魔王「よくぞ来たな、勇者よ」 勇者「何を今さら」(18)

とある世界の、とある大陸にあるトアル国。

この国では世界の半分を手中に治める魔族の王、『魔王』に苦しめられていた。

そんなさ中、数千年に一度あるとされる、7の月・7の日・7つの星が輝く夜に巫女が啓示を受け取った。

巫女「悪しき魔王を倒す勇ましき者、『勇者』が現れ世界を平和とするでしょう」

人々は待った。

幾千、幾万の昼夜が過ぎ、勇者様が現れ世界を平和にしてくれると信じて…

巫女の啓示から5年の月日が流れた。

その間、魔族側は不思議にも活動を見せなかった。

ある者は勇者様出現の兆しとも、またある者は世界滅亡の兆しとも危惧していたが

国王より勇者が現れた事を発表されるや否や、国中を挙げてのお祭り騒ぎとなった。

勇者「女神様より選定を受けましたが、僕のような元農民に魔王が倒せるのでしょうか?」

国民がお祭り騒ぎの中、勇者は国王に小声で訊ねた

国王「いやいや、お主一人で旅に出す訳ではないぞ?この国の酒場は冒険者ギルドも兼ねておる。2~3人ほど共に旅立つ仲間を身繕うと良かろう」

後日、勇者は酒場に向かった

*「いらっしゃい!ここは冒険者ギルド兼酒場だよ。何が…って、勇者様じゃないか。仲間を探しに来たのかい?」

店主は勇者にギルドは上階である事を教えた

2階に上がると数々の冒険者が勇者を待っていた

*「お!来たな!」

戦士「俺は戦士だ!剣の腕と体力には自身がある!宜しくな!」

魔法使い「私は魔法使いよ。攻撃呪文を使えるわ。どんな強敵だろうと消し炭にしてあげる」

僧侶「私は僧侶です、回復呪文と防御呪文が使えます。体力には自身がありません」

商人「私は商人です。国王様より勇者様の会計係を任されております。私は戦闘に不向きですが、買い物でしたら半値で落としてみせましょう!」

盗賊「俺は冒険者だ!盗賊なんて呼ばれてるが犯罪者じゃねぇ。れっきとしたトレジャーハンターだ!鍵付きは任せな!」

竜「我はドラゴンだ、マスターからの命令で特別に人間と共に戦ってやる」

踊り子「私はダンサー♪応援ならまっかせて♪」

賢者「僕は賢者だ。回復呪文も攻撃呪文も召喚魔法を使える!君が何を言おうが必ず付いていくからね」

勇者は一度に名乗られた事で混乱していたが、明らかにおかしいのが数名いたのには気付いた

なんやかんやあって、勇者は賢者と盗賊、竜を従えて旅に出た

なぜその四人を選んだ

>>6
賢者と竜は外せない理由がある
盗賊を選んだ訳はサイコロで決めた

ネタバレすると賢者か竜のどちらかが魔王の使い

勇者一行は国民の歓声を背に国を発った

周辺の地理に疎い勇者の為に賢者を先頭にして歩を進める

途中で賢者が勇者に訊ねた

賢者「勇者様はこの世界のルールをご存知ですか?」

勇者の頭上に『?』が浮かんだ

盗賊「この様子じゃ後々大変な事になってたな。感謝しろよ」

それでも勇者は首を傾げる

賢者「えっと…簡単に説明しますと、魔物が飛び出して来ても殺してはならないという事です」

竜「この世界に存在する、いわゆる魔物というのは元は我のようなマスターに使役された精霊崩れの事を指す。我が同行するのはお主と出会った魔物をマスターの元に返す為だ」

賢者「まぁ、女神様がその旨を伝えていた筈なんですが…巫女様から聞いてらっしゃらない、ようですね」

盗賊「マジかよ!よくそんなんで勇者なんて名乗ってられるよ…あ!昨日の今日か、無理もねぇか」

勇者の威厳がレベルダウンした!

勇者「それで、僕は何をしたらいい?」

勇者はちからなく訊ねた

話し合うこと数時間、魔物に襲われることなく次の町に向かう為に洞窟を潜ることとなった

竜「やはり我がいるせいか弱い魔物は現れなんだな」

盗賊「いいんじゃね?そこの賢者の武勇伝を聞いた限りじゃ、敵うのは魔王くらいらしいし」

勇者「え!賢者さんてそんなに強いんですか!?」

賢者「身体能力は僧侶、魔法使い、遊び人と同じく非力ですが…オートスキルがあるせいですかね」

『オートスキル』
勇者は聞き慣れない単語にまたハテナした

盗賊「オートスキルてのはよ、この世界に於いて職に就いてる奴に必ず備わる特殊能力の事さね」

竜「我は職に就いてはおらんが…」

賢者「まぁ、今は竜さんのASを明かすと色々バレてしまうので割愛しますが」

勇者(竜さんの正体?ドラゴンじゃないの?)

賢者「僕のASはMPの自動回復と対物理結界の常時発動ですね」

勇者「え?2つも!?」

盗賊「賢者みたいな上級職は複数持ちなんだよ。俺みたいな下級職は1つだがな」

勇者「じゃあ、僕にもあるの、かな?」

賢者「…」

勇者「え!どうして黙るの!?」

賢者「上級職とは複数の職を極めた者のみが成る事を許されるのです。勿論、勇者は上級職ですが…勇者さんは勇者ではあれど勇者ではありません」

勇者「????」

盗賊「お前、バカか?」

盗賊「お前の『勇者』ってのはあくまで称号だろ?お前が勇者に選ばれる前に就いてた職が今もお前の職だろうが」

勇者「えっと…農民?」

賢者「そうですね。勇者さんのASは『農業に関連する行動が速くなる』ですね」

勇者「…」

盗賊「ここまで話しといてアレだけどよ、魔物出なさすぎじゃね?」

賢者「おや?気付いてなかったんですか盗賊さん?」

盗賊「…へ?」

賢者「貴方のASは『常時、しのびあるき』でしょう?」

盗賊「…ぱねぇ」

しばらくして…

賢者「そう言えば、知り合いの諜報部員からこの洞窟について教えて貰った事があるのですが」テクテク

勇者「ち、諜報部の方と知り合いなんですか!?凄いですね」テクテク

賢者「まぁ、昔馴染みというやつですよ。で、この洞窟なんですが出口付近に四天王配下の魔族騎士配下の魔物が配置されてるようです」テクテク

竜「あれではないか?逆光で顔は見えないがかなりデカイ」

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