アッガイ「オキヤガッテクダサイ、ご主人サマ」 P「!?」 (71)



アッガイ「オハヨウゴザイマス。コーヒーイレタゾ、ノミヤガレ」

P「お、おう」

アッガイ「ミルクのみ、砂糖はなしでヨカッタナ?」

P「う、うん、それでいいよ。ありがとう」



アッガイ「朝はちゃんとクウカ?簡単にスマセルカ?」

P「えっと、いつもは目玉焼きとトーストなんだけど…」

アッガイ「野菜が足りないナ、材料買ってきたからサラダもツケテヤル」


アッガイ「ソレ飲んだラ顔洗って出直シテコイ。今日は休みダ、ユックリデイイゾ」ガシーン ガシーン

P「」



P「久しぶりの休みに目が覚めたら、アッガイがコーヒー持って枕元に立っていたでござる」

―――九月のとある休日 AM08:00 Pのアパート、201号室


======================

タイトルが紛らわしいですがアイマスSSです。

「アッガイ」は「機動戦士ガンダム」に登場する水陸両用モビルスーツです。
ガンダムネタはほんの少し出てきますが、いわゆるクロスオーバーSSではありません。




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P「な…、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何がなんだかわからねえ」

P「昨日鍵かけなかったか?いや、酔っぱらってたけど確かにかけたよな」

P「ていうか、なんでモビルスーツが俺の部屋でコーヒー淹れてるんだ?しかもご主人さまだと?」



アッガイ『~~♪ ~~♪』サッサッ


P「あ、昨日スーツ脱いでハンガーにかけなかったか。アッガイがブラシかけてくれてる」

P「そういや、下もそのまま着替えてないな。ズボンもシワになっちゃったし
  アイロンもかけてもらおうかな…」



P「いやいやいや、なに和んでるんだ俺」

P「意外と家庭的な雰囲気に流されたが、モビルスーツが朝めし作るとか
  アイロンかけるとか、どう考えても異常事態だろ。まるで嫁さんかメイドさんじゃねえか」


P「……待てよ、メイドさん?そういえば先週あたり、事務所でそんな話を…―――」


――――

――



――


P『―――へえ、そうなんですか?針、ねえ。でも、自分でなんて危なくないんですか?』

小鳥『いいえぇ、ちゃんとした先生に教わってますので。すごいんですよ。
   肩こりとか腰の痛みとか、一時的にですけどもうスーッて取れちゃって』


―――10日ほど前 765プロダクション事務所



小鳥『あ、あの、プロデューサーさんもどうですか?最近肩こりがひどいって
   よくこぼしてるじゃないですか』

P『そうですねえ、じゃあ今度お願いしようかなあ』

P( 素人が刺してもいいってことは、そう危なくない場所なんだろう )


P( それにしてもこの人、性格はいいし、仕事は出来る上に勉強熱心だし、
  顔だって超可愛いのになんで彼氏が出来ないんだろう? )




小鳥『そうですか!やったぁ……』

小鳥『ふふっ、じゃあ先生に人を眠らせちゃうツボでも聞いておこっかな♪』

P『ははは、お手柔らかにお願いしますよ』

P( こんな風に冗談だって言えるし、美人なのに気取ってないから普通なら引く手数多だろうになあ )



真美『兄ちゃん、今ってちょっといいかな?』ヒョコッ

P『ああ、別にいいぞ。何だ?』

真美『あんね、この前亜美と話してたんだけどさ、
   兄ちゃんはドラゴンボール全部集めたら何をお願いする?』



P『そりゃあ、竜宮も含めた765プロの皆がトップアイドルになることかな』

真美『うーん、やっぱ兄ちゃんはそう言うかー。でもさ、そのお願いって
   真美たちが自分の力で叶えなきゃ意味なくない?』

P『その通り!さすが真美だな!いや、そこに気が付くかお前を試したんだよ』ハハハハ

真美( こういう先生いるよね )




真美『うん。真美たちはいいから、兄ちゃん自身のお願いで何かないかな?』

P『そうだな。俺の部屋の洗濯機の中が汚れてきたから、槽洗浄して欲しいな。
  後、流しの水が流れにくいから、それもどうにかしてもらおうかな』

真美『もうちょっと生活臭のないものがいいかな』



P『休日に近所の公園で一人キャッチボールしてても職質されない、とか』

真美『もうちょい、夢を見て欲しいかな』



P『じゃあこれから一生、俺が買うハードディスクやパソコンの部品が壊れないようにしてもらう、とか』

真美『すこしマシになったけど、ビミョーに切実さが漂ってるね』





真美『ダメだよ、兄ちゃん。アイドルは夢を売るお仕事なんだから、
   その上に立つ人がそんなショタイじみたことばかり言ってちゃあ』

真美『わかってる?願いだよ?シェンロンだよ?』

真美『もっとこう、ロマン溢れる回答をしてくんなきゃ』



P『ロマンか…』

真美『そう!ロマン!』



真美『んでもって、できれば一生どうこうってのじゃなくて。一日で叶えられるお願いにして欲しいな』

真美『その、一生っていうのはさ……、真美の時に取っといて欲しいし……』モジモジ




P『うーん。ロマン、ロマン……』

真美『まあ聞いてないよね』



真美『まあいいや、ここは一つ!兄ちゃんなりの男のロマンってのを、バチッと叩きつけちゃってよ!』

P『男のロマン、か……。よし!決まったぞ!』

P『待たせて悪かったな、真美。俺の願いは…』

真美『願いは?』ワクワク



P『ぱっちりお目目の可愛いメイドさんに一日つきっきりで世話をしてもらいたい!』


P『しかもただのメイドさんじゃないぞ!Yes!メイドロボだ!これしかない!』

真美『ウヘァ(どん引き)』


――――

――


――

―――再びPのアパート、201号室


P「なるほど、そういうわけか」モグモグ

アッガイ「ソウダ、願いが叶ってよかったナ。アッガイの手料理はウマイカ?コノ幸セモノメ」ガシーン ガシーン

P( 確かにぱっちりモノアイで、ロボっていうか可愛いモビルスーツだけどさあ )



P「じゃあ何か?真美が君を寄こしたのか?」

アッガイ「送り主の名前は言エナイ。タイムパラドックスが生じるかもしれないカラナ」


P「タイムパラドックス?過去の改変で未来に影響が出てくるってアレか?」

アッガイ「ソウダ。ソレニ、アッガイも送り主も、タイムパトロールの点数稼ぎには使われたくナイ――」




伊織「――あら、なかなか上手いこと言うじゃない」

―――Pの部屋の隣、202号室



律子「そうね。真美って勘違いされても困るけど、私達の名前を出されても恥ずかしいし」

あずさ「ええ、この分なら大丈夫そうです~」

亜美「まさか本当に騙されてはいないと思うけど兄ちゃんも相当の天然だしね。
   きっといい感じにごまかせるよ」



伊織「それにしても狭いし、散らかってるわねえ。いかにもモテない男の部屋って感じ」

あずさ「生ゴミとかはないみたいだけど、雑誌や本が山積みねえ…」

亜美「DVDとかもすごいね。兄ちゃん、どんな映画が好きなんかなー」


真「このカメラ、ノートパソコンの画面が小さいから
  細かい部分までは見えないけど、よく映ってるね。あんなに小さいのになあ」

響「音もクリアだな」




―――201号室


P「つまり話を総合するとこうだな」モグモグ


P「君は未来から何者かによって送り込まれたメイドロボで、
  今日一日だけ俺の身の回りの世話をしてくれると」

アッガイ「ソウダ。アッガイは『 "A"utomated "C"ontrol In"G"rid Bergman-like yo"U"ng lad"Y" 』ダ」



P「自動制御型イングリッド・バーグマン似のお嬢さん?意味わからんぞ」

アッガイ「気ニスルナ。細かいことにコダワル男はモテナイゾ」ガシーン ガシーン





―――202号室


亜美「イングリッド・バーグマンって?」

律子「大昔の女優さんよ。それこそ白黒映画の時代からのね」



真「でも伊織の家ってすごいね。あのロボット、今日のために作ったんでしょ?」

響「だぞ。これならドラえもんとかも作れるんじゃないか?」

伊織「何言ってるの。あんなにスムーズに動いて人と話せる自律思考型の
   二足歩行ロボットなんて現代の科学で作れるわけないじゃない」

あずさ「スピーカーに変声機がついてて、中には春香ちゃんが入ってるの。
    音無さんに車で送って来てもらったのよ~」



真「小鳥さんに?」

律子「ええ。小鳥さんの提案で、万が一の場合を考えて車の中で着替えてもらったのよ。
   プロデューサーがコンビニかなんかに行ってて春香と鉢合わせると困るしね」

亜美「ピヨちゃんのミニバンならよくある車だし。顔を見られなければゴマカシがきくかんね」

伊織「まあ、この部屋で着替えてもよかったんだけど、
   ここに運び込む時にアイツがドアから出てくるなんて可能性もゼロじゃないしね」




―――201号室


P「装備は両腕とも爪なんだな」

アッガイ「ソウダ。今日は戦闘の必要はナイカラナ。バルカン砲だとオ掃除ガデキナイ」


アッガイ「掃射、ナラデキルガナ」ガシーン ガシーン

P「ははは、こやつめ」ムシャムシャ




―――202号室


響「じゃあ、あれはただの良く出来たハリボテなのか?」

伊織「ちょっと違うわね。ガワの他にうちの技術部が作ったのは、目の代わりになる薄型のスクリーン、
   そして手の動きに合わせてクロー(爪)の3D映像を投影する光学迷彩よ」

伊織「料理とかの細かい作業をする必要があるからね。ロボットアームだと慣れるのに時間がかかるし」



伊織「だから、操縦者に特殊な屈折率を持つ素材の手袋を装備させて、あたかも透明に見えるような状態を
   作ると同時に、手袋に仕込んだモーションセンサーに合わせてアッガイの六本の爪が動いてる様な
   映像をリアルタイムで投影してごまかすことにしたの」

伊織「3D映像と手袋との干渉の問題があったけど、これは天馬博士の提唱したスターシステム理論で
   解決できたわ。電力の問題はエメット・ブラウン博士のジゴワット機関を応用することで、
   単3電池六本で約12時間の稼動が可能になったの。エアコンも付いてるし、おまけに潜水も可能よ」



伊織「もちろん、包丁とか持ってる時に手元を見られたり、手を握られたりしたら確実にばれるけど、
   メイドロボって言うからにはやっぱり外見にこだわりたいものね」

真「うんうん、なるほどね」

響「そうだな、そのくらいなら今のテクノロジーでも可能だな。うん、わかるぞ」

律子( ほんまかいな )

亜美( 何たら理論ってくだりは100パー、ウソだね )




―――201号室


P「えーっと、young ladyとかメイドというからには君は女の子か?」

アッガイ「ソウダ。アッガイは女の子ダ。メイドというフレーズは男には使ワナイ。
     ドウシテモ使う場合はメイドガイになるナ」


P「どうしてアッガイなんだ?」

アッガイ「ジャア聞クガナ。一年戦争のモビルスーツから一機、メイドに出来るとしたら誰にスンダ?」


P「そりゃあ、アッガイだろうな」モグモグ

アッガイ「ダロウ?オマエ、なかなか話がワカルジャナイカ」ガシーンガシーン




―――202号室


真「ガンダムって父さんの影響でしか知らないんだけどさ、どうしてアッガイなの?」

真「ドムとかゲルググとかの方が、スカートはいてるし女の子っぽくない?」

伊織「そのドムとかゲレゲレってのは知らないけど…、男って皆ガンダムが好きなんでしょ?」


伊織「私はガンダムなんて全然知らないから、パパ達に聞いてみたのよ」




Trrrrrr... Trrrrrr...


伊織父『どうした伊織。何?ガンダムでメイド?』

伊織父『そんなもの、アッガイに決まっている。こんな簡単な事柄で私を煩わせるんじゃない』ガチャン


伊織兄1『ああ、伊織か。最近頑張っているようだな。今日はどうした?』

伊織兄1『うん?ガンダムで?メイド?伊織、お前は何を言ってるんだ』

伊織兄1『答えはアッガイに決まっているだろう。それじゃあ私は会議があるからな』ピッ


伊織兄2『ヘロー?やあ伊織。この前はステイツまで竜宮小町のナイスなCDを贈ってくれてありがとう』

伊織兄2『うん?ガンダムでメイド?HAHAHAHA!伊織、いつの間にジョークのセンスまで磨いたんだい?』

伊織兄2『オフコース、アッガイに決まってる。It's true!It's damn true!(ホントにホントさ! )』

伊織兄2『それじゃあ、兄さんはパーティーがあるからね。Have a nice day~♪』ピッ


新堂『無論、アッガイがよろしいでしょう』



伊織「―――って言うからアッガイに決めたの。アニメは見てないんだけど、結構可愛いじゃない?」

あずさ「そうよね~、エプロンとかしても可愛いかも~」

律子「いいですね。私が売り出すとしたら、Vi系かな」

亜美「『 Do-Dai 』とかいいかもね」




―――201号室


P「その口調はどうにかならないか?俺の中のアッガイはこう、もうちょっと可愛いイメージなんだが」

アッガイ「スマンナ。ソノ気持ちは嬉しいガ、期待には応えられナイ。
     コウイウ口調にプログラミングされてるカラナ」


アッガイ「チナミニ、コノ口調の参考データは寺沢武一の『コブラ』の第一話ダ」

P「コブラ?俺が産まれる前の漫画だぞ?」ガツガツ

アッガイ「未来のラーメン屋ニモ、コブラは置イテアル」ガシーン ガシーン



―――202号室


真「コブラって?」

伊織「知らないの?ネットでたまにネタにされてるじゃない。駄目よ、流行は常にチェックしないと」

響「自分は貴音と千早と行ったラーメン屋で読んだぞ。左手の銃がかっこいいよね」

あずさ「千早ちゃんが新聞を左手に巻きつけて『サイコガン!』とか言ってたのはそれだったのね~」


律子「春香にしては随分古い漫画を知ってるのね。事務所に置いてあるのはゴルゴと横光版の家康だけだし」

亜美「ひびきんみたいにラーメン屋さんで読んだんじゃないかな?」




―――201号室


P「まあ、それなら仕方ないよな。ご馳走様、おいしかったよ」

アッガイ「イイッテコトヨ」ガシーン ガシーン



―――202号室


響「ところで、自分は何のために呼ばれたんだ?」

真「うん、ボクも気になってたんだけど聞いていいかな?皆がいるってことは、この企画は竜宮のだよね?」

伊織「別に企画って程のことじゃないわ。むしろ今日ここにいる四人は、
   竜宮以前のアイツの担当アイドルだった頃の私達よ」


響 真「?」

あずさ「響ちゃんにはお料理で助けてもらおうと思ったの。
    私では対応できないメニューをリクエストされた時に手伝ってもらおうと思って」

律子「真はその、無いと思うけど腕力担当よ。ガワはアッガイだけど、春香と二人きりなわけだしね」

亜美「二人とも、せっかくの休みなのにゴメンね」




真「ちょっと話が見えないんだけど、さっきの真美の話と関係あるのかな?」

伊織「言ってもいいかしら?」

律子「私は構わないわよ」




伊織「実はね、九月の祭典で『 竜宮小町 』がBランクに上がることがほぼ確定したのよ」

響「そうなんだ!皆も律子もおめでとう!」



あずさ「ありがとう。響ちゃん」

亜美「ありがとう、ひびきん。そんでね、ひびきんとお姫ちんは今年度から765に来たから
   詳しくは知らないと思うけど、去年度は兄ちゃんがアイドル全員を担当してたんだ」

律子「そう、そしてまだ無名だった765プロの皆を一年でCランクに引き上げてくれたの」




律子「社長から私のプロデューサー転向の話が出たのが十一月の終わり、
   IA大賞のノミネートが決まる一月前のことよ」

伊織「ま、去年の私達は誰もそんな位置にはいなかったけどね」

律子「私はもともとプロデューサー志望だったし、三人組のユニットを丸々一つ任せてくれるっていう
   社長の後押しもあってこの話に乗ることにしたの」



律子「ただ、その三人のメンバーは社長の中で既に決まっていた。つまり、竜宮小町よ」

伊織「私達三人は、オフの日にいきなり集められて即答を迫られたわ」



真「プロデューサーは?」

あずさ「プロデューサーさんはいなかったわ」

亜美「兄ちゃん、何も知らなかったんだ」




響「えっ!?そんなことってあるのか!?」

伊織「まあ驚くわよね。そのことは律子だって知らなかったんだから」

律子「言い訳にしかならないけど、色々なことが一気に決められていったの」

律子「社長は『話が決まるまで、事務所内でもこの件は口にしないように』って言ってたけど、
   そこにプロデューサー殿まで含まれてたなんて、夢にも思わなかったのよ」



伊織「その日どんなやり取りがあったかまでは言わないわ」

伊織「話して面白いことじゃないし、今こうなってる以上、予測はつくでしょうからね」



響「でも、いくら経営者だからって社長のやり方は筋が通らないぞ」

伊織「べつに亜美達だって黙ってたわけじゃないよ」

あずさ「ただ、あの日の社長はとても厳しい調子だったの」

伊織「やめなさい、あずさ、亜美」




伊織「何も言うことはないわ。少なくとも、私はね」


伊織「私は今までの活動とチャンスを天秤にかけて、その結果、後者を取った。それだけよ」

伊織「その点に関して、私は公平だったと今でも信じている」

律子「話を戻しましょう」



伊織「その日の翌日、社長と一緒に朝一でアイツに竜宮のことを話したわ」

真「ええっ!?プロデューサー、そんな前から知ってたんだ?」

律子「真達に話したのだって三月入ってからだもんね」

あずさ「発表まで私達を三人で歌わせないように、というのが社長の命令だったの」




響「プロデューサー、きっと反対しただろ?」

亜美「ううん。兄ちゃんね、はじめは驚いてたけど、すぐに『はい、わかりました』って」

律子「こっちが拍子抜けした位だったわね」

あずさ「………………」



伊織「結局、その日は六人で今後のソロ活動についての話し合いをして、
   私達はまたアイツの担当アイドルに戻ったの」

律子「後は、真や他の皆も知っての通りよ」



伊織「それからも、アイツは自分抜きで決められた『 竜宮小町 』に対して文句一つ言わずに、
   最後まで一生懸命、本気で私達をプロデュースしたの」

伊織「ノミネートには届かなかったけど、年度の終わりまで、
   今日の竜宮に繋がる位置へと私達を押し上げてくれた」

伊織「そりゃあ、アイツはそれで食ってるんだし、私達だって必死で走ってきたつもり」




あずさ「そう。必死に今日まで走ってきて、プロデューサーさんに
    御恩返しが出来なかったことに気付いたの」

亜美「今回のランクアップはいい機会なんだ。これからはそんな暇ないし、
   兄ちゃんも兄ちゃんで忙しくなるからね」

律子「でもプロデューサー殿に面と向かってどうこうするにはタイミングを逸しちゃってね」

あずさ「ええ。それに、プロデューサーさんに正面からお礼がしたいです、
    なんて言っても、きっと遠慮すると思うの」



伊織「私達はこれからも同じ事務所の仲間だけど、ライバルでもあるわけだからね」

伊織「だからここで一旦、今までの借りをリセットして、対等な競争関係になろうと思ったのよ」

伊織「それで、それとなく真美に聞いてもらったアイツのしょーーーもない願いを
   こっそり叶えてやろうってわけ」


伊織「別にあずさ達がどう言おうと、お礼とか恩返しとか、そんなのじゃないからね?わかった?」




真「うっ、ぐすっ……。変だな…目から汗が出てきちゃったよ……」グスッ

響「うぅっ、ひぐっ……、自分、こういう話に弱いんだ……」オーイオイ

伊織「やめてよ。どこもそんないい話じゃないでしょ」


律子( ベッタベタね )

亜美( オーイオイは無いわー )

あずさ( 二人とも表現力レッスンを増やした方がいいわね~ )



響「ううぅっ……、ぐすっ…。でも、どうして春香なんだ?」

伊織「最初はね、この中で一番家事が出来るあずさにしようと思っていたの」

伊織「でも、アイツがいない時に事務所で着てみたらアホ毛と体の一部がつっかえちゃって」

あずさ「///」

律子( この人、どこまで大きくなる気かしら…… )




伊織「あずさに合わせて作ったから私が着るにはちょっと大きすぎるし」

亜美「亜美は料理とかって、家庭科とお仕事でしか作ったことないからアウトだし。
   洗濯とかもちょっとわかんないし」

あずさ「それで恥ずかしがる律子さんを説得していたら、春香ちゃんがいきなり現れて――」



春香『 話は聞かせてもらいました!追いかけてそっと潜る!天海春香、天海春香です!! 』

         バアァァーーーーーーン!!!



真「ああ……」

響「うん……」

律子「ああぁ……、私は何をためらっていたのかしら……」

伊織「チャンスの神様に後ろ髪はないってことよ、覚えておきなさい」




伊織「春香に着せたら何も問題なく動けることがわかったから、
   アッガイはそのまま事務所の更衣室に隠して、今朝小鳥の車で持ってきてもらったわけ」

亜美「途中ではるるんも拾ってね」



真「この部屋の設備や、プロデューサーのお部屋のカメラとかはどうしたの?」

伊織「新堂が万事整えてくれるっていうから任せたわ」

伊織「アイツのスケジュールは律子が大体把握してるし、そもそも新堂なら悟られる様なヘマはしないしね」

真( 新堂さん万能過ぎ )

響「この部屋はどうしたんだ?大家さんに言って開けてもらったのか?」



伊織「まさか、一年契約で借りたのよ。部屋代とか光熱費だって四人でワリカンすればお金は
   そんなにかからないし、頃合を見計らって倉庫なり隠れ家なりにしてもいいからね」

真「!」

響「!」




真「う~ん。そっちの事情はわかったけど、こういう隠し撮りみたいなのはどうかと思うなあ」

響「そうだぞ。にぃ、プロデューサーだって、こんなやり方よりも、
  もっとストレートにお礼を伝えた方が喜ぶんじゃないか?」



伊織「律子」

律子「実はね、合鍵が後二本余ってるのよ」ジャラッ


真「いやー、さすが未来のBランクアイドル達だよ。うん、実に立派な恩返しだね」

響「うんうん。身近な人に感謝の気持ちを伝えるって、結構恥ずかしいもんな。自分、感動したぞ!」

亜美( チョロイなー )




伊織「これで協力体制は整ったと考えていいのね?」

真「やだなあ、伊織。ボク達は同じ事務所の仲間じゃないか。もちろん協力させてもらうよ」


あずさ「それじゃあ、真ちゃんと響ちゃんも入れて六人でワリカンね~」ニコッ

響「えっ?」


アッガイ『次はドウスンダ?』


亜美「あっ、洗い物が終わったみたいだよ」




―――201号室


P「そうだな。洗濯も頼んでいいか?」

アッガイ「任セトケ」


アッガイ「アッガイが見タトコロ、そのシャツとズボンも昨日から着たままダナ?」

P「ああ、レコード会社の人達に誘われてな。終電近くまで呑んで、帰ってきてそのまま寝ちまったらしい」


アッガイ「付き合いも仕事の内トイウガ、無理はヨクナイゾ。オマエが倒れたラ、事務所がマワラナイ」

アッガイ「ソレニ、いつまでも若くナインダ。身体のことも考エナイト」ガシーン ガシーン

P「わかってるよ。若くないってのは余計だ」



―――202号室


真「何だか、メイドさんとご主人さまっていうよりも、長年連れ添った夫婦みたいだね」

律子「そうね。中身が十代の女の子でもガワがアッガイじゃあ、さすがに甘い空気にはならないわよね」

あずさ「プロデューサーさん、本当にご無理とかなさってないかしら…?」

亜美「兄ちゃんもたまには男だけでお酒飲んだりしたいんじゃないかな?」




―――201号室


アッガイ「トニカク、ズボンにアイロンをかけないとナ」

アッガイ「洗濯は後でやるカラ、先にシャワー浴びてコイ。ソノ間にアイロンかけておいてヤルゾ」

P「ああ、じゃあ頼むよ」


カチャカチャ ジイィィィィィーーー...


アッガイ「!!!」



―――202号室


真「!」

響「!」

律子「!」

伊織「!」

あずさ「亜美ちゃん!見ちゃいけません!」ガバッ

亜美「うわっ!急にどしたの?何も見えないよー」




―――201号室


アッガイ「ナ、ナニをスル!?///」

P「何って、脱がなきゃアイロンかけれないだろう」カチャカチャ



アッガイ「あた、ア、アッガイに乱暴する気ダナ!?エロ同人ミタイニ!エロ同人ミタイニ!!///」

P「何で二回言うんだよ……。ああ、すまない。モビルスーツとはいえ女の子だったな。
  大丈夫だよ、下着までは脱いでないから」


P「すっかり忘れてたよ、ごめんな。ズボン、ここに置いとくからアイロン頼んだよ」スタスタ

アッガイ「ご主人サマのセクハラ総帥……///」





―――202号室


アイドル達「///」


亜美「ねー?あずさお姉ちゃん、もういいかなー?」

あずさ「……え?ええ、ごめんなさい///」パッ

亜美「ふー、一体どうしたのさー?あれっ、アッガイが兄ちゃんのズボン抱きしめて震えてる」


アッガイ『///』ギュッ



律子「不意打ちだったわ……」

伊織「洗面所にもカメラあるみたいだけど、やめときましょうか……」

真「うん…ちょっとボク達には刺激が強いよ」

響「心臓に悪いぞ……」


――――

――


――

―――20分後、201号室


P「ふう、さっぱりした」

アッガイ「オカエリナセエ。ズボン、アイロンかけて干しといたカラナ」


P「ありがとう。助かるよ」

アッガイ「イイッテコトヨ」ガシーン ガシーン


P「じゃあ俺は仕事するから、アッガイはゆっくりしててくれ」

アッガイ「エッ、今日は休みジャナイノカ?公園で一人キャッチボール、ヤラナイノカ?」




―――202号室


響「一人でキャッチボールってどうやるんだ?」

真「上に投げて捕るんじゃないの?」

伊織「どんだけ寂しい休日よ……」

律子「たぶん壁とか使うんでしょう。そうでなきゃ悲しすぎるじゃない……」




―――201号室


P「このところ忙しくてさ、書類が相当溜まっちゃったんだよ」

P「あんまり残業すると皆が心配するし、会社も時間外手当出さないといけないからな」


アッガイ「オマエの会社、ピンチナノカ?ソレトモ、今流行ノブラック企業ってヤツカ?」

P「いや、そんなことはないよ。ここまで余らせちゃったのは俺の時間の使い方が下手なだけ」




―――202号室


亜美「どうなの?ヤヴァイの?」

律子「そんなことは無いと思うけど……」

響「確かに今週、というかここ一ヶ月は特にプロデューサー忙しそうだったな」

真「イベントが重なって毎日走り回ってたもんね」

あずさ「私達の時もそうだったわねえ……」

伊織「それなのに遅くまで呑み歩いて……」




―――201号室


P「さて、PCを立ち上げてっと」キュイーン


アッガイ「アッガイは静かにしていた方がイイカ?」

P「いや、別に普通にしてて構わんよ。仕事中に話しかけられるのは慣れてるし、
  どの書類も特別集中が必要なものじゃないからな」


アッガイ「ワカッタ、飲み物でもイレヨウ」

P「ありがとう。えーっと、まずは雪歩の活動報告がもうちょっとだったな……」カタカタ




―――202号室


響「カメラが遠くてよく見えないけど、壁紙が765プロオールスターライブのやつだったな」

真「うん」

伊織「ふん………」





―――201号室


アッガイ「紅茶をイレタゾ、ノミヤガレ」

コトッ


P「うん、ありがとう。あー、今洗濯機回してるのか?」カタカタ

アッガイ「ソウダ、少し汚かったからゴミを取って槽洗浄シテル。
     薬剤はあったものを使わせてモラッタ、洗濯はソレカラダナ」


P「そうか、朝から疲れただろ。槽洗浄が終わるまで休んだらどうだ?」カタカタ

アッガイ「ソウサセテモラオウ。オマエ、ナカナカ気が利くナ」

アッガイ「………………」



アッガイ「トナリ、座ってもイイカ?」

P「どうぞ」カタカタ




アッガイ「………………」

P「よし、雪歩のはこれで終わりっと」ズズー


P「あれっ?こんな香りの紅茶、家にあったかな」

アッガイ「『ラベンダー』ダ。アッガイが未来から持ってきタ」


アッガイ「アッガイのデータには、オマエは仕事中にコーヒーを飲み過ぎるとアル。
     好きなものは好きだからショウガナイガ、カフェインの過剰摂取はヨクナイ」

P「これは違うのか?紅茶にもカフェインは入ってるだろ?」



アッガイ「正確には『ハーブティー』ダ。ハーブティーは基本、ノンカフェインと考えてイイ」

アッガイ「オマエの飲んでいる『ラベンダー』は精神を安定サセ、リラックスさせる効果がアル」

アッガイ「他にもたくさん持ってきたカラ、イロイロ試して好きな香りを見ツケルガイイ」


P「そうか、そういえばそんなことを誰かに聞いた覚えがある気がするよ。いい香りだな」ズズー

アッガイ「気に入ったようでナニヨリダ」ガシーン ガシーン




P「えーっと、次はさ来週の貴音と千早のミニライブの経費をまとめないとな」カタカタ

アッガイ「ウン?ソレハ同僚の事務員がやる仕事ジャナイノカ?」


P「よく知ってるな」カタカタ

アッガイ「アッガイをナメルナ。オマエのデータは大体把握シテイル」



P「まあ、今までは音無さんにやってもらっていたんだけど、
  俺の出した企画だし、最後にチェックしてもらえば俺がやって悪いことは無いだろう」カタカタ

P「皆売れてきて書類の量も半端なく増えたし、実際問題、手が足りてないからな」カタカタ

P「この業界に入って一年半くらいだけど、音無さんには色々と教えてもらったし。
  忙しい時に散々助けてもらったからな、少しでも役に立たないと」カタカタ



アッガイ「ソコの数字、計算の仕方を間違ッテルゾ」

P「あっ、いけね」カタカタ


P「さすがアッガイだな」カタカタ

アッガイ「アッガイをナメルナ、とイッタロウ。
     コストパフォーマンスではズゴックを圧倒する働きモノダ」ガシーン ガシーン





アッガイ「休日はいつもこうナノカ?」

P「えっ、何だって?」カタカタ


アッガイ「休みの日はいつも仕事をシテルノカ、と聞いたノダ」

P「いや、そうでもないよ。午前中は大抵書類で潰れるけど、午後は映画観たり本を読んだりだな」カタカタ



アッガイ「外には出ないノカ?彼女とか作ラナイノカ?」

P「俺そんなにモテないし。強がりじゃないけど、今はそんな余裕ないからね」カタカタ



P「よし、これはこんなもんだな。次はやよいのネット配信動画の企画書かな」カタカタ




アッガイ「大変ダナ」

P「そうでもないぞ。こんな言い方したら律子は怒るだろうが、もう半分趣味みたいなもんだ」カタカタ


アッガイ「趣味?仕事ガカ?」

P「仕事が、というより、765プロの皆のことを考えることが、と言った方が近いな」カタカタ


アッガイ「………………」

P「何ていうか、今はどこに行っても、何をしても、プロデュースに活かせないか考えちゃうからな」カタカタ



アッガイ「コノ大量の女性向けのファッション雑誌もソウカ?」

P「ああ。職業柄、あらゆる層の流行を抑えておく必要があるし」カタカタ

P「何より、皆にはその時々で一番似合う格好をさせてやりたいからな」カタカタ


アッガイ「危ないヤツダナ」

P「まあ、そうかもな」カタカタ




アッガイ「仕事を楽しんでいるヨウデ、ナニヨリダ」

P「うん、俺にとっちゃ天職だろうな」カタカタ


P「よし、これは今日はここまでだな。一度本人に読ませて、その後で続きをやろう」カタカタ

P「えーっと、次はどれから……あれ?このテキストファイルは何だっけな」



アッガイ「 RKoboegaki.txt ?」

P「ああ、そうだそうだ。アッガイ、そのファッション雑誌の山のどこかに
 『 竜宮小町 』って書いたノートがあると思うんだけど探してくれないか?」カタカタ


アッガイ「雑誌の山がイッパイでワカランゾ」ガサガサ

P「号数が新しい方の山だ。雑誌に挟んであると思う。後で片付けるから適当に崩してくれ」カタカタ




アッガイ「アッタゾ。No.1ト、2がアル。2の方でイイノカ?」

P「うん、ありがとう。そこに置いてくれ」カタカタ



アッガイ「アッガイが思うに、ご主人サマはモウチョイ整理整頓を心がけた方ガイイ」

P「そうだよなあ。事務所でも、机の上を片付けろってアイドル達に言われるよ」カタカタ


アッガイ「雑誌、種類ごとにマトメルカ?ソレトモ、出版月ごとニ?」

P「いや、そのままにしておいてくれ。どこに何があるかは把握してるから」カタカタ



アッガイ「整理する気ナイダロ」

P「ノーコメントで」カタカタ




P「えーっと、このノートの……ああ、ここだ。ここに書いておけばいいな」カキカキ

アッガイ「『 竜宮小町 』の三人はモウ、オマエの担当じゃないダロウ?」


P「ホントによく知ってるんだな」カキカキ

アッガイ「アッガイは優秀ダカラナ。そのページのライブは、ついこの前のやつダロウ?」



P「ああ。竜宮の活動も出来るだけチェックして、気付いたことなんかは片っ端からメモっておくんだ」カキカキ

P「それを俺なりにまとめたところで、折を見て律子にそれとなく話すようにしてるんだよ」カキカキ


アッガイ「彼女達のプロデューサーは嫌がらないカ?」




P「いや、律子はそんな了見の狭い子じゃないぞ。まだ若いから挑発に乗りやすいところはあるが、
  冷静な時は誰の意見だってちゃんと秤にかけて見れる子だ」カキカキ


P「まあ、この世界は彼女の方が先輩なわけだし、

  向こうにしてみればわかりきったことを言ってる時もあるかもしれんが、
  男性の同業者の視点から見た意見ってのもあってもいいと思うんだよ」カキカキ

アッガイ「………………」



アッガイ「未練、ジャナイノカ?」

P「まあ、そういう気持ちもあるだろうな」カキカキ


P「よしっ、これはこんなもんでいな。次は、えーとー……響のファン投票企画かな」カチカチッ





アッガイ「アッサリ認めるんダナ?」

P「そりゃまあ、竜宮の三人だって律子だって、一年近く担当していたし」カタカタ


アッガイ「タシカ、この話はオマエ抜きで決められたんダッタナ?」

P「そうだよ。本当にいきなりだった」カタカタ



アッガイ「社長を恨んでナイノカ?」

P「高木さんを?まさか。俺をこの業界に誘ってくれた人だ。彼を恨むなんて筋違いだろ」カタカタ



アッガイ「本当に一言も無カッタノカ?」

P「まあな。それでもIA大賞のノミネートにまだ間に合う時期に話してくれたんだ」カタカタ



P「何というか、それがあの人なりの誠意なのかもしれんし、
  ある意味では、俺を信頼してくれていたってことだろ?」カタカタ

アッガイ「ソウカモナ」





P「伊織達にしたって、律子にしたって、それぞれの路線でやりたいことはいっぱいあったさ」カタカタ


P「それでも、会社の為になるなら従うのが当然だし、アイドルはプロデューサーの私物じゃないんだ。
  彼女達が自分で選んだ道なら応援してやりたい」カタカタ

P「どうも俺には、そういった公私混同しがちな傾向があるみたいだからな。
  適度なところで、こう、物事を突き放して見る機会がないと駄目なんだろう」カタカタ



P「俺の力が彼女達に、というかアイドル全員を担当するには見合ってなかったというのも事実だし」カタカタ

P「一年目だったから多少甘めに見て欲しいとは思うけど、彼女達はそれこそ今が勝負なわけで」カタカタ



P「もちろん、当時は色々と考えたし、変な邪推もしたよ」カタカタ

P「でも今の竜宮の人気を見れば、高木さんや彼女達の判断は正しかったと思うし」カタカタ

P「それに四人とも、今でも俺をプロデューサー扱いして慕ってくれるからな」カタカタ

P「出来ることは何でも、してやりたいよ」カタカタ





アッガイ「ヨッコイショ」

P「おいおい、モビルスーツのくせに『よっこいしょ』はないだろう」カタカタ



アッガイ「槽洗浄も終ワッタシ、十分休ンダ。アッガイはコレヨリ、ジャブジャブ・攻略作戦を開始スル」

P( 洗濯のことかな? )カタカタ


アッガイ「ソレト並行シテ部屋の片付けもスルゾ。モノには限度がアル」ガシーン ガシーン

P「雑誌や資料の類は動かさないでくれよ」カタカタ


アッガイ「案ズルナ。トリアエズ、大量の文庫本やDVDの整理カラダ」

P「それくらいなら、やってもらおうかな」カタカタ



アッガイ「アッガイの仕事が終ワッタラ、ご主人サマもヤスメ。キャッチボールに付き合ってヤロウ」

P「また職質されちゃうよ……」カタカタ




アッガイ「ナラ仕方ナイ。無敵のアッガイも、お上にはサカラエナイ」

P「気持ちだけ受け取っとくよ、ありがとう」カタカタ



アッガイ「昼食は12時くらいでイイカ?何が食ベタイ?」

P「色々買ってきたみたいだけど、和風のものはできるか?
  味噌は家のがあるし、アッガイの作った味噌汁が飲みたいかな」カタカタ


アッガイ「マカセロ。ツルムラサキを買ってきたからおひたしニシテ、魚も焼いてヤロウ」

P「いいね。それと手が空いた時でいいから、またお茶を入れてくれないか?
  ラベンダーもよかったけど、別の香りも試してみたいな」カタカタ


アッガイ「了解シタ。アマリ、根を詰メスギルナヨ」

P「ああ、ありがとうな」カタカタ

アッガイ「イイッテコトヨ」ガシーン ガシーン



プツッ ―――






―――202号室


響「伊織?」


伊織「もういいわ。飽きちゃったもの」

亜美「そうだね」

律子「二人とも、もう帰ってもいいわよ。休みをこんなことに使わせて悪かったわね」

あずさ「真ちゃん、響ちゃん。今日はありがとう」



真「いいの?ボクはともかく、響はまだ必要になるんじゃないの?」

伊織「たぶん大丈夫でしょ。あの人、料理は得意みたいだし」

響「?」




伊織「私達は帰るわけにはいかないし、とりあえず近くの喫茶店にでも行きましょうか」

律子「そうね。電話にだけ気をつけて、予定通り六時まではこの近くにいた方がいいわね」

あずさ「皆でお茶でも飲んで、今日どうするか考えましょうか~」

亜美「もうすぐBランクってアイドルの休日の過ごし方じゃないよね、これ」



伊織「アンタ達もいらっしゃい。どうせヒマでしょう?」

真「まっ、乗りかかった船だしね。今日はこのまま付き合うよ」

響「自分だって、すぐにBランクまで行くからな!」

律子「そうね。あんた達ならきっと、すぐに上がってこれるわよ」




亜美「この部屋、どうしよっか?」

律子「もう契約しちゃったしね」

伊織「Bランクに上がった時に、アイツにプレゼントすればいいわ」



伊織「雑誌や仕事の資料だけじゃなくて、他にもくだらない物を色々と溜め込んでそうだったしね。
   倉庫代わりに使わせてあげましょう。もちろん、イザって場合の765プロの隠れ家にも」

あずさ「それがいいわね~」

亜美「あ、二人は払わなくていいかんね。コレは亜美たちのプレゼントだから」

律子「鍵は持っていていいわよ。その方が融通が利くからね」


響「ぐぬぬぬ……、なんか勝手だな…。自分、納得がいかないぞ」

真「まあまあ、ボク達はボク達で売れっ子になった時に、何かプロデューサーにしてあげればいいじゃない」




真「響、携帯持った?」

響「うん」

律子「私達は一度戻ってくるけど、あんた達は一応全部持っていきなさい」



伊織「はあ、とんだ馬鹿騒ぎだったわね。皆でお金出してあんな物まで作らせて、ホント馬鹿だったわ」

あずさ「まあまあ、伊織ちゃん。アッガイさんが可愛いということがわかっただけで良しとしましょう」

律子「そうですね、今回最大の収穫だったかも」

亜美「亜美、ガンダムって新しいのしか見たこと無いんだけど、今度兄ちゃんに色々聞いてみようかな」



伊織「じゃあ私は、ノートパソコンを落としてから行くわ。先に律子の車に乗ってて」

律子「ええ、鍵お願いね」


バタン



伊織「さて、シャットダウンして、と」ピロン♪




ガガガガガ ガガガガカ

伊織「このパソコン、最近シャットダウンにやけに時間がかかるのよね」



ガガガガガ ガガガガカ

伊織「自分のノートじゃなくて新しいのを用意した方が良かったかしら」



ガガガガガ ガガガガカ

伊織「いえ、やっぱり無駄になっていたもの。これでいいんだわ」



ガガガガガ ガガガガカ

伊織「やたらガリガリ言ってるし、OSの再インストールだかっていうのをやった方がいいのかしら…」




ガガガガガ ガガガガカ

伊織「プロデューサー、いいえ、その前に律子に聞いてみましょう」



ガガガガガ ガガガガカ

伊織「律子は機械に強いし、アイドル活動に関係のあることじゃなくても、それが筋よね」



ガガガガガ ガガガガカ

伊織「………………」



キューーーン......

伊織「やっと終わったわね」


パタン


伊織「あーあ」


伊織「スッキリしたわ」


――――

――


――

―――同日 PM05:45 Pのアパート、201号室の玄関


アッガイ「ソレデハ、アッガイはこの辺でお暇サセテモラウ」


アッガイ「肉じゃがはまだ暖かいから、ソノママ喰ラエ。残りは冷蔵庫に入れておけば二日はモツゾ」

アッガイ「昆布と油揚げの炒めものとキンピラは四日はモツガ、ヤハリ早めに喰ラエ」

アッガイ「ソレト、ご主人サマは野菜をもっとトルヨウニ、栄養が偏るのはヨクナイ」

P「色々とありがとう、助かったよ。送り主さんに礼を言っといてくれ」



P「それに、君がいてくれてとても楽しかったよ」

アッガイ「ヤメロヨ、テレルジャネエカ」ガシーン ガシーン


P「………………」

アッガイ「………………」




P「その、今日の午前の話だけど」

アッガイ「ソンナ昔のことは忘れてシマッタ」


P「そうか。また、いつかの休みに来てくれるか?」

アッガイ「ソンナ先のことはワカラナイ。アッガイの送り主シダイダ」


P「………………」

アッガイ「………………」



アッガイ「デハ、アッガイはユク。タッシャデクラセヨ」

P「ああ。今日は本当にありがとう」



P「その、また明日」

アッガイ「ハテサテ、ナンノコトヤラ」ガシーン ガシーン


――――

――


――

―――同日 PM06:05 Pのアパート近くの駐車場


律子「ああ、いたいた。やっぱり、今朝と同じスペースに停まってるわ」

あずさ「うふふ。でも~、偶然かもしれないですよ~」

伊織「そういうことにしておきましょう」

亜美「おーい、ピヨちゃーん。窓下ろしてくれるかなー」トントン



小鳥「皆さん、お疲れ様。今日はどうだった?」ウィーーン

伊織「わざわざ二度も来てもらって悪いわね。まあまあだったわよ」

律子「ところで今日の主役はどこですか?」

小鳥「春香ちゃんなら、ほら、後部座席にいますよ」


ガチャッ




春香『 がーーーーっ、ごがーーーーっ。すーーーーっ、ぐがーーーー 』スヤスヤ


伊織「前後不覚、って感じね」

律子「動画に残しておきましょう」ピロリン♪

あずさ「じゃあ、私は写メっておきます~」ポロリン♪

小鳥「起こさないであげてくださいね。このままお家まで送っていきますから」



亜美「ピヨちゃーん。はるるん、本当に大丈夫なの?」

小鳥「喉のことなら心配しないでも平気よ。加湿器点けておくから」


春香『 えへへへ…、プロデュ-サーさ~ん……ぐがーーー。今行きますからね~…ごがーーー 』スヤスヤ

伊織「タフねえ」




律子「とりあえず、美希に送信しといたわ」

あずさ「私は千早ちゃんに~」

亜美「明日が楽しみだね」

小鳥「じゃあ私は行きますね。アッガイは明日事務所に持っていきます」

伊織「ええ、お願い。私も着てみたいわ」

伊織「………………」



伊織「小鳥」

小鳥「なあに、伊織ちゃん?」

伊織「今日はありがとう。一つ、借りね」

小鳥「いいのよ。あたしも楽しかったから」


春香『 えへへ…、どうですか~……ぐがーーー。メイドアッガイですよ~…ごがーーー 』スヤスヤ


――――――


――――

――


――

―――


P「―――どうだ?決まったか?」

美希「うん。ミキ的にはA案の衣装の方が好みなんだけど、十一月のフェスはB案でいくの」

―――― 一ヵ月後 765プロダクション事務所



美希「男の子のファンはカワイイ系でもセクシー系でもいいけど、女の子のファンはそーゆーとこ敏感なの」

美希「ここんとこの売り出し方で、ミキにも女の子のファンがいっぱいできたの。
   今は大事な時期だし、そのコ達をがっしり掴んでおきたいかな」


美希「やよいはどう思う?」

やよい「どっちの衣装も美希さんには似合うと思いますけどー、
    そういうことならB案の方がだんぜんいいかなー、って思います」

P「よし、決まりだな。話は通してあるから、今日発注すれば来週には届くだろう」

美希「早く来ないかなー。楽しみなのー♪」




美希「プロデューサーも、やーっとファッションがわかってきたみたいでミキ嬉しいの」

P「そりゃあ毎日毎日、年頃の女の子達を見ていればな。それに厳しい先生もいたことだし」

美希「あはっ。とりあえず、ミキ的には合格点をあげてもいいかな」


P「明日のレッスンの後で、ショップイベントの時に着る服を見に行くぞ。
  また土壇場でワガママ言われちゃたまらんからな」

美希「あはっ、そんなこともあったっけ。何もかも懐かしいの」

P「ついこの前じゃないですかぁ……」



P「あー、なんか疲れたな。一度休憩にしようか」トントン

美希「そうだね。一気に色々決めたから疲れちゃったの」

P「やよいもコーヒー飲むだろ?」

やよい「あの、社長の分もお願いします」





高木『ぐむむむ、飛車をこう……、いやいやこれではいかん。
   ならばこの歩をとって、桂馬を……ああ、これも駄目じゃないか……』


P「まーた長考に入ったのか。美希の後で今度の配信動画の打ち合わせやるから、
  それまでには終わらせておいてくれよ」

やよい「その点はだいじょうぶですー。社長、もう『待った』全部使っちゃいましたから」



高木『待てよ、この銀が……、ああっ!これも駄目ぢゃあないか……。
   いや、あきらめちゃいかん。どこかに逆転の糸口が……』


P( 高木さん、ああなってからが長いんだよなあ…… )

P「まあいいや。小鳥さん、コーヒーお願いします」

小鳥「はーい」パタパタ





美希「ねえ、プロデューサー。このフィギュアのガンダムって何ていうんだっけ?」ヒョイッ

P「前にも教えたじゃないか、それはガンダムじゃないぞ。アッガイだ」


美希「ふーん。違うロボなの?」クリクリ

P「ロボっていうか……、うん、違う機体だな。そんなに強くないけど、水陸両用の優れものだ」

美希「そっかー、確かにそんなに強そうじゃないもんねー」

美希「でもカワイイのー♪」ウリウリ



やよい「倉庫にもおっきいのが置いてありますけど、誰かガンダムのイベントでも出たんですか?」

P「あー、まあ、そうかな。公式のイベントじゃないけどな」

美希「春香やでこちゃん達が着て写真撮ってたよね。ミキも入ればよかったな」




小鳥「お待たせしました。はい、美希ちゃんの、少し熱いから気をつけてね」

美希「ありがとなのー」

小鳥「はい、やよいちゃんの」

やよい「ありがとうございますー」



小鳥「社長のカップはどうしよっか?」

やよい「ずっと中座してるのは失礼なので、わたしが持ってきますー」

小鳥「じゃあこのお盆ごと持っていってね。それと、いつまでも付き合わなくてもいいのよ。
   社長、どうせ詰んでるんでしょ?」

やよい「えへへ、自分で気が付くまでは考えさせてあげようかなーって」

P「やよいは優しいなあ」

美希「ちょっと違うと思うの」



小鳥「はい、プロデューサーさんの分です」スッ

小鳥「―――― ――――」コショコショ

P「はいはい、ありがとうございます」

やよい「?」トテトテ




美希「はふはふ」ズズー

美希「やっぱり小鳥のコーヒーはおいしいのー♪」


美希「そういえば、プロデューサー、最近あんまりコーヒー飲まないね」

美希「前は営業でも待ち合わせでも必ずコーヒー買って飲んでたし、
   事務所にいる時も自分でお湯沸かしてしょっちゅう飲んでたの」ズズー

P「カフェインの摂りすぎはよくないからな」

P「雪歩もお茶を淹れてくれるし、仕事で詰まった時以外は自分では淹れないようにしてるんだ」ズズー

美希「ふーん」ズズー



P「最近はな、アパートにいる時はハーブティーとか飲んでるんだよ。美希もどうだ?気持ちが落ち着くぞ」

美希「あはっ、プロデューサーとハーブティーって全然似合わないの。あはっ、あははは」

P「傷付くなあ」ズズー




高木「うーーむ、この角を取らせて銀を……いやいや、それだとこの歩が……」

やよい「社長、せっかくのコーヒーが冷めちゃいますー」ズズー


高木「ああ、いかんいかん。……どうだろう、やよい君?
   ここは一つ、このコーヒーに免じて、先の一手は無かったことにしてもらえないかね?」ズズー

やよい「だめですー。もうわたしの分の『待った』まで使ったじゃないですかー」



高木「うむむむ………。いやはや、まったく、君も成長したものだ。
   覚えているかね?君が我が765プロに来た時はまだ…」

やよい「その手にはもう乗らないかなーって。あのー、小鳥さんと
    プロデューサーって、最近何かあったんですか?」

高木「彼と音無君が?いや、特別何も聞いてないし、今見ても特に仲は悪くないようだが」




やよい「そうですかー。じゃああれは小鳥さんがふざけただけだったのかなー」ズズー


高木「ふむ、音無君がどうかしたのかね?」スーッ

やよい「ズルはだめですー。ちゃーんと見てますからねー」


やよい「小鳥さん、コーヒーをプロデューサーに渡す時に耳元で変なこと言ったんです」ズズー





やよい「『 コーヒーイレタゾ、ノミヤガレ♪ 』って」






                 アッガイ「オキヤガッテクダサイ、ご主人サマ」 P「!?」 おしまい


誕生日SSでもないし一日早いけど、小鳥さん2X回目の誕生日おめでとう。
アッガイかわいい


本文の投稿は以上です。ここまで読んでくれた人ありがとう。
HTML化依頼だしてきます。

メイドロボから最初にイメージしたのがアッガイだったんだ。間違えて開いた人正直すまんかった
ズゴックとかゴッグとかの方がよかったかもね

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