勇者「だっぷん!」(92)

勇者「うんこでた」

戦士「そっか」

勇者「たぶん朝食べた肉のせい」

戦士「うん」

勇者「それでほら…こんなうんこが…」

戦士「うん」

勇者「なんだよ!ばか!」

全裸中年勇者とは驚いたなぁ

勇者「こうやってさ、ゲル状の魔物をさ、うんこに見立ててさ」

戦士「うん」

勇者「殺伐とした旅路に笑いを添えようとしてるわけじゃん」

戦士「ありがとう」

勇者「それをなんだお前は」

戦士「ごめん」

勇者「そういえばこいつゲルじゃん」

戦士「ゲルだね」

勇者「でもゲルってもっとなんかゲルゲルしてるじゃん」

戦士「あーわかる」

勇者「たぶんこの形容しがたい固さが生きてるってことなんだろうな」

戦士「あ、襲ってきた」

勇者「うわ生きてたんだ」

勇者「死んだな」

戦士「君が殺したんだけどね」

勇者「死んだらドロドロになったな」

戦士「まぎれもなくゲルだね」

勇者「きっとあいつの生きる意味とは固さを維持することなんだな」

戦士「おっさんのセックスみたいだね」

勇者「俺にこいつの固さを奪う権利はあったんだろうか」

戦士「うんこに見立てられて固さを奪われて浮かばれないね」

勇者「やはり浮かばれないかな」

戦士「まあ浮かばれないだろうね」

勇者「これはヘコむ」

勇者「これから先、何回ヘコんだらいいんだろう」

戦士「何百という魔物をなぎ倒すのが勇者だそうだよ」

勇者「マジかよ今のままの性格でいられる気がしない」

戦士「魔王倒したら行き場無くした魔物が何万と死ぬよ」

勇者「完全に気が滅入った」

勇者「しゃれにならん」

戦士「士気の低下が著しい」

勇者「出発したてでまだ実家も見えているというのに」

戦士「君のお母さんがくれたオニギリもまだ残っているというのに」

勇者「そういえばさっき形容しがたい固さって言ったけどソフトテニスボールに似てる気がする」

戦士「ほんとだ」

勇者「俺の敵って魔物なわけじゃん」

戦士「うん」

勇者「たとえばさ」

戦士「うん」

勇者「洞窟に攻め入ったら魔物の家族がいるとするよ」

戦士「うん」

勇者「こう、晩御飯を囲んでいるとするよ」

戦士「うん」

勇者「もう家族団らんだよね」

戦士「水入らずだね」

勇者「お父さん魔物も長い出張から帰ってきたわけ」

戦士「子供も大喜びだろうね」

勇者「これをボコボコに殴り殺したら俺は正義なのかね」

戦士「正義とは言いがたい気がする」

勇者「でもお父さん魔物は出張で人間を倒しに行ってるんだよ」

戦士「あ、こいつ自分が有利になる情報を後から出しやがった」

勇者「勇者たるもの情報を小出しにくらいするよ」

勇者「でもやはりお父さんも子供を養うためには仕事をしなければならないから」

戦士「人間を殺すのもやむなしなのかもしれないね」

勇者「しかもお父さんは血が苦手だから人間を気絶させるだけなんだ」

戦士「なんと」

勇者「ていうかあいつらって人間殺すの仕事なの?」

戦士「知らないよ」

勇者「決めたわ」

戦士「なにを?」

勇者「俺は何も殺さない勇者になります」

戦士「さっきゲル殺したじゃん」

勇者「あれは蟻踏んじゃったぐらいの仕方なさ」

戦士「蟻をなんだと思ってるんだ」

勇者「まあともかくそういうことだから」

戦士「やっと物語の趣旨が決まった気がするね」

勇者「これから先、俺がなにかを殺したら俺を一発殴ってくれ」

戦士「わかった」

勇者「でもそれは結局、罪を犯した自分に慰めが欲しいだけであって
   殴られた事によって、ああ自分はこれで許されたと思いたいだけ何じゃないだろうか。
   そんなことをしたって僕がしたことは変わらないし
   罪を犯した僕だけがスッキリしてしまう最低の行為なのかな」

戦士「殴った僕もスッキリするよ」

勇者「ああならいいや」

勇者「殺さないと決めたら実に心も晴れやかだ」

戦士「喜ばしいことだね」

勇者「いい旅になりそうだ、あ、かゆい」

戦士「蚊にでも食われたんじゃない」

勇者「うん、今食われてる真っ最中だ、死ねっせりゃ」パチン

戦士「おいおいどうしようこいつバカだぜ」

勇者「どうやら、やってしまったようだな」

戦士「紛れもなくやってしまったよ」

勇者「君に殴られるわけか」

戦士「そういうことになるね」

勇者「虫はセーフにします」

戦士「なんて自分に甘い勇者だ」

勇者「勇者たるもの少しぐらい自分に甘いよ」

勇者「さあ旅を続けよう」

戦士「殴られまいと必死だ」

勇者「あ」

戦士「あ」

勇者「遠くに見えるあれって、そういうこと?」

戦士「虫型の魔物に見えるね」

勇者「これは迷いどころ」

戦士「さて伝説の勇者の末裔はどのような答えを導きだすのか」

勇者「あれは虫なのか魔物なのか」

戦士「あれは虫に魔王パワーで力を与えられた魔物です」

勇者「あ、じゃああれって元々は虫なの?」

戦士「そうだね」

勇者「なんだ、死ねっどりゃ」

戦士「迷いがないいい太刀筋だ」

勇者「虫はセーフ」

戦士「元々って言っても祖先って意味であれは魔物と魔物との間に生まれた純正の魔物だよ」

勇者「俺はなんてことを…」

戦士「まあ力を与えられたと言っても多少でかい虫と見て大差ないけどね」

勇者「じゃあ虫でいい」

戦士「迷いのないいい眼差しをしている」

勇者「虫とは言え、殺すと気分が悪い」

戦士「見よ、これが自分に虫と言い聞かせようと頑張る勇者の姿だ」

勇者「しかしそれでもお腹は空く」

戦士「おにぎりあるよ」

勇者「あ、ツナだ やった」

戦士「よかったね」

勇者「談笑してたら街に着いた」

戦士「殺伐とした旅路とはよく言ったもの」

勇者「お、なんかいまおっさんと目が合った」

戦士「恋の予感」

勇者「あ、おっさんすごいこっち走ってくる」

戦士「恋は体当たりだ」

町長「失礼ですが勇者様でいらっしゃいますか?」

勇者「いかにも勇者ですがなぜおわかりに」

町長「その溢れ出るオーラまさしく勇者様のそれ」

勇者「よせやい」

戦士「ところであなたは」

町長「町長です」

勇者「蝶々?」

戦士「あ、勇者がかわいこぶってる」

町長「洞窟に魔物が住み着いておるのです」

勇者「ほほう」

町長「その洞窟の採掘でこの町はもっておるのです」

勇者「なるほど」

町長「やっつけて欲しいのです」

勇者「実に簡潔に話す人だ」

戦士「町長の器をしている」

町長「町の兵では勝てんのです」

勇者「なるほどそれでたまたま訪れた勇者にお願いを」

戦士「この呑気さも町長には必要なのかもしれない」

町長「やってくれますかな」

勇者「勇者はイメージ商売ですからね。引き受けましょう」

戦士「これを断ったらいろんな町村に嫌な噂を回されてしまう」

勇者「話半分に聞いてたんだけどもしかして討伐の依頼か」

戦士「そうだね」

勇者「やべー」

戦士「不殺の誓いが早速ネックに」

勇者「ぐぬぬ…しかし私は勇者だ…
   民に頼まれたことをおいそれと反故にはできまい
   仕方ない…引き受けましょう」

戦士「せりゃっ」

勇者「うわっ殴られた」

勇者「君、急にどうした」

戦士「今…自分を殺したでしょう!
   あなたの誓いは何も殺さないということ!
   それはあなた自身とて例外ではない!」

勇者「うわ、どうしたどうした」

戦士「勇者様はなにも殺さまいと…
   そう私に誓った!
   しかし…しかし洞窟の魔物を野放しにはできない!
   ああ…勇者様…なんと…おいたわしや…」

町長「とても申し訳ない」

戦士「そうでしょう」

勇者「こいつさてはお礼を貰おうとしているな」

勇者「というわけでおにぎりを貰いました」

戦士「やったね」

勇者「いい話にしようとしてるのかと思ってびっくりしたよ」

戦士「そんなまさか」

勇者「おにぎり見てたらお腹空いた。食べちゃお」

戦士「僕はまだとっとこう」

勇者「昆布か…」

戦士「ゲル魔物倒したときよりヘコんでる」

勇者「洞窟近いね」

戦士「こんなに近いとは」

勇者「おや」

戦士「こんにちはー」

勇者「誰かが先に入っていったね」

戦士「浮き足立って僕らにも気づいてなかった様子」

イメージ商売って言っちゃったよwww

勇者「やっぱ最深部にいるのかな」

戦士「そうでしょうね」

勇者「なんで奥にいるんだろう」

戦士「そりゃ仮にも人間のもの奪った形になるから顔合わせづらいでしょう」

勇者「いいやつそうじゃん」

戦士「採掘したいのも最深部だから結局一番ジャマっていうね」

勇者「やなやつだ」

勇者「魔物が一匹だけだといいな」

戦士「ね」

勇者「でも学校でうんこするとき仲のいい後輩を見張りにしたくなるしなー」

戦士「伝わりづらい」

勇者「強い奴が住み着いたらしいから手下を道中配置するだろうということです」

戦士「よろしい」

勇者「仲のいい後輩ポジションの魔物を見つけた」

戦士「あちらも気づいた様子」

勇者「羽生えてるけど、あれ虫かな」

戦士「こうもりっぽい」

勇者「うそ、とんぼじゃない?」

戦士「殺す言い訳探しに必死だ」

勇者「ギリギリでこうもりかな…」

戦士「倒したいなら倒せばいいのに」

勇者「倒したら結局ヘコむからやだ」

戦士「勇気ある者とは思えない発現」

勇者「こんな時のために虫を捕まえておきました せいっ」

戦士「おー食べてる」

勇者「いまのうち」

戦士「とことん虫ならいいんだ」

勇者「あれは虫かな」

戦士「あれはもう豚でしょ」

勇者「こんな時のためにおにぎりを残しておきました せいっ」

戦士「あんた昆布あんまり好きじゃないからって」

勇者「いまのうち」

戦士「あ、最深部っぽい」

勇者「おや、さっきの」

戦士「入り口の君」

勇者「おや、変身しているぞ」

戦士「魔物だったようだ」

勇者「なんでこんなに怒ってんの」

戦士「勝手に家入られたら誰でも怒るよ」

勇者「マジかよすげー身勝手だよこいつ」

勇者「くそーこらーお前出てけこらー」

戦士「そうだそうだ」

勇者「出てかんとお前虫を投げるぞー」

戦士「気にしてなかったけどこいつ虫とおにぎり同じポケットに入れてる」

魔物「お前らが出てけ」

勇者「うわ喋ったびっくりした」

なにこれ面白い

支援

勇者「魔物は喋るのか」

戦士「僕らが外国語を喋るように知能が高いと人間の言語を覚えられるのだろう」

勇者「なるほど」

魔物「出ちぇけ」

勇者「たしかに発音がまだいまいち」

戦士「真似してみなさい 出てけ」

魔物「出てけ」

戦士「その調子」

魔物「ありがとう」

戦士「いいよ」

勇者「打ち解けてる」

女魔物「お父さんご飯冷えますよ」

子魔物「さめちゃうよ」

勇者「あ」

戦士「あ」

魔物「あ」

勇者「家族団らんしてる」

魔物「出張帰りです」

戦士「洞窟前で浮かれるわけだ」

勇者「人間を殺すのが仕事か」

魔物「人間を殺すのは仕事とかじゃないです」

戦士「予想はずれた」

勇者「くっそー」

魔物「でも血が苦手なので私は殺しません」

戦士「おお」

勇者「仕事はなにをしてるんだい」

魔物「魔物ハンターです」

戦士「同族殺しとは難儀な」

勇者「なぜここに住みだしたんだい」

魔物「出張先が遠すぎて寂しくなり
   ちょうど実家との中間のここに家族を呼び寄せ落ち合おうと」

戦士「家族に会いたいとは良い夫。大事にするんだよ」

女魔物「はい」

勇者「もう一度聞く。これをボコボコにしたら俺は正義か」

戦士「今度ははっきりと言おう。正義ではない」

魔物「しかし君は私の敵だ。みすみす帰せない
   ここに来るまでに洞窟の魔物を殺しただろう」

勇者「ご飯をあげてきただけだ」

魔物「ありがとう あれは大事な後輩」

戦士「例え話が全部当たってる。勇者ってすごい」

勇者「でもここからは出てってもらわんと困る」

戦士「おにぎり貰っちゃったからね」

魔物「人間の法律ではここはあの町の所有物とは聞いた
   しかし魔物の法律ではここはまだ誰の所有物ではなかった」

勇者「なるほど では問題ないと言える」

戦士「一理ある」

勇者「おにぎりあげるから入り口のほうに行ってくれないか」

戦士「昆布苦手だからってあんた」

勇者「というわけで採掘には問題ないです」

戦士「人間が来たら入り口でお茶を振る舞うそうなので許してあげて」

町長「さすが勇者様だ」

勇者「聞けばこの町の兵も怪我すらしてないと」

町長「確かに 凄い力で入り口押されただけです」

勇者「それではそういうことで」

戦士「一件落着」

面白い

勇者「殺さずの誓いは叶った。実に晴れやかな気分だ」

戦士「お見事」

勇者「しかし気がかりなことがある」

戦士「なんと」

勇者「こういうこと言っとけば後々問題が起きたときに
   『誰も知る由がなかったことだが勇者だけは気づいていた』
   とか伝記に書かれたりするんだよ。証言は君に任せる」

戦士「断る」

勇者「そんなことしてたら実は仕込んでおいたカレーが焦げた」

戦士「真っ黒だ」

勇者「殺さずの誓い発動により具材は虫です」

戦士「虫なんか食えるか」

勇者「俺だって食いたくないよ」

戦士「食べなきゃいいのに」

勇者「勇者たるものいくらか強情になるよ」

勇者「虫型魔物のお肉も入っております」

戦士「果たして食べられるのだろうか」

勇者「僕らが歴史の証人だ 食べられると証明しようぞ」

戦士「意外と肉々しい 鶏肉みたい」

勇者「旅の主食が決まった瞬間であった」

勇者「どうせ虫食べるんだって思えばおにぎりと同じポケットにも入れるさ」

戦士「納得のポケッティング」

勇者「さあ、じゃあ行こうか」

戦士「僕らの旅は魔王の待つ北へ北へ」

今日はここまでにします

淡々としてていいなコレ

おつおつ勇者がw

勇者「思うのだけれど」

戦士「話してみなさい」

勇者「勇者というのは称号でしかないわけだ」

戦士「というと」

勇者「フィリピンパブで社長と呼ばれるのと大差ない」

戦士「つまり持て囃したいだけ感が伝わって嫌だと」

勇者「そう だからゆうちゃんと呼んでくれ」

戦士「ださい」

勇者「そのほうが距離も縮まってなんかいいだろ」

戦士「ゆうちゃん頭に虫がとまっているよ」

勇者「なんだと 死ねっぷしゃー」

戦士「こいつついに殺虫剤を持ち歩くようになってる」

勇者「洞窟の魔物がくれた」

戦士「まったくいい人だ」

勇者「この殺虫剤妙に強力なんだよ」

戦士「アホな勇者が自分に噴射して死ねばいいと思ってるんじゃ」

勇者「やはり腐っても魔物か」

戦士「血を見たくないけど勇者を倒さねばならぬ悲しい運命」

勇者「それでこの殺虫剤か」

戦士「やはり知能高い」

勇者「村に着きました」

戦士「とてもスムーズでした」

勇者「あ、やばい おっさんと目が合った」

戦士「案の定走ってきている」

勇者「勇者たるものおっさんの一人や二人すぐに惹き付けるさ」

戦士「なんてつらい職業なんだ」

村長「村長です」

勇者「それはそれは」

戦士「ご苦労様です」

村長「魔王を倒してくだされ」

勇者「会うなりなんだこの人は」

戦士「勇者の旅を急かしてきた」

村長「最近魔王パワーをひしひしと感じるのです」

勇者「俺ですら全然感じない魔王パワーを感知するのか」

戦士「村長ってすごい」

村長「このままだと魔物になっちゃう」

勇者「マジかよ魔王パワーってすごい」

戦士「こわい」

村長「お願いです勇者様」

戦士「ゆうちゃんと呼んであげて」

町長「お願いゆうちゃん」

戦士「確かに距離が縮まっていい感じ」

勇者「やってやろうという気になる」

勇者「勇者なら誰でもいい感が消えた」

戦士「これはゆうちゃん個人へのお願いごとへと昇華した」

勇者「まあなんにせよ魔王を倒すのは頼まれなくてもやります」

戦士「彼の生き甲斐なんです」

勇者「だけれど村長の気持ちを尊重して急ぎめでやってやろうという気になった」

戦士「この勇者ダジャレをぶちこんできた」

勇者「村にはアホみたいになにもないし、もう行こうか」

戦士「ひどく辛辣だ」

勇者「お腹も空いたし虫カレーでも食べようか」

戦士「虫の魔物を倒す事に慣れてきている」

勇者「あーあ実家のおにぎりが食べたいなあ」

戦士「おにぎりなんてどれも一緒でしょう」

勇者「勇者たるもの序盤でホームシックにもかかるよ」

勇者「切ない旅路になってしまった」

戦士「まさにセンチメンタルジャーニー」

勇者「あのばかでかい家に帰りたい」

戦士「たしかに君の家はでかい」

勇者「父の土地収入がすごいのです」

戦士「いいな」

面白い 支援

ああ、村長を尊重か……

勇者「ただいま」

戦士「帰ってきちゃったよ」

勇者「我慢できなかった」

勇者母「あらおかえりユウスケ」

戦士「ユウスケっていうんだ」

勇者「お恥ずかしい」

勇者「やっぱり実家はいい」

戦士「見るに耐えない程だらだらしてる」

勇者父「あれユウスケじゃないか」

勇者「ただいま」

戦士「おじゃましてます」

勇者父「そうか…こんなに帰りが早いという事は気づいてしまったんだな」

勇者「え?」

戦士「ん?」

勇者父「あれ?」

勇者「もちろん気づいたよ」

戦士「伝記にいい感じに載りたい作戦発動」

勇者「父が黒幕なのだろう」

戦士「なんだって」

勇者父「なんだ…やはり気づいていたのか」

勇者「マジかよ」

戦士「勘かよ」

勇者「こういうときって大体そうかなって思って言ってみたら当たった」

戦士「勇者ってすごい」

勇者父「さすが伝説の勇者ことパパの息子」

勇者「勝手に白状した父がなぜか誇らしげだ」

戦士「このバカ息子にしてバカ親父あり」

勇者「人の家庭を悪く言い過ぎだぞ」

戦士「ごめん」

勇者「して伝説の勇者の父が黒幕とはどういうことなのか」

戦士「気になる」

勇者父「仕方ない。じゃあパパクイズをしよう」

勇者「父のクイズは難しいからなあ」

戦士「黒幕登場というのに全然シリアスにならない」

勇者「勇者たるものシリアスな場面すら和気あいあいとした雰囲気を醸し出すよ」

戦士「おにぎりを食べるのくらいやめたらどうなの」

勇者「ツナの美味しさはシリアスすらも吹き飛ばす」

戦士「さすがツナ大好きクラブ会員は言う事が違う」

勇者父「パパが30年前に魔王をボコボコにしたとき手に入れたものはなんでしょう」

勇者「地位と名誉だ」

戦士「実に模範解答」

勇者父「残念。世界の半分でした」

勇者「くそー」

戦士「うわ あれ貰っちゃう人いたんだ」

勇者「父の土地収入はそこからきていたのか」

戦士「世界の半分の土地収入とは計り知れない」

勇者父「おかげさまで豪邸を建てる事ができました」

勇者「おめでとう」

勇者父「ありがとう」

勇者「いえいえ」

戦士「親子で君たちは何をしているんだ」

勇者父「それで最近欲が出て、こうなったら世界全部欲しいなって」

勇者「まったく父さんらしいや」

戦士「おっさんそれ世界征服だからね」

勇者父「だから黒幕と言ってるだろうが」

勇者「そうだぞいったい君は今まで何を聞いていたんだ」

戦士「絶対僕は悪くないのに勇者の血筋の圧倒的説得力にひれ伏しそうだ」

勇者父「それで30年前に虫型の魔物だけ魔王がくれたからそれで頑張ってみようかなって」

勇者「魔物もくれるとは魔王ったら太っ腹」

勇者父「その虫型魔物の数が最近えらい減った」

戦士「この人カレーにして食べてました」

勇者「ごめんね」

勇者父「実は魔王パワーも30年前にもらった」

勇者「魔王の懐の広さは留まる事をしらない」

勇者父「それで隣町の町長を虫の魔物に変えて計画と第一歩とした」

勇者「ほらやっぱあれ蝶々だよ」

勇者父「確かに蝶々の魔物にした」

戦士「それで喋り方が簡潔だったのか」

勇者父「どうしても知能下がる」

勇者父「そしたら魔王が感づいたっぽくて魔物を進軍してきた」

勇者「世界の半分という契約だからね」

戦士「そりゃ怒るよね」

勇者父「凄腕の虫型魔物ハンターが来たのだ」

勇者「なんかその人知ってる気がする」

戦士「ああ 洞窟の君」

勇者父「強力な殺虫剤を使う恐ろしい敵だ」

勇者「間違いなくなった」

戦士「あれ仕事道具だったんだ」

勇者父「腕っ節もかなりあるのに殺虫剤しか使わないから嫌みだよね」

勇者「あの人、血が苦手だから」

戦士「なんで魔物ハンターやってんの話」

勇者「む」

勇者「それにする」

戦士「なんの話だ」

勇者「洞窟奪還後に言ってた気がかりなことってやつ」

戦士「伝記にいい感じに載りたいってやつか」

勇者「そう 血が苦手な上に魔物が魔物ハンターなんておかしいってやつにする」

戦士「誰も知る由がなかったことだが戦士だけは気づいていた」

勇者「ずるい」

勇者「今思えばあんなに知能高い魔物がこの辺にいるのもおかしい」

戦士「虫型魔物を倒しに遠くから来たんだね」

勇者父「俺の力が及ぶこの辺の虫型魔物が一番強いからね」

勇者「誇らしげだ」

戦士「そういえば村に行くあたりはスムーズにいけたものね」

勇者「確かにだんだん弱くなってた」

勇者父「村と言えば村長は魔物になってたかい」

勇者「なってなかったよ」

戦士「最近感じる魔王パワーってあんたのかい」

勇者父「町長も魔王パワーで魔物に変えたんだからそりゃそうだろ」

勇者「何を聞いていたんだ」

戦士「この親子嫌い」

勇者父「本当の魔王は俺がボコボコにしたから悪事なんてとてもとても」

勇者「誇らしげだ」

戦士「じゃあこの勇者ってなんで旅してるの」

勇者「あ、ほんとだ」

勇者父「進軍してくる魔物倒してくれないかなって」

戦士「魔王が復活したとでも聞かされたのかな」

勇者「うん まんまと聞かされた」

勇者父「それが全然倒さないし、なのに虫は倒すしやんなっちゃう」

勇者「殺さずの誓いがこんな形でいい感じになるとは」

戦士「ゲル状の魔物に感謝」

勇者父「最弱の魔物に邪魔されるとは」

勇者「うんこに邪魔されたと言ってもいい」

戦士「なんかかわいそうだ」

勇者父「人生ってそんなものだよね」

戦士「悟ってる。さすが伝説の勇者」

勇者父「さあどうする。俺を倒すか」

勇者「村長を尊重するとそういうことになる」

戦士「ダジャレわかりづらかったかなって反省して簡潔にしてきてる」

勇者「民を救う勇者としては戦わねばならない」

戦士「イメージ商売だからね」

勇者「しかしあれは、ゆうちゃんことユウスケに頼まれたこのなのでノーカンです」

戦士「すごい結論を出したな」

勇者「勇者は約束破らないけど、そりゃユウスケは破るよ」

戦士「人間だもの」

勇者父「なんて慈悲深い子に育ったんだ。パパ嬉しいから世界の半分あげちゃう」

勇者「やった」

戦士「いいな」

勇者「世界は平和に導かれた」

戦士「こんな形で終わるとは」

勇者「土地も手に入ったしハッピーエンドだ」

戦士「いい世界になりますように」

勇者「あれからいろいろあって結局旅は続いたわけだけれど」

戦士「そんなこともあったね」

勇者「もう20年前になるのか」

戦士「懐かしい話してどうしたの」

勇者「朝食べた肉のせいで下痢してたら思い出した」

戦士「そっか」


終わりです


おもしろかった


淡々としててよかった


よかった

おつ
勇者が今何してんのか気になる

レスタイで期待しないで開いたのに面白かった

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