【KJSLYR】(48)

◆「ブロークン・ウォール・アンド・リターン・オブ・ニンジャ」#3◆

(前回までのあらすじ:最愛の家族の為、全てを捨てて戦う覚悟を決めたキョジンスレイヤー、
ミカサ・アッカーマン。戦う彼女の窮地に現れたのは謎の金髪ニンジャ、デウスエクスであった。
キョジンスレイヤーの危機に絶望する人々を一瞬にして沈静化させた彼のジツとは?)

「ドーモ、キョジンスレイヤー=サン。デウスエクスです」「……ドーモ、デウスエクス=サン。キョジンスレイヤーです」
初めて他者から掛けられたアイサツに戸惑いながらも、彼女の内なるニンジャソウルが奥ゆかしくアイサツを行わせる。
金髪にメンポ、キョジンスレイヤーと同じく訓練兵団ニンジャ装束に身を包む彼はかなり小柄だ。1

キョジンスレイヤーは身構える。一切の油断は無い。デウスエクスのカラテはあまり洗練されていないように見えるが、
それが更に不気味さを際立たせている。先程目撃した怪しげなジツもある。「キョジンスレイヤー、僕は敵ではない」
「正体を明かすべき」「それは出来ない」「何故」「……それは、あなたと同じ理由だ」2

キョジンスレイヤーは市中の尖塔に片足立ちしたまま辺りを見回す。周囲にはキョジンスレイヤーを見つめる多くの目がある。
(グググ……)ソウルの昂りを感じる。キョジンスレイヤーのニューロン内に巣食う邪悪なソウルの声だ。
(エレン……エレンが見ているぞ……エレンを……prprしたい……)(黙れ)3

ミカサ・アッカーマンのニューロン内には三つの自我が共存している。一つはモータルとしての自我、一つは両親を失った時に
目覚めたリアルニンジャとしての自我、そしてもう一つはエレンの家族となった時に目覚めたニンジャ邪悪性の象徴。
隙あらば肉体の主導権を奪い、最愛のエレン・イェーガーを感情の赴くままに貪り尽くさんとする獣の意思である。4

ミカサ・アッカーマンはニンジャである。そしてそのソウルは残忍に獲物を狙っている。故に彼女はその正体を誰に明かす事も
許されてはいない。最愛の家族であるエレン・イェーガーにさえも。5

キョジンスレイヤーは身構える。一切の油断は無い。デウスエクスの言葉は全てを見通している様でもあり、
それが更に不気味さを際立たせている。先程目撃した怪しげなジツもある。「キョジンスレイヤー、僕は敵ではない」
「目的を明かすべき」「今は出来ない」「何故」「……あなたには分かっているはずだ」6

「状況判断せよ。フーリンカザンだ」デウスエクスが紡ぐ言葉には聞き覚えがある。父、母、そしてグリシャセンセイ……。
現在の状況は混乱している。トロスト区、ハバタキ・ストリート。侵入してきた巨人。破られた壁。逃げ惑う人々。
「分かった」キョジンスレイヤーは警戒を解く。優先順位だ。「話を聞こう」7

「またキョジンスレイヤーが現れたらしい」トーマスが言う。彼は事情通なので噂に詳しいのだ。
「スゴイよね」「スゴイ」口々に声が漏れる。巨人を狩る者、キョジンスレイヤー。その名は既に伝説となっていた。
その存在はパンクであり、ロックであり、ある種のアンタイセイでもあった。8

(何がキョジンスレイヤーだ。人任せにしていいのかよ)エレンは内心苛立つ。彼は強い憎しみに
由来する目的意識の持ち主であった。己の手で巨人を殺す。それを強く願っていた。彼は純真で、高潔であった。
それ故に自らの手で危険を冒す事が正しいと信じて疑わなかった。生来頑固な性格である。9

「イヤーッ!」「グワーッ!」思考の海に没入していた意識を声が呼び戻す。そこには巨人に咥えられたトーマスの姿があった。
(やられた……!奇行種のアンブッシュだ!)古事記に記された戦術を思い出す。奇行種と呼ばれる巨人は想定外の行動を行う。
その一つがアンブッシュだ。アイサツを省略しての攻撃には数多くの兵士が命を落としてきた。彼もその一人となる。10

「班長!周囲に四体、囲まれました!」班員が叫ぶ。巨人1体に対してモータル兵士では5人程度で当たるのが一般的なレシオだ。
トーマスを失い巨人は四体。四対三、圧倒的不利。増援も見込めない状況に追い込まれた彼らに生存の目はない。
目の前の巨人がトーマスを咀嚼し、ゴアめいた死体にしてから大きく音を立てて嚥下した。11

「ドーモ、ニンゲンの皆さん。モグモグタイムです」「キューティアイズです」「ファットモンキーです」「オールドオーガです」
巨人が次々とアイサツする。巨人は知性を持たないが、たどたどしくアイサツ行為を行う。これは威嚇行動であると推測される。
「アイエエエ……」囲まれた固定砲整備四班は失禁した。12

巨人の手が新人兵士たちを摘み上げ、スシを食べるような気軽さで口元に運ぶ。再生力と膂力で圧倒的に勝る巨人から
逃れる術は人間にはない。自分が死ぬ瞬間をただ座して待つ、イタマエを前にしたマグロの心境を味わう事になる。
「ヤメテ!ヤメテ!ヤメ」一人が喉の奥に消えた。その姿を目にして残った固定砲整備四班は失禁した。13

巨人の手が新人兵士たちを摘み上げ、スシを食べるような気軽さで口元に運ぶ。高熱の体温と巨躯で優位を得る巨人から
逃れる術は人間にはない。自分が死ぬ順番をただ座して待つ、ジゴク行きの船を待つオバケの心境を味わう事になる。
「ヤメロー!ヤメロー!ヤメ」一人が喉の奥に消えた。その姿を目にして固定砲整備四班長のエレンは失禁した。14

(もうダメだ……おしまいだ……巨人には勝てなかった)強い精神力を持つと評されていたエレンが絶望するのも
無理からぬことであった。巨人は強い。人間との間にはスゴイタカイカベくらいの隔たりがある。
スゴイタカイカベは人間を守ったが、人間は巨人には勝てない。ブッダは無情である。15

最後の一人となったエレンがゆっくりと口元に運ばれる。最後の一つになったトロマグロ・スシを食するようにゆっくりと、
名残を惜しむように緩慢で仰々しい動作だ。ソーマト・リコールがモノクローム再生され、ニューロンに新鮮な刺激が走る。
母親の姿、家族の姿、友人の姿が次々と浮かんでは消えていく。……その時!16

特に何も起こらない!エレンの体は巨人の滑りある口腔を通過し、体内の胃袋らしき部位へと運ばれる。
しかし巨人は生物を捕食し消化するわけではない。体内の高温で熱殺した後、改めて吐き出すのだ……。
意識を残したままそのおぞましい行いを体験することになった彼は不幸である。死んでいたほうがマシだ……!17

有機的な肉の壁に包まれ、煮え滾るセントーの如き液体に浸かりながらも彼の意識は残っていた。
しかしそれも時間の問題だ。数時間もすれば彼は死ぬ。彼が最後に見る事になるのは……
先に飲み込まれ、同じように絶望し、壮絶な死を遂げた沢山の人間の死体なのだ!ナムアミダブツ!18

「どうして」押し殺したように呟く。「どうしていつも奪われる」今まで溜め込んできた感情が蓋を押し上げる。
「巨人ナンデ!ナンデ!アーッ!アーッ!」満足に動かぬ体を揺すり、エレンは叫んだ。怒り、憎しみ、悲哀、未練。
彼の今までの人生の全てを凝縮した叫びは誰の耳にも聞こえていないかのように見えたが、しかし!19

おお、おお、ゴウランガ!読者の中に優れたニンジャ動体視力を持つ方がいるならば、その一瞬を見通すことが出来ただろうか!
瞬間、肉の壁を切り裂き太陽の光がエレンを照らした!これは一体如何なる事態か!20

重症の肉体を引きずり巨人の体外に這い出すエレンが目にしたのは、幾体もの巨人の死体!
人間の業とは思えぬ暴力的な旋風、あまりに鋭利な切れ味によってその項を切断されつくした姿!
そして、また一体残った巨人の姿が……爆ぜる!21

「Wasshoi!」訓練兵団ニンジャ装束に身を包み、首元にはマフラーが風にはためく。メンポには「巨」「殺」のカンジ!
伝説的に語られていた通りの姿、巨人の肉体を内側から突き破り現れたその姿こそ、紛れもなく我らがキョジンスレイヤー!22

「ドーモ、エレン=サン。キョジンスレイヤーです」「ドーモ、キョジンスレイヤー=サン。エレン・イェーガーです」
ニンジャはアイサツをする。しかしエレンは知らない、目の前にいるその半神的存在と自分は会った事があることを!
自分の大切な存在である、ミカサ・アッカーマンがニンジャであることを!23

「ここは危険、早急に避難すべき」キョジンスレイヤーが告げる。家族を守ることが彼女の最大の行動理由なのだ。
「イイイ、イヤだ」エレンは震えながら反抗する。ニンジャを目の当たりにした恐怖と混乱によって失禁しながらも
反抗し、応答を行った彼の精神力は実に驚嘆に値するものだ。24

「言っても聞かぬのならば、力ずくで移動させよう」「待って」キョジンスレイヤーの背後から現れたのは、「僕だ!」
「アイエエエ!?またニンジャ?ニンジャナンデ?」生と死の境界線上を行き来していたエレンの精神が決壊!
「続けて撃つと実際当たりやすい」伝説の兵法書に記された、古の攻撃メソッドか!?25

「ドーモ、デウスエクスです。キョジンスレイヤー、ここは任せて」金髪ニンジャがおもむろにエレンに歩み寄る!
「ヌンヌンヌン……」エレンの肩に手を置くと、手が超自然的極彩色発光!LEDボンボリでも再現できぬ複雑な色彩!
「アババババ」発光は肩からエレンの全身へ拡大!ニューロン影響なのか痙攣!流涎!「ヌンヌンヌン……」26

「アンシン・ジツ!イヤーッ!」「アバババッババーアアアー!」シャウトと共に一際激しく痙攣!
やがて光が止み、二人が開放される。デウスエクスは玉のような汗を額に浮かべ苦しそうにしていたが、
エレンの表情は悟りを開いたブッダのようにこの上なく穏やかであった。27

「ここは危険だからすぐに避難しなさい。いいね?」「ハイ」「ニンジャはいない。いいね?」「ハイ」
デウスエクスが優しく諭すように語り掛けると、エレンはニューロンを酷使し自我の曖昧になった病人の様に回答を返す。
アンシン・ジツとは一体如何なるジツなのか?それは「僕達は強い。ごあんしんください。いいね?」28

「安心です!」最後の言葉が鍵であったかのように、エレンは決断的に立ち上がり駆け出す!方向はカベの内側、避難所だ。
アンシン・ジツは精神を安定させる効果を持つ特殊なジツである。実際それは暗示めいた危険性を孕むが、
キョジンスレイヤーのニンジャ観察力と直感はデウスエクスの邪悪性を否定していた。29

「助かった」「気にしないで。エレンが危険な目に会うことは僕の本意でもない」キョジンスレイヤーは彼を注視した。
何故彼がエレンのことを気に掛けるのか。自分と似たような目的を持ち、協力を申し出たのか。答えは出ない。
「ウウ……胃が痛い……ジツの反動が」デウスエクスがよろめく。今は疑っている時ではないか。30

「動けるか」「大丈夫、でも僕はカラテがそれ程ではない」「問題ない。元より私一人のつもりだ」
エレンの事を考えると、全身に力が漲る。呼応してソウルの高ぶりを感じるが、それは強い精神力で封じ込める。
(大丈夫だ。ヘイキンテキ、自分を支配できる)感覚を確かめ、ニンジャは街へ跳ぶ!「巨人……殺すべし!」31

その姿を遠目に窺う影が二つ。一人は長身、一人はよく引き締まった肉体の持ち主であった。
「キョジンスレイヤー」「我々の障害になる」互いに顔を見合わせ意思確認の後、彼らの姿も掻き消えた。
その姿は装束に身を包み、メンポを装着した……紛れもない、ニンジャのそれであった。32

(「ブロークン・ウォール・アンド・リターン・オブ・ニンジャ」終わり。「ニンジャ・ディフェンス・ウィル・ヴェンジェンス」に続く)

◆巨◆ニンジャ名鑑#2【デウスエクス】◆殺◆
訓練兵団ニンジャ装束に身を包む、キョジンスレイヤーの協力者。エレンを守る事が目的。
アンシン・ジツは他者にリラクゼーション効果と自身への信頼感を植え付ける特殊なジツ。
しかしその反動は彼の胃袋にフィードバックされる。

◆読み難さ◆>>1は直ちにメキシコ研修に派遣されたので続きはありません。◆インガオホーな◆

「すまん」涙を流しながら絞り出すように彼は言う。「本当にすまん」

もしもネタが浮かんだらまた立てるかも知れないが、実際確率は低い。

それよりもあなたもまた忍殺を題材とした何かを書いてみてはいかがだろうか?

考えてみてほしい。SS深夜はコインを入れればスシが供される機械だろうか?自動販売機なのか?

ゲーム脳になっていないか?最近家族と話をしているか?バンブーや、ラッコのことを考えていますか?

つまりは多様性を尊重し、DIYの精神を貫くほんやくチームのアティチュードを忘れないでほしい。

それにしても http://ninjaslayer.jp/ は実際重要だ。

あなたの周りの書店にはおそらくニンジャアトモスフィアが潜伏しているに違いない。

ツイッターアーを利用している人は#njslyrをチェックするのも良い。遥かに良い。

なおほんやくチームや原作者と一切関係が無い。当然「アタック・オブ・タイタン」とも一切関係が無い。

更なるニンジャアトモスフィアの拡散の為、節度を持って活動していきたいと私は思う。

……アタック・オブ・タイタンとは一切関係が無い。勿論アタック・オン・タイタンともだ。

これはケジメ案件ではなく何らかの磁気嵐的現象か電子攻撃だ。仮にそうであったとしても

メキシコ研修中の>>1へのケジメは過酷だ。よってケジメはない。

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