勇者「娘ちゃんお久しぶりです」(28)

娘「あら!勇者くんじゃない!も〜来るならなんで手紙くれないの?」

勇者「すいません、お邪魔でしたかね?」

娘「世界を救った勇者様がお邪魔なわけないでしょ!ささ上がって上がって」 

勇者「いえ…そういう訳には…」

娘「え?じゃあ何しに来たの?」

48時間前

伝書鳩「クルックー」

勇者「何時もご苦労様です、今日の記事は…うん?手紙?」

勇者「いえ、なんというか、旅が終わってからお世話になった人へのお礼の挨拶ができてないなあと思いまして…」

娘「は〜お礼をしたいのはこっちの方だってのに…まあそういうとこが好きになったんだけど」

勇者「え?えー?」

娘「あら?告白しちゃった!まあいっか、ね、お嫁さんにしてくれらたくさんしてあげるよ、オ・レ・イ」

勇者「あ、ああうう〜」

勇者「うう…すいません、今はお礼の旅の途中でその…」

娘「そっか〜だめか〜」

勇者「ごめんなさい!ごめんなさい!」

娘「いいよ、そんなに謝らなくても」

勇者「あの…その…」

娘「待ってるから!」

勇者「へ?」

娘「あたし、いい返事もらえるまで待ってるからね!勿論二番目とかでもいいし」

勇者「いや…そういう不貞は…」

娘「これは前金ね」チュ

勇者「」カアアアアアア

勇者「そ、その、し、失礼しましたー!後達者でー!」タタタ

娘「いっちゃったか…」

娘「…まってる…からね…」

47時間前

勇者「宛先も差出人も書いてないのに良く届きましたね…」

勇者「誰からだろう…とその前にお野菜にお水をあげないと」

勇者「この教会に来るのもいつ以来でしょうか…」

勇者「こんにちは、司祭様お久しぶりです」

童A「あーゆーしゃしゃまらー」

童B「しさいさま、ゆーしゃさまだよー」

司祭「おお、勇者殿ですか?本日はどうされた?」

勇者「実は…」

45時間前
勇者「今日は卵が思いのほか取れました」ホクホク

勇者「巨大な卵焼きをつくっても余りそうですね」

勇者「そうだご近所さんにおすそ分けしましょう」

司祭「ほう…感謝の旅ですか…さすがは勇者殿だ」

勇者「いえ…本来ならすぐにでもするべきことでした」

勇者「あの…それで司祭様…」

司祭「ほほほ、ご覧の通り視力は戻ってきておりませんよ」

勇者「僕のせいで本当に…」

司祭「何をおっしゃるか…勇者殿のおかげでどれだけの命が救われたか」

童A「ゆうしゃびーむ」

童B「ゆうしゃばりあーだ」

童A「ゆうしゃびーむはばりあはかいできるもん」

司祭「あなたが居なければ魔獣によって私もあの子らもここにいなかったでしょう」

司祭「あなたは誇るべき人です、もっと誇りを持って下さい」

童A「ねえゆーしゃさまなんでとまっていかないのー」

童B「ねえなんでー」

勇者「すいません、少し急ぎの旅でして」

司祭「これこれ、お前たち勇者殿を困らしてはいかんよ」

童AB「ぶー」

勇者「それでは司祭様、失礼させて頂きます」

司祭「あなたの行く末に幸あらんことを」

勇者「ありがとうございました」

司祭「ああ、勇者殿…」

勇者「はい?」

司祭「一つ言い忘れたことがありました」

司祭「時に優しい嘘は悪意に満ちた嘘よりも深い罪を背負うことがあります」

勇者「…………」

司祭「いえ…忘れて下され、この老いぼれめ、両の眼だけではなく心の眼まで曇らせたようで…」

勇者「いえ…ありがとうございます」

44時間前
勇者「ふう、おいしかったなあ」

勇者「さてと…手紙は誰からですかね〜」ガサガサ

勇者「………………」ハッ

兵士C「はあ…はあ…はあ…」

兵士D「もうだめ…」バタン

女剣士「おらあ―!誰がくたばっていいって言った!腹筋9800回追加あああ!」

兵士E「た、隊長殿…我々死んでしまいます…」

女剣士「誰が無駄口叩けと言ったあああ!腕立て334回追加じゃボケええええ!」

兵士E「そんな〜」

勇者「結構厳しいんですね…」

女剣士「誰に向かってタメ口をおおおお…って勇者か!久しぶりだな!」

勇者「国防軍の5番隊隊長でしたっけ、凄い訓練ですね」

女剣士「なーにが凄いもんか!あいつら俺の半分の訓練量でへたばっちまうもやしばっかりよ!」

勇者「もやしって…皆さん僕より頭二つは大きいしムッキムキじゃないですか…」

女剣士「あんなもん見せかけだ!闘いの為の筋肉じゃねえよ!つまようじのてめえのほうがまだ役に立つわ!」

勇者「爪楊枝…」

女剣士「それでなんのようだ!」

勇者「はい…」

女剣士「挨拶だあ?お前バカか?」

勇者「いえ多分違います」

女剣士「いいやバカだね、んなくだらねえことしてる暇があるなら俺が鍛えてやるわ!」

勇者「いえそれは…ご勘弁を」

女剣士「あーそのー…なんだ」

勇者「ハイ?」

女剣士「俺達いっしょに旅したなかなんだし…離れててもその…なか…ま?じゃねえか…水臭いこと…いうなよ」

勇者「はは、すいません」

女剣士「あ!てめえ笑いやがったな!」

勇者「笑ってませんよ」

女剣士「嘘こけ!顔が引きつってるぞ!あったまきた!絶対訓練に参加させてやる!」

勇者「あ!じゃあ僕はこれで!兵士の皆さん訓練頑張ってください!」タタタタタ

兵士たち「ふぁ〜い」

女剣士「待てテメー!おいこらー!」

42時間前
勇者「…………………」

勇者「…準備しなきゃ」

鍛冶屋「あらん?勇者ちゃんじゃないの?」

勇者「お久しぶりです」

鍛冶屋「やっだーもうアタシったら!お化粧もしてないのに!」

勇者「いえ、おかまいなく…」

鍛冶屋「オカマいするのはこっちよ!もーあんたは相変わらずぴちぴちのお肌ね!憎らしい」

勇者「鍛冶屋さんも相変わらず男らしいですね」

鍛冶屋「へー律儀ねー、あたしなら絶対手紙で終わらせるわ」

勇者「そうですね、でもなんか皆さんの顔、見たくなっちゃって」

鍛冶屋「あら、嬉しい事言ってくれるわね」スルスル

勇者「あ、何をするんですか…」

鍛冶屋「静かに…聞いたわよ、立派に成長させたんでしょ?」

勇者「いや…そんな…」

鍛冶屋「いいから見せなさい…優しく扱うから」

勇者「あ…ああ…」

鍛冶屋「凄いわね、あたしの手にあった時とはものが違うわ」

鍛冶屋「剣を打ったあたしも鼻が高いわ!」

勇者「その剣には何度も助けられました」

鍛冶屋「女神の山の特殊鉱石で作ったその剣、物質を吸収して成長する剣」

勇者「これが無ければ多分サラマンダ―に焼かれていました」

鍛冶屋「炎までも吸収するのか…液体・気体及び固体の吸収は確認ができたがそういった特異なものまでを…」

勇者「口調戻ってますよ」

鍛冶屋「え?あらやだ〜聞かなかったことにして〜」

40時間前
勇者「ルーラの書に一応装備品も付けたし…行こう…」

鍛冶屋「今日はありがとうね」

勇者「こちらこそありがとうございました」

鍛冶屋「あと、あんた変な事しちゃダメよ」

勇者「!」

鍛冶屋「図星か…」

勇者「なんで…」

鍛冶屋「目…止めたって駄目でしょうし、他の奴には感づかれないように気をつけなさいよ」

勇者「………」

鍛冶屋「一人で抱え込むのもいいけど…」

鍛冶屋「重くて背負いきれなくなったら放り投げてもいいんだからね…」ギュウ

勇者「…………グス……」

勇者「ずいばせん…ずいばせん……」グズッグズ

鍛冶屋「おーおー泣け泣け…好きなだけ胸ぐらい貸してあげる…」

38時間前
勇者「ひどい有様ですね…」

勇者「前来た時とは全然違う、進むのに時間がかかりそうです…」

勇者「こんにちは、相変わらずここも凄い実験設備ですね」

学者「よお、少年、元気か?」

勇者「あれ?驚かないんですね」

学者「そりゃそうよ、学者ってのは驚くことを見つけるのが仕事だからね、自分が驚いちゃお終いさ」

学者「魔王…どうだった?」

勇者「強かったです」

学者「不可」

勇者「へ?」

学者「どうつよかったか説明しないと合格点はやれんよ」

勇者「再生力が並みの魔物とは違いました」

学者「ふむ」

勇者「何度斬っても焼いても奴は復活を繰り返して僕らに巨大な魔力の束をぶつけてきました」

学者「魔力の束ねえ…詩的な表現だ」

勇者「そうとしかたとえようがありません、暑さや寒さ痺れはありません、ただただ心を蝕むだけのエネルギーが僕らの中に入っていきました」

学者「興味深いねえ、どうやってトドメを?」

勇者「この剣に…」

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