女「私好きなんです!」(311)

キーンコーンカーンコーン

先生「今日のホームルームはこれまで。お前ら寄り道するんじゃないぞー!」

がやがや…がやがや…

男「ふう…、やっと終わったあ」

男「ん、机の中に何か入ってる?」カサッ

男「これは?」

男「今日の放課後…屋上で待ってます」

男「女より…」

男「…女さんって綺麗だけどあんまり目立たないタイプの子だったよな」

女さんとはあんまり話したこともなかったはずだけど。知らないところで密かに想われていたんだろうか?
そして…ついに彼女いない歴=年齢の俺にもモテ期到来か!?

幼馴染「おーとーこ!」ガシッ

だが、そんな甘美な妄想も後方からのアームロックにより完全に消し飛んだ。

男「いてっ!何するんだよ、幼」

幼「まあまあ。どうせ男って今日は暇なんでしょ?たまにはわたしに付き合いなさい?」

男「あー…悪い、今はそれどころじゃないんだ。何というか、新しい人生のスタートラインに立ってるんだよ。だから邪魔しないでくれ。」

友「えー!それって可愛い幼馴染との約束よりも大事なものなの?」

男「自分で言うか普通?っていうか、そもそも約束してないからな。今初めて聞いたからな。」

幼「ふん、いいよーだ!せっかくおいしいラーメン屋さん紹介しようと思ってたのに。あとで泣いて頼んでも知らないんだから!」

男「馬鹿はお前だ!夕食があるってのに今からラーメンみたいなごついもの食えるか。」

幼「男のばーか!」ガラッ

男「はぁ…何なんだ、あいつは」

幼とはガキの頃からの付き合いで、いわゆる腐れ縁ってやつ。顔はまあ…黙ってれば可愛い方なんだが、性格があの通りガキっぽいせいで女って感じがしない。
友達としては付き合いやすい奴だと思うが意外にも本人はあれで結構モテるらしい。世の中ってのは本当によく分からない。

男「おっと!そんなことより!」ガタッ!

女さんが待ってるんだった。急いで屋上に行かないとな!

ガラッ

女「……!」ビクッ

扉の音が大きくて驚いたのか彼女は怯えた小動物のようにビクッと震えた。相当緊張しているのだろうか?
俺はガラス細工を扱うように慎重にそして出来る限り優しい声色で女さんに声をかけた。

男「やあ、女さん。」

女「お…男くん。こんにちは…」

男「この手紙って女さんで間違いないよね?どうしたの?」カサッ

女「いきなりでごめんなさい…。えっと…男くんに大事な話があって…」モジモジ

か、かわいい!

男「えっと…それで話って何かな?」

女「あ、あの!」

男「うん。」ドキドキ

女「…んです。」

男「え?」

女「私好きなんです!」

男「!!」

女「幼さんが好きなんです!!」

男「…え?」

ひゅー

待て、冷静になるんだ。俺。きっとヘッドフォンばっかで音楽聴いてるから難聴になったんだ。あと屋上は風が強いからそのせいだ。
しかもあのデリカシーの欠片もないガサツ女の幼を好きだって…ありえない。

男「えっと、女さん…?幼を好きって聞こえたんだけど俺の聞き間違いだよね?」

女「えっと…」

男「ごめん、変な質問して!女の子同士の恋愛って普通漫画の中でしか聞いたことないし、現実にそんな話があるはず…」

女「う…」ポロ

男「女さん…?」

女「うえ…えぐ…」ポロポロ

男「あれ…れ?女さん、どうしたの?」

女「ひっく…ひっく」ポロポロ

男「な…泣かないで!ごめん、なんか俺変なこと言ったんだよね!」

女「あはは、そう…でずよね?お…おんなのこがずきっでいったら軽蔑します…よね?ふつう」ヒックヒック

男「え…そんなつもりじゃ」

女「こんなわだしなんで…生きてる資格ないんでず…」ガッ

男「えっ」

女さんは俺の目の前で今にもフェンスを乗り越えようとして…

男「…って何してるんだ!やめろ!!」ガシッ

女「放してください!こんなこと考えた私が馬鹿だったんです!!」ジタバタ

男「あんた馬鹿じゃないか!死んだら好きな人にも好きだって言えなくなるんだぞ!」

女「!!」

男「あまり知った風なことは言えないけど、とにかく女さんが本気なんだってのは分かったよ。間違ってるかどうかは結果が出てから判断しても遅くないんじゃない?」

女「……」

男「冗談とはいえ傷つけることを言ってごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。よかったら事情を話してくれないかな?俺でよければだけど…女さんの力になりたいんだ。」

女「……」コクン

女「迷惑かけてごめんなさい…男くん」

男「うん。」

女「あ、あと…その…」

男「ん?」

女「そ…そろそろ離してもらえませんか?は…恥ずかしいです。」カァ

男「わ!ご…ごめん!!」バッ

さっきは止めるのに必死だったとはいえ、俺は話している間もずっと女さんを抱きしめたままだった。恥ずかしい。
その後の話はお互い変に緊張してしまい、まともに続かず結局後日屋上で話し合うことに決まった。
だけど情報交換という名目で女さんと連絡先を交換出来たのは嬉しい誤算だった。幼と家族以外では初めての女の子の連絡先だ。女さんはレズだけどね。
俺は嬉しさのあまりにアドレス帳の一番上に女さんを登録した。その時の俺は相当ニヤついた顔だったに違いない。
それにしても幼にモテ期が到来したことには驚いた。幼はあれで面倒見がいいから女の子にモテるのもあながちありえない話ではないのかもしれない。

男「ただいまー」ガラッ

妹「にぃにぃ、おかえり!」ダキッ

男「うおっ!びっくりした!なんだ…妹か。」

妹「あのね、にぃにぃきいてー!」ギュー

男「はいはい。どうした?」

妹「わたしねー、きょうのてすとがんばったんだよ?」ギュー

男「あ、そっか。確か妹の学校って今日テストの返却日だったな?もしかして…」

妹「うん、まんてんとれたー!」ギュー

男「偉いじゃないか!お前は俺の自慢の妹だよ。」ナデナデ

妹「えへへー」ギュー!

目に入れても痛くないとはまさにこのことを指すんだな。どっかの馬鹿とは大違いだ。

幼「だーれが馬鹿ですってー?」ギュー

男「いたいいたい!耳を引っ張るな!!心を読むな!!あと、何でお前がここにいる!?」

幼「なんでって当たり前じゃない。お隣同士なんだし?」

そう。幼と俺の家族はお隣ということもあって小さい頃からの付き合いなんだ。

男「それで今日はどうしたんだよ?」

幼「感謝しなさい?いつも男の料理だけだったら可哀そうだから、たまには妹ちゃんのために手料理でも作ってあげようと思っただけ。」

相変わらず口だけは減らない奴だ。

妹「きょうのりょうり幼ちゃんがつくってくれるの?やったー!!」

妹の笑顔がまぶしい。認めたくないが実際に幼の料理はうまい。それだけが唯一の特技と言っても過言ではないだろう。
俺の料理も決して悪くない…と自負している。だが「うまい」と「悪くない」の差は結構大きい。
そして、なにより決定的な違いはそのバリュエーションの多さだろう。俺の代わり映えのしない料理には妹も多少は飽きを感じているはずだ。
妹が喜ぶのも無理はない。この笑顔のためだったらにぃにぃは一時の恥を忍んでやるさ。

男「わ…分かったよ。勝手にしろ。」

幼「まったく…男は素直じゃないんだから。」

妹「ごめんね、にぃにぃ。でも、にぃにぃのりょうりもとってもおいしいんだよ…?」

男「ありがとう。妹はいつも優しいなあ。」ナデナデ

妹「や、やめてよ。にぃにぃ、くすぐったいよぉ。」モジモジ

こんなによく出来た妹なんだ。もし妹が嫁に行くことになる日が来たら俺は結婚相手を殴り倒してでも反対するだろうなと密かに思った。

幼「…シスコン」ボソッ

男「だから心読むなって!」

幼「男の考えてることはいちいち顔に出てるのよ。」

俺はなんとなく幼には一生勝てそうにないと思った。だがこの雰囲気は嫌いじゃない。むしろ心地よかった。俺も幼も妹もみんな笑顔だったから。

ガチャッ

男「ふう。」

夕食のあと一風呂浴びた俺はベッドの上に寝転がった。
ふと、携帯を見つめると新着メールが一件入ってるのに気付いた。

男「まさか…」ゴクッ

女さんから!?そんな期待を胸に抱きつつ俺はおぼつかない指で携帯を操作した。


【ルミ子】さんから
新着メールが届きました!!

☆メール受信完全無料・添付写メ閲覧も無料☆

タイトル
22時で最終期限よ?手続きできなかったら二度と出会いはない?



男「……」ピッ

俺は何の躊躇いも無くメールを消去した。
今日の俺をイラつかせたランキングがあるとしたらこのメールは栄えある一位に輝くことだろう。二位はもちろん幼だが。

男「まあ、初日から何事もうまく行くわけ無いか…。」

だが、どうして俺はこんなにも女さんにこだわっているんだろうか?
同情から?いや、それは違う。俺は幼みたいなお節介な人間では決してない。
それとも恋に恋をする年頃だからだろうか?今まで縁が無かったことだから浮かれているのかもしれない。

男「まあ。」

いずれにせよ時間が経てば答えははっきりと分かるはず。とりあえず今は眠ろう。

男「おやすみ。」パチッ

男「……」ウトウト

男「……」スースー

ブーブー

俺が女さんからのメールが来たことに気付いたのは朝になってからだった。
色々と前途多難だが悪くはないと思いたい。

一話終わり

初投稿でした。色々と稚拙なところがあったと思いますが、それでももし見ていただいた方がいたら幸いです。
では。

はやく続きを…

>>13
まさか見ている人がいたとは…
とりあえず書き溜めが無くなったのでのんびり続けていきたいと思います。
よかったらお付き合いください。

暗い。ここは俺の部屋…?

幼「男…」

今日の幼はいつもと雰囲気が違う。どこか憂いのある表情を浮かべている。こいつにもこんな女らしい表情が出来るんだな。
心配になった俺は電気を点けて幼の状態を確認しようとした。

男「幼?どうした…って、うおっ!」

目の前の幼は一糸まとわぬ姿だった。胸にある二つの双璧も年相応に成長が見られる。こいつも一応女の子だったんだなあ。
っていかんいかん!何まじまじと注目しているんだ。俺は変態じゃないか。

幼「男のこと…昔からずぅーと大好きだよ?だから…」ズイッ

そういうと幼は俺に近づいてきて…

男「!!」ドキッ

幼「ぎゅーって…させて。ね?」ギュー

男「……」

これが幼なのか?姿形は同じでもこれではまるで全然違う生き物じゃないか。
だが待てよ。冷静になってみると、ある違和感に気付いた。


男「いたいいたい!これでは抱きしめているというより…」

首を絞めているに近い!

幼「男ー!いい加減に起きないともっと強くするわよー!」

ああ、これは夢はなんだ。幼に一瞬でも女らしさを見出した俺が馬鹿だったんだ。
寝ている人間に問答無用でチョークスリーパーをかけてくるような暴力女に期待した俺が馬鹿だったんだ。

ゴキッ

そこで俺の意識はブラックアウトした。


男「いたいいたい!これでは抱きしめているというより…」

首を絞めているに近い!

幼「男ー!いい加減に起きないともっと強くするわよー!」

ああ、これは夢はなんだ。幼に一瞬でも女らしさを見出した俺が馬鹿だったんだ。
寝ている人間に問答無用でチョークスリーパーをかけてくるような暴力女に期待した俺が馬鹿だったんだ。

ゴキッ

そこで俺の意識はブラックアウトした。

男「朝っぱらからお前は俺を殺す気か!?」

幼「感謝しなさい?わざわざわたしが直々に起こしてあげてるんだから。」

ちょっと今のは温厚な俺でもイラッと来たぞ。このままでは癪だから、たまには俺のほうからあいつをいじめてみよう。
多分奴には通用しないと思うが…

男「いい。今度からは妹に起こしてもらうから。」

幼「えっ?」

男「えっ?」

そう言われた幼の表情はどこか寂しそうだった。それはまるでさっきの夢の続きを見ているようで…

妹「だめだよ、にぃにぃ!幼ちゃんはにぃにぃをおこしてあげたいんだから。」

幼「うわーうわー!!」ジタバタ

珍しい。あいつがああやって取り乱すところを見るのは久しぶりだ。
今回は幼が全面的に悪いとはいえ俺も少し言い過ぎた。ちょっとフォローを入れておくか。

男「悪い。さっきのはちょっとした冗談だよ。たまにはお前をからかってやろうと思ってさ。」

幼「ふ…ふん。なんか気に入らないけど冗談なら許してあげるわ。」プイッ

幼の上から目線は何故かいつも俺に対してだけだ。馬鹿にされてんのかな?だが、温厚な俺は笑ってやり過ごすとしよう。

幼「いい?男の面倒を見れる人なんてわたしをおいて他にはいないんだから感謝しなさい?」

男「はいはい。」

考えてみればそうかもしれない。なんだかんだ言っても幼はいつも俺の面倒みてくれている。
たまには感謝してもいいのかもしれない。

男「幼。」

幼「なによ?」

男「いつもありがとな。」

幼「ふ…ふん!分かればいいのよ。分かれば…」ブツブツ

男「そ…そうか。」

今のは自分でもちょっと恥ずかしかったな。

男「……」サクッ

気を取り直して俺は目の前のトーストに神経を集中することにした。

妹「にぃにぃ、いってきまーす!」

玄関の方から妹の元気な声が聞こえる。俺も元気な声で返してやるとするか。

男「気を付けてなー!」

妹「うん!」ガチャッバタン

男「さて。」

俺たちもそろそろ行かないとな?

男「幼、そろそろ行くぞ。」

幼「うん。」

男「そういえば。」

昨日の深夜、女さんからメールが来たんだっけな。
確か今日の放課後も屋上で待ってるってメールだったな。

幼「おとこー?どうしたの?」ズイッ

男「うおっ!びっくりしたあ。」ビクッ

気が付けば幼の顔が目と鼻の先にあった。

幼「びっくりした、じゃない!折角わたしがガンダムMk-IIのティターンズカラーについて熱く語ってるのに男ったらどこか上の空なんだもん。」

男「ものすごくどうでもいいよ。」

今時そんなマニアックな女子高生はいない。

男「そんなことよりも。」

いい機会だ。女さんがどんな人なのかこの際だから聞いてみよう。

男「幼。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

幼「うん?」

男「同じクラスの女さんってどんな人?」

幼「え!男、女さんに興味があるの?」ズイッ

男「だからあんまりにじり寄ってくるな!暑苦しい!」グイグイ

幼「女さんか…あんまり話はしたことないけど、おとなしい子だね。」

俺の持っている印象とあんまり変わんないな。

男「そ、そうか。」

女さんも前途多難だなあ。

幼「でも、一生懸命で真面目な子だよ。去年の文化祭の手伝いなんか自分からも率先して手伝ってくれてたし。」

男「え、幼と女さんって一年の頃同じクラスだったのか?」

幼「そうだよ。ちゃんと話をするようになったのは文化祭の班が一緒になってからかな。」


男「なるほど。」

文化祭の手伝いの時に何かあったのかもしない?
女さんにはその時の事情を中心に話してもらうことにしよう。

男「わかった、ありがとな。」

幼「ところで男?」ニコッ

幼の顔はいつもより不自然なほど笑顔だが何故か目が笑ってないような気がする。

幼「女さんとどういう関係なのか。詳しく聞いていい?」ジリッ

なんか怖いぞ?

男「無理!」ダッ

幼「おーとーこー!待ちなさーい!逃げるなー!」ダッ

その後の俺は幼にあっさりと掴まり、教室に入るまで延々と質問攻めにあったというのは言うまでもないだろう。


先生「さて、お前らとこのクラスで生活してもう二週間が過ぎようとしている。」

教室に担任の黒髭の声が響き渡る。

先生「そろそろクラス馴染んできただろう?よって今日のHRではクラス委員を選出しようと思う。
推薦でも立候補でもかまわん。決めないと早く帰れんぞー。」

えー、ひっどーい! 

ぶーぶー! 

ファックユー!黒髭

などの罵詈雑言が飛び交う。この調子じゃいつまでたっても決まりそうにないな。
そんなことを考えていると、気付けば隣の席の奴から肩を叩かれていた。

?「教室はこの調子だ。このままでは夕方になってもクラス委員は決まりそうもない。君はそう考えているのだろう?」

何だこの人?俺の心を透かしたようなことを言っているが。

男「はあ…そうだけど?」

?「よろしい。ならば方法は一つだ。」

男「は?」

?「君が立候補すればすべて解決する。」

男「…は?」

何言ってるんだこの女?

?「代わりと言ってもなんだが私も立候補するとしよう。」

確かに俺ははやくこのHRを終わらせて女さんと屋上に行きたい。だが…

男「冗談じゃない。」

俺は委員長なんて柄じゃない。そういうのは誰にでもお節介を焼きたがる幼みたいなやつがやるべきなんだ。
俺は適任じゃないだろうし、それに面倒くさい仕事を押し付けられるのも嫌だ。

?「諦めが悪い奴だな君は。男ならそろそろ覚悟を決めたまえ。」

男「他の奴をあたってくれ。俺は嫌だからな。」

身を乗り出した彼女は意外にも長身で足元まで届きそうな黒髪が印象的だった。
ふんわりといい香りがした。石鹸か?そして鋭くキリッとした目が俺を見つめていた。
圧倒されて俺は何も言うことが出来なかった。

男「わかったわかった。手挙げればいいんだろ?」バッ

?「よろしい。」フッ

隣の席の女は俺を鼻で笑った。まるでそれは年下の弟を扱うかのようだった。

ミスりました。
>>32>>33の間に↓の文章を入れてください。

?「いいから。」ズイッ

先生「おお!やってくれるのか。俺はお前らのような聞き分けのいい生徒をもってよかったと思うぞ!」

黒髭は嬉しそうだった。彼も一教師なんだ。きっと俺たち以上に忙しいに違いない。
クラスの連中もクラス委員が決まったと聞いて、どこか解放感に満ちた顔をしている。
中には鞄を抱えて今にも駆け出そうと構えている奴もいる。

先生「クラス委員は男と隣女の二人ということで。今日は以上!」

その声を聞くや否やクラスの男連中は我先にと駆け出して行った。
俺もやっと屋上に向かうことが出来る。安堵すると同時に明日から始まるであろうクラス委員の仕事のことを考えると頭が痛くなった。

隣女「男くんと言ったね?明日から一つよろしく頼むよ。」ポン

隣女が軽快な調子で俺の肩を叩いた。俺はさっきから一つ気になっていたことがあったから尋ねてみた。

男「あのさ…」

隣女「ん、どうした?」

男「どうして俺なんだ?」

隣女「えっと…どうしてきみを選んだかって?」

男「そうだ。」

隣女「なんとなくかな?席も隣だったし。私はこう見えても忙しいから早くHRを済ませたかったんだ。」

男「……」

大した理由はないらしい。

隣女「でも…」

男「?」

隣女「きみとはいい友人になれそうだよ。これからよろしく?男くん」グッ

そう言って彼女は手を差し伸べてきた。

男「え?ああ。」グッ

握り返した手は思ったよりも細かった。身長は高いが彼女はやっぱり女の子なのだなと思った。

隣女「じゃあ、私はこれで失礼するよ。」クルッ

男「お、おう。」

…やっぱり俺は流されやすい男なのかもしれない。

男「ん?」

ふと、気配がしたので振り返ってみると…

幼「……」ニコッ

幼がこっちを見て微笑んでいた。恐ろしいほどに笑顔で。

幼「おーとーこー?詳しく話を聞いていい?」ヒタ

男「うわあ!なんでもないからなんでもないから!」ダッ

幼「待ちなさい!逃がさないから!」ダッ

このままでは今朝のように屋上に行く前に追いつかれてしまう。

男「こうなったら…!」ガサッ

俺は学生鞄の中からあらかじめ用意していた物をぶちまけた。

幼「なに…これ!?」

男「それは…」

昼休みに校舎の裏で見つけたバッタの大群だった。幼は確か小さい頃は虫は苦手だった。
そしてそれは今も変わらない…はず。

幼「甘いわね…!」

男「なに…!?」

幼は軽快なフットワークで、飛んでくるバッタの大群を難無く躱して行き一直線へ俺の眼前へと迫った。
そして俺のみぞおちにボディーブローを叩きこんだ。

ドスッ

男「ぐっ!」

念のためにノートの何冊かを制服の間に挟んでおいたおかげでダメージを軽減することは成功したが、俺の体力を奪うには申し分のない程の威力だった。

幼「命拾いしたわね、男?でも次の一撃で最後よ?」スッ

幼が構えの姿勢を取る。どうやら奴は必殺技で確実に俺を仕留めにかかるらしい。

幼「観念なさいっ!!」クワッ

幼の狂拳が俺へと迫る。いつもよりも世界が回るのがゆっくりな気がした。
ああ、これが走馬灯と呼ばれるものなのか。

男「……」

だが、いつもよりも穏やかな気分でいられた。このまま逝ったとしても俺は後悔しないだろう。
その時だった…

女「それで…他に言うことは?」

男・幼「ごめんなさい…」

俺たちは女さんに屋上でこっぴどく叱られていた。意外だったのは普段おとなしいはずの彼女は怒ったら物凄く怖いということだ。

女「男さん…聞いてますか?」チラッ

男「はい!!」ビクッ

いけない、ちゃんと集中しないと。

その後、お怒りモードの解けたあとの女さんはこっちが恐縮するぐらいに謝りっぱなしだった。
いつもの彼女に戻って本当によかったと思う。
やっと雰囲気も落ち着いてきたので俺は女さんに昨日の話の続きをしてみることにした。

男「それで昨日の話の続きなんだけど?」

幼「何よ?それ。あやしーい。」ズイッ

幼が体を寄せてくる。

男「だから、しつこいって!それでどうかな?女さん。」

女「え…えっとぉ…」モジモジ

見た感じ彼女はとても緊張しているらしい。それはそうだ。だって目の前に自分の想い人が目の前に座っているんだから。
それでどうも話しあぐねている様子だ。見兼ねた俺は女さんに助け舟を出すことにした。

男「幼。」

幼「ん、なに男?」

男「女さん、幼に大事な話があるんだってさ。聞いてあげてくれないか?」

幼「うん。わかった。」スッ

女さんの真剣な態度に触発されたのだろう。幼も俺から身を離し真剣な面持ちで女さんに向き直った。

幼「それで話聞かせてくれる?女さん。」

女「は、はい!え、えっと…」

女「わ…私と…その」アワアワ

幼「うん…」

男「……」

ひゅー

女「と…友達に…なってくれませんか…?」

幼「…え?」

男「…え?」

ひゅー

幼「……」

女「…あ」

女「や、やっぱり…ダメです…よね?私が幼さんみたいな素敵な人と友達なんて…」

幼「幼。」

女「…え?」

幼「幼って呼んでくれたら嬉しいかな。」

女「え…あ…」

幼「ほーら!」グイッ

幼は女さんの手を引っ張ってその場に立たせた。

女「わ…っわわ!」ジタバタ

幼「もっとシャキッとしなさい!折角の美人がもったいないでしょ?」ポンポン

そして女さんの背中を優しく叩いた。まるで小さな赤ちゃんをあやすように。

女「あ、ありがとう…ござ…」

幼「……」ズイッ

女「え…えっ?」

幼が女さんににじり寄ったそれはいつも俺に対してやってるように。
そして人差し指を女さんの顔の前に突き付けた。


幼「敬語禁止!」グイッ

女「へ?」
 
幼「わたしたち友達なんでしょ?」

女「う…うん!!」

幼「もし使ったらお仕置きだかんね。」ニコ

女「うん!」パァー

女さんの笑顔が咲いた。幼はすごい奴だ。
あいつはお節介と料理に関しては天才なんだ。俺はよく知っている。

幼「おーとーこー?」ジー

幼がこっちを訝しげに見つめている。

男「なんだよ?」

幼「わたしの友達はあんたの友達でもあるんだからね!」

男「…は?」キョトン

女「…え?」ポカーン

幼「あんたたちも仲良くしなさい!」

…こいつは本当にお節介だな。

男「えっと…女さん?」

女「ひっ!」ビクッ

そんなに怖がらなくてもいいのに…まあ、いいか。気を取り直して。

男「これからよろしくな。」スッ

そういって俺は手を差し伸べた。

女「……」

女「うん、よろしく。」ギュッ

そういって女さんは俺の手を握り返した。


その日の帰り道。俺は女さんに気になったことがあったからこっそりと聞いてみた。

男「あのさ…」

女「え、なに?」

男「どうして…しなかったの?」

女「えっと…ごめん、なにを?」

男「告白だよ…」ボソッ

女「え!だって…」

女(悔しいけど…今の私じゃ勝ち目ないんだもん)

男「え?」

風が強いせいか女さんの声がうまく聞こえなかった。

女「な…なんでもない!」ビクッ

まあ当人同士の問題なんだ。あまり突っかかるのは止めにしよう。

幼「なにを仲良く内緒話してんの?わたしも混ぜてほしーな。」ニコッ

男・女「なんでもないなんでもない!」

俺の周りは変な奴ばかりだけど、こんな日常も悪くないと思う。
だって今の俺は心地よい充足感で満たされているんだから。
どうか、こんな毎日がずっと続きますように…

2話終わり

今日の投下はひとまずこれで終わりです。
お付き合いくださった方ありがとうございました。
では。

度々すいません。
今更ですがミスに気づきました。
>>41>>42の間に↓の文章を入れてください。

女「二人ともやめてください!」

女さんだった。心配して駆けつけてくれたのだろうか?
というか…

男「何をやってるんだ俺たちは…。」

まさに馬鹿の極みだった。

乙っす
いかんなー隣女みたいなタイプがツボなので無条件降伏してしまう
あのタイミングで新キャラ?&出番もう終わり?状態なのにねぇ……www

>>55
どうも、やっぱり登場シーン強引すぎでしたかねwwww
次回から隣女もクラス委員関係でもうちょっと出番を増やす予定です。

おはようございます
途中までですけど三話投下します

男「……」ムクッ

いかんいかん 昨日は昼に睡眠をとりすぎたこともあって真夜中に目を覚ましてしまった 

現在の時刻は4:00、なんという中途半端な時間だろう

男「はあ…」

とりあえず手持ち無沙汰なのでリビングに行ってお茶でも飲んで来よう のどが渇いて仕方がない

男「……」ガチャッ

男「……」トットット

男「そういえば」

俺って妹の部屋に一度も入ったこと無かったよな? 俺はちょっとした好奇心で妹の部屋に向かっていった

男「ん…?」

なんだ?部屋のドアに張り紙がしてある 俺は目を凝らしてみた すると…

男「ええと、なになに?…にぃにぃは入っちゃダメ!…だって」

○学生のくせに一丁前に女の子ぶっているのか

男「かわいい…!」

今の俺の顔は相当に緩みきっていることだろう 仕方がないたった一人の愛すべき妹なのだ その辺の事情は考慮してもらおう

男「妹ー入るぞー」コンコン

返事がない!どうやら、ちゃんと眠っているようだ しめしめ…

男「そーっと…」キィ

「こんな時間になにしてるんだい?あんたは」

男「!!」ビクッ

背後からの声に驚いた俺はそのまま固まってしまった

「はあー、自分の妹に夜這いするたぁ… あんたもすっかり落ちぶれたね 一体誰に似たらこんな変態に…」ハァー

あんただよ!

男「なんだよ、もう帰ってきたのかよ」

母「帰ってきちゃ悪いかい?とは言っても…」

母「またすぐに向こうに行かなくちゃいけないんだけどねぇ…」

母さんはプロのクリエイターとして仕事をしている 

その仕事柄、残業も多く家に帰ってくる時間も夜遅くになる あまりの忙しさに会社で寝泊まりすることも珍しくない

母「家事やらなにやらあんたにまかせっきりで悪いねぇ 感謝してるよ」

そうやって母さんは寂しそうに笑った。

男「仕事忙しいんだろ?じゃあ、文句は言えないよ」

不満がないといったら嘘ではない 俺はまだ我慢できる余裕がある

だが妹の場合だとどうだろう?まだあの年齢なんだ

一人で寝るのが寂しくて、たまに俺の布団まで入ってくることもある

そんな日はいつも決まって泣き出す

妹だって本当は母さんに甘えたいんだろうけどそれは出来ない 

なぜならそれが母さんの負担になるってことが分かっているから

母さんも妹の思っていることは恐らく知っているんだろう

本当はいつでも好きな時に甘えさせてあげたいと思っているが出来ない

中途半端に甘えさせると必ずそれ以上を求めてしまう

でも応えてあげることが出来ない

ならばいっそのこと干渉しなければいい 母さんはそう考えたんだろう

そして、自分の代わりとして俺に妹を任せたんだろう

母「それじゃあ、いつまでもウロウロしてないで早く寝なよ」クルッ

母さんは寝室に戻って行った。

男「でも…」

コピーは所詮コピーに過ぎない オリジナルには絶対に勝てないんだよ…

俺は小さく呟いた

その日はお茶を飲んでも、のどの渇きは潤いそうになかった

幼「男!起きなさ…」ガチャッ

幼「…って起きてる!?」

いつもは寝坊助の俺が今日は珍しく早起きだったので幼が呆気にとられていた

男「悪いかよ」

幼「珍しい!こんな日は台風が来なければいいけどね」

男「今は5月だから…」

それに俺にとっての一番の台風はお前だよ、幼

幼「……」グイッ

男「ひぎぃ!」メキメキ

幼に腕ひしぎ逆十字固めをきめられて、俺の関節が悲鳴をあげている

幼「あんた、今失礼なこと考えたでしょ?」ジロッ

幼は今日も相変わらずだった

男「でも、よく考えてみろ こんなに旨そうなものが朝から食卓に並んでるんだぜ?」

メニューは鮭の塩焼き、味噌汁、おひたし…といった一般的なものだが、シンプルだからこそ調理者の実力の違いがはっきり出るというものだ

そのあたり幼の料理の腕は天才的と言っていい 我慢しろという方が無理という話だ

妹「そうだね、ほんとうにいいにおーい!もうそろそろたべていいかな?わたしおなかすいちゃった」グー

妹も俺に続いて褒めちぎる

幼「そ、そうね…じゃあ、そろそろ頂きましょうか?」カァー

幼が居心地悪そうに身をクネクネさせている 自分が作ったものが褒められるのが素直に嬉しいのだろう 

分かりやすい奴だ

幼「それじゃあ、手を合わせて」

「「「いただきまーす!!」」」

男「ガツガツガツ!!」ムシャムシャ

俺は一心不乱に料理にむしゃぶりついた! この味は俺を狂わせるぜ!

幼「男!行儀が悪いわよ!」

男「ん?」ポロポロ

幼「ああ、こんなにこぼしちゃって 全くしょうがないわね…」フキフキ

幼が俺の口の周りを拭いてくれる ちょっと恥ずかしいぞ

男「幼、恥ずかしいからもういいって!」カァー

幼「ダメ!じっとしてなさい!」ビシッ

幼にデコピンをかまされた 相変わらず威力は高い

幼「本当に…男はわたしがいないとダメなんだから…」ブツブツ

幼が悪態をついてくる だが口調のわりには幼の機嫌はいつもより良いように思えた

妹「ふふっ!」クスッ

妹が俺たちを見て嬉しそうに笑っている

男「妹?どうして笑ってるんだ?」

妹「だって…」フフッ

妹「にぃにぃと幼ちゃん、なんだか、かっぷるさんみたいだなあって」ニコ

男・幼「な…!?」

俺たちは同時に言葉を失った

男「いやいや、妹よ! 間違っても幼とそんなことなんて絶対にないぞ!!」

幼「そ…そうそう! 男となんて絶対にありえないから!!」

男「俺たちはただの幼馴染だからな! 腐ってもそんなことはない 俺は幼なんて女としてみたこと…」

バキッ!

次の瞬間、俺は壁に吹っ飛ばされていた そして幼に顔面を殴られたのだなと悟った

幼「男のばかー!死んじゃえー!!」ダッ

幼は走り出して、先に学校へ行ってしまった

妹「にぃにぃ!だいじょうぶ!?」

男「あ、あぁ…」

それにしても幼の奴…なんで急に機嫌が悪くなったんだろう…

結局俺は一人で登校する破目になった 途中、見知った顔を見つけたので声をかける

男「よう、隣女」

隣女「ん?男くんじゃないか、おはよう」

隣女は俺の言葉に気付いて立ち止まった

男「そういえば今日ってクラス委員の仕事あるよな?」

隣女「そうだ、放課後に資料の整理整頓やら色々とやることが多いそうだからな… ちゃんとサボらずに残っていてくれよ?」

男「言われなくてもわかってるよ…」

隣女「よろしい」フフッ

隣女は何を考えているのか、よく分からない こいつと一緒にいるとなんだかちょっと落ち着かない

隣女「男くん?」

隣女が首を傾げてこっちを覗いている

隣女「早くしないと遅刻してしまうぞ?」フフッ

男「わかってるよ」

そして俺たちは教室へと急いだ

教室に入ると幼が机に突っ伏していた あれは相当機嫌が悪いな…

そして女さんを見つけた どうやら彼女は本を呼んでいるみたいだ 声をかけてみようか?

でも一生懸命本を読んでるみたいだし邪魔をしたら悪いしなあ…

隣女「男くん、朝からクラスの女子生徒の物色かい? 中々いいご趣味だね」ポンポン

そう言いながら隣女が俺の肩をニヤニヤしながら叩いてくる 容姿に似合わず言ってることが親父くさい…

男「そんなんじゃないって」プイッ

隣女「冗談だよ、そうやって額縁通りに受け取らなくてもいいのだよ? まったく…一々きみはかわいいなあ」フフッ

男「えっ!…今なんて?」ドキッ

隣女「ぷっ!」

隣女が声を殺して笑っている

隣女「純情少年だな…きみは」ククク…

しまった また、からかわれた…

隣女「まあ、それがきみの魅力なんだ きみはいつまでも変わらずにそのままのきみでいなよ」

男「え?」

今の言葉ってどういう意味で言ったんだ?

先生「おい、さっさと席につけー!HRはじめるぞー!」ガラッ

タイミングの悪いところで黒髭が来たので結局隣女に聞けず仕舞いだった

午前の授業が終わり昼休みになった クラスの生徒の半分は恐らく購買か食堂に向かったのだろう

隣女の姿もなかったので多分あいつも同じだろう

男「さて、俺はどうするかな?」

今更、食堂に向かっても遅いだろう 多分座る席がないはずだ

購買も同じでこの時間帯はうぐいすパンくらいしか残っていない

それに今日は弁当も用意してある

幼と一緒に食べようかとも考えたが、正直朝の一件のせいでなんとなく顔を合わせ辛い

消去法で行くと…

女「えっと…それで私なの?」

男「俺たち友達だよな?」キラキラ

女「はあ…」ゲンナリ

女さんと一緒に中庭のベンチで昼食をとることになったんだが、彼女はあまりノリ気ではないみたいだ

女「私、お昼は一人で食べたい派なんだけどなあ…」

男「まあまあ、そんな寂しいこと言わずに」

あれ?ひょっとして俺、ウザがられている?

ならば、ここは女さんの好きそうな話題を振って挽回しよう 幼のことぐらいしか思いつかないが…

男「待てよ?そういえば…」

朝、読書をしていたような… よし、本について聞いてみるとしよう!

男「幼さんって朝、本読んでたみたいだけど…一体どんな本読んでたの?」

女「あ…あなたには関係ないです!」プイッ

むっ!そう来るか そっちがその気ならこっちは…

男「そんなこと言わずにさあ~」ジリジリ

女「や…やめて」ビクッ

男「ね!見せてくれるだけでいいからさ」グイグイ

女「あ…」ビクンビクン

男「ちょ…ちょっとだけでいいからさあ…」ハアハア

よし、あと一押し!

女「い…いやあ!だれか助けて!」ヒクッヒク

男「ぐへへへ…」ニヤニヤ

あれ、待てよ?これって傍から見たら俺って…

「そこの男子生徒、何をやっている!?」

背後から何者かの声がしたので振り返る

男「だ…だれだ!?」バッ

風紀「私はこの学園の風紀委員長をやっている!早くその女生徒からただちに離れないと…」

男「離れないと?」ゴクッ

風紀委員長の先輩は脇に差してある竹刀を抜き…

風紀「ただちに実力行使にうつる!」スチャッ

俺に対して突き付けた

男「ちょっと待ってくれ、俺は…!」

ただ…女さんと仲良くしたかっただけだったのに…!

女「大体あなたおかしいんですよ!屋上の時だっていきなり抱きついてきて!」

男「え?」

待ってくれ!それは女さんが飛び降りようとしてたから俺も必死になって止めただけなのに…?

だが衝撃の告白に俺の頭がまだ追いついて無いのだろう うまく言葉が繋げない…!

女「幼の友達だからって…仕方なく一緒にいてあげたのに 勝手に勘違いしちゃってさぁ」

男「…え?」

女「お願いだから、もう金輪際私に話しかけないで!顔も見たくないから!」

男「な…」

男「なんでさ…」

女「は?」ギロッ

男「じゃあ、なんであの時俺にあんな手紙を出したんだよ…?」

女「そんなの決まってるじゃない」ニヤッ

女「幼と仲良くなるための手段としてあんたを利用したのよ」

女「男って単純よね?ちょっとおどおどした振りして見せればすぐに駆け寄って来て心配してくれるんだもの ほんといい気分だわ!」

どうしてだろう?以前はとても綺麗だと思っていた彼女の顔は今はひどく醜く見えた

そして俺が今まで見ていた彼女は全て演技によるものだったのだろうか?

すると、今まで積み上げてきたものが崩れていくような気がした

男「……」ガクッ

風紀「!!」ダッ

倒れそうになる俺を見て風紀委員長の先輩は俺に駆け寄って支えてくれる

風紀「しっかりしろ!顔が…真っ青だぞ!!」

男「へ…平気です」フラフラ

平気じゃない、もうこのまま倒れてしまいたいぐらいだ

女「それにあんた邪魔だったのよ!幼はいつもあなたのことばっかりで、いつまでたってもわたしに靡いてくれないし!!」

そうだ…

女「ほんと幼も幼よね?こんな変態を…」クスッ

俺はなんて馬鹿なんだろう 勝手に一人で舞い上がって…

女「おかしくて笑えちゃうわ!」キャハ

挙句の果てには勘違いなんて滑稽すぎるよな…

風紀「貴様、それはいくらなんでも言い過ぎだろ!訂正しろ!」

違う…全部俺が悪いんだ… 

俺が…

男「あ…れ?」

気が付いたら俺は保健室のベッドで横になっていた

風紀「目が覚めたか?いきなり倒れるものだから心配したぞ」

そして隣には先輩が付き添ってくれていた 気付けばもう夕方になっている

もしかしてこの時間まで俺に付き添ってくれていたのだろうか?だとしたら真面目すぎるだけで根は優しい人なのかもしれない

風紀「しかし、困ったなあ…」

風紀「私はあの時お前が彼女を襲ったのとばかり思っていたのだが…今はさっぱりわからなくなってきた」

先輩は困ったような顔で苦笑いをした

男「襲ってはないですけど…でも誤解されるような真似をした俺が全面的に悪いんですよ」

風紀「確かにそうかもしれない…でもな」スッ

風紀「今のきみはそんなことをするような人にはとても見えないんだよ」ナデナデ

男「!?」

風紀「なんでだろうな?」ナデナデ

そう言って先輩は俺の頭に手を乗せて優しく撫でてくれた

男「……」

先輩の手は温かくて心地よかった 俺が落ち着くまでの間、先輩はずっとそのままでいてくれた

男「ありがとうございます、もう大丈夫です」

風紀「もういいのか?私としてははもうちょっと撫でていてもよかったんだが…」シュン

なんでちょっと残念そうな顔してるんだよ?

男「い…いえ、流石に恥ずかしいですから…」

風紀「わかった」

さて、帰るとするか?

男「それじゃあ、俺はこれで…」ガラッ

風紀「男」

男「え?」

先輩に呼び止められた 何だろう?

風紀「ほれ」ピッ

先輩が何かをこちらへ投げてよこしてきた

男「これは…名刺?」

風紀「なにか困ったことがあったら私のところまで訪ねてこい 三年の風紀だ」

先輩の名前は風紀さんと言うらしい やっぱり彼女はいい人だった

先輩と別れた俺は靴箱に向かった 俺のクラスの靴箱には隣女がもたれてかかっていた

男「隣女、お前こんな時間まで一体どうしたんだよ!?」

すでに外は真っ暗だ

隣女「察したまえ、きみを待っていたのだよ」フー

男「お前、委員の仕事は?」

まさかこの時間まで一人で…?

隣女「感謝したまえよ、男くん」フー

男「まあ、借りってことで 今度何か奢るよ」

男「…っていうかお前この前用事とかで色々忙しいって行ってたじゃないか 大丈夫なのか?」

隣女「それはきみが気にする必要はない それに委員の仕事がある日は用事を入れていないんだよ」

隣女「…って私のことはどうでもいいんだ!それよりも…」

隣女はそこで一区切り置いた なにか重大なことを告げるつもりらしい

隣女「友人として、きみに忠告しておくことがある」

男「……」ゴクリ

何故か背筋が凍るような嫌な予感がした

隣女「女さんがね…クラスの女子連中に泣きながら話していたのだよ きみに暗がりに連れて行かれ強姦されそうになったって…」

男「……」ギリッ

色々と爆発しそうだったが、なんとか思いとどまった

隣女「クラスの女子連中は敵に回したと考えていいだろう…」

俺は一つ気になることがあった

男「幼は…!幼はどんな様子だったんだ…?」

隣女「えっと…」

俺は幼のことを信じている!だから幼も俺のことを信じてくれるはずだ!!

隣女「…泣いていたよ、だから、会わないほうがいいだろう…」

男「うわああああああ!!」ドガッ!

いたたまれなくなって俺は靴箱を殴りつけてしまっていた 鉄のひしゃげた音がした

隣女「やめないか!!」グッ

隣女にガッチリと押さえつけられる 一体あの細い体のどこにそんな力があるのだろう?

男「俺は…あいつにだけは信じていて欲しかったのに…」

隣女「男くん…きみは…」

男「馬鹿…だよな?」

隣女「幼くんのことが…」

男「ほんと今頃になって気付くなんてな…」

次の瞬間、俺は隣女に抱きしめられていた

隣女「私だけは何があってもきみを信じるぞ…!だってきみは純情少年なんだ そうだろう…?」ギュッ

男「隣女…」ポロ

俺は幼がこんなにも好きだったんだ もっと早く気付いていれば何か変わったのかもしれない

だけど全ては遅かったようだ そして俺の初恋はこれで終わったんだと悟った

3話終わり

はい!3話終わりです
色々と突っ込みどころ満載な展開でしたがいかがでしたでしょうか?
お付き合いくださった方ありがとうございました
ではでは

乙っす
「三話投下」→「3区切り分投下」と勝手に解釈してたわwwwww
どおりで切れ目が全然無いわけだ(´・ω・`)

>>97
1日に3区切り分投下は流石に僕の体力がもたないですwww

こんばんは!
本編の男視点だけだったら他の登場人物の行動に説得力が無いんじゃね?
これじゃ正直内容薄っぺらじゃね?
ということで番外編を投下します

これでちょっとは理解が深まるかも?



                第3話 Ver.幼

昼休み、教室は生徒たちの歓談で包まれていた

その中でわたしだけ自己嫌悪に陥っていた

今朝ついカッとなって男を殴り飛ばしまった そして、そのまま家を飛び出してしまったのだ

幼「はぁ…」ドヨーン

こんなことばっかりやってるから…男もわたしのことを女として見てくれないんだよね

ほんとは今すぐにでも大好きって伝えたいのに…たくさん甘えたいのに…言葉に出来ない 

だって口にすれば今のこの関係が壊れちゃうかもしれない 断られたらどうしよう…どんな顔をしよう…冗談だって笑い飛ばせばいいのかな?

そんな思考が頭の中をぐるぐる回っていて、どんどんわたしを蝕んでいく

幼「男ぉ…」ポロ

わたし壊れちゃいそうだよ…

そんなことを考えていると、突然すごい勢いで教室のドアの開く音がした

女「う…えぐっ…」ヒクヒク

立っていたのは女だった その着衣は乱れていて、顔からは大粒の汗と涙をたらしている 目もうつろで、息も絶え絶えといった様子だ

教室にいる誰もがその異常性を肌に感じたに違いない

女友「はい!男子は出てった、出てった!」

最初に動いたのはクラスのムードメーカー友ちゃんだった そのサバサバした性格から後輩の女子からは人気があるらしい

女友ちゃんたちは手際よく男子を教室の外へと追いやっていく あっという間に教室は女子だけになった

女友「それで一体何があったの?聞かせて?」サスサス

泣きじゃくる女の背中を友ちゃんは優しく撫でながら尋ねた

女「え、えっと…」グス

それで多少は落ち着きを取り戻したのか 女はゆっくりと言葉を紡いでいった

女「ついさっき…中庭でお昼をとっていたら…」

幼「……」 隣女「……」 女友「……」 地味女「……」 ギャル女「……」 モブ女「……」

わたしたちは女の言葉を静かに待った

女「男くんに…」

幼「え…!」ビクッ

待って!どうしてそこで男の名前が出てくるの…? するとわたしの中で嫌な結論が湧きあがってくる

乱れた着衣、女の泣き顔、荒い呼吸、うつろな視線…

それらから導きだされる答えは…

女「お…男くんに…おか…犯されそうに…なって」ガクガク

女は壊れたマリオネット人形のように震え始めた 保っていた落ち着きを失うほどに戦慄していた

幼「いやあああああああッ…!!」ガタン!

女友「幼!?」

気が付いたらわたしは教室から逃げ出してしまっていた

どうも
女編はちょっと長いので前編と後編で2分割にします
よかったらお付き合いください

まずは前編です



              女「私たちの世界」 前編

7年前

女「母さん…!目を開けてよ!!母さん!!」ユサユサ

女母「……」シーン

女父「ごがーッ…!!」

青白い母さんの横であいつは大きないびきを立てながら眠っていた

女「母さ…」ユサ

女父「やかましい!!」バシッ

女「ッ…!」ゴロゴロ

女父「ごがー…!」

女「……」ツー

騒ぐとまたあいつに叩かれると思ったので声を殺して泣いた そして、神懸けていつか必ずあいつに復讐をしてやると誓った 悔しさと悲しみで唇を噛みしめながら…



ゼ  ッ  タ  イ  ニ  ユ  ル  サ  ナ  イ

女「……」ガチャ

家の中は相変わらず酒臭かった わたしの部屋の隣ではまたあいつが新しい女を連れ込んでいる 女の嬌声と行為の音が聞こえてきた

女父「おい!帰ってきたのに何も言うことなしか?随分とお高く留まったもんだなあ?ええ!?」ドン

あいつの耳障りな声が聞こえてくる うるさい、脳にガンガン響く

女「クズが…」チッ

死んでしまえばいいのに…!

女「……」スッ

わたしはすぐにイヤフォンをつけて外界の音をシャットアウトした そして内側の世界へと沈んでいく…

あいつがあの時、母さんの薬の金を酒代に使わなければ…母さんは死なずに済んだのに…!

あいつの下品な面を思い浮かべる度に怒りが込み上げてくる 本当に汚らわしい…!

だから…私は…




女「男という生き物が…大嫌いなんだ…!!」ギリッ

母さんが死んだあの日から、私は人を信用するという行為が理解出来なくなっていた

相手の顔色を見て相手が不快に思わない言葉を選んで話す 近づきすぎず離れすぎずその距離が理想だと…ずっと思っていた

そんな私にもある日、転機が訪れた それが幼さんとの出会いだった

幼「よろしくね!女さん」

幼さんは眩しいほどに明るく私にとって太陽のような存在だった その温かさに触れるとここが私の居場所なのだと安心できた

彼女の存在が私に道を示してくれたんだ

女「よ…よろしく」カァー

同時に乾いた私の心に優しい雨のシャワーを降らせた

彼女の存在が私の人生に潤いを与えてくれたんだ

幼「ふふっ!」ニコ

これが私の初恋だった

幼さんと私は同じクラスだったが、私は幼さんとの距離間を測りかねていた

なぜなら私は今まで「人に嫌われない接し方」しか練習してこなかったため「人に好かれる接し方」を全くといっていいほど知らなかったのだから

どのぐらいの距離で接するのが1番適当か?こっちから話しかけても不快に思われないだろうか?

いつまでもそんな疑問が尽きなかった…

幼さんが私の中で絶対的な存在であるように、幼さんにも私の中に同じものを求めて欲しかった

それを満たすには「恋人」という形態が1番望ましいだろう、私はそう考えた


そして季節は流れ、9月に入り文化祭が始まった

クラスの出し物では各班に分かれて作業することになるらしい 女さんと同じ班になれれば会話をする自然なきっかけが見つかるのでは?

どうやら私にもツキが回ってきたらしい このチャンスをみすみす逃す馬鹿はいないだろう

絶対の安心感を得るために、私は班決めの係りの1人を買収することに決めた

係女「え?本当に…こんなにもらっていいの?」ピラピラ

女「はい、だから…例の件をお願いしても…?」

係女「任せてよ!絶対約束するよ!」ニヤ

女「あ…ありがとうございます」ペコ

よし、これで準備は整った

翌日、結果が発表され私と幼さんは見事同じ班になれたことを知った

幼「女さんと一緒の班なんだーそれじゃ、明日からよろしくね?」ニコ

女「は…はい!」

幼「あはは、そんなに嬉しいそうにされると恥ずかしいなあ…」モジ

だが、そんな貴重な幼さんと私の時間を邪魔する存在がいた

それは…




係女「ねえ、女さん ちょっといいかな?」

係女さんだった

私は人気のない廊下に呼び出された

女「えっと…それで?」

係女「正直、昨日のお金じゃ足りなくてさ もっと持ってきてくれないかな?」

女「え…?」

もしかしてカモられた…?

係女「いいでしょ?ね、お願い!この通り!私のおかげで幼さんと一緒の班になることが出来たんだし」

女「えっと…」

係女「そ・れ・と・も~…」



係女「ズルしたことが女さんにバレちゃってもいいのかな?かな?嫌われちゃうかもよ~?」ニヤニヤ

女「…ッ!」ビクッ

冗談ではない…このままでは全てが終わってしまう

これから始まるであろう幼さんとの甘美な生活も…ならば…

絶  対  の  安  心  感  を  得  る  た  め  に


女「……」チャキ

私は懐からカッターナイフを取り出し…

係女「え!」ビク

係女の首筋にめがけて…




女「私  た  ち  の  世  界に踏み込むなぁーーーーーッ!!」ヒュン!!



係女「ひいっ!!」ピッ



一閃した

係女「あ…ああ…」プルプル

傷自体は大した深さではないがショックを与えるには十分すぎたらしい

係女はその場にうずくまって見っともなく失禁していた

女「係女さん…」ニコ

係女「ひ…ひいいい!!」ビクッ

女「さようなら…」スタスタ

私は怯える係女をそのままに幼さんの待つ教室へと戻った



係女「あ、あの女…普通じゃない…!」ガクガク

教室に戻ると幼さんが訝しげな視線で幼さんがこちらを見つめてきた

幼「なんかやけに長かったね?」

女「な…なんでもないです」

幼「ふーん?」


私たちの世界を脅かすものはだれであろうと容赦はしない

だって幼さんだけが私の唯一の生き甲斐であり唯一の居場所なのだから…

ね?幼さん?




女「私たちの世界」 前編 終わり

前編の投下終わりです
お付き合いくださった方ありがとうございました!
ではでは

後編の投下です
相変わらず内容が重いですけどご容赦ください

これが終わったら早速4話を投下していきたいと思います
ちなみに隣女の番外編はまだ必要じゃないと思ったので、また時期が来たらということで
なんか色々とブレまくりでごめんなさい



              女「私たちの世界」 後編

文化祭終了後、私は幼さんとの接点を失ってしまった 渇いて渇いて仕方がない 

だから私は代用品として「自らの妄想」の中に私たちの世界を作り上げ、その中で渇きを癒そうとした




女「幼さんの指がぁ…私のなかにぃ…!ひゃうぅ…!」クチュクチュ

だが、いまいち満たされなかった

女「えぐ…」ポロ

それどころかもどかしさばかりが感じてしまい感傷的になってしまう自分がいる

女「やっぱり…本物じゃないとイケない…よぉ…!!」グス



私の欲望はどんどん募っていく一方だった…

そして冬が過ぎて春になり、私は2年生になった 今年も運良く幼さんと同じクラスになれることが出来た

今の私なら女さんに話しかけることが出来るかもしれない 去年行動できなかった分、今年こそは勇気を出してみたい

以前の私ならこんな積極的な行いをしようなどとは考えたことも無かった 幼さんに対する想いが私の生き方に影響を与える程大きくなっている…

少しだけそんな自分が好きになれたような気がした 



あいつの呪縛から解き放たれて楽になりたい…!そして、ここから新しい人生をやり直したい…!

そんな気持ちが私の中に芽生え始めていた

女「幼さ…」



だが幼さんの視界には私の姿など映っていないようだった 夢中になって目の前のある男子生徒と言い争いを繰り広げている

彼に向ける女さんの表情は初めて私が目にするもので、まるで子どものように目を輝かせていた

それは私に対して向けられる母性に満ち溢れていた聖母のような表情とは程遠いものだった

私が知らない彼女の一面を目の前でまざまざと見せつけられたのだ

胸の中でどす黒いマグマのような感情が沸騰して今にも爆発しそうな勢いだった



女「ああ…」

これが嫉妬という感情か…

ついさっき幼さんと戯れていた男子生徒の名前は男くんというらしい

第一印象は優しそうな男の子という感じだ 世の中の汚さを知らない子どものような顔つきをしている

幼い頃から現在に至るまで、この世のありとあらゆる汚れた部分を散々思い知らされてきた私とは全くの正反対だ

そんな彼だからこそ幼さんも惹かれたのだろうか? 

そうだとしたら…




女(憎い…!)

異性として生まれた彼が! 

幼さんに好意を向けられている彼が! 

純粋無垢で人畜無害な彼が!

こんな私にだって幸せになる権利はあるはずだ!生まれてからはずっと普通の人以上に辛酸を舐めさせられ続けてきたのだから…

せめて一度くらいは幸せな夢を見ても罰は当たらないはずだ もし誰も与えてくれないのだったら…




女(徹底的に奪いつくしてやる…!!)ギリッ

たとえその犠牲者が目の前の善良そうな彼であったとしても関係ない 桃源郷を手に入れるためならば私は心を鬼にしよう

この世は弱肉強食だ 手段など選んでいられない 



全ては私たちの世界の実現のために…!

風紀「お前!しっかりしろ!!」ユサユサ!


私の目の前で男くんが崩れ落ちていた どうやら意識を失ってしまったらしい 他人の不幸は蜜の味という言葉があるけどまさにこのことだ

この足で教室へ駆け込めば彼は犯罪者予備軍として扱われ、周りからの信頼は一気に失われるだろう 



もちろんその中には幼も含まれている

実行するなら今しかないだろう

女「あの…もう用事は終わったんですよね?」

風紀「な?」

女「私はこれからやることがあるので…失礼します」クルッ

風紀「ま…待てッ!!」

彼女の制止の声を背中に残し、私は教室へと向かった

私は出来るだけ大袈裟な動作で教室のドアを開け放った

女「う…えぐっ…」ヒクヒク

クラスのみんなは一瞬何が起こったのか理解が追いついていない様子だった

そんな中でいち早く冷静に対応してみせたのは女友さんだった 

女友「はい!男子は出てった、出てった!」

しっかり者の彼女らしいテキパキとした手際のいい対応でクラスの男子を次々と捌いていった

そして教室から男子が消えたのを見計らい女友さんがゆっくりと近づいてきた

女友「それで一体何があったの?聞かせて?」サスサス

背中を優しく擦ってくれる そろそろ始めることにしよう

女「え、えっと…」グス

聞き逃さないように、そしてみんなの耳に浸透させるようにゆっくりと言葉を結んでいく

女「ついさっき…中庭でお昼をとっていたら…」

幼「……」 隣女「……」 女友「……」 地味女「……」 ギャル女「……」 モブ女「……」

そこで十分に間を置く

女「男くんに…」

幼「え…!」ビクッ 隣女「……ッ」ピクッ

クラスの何名かはその名前を聞いて動揺した様子を見せていた 

普段は優しそうな雰囲気の彼が女子に乱暴な行為を行っていたと知った彼女たちはどんな表情を浮かべるのだろう?

想像しようとすると思わず笑みがこぼれそうになる

だがここで失態をおかしては全てが水の泡だ 込み上げてくる笑いを抑え込んで私は続きを再開した

女「お…男くんに…おか…犯されそうに…なって」ガクガク



幼「いやあああああああッ…!!」ガタン!



女友「幼!?」

勝った…!! 幼が教室から駆け出して行くのを見送ったあと、私は勝利を確信した

地味子「そ…それって…ほんとなの?」

モブ女「表面は優しそうな顔しといて、中身はムッツリスケベだったなんてね!人間としてどうかしてるわよ!」

ギャル女「きんもーっ!マジやばくね?超ありえなくね?流石に引くわー」

女友「そんなことを平気でするような人だったなんてね!幼の幼馴染として問題なんじゃないの?それは!」


クラスメイトの男に対する信用はすっかり地に堕ちた

あとは放っておいてもどうにかなるだろう うまく行けば男くんを不登校にまで持ち込めるかもしれない

幼を籠絡することが出来れば私たちの世界が遂に完成を迎えることになる 

まあ、今の状態の幼を堕とすのは私の手にかかれば容易に済むことだろう

だから今しばらくはこの勝利の余韻に酔いしれることにしよう




隣女「……」


女「私たちの世界」 後編 終わり

どうも番外編はこれにて終了です
次は4話を投下していきたいと思います

とりあえずお付き合いくださりありがとうございました!
ではでは

こんにちは!
書き溜めが少ないので途中までですが、第4話を投下していきたいと思います
よろしくお願いします!



                     第4話

妹「にぃにぃ、あさだよ!」ユサユサ

布団が遠慮がちに揺すられている 幼にしては珍しくしおらしい起こし方だな…

妹「おきないとちこくするよ!」ユサユサ



違う、俺を起こしてくれたのは妹だ ということは今日はあいつ来てないんだな…

男「ああ、そっか…」

もうこのさき幼に世話を焼いてもらうことなんてないんだな…

薄々こうなるだろうって本当はわかっていたはずなのに俺は認めようとしなかった 


体が、心がごく当たり前のように幼を求めていた


でもそんな悪あがきをすればするほど、俺は自分がちっぽけな存在になっていくような気がして虚しくなるだけだった

朝食はいつも基本は俺が作って時々幼が作りに来るといった様子だったが、今日の俺には朝食を作る気力すらなかった

そんな俺の様子を慮ったのか どうやら今日は妹がトーストを焼いてくれたらしい



妹「…うまくできたかな?」チラチラ

妹が不安そうに俺の顔色を窺ってくる

男「馬鹿、そんなに心配そうな顔するなよ 妹が一生懸命に作ってくれたんだ 何でも嬉しいに決まってるだろ?」

妹「う、うん」コクリ

恐らくトーストを焼くのは初めてのことだったのだろう ところどころが黒く焦げているのがわかる

男「もぐ…」

俺はトーストにがぶりついた

妹「ど…どうかな…?」ドキドキ

男「ぷっ…!」



期待と不安の入り混じった表情を浮かべている そんな健気な妹が愛おしくて思わず笑みがこぼれそうになった

男「おいしいよ、ありがとうな?妹」ナデナデ

嬉しさのあまり、俺は妹の頭を撫でまわしていた

妹「えへー」パアー



笑顔の花が咲く 妹の焼いてくれたトーストはちょっと苦かったけど、今まで食べたトーストの中では1番の価値があったと思う

妹のおかげで俺も少しだけ…いつもの余裕を取り戻せたような気がした

めっちゃ短いですが、すいません
とりあえずはここまでです
ちょっくら書き溜めてきます!

区切りのいいところで書き溜めが終わったので再開します!

いつもの通学路に向かう途中、幼の姿を見つけた 目を離すとそのままどこかへ消えてしまいそうな予感がしたので、俺は思わず呼び止めてしまっていた


男「幼…」

幼「……ッ!」ビクッ

幼は俺の言葉に体をビクつかせた 幼の顔は俺に対する恐怖心が張り付いていた… そんな幼の表情を見たのはこれが初めてのことだった

男「お…おい!」

幼「男…ごめんね…!」タッ


幼は小さな声でそう呟くと俺の前から走り去って行った

男「あ…れ」

あいつ…泣いていた…?

あんな表情の幼を見ているのは正直辛かった いつものように格闘技を仕掛けてきたり、憎まれ口を叩いてくる方がよっぽどあいつらしいのに…

俺もそんなあいつのことが好き…だったのに



あいつにはいつまでも笑っていて欲しかったんだ そして、その隣で俺も一緒に笑っていたかったんだ

男「あ…れ…」ジワ

顔に触れてみると湿り気があることに気付いた 



思っていたよりもずっと痛くて苦しかったんだな… 心と体はいつだって正直だった

俺が教室に入ると、さっきまでざわついていたクラスの温度が急激に下がったような気がした 俺はそれを痛い程肌に感じていた

いつもは休み時間のギリギリまで俺の席の周りでたむろしている連中も今日に限ってはみんな余所へ行っている


軽 蔑  嫌 悪  好 奇  怯 え 


そんな視線の刃が俺の心を容赦なく抉ってくる 俺がここにいるのが場違いだ、そう訴えかけているように

まるで動物園の檻の中のライオンになったような気分だった 俺の心は見る見るうちに擦り減っていった…

だが、隣女だけはいつもと変わらず俺の傍にいてくれた


隣女「想像していたよりもひどいな…この状況は」

隣女が話しかけてくる

男「隣女」

隣女「ん…どうした男くん?」



男「もう、俺に関わるのは止めろ…!」

隣女「……」

男「お前まで巻き込みたくないんだ…だって、大事な友達だと思ってるから」

こんな風に傷つくのは俺だけでいい 関係のない隣女まで巻き込む必要はない



隣女「……」ツネッ

男「ひぎっ…!」

隣女は無言で俺の脇腹をつねってきた

隣女「あんまり自惚れてくれるなよ…?私を誰だと思っている」

男「は?」

隣女「私は自分の身の守り方ぐらいはちゃんと心得ているつもりだ きみに心配されるいわれはない」フン

隣女は腕組みをしながらその鋭い眼光で俺を見つめてくる 相変わらず人を圧倒する勢いの迫力がある

隣女「友人として今のきみを放っておくわけにはいかないのだよ それにな…」



隣女「私は逃げ道を知っているからな それさえ分かっていれば、いつだって冷静に自分を保つことが出来る」

男「逃げ道…?」

隣女にも俺が知らないだけで彼女なりに何か悩み事を抱えているのだろうか…?いつも飄々としているイメージがあるからちょっと想像し辛い

隣女「まあ、これも何かの縁だ 特別にきみに紹介してやろう」

男「…は?」

隣女「今日の放課後は空けておきたまえよ?」ツネリ

男「いてっ…!」


もう一度俺の脇腹をつねったあと、彼女は前に向き直った その直後、黒髭が教室に入ってきた 相変わらず入ってくるタイミングが良すぎだろ…

まあ、黒髭のことはどうでもいいとして…隣女はどうして俺にそんな大切なことを教えてくれるのだろうか?

同情?それとも少しは信頼されているのか…?  後者だったら純粋に嬉しいと思う

男「……」

気を取り直して俺も午前の授業に集中することにした

書き溜め終了したんで一旦戻ります

ではでは

たまって来たんで投下します

午前の授業が終わって昼休みが訪れた なんとなく教室には居づらかったので今日は中庭で昼飯を済ませることに決めた

中庭に向かうと知っている顔を見かけたので声をかけてみることにする


男「おはようございます、先輩」

風紀「おはようじゃなくてこんにちはだろ?今は何時だと思ってる」モグモグ

風紀先輩だった 黒髪ポニーテールの彼女は中庭のベンチに座ってハムスターみたいにおにぎりを咀嚼している真っ最中だった

ちょっとかわいいかもしれない ベンチに座る時でも腰に竹刀を装備しているあたり相変わらずといったところだ

邪魔じゃないのだろうか…?でも突っ込むのは野暮のような気がしたので黙殺することにした


男「隣…いいですか?」

風紀「ん?構わないぞ」スッ

腰を動かしてスペースを空けてくれる

風紀「…それにしても」チラ

先輩は俺を不思議そうに見ている

男「はい?」



風紀「お前…昼飯は持って来てないのか?」

男「あ…!!」

なんということだろうか…今日は朝飯を作っていなかったから弁当に残り物をストック出来ていない そのことをすっかり失念してしまっていたのだった

男「色々あって…忘れちゃいました」

この時間まで気付いていなかったなんて間抜けすぎる 購買に行ってもどうせうぐいすパンしか残ってないだろうし… どうしようか…?



風紀「…仕方がないな」ハアー

男「え?」

風紀「ほら…食わせてやるからこっちを向け」

そう言って弁当箱を俺も前に持ってくる 先輩の意外な申し出に俺は呆気にとられてしまった

男「あ、え、えっと…じゃあ、割り箸とってきます」

そんな俺を先輩は片方の手で摑まえる

風紀「いらん いちいち手間だろう?私が食わせてやる」



男(ま、マジかよ…!)

確かに嬉しい!けど、こんな公衆の面前で恥ずかしくないのか?風紀委員長である彼女の行動としてはいささか問題があるように思える

男「いいですって!は…恥ずかしいですから!」

風紀「? 何を言ってる?やましいことは何もしていないだろ」キョトン

この人もしかして真性の天然か…?天然の人なのか…!?



風紀「ええい、みっともない!男ならシャキッとしろ!シャキッと!」クワッ

男「はい!」ビシッ

遂に俺は観念することにした 弁当の味なんて分かったもんじゃなかった

それからはあっという間に放課後になり、俺は隣女に付き合うことになった



隣女「ちょっと歩くことになるが…構わないかね?」

隣女にしては珍しく遠慮がちに尋ねてくる

男「構わないさ」

ちょっとぐらいは我慢しよう 俺だって腐っても男としてこの世に生を受けたんだ 簡単に弱音を吐くわけにはいかない

男「ぜえ…ぜぇ」ポタポタ


俺の汗が地面に滴り落ちている 正直侮っていた 実際はこんなに道が険しいとは…

隣女「辛そうだね 男くん、そろそろ休憩するかい?」クルッ

そんな俺とは対照的に隣女は涼しい顔をしていた 密かに筋トレとかに励んでいたりするのだろうか?

男「なんのこれしき…!」ゼエハア

隣女「そ、そうか?」

俺たちは学校の裏にある山の獣道を延々と歩き続けていた

空は茜色に染まりもうすぐで陽が落ちそうだった



隣女「どうやら間に合ったようだな…」フー

隣女「着いたぞ」ストン

隣女が地面に腰を下ろす 俺もそれに続いた

男「この場所は…?」

隣女「ここから眺める夕陽は絶景なんだ…」

感慨深そうに隣女は呟いた



隣女「悩み事を抱えた時はいつもこの場所で気持ちを落ち着けることにしているんだ…」キュッ

男「!?」

隣女は俺の手にそっと指を絡める ひんやりとした感触が手のひらに気持ちいい

隣女「きみが初めてなのだからな…?感謝したまえよ?」チラ

男「へ…あう」ドキ

俺は緊張していたせいか間抜けな返事しか出てこなかった


隣女「きみも困ったらいつでもここを逃げ場所に利用してくれて構わないよ」

男「まあ、気が向いたらな」

それまでには頑張って体力をつけておかないとな?


隣女「あ…あと」

男「え?」

隣女「もし幼くんのことで辛くなったら…わ、私に頼ってくれても構わないんだぞ…?」モジ

男「…え?」



隣女「か、勘違いしないでくれよ!あくまで友人として助言をしただけだからな!」ギュー!

そう言って繋いでいる手を思いっきり握ってくる はっきり言ってちょっと痛いぐらいだ

男「は、はあ…」


というかそんな必死になって否定しなくてもいいのに…ちょっと傷ついたぞ…

それからは暗くなるまで俺たちは2人してこんな感じで同じ夕陽を眺めていた

俺たちの間に言葉は無かったけど、不思議と気まずさとかそういうものは一切存在していなくて

むしろ心地よい雰囲気だけが広がっていた



隣女「ずっとだれかと一緒にこんな風に夕陽を眺めていたかったのかもしれないな…私は」ボソ

男「え?」

隣女「なんでもないよ」フフ

隣女は勢いよく立ち上がった 俺もつられて引っ張り上げられる

隣女「さて…そろそろ帰ろうか?」グイ

男「うわっ!」トトト


帰り道でも俺たちの手は繋がっていたままだった



第4話 終わり

今日の投下は以上です
お付き合いくださった方ありがとうございました!

ではでは

今日の投下は以上です
お付き合いくださった方ありがとうございました!

ではでは

おはようございます!
短いですけど、ほんのちょっとだけ第5話投下します
よかったらお付き合いください

うう、体が重い…

男「……」シュッ

音の鳴った体温計を引き抜くと数字のメモリが38.5℃を示していた

男「しくじったなぁ…」ハアー…



どうやらこの調子じゃ今日の学校は休むことになりそうだ…

昨日の俺はパンツ一丁で眠ってしまった挙句、寝ぼけて布団をベットから落っことしてしまっていた… 

そりゃ風邪ひいて当然だよな…?

でも、これも考えようによってはいい機会なのかもしれない 最近の俺は色々とトラブル続きでろくに休みもとれていなかった

人間、たまには腰を落ち着けて自分をゆっくりと見つめなおす時間も必要だ プラス思考は人生を豊かにするよな?

「にぃにぃ、入るよ」コンコン


妹がドアをノックする音が聞こえる


男「どうぞ…」


妹「にぃにぃ、たいちょうだいじょうぶ?」ガチャ

妹が不安でいっぱいになった表情で俺を見つめてきた

男「まあ、今日1日休めば明日からは登校できそうだな」

妹「よかったぁ…」ホッ


そんな俺の言葉を耳にして、妹が胸を撫で下ろしていた

妹「なにかたべたいものある?」

男「今は…特に無いかな」

妹「えっと、じゃあ…よーぐると、かっておくね!」

男「ありがとな…?」

妹「ううん…それじゃいってきます!」ガチャッ

男「おう…」


男「……」ジーン


妹の優しさが病身に沁みた 我ながらよく出来た妹を持ったものだなぁ…

先生「お前らさっさと席に着けよー!出席をとるからなー!」ガラッ

幼「……」ハア…

隣女「……」フー…


幼・隣女(今日は男がいない…)


先生「男は…体調不良で欠席、と」


幼(体調…)


隣女(…不良だと?)


幼・隣女「……!」ゴクリ…!

女「幼…?なんだかボーっとしてるけど、どうかしたの…?」

幼「なななななんでもないかりゃぁ…ッ!!」アタフタ!!

女「そ、そう…?」


先生「おい!…おい!隣女、さっきから呼ばれているのが聞こえないのか?さっさと返事しろ!」

隣女「ふ…ふぁい!!」ビクン!!




男「…っはくしゅッ!!」ブルッ!!

一瞬、凄まじい寒気がしたのは果たして熱によるものだったのだろうか…?



                    第5話

男「…んー!」グッ

ひと眠りしたあとの俺は妙にすっきりしていた


男「……」グー!

腹の虫がけたたましい音を立てる 

何か物を入れたくなったから冷蔵庫でも漁ってくることにするか?

男「おっ…?」

妹「ただいま、にぃにぃ!」ガチャッ!

もうすでに妹が帰って来ていた

妹「よーぐると、れいごうこにいれておいたからね」

男「ありがとな?」ナデナデ

感謝の意を表して妹の頭を撫でてやることにする

妹「えへー!」パアー

なんだか犬みたい…だな?

すいません、今回もめちゃんこ短いですね
書き溜めてきます!

男「……」モグモグ

俺はヨーグルトを食べながら、前から撮り溜めしておいたシリーズもののドラマを消化していた

ジャンルは王道サスペンスものと言ったところだ



ピーンポーン…!

「はーい!!」パタパタ

チャイムの鳴る音が聞こえてきた 妹の友達でも来たのだろうか?

隣女「や」ガチャッ

男「!?」

それは俺にとっては予想外の来客だった っていうかそもそも隣女って俺の家の場所知ってたっけ?


隣女「ふふ、きみはどうして鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしているのだね?私が来たことがそんなに意外だったかな?」

男「家の場所をお前に教えたっけ?」


隣女「そ、それは…」モジ

男「ん?」

隣女にしては珍しく、落ち着きなく視線をキョロキョロと移動させている 最近はなんか挙動不審な動作が増えたよなぁ…隣女 具合でも悪いのだろうか?


隣女「あ、そうそう!!うちの担任に尋ねたんだよ!友人のピンチに駆けつけないというのであれば人間としては失格だろう?」

男「そ、そうか…?」

高速でまくしたてられたのでちょっと言い返しづらい… なんか無理やり言いくるめられたような気がしないでもない まあ、気にするだけ無駄か?

隣女「…ほう?」

気が付けば隣女の視線がテレビの中へと移動していた

男「気になるのか?」

隣女「わたしもこのドラマは毎週チェックしていてね、数ある中でもお気に入りなんだ」

男「へえ」

俺たちは意外なところで意気投合していた …いや、そこまで意外でもないか 

隣女はこういう渋めのジャンルが好きそうなイメージは確かにある ラブコメよりかはこっちの方がよっぽど似合っているだろう

男「じゃあさ…」

俺が内容について質問をしようとしたところで、いきなり画面が別のものに切り替わった

隣女「これは…?」


…AV?

一体、どこの馬鹿がこんなものを重ね撮りしたのだろうか? 

だがそんなことを気にするよりも、俺の五感がこれから起こるであろう事態を感じ取って警鐘を鳴らしていた 嫌な予感がしたので隣女の顔をのぞき見ると…

隣女「……ほう?」ピクピク


隣女は張り付いたような冷笑を浮かべていた 彼女の怒りのボルテージは頂点に達し、そして一気に爆発した



隣女「昼間っから随分ともてあましているようだね?きみは  

   それともあれかな?これっていわゆる世間ではセクシャルハラスメントと呼ばれている行為そのものなのかな?

   こういうやり方で女性をあれよあれよとクルクル回して誑し込んでしまおうという魂胆なのかな?

   あ、もしくは私が来ることを最初から想定した上でこのような策を仕組んでいたわけか…

   なるほど、きみにしては面白い考えだな  お情けをかけて一定の評価はつけてあげよう、感謝したまえ  

   だが、甘いぞ?

   私を堕とすつもりならもっと真正面からぶつかってゆくような気概でないと響かないからな?

   だが、それだけではいけない もっとこういう風に全てを優しく包み込みこんでくれるような度量も



正直、耳栓が欲しくなった…

隣女「それじゃあ、私はそろそろ失礼することにするよ」


夕方になったあたりで隣女は帰って行った お見舞いの品として果物やら何やらいっぱい持ってきてくれたのは素直に嬉しかった

ただ、とてもじゃないが1日で食べきれるような量じゃなかった…


中途半端に閉めかかっているドアの隙間から誰かの視線を感じる 恐らく妹だろう 彼女は遠慮しがちな性格だからな…たまには俺から気を遣ってやるとするか

男「おーい、ドアの前で突っ立って何やってるんだ?どうせなら入ってこいよ?」ガチャッ


俺は妹を中に招き入れようと試みた、のだが…

幼「きゃっ!」ビクゥ

何故かそこには幼がいた 本日の予想外の人物2人目だった


男「幼…?」

幼「お…男?」


久しぶりに会話した幼は以前の怯えたような表情では無かったが、どこかぎこちなさが見え隠れしていた

男「ま、とりあえず中に入れよ」

とりあえず部屋の中にいれることにした 

幼「う、うん」

幼の考えていることは相変わらず俺にはよく理解出来ない 俺はあの騒動ですっかり愛想を尽かされたものだとばかり思っていたのだったが…

実際はどうやら違っていたらしい

男「……」

幼「……」モジモジ


部屋の中での俺たちはお互いに話のきっかけを掴み損ねていた このままでは俺たちは永遠に先へ進むことはできないだろう… 

だから…


男「俺は…」



男「今回の一件でお前に嫌われたんじゃないか?だから離れて行ったんだ…ってずっとそう思ってたんだ」

俺は自分の想いを直接幼にぶつけることにした

幼「馬鹿…!!」


幼「私が…男のことを嫌いになんて…絶対になるはず…ない、よ?」ポロ


男「幼…!」


俺の胸板に幼のおでこが押し当てられていた 心地のいい重みだった

幼「わ、わたしね…?おとこがあんなこと…するはずないってわかってたのにぃ…!わかって…たはず…なのにぃ…!!」グス


幼「こわ…こわかった…の…!ど、どうすれば…いいのか…わからなかったのぉ…!!」ポロポロ


幼「ご、ごめ…んなさい…!ごめん…なさぃ…!!」ヒク


男「…わかってる」

確かに俺は相当に深く傷ついた 下手をすれば人間不信に陥って一生もののトラウマを抱えることになっていたのかもしれない…

でも…


男「幼は俺のところに…戻ってきてくれたんだよな?」 


過去のことは今はどうでもよかった ただ…幼が俺の場所に留まることを選んでくれた

それだけが嬉しかった…

幼「おと…こぉ…」グスッ


男「信じてくれて…ありがとな?」ギュッ


幼「うああああああああああ!!」


いいんだよ お前は悪くないんだ


男「おかえり…幼」

幼「ただいま…男」


1度止まったかのように思えた俺たちの歯車はもう1度回り始めた


この繋がった糸をどんなことがあっても今度は決して手離さない…!

目の前の幼の笑顔に、俺は約束した…




第5話   終わり

第5話の投下を終わります
お付き合い「くださった方ありがとうございました!
ではでは

乙っす
>>206の【「】が非常に気になるっす!

>>208
どう見ても誤字です。
本当にありがとうございました。

こんばんは!
短いですが投下します

「男ー!さっさと起きなさい!」グイグイ

男「う…ん…」

誰かが…俺の上に馬乗りになっている


「いつまでも、お…起きない男が悪いんだからね?べ…別に、わ…わたしが好きでやってるんじゃないんだからね?」ドキドキ

男「幼…?」

俺の目の前には幼の顔があった 唇をこちらに突き出して今にも触れようとしていたところだった 幼の甘い匂いが俺の鼻孔をくすぐった

幼「ひ…!ひゃいっ…!!」バッ!!

幼は俺の上から勢いよく飛び引いた


幼「ば…ばかぁ!お、起きてるなら早く言いなさいよねっ…!ほんと、男のばかばかばかばかばかばかばかッ!!」ポカポカ!


俺には何の落ち度もないはずなのに、朝一番でいきなり罵倒された そして胸をグーパンチでぽかぽかと殴られる 相変わらずそれなりの威力はある



男「お、お前…何やってんだ?」

今日の幼の行動はいつにもまして脈絡がなかったので、俺は置いてけぼりを喰らうことになり呆然と立ち尽くしていた

幼「か、勘違いしないでよねっ!?」ビシッ!

そういって俺に人差し指を突き付ける


男「は?」


幼「これは幼馴染として当然の義務を果たしてあげただけなんだからね!感謝しなさい!?

  あ…あと、別に男のことが…す…すきとか…全然そういうわけじゃないんだからね!!でも、嫌いってわけでもないんだからねっ!

  男は本当に世話が焼けるんだからっ!も、もぅ…しょうがないから、これからもわたしが責任とってちゃんと面倒みてあげるんだからねッ!?」カアー!


男「…は?」

幼の言ってることは相変わらず俺には理解できなかった…



それは俺にとって久しぶりに賑やかな朝だった



                  最終話

今日の朝飯は幼が既に作ってくれていた 相変わらずこいつの作る飯は旨い 

結婚したらきっと家庭的な奥さんになるんだろうな…と俺は柄にも無いことを考えていた


幼「……」ジー

男「……ッ!」ビクッ

なんか凄い勢いで幼がこっちを見ている ちょっと食いづらいぞ…?

男「…あー」

そういえばそんなこともあったな

俺がいつだったか弁当を忘れてしまった時に風紀先輩に弁当を分けてもらっていたことがあった

思えばあれは相当に恥ずかしかったな…



幼「あの女の人にはしてもらって、わたしの時になったら断るんだ…」プー

そう言って頬っぺたを膨らませている 拗ねた時の幼の扱いはちょっと面倒くさいからなぁ… 

男「…ったくしょうがねえなぁ」ハアー

しょうがない…たまには素直に言うことを聞いてやるとするか?

男「一口だけだぞ?」

幼「うん!」パアー

そんな俺の言葉を耳にして、幼は満面の笑みを浮かべた


男「うっ…!」ドキ

不覚にもちょっとかわいいと思ってしまった… 

実際に口に出すと多分馬鹿にされると思うから言わないけど…

幼「は…はい!」ドキドキ

男「……」ゴクリ


俺たちはお互いに緊張していた


幼「あ…あーん」ドキドキ

そして、幼の箸が俺の口元に近づいてくる 


そんな時だった…

妹「にぃにぃ、おはよー!」ガチャッ

今日は珍しく妹が遅めの時間に起き出していた

幼「きゃあっ!」ビクン

突然のアクシデントに幼は狼狽していた その反動で手元が狂ってしまい、俺の喉元に箸が突き刺さった


男「~~~~~~~~っ!!」ビクンビクン

妹「にぃにぃ、どーしたの?」キョトン

男「な、なんでもないよ…?」プルプル

妹「そう?」

幼「……」チラリ

幼が申し訳なさそうな視線をこっちに送ってきた その時の俺は涙目だったに違いない

今日はいつもの時間より早めに家を出ていたので、俺たちはゆっくりと登校することが出来た


男「たまにはゆっくり登校するってのもいいもんだな?」

幼「今日みたいに早く登校出来るのも、わ…わたしが朝男を起こしてあげたおかげなんだからね?感謝しなさい?」モジ

こいつも相変わらずだなぁ…

男「はいはい」

幼「ふ、ふんっ!」プイッ

…ったく素直じゃないなあ

俺たちが曲がり角を曲がろうとしたとき誰かと正面衝突してしまった

男「だ、大丈夫ですか?すいません…!」

俺は咄嗟に謝って相手の顔を見ようとした 


それは…


隣女「やあ、おはよう こんな出逢い方をするなんてもはや運命としか思えないな?」モグ

トーストを口にくわえた隣女だった


男「いやいやいやいや」

流石にそのシチュエーションはベタすぎるだろ…

男「いやいやいやいや」

流石にそのシチュエーションはベタすぎるだろ…


男「こんなところで一体何やってんだよ?」ハアー

隣女「ふふ、さっきの場所できみが来るまで朝からスタンバイしていたに決まっているだろう?」ニヤ


その努力は認めよう だが、向ける方向を色々と間違っているぞ…?


男「はああああ…」ゲンナリ


変な奴だとは前々から少し思っていたが、まさかここまで突き抜けていたとは思っていなかった

ある意味尊敬に値する

幼「……」ツネリ

男「いてっ!」

いきなり幼が俺の脇腹をつねってきた 何を不貞腐れてるんだか…


隣女「さ、早く学校に行こうではないか あんまり話し込んでると遅刻してしまうぞ?」キュ

男「!?」ビク

そう言って隣女が指を絡めてきた

幼「……」ギュー

幼も隣女に触発されたのか、もう片方の手を無言で握ってきた

隣女「ほう…?」ゴゴゴゴ


幼「……」バチバチバチ


2人の間には火花が散っていた まさに冷戦状態といった様子で俺の周りは緊迫した空気に包まれていた



男「……」ゴクリ

そんな2人の間に挟まれた俺は口を挟むタイミングが見つからないので無言を決め込むにした

結局この状況は俺たちが教室に入るまで続いた…

ミスったお…orz

>>216>>217の間に↓の文章を入れてください!

幼「あの、さ」モジ

男「な、なんだよ?」



幼「ご飯、食べさせて…あげよっか…?」ドキドキ

男「い…いや、いいから…」ドキ

相変わらず幼は俺の不意をついてくるような発言をしてくる


幼「わたし、見たんだからね…?男が中庭で女の人にお弁当食べさせてもらってるの」チラ

そして午前の授業が終わり昼休みになった

そろそろ飯でも食いに行くとするか?俺は教室を抜け出そうとしたが…


幼「おーとーこ!ご飯食べよ?」ギュッ!


俺は幼に腕をがっちりとホールドされていた

そんな幼の身の代わりように周りの連中は戸惑いの色を隠せずにいるようだった

それはそうだ だって俺たちは昨日になるまでまともに会話を交わしていなかったのだから…

俺と目が合うと彼らは気まずそうに視線を逸らした

女友「男くん…幼と仲直りしたの?」

そんな俺たちの様子を女友さんが不思議そうに眺めていた


男「まあな…色々あったんだよ」

女友「ふーん、なるほど…ねえ?」ニヤニヤ

女友さんは俺の言葉に意味ありげに相槌を打っている おいおい、なんか誤解されてないか…?


女友「お幸せにね!お二人さんっ♪」ポン!

彼女は俺の肩を叩いて走り去って行った 軽く鼻歌を口ずさみながら…

男「なんだったんだ…一体?」

そう呟いたあと、俺は幼の方に顔を向けると…


幼「~~~~~!!」カアー!

まるでトマトのように顔を紅潮させていた


男「幼…?」

幼「な…なんでもないかりゃ!」ビクン


なに必死になって慌ててんだか そんなんじゃ、俺まで恥ずかしくなってくるじゃねえか…

そして、昼休みが終わりあっという間に放課後になった


隣女「さて、帰ろうか?」キュ


今度は隣女が俺の腕を捕まえてきた 教室の中は流石に気まずいぞ…?

クラスの男子連中の鋭い視線を感じた 俺は気にしないことにした


幼「……」ゴゴゴゴゴ

後ろから幼の殺気を感じる 気のせいだと思いたい…


女友「……」ニヤニヤ

そんな俺たちの様子を女友さんは楽しそうに見届けていた…

隣女「どうした、男くん?さっきから落ち着きがないぞ」チラ

男「え?あー何でもないんだ 気にしないでくれ」


幼「……」ジー

幼が電柱の影から俺たちの様子を恨めしそうに見つめていた 


男「……」チラッ

幼「……ッ!」ピャッ!

俺と目が合うと電柱の後ろに隠れた


男「……」クルッ

俺が前に向き直ると…

幼「……」ジー

また観察を始めたのだった


まったく何やってんだか…

風呂から上がったあとの俺は今までの日々を思い返していた



女さんとの出会い

友情

そして決別…


幼との騒がしい毎日

すれ違い

そして再開…

隣女との出会い

友情

そして2人で共に見た夕陽…


風紀先輩との出会い

真面目な性格

そして優しい一面…


妹との愛に満ちた毎日

ちょっと焦げてたトースト

そして健気さ…



彼女たちには、みんなそれぞれに魅力があった

その中でも…たった1人だけ強く心惹かれた人がいた


それは…

はい!
最終話という名の共通シーンの終了です

ここからは各ヒロインたちの個別シナリオに入っていきたいと思います
まずは妹ルートからです

どうぞ!

男「妹…」ポツリ


男「ん?」


ん?


男「いやいやいやいや」


ちょっと待てよ、俺は今しがた妙なことを口走らなかったか…?

確かに俺は妹のことが大好きだが、それは恋愛感情じゃない

あくまで兄妹としての話だ

男「はあ、くだらねえ…寝よ寝よ」

きっと深夜だからテンションがおかしなことになってしまっているんだろう 

こういう時はさっさと眠てしまうのに超したことはない



男「さて、さっさと寝るとするか?」 

そうやって俺が布団に包まろうとした、その時だった…

「にぃにぃ、起きてる?」コンコン


妹が遠慮がちにドアをノックする音が聞こえてきた

男「どうした?」ガチャ

俺は妹を部屋に入れてやる


妹「きょうもひとりでねるのがさびしくて…」

男「また…なのか 最近、多いな?」

妹「うん…だめ?」チラ

妹が上目遣いにこっちを見つめてくる そんな目で見つめられたら断ることなんて出来ねえじゃねえか

…ったくしょうがねえな?


男「どうぞ、甘えん坊のお嬢さん?」ニヤ

素直に認めてやるのも面白くないので、ちょっとからかってやることにする


妹「もう…にぃにぃのいじわる!」プー

妹は俺の期待通りの反応を返してくれた ハコフグのようにほっぺたを膨らませている


妹「えいっ…!」ピョン!

そして、いきなり俺の上に飛びかかってきた


男「…おわっ!いきなり何するんだ!危ないだろ!」

妹「あっかんべー!」ベー

こいつは…ガキか?いや、見た目の通りガキなんだけれども…

いい加減に馬鹿正直に相手してやるのも疲れてきたので、俺はそろそろ電気を消すことにした



男「電気消すぞー」パチッ

妹「えー!」

男「○学生がこんな時間まで起きてるのは普通はいけないことなんです!」

妹「ケチー!」

男「あんまりわがままばっか言ってるとつまみだすぞ…?」ジロ

妹「わ、わかったよぅ…」シュン

いつもはどちらかと言えば遠慮をしてばっかりの性質の妹なのだが

こんな風に俺と2人っきりになったら年相応にわがままを言ってくる

そんなところがまた可愛かったりする


妹「えへー!」ギュー!

男「……」

この笑顔をこれからもずっと傍で見守っていきたい

俺は兄心にそう思った

その日の夜、隣から聞こえる嗚咽音で俺は目覚めた


妹「う…え…」ヒクヒク

妹が苦しそうな表情で涙を流していた

もしかしたら悪い夢でも見ているのだろうか?


男「怖くないからな…」ギュッ

母親の代わりにはなってやれないけど、にぃにぃがここにいてやるからな…

どうか妹の涙が止まりますように…


妹「ん…」スースー

抱きしめてからしばらく経ったのち、落ち着きを取り戻したのだろう

妹が規則的な寝息を立てていた

妹「にぃにぃ!おきてよ!」ユサユサ

男「ん…いも…うと?」

目を開けると俺は妹に体を揺すられていた

昨日の夜泣いていたのはまるで幻想だったのかと思うくらいに普段と変わらない表情を浮かべていた



妹「はやくおきないと、ちこくするよ?」

男「あ、ああ」

俺はそんな妹に感じた違和感を無理やり心の中に押し込めた

とりあえず今は学校に行くことに集中しないとな?

男「ただいま!」ガチャッ


その日の学校も終わり、俺は家に帰宅した


妹「にぃにぃ、おかえり!」トットット

妹が小走りで俺の元に向かってきた 相変わらず犬みたいな奴だなぁ…

俺の中にちょっとした好奇心が湧いて出てきた

男「……」グニー

興味本位で俺は妹の頬っぺたを引っ張ってやった


妹「ひひゃい!ひひゃいよ!ひゃめへよ~!」ジタバタ 訳(いたい!いたいよ!やめてよ~!)

妹は涙目になりながら抵抗してくる



男「これは…」ゴクリ

面白い! でも、そろそろ本格的に泣き出しそうだったので離してやることにした

妹「う~~~~…!」ジー

男「な、なんだよ?」ビク


妹がいじけたような目で睨んできた

そんな目で見つめてきても…お、俺は簡単に屈したりはしないぞ…?



妹「う~~~~~~~!!」ジー!!

男「わ、悪かったって…今度妹の好きなもの買ってやるから、な?」


俺はあっさりと白旗をあげた

男「さて、そろそろ寝るか?」パチッ

風呂から出たあと、部屋に戻った俺は電気を消して布団の中に潜った 

今日は久しぶりに早めの時間に寝ることにする



男「ぐがーー…」スピー

そしてすぐに深い夢の底に落ちて行った

妹「うぐっ!えぐっ!」ヒクヒク

男「なくなよ」


いもうとのなきがおを みているのは とてもつらかった…

どうしたら なきやんでくれるのかな?

おれはバカなあたまで いっしょうけんめいにかんがえた


男「そうだ」

男「こうえんにあそびにいこう!」グイッ

妹「え…?にぃにぃ?」グス

男「いいからこいよ?」グイグイ

妹「うわっ…」トトト


たのしいきもちになれば かなしくなくなるかもしれない

おれはそうかんがえた

男「そーれ!」グイ!

妹「あはははは!!」ギーコギーコ


こうえんのぶらんこのうえにいもうとをのっけて おれはちからいっぱいゆらした

いもうとはたのしそうにわらっていた


妹「あははははっ!!」パアー


えがおのいもうとをみてると おれもたのしいきもちになっていった

ぶらんこでひとしきりあそんだあと おれはいもうとにいった


男「いもうと」

男「かなしいことやこわいことがあったら ここにこい」


妹「え?」


男「おれがすぐにたすけにいってやるからな?」


妹「にぃにぃ…」


男「やくそく…だからな?」


妹「うん!」

「ゆーびきーりげんまん!」



「うそつたらはりせんぼんのーます!」



「ゆーびきった!!」

男「ん…」パチ

あれは…昔の夢?



男「そういえば…そんなこともあったよな?」

懐かしい想い出だった… いつだって俺の隣には妹がいた

甘えん坊で泣き虫で…時々わがままな妹がいた

男「いつもありがとな…?」ボソ


妹のことを考えると俺はだんだんと温かい気持ちになっていくのが分かった

俺たちは今日まで共に支え合って生きてきた


辛いことや悲しいこと そして楽しいこと

2人で一緒に乗り越えて今日まで生きてきた…


きっとこれからもその関係は変わらずに続いていくのだろう

目の前には笑顔の妹がいる


男「おは…ようっ!!」グリグリ

俺は嬉しさのあまり思わず頭をかき回していた


妹「もぅ…にぃにぃのいじわるっ!!」ウー…

男「…ばーか」ニヤ


俺は妹に愛らしさを感じていた

俺の注いでいる愛情は一般的な兄妹の範疇を凌駕しているのかもしれない

だとすると、もしかしたら俺は妹に…

男「…なんてな」


妹「にぃにぃ?」キョトン

男「ばーか、なんでもねーよっ!」グリグリ

妹「きゃっ!」ビク


俺は湧きあがってきた馬鹿な考えを抑え込むことにした

大事な妹だからこそ傷つけるような真似はしたくない

だって俺は妹の笑顔が好きなのだから、そんな彼女を泣かせるような真似は絶対にしたくない


でもそんなことを考えていると抑えていた胸は何故か痛んだ

まるで抑え込めば抑え込むほどに溢れてくる、間欠泉のような想い…


そんな感情が俺の中に、あった…

すんません…

>>253>>254の間に↓の文章を入れてください

妹「おはよう、にぃにぃ!」ガラッ

その日の学校もいつものように何事もなく終わり、俺は家に帰って来た


男「ただいま!」

妹「にぃにぃ、おかえりなさい!」ギュー

いつものように妹が飛びついて来た ちょっとからかってやるか?


男「あんまり甘えるなよ?お前もにぃにぃ離れしないといけない日がいつか必ず来るんだからな?」


妹「え…?」ビクン

妹の体が一瞬、跳ね上がった

妹「…もん…!」ボソ


男「え?」



妹「わたしは…にぃにぃと、いっしょにいる…もんッ…!ずっと…ず、っと…いっしょ…なん、だもん…!!」ギリギリ



妹の爪の俺の背中に思いっきり喰いこんできた

それはまるで大事なおもちゃを取り上げられた子どものような泣き顔だった…

男「いや、だって考えてみろ…?お前が将来だれかと結婚することになったらこの家から出て行くことになるんだぞ?」


妹「じゃあ、わたし…けっこんなんて…しなくて、いいよ…?」エグ

なにを我がまま言ってるんだ、妹は?

男「馬鹿言え…母さんだってお前の産んだ子どもが見てみたいに決まってるだろ?だから…」



妹「うそつき…」ボソ

男「え?」

妹「にぃにぃも…おかあさんとおなじようにわたしのこと、すてるんだ…?」ギリギリ

男「待て!そ、それは違うぞ!」

妹「…らい」



妹「にぃにぃ、なんて…だいっきらいッ…!!」ダッ



妹は俺の前から駆け出して行った


ドアの閉まる音が玄関に虚しく響いた…

俺はショックでしばらくその場から動けなくなっていた


いつのまにか俺の中の妹に占める割合は大きくなっていたんだ 俺の体の調子を左右する程にそれは大きかった…

だが、それに気付いた時には既に遅かった


だって、俺は…

男「妹を…傷つけて、しまったんだな…」ボソ


妹の笑顔を守りたいと守りたいとずっと思ってきたはずだったのに、自らの手でそれをバラバラに引き裂いてしまった…

それは俺の意思に関係ないとは言っても、とても許されていい行為じゃなかった


たった1つの冗談でこんなにも簡単に崩れ去ってしまうなんて…

俺たちはそれほどに深く繋がっていたんだ


それに俺は…

男「こんなにも…妹のことが好きだったなんて…」



俺の心に深く沁み込んでくるような想い…

それを言葉にしてみれば確かな実感が湧いてきた



男「……ッ!」

こんな自分が情けなくて涙が溢れ出てきた

その姿はあまりにも醜くて、滑稽だった…

だけど…



男「いつまでも、泣いているわけには…いかないよな?」スッ



この想いの丈を妹に真正面からぶつけよう もしそれが残念な結果に終わったとしても構わない

だって、何も出来ずに終わってしまう方がよっぽど怖いからな?

どうせなら可能性のある方に懸けてみたい



これからの俺たち自身のためにも…



気が付いたら俺は駆け出していた

男「妹ーーーーーッ!!いるなら返事をしてくれーーーーーッ!!」



俺は夢中になって叫んでいた

周囲の人はそんな俺の様子に訝しげに顔をしかめている



男「どこだ…どこにいるんだ…妹っ…!」ハアハア


思いあたる場所は全て探したはず… どうして、どこにもいない…?

俺は全身を汗で濡らし、息も絶え絶えと言った様子だった


すでに外は陽が落ちていて、辺りは真っ暗になっていた

男「待てよ…」


1つだけアテがある…!



それは、幼い頃に約束を交わした俺たちの思い出の場所だった



男「すぐに行くからな…!!妹っ…!」ダッ



俺は全力で駆け抜けた



あの日の約束をもう1度、果たすために…

男「妹っ…!?」



妹「にぃにぃ…?」


あの日と同じように、妹はブランコの上に座って1人黄昏ていた



男「ごめ…んな…妹…!俺が、馬鹿…だったよ…!」ゼエゼエ


だから…


男「帰ろう…!俺たち、2人の家に」

妹「に…にぃ、にぃ…」ポロ


妹「わたしとのやく…そく…ちゃんと、おぼえて、たん…だね?」ヒクヒク


妹「うれ、し…いよぉ…」グス



男「馬鹿…!大好きな妹との約束なんだ…!!忘れられるわけないだろっ…!!」ギュッ


俺は泣き顔の妹をそのまま抱きしめた


妹「にぃ、にぃ…」



離れないように、そして離さないように…

俺たちは強く抱きしめあった

妹「えへへ…うれしい、なぁ」グス


妹「わたしも、だいすき…だった、の…!にぃにぃのこと…むかしから、ずっと…だいすき、だったの…!」ヒグ


妹「おね、がい…」




妹「きす、して…?」



妹が唇をこちらに突き出している


そんな妹の顔に俺はそっと口づけた…

男「唇は…まだ早いからな?」ニヤ

俺は意地悪く微笑んだ

妹「おでこに、するなんてぇ…ひ…ひどいよぉ…いじ、わる」ポロ

そんな俺に妹は不貞腐れていた顔を向けた



男「そうだな、じゃあ…」



男「5年後も俺たちが今と同じ気持ちでいられたら…」



その時は…

男「もう1度、この時間にこの場所でキスしよう、な?」


妹「約束…だよ?」チラ


男「…ばーか、俺がお前との約束を破ったことなんてあったか?」


妹「な、ないけど…」ボソ


男「じゃあ、決まりだな…」スッ

そう言って俺は小指を妹の前に差し出した


妹「うん…!」キュ

そして、決して解けることが無いように固く結んだ…

「ゆーびきーりげんまん!」



「うそつたらはりせんぼんのーます!」



「ゆーびきった!!」



俺たちの声が夜の空に溶けて行った…




妹END

店員「ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております!」


あの約束の日から5年後、俺はあの約束の場所へと向かっていた



ある1つのプレゼントを胸に抱えて…

 

              妹END エンディング

彼女はあの日の約束をまだ憶えているだろうか?

なんせもう5年前の話だ…とっくに忘れているかもしれない



男「ああ、いかんいかん…!」

ネガティブさは捨てろ それに、まだ失敗したと決まったわけじゃない

たとえダメだったとしても、いい経験だったと思える日が必ず来るはずだ

もっとポジティブに行こう!


男「…だな」

俺は僅かな期待を胸に残して、その場所へと急いだ

約束の時間の1時間前に俺はその場所に到着した



そしてベンチに腰掛けあの頃の日々の記憶を1つずつ想い出していた 



妹と共に過ごした日々の想い出を…

『にぃにぃ!』



『えへー!』



『おはよう、にぃにぃ!』



『もぅ…にぃにぃのいじわるっ!!』

『うそつき…』



『にぃにぃ、なんて…だいっきらいッ…!!』



『に…にぃ、にぃ…』



『わたしとのやく…そく…ちゃんと、おぼえて、たん…だね?』



『えへへ…うれしい、なぁ』

『わたしも、だいすき…だった、の…!にぃにぃのこと…むかしから、ずっと…だいすき、だったの…!』



『きす、して…?』



『おでこに、するなんてぇ…ひ…ひどいよぉ…いじ、わる』



『約束…だよ?』



                 「にぃにぃ…?」

男「うおっ!」ビクッ


…って妹?



妹「久しぶり、にぃにぃ!」ニコ


5年後の彼女はあの頃よりもちょっと背が伸びていて、綺麗な女の子に成長していた


かつての面影をうっすらと残して…



それにしても驚いた…!だって、妹はまだ…

男「5年前の約束…ちゃんと憶えていてくれてたんだな」

妹「だって大好きなにぃにぃとの約束だよ?絶対に忘れるはずないよ…」



そうだよな…?忘れられるわけがないよな…


俺は胸に込み上げてくるものがあって、思わず目の前の妹を抱きしめてしまっていた



男「俺だって…同じ気持ちだったよ…!」ギュッ


妹「にぃにぃ…」

男「さてと…」ニヤ

妹「な、何…?」ビク



男「実はにぃにぃからサプライズなプレゼントが用意してあるんだよ」


妹「え…プレ…ゼント…?」

妹は事態を把握できずに困惑していた



俺は背中に隠してあったプレゼントを取り出して、その包装紙を破いて中身を取り出した

プレゼントの中身は…純白のウエディングハットだった

それを妹の頭の上にそっと被せる



男「…っと、これで即席花嫁の完成だな」

妹「えっ?…えっ?」


男「妹」



男「ここで俺たち2人だけの結婚式を挙げよう、な?」



妹「にぃにぃ…」ポロ

男「あなたは永遠の愛を誓いますか?」


妹「え、ぐ…ちか…います…!」ヒク


男「こら、泣いてばっかじゃ何言ってるのか分かんないだろ?」


妹「だって…にぃにぃ、いじわるだよ…こんなの…!」グス


男「…ったく、泣き虫なところは全然変わってないな?この花嫁さんは」スッ

俺は妹の頬にそっと手をふれた…

妹「…ん」チュッ


そして俺たちは永遠の愛を誓った


誓いのキスは2人にとってのファーストキスでもあった


きっと…この誓いは俺たちが死ぬまでずっと守り続けて行くことになるに違いない

妹「にぃにぃ…」

男「なんだよ?」

妹「私ね…今とっても幸せだよ…?」

男「…ばーか」



さっきも言っただろ?



…俺だって同じ気持ちなんだよ




妹END エンディング  終わり

…というわけで妹ルートはこれにて終了です

次に投下を予定している個別シナリオは風紀か隣女のどちらかです

お付き合いくださった方ありがとうございました!

ではでは

隣女に期待

隣女「私を選んでくれるとは光栄だよ、>>287 どうやら、きみは中々に良い着眼点の持ち主のようだな 

    恐らく私やきみのようなが人材がこれからの新しい時代を築いていくのだろうな… その調子で励みたまえよ?」

BAD ENDを投下します

このルートは3話終了後、人間関係に絶望した男が現実から逃げ出す話になっています

※正直、胸糞悪いです 苦手な方はスルー推奨です

人間関係に疲れてしまった俺は最低限の荷物だけ持って家を飛び出した

家族とはその日以来顔を合わせていない もうこれからも会うことはないだろう

ただ最後に妹の泣き顔を見たのだけは辛かった…



俺は知り合いの誰もいない街に行き、そこで安アパートの一室を借りて生活していた

最近は仕事の収入も安定してきて、必要最低限暮らしていく分には困らないようになってきた

これからは1人で生きていくと決めていた俺だったが、完全には人との繋がりを断てないでいた


今でも隣女とだけは電話でやり取りを続けている…



どっちつかずな生き方だと自分でも分かっていた

だけど、本当は1人で生きていくことなんて俺には無理だったのかもしれない

寂しさに押しつぶされてしまうかもしれない



人との繋がりを心のどこかで求めていたのかもしれない…

男「…俺って最低だな」ボソ



天井に向かって自嘲気味に呟いた


人間関係は自分にとって都合の良いものや利用価値のあるものだけで構成すればいい

刃向かおうとする存在は切って捨てて、自分のテリトリーに踏み込ませないようにすればいい



今の俺にはそんな歪んだ考え方しか出来なくなっていた…

ブーブー


携帯が震えている 手に取ると画面には隣女の名前が表示されている 俺は通話ボタンを押した


男「もしもし?」

『もしもし、男くん?元気してるかい?』

男「…まあ、ぼちぼちってとこ」

『そうか…よかったよ』ホッ


電話越しに隣女の安堵の吐息が聞こえてきた

男「…幼は…どうしてる?」

未練がましくも俺はまだ幼のことを完全には振り切れないでいた


『彼女は一ヶ月前から学校に来ていないんだ…どうもひどく体調を崩してしまっているらしくてね…』


体調…不良…?しかも、一ヶ月も…?


男「そう…なのか」


俺は幼のことを心配だったが、実際に会いに行く勇気はなかった

だって、もう1度拒絶されるのが怖かったからな… そんなのは2度と懲り懲りだった


今度こそは耐えきれず、自らの命を絶ってしまうかもしれない

『それよりも…だ』ゴホン

隣女がわざとらしく咳払いをした どうやら話題の転換をするようだ


男「ん?」



『きみは…いつまでそうやって逃げ続けている気だ?』



男「……」

『逃げること自体は悪いことじゃない…でも私は怖いんだよ…!

 きみがもう帰って来ないんじゃないかって…!手の届かないところに行こうとしているんじゃないかって…!それだけが不安なんだよ…』


男「……」

『まだ今なら間に合うんだ!私はきみに帰って来て欲しいと思っている!幼くんだって…きっと…!』



男「…れよ…!」

『男…くん…?』



男「黙れって…言ってるんだよッ!!」

『……ッ!』

男「お前に何が分かるって言うんだ…!!人の苦しみを知りもしないで、自分の気持ちばっか押し付けてきやがって!!

  はっきり言うぞ!?正直迷惑なんだよ…!!知ってるか?こういうの親切の押し売りっていうんだよ!!余計なお世話なんだよッ!!」


『……』


男「何だよ!おい、さっさと言い返してみろよ!!まさに図星ってやつか?お前も心の中では俺のことを見下しているんだろ!?…なあ!!」


『男くん…』


男「はあはあ……!!」


『…きみも…変わってしまったんだな…』


男「……」

男「…悪い、言い過ぎた きるぞ…」ピッ


隣女との関係ももう終わりが近いのかもしれない…

男「くそっくそっくそっ…!!」ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!


俺は部屋の壁を思いっきり殴りつけていた

拳はところどころが擦り切れていて血が滲んでいた


男「俺は…どこで道を踏み間違えたんだろうな…」


視界が歪んだ


これからの俺は誰とも深く交わらずに生きていくしかないんだ…




…それはこれから始まるとても長くて険しい旅路への第一歩だった




逃亡END   終わり

以上でBAD ENDを終わります

お付き合いくださった方ありがとうございました!

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