螢一「き、君みたいな女神に、ずっとそばにいて欲しい!」(76)

ああっ女神さまっのSSです。

スクルド「わ、わたし!?」

スクルド(ど、どうしよぉ…)

スクルド(お姉さまも忙しそうだったし、少しくらいお手伝いできないかと思って地上界に降りて来たのはいいけど…)

スクルド(わたしみたいな女神に、ずっとそばにいて欲しいですって?)

スクルド(うう…ウルドの薬で大人の姿になんてなってこなければ良かったかも)

スクルド(……まあ、元の姿でそんなことを言う変態に当たっていたかも知れないから何とも言えないけど)

スクルド(わたしの美貌がこの男を魅了しちゃったのは仕方ないにして)

スクルド(問題は、この願いをどうするかよね)

スクルド(二級神一種限定女神のわたしに、こんな願いが叶えられるわけないじゃない)

スクルド(お金とかならメカでどうにでもしたのにぃ…)

螢一「や、やっぱり無理だよね、そんな願いじゃ」

スクルド(…この人間)

スクルド(森里……螢一だったっけ)

スクルド(見るからにお人好しっぽい…なよなよしてるし)

スクルド(よく考えたら、そもそも受理されないわよね、こんな願い)

スクルド(適当に申請して、頃合いでわたしの可能なものに誘導しちゃえば)

スクルド(何とかできるかな)

スクルド(そうすれば、お姉さまもきっと褒めて下さるし)

スクルド(ウルドもわたしの力を認めるに違いないわ!)

スクルド(うーん、まずはこの状況をどうにかしないと)

螢一「あの、スクルド、さん?」

スクルド「ああ、ごめんなさい」

スクルド「そういう願いは初めて聞いたものだったから」

螢一「やっぱりそうなんだ…」

スクルド「とにかく、ユグドラシルに確認をとりますわ」

螢一「え?い、いいよ」

螢一「他の願いを考えるから」

スクルド(う、正直それはありがたいけど)

スクルド(でも、無理矢理変えさせたなんて事になったら、お助け女神事務所の信用問題になっちゃうかも)

スクルド(やっぱり、一旦聞いちゃった願いは申請しないと)

スクルド「いいえ、とにかくやってみます」

スクルド「ですが、難しいというのはご理解いただけますか?」

螢一「う、うん」

スクルド(よし、お姉さまの見よう見まねだけど、言葉遣いも大丈夫よね)

スクルド(この調子で、さらっとこなしてみせるんだから)

スクルド「それでは…」パァァァァ

螢一「うわっ!?」

ばしゅううううううん

スクルド「……え?」

螢一「い、一体何が…」

スクルド「う、嘘」

スクルド「ごめん、ちょっと電話借りるわね!?」

螢一「あ、はい」

スクルド(嘘、そんなこと、あるはずない…)じーこじーこ

スクルド「あ、神様!?あの、さっきの願いなんですけど…」

スクルド「受理された!?でも、女神の占有なんて前例が…」

スクルド「勝手に免許外のことをしようとした罰!?そ、そんな理由で…」

スクルド「でも……」

スクルド「半人前がいないくらいどうにでもなるですって?」

スクルド「なによ、その言い方!」

スクルド「あ、別に文句があるとか…そりゃあ文句はあるけど」

スクルド「ま、待って、いつまでわたしはここにいればいいの?」

スクルド「こいつが満足するまでって、嘘でしょ!?」

螢一(よく分からないけど、揉めてるなぁ)

螢一(それにしても、うちの電話が神様に繋がってるなんて凄いことだぞ…)

スクルド「待って!話は以上って」

スクルド「まだ言いたいことが…」ッ~ッ~

スクルド「…んもう!分からず屋!」ガチャンッ

螢一「その、大丈夫かい?」

スクルド「これが大丈夫に見える!?」

螢一「い、いえ…」

螢一(さっきまでと、随分印象が違うな)

スクルド(どうしよう…この様子だとゲートも閉じられちゃってるだろうし)

スクルド(こんな冴えないやつと、ずっと一緒に…)

螢一「な、何かな?」

スクルド「無理無理無理!ずぇったいに無理!」ドンッ

螢一「うわっ」

スクルド「どうしよぉ、お姉さまにも会えないし…」

スクルド「ただお手伝いがしたかっただけなのにぃ」

スクルド「うわーん」

螢一「いや、あの…」

螢一「そんなに嫌なら、今から撤回すれば…」

スクルド「あのね、一度受理された願いには強制力が働くの!」

螢一「強制力?」

スクルド「要は、わたしたちがずっといられるように世界が動くのよ!」

スクルド「簡単に変えられないってこと!」

螢一「そ、そうなんだ」

スクルド「…うう」

螢一「参ったな」

スクルド「それはこっちのセリフよ!」

螢一「ご、ごめん…」

スクルド(……こいつ、本気で困ってる)

スクルド(わがまま言ってるのはわたしなのに)

スクルド(よく考えてみれば、天界に電話繋げるなんて相当な善人ってことよね)

スクルド(こういう時、お姉さまならどうするのかしら)

スクルド(…きっと、どんな時でも全力でやるんだろうな)

スクルド(そうよ、ここで駄々捏ねても何も解決しないわ)

スクルド(要は、この人間が満足すればいいんだから)

スクルド(そのうち神様も許してくれるだろうし)

スクルド(それまでの辛抱だと思えば)

螢一「ど、どうしたんだい?」

スクルド「…ごめんなさい、少し取り乱しました」

螢一「あ、うん」

スクルド「ともかく、願いは正式に受理されました」

スクルド「…ちょっと、ううん、だいぶ不本意だけど」

スクルド「これから貴方とずっと一緒にいられます」

螢一「そ、そうなんだ」

スクルド「森里螢一さん、よね?」

螢一「うん」

スクルド「それじゃあ螢一さん」

スクルド「とりあえず、よろしくお願いします」

螢一「いいのかい?君が嫌だって言うなら…」

スクルド「…もういいわよ」

スクルド「だから、そんな顔しないでちょうだい」

スクルド「わたしだって女神なんだから」

スクルド「…人に幸福を与えるのが仕事なの」

スクルド「そんな顔されるためにいるんじゃないわ」

螢一「ごめん」

スクルド「それも禁止」

螢一「え?」

スクルド「…悪かったわよ、ぐちゃぐちゃ言って」

スクルド「正直に言って、わたしは天上界に帰りたい」

スクルド「だから、螢一さんには満足してもらって、願いが要らなくなってもらわなきゃ」

螢一「そうすれば、君は帰れるのかい?」

スクルド「たぶんね」

螢一「たぶんって」

スクルド「わたしにも分からないのよ」

スクルド「こんな願い、前代未聞だもの」

螢一「ご……」

スクルド「だーかーら、それ禁止」

螢一「……それじゃ、ありがとう」

スクルド「は?」

螢一「俺のために、辛い思いをしてくれて」

スクルド「…調子狂うわね」

スクルド「変な人ね、螢一さんって」

螢一「螢一でいいよ」

螢一「何故か違和感を感じるし」

スクルド「…じゃあ螢一」

スクルド「わたしもスクルドでいいわ」

螢一「え?でも…」

スクルド「そろそろ薬も切れると思うから」

螢一「薬?」

ぼんっ

スクルド「…分かった?こういうこと」

螢一「こ、子供?」

スクルド「次言ったら怒るからね」

スクルド「とにかく、本当の姿はこっち」

スクルド「だから、スクルドでいいわ」

螢一「…君がそう言うなら」

スクルド「ま、よろしくね」

スクルド「…もっとも、螢一の望んだ姿じゃないだろうけど」

螢一「まあ、そうだね」

スクルド「…そこは、少しくらい気を遣うとこじゃないの?」

螢一「それで君が喜ぶなら、そうするよ」

スクルド「……本当、調子狂っちゃう」

ここまで。また続き書きます。

螢一「でも、とりあえずどうすればいいんだろう」

スクルド「何の話?」

螢一「いや、この寮って女人禁制だからさ」

螢一「まして、君の見た目は…」

スクルド「それ以上言ったら怒る」

螢一「と、とにかくマズイなって」

スクルド「追い出されるの?」

螢一「たぶん」

スクルド「となると…」

螢一「どうなるんだい?」

スクルド「そうね、すぐに……」

田宮「もーりさーとくーん」バンッ

スクルド「……こうなるわね」

螢一「……なるほど」

大滝「女人禁制の我が寮に…」

スクルド「あーはいはい、分かってるわよ」

田宮「む?」

スクルド「悪かったわ、すぐに出て行くから」

大滝「い、いや、そんなアッサリ…」

スクルド「ほら螢一、行くわよ」

螢一「行くっていったって、どこに…?」

スクルド「これから考えるわ」

スクルド「荷物、後で送ってくれるわよね?」

田宮「あ、ああ」

螢一「ちょっと、スクルド!」

スクルド(あのね、強制力があるんだから、遅かれ早かれ追い出されるのは間違いないのよ)

スクルド(それなら、早く次の家を探しておいた方が得じゃない?)

螢一「そ、そうかもしれないけど……」

スクルド(大丈夫、何とかなるわ)

スクルド「お世話になりましたー」テテテ

螢一「……なんというか、凄い思い切りだなぁ」

田宮「なあ森里、あの子は何者なんだ?」

螢一「いやぁ、実はサッパリで」

大滝「で?追いかけないのか?」

螢一「とりあえずは追いかけますけど」

田宮「……ごほん、まあ決まりは決まりだからな」

田宮「そういえば、お前のサイドカーを直してやろうと思っていたんだが」

大滝「まだ終わっていないんだな、これが」

螢一「……じゃあ、そこからですね」

田宮「色々あるようだが、頑張れよ森里」

大滝「応援だけはしてやろう」

螢一「…ありがとうございます……はぁ」

田宮「大ちゃん、一体全体何なんだろうな」

大滝「田ちゃん、俺にもよく分からん」

~外~

螢一「スクルドー?」

スクルド「遅いわよ、螢一」

スクルド「これ、あんたの乗り物なんでしょ?」

螢一「え?ああ、そうだけど」

螢一「変だな、先輩たちはサイドカー直してないって言っていたのに」

スクルド「この横のやつのこと?」

スクルド「こんなの、わたしが直しておいたわ」

螢一「君が?」

スクルド「ふふん、機械なら任せてちょうだい」

螢一「驚いたなぁ」

スクルド「そんなことはどうでもいいのよ」

スクルド「とにかく、今は住むところを考えなくちゃ」

スクルド「一応聞いてみてあげるけど、住むところのアテはないの?」

螢一「残念ながら」

スクルド「そ、まぁそんなことだろうとは思ってたわ」

螢一「随分ズケズケ言うんだな」

スクルド「だって、凹んでも仕方ないもの」

スクルド「これから暫く一緒にいるのよ、遠慮してたらやっていけないわ」

螢一「一理ある……のかな」

スクルド「人間界のことはあんまり詳しくないけど」

スクルド「とにかくこの寒さを凌げるところは必要ね」

螢一「確かに、スクルドは薄着すぎるね」

スクルド「あたしは女神だから、螢一たちとは少し感覚が違うんだけど」

スクルド「まずはこっちの生活がどういうものなのか知らないとね」

螢一「どんなことが知りたいんだい?」

スクルド「別に螢一に聞くことないじゃない」

螢一「?話が見えないな」

スクルド「こっちの情報を伝える端末とか、媒体はなんなの?」

螢一「えっと、本とか新聞かな」

スクルド「それじゃ、それが沢山ある場所に連れて行って」

螢一「え?いや、この時間だと本屋も図書館も閉まっていると思うけど」

スクルド「なによ、使えないわね」

螢一「仕方ないじゃないか」

スクルド「……それなら、とりあえず無理やりに見るしかないわね」

螢一「別に明日の朝見に行けばいいじゃないか」

スクルド「善は急げ、さ、行くわよ」

螢一「……はいはい」

螢一「さしあたって、比較的安全なのは大学かな」

スクルド「大学?」

螢一「最悪言い訳がききそうだし」

螢一「部室に逃げてもいいしさ」

スクルド「よく分からないけど、螢一に任せるわ」

螢一「かしこまりました、お嬢さん」

スクルド「この乗り物、なかなか悪くない乗り心地」

スクルド「欲を言えば、もっと安定と速度、安全性なんかも求めたいけど」

螢一「だんだんバイクじゃなくなりそうだね」

スクルド「螢一はこのフォルムが好きなの?」

螢一「うーん、というよりは」

螢一「緻密に組み上げられた部品達で出来た一つの芸術が好きなんだ」

螢一「バイクに限らず、機械ってさ」

螢一「細かく分解してしまえば、一つのネジやボルトの集まりで」

螢一「でも、それが組まれるべきところにハマった時」

螢一「一つの生き物みたいに動き出すんだよ」

螢一「このバイクだって、こうあるべくしてあるんだ」

螢一「だから……」

スクルド「はいはい、ストップ」

スクルド「なるほど、螢一とわたしって似てるのね」

螢一「似てる?」

スクルド「……例えば」

スクルド「ここにさっき取り替えたバイク?の部品の一部があります」

螢一「うん」

スクルド「こーして、こーして」カチャカチャ

スクルド「はい、ぐいぐいハンドくん」

螢一「マジックハンド?」

スクルド「三段延長可能で、さらに力の調節も出来るわ」

螢一「魔法みたいだね」

スクルド「わたしもマシンを作るのが好きだし」

スクルド「自分のメカにはプライドがあるわ」

スクルド「螢一にもあるでしょう?」

螢一「そ、そんな大層なものじゃあないけどね」

スクルド「このバイクも、よく手入れしてあるし」

スクルド「なにより、不思議な温かさがあるの」

スクルド「きっと、螢一が大切にしてるからよ」

スクルド「部品一つ一つを大切にして」

スクルド「それでやっと、本当にマシンと向き合える」

スクルド「あなたもわたしも、その姿勢は同じだと思う」

螢一「そうなのかな」

スクルド「そうよ」

スクルド「どんなものだって組み立ててみれば」

スクルド「それぞれにとっても素敵な力が宿るもの」

スクルド「そう思わない?」ビヨーン

螢一「……」ブロンッ

スクルド「ほら、バイクもそう言ってる」

~廃ビル~

???「うおー!ここはどこだァー!」

???「うるさいわねぇ、あんた」

???「仕方ねぇだろ、突然こんなとこにきちまってよ」

???「訳わかんねぇ機械はウロウロしてるし、変身もしないで変な能力つかうし」

???「変身?それこそ何言ってんのあんた、よ」

???「変な髪型だけど、見たところただの学生じゃない」

???「その言い方、まるであんたは学生じゃないみたいだな」

???「ええ、その通りよ」

ウルド「あたしはウルド、二級神管理限定女神」

ウルド「あんたこそ、そんなとこでブツクサ言う前に名乗ったらどうなのよ」

みす

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