ライナー「ベルトルトが」 べるとると「ちぢんだ!」(484)

ちびべるさんを愛でる話。

最初はぬるいエロの予定だったが、罪悪感がでてきたのでひとまず日常の話で。

ライナー(……朝か。まだ誰も起きてないみたいだな)

ライナー(ベルトルトは……布団ごといなくなってるな)

ベルトルトは寝たままの場所にいることの方が珍しい。

周りを見渡してみると、部屋のすみに布団が丸まっていた。

中には蓑虫のようにベルトルトが入っているのだろう。

ライナー「ベルトルト、朝だ……ぞ……」


布団を引き剥がした俺が見たものは、ぶかぶかの寝間着を着て三角座りで眠る、幼いベルトルトの姿だった。

エレン「うわ、ちっちぇえ!」

ジャン「……本当にベルトルトなのかよ?」

ライナー「ああ……当時の姿を知ってる俺が言うんだから間違いない」

べるとると「……うぅ……」

マルコ「みんなで覗きこんだらだめだよ。怖がってる」

アルミン「大丈夫、何もしないよ?」

べるとると「…………らいなー」

ベルトルトは、目を覚ましてからずっと俺の服を掴んだままだ。

お陰で着替えもできない。

いきなり知らない奴らに囲まれているんだから、当たり前だろう。

ライナー「先に飯に行っててくれ。俺はこいつを落ち着かせてから行く」

コニー「でもよー」

ライナー「見ての通りの人見知りなんだ。頼む」

アルミン「わかったよ。今僕らにできることもなさそうだし……先に食事に行こう?」

エレン「おう。じゃあライナー、後でな!」

あいつらが出て行ってからもベルトルトはガチガチに緊張している。

妙に微笑ましくて頭を撫でると、見上げてくるベルトルトと目が合った。

べるとると「ら、らいなーっ!」ヒシッ

ライナー「驚いたか? あいつらは悪いやつじゃないぞ」

ライナー(むしろ、俺の方が驚いてるんだがな……)

飛びついてきたベルトルトの背中を撫でながら、溜め息をつく。

こいつはベルトルトだ、と言ったものの…。

正直、何が何だかよくわからない。

ライナー「自分の名前は言えるか?」

べるとると「べるとると、ふーばー…」

ライナー「俺は?」

べるとると「らいなー、ぶらうん!」キラキラ

ライナー(何だこのかわいい生き物)


いくつか質問をしながら、身の丈に合わない服を調節してやる。

ベルトルトは、今の自分の状況がわかっていないらしい。

見たところ、俺たちが「内地」に来る前……壁を破るよりも前の姿だ。

その後のことは覚えているわけがなかった。

アルミン「ライナー、入るよ?」

べるとると「!!」ビクッ

ライナー「何だアルミン、飯を持ってきてくれたのか?」

アルミン「うん。スープは持ち出せなかったけどね。今のベルトルトを食堂に連れて行くわけにもいかないだろ」

ライナー「すまんな、助かる」

べるとると「…………」サッ


ベルトルトはまた俺の後ろに隠れてしまった。

屈み込んだアルミンが、ベルトルトを覗き込む。

アルミン「こんにちは、ベルトルト」

べるとると「……こん…にちは」

アルミン「僕はアルミン。ライナーの友達だよ」

べるとると「……らいなーの?」

アルミン「うん。だから、ベルトルトとも友達になれるとうれしいな」

そっと差し出された手を見て、俺を見て、ベルトルトは迷っている。

頷いてみせると、ベルトルトはおずおずとアルミンと握手をした。

アルミン「よろしくね」

べるとると「……」コクリ

アルミン「パン食べる?」

べるとると「……うん!」

ベルトルトはアルミンから渡されたパンを一生懸命食べている。

アルミン「はい、ライナーの分」

ライナー「おう。……それにしても、流石だな。この頃のこいつは本当に引っ込み思案だったんだが」

アルミン「ライナーのお墨付きがあるからだよ。それに、僕は小柄だから、あまり怖がらせないて済むかなって」

ライナー「なるほどな。しかし、俺が怖くないのにお前らを怖がるってのはおかしな話だ」

アルミン「確かに、ライナーのが大きくてたくましいからね」

べるとると「…………」クイッ

ライナー「ん? どうしたベルトルト」

べるとると「…食べないの?」

ベルトルトは俺の服を掴んでいるが、見ているのはアルミンだ。

アルミンは驚いた顔をした後、ニコッと笑った。

アルミン「僕はもう食べてきたからね。ありがとう」

べるとると「…うん」

アルミンはニコニコしながらベルトルトの頭を撫でる。

最初はぎこちなかったベルトルトも、今は少し嬉しそうだ。

アルミン「かわいいね」

ライナー「……ああ」

アルミン「昔、ミカサにかわいいって言われてすごく複雑だったけど、こんな気持ちだったのかなぁ」

ライナー(幼少期のアルミン……)

ライナー「かわいいものはかわいいんだから仕方ないな」

アルミン「そうだね」

一旦ここまで。

すまん、言い忘れてたが11巻までのネタバレがある。

あとライナーはバイ(実績なし)

ありがとう。
続き行きます。

ライナー「しかし、これからどうするんだ? これじゃあ訓練は無理だ」

アルミン「……不安だけど、教官に相談してみるしかないね」

ライナー「教官に、か……」

アルミン「うん。ライナー、君にはこの子がベルトルトだって証言をしてほしい。すぐに営倉送りなんてことにはならないと思うけど…」

ライナー「ああ、任せてくれ」


ライナー(こうして、俺とアルミンはキース教官の元へ向かった。)

アルミン「失礼します! 104期訓練兵、アルミン・アルレルトです!」

ライナー「同じく、ライナー・ブラウンです!」

キース「何の用だ」


鋭い眼光を向けられて、背筋が伸びる。

後ろにしがみつくベルトルトが、ますます強く服を掴んだ。


キース「……その子供は?」

アルミン「彼のことでお話があって来ました。彼は……ベルトルト・フーバー訓練兵です」

キース「フーバーだと? 顔を見せてみろ」

ライナー「ほら、ベルトルト」

べるとると「…………っ」ビクビク

キース教官に凝視されながら、ベルトルトは涙をこらえている。

怖くて声も出せないらしい。


キース「確かに面影はあるようだが…俄には信じられん。お前達は何故この子供をフーバーだと判断した?」

ライナー「はっ!私はフーバー訓練兵とは同郷であります。彼は私の知る、幼い頃の姿そのままです」

ライナー「加えて、この子はフーバー訓練兵の服を着て、彼の寝床にいました。原因は不明ですが、何らかの理由でフーバー訓練兵が幼くなったものと推察されます」

キース「……お前、名は何と言う」

べるとると「……べっ、べるとると…ふーばー……です……」カタカタ

ベルトルトは目に涙を溜めながら、逃げ出したいのを必死に我慢しているようだ。

通過儀礼を思い出す光景だが、正直教官がベルトルトをいじめているようにしか見えん。けしからん。

アルミン「ベルトルトは成績優秀でしたし、真面目に訓練に取り組んでいました。脱走する理由はありません。それに、代わりにそんな子供を置いていく理由もありません。」

キース「この子供がフーバーであると判断することが最も合理的だということか」

アルミン「……はい」

キース「…よかろう。仮に、フーバーが幼くなったとする。だが、訓練はどうするつもりだ? 訓練に従事できん訓練兵をここに置くわけにはいかん」

ライナー「そんな…!」

アルミン「教官……ベルトルトの暫定順位は10位以内、いや、5位以内のはずです。今でこそ訓練に参加はできませんが、少しの遅れを取り戻すくらいの能力を持っていることは間違いありません」

キース「訓練を一時中断することを認めろというのか?」

アルミン「はい。回復の見込みは、……ないわけではありません。ですから……」

キース「…………」

ライナー「お、お願いします!」

アルミン「お願いします!」

どれくらい沈黙が続いたのだろうか。

身動きひとつしなかった教官が、ベルトルトの前で屈む。


キース「フーバー。お前の意志を問おう」

べるとると「!」ビクッ

アルミン「! 教官、ベルトルトは今――」

キース「ライナー・ブラウンと共にここに残るか?」

ライナー「!」

べるとると「あ……」

べるとると「……!」コクコクッ

キース「返事は「はい」だ、フーバー。まぁ良い。規則はお前達が教え直してやれ」

アルミン「あ、ありがとうございます!」

キース「誤解のないように言うが、あくまで一定期間のみだ。回復の見込みがないと判断した場合、それ相応の処置を取らせてもらう。いいな?」

ライナー「はいっ! ありがとうございます!!」

キース「そろそろ時間だ。訓練に向かわねば罰則だぞ」

ライナー「はい」

アルミン「失礼しま――」

キース「待て。フーバーを連れて行くつもりか?」

ライナー「ですが、この状態のベルトルトを一人にしておくわけには……」

キース「お前は子守をしながら訓練を受けるつもりか?」ギロッ

ライナー「う……」

キース「フーバー訓練兵は一旦こちらで預かろう。他の異常がないか確かめておく必要がある。」

アルミン「教官、それは……」

キース「気になるのであれば昼食時に様子を見に来るといい。さあ……本当に罰則を受けるつもりか?」

ライナー「はいっ! ベルトルト、いい子にしてるんだぞっ!」ダッ

アルミン「失礼しましたっ!」ダダッ

べるとると「あっ」




早足に教官室から抜け出し、そのまま走り出す。

ライナー「助かったぜアルミン! お前のお陰だ」

アルミン「いや、ライナーの説得が効いたんだよ。それに……」

ライナー「?」

アルミン「……教官は厳しいけど、本物の鬼じゃあなかったってことだ」

べるとると「あ……らいな……」グズ

キース「フーバー」

べるとると「……!」ビクウッ

キース「……良い友人を持ったな」ナデ


ガチャ


メガネ「おやキース殿、そちらの子は?」
キース「……健康診断の手配を頼む」

まさかの教官のターンだった。

ちょっと書きためてくる。

つづき。おかしいぞ、シリアスになってきた

※メガネ=座学の教官

ライナー「悪いな、昼飯急がせちまって」

エレン「そんなに変わんねぇよ。俺もベルトルトの様子気になってたし。しかし…教官室で留守番って大丈夫なのかよ?」

アルミン「確かにすごく怯えてたけど…。教官も悪い人じゃないし、大丈夫なんじゃないかな?」

ライナー「ぐずってないといいんだけどな。失礼します!」ガラッ

メガネ「やぁ。彼の様子を見に来たんだね」

アルミン「あの…キース教官は」

メガネ「キース殿は訓練の準備で留守だよ。フーバー訓練兵については、幼くなった以外体に大きな異常は見られないらしい」

アルミン「そうですか…」ホッ

ライナー「それで、ベルトルトは…?」

メガネ「ああ、ここだよ」

言われるまま覗き込むと、応接用のソファーでぐっすり眠るベルトルトがいた。

メガネ「少し前まで読み書きを教えていたんだけどねぇ。疲れちゃったみたいだ」

エレン「すげー幸せそうに寝てるな」

アルミン「うん。ちょっと起こしづらい」

ライナー(……かわいい)

アルミン「食事を持ってきたんですが、食べさせてもいいですか?」

メガネ「ああ。次は座学の時間だろう? その子は大人しいようだから、食事が終わったらそのまま連れてきて構わないよ」

ライナー「ありがとうございます!」

食事の載ったトレイを机に置き、3人でベルトルトの様子を見る。

エレン「えいっ」プニッ

アルミン「エレン!何してるのさ!」

エレン「いや、だって起こさないと。アルミンもやってみろよ」

アルミン「そんな起こし方……いや、してたね、昔。思い出したよ」

ライナー「……ベルトルトの寝起きは悪いぞ? ということで俺も」プニプニ

アルミン「ライナーまで…」

エレン「ベルトルトってこんなにほっぺた柔らかいんだな」

ライナー「これは……今だけの期間限定だ」

エレン「限定だってよ!アルミンもさわってみろよ!」

アルミン「エレン…目的が変わってるよ。ほら、ベルトルト起きて!」

べるとると「んー……?」コロン

イヤイヤをするようにベルトルトが寝返りをうつ。

弾みで転げ落ちそうになったその瞬間に、3人分の腕で抱き留めた。

エレン「あっぶねぇ!」

アルミン「ギリギリセーフだったね!」

ライナー「ああ…すまん、ふざけすぎた」

べるとると「ん……らいにゃ……?」

寝ぼけた様子でベルトルトは目をこすっている。

それほど眠りは深くなかったようだ。

ライナー「起きたか」

エレン「飯持ってきたぜ!」

べるとると「!?」ビックリ

急にパッチリ目を開いたベルトルトは、少しオロオロしてから俺の腕にしがみついてきた。

緊張した様子でエレンの方を見ている。

エレン「ん?」

アルミン「ああ……そうか。エレンがいるから驚いたんだね」

エレン「どういうことだ?」

ライナー「こいつは、見たままの年齢に戻っちまってるからな。お前のことを覚えてないんだ」

エレン「アルミンは平気なのかよ」

アルミン「僕は朝友達になったから。ベルトルト、驚かせてごめんね」

べるとると「……ううん。このひとも、らいなーのともだち?」

エレン「ああ! 俺はエレン。ライナーもアルミンもベルトルトも、みんな友達だぜ!」

べるとると「……僕も?」

エレン「おう!」ワシワシ

べるとると「わっ……」グシャグシャ

アルミン「だめだよエレン、乱暴にしたら。さ、お腹空いただろ? ご飯を持ってきたよ」

べるとると「ありがとう!」パアッ

朝はどうなることかと思ったが、アルミンに対する警戒心が解けていたお陰か、エレンのこともすんなり受け入れられたようだ。

少し周りを気にする様子はあるが、怯えているという程じゃない。

ライナー「よかったな、ベルトルト」

べるとると「?」モキュモキュ

アルミン「だめだよライナー、話しかけちゃ。食べるのに時間がかかるんだから」

ライナー「おお、すまんな」

エレン「好き嫌いすんなよー。好き嫌いしなかったらライナーよりもでかくなれるぞ!」

べるとると「ほんとに?」キラキラ

アルミン「エレン、僕の話聞いてた!?」

原因はわからないし、不安はあるが……

今のベルトルトが受け入れられているのを見ると、ほっとする。

ベルトルトはあまり感情を出さないようになってしまったが、これくらいの頃はよく泣いて笑っていたな。

場違いだが、無邪気な表情を見ていて、よかったと思ってしまった。

ライナー(何で感情を出さなくなったんだったか……)

べるとると「ごちそうさまでした」ケフッ

エレン「おー、ちゃんと食ったな!」ワシャワシャ

べるとると「~~っ」メツムリ

アルミン「もう、エレンは乱暴だなぁ。ほらベルトルト、口拭くよ」

べるとると「うん」

アルミン「何かこうしてると、弟ができたみたいだね」

エレン「そうだなぁ。どっちかっていうとミカサに弟扱いばっかされてたから、新鮮だ」

アルミン「うん。それに、ベルトルトは104期の中では物静かで大人っぽい方だったから、そういう意味でも不思議な感じだね」

エレン「ライナーと二人でいると貫禄あったよな」

アルミン「確かに。……ライナー?」

ライナー「ん? ああ」

アルミン「ずっと黙ってなくてもいいんだよ」

ライナー「なんだ、いつの間にか食べ終わってたのか」

エレン「ぼーっとしすぎだぜ! 次の座学大丈夫か?」

ライナー「問題ないさ。…そういえばベルトルトも行くんだったな」

べるとると「行っていいの?」
ライナー「ああ、お前がいい子にしてたからな」ナデナデ

べるとると「やった!」ニコニコ

ライナー(癒される)

エレン「でも、内容わかんないだろ?」

アルミン「うん。ひとまず、大人しく座っててもらうことになるのかな」

ライナー「質問があったらアルミンに聞くといいぞ、アルミンは物知りだからな」

べるとると「うん!」

アルミン「また適当なことを…」

エレン「アルミンが物知りなのは本当のことだろ? 何が適当なんだ?」

アルミン「そういうことじゃないよ…。まぁ、せっかくだし、今日はベルトルトの近くに座ろうかな」

ライナー「いいのか? 後ろの方になるぞ」

アルミン「たまにはね。ライナーひとりでそばにいるのも寂しいだろうし」

エレン「じゃあ俺も! いいだろ、ベルトルト!」

べるとると「う、うん」

メガネ「……君達、時間はいいのかい?」

エレン「えっ?」

アルミン「しまった、食器の片付けもまだだよ!」

メガネ「私より早く教室に着くようにね」

ライナー「はいっ! 行くぞベルトルトォ!」ガシッ

べるとると「ぴゃっ」


ガラッ シツレイシマシタァ! ピシャーン


メガネ「賑やかな子達だね……」

メガネ「さて、私も行くとするか」

next 座学編はまた明日。

大人数さばくの難しいから、少しずつ増えるよ。

次は流れ的にあの人。

>>1は最初どうやってこんなのエロにしようとしてたんだ………
シリアスか癒ししか俺には想像できないんだが……

ID変わるが1です。
組長先生なつかしい。

>>47
当初のままなら、最初の方のちびべるの服を調節するシーンでライナーが壊れ始める。

さて、続きです。

〈講義室〉



バタバタバタ...

エレン「うおっギリギリ!」

俺がベルトルトを抱え、アルミンが教材を持って走る。

食器を置いてきたエレンとほぼ同時に教室に到着して、机に縋り付いた。

アルミン「エ…レン……っ、早、かったね……」ゼェゼェ

エレン「ちょっと寄り道しただけだぞ。ベルトルトを担いできたライナーのがすげえだろ」

ライナー「まあ、トレーニングと思えばな」ヒョイッ

べるとると「わひゃっ」ストンッ

ベルトルトをいつもの位置に収めて隣に座る。

アルミンがその隣に座ろうとしたところで、反対側から強い視線を感じた。

ミカサ「エレン、アルミン……どこへ行っていたの?」

じっ、と深い色の瞳が二人を見据える。

怒っているわけではないのだろうが、……妙に肝が冷える。

ミカサ「すぐに食べ終わってどこかへ行ってしまうし、教室にもなかなか来ないから心配した」

アルミン「ごめんね……ミカサ…」ゼェ

エレン「ちょっとベルトルトの様子を見に行ってたんだ」

ミカサ「ベルトルト?」

今気付いたように、ミカサは俺の隣に視線を移す。

エレン達のやりとりを見ていたベルトルトとミカサの目線が、ばっちり合った。

ミカサ「…………」

べるとると「…………」ビクッ

ミカサ「………………」

べるとると「………………」ダラダラ

ミカサが視線を外すと、ベルトルトはほっと息を吐いた。

見逃された小動物のような気持ちなんだろう。わかるぞ。

ミカサ「確かによく似ている。でも、私の知っているベルトルトは、1.9mはあったはず」

エレン「まぁそうなんだけど……って、教官が来ちゃうぞ、早く座れって」

ミカサ「そうする」サッ

ミカサは迷いなくエレンの隣に座った。

エレンを挟んでミカサとアルミン。

俺達と同じように、この3人も大体指定席だ。

後ろから見ているからよくわかる。

今日はその3人が揃って後列にいるせいで、少し視界が違って見えるな。

まぁ、一番普段と違うのは、俺の隣なわけだが。

ベルトルトは辺りの様子を気にしているようだ。

急に知らない所に連れてきた上、大勢の人がいるんだ。無理もない。

宥めようと手を伸ばしたところで、アルミンに先を越された。

アルミン「はい、ベルトルトの分だよ」

べるとると「…くれるの?」

アルミン「うん。教官の言ったことをここに書くんだ。教本を写していてもいいよ」

べるとると「!」ワクワク

ライナー(楽しそうな顔しやがって)

少し妬いてしまいそうになりながら、ベルトルトの頭を撫でる。

べるとると「らいなー?」

ライナー「がんばれよ。後で見てやるから」

べるとると「うん!」


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メガネ「では――今日はこのあたりで。課題は忘れず提出するように」


その言葉を合図に、部屋のあちこちから声が溢れ出す。

俺の隣近所も例外ではないようだ。

エレン「また課題かよ…めんどくさいな」

アルミン「実践して身に着けることも大事だけど、知識があるに越したことはないよ。知識が実践に役立つこともあるんだし」

ミカサ「アルミンの言うとおり。私はアルミンの助言で、成績が上がった」

エレン「お前それ以上得点とってどうするんだよ!」

ライナー(相変わらず仲がいいな……ん?)

座学が終わっても、ベルトルトはペンを握ったままだ。

不思議に思って手元を覗いて、思わず声が出た。

ライナー「すごいじゃないか」

べるとると「わっ!」

驚いたのか、ベルトルトはノートを隠してしまう。

アルミン「どうしたの?」

ライナー「ベルトルト、もう一度見せてくれよ」

べるとると「……笑わない?」

ライナー「笑うわけないだろ。ほら」

おずおずと手が退けられる。

皆の反応は予想通りだった。

エレン「うわ、すっげえ」

ミカサ「とても上手」

アルミン「さっき教官が書いてた図解だね。すごくきれいに写せてる」

べるとると「ほんと?」

ライナー「ああ。正直俺よりちゃんと書けてるぞ。お前は本当に変わらないんだな」

アルミン「ベルトルトは丁寧にノートを書いてたもんね」

ライナー「ああ。それに、昔から絵が上手かったんだぞ?」ヨシヨシ

べるとると「……」テレテレ

一歩退いて大人しくしているというだけで、ベルトルトの良いところは見えにくくなっていた。

昔からそうだ。

だが、俺はベルトルトの良いところを知っているし、……今ではこいつらもわかってくれているんだな。

ジャン「…お前ら、いつまで残ってんだよ」

アルミン「ジャン」

マルコ「そろそろ移動しないと遅れるよ?」

エレン「あ、次は……」

ミカサ「立体機動装置の整備。……ライナー、ベルトルトはどうするの?」

メガネ「その点は心配いらないよ」

ライナー「教官!」

メガネ「フーバーは一度連れて行くよ。これからの訓練中の扱いを考えなければいけないからね。……座学は同席させても大丈夫なようだ」

ライナー「わかりました。ベルトルトをよろしくお願いします!」

メガネ「ああ。何だか君は本物の保護者のようだね」

ライナー「大事な……親友ですから」

メガネ「そうか。人望があるのはいいことだ。君もフーバーもな」


メガネ「さて、行こうか」

べるとると「はいっ」テトテト

べるとると「……」クルッ

ライナー「また後でな!」

ミカサ「……小さく手を振ってる」ヒラヒラ

アルミン「何だか和むね」フリフリ

エレン「そういえば、ベルトルトのほっぺためちゃくちゃ柔らかかったぜ?」

ミカサ「それは興味がある」

アルミン「エレン、何言ってるの! ミカサも乗り気にならないでね」

ライナー「いや、あれは触る価値がある」

アルミン「そこは親友として阻止しなきゃだめだよ!」


スタスタスタスタ...




ジャン「あぁ、ミカサ……」

マルコ「混ざれなかったねぇ。……夕食の時は、僕たちもベルトルトに挨拶に行こうか?」

ジャン「……おう」

今日はここまで。

ベルトルトは絵や字が上手な気がしてならない。

ベルノートの人?

>>64
ベルトルトが某ノートを手にしてアルミンと頭脳戦する話かと思った。
(次回作にしよ)

期待ありがとう。
では投下します。

エレン「ライナーって意外に細かい作業も得意だよな」

ライナー「でかい図体なのに、ってことか?」

エレン「別にそんなこと言ってねぇよ」

アルミン「エレンは苦手だよね、細かい作業」

エレン「うっ」

ミカサ「エレン。整備はちゃんと覚えなければダメ」

ライナー「なるほど、お前らしいな」ハハハ

エレン「に、苦手なもんは仕方ないだろ!」

食堂の扉を開ける。

何気なくいつも座る辺りに目を向けて、驚いた。


ライナー「ベルトルト!」

べるとると「らいなー!」タタッ

膝をついてベルトルトを出迎える。

広げた腕の中に収まるようにベルトルトが飛び込んできた。

アルミン「ベルトルト、一人で待ってたの?」

べるとると「うん」

ライナー「そうか、偉かったな」ナデナデ

べるとると「おかえり、らいなー」ニコ

ライナー「おう」


おかえり、か。

……昔を思い出すな。


エレン「本当に弟って感じだな」

アルミン「ライナーのこと大好きなんだね」ヨシヨシ

ミカサ「…」ナデ

べるとると「!?……」

ベルトルトはまた、さっきのように固まった。

怖がっているわけではないようだが、まっすぐに向けられるミカサの視線に萎縮しているようだ。

ベルトルトの異変に気付いたミカサが、屈んで目線を低くする。

ミカサ「怖がらなくていい。私はミカサ。ライナーの同期」

べるとると「どうき……?」

ミカサ「そう。アルミンは親友で、エレンは家族」

べるとると「かぞく……」

ミカサ「そう」

べるとると「…………」

無言で二人は見つめ合う。

意思の疎通が図れていないのが、よくわかった。

アルミン「もう。そんな言い方じゃわかりにくいよ」

ミカサ「……どうすればいい?」

エレン「簡単だろ。ミカサも俺達の友達だ! ってことで、よろしくな、ベルトルト」

べるとると「…うん」ニコ

ミカサ「よろしく」

ライナー「……」フッ


ジャン「おいお前r」

サシャ「みなさん、こんなところで固まって、どうしたんですか?」

アルミン「あっ、ごめんね。道を塞いじゃってた」

サシャ「いえいえ。でも、せっかくのご飯が冷めちゃいますから、急いだ方が――」

はたとしてサシャは言葉を止める。

視線の先は勿論ベルトルトだった。

サシャ「ベルトルト……に良く似た子ですね。弟とかですか?」

コニー「いや、本人だぜ」

サシャ「えっ、どうしてコニーが知ってるんです?」

コニー「どうしても何も…こいつはベルトルトなんだよ。なぁライナー」

ライナー「ああ。説明になってないが、…俺が保証する」

サシャ「ふんふん。確かに似た感じはしますねぇ」

ミカサ「サシャ……あなたは匂いで人を判別するの?」

サシャ「えっ、しないんですか?」

エレン「何か犬みたいだなぁ」

サシャ「ひ、ひどいですよエレン!」

アルミン「嗅覚そのものっていうより、雰囲気とか人間性を直感的に嗅ぎ取ってるんじゃないかな。サシャは鋭そうだし」

サシャ「そう、それですよアルミン! ありがとうございます!」

コニー「……なぁ、嗅いでるんなら結局嗅覚じゃないのか?」

エレン「ん…? 言われてみれば」

ミカサ「エレン……それは比喩」




べるとると「……!」キョロキョロアワアワ

ライナー「ベルトルト」ポンポン

べるとると「!」ギュッ

ライナー「はは、流石にこれだけの人数に囲まれたら驚くな。みんな良い奴だから大丈夫だ。後で改めて紹介してやろう」

サシャ「それにしても、ベルトルトのつむじを初めて見下ろしましたよ!」

エレン「確かに! そう思うと貴重だよな」

アルミン「……座ってるときに背後に立てば見えるんじゃないかな?」

サシャ・エレン「「あ」」

ミカサ「対人格闘で寝技に持ち込んでも見れる」


コニー「!」ピコンッ

コニー「…なあライナー、後でベルトルト借りていいか?」

ライナー「借りる? どういうことだ?」

コニー「いいから! さ、飯食おうぜ!」




ジャン「」ズーン

マルコ「どうどう」

ジャンはついつい焦らしたくなるな。

つづき書いてくる。

だんだん幼さが増している気がしないでもない。
慣れたらもう少し口数増えます。

ジャンのターン!

〈宿舎〉

ジャン「……」ハァ

コニー「どうしたんだよジャン。元気ないなー」

ジャン「お前らが乱入してきたからだよ!」クワッ

コニー「おおっ!?」

ジャン「……何でもねぇ、八つ当たりだ。風呂行ってくる」

ジャン「うまくいかねぇな……」

ジャン(ミカサと話してぇだけなのに…)

ジャン(ベルトルトが羨ましいぜ)

ジャン「……俺もミカサに撫でられたい」ボソッ


ガヤガヤ


ジャン「!」ギクッ

アルミン「あ、ジャン。今からお風呂?」

ジャン「お、おう」

ライナー「丁度良かったな、空いてきたところだぞ」

べるとると「♪」ホカホカ

ジャン「……」

ジャン「やっぱチビも一緒か」

エレン「チビ?何のことだよ?」

ジャン「少し考えりゃわかるだろ。脳みそまで駆逐されたのか?」

エレン「はあっ? 何だよ急に」

ジャン「お前ら大変だな。ずっと子守で」

ライナー「おいジャン」

ジャン「……冗談だよ」プイッ

アルミン「あ、ちょっと……」

エレン「何だよあいつ!急にふっかけてきやがって」

べるとると「……」オロオロ

ライナー「どうしたんだ、ジャンの奴」

アルミン「さぁ……何かあったのかな?」



スタスタスタスタ ピタッ


ジャン「」orz

ジャン「あーくそ、タイミング悪すぎだろ!」

ジャン(聞かれてなかったよな)

ジャン(ハァ……後で謝るか)

〈30分後〉


ジャン(戻り辛いな…)

バタバタ ワーワー

ジャン(…ん?)

ガチャ

ライナー「コニー!とにかく止まるんだ!」

コニー「グラグラして無理だ! つか前見えねえっ!」

アルミン「二人とも落ち着いて! ベルトルトはその手をずらして!」

べるとると「……!」ギューッ

ライナー「落ち着けベルトルト!」ガシッ ズルッ

マルコ「わああ、ベルトルトのズボンが脱げた!」

ライナー「」


エレン「何やってんだライナー!」

ライナー「違っ、元々サイズが…」

アルミン「そんなこと言ってる場合じゃ――!?」


ジャン「」


ドガシャーン

ジャン「……何なんだ、お前ら。馬鹿なのか?」ボロボロ

コニー「……返す言葉もねぇ

べるとると「…」グスグス

アルミン「まぁまぁ…その、僕達もまさかこうなるとは」

ジャン「いや、お前なら予測できただろ」

ジャン「知らない奴と目が合うだけでビクビクしてるんだぞ? 肩車なんかしたらパニックになるに決まってるだろうが」

アルミン「……うん」

コニー「……その、いつもの目線を体験させてやろうとな」

ジャン「自分で立つのと肩に乗っかるのとじゃ大違いだろ。ライナーも止めるんならちゃんと掴めよ」

ライナー「……実にすまん」

エレン「でもよ、ベルトルトも乗り気だったんだぜ?」

ジャン「煽ってどうすんだ。下手すりゃ頭から落ちてたぞ」

エレン「……う」

ジャン「ま、デコぶつけただけで済んで何よりだぜ。……チビはな」

マルコ「ジャン…湿布もらってこようか?」

ジャン「いらねえよ。部屋ですっ転んだだけだから大事にするな」



「………………」


ジャン(……あーくそ、気まずいな)

べるとると「……」グスッ

マルコ「額が赤くなってるね。大丈夫かな?」

べるとると「……ん」コク

マルコ「偉い偉い。それでこそ男の子だね」ナデナデ

ジャン(いつの間にかマルコが馴染んでるし……別にいいけどよ)

べるとると「……」トコトコ

ジャン(ん?)

べるとると「…ご、ごめんなさい……」プルプル

ジャン「……」

ジャン「別にお前を怒ってるわけじゃない」

べるとると「」シュン

ジャン「……こういうときは、ありがとうって言うもんだぜ」ナデ

べるとると「!」

べるとると「……ありがとう」ニコ


ワイワイ


ジャン「……」フゥ

ライナー「……ジャン」

ジャン「ん?」

ライナー「ありがとうな」

ジャン「…ん。お前も保護者ならちゃんとしろよ」

ライナー「そうだな、これじゃ保護者失格だ」ハハ

ジャン「ああ。チビのズボン剥いた時は何事かと思ったぜ」

ライナー「……なかったことにしてくれ」

ジャン「どうするかなぁ」ニヤニヤ

>>90>>91の間が抜けてた


コニー「……」

コニー「ベルトルト、驚かせてごめんな。痛かっただろ」

べるとると「…もうへいきだよ」ニコ

べるとると「こにーも、ごめんなさい」

コニー「おう」ワシャワシャ

アルミン「僕もごめんね。止められなくて」

べるとると「ううん」

エレン「……俺もごめん。実はコニーの次に肩車してやろうと思ってたんだ」

アルミン「え、そうなの?」

エレン「だってこんな時でもねぇと、ベルトルトを肩車なんてできないだろ?」

マルコ「エレン、ベルトルトを肩車したかったの?」クスッ


ワイワイ


ジャン「……」フゥ

ライナー「……ジャン」

ジャン「ん?」

ライナー「ありがとうな」

ジャン「…ん。お前も保護者ならちゃんとしろよ」

ライナー「そうだな、これじゃ保護者失格だ」ハハ

ジャン「ああ。チビのズボン剥いた時は何事かと思ったぜ」

ライナー「……なかったことにしてくれ」

ジャン「どうするかなぁ」ニヤニヤ

一段落したので寝る。

13日の金曜日か…

再開

しばらく短編が続きます。
未登場キャラはそのうちに。

『回る』


べるとると「ふあ…」

ライナー「お、起きたな」

べるとると「…?」

エレン「はは、驚いた顔してんな。お前、あっちからここまで転がってきたんだぞ?」

アルミン「びっくりしたよ。起きたら目の前に足があったんだもん」

ライナー「蹴られなくてよかったなぁ、アルミン」

エレン「ひでえ、俺蹴られたのに!」

べるとると「あ……」

エレン「あ」

アルミン(あ、言っちゃった…)

べるとると「えれん、痛かった…?」ウルウル

エレン「いや、平気だぞ。対人格闘の時にもっと痛い目にあってるからな!」

べるとると「えっ」

ライナー「いや、全然痛くないぞ! エレンは打たれ強いからな」ガシッ

エレン「あ、ああ! 何てことないぜ!ちょっと一回転しただけだ、こう、グルッと……」

べるとると「ぐるっと………」

べるとると「…みてみたい!」キラキラ

アルミン「何か、すごく興味持っちゃったみたいだよ」

ライナー「…アレをベルトルトに見せるわけにはいかんだろ。泣くぞ」

エレン「わ、悪かったって…」

べるとると「」ワクワク

『おさがり』


ライナー「よ…っと、こんなもんか?」

ジャン(ん?)

べるとると「?」ブカブカ

アルミン「やっぱり、動きづらそうだね」

ライナー「ああ、上はどうにかなりそうだが…」

アルミン「ズボンの丈がちょっとね…」

ジャン「……」

アルミン「どうする? コニーのも試してみようか」

ライナー「いや、そんなに変わらんだろ。いっそ切るか?」

ジャン「……ほらよ」

アルミン「ジャン? あ…」

ジャン「やるよ。あんまり着ねぇやつだから」

ライナー「おお、膝丈だな。こんなの持ってたのか?」

ジャン「訓練中は絶対着ないからな」

アルミン「ってことは私服? いいの?」

ジャン「いいって言ってんだろ。うわ、どんだけ裾折ってんだよダセェな。ほら脱げ」

べるとると「うん」キセカエー

ジャン「ベルト貸してやるよ。しっかり締めときゃ落ちないだろ」マキマキ

ライナー「おお…」

アルミン「細いベルトだね。ニ巻きしても苦しくなさそう」

ジャン「よし、1回折ったらちょうどいいくらいだな」

べるとると「!」ジャーン

ライナー・アルミン「「おおー」」パチパチ

べるとると「…」ジーッ

ジャン「…なんだよ」

べるとると「ありがとう!」ニコッ

ジャン「ん」ポンポン スタスタ



アルミン「すごいね、上もきれいに結び上げて調節してる」

ライナー「小器用なやつだな」

マルコ「あれ? ベルトルト着替えさせたの?」

アルミン「うん、ジャンがね」

べるとると「動きやすいよ!」キラキラ

マルコ「ふふ、よかったね」ニコニコ

アニちゃんは、まだですかね……

>>104-106
アニは話の都合で出番が遅いんだが、正直早く出したい。
暫しお待ちを。

つづき投下します。

『パァンの人』


べるとると「らいなー、ありがとう!」

ライナー「気にすんな」

ライナー(今のベルトルトに食事を持ちに行かせるのは、危ないからな)


ライナー「よし、食うか」

べるとると「うん」

コニー「ライナー、ここいいか?」

ライナー「おう、空いてるぞ」

コニー「よっしゃ、飯だ飯だー!」

べるとると「♪」モキュモキュ

コニー「しっかし、大人しいのは同じだけど、表情豊かだよなぁ」モグモグ

ライナー「そうだな」モグモグ

コニー「ま、嬉しそうに食うのはいいことだよな」

コニー「ん? 何かを思い出すような…」

ダダダダダダ

サシャ「お呼びですか!?」シュバッ

コニー「お前か!!」

ライナー「ようサシャ。また巡回か?」

サシャ「はいっ。いつどこでお腹の具合が悪くてパァンが食べられなくなる人が出るかわかりませんから!」

コニー「普通はいないだろ?」

サシャ「!」パチッ

べるとると「…」モキュ..?

ライナー「サシャ、ベルトルトのはやれんぞ?」

サシャ「わ、わかってますよ。ベルトルトは大きくならなきゃいけないですからね、いっぱい食べてください」

べるとると「…? うん」

サシャ「あっ、でも、食べきれないときはいつでもパァンのお姉さんが食べてあげますからね!」ニコッ

サシャ「ではまた!」

タタタタタッ

ライナー「風のように去っていったな…」

コニー「おお…」

『兵士の心得』


エレン「よし、準備はいいか?」

べるとると「はいっ」

エレン「ライナー、頼むぞ」

ライナー「おう」

ライナー「」スゥ

ライナー「心臓を捧げよ!!」クワッ


エレン「」サッ

べるとると「」ビクゥ

べるとると「…!」..サッ

ライナー「ベルトルト・フーバー!」

べるとると「は、はいっ!」

ライナー「返事は「はい」だ!」

べるとると「はい!」

ライナー「反応が遅い! それと、後ろ手はこうだ!」ナオシッ

ライナー「わかったか」ジロッ

べるとると「はい、きょうかん!」ピシッ

ライナー(ぐっ、頭を撫でてやりたい……しかし今の俺は教官役…我慢だ…!)

エレン「よし、じゃあもう一回だ。終わったら隊列と点呼を教えてやるからな」

べるとると「はい!」キラキラ

アルミン「楽しそうだね。ライナーの教官役もはまってる」

ミカサ「私も混ざりたい」ウズウズ

アルミン「隊列もやるって言ってたから、混ざればいいと思うよ。2人だけじゃ練習にならないだろうから」

ミカサ「確かに。アルミンも行こう」

アルミン「うん」ニコニコ

今日はここまで。
次こそ女性陣を増やしたい。

『お姉さんズ』


べるとると「……」ジーッ

馬「…」

べるとると「……?」ジーッ

馬「…」ブルルッ

べるとると「!」ビク

クリスタ「あ。あれは……」

サシャ「ベルトルトじゃないですか。どうしたんですかこんなところで」

べるとると「あの……ここですこし待ってなさいって言われて」

クリスタ「教官に言われたの?」シャガミ

べるとると「…」コクリ

サシャ「何でしょうねぇ。馬小屋の掃除でもするんでしょうか?」

クリスタ「うーん。でも、今のベルトルトには少し危ないような気も…」ジーッ

べるとると「……」

べるとると「……」アセアセ

クリスタ「えっと、緊張してるのかな?」

サシャ「ベルトルトは人見知りなんですよ。私にお任せください」ズイッ

サシャ「私のこと覚えてますか、ベルトルト。パァンのお姉さんことサシャですよ」

べるとると「うん…」

サシャ「そしてこちらが我らが女神のクリスタです」

べるとると「…めがみ?」

サシャ「はい。女神のお姉さんですよ!」ドヤァ

クリスタ「ちょっとサシャ、変なこと言わないで!」

クリスタ「……私はクリスタ・レンズっていいます。よろしくね、ベルトルト」スッ

べるとると「うん……」アクシュ

べるとると「……」テレ

クリスタ「…また黙っちゃった」

ユミル「おーいクリスタ、待たせたな」

クリスタ「あ、ユミル」

サシャ「意外と早かったですね」

ユミル「まぁな。……って」

べるとると「!」ビクッ

ユミル「おいおい、そこのチビ助は何やってんだぁ?」ズズイッ

べるとると「!!」プルプル

ユミル「クリスタの手ぇ握って赤くなるたぁいい度胸だな」グシャグシャ

べるとると「わ、う……」ウルウル

クリスタ「ユミル! ベルトルトをいじめちゃだめ!」サッ

ユミル「いじめちゃいねーよ? ユミルお姉様直々に女性に対するマナーを教えてやろうかと思っただけだ」ニヤニヤ

べるとると「……!」ブルブルブル

サシャ「ああっ、何やら本格的に怯えています!」

クリスタ「ユミルっ!」

ユミル「ったく。冗談だって」ポフポフ

ユミル「チビに構ってねーでさっさと支度するぞ。何のために早めに来たんだよ」

クリスタ「もう……ごめんね、ベルトルト」

べるとると「……」..フルフル

ユミル「よしサシャ、クリスタを護衛してけ」

サシャ「あいあいさー! ではベルトルト、また後で!」

クリスタ「護衛って…。わ、サシャ引っ張らないで…」

べるとると「……」

ユミル「しっかし随分と縮んだもんだなぁ」ジッ

べるとると「!」ビクーン

ユミル「馬に蹴られんなよ?」ナデ

べるとると「…!」

ユミル「おいコラ芋女! 誰が私を置いてけっつった」スタスタ


べるとると「…」チラッ

馬「…」ブルルルッ

べるとると「…」ソーッ(離)

『黒髪』


べるとると「…」スヤスヤ

ジャン「…」

マルコ「器用だね。ふくらはぎを枕にしてる」

ジャン「すげぇ嫌な圧迫感なんだが」

マルコ「下のベッドに変わって大正解だね。上にいたら落ちちゃいそうだ」

べるとると「」コロコロ

ジャン「…やっとどいたか」

マルコ「うん」ツンツン

べるとると「んー?」ムニャムニャ

マルコ「ベルトルト、起きたかい?」

べるとると「…」ウトウト

マルコ「転がったせいかな。随分髪がボサボサになっちゃったね」ナデナデ

べるとると「……」ポーッ

ジャン「寝ぼけてんな」

マルコ「おはようベルトルト」

べるとると「おはよう…」

マルコ「目覚ましに顔を洗ってこようか」

べるとると「…うん」





マルコ「寝癖、なかなか直らないね」ナデ

ライナー「お、悪いなマルコ。起こしてくれたのか」

べるとると「らいなー!!」ヒシッ

マルコ「うん。今日はそんなに大移動してなかったよ」

ライナー「そりゃよかった。しかし髪が跳ねてるな」

マルコ「髪が柔らかいから直りにくいのかな?」

ライナー「かもなぁ」ナデナデ

ジャン「なんだよ、また撫で回してんのか?」

ライナー「触り心地が癖になるだろ?」

マルコ「ついついね。ジャンは撫でないの?」

ジャン「俺はミカサの髪のが好きだ」キリッ

マルコ「…相変わらず正直だな君は」

ジャン「ま、触り心地の良さは認めるが……ミカサの黒髪は別格だぜ。本当に、きれいだ」

べるとると「……」

ジャン「って、何言わせんだ!」

ライナー「いや、勝手に喋ってただろ?」

(座学講義後)

べるとると「あるみん、これは何?」

アルミン「それは……」


エレン「何かすげぇ懐かれてんなぁ」

ミカサ「アルミンは説明がとても上手。ベルトルトが質問責めにするのも無理はない」

エレン「ライナーには聞かないんだな。一番懐いてるのに」

ライナー「それだけアルミンの教え方がうまいんだろう。馴染んでるようで何よりだ」

エレン「あ、アルミン。俺にもここの説明してくれよ」

アルミン「エレンも? ええっと、そこはね…」

ミカサ(微笑ましい……)

べるとると「……」ジーッ

ミカサ「……?」

ミカサ「どうしたの?」

べるとると「……みかさの髪は、べっかく?だって」

ミカサ「……別格?」

べるとると「本当にきれいだって、ズボンのお兄ちゃんがいってた」

ミカサ「私の…髪が?」

べるとると「うん」

べるとると「…僕もそうおもう」ニコ

ミカサ「…」キュン

ミカサ(誰だろうか…まさか、エレンが……?)ドキドキ

ミカサ「……ありがとう」ニコ

ジャン「……っ」ドキイッ

ジャン(ミカサの笑顔…!)

ジャン「…くそ、あいつ余計なことを……」

マルコ「よかったね、ジャン」

ジャン「ふ、ふん!」



マルコ(ベルトルトはジャンが、とは言っていないから、ミカサはきっとエレンあたりの言葉だと誤解しているんだろうけど……かわいそうだから黙っておこう)

ちびべるは基本的にみんな名前で呼ぶが、ジャンは名前うろ覚えなのでこうなった。

本日はもう1話進める。

ズボンのお兄ちゃんってあれか、ジャンがハーパンくれたからか

>>134
そう。

女性陣をお姉さん呼びする話も書こうと思って前フリをしたが、そっちはボツになった。

ではつづき。

『母性』


アルミン「あ、ベルトルト。ライナーを待ってるの?」

べるとると「うん」

アルミン「じゃあ、一緒に座って待ってようか」

べるとると「うん!」


アルミン「エレン、ミカサ!こっちだよ」

ミカサ「ありがとう、アルミン」

エレン「お、ベルトルトもいるじゃねーか」ニカッ

べるとると「……」ニコッ


クリスタ「あ、あのっ」

アルミン「クリスタ?どうしたの?」

クリスタ「ここ、座ってもいいかな?」

エレン「おう、座れよ」

ユミル「ったく、仕方ねぇなぁクリスタは」

ミカサ「…珍しい。どうしたの?」

ユミル「ん? ああ、クリスタがチビ助の世話焼きたいってうるさくてよぉ」

クリスタ「ユ、ユミル! そんなこと言ってないよ! 私はただ…」

ライナー「ク、クリスタ!?」ドキーン

エレン「おっライナー!席空けといたぜ!」

べるとると「らいなーはここだよ」ポンポン


   ライ ベル アル
 ○  ●  ●  ●  

 ●  ●  ●  ●
ユミ クリ ミカ エレ

ライナー(クリスタの正面…だと)

クリスタ「ライナー、トレイひとつ受け取るよ。ベルトルトの分でしょう?」

ライナー「あ、ああ」

クリスタ「はいどうぞ」キラキラ

べるとると「ありがとう」ニコニコ

ライナー(結婚したい)

ユミル「……おい、鼻の下伸ばすんじゃねぇ」イラッ

(食後)

べるとると「ごちそうさまでした」

ライナー「よし、残さず食ったな」ナデナデ

クリスタ「…」ジーッ

ライナー「!」

ライナー(クリスタの視線を感じる!)

ライナー「ど、どうしたんだ? クリスタ」ドキドキ

クリスタ「……私もベルトルトの頭を撫でてもいい?」キラキラ

ライナー「」(結婚しよ)

エレン「おー、撫でてやれよ。すげぇふわふわだぜ」

ミカサ「そういうことなら私もぜひ」スチャ

アルミン「だそうだけど。ベルトルト、いいかな?」

べるとると「うん……」チラッ

ライナー「」

ユミル「そいつは今役に立たねぇからほっとけ」

(※べるとるとはクリスタとミカサの間に移動)


クリスタ「…」ナデナデ

ミカサ「…」ナデナデ

べるとると「……」テレテレ

ミカサ「これはなかなか。小さい頃のエレンも良かったけれど、また別の良さがある」ナデナデ

クリスタ(緊張してるみたい。かわいい……)ナデナデ

アルミン「すごい光景だなぁ…」

ユミル「元に戻ったらこれをネタに脅せるレベルだな」チッ

アルミン(冗談に聞こえない…)


ユミル「…クリスタ、気は済んだか?」

クリスタ「うん」ホワホワ

ユミル「ったく。何やってんだか」

クリスタ「だって…何だかこう、守りたいって気持ちにならない?」

ユミル「さっすが私のクリスタ! 既に母性愛に目覚めてるわけだな。これならいつ私の嫁になっても安心だ」ギュウギュウ

クリスタ「ちょっと、やめてよユミルー!」

ライナー(嫁……)

ミカサ(母性……)ナデナデナデ

エレン「何かそうしてると、姉弟みたいだよなぁ。ミカサは同じ黒髪だし」

ミカサ「むしろ息子のような気持ちで撫でている」キリッ

エレン「ははっ、それにしちゃでかすぎるだろ」

アルミン(あぁ…ミカサの母性アピールはひとかけらも伝わってないんだろうな…)ホロリ

エレン「ああ、でもユミルなら親子でもいけるかもな」

ユミル「…テメェ、喧嘩売ってんのか?」ギロッ

エレン「な、何怒ってんだよ…」

アルミン「ち、ちょっと待ってユミル。ええと……エレンは多分、ユミルが大人っぽくて面倒見が良いって言いたいんだと思うよ。ライナーと同じで、保護者の風格があるというか…ね、エレン?」

エレン「おお、それだ! すげぇなアルミン」

ユミル「…保護者ねぇ。ま、私はクリスタ専属なんだがな」ナデナデ

クリスタ「もう、私じゃなくてベルトルトを撫でる流れでしょ?」ムゥ

ユミル「あん? 私もか?」

クリスタ「そう。この間ベルトルトをわざと威圧したでしょ? 仲直りしなきゃ!」

ユミル「……」チラッ

べるとると「!」ビク

ユミル「……はー、しゃあねぇな」スタスタ ピタ

ユミル「……」ジーッ

べるとると「……」ドキドキ

ユミル「……」スッ


べるとると「ふゃっ!」ビヨーン

ユミル「おー、よく伸びるなー」

クリスタ「ユミル!」

ユミル「何だよクリスタ。これも愛情表現だって。お前にもたまにやってやるだろ?」プニプニプニプニ

べるとると「う、うぅ……」フルフル

エレン「おいユミル、そのへんにしとけよ」

ミカサ「そう。ベルトルトの頬は触り心地が良いので、止められなくなってしまう」プニ

アルミン「ミカサ、それはちょっと違うと思うよ…」

ユミル「何だお前らも経験済みか。よかったなぁベルトルさん、みんなに可愛がってもらえて」グシャグシャ

べるとると「ら、らいなぁ!!」ジタバタ

クリスタ「もうっ、そうじゃないでしょユミル!」


ライナー(息子もいいが娘は譲れん…両取りだな)モンモン







ミーナ「…………」

ミーナ「ね、ねぇアニ!」ソワソワ

アニ「混ざりたきゃあんたひとりで行きなよ」

ミーナ「アニつれない!」

アニ「何とでも言いな」フゥ






アニ「…………」

~現在公開可能な情報~
※べるとると視点

【コニー】
よく遊んでもらう。肩車の後はしばらく怖がっていたが、おんぶダッシュで仲直りした。

【マルコ】
ライナーの次に落ち着く。膝の上に座らせてもらってそのまま寝てしまったことが何度かある。

【ジャン】
目つきも口も悪くて怖かったが、実は優しいと気づいてからは怖くない。
※自己紹介の前にズボンの件があったので、その認識が強い。

やっとアニとミーナ出せた…。

気付くとシリアスになる病気…むしろ途中から確信犯ゆえ、次からシリアス入ります。
アニのターンは2話先。

『目の前で、回る』


キース「組を作り終えた者から開始せよ。ならず者役は適宜交代するように」

べるとると「…」キョロキョロ
キース「フーバーは巡回に同行しなさい。くれぐれも勝手な行動を取ってはならんぞ」キッ
べるとると「はい!」ピシッ

トコトコ...

ミーナ「うっわぁかわいい…教官が怖くないように見える…」

アニ「そう思うなら怒られてみるといいよ。きっといつもと変わらないから」スタスタ

ミーナ「もう、冷たいなぁ…」



アニ「…」スタスタスタ

エレン「アニ、組もうぜ! 今日こそお前の技を盗んでやる!」

アニ「……飽きない奴」

べるとると「……」トコトコ

ヒュッ バキッ

べるとると「……」ビクッ

ドカッ ゴッ

べるとると「……」オドオド

キース「我が身を守る程度の技術なくして兵士とは言えん。そして…我が身を守る力は仲間や大切なものを守る力ともなるのだ。心しておけ」

べるとると「……はい」


べるとると「!」

キース「ん? …イェーガーとレオンハートか」



エレン「相変わらず隙がねぇなぁ……」

アニ「……」スッ

エレン「こっちから行かせてもらうぜっ!」ブウンッ

アニ「…」ヒュンッ

エレン「……っらぁ!」

アニ「甘いよ」ポソ

エレン「ぐあ!」ドガッ

アニ「……随分うまくなったじゃないの。受け身だけは」

エレン「へっ。お前のお陰でな!」ニヤッ



キース「……ふむ。良い動きをしているな」

べるとると「…!」ドキドキ



エレン「まだまだぁ!」ダッ

アニ「……フン」ヒュッ

エレン「!?」

アニ「正面から向かってくるだけじゃ

アニ「こうなるよ」ドゴオッ

エレン「っ……おわあっ!」

べるとると「あ……」

エレン(天地が)




ミカサ「!」

ライナー「おいミカサ、どこ見て」

ミカサ「エレンの危機。行かなければ」グッ

ライナー「ん?」

ライナー「のわああぁっ!?」グルンッ

ズドォォォォン

ジャン(一本背負い…いかにミカサ愛の俺でもあれは受けたくねぇ……)

ガシッ

エレン「お」

ミカサ「間に合った」

エレン「な、何してんだぁぁ!?」



マルコ「わぁ……これはいわゆる」

アルミン「お姫様だっこ…ってやつだね」

ジャン「」



ミカサ「エレン、無茶をしては駄目。この間も背中を強打してまともに食事もできなかった」

エレン「だああ!そんなのもう慣れ」


べるとると「ら、」

べるとると「らいなぁぁ!」

エレン「!」

ミカサ「!」

アニ「…………」


べるとると「らいなー、らいなー…!」ペタペタ

ライナー「」


キース「フーバー!」

べるとると「」ビクッ

キース「取り乱しすぎだ」

キース「……アッカーマン。お前はブラウンを医務室へ運んでおくように。これもパートナーの務めだ」

ミカサ「……はい」

ユミル「……教官。流石にアッカーマン訓練兵ひとりであの巨体を運ぶのは無理があるかと思いますので、私も同行します」

キース「いいだろう」

キース「他の者は訓練を再開せよ」


べるとると「……」

ユミル「おい、一回離れろって。運べねぇだろ」

キース「……フーバーはブラウンが目覚めるまで様子を見ておくように」

べるとると「あ…」

ユミル「…許可も出たみてぇだな。ほら、付いて来い」

ユミル「ミカサ、そっち持ってくれよ」

ミカサ「……わかった」

(医務室)

ミカサ「…………」

べるとると「…………」

ユミル「……揃ってお通夜みたいな空気作るんじゃねーよ」

ミカサ「ユミル、……私ひとりでも運べた」

ユミル「んなのわかってるって。私はサボる口実が欲しかっただけだからな」

ミカサ「そう…………」

べるとると「……」グスッ

ユミル「おいチビ。言っとくがこんなのいつものことだぜ? いつもよりマシなくらいだ。そのうち目を覚ますって」

べるとると「…本当?」

ユミル「あぁ」

ミカサ「…………」

ミカサ「……ライナーはとても強い」

べるとると「……うん」

ミカサ「そしてとても頑丈」

ユミル「ブッ」

ミカサ「けれど…いくら強くても、大事な人に何かあると心配。私もそう、だから」

ミカサ「……気絶させてしまって、ごめんなさい」ギュッ

べるとると「……」ウルッ

べるとると「らいなー、大丈夫…だよね?」

ミカサ「ええ。きっと夕方にはピンピンしている……はず」

ユミル「適当だなオイ」

ユミル「お前、もう戻れよ。私が見ててやるからさ」

ミカサ「…でも」

ユミル「エレンとアニにも言うことあるんだろ?」

ミカサ「……。では、行かせてもらう」

ユミル「おぉ」


パタン




べるとると「…………」

ユミル「……」

ユミル「ベルトルさん」

べるとると「……」

ユミル「お前のことだよチビ助!」

べるとると「!?」ビクッ

ユミル「……お前さ、何でそんなにライナーに懐いてんの?」

べるとると「……?」

ユミル「お前がライナーの後をついて回るのは前からだけどよ。「お前」の知ってるライナーは、こいつじゃないんじゃないか?」

べるとると「…………」

べるとると「……わかるよ」

べるとると「らいなーは……らいなーだったから」

ユミル「……そんなもんかね」

べるとると「……うん」

ユミル「…………」

ユミル「お前、こいつが起きるまでちゃんと見てろよ」

べるとると「…ゆみるは?」

ユミル「私は適当に時間潰す。別にゴリラとガキの面倒見るために来たわけじゃないからな」

ユミル「……」

ユミル「ベルトルさん」

べるとると「?」

ユミル「それがお前の望みなら、間違えんなよ」


キィィ パタン





べるとると「…………?」

ユミル(…………)

ユミル(肉体が「戻った」)

ユミル(人間じゃありえねぇ。恐らくあいつは私と同じ巨人だ)

ユミル(なら、どうして記憶がないのか)

ユミル(私でさえ、…60年の空白を挟んでさえ前の記憶がある)

ユミル(そもそもあいつは死んでああなったわけじゃないだろう)

ユミル(……だとしたら)

ユミル「!」

アニ「……」

ユミル「…よぉ。珍しいな、見舞いか?」

アニ「かすり傷の手当てにね」

ユミル「何だ、ついにエレンにやられたのかよ?」

アニ「ミカサだよ」

ユミル(……あいつ、アプローチ間違えすぎだろ)

アニ「……」

ユミル「…………」

ユミル「ライナーはまだ寝てやがるだろうが、チビ助は大人しく付き添ってるぜ。好都合じゃねぇの」

アニ「……何が言いたいの」

ユミル「お前もあいつを撫でくり回したいが、皆の前じゃ恥ずかしくてできないんだろ?」ニヤニヤ

アニ「……」ジロッ

アニ「悪いけどそういう趣味はないから」

ユミル「まぁ、元があの大男じゃあな。ビクビクしてんのは面白ぇけど」

アニ「……あんた、イイ趣味してるよ」

ユミル「そりゃどーも」スタスタ


アニ「………」





ガチャ

次の話へ続く。

ミカサのアプローチ↓
「私も混ぜてほしい」ゴゴゴゴゴ

アニ視点

一部の設定を想定で書いてますが、細部は伏せています。

『あお』


アニ「……」

べるとると「…!」

足音に誘われるようにこっちを見た目は、怯えていた。

本当に、腹が立つ。

私よりでかい図体のくせして、逃げ惑う小動物のような顔をする。

はじめて会った時も、同じ顔をしていた。

今と同じ顔を。

べるとると「……っ」

ライナーの服の裾をこっそり掴むのが見える。

こっちに来てからはマシになったと思っていたけど、今は本当に昔のままだ。

いや、私が知っている昔より酷い。

いつもライナーの陰に隠れてる。問われなきゃ黙ってる。周りに流される。

……全く、微笑ましくなんてない。

嫌でも思い出す。

はじめてこいつを見た時、大丈夫なのかと不安を覚えるのと同時に、

どうして選ばれたのかが、わかったような気がした。



アニ「安心しな。私はあんたと……ライナーの味方だ」

べるとると「……みかた」

アニ「……*****」



その言葉を口にすると、ベルトルトはわずかに目を見開いた。

怯えの代わりに表れた驚きは真っ白なものだった。

何の後ろめたさもない。

感情を隠すあの真っ黒な瞳はどこにもない。

少し嬉しそうに緩んだ表情を見て確信した。



こいつは、何も知らない。

べるとると「あ、あの……」

アニ「何?」

べるとると「…………。名前、は…」

アニ「アニ」

べるとると「……あに」


ほっとしたように笑う、その顔を見て胸がざわついた。


アニ「さっきまであんなに怯えてたのに、よく笑えるもんだね」


睨み付けるように視線を返すと、潤んだ瞳が困惑する。


べるとると「あ、あに……怒ってるの?」

アニ「…………」


ライナーは、死んだように動かない。

104期で一番ガタイのいい奴が、私以外の女に投げ飛ばされて気絶するなんてどうかしてる。

しかも、間の悪いことに起きやしない。

アニ「あんたもライナーも、いい加減にしなよ…………」


溜め息をつくと、小さな頭がうなだれた。


べるとると「……ごめんなさい」


……こいつ、さっきからいちいち神経を逆撫でてくる。


アニ「理由もわからないのに謝るんじゃないよ。あんたのそういう所、好きじゃない」


涙をいっぱいに溜めている顔を見て、冷めたところで悔いる。

ベルトルトにこんな態度を取るのは筋違いだ。

わかっているのに口にした。

私は、自分のそういう心の狭さが嫌いだ。

いつもそれを受け止めてくれていたライナーやベルトルトが遠い、今が、嫌いだ。

――手を伸ばして触れた頭は、いつもより下方で、いつもよりずっと近い。

べるとると「…………あ」

撫でた弾みで零れた涙が、落ちていく。


アニ「……あんたが、私より小さい時なんてなかった」

アニ「何で、あんなにでかくなったんだろうね」



べるとると「…………」

べるとると「……あに」


伸ばし返された手が、顔の前で止まる。


アニ「何」

べるとると「あに、……泣きそうだから」


懸命に伸ばされる腕は、短くて届かない。

届かなくても、小さな手は先に進もうと揺れていた。

アニ「…………」

アニ(何で、簡単にできる時にはそんなことしなかったくせに)



俯くようにして近付いてやると、小さな手が前髪を撫ぜる。

先に自分の涙を拭えばいいのに。

頬を濡らしたまま、どうしてだか一生懸命に頭を撫でてくる。



そんなことで救われるわけがないのに。

涙を流せるわけもないのに。

頭を引くと、少しさまよってから小さな手も引っ込んだ。

泣きそうな顔はしていないが、相変わらず戸惑ったような、落ち着かなさそうな様子でいる。

ふ、と、ベルトルトと目が合った。


べるとると「!」


今まで何度となく向けられた物言いたげな目は、苦手だった。

ライナーみたいに促してやらずに無視した。

後押しがなきゃ言わないようなことは、言わずにいればいい。

今も、そう思う。

ただ、状況が状況だ。

このベルトルトが何を考えているかは正直どうでもいい。

けど、何かに気づいたらしい表情を見たからには、問い詰める必要があった。

アニ「言いたいことがあるなら言いなよ」

べるとると「えっ」

アニ「言えないようなことなの?」

べるとると「え、えっと」



みるみる内に頬が赤くなる。

……どういうこと?

不可解に思って眉をひそめたのを、機嫌を損ねたと取ったらしい。

しばらく慌てたように視線を泳がせてから、ベルトルトは観念したように私を見上げた。



べるとると「あの……」

アニ「早く言いなよ」

べるとると「あ、あにの目は、きれいだなって……」

べるとると「……空みたいな、きれいな、あお、だなって……」

アニ「…………」


は、と口から漏れそうになった呆けた声を飲み込む。

ベルトルトは耳まで赤くなって俯いていた。

……こんなナリでも、恥じらう気持ちはあるみたいだ。



アニ「あんたが照れてどうするのさ」


更に俯かせてやろうと、頭に手のひらを押し付ける。


べるとると「……、……う、うん」


ごめんなさい、という言葉を呑み込んだことがわかった。

さっきの私の言葉は、ちゃんと届いていたのか。

……私は、こんなベルトルトを知らない。

あの煮え切らない表情の影はどこへ行ったのか。

些細なことに怯えるのは元からなんだろうが、素直に、笑い、泣き、頷く。

濁りない目を向けてくる。

懸命に何かに手を伸ばす姿なんて、あいつのどこから連想できただろう。


はじめて会った時には既に思い詰めたような顔をしていた。

目の前で幼馴染が喰われたんだから無理もないとは思ったけど、

それだけじゃない。

故郷に至る道を戻ることはできないと知った私たちは、ただ示された道を歩んだ。

必要なことだけを選び取ってきた。

どうでもいいこと、どうしようもないことには、触れる必要もなかった。

何があろうとも、続いてきた道と歩んでいく道は変わらないから。


私たちは受け入れた。

使命は、幼い甘えを塗り潰した。

ライナーは、俺がお前たちを守る、と空を睨んだ。

ベルトルトは、青白い顔をしながらもやり遂げた。

滑稽な壁内を見ながら、私の目と心は冷めていった。

それは、道の途中で必要だったことだ。

それなのに、どうしてこんなことを思う?





絶望を知らない愚直な目。

無条件に明日を信じる、苦々しい目。





失ったってかまわないじゃないか、そんなもの。






アニ「……、何でこんなことに」

膝に頭を寄せるようにして、ベルトルトが寝息をたてている。

緊張感がないにも程がある。

考え事をしながらベルトルトの髪をかき混ぜていたら、俯いていた頭が不安定に揺れ出して、崩れ落ちて、こうだ。

滑り落ちないよう捕まってきたから引き上げてやったけど、まさか…そのまま安眠されるとは思わなかった。

アニ「…………」





ベルトルト『わっ…!』

アニ『あぶない』

ベルトルト『た、助かったよアニ、ありがとう……』

アニ『気をつけなよ』

ベルトルト『…………』

アニ『…………』

アニ『……何?』

ベルトルト『えっ、いや、その、なんでもないから!!』

アニ(……変なやつ)

アニ「……あんたも、同じように思ってたの?」



私やライナーとは違う黒髪を撫でる。

返事なんてあるわけがない。

寝息だけが小さく聞こえる。







アニ「自分に先を越されるなんて、馬鹿じゃないの」

アニが怖いのは忘れられてたことに傷付いてるから(あと使命関係)だよ、という弁解。

幼なじみ関係も捨てがたいですが、ベリックが欠けてアニが来たということでこうなりました。アニごめん。

『おそろい』


(食堂)

ミーナ「……」ジーッ

アニ「……何?」

ミーナ「アニ、私に何か言うことない?」

アニ「それ、朝から何度目? 別にないよ」

ミーナ「ふーん。そっか……教えてくれないんだ」

アニ「だから、何の話?」モグ

ミーナ「…アニだけ、ずるい」

アニ「は……?」

ミーナ「知ってるんだからね!アニが昨日ベルトルトを膝枕して頭撫でてたのっ!!」

アニ「」

ライナー「ぶっ」

アニ「」ギロッ

ライナー「!」ゴホン

アニ「…ミーナ、その話は」

ミーナ「やだ、やめないよ。だってアニひとりだけ仲良くなっちゃって。…寂しかったんだから」

アニ「……悪かったよ。あれは…寝付いちゃって、不可抗力だったんだ」

ミーナ「頭撫でたのも不可抗力なの?」ジッ

アニ「…………はぁ。どうすりゃいいの?」

ミーナ「私もお姉さんしたい!」

アニ「……そう」

ミーナ「ベルトルトはおとなしいし素直だしかわいいし、思いっきり可愛がってあげたいなぁ」キラキラ

アニ「……。やりすぎると泣くよ。あいつ、人見知りらしいから」

ミーナ「だから、アニから私を紹介してほしいな。ね!」

アニ「……はぁ、しつこいね」ガタッ

ミーナ「! アニ大好き!」ガタタッ

アニ「……ここ、座るよ」

ミーナ「お邪魔します!」

べるとると「!」アワアワ

ライナー「……おう」

エレン「よぉアニ。珍しいな」

アニ「ちょっとね。……何笑いそうになってんの?」

ライナー「いやいや、そんなことは」

アニ「」ゲシッ

アルミン「アニ!?」



ミーナ「こんにちは、ベルトルト」

ベルトルト「こ、こんにちは……」

ミーナ「…」チラッ

アニ「……ミーナだよ」

ミーナ「アニ、そっけなさすぎ!」

ミーナ「ええと、私はアニのお友達なの」

べるとると「あにの……」チラッ

べるとると「……」テレ

ライナー「何だ、アニと話すのが恥ずかしいのか?」ニヤニヤ

アニ「……」スッ

ライナー「無言で拳を構えるな!」



ミカサ「アニだけじゃない。ミーナは私たち皆の友達。もちろんベルトルトとも」

べるとると「……」ジーッ

ミーナ「……」ニコ

べるとると「……」ニコッ

ミーナ「」キュン

ミーナ「…私のこと、お姉ちゃんだと思って頼っていいからね、ベルトルト!」

べるとると「うん…ありがとう」ニコニコ

ミーナ「…そんなに人見知りじゃないね?」コソ

アニ「あんたが脳天気な顔だから、怖くないんじゃないの」

ミーナ「珍しいなぁ、アニが褒めてくれるなんて」ツンツン

アニ(褒めてない)

ミーナ「……ねぇライナー、ベルトルトの服ってどうしてるの?」

ライナー「比較的サイズの小さい奴のを借りたり、丈を適当に調節したりして着せてるな。良く穿いてるズボンはジャンから貰ったやつだぞ」

ミーナ「ちょうどいいサイズは難しいよね。……そう思って、実はあるものを用意してきました!」

エレン「ん? さっきから持ってるその袋か?」

ミーナ「ほら、私たちとお揃い!」ジャーン

ライナー「お、訓練兵団の上着か!」

アルミン「これって…ベルトルトに合わせて調整したの?」

ミーナ「うん。しっかり測ってはないけど、それなりに動きやすく――」

アニ「…………ミーナ?」

ミーナ「」ギクッ

アニ「それ、どうやって用意したの?」

ミーナ「……私の予備のやつを直し」
アニ「へぇぇ…じゃあ、あんたが前にほつれを直してあげる!とか言って持って行った私の上着は、部屋にあるんだね?」

ミーナ「ごめんなさいアニのが元です! 」

アニ「……まぁ、支給品だし私のも何もないけどさ」ハァ

ミーナ「アニのが小柄だから、直すところ少なくて済んだんだもん…」

ミカサ「小柄……クリスタには頼まなかったの?」

ミーナ「……ユミルに断られた」

アルミン「ユミルらしいね……」

アニ「……いいよ、替えも足りてるし。後で元通りにして返しな」

ミーナ「アニぃ…!」ギュウッ

アニ「暑苦しい」

ライナー「で、結局着せてもいいのか?」

ミーナ「もちろん! 私が羽織らせてあげるね!」キラキラ

べるとると「わ、」

ミーナ「ほらベルトルト、ここに腕を通して」

ミカサ「私も手伝う」

アルミン「ちょっとミカサ、両腕一度に通すのは無理だよ!」

キャッキャッ...





ライナー「随分生き生きしてるな」

アニ「……弟か妹が欲しかったみたいなこと言ってたよ」

ライナー「なるほど。弟分をとられて寂しいな? …ん、どちらかというと兄貴分か?」

アニ「……」ギロッ

ライナー「……あぁ、すまん」

アニ「……」

アニ「そういえば、水汲み用の桶が水漏れして困るって聞いたね」

ライナー「ん、そうなのか?」

アニ「ああ。ただでさえ面倒なのに、厄介な話だよ。これなら『書庫の掃除』のがマシだ」

ライナー「!」ピク

ライナー「そうだな、だが、書庫も広いぞ。書架整理も大変だろう」

アニ「『3番書庫』くらいなら楽なんじゃない? まぁ、当番なんてない方がいいんだけどね」

ライナー「そういうわけにもいかんだろう。共同生活だからな」





ミーナ「少し丈が長いかな?もう少し上げようか」

エレン「そうしてると仕立て屋みたいだな」

ミカサ「ミーナは意外に器用」ウンウン

ミーナ「意外は余計だよ!」


アニ「……ミーナ、いい加減に行くよ」

ミーナ「えぇー」ナデナデ

べるとると「……」アセアセ

アニ「付き合ってられないね」スッ

ミーナ「あっ、待ってよアニ!」

エレン「何だ、相変わらずそっけないな」

ミーナ「ふふ。見た目だけはね」

アルミン「そうなの?」

ミーナ「うん。アニって実は……って、本当に置いてかないでよ!」

ミーナ「またね、ベルトルト、みんな!」

べるとると「う、うん」

ライナー「ああ」


ライナー(また後で……な)







(3番書庫)


「…………」

「…………灯りもなしか」

「要らないよ。今日は月が明るい。窓が小さくてよかったくらいだ」

「確かに、な」

「…………」

「…………」

「珍しいな、二人だけになるのは」

「そうだね。あんたたちじゃあるまいし」

「……いやに棘のある言い方だな」

「気のせいだよ」











「ねぇ」

「…………どうするの?」

~現在公開可能な情報~
※べるとると視点

【サシャ】
食事を狙う目をしている時以外は怖くない。パァンのお姉さん、の意味はよくわかっていない。

【クリスタ】
アルミンに似た安心感がある。目が合うとちょっと恥ずかしい。あと後ろの人が怖い。

【ユミル】
怖い。つねられて反射的に涙が出たが、実はあまり痛くなかった。時々優しいような気もする。

本日はここまで。
合言葉とか秘密の暗号があったらいいな。

ベルトルトもアニの兄貴分のような気がしていたが、あの身長差で弟分というのもありだと思った。

『もうひとり』


ライナー「……ん」

いつもの通りに目が覚める。

体を起こそうとして、ベルトルトが俺の隣まで転がってきていることに気付いた。

穏やかな寝顔だ。

頭を撫で、起き上がろうとすると、ベルトルトが小さく声を漏らした。


べるとると「……らいなー…?」

ライナー「起こしちまったか。もう少し寝てろ」

べるとると「どこ行くの……?」

ライナー「当番だからな、薪割りに行く」

べるとると「……僕も行く」

目をこすりながら服の後ろを掴まれる。

この様子だと、断っても付いて来そうだ。

ライナー「来てもいいが、お前も手伝うんだぞ?」

べるとると「うん」


手伝えることをむしろ嬉しそうに思っている顔だ。

今日は元々俺とベルトルトの番だし、一緒に行っても問題はないだろう。


ライナー「なら、さっさと顔洗って着替えるか」




両腕に薪の束をひとつずつ持ち、台木の近くに下ろす。


ライナー「お前は一つずつ運べよ」

薪を抱えてふらつく後ろ姿を横目に、薪割りを開始した。

普段は二人で割っていくが、正直今のベルトルトに鉈を持たせたくない。


べるとると「ここでいい?」

ライナー「ありがとうな。その調子で運んできてくれ」

べるとると「うん!」


どさりと薪を落とし、ベルトルトはまたすぐに次の薪を取りに行った。

……ベルトルトの補充が間に合うように、いつもより心なしかゆっくりと作業を進める。

ふと、視界の端に綺麗な金髪が過ぎった。

クリスタ「おはようライナー」

ライナー「お、おはようクリスタ! どうしたんだ?」

クリスタ「水汲み当番なの」

ライナー「そうか…。もう一人はどうしたんだ?」

ユミル「ここにいるぜ」


背後からの声に、ぞくっとして振り返った。

不機嫌そうに睨…いや、見下されているんだが、何故だ。

ユミルは俺を無視して通り過ぎ、何の迷いもなくクリスタに抱き付いた。


ユミル「おはようクリスタ」

クリスタ「おはよう、じゃないよ! あんなに起こしたのに起きないし、サシャに行かせるなんて言うし…」

ユミル「まぁそう怒んなって。お前が一人で行っちまうから、ちゃんと追い掛けてきただろ?」

ライナー(……顔が近いな。同性なら、こんな近距離でも許されるのか。羨ましい。)

クリスタ「もう。ベルトルトだってちゃんとやってるのに!」

ユミル「あ?」


丁度、隣に薪を下ろしたベルトルトが二人に気付く。

ベルトルトはユミルの目線にびくりとしてから、3分の1俺の影に隠れた。


べるとると「おはよう、くりすた、ゆみる……」

クリスタ「おはよう、ベルトルト。お手伝いしてえらいね」

ユミル「ほぉ…。ライナーひとりでやった方が早いんじゃね?」

クリスタ「ユミル!」

ユミル「冗談だって、手伝えてんのは見りゃわかる」

ライナー「ああ。分担できて助かってる」

クリスタ「もう、ユミルったら…。じゃあライナー、またね」

ライナー「ああ」(女神)

ユミルがまた凄い顔をしていたが、クリスタの可憐な微笑みの方が印象に残っているので問題ない。


ライナー「ん?どうしたベルトルト」

べるとると「……ゆみるって、何でにらむの?」

ライナー「さあなぁ。癖なんじゃないか? あまり気にするな」

べるとると「うん」





...

さっさと薪を指定位置へ運び、ベルトルトの元へ戻る。

まだクリスタは戻ってきていない。水汲みが終わっていないのだろう。


ライナー(……つまり、今行けばクリスタを手伝って良い所を見せられる)

ライナー「よし、行くぞベルトルト!」

べるとると「どこに?」

ライナー「まぁ、付いて来い」





井戸の辺りに向かうと、ちょうど二人が水桶を運び出したところだった。


ライナー「良かったら手伝うぞ」

クリスタ「えっ、でも……」

ユミル「そうかそうか、じゃ、頼むぞ」

ライナー「」

クリスタが戸惑っている間に、ユミルに桶を押し付けられる。

直後、ユミルは涼しい顔で、クリスタの桶を奪い取った。


クリスタ「ちょっとユミル!」

ユミル「何だよクリスタ。ご好意には甘えときな」

クリスタ「駄目だよ、そんな…」

ユミル「いいんだって」


申し訳なさそうにクリスタが俺を見る。


ライナー「たまたま早めに終わったからな。少しくらい変わらんさ」

クリスタ「ごめんなさいライナー。……ありがとう」


クリスタは困ったようにだが笑みを浮かべた。

うむ。こういう表情も良い。

ユミル「あーあ。ベルトルさんが普段のままなら、こっちも楽になるんだがなぁ」

べるとると「!」

クリスタ「ユミル、困らせちゃ駄目よ!」

ユミル「はいはい。お前は本当にチビに甘いな」

べるとると「あの、……てつだうよ?」

ユミル「お前が持つと遅くなるからいい」

クリスタ「ユミル、矛盾してるよ…」

べるとると「……」


ベルトルトがしょんぼりしたのを見て、すかさずクリスタが口を開いた。


クリスタ「……ベルトルトは薪割りを手伝ったんでしょう? えらいね。昔から手伝ってたの?」

べるとると「うん…でも、やっぱり割るのはやらせてもらえなかった」

クリスタ「そうなんだ。でも運ぶのも大事なお仕事だよ」

べるとると「うん……」

べるとると「…………」

クリスタ「……ベルトルト?」

べるとると「運んでたのは僕じゃなくて、らいなーだったよ」

ユミル「じゃあ、お前は何してたんだ?」

べるとると「……まきをほどくのと、むすぶの」

ユミル「それだけかよ」

クリスタ「でも、誰かがやらなきゃ。私はそれもえらいと思うよ」

べるとると「……うん」





――――
――

二人は一旦宿舎へと戻るらしく、手伝い終わった後で別れた。

朝からクリスタの笑顔も見れたし、適度に体を動かせて調子がいいな。


ライナー「ん? どうしたんだ、ベルトルト」


ベルトルトが、妙に静かだ。

覗き込むと、いつになく不安そうな顔をしていた。


ライナー「どうした、棘でも刺さったか?」

べるとると「ううん」

べるとると「…………らいなーが運んだまきを割ってたのは、」

べるとると「べりっくだった」
ライナー「!」

べるとると「らいなー、……べりっくはどこ?」







べるとると「……らいなー?」

ライナー「ベリックは……遠いところにいるんだ」

べるとると「そうなの?」

ライナー「ああ。お前を見たら、驚くだろうな」

べるとると「……べりっくのことも、見たらわかるかな?」

ライナー「……わかるんじゃないか?」

べるとると「そうだね」

ベルトルトはそれ以上のことを聞かなかった。

村を、親元を離れて訓練所にいるという説明をしたからだろう。

ライナー「……朝飯に行くか。食いっぱぐれるぞ」

べるとると「うん」




これ以上のことを聞かれて、答えられる気はしなかった。

~現在公開可能な情報~
※べるとると視点

【アニ】
目つきや言葉が怖い。でも悪い人ではないような気がする。仲良くしたいが睨まれるとやっぱり怖い。

【ミーナ】
ご機嫌なお姉さん。いつもにこにこしていて優しい。アニは本当は優しいとこっそり教えてくれた。

【キース教官】
顔が怖くてまともに目も合わせられなかったが、話してみるとあまり怖くなかった。見守られている気がする。

寝落ちした…だと…

ライナーは既に半分くらい壊れてます。
続きはまた夜に。

……こんな、やるせない気持ちになるのはいつぶりだろう。

いつも二人でいる、というアニの皮肉は間違っていない。

同じ目的を持ってここまで来て、ここに来てからも随分支えられてきた。


気付かないふりをしたかった。

正視できなかった。

だから、アニはわざわざ、あんな話をしたんじゃないか。


『あいつは何も知らされてない』

『あんたならわかるだろ、……あいつが何年前の姿なのか』

『そんなことが起こり得るのか、私にはわからないけど』



『あいつは、戦士にはなってない』






わかっていないはずがなかった。

それでも、心から笑うベルトルトを見ていると、救われるような気がしたんだ。

もう二度と戻らない日々を、取り戻せたような気がして。

つづきに個人的な考察による描写や、49話のネタバレ(台詞一言)がありますのでご注意を。

数日かけて終わりまで突っ走ります。

『違和感と証』


(食堂)


エレン「おっ、ここだぜライナー」

ライナー「何だ、今日は大所帯だな」


ベルトルトがアルミンに懐いていることもあって、食事はエレン達と一緒になることが増えていた。

それだけでも前より随分賑やかだが、今日は同じテーブルにコニーとサシャもいる。


サシャ「えへへ、よろしくお願いしますライナー」

ライナー「パンはやらんぞ?」

サシャ「まだ何も言ってないですよ!」

コニー「何だ、今日は大人しく食う気なんだな」

サシャ「頂けるものなら頂きますけどね」

笑いながら、席に着く。

一足先に席に着いていたベルトルトも、皆と一緒になって笑みを浮かべていた。


サシャ「それにしても、やっぱり違和感がありますねぇ」

アルミン「違和感?」

サシャ「ベルトルトですよ。いつもと違うというか」


サシャの言葉を聞いて、一瞬間ができる。

ベルトルトをちらりと見て、エレンが首を傾げた。


エレン「何言ってんだ?大分いつもと違うだろ」

ミカサ「……言いたいことはなんとなくわかる」

エレン「ん?」

ライナー「どういうことだ」

ミカサ「確かにベルトルトだと感じる瞬間がある一方で、私達の知らないベルトルトを見せられている……と、いうような」

サシャ「まさにそれです!」

ライナー「……あぁ」


それは、そうだろう。

俺はどちらのベルトルトも知っている。だが、こいつらはそうではない。

そもそも、こうして皆に囲まれていることさえ、以前では有り得なかったことだ。



アルミン「なるほどね」

アルミンは、全く驚いた様子を見せなかった。

周りの2人が理解を示したせいか、エレンが不満げにアルミンを覗き込む。

エレン「なぁ、何がなるほどなんだ?」

アルミン「僕達の知っているベルトルトと、今のベルトルトは違うんだよ」

コニー「? …さっきは、確かにベルトルトだって言ってたよな。やっぱり違うのか」

アルミン「同じだけど違う、っていうのかな。わかりやすく言うと…そうだな。5年前の自分と今の自分は全く同じじゃない、っていうのはわかる?」

コニー「…おお。身長も違うし、中身もガキだろうな」

アルミン「そうだね。5年前のコニーは、5年分の経験があって、今のコニーになるんだ。ベルトルトも同じだよ。今のベルトルトが、何年間も色々考えて、感じて、身に付けて、僕達の知るベルトルトになる」

サシャ「おおっ、よくわからないけどアルミンすごいです!」
コニー「俺はわかった気がするぞ! つまり、ベルトルトはまだベルトルトじゃないんだな!」



ライナー「……いや、ベルトルトだぞ?」

エレン「だよな」

アルミン「…ごめんね、よくわからない話になっちゃった」


アルミンは小さく笑って話を収めたが、どこかぎこちない。

理由は、ミカサが途中から神妙な顔になったからだろう。

4年前に壁が破られ、エレンは家族を失った。

エレンの巨人に対する敵意は群を抜いていたが、それは異質なほどに強い目的意識に突き動かされているからだ。

あの日があって、今がある。

当たり前の事実だが、改めて認識したくないことであるのは間違いない。

大切なものを失った時のことなど、思い出したいわけがない。


幸いにも、サシャやコニーは昔話に花を咲かせはじめた。

何事もなかったかのように食事を再開しようとした、が。


べるとると「……ねぇ、僕は、どんな僕だったの?」



止める間もなく、会話が滑り出した。


サシャ「ベルトルトはですねぇ、時々パンをくれる優しい人でしたよ」

コニー「それ、たかってるの間違いだろ。 ベルトルトはなぁ、すげぇデカかったぜ!多分104期で一番だ」

エレン「でも、静かで目立たなかったよな」

アルミン「確かに、部屋が違ったら話す機会も少なかったかもね」

ミカサ「技術は目を見張るものがある。……苦手科目がない」

アルミン「言われてみればそうだね。何でもそつなくこなしちゃうから、なかなか気づかなかったけど」

エレン「確かに、よく上位に名前見るよなぁ。それで目立たないって逆にすげぇよ」


サシャ「ベルトルトは控えめなんですね。いつもライナーの後ろにいましたし」

コニー「そうだ、ライナーはどうなんだよ。いつも一緒にいただろ?」

ライナー「ベルトルトは……」


ライナー「…………」

べるとると「……」


ライナー「消極的に見えるが、芯の強い奴で思いやりもある。……俺の自慢の親友だ」


コニー「……かっけぇ」

エレン「流石ライナー! 見えないとこまでわかってるんだな」

ミカサ「とても良いと思う」



隣のベルトルトを見ると、恥ずかしそうに、嬉しそうに笑っていた。

誤魔化すように、頭を撫でる。

少し乱暴になって、アルミンが笑いながら止めようとするほどに。


照れ隠しじゃない。

違うんだ。


……違うんだ。




今俺達がどんな風に振る舞おうと、どんな風に受け止められようと、変わらない事実がある。

あの日があってここにいるのは、俺達も同じなんだ。

今日はここまで。

鬱ルートは自分なりに回避します。

ありがとう

ここから先が書きたかったのでシリアスに繋げました。
では、投下します。

『壁』


ライナー「ベルトルトを頼んだぞ」

マルコ「うん、任せて」

ジャン「はぁ……よりによって書庫担当かよ。ライナーと代わってやりたいぜ」

ライナー「そういうわけにもいかんだろう。……じゃあな、ベルトルト」

べるとると「うん」





マルコ「さて、始めようか」

べるとると「何をするの?」


マルコ「書架整理と、リストにある本の抜き出しだよ。何人かで手分けしてやるんだ」

ジャン「休息がてらとか言うが、訓練兵に雑用押し付けてるだけだよな」

マルコ「訓練より身体的負担が減るのは確かなんじゃないかな」

ジャン「同じ雑用なら武器の手入れのが性に合うぜ」

マルコ「ジャンは器用だからね……よし、この棚から見ていこうか」

ジャン「ああ。おい、余所見して転ぶんじゃねえぞ」

べるとると「う、うん」

マルコ(ジャンって何だかんだ言っても面倒見がいいよなぁ)

―――



ジャン「ああクソ! 何だってこうわかりにくいんだよ。つか読んだら元の棚に戻せ!」

マルコ「配架位置はあくまで目安だからね…。うーん、せめて表紙の色や厚みがわかってたら、手掛かりになるのに」

べるとると「……」キョロキョロ

マルコ「ごめんよベルトルト。暇だろう?」

べるとると「ううん。本がいっぱいあっておもしろいよ」

ジャン「呑気だなお前。アルミンみてぇ」

ジャン「…なぁマルコ、今度から教官に相談して、アルミンも書庫の担当になるようにしてもらわねぇか?」

マルコ「それはアルミンも喜びそうだね。サシャは倉庫整理から外されてるみたいだし、申告したらそうしてくれるかもよ」

ジャン「……倉庫は食糧庫に近いからか。流石芋女だな」


マルコ「はは。……あ」

ジャン「ん? あったか?」

マルコ「いいや、これ」

ジャン「……あぁ。伝承の書か。懐かしいな」

マルコ「最初の講義で触れて以来だね。まぁ、内容は皆知ってることだけど」

べるとると「でんしょうのしょ?」

マルコ「その名前じゃわからないよね。僕もそんな名前がついてると知ったのは、ここに来てからだよ」




マルコ「昔々、人類は海の向こうに住んでいました」

マルコ「しかし、巨人の出現により人類は追い詰められ、船に乗って大陸から離れました」

マルコ「たくさんの人が命を落としましたが、人類はついに新大陸に辿り着きました」

マルコ「新大陸には巨人を遮る壁が用意され、人類は壁の中で平和な世界を作ることを約束したのです」



.



べるとると「…………」

べるとると「…………?」

マルコ「あれ、難しすぎたかな?」

ジャン「んなの噛み砕いた内に入らねぇよ」

ジャン「突然巨人が現れて、人類は壁の中に逃げた。壁は元々あったもんで、壁のおかげで人類は巨人に怯えず生きられるようになった。そういう話だ」

マルコ「それはいくらなんでも端折りすぎじゃあ……」

ジャン「ガキの頃の認識なんてそんなもんだろ。第一、俺はウミなんてもんは信じてねぇ。ありえねぇだろ、塩水が山ほどあるなんて」


マルコ「そういえば、前にそれでアルミンと口論になってたねぇ。言い負かされてたけど」

ジャン「ぐ…」

マルコ「夢があっていいんじゃないかな。壁の向こうのどこかに塩の山があって、それが雨に溶かされて流れ出して……僕はアルミンの説は有り得ると思ったけど」

ジャン「あいつ、何で外の話になるとあんな必死になるんだ? 死に急ぎ野郎も一緒になってうるせぇし」

マルコ「それが彼らの夢だからね。壁の向こうに冒険に行くなんて、壮大じゃないか」

ジャン「よくそんなこと言ってて捕まらなかったよな、あいつら」


べるとると「……かべの、むこう」

マルコ「ああ、アルミンの受け売りだけどね。ほら…っていっても、挿し絵は壁の周りの絵ばかりだなぁ」ペラ

マルコ「壁の先には僕達の知らないものがたくさんある。今は壁の外に行くことはできないけれど、壁の中も外も平和にするために、こうして訓練を受けているんだよ」

べるとると「……」ペラ

ジャン「っあー、お前も大概だよなぁ…」

マルコ「そうかな? 少なくとも、壁の中の平和を守るためにここにいると思ってるけど」

ジャン「…まぁな。俺だって、……トロストがシガンシナみてぇになるのは御免だ」

マルコ「……うん」

べるとると「……」ペラ


ジャン「……しっかし、相変わらず気味の悪い絵だよな」

マルコ「まあね……この絵も言い伝えも、混乱の中で辛うじて残ってきたものだ。その時の念みたいなものが込められてるのかも」

べるとると「……」ペラ

ジャン「だとしたら、随分皮肉めいた証言も混じってることになるな。ま、俺は生き残りの子孫であることに感謝するが」

マルコ「犠牲を認めるのは皮肉じゃないよ。それがどんな形でも。……本当はそうじゃなかったと思いたいけどね」

ジャン「本当だの何だのって話はやめとけよ。考えるだけ無駄だぜ」

べるとると「……」ペラ


マルコ「そうだね。……はは、アルミンに影響されちゃった、かな」

ジャン「……あいつもある意味死に急ぎ野郎だよな。話聞いてると時々ヒヤッとするぜ。憲兵になって、あいつらをひっ捕らえるようなことにならなきゃいいが」

マルコ「嫌な冗談だな……」


べるとると「…………」


べるとると「……かべのむこうには、いるんだ」

ジャン「ん?」

べるとると「たくさんいるんだ。たおさなきゃ。みんなたおさなきゃ」

マルコ「ベルトルト、落ち着いて」




べるとると「……みんな死んじゃう」



ジャン「ったく!」グシャグシャ

べるとると「……っ」ポロポロ

ジャン「ガキにはお伽話で十分だ」

マルコ「大丈夫? ベルトルト…」

べるとると「……」コクリ

ジャン「マルコ、続きやるぜ。お前はそこで大人しくしてろ」

マルコ「うん。……ごめんよベルトルト、終わるまでここで待ってて」

べるとると「……うん」





ジャン「こいつは飛ばして次を探すか」

マルコ「そうだね。元の棚にないものはみんなにも呼びかけて後で探そう……」






べるとると「…………」


べるとると「…………かべのむこうに、いるんだ」










べるとると「あくまが」


今日はここまで。
戦士じゃないけど一般常識。まるで人類が語る巨人のように。

自己解釈入っててすみません。

つづき。

やや生々しいシーン(動物の解体)注意。

『この世界は』


森での兵站訓練の最中だった。

進行方向がやけに騒がしいことに気付いた教官が馬を走らせる。

規定通りのルートを辿る途中で、小さな人だかりにぶつかった。

何か事故でもあったかのと思ったが、人に被害の及ぶものではなかった。





ライナー「……手際が良いな」

コニー「そうか? 普通こんなもんだろ」

ライナー「…狩猟民ならそうなのかもしれんな」


目の前では、サシャが黙々と鹿を解体していた。


先発隊が偶然鉢合わせた直後、鹿はすぐ逃げ出したそうだが、逃げた先には随行する教官を乗せた馬が居た。

突然の衝突に馬はどうにか持ちこたえたようだが、体側を強く打って鹿が一時倒れた。

その瞬間、サシャが大石で鹿を殴り付けたのだそうだ。

唖然とする皆の前でサシャはナイフを取り出し、迷いなく気絶した鹿の喉を切り裂いた。

何が起こったのかわからず教官がサシャに行動の理由を問うと、新鮮な獲物が目の前にあるのだから、早く処理をしなければ、と言い放ったそうだ。

芋の逸話を思い出すがかなり話の程度が違う。

狩猟民族にとっては、ある意味当然の感覚なのだろうか。

結局後から教官を言いくるめ、血抜きをした鹿を運ぶのを手伝った。

……そして今に至る。


訓練所営庭の端にできた小さな人の壁が、サシャを見守る。

はじめは興味本位で集まってきたのだろうが、生々しい工程とサシャの手際の良さを前にいつのまにか皆静かになっていた。


サシャ「コニー、皮の処理を任せていいですか?」

コニー「おう」


鹿の体を覆っていたはずのものが、布のようになってコニーに手渡される。

見るだけで厚みと重みが伝わってくるようなそれを木の枝にひっかけ、コニーもまた手際よく、残った肉や脂肪を剥いでいく。

サシャは肉の塊となった鹿を、あっという間に部位ごとに切り分けてしまった。


サシャ「こんなもんですかね…」

エレン「すげぇな、お前……」

サシャ「そうですか? あ、アルミンありがとうございます、教官の説得を手伝って貰って」

アルミン「あ、うん……。肉が食卓に上れば、みんなの士気も上がると思ったからね…」


アルミンは少し青い顔をしている。

サシャはニコニコと笑っているが、手には血がついたままだ。

微かに温もりの残る肢体の感触が思い出される。

自分の手が血に塗れているような錯覚に襲われた。


サシャ「これは今から厨房に運びましょう。こっちは薫製用です」

エレン「手伝うぜ」



ミカサ「アルミン……顔色が悪い」

アルミン「あ、うん。ごめん……」

ミカサ「……見慣れていないのなら仕方ない。私も驚いた」

ミカサ「ただ、私達はいつもこうして命の上に生きている」

アルミン「うん……」

ミカサ「……残酷だ、と思う」





無性に手を清めたくなって訓練所の方に向き直る。

見物を終え、疎らに散り始めた訓練兵の間に、――今ここで見たくはなかった姿があった。


ライナー「ベル…トルト」


アルミンより遥かに青い顔をしたベルトルトが、茫然と立ち尽くしている。

隣に立っているアニがさり気なく肩を抱いてやっていた。

触れてもいないのに、その肩が小さく震えているのがわかる。

俺の背中の先にあるものを見据えたまま、今にも泣きそうになっているベルトルトに手を伸ばす。

だが、途中で、それ以上伸ばせなくなった。

この手が、血の臭いを纏っている気がして。


べるとると「……っ」


堪えきれない様子でベルトルトが逃げ出してしまう。

その姿がすっかり見えなくなった所で、その場に残っていたアニが眉をひそめた。


アニ「何がしたいの、あんた」

ライナー「いや……」

ライナー「……お前こそ、何でベルトルトを」

アニ「私が連れてきたわけじゃない。あいつがあんたを探してここまで来たんだ」

アニ「一応止めた。それでも動かなかったのはあいつの方だよ」

アニ「……臆病なくせに、何で受け止めようとするんだろうね」

ライナー「…………っ」


呆れるような言葉だったが、アニはいつになく哀しげな表情をしていた。


サシャは何も悪くない。

血の抜け落ちていく様を見ながら黙祷しているのが見えた。

死を受け入れてのあの振る舞いだ。

血を厭わないのも、命の尊さを我が身で理解しているからだ。


死を、自らが生み出した死を、両手から零れて溢れかえるほどの死を受け入れるなんて俺には




アニ「酷い顔」

ライナー「!」


アニ「……あんた、疲れてんだよ。夕飯まで少し休めば」

ライナー「……」

アニ「ついでにあいつを探してきな。そういうのはあんたの役目でしょ」

ライナー「……ああ」


歩き出す前に背後を振り返る。後始末をするサシャの傍ら、土の上に置かれた鹿の首が、物も言わずにこちらを見ていた。

真っ黒な、光のない目をして。






アニ「…………」

アニ「本当に、甘い奴ばっかりだ。あいつも、あんたも……私も」





部屋には誰もいなかったが、いつかの朝のようにベッドの上段に布団が丸まっていた。


ライナー「ベルトルト」


少し待っていると、おずおずと解かれた布団からベルトルトが顔を覗かせた。


べるとると「……らいなー」

ライナー「無理はしなくていい。急にあんなものを見たら誰だって驚く」

べるとると「…………」


べるとると「……うさぎ」

ライナー「…ん?」

べるとると「……わなにかかってた、うさぎ。つかまえて持っていったよね」

ライナー「ああ……」



昔の話……いや、ベルトルトにとっては少し前の話なのだろう。

畑の罠を調べにいって、兎を見つけた。

まだ生きていたが、その後……。


べるとると「シチューになっちゃった」

ライナー「……」

べるとると「てぶくろも作ってもらった」

べるとると「…………かわいそうだった」

ライナー「そう……だな」

べるとると「でも……おいしかったね」ポロ

ライナー「…ああ」



ベルトルトはごしごしと涙を拭い、布団から出てきた。

夕食の支度ができた、と声を掛けられたらのはその直後だった。





食堂はいつもより賑わっていた。

周囲から聞こえる話によると、皮や角と肉の一部を教官側に渡したが、肉の大部分は訓練兵の口に入るように取り計らわれたようだ。サシャ個人の分まで確保されている。


2人分のトレイを机の上に置く。

スープには見てわかるほどの大きさの肉が入っていた。



べるとると「…………」

ライナー「……頂きます」

べるとると「……いただきます」

べるとると「……」

べるとると「ごめんなさい、……ありがとう。ありがとう……」


小さく呟く声が、耳から離れなかった。







『……かなりショックを受けていたな』

『そうね。……あの子は、優しいから』

『そうだ。……優しすぎる』

『……黙っておけばよかったかしら』

『その必要はないさ。いずれ向き合うことだ』

『…………』

『あの子に、素質があると聞いたの。とても…信じられないわ』

『臆病さえどうにかなれば、かなり有望だそうだ。ライナーにかなり助けられていると聞いている』

『……あの子に、できるのかしら』

『花や虫にまで心を痛めるあの子が、もし……』


『考えすぎだ。あんなものにまで情が沸くはずがない』

『…………』

『ベルトルトは、優しい。……何があっても仲間を守る、戦士になれるだろう』






ベルトルトの家を訪ねると、おじさんとおばさんが話していた。

お裾分けして貰った兎肉のお礼を言いに行こうとした時だった。

ベルトルトはいなかった。

……今思えば、部屋にこもって泣いていたのだろう。


慌てて声を掛け、お礼だけ伝えてすぐ帰ろうとすると、少し悲しそうな顔をしたおばさんに言われた。


『ベルトルトを、よろしくね』






窓の下でぼんやりとしているベルトルトの背中を見つめる。

皆風呂に行ってしまったが、二人で残った。

ベルトルトを少し落ち着かせたい、と言ったが、一番の理由じゃない。

様々な感情が渦を巻いて落ち着けないのは、俺の方だ。


べるとると「……らいなー?」

ライナー「ん……何だ?」

べるとると「……もう、泣かないよ」


少し無理をしながらも、ベルトルトは俺を安心させるように笑った。


沢山の笑顔を見た。

嬉しそうに微笑む顔。

泣きながら笑う顔。

心の底から溢れる笑顔。

いつからか、ベルトルトはそんな顔を見せなくなった。

それがいつからなのか、はっきりと覚えている。


ウォール・マリア陥落の日。

人波に紛れてローゼ内に入り込み、やっと歩みを止めて振り返った時。

ベルトルトは憔悴しきっていた。

巨人化のせいだけではないと、嫌でもわかった。


俺達は戦士だ。

使命を果たすため、故郷を守るためにここまでやってきた。

俺はいつだって、そう教え諭さなくてはならない側だったはずだ。

そのはずなのに。

俺は戦士ではないベルトルトを見て、安堵してしまった。

ベルトルトの笑顔を見ていると、昔に戻れたような気がして。


べるとると「! ……ライナー?」

ライナー「すまん。すまんベルトルト」

ライナー「俺は、自分が何のためにここにいるのか、忘れかけてしまうことがある。何をしたか、何をしようとしているかを、忘れたいと、願ってしまう…! そんなことを望む資格もないのに」

ライナー「もしお前がお前のまま、俺が、アニが、あの頃のまま……、今を迎えられていたらと、思うと…………」


抱きすくめたベルトルトの肩が、涙で濡れてしまう。

背中に回された小さな手が、しがみつくように服を掴んだ。


べるとると「らいなー……らいなー、泣かないで……っ」


いつの間にか、ベルトルトも泣いていた。

泣きながら、俺を宥めていた。





ライナー「何でなんだよ」

ライナー「どうしたらいいんだよ!!」

つづく。

次回(恐らく最後)、ベルトルトが戻ってきます。

一気に投下は難しそうなので、少し投下しておきます。



だれかが泣いてる。

おし殺したような泣き声が聞こえてくる。



「…………」

「ねぇ、」

「……どうして泣いてるの?」


みんなにされたように、手をのばす。


(届かない……)


のばした手の先でうつむく頭。

どうして、そんな遠くにいるの?

だれの手もとらずに、背中を向けているの?






「…………」

「ねぇ、」

「……どうしてそんなことを聞くの?」




届かなくて、いいんだ。


触れられなくていいんだ。


触れてしまったら、その手が温かいことがわかってしまうから。



「……さみしいよ」

「……さみしくないよ」

「……笑っていたいよ」

「……笑わなくていいよ」

「どうして? みんなやさしいのに」

「……やさしいのは、何も知らないからだよ」

「全てを知ってしまったら、みんなは僕を殺しに来る」

「うそだよ」

「うそじゃないよ」



「……ねぇ、なら」

「どうしてみんなはやさしいの?」

「どうして……僕の知ってるあくまと、違うの?」

***


ベルトルト「え…………」


ライナーがうれしそうに笑っていた。

僕はすこし信じられない気持ちで、乾いた喉をごまかすようにつばを飲み込んだ。


ライナー「何だよ、ぼけっとして」

ベルトルト「だ、だって……」

ライナー「選ばれたんだぜ!これでみんなを守れるんだ!」


そのためにがんばってきた。

怖いこともたくさんあったけど、ライナーには何度も助けられた。

名前も知らない大人のひとたちに期待されているのもわかった。

だから……本当はよろこぶべきことなのに。


ベリック「うるせえなぁ」


ライナーを止めてくれたのはベリックだった。

少し年上のベリックと仲良くなったのは、いっしょに訓練をはじめてからだ。

何でもできてみんなから信頼されているベリックが選ばれるのはわかっていた。


ライナー「やったぜベリック! これで壁のむこうの奴らをやっつけられる」

ベリック「お前なぁ。俺たちにはまだ色々と準備しなきゃいけないことがあるんだ。浮かれるくらいなら鍛えにでも行っとけ」

ライナー「わかった!」


ライナーは張り切って行ってしまった。

いつも年上に混じって取っ組み合いをしているライナーは力も強いし言うこともはっきりしている。

でも……


ベリック「何で選ばれたんだろう、って顔してるな」

ベルトルト「あ……」


言い当てられて、思わずベリックを見てしまう。

僕がみんなに勝ってることなんて…同じ年頃の中では少し背が高いことくらいだ。

それでもベリックと並ぶと、ベリックを少し見上げるくらいしかない。

ベリックはいつものように笑って、頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。


ベリック「心配するな。お前はしっかりやれるよ」

ベルトルト「そうかな…」

ベリック「……確かにライナーは先陣きって行くし、頼もしいけどな。俺はお前が慎重に、確実に後から着いてくるのも、同じように頼もしいと思ってる。みんなが突っ込んだって仕方ないんだ」

ベルトルト「でも…」

ベリック「こら」


こつんと軽く頭を小突かれて、思わず目をつむる。


ベリック「自分から、でもとかだってとか言うな。小さい男になっちまうぞ」

ベルトルト「……うん」


ベリック「……お前はきっと、作戦の要になると思う。ちゃんと支えてやるから、……戦士として、使命を果たそうぜ」


いつもよりずっと真剣で、強い眼差しとぶつかる。

ベリックと、ライナーがいる。こんなに心強いことはない。


ベルトルト「…うん!」





***






ベルトルト「あ……あぁ……」

ばきばきと嫌な音がしていた。

ベリックに突き飛ばされたライナーが、地面に座り込むようにして硬直していた。

反射的に飛び退いて距離を置き、振り返った先に、僕達に向けて手を伸ばしているベリックがいた。

痛みと苦しみの叫びに合わせてもがく腕は、助けを求めているようだったけど、足が竦んで一歩も動けなかった。


――大きく腕を振り回して、ベリックが叫んだ。


ベリック「行けぇ!さっさと…行くんだ!!!」


涙が出てきた。

ベリックを助けられないとわかっていたから。

助けられないとわかっていて助けにいけるほどの勇気もなかったから。


ベルトルト「……っ」


飛びつくようにライナーの腕を掴んで引きずった。

どうにか立ち上がったライナーと、転がるように逃げた。


ただ、ただ、……逃げた。

***



アニ「……よろしく」


僕は背丈だけならライナーよりも大きくなっていた。

だから余計に、その子を見て心細くなってしまった。

小柄で色が白くて、…きれいな碧い目をした女の子。

ベリックの代わりだなんて思ってはいなかったけど、一番優秀で頼りになるベリックが、いなくなってしまった、その穴は大きすぎた。

無口な上顔色の悪い僕ら二人に、彼女はあまり構ってこなかった。

それが気遣いだったと知ったのは、もう少し後の話だ。

***



アニ「……あんた、もう少し堂々としてた方がいいよ」

ベルトルト「え、……っと」

アニ「今のあんた、壁を破る前に自分で転んでひっくり返りそう」

ベルトルト「う」

ライナー「おい、滅多なこと言うなよ。ベルトルトがそんな間抜けなことになるわけないだろ」


慣れてくると、アニはそれなりに口数が多かった。

ライナーは、ベリックがいなくなってから以前よりも進んで前に出るようになった。

僕のこともアニのこともあれこれ心配して、特にアニのことは妹みたいに気遣っていた。


僕もぼんやりとそう思い始めていた頃に、同じ年だと知って何も言えなくなった。

アニは強かったし頭も良かったけど、小さかったから。

同い年なの?と恐る恐る確認すると、それ以外何も言っていなはずなのに蹴られた。

ライナーがアニを叱って、アニは拗ねて、僕は二人を宥めた。

壁に辿り着くまでの間に、僕たちは仲間として、他に頼る者のいない選ばれた3人として、随分と親しくなった。

……時々、ベリックや、故郷のことを思い出して泣いた。

2人がそばにいたから乗り越えることができたんだと思う。





そんな夜を繰り返して、その日がやってきた。

保守ありがとう
細々と続けさせてもらっているので、待っていてくれてうれしい。

一気に最後までと思ったが、なかなか書き進められない状態なのできりのいいところまで投下します。


仰ぎ見えた空は、不思議と、いつもと同じように見えた。

覗き込んだ壁の向こうには、みっしりと建物が詰まっている。

見たこともない大きな建物。高い建物。

僕達を追いやって築かれた「平和」。

……熱さで、考えるのが嫌になってくる。

足を後ろに引き上げ、そのまま、狙い通りの位置を蹴破った。

呆気なく飛び散った壁が、内側に降り注ぐ。

門の近くにあった人だかりに、その一部がめり込んだ。



小さな赤い染みができるのが見えた。






朦朧とする意識の中、アニに連れられて壁内に侵入する。

しばらくして、小さな地響きが伝わってきた。

……ライナーが成功したんだ。

波のように、嘆きと怒号が押し寄せて混ざる。

手はず通り、巨人化を解いたアニと一緒に合流地点に向かう途中で、振り向いた。

入ってきた巨人の頭が、建物の間から突き出している。

遠くで煙が上がっているのは、僕の吹き飛ばした破片で建物が壊れたからだろう。

泣き喚く子供を抱えながら走る人とすれ違った。

誰も彼も、酷く辛そうな顔をしている。

当たり前だ。逃げられなければみんな食べられてしまう。


この壁内は、もう、終わりだ。


ベルトルト「…………」

アニ「ベルトルト、大丈夫?」

もう意識ははっきりしているけど、身体が重い。

掴まれた手を強く握り返すと、アニは黙って僕を引っぱってくれた。





***


ライナーとは、避難の途中で合流した。

僕達はみんなぼろぼろで、疲れた顔をフードで隠していたけど、3人で再会できた時、ライナーはこの上なく上機嫌だった。


ライナー「よくやったな、ベルトルト、アニ」

アニ「あんたもね」

ライナーの少し大きな手が頭を撫でる。

いつもなら嬉しいはずなのに、ライナーと同じようには笑えなかった。

ライナー「どうしたんだ、ベルトルト」

アニ「さっきから顔色が悪いみたいなんだ」

ライナー「少し休んでくか?」

ベルトルト「ううん、……大丈夫だよ」

アニ「…そういう風には見えないんだけど」

ベルトルト「ちょっと疲れただけだから……。休めばよくなるよ」


二人の腕を掴むと、少し落ち着けた。

その日の夜は、潰れて地面に弾けた赤い跡が目に焼き付いて、よく眠れなかった。






***

壁の崩壊に伴う避難で、街や家という単位はめちゃくちゃになった。

お陰で僕たちも親とはぐれたといっても怪しまれずに済んだ。

3人とも出身が同じだと言ったおかげで、避難先の開拓地も同じところになった。

壁内が怖くて仕方なかった僕にとって、ライナーとアニと一緒なのは本当に心強い。



中途半端に森を切り開いた開拓地は、初めて覗き見た壁の中とは随分違っていた。

辛い肉体労働に、決して満足とは言えない食事。

故郷にいた時と同じように土を耕しているのに、そこに笑顔はない。

僕とアニは、大抵ライナーの後ろで大人しくしていたから、周りと関わることはライナーの方が多かった。

それでも、慣れてくると少しは話をしなければならなくなってくる。

僕たちは3人で身を寄せ合って暮らしていたから、…心配されるようなこともあった。

***



ベルトルト「…ライナー」

ライナー「ん?」

ベルトルト「これ…」

ライナー「服じゃないか。どうしたんだ?」

ベルトルト「もらったんだ…お古だけど、って」

ライナー「……まあ、ちょうどよかったな。お前、また背が伸びただろ」

ベルトルト「うん。……ライナーとアニの分もあるよ」

ライナー「……」


ライナーは、壁内の人類に強い敵対心を持っていた。

もちろん、ライナーだけじゃない。

僕だって、怖さが勝っているだけで、壁内の人類のことは嫌いだ。

故郷を出たときから目標も気持ちも変わらない。

けど……ここにいるとよくわからなくなる。


ベルトルト「……ねぇ、ライナー」

ライナー「何だよ」

ベルトルト「……こっちの人たちって、何か……思ってたのとちがうときが、あるね」

ライナー「……俺達は親と生き別れたことになってる。気を遣うくらいの情はあるってことだろ。今は、こっちの奴らのふりをしてるんだしな」

ベルトルト「そう…だね」



アニ「ちょっと、何怠けてるの」

ライナー「何でもない。…アニ、受け取れ」

アニ「何これ。……服?」

ベルトルト「うん。…あ、アニの服だけなんか違うね」

アニ「……こんなの着たら動きにくいよ」

ライナー「じゃあ、寝間着にでもするんだな」


アニが、困ったような顔をしながらも、ほんの少し嬉しそうにしていたのを覚えている。

普段男女の区別なんてないような格好で泥に汚れているのに、アニの手にあったそれは、ちゃんとした女の子用のワンピースだったから。

***



配給を受け取るのにも、畑を耕すのにも、彼らと関わらないことは難しい。

あまり話さないようにと思うのに、話しかけられたら話さなくてはならない。

そのたびに、同じ疑問が頭を過ぎった。

……その内に、怖くなって彼らを避けるようになった。

周りとの接触はほとんどライナーが引き受けてくれて、いつの間にかライナーは真面目でしっかりしていると評判になっていた。


ライナーは、そう言われている時は笑っていたけど、僕たちのところに戻ってくるとそのことには一切触れなかった。



開拓地に来てしばらくとたたないうちに、ライナーは12歳になっていた。

彼らはライナーに、どうして兵士に志願しないのかとしきりに尋ねた。

その度にライナーは、僕とアニを残しては行けないと答えた。

すっかり僕たちの兄貴分として定着していたライナーの言葉には説得力があった。

訓練兵団に入らない者を責めるような風潮があるにも関わらず、彼らはライナーの言葉に感じ入って誤魔化されたようだ。


ライナーが言った理由は、彼らが思うのとは別の意味で正しい。

僕たちは同期として行動を共にする必要があった。

そしてもうひとつ。

僕たちには準備が必要だった。


3人共、訓練兵団に入ることは決めていた。

ただ、正直に12歳で名乗りを上げる必要はない。

確実に目標圏内に達するために、費やせる時間は長い方がいい。

特にアニは、兵団に入るにはまだ小さいからな、と口にしたその夜、ライナーは脛にきれいな一撃を入れられてうずくまっていた。

縮こまって悶えるライナーを見て、苦笑する。

アニのお父さん仕込みの蹴りは凄い。

今思えば、僕たちは故郷にいた頃から、来るべき時のための準備をしていた。


ひとまずここまで。

書いてるうちに、数年後の彼らに至るまでの過程を辿らねばならないような気がしてしまった。

ので精一杯書ききろうと思う。

保守ありがとうございます!

やっと再開できそうです。
少しずつですが、投下します。


教官の恫喝を横目に、心臓の前に構えた拳を握り直す。

「通過儀礼」がいつ自分の身に振りかかってくるかと身構えていたけど、教官は立ち止まりもせず目の前を通り過ぎた。

一瞬だけ合った目は暗く冷たく、何かを失ったような目をしていた。

少なくとも安穏と生きてきた目ではない。

……同じ目をしていたからということだろうか。

ライナーやアニを含む数名も、名前を呼ばれることはなかった。


部屋は大部屋だった。ライナーと一緒なのが救いだ。

真ん中に寝るのは身体が大きくて邪魔だろうからと、上の段の端を寝床にしてもらった。ライナーはその隣だ。

アニは一人で女子宿舎に入る。

今後のことを考えて、人前ではあまり親しくしないことを決めた。

3人で固まっているのはリスクが高い。

それでも、もしもの時にすぐに動けるように、僕とライナーが同郷の友人であることは隠さなかった。

長らくライナーの背中に守られてきた僕にとって、それはとても心強いことだ。

でも、ライナーは僕達の分まで周りと関わり、嫌な思いをしてきている。

だから、ライナーばかりに負担をかけないようにしよう、と思っていた。


思っていたのに。


ベルトルト「うっ……、ぅ……」


身体の震えが止まらない。

ライナーは僕の背中をさすりながら、ずっとそこにいてくれた。


ライナー「落ち着け、ベルトルト……」


…ライナーの声が聞こえているはずなのに、心までは届いて来ない。

だって。

だって!


ベルトルト「落ち着ける訳ない……。君も聞いただろ?」

ベルトルト「彼のお母さんはあの日に亡くなった」

ベルトルト「僕が」

ライナー「ベルトルト!」


鋭く張り詰めた声に遮られる。
ライナーに両肩を掴まれて、言葉の代わりに涙が出た。


ライナー「俺達は戦士だ。死んじまった仲間のため…生きている皆のために戦うんだろ!」

ベルトルト「……っ」





エレンのことは苦手だった。

一番最初はただ、何となくそう感じただけだったような気がする。

強い意志を宿した目が怖かった。


……それなのに、どうして僕は彼の話を無視できなかったんだろう。

上手に嘘を織り交ぜた真実を語る気になってしまったのだろう。


落ち着いた後に、ライナーに諭された。

うまく言い換えていたが、あんなことを壁内の奴らに言うんじゃない、と。

苦々しげに漏らすライナーに、頷くことしかできなかった。


彼らのせいで僕たちは怯え逃げ惑い、たくさんの仲間を失うことになった。

僕らのせいで、彼らは同じように。

そう考えてしまった時、僕はライナーのように、自分の気持ちで彼らに相対しているわけではないと気付いてしまった。

僕はただ、選ばれたからここにいる。

ここに、来てしまった。

そこに……僕の意志はない。



あの、強い意志の秘められた目。

それがどんな意志なのか、どんな理由でもたらされたのかを知って、僕はますますエレンが苦手になった。


ライナー「いいか、ベルトルト。俺達は……やり遂げなきゃならん。何に換えても」

ベルトルト「…………うん」

ライナー「……お前は極力あいつらと喋るな。どうしても用がある時は俺が代わりに話す」

ベルトルト「それじゃライナーが…」

ライナー「死にそうな顔で何言ってんだ。俺は平気だ。いいから訓練で結果を残せ」

ベルトルト「……でも」

ライナー「……でも、じゃないだろ」

ライナー「あいつらに情を持って苦しむお前を見たくないんだ」



違うよ、とは言えなかった。

自分の感情がわからなかった。


ただ、あの時遠くに見えた赤い飛沫は、未だに時々夢で見た。


今日はここまで。


最初はほのぼのドタバタギャグだけの予定だったので、ライナーの扱いが一部アレでした。すみません。当初の変な設定は無視しておいてください。

ちなみに現時点のライナーは頼れる戦士100%。

更新楽しみにしています

過去作あったら教えろください

>>332
ありがとう!
過去作はないんだ。書きたいものはいろいろあるのに、書くのが遅くて…。
素晴らしい供給が多いから、半分満足してるのかもしれない。


では、投下します。


彼らの声は空気のようだ。

ただ、そのあたりを漂っている。

相手の言葉を飲み込むことも、自分の言葉を吐き出すこともしないからそう思うのだろう。


普段は気にも止めないはずのざわめきが、僕でもわかるくらい波打った。

視線の先にいるのは…エレンだ。

あまりにきれいにひっくり返されているから、何人かが格闘の手を止めて見入っているようだ。


エレンの向こうでは、ライナーとアニが対峙している。

…ライナーがエレンの隣に並ぶまでに、大した時間はかからなかった。



(どうして君は…)

ライナーなりにアニを思いやっての行動、だと思う。

だけど、空回っているのは、アニの反応を見れば明らかだ。

しかもよりによって、エレンと一緒に話しかけるだなんて。

本当に、何事でもないように彼の隣にいるライナーには頭が下がるけど、…自分から傷を増やすようなことをしなくてもいいのに。


痛そうに顔を歪めながら起き上がったライナーに、エレンが何か言っている。

あの表情なら、文句か何かだろう。


ライナーは済まなそうに笑いながら、エレンの肩を叩いた。



(どうして君は…)

ライナーなりにアニを思いやっての行動、だと思う。

だけど、空回っているのは、アニの反応を見れば明らかだ。

しかもよりによって、エレンと一緒に話しかけるだなんて。

本当に、何事でもないように彼の隣にいるライナーには頭が下がるけど、…自分から傷を増やすようなことをしなくてもいいのに。


痛そうに顔を歪めながら起き上がったライナーに、エレンが何か言っている。

あの表情なら、文句か何かだろう。


ライナーは済まなそうに笑いながら、エレンの肩を叩いた。



二人への注目が解けて程なく、対人格闘の終わりの合図があった。

適当に組んだ相手とは形ばかりの会釈で別れ、人混みに紛れながら二人の後ろ姿を目で追う。


エレンは、過去を語ったときに滲ませた巨人への異様な殺意を除けば、意外と普通の少年だった。

意外と、と言うことはおかしいかもしれない。

兵士になるために訓練兵団に入っているといっても、ここに集まっている彼らは少年や少女と言う方がしっくりくるような年齢だ。

エレンだってそう。主席で、ライナー以上の身体能力を見せるミカサも。

年齢だけでいうのなら…ライナーも、アニも僕も大して変わらない。


……ただ、僕たちと彼らは、違うけれど。






いつものように寝床の片隅に身体を寄せて本を開く。

集団生活の中で大変なのは、生活時間と空間を共有しなくてはならないことだ。

そこからさり気なく外れることは、簡単なようで難しい。

特に、同室の彼らは…飽きることなく僕を誘った。


コニー「おーい、ベルトルト! お前も降りて来いって」


無視をするわけにも行かず、本から目を離して下を覗き込む。

やんわりと拒否しようとするが、強く断らないせいか、引き下がってはくれない。



マルコ「折角だから、次の演習の話もしよう」

ベルトルト「……僕は」

ライナー「たまにはいいだろ?」


笑みを浮かべたライナーが、僕を手招く。

…演習の話をするとも言ってるし、頑なに断らない方がいいってことだろう。


ベルトルト「わかった……行くよ」






混じってみると、真面目な話はほんの一握りだった。

日常のささいな出来事、教官の様子や噂話、色んな言葉が飛び出してくる。

曖昧に流しているだけで、何とかなりそうだ、と思っていたところで、ライナーと目が合った。


ライナー「ベルトルト、この陣形、お前はどう思う」

ベルトルト「え…」


他愛ない話で盛り上がるコニーやエレンから少し離れたところで、ライナーとマルコは地図を見ていた。

ベルトルト「そう…だね。……悪くないと思うよ。でも、実戦には不向きだよね…壁外の大部分は見通しが良すぎる平地だろうし」

ジャン「なんだ、お前もちゃんと考えてるんだな」


後ろから覗き込むように話に加わってきたジャンにびくりとする。


マルコ「そんな言い方はないだろ? ベルトルトって控えめだけど、成績はジャンより上だし」

ジャン「…爽やかな嫌味だなオイ」

マルコ「ジャンこそ、褒めるんなら言葉を選びなよ」

ライナー「何だ、褒めてたのか? よかったな、ベルトルト」

ベルトルト「え、……」

ジャン「違ぇよ。 普段だんまりな奴がちゃんと喋ったから驚いただけだ」


いつの間にか、自分の存在を消せないくらい、輪の中に入り込んでしまってた。

演習の話が盛り上がってきたところで、エレン達もこちらに加わってくる。

話さないわけにはいかずに時々口を開いた。




とても苦しかった。

彼らの話を聞き流せないことが。

とても苦しかった。

純粋に、会話を交わせないことが。






なかなか眠れずに寝返りをうつ。

他人の息の音がうるさくて眠れない。

実際にはそんな微かな音、ほとんど聞こえていないはずなのに、彼らと関わりすぎた日の夜はいつもうるさかった。

これは彼らがここにいることの証。生きている音だ。

…潰れていったたくさんの命を、思い返さずにはいられない音だ。



眠ってもいないのに魘されているような気分になって、身体を起こす。

冷や汗を拭うと、隣の布団が動いた。


ライナー「眠れないのか?」

ベルトルト「……うん」


返事はないけど、心配してくれている気配が伝わってくる。


ベルトルト「さっきは…ごめん。いくらなんでも、…ずっと一人でいるのは不自然だよね」

ライナー「俺となら喋れるのにな」

ベルトルト「…ライナーと喋れなかったらかなりの重症だよ」

ライナー「まぁな。だが、あまり怖がっても仕方がない。それに、何だかんだ言っても、どうにかやっていけてるだろう?」

ベルトルト「……そうかもしれない。ここに来た頃は…心配しかなかったから」

ライナー「お前らしいな」


薄闇の中でライナーが笑う。

胸を這いずり回っていた嫌悪感が消えていくのがわかった。


ベルトルト「本当に…ライナーのお陰だよ」

ライナー「大げさだな。2年も経つんだから、そろそろ慣れろよ。俺がいるから大丈夫だ」



ライナー「お前も皆の輪に入ってこいよ」





.




頷こうとしたところで、ライナーはそう続けた。

少し闇に慣れてきた目を…さらに凝らす。

僕を励ますようなライナーの笑顔には、一点の曇りもない。


ベルトルト「ライナー、……何を言っているの」

ライナー「ん?」

ベルトルト「僕は、彼らとは…」

ライナー「何だ、そんなに怖がらなくたっていいだろ。お前の臆病はなかなか治らないな」



違う。

僕が怖いのは、それじゃない。

ベルトルト「僕らは、彼らとは違う、だろ……」


ベルトルト「僕らは、……戦士じゃないか」








長い、長い沈黙があった。

暗闇の中にも関わらず、ライナーの顔色がひどく悪くなっていることに気付いてしまう。

疲労を滲ませる苦悩の表情に、笑顔の名残はない。


ライナー「…………すまん」


返事をすることも躊躇われるほどに、苦しげな呟きだった。

思い出したように冷や汗が吹き出してくる。


ベルトルト「ね、ぇ……ライナー……」

ライナー「……今のは忘れてくれ。早く、寝ろよ」


そう言ってライナーは背を向けた。

手の震えが、止まらなかった。


……ライナーは。

ライナーは強いから、彼らの中にいても強く居られるのだと思っていた。


でも、そうじゃなかった。


彼らに向けていたはずの偽物の笑顔は、いつの間にか本物と見分けがつかないくらい精巧になっていた。

いや、あのライナーは間違いなく…彼らの信頼を集め慕われる、訓練兵団の一員だった。

それがライナーの内面が蝕まれた結果だと、どうして気づけなかったんだろう。


僕のことを案じてくれた表情は普段と同じだった。

そのことに胸をかきむしりたくなる。

あぁ、さっきライナーが言った通りだったらどんなによかったことだろう。

僕が内気で臆病で、彼らとうまく話せないだけだったなら!



ライナーはずっと苦しんでいたんだ。

それなのに僕の盾になってくれていた。

ここに来てから。いや、きっと……開拓地にいた頃から。

そんなの、耐えられるわけがない。



――ねぇ、それならどうして、

彼らは悪魔らしく残虐で非道で、どうしようもない悪じゃないんだ

どうして、同じように仲間を悼み、家族を想うんだ

深い怒りを、哀しみを背負って戦おうとするんだ




彼らは

彼らは僕らとなにひとつ変わらない


彼らは僕らと同じ
過酷な運命を押し付けられた『人間』じゃないか





.








だとしたら、僕がしたことは

この手で摘んだ数々の命は

何のために奪われなければいけなかったんだ?




「う」


「うわあぁあぁぁぁぁッ!!」



そして彼は巻き戻る。


縮んだ理由の詳細も考えてはあったんだが、えぐくなる予感しかしない上、巨人化との整合性が取れんので説明をやめました。

残りの分量もある程度あるので、明日改めて投下します。

もうしばらくお付き合いいただければ幸い!


感想ありがとう! 励みになります。

まずは帰ってきたほのぼのエンドを投下。
シリアス風味が拭えてないが…書いてる奴の癖&次への布石ってことでよろしく。

では、いきます。






ベルトルト「………………」

ベルトルト「……朝、だ」






.




コニー「うおっ!? ベルトルトがでかくなりやがった」

マルコ「いや、元々この身長だったんだよ」

ジャン「しかし……改めて見るとでかいよな。視界が狭ぇ」


ベルトルトは苦笑いをしながら着替えている。

起きてすぐ、急に元通りになったことに驚いて色々聞いてみたが、ベルトルトは全く事態を理解していなかった。

慌てる様子も全くない。

今までのことを覚えているのか、という問いにも首を傾げられた。


ライナー「大丈夫か? どこか具合が悪いとかは…」

ベルトルト「ううん。特には…。何だか、長い夢を見ていたような気がする」

ライナー「…そうか」

…俺も、あの期間の記憶がそっくり残っているとは思っていない。



エレン「よし、飯に行こうぜベルトルト」

ベルトルト「うん」

ベルトルト「……ライナー?」

アルミン「早く行かないと席がなくなるよ」

ライナー「あ、ああ……」






食堂でベルトルトを見かけた者は、誰もが驚き、まじまじとベルトルトを確認しに来た。

ベルトルトはその度に不思議そうにしていたが、動じてはいないようだった。

ここしばらくの慣習でエレン達と食事を共にしながら、全く様子の変わらないベルトルトを見やる。

食堂ではじめてベルトルトと「再会」したミカサと言葉を交わした後、そこにエレンやアルミンも混ざって談笑している。



ベルトルト「ライナー…食欲ないの?」

ライナー「! いや、食ってるぞ」

エレン「何か、ライナーの方が驚いてるみたいだよな」

ミカサ「ベルトルトは幼くなっていた時のことを覚えていないと言うのだから仕方ない」

アルミン「ライナーはいつもベルトルトを気にかけていたからね」

エレン「確かに、本当の兄弟みたいだったぜ?」

ベルトルト「そんなに似てないと思うけど…」

ミカサ「でも、あなたがライナーに一番懐いていたのは確か」

ベルトルト「…そう言われると否定できないな。ライナーにはいつも世話になりっぱなしだね」

ライナー「それは…お互い様というかな」


アルミン「本当に仲がいいんだね」

ミカサ「ええ。ライナーを探して涙目になるベルトルトは、迷子になった時のエレンによく似ていた」

エレン「何だよそれ、嘘つくなよ」

ミカサ「嘘ではない。私を見つけた時のエレンのほっとした顔…今でも覚えている」

エレン「俺は覚えてねえって!」

アルミン「二人とも落ち着いてよ。今は食事の時間だからね!」

ベルトルト「はは」


ベルトルトが、笑った。

エレンは相変わらずミカサに対抗していて気に留めなかったようだが、ミカサとアルミンが驚いたようにベルトルトを見たことに気付く。



ベルトルト「さてと…勘を取り戻しておきたいから、僕は先に行くよ」

ライナー「ああ…」

エレン「おう!俺もすぐ行くぜ」



ミカサ「……ライナー」

ライナー「…ん?」

ミカサ「ベルトルトは、変わった。いえ、本当は変わっていないと言うべきなのだけれど」

ミカサ「…うまく言えない」

ライナー「ああ……」

アルミン「僕達は、ベルトルトのあんな顔は知らなかったけど…不思議と、違和感はないんだ。ここのところ、一緒に過ごしていたからかな?」

エレン「何だよ、ベルトルトが元々ああだったってだけだろ? 前まではあまり話してなかったしな」

ライナー「…………」

ライナー「……そう、なのかもしれないな」






キース「問題なく訓練に取り組める状態か?」

ベルトルト「はい。体調にも異常はありません。通常通り訓練に参加します」

キース「良かろう。お前は正式な評価に用いるデータが不足している。以後心して訓練に励むように」

ベルトルト「はっ」



空白を感じさせない動きに驚いたのは、ベルトルトの周囲の方だった。

前よりもずっと、動きやすそうに見える。

当人が全く顔色を変えずに適応していることが不思議なほどに……何かが変わっていた。

まるで何か、抑圧から解き放たれたような。



マルコ「凄いな。久しぶりに見たけど、前より無駄な動きがなくなってるんじゃないか?」

ベルトルト「そうかな」

ジャン「ちっ…自覚ないのかよ」

マルコ「ジャンは、立体機動の成績まで追い抜かれるんじゃないかってハラハラしてるんだよ」

ジャン「おい!」

ベルトルト「そんな…ジャンにはまだまだ適わないよ。でも、もう少し改善できそうな気はする」

ジャン「…そうかよ。望むところだぜ」






ユミル「おっ、こりゃあ丁度いいところに。復帰してから絶好調のベルトルさんじゃねーか」

ベルトルト「え?」

ユミル「ほらよ、手伝うって言ってただろ」

クリスタ「ユミル!だめよ、ちゃんとやらないと」

サシャ「そうですよー!ユミルだけずるいです!」

ユミル「何だよ、冗談だって…」

ベルトルト「…よくわからないけど、水汲みなら手伝うよ?」

クリスタ「えっ?」

ベルトルト「多分、しばらくの間当番できてなかっただろうし…その代わりというか」

クリスタ「でも、ベルトルトはちゃんと…」


ユミル「お、話がわかるな」

クリスタ「あっ…ユミル!」

ベルトルト「サシャも、桶を置きなよ」

サシャ「私の分も持ってくれるんですか?」

ベルトルト「両手が空いてるから…」

サシャ「ありがとうございますベルトルト!」

クリスタ「本当に大丈夫…?」

ベルトルト「うん。お世話になっていたみたいだから、気にしないで」ニコ

サシャ「!」

クリスタ「もう…サシャはともかく、ユミルは後でちゃんとお礼を言うんだよ?」

クリスタ「……ユミル?」

ユミル「…………」

サシャ「……ベルトルトって、あんな感じでしたっけ?」

ユミル「さぁな」






コニー「飯だ飯ー! ライナー、ベルトルト、先に行くぜ!」

ライナー「こら、走るんじゃない」

ベルトルト「…相変わらずだね」

ライナー「ん?」

ベルトルト「ううん、何でもない」



.



ベルトルトは、驚くほど自然に、元の日常に戻ってきた。

いくつか驚かされることはあるが、それはどれも悪い意味ではない。

何となく心配でベルトルトの様子を気にしてしまうが、ベルトルトはうまくやっていた。

拍子抜けするほど問題なく、訓練兵団に溶け込んでいる。

俺達の日常に。

そう思うと妙な安心感を覚えるが、同時に何か落ち着かないような不安に襲われる。

ベルトルトが時折見せた不安そうな様子や、思い詰めたような表情の影が、どこにもないからだ。

隠しているようには見えない。

なくなるようなものでもない。

それなのに、今のベルトルトは……




ミーナ「あ、あのっ」

ベルトルト「ミーナ……それにアニ。どうしたの?」

アニ「私は付き添い。用件があるのはこっち」

ミーナ「そんなに怒らないでよ…」

ベルトルト「…?」

ミーナ「あのね…ベルトルトに貸していた服を返してほしくて。少し手直しした訓練兵団の上着なんだけど」

ベルトルト「えっ……服なんて借りてた、かな」

アニ「あんたが縮んだ時に貸してやってたんだよ。ライナーあたりが知ってるんじゃない?」

ベルトルト「そうだったんだ…ごめん、急いで探すよ」

ミーナ「うん、お願いします!」


ミーナ「……」

ベルトルト「…他にも何かあるの?」

ミーナ「……駄目もとでお願いするんだけど」

ベルトルト「うん」

ミーナ「頭、撫でてみてもいい?」



ミーナの言葉に、同じテーブルにいたエレンが噴き出し、アルミンがむせた。

ベルトルト「…え?……ええ?」

流石のベルトルトも動揺しているようだ。

アニ「…ミーナ?」

ミーナ「だって…あのさわり心地が忘れられなくて…」

ライナー「ベルトルトはぬいぐるみか何かか…?」

ミカサ「そういうわけではない。けれどミーナの意見には同意する。せめて、あの触感が残っているかどうか確認したい」


ベルトルト「ちょっと…よくわからないけど、恥ずかしいからやめようよ…」


慌ててベルトルトは立ち上がるが、……ベルトルトの性格と周りの押しの強さからして、恐らく断れないだろう。

ミカサがミーナの味方についたことで、戦局は一気に傾いた。


ミカサ「ベルトルト、座って。確認をするだけだから」

エレン「いいだろちょっとくらい。俺も今のベルトルトは撫でたことないしな」

アルミン「ちょっとエレン…」


ベルトルト「わ、わかったよ…」


恐る恐る座ったベルトルトは、座るまで気づかなかったのだろう。

同期がいつの間にか集まってきていることに。

…皆、幼くなってしまったベルトルトを可愛がっていた者ばかりだ。



名残惜しさも手伝ってか、勢いに乗った「お願い」が容赦なくベルトルトを包んだ。



ミカサ「これは……以前の感触とも、エレンとも少し違う。何が違うのだろう」ナデナデ

ベルトルト「僕には何とも…」



エレン「何で俺が比較対象なんだよ。……お、なんかいいな、でっかい弟ができたみたいだ」ナデナデ

ベルトルト「…僕の方が年上だよ?」



ミーナ「わ、私も! 私が言い出したのにずるい!」ナデナデッ

ベルトルト「そうだったね…」



マルコ「急に撫でにくくなっちゃったから、名残惜しかったんだよね」ナデナデ

ベルトルト「そんなに…?」




コニー「どうだベルトルトっ!うちの弟たちはこうしてやるのが大好きなんだぞ!」グシャグシャ

ベルトルト「ま、前髪が…」



サシャ「うちの犬はこうしてやると喜びますよ!」ワシャワシャ

ベルトルト「犬…」



クリスタ「もう、サシャったら……大丈夫?」ナデナデ

ベルトルト「うん。ありがとう」



ユミル「…お前、クリスタに撫でられていい気になるなよ?」ガシッ

ベルトルト「…ごめんなさい」




ジャン「…ったく。ガキみてーなことしてんなよ」ナデ

ベルトルト「…あはは」



アルミン「ほんと、ジャンって素直じゃないよね」ナデナデ

ベルトルト「うん」



アニ「…………」ナデナデ

ベルトルト「……えっと」




困ったように笑いながら、ベルトルトは皆の輪の中で大人しくしていた。

たくさんの手に撫ぜられて、くすぐったそうに、恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに。


エレン「来いよ、ライナー!」


呼ばれるままに伸ばした手で、ベルトルトの髪を撫でた。

皆の温もりが移ったのか、体温以上のあたたかいものを感じる。

確かめるように頭を撫でる。

とても無防備だ。見知らぬ手が頭に触れることを、本能は拒むだろう。

けれどそこに信頼があれば、親愛があれば……この触れあいは温もりに満ちた安らぎに変わる。



ベルトルトが目を細めて笑うのを見て、何かが解けていくのを感じた。



ベルトルト「…ライナー?」


目を丸くしてベルトルトが立ち上がる。

頬から顎まで雫らしきものが伝った、と、一拍遅れて理解した時には、ベルトルトに頭を撫で返されていた。



ベルトルト「心配かけてごめん。僕はもう、大丈夫だよ」

ライナー「……っ」








ライナー「……おかえり、ベルトルト」


ベルトルト「…ただいま」







.


戻ってきたらみんなに頭を撫で回されるって決めてたんだ。

皆好きすぎて正直色々詰め込みすぎた。
きりのいいところで一旦の終わりですが、実はもう少しだけ続きます。過程を遡ったのはこの先を書くためなので。

明後日以降にまた来ます。

の、残っていた…
保守ありがとう!!

ここまで温めていたものを描ききるべく書き込んでいたら、年が明けてしまった…

描き切れたかはわからないけど、今日と明日とで最後まで投下します。
もはやちびの話ではないですが、お付き合いいただけると嬉しいです。

では、投下します。



エレン「おい、ライナー、そんな男泣きすんなって!」

ベルトルト「落ち着いてよライナー。今度は君が子供みたいになってるじゃないか」

ミカサ「それだけ、ベルトルトの言葉に安心したのだと思う」

アルミン「ふふ、ミカサの言うとおりみたいだね」




ミーナ「…私もお返ししてほしいっ!」

クリスタ「わ、私も…」

ユミル「ちょっと待てどうしてそうなる。考え直せ」

アニ「…………」

アニ(……何してるんだか)



ミーナの悪ふざけがここまで大事になるだなんて。

自分も無関係ではないから、あまり細かいことを言うつもりはない。

ただ……ベルトルトが大丈夫と言った、その理由が私にはわからない。

あいつは何を確信して、あんな顔をするようになったんだ。

いつも自信なさげに、表情を曇らせていた奴が…

今はまっすぐ、前を向いている。


アニ(……後で、話を――)


ベルトルト「アニ」

不意を突かれて、視線を上げる。

ベルトルトは人の良さそうな笑みを浮かべて私を見ていた。


アニ「…何?」


こんな、人前で話しかけてくるなんて以前じゃ考えられなかった。

ただ……今の状況でなら、何もおかしくないかもしれない。

ミーナに連れられて干渉していたせいか、今はこいつとも友人ということになっている。

ベルトルト「いや、アニにもお世話になったり、迷惑をかけたみたいだから。まだお礼も何も言ってないだろ?」

アニ「…あんた、お礼言って回ってるの?」

ベルトルト「似たようなものかな」


アニ「…律儀な奴」

ベルトルト「はは」


ライナーは、エレン達に宥められて落ち着きはじめているようだ。

視線は、あちらに集まっている。

ベルトルトもそれを理解しているであろうことはわかる。

わからないのは、話し掛けてきた理由だ。


…なんだろう。この感じは。

違和感があるが、不快な感じではない。

そういえば私は、ベルトルトの自信なさげに曇った瞳が苦手だったのだ、とふと思い出した。


ベルトルト「…そういえば」

ベルトルト「しばらくの間、訓練や当番にも穴を空けてしまっていたって聞いたんだけど」

アニ「ああ…それなら、ほとんどライナーが肩代わりしてるはずだよ」

ベルトルト「やっぱりそうなんだ。じゃあ、しばらくは僕がライナーの代わりに当番を務めようかな?」

アニ「そうしたいんなら、すればいいんじゃないの」

ベルトルト「うん。そうするよ」

ベルトルト「…でも、面倒な所に当たったりしたら一人じゃ大変だろうな。備品庫なんて、埃にまみれているしね」


返答しようとして、言葉を止める。

ベルトルトは確かめるようにこちらを見ていた。


アニ「……『備品庫』に当たっても、ライナーの代わりに一人でやるつもり?」

ベルトルト「そうなったら、ライナーにも来てもらうよ。色々積もっているだろうし、きっと三人は必要なんじゃないかな」

アニ「…………」

アニ「いずれにせよ、あんたがそのつもりならちゃんとライナーに話しておくんだね。もう少し、落ち着いてからさ」

ベルトルト「うん。ありがとう、アニ」






三人で話そう。

暗にそう告げたベルトルトの目は、以前とは全く違って――少しの揺らぎも見られなかった。


短いですがきりがよいので一旦ここまで。

続きは7日の夜に投下します。


お待たせしました、最終章です。
途中で休憩をはさむかと思いますが、投下していきます。

ちなみにアニ視点に深い意味はありません…あまり書けなかったのでさみしくて。

では、行きます。


(備品庫)



この時を、待ち望んでいたはずだった。

悩まざるを得なかった件が、どうにか収まったのだ。

また、以前のように…作戦へ向けての準備を、進めなければ。


それなのに、誰も言葉を発さない。

薄暗い倉庫の中で、私達は顔を合わせたまま、沈黙していた。



ベルトルト「……改めて、になるけど」

ベルトルト「心配をかけてごめんね。きっと、色々なところで悩ませたと思う」

ライナー「いや、もう大丈夫だ。お前は…こうして元に戻ったわけだしな」

ベルトルト「そうだね。…やっと卒業後の話ができる」

ライナー「……あぁ」


答えるライナーは妙に歯切れが悪い。

それを知ってか知らずか、ベルトルトは続けた。


ベルトルト「作戦のこと…きちんと話しておくべきだと思うんだ」

ベルトルト「このまま行けば3人とも憲兵団を狙える。訓練兵団で身に付けた技術も作戦に役立てられるだろうし…何より、ここまで来て、失敗するわけにはいかない」



今度こそ…ごまかせないくらいはっきりと、ライナーの表情が変わった。

苦しげに顔を歪めながらも、必死に平静を保とうとしている。


ライナー「ベルトルト…」


静かにライナーを見たベルトルトは落ち着き払っていた。

今までになく強い眼差しに、ライナーはそれ以上の言葉を続けられずにいる。


ベルトルト「…………」

ベルトルト「ライナーは…彼らを仲間だと思っている?」

ライナー「っ!」

ライナー「いや、俺は……」

ベルトルト「仲間と言うと答えづらいかな」

ベルトルト「……彼らは君を慕ってる。君も彼らに応えようとしてる。同期として、友人として。……そうだよね」


ライナー「それ、は……」

ベルトルト「アニも、女の子の友達ができた。僕はあんな風に笑うアニをはじめて見たよ」

アニ「…………」






ベルトルト「ねぇ、君たちは彼らを……殺せる?」






.



意図の読めない言葉と表情に、……何も言えなくなる。

けれど声色は不思議と、咎めようとしているようには聞こえない。

何を思っているのかと、相対するその人に目を凝らす。

暫くの沈黙の後、ベルトルトは静かに顔を伏せた。



ベルトルト「僕は殺せない。殺したくない」



告げられた言葉は、ベルトルトの信念がどこに向けられたものであるかを――はっきりと示した。


ライナー「…え」

ベルトルト「…そんなに驚かないでよ。僕はライナーが苦しんでいることにも、アニが迷っていることにも気付いてたよ」

ベルトルト「ただ、……何も言えずにいたけど」

アニ「……あんた」


ベルトルト「僕達は使命を果たす。そのためにここに来た」

ベルトルト「やるべきことは覚悟していたよ。でも……思ったんだ。僕達の採る手段は正しいのか、って」


ライナー「……どういうことだ?」

ベルトルト「思い出してみてよ。僕達は、何をやるべきかはわかっている。でも、……何故やるべきか、その理由の全ては教えられていない」

ベルトルト「アルミンがよく言っていた。王政は都合の悪いことをもみ消せる。嘘を真実にすることもできる」

ベルトルト「酷い皮肉だけど、鋭い指摘だ。僕達は使命について、知らないことがたくさんある。……壁内の彼らのことも」

ベルトルト「僕達が教えられてきたことの全てが真実じゃないってことは…二人とも身に染みてわかってるだろ?」

ライナー「……!」

アニ「…………」


ベルトルト「……僕達の使命は彼らを殺すことじゃない。僕達の故郷を、同胞を守ることだ」

ベルトルト「だとしたら……彼らを殺さなくて済む方法があるかもしれない」


アニ「あんた、…何を言っているのか分かってるの……?」

ライナー「そんな、わけがない…!それしか方法がないから、俺達はここまで来たんだろ!?」


ライナーがうろたえる気持ちが、痛いほどわかる。

そんな仮定を認めてしまえば…私達のしたことは必要のなかったことになる。

奪う必要のない命を、奪ったということになる。

背負い切れない重みが怖い。

……そして、冷静なままのベルトルトの表情を見て思った。

もし、ベルトルトの言うように、別の可能性があるというのならば。

間違っていない、と頑なに信じ込むことは…単なる殺人の正当化だ。

その事実の恐ろしさに、背筋が寒くなった。


ベルトルト「…………」

ベルトルト「まだ、穴だらけの論理だと自分でも思うよ。でも、壁内の彼らは偽の歴史を疑いもせずに、きれいに騙されているよね」

ベルトルト「僕ら自身もそうでないとは、限らないじゃないか。少なくとも……故郷の皆が、何かを隠してるのは確かだ。そうでなきゃ、どうして僕達に嘘を教えたの?」

ライナー「嘘なんて……」

ベルトルト「……そうだね、嘘じゃないかもしれない」

ベルトルト「父さんも母さんも、おじさんもおばさんも……何も知らないだけかもしれない」

アニ「!」


ベルトルト「隠された真実は…隠しておかなければ都合が悪いものなんだろう。壁内と同じで、僕達の側にも限られた人間しか知らない何かがある」

ベルトルト「今になって不思議に思うんだ。僕達が植え付けられてきた憎しみは、いったい誰のものなんだろうって」

ベルトルト「感情的に…壁内の彼らを皆殺しにしたいという意志が働いているように感じてしまうんだ。彼らが巨人を憎むようにね」


ベルトルト「考えてみてよ。……もし、彼らが一部でも無事に生き残れたら」

ライナー「……っ」

ベルトルト「彼らを殺して平穏を取り戻せたとしても……今度は、僕らの方が悪魔になる。いや、既になっているよね」

ベルトルト「断ち切りたいんだ。そんな連鎖を。僕は…故郷を守りたいし、彼らを殺したくもない」



ベルトルトがはっきりと意思表示をすることが…短くない付き合いの中で何度あっただろうか。

一つ一つ訴えかけられる想いが、どれだけの重みを持つものなのか…それを思うだけで手が震える。

ベルトルトもまた、……それだけのものを抱え込んできたのだ。



ライナー「今まで通り過ごしながら……故郷を守る方法を探すっていうのか。そんなこと……」

ベルトルト「使命への責任を放棄するわけじゃない。内地で、王政の…壁の秘密を探る価値はあると思うよ。折角憲兵団に入る資格もあるんだ」

ベルトルト「それに、彼と……アルミンと関わりを持っていれば、壁内の秘密に近付けるような気がするんだ」

アニ「……あいつのこと、随分買ってるんだね」

ベルトルト「アルミンの観察眼と思慮深さは知ってるだろ。だから、……うまく協力してもらえないかと思ってる」


ライナー「な…っ」

ライナー「お前、正気で言ってるのか? …あいつはエレンの昔馴染みだ。あいつ自身も巨人の……」

ライナー「…俺、達の……襲撃を受けてる……。もし、マリア陥落の真実を知ったら…………」


ベルトルト「……許してもらえるなんて、思ってないよ」

ベルトルト「協力してもらうにしても、全てが終わるまでは隠し事をしなければならないと思ってる。でも、全てが終わったら、そのときは……」



ベルトルト「みんなのために死ぬ覚悟はできてる」


慌てるばかりだったライナーの顔色が、すっと白くなる。

当たり前だ。

ベルトルトが……全く動じることなく、そんな言葉を口にしたから。


ベルトルト「なんて顔するんだよ、ライナー。もちろん、故郷が救われた後の話だから。……僕はそれでも、悔いはない」

ライナー「……な、何言ってるんだ、お前……っ」

ベルトルト「大丈夫だよ。気付かれなかったら……人目を避けて生きていくくらいは、できるだろうし」

アニ「…………ねぇ」

アニ「もし、協力できたとしても…何か有用な情報が得られたとしても…。……それでも殺すしかないとわかったら、どうするつもり……?」


ベルトルト「…わからない」

ベルトルト「今は、可能性に賭けてみたい。足掻きたいんだ」



アニ「……可能性に賭ける、か」

アニ「あんたの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった」

ベルトルト「うん……自分でも不思議だよ」


ベルトルト「ライナー。アニ。…ふたりの考えを聞かせてほしい」



ベルトルトは、こんなことを言う奴ではない、と思っていた。

でも、ここにあるのは違和感なんかじゃない。

ひとつひとつ噛み締めるように自分の気持ちを口にするベルトルトを見ていると、……それが、今まで見えなかったベルトルトの一部なのだと思い知らされる。

自分の意思を持ち、それを口にするということすらままならなかった私達の殻を、……一足先に破られてしまったみたいだ。


ベルトルト「…………」

ライナー「俺、は……」

アニ「……私が先に話す」

ライナー「あ…あぁ」

アニ「……あんたは本当に甘いよ。あんたの話したことは夢物語だ。私たちはあの日のために多くを費やした。他の手段なんてあって堪るか」

ベルトルト「……うん」


いつものように真面目に、頷き返される。

ただ、その瞳に怯えはない。

そこにあるのは……心地よさすら感じるほどに、真剣な瞳だった。


アニ「……でも、」

アニ「可能性がゼロではないっていうのなら…信じたい。……私はあんたの考えに賛同する」

ベルトルト「……アニ」

アニ「ライナー、あんたも腹は決まってるんだろ」

アニ「両方とも守れるなら守りたいって、一番強く思ってたのはあんたのはずだ」

ライナー「……っ!」


弾かれたように、ライナーが顔を上げる。

…気付かれていないと思っていたのかもしれない。


ベルトルト「……ごめんね、ライナー。気付いていたのに、何も言えなくて」

ベルトルト「僕は、ライナーが遠くへ行ってしまうのが怖くて……。君はそんな僕に気付くたび、僕よりも苦しんで、もがいてた」

ライナー「お前…」

ベルトルト「ライナー……賭けてみないか。もし、どれだけ足掻いても彼らを殺すしかなくなってしまったら……僕が全てを請け負うから」

ライナー「!」

アニ「…あんた」


淀みなく口にされる数々の言葉には、わずかな迷いもない。

ベルトルトの中で、結論は出ている。…決めているのだ。

この決断で犠牲を払うことになったとしても…自分がその役を負う、と。


ベルトルト「今まではただ、示されたとおりに動いてきた。自分の意志で何かしようなんて…思う必要も、理由もなかったから」

ベルトルト「でもこれからは、自分の意志で道を切り開きたい。その先に何が待ち受けていても、ちゃんとそれを受け入れたい」

ベルトルト「以前のように君の優しさに縋って……現実から目を逸らすのは、やめたいんだ。だから…」


ライナー「ふざけるなっ!」

ベルトルト「っ!」








ライナー「……何が、全て請け負うだ」

ライナー「お前だけに、背負わせるわけにいくか!」



ベルトルト「ラ、イナー……」

ライナー「くそ、……お前達を守るのが、導くのが俺の役目じゃないか」

ベルトルト「な、泣かないでよ……。アニまで…」



……拳を震わせながら、ライナーは泣いていた。

私もだ。悲しいのか、安心したのかよくわからない。

さっきまで冷静沈着だったベルトルトが、昔のようにうろたえている。

つられて泣きそうになっているあたり、やっぱりベルトルトはベルトルトのままだ。

妙に気持ちが落ち着いて、笑いがこみ上げてきそうになった。



ただ、ただ……3人ぽっちでさまよっていた私たちの、離れかけた心が…急にひとつに抱き寄せられてしまった、そんな気分。

戸惑うような、気恥ずかしいような。

でもこの気持ちはやっぱり……嬉しいというのが、一番素直な呼び名なんだろう。


ライナー「……俺は、兵士としての自分に甘んじていただけだ。お前のように…使命以上の目標を見出すなんて、考えつきもしなかった。だが、俺は…っ」

アニ「……馬鹿みたい」

ライナー「なっ」

アニ「あんたは、そうやってひとりで抱え込もうとするからダメなんだよ」

アニ「今まではベルトルトがだんまりだったから、あんたが頑張ってたけどさ」

アニ「私達は…仲間だろ。互いを互いが支える。そうしていけばいい」

ベルトルト「アニ……」

アニ「面倒な前置きなしで、返事してやりなよ。ベルトルトの提案にさ」



ライナー「………賭けてやろうじゃないか。みんな、守りきってやる」

ベルトルト「ライナー!」

ライナー「お前は…本当に頼もしくなったよ。もちろん、アニもな」

アニ「それはどうも。……ちょっと、頭押さえつけないでよ」


ベルトルト「あ、僕も……」

アニ「…何なの?

ベルトルト「…お返しっていうか」


照れながら髪を撫でてくるベルトルトはまだいい。

もう一方のごつい手が、とにかく重い。首が痛い。

睨みあげると、ベルトルトだけが気付いて萎縮した。


アニ「あんたら…しゃがみな。届かないからさ」

ライナー「ああ…そうだな」


ベルトルトを道連れに、ライナーが体勢を低くする。

両手をそれぞれ頭に押し付けてやると、大型犬に待てをしているような気分になった。


感触を確かめてから、そっと手を離す。

迷いはもうなかった。


アニ「……ベルトルト、意見は一致した。あんたの考えを詳しく聞かせてほしい」

アニ「ちゃんと、考えてきてるんだろ?」

ベルトルト「……よく、わかったね」

アニ「あんたはやればできる子だからさ」

ライナー「ハハ、全くそのとおりだな」

ベルトルト「か、からかわないでよ……」



ふとした沈黙で、視線が噛み合う。

誰からともなく重ねた手に、確かな温もりと決意を感じる。



ライナー「……」

アニ「……」

ベルトルト「どんな結末になるかはわからないけど、できる限りのことをしよう」




「みんなを、守ろう」







<end>

ありがとう、ありがとう!

>418=463をはじめ、ちょくちょく保守してくれたみんなも本当にありがとう! お陰で最後まで書けたよ。


お礼と、記憶の上書き用におまけを2つほど投下します。
だから…ぬるエロのことは忘れてくれ…っ(恥ずかしくて吐血)


では、投下します。



アニ「……ところで」

ライナー「ん?」

アニ「あんた、本当に何も覚えてないの?」

ベルトルト「え?」

アニ「色々しでかしたじゃないか、小型になってる間に」

ベルトルト「しでかしたって…?」

アニ「……覚えてないんだね。恥ずかしい奴」

ライナー「何だ、何かあったのか? 勿体ぶらずに教えてやればいいじゃないか」

アニ「…………」


アニが、無言でベルトルトの手を取る。

二回りは大きいその手を、アニはそっと自分の頬に添わせた。

ベルトルト「ア、アニ…!?」

アニ「あんた、私にこうやって……綺麗な目だねって言ったんだよ」

ベルトルト「…………っ」

ぼんっ、と音が出そうな勢いで、ベルトルトが顔を真っ赤にする。

ベルトルト「そっ、そんなこと…!

アニ「嘘だったの?」

もごもごと、恥ずかしそうに口ごもったあげく、ベルトルトは俯いてしまった。


アニ「後は…ミーナに抱きしめられたり」

ベルトルト「えっ」

アニ「サシャに膝枕されたり」

ベルトルト「ええっ」

アニ「あと、ミカサとはよく見つめ合ってた」

ベルトルト「……うそ」

アニ「嘘なもんか。あとは、クリスタに頬ずりされたり。……ユミルには押し倒されてたね」

ベルトルト「押し……え…えっ!?」


アニ「覚えてないんだね?」

ベルトルト「~~~~」


ベルトルト「お、覚えてなかったけど、そんなこと言われたら……」

ベルトルト「みんなの顔が見れないじゃないかっ……!」

ライナー「あっ、ベルトルト!」


脱兎のごとく、とはああいうことをいうのだろうか。

真っ赤な顔をしたベルトルトは、いつにも増して俊敏に、倉庫を飛び出していってしまった。




アニ「本気だすと足速いよね、あいつ」

ライナー「お前な…あまりからかうなよ。どうせ時間をずらして戻るつもりだったからいいが…」

アニ「うろたえてる顔が恋しくてさ。…不安げに後を着いて来られるのには腹が立ってたけど、いざそれがなくなるとね」


ライナー「……まぁ、わからんでもないが。だが見てのとおりだ。あいつの根幹は変わらない。だからあんまりいじめてやるなよ」

アニ「いじめてなんかない。大体本当のことだよ」

ライナー「…………」

ライナー「本当……なのか?」
アニ「ん?」

ライナー「あいつ、クリスタに頬ずりされたのか……」

アニ「……何考えてるのか大体わかったけど、それはやめてやりなよ。夢見が悪くなりそうだ」




その日からしばらく、ベルトルトは妙に女性陣を避けていたとかなんとか。



(おわり)


(愛のある)いじめっこアニちゃん。
人目につかないところではそれなりにちびを可愛がってました。

お次は、没になったハーレム話の改良版です。
やったねベルトルト!(棒読み)


(ことの真相)



ミーナ「あっ、アニ!」

アニ「どうしたのさ、急に立ち止まって…」

ミーナ「ベルトルトがいるよ!」

べるとると「」スヤスヤ

アニ「……こいつ、なんで廊下で寝てるの?」

ミーナ「何でだろうね。ふふ、寝顔かわいいなぁ」プニッ

アニ「やめな。起きたら面倒だろ」

ミーナ「そう? こんなところに放っておくほうがどうかと思うけど…」

ミーナ「あっ」

べるとると「」コロン

べるとると「」ゴロゴロゴロゴロビターン!

ミーナ「きゃあっ!」

アニ(……まさかこいつ、寝ぼけてここに…?)


ミーナ「だ、大丈夫…?」ダキッ

べるとると「むー…」

アニ「よく寝てるみたいだね」

ミーナ「……」ギュ

ミーナ「どうしようアニ、すごく抱き心地がいい!」

アニ「何やってんの」

ミーナ「本当だって!」

ミーナ「それにこう……ちょうどよく収まる感じ」

アニ「…………だから?」

ミーナ「…………」

ミーナ「もう少し和みたいから、食堂に行こうよ。もしかしたらライナー達もいるかもしれないし」

アニ「随分適当な建前だね……まぁいいけど」






ミーナ「誰もいない…」

アニ「…………いや、一人隠れてるだろ」

ミーナ「え?」

サシャ「……よく気付きましたね」スッ

アニ「じっと潜まれてたらわからなかっただろうけど……さっき急に隠れただろ」

サシャ「えぇ、まぁ…」

ミーナ「サシャはここで何をしてたの?」

サシャ「隠しておいた非常食を取りに」キリッ

サシャ「…って、おぶってるのはベルトルトですか?」

ミーナ「うん」

サシャ「ぐっすり眠ってますね」

ミーナ「そうなの、何でか廊下で寝てて…」

サシャ「!」


サシャ「ミーナ、ベルトルトを下ろしてください」

ミーナ「どうしたの?」

サシャ「ベルトルトの額が赤いので…熱でもあるんでしょうか?」ペタペタ

アニ「赤くなるのも無理ないよ。床を転がった挙げ句壁に激突してたからね」

サシャ「なるほど、それで…」ナデナデ

ミーナ「いいなぁ、膝枕」

サシャ「なんだか弟みたいで、つい甘やかしちゃいますね」

アニ「…後々あのサイズになるんだよ?」

サシャ「? 頼もしくて良いじゃないですか」

アニ(…中身は臆病者だけどね)


クリスタ「サシャー?」

サシャ「はっ」

クリスタ「あれ、アニにミーナも一緒?」

クリスタ「…………」ジーッ

サシャ「忘れてましたっ、すみません」

クリスタ「あ、それはいいの…サシャが遅いから心配で、様子見にきただけだから」

クリスタ「ところで、ベルトルトはどうしてそんなことに?」

ミーナ「話せば長くなるんだけど…今は、おでこをぶつけたから様子見?」

クリスタ「えっ……」

クリスタ「それって大変なことなんじゃ…。意識がないんでしょう?」

アニ「寝てるだけだよ。最初からね」

べるとると「」スヤスヤ


クリスタ「…確かに辛そう顔はしてないけど」ナデナデ

サシャ「やっぱりクリスタは女神ですねー。ベルトルトをよしよしする姿も絵になります」

クリスタ「もう、ユミルみたいなこと言わないで!」

クリスタ「……でも、もし弟や妹がいたら……めいっぱいかわいがってあげたいなぁ」ポツリ

ミーナ「クリスタ…」

サシャ「…よしっ」

クリスタ「え…きゃあっ!」ギュウッ

サシャ「ほらほら、クリスタもベルトルトをギュッってしてあげてください」

サシャ「お姉ちゃんなんですから!」

クリスタ「サシャ……」


べるとると「……むにゃ」スヤスヤ

クリスタ「…………ふふ」ギュ

クリスタ「あったかい」スリスリ

アニ「…………」(起きてたらリンゴみたいな顔になってるだろうね…)

ミーナ「…女神って言われてる理由、今ならわかるかも」

サシャ「ですよね! こんな素敵な笑顔を見逃すなんてユミルがきっと――」

ユミル「私が何だって?」

サシャ「うひゃあっ!」


ユミル「…………」

ユミル「何してんだてめぇ」ゴゴゴ


ヒョイッ ドサッ


クリスタ「あっ!」

ユミル「……クリスタの頬ずりを受けた罪、万死に値する」ムニムニムニムニ

べるとると「…………!?」ビクウッ

ミーナ「ちょっとユミル!?」

サシャ「ベルトルトがつぶれちゃいますって!」

ユミル「あん?」

ユミル「こいつぁ未来のデカブツだ。馬乗りになったくらいじゃ堪えねぇだろ」

べるとると「…………」プルプル

クリスタ「今は小さいでしょう!どきなさい、ユミル!」ポカポカ

アニ(寝ながら脅えてる…器用な奴)




アニ「…………」

アニ「ていうか、そいつさっさと返しに行かない?」

ミーナ「あ、そうだった」





(おわる)


元に戻ったあと、ユミルさんが地味な仕返しをして来そうだ。
ちなみにミカサにはこの後男子寮に向かう途中で会います。


原作の展開にウズウズしてならないので、いつかつづきを書きにこようと思う。あと、素直にほのぼのも書いてみたい。

最後の最後までお付き合い感謝!

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