少年「生きるとはどういうことか」(17)

少年「僕はある夏に男の人に出会った。」

少年「その人は死なない、らしい。」

少年「死なないのはなぜ?」

少年「その質問に男の人は」

男『俺は大切な人を同じ苦しみに巻き込んだ。だからといって死ねた訳ではないが。』

少年「…そう、答えて歩みを進めた。」

少年「僕はその後ろ姿を見送る事しかできなかった。」

俺は、あるとき、ふと思い出した。

あの人懐っこい笑顔を。

あの俺に厚く語りかけてくれた日々を。

二度と思い出そうとも思わなかった日々を。

その日々から変わり、全く違う装いを見せる街並みで、あの店で。

俺はここに百年は住んでいる。だいぶ馴れたがあの頃に撮った古い写真を見るとその色褪せた写真から、あのときの匂いが感じられる。

その写真には、あいつと俺が写っている。

その中ではあいつは笑顔のまま。

俺はぎこちない作り笑い。笑えてくるぐらいに。

百年、ここに住んでいると言っても生きた時間は一万年を優に越える。

その時の流れのほんの一瞬、一年。

その一年で俺は劇的に変わった。あいつのお陰で。

忘れてはいけない、彼女のお陰でもあるな、そう呟き一枚の写真を取り出した。

そこには、儚げに、小さな花を咲かせている一輪の花。

その花に水を撒いている少女、彼女がいなければ今ごろ俺はどうなっているのだろうか?

そう考え、もう一枚の写真を見つめた。

彼女とその彼女の母、そして叔父の男、その友人、いわゆるあいつ、だ。

さぁ、話を戻そう。

彼女は俺といた日々を誇りに思ってくれた。

しかし、時が過ぎ、一年、十年、ニ十年…

その中で成長し、思春期を迎え、結婚し、普通で平凡な日々を手に入れた。

その過程で俺は老けもしない、それは平凡でもない、言わば彼女にとって邪魔な存在になった。

俺の事を忌み嫌い、追い出される形で店を後にした。

それからあいつの友人、そして彼女の叔父さんの家で暮らすことになった。

そこでは色々なことが起きた。

あいつの先輩や友人、上司、後輩、そして俺。色々な物語が折り重なった。

それを踏まえ、ここにいてはいけない。

思い出のこの写真を持ち、俺はこの街から立ち去る事を決意した。

だいぶ歩いた。

どこへ行くわけでもないが、歩みを進める

もしかしたら歩いてればあいつに会える、そう思った。

なぜあいつが生きているか、それは俺が世界を破壊しそうになったからだ。

俺は封印されていなければいけない存在。それをあいつは自分が不死の体になり、世界の破壊を食い止めた。

あいつは、もう人間ではない。

それからあいつは俺達の前から姿を消した。

最後に見た顔は、

作り笑顔

俺は自分を呪った。

あいつから笑顔を奪った。

やはり俺は封印されるべきだった。

しかし、あいつの最後に残した言葉、

『お前は人間の中で生きろ』

その言葉道理生きてきた。人間の中で。

しかし、俺はどうすればいい?

生きているのが辛くなる。

死ぬこともできない。

さまようように田舎町を歩いた。

そこで、ある少年に出会った。

その少年はもの不思議そうに俺のことを見つめている

「こんなところで何やってるの?」

「帰るところがないの?」

俺はそっとしゃがみ、その少年にこう、話した。

「帰るところがないのではなく帰りたくない」

そう、少年に話した。

少年は笑いながら俺に指を指している。

「それは嘘だよね?僕は家に帰りたい何てこと無いもん」

その時の少年はあいつの笑顔に似ていた。

俺はなぜかその少年を見つめ、久しぶりの笑顔を見せた。

少年は少し考え、こう、口にした。

「僕の家に来れば?」

俺は、少年に連れられ、少年の家へと歩いた。

少年はふとこちらを向き、

「あの家だよ。早く早く」

その家は似ていた。昔、住んでいた家に。

その日からその家庭で暮らすことになった。

「ずっとここにいていいよ」

暖かい家庭。その家は俺を受け入れてくれた。

しかしそれがつらい。

また、拒まれる可能性がある。

だから、ずっとここにいていいよ、この言葉が胸に刺さる。

そう思うと、あいつの事を思い出す。

あいつはどこでこの様な思いをしているのか

その夜、俺はその少年の部屋で寝た。

この家では居酒屋らしく、夜まで声が聞こえる。

「うるさい?ごめんね。でもこれが僕の家。我慢してね」

そう、一言を残し少年はまぶたを閉じた。

その夜は、一睡もできなかった。

この人たちは純粋に家族として受け入れようとしてくれている、そう思うと…

翌日から俺はその店の手伝いを始めた。

買い出しやテーブル拭き、食器洗い、全てあの頃に習った事だ。

その姿を見て少年の母は、

「手際いいね。給料欲しい?」

と、聞いてきた。

家にいさせていただいてるだけで充分、そう答えた。

少年の母は嬉しそうに笑い、食器を丁寧に拭いていた。

「ずっとここにいていいよ」

俺はここにもいてはいけない、そう感じた。

数日が経ち、次第と新しい暮らしに慣れてきた。

その間に、あるニュースを目にした。

『…えぇ…只今入ったニュースによりますと、約100年前に出されていた某雑誌の記事の写真によく似た人物を都心で多数目撃したとのことです…』

『その人物とは、この写真なんですが…』

それは紛れもなくあいつだった。

『…不思議ですね…なぜこんなにも目撃した人が多いのでしょうか?…』

『…この、<都市伝説の戦士!…>との内容からして、人間ではない、と考えた方がいいんでは無いんですかね?…』ピッ…

そのニュース以来、俺は荷物をまとめた。

あいつがこの国に、しかも都心にいる。今のうちに一言でいい、話したい。

俺はこの家を出ることにした。

「待って!」

ある純粋な声が聞こえた。少年だ。

「どこ、行くの?」

俺は振り向きもせず、ただ立ち尽くした。

悲しいのではない、辛くもない、少年が泣いているのだ。

なぜ泣く、そう聞くと

「お兄ちゃんが…いなくなるのが…嫌だ…」

・・・・・・

「なんで…人間じゃないから…?」

…!?なぜだ?そう、思い振り向いた。

「お兄ちゃん…寝ている間に手が…変になってた…でも…嫌だ!!」

俺はその少年の目を見つめ、こう問いかけた

俺は死なない。死なないのはいいことか…?

少年は下を向き、涙をぬぐい、声を振り絞り、

「お兄ちゃんは…なんで死ねないの?」

俺はあいつを思いだし、あいつの先輩、後輩、友人、上司…

彼女や彼女の母、父。

走馬灯…ではないが数秒であの一年を思い出した。

少年に、少し昔のことを話した

そのあと、少年の目を見つめ、こう答えた

…俺は大切な人を同じ苦しみに巻き込んだ。だからといって死ねた訳ではないが…

そう言い残し、その少年の事を見つめ振り返り、あいつに会うためにまた、旅をすることにした。

…この男が求めている男に会うのは200年後なのはまた別の話である…

語り……森本亮治

ナレーション……小杉十郎太

終わり

即興思い付きですいません…

これは仮面ライダーブレイドの影の主役、カリスこと相川始のその後を描きたいと思ったので…

小説面白かった。

これは仮面ライダーブレイドが知らなくても読める?かな?そこら辺は不安ですww

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