エレン「この目に映る彼方の時」(158)

※10巻までのネタバレありかも
※なんか中二臭いよいいの?

ikoturusotneusimowimaguyonikotijnan oyekumoweminarosuruyom
inonohonioyahinitadaw inonohonekaahinukahuk oyegasasowiagen

=I=

―――ここはどこだ?

さっきまで食堂にいたような……

いや……ここは食堂だ……

そうか……みんなの雰囲気が違いすぎるから……

どう違うんだ……?

あぁ……みんなの表情がいつもと違うんだ……

でも一体何でそんな―――

エレン「死んだような顔をしてるんだ……?」

    「……ン……」

    「……エ…ン……!」

アルミン「エレン!!」

エレン「ッ!!」

エレン「……アルミン……?」

アルミン「大丈夫?」

エレン「……?」

ミカサ「放心状態になってるようだった。
    今もすごく疲れたような顔をしている」

エレン「オレが……?」

アルミン「エレン、ちょっと休んできたらどう?
     明日は立体機動の訓練があるし、無理はしないほうがいいよ」

エレン「あ……いや、大丈夫だオレは!」クルッ

エレン「ほら、いつも通り

アルミン「エレン……?それ……」

エレン「アルミン?」

アルミン「それ、どうしたの……?その目……」フルフル

エレン「え……?」

アルミン「ほら、ミカサ……」

ミカサ「?……目がどうし……」

ミカサ「!!」

ミカサ「エレン!今すぐ教官に知らせなさい!何かの重病かもしれない」

エレン「は!?急に何だよ、わけわかんねぇ」

アルミン「僕も同感だ。今すぐ行くべきだよ」

エレン「ええぇ……アルミンまで……」

エレン「……んだよわかったよ……行けばいいんだろ……」ガタ


取り敢えず残っていたものを手っ取り早く食べ終え、席を立った。

そして食堂を出て、アルミンとミカサに付き添われて教官室へ向かった。

マルコ「あれ?どこへ行くんだろう」

ジャン「どこだっていいだろ別に……」

ジャン「………」ジロ

=II=

廊下に、三人の足音と雨の音が響く。

ふと、教官室へ向かう途中に手洗い場があることを思い出した。


エレン「……あ、悪いけどちょっと鏡見てくんな……」

アルミン「うん」


ミカサが大袈裟に騒ぐものだから、少々ばかり胡散臭く感じていたが、

やはり自分の目がどうなっているのか、自分の目で見てみたかった。

それに、アルミンにまで言われたことで、

少しずつ不安を覚えるようにもなっていたのだ。

―――自分の目を自力で見ることはできない。

その『当たり前』にすら煩わしさを感じながら、

鏡のある方へと歩を進めていった。

自分の足音。軋む床。雨による雑音。

そして、一歩ごとに増してゆく言い知れぬ不安。

やがて物音さえ意識に入らなくなったその時、眼前に人の顔が現れた。

エレン「……んだよ、これ……」


目の前にいるのは自分自身。

とがり顎の輪郭。

大したことはないがほんのちょっとだけ癖のある髪。

大きくて釣りぎみな、猫のような目。

なんだ、いつも通りじゃねぇか―――

そう言いたかった。

言えなかった。

少なくとも右目はいつも通りだった。父譲りの碧い虹彩。

……だが左目がどうだ。

明るくも、どこか鈍さを持った黄色。

何度も目をこすり、頬をつねり、鏡の前をうろうろし、覗き込んだ。

だけど何も変わっていない。


エレン「……ッ」

落ち着け。これも案外悪くないかもしれない。

そう思ってもう一度鏡を覗き込む。

以外と綺麗な色だ。綺麗な金眼。

だがそれ以上に、その瞳の奥に何か深い感情が宿っているような、

そんな気がしたことの方が気にかかってしょうがなかった。

怒りなのか。哀しみなのか。不安なのか。恐怖なのか。

少なくとも、いい気のするものは感じなかった。

エレン「うっ……」ゾクッ


しかも、それについて考えようとすると、

触れてはいけないものに触れたような、

あるいは越えてはならない線を越えたような、

強いていうなら知らない方が良かったことを知ってしまったような、

そんな得体の知れない不快感が背筋をのぼってくるようで、気持ち悪かった。

……もうこれ以上はよそう。多分オレ一人であれこれ考えても無駄だろう。

そして鏡の前から去りかけた瞬間。

視界の左の隅に残っていた鏡に、尖った耳が映った気がした。


エレン「!?」


衝動的に鏡の前に戻った。

が、そこに映っていたのは、左目以外はいつも通りの自分だった。

エレン「……気のせい……か」


そう思うようにしても、漠然とした不安が深く根をおろし、

しばらくのあいだ、うまく足を動かすことが出来なかった。

=III=

アルミン「遅かったね。気分が悪くなったりしてない?」

エレン「あぁ、大丈夫だ……どうなってるのかちょっと気になってな」

ミカサ「その割には無理してるように見える」

エレン「あ、あぁ、ちょっといろいろ思い出して」

エレン「でもまぁ大したことなかったし、
    別に人に見せなくても、ほっといたら治るんじゃねぇの?」

ミカサ「駄目。そうやって油断してる時が一番危ない」

エレン「………」

ミカサ「………」

エレン「……わかったよ」

ミカサ「それにしてもエレン……」

エレン「?」

ミカサ「なんだか左半分が老けて見える」ボソッ

エレン「なんだよそれっ!?」

アルミン「……言われてみれば確かにそうかもしれない……」

エレン「アルミンまで!」

ミカサ「……ふふ」

ミカサ「……冗談」

アルミン「はは、エレンもしかして真に受けた?」

エレン「あ……」

エレン「ははっ、何だよそれ」

ハハハハッ!


こうして三人で笑いあったのはいつぶりだろうか。

オレのそばにこの二人がいて、本当に幸せだと思った。

―――だが、その笑いも束の間のことだった。

この目に映るのが何なのか、それに気付くまでのわずかな時間の、

本当に短い間の幸福だった。

=IV=

アルミン「そうだ。僕は書庫へ行って、過去に似た事例がないか調べてくるよ。
     二人は先に教官室に行ってて」

エレン「おう」

ミカサ「わかった。情報収集はアルミンに任せよう」

アルミン「じゃあ」


そう言ってアルミンは、教官室とは逆の方向へと駆けていった。

見送るその背中に、大人びた何かが見えたような、気のせいだったような。

身の芯に疼きを覚え、思わず左目に手を当てた。

ミカサ「……エレン?」

エレン「ッ……大丈夫。ちょっと痛かっただけだ」

ミカサ「本当に重病かもしれない。手遅れになる前に打つ手を見つけないと」

エレン「そうだな……」

見てる人いるかわからんけど一日四シーンくらいのペースでいこうと思う

ちゃんと見てるぞ!
ゆっくりでいいからしっかり完結させてくれ!

>>21
ありがとうございますっ!人いてよかった!

一応最後まで書き溜めてるんで、パソコン規制されない限りは完結できるはず

ちゃんと待ってるよー

応援します!


神スレの予感……

=V=

キース「残念だがそのような病状は聞いたことがない」

エレン「そうですか……」

コンコン

キース「入れ」

アルミン「失礼します」ガチャ

キース「話は聞いている。で……」

アルミン「残念ながら、この件に関与しそうな書籍は見つかりませんでした」

キース「そうか……」

エレン「もう……手詰まりなのか?」

キース「まだそうとは決まっていないぞイェーガー。
    それとも貴様の精神はそう簡単にものを諦めるほど
    軟弱なものだったか?」

エレン「いえ……!決してそういうわけではありません!しかし……」

キース「ならついて来い。
    書庫のさらに奥に、一冊だけ本を保管してある部屋がある」

アルミン「そんな部屋が……」

エレン「……もしかしてその本になら……?」

キース「わからん。一つの可能性にかけてみるだけの話だ。
    ……貴様の今までの実績を顧みての結論だが、
    解決法が見当たらず、訓練にも支障をきたすようなら
    イェーガー訓練兵はすぐにでも開拓地行きだ。
    そこはわかっているな?」

ミカサ「!!……エレン……」

エレン「はい。しかし教官、訓練の方は……おそらく大丈夫です」

アルミン「エレン!無理しちゃ駄目だよ……」

エレン「無理じゃねぇよ。ちょっと痛くなる以外は別に何ともないし、
    それくらい耐えれる」

キース「………」

ミカサ「本当に……?」

アルミン「大丈夫なの……?」

エレン「だーもー、お前らオレのこと心配しすぎだっての!
    自己管理くらいできるって」

アルミン「できてないから心配してるんだろ……」

エレン「う……」

キース「……少し騒がしいようだが」

エレン「あ……失礼しました……」

キース「まあいい。ともかく、書庫のことは絶対に口外禁止だ。
    部屋の存在は本来なら機密事項だからな。わかったな?」

三人「はい!」

=VI=

アルミン「とても綺麗なまま保管されていますね。
     これは……医学書?」パラパラ

キース「そうだ。これは……イェーガーの父親―――
    グリシャから托された医学書だ」

エレン「え!?」

キース「グリシャが唯一残した本だ。
    確か最後に話をしたのはこれを受け取った時だったか……
    まあ……大分前の話ではあるが」

キース「貴様らをこの部屋に入れることを決めたのも……
    まあその理由からだ」

キース「……それで、該当する項はありそうか?」

アルミン「ない……ですね」パラパラ

アルミン「ただ……ひとつ気になる箇所を見つけました」

キース「何と書いてある?」

アルミン「『汝時の歪みを見据■んとするとき 燃ゆる■に目を向けよ
      轍には宵■焔に 空白には■の焔に 願■■捧げよ

      ―――ある廃墟で見つけた古代文献による。
      一部は解読できなかったが、これだけでも大きな収穫だ。
      もしかしたら、患者に見られた症状と、
      古代呪術には深い関わりがあるのかもしれない。
      だとしたら面白い。
      稀にあらわれるという時空交視の患者に話を伺いたいが、
      滅多にいない上に、見た光景はものの数分で忘れ、
      さらに症状は1~2日で消滅するため、
      詳しいことが調べられないのが非常に残念だ。』」

ミカサ「何のことだかさっぱり」

キース「時空交視……聞いたことがないな」

アルミン「目に関わりそうな文といえばこれくらいしかありませんでした。
     古代の人々は呪術を使って、時の歪み……が何かわかりませんが、
     それを見ようとしていたようです」

エレン「あの……さ。見た光景をすぐ忘れるってとこで
    なんとなく思い当たることがあんだけど……」

キース「手掛かりになりそうなことなら何でも言え」

エレン「はい。えっと……右目と左目で違うものを見てる気がすることが
    たまにあった……と思うんです。夢の中にいるような感じで……
    何が見えていたかは……さっぱり覚えてないですけど」

覚えてないなんてなんて都合のいい、と思うかもしれない。

だが本当にそうなのだ。思い出せないのだ。

寝起きすぐは夢の内容を覚えていても、いつの間にか思い出せなくなる。

あるいは、何か見ていたはずなのに、目が覚めた瞬間何も思い出せなくなる。

そんなもどかしさを感じたことがないだろうか?

エレン「……すみません、こんな曖昧でわけのわからないこと言って」

アルミン「いや……ありがとうエレン。今のでわかった。
     多分エレンの症状は時空交視で間違いないと思うよ」

エレン「そう、か?」

アルミン「うん。普通とは違うものが見えて、
     さらに見たものをすぐ忘れる、っていう点が一致してる。
     それに、滅多にあらわれないものなのなら、
     これに関する書籍がないのも頷ける」

キース「うむ……ひとまずはそうとするか。
    グリシャの書いた通りなら数日で治るはずだが、
    万一の場合も想定して、覚悟はしておけ、イェーガー訓練兵」

=VII=

~男子寮~

コニー「うおおおぉかっけー!エレン何で眼帯なんかしてるんだ?」

エレン「いろいろあってな……その、ほら、ちょっと目が弱ってて、
    光に当てないほうがいいって言われたから」

コニー「へー!」

マルコ「すぐ治りそうなの?」

エレン「あぁ、そのへんは大丈夫だ」

ジャン「ハッ!エレンがつけてるとただのバカが
    面白がってやってるようにしか見えねぇな!」

エレン「んだと……!」ギリリ

アルミン「やめなよ二人とも!」

ジャン「別に今は大して明るくないし、外しても問題ないだろ?」

エレン「ッ!それは……」

ジャン「あぁそうか。やっぱ遊びでやってんだな!外してみろよほら!」バッ

マルコ「やめるんだジャン!」


無理やり眼帯を引きはがそうと暴れるジャンの制止にマルコが入った。

が、敵わず、マルコは突き飛ばされてしまった。

次の瞬間、顔の左側に人の手が触れるのを感じた。

エレン「あっ!」フッ


眼帯が外された。

不意に開いた左側の視界。そこに偶然いたマルコ。

その顔は……

その顔は―――

エレン「う……ああ……うあああぁぁ!!」


マルコなのか?

その虚ろな目は?

その何かが欠けた輪郭は……?

その……生気のない顔色は……?

まるで死体のような風貌。一体何が?


エレン「ああぁぁぁ……!」

    「大丈夫!?」

  「おい……か」

      「だれか…を……」

音が遠のき、足元が揺らぎ、視界が歪み、そして全て消えた。

あー万華鏡写輪眼パータンかな?

=VIII=

エレン「あれ……朝……?」パチ

   「……目ぇ覚めたか」

エレン「……!?ジャン……?」

ジャン「その……悪かった。
    まさかあんなことになるとは思ってなくてな……」

エレン「あんなこと、って?」

ジャン「やっぱ覚えてねぇのか。あの後……倒れたんだ、お前」

ジャン「……なぁ教えてくれ。お前の目はどうしちまったんだ?」

エレン「……『時空交視』とかいうらしいんだけど、
    何か普通と違うもんが見えちまうらしい」

ジャン「らしいってお前……見たのは自分なんだろ?」

エレン「そのはず……なんだけどさ」

エレン「忘れちまうんだ。しばらくしたら」

ジャン「何だそれ……ってことは、昨日見たことも覚えてねぇんだな」

エレン「あぁ……」

ジャン「………」

エレン「……あのさ」

エレン「……もしジャンがよければ」

ジャン「?」

エレン「今……見ようか?」

ジャン「は!?んなことしたらまた倒れるだろ!?
    もうこれ以上面倒かけられんのはごめんだからな!」

エレン「……どんなものが見えてもいいように覚悟は決めたつもりだ」

エレン「……知りたいんだろ?何が見えてるのか」

ジャン「そりゃ……そうだけど」

エレン「今度は……大丈夫だ。だから……」

そうは言いつつも、本当はこわかった。

昨日、とんでもないものを見て倒れたのなら、今回も倒れるかもしれない。

だがそれ以上に、何が起こるのか見てみたいという気持ちがあった。

―――自分の好奇心のために、人に迷惑をかけるのか?

耳鳴りとともに誰かが自分の中で囁いた。

エレン「だから、どうだ?」

ジャン「ハァ……仕方ねぇな」


そういったジャンの顔にも、どことなく興味津々といった表情が感じられた。

ほらみろ、ジャンだって気になってるだろ。


エレン「おう……じゃあいくぜ」

少しずつ眼帯をずらしていく。

段々と開けていく視界に、ふと、昨晩のものらしき、

ジャンの手で視界が開かれた時の光景が重なった。

ぐちゃぐちゃの感情をあらわしたジャンの目。

―――お子様なのはどっちだ。

また声が聞こえた。

……確かにそうだ……今わがままを言っているのはオレの方だ。

ジャンは(珍しく)ちゃんと謝ってくれたのに。

でも……もう、遅い……

少しずつ増す光の量。

そして、眼帯が外れ―――

=IX=

エレン「ッ!!」

ジャン「おい!何目ぇ閉じてんだよ!」


意図的にしたわけではなかった。反射的に閉じてしまったのだ。

やはり昨日のトラウマを体は覚えているのか。

記憶は……まるでないのに。


エレン「悪ぃ……」

警戒体制を万全にして、おそるおそる瞼を開ける。

髄が震える。

もし……もし、精神的苦痛をもたらすようなものが見えたら……

そう思うとなかなかジャンを直視できない。

……もうこの際当たって砕けろ!


エレン「ッ……!」バッ


心拍数が異常に跳ね上がっている。

心臓が壊れてしまうんじゃないか、などと考えてしまったほどに。

が。

エレン「あれ……?いつものジャン……」


のように思えた。


エレン「……じゃないな」


一見、何も変わっていないように見える。

しかし、よくよく目を凝らすと、少し顔が大人びて見える。

そして、今は着ていないはずのジャケットが、ぼやけて見えるのだった。

もっとハッキリと見るために、右目を手で塞いでみた。


エレン「あ!!」

ジャン「?……なぁ、何が違うんだ?」

エレン「何かジャケット……着てんだけどさ……
    紋章が……調査兵団のだ……」

ジャン「………」

ジャン「……お前は、オレが通過儀礼の時、
    憲兵団に入りたいっつったの覚えてるよな?」

エレン「あぁ。絶対に忘れねぇな」

ジャン「……つまりこれで、
    お前が見てるものは何の当てにもならねぇってことがわかった。
    オレは何があろうと憲兵団に入る意志を曲げるつもりはないからな」

エレン「……そう……だろうな。別にオレだってこの目に何か期待したり
    してたわけじゃないし……」


内心、安堵していた。

大人びた顔と調査兵団のマークが見えたということは、

これはおそらく未来を見ているのだろうが、当てになるものじゃないのなら、

何が見えても気にしたりすることはない。

……ただ、面白いものが何も見れなかったのを、

少々残念に思ったのも本音である。

ジャン「期待なんかしてたらさすがに引くわ。
    ……やべ、早くしねぇと飯の時間終わっちまうな。
    もう元気になったんなら後は自分でやれよ、じゃーな!」

エレン「………」

エレン「……ジャン!」

ジャン「何だよ?」

エレン「……その、悪かった」

ジャン「何が?」

エレン「……その……オレの……
    わがままに付き合わせたみたいになっちまって」

ジャン「……別にそんなの気にしてねーし」

エレン「あと……ありがとな……昨晩から迷惑かけてたみたいだけど」

ジャン「………」

ジャン「何かお前にそんなこと言われると気持ち悪ぃな」

エレン「……あぁ?」

ジャン「ほら、早くしろよ。飯抜きになんぞ」


そう言ったジャンの顔は、かすかに微笑んでいるように見えた。


エレン「……!!」

エレン「あぁ。すぐ行くさ」


ただの自己満足でしかない謝罪だったけど。

たったこの時だけでも、素直になれてよかった。

=X=

アルミン「あ、エレン!大じょ

ミカサ「エレン!エレン!!」

ジャン「ミカサ、こいつならもう

ミカサ「おかしいところはない?
    ごめんなさいお見舞いに行ってあげられなくて」ギュウウウウ

ジャン「」

エレン「イテテ、苦しいってミカサ!」

ミカサ「……ごめんなさい」

ジャン「チクショウうらやましい」ボソッ

エレン「でもどちみち男子寮だから入れないだろ?」

ミカサ「そのときは強行突破」

エレン「………」

アルミン「それよりちょっと聞いてよエレン……
     ミカサがエレンに栄養満点のものを食べさせるってきかなくて、
     夜通しで厨房の人と喧嘩してたんだ……
     しかも結局作っちゃったし」

エレン「それで来れなかったっつってんのか……」

ジャン「チクショウうらやましい」ボソッ

エレン「……駄目だろミカサ。食糧不足が深刻なんだから」

ミカサ「……ごめんなさい」

エレン「いやもういいけど……何度も謝られたら何か変な気分になる」

ミカサ「……ごめんなさい」

エレン「だからぁ……」

アルミン「そろそろエレンも気づいてあげてよ」

エレン「え?何に?」

アルミン「……ハァ」

マルコ「あ!エレン、それにジャンも!」テクテク

ジャン「あっ!……マルコ……昨日はその……ホントに悪かった」

マルコ「いいよジャン。実際大したことはなかったから。
    それよりエレンの体調は大丈夫なの?」

エレン「あぁ」

マルコ「それはよかったよ」ホッ

マルコ「ただジャン……」

ジャン「?」

マルコ「来るのがあまりに遅いから、ジャンの分の食事、
    サシャが食べちゃったよ」

=XI=

ジャン「ヘヘッ、悪ぃな、『きっちり半分も』分けてもらってよ」

エレン「え?あぁ、大したことねぇよ」

ミカサ「全部エレンに食べてほしかったのに」ボソボソ

エレン「……あ……ミカサ、旨かった!ありがとな」

ジャン「ホントにな。マジで助かったぜ……さすがミカサだ」テレテレ

ミカサ「うん……それならよかった」

アルミン「……で、話をまとめると……
     エレンのその目は未来が見えるってことなんだね?」

エレン「多分な。さっきジャンを見た時は……あれ?何が見えたんだっけ」

ジャン「流石に忘れるの早過ぎやしねーかお前」

エレン「いや、そこまで出かかってんだけどな?
    どうしてもちゃんと思い出せねぇ……」

ジャン「……さっきお前はオレに、
    調査兵団のジャケットを着てるのが見えたって言った」

マルコ「ジャンが調査兵団?」

エレン「んなこと言ったっけ?」

ジャン「あぁ。つまりな、確かにこいつには未来が見えてるかもしれねぇけど、
    それには信憑性も何もねぇってことが確認できたわけだ。
    簡単に言えば幻が見えてるだけ」

マルコ「まぁ……つまりはそういうことになるね」

マルコ「……それにしても、見ただけで気絶するなんて、
    昨晩エレンは、一体何を見たんだろう?」

エレン「それはもう確かめたくねーな」

ジャン「当たりめーだ。これ以上迷惑かけられたらたまらねぇよ」

アルミン「ともかくこれで欲しかった情報は大体手に入ったし、
     あとは眼帯が外れないように気をつければ、
     治るまで面倒は起こさずに済みそうだね」

エレン「そうだな」


これで、治るまで放っておけばいい。

誰もがそう思った。

……だが、こんな時に限って、面倒事はやってきたりする―――

今更だけどセリフ以外の文が多いのってウケにくいのかな

読んでるよ、見てるよ
期待して続き待ってるよ
ただ投下終わりに宣言してくれるとレスつけやすいかも
途中で割り込むの気が引けるしね

>>64
ありがとう気をつけます

おもしろい、期待

別に地の文が多いって印象は受けなかったよ

=XII=

エレン「………」

サシャ「………」ジー

エレン「………」クルッ

コニー「………」ジー

エレン「………」

サシャ「……未来が見えると?」

エレン「そうだけど……」

エレン「お前らいつからいたんだよ」

コニー「ほぼ最初から聞いてたな」

サシャ「ずっと机の下にいたんですけどねー」

ジャン「盗み聞きなんて質の悪いことしやがって……」

サシャ「でも別に秘密の話でも何でもないでしょう?」

ジャン「それとこれとは違うだろ。つーかサシャお前、オレの

エレン「で、何で今出てきたんだ?」

ジャン「」

コニー「未来を見てもらおうと思った、以外に何かあるかよ?」

マルコ「やっぱり……」

コニー「なぁいいだろエレン!別に減るもんでもないし」

エレン「え……っとそれは……」

アルミン「……それはどうだろうね」

サシャ「へ?」

コニー「え?」

エレン「ちょ、アルミン!何を……」

アルミン「何ができるのかはわかっていても、その先はまだまだ謎なんだ。
     あまり多用しすぎると、例えば視力低下、もしくは失明……
     そうなる可能性はゼロじゃない」チラッ

アルミン「そうなんだよね、エレン!」


あ……


エレン「そ、そうなんだ二人とも!だから、ごめんな……」

コニー「……そういうことなら仕方ねぇな」

サシャ「それ相応のリスクがあるんですね……」

スタスタスタ

アルミン「……ふう」

エレン「……何とかなったな」

ジャン「………」

アルミン「エレンが察してくれてよかったよ」

エレン「あぁ……一瞬マジでビビった……」

サシャ「皆さーん?」

一同「!!」ビクッ

サシャ「行かないんですか?訓練始まりますよ」

=XIII=

~午前・立体機動~

ヒュン

    ヒュン
 ヒュン

コニー「やっぱミカサとジャンははえーな」

サシャ「今日はいっぱい仕留めてやりますからね!」ギュン

コニー「あっ、おい!―――オレも負けねぇぞ!」ギュン

ヒュウウウ

コニー(左方に目標発見!)

コニー「うおらあぁぁぁ!!」

ギギギギギ

スカッ

コニー「んなっ!?屈むなんて聞いてねぇぞ!」

教官「巨人にそんな文句を言っても通用しないが?」

コニー「う……」

ヒュン

ヒュン

サシャ「前方に獲物発見!サシャ・ブラウス、突撃!」

ゴオオオオオ

ザクッ

サシャ「えっ!?ちょっと!!何してくれるんですか!」

サシャ「ジャン!」

ジャン「朝食のお返しだっ!」

サシャ「ずるいですよー!私が先に見つけたのに!」

ジャン「ヘッ!取られる方が悪いんだろー?」

サシャ「!!」

サシャ「うあぁぁぁ!あの発言が裏目にでるとは!
    先立たぬ後悔は予測がつかぬとはまさに!」

ジャン「お前は何を言っているんだ」

=XIV=

ヒュウウウウウ

エレン「!!」

エレン「うわっ!」バッ

エレン「……あぶねー……木に全然気づかなかった……」


やはり視界が狭いままでの立体機動は苦しいものがある。

この際眼帯を外してしまおうか……

午後にある対人格闘ならまだしも、

立体機動ともなると、一つのミスが命に関わる。

変なものが見えるリスクに比べれば、視界が悪いのは致命的なものだろう。

そうだ。外したほうがいい。そうしよう。

ガッ

スタッ


木の幹にアンカーを刺し、足をつける。

姿勢を安定させ、眼帯に手をかけた。


エレン(ん?後ろからのあれは……ベルトルトか)


見事な立体機動である。ベルトルトは何でもこなせてるし、

本人の言う通り、積極性さえあれば素晴らしい兵士になれるに違いない。

眼帯を外し、胸ポケットに入れた。

そして、立体機動を再開しようと顔をあげたそのとき。

エレン「ッあぁ!」


何だ……何てものを見せやがるんだこの目は……

サイズは人間のそれだったが―――

忘れたくない、忘れるはずもない、あの姿。

故郷の仇。

全ての始まり。

誰かが歯を食いしばる、不快な音が聞こえた。

何を考えるでもなく、殺意が全身からにじみ溢れる。

エレン「このっ……!」


が、飛び出そうとしたその瞬間、目に入ったのは、

遥か森の奥へ消えてゆくベルトルトの姿だけだった。


エレン「ハッ!」


今オレは何をしようとした?

共に訓練してきた仲間に、殺意を向けた?

……こんなの、ありえるはずがない。さっき見えたものだって……

そうだ、この目に映るものに信憑性なんてないんだ。

こればかりは何にも残さず、忘れてしまおう……

=XV=

~昼休憩~

ミカサ「エレン、無茶はしてない?」

エレン「それが一回木にぶつかりかけてよ」

ミカサ「……!!だから見学に

エレン「だからすぐに眼帯外した」

アルミン「えっ!?それで大丈夫だったの!?何か見えたりは……」

エレン「うーん……何か見た気はすんだけどなぁ……」ヒラ

そう言って、懐から一枚の紙を出した。

何かが見えたときに書き留めておけるように、と思って持ち歩いていたものだ。

ハッキリいってこんなことに使うのはどうかと思っていたので、

よっぽどのものが見えない限りは何も書かないつもりでいた。


エレン「……この紙にも何も書いてねーし、気のせいだな」


この調子なら、無駄に紙を消費せずに済みそうである。


エレン「……ん?」

ライナー「……やる」

ベルトルト「……むよ」

アニ「………」

エレン「あれ?あの三人で一緒にいるなんて珍しいな」

今日はここまでっスよ

実に面白い

遅くなったが乙
実際未来が見えるのってどんな気持ちを抱くんだろうな

=XVI=

~午後・対人格闘~

ライナー「エレンお前……眼帯つけたまま訓練って大丈夫か」

エレン「何も問題ねぇよ。むしろ勘を鍛えるのに打ってつけだ」

ライナー「……じゃあいつも通りでいいんだな?」

エレン「おう。頼むぜライナー」

ライナー「よし。ならまずは俺がならず者をやろう。
     その状態でどこまでいつも通りできるか試すといい」

エレン「あぁ!」

ライナー「行くぞ!」ダッ

来る!

多分視界をカバー出来てない左側に突っ込んでくるだろう。

いや、裏をかいて右に来るかもしれない。

よく見ろ……

……!!左だ!


エレン「フッ!」

ライナー「甘い」ヒュッ

エレン「!!」


捻られた!間に合わねぇ……!

エレン「うわっ!?」ガッ

ドサッ

エレン「ってぇ……」

ライナー「すまんすまん。
     だがお前はもう少し心理戦に強くなる必要があるな……
     ほら、木刀」ヒュッ

エレン「くっそー……」パシッ

ライナー「……いや……フェイントかけたのは久々だったが、
     さっきのはうまくいったとかいうレベルのもんじゃなかったぞ。
     読みが単調過ぎる。……エレンお前、何か知らんが動揺してるな?」

エレン「それは……」

何で下げてたんだろ

アニ「エレンが一方的に負けてるなんて珍しいね」スタスタ

エレン「アニ?」

ライナー「お……やっとやる気になったか?」

アニ「いや?面白そうだったから見に来ただけ」

アニ「?……どうしたんだい、その眼帯」

=XVII=

ミカサ「アルミン?さっきから隙だらけ」

アルミン「あっ!ごめん」

アルミン「ちょっと考え事をしてたんだ」

ミカサ「時空交視のこと?」

アルミン「うん」

アルミン「放っておいたら勝手に治るっていっても、
     やっぱり原因は突き止めたいからね。
     取り敢えず今は、あの本の古文の部分が呪術の方法を指していて、
     それを偶然エレンが実行してしまったと考えてる」

ミカサ「なるほど……でもあの文章の意味がわかるの?」

アルミン「簡単な比喩だと思うよ。
     例えば、『轍』は今まで歩いてきたところって意味で過去、
     逆に『空白』はまだ何もない部分って意味で未来を指してると思う」

ミカサ「そんな解釈が……」

アルミン「それから、あとは大体文のままだけど、
     過去を見たい場合は『宵』の『燃ゆる何か』に
     『願いを捧げる』ことがキーらしい。
     未来の方は『いつの』が抜けてるけど、
     『宵』の対ってことで『明』で間違いないと思う」

アルミン「……問題は、何を燃やすのかが解らないことなんだ」

ミカサ「……そこが解らないと何もわからずじまいってこと……」

アルミン「そうなんだよ……
     だからあとは本人に、昨日の朝何か変わったことをしてないか
     聞くしかないんだ」

ミカサ「わかった。聞いてくる」ズイ

アルミン「今はまだ駄目だって!」

ミカサ「どうして?一刻でも早いほうがいい」

アルミン「……後ろ見なよ」

ミカサ「?」

キース「………」

キース「貴様ら訓練はどうした?」

=XVIII=

アニ「へぇ……そんなことがあるんだね」

エレン「ハッキリ言ってオレもよくわかってねぇよ……
    まぁほっといたら治るっぽいから、そんな気にするもんでもねぇし。
    そらっ!」バッ

ライナー「……ちなみにそれは、いつ何に対して使うとかいうのは
     コントロールできるのかっ?」ガッ

エレン「ッ!いや、今んとこは無理っぽいっ!」ガシッ

ライナー「その能力を使って、将来誰が、
     どの兵団に入っているとかが見れたら面白いと思ったんだがな!」ヒュッ

エレン「……それは一回試してるぞ。
    いや……たまたま見えたんだった……はずだっ、うおっ」バタッ

ライナー「悪い悪い。で、それは……」

エレン「ジャンが調査兵団に入ってた」ムクッ

アニ「!!……あのジャンが?」

エレン「あぁ。とても信じられないだろ?」

ライナー「当然だ……だってジャンが……」

エレン「だから取り敢えず、
    見えてるもんはただのデタラメだろうっていうことになった」

アニ「………」

ライナー「まぁ……普通そうなるよな……」

アニ「……だけど、例えばそれが本当に未来なのなら、
   ジャンが調査兵団に入るというのが真実ではないと言い切ることは
   できないんじゃない?
   未来なんて誰にもわからないんだから」

エレン「あぁ……確かにそうだけど……」

ライナー「じゃあ、他に何かもっと信憑性のありそうなものは?」

エレン「……それは今んとこねぇな。この紙にも何も書いてねぇし……」

アニ「……!?」

ライナー「……紙に書くってのは……何のためにだ?」

エレン「時空交視は、見たものをすぐ忘れるっていう特徴があるらしいから……
    だから、どうしても忘れたくないものが見えたときは、
    この紙に残しとこうと思って……」

ライナー「……そうか」チラッ

アニ「………」コクリ

今日はここまでっす。上げたり下げたりすんまそん

=XIX=

~夕食~

アルミン「……それでこういう解釈に至ったんだ」

エレン「はー……よくわかんねぇ」

アルミン「まぁつまりエレンに答えてほしいのは、昨日の朝、
     エレンが何か変わったことをしてないかってことなんだ」

エレン「昨日の朝?……んー……」

エレン「……特に何かした覚えはねーな」

アルミン「うーん……そうか……」

ミカサ「……例えば、未来が見たい、とか、
    それに近いことを思ったりしなかった?」

エレン「うー……」

エレン「……あ……思っただけ……ならあるぞ」

アルミン「ホントに!?一体何て?」

エレン「『巨人のいない未来とかが見れたらなー』って」

ミカサ「まんま……」

アルミン「……まぁ、それが『未来が見たい』と願い捧げたと
     捉えられたわけだね」

エレン「……でもさ、ホントにちょっと思っただけだぞ?
    アルミンの言う通りなら、
    何か燃やしてるもんに向けて願いを捧げなきゃ駄目なはずだろ?」

エレン「……何か燃やした覚えはないし」

ミカサ「誰かが外でものを燃やしてたりは?」

エレン「いや、してなかったな。午後から雨が降りそうな空だったから、
    誰も火を焚こうとはしてなかったはずだ」

アルミン「そうか……」

アルミン「……そうだエレン。ちょっと目を見せてくれないかな?
     何か変化がないか見たいんだけど」

エレン「え?あぁ、いいぞ」パッ


何も変わって見えるものはない。

体の芯がむず痒くなるようなこともなかった。

アルミン「あ、最初より大分マシになってるね。そのうち治るんじゃないかな」

エレン「そっか、よかった……」

ミカサ「……やっぱり納得いかない」

アルミン「え?」

ミカサ「エレンをこんなにした原因が解れば……」

アルミン「それはそうだね。僕は、こうなった原因について
     もう少しヒントがないか探してみるつもりだ。
     取り敢えず就寝時間まで、もう一度書庫を調べ尽くしてみるよ」

ミカサ「原因が解れば……そいつを締め上げてやれるのに」

アルミン「……呪術だから人は直接関係ないんじゃないかな」

ミカサ「……繋がりがあれば何でもいい」

エレン「………」

エレン「あ。なぁアルミン、書庫に行くの、オレもついてっていいか?
    何かずっとアルミンに頼ってばっかな気がして……悪いから」

ミカサ「私も。三人で調べよう」

アルミン「……二人とも……」ウルウル

アルミン「わかった!三人で手分けして調べよう」

=XX=

アニ「参ったね……」

ベルトルト「そうだね……」

ライナー「………」



ベルトルト『ライナー、アニ、頼みたいことがあるんだ』

ライナー『何だ?』

ベルトルト『実は立体機動の訓練中……後ろから物凄い殺気を感じたんだ』

アニ『……まさか誰かに……』

ベルトルト『それはない……と言いたいところだけど……』

ライナー『それはもしや……』

ベルトルト『……エレンは昨晩から眼帯をしてたよね?
      それが訓練中、眼帯を外してて……』

ベルトルト『ほんのかすかにだけど、見えたんだ。
      ……右目と左目の色が違うのが』

ベルトルト『……思い当たる節は一つしかないよね?』

アニ『……!』

ライナー『!!……そういうことか……
     よし。対人格闘訓練の時に聞き込んどいてやる』

ベルトルト『……頼むよ』

アニ『………』



ベルトルト「その答えが、案の定時空交視でした、で」

アニ「笑える冗談じゃないね」

ライナー「しかもエレンのヤツ、紙とペンを持ち歩いてるらしいしな。
     見たもんを記録するために」

アニ「……しなくていいことを」

ライナー「それに、どちらにせよ誰かに言われたら元も子もない」

アニ「………」

ベルトルト「そうだね……ただそこは初めからわかっていたことだから、
      エレンの動向にしっかり気をつけてさえいればいいんだ……
      僕が言いたかったのはそこじゃない」

ライナー「?」

ライナー「これ以外にどんな問題がある?」

ベルトルト「……あっち」

ライナー「………」

ライナー「……あれはいろいろとマズイな」

アニ「面倒くさ……」

今日はちょっと短いけどここまで。
多分月曜くらいには終わる。

=XXI=

エレン「こうやってじっくり見ると、ここってすげーたくさん本があんだな」

アルミン「そうそう。だから、初めてここに入ったときはすごく驚いたよ!」

エレン「あー、アルミンがはしゃいでるのが目に見える気がする」

アルミン「ハハッ、はしゃいでまではないよ」

アルミン「あ、そうそう……驚いたっていうので思い出したけど……」

アルミン「今日、ミカサが教官を投げ負かしたんだ」

エレン「……え!?」

アルミン「対人格闘の訓練中に、ミカサと話し込んでしまってね。
     それが教官に見つかって、死ぬ寸前まで走れって言われかけたとき、
     ミカサが言ったんだ。こう、『教官、

ミカサ「『教官、提案ですが、私と教官とで組手をして、
     私が勝ったら走るのは免除にしていただけませんか』」

アルミン「……って。
     そしたら教官、あっさり受けちゃったんだよ。
     多分、甘く見てたんだろうね。訓練兵にくらい余裕で勝てるって」

アルミン「で、即一本」

エレン「うわぁ……」

ミカサ「教官は私達が何を話していたのかを知らない。
    だから、決してふざけてお喋りしていたわけではないことを証明した」

アルミン「……絶対逆効果だったと思う」

アルミン「……って!」

アルミン「もうっ、これこそお喋りで時間を喰った!
     早く本を探そう。
     僕はもう一度医学関係の棚を調べるから、
     ミカサは古代文献、エレンは呪術関係の棚を頼む」

ミカサ「わかった」

エレン「じゃ行くか!」

=XXII=

エレン「えっと、呪術……呪術……あ、この棚か」

エレン「『雨を降らせる儀式』、『地中の金属の探索』、
    『香草の煙を使った天候の予測』……へぇー……」

エレン「結構面白そうだな」

エレン「お!?『未来に瞳を飛ばす』!!これか!?」

パラパラ

エレン「何だ……薬を使うのか……」

     「や、やあエレン」

エレン「?……あ、ベルトルトか。お前も呪術の本探してんのか?」

ベルトルト「う、うん、そうなんだ……」

ベルトルト「あの……そこの本、取っていいかな?」

エレン「あ、悪ぃ、邪魔になってたな。はい」スッ

ベルトルト「ごめんね……」

パッ

エレン「いいなぁベルトルトは……背が高いと一番上にも楽々届くし」

ベルトルト「逆に言えばそれくらいしかいいことないよ……」

ベルトルト「それじゃあね」

スタスタ

ガチャン

エレン「……そうかなぁ」

エレン「あ……早く探さないと」

―――――

ベルトルト「取ってきたよ。『古代呪術の発祥と由来』。
      これであってるよね?」

ライナー「あぁ、これだ……思ってたより早かったな。
     ……やっぱりお前を行かせて正解だった」

アニ「ベルトルトなら万が一誰かに会っても絡まれにくいから?」

ライナー「大体そんな感じだ」

ベルトルト「………」

ベルトルト「それが……実はちょっとだけエレンと話したんだ」

ライナー「……まぁそんなこともあるだろ」

ベルトルト「取ろうとした本の前にエレンがいたときは、
      二つの意味で、かなりヒヤッとしたよ……」

アニ「……よくそれで何事もなかったね」

ベルトルト「まぁ……エレンだったから……」

アニ「エレンだから、ね……
   ミカサだったら、『本の中身を見せて』とか言われたあげく、
   あんたその場で終わってただろうね」

ライナー「あぁ……古代呪術の発祥が、俺らが出身地だって言ったとこの
     先住民だって知れたら、ミカサは俺らに詰め寄り……
     下手すりゃ半殺しにされてたかもしれない……」

ベルトルト「僕らとは直接関係ないのに……」

アニ「随分理不尽な話だけど、本当にそれを実行しかねないあたりが
   ミカサの恐ろしい点だね……」

=XXIII=

アルミン「結局見つからなかったね」

エレン「そうだな……」

アルミン「……あ……エレン。もう一度目を見せてくれないかな?」

エレン「ん?あぁ」パッ

アルミン「……もうほとんど治ってるね。
     明日からは普通に生活できそうだ」

エレン「そっか……」

エレン「………」ウツムキ

ミカサ「……どうしたの?」

エレン「なんだかんだ言ってもな……やっぱ何かが消えんのって
    寂しいよな……って思って」

アルミン「それは確かにあるね……」

エレン「………」

エレン「……初めに見たとき……ビックリしたのと同時に、
    母さんのことを思い出したんだ」

ミカサ「カルラおばさんのことを?」

エレン「あぁ……ほら、母さんの目の色、黄色だったろ」

エレン「……それでまぁ……いろいろ思い出して……」ボソッ

アルミン「そっか……じゃあ、あの時言ったのは嘘じゃなかったんだね」

エレン「……疑ってたのかよ」

ミカサ「エレンのことだから……適当にごまかそうとしてるものだと」

エレン「ひでぇなおい」

アルミン「日頃の行いってやつだよ、エレン」

エレン「ッ!!……じゃあこれからは超絶真面目系になってやるよ!」

ミカサ「やってみるといい」フッ

アルミン「頑張りたまえイェーガーくん」

エレン「何だよナメんなよっ!?」グッ

ワイワイ

再び訪れたひと時の幸福。

その笑い声は、消えるのを拒むかのように、長い余韻を残して響いていた。

=XXIV=

~男子寮~

マルコ「そっか。もう治りそうなんだね」

エレン「あぁ。これでまた明日から思いっきりやれるぜ!」

コニー「何だよー……明日からオレも真似して眼帯しようと思ってたのに」

ジャン(……バカか)

ベルトルト「………」チラッ

ベルトルト「もう大丈夫そうだね」コソッ

ライナー「そうだな……」コソッ

アルミン「皆ー?就寝時間だよ」

   「おやすみー」

 「おやすみ」

     「おやすみなさい」


皆がベッドに入り、明かりが消された。

明日からはまたいつも通りの日々か。

……もうちょっといろいろ見たかったなぁ。

例え信憑性がないものなんだとしても……

エレン「………」

スースー


もう寝息しか聞こえない。

……オレも寝るか……

そう思って布団に体を滑り込ませる。


エレン「……ん」


だが、なかなか目が冴えてしまって眠れない。

グガガガー

エレン「!?」

エレン(あ……ジャンのヤツすごいいびき)


さらに眠れなくなる原因が増えてしまった。

……このままボーッとしていても眠れそうにない気がしてきた。

ちょっと見つからないように外に散歩に行こう。

エレン「……よっと」

アルミン「ん……」

エレン「……っと……」


あぶねー。アルミン起こすとこだった。

……よし、皆ちゃんと寝てるな……

ってあれ?これはオレが言えたことじゃねーな?

……まぁいいや

ここまで。もう次でクライマックスにいくかな

=XXV=

エレン「うわ……すっげー綺麗だ」


見渡す限りの星空。今日は新月だったらしく、月は昇っていない。

もっとよく見ようと、眼帯を外した。


エレン「!!」

雪の空。

快晴。

満月の光る夜。

大きな雲。

すじのような雲。

そしてまた夜―――

これらはいつの空なのだろうか。

次々と切り替わる美しい空の表情に、思わずうっとりと見とれていた。


エレン(いつか……皆と一緒に見れたら)

北座星を中心にして、無数の星が弧を描いている。

周りに皆がいて、一緒に空を見上げている光景を思い浮かべた。

夢の中にいるようだった。強く願った未来の夢。

……だがその夢心地は、ある違和感によって、

一瞬にして掻き消されてしまった。


エレン「うっ……」ズキン

エレン(視界が……ぼやける)


さらに、抗いようのない痛みと眠気も襲ってくる。

どうやら、目が完全に元に戻ろうとしているらしい―――

=XXVI=

エレン(やべ……眠っちまう前に宿舎に戻らねーと)


急いで走ろうとするが、足も体も重くて、うまく動かすことができない。

引きずるようにして何とか部屋にたどり着いたときには、

もうほとんど体の動きを感じられなくなっていた。


エレン(あとは……ベッドに……)

エレン(!!)


不意に、視界に気になるものが飛び込んできた。

エレン(え……?)


それは、自分のジャケットだった。

―――ただし、訓練兵団のそれではなかった。


エレン「自由の……翼……」


調査兵団のシンボル、自由の翼。

その紋章が見えた。


エレン(そっか……オレはやっぱり……)

この目に映っているものが、いくら確実性のないものだとしても。

信じるに足る証拠がなくても。

やはり―――


エレン(そう。絶対に……)

エレン(絶対になって見せる。そして……)


やはり、誇らしく思えた。


エレン(そして―――)


そのまま、意識は真っ白な光の中へ―――



≡MM≡

「   」

何もない、空白の時空。

このかすかな意識すら無の中に溶かされようとしていたその時、

黒髪を風にたなびかせた少女に、自分の名前を呼ばれた気がした。



=XXVII=

    「……ン……」

    「……エ…ン……!」

エレン「んん……」

アルミン「エレン!!」

エレン「………」スヤスヤ

アルミン「どうしよう全然起きないよ……
     そもそもエレンは何だってこんなとこで寝てるんだ……」

ジャン「……よく見てみろよ、こいつ微笑みながら寝てんぞ気持ち悪ぃ」

マルコ「……いい夢を見たんじゃないかな」

アルミン「エレぇン!!」ユサユサ

ジャン「……もういいだろアルミン。
    こいつ放ってでも行かねぇとオレらがやばいぞ」

アルミン「……ハァ」

バタバタ

ガチャン

エレン「zzz」



エレン「う……ん……あれ?」

エレン「オレ何でこんなとこで寝てんだ……?」ムクッ

エレン「ってぇ!」グキッ

エレン「マジで……何で床なんかで……ん?」ガサ


そこにあったのは、一枚の紙とペン。


エレン「あれ……?これ……オレの字だよな……」

『自由の翼』

それが、紙に書かれていた文字だった。


エレン「自由の翼って、調査兵団のシンボルマークのことだよな……」

エレン「何で書いたんだろ……全然思い出せねぇ」

エレン「……って時間!くっそ、あいつら何で起こしてくれなかったんだ!」

バタバタ

急いで宿舎を出て、走る。

ふと、東の空が燃えるような紅に染まっているのが目に入った。


エレン「今日も朝焼けかぁ……午後荒れるかなこりゃ」タッタッタ

エレン「なんて言ってる場合じゃねぇ……!
    ……もう急いでも遅い気がするけど……!」タッタッタッタ

=XXVIII=

ジャン「ハッ!案の定あいつ走らされてやがる」

アルミン「そりゃ40分も遅刻しちゃあね……」

アルミン「……そうだ」ダッ

マルコ「どこ行くの!?」

アルミン「ちょっと聞きたいことが!」タタタ

マルコ「?」

―――――

アルミン「エレーン!」

エレン「あれ、アルミン!?何で起こしてくれ

アルミン「起こしたけど起きなかったんだよ。
     それよりエレン!目は!?」

エレン「……は?目?」

アルミン「……え?」

アルミン「……エレンもしかして覚えてないの?」

エレン「いやいや何のことだよアルミン?」

アルミン「そう……ならいいや」クルッ

エレン「え、ちょ、それだけ!?」

エレン「………」

エレン「何なんだホントに……」

キース「おい」ヌッ

キース「誰が止まっていいと言った?」

エレン「」

―――――

マルコ「何を聞いてきたの?やっぱり目のこと?」

アルミン「うん。そうなんだけどさ……」

ジャン「まさか全部忘れてたなんて言うんじゃねぇだろうな」

アルミン「そのまさかだった」

ジャン「………」

ジャン「……まぁ……その方がやりやすいこともあんじゃねーの」



-DCCCL-

ジャン「おい……お前ら……」ザッザッ

ジャン「所属兵科は何にするか、決めたか?」ザッザッ

ジャン(あの死に急ぎ野郎、ホントに忘れてたっぽいからな……)

ジャン「オレは決めたぞ」

ジャン(お前は、あの日オレに何て言ったかも覚えてねぇんだろうけど)

ジャン「オレは……」グググ

ジャン(……どうやらデタラメなんかじゃなかったらしいな)

ジャン「オレは……」

ジャン(チクショウ……)

ジャン「調査兵団になる」


Fin

終わった・・・
なんとか書ききれた!
最後まで読んでくれた人ありがとうございました!

乙!

乙おつ
面白かったけどもっとじっくり書いてもよかったと思う
というかもっと読んでいたかった

内容がよくわからなかったがそれは俺がバカだからじゃねぇよな?

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