苗木「僕が超高校級の幸運?」 (724)

苗木「そんなこと無いと思うけどなぁ……」

苗木「でも、あの希望ヶ峰に入れるのは幸運に間違いないし」

苗木「行ってみようかな」

――入学式 当日 朝――

苗木「ここが希望ヶ峰学園か。よし、行こう!」

苗木「玄関はここかな……えっと」

―――――

苗木「う、んん?」

苗木「ここは……教室? どうして」

苗木「何だろう。窓が鉄板で塞がれてる。外に出られないのか?」

苗木「……玄関ホールに行ってみよう」

――玄関ホール――

苗木「あ……」

セレス「まだ誰か来たようですわね」

苗木「あの……」

石丸「君、遅いじゃないか! 遅刻だぞ」

苗木「え? あ、すみません。朝早く来たんですけど」

苗木「その、なぜか教室にいて」

朝日奈「あなたも?」

苗木「え?」

舞園「私たちも気が付いたら教室にいたんですよ」

苗木「どういうこと?」

十神「こっちが聞きたいことだ」

腐川「一体、何がどうなってるのよ……」

ざわざわ

苗木(みんな、何も知らないのかな……ちょっと話を聞いてみよう)

苗木「あの……」

江ノ島「なに?」

苗木「あなたは……江ノ島さん?」

江ノ島「そうだけど、あんたは?」

苗木「僕は苗木誠っていうんだ。君は読者モデルの」

江ノ島「そうだけど、よく知ってるね」

苗木「有名だから……でも雑誌で見るのとちょっと感じが違うような」

江ノ島「あ、あれは、色々いじってるからさ。最近のなんて大体やってるよ」

苗木「そうなんだ。でも、君の顔、雑誌以外のどこかで見たような」

江ノ島「え?」

苗木「あ、そうだ。ついこの間、道端で拾った鞄に入ってた書類の、あの女の子にそっくりだ」

江ノ島「は、はぁ? 誰それ」

苗木「確か名前は……戦刃むくろ、だったかな」

江ノ島「!?」

苗木「まぁ君とは関係ないけどね。そのむくろって人何か危険な人らしいし」

苗木「超高校生級の軍人? だったかな。でもさすがにこの学校にそんな危険人物いないよね」

江ノ島「……」

苗木「ごめんね変な事言って」

江ノ島「え? あ、ああそうだね。あはは」

苗木「それじゃ、またあとで」

苗木(次は誰に声をかけようかな……)

セレス「どうも」

苗木「あなたは……」

セレス「セレスティア・ルーデンベルクです」

苗木「セレ……え?」

セレス「セレスとお呼びください」

苗木「セレス、さん。あなたは確か、ギャンブラーの?」

セレス「ええ。そうです」

苗木「……偽名ですか? ペンネームとかそんな感じの」

セレス「本名です」

苗木「……日本人?」

セレス「フランス人とドイツ人のハーフです」

苗木「日本語お上手ですね」

セレス「ありがとうございます」

苗木「案外、栃木県出身の多恵子さん、みたいな生粋の日本人だったりして」

セレス「……」

苗木「す、すみません。適当に言いました。忘れてください!」

セレス「当てずっぽうで名前当てるって、どれだけの確率……」

苗木(お、怒ってるのかな)

苗木「す、すみません。僕はこれで」

苗木(とりあえず、一通り話し終えた)

苗木(みんな凄い人ばかりだけど、そんなに話しづらいわけでもないな)

霧切「……」ジー

苗木(……霧切さん以外は。なんであの人こっち見てるんだろう)

ヴヴ・・・ヴヴ・・・

アナウンス「オマエら、入学式を行いますので、至急体育館まで来てください」

苗木「な、なんだ?」

山田「入学式、をやるようですね」

セレス「聞けば分かります。それで、行きますか?」

石丸「行くに決まっているだろう。入学式をサボるなんて許さないぞ」

大和田「そうだな、とりあえず行ってみないとはじまらねえ」

大和田「この状況に関しても、聞かなきゃいけねえしな」

苗木「……とりあえず、行ってみよう」

――体育館――

石丸「体育館は、ここだな」

大和田「どういうことだ、誰もいねえぞ」

モノクマ「やぁやぁ君たち、おっはようございまーす」

葉隠「う、うわ! びっくりした」

モノクマ「僕はこの――」

苗木「うわ、何か生徒たちに殺し合いを強要する黒幕が操る」

苗木「量産型で爆発とかもするロボット的なもの出てきた!」

苗木「まさかあれが学園長とか言わないよね!」

シーン

石丸「君、あまりふざけたことは言うものじゃないぞ」

舞園「そうですよ、殺し合いなんて冗談にしても酷いです」

腐川「ただでさえ混乱してるのに、ありえないこと言わないでよ!」

苗木「え? あ、そうだよねごめん。つい」

モノクマ「……」

苗木「すみません。それで何ですか? 続けてください」

モノクマ「えっとね。何かね。その、学園長は僕なんだけど」

苗木「え? 何て?」

モノクマ「……苗木君。君少し黙って」

苗木「あ、すみません」

モノクマ「おほん。僕がこの学園の学園長です」

セレス「その冗談はもう苗木君が言いましたわ」

モノクマ「……この学園でお前たちに殺し合いをしてもらいます」

大神「その冗談もさっき苗木が言ったが」

モノクマ「……お姉ちゃん」ナミダメ

朝日奈「は? お姉ちゃん?」

江ノ島「……が、頑張れ」ボソ

モノクマ「ともかく生徒手帳配るから、あとは好きにして」

大和田「は? てめえふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ。まずこの状況説明しやがれ」ガッ

モノクマ「うわー暴力反対暴力反対!」ピピピ

霧切「危ない! 投げて!」

大和田「お、おう! しまった!」ヒョイ

苗木「な、なんでこっちに!?」キャッチ

霧切「危ない!」

ピピピ……

苗木「……あれ? 何も起こらないけど」

霧切「え?」

苗木「も、もう。脅かさないでよ。爆発するかと思った」

葉隠「な、なんだ。やっぱりただの人形か」

不二咲「びっくりしたぁ……」

大和田「てめぇ、脅かしてんじゃねえぞ。偽学園長」

モノクマ「故障した……」

苗木「……あのクマ。逃げて言っちゃったね」

舞園「これからどうしましょう?」

石丸「生徒手帳の地図を見ると、どうやら一人ずつ部屋が用意してあるらしい」

石丸「外の様子が分からないが。時計を見る限りではもう夜だ」

石丸「とりあえず部屋で寝て、明日また考えよう」

大和田「それでいいのか?」

セレス「仕方ありませんわ。この状況を説明できる方は一人もいませんし」

セレス「落ち着いて頭の中を整理することも必要でしょう」

十神「仕方あるまい。今日は解散して、また明日考えるか」

苗木「そうだね。それじゃ、部屋に行こう」

――翌日 食堂――

苗木「……生徒手帳には物騒な事が書いてあるけど。でも」

舞園「信じられませんよね」

葉隠「また何かの茶番だべ」

石丸「とりあえず、この学園を手分けして探索してみよう。何か見つかるかもしれない」

苗木「そうだね。集合場所はまたここでいいよね」

舞園「苗木君、一緒に行きませんか?」

苗木「うん。いいよ」

舞園「それじゃ、行きましょう」

霧切「……」ジー

苗木(……また視線を感じる)

――数時間後――

苗木「みんな、何か見つかった?」

不二咲「食料はあるみたいだよ。モノクマが言うには補充もされるみたい」

苗木「モノクマ?」

不二咲「ああ、昨日のクマの人形」

不二咲「昨日自己紹介できなかったからって名乗ってきたよ」

大和田「あのクマは本当、意味がわからねえな。おちょくってんのか?」

苗木「他には何か……」

大神「あのクマはふざけたようにしか見えなかったが」

大神「どうやら出られないのは本当らしい」

朝日奈「あっちこっち見て回ったんだけど、どの窓も鉄板で塞がってたよ」

朝日奈「玄関ホールの扉はどうやって開ければ良いかも分からなかった」

大神「私の力でも破壊は出来なかった」

苗木「そっか……」

さくらちゃんの一人称は我

桑田「部屋にはそれぞれ工具と裁縫があったぞ」

山田「男子には工具、女子には裁縫、らしいですな」

葉隠「なんだ? みんなで協力してここで暮らせって事か?」

石丸「なるほどありえるな。入学したばかりの新入生が」

石丸「サバイバルの中で友情を深め合うために」

石丸「こういうことをしているのかもしない」

江ノ島「え? いや違っ」

大和田「なんだ、そんなことか。くだらねえな」

十神「全くだ」

苗木「まぁまぁ、みんな。折角こういう機会を貰ったんだし、仲良くしようよ」

舞園「そうですよ。みんなここの生活を頑張りましょう」

不二咲「おとまり会ってことかな。ちょっと楽しそう」

葉隠「どっちかっていうと、合宿だべ」

江ノ島「……」

>>45
すまん

石丸「よし。そういうことなら頑張ってここで暮らしていこう」

十神「仕方あるまい」

腐川「ど、どれくらい暮らせばいいのかしら」

朝日奈「一ヶ月くらい?」

桑田「今年一年かもな」

葉隠「さすがにそれはないべ」

江ノ島「……」

――翌日 食堂――

苗木「とりあえずみんな集まったけど……」

舞園「私たちは一体なにをすれば良いんでしょう?」

石丸「勉強に決まっているではないか」

大和田「どこに勉強道具があんだよ」

石丸「それは……」

セレス「仕方ありませんね。苗木君、私の部屋でポーカーでもしませんか?」

苗木「え?」

セレス「やることもありませんし。トランプなら、持ってますから」

苗木「でも、セレスさんに勝てる気がしないよ」

セレス「大したものは賭けませんから、大丈夫です」

苗木「それなら……」

江ノ島「あ、あのさ……」

舞園「私も行っていいですか?」

セレス「かまいませんよ」

江ノ島「こ、ころし……」

山田「僕は漫画でも描いていましょうかね」

石丸「何だペンと紙があるのか。では貸してくれ、僕は勉強をする」

大和田「そこら辺歩いてくるか」

江ノ島「ころ……」

大神「我は……ランニングするか」

朝日奈「私も行くよ。桑田君も行く?」

桑田「俺は……まぁ他にやることもねえしな。一応野球部だし」

十神「それでは各自好きな事でいいな……江ノ島、どうかしたか?」

江ノ島「……部屋でコロコロクリーナー転がしてくる」

セレス「それでは行きましょうか」

舞園「はい。行きましょう、苗木君」

苗木「うん」

霧切「」ジー

苗木「……あ、あの。霧切さんも来る?」

霧切「わ、私は……」

セレス「かまいませんよ?」

霧切「……行くわ」

――セレスの部屋――

セレス「ストレートフラッシュ」

苗木「ロイヤルストレートフラッシュ」

舞園「ま、また苗木君の勝ち?」

セレス「ありえませんわ……」

霧切「ロイヤルストレートフラッシュ三回。ストレートフラッシュ五回。フォーカード十回」

霧切「神がかってるわね……」

セレス「私のカードでやって霧切さんと舞園さんに配って貰って」

セレス「不正はないはずですのに……」

苗木「ま、まぐれだよ」

舞園「すごいです苗木君」

セレス「今日で運を使い果たして、明日辺りしぬかもしれませんわね」

苗木「ふ、不吉な事言わないでくださいよ」

霧切「……」

舞園「えっと……ワンペアです」

苗木「フラッシュ。僕の勝ちだね」

セレス「相手を問わずこれで三十連勝……なんて強運」

霧切「一体、なにが」

モノクマ「流石、超高校生級の幸運だね」

苗木「ま、まぐれだって」

セレス「三十回連続でまぐれを起こすのは、才能だと思いますわ」

舞園「本当、凄いですね」

霧切「ええ。正直、驚いたわ」

モノクマ「……スルーですか」

苗木「あ、モノクマだ」

舞園「こんにちは」

霧切「……こんにちは」

セレス「あなたもポーカーやりますか?」

モノクマ「まぁポーカーもいいけど。今日はお前たちにプレゼントがあります」

モノクマ「至急、他の連中をつれて視聴覚室にきなさい。それでは!」

苗木「プレゼント?」

舞園「なんでしょうか」

霧切「とりあえず行ってみましょう」

セレス「そうですわね。他の皆も連れて」

――視聴覚室――

大和田「プレゼントってのは一体なんだ?」

苗木「僕たちも聞かされてないんだ。何かが渡されるみたいだけど」

石丸「勉強道具だろう。教科書とノートと筆記用具だ」

朝日奈「プールとかじゃないかな。体育館だけじゃ暇だしさ」

大神「トレーニングするための場所も欲しい」

山田「それはただの願望なのでは?」

苗木「あ、着たみたい」

モノクマ「どうもどうもお前ら。こんにちは」

モノクマ「プレゼントだけどね。そこのダンボールに入っているから」

モノクマ「各自自分のものを取ってください」

苗木「ダンボール? これかな。中身は……DVD?」

モノクマ「そ。この場で見てもいいよ。何せそれには」

苗木「よしそれじゃ配るよ……っとっと。あ」ガッシャーン

大和田「おい! なにしてんだ!」

舞園「ああ、割れちゃいましたね」

苗木「あ、ご、ごめん」

石丸「全く君は、落ち着いて行動すべきだ」

腐川「そうよ。どうしてくれんのよ」

不二咲「ま、まぁまぁみんな落ち着いて」

苗木「本当にごめん」

モノクマ「……」

モノクマ「ま、また妨害された……とでも言うと思った苗木君!」

苗木「え?」

モノクマ「ちゃんとDVDは複製品があるからね。ほら、みんな並んで並んで」

モノクマ「そしてこの場で見てください。その中身を。外でなにが起こっているかを」

苗木「も、モノクマ……」

モノクマ「」フフン

苗木「ありがとう! 助かったよ」

モノクマ「え? あ、うん。そうだね。とりあえず君の分。さっさと見ちゃってください」

苗木「……こ、これは」

舞園「ど、どういうことですか! これは! これは、本当に……!」

苗木「ま、舞園さん、落ち着いて!」

大神「……事実、なのか?」

モノクマ「とろあえずそこにあるのは事実だよ」

モノクマ「それで、そのあとどうなったか。知りたいよね? 知りたいよね?」

セレス「別に」

モノクマ「そう言う人には聞いてない」

モノクマ「でも、知りたいと思っている人はいるみたいだよ」

舞園「……」

モノクマ「生徒手帳はお前ら全員持ってると思います」

モノクマ「そこに書かれている事も読んだよね。この意味分かるよね」

苗木「……本当に、殺し合いを?」

モノクマ「その通り! やっと分かってくれたみたいでほっとしたよ」

江ノ島(……今だ!)

江ノ島「ふ、ふざけんな!」フミ

モノクマ「うわぁ、暴力反対。助けてグングニルの槍!」

江ノ島「え?」

苗木「何を……うわ、つまずいた!」

江ノ島「きゃあ」

モノクマ「は、外した……!?」

苗木「ご、ごめん江ノ島さん」

江ノ島「い、いや。別にいいけど……ていうか、こっちこそありがとう……」

江ノ島「……」チラ

モノクマ「やば。それじゃ、またばいばい!」

大和田「ま、待ちやがれ!」

セレス「行ってしまいましたわ……」

舞園「……」

霧切「……」

――同日 食堂――

苗木「これから、どうしよう」

舞園「……」

石丸「……みんな、DVDを見せ合わないか」

大和田「な、何でそんなことしなきゃいけねえんだよ」

石丸「お互いを信用する為だ。まさか……殺しなんて起きないとは思うが」

十神「悪いが、俺はごめんこうむる」

石丸「な、なぜ」

十神「見せた所で、信用できるかどうかはまた別の話だからだ」

十神「これから殺し合いをしようという仲だぞ。自分の情報はなるべく与えたくない」

石丸「そ、そんな。殺し合いなんて」

腐川「わ、私も嫌だわ」

石丸「ほ、他のみんなは」

山田「……」

大神「……」

石丸「……そうか。仕方ない」

セレス「こういう状況になった以上。自分の身は自分で守らなければいけませんね」

苗木「みんな……」

舞園「……」

石丸「とりあえず、今日はこれで解散か」

石丸「各自部屋に戻ろう。無いとは思うが、一応みんな戸締りは忘れないように」

セレス「それでは、また明日」

桑田「……おう」

苗木「舞園さん。行こうか」

舞園「ええ」

――苗木の部屋――

苗木「もうそろそろ夜時間か。お風呂にも入ったし。そろそろ」

ドンドンドン

苗木「ん? 誰だろう」

ガチャ

苗木「舞園さん……? どうしたの顔が青いよ」

舞園「お、音が。扉が……」

苗木「どうしたの舞園さん。しっかりして」

舞園「誰かが私の部屋に入ろうと、ドアノブを回していたんです。乱暴に」

舞園「私怖くなって、相手がドアを離れてから急いでここに」

苗木「だ、大丈夫?」

舞園「え、ええ。鍵はかかっていたので」

苗木「良かった。相手は誰か……分からないよね」

舞園「はい。私怖くて」

舞園「苗木君。お願いします、部屋を交換してくれませんか?」

苗木「え?」

舞園「お願いします。私このままじゃ怖くて眠れません」

苗木「……いいよ分かった。舞園さんよりは僕の方が力もあるしね」

舞園「ありがとうございます」

苗木「それじゃ、僕は隣で寝るから。戸締りはちゃんとしてね」

舞園「はい。それでは」

――舞園の部屋――

苗木「舞園さんの部屋か……いやいや、変なこと考えちゃ駄目だ」

苗木「とりあえず、寝ようかな」

苗木「……眠れない」

苗木「そういえば何かを忘れている気がするんだけど、何だろう」

苗木「えっと……」

苗木「はっ! やっと思い出した。お風呂場にパンツ置きっぱなしじゃないか!」

苗木「明日の朝、舞園さんがシャワーを浴びたら見られてしまう!」

苗木「仕方ない。もう遅いけど、パンツだけ回収させて貰おう……って入れてもらえるかな」

苗木「まぁ、いいやとりあえず行くだけ行ってみよう」

――苗木の部屋前――

苗木「舞園さん、ごめんちょっと入れてもらって良い?」

苗木「舞園さん?」ガチャ

舞園「くっ……」

桑田「よ、よせ!」

苗木「開いている。舞園さんちゃんとドアは閉めないと……舞園さん! 桑田君!」

舞園「な、苗木君!?」

舞園「な、なぜ」

苗木「それはこっちの台詞だけど……まさか二人付き合ってたの?」ガーン

桑田「この状況見てどうしてそう思う!」

苗木「え? 違うの?」

桑田「俺は殺されかけてんだ! 馬鹿野朗!」

苗木「え? そうなの? てっきり何かのプレイかと」

桑田「お前どんな思考回路してんだ! 見りゃ分かるだろ!」

苗木「それじゃ舞園さん。まず包丁を置こうか」

舞園「……」

舞園「苗木君……わ、私は……」

苗木「あのDVDでしょう?」

舞園「……ええ。私」

苗木「何か、あったんだね。家族? 友達? それとも、ああアイドルの仲間かな」

舞園「……苗木君」

苗木「モノクマが殺し合いの動機を作ろうとしたくらいだからね」

苗木「あのDVDの中身がそれ相応のものだって事は分かってる」

苗木「でも舞園さん。あのDVDが本物かどうか分からないよ?」

苗木「それなのに、こんなことしちゃ駄目だ。それじゃモノクマの思う壺だ」

舞園「……でも、一刻も早く確かめないと」

苗木「他に方法はあるよ」

舞園「どんな? どんな方法があるんですか?」

苗木「それを探そう。これから」

苗木「こんな事まで起きてしまった以上は、それを探さなきゃいけない」

舞園「それじゃ、遅いかもしれないんですよ」

苗木「遅くないかもしれない。誰も犠牲にならない、ハッピーエンドがあるかもしれない」

苗木「可能性があるなら諦めちゃ駄目だよ。舞園さん」

苗木「希望があるなら自分から捨てちゃ駄目だ」

舞園「……ううっ」バタッ

苗木「舞園さん!」

苗木「舞園さん、大丈夫?」

舞園「……」

霧切「気を失っているだけよ。緊張の糸が切れて、疲れが出たんじゃない?」

苗木「うわ霧切さん、いつの間に」

霧切「苗木君が説教始めたあたりからいたわ。なかなかはったりが上手ね」

苗木「はったりって……」

霧切「ともあれ見事だったわ。殺人は未然に防がれたし」

桑田「お、おう。助かったぜ苗木」

苗木「うん、まぁ良かったよ……だけど」

霧切「どうする? この子、監禁でもしておく?」

桑田「と、とりあえず手足を縛っておけばいいんじゃねえか?」

苗木「そんな」

霧切「殺人未遂よ。あなたが運よくここに来なければ、殺人は起きていたわ」

苗木「そうだけど……でも、理由があったんだ」

霧切「理由があったら人を殺してもいいの?」

苗木「殺してはいないよ。未遂だ」

霧切「未遂でも何でも、一度起きてしまったことで」

霧切「私たちがここで生活する危険性は跳ね上がったわ」

霧切「二度目が起きる可能性もある」

苗木「そんな事言ったら、ここにいるみんな、殺人を犯さないという確証はないよ」

霧切「そうね。できればみんな部屋に閉じこもって生活するのが一番かもね」

苗木「そんな……そんなことは、無理だよ」

霧切「そうね、無理だわ。人が集団で生きていく以上、信頼は必要」

霧切「それで、どうする?」

苗木「え?」

霧切「どうするって聞いているのよ。私はこの子を監視下に置いたほうが良いと思うけど」

霧切「苗木君はどう思うの?」

苗木「どうって……僕は舞園さんを信じたいよ。もう殺人はしないって」

桑田「お、おいマジでいってんのか?」

苗木「うん。僕が一番良いと思うのはみんな一緒にここから出る事だよ」

苗木「それを達成するには、信頼は大切だ」

苗木「みんなの信頼を得るためにはまずこっちが信頼しないと駄目だよ」

苗木「みんなの中には、もちろん舞園さんも入ってる」

霧切「この状況からみんなが手を取り合って外に出られるなんて」

霧切「あまりにも現実味が無いわ。理想よ」

苗木「そうだね。でも、それを言ったら一人だって出られるか分からないよ」

苗木「どうなるか分からないんだ。それならまずは一番良い理想に向かって行こうよ」

苗木「僕は舞園さんを、みんなを信じたい。希望を捨てたくないよ」

霧切「……分かった。あなたに任せるわ」

桑田「お、俺は助けられた側だしな。何もいえねえよ」

桑田「でも苗木。俺も、少なくともお前だけは信じるぜ」

苗木「ありがとう」

苗木「僕たちの希望はこれからだ」



すんません。もう寝ます。

すんません。
明日の朝ちょっと余裕あるのでもうチョイ続けます

――翌日 食堂――

石丸「おはよう。何事も無く一日過ぎて良かった」

苗木「石丸君、ちょっといいかな」

石丸「ん? なんだ」

霧切「……本当に言うの?」

苗木「あとからばれたら、余計にみんなの信頼を失うよ」

苗木「それに僕はみんなを信じてる」

霧切「それでいいなら、いいけど」チラ

舞園「私は……苗木君にすべてお任せします」

桑田「俺は、苗木がやるならこれ以上責める気はねえ。好きにしてくれ」

苗木「うん」

石丸「何かいうなら早くしたまえ」

苗木「実は……」

苗木「……ということがあったんだ」

石丸「なんと」

朝日奈「そんな……」

腐川「さ、殺人未遂なんて! は、早くそいつを捕まえてよ」

苗木「ちょ、ちょっと待って! だからそうじゃなくてみんなを信頼して」

十神「それは無理だな。考えなくとも分かるだろう」

十神「この状況で殺人未遂と言うのが、どれだけ致命的かという事が」

十神「そいつは俺たちの間を繋いでいた一本の糸を切ったようなものだ」

十神「この件は舞園だけではおさまらない。この瞬間、全員が敵になった」

舞園「……」

不二咲「み、みんな。待って、ちゃんと話を聞いてあげようよ」

石丸「そ、そうだ。みんな冷静に!」

山田「そ、そうですな。まずは冷静に、冷静に……いや無理ですぞこれは!」

苗木「ま、待ってよみんな。落ち着いて」

朝日奈「……」

大神「……」

十神「諦めろ。これはそういうゲームだ」

苗木「ゲームって……」

腐川「……」

十神「殺さなければ殺される。そういうことだ。認めるんだな」

苗木「……殺さなければ殺される、ってことは」

苗木「積極的に誰かを殺したいとは、思ってないってことだよね?」

苗木「誰も人を殺したいなんて思ってないんだよね?」

朝日奈「あ、当たり前だよ!」

腐川「だ、誰が望んで殺人なんか……私だってあいつさえいなければ……」

苗木「それなら、殺さなければ殺されるじゃなくて」

苗木「誰も殺さなければみんな助かるって考えようよ」

十神「……」

苗木「誰も殺す気はないんだ。追い詰められて仕方なくやろうとしてる」

苗木「じゃあ、やる必要なんかないじゃないか。誰も追い詰められてなんかいない」

苗木「人を殺す方法を考えるより、みんなで助かる方法を考えようよ」

朝日奈「……」

腐川「……」

十神「それは理想だ。現実がそう上手くいくとは限らない」

霧切「上手くいかないとも限らないわ」

十神「……」

霧切「誰も殺さなくて良いならそれに越した事はないわ」

十神「しかし……」

霧切「あなたは積極的に殺しがしたいの?」

十神「……ふん」

葉隠「……誰もしなないなら、確かにそれが一番だべ。うん。俺は信じてみる」

朝日奈「わ、私も……信じてみるよ。信頼しないより、した方が楽だしね」

苗木「みんな……」

腐川「私の意見なんか、誰も聞いてないでしょうけど……わ、私も信じてみるわよ」

腐川「い、一応ね……」

苗木「ありがとう」

腐川「……ふん」

石丸「どうやらその方向で決まりそうだな。うん、何とかまとまって良かった」

山田「苗木君の手柄ですけどね」

セレス「それではルールを作りましょうか」

苗木「ルール?」

セレス「ええ。互いを信頼するには、やはりただとは行かないでしょう」

セレス「みんなが納得した一つのルールを作る事で」

セレス「少しでも信頼の根拠を作っておけば、安心できるのでは?」

苗木「でも、どんな?」

セレス「簡単ですわ。夜時間には自分の部屋の外へ出ない。これだけです」

石丸「なるほど、確かに良い案だ」

十神「そんなもの、所詮口約束に過ぎない」

セレス「無いよりはマシでしょう。それにこのルールを守る人はある程度信頼置けますでしょう?」

セレス「あなたは守りたくないんでしょうか?」

十神「……いや、結構だ。危険な夜のリスクが下がるならば、越した事は無い」

朝日奈「でも、それってもし他の人の部屋とかに行ってて」

朝日奈「気付かずに夜時間まで過ごしてしまったら、どうすれば良いのかな?」

セレス「その時は、舌を噛んで潔くしになさい」

朝日奈「え、ええ!?」

苗木「さすがにそれは……じゃ、じゃあ夜時間開始から十分後って事でどうかな」

苗木「夜時間の時はアナウンスがあるし、それから十分あれば自分の部屋へ行けるでしょ?」

山田「なるほど、たしかに名案ですな」

セレス「では、もしそれでもルールを破った人がいた場合は、その方におしおきですわね」

苗木「おしおき? お、おしりぺんぺんとか?」

セレス「いえ、セレスティアバスターです」

苗木「せ、セレスティアバスター!?」

セレス「私がヒールをはいて、相手の体を踏みつけます」

山田「我々の世界ではご褒美――」

セレス「では、あなたの場合は喉笛を引き裂きます」

山田「我々の世界でも拷問ですぞー!?」

苗木「いや、たぶん、しんじゃうから……」

苗木「と、とにかく、ルールはこれでいいかな」

セレス「問題ありませんわ」

大神「問題ない」

大和田「いいぜ」

苗木「それじゃ、今日はまた出口を探そうか」

石丸「それがいいだろうな。実質的に自由行動だが」

苗木「じゃあ、夜時間の一時間前に、ここに集合で」

不二咲「うん。それじゃ、まああとで」

江ノ島「……」

苗木「それじゃみんな自由行動で……」

霧切「舞園さんは苗木君と私が監視役でいいわよね」

苗木「監視って」

霧切「信頼を得るにはそれ相応の行動もいるわ。今は耐えて」

舞園「大丈夫ですから、私。悪いのは全部私だって分かってますし」

舞園「苗木君と霧切さんなら、私も安心できます」

苗木「舞園さん……分かった。それじゃ行こうか」

舞園「はい」

江ノ島「……ちょっといい?」

苗木「え? 何かな」

江ノ島「少しで良いから時間ちょうだい」

苗木「いいけど……それじゃ二人とも、先に行っててくれるかな」

舞園「分かりました」

霧切「……分かったわ」

苗木「それで、何かな?」

江ノ島「……」

限界だわ。チョイ寝る
残ってたら書くかもしれん

まだ残っていたとは……続き書きます

苗木「江ノ島、さん?」

江ノ島「とりあえず、私の部屋に来て。そこで話す」

苗木「わ、分かった」

――江ノ島の部屋――

苗木「それで……」

江ノ島「単刀直入に聞く。あなたはどこまで知ってるの?」

苗木「……え? な、何を」

江ノ島「この学園とモノクマについて」

江ノ島「あなたはどこまで知ってるの? って聞いてるの」

苗木「どこまでって、たぶんみんなが知っている以上には」

苗木「知らないと思うけど」

江ノ島「嘘。そんなはずない」

江ノ島「あれだけ回避しておいて、何も知らないなんてわけない」

江ノ島「まさか、まだ記憶があるの?」

苗木「記憶? 何のこと?」

江ノ島「とぼけないで」

苗木「本当に分からないよ。江ノ島さんの方こそどうしたの?」

苗木「口調も変わってるし、それに記憶って……」

苗木「君は何か知っているの?」

江ノ島「うっ……それは……」

苗木「江ノ島さんは、何か知っているの? なら、それを教えて」

モノクマ「絶望的モノクマハンマー! せいや!」

苗木「うわ、またつまずいた!」

江ノ島「うわっ」

モノクマ「……また、外した……何だろうね、この絶望的命中率」

苗木「ご、ごめん江ノ島さん」

江ノ島「い、いや……大丈夫」

苗木「も、モノクマ……!?」

モノクマ「やぁやぁ苗木君」

モノクマ「相変わらず人まで伝播するラッキーマンだねぇ」

モノクマ「正直こちらとしては不愉快の極みです!」プンスカ

モノクマ「みんな殺し合いしてくれないし。この間はもうちょっとだったのに」

モノクマ「君、本当邪魔だよ!」プンプン

苗木「……」

モノクマ「それに江ノ島さんもね。一体、何事かなこれは……」

江ノ島「……」

モノクマ「女の子が自分の部屋に一人で男子を連れ込むなんて……」ハァハァ

モノクマ「不純異性交遊は認めないよ!」

苗木「いや僕はただ話を……」

モノクマ「認めません! 認めません!」

モノクマ「男の子はみんな狼だからね! いつ変貌するか分からない」

モノクマ「一対一で部屋の中、は如何なる場合でも許されないよ!」

モノクマ「以後気を付けるように! 意味は分かるよね?」

江ノ島「……」

モノクマ「それじゃ……」ヒョイ

苗木「一体、何が……」

モノクマ「あ、そうだ。伝える事があったんだった」ヒョイ

苗木「うわ、戻ってきた」

モノクマ「君たちの中に裏切り者がいるよ。近々殺人が起きるかもね」

苗木「……え?」

江ノ島「……」

モノクマ「誰が殺されるかは、お楽しみ。うふふふふ」

モノクマ「それじゃね!」

苗木「裏切り者……」

江ノ島「な、苗木、これは……」

苗木「一体誰だろう。さっぱり分からない!」

江ノ島「……」

江ノ島「いや、どう考えてもこれは」

苗木「一体誰なんだ裏切り者! 違う! そうじゃない」

苗木「本当は裏切り者なんていないんだな! そうだ!」

苗木「これもモノクマの罠か。デマ情報を流して僕たちを疑心暗鬼にさせる」

苗木「そういうことか!」

江ノ島「……馬鹿なのか」

苗木「そういうことだから、江ノ島さん!」

江ノ島「な、なに?」

苗木「僕は君を信じるよ」

江ノ島「……え?」

苗木「僕は君を信じる。みんなを信じる」

苗木「裏切り者なんていないんだ。だから安心して」

江ノ島「……」

苗木「大丈夫。きっとみんなで外に出られる。希望はあるよ」

江ノ島「苗木……」

苗木「それじゃ、僕はこれで。またモノクマに襲われるのも嫌だし」

苗木「江ノ島さんも気をつけてね」

江ノ島「……う、うん」

苗木「それじゃ」

江ノ島「……ばいばい」

苗木「はぁ……疲れた」

舞園「お疲れ様です」

苗木「うわ、いたの?」

霧切「当たり前でしょう。江ノ島さんは、怪し過ぎるわ」

霧切「モノクマの言ってた裏切り者も、十中八九彼女よ」

霧切「まさか、本当に信じてはいないんでしょう?」

苗木「……僕は信じてるよ。彼女は裏切り者じゃない」

霧切「確証でもあるの?」

苗木「……僕は信じるよ」

霧切「それは、もはや理想や希望じゃないわ。ただの現実逃避よ」

霧切「彼女は裏切り者。さっきの不可解な発言、態度」

霧切「モノクマの出てきたタイミング。どれを見ても彼女が裏切り者なのは明白」

苗木「だから、だよ。彼女が裏切り者なんて、あまりにも分かりやす過ぎる」

苗木「モノクマだって、殺人が起きる前に裏切り者を明かすようなことするかな?」

霧切「それは……」

苗木「それにね、例え裏切り者が僕らの中にいたとしても」

苗木「最後には、きっと僕たちの味方に戻ってきてくれるよ」

苗木「僕はそう信じてる」

苗木「舞園さんだって、ちゃんと味方に戻ってきてくれたしね」

舞園「苗木君……」

霧切「……甘いのね。でも、いいわ。判断は任せる」

苗木「ありがとう」

霧切「……あなたの運がいいからよ」

霧切「あなたの判断に任せれば、最後には全部幸運な方に傾くから」

苗木「それって、信じてくれたって事だよね」

霧切「あなたの運をね」

苗木「ありがとう」

霧切「……もういいわ。行きましょう」

――食堂――

苗木「みんな、揃ったね。それじゃ何か見つけた人いるかな」

石丸「すまない。今まで分かっていた以上の事は分からなかった」

大和田「俺もだ」

腐川「や、役立たず……」

不二咲「もしかして、何か見つけたの?」

腐川「わ、私は……何も見つけてないわよ……ふん」

山田「状況が変わりませんからなぁ……」

セレス「そうですわね。同じところをどれだけ見たところで、見つかるものはありませんわ」

セレス「二階にいければ、また見つかるものもあるかもしれませんが」

朝日奈「あのシャッター。どうすれば上がるのかな?」

十神「殺人、だろうな」

舞園「え?」

十神「これはゲームと同じだ。展開を進めるには何かしら進展がなければいけない」

十神「この場合の進展とは、すなわち殺人だ。そうだろう?」

不二咲「そ、そんな……」

桑田「ふ、ふざけんなよ。もう殺人はしねえって決めたばかりじゃねえか」

桑田「みんなで出るんじゃねえのかよ」

十神「それはこちら側が勝手に決めた事だ。モノクマは知った事じゃない」

十神「殺人をしなければ、この学園の真相にも近づけん」

十神「そういうことだ」

霧切「でも殺人が起きたからと言って、二階に行けるとは限らないわ」

霧切「それに二階へ行ったからと行って外への出口があるとは限らないし」

霧切「この一階だけで、外へ出られる方法が見つかるかもしれない」

十神「……否定はせん。俺のはただ一番大きな可能性を提示しただけのことだ」

苗木「……と、とにかくさ。もうちょっと一階を探してみようよ」

苗木「外に出られる手段……じゃなくても、二階へ上がる手段は見つかるかもしれない」

苗木「もうちょっと、様子をみよう」

大神「……」

江ノ島「……」

――階段シャッター前――

苗木「困ったなぁ……」

舞園「困りましたね。二階への階段は閉ざされたままですし」

舞園「一階はもう、ほとんど見てしまいましたし」

霧切「……」

苗木「確かに、二階へ上がることが出来れば、何か見つかるかもしれないけど」

苗木「そう簡単に、開いてくれないよね……」

江ノ島「……」

苗木「あれ? 江ノ島さん、どうしたの?」

江ノ島「え? ……あ、いや。私はその。ちょっと」

霧切「……このシャッターを上げる方法を、知っているのかしら?」

江ノ島「そ、それは……分からない」

苗木「そうだよね……困ったなぁ」

霧切「……」

苗木「なんかこう、衝撃とか与えれば何かの拍子に上がらないかな」

舞園「そんな脆くは出来てないと思いますけど……」

苗木「そうだよね……えいっ」キック

江ノ島「あ、あの――」

ガシャ ウィーン

江ノ島「……え?」

苗木「あ、開いた! 開いたよこれ!」

舞園「ええ!?」

霧切「……脆かったわね」

江ノ島「そ、そんな馬鹿な……」

苗木「やった! これで二階に行ける」

霧切「……」

モノクマ「ちょっと待ったー!」

苗木「うわ! モノクマ!?」

モノクマ「何これ、マジこれ、本当アリエナインですけどー!?」

苗木「な、何?」

モノクマ「なに? じゃないでしょ! それは反則だよ!」

モノクマ「殺人も起きてないのに、ただのラッキーで二階に上がるなんて」

モノクマ「夢オチ以上にやっちゃいけない展開だよね!」

モノクマ「そんなの、手○先生が許してもモノクマ先生は許しませんよ!」

苗木「な、なにを」

モノクマ「ということで、校則違反っていうか、ルール違反のおしおきタイム」

モノクマ「今度こそ食らえ、グングニルの槍増量版!」

苗木「う、うわ!?」

舞園「な、苗木君!」

霧切「逃げて!」

江ノ島「――!」

モノクマ「……これは、どういうことかな?」

モノクマ「……江ノ島さん!」

江ノ島「先にやったのはあなた。私は二度、見逃したわ」

モノクマ「……ちょっと手が滑っただけじゃないのさ」

江ノ島「なら、私も足が滑って、たまたま苗木君を押しただけ」

モノクマ「……そういうことでいいのかい? 一人になるよ」

江ノ島「互いに孤独。絶望的でしょう? 私は好き」

モノクマ「うふ、うふふふふ。なるほどそういう路線に変更か」

モノクマ「いいよ。分かったよ! それじゃ、もう一度仕切りなおして」

モノクマ「みんなまとめて、絶望してもらおうかな!」

モノクマ「それじゃ、ばいばい! また会おうね!」ヒョイ

江ノ島「……」

霧切「……」

苗木「う、ん……」

舞園「苗木君! 大丈夫ですか!?」

苗木「ま、舞園さん……うん、大丈夫だよ」

舞園「良かった……」

江ノ島「……」

霧切「あなた、今なにを話していたの? 随分、相手を知ってるみたいだったけど」

江ノ島「……さてね」

霧切「何か、知っているのね。裏切り者は、やはりあなたかしら?」

江ノ島「……どうかな」

霧切「……真面目に答えてくれる? こっちはみんなの命がかかってるの」

江ノ島「知った事じゃない」

霧切「あなたは――」

苗木「江ノ島さん!」

霧切「……」

江ノ島「なに?」

苗木「ありがとう。助けてくれて」ニコッ

江ノ島「……べ、べちゅに、大したことじゃ」

霧切「……」

舞園「……」

江ノ島「」カァ

江ノ島「わ、私はちょっと、他を見てくる。それじゃあ、ね」

苗木「あ、うん。また、あとで」

霧切「……」

霧切「苗木君」

苗木「な、なに霧切さん。顔、怖いよ」

霧切「今のは、追い詰めておくべきだったわ」

霧切「情報も聞き出せたかもしれないのに」

苗木「そ、そうかもしれないけど……でも、やっぱり」

霧切「向こうから明かしてくるのを信じたいっていうの?」

苗木「……うん」

霧切「今は一つでも情報が欲しいの。この状況を打破する情報が」

霧切「早く、手掛かりの一つでも見つけないと」

霧切「それにいい加減にしないと、このままじゃあなた、いつかしぬわ」

苗木「……分かってる、けど」

霧切「今だって、運よく江ノ島さんが来て」

霧切「いいタイミングで裏切ってくれたから良かったようなものの」

霧切「……本当、底なしの運ね」

苗木「……うん」

霧切「でも気をつけなさい。幸運だって、いつまで続くかも分からないのだから」

苗木「……分かったよ。心配してくれてありがとう」

霧切「あなたの心配じゃ……まぁいいわ。それより早くみんなを呼んできましょう」

苗木「そうだね。折角二階へ行けるようになったんだし」

舞園「それじゃ、呼んできますね」

石丸「おおっ! 本当だ二階へ行けるようになっている! お手柄だぞ苗木君」

大和田「一体どうやったんだ?」

苗木「えっと、蹴ったら開いたって言うか」

桑田「す、すげぇな」

不二咲「力強いんだね苗木君。いいなぁ」

大和田「今度、一回タイマンしてみねえか?」

大神「我も、お手合わせ願いたい」

苗木「い、いやそれは、ちょっとお断りしたい、かな」

十神「ともかく、これで二階へいけるようになった。また探す場所が増えたって事だな」

朝日奈「外に出る手掛かりあるかな」

腐川「なきゃ困るわよ」

セレス「外に出る手掛かりではなくとも」

セレス「この学園に関する手掛かりは欲しいですわね」

石丸「ともかく、行ってみようではないか」

葉隠「そうだべ。とりあえず行って見ないとなにもわからないべ」

苗木「よし、行こうか」

舞園「はい!」

霧切「……」

霧切「苗木君、ちょっといいかしら」

苗木「なに?」

霧切「あなた、ちょっと玄関の扉を蹴ってみてくれない?」

苗木「え? どうして?」

霧切「二階のシャッターと同じように、開くかもしれないでしょう?」

苗木「え? さ、さすがに無理だと思うけど」

霧切「とりあえず、やってみて」

苗木「う、うん……」

――玄関ホール――

苗木「え、えいっ! ていっ!」

苗木「はぁ……やっぱり無理だよ」

霧切「……あなたの運にもやっぱり限界はあるのね」

苗木「そ、そりゃ、あると思うよ。いくらなんでもこんなでっかい扉」

苗木「押すのか引くのかも分からないし」

霧切「……そうよね。ごめんなさい。無駄な事をさせたわ」

苗木「大丈夫だよ。それより、二階へ行こう」

霧切「……ええ、そうね」

――二階――

苗木「二階には図書館と、いくつか教室と……」

朝日奈「プールだ! プールだよ! ねぇねぇプール! やった!」

苗木「う、うん分かったから落ち着いて」

朝日奈「よし入ってこよう!」

舞園「ま、待ってください。なにがあるか分からないのにいきなり入るのは」

霧切「まず辺りを確認してからの方がいいわ」

朝日奈「ええ。大丈夫だよ。だってプールだよ?」

霧切「なんでプールにそんな自信があるの」

朝日奈「じゃあ、私が何かないか確認してくるね」

霧切「あ、待って……行っちゃったわ」

舞園「たぶん、何も無いとは思いますけど」

苗木「……大丈夫かな? 付いていった方がいいかな」

大神「男では駄目だ」

苗木「あ、大神さん。いたんだ」

大神「今、上がってきた。下では大浴場と倉庫が開いた見たいだぞ」

苗木「え? 何もしていないのに?」

大神「なぜかは分からん。モノクマが開けたのかもしれん」

苗木「そうなんだ……」

大神「あとで見てくるといい。プールへは私が付いて行こう」

大神「どちらにしろ、苗木では途中ついていけまい」

苗木「あ、それじゃお願い」

霧切「……」

舞園「それじゃ、私たちは行きましょうか。二階は図書館」

舞園「一階は倉庫。それから大浴場ですね」

苗木「そうだね。それじゃ、行こうか」

霧切「……」

苗木「どうしたの? 霧切さん」

霧切「ちょっと気にかかって……いえ、何でもないわ」

苗木「……?」

苗木「それじゃ、まずは図書館だね」

舞園「うわぁ、本とかたくさんありますね」

霧切「全部は、ちょっと読みきれないわね」

十神「ふん、情けない」

苗木「あ、十神くん」

十神「これくらい読めなくてどうする。手掛かりがあるかも分からんのに」

十神「そう簡単に諦めるな」

苗木「十神君……」

十神「まぁ、お前らには無理かもしれんがな。ここの書物は俺が読む。邪魔をするな」

十神「それと、手掛かりといえばそこの封筒とパソコンだ。みてみろ」

苗木「封筒と、パソコン?」

十神「ああ。パソコンの方は動かんがな」

苗木「封筒、か。えっと……」

苗木「……深刻な問題により廃校?」

舞園「ど、どういうことでしょう……」

十神「わからん。しかし、この学園はもはや教育機関として成り立っていない事は確かだ」

十神「まぁそんなこと、とっくに分かりきっていたことだがな」

苗木「でも、じゃあ一体誰が」

十神「この学校を運営しているのか。あのモノクマを動かしているのか」

十神「まだ、その手掛かりはない。だが、このパソコン。これがあれば」

苗木「調べられるかもしれない……でもこれ」

十神「壊れている、かどうかは分からんが。動かんな」

苗木「そっか。仕方ないね」

霧切「……ちょっとチョップしてみなさい」

苗木「え?」

霧切「昔のテレビを直す要領で、ほいっと」

苗木「いや、ほいって言っても……」

十神「さすがに無理だろう。コンセントがあるから充電はされているようだが」

十神「どこをいじっても電源は付かない。十中八九、壊れているぞ」

霧切「いいから」

苗木「えっと……ほい」

ガン ブブブ・・・

舞園「え? な、直った!?」

霧切「さすがね」

十神「もはや神の領域だな」

苗木「電源、付いたね」

苗木「でもこれ……なんかおかしいよ。数字ばっかり出てきて」

舞園「やっぱり壊れているんでしょうか?」

十神「特殊なプログラムらしいな……分からん」

霧切「プログラム……」

苗木「不二咲さんに頼めば、どうにかしてくれるかな?」

不二咲「あ、みんな」

苗木「あ、不二咲さん。ちょうどいいところに」

不二咲「え? なに?」

苗木「……ってことなんだけ」

不二咲「うーん。たぶん大丈夫だと思うけど、少し時間貰えるかな」

苗木「うん。お願い。急がなくてもいいからね」

霧切「少しは急いでもらわないと困るわ」

不二咲「なるべく早くできるように頑張るよ」

苗木「うん、とりあえず。みて見るのはこれくらいかな」

霧切「……本当にそうかしら」

苗木「え?」

霧切「苗木君はあっちこっち蹴って回った方がいいんじゃない?」

苗木「え? な、なんで?」

霧切「隠し扉とか、見つけられるかもしれないでしょ」

苗木「いや、でもさすがにそれは……」

霧切「……そうね。まぁいいわ。行きましょう」

十神「俺はもう少しここを見ていく」

苗木「分かった。それじゃ、あとでね」

苗木「それじゃ一階に行こうか」

霧切「その前にプールを見に行かない?」

苗木「え? でもそっちは二人行ってるし」

霧切「気になる事があるのよ」

苗木「うん、いいけど……舞園さんも、いい?」

舞園「私はいいですけど……なにがあるんですか?」

霧切「少し、ね」

――プール 更衣室前――

霧切「……」

苗木「更衣室はちゃんとあるんだね」

舞園「そうですよね。さすがにそこら辺で着替えるわけには行きませんし」

霧切「更衣室へ入るには生徒手帳がいるのね」

苗木「そうみたいだね」

霧切「……苗木君ちょっと、女子更衣室に入ってみて」

苗木「え、え? それはさすがにまずいんじゃ」

霧切「いいから」

苗木「……し、仕方ないなぁ。まだ朝日奈さんも大神さんも戻ってないよね」

苗木「……えい」

ピピピ ブー

苗木「え、え?」

ウィーン

苗木「うわ、何かガトリングガンみたいの出てきた!?」

ガガガガ

苗木「うわああああ!? あぶな、あぶない!?」

シュー ウィーン

舞園「だ、大丈夫ですか苗木君!?」

苗木「……しぬかと思った」

霧切「よく生きてたわね。さすがだわ」

苗木「霧切さんのせいだよね!」

霧切「だってそんなこと知らなかったもの」

苗木「知らなかったって……済まされないレベルだと思うだけど」

霧切「そう、でもこれは男では駄目ね。分かったわ」

苗木「……何が分かったの?」

霧切「下へ行きましょうか」

苗木「……」

――倉庫――

苗木「色々あるね」

舞園「本当ですね」

セレス「菓子類。インスタント食品。雑貨。文字通り山のようにありますわ」

霧切「なぜ、開いたのかしら」

セレス「さぁ?」

霧切「最初に気が付いたのは誰?」

セレス「私は石丸君にお聞きしましたが、始めに気づいたのは大神さんらしいですね」

霧切「……」

セレス「大浴場の方は、不二咲さんが気がつかれたようですわ」

苗木「うーん。何かあるのかもしれないけど、さすがに探せないね」

セレス「これといったものはありませんよ」

セレス「先ほど山田君が一生懸命探していましたが何も見つからなかったようで」

霧切「……探させたの?」

セレス「私の代わりに探してくださったんですわ」

苗木「……ま、まぁ、何もないなら仕方ないよね」

セレス「ええ、私も他の場所をみてこようと思います」

苗木「うん。それじゃ、大浴場に行ってみようか」

舞園「はい」

――大浴場前――

苗木「当然ながら、男風呂と女風呂で別れてるね」

舞園「それじゃ私たちは女風呂を見てきますね」

苗木「うん。じゃあ、僕は男風呂を見てくるよ。あとでね」

――男風呂――

苗木「広いな……とはいってもそれだけで、普通のお風呂みたいだ」

大和田「おう、こっちにサウナもあるぞ」

苗木「あ、大和田君と石丸君」

石丸「それと、調べてみたのだが、ここには監視カメラがないらしい」

苗木「え?」

石丸「風紀の為だろうか。それとも湯気で壊れるのか」

大和田「どっちにしろ好都合だな」

苗木「そうだね」

石丸「まぁそれ以外、特にみれる所もないのだが」

苗木「監視カメラがないのは、かなりいいよ。何か相談があったらここでしようか」

石丸「うむ。しかしここに集まりすぎるのも、モノクマに怪しまれそうだがな」

苗木「そこら辺は、考えておこう」

苗木「あ、舞園さん、霧切さん。こっちだよ」

舞園「苗木君」

霧切「何かあった?」

苗木「うん、大浴場には監視カメラが無かったよ」

霧切「そう、こっちも同じようなものかしら」

苗木「行ける場所には、大体行ったね」

舞園「それじゃ、どうしましょうか」

苗木「とりあえず不二咲さんがノートパソコンを解析するまで待機かな」

霧切「本当に、待機だけでいいなら良いけどね」

苗木「え?」

霧切「なんでもないわ」

――食堂――

苗木「……ってことで、大体みんなの意見交換は終わったかな」

石丸「うむ。それでは今日はこれで解散と言う事にしようか」

苗木「そうだね。じゃあ、また明日。みんなルールは守ってね」

セレス「破ったらセレスティアバスターです」

山田「ひぃ」

桑田「だ、誰もやぶらねえって」

苗木「それじゃみんな、また明日」

不二咲「……大和田君、ちょっといいかな」

大和田「ん? なんだ?」

霧切「……」

――廊下――

苗木「とりあえず、また明日か。ノートパソコン、どれくらいで解読できるかな」

舞園「どうでしょう。分かりませんけど、一歩前進した事は間違いありませんよ」

苗木「そうだね」

霧切「……」

苗木「霧切さん?」

霧切「苗木君……その」

桑田「あれ? こんなところでどうしたんだ?」

霧切「え?」

苗木「色々今日事に付いて喋ってたんだよ。桑田君、君の方こそどうしたの?」

桑田「お、俺は……ちょっとな」

苗木「でももうすぐ夜時間だけど」

桑田「大丈夫だって、すぐ帰ってくるし」

苗木「そう、でもなるべく早くね。セレスティアバスター、食らっちゃうよ」

桑田「そうだな。うん。なるべく早く帰るよ。それじゃな、また」

苗木「うん」

霧切「……」

苗木「それじゃ、僕たちは部屋に戻ろうか」

舞園「ええ、そうですね」

――夜時間 苗木の部屋」

苗木「そろそろ寝ようかな」

コンコン

苗木「あれ? 誰だろう」

ガチャ

霧切「……苗木君」

苗木「あれ、霧切さん?」

霧切「ちょっと付いてきてもらえる?」

苗木「え? でも、もう夜時間だし。ルール違反だよ」

霧切「ルールなんて、人の命よりは軽いでしょ」

苗木「え?」

霧切「とにかく、付いてきて」

――階段前――

苗木「き、霧切さん。人の命よりって、どういうこと?」

霧切「裏切り者は江ノ島さんじゃないわ。彼女もそうかもしれないけど、もう一人いる」

苗木「え?」

霧切「モノクマは裏切り者が一人とは言っていなかった」

苗木「そ、そうだけどでも」

霧切「ありえないって? 舞園さんはDVDの為に人を殺そうとしたわ」

霧切「誰かが人質に取られてて、その為にモノクマの言いなりになっていたとしたら?」

苗木「そんな……でも、誰が」

霧切「大神さん」

苗木「え?」

霧切「彼女が二階へ来たときの台詞、ちょっと引っかかったの」

苗木「どこが?」

霧切「プールへ付いていく時『男では駄目』と言っていたわ」

苗木「でもそれは、あのガトリングガンがあるし」

霧切「そう、でもなぜ彼女はそれを知っていたの? 私は知らなかったわよ」

苗木「……!?」

霧切「彼女はあの時、倉庫と大浴場を見て、それから初めて二階に上がってきたはずよ」

苗木「でもそれは……女子と男子じゃ一緒に着替えられないって事を言ったのかも」

霧切「この状況よ。着替えなんて、そんなもの見なければいいじゃない」

霧切「苗木君が跳びぬけたラッキーマンであることは誰もが知っている」

霧切「正直、大神さんよりも苗木君がいた方が遥かに安全だわ」

霧切「まだみていない。どんな危険があるかも分からない場所に行くなら」

霧切「苗木君がいた方がいい」

霧切「なのに、それを止めて『駄目だ』と言った。その理由は『男だから』なのよ」

霧切「ガトリングガンの事、それにプール自体には危険が無い事を知っていたんだわ」

霧切「彼女はあのシャッターが開く前に、何度か二階に来ている。もしくはそれより上に」

苗木「……」

苗木「で、でも……」

???「う、うわー!」

苗木「な、なに!?」

霧切「プールの方だわ!」

――プール――

霧切「ど、どこ?」

???「う、ううっ」

苗木「男子更衣室の方だよ!」

霧切「……え? で、でもそんなわけ」

苗木「と、とにかく僕が見てくるよ!」

ピピピ ピー

苗木「だ、大丈夫!?」

大和田「おお、頑張れ頑張れ」

不二咲「うう。が、頑張る……」

苗木「あ、あれ?」

大和田「ん? あ、やべ見つかった」

不二咲「え? う、うわ!?」

大和田「おっと。あぶねえな。いきなり落とすんじゃねえ」

不二咲「ご、ごめんなさい。えっと、でも……」

苗木「あ、あれ? 二人とも何してるの?」

大和田「みりゃわかんだろ。筋トレだよ」

不二咲「僕の練習に付き合ってもらってたんだ。だ、だから大和田君は悪くないよ!」

苗木「え? うん。でも、え? 何で不二咲さんがこっちに……」

不二咲「それは……ぼ、僕が男だから」

苗木「ええ!?」

苗木「で、でも……ええ!?」

大和田「そういうことだ」

大和田「夜時間に抜け出した事は頼むから黙っていてくれよ、な?」

不二咲「ご、ごめんなさい」

苗木「いや、でも……あれ、それじゃ殺人は?」

霧切「……桑田君」

苗木「え?」

霧切「桑田君はさっき、どこへ行こうとしてたのかしら」

苗木「え、どこへって……」

桑田「う、うわあああああ!」

苗木「!?」

大和田「な、何だ!?」

不二咲「なに!?」

霧切「……図書室の方よ!」

――図書室――

苗木「桑田君、大丈夫!?」

桑田「う、うわ……」

大神「……苗木か」

苗木「お、大神さん」

霧切「やはりあなただったのね……桑田君は、なぜまたここに」

桑田「し、しらねえよ。俺は霧切に呼び出されて……あれ、なんでそこに?」

霧切「……少しは学習しなさい」

苗木「大神さん……君は」

大神「苗木は既に聞いているのか。……裏切り者。そうだ」

苗木「な、何か理由があったんだよね」

大神「……もはや何を言おうとも言い訳にしかなるまい」

大神「しかし、そう聞いてくれるからには、弁解させてもらおう」

大神「我は、人質を取られたのだ。モノクマに」

苗木「……そう、か。そうなんだね」

大神「舞園が最初の殺人に失敗した。だから我が殺さなければいけない」

大神「そういう、約束だった」

苗木「で、でもそんなのって……」

大神「ああ、そうだな。我も迷っていた。もし桑田が来なければ諦めていたかもしれん」

大神「しかし桑田は来た」

霧切「……」

桑田「……」

大神「もはや、我が最初の殺人を犯すのは運命なのかもしれない」

苗木「そ、それは違うよ。だって、僕らが着たじゃないか」

苗木「運命は大神さんを殺人者にはしなかったよ」

苗木「人を殺す運命なんて、誰だってそんなもの持ってないよ」

大神「……そうかもしれぬ。しかし、我は一度殺そうとした。もはや」

苗木「大丈夫。未遂なら、まだ希望はある。みんなでここから出るんだ」

苗木「そうだろう?」

大神「……」

苗木「出よう。大神さんも、桑田君もみんなで。ここから出よう」

大神「……ああ、そうだな。すまない」

桑田「あ、ああ。まぁいいってことよ……」ガクガク

苗木「うん。それじゃ、部屋に戻ろう。みんな」

霧切「そうね」

大神「……すまない」

――寮 廊下――

苗木「はぁ、なんとかおさまったね」

霧切「そうね」

苗木「大和田君と不二咲さんも戻ったみたいだし。僕たちも戻ろうか」

霧切「ええ、それじゃ、また……」

セレス「あら、お二人ともこんな時間にどちらへ?」

霧切「」ビクッ

苗木「せ、セレスさん……どうして」

セレス「物音がするので、ちょっとドアを開けてみただけですわ」

セレス「そうしたらお二人が廊下で話していたので」

苗木「い、いや、これには事情が……」

セレス「でしょうね。あれだけ信頼を大事にしていた苗木君がこんな事をするなんて」

セレス「よほどのことがあったのでしょうね」

苗木「う。うん。そうなんだ。それが大変で……」

セレス「でもそれとこれとは別ですわ」

苗木「……え?」

セレス「如何なる事情があるとはいえルールを破ったのですから」

セレス「セレスティアバスター、受けていただきましょうか」

苗木「そ、そんな。これには事情が」

セレス「それはあとでお聞きします。とりあえず、苗木君は私の部屋へ来てください」

苗木「ちょ、待って」

セレス「いいから早くこいっつってんだよ、クソ野朗がっ!」

苗木「う、うわ! 待って待って話を」

セレス「霧切さん」

霧切「はい!」ビクッ

セレス「逃げようとしても無駄ですから。あとで及びいたしますので」

セレス「ちゃんといらしてくださいね」

霧切「……はい」

セレス「それでは、行きましょうか苗木君」

苗木「う、うわあああ!」

――翌日 食堂――

苗木「はい。皆さんという事がありましたが、殺人は起きなかったのでご安心ください」

腐川「ご安心くださいって……」

石丸「しかし二回も未遂が起きるとは」

朝日奈「で、でもでも。人質取られてやったことでしょう。仕方ないって」

不二咲「そ、そうだよ。許してあげようよ」

十神「舞園を許した時点で俺たちの行く道は決まっている」

十神「今から許す許さないなど、今更だ」

大和田「……桑田は、それでいいのか」

桑田「い、いいよ。別に。俺も馬鹿だったし」

葉隠「さすが、器がでかいべ」

大神「……すまない」

桑田「い、いいってことよ」ガクガク

江ノ島「……それはそれとしてさ。あんた、何かあったの?」

苗木「いえ。何もありません」

江ノ島「いやだって前までそんな口調じゃ」

苗木「何もありませんです。サー」

江ノ島「……」

セレス「うふふ」

江ノ島「あ、あのさ。何か、あったの?」

霧切「ひっ。い、いや。何も。何も無かった! そう何も!」

江ノ島「え? いや、落ち着けって」

セレス「うふふ」ニコッ

霧切「す、すみません……」ビクビクッ

江ノ島「……一体何が」

霧切「」ボー

江ノ島「お、おい。大丈夫か」

霧切「え、ええ。大丈夫よ」

苗木「……おほん。これからの放心、いや方針ですが」

石丸「そうだ。どうするんだ。二回も粗方調べ終わってしまったぞ」

苗木「三階へ続く階段があるみたいなんだ。だからそこから上がる方法を考えよう」

大和田「三階へ行く方法? そんなの分かりきった事じゃねえか」

苗木「え? 何か案があるの?」

大和田「苗木がシャッター蹴れば、また開くだろ」

苗木「……いや、それはさすがに。二回目はどうかな」

十神「まぁ、試すだけ試せばいい。一回目はそれで開いたのだからな」

苗木「そうだけど」

モノクマ「そんな乱暴なことしてほしくないなぁ」

苗木「そう、だよね」

モノクマ「そうそう。もっとスマートに。殺人とかで行こう」

苗木「それはないよ」

朝日奈「だよね。ないない」

石丸「それはないな」

腐川「あ、ありえないわよ」

モノクマ「……また普通にスルー?」

苗木「やぁモノクマ。おはよう」

モノクマ「うんうん。おはようございます」

モノクマ「ってそうじゃないでしょー! 誰か突っ込んでよ!」

苗木「そんな事言っても」

モノクマ「はぁ、うちの生徒が冷たくて悲しい……」

モノクマ「まぁそれはそれとして、お前たち。どうもおはようございます」

モノクマ「この学園の学園長! モノクマ、モノクマでございます!」ワーワー

朝日奈「知ってるよ。それで? 何しにきたの?」

十神「また何か殺し合いをけしかけようとしているのなら、その手には乗らんぞ」

モノクマ「どうかなぁ。未遂とはいえ一応二名、もう乗ってくれてるしね」

舞園「……」

大神「……」

苗木「未遂だよ。だから、誰も殺されてはいない。お前の計画は失敗してるんだ」

モノクマ「イラッ。誰のせいだと思ってるのさ、全く!」プンスカ

モノクマ「こっちは頑張ってるのに、お前らが強情だからいけないんでしょ!」

セレス「それは褒め言葉でしょうか?」

モノクマ「ふんだ! 折角三階へ行くためのルートを教えてあげようと思ったのに」

苗木「な、なんだって?」

石丸「ほ、本当か」

モノクマ「と、思ったけどどうしよっかなー」

大和田「て、てめぇ。さっさと教えやがれ」

モノクマ「そんな態度では教えられませーん。もっと丁寧に言ってくれないとさー」

大和田「ぐっ……教えて、ください。学園長先生」

モノクマ「まぁ丁寧に言っても教えないんだけどね。うぷぷ」

大和田「てっめぇ」

モノクマ「交渉に、来たんだよ」

苗木「交渉?」

江ノ島「……」

モノクマ「そう。交渉。三階へのルートを開いてあげる代わりに、一つこちらも条件がある」

セレス「条件、ですか」

桑田「な、何だよ、条件って」

モノクマ「それはね……苗木君、君だよ」

苗木「え? 僕?」

江ノ島「……!?」

霧切「な、何を……」

モノクマ「このたび学園長は苗木君を特別生として」

モノクマ「学園長室へ連行……招待する事に決まりました」イエーイパフパフ

霧切「な……!?」

モノクマ「と言っても自力じゃ連れて行けそうにないからね……」ショボーン

モノクマ「そこで交渉だよ。三階への階段を開ける代わりに」

モノクマ「苗木君は大人しく拉致……招待されてね!」

不二咲「そ、そんな……」

江ノ島「そんな事は、させない!」ダッ

モノクマ「お前には聞いてないよ! グングニルの槍!」

舞園「危ない!」

江ノ島「くっ……」

モノクマ「それで? どうする? どうする?」

苗木「……なぜ僕なんだ。僕を連れて行って、どうするの?」

モノクマ「そりゃもう、あんなことやこんなことを」ハァハァ

江ノ島「ふざけんな、このっ……!」

モノクマ「無駄無駄。それで。どうするのさ。出来れば早く決めて欲しいね」

苗木「……」

セレス「乗る必要はありませんわ。階段のシャッターなんてあなたが蹴ればそれで」

モノクマ「どうかな。彼の幸運にも限界はあるみたいだよ」

モノクマ「玄関ホールの扉は開けられなかったみたいだしね」

セレス「……でも」

モノクマ「三階行きのシャッターは二階行きより頑丈だよ? あけられるかな?」

苗木「……分かった。行くよ」

朝日奈「な、苗木君!」

山田「苗木殿!」

苗木「みんな、あとはよろしく」

石丸「苗木君! 待ちたまえ!」

霧切「苗木君、あなたみんなで出るって言ったじゃない!」

苗木「ごめん」

霧切「……」

苗木「でも、またきっと帰ってくるよ。絶対、みんなで出られるから」

苗木「だから、ちょっとだけ、さようなら」

霧切「苗木君……」

モノクマ「それじゃ、苗木君一名様ご案内!」

――翌日 三階階段前――

霧切「……開いた、わね」

セレス「ええ」

石丸「……とりあえず、行ってみようではないか」

大和田「そうだな」

桑田「……おう」

霧切「くれぐれも気をつけて……もう、苗木君の幸運はないわ」

霧切「ここから先は、助けてくれない」

舞園「……」

江ノ島「……」

――三階――

霧切「舞園さん、ここからは分かれて探索しましょう」

舞園「で、でも」

霧切「もう、あなたを疑う人はいないわ。それに……」

霧切「今は一刻も早く、一つでも多く手掛かりを見つけて苗木君を助けないと」

舞園「……分かりました。行ってきます」

霧切「三階は……物理室。美術室。娯楽室。行くとしたらそんなところかしら」

霧切「まずは娯楽室から」

――娯楽室――

霧切「ここが娯楽室……」

セレス「あら、どうも」

霧切「」ビクッ

霧切「ど、どうも。何かあった?」

セレス「いえ、何もありませんわ。色々見てみたのですけど」

霧切「自分で?」

セレス「ええ。何か?」

霧切「い、いえ。何も……」

セレス「本当に何もありませんでした。他の所を見たほうがよろしいようですわね」

霧切「そうみたいね」

――美術室――

霧切「ここにも……何も無い」

霧切「倉庫に行ってみましょう」

――美術倉庫――

霧切「ここにも、何も……?」

霧切「これは……写真。でも、どうして大和田君と不二咲さんと桑田君が一緒に」

霧切「……あとで、聞いてれば分かるか」

霧切「あとは、ないみたいね」

――物理室――

霧切「物理室には……」

江ノ島「……」

霧切「あなた。なぜここに?」

江ノ島「別に」

霧切「……あなたは何か知ってるのよね? まだ教えていただけないのかしら?」

江ノ島「……」

霧切「苗木君は行ってしまったわ。私たちを助ける為に」

霧切「その中にはあなたも入っているのよ」

江ノ島「関係ないよ」

霧切「……まぁいいわ。苗木君は私が助けてみせる。たとえあなたが力を貸してくれなくとも」

江ノ島「……」

霧切「それじゃ、ね」

江ノ島「……方向が、間違ってるんだよ」

霧切「え?」

江ノ島「みんなの進む方向が、間違ってる。苗木の幸運は本物」

江ノ島「苗木にとってそれが良い方向なら必ずそっちへ傾くはず」

江ノ島「でも、今は傾いてない。みんなの認識と幸せの方向がずれてるから」

霧切「一体何を……」

江ノ島「それじゃ」

霧切「ま、待って……」

霧切「一体、何のこと……?」

――食堂――

石丸「それで、何か発見できた人は」

シーン

石丸「……成果はなしか」

大和田「畜生、苗木がいれば、何か分かったかも知れねえのによ」

朝日奈「……苗木君が折角開いてくれた道なのに、私たちだけじゃ何も」

セレス「……」

石丸「お、落ち込んでいても仕方ない。また明日、探してみよう」

石丸「必ず、何か見つかるはずだ。今日は、解散」

霧切「……」

霧切「ねぇ、不二咲さん」

不二咲「え?」

霧切「あの、この写真見てもらえないかしら」

不二咲「写真? えっと……あれ? これ僕が写ってるよ」

霧切「そうなの。見覚えある?」

不二咲「い、いや。見覚えないけど……なんで二人と一緒に写ってるんだろう」

霧切「そう……分かったわありがとう」

不二咲「そうだ、僕の方も一つ質問して良い?」

霧切「何かしら?」

不二咲「例のノートパソコン。ロックが厳重で、ちょっと手間取ってるんだ」

不二咲「それで、苗木君に何か英数字の羅列を考えてもらうように言ってたんだけど」

不二咲「聞いてないかな?」

霧切「ごめんなさい。何も知らないわ」

不二咲「そっか……うん。自力で頑張ってみるよ」

霧切「頑張って。それじゃ」

霧切「……何も分からなかった。あの写真、いつどこで取られたものなの?」

霧切「合成? ノートパソコンのほうも行き詰ってるみたいだし」

霧切「苗木君。あなたの力があれば、もっと上手く……」

――苗木の部屋――

ガチャ

霧切「馬鹿みたい。部屋に入ったって力が貰えるわけじゃないのに」

霧切「……でも、ベッドとか枕にはちょっとはご利益があるかしら」

霧切「……どうすればいいの苗木君」クンカクンカ

ピラッ

霧切「? これって……メモ?」

『2F DANSHITOILET』

霧切「二階の、男子トイレ? 一体何が……」

ガチャ

江ノ島「お邪魔しま……な、何やって」

霧切「な、なに!?」

江ノ島「いや、何でここにお前が」

霧切「あなたこそ何をしに……」

江ノ島「わ、私は……べちゅに」

霧切「べちゅに、じゃないでしょう」

江ノ島「お前こそ、何をやって」

霧切「私は……べちゅに」

江ノ島「べちゅに、って……」

霧切「……」

江ノ島「……」

霧切「お互い、見なかったってことで」

江ノ島「……異議なし」

霧切「それじゃ」

江ノ島「うん」

霧切「二階の男子トイレ。そこに何かあるの?」

霧切「でも……いや背に腹は変えられないわ」

霧切「今から、行きましょう」

――2階 男子トイレ――

霧切「何かあるとは思えないけれど……」

霧切「あれ、でもここ……隠し扉」

霧切「一体何が……」

霧切「これは、名簿? なぜこんな所に」

霧切「ともかく調べてみないと……」

ピラッ

霧切「何か落ちて……またメモ? これも苗木君が?」

『ここから出てはいけない』

霧切「出ては、いけない? なぜ?」

霧切「……あの正面玄関の扉、苗木君はあれを開けられなかった」

霧切「江ノ島さんは苗木君の幸運は本物だと言っていた」

霧切「……全ての窓が塞がれている。でも、塞がれ方が少しおかしい」

霧切「窓は全て内側から塞がれていた。閉じ込めるなら普通は外側から塞ぐんじゃ」

霧切「外に出てはいけない……外で一体何が起こってるの?」

霧切「それに、私たちもおかしい。何かが、ずれている」

霧切「第一、なぜ生徒がこんなに少ない?」

霧切「特殊なものと言ってもここは学校、在校生はもっといるはず……」

霧切「なぜ私たちだけ。なぜ私たちなの?」

霧切「図書館の封筒。深刻な問題とは何?」

霧切「……名簿。名簿を見れば」

――???――

苗木「う、うん? ここは」

モノクマ「どうもどうも、お目覚めだね苗木君」

苗木「モノクマ……ここは、どこ?」

モノクマ「さぁ? 教えるわけないでしょ」

モノクマ「でもね、君には真実を教えてあげようと思うのさ」

苗木「真実? 何を……」

モノクマ「どうやら君はどれだけ言っても絶望しない」

モノクマ「どころか全ての絶望を回避してしまう」

モノクマ「だから、殺し合いとかそういうのじゃなくて、別の方向から行ってみようと思って」

モノクマ「全く、こんなの大大大サービスだよ」

苗木「何のこと?」

モノクマ「それじゃ、レッツショータイム」

苗木「……これ、これは」

――アニメED曲――

苗木「うわあああああああ!!」

>>526

いや、526は違う人だよ
ちょいまち、今ラストに向けて調整中です。すんません

まだ書き終わってないけどちょっとずつ貼ってく

――翌日――

石丸「……それでは、今日も各自探索と言う事で」

朝日奈「……」

霧切「不二咲さん。ノートパソコン解読できた?」

不二咲「そ、それが、まだ……」

霧切「ちょっとこれを入力してみてくれない?」

不二咲「え? 男子トイレット? これ……」

霧切「いいから」

不二咲「わ、分かったよ、いま持ってくるから」

不二咲「……あ、ロックが解除された」

霧切「やっぱり」

セレス「どうしたのですか?」

霧切「ノートパソコンが見れるようになったわ」

舞園「え? そ、それでなんて?」

不二咲「待って……これって」

霧切「人類史上最大最悪の絶望的事件?」

舞園「そのせいで学校が閉鎖……」

セレス「希望ヶ峰が立てた計画って、何のことですの?」

不二咲「それにこれ……一年前って」

霧切「……」

霧切「不二咲さん。この間みせた写真、本当に見覚えないの?」

不二咲「な、ないよ。他の二人にも聞いたけど、なんだこりゃって」

セレス「写真? 何のことですか?」

不二咲「じ、実は……」

舞園「そんな事が……」

霧切「ここに書いてある事が事実だとして、そしてあの写真が本物だとすれば」

セレス「私たちは、ここで生活していた?」

不二咲「そ、それはないよ。僕がここにきたのはつい先日で……」

舞園「そ、そうですよ。私だって……」

霧切「では、これは全てデマなの? 外にはちゃんとした世界があるの?」

霧切「それならなぜ、大人たちは私たちを助けに来ないの?」

舞園「そ、それは……」

霧切「……これを、隠し部屋で見つけたわ」

セレス「これは……名簿? それにこのメモ」

舞園「ここから、出てはいけない」

霧切「考えたの。もしかして私たちを閉じ込めたのは私たち自身なのではないかって」

霧切「私たちは身を守る為に自分からここに閉じこもったんじゃないかって」

舞園「そんな……でもだとしたら」

セレス「外の世界に、希望はない。そうですわね」

霧切「ええ。恐らく。外はもう……」

不二咲「……ぼ、僕たちはどうしたら」

セレス「それでも疑問は残りますわ」

セレス「なぜ私たちは自分で閉じこもった記憶がないのでしょう」

霧切「ええ。それに、モノクマを操っている黒幕」

霧切「その目的は何か……」

霧切「江ノ島さん。いえ、戦刃むくろさん」

霧切「あなたは何か、知っているのね」

江ノ島「……」

――???――

モノクマ「どう? 分かったかな苗木君。君がやろうとしていることの真実が」

モノクマ「外に出るという事がどういうことなのか?」

苗木「……これが、真実」

モノクマ「そう、もう世界は無いんだ。外には何も残っちゃいない」

モノクマ「君たちはこの学園の中で絶望の中で生きていくしかないんだ」

苗木「でも、それならなんであんなこと……どうして殺し合いなんて」

モノクマ「それはね、どん底に落としたかったからだよ」

モノクマ「みんなを絶望の底に落としたかったから」

モノクマ「絶望という物を知ってほしかったから」

モノクマ「世界は今、絶望に包まれてる。もはや希望はないんだよ」

モノクマ「幸運の苗木君」

苗木「……」

苗木「あなたは、誰なんですか?」

モノクマ「なに?」

苗木「あなたは、一体誰ですか?」

苗木「こんなものを見せてどうする気ですか」

モノクマ「僕はモノクマだよ?」

苗木「そうではなく、操っている人の名前です」

モノクマ「……」

霧切「名簿に名前があったわ。初日、玄関ホールに来たとき」

霧切「あなたは苗木君にそう呼ばれていた。それは正しかったのね」

戦刃「……そうよ」

霧切「あなたが化けていた江ノ島。本物の江ノ島さんが黒幕ね」

戦刃「そう。私たちは双子なの」

霧切「あなたたちの目的は何? 殺し合いをさせて」

戦刃「絶望。それだけよ」

霧切「それだけ? それだけって……」

戦刃「それだけ。それだけが私たちの生きる理由。そしてしぬ理由」

霧切「……ふざけないで」

戦刃「ふざけてない」

霧切「……分かった。それはいいわ、苗木君のところへ案内して」

戦刃「知らない」

霧切「ふざけないで!」

戦刃「だからふざけてない。私たちはもう縁を切った」

戦刃「それは見ていたでしょう?」

霧切「そんな……それじゃあ……」

戦刃「本当に、知らない……」

霧切「……苗木君」

――???――

苗木「……あなたの目的は、殺し合いじゃありませんよね」

モノクマ「……」

苗木「あなたが今言ったとおりなら、あなたは僕の幸運を知っている」

苗木「僕が戦刃さんの名前を知ったのは入学式前」

苗木「つまり、ここに来る前から僕の幸運はあった」

苗木「周りの人も巻き込むほどの絶対的な幸運が」

苗木「理屈では説明できない、幸運が」

モノクマ「……」

苗木「そんな奴を、ここに混ぜたのは、わざとでしょう」

苗木「あなたは誰も殺す気なんてなかった」

苗木「じゃあ、なぜこんな事を?」

苗木「あなたは一体……」

???「……僕がこの席に座ったのは途中からなんだよ」

苗木「だ、誰ですか?」

???「最初は江ノ島さんが座っていた」

???「君を入れたのは何の思惑もない。江ノ島さんの誤算だったわけだ」

???「君たちにとってはラッキーだったね。さすがだよ」

苗木「あなたは……一体……」

???「そうか。記憶は戻らないのか。僕はね……」

戦刃「私が苗木君を取り戻す」

霧切「……できるの?」

戦刃「三階から四階に抜ける道を知っている」

霧切「四階に、いるのね」

戦刃「学園長室と情報処理室がある」

霧切「そのどちらかに」

戦刃「恐らく」

霧切「……いいわ。私も付いていく」

舞園「そんな、危険ですよ」

セレス「モノクマが何をしてくるか、分かりませんわね」

霧切「三人はここにいて。他のみんなにも報せないように」

不二咲「ど、どうして?」

霧切「みんなが同時に動けば、監視カメラで気付かれるわ」

霧切「二人だけなら、たぶん大丈夫」

舞園「でも……」

霧切「大丈夫だから」

戦刃「私は連れて行くなんて一言も……」

霧切「言われなくても、勝手についていくわ」

戦刃「……ご勝手に」

霧切「それじゃ」

舞園「気をつけて」

不二咲「頑張ってね」

セレス「帰ってこなかったらセレスティアバスターですよ」

霧切「行ってきます」

戦刃「……」

――4階――

霧切「……ここが四階」

戦刃「なるべく伏せて。監視カメラの死角を通っていく」

霧切「了解」

戦刃「……こっちから行くと、学園長室が近い」

霧切「そちらから行きましょう」

――学園長室――

戦刃「……開いてる」

霧切「誰かいる?」

戦刃「待って……あ、あれは……盾子!?」

霧切「え?」

戦刃「な、なぜここに……眠っている」

霧切「黒幕は江ノ島さんじゃなかったの?」

戦刃「そ、そんなはず……じゃあ、一体誰が」

霧切「……ここ、見た事があるような」

霧切「これは……私の写真。なぜここに」

霧切「何かを、忘れている……」

戦刃「……盾子は、気を失っているだけ」

戦刃「でも、だとしたら一体誰がモノクマを」

霧切「……情報処理室に行ってみましょう」

――情報処理室――

???「と、いうことなんだ。苗木君」

苗木「……それじゃ、学園長。あなたが」

霧切仁「そう。危うく殺されるところだったけどね。危機一髪だった」

霧切仁「しかしもはやこの学園も限界だ」

霧切仁「江ノ島さんのお陰で当初の計画がくるってしまった」

霧切仁「この場所に、もはや君たちを長く保護できる能力は残っていない」

霧切仁「そこで私は、君に全てを委ねようと思う」

苗木「どうして、僕なんですか?」

霧切仁「君は幸運だ。そして我々の希望だ」

霧切仁「君たちは、世界の希望だ」

霧切仁「我々に導く力はなくなってしまった」

霧切仁「ここから先は、君たちが決めなくてはいけない」

霧切仁「まぁ私としては、短期間でもこの学園の中が一番安全だと思っているが」

霧切仁「その為の警告も色々してきた積もりだ」

霧切仁「それが私の君たちに対する最後の義務だからね」

霧切仁「しかし、君たちの行動にもはや我々は口を出せない」

霧切仁「君たちが、決めなさい」

苗木「……僕たちが外へ出ようとするなら」

霧切仁「あの映像を見て真実を知って、それでも外へ行こうというなら」

霧切仁「止めようとは思わない」

苗木「……学園長、僕は――」

――四階 情報処理室前――

戦刃「……ここ」

霧切「ここに苗木君が」

戦刃「たぶん黒幕も」

霧切「……行きましょう」

戦刃「うん」

戦刃「先陣を切る」ダッ

ガチャ

苗木「失礼しました」

戦刃「あ」コケ

苗木「う、うわ! だ、大丈夫?」

戦刃「うっ、足捻った」

苗木「ああ。本当だ。保健室行こうか」

霧切「な、苗木君! 無事だったの?」

苗木「うん、大丈夫だったよ」

霧切「良かった……それで、黒幕は?」

苗木「それが……」

霧切仁「大丈夫かい君たち」

霧切「あなたが、黒幕……!」

霧切仁「……響子」

霧切「私はあなたを知らないわ。なぜ私の名前を知っているの!?」

霧切仁「そうか。記憶が。そこまで消えてしまっているのか……」

霧切仁「……うん。そうだね私が黒幕だ」

霧切仁「でも、もはや関係ない事だ。君たちはこれから自由なのだから」

霧切「……どういうこと?」

霧切仁「文字通りの意味だ。今、正面玄関を開けるキーを彼に渡した」

霧切仁「全ては君たちに委ねられた。好きにするといい」

霧切「……」

霧切仁「私は少し寝る事にしようか。さすがに疲れた」

霧切「待って……あなたは」

霧切仁「響子……霧切さん」

霧切仁「あの事件を越えて、生きていてくれてありがとう」

霧切「……」

霧切仁「それでは失礼しよう。行きたまえ、我々の希望たち」

霧切仁「絶望に包まれた世界に、一点の希望を見つけてくれ」

霧切「あなたは……ま、待って。待って……」

霧切「……おとう、さん……」

――翌日 食堂――

舞園「苗木君! 良かった……」

不二咲「本当に良かったよ。みんな無事で」

桑田「心配かけさせてんじゃねえよ。くそ」

苗木「ご、ごめん。ありがとう」

セレス「おかえり祝いのセレスティアバスターですね」

苗木「な、何で!?」

セレス「心配かけられたのですから当たり前です」

セレス「霧切さんもですよ」

霧切「え? だって帰ってこなかったらって」

セレス「帰ってきたら許すなんて一言も言ってません」

霧切「……」

朝日奈「な、何はともあれよかったよ。みんな無事で」

十神「それで、そこの二人はどういうことなんだ?」

戦刃「……」

江ノ島「……」

苗木「そ、それは……」

大和田「おい、これからは、こいつらも一緒に行動すんのか?」

桑田「ど、どうすんだ苗木」

苗木「……みんなで、出るんだ。ここから」

苗木「だから、二人も連れて行こう」

桑田「……いいのか、それで」

苗木「うん……僕も迷っちゃってるけど」

苗木「でも、みんなで行こうって言ったから。みんなで行こう」

十神「……仕方あるまい」

山田「ちゃんと手足は縛っておきますぞ!」ハアハア

セレス「あなたは危ないです。私がやります」

霧切「いや、そっちの方が止めといたあぶな」

セレス「なにか?」ニコッ

霧切「……何も」

舞園「それで、苗木君。私たちは外へ出られるんですか?」

苗木「そう、なんだけど……」

苗木「最後に、もう一度確認しておきたいんだ」

苗木「外の世界は、さっき言ったような状況なんだ」

苗木「正直言って学園の中の方が安全かもしれない」

苗木「僕たちは絶望の中へ飛び込もうとしているのかもしれない」

苗木「それでも、みんなは外へ行く?」

舞園「私は、行きます」

舞園「例え今、絶望しかなくとも、少しでも希望があるなら諦めたくありません」

桑田「俺もいくぜ。当たりめえだろ」

十神「絶望だろうと何だろうと、やってやろうじゃないか」

朝日奈「何とかなるよ。みんながいればさ」

大神「障害は、我が取り除く」

大和田「おう、絶望なんてクソ食らえ」

腐川「わ、私は……行くわよ。こんな所より外の方がずっとましよ」

山田「行きますぞ!」

葉隠「ま、なんとかなるべ」

不二咲「行こう。みんなで」

石丸「行こうではないか。みんなで」

セレス「出ましょう。ここから」

霧切「行きましょう。苗木君。皆で」

苗木「みんな……二人は?」

江ノ島「うっ……出るよ。出ればいいんだろ」

戦刃「私は……な、苗木君について行く」

苗木「うん。それじゃ、鍵を開けよう」

霧切「ええ」

――玄関ホール――

ピー ガチャ

苗木「開いた……」

霧切「……出るのね。いよいよ」

苗木「行くよ」

一同「おう」

苗木(世界は絶望に包まれている)

苗木(でも希望はある。僕たちが希望になるんだ)

苗木(希望を繋ぐ為に、僕たちは……)


これで終りです。
ゲームをやってたのがだいぶ前という事もあり所々口調がおかしいようですが
ご容赦ください。

とにかくゲームの特典画像で出てくる「みんなで外へ」をやってみたかったんです
何とか完結できました
こんなクソ長いSSにお付き合いいただき、ありがとうございました。

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