エレン「とある男の日記」(13)


※ネタバレを含みます※
※亀更新、自分で創作した設定があります。嫌な方はお勧め致しません※


僕の書斎の、机の上にはいつも古びた手帳が置かれている。
何度も開いたのだろう、自然に折り目がついて膨らみ、上質で滑らかだった表紙も触ればポロポロと材質が剥がれ落ちてしまう。中の紙は黄ばみ、所々インクが薄れている。
僕は、あの日以来何度となくこれを読み返してきた。


844年○月×日
今日から、この手帳に思ったことを書こうと思う。
見つかったら多分取り上げられるけれど、毎日の巨人化訓練、作戦へむけての訓練で僕は疲れている。思っていても、絶対に口にしちゃいけないことばかり思いつくので、吐き出すためだ。
今日も巨人化訓練はとても疲れた。最後の方は、上手く巨人化がたもてなくて、しかられてしまった。
みんなあと一年を切った作戦の実行にとても焦っているのが分かる。


でもライナーと、僕は最近辛く当たられてばかりだ。やめてほしい。


844年×月○日
今日は巨人化訓練は少なく、作戦のおさらいがメイン。体はそんなに疲れては無いけど………

僕たちは、壁を壊すんだ。
壁内には、"ジンルイ"がいる。
僕らとは違う。でも、きっと似ている所もかならずある。
僕らが壁を壊したせいで、×××が、僕たちをかばって目の前で食べられた時みたいな、あの気持ちを味わう人をたくさん、たくさん作るんだ。

みんなは『壁内の人類は敵だから、滅ぼして当然なんだ』『ベルトルトが気に病む必要なんて無いんだよ』しか言わない、僕に分かりましたしか言わせてくれない。
…僕は分かりました以外言っちゃいけないのは分かってる。でもぼくは

誰かがみまわりにきた、かくのをやめる


844年△月×日
まだアニと話せていない。

今日は遠くから見ただけだけど、外見は何だか小さくてフツーの女の子のみたいだった。
ライナーは一回近くで見たことがあるらしい。『美人だったけど、俺よりおっかない顔してたぞ』だって。
僕はライナーよりもおっかない顔をした女の子なんてメスのゴリラくらいしか思いつかな●●


ライナーが後ろにいたのに気付かなかった。隠そうとしても残念ながら手遅れ。なぐられた。痛い。
飛び散ったインクが手帳についちゃったよ…ライナーったら…


844年×月×日
今日からアニも一緒に訓練。

ライナーがおっかない顔だって言ってたけど、普通に可愛い顔だと思った。
僕とも普通に握手してくれたし、よろしくとお互いにあいさつした。
ライナーはよく分からないけどにらまれて握手を拒まれていた。なにしたのさライナー。



844年◎月×日
僕たちが、この作戦に選ばれたのは、僕たちの巨人化が特別なものだからだ。
何でかは分からない。でも僕は他人よりかなり大きい巨人に変身できるし、ライナーは硬化能力に優れている。
格闘、身体能力に優れたアニも加えて僕ら三人はみんなから希代の世代だとか、人類を滅ぼす為に生まれてきたみたいだとか言われている。

僕みたいなのが作戦に選ばれたのは、喜ぶべき事だって分かってる。

僕が本当に喜ぶかは別だけど。
今日も、作戦のおさらいと巨人化訓練。素早く手を噛みちぎって、巨人化できるようになった。


844年◇月★日
今日は午後から格闘術。
アニはやっぱり凄い。巨人になれない場所で大人に囲まれた場合を想定した訓練だけど、大人をバッタバッタと倒していた。今ならライナーがおっかない顔と言っていたのも分かる気がする…
凄いなあ、と声をかけたら余り嬉しそうじゃなかった。

アニはなんて言うか、とってもクールだ。表情もあまり変わらないし。怒ってるのかなと思うことも良くある。でも、悪い人って訳じゃないのは十分分かってきた。


844年□月☆日
アニにアニのお父さんの話を聞いた。
アニは、嫌だったけれども格闘術を習い、アニのお父さんの厳しい訓練を受けたらしい。
前に格闘術を誉めても、嬉しそうじゃなかったのはそれだからなんだって。
アニは、きっと普通に育っていく子供たちを後目に自分は訓練ばかりだったんだろう。
僕にも、その気持ちはよく分かるよ。


844年□月▽日
今日からは山奥で体力養成を兼ねた行軍。

監視している人はいるけど…正直楽しい!!
アニとライナーと僕の三人だけだ。
ライナーはいつもより冗談を言うし、アニもそれに呆れてるふりしてるけどいつもより笑ってる。
山奥の小屋で三人っきりでいると、みんな普段とは違うことばかり話す。

好きな食べ物のこと、大人になったらなりたいもの、一度やってみたいこと、今まで楽しかったこと、一番ひどいいたずら、教官の顔マネ、施設の愚痴……

話しすぎてもう夜遅い。今日はもう寝よう。

844年◇月▼日
今日は見事に三人共寝不足。朝はあのアニですら僕とライナーの顔を見て笑い転げていた。
山なので自分たちで獲物を捕まえた。
意外にも僕が一番捕まえることが出来た。
料理はライナーが担当。『男の料理だー!!』とか言って凄いおおざっぱな調理をしてアニに蹴られていた。
でも、意外と凄い美味しかった。アニもしぶしぶ認めてて、ライナーは自慢気だった。


844年□月■日
山奥での訓練も六日目。
今日は大変だった。三人でとても楽しいけど、やっぱり疲れは溜まってるみたいだ。
採集に行くと言って出て行ったアニが、夕方になっても帰ってこない。
僕は焦って闇雲に探しに行こうとした。
ライナーはそんな僕を捕まえて、落ち着いて行動するよう説得してくれた。闇雲に探しに行っても迷うだけだって。
僕たちは松明を手に、山奥にアニを探しに行った。
暗闇の中で、松明は良く見える筈だから、アニから僕たちのいる所は分かるはずなのに、アニは現れなかった。
僕たちはとりあえず、拠点にありったけ火を焚いて、アニを二人で探すことにした。

巨人化して、アニの名前を呼べば見つかるんじゃないか、そうライナーに提案してもライナーは絶対に許してはくれなかった。

一時間程探していたら、アニがようやく見つかった。
ライナーに抱えられたアニは、道に迷ってさ迷った挙げ句体力が無くなってもうろうとしていたことをしきりに謝っていた。

『なんであたしよりベルトルトの方が泣いてるのよ、情けないな』なんて、アニに笑われたけど全然気にならない。

そう言いながらアニだって泣いてるし、アニをおんぶしてるライナーだって泣いてたんだから。

アニが見つかって良かった…

今日はここまでです。
一応言いますとベルトルト視点のライベルアニの過去みたいな…

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