男「座敷童がいる毎日」座敷童「……」 (92)

男「暇だなぁ」

座敷童「……」

男「大学はまだ長期の休みだし、俺友達いないし」

座敷童「……」

男「漫画なんて全部読み漁っちゃったからなぁ」

座敷童「……」ペラペラ

男「漫画、おもしろい?」

座敷童「……」コクッ

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男(座敷童、裕福な家に住むと言われる昔ながらの日本お馴染みの妖怪?だ)

男(俺の目の前にいるこの可愛らしい彼女も実際そうだったりする)

座敷童「……」ペラペラ

座敷童「……」ポリポリ

座敷童「……」ゴクゴク

男(俺の目の前で漫画読んでスナック菓子食ってジュース飲んでるのが座敷童だ)

男「実際は裕福になりそうな家に住む妖怪だったっけ?お前って」

座敷童「……?」

男(本人もよくわかってないみたいだ)

座敷童「……」チョイチョイ

男「ん?……ああ、次の巻ね、はい」

座敷童「……」ペコッ

座敷童「……」ペラペラ

男(……彼女はなぜかまったく喋ろうとしない)

男(こんな自堕落した生活を送っている彼女だが)

男(そもそも、なんで俺のうちに居座っているのか)

男(俺は知らなかったりする)

座敷童「……」ゴクゴク

男「ねぇ、お前ってなんでこの家に居ついてるの?」

座敷童「……」フンスッ

男「なに?私が先に居たのに後から引っ越してきたお前に関係ないって?」

座敷童「……」コクン

男「生意気な……」

男(時を遡って半年前くらいか)

――――――
―――

男「おー、随分田舎なんだなぁ」

母「ここまで来るとねぇ、大学近くなるからいいんじゃない?」

男「電車に乗る必要はあるけどね」

母「いいじゃん家より遥かに近いし。おじいちゃんの家を空家にしておくのももったいないし」

男「そうねぇ」

男(去年の暮れにおじいちゃんが亡くなり、親父がおじいちゃん家を相続したのだが)

男(まぁ寂れてるわ田舎だわで我々家族が管理するのもアレなので、売っぱらう手もあったのだが)

男(たまたま俺の大学からいくつか駅が近くなるって事で俺が住むことになった)

男(勿論一人でだが)

母「年季入った家だから掃除くらいしておかないとね」

男「一人で出来るからいいってのに」

母「アンタ一人だと絶対やらないでしょ?」

男「息子を信用してないのね」

母「生活の方面ではまったく信用してないよ」

男「ひでぇ話だ」

母「っと、もう着いた。やっぱり駅から近い」

男「近くても周りがすげぇ畑だらけだな。まだ日本にこんな風景が残っているとは」

母「私はとりあえずアンタの寝床になるところを先に掃除してくるから」

男「俺はどうすればいい?」

母「どうせ役に立たないから家の周りのゴミでも拾っておけば?」

男「そりゃねぇぜ……」

トットット

男「ん?」

母「どした?」

男「いや、何か走るような音しなかった?」

母「気味悪い事言わないでよ、ただでさえ何か出そうな家なのに」

男「住むのは俺だけどね」

母「ま、妖怪だの幽霊だのに食われても私に被害がなけりゃいい話だけど」

男「俺はいいのか……まぁいいや、家の中探索してくる」

母「あいよ、結構広いしねぇ」

男(おじいちゃん家なんて来ること自体数年ぶりだったりする)

男(疎遠って訳ではなかったけど、こっちにくる事も無かったなぁ)

男(墓参りなんかも現地集合で、そこで挨拶して終わり)

男(年末なんかはおじいちゃんがウチに来る始末、どういうこった)

トットット

男「……やっぱり何かいるな」

トットット

男(不気味なことに)

男(足音だけ立てて、おびき寄せようとしている風にも取れる)

男「明らかに動物とかじゃないもんなぁ」

男「怖いけど気になる、でもここは敢えて」



男「お母さんのところに戻ろう」

グイグイグイ

男「なんか滅茶苦茶引っ張られてる!?」

男「ちょっ!?ヤバいってこれ!?何!?」

グイグイグイ

男「お母さん助けて!!何もないところから引っ張られてる!!ねぇ助けて!!」ガタンガタン!!

母「うるさいな!引っ越してきたばかりで騒いだらご近所さんに変な噂立てられるからやめろ!」

男「いや世間体なんてどうでもいから助けてよ!!めっちゃ引っ張られてるんだよ!」

母「え?」

男「え?」

男「え、俺今引っ張られてるでしょ?なにやだ怖いよその反応」

母「あなたどなたですか?」

男「え!?俺だよ!?アンタの大事な息子だよ!?3人目にしてやっとできた可愛い男の子だよ!?」

母「バカ、アンタじゃなくて後ろの人」

男「なにやだそっちの方が怖い」クルッ




男「いやいねぇし!?何虚空を見てるの!?」

母「ま、今のは軽い冗談だけどね」

男「おい」

母「ハッハッハ、あんた座敷童に懐かれたんじゃないの?」

男「座敷童?そんな非現実的な……」

母「お父さんもおじいちゃんも、この家には座敷童がいるって昔からずっと言ってたからねぇ」

母「お父さんの家系の男は皆好かれるんじゃない?」

男「本気で怖いって」

母「ま、私も一度見たことがあるから。多分害は無いと思うよ」

男「」

母「怪奇現象とかはあんまり信じないんだけどね、一回見ちゃってるから」

母「それに、ホラ。寝室見てごらん?」

母「おじいちゃんが亡くなってからずっとほったらかしだった家なのに」

男「……ホコリ一つなく綺麗な部屋ですね」

母「座敷童が掃除してたんじゃない?」

男「いやいやいや、ご近所さんが気を効かせてやったとかじゃないの!?」

母「今時そんな親切な人いないよ」

母「んじゃ、私は帰るから」

男「ねぇ、やっぱり一人暮らしとか不安なんですけど」

母「いつかはしなくちゃいけない事でしょうに。頑張って!それじゃ」

母「あなたも、よろしくね」フリフリ

フリフリ

男「おいちょっと待って!今何に手を振った!ちょっと!車発進早い!カムバーック!!」



男「……他の部屋見てみるか……」

男(今時そんなの信じる人の方がいないだろって思いつつも)

男(もしそんな非日常的なことが起こったりしたら本当は嬉しいわけで)

男(ちょっと小躍りしながら台所、風呂場、縁側と捜索していった結果)

男「まぁ、居ないわな」

男「……台所は普通に使えるし、適当に何か作って食うか」

男(で、その後本当に夜まで何もなく)

男「……寝るか」

男(まだ必要最低限のものしか持ってきていなく、ゲームや漫画、ネットさえも無い状況)

男(俺は耐えきれるワケもなく、今日という日を終えようとしていた)

男(していたのだが)

ギシッ

男「……」

男「……俺の布団の横から何かの気配が超するんだけど」

男「……何もないんだよなぁ」

男「ここら辺かな?」ブンブン

ガスッ

男「あ」

男(腕を振り回してたら何かに当たって)

男「……」

座敷童「……」

男「……」

男「キィィィィィヤァァアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

座敷童「!?!?!?」


男(小さい女の子が目の前に現れて、気絶をすることで俺の一日が終わった)


――――――
―――

男「そうか、もう半年も前か」

座敷童「……?」

男「何がって?俺が引っ越してきてから」

座敷童「……」プンプン

男「いや、ゴメンって。あの時たまたま手が当たっただけでワザと殴ったワケじゃないんだって」

座敷童「……」プイッ

男(慣れるまでは実はそう時間はかからなかった)

男(彼女自体は実体が存在する)

男(こうやって見ることも出来るし触ることも出来る)

男(少し近づくとちょっといい匂いもする)

男(……いつも使ってるシャンプーの匂いだけど)

座敷童「……」ゾワッ

男「いや、別に変なことは考えてないからね?」

座敷童「……」ホッ

男(そこに存在する者、と割り切ってしまえば普通に過ごせる)

男(いや、普通なら即座に家から出て行くレベルだけど)

男「こういう非日常的なことが楽しいから仕方ないね」

座敷童「……」

男「今日は独り言が多いって?気にするな、そういうもんだ」

男(彼女と生活していて実際に困ったことは特には無い)

男(身の回りの事は自分でなんとかするし、食事自体は本来必要ないみたいだし)

座敷童「……」ポリポリ

男「……食べようと思えば食べれるみたいだけど」

座敷童「……」ゴロゴロ

男「こういう生き物って考えた方がいいなコレ」

男(俺が目の当たりにした超常現象は不可視化できるって事くらいで、座敷童的な要素は一切無い)

男(どうやら俺以外の他の人にも彼女の姿は普通に見えるみたいで、この前も)

――――――
―――


「こんにちわー!ご注文の品です!」

座敷童「……」ペコッ

「アレ?お嬢ちゃんここの子?誰か今家にいるかな?」

座敷童「……」フルフル

「参ったなぁ……え?お金預かってるから受け取るって?」

座敷童「……」コクン

「じゃあここにサインもらえるかな?」

座敷童「……」カキカキ

「ありがとうございまーす!」

――――――
―――


男(なんてことがあったらしい)

男「なお、その時届いた品は、とても人には見せられるようなものでは無かった」

座敷童「……」ヒョイッ

男「やめて!女の子にエロゲ届いた所見られるとか恥ずかしくて死にたい!」

座敷童「……」暗黒微笑

男(俺はすっかり弱みを握られてしまった)

男「まぁ、弱みって言っても誰に話すって訳でもないしね、お前は」

座敷童「……」コクン

男「目を見て話すと不思議とそっちの言いたいことが分かるんだけど、それも座敷童の能力だったりするの?」

座敷童「……」フルフル

男「何?通信教育で学んだ妖術?なんだそれ……」

座敷童「……」フフン

男「おっと、もうこんな時間か。晩飯買いに行くけど、一緒に行く?」

座敷童「……」コクン

男(数日に一回の買い出し)

男(彼女と二人で行くのがお決まりだ)

座敷童「……」サッサッサ

男(気持ち程度のおめかし。と言うより、寝癖で跳ねた髪を直しているだけだが)

座敷童「……」シャキーン!

男「準備オッケー?じゃあ行こうか」

男「流石にこの時間帯は暑いな……まだ9月だけど」

座敷童「……」グダァ……

男「7月の頭から思ってたんだけどさ」

座敷童「……?」

男「着物、暑くないの?」

座敷童「……」ダラァ

男「暑いのね、着替えはそれ以外無いんだっけ?」

座敷童「……」フルフル

男「ああ、何着も持ってたなそういえば」

男「別に金に困ってるわけじゃないし、何か服買ってあげようか?」

座敷童「……」フルフル

男「え?いいって?なんでさ」

座敷童「……」

男「アイデンティティーが無くなる?座敷童がなんでそんなこと考えてるんだよ……」

座敷童「……」ドヤァ

男「座敷童の間でもグローバル化が進んでるって?グローバル化の意味全然違うぞソレ」

男「さて、着いたぞ近所のスーパー」

座敷童「……」

男(そういえば、ご近所さん達は彼女の事を知っている人が多々いるとかなんとか)

男(ちょっと出歩いたりすると結構声をかけられたりする)

「あら、麗華ちゃんこんにちは」

座敷童「……」ペコッ

「麗華ちゃん、今日も元気だねぇ」

座敷童「……」ペコッ

男(かなり長い間この土地に居るらしく、理由は分からないが気味悪がられることなく信用されている)

男(外に情報が漏れることもないようだ)

男「おやつ買ってもいいけど、300円分までな」

座敷童「……!」ガーン

男「いや、だって俺食べないし、そもそも食べるのお前だけだし」

座敷童「……」ジー

男「服は買ってくれるのにおやつはダメなのかって?優劣があるでしょ、ダメなものはダメ」

座敷童「……」ケッ

男「不貞腐れるなって」

男(あ、ちなみに麗華ってのはこの子の名前だ)

座敷童「……」プイッ

男「いい名前持ってるのに我が儘なんだよなぁお前は」

座敷童「……」フンッ

男「それじゃあそうだな……プリン、俺も食べるしこの3個入りのやつ買おうか?」

座敷童「……!!」パァァァ

男(チョロイ)

「ありがとうございましたー」

座敷童「……♪」ルンルン

男「ホント、いい笑顔だな」

座敷童「……♪」

男「今世紀最大の喜び?なんじゃそりゃ」

座敷童「……♪」

男「飯作るにはまだ早い時間だな……他にどこかに寄っていくか」

座敷童「……」クイクイ

男「川原か……まぁ暑いし、足を漬けに行くくらいならいいか」

座敷童「……!」タッタッタ

男「はは、あんなに喜んじゃって」

座敷童「……」ズッコケ

男「ああ!そんな走り辛そうな格好してるから!」

パチャパチャ

座敷童「……」パチャパチャ

男(こういう自然いっぱいな所が田舎っていいと思う)

男(……娯楽施設は無いけどね)

ガサガサ

男「ん?何かいるのかな?」

座敷童「……?」ヒョコ

男「あ、そんな覗き込むと危ないぞ」

ガサガサ

子ウサギ「ウキュ?」ピョン

男「ウサギ?こんな場所に?」

座敷童「……!」ダキッ

子ウサギ「ギュウ!?」

男「ああ、可愛いからってそんな突然抱きしめるのは止めなさい」

男「にしても変なウサギだな、模様とか色とか付いてるし」

座敷童「……」スリスリ

男「お前は本当に自分に正直なまでに行動するなぁ」

ビョン

子ウサギ「キュー」タッタッタ

男「あ、逃げた」

座敷童「……」シュン

男「生き物は丁寧に扱わなきゃ」

座敷童「……」

男「……え?今の普通のウサギじゃない?」

座敷童「……」コクン

男「妖怪とかそういうの……やっぱりお前以外にもいるんだな」

男(たまーに人間の前に現れるらしい妖怪)

男(普段隠れてたりする種族や次元の壁を突破して来てしまうのも居たりするとの事)

男(ひょっとしたら、彼女のように人間社会に紛れ込んでいるのもいるかもしれない)

座敷童「……」パチャパチャ

男「あ、また遊びだして……もうちょっとしたら帰るぞー」

座敷童「……」コクン

……

男「さて、今日の晩御飯は」

座敷童「……」ワクワク

男「一人暮らしのおとも!パスタです!」

座敷童「……」

男「そんなまたかって顔するなって」

男「美味い安いで助かってるんだから」

座敷童「……」ゲンナリ

男「俺が料理あんまり上手じゃないのは知ってるから、こういうのしか作れないのよ……」

座敷童「……」

男「今度何か作ってやるって?って、お前料理出来るのかよ……」

座敷童「……」フフン

男「出来るなら言ってよ……俺の手間も減るじゃない」

座敷童「……」

男「自分で作るのは面倒って……俺は毎日作ってるんだけど」

男(とりあえず今度一緒にハンバーグを作る約束はしておいた)

男(何気に女の子と一緒に料理を作るシチュエーションなんて、全国の一人身の男がどれだけ血涙を流すだろうか)

座敷童「……」ズルズルズルズル

男「さっきは文句言ってたのにちゃんと食べるものは食べるのな」

座敷童「……」ズルズルズルズル

男「残すのは食材にも作った人にも悪い……よしよし、いい子だ」

座敷童「……」ヘヘン

男(食事の後の時間は本気ですることがな)

男(特に見たいテレビ番組も無いし、ゲームをする気分も漫画を読む気分でもない)

男(ネットは……)

座敷童「……」カチッカチッ

座敷童「……」カタカタッ ターンッ!!

男(俗世にまみれた彼女が占領している)

座敷童「……」フッ

男(画面見て鼻で笑う始末)

男「あ、風呂沸いたから入るぞ」

座敷童「……」コクン

男(彼女と一緒にお風呂に入る。日課だ)

座敷童「……」ヌギヌギ

男「ちゃんと洗面所で脱ぎなって」

男(別に、いやらしい事なんてないですよ?はい)

男(前に俺が風呂に入ってる時に彼女が突入してきたのが始まりだっけか)

チャポン

ザパーン

座敷童「……」ウィー

男「オッサンみたいな声出すなよ」

男「あと、先に体洗ってから入ってね。俺も浸かるんだから」

座敷童「……」シブシブ

男「ほい、まず頭流すよ」

ザパー

座敷童「……」ンー

男(正直シャワーが付いていないのは不便だ)

男「ちょっと親に頼んでみて風呂だけ改装してみようかしら」

座敷童「……!」プンプン

男「これがいいって言ってもなぁ……シャワーがあれば湯船からお湯を減らさなくて済むんだぞ?」

座敷童「……!」

男「風情が分かってないって……まぁ確かに檜の風呂は素敵だけどさ」

座敷童「……」チョンチョン

男「はいはい、シャンプーね」ワシャワシャ

座敷童「……」ホンワカ

男「お客様ー、痒いところはございませんかー?」

座敷童「……」ココココ

男「背中?自分でかけよ」

座敷童「……」ポリポリ

男「そろそろいいかな」

座敷童「……ッ!」

男「どうした?」

座敷童「……!!」ブンブン

男「うわ!?頭振り回すなって!」

座敷童「……!!」ブンブン

男「目に泡が入ったのか!流すから待ってろ!」

ザパァ

座敷童「……」ナミダメ

男「あー……ごめんね?」

座敷童「……」プイッ

男(とりあえず、シャンプーハットは買ってこよう)

男(首に巻いてエリマキトカゲごっことかしそうだけど、引っかかって首から取れなくなってまた喚く姿が目に浮かぶ)

座敷童「……」ゴシゴシ

男「女の子なんだから、髪はもっと優しく拭かなきゃ」ワサワサ

座敷童「……♪」

男「なんか完全に保護者だなぁ、俺」

男「さて、いい時間だしそろそろ寝るか」

座敷童「……」カタカタッ ターンッ!!

男「掲示板での煽りはもういいから、早く寝なさい」

座敷童「……」ショボーン

男「はいはい、また明日やりなさい」

男「電気、消すよ」

座敷童「……」コクッ

男「枕元に置いてある携帯ゲーム機は没収な」

座敷童「……」ガーン

男「子供は早く寝なさい、まったく……」

座敷童「……!」

男「子ども扱いするなって?じゃあ大人らしく振舞いなさい」

座敷童「……」ムー

男「……」

座敷童「……」

ゴソゴソ

男「……」

座敷童「……♪」

男(布団は分けてある、流石に一緒ではまずいだろうし)

男(だが最近、彼女は俺の布団に侵入してくる)

男(始めは追い出していたが、今となってはもう慣れてしまった)

座敷童「……♪」ダッコ

男(暑いけど彼女の機嫌を損ねない為に、このくらいは我慢だ)

――――――
―――


チュンチュン


男「……」

座敷童「……」スヤァ

男「今日は縁側ギリギリか」

座敷童「……」スヤァ

男(寝相が悪すぎて、朝になれば在らぬ場所まで移動してたりするんだけどね)

男(朝食を終え、また昨日と同じ風景)

座敷童「……」ゴロゴロ

座敷童「……」ペラペラ

男(昨日と違うのは今日は買い物に行く必要が無いって事くらいか)

ポツポツ

男「あ、雨だ」

座敷童「!」ダダダッ

男(流石に、こういう時に洗濯物を取り込むのは二人の作業だ)

ザー……

男「何とか間に合ったか……天気予報は晴れだったのになぁ」

座敷童「……」コクン

男「部屋干しはなぁ、畳の部屋だし臭くなっちゃうんだよな」

座敷童「……」

男「諦めろ、うんまぁその通りだけどさ」

男「後から湿気でいやな感じになるんだよね」

座敷童「……」パラパラ

男「朝刊のチラシ……乾燥機?買えってか?」

座敷童「……」コクコク

男「風呂はダメでコッチはありなのか」

座敷童「……」イエス

男「そこまでは欲しいとは思わないな」

座敷童「……」ショボーン

男「ああ、どういうものか試してみたかったのね」

男(彼女は機械の物があれば何かと触ろうとする)

男(ゲーム機やパソコンも触らせてみればすぐに使い方を覚えてしまった)

男(案外感性は現代っ子なのかもしれない)

男「それにしても暇ねぇ」

座敷童「……」ペラペラ

男「無視して漫画かい!偶には俺の話し相手になってもいいんじゃない?」

座敷童「……」ジー

男「喋らないから会話にならない……いや、意思疎通出来てるからいいじゃない」

座敷童「……」ミブリテブリ

男「話題を振れと、分かったよ。聞きたいことがあったんだった」

座敷童「……?」

男「座敷童がお前以外に沢山いるって前に聞いたけどさ、近所に住みついてたりするの?」

座敷童「……」

男「近所にはいないけど日本各地に居たりする……結構多いんだな」

座敷童「……」フフフ

男「世界進出も目指してるのか……お前たち一体何なんだよ」

男「それじゃあ、お前とはまた違う妖怪とかって居たりするの?」

座敷童「……」コクッ

男「居たには居たけどって……もういないみたいな言い方だな」

座敷童「……」

男「昔は居たけど、人間が増える毎に数も減って行って」

男「友達の妖怪狐は、事故で近所の少年と一緒に異次元の彼方に落ちて行った……どういうこっちゃ」

座敷童「……」ジーン

男「次元が緩んで他の世界へ旅立つ……そんなことあるのか」

座敷童「……」チョコン

男「……大丈夫、俺は居なくなったりしないから」

座敷童「……♪」

男(偶に寂しさを感じたりすると、膝の上に乗って甘えてくる)

男(見た目10歳くらいで、よく見られる座敷童としては意外と大きい方なので、乗られると案外重い)

座敷童「……♪」サスサス

男(頭を擦り付けてくるのも甘えているのだろう)

男(なんだかんだで今日も一日が終わる)

男(半年目にして彼女の過去がいろいろ分かったのは収穫か)

男「んじゃ、電気消すぞ」

座敷童「……」カタカタッ ターンッ!!

男「ネット、解約しようかな」

座敷童「……」フルフルフルフル

男「分かったら早く布団に入りなさい」

座敷童「……」ムー

――――――
―――


座敷童「……」

男(……彼女が俺を見てる)

座敷童「……ッ」

男(……何か言おうとしてるのか?)

座敷童「……」

座敷童「……バイバイ」

――――――
―――



男「ッ!!麗華!!」ガバッ

男「……あ……」

男「……夢か」

男(何か妙な夢を見てしまったようだ)

男(彼女が俺の傍から離れるなんて考えられない)

男(何より、彼女があんなことを言うはずがない。というか声を聞いたことすらない)

男「ん……朝か、雨が降り続いていたから暗いままだな」

男「さて、今日はアイツは悪い寝相でどこまで転がって行ったかな……」



男「おーい」


男「台所かー?」


男「風呂場……?」



男「まさかトイレ!?」




男(……どこを探しても、彼女はいなかった)

男「おい!隠れてないで出てこいよ!」

男「悪ふざけしてないでさ、俺普通に心配してるんだけど!」

男「……クソッ、外か!?」

男(こんな雨の日に彼女が一人で出歩くわけがない)

男(まさか誘拐?夜まで俺の布団で一緒に寝てたんだぞ?)

男(雨も降ってるし、窓は全部戸締り出来てたハズだ!)

男「あ、すみません。ウチの見ませんでしたか?」

「麗華ちゃん?今日は見てないけど……」

男「ありがとうございます……」

男(買い物……?)

「麗華ちゃんは今日来てないですね」

男(近所の人ん家……?)

「家には来てないなぁ」

男(川原……?)

男「……こんなところに来てるワケ無いよな……」

男「……ハハッ、案外家に帰れば居るかも」

男「ただいまー!」

男「……」

男「……帰ってきてない」

男(怖かった、彼女と初めてであった時以上に怖かった)

男(あの日から一度も、俺たちは傍を離れたことが無かったからだ)

男「……つっても、大学行ってる時ぐらいか、一緒に居なかったのは」

男「……そっか、そうだな。アイツはよく考えたら座敷童だもんな……」

男(座敷童。正しい伝承では見たものに幸運が訪れ、家に富を与える妖怪)

男(……俺の傍に居る必要って、無いもんな)

男(ひょっとしたら、他の人の家に住みつくようになったのかも)

男「だとしたら……惨めだなぁ、俺って……」

男(それから、いくら待っても彼女は帰ってこなかった)

男(……)

男「……寝よう」

男(これ以上待ち続けても仕方がない)

男(俺は食事も取らず、今日という日を終えた……)

男(……彼女がいない、初めての夜を迎えて……)

――――――
―――

チュンチュン


男「朝……」

男「……いないよな」

男(一日、たった一日彼女がいないだけでコレである)

男(これから毎日、彼女がいないかもしれないと考えると……ダメになってしまいそうだ)

男「……腹減ったな……」

男「飯、食おう」

コトコトコト

トントントン

男「……?」



座敷童「……」セッセセッセ

男「……!!」

座敷童「……♪」ニパァ


男(俺の予想を裏切り、彼女は次の日には帰ってきていた)

男「い……今までどこ行ってたんだよ!!」

男「何だよ!昨日突然いなくなっちまって……滅茶苦茶心配したんだぞ!!」ダキッ

座敷童「……!」カオマッカ

男「ああもう……一日いなくなっただけで俺はこんなんだよ……どこにもいかないでくれ!」

座敷童「……?」

男「え?机の上の置手紙読まなかったのかって?」

座敷童「……」コクッ


[半年に一回の妖怪の定期会合に行ってきます。今日は帰れません]

座敷童「……」コレコレ

男「……」

男「……俺の早とちり?」

座敷童「……」コクン

男「うわ恥ずかしい……」

男「ってか定期会合……近場に妖怪いなかったんじゃなかった?」

座敷童「……」フルフル

男「かなり減っただけでまだ居る……ああ、そっか」

座敷童「……♪」

男「で、その会合で楽しくおしゃべり出来たから機嫌が良くて朝ごはん作ってくれているっと」

座敷童「……♪」コクン

男「なんかもう……」

座敷童「……?」

男「疲れた」ヘニャ

座敷童「……あっ」ダキッ

男「おっとと、スマン。女の子に支えられるとは」

座敷童「……」フルフル

男「気にするなって?いやいや、感謝してるんだよ」

男「お前の存在って偉大なんだなぁって思い知らされた」

男「それに……今初めてお前の声聞けたし」

座敷童「……ッ!」

座敷童「……」フイッ

男「へへっ、恥ずかしがるなって。可愛い声だったよ」

座敷童「……」プイッ

コトコト
トントン

男(まぁ、そんなこんなで座敷童と二人で仲良く暮らす毎日だ)

男「おお!美味い!俺が作ったのよりも!」

座敷童「……」ヘヘン

男「こんな味噌汁、毎日作ってくれたりしないかなぁ」ズズッ

座敷童「ッ!?」

男「どした?」

座敷童「……」プイッ

男「ちょっと聞きたいんだけど、お前さ」モグモグ

座敷童「……?」

男「俺といて楽しい?退屈だったりしない?」

座敷童「……」フルフル

男「そっか、よかった」ズズッ

男「あ、あともう一つ」

座敷童「……?」

男「なんで、喋らないの?」

座敷童「……」

男「……」

座敷童「……は、恥ずかしい……から」プイッ

男「ハハッ!なんじゃそりゃ!」

座敷童「……!!」プンプン



男(こんな寂れた家に住んでた彼女と、俺が織りなす楽しい毎日)

男(いつまで続くか分からないけど、毎日楽しく過ごそうと思う)

男「……な?」

座敷童「……」ニパァ




男「座敷童がいる毎日」座敷童「……」

終わり

下書きもプロットも無しに即興でこんな高速でここまで書けた自分にビックリ

座敷童、いいよね

お付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

うわ早速バレた

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