ベルトルト「アニが僕の名前覚えてなかった」(128)

食堂
夕食中

ライナー「…は?」

ベルトルト「うん」

ライナー「オイオイ冗談だろ?いくらなんでも…」

ベルトルト「…冗談なら良かったんだけど」

ライナー「…本当なのか」

ベルトルト「うん、実は今日──」


※ネタバレ、捏造あり
こんなタイトルですがベルアニ予定
苦手な人逃げてください

―回想―


対人格闘訓練

ベルトルト(…誰と組もうかな)

アニ「…ねえ」

ベルトルト「わっ、アニ」

アニ「あんた空いてたら今日一緒に組まない?」

ベルトルト「えっ、いいの?」

アニ「頼んでるのこっちなんだけど」

ベルトルト「あ、えっと、うん。空いてるよ!組もう」


ベルトルト(…今日は良い日だ)


アニ「…あんたいつも対人格闘もちゃんとやってるよね。…真面目な奴…」イクヨ

ベルトルト「うーん…まあ一応は。サボって怒られて目立ったりするのが嫌だっていうのもあるけど…」 ウン

アニ「ああ、なるほど」タッ

ベルトルト「…ええとアニは…」スッ

アニ「…なに?私がちゃんとやるのが珍しいって思ってるの?」ヒュン

ベルトルト「イヤ僕は…」パシッ

アニ「そう?」ググッ

ベルトルト(目力こわい)グイッ

アニ「…まあ、私も時々は真面目にやってるところも見せておかないとだから」クルッ

アニ「常にサボっていると完全にサボリ魔の印象をもたれるけど、時々やってるところを教官に見せつけていれば、教官の目に入っていないときもちゃんとやっているだろうと思われることができる」ブンッ

ベルトルト「そ、そうなんだ」サッ

ベルトルト(その考え方がすでにサボリ常習犯だよね、アニ…)トン



ライナー「…あっちすげえな」ヒュッ

エレン「動作が一連の流れみたいだな、どうなってんだ」バシッ

※以下効果音とかないけどそのまま訓練しながらの会話だと思ってください

アニ「…それにたまには立体機動とか馬術とか兵站行進とかと違う風に思い切り体動かしたいし」

アニ「ベルとだと手加減をあまりしなくていいからいい運動になる。でかくて若干やりづらいけど」

ベルトルト「はは、なるほどね。…にしても、なんかアニに呼ばれるの久しぶりだね」

アニ「…普段あまり話さないようにしてるからね」

ベルトルト「うん…仕方ないけど、ちょっと寂しいや」

アニ「まあどうしようもないさ」

ベルトルト「そうだね…」



ベルトルト「ところでさ、訓練所に来る前の約束、守らなきゃ」

アニ「…?どれのこと?色々あるけど」

ベルトルト「あぁ、呼び方のこと。僕らが同郷なのを悟られないように、あまり親しそうな呼び方は避けようって決めてたじゃないか」

アニ「あぁ、それ。でもさ、訓練兵も皆名前で呼び合ってるじゃないか。そんな中で苗字で呼び合ったりしてたら逆に怪しまれると思うんだけど」

アニ「ライナーだってライナーだし、あんただって私のこと名前で呼んだばかりじゃないか」

ベルトルト「いや、そりゃ苗字では流石に距離あり過ぎだけどさ、愛称だと近すぎるかなと思って」

アニ「…愛称?」

ベルトルト「うん」

アニ「使ってないじゃないか」

ベルトルト「…うん?」

アニ「え?」

ベルトルト「あれ、さっきアニ僕のことなんて呼んだっけ」

アニ「ベル」

ベルトルト「…もしかして、覚えてないの?」

アニ「は?」

ベルトルト「いや、だから僕の名前」

アニ「え、だからベルだろ」

ベルトルト「いやそうだけど違くて」

ベルトルト「…僕の名前、ベルトルトっていうんだけど」

アニ「……」

ベルトルト「……」

アニ「……え?」

ベルトルト「……うん」

ベルトルト「…なんていうか、正直傷ついたよ…」

アニ「だ、だってずっとベルって呼んでたから…!」

ベルトルト「そうだけど、それにしたって覚えてくれてたっていいじゃないか…!せめて最悪、ここに来てからでも覚え直す期間はいくらでもあっただろう?」

アニ「え、えっと、教官たちは苗字で呼ぶじゃないか!だから覚え直せなくても仕方ないでしょ…?」

ベルトルト「それは教官たちだから!同期は名前で呼んでるから!ていうかそもそもライナーも昔からずっと名前で呼んでたよね?」

アニ「ああ、確かに皆ベルのことベルなんとかとか不思議な呼び方してるとは思ってたんだ…」

ベルトルト「ベルなんとかって…ベルトルトだよ!」

アニ「ずっとそっちが愛称だと思ってた…」

ベルトルト「いやいや何で!?長くなってるでしょ!?」

アニ「エレンだってジャンには死に急ぎ野郎って呼ばれることあるし…」

ベルトルト「明らかに別系列だよねそれは…」



ベルトルト「…流石にやっぱり愛称だと怪しまれるかもしれないし、いい機会だから僕の名前覚えてね」

アニ「わかったよ…ベル…なんだっけ」

ベルトルト「ベルトルトだよ」

アニ「ベル……ト」

ベルトルト「言えてないね」

アニ「ベル…ン…ハルト…」

ベルトルト「違うよ?」

アニ「ベルラルト?」

ベルトルト「惜しい!」

アニ「まってめちゃくちゃ難しいんだけど」

ベルトルト「え、そこまで?」

アニ「あんた本当にこんな名前なの?」

ベルトルト「人の名前バカにしないで…」

アニ「バ、バカにはしてないでしょ」


教官「本日の対人格闘の訓練はここまで!」

ベルアニ「「あ」」

ベルトルト「えっと、頑張って覚えてね…!」
アニ「ああ、うん…」


アニ(ん?ベル…なんだっけ…)

ベルトルト(…大丈夫かな)


―回想終わり―

ベルトルト「…ということなんだ」

ライナー「…まじかよ」

ベルトルト「…まじだよ」

ライナー(こいつ俺の勘違いじゃなければアニのこと好きなんだよな…不憫な奴だ…)

ライナー「元気出せよ、どうせすぐ覚え直すだろ」

ベルトルト「…うん、ありがとう」

ベルトルト(…結局アニはあの後覚えてくれたのかな?うーん心配だ…)


一方

アニ「……」

ミーナ「アニ、どうしたの?なんか対人格闘のあとからちょっと元気ないよね…?」

アニ「…ちょっとね…大丈夫」

ミーナ「ほんとに?なにかあったら言ってね?」

アニ「…ありがとう」


アニ(…あのあと必死でベルの名前覚えようとしたけれど、普通に無理だった)

アニ(なんで?難しくない?覚えづらすぎない?)

アニ(ていうか今までずっとベルだと思ってたのにベル…えー…うん、とか言われても、今さら認識変えられないし)

アニ(でも今日のベルちょっと傷ついた顔してたな…悪いことしたかな…)

アニ(ちゃんと覚え直してやろう…)

アニ「あのさ、ミーナ」

ミーナ「なに?」

アニ「ベ…えっと、フーバーの上の名前、なんだかわかる?」

ミーナ「フーバー…ベルトルトのこと?」

アニ「そうベル…ルート?」

ミーナ(違う…)

ミーナ「で、ベルトルトがどうしたの?」

アニ「いや、単純に名前なんだったっけと思って…」

ミーナ「え?それだけ?」

アニ「うん、まぁ」


アニ(ミーナもちゃんと覚えてるのか…ていうか普通そうか)

アニ(…そして私はまた覚えられなかった…)


ミーナ(それだけ、のわりになんか落ち込んでるなぁ…どうしたんだろう)

ミーナ(ハッまさか) キュピーン


ミーナ(アニはベルトルトのことが気になっているのね!?)キラキラ

ミーナ「頑張って!私応援するから!」ガタッ

アニ「は?なにが?」

ミーナ「もう、とぼけちゃって」

アニ「いや本気でわかんないんだけど」

ミーナ「アニ、ベルトルトのこと好きなんでしょ?」

アニ「…は?」

ミーナ「だって、さっきのってそういうことよね?

     実はベルトルトって地味に女子に人気なんだけど、まさかアニもとはなぁ〜競争率高くて大変だね…。
     あ、でも大丈夫だよ!アニ可愛いし、知らないと思うけど男子人気高いんだよ!アニとベルトルトなら成績上位どうし話とかもあうだろうしちょうどいいんじゃない?それに二人とも無口…ええと物静かな方だから、ペース合いそうだよね!ベルトルトは背が高くてアニはちっちゃめだから身長差がちょっと凄いけど…でもそれはそれで素敵だと思うな!むしろ身長差萌え!みたいな!?お似合いだと思うよ!私、協力できることならなんでもするから言ってね!」

アニ「違う違う違うからちょっと落ち着いてミーナ」

ミーナ「照れなくてもいいのに…」

アニ「だから違うって 怒るよ」

ミーナ「えぇー…」


アニ(…周りの人に教えてもらって覚えて行こうかとも思ったけど、こういう風に怪しまれたりするのか…)


アニ(…お似合い、ね…)フフッ

アニ(っていやそうじゃなくて)


アニ(…あいつ女子に人気あるのか、知らなかった…)モヤッ


アニ(…いやだからそうじゃなくて…!)

アニ(名前、直接ベルに訂正してもらっていったほうがいいのかな)

アニ(でも私たち普段喋らないから突然喋るようになっても目立っちゃうだろうか)

アニ(どうすれば……そうだ!)

片づけ中

アニ「ベ…あー、あんた」

ベルトルト(まだ覚えてないなこれは…)

ベルトルト「なに?」

アニ「後で、少しいいかい?」

ベルトルト「わかった」

なんか人気ない倉庫裏

アニ「ごめん、頑張った結果、結局まだ覚えられてないんだ」

ベルトルト「うん、そうだと思った…」

アニ「ちゃんと覚える気はあるんだけど」

ベルトルト「うん」

アニ「あんまり周りに確認し過ぎると妙な勘繰り入れられるみたいだしさ…」

ベルトルト「そうなの?」

アニ「うん」

アニ「だから明日からしばらく対人格闘一緒に組んで欲しいんだけど」

ベルトルト「うん?」

アニ「悪いけどさ、ちゃんと覚えられるまで訓練しつつ教えて欲しいんだ」

ベルトルト「なるほど…わかった、いいよ。」

アニ「ありがとう、悪いね」

ベルトルト「ううん、僕も覚えて欲しいし、今日呼び名について言及しちゃったの僕だしね」

アニ「じゃあ、まぁそういうことでよろしく」

ベルトルト「うん、よろしく」

アニ「じゃ」

ベルトルト「うん、またね」


ベルトルト(…アニと対人格闘か)

ベルトルト(正直嬉しい、けど名前覚えてもらってないのが理由というのがなんかつらいな…)

ベルトルト(しばらくって言ってたけど、そんなに長期計画になるの…?うーん…なんとも複雑な気分だ…)

男子訓練兵宿舎

コニー「おお、おかえり」

ライナー「どこ行ってたんだ、ベルトルト?」

ベルトルト「うん、ちょっとね。…ねえ、あのさ、皆に聞きたいんだけど」

マルコ「ん?」

エレン「なんだ?」

ベルトルト「僕の名前って覚えにくいかな?」

アルミン「…うーん」

エレン「えーそうか?」

ジャン「どうなんだろうな?」

マルコ「他の皆と比べると若干ややこしめかもね、でも覚えにくいってほどではないと思うよ」

コニー「俺でも覚えられるからな!」

ジャン「それ威張るところじゃないだろ」

アルミン「というか突然どうしたの?」

ベルトルト「あー、えっと、さっき名前間違われて…」

ジャン「まじかよ」

エレン「ひどいやつも居たもんだな」

マルコ「あまり気にしなくていいと思うよ?」

ベルトルト「…うん、ありがとう」

ライナー(…まだ気にしてたのか)



ベルトルト(…そう、そうなんだ)

ベルトルト(なんか何故だか至る所でネタにされまくっているけれど、僕は別に原作で名前を間違われたことは一度もない)

ベルトルト(そりゃ巨人疑惑かかった時にエレンに「無口なベルトルトはともかく」とか言われてしまうほど影を薄めようとしてきたのは事実だけども(実は少しショックだった…))

ベルトルト(しかも挙句の果てに腰巾着とか言われたりしちゃうけど(これも地味にショックだった…そりゃ事実だしエレンからしてみてば悪いのは僕らだから悪態つきたくもなるだろうけどさ…))

ベルトルト(いやまぁメタな話はともかく…)

ベルトルト(とにかく、それでも名前は間違われたことなかったし)

ベルトルト(わりと皆普通に早い段階から覚えてくれてたし)

ベルトルト(なのになんで、君が覚えていないんだよ、アニ…!)

ベルトルト(ぶっちゃけ僕これ怒ってもいいと思う)

ベルトルト(だってそこそこ長い付き合いなのに名前把握されてなかったとか)

ベルトルト(…なのに、怒れないんだよなぁ…)

ベルトルト(むしろ対人格闘組める約束ができて嬉しいとか思ってしまっている僕がいるという…)

ベルトルト(これが惚れた弱みってやつか…)

ベルトルト(まぁいいや…明日から頑張ろう)

ベルトルト(…ちょっと楽しみだな)

とりあえずここまで
読んでくださってる方コメントくださってる方ありがとうございます、嬉しいです
でも自分でこのss書いといてなんなんですがベルなんとかさんの名前ちゃんと呼んだげてよぉ

つづき

翌日
対人格闘訓練

ベルトルト「覚えてくれた?」

アニ「…いや、昨日から進展ないよ」

ベルトルト「…そっか」

アニ「ごめん、ベル…んっと、」

ベルトルト「いや、いいよ。…ベルトルトね」

アニ「ベルメルト?」

ベルトルト「違う 溶けないし」

アニ「ベルナール?」

ベルトルト「遠のいたよ…」

アニ「ベルトゥッチ」

アニ「どこから出て来たのそれ…」


ライナー「今日もやってるな」

エレン「ああ、やっぱすげえな…」

別の日

アニ「ベルリー二だっけ?」

ベルトルト「ベルトルトだよ」

アニ「…うーん」

ベルトルト「ていうかアニ、ライナーの名前はちゃんと覚えてるでしょ?」

アニ「そのはずだけど」

ベルトルト「なのになんで僕の名前覚えてくれないのさ…凹むよ…」

アニ「…だってライナーのことは昔から名前で呼んでたから…」

ベルトルト「それってちゃんと名前わかってたってことじゃないか…いいなぁライナーは…」

アニ「…えっと、名前分かってたのは事実だけど、つまり愛称呼びより距離があったってことでしょ?だとするとベルのほうが親しいってことに…!」

ベルトルト「はは…フォローありがとう…」


ライナー「なんか特に理由のない疎外感に襲われた気がしたぞ…距離感なんて同じくらいだったんじゃないのか…実は違ったとでもいうのか…?」

エレン「は?いきなりどうした?」

また別の日

アニ「ベルメゾン」

ベルトルト「ううん…なんで?」

アニ「…むしろなんでベルじゃないの?」

ベルトルト「そんなこと言われても…ていうかベルだけで名前だと女の子みたいじゃないか…」

アニ「エレンだって女の子みたいな名前してるじゃないか…」

ベルトルト「エレンは男女どっちもありの名前だろ…」

アニ「ベルは違うの?」

ベルトルト「いやわかんないけど…そもそも男女どちらでも可な名前の問題じゃなくて僕の名前がベルじゃないって問題だからね」


ミカサ「エレンと聞こえた…何を話していたの?」ヌッ

ベルトルト「うわあ!?」

更に別の日

アニ「ベルタルト…!」

ベルトルト「タルト違う…僕食べ物じゃないからね」

アニ「うーん…」

ベルトルト「…ちょっとアルミンのフルネーム言ってみてよ」

アニ「アルミン・アルレルトでしょ?」

ベルトルト「うん、そうだよ。じゃあ僕の名前は?」

アニ「…ベルレルト?」

ベルトルト「違うよ!」

アニ「ベルミン?」

ベルトルト「なんで!?」


アルミン「…?呼ばれた?…気のせいかな」

またまた別の日

アニ「ベルトーベン?」

ベルトルト「違います、ベルトルトです」

アニ「くっ…だいたい長すぎるんだ名前が…」

ベルトルト「いうほど長くないからね?レオンハートより短いからね?」

アニ「レオンハートは覚えやすいだろ」

ベルトルト「ベルトルトだって覚えづらくないよ」


ジャン「…あいつら何名乗りあってんだ?」

マルコ「ジャン、他のペア気にしてないでちゃんとやろうよ…」

そして別の日

アニ「ベルリウス」

ベルトルト「違うよ…アニ、本当に覚える気ある?」

アニ「あるよ……私を疑ってるの?」

ベルトルト「イヤ、その…」

アニ「まったく…傷つくよ。一体いつからベル…ええと…あんたは私をそんな目で見るようになったの?」

ベルトルト「アニが僕の名前覚えてないって知ってからだよ…!そして今のはどっちかっていうと傷ついたの僕だと思う…!」


教官「おい!ブラウス、スプリンガー!貴様らまたふざけおって…!」ギリギリギリ

サシャ「あの二人もふざけてるように見えるのにどうして私たちばかり怒られるのでしょうか…?」イタイデスキョウカンゴメンナサイ

コニー「さあな…悪ぃけど俺もわからないから…“感じろ”としか言えん」チョウイタイデスマジデ

ユミル「お前らはどうみても格闘じゃない動きしてるからだろ…バカどもめ」

クリスタ「もうっ、ユミルったら!そういうこと言っちゃ駄目だよ!」

数日後

ベルトルト(…そんなこんなで何日もやってきたけど)

アニ「ベルティーエだっけ」

ベルトルト「ベルトルトだってば…」

アニ「ベルト…ええと?」

ベルトルト「ベルトルト!」

ベルトルト(一向にアニが僕の名前を覚える気配を見せない)


教官「本日の対人格闘訓練はここまで!」

ベルトルト「ああ、今日もダメだったか…」

アニ「ごめんなさい…」

ベルトルト「いや、うん、悪気がないのは分かってるんだ。大丈夫だよ」

アニ「うん…じゃあまた」

ベルトルト「うん、またね」

ベルトルト(…悪気ない…よね?)

ベルトルト(…なんか心配になってきた)


アニ(…いい加減覚えないと…)

その日の夕食後、食堂裏

ミーナ「ベルトルト」

アニ「ベルトベル」

ミーナ「違うよアニ!ベルトルトだよ」

アニ「ベルトルベ?」

ミーナ「あぁっ最後、最後の一文字!」

アニ「ベルトルル!」

ミーナ「ベルトルト!」

アニ「ベルト…ル…タ」

ミーナ「なんでタになっちゃうの!?」

アニ「くっ…こっちが聞きたいよ…」


アニ(そう、ベルの名前を知らなかったことが発覚してからはや数日…)

アニ(なぜか未だに覚えられない)

アニ(本人に協力をたのんでいるというのに…!)

アニ(間違えるたびに落ち込んだような顔をされるのは私もつらい。いや私が悪いんだけど)

アニ(そこで私は考えた)

アニ(そもそも対人格闘などという限られた時間に、体を動かしながら、複雑な名前を覚えようなどとするからいけないのだ)

アニ(しかも相手が弱いとかならともかく、ベルではあまり思考に気を取られすぎるわけにもいかないし)

アニ(そして考えた結果、)

アニ(対人格闘以外の時間で覚えようとすればいいんじゃないの?)

アニ(という至極まっとうな結論に辿り着いた)

アニ(とはいえ、対人格闘以外の時間にベルとずっと話してるわけにもいかない。目撃されたら困るし)

アニ(そして、他の人に聞くにしても迂闊に頼ると勘違いされかねない)

アニ(ということで、ミーナに別にあの時の質問は好意云々ではなく単純に名前が覚えられていなかったからであること、未だに覚えられず苦労していることを話し、協力してもらうことにした)

アニ(…ミーナからは「好意云々じゃない」という話を信用されていない気はするが、まあもういいや。他の奴相手なら勘違いでも嫌だけど、まあベルだし)


アニ(…ん?私今何を……まあいいか)

アニ(それにしても、全然覚えられない…)

ミーナ「いやー、アニなかなかに頑固だね…」

アニ「好きで頑固なわけじゃ…」

ミーナ「うーん、それにしたって…」

アニ「そんなに…?」

アニ(ちょっとショックだ…)

ミーナ「ともかくもう一回やってみよう、はい」

アニ「…ベルルトル」

ミーナ「ちょっと遠のいたね…」

アニ「ベルールト…」

ミーナ「いやいや…あ、でも近い。ベルトルト、だよ」

アニ「ベルト──」

ライナー「何やってんだミーナ、ハンナが探していたぞ…と、アニ?」ヒョコッ

アニ「ら、ライナー…!」

ミーナ「ああああ、水汲み当番忘れてた!ごめんアニ!続きはまた今度でいい?」

アニ「え、あ、うん」

ミーナ「ごめん!じゃあね! 」タタタタ…

アニ(…行ってしまった)

アニ「…今の聞いてた?」

ライナー「…ベルトルトの名前で遊んでるやつか?」

アニ(聞かれてた…!)

ライナー「人の名前で遊ぶのは感心せんな…」

アニ「遊んでるわけじゃない。…覚えられないんだ」

ライナー「は?」

アニ「名前」

ライナー「…ベルトルトのか?」

アニ「そう」

ライナー「…は?」

ライナー「ベルトルトが、お前があいつの名前覚えてなかったって言って落ち込んでいたのが何日も前なんだが…。お前酷い奴だな」

アニ「…だって、ずっとベルって呼んでたんだよ?」

ライナー「あぁ、そういえばそうだったな。…というかもしかして最近ずっと対人格闘一緒に組んでたのは…」

アニ「…名前覚えるためだよ」

ライナー「それでまだ覚えていないとかは流石におかしいだろう。若干複雑かもしれんが、そんなに苦労する名前でもないはずだが」

アニ「私は苦労してる…」

ライナー「…試しに言ってみろ」

アニ(え、無理)

アニ「えっと、…ベルゲネフ」

ライナー「…え?いやいや誰だよ」

アニ「……」

ライナー「…ベルトルト、だ」

アニ「…ベルトトル?」

ライナー「ベルト取ってどうするんだよ。…わざとやってんのか?」

アニ「そんなわけないでしょ。蹴るよ」

ライナー「す、すまん。…しかしお前な…」

アニ「……」

アニ(ライナーにも引かれてる…。そんなにひどいのか…)

アニ(これやっぱりベル絶対呆れてるよね…。ほんとに申し訳ない…)

アニ(なんかもう…疲れたし…なんでもいいから何か打開策が欲しい…。ほんともうなんでもいいから…)

ライナー「…!いいことを思いついたぞ」

アニ「え、なに教えて」

アニ(まさかの!?よくやったよライナー!)

ライナー「付き合っちまえばいいんじゃないのか?」


アニ「………は?」

ライナー「アニとベルトルトで」

アニ「…なんで」

ライナー「なんでって、恋人同士なら愛称で呼んでたって違和感ないじゃないか」

アニ「…ええと、今ライナーが何言ってるかわからないんだけど、それはあんたが馬鹿だからであってる?」

アニ(前言撤回だ…!)

ライナー「なんでだよ!名案だろ!」

アニ「どこが?迷案のまちがいじゃないの?なんのために私たちが距離とって生活してると思ってんの馬鹿なの死ぬの?」

ライナー「死なねえよ失礼だな…。ちゃんと考えた上だ」

ライナー「いいか、」

ライナー「アニとベルトルトが付き合った場合、そこから俺たちの関係が露呈する恐れはあるかもしれない、というのが懸念なんだろう?」

ライナー「しかし、だ 良く考えてみろ」

ライナー「同郷出身であることはばれたら危険すぎるから隠してきたけれど、恋人にならなってもいいんじゃないか?」

ライナー「幼馴染なのに『巨人になれるなんて知りませんでした』は通用しないだろうが、訓練所で知り合って付き合い始めた、という設定なら『そんな!まさか巨人だったなんて!』という言い訳もおかしくない」

ライナー「…どうだ?」

アニ「な…なるほど…?そういわれるとそうかも…?」

アニ(…混乱してきた)

ライナー「な?それにお前だってベルトルトのこと嫌いじゃないだろ?」

アニ「そうだけど、でもベルがどうするか…」

ライナー「それなら問題ないはずだ あいつはお前のことが好きなようだからな」

アニ「えっ?」ドキッ

アニ(思わずドキッっとしてしまった…)

アニ「…それ、本当」ドキドキ

ライナー「ああ。直接本人に確かめたわけじゃないが」

アニ「確定じゃないじゃないか…!」

ライナー「いやでもいけるだろ。こっちから告白すれば絶対大丈夫だ」

ライナー(あいつ押しに弱いし)

アニ「…本当に断られたりしない?」

ライナー「大丈夫だって!そうと決まれば善は急げだ。もう行ってきちゃえよ」

アニ「は、早すぎるよ!心の準備がまだ…」

ライナー「どうせOK貰えんだからいらないだろ。いいから行けって」

アニ「…じゃあ行ってくるよ…」

ライナー「おう、頑張れよ」ニカッ

ライナー(半ばノリで吹っかけちまったけどアニも満更でもなさそうだな…。良かったなベルトルト)

男子訓練兵宿舎付近

アニ(しかし勢いで来てしまったけれど簡単に見つかるかな…)キョロキョロ

ベルトルト「…」テクテク

アニ(都合よくいた!)

アニ「ベル、ちょっといいかい」

ベルトルト「あれ、アニどうしたの」

ベルトルト(ていうか呼び方…)

アニ「ちょっとこっちきて」

人気のない倉庫裏とか

ベルトルト「で、なあに?」

アニ「ああうん、ええと…」


アニ「…付き合って欲しいんだけど」


ベルトルト「ん?あぁ、名前覚えるのの続き?やっぱり対人格闘の時間だけじゃ厳しかったかな…」

アニ「いやそうじゃなくて」

アニ(確かに覚えるのは対人格闘の時間だけじゃ厳しかったけど)

ベルトルト「あ、じゃあ何かの手伝いとか?」

アニ「それでもない」

ベルトルト「ご、ごめん。外出とかの話だった?」

アニ「違うよ」

ベルトルト(…?他に何かあるかな)


アニ「その…わ、私と恋人になってほしいって意味で…」

ベルトルト「えっ!?」

ベルトルト(…僕は夢でもみてるんだろうか…)スッ

アニ「ちょっと待って何で手を噛み切ろうとしてるの!?」

アニ(え、思わず巨人化するほど嫌ってこと…?)ガーン!

ベルトルト「あ、ごめん、びっくりして…夢なのかと思って確かようかと…」

ベルトルト(我ながら動揺しすぎた…にしても確認で巨人化はないだろ僕。死ぬぞ)

アニ「もっとまともな確認の仕方があるでしょうが。ていうか夢じゃないし…」

アニ(嫌だったわけじゃないのか…良かった…にしても確認で巨人化はないだろベル。死ぬよ)


アニ(…ん?なんで今良かった、って思ったんだろう)

アニ「…で、返事は」

ベルトルト「え、ああ、ええと、ちょっと待って整理させて」


ベルトルト(…アニに告白された。正直嬉しすぎて意味わかんないやばい)

ベルトルト(でもなんだろう、何かしらの裏がある気がして仕方ない…。あまりに唐突だし)

ベルトルト「えっと、良ければ理由というか、事情?を教えてほしいんだけど…」

アニ「え?あ、うん、ええと」

カクカクシカジカ

ベルトルト「……」

アニ「……」

ベルトルト「えーと、ちょっと待ってくれ」

ベルトルト「つまり、名前がどうしても呼べないので愛称で呼んでもいいように付き合いたいってこと…?」

アニ「そういうことになるね」

ベルトルト(はは…やっぱり裏があったか…僕糠喜び乙)

アニ(あれ、もしかしなくてもこれベルに凄い失礼じゃない…?)

ベルトルト「でもそんなことしたら本末転倒じゃないか…。僕らの関係伏せるために頑張ってたのに」

アニ「それに関してはライナーが…」

マルマルウマウマ

ベルトルト(ライナー…きみは何をやってるんだ…)

アニ(ベルが凄い微妙な顔して黙ってしまった)

ベルトルト(…冷静に考えよう)

ベルトルト(確かにライナーの言うことも一理ある)

ベルトルト(かつ付け加えるのなら、アニと僕が付き合うことができれば、それによって僕たちとアニの間の連絡をこれまでよりもスムーズにできるようになるというメリットも発生する)


ベルトルト(ということは…アニと恋人どうしになれる?)

ベルトルト(なにそれ幸せ)

ベルトルト(…いやいや冷静に言い訳を考えてどうするんだ落ち着け僕真面目に考えろ)

ベルトルト(あくまで危険度が同郷>恋人なだけで、関わりの薄いただの同期、というこれまでの設定よりは怪しくなってしまうことは事実だ)

ベルトルト(僕らの目的を無事に達成するためには、なるべくリスクは減らしておくべきだろう)


ベルトルト(…でもなぁ…)ウーン

ベルトルト(…いやいや駄目だって)

ベルトルト(…というかそもそもあれだ)

ベルトルト(アニが僕に付き合おうって言ってくれたのだって名前が覚えられないという凄く歓迎できない理由だ)


ベルトルト(…つまりアニにとって名前の難易度のほうが僕と付き合うか否かよりも重要度が高いんだ)

ベルトルト(それで付き合ってもらって嬉しいのかって言ったら)


ベルトルト(…そりゃ全く嬉しくないわけでもないけど、絶対それ以上に、むなしい)

ベルトルト(…うん)



ベルトルト「えっとね、アニ」

ベルトルト「悪いけど、無理だよ…」

……
その後

アニ「……っ」タタタタ…

ライナー「おう、アニ、どうだった…ってお前なんで泣きそうな顔してんだ!?」

アニ「してないし…」

ライナー「いやしてるだろ、何があったんだよ?」


アニ「…振られた」

ライナー「は?」

アニ「ベルに、振られたんだよ…!大丈夫って言ってたのに…!ライナーのうそつきゴリラ!」ゲシッ タタタタ…

ライナー「痛って!…あ、おい待て!」

ライナー「…行っちまった…」


ライナー「…誰がゴリラだ誰が」ブツブツ

ベルトルト『なんか思い悩ませちゃってごめんね。…あんまり大変だったらやっぱり名前覚え直さなくてもいいよ』

ベルトルト『そもそもここまで気付かないくらいには呼び合わなくて済んでいたんだ。これからも人前では名前でも愛称でも呼ばないように気を付けつつ過ごせばいいさ』

ベルトルト『無理させちゃってごめん。…ありがとう』



アニ(…ベルに、振られた…)

アニ(…そりゃそうか、ずっと名前ちゃんと知らなくて、しかも未だに覚えてない奴なんか、仮に今まで好きだったとしても、愛想尽かすよね…)

アニ(ひょっとして、もう嫌われちゃったかな…)

アニ(…なんで私、こんなにショック受けてるんだろ)グス

今回はここまで まだくっつきませんでした
見てくださってる方本当にありがとうございます

…ライナーのキューピッド姿想像したらやばかったです…

誤字ってました
>>31
ベルトルト ×(〜エレンからしてみてば〜)→○(〜エレンからしてみれば〜)
>>64
ライナー   ×「〜俺たちの関係が露呈する恐れはあるかもしれない〜」→○「俺たちの関係が露呈する恐れがあるかもしれない」


つづき

男子訓練兵宿舎

ライナー(とりあえずベルトルトに事情を聞いてみよう)

ライナー「おいベルトルトちょっといい…か…」

ベルトルト「……」ズーン

ライナー(…膝を抱えて蹲っている…。いやいつもの格好ではあるんだが…なんというか、死にそうなオーラが出ている)

ベルトルト「…なんだいライナー」

ライナー「…ベルトルト、お前、アニのこと好きなんじゃないのか」

ベルトルト「なんで知ってるの…ってそうか、焚き付けたのライナーなんだっけ…。ほんとなんで知ってるんだよもう…」

ベルトルト「そうだよ好きだよ」

ライナー「…アニが、お前に振られたといっていたんだが。…そして俺は蹴られた」

ベルトルト「……振ってないし」

ライナー「ん?」

ベルトルト「…どっちかっていうと振られたのは僕だし…」

ライナー「は?でもアニに告白されたんだろ?」

ベルトルト「…あれは違うんだよ」

ライナー「違うって何が」

ベルトルト「本心じゃない。いやそれどころか、呼び名問題解消のための手段として告白が使われるくらいには、僕のことはどうでもいいと思われてたんだ…」

ライナー「えっ」

ライナー(アニの奴、名前覚えられないから付き合いたいなんて本人に言っちまったのか!)

ベルトルト「所詮そんなもんなんだよ…いやまあ別に好かれるとは思ってなかったけどさ…。…こう…現実を直視するのってつらいよね…」

ベルトルト(言ってて余計悲しくなってきた…)

ベルトルト「ふふ…所詮僕は自分の意思がなくて影の薄い臆病者の超大型腰巾着さ…」

ライナー「お、おい…!」

ライナー(…なんか悪いことした気分だ…)

ライナー(しかし先程のアニの様子を見た限りベルトルトのこと好きなんじゃないかと思うんだが)

ライナー(ベルトルトに至っては今言質とれたし、両想いじゃないのかこれは)

ライナー(一体なんですれ違ったんだ)

ライナー(…どうにかしてやりたいな)

ライナー「お前はそういうが、俺が見た限りアニもお前のこと好きなように思えるぞ?」

ベルトルト「いいよ無理に慰めなくて…。…もともと期待はしてなかったもん…うん…」

ライナー(駄目だ信じる気がない)

ライナー(こいつ自分の意思ないとか言ってる割にマイナス方面に落ち込むと頑固だな)

ライナー(…まあ実際アニが本当にベルトルトに好意あるのかはっきりはしてないからな、明日どっかでアニに聞いてみるか)

女子訓練兵宿舎

ミーナ「アニ…あれ、布団被ってる…もう寝てる?」

アニ「……起きてる」モゾ

ミーナ「あ、良かった。さっきはごめんね!またいつでも手伝うから言ってねっ」

アニ「…もういい。手伝ってくれてありがとう」

ミーナ「え?覚えられたの?」

アニ「違うけど…もういい」

ミーナ「えっ」

アニ「…もう、嫌われちゃったから、どうでもいい」

ミーナ「え?どういうこと!?」

アニ「…なんでもない、気にしないで。おやすみ」モゾ

ミーナ「あ、ちょっとアニ!」

アニ「……」シーン

ミーナ(えっ、どういうことなの)

ミーナ(…明日ベルトルトに聞いてみようかな)

翌日
対人格闘訓練
※たまには他の訓練しろよと言われそうですが描写がないだけでやってるんですよ


ベルアニ((今日、どうしようかな…))

ミーナ(今日は、アニはベルトルトと組まないのかな?)

ライナー(今日はベルトルトとアニで組まないのか?まあ昨日の今日だからな…)



ミーナ「ベルトルト、今日は私と組んでくれない?」

ベルトルト「えっ、あ、うん。わかった、いいよ。」

ライナー「アニ、今日は俺と組まないか?」

アニ「…いいよ」

ミーナ「よろしくねベルトルト!」

ベルトルト「よろしく、ミーナ」

ミーナ「あ、私あんまり強くないから、手加減してね!」

ベルトルト「うん、わかった」

ミーナ「ごめんね。いきなり頼んじゃって」

ベルトルト「ううん。…僕も、組む相手探してたんだ」

ミーナ(…気のせいかな、ベルトルトも元気ない…?)

ミーナ「…アニとは組まないの?最近よく組んでたじゃない」

ベルトルト「…うん。…もういいんだ」

ミーナ「なんで、って聞いてもいい?」

ベルトルト「…必要なくなっちゃったから、かな」

ミーナ「必要って、アニがあなたの名前を覚える必要ってこと?」

ベルトルト(あれ、知ってるんだ…)

ベルトルト「…うん」

ミーナ「…それは、全然名前を覚えないアニに愛想を尽かしちゃったから?」

ベルトルト「……?イヤ、それは絶対ないよ」

ベルトルト(……絶対に)

ミーナ「そうなの?」

ベルトルト「うん」

ミーナ「そっかぁ、良かったぁー!安心したっ!!」ニコッ

ベルトルト「?」

ミーナ「…でもね、アニはベルトルトに嫌われたと思って、落ち込んでるよ」

ベルトルト「え?」

ミーナよかったら、誤解をといてあげてほしいな。アニが元気ないと、私もさびしいし

ベルトルト(……)

ぎゃあ「」抜けてる
>>94
ミーナ「よかったら、誤解をといてあげてほしいな。アニが元気ないと、私もさびしいし」
ですすいません

一方

ライナー「…で、結局昨日のは何だったんだ」

アニ「…やっぱりそれを蒸し返すの?やめてほしいんだけど」

ライナー(アニ、やはり落ち込んでるように見えるな。…やっぱベルトルトのこと好きだろこいつ)

ライナー「そうもいかん。俺が煽ってしまった以上、最後まで責任は果たす」

アニ「…最後までもなにも、もう終わってるよ」

ライナー「そんなことないだろう」

アニ「あるよ」

ライナー「いや、ないな。…とりあえず、昨日どう告白したのかちょっといってみろよ」

アニ(…ひとの傷口を抉るような真似を…)イラ

アニ「…普通に、付き合ってほしいって言った」

ライナー「まあそうだろうな。で?」

アニ「…そしたら理由をきかれた」

ライナー(わざわざ理由きくってことは、ベルトルトはアニの告白を疑ってたのか…。まあ突然だったしな…)

ライナー「…で、名前覚えられないからって馬鹿正直に言ったと」

アニ「そう…」

ライナー「お前…そりゃいくらなんでも…」

アニ「…じゃあどうすればよかったの」

ライナー「そこは好きだからとか言っとけよ」

アニ「…ベルに嘘つくのは悪い気がしたから」

ライナー「…嘘なのか?」

アニ「え?」

ライナー「お前は、ベルトルトのことが好きじゃないのか?」

アニ「いや、好きだけど。恋愛感情ではないでしょ」

ライナー「本当か?」

アニ「何が」

ライナー「本当に、恋愛感情はないのか?ってことだ。」

ライナー「ベルトルトに振られたって言ってた時のお前は凄くショックを受けているように見えた。」

ライナー「そして今もそうだ。お前、元気ないだろう。」

ライナー「そういう意味での好意がないなら、単純に提案を断られただけであんなに落ち込むとは俺には思えん。」

アニ「……」

ライナー「もう一度、自分の気持ち自体を見つめ直してみるのもいいんじゃないか?そのうえで、今度はそれをベルトルトに伝えるのもありだと思うぞ、俺は。」

アニ(…自分の、気持ちを…?)

……





夕食後

アニ「…ねえ、この後ちょっといいかい?」

ベルトルト「…うん、僕もちょうど、用があったんだ」

なんか人気ない倉庫裏

ベルトルト「ええと、なにかな」

アニ「…あんたも用があるって言ってたじゃないか。先に言いなよ」

ベルトルト「僕はできれば後のほうが…」

アニ「良いから先に言いなって」

ベルトルト「わ、わかったよ」

ベルトルト(…目力こわい)


ベルトルト「…誤解されているみたいだから言うけど、僕は、アニのことが好きだよ」

ベルトルト「仲間として大切だし、それから、“女の子”として、恋愛感情的な意味でも好きだ。ずっと好きだった」

ベルトルト「そりゃ、名前覚えてもらえないのはショックだったけど、それでも、アニのことが好きな気持ちに変わりはないよ」


ベルトルト「でも、ううん、だからこそ、かな。あの提案には乗りたくなかった」

ベルトルト「任務的な都合もあったし、それ以上に、」

ベルトルト「好きな子と、打算的な理由で付き合うのが、嫌だったんだ」

ベルトルト「アニと恋人になれるなら、それは僕にとってはとても喜ばしいことだったんだけど、」

ベルトルト「形式上恋人どうしなのに実際は相手になんとも思われてない片思いなんて、むなしいって、そう思った」

ベルトルト「…だから、断らせてもらったんだ」

アニ「…え?」

ベルトルト(…恥ずかしい)

ベルトルト「ご、ごめんねこんなこと言われても逆に困るよね!気にしないでってことが言いたかっただけだから!やっぱり忘れてくれ!」

ベルトルト(…普通に「気にしてないよ」とだけ言えば良かった…いたたまれない消えたい…)

アニ「…いや、忘れないよ」

ベルトルト「えっ」


アニ「私の話がまだだったでしょ」

アニ「いろいろ考えたんだけどさ、私はベルのこと好きなんだと思う」

アニ「自分でも全然気づいてなかったんだけど…」


アニ「付き合っちゃえって言われて乗せられてしまったのは、名前がどうのこうのの他に、そういう感情があったからだと思うんだ」

アニ「思い返せばその前から、お似合いだって言われたりベルのこと好きなんじゃないかって勘繰られたりしても嫌な気がしなかった」

アニ「他にも、ベルが女の子に人気あるって聞いてモヤッとしたり、ベルに好かれてるって聞いたときはドキドキしたりした」

アニ「告白の後、ベルに振られて凄いショック受けて落ち込んだ」

アニ「自覚は全然なかったけど、きっと、私もベルのことがずっと好きだったんだろうね」

アニ「…こうしてせっかく自分の気持ちに気付けたんだ、だから、改めて言わせて」


アニ「…私と、恋人になってほしい」

アニ(…恥ずかしい)

ベルトルト「…え?ほ、本当に?」

アニ「…うん」

ベルトルト(今度こそ僕は夢を見ているんじゃないか…?)スッ

アニ「夢じゃないから手噛もうとするのやめて!」

ベルトルト「あ、うん」

アニ「…で、どうなの?…駄目、かな…?」



ベルトルト「…ううん、駄目じゃない。全然駄目じゃないよ」

ベルトルト「言ったでしょ、前回断らせてもらった理由」

ベルトルト「でも、今回は違うんだよね?素直に喜んでいいんだよね?」

ベルトルト「…ありがとう、アニ」


ベルトルト「どうか、僕と付き合ってください」

……
その後


アニ「…と、いうことで付き合うことになった」

ベルトルト「…とはいえ、冷静に考えて、色々話し合って、『やっぱりここで付き合ってると目立っちゃうよね、いざというとき怪しまれる可能性上がるよね』という結論になったから、」

アニ「なるべくリスクを減らすためにも、とりあえず今は表面上今まで通りの関係を続けて、故郷に帰ったら、正式にちゃんと恋人になることにした」

ベルトルト(…アニのお父さんアニのこと大好きだからちょっと怖いけど)

ライナー「そうか!なるほどな。しかし、うまくまとまって良かったぜ本当に」

アニ「まあ、感謝しておくよ」

ベルトルト「うん、ありがとう」

ライナー「おう」

アニ「…引っ掻き回したのもライナーだった気がするけどね」

ベルトルト「ああ、たしかに」

ライナー「おいコラ」

アニ「…ミーナにも本当のこと伝えて感謝したかったけど、…今付き合わない事情が事情だし、喧嘩していたけど和解したってことにしてお礼は言っておいた」

ベルトルト「…うん。僕も、彼女には後でお礼を言うよ」


ライナー(なんにせよ、とりあえずは一件落着だな。本当に良かった)

ライナー(…しかし、なんか忘れているような気がするんだよな…)

ライナー(なんだったか、そもそものことの起こりというか……あっ)

ベルトルト「まあ…ええと、改めてよろしくね、アニ」

アニ「うん、こちらこそ、よろしく頼むね」





アニ「…ベルベルト」

ベルトルト「違うよ!?」

おまけ

……
その後

ミーナ「ええっ、せっかく和解できたのに名前間違えて呼んじゃったの!?」

アニ「…どうせだからちゃんと名前呼んで綺麗にまとめたかった。…失敗したけど」

ミーナ「もー、アニってば…。…怒られなかった?」

アニ「あいつは怒りはしないよ。さすがにツッコミは入れられたけどね」

ミーナ「…やっぱあやしいなあー、二人付き合い始めたんじゃないの?」ニヤニヤ

アニ「だから違うってば」

アニ(…ごめんミーナ。でもまだ付き合ってないから嘘じゃないよ)

ミーナ「ちぇー、じゃあそういうことにしといてあげるわよ」

ミーナ「…でもここまで全然覚えられないと、何かの呪いかと思いたくなるレベルだよねー…なんちゃって」

アニ「の、呪い…!?…いやさすがにそんなことは…」


アニ「…あっ」

―回想―
アニ幼少期

アニ父「あ、アニ!?どうしたんだその怪我!今日は訓練は休みだから友達と遊んでくるって言ってたじゃないか!」

子アニ「…きのぼりでしっぱいして、おっこちちゃった」

アニ父「何!?大丈夫だったのか!!!???」

子アニ「おとうさんこえおおきい…。だいじょうぶだったよ。ベルがたすけてくれたから、すりきずですんだ」

アニ父「ベル?ベルトルトのことか?」

子アニ「うん。わたしがじめんにぶつからないようにつかまえてくれたの。…でもそのせいで、ベルにもけがさせちゃった」

アニ父「それは、ベルトルトの怪我は大丈夫だったのか?」

子アニ「うん、そういってた。…けど、いたそうだった。うちみとすりきず」

アニ父「…そうか。ベルトルトには感謝しないといけないな」

子アニ「うん。ちゃんとあやまって、おれいもいったよ」

子アニ「ベルなきむしなのにたすけてくれてね、それで『アニはおんなのこなんだからあんまりあぶないことしちゃだめだよ!』だって。ふふ、かっこよかったな。なみだめだったけど」

アニ父「…そ、そうか」

子アニ「ベルとだったらけっこんしてもいいかなあ」

アニ父「ファッ!!!???」

子アニ「えっ、なに?」ビク

アニ父「……アニ、お前疲れてるだろう。ちょっと昼寝でもしたらどうだ」

子アニ「…う?うん、まあ…じゃあそうする…」

子アニ「…zzz」

アニ父「…寝たか」スッ

アニ父「いいかアニ、ベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだベルトルトはだめだ…」ブツブツブツブツ…(←アニの耳元で)

子アニ「う゛?うぅーん…」(←魘されている)



―回想終わり―

アニ(……凄いことを思い出してしまった)

アニ「…なんか原因がわかった気がするよ」

ミーナ「えっ」

おまけおしまい
本編もおまけも書いてる途中ベルタルトさんのゲシュトルト崩壊しかけましたが楽しかったです
読んでくださった方コメントくださった方どうもありがとうございました


…ベルアニ流行れとまでは言わないからせめてもうちょっと増えろよ

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