ユミル「劇場のチケット?」ベルトルト「あっ!」(190)

この話は、

サシャ「コニー!勝負しましょう!」コニー「勝負?」

と、時系列的につながっています。
前回の話を知らないよって方は、

コニーとサシャが、バカ夫婦その2になった(ライナー談)

とだけご理解ください。
明確ではないけどぼんやりとした原作ネタバレありです。
では投下します。


ユミル「なんだ、お前が落としたのか?」

ベルトルト「あ、あぁ。ありがとう、ユミル」

ユミル「それ、今度の休日に行くのか。二枚あるってことは、ライナーと行くのか?」

ベルトルト「そのつもりだったんだけど……ライナー、今日の訓練で足を負傷してしまって、休日は安静にしてるように言われたらしいんだ」


ユミル「じゃあ、誰と行くんだ?」

ベルトルト「うーん、特に当てはないんだ。かといって一人で行くのも味気ないし、今回は諦めようかな」

ユミル「なんだ、だったら私が一緒に行ってやるよ」

ベルトルト「えっ?」

ユミル「誰かが一緒に行けばいいんだろ?」


ベルトルト「まぁ、そうだけど……でも」

ユミル「今度の休日、10時に兵舎出口で待ち合わせだ」

ベルトルト「え、ちょっ」

ユミル「それじゃあまた」

ベルトルト「ユ、ユミル!」


女子寮

クリスタ「ユミル! どこに行ってたの?」

ユミル「何だ? 探しててくれたのか? 流石私のクリスタだな」ワシャワシャ

クリスタ「わっ、髪ぐちゃぐちゃになっちゃうよぉ、ユミルっ」

ユミル「あっはは!……なぁ、クリスタ」

クリスタ「なぁに?」

ユミル「明後日の休日、出掛けてくる」


クリスタ「え? う、うん、行ってらっしゃい。何かお買い物?」

ユミル「そんなとこだ」クシャクシャ

クリスタ「わっ、だからユミル!」

ユミル「はは……」

ユミル(……)

ユミル(あいつが乗り気じゃなさそうなのは、わかってるんだがな……)

ユミル(でも……)


休日の朝
女子寮

ユミル(よし、こんなもんでいいだろ)

ガチャ バタン

クリスタ「あれ、ユミルもう行っちゃったんだ」

ミカサ「クリスタ、あなたは行かないの?」

クリスタ「うん、今日はユミル、用事があるみたいなの」

ミーナ「用事って、どんな?」


クリスタ「お買い物、だったかな。でも、はっきり答えてなかったような……」

ミーナ「じゃあ、もしかしてデートじゃない? ちょっとおめかししてるみたいに見えたし!」

クリスタ「えぇっ!? ユミルが!?」

ミカサ「可能性はゼロじゃない」

クリスタ「でっでも、いったい誰と?」


ミカサ「エレンとアルミンではない。あの二人は今日外出届を出してない」

ミーナ「まぁ、コニーが外出届出してるのは確実だけどね」

クリスタ「え、なんで?」

ミーナ「サシャがいないでしょ?」

クリスタ「あっ、もしかして初デート!?」

ミカサ「なるほど」


ミーナ「ジャンとマルコは?」

ミカサ「二人ともまだ寝てるって、食堂でエレンが言っていた」

クリスタ「じゃっ、じゃあ、他に誰がいるんだろう」

アニ「あんたたち、朝っぱらからうるさいよ……」ムクリ


クリスタ「あっ、ごめんアニ、起こしちゃった?」

ミーナ「ねぇ、アニは今日、誰が外出届出してるか知らない? 男子で!」

アニ「大声出さないでくれない? こっちは寝起きで頭が働いてないんだ」

ミーナ「ご、ごめん」

アニ「……まぁ、二人知ってるけど」

クリスタ「え、誰!?」


アニ「ライナーとベルトルト」

ミーナ「あぁー……でもあの二人はあの二人で行動しそうじゃない?」

ミカサ「いや、ライナーはまだ足の怪我が治りきってないはず。今日外出できるとは思えない」

アニ「そこまでは私もわからないね。外出届を出すのは三日前までだ。二日前に怪我をしたんなら、ライナーは外出届を出したまま、寮か医務室に留まってるのかもね」

クリスタ「えっ、ちょっと待って、じゃあ、ユミルがデートしてるとしたら、相手は――」

今夜はここで切ります。明日午後にまた投下します。

それと、ここで言うべきか迷いましたが、管理人さんへ。
前作の記事をまとめてくださってありがとうございました。
あちらの記事でお礼を言うのも場違いな気がしたので、この場で。


訓練兵舎出口


ベルトルト「ごめん、遅れて……」ゼエゼエ

ユミル「女を待たせるとはいい度胸だな。行くぞ」



トロスト区市街地


ユミル「おーおー、賑わってるじゃねぇか」

ベルトルト「あの、さ、ユミル……その、ほんとによかったの?」

ユミル「あん?」


ベルトルト「いや……何でもない」

ユミル「何だよ。はっきりしないやつだな。なぁ、劇場ってどっちだ?」

ベルトルト「向こうの通りを真っ直ぐ行って、左かな。チケットの地図を見る限り。でもまだ時間があるから、先にどこかでお昼を食べたほうがいいかもね」

ユミル「なぁ、そういや今日って、どんな演目見るんだ?」ヒョコッ

ベルトルト「あっ」ギクッ



『古城の真っ赤な階段 ~真夜中に現れる少女~』



ユミル「……」

ベルトルト「ご、ごめん……言おう言おうと思ってたんだけど。これ、ホラーものなんだ」

ユミル「……」

ベルトルト「だから、ちょっと女の子は誘いづらくって……それに僕は」

ユミル「……」

ベルトルト「えっと……ユミル?」


ユミル「……べ」

ベルトルト「え?」

ユミル「別に平気だっつの! 何だよお前、私がビビるとでも思ったのか?」

ベルトルト「あ、いや」

ユミル「お、地図はこれか。ここなら近くに美味い鶏肉料理の店があるから、そこに行くか! な!」スタスタスタ

ベルトルト「あっ、ちょっ、待ってくれユミル!」


鶏肉料理店


女店員「いらっしゃいませ!」

ユミル「ふ、二人!」

ベルトルト「ユミル、店員さんまだ何も聞いてないよ」

ユミル「」

ベルトルト「ごめん、演目のことで緊張させちゃったかな」

ユミル「そんなんじゃねぇって! ほら、行くぞ!」

ベルトルト「ユミル、だからまだ、案内もされてないって!」



ユミル「……」ソワソワ

ベルトルト「ねぇ、ユミル?」

ユミル「……」プルプル

ベルトルト「ユミルってば」

ユミル「ふぁっ!?」ビクッ

ベルトルト「そんな驚かなくても」

ユミル「わ、私は別に」


ベルトルト「ねぇ、よくここには来るの?」

ユミル「ん? あぁ、まぁな。ここはわりと有名だぞ」

ベルトルト「そうなんだ。来たことなかったな」

ユミル「お前はそもそも、あんまり出かけてないんじゃないか? たまに外出するにしても、ライナーとしか見たことないぜ」

ベルトルト「ま、まぁ、そうかもね。でも君だって、クリスタといつも一緒じゃないか」


ユミル「私はちゃんと他にも交友関係持ってるよ。だいたいお前、ライナー以外のやつと打ち解けて話してるか?」

ベルトルト「えっ?」

ユミル「お前って、人並みには話すけど、どうも表面的に見えるんだよな」

ベルトルト「……どうして」

女店員「はい、お待ちどうさま!」

ユミル「おっ、来た来た! 食べるか!」

ベルトルト「……あぁ」


ユミル「このトマト煮込みが絶品なんだよな~」パクパク「ん~うま~」

ベルトルト「美味しそうに食べるね」

ユミル「お前は美味しくないのか?」

ベルトルト「いや、美味しいよ、とても」

ユミル「ほら、その顔だ」ビシッ

ベルトルト「え?」

ユミル「今の顔、ほんとに心から美味しいと思って笑ってる顔か?」


ベルトルト「……」

ユミル「な?」モグモグ

ユミル「お前は感情を出さなすぎる」

ユミル「出せないのか隠してるのか知らねぇけどさ」

ユミル「こうして向かい合って一緒に飯食ってる相手とは、もっと素直に接してもいいんじゃねぇか?」


ベルトルト「……」

ユミル「何だよ」

ベルトルト「いや、その……ありがとう、ユミル」

ユミル「は?」

ベルトルト「今日、僕についてきてくれて」

ユミル「別に。いいから食おうぜ」

ベルトルト「あぁ」

いったん切ります。もうちょい書き溜めてから再開です。
読んでくださってる方、コメント残してくださった方ありがとうございます。


劇場前


ユミル「いよいよか……」ドキドキ

ベルトルト「ユミル、大丈夫かい?」

ユミル「別に、どーせ子どもだましのレベルだろ?」

ベルトルト「どうかな……15歳未満お断りってなってるし、結構本気で脅かしにかかるかも」

ユミル「」

ベルトルト「……ごめん。やっぱりやめても」

ユミル「いいい行くぞ!」


開演


ヒュウウウウ

『何だ……誰もいないのか?』

『おーい……』

ギイイ

『空いて、る……?』


ユミル「……」バクバク

ベルトルト「ユミル? 大丈夫?」

ユミル「……」

ベルトルト「聞いてないか……」


『すみません、道に迷ってしまったんです』

『今晩泊めてもらえませんか?』

シーン

『誰もいないか』

ガタン!

ユミル「ひっ!」

ベルトルト「……」


『何だ? やっぱり誰かいるのか?』

『上から聞こえてきたな……』

『あそこにあるのは……階段か?』

ベルトルト「……」チラ

ユミル「」ガクガク


『暗くてよく見えないな。正面に回り込んでみよう』

『大きな階段だな。上の方がよく見えな――うん?』

パッ!(血まみれの階段が照らされる)

ユミル「うわあああっ!!」ガシッ!


ベルトルト「ちょっ、ユミル! 声が大きいよ!」ヒソヒソ

ユミル「あっ、あかっ、か、階段がっ」ギリギリ

ベルトルト「痛い痛いユミル! 手をつかむのはいいけど、爪食い込んでるから!」ヒソヒソ


『な、何だこの階段!?』

『血の量が尋常じゃない。これ、絶対死ん――』

ポタ…

ユミル「!」ビクッ

『な、何だ?』

ポタ…ポタ…

『水……音?』


ポタ…ポタ…ヒタ…ヒタ…

『水音に混じって……何か』

『足音が……上から――』

ドロッ(階段がさらに血に染まる)

ユミル「ひっ!」ギュウッ


ヒタ…ヒタ…

ヒタ……



『……ダァレ?』


ユミル「いやああああっ!!」ガバッ!

ベルトルト「うわっ、ユミルちょっ、前見えないよ!」

ユミル「あああ、あの子っ、血まみれでっ、頭がな――いやあああ!!」

ベルトルト「落ち着いて! あれ作り物だから! ユミル!」

ユミル「うわああああん!!」


閉演後


ユミル「……」

ベルトルト「ユミル?」

ユミル「……」ガクガク

ベルトルト「ユミル、もう終わったよ」

ユミル「……え? 終わった?」


ベルトルト「全く、目も閉じて耳も塞いで、ほとんど見れてないじゃないか」

ユミル「だ、だってさ――ん?」

ユミル(な、何だこの体勢!?)

ユミル(まさか、あのままずっと抱きついて――)チラッ

ベルトルト「大丈夫?」

ユミル「う、うわぁっ!」バッ!


ベルトルト「まだ怖い?」

ユミル「だ、大丈夫だ! もう全然平気!」

ベルトルト「よかった」フッ

ユミル(あれ?)

ユミル(こいつの、今の笑顔……)


ベルトルト「どうしたの?」

ユミル「いや……何でもない」

ベルトルト「いったん外に出ようか」

ユミル「あぁ……」

ユミル「……」


ユミル「ベルトルト」

ベルトルト「何だい?」

ユミル「その……ありがとう」

ベルトルト「どういたしまして」

とりあえずまたここで切ります。次は今夜遅くか明日の午前になるかと。
読んでくださってる方、コメント残してくださった方ありがとうございます。ユミル最高。


劇場の外


ユミル「おー、だいぶ日が傾いてるな」

ベルトルト「そうだね。少し散歩して――あっ」

ユミル「うん? どうした?」

ベルトルト「サシャとコニーだ」

ユミル「何っ!? どこだ!」

ベルトルト「あそこ」スッ

ユミル「よし行くぞ!」ガシッ

ベルトルト「えぇっ!? おいちょっ、ユミル!」ズルズル


商店街 路地裏


ユミル「よし、十分距離はとったし、ここからなら見つからねぇな」

ベルトルト「でも、だいぶ近いと思うよ……会話はさすがに聞こえないけど」

ユミル「これ以上近づくとバレるかもしれないだろ。お前のそのでかい図体のせいでな」コンッ

ベルトルト「痛っ」

ユミル「んー? 何だよあいつら、まだ手も繋いでねぇのかよ。お子様だな」

ベルトルト「まぁ、二人のペースってものがあるんじゃないかな」

ユミル「あいつらのペースって、牛よりも遅いんじゃねぇの」


ベルトルト「でも、コニーは繋ぎたがってるみたいだね」

ユミル「あん? なんでわかるんだよ」

ベルトルト「時々、サシャの左手をちらちら見てる」

ユミル「じゃあさっさとすりゃいいじゃねぇか」

ベルトルト「恥ずかしいんだろうね」

ユミル「何やってんだ……お、立ち止まったぞ」


ベルトルト「露店、かな? おばあさんが座ってる」

ユミル「サシャの奴、随分興味津々に見てるな。あれは……髪留めか?」

ベルトルト「みたいだね。白い花のついた髪留めを手に持って見てる」

ユミル「お前、眼いいな……お、財布出したぞ。買うのか」

ベルトルト「視点が高いだけだよ……あれ、なんか、がっかりした顔してる」

ユミル「金が足りなかったのか、馬鹿だな……うん? コニーがそわそわしだしたな」

ベルトルト「視線があっちこっち動いてるね。サシャと、サシャの手元の髪留めと……あと、自分のポケット」


ユミル「待て、コニーがサシャになんか言って……髪留め渡されたな。んで、ばーさんのとこ行って……財布取り出したぞ! 買ってやる気か」

ベルトルト「そのようだね。サシャが驚いてる」

ユミル「やるじゃねぇか、コニー」

ベルトルト「サシャ、すっごく喜んでるね。コニーがサシャの右手をとって、髪留めを渡して――」


ベル・ユミ「「おぉー」」


ユミル「そのまま反対側の手をとって繋ぐとはな」

ベルトルト「ちゃんとコニーの方から繋いであげたね」

ユミル「何だ、男ってのはそういうの気にするのか?」

ベルトルト「気にする男も、いるってことだよ」

ユミル「ふーん……なぁ、あの露店、ちょっと覗いてみないか」

ベルトルト「あぁ、いいよ」


露店


おばあさん「いらっしゃい」

ユミル「へぇ、なかなかいいのが揃ってるな」

ベルトルト「可愛らしいものが多いね」

ユミル「あぁ。サシャも見てたが、遊びのきいた髪留めが多いな。あいにく私は、飾りもんに興味はないが」

ベルトルト「そうなの?」


ユミル「似合わないだろ? 私には」

ベルトルト「そんなことは」

ユミル「いいや、こういうのはサシャみたいな、愛嬌あって可愛いやつがつけるもんさ」

ベルトルト「……」

ユミル「せっかくだし、クリスタに何か土産に買ってってやるかな――ん?」

ユミル(これは……)


ベルトルト「それも、髪留めだね。シンプルだけど、青い石のあしらいが綺麗だね」

ユミル「この石……護り石だ」

ベルトルト「護り石?」

ユミル「持つ人を護るまじないをこめた石だよ。石の御守りだ。こんなところに売ってるなんて……」


ベルトルト「へぇ、初めて聞いたな」

ユミル「……」

ベルトルト「ユミル?」

ユミル(ちっ、やっぱり他のより高いな。簡単に手に入るもんじゃねぇってのは、わかってたが……)

ユミル(いや、何考えてるんだ私は。そもそもこんなもの、買ったところで何の意味がある。どうせ私なんか使わないのに……)

ベルトルト「……」


ベルトルト「すみません、これください」

ユミル「えっ!?」

おばあさん「はいよ。ありがとう」

ユミル「お、おいちょっ、お前何やって!」

ベルトルト「見ての通りさ。ほら」グイッ

ユミル「!」


ベルトルト「はい」ポンッ

ユミル「お前……どうして」

ベルトルト「今日のお礼だよ、ユミル」

ユミル「え?」

ベルトルト「今日は、ありがとう。ユミル」フワッ

ユミル「――!」

ユミル(笑っ、た……今度こそ、本当に)


ユミル「……」

ベルトルト「ユミル?」

ユミル「お前、ずっとそのツラしてろよ」

ベルトルト「えっ?」

ユミル「ずっと、そうやって笑ってろ。その方がいい。その方が似合ってる」

ベルトルト「……!」


ベルトルト「……ありがとう」

ユミル「礼をいうのはこっちだよ。これ、大切にする」

ベルトルト「あぁ。そろそろ日が暮れるね。戻ろうか」

ユミル「おう」



女子寮


ユミル「ただいま」

クリスタ「お、お帰りユミル」ソワソワ

ユミル「うん? どうしたクリスタ?」

クリスタ「え、えっと、その」

ユミル「何だ? 一日私に会えなくて寂しかったのかー?」クシャクシャ

クリスタ「わわわっ! だから、髪はダメだってば!」


ユミル「あっははは! 全くかわいいなークリスタは」ギュー

クリスタ「もう……あ、あの、ところでさ、ユミル」

ユミル「悪いなクリスタ。今日はちょっと疲れちまってな。話はまた明日にしてくれるか?」

クリスタ「えっ? ……あぁ、うん、そうだよね! うん、わかった、おやすみユミル!」

ユミル「おやすみー」ゴロン


ミーナ「ちょっとクリスタ! 何で聞かないのよ!」ヒソヒソ

クリスタ「だ、だって、なんだか聞きづらくなっちゃって……」ヒソヒソ


ユミル「……」

ガサ…

ユミル(どうせ似合わないのにな)

ユミル(別に大したことしてないのに、こんな高いもの買ってくれるなんてな……お人好しもいいとこだ)


ユミル(……)


『ユミル』


ユミル(あんなふうに、何度も名前を呼ばれるのは――)


決して捨てなかったこの名を。

私の生きる証であるこの名を。


ユミル(嬉しかったな……)

本日はここまでで切ります。続きはまた明日。
すでに70レスを超えててびっくりですが、これでもプロット的には半分です。まだ頑張ります。
読んでくださってる方、コメント残してくださった方ありがとうございます。力になります。


翌朝
女子寮


ユミル「……」

グイッ パチン


クリスタ「あっ、おはようユミル!」

ユミル「よっ、クリスタ」

クリスタ「あれ? ユミル、そんな髪留め、持ってたっけ?」

ユミル「あぁ、昨日ちょっとな」

クリスタ「……ねぇ、もしかして、昨日――」

サシャ「おはようございます!」


クリスタ「あっ、おはよう、サシャ」

サシャ「さっ、早く食堂に行きましょ!」

ユミル「お前はほんと食うことばっかだな」

サシャ「そっ、そんなことないですよ!」

クリスタ「あれ? サシャも見慣れない髪留めしてるね」

サシャ「えっ、あぁ、これですか? 昨日、ちょっとかわいい露店があって、そこで買ったんです!」

ユミル「『買ってもらった』の間違いだろ?」ニヤニヤ


サシャ「えっ? そ、それは……」テレテレ「あれ? ユミルのその髪留め、見たことあるような」

ユミル「お前と同じ店で買ったんだから、そうだろうさ」

サシャ「えっ!?」

ユミル「仲睦まじいところを邪魔しないように、気ぃ使ったんだぜ?」

サシャ「――!」カアッ

ユミル「よし、食堂行くか!」

サシャ「ユミル、まっ、待って下さい~!!」


食堂


クリスタ「皆おはよう!」

アルミン「おはよう、クリスタ」

エレン「おークリスタか。おはよ」

サシャ「ちょっとユミル! 待って下さいってば!」バタバタ

ジャン「サシャとユミルの奴、何やってんだ?」

コニー「サシャ?」


ユミル「はいはい。ほら、コニーに見せてこいよ」ドンッ

サシャ「うわっ! あっ……コニー! おはようございます!」

コニー「お、おう。おはよう」

サシャ「え、えっと、その……その……」チラチラ

コニー「ん? どうした?」

サシャ「も、もう! 気づかないんですか!?」


コニー「え? ……あー……」

コニー「まぁ……悪くないんじゃねぇか?」

サシャ「そ、それだけですか?」

コニー「え? それだけって?」

サシャ「もっとこう……可愛いとか」ボソボソ

コニー「へっ?」

サシャ「もういいですよっ」プンッ

コニー「な、何なんだよおい、サシャ!」


アルミン「あーあ、怒らせちゃったね」

ユミル「とことんバカだなあいつは」

ジャン「えっ、今の会話のどこに、サシャを怒らせる要素があったんだ?」

ユミル「お前も同類か」

ジャン「」

マルコ「まぁ、コニーにとっては、『悪くない』でも、結構頑張ったつもりなんだろうね」

ユミル「……」


ユミル(それでも、気づいてもらえるだけマシだよな……)チラ

ユミル(ベルトルトは……奥のテーブルか。もうあそこはいっぱいだな)

クリスタ「ユミル、どうしたの? 席につこ?」

ユミル「あぁ」


午前
訓練用敷地 森
兵站訓練


クリスタ「うわぁ、雨だよー」

マルコ「土ぬかるんでるね」

サシャ「体力奪われそうで嫌ですねー」

ユミル(結局、食堂にいる間は席が遠くて何もなかった)

ユミル(今だって、兵站訓練用の雨具のせいで、髪は覆い隠されてる)

ベルトルト「ユミル、頑張ろう」

ユミル「あぁ」

ユミル(こんなに近くにいるのにな……)

パッテリないのでまた明日。
読んでくださってる方、コメント残してくださってる方ありがとうございます!

1です。
待ってくださってる方すみません、急に忙しくなってしまいキリのいいとこまで書ききれていません。プロットは完成してるんで投げることはありませんが前回以上に日にちをまたぐことになりそうです(。´Д⊂)
亀のようにしか進みませんが頑張っていきます。

ザッザッザッザッ


ユミル(くそっ、思ったよりきついな)ハァッ ハァッ

クリスタ「ユミル……っ待って……速い、よ……」ゼエゼエ

ユミル「クリスタ! 大丈夫か?」

クリスタ「うぅ……重い……」

ユミル「待ってろ、今荷物をこっちに――」

ズルッ

ユミル「!」

ユミル(やばい!)グラァ


ガシッ


ユミル(えっ? 倒れて、ない……)

ベルトルト「ユミル!」

ユミル「――ベル、トルト?」

ベルトルト「大丈夫? ゆっくり体を起こして」グッ

ユミル「あ、あぁ」

クリスタ「ユミル!」ザッ「ごめんね! 大丈夫だった?」

ユミル「あぁ。ありがとな」

ベルトルト「クリスタ。僕が君の荷物を持つよ。貸して」

クリスタ「ほ、ほんと? でも、そんなことしたら、ベルトルトが」

ベルトルト「平気だよ。ほら」ヒョイッ

ユミル「ほー、軽々と持ち上げるじゃねえか。流石だな」

ベルトルト「そんな誉めても何もでないよ。ほら、頑張ろう」ザッザッ

ユミル「お前ってわりと面倒見がいいんだな」ザッザッ

ベルトルト「そうかな?」ザッザッ

ユミル「あぁ。故郷に妹か弟でもいるのか?」

ベルトルト「!」ギクッ


ベルトルト「……」

ユミル「ベルトルト? どうした?」

ベルトルト「いや……その……ごめん」

ユミル「ごめんって、何が」

ベルトルト「その……故郷のことは」

ユミル「え――」ハッ

ユミル(そうだ。こいつは)

ユミル(入団のとき、教官から何も言われなかった)

ユミル(それはつまり――そういうことだ)


ユミル「――悪かった」

ベルトルト「いや、謝らないでほしい」

ユミル(何をやってるんだ私は)

ユミル(人の心を抉るような真似をして)

ユミル「……」



だいたい、私だって答えられないじゃないか。

故郷にかかわる、話なんて。


ベルトルト「ユミル、フードが落ちそうだよ。さっき滑ったからかな」スッ

ベルトルト「――あっ」

ユミル「……?」

ベルトルト「髪留め、つけてくれてたんだね」サラ

ユミル「!」ドキン

ベルトルト「……」

ベルトルト「うん、似合ってる。綺麗だよ」

ユミル「――!」


クリスタ「はぁっ、はぁっ……もう、私荷物持ってないのに、二人ともなんでそんなに早いの……」

ベルトルト「クリスタ、そろそろ目的地点だから荷物を戻したいんだけど、大丈夫?」

クリスタ「うん、ありがとう」

ベルトルト「あとちょっとだ。頑張ろう」ザッザッ

ユミル「……」


クリスタ「ユミル? どうしたの?」

ユミル「……」

クリスタ「……顔、赤いよ?」

ユミル「!」

クリスタ「何かあったの?」

ユミル「……何でもないさ。ちょっと雨に当たりすぎたのかもな。行くぞ」

クリスタ「……」

大事なシーンでミスった……
>>100>>101を修正します


ユミル「――悪かった」

ベルトルト「いや、謝らないでほしい」

ユミル(何をやってるんだ私は)

ユミル(人の心を抉るような真似をして)

ユミル「……」


だいたい、私だって答えられないじゃないか。

故郷に関わる、話なんて。

また少し日をまたぐかと思います。
とりあえず>>105>>102が書けて満足。
書きたいシーンがまだまだいっぱいあるなぁ~
読んでくださってる方、コメント残してくださった方ありがとうござます。
お前たちの残したレスが、俺に力を与える!
(……言いたかっただけ)


午後
座学 兵法講義

エレン「まだ雨止まないな」

アルミン「そうだね。今日は元々対人格闘訓練だったのに」

コニー「サ、サシャ。一緒に」

サシャ「……」プンッ

コニー「な、なぁ、いい加減機嫌直してくれよー」オロオロ


ユミル「まだやってんのかあいつらは」

クリスタ「ふふ。でも、微笑ましいよね」

ユミル「何言ってんだ……お、あそこの席空いたな。行くかクリスタ」

クリスタ「うん……あっ」

ユミル「ん?」

クリスタ「ご、ごめん、今日はミーナと一緒に受ける約束してたんだった! また後でねユミル!」ソソクサ

ユミル「え、お、おいクリスタ!」

ベルトルト「ユミル? 座らないの?」


ユミル「おわっ!?」ビクッ!!

ベルトルト「そ、そんなに驚かなくても」

ユミル「きゅ、急に後ろから現れるな」ドキドキ

ベルトルト「えっと……ごめん。まだ席着いてないの?」

ユミル「え? あぁ、まぁな」

ベルトルト「じゃあ、一緒にすわらない? あっち空いてるから」

ユミル「!」


ユミル(……もしかして、クリスタのやつ)チラ

クリスタ「!」ササッ

ユミル(やっぱりか。ったくあいつ、何考えて――)

ユミル「……」


ユミル(いや、認めよう)

ベルトルト「ユミル?」

ユミル(私は、クリスタのこの"気遣い"を)

ユミル「……あぁ、いいぜ。とっとと座っちまおう」

ベルトルト「うん」

ユミル(嬉しく思っていることを)


講義終了後


ワイワイ ガヤガヤ

ユミル「クリスタ、話がある。いいか?」

クリスタ「……うん」


兵舎裏


ユミル「私が何を聞きたいか、わかるな?」

クリスタ「うん……ごめん」

ユミル「謝ってほしいわけじゃないんだ。むしろ……いや」

クリスタ「ねぇユミル。やっぱり、ベルトルトのこと」

ユミル「……よくわかんねぇんだ。自分でもな。というか、なんでクリスタは気づいたんだ?」

ユミル「私がその、ベルトルトのことを……気になってるって」


クリスタ「昨日の朝、ユミルが外出したでしょ? それが、デートなんじゃないかって、寮の女の子達の間で話題になって」

クリスタ「デートだとしたら、相手は誰なのかなってなったら、ベルトルトが頭に浮かんで」

クリスタ「あとは……今朝の兵站訓練の様子見て、なんとなく、かな」

ユミル「そうか……だとすると、他にも気づいてるやつがいるかもな」

クリスタ「ねぇユミル、私にユミルのこと、応援させてくれないかな? ユミルに幸せになってもらいたいの」

ユミル「クリスタ、けどな――」


クリスタ「ベルトルトと一緒にいられると、嬉しいんじゃない?」

ユミル「!」

クリスタ「もっと一緒にいたいって、思わない?」

ユミル「……あぁ」

クリスタ「だったら、協力させて?」ニコッ

クリスタ「まだ恋だってわかってなくても、今のその気持ち、大事にしてほしいの」

ユミル「……」

ユミル「ありがとな。クリスタ」


クリスタ「ふふ。いいの。私、友達のこういうことに力を貸せるの、嬉しいから」

ユミル「なるほどな。クリスタは案外、耳年増だからな」ニヤリ

クリスタ「ちょっ、どういう意味よユミル! もう!」

ユミル「ははっ」

サシャ「ユミルー! クリスター! まだこんなとこにいたんですか。もう夕食の時間ですよ!」


クリスタ「はーい……あれ? サシャ、私たちを待っててくれたの?」

サシャ「え、えっと、まぁ」

ユミル「違うな。いつもならコニーと一緒に、食堂にダッシュしてる。大方、意地張りすぎたせいでひっこみつかなくなってるだけだろ」

サシャ「……ユミルは意地悪です」

ユミル「なぁ、あれは私がけしかけたことだけどさ、コニーだってみんなが見てる前で、のろけた言葉なんて言いにくいんだろうさ。わかってやれよ」

サシャ「うぅ……わかってます」


ユミル「なら、とっとと仲直りしてこい。そろそろ頃合いなんじゃねぇのか?」

サシャ「そう、ですね。いつまでもこのままじゃ嫌ですし……行ってきます」タタタッ

ユミル「ったく……世話のやける」

クリスタ「ふふっ」

ユミル「何だよ」

クリスタ「ユミルは案外、お節介やきなんだなーって」

ユミル「……」グシャグシャ

クリスタ「わっ、もう、だから髪はダメっ!」


食堂


コニー「……」ソワソワ

ジャン「何やってんだコニー? 席についても、食わずにキョロキョロして」

マルコ「ジャン、察してあげなよ……」

サシャ「あ、あの、コニー!」

コニー「!」ガタッ


サシャ「あ、あの、このたびは」

コニー「……」ツカツカ

サシャ「つまらない意地を張ってしまって、ほんとに」

ツカツカ

サシャ「ごめんなさ――」

グイッ


サシャ「わっ!?」グラァ「な、何」

コニー「かわい、い」ポソッ

サシャ「!」

コニー「~~っこれでいいかよ!」カアア

サシャ「――はい!」バァッ


ユミル「ったく、ほんとに世話のやける奴らだよ、全く」

クリスタ「本当にね……あ、ユミル、あそこ」コソッ

ユミル「お、おう」

クリスタ「頑張って!」ヒソヒソ

ユミル「……あぁ」ツカツカ


ユミル「なぁ、ベルトルト」

ベルトルト「うん?」

ユミル「その、隣空いて――」

ライナー「ユミル? 久々だな」


ベルトルト「!」

ユミル「ラ、ライナー? お前、怪我したって聞いたけど、もういいのか」

ライナー「休日安静にしてたら、この通りだ。もう訓練にも参加できる」

ユミル「そうか、よかったな」

ベルトルト「……」


ユミル「ベルトルト? どうした?」

ベルトルト「いや……何でもない。大丈夫だよ」

ユミル「大丈夫な奴は、大丈夫っ言わねぇよ」

ベルトルト「はは……かなわないな。君には」

ライナー「なぁ、お前ら、俺がいない間に随分仲良くなってないか?」

ベルトルト「!」ギクッ

>>128脱字ったやりなおし


ユミル「ベルトルト? どうした?」

ベルトルト「いや……何でもない。大丈夫だよ」

ユミル「大丈夫な奴は、大丈夫って言わねぇよ」

ベルトルト「はは……かなわないな。君には」

ライナー「なぁお前ら、俺がいない間に随分仲良くなってないか?」

ベルトルト「!」ギクッ


ユミル「な、何言ってんだよ。別にもともと、そんなしゃべらないわけでもないだろ」アセッ

ライナー「まぁ、確かにそうだな」

ベルトルト「……ライナー」

ライナー「うん?」

ベルトルト「君の目から見ても、そうかい?」

ライナー「何がだ?」

ベルトルト「君の目から見ても、僕とユミルが……仲良さそうに映るのか、ってこと」


ユミル「ベルトルト……?」

ライナー「まぁ、そうだな。もともと、コニーとサシャの野次馬やってた時から、ユミル相手にはよくしゃべるなと思っていたが」

ベルトルト「……」

ライナー「そんなことよりとっとと食うぞ。ユミルお前、そこに座るんだろ? このテーブルはもういっぱいだし、俺は向こうに行くかな」クルッ

ユミル「あ、あぁ……ベルトルト、隣座るぞ」ガタン

ベルトルト「……」


ユミル「なぁ、一体どうしたんだよ。さっきライナーに聞いたのは、どういう意味なんだ?」

ベルトルト「……」

ベルトルト「……ごめん」

ユミル「私には言えないことなのか」

ベルトルト「……」

ユミル「……そうかよ」


ユミル(……)

ユミル(何でだ?)

ベルトルト「……」モグモグ

ユミル(何で私は、こんなに)

ユミル「……」モグモグ

ユミル(胸が苦しいんだ……)

とりあえず一区切り。
物語的にはあと一日半ほどで終わるはず。それを書ききるまでに何日かかるかは分かりませんがお付きあい下さいませ。
読んでくださってる方、レス残してくださった方ありがとうございます。


翌朝
女子寮


ユミル「……」ボー

ユミル(結局、考え事ばっかしてて、ほとんど寝られなかったな……)

クリスタ「ユミル? どうしたの、大丈夫?」

ユミル(何度同じことを考えたって、答えは出ないのに)

あ、↑トリップ忘れましたが1です


クリスタ「ユミル?」

ユミル「……うん?」

クリスタ「どうしたの? なんか、顔色悪くない?」

ユミル「んなことないだろ。ほら、食堂行こうぜ」

クリスタ「うん……」


食堂


サシャ「コニー! おはようございます!」ガタン

コニー「おぉ、おはよ」ガタン

サシャ「ふふ……」

コニー「ん? どうした?」

サシャ「いーえっ」

クリスタ「サシャ、コニー、おはよう」


サシャ「クリスタ! おはようございます!」

クリスタ「ふふ。サシャ、すっかり元通りだね」

サシャ「はい! そうなんです! 良かったです!」ニコッ

コニー「……!」

サシャ「コニーもかわいいって言ってます!」

コニー「なっ! ちょっ、ばっ、お前!」カアッ

ユミル「……」ボー


サシャ「ユミル? めずらしいですね、いつもからかってくるのに」

ユミル「……」

サシャ「ユミル?」

ライナー「おいお前ら、道ふさいでるぞ」

クリスタ「あ、おはよライナー、ベルトルト」

ユミル「!」パッ


ユミル「……」

クリスタ「ユミル……」

コニー「何だ? 今の」

サシャ「ユミル、ちょっと顔色悪くないですか? 大丈夫ですか?」

クリスタ「ねぇユミル……昨日何が――」

グラァ

クリスタ「えっ!?」

ガチャーン!

クリスタ「ユミル!? ユミルーっ!!」


ユミル(……何だこりゃ)

ユミル(何にも見えねぇ)

『ユミル! しっかりしてユミル!』

ユミル(クリスタ? どこだ? 体が動かねぇ)

『お、おい! 一体どうしたんだ!』

ユミル(うっせぇぞコニー、頭に響くだろうが)

『ユミル、しっかりしてください!』

ユミル(これはサシャか。体揺らすなよ……)

ユミル(……)


なぁ、サシャ。

私はお前がうらやましいよ。

お前は、お前たちは、

好きな人に好きだって言える。

心から。素直に。隠し立てせずに。

そういう自由を、生まれながらにして持っている。

私にも、私にだって、

そんな自由が欲しかった――


『――ユミル!』


ユミル「……?」パチ

クリスタ「ユミル! 気がついた?」

ユミル「ここは……」

クリスタ「医務室だよ。ユミル、いきなり食堂で倒れたの。覚えてない?」

ユミル「……」

クリスタ「熱はないみたいだけど、具合悪いなら安静にしてなくちゃだめだよ。教官には言ってあるから」


ユミル「……最後に」

クリスタ「えっ?」

ユミル(最後に、名前を呼んだのは)

ユミル「――いや」

クリスタ「あ、もう午後の訓練が始まっちゃう。ごめんねユミル、また後でね!」タタッ


ガチャッ バタン


ユミル「……ふぅ」ゴロン

ユミル(まだちょっと頭が痛いな。寝不足か?)

ユミル(丁度いい。教官にも言ってあるって言ってたしな。ありがたく寝させてもらうか)


コンコンコン


ユミル(!? 誰だ!?)ガバッ


コンコンコン


ユミル(クリスタはもう行ったよな。まさか……教官? 大丈夫そうなら訓練やれとか言い出すんじゃ……)


コンコンコン


ユミル(ここは……寝たふり!)


……

ガチャッ

コツ コツ コツ


コツ コツ コツ


ユミル(寝てますよー私は寝てますよー)


コツ…

スッ

ユミル(!)

ユミル(額に、手が)


「……」


大きな手が、私の額を優しく覆う。

そのまま頭を撫で、髪を梳き――

青い石の髪留めに触れた。


「……」スッ


いったん手が離れ、また触れる。

眉を、瞼を、鼻筋を、頬を、指の側面がなぞっていく。

そして指先が口元に達した瞬間、動きが止まった。


「……」


そっと、指先が唇に触れる。


「……」


クルッ

コツ コツ コツ


「……何をやっているんだ。僕は――」


パタン…


ユミル「……」ムクリ

ユミル(……)


ユミル「馬鹿野郎……」



兵舎裏 医務室裏口


ガチャッ


ユミル(随分暗くなっちまったな。とりあえず女子寮に戻るか)テクテク


タッタッタッ


ユミル(ん? 女子寮の方から誰か――)


アニ「……」タッタッタッ


ユミル(あれは……アニ? なんで男子寮の方に?)

ユミル(……ちょっと気になるな。ついていってみるか)


男子寮裏口


アニ「……」

ユミル(意外だな。いつも孤高ぶってるあいつが、男と待ち合わせなんてな)

ユミル(相手は誰だ? おっ、丁度来たみてぇだ――)

ユミル(えっ!?)

ベルトルト「――」

アニ「――」

ユミル(ベルトルト? 何で……あいつら、今までしゃべってたことあったか?)

アニ「――」

ベルトルト「……」

アニ「――」

ユミル(ダメだ。こっからじゃ、何て言ってるのかわからない)

ベルトルト「――」

アニ「――」クルッ タタタッ

ユミル(うん? 何だ、もう終わりか?)


ベルトルト「……」

ユミル(妙だな。たったあれだけの会話のために、アニは女子寮を抜け出して来たのか?)

ユミル(よっぽど大事な用だったのか? 人目につきたくないような?)

ユミル(……よし)ザッ


ユミル「ベルトルト」

ベルトルト「ユミル!?」

ユミル「よぉ。奇遇だな、こんなとこで会うなんて」

ベルトルト「もう大丈夫なのかい?」

ユミル「あぁ。この通りだ」

ベルトルト「よかった……」

ユミル「なぁ、今、アニと何話してたんだ?」

ベルトルト「!」ギクッ


ユミル「話してただろ? アニと」

ベルトルト「……見てたのか」

ユミル「何だよ、見ちゃいけなかったか?」

ベルトルト「いや、そんなことないよ。偶然会って、話しただけだから」

ユミル「お前さ、いい加減私に嘘が通じると思うなよ」

ベルトルト「……」

ユミル「もう一度聞くぞ。何話してたんだ?」


ベルトルト「……ごめん」

ユミル(またそれかよ)

ユミル「そんな言葉が聞きたいんじゃない」

ベルトルト「頼む……これ以上は、聞かないでくれないか」

ユミル(何でだよ)

ベルトルト「君に嘘をつきたくないし、かといって、素直に話せることでもないんだ」

ユミル(それで納得できると思うかよ)

ベルトルト「本当に……ごめん」

ユミル(謝ってほしいんじゃない)

ユミル「……」

ユミル「わかった。もういい」


ベルトルト「ユミル?」

ユミル「邪魔して悪かったな。ベルトルト」クルッ

ユミル「――じゃあな」ダッ

ベルトルト「ユミル!」


わかってる。私にあいつを責める資格はない。

私だって持っている。どうしても言えない秘密を。

それを追及されたら、おそらく同じ返答をするに違いない。

わかってる。わかってるけど。


ベルトルト「ユミル! 待て!」


どうしてこんなに、身勝手なことを思ってしまうんだ。


「ユミル!」ガシッ


隠してほしくない。


「離せよ!」バッ


教えてほしい。


「どうせ何聞いたって、答えてくれないんだろ!」


お前のことを、もっと知りたい。


「どうせ……私になんて……」


知って、一番近くに寄り添いたい。寄り添う私を受け入れてほしい。


「ユミル」グイッ


私のことを


「聞いてくれ」ギュッ


愛してほしい。


「……」


ベルトルトの体の温もりが伝わる。

大きな腕に包まれているのに、心から安らげないのは、きっともうわかっているからだ。


「ユミル。僕は」


抱きしめられても


「君が好きだ」


甘く囁かれても


「ベルトル――っ」


唇を重ねても


「んっ……」


私たちは、幸せな恋人同士にはなれない。


「んっ……はぁっ、うっ……」


お互いに隠し事をしている、こんな私たちでは。


「ユミル……」スッ


ベルトルトの手が、そっと私の頬に触れる。


「泣いてる……」


指でそっと、涙を拭われた。


「ごめんね。本当は泣かせたくないんだ」


まっすぐに、瞳を見つめられる。


「本当は……君にすべてを打ち明けてしまいたい。僕が楽になるだけだけど、全部吐き出してしまいたい」

「だけど、そうしてしまったら、君をこの腕に置いておけなくなる。それだけは、どうしても嫌なんだ」

「僕は、君に嘘をついてばかりだけど……この気持ちだけは、本当なんだ」


すると、ベルトルトの目にも、うっすらと光るしずくが見えた。

私も、ベルトルトの頬に手を伸ばし、こぼれた涙を払ってあげて、そのまま――口づけをした。



もう、どちらが求めているのかわからない。

私たちは泣いて、泣いて、お互い慰め合うように、強く抱きしめ合った。


女子寮前


ガチャッ


クリスタ「ユミル! お帰り、もう大丈夫なの?」タタッ

ユミル「あぁ。心配かけたなクリスタ。みんなは?」

クリスタ「今ね、丁度お風呂に行ってて――」ピタッ

ユミル「うん? どうしたんだ?」

クリスタ「……」


ギュッ


ユミル「クリスタ?」

クリスタ「……」

ユミル「何だよ。そんなに心配したのか? さっすが私のクリスタだな」ワシャワシャ

クリスタ「……」

ユミル「何だよ、髪ぐちゃぐちゃになってんぞ。怒らないのか?」

クリスタ「……いいよ、今日は。ぐちゃぐちゃにしても」

ユミル「……」

ユミル「クリスタ。ありがとうな」


クリスタ「うっ……」グスッ

ユミル「おい、なんでお前が泣くんだよ」

クリスタ「だって……っ、ユミルが悪いんだよっ! ユミルが、目ぇ真っ赤にして帰ってくるからっ」グスッ ヒック

ユミル「何言ってんだよ」ポンポン

クリスタ「うぅっ、えぐっ、うわあぁーん!」ボロボロ





翌朝

食堂


クリスタ「おはよう!」

アルミン「クリスタ、おはよ――えっ!? どうしたのその顔! 目が腫れてるじゃないか!」

クリスタ「えへへ……ちょっとね」

マルコ「ユミルも目が大分腫れてるね。二人とも喧嘩でもしたの?」

ユミル「そんなんじゃねーよ。ほっとけ」


ベルトルト「ユミル、ちょっといいかい?」


ユミル「……おう」スタスタ

ユミル(目立たないけど、こいつの目も赤いな)

ユミル「何だよ」

ベルトルト「この前の劇場で、また別の演目が上演されるらしいんだ。今度はホラーじゃないやつ」ピラッ

ベルトルト「その……よかったら、今度の休日、一緒にどうかな?」

ユミル「――!」


私たちはきっと、幸せにはなれない。

けれど、それでも。

ほんの少しの間だけでいい。かりそめの物でもいい。


ユミル「……あぁ、いいぜ」


幸せになれる道を探したい。探す時間を共有したい。


ユミル「――ベルトルさん」


幸せにしてあげたい、私の大好きな人。




終わり

これにて完結です。な、長かった……疲れた……
正直こんなに長くかかるとは思ってませんでした。スレ立ててから二週間超とか。
この話を書いている最中に原作46話が出て、ちょいちょいベルユミが増えてきたのがうれしかったり。
前作から見てくださってる方も、今作で初めましての方も、最後まで読んでくださってありがとうございました!

うわああああやらかしたああああ
めっちゃ今更のところいっこ抜けてるううう
なんでや!書き込み完了しましたてゆーてたやん!!( TДT)

すみません、>>144>>145の間が抜けてました。今更ですが次レスで一応補完します。

>>144>>145の間です。


ライナー「おお、おはよう皆」

ベルトルト「おはよう……」

ユミル「……あの」

ベルトルト「……」フイッ スタスタ

ユミル「――!」

ライナー「ん? お、おいベルトルト!」

これでもう穴はない、はずです。漢字変換できてないとか細かいところ除けば。
ラストまで行った後にこんなことになるなんて……今回はミスが多くて恥ずかしいです。反省します。
次書くときはもっと丁寧に進めたいと思います。それではまた。

壁|∀・)ジィー

1です。
皆様レスありがとうございます。書いてよかったと思えます。

ベルユミを書く上でどうしてもブレさせたくなかったのは、「ハッピーエンドにはならない」ことです。
それでも、書いていくうちにどんどんこの二人に感情移入してしまって、気づいたら当初予定してたよりだいぶ救いのある幕引きになりました。後悔はしてません。

また少し構想を練る時間をとって、次回作に繋げたいと思います。
ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom