魔王「さあ…殺れ!」勇者「命を大切にしない奴なんか大嫌いだっ!」 (954)

夜のテンションでスレ立てしちまったああ!

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魔王「さあ…殺れ!」
勇者「命を大切にしない奴なんか大嫌いだっ!死ね!」ズバァ
魔王「ぎぃあああ!?」

魔王「馬鹿野郎!これが最後のチャンスなんだ!俺がこいつを押さえつけている間に、俺ごと殺れ!」グググ

大魔王「おのれ魔王ごときが!」グググ

勇者「嫌だ!そんな事出来ない!早く離れるんだ魔王!」

魔王「いいから殺れ!勇者!」

勇者「うわあぁぁぁぁ!」




こうですか?

勇者「無理だよ・・・・・・、こんなかわいいコをコロすなんて、無理だ!」

スライム「ピギーッ」

魔王「いいから殺れよぉ、そんなつまんない理由で序盤から詰んでんじゃねえよぉ!」

的な展開でお願いします!

勇者「はぁ…結局スライム倒せずに逃げ出してしまった…」

勇者「だいたい訓練も無しにいきなり魔物と戦うなんて無謀だよ」

勇者「…そうだよ、いきなり魔物と戦っても勝てないよ」

勇者「まずは狼とか、そういう害獣を倒して進んでいこう」

勇者「少しずつ慣れていけばいいよね」



魔王「ずいぶんマイペースな奴だな…」

魔王「…あのあたりの獣はスライムより強いんだがな…」

勇者「あの森に狼が?」

村人「はい、前は森に迷い込んだ者を襲っていたんですが、先日ついに村の方にやってきまして…」

村人「幸い死人はでませんでしたが、村長の娘が怪我をしまして、それで男衆で狩りに行こうと」

勇者「…」

村人「勇者様?」

勇者「あ、いえ…その狼の討伐、俺に任せて頂けませんか?」

村人「ほ、本当ですか!ありがとうございます、ぜひお願いします」


魔王「…この地域の狼はゴブリンレベルなんだけどな」

魔王「てか、ほんとにこんなとこで詰むな!」

魔王は勇者の場所把握してんなら、さっさと殺しに行けよwww

勇者「さてと、ここが問題の森か…」

勇者「薄暗いな…魔翌力も濃い…」

勇者「こんなに濃密な魔翌力溜まりに魔物がいないなんて、ちょっと不自然だよな…」

勇者「…考えても仕方ない、警戒しながら進もう」


魔王「発生するスライムや小型ワームを餌にする獣がいるからだっての」

魔王「有能なのに、なんでこうも頭が悪いのかねぇ…」

魔王「…魔物食い過ぎで魔物に変異してないだろうな、その狼」

勇者「…静かだな…」

勇者「狼は群れになる獣なんだし、もっと鳴き声とか聞こえてもおかしくないと思ったんだけど…」

勇者「…」

勇者「今まで出てこなかった村にまで餌を探しに来た狼」

勇者「魔力の濃い森」

勇者「…もしかして」


魔王「…?」

はじめてのおつかいw

>>12
え?どういうこと?

スマホだと時間かかるのでPCに
何回か読み返したけどおつかいの意味が分からなかった
読解力がなくて申し訳ない


勇者「これは…獣の骨だ」

勇者「死んで結構経ってるな…完全に白骨化してる」

勇者「骨に傷もない…」

勇者「…餓死、かな」

勇者「ほかの狼も死んでるのかな」

勇者「死んでなくても、かなり弱ってるかも…」

勇者「少女一人、殺せなかったんだから」


魔王「…ん?勇者生存フラグ?」

勇者「あれから結構探したけど」

勇者「見つかった狼は」

狼「グルルルゥ…」

勇者「一匹だけ」

勇者「ほかの狼はみな餓死したんだろう」

勇者「魔力の濃い森に新しい獣は入ってこようとしない」

勇者「もともと魔物を食って生きてきたのかもしれないけど」

勇者「村の人達が魔物を狩っていったから、餌がなくなったんだろう」

勇者「魔物の発生量は不変だから」

勇者「そして、全ての原因は」

勇者「魔王だ」

>>13
勇者の行動を逐一観察して、なんやかんや言ってる魔王がお母さんみたい。
ってことじゃね?

勇者「魔王の力で活性化した魔物を倒すためには、魔物の素材を使った武器を使うのが効果的」

勇者「スライムや小型ワームならある程度強ければ魔物武器じゃなくても倒せる」

勇者「村では初心者用の魔物武器を作ってるんだろう」

勇者「需要が増えれば、魔物も大量に狩らなくてはいけなくなる」

勇者「…魔物(エサ)がなくなれば、狼は魔物を狩りに来た人間を襲う」

勇者「…」


魔王「…」

勇者「…」ゴソゴソ

つ干し肉

勇者「…」ポイッ

狼「?」ガルルルゥゥ…

勇者「喰え」

狼「…」

勇者「…いいよ、喰え」

狼「…」テクテク クンクン

狼「…」ガブッ

狼「…」ガツガツグチャグチャ

狼「…クゥゥン」ガツガツ ポロポロ

勇者「…なに泣いてんだよ」

勇者「…獣なのに、腹減ってる時の飯はうまいってわかってるのか?」

勇者「…仲間が死んで、自分だけ生き残った無念か?」

勇者「…人間に恵みを受ける不甲斐なさか?」

勇者「…生きる喜びでも…感じてるのか?」


狼「…」ガツガツポロポロ


魔王「…」

勇者「…」スタスタ

狼「…」テクテク

勇者「…なんでついてきてんだよ」

狼「…」

勇者「あのな、せっかく助かったんだぞ」

勇者「人間について行ったら毛皮を剥いでマフラーかコートのファーになっちまうぞ」

勇者「もっと命を大切にしろよ」

狼「ガウ」

勇者「…お前はそんなことしないだろって目で見るな」

勇者「…実際しないけど」

勇者「狼って言ったら、同族でも気に入らないと攻撃するようなプライドの高い生き物だろ」

勇者「飢えてたとはいえ一食の恩を感じるほどの知能だって…」

狼「…」テクテク

勇者「どうなってんだ?」


魔王「中途半端に魔物化した結果だな」

魔王「ましてや人間だって喰ってるんだ、力も知恵もそれなりにあるだろうな」


勇者「…狼討伐に来たのに、対象に懐かれちゃ世話ないよな」

狼「ガウ」

勇者「…凛々しい顔しやがって」

勇者「これじゃ報酬も貰えないなぁ…」

勇者「…!、どうにかなるか、も?」

勇者「確か小さいベルト持ってたはず」ゴソゴソ


魔王「何してんだ?」

村人「報酬をもって、さっさとその獣をつれて行ってくれ」


勇者「追い出された…」

勇者「…仕方ないか」

勇者「お前も、村に入りたくなさそうだったしね」

狼「…」

勇者「お互い、家族の敵なんだもんね」

勇者「直接的なのか間接的なのかは別にしても」

勇者「…行くよ」

狼「ガウ」


魔王「…獣倒して経験を積む目的はどうした」

勇者「今日はここで野宿しよう」

勇者「次の街にはまだ一週間以上かかる」

勇者「途中で馬車に乗れればもっと早いけど…」

狼「ガウ」

勇者「お前がいると乗れるか微妙なんだよね」

狼「ガウ…」

勇者「ま、食料はあるし大丈夫だね」

狼「…」

勇者「はい、干し肉」

狼「ガウ」

ガサガサッ

勇者「!」バッ

狼「…」ガルルル

勇者「前に出過ぎるな」

狼「ガウ」ジリジリ

ガサガサガサガサ…

兎「…」ピョコ

勇者「…ハァ、なんだ兎か」

狼「…」

勇者「…?、あ、いいよ」

狼「ガルル!」バッ

兎「」グシャ

勇者「…oh」

勇者「食欲無くなっちゃった…」

勇者「…寝よう」

勇者「…お前はどうする?」

狼「ガウ」ゴロン

勇者「お前も寝るのか」

勇者「…枕にさせてもらおう」

もふっ

勇者「やわらかい…」

勇者「…zzz」


魔王「…zzz」

勇者「起きたら野犬の群れに囲まれてた」

狼「…」ガルルル

勇者「十…二十…結構いるな」

勇者「全部倒すのは骨が折れるな、揶揄じゃなく」

勇者「困った…」


魔王「…zzz……ふぁ?」

勇者「さてどうしよう…」

勇者「炎で追い払うか…いや、逆に飛びかかってくるかもしれない」

勇者「正面を吹き飛ばして一気に駆け抜けるか…ダメだ、数が多くて道が開けられない」

勇者「どうすれば…」


魔王「まだ詰み方がマシか…

比喩でした…
指摘ありがとうございます


勇者「魔法で動きを止めることなら出来るか?」

勇者

ミスった

勇者「氷で動けなくするか、光で目くらましだな…よし」

勇者「おい、ちょっと目瞑ってろ」

狼「ガウ」ギュ


勇者「退魔光!」ピカァァ!


魔王「うおっ、眩しっ!」

勇者「ハァ、ハァ…なんとか脱出できた」

狼「…」

勇者「…あ、戦わなかったらいつまで経っても戦闘に慣れないままだ…」

勇者「…進歩しないなぁ…」


魔王「勇者観察中に光魔法直視とか、死ぬ気か俺は」

魔王「魔王事故死とか笑えない」

勇者「とりあえず、この先の草原にある川で水分補給しよう」

勇者「煮沸消毒しなきゃいけないし、たぶん今日はそこで野宿かな」

勇者「…昨日からぜんぜん武器使わないな…」


魔王「…いい加減戦えよ」

ザッパァァ…ン

勇者「…デカいな…」

勇者「明日はこの川を渡らないといけない」

勇者「渡し船や橋も見当たらないな…」

勇者「…泳げない横幅じゃないし、たぶん大丈夫かな」

狼「ガウ?」

勇者「あ、お前泳げる?」

狼「…」コクコク

勇者「優秀だね」


魔王「そこには人喰いワニが住んでるぞ」

魔王「今回はどうなるかな」

勇者「よくよく考えたら、地図の川より明らかに大きい」

勇者「草原がメインな感じじゃないし…」

狼「ガウッ…ガウッ…」ダッダッダッ

勇者「ネズミ捕りはいいけど、血で汚さないでよ」

勇者「…俺も飯にしよう」


魔王「腹が減ったな…」

勇者「鍋に水を入れて魔法で火をつけて…」

狼「…」ガサゴソ

勇者「沸騰したら布を通して水筒に…」

狼「…」ガサゴソ

勇者「…なにしてんの?」

狼「ウゥゥ…」

勇者「地面に向かって唸ってる…」



狼「ガウ」

勇者「掘れって?」


魔王「ここ掘れワンワンってか」ムシャムシャ

吸血鬼「魔王様、はしたないです」

吸血鬼「テーブルにつくか食べるのを我慢してください」

魔王「勇魔鏡の台座が高すぎるんだよ」

吸血鬼「水晶覗きながら炒飯を立ち食い頬張る魔王様なんて見たくなかった」

魔王「親しみやすいだろ」

吸血鬼「バカっぽいです」

勇者「よいしょ…よいしょ…」ザックザック

勇者「よっ…と?」ガギン

狼「…」

勇者「なにこれ…」ゴリゴリ

勇者「白い石…というより」

勇者「卵?」


魔王「…なにそれ」

勇者「なにかわからないけど、持ってればいいの?」

狼「…」コクコク

勇者「ふーん…」

勇者「水の補給も出来たし、日が落ちるまでに時間もある」

勇者「周りを探索してみよう」

勇者「渡し船の船頭小屋でもあるかもしれない」


魔王「人喰いワニがいるから船なんてないんだけどな…」

魔王「渡るならかなり上流に行くか、飛ぶしかないね」チラッ

吸血鬼「…」パタパタ

魔王「吸血鬼ってかサキュバスみたいな身体してるよね」

吸血鬼「ヒドい!」

勇者「…歩けど歩けど小屋どころか生き物もいない」

勇者「このあたりに魔物は出ないはずなんだけど…」

狼「…」スンスン

勇者「やたら匂いを嗅いでるけど、なにか匂う?」

狼「ガウ」コクコク

勇者「…」スンスン

狼「…」スンスン


魔王「…」

吸血鬼「匂いまでは伝わってきませんよ」

魔王「わ、わかってるよ!」

勇者「…?、たしかになにか匂う…」

狼「…」スタスタ

勇者「この甘い匂い…花か?」

勇者「にしては香りが強い…むしろ臭い」


魔王「誰だ加齢臭とか言った奴」

吸血鬼「言ってません」

魔王「まだ復活から2年も経ってないぞ?この若々しい肉体にそんな不快な臭いががあるわけ」

吸血鬼「発言はオヤジ臭いですけどね」

勇者「これは…ラフレシアか」

勇者「動物除けの原因はこれか?」

勇者「いや…ラフレシアにしては匂いがましだ」

勇者「魔力の影響でも受けてるのかな?」

狼「…」



勇者「結局なにも見つからなかった」

勇者「向こう岸に行くには泳ぐしかないかな…」

狼「ガウ」ガツガツ

勇者「…干し肉お代わりいるか?」

狼「ガウ」コクコク


魔王「なんで俺が臭いこと確定してんだよ」

吸血鬼「さわやか果実と血の臭いですよね」

魔王「…それ臭くね?」

勇者「…zzz」

狼「…zzz」

勇者「…」

勇者「…なにかいるな」

狼「…」スクッ

勇者「…川から、何か来る」

狼「…」ガルルル


魔王「俺は普段さわやか果実の香りだろ」

魔王「血の臭いがするのは返り血を浴びたときだけで」

吸血鬼「相手の臓物を握りこんで恍惚の表情を浮かべますよね」

魔王「そんなことはしない!」

吸血鬼「しましたよ」

魔王「してないし、しない!」

勇者「なんだ…なにが来るんだ…」

勇者「魔物じゃない…なのにこの魔力量」

狼「…」グルルルッ


魔王「俺そんなに臭いのかな…」

吸血鬼「ほらほら、勇者の方でなにかありそうですよ」

魔王「俺だって身だしなみは気をつけてるんだぞ」

吸血鬼「魔王様??」

魔王「お、俺だって可愛くなりたいし?」

吸血鬼「うわさらっと問題発言」

魔王「臭くないだろ?」

吸血鬼「はいはい」

え?


勇者「こいつは…ワニか」

狼「…」グルルルッ

勇者「まて!、様子がおかしい…」

ワニ「…」ノッシノッシ

勇者「…俺たちを素通りして…花があった方向に向かってるのか」

狼「ガウ」

勇者「あぁ…後を追うぞ」


魔王「いつから俺が女の子ではないと錯覚していた?」

吸血鬼「なん…だとっ…」

勇者「…花の近くでワニが動かなくなった」

勇者「近づいたらおそいかかってくるかもしれない」

狼「ガウ」

勇者「あぁ、まずは様子見だ」


魔王「今日もいい湯だった」ホカホカ

吸血鬼「あ、お帰りなさい」

魔王「勇者は?」

吸血鬼「まだ動きません、この臆病者」

魔王「変なところで詰まれるよりはマシだ」

吸血鬼「そういうもんですか?」

魔王「そーゆーもんだ」

おにんにんについて小一時間問い詰めたい


勇者「動きが全くない…」

勇者「…花を見守っているのか?」

勇者「なんのために…」

狼「…」


魔王「今度は俺のスタイルか、節操がないな」

魔王「二歳児だって甘く見るなよ、歴代魔王の知識を引き継いだ俺には死角はない」

吸血鬼「スタイルはいいですよね」

魔王「そうだろうそうだろう」エッヘン

吸血鬼(筋肉無いから戦闘は魔法頼りのもやしですけどね)

俺っ子耳年増ロリスリムもやしだと!
一生お仕え致します!

>>80 文字に起こすとすごく魅力的ふしぎ


勇者「花かワニか…たぶんどちらかは魔物か、魔力の影響を受けてる」

勇者「…魔力を散らして様子を見てみよう」

勇者「また目を瞑っとけ」

狼「ガウ」ギュ

勇者「よし、退魔光!」ピカァァ!


吸血鬼「うわっ、眩しっ!」

魔王【サン】ω【グラス】

勇者「!、花から魔力が抜けていってる」

勇者「となると、ワニはなんだ?」

勇者「魔物化した花の香りで惑わされて操られていた、ってところだろうか…」

勇者「ワニに魔力源の獲物を持ってこさせていたってところかな」

勇者「近くに人気や野生動物、魔物もいないのはそういう事かも知れない」


魔王「ワニ一匹では説得力が欠けるが、あの花の香りにはドーピング効果があるかも知れないな」

勇者「…ワニがすっげーキョロキョロしてる」

勇者「…けど、全然離れる気配がない…」

勇者「…まるで、花を守ってるみたいだ」

勇者「自分の意志で」


魔王「こーころを何にたとえよぉ?」

吸血鬼「サングラスなんて用意がいいですね」

魔王「さらに伸縮自在の6本の腕と最高の湯加減を保つ火力調整技術を」

吸血鬼「持ってないでしょ、それは人違いです」

魔王「腕は生やそうと思えば生やせるぞ」

勇者「別に操られてないならいいか」

勇者「あのワニが望んでるなら手を出しても野暮だよな」

勇者「よし、関わるのヤメ、明日に向けて寝よう」クルッ スタスタ


ワニ「…」

狼「…」


魔王「俺はそもそも腕立てなんかしないぞ」

吸血鬼「もやしって言ってもバトルスタイルの話ですもんね」

魔王「俺をなんだと思ってるんだ…」

勇者「…待てよ」

勇者「魔力が抜けたのは花からだけだったけど、あのワニだって人を襲ってるはずだ」

勇者「少なからず魔物化してるかもしれない…」

勇者「…いや、花を守ってるだけなら無害な筈だ」

勇者「念のため明日もう一度様子を見よう」

勇者「おやすみなさい…」

勇者「…」zzz

狼「…」

ワニ「…」

狼「…」スタスタ

ワニ「(…さっきの男と一緒だった犬か)」

狼「(狼だ)」

ワニ「(どっちでもいい、なにしに来た)」

狼「(お前はここでなにをしている)」

ワニ「(何故知りたがる)」

狼「(いいだろ、同じ魔物になりかけの哀れな獣仲間が気になるんだ)」

ワニ「(…)」

狼「(長い間、人や魔物を喰らってきた獣は魔力を蓄え魔獣になる)」

狼「(テレパシー紛いの意思疎通が出来るってのが証拠だ)」

ワニ「(ずいぶん詳しいな)」

狼「(勇者からの受け売りだ)」

ワニ「(なのに俺には気づかないのか)」

狼「(どっちかってと、あの勇者は敵意の方に敏感だからな)」

狼「(浄化の光を浴びても、お前は襲ってこなかった)」

ワニ「(…)」

狼「(この花も、もともとはただの花だ)」

狼「(土壌に生き物の血や魔物の体液が染み込んで、それを吸収し続け、この花も魔力を帯び始めてる)」

ワニ「(…この花を狙う奴を殺してきたからな…)」

狼「(なんでた?この花は別にちょっと珍しい程度のモンだろ)」

ワニ「(あぁ、別に生き物を寄せ付ける甘い匂いがあるわけでも、何かの薬になるわけでもない)」

ワニ「(ただ、ちょっと珍しいだけのただの花だ)」

ワニ「(それでも、この花をねらう輩はいた)」

ワニ「(観賞用なんてぬかして摘み取ろうとする奴らを殺した)」

ワニ「(…もう何十年も前からな)」

狼「(!、マジか…)」

ワニ「(少しずつ魔力を得て、俺もこの花も長く生きた…未だに死の影も見えない)」

狼「(大切なのか、その花が)」

ワニ「(…どうなんだろうな)」

ワニ「(話は終わったろう、さっさと立ち去れ)」

狼「(ヘイヘイ、わかりましたよっと)」スタスタ

狼「(…最後にもう一つ)」

狼「(お前、いつまでこうしてるつもりだ?)」

ワニ「(敵に負けて朽ち果てるまで)」

狼「(そうかい)」

狼「(やっぱり大切なんじゃないか)」スタスタ


ワニ「(…)」

魔王「さて、勇者も寝ちゃったし俺も寝るか」

吸血鬼「いいかげん勇者中心の生活を改めていただけませんか」

魔王「そうは言ってもな、政治経済はお前らがやってるし」

魔王「俺としてはやることなくて暇なんだよ、唯一出来そうな軍事系も黒騎士に取られちゃったし」

魔王「…あ」

吸血鬼「どうしました?」

魔王「いやぁ…ちょっとね、勇者のほうが面白くなりそうなんだよ」


魔王「スケルトン大量発生だ」

ワニ「(!)」ビクッ

ザワザワザワ……

狼「(なんだ…これ)」

狼「(さっきのワニの野郎とは違う…もっと多くて、強い魔力の気配)」


ワニ「(…真っ直ぐこっちに向かってるのか)」

ワニ「(途中の木々をなぎ倒して進んでる、この花が狙いじゃなくとも)」

ワニ「(こいつは闘らなきゃダメだな)」


狼「(無茶だ…この気配の量の魔物、たとえ魔獣化してても)」

狼「(…どうする、俺が助けに行っても一対多が二対多になるだけだ)」

狼「(見殺しに…するか)」


ワニ『(敵に負けて朽ち果てるまで)』

狼「…」

スクッ

狼「!」


吸血鬼「!」

魔王「…へぇ」


勇者「また、何か来るな」


勇者「これまた花のあった…ワニがいる場所に向かってる」

狼「…」

勇者「行くぞ」

狼「ガウッ!」

スケルトン集団「「「…」」」ガチャガチャ

ワニ「ググッ」ボロボロ

ワニ「(マズい…勝てない敵じゃないが、数が多すぎる)」ジリジリ

ワニ「(少しずつ押され始めてる…)」

スケルトン「…」ガシャガシャッ!!


ワニ「グッ(クソッ!)」






勇者「雷撃弾っ!」バリバリバリッ!!

スケルトン「」ビリビリビリ

グシャッ

狼「ガルルルッ!!」ブンッ

スケルトン「」グシャッ

ワニ「!」


勇者「おっす、だいぶん苦戦してんな」ザッザッ

ワニ「(お前、なんで)」

狼「(正直俺は来るの悩んでたんだけどな?…)」

勇者「あとは任せな」

狼「(この人は迷わなかったんだよな)」

勇者「闘いたかったら巻き込まれないようにだけはしろよ」

狼「(俺はただの付き添いだ)」

勇者「死んだ生き物相手に手加減なんてする気は無いからな」


勇者「雷光波!!」バリバリバリッ

スケルトン「」グシャッグシャッグシャッ!!



ーーー

ワニ「(…100近くいたスケルトン軍団が、あっという間に…)」

骨の残骸

狼「(そういや、この人の戦い初めて見たな…)」

狼「(…性格に似合わず豪快な戦い、いやむしろ蹂躙?)」

勇者「ふぅ…数が多い分、結構骨が折れたな」


魔王「文字通りな」

吸血鬼「」

なんか知らん間にVIPPERになってる


勇者「さて、敵も殲滅したし、戻って寝るか」

ワニ「…」

勇者「ん?どうした?」

ワニ「グググルル」

狼「!」

勇者(

ミスった…

VIPPERじゃなくてNIPPERだ!


勇者「?」

ワニ「…」ノッシノッシ

勇者「…帰ってったな」

狼「…」

勇者「俺たちも戻るぞ」

狼「ガウ」


魔王「一件落着か、思ったよりアッサリ終わっちまったな」

魔王「俺としてはスケルトン軍団相手に敗北する勇者が見たかったんだがな」



吸血鬼「その割には魔王様、なんだか嬉しそうですね」

魔王「…そうか?」

おいおい…


翌日 河辺
勇者「…」

ワニ「…」

勇者「…背中に乗れって事か?」

ワニ コクッ

勇者「いやでも、泳いで渡れない川でも」


ピラニア「ギャギャギャギャ!!」ビチビチビチ

勇者「…」

狼「…」

勇者「ありがたく乗せてもらおう」

狼「(感謝する)」


吸血鬼「ピラニアなんて一言も無かったですよね」

魔王「だってあそこの生き物で今一番強いのがあのワニだったから」

ーーー

勇者「ふぅ、無事川を渡れたな」

狼「…」

勇者「…ワニ、すぐ帰っちゃったな」

勇者「次に来るときにはお礼しないとな」

狼「ガウ」

勇者「さ、次の街に出発だ」


魔王「次の街ってどこ?」

吸血鬼「えっと、火山の麓にある街です」

吸血鬼「温泉街ですね」

魔王「…」

吸血鬼「…」

魔王「行くぞ!」

吸血鬼「おい待て」

お前らww


勇者「次の街は火山が近いから温泉があるみたいだ」

勇者「久しぶりに風呂に入れそうだな」

狼「ガウ」

勇者「あぁ、首輪しておけばお前も街に入れるはずだ」

勇者「街の人には大きくて牙と爪の鋭い犬だと思ってもらおう」

狼「(大丈夫かな)」


魔王「移動には火竜を使おう、街にいる間は火山に放っておけばいいだろ」

黒騎士「地図と航空写真、用意できましたが…」

黒騎士「どちらか一方で十分なのでは?」

魔王「移動手段が飛行なんだ、航空写真のほうがいい」

魔王「だが他人にそんな物どうやって手にいれたか聞かれたら困るだろう」

吸血鬼「なるほど、地図は周りへのカムフラージュ…」

吸血鬼「…なんでこういう事は的確にうまくやるかな」

数日後

勇者「着いた!この街で休むぞ」

勇者「と、その前に番人にお前のこと言っとかないとな」

狼「ガウ」


勇者「すいません」

番人「あい?なんですかい」

勇者「この街に動物を連れて泊まれる宿ってありますか?」

番人「ん?後ろのそれかい」

勇者「はい、結構大きいですけどこれでも犬」

番人「狼だろ」

勇者「」

勇者「いや、あの、これは」

番人「別に狼だろうとワイバーンだろうとナインテイルだろうと構いやしないさ、人を襲わないならな」

勇者「はい!そりゃもう!」

番人「はは、遠くて悪いが街の向こう側の温泉宿がおすすめだ」

番人「温泉、飯、女将さんも美人だし最高だぞ、獣連れてても大丈夫だしな」

勇者「あ、ありがとうございます!」

番人「おう、いいってことよ」


勇者「…大丈夫だったね」

狼「ガウ」

勇者「まぁいいや、さっさと休みたいし宿に行こう」

狼「ガウ」

ーーー

温泉宿 2号室
勇者「やっと一息つけたな、お疲れ様」

狼「ガウ」

勇者「番人の人が言ってた通り飯は旨いし女将さんも美人だったな、既婚者みたいだけど」

勇者「あとは温泉だ、お前もいいらしいけど来るか?」

狼 コクッ

勇者「よし、行くぞ」

勇者「さて、温泉に入る前に確認だ」

勇者「まずこの宿の温泉は混浴だ、従って中には女性も入ってくる」


勇者「だが、この宿は泊まっている者しか温泉には入れない、そして今この宿に泊まっているのは」

勇者「1号室のお客さんと俺たちだけだ」

勇者「さらに言えば…二人組の女性らしい」

勇者「念の為、お前は出来るだけ鳴き声を出すな、怖がられるかも知れない」

狼 コクッ


勇者「とは言え、今は出かけているそうだし大丈夫だろうけどな」

狼「ガウ」

夜 温泉

カポーン

勇者「おぉ、立派なもんだなー」

勇者「よし、先に体を洗うぞ、それがマナーだ」

狼「ガウ」


勇者「…露天風呂なんて初めてだな…火山が見える…」

勇者「活火山らしいな、火口の方の雲がオレンジに染まってらぁ…」

勇者「あ、動物専用の風呂はそっちだぞ」

狼「ガウ」ザブンッ!!

勇者「飛び込むなよ」

なんか、みんなありがとう


勇者「あ゛ああぁー…生き返る」チャプン

勇者「風呂に入るのは久しぶりだな…ふぅ」

狼「」バシャバシャ

勇者「おいおいはしゃぐなよ」


ガラガラッ

勇者「!」

勇者「(おい、人が来たぞ、静かにしてろよ?)」ヒソヒソ

狼「(わかった)」コクコク

勇者「(絶対吠えるなよ、絶対だぞ)」

狼「(わかったって)」


?「はぁー、今日も絶景だなぁー」

勇者「(女の声、1号室の人かな…一応挨拶だけしとくか)」

勇者「(…湯煙で全然見えない…タオル着用するように言われてるし見ても問題ないよな?)」

?「…はぁ、宿泊客ガラガラだぁ…」

勇者「?」

?「まったく…あのドラゴンの所為だ…早くどっか行くか退治さ…」

勇者「!?」

?「…!!?」

勇者「なっ、なんでタオル巻いてな」

?「きゃああああああああああああぁ!!!」

女将「ごめんなさいね、うちの娘がこんな」

勇者「いえ、その、こちらこそすいません」カオモミジ

?改めて娘「その、なんていうか…」

勇者「あ、謝らないでいいよ、たぶん俺が悪いし」

娘「うぅ…///」 

女将「この子、お客さんのいないときに勝手に温泉に入ってるんですよ」

女将「自分だけだって言ってタオルも巻かないで」

勇者「ははは…」

狼「(やれやれ)」


魔王「俺たちだと思ったか?残念、娘だ!」

吸血鬼「急にどうしました?さっきの温泉卵にアタりましたか?」

魔王「いや、ちょっと言ってやりたくてな」

吸血鬼「宿の女将さんの娘さんがどうしたんです?」

魔王「いや《巨乳》だったな、と」

吸血鬼「」

魔王「汚物を見るような目をヤメロ!」

勇者「ところで、ドラゴンって?」

女将「あら、どこでそれを?」

勇者「さっき浴場で娘さんが」

女将「あぁ、そうですか…まったく困ったものでして」

娘「数日前から火山にドラゴンが居座っているの、それで客足も遠のいちゃって」

女将「コラ、お客さんに愚痴を言ってどうする」

娘「あぅ…」

勇者「ドラゴンなら討伐隊が出てるはずじゃ?」

女将「そうなんですが、まだ日が浅いですからね…この街には実力者も少ないですから」

女将「なにせ相手は火を吹く火竜種ですからね、二、三人ではとても…」

娘「お母さんだって愚痴ってるじゃん」

女将「あ…ごめんなさい、つい」

勇者「いえ…もう少し、詳しく話を聞いても構いませんか?」


魔王「次はあの店に行くぞ」

吸血鬼「ちょ、そろそろ宿に戻りませんか」

魔王「なんの、夜はまだまだ長い!たまには朝まで飲み明かそうではないか!!!」

吸血鬼「ギャアアアアアアアアア」

翌日 未明

勇者「…」ゴソゴソ

狼「…」


娘「なにしてるの?」

勇者「!?」ビクッ


勇者「き、君か、びっくりしたー…」

娘「…出ていくの?」

勇者「あぁ、お金は昨日払ってあるからね…もしかしたらまたすぐ戻ってくるかも」

娘「火山に行くんでしょ?」

勇者「…」

娘「黙ってもダメだよ、なんとなくだけど気づいてたんだから」

勇者「…昨日の話の時?」

娘「お母さんからドラゴンの話を熱心に聞いてるからもしかしてって思って」

勇者「なるほどね…」

狼「(ドジめ)」

娘「普通ドラゴンに一人、と一匹?で立ち向かおうなんて考える人はいないよ」

娘「アナタ、強いんだよね?」

勇者「ま、まぁそれなりには…」ハハハ…



娘「だったら、私を連れて行って」

勇者「ファッ!?」

娘「大丈夫、私これでも魔法は得意だし、ドラゴン相手でも逃げるぐらいは出来るから」

勇者「いやそんな問題じゃ」

娘「私個人的にもアナタに興味出てきたし」

娘「裸見たってお父さんに言っちゃうよ」

勇者「うぐっ…」


娘「アナタがこの街の為に戦ってやられちゃったら後味悪いの、わかるでしょ?」

勇者「…」

娘「…お願い、後方支援ぐらいなら絶対役に立つから」

勇者「危なくなったらすぐ逃げること、絶対に俺より前に出て戦わないこと」

娘「わかった……ありがと」

勇者「ダメって言っても勝手についてきそうだったからな、これで君になにかあったらご両親に顔向け出来ない」

勇者「お前は今回彼女の護衛を頼むな」

狼「ガウ(やれやれだぜ)」


娘「さて、せっかくお母さん達が寝てるんだし今のうちに行こ?」

勇者「あぁ」

狼「!」ピクッ

勇者「?、どうした?」


?「やっと宿に帰れた」

?「あれぐらいでだらしない、お前それでも…!」

魔王「…」

勇者「…」


魔王「おはようございます、昨日は部屋に戻れなくてごめんなさい」

娘「え?あ、いえ、大丈夫ですよ」

魔王「昨日の分の料金もちゃんと払いますから、今日は部屋で休んでますね」

娘「はい、ごゆっくり」

狼「…」ガルルル…

吸血鬼「……この犬畜生が、誰に向かって」


魔王「おい」ギロッ

ゾクッ

娘「ヒッ」ビクッ

吸血鬼「も、申し訳ありません」ビリビリ

勇者「…」


魔王「すいませんね、うちの者が」

勇者「いえ、こちらこそ」

魔王「お出かけですか?」

勇者「えぇ、まぁちょっと」

魔王「そうですか」



魔王「山登りはお気をつけて、どうやら凶暴なトカゲがいるようなので」スタスタ

勇者「…ご忠告ありがとう」

はじめまして、>>1です
私用にて来週月曜から一週間投下を休まざるおえなくなったので、その報告とそれを兼ねたご挨拶とトリップテストを

なんか、ね
思いのほか読んでくれてる人が多いみたいですごく嬉しいです
特に魔王親衛(ストーカー)隊がねww

こんなに自分の作ったキャラが愛されてるのは嬉しいです
自分としては笑えて燃えるバトルSSを目指してるつもりです
まぁ魔王征伐で終わり、なんてことにはしませんが、それなりにハラハラドキドキしてくれたらなと思います

出来ればもうちょっと勇者一行の方にも意識は向けて欲しいですけどねwww

長文失礼しました
今日はここまでとさせていただきます
では、また明日

ーーー

火山 道中

娘「あの、どうしたんですか?」

勇者「なに?」

娘「さっきの女の人と話してから…なんていうか、ピリピリしてるじゃないですか」

勇者「そう?」

娘「特に口数が減りました」

勇者「…」

娘「…」

勇者「あの人の魔力量、尋常じゃなかった…まるで魔物みたいに」

娘「…他人の魔力量がわかるんですか?」

勇者「じっくり、相手の瞳の色を観察するぐらい集中しないと出来ないけど、わかることはわかる」

勇者「けど、あの人を前にしたときにはすぐにわかった…膨大な魔力に押しつぶされるような錯覚を覚えるくらい」

娘「…」ゴクッ

勇者「このドラゴンの一件、黒幕なんて人聞きの悪いことは言わないけど、あの人もなにか無関係じゃないような気がするんだ…」

娘「……そういえば、狼さんも威嚇してたよね」チラッ

狼「…」スタスタ


狼「(…あの異質な匂い、染み付いた返り血の匂い、間違いなく殺人経験者だ)」

狼「(魔力だけじゃない…あいつはなにか、とにかくヤバい奴だ)」


魔王「着いてきてた連中はどうした」

吸血鬼「ゾンビ一党はカメラやら持って何処かへ、黒騎士はわかりません」

魔王「そうか」

吸血鬼「…よかったのですか?勇者一行を火山に行かせて」

魔王「実力で言えば十中八九勇者が勝つ、だが火竜種は火口に落とせば復活する、帰りは心配ない」

吸血鬼「そうではなくて」

魔王「…結局、勇者が生き物相手に戦えるかの最終テストだ」


魔王「命を粗末に出来ない奴に世界は救えないんだからな」

…GYAOOOOoooo…

勇者「!!」

娘「!!?」

勇者「聞こえた?」

娘「うん」

勇者「火口付近で戦う事になると思ってたけど、案外早く会えるかもね」

娘「声が聞こえたのって、この洞窟、だよね」

狼「…」

勇者「…行くよ」

娘「うん」

火山 洞窟内

娘「すごい熱気…マグマが出てきてる…」

勇者「おかげで洞窟内も明るい、それに」

狼「…」グルルルル

勇者「奴さんもよく見える


火竜「GYAOOOOOOOO!!!」

娘「ッ」ビリビリビリ

勇者「下がって、言ってたように援護だけに専念して、水魔法中心で頼む」スラァ

娘「了解…その剣は?」

勇者「聖剣」

娘「…え?」



勇者「行くぞっ!!、烈風斬!!」ブオオオオオ

狼「(!!、バカっお前…っ)」

火竜「GUOOOOOO!!!(火炎砲!!)」ゴオオオオオッ!!

勇者「っ、危っ」

娘「水傘壁」バッシャアアアン

ジュウウウ…

狼「(!、ドラゴンの炎をあの子が出した水の壁が鎮火させた)」

勇者「サンキュ」

娘「もうちょっと慎重に」

勇者「はい」ダッ


狼「(…なるほど、ドラゴン相手に逃げ切れると言っただけはあるな)」


勇者「風迅剣、烈風波」コオオオオオ

火竜「GRUAAAAAA!!!」

やっぱり携帯だと打ち込みにくい


狼(後衛の守り役である以上俺は自分から戦えない)

ブンッ

狼(!…
 …火竜が尾をしならせ振り回す度
 息を吸い込み炎を吐き出す度に身を竦ませて、目の前の戦う後姿を見守るしかない)

娘「水傘壁!、石針壁!」

狼(この子もよくやってる
 炎は水で相殺、尾や爪の肉弾攻撃はカウンター込みの守り
 …いい戦闘センスだ)

狼(それに…)

勇者「フンッ!!!」ブンッ

ズパンッ

火竜「GYAAOOOOOOOOO!!!!」

狼(剣を使っているのも初めて見たな…
 スケルトン軍団相手の蹂躙とは違う、しっかりと重みのある攻撃だ

 …あの人戦えたんだな)

火竜「GYAUUUU…」ボロボロ

娘「すごい…本当に一人でドラゴンを」

勇者「最初のアレは危なかったけどな」

娘「まぁね…でも、そもそも竜と戦うのも初めてなんでしょ?
 攻撃パターンも知らなかったって…
 そんなの知ってたら私絶対ついて来ないよ」

勇者「ハハハ」

娘「無謀すぎ」

勇者「面目ない」

娘「さ、早いとこトドメを刺して帰ろっ」

勇者「ん?」


勇者「トドメは刺さないぞ」

狼 ビクッ

娘「…へ?」


娘「え……ちょっと待って、何言って」

勇者「だってまだ直接は害無かったんだろ?
 これだけ痛めつけておけば元の住処に戻るだろうし
 そのためにほら、翼には攻撃してない」

火竜「…」

娘「いや…ちょっと待ってよ、そんなことしないでここで殺せばいい話じゃんか」

勇者「ドラゴンは魔物じゃなくて獣の類だ
 しかも火竜種は火山でしか長期生存できないから普通害獣指定も受けない
 今回のケースは運が悪かったけど、たぶんこれからもなかったと思うぞ」

娘「あのね!、旅人はそんな情報知らないの!
 知ってても普通ドラゴンがいる火山の近くなんてゆっくりして行こうなんて考えないでしょ
 まだ客足が遠のき始めて数日だからいいけれど、
 これが二か月三か月と伸びてたら下の温泉街の他の人たちも仕事が無くなってたの!
 こいつが害獣じゃないわけが」

勇者「待て」ガバッ

娘「ムグ!?、モガガ!」


勇者「…あいつ、どこ行った」


火山洞窟外 山道

狼 ガルルルルル

黒騎士「…気配を察知して牽制しに来たのか、まるで忠犬だな」
 …だが、お前では私には勝てん」

黒騎士「退け、お前を掃除する一瞬すら惜しい」スラァ…

狼「…」

スッ

黒騎士「………ククク、忠犬というのは撤回しよう
 だが思ったより物わかりが良くて賢い」

黒騎士「命拾いしたな、獣」スタスタ

勇者「!」

黒騎士「あぁ…そこにいたか」

娘「何、誰アナタ」

黒騎士「ただの魔族だ」


黒騎士「ただ、お前らの敵ではあるが」

ゾワッ

勇者「っ、逃げろ!」

娘「え、あ…え?」

勇者「もし出来るなら一号室の人に助けを頼む!早く」

黒騎士「『黒炎煉舞』」

勇者「行け!、『烈風斬』!、『雷光――』」

その一瞬は一生掛けても忘れられないと思う

彼が光弾を撃ちながら突撃する背中越しに見えた、鎧の男から放たれた黒い炎

それは敵として立ち向かう彼に向けられたものではなく

娘「あ」

私に向かって飛来していた


それを

勇者「―――」

身を以て受けた彼の姿

娘「ひっ」

…ドサッ

娘「きゃあああああああああああああああ!!!」

娘「イヤ!イヤアアアア!!!」

黒騎士「肺を貫いたな、他愛ない
 …だがよく反応した、いや、出来たな
 さすが勇者、と言ったところか」

ピクッ

娘「…勇者?」

黒騎士「あぁ…知らなかったのか
 そいつはまさしく、魔王の不安要素の中で唯一、個人で指定されている存在だ」

娘「そういえば、さっき雷光魔術を…」

黒騎士「…なんだ、目の前の惨状より隠し事されてたことのほうがショックだったか?」



娘「…助けられる…かな」ボソッ

黒騎士「…なんだと?

スゥ……

娘「…『仙癒光』」ポゥ…

黒騎士「なっ!、貴様!」

バッ

黒騎士「…なんのつもりだ、犬」

狼 ガルルルルルル

黒騎士「…」

娘「…」グッ 勇者


黒騎士「……興冷めだ」クルッ

スタスタ

黒騎士「おい」

火竜「…」

黒騎士「…起きろ」ギロッ

火竜 ゾクッ 「GAAAAA!!」

黒騎士「乗せろ」


バサッバサッ

黒騎士「勇者が目を覚ましたら伝えろ
 『魔王を倒すつもりなら俺の3倍は強くなければならない』とな」

娘「…」


勇者「…」

温泉宿 2号室

勇者「…ここは」

娘「麓の宿、連れて帰ってきた」

勇者「…あいつは」

娘「黒い鎧の男はドラゴンに乗って帰って行った
 狼は外でぶらぶらしてる」

勇者「そうか…」

娘「…」

勇者「…」

娘「アナタ、勇者だったんだね」

勇者「…あぁ」

娘「別に言う必要もないし、隠してたんじゃなくて言ってなかっただけでしょ?」

勇者「あぁ……あいつは知ってたのか」

娘「知り合いじゃないの?」

勇者「初対面だ」

娘「アイツから伝言
 『魔王倒したかったら俺の三倍は強くなってみろ』だって」

勇者「…」

勇者「俺、致命傷だったろ…どうやって助かったんだ?」

娘「…回復魔法」

勇者「!、使えるのか!?」

娘「私の光魔法だけじゃ治せなかった
 アナタの体の中の光魔法の因子を活性化させる方向に使ったら、割とあっさり治った」

勇者「そうか…俺は回復魔法は習得できなかったから…」


勇者「本当にありが」
娘「そうじゃないでしょ!」

勇者「へ?」

娘「そもそも、アナタが私を庇ったからあんなことになったんだから」

勇者「そだけど…しょうがないことだろ、あれは」

娘「私がついて行かなければあんなことにはならなかった」

勇者「ついてこなかったらドラゴンの最初の一撃で沈んでる」

娘「狼はいた、私の守りに入ってなかったらたぶん助けに入ってる」

勇者「そんじゃ一人と一匹は今頃ドラゴンの胃袋かマグマの中だ」

娘「うぐぐぐぐ…」


勇者「…感謝されることはしただろうけどな、俺は聖職者じゃないんだ
 悪いけど懺悔は受け付けないぞ」

娘「…」




娘「勇者って聖職じゃないの?」

勇者「…あ、そうか」

勇者「まぁ…な
 結果オーライなんて無責任なことは言わないけど、君が俺を助けてくれたんだしプラマイゼロ、な?」

娘「ゼロなわけないでしょ!、アナタ死にかけたんだから」

勇者「貴重な体験だったって思うよ、臨死体験」

娘「もおおおおお…バカッ!」

勇者「ハハハ…それでもさ、お礼言わせてくれよ」


勇者「ありがとう、やっぱり君を連れて行って正解だった」ペコッ

娘「……私も…ごめんなさい
 それと、本当にありがとう、私と、この街を助けてくれて」ペコッ

コンコン

女将「失礼します…あら、目が覚めたんですね」

勇者「あ、はい…ご迷惑おかけして申し訳ない」

女将「いーえ、それはこちらのセリフです」チラッ

娘「うぐっ…」

女将「火竜討伐なんて無茶をなさるような実力者のお荷物になりに行くなんて全くうちの娘は」

勇者「お、女将さん!」

女将「はい?」

勇者「あまり責めないであげてください、連れて行ったのは俺ですし、死にかけたところを助けてくれたのは彼女ですから」

女将「…」

女将「それを差し引いても、貴女にはお話があります…家族として」

娘「…はい」

女将「勇者さん?温泉に入っていらっしゃいな、うちの温泉は傷にも良いですよ」

娘「傷口は塞がってるから、大丈夫だよ」

勇者「…わかりました」スクッ

スタスタ バタン

娘「…」

女将「…」

娘「勝ったな」

女将「ああ」

温泉街

狼「…」トボトボ

ウオッ!?オオカミジャネーカ

オカミサントコノキャクノツレダトヨ

オソワレナイヨウニナ、チカヅクナヨ

ザワザワ…

狼「…」


狼(あの黒い鎧の男…確実に勇者より強かった)

狼(この先、魔王討伐の旅路にはあんなバケモノがゴロゴロいる)

狼(恩を感じてついてきている俺に途中離脱の考えはない)

狼(だが…俺はあの人の足手纏いになりはしないだろうか?)

狼(いざという時、あの人は獣の俺を救おうと身を挺しかねない)

狼(…)


?「…」テクテク

?(あー、落ち込んでます!って感じの子がいる)

?(…見たところ、大昔に王都近くの村で信仰されてた種っぽいな)

?(いいなー、フサフサの尻尾とかモフモフしたい、肉球をウニウニしたい、全体的に撫で回したい)


?(てか、飼いたい)


狼「!?」ゾクッ

狼 ダッ

?(あ、走り出した)

?(気づかれちゃったかな?まぁいいや)

?(ゆっくり仲良くなればいいよね)



狼「ハッ、ハッ、ハッ…」

狼(なんだ、今の悪寒は…)

狼(なんて粘っこい気配、一切悪意を感じないのも質が悪い)

狼(…嫌な汗かいちまったな)


狼(…戻るか)

温泉

チャポン

勇者「痛っ…はぁ…」

勇者「…久々に全身を使った戦闘をした気がする」

勇者「いつも魔法で足止めか浄化魔法で一掃だったからな」

勇者「剣を使ったのも…訓練、いや試験以来か」

勇者「…王都の神官様、元気かな」

勇者「師匠は…絶対元気だな」

勇者「…」

ーーー
娘「害獣じゃないわけが…」
ーーー

勇者「そもそも、俺は魔王という害敵を倒すために…」

勇者「殺すために旅にでているんだ」

勇者「スライム一匹に躊躇して、ドラゴン相手に非情になりきれない」

勇者「…俺は……」


ガラガラッ

勇者「!」

勇者「…」

 ヒタヒタ…

勇者「……」

 ヒタヒタ…

勇者「……ごめんなさい、俺あがりますね」


魔王「いえ、構いませんよ

  ちょうどアナタと話したいと思っていたところですから」


今日はここまで
携帯だと文字打つのが面倒なんでたまに酉無しのレスがありますけど、IDの方で確認してください

魔王はタオル巻いてますよ
マナーは守るべきですからね

その女性は魔族だった

人間の中ではそこそこ魔力量の多い俺や
あの黒騎士を優にしのぐ魔力量を持っていた

魔族特有の原色の髪は赤く
長く美しい様は火竜の尾を連想させた

魔王「巨より美が大事なんだ」

勇者「はい?」

魔王「こっちの話だ、気にしないでくれ」

彼女はそう言って湯船に入ってきた

僅か4mの距離

それでも俺は、身動き一つとることが出来なかった


魔王「無事に火竜を倒したんですね」

勇者「いや…まぁ、追い払っただけですけど」

魔王「十分凄いじゃないですか、この街にはそんな実力者はいませんもの」

勇者「……」

魔王「ひとつ、手合わせしていただけませんか?」

勇者「そんな」

魔王「竹刀というものを知っていますか?東の国で木刀の代わりに剣の稽古で使われるものなんですが、それなら怪我もしません」

勇者「俺魔法ありきの戦闘スタイルなんで」

魔王「そうですか?残念ですね…」

魔王「…私は普段魔法しか使いませんけどね」

勇者「あなたも相当お強いはずだ」

魔王「いえいえ私なんて」

勇者「魔法だけの戦闘スタイルで"南"からよく来れましたね」

魔王「連れが強いんですよ」

勇者「ヒエラルキーはあなたが上のようでしたけどね」

勇者「あなたの魔力量なら大抵の魔法は使えるでしょう」

魔王「どうしてそれを?」

勇者「…ちょっとした特技です」

魔王「そうですか…確かにある程度は使えますよ」

勇者「ドラゴン相手にも闘えるでしょう」

魔王「なにが言いたいんですか?」

勇者「どうして倒しに行かなかったんですか?」

魔王「ドラゴンは害獣じゃないですからね、その内どこかに行くだろうとも思っていました」

勇者「……本当ですか?」

魔王「嘘を言ってどうするんですか」クスクス

勇者「あのドラゴン、あなたの支配下にあるんじゃないですか?」

魔王「……」

勇者「……」


魔王「どうして?」

勇者「あんなに弱い火竜はいません、一撃くらいなら耐えられるぐらいには弱体化していた」

魔王「誰かの支配下にあると主が側にいないとき半分近くの力しかでない、というあれですか」

勇者「あなた達がこの街に来たのと、ドラゴンが居座り始めたのも同じころだそうなので」

魔王「なるほど……えぇ、確かに自分たちのドラゴンですよ」

魔王「あと数日もしない内に街を発つつもりでしたから、そんなに気にもしてませんでした」

勇者「……」

魔王「それで、どうします?街の憲兵にでも突き出しますか?」

勇者「……」



勇者「申し訳ない!」ガバッ

魔王「…え?」

勇者「火竜の生態を知っていながらぶちのめしたあげくよくわかんない奴(黒騎士)にドラゴンを奪われてしまって」

魔王(黒騎士なにしてんだ)

勇者「ドラゴンに乗ってきたなら、さぞ遠いところから来たんでしょ?帰りの足を潰してしまった…」

魔王「あ、いや、問題ない…帰りはどうとでも…」

勇者「いやでも!」

魔王「あぁ…うぅ…」シドロモドロ

魔王「まぁ、どうしようもないことだからな、気にするな」

魔王(黒騎士が回収してるなら結局帰れるもんなぁ)

勇者「そうですか?…本当にごめんなさい」

魔王「あぁ…」

勇者「…普段はそんな口調なんですか?」

魔王「ん?あぁ……あ」

勇者「凛々しいですね」

魔王「お、おぉ」

勇者「…そっかー、ドラゴンを従えるほど強いんですね…すごいなぁ」

魔王「それほどでも…」

勇者(それに…綺麗な人だ…)


魔王「…お、お前こそドラゴンと闘って勝ったんだろ?十分すごいじゃないか」

勇者「まぁ、手助けもありましたけどね」

魔王(スライム相手に逃げた時は情けない勇者だと思ったが)

魔王(やるときはやる男なんだな…)

?「~♪」テクテク

?(女将さんの宿にいるんだっけ、そこに行けば会えるはず)

?「オ・オ・カ・ミ・く~ん」

ドン

?「ひゃっ」ドテッ


黒騎士「む、済まない」

?「あ、いえいえ…」パッパッ

黒騎士「…」ジィ…

?「…?」

黒騎士「…珍しい剣を持っているな」

?「あ、わかります?おじいちゃんの形見で、研がなくても大丈夫なんですよ」

黒騎士「…そうか」


黒騎士「大切にしろ、盗もうとするやつは容赦なく殺すぐらいのつもりでな」

?「はい!……へ?」

?「…その首から下げてる物はなんですか?」

黒騎士「これか、…この辺にはこんなカラクリはないのか」

?「ない」

黒騎士「これはな」


黒騎士「…」

?「…?」


黒騎士「出てこい」

狼「…」ガルル…

黒騎士「…奇遇だな、こんなに早くまた会う「あ!狼くん!」」

狼「!?」

?「捕まえたぁ~♪」ギュゥ

狼「モガッ」ジタバタ

?「もふもふぅ~」モフモフ

狼「…!……!」アガガ

黒騎士「…」

黒騎士「…苦しんでるぞ」

?「あ、ごめん!そんなつもりじゃ」パッ

狼「ぜぇ…ぜぇ…」

黒騎士「…また命拾いしたな」フッ…

狼(うぜええええ)


?改めて少女「この可愛い子の飼い主さんがいる宿に行くんだよ」

黒騎士「そうか、私もそこに用がある」

黒騎士「安心しろ、お前等には関係ないことだ」ボソッ

狼「…」

少女「それじゃ、みんなでレッツゴー!」


狼(兜を外した状態じゃこの男をあの黒騎士だと気づかないだろう)

狼(万が一の場合は、俺が守らなくては…)

黒騎士「…」

ところもどって
温泉

魔王「そうか、魔王討伐の旅か」

勇者「はい…でも、やはり世界は広い。勝てない敵もまだまだいるんだろう…とか考えてしまう」

魔王「…」


魔王「お前がそうやって悩んでいる間は、助けられた者は自分の無力を呪い続けるだろうな」

勇者「!」

魔王「戻ってきた時にね、娘さんが泣きながら私の所為だ、とか言ってるのを聞いてたからね」

勇者「そんなことを…」

魔王「…もう少し気楽でいいんじゃないか?」

魔王「魔王討伐なんてでっかいことしようとしてるのに、魔獣や魔物倒すのに躊躇うってのもねぇ」

勇者「うぐっ…」


魔王「勇者なんだろ?勇ましく行こうよ」


勇者「勇ましく…」

魔王「…」


魔王「火山を越えた先に小国がある。そこで行われる祭があってな」

勇者「?」

魔王「武闘会さ、戦うんだよ」

勇者「そ、そんな危険な祭が」

魔王「死にはしないさ、参加者には特殊な魔法で命のストックが作られるそうだからな」

魔王「でだ、力試しに出てみたらどうだ?自信はつくだろう」

勇者「…」

魔王「…」

ザバッ

勇者「!?」

相変わらず温泉からの蒸気は凄い
今日に至っては露天なのに外が見えないくらいだ

だけど、4mも距離がなかった俺には
彼女の姿はよく見えた

よく見えた


魔王「俺を倒すならな、それぐらいやってみろや」

人を喰ったような邪悪で、どこか無邪気な子供のような笑顔を浮かべた彼女は
そのまま温泉から出て行った

俺はしばらく身動きがとれなかった
話に聞いた、魅了の状態異常の症状に似ていた

なにより

勇者「…顔真っ赤にして、恥ずかしいならやらなきゃいいのに」



大きくはなかったが、確かに美しかった

宿 ロビー

吸血鬼「あ、魔王様!どこに行ってたんですか!?」

魔王「最後に温泉入ろうと思ってな…黒騎士はどうした」


少女「お邪魔しまーすっと」

狼 ビクッ

黒騎士「む」

少女「あ、お姉さん。ここの人ですか?」

吸血鬼「い、いや違うぞ」

少女「そうですか、じゃああっちで待ってよ?」タッタッタッ

狼「…」ズルズル


魔王「…黒騎士、勝手な行動は慎め。ましてや勇者と戦闘したようじゃないか」

黒騎士「…申し訳ありません」

魔王「まぁいい。…例の物はどうした」

黒騎士「こちらに」スッ

吸血鬼「?、なんだそれは」


吸血鬼「…カメラ?」

魔王「現像は」

黒騎士「されておりません」

魔王「写っていたか?」

黒騎士「もやで見えませんが、編集すればあるいは」

魔王「ならいい、よくやった」

黒騎士「この程度の仕事…」

魔王「そういうな」

吸血鬼「なにか撮影を頼んでいたんですか?」

魔王「…まぁ、勝手にな」

吸血鬼「?」


魔王「この地にはもう用はない。帰還するぞ」

黒騎士「火竜はまだ全快しておりませんが」

魔王「三人乗れれば問題ない」

吸血鬼「え、死人どもはいかがなさいますか?」

魔王「ほっとけ」

少女「飼い主さん来ないねー」

狼(早く来てくれ…)

少女「…君、やっぱり賢いね。普通ならもっと暴れるよ?」

狼(本気で暴れたらそっちが怪我しちまうだろうからな…)

少女「うん、やっぱり君は私の言ってること理解してるね」

少女「君みたいな子に側に居て欲しいんだよ」

狼(?)

正直に言わせていただきますと
僕自身、このスレッドでこんなことになるとは思いませんでした

今までに何人かの方が書き込んでおられましたが、こんなに読んでくださってる人同士が仲のいいスレッドは僕も見たことがありません

なので、レスが増える度に僕はニヤニヤしる一方、
とても嬉しかったです

安価、コンマスレとは違う形で、参加型のSSの新しい形なんではないかと僕は考えています

書き込みはとても励みになりますしありがたいです
もちろん限度はあるでしょうし、他の方の気分を害するものはやめて欲しいですが、
いまの形は>>1としてもとても楽しいです


続けてくださって構いません
一緒に楽しみましょう(*´∀`)  by>>1

勇者「…」スタスタ

狼 ピクッ

少女「あ、あの人が飼い主さんだね?」

狼(…そうだけど)

勇者「…」ボンヤリ

狼(なにがあった…)


少女「あの、ちょっといいですか?」

勇者「うん?…なんだい?」



少女「この子を私に下さい!」

狼「ギャン!?」

勇者「えっと…どゆこと?」チラッ

狼(俺を見るな…)

少女「この子はとても賢いし強いでしょ?だから私の側でずっと守って貰おうって」

少女「この子の飼い主さんなんですよね?」

勇者「いや…こいつは勝手についてきただけだし。別に飼ってはいないけど…」

狼(な、こいつ…)

少女「じ、じゃあいいんですね!?」

勇者「でも、こいつとはもう仲間なんだ。悪いけど諦めてくれ」

狼(……)


狼(仲間…)

勇者「そもそも、君はまだ子供だろ?お供を連れてどこに行くつもりなんだ?」

少女「いろんな所、私はいろんな出会いをしたいの。そのためにボディーガードとしてこの子を選んだの」

勇者「どうしてこいつを?」

少女「かっこいいから」

狼 ザワッ

少女「かっこよくて強くて賢くて繊細で逞しくて正義感と責任感が強いこの子に惚れたの。ラブ、ぞっこん、一目惚れ。大好きなの、もうこの子しか考えられない!」

勇者「そ、そうか」

狼 ガクガクブルブル

勇者(まぁ、こうなるよな…)

少女「でも、この子も嫌がってるみたいだし、諦めるしかありませんね…」ションボリ

勇者(なぜだろう…全然可哀想とか思えない)


少女「それじゃあ、一つお願いを聞いてくれませんか?」

勇者「お願い?」

狼(いやな予感しかしねぇ…)



少女「あなた達の次の目的地まで同行させてほしいの」

少女「さっきも言ったとおり目的地は無いの。ただこの街から移動して、他の土地に行ってみたい」

勇者「ようは付いて来たいんだな?」

少女「その通りでございます」

勇者「……」チラッ

狼「……」

勇者「もし断ったら?」

少女「一人で適当な街に向かう」

勇者「……」



勇者「次の街までだぞ?」

少女「アリガト!」

狼(一人旅は危険だ、けどこの子ならやりかねない)

狼(仕方ないか…)

勇者「明日の朝にはここを出るつもりだから、準備はしておきなよ?」

少女「はい!ありがとうございます!」

狼(このやりとりだけなら、しっかりしてる女の子で済むのにな…)ブルッ…


勇者「さて、部屋に戻りたいんだが」

………ーーー、ー……

勇者「女将さんたち、まだ話をしてるみたいだ」

勇者「盗み聞きもよくないし…」

ーーー
魔王「火山のむこうにある小国…」

魔王「そこで行われる祭り…」
ーーー

勇者「……ちょっと、調べてみるか」

少しだけ時間を遡って
温泉宿 2号室

女将「私が何を言いたいのかわかってる?」

娘「……勝手に回復魔法を使ったこと」

女将「違う」

娘「……何も言わずに出て行ったこと」

女将「それも叱らないといけないけど、それよりも」

娘「……」

女将「勇者さんの足手まといになりに行ったことです」

娘「っ」

女将「ドラゴン討伐には国から認められるほどの実力者でも敬遠するほどの危険がつきものなの」

女将「なのにあなたは、まだ『傘壁』と『針壁』しか使えないような素人魔法使いなのよ」

娘「……ごめんなさい」

女将「……」


女将「彼が勇者だって聞いて、あなたはどうするつもり?」

娘「どうって…」

女将「勇者の伝説、よく聞かせてあげたわよね」

娘「……」

女将「歴史上の勇者や魔王達の逸話」

娘「覚えてるよ…」

女将「勇者の仲間には、どんな形であれ必ず聖者がいるのも、教えたわよね」


女将「癒しの光の魔法が使える聖者が、勇者の危機を救うお話。あなた好きだったでしょ」

娘「……」

娘「…正直、悩んでる」

娘「お母さんの言った通り、私は足手まといにしかならなかった」

娘「だけど…」

女将「……勇者様について行くつもり?」

娘「お母さんの言った通り、勇者と聖者のお話にあこがれてる部分もある」

娘「でも私が言いたいのは、そんな浮ついた気持ちじゃないの」


娘「この街を助けてくれたあの人に、もっとなにか…恩返しがしたいの」

女将「…」

娘「……」


女将「…いつか、こんな日が来るんじゃないかとは思ってた」

娘「それじゃ」

女将「だめです」

娘「……」


女将「と言っても、どうせまた黙って出ていくつもりでしょう」

女将「…覚悟はできてるんですね?」

娘「…うん」

女将「はぁ…」

女将「たとえ縛りつけてもあなたなら簡単に解いてしまうでしょうし」

女将「あいにく私は封印魔法は使えません」

娘「そこまで…」


女将「止められないなら、送り出すしかないじゃないでしょう」

娘「……ありがとう、お母さん」

女将「とはいえ、確かにあなたは弱すぎます。まだ攻撃呪文も覚えてないでしょう」

娘「うぐ…」

女将「なので、まずは実力をつけなさい」

娘「けど、たぶん勇者明日にはこの街を出ちゃうよ!?」

女将「大丈夫、彼の行先は決まっていますから」

娘「え?」

女将「火山の向こう側、草原と森を越えた先にある小国です」

娘「なんでそんなこと?」

女将「…それよりも、勇者様について行くなら一つだけ条件があります」

娘「…条件?」


女将「その小国で行われる武闘会で、結果を出し賞品を手に入れること」

女将「もしこの条件を達成できなかった場合、勇者との同行を認めません」

女将「そのときは足の骨を折ってでも止めます」



女将「……いいですね?」

娘「……」コクッ

温泉街

勇者「…武闘会の賞品?」

番人「おぉ、火山の向こう側、草原と森を越えた先にある小国である武闘会のな」

番人「毎年百以上の参加者が10位以上の賞金と5位以上の賞品を狙って戦うんだ。たまに腕試しの奴なんかもいるがな」

番人「でだ、今年その大会の賞品のうち、2位と1位の賞品が桁外れに高価値なものなんだって騒がれてる」

勇者「賞品が、ねぇ」

番人「目安的に聞けよ、去年の1位の賞品は金剛竜の角で作られた大剣だ」

勇者「!、すごいですね」

番人「でだ、まず今年の2位の賞品がその金剛竜の卵なんだ」

勇者「えぇ!?」

番人「それにな、1位はもっとすげぇんだよ」


番人「魔剣だよ、魔剣」

勇者「……え?」

番人「お、スケールでかすぎて驚くに驚けないか」

勇者「え、あの…あの魔剣ですか?」

番人「あぁ、銘は知らないがかなり強力な魔剣だそうだ」

勇者「…魔剣、か」

上空600m ドラゴンの背の上


魔王「魔剣?」

黒騎士「は、小国の武闘会の賞品として出ているようで」

吸血鬼「万が一、勇者がそれを手に入れると聖剣と魔剣を持つ勇者を止めるのは困難になりますね…」

魔王「そうだな…」

魔王(まじかよ、そんなの知らないってばよ)

魔王(ただ自信無くしてるっぽかったからちょっと励ます意味合いで…)

魔王(………)///フシュー…

吸血鬼「ま、魔王様!お気を確かに」

魔王「はうっ!」

黒騎士(……)

魔王「とにかく、勇者にそれを取られるのはきついな…」

黒騎士「いかがいたしましょう」

魔王「…黒騎士、勇者と戦ってみてどうだった」

黒騎士「は?」

魔王「いいから」

黒騎士「…実際に剣を交えたわけではありませんが、私の『黒炎煉舞』に反応していました」

黒騎士(庇うものが無ければ簡単に避けれただろうな)

魔王「ふむ……」


魔王「黒騎士、お前の腕の立つ部下2名ほどをその大会に出場させろ」

黒騎士「となると、金剛竜の卵も?」

魔王「あるなら、貰っておこうではないか」ニタァ

ザワザワザワ……

翌朝 温泉街出入口

勇者「…ん、来たか」

タッタッタッ

少女「お待たせしました、出発しましょう」

勇者「もういいのか?」

少女「はい、施設でも一人だったし」

勇者「そうか…」

狼(可哀想だけど、なんで弾かれていたのかはわかる…)ダラダラ


魔王「っと、ひさびさの魔王城だな」

吸血鬼「…?、留守を任せてた側近がいませんね」

黒騎士「念のため勇者の監視を頼んだ」ガチャガチャ

黒騎士(あと屍の監視も)ガチャガチャ

魔王「黒騎士、鎧がうるさい」

吸血鬼「魔王様の側にいない側近って…」

魔王「まぁ、アイツは戦闘のパートナーの役割の方が主だったからな」

勇者「次の目的地は森に囲まれた小国だ」

勇者「そこまでは2週間ぐらいかかるけど、大丈夫か?」

少女「大丈夫、私火山を登りきったこともあるし」

勇者「あの高さをか…大丈夫そうだな」


勇者「よし、出発!」



魔王「これも久しぶりだな」

勇魔鏡

吸血鬼「これがあれば監視はいらなかったんじゃ…」

魔王(俺も小国には行きたかったけど…)

魔王(勇者の目の前で挑発してきちゃったからな、今回は我慢だ)

魔王「そういうな、本当に止めないとヤバいことされたとき俺達じゃどうしようもないだろ?」

吸血鬼「まぁ、そうですけど…」


吸血鬼「あれ、黒騎士は?」

黒騎士「…以上が今回の任務だ」

勇者が相手ということもあり、私がもっとも信頼を置く二人に小国へ行かせることにした

忍「大会、ということは相手は殺してはいけないのですね…」

鬼「いや、確か特殊魔法だかで手加減はしなくて済むらしい」

忍は諜報、暗殺が専門で魔法も得意
鬼は単純に力が強く意外と機転も利く

なにより、私の命令を第一に行う

黒騎士「それとは別に、それぞれに指令を出す」

黒騎士「忍、お前は何故魔剣があの国に流れたのかを調べろ」

忍「ハッ」

黒騎士「鬼、向こうで側近と合流して、この手紙を渡せ」ピラッ

鬼「ハッ」


最後に、念には念をいれる

黒騎士「それからお前たち」








黒騎士「『修羅』を一本ずつ、持って行け」


忍・鬼「………ハッ」






温泉宿

娘「さて、と」

私は今、身支度を終えて最後のお母さんの手料理を食べ終わったところだった

勇者達はもうこの街を出てしまっている

早く追いつきたい気持ちもあるけれど
大会までに到着すれば問題ない

女将「知り合いの商店の人が丁度小国まで馬車をだすそうだから、相乗りさせてもらえるように言っておいたからね」

何気に、勇者達より早くつくかもしれない

今日はここまで

セリフ中心
たまに地の文が入る
安定してないって言われたらそれまでだけど
このスタイルって読むとどうですかね?

んじゃ、おやすみなさい

女将「それと、この杖を持って行きなさい」ガタッ

娘「杖?」

女将「魔法使いならこれぐらい持ってないとね」

娘「…ありがとう」


娘「あれ?ここの窪みはなに?」

女将「そこには魔石や魔物の体の一部を入れるの。含んだ魔力が多ければ多いほど魔法の効力も強化されるわ」

女将「今は空っぽだけど、その内何か入れなさい」

娘「わかった」


娘「それじゃあ、行ってきます」

女将「…行ってらっしゃい」

女将「……」

番人「行っちまったな」

女将「あら…えぇ、覚悟はしてたわ」

番人「本当か?」

女将「私もそうだったもの」

番人「確かにな」


番人「なぁ、なんであの杖渡したんだ?」

女将「旅をしていれば、その内私の故郷にも行くかもしれない。あの杖なら私の子だって皆気づくでしょ?」

番人「まぁなぁ」

女将「あの子にはもっと色々な事を教えてあげたかったけど…」

番人「なぁに」

番人「アイツはもう立派な魔法使いだよ」




以下、娘は魔法使いと表記します

魔法使い ビクッ

商人「ん?どしたお嬢ちゃん」

魔法使い「なんか…とても不潔なこと言われてる気が…」

商人「そうか?それより『立派な魔法使いだよ』とか、お父さんに言われてるんじゃない?」

魔法使い「感動は悪寒に勝てないよ。」

商人「繊細だねぇー」

商人「ところで、お嬢ちゃん。このあとも何人か途中で乗せる予定だからそこんとこよろしく」

魔法使い「わかりました」

商人「なんかあったらすぐ言いなよ、乗り物酔いは特にな」

商人「万が一吐くときも外に頼む。商品に臭いがうつるとダメになるんでね」


ガラガラガラガラ…

大草原


勇者「広いな…」

少女「広い…」

狼「ガウ」

勇者「草の背も低い、これだけ開けていれば魔物が近づいてきてもわかるだろう、ちょっと休憩」

少女「ハーイ」ドサッ

狼「ガウ(飯捕ってくる)」スタスタ

勇者「あぁ、行ってこい」

少女「…よくわかったね、今ので」

勇者「まぁ、慣れだな」

勇者「草の

勇者「……」カチャカチャ

勇者(にしても、温泉街を出て3日。この子も思いの外タフだな)チラッ

少女「?」

勇者「ご飯出来たぞ」

少女「ハーイ」

ガサガサ

狼 ズルズル

死んだ猪「」

勇者「うおっ、これまたデカいのを捕ってきたな」

狼(むしろコイツしかいなかった…余っちまうな…)

少女「…」ジィー…

狼「…?」

少女「ーーーーー…ーーーー、ーーーーー?」ボソボソ

狼「!?」

狼(コイツっ…」

勇者「おーい、なにしてんだ。飯要らないか?」

少女「いえ、頂きまーす」


狼「…」

魔王城

魔王「腹が減ったな。吸血鬼、なにか作らせて持ってきてくれ」

吸血鬼「はいはい」

黒騎士 ガチャガチャ

魔王「…黒騎士、その鎧うるさくてかなわんな」

黒騎士「先代から頂いた物ですから、魔王様の前で外すわけにもいきませぬ」

魔王「そう言われてしまうと何も言えなくなる」

吸血鬼「ついでにお前の飯も頼もうか」

黒騎士「結構だ」

途中ですが今日はここまで
短くてごめんなさい

魔法使い「…ゴーレム?」

商人「あぁ、なんでも大昔の大錬金術師が造ったモンがいるそうだ」

魔法使い「そんなものが大草原に…」

商人「大草原は通らないけどな」ハッハッハ

魔法使い(勇者………)


魔王城

魔王「ゴーレムねぇ…」モグモグ

吸血鬼「その鋼づくりの巨大から繰り出される拳は全てを粉砕する…のを目標に作られたようです」

魔王「けど未完成体なんだろ?それは」
モグモグ
吸血鬼「そうですね、とはいえ破棄されて数年、何故今になって再起動したのか」

魔王「ふむ…」モグモグ

魔王(勇者………)


吸血鬼(シリアスな顔で物思いに耽ってるのにご飯頬張ってるからどうも締まらないな…)

勇者「……」

ザワザワザワザワ…

勇者(…なんだ?、妙な気配がする)

狼「…」

少女「…」モグモグ

勇者「お前たち、ちょっとここで待ってろ」スクッ タッタッタッタッ


少女「行っちゃったね」

狼「…」

勇者「…」タッタッタッ

勇者「…静かだな」

勇者「こんなに豊かな土地だ、草食動物やそれを餌にする魔物がいてもおかしくない」

勇者「なのに…そもそも狼も猪なんてデカいのじゃなく、いつも兎なんかを何匹か捕ってきてた」

勇者「猪しかいないのか…?」


ザワザワザワザワ…

勇者「結局何も出てこなかった」

勇者(これといって魔力も察知できなかった。やっぱり気のせいなのか?)

勇者「…ただいま」

少女「あ、お帰りなさい」

勇者「あぁ、ただいま……!」

猪の骨

勇者「お前、これ全部喰ったのか」

狼「……」

勇者「…そんなに腹が減ってたのか、ごめんな気づかないで」

狼「……」


少女「……」ニコニコ

その夜

勇者「……」Zzz

狼「……」Zzz

少女「……」Zzz

サワサワサワサワ……

勇者「…?」ムクリ

狼「…」ピク

勇者「あ、すまん。起こしちまったか」ヒソヒソ

狼 フルフル

勇者「…なにか、妙な予感がする。ちょっと見てくる」ヒソヒソ

狼 コクッ

勇者「じゃあ、この子を頼むぞ」サッサッサッ



少女「…行った?」

狼「……」ギロッ

少女「やだなぁ、睨まないでよ」

少女「残飯処理、してあげたじゃん」

狼「……」

勇者(なんだ…魔力も殺気も感じない)

勇者(なのになんだか、胸騒ぎがする)タッタッタ


少女「いいよね、言葉を交わさなくても通じ合えるって」

少女「君のこととても信頼してるし」

狼「……」

狼「(お前、何者だ)」


勇者「っ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

勇者「こいつは…」


狼「(俺が喰い残した猪の肉は、まだ半分ぐらい残っていたはずだ)」

少女「……」


少女「(食べちゃダメだった?)」

(ちくわ大明神)

「」セリフ、実際に言葉を発している
()思考、頭の中での考え事
「()」テレパス、頭の中で考えたことが相手に伝わってる
『』名称、強調

わかりにくいかもと思ったんでここで決めておきます
たまに間違えるかもしれないですけど、前後の流れで察してください

>>397-400
くっそwwww

少女?「(だって、生肉なんて久しぶりだったもん)」

少女?「(余らせて、腐らせたら猪さんにも悪いし)」

狼「(人間もな、そうやって殺した相手へのせめてもの報いってんで食い物を大切にする)」

狼「(けどな、普通の人間は嬉々として獣の臓物をネチャネチャ貪ったりはしないんだよ)」

狼 グルルルルゥ…

少女?「……」


少女?「なにさ、偉そうに」


少女?「君も私と変わらないだろう。そっちこそ目玉や心臓を旨そうに喰ってたじゃないか」

狼「(俺は獣だ)」

少女?「……」

狼「………っ」


狼「(お前、まさか)」

少女?「君が何を想像したのか知らないけどね」


少女?「君と私は同族だよ、狼君」

ドゴオォォォン……!!

狼「!」

少女「…あの人が向かった先だね」

狼「(クソッ)」ダッ

狼「……」ピタッ

クルッ

少女「……行かないでいいの?ご主人様がピンチかもよ」

狼「……」


狼「(俺はここから動かない)」

少女「…美しい信頼だね」

少女「なまじ頭が回るようになると理屈じゃないことを尊重しだすよね、生き物って」

少女「行ってきなよ、別に自分ぐらい自分で守れるし」

狼「(お前を頼むと言われたからだ)」

少女「ふぅん……」

狼「(そもそも、あいつは簡単には潰れない。それに)」


狼「(お前の傍にいるのが俺の役目だ)」

少女「……」

勇者「ハァ…ハァ…」

ドゴォン ボカァン

ゴーレム「」ドシン ドシン

勇者(こんなやつがいるなんて聞いてない…現れたのは最近か…)

勇者(いや…俺が近づくまで全く動いていなかった…魔力も流れていなかった)

勇者「これは…守護者、ガーディアンか」

ゴーレム ゴォォォォォォォォ!!!



吸血鬼「守護者…ですか」

魔王「となると、あの人形は何かを守っているってことになるな」

吸血鬼「でもそれならもっと早い段階で騒ぎになっているはずじゃ」

魔王「……」

勇者「ハッ」ブンッ

カキィンッ!

勇者「クソ!」

勇者(刃が通らない…やっぱりまだ使いこなせてないか)

勇者「なら………風迅剣っ!」ブゥンッ

ガァンッ

ゴーレム「」ブンッ

勇者「これでもダメか!」バッ

勇者(考えろ…あのゴーレムの体はおそらく溶岩だ)

勇者(体を切断出来ないなら出来る箇所を探せ)

ゴーレム「」ゴォン! ドォン!

勇者「可能性があるのは、ずっと握りこまれている掌、関節部分、核石……」

勇者「まてよ…っ」サッ

ブゥンッ

ゴーレム ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ

勇者「あのゴーレム、頭がないぞ」

勇者(普通核ってのは頭か胸に作る。とにかく身体の縦軸上にあるはず)

勇者(けど、四肢はデカいのに胴体はかなり小さい…こんなので核が入ってるとは思えない…)

勇者(…こいつ、核で起動してるんじゃなくて、外部から操られているんじゃないか?)


ゴーレム ゴボォォン!!

勇者「操られてるなら、そいつを倒せば…」

勇者「考えろ…こいつはどうやって操られてる…」

勇者「もしかしたら……!」

博士「ワシじゃよ。」

勇者(魔力は感じない、なら内部から物理的に操っているってことに…)

勇者「……」

勇者「憑依魔法…いや、魔力が無いなら、とり憑いてるというより…」

ゴーレム「ゴオオオオオオオオオオオ!!!」


勇者「主が死んで、破棄されて、魔物として復活して、この場を守り続けていたのか?」


※付喪神のイメージ

勇者「…さぞ大切にされてきたんだろう。ここにもともと何があったかはしらないけど、風化して跡形もなくなっても守り続けるなんて」

ゴーレム ピタッ

勇者「でも、ここを通る人を全て襲っているのは、きっと主も悲しむ」


勇者「止まってくれ」

ゴーレム「……」






ゴーレム「ゴガアァオオオオオオオオオオオ!!!」

勇者「…」

勇者「今更止まれないか…」

勇者「すまない…」スッ

ドシンドシンドシンドシンッ!!!
ドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンドシンッ!!!

ゴァグオオオオオオオオオオオ!!!

ゴーレム ブウォン!!

勇者「……星浄光」カッッ!!


ピタッ


ゴーレム

グラリ
ドッシィィィン!!……





勇者「…これは、魔物を殺したことに、なるのかな………」

勇者(もともと無機物のカラクリ人形だったとはいえ、最後の問い掛けに反応してたあたり、やっぱり一つの生物になってたか)

勇者(……初めての魔物殺し、思いの外あっさりだったな)

勇者「…もっとショッキングなもんだと想ってたんだけどな……命を奪うって」


魔王城
魔王「……」

魔王(発破をかけたのは俺だが、まさかこんなことになるとは…)

魔王(殺した相手への罪の意識なんてのは、戦いの初心者なら誰でもぶち当たるし越えなくちゃいけない壁だ)

魔王(それを、魔物化したゴーレム相手なら、命を奪った印象が薄れる)

魔物「…側近に伝えろ」

吸血鬼「はい?」

魔王「最悪、勇者の狂戦士(バーサーカー)ルートが出て来るぞ。なんとか止めろ。配下のゾンビを使ってでも勇者を勇者らしく闘う苦悩とかそんな感じのそれっぽい精神状態に戻せ」


魔王(じゃないと、本当に世界がヤバいぞ、勇者)

翌朝

狼「……」ジィ……

兎 ヒョコッ ヒョコッ

ヒョコッ ヒョコッ ヒョコッ

狼 バッ

ザクッ



狼「……」ズルズル



少女「あ、お帰りー。今日は兎が捕れたんだ」

狼「……ガウ(……あぁ)」

少女「……」

狼「……(なんだよ)」

少女「返事してくれたね、私の正体がわかった?」

狼「……」

少女「まぁ、いいけど。君が私を嫌っても私は君が大好きだからね」

狼「……」

勇者「……」Zzz…

少女「…まだ起きないね」

狼「……」

少女「出発はお昼ごろになりそうかな…」

狼「(…どうだろうな)」

少女「地響きとかすごかったけど、本人は傷一つ無いんだし、大丈夫でしょ?」


狼「(…どうだかな)」

勇者「……」Zzz…

魔王城

勇魔鏡

魔王「……」ジィ…






吸血鬼「おはようございます」ピョコッ

魔王「キャッ!?」ビクッ




吸血鬼「……」

魔王「……」

吸血鬼「……」

魔王「……」ダラダラ


吸血鬼「……キャッ」キャピッ

魔王「忘れろォォォォォォォォォ!!!」

吸血鬼「魔王様、一晩中勇者の様子を見てたんですか?」

魔王「あぁ」

吸血鬼「ちゃんと睡眠とらないと思考能力が鈍りますよ」

魔王「あぁ」

吸血鬼「あと美容にも悪いんですからね」

魔王「あぁ」


吸血鬼(だめだこいつ、なんとかしないと)

吸血鬼「……で、側近はその先の森の中で仕掛けると報告してきました」

魔王「そうか、確かあの森は日の光がほとんど遮断されて薄暗いんだったか」

吸血鬼「はい、ですので死人どももましな動きをするでしょうとのことです」

魔王「だといいがな…どさくさに紛れて少女に襲い掛かったりしないだろうか」

吸血鬼「襲っても問題ないのでは?」

魔王「…そういう意味じゃないんだ」

吸血鬼「はい?」


魔王「…なぁ、お前俺よりそういうのわかるタイプじゃないのか?」

吸血鬼「ナニヲオッシャッテイルノカワカリマセン」

魔王(この野郎…)

魔王「そもそもお前何歳なんだ?」

吸血鬼「そういう魔王様も、おいくつなんですか?」

吸血鬼「封印云々で数百年前の人なのはわかってますけど、時間が止まっている以上何歳で封印されたか、からの計算ですよね」

魔王「そうだが、今お前の話を」

吸血鬼「そもそも先代魔王様も9000年近くご存命だったそうですし、魔王様だって寿命は半端じゃないんでしょ?」

魔王「う、うむ…」

吸血鬼「封印が解かれて2年、封印される前はおいくつなんですか?」

魔王「う…うぐぐ…」

吸血鬼「大丈夫ですって、100歳200歳ぐらいならまだまだ若い方ですよ」

吸血鬼「逆に5000歳とかならむしろ箔がつくってもんですよ」

魔王「だ、だがな…」

吸血鬼「さぁさぁ!ハウオールダーユー!!!」

魔王「うううううううううううぅ……」
















魔王「じ……1、8…だ」///

吸血鬼「」

吸血鬼「……18+2=20?」

魔王「そ、そうだ…」

吸血鬼「」

魔王「……」///


吸血鬼「まだションベン臭いガキじゃねぇか!!?」

魔王「てめー俺のほうが強いし立場上なんだからな!?」

吸血鬼「なにそれ、魔族でそんな…えぇ!?」

魔王「動揺するのもわかる、けどしょうがないだろ、事実なんだから」

吸血鬼「な、なんで18で封印なんて」

魔王「魔王ってのは長寿だから、死んだときに跡継ぎの子供もそれなりに年寄になっちまうだろ」

魔王「そんなんじゃ困るから、まだ若いうちに子供を封印しておいて魔王が死んだら若い跡継ぎが復活する」

魔王「そうやって強い魔王が何千年も君臨してきたんだ」


魔王「……まぁ封印時の不手際で先代が死んでから1000年も復活できなかったわけだが」

吸血鬼「思いのほか壮絶な伝統と間抜けな裏事情」

魔王「そういうお前は何歳なんだよ」

吸血鬼「えっと、1500後半ですかね。あんまり細かくは覚えてないです」

魔王「適当だなお前」

吸血鬼「魔族なら200越えた先は10年単位で数えるのが一般的ですよ」

魔王「ふぅん…」

吸血鬼「ちなみに黒騎士は2300以上、側近は1800ぐらいでしたかね」

魔王「ずいぶんおじいちゃんなんだな…」

吸血鬼「労わったら負けですよ」

魔王「わかってる」


魔王「黒騎士かなり長寿だな…もうあいつが魔王でよかったんじゃないか?」

吸血鬼「先代の忠実な僕って感じで、私は王の器じゃない、とか言ってましたからね」

吸血鬼「先代にも魔王様……娘を頼むとか言われてたみたいですし」

魔王「……」

吸血鬼「魔王様だって、18で封印されるなんて…」

魔王「かわいそうとか?我ながら特に思わなかったな」

魔王「先代には多くの妻がいたし、子供…兄弟姉妹も多くいた。次期魔王に選ばれたのはむしろ誇りに思ってたよ」

吸血鬼「……結局、魔王様って何千年前の人なんですか?」

魔王「俺にもわからんよ。5000年以上前なのは確かだろうがな」

魔王「それからずっと眠り続けて、やっと封印が外れて、目が覚めて」

魔王「そのにあったのは忠実な部下達と、魔王専用の魔剣と、この勇魔鏡と」


魔王「あとは、勇者との因縁だけだったな」

草原 お昼すぎ

勇者「寝坊しちゃって申し訳ない」ザッザッ

少女「疲れてるんですよ、しかたないです」サッサッ

勇者「そういってくれると助かる」

狼「……」スタスタ


夕方 森の入り口

勇者「とはいえ、やっぱり寝坊は痛かったな」

勇者「森の中で夜を過ごすのはあまりよくないんだけど…」

少女「でもこの森には猪以上大きな獣はいませんよ?」

勇者「ほんと?…でもなぁ…」

少女「ここまで来ちゃったんですから、もう入っちゃいましょうよ」

勇者「……仕方ない、万が一の場合はすぐに逃げるんだぞ」

少女「はーい」


狼「……(確かに気配も匂いもないな)」

少女「(疑ってたの?)」

狼「(信用はしてない)」

少女「(ひどいなぁ、でも、『私の鼻』もよく効くんだよ?)」

狼「(へぇ、じゃあ)」

狼「(このかすかな腐臭にも気づいてたか?)」スンスン

少女「!?」スンスン

少女「(…気づかなかった)」

狼「(……やっぱり信用ならないな)」スタスタ

少女「あっ……」ションボリ

勇者「?」



森の中

シィィィ………ン

勇者「…静かだな」

少女「…鳥や獣の声もしない」

狼(なにか、いるな)



更新されてるかと思ったら屍共の会話しかない時の絶望感

ガサガサガサガサッ

勇者「っ」サッ

近くの草むらが音を立てて揺れる
そのにいたのは

勇者「…人?」

一人の男

?「……」

勇者(気配はなかった。魔力もこれといって感じない。これは)

狼(スケルトンを除けば、初めての肉のついた人型魔物だな)

?「……ァ……」

少女「?」



ゾンビA「エモノだァ」

ガサッ
ガサガサッ
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサッ!!!

ゾンビーズ「「「「「「ヴォアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」」」」」」








勇者「……」ゲンナリ

狼「(……ひでぇ臭いだ…)」

少女「鼻がもげそう…」ウエェ

勇者「これなら退魔光と星浄光ですぐだな。ちょっと目を瞑ってな」

?「そんな簡単にはいきませんよ」

勇者「!」


?「お初にお目にかかります。自分は魔王様にお仕えする側近」ガサガサ

側近「もっとわかりやすく言えば、魔界四天王の一人です」

勇者「魔王の側近、四天王……」ゴクッ

側近「まぁまぁ、そんな緊張せずに。今回はこのゾンビどもの…いわば訓練です」

勇者「訓練…?」


側近「ここにいる獣ゾンビ50、通常の人型ゾンビ50、かすかな自我を持ち簡単な魔法を使えるエリートゾンビがさらに50」

側近「都合150体のゾンビ軍団、さらにこの森は光魔法の効果が半分以下になる特殊な場所」

勇者「!?」


側近「さぁ、選ばれし勇者の実力、見せていただきましょうか」





狼「(おい)」

少女「(え、私のせい…?)」

狼「(お前が勇者を急かして森に入らせただろ)」

少女「(うわぁ……)」

勇者「くそ…お前ら逃げろ!」

少女「わ、私も戦う!」

勇者「いいから!行け!」

狼「(行くぞ)」グイッ

少女「あ、ちょっと引っ張らないで!」ズルズル


側近「自分は今回ただの付き添いですからお気になさらず。では、頑張ってください」スッ

勇者(くそ、光以外で死者に効くのは炎系、だが森の中で使うのは自殺行為だ)

勇者「風迅剣」コオオオオオ

ゾンビ達「「ヴァアアアア」」ゾロゾロ

勇者(少しずつ削っていくしかないか)

勇者「烈風波!」

ズパンッ




少女「(ちょっと!なんで離れるの!一緒に戦わないとあんな大勢に勝てるわけ)」

狼「(黙れ、俺もお前も足手まといにしかならんに決まってるだろう)」

少女「(け、けど)」

狼「(それともなんだ?お前にはあの状況を打破する秘策があるのか?)」

少女「………」

勇者「くそ、キリがない」

もう30は倒しただろうか
それでもまだ100体以上

しかも遠くから魔法を打って来たり、剣や槍のような武器を持ったゾンビはまだ一体も倒せてない

今のところ致命的な攻撃は受けてないものの、このままはまずい

勇者(一か八か炎を使うか?けど万が一のとき逃がしたあいつらにまで危険が…)

ゾンビ「ウバァァァァ!!」バッ

勇者「っ、烈風斬!」ブォォォォォォ

ギャアアアアアアア




側近「……このまま押しつぶせば、ここで勇者を消すこともできそうですね…」

側近「……しかし、彼はまだ殺せない」


側近「ゾンビども、逃げた少女と獣を追いなさい」

ゾンビ達「「「イィーーー!!」」」

勇者「くっ、させるか!」

少女「無いこともないよ、策」

狼「(なんだと?)」


少女「でも、これをやるのはリスクが大きすぎる。それにできる可能性もかなり低い」

少女「奇跡的に私は出来た、けど他の人…獣にもできるとは思えない」

少女「まぁそれでも………   やるんでしょ?」スッ


取り出したのは、ずっと腰につけていた一本の剣
その少女の小さな体には不釣り合いな剣は、どこかで見たものと雰囲気が似ていた


狼(そうだ…勇者が持っていた聖剣や、黒い鎧の男が持っていた剣に似て…)

少女「魔剣『人』 私に注ぎ込まれている呪いを、君も受けることになるけど」


獣が少女の言葉を咀嚼しきる前に、その剣は鞘から引き抜かれていた




瞬間、

森が光にあふれた















光の届かぬ魔王城では、黒騎士と魔王が

森に隣接する小国では、魔剣を管理していた兵士達が

そして、戦いの渦中にいるゾンビと、側近と、勇者が

共鳴し、淡く光る目の前の剣を見た


意味を知るものは冷静にそれを見つめていた

意味を知らぬものは慌て、驚き、動きを止めた

しかし、それはみな知恵のあるものの話

本能でしか動くことのできない一体のゾンビが、硬直した戦場も意に介さず
勇者に向かい飛び出していった


とっさのことに反応が遅れる勇者

向かってくる爪


身を抉らんとする爪が目の前に迫る



避けられない





そしてこれもまた突然

戦場の外側の草むらから飛び出したひとつの影

それは一直線に屍を吹き飛ばしながら、中心にいる勇者の元へと突き進み


その煌めく銀の爪で死人の醜い爪を砕いた



思わず目を瞑っていた勇者は、いつまで経っても攻撃が届かないことに気づく

恐る恐る、目を開く


そこにいたのは、片腕を爪ごと砕かれ気色の悪い液体を垂れ流すゾンビと


一人の獣人

獣人特融の獣の耳と尾をもつ男

ただ




勇者「……狼?」

その獣の体には見覚えがあった

勇者「えっと、あなたは…?」

狼?「話はあとだ。まずはこの嫌な臭いをどうにかしたい」


ゾンビ ワラワラワラ

狼?「行くぞ」ダッ

勇者「あ、……おう!」



勇者「烈風波、雷撃弾!」
ヒュウウウウ バリバリバリバリ!!!

狼?「フンッ、カァッ!!」ブンッ
ズバンッ グシャッ


ゾンビ「「「「ガアアアアアアアア!!!」」」」バタバタバタバタ



狼?「…二足歩行難っ…」ボソッ

こんばんわ>>1です
早いもので、あっという間に500越えましたね ありがとうございます

ただどうも、僕の書き込みとみなさんの書き込みの量の比が偏りすぎている気がしました
これは決してみなさんの書き込みが多すぎるということではありません

数えてみてください
ここ最近、僕の書き込みのレス数、少なくないですか?

僕はこれっぽっちしか書き込みをしていないのに500越えて、僕は本当に喜んでいいんでしょうか
1000まで行ってしまったら次のスレ立てるつもりなんでなんら関係ないんですけど

じゃあレス減らせばいいのかってわけではないです
以前も言った通り、僕は今のこの形は大好きですから
みなさんの掛け合いには本当に楽しませてもらってます

ただ、>>486の方のようなレスも、とても申し訳なく思ってしまうんです
とりあえず一人で何度も書き込まれるのはほかの方の気分を害すかもしれません
明確に何回までとはいいませんが、やりすぎは自重願います

長文、説教じみた言葉、すいませんでした
僕ももっと多く書き込みできるように頑張ります



ひとつだけお願いするなら、読んだ感想とかのレスも増えると嬉しいな



勇者(作業の分担というか…二人でやったらすぐ終わった…)

屍の山

勇者(戦いの中で側近という男はどこかへ行ってしまった。とりあえず一件落着)

勇者「それはともかく」


勇者「…」

狼?「…」

勇者「お前、狼だよな」

狼?「……あぁ」ボソッ


勇者「お前、なんでそんな格好してんの」

狼男「俺に聞くな…あいつの仕業だ」

勇者「あの子は?」

狼男「……もうすぐ、来るだろ」

勇者「で」

少女「はい」

勇者「それはなんだ」

少女「はい?」

勇者「君の頭の上にあるかわいらしい耳はなんだって聞いてます」

少女「サブカルでいうところのケモ耳です」

勇者「それがなんで君の頭の上に生えてるのかを聞いてるんだ!」

狼男 ゲンナリ


勇者「さっきまで無かっただろ?しかもそれ、生えてるよね、被り物とかじゃないよね」

少女「はい」ピコピコ

勇者「で、こいつはなんでこんなことになってるの」

狼男 体育座り

少女「……疲れたんじゃない?」

勇者「質問が悪かった。なんで人型になってるのってこと!」




少女「……話、長くなるよ」キリッ

勇者「……かまわん、話せ」キリッ

狼男(急にシリアスな雰囲気にするなよ)

少女「魔剣『人』 これは強力な力を与える代わりに所持者に呪いをかけるの」

勇者「呪い?」

少女「魔剣の逸話にはよくあるでしょ。この魔剣の呪いは、人化」

少女「意味は字の通り人になること。そこの彼のようにね」

狼男「……」

少女「人に変身するから人が持っても意味がない、まさしく獣専用武器だね。製作者が人間だからこその発想だよ」

勇者「…もとに戻るのか?」

少女「わからない。けど、これと真逆の呪い、獣化の魔剣があるらしい」

少女「私は旅をしながらそれも探していたの。この魔剣とそれは一緒にあったほうがいいから」


勇者「じゃあ、君も人間じゃなくて獣なのか?」

少女「そう、かな。あんまり頭よくなかったからわかんないけど、少なくとも犬と同じような姿だったよ」

勇者「その獣の耳は」

少女「私が無理やり彼に呪いの一部を擦り付けたから、私の呪いが少し解かれたんだよ」

少女「逆に彼は完全に人にならずに尻尾や耳の残った獣人姿に変身した」

勇者「この鉤爪は?」

少女「この魔剣は変身した者が一番使いやすい武器に変身するの。彼は狼だから爪が一番馴染み深かったってこと」

勇者「じゃあ、小国の武闘会に出されている魔剣が、その獣化の魔剣だと?」

少女「舞踏会?」

勇者「知らないのか てっきりそのために俺たちについてきたのかと」

少女「だって、別に呪いとか私はそんなに気にしてなかったし、旅のついでに魔剣も探してみようかなーって程度だったから」

勇者「ほんと変わった子だな…」



勇者「で、お前はいつまでだんまりなんだよ」

狼男「……」

勇者「まさかお前と会話できる日が来るとはな」

狼男「……そうだな」

勇者「まぁ一緒に旅してきた仲だ 俺から言うことはないが、お前に聞きたいことはたくさんあるな」ニコニコ

狼男「やめろ、なんだその笑顔は」

勇者「それに良かったじゃないか 正直どぎついケモナー属性の娘かと思ったがただ単に同族に惚れられただけだぞ」

狼男「やだよこんなバカ犬」

少女「えぇ!?」

勇者「あ、そうなると少女ってのも変だな 犬娘でいいか」

犬娘「もうちょっとちゃんと考えてくれないの? 別にいいけど……」


勇者「ま、積もる話はたくさんあるが今は移動しよう」

狼男「…戦いで眠気もすぐに来そうにないし、このまま森を突っ切っちまってもいいだろうな」

犬娘「えぇ、私眠い」

狼男「うるさい! あれもこれも全部無理に森に入ろうなんていったお前のせいだ」

狼男「それに、お前だって戦えるのにサボってた罰だ 歩け」

犬娘「ぶー」

勇者「眠くなったら狼男におぶってもらえばいいだろ」

犬娘「できる限り頑張ります!!」

狼男「その気ないだろ!絶対おぶってやらねぇからな!」

魔王城

吸血鬼「あぁ……あぁ…わかっている、こちらも見ていた」

側近『死人軍団の全滅は予定外でしたが、勇者どもが去ったあと残骸を回収しておきましょう』

吸血鬼「そうだな…エリート共の中では最近妙な言動をする個体もあったから口減らしには丁度よかったかもしれんな」

側近『まぁ…砂漠地帯のミイラ達のようにもう少し理性的で紳士的ならいいのですがね』

吸血鬼「生前の邪念が入ってるんだろう 砂漠地帯の人々はみな協力的で義理堅い」

吸血鬼「それに、死後の神がしっかりしているかなら」

側近『…結局勇者側に聖剣一本と魔剣一本の形になってしまいましたね』

吸血鬼「せめて小国の魔剣はこちら側が持たなくては いっそ、お前が大会に出てはどうだ?」

側近『顔が割れてますからな…最悪、殺してでも奪い取りますよ』

吸血鬼「ハハ、まぁ頑張れ」ガチャッ


魔王「…側近か?」

吸血鬼「あ、魔王様 はい、小国から電話を寄越してきました」

魔王「……それは大丈夫なのか?」

吸血鬼「さぁ?」

魔王「てか、電話って」

吸血鬼「……」

魔王「……」

吸血鬼「冗談ですよ」

魔王「オイ」

時間を少し遡り、勇者たちがゾンビ軍団を殲滅したころ
小国への道 馬車の中

魔法使い「……」

側近「……」

?「……」

魔法使い(気まずい…)

魔法使い(私と、魔族の男の人と、人のよさそうな青年の三人しか乗ってないのに)

魔法使い(ものすごくピリピリした雰囲気…)ダラダラ

側近(ゾンビどもが全滅したようですね…小国についたら報告を入れなければ)

側近(にしても、まさかあの小娘が魔剣を持っているとは)ギリギリ

魔法使い(あの不機嫌な男の人の所為だ…)ダラダラ

?「……」


?「なぁ旦那、ちょっといいかい」

側近「…なんだ」

魔法使い(は、話しかけた!)ビクッ

青年「なんかしかめっ面だったけどさ、酒でも切れたかい?」

側近「…あいにく自分は酒を飲まない」

青年「そうかい…んじゃクスリ?タバコ?」

側近「どうして体に悪い方向にしか持っていけんのだ」

青年「そりゃものすごいしかめっ面だったからね」

魔法使い(うわわわわ)

側近「しかめっ面な…」

青年「そりゃもう、自分が放った刺客が敵に潰されたみたいな」

側近「ずいぶん具体的だな…」

青年「ま、仕事で疲れてるんでしょ?だから小国に行ってパーッと遊ぼうって思ってこの馬車に乗ってるんでしょ?」

側近「う、うむ」

青年「ですよね!特に賭け事がものすごい国だから」

魔法使い(賭け事…?)


青年「あ、もし武闘会で儲けようっておもってるなら俺にベットしてくれよ 絶対優勝してやるからさ!」

側近・魔法使い「「!!」」


「あ、自己紹介がまだだったな」

盗賊「俺は盗賊 魔剣を手に入れるのはこの俺さ」

翌朝 森の外

勇者「結局、寝ずに歩いて森を出たな」グッタリ

犬娘 Zzz……

狼男「なんで俺が……」ゲッソリ

勇者(なんだかんだ言ってもちゃんとおぶってやってるんだな)

勇者「あとは小国まで街道が作られてる 道中の町で一泊して、あとは一週間もかからないだろ」

勇者「少女…犬娘が思いのほか速いペースで歩いてくれたからな」

狼男「そうかい、で、村まではどれくらいだ」

勇者「あと1,2時間だ 頑張れ」

狼男「うががが……」

犬娘 Zzz……

道中の村 宿

勇者「なんとかたどり着いたな」

狼男「もう無理…寝る」バタッ

Zzz…

勇者「あーあ、寝ちまった」

勇者「お前は起きてるだろ」ゴツッ

犬娘「イタッ!?」

勇者「殴ったからな」

犬娘「酷いよ、女の子に手を挙げるなんて」

勇者「なにを今更」

犬娘「うう、この勇者怖いよ…」

勇者「俺も疲れたから寝る 金渡すから俺たちのぶんの食べ物買ってきてくれ」

犬娘「私は?」

勇者「狩ってこい」

犬娘「字が違うよ!」




勇者「…さて、荷物の確認をしておくか」

勇者(携帯食料と傷薬は補充しないと それにランタンの油も)

勇者「それと」チャキッ

聖剣

勇者(戦いの中で唐突に光り始めたとき、俺は思わず動きを止めてしまった)

勇者(あとから魔剣に共鳴したんであろうことはわかったけど、まだわからないことは多い)

勇者(知らないことがあれば、それに戸惑う 戸惑いは隙を生む)

勇者「……調べておかないとな この聖剣と魔剣の関係性も含めて」

狼男 Zzz……

小国 宿

魔法使い「…うちの宿屋より綺麗だな」

魔法使い(そりゃそうか、小国の宿ならお金もあるんだろうな)

魔法使い「……」

魔法使い(あのあと調べてみると、武闘会は競馬のように誰が勝ち残るかでの賭けがされているようだ)

魔法使い(命がけなら外道もいいとこだけど、魔法で保護されてるなら娯楽で済むのかな…)


魔法使い(武闘会はまず予選で4つのグループに分けられて乱戦、残った16人が勝ち進む)

魔法使い(そこから一対一でトーナメントをして、上位10名には賞金、上位5名には賞品が与えられる)

魔法使い(1位の魔剣、2位の竜の卵以外もすごい逸品が出されてる)

魔法使い(あの盗賊さん、大会に出るつもりなんだ)

魔法使い(当然私や、勇者とも戦うことになる)

魔法使い(けど…あの人、魔法使えなさそうだんだよな)

魔法使い(やたら大きな腰巻鞄に道具をいっぱい入れて、まさしくシーフって感じだったけど)


魔法使い「考えてみれば、人と戦うことになるんだよね…」

小国 酒場

ガヤガヤ ザワザワ

側近「……」

鬼「……」

側近「…なるほど、確かに手紙は受け取りました」カサッ

鬼「それで、側近殿はこれからどのように?」

側近「私もここにいましょう 念には念を入れます」

鬼「わかりました 忍には私から伝えます  では」ガタッ スタスタ


側近「……」

盗賊「お、旦那 こんなところで一人酒かい?」

側近「あいにく連れがいないからな」

盗賊「んじゃ相席させてもらうよ」ガタッ

側近「……」

側近「…大会に出て、優勝すると言ったな」

盗賊「はいよ、少なくとも俺に賭けたら絶対損はさせないぜ」

側近「勝算はあるのか?」

盗賊「それは旦那でも言えないな 手の内明かすのは本番中か後だ」

側近「ふん、だがそう簡単に勝ち進めるとは思えないがな お前のような細腕の優男に」

盗賊「そりゃ、俺はパワーよりテクニック派だからな」

盗賊「ところで旦那、大会前に一儲けしたいんだけど、一口乗らない?」

側近「秘密主義者は信用しないのが私のジンクスでね」

盗賊「つれないなぁ、小国の女王様相手の大ギャンブルだよ?」

側近「なんだと?」

盗賊「大会前にちょっとしたパーティーがあるんだけどさ、そこでディーラーするんたよ女王様が」

側近「王族がディーラーだと?」

盗賊「この国の伝統みたい んでさ、ディーラー相手に勝負ふっかけてボロ儲けしようっていう計画建ててるんだよね」

側近「…王家に恨みでもあるのか?」

盗賊 ギクッ

盗賊「ま、まぁいいじゃん それより乗るの?乗らないの?」

側近「……」

時間は経過し、武闘会前夜

まだ宵の口から城に集められた大会参加者は大広間でご馳走を振舞われていた

その広間の中央には大きなドーナツテーブル
小国の女王がディーラーとして、そこにいる

で、私はというと

魔法使い「お腹いっぱい…」

広間の隅の椅子で休んでた

魔法使い「さすがお城のごちそう、味が違うね…」

魔法使い「それにしても、すごい人」

ザワザワ ザワザワ ザワザワ

魔法使い「100人はいるかな? これが全部参加者なんてねぇ…」

魔法使い「あ、他国の来賓もいるんだっけ」

魔法使い「通りで綺麗な服を着た人もいる……あれ」


盗賊 コソコソ


魔法使い「盗賊…? なにしてるんだろう」

城の内部 廊下


盗賊 コソコソ

魔法使い(つい尾行しちゃったけど、勝手に入ったらまずいんじゃないかな…)

魔法使い(…けどあの人、歩みに迷いがない 入りなれてるのかな さすが盗賊)


盗賊 キョロキョロ


魔法使い(部屋の前であたりを見回してる  あ、入った)

魔法使い「この部屋に、何かあるのかな」

?「…また来たの?」

魔法使い(女の子の声だ… あれ、お城に女の子?)

盗賊「明日、武闘会にでる」

?「ダメ! 魔法もろくに使えないでしょ そんなのじゃ戦えっこないよ」

盗賊「これでもかなり死線は潜ってきた 今だってこうして、 一国のお姫様とお話が出来てるじゃないか」

魔法使い(お姫さま!?)



盗賊「明日、絶対に魔剣を手に入れる だから…」

姫「やめてよ 私のために…危険なことはしないで…」

魔法使い(なんだろう…かなり裏がありそうな…)



側近「秘密の逢瀬はそこまでにしてもらおうか」

盗賊「!?」

姫「!?」

魔法使い(!? なんであの人がこの部屋に)

側近「妙な話だと思っていた 大会の前日に王族から恨みを買うようなことをすれば、どんなしっぺ返しが待っているかわからない」

側近「貴様 私におとりになれと言っていたのだろう?」

側近「私が騒ぎを起こしている間に、貴様は…」スッ

姫「っ」ビクッ

側近「姫を連れ去ろうとしていた」

盗賊「……」


側近「武闘会でどんな立ち回りをするかは興味があったが、私を利用しようとした時点で貴様の運命は決まった」

側近「すでに女王にこのことは伝えてある 大会の参加者名簿からも削除されるだろうな」

盗賊「なら、お姫様も魔剣も盗むしかないな」

側近「私が、それを止めるんだよ」

ザワッ

魔法使い(やばい)「っ!」ガチャッ

姫「こ、今度はだれ!?」

盗賊「!? あんたっ」


側近「火炎砲!」ゴオオオオオッ!!

魔法使い「水傘壁!」バッシャアアアン

側近「…もう一人ネズミが入っていたな」

魔法使い「二人とも大丈夫ですか!?」

盗賊「あ、あぁ いや、なんであんたが!」

魔法使い「そんなことより っ!」


側近「炎弾幕」

魔法使い「石傘壁、水膜壁っ!」

ダダダダダダッ

ジュワァアアアァァァァ…


側近「まとめて消せば問題ないな」

魔法使い(うぅ、またイライラしてらっしゃる)「二人とも逃げて!」

側近「そうはさせまい 『岩石砲』」ヒュッ

ドゴォンッ!!

盗賊「っ、扉が塞がれた!」

側近「ここも王が住む城、壁は壊れない強度を誇っている」

側近「外に出るなら、私の後ろにある窓から飛び降りてはどうだ?2階ですから受け身を取れれば怪我もないだろう」


側近「まぁ、私を倒せたらの話だがな」ゴオオオオオ

魔法使い「っ…」

盗賊「おい、どっか隠れてろ」

姫「け、けど!」

盗賊「足手まとい」

姫「……わかった」タタタタ


盗賊「なぁあんた なんでわざわざ飛び出してきたんだ?」

魔法使い「そりゃ、危なそうな気配を感じたから」

盗賊「そうかい…」


側近「『火炎弾』『熱風砲』」ゴオオオオオオ

魔法使い「『水傘壁』『石傘壁』」ドドドドドド

盗賊「うはぁ~…すごい防御魔法だな 何もないとこから水やら石やら」

魔法使い「ちょっと、感心してないで攻撃してよ」

盗賊「え、攻撃魔法は?」

魔法使い「カウンターしかできない」

盗賊「急にすごくなくなって見える…」

魔法使い「壁から放り出すよ!?」


側近「防御しか使えない? にしてもさきほどから水と石しか使ってませんね」

側近「……『水龍弾』」

魔法使い「! 『石傘壁』」バシャアアン

側近「…なるほど」ニヤッ


側近「『迅雷竜火』」ゴオオオオオ バリバリバリバリッ

魔法使い「!!! 避けて!」サッ

盗賊「えぇ!?」バッ


ドドドドドドドドドドドド………



ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!

側近「やはり回避を選んだか…」

盗賊「やべぇ…壁壊れないとか言っといて、自分は吹き抜け作ってやがんの…」

魔法使い「……」ゴクッ


側近「防御魔法だけ、そのうえ水と石しか使えない とんだ欠点を抱えたもんだ」

魔法使い「あ、…バレた……」

側近「なら雷撃魔法などの、物理防御では防げない攻撃にするまで 『熱風波』『雷矛』」ヒュンヒュンヒュンッ

魔法使い「あぁっと、電気は避けて! 『水流膜』!」

バリバリバリィ


姫(どんどん室温が上がっていく…あの熱い風の魔法、温度を完全に奪えてないんだ)

姫(……ここに、魔剣があれば…)ギリッ



側近「どうした、このままだと蒸し焼きだぞ」

魔法使い「うぅ、そっちは攻撃手段ないの!?」

盗賊「あるにはあるけど、準備がいるんだよ! 攻撃よけながらじゃ準備でき…!」

側近「だがこれはどうだ? 『雷弾幕』」

バリバリバリバリバリバリィッ!

盗賊(やばい、避けられな…)

魔法使い スゥ…

魔法使い「『水傘壁』『水龍塔』」

バリバリバリ
ドゴォォォォォン!!


側近「……やるな」

盗賊「天井に穴が…」

姫「雷を水に流して上に打ち上げた…!」


側近「だが、消費魔力も相当だろう」

魔法使い ハァ…ハァ・・・

盗賊(クソッ なんとか攻撃したいけど、今の俺に出来ることは何もない…)

盗賊(この身一つで旦那…あいつに突っ込んで行っても、魔族と人間の身体能力の差は俺には埋められない…)

盗賊 チラッ

姫 ガタガタガタ

盗賊(なんとか…お姫様だけでも逃がさないと…)


側近「さぁ、次の魔法で一気に消し飛ばしてやりましょうか」

盗賊(もうあいつお姫様とか眼中に無いし)

魔法使い(苦しい…)

魔法使い(ここまで魔力を使ったのって、お母さんに魔法を教わってる時以来じゃないかな…)

側近「『大雷火炎門』」ゴワアアアアアアアアアア

姫「ヒッ!?」

盗賊「火柱と雷雲…で、でかい…」

魔法使い(あ、死ぬかも)


魔法使い(……ここまでか、勇者っ)ギュッ

魔王城

吸血鬼「魔王様、側近が暴走気味なんですけど」

魔王「うぅん…あいつ竜人だからな、戦い始めたら割と周りが見えなくなる」

魔王「まぁ、いいんじゃない?魔剣の所持者がお姫様なら、殺せば次の所有権の第一候補は殺した奴だ」

吸血鬼「ですけど、いまむやみに人間の国と亀裂を生むのはあまり…」

魔王「……」



魔王「大丈夫だろ タイミングはそろそろだからな」



小国 王城




「『水龍塔』『凍土石弾』」

バシャッ
ドドドドドドドドッ!!

側近「!!」

盗賊「なっ!?」

「やっとのことでついた小国、ふと空を見上げたら炎とか雷とか城から飛んでってるんだもんな…休みたい」

「真っ先に飛んで行ったのはお前だろ、勇者」

「眠い…」

「そこで寝てろバカ犬 最後には結局お前のせいで予定よりこんなに遅れて到着することに…」

魔法使い「…勇、者?」

狼男「! お前、温泉街の…」


勇者「……見知った顔が約二名 ま、どっちに味方するかなんて決まってるよな?側近さん」

側近「貴様っ……」




魔王「な? ヒーローの相場その一、ちょっと遅れてやってくる」

吸血鬼「武闘会前夜に到着とか、計画性なさすぎでしょう」

魔王「道中の森で足止めしたりしただろw」

小国 王城

ドンドンドン!
ドンドンドン!

兵士「姫様!如何なされました!?姫様!!」


側近「……ここは引きましょうか しかし」

側近「魔剣は我が魔王軍がかならず手に入れる」

姫 ピクッ

勇者「させるとでも?」チャキッ

側近「なめるなよ、これでも魔王様の右腕の名は伊達ではない ここで消し炭にすることも出来る が…」


側近「魔王様に怒られるからな、それをすれば」

側近「『砂塵嵐』」ゴオオオオオ

勇者「待っ…クッ」

犬娘「ゲホゲホ…ウェ…砂埃で見えない…」



狼男「…逃げられたな」

魔法使い「……ハァ」

王城 女王の間

女王「……では、あの魔族の男の言ったことは嘘で、実はあの者が娘を連れ去ろうとしていたと?」

勇者「はい、奴は魔王の右腕で側近である男です」

女王「……そして、あの男のあとを追った結果娘の部屋にいたのであり、あなたは本来無関係だと?」

盗賊「……はい」

魔法使い「あ、あの、私が誘ったんです 妙な男が城の奥に入っていこうとしてるのを見たから」

姫「……お母様、彼らは私のために戦ってくださいました 責任は一切ありません」

女王「……」


女王「勇者様のお知り合いということですし、今回は城に無断で入ったことは不問とします」

女王「娘を守っていただきありがとうございます」

魔法使い「あ、いえいえ…」

盗賊「……」

姫「……」

女王「それで、勇者様は武闘会へ?」

勇者「はい、あと連れの彼も」

狼男「……」ペコッ


女王「勇者様がご所望の品でしたら、大会に出ずとも差し上げますのよ?」

盗賊「!」

姫「!?」

勇者「……?」

盗賊「……」ギリッ

女王「さぁ?どうなさいますか?」

勇者「…いえ、力試しのつもりで参加させていただきますんで、特に特定の品が欲しいわけでは…」

狼男「……」コクン

女王「……そうですか」ニッコリ


犬娘「え~魔剣…モガッ」

魔法使い(空気読めない子だ…)バタバタ

もともとは城に金目の物は無いかと思って、忍び込んだのが最初だった

当時、小国には旅の男から買った魔剣の扱いについて女王と大臣が対立していた
そこに俺は忍び込んで、魔剣の話を盗み聞きし、それを盗もうと思ったんだ

いざ魔剣の保管場所に行くと、そこには先客がいた
お姫様が魔剣を盗もうとしていたんだ
その時はただ、お姫様が魔剣を手に取ろうとしたようにしか見えなかったけど

けど、お姫様が魔剣にふれた瞬間、
彼女の身体をどす黒い霧が覆ったんだ

あとから知ったよ、魔剣には呪いがあるってこと

お姫様が触れた魔剣の銘は『餓鬼』
黒い霧が晴れた後、そこにいたのは女の子じゃなく、痩せこけ下腹部が肥大化した醜い鬼だった

魔剣の力で今はあの元の女の子の姿に変装してるけど、もし魔剣が他国に、国の外にでてしまえば二度と元に戻ることは出来ない

女王はそのことを知らない
知ったところで、魔剣に触ろうとしただけで娘を部屋に幽閉するような女だ…
絶対に信用できない


だから…俺が…

小国 宿

魔法使い「…だから武闘会で優勝して?」

盗賊「あぁ…」

犬娘「ナルホドね~…」

勇者「……」

狼男「納得いかないな」

盗賊「…何がだ」

狼男「お前とあのお姫様との繋がりはわかった だがそれでそれだけお前が身を削る理由にするには軽すぎる」

盗賊「……」

魔法使い「ちょっと、彼の頑張りを否定するようなこと言わないでよ」

狼男「献身は美徳だろうけどな、それだってそもそもこいつもあのお姫様も魔剣を盗もうとしてたんだぞ?」

盗賊「魔剣の扱いで揉めてたって言ってただろ? 片側の主張は、その力を使って隣国を攻め落とそうって主張だったんだ」

狼男「!」

勇者「…まさか、女王側の主張か?」

盗賊「……あぁ」

魔法使い「そんな…」


盗賊「俺は親も家族もいなかったけど、なんだかんだこの国で育ってきた」

盗賊「国を守るために呪いを受けたお姫様を…俺は救いたいんだ…」



深夜  小国 繁華街

狼男「……」

勇者「この時間だと、誰もいないな」

シーン…

狼男「…あいつの言葉を信用するのか?」

勇者「そうだね、魔王軍に渡すよりかはいいんじゃない? お姫様の呪いも解いてあげたいし」

狼男「確かに彼女は魔剣の所有権を持ってるのは、気配でなんとなくわかったが…」

勇者「わかんのかよ すごいなお前」

勇者「まぁ、いいじゃないか あくまでも俺たちは腕試しだ」

勇者(これで魔王に手の内を読まれることになったとしても…)

#
翌日 武闘会当日

?「……スゥー~…」つマイク

実況者『レディースエンドジェントルメーン!! かつての数多の英雄たちの血が染み込んだ伝統の舞台、コロッセオへようこそォ!!』

ワーワーワー ウォーウォーウォー

実況『あいも変わらず人が多いねェ! 暑苦しいぞお前ら! っと、王侯貴族の人は別ね!!俺の首飛んじゃう、物理的に』

ハハハハハハ

実況『今回も年に一度の特大イベント、武闘会が始まるぜェ! まずは予選、参加者全員が4つのグループに分けられての大乱闘!!』

ウォオオオオオオオオオオオオ!!!

実況『そこで勝ち残った16人がトーナメント、そして見事、その頂点に立った者には……』

ピタッ

シーーーーーーーーーーーーーーーーーー………………ン

バサッ

実況『この、魔剣が与えられる…』ゴクッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

出場者 控室

狼男「……ものすごく、禍々しいオーラだな」

勇者「『人』はそんなに禍々しい感じしないのにな?」

狼男「そうだな…」チャキッ

鉄爪

勇者「そういや、所持者に一番合った武器になってるんだっけ?」

狼男「あぁ」

勇者「魔剣の能力って、呪いと引き換えに所有者に戦う手段を与えるって感じなのかな」

勇者「お姫様の『餓鬼』は変身能力だろ?魔族に変身したりしたら結構強くね?」

狼男「……」

狼男「俺に言われても」

勇者「…それもそうだな」

魔法使い「二人とも、余裕そうだね…二人?一人と一匹?」ガタガタ

勇者「お前は余裕無さそうだな…」

魔法使い「だって、こんなに強そうな人ばっかりだとは思わなかったし…」チラッ

スキンヘッドの男

勇者「…あれはただ単に強面なだけだろ」

魔法使い「けどさぁ…防御魔法と回復魔法しか使えないんじゃ…」

魔法使い(昨晩の、あの側近とかいう男にも一方的に攻撃を防ぐしか出来なかったし…)ズーン

勇者「うぅん…だったら、即興で一つ攻撃魔法を教えてやろう」

魔法使い「…えぇ!? 攻撃魔法ってそんな簡単なノリで覚えられるの!?」

勇者「おう、ちょっと耳かせ」グイッ

魔法使い「ヒャ!?」

魔法使い(か、顔近い…///)

勇者「……」ゴニョゴニョ

狼男「…やれやれだ」

小国王室 観戦室

女王「では大会前のあいさつに行ってくる」

姫「はい、お母様」

バタン

姫「……ハァ」

盗賊「オッス」ヒョコッ

姫「うわぁ!? どこから入ってきてるのよ!!」

盗賊「床板剥がしてだけど」

姫「私の真下じゃない!」

盗賊「いいだろ別に、なにも見てないから」

姫「見たでしょ」

盗賊「……」

姫「うがあああ」

盗賊「今日魔剣を手に入れて、お姫様もここから連れ出す」

姫「…今からでも棄権してくれたりは……しないよね」

盗賊「大丈夫だって、勇者も協力してくれてる」

姫「……」

盗賊「それに、もうあの女王にこの国は任せられない」

姫「………わかった」

姫「私の為にそこまでしてくれてるのに、私が決断を済ませられないんじゃダメだよね」

姫「…頑張って」

盗賊「あぁ、頑張る」

コロッセオ 一般観戦席

犬娘「……」ムスッ

犬娘(私も出たかったのに、狼さんったら『お前が勝ち残れるわけない』って、もともと魔剣の所有権は私の方が上なのに)

犬娘「……もういいや、お腹すいた 屋台で何か売ってないかな~?」タッタッタ

犬娘「何々…アメリカンドッグ?」

屋台のオヤジ「嬢ちゃん、アメリカンドッグが欲しいのかい?」

犬娘「えっとぉ…じゃあ3本ちょうだい」

屋台のオヤジ「まいど、一本サービスだ」

犬娘「ありがと」ニパッ

犬娘「モグモグ……なるほど、中にソーセージが…」ハムハム

実況『さぁ、いよいよ武闘会の第一予選が始めるぞ! 事前に通達された参加者は入場してくれェ!』

犬娘「えっと、第一試合は…」


狼男「俺からだな」

勇者「頑張れよ」

魔法使い「ファイト!」

狼男「あぁ」

鬼「……」スクッ

忍「む、お前も第一か」

鬼「あぁ…リングから落とすのでも失格になるなら楽だ 参加者の影から場外へ突き落せば問題ないだろう」

忍「なら『修羅』は使うな、本戦で勇者に当たった時に使うのが賢明だ」

鬼「あぁ」

忍「その間私が預かろう」

鬼「使わんが持っていく」

忍「……」

鬼「……」

忍「戦いの邪魔になるだろう、おいていけ」

鬼「黒騎士様から私が預かった物だ 万が一も考え常に持っておく」

忍「貴様ただ単にそれを手放したくないだけだろう」

鬼「貴様こそ、ただ単に私の預かりもの取り上げたいだけだろう」

忍「……」

鬼「……」

忍「この任務は魔剣の出所の調査と入手だ そのことも考えて黒騎士様は私にこれを預けてくださったのだ 貴様はただのおまけでしかない」

鬼「お前より強い私の方が確実に勝ち進められるから、私にこの武闘会への潜入を任されたのだ それに私だって側近殿への手紙を預かった」

忍「私の方が脳筋より早く手紙を届けられる!」

鬼「黒騎士様の判断だ諦めろ無能!」

忍「なんだとアバズレ!」

鬼「やるのか根暗女!」

ドゴォンバキィンガシャァン

魔法使い「…向こうが騒がしいね」

狼男「ほっとけ」

係員「控室での戦闘行為はやめてください!!」

実況『……控室で喧嘩があったようだ 戦る気満々なのはいいがもうちょい我慢してくれよォ~』

ハハハハハ

実況『さて、参加者たちが入場して保護魔法をかけている間に、ここでルール説明だ』

実況『コロッセオの中央にある闘技場、通称リングにてこれから予選の大乱闘が始まるわけだがァ』

実況『今年の参加者はなんと200名! つまり一回の大乱闘で50人もの猛者がリング上で戦う!』

実況『剣、槍、弓などの武器や火、水、風、土などの魔法、あるいはその身一つで戦うのも、小道具だらけの戦法も、接近戦も遠距離戦も空中戦も、共闘、不意打ち、正面、背後、なんでもアリの、一心不乱の大せn』

実況『…オホン、とはいえかなりの混戦だ そこで例年の保護魔法が切れるだけのダメージを受けると失格に加え、リングから落ちた者は失格になるルールが追加された』

実況『あとは例年通り、保護魔法が切れれば自動的に控室に飛ぶから安心して捨て身の攻撃を見せてくれよォ!』

実況『さらに、観戦者のみなさんが他の参加者が邪魔ですべての戦いを見ることが出来ないだろうという判断から、戦いを把握出来るよう今年は解説者も招いたぜ』

実況『解説の魔女さん、今日はよろしくお願いします』ペコリ

魔王『魔女(偽名)です よろしくお願いします』ペコリ

勇者「ファッ!?」

鬼・忍「」

魔法使い「あ、お客さんだ」

今日はここまで

コロッセオ 一般観戦席

犬娘「…? 覚えのある匂い」スンスン

犬娘「……こっちだ」タッタッタ



吸血鬼(魔王様、いきなり小国に行くぞとか言ってまたドラゴン乗り潰そうとするし、着いたらすぐにどっか行っちゃうし、いつの間にか解説に回ってるし)

吸血鬼「たぶん洗脳しまくったんだろうなぁ…」ハァ

犬娘「あ、温泉街にいたお姉さん」ピコッ

吸血鬼「」

犬娘「これは?」

屋台のオヤジ「お、またかいお嬢ちゃん それはフランクフルトだ」

犬娘「おいしそう! それじゃあまた3本!」

屋台のオヤジ「はいよ!……そちらのお嬢さんもかい?」

吸血鬼「…一本」

犬娘「あとアメリカンドッグも!」

屋台のオヤジ「はいよ!……あれ一人で食べたのかい?」

犬娘「うん♪」ニパァ

犬娘「フランクフルト 美味しそう…」ゴクリッ

吸血鬼「……」

犬娘「あ~…n」

吸血鬼「おい」

犬娘「? なに?」

吸血鬼「…横からかじって少しずつ口に入れろ 間違っても咥えるな」

犬娘「はい」

魔王(今、ものすごい数の邪念と煩悩が霧散した気配が…)

実況『さぁ、準備が整ったようだ ではさっそく 第一予選のゴングがァ……』


シーーーー………………ン


狼男「……」ゴクッ

鬼「……」スゥ…






ガァァン!!

実況『打ち鳴らされたァ!!!』

ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!




今日はここまで





ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!




ゾワッ

狼男「!」バッ

ガキィン!

鬼「!」

狼男「女!?」

鬼「チッ……」サッ

狼男「あ、待っ」

ブンッ

モブ剣士「!、完全に死角からの攻撃を躱した!?

狼男「クソっ」




実況『さぁ始まった! ゴングと共に多くの戦士が動きだし、例年のごとくどこから実況すればいいかさっぱりわかりません』

吸血鬼「なんでこいつが実況なんだ」

魔王(鬼の一撃を受け止めたか、さすが狼)

魔王『お、あの青い鎧の男が何人か吹き飛ばしましたね』

実況『おぉ! 彼の一撃で一気に4人脱落! あの巨大なハンマーで周囲の戦士たちを薙ぎ払っている!!』

大男「はっはぁ!! 魔剣は俺様の物だぁ!」

実況(小物臭がするがここで盛り上げないとな)

実況『その丸太のような腕でハンマーを振り回すその姿はまさに人間台風! 第一予選を勝ち残る有力候補だァ!』

オォォ!イイゾヤレヤレー!!

ドゴォン
ウワァァ!!

狼男(力任せで隙だらけだな)チラッ

モブ戦士「よそ見してんじゃねぇよ!喰らえ!」ブンッ

狼男「フン」サッ ザクッ

モブ戦士「グハァ」ヒュンッ

狼男(おぉ、本当に消えた)

実況『おぉっと!? その大男の前に一人の女戦士が!』

鬼「……」

大男「ホラホラホラァ!」ブンッブンッ

狼男「!、さっきの女」

鬼「この程度」スッ

ガシッ

ドシィィィン!

大男「な、」



実況『な、なんと!受け止めたぁ!! あの細い腕で巨漢の大質量ハンマーを受け止めたァァ!!!』

鬼「『鬼童丸』」ザワッ

大男 ゾクッ

グイッ

観衆 オオオオオオオオオ!!!

実況『な、な、なんと! 女戦士はハンマーを受け止めるだけでなく、そのまま大男ごと持ち上げたァ!!!?』

魔王『魔族の筋力でもあれは難しいでしょう、そうとうの手練れですね』(知ってるけど)


魔法使い「すごい…」

勇者「そうだな」

勇者(あの巨体を片手で持ち上げて、あんなに涼しい顔をしてる…本当にすごい)


鬼「そうだな、ついでにこの槌は私が使わせてもらおう」グイッ

大男「な、なにを」

グルングルン

鬼「お前は飛んでけ」パッ

大男「うおおおおおおおおおおおおおおお!?」


実況『あぁ! 持ち上げただけでは飽き足らず、そのまま振り回して、投げ飛ばしたああああああああァ!!』

実況『そして投げ飛ばされた重量級戦士は、そのまま、観客席へ!!』

大男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

グシャッ ヒュン

魔王『消えましたね リング外に出たので失格です』

実況『ちなみにリングと観戦席の間にはバリアが張られています 思わず席を立ってしまったお客様、お座りください』


犬娘「……」

吸血鬼「…座ったらどうだ」

犬娘「…早く言ってよ」プンプン

吸血鬼(……不本意ながら、可愛いなコイツ)

今日はここまで

吸血鬼「犬娘 ただの知り合いとしてではなく、恋人としてお願いしたいことがあるのですが
一緒に私の元へきてはいただけませんか?  
もし あなたが手に入るのなら・・・ わたしの生涯において特別な者としてあなたを迎えます わたしは何としてもあなたを手に入れたいのです」

犬娘「詮索すると・・・  私とあなたは敵同士、それに歳がだいぶ離れている、無理だな。 普段あなたがどんな性格でどんな性癖なのか知らないが・・・奴隷商人たちから好みの犬耳奴隷を買えばいいだろう?」

吸血鬼「貴重すぎる犬耳処女・・・ 商人たちは一人も売ってくれません」

犬娘「オイオイオイオイオイ オイオイオイオイ オイオイオイ オイオイオイ オイオイオイオイオイオイオイ
だからって尊くてまだ穢れのない私を誘おうってのかいっ!?それって「違法」って事だろうッ!?」

吸血鬼「全ての罪をかぶるのはわたしです・・・ あなたはただ黙ってついてきてくれるだけでいい」

犬娘「ナアナアナアナアナア ナアナアナアナア ナアナアナアナアナア ナアナアナアナアナア ナアナアナアナアナア
ただ黙ってついて来いだって・・・・・・  私は勇者と狼男と共に旅している言わばあんたの敵だぜ・・・
・・・アンタも社会的に少しは有名なんだ
しかも!私には狼男とのフラグだって建ってあるッ その後の処理の苦労は想像できない!!」

吸血鬼「『NTR』をします」

犬娘「だから気に入った///」

吸血鬼「ベネ(良し) そうおっしゃっていただけると思っておりました///」

今日(23日)午後1時ごろ投下予定
なのでsage お楽しみに

…吸血鬼さんの発言にそこまでの意図はなかったww
実は吸血鬼レズ案もあったんだけど、そうなると吸血鬼→魔王の構図になりそうだったんでやめた
まさか相手に犬娘を据えるとはwwww

一応犬娘→狼男の構図は健在で、吸血鬼はフリーなんだけど…
…ちょっと小国編の後のアイディアが固まりきってなかったんだけど、面白いネタが出てきそうです
やっぱりみなさんのレスは励みになる上、参考やアイディアの元になるんでありがたいです

少なくとも現時点で吸血鬼も犬娘もノーマルなんで、そこはご理解ください
あと、娘ってついてるけど、あの子、犬だからね



吸血鬼「興奮してきたわッ!早く!『圧迫祭り』よッ!」っていうのが頭をよぎったけど、それだけは絶対にない

参考にするのか業深いな

ごめんなさい…1時は無理やった…

>>678
参考といってもマルッとパクったりはしませんよ ちゃんと自分なりの解釈とルールに当てはめて、あくまで参考に
みなさんの意見全部入れるつもりも毛頭ありませんのでそこもご了承ください
最終的に>>1いらなくね? ってなるのは一番つらいんで… 頑張ります


では投下します

実況『おっと、ここで先ほどの大男を放り投げた女戦士が、手元に残った巨大ハンマーを振り回し始めた!』

魔王『もともとパワー型の選手でしょうから、あの武器は丁度良かったのかも知れませんね』

鬼(実際のところ飛び道具以外ならほとんどの武器は使えるんだけどな)

ボゴォン ドガァン

ドワァァ!! ギャアアアア!!

実況『すごいすごい、さっきの大男とやっていることは同じなのに、彼女がハンマーを振り回す姿はまるで舞を舞っているかのように美しい!!』

実況『っと、大量の戦士が一本の巨大ハンマーの餌食になったため、すでにリングに立っている人の数は20を切っているぞォ!!』

魔王『ここであの女戦士を倒せないようでは本戦で勝ち残るのは難しいでしょう 他の戦士にとってはここが正念場です』

実況『なるほどォ…おっと!ここで一人の獣人が女戦士の前に躍り出たァ!!』

ウオオオォォォォォ!!!!!

狼男「……」

鬼「……」

狼男「…お前の動き、どこかで見覚えがあるんだよな」

鬼「……」

狼男「……あの黒い鎧の男とどういう繋がりだ」

鬼「貴様に教える筋合いはない」スッ

狼男「そうか」チャキッ

ピリピリピリ

実況『両者睨みあい、まだ焦るような時間じゃないと相手の出方を探っている』

実況『さっきの大男の巨大な体が目立っていましたが、この獣人の戦士もすでに5人以上リタイアさせているれっきとした手練れ』

実況『一体どんな勝負を見せてくれるのかァ!?』

イイゾー ガンバレオンナァ!! ヤッチマエケモノヤロー!!

狼男(獣野郎って…)



モブ戦士2「う……、うおおおおおオオオオ!!!」

モブ剣士2「お、おおおおお!!」

その他数名「「「おおおおおおお!!!!」」」

実況『っと!ここで一人の外野の戦士が二人に突っ込んだァ!一人に釣られて近くの数名も一気に突撃だァ!!』

魔王『…駄目ですね』

実況『え?』

モブ戦士2「くらえええ!!」



狼男「邪魔を!!」スッ

鬼「するなッ!!」ブンッ


ザシュ ゴォン

モブ戦士2「ガフッ」ヒュンッ

ギャッ アガッ アアアァッ

魔王『両者とも精神統一の段階も兼ねてましたし、それを切られれば隙が生まれる以上に不快感を感じます』

実況『なるほど…確かに獣人も魔族も感情を特定の相手にぶつけると筋力等、攻撃翌力が増すそうですから』

魔王『そして、どうやらここまでのようです』

実況『その通り! ただいまの返り討ちにより一気に10名以上の脱落者が出た 現在リングに残っているのは例の二人と、静観を保った二人 つまりィ…』





実況『第一予選終了ォ!!!』

オオオオオオォォォォ


ナンダヨー アノフタリタタカワナイノカヨー

犬娘「ま、当然だよね」

吸血鬼(まぁ、当然だな)

魔法使い「勝った!狼男君残ったよ勇者!」

勇者「あぁ、思ったより危なっかしい所はなかったな」

勇者(…最初の一撃以外はな)

実況『女戦士と獣人の戦士の戦いは本戦までのお楽しみ! それでは破損したリングの修復や次の予選の準備に入ります 30分後にお会いしましょう!』

ワーワーワーワーワー
ワーワーワーワーワー

狼男「……」

鬼「……」

狼男「…本戦で待ってろ」

鬼「ほざけ畜生」クルッ

スタスタスタ

格闘家「……」

魔導師「……」

狼男「……思ったより面倒な所だな」

狼男「やっぱりバカ犬は参加させなくて正解だったな…」

実況『大変長らくお待たせしました …間違ってはいないはずだ』

実況『えーようやくリングの整備が終わったようです それでは第二予選の戦士たち、リングに上がってくれ!』

ウォォォォォ!!!

犬娘「えっと、第二予選は魔法使いさんが出るんだよね」

吸血鬼(他の知り合いは出ないはず、これで敗退したらとんだ笑い種だが…)

魔法使い「うぅぅ…吐きそう…」ゲッソリ

盗賊「おぉう…大丈夫そうじゃないな でももう時間だ」

魔法使い「うぅ…」(勇者どこか行っちゃったし…頑張れ一言ぐらい言ってくれても)ズーン

?「……ちょっといいかい?」

盗賊「あぁ?」

魔法使い「…はい?」

剣士「もしよければ、予選の間だけ俺とコンビを組んでくれないか?君も第二予選だろう?」

魔法使い「そうだけど…」

剣士「俺は接近戦はそこそこいけると自負してるが、そのぶん遠距離が弱いんだ それで君は魔法使いだろう?」

魔法使い「私防御しかできませんよ?」

剣士「それはそれで構わない、というより、俺の背中を守ってくれないか 俺も君の背中を守る」

魔法使い「……」

盗賊「ちょいまち、なんで彼女に声をかけたんだ? 言っちゃなんだが他にも強そうな魔法使いはいるだろう」

剣士「そうだね……」

剣士「どうせなら可愛い子のためってほうが頑張れるだろう?」

盗賊「なんだそりゃ…」

魔法使い「……いいよ別に、一緒に頑張ろう」

剣士「あぁ、よろしく」

盗賊「ちょ、いいのかよ? 油断させて後ろからざっくりいかれるかもしれないんだぞ」ヒソヒソ

魔法使い「それで私を倒すより私と一緒に戦った方がメリットは大きいよ たぶん大丈夫」

盗賊「そうかも知れんが…」

剣士「さ、それじゃあ行こうか」

魔法使い「うん、それじゃまた後でね」

盗賊「…あぁ」

剣士「OKもらったあとで言うのもなんだが、彼氏さんはよかったのかい?」

魔法使い「盗賊のこと?まさか 彼氏じゃないよ、事情があって利害が一致したから協力してるだけ」

剣士「そうか…なら、俺はどうだ?」

魔法使い「……」

剣士「…ま、いきなりこんなこと言われても困るだろう 戦いの後で時間をくれ」

魔法使い「……疲れてなかったらね」

剣士「あぁ!」

リングに上る階段


魔法使い(この人、確かにカッコいいんだろうけど…なんか、釈然としない)

魔法使い(…なんでイライラしてるんだろ、私)ハァ

剣士「それじゃあ」

魔法使い「うん、よろしk「おーい!!」」

魔法使い「!?」


勇者「おーい!魔法使い!!」

剣士「知り合いかい?」

魔法使い「う、うん」(勇者?)

勇者「餞別だ!杖に入れて使え!」ポイッ

魔法使い「!? あわわわっ…と」ガシッ

魔法使い「……あ」

青く輝く魔石

勇者「頑張れ!」

魔法使い「あ、えっと、あ、」

魔法使い「ありがと!」

勇者 ニッ

剣士「……それは、魔石か」

魔法使い「…えっと、杖のくぼみに…よし」カチッ

魔法使い「…それじゃあ、頑張りましょうか」キリッ

剣士「……あぁ」(これは、とんだかませ犬だったかな?)

狼男「…あれは」

勇者「あぁ、前にワニんとこでお前が見つけて掘り返した魔翌力の塊 この間のゾンビやらゴーレムやら倒してるうちに魔翌力吸ってあんな風になってた」

狼男「で、どこ行ってたんだよ」

勇者「せっかくだから宝石屋で磨いてもらってきた」

狼男「……お前、軽々しく女に宝石とか渡すなよ」

勇者「え?駄目か? そりゃ確かに魔石はかなり高価なもんだけど…」

狼男「……もういい」

この剣士はモブではありません

おやすみなさい

キィン キィン キィン キィン ベチャッ
カァン ガシャァン グワァン ギャアアア

実況『さぁ、始まりました第二予選! さっきとは打って変わり特に目立った動きはありません』

実況『しかしィ、それこそがこの大会の醍醐味 目の前の敵に必要以上に気を取られていると簡単に後ろを取られます』

魔王『明確な強者を数人で囲むこともできないですし、まさに味方は自分自身というわけですね』

実況『そんな中、私の眼にはどうやらコンビを組んでいるような動きの男女が確認できます』


魔法使い「『石傘壁』、『石針壁』!」

ガキィン グサッ

モブ戦士「クソッ、全然攻撃が通らねぇ!」

モブ格闘家「それにあの魔法剣の奴、めちゃくちゃ強いわけじゃねぇのになんで倒せないんだ!」

剣士「『風塵剣』!!」ブォォォォォ

モブ戦士「けどあいつ、一度に3人ぐらい吹っ飛ばしてるぞ!」

魔法使い(すごい、魔石をセットした途端壁の大きさが変わった)

魔法使い(すこしの魔力でいつもの魔法が使える…これならいけそう!)グッ

剣士「フン!ハァ!」ズバンッ ザクッ

魔法使い(にしてもこの人、魔法剣の使い手だったんだ… 勇者と似てる)


勇者「いや、似てるなんてもんじゃない…」

狼男「なら同じ流派なんじゃないのか?」

勇者「俺がこれを教わったのはエルフの剣士だった 師匠が作った戦闘スタイルで、弟子は俺だけだって言ってたんだ」

盗賊「……エルフの戦闘スタイルを基盤に作られたってことじゃないのか?」

狼男「…エルフは基本里から出てこないだろ これはすごい偶然だな」

勇者「あぁ……」

勇者(師匠……)

魔法使い(こんなに魔力に余裕があるなら…勇者が教えてくれたヤツ、早めにできるかも…)

魔法使い「ねぇ、今私たち以外どれくらいいる?」

剣士「えっと、『烈火斬』ッ! だいたい30!」ボォォォォ

魔法使い「じゃあいける!リングの端に移動するよ!」ダッ

剣士「!?、お、おう!」ダッ


実況『おっと、先ほどのカップルが戦場を駆けてゆく!一体何をしようというのか!』

魔王『カップルではないと思いますが…』

実況『そうですか? ではアベックですか』

吸血鬼(それは死語じゃないのか…?)

~試合前~

魔法使い「で、攻撃魔法って?」

勇者「いいか、まずはある程度敵が減るまでは耐える」

魔法使い「範囲が狭いの?」

勇者「お前次第だけど、自分のいる場所は避けないといけないだろ?」

魔法使い「うん」

勇者「ほんとにある程度でいいんだ 人が減った分成功率は上がる」

勇者「耐えた後はリングの隅のほうに陣取る それからほかの奴が近づいてこないように適当な魔法で押し込む」

魔法使い「『石針壁』で?」

勇者「それは何でもいい とにかくそれが出来たら、あとは………」

~第二予選~

魔法使い「『石針壁』!」

実況『ここで魔法使いが味方と自分を中心として石の壁で囲った!防御するのはいいが、これでは攻撃もできないぞ!?』

ナンダ? タタカエー! ボウギョバッカジャオモシロクナインダヨー!

魔王(趣味の悪い野次が飛んでるな)


剣士「どういうつもりだ?」

魔法使い「大丈夫、いくよ!『水龍塔』!!」

バシャッ グォォォォォ

モブ戦士「な、なんだ!?」

モブ拳闘士「壁の中から、水の龍が出てきたぞ!」

実況『そのまま龍は上空に上がり…』

魔法使い「『水傘壁』!!」

実況『平たく広がり空を覆っていきます! まさに水でできた傘!』

ザワザワ ザワザワ

パキパキパキッ…

実況『な、何の音でしょうか…?』

魔王『水の凍る音ですね』(なるほど、上手いな)ニヤッ



勇者「さぁ、仕上げだ」

魔法使い「『氷針壁』!!」


パキィィィン!!

ジャキンッ!
ジャキンッ ジャキンッ ジャキンッ ジャキンッ



実況『水でできた傘が、凍っています! それだけじゃない!』

実況『針だ! 氷の針が生えている! まさに氷でできた針天井!』

魔王『さらにこの光景を作った本人は石のドームで守られています 防御力は今までの戦闘を見れば明らかですね』

モブ戦士「し、しまった!!」

モブ魔術師「クソッ、『火炎弾』!」

ヒュゥゥ…… ジュッ

実況『炎の魔法も大質量の氷の前にはなす術無し! すごい、すごいぞ!』




ガキィン! ガキィン! ガキィン!

魔法使い「壁が壊される前にさっさとしないとね」


魔法使い「落ちてこい」

ズッ…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


ギャーギャーギャーギャーギャー

コイツラノシェルターヲコワセ! アノツリテンジョウノハカイガサキダ! イイカラヤレ! ナンダト!?

実況『逃げ惑う者、石の壁を壊そうとする者、迫りくる大質量の氷を破壊しようとする者』

実況『しかし無慈悲に吊り天井は重力に従う!』

実況『そして!』

ドッッゴォォン!!



シーーン……


魔王『……終わったようですね』

実況『はい、氷で埋めつくされたリング上には人影はありません』

実況『しかし…』

ガシャガシャン!

剣士「ハァッ!と…こりゃすごいなすごいな…」ヒョコッ

実況『巨大な氷塊の下から這い出してきたのは、先ほどの剣士と』

魔法使い「……」ヒョコッ



魔法使い「…私、頑張ったよ」グッ

実況『魔法使い! そしてそれ以外に動く影はありません 第二予選終了!! 勝ち残ったのはわずか2名ダァァァ!!』


ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

魔法使い「やった!やったよ勇者!!」バタバタ

勇者「おう、頑張ったな」

魔法使い「やった!やった!勝った!勝った!」バタバタ

勇者「…一回落ち着こうぜ」

盗賊「一時はどうなるかと思ったけどな」

魔法使い「え、そんなに危なっかしかった?」

盗賊「いや…」チラッ

剣士「……」苦笑

盗賊「…なんでもない」

剣士(予選前の話、たぶん忘れてるだろうな…)

吸血鬼「まさか二人しか残らないとはな」

犬娘「トーナメント表書き直さないとって係りの人が走ってたね」

吸血鬼「そして勢いに任せて話作ってた奴も調整に四苦八苦してるだろうな」

犬娘「喉かわいた、買ってくる」

吸血鬼「コーラ」

犬娘「あとポップコーンも買ってくるね」タッタッタ

吸血鬼「……」


吸血鬼(私、懐柔されてるわけじゃないよな…)

実況『それではリング上の氷の撤去が終わるまでしばしお待ちください』ガチャッ

実況「いや~、まさかあのお嬢ちゃんがあんなことするとはねぇ」

魔王「見かけに騙されちゃ長生きできませんよ」

実況「魔族の魔女さんにいわれると説得力あるね」ハハハ

実況「それにこれでも、俺は人を見る目あるんだぜ。 それによれば…魔女さん、なにげにこの会場で一番強」

魔王「では第三、第四の予選で勝ち残る者を予想してみませんか?」

実況(誤魔化しきれてないっての…)「……いいですよ、せっかくなんで魔女さんもどうです?」

魔王「……かまいませんよ」

名簿

実況「ではまず第三予選、勝ち残るのは……お、このお嬢さん強そうですね」

魔王(忍か…確かにコイツ、見る目があるな……)

実況「んで、これはさすがに無いかなって思いながらも考えている展開が…」

魔王「なんです?」



実況「彼女一人で、残り全員を殺す」

魔王「!」ゾワッ



実況「……ま、さすがにないでしょうね」ハハハハ

魔王「……」




鬼「……お前、『修羅』を使う気か」

忍「さっきトーナメント表が変わった。 これで私が勇者と戦う前にお前が勇者と戦うことになる」

鬼「手の内云々はどうした」

忍「私の剣とお前の剣は違う 隠す意味もないだろう」

鬼「…重圧はどうする」

忍「耐えるしかない…それに」


忍「いい加減、剣に血を吸わせんと治まりが効かん」ガタガタガタガタ

鬼「実際に言ってるの見るとこんなに痛々しいものなんだな」

忍「……」ギロッ

実況『でかい塊は掃除出来た 時間ロス埋めるために出場者はリングに入ってくれェ!』

鬼「…ほら、早く行けよ」

忍「わかってる…」


鬼「さっさと終わらせて来い」

忍「あぁ…」

魔法使い「第三予選は知り合い出ないよね、そっちは?」

剣士「一人旅でね、知り合いはいないよ」

盗賊「俺も今回は知り合い全員不参加だし、これは気楽に見てられるんじゃない?」

狼男「……いや、むしろ目見開いてガン見しとけ」

魔法使い「え?…狼男君?」

狼男(…さっきすれ違った時、鬼女の臭いがかすかにした…一緒にいたとすれば、奴も黒い鎧の男と繋がりが…)

狼男(それに……)チラッ

勇者「……」グッ

狼男(勇者の表情、今までで一番穏やかじゃねぇな…)

リング上

実況『さぁ準備はできた!それでは第三予選~……」

忍「………」

シーーン……

忍(……精神統一でここまで周りが静かになるのは、やはり魔剣の力も強いからか…)

忍(…黒騎士様から預かった『修羅』、ほんらいはこんな雑魚どもに使うなんてありえない)

忍(どうかお許しください…そして…)

チャキッ

忍(どうか…この剣に踊らされるような無様な真似だけは…)



実況『開始ィィィィ!!』






ザワッ

勇者「!!!」
狼男「!!?」
犬娘「ヒッ!?」
魔王「……」

鬼「阿呆が…」ギリッ



シュッ
ヒュパッ

ゴトゴトゴトゴトゴト




















実況『……えー、先ほどの第三予選、ビデオ審査の結果、勝ち残ったのはやはり一人だけでした』

実況『見逃した方のために解説させていただきます』


実況『まず開始直後、勝ち残った戦士の周りにいた五人の戦士の首が同時に落ち、リタイアとなりました』

実況『続けざまに向かって実況席側に向かって影は突撃し、同時に二人の首を落としたのち、その体が消える前に装備を奪い、周りの戦士の喉や心臓に向け投擲しました』

実況『これにより一気に15名をリタイアさせたのち、その影は目にもとまらぬ速さでリング上を駆け巡り、先ほど説明した攻撃を繰り返しました』

実況『結果、生み出されたのが…』


実況『この血まみれのリングにたたずむ、一人の女剣士、でしょうか、刀を持った女性です』


実況『最初は黒装束だった彼女の服も、今は敗者が消えるまでの一瞬で飛び散った返り血にまみれ、赤く染まっています』

実況『なおリタイアした戦士たちは当然みな無事ですが、若干貧血気味の者に関してはこちらで治療中です』

実況『第三予選、勝者一名 リング上の清掃に時間がかかると思われますが、皆様、しばしお待ちください……』

出場者 控室

魔法使い「……」

剣士「……」

盗賊「……」

狼男「……辛気臭い顔してるな…」


魔法使い「当たり前でしょ!? なにあれ、目にも止まらぬとかじゃないよ、ほんとに残像しか見えなかったじゃん!」

剣士「あれを相手取って、一体どういった戦いをすれば一矢報いれるか…」ブツブツ

盗賊「ほらもうこの人なんか一矢報いることに重点おいてるし、勝てる気しないし」

狼男「お、おぉ…落ち着け、な?」

忍「ハァ………ハァ………」

鬼「…肩貸してやる、大丈夫か」

忍「…いつになく親切じゃないか、気持ち悪い」

鬼「大丈夫そうだな」

忍「…いや、実際きつい…やはり6分の1とはいえ、魔剣を使うのは…」


勇者「おい、ちょっといいか」

鬼「!!」

忍「……」

忍「…なんだ」

勇者「ずいぶん参ってるみたいだが、さっきの戦い…いや、虐殺のせいか?」

忍「敵に手の内をさらす阿呆がいるわけがないだろう」

勇者「そうだな…敵に塩を送る俺も俺だな…」



勇者「自家製の丸薬だ、魔力を回復させる 飲め」スッ

忍「なに?」

鬼「……」


忍「…人のいるこの場で差し出してくるんだ、毒なんか入ってるわけじゃないだろうが、それを受け取るとでも?」

勇者「さぁな」

忍「……」

鬼「……」


鬼「…いや、ここはありがたく受け取っておこう あとで飲ませておく」

勇者「あぁ」

忍「……」

鬼「…どういうつもりだと思う」

忍「さぁな…なんにせよ、私には確かに魔力回復はありがたい……」


忍「まさか敵の施しを受けるとはな」

鬼「……」

忍「…私の出番までは時間があるだろう せめてこの丸薬を徹底的に分析してから飲んでやる…」

鬼「あぁ……いまは休め…」




狼男「あ、おい勇者! お前どこ行ってたんだ」

魔法使い「勇者!あんなの勝てっこないよね?ねぇ!?」

勇者「なんでお前は若干キレてんだよ」


勇者「なんにせよ、次は俺と盗賊だ 応援頼むぜ」

盗賊「うぅ…今のうちに魔剣盗む手段考えておこう…」

実況席

実況「…さて、次で最後の予選ですな」

魔王「……」

実況「さっきので堪えましたか?」

魔王「いえ…このご時世、あんな光景はきっと珍しくないでしょう」

実況「まぁ、勝ち残るだろうと予想もしてましたしね」

魔王(あそこまでとは思わなかったがな…)

魔王(黒騎士の奴め……)


実況「せっかくなんで、また予想でも立ててみましょうか」

魔王「え…構わないですけど…」

実況「名簿は基本的に本戦に残った人の分しか読まないし、こういうのも新鮮でね」ペラペラ

魔王「…そういえば、今年は解説を呼んだって なぜ毎年呼ばないんで?」

実況「さぁ? 女王様がある程度を超えた手練れには解説にせよ観戦にせよ、戦いを見せてはいけないってんで」

魔王「どうしてまた…」

実況「よくわかりませんよ、女王様の考えてることなんざ」ペラペラ

魔王「……」

実況「で、だれが残ると思いますか? さっきからチラチラみてる青年ですか?」

勇者の名簿

魔王「え!? いや!そういうんじゃ……」

盗賊「なに?お前は戦うなだと!?」

勇者「あぁ、お前の戦い方が初見殺しなら出来るだけ温存しておいた方がいい 俺が戦うから、お前は飛んできた矢だけを落としていればいい」

盗賊「それは…その方がいいかもしれないけど…」

勇者「…それに、俺も試したい技がある?だ…」
ザワッ

盗賊「わ、わかった…」

盗賊(…第二、第三をみた後だし、どんなことになったとしても驚かない自信があるが…コイツ、一体なにをする気だ…)

勇者「まぁ問題ない程度には戦ってくれや 俺も守りきれる気しないし、何十人もいたら」

盗賊「お、おう…」



実況『それでは最終予選、出場者はリングへ!』

勇者「さぁ…行くぞ」

盗賊「あぁ」

魔法使い「頑張って!」

狼男「……」

剣士「幸運を」

勇者「あぁ、見といてくれ」


盗賊「さっさと終わらせてくれよ」

勇者「わかってるさ」

実況「さぁ、魔女さんが注目している勇者の活躍に期待ですな」

魔王「だ、だからそんなんじゃ///」

マイクハイリマース

実況『それでは最終予選、開始ィ!!』

魔王(この野郎…///)ビキビキ


勇者「いくぜ、開幕一発!」

勇者「『烈風円陣』!!」ビュオオオオオオ

魔王『!、勇者を中心として風が…』

実況『サァサァサァ、開戦早々、なにをしようといているんだァ!?』

狼男「……」

狼男(餓死寸前の害獣一匹殺せないくせに、命がない屍系の魔物や、こういう命が保障された戦いは嬉々として戦いやがる)

狼男(そのくせ黒騎士に殺されかけたり、ゾンビ共に一人で立ち向かったり、自分の命は放り出す癖がある)

狼男(その上……)

~~~
火山
勇者「行くぞっ!!、烈風斬!!」ブオオオオオ

狼「(!!、バカっお前…っ)」

火竜「GUOOOOOO!!!(火炎砲!!)」ゴオオオオオッ!!

勇者「っ、危っ」
~~~

狼男「……」


実況『サァサァサァ、開戦早々、なにをしようとしているんだァ!?』


ゴォォォォォォォォォ!

盗賊「お、おい!そこからどうするつもりだ!」

ブォォォォォォォォォ!!

勇者「どうって、攻撃だよ!お前には当てないようにするから心配すんなって!」

ビュオオオオオオオオ!!

盗賊「どんどん風強くなってるみたいなんだけど!!?」

ゴゴゴゴゴゴ!!!

勇者「強くしなきゃ攻撃じゃないだろ!!」

ブオオオオオオオオオ!!!

盗賊「いくら風圧が強くたって!切断の性質持たせてなかったら!ただの突風だぞ!!!」

ドォオオオオオオオオ!!!!

勇者「わかってるよ!!!こっからもう一段階!手を加えるんだ!!!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

盗賊「それで!!本当に!!大丈夫なのk」

魔王『うっせー!!!早くやれ馬鹿!!!』キィィ――――ィン!!!


実況「……マ、マイクで、叫ばないで…ください…」プルプル

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ

実況『あまりの風圧で空気が歪み、外からでは竜巻の中の青年の様子は確認できません』

盗賊「これでしっかり俺にも風のバリアを張ってるあたり、しっかりしてるんだな…」



勇者「ここからやるのは合成魔法、またの名を合体魔法だ」

勇者「フゥ……よし、『炎盤』」ゴォッ


魔王『!、中で炎魔法を使ったようですね』

実況『っと、しかしそのほかの戦士たちも竜巻に魔法を打ち込んでいる!先ほどの一方的な力を見せつける、戦いのペースに飲まれるものかと立ち向かっております!』


モブ魔剣士「炎魔法と竜巻を合成して、『火炎旋風』を作る気か、そうはさせん!『水龍矛』!!」

モブ魔術師「『水龍弾』」

モブ(ry「それに合わせて、『雷撃弾』!!」

ヒュン!ヒュン!ヒュン!

バリバリバリィ!!!

盗賊「うわぁ…なんか風にいろんな魔法やら飛び道具やらが飛んでるよ…」

盗賊「中まで貫通させずに表面の風に飛来物を乗せるなんて、とんでもない風圧…風力だな」

?「…そうだな」

盗賊「…!? な、なんだお前!?」

盗賊(いつの間に背後に、それも俺の周りの風バリアの内側に!)

侍「風の壁か…少し切って入ってきた…あんなにすぐに穴が塞がるとはな……優れた魔法使いだ」

盗賊「…あいつは魔法剣士らしいけどな…」(てか勇者だけどな)ジリッ

侍「…今は戦う気はない……静かに見ていろ、コレがどうなるかを」ジィ……

盗賊「コレって…竜巻のことか?」

侍「………」

盗賊(なんだ、このおっさん……)

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

勇者「……」

勇者(魔法攻撃物12、石矢23本、投げナイフ9本、毒ビン3つ、破壊されたリングのタイル40枚、小石が50以上……)

勇者「けっこう飛んできたな……あとは…」


魔王(風に不純物が多い…これを無理に『火炎旋風』にすれば操りきれない火の玉が自分を襲う結果になる)

魔王(かといって、今から風を解除すれば飛んできた物が全部自分の元に落ちてくる……)

実況『逆に自分の魔法で迂闊に身動きが取れなくなってしまっているぞ!? 一体どうする!!?』

モブ魔術師「……中で動きがない あきらめたか」

モブ(ry「ならこいつは無視して、ほかの奴らを!『雷竜弾』!」

モブ魔剣士「『烈火剣』!!」

ドゴォン!! ゴォォォォ


盗賊「他の奴らが戦い始めたな」

侍「……」

侍「コイツは……中でなにをしている?」

盗賊「しらね…さっきみたいにその剣で風スパッっと切って確認してくれば?」

侍「この風の壁は切れん……切れてもすぐに塞がり、中に入ることはできない」

盗賊「あぁそう」

侍「それに、これは剣ではなく刀だ」

盗賊「…あぁそう」(同じだろうが…)

盗賊(ずっと黙って竜巻見上げて、攻撃の素振りも見せない 一体なんのつもりだ…)


侍「……」

勇者「………59……60」

勇者「一分経った…そろそろいいか」

自分を中心に渦巻く空気の奔流
陣を描くように作った風の壁は、自然の摂理に従ってどんどん上に伸びて行っている
これがまだ薄い空気の壁なら、ここから鎌鼬のように真空刃を拡散させた攻撃も出来たけど、ここまで成長した竜巻はもう俺の言うことを聞かない

それはどんなに魔法に疎い奴でも知っていること
すでに人間がどうにかできる魔法ではない だから竜巻への攻撃も打ち切られ、俺は不戦敗扱いになる

勇者「と、外の連中は思っているだろう」

精一杯の魔力で作った竜巻は魔法の範囲を超えている
最初から制御に力を回さなければ、これは案外簡単なものである

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

モブ魔術師「リングのど真ん中に竜巻なんて起こしやがって…気が散って仕方ねーぜ」


実況『依然竜巻の青年は動きを見せない 他の戦士たちもそれぞれ目の前の敵と戦ってはいるが、どうしても風に煽られ決定打を打てるような環境でない!』

魔王『…さっきから動きがないと言えば、竜巻のそばにいる二人も戦う様子がない……』

実況『竜巻の青年の仲間、ということか、それとも何か狙いがあるのか!?』


………ズッ

侍「……?」

…ズズッ

ズゴゴゴゴゴゴ

侍「こ、これは…」

盗賊「!? なんだ!?」

実況『う、動いている…』

ゴオオオオオオ

実況『先ほどまで、周囲の空気をかき混ぜながらも移動しなかった竜巻が、動いているぞォォ!!!』

モブ魔術師「な、なんだと!?」


剣士「どういうことだ?」

魔法使い「円陣系の魔法は発動した場所から移動しないのに、動いてる…」

ザワザワザワザワ

ワー ワー ワー
 ワー ワー ワー

魔王『竜巻の中にはほかの選手が投じた凶器が含まれています それに、あの風圧なら刃の性質を与えずとも肉体を切り裂くだけの勢いと鋭さが生まれます 薄皮を切る程度でしょうがね』

実況『リング上を移動する竜巻、いや台風は、次々に戦士を飲み込み切り裂き吹き飛ばしていく!』


ゴオオオオオオオオオオオオオ

モブ魔術師「畜生! どこだ術者は!?」

モブ魔剣士「あの台風の目じゃないか!?」

モブ魔術師「だとすればもう俺たちはなす術無しじゃないか!!!」


魔王『最初に散々攻撃を加えていた戦士たちにあの台風をどうにかすることは出来ないでしょう』

実況『これは竜巻の青年のトーナメント進出は決定的かァ!!』


狼男「『竜巻の青年』が代名詞になってしまってる…」

盗賊「なにがどうなってるのかわかんねーけど、とりあえず周りの風の壁は健在だし、黙ってみてればいいか…?」

侍「……」

盗賊「…なぁ、実力で安全地帯に入ってきたあんたにこんなこと言うのもなんだがよ」

侍「…なんだ」

盗賊「戦わなくていいのか? いや、これも俺が言うことじゃねーけど…」

侍「……」


侍「いいだろう」スラッ

盗賊「!」

侍「いったいどんなからくりで、あの台風を動かしているのかは知らんが……」



侍「所詮まやかしの風、切れば何も残るまい」

そういって刀をゆっくりと振り上げた男は、その場で素早く刀を振り下ろした
ただそれだけ それだけで


ズバン
ブワッッ!!

モブ(ry「なに…」ズルッ

盗賊「なっ!?」

実況『何だァァァ!!?』

竜巻が縦に真っ二つに割れ、中にいる勇者が、剣を構えて目を見開いているのが見えた
さらに、竜巻と侍の一直線上にいた戦士数名も頭から二つに分離し、直後に光の粒になって消えた


勇者(いま、とっさに剣を向けなければ殺られていた……)

侍「あぁ、術者はそんな顔だったか……すっかり忘れていたな」

ワー ワー ワー
 ワー ワー ワー

魔王「……」

魔王(勇者がやったのは『烈風円陣』に過剰な魔力を注いで暴走させ、その上で光魔法で『土地からの呪縛』を解除させたものだ)

魔王(以前魔物を浄化させるのに使った『退魔光』ではないな…光を発していなかった)

魔王(光魔法に精通してるのはエルフの一族だ 俺には分からん…それより)

魔王『あの侍…東から来たのか』

実況『ほう、彼がうわさに聞く『サムライ』ですか魔女さん!』

魔王『大陸のこちら側にやってくるのは稀ですからね…』

魔王(…奴らの剣術は、魔法をも切り裂く どうする勇者……)

ザワザワザワ…
 ザワザワザワ…


勇者「……」

侍「……」

盗賊「……」


勇者「……風を切っても」

侍「…?」

勇者「台風の大元は殺せなかったみたいだな」ニヤッ

侍「!」


侍「……フ、そのようだな」


勇者「ハハハハハ」

侍「フハハハハハ……」




侍「ハァッ!!!!」ダッ

勇者「『石壁』、『火炎剣』!!!」ベキベキッ ゴォォォ

寝落ち?寝落ちなの?

こういう独特な流れのスレって
ちょっとでも空気乱すようなこと言うとすぐ自治厨扱いするよね
そういうのどうかと思う

自分もそう思うけど、独特の流れのときに言わないと・・・

実況『突撃するサムライ!迎え撃つ体制の青年! 面白くなってきたァ!』

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

モブ魔術師「くそっ、一気に観客の注目浴びやがって…モチベーションが下がるぜ…」

ヌッ
盗賊「だったら黙って寝てろ!!」

ブンッ
ガシャン グハァッ!

盗賊「くっそ……もう10人ぐらいしか残ってないだろ もう我慢の限界だ 体術だけでも戦ってやらぁ!!」

>>777 あ、スリーセブン おめでとうございます
投下終わりには宣言したほうがいいですか?
自分その辺適当で、眠くなったし今日はここまででいいか、って布団入っちゃう感じなんですけど…
あと、特に自分が投下中はレスを挟んでほしくないとか、そういうのはあんまりありません
話の途中でも書き込みたいときはどんどん書き込んでください
展開的にレス挟んでほしくないって時はちゃんと投下前に一言入れます それか書き溜めて時間開けずに一気に落とします
その時だけ勘弁してくれれば構いません

>>778 >>779
自治というか、思ったことを表現的に問題ない程度に、自由に言ってください
それに対してただの否定だけじゃなく、お前の意見はここがおかしいと『俺は』思う、俺が思うのはこうだ、と返してあげてください
このスレの独特の雰囲気は>>1と、みなさんと、勇者や魔王たちとのやり取りの中で生まれた偶然の産物です
だから、誰かがゴールを決めたわけでも、ルールを決めたわけでもないんです
みんなで楽しい空間を、話し合って作っていきたいです


こうして説教じみた長文で離れていく人もいるんだろうな…仕方ないとはいえ、ちょっと苦しいです
一日に15レス以上もみなさんが書き込んでくれた日はすごくうれしかったです
前にも書きましたが、埋まったら次のスレ立てるんで気にせずどうぞ 長文失礼しました

では投下再開します

侍「ハァッ!!」

上段から振り下ろされた刀は勇者の『石壁』を豆腐のように簡単に切り裂いた
魔法使いが使っている『傘壁』などの下位互換である『壁』魔法にはそこまでの防御力はない
しかし、一度壁を切るためのワンテンポを生み出すだけなら、その役は十分に勤まる

勇者「『火炎斬』!」

『石壁』と刀の刃がぶつかる瞬間に壁の影から飛び出していた勇者は、侍へ側面からの魔法剣の攻撃を狙う
しかし

侍「ぬんっ!」
ガッ

先ほど切り裂いた石が地に落ちるまえに、壁の片割れを勇者の顔面へ蹴り飛ばした
単純に半分の大きさとはいえその石は子供の胴程度の大きさはある
当たれば痛いでは済まない それに顔を狙われ、石で視界が隠れてしまっている
勇者は攻撃を断念し後ろへのバックステップで石つぶてを躱す

そこに今度は侍が、勇者の回避行動のワンテンポに突っ込んでくる

今度は右手で振りぬくために左腰に添えるように構えた侍
力を込められた刀は、そのまま勇者へ逆袈裟懸けに襲い掛かる
それに対して勇者の対応は

勇者「『退魔光』!」

侍と同じ、目を狙った攻撃
相手が魔物でもなんでもない場合はただの光だが、至近距離で目が光に照らされればどうなるか

侍「くぅっ!?」

当然目を瞑ってしまう
誰だってそーする 侍もそうしてしまった

そして今度こそはと勇者は炎に包まれた聖剣で右から切りかかる!

ガキィィン!!

しかし、目を瞑ったままの侍は正確に勇者の攻撃を刀で受け止めた
いつの間にか逆手に握られた刀と赤く燃える剣を挟んで両者は相手を見る
といっても侍は依然目を瞑ったままだ
それでも勇者は、まるで猛禽の鋭い瞳で睨みつけられているかのような錯覚を受けた








観客a「…なぁ…もうどれくらいだ?」

カカァン キィン ギャィン

観客b「もう10分は『アレ』やり続けてるな…」

キャイン カァン キィン

観客c「タフっつーか…見ろよ、周りも手が出せないって感じだ」

観客d「第一予選のこともあるしな」

ガァン!!

観客達「「「「「!!!」」」」」

実況『長時間の剣戟の末にも、未だ両者倒れず!! サムライも青年も、まだまだ倒れないィィィ!!!』

勇者「ハァ、ハァ、ハァ…」

侍「ハァ……ハァ……ハァー…」


盗賊「……」

盗賊(二人の戦いに気圧されて、他の戦士たちが竦んでる…クソ、俺もそうだ!)ガタガタガタ

盗賊(まだ続くのか…この戦いは…)


侍「なぁ青年よ…少年と青年の間を生きる君よ」

勇者「…なんだ」

侍「君を相手に、予選で本気を出すのはどうも勿体ない気がしてきたのだが、どうだろうか」

勇者「…わからんでもないが……今更他の戦士をリタイアさせようにも、お互い消耗が激しい」

侍 ニヤッ


侍「ならば、この戦いはここまでだ」

侍「『第六天魔王』」

ザワッ


犬娘「ヒッ!?」ギュッ

ガタガタガタガタガタガタ

吸血鬼「…腕を掴むな」


魔王「……」


バタッ バタッ バタッバタッバタッ

観客「なんだ…? 急に戦士が倒れだしたぞ」

実況『ど、どうなっているんだ!?』

勇者「……」

侍「…では、本戦で会おうぞ」


魔王『…リング上に立っているのは4名に見えますが?』

実況 ハッ

実況『さ、最終予選終了!! 最後の戦いを制した…(?)のは…この、4人だ…』

シーン……


盗賊「…なにが、起きた?」

勇者「…威圧だ」

盗賊「え?」



狼男「勇者との戦いで周囲に実力を見せつけておいて、後から殺気を送ったんだ」

剣士「あの実力者が自分へ向かってくる、そう錯覚するほどのね」

魔法使い「そんなことを…それでプレッシャーに負けて気絶してるってことでなの?」



忍「そうなるな 正確に殺気を送ったから他の者には気がつけないだろう」

鬼「盗賊が助かったのは勇者の知り合いだからか… 後の一人は数合わせか?」

忍「だろうな 見ろ 本人が一番困惑してるぞ」






魔王(……あの技は殺気を振りまくだけの技じゃない…)

魔王(どんな力を使うかは知らんが、攻撃の準備段階までしか行使されなかった)

魔王(……魔王の名を持つ技…その威力、見せてもらおうじゃないか…)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



吸血鬼(獣だからこそ、殺気なんかには敏感な節があるんだろう だからリングから離れたここでも、こいつはこんなに怯えている…)

犬娘「……ウゥゥ…ヒック」ガタガタ

吸血鬼「…はぁ」

吸血鬼「泣くな泣くな…側にいてやるから、な?」

犬娘「ヒック………グスン」ギュウウウ

吸血鬼「そんなに必死に掴むなよ…」



実況『最終的に決勝トーナメントに勝ち残ったのは11名!』(不完全燃焼な人はかなり居そうだけど!)

実況『そのうち10名が賞金を得られるから、せっかく勝ち残ったのに一人だけリターン無し!残念!』

実況『えーお察しの通りトーナメント表がめちゃくちゃになってます 一回戦時点で1人シード権を作らないといけませんね…』

実況『……まぁ、大会運営委員会のほうでも話し合いがありましたが、30秒もかかりませんでした』

実況『第三予選、一人勝ちした女戦士にシード権を与えることが決定しました』

シーーーン

実況『…うん、まぁ異議はないでしょうね』


実況『敗者復活はしないのが毎年のルール なので最後の三回戦は勝ち残った3名でのバトルロワイアルになります』

実況『詳しくはトーナメント表をどうぞ』



第一回戦        第二回戦        第三回戦(決勝)

剣士VS勇者
     ]
狼男VS鬼

魔法VS魔導
     ]
侍VSモブ

格闘VS盗賊
     ]
忍(シード権)

剣士「初戦か よろしく頼む」

勇者「こちらこそ」


狼男(一回戦でアイツとか…)

鬼「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ


魔法使い「魔導師…同業者なのかな?でも魔法じゃない…」

盗賊「格闘家って…予選でも得物持ってなかったけど、本気か…?」

「「謎だ……」」


侍「……」

忍「……」

小国王室 観戦室

姫「…お母様、どうして戻ってこられないのかしら?」

執事「陛下は闘技場地下に赴かれたそうです」

姫「?、どうしてそんなところへ?」

執事「それはワタクシにも、誰にも言われておりません」

姫「…地下って、たしか特殊魔法を行ってる場所よね?」

執事「左様でございます リタイアした戦士たちを控室へ転送する魔法を行っております」

姫(お母様……いったい何を…)

昨日今日と連続で短いですがここまでにします
申し訳ない
明日から頑張る

魔王「……」

実況「あ、魔女さん 本戦が始まる前に出場者の名簿とプロフィールは確認しといてくださいね」

魔王「わかりました」


魔王(第一試合は勇者と剣士だな……)

魔王(勇者については調べはついてる それより剣士についてだ)


魔王(剣士……勇者と同じ魔法剣主体の戦闘スタイル 単純な剣術も達人級)

魔王(…貧民街出身? 出場動機は『力試し』……)

魔王(……何から何まで、勇者そっくりだな…)

魔王(次は…狼………鬼………)

魔王(魔法使い、の動機は知らないな)

魔王(出場動機は…『力試し』……なんだ、敷居が低いなこの大会…)

魔王(それから……魔導師と格闘家は同郷か 二人とも出場動機は『賞金目当て』……賞金稼ぎか?)

魔王(問題は……侍)

魔王(出身は案の定、極東……出場動機は……『金剛竜の卵』…」

魔王(…確か極東には竜を祀る文化があったか……ご神体でも手に入れようとしているのか?)

魔王(いや…魔王の名を持つ術を使っている時点で警戒するには十分だ)

魔王「(吸血鬼、聞こえるか)」


吸血鬼「!!」ピクッ

魔王「(聞こえているか、吸血鬼)」

吸血鬼「(聞こえています どうしました?ソフトドリンクでも届けましょうか?)」

魔王「(おぉ、丁度喉が渇いていたところ……)」


魔王「(貴様、まさか売店でのん気にジュースでも買ってるんじゃないだろうな?)」

吸血鬼 ギクッ

吸血鬼「(そ、そんなわけないじゃないじゃないでSU化)」

魔王「(おい、読みずらいぞ)」


犬娘「えっと~……アメリカンドッグ3本」

屋台のオヤジ「またかいお嬢ちゃん!?」

吸血鬼「(そ、それでなんの用ですか?)」

魔王「(近辺の下僕どもに伝令だ 勇者一行についてる監視の一部を侍の監視に回せ)」

吸血鬼「(…あの『第六天魔王』とかいう術のことですね)」

魔王「(そうだ 側近に指揮を執らせろ ゾンビどもは今使える奴が少ないから魔族か使い魔でな)」

吸血鬼「(……ゾンビなら、一般観戦席にかなりの個体が居ましたが)」コーラノンダリシテマシタ

魔王「(ハァ!?)」

狼男「……?」

勇者「どうした?」

狼男「いや…いま一瞬腐臭が……気のせいか」


魔王「(いつの間にあいつら消臭剤なんか買ってるんだよ!?)」

吸血鬼「(さぁ?)」

吸血鬼(犬娘に感づかれてないレベルで消臭出来てるなら問題ないでしょうケド)

犬娘 クンクン

犬娘「香ばしいにおい!」

屋台のオヤジ「本当に大丈夫なのか…?」

魔王「(本当に大丈夫なのか…?)」

吸血鬼「(大丈夫ですって それより、解説席から見た戦いはどうでした?魔女さん)」

魔王「(……あぁ、見物だったな)」

魔王「(思いのほか手練れが少なくてガッカリもしたが)」

吸血鬼「(予想をお聞かせ願います 果たして誰が魔剣を手に入れるのか)」

魔王「(お前も実況と同じことを言うんだな)」

魔王「(…俺の予想では………――――)」











コロッセオ地下

女王「………」

小国王家専属魔術師「!、女王陛下」

女王「首尾は」

王家魔術師「順調です “例年通り”」

女王「作業を続けよ」

王家魔術師「ハッ」

王家魔術師「しかし陛下、毎度のことですが、なにも“ここまで”しなくてもいいのでは?」

女王「…口答えするつもりですか?」

王家魔術師「いえいえ、ただ疑問になっているだけです」

女王「これがいいのだ」


女王「この武闘会は、我がちっぽけな国の貴重な財源 客が集まれば集まるほど軍資金も増える」

女王「客が求めているものはなにか? 答えを求めればこの手はかなり効率がいい 効率よく稼ぐ手段を選んで何が悪い?」

王家魔術師「おっしゃる通りです」

ガラガラガラガラッ

女将「馬車に乗せてくれてありがとうね」

商人「いいってことよ、娘ちゃんによろしくな!」

ピシャ ヒヒーン!!

ガラガラガラガラ

女将「…そろそろ本戦が始まるころね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

女将「……?、なにかしら、この魔力…」

ガラガラガラガラッ

女将「馬車に乗せてくれてありがとうね」

商人「いいってことよ、娘ちゃんによろしくな!」

ピシャ ヒヒーン!!

ガラガラガラガラ

女将「…そろそろ本戦が始まるころね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

女将「……?、なにかしら、この魔力…」

ガラガラガラガラッ

女将「馬車に乗せてくれてありがとうね」

商人「いいってことよ、娘ちゃんによろしくな!」

ピシャ ヒヒーン!!

ガラガラガラガラ

女将「…そろそろ本戦が始まるころね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

女将「……?、なにかしら、この魔力…」

勇者「試合の前に聞いておきたいことがある」

剣士「なんだ?」

勇者「その魔法剣、誰に教わった?」

剣士「?、俺の師匠だが…」

勇者「…エルフか?」

剣士「あぁ もう何年も前だがな」

勇者「…そうか……」

剣士「?」

剣士「どうして師匠のことを? エルフ式魔法剣は確かに珍しいものだけど…」

勇者「あぁ……」


勇者「俺の師匠がいた里は、3年ほど前に滅びたそうなんだ」

剣士「!?」

勇者「俺の師匠は同胞を探す旅をしていたんだ だから気になってな…」

剣士「そうか……エルフの隠れ里なんていくつもいくつもあるものじゃないからな……」



剣士「とはいえ、よそ者の俺たちが暗くなっていても仕方ない 今は自分たちのことをやろう」

勇者「……そうだな もう試合も始まる 正々堂々戦おう」

剣士「あぁ!」

実況『それでは一回戦、第一試合の出場者、勇者と剣士はリングへ上がってくれェ!』

ワー ワー ワー
 ワー ワー ワー

リョウホウガンバレー
コンジョーミセテクレケンシー
タツマキユウシャー

勇者「竜巻勇者って……」

剣士「二つ名みたいでいいな」

勇者「そんなポジティブに考えられん」

魔王『勇者、剣士、ともに魔法剣の使い手です ですが勇者は魔法に精通しており、剣士は剣術だけでも相当な手練れです』

魔王『勝敗がつくとすればそこでしょう あとは、経験ですね』

実況『なるほどォ~ っと、両者リングに上がったァ! それでは第一試合~………』


実況『スタートォ!!』


勇者「『火炎弾』『稲妻剣』」

剣士「『岩石剣』!!」

実況『開始と同時に両者動く! 先手を打ったのは勇者! 魔法弾が剣士に迫る!!』

剣士「この程度は簡単に避けられる!が」

勇者「『雷電剣』!!」

剣士「そうだろうな」

バリバリバリバリィ!!

実況『炎を躱した剣士へ迫るのは、勇者の剣から伸びた雷の刃!』

勇者「電気は金属に寄せられる 戦場で最も純度と大きさがでかい金属は、当然剣!」

剣士「たしかに、だが」

バリバリバリバリ!!!

実況『雷が剣に当たった!』

勇者「よし!……なに!?」

実況『しかし、剣士は何ともないようだ!』

魔王『なるほど…どうやら先手を打っていたのは剣士のほうだったようですね』

実況『というと?』


剣士「最初の『岩石剣』は基本の剣魔法で唯一、二通りの使い道のある魔法だ 石の剣を作ることと、剣を石でコーティングすること」

勇者「!、石は絶縁体 柄や鍔の部分を石で囲ったのか」

剣士「そして、帯電している剣は俺の魔力を使わずに『稲妻剣』の状態になった!」

勇者「クッ」


オオオオオオオオオオオオオオォ
イイゾケンシー!! イケイケー

時間があきましたが、今日はここまでです
おやすみなさい

勇者(『稲妻剣』の状態で剣を打ち合えばこちらが感電してしまう ならこっちも…)

勇者「『岩石剣』!」

剣士「『砕破斬』!」

勇者「!」

バキィッ

剣士「石の剣は切断には強くても粉砕には弱い 『岩石剣』は使わせない!」

勇者(クソ…お互い魔法剣の使い手、長所も短所も知り尽くされてる…)

実況『剣士が雷の剣で責める!勇者は防御も許されずに回避するしかない!』

魔王『とはいえよく躱しています 戦いの中で好機を探るしかないでしょう』

勇者(わかってるっての…)

ワーワーワー
 ワーワーワー

勇者(まずは距離を置く それには…)

勇者「『氷盤』!」

剣士「?」

実況『おぉっと?勇者の周りに無数の小さな氷の円盤が現れたァ!!』


剣士「なんにせよ、相手の策を潰すのは戦いの常識!『火炎剣』『砕破斬』!」

ゴォオオオオオ!!

勇者「いやいや、どうせなら溶かそうぜ それじゃ火力が足んない」

勇者「『烈火斬』!」

剣士「!」

ジュワアアアアアアア

剣士「!、しまっ」

魔王『…なるほど、氷が解けて水蒸気が』

実況『リングが霧に包まれ真っ白になっている!これではお互いの姿が見えないぞォ!』

ギャーギャーギャー
タタカイヲミセロー カクシテンジャネー!

勇者(今のうちに距離を稼ぐ…移動中は隙ができるから、少なくとも方向を相手に悟られてはいけない なら!)

剣士(視界をふさいで距離を稼ぐか、あるいは霧に紛れて不意打ちを狙うか…だが、どちらにしてもやることは同じ!)

勇者「『散火花』!」

剣士「『烈風斬』!」

バチバチバチバチッ
ビュォォォォォォォォォォ

ズバンッ!!

「「「「!!!」」」」

ザシュ
勇者「うぐっ!」

実況『き、霧が!“斬られた”!剣士が風の斬撃で霧を晴らしたァ!さらに飛んできた斬撃を受け勇者が初のダメージィ!!』

ウオオオオオオオオオオ!!!
ヨッシャイケーケンシー アァ!ユウシャガンバレ!

魔王(勇者は予選の時と同じように炎の光で自分がアクションを起こしたように見せかけようとしたようだな)

魔王(しっかり光源を散らしたのはいいものの、剣士が一枚上手だったか…)

剣士「ずいぶん距離を稼いだようだね…けど、魔法剣には間合いの制限がないことを忘れてないかい?」

勇者「忘れてなんか、ないさ」ニヤッ

剣士「!」


剣士(なんだ…勇者は策の上でしてやられたと思っていない…ここまで計算通りだとでもいうのか?)

勇者「なんだよ…人の顔ジッと見つめやがって…そんなにかっこいいか?」

剣士(それにこの腹立たしいほどの余裕も!)

勇者「そんな不思議そうな顔すんなよ 周りを見てみなって」

剣士「ハッ!?」


バチバチバチバチバチッ!!

剣士「火花が消えていない!?」

勇者「それだけじゃない お前が作った風は今!俺が操っている!」

剣士「なに!?」

魔王『魔法剣が行う遠距離攻撃は基本、炎などで刀身を伸ばすか斬撃を飛ばすか そして飛ばされた斬撃は術者には遠隔操作できない!』

勇者「術者の振った太刀筋に沿って飛んでいくだけだ!」

勇者「そして、火花は俺が操る風に乗って、剣士!お前の周りをグルグル回っているぞ!」

剣士「これはっっ」


魔法使い「まさか!?」

盗賊「容赦ないな…」ハハハ・・・




勇者「『火炎旋風』!!」



ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


剣士「……これは消せないな」

剣士「ハハハ…こりゃ参った」

ゴゥンッ!!

実況『炎の波が剣士を飲み込んだ!!』

ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

ワーワーワー
 ワーワーワー

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……………

実況『そろそろ火の威力も弱まったでしょう』

勇者「あ、はい 『水龍弾』!」

バシャッ
ジュワアアアアアア………


「「「「……」」」」

実況『剣士の姿はありません!第一試合、戦いを制したのは勇者だァ!!』


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

実況『それでは第一試合の勝者は控室へ、第二試合の出場者はリングへ入ってくれ!』


控室

魔法使い「お疲れ様!」

盗賊「余裕なさそうだったな」

勇者「そりゃな …その剣士はどこだ?」

盗賊「そういやまだ帰ってきてないな」

魔法使い「トイレかな…? あ、そうだ勇者、さっきお母さんが来てね」

勇者「へ、女将さんが?」




・・・……―――――――

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

実況『さて、先ほどの剣士と勇者の戦いもなかなかでしたが、少なからず!あとに続くこの戦いに気を取られている方も居たんではないか…』

狼男「……」

鬼「……」

実況『第一予選での決着をここで!第一回戦第二試合、スタートォ!!』

狼男「……」

鬼女「……」

ジリジリジリッ…


実況『さて、第一試合と打って変わって膠着状態が続いております……』

魔王(一切野次も飛んでいない それだけこの二人の気迫が伝わってきているからだろう すごい集中力だ)


魔法使い「……全然動かないね」

盗賊「だな……あ、勇者、遅かったな 女将さんと二人で何話してたんだ?」

勇者「……」

魔法使い「? 勇者?」

勇者「!、あ、いや、なんでもない 大会終わったら話すよ」

魔法使い・盗賊「?」


勇者「…っ…」ギリッ

狼男(このままお見合いしてたって相手が隙を見せるわけもないし、好機は来ない)

狼男(まずは俺から動く 相手の判断で後のことを考えるしかない)

狼男「フッ!」ダッ


実況『!、動いたのは狼男!右の鉤爪を振りかぶり一直線に鬼女へ向かっていく!』

鬼女「『鬼童丸』」ザワッ

狼男 ピクッ

狼男(予選で使った魔法!効果は…)


鬼女「フンッ!」ブンッ

狼男(攻撃力増強ッ!)「クッ!」バッ

ドゴォォォン!!

実況『対する鬼女は拳を振るう!間一髪で狼男はそれを避けたが、拳は地面を砕いたァ!!』

ワーワーワー
 ワーワーワー

魔王『一見、拳と鉤爪では圧倒的に狼男に分がありますが、鬼女は魔法で肉体を強化しています』

魔王『正面からぶつかり合って、押し負けるのはおそらく彼の方ですね』

実況『ナルホド!』


狼男(予選から一度も抜いていない、腰に差した剣…あれが本当の武器だろう)

狼男(だが、徒手空拳でも予選でのハンマーも十分脅威だった)

狼男(底が知れない…)

鬼女「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………

鬼女「フンッ、ハァ!!」

ブンッ ゴウッ

狼男「クッ!」サッ


実況『今度は鬼女の攻撃が始まる! 狼男は必死で躱す!』

魔王『いけませんねぇーおそらく鬼女の方が格上でしょうから防戦ばかりでは彼に勝機はありませんよー』


狼男(そんなことはわかってる…っ)

鬼女「……もう少し骨があるかと思っていたが……私の目が節穴だったか」

狼男「なんだとっ」

鬼女「もういい、私の相手はお前じゃなかっただけだ」



鬼女「『酒呑童子』」ゴウッ
メラメラメラメラ


実況『と、突然鬼女が炎に包まれたぞ!!?』

ザワザワザワザワ

今日はここまで

9月の頭から今日まで、間が空くこともありましたがなんか続けて来れました
気づけば850を超えてます すげぇ

3が日はお休みします たまには書き溜めってことをやってみようかと

その間、要望、感想、気になったこと、雑談、自由にこのスレを使ってください
(そろそろレス乞食なのがばれる)

無いとは思いますが、一応950超えた場合は次スレとリンクを用意していただければありがたいです

再開は1月4日午後9時予定としておきます 暇だったら早めに来ます


こんな読みにくい駄文におつきあいしてくださる寛大な皆様がよい年越しを迎えられることを祈っております
4か月弱、本当にありがとうございました
それでは、よいお年を



……………………………



鬼女「…………」メラメラ


狼男「……くっ」ジリッ



実況『突如炎に包まれた鬼女、しかしその顔に苦痛の表情はありません!魔女さん、これは一体どういうことなのでしょうか!?』


魔王『どうやら彼女は『酒呑童子』という術を使ったようですね 炎の衣を纏い攻撃威力を上げ、同時に相手の攻撃を牽制する 攻守にバランスのとれた術です』

魔王(しかし、この術の本当の真骨頂は別にあるが……それが露見する機会は無いか………)


ワー ワー ワー
 ワー ワー ワー



狼男(……現状、俺よりも相手が格上なのは否定できない そのうえ身体強化のような魔法でブーストしてくる)


鬼女 ブォンッ!!


狼男「っ!……………ガハッ!」



実況『鬼女のストレートが狼男に直撃ィ!狼男は体をくの字に曲げている、モロに喰らったァ!』



狼男「くっ!はぁっ!」シュッ


鬼女「甘い」サッ


狼男「クソッ!」


実況『鬼女の攻撃に為す術なしか狼男!攻撃のチャンスも、ヒラリと躱されてしまっているぞォ!』


ガンバレオオカミオトコ!
オニオンナーイイゾー!



狼男「くっ」


鬼女「諦めるか そうすれば楽になるぞ」


狼男「冗談だろう!ハァ!!」バッ


鬼女「フン………」ヒラリ


ドムッ!


狼男「っ!!かハっ」ガクッ


実況『あぁ!鬼女が攻撃を回避しすれ違いざまに一撃!これには堪らず狼男も膝をつくゥ!!』


………………………


魔使「あぁ!狼くんが!」


勇者「!!」ガタンッ!!


盗賊「!?、おいどうしたんだ勇者!?」


勇者「あ…あぁ……すまない…………なんでもないんだ」ストン


魔使「??」



勇者「負けるな…狼………」


………………………

今日はここまでです

最近自分の中で遊戯王の面白さが再燃してる…
TFでも買ってやろうか

忘れてた コメント返し的ななにか

まずは、新年あけましておめでとうございますm(_ _)m
今年もよろしくお願いします

要望のあった犬娘と吸血鬼の絡みは武闘会編のあとに予定してます
お楽しみに

案の定950まで行きませんでしたね
やっぱりこのスレッドの体制でも大丈夫そうですね ちょっと安心

そういえばどうでもいいことなんですけど
今年初詣を二回行ったんです
それぞれ違う日に違う神社おみくじ買ったんですけど、両方とも大吉でした


(*´∀`)

以上です おやすみなさい



狼男「あ…………がっ……」


鬼女「……」


実況『膝をついた狼男!それを見下ろす鬼女!まさに強者と弱者の図だ!狼男に勝ち目はないのかああああああ!!!』


「狼男頑張れー!」
「立てー!立つんだー!!」
「根性見せろー!!!」

ワー ワー ワー
 ワー ワー ワー


狼男「畜生………まだだっ…」グッ


鬼女「フン」


………………………


吸血鬼「………」


犬娘「狼さん……」


魔王『一方的ですね 力の上下関係の刷り込みもあるでしょうし、このままでは狼男は二度と鬼女に勝てなくなってしまいますよ』

犬娘 ピクッ


吸血鬼(魔王様の言うとおり ここまで一方的に嬲られればもう歯向かうこともとも出来なくなる)

吸血鬼(頭ではなく、心で!目の前の相手には勝てないと決めつけてしまうことになる)


犬娘「…………頑張って」ぐっ


………………………

狼男(何かないか……こいつを倒すための手段は…)


狼男(若干の身長差 狼としての嗅覚 奴の使う体術系魔法 炎の衣 武器のアドバンテージ……)


鬼女「………」メラメラメラ


狼男(…武器といえば、こいつは刀を差しておきながら使う様子がない)


狼男(勇者戦を意識して温存するためか なら魔剣か何かの可能性も……)



~~~

鬼女「もう少し骨が……」

~~~




狼男(それをこの場に持ってきたなら、この『刀』を、使う必要があるかもしれないと)


狼男(こいつ自身!俺に対して思ったんだろう!だったら……)


狼男「まだいける 出来るはずだ」





狼男「お前に勝つことが」


鬼女「…………ならやってみろ、勇者の犬」






………………………

コロッセオ地下

女将「………」

ワー……
 ……ワー…


女将「……ここまで歓声が聞こえる…」


女将「確か……鬼女と狼男という方たちが戦っているはず」







女将「その二人も、この勇者に負けた人も問題ない」


剣士 ………


女将「勇者、魔法使い、あなた達に負けは……」



女将「………………死は、許されませんよ…」

今日はここまで

明日は冬休み寿命と最後の一日…
宿題は未だなにも終わらず…

そして私は筆を置かない(諦め)

狼男(まずは、距離を稼ぐ お互い近距離型の戦闘スタイル、これで時間は稼げる)サッ


鬼女「………」


狼男(炎の衣のせいでうかつに触れることは出来ない そうなると当然、中遠距離攻撃が必要)ボゴォン!


実況『鬼女から距離を置いた狼男、振り上げた拳をリングに打ち付けた!?』


魔王『なにか、準備をしようとしているんでしょうね』


鬼女「当然、それを相手が続けさせるわけがない」ダッ


実況『鬼女が走る!狼男は依然タイルを砕く作業だ!』


「それ整備するのにどんだけ金と時間と手間かかると思ってんだ!」
「ふざけんな畜生!」


実況『整備班からの怒号が飛ぶ!』

狼男「ハァ!」ボゴォン!


鬼女「なにをしているんだ!」ブンッ!


狼男「チッ」バッ


実況『追いかける鬼女!狼男は攻撃を避けながらもリングを破壊し続ける!』


「やめろおおおおおおおおお」
「いいかげんにしろよこの野郎!!」


魔王(一体なにを狙っているのか……)


鬼女「………」

ごめんきょうここまで

つまり、品詞に気を付けながら読めば、この文は、バッファローの地に暮らすバッファローたちの社会的階級に見られる上下関係を描写したものとして解釈することができる。
{{Indent|
[Those] (Buffalo buffalo) [whom] (Buffalo buffalo buffalo) buffalo (Buffalo buffalo).<br />
{{small|(バッファローのバッファローがおびえさせるバッファローのバッファローは、バッファローのバッファローをおびえさせる)}}<br />
[Those] buffalo(es) from Buffalo [that are intimidated by] buffalo(es) from Buffalo intimidate buffalo(es) from Buffalo.<br />
{{small|(バッファロー出身のバッファローは、バッファロー出身のバッファローにおびえているが、バッファロー出身のバッファローをおびえさせている)}}<br />
Bison from Buffalo, New York, who are intimidated by other bison in their community also happen to intimidate other bison in their community.<br />
{{small|(ニューヨーク州バッファロー出身のアメリカバイソンは、同じコミュニティー出身のほかのアメリカバイソンにおびえているが、同時に同じコミュニティー出身のほかのアメリカバイソンをおびえさせてしまっている)}}
}}
動物のバッファローを「人間」に置き換え、動詞の "buffalo" を "intimidate" に置き換えれば、この文の理解はより容易になるであろう。
{{Indent|
"Buffalo people [whom] Buffalo people intimidate [also happen to] intimidate Buffalo people."<br />
{{small|(バッファローの人々におびえるバッファローの人々は、同時にバッファローの人々をおびえさせている)}}
}}
文の意味を変えないように、動物の "buffalo" の代わりに "bison" を、動詞の "buffalo" の代わりに "bully" を用い、市名の "Buffalo" をそのまま残せば、次のようになる。
{{Indent|
'Buffalo bison Buffalo bison bully bully Buffalo bison'<br />
{{small|(バッファローのバイソンがいじめるバッファローのバイソンはバッファローのバイソンをいじめる)}}<br />
'Buffalo bison whom other Buffalo bison bully themselves bully Buffalo bison'. <br />
{{small|(他のバッファローのバイソンがいじめるバッファローのバイソンは彼ら自身、バッファローのバイソンをいじめている)}}
}}
この文の構造をさらに理解するためには、"Buffalo buffalo" を何でもいいから他の名詞句に置き換えてみればよい。他の "Buffalo buffalo" をおびえさせる "Buffalo buffalo" を指す代わりに、"Alley cats"(野良猫)、"Junkyard dogs"(猛犬)、"Sewer rats"(ドブネズミ)を使ってみよう。するとこの文は次のようになる。
{{Indent|
"Alley cats Junkyard dogs intimidate intimidate Sewer rats." <br />
{{small|(猛犬がおびえさせる野良猫はドブネズミをおびえさせている)}}
}}
上の文が、'Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo' と同じ文構造、意味を持っているのである。

同音異字によるわかりにくさのほか、この文は以下の理由により、語法を理解するのが難しくなっている。
# 動詞の "buffalo" があまり一般的でない上に、この語自体が複数の意味を含んでいる。
# 名詞の "buffalo" の複数形に "buffaloes" を用いず、単複同形として動詞の "buffalo" や地名の "buffalo" と同じ形を取っている。
# "buffalo" の複数形は "buffaloes" でも良いのにも関わらず、あえて動詞と同じ形を持つ "buffalo" を含んでいる。
# 文中に冠詞や明確な複数形など、構文上重要な手掛かりが存在しない。
# カンマを打たないことで、文の流れがつかみにくくなっている。
# 結果的に袋小路文、つまり文を読み返さずに、さっと読んだだけでは意味を捉えることができなくなっている。
# この文では、ある集合についての[[全称記号|全称的]]な叙述を行なっているが、そこからさらに第2の集合(おびえさせられたバッファローによっておびえさせられているバッファロー)を導き出している。この第2の集合は、当初の集合と同じものとも違うものとも解釈可能である。
# 大文字を無視すると意味の判別が曖昧になる。形容詞の "buffalo" には "cunning"(悪賢い)という意味もあり、この用法によって文を解読すると次のようになる。'Buffalo bison [that] bison bully, [also happen to] bully cunning Buffalo bison'{{small|(バイソンがいじめるバッファロー出身のバイソンは、悪賢いバッファロー出身のバイソンをいじめる)}}
# 関係詞節が中央に埋め込まれており、理解しにくくなっている。

狼男「………っ…………っ……」

ダダダダダッ
ボゴォン!

ダダダダダダッ
ボォオン!


実況『走る走る!狼男が全力でリング上を駆け抜けてゆく!そしてリングを破壊していく!』


魔王『リング脇から怨嗟の言葉が飛んでいます』


鬼女(ずいぶん破壊しまわっているが……一向に攻めては来ない……………リング上にあるのは破壊されたタイル片だけだ)


狼男「フッ……………フッ…………」シュッ
ボゴォン!


鬼女(……だが、スピードだけは称賛に値するな)


「なにやってるかは全くわかんねーケド………ナァ?」
「あぁ…………すげぇ速い…」
「目が疲れる…………」


…………………………

ゴロゴロッ


狼男「…………」


実況『やっと終ったようです…………リングの上は石ころだらけ、走ることはおろか、悪いところは真っ直ぐ立っているのも困難な足場です』


鬼女「……これが狙いか?」


狼男「………」


鬼女「…フン」ゴォオオォッ!!


実況『再びにらみ合う両者!このフィールドには意味があるのか狼男!炎の勢いが増していく鬼女!先に動くのは、はたしてどちらかーーーー!!』


オオオオオオオオオオオオーーー!!!

狼男「………スゥー………フゥー………」


鬼女「…………さぁ…来い」


狼男 ギロッ



………………………




犬娘「……!」ピクッ


犬娘「魔剣の所有権が…戻ってきてる?」


吸血鬼「どうした?」


犬娘「……なんでもない…」


犬娘(………一体何を…)




………………………




勇者「………」


魔使「狼くん、勝てるの…………?」



…………………………




狼男(……場は整った……あとはタイミングだけだ…)フゥー…フゥー…


鬼女(…タイミングを計っているのか……)


鬼女「……がっかりだ、と思ったんだがな」


狼男「?」


鬼女「走り回って地面を砕いているだけ、それならふざけているようにしか思えない」


狼男「………」


鬼女「だが、私の中の血が騒ぐんだ……これは面白い戦いができると」


狼男「………鬼め」


鬼女「私を満足させてみろ、犬」



ビュォォオオオオオオオオオオオオオ!!!



「…風が……」


狼男(来たっ!!)

ゴゥン!


サアアアアアアアアアアアアアァァァ………


実況『こ、これは!』


鬼女「……」



勇者「!」



「な、なんだ!?」
「リングからいきなり煙が………」




魔王『砂埃……いやこれは』



実況『コロッセオに吹き込んだ風が、破壊されたリングから大量の粉塵を巻き起こしたああああ!!!そして!』




狼男「………」スッ


鬼女「…チッ、煙に紛れて姿を消したか」




「竜巻勇者と同じだね 攻めあぐねて目つぶしで身を隠すなんて」
「!、なるほど 彼は勇者の戦いを参考にしたわけか」



魔王『当然拡散型の遠距離攻撃が可能ならば攻略もされたでしょうが、今までの戦いからし鬼女にその手段はないと判断したんでしょうね』


鬼女「それに、スピード型で狼の嗅覚がある奴と視界がはっきりしないフィールドは相性が良すぎる………」


実況『加えて鬼女は今炎の衣を纏っている!その現在地ははっきりしている、ここからは狼男の逆転劇だああああ!!!』




魔王『とはいえ風で舞い上がった砂埃はすぐに地に落ちます………それにさっきの勇者の霧と違って濃度にもばらつきがある…短期決戦は必至ですね』


勇者(それはあの二人も理解している…………特に狼は)



鬼女「『酒呑童子』の炎がなくとも奴には嗅覚がある……なら解除はしない………」




鬼女「あとは、神経を集中させて………空気の流れでもなんでも」


ゾゥン!


鬼女「!!」バッ



ダダダダダダダダダダダッ


鬼女「………走り回って空気をかき回しているのか………あじな真似を…」

狼男「3」




……………………………




狼男「2」




…………………………………





狼男「1」

バッ





鬼女「!!」クルッ





シュッ
ズバンッ!!!







鬼女「!!!?」


鬼女「な、なに!?」ガフッ




サアアアアアアアアアアァァァァァァ……………………

実況『!!!、い、いま粉塵の合間にワタクシの目に見えた光景は!』



実況『鬼女が肩から袈裟懸けに斬られ!膝をついている姿!!!その目の前には!』


実況『『刀』らしき物を携えた狼男の姿ァ!!!』



ザワザワザワザワザワザワ………………………

「どういうことだ!?」
「あいつの得物は鉤爪だろ?」
「だから燃えてる鬼女を攻撃できなかったわけで…」



吸血鬼「刀や剣ならば、ある程度体から離した攻撃……専門家によればある種、剣も中距離攻撃手段だそうだ」



犬娘(私に所有権が帰ったから、私に合った刀の形状に変わった……でも魔剣は触れている以上は呪いを受ける……当然人化は解けない)




犬娘「でも…所有権無しの魔剣はいうことを聴くかどうか…………」


…………………………………



鬼女「………………クッ」


狼男「ハァ…ハァ…ハァ…………………」

鬼女(……出血はあるが筋には異状ない……体を動かすことに支障はない)


鬼女「…さっきまでの爪が消え、代わりにその刀……魔剣の類か」



………………………………



忍「…………」



………………………………


魔使「まだ粉塵ではっきり見えないけど、やっと狼クンの攻撃が通ったみたいだね!」


盗賊「得物のトリックは知らないが、まずは一矢報いたってところか……?」


勇者「…………」


………………………………

ポタッ……………ポタタッ…………

鬼女「………」


ザアアアアアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア………………



……………………………………


狼男 スンスン…


狼男(視認は一瞬だったが、血の匂いがする……まず間違いなく攻撃は通った)


狼男(まだ傷は浅いかもしれないが、それでも軽傷とは言い難い出血だろう……まだまだっ!)スッ…





ゾワッ



狼男「!?」ゾッ



……………………………………


勇者「!!?」


魔使「頑張れ狼クーン!!」


勇者「…………まさか……」ボソッ


狼男(なんだ………この悪寒……)



ザザザザッ!!


狼男(!、奴が動いている……こちらには気づいていないようだが…)




狼男(……いや、臆さず攻めるしかない)ダッ






……………………………





忍「………お前も魔剣を使うか」


忍「………仕方あるまいか…相手も、魔剣なら………」カタカタ


忍「……………」

狼男(……移動している…これはまわりを警戒しているのか)


狼男(進行方向からして、体の向きは正面……ここから一直線に接近すれば奴の右側に攻撃できる)


狼男(…ここで腕でも落とせれば剣も使いづらくなる……よし!)


ダダダダダッ




「あ、粉塵の隙間から鬼女が見える!」
「本当だ!出血してるぞ」
「いいぞーいけー狼男ーー!」
「鬼女負けるなーーー!」



鬼女「………」(……来い)


ゾゥン!


狼男(よし、取った!)バッ



鬼女「!!!」





ザシュッ

………………………………………




サァァァァッ!!!








「………粉塵が……」
「晴れた………」





「おい…………あれ……」
「……マジかよ」
「鬼女の腕が……」



鬼女「…………ガフッ………」ボタタタタッ
プラーン……




「けど…………『それどころ』じゃないぞ!」
「まじかよ!狼男!!」




狼男「…ッ……!!……」


狼男「……カハッ」ベチャベチャベチャ!!
グッサリ……





実況『み、右腕が皮一枚で繋がっている鬼女!おびただしい量の出血だ!』

実況『だがしかし!だがしかし!!その目の前にいる人影、狼男!』

実況『その胸に!!鬼女の剣が深く突き刺さっているうううううう!!!!!』


ウオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオォォォ!!!!!!




狼男「……き、貴様っ」ギロッ

鬼女「…クッ…クカカカカッ」ニヤッ


ガシッ


鬼女「!」


狼男「畜生!貴様何をした!『コレ』はなんだ!?『ソコ』にいるのか!!?」
ビチャビチャ



「狼男、何か叫んでる?」
「コレとかソコとか…」
「あんなに叫んだら傷が……」


鬼女「…あぁ、『ココ』にいる……あとお前が今掴んでいるのは刃物だぞ」


狼男「そんなことは『見なくても』わかる……貴様ぁ…」ギギギギッ


鬼女(…胸に刺さった剣をつかんで固定している…今引き抜けば出血もひどいだろうが、それ以前に私を移動させないためか)




狼男「確かに腕を切った感触はあった……今お前は左腕一本で剣を持っているはずだ」


鬼女「あぁ、その通りだ」

鬼女「だが、お前は自分の状況を理解しきれてないようだ」

ゴワッ
ボウッ!!



狼男「グワアアァ!?」



実況『鬼女が持つ剣を伝って、狼男の体に火が付いた!!』



「ああぁ!?」
「狼男おおお!!」



鬼女「ここまでだな」


狼男「グワッ………ガ」









狼男「があああああああああああああああああああ!!!」
ズルッ

ブシャアアァァァ!!!


鬼女「なっ!?」



「きゃあああああああああ!」
「あ、あいつ!!」


実況『な、なんということだ!!狼男が自分の胸に突き刺さっていた剣を、自ら引き抜いた!!!』

狼男「がああああああああああ!!!」ブンッ!ブンッ!


鬼女「クッ!」サッ


実況『剣を振り回す狼男!鬼女は距離を取ります!』


魔王『自分の血で炎を消してますね………』

魔王(ずいぶん無茶で無意味なことを……いや、なにがしたいのか)


鬼女(クソ、さっさとトドメを差しておけばよかった…………だがじきに奴は出血で死ぬ、問題は…)




狼男「あああああああああああ!!!」ブォン!ブォン!


鬼女「!?」




実況『お、狼男、何をしているのか?……無暗に暴れまわっているように見えますが…』

「なにしてるんだ!」
「ダメージ判定で転送される前に鬼女を叩けばまだ間に合うんだぞ!!」
「そっちじゃねー!」


ギャーギャーギャー!!



「……ひょっとして、見えてないのかな?」
「あ?何言ってんだ?」


狼男「はぁぁぁあああ…!!ア゙ア゙ア゙ァァァァ!!!」
ブォン!ガシャン!


「……粉塵の砂埃でも目に入ったか?」
「そんな間抜けな…」
「………そんなに間抜けなことあるのか?」
「…………」


狼男「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


鬼女「!、コイツ!」


……………………………


魔使「お、狼クン!?」


盗賊「あいつ一体なにを…」




勇者「まさか……」


……………………………




狼男「ハァ…………ハァ……………ハァ……」ガックリ


鬼女「…………」



実況『………まるで憑き物でもついていたかのように暴れまわっていた狼男…しかし限界が来たのか、今はリングの上に膝をつき、肩で荒い息を繰り返すのみとなっています』




………………………………




吸血鬼「………」


犬娘「………」カタカタカタカタ……




………………………………



狼男「……」チラッ




控室

勇者「!」



狼男「………―――」パクパク





勇者「………………あっ」







鬼女「死ね」ブンッ
ザシュッ













犬娘「ッ!!!!」ガクッ


勇者「狼いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」










………………………………………

実況『第二試合の勝者は鬼女!これで第二回戦の初戦組は決まった!!けどそれは次のお楽しみってやつ、次は第三試合、リングの整備が終わり次第出場者は出てきてくれ!以上!!』



ワアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア



勇者「………」


魔使「……ねぇ、勇者……本当にどうしたの?」


勇者「………」


盗賊「………お前、さっきからおかしいぞ…女将さんに一体何言われたんだ」


勇者「…まだ、言えない………」


魔使「……狼クン負けたけど…帰ってこないんだけど」


勇者「………」


盗賊「剣士も、いつまで経っても帰ってこない……どうなってるんだ」


勇者「……………まだ」


魔使「勇者!」





勇者「………わかった……でも、第三試合までは…」


盗賊「…………それが終わればすぐに話すんだな?」


勇者 コクッ


魔使「……」

…………………………


犬娘「……うぅ……ん…?………あ、れ?」


吸血鬼「……目が覚めたか」


犬娘「……うん」



「美女が美少女に膝枕してる……」
「カメラ取ってこい!こっそりな!」
「……やましい気持ちないけど……なんか絵になるなぁ…」
「ktkr!!」


吸血鬼「どうしたんだ、急に倒れたりして」


犬娘「……あのひとは?」


吸血鬼「は?」


犬娘「狼…男……」


吸血鬼「負けたんだから、控室じゃないのか?」


犬娘「……狼さん…………」フラフラ


吸血鬼「おい、まだ回復しきってないだろ」ガシッ


犬娘「どこなの………狼さん……」ブツブツ


吸血鬼「………」

………………………………



コロッセオ・地下



女将「……ふぅ…とりあえずこの人の処置は終わったわね…」


剣士「………」スー…スー…


女将「…すごい回復力…まるで一呼吸ごとに細胞が活性化しているよう…」


女将「………エルフみたいね」


シュイン!


女将「!、次の敗者ね…順番からして勇者や娘じゃないでしょうけど……」





女将「!?」


……


女将「………狼?」


狼 ……

カラァン
魔剣『人』…
………………………………

ギャーギャーギャー

「まったくあのクソ野郎!さんざん場をかき回した挙句に負けやがって!」
「俺たち整備班の手伝いでもさせてやろうと思ったのに、どこにもいねーしよお!」
「………」


「なぁリーダー!」
「ん?あぁ…そうだな」
「?、どうかしたんですかい?」


「……いやな、実は気になることがあってな」
「気になること?」
「どうしたんですかリーダー、そんな真剣な顔して」


「…おめーら、もうここで働いてるやつで短くとも3年はやってるよな?」
「へい」
「……いままでによ、本戦で負けたやつって、みたことあるか?」


「はい?さっき狼男の野郎の戦いを見ましたよ」
「んだな」
「そうじゃねぇ……じゃあ言い方変えよう、『本戦で負けた後の奴』を見たことあるか?」


「…負けた後、ですかい」
「気にしたことねーな…たいていみんな自分が終わったらすぐ帰っちまうし…」
「そうだな、だから『毎年』一位は賞品持って帰るのに、二位とか賞金だけの奴はよくいなくなっちまう…」


「……あれ?それにしちゃ、毎年ってのが変な話ですね」
「あぁ…それに一度でも本戦で負けたことのある奴は二度とここへ戻ってこねー」
「………あれれぇー?」


「…………狼男の野郎…いまどこにいるんだ?」
「…さっきあいつの仲間が戻ってきてないって言ってたの聞きました」
「……………どうなってんだ?」




(それになにより、いちばんおかしいのは、なんでこんなおかしなことを俺たちはずっと気づかなかったんだ…?)




…………………………………………

飛び飛びだったけど今日はここまで

流れ考えてた勇者と剣士の話はともかく、狼と鬼の話は若干ぶっつけなとこばっかだったから変なとこ多いと思う…
精進します
次は魔法使いと魔導師…
遠距離でバンバンやりたいなーとか考えてたけど、よく考えたら魔法使いちゃん盾役だった…
どうしましょう

そろそろ次スレだけど、建てるタイミングは今のスレの様子見て考えます
おやすみなさい

どうしようかな…
950ぐらいで次スレ建てるのが一般的だけど
今は(過疎なのか自重してくれてるのかわかんないけど)そんなにレス伸びてないし
かといってここで次の対決書いちゃうのも中途半端になりそうだし…

もう思い切って新しいの建てようかな?
とりあえず今日はちょっと精神的に(眠気)辛いんで寝ます、ごめんなさい

よし、建てるか

次スレ
魔王「さあ…殺れ!」勇者「命を大切にしない奴なんか大嫌いだっ!」魔使「part2!」
魔王「さあ…殺れ!」勇者「命を大切にしない奴なんか大嫌いだっ!」魔使「part2!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389706660/)


一応こちらもage
よろしくお願いします

埋めか申請かはお任せします


なんだか感慨深いぜ……

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