【MJP】銀河機攻隊マジェスティックプリンスで短編集【マジェプリ】 (595)

スレタイ通り。
いつでもネタを募集中。大概のネタで書いていきたい。
前スレ【マジェプリ】もしもイズルが一週間いなかったら - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368891908/)
現在のネタ候補
ラビッツの結婚式 ジャンル違いのイズルのマンガ テレビ取材 幼児化
レッド5さんの活躍(攻略) テオーリアショタコン説 アマネとラビッツの交流
ストレス発散するケイ イズルとケイの初夜(意味深)
どれから行きましょうか?

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375105128

どうも。では、今日は一番目に書かれたテオーリアさんと多かったレッド5さんを。

お姉さん(意味深)

九話より

スターローズ―― 一般居住区

テオーリア「」テクテク

テオーリア(あ、あった…)

テオーリア(ここの噴水はやはりステキですね…)

テオーリア「」チョコン

テオーリア(ああ、イズル…。私はあなたに……)

イズル「――あ」

テオーリア「え?」

イズル「あ、あなたは!」

ケイ「イズル?」

テオーリア(い、いいいイズルーっ! あぁ、イズルが、本物のイズルがーっ!)

テオーリア(ああ、その少し頼りない儚げな顔、何てかわいいんでしょうっ!)

テオーリア(身体つきも逞しくなって…ああ、何てギャップなのでしょう!)

テオーリア(今すぐ抱き締めたい、抱き締めてぎゅーってしてすりすりして……っ!)

テオーリア「……っ!」タッ

イズル「あ、待って!」タタタ…

ケイ「イズルっ」

テオーリア(ああ、そんな風に呼ばないで! 立ち止まりたくなってしまいますっ!)

テオーリア(……っ、っていうかいつの間にガールフレンドなんて……お、お姉さんは許しませんよっ!)

ダニール「テオーリア様、こちらです」

テオーリア「ダニールっ!」

タタタ…






十四話より

スターローズ―― 一般居住区

テオーリア「イズルはこっちにいるんですね?」テクテク

ダニール「はい。…テオーリア様、慌てないでください」

テオーリア「これが落ち着いていられますか。早くイズルに…」

イズル「……」シュン

テオーリア「隠れなさい」ハッ

ダニール「…? はい」

テオーリア(ああ、イズル…っ、そのしょんぼりした顔も…ううっ、罪悪感もあるけれど、最高ですっ! なでなでしてあげたい!」

ダニール「…テオーリア様、声に出ています」

テオーリア「あっ」

テオーリア「…こほん。では、行きましょうかダニール」

ダニール「はい」






十六話より

お好み焼き屋――赤色彗星

テオーリア「」ソワソワ

カタッ

ダニール「――テオーリア様」

テオーリア「だ、ダニール! イズルが来たのですかっ」

ダニール「いえ、十分ほどしたら着くそうです」

テオーリア「そ、そうですか…」

ダニール「はい、では…」

テオーリア「だ、ダニール。私の服は大丈夫でしょうか? どこか乱れたところは…」

ダニール「いえ、問題はありません」

テオーリア「そ、そうですか…」

テオーリア(ああ、イズル、この間は少ししか話せなかったし、入院までしたというし…)

テオーリア(今日こそイズル分を補給しなくては……っ!)

テオーリア「……ふふっ」ホホエミ

終わり。もちろん実際のテオーリアさんはこんなことない。
どっきゅん♪がかわいかったですね、あの人。
次行こう。

レッド5兄貴

スターローズ――イズルの部屋

イズル「」スースー

イズル「」パチッ

イズル「」ムクッ

イズル「」キョロキョロ

イズル「……また俺か」

イズル「ま、いいや。イズルの代わりに遊んでくるか」






食堂

イズル(お、食堂か)

イズル(ん。まぁ、まずは腹ごしらえからだな…)

シオン「お、イズル君じゃん。今日は遅かったね」

イズル「ああ、まぁね、いつもの頼むよ」

シオン「? 何かキャラ違うような…ま、いいや。待っててね」タタタ






イズル「…ふぅ。ごちそうさん」

シオン「お粗末様。いやー、いい食いっぷりだね」

イズル「あなたの作るごはんが美味しいからですよ」

シオン「お、嬉しいこと言うねぇ」

イズル「ええ。何なら、色々終わっても、俺のために毎日作ってほしいですね」キラーン

シオン「」ドキッ

シオン「や、やだなぁ。もう、スルガ君みたいなこと言っちゃってー」テヲフリフリ

イズル「俺は本気で言ったんですけどね」ニコリ

シオン「も、もうっ、じゃ、私行くから!」タタタ…

イズル「……うん。からかいが過ぎたかな?」

イズル「次は誰に行こうかねぇ……」ガタッ






格納庫

イズル「」スタスタ

レイカ「お、イズルちゃーん。どしたの?」

イズル「いや、たまには自分の機体を見に行こうかと」

レイカ「へぇ、良いことじゃん。どうぞどうぞ。見てきなよ」

イズル「はい。ありがとうございます」

レイカ「うんうん。こっちとしても、大事な機体だからさ、大事にしてほしいね」

イズル「個人的には同じくらいあなたたちピットクルーも大切にしたいんですけどね」

レイカ「へ?」

イズル「俺たちと同じ戦場に出るんだ。リスクだってある」

レイカ「あはは、それも守ってくれるんでしょ、ヒーローさん?」

イズル「ふ、そうですね。……俺が皆を守りますよ」キラーン

ダン「イズル…」キュン

マユ「それって…」ドキッ

デガワ「お前……」キュン

レイカ「あっはっはっは。頼りにしてるわよ?」ナデナデ

イズル「はは、ええ、任せてください」



イズル「さて、と。次行くか」






食堂

ランディ「あーあ、暇なモンだな」

チャンドラ「命令あるまで待機か。こういう中途半端な時間はどうもな」

パトリック「」ソワソワ

ランディ「別にタマキに会いに行ってもいいんじゃないか?」

パトリック「! …いえ、会ったらたぶん、出撃に迷っちゃいますから」

チャンドラ「中途半端に会うよりもがっつり、ということか」

ランディ「ふ、違いない」

イズル「あ、先輩」

ランディ「お、イズルか」

イズル「待機中ですか?」

チャンドラ「ああ、まったく、こういう時間が一番困るぜ」

イズル「大変ですけど、がんばってください」

ランディ「おう。お前も、頼りになってきてるし、頼むぜ、ヒーロー」ニッ

イズル「ええ、もちろん。俺も、皆さんを頼らせてもらいますよ」キラーン

タタタ…

ランディ「…ふっ。言ってくれるぜ」

チャンドラ「まったくな。頼りになるな」

パトリック「…ええ、そうですね」ニコリ






休憩所

イズル「さ、次はどうするかな…」

イズル(オペレーターの二人は終わったし、先輩、食堂の姉ちゃん、ピットクルーも…)

イズル「どうっすかな…」

リン「あら。イズル」

イズル「ああ、どうも艦長」ニコリ

リン「……レイカから聞いてたけど、何かキャラが違うわね」

イズル「…そうですかね。俺はいつも通りだと思いますけど」

リン「…そうかしらね……まぁいいわ」

イズル「艦長は何してるんです?」

リン「ちょっと散歩よ。…隣いいかしら」

イズル「ええ、もちろん」

リン「」ストン

イズル「上役ってのも大変ですね」

リン「そうでもないわ。皆いるし、あなたたちの方がよっぽど大変だしね」

イズル「そうですかね?」

リン「前線に出るのはあなたたちだもの。それに、アッシュも」

イズル「アッシュも?」

リン「まだまだ試作品で危険性だって見えてる。実験してるみたいじゃない?」

イズル「…俺はアッシュは気に入ってますよ? 相棒って感じです」

イズル(まぁ俺がそのアッシュなんだけど)

リン「なら、いいけど…ね」

イズル「?」

リン「……無茶はしないでね。何か言いたいことがあれば何でも聞くから」

イズル「はは、そりゃどうも。じゃあ、そうだな…」

イズル「ありがとうございます。ここまで俺たちを導いてくれて」

リン「……お礼を言われること、かしらね、それ」

イズル「もちろん。艦長がいてくれたから、俺たち生きているんですよ、きっと」

イズル「だからありがとうございます。今度は、俺たちであなたを守りますよ」キラーン

リン「っ、な、生意気なこと言うじゃない…」メソラシ

イズル「いいじゃないですか。生意気くらい言わせてくださいよ」

リン「…そうね、たまにはいいかしらね」

リン「じゃ、私は行くから」

イズル「ええ、また後で」

カツカツカツカツ…

イズル「……そろそろ戻るかね」






イズルの部屋

イズル(……さて、戻ってきたけど、どうするかな)

イズル(もうちょっと遊ぶのもいい…)

シュッ

ケイ「イズル、いる?」

イズル「」ギクッ

イズル「や、やぁケイ。どうかしたか?」

ケイ「えっと、新しいケーキ作ってきたんだけど、食べないかな、って」ウワメヅカイ

イズル「」

イズル(……ふぅ、戻るタイミングか)

イズル(イズル…お前はこれに付き合えるなんてすげぇよ、ホント)

イズル「っ、…」クラリ

ケイ「え、イズルっ!?」ダキシメ

イズル「………あ、ケイ」

ケイ「だ、大丈夫、イズル!」アワアワ

イズル「…うん、大丈夫……」ヨッ

ケイ「あ、無茶しない方がいいわ。ほら、寝て」ウンショット

イズル「ん、ありがと」ニコリ

ケイ「……う、うん」カァ



レッド5(…やれやれ、誰か一人のための笑顔、か)

レッド5(ま、それはお前にしかできないことだけどさ)

レッド5(やっぱ、イズルはお前なんだよ)フッ

終わり。これで残ったネタ候補は
ラビッツの結婚式 ジャンル違いのイズルのマンガ テレビ取材 幼児化 水彩にはまるイズル
アマネとラビッツの交流 ストレス発散するケイ イズルとケイの初夜(意味深) ですね。
次は初夜と、何にするかは決めてません。どうぞネタや希望があれば書いてやってください。

どうも。思ったよりも初夜が長くなりそう。
書ききれないので、息抜きに今日はアサギの幼児化で一つ。

アサギ、お子様化する

スターローズ――アサギの部屋

アサギ「……とうとう届いたか、西園寺製薬の最新胃薬」

アサギ(これを注文するまで、思えば一か月…長かった、そして苦労した…)

アサギ「っ…」キリキリ

アサギ「さっそく、飲むか…」ゴソゴソ

シュッ

レイカ「ちょ、アサギクン! そっちにウチの小包混ざって、ない…?」

アサギ「え…?」ゴクンッ

アサギ「!」ドクンッ

アサギ「あ、う……?」ヨロ…

レイカ「アサギクンっ!」






病室

シュッ

イズル「皆、アサギは!?」

ケイ「イズル…」

スルガ「…まだ分からない。急に運び込まれた、って」

タマキ「だいじょうぶかなー…」

アンジュ「アサギ先輩のことですから、心配はいらないとは思いますが…」

ケイ「そもそも、どうして運ばれたのかしら?」

スルガ「そういえば俺も知らねーな。ただここにって聞いたもんだから…」

イズル「僕もだよ。誰か知らないの?」

タマキ「ううん…あたしも知らないのらー」

アンジュ「私もですね…」

イズル「うーん…?」

シュッ

ルーラ「あら、皆集まっているのね」

イズル「あ、ルーラさん! アサギは大丈夫なんですか?」

ルーラ「…んー、そうね……」

スルガ「な、何ですか? まさか………」

ルーラ「いや、そうじゃないんだけど…まぁ、直接見た方が早いわね」

ケイ「あの、それは一体…」

???「――こういうことだよ」

タマキ「? 誰、この子?」

アンジュ「何故こんなところに子供が…?」

???「……子供で悪かったな、子供で」

ケイ「……ま、まさかとは、思うけれど」

イズル「アサギ、なの!?」

アサギ「…ま、そうなるよな」ハァ

タマキ「え、マジー? アサギって、こんなに小っちゃかったっけ?」クビカシゲ

レイカ「あー、ウチの新製品のサンプルのせいなのよね、それ」

アンジュ「整備長、それは一体…」

レイカ「かいつまむとね。最近ウチの実家で外見的な年齢を一時的に下げる薬の開発が進んでててね?
    こないだ私にも意見がほしいから、って試供品を送ってもらったんだけどさ……」

アサギ「それが俺が頼んだ新しい胃薬とごちゃ混ぜで届けられてな…それで、このざまさ」ハァ

レイカ「いやー、ホントごめん! まぁ時間経過で治るからさ。一日、そのままでお願いね」ナデナデ

アサギ「な、撫でないでください!」

スルガ「なっ…て、てめー、アサギ! なんて羨まし…ごふっ!」

ケイ「まったく…大変ね、アサギ。私たちなりにできることはするから、頼ってね?」シャガミ

アサギ「あ、ああ……」ドキン

イズル「そうだね! アサギには僕たち頼ってばかりだもん。たまにはアサギを助けよう!」

アンジュ「そうですね。私たちをどうぞ頼ってください、アサギ先輩」

アサギ「…おう」

タマキ「じゃ、部屋まで連れてってあげるのらー♪」ダキッ

アサギ「な、お、おい! 俺はそこまで……っ」

タマキ「しゅっぱーつ!」タユンタユン

アサギ「だからいらねぇってーっ!」






食堂

タマキ「はい、あーん」

アサギ「…」アーン

イズル「アサギ、はい、これ」リョウリテワタシ

アサギ「…」ウケトリ

スルガ「」ムー

アンジュ「先輩、モテモテですね」ホホエミ

アサギ「…俺はまったく嬉しくないけどな」

タマキ「えー」

アサギ「誰がこんな甲斐甲斐しくしろって言ったんだよ!」

イズル「そんな…僕たち、ただアサギに…」

アサギ「だからそれが余計だって…」

ケイ「食後のケーキはどうかしら?」

いつもの色彩がスバラシイケーキ「」┣¨┣¨┣¨┣¨ドド

アサギ「」

イズル「えっと、い、いただこう、かな…」ハハ

スルガ「お、俺はいいや」

アンジュ「わ、私も…」

タマキ「あたしもー」

ケイ「そう。まぁいいわ」

ケイ「はい、アサギ」アーン

アサギ「……うっ」

アサギ(できれば、こういう状況以外でやってほしかったぜ…)

アサギ「……あ、あーん…」






アサギの部屋

イズル「ほら、アサギ。着いたよ」

アサギ「お、おう……」

ケイ「お腹、無理してたのね…ごめんなさい」

アサギ「……いや、気にしなくていい」

イズル「(ホント、無理してケーキは食べなくてよかったのに…)」

アサギ「(うるせぇ。お前には分からん)」

イズル「?」

アサギ(…チッ。天然め)

イズル「……ええっと、じゃ、僕たち行くね」

ケイ「お大事に、アサギ」

アサギ「ああ、じゃあな」

シュッ

アサギ「……ふぅ」

シュッ

アンナ「いよっ、見舞いに来てやったぞ!」

アサギ「…何で来た?」

アンナ「うっわぁ、ホントに小っこくなってるんだな」ケラケラ

アサギ「…悪かったな小さくて」

アンナ「別にそんなこと言ってねーじゃん。弟できたみたいでおもしろいしー」

アサギ「お前にそんな呼ばわりされるとはな…っつーか、俺の方が上だろ」

アンナ「何を言ってんだか、このチビパイが」

アサギ「おいお前の方が小さいからな」ズイッ

アンナ「…なっ、ホントだ…っ!」ガーン

アサギ「そんなショック受けるかよ…」

アンナ「あったりめーだっ! せ、せっかくお姉さんぶれるかと思ったのに…」

アサギ「いや、それはねぇよ」フー

アンナ「くっ、な、なら、ほら」モグリ

アサギ「おい、何を…!」

アンナ「お姉さんらしく添い寝してやるよ。ほら」

アサギ「…何でそうなるんだよ。おい、とっとと出ろ…」

アンナ「」スースー

アサギ「寝付くの早すぎるだろ…」

アサギ「……」

アンナ「」スースー

アサギ「……」ナデナデ

アンナ「…ん、ぅ」

アサギ「…やっぱり俺の方が上じゃねぇかよ」ハァ



その後、結局元に戻ったアサギではありましたが、この薬の効果を知ったケイがイズルで試そうとしたり、
スルガが食堂のお姉さんで試そうとしたり、逆に年齢が上がる薬をアンナが試そうとしたりと、一悶着が続くのでありました。

終わり。微妙に失敗しているところはスルーで。
残ったネタ候補
ラビッツの結婚式 ジャンル違いのイズルのマンガ テレビ取材 水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)
アマネとラビッツの交流 ストレス発散するケイ イズルとケイの初夜(意味深)スルガ視点の仲間たち
前スレの方、スレ建てされたようで何よりです。期待してます。それでは。

海にいくラビッツとドーベルマンで

どうもお久しぶりです。
今日は二つやっていこうかと思います。

※この番組は主にストレスフリーで構成されています

スターローズ――ケイの部屋

ケイ「……」

ケイ「」フー

ケイ(…何でかしら、任務が終わって、もう二日も休日をもらったのに…)

ケイ(全然疲れが取れない…)

ケイ(…どうして、なんて分かってるけれどね)

ケイ(テオーリアさんと二日間出かけるなんて…大丈夫、よね)

ケイ「」ハァ

ケイ「ケーキ…は焼く気にはならないわね」

ケイ「どうしましょうか…」






アサギの部屋

アサギ「だから何で俺の部屋に来るんだよお前らは…」

タマキ「休暇することなくってひまなのー」ダラーン

スルガ「しょうがねーじゃん、ぶらぶらしてっと筋トレ付き合わされるんだよ」フー

アンジュ「えっと…すみません。先輩たちにお誘い受けたものでしたから…」

アサギ「ったく……」

シュッ

ケイ「やっぱりここにいるのね」

アサギ「…よう、お前もかよ」

スルガ「これで全員かぁ」

タマキ「ほえ? イズルはー?」

アンジュ「先輩はテオーリアさんとお出かけしているのでは…」

タマキ「そらっけー?」キョトン

ケイ「」フー

アサギ「……いないヤツのことはほっとけ」

スルガ「んー、アイツもぐいぐい進むねー」ノビー

タマキ「意外だけどねー」

ケイ「それはそうと! ちょっと相談があって来たの…」

スルガ「な、何だよ大声なんか出して…」キーン

アンジュ「相談…ですか?」

アサギ「……何の相談…なんだ?」

アサギ(まさか…とうとう、なのか?)

ケイ「疲れを解消する良い方法はないかしら?」

アサギ「…疲れ? ストレスか?」

ケイ「…まぁ、そうとも言うかもね」

スルガ「ストレスゥ? んなもん、いつもみたくケーキでも焼いてりゃいいじゃん」

ケイ「今日はどうもそういう気分じゃないの…」

タマキ「塩辛食べればいいのらー」

ケイ「それはアンタだけでしょうが…」

スルガ「そー言ったら皆そうだけどなぁ」

アンジュ「…えっと、ひたすら訓練するのはいかがでしょう?」

タマキ「えー、疲れてるのにー?」

アサギ「逆にそうやって時間を潰せば疲れがもっと溜まってよく眠れるんじゃないかってことだろ」

スルガ「そういうもんかね…」

ケイ「…ちょっと、試してくるわ」






仮想訓練室

ケイ(たまには、射撃訓練でもしようかな…)

ピッ

ケイ(武装選択…最大火力を選択)

『これより戦闘訓練を開始します』

ケイ「」ギュッ

ケイ(行くわよ、パープル2。敵を全て、殲滅する!)

パララララッ!

ケイ「当たれ! 消えてしまいなさい!」

ダミーエネミー「」チュドーン

ケイ(……今頃イズルは…)


イズル『テオーリアさん、美味しいですね』

テオーリア『ええ、地球の食事は素晴らしい…あら?』

イズル『? どうかしましたか?』

テオーリア『ふふっ、食べこぼしが付いていますよ』クスクス

イズル『へっ!? あ、いや、あの…』ワタワタ

テオーリア『はい、取れましたよ』フキフキ

イズル『あ、ありがと、ございます…』カァ


ケイ「――はあああああぁぁぁっ!!」ギュッ




タマキ「何かすごいのら…」

スルガ「へー、ケイって結構やるのな」

アンジュ「そ、そうですね…何だか怖いですが」

アサギ(……こりゃ、イズルが帰ってきたら色々と面倒だな…)






アサギの部屋

ケイ「…ありがとう、それなりに気分が晴れたわ」

アンジュ「そ、そうですか」

スルガ「いやー、そりゃ良かったな」

タマキ「ケイー、何か怒ってる?」

ケイ「いやね、そんなことないわよ」ニコリ

タマキ(何か笑顔が怖いのらー)

アサギ(仕方ねぇな…)

ケイ「じゃあ、私は帰るから」

アサギ「…ケイ」

ケイ「何?」

アサギ「これを焚いて寝るといい」

ケイ「これは…アロマ?」

アサギ「ああ。気分がもっと良くなる」

ケイ「…そう、ありがとう」ニコ

アサギ「…おう」メソラシ



その後、イズルが帰って年少組がデートの結果を根掘り葉掘り聞いたり、
それを聞いてケイは戦闘訓練で気持ちを発散したり、アサギのアロマで心癒すことを日課としてしまうのでした。

終わり。次に行こう。

ざわ…ざわ……!

スターローズ――イズルの部屋

イズル「」ハァ

イズル(何で僕のマンガ、評判悪いんだろ?)

イズル(…一度ヒーローモノを止めたらいいってアンジュには言われたっけ…)

イズル(確かに、そればかりで描いてたから、話の流れが同じになっちゃうし…)

イズル(でも、僕ヒーローモノ以外はなぁ…うーん……)

イズル「やって、みようかな?」






アサギの部屋

アサギ「で、早速見てみてほしい、と」

イズル「うん! どうかな?」ズイ

スルガ「分かった分かった! 見てやるからそんな押し付けるなって!」

スルガ「……」ペラ

イズル「」ドキドキ

スルガ「…! マジかよ……」

ケイ「どうしたの?」

タマキ「やっぱりおもしろくないのー?」

アサギ「まぁ急におもしろくは…」

スルガ「……お、おもしろい…」

ケイ「え?」

イズル「ほ、ホント!?」

アサギ「おい本当か?」

スルガ「ああ、ほら」

アサギたち「……」ペラ

アサギたち「…! ほ、本当(ホント)だ……!」

イズル「そ、そんなに驚かなくても…」

スルガ「っつーか、お前ジャンル変えたんだな。急にギャンブルモノなんて描くなんてよ……」

ケイ「意外すぎるわ…路線変更が過ぎるというか……」

タマキ「でもでも、絵は変わってないのら。何でおもしろいんだろー?」

アサギ「……話がおもしろいからだろうな…認めたくないが」

スルガ「俺ちょっとアンジュ呼んでくる!」タタタ…

タマキ「あ、ズルい! あたしもー!」タタタ…

アサギ「走るなよ! 艦長に見つかったら説教だぞ!」

ケイ「良かったわね、イズル。マンガ、おもしろくなって」ニコリ

イズル「え、えっと……あ、ありがとう」ニガワライ

アサギ「……ま、たまにはこういうのも描けばいいんじゃないか。ヒーローモノもだが」

イズル「…うん」

シュッ

アンジュ「ええっと、先輩、そんな引っ張らないでください」

スルガ「いや、いいからいいから!」グイグイ

タマキ「急ぐのらーっ!」グイグイ

イズル「あ、アンジュ。その、君の言ってみた通りにマンガ描いたんだけど、見てくれるかな?」

アンジュ「はぁ…それでは……」ペラ

イズル「」ドキドキ

アンジュ「……! これは…」

ケイ「どうかしら? おもしろい?」

アンジュ「そう、ですね。正直、意外です」

イズル「そ、そっか! ありがとう、アンジュ」

アンジュ「あ、ですけど、もっとこのルールの部分の説明やコマの割り方は変えた方が…」

イズル「う、うん…」

アサギ「…いや、話は自分の部屋でしろよ」






イズルの部屋

アンジュ「それでは先輩、今のところが変わったらまた見せてくださいね?」

ケイ「頑張ってね、イズル」

タマキ「期待してるのらー」

スルガ「今度兵器ネタで頼むぜ!」

アサギ「…じゃあな」

イズル「う、うん。じゃあね」

シュッ

イズル「……」

イズル「」ハァ

イズル(マンガ、あんなに評判良かったなんて…)

イズル(嬉しいけど…嬉しくないなぁ)

イズル(僕、ヒーローが描きたいのに……)

イズル「どうしよう……」ハァ



その後も頑張ってヒーローモノとギャンブルモノを描くイズルではありましたが、
結局、評判はギャンブルモノの方が上となってしまいました。
もちろん、その経験と諦めずに描き続ける努力のおかげで、ヒーローモノもおもしろくはなりましたが。

終わり。何か微妙ですね…。まぁいいや。最近のお話はずいぶんと濃かったですね。正直幹部減るの早すぎです。
絵がアレでも話の質が素晴らしい福本さんが羨ましいです。
残ったネタ候補
ラビッツの結婚式 テレビ取材 水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)
アマネとラビッツの交流 イズルとケイの初夜(意味深)スルガ視点の仲間たち
マッスルスルガ 同期たちの評価 アサギ兄ちゃん
次はスルガによるラビッツの評価、結婚ネタ、初夜でやります。では。

あと6回しかないんだぜ…受け入れられない…

どうもお久しぶりです。今日初めてコミケ行きました。レッド5カッコよかったです。
売れ残ったのはザンネンですが。うちわをいの一番にゲット。皆かわいい。これを元に>>57ですかね。
では、二つほどやっていきます。

戦場において、射手に必要とされる能力。
それは間違いなく観察力だ。
スナイパー――まぁ俺はガンナーだけど――なんかは特にそうだ。
見る力が無ければ、敵に狙いをつけられない。
自分を狙う敵に気付かなかったら、マヌケに死ぬことになる。

と、いうわけで。
俺は結構、色々といつでも見ている。

「……出撃までまだかなり時間あるね」

戦艦ゴディニオンのパイロット待機所。
ミッション開始前で暇してる俺たちの中で、イズルが一人呟いた。
俺と同い年のこの頼りねー――いや、最近は結構頼りになるのか?――リーダーはマンガばっか描いている。
しかも全然おもしろくない。どうせならヒーローじゃなくてミリタリーで描きゃいいのに。
いや、それは俺だけかおもしろいの。

「出撃が早回しになるかもしれないんだ、気を抜くなよ」

イズルの言葉に携帯アロマか何かでリラックス中のアサギが少し力んだ声で返した。
相変わらず、緊張しやすいタイプだ。まぁ、イズルじゃできない緊急の作戦立案とか指揮をこなすことになるわけだし、仕方ねーけど。
…何だかんだ言って、そういう面では最年長として頼れる存在なのかもな。
……俺も、一応信用してるし。

「でもひまー」

と、アサギに甘えた調子のだらけた声がする。
タマキだ。ウチのチームの中で一番のアホの子。
んでもって癒し要員。コイツののほほんとした調子は、何だかんだ言って俺たちにとって大事になっている。
まぁアホの子だけど。
さっきまで食べていた食堂のお姉さんの特製塩辛が無くなってすることが無くなったんだろう。
タマキを見てみれば、やっぱりカウンターに突っ伏して足をぶらぶらさせていた。

ったく、お子様め。

「スルガに言われたくないーっ!」

俺の呆れた言葉にタマキは椅子を鳴らしながら立ち上がる。
俺のどこがお子様だってんだ。俺は――あー、まぁ、お前よりかはオトナ、だよな?
うーん、あんまり言えないのか? そんなことを考えながら、最新の銃器の情報をネットで仕入れる。

「ま、まぁまぁ。ほら、ええっと…」

「無理に場を繋ごうとすんなよ」

「まったくもー」

ホントお前はダメリーダーだぜ。

「えー……」

頑張って場を纏めようとして纏められないイズルにほぼ全員で呆れ返った。
…まぁおかげで一気にリセットされたけどな。こういうところで、案外リーダーっぽいことしてるのかもな。
いや、これでリーダーってのもあれだけど。

「だ、大丈夫よ。私は、その、応援してるから」

ちょっとだけ気を沈めるイズルをケイが照れ気味にフォローしようとする。
最近はずいぶんと露骨になったもんだ、と思う。
テオーリアさん効果なのかね。まぁイズルは全然気にもしてねーけどな。
ついでに言うけど、ちょっとは俺にもその優しさを向けてくれませんかね。
あの長距離狙撃のときくらいじゃん、ちょっと励ましてくれたの。

「うん、ありがとね、ケイ」

「…ええ」

素直に礼を言うイズルにちょっと照れて顔赤くしちゃうケイ。
何アレ青春? いや、俺ら青春とか記憶にないけれどさ。
おいアサギ、そんな羨ましそうな目向けてりゃバレバレだぞ。
まったく、周りに気ばっか遣ってよ…たまには自分も優先すりゃいいのに。

「先輩方は、本当に仲が良いんですね」

どこか遠くから見るような声に、俺は目を動かす。
俺の隣――に近い距離に座るアンジュだ。
彼か彼女か知らないけれど、アンジュは不思議そうにしている。
この子はどうも兵士然としている。というのが俺のこの子への感想だ。
それが当然のこととは思うが、緊張感のない俺たちにとって、この子の考えや行動は少し怖い。

もちろん、悪い子ってわけじゃないから、俺やタマキは積極的に仲良くなろうとしている。
そうやって、俺たちのペースに早くこの子を引き込んであげたい。

「アンジュも仲良くなるのらー」

「せ、先輩!」

言いながらタマキがいつものノリで簡単に抱き着く。
当然ながらアンジュは困ったような反応を見せた。
だけど、タマキの無邪気さ相手にはさしものアンジュも悪いようにはできない。
こういうところが、ウチのチームの癒し要員らしさだと思う。

「アンジュ、さん。君も僕らの仲間なんだよ」

「遠慮なんてする必要はないわ」

「そうさ。年上の俺たちはともかく、タマキは同い年だしよ」

畳み掛けるようにイズルたちが続く。
ここは俺も行くか。

そうだよアンジュ。アサギやケイみてーなカタブツどもはともかく、俺やタマキとかには遠慮なんかしなくていいからな。

「おい余計なこと言うな」

「アンタは軽すぎるでしょうが…」

いった! だからケイ、ちょっとは俺にも優しくしろっての! イズルばっか甘やかしすぎだろうが!

「な、あ、そ、そんなことないわよ!」

「へ? そうなの?」

「ち、違うわよ」

必死になって否定するケイとキョトンとした表情を見せるイズル。
それとは別に、また新しい話題で俺たちが盛り上がる。
さっきまで良い話しようとしてた空気がもうなくなっている。
おいおい、これじゃアンジュも置いてけぼり――

「――ふふっ……あ」

ちょっとした喧噪の中、急に皆の声が止まる。
それと同時、俺たち―― 一人を除いてだけど――の視線がその一人に集中する。
その先にいるそいつは、自分の綻んだ口元に右人差し指を添えていた。

「アンジュ、今…」

「笑ったのらーっ!」

そう、タマキが言った通り。
今、アンジュは確かに、微かにだけど笑みを零したんだ。
ようやく見れたそれは、はっきりと言って普段のアンジュらしくない。
でも、それは悪い意味じゃない。何て言うか、俺たちと同じ、年頃の子供の笑いだったから。

「わ、私…今、笑ったんですね」

大きく違和感を抱いているらしい様子で、アンジュは自分の行動を改めていた。
あ、やばい。かわいい。……この子、女の子だといいなぁ…。

「そうだよ。アンジュ、さん」

「……先輩方と話していると、何だか、変になります」

もっと変になったっていいんだぜ? その方がこっちも気楽だし。

自分の変化に戸惑うような素振りを見せるアンジュに、俺なりの言葉を告げる。
イズルじゃねーけど、俺たちはもっと仲良くなるべきだ。
チームとして、仲間として、これからも戦っていくために。
…まったく、俺がチームワークなんて気にしちまうなんてな。
俺も、変わってきてるのかね。

「そうだよ。もっと変になっちゃおう」

「おい言い方を考えろ。それじゃ俺まで変みてえじゃねぇかよ」

アサギも立派に変だっての。

「ふざけんな、お前らと一緒にするなっつの」

「アサギはー、えーっと、ろり…」

「それ以上言うなタマキ。だいたい全然違うからなそれ」

「…ふふっ」

「また、笑ったわね」

「…あ、えっ……」

油断するとツボが浅くなるのかもな。
アンジュの表情がどんどん柔らかくなっていく。
そんなアンジュに、タマキが、アサギが、ケイが、イズルが祝福するように微笑みかける。
俺たち、似た者同士なのかもな?
そんな皆につられるわけじゃなく、俺も笑った。

――チームラビッツ、というチーム。
やっぱザンネンだけど、不思議と前みたいな悔しさみたいなのは湧かない。
代わりに思うのは、ここにいて良かった、という安心。
ザンネン仲間たちの集い。そう、それはまるで家族のような――――

今日も今日とて、俺たちはいつも通りだ。
そのいつも通りが可能な限りは続くよう祈りつつ――俺はまた、観察するんだ。

終わり。>>85 (残りの話数を噛みしめて)受け入れよ。
どうせなら二期とかじゃなくてあのスタッフで完全新作が見たい。
次行こう。

結婚しよ(迫真)

地球――どこかの教会の一室

イズル「……」

イズル「」ソワソワ

アサギ「おい、準備できてんのか?」ガチャ

イズル「うわっ!」ガタッ

アサギ「…何をそんな慌ててんだよ」フー

イズル「あ、や、ごめん。き、緊張しちゃってさ」アハハ

アサギ「ったく、お前そんなので大丈夫なのか…」

イズル「だ、大丈夫だよ。……たぶん」

アサギ「段取りは? …指輪は忘れてないだろうな」

イズル「ゆ、指輪…え、えーと……」ガサゴソ

アサギ「……」

イズル「あ、あった!」パァ

アサギ「……」イガー

ガチャ

スルガ「はは、アサギ兄ちゃんは大変だなぁ?」ニヤニヤ

アサギ「…コイツの兄貴なんてゴメンだ、っつーか、いたなら入って来いよ」

スルガ「いやー、おもしろかったからよ」

イズル「あ、スルガ」

スルガ「よー」ヒラヒラ

アンジュ「えっと、おはようございます」ヒョコ

タマキ「おはよー!」ニコニコ

イズル「タマキとアンジュも!」

アンジュ「あの、お、おめでとうございます先輩」

タマキ「おめでとーなのらー」

イズル「うん、ありがとう!」

スルガ「しっかし、まさかお前らからとはな…」

タマキ「次はあたしー!」ハーイ

アサギ「そりゃ無理だろ」

スルガ「無理だな」フッ

タマキ「あーん! アンジュー、イジメられたのらー!」

アンジュ「えっと、先輩、時には真実から目を逸らすのはいかがかと…」ニコリ

タマキ「ひどっ! アンジュ最近冷たいのらー!」

アサギ「何言ってんだか。諦めるなって言ってるだけ優しいだろ」

スルガ「そーそー。んで? おめーの彼氏様はまだ来てないのか?」

タマキ「パトリックセンパイたちは後で来るってー」

アサギ「そうか。まあいい。イズル、俺たちは向こう見てくるから。大人しくしてろよ」

イズル「わ、分かってるよ。アサギ兄ちゃん」

アサギ「それ二度と言うなよ」ガチャ

スルガ「じゃーな」

タマキ「まったねー!」ヒラヒラ

アンジュ「それでは」ペコリ

イズル「……」

イズル「」フー

イズル(もうちょっとかぁ…な、何か緊張がまた……)

イズル「向こうは、大丈夫なのかな…」

レイカ「平気そうにしてたわよー?」ガチャ

イズル「わっ!? え、あ、整備長! …それに」

リン「相変わらず落ち着きのないわね、あなたは」

イズル「きょうか…じゃなくて! かんちょ…あ、えっと…」

リン「まったく…プライベートは名前で構わないと言ったでしょう?」

レイカ「私もねー」ニコニコ

イズル「あー、えっと、そうなんですけど…」

リン「その調子じゃ、尻に敷かれるわね」フッ

レイカ「あっはっは、リンリンもそういうタイプだもんねぇ」

イズル「あれ? 艦長ってご結婚なさったんですか?」

リン「」ズーン

イズル「えっ!? 艦長!?」

レイカ「ゴメンゴメン。最近はずっとこんな調子でさー」

レイカ「こっちで連れてくから。あ、おめでとさん」

リン「レイカァ…何で人は孤独なのかしら……?」

レイカ「はいはい。そんじゃねー、あ、そうそう」フリフリ

イズル「はい?」

レイカ「あの子、すっごくキレイになってたからねー。いやー、イリーナたちは優秀だわ」

イズル「き、キレイ……」ポー

レイカ「ふふっ、ちゃんとホメてあげなさいね?」ガチャ

リン「そ、それじゃあ…」

イズル「は、はい。ありがとうございます」

イズル「…艦長、相手見つかるといいなぁ」

ランディ「よう! 元気してたか?」ガチャ

イズル「あ、先輩!」

チャンドラ「よう。さっき、スズカゼ艦長たちとすれ違ったんだが…何かあったのか?」

イズル「え、あぁ、その…婚期というか何というかですね…」

パトリック「ああ、そういうこと…」

ランディ「パトリック、お前はタマキちゃんにそういう思いさせるなよ」

パトリック「させませんよ!」

チャンドラ「そういえばそのタマキたちがいないようだが…」

イズル「ああ、皆は向こうの方を見てくるって」

ランディ「何だ入れ違いか。ま、いいけどよ」

パトリック「ああ、タマキちゃんのウエディングドレス…ステキだろうなぁ」ポー

チャンドラ「まったく…」

ランディ「まぁ放っておけ。イズル」

イズル「は、はい!」

ランディ「あいにくと俺には家庭がないからな。お前にアドバイスしてやれることがもうない」

イズル「あ……」

ランディ「ま、これからは俺に教えてくれよ? 先輩」ニッ

イズル「――はい!」ニコリ

チャンドラ「じゃ、俺たちはもう行くぞ」フッ

パトリック「じゃあね。僕らの式のときは頼むよ」

ランディ「楽しく生きろよ」ガチャ

イズル「ありがとうございました、先輩!」

イズル「………」チラリ

祝いの言葉が添えられた花『迷わずに 進んで行けよな 二人でな』

祝いの言葉が(ry2『おめでとさん! しっかりな、ヒーロー!』

祝いの言葉が(ry3『とにかくおめでと、イズぴょん! 絶対に幸せになってよ?』

イズル「こんなに、たくさんの人がいたんだなぁ、僕の近く」

イズル(最初の頃は、誰もいなかったのに…)

「――そうですよ、イズル。あなたが気付かなかっただけで、あなたの世界にはこんなにも多くの人がいるのです」ガチャ

テオーリア「もちろん、私も」

イズル「あ…テオー、リアさん。司令も」

シモン「……」

シモン「…テオーリア様、私から先に」

テオーリア「ええ、どうぞ」

シモン「…おめでとう。これからも頑張ってくれ」ビシッ

イズル「は、はい…ありがとうございます」ビシッ

シモン「それでは。私はダニールと待っていますので」

テオーリア「はい」

ガチャ

イズル「……」

テオーリア「」ニコリ

イズル「あの、テオーリア、さん」

テオーリア「はい? 何でしょうか?」

イズル「あの、これまで、ありがとうございました。これまでのこと、テオーリアさんのおかげだと、思うんです」

テオーリア「そんなことはありませんよ、イズル。全てはあなたの行動の結果。私は一つのきっかけにすぎなかったんです」

イズル「それでも、テオーリアさんがきっかけの一つになったんですから。きっと、なかったら全然僕の道は違うモノになってたんです」

テオーリア「そうですか? ふふっ、あなたらしいですね」

テオーリア「それでは、私もお礼を一つ」

イズル「え?」

テオーリア「ありがとう。私を守るヒーローでいてくれて。私がここにいるのはあなたのおかげです」

テオーリア「そして。これからも、誰かのためのヒーローでいてくださいね?」ニコリ

イズル「…はい。約束します。僕は、ヒーローですから」

テオーリア「ええ、約束です」

イズル「あの、テオーリア、さん」

テオーリア「はい? 何でしょうか?」

イズル「あの、これまで、ありがとうございました。これまでのこと、テオーリアさんのおかげだと、思うんです」

テオーリア「そんなことはありませんよ、イズル。全てはあなたの行動の結果。私は一つのきっかけにすぎなかったんです」

イズル「それでも、テオーリアさんがきっかけの一つになったんですから。きっと、なかったら全然僕の道は違うモノになってたんです」

テオーリア「そうですか? ふふっ、あなたらしいですね」

テオーリア「それでは、私もお礼を一つ」

イズル「え?」

テオーリア「ありがとう。私を守るヒーローでいてくれて。私がここにいるのはあなたのおかげです」

テオーリア「そして。これからも、誰かのためのヒーローでいてくださいね?」ニコリ

イズル「…はい。約束します。僕は、ヒーローですから」

テオーリア「ええ、約束です」

コンコン

ペコ「イズルさん。時間です」ガチャ

イズル「あっ…」

テオーリア「さ、行ってらっしゃい。人を待たせるのは失礼ですよ?」

イズル「はい。…じゃあ、行ってきますね」

バタン

ペコ「…あの、そろそろ時間ですし」

テオーリア「ええ、案内をお願いしますね」

ペコ「はい。じゃ、こちらに…」

テオーリア「……」

テオーリア(イズル、幸せに…)






イズル「」スタスタ

アサギ「よう、来たか」

イズル「あ、アサギ」

アサギ「この先の曲がり角を右に行ってまっすぐだ。…間違えるなよ?」

イズル「わ、分かってるよ!」

アサギ「ったく…」

イズル「」スタスタ…ピタッ

アサギ「? どうした?」

イズル「……あの、アサギ」

アサギ「…何だよ?」

イズル「ありがとう」ニコリ

アサギ「……おう」

イズル「」タッ

アサギ「…っ、イズル!」

イズル「何?」

アサギ「その、何だ…」

イズル「?」

アサギ「――おめでとう」

イズル「うん、ありがとう!」

タタタ…

アサギ「……」

アサギ「」ズルズル…ストン

アサギ「…ったく、何を急に言うかと思えば……」

アサギ「ズルいヤツだよ、お前は」

アンナ「おーい! アサギー! …って、何壁にもたれて座ってんの?」

アサギ「ああ、お前か。…どうかしたか?」

アンナ「もう時間だろー? 急げよー」グイグイ

アサギ「……はいはい、引っ張るなよ」ハァ

アンナ「おう、急げ急げー」ニコニコ






イズル「」タタタ…

イズル「っと、この辺で歩きに戻しとかないと…」

「へぇ、この辺で?」

イズル「うん、だって、ほら。慌てた感じで行ったらまただらしないって怒られ…」

「……」ニコニコ

イズル「い、いつから…?」

「さっきから。まったく、あなたって人は…」

イズル「ご、ゴメン」

「怒ってないわよ。あなたらしいし、ね」

イズル「そ、そう? ありがと」

「ホメてないから。…ね、どうかしら?」

イズル「へ? ……あ。ああ! うん、えっと…」ポー

「言葉に詰まらないでよ…」

イズル「あ、いや、さ。聞いてたよりも、その、ずっとキレイだったものだから、つい…み、見とれちゃって」カァ

「…っ、そ、そう。ありがとう…イズルも、似合ってるわ」

イズル「そう? 皆には着られてるって言われちゃったけど」

「私はそうは思わないわ。か、カッコいいから」

イズル「…ありがとう」

「……」

イズル「……」

イリーナ「あー、おほん」

イズル「!」

イリーナ「まったくもう。続きは帰ってからね。ほら、時間よ」

「…はい」

イズル「は、はい」

イリーナ「準備完了しました、どうぞ」

『りょーかーい、どうぞ』

「…ね、イズル」

イズル「うん?」

ケイ「これからも、よろしくね?」ギュッ

イズル「――うん! こちらこそ!」ギュッ

――――ガチャ!

終わり。
残ったネタ候補
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イズルとケイの初夜(意味深)マッスルスルガ 同期たちの評価 アサギ兄ちゃん
Oさん視点 ドルガナの一日 海開きpart2
それでは。時間に余裕があればもう一回来ます。日付変わっても来なかったらそういうことで。

どうも。今日もやっていきます。

軍団長は大変

今回は記録を地球人たちの方式で付ける。
あくまで研究としての行為であり、特に意味はない。
…まったく、プレ・エグゼスには困ったモノだ。

AM8:00

問題なく起床。
ガルキエ様や他のレガトゥスたちと朝食を済ませる。
相変わらずジアート様はいらっしゃらない。
……あの方の気まぐれにはこちらも参る。ガルキエ様は慣れた様子でいらっしゃるが。

AM10:00

戦闘記録の管理や機体の整備を行う。
先程はジアート様もいらっしゃったらしく、あの美しき機体は変わらず輝いていた。
シカーラの実力は随一、ガルキエ様の補佐としても素晴らしい手腕を発揮なさるというのに。
いや、あのようなお方だからこそ、私のような者がガルキエ様の補佐役を務められるのだが。

PM12:00

昼食を済ませる。
今回はルメスとの会食となった。

「レガトゥス・ドルガナ。あなたはいかがに思いますか?」

何をかね?

「例の地球人たちです。この前はジアート様に本気を出させたとか」

うむ。その話は聞いている。

今朝の戦闘記録、そこには例の赤い機体とジアート様の戦いが映っていた。
最初は圧倒的な実力を以てシカーラをしていたジアート様が突如変化した敵に押され、本気になっていたのだ。

しかしながらそう驚く話でもあるまい。
あのジアート様に気に入られるのだ。大して実力がなければ、それこそとうに消えているはずだ。

「なるほど…」

ルメスはそれだけ言うと、納得したように頷く。
この男はそれなりに聡明だ。そういう点においては信用の利く相手ともいえる。
ジアート様とも個人的に通じているらしい。
私がガルキエ様の補佐なら、ルメスはジアート様の補佐といったところだろう。
そのことに気付いている者は、あとはルティエルくらいだろうが。

PM14:00

ガルキエ様のところへ参上する。
この度の大きなシカーラの計画の確認や予定を立てるお手伝いをするためだ。

「――ドルガナよ」

は。

細かな作戦などをご提案し、ある程度の予定が組みあがった頃に、ガルキエ様が話しかけてくる。
ガルキエ様は実に憂慮されたような表情をお見せしていた。

「私は主を信用している」

は。ありがたきお言葉です。

「今回のシカーラは長丁場になるだろう。他の者どもに隙を作らぬように行け」

と、言いますと?

「くだらぬ野心を持つ者はいくらでもいる。上手くジアートが暗躍しているためにあまり表には出ていないがな」

そのことは私も気付いていた。謀反を企てようとする輩が一部にいること。
ジアート様はガルキエ様の統治に支障が出ないように行動していらっしゃることも。
私はいつものようにはっきりとこの忠誠と共に答える。

かしこまりました。お任せください。

満足したようにガルキエ様は頷いて、話を続けなさった。

PM19:00

全ての職務を果たし、夕食に出席するために王宮へと向かう。
さすがに一度はジアート様もご出席なさるだろう。

「あら」

む。ルティエルか。

途中、ルティエルに出くわした。
ヤツは相変わらずの澄ました顔でいた。

「ふふ、懐刀は忙しいのかしら」

もちろんだ。貴公のように実働する者のためにも作戦はしっかりと作らねばならんのだ。

「私は無理はしないわよ。クレインとは違うもの」

ルティエルは最近地球人に大怪我を負わされたレガトゥスの一人を名指す。
ふむ、確かにクレインはどうにも冷静さが足りていない。
自らを過信している節はある。

あまり悪く言われるモノではない。クレインは強襲部隊としての行動をしただけのこと。負傷もするだろう。

私がそう言うと、ルティエルは何も言わずに去った。
…やれやれ。どうにもヤツといい、ラダやクレインといい、ガルキエ様への障害となりうる可能性の者が多い。
シカーラの腕前は良いが。

しかし、それはマナーバとしては当然か。我々は本能のままに生きる者たちだ。
ヤツらは進む。自らの本能のために。
私は進む。我が忠誠もまた、本能である。

終わり。ドルガナさんはこんなイメージ。
次行こう。

兄ちゃんは奉仕屋

スターローズ――アサギの部屋

アサギ「」カチッ

アロマ「」ポッ

アサギ「」スー

アサギ「」ウンウン

アサギ(なかなか良いアロマだな…買ってよかった)

シュッ

スルガ「うーっす」

アサギ「…何だよ人がのんびりしようってトコに」

スルガ「まーまー。ちょっと聞きたいことがあってだな…」

アサギ「…何だ」

スルガ「しょ、食堂のお姉さん誘うにはどうすればいいと思うよ?」

アサギ「何照れてんのお前?」

スルガ「い、いや。何か、その、気分としてだな…」

アサギ「ったく…別にいつも通りでいいだろ。テキトーなお前らしく行けよ。そしてフラれろ」

スルガ「ざけんな、俺はフラれねーよ。見込みだって――」

アサギ「あんのか?」

スルガ「……ねーよ、ちくしょう!」タタタ…

シュッ

アサギ「ったく、分かってるなら諦めりゃいいのに…」

アサギ(諦められない気持ちも、分かるけどな…)

シュッ

タマキ「アサギー」

アサギ「…何だよ」

タマキ「アサギが相談とか聞いてくれるって聞いたからー、ちょっとね」

アサギ「それ、誰から聞いた?」

タマキ「ほえ? イズルとー、スルガかなー?」

アサギ(ケイからは聞いてない、と。ならいいけど)

アサギ「で? 何を相談したいんだ?」

タマキ「うーんとね、パトリックセンパイとねー……」

アサギ(何で今日はそういうネタばっかなんだよ…)




タマキ「でねでね、ケイはデートに塩辛食べに行くのはおかしーって言うから…」

アサギ「そりゃそうだろ。っつーか、向こうが誘ってんだろ? 向こうがルートとか決めてるだろ」

アサギ(っつーか決めてるってこないだランディ先輩やチャンドラ先輩に聞いたしな)

タマキ「そーいうものー?」

アサギ「そういうもの、なんじゃないのか? 俺は知らないが」

タマキ「うーん……なら、いいのかなー?」

アサギ「ま、お前次第だろ」

タマキ「じゃ、後は部屋で考えてくるのらー」

アサギ「そうか。じゃあな、せいぜい上手くやれよ」

タマキ「うん! ありがとー」ニコニコ

シュッ

アサギ「ったく、浮かれやがって」

アサギ(…まぁ、めでたいけどよ)

アサギ(案外、アイツが一番に、かもな)

シュッ

イズル「あ、アサギ…ちょっと、いいかな?」ヒョコ

アサギ「……ああ」

アサギ(今日は…マンガの相談だったら良かったんだがな……)



イズル「それで、その…テオーリアさんにまた会いに行こうと思ってさ」

アサギ「…普通に行けばいいだろ」

イズル「い、いや…何か、理由とか必要だよね? やっぱり…」

アサギ「会いたきゃ会いに行けばいい。どんな理由だろうと門前払いされる可能性の方が高いだろ」

イズル「そ、そうかな…」

アサギ「そうだろ。だいたい、お前がそんなことなんて考えたって意味はない」

イズル「え?」

アサギ「あのテオーリアさんは、普段のお前に会いたいだろうよ。少なくとも、そんならしくないお前には会っても嬉しくないだろ」

イズル「……そう、かな」

アサギ「さぁな」

アサギ(…普段通りのお前を好いてるヤツなら知ってるけどな)

イズル「じゃ、じゃあ。行ってみるよ、いつもの僕で」

アサギ「そうかよ。まぁ頑張れよ」

イズル「うん! ありがと、アサギ」ニコリ

アサギ「……おう」

シュッ

アサギ「……」

アサギ「胃薬は、っと」

シュッ

ケイ「アサギ…ちょっと、いいかしら」

アサギ「……ああ」

アサギ(…やれやれ、またこの時間か)

ケイ「一昨日言ってくれた通り誘ってみたの…それで」

アサギ「また空気読まなかったのか?」

ケイ「いえ。その、一緒に出掛けはしたのだけれど…」

アサギ「けど?」

ケイ「やっぱり、まだちょっと」

アサギ「受け身に走ってちゃ、進まないだろ。アイツ、ただでさえ今は…」

ケイ「分かってる。分かってるけど…」

アサギ「…近すぎては、分からないモノもある」

ケイ「え?」

アサギ「イズルとお前の距離は、まさにそれだ」

ケイ「それは……」

アサギ「俺たちはあまりにも近しい距離の仲だ。それこそ、その、何だ…家族、みたいにな」

ケイ「……」

アサギ「つまりだな。イズルからすれば、お前もまた、家族みたいなモンなんだ。そうだな、優しい姉ってトコか」

アサギ「……だから、気付かない。お前の行動も、姉弟への愛情みたいなモノだと思っているから」

ケイ「…だとしたら、私は」

アサギ「まずお前は、アイツの認識をどうにか改めることだ」

アサギ「意識を家族から、他人に」

ケイ「それだと、何だか離れるみたいね」

アサギ「そんなことはない。家族ってのは、一番近しい他人でもある」

ケイ「あなたが言うの?」

アサギ「どっかで見た言葉だよ。まだ信憑性もあるだろ?」

ケイ「そう。…いつも、ありがとうアサギ」ニコ

アサギ「…ああ。もう、いいか?」メソラシ

ケイ「ええ。後は、自分で」

アサギ「そうか。……頑張れ、よ」

シュッ

アサギ「……」

アサギ「…ったく、俺も何してんだろうな」

アサギ「………アロマ、焚くか」

終わり。どっちも苦労人だよね。
残ったネタ候補
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イズルとケイの初夜(意味深)マッスルスルガ 同期たちの評価 なぞなぞ
Oさん視点 海開きpart2 くすぐり
ネタが増えていく一方、消化は進まず。頑張るです。それでは。

どうも。今日はギャグモノ書いてたんですがね。
やりましょう。

俺たちの世界は、ほんの小さなパノラマの中。
生まれて、箱庭の中で育てられて、少しだけ人の暖かさを知って。
それから。それを失って。
また、新しく、暖かさを知った。

『――先輩! 聞いてるんですか?』

あん?

あまりにも退屈な宇宙の旅でまどろむ俺の耳に、幼い後輩の声が響いてきた。
チラリと備え付けの時計を見てみれば、作戦開始からまだ二十時間ばかり経過している程度だった。

『その受け答え…寝てましたか? だったらすみません』

悪い悪い。で、何だ?

ちょっと申し訳なさそうにするパトリックに、俺はどうせ見えもしていないのに、ふりふりと右手を目の前で横に振った。
まぁ何のお話してたのかはテキトウに想像しておこう。
どうせ、あの子のお話だろうし。

『えっと……その、戻ってから、タマキちゃんに渡す予定のプレゼントを渡してから言うセリフを考えたんで聞いてみてほしくて』

ほらな、やっぱり。
自分の考えが当たって、我ながら大したモンだと思う。
ま、付き合いは長いからな。
俺の小さな世界の中じゃ。

『まったく…そんなに不安に感じることもないだろう。聞いた限りでは、なかなか悪くなかったぞ?』

俺が何事か言う前に、ツッコミ担当が割り込んでくる。
なるほど、相変わらず無意識に心の声が漏れてたわけだ。

『え、あ、聞いてたんですか?』

『ああ、お前、その癖はどうにかしておけよ?』

そーそー、デートにでも誘ったときに、独り言なんて呟いてたらヘンだからな。

『言いませんよそんなこと!』

からかうように俺が言ってやると、パトリックはムキになったような態度で通信を切った。
まったく、茶化しがいのあるヤツだな。

『ふむ、やりすぎたか?』

何、ちょっとすりゃ機嫌も直すさ。

『だといいがな』

チャンドラの少し反省するような声に思いつく限りのフォローをする。
まぁ経験からすれば、こんなやり取りなんて日常茶飯事ってモンだ。

それからは、俺もチャンドラも黙り始めた。
どうせまだ一日ほどは旅をするんだ。
特に話すことも、もう旅行が始まった数時間の時点で潰しきっている。
こうやってジッとするか、帰ってからすることを考えるくらいしかすることはない。

帰ったら、まぁ、まずは美味い酒を飲んで、寝て。
新しいビデオを子ウサギどもにでも見せてやるのも良い。
いや、あんまりやりすぎるとあのケイって子がうるさいかもな。
……ふ、イズルのヤツ、ちゃんと言った通りにしてるといいが。

『……おい』

ん?

そんな風に思考を重ねていると、チャンドラのヤツが話しかけてきた。
何だ、一体。

『お前、もしも生き残れたら、どうする?』

…………。
少し、言葉に詰まった。
まぁ一瞬だけだけど。

そうだな、酒をたっぷり飲む。経費で。

わざと冗談めかした態度で言った。
俺だってバカじゃない。コイツの言いたいことは理解している。
だが、そんなことを考えたってしょうがない。

『……分かっているんだろう。この任務は一方通行なモノだと』

…まぁな。

それだけ答えて、俺は任務を受けたときにシモン司令が言っていたことを思い出す。
生きていられる確率は極めて低い、と。

もちろん、可能性はある。
そりゃあ低い可能性なんだろうが。
何せ俺たち三人だけで敵の本拠地に繋がる道へと行くんだ。
敵も駐屯部隊くらい配置してるだろうよ。

『……もしも、敵襲を受けたらどうする気だ』

…誰を生かすか、ってことか?

俺の質問に、チャンドラは無言の肯定を返す。
ああ、分かってる。そういう場面も来るだろう。
誰かが犠牲になる必要のある瞬間というものが。

自分の道を振り返ってみる。

もう覚えちゃいないが、どっかの小さな箱庭の中で育ち、そこでのんびりと生きて。
それを一度失った。さようなら、ってヤツだ。
子ウサギどもと違って、俺たちの世代は家族を『存在しないモノ』として受け入れるだけだったが。

そして、都市学園に入学。
特に緊張感もなしにパイロットとして特訓して。

――アイツらに、出会った。

クールぶりやがるスカしたチャンドラ。どっかのんびりしてて、のほほんとしたところのあるパトリック。
チームドーベルマン。それが、新しく俺に与えられた温もり。

ふざけた俺にツッコむチャンドラ。それを遠くからまとめるパトリック。
マンザイスリー、なんて呆れられたけど、何だか楽しかった。失ったモノが、また戻ってきたみたいで。
卒業してから、どんなに辛く厳しい任務を与えられても、コイツらと共に生き残ってきた。

周りでは同期たちが死んでいっていた。行方不明にもなった。
ただ、俺たちだけがしぶとく盤上に残っていた。
この駒足らずの将棋の中で、きっちりと地球という王将を守っていた。

そうして過ごしていって。
チームにとなり、仲間となり、友人となり。
――最後に、『家族』となった。

くだらないやり取りの中に生きがいを見出して、バカみたいに笑って。
それでもどんどんどんどん熾烈さを増してていく戦いを、抜けて行った。

そして、今度はアイツらに出会った。

チームラビッツ。現状の地球の中での、唯一の希望。
最初にテレビの会見で見たときから、ああ、俺たちにそっくりだと感じていた。
確かな実力を見せているのに、何とも言えないガッカリ感。
最初に、チームになった頃を思い出さされた。

その後、任務で助けて、一緒に戦って。
俺の箱庭に、また新しい世界が、ちょっと広がった。

頼りなかったそいつらが、気付けば戦場を共にする仲間となって。
活躍の場を奪われ始めて、それから。
ほんの二十時間ばかり前に、友人となった。
バカみたいな軽口を叩きあって。笑いあった。

……きっと。
俺は幸せなヤツだった。
あんまりな人生を歩んでいるはずなのに、幸せだった。
だってよ、一回色を失っちまったのに、俺の世界は、色褪せもせずに新しく塗られたんだぜ?

だから、かもしれない。
無理な任務だと知っているのに、今も、この『先』があるような気がしちまうんだ。
分かってるんだ。せいぜい、そんな感覚を抱けるのは――

『……パトリック、だろうな』

俺の思考を読んだように、チャンドラが言った。
おいおい、『家族』とは思ってたがな、そこまで近かったか? 俺たちはよ。

……それで良いのかよ?

俺はチャンドラのセリフを理解して、コイツの抱えるモノも知った上で問い質す。
コイツには、俺と違って帰る場所が存在する。
細かい事情はよくは知らないが。コイツが死ねば悲しむ誰かがはっきりといる。

『……パトリックはな、純粋なんだ』

俺の声に、しばらくしてからチャンドラは答えた。
ゆっくりと、自分の思うところをはっきりと示すように。

『純粋で、眩しいヤツだ。そして――あの子も』

あの子、が誰を指すかなんて聞く必要もない。
コクリと頷く。

アイツもあの子も。あんなにも眩しい。
戦いなんて、もっとも縁遠いタイプの人間だ。
だから、生き残るべき人間ってわけか。
『先』に希望を持てるようなヤツらだから。

『俺だって、死ぬ気などない』

チャンドラは当然のことを言った。
当たり前だ。俺だって、イズルの野郎とあの子をからかうだけからかってやりたい。
もう一歩、『友人』から進んだ世界の中で。
かつて、コイツらとそうなったように。

『……何事も優先順位がある』

それだけだ――

吐き捨てるように呟いて、チャンドラは通信を切った。
話は、終わった。
結論を互いに出して、全て終わった。

ふぅ、と息を吐いた。

もしも。
もしも、そのときが来たら――俺はどうする。

決まってる。

操縦桿を強く握った。
さっきも言ったが、俺は幸せ者だ。
恵まれた世界を手に入れたと思う。
でも、タダってことはない。仮にそうだとしても、タダより高いモノはない。
…まぁ意味が違うか。

とにかく。
俺は払うだけだ。この幸せの釣りを。きっちりと。
過払いしてもいいくらいだ。その過払いで、アイツらの幸せを買えるなら。

チャンドラ、パトリック。
アンジュ、タマキ、スルガ、アサギ、ケイ――イズル。

お前らは、俺と同じ『幸せ』を味わうんじゃねぇぞ?

残り数時間。俺にできることは祈ってやることだけだ。
たった二人の『家族』と、たった六人の『友人』たちの、ただ一つの『未来』を。

終わり。
スクライドのシェリル以来、久しぶりに泣きました。
幼児だった頃に戻されてしまうこのアニメは、やっぱりおもしろいですね。
それでは。

二期…二期かぁ。
うれしい、うれしいが…きっちり終わってくれよ、一期。
あとやるならMZ5の人が言うようにデート回をやってほしかです><
やっていきます。

ようこそ、『男の世界』へ……

スターローズ――格納庫

スルガ「」ゼーハーゼーハー…

ヒデユキ「おいおい、この程度でバテるなよ」フンッフンッ

ノリタダ「まったくだ。お前の筋肉が泣いているぞ?」フンッフンッ

タカシ「この様じゃまた機体を破損させちまうぞ」フンッフンッ

スルガ「ちょ、ちょっと…俺、別に…そこまで付き合うつもりねーんすけど……」

ヒデユキ「バカ者。もう忘れたのか?」

フィジカルスリー「世界は武器と筋肉でできている!」キラーン

スルガ(だ、誰か…助けてくれ……)






ノリタダ「よし、一度休憩に入る!」

タカシ「次は三十分後だ! よく休んでおけ!」

スルガ「」ゼーハーゼーハー

スルガ(も、もう無理…)

スルガ「ふー……」ストン

スルガ「」ボー

ゴールド4「」パチッ…パチッ……

オーイ! ソコノブヒンヲー オーライオーライ…

スルガ「……すげーな」

ヒデユキ「何がだ?」

スルガ「あー、いや、もうあんなに直ってんだなぁ、って」

ヒデユキ「当然だ。俺たちは筋肉に満ち溢れてるからな」

スルガ「いや筋肉は関係ないでしょ……」

ヒデユキ「何だと? ……まぁいい」

スルガ(いいのかよ……)

ヒデユキ「いいか、スルガ」

スルガ「……何すか」

ヒデユキ「俺たちは整備士だ」

スルガ「いや、知ってますよ?」

ヒデユキ「そういうことじゃない。アッシュもそうだが、お前もだ」フッ

スルガ「俺ぇ?」

ヒデユキ「あぁ。…アッシュは壊れても直せる。だがパイロットは別だ」

スルガ「……」

ヒデユキ「だから、まぁ、俺たちにできるのはパイロットを――――」

スルガ「俺は、そんなヤワじゃねーですよ」

ヒデユキ「…そうだな。俺も知ってる」フッ

スルガ「……ただ」

ヒデユキ「ああ」

スルガ「その、鍛えてもらえる、ってんなら…まぁ、付き合わなくはない、っすよ?」

ヒデユキ「そうか。付き合ってくれるか」ククク

スルガ「何すかその笑い…」

ヒデユキ「別に。…ほら、次に行くぞ」ホレ

スルガ「…もうちょっとユルいのがいいっす」ギュッ

ヒデユキ「慣れろ」ハッハッハッ

スルガ「分かりましたよ……」ヨット






数日後

リン「――以上で作戦の説明を終わる。各自、配置に着け」

チームラビッツ「了解!」



イズル「久しぶりの任務…がんばろうね!」

タマキ「おーっ!」

ケイ「ええ、そうね」

アサギ「…それは当然なんだが」チラッ

アンジュ「そ、そう…ですね」チラッチラッ

イズル「? どうかした?」

アサギ「いや…だからだな」チラッ

スルガ「何だよアサギ、俺がどうかしたか?」ムキッ

アンジュ「ええっと…それは、その」

アサギ「いや、お前がどうした」

スルガ「? どうもしねーぞ?」ゴクゴク

アサギ「どうかしてるだろ! 何だそのプロテインは!」

スルガ「これか? ヒデユキさんにもらったんだよ。お前もどうだ?」ズイッ

アサギ「いらん!」

イズル「あ、僕もらうよ」

ケイ「…無理に付き合わなくてもいいんじゃないかしら?」

イズル「え? そんなのじゃないよ?」

スルガ「イズルも教えが分かってきたみてーだな。どうだ、今度」ムキッ

イズル「え? いいの? なら……」

ケイ「イズルは参加しないわよ」

イズル「へ? ケイ…」

ケイ「参加しない、わよね?」┣¨┣¨┣¨┣¨

イズル「…う、うん」

ヒデユキ「おうスルガ! そろそろ始めるぞ!」ムキッ

スルガ「はいよ!」ムキッ

ハッハッハッ……

アサギ「…大丈夫か、アイツ?」

アンジュ「……た、楽しそうだし、いいんじゃないですか」

タマキ「スルガ、イキイキしてたのらー」ニコニコ

イズル「うんうん。よかったよね」ニコリ

ケイ「…イズルは、ああなっちゃ、ダメよ?」



その後、筋肉の教えを理解したスルガの影響を受け、着々と筋肉の教えは世界へと広まるのであった。
――暗明書房出版『世界と筋肉の始まり』より。

終わり。やっぱりはっちゃけたのは苦手だ。
残ったネタ候補
テレビ取材 水彩にはまるイズル テオーリア(でかい) アマネとラビッツの交流 パトリックとタマキ
イズルとケイの初夜(意味深)同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 海開きpart2 くすぐり
それではまた。

どうも。始めたいと思います。
公録は行きました。20話が先に見れて嬉しかったです。
まぁまた今から見ますが。

有名人

スターローズ――作戦会議室

アサギ「…テレビ取材、ですか?」

リン「ええ」

ケイ「またスポンサーですか…」

タマキ「いいじゃん、テレビー」

スルガ「そうそう、へへ、これで俺の知名度が上がりゃきっとモテ…」

ケイ「それはないから」

イズル「て、テレビかぁ…き、緊張するなぁ」ドキドキ

アンジュ「わ、私目立つのは……」オドオド

アサギ「……胃薬用意しとかねぇとな」ハァ

リン(ホントに、この子たちで大丈夫かしら……)ハァ

有名人

スターローズ――作戦会議室

アサギ「…テレビ取材、ですか?」

リン「ええ」

ケイ「またスポンサーですか…」

タマキ「いいじゃん、テレビー」

スルガ「そうそう、へへ、これで俺の知名度が上がりゃきっとモテ…」

ケイ「それはないから」

イズル「て、テレビかぁ…き、緊張するなぁ」ドキドキ

アンジュ「わ、私目立つのは……」オドオド

アサギ「……胃薬用意しとかねぇとな」ハァ

リン(ホントに、この子たちで大丈夫かしら……)ハァ






スターローズ―― 一般居住区のテレビ局の一室

アナウンサー「さて、本日の『有名人を知ろう』のゲストをご紹介しましょう」

アナウンサー「突如として宇宙からやってきた、侵略者ウルガルから日々我々を守護している地球の英雄」

アナウンサー「マジェスティックプリンス――おっと、これは我々の通称でした」

アナウンサー「では、改めまして――MJP機関のチームラビッツの皆さんです!」

パチパチパチパチ

イズル「」カチコチ

アサギ「」キチッ

ケイ「」キチッ

スルガ「」ニコニコ

タマキ「」ニコニコ

アンジュ「」オドオド

アナウンサー「ようこそ、皆さん! 本日はどうぞよろしくお願いします」ギュッ

イズル「ひゃ、ひゃい!」ギュッ

ドッ

アサギ「落ち着け。…ええとお願いします」

アナウンサー「はいお願いします。皆さんは若くして前線にて誇り高きGDFの一員として戦っております」ニコリ

パチパチパチパチ…

ケイ「(少しは落ち着いて。ほら、深呼吸)」スーハー

イズル「(う、うん…)」スーハー

タマキ「(そーそー、ひっひっふー)」

イズル「ひっひっふー」

スルガ「それは産む方だろ!?」

アンジュ「せ、先輩、声が大き…」

ワッハッハッハッハ……

ラビッツ「」カァァ

アナウンサー「さぁ、見事に場を和ませていただきましたところで、お話を始めるとしましょう…」




スターローズ――リンの部屋

テレビ「」ワハハハハ…

リン「」ジー

レイカ「あっはっはっは。いやー、おもしろい子たちね、ホント」グビグビ

リン「笑い事じゃないわよ…」チビッ

レイカ「今度はあたしたちかな、出演」

リン「冗談! 私は遠慮するわよ、それ」

レイカ「えー、いいじゃーん。美人艦長、とかでさー。リンリンにいい人見つかるかもよ?」

リン「公私混同じゃないの、それ…」

テレビ「」ワハハハハ…

リン(やっぱり、私も付いていくべきだったかしら…)フー




ドーベルの部屋

テレビ「」ワハハハハ…

パトリック「ああ、タマキちゃんはかわいいなぁ…」

チャンドラ「パトリック、もう少し距離を置け。…というか、録画してあるんだろう?」

パトリック「いやだなぁ。後で自室でも見るんですよ」

ランディ「いやはや、そこまで行くとはな。恐れいったぜ」

パトリック「いやぁ…」テレテレ

チャンドラ「ホメてる場合か、まったく」アキレ

ランディ「…にしてもズルいな。俺たちも出たいぜ」

チャンドラ「全宇宙的に醜態を晒す気か。それこそ恐れいる」

ランディ「んだよ。これを機会にいい姉ちゃんとだな…」

チャンドラ「そんなのお前だけだろうが、必要なのは」

ランディ「くっ…この勝ち組どもめ……っ」

パトリック「あー…タマキちゃーん……」ニコニコ

チャンドラ「」フー






数日後――アサギの部屋

イズル「いやー、疲れたね!」

アサギ「ああそうだな、特に誰かさんのせいでな」ジトー

イズル「あ、あはは…」

タマキ「?」キョトン

スルガ「ったく、お前らは…」

ケイ「ア・ン・タ・も・よ」ドスッ

スルガ「うげっ…」ドサッ

アンジュ「…お、お疲れ様でした」

ケイ「ええ。そっちも大変だったわね」

アサギ「そうだな。急にスイッチ入れたからな」

アンジュ「す、すみません! 私も、その、気を付けてたんですけど…」ペコペコ

イズル「だ、大丈夫だよ、アンジュ、さん。ほら、結局皆大ウケだったし…」

アサギ「俺たちは芸人じゃねぇんだよ!」

スルガ「くくっ、ま、いいんじゃねーの、ザンネンでさ」

ケイ「よくないわよ…」

イズル「うん、ザンネンでがんばろう!」

イズル以外(ダメだコイツ……)ハァ



その後、放映された番組の反響の意外な良さによって、
取材第二弾やドーベルマンとの合同インタビューを受け、さらなるザンネンぶりを披露することとなるイズルたちでありました。

終わり。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい) アマネとラビッツの交流 パトリックとタマキ
イズルとケイの初夜(意味深)同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 海開きpart2 くすぐり
では、二十話見てきます。

どうも。今日はちょっとやりたいネタで書いていく。

懐いて懐いて

スターローズ――アサギの部屋

アサギ「……」ハァ

アサギ(まったく…)

イズル「お兄ちゃん? どうかした?」

アサギ「それはやめろって言ってんだろ!」

ケイ「…いつから兄弟になったの、あなたたち」

スルガ「遺伝子的に兄弟なんだとよー」ケラケラ

タマキ「ええっ、そーなのー!?」

イズル「う、うん。そうなんだって…」テレテレ

アサギ「照れるな頬を染めるなこっちを見るなーっ!」

スルガ「何だよいいじゃねーかよー、お・に・い・ちゃ・ん?」ニヤニヤ

アサギ「……っ」デコ、ピン

スルガ「って! そんなに照れなくてもいいだろうが」サスサス

タマキ「いいなー、イズル。お兄ちゃんがいたんだー」

イズル「うん。ね、お兄ちゃん?」ニコリ

アサギ「」イガー

ケイ「そんなに羨むこと?」

タマキ「らってー、あたしは家族いないしー…」

スルガ「…別にいいだろ。いない方が楽、だしよ」プイッ

タマキ「でもー……やっぱりちょっと…」チラッ

イズル「じゃあ兄さん?」

アサギ「却下。そもそも名前でいいっつってんだろうが!」

タマキ「何か、いいのらー」ホホエミ

ケイ「……」ギュッ

タマキ「ふえ? ケイ?」

ケイ「なら、私がお姉ちゃんになったげるわよ」

ケイ「ホンモノじゃ、ないけれど」ギュッ

タマキ「……そっかー」ギュー

イズル「あ、あれいいなぁ…」

アサギ「やめろこっちに来るな俺にそんな趣味はない!」

スルガ「」ピーン!

スルガ「じゃあそれでいこうぜ!」

イズル「? 何が?」スリスリ

スルガ「おほん。発表しまーすっ!」

アサギ「だから何をだよ………」グイグイ

スルガ「フォーメーションだよ。ウチの」

ケイ「? 決まってるじゃないの」

スルガ「そうじゃねーって」

タマキ「じゃあ何?」

スルガ「――長男アサギ、次男イズル、三男俺!」

アサギ「なっ……」

スルガ「んでもって、長女ケイ、次女タマキ、っと三女にアンジュな!」

ケイ「…何よ、それ」

スルガ「だからー、その、何だ。家族のフォーメーション、ってヤツだよ。
    ほら、あんだろ。祖父、祖母、父、母、息子、娘、孫、って感じで」

タマキ「フォーメーション…」

イズル「わぁ…いいねそれ!」キラキラ

アサギ「…俺は何も納得してないぞ」

ケイ「私もよ…」

ケイ(その配置じゃ、私は…イズルと……)

アンジュ「私はタマキ先輩より上だと思うのですが…」シュッ

スルガ「お、アンジュ」

タマキ「えーっ、あたしセンパイなのらー」

アンジュ「いえ、その、そうなんですが…」

アサギ「…まぁ、それはそうかもな」

タマキ「兄ちゃんひどいのらー!」

アサギ「誰が兄ちゃんだ!」

ケイ「………ふふっ、それはいいかもね…兄さん?」ニコリ

アサギ「な……」ドキッ

スルガ「そーそー、お兄ちゃん?」ケラケラ

アサギ「っ、よくねぇよ!」

イズル「いいと思うけどなぁ…お、お姉ちゃん」ウワメヅカイ

ケイ「…っ! こ、これは、やっぱりなしの方がいいかもね」カァ

タマキ「えー……」

スルガ「じゃ、アンジュはどう思うよ。反対か?」

アンジュ「え? ええっと…」

アサギ「反対だろ、アンジュ?」

タマキ「そんなことないよね、アンジュ?」

アンジュ「え、ええっと……」アセアセ

スルガ「よし、分かった。アンジュ、お兄ちゃんって言ってみてくれ」

タマキ「ついでにお姉ちゃんって言ってー」

アンジュ「へ?」

イズル「まぁまぁ。ほら、アンジュ、さん」

ケイ「そんな無理に言わせなくても…」

アサギ「そうだぞ。だいたい…」

アンジュ「…お」

イズル「お?」

アンジュ「お兄、ちゃん」カァ

イズル・アサギ・スルガ「」ドキッ

アンジュ「お……お姉、ちゃん」カァァ

ケイ・タマキ「」ドキッ

タマキ「あ、アンジュー!」ギュー

アンジュ「わっ、あ、先輩…」

スルガ「…どうだ、アサギ。これで反対はお前とケイだけだぜ?」

アサギ「あ、あのなぁ…」

ケイ「そ、そうね」

アサギ「おいケイ?」

ケイ「その、イズル以外は、認めるわ」

イズル「…え? 僕、だけ?」ガーン

ケイ「あっ…いや、その、違うのイズル。あなたのことが嫌いってわけじゃなくてね?」

イズル「……はぁ」ズーン

ケイ「あ、えっと……」オロオロ

スルガ「…ほら、アサギは?」

アサギ「……っ、しょうがねぇな…」ハァ

スルガ「うっし、けってーい!」ガッツ

タマキ「いえーいっ!」ハイタッチ

アンジュ「…い、いえー…」チョン

ケイ「まったく…単純なんだから」ホホエミ

アサギ「ホントにな…」

アサギ(ったく、どいつもこいつも…お気楽なもんだよ……)

スルガ「」ニヤニヤ

アンジュ「」カァ

タマキ「」ニコニコ

ケイ「」ホホエミ

イズル「」ニコニコ

アサギ(ホント…)

イズル「アサギ兄ちゃーん」フリフリ

アサギ「…だから、それやめろって」フッ

終わり。アサギ兄ちゃんマジアサギ兄ちゃん。
MJPパズルがちょっとほしい。今度は何を書こうか。それでは。

どうも。今日もテキトウに一つ。

規定外労働

スターローズ――居酒屋

アマネ「」スッ

リン「」スッ

アマネ・リン「……」カーン!

アマネ「」ゴクッゴクッ

リン「」ゴクッゴクッ

アマネ・リン「――っぱー!」

アマネ「はー、さいっ、こー…」

リン「ほらほら大佐殿、もう一杯」ツギッ

アマネ「うむー…くるしゅうない、くるしゅうない」アカラメ

リン「…結構酔いやすいタイプなのね、あなた」

アマネ「えー? 酔ってないけおー?」ゴクッ

リン「いや…ま、いいわ」

アマネ「ほれほれ、もっともっとー」グイ

リン「はいはい」フー

リン(ノンアルコールにしといてよかったわね、これは)

リン(…かわいいけれど)クスッ

アマネ「はーい、もっと飲もー!」ツギ

リン「…はいはい」フッ






スターローズ――MJP拠点

アサギ「ったく、何で俺が散歩なんか…」

スルガ「いいじゃねーか、どうせ暇なんだし、眠れないし」

アサギ「それにしたって、他のヤツらはどうしたんだよ?」

イズル「いや、たまには男三人で、ってのもいいかなと思って」

アサギ「そうかよ……」フー

スルガ「んだよ、その反応は」

アサギ「……別に」

イズル「?」

スルガ「…ふーん?」ニッ

アサギ「…っ、ほら、とっとと行くぞ」ツカツカ

イズル「あ、待ってよ!」タタタ…

スルガ「わっかりやっすいヤツ」ククク…




スルガ「しっかし、さすがに誰もいねーのな」

アサギ「そりゃな。いたとしても残業中だろうよ」

イズル「わぁ、あっちの方の流星群キレイだね!」キラキラ

アサギ「…子供か、ってんだよ」

スルガ「まーまー。あれぞ我らがリーダーじゃん?」

アサギ「……まぁ、な」フッ

イズル「」タタタ…

アサギ「おい、走るなよ――」

イズル「わっ!」ドンッ

アマネ「にゃっ!?」ドンッ

アサギ「…やりやがった」フー

スルガ「ありゃ、あの人って確か……」

イズル「ええっと、すみません…」ヨッ

アマネ「んー? いいってことよー…」ヨイショ

アサギ「こいつがとんだ失礼を、アマネ大佐」ペコリ

スルガ「後で灸を据えときますんで」ニコニコ

アマネ「あっはっは、きにしゅるなよー、しょーねーん!」プハー

イズル・アサギ・スルガ(さ、酒臭っ!)

アマネ「…にしてもあっついわねー、ここー」ンフー

イズル「へ?」

アサギ「そうでしょうか? 今日は確かそれほどに気温は高くないはず…」

アマネ「そー? ま、いいやー…」ヨッ

スルガ「へ、え?」

アマネ「ぬーいじゃえばいいじゃーん」ヌギッ

イズル「え、あ、ええっ!?」

アサギ「なっ…」

スルガ「な、なん、わああっ!」ドターン!

アマネ「? どーかしたー? あかいよ? えっと…スルガクン?」ピトッ

スルガ「」ボンッ

アサギ「――はっ。い、いえ、その、そ、そいつはちょっと…」

アマネ「んー? ねつはないねー、へんなのー」ヌギッ

アサギ「」

イズル「」

スルガ「」ボー

イズル「――はっ、す、スルガ、大丈夫!?」

スルガ「……きゅー」パタン

イズル「スルガっ!?」

アマネ「ありゃ? だいじょーぶぅ、ちょっと」ギュー

スルガ「」キュー

アサギ「だ、大丈夫ですから! た、大佐は早く服を着て離れてください!」グイッ

アマネ「えー? あついのにー」プルンッ

アサギ「い、いいから! お願いしますから!」メソラシ

イズル「す、スルガ! しっかりして、スルガ!」ユサユサ

スルガ「う、うーん……」ノビー



ギャーギャー!

リン(はぐれたのをようやく見つけたと思ったら…)

リン「厄介ね、まったく……」ハァ






翌日――救護室

アマネ「えー、っと……」

イズル・アサギ・スルガ「……」

アマネ「…ごめんね?」テヘ

スルガ「い、いえいえっ、とんでもないですます!」

アサギ「落ち着け落ち着け。…その、お気になさらず」

イズル「そ、そうですよ。ほら、お酒をたくさん飲むとそうなるときってあるんですよね? 絡み癖ってヤツだとか…」

アマネ「…うぅ、自分が情けない……っ」

リン「まぁまぁ。私も悪かったわ、しこたま飲ませて」

アマネ「いや、飲んだのは私だし…」

イズル「と、とにかく、僕らは大丈夫ですから! えっと、昨日見た下着のこととか誰にも話しませんし…」

アマネ「そ、そのことは二度と口にしないで!」カァ

アサギ「ばっ…し、失礼しました!」ダッ

スルガ「」ボンッ

アサギ「思い出してんじゃねぇよ! 行くぞ!」グイ

シュッ

アマネ「」

リン「……忘れましょう、ね?」ポンッ

アマネ「…うぅ」グスッ




アサギ「…ったく、お前なぁ、少しは空気を読めってんだよ」

イズル「ええと、ゴメン」

スルガ「」ハァ

アサギ「お前も。いつまで放心してんだ、チキン」

スルガ「てめっ、お、俺は別に、そ、そんなだなぁ…」カァ

アサギ「はいはい。もう忘れろよ、それは」フー

イズル「うん…。そ、そうだね、アマネ大佐の下着姿なんて…」

???「…誰の、下着姿ですって?」

イズル・アサギ・スルガ「」ビクッ

イズル・アサギ・スルガ「」カオヲミアワセ

アサギ・スルガ「……」ユビサシ

イズル「……」コクリ

イズル「」ソー

ケイ「」ニコニコ



ギャー! ハナシヲキカセナサイ!

アンジュ「あ、タマキ先輩、おはようございます」

タマキ「おはよー、あんじゅー」ネボケー

アンジュ「先輩たちは、どうされたんですか?」ユビサシ

タマキ「わかんなーい…でも、げんきそーなのらー…」

アンジュ「そう、ですね…」

アサギ「いいからちょっとは仲介しろーっ!」

終わり。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい) パトリックとタマキ くすぐり
イズルとケイの初夜(意味深)同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 海開きpart2
では。明日が楽しみです。

どうも。久しぶりに一つ。

海開き Part2

某南の県――別荘

ガチャ

イズル「おはよう、皆」

ケイ「イズル、おはよう」

スルガ「ずいぶんと遅かったな」

ランディ「よう、重役出勤とは結構なことだなぁ、まったく」

イズル「あ、あはは…すみません」

チャンドラ「おい、お前がずっと話をして起こしていたんだろうが」

ランディ「何だ、聞いてたのか?」

チャンドラ「別に。だが貴様がイズルの部屋を訪ねるのを見たのでな」

アサギ「話、ですか?」

ランディ「いや、ちょっとチームのリーダーとしての心構えをだな…」

チャンドラ「抜かせ。どうせくだらないことだろう」

ケイ「…あまりイズルを変な方向に巻き込まないでください、先輩」

スルガ「相変わらず、お母さんみてーだな」ククク

ケイ「」スッ

スルガ「」タタタ…

アンジュ「ちょ、スルガさん、私の背に隠れないでください」

イズル「え、えーっと。そろそろ行こうか」アハハ…

アサギ「ああ、行くか」

パトリック「そうだね。…い、一緒に行こう? タマキちゃん」ニコニコ

タマキ「はーいっ!」ニコニコ

ランディ「さ、行くか」ウンウン

ケイ「先輩、私はごまかされませんよ」

ランディ「」ダッ

ケイ「あ、ちょっ…」

チャンドラ「すまんな。アイツには私からよく言っておこう」

ケイ「お願いします」

イズル「ほら、ケイ、行こう?」

ケイ「…ええ。行きましょう」

アンナ「あ、待ってー!」

アンジュ「荷物を忘れてますよ、皆さん!」

タタタ…

チャンドラ「まったく…」フー

アサギ「…行きましょう」

チャンドラ「ああ、ヤツを放っておくと面倒だ」

アサギ「…心中お察しします」






浜辺

ランディ「うむ、今日も良い天気だぜ!」

スルガ「照り付ける太陽! それを受け輝くお姉さま方!」

ランディ・スルガ「「最高だな(ですね)!」」ガシッ

アサギ「…意気投合してんじゃねぇよ」

ランディ「ふ、青いなアサギ」

スルガ「いいんすよあの愚か者は放っておいて。さ、行きましょう!」ダッ

ランディ「おうよ!」ダッ

アンジュ「元気ですね、お二人は」

ケイ「呆れたモノよ…」フー

チャンドラ「まったく…ここに私は待機している。何かあったら来るといい」

タマキ「はーい!」

パトリック「タマキちゃん。僕と、その、よかったら泳ぎに行かない?」

タマキ「ふえ?」

パトリック「あ、いや、その、よかったらでいいんだけど…」ワタワタ

タマキ「うん!」

パトリック「…へ?」

タマキ「行こ、センパイ!」タタタッ

パトリック「あ、手、手が…」タタタ…

アサギ「初々しいもんだな、おい」

イズル「あはは、よかったね、タマキ」

チャンドラ「こちらとしても、うちのパトリックが何よりだよ」フッ

アンナ「おい、アサギ。泳ぐの付き合えー」グイグイ

アサギ「何で俺が…」

アンナ「だって、結局昨日はサンドアートしかしてねーんだもん」ブー

イズル「そっかぁ…じゃ、皆で行こう!」

アンナ「おう! ありがとな、イズル!」

ケイ「そう、ね。行きましょうか」

アサギ「…ったく」

アンジュ「私はテキトウにそこらをぶらついてきます」

チャンドラ「ああ。皆、行ってくるといい」






アサギ「だからだな、浮くためには力を抜けってんだよ」ハァ

イズル「う、うん」グッ

イズル「」バシャーン!

アサギ「だ、だからなぁ…!」プルプル

ケイ「イズル、その、無理に泳ごうとしなくてもいいと思うけど…」

イズル「で、でも。せっかく海に来たんだし。それに…」

ケイ「それに?」

イズル「い、いつか。テオーリアさんとプールにでも行ったときに、やっぱり泳げないのは…さ」テレテレ

ケイ「…っ」キッ

イズル「ケイ? どうか、した?」キョトン

ケイ「……いえ、何でも、ないわ。その…」

イズル「?」

ケイ「泳げるように、なるといいわね」ニコリ

イズル「うん、ありがとう!」ニコニコ

アサギ「」イガー

アンナ「ひゃっほーい、アサギー、イズルー、ケイー」プカプカ

ケイ「ずいぶんと楽しそうね、浮き輪」

アンナ「まーな。ほら、イズルの分も取ってきたぞー」

イズル「え?」

アンナ「たまには休めって。な?」

イズル「えっと、そう? なら…」

イズル「」プカプカ

イズル「わぁ……」

ケイ「楽しい?」

イズル「うん、すっごく」プカプカ

アサギ「(…助かる)」

アンナ「(いいってことよ。これで少しはイズルも楽しめるならさ)」ニッ

ケイ「…ホントに、楽しそうね」

イズル「ケイも使う?」プカプカ

ケイ「そ、そう? それなら…」

イズル「うん、どうぞ」ヨッ

ケイ「ん、しょっと」

ケイ「」プカプカ

イズル「どう?」

ケイ「楽しい…」

イズル「でしょ? よっ、と」

ケイ「イズル?」

イズル「押してあげるよ」ニコリ

ケイ「あ、ありがとう」

アンナ「(…空気読んだ方がいいのか?)」

アサギ「……」フー

アサギ「おい、コイツにかき氷買ってくるけど、お前らも食うか?」

アンナ「へ?」

イズル「僕はいいかな。ケイは?」

ケイ「あ、そうね…ブルーハワイなんていいわね」プカプカ

アサギ「分かった。おい、お前も来いよ」

アンナ「…うん」

アサギ「チャンドラ先輩のところにいるから、後でな」

イズル「うん、分かった」

アサギ「……」クルリ

アンナ「」ニコー

アサギ「…何だよ」

アンナ「いやー? 行こうぜ」グイグイ

アサギ「引っ張るなよ…」






ランディ「」トボトボ

スルガ「」トボトボ

ランディ「何故だ…? 俺とお前のコンビネーションは完璧だったはず…」

スルガ「おかしいっすね…これだけの人がいて、一人もかからないなんて……」

ランディ「一度作戦会議だ、な…」

スルガ「どーしたんすか……あ」

キレイなお姉さま方「」ペラペラ

チャンドラ・アサギ「」ペラペラ

アンナ「」ブスーッ

キレイなお姉さま方「」ガッカリ

キレイなお姉さま方「」トテトテ

アサギ「」フー

アンナ「」ゲシッ

アサギ「――! ――!」ピョンピョン

アサギ「!――!」ガミガミ

アンナ「」プイッ

チャンドラ「」フッ

ランディ・スルガ「」カオヲミアワセ

ランディ・スルガ「」タタタ…

ランディ「……よ、よう。お前ら」

チャンドラ「何だ、もう戻ってきたのか?」

スルガ「い、いやー、ちょっと作戦を練り直しに…」

アサギ「だから、ちょっとは人に対する遠慮ってもんをだな…っ!」

アンナ「うるせー、ヘボパイ!」

スルガ「……あのう、さっきのお姉さま方は…?」

チャンドラ「ああ。何、ただのナンパだ。まったく、こっちは静かにのんびりしていたいのだがな…」

ランディ「……」

スルガ「……」

チャンドラ「……? ああ。まぁ、何だ。時間も人もまだまだいるんだ。次に行けばいいだろう?」

ランディ「…スルガ」

スルガ「…うす」

ランディ・スルガ「「――リベンジだぁぁぁぁあああっ!!」」ダッ

チャンドラ「……せいぜい頑張れよ」フー

アンナ「だから! あんな女の人たちにデレーっとなんかしてんじゃねーってんだよっ!」

アサギ「誰がだよ……」ハァ

チャンドラ「」フッ






イズル「この辺の岩場はあまり人がいないんだね」キョロキョロ

ケイ「そうみたいね…少し休みましょうか。イズルも手が疲れたでしょ?」プカプカ

イズル「うん、そうしようか」

ケイ「そこの岩の上なんか、日蔭でいいんじゃない?」

イズル「じゃ、ここに…」ヨイショ

ケイ「」ストン

イズル「にしても、人が多いね」

ケイ「そう、ね。少し…疲れるわ」

イズル「あ、そっか…ケイは耳がいいんだっけ」

ケイ「……そんなに気にしなくてもいいわよ。大きな音にも慣れたし、ね」

イズル「そう? なら、いいけど…」

ケイ「………あの、イズル」

イズル「ん?」

ケイ「――ありがとう」

イズル「? 何がさ?」

ケイ「昔の私だったら、きっとここにはいなかった。人付き合いを嫌がって、別荘に閉じこもってた」

ケイ「皆や――あなたのおかげで、きっと、私は少し変わったんだと思う」

ケイ「だから、改めてお礼」

イズル「…ええっと、それはどういたしまして」

イズル「――じゃあ、僕もお礼言わないとね」

ケイ「え?」

イズル「ケイには、最近は心配かけたりしてばっかりだもんね。お見舞いとかも、してくれたりさ」

イズル「一緒にヒーローになれるように頑張るって、言ってくれたりさ。僕、嬉しかったよ? あの時はさ。仲間ができたみたいで」

イズル「だから、ありがとう。それと、これからもよろしくね」ニコリ

ケイ「……そう。なら、私も。……これからもよろしく」ニコ

ザザーン、ザザーン……

イズル「……」

ケイ「……」

ケイ「…海、キレイね」

イズル「うん」

ケイ「また、来れるかしら」

イズル「来れる、じゃないよ。また、来るんだ」

ケイ「そう。…そうね」

イズル「うん」ニコリ

ケイ「……あの、イズル」

イズル「? うん」

ケイ「その、良ければ、次は二人で――」

ランディ「――ぬおおおおおっ!!」バシャバシャバシャバシャ!!

アンジュ「――――――――!!」バシャバシャバシャバシャ!!

イズル「! あれ、アンジュにランディ先輩!」

ケイ「……何をしているのかしら? サーフボードよね? あれ」

イズル「行ってみようか」

ケイ「あ、イズル……」

タタタ…

ケイ「……もう」クスリ






ランディ「おっらあああっ!」ナミノリ

アンジュ「―――――!!」ナミノリ

スルガ「おー、すげーっ!」

キレイなお姉さま方「」キャーキャー!

アサギ「何やってんだか…」

チャンドラ「まったく…」フー

イズル「皆!」タタタ…

アンナ「おー、イズルー、ケイもー」フリフリ

ケイ「あれ、何をしているの?」

アサギ「サーフィンだとよ。ランディ先輩は注目を集めるため。アンジュは…まぁ、巻き添えだ」

イズル「へぇ…すごいなぁ」

アサギ「動機を知らなければな。ケイ、かき氷はクーラーボックスの中だ」

ケイ「ああ、ありがとう」

ランディ「ふー、いい調子だぜ」

アンジュ「久しぶりに熱くなりましたよ…」

スルガ「センパイ、お疲れ様です!」

ランディ「おうよ。よし、スルガ、今のでかなり注目を集めたはず…!」

スルガ「チャンスです!」

キレイなお姉さま1「ねぇ! キミすっごくカッコよかったよ!」

キレイなお姉さま2「もしかしてプロの人ー?」

アンジュ「え、あ、いや、あの……」アワアワ

ランディ「」

スルガ「」

チャンドラ「……まぁ、そういうこともあるだろう」






ザザーン、ザザーン…

パトリック「…静かだね……」ストン

タマキ「そーですねー」ストン

パトリック「あ、あの、タマキちゃん」

タマキ「?」

パトリック「タマキちゃんには、この先で何かやりたいこととか、あるの?」

タマキ「この先?」

パトリック「うん。…戦いが終わればさ、自由になるチャンスだってあるだろうし、タマキちゃんには何かないのかな、って」

タマキ「うーん……」

パトリック「……」ドキドキ

タマキ「――とりあえず、皆と一緒にいたいかなー」

パトリック「皆と?」

タマキ「うんー。離れたらー、寂しい? かなー」ニコニコ

パトリック「はは、家族みたいなもの、ってこと?」

タマキ「家族……」

パトリック「僕もそれは分かるよ。ランディ先輩もチャンドラ先輩も、家を捨てさせられた僕にとって家族だからさ」

タマキ「……」

パトリック「タマキちゃん?」

タマキ「――家族! すっごく良い響きなのらー!」キラキラ

パトリック「そう? それなら良かった」

タマキ「んふふー、ケイがお母さんでー、アサギがお兄ちゃん、イズルが弟で、アンジュは妹かもー」

タマキ「あ、あとスルガがペットみたいなー?」

パトリック「ペットは酷いんじゃない? …まぁ、分かる気がするけど」

タマキ「それとー、センパイたちは親戚のお兄さんでかも」

パトリック「親戚、かぁ」

タマキ「うん! 頼りになるお兄さんなのらー」

パトリック「た、頼りになる……」テレテレ

パトリック(っていうかさりげなく家族にカウントされている! し、しかも親戚ならもしかしたら……)

タマキ「センパイ?」

パトリック「え、あ、何?」

タマキ「センパイは何かあるのー?」

パトリック「あ、僕? ぼ、僕は……その」チラッチラッ

タマキ「?」キョトン

パトリック「た、タマキちゃ――」

ランディ「ぬおおおっ! パトリックーっ!」ダダダッ

パトリック「わっ!?」

タマキ「あれー、ランディセンパイ…とスルガー」

スルガ「…よー、ったく、おめーはいいよなー、おめーは」

タマキ「?」

パトリック「ちょ、先輩、やめてください!」

ランディ「いやだ! 抜け駆けなど許さん!」ギリギリ…ッ

パトリック「自分がモテないからって八つ当たりはやめてくださいよ!」

ランディ「ぐっ……お前までチャンドラみたいなことを……っ!」ギリギリ!

タマキ「やっぱりセンパイって……」アタタカイメ

パトリック「だから違うんだよおおおおっ!!」






アサギ「……」

イズル「」スーハースーハー

イズル「」キリッ

イズル「」ザバーン!

イズル「」プカプカ

イズル「」バッシャバッシャ!

イズル「」ザバッ!

イズル「……」クルリ

イズル「や、やった! 泳げたよ、アサギ!」キラキラ

アサギ「そうだな……五メートルぐらい」

イズル「うう……で、でも、これからまた…」

アサギ「そうだな、これから毎日毎日五時間近くも練習する時間があればな」

イズル「」ガックシ

ケイ「で、でも。バタ足だけでスタートしたところから考えれば進歩よね」

イズル「」パァ

アサギ「いーや。息継ぎもできないようじゃまだまだだ」

イズル「」ガックシ

ケイ「……イズル、帰ったらケーキ焼いてあげるから、ね?」

イズル「い、いや、それはいい、かな?」ハハハ…

アサギ「……ほら、そろそろ戻る時間だ」

イズル「う、うん…」

アンジュ「だから、そこで重心を…」

アンナ「お、おおっ!?」

アサギ「おいアンナ、アンジュ、戻るぞ」

アンナ「ええー…もうちょっとで立てそうなのにー」

アンジュ「ええっと、仕方ないですよ」

アサギ「そうだ、アンジュの言う通り。またの機会な」

アンナ「ちぇー……」

アサギ「…また来年に来ればいいさ。今度はお父さんたちもな」ポンポン

アンナ「うん……」






スターローズ

リン「久しぶりね。少しは休めた?」

イズル「ええっと、かなり休めました」

スルガ「ああ…お姉さま方……」

ランディ「ああ…今すぐにでも口説きに戻りたい……」

チャンドラ「まったく問題なく過ごせました」

アサギ「そうですね。いつも通りに」

ランディ・スルガ「気遣いとかはねーのかよっ!」

イズル「え、えっと…」

スルガ「いやお前には求めてないし」

イズル「ええー……」

タマキ「楽しかったのらー」

パトリック「そうだね、とっても」

アンナ「土産も買えたしなー」

アンジュ「初めてですが、その、休暇もいいものですね」

ケイ「ええ。まったく…」

リン「」フッ

リン「明日からはまた任務がある。いつまでも浮いた気分でいないように!」ピシッ

全員「」ビクッ

リン「……今度は、もっと長期の休暇が取れるように、頑張りましょう?」ニコリ

全員「――はいっ!」






ランディ「さて、と。俺たちは次の任務が早速ある」

チャンドラ「またいつか会おう」

パトリック「そう、ですね。また、いつか」

イズル「頑張ってください、先輩!」

アサギ「今度は俺たちが助けになりますよ」

スルガ「へへ、そうだな」

ランディ「ずいぶんと言うようになったもんだな、おい」

チャンドラ「事実だろ。お前も少しは訓練でもしろよ」

ランディ「チッ、マジメめ」

チャンドラ「お前がそんなだからだ」

パトリック「ま、まぁまぁ」

タマキ「パトリックセンパイ、頑張って」

パトリック「あ、ありがとう」

タマキ「どんな恋だろうと、ありなのら」ニコリ

パトリック「ぐはっ!?」

ランディ「…あー、何だ、パトリック。すま……」

パトリック「先輩のバカぁ!」ダッ

チャンドラ「まったく…」フー

タマキ「?」

ランディ「……じゃ、もう行くぜ」

イズル「はい、先輩、お気をつけて」

ランディ「ああ、お前たちもな」

イズル「また、皆で海、行きましょうね」

チャンドラ「それは構わないが…そこのバカはやめておいた方がいいかもしれんな」

ランディ「てめっ…俺も連れてけよ!」

イズル「あはは…それじゃあ、さよなら」

ランディ「おう、またな!」

タタタ…

イズル「行っちゃったね…」

ケイ「また会えるわ。いつでも」

アンジュ「そうですよ、きっと」

アサギ「俺たちが頑張ればいい。先輩たちの分まで」

スルガ「出番を奪ってやりゃあいいってことだな」

タマキ「えへへー、そしたらセンパイたちもすっごくホメてくれるのらー」

イズル「……うん、そうだね」

イズル「僕たちが、頑張れば――」






イズル「……っは」ガバッ

イズル「…………」キョロキョロ

イズル「…夢、か」

イズル「」ガタッ

イズル「このビデオ、返し忘れちゃったな…」

イズル「…っ」ポロ……ポロ……

イズル「おか、しいな…あの時は泣かなかったのに…」

イズル「今になって…どうして」

ランディ『今のうちにできるだけ多くの人と関わっておけ…。
     そうしてそいつに少しでも自分のことを覚えてもらって、自分もそいつを忘れないようにするんだ』

イズル「…………」

イズル「」ゴソゴソ

イズル「」カキカキ

イズル(僕の全力で描きます…忘れないために)

終わり。MJP本編がネタを挟まないと死ぬなら、その逆でオチてやる。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい) パトリックとタマキ くすぐり 親バカシモン
イズルとケイの初夜(意味深)同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 結成前のラビッツorドーベル
次は何を書くか、希望があればどうぞ。

どうも。今日は一つ、放送前にやっていきます。

『あたし』が生まれて数ヶ月。初めて、人から向けられる好意を知った。
あれほどに求めていたそれは、不思議なことに実感の湧かない、持て余した感覚をくれた。
…おかしいなぁ。どうしてか、胸が苦しい。
いっぱい食べたわけでもないし、服やブラのサイズがキツくなったわけでもないのに。

「………」

戦艦ゴディニオンの自室。
あたしは珍しく一人でベッドにふて寝でもするみたいに寝転がっていた。
いつもなら、皆のいるであろうアサギの部屋へと行くのに。
オペレーション・ヘブンズゲート。
スターローズの進軍が終わり次第始まる作戦への緊張感のせいかもしれない。

…もちろん、違う。
緊張なんて、ウソっぱちだ。
さっき、ピットクルーたちとえいえいおーしてきたばかりだし。
頑張ろう、って作戦に関しては気合いしかなかった。

どこにも行かないでいるのは、もっと、別のことを考えていたかったからだ。

「……ん」

ぐるん、と体の向きを変える。自然と視界が百八十度変わる。
壁しかなかった世界に変化が起きて、備え付けのテーブルとチェア、事務机と椅子のセットが映る。

他にあるのは――

「……」

ぐったりとした気分で起き上がろうとする。自然と床の光景が見えた。
さっきは映っていなかった足元には、ごちゃごちゃになった服やら下着やらが落ちて足の踏み場を微妙に残していた。
…ケイにもアサギにもかんちょーにも言われたけど、掃除しよっかなぁ。
まぁ、また今度。そう結論付けて、ゆっくりと一歩を踏んだ。
のろのろとした歩みで、部屋にある他の家具――冷蔵庫へと近付く。

今度は億劫そうな動きで、しゃがみ込んだ。
それから、そのままの流れで小さな扉に付いた小さな取っ手に手を掛けようとして、何度も思いとどまる。
自分の右手のひらと真っ白な扉を交互にぼんやりと見つめた。

扉を開けたい、という気持ちがあった。
扉を開けたくない、という気持ちがあった。
どうせ期限がある品物だし、食べきれるときに食べてしまわないとあんまりだ、と思った。
これを食べきったら、いよいよあの人の好意の証がなくなってしまいそうで怖い、と思った。

ずーっと、ずーっと、悩んで、何度も手を取っ手に付けたり離したりした。
それでも。結局は決断をする。
最後に取っ手から手を離したとき、あの人の顔が浮かんで、その最期も思い浮かんで。
後悔を残すわけにはいかないってケイと話したときに決めたことを思い出したから。

がちゃり、と扉はあっさりと開いた。
ひんやりとした空気をまず感じた。
それから、冷蔵庫の中の薄暗い照明を目にして。
唯一、保存してある品物を、しげしげと手に取った。

高級塩辛。
これまで食べたどの塩辛よりも、ずうっと美味しくて。
印象的で、きっとこの先もずっと忘れられないであろう塩辛だった。

ぎゅう、とそっと塩辛の瓶を抱き締めた。
冷蔵庫の中で冷えていたそれは、すごく涼しい感覚をくれて、その存在を主張していた。
冷蔵庫の扉を閉めてから、立ち上がる。

「食堂…開いてるかな」

ぼそりと呟いてから、部屋の外を目指す。
ふと、したいことができた。






数分後、あたしはある通路に移動していた。
強化ガラスで覆われた大型の窓がびっしりとある、広々とした通路。

「………」

誰もいないそこに向かうあたしの右手には塩辛の瓶と水のボトル。左手には大盛り白飯と箸。
塩辛以外は、腹ごしらえをしたい、と忙しなく働いていたお姉さんに無理を言って頼んで貰ってきたモノだった。
お姉さんは、何も言わずにニッコリと笑って用意してくれた。

やがて窓に張り付けるくらいのところまで歩いて、あたしはゆったりとした調子で座り込んだ。
それから、瓶のふたを開けて、白飯にかける。
ケイがいたら怒られるだろうな、と箸を手に取ってから思った。
でも、お行儀が悪いとしても、ここじゃないとダメだった。
あの人の部屋だった場所でもいいかな、とは最初は考えたけれど、もうそこは別の人の場所になっているらしかった。

だから、ここにした。
最後にあの人と会話をした、たった一つの場所だから。

「…いただきます」

外を眺めながら、両手を合わせて、一言だけ呟いた。
この声が、食堂のときみたいにあの人に届けばいい、と思った。

「…ぱくっ」

いつもみたいにかっ食らう前に、ゆっくりと塩辛とご飯を箸に取って、口にした。
……ああ、美味しい。美味しいなぁ。

「………っ」

最初に食べたときみたいに、しょっぱさで涙が出てしまいそうになった。
噛み締めて味わうのを止めて、慌てて一気にかっ食らい始めた。

流れ込んでくる塩辛の味を連続的に味わう。
ある意味一つの贅沢なマネだけれど、そんなことは考えていなかった。
ただ、この美味しい味がずっと続けばいいな、と何となく思った。
もちろん、そんなことはない。無限なんてない。
何物にも、別れはあるんだから。

「……ごちそうさまでした」

あっさりと別れの時は来た。
空になった茶碗を置いて、その上に箸を置いて、水を一口飲んだ。
それから、そっと、そばに置いておいた塩辛の瓶に視線を送る。
もう空っぽになった、ただの瓶に。

食べきったんだという満足感と塩辛がなくなった何とも言えない喪失感が、ぐるぐる頭の中を回っていた。
それでも、あたしは笑顔でいた。
嬉しかった。こんなにも美味しいモノを、あたしのために用意してくれたんだ、って。
改めて、あの人の純粋な好意が嬉しいと感じた。

ああ、何だ。最初から持て余してなんていなかったんだ。
単純に嬉しい。それだけが、あたしの気持ちだったんだ。
実感が湧いた。あの人が必死になって、これを選んでくれた姿が何となく浮かんできて、少しおかしくなって笑みを零した。
もしかしたら、あたしは。あの人に――――

「……っ!」

ぶんぶん、と頭を何度も横に振った。
たら、れば、そんなありもしない未来のことなんて、考えたってダメなんだ。
今は、違うことを考えなくっちゃ。

「―――よーっし!」

さっきとは打って変わって、勢いよく立ち上がった。
元気、湧いてきた!
ぜったい、ぜーったい、やりきってみせる!
みなぎってきたやる気を感じて、あたしは俄然自分の中に勢いがあるのが分かった。

「あー、いたいた。タマキちゃん!」

ん? と自分を呼ぶ声にあたしは振り向く。
振り返った先には、こっちにぱたぱたと走ってくる食堂のお姉さん。

「もう、ダメじゃない。こんなところでご飯食べちゃー」

「ごめんなさい」

ペコリ、と素直に謝ると、お姉さんは意外にもそこまで怒らないで、呆れたように笑っていた。
それだけで、何でこんなところにいたのかとか、何も聞かないでくれた。

「ほら、そろそろ自分の部屋に戻りなさいな。あたしが片付けしておくから」

怒る代わりにそう言うと、お姉さんはしゃがみ込んで足元のボトルや茶碗を手にして――

「あ、待って」

「ん?」

そのままの勢いで空になった瓶に手を伸ばしたお姉さんを止める。
お姉さんは不思議そうな顔であたしを見つめていた。
あたしは珍しく真剣な顔で、お姉さんより先に瓶を大事に抱えた。

「これは、あたしのだから」

ぎゅう、と瓶を抱き締めた。
もう定温に戻って冷たさを失っていたけれど、それはちゃんとあたしの腕の中で存在感を示していた。
それどころか、ヘンな温もりですら感じていた。

「…そっか、ごめんね?」

そんなあたしに、お姉さんは一言謝ると、すぐにその場を去って行った。
その時のお姉さんはあたしを訝しむようなこともなく、慈しむような笑顔でいた。

……そろそろ、行かなくちゃ。
あたしは瓶を抱えたまま、そっと歩き出した。

「……」

くるん、と数歩進んでから、振り返った。
最後に一言、伝えなくっちゃ。
誰もいない通路に、あの人の姿があった気がした。

「――美味しかったのらー!」

大きく、元気いっぱいで叫んでから、あたしは方向転換して走り出した。
もう、振り返らない。真っ直ぐに進んでみせる。

良かったら、一緒に戦ってね?
……アッシュに積めるかなぁ。瓶くらいは。

あたしは進む。迷いなく、元気いっぱいに。
そうして振り返らない代わりに、もう一言だけ、ありがとう、って囁いた。

あーたーし、いーかーなーくーちゃー。
終わり。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)くすぐり 親バカシモン イズルとケイの初夜(意味深)
同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 結成前のラビッツorドーベル
では。

どうも。22話はよくできていましたね。
アサギとタマキの名前を叫びっぱなしでした。
今日は二つやっていきます。

決まった人生ほどつまらないモノはない。
特に、先行きもないような人生は。

「――聞いているのかしら、ランディ・マクスウェル君?」

ぴしゃり、と風を切って高鳴るムチの音に、ランディ・マクスウェルは投げかけていた意識を戻す。
緩くなり始めていた姿勢を改めてみれば、目の前でムチの持ち主――スズカゼ・リンがため息を吐いていた。

ここは、グランツェーレ都市学園。
MJPと呼ばれる特殊な士官学校の一室である。
ちなみに身分としては、ランディはこの学園の生徒で、リンはその教官である。
つまりは教師と生徒の関係であるが、もちろんながら、だからといって何かいかがわしい関係などは二人にはない。

そもそもランディ自身が特殊すぎる環境にある人間なのだ。
と、そこまで何となく考えてから、すぐに思考を改める。
今はこの教官との状況の解消からだろう。
へへ、と彼は愛想笑いを咳払い代わりに一つしてから、ごまかしの言葉を紡いだ。

「もちろん。ええと…教官がサイオンジ整備官の酒に付き合わされて苦労してるって話――」

「あなたの訓練へのそのやる気のなさの話だったわね?」

最後まで言わせてもらえず、ランディは少しだけ抗議の声を漏らそうとしたが、リンの恐ろしいほどの清々しい笑みに気が失せてしまう。
この教官の美人さは確かなモノなのに、どうにもマジメさで印象をマイナスに振り切っている気がする。
そんな調子だから、年頃の割に彼氏の一人のいないのだろう、とランディは思う。
すると、失礼な発想が表情から伝わってしまったのか、リンが一際厳しげな顔つきを見せた。
険しい表情でいた方がもっと美人だ、と何となく思う。

「まったく……あなただけよ、そんなにもやる気がないのは。分かっているの?」

「はは。分かってますって」

呆れたような声、というよりは本気で心配するような声色で叱咤するリンに、ランディは軽い調子で返す。
そう、分かっている。自分が何をするためにいる人間で、そうしないとどうなるのかも。
ランディの返答に、リンは眉根を寄せ、俯いた。
まるで、何か辛いことを思い出すかのように。

「…知ってるでしょう? この先、あなたはいつか――」

「前線で戦っていく。ええ、分かってますよ」

まったく、その通りだ。何なら余裕の笑みが浮かんでしまう。
彼は、そのために生み出されたのだから。

MJP機関――通称Military Junior Pre-academy――は宇宙に適合する新たな新人類を生み出す、ということを目標にした宇宙開発機構である。
といっても、今では宇宙での戦争に適合した人間を生み出す軍事機関だが。
汎統一銀河帝国ウルガル――と地球で勝手に名称付けられた敵国――による侵略が始まって以来、MJPはただの士官学校となったのだ。

この特務機関の最大にして唯一の特徴としては、士官候補生の全ては遺伝子操作によって作り出された人間だ、ということだ。
普通の人間のように、母親から生まれたりはしない。
人工子宮から生み出され、養父母の元で育てられ、一定の期間の後、学園に送られる。
そうして訓練を積んだ後に、戦いへと赴くのだ。

そうだ、分かっている。
いつか、遠くない未来で自分が戦って死ぬことも。
きっと、あの優しかった養父母に二度と会うことはないであろうことも。
自分は戦場で散っていくことを定められた人間だということも。

だからなのだろう。自分にやる気が起きないのは。
納得のいく理由だと、よく思う。

「――もういいわ」

ランディの態度からか、見放すかのごとく、リンは仕方ないといった様子でため息を吐いた。
ああ、それぐらいがいい。自分に期待など、してもらっては困る。
しかし、そうした諦めのような心持ちでいたランディの心情は後にあっさりと裏切られることとなる。
リンのある一つの知らせによって。

「あなたのチーム編成のことだけれど、決まったから渡しておくわ」

話を切り替えるように、リンは一枚のA4サイズの紙を自らの机から取り出すと、手渡した。
もちろんランディには受け取る以外の選択はない。さっさとその紙を受け取る。

「……今日はいいわ。帰りなさい」

目を通す前にリンに言われて、ランディは細かく紙を読むのを止める。
帰っていいと言うのなら、その通りにするだけだ。
何より、昨日手に入れた成人向けの映像作品の続きが気になっていたのだ。

「ランディ君」

礼をして、部屋を出る直前、リンの呼び止める声が聞こえた。
が、ランディは立ち止まらなかった。お説教はもうゴメンだ。
入口を抜けて、振り返った先に、悲しげなリンの表情が見えた。
それを見て、一瞬だけランディの思考は止まり。
冷たく、扉が閉まる音がした。

終わり。前スレの本編のように何度かこれは続く予定。
次に行こう。

――元々、覚悟はできていた。
あと足りないのは、きっかけだけ。

「あ、お湯沸いたね」

隣から聞こえた声に、私は頷いて立ち上がった。
ここはイズルの部屋。
小さなキッチンでポットの紅茶を注ぐ私の後ろで、イズルがベッドに座っている。
その前の小さな机には、さっきまで一緒に食べていた私お手製のケーキの包みがある。

今日は何日かぶりの休暇。
せっかくだからと、イズルを誘って出かけた。
リーダーとして、心労が激しいだろうし、少しは気晴らしになれば、と思ってのことだ。
……本当のところを言えば、最近のイズルが何だか怖い、というのもある。

あの日のジアートとの戦い以来、時々イズルがおかしく感じてしまう。
もちろん、実際のところは一度そんなことがあっただけでイズルはいつも通りだ。

とにかく、その…恋人、として、私なりにイズルとなるべく普段のように過ごして、それから彼の部屋でゆっくりとケーキを食べていた。
今は、食後に一度紅茶を淹れ直していたところだった。
チラリ、と壁に掛けてある時計を見てみると、もう深夜と呼んでいい時間だった。

……こっそりと、深呼吸をした。
今日は、一つ決めていたことがあった。
いつか、必ず、と。

必要なのか、と問い直すのはきっと、つい怖気づいてしまっているからだろうけれど、もうしない。
そっと、イズルを盗み見る。
これまでの私と彼の距離、それはまだ初々しいモノでしかない。
はっきりとした関係とは言えない。
本当に、イズルの中に私がいるのか、自信が持てない。
あの人が、いるから。

自分で決めたことを、思い出す。
そうだ、きっかけはもう出来た。
残りは、私の行動だけだ。






誰だって、初めてすることは怖いと思う。
初めての料理、初めての搭乗、初めての戦い。
それと、ええと……その、は、初めての―――

「イズル?」

隣から聞こえてきた声に、僕ははっとした。
慌てて横に目をやると、そこには彼女がいた。
クギミヤ・ケイ。
僕の仲間の一人で――大切な人。

ここは僕の部屋。
時間は深夜。お互い、休暇に二人で出かけて、のんびりと過ごして。
それで――僕の部屋でこうして二人っきりでいる。
ベッドに座って、お話して、時々黙って、マンガを読んでもらって、ケイのケーキを食べて。
緩やかな時間が流れていた。




「…あ、そろそろ帰った方がいいよ、ケイ」

僕の部屋で過ごして、いくらか時間が経って。
ケーキを食べ終えて、紅茶を飲みながら軽くお話をしていた僕がふと壁に掛けた時計を見たら、結構な時間になっていた。
これはまずい。明日からは任務や訓練が再開する。このままじゃ、支障が出る。
そう思い、僕は立ち上がって――

「……っ」

「へ、ケイ?」

突然、ケイが立ち上がった僕の手を握った。
慌ててその顔を覗き込むように見てみれば、彼女の目は潤んでいて、紅潮した頬が実に色っぽかった。

ど、どうしたんだろう? 何だか、目が据わってるし。
知らないうちに、緊張して唾を飲み込んでしまう。
ゆっくりと、ケイが薄い唇を震わせながら動かす。
そこから漏れ出す声に、僕は知らず知らずのうちに聞き惚れていた。

「きょ、今日は……泊まっていっても、いい?」

「――え、あ…そ、そえって……」

動揺して噛んでしまう。
上目遣いで僕の目を見上げるケイがあまりにもかわいかったんだ。
そして、僕は言いながら、ケイの言うことの意味を考える。
ど、どう考えても、泊まるってことは……。

「ええっと…その、ホントにいいの?」

僕は知らず知らずのうちにケイの意思をもう一回確認していた。
その声は緊張しちゃったせいか、震えている。
女の子にとって、そういうことを初めてするのはとても大事なことだ、と思う。
い、痛いっていうし………。
でも、僕の言葉にケイはまったく怯むような様子を見せなかった。

「…ええ。私、もう決めたの。イズルに全部あげたい、って」

覚悟を決めたように真剣な色を宿した瞳で、ケイは僕を見つめた。
ああ、そんな目で見ないでよ。手を少し震わせて、そっちだってホントは緊張してるんじゃないか。
そんな目と言葉を当てられたら、こちらも真摯に応えなくちゃならない。

ケイが、改めて愛おしいと思った。これほどに、一途に僕を想ってくれている。
僕のことをそれほどまでに好いてくれる。それはもう知っていた。
僕だって、同じなんだから。

大きく、僕は息を吸い込んで、吐いた。
そうして、ようやく一歩、進む気になれた。

「……ケイ」

とりあえず、眩しくなるだろうから明かりを薄くした。
改めてベッドに座って、僕は名前を呼びながら、ケイの後ろ髪を右手に取って撫でてみる。
サラサラとした感触が伝わってくるのを手のひらから感じながら、くすぐったそうにしているケイの肩に左手を添えて引き寄せる。
こうしているときが、一番好きだった。

ケイの髪は、触っていて心地いい。ずっと撫でていてもいいくらいだ。
きっと手入れをよくしているんだろう。シャンプーの良い香りもする。
と、僕が夢中になっているうちに、ケイが僕を見つめていることに気付く。
もちろん分かっている。いつまでもこうしていても始まらない。

だから――

「ん…」

まずは、軽いキスから。
髪から手を離して、そっとケイの頬に添えて引き寄せた。
ゆっくりと瞼を閉じたケイの唇に、僕のそれが触れた。
時間にしてみれば、ほんの五秒くらい。だけど、それが実に長く感じてしまう。

ちゅ、と唇を離すと淡泊な水音が耳に響く。
最初の頃はこうすることにも度々気恥ずかしさなんかを感じていた。
今では…いや、まぁまだ慣れてはいないけど、とりあえず顔が赤くなっちゃうことはなくなった。
とにかく、僕らはそれを繰り返し、繰り返して、だんだんと離れるのに長い間が入るようになる。
離れられなくなってしまう。それぐらい、僕たちは相手を想っているらしい。

「はっ、ん…」

「っ、はぁ……っ」

息継ぎをしながら、お互いに動きを止めずに続ける。
そうして、いつの間にか僕は勢いのままにケイを押し倒して、彼女と舌を絡め合っていた。
ぎゅ、とその身体を抱き締めてみる。
柔らかで、そのくせ細いためにすぐにでも消えてしまうんじゃないかという不安を掻き立てられる。

その不安を無くしてしまうように、さらに力を込めてケイの腰に添えた手を握る。
ぬるりとした感覚を舌で楽しみながら、積極的に来るケイに僕も負けじと必死に舌を動かす。

「……いず、る」

何度目か分からないキスをして、唇を離した僕をケイが見上げた。
その顔はのぼせたように紅く染まっていて、熱に浮いて潤んだ瞳が薄い闇の中で輝いていた。
そ、そろそろ次の段階かな。

「…脱がす、ね」

一言断りを入れてから、ケイの服に手を伸ばす。
初めてのことにちょっと緊張を感じていたから、手が震えかけていた。
ちゃ、ちゃんと脱がせられるかな。僕、女の人の服の脱がし方なんて知らないしなぁ。
と、そう思っていたけれど、その不安はあっさりと解消された。

「ま、待って」

服に触れる前に、僕の手首をケイが掴んだ。
どうしたの? と僕が不思議そうな視線を送ると、ケイは僕の心を見透かしたようにうっすらと微笑んだ。

「――自分で、脱ぐから。あの、イズルも……ね?」

「う、うん……分かった」

正直にありがたい申し出を受け入れて、僕はケイから少し距離を置く。
ケイも起き上がって、若干恥ずかしそうに僕に背を向けると自分の服に手を掛けだした。
それを確認すると、僕も自分の服を脱がしにかかる。
これからすることになる初めてのことを考えてしまったせいか、いつもよりも時間が掛かってしまう。

……というか、背中合わせにしているケイが服を脱いでいく衣擦れの音に色々と想像をさせられてしまったせいもある。
……ケイ、キレイな身体をしてるんだろうなぁ。いつも思っていたけれど、ケイのスタイルってモデルさんみたいにバランスが良いんだもの。
確かに、その、胸とかは全然無いかもしれないけれど、僕はそんなことを気にしたりはしない。

と、そうやって思考を重ねているうちに、もう僕は完全に生まれたままの姿に変わっていた。
自分なりに鍛えた肉体は、まぁ、スルガのピットクルーよりはだらしないけど、それなりに逞しい、と思いたい。
とりあえず、脱ぎ捨てたジャケットやシャツなんかをベッドの下に畳んでおいて、僕はゆっくりと振り向いた。
もうケイは先に準備できていたらしい。まぁ、つまり。

「あ……」

僕の目の前に、とても美しい世界が広がっていた。
それから、想像なんて当てにならないことを僕は思い知った。
ケイの身体は、キレイとか、そんなモノじゃなかった。
完成した芸術品みたいに、ずっとずっと、輝いていた。

きゅっと締まったお尻。大きさはないけれど、形の整った乳房。桜色にほんのりと染まった乳頭。
スラリと伸びた足。どこを取っても、だらしない場所が一切存在しない。
完全だ、と思った。

「……あ、あまり、見ないで…その、は、恥ずかしい、から」

僕の視線に気付いたのか、ケイがもじもじとしながら俯いた。
朱に染まったほっぺに、僕もつられて顔を紅潮させる。

「ご、ごめん。あんまりキレイだったから、その、つい…」

「き、キレイなんて、そんな……あ、ありがとう」

俯きがちにそう言ったケイは視線を下に向けてから、その先の何かを見て、慌てたようにそっぽを向いた。
それから、恥ずかしそうにチラチラと僕に視線を送る。

「……っ、その、イズルもすごく、逞しいと、思う」

ケイはそれだけ言うとまた顔を蒸発させたみたいに赤くした。
て、照れるなら言わなければいいのに。
一応、僕はお礼を言うことにした。いや、言うべきかは分からないけれど。

「あ、ありがとう」

「そ、それに……大きい、のね」

言いながら、ケイは赤いままの顔でどこかに目線を送っている。
…いや、どこかなんて分かっているけれど。でも、ちょっと、恥ずかしい。
ああ、ケイも同じような気持ちだったんだね。

その存在をはっきりと主張する赤黒い怒張を見ながら、僕は少しだけ見られることに抵抗を覚える気持ちを理解した。
でも、そうやってお互いに恥ずかしがってちゃ、踏み止まったら始まらない。

「あ、あはは……。ええっと、じゃ、じゃあ…」

「う、うん……」

僕の言葉に、ケイは察したように頷いてから、そっと、自分の身体を僕に寄せる。
直に触れると、人の肌がどれほど暖かいのかがよく分かった。
僕は手を伸ばして、ケイの身体を抱き締めた。
胸板に直に当たる柔らかな感触にドキドキしながら、僕は行為の続きを始めた。

くい、とケイの顎に右手を添えて、またキスをした。
舌と舌を絡め合い、目と目を合わせて、抱き合った。

とりあえずここから始めてみたけれど、そこからは何をしようかなんて考えていなかった。
え、ええっと、確かいきなりするんじゃなくて、その、準備しないとなんだよね。
持ち合わせた知識を頭の中で総動員しながら、僕はゆっくりとケイから離れた。

「ん……」

名残惜しそうにするケイをベッドに倒す。
完全に力を抜いて彼女は身体をベッドに預けきって、こちらを見上げた。
僕だけを見つめる熱い眼差しは実に扇情的で、俄然その気になってしまう。
僕は改めてケイの全身を眺めてから、覚悟を決めて行動に移す。

「ええっと、じゃ、じゃあ」

ちょっと躊躇ってから、僕は自分の顔を滑り込ませる。
ケイの秘所へと。

「え、ちょ、い、イズル、そこは……っ」

突然の僕の行動に一瞬呆気にとられたらしいケイは、僕が何をしようとしているのか分かったらしく、止めようとした。
でも、集中を始めた僕の意識にはその声は届かない。
茂みに覆われている淡いピンク色のそこは、想像の世界よりもキレイで。
薄く広がるビラビラとしたところが、何か透明な液体で潤んで艶やかに蠢いているように見えた。
こくん、とつばを飲み込んでから、僕はそっと舌を伸ばして、震えるそれで、触れた。

「――ああっ!」

甘い、と認識すると共にケイの普段聞いたこともないような女の子らしい声を上げた。
僕は甘いそれをもっと味わうように舌をさらに深く差し込んで、上下に動かしてみた。
う…何か、すっごくそういうことをしてる、って感じがする。
女の人のフェロモン、といえばいいのか、蠱惑的で強烈な匂いが鼻の奥まで突き抜けていく。

「ふあ、いず、や、んんっ…!」

気持ちいいのか、ケイは叫ぶのを押し殺したような声で僕の頭に両手を添えた。
僕を引き離そうとしている手の力は、僕が行為を続けていくうちに抜けていっている。
チラリと見上げてみると、ケイは戸惑うような瞳で僕を見下ろしていた。
唇を結んで瞳を羞恥の涙ににじませているケイの弱々しい表情は、とってもかわいかった。

「ん、かわいいよ……っ」

感情を口に出しながら、僕は舌で溢れ始めたトロリとした液体を舐めとっていく。
そうしていると、ジュースなんかよりも甘いかもしれない液体の流れるペースが上がっていく。
そ、それだけ気持ちいいってことだよね、確か。
僕はケイをもっと喜ばせ、かわいい姿を見たい、という気持ちの元、さらに行為を続ける。

「ちゅう…っ、んくっ…は……っ!」

「あっ、ひゃっ……! ふわ、ぁああ……」

中にあった核みたいな丸い部分を必死に舐めてみる。
それに応えるように甘い声が頭上から聞こえた。
…ケイって、エッチなんだなぁ。
乱れきったケイの姿は実にイヤらしくて、その、悪いけれど興奮してしまう。

「やっ! そこ、すっちゃ、あ、いず――」

すっちゃ? えっと、もっと、ってことかな?
そう解釈して、僕は思いきりまたそこを吸い込んでみた。

「――――や、ああっ!!」

一際大きな悲鳴が上がった。
と、思ったときには僕は慌てて瞳を閉じていた。
さっきまで舌を伸ばしていた淫口から、今までで一番の量の液体が出てきたからだ。
目元にまでそれがかかってきて、つい反射で視界を塞ぐことになった。

「わ、っ……」

勢いよく噴き出してくる愛液に僕は思わず首を引っ込める。
僕の顔にかかった甘い液体がとろとろと雫となってシーツに落ちていく。
ケイの表情を窺えば、荒い呼吸のまま紅潮させて横を向いていた。

「あ、だ、大丈夫…?」

疲れ切ったような様子でぐったりとしたケイが心配になって声を掛ける。
乱れた呼吸で切なそうに腰を捩じらせて額に汗の珠を浮かべたケイのその姿は、いつかのビデオで見たような光景にそっくりだった。
うわぁ…ほ、ホントにそんな風になるんだなぁ……。
良く分からないことに感心して、僕は訳の分からない感動を覚える。

「だ、だいじょ、ぶ…」

僕の声にそれだけ言うと、ケイはゆっくりとした調子で息を整え始めた。
僕はその様子を眺めながら自分の顔に付いた蜜を手で拭き取っておく。
ペロリ、と舌で指に絡みついたそれを舐めとると、やっぱり癖になってしまいそうな甘味がした。

チラリ、と僕はケイに意識を戻す。
いつの間にかケイの様子は落ち着いていた。
……というか、妙に据わった目で僕を見つめていた。

「えっと、ケイ……?」

少し怯んで、僕は訝しむような調子で声を出した。
そんな僕にケイは特に視線を逸らすことなく、ニコリと笑った。
…な、何か怖い。ゆらりと僕に迫ってきてるところとか。
そうしているうちに、倒れていたはずのケイが起き上がって僕のすぐ目の前にいた。

「…今度はイズル、ね」

「え…わっ……」

トン、と胸板を押された感触があった。
そうして気付けば、今度は僕が天井を見ていて。
薄く光る照明を遮るように、ケイが僕の顔を覗き込むようにしていた。

と思うと、ケイは照明を遮るのを止めて、僕の膝の辺りに座り込んでしまう。
それから、迷ったように何度か両手を宙に舞わせてから、さっき僕がしたみたいに、そっと下腹部に手を伸ばした。
びくっ、と突然の痺れるような感覚に身体が少し跳ね上がった。

「こ、こうすれば、いいのよね?」

「あ、け、ケイ…っ」

そう。僕の大きく赤黒くいきり立っていた怒張がケイの滑らかな両手に包み込まれていた。
グロテスクな見た目のそれに他人が――ケイが触れている。
それだけで、僕の興奮が高まる気がしてしまう。
僕の反応を見てから、必死な様子でケイは僕のモノを握って、上下に擦る。
その都度、人に触られることに不慣れな僕の身体を電気が走るみたいに快感が流れていく。

「ん……」

ただ擦るだけじゃ足りないと思ったのか、ケイが次の行動に移る。
僕の肉棒に向かって、透明で粘性のある液体がケイの唇から零れ落ちて、纏わりつく。
ケイは、てらてらと微かに光る僕のそれを改めて握った。

「ふっ……んん…!」

その状態での続きによって、さっきとはまったく変わった結果が生まれた。
ぬるりとした液体が柔らかな手によってにちゃにちゃと広まって、圧迫されて、擦られて。
視覚、触覚、聴覚を刺激されて、思わず声が漏れてしまう。…うう、気持ちいいや。

「…イズル、気持ちいい?」

僕の表情は分かりやすいのか、ケイは僕を観察しながらニコリと笑って聞いた。
わ、分かってるくせに…イジワルだなぁ。
さっきの仕返しなのかもしれないけど。

「んっ…気持ち、いい……」

それでも一応答えると、ケイは嬉しそうに唇を綻ばせる。
それからケイはいくらか行為を続けて、急に何かを思いついたように屈み込む。
え、ちょっと…何を――

「……はむっ」

「………っ!? ちょ、け…」

突然すぎるケイの行動に目を丸くしてしまう。
意を決したようにケイがしたこと、それは…えっと、僕の、その、モノを頬張ることだった。
いきなりすぎることに、僕は止めようとしたけど――

「あ、うわっ、ああ!」

蠢く口内の感触に、僕の身体が大きく跳ねた。
さっきとはまるで違う。快感の質が段違いに上がっている。
舌が一点的に絡んでくるのとは違って、まるでケイの口全体が僕のことを本当に包み込むようだった。
それに、さっきより唾液がもっと絡むし。

「ん、ちゅ……」

ケイは舌を使って僕のモノを突いたり、チロチロと撫でてくる。
その度に僕の身体に電気が流れる感覚がして、気持ちいい。
何より、僕に必死になって快楽を与えながら、自信がなさそうに僕を潤んだ目で見上げるケイの姿にどうしようもなく興奮してしまう。

「は、あっ……んっ」

自然と漏れる声が大きくなってしまう。
それに従って、ケイは反応する僕を嬉しそうに見つめて上下に顔を動かす。
じゅぽっ、じゅぽっ、と派手な水音が聞こえてきて、僕の耳に残るように響く。
暖かい感触に激しく圧迫されて、擦られる。
音と合わさって、僕に伝わってくる快感はさらに増していく。

「ちょ、けいっ…も、そろそろ限界、だから…」

ぞくぞくとした感覚に僕は呻く。
いつものように何かが下半身から込み上げようとする。
こ、このままじゃ、ケイに……っ!

「いい、そのまま、出して…っ」

僕の気持ちとは裏腹にそれだけ言うと、ケイはまた僕を銜え込んだ。
本気で口の中に出させる気なのかな。そ、それはまずいけど…。
なんて、慌てて止めさせようとする僕に限界が訪れる。

「――っ、あ、ああっ、けい、けいっ!」

真っ白になった頭で彼女の名前をバカみたいに呼ぶ。
無意識で必死になっていたらしく、僕は何とかケイの頭を掴んで肉棒を引き抜く。
僕の身体が、大きく跳ねた。
そして――

びゅ、びゅるるるるっ――!

僕の肉棒の先から、迸るように真っ白な液体が噴き出ていく。
かろうじてケイの口から出してはいたから口内には出していないけれど、勢いよく放たれる僕の精は止まらずにケイの顔を汚していった。

「…は、ぁ…っ」

溜まった精子を一気に吐き出すと、僕は大きく息を吐いて、そのままベッドに身体を落とした。
ぎしり、とフレームの軋む音を耳にしながら、僕は瞳を閉じた。

「……ん、いっぱい、出た…」

聞こえた声に僕は気だるげに薄く目を開けた。視界が開けて、ケイの姿が目に映る。
出てきた精液を余すことなく、顔面で受けきったケイは呆然とした様子で元気を失った僕のそれを眺める。
僕はといえば、出し切った余韻に浸ってしまって、何も行動できなかった。
少しの間、僕が息を吸っては吐く音しか部屋にはしなかった。

「…っ、えっと、ごめん。ほ、ほら…」

ようやく落ち着いてきた僕は、何とか起き上がってベッドの側に置いたティッシュに手を伸ばした。
わ、悪いことしちゃったな。汚いし…。
数枚の紙を引っ張り出して、ケイに差し出そうと向き直る。

「……」

「ケイ?」

ケイの方を見てみると、彼女は何やら不思議そうに顔にかかっている精液を右人差し指で掬って見つめていた。
ど、どうしたんだろう? そんなモノ早く拭き取らないと。
僕は手にした紙をまず顔に伸ばし――

「え、ケイ!? 何してるの!」

僕の動きが、止まった。
僕の視線の先。ケイが、その指を銜え込んだ。
慌てて指を離させようとする前に、ケイは自分で指を離した。
その指の先に付着していた僕の精液はきれいさっぱりなくなっている。
もしかしなくても、ケイは。

「……苦い、わね」

「あ、当たり前でしょ! ほら、拭くから…」

「うん…」

動揺しながらも、とにかく僕は渋い顔をしていたケイの前髪やら鼻の辺りやらにかかっちゃっている白濁とした液体を拭い取る。
ドロドロとしてティッシュに纏わりつくようになっているそれを一瞥して、僕はティッシュをゴミ箱に捨て去る。

……もう。いきなり何をするかと思ったら。ホントにびっくりしちゃったじゃないか。
ま、まあ、確かに。そういうの、見たことあるし。ちょっと、興味はあったけど……。
実際にやられると、こんなにも罪悪感があるなんてなぁ。

「ど、どうしてそんなことしたのさ……?」

いたたまれなくない気持ちのまま、僕は恐る恐る聞いてみた。
すると、ケイは今さらになって自分のしたことを思い返したのか、頬を赤らめていた。
そうして少しだけ、口をもごもご動かしてから、静かに答え始めた。

「…何でって、その、気になったというか……い、イズルが」

「僕が?」

途中まで言って、妙に照れた様子でケイはそっぽを向く。
つい気になって、僕が続きを促すと、彼女はさらにたどたどしく続けた。

「イズルの、だから。その、全部…」

そこまで言って、ケイは言葉を詰まらせた。
えっ、と。それって、つまり…ぼ、僕のモノなら何でもほしい、ってこと?

「…ケイの、エッチ」

なるべく嬉しい気持ちを隠して、僕は必死にジト目を作ってみせた。
だ、だって、そんなことを喜んじゃうなんて、僕が変態さんみたいだし。
と、そうしているうちに、ケイがぼそりと何かを呟いた。

「しょうが、ないじゃない。…あなたのこと、好きだから…」

顔を真っ赤にして反論してくるケイの小さな声を聞きながら、僕は自分の顔が熱くなるのを感じていた。
そんなこと言わないでよ。抱き締めたくなっちゃうから。
ああ、もう。僕たちはしょうがないな。

「……そ、そろそろ、いいんじゃないかしら」

お互い真っ赤になって黙っていると、ケイがチラチラと僕に視線を送っていた。
気付けば、元気を失っていた僕の肉棒が、また元に戻っていた。

「…う、うん。そう…だね」

少し恥ずかしくなって、僕はそれだけ返すと、ケイの肩を掴んで、押し倒した。
これからすることに改めて緊張を感じながら、僕はゆっくりとケイの腰に手を回す。
見下ろしてみれば、ケイも同じ気持ちなのか、固くなった表情で僕を見上げていた。
だ、大丈夫かなぁ……。

一度終わり。何を書いてるんだろう、まったく。続きはまた今度。
ケイのキャラソンが不穏でしょうがない。イズル大丈夫かなぁ。
次の予告はアサギ撃墜みたいで何か怖いし。ジアートが出てくるだけなんだろうけど。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)くすぐり 親バカシモン 家族 スルガ君の嫉妬
同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ
では。

どうも。今日は一つだけやりたいと思います。

笑えや笑え、別れの時まで

アサギの部屋

アサギ「……」

アサギ(作戦開始までもう僅か…この戦いに人類の未来が…アイツの、未来が…)

アサギ「…っ」ギリッ

シュッ

スルガ「うーす」

タマキ「うーす!」マエニナライ

ケイ「……こんにちは」

アンジュ「…えっと、こんにちは」

イズル「お兄ちゃん、いる?」

アサギ「……また俺の部屋か?」

スルガ「いいじゃん、どうせ一人で退屈してたろ?」

アサギ「…精神統一してたんだよ」

タマキ「せーしんなんて気にしなーい!」ニコニコ

イズル「お兄ちゃんなら大丈夫だよ!」ガッツ

アサギ「お前なぁ…」

ケイ「リーダーは大変ね」クスッ

アサギ「…ああ、そうだな。おかげで潰れそうだよ」フー

イズル「大丈夫だって、お兄ちゃんだからさ」

アサギ「だからその呼び方は、その、やめ…」

イズル「」キラキラ

アサギ「う…好きにしろ……」メソラシ

スルガ(弟バカだ…)

アンジュ(弟バカですね…)

タマキ「むー、やっぱ羨ましいのらー」

アサギ「…別に。お前にとっては皆、家族なんだろ?」

タマキ「うん! アサギがお兄さんでー、イズルが弟ー」

ケイ「」ナデナデ

タマキ「…やっぱ、お母さん?」クビカシゲ

ケイ「」ムッ

スルガ「だから俺は?」

アンジュ「あの、私も、ですか? それ…」

イズル「ああ、僕たち皆家族さ!」

ワイワイ…

アサギ「…ったく、デカい作戦の前だってのに、何やってんだか」フー

スルガ「んだよ、自分は違いますってか?」

タマキ「アサギ、ノリ悪いー。…そーら!」ピーン!

アサギ「な、何だよ」

タマキ「ふふーん」ジリジリ

ケイ「タマキ?」

タマキ「それー!」コショコショ

アサギ「…っ!? ちょ、何し…」

スルガ「お、おもしろそー、俺も俺も」コショコショ

アサギ「や、やめ……く、あ、はは、ひゃ、あ、はははっははは!!」プルプル

イズル「わぁ…楽しそうだね、お兄ちゃん。……ようし、僕も!」コショコショ

タマキ「それそれー! もっと、笑うのらー!」コショコショ

スルガ「そうだそうだ、緊張で仏頂面なんかすんなよなー」コショコショ

アサギ「き、きんちょ、なんて、ははは、はー! してね…はははははっ!!」ナミダメ

ケイ「…まったく、何をしているんだか」クスッ

アンジュ「…ザンネンですね」ホホエミ




アサギ「は、はは、はぁ…はぁ…」ビクンビクン

イズル「大丈夫? お兄ちゃん」

スルガ「へへ、いっちょ上がり!」

タマキ「…よーっし! 次はケイとアンジュなのらー!」

ケイ「え、ちょ、待ってたま…ひゃっ!?」

タマキ「それそれー!」コショコショ

ケイ「や、たま、ひゃ、ははは、っは、あ、はは、ふふふっ、ひっ!」プルプル

タマキ「んー、ここー? ここがいいのー?」コショコショ

ケイ「――――っ!! だ、ダメぇっ! …あははは!」プルプル

アンジュ「ちょ、す、する…が、さん! ははははは!!」プルプル

スルガ「ほらほら、遠慮しない遠慮しない」コショコショ

イズル「そうだよ、二人とも」コショコショ

ケイ「や、いず、そこ、はぁ…っ!」プルプル

タマキ「ほれほれー!」コショコショ

ケイ・アンジュ「「あははっ、は、ははははは――!!」」




ケイ「はぁ…はぁ……ん、はぁっ…」ビクンビクン

アンジュ「ひ、はは、はぁ…」ビクンビクン

イズル・スルガ・タマキ「いえーい!」パチーン!

タマキ「どー? きんちょーはほぐれたー?」

スルガ「まったく、俺たちに感謝してほしいぜ」フフーン

アサギ「……」スクッ

イズル「…あ、お兄ちゃん」

ガシッ

イズル「へ? お、お兄ちゃん?」

アサギ「ありがとよ、お前ら…今度は俺が緊張をほぐしてやるよ」ニコリ

イズル「え、で、でも、僕は出撃しない、し…」

ケイ「遠慮なんてしなくていいわよ、イズル。私たち、皆一緒なんだから」ニコニコ

アンジュ「そうですよ、イズルさん。スルガさんたちも…ね?」ニコリ

スルガ「お、おう? い、いやー、そうだ、ピットクルーの人たちと訓練いかなきゃ…」ジリジリ

タマキ「あ、あー! 塩辛パワーがちょっと足んないかもー…」ジリジリ

ケイ「逃がさないわよ?」ガシッ

アンジュ「逃がさないですよ?」ガシッ

イズル・スルガ・タマキ「……」カオヲミアワセ

――ギャー! アハハハハハハハ! ヒーッ!

終わり。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン 家族 スルガ君の嫉妬
同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ
では。

別にええやん。
ところでケイの初夜ネタを2回書いた心境の変化を聞きたかったり

どうも。言いたいことは>>312が言ってくれた。
別に誰が同じネタで書こうと関係ないです。どうやっても、まったくの別物になるのですから。
むしろ違いを楽しもうじゃないかと。
では、始めます。

何となく、だけど。
アイツのことが、苦手だった。
遺伝子上の父が同じというだけで、しつこく懐いてくるし。
自分が特別な存在だということを知らないで、無邪気に振る舞っていて。
その全部が、何となく、苦手だった。



スターローズ、と呼ばれる大きな宇宙ステーション。
その中にある軍の拠点の廊下。
俺は一人でそこをすたすたと歩いていた。
両手に抱えているのは、固くロックを施された特殊な運搬用のケース。
周りには誰もいない。
目指すのはある特殊な部屋。

「にーちゃん?」

俺を後ろから呼ぶ声。
俺は振り向かない。

「にーちゃーんっ!」

再度、声がする。今度は音量が大きい。
気付いていない、とでも思ったのか、愚直にも真っ直ぐな態度で追いかけてきているらしい。
仕方なく、振り向いた。

「……何だよ」

冷徹な声、というのを心掛けてあしらうような態度を取る。
アイツは、それを気にもしないで、呑気な笑顔を浮かべていた。

「いっしょにいこー?」

「……」

無垢な瞳が下から射抜いてくる。
アイツは腰の辺りを、きゅ、と小さな両手で強く握り締めていた。
俺は、一つため息を吐いた。
コイツは何も悪くない。だから、コイツにこのもやもやした感情をぶつけたりなどしない。
たった一人の、弟だから。

俺の名前は、アサギ・トシカズ。
そして、俺の後ろをバカみたいに追ってくるこの小さな男の子はヒタチ・イズル。

苗字は違う。しかし、一応イズルと俺は兄弟だ。
遺伝子上の父親が同じで、母親は違う。
そもそも、その父親とさえ苗字は違う。
俺とイズルは特別な存在だから。

俺とイズルは、MJP計画、というある軍事計画の産物だ。
遺伝子の操作によって、より強力な人類を育成する、という計画の。
その先に待つのは、戦場。
ウルガル、とかいう宇宙の侵略者と戦うための。

今は、まだ戦場には向かわない。
一定の年齢になるまでは、養父母の元で育てられることになっているからだ。
ただし、ここが俺とイズルは特別だった。
何せ、その養父母が―――

「ふふ、イズルはアサギが好きなんですね」

「はい! だって、にーちゃんですから」

――遺伝子の提供者なのだから。

目的の部屋に着いた俺とイズルを、その人は穏やかな笑みで迎えてくれた。
テオーリア。
宇宙からの侵略者、ウルガルからの亡命者。
そして――イズルの、遺伝子上の母親。
俺とは関係はない。俺の遺伝子上の母親はまったく別人だ。

そんなことを考えながら、無邪気にテオーリアさんと話すイズルを眺める俺に、彼女は慈しむような笑顔を向けた。
…少しだけ、目を逸らした。イズルと同じで、この人は苦手だった。
俺とは違う遺伝子の持ち主だけど、イズルの母親ではあるから。
どう振る舞おうか、今でも時々迷う。
赤の他人としてか。それとも、養母として割り切って振る舞うか。

「久しぶりですね、アサギ」

「――はい。テオーリアさんもお元気そうで何よりです」

迷っているうちに、話しかけられて。
結局、いつものように他人行儀でいた。
それでも、テオーリアさんは大して気にした様子でもなく、ニコニコと笑顔でいた。

「だにーるさんはどうしたんですか?」

特に何も気にしてなさそうなイズルの声で、テオーリアさんの視線が俺から逸れる。
正直、ありがたかった。

「ああ、彼には用事を任せていまして…ここにはいないんです」

ダニール、というのはテオーリアさんと一緒にこの地球まで亡命してきたウルガルの人間だ。
いつもはテオーリアさんの身の回りの世話をしていて、時にどこかへ出かけている。
それは俺とイズルの父親の所属する機関のことに関係していることらしい。詳しくは知らないが。

…まぁ、そんなことはどうでもいい。
さっさと用事を済ませてしまおう。
俺は手に抱えたケースを、テオーリアさんに差し出す。

「これを、どうぞ」

それを見て、テオーリアさんは目を細めながらしげしげと受け取った。
それだけ重大な何かがあるのだろう。
いつものことだ。

「ありがとう、アサギ」

「それなんなんですか?」

不思議そうにイズルがケースを見上げていた。
そうか、これを渡すのを見るのは初めてだったか。
テオーリアさんは、少し考える素振りを見せると、

「そうですね…私が生きるためのモノですよ」

とだけ、言った。
説明は難しいのだろう。ずいぶんと噛み砕いた答えだった。

「ごはん?」

自分なりの解釈をしたのか、イズルは首を傾げながら言った。
テオーリアさんは特に何も言わず、肯定したように微笑んでいた。

「…それでは、俺たちは行きますので」

淡々とそれだけ言うと、俺はイズルの手を引いた。
わわ、なんて言いながら、イズルは俺の近くにやってきた。
軽く一礼すると、不服そうにしながらも、イズルも俺のマネをしてペコリと礼した。
テオーリアさんはそんな俺たちを見て、やはり笑顔でいた。
そう、まるで、母親のように愛おしげに――

「失礼します」

そこまで考えてから、すぐに俺はイズルの手を取って、部屋を出て行った。
テオーリアさんは、部屋の扉が閉まるまで、俺とイズルを見つめていた。

「――ええ、また今度」

その視線が何だかくすぐったくて。
俺は最後の最後に、目を逸らしていた。




帰り道。
普通の兄弟みたいに手を繋いで歩く俺たち。
そんな俺たちに微笑ましそうな視線を向ける大人たち。
ああ、胃が痛い。

無言で歩く俺。
キョロキョロと何がおもしろいのかニコニコ笑って周りを見渡すイズル。
何ともない。いつものことだ。

「にーちゃん」

「…何だよ」

沈黙を破るイズルの声。
無視するわけにもいかないから、仕方なしに応対する。

「こんどは、おとうさんといっしょにいきたいね」

ぴた、と俺の足が止まった。
おとうさん、という言葉が俺の足を止めた。

「ちょ、にーちゃん?」

急に停止したせいで、前に少しつんのめってしまったらしい。
イズルが不服そうな声を上げた。
それを聞くような精神的な余裕は俺にはなかったが。

「あの人は、忙しいんだ」

冷めた調子で、俺はそれだけ言った。
あの人は、苦手だ。
何を考えているのか分からない。
父親として何かをしてくれるわけでもない。
どうしてあの人が俺とイズルの養父になったのか、今でも分からない。
俺は構わない。せめて、イズルには目に見える愛情を向けてやってほしい。
だって、コイツは俺の――

「…にーちゃん?」

はっ、と思考が遮られる。
気付けば、イズルが不安そうに俺を見上げていた。
…何してんだ、俺は。悩むなら、一人で悩めよ。
余計な心配なんか、かけてどうする。

「ほら、行くぞ」

気を取り直して、俺はイズルの手を改めて握って、歩き出す。
慌てていたせいか、若干乱暴な調子になってしまった。

「わっ、にーちゃん!?」

抗議するようなイズルの声を耳にしながら、俺は歩く。
何も考えたくない。あの人のことも、テオーリアさんのことも。
記憶を消されて、イズル離れてしまうかもしれないことも。
今は、黙って一緒に歩いて。
確かにそこにある、いずれは消える絆と温もりを確かめていたい。
ぎゅ、と手を握る力が強くなった。

終わり。最近はお兄ちゃんばかり。
>>312 二回目? というのは前スレのでいいんですかね?
書いた心境と言われても。
まぁ前書いたのは過程でそういうの入れただけでメインはケイが報われる所で、本番行かなかったし。
今回のはリクエストした人がそういうのお望みかと思ったのと、単純にそこまで行くのをやりたかっただけですし。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン スルガ君の嫉妬
同期たちの評価 なぞなぞ Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ
次はわんわんお先輩の続きとモブ5で。

どうも。今日もやっていきます。

初めて活躍を見たときは、驚いた。
どうしてアイツらのようなザンネンどもが最新鋭の機体に搭乗して、あまつさえ活躍をしているんだ、と。

と思えば、その後は失敗ばかりでやきもきもした。
ザンネンでも活躍できるならしろよ。
ったく、これじゃ俺たちが先を越された意味が分からないだろ。

実際、一度地球に戻ってきたときの先輩たち相手の訓練にはガッカリした。
やっぱり、ザンネン5はザンネン5でしかなかったんだって。

そして、先輩たちとの共同任務。
また失敗かと思えば、先輩たちを出し抜いての大活躍。
…やるじゃん、と思った。
少しだけ、本当に少しだけ。見直した。

そしたら、今度は卒業ときた。
どんどんどんどん、追い抜かれて、置いていかれていることに気付いた。
ついそれが気になって、嫌味みたいなことを言ってしまいもした。
…我ながら、お子様だったと思う。

改めて公開演習が終わってから、やはり嫌味混じりではあったけれど謝っておいた。
その上で、今度は追いついてみせると宣言した。
そうして、きっちりと敬意を以て送り出してやった。
珍しくマジメな顔してやがったのが、妙におかしかったな。
まぁ、俺も人のこと言えないけどさ。

さらに時間は過ぎて。
大きな戦いでアイツらはぐんぐん活躍して。
ますます俺たちの手が届く場所から離れて行った。

そして、今では――






「…しっかし、学園の被害、デカかったんだなぁ」

グランツェーレ都市学園の校舎。
その中で、散らばったガラスを片付けながら、俺はぼやくように呟いた。
つい昨日、この学園はウルガルの侵攻を受けた。
その戦い自体には勝ったけれど、その被害は甚大で、こうして、一日かけての後掃除に取り掛かっていた。

「そりゃな。直接の戦闘だし、あの爆発じゃな」

俺の声を聞き取ったのか、チームの仲間が同調してくれる。
その通りだ、とは思う。
敵と味方の戦いは、かなりの熾烈を極めたらしいことは知っている。
戦場となった学園のラベンダー畑には、キレイなクレーターが生まれていた。
長距離からの特殊光学兵器と爆薬のコンボによるものらしいが、その威力は絶大で、こうして遠く離れた学園にも影響が及んでしまっている。

「当分は授業もなしなんだろ…最悪だな」

もっと訓練をしなくては、アイツらからもっと遠ざかってしまう。
…自主的な訓練しかないのかもな。

「にしても、まさかイズルたちがなぁ…」

仲間の言葉に、つい遠い目をしてしまう。
そうだ。昨日攻めてきた敵を退けたのは、何を隠そうあのザンネン5なんだ。
しかも、見事なチームプレイをしていた。
仲間とは連携なんて全然できないはずの、あのザンネン5が。

「……ザンネン5、か。もうネタにもできねーな」

少しだけ、悔しそうに仲間が呟く。
不思議と若干の寂しさも込められている気がした。
いや、それはきっと俺がそう思っているからなのだろう。
アイツらが、俺たちとは違いすぎるところにいるのが、置いていかれたことが、寂しいんだ。
俺たちだって、十分に戦えるはずなのに。

「ぜってーやってやろうぜ。アイツらだけに活躍なんかさせねー」

「ったりめーだ」

俺が士気を上げるように言うと、仲間は当然のように威勢よく返した。
そうさ、このままむざむざお勉強だけで終わってたまるかってんだよ。

あんな、ザンネンどもに負けてられるかっての。
何より、貸しを作りっぱなしだしな。

――見てろよ。きっちりと出番を取ってやるぜ。

……だから、それまで、死ぬなよな。

終わり。よければ見てる人がいたら感想ください。
やる気につながるのです。次行こう。






「お前がランディ・マクスウェルか?」

翌日のチームメンバーとの顔合わせ。
騒がしい教室の中で、サボり仲間と共にテキトウな会話をしていたランディに向かって、青年が一人話しかけてくる。
ランディにとっては見慣れない浅黒い肌のインド系のその青年は、立ち振る舞いから優等生を絵に描いたような印象を与えた。
実際、優等生であることは聞いているが。

「ラケシュ・チャンドラセカール…だよな?」

とりあえず確認するように言うと、青年――ラケシュは真顔のままにランディに告げた。

「チャンドラでいい。もう一人がいるはずだ、行こう」

「…おう」

促されて、仕方なしに立ち上がる。
話していた連中には何も言わない。
別に、友人でも何でもないのだ。本当に、ただのサボり仲間なだけだ。
気を紛らわすための存在でしかない。

それにしても、とランディは思う。
何故自分のような人間とこの青年が組まされることとなったのだろう。
入学以来、輝かしい訓練成績を上げているこの期待の新人と、問題児の自分。
ランディにはリンが何を思ってこのチーム編成にしたのか理解できなかった。
もう一人のことも含めて。

と、そうやってぼんやりとしているうちに、そのもう一人の元に辿り着いていた。
チャンドラはさっきと同じように周りと話をしている少年に割り込むように声を掛けた。

「君がパトリック・ホイルか?」

「へ? あ、えっと…チャンドラ先輩とランディ先輩、ですよね?」

話しかけられた少年は、急な声に戸惑うようにしながらも、状況を理解したらしく、即座にこちらのことを確認してきた。
もう一人のチームメンバーは、何というか、お坊ちゃんのようなふんわりとした印象の、頼りなさそうな少年だった。
一つ年下らしい、ということは知っているが、それ以外は何も知らなかった。
だが、きっと訓練成績はいいのだろう。
同じ世代たちの中で、自分たちの所属する上位のクラスに唯一入っているのだから。

ますますランディは疑問を抱く。
自分の悪名が下の生徒たちにもきっちり轟いていることは先程のパトリックの発言からも分かっている。
だというのに、この優秀そうな連中の中に自分のような不真面目な人間を放り込むとはどういうつもりなのだろうか。

それに、何よりも不思議なのは――

「それでは、よろしく頼む。ランディ」

「お願いしますね、ランディ先輩」

「……ああ」

自分が、リーダーに任命されていることだった。

一度終わり。次でドーベルは終わる。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン スルガ君の嫉妬
なぞなぞ Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ
では。明日楽しみ。

どうも。公式トップの覚醒レッドさんちょーカッコいい。
次で終わりとは思えない。楽しみである反面寂しいものです。

なぞ? ナゾ? 謎?

戦艦ゴディニオン――チームラビッツの待機所

イズル「」カキカキ

タマキ「…ひまー」グデー

アサギ「またかよ。それしか言うことねぇのか?」

タマキ「らってー、暇なモノは暇なんだもん」

スルガ「ま、分かる気がするけどな。こうも長時間縛られっぱなしだとさ」

ケイ「だからって何かするには時間はないわよ」

タマキ「えー…つまんなーい……」

アサギ・ケイ「「文句言うな(言わない)」」

タマキ「にーちゃんもおかーさんも冷たいのらー」グデー

ケイ「何で私がお母さんなのよ…」

スルガ「いいじゃん。俺なんか何なのかも聞いてないぜ?」

タマキ「ほえ? スルガはー…猫?」キョトン

スルガ「人じゃねーのかよっ!?」

アンジュ「ええっと…私は何なんでしょう?」

イズル「………」カキカキ

イズル(暇、かぁ……)






格納庫

マユ「お疲れーイズルっち」

ダン「今日は珍しくあんまり壊さなかったな」

イズル「そんな、いつも壊すみたいに言わなくても」ハハハ

デガワ「壊さない それはそれで 何だかな」

ダン「最近質が落ちてません? ただでさえあれなのに」

デガワ「そんなこと言うなよ…」

マユ「あはは、まぁまぁ。いつもと変わんないって…たぶん」

デガワ「ひどくないか…?」

イズル「……あの、いいですか?」

ダン「ん? どうした?」

マユ「何か聞きたいことでも?」

イズル「ええと…よければ、少し」

デガワ「何だ? 言ってみろ」






イズル「…で、何かいい方法はないかなぁ、って」

ダン「ふーん…リーダーってのは大変だな」

イズル「いや、そういうつもりじゃなくて…何となく、毎回それじゃあな、と思って」

デガワ「それがリーダーっぽいと思うがな」

マユ「…あ、そうだ」

デガワ「何かあるのか?」

マユ「うん。いーちゃん、後で部屋来なよ。いいモノ貸してあげるからさ」

ダン「いいモノ? 何だよそれ」

マユ「ほら、前に暇つぶしにやったじゃん。あれだよ、あれ」

ダン「ああ、あれか。確かにいいな」

イズル「?」

マユ「まーまー。とりあえず、後でね?」ウインク






数日後――チームラビッツ待機所

タマキ「ひーまー」ハー

ケイ「…いい加減何も言わないわよ」

スルガ「言ってるようなもんじゃん…」

イズル「タマキ、タマキ」チョイチョイ

タマキ「んー? 何ー?」

イズル「通るときには閉まって、通らないときには開いているものってなーんだ?」

タマキ「へ? 何それー?」

スルガ「何だよ急に? なぞなぞか?」

イズル「うん。ピットクルーの人たちに借りたんだ。暇つぶしにはちょうどいい、って」

タマキ「えーっと。通るときに閉まって…そうじゃないときに開く…?」ウーン

ケイ「……まさか分からないの?」

タマキ「ケイは分かるのー?」

スルガ「俺でも分かるぜ?」

タマキ「えー…」

イズル「大丈夫だよタマキ。僕もまだ分かんないから」

スルガ「おめーは出題者だろ!?」

ケイ「問題を出す側が分からないんじゃ意味ないじゃない…」

イズル「あ、そっか」

タマキ「うー…分かんないのらー」ギーブ

ケイ「正解は『踏切』よ。たぶん」

イズル「えっと…あ、合ってる」ペラペラ

タマキ「何でー? って、あ、そっかぁ」

スルガ「電車が通るときに開いてたら危ねーし、通らないときに閉まってたら邪魔だしな」

スルガ「もっと言うと、そういう機構はこの俺の持っている…」カチャ

タマキ「はいはい。もうそれはいいのらー」

スルガ「……」

タマキ「ねね、イズル、なぞなぞもっとやりたいのらー」

ケイ「…イズル、それは私に貸して」

イズル「へ?」

ケイ「だって、あなた正解かどうかの判断できなかったじゃない」

イズル「…うーん。それを言われるとなぁ…まぁ、僕も答える側やりたいし、いいよ」ハイ

ケイ「…それじゃあ。次の問題に行きましょう」

タマキ「ばっちこーい!」

イズル「こーい!」

スルガ「…俺はいいわ」




イズル「いい加減分かったよ。答えは『ジンジャーエール』だよ!」

タマキ「同じく!」

ケイ「…本当に?」

イズル「ほ、本当に!」

タマキ「ほんとーに!」

ケイ「ようやく正解ね」フー

イズル・タマキ「「やった!」」パチン

スルガ「ここまでで五十二問か…思ったよりかは短かったな」

ケイ「そうね。もっとかかるかと思っていたけど…」

タマキ「あー、ひどいのらー!」

イズル「そうだよ。ケイたちは僕らをバカにしすぎだよ!」

スルガ「よく言うよ。さっきの『一枚じゃなくてたくさん切らなきゃ使えない紙は?』ってのも分からなかったじゃん」

タマキ「あれはなしなのら! 『トランプ』なんて誰も思いつかないもん!」

ケイ「…はいはい。まだやるの?」

タマキ「とーぜん! あたしまだ一問しか正解してないし!」

イズル「僕もだよ!」

ケイ「じゃあ――」

シュッ

アサギ「遅くなったな。整備の手伝いで少しな…」

アンジュ「私も…」

スルガ「お、強そうなのが来たな」

アサギ「何がだよ?」

ケイ「なぞなぞよ。イズルが暇つぶしにって持ってきたの」

イズル「お兄ちゃんとアンジュもどう?」

アンジュ「なぞなぞ、ですか」

アサギ「そのお兄ちゃんはやめろって。…なぞなぞか。まぁいいかもな」

ケイ「正直あなたたち相手なら問題のレベルを上げたいところだけれど」

イズル「あ、じゃあ僕とタマキはやめるよ。疲れたし」

タマキ「んー、確かにーいっぱい頭使って疲れたのらー」

スルガ「そんな大した量でもねーだろ、使った頭は」

タマキ「むー」

アサギ「ったく。さ、始めてくれ、ケイ」

アンジュ「ええと…できる限り、やらせていただきます」

ケイ「それじゃあ、始めましょう」






ケイ「ある数にふたをかぶせると三分の四になってしまいます。その数とは?」

アサギ・アンジュ「「八」」

スルガ「早っ! 即答かよ…」

イズル「え? どういうこと?」

ケイ「漢数字の八があるでしょう? それにちょうどふたをかぶせるようにするの」

タマキ「うんうん」

ケイ「それを書いて表すと、こうね」カキカキ

イズル「あ、『六』だ!」

スルガ「んでもって、『八』の三分の四は『六』。だから正解ってことだ」

イズル「すごいよ、お兄ちゃん! アンジュ!」キラキラ

タマキ「すごいのらー!」キラキラ

アサギ「…別に。そんなすごくなんかねぇよ」メソラシ

アンジュ「そ、それほど、でも…」ボソボソ

イズル「いつか僕もこれぐらいの問題できるようになるよ!」ガッツ

タマキ「なるのらー!」

ケイ「それなら、まずは練習からね」

アサギ「ま、何度もやってりゃいつかはできるんじゃないか」

ケイ「これからはずっとやるの?」

イズル・タマキ「「もちろん!」」

アンジュ「す、すごい熱心ですね…」

スルガ「当てられたんだろ。単純っつーか何つーか」

イズル「頑張ろう、タマキ!」

タマキ「頑張ろう、イズル!」



その後、なぞなぞ大会はイズルの思った以上に続きました。
その盛り上がりは大人たちも巻き込み、ゴディニオンに新たなブームを生み出したとか。

終わり。意味はない。このスレはいつまで続くものでしょうか。とりあえずここは埋めますが。
残ったネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン スルガ君の嫉妬
Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ 座談会@冥府
では、最終回まで、残り四日。

どうも。今日も一つやっていきたいと思います。

ガッカリラジオ@冥府

木星間

ランディ「ゴチャゴチャ言うなッ! いいから行けッ!」ゴウッ

チャンドラ「――!」ガチャガチャ!

ドドドドッ! チュドーン!

ランディ「…弾切れか……」

チャンドラ「動いた…!」

ランディ「行け!」

チャンドラ「――ッ、すまん!」

ランディ「…っ」フッ

チャンドラ「ランディ!」

ランディ「その情報には全地球の命が掛かっているんだ…いいから行け……」

チャンドラ「ランディ!!」

ランディ「そうだ……新作ビデオを…受け取っておいてくれ………チャンドラ」

ランディ「」ニヤリ

チュドーン!

チャンドラ「ランディッ!」

チャンドラ「何だよ…最期まで、ガッカリじゃないか……」






???

ランディ(……死ぬってのは、痛みも無い、のか? いや、ん?)

ランディ「動ける…」ヨット

ランディ「どこだ、ここ…?」キョロキョロ

ランディ(開けたところだ。…光源も見当たらないのに、不思議と明るい…)

ランディ「俺は死んで…ライノスは?」

???「あ、先輩!」

ランディ「!? お、お前…」

パトリック「よかった。先輩がいましたか」

ランディ「おま、何で…」

パトリック「? 何がですか?」

ランディ「何が、じゃねぇだろ! お前、もう…」

パトリック「チャンドラ先輩はいないんですか?
      もう、急に光るわ、感覚が鈍るわで何が起きたのかさっぱりで…ここ、ゴディニオンですか?」

ランディ「……っ」

ランディ(ああ、なるほど。そういうことかよ…)

ランディ「…パトリック、落ち着いて聞け」

パトリック「?」

ランディ「――俺たちは、もう死んだんだ」

パトリック「――え?」






パトリック「そう、ですか。僕は敵の一撃で…」

ランディ「ああ。きっと気付かなかったんだろうな」

パトリック「……はは、僕はバカだな。何で気付かなかったんでしょうね? まったく…」ウツムキ

ランディ「パトリック…」

パトリック「はぁ。我ながらガッカリ、です。せっかく、色々と用意したっていうのに…」

パトリック「――せめて、渡したかったですよ、タマキちゃんに」ニコリ

ランディ「大丈夫だ。きっと、チャンドラのヤツが渡してくれるさ」

ランディ「だから、気にするな」

パトリック「…そう、ですね。チャンドラ先輩なら…ですよね」

ランディ「おう」

パトリック「とりあえず、座りましょうか。のんびりとお話でもしましょうよ」

ランディ「ああ。時間はたっぷりあるからな。…死んだ人間が言うことじゃねぇけど」フッ






パトリック「しかし…ここ、どこなんでしょうね?」

ランディ「そりゃあ…あれだろ? いわゆる『あの世』ってヤツじゃねぇのか?」

パトリック「ずいぶんとイメージと違うなぁ…何でもあるものだと思ってましたから」

ランディ「そうか? むしろ俺はそれっぽいと思うぜ? 何か、安心するしよ」

パトリック「言われてみると…何だか、ホッとしますね」

ランディ「まぁ、でも、こうやって座ってるだけなのも退屈だな」

パトリック「…チャンドラ先輩、どうなったんでしょうか?」

パッ

ランディ「何だ!?」バッ

パトリック「先輩、足元です!」

ランディ「これは、映像か…?」

チャンドラ『……』

ランディ「チャンドラ!?」

パトリック「これ…スターローズですよね」

ランディ「…ああ。あれ、俺たちの棺みてぇだな」

パトリック「……あ、本当、だ」

ランディ「ヘンな話だな。自分の葬儀を見るとは…」

パトリック「そうですね…不思議です」

チャンドラ『』ヒョイ

パトリック「あ、あれ…僕の……」

ランディ「どうやら、持って行ってくれるらしいな」

パトリック「…ありがとうございます、チャンドラ先輩」






タマキ『美味しい…すっごく美味しい!』

パトリック「……」ホッ

ランディ「…よかったな。喜んでんじゃねぇか」

パトリック「そう、ですね…嬉しいです、あんなに喜んでもらえて」

ランディ「チャンドラに礼でも言っとけよ、今度会ったらな」

パトリック「今度、かぁ。いつになりますかね、それ」

ランディ「さぁな。アイツが戦死するのも早いかもな?」

パトリック「先輩」

ランディ「分かってるよ。冗談さ」

ランディ「…個人的には、このまま会わないでさよならでもいいけどな」

パトリック「そう、ですか。僕も、その方がいいです。チャンドラ先輩までここに来る必要ないですし」

ランディ「だろ?」ニッ






シモン『スターローズ、発進!』

ランディ「…どうやら、最後の戦いに行くみてぇだな」

パトリック「タマキちゃん…皆、頑張って」

ランディ(…無理すんなよ、アンジュ、タマキ、スルガ、アサギ、ケイ、イズル)

???「!?@&$#!?」

パトリック「ん? 何の声でしょうか?」

ランディ「さぁ。俺たち死んでるからな。何が来ても関係ないだろ」

パトリック「それもそうですかね…」

???「」ザッ

???「」ザッ

パトリック「子供…?」

ランディ「とおっさん…?」

???「!?&%&?!」

???「?@*&%&!」

ランディ「何言ってんだ?」

パトリック「さぁ…?」

クレイン「%$#?!――前たち、聞いているのか!」

ラダ「ちょっと、言葉も話せないの!」

パトリック「あ、分かった」

ランディ「何だ、話せるなら話せよ」

クレイン「ふざけるな! お前たちこそ、話せたならさっさと話せ!」

ラダ「そうよ! 訳の分からない言葉なんか話して!」キー!

ランディ「いやはや、そんなこと言われてもな…」

パトリック「僕はパトリック。こっちの人はランディ。あなたたちは?」

ランディ「おいパトリック」

パトリック「いいじゃないですか。同じ死人ですよ」

ランディ「…ま、それもそうか」

クレイン「……クレインだ」

ラダ「…ラダよ」






ランディ「じゃあ、お前らウルガルの将軍的なモンなんだな」

クレイン「ウルガルではない。マナーバだ」

パトリック「どっちでもいいですけどね…でも、奇妙な縁ですねぇ」

ラダ「ふん。低レベルなチキュウジンどもと同じ場所に来るなんて、屈辱だわ」

クレイン「ふ、戦いもせずジアート様に叩き落された雑魚が言うことか?」

ラダ「何ですって!?」キー!

ランディ「はいはい。死人は死人。何であれ同じだっての」フー

クレイン・ラダ「「同じじゃない(わよ)!」」

パトリック「結構、波長合ってるじゃないですか…」

ランディ「あれだろ? ケンカするほどってヤツだ」ウンウン

クレイン「意味は分からないがとてもムカつくぞ…」

ラダ「まったくね…」






タマキ『ふぇーん! あっちもこっちもウルガルだらけーっ!』

ランディ「チッ、運がねぇな」

パトリック「これほどの数だなんて…」

クレイン「アイツらは…」ギリギリ

ラダ「ふん。勝てるはずもないのに、元気なものね」

ランディ「いいや、アイツらは勝つさ」

ラダ「何を根拠に言うわけ? 無理よ、むーり!」

クレイン「……」

タマキ『アイツがいる……! パトリックさんを墜としたヤツ………っ!』

パトリック「ダメだ、タマキちゃん! 無理をしちゃ…!」

タマキ『うわああああああっ!!』

パトリック「……っ! ……頑張れ…!」






ルティエル『…あまり、美しいとは言えないわね』フッ

ラダ「そんな…ルティエルが撃墜されるなんて…」

クレイン「…チッ、やはり、ヤツらは………」

ランディ「な? アイツらは強いのさ」

パトリック「タマキちゃん…無事で、よかった」

ランディ「おいおい、違うだろ。この場合は?」

パトリック「…ありがとう、タマキちゃん」

ラダ「…ふ、ふん。ホント、意味分からないわね、チキュウジンどもは」

クレイン「まったくだ…全然理解できない」

クレイン(でも、それが分かれば…今度こそは。……ありえないこと、か)

ランディ「そうだ、こうなると次は…」

???「あらあら。負け犬たちが何を集まっているのかしら?」

ランディ「…やっぱり」



その後、更なる追加メンバーたちによって、ウルガルと地球の思わぬ交友は意外にも盛り上がりを見せるのでした。

終わり。本編終わり次第これも続きを書く。
それはそうと何故農協とコラボするのか。かわいいけど。ぶどう生では食えないのに。
まぁ、タルトとかコンポートとかケーキとかにするけど。
ネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン スルガ君の嫉妬 二人のイズルの冬コミ
Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ チャンドラの結婚式
初夜続き わんわんお先輩続き にーちゃん続き 座談会続き
では、放送終了まで残り二日。

どうも。ついにこの日がやってまいりました。
最終回前に、一つやりたいと思います。

別れとは不思議なモノで、案外それ自体には大きな痛みがない。
それをあっさりと受け入れる、というわけでもないけれど、その先のことを考える余裕がある。
そんな感覚を、私は二回経験した。
初めては、先輩のチーム。
そして、二回目は――

「――ケイ」

地球。グランツェーレ都市学園、MJP所属の病院施設。
その中のある病室に向かって一人で廊下を歩く私を、誰かが後ろから呼び止めた。
誰かなんて分かっている。アサギだ。

振り返った先に、アサギはいた。
最初に会った頃とは違い、神経質そうな部分のあった表情は、すっかりと穏やかなモノになっていた。

「何?」

彼が何を言うのかは分かっているのに、私はわざわざ用事を聞いた。
無意識に、私は一人で行動したいと思っていたらしい。
だから、少し棘のある言い方になってしまった。
彼はそんな私の考えなどお見通しなのか、わずかに苦笑して、

「アイツのところに行くんだろ?」

俺も行くよ、とだけ彼は加えて私の前を歩き出した。
何も返せないまま、その背中を私はただ見つめていた。
大きい背中だ、と思う。
そこに背負っているモノの数は、少ないけれど。
きっと、それら自体は重たいのだろう。
少なくとも私だったら、アサギの背中のモノは何よりも重いと感じるだろう。




無言のままでいた私たちは、すぐに目的の部屋に着いた。
周りには何の部屋も無い、本当に特別な部屋。

アサギよりも先に立って、扉にノックをしようとする。
するけど、振り上げた右手が下ろされることもなく、ただぶらぶらと宙を舞う。
そこに入りたいと思っているはずなのに、私の身体はそれをしたがらずにいる。
もうここに来るのは数えきれないほどなのに、私はまだ抵抗を覚えている。

いや、違う。抵抗とは別だ。
たぶん、これは期待なんだろう。
今この扉を開けば、全てが夢のようになり、『彼』にまた会えるんじゃないか、と。
物語のオチとしては最悪だけれど、これは現実なんだ。
その方がよっぽど嬉しいに決まっている。
笑って、済ませられる。
もちろん、そんなことはないと知っているから、手が動こうとしない。

「…さ、入ろうぜ」

いつまでも止まっていられるはずもなく、アサギが行動した。
彼は呆然とするように停止する私よりも前へと出て、扉に手を掛ける。
そして。私が何かを思うよりも早く。
開けたいようで開けられなかった扉は、開かれた。

入った病室は、真っ白で清潔感に溢れている。
逆に言えば、そこは何もないような虚無感に包まれてもいる。
開かれた窓からは暖かな陽が差し込んでいる。
そしてその広い空間の中に置かれた大きなベッドの中。
そこで、『あの子』は起き上がって、陽の当たる部屋の中でスケッチブックに向かっていた。
彼はすぐに訪問者である私たちに気付いたらしく、明るい笑顔で迎えてくれた。

「あ、アサギお兄ちゃん」

「…よう」

遺伝子上の弟に向かって、アサギは少し照れた様子で笑いかけた。
入院患者である彼は兄の訪問を実に喜ばしそうに満面の笑みでいた。
微笑ましい光景に違いない、と思う。

ああ、本当に。
『この子』が、『彼』だったら。
そんな、意味のないことを私は一瞬だけ思った。
しかし、その思考もすぐに失せる。
『この子』が私を戻してくれるから。

「――ケイお姉ちゃんも、いらっしゃい」

ニコリ、と彼は微笑んでくれた。
その太陽にも負けない笑顔こそが、私にとっての痛みになるのに。
ああ、本当に。
こんな気持ちを抱くくらいだったら、ほんの小さな希望なんて残してくれなかったらよかったのに。
神様がいるなら、その人(人と呼ぶのは間違っているけれど)は理不尽な人に違いない。

「…ええ」

それでも、私は微笑み返した。
私の気持ちと、『この子』は関係なかった。
私にとって、『この子』は守るべき人だから。

『彼』は――ヒタチ・イズルは、もういない。
ここにいるのは、また違う人だ。






あの、ジアートとの戦い。
イズルは帰ってきた。
機体をボロボロにしても、なお、しっかりと帰ってきた。
でも、その身体には私の愛した少年とは違う、別の人格が生まれていた。
いや、実際のところ、イズルの人格が消えてしまっただけ、ということらしい。
アッシュの副作用だ、と医者や技術者たちは言っていた。
ディスクの上書きのようなモノだ、とも。

つまり。私の知るヒタチ・イズル、という人格はリセットをされた、ということらしい。

それを艦長から知らされたとき、私も皆も、ただ呆然としていた。
イズル自体は、ずっと入院をすることになり、私たちは誰も当分の間会うことはできなかった。
その間、私たちは戦後の処理を手伝って過ごしていた。

実感もする時間もなかった。
泣いてしまうんじゃないか、と思っていたのに、そんなこともなかった。
イズルが消えた、と言われても本人に会うこともできないでいると、まったく現実味を感じられない。

そして、最近になって。
ようやく、私たちはイズルに会うことができた。




『よう、元気そうだな』

『あ、アサギお兄ちゃん』

『よっ』

『あ、スルガお兄ちゃん』

『へ?』

『何言ってるのらー?』

『イズルさん…?』

『どうかした、タマキお姉ちゃん? アンジュお姉ちゃん?』

『…ありなのらー』

『え、えっと…』



新たに生まれたイズルの人格は、少しだけ幼かった。
アサギや私だけではなく、スルガやタマキ、アンジュのことも兄や妹、姉として呼ぶ。
イズルにそんな風に呼ばれるとは思ってもいなかったので、皆くすぐったく感じるらしく、最初のうちは戸惑っていた。

でも、その戸惑いもちょっとの間だけ。
イズルだから、と皆してそれを受け入れてしまっていた。
おそらく、そうできたのは、イズルはどうあっても変わらないことを知って、今となっては生きていることを喜んでいるからだろう。
私は――どうだろうか。

私は、少し違うらしかった。
記憶も人格の根っこの部分も変わらないと知ったのに。
不思議な喪失感に、私は襲われていた。

最初のうちは、その正体には気付くことができなかった。
少しずつ、イズルの病室に通っているうちに、気付くこととなった。

ある日、私が付き添いで外へと出ていたときのこと。
私とイズルは、学園を離れた街中をのんびりと歩いていた。
マンガのネタが欲しい、という彼の要望に沿ってのことだ。
こういうところも含めて変わらないから、皆安心しているんだろう。

『ケイお姉ちゃん』

『何かしら?』

ふと、隣を歩いている私に向かって、イズルが声を掛ける。
そちらの方を見れば、彼は相変わらずの無垢な笑顔を見せていた。
それを見ると、ついつられて笑ってしまう。

『いつもありがとう。お姉ちゃんのこと、大好きだよ』

何気ない調子で、彼はそう言った。
彼らしい、素直な感謝の言葉。
本当にあっさりとそんなこと言うんだから――

『…そう。私もよ。あなたのこと、だ……』

言いかけた私の唇の動きが止まった。
私は、今自然に何を言おうとした?
あんなに言えなかったあの言葉を、あっさりと言いかけていた。

どうして?
言葉を止めた私を不思議そうにイズルが見ていたけれど、それを気にする余裕はなかった。

私は自分の胸に手を当ててみた。
いつもだったら、『彼』といたときなら、あんなにも跳ねていた心臓は、普段通りに動いていた。
好き。『彼』に言われたら、きっと無様な姿を晒すと思っていたあの言葉に、私は何の緊張も抱いていない。
それどころか、ごく自然な調子で同じ言葉を返しかけていた。
それは、まるで、そう。私をお母さんと呼んだタマキに対する気持ちにも似た――

――ああ、そうか。と思った。
あの日々にあったドキドキとした感覚は、『彼』といたから抱けたんだ。
私の愛したヒタチ・イズルは『彼』一人だからなんだ、と唐突に理解した。






「じゃあ、俺はもう行くから」

しばらく三人で話しているうちに、アサギが席を立った。
彼も忙しい。チームラビッツの現在の代表として、彼には多くの予定がある。

「またね、お兄ちゃん」

「またね、アサギ」

無邪気に大きく手を振るイズルに合わせて、私も小さく手を振った。
アサギは、それに対してやっぱり照れた様子で手を一回だけ軽く振って、すぐに部屋を去った。

「……」

「……」

一人いなくなっただけで、真っ白な部屋は何もかもがなくなったように静かになった。
ただ、シュッ、シュッ…とイズルのペンが走る音だけが心地良く響く。
私はその音を聞きながら、頑張ってマンガを描くイズルを見守る。
何だか、こうしていると弟の面倒を見る姉のようだ、と思う。

と、そうして過ごしていると、イズルが急にその手を止めた。
どうしたの? と聞く前に彼は思いついたようにポツリと呟いた。

「アサギお兄ちゃん、忙しいんだね」

「…そうね」

とりあえず相槌を打つ。
イズルの代わりに彼が連日行動していることは事実には違いない。
肯定する私の声に、イズルは少しだけ沈んだように見えた。

「お兄ちゃん、迷惑じゃないかな?」

「え?」

思わぬ言葉に、私は驚きの声を上げる。
いつもの彼らしくもない、しおらしい調子だった。
イズルはそんな私の声に答えるように続けた。

「ただでさえ忙しいのに、僕が、いるから」

ああ、そういうことか、と私は辛そうにするイズルの考えを理解する。
チームの代理リーダーとして、激務をこなすアサギ。
その疲れは他のチームのメンバーの比ではないだろう。

そこに、イズルの存在。
たった一人の弟の変化。さらに、本人には教えていないけれど、まだ治る見込みのない病状。
確かに、アサギの心労はきっと計り知れない。かもしれない。

でも、そんなこと。
私はすぐにイズルの気持ちへの答えが思い浮かんだ。
アサギの気持ちが完全に分かるわけじゃないけれど。
少なくとも、アサギがこうして時々イズルのところに来る理由は分かるから。
だから、私は行動する。

「ケイ、お姉ちゃん?」

私の突然の行動に、イズルは驚くような声を上げた。
それはそうだろう。
急に抱き締められて、頭を撫でられたんだから。

普段、タマキにするみたいに私は安心させるようにイズルの身体を抱き締めた。
頭を撫でてみれば、少し固めの髪がくしゃくしゃした感触をくれた。

「…そんなこと、ないわよ。イズルは、弟なんだから」

アサギにとって、たった一人の家族。
大切な人。守りたい人。
アサギが予定の間を縫って、何度も足繁くイズルのところに通うのだって、癒されたいからだろう。
どんなに忙しくても、疲れても。
家族に会えれば、そんなモノは吹き飛ぶから。

ところで、私は、弟とはいっても、私の、とは言わなかった。
それを言うと、やはり『彼』を想ってしまうから。
まだ、完全に気持ちの整理はついていないんだな、と思う。
もう、抱き締めることに何も思わなくなったのに。

「…あったかいね」

耳元で、イズルの声がした。
ホッ、と一息吐くような声色だった。
それから、ぎゅ、と私を抱き締め返してくれる。

「あなたも、ね」

言いながら、私は瞳を閉じて、さらに背中に回した手の力を強くした。
この温もりを、すぐには手放したくなかったから。
家族のように、愛おしい、と思ったから。

どうやっても、『彼』は戻らない。そのことは構わない、と思った。
『この子』を守る。この先、何があっても。
『彼』が私を守ってくれたように。
絶対に、私が守ってみせる。

終わり。こうやって最終回の嫌な予感を潰していく。某参謀長官のように。
では、最終回の後にまた来ます。最終回を見て思ったネタなんかありましたらお願いします。
可能な限りそれで早く書くんで。では、一挙見てきます。

どうも。最終回すばらしかったです。
四年かけてもいいから二期をやっていただきたい。
では、一つやります。

心は一つじゃない

『――では、次のニュースです。GDFからの公式発表によると、
 数年前から度々地球へと侵攻してきた外宇宙からの侵略者たち、
 ウルガルとの戦いは、この度の地球上の全ての戦力の結集の結果、敵の完全なる撤退という形で収束を迎えました』

『――今回の戦闘での損害は予想を遥かに上回るモノとして、GDFに対してのデモの動きは熾烈さを極めているそうです』

『――この戦争の勝利への一番の立役者は、やはりMJPといえるでしょう』

『MJPの方では、我らが英雄、チームラビッツの他、グランツェーレ都市学園の士官候補生たちによる活躍がありました』

『今後、各国の政府はMJP機関の士官候補生たちへ勲章授与をするほか、
 グランツェーレ都市学園への視察や留学生の派遣などを発表しており――』

プツン!

イズル「あ」

アサギ「テレビは見るなって言ったろ?」

イズル「でも、暇だから」

スルガ「ったく、しょうがねーヤツだな」

イズル「あ、スルガも」

アサギ「…調子はどうだ?」

イズル「えっと、怪我はもう治ってきてるって。その、身体の方は――」

スルガ「もう艦長から聞いたよ。これから研究していくんだってな」

イズル「うん…。当分は外には出られない、って」

アサギ「そうか。まぁ、ゆっくりとしてろよ。マンガでも描いてよ」

スルガ「そーそー、あのつまんねーのな」

イズル「そんな風に言わなくてもいいじゃないか…」

アサギ「別に気にすることないだろ。あれがお前らしさってヤツだ」

イズル「お兄ちゃんまで、ひどいや」

アサギ「だから、それは止めろって…」

スルガ「くく、いいじゃん。お兄ちゃん」ニヤニヤ

アサギ「お前まで言うなよ…」

イズル「ちょっとスルガ、お兄ちゃんは僕のお兄ちゃんなんだからね?」ギュー

アサギ「ちょ、腕に抱き付くな、気色悪い」

イズル「えー…」

ハハハハハハ……

スルガ「…はーあぁ。なーんか、心配する必要なかったな」

アサギ「そうだな。いつも通りだったからな」

イズル「あはは、何それ」

スルガ「別に。ザンネンリーダーはザンネンリーダーだったってことだ、よっと」

イズル「あれ? 二人とも、もう行くの?」

アサギ「おう。これから学園に来る視察やら留学生やら迎えに行かなきゃならねぇんだ」

スルガ「さっきもテレビでやってたろ?」

イズル「そっかぁ…。忙しくなるんだね?」ウツムキ

アサギ「…一生会えないってわけじゃないんだ。そうガッカリすんなよ」ポン

イズル「あ…」

スルガ「そーそー、じゃな! 今度はミリタリーで描けよ?」

アサギ「じゃあな。大人しくしてろよ」

イズル「うん、じゃあね、二人とも」






コンコン

イズル「はい?」

タマキ「イズルー! 元気してたー?」ガチャ

アンジュ「こんにちは、イズルさん」

イズル「タマキ、アンジュ。いらっしゃい」

タマキ「んふふー、元気そーじゃん?」

イズル「まぁね。そういつまでもダウンしてられないよ。マンガ描いてたいし」

アンジュ「また、ですか?」

イズル「うん。今度完成したら、感想聞かせてよ、アンジュ」

アンジュ「それは構いませんが…また私ひどいことを言うかも……」

イズル「大丈夫。アンジュ、すっごく的確なアドバイスくれるからさ、頼もしいんだ」

アンジュ「そう、ですか?」

イズル「うん。そうだよ」

タマキ「アンジュは頼りになるのらー。さっきもー、インタビューで困ってたあたしのフォローしてくれたしー」ギュー

アンジュ「ちょ、タマキさん。抱き付かないでください…」

イズル「あはは…っと、タマキは、どうなの? 調子」

タマキ「んー、元気爆発ーって感じ? いつも通りー、塩辛食べてー」

アンジュ「相変わらず告白しては撃沈ですね」

タマキ「ちょ、アンジューっ!」

イズル「あはは…そっか、相変わらずなんだね」

タマキ「ひどくない!? …いつまでも、うじうじ悩むのよくない、って思ってるだけだもん」

イズル「タマキ…」

アンジュ「タマキさん…」

タマキ「…でね、今度こそダニール様に告白しようと思っているんだけどー」

イズル「タマキ…」ハァ

アンジュ「タマキさん…」ザンネン




アンジュ「いいですか、タマキさん。
     そもそも会ってまだそこまで時間も経過していない相手に対して恋愛関係を結ぶというのがありえないんですよ。
     何かちゃんと積み重ねてこそ、初めて人と人はそういった関係にまで発展する前段階にですね…」

タマキ「うー……でもー、もたもたしてたらー………」

イズル「タマキ。ダニールさんって五十年も前からああなんだよ? それならそんなに慌てなくてもいいんじゃないの?」

タマキ「あ…そっかー」

アンジュ「タマキさん。イズルさんの言う通りですよ。まずはダニールさんのことを知るところから始めないと、告白も何もないんです」

タマキ「そっかー! 何であたしそんなことに気付かなかったんだろー!」

アンジュ「分かってもらえましたか?」

タマキ「うんうん! すっごく分かったのらー! ありがとー、アンジュ! イズルー!」ギュー

イズル「わ、タマキ、苦しいから…」

アンジュ「た、タマキさん…」

タマキ「よーしっ! そーとなったら行動開始なのらーっ! じゃね、イズル! また後でねー!」タタタ…

アンジュ「ちょっと、タマキさん! ああ、行ってしまいましたね…」

イズル「やる気あっていいよね」

アンジュ「そういう問題でしょうか? …ええと、それじゃあ、私も行きますね。見失うといけないので」

イズル「うん。お見舞いありがとうね、アンジュ。タマキにもよろしく言っておいて」

アンジュ「はい、それでは」ニコリ

イズル「うん、またね」ニコリ

ガチャ

イズル「…後輩だったのに、ずいぶんと頼りになっちゃったなぁ…ホント」






イズル「……」カキカキ

イズル「」ヒョイ

イズル「」ジー…

イズル「」ウンウン

コンコン

イズル「はい?」

ガチャ

ダニール「…失礼します」

イズル「あ、ダニールさん」

ダニール「お身体の方は大丈夫ですか?」

イズル「ええと、問題ない、そうです」

ダニール「そうですか…テオーリア様とシモン様がご面会を、と言っておられますが…よろしいですか?」

イズル「…はい、大丈夫です」

ダニール「そうですか、それでは…」クイ

ガチャ

テオーリア「久しぶりですね、イズル」ニコリ

シモン「……」

イズル「はい、お久しぶりです、テオーリアさん、シモン司令」

ダニール「…では、私は失礼します」

ガチャ

イズル「……」

テオーリア「……」

シモン「……まず、私の用事からでよろしいでしょうか」

テオーリア「ええ、どうぞ」

シモン「ヒタチ・イズル。この度の戦い、見事な活躍だった」

イズル「あ、ありがとうございます」

シモン「お前の身体については、こちらもこれからも全力でサポートをする。問題があれば言うように」

イズル「は、はい」

シモン「…それでは、私はこれで失礼します、テオーリア様」

テオーリア「…いいんですか」

シモン「ええ。それでは――」

イズル「あの、いいですか」

シモン「何だ?」

イズル「アサギお兄ちゃんから、聞きました。あの、司令が僕の――」

シモン「それは遺伝子上の話だ。私には家族はいない」

イズル「…そう、ですか」

シモン「…話はいいか? では――」クル

シモン「」ガチャ

イズル「だとしても!」

シモン「」ピタッ

イズル「だとしても、その、司令がいなかったら、僕はここにいられなかった。仲間や大切な人に出会えなかった」

シモン「……」

イズル「――だから、ありがとうございました。お父さん」

シモン「……」

ガチャ

イズル「……」

テオーリア「ふふっ、彼は昔からああいう人です。気にしなくてもいいですよ、イズル」

イズル「そう、なんですか?」

テオーリア「ええ。そういうところは、アサギが似ているのかもしれませんね」

イズル「あはは、何だか、分かります」

イズル「…あの、テオーリアさん」

テオーリア「はい?」

イズル「その、僕、お父さんのことも……お母さんのことも、知りました」

テオーリア「…そうですか」

イズル「親の顔も知らない、ってずっと思っていたけれど…僕は、知っていたんですね」

テオーリア「ごめんなさい、イズル。ずっと、ずっと、私はあなたにそのことを教えていなかった」

イズル「いいんです、そんなの。テオーリアさんにも、理由はあるし」

イズル「むしろ、嬉しかったんです」

テオーリア「え?」

イズル「僕が守りたいと思った人は、僕にとって、大事な家族だった。…それを知ることができて、嬉しかったんです」

イズル「最初から知っていたら、きっとそんな感情は抱いてなかったでしょうから、えっと…得した気分です」ポリポリ

テオーリア「……」

イズル「テオーリアさん?」

テオーリア「――ふふ、イズル。あなたは本当に不思議な子です」

イズル「あはは、よく言われます」

テオーリア「でも、その不思議さが、皆を救う。あなたは、本当にヒーローだったんですね」

イズル「! ヒーロー、ですか?」パァ

テオーリア「ええ。掛け値なしに、あなたは私のヒーロー…いえ、皆のヒーローですよ?」

イズル「…そっか。ヒーロー…か」

テオーリア「」ニコリ

イズル「」ニコリ

テオーリア「…さて、一度私も戻らなくてはなりません」

イズル「あ……」

テオーリア「安心してください、イズル。時間はありますから」

イズル「そう、ですよね。これからも、ありますよね」

テオーリア「ええ。今度、ゆっくりと、アサギや他のお友達も一緒に、お話しましょう?」

イズル「――はい! きっとですよ?」

テオーリア「はい。何なら、指切りでもしますか?」

イズル「ええ、ぜひとも」

テオーリア「」キュ

イズル「」キュ

イズル・テオーリア「「指切りげんまん♪ 嘘吐いたらハリセンボン飲ーます♪」」

イズル・テオーリア「「――ゆーび切っ、た!!」」

テオーリア「それじゃあ、また会いましょう、イズル」

イズル「……」

テオーリア「? イズル?」

イズル「…また会いましょう――お母さん!」

テオーリア「――! ……ええ、絶対に」ホホエミ






イズル「」カキカキ

コンコン

イズル「はい、どうぞ?」

ケイ「」ガチャ

イズル「あ……」

ケイ「…久しぶり」

イズル「うん、久しぶり」

ケイ「アサギたちから聞いてるわ。…元気そうね?」

イズル「うん、少しだけ退屈だけど、色んな人がお見舞いに来てくれるからね」

ケイ「そう…」

イズル「……」

ケイ「……」

イズル・ケイ「「あの」」

イズル・ケイ「「……あ」」

ケイ「…イズル、何?」

イズル「ケイからでいいよ。何?」

ケイ「……あの、ありがとう」

イズル「え? 何が?」

ケイ「あのとき。ジアートから、その、守ってくれた」

ケイ「……また、守られちゃったわね」

イズル「……そっか…」

ケイ「……うん」

イズル「えっと…僕こそ、ありがとう」

ケイ「え?」

イズル「ケイが、あのとき呼び掛けてくれなかったら、きっと僕はここにはいなかった」

イズル「ケイの声が、僕に『生きたい』って思わせてくれた」

イズル「だから、ありがとう。ケイがいたから、僕は生きている」

イズル「ケイは『守られた』って言ってるけど、今度は僕が『守られた』んだよ」

ケイ「…ホントに?」

イズル「うん」

ケイ「……ホントに、ホント?」

イズル「ホントだってば。僕、すっごく嬉しかったんだよ。帰ってきてほしいって言ってもらえて」

ケイ「……っ」

イズル「え、ちょ…ケイ?」

ケイ「う…うぇっ…ぐすっ……」ポロポロ

イズル「な、何で泣いているのさ!? どこか痛いの?」

ケイ「ちが、うの…うれしく、って」

イズル「え?」

ケイ「あなたの、ために、わた…っ、なん、にも…できないってぇ……っ」ポロポロ

イズル「……ケイ」

ギュッ

ケイ「…あ」

イズル「そんなわけないじゃない。ケイは、いつもいつも、僕らのこと、お姉ちゃんみたいに助けてくれたじゃないか」

イズル「皆も…僕も、ケイがいてくれてよかったに決まってるよ」

ケイ「…ありがと、イズル」ギュッ

イズル「いやさ、お礼は僕が言うことだってば」

ケイ「関係ないわ…私がそう思っているから」

イズル「そ、そっか…あの、そろそろ離れていい? その、恥ずかしくなってきたっていうか…」

ケイ「ごめん。もう少しだけこうさせて…泣き顔見せたくないの」

イズル「えっと…そっか」

ケイ「ええ…そうよ」ギュッ

イズル「……」

ケイ「……ん」ハナレル

ケイ「…ねぇ、イズル」ウワメヅカイ

イズル「う、うん」ドキッ

ケイ「私、ね? その、イズルの――」

ガチャ

ダン「おーっす! 元気にしてたか、イズル!」

マユ「お見舞い来たよー! いーちゃん!」

イズル・ケイ「「!?」」バッ

デガワ「何だ、先客か?」

マユ「あ、ケイっちじゃん」

ケイ「ど、どうも」

イズル「だ、ダンさん、マユさん、デガワさんも」

ダン「俺たちだけじゃないけどなー」

アンナ「おーっす、イズル! パパたちを代表して来たぜ!」

イリーナ「やっほー…って、あら、お嬢?」

ケイ「い、イリーナ! どうしてここに…」

イリーナ「どうして、ってウチのジェーンたちやシンイチロウたちが来れないから代わりに来たのよ…って、ははーん?」

ケイ「な、何ですか…?」ビクッ

イズル「」キョトン

イリーナ「ごめん、空気読めてなかったわね」

ケイ「なっ、何を言って…」

マユ「え、ああ、そういうことだったの、イリーナ」

イリーナ「マユは少し分からなかったわよねー、ダンはもう言うまでもないし」

ダン「…はいはい、どうせ分からないですよー」

イズル「(あの、どういうことですか?)」コソコソ

デガワ「(お前にも いつか分かるよ いつかはな)」ウンウン

イズル「?」

アンナ「おーい、イズルー、これアサギからなー」ゴソゴソ

イズル「あ、新しいスケッチブック。ありがとう、アンナ」

アンナ「なーに、気にすんなよー、お姉さんにかかればこれくらいのおつかいは余裕だぜー」

ダン「これはおやっさんとかスズカゼ艦長からな」

イズル「新しいペンだ! わぁ、ありがとうございます!」

イリーナ「いーい、お嬢? 後で私たち出直すからそのときにでも…」

ケイ「いや、だから、わ、私は…」

マユ「頑張ってね、ケイぴょん。私応援してるから」

ガチャ

チャンドラ「おっと、見舞いに来たはいいが…これはすごい人数だな」

スルガ「うわ、さらに人数増えてんじゃん」

タマキ「あれー、ケイ? 予定があったんじゃなかったのー?」

アンジュ「いえ、たぶん用事というのはここのことだったのでは…」

アサギ「…アンナ、忘れ物だぞ」

アンナ「なっ、アサギ!?」

ワイワイガヤガヤ

イズル(すっごい騒がしいや…でも、楽しい)

イズル(最初は、たった一人でここに生まれてきたけど)

イズル(今は、違う)

イズル(ピットクルーの皆がいて、整備長がいて、食堂のお姉さんがいて、オペレーターの二人がいて、艦長がいて)

イズル(お父さんやお母さんもいる)

イズル(そして―― 一緒に同じモノを見てきた仲間――アンジュ、タマキ、スルガ、ケイ、お兄ちゃん――チームラビッツの皆がいる)

イズル(これまでのこと、辛いことも楽しいことも、全部全部振り返れば)

イズル(――心は、一つじゃない)

終わり。ゲーム化決定おめでとう。次のコミカライズは絶対マンザイスリーのはず。
ネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン スルガ君の嫉妬 二人のイズルの冬コミ
Oさん視点 結成前のラビッツ スクライドなタマキ チャンドラの結婚式
初夜続き わんわんお先輩続き にーちゃん続き 座談会続き
では。

お久しぶりです。
始めていきたいと思います。

――彼と知り合ったのは、つい最近のことだった。

きっかけ自体は、ある夏の日のこと。
地球で行われた、とあるマニア向けの大きなイベント。
戦いが終わって以来、初めて再開されることとなったらしいそのイベントに、『イズル』が興味を示したのは当然といえば当然のことだった。

「わぁ……」

暑い暑い夏の中、イズルはようやく動いた行列を抜け、辿り着いた開けた空間の先を目の当たりにして、感嘆の声を上げる。
イズル自体は鍛えているだけあってか、汗一つかいていないが、
その場所にいるのはほぼ一般の人間しかいないためか、ずいぶんと汗の湿っぽさに満ち溢れているように感じた。

もちろん、イズルの後ろには同じく並んでいた人がたくさんいるので、すぐに脇に道を譲る。
そうして、絶えない人の波が、バラバラになったかと思えば、一つの方向に収束していく光景が広がっていく。
なかなか不思議な光景だなぁ、とイズルは思ったが、それは置いておく。

ちなみに彼以外には仲間はいない。
ある少女だけは付き合ってくれる約束をしてはくれたが、ザンネンなことに彼女には任務が入ってしまった。
かといって、保護者みたいな兄も人がたくさんいるところには行きたがらず、
ついでにいうとそういったマニア向けなイベントに興味がなかったというのもある。
とにもかくにも、そういう訳で、彼は今一人だ。

「えーと…」

先に決めたルートを順々に進んでいく。
こういったイベントでは、先に配布されているパンフレットをよく読み込んでおいて、
自分なりのルート構築をしておかなくてはならない、らしい。
そういったことに関しては初心者であるイズルも、ちゃんとそこは徹底している。

あのヒーローモノのスタッフの作ったらしいオリジナルはあっち。
少し前に見たヒーローアニメの模型はあっち。
グッズはあっち。

あちらこちらを、決めた予定通りにするすると進んでいく。
ちなみに言うと、彼は今回は企業向けのブースにしか来ていない。
本当は一般のモノもどういうモノがあるのか興味はあったが、一度に行くと疲れてしまう。

それに、あいにくと与えられた休暇は一日のみだ。
そういう訳で、彼は一つにしか絞っていない。
それは、『彼』も同じだった。

――そして、同じ遺伝子が呼ぶのだろうか。

「え?」

「あれ?」

偶然にも、二人は出会ってしまった。
先に紹介をされる前に。






「――イズル!」

「あ、ケイ」

唐突に背後からの呼ぶ声に、イズルは振り返った。
夏も過ぎ行き、もう少しで秋の気配がしてくるであろう頃。
イズルはグランツェーレ都市学園の、自らに与えられた個室を離れて、外に出て、マンションの入口から歩き出そうとしていたところだった。
偶然自分を見かけたらしい少女――ケイは、ゆっくりとイズルの元に近寄る。
それから、イズルが手に抱えている荷物を見て、どこに行くのかを何となく察したらしい。

「また、あの子のところ?」

「うん、まぁね」

あ、何だか友達の家に遊びに行くみたいだ、とふとイズルは思った。
いつだったか、仲間の一人が彼女のことを『お母さん』みたいと言っていたが、少し分かる気がした。
そんなイズルの気持ちとは別に、ケイは少しだけ微笑んだ。
まるで、初めて出来た友達の家に遊びに行くのにはしゃぐ子供でも見るような目をしていた。

「…そう、その、出展、だったかしら? 頑張ってね。手伝えたら私も手伝うから」

ケイの申し出が素直に嬉しくて、イズルも笑みを浮かべる。
この少女には、本当に感謝してもしきれない。
姉のようにいつもいつも自分のことを心配してくれて――
いつか何かお返ししなくてはならない、と思う。

「ありがとう。でも無理はしなくていいよ?」

イズルがそう返すと、前方、ケイの背後から聞き慣れたマネージャーの声がする。
なるほど、今日は仕事の待ち合わせだったらしい。
ケイはその声に簡単に返事をすると、ちょっとだけ名残惜しそうにすると、くるりと方向転換した。
それから、彼女は顔だけこちらに向けると、ただ一つだけを口にした。

「分かってるわ。ただ、手伝いたいだけよ」

じゃあね、と別れを告げ、ケイは走って行った。
イズルも、頑張ってね、と大声で伝えてから、軽く右手を振った。






ヒタチ・O・イズル。
イズルと同じ遺伝子の持ち主。
ただし、彼はイズルと違い宇宙に適応する人間というわけではないらしく、実戦に駆り出されることもなかったが。

その存在を知ったのは、つい最近のことだった。
同じ趣味でなかったら、たぶん、知り合うこともなかったのだろう。
不思議な親近感をイズルは彼に抱いていた。
同じ遺伝子の、言わば、同じ人。
自分の分身。

そんな風に思ってしまうと、何だか不思議だ。
まるで、初めて兄の存在を知った時のような感覚になる。
そして、それは彼も同じだろう。
だからこそ、こうして仲良く――

「だから、ここはさ、こっちの構えからの技を放つ感じだと思うんだよ」

イズルと彼は、今、出会いのきっかけとなったイベントに向けて準備をしていた。
例のイベント自体は夏と冬に開催されるらしく、
お互いにマンガを趣味に描いていることを知り、共同でいわゆるオリジナル同人誌を出すことにしたのだ。
プロに近付く特訓、という名目でコンビを組んだ二人は、最近はずっとマンガを描く以外に何もしていない。

さて、二人でマンガを描いていると、意見が衝突することもある。
同じ人間のはずなのに、こうなると別人なんだなぁ、と何となくイズルは思う。
今は、一番の見せ場、主人公の必殺技のポージングについて論争していた。

「で、でも。この構えの方がカッコいいよ」

そう言うと、イズルはまったく別の構えを簡単にしてみせる。
もう一人の自分はと言えば、イズルとは違う恰好のまま、首を傾げていた。

「そうかなぁ……俺はこっちだと思うけど…」

お互いに譲れないモノがある。
故に、まったく話が進まない。
こればかりは、イズルにも意地がある。
もちろん、彼にも。

「「うーん…」」

二人同時に困ったような声色を出す。
こうしてみると、なるほど、双子のように一致する。
双子、双子かぁ――イズルは何となくその考えが一番しっくりとするような気がする。
まぁ、少しは趣味が違うこともあるけれど。

そうして膠着したままに、会議は続いた。
意見を出し合い、そこにある良い部分を取り出し合い、二人は話を進める。
こうして楽しくマンガの話をできる人がいるのは初めてのことで、イズルにとって、こうして話し合う時間は実に楽しかった。
話の合う友達、というのはこういうモノなのかもしれない。






カリカリ……とペンの走る音が部屋に響く。
ちなみにここは学園の生徒に支給されている寮の一室だ。

何故個室であるイズルの部屋を選ばなかったのかと言えば、
単に描き終わったときにすぐに同室の素人たちの目で感想を聞かせてもらいたかったからだ。
マンガの批評に関しては、イズルも一人参考になる人物を知っているが、あいにくとあちらは大忙しだ。

「ネーム上がったか?」

「うん。これでいいと思うけど、どう?」

「…うん! これだね、これ」

「よかった。じゃあ、こっちで」

「ああ。塗りはこっちがやるからさ、そっちはトーン頼む」

「うん、任せて」

流れるような連携を見せて、二人のイズルはすらすらと作業を進めていく。
単純にイズルが二人になったからだろう。効率がそのまま倍になっているのだ。
この順調さなら、きっとどうにかなるだろう。
かなりの長編のマンガになる予定だったが、立派なモノになるに違いない。
マンガの出来を想像して気分が高揚し、ふと、イズルは思ったことを口にした。

「間に合うといいな、冬」

「間に合うといいね、冬」

二つの待ち遠しげな声に、一瞬、何が起きたか分からず、イズルは作業を止めてしまう。
顔を上げれば、もう一人の自分も手を止めていた。
その顔は、たぬきにでも化かされたようだった。

「…ふふっ」

「…ははっ」

妙なところで意見が合って、つい笑ってしまう。
やはり似た者同士なのかもしれない、と。

そうして、作業は続く。
彼らの希望の詰まった大作が生まれるその日まで。

終わり。ちょっと物足りないかも。機会があれば、何か別で似たようなの書こうと思います。
次行こう。

スルガくんの嫉妬

スターローズ――食堂

スルガ「カレー、カレー、っと」

アサギ「またかよ。お前も飽きないな」

スルガ「いいだろ、別に。この安定感を理解しろっての」

アサギ「ったく…他のヤツら遅いな」

スルガ「……なぁ、前から思ってたんだけどよ…」

アサギ「何だよ?」

スルガ「お前最近さ――」

イズル「あ、お兄ちゃーん!」タタタ

ケイ「アサギ」

アンジュ「あ、アサギさん」

タマキ「あっさぎー!」

アンナ「アサギーっ!」タタタ

スルガ「……」パクパク

アサギ「おう…で、何だ? 言葉を出せ、言葉を」

スルガ「…何でもねーよ」モグモグ

アサギ「?」






イズル「ごちそうさまでした!」

タマキ「ごちそうさまー」

アンナ「ごちそうさまー」

スルガ「ごちそうさん、っと」

ケイ「…ご馳走様でした」

アンジュ「…ご馳走様でした」

アサギ「…ご馳走様でした」

イズル「お兄ちゃん、せっかくだし遊びに行こうよ!」

アサギ「は? どこにだよ?」

アンナ「ダメー、今日はあたしの買い物に付き合うんだよ、こいつはー」グイグイ

アサギ「待て、勝手に予定を決めんな」

イズル「えー、じゃあ一緒に行こうよ」グイグイ

アンナ「お、それならいいぞ」グイグイ

アサギ「おい、人を引っ張るな」フー

タマキ「おもしろそー! あたしもー」ダキッ

スルガ「………」ジトー

アサギ「だからやめろって……あぁ、もう。ほら、行くぞ」

アンナ「おうし、行こうぜー」

イズル「やった! ありがとう、お兄ちゃん」ニコニコ

ケイ「……私も行くわ」ムスッ

アンジュ「ええと…」

タマキ「アンジュも来るのらー」

アンジュ「そ、それじゃあ…」

イズル「スルガも行こうよ!」

スルガ「……」

ケイ「スルガ?」

スルガ「」ハッ

スルガ「…あー、いや、俺はちょい兄貴たちと約束あっから…」

アサギ「何だ、結構仲良くやってんのか?」

スルガ「まーな。悪い人たちってことはねーからな」ガタッ

アサギ「そうか…じゃあな」フッ

スルガ「…おう」

ワイワイガヤガヤ…

スルガ「……さ、部屋に戻るか」






スルガの部屋

スルガ「」カチャカチャ

スルガ「……」フー

スルガ「なーんか、調子良くねーなぁ…」

スルガ「いや、まぁ。勝手に何かもやもやしちまってるだけなんだけどさぁ。
    ホント、別に。モテねーからって、お前、仲間に嫉妬なんざ……」

スルガ「」ハァ

スルガ「…アホらし。だいたい、アイツに向いてるそういう感情一つくらいじゃん」

スルガ「……っかしいなぁ。どこで差ァついたんだろうな?」

スルガ(…アイツ、頼りになるもんなぁ。最近は特に。プレッシャーにも負けなくなったし)

スルガ「……頼りになる男、か」

スルガ「…兄貴たち、まだいたよな?」






スターローズ―― 一般居住区

イズル「お兄ちゃーん」

アンナ「アサギー」

アサギ「」ズッシリ

ケイ「…結構ね、お義兄ちゃん」ムスッ

アサギ「…意味深な言い方すんなよ」ハァ

タマキ「どういうことー?」キョトン

アンジュ「ええと、ほら、タマキさん。行きましょうか」

タマキ「? うん」

ケイ「まぁいいわ。アサギはそこで休んでいたら? かなり疲れてるでしょ」

アサギ「ああ、助かる」

タタタ… アレ?オニイチャンハ? ツカレチャッテル ショウガネーカー

アサギ「」フー

アサギ(…スルガのヤツ、どうしたんだろうな)

アサギ(変な視線は感じるし…何か言いたそうにしてたしな)

アサギ(…何だってんだ)

スルガ『』シュン

アサギ「……しょうがねぇな」フー






格納庫

スルガ「じゃあな、兄貴たち」

フィジカルスリー「おう! じゃあな!」ムキッ

スルガ「」フー

スルガ「何か違うなぁ…兄貴たちは確かに、まぁ、頼れる人間だけど……」

スルガ「…何だろうな?」

アサギ「スルガ」

スルガ「お? おう、戻ったのか?」

アサギ「ああ……」

スルガ「? 何だよ?」

アサギ「食堂で何か言いかけたろ? 気になってな」

スルガ「あぁ…。まぁ、その、何だ」ポリポリ

スルガ「――ちょっと、羨ましくてよ」

アサギ「羨ましい?」

スルガ「おう。皆さ、お前のことすっげぇ頼ってんじゃん? 何か、羨ましくてな」

スルガ「俺だってさ、一応タマキとかアンジュよりかは年上なのにさ。
    こないだの家族うんぬんの話のときだって俺は飛ばされちまったし。…俺って、何なんだろうな?」

アサギ「……」

スルガ「」ハッ

スルガ「…わり、お前に話してもあれだったな。忘れろ。もう俺も忘れとくことにしてっから」

アサギ「記憶力ピカイチなのにか?」

スルガ「忘れんのもピカイチなんだよ」

アサギ「…俺は、そうは思わないけどな」

スルガ「あん?」

アサギ「何だかんだいって、お前も頼られてるんじゃないか?」

スルガ「んなこと――」

イズル「あるよ!」

スルガ「イズル!? いたのかよ!」

ケイ「私たちもね」

スルガ「…聞いてたのか?」

アンジュ「ええと、まぁ…」

イズル「スルガ、僕らスルガのことすっごく頼りにしてるよ!」

ケイ「…そうね。あなたがいると、皆も安心はするわね」

アンジュ「マスコット、のようなものでしょうか」

アンナ「戦うときだって、スルガが援護してくれるから皆大丈夫なんだろー? ウチのブルーいちもなー」

アサギ「ブルー1だ、ブルー1」

タマキ「あのね、スルガー」

スルガ「…何だよ」

タマキ「あの時ね、スルガのこと言わなかったのはー、うーんとー」

スルガ「何だよ?」

タマキ「スルガはね、おとーととかー、おにーちゃんとかよりー、こう…ネコ? みたいだったからー」

スルガ「俺は動物かよ!?」

アサギ「…すまん、俺もそんなイメージだ」

ケイ「そう、ね。何というか、それは私もそうだわ」

スルガ「酷くねーか? それ」

イズル「でも、それがスルガなんだよ、たぶん」

スルガ「……そりゃどーも。ったく…」ポリポリ

アンジュ「スルガさん…?」

スルガ「悪かったな、余計なこと言って。もうこんなことは言わねーからさ」

スルガ「それと…何だ、ありがとよ。俺もお前らのこと、頼りにしてるから」

イズル「うん!」

アサギ「そうか。俺も、お前を頼りにしてる」

タマキ「あたしもー」

ケイ「私も」

アンジュ「わ、私も、です。頑張って頼りにしてもらえるように、私も…」

スルガ「……おう」

スルガ(…ったく、それ言うためにわざわざ皆で来たのかよ。おせっかいなモンだな……)

スルガ(――ま、その方が俺たちっぽくていいか)フッ

終わり。次行こう。

彼は、いつでも

『今回の大戦の結果、我々はとうとうウルガルの脅威を押し返し、見事な勝利を手にしました』

『この勝利には、彼ら――チームラビッツの貢献があったからこそ、といえ――』ピッ

『今回の特集では、彼らの活躍を振り返って――』ピッ

『この番組ではチームラビッツの独占取材を――』ピッ

『チームラビッツの美しき少尉――クギミヤ・ケイ少尉、イリエ・タマキ少尉に密着取材を――』ピッ

プツン!

ケイ「」フー

ケイ「」ポスン

ケイ「…もう、疲れた」

ケイ(何だっていうのよ…いくら人手がないからって……)

ケイ(…皆、どうしているかしら?)

ケイ(タマキは…時々一緒になれるから、まぁ、元気にしてるのは知っているけど…)

ケイ(スルガは…こないだカレーのCMに出ていたし、アンジュやアサギはMJPで後進育成をしてるらしいけど…)

ケイ(…イズルは、どうしているのかしら)

ケイ(結局、お見舞いしてから、この一か月まったく会えていないし…)

ケイ(………私は、どうしたいの?)

ケイ(イズルは、結局テオーリアさんをお母さんだって慕ってる)

ケイ(でも、だからって、私にそんな気持ちが向いているわけなんかじゃない)

ケイ「」ハァ

ケイ(そんなの抜きで、『会いたい』ってことなのよね…)

ケイ「どうしよう…」

ピピッ!

ケイ「はい?」

ペコ『あ、ケイさん?』

ケイ「ペコさん? どうかしましたか?」

ペコ『明日のお仕事なんですけど――』

ケイ「…え? 本当、ですか?」

ペコ『はいー。それでは、明日また迎えに行きますのでー』

ケイ「……」

ケイ「…チャンス、なのかしら?」






グランツェーレ都市学園、病院施設

ペコ「はいー、これ制服ですのでー」

ケイ「また、これなのね…」

タマキ「いいじゃーん、ケイのナースさん、かわいいのらー」

ケイ「ホメたって別に何も出ないわよ」

ペコ「今回の一日ナースはこの学園の病院施設の宣伝も兼ねてますのでー」

ケイ「…各国への視察の参考ってわけですか」

ペコ「まぁ、そんなに考えないで自由にやってくださいー」ニコリ

タマキ「らってー、がんばろ?」

ケイ「…ええ」






ペコ「はい、休憩入りますー」

タマキ「はー、塩辛ー」

ペコ「はいはーい、どうぞー」

ケイ「」スッ

タマキ「あれ? ケイ、お昼にしないのー?」

ペコ「ケイさーん、ちゃんと食べないとダメですよー?」

ケイ「ちょ、ちょっとだけ席を外してくるだけですから…」

ペコ「そうですか? まぁ休憩の時間は長いですし、一時間くらいは自由にしてていいですよ」

タマキ「あ! なら一緒に食堂行こうよケイ! ここの塩辛すっごく美味しいらしいのー」ニコニコ

ケイ「あ、後でね」タタタ…

タマキ「えー…」






ケイ「」タタタ…

ケイ「確か、この辺りに…」

???「ん、ケイ?」

ケイ「! アサギ…」

アサギ「何してんだ? その恰好…」

ケイ「し、仕事よ…アサギは?」

アサギ「ああ、そうか。今日だったな。
    …俺たちは、スルガもアンジュも暇が取れたから、一応このメンツでアイツのトコに行こうって話になってな」

ケイ「そ、そう…」

アサギ「……」

アサギ「」フー

アサギ「アイツのトコに行くなら早く行けよ」

ケイ「!」

アサギ「タマキとかアイツじゃねぇんだ。空気くらい読むよ」

ケイ「…ありがとう、アサギ」

アサギ「…別に。弟の将来の面倒見るヤツがいた方がこっちも楽だからな」

ケイ「ふふっ、お兄ちゃんってわけね?」

アサギ「ほら、早く行けって」プイッ

ケイ「…ええ。ありがとう、アサギ」

タタタ…

アサギ「……」

アサギ「」ハァ

アサギ「何で俺ってヤツはこうも…」

スルガ「ドンマイ、お兄ちゃん?」ニヤニヤ

タマキ「ドンマイなのらー、お兄ちゃん」ダキッ

アンジュ「ええと、その…」

アサギ「いいから。お前までそれで呼ぶなよ、アンジュ」

アサギ(――まぁ、何だ。少しは幸せにな、イズル)






イズル「」カキカキ

イズル「……」

イズル「お兄ちゃんたち、遅いなぁ…」ソワソワ

ケイ「イズル、いる?」ガチャ

イズル「おに…あれ? ケイ?」

ケイ「ああ、よかった。久しぶりね」

イズル「ええと、うん。久しぶり。どうしたの?」

ケイ「え、ああ、ちょっと、仕事でね。時間あったから来たの」

イズル「ふーん…あ、じゃあ、その恰好も…」ジー

ケイ「」ハッ

ケイ「べ、別に何でもいいでしょう? 何、文句でもあるの?」

イズル「へ? いや、えっと、かわいいね」ニコリ

ケイ「なっ…」カァ

イズル「?」

ケイ「…あ、ありがとう」

イズル「? うん」ニコリ

ケイ「あの、イズル」

イズル「何?」

ケイ「話が、あるの――」

終わり。何がしたいのか分からなくなってきた。
次に行こう。

イリエ・タマキの場合

目が覚めて最初に思ったのは、あたしは誰だっけ、ってことだった。

『――目が覚めたか』

どこかのベッドの上に寝転がるあたしの耳に、男の人の声が聞こえた。
不思議な感覚だった。
ここがどこで、何があったのかは覚えてるのに、自分のこととなると何も分からない。

『君の名前はイリエ・タマキだ』

そんな心の中の疑問に答えるように声が真っ白で狭い室内に響く。
ただそれだけを知っていればいい。そんな調子の声色だった。
また何かを言おうとする前に、外に出るように促された。
そうか、この後は入学式なんだ。

のろのろと立ち上がる。
行かなくちゃ。とりあえず、分かんないけど。
あたしは、戦うために生まれたんだから。

スルガ・アタルの場合

目が覚めて最初に思ったのは、うわ、すげえ、ってことだった。
記憶が消去されている、ということは知っていた。
そのことには特に何も思わない。ただ、これほどすっぱりと消えるとは思っていなかった。

『――目が覚めたか』

と、感心しているうちに、声がした。
たぶん、MJPの偉い人だろう。ずいぶんと大物っぽい雰囲気があった。

『君の名前はスルガ・アタルだ』

スルガ。アタル。…オッケー、覚えた。
覚えてることがないと新しく覚えるのが楽でいいな。
…まぁ、これから覚えることはたくさんあるしなぁ。

もう遠い存在になった過去の自分のことを思いながら、俺はゆっくりと立ち上がった。
すると、その様子を見ているのか、そのまま部屋を出て入学式に出るように促される。
はいはい、行きますよ。
…それしかねーもんな。俺は、戦うために生まれてきたんだから。
部屋を出ようと歩き出す。

『――アタル』

あん?

急に、耳の奥底にこびりつくように声が聞こえてくる。
慌てて振り返ってみたが、そこには誰もいない。ベッドがただ置いてあるだけだ。
…何だよ、まったく。
訳の分からない感覚に少し戸惑いかけたけれど、俺は気にしないでもう一度足を運ぶ。
忘れたモノは忘れたんだ。さっさと忘れろ。…いや、忘れろってのもおかしいんだけどさ。

クギミヤ・ケイの場合

目が覚めて最初に思ったのは、怖い、ということだった。
私は誰。ここは、どこ。何も分からない。何も覚えてない。
怖い。なのに、逃げ出したい、という気持ちは湧かない。
どこに逃げればいいのかも知らないから。
ただ、自分が何をしなくてはならないのかだけを理解していたから。

『――目が覚めたか』

びくり、と体が震える。
誰だか知らない男の声がする。

『君の名前はクギミヤ・ケイだ』

追いつかない情報の処理をしているうちに、名前だけを告げられる。
ああ、そう。私の名前は、そう言うんだ。
それ以外は何も知らない。
私は、誰なの?
たまらなく、不安になる。
そんな気持ちのまま、私は外へと歩き出す。
戦うこと以外、他には何も選べないから。
諦めるしか、なかった。

アサギ・トシカズの場合

目が覚めて最初に思ったのは、俺は何者だ、ということだった。
戸惑いも恐怖もなかった。
兵士になるんだな、という気持ちだけだった。
自分が優秀な人間である、というような情報だけはあった。

『――目が覚めたか』

誰かの声――おそらくは上官だろう――の声がする。

『君の名前はアサギ・トシカズだ』

淡々とそれだけを冷静にその情報を取り入れて、俺は立ち上がった。
行かなくてはならない。今から俺は兵士だ。

それ以外を考えずに、向かわなくてはならない。
失った過去に興味はない。
定められた任務をこなさなくてはならない。
そう思わないと、自分の存在理由が分からない。

…行こう。
絶対に、活躍してみせる。
俺の存在を示してみせるために。

ヒタチ・イズルの場合

目が覚めて最初に思ったのは、ああ、終わったんだな、ということだった。
――何が終わったんだろう? と、次には不思議に思っていた。
何も記憶がないはずなのに、まるでまだ何かが自分にあるような錯覚を抱いているらしい。
そもそも、自分の名前も知らないのに。

『――目が覚めたか』

男の人の、声がした。
どうしてだろう、少し聞き覚えがある気がした。
また、錯覚なのかな?

『君の名前はヒタチ・イズルだ』

ヒタチ・イズル。
何だか覚えのある名前だった。
いや、それはそうか。
それが僕の名前なんだから。

…ん? そうじゃないか。
僕はふと気付いた。

この声だ。この声に、名前を呼ばれると、何だか懐かしい気持ちになるんだ。
…どういうことなんだろう。
まったく分からない不思議な感覚に戸惑っているうちに、僕は外に出た。

シモン・ガトウの場合

彼らの目覚めを全て確認し、私はゆっくりと外へと向かう。
これから、彼らを育てる助けをするのが私の任務。
それ以外には何もない。
彼らが我々の希望であり、夢なのだから。

ふと、二人の候補生のことを思い出す。
どちらも、私に似た顔立ちや髪の色をしている、らしい。
当然か。どちらも私と同じ遺伝子を持つのだから。

「…イズルはどうですか?」

後ろから声を掛けられる。
私のスポンサーであり、恩人でもある方だった。

「…健康上、問題はありません」

淡々と答える。
特にそれ以外に答えられることがなかった。
すると、その答えが予想通りだったかのように、彼女は微かに笑った。

「…お願いしますね、シモン」

何を、とは彼女は言わなかった。
私も、言われなくても分かっていることだった。
それが私の仕事なのだから。

そう、全ては仕事。私情などはない。
あるとすれば――

「…はい」

それだけ答えて、私はまた歩き出す。
そろそろ、入学式の時間だ。
ようやく、これまでの時間と犠牲の結果が出てくる頃だ。

…見ていてくれ、ジュリア。
君の『成果』は、私が必ず実現させてみせる。
必ずだ。

終わり。MZ5!の人の絵がずいぶんとステキでしたね。ケイさん、イズルはまだ結婚できる年じゃないですよ。
ネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン Oさん視点 未来予想図Ⅱ
スクライドなタマキ チャンドラの結婚式 リンリンの後日談 ケイの嫉妬
初夜続き わんわんお先輩続き にーちゃん続き 座談会続き

それはそうと、今さら気付いたのでなぞなぞの訂正。
>>353の三分の四→四分の三

では。

どうも。今日もやっていきたいと思います。

ガッカリラジオ第二部

ランディ「さて、この時間もやってきたな」

パトリック「先輩、それ何ですか」

ランディ「一回やってみたかったんだよ、ラジオ」

パトリック「ここじゃ誰も聞いてないですよ…」

ランディ「いいじゃねーか、ほら、ゲストはいるぞ?」

ルティエル「何を言っているのかさっぱりだけれど…ずいぶんね、チキュウジン」

ラダ「まったくよ! 不愉快だわ」

クレイン「……」

ランディ「まーまー、いいじゃねーかよ、同じ死人だぜ?」

ルティエル「負け犬に言われるとなかなかに不快だわ」

パトリック「あはは…僕ら犬だからなぁ……」

ランディ「っつーか、ウルガルにも犬っているのか?」

ルティエル「…にしても、理解不能ね、あなたたちは」

ランディ「あん?」

ルティエル「あなたたちを殺したのは私よ? 何も思わないのかしら?」

ランディ「そりゃ、まぁ、よくも殺しやがってー、とか思うかもしれんがなぁ」

パトリック「そうしたところで僕ら生き返りませんしねぇ…それに」

ルティエル「それに?」

パトリック「タマキちゃんが無事だったし、よかったかな」

ルティエル「…あんな小娘たちに負けるなんてね」フフッ

ランディ「ほら、アンタも笑ってるじゃん」

ルティエル「なるほど。少しだけ理解を示してあげるわ」

ラダ「な、何なのよアンタたち…」

クレイン「ふん……」






GDF兵士『いっけえっ!』

アサギ『……っ』

テオーリア『アサギ…』

ケイ『アサギ…』

スルガ『決めちまえ、アサギ!』

アンナ『いっけぇ、アサギ! 失敗すんじゃねぇぞ!』

レイカ『頑張れ、アサギちゃん』

リン『アサギ…』

イズル『お兄ちゃん、ファイト!』

ランディ「きっちり決めろよ…兄貴だろ!」

パトリック「ここで終わらせてくれ…」

アサギ『いっけええええええッ!!』

バシューンッ!

パトリック「やっ…」

ジュリアーノ『っ、発射したエネルギー、無力化されました!』

ランディ「マジかよ…」

ルティエル「なーんだ、こんな攻撃でゲートが壊せるとでも思っていたの?」フー

ラダ「まったく呆れるわね、チキュウジン」フフン

ランディ「ちっきしょう…まだだろ!






アサギ『弾薬残り十五パーセント!』

イズル『皆…』

ランディ「頑張れ…生き残れ…っ」

パトリック「タマキちゃん……」

ジアート『出てこないなら、嫌でも出てくるようにしてやろう』

ラダ「あら、ジアート様が出るなんて…」

ルティエル「よほどなのねぇ、あの方のラマタ」

ランディ「おいおい、アイツはあのときの…」

パトリック「ま、まさか…」

ケイ『タマキ、逃げて!』

パトリック「――ッ、タマキちゃん、早く!」

タマキ『な、何ーっ!?』ザンッ!

パトリック「っ!!」ギリッ

ランディ「落ち着けパトリック、あの子は無事だ」

ルティエル「このまま全滅かしら?」

ラダ「ふ、ふん。ジアート様には誰も敵わないもの…」

クレイン「青いヤツめ…僕を倒したときはそんなもんじゃなかったろ……」

ドルガナ『久々に狩りの中に身を浸したくなるとはな…ふふっ』

ラダ「ど、ドルガナまで…何だっていうのよ」

パトリック「皆…このままでは…」

ランディ(この状況…どうにかするには、もう……)

イズル『……僕が出ます』

ランディ「イズル…」

パトリック「イズルくん…」

イズル『スズカゼ艦長、僕はあなたが好きです』

ランディ「何ィ!?」ガタッ

パトリック「先輩、落ち着いてください。そういう意味じゃないですから」

イズル『僕は親の顔も知らないで、たった一人で生まれてきた。
    でも、こんなにたくさんの好きな人や家族ができたんです。
    その人たちのためにも、そして…そして、まだまだ描きたいマンガがあるんです!』

イズル『だから、僕は死にません。…たぶん』

ランディ「おいおい、たぶんかよ。しょうがないヤツだな、まったく」ククッ

パトリック「あの…さりげなく僕ら飛ばされてません?」

ランディ「まぁ死んじまったからなぁ、俺たち」

ペコ『行ってらっしゃい』

リン『――必ず帰ってらっしゃい』

イズル『ブラスト・オフ!』

ラダ「あーっ! アイツ…」

クレイン「…ヤツは」

ルティエル「あら。初めて見たわ」

パトリック「頑張ってくれ…」

ランディ「頑張れ。…死ぬな、イズル」ギリッ






アマネ『本艦はこれより敵陣中央を突破!』

ランディ「無茶すんなよ…大佐殿」

パトリック「このままじゃ艦隊も…」

チャンドラ『タリホー! 騎兵隊の到着だ!』

パトリック「ちゃ、チャンドラ先輩!」

ランディ「おいおい…人のマネなんかしやがって、あの野郎…」フッ

ルティエル「あらあら。また倒されにでも来たのかしら」

ランディ「いーや。アイツはやられねぇぞ」

パトリック「僕たちの想いも持ってますからね」

ランディ「そうそう、アンタらとは違うのさ。俺たちは」

ルティエル「理解に苦しむわね…」フー






アサギ『これをぶつけます!』

ランディ「うおっ、なんとまぁとんでもないモンを…」

パトリック「でも、あれをぶつけるにも、敵の数が多すぎて……」

テオーリア『ウルガルの民よ、聞きなさい。
      私の名は……私の名は、プレ・エグゼシア、テオーリア』

ラダ「テオーリア様! ほ、ホントにいた…」

ルティエル「へぇ。誰かと思えば、プレ・エグゼシアったら、ふふっ、裏切者ね」

クレイン「テオーリア様……」

ランディ「なるほどねぇ。こりゃ美人だな」

パトリック「先輩、ジュリアーノみたいなこと言ったりしないでくださいよ」






ジークフリート『ストラグルレーザー、完全消滅…!』

ランディ「くそっ、ここまでなんて、冗談じゃねぇぞ!」

パトリック「僕らの努力を無駄になんか、させたくない…っ」

ラダ「ふ、ふふっ、や、やっぱりチキュウジンごときに…」

シモン『…スターローズを、ぶつける』

ランディ「なんつー滅茶苦茶な…」

パトリック「でも、もうそれしか……」

ラダ「な、何なのよ…そんなことしたら死ぬでしょうに…」

ルティエル「ホント、理解のいかない種族ね。自己犠牲なんて…」

ランディ「分からなくて結構、俺たちはただ、皆のために戦いたいだけだっつーの」

ルティエル「意味不明…」フー






ジアート『今はただ、お前を狩りたい!』

イズル『獲物を……っ! あの獲物を倒すんだ!』

ランディ「チッ、イズル!」

ラダ「な、何なのよ…アイツは」

ルティエル「へぇ…あれはいいラマタね。一度やってみたかったわ」

クレイン「ヤツめ…まだあれだけの力を……」

パトリック「だ、大丈夫なんですかね、彼…」

ランディ(我を失うんじゃねーよ。皆が待ってるんだろうが…)



チャンドラ『補給は終わったのか?』

アンジュ『終わったから来たんだろうがっ!』

チャンドラ『うおっ!? お前っ…私を殺す気か!』

アンジュ『邪魔なんだよ! 私の前に立つな!』

チャンドラ『後から来といて何だ!』

アンジュ『黙って付いて来い!』

チャンドラ『…暴れ馬の手綱を引くのは大変だぜ』

パトリック「先輩…」

ランディ「くくっ、いいじゃねーか、ドーベルマン2ってのも」






ケイ『聞いてよ!』

イズル『うるさい!』

ケイ『そんなのイズルじゃない! あなたはヒーローになるんでしょ! 私達とヒーローになるんでしょ!』

イズル『っ、ヒーロー…』

ランディ「ヒーローになんなら、仲間に心配なんか掛けてる場合じゃないだろうが!」

パトリック「タマキちゃんたちだって必死に説得してるんだ、無視しないでくれ!」

ランディ「このザンネン!」

イズル『ひどい…』

アサギ『ひどいのはお前だ!』

タマキ『描くマンガもひどいけど!』

スルガ『ほんっと、ザンネンなヤツだな!』

イズル『……三回連続でツッコミはやめてくれる?』

ランディ「」ニッ

パトリック「やりましたね、先輩!」

ランディ「おうよ!」

ラダ「な、何なのよ、アンタたちのそれは…」ヒキ

ルティエル「こんなのに負けたなんて…今更ながら屈辱ね」ヒキ

クレイン「まったくだ…」ヒキ






チャンドラ『行ってくれ…私は仲間を助けられなかったが…君たちは』

ランディ「……」

パトリック「先輩…」

ランディ「そうだな。きっちりとアイツらを頼むぜ、チャンドラ」

ランディ(俺たちみたいなヤツらは、もういいんだ)



イズル『――ヒーローになるため!』

ラビッツ・ランディ・パトリック「『結局そこかよ!』」

ラダ「何なのよ、その協調…」

ルティエル「意味不明……」






ラダ「げ、ゲートがぁ……」

ランディ「イズル、イズルは!?」

パトリック「先輩、あれ!」

イズル『っ、まだまだぁ!』

ランディ「イズル、負けるな!」

パトリック「君が死んだらタマキちゃんが悲しむんだ!」

イズル『――皆のところに生きて帰るんだッ!』

チュドーン!

ランディ「! イズル――!」

パトリック「イズルくん!」

ルティエル「…まさか、ジアート様相手に相討ちとはね」

ラダ「そ、そんな…あの方が負けるなんて」

クレイン「……っ」ギリッ

パトリック「せ、先輩…」

ランディ「まだだ。アイツは生きてる。絶対に。俺の教えを勝手に破るなんざ許さん…っ」

パトリック「イズルくん…」キョロキョロ

ランディ「イズル…」キョロキョロ

ケイ『イズル…っ、イズル……っ!』

ジークフリート『レッド5確認!』

ランディ・パトリック「「!!」」

ケイ『イズル!』

タマキ『イズル!』

スルガ『イズル!』

アンジュ『イズルさん!』

チャンドラ『イズル!』

パトリック「イズルくん!」

ランディ「イズル!」

アサギ『イズル!』

イズル「……っ」

イズル「」フッ






ランディ「…ふぅ。ようやく終わったか」

パトリック「…違いますよ、先輩。始まったんです」

ランディ「そうか…そうだな」

パトリック「僕らは終わったけれど…あの子たちもチャンドラ先輩も」

ランディ「いつまでここにいるんだろうな。俺たち」

パトリック「さぁ。あの人たちは、もういませんね」

ランディ「おっと…ホントだな」

パトリック「…っ、あ、っと」クラ

ランディ「パトリック!」

パトリック「先輩、そろそろ…みたいです、ね」

ランディ「っ…みたいだな」クラ

パトリック「僕らは、これを見届けるために、ここにいたのかもしれませんね」ニコ

ランディ「かもな…こっちとしては、嬉しい話だったな」フッ

パトリック「次、生まれたら、きっとタマキちゃんのところに…」

ランディ「そうか…俺は、キレイなねーちゃんに会えるトコに行くぜ」

パトリック「…もう、変わらないですね」

ランディ「ったりめーだろ…」ガクッ

パトリック「楽しかったですよ、ランディ先輩…また、会いましょうね」ガクッ

ランディ「くくっ、因縁があったら、な…?」

パトリック「さよう、なら――」

ランディ「…おう」チラ

ラビッツ&チャンドラ『』ワイワイ

イズル『』ニコニコ

ランディ(じゃあな、イズル。しっかり、生きろよ?)

ランディ「――さようなら、だ」

終わり。そこあにでドーベルマンの設定を聞いて、ちょっと>>336の続きは書かないことにしました。
代わりに、ちょっとこういうのを考えています。

これは、知られざる戦いの記録。
誰にも語られないガッカリな物語。



「…まったく、お前ももう少しリーダーらしくすればな……」

「んだよ、俺はリーダーしてるだろ?」

「ええっと…」

「よせパトリック。コイツには何も言わなくていい」

「ったく、何だよな…」

「お、よう、ガッカリスリー」

「また教官に怒られたのか? さすがだな、ガッカリスリー」

「…それは止めろと言っただろう」

「まぁまぁ、いいじゃねーか、ガッカリスリー」

「よくない。お前のせいだぞ」

「チームといえば家族も同然。一人がガッカリなら皆もガッカリなんだよ」

「誰が家族だ…」

やはりガッカリな平和。
そして、そこに訪れる戦いの世界。

「チームドーベルマン」

「ほいほい」

「あなたたちはこのライノスを使って、敵の足止めを。時間はおよそ十分」

「はい」

「了解しました」



「…大丈夫なんですかねぇ、僕たち」

「さぁな。まぁ、うまくやるしかないだろ」

「さすがのお前も緊張しているのか?」

「いんや。明日届くビデオに緊張してる」

「いい加減、私も何も言わんぞ…」

「おいおい、ツッコミがいねーとボケがガッカリになるだろ」

「だから私はそういう人間じゃないと言ってるだろうが」

若き精鋭たちの活躍の始まり。

そして――

「おいおい…」

「どうするんだ、ランディ」

「敵の部隊が近くにいますよ…っ」

「……」

試練と決断、覚悟の時。

「チッ…放っておけだと? できたら苦労しねーよ!」

「パトリック! 火線から離れて索敵に集中! チャンドラ! 俺の援護頼む!」

『『了解!』』



「よっしゃ、回収完了!」

『先輩急いでください! 敵の増援が迫ってます!』

出会い、別れ、進化、成長。
全てがその後の世界へと繋がる、もう一つのマジェスティックプリンス。



「…まったく、ヒヤヒヤしたぞ」

「へへ、でもスリルはあったろ?」



「生き残りましょうね、先輩」

「おう」

「ああ」

銀河機攻隊マジェスティックプリンス外伝――オペレーション・ドーベルマン。
近日、公開。

終わり。これは今度しっかりと書きます。
次行こう。

兄と家族

スターローズ――アサギの部屋

イズル「お兄ちゃーん」ニコニコ

アサギ「あー、はいはい。何だよ?」

イズル「うん。あのね……」

スルガ「いやー、結構な仲良しだな、ホント。まるでバーストスリンガー社のスポットマグナム42の…」ペラペラ

タマキ「いいなーイズルー、いいなー」

ケイ「………」ジトー

アンジュ「あの、どうかしましたか、ケイさん」

ケイ「…何でもないわよ」プイッ

スルガ「ああ、ほっとけほっとけ。勝手に嫉妬してるだけだかんな」

タマキ「ん? あー、ケイも羨ましいのら?」

アンジュ「そうなんですか?」

イズル「」ニコニコ

アサギ「」フッ

ケイ「……そうね、羨ましいわね」






ケイの部屋

ケイ「………」カシャカシャ

ケイ「」ソソギ

ケイ「ん、っと」ガタン

ケイ「」ピッ

ケイ「」ストン

ケイ「……あ、紅茶沸いたわね」

ケイ「」トポトポ

ケイ「……」ゴクッ

ケイ「」ハァ

ケイ(…アサギはいいわよね。ああやって、イズルにたくさん愛されて…)

ケイ(……分かってるわよ。アサギは、たった一人の家族なんだもの。特別な存在なんだってことくらい、分かってるわよ)

ケイ(……でも、羨ましい)

ケイ(私だって、イズルの特別になりたい)

ケイ「…そうなれたら苦労しないわよね」ハァ

コンコン

ケイ「はい?」

イズル『ケイ? いる?』

ケイ「イズル? 入っていいわよ?」

シュッ

イズル「や」

ケイ「どうしたの? アサギと一緒にいたんじゃ…」

イズル「うん。そうだけど…」

ケイ「何か用?」

イズル「うん。…えっと、ちゃんと言おうと思ってさ」

ケイ「何を?」

イズル「僕も気付かなかったよ、ごめんね?」

ケイ「ねぇ、何の話?」

イズル「お兄ちゃんに妬いてるんだよね?」

ケイ「なっ…」

イズル「いや、まぁ、僕もそれはちょっと悪かったなぁって思ってさ」

ケイ「わ、私は、別に…そんな……た、確かに、その…」

イズル「うん。ごめんね――お姉ちゃん」

ケイ「………は?」

イズル「ん?」

ケイ「ちょっと、イズル。今、何て?」

イズル「いや、だからさ、ケイお姉ちゃん」

ケイ「誰がお姉ちゃんよっ!」ガタッ

イズル「ええっ!?」




ケイ「…つまり? 私があなたにも家族らしく呼んでほしいと思っていたと?」

イズル「う、うん。や、そうなのかなって」

ケイ「誰よ、そんなこと言った人は」

イズル「え? いや、スルガとかタマキが、ケイがお兄ちゃんを羨ましがってる、って言うから…」

ケイ(あの二人は……)フー

イズル「あれ? 違ったの? あ、もしかしておか――」

ケイ「それは止めて。絶対止めて」

ケイ「……あのね、イズル。別に私、あなたのお兄さんに妬いたりとか…いえ、そうじゃないわね」

イズル「うん」

ケイ「正直に言うと、羨ましかったわ。アサギがあなたにとっての特別な人だってこと」

ケイ「何て言うか…アサギに甘えてるあなたを見ると、微笑ましくて…ちょっとだけ、良いな、って思ったの」

イズル「そっか…」

ケイ「うん…」

イズル「あのさ。ケイ」

ケイ「何?」

イズル「確かにさ、お兄ちゃんは大事な家族だけど、ケイも大事な人だよ?」

ケイ「…そう」

イズル「うん。スルガもタマキもアンジュも、皆、僕と一緒に戦ってきた仲間で、家族だもん」

ケイ「家族…」

イズル「そうだよ。血は繋がってないけど、ほら、タマキも言ってたでしょ? 皆家族みたいだ、って」

ケイ「そう、ね。そうだったわね」

イズル「うん。だからさ、ケイにだって、その、僕も甘えるよ、たぶん」

ケイ「…別に甘えなくてもいいわよ。それはアサギの特権みたいなものだし」

イズル「え? そう?」

ケイ「そうよ。今まで通りでいいの」

イズル「そっか」

ケイ「ええ、そうよ」

チーン!

ケイ「…ケーキ、焼けたけど。食べる?」ホホエミ

イズル「ん、いただこうかな」

ケイ「そう。じゃ、座ってて」ガタッ

ケイ(……家族、か)

ケイ(…色々と納得は行かないけど、今はそれでもいいかしらね)

イズル「」ニコニコ

ケイ(――見てなさいよ、イズル。絶対、私も『特別』にしてみせるんだから)

終わり。次行こう。

それぞれの道へ

スルガ・アタルの場合

ヒデユキ「スルガァ! 部品の交換は終わったのか!?」

ノリタダ「スルガァ! そっちのサスペンション古くなってるぞ! 取り替えておけ!」

タカシ「スルガァ! 終わったら腕立てと腹筋だぞ! 準備を忘れるなよ!」

スルガ「だぁーっ! いっぺんに言われたってできねーよ!」

フィジカルスリー「バカ野郎! 筋肉が足りてたらこれぐらい余裕だろうがッ!!」ムキッ

スルガ「り、理不尽だーっ!」

レイカ「おっすー、頑張ってるかー? スルガ整備官?」ニヤニヤ

スルガ「あ、整備長」

レイカ「おやっさんでいいってば。…いやー、リンリンに様子見て来てーって頼まれたんだけど…うまくやってるみたいじゃん」

スルガ「へへ、ま、ここは楽しいっすよ。兄貴たちも…まぁ、良くしてくれるし? 自分の機体の整備ってのも新鮮だし」

レイカ「そ。ま、楽しいならそれでいいよ。ほい」

スルガ「何すか、これ?」ウケトリ

レイカ「今度皆で集合しよ、って話」

スルガ「へぇ。そりゃまた、楽しみっすねー」

レイカ「でしょ? ほいじゃ、せいぜい頑張ってね、新人くん?」フリフリ

スルガ「あいよ、それじゃ、おやっさん」ビシッ

フィジカルスリー「」ムキッ

スルガァ! マタカヨーッ!?

レイカ「」クスクス

イリエ・タマキの場合

ワイワイガヤガヤ

幼稚園児「よっしゃ、次はタマキがオニー!」

タマキ「えっへっへー、次はあたしがオニなのらー!」

幼稚園児たち「わーっ、逃げろー!!」

先生「タマキちゃん、お客さんですよー」

タマキ「今忙しいのらーっ! …わぷっ」ドテーン

ケイ「……相変わらずね、アンタ」フー

タマキ「…ケイ!?」




先生「じゃ、ゆっくりね」

タマキ「ごめんなさい、後はお願いしまーす」

ケイ「…ずいぶんと楽しそうね?」

タマキ「まーねー、ガキの相手は楽しいのらー」

ケイ「アンタが先生、ねぇ」

タマキ「別にー、先生見習いなのらー」

ケイ「ちゃんと免許が取れる年になるまで、だったかしら?」

タマキ「ジャーマネさんには感謝してるよー? いろいろー、手回ししてくれたしー」

ケイ「…そう」クスリ

タマキ「ケイは何しに来たのー?」

ケイ「はい、これ」

タマキ「何これ?」

ケイ「今度皆で集まろう、って」

タマキ「ほへー、行く行く、絶対行くのらー」ニコニコ

ケイ「そ。じゃ、頑張りなさいよ、先生」

タマキ「うん!」

クロキ・アンジュの場合

アンジュ「……」スーハースーハー

チャンドラ「おい、アンジュ」

アンジュ「うわっ! …あ、チャンドラ、さん」

チャンドラ「驚かせたか? すまんな」

アンジュ「い、いえ。お気になさらず。…あの、任務ですか?」

チャンドラ「ああ。新しい量産型のテスト運行に付き合うことになった。詳しくはこれを」スッ

アンジュ「」ピッ

アンジュ「……」

チャンドラ「何か疑問があれば言ってくれ、行きながら話す」

アンジュ「はい、分かりました」

スタスタ

チャンドラ「…しかし」

アンジュ「はい?」

チャンドラ「平常時の君はずいぶんと違うな」

アンジュ「…っ、そ、それは言わないでください。直そうとはしてるんですが…」カァ

チャンドラ「まぁ、無理に直さなくてもいいとは思うが」

アンジュ「い、いえ。そうもいきません。これから来る人たちに、無様な姿は見せられないというか…」

チャンドラ「そうか。…気を付けろよ? 正直、君には頑張ってもらわないとならないからな」

アンジュ「は、はい。…そろそろ、式ですね」

チャンドラ「ん。私としては彼らに会う久しぶりの機会だ、楽しみだよ」

アンジュ「そう、ですね。イズルさんたちにまた会えるのは私も楽しみ、かもしれません」

チャンドラ「君は今度会うんだったか」

アンジュ「えっと、そうですね。チームで集まるという話でしたから」

チャンドラ「そうか。後輩育成はその日くらいは私に任せて、君は楽しむといい」

アンジュ「はい、ありがとうございます。リーダー」

チャンドラ「それは止せ。……このチームのリーダーは、私じゃない」

アンジュ「…そう、でしたね。すみません」

チャンドラ「いや、気にするな。私の勝手なこだわりのようなモノだしな」ピタッ

チャンドラ「さ、行くぞ。チームラビッツ」フッ

アンジュ「はい、ドーベルマン2」

アサギ・トシカズの場合

アサギ「……」カリカリ

MJP教官1「アサギ教官、今度のカリキュラムの新しい資料です」ドサッ

アサギ「ああ、ありがとうございます」ニコリ

MJP教官2「アサギ教官、月方面への開発補助部隊の育成計画の修正をお願いします」ドサッ

アサギ「は、はい。分かりました」

MJP教官3「アサギ教官。今期の予算案に異議があると、GDF各方面からの通達が来ています。目を通してください」ドサッ

アサギ「…は、はい……」ヒキワライ

アサギ「……」カリカリ

アサギ(…ふぅ、こりゃ、居残りになるかもな……)

アサギ「」チラッ

資料や書類「」ドッサリ

アサギ「」イガー

MJP教官4「アサギ教官」

アサギ「こ、今度は何ですか……練習機が暴走でもしましたか」

MJP教官4「いえ、あの、来客です」

リン「――忙しそうね、アサギ教官?」

アサギ「す、スズカゼ艦長!」ガタッ




リン「ずいぶんと大変そうね」クスクス

アサギ「ええ、まぁ。他の皆さんも手伝ってくれていますが、全然追いつかないですよ」カリカリ

リン「そう。頑張ってね。来週の集まりのためにも」

アサギ「分かってますよ。そこには絶対間に合わせますから」カリカリ

リン「ふふっ、楽しみにしてるわ。アサギ」

アサギ「他の皆に会える良い機会ですからね、逃しませんよ」カリカリ

リン「そういえば、あの子、相変わらず描いてるんですってね」

アサギ「らしいですね。ザンネンながらケイから聞いただけですけど」カリカリ

リン「そう…それじゃあ、私ももう行くわね。来週のためにも」ガタッ

アサギ「お忙しい中、わざわざすみません。お見送りもできなくて」カリカリ

リン「いいのよ。こっちも少し様子を見ておきたかっただけだから」

アサギ「それじゃあ、また来週。スズカゼ艦長」ビシッ

リン「ええ、さようなら、アサギ教官殿」ビシッ

バタン

アサギ「……」

イズル『お兄ちゃん』ニコリ

アサギ「…頑張るか」フッ

クギミヤ・ケイの場合

イリーナ「はーい、次はそこを上いってー、そう、返しを忘れずにね」

ケイ「」チクチク

イリーナ「お、良い感じじゃない、お嬢」

ケイ「そ、そうかしら?」

イリーナ「ええ、この調子ならちゃんと六人分できそうじゃない、マフラー」

ケイ「そう…良かった」フー

イリーナ「ふふっ、にしても、ずいぶんと気合入れるのね。この赤いの」

ケイ「そ、そんなこと…ありますけど……」

イリーナ「うんうん。男の子はねー、何かと手作りに弱いものなのよねー。ついつい意味深に取っちゃうのよ」

ケイ「…喜んで、くれるかな?」

イリーナ「むしろ喜ばなかったら、イズルくんを張っ倒すわよ。ウチのケイが頑張って作ったんだから」

ケイ「そ、それはやめてよ。イズルが…」

イリーナ「もー、冗談よ、冗談。お嬢の未来の旦那さんに悪いことなんかしないって」

ケイ「だ、だん……」

ガチャ

ジェーン「お嬢ー、そろそろ料理の方始めよっかー」

ケイ「あ、うん」

イリーナ「おっと、じゃあ、また今度ね、お嬢」

ケイ「ええ。ありがとう、イリーナ」

イリーナ「気にしない気にしない。かわいい妹分だもの」

ケイ「何それ」クスッ

ジェーン「お嬢ー?」

ケイ「今行くから。それじゃあ」

イリーナ「ええ、それじゃあ」

ヒタチ・イズルの場合

イズル「」カキカキ

イズル「!」

イズル「」ゴシゴシ

イズル「」カキカキ

テオーリア「イズル」ガチャ

イズル「あ、お母さん」

テオーリア「今度は良さそうですか? イズル」

イズル「ええと、そうですね。きっと今度こそ、です」

テオーリア「そうですか。うまくいくといいですね」

イズル「はい」

テオーリア「」ニコニコ

イズル「」ニコニコ

コンコン

イズル「はい?」

ダニール「イズルさん、ご面会です」

イズル「あ、分かりました」

テオーリア「彼女でしょうか?」

イズル「たぶん」

ケイ「イズル…とテオーリアさん」

テオーリア「こんにちは、ケイ」

イズル「ケイ。久しぶり」

ケイ「ええ。新しいマンガ、どう?」

イズル「うん。今度は自信あるよ。きっとアンジュもホメてくれるかな、たぶん」

ケイ「ずいぶんと力の抜ける自信ね」フー

テオーリア「イズルらしいものですね」ニコニコ

ケイ「ええ、本当に」ニコリ

イズル「……うーん」

ケイ「何?」

テオーリア「どうかしましたか?」

イズル「いや、なんか、お母さんが二人に増えたみたいだなぁ、って」

ケイ「誰がお母さんよ、誰が」

テオーリア「ふふっ、その場合はイズルがお父さんですか?」

イズル「?」

ケイ「…そ、そうだ、あの、これ…」

イズル「あ、ケーキ?」

ケイ「ええ。その、差し入れも兼ねて、ね。試食してほしくて」

テオーリア「まぁ。ダニール、紅茶はありましたか?」

ダニール「こちらに。今、淹れてきます」

ケイ「ありがとうございます。それじゃあ、準備の方を…」ガサゴソ

イズル「わぁ、何て言うか、その、変わったね?」ニコリ

ケイ「…イリーナたちの指導のおかげよ。…ねえ、そんなに前のケーキ、お、美味しくなかった?」

イズル「え? えっと、すごく甘い、かな?」

テオーリア「あら、それは普通のことではないのですか?」

イズル「いや、あの……」

ケイ「そ、それはともかく、さ、どうぞ」

ダニール「紅茶をどうぞ…こちら、ミルクと砂糖です」

イズル「あ、ありがとうございます」

テオーリア「それでは」

ケイ「は、はい」ゴクリ

イズル「」パクッ

テオーリア「」パクッ

ケイ「」ドキドキ

イズル・テオーリア「「美味しい!」」

ケイ「ほ、ホントに!?」

イズル「うん。すっごく美味しいよ! アンジュさんみたいだね!」

テオーリア「とても美味しいですよ、ケイ」ニコリ

ケイ「よ、良かった……」ホッ

イズル「今度の集まりの時にも持ってきたらいいんじゃない? 皆びっくりするよ、たぶん」

ケイ「そ、そんなに……前の、ダメだった?」ガクッ

イズル「あ、や、そういうことじゃなくて…ええと……」ワタワタ

テオーリア「」ホホエミ




イズル「……っ、んー」ノビ

ケイ「もう今日は休んだら? 疲れてるみたいだし」

テオーリア「そうですよイズル。朝からずっと描いていますし…」

イズル「そう、ですね。今日は、もういいかな」

テオーリア「さ、食事にしましょうか。ケイも、一緒に食べますか?」

ケイ「え、いいんですか? 私…」

イズル「それはいいですね! 僕もケイとまだ色々と話したいし」

テオーリア「そうですよ、ケイ。それにケーキのお礼もしたいですから」

ケイ「そ、それじゃあ。お言葉に甘えて」

ダニール「皆さん、食事の準備ができました」ガチャ




イズル「ごちそうさまでした」

ケイ「…ご馳走様でした」

テオーリア「ご馳走様でした」

ダニール「…それでは、私は片付けを」

ケイ「私もお手伝いします」

ダニール「いえ、あなたは客人ですので…」

テオーリア「そうですよ、ケイ。あなたはくつろいでくれていいんですよ?」

ケイ「…ありがとうございます」

テオーリア「ふふっ、お互いにしか分からないお話もあるでしょうし、私はここで失礼しますね」

ケイ「え……」

イズル「え、もう帰るんですか?」

テオーリア「ええ。私にも用事がありますから。…ダニール?」

ダニール「はい。参りますか?」

テオーリア「ええ。行きましょう」

ケイ「あ、あの、テオーリアさん」

テオーリア「それでは、イズル、ケイ。また今度」ニコリ

イズル「はい、また今度。ダニールさんも」

ダニール「ええ、また今度」

ガチャ、バタン

ケイ「…気を遣わせちゃったわね」

イズル「うーん…わざわざ帰らなくてもよかったのに」

ケイ「もう行っちゃったし、しょうがないわ。それより」

イズル「あ、そうそう。聞かせてよ、皆のこと」

ケイ「うん――」




イズル「そっかぁ。スルガ、うまくやってるんだね」

ケイ「ええ。あのピットクルーの人たち、むさ苦しい、って嫌がってたけど、最新鋭の兵器に触れられて楽しい、って」クスリ

イズル「あはは、スルガらしいや」

ケイ「タマキも…まぁ、良い先生、って評判良いみたいね」

イズル「子供と遊んでる姿は結構思い浮かぶけど…先生かぁ」

ケイ「イズルや私のイメージじゃ先生は教官くらいなモノだから、あまり参考にはならないわね」

イズル「うん。それはそうかも。…そういえば、艦長はどうしてるの?」

ケイ「今は新しい基地の設営の支援をしてるらしいわね。今度の集まりの後に、出るんですって」

イズル「そっか。…あんまり、会えなくなっちゃうんだね」

ケイ「…そうなるわね、でも、二度と会えない訳じゃないから」

イズル「うん。そうだよね。…ところで、アンジュはチャンドラさんとうまくやってる?」

ケイ「量産機の開発はうまくやってるらしいわよ。…相変わらずの暴言っぷりみたいだけど」

イズル「あはは、チャンドラさん、大丈夫かなぁ」

ケイ「少なくとも楽しんでるみたいだったわね。アンジュみたいな暴れ馬はツッコミがいがあるんじゃない?」

イズル「そう? …そういえば、チャンドラさん、もう少しだったね」

ケイ「ええ。イズルのところにも招待状は来た?」

イズル「うん。…楽しみだなぁ。チャンドラさんの奥さん、キレイな人なんだよね」ニコニコ

ケイ「……そう」ムッ

イズル「?」

ケイ「何でもないわよ。…そうそう、アサギが会いたがってたわよ」

イズル「お兄ちゃんが?」

ケイ「ええ。…まったく、実はあなた以上にブラコンなんじゃないかしらね、アサギ」

イズル「僕としては嬉しいけどなぁ…」

ケイ「…少しは兄離れしなさいよ」

イズル「えー、いいじゃないか。お兄ちゃんのこと、僕は大好きだよ?」

ケイ「……アサギが羨ましいわね」ハァ

イズル「あはは、ケイにはタマキがいるじゃない」

ケイ「そういうことじゃないわよ…」

イズル「?」

ケイ「…じゃあ、そういうことだから。来週ちゃんと忘れないでよ?」

イズル「うん。あ、もう、帰るの?」

ケイ「ええ。泊まるわけにもいかないから。そろそろ、ね」

イズル「そっか。じゃあ、送るよ」

ケイ「……ありがとう。じゃあ…」スッ

イズル「何これ?」

ケイ「その、これからの季節、寒くなるし、よかったら…」

イズル「わぁ、マフラー? ありがとう。買ってきてくれたの?」

ケイ「い、いえ。私が、ね?」

イズル「えっ、手作りなの? すごいね、全然そんな風には見えないや」シュルシュル

ケイ「あっ……」

イズル「うん、あったかいよ?」ニコリ

ケイ「…巻き方間違えてるわよ」クスッ

イズル「あれ?」

ケイ「ほら、こうやって通して固定しないと…」スッ

イズル「う、うん…」ドキリ

ケイ「うん、これでいいわ」

イズル「あ、ありがと……」

ケイ「じゃあ、行きましょうか」シュルシュル

イズル「うん、行こう。…あれ、ケイも?」

ケイ「ええ。皆の分も作ってあるのよ」

イズル「そっかぁ。皆と色違いでお揃いなんだね」

ケイ「いいでしょ?」ニコリ

イズル「うん、すっごく」




イズル「……」

ケイ「……」

ケイ「どう? マフラー」

イズル「良い感じだよ。首があったかいだけで変わるんだね」

ケイ「そう。良かった」

イズル「……もう少しでさ、一年終わるんだね」

ケイ「そうね。こうなってから、初めての年越し、ってことになるのかしら」

イズル「案外さ、時間が経つのって早いよね。何だか、宇宙にいたのがつい最近のことみたい」

ケイ「そう、ね。これまで、目まぐるしいくらい忙しかったし、変化が多かったから、余計にね」

イズル「僕は……」

ケイ「ん」

イズル「僕は、変わったかな?」

ケイ「ヒーローに?」

イズル「そうじゃ、なくてさ。ヒーローやマンガ家を目指してみたけど、何かが変わったかな、って」

ケイ「どうかしら?」

イズル「ケイからすれば、どう? 変わった?」

ケイ「そうね…あんまり変わらないわ」

ケイ「ヒーローになる、って子供みたいに目を光らせてた頃と、あんまりね」

イズル「そっか…」

ケイ「ええ、そうよ。…いいじゃない、変わらなくたって」

イズル「え?」

ケイ「イズルはイズルのままでいい、ってことよ。きっと、皆そう言うわ」

ケイ「それに、もうあなたはヒーローよ、立派に」

イズル「そう、かな?」

ケイ「少なくとも、私にとっては、ね」

イズル「…ありがとう。ケイは…結構、変わったね」

ケイ「そう?」

イズル「うん。前はさ、皆にもちょっと冷たくて、仲良くしようなんて、全然してくれなかったし」

ケイ「ご、ごめん…」

イズル「あ、非難してるわけじゃないよ。僕こそごめん」ワタワタ

イズル「今のケイはさ、すっごく優しくて、皆のこと面倒見てくれて――僕も色々と助けてもらってさ」

ケイ「あ、ありがとう……」

イズル「……そうやって考えると、皆、もう一緒のところにはいないんだね」

ケイ「…そうね。皆、自分の行きたいところに行ったのね」

イズル「…いつか」

ケイ「いつか?」

イズル「タマキやスルガ、アンジュ、お母さんやお兄ちゃん――ケイとも、さよならする日が、来るのかな?」

ケイ「……そう、かもね」

イズル「………」

ケイ「でも、私は」

イズル「?」

ケイ「私は、できるなら、イズルとこうやってまだまだのんびりと歩いてたい、かな」

イズル「ホント?」

ケイ「ええ。皆も、ずっとさよならすることなんてないわよ、たぶん。どこかでまた会ったりできるから」

ケイ「私たち、そうやって出会ったんじゃない?」

イズル「え?」

ケイ「偶然――みたいなモノで、私たちは同じ道に入ったの。それで、今は道が別れちゃってるだけで」

ケイ「どんな人も、それは同じ。別れても、道はまた合流できるわ、きっと」

イズル「合流、かぁ」

ケイ「ええ、そうよ」

イズル「…うん! そうだよね!」

ケイ「」ニコリ

イズル「」ニコリ

ケイ「……ほら、もう着いたわ」

イズル「そっか。じゃあ、僕はこれで」

ケイ「ええ。また、来週」フリフリ

イズル「うん、また、来週」フリフリ




イズル「」テクテク

イズル「」ハー

イズル(寒くなってきたなぁ…)

イズル「」ギュッ

イズル(あったかい……)

キラッ

イズル(…あ、流れ星、だよね?)

イズル「キレイに並んでるや……」

イズル「」ヒトミツムリ

オペレーターたち『』ニコリ

ピットクルーたち『』ワイワイ

ドーベルマン『』ニッ

レイカ『』ニッ

リン『』フッ

スルガ『』ニッ

タマキ『』ニコニコ

アンジュ『』ホホエミ

ケイ『』ニコリ

アサギ『』ニコリ

テオーリア『』ニコニコ

イズル「」パチッ

イズル(うん、そうだよね。今、僕は一人だけど、皆がいる)

イズル(今は違う道にいても、どんなところに行っても)

イズル「――心は、一つじゃない」ギュッ

終わり。
ネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン Oさん視点 未来予想図Ⅱ
スクライドなタマキ チャンドラの結婚式 リンリンの後日談 初夜続き わんわんお先輩 にーちゃん続き
それでは。

お久しぶりです。
初めてのスパロボをずっとやってたら時間が過ぎてしまいました。全然書けてないので今日はやりません。
一週間である程度書いてきたいと思います。
期待しないでお待ちください。

スパロボにマジェプリ出て大丈夫なのか不安になってきました。
改悪されないといいなぁ。

いやぁ、スパロボKは強敵でしたね!
一週間どころじゃなかった…。すみません。
とりあえず一つだけやっていきます。

初めてのスパロボはUXにすべきだったんですねぇ…。
安いからって買うんじゃなかったぜ、ミストさん。

『艦長。――僕はあなたのことが好きです』

これまで色々と経験してきたはずなのに、そのときの告白は、私を酷くドキリとさせた。
もう今年で二十八にもなるのに、その瞬間だけ、私は少女にでもなったような錯覚を覚えていたことが否定できない。
それは、あれから時間が経った今でも――

「リンリーン、終わったよー?」

「……っ、レイカ」

はっ、と白昼夢のような気分から覚めた。
私が意識を現実に集中させれば、友人が目の前で右手を何度か眼前で往復させているのが見える。
どうやら、少しばかりぼうっとしていたらしい。急なことに驚いて、私は距離をほんのわずかに取ってしまう。
すると、レイカは私のその挙動不審な態度に違和感を抱いたらしく、一瞬眉をひそめた。
…しまった。私は何をしているんだろう。

「ちょっとー、さっきから呼んでたのにリンリンったらずーっとぼけーっとしてるんだもん」

どしたの? といつものように軽い調子でレイカは私の顔を覗き込む。

「……何でもない。たぶん、疲れてるのよ」

対して、私はそっけなく言うと、くるりと回れ右をした。
あらそう、と背後からレイカはそれだけ言って、やれやれ、と言わんばかりに息を漏らす。
ただし、反応はそれだけで、彼女はそれ以上に何かを言うこともなく、後ろで残った仕事をしているピットクルーに何事か檄を飛ばした。
あまり深く聞いてはほしくない、という私の気持ちを察してくれたらしい。
こういうところが、彼女と私を長年の友人であることの証明のようによく感じる。

先程までいたのは、地球のグランツェーレ都市学園、そこにあるアッシュ専用の整備ドックだ。
以前の大きな作戦で大破してしまったリーダー機体の大幅な修理――それと、アップグレード。
そのためにレイカたちピットクルーの面々が連日活動している場所。

「じゃ、私着替えてくるからー」

待ってて、と言い残してから奥の方へと消えるレイカの背を尻目に、私は遠くから地球の救世主――レッドファイブを眺める。
日々、少しずつ姿を変え、強さを変えていくアッシュには、頼もしさを感じる気がする。
それでいて、もう一人は。

目を細めて、アッシュの操縦席に視線を移す。
誰もいないそこに、もう一人の救世主の姿を何となく浮かべてみる。
彼は、変わっただろうか。頼もしくなったのだろうか。
…そして、私は。

「お待たせー」

その先を考えてみようとする前に、私服に着替えたレイカが現れて、私は意識を変える。
少しだけ、そのことを惜しむような気持ちを抱きつつも、独りでまた考えていればいい、と判断を改めた。
チラリ、ともう一度だけアッシュの雄大な姿を目に収めておく。

「…ん、行きましょうか」

二人で並んでそこを離れて、施設の出口を目指す。
今日は、久しぶりに取れた時間を使って、軽く街まで飲みに行くことにしていた。
テキトウにお互いの近況を語り合いながらゆったりと歩く。
近況といっても、ずっと仕事しかなかったので、大した話にもならないけれど。

「でさー、せっかく開発した新パーツを試してほしいのか知らないけど、急に持ち込んで来てさ…」

別の部署からの無茶ぶりに愚痴を零すレイカの声を耳にしながら、私はまったく別のことを考えていた。
……ぼんやりとしていたのは、疲れている、というのもあった。
侵略者との大きな戦いに一応の収束は付いたものの、その戦いの代償の大きさを補填するために、私は忙しない日々を送っていた。
今、心の緊張が解けるのは、こうして同じく仕事をしているレイカと一緒に帰るときぐらいのものだろう。

…でも、もう一つ。
もう一つだけ、私のこの覚束ない思考の感覚を与える原因はある。

――そして、それは急に現れた。

エレベーターで出口のあるフロアに到着して、自動で開いたドアを抜けた時のことだった。
愚痴を止めて今度更なる昇進を果たすこととなったアマネのことを語り出すレイカが突然に出口へと向かう足を止めた。
どこか気の入っていない私はレイカの動作に数秒遅れて、どうしたの? と足を止めて振り返る。
レイカは私の方を――いや、正確には振り向いた私の背後の方を見ているようだ。
何かあるのだろうか、と私が確認するよりも早く、彼女は答えを教えてくれた。

「お、やっぱり。イズルくんじゃーん!」

レイカの声に、私の身体はさっきとは違ってすぐに反応した。
すっともう一度振り返ってみると、そこには、部下である少年と少女がいた。
少年の方――ヒタチ・イズルは、松葉杖を右肩に差し込んで出口に続く通路の隅で、必死に歩こうと動いていた。
少女の方――クギミヤ・ケイは、そんな彼に手助けしたそうな視線を送りつつも、ただ見守っていた。

時々会うチームラビッツのメンバーであるケイはともかく、イズルの方は本当に久しぶりに見た姿だった。
彼に最後に会ったのは、一度見舞いに出た時だけだったから、一か月ぶりになるのだろうか。

といっても、たかだか一か月。見たところ、彼は前と全く変わらない様子でいた。
強い意志の宿った目で、つまづきそうになりながらも懸命に前へと歩こうとしていた。

「あ……」

「おーい!」

私は呆然としたように口を開いた。
レイカのように何か大きな声で話しかけようとしていたのだけれど、何かを口にする前に、レイカが一気に彼らの所に走っていた。
……もう、行動力あるんだから。
仕方ない。それに、ちゃんと近付いて話した方が良いに決まっている。

走るレイカの後ろから、私はゆっくりと歩く。
レイカ、人がいないからいいけど、あんまり目立つようなことしないでよね。
レイカの呼び掛ける声に気付いたのか、二人は動きを止めて、顔だけこちらに向ける。
そして、私たちのことを見た途端、嬉しそうに顔を輝かせてくれた。

「艦長! 整備長も! …うわっ!?」

「――イズル!」

レイカに負けないくらい大きな声をイズルが上げた。
彼はそのまま勢いのまま杖を持った手を振り上げてしまいそうになって、バランスを崩してしまう。
慌ててケイが咄嗟に支えて体勢を整える。
……まったく、仕方のない子ね。
内心、変わらない彼に何となく微笑む。
私と違って感情を大っぴらに表すレイカは、けらけらと笑った。

「やっ。ケイちゃんも。リハビリ?」

あの日の戦い以来、完全にアッシュを乗りこなしてみせたイズルの老化現象は、少しずつだけれど収まりを見せていた。
少なくとも手の震えは治ったようで、見舞いに行った時もマンガを描いていたことを覚えている。
まぁ、それでも、一か月経った今でも、松葉杖無しではあまり歩けないらしい。
その辺りのことは慣らしていくしかないだろう、というのが彼の主治医を担当しているルーラの意見だ。

そういう訳で、こうして時々病室を出て、動く訓練をイズルはしていると聞いていた。
イズルのことだから危なっかしいだろう、ということで、イズルの仲間であるチームのメンバーが見守ると決めた、らしい。
ついでに言うと、これはアサギが発案したことらしい。…どうも彼はいわゆるブラコンというヤツになってしまったようだ。

「ええ。イズル一人じゃ不安ですから」

レイカの声に頷くと、ケイはそっとイズルの姿勢がしっかりと改まるのを確認して離れた。
まるでお姉ちゃんね、と何となく思う。
たぶん、彼女からすれば、もっと違う風に見て欲しいのだろうけれど。
ケイの言葉に、イズルは少しだけザンネンそうな声を漏らす。

「あはは…そろそろ一人でリハビリしたいんだけどなぁ」

「ダメよ。また倒れでもしたらどうするの?」

「…うん」

窘めるようなケイの言葉に、やはりイズルはザンネンそうに頷いた。
……やっぱりお姉ちゃんね。いや、お母さんかしら?
何だか自分の立場が奪われたような感覚がして、むずがゆく感じる。
そもそも私は独身だから、子供のいる親の感覚なんて分からないけれど。

「あっはっは、イズルくん、尻に敷かれちゃってー」

そんな私の横で、男の人のように豪快な笑い声を上げて、レイカがからかうような笑みを浮かべる。
…イジワルなお姉さんだこと。まぁ、私もレイカもそろそろ三十路なので、『おばさん』になっていくのかもしれないけれど。
いや、まだ早すぎるわね。私もレイカも『お姉さん』で全然通じるだろう。

「へ?」

「なっ、あ、ち、違います、整備長!」

レイカの言うことの意味が分からなそうに首をかしげるイズルと顔を赤くして両手をぶんぶんと振り回すケイ。
ケイは、かわいいわよね。…羨ましいものだわ。

一瞬浮かんだくだらない考えに、内心でため息を吐いた。
何とつまらない嫉妬心だろうか。
いくら自分に男っ気がないからって…私という人は。
こんなだからいつまで経っても独り身から解放されそうな機会に恵まれないのだろうか。
……やめよう。考えても仕方ない。

軽く自己嫌悪に陥りかけて、すぐに持ち直す。
そのまま私たちはその場でお互いのことを話し始めた。
仕事のこと。マンガのこと。お菓子のこと。お酒のこと。
…どんどん話の内容が脱線しているような気がする。
いや、気のせいじゃないけれど。
特に最後の話は、絶対に未成年の二人に語る内容とは言えないに違いない。

「…あ、そろそろ戻らないと」

そうして話に花を咲かせているうちに、時間が来てしまった。
イズルの言葉に腕の時計を確認してみると、確かに、私の記憶が正しければそろそろ患者の外出時間を過ぎてしまう頃だった。

「そうみたいね…」

気付かないうちに私はザンネンそうな調子の声を漏らす。
…もっともっと、彼と話をしたかった。
言いたいことが、たくさんあった。
艦長として、教官として。
――個人として。

まぁ、でも仕方がないだろう。
また会える機会はあるはずだ。…きっと、遠い日になるだろうけれど。
今日はもう、このまま――

「…あ、いっけない」

と、急にレイカがわざとらしい声を上げて、両手をポン、と打った。
その様子は、何かを狙ったかのようだった。

「? どうかしたんですか?」

そんなレイカの行動に、特に疑念を抱いていないイズルが、純粋な彼らしく気遣うように尋ねる。
すると、彼女はその質問を待っていたと言わんばかりにニコリと微笑んだ。

「んー、忘れ物しちゃったみたいでねー?」

「…忘れ物?」

私はありえないことに思わず聞き返す。
今日、彼女には手荷物なんてなかったはずだ。
今朝だって、一緒に出勤したのだから、私はそれくらいのことは知っている。
一体何を考えているのだろう。
私がそのことを言及しようとした途端、レイカはまくしたてるように声を出す。

「いやー、私としたことがうっかりうっかり。リンリン、ちょっと待ってて」

「ちょっと、レイカ…」

「イズルくん、ケイちゃん、じゃねー」

私が止める声も聞かず、それだけ残して、レイカは戻って行ってしまった。
何のつもりか、なんて聞く必要もない。
私の様子を見て、わざわざ私だけを残してくれたんだろう。
…まったく……ありがと。

「…私、飲み物買ってくるから」

レイカがその場を去った途端、今度はケイが思いついたように言うと、くるりと方向転換した。
こちらをチラリと見た彼女は、微笑んでいて。
積もる話もあるだろう、とその目は言いたげでいた。

「ケイ?」

不思議そうにするイズルに何も言わず、ケイはすっとその場を離れていった。
このまま私とも別れて、イズルと二人きりで帰る良い機会だったというのに。

「…ありがとう」

ケイの背中に礼を告げながら、私はイズルの方へと向き直る。
イズルは特に意味を理解していないのか、不思議そうにしていたけれど、すぐに私の方へと意識を向けた。
二人だけになって、一気に何だかよく分からない緊張を感じながら、私は軽く口火を切った。

「…その後、どう? 身体の方は…?」

「ええと、まぁ、大丈夫です。……たぶん」

「…そう」

それだけの言葉を交わして、私たちは互いに黙ってしまった。
何故だろうか。無事に帰ってきた彼に、短い見舞いの時には伝えられなかったことをたくさん伝えようとしていたのに。
言葉が浮かんでは、消えていってしまう。
どれも、今すぐに言いたいことに感じられなかった。

「あの、艦長」

「…何?」

もどかしい感覚に悩んでいるうちに、沈黙に耐えきれない、といった調子でイズルが話しかけてくる。
何も話せなくなっていた私は、とりあえず続きを促す。これが何か話すきっかけになるかもしれない、という期待があった。
言われた彼は少し困ったような顔をして、頭を掻きながら、口をゆっくりと開いた。

「その、身体のこと、ご心配おかけしたみたいで、すみませんでした」

「……そんなこと、気にしなくてもいいわよ」

とりあえず、私はそう返した。
心配なんて、いくらでもかけてくれていい。
ちゃんと生きていてくれているなら、私は、それだけで嬉しいのだから。
すると、イズルは表情を変えることなく、やはり叱られた子供のような顔をしていた。

「いや、あの、お兄ちゃんが『艦長がとても気にしてた』って言っていたものですから」

ああ、なるほど、と納得する。
確かに、アサギにはよくイズルの体調のことを聞いていた。
そのときの私は、まぁ、少しばかり冷静さというものが足りていなかったのだ。
イズルの身体が安定し始めたということをまだ知らなかった、というのもあるけれど。
…仕方ないだろう。大事な生徒のことなのだ。落ち着きがなくても、仕方ない。

ごほん、と私は自分の気持ちを改めるために咳払いをした。
私の思考など知る由もないイズルは、慌ててぴん、と背筋を立てた。
こういう動作には、私の教官時代の経験が生きているのかもしれない。
くすり、と何となくおかしくて、口元が綻んでしまう。

まぁ、おかげで一つだけ言っておきたいことをしっかりと言えそうかしら。
私は、なるべく優しく、と意識しながら、そっと言葉を紡ぐ。

「別に、気にしなくていいわよ。その、元気なようで……安心、したわ」

最後の方は、若干消えそうな音量で呟くような声になってしまう。
あの日の戦いで死にかけた彼のことをつい思い浮かべてしまって、声に力が入らなかったんだろう。
……本当に、よく生き残ってくれた。

いけない、お酒を飲んでいるわけでもないのに、涙が出てしまいそうになる。
私は顔を少しだけ逸らす。彼に自分の表情を見せたくなかった。自分がどんな顔をしているのかも分からないからだ。
もし、泣き顔にでもなっていたら、情けない。

イズルは何も言わなかった。
妙な静寂が私と彼の周りを支配していた。
…まさか泣き顔だったんだろうか。

いや。そもそも私の声がちゃんと聞き取れていたのかも怪しいか。
もしかしたら、私の言葉が聞こえなくて、戸惑っているのかもしれない。
それなら、と私は逸らした顔を正面へと向き直させる。
彼は、まだ困った顔をしているだろうか、それとも。

イズルは――――

「ありがとうございます、艦長!」

嬉しそうに、笑っていた。
ああ、しっかりと私の安堵の言葉は聞こえていたらしい。

…これは、いけない。
まるで太陽のように輝くその顔に、私は魅力を感じ始めていることに気付く。
元々、知っていた。彼の優しさも、頼りになるんだかならないんだか分からない強さも。…その笑顔の力も。

ああ、そうか。
私が、あの告白をいつまでも脳裏に刻んでいるのは。
たった一つの、単純すぎる答えのせいだった。
それを今、理解した。

「イズル」

彼の名前を、呼んだ。変な感覚だった。
ただ、いつもみたいに名前を呼ぶだけなのに、これまでとは全然違う気がした。
…何かが、変わってしまったんだろう。
私の、心の中で。

「はい?」

そんなことは知らずに、イズルは笑みを浮かべたまま、反応する。
私は、自分の変化を感じながら、思うままに言葉を紡ごうとする。

「あなたが、その、本当に気に病んでいるのなら」

「は、はい」

イズルが緊張した様子で身を改めた。
こういうところは学生時代の習性なのだろう。
その奇妙でかわいらしい動きに、いくらか私もリラックスできた。

ぎゅ、っと下ろしてある両の拳を握り直して、私は一歩踏み出した。
イズルとの距離が、近付く。
息のかかりそうな、ところまで。

「艦長?」

幼い印象を感じる彼の、それなりに整った表情を一瞥して、私はその瞳を吸い込まれるように見つめる。
この距離でも、幼い彼は異性としては何も感じないらしく、戸惑うような目をしているだけだった。
今は、それでも構わない。…これから、だもの。
私はゆっくりと、その首に両手を回した。

「え、ちょっと…」

そこまでして、イズルは困ったような表情を見せた。
それはそうだろう。いきなり身体の距離を縮めているのだから。
しかし、私は止まらない。
自分の気持ちを、確かめるためにも。牽制のためにも。

「……これはあなたの罰、ね」

「かんちょ…っ!?」

首に回した手を使って彼の身体を抱き寄せた。
一気に私と彼の距離がゼロになる。
案外、ファーストキスなんて、淡泊なモノだった。
それは当たり前だろう。ただ、唇と唇をくっつけるだけなのだから。
でも、それだけの行為に、私の小さな心臓は大きく拍動していた。
男の子のくせに、結構柔らかい唇してるのね。
…少し、ずるいわ。

目を見開いているイズルの瞳を見据えてから、私は顔を引いた。
ちゅ、と簡素な水音と共に私とイズルの唇が離れてしまう。
ああ、少し惜しいな、と思った。

「へ、え、あ……え、ええっ!?」

「――か、艦長!?」

あわわ、と松葉杖を持たない手で口元を押さえて動揺した表情を見せるイズル。
目の前で起きた事態に驚愕とも怒りとも見れる感情を露わに迫ってくるケイ。
そして、熱くなってきた顔を見せないように踵を返してその場を走り去る私。

何ともまぁ、だらしなくて、大人らしさの欠片もない先制だった。
我ながら、いい年して何を乙女な心持でいるのだろう、と思う。

――ごめんなさいね、ケイ。
私、あなたのライバルになるかも。
イズル。この私に向かってあんなこと言ったんだもの。責任取らせてもらわないと、ね?

終わり。やべぇ、時間かけすぎた。
ホント、こんなんでごめんなさい。
次はちゃんと書く、たぶん。
ネタ候補
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン Oさん視点 未来予想図Ⅱ スルガの進路
スクライドなタマキ チャンドラの結婚式 初夜続き わんわんお先輩 にーちゃん続き キャラソン収録会
では、また今度。

いや終わりにする気はないんだぜ?
ただちょい書けてないんですよ。ごめんね。
期待しないで待ってください。どっかで一気にやりますから。

年末には何かやろうと思ってたのに…。
久しぶりに一本書きます。

新年もあけまして

大晦日 地上――グランツェーレ都市学園・付属病院

イズル「」カキカキ

イズル「……」

イズル「」キョロキョロ

イズル「」ソワソワ

コンコン

イズル「はい!」

ガチャ

ルーラ「あら、ずいぶんと元気そうね、イズルくん」

イズル「…あ、ルーラさん」シュン

ルーラ「ええと、ガッカリしちゃったかしら?」

イズル「い、いえ。そんな…」ハハハ

ルーラ「気にしなくていいわよ。…あの子たち、もう少ししたら来るそうだから」

イズル「ホントですか!」パァ

ルーラ「ええ。さ、早く検査を終わらせましょう」ニコリ






イズル(ウルガルとの戦いが終わって、もう二週間が過ぎた)

イズル(僕の身体の不調も、あれ以来ゆっくりと収まってきて、まだ入院しているけど、問題なく生活できるくらいに戻ってきているらしい)

イズル(実際、この入院生活も、今じゃマンガを描く合宿生活みたいなモノになってきている)

イズル(……まぁ、それを言ったら、呑気すぎだ、ってお兄ちゃんには苦笑いされたし、ケイにもちょっと怒られてしまった)

イズル(それで、今日で今年が終わるから、って戦いの後始末で忙しい皆が集まる――そう聞かされたのが、昨日)

イズル「」ボー

イズル(……のはずなんだけどなぁ)

イズル(…もう二十三時)チラッチラッ

イズル「…年、越しちゃうよ?」

イズル(…もしかして急用でも入ったのかなぁ。スルガとかも、最近は大変でしょうがないって愚痴ってたし……)

イズル「………」

イズル(…何か、こんな年越し、やだな)

イズル「仕方ない、のかなぁ」

???「何がだ?」ガチャ

イズル「!」

アサギ「悪い、遅れた」

イズル「お兄ちゃん!」ガタッ

アサギ「おい急に起き上がるなよ。一応は入院患者だろうが」

イズル「もう、そうしたくもなるよ! こんな時間なんだよ!?」ビシッ

アサギ「あー…いや、悪かったよ。本当はもっと早く来る話だったんだがな」メソラシ

???「これの準備で手間取っちまったもんな。『お兄ちゃん』?」

???「仕方ないのらー、『お兄ちゃん』」

アサギ「…俺はお前らの兄貴じゃねーっての」イガー

イズル「あ、スルガ、タマキ!」

???「た、タマキさん。あまり振り回すと中身が…」アワアワ

???「そうよタマキ。何のために私が…」

イズル「アンジュ、ケイも!」

スルガ「よう。遅くなったな、イズル」

タマキ「元気してたー? イズルー」ニコニコ

アンジュ「ええと、こんばんは、イズルさん」

ケイ「遅れてごめんなさい、イズル。…その、不安にさせてしまったかしら」

イズル「ううん、いいよ。皆、来てくれたから」ニコニコ

アサギ「まぁ、何だ。詫びといってはなんだけどさ」

タマキ「これを皆で食べるのらー!」ゴソゴソ

イズル「何その岡持ち?」

スルガ「へへ。食堂のお姉さんから今日聞いてよ、慌てて作ったんだよ」

アンジュ「急すぎて本当に大慌てでしたね」

タマキ「はい、イズルー」

イズル「これ……天ぷらそば?」

アサギ「年越しそば、ってヤツだよ」

イズル「年越しそば…聞いたことあるなぁ」

スルガ「ま、学園で生活してた頃はそんな風流なもん食えなかったけどな」

タマキ「お仕事終わってからお姉さんが教えてくれたのらー。『年の終わりはこれを食べるものよ』って」

ケイ「仕事終わりが遅かったから、用意するのが本当に大変だったわね」

アサギ「あぁ、アンジュが手早くやってくれて助かったよ」

アンジュ「皆さんで分担したおかげですよ」ニコリ

イズル(うん、アンジュも変わったんだなぁ)シンミリ

アサギ「…さ、皆持ったな」

タマキ「早く食べよー! お腹減ったのらー…」

スルガ「お前、それにまで塩辛のっけたのかよ…」

タマキ「スルガだってカレーそばじゃん、それー」

ケイ「ほら、食べないと本当に年を越してしまうわよ」

スルガ「それもそうだ、どれ、いっただきまーす!」

タマキ「あーっ! ずるい、あたしもー! いっただきまーす!」

アサギ「慌てるなよ、喉にでも詰まったらどうすんだ」

タマキ「ここびょうふぃんだふぁらだいひょーぶ!」ズルズル

ケイ「喋りながら食べないの」

アンジュ「お水どうぞ」

タマキ「…んんっ! ありがとー」ゴクゴク

アサギ「騒がしいな、まったく」

イズル「そう? 僕はこれですっごくよかったよ。…一人は、寂しいもん」

アサギ「…そっか。ま、俺もこのノリじゃないと逆に落ち着かないけどよ」

イズル「えへへ…」

アサギ「…何だよ」

イズル「いや、やっぱり兄弟なのかな、って」

アサギ「それは関係ねーだろ…」フー

ケイ「イズル、どう? 美味しい?」

スルガ「俺たちが心こめて作ったんだ、まずいワケねーだろ?」

タマキ「どうどう、イズルー」

アンジュ「それなりのモノにはなったと思うんですが…」

アサギ「どうだ? イズル」

イズル「――もちろん! 美味しいに決まってるよ!」ニコリ



イズル(皆で迎える年越しで、皆で食べるそば)

イズル(こんなに最高の調味料、他にあるはずなんか、ないよ)

終わり。
書きたいことが増えて困る困る。そのくせまったく書く時間なくて困る困る。申し訳ない。
ネタ一覧
水彩にはまるイズル テオーリア(でかい)親バカシモン Oさん視点 未来予想図Ⅱ スルガの進路
スクライドなタマキ チャンドラの結婚式 初夜続き わんわんお先輩 にーちゃん続き キャラソン収録会
初詣 皆から見たイズル アンジュの独白
それではまた。

申し訳ないがまだまだ書けそうにないです。お待ちを。
ヴァリアブルアクション、プラモと、うれしい知らせが続きますねぇ。

お久しぶりです。今日は一挙放送を見て思ったものを。

イリエ・タマキの場合

ほえ? イズル?
…うーん、最初に会った時は何にも思わなかったなー。
っていうか、皆始めて会う人だったから同じだけどね。

でもでも、一番最初にチームの中で仲良くなれたのもイズルかも。
何か気が合ってさー。
生徒さんの頃は、ケイちょっと気難しかったしー。

リーダー、って決まったときは正直どーなのー、って思ってたかな。
イズルはどっちかっていうと面倒を見なきゃー、ってタイプだと思ってたし。
まぁ、あたしは絶対めんどーそうだからやだったし、いっかー、ってなっちゃったけど。

今じゃ、リーダーはイズル、っていうのが自然で当たり前だって思うのら。
でもって、絶対弟ポジション! あたしのがお姉さんじゃん、感じ的に。

スルガ・アタルの場合

あん? イズルゥ?
んー…そーだなー。何かズレたヤツだな、ってのが個人的なトコかな。
少しずつ話とかするようになってから思ったんだけどさ。
どっか天然ボケっつーか、ぼんやりしてるっつーか。

まぁ、別にああいうの嫌いじゃねーし、あの頃のアサギと違って話し易いから、助かったけどな。
あいつがいたからアサギとも何とか大きなケンカしないで済んだと思うんだよなー。
実際、いつぞやの授業でも、あいつのおかげでちょっとだけチームがまとまったわけだし。

リーダーとしてなら、作戦は立てれねーけど、あいつの分しっかりしねーとってなるし、必要だったんだなって今になると思う。
それって小隊の指揮官としてどうなんだって感じだけどよ。
ウチのチームらしくて良い気がするんだよなぁ。
いざってときは、あいつが何とかしてくれる――そう思わされるんだ。

だから、まぁ。あいつは良い仲間だと思ってる。

クロキ・アンジュの場合

イズルさん…ですか?
そう、ですね……。

えっと、初めてお会いしたときは、すごく緊張しました。
私は人付き合いがあまり得手ではありませんでしたし、先輩ですし。
それでも、先輩方は私の、正直不躾な態度にも関わらず、ずっと気にかけてくださりました。

特に、イズルさん。
あの人が積極的に私のことを訓練や集まりに誘ってくださったから、私はチームでも学園のように孤立することがなかったんです
模擬戦をさせていただいた時は、その、正直なところ、何故この人がリーダーなのだろうとは――あぁっ! 今のは無しです!

…こほん。でも、戦いを重ね、助けていただいているうちに、理解できたんです。
私のように一兵士であろうとする人間にはない、優しさや気配り、守るために戦おうとする強い意志。
それを誰よりも持って――幼い子供みたいにヒーローになる、なんてザンネンなことを言えるあの人こそが、リーダーで正しいんだと。

だから、ええと、あの、その――いつまで聞いてくるんだよ、このたかりバエが!




(記録はここまでで更新が止まっている)

クギミヤ・ケイの場合

イズル? …そう、ね。
昔は、変な人だって思ってたわ。
勝手な都合で創り出されて、記憶も消されて、未来も見えないような状況で、キラキラ目を輝かせていたんだもの。
変と言わないで何と言えばいいのかしら。

おまけによく分からないマンガ描いては――あ、い、今のは聞かなかったことにして。イズルに言ったりとか、その…。
え、ええ。ありがとう。
…とにかく、昔は理解できないって思ってたわ。

あんまり不思議だったから、聞いたことがあるの。
イズルは不安じゃないの、って。
そうしたら、全然考えもしなかった答えが返ってきて、少し、戸惑っちゃったりして。
でも、何だかイズルらしいな、って納得させられちゃって。
…たぶん、あの話が私にきっかけをくれたんだと思う。
え? ち、違うわよ。そういうお話じゃなくて――その、自分なりに前向きに考える、というか。

リーダーとして?
……そうね、頼りないかも、って最初は思ってたわ。
ときどき、タマキよりも自分の世界に浸りがちなところもあったし。
ただ成績だけで言うなら、私やアサギ、アンジュの方が上だったしね。

でも、そうじゃないんだ、ってすぐに気付かされたわ。
タマキが敵に撃墜されかけたときだって、咄嗟に動いて皆を励まして、助けてくれたのはイズルだった。
作戦なんて、アサギやアンジュ、私だって、もしかしたら立てられるかもしれない。
だけど、イズルの代わりは、一人もいないの。

イズルは、リーダーで――皆のヒーローよ。絶対にね。

アサギ・トシカズの場合

イズル? 家族だよ。――俺の、大切な。
…そうじゃない? ああ、昔はどう思ってた、ってことか。

……そうだな。スルガもそうだったけど、俺は年上だから、ちゃんと面倒見ないとな、って思ってたよ。
特にイズルは、どっか危なっかしくてさ。スルガはわりとしっかりしてるんだがな。

ただ、まぁ、あいつがいなかったら、きっと俺は今のチームでよかったって思わなかったろうな。
スルガとはずっと険悪な空気で、ケイやタマキたちとも全然行動できなかったろうしさ。

リーダーとして、か。

今になって思うと、馬鹿らしいけど、何であいつがリーダーなんだ、ってちょっと――ホントにちょっとだぞ? 不満に、思ってた。
パイロットとしての実力だって、座学だって、俺の方がずっと上だった。

それで、どんどんどんどん思い知らされるんだ。
あいつが活躍する度に、仲間を助ける度に。
俺よりあいつの方が、昔からリーダーだったんだ、って。
そこで、ちょっとだけしょげたこともあったけどさ――おい、スパナを構えるなよ。今はそんなことないって。

それで…何だかんだで、あいつがリーダーなら、俺はチームの一員としてできることをしようって決めて。
ようやく、長い間心にかかったもやが晴れかかって。
……あいつが俺の家族だって分かってから、やっと完全にすっきりしたんだ。

俺は、あいつを守るために戦いたい。そのために、頑張ろう。そう決められた。

お、おい。何お前が泣いてんだよ。え? ああ、そうだな…よかった、って思うよ。

…何か、急に恥ずかしくなってきたぞ。なぁ、やっぱりこれ無しに――わ、分かった、分かったよ。…まったく、将来が怖いな。

え? …うん、そうだな。終わったら、二人で会いに行くのもいいかもな、父さんと、あいつの母さんに。
俺はともかく、あいつにとって、大事なことになるだろうから。

イズルに? 何にもないよ。――直接、会って言うからさ。






「……」

グランツェーレ都市学園付属病院の特別病室の一室、そこで、彼はそれを一つ一つ、丁寧に読んでいた。
起き上がったり、出歩いてはいけない、としつこく言われている彼にとって、それは宝物のようなモノだった。

彼の眠るベッドのサイドテーブルにも積まれた、手紙のようなそれら。
兄のピットクルーが、忙しくてお見舞いにも来れない仲間たちの代わりにと、インタビューしてきてくれたレポートである。
彼が今、手にしているのが、仲間たちの手紙。
積まれているのは、直接の上司や彼専属のピットクルーからのモノ。

もちろん、すでに一通り読み終えている。
それでも、仲間からのそれは、何度も何度も目を通したくなる気持ちになるのだ。

大して動けない身体で、仲間たちに会いに行きたくてしょうがない想いが募る度に、読み返している。
少しでもまぎらわせないと、すぐに寂しくなる気がした。

どうしてだろう、とすぐに考えたけれど、答えはあっさりと驚くほど早くに自分の内から出てきた。

ああ、僕は皆が大好きなんだ、と。
早く会いに行きたい。一緒に笑って、また気楽な空気に浸りたい、と。

それに気付いてからは、もっともっと手紙を読むようになった。
検査と治療の、退屈な日々が続いても。
その気持ちがあったから、ずっと楽しみでいられた。

でも、そんな気持ちも、今日までだ。

コンコン、とノック音が耳に響いた。
彼は手紙をそっとテーブルに置いて、ゆっくりと目線を部屋のドアに動かす。
どうぞ、と彼は明るい声で返した。

それに応えるように、きぃ、とドアはゆっくりと開放され――――

「よっ、久しぶりだな」

「元気そうですね」

「らいじょうぶー?」

「新しい画材、持ってきたわ」

「大人しくしてたろうな?」

部屋に入ってきた五人の少年少女に、彼は懐かしいものを見るように目を細めた。

そして、あの時とは違う、満面の笑みを見せてみせた。

「久しぶり、皆」

終わり。改めて六話を見ると感慨深いものですねぇ。
そろそろ元のペースに戻したいところ。それでは。

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