エルフ「なんだ、この四角いの」 (45)

エルフが偶然拾ったスマホ

それが始まりの合図だった…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363633266

エルフ「ふぅ…」

チャポン

エルフ「水汲み、しんどいわ」

キランッ

エルフ「あ、川の中で何かが…」

エルフ「何なのかしら…?」

サワサワッ

ピッ

エルフ「うわぁ、音が…!」

オゥ カンナムスタイル

エルフ「奇妙な箱だわ…でもまぁせっかくだから捨てずに取っておこう」


〜エルフの家〜

エルフ「…ただいま」

エルフ母「遅いよ!」

バシンッ

エルフ「ぎゃあっ!」

エルフ母「水汲みにどれだけ時間をかけてるんだい、このノロマ!」

エルフ父「おい顔は止めとけ、遊女としての値が下がる、ヒック」

エルフ母「うるさいよ酔っぱらい!」

エルフ(ここは、地獄だ…)

エルフ母「早く飯の支度をしな!」

バシンッ

エルフ「は、はい…」

エルフ父「あーっと、俺の酒も買ってきてくれよー」

エルフ「え…もう?…昨日買ったばかり…」

エルフ父「あぁん?」

エルフ「わ、分かりました、後で買ってきます」

エルフ父「今すぐ買って来い!」

ガシャァァァン

エルフ「ひぃっ、痛いっ、ガラスが…」

エルフ「行ってきます…」

エルフ母「早くするんだよ、私ゃ腹が減ってるんだ。さっさと行って飯を…40秒で支度しな!」

バシンッ

エルフ「ぎゃぁ!」

—————————————

エルフ「…もう嫌だ、あんな家、あんな奴等」

エルフ「これが、あいつらを一瞬で消せる兵器か何かなら、よかったのに」

サワサワッ

ピッ

オゥ カンナムスタイル

エルフ「オゥ カンナムスタイル」

〜酒屋〜

エルフ「お酒…ください」

女「はいはい…あ、エルフちゃん、まいど」

エルフ「こんにちは女さん」

女「いつものやつでいいの?」

エルフ「えぇ、父はあのお酒じゃないと怒るので…」

女「…大変だね、エルフちゃん」

エルフ「いえ、慣れました…慣れた事に、しました」

女「エルフちゃん…」

エルフ「これ、お代です」

女「まいど…はい、お釣り」

エルフ「え。確か代金はちょうど…」

女「いいって。こんな小さな事しかできないけどさ、私はエルフちゃんの味方だからさ…頑張って」

エルフ「女さん…」

エルフ「それじゃ、失礼します」

女「まいどー」

————————————

エルフ「………」

ギリッ

エルフ「あの女…」

ギッ

エルフ「あの女あの女あの女!ニコニコしやがって!」

エルフ「私を惨めだ、と決めつけ同情し、哀れむ…さぞかし気分がいいだろうな、高みの見物は!」

サワサワッ

ピッ

オゥ カンナムスタイル

エルフ「カンナム…スタイル…」

〜エルフの家〜

エルフ「ただいま…!?」

エルフ母「うぅっ…」

エルフ父「ぐぅっ…」

エルフ「ど、どうしたの!?」

エルフ母「ご、強盗だよ…人間の」

エルフ父「命こそ助かったが、金目の物はごっそり奪われちまった…」

エルフ「なん…だと…」

エルフ母「な、何ボサッとしてんだい、飯の支度をしな!」

エルフ父「酒だ酒、早く酒!」

エルフ(何なんだこいつら…こんな事態になっても、まだ…自らは行動しようとしない…娘の私に全てしてもらおうという考えが…変わらないのか…!)

プツン…

エルフ「こんな…こんな奴等に今まで私は…なぜ…勇気が…いや…今さら…違う…今から…そうだ、今から…!」

サワサワッ

ピッ

オゥ カンナムスタイル

オゥ カンナムスタイル

エルフ「カンナム…スタイル!」

エルフ母「かん…なむ?」

エルフ父「すた…いる?」

えっなにこわい

オーパンじゃないの

エルフ母「かん…なブヘァ!?」

トケツッ

エルフ父「お、お前、一体な…グヘバァァァ!」

チミドロォ…

エルフ「…やっぱり、ね。この四角い箱は兵器だったのね…」

サワサワッ

ピッ

オゥ カンナムスタイル

エルフ母「ぎいゃぁぁぁ!」

エルフ父「ぐへぁばらぁぁぁ!」

バタリ

バタリ

エルフ「吐血、失神させる箱か…面白いじゃないの」

なにこれ

エルフ「もうこの家に居て我慢する日々とはオサラバね…」

テクテクテク

—————————————

エルフ「この箱さえあれば、誰も私を責めない。私は、私は自由なんだ」

サワサワッ ピッ オゥ カンナムスタイル

エルフ「しかし、何なのだろう。聞いたことの無い言葉だ。異国の呪いか何かなのかしら」

エルフ「ま、いいわ。手始めに…そうね、あの酒屋の女ね。いつも私を見下していたあのくされま○こに、痛い目にあってもらおうかしら!」

〜酒屋〜

カランコロンカラン

女「いらしゃいま…あ、エルフちゃん」

エルフ「…」

女「珍しいわね、日に二回来るなんて」

エルフ「…」

サワサワッ

女「ど、どうしたのよ黙っちゃって…」

ピッ

女「何か嫌な事でもあったの?」

オゥ カンナムスタイル

エルフ(くたばれ、くされまん○!)

女「ねぇ、どうしたのよ?」

エルフ(…!?)

サワサワッ ピッ オゥ カンナムスタイル

オゥ カンナムスタイル

オゥ カンナムスタイル

オゥ カンナムスタイル

女「エルフちゃん…本当にどうしたゃったのよ…」

エルフ(な、何故だ!?)

おぅふ誤字…

エルフ(この箱が…効かない…まさか、これは人間には効果が無い、とでもいうのか…?)

女「エルフちゃん、私でよかったら相談に乗るわ。何があったか話してよ、ね?」

エルフ「…」

サッ

女「あ、エルフちゃん!?」

テクテクテク

女「帰っちゃった…」

エルフ「ちくしょう…」

ガンッ←壁殴った音

エルフ「ちくしょうちくしょうちくしょう、あのくされ○んこ!」

ガンッ

エルフ「せっかく、今までの恨みを…晴らそうとしたのに!」

ボソボソ

エルフ「…?」

ボソボソ

エルフ「だ、誰?」

?「邪念では、その箱…いや、『スマホ』は使いこなせないぜ」

エルフ「あ、あなたは…?」

?「俺は男だ」

エルフ(くにおくん?)

エルフ「あなた…この四角い箱の事を知っているの!?」

男「まー知っているっつーか、何つーか…」

エルフ「確か、スマホって言ったわね。それがこの箱の名前なの?」

男「あぁ。まぁこの世界、この時代にはあるはずのない物なんだがな」

エルフ「あなた、一体何者なの…?」

終わりじゃないよな…?

男「俺は、自由きままに生きる…あの雲のような存在さ」

エルフ「いや、そんなぼんやりした言い方されても」

男「まぁ気にしないでくれ。それより、そのスマホの事を知りたいんだろ?」

エルフ「え、えぇ」

男「こんな所で立ち話もなんだ、近くのハンバーガー屋にでも入ろうぜ」

〜とあるハンバーガー屋、店内〜

エルフ「あなたはこの四角い箱…スマホの事を知っているのね?」

男「あぁ。詳しい事を話し出すとキリがないから省くが、これは、この世界ではない別の世界の物だ。それも未来の、な」

エルフ「別の世界…?」

男「あぁ。そこには君のようなエルフはいない。ドワーフもゴブリンもドラゴンも、ね」

エルフ「そんな世界が…あるというの…」

男「あぁ。そこには人間しかいない。そしてこの世界では当たり前の、魔法が存在しない」

エルフ「!」

男「精霊と契約して生きているエルフ族にとっちゃ信じられないだろうけどね」

男「俺はその世界から来た…飛ばされた、と言った方が正しいかな」

エルフ「飛ばされた?」

男「時空の裂け目に取り込まれたんだ…説明は難しいが、まぁ事故みたいなもんでこの世界に来た訳だ」

エルフ「では、このスマホはその時に一緒に持ってきた…?」

男「あぁ。つまりそれは俺のもの、って訳」

エルフ「…」

男「あぁそんなに睨まないで。返せという訳じゃない。俺がこっちに来たのは、もう10年も前の話なんだ」

エルフ「!」

男「もうこっちの生活に馴染んでしまってね。それがあろうがなかろうが、もうこの世界の住人として生きていくつもりさ」

男「それは君が使うといい。ただし、さっきも言ったけど、邪念ではそれは使えない。そもそもスマホはそういう使い方をする物じゃあないからね」

エルフ「では本来の使い方って…?」

男「それは言えない。ただ、誰かを傷付けるのは間違った使い方だよ」

エルフ「!」

男「スマホの発する音声データは、何故かこの世界の住人に危害を加えるようだからね」

エルフ「あなた…私が…」

男「追及はしない。ただの推測さ」

男「さぁ、先に店を出なよ。代金は半分置いてってくれ」

エルフ(割り勘かよ!)

男「もう会うこともないだろう。願わくば、君がスマホを正しく使ってくれる事を…」

チャリン

エルフ「お代、置いときます。さよなら」

テクテクテク

割り勘ワロタ

もしもバンナムスタイルだったなら……もっと色々と”やれ”そうかもな。何がとは言わないが

男(不可解な点が二つある。一つ目は、スマホの充電だ。10年経った今でも問題なく使えるのは何故か?)

チュー←バニラシェイク飲んでる

男(二つ目は、スマホを使っている、あの子自身に被害が無いのは何故か?)

チューチューチューチュー

ズッ

男(もしやあの子は…いや、しかし…だがもしそうならば合点が…とは言うが…)

ズズズッ

ズズズッ

ズズズッ

男「よし、シェイクもう一つ頼むか」

————————————

エルフ「スマホ…これで私は何をすれば…」

エルフ「深く考えても仕方ないわね…とりあえずこの村を出よう。何一つ良いことのなかった、この村を…」

テクテクテク

〜数日後〜

エルフ「当てもなくさまよったけど、どうにか村のような所に着いたわ」

テクテクテク

エルフ「あ、あそこに誰かいる。話を聞いてみよう…あのー」

?「はいぃ?」

エルフ「ここはなんていう村ですか?」

?「ここはゴブリン村でがす」

エルフ「ゴブリンの村でしたか」

ゴブA「へぇ。何も大したもんはねぇチンゲな村でさぁ」

エルフ(チン…ゲ…?)

ゴブA「見たところあんたはエルフですな」

エルフ「えぇ。訳あって放浪の旅をしています」

ゴブA「そうでがすか…まぁ何もない所ですが、ゆっくりしていってくだせぇ…」

テクテクテク

エルフ(ゴブリン…見るのは初めてだったけど、噂より大人しそうな種族ね…)

エルフ「歩き疲れたわ…宿を探そう」

————————————

ゴブB「らっしゃい。一泊でいいでがすか?」

エルフ「はい」

ゴブB「では一番奥な部屋を使ってくだせぇ」

テクテクテク

ガチャ

エルフ「ふぅ、やっと休めるわ」

エルフ「…」

エルフ(これからどうしよう。行き先もない、目的もない。この四角い箱の本当の使い方も分からない…)

サワサワッ ピッ オゥ カンナムスタイル

エルフ(これを使えば誰かが傷付く。使わなければ、私が虐げられる。だったら…)

ギリッ

エルフ(自由って、こんなにも不自由な事だったのね…辛くても、あの薄汚い村でいた方が…)

エルフ(いや…それが嫌だから、わた…し…は……)

Zzz…

〜翌朝〜

エルフ「んんっ…朝か…」

ザワザワッ

エルフ「外が騒がしいわね…何かあったのかしら」

テクテクテク

エルフ「何かあったんですか?」

ゴブC「へぇ、ドラゴンでさぁ」

エルフ「ドラゴン?」

ゴブC「へぇ、ドラゴンが暴れて村を荒らしたんでさぁ」

エルフ「はぁ、そうですか」

ゴブC「誰か、あの暴れん坊のドラゴンを退治してくれないですかねぇ…」

チラッチラッ

エルフ「…」

テクテクテク

————————————

エルフ「ドラゴンか…早くこの町を出なきゃ」

ザザザッ

ゴブD「待ちなせぇ、旅のエルフ殿」

エルフ「?」

ゴブD「実はこの町はドラゴンの被害にあっていましてな」

エルフ「うんさっき聞いた」

ゴブD「ドラゴンは我々ゴブリンを見下して、話を聞こうとしない…誰か別の種族の方に交渉をお願いしたいのでがす…」

エルフ「ふーん、あっそ」

ゴブD「…私の言いたい事を理解して頂けましたかな?」

エルフ「…」

ゴブD「だーかーら、ドラゴンと交渉してくれって言ってんの」

エルフ「めんどい」

ゴブD「っ、素直にならねば、力ずくでも…」

ザザザッ

ゴブA「…」

ゴブB「…」

ゴブC(うんこもれそう)

ゴブC(やば、げんか…)

ブリュ

ブリュ

ブリュッセル!

ゴブC(はうわっ!)

エルフ「く、臭い!」

ゴブC「///」

ゴブA「照れてんじゃねぇ!」

ゴブD「くっさ、うんこくっさ!」

————————————

エルフ「なんか色々あったけど、分かりました」

ゴブD「おぉ、では!」

エルフ「あの後、うんこ投げるぞ!って脅されちゃあね…」

ゴブC「///」

ゴブB「お前、羞恥心ゼロだな」

エルフ「まぁいいですよ。今の私には、目的ってやつがある方がいいですし」

ゴブB「おすし」

ゴブC「おすぎ」

一同「ピーコ!」

エルフ「で、ドラゴンは今どこに?」

ゴブD「あの山の洞窟にいます」

エルフ「あの山とか言われても…道案内に誰か来てくれませんか?」

ゴブD「道案内でがすか…ならゴブB、お主が一番詳しかろう」

ゴブB「へ、へい」

エルフ(ゴブCじゃなくてよかったわ…)

エルフ「では行ってきます」

ゴブD「吉報を待っておりますぞ」

ゴブC(あ、また腹痛くなっつきた)

—————————————

ゴブB「洞窟までは2時間くらいでがす」

エルフ「まじすか…」

ゴブB「失礼ですが、あまり体力が無いようでがすね」

エルフ「えぇ、体力を使うような仕事はしてこなかったから…」

ゴブB「まあ我々ゴブリン族は体力だけが取り柄みたいなもんでがすからなぁ」

エルフ「でも、羨ましい。自分の足で、自由に踏み出せるのだから…」

ゴブB「そうでもないでがすよ。我々ゴブリンは、昔から、自由なんてものは…」

エルフ「?」

ゴブB「ドラゴンに襲われるのだって、別に昨日今日に始まった事じゃあない。ずっと昔から、あっしのじいさんの、そのまたじいさんのじいさんの、もっと昔から…食物連鎖ってやつでがすよ」

エルフ「昔から…ならなぜ村から出ないの!?」

ゴブB「無理でさぁ。我々は弱く、臆病な種族。人間にはその外見から嫌われ、他の種族からは低脳だと蔑まれる…ここしか生きる場所は無ぇでがすよ」

エルフ「で…でも…」

ゴブB「それに、さっき食物連鎖って言いましたが…ありゃ我々にとっても、そうなんでさぁ」

エルフ「?」

ゴブB「ドラゴンは多くのゴブリンを食い荒らす。ドラゴンは多くのゴブリンの胃袋を満たす」

エルフ「!」

ゴブB「意外でしたか?いやなに、暗黙の了解ってやつですかねぇ…互いに持ちつ持たれつで、やってるんでさぁ、ゴブリンも、ドラゴンも…」

エルフ「なら…なら貴方は食べるのも食べられるのも仕方の無い事だと!?」

ゴブB「…何を熱くなってるかは知らねぇでがすが…まぁ、そうでしょうな。おたくも、仕方無ぇ、仕方無ぇって、生きてきたクチでがしょ?」

エルフ「!、わ、私は…」

ゴブB「おたくの目は、我々と同じでさぁ。何かに怯え、でも逆らおうとはしない臆病者の目…」

エルフ「…」

ゴブB「すいやせん、口が過ぎやした…さぁ、そろそろ洞窟の入り口でがすよ」

————————————

ゴブB「この奥にドラゴンがいるでがすよ。心の準備はいいでがすか?」

エルフ「え、えぇ。なんとか交渉のテーブルについてくれるといいのだけど…」

ゴブB「ドラゴンは知的でがす。出方次第では、あるいは…」

エルフ「まぁ、やってみるわ」

ゴブB「では、洞窟の奥へ、行きやしょう…」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom