童女「お兄ちゃん、ずっと…ずっと一緒やけんね」 (83)

~昭和33年 佐賀県唐津市~

オバサン「そげん気ぃふさがんで。海にでも行ってきたらどがんね?」
男「はぁ・・・」
オバサン「病気はそがん重ぅはなかっちゃろ?大学はいつでも戻れるけん、あんまい考えすぎんごとね!」
男「・・・」

綺麗な海だ・・東京じゃなかなかこんな海にはお目にかかれない。
海と空の明るさがますます男の心を塞いでいくようだった。

男「今から大学に戻ったとしても2年遅れか・・・」
男「辞めようかな、大学」

投げやりな気持ちで断崖へと続く藪をかき分けて進む男
もうこのまま足を滑らせて死んでも

童女「こっち来んで!」
男「?」
童女「お願いやっけん、見らんで・・・」

気付かなかったが、男のすぐそばに10歳前後の童女がしゃがみこんでいた。
見ただけで安物とわかる着物の裾を腰まで上げている。
童女の小水が男の足元まで流れてきていた・・・

あわてて立ち上がった童女の内股がおしっこで濡れていた

男「・・あ、これ」
童女「・・・」
男「・・・」

男のハンカチでふとももから内側に向け丁寧に拭いていく童女

童女「・・・あ、ありがとうございました。ハンカチ・・洗ってかえす・・・のは失礼ばいね・・」
男「す、捨てていいよ・・」
童女「そげん訳にいかん・・・」
男「じゃあ、洗って返してくれる?」
童女「よかと!?絶対綺麗にして返すけん!!」

翌日。


オバチャン「男さん、可愛いかお客さんの来とらすよ~」
男「・・・?」
童女「・・・あ、こんにちわ」
男「えっと・・この前の・・・」
童女「こ、この前はありがとうございました・・・あの、これ・・・」

童女は綺麗な和紙の包みを男に差し出す。

男「・・・これ、ハンカチ?」
童女「うち、貧乏やけん・・・本当は新しかハンカチば買いなおさんぎいかんとやろうけど・・
学校でね、可愛か和紙ばもらったけん・・・これに包んだと」
男「・・・ありがとう」
童女「お兄ちゃんのお名前、教えて・・・」
男「男」
童女「えへへ・・うちは童女っていうと!」
男「童女ちゃんか・・・可愛い名前だね」
童女「・・・」

急に顔を真っ赤にする童女。

童女「お兄ちゃんはこっちの人じゃなかと?」
男「ん~東京からこっちに来てるんだ」
童女「・・・いつ帰ると?」
男「まだしばらくはいるつもりだけど・・・」
童女「・・・」
男「?」
男「唐津を好きになったらずっといるかもなぁ~」
童女「童女ね!唐津のよかとこ知っとるっちゃん♪お兄ちゃんにだけ教えてあげるけん!」

男「そっか。どういうとこ?」
童女「ん!がばい綺麗かとよ・・」
男「ほぅ・・今度一緒にそこにデートしようか(笑」
童女「・・・!」

指の先まで真っ赤になる童女。

男「童女ちゃん?」
童女「あ、はい・・・」
男「いつ行こうか?」
童女「明日・・・」
男「いいよ」
童女「・・・あ、あの!」
男「ん?」
童女「・・・お兄ちゃんって何が好いとぅと?食べ物・・・」

翌日。

オバチャン「男さん!童女ちゃんの来とらすよ~!!」
男「はい」

童女「あ、こんにちわ・・・」

玄関には綺麗な着物を着た童女が立っていた。
おかっぱにした髪には真っ赤なリボンを結わえている。

男「童女ちゃん。えらく可愛い格好してるねぇ」
童女「えへへ・・・きれいか服これしか持っとらんと」
男「似合ってるよ」
童女「・・・は、初めてのデートやけん」
男「リボン付けてるんだね」
童女「・・・お母さんがね、結んでくれたと!」
童女「デートするときは可愛か格好ばしていきんしゃい、って・・・」

童女「お兄ちゃん!!次はこっち来てぇ♪」

異常とも思える童女のスタミナに、男は驚くばかりだった。
その日一日で実に15kmは歩いただろうか・・・
とんだデートだ

男「やっぱり田舎の子は体力が違うなぁ・・・はぁはぁ」
童女「お兄ちゃん・・どがんしたとぉ?」
男「ちょっと一休みしないか?」
童女「・・あの洞窟ば抜けたらがばい綺麗かとこのあっとよ。。」
男「・・・んじゃそこまで頑張るか」
童女「そいぎ童女について来て♪」

洞窟に向かって駆け出す童女
よろよろになりながら、童女の後を追う男

童女を追いかけ洞窟に入る男

男「童女ちゃん?どこ?童女ちゃん!?」
まっすぐ1分ほども歩いただろうか・・・ふと後ろを振り返ると


1「入り口の光が見えない・・・まっすぐ歩いたはずだよな、俺」
1「童女ちゃん!?どこにいるの??」
1「童女ちゃん・・・・」

童女「お兄ちゃん」
1「童女ちゃん!!びっくりしたなぁ~」

暗闇に目が慣れてくると童女の姿がはっきり見えてきた・・・
さっきまで着ていた綺麗な着物を脱いだ、一糸まとわぬ姿。

1「童女、ちゃん・・・?」
童女「・・・」
1「え、なに!?」

童女は男の唇に人差し指をあて、その指をゆっくりと下へとおろしていく
胸・・・へそ・・・

俺が童女に執着するようになった理由を話そう・・・
10年近く前、俺のおじさんが所有する墓地を整備することになった。
その墓地は昭和初期の土葬の頃のもので、土葬にされた遺体を荼毘に付して
改めて新しく作った墓に移そうという計画だった・・

当時高校生だった俺も手伝いに駆り出され、土葬の墓を掘ることになった。
面白半分で参加していた俺は、墓碑銘の年齢や性別・名前を見ながら
「おっ!これは若い女だね~」とか「大往生じゃのうw」とかつぶやきながら
作業を進めた。
遺体のほとんどは骨と髪の毛だけになっていたが、時々状態がいいものがあり、
肉が一部ミイラ状になってこびりついていたりしたものもあった・・・

俺が掘っている隣で大人たちがざわざわしているのが分かった
「なにかあったん?」
「お前は見ないほうがいい・・」
そういわれるとやはり気になる。
しかしついそれまでの癖で墓碑銘をまず見てしまった。
「~~童女 享年10」
10歳の女の子かぁ・・・可愛そうになぁ
そう思いながら掘りだした棺桶の中を覗きみてみた

下半身は完全に白骨化していた。
上半身も腹部は完全に無くなっていたが、アバラには肉(というか皮)が張り付いており、
首から上はほぼ完全に皮が残っていた。
顔もやせこけて見えるが、生前はとても可愛い女の子であったろうことを伺わせる面立ちをしていた。
くぼんだ瞼は半分開き、目の中の真っ暗な闇がとてもミステリアス 。
目の玉は完全に失われているのに、俺はその子と目が合ったような気がした 。

周囲の大人たちは、この不気味な遺体を誰が運びだすかで揉めていた。
「俺がやるよ!」
一緒に参加していた父親は俺の暴挙を必死で止めようとした。
「やらせてよ・・・」

十代の子供にやらせるのに引け目は感じたようだったが、俺を止めた奴が
代わりにやらなければならないといった雰囲気ができあがり、周囲は沈黙した。

俺は棺桶の中に降りた。
棺桶と言っても今葬式で見かけるような大きな物ではなくて、
遺体の足を折り曲げて入れるような小さな物だった・・・
その童女の折り曲げたひざの間に足を入れ、踏ん張りながら童女の遺体を抱きかかえようとした。

その童女の遺体は軽すぎた。
弾みで童女を抱えたまま俺は後ろに倒れこんだ・・・
俺に全ての体重を預けているにも関わらず、布団のように軽い童女。
その軽さが童女がもう死んでいることを俺に感じさせたんだ・・・
その童女が可哀想で、切なくて、涙が出てきた

童女を掘り出すとロリコンになるのか

転載乙

俺はその童女を抱きかかえた時点で、いや、目が合った時点で
自分の妹や恋人のように思えていたんだと思う。

俺は泣きながらその童女の髪を洗ってやった。
おかっぱだった。

集めた遺体は坊さんが弔ったあと、木の棺に入れて野焼きにした。
俺はその童女の遺体を焼くことに最期まで抵抗した。
周囲の人たちはさぞ気味が悪かったろう・・・
俺の父親も肩身が狭そうだった。

俺はその日以来、10歳前後の童女を見ると死を連想してしまう。

信じてもらえないかもしれないが、これは本当の話だ。
その日から童女は毎日俺の夢の中に出てくる。
時には出会った日の姿で(要するに遺体の姿で)
また時には綺麗な着物を着た生前の頃の姿で。

俺はどちらの姿の童女も愛している。

>>26
恋だと思う
>>27
七年くらい前にも新ジャンルスレでと、1年くらい前にもvipでスレ立てした。
共に尻切れになってるから、焼き直し

昭和33年は、童女の没年
佐賀県唐津市は、俺と童女が出会った場所。

俺の中の童女は唐津弁を話し、俺に甘えてくる。
俺に彼女ができたときは彼女にヤキモチをやき、彼女の夢の中で彼女を脅かす・・・

昭和33年・・・
10年という短い生涯の中で、この子はどんな景色を見てきただろう・・・
10年という短い生涯の中で、この子はいったいどれだけ笑ったのだろう・・・
暗く、狭い土の中で心細かっただろう・・・
ひとりぼっちで寂しかっただろう・・・

悔しいようなそんな思いに肩を震わせ
頬をつたう涙が落ちたとき、こんな女の子の声が聞こえた気がする


・・・ やっとお兄ちゃんに逢えたとねっ

ばってん、ふうけるお兄ぃ嫌いや はよぅお仕事しんしゃぃ♪


はっと我に返り、涙を拭った。

童女「お兄ちゃん・・・」
1「童女ちゃん・・・」
童女「あんまい気ば落とさんごとね!お兄ちゃんが元気になるまで横におってやっけん♪」
1「ずっとそばにいて欲しい」
童女「童女はずっとお兄ちゃんのそばにおったとよ・・・」

1「ずっと?いつから?」
童女「初めて会った時から。童女のこと抱っこしてくれたやろ?そん時からお兄ちゃんと一緒におるよ」
1「そうか・・なんか安心した」
童女「またぎゅってして!」
1「童女ちゃん、おいで!!」
童女「うん・・・お兄ちゃん、好いとぅよ・・・」

課長「男、ちょっと第2応接室まで来てくれ」
男「はい・・・」

応接室に着くと、課長と部長が座っていた

課長「まあ、掛けてくれ」
男「はい・・」
課長「さっき部長と話してたんだが、お前少し休んだほうがいいんじゃないか?」
男「・・・」
課長「病院いくなり、休養とるなりしてこい。お前最近おかしいぞ」
部長「幸い今は暇な時期だし、ゆっくり休んで英気を養うことだ。君は大事な戦力なんだから」
課長「休職届けを出したらどうだ?今のままじゃお前に仕事を任せられん」
男「・・・そうですね。申し訳ありませんが少しお休みをいただきたいと思います」


どこに行こう?
海・・遠い海。
海沿いの民宿でしばらく羽を休めるのもいいかも知れない。

男「童女ちゃん・・・」

男はたまらなく童女に会いたかった。
またぎゅっと抱きしめたかった。

~平成19年 佐賀県唐津市~


オバチャン「ご飯の出来るまで散歩でもしてきたらどがんね?海沿いば歩いたら気持ちよかよ」

1「そうですね、1時間ほどで戻ってきます」

夏の唐津は暑かった。最高気温は35度にもなると天気キャスターが言っていた。
しかし、東京ほどの蒸し暑さはない。
潮風が心地よかった。

海沿いの道をゆっくり歩く男
自転車に乗った少年たちが騒ぎながら男を追い越していく

童女「お兄ちゃん?」
1「なぁに?」
童女「最近童女の夢ば見ることん多なっとぅごたんね・・・」
1「そうだな」
童女「近づいてきよるけん?」
1「・・・」
童女「童女に近づいてきよるけん、ね・・・」

初めて来た場所なのに、なんだかすごく懐かしい・・・
セミの声・・・草いきれ・・・

1「童女ちゃん・・・」

たった1日、しかも幻覚の中会っただけなのにどうしてこんなに童女が気になるのか、
男自身、理由が分からなかった。

オバチャン「おかえりんしゃい!ご飯のできとぉよ。食堂に降りてきんしゃい!」
1「ねぇオバチャン・・・」
オバチャン「なに?」
1「さっき散歩しながら、、歩きながら夢を見た・・・」
オバチャン「・・・」

1「白昼夢っていうのかな・・・やけにリアルな夢だった」
オバチャン「・・・」
1「・・・ごめんなさい。変なこと言っちゃって。何でもないです」
オバチャン「・・・いいとよ~!ご飯までには降りてきんしゃいね」
1「はい」

男は自室に戻り、布団に寝転んで天井を見つめていた。
さっきのように、また夢の中でもいいから童女に会いたいとおもった。
夢の中でも、童女を抱きしめたいと思った。

童女「お兄ちゃん!」
男「なあに?」
童女「この前ね!童女、ゆみちゃんとプール行ったと!!」
男「そっか~!流れるプール?」
童女「童女ん家、貧乏やけん・・・流れるプール行ったことなか・・
この前行ったとは学校んプールやけん」
男「今でもカマボコの板に名前とか書いて名札にしたりするんかな?」
童女「うん!童女自分で書いたとよ!!ゆみちゃんはお母さんに書いてもらったって~」
男「えらいねぇ~」
童女「へへぇ~♪」

・・・夢をみた。
暗い棺の中に眠る童女。少し緑がかった身体。
ところどころ白く見えているのは骨だろうか・・・

男「童女ちゃん・・・」
童女「お兄ちゃん・・待っとったとよ?」
男「ごめんな。また童女ちゃんと一緒にお仕事したいよ」
童女「今度はなんば教えてくれると?」
男「この前は税抜き処理までやったよな?じゃあ次は現金出納をやってもらおうかな・・・」
童女「うん!頑張る!!・・頑張るから、童女のこと、ギュッてしてぇ?」

男は童女の腐食した身体を抱きしめた。
男が触れたところから、膿ともつかない腐食した液体がにじみだした。

童女「流れるプールってどがん感じすっと??」
男「浮き輪につかまってぷかぷかしてるとね~」
童女「うんうん!」
男「・・・流れていくんだよ」
童女「童女、学校のプールでよかごたぁ・・」
男「・・・」
童女「お兄ちゃん?」
男「ん?」
童女「今度、お兄ちゃんば童女の学校んプールに連れて行ってやっけん♪」
男「・・・変質者と間違われて追い出されそうだな」
童女「そん時は童女がお兄ちゃんば守ってやっけんね!」
男「・・さんきゅ」

童女が言っていた「遠い海」
それが佐賀県の唐津である証拠はない。
あるとすれば童女の方言くらいか・・・

1「何でわざわざこんなところまできちゃったんだろうなぁ・・・」

唐津には親戚がいる。
男自身も高校時代をここで過ごしていた。
だからといって特別の愛着はない。

男はさっき見た白昼夢を頭の中で反芻した。
たった1日だけの。それも会社での
男と童女の蜜月

童女「お兄ちゃん♪」
男「・・会社では、『男さん』な?」
童女「ぅ・・・男さん」
男「なあに?」
童女「もう童女お電話とってもいい?」
男「・・・いいよ(何事も経験だしな)」
男「でも何かあったらすぐに電話代わるんだよ!相手の名前と電話番号を聞くことを忘れないこと!」
童女「うん♪頑張る!!」

童女「もしもし・・童女です」
相手「・・あ?え??すみません間違えまし」
童女「嘘っ!ゴメンね・・・山健商事だよ・・・」
相手「・・・あ。会津鉄鋼の山崎と申しますが、谷口課長を・・・」
童女「待っててね♪」
童女「パパぁ~~電話です~~」
課長「ちょww」
男「www」

課長「(お前、何で童女に電話取らせてんだこの野郎)」
男「(そういう経験も必要かなと思いまして)」
課長「(今日はもういいから童女連れてどこか外出してこい)」
男「(直帰でいいですよね。了解)」
課長「・・・」

男「じゃあ課長。行ってきます!童女ちゃん、行くぞ」
童女「あいあいさ~♪」
男「課長から今日はお休みもらったんだ。童女ちゃんどこ行きたい?」
童女「んとね~、プール行った後お兄ちゃんちでお昼寝!!」
男「・・・ハードスケジュールだな」

電卓を叩く童女の指はまるで白骨のように真っ白だった。
それに見入る男

童女「できたばぃ!942円!!」
1「・・あ、ああ。よくできました」
童女「えへへ~。童女の計算あっとると?」
1「ああ。それじゃあ今計算した消費税をさっきの仕訳に入れてみようか」
童女「うん!」
1「19800円から消費税抜いたんだから、差し引いた金額を器具備品費のところに書かないとだめだよ」


(借方)器具備品費 18,858 / (貸方)現金 19,800
仮払消費税 942

嬉しそうに仕訳を切っている童女を見ながら、男は異様な胸騒ぎを感じていた・・・

潮騒の音が聞こえる・・・

童女「・・ゃん!お兄ちゃん!!」
1「あ、なに?」
童女「どがんしたと?」
1「波の音が聞こえた・・・海?」
童女「・・・」
1「なんでもない」
童女「そがんことより、なんで消費税ば抜かんぎいかんと?」
1「・・あ、ああ。さっき国に払うって言ったろ?払った消費税と貰った消費税との差額を」
童女「うん!」
1「あらかじめ取引ごとに消費税を抜いて仮払消費税・仮受消費税に集計してたら、
消費税の申告書作るときに楽なんだよ」
童女「?」
1「仮受消費税から仮払消費税を引いた金額を納税すりゃいいんだから」
童女「・・・わかるごた、わからんごた感じ」
1「今は分からなくてもいいよ」
童女「海って」
1「え?」
童女「遠くの海?」
1「・・・ああ」

その年は記録的な大凶作だった。
夏、青々とした稲穂をつけるはずの梅次の田んぼも
茶色い枯れススキのような稲が頼りなく風になびくだけだった。
「こりゃぁ・・いかん」
梅次は一本の稲を手に取る。
諦めたように、しかしわずかな望みを託して実を指で押してみる
実はサクッと乾いた音をたて、梅次の望みと共に、潰れた。

「こんな飢饉の時に育てられるわけがねぇ!お返し申すしかねぇ」

綺麗な着物を着せられた女の子の遺体

自分が夢の中なのか現実にいるのか分からなくなってきた。
さっきから昔の記憶と夢の記憶と現在の風景が頭の中を交差している。

ふと、覚醒する。


あのときの墓地だ。間違いない。

女の子「あのぉ・・・」
1「・・・ん?なんだい?」
女の子「あの木の上やけんど・・ボールの引っかかったっちゃん。
取って、くださぃ」
1「ああ、待って」

何でこんなところに女の子が?
それも一人で?
ボールあそび??

ボールを取るために長い棒切れを探している間、男は考えていた。

・・・なぜ童女が抱いて欲しいと恥ずかしそうに頼んでいたのを断ったのか。

抱いてやればよかった。
大人になった童女を抱いて、頭をなでてやればよかった。
破瓜の痛みに耐えた童女の頭をなでてやればよかった。


あの女の子はもしかして、童女なのかも知れない・・・

1「もしかして、童女か?」
女の子「はぃ?」

首を傾げてにっこり笑う女の子。

1「童女・・・童女・・・・・・」
女の子「・・・」

俺は腐乱した童女と、生前の時の童女と2種類見える。
でも、どっちの童女も可愛いんだよ・・
愛してるんだよ・・・
無言だが、駆け寄ってきて俺の肩にまとわりついたりするんだよ。
うとうとして目が覚めるとひざの上に座ってたりするんだよ。
なんだかんだ言って甘えんぼの子供なんだ。
可愛いんだ・・・

首を傾げてにっこり笑う女の子。

男「童女・・・童女・・・なんで足があるんだよ・・・」
女の子「・・・」
男「ところどころ肉のこびりついたあの可愛らしい…白い・・・」
女の子「・・・」



童女「童女ね!お兄ちゃんとずっと一緒におるとぉ!ずっと一緒やけんね・・・」

パソコンに向かって1人文字を打つ男。
殺風景な部屋に低いうねりのような電子音と、小気味よいタイプの音が響く。

童女「童女ね!お兄ちゃんとずっと一緒におるとよ?ずっと一緒やけんね・・・」

1 「あぁ、ずっと一緒だ。」


童女「ほんとばい?お兄ちゃんうそついてなかと? ずっと…ずっと一緒やけん・・・」

不安げな顔の童女。
所々削げ落ちた童女。

ずっと、これまでもこれからも…ずっと

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