モテないし弟の結婚式に出席する(20)

智子母「ほら智子、早く試着して決めちゃいなさい」

智子「あ、うん・・・」

私は黒木智子30歳。独身。彼氏いたことない歴=年齢。

いわゆる喪女。

服なんてファッションセンターむらむらで2枚980円のパンツや1980円のtシャツくらいしか買わない私が

今日はお母さんとデパートの洋服売り場に。

シャッ

試着室のカーテンを開ける私。

店員「まあ、とてもよくお似合いですよ」

智子母「あら、いいんじゃない?」

店員「如何いたしましょう、お客様?」

智子「はい、じゃあその・・・これで・・・」

店員「はい、かしこまりました。ではお会計を・・・」



智子(なんで私がこんなドレスなんて・・・しかもこんな肌露出させてビッチか?キャバ嬢かっつーの)

智子母「あんたもこういう服1着くらいは持っておかないといざという時に困るでしょう?お友達の結婚式に呼ばれた時とか」

智子「う、うん・・・そだね」

智子(そんな私を結婚式なんかに呼ぶよーな友達なんていねーよ。今回が最初で最後だっつーの)

智子(あの糞弟の結婚式が)


智子(何か・・・高校生の頃が昨日の事みたいだ、結局あれからも友達はできなかった・・・適当に大学に行ってそこでもぼっちで・・・)

智子(ショボイ会社の事務職で就職こそできたけど、お局のババアに虐められてやってられなくなって・・・)

智子(それからは・・・バイトを始めてはすぐやめての繰り返しで・・・)

智子(いわゆる社会の負け組・・・)

母「ただいまー」

智子「ただいま・・・」

智貴「おかえり、母さん。ちゃんと姉ちゃんが式に出れるような服買えた?」

母「もうこの子ったら中々決めないんだもの困ったものよ、最後は店員さんに無理やり選んでもらったわ」

智貴「ははは、何だよそりゃ」

智貴嫁「あ、お帰りなさいお義母さん、お義姉さん」

母「あら、来てたの?智樹嫁ちゃん」

智子「ああ・・・その・・・どうも・・・」

嫁「ごめんなさいお義姉さん、無理やり服を買わせるようなことになっちゃって・・・」

母「嫁ちゃんが気にする事なんてないのよ、この子この年になってこういう服とか持ってなかったから、ちょうど良かったわよ」

智子「・・・ごめん、ちょっと疲れたから・・部屋で休んでる・・・」

母「何よあの子ったら、歳ばっかりとって子供のままなんだから」

母「だから碌に仕事も続かないのよ、まったく・・・」

智貴「母さん」

母「ご、ごめんね、嫁ちゃんの前なのに変なこと言っちゃって」

数日前

母「智子、今なんて言ったの?式に出たくないってどういうことよ!?」

智子「なんで私が弟の結婚式なんかに出てやんないといけないんだよ!」

智子「別にアイツが結婚したってめでたくもなんともないし、面倒くさいし」

母「あんたねえ、どこまで捻くれてるのよ!いつまでも子供みたいなこと言ってるんじゃないの!」

パーン!!

母「ほら、あんたが式に着ていけるような服買いにいかないと、どうせあんたそういう服持ってないんでしょ」

智子「ぐすん・・・」

智子「あの糞弟、姉である私を出し抜いて高校の頃から付き合いだした彼女とよろいくイチャイチャヌコヌコやりやがって」

智子「でもって私よりいい大学行っていい会社入って20代で年収500万超とか、超勝ち組になりやがって・・・」

智子「でもって更に結婚までして・・・くそくそくそくそ!」

智子「何なんだよあのリア充野郎!マジ夫婦そろって爆発しろよ!」

智子「それに比べて私は・・・」

智子「あのころから何にも変わらないまま、歳だけはとって・・・胸もないし・・・」

智子「いやまてよ!?ロリババアジャンルがあるじゃん、私だってむしろそっち系でいけば・・・」

智子「・・・・はあ・・・何にも変わってないや、私」

智子「そうだよね・・・何にもしてこなかったんだもん・・・変わる訳ないよね・・・」




嫁「ねえ智樹」

智貴「ああ?」

嫁「私、義姉さんに嫌われてるのかな・・・?」

嫁「あんまり、会話とかもしてくれないし」

智貴「気にすんなって、あいつは昔っからあーゆー奴なんだよ」



コンコン

智貴「おーい、いるんだろ?」

コンコン

智貴「・・・・寝てるのかー?」


智貴「・・・入るぞー」

智貴「って、真っ暗じゃねーか、なにしてんだよカーテンまで閉めて、電気つけるぞ」

智子「ぐす・・・ずず・・・」

智貴「あ・・・」

智貴「そ、その服・・・今日買ってきたやつか?」

智子「ぐす・・・何がお似合いですねだよ・・・全然似合ってなんかねーよ・・・」

智子「バレバレなおべんちゃらなんて、かえって傷つくんだよ・・・」

智子「どーせ私にはむらむらで売ってる在庫処分ワゴンセールのTシャツがお似合いだよ・・・」

智子「それでも売れなくて最後には雑巾代わりにでもされるんだよ・・・」

智貴「・・・」

智子「・・・」

智貴「よっこらせっと」

智子「何だよ、出てけよ・・・入場料1分500円取るぞ」

智貴「高っけえな!マジかよ」

智貴「・・・久しぶりだな、こーして姉ちゃんの部屋来るのも」

智貴「昔はよく姉ちゃんが俺の部屋に勝手に押しかけて来たもんだよ」

智貴「俺のカップ麺とかジュース勝手に持っていっちまうしな」

智子「・・・」

智貴「・・・」

智貴「しかし、母さんもずいぶん老けたよな」

智貴「・・・あ、こ、この漫画まだ持ってたのか、懐かしいなー、面白かったよなこれ」

智子「・・・何だよ、何が言いたいんだよ・・・」

智子「アタシの事馬鹿にしてそんなに楽しいかよ!!見下して楽しいかよ!!」

智子「その漫画だって今でも読んでるんだよ、毎日毎日ネットと乙女ゲーだけやって無駄に過ごしてるんだよ!」

智子「私は・・・あの頃と全然変わってないんだよ・・・」

智子「なのに・・・なのにさ・・・皆、変わっちゃって・・・私だけ・・・置いてけぼりで・・・」

智貴「姉ちゃん・・・」

智子「ついこの間まで・・・皆子供だったのに・・・くだらないことばっかやってた筈なのに・・・」

智貴「・・・そりゃ俺だって、昔は楽しかったなーって思うことはあるよ」

智子「何だよ、今だけじゃなく過去のリア充自慢まですんのかよ」

智貴「就職して家を出て初めて気づいたんだけどさ、それまでずっと父さんや母さん、姉ちゃん・・・」

智貴「皆が一緒にいるのが当たり前だって思ってた」

智貴「一人暮らしでこれで俺は自由だー、って最初は喜んでたんだけどさ、何か時々寂しくなっちまって」

智貴「家にいるときはいっつも姉ちゃんが絡んできて喧嘩ばっかしてたから、全然そんな事なかったんだよな」

智貴「当時はうざかったけど、今思うとほんと、楽しかったよな」

智子「うん・・・」

智貴「姉ちゃんにはさ、結果的には、感謝してるんだぜ?」

智子「なんだよそれ」

智貴「俺が高校受験する時の事覚えてるか?」

智子「う・・・覚えてねーよ」

智貴「嘘つけよ、俺の受験の願書出し忘れて、母さんに滅茶苦茶怒られてたじゃん」

智貴「で、俺は姉ちゃんと同じ原幕に行かざるを得なくなった」

智貴「中学の時の奴らと同じトコで、また一緒にサッカーやって・・・」

智貴「それに、嫁とも出会って」

智貴「まあ、嫁とは中学から一緒だったんだけどな、そん時は全然話したりしなかったけど」

智子「初めて家に連れてきたときビビったよ、何時だったかお前が風邪ひいた時に見舞いに来てたビッチじゃんって」

智貴「あのな、人の嫁をビッチとか言うなよ・・・それに確かあの時の俺が風邪で寝込んだのって姉ちゃんのせいだったよな」

智子「私には誰も見舞い来なかったし・・・」

智貴「まああの頃、まさかこいつと付き合って結婚までするだなんて夢にも思わなかったけどな」

智貴「でもあそこで原幕行ってなかったら、俺どうしてたかなって思うことはあるよ」

智貴「俺、学生時代で一番楽しかったのはたぶん高校の時だろうな」

智子「ふん、私はこうなるって見越してたからわざとあの時願書を出さないでいてやったんだ」」

智子「お前の今のリア充生活の基盤を作ってやった私に、夫婦そろって死ぬまで私に感謝し続けろよ」

智貴「・・・そうだな」

智子「・・・キモイ」

智貴「姉ちゃんには負けるよ」

智子「・・・」

智貴「あ、もうこんな時間か・・・」

智貴「そろそろ帰らねーとな、たぶん次に会うのは式の日かな」

智子「私は、絶対行かねー」

智樹「また母さんに張り手食らうぞ」

智樹「じゃあな。」

智子「あ、うん・・・」

智樹「・・・なあ」

智子「ん?」

智貴「結構、似合ってるんじゃねーか?それ」

智子「・・・」

智子「私が・・・!」

智貴「?」

智子「私が一番楽しかったのは・・・多分、中学ぐらいのころまで・・・」

智子「あのときは優ちゃんに小宮山さんに・・・」

智子「一応友達・・って呼べたかどうかもわかんないけど、友達もいて・・・」

智子「今思うと、私なんであの二人にもっと優しくできなかったのかなって・・・」

智子「捻くれたことばっか言って・・・見下して」

智子「自分は本気にさえなれば、何でもできるはずなんだって勝手に思ってて」

智子「でも本当は、何にも出来なくて・・・」

智子「それに気が付いたころには・・・もう手遅れで・・・」

智貴「でも・・・そう思えるってことは、姉ちゃん自身も変わってるんじゃないのか?」

智貴「姉ちゃんは俺のこと、リア充リア充って言うけど」

智貴「そんな何時だって楽しいことばっかな訳ないんだぜ?」

智貴「学校とか部活とか、仕事とか上手くいかない事とかもあるし、むしろそっちの方が多いしさ・・・」

智貴「なあ、姉ちゃん、今の日本人女性の平均寿命知ってるか?86才位なんだってよ」

智子「だからなんだよ」

智貴「姉ちゃん30だろ?人生をサッカーの試合に例えればまだ前半戦すら終わってないんだぜ?」

智貴「前半戦からダメ押しで勝ってる試合より、最後の最後で逆転する試合の方が面白いと思わねーか?」

智子「いっそもうレッドカードで退場させてくれ・・・」

当日

智子「はあ・・・結局来てしまった」

母「智子、せっかくのおめでたい席で暗い顔してないの」

父「智貴たちはもう来ているそうだよ」

きーちゃん「あ、伯父さん、伯母さんご無沙汰しています!」

母「あら、きーちゃん!」

父「きーちゃんか、久しぶりだね、綺麗になったね」

智子「」ソローリソローリ

きーちゃん「智子お姉ちゃん、久しぶり!」

智子「あああ、えっと、その・・・ひ、久しぶり・・・」

きーちゃん「智子お姉ちゃんごめんね、私も子供が産まれてからはなかなか遊びに行けなくて」

智子「ははは・・・き、気にしないで」

智子(きーちゃん確か大学でイケメン彼氏と知り合って学校出て間もなく結婚したんだよな)

智子(あのきーちゃんが今では2児の母・・・)

きーちゃん「智子お姉ちゃん、はいこれ」

智子「え・・・お、お金!?しかも3万も!?」

きーちゃん「伯父さんと伯母さんには内緒」

きーちゃん「智子お姉ちゃん、アルバイトだけだとお金に困ってると思って・・・」

智子「さ、流石にこれは駄目だよこれは・・・」

智子「最低限は稼いでるし、いざとなったらお父さんにお小遣いもらえば・・・」

きーちゃん「お姉ちゃん!」

智子「はい!」ビク

きーちゃん「伯父さんだって何時までも働けるわけじゃないんだよ!?」

きーちゃん「本当ならお姉ちゃんが伯父さんや叔母さんにお小遣いをあげなきゃいけないくらいなのに・・・」

きーちゃん「それでお姉ちゃん、お家にはお金毎月どれくらい入れてるの?」

智子「・・・え?いやその」

きーちゃん「入れてないの?」

智子「・・・はい」

きーちゃん「お姉ちゃん!そんなのでいいの!?」

きーちゃん「伯父さんや叔母さん、口にしないだけで裏でどんな思いしてると思うの!?」

智子「・・・うう・・・」グス

きーちゃん「・・・はっ!」

きーちゃん「ご、ごめんねお姉ちゃん・・・怒ったわけじゃないよ?私はお姉ちゃんの為を・・・」

智子(もう殺して・・・)

写真屋「えーと、新郎のお姉さま?その位置では隠れてしまって集合写真に写りませんよ?」

母「ちょっと、智子何してるのよ」

智子(チッ、ステルスモードで乗り切ろうと思ったのに・・・)





司会「では、新郎新婦によるケーキの入刀です!」

智子(乳頭?)

智子(初めての共同作業だね、ってか?)

智子(どうせ毎晩、夜の共同作業してんじゃねーか)





智貴「まあ、そのさ・・・今まで・・・ありがとう・・・」
母「智貴・・・」ウルウル
父「母さん泣きすぎだよ・・・」ウルウル

智子(おい雄ども、今なら話しかけてくれば相手してやんよ?)

智子(結婚式なんて半分は来客同士の合コンみたいなもんなんだろ?)

司会「えー皆様、ここで新郎のお母様からいただきました粋なサプライズの発表いたしましょう!」

司会「では、スクリーンに映像を」

智子「?」

智貴「?」


「おねーちゃん、おねーちゃん」

智子・智貴「!!!!!!!!!!!!!!」

「おねーちゃんだーいすきー」

「おねーちゃんもともくんすきー」

智子「ゲッ!」

智樹「」

「おっきくなったらねー、ぼくねー、おねーちゃんとけ・・・」

智貴「やめろおおおおおおおおおおお!やめろ・・やめてくれ・・・頼む!」


司会「同じく、新郎のお母様よりいただきました新郎が小学生の頃に書いた作文を・・・」

智貴「やめてくれええええええ!!!」

智子「こうして、私たち姉弟のとんだ醜態をさらす結婚式となった・・・」

智子「あと、きーちゃんからのお小遣いは無理やり受け取らされた」

智子「・・・ゲームでも買って帰ろう」



終わり

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