エレン「なんかもうどうでもいいや」(183)

キース「貴様は何故ここに来た!」

エレン「はい!憲兵団に入る為に来ました!」

キース「そうか。貴様、憲兵団になりたいのか」

エレン「人類は巨人に駆逐されます! なので、最後ぐらい内地で至福な一時を過ごしたいんです!」

キース「ほう……元気が有り余っている様だな。死ぬ寸前まで走ってこい!!」

エレン「分かりました! エレン、いっきまーす!」


コニー「おい、まだ芋女と馬鹿が走ってるぞ」

マルコ「凄いな……5時間ぶっ通しだろ?」

アルミン「エレン……昔はあんな風じゃなかったのに……」

ミカサ「……あんな事があったのだから仕方ない」

コニー「何だ? お前らあいつの知り合いなのか?」

アルミン「うん……僕達はエレンと生涯を共にしてきたんだ」

マルコ「へえ、幼馴染か何かなの?」

ミカサ「私は家族」

アルミン「僕が幼馴染なんだ」

コニー「なら、なんであいつは出身聞かれてお前らは聞かれなかったんだ?」

アルミン「出身を聞かれなかったのは、僕達がシガンシナ区出身だったからじゃないかな」

マルコ「え!? シガンシナ区ってあの……」

ミカサ「そう。超大型巨人が出現し、壁を壊した発端地」

コニー「マジかよ……じゃあ、あいつは何で聞かれたんだ……?」

アルミン「悪魔で憶測だけど……エレンの面構えに威厳さが感じられなかったからだと思う」

コニー「ど、どんだけだよあいつ……!?」

マルコ「屈強な精神の持ち主なんだね……」

ミカサ「いえ、違う。エレンはただ吹っ切れただけに過ぎない」

マルコ「え……?」


エレン「あー疲れた……サシャ、おんぶしてくれよ!」

サシャ「なに……言ってるんです、か……!」

エレン「おんぶしてくれたら、ご飯やるからさ。なあ、頼むよ」

サシャ「ホントですか!?……でも、エレンはメシ抜きにされてないんですか?」

エレン「多分大丈夫だろ!!!」

サシャ「ひっ! い、いきなり叫ばないで下さいよ……!」

エレン「うふふ、御免あそばせ」

サシャ「良く分からない人ですね……」

エレン「なあ、もう帰ろうぜ」

サシャ「帰るって……どこにです?」

エレン「決まってんだろ自分の家にだよ」

サシャ「いやいや、もはや意味不明ですって!」

エレン「だははは! なーんてな。俺の家は巨人に駆逐されちゃったし」

サシャ「え……駆逐、ですか?」

エレン「ああ……俺の母ちゃんは……巨人の……餌食に……」

サシャ「そ、そんな……」

エレン「嘘ぴょーん!」

サシャ「は……?」

エレン「ドッキリ大成功!」

サシャ「は? は?」

エレン「あははは、なに呆けた顔してんだよ!」

サシャ「エレンが不謹慎な冗談つくからでしょうが!」

エレン「まあ、嘘じゃないんだけどな」

サシャ「はあ……」

サシャ「もう、エレンと話すの疲れましたよ……」

エレン「とか言いつつ喋ってくれるサシャちゃんかわいい」

サシャ「な、なにを……」

エレン「ツンデレ乙」

サシャ「つんでれ……?」

エレン「芋女乙」

サシャ「私、馬鹿にされてます?」

エレン「おう!」

サシャ「……地味に傷付きますよ」


エレン「―――やっと、終わった、な……」

サシャ「―――です、ね……」


ガタッ!


エレン「もう……生きる気力がない……」

サシャ「私達は……このまま死ぬんですかね……」

エレン「もっと……いろんな物を食べたかった」


クリスタ「二人共―――」

エレン「がああああああああ!!!」

クリスタ「ぎゃああああああああ」

エレン「ハッ! これは!?」

エレン「パァン!!」

サシャ「エレン!私にもパァンくださいよ!」

クリスタ「そ、それだけしか無いけど取っておいたの……」

エレン「は?」

クリスタ「え? あ、ご、ごめん! 出過ぎた真似だったよね……!」

エレン「女神! 神様!」

クリスタ「え……?」

エレン「結婚しよ」

クリスタ「えええ!?ちょ、ちょっとエレン!?」

サシャ「こういう人なので気にしないで下さい」

クリスタ「え、う、うん……」

エレン「ふひひ。サーセン」

クリスタ「……」

サシャ「あ、私にお水ください!」

エレン「俺にもくれ!」

クリスタ「静かにしないと……!」

ユミル「おい」

エレン「あ、はい」

エレン「何で御座いましょうか」

ユミル「何やってんだ?」

サシャ「ひいいい、神いいいいいいい!」

クリスタ「えっと……二人は今まで走りっぱなしで」

エレン「地獄の中を走っていた私達に、一筋の光が差し込みました」

ユミル「……は?」

エレン「まさに奇跡でした。何と、光の正体は女神だったのです」

エレン「女神は私達にパァンを与え、文明を与えました」

エレン「が、次の瞬間、突如そこに魔女が現れ、今に至ります」

ユミル「あーちょっと待て。魔女ってのは私のことか?」

エレン「何故分かったし」

ユミル「……殴ってもいいか?」

クリスタ「お、落ち着いて! 悪気は無いの」

エレン「そうそう。悪気は無くて、悪意しかないんだよ」

ユミル「こいつ……!」

クリスタ「エレンもやめて!」

エレン「おい……何怒ってんだよユミル」

エレン「俺が……何かマズイこといったか?」

ユミル「なんで私の名前知ってるんだよ!」

エレン「まあいいや。じゃあ俺寝るからお休み」

サシャ「グー……」

クリスタ「お、お休み……」

ユミル「ケッ……気色の悪い奴だな」

クリスタ「取り敢えず今はサシャを運ばないと」

ユミル「……そうだな」

―――翌日、訓練場

キース「まずは貴様らの適性を見る!」

キース「心して取り組む様に!」

一同「ハッ!」

先輩教官「これはまだ初歩の初歩だが、この段階から素質はみてとれる……ん?」

先輩教官「見ろ……あの子だ。全くブレが無い」

後輩教官「何をすればいいのか分かるんでしょうね……」

ミカサ「……」

先輩教官「うむ……今期はできる者が多いようだな」

コニー「よっしゃあ……!」

サシャ「何だかブランコみたいですね」

ジャン「よし、これなら何とか……」

後輩教官「あの……彼は……」

先輩教官「……素質といあものだろう。人並み以上にできる者がいれば……」

エレン「口笛はなぜー遠くまで聞こえるのー」


ざわ…ざわ…


エレン「あの雲はなぜー私を待ってるのー」

エレン「おしえてーおじいさん」

先輩教官「ああやって訳の分からない事をする者もいる」

キース「ふざけているのかエレン・イェーガー!!!」

キース「これはブランコではないのだぞ! 前後に揺り動かして遊ぶのはやめろ!!」

訓練兵「あ、あいつ……一体どうやってんだ!?」

訓練兵A「すげえ!!」


アルミン「それにしても、すごいねエレンは」

エレン「なんでだ?」

ミカサ「まさかあれで適性診断が合格するとは思わなかった」

エレン「ああ、ブランコのこと言ってんのか。案外面白かったぜ」

サシャ「エレン、昨日おんぶしてあげたんですからパンくださいよ」

エレン「ん、ほしい? ねえ、ほしいの?」

サシャ「約束は守って下さい」

エレン「しょうがないなあげるよ。べ、別にサシャの為じゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」

サシャ「え、あ、はい……でも、それじゃあ誰の為何ですか?」

エレン「さあ?」

サシャ「何か適当ですね……」

エレン「些細な事は気にすんなよ。仲間だろ!?」

アルミン「もう訳が分からないよ」

エレン「はあ……なんだ、分からないのか。まあお前ら程度じゃ分からないだろうな」

ミカサ「また始まった……」

エレン「何故お前らには分からないと思う? それはお前らが俺の域に達してないからだ」

サシャ「もう驚愕を取り越して絶句ですね」

エレン「あーあ。サシャにご飯あげちゃったから滅茶苦茶暇だぜ」

サシャ「そういう約束ですからね。仕方ないですよ」

エレン「誰かの盗んでくる」

アルミン「エレン…… 流石に物を盗むのは―――て、行っちゃった」

エレン「なあ、そこの刈り上げボーイ」

ジャン「あ? 俺に言ってるのか?」

エレン「ああそうだ刈り上げボーイ。お前だよお前」

ジャン「ムカつく野郎だな……何だよ?」

エレン「俺にそのパンをよこせばいい事が起こるぜ」

ジャン「ハッ、誰がお前なんかにやるかよ」

エレン「それがお前の選択か?」

ジャン「ああ、そうだ。てめぇみたいな奴にパンをやるほど、俺は御人好しではないんでね」

エレン「本当にいいんだな?」

ジャン「だから言ってんだろ。しつこいぞ」

エレン「はぁ……残念だ。お前にミカサと話す機会を作ってやろうとしたんだがな」

ジャン「……何?」

エレン「あの綺麗で艶やかで凛とした美しい黒髪。お前好きじゃないのか?」

ジャン「何でその事を……」

エレン「あー可哀想なミカサ。お前、ミカサの事が嫌いなのか」

ジャン「別に、誰もそんな事言ってねえだろ!」

エレン「ミカサに告げ口しよっかな」

ジャン「待て待て、分かった。パンはやるよ……」

エレン「お、いいのか刈り上げ君。有難く頂戴するよ」

ジャン「何が目的なんだお前……パン以外にも何かあるだろ」

エレン「え? 別にないけど……あ、もしかして自意識過剰な方?」

もしかして>>1はエレン「お前らやる気出せよ」の人?

ジャン「この野郎……」


カンカンカン


エレン「あ、晩飯終了だな。パンやっぱ返すよ」

ジャン「マジで何なんだよお前は」

エレン「エレン・イェーガー……探偵、さ」

ジャン「また法螺吹きかよ……訳の分からないこと言いやがって」

エレン「まあまあそう怒るな。俺も喧嘩腰だったな、悪かったよ」

>>48
すいません違います

エレン「ほら、これで手打ちだ」

ジャン「あ、ああ……」


ポン


エレン「よし、これで俺達は兄弟だ。そうと決まれば早く戻るぞブラザー!」

ジャン「はぁ……? どうも流れについていけない」

ジャン「だがまあ……こんなのも悪くはない、な」

エレン「と、一人心の中で呟くのだった。」


エレン「風呂だ風呂だ!うっうー!!」

ライナー「やけにテンション高いな」

エレン「あー最高だ。人生で幸せに感じる時間、第二位に入るな」

ジャン「第一位は何だ?」

エレン「そりゃあ勿論、寝る時に決まってんだろ」

ジャン「ほう、案外真面な返答だな」

エレン「うわあ……何を期待してたんだよ……」

ジャン「何も期待してねえよ! ただ、お前の事だからもっと変なこと言うんじゃないかと思ったんだ」

エレン「え……ひ、酷いよ……!」

ジャン「おい……お次は何だ?」

エレン「僕は、君の事をただの友達だと思ってたのに! そんな言い草ってないよ!」

ジャン「さっきブラザーとか言ってたじゃねえか」

エレン「マジレス乙」

ジャン「まじれす……?」

エレン「なんでもない。ただの妄言だ」

マルコ「盛り上がっているところ悪いんだけど、そろそろ次の入浴当番が回ってきたよ」

―――翌日、食堂

エレン「あー今日の訓練は兵站行進だぞ。面倒臭い事この上ない」

ミカサ「これも兵士には欠かせない必須訓練。文句を言っても仕方ない」

エレン「澄ました顔で言うけどな、こっちはホントに面倒臭いんだよ」

ミカサ「そんなに?」

アルミン「確かに、いつもより元気がないね」

エレン「教官に懇願して、立体起動に変更させてきてくれよミカサ」

ミカサ「流石に無理がある」

エレン「ですよねー」

エレン「……」

アルミン「今度はどうしたんだエレン。急に黙り込んじゃって」

エレン「決めた」

ミカサ「……一体、何を?」

エレン「俺は今から怒るぜッ!!」

コニー「うおっ、いきなり怒鳴りだすとかどうしたんだよエレン」

エレン「スキンヘッドに会いに行ってくる!」

コニー「はぁ……?」

アルミン「落ち着くんだエレン……!」

エレン「落ち着いてられるか。文句言ってくる」

アルミン「流石に教官相手じゃ―――て、行っちゃったよ……」

ユミル「馬鹿はほっとけ。構うだけ無駄だぞ」

ミカサ「……放って置けない」

アルミン「み、ミカサ!」

コニー「何だか朝っぱらから騒がしい奴らだな。何だったんだ?」


エレン「目標まで5メートル……一気にケリをつけてやる」

ミカサ「エレン!」

エレン「どうした、俺は今集中してるんだ」

ミカサ「教官に言っても無駄。諦めて帰ろう」

エレン「……俺を束縛するつもりかミカサ?」

ミカサ「別にそんなつもりはない。ただ、勝ち目のない勝負に挑むあなたを放って置けないだけ!」

エレン「フッ……俺の女房を気取るにはまだ必要な手順を……いや、こなしてるか」

ミカサ「……え?」

ミカサ「な、何を……」

エレン「お前、ずっと俺に着いて来てくれたもんな」

ミカサ「……」

エレン「だから、お前だったら俺のこの気持ちが分かるハズだ」

ミカサ「エレン……」

エレン「負けると思っていても、兵士には引けない状況がある」

エレン「今がそうだ」

ミカサ「……分かった。でも、どうか……無茶はしないで」

エレン「……当たり前だろ。こんな所で終われるか……!!」


アルミン「ほら言ったのに……教官相手じゃ無理なんだよ」

ユミル「全く、馬鹿も休み休みに言えってんだ」

エレン「なんの成果も!!得られませんでしたあああ!!!」

ミカサ「エレン、今は感傷的になっている場合ではない」

エレン「うっ……うっ私が無能なばかりに……」

エレン「たたいたずらにカッコつけ……!」

エレン「訓練内容を……!立体起動に変える事が出来ませんでした!!」

ジャン「だからさっきからうるせぇって!」

―――兵站行進

アルミン「は……はぁ……!」

エレン「貴様には重いか!? 貴様だけ装備を外すか!?」

アルミン「ちょっと……黙っててよ……!」

ライナー「なに教官の真似してんだ……! バレても知らんぞ!」

エレン「二人とも慎め!! 訓練中の私語は厳禁だぞ!!」

ライナー「おい! 声がでかいぞ……」

キース「イェーガー訓練兵! 装備を増やしたいか!?」

エレン「いえ、装備を外したいです!」

キース「ほう、どうやら他よりもっと走り込みたいようだな!」

エレン「違います! 走りたくありません!」

キース「そうか。貴様は晩飯を抜きにされたかったか!」

エレン「そんな理不尽な……」

キース「よかろう! 貴様は飯抜きだ!」

アルミン「自業自得だよ……」

エレン「畜生……! 不幸だあああああああ」

ジャン「後ろの方が騒がしくないか?」

マルコ「言われてみれば確かに……何かあったのかな?」


エレン「……」

サシャ「どうしたんですかエレンは?」

ジャン「ああ……どうやら飯抜きにされたらしい」

サシャ「え? 何でですか?」

エレン「人生……オワタ……」

ジャン「訓練中の不適切な言動が原因だってよ」

サシャ「なるほど……エレンなら納得です」

ミカサ「エレン、私のパンを少し分けてあげる―――」

エレン「があああああああ!!」

ミカサ「ッ!」

エレン「パァン!ガブガブガブ!」

サシャ「私よりも素早い反応……!」

ジャン「ご丁寧に効果音までつけてやがる」

エレン「ガブガブガブ!」

ミカサ「……」

エレン「フッー……悪いミカサ。勢い余ってお前のパンまで食べちまった!」

ミカサ「……」

エレン「そんなに見つめんなよ……悪かったって。この恩はいつか返すよ」

エレン「いつか、な……」

ミカサ「別にいい。私は気にしていない」

エレン「ありがとう、アッカーマン!」

ミカサ「……どうも」


カンカンカン


エレン「終わりだ、行くぞ皆の衆!」

ジャン「アホか……」

コニー「おう!」

ジャン「もう一人いたか」

―――男子寮

エレン「風呂も入ったし寝るか」

ジャン「早くねえか? 消灯までまだ時間あんのによ」

エレン「え」

ジャン「『え』って何だよ。なんも間違った事は言ってないぞ」

エレン「れ」

ジャン「『れ』……?」

エレン「ん」

ジャン「……」

エレン「……」

ジャン「くだらねぇなおい!」

ジャン「なあ……お前はいつからそんな感じなんだ?」

エレン「えーっと……多分、2年前ぐらいからじゃねえか?」

ジャン「2年前って……マリアが陥落した年だよな……?」

エレン「ああそうだ。確か、ミカサ達が言うには超大型巨人が出現した日ぐらいからかな」

エレン「その日から俺はよく、変わったって言われるよ」

ジャン「超大型巨人出現日だと……?」

ジャン「じゃあ、まさかお前………シガンシナ区出身だったりするのか?」

エレン「おう、そうだぜ」

ジャン「ッ……そうか、嫌なこと聞いて悪かったな」

エレン「お前にも気遣いできるほどの優しさがあったんだな」

ジャン「うっせ、一言多いぞ……」

エレン「なんか、もうどうでもいいんだよ」

ジャン「……? 何でだよ?」

エレン「なんていうか、人類は巨人に勝てないと思うんだ」

ジャン「……」

エレン「悟った、と言うべきか。勝てる未来が見えない」

ジャン「……なんか、お前らしくないな」

エレン「まあ、憲兵団に入ってのんびり暮すよ。今の俺じゃなれるかどうか怪しいが」

ジャン「……」

ジャン「………なあ」

エレン「ん?」

ジャン「お前は、巨人に勝てないと思うから諦めるのか?」

エレン「……何?」

ジャン「あえて希望を捨ててまで、現実逃避する事を選ぶのかよ?」

エレン「……何言ってんだ、ジャン。お前も憲兵団に入りたいんだろ」

ジャン「ああ、その通りだ。俺は何としても憲兵団に入って内地に行く」

エレン「なら……」

ジャン「滅茶苦茶なこと言ってんのは百も承知だ……でも、何でだろうな」

ジャン「何故か、こう言わなくちゃいけない気がするんだ」

エレン「……何だよ、それ?」

ジャン「……」

ジャン「なあ、エレン……笑わないで聞いてほしいんだが」

ジャン「お前――――――」

―――訓練場


エレン「――――何で今、昔を思い出すんだ……俺は……」

アニ「どうした? 早く立ち上がりなよ」

エレン「まさかこれが走馬灯ってやつか……?」

アニ「そのまま地面で寝てるつもりかい? 来ないんだったらこっちから行くよ」

エレン「……」

ライナー「いってえ! クソ、少しは加減を……ん?」

ライナー「おい、ミカサ。エレンがアニに絞められてるぞ」

ミカサ「……! 何処?」

ライナー「ほら、あそこだ」

ミカサ「アニ……!」

エレン「おい、アニ……」

アニ「なんだい、もうギブアップ?」

エレン「いや、胸が……当たってるぜ……!」

アニ「ッ! この……!」

エレン「……強く絞めんな、死ぬ……」

アニ「変態!」


ギュウ!


エレン「ああ……なんかもうどうでといいや……」

―――あえて希望を捨ててまで、現実逃避する事を選ぶのかよ?

エレン「……!」

―――なあ、エレン……笑わないで聞いてほしいんだが――

エレン「……」

―――お前の、夢を見たんだ


―――俺の夢?


―――ああ……その夢じゃ、お前は調査兵団を志望してた


―――ッ………俺が、か……?


―――そうだ。だからお前は死に急ぎ野郎って呼称されていてな


―――俺とお前は不仲だったんだ


―――お前はいつも周りに茶化され、馬鹿にされていた

―――でも、そんな境遇にも負けずお前は頑張ってて……最終的には周りから努力を認められるんだ


―――そうなのか………


―――だが、訓練兵卒業の翌日……超大型巨人が襲来。そいつによって壁がまた壊された


―――人々は逃げ惑い、悲痛な叫び声を上げ、そして巨人に喰われていく


―――そんな中、人々が巨人には敵わないと諦めかけたその時……一人の救世主が現れた


―――その名はエレン・イェーガー、お前だ


エレン「―――そうだ」


アニ「……?」

エレン「……こんなところで……死ねるかよ……」

アニ「何だか大袈裟だね」

エレン「なあ、アニ……この現状を打破する方法を思い付いたぞ」

アニ「ふん……しぶとい奴だ。やれるものならやってみな」

エレン「ああ、いいぜ……!」

エレン「てめえが何でも自分の思い通りに出来るってなら」

エレン「まずはそのふざけた幻想を―――」

アニ「ッ!」

エレン「―――ぶち殺す!!」

アニ「うぐっ!? く、くすぐるんじゃないよ……!」

エレン「ほら、早く観念しろ!」

アニ「こ、この程度……!」

エレン「もうお前の負けだ」

アニ「何―――」

ライナー「うわぁああああ!」

アニ「ッ! ライナー!?」

エレン「アニを退けて華麗に避ける俺。」


ドサッ!


アニ「うっ!?」

ライナー「オエッ」

ミカサ「エレン、大丈夫?」

エレン「計画通り」

ミカサ「え?」

エレン「怪獣をやっつけてくれてありがとう、アッカーマン!」

ミカサ「よく分からないけど……エレンが助かったのなら良かった」

エレン「そうか。突然だけど、俺は人間をやめるぞ! ミカサ!!」

ミカサ「全くもって訳が分からない。何かあったの?」

エレン「ああ、ちょっと俺覚醒イベントが起こったからよ。みなぎってきたんだ」

エレン「もう、何も怖くない」

ミカサ「恐怖を感じないのはいい事。どんな場合であっても、冷静に対処する事ができる」

エレン「お、流石ミカサ先輩! 他とは言うことが違いますねー!」

ミカサ「……そう言ってもらえると、嬉しい」

エレン「まあ、取り敢えずアニとライナーは気絶しちゃったみたいだし一緒に組もうぜ」

ミカサ「分かった。エレンと組むのは久しぶり」

エレン「うへへへ、手加減はしないぜお嬢ちゃん?」

ミカサ「なら、私も……」

エレン「アチョー!」

ミカサ「え……?」

エレン「ほぉおわったああ!」

ミカサ「顔目掛けて蹴るのはやめてほしい」

エレン「何だよミカサ? やる気無いな」

ミカサ「それはこっちのセリフ。エレン、今は訓練中」

ミカサ「遊んでいる場合ではない」

エレン「分かった分かった。悪かったよ」

ミカサ「分かってくれたのならいい」

エレン「……あらかじめ言っておくが、俺に殺されても泣くなよ?」

ミカサ「死んだら泣けないし、これは人を殺す為の訓練でもない」

エレン「フッ……いつまで笑ってられるかな」

ミカサ「笑ってない」

エレン「こまけぇこたぁいいんだよ!!」

ミカサ「……今日のエレンはおかしい」

エレン「いつもの事だろ」

ミカサ「……! 自覚していたの?」

エレン「当たり前だろ。常日頃から情緒不安定っぷりを罐してんだから自覚しない方がおかしいっての」

ミカサ「確かにそうだけど……」

エレン「腑に落ちないってか?」

ミカサ「……」

エレン「この世界は残酷だからね。仕方たいね」

ミカサ「……分かった」

キース「対人格闘はそこまでだ!! 次の訓練に移る!」

キース「各員、指定箇所に集合しろ!」

一同「ハッ!」

エレン「あれ、終わっちまったな。残酷だ」

ミカサ「残念だ。またいつかやろうエレン」

エレン「勿論、約束だからな」

ミカサ「うん、約束」

エレン「そうと決まれば早く行くぞ。次の訓練は立体起動だ!」

―――立体起動訓練

訓練兵「おい、来るぞ!」

訓練兵A「了解!」


ズバッ!


エレン「やった!! 討伐数10!」

マルコ「すごいなエレン……今のところ一位じゃないか?」

エレン「やっべええええ!クッソ楽しいぜこれ!!」

ミカサ「エレン、興奮しすぎ……」

エレン「これが興奮せずにいられるか!?」

ミカサ「立体起動の時はいつもそう……どうしてそんなに熱狂するの?」

エレン「うるせぇ!エビフライぶつけんぞ!!」


ジャン「クソ……なんでさっきから巨人が見つからねえんだ!」

ジャン「模型の設置数少ないんじゃないか……」

ジャン「……!! やっと見つけた!」

ジャン「ハッ! 憲兵団に入るのは―――」

エレン「俺だ!!」


ズバッ!


ジャン「何ッ!?」

エレン「やったー!! 上からジャンをつけた甲斐がありました!」

ジャン「てめえ汚ねえぞ!」

エレン「汚い? 獲物を奪うのに作法が必要ですか!?」

ジャン「チッ……お前の理屈は分からん。とにかくついてくんな!」

エレン「そうだぞサシャとコニー! ついてくんなよ!」

コニー「な、なんでバレたんだ!?」

サシャ「ありえない……!」

ジャン「何でお前らまでいんだよ!」

エレン「そうだぞ!? ジャンが可哀想だろ!!」

ジャン「お前もその一因だろうが!」


キース「……」

エレン「ははは! 相変わらず子鹿の様に繊細な奴だな!」

ジャン「逆に大胆すぎるお前にだけは言われたくねえ!」

キース(……エレン・イェーガー。仲間との信頼関係は重畳で、立体起動と格闘術に秀でている)

キース(高い潜在性を感じるが……普段の言動からでは断定できず)

キース(また、目を離すと何をしでかすか分からない危うい部分が目につく)

エレン「獲物を屠るイェーガー!」

キース「……グリシャ、お前の息子に一体なにがあったんだ……?」

―――食堂

コニー「明日で俺たち卒業だな……」

サシャ「え、そうだったんですか?」

マルコ「全くサシャは……教官の話を聞いてないから分からないんだよ」

サシャ「あはは……返す言葉もありません」

ジャン「この三年間、ある馬鹿のお陰で退屈したくてもできない日々だったもんな」

ジャン「あっという間に感じるのも無理はない」

コニー「あ! お前俺のこと言ってんだろ!」

ジャン「ちげぇよ。お前も確かに馬鹿だが、俺はエレンのこと言ってんだ」

エレン「呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!」

ジャン「うおっ!?」

サシャ「ど、どこから現れたんですか!?」

エレン「え? ずっとお前らの背後にいたけど?」

コニー「脅かすなよ!」

エレン「おい……お前ら……」

マルコ「ん?」

エレン「所属兵科は何にするか、決めたか……?」


ザッザッ


ジャン「……」

サシャ「ぼんやりとは決めてるんですけどね……まだハッキリとは」

マルコ「僕は、憲兵団に入るよ。王に仕えられるなんて光栄だ」

コニー「俺は……うーん……」

ジャン「……エレン、お前はどうなんだ?」

エレン「俺は決めたぞ……」

コニー「やっぱ、憲兵団にすんのか?」

サシャ「ああ、やっぱりエレンもですか。私も憲兵団にしましょうかね……」

エレン「俺は……」


グググ……


エレン「……」

マルコ「エレン……? 震えてるのか?」

エレン「俺、は………」

ジャン「……」

コニー「俺は……?」


エレン「……調査兵団になる……!」

―――翌日、解散式

キース「諸君らには事前の打合せ通り、それぞれ持ち場に別れて作業を行ってもらう」

キース「食材調達、調理、食堂の完備及び準備、その他下働き」

キース「これらは送別会の下準備だ。皆、心して取り組む様に!」

キース「解散!」

一同「ハッ!」

エレン「やべえ……俺どこだっけ。まあいいや」

訓練兵「行こーぜ」

訓練兵A「おう!」

エレン「奇跡のカーニバル」

エレン「 開 幕 だ 」


アルミン「ねえミカサ。エレンを知らない?」

ミカサ「エレンなら食材調達に行ってるはずだけど」

アルミン「いや、それがどうやら居ないらしいんだ」

ミカサ「……え?」

アルミン「エレンと同じ班の人からそう言われて、ミカサなら心当たりがあると思って来たんだけど……」

アルミン「思い違いだったみたいだね」

ミカサ「……もしかしたら、エレンに何かあったのかもしれない。私も一緒に捜す」

アルミン「分かった。じゃあ、手分けして捜そう」

アルミン「最低でも夕暮れ時にはまたここに集合だ。いいね?」

ミカサ「承知した、また後で会おう」

ミカサ「一体どこに……」

サシャ「コニー……この蒸かした芋を試食してみませんか?」

コニー「あ、ああ……でもそれって」

サシャ「大丈夫ですよ、悪魔で試食ですって……これに毒でも入ってたら大変じゃないですか」

コニー「そ、そうだよな……これはみんなの為だ……別に、腹が減ったから食べる訳じゃない」

サシャ「そうです……私達は良い事をするんですよ……うへへ」

ミカサ「二人に聞きたい事がある」

サシャ「ひいいいい、ごめんなさい嘘です全部コニーが悪いんです!」

コニー「な!? 言い出しっぺはお前だろうが!」

ミカサ「落ち着いて。今はあなた達の三文芝居に付き合ってる暇は無いの」

コニー「す、すまん……」

サシャ「すいませんでしたミカサ……聞きたい事ってなんですか?」

ミカサ「エレンを見かけなかった?」

サシャ「エレン? いえ、見かけてませんけど……」

コニー「俺も見てないぞ」

ミカサ「そう……分かった」

サシャ「エレンがどうかしたんですか?」

ミカサ「別に何でもない。私は行く」

コニー「お、おい……行っちまったけど何だったんだ?」

サシャ「さあ……」


アルミン「見当たらないな……誰かに聞いてみるか」

アルミン「えーっと……」

ユミル「あー面倒臭え……何で私らがこんな事しなくちゃいけないんだ」

クリスタ「まあまあユミル。働かない者食うべからずって言うでしょ?」

ユミル「ハッ、さすが優等生は言うことが違うな」

アルミン「クリスタとユミルでいいか。おーい二人とも!」

クリスタ「あれ、アルミン?」

ユミル「何だ、天下のアルミン様は絶賛おサボり中か?」

アルミン「ち、違うよ。エレンを捜してるんだ」

クリスタ「え? エレンに何かあったの?」

アルミン「まだ分からないけど、エレンが自分の担当場所に居ないんだ」

ユミル「あの馬鹿……概ね、何処かでサボってるんじゃないか?」

アルミン「そうだったらいいんだけど……」

クリスタ「きっと、エレンなら大丈夫だよ!」

アルミン「……」

クリスタ「確かに、エレンはいつも変わった行動をするし、危なっかしいところもある」

クリスタ「だけど、その分強いじゃない。例え何かあったとしてもエレンなら平気だよ!」

ユミル「まあ、それ以前に大事なんて滅多に起きないしな」

アルミン「二人共……ありがとう、そうだよね。僕は他を当たってみる」

クリスタ「力になれなくてごめん……」

アルミン「いや、クリスタが謝る事じゃないよ。それじゃあ」

ユミル「ああ、ここ周辺は私達に任せて行ってきな」

アルミン「恩に着る!」


ミカサ「……結局、見つからなかった」

アルミン「だ、大丈夫だってミカサ。きっとそのうち姿を現すよ」

ミカサ「私が、注意を怠っていなければ……」

アルミン「悩んでも仕方ない。もう、僕達ができる事は全てやった」

アルミン「それに、何もエレンが死ぬ訳じゃないだろ?」

ミカサ「……分かってる。分かってるけど……」

アルミン「ミカサ……」

ユミル「よお、お二人さん。イチャイチャしてるけどあの馬鹿は見つかったのか?」

ミカサ「馬鹿ではない。エレンという歴とした名前がある」

ユミル「そんな睨むなよ。こっちは心配してやってんだぜ?」

ミカサ「別に、心配してほしいと頼んだ覚えはないけど」

アルミン「二人とも落ち着いて! 言い合っても意味ないよ」

ミカサ「………悪かった」

ユミル「ケッ……」

クリスタ「ごめんアルミン! エレンは見つからなかった……」

ユミル「……」

クリスタ「あれ、どうかしたの?」

アルミン「いや何でもないよ」

クリスタ「な、ならいいんだけど」

アルミン「にしても、エレンはホントどこに行ったんだろうか……」

ジャン「なあ、お前ら」

アルミン「……? どうしたのジャン?」

ジャン「コニーから聞いたんだが、エレンを捜してんのか?」

ミカサ「……! 何か知ってるの?」

ジャン「あ、ああ……エレンなら、朝みんなが持ち場に移動してる時に一人だけ門扉の方に行ってたぜ」

ミカサ「それは本当……?」

ジャン「嘘吐いても何の得もないだろ」

ミカサ「……感謝する。アルミン、行こう」

アルミン「うん」

ジャン「俺も行くぞ」

クリスタ「あ、三人共……! 行っちゃった……」

ユミル「……仲睦まじいね、どうも」


アルミン「門扉に向かってたって事は……やっぱり、食材の買い出しに行ったのか?」

ミカサ「分からない……でも今は一刻も早く街に行かなければ」

ジャン「しかし、何でお前らはそこまでしてエレンを捜すんだ?」

ジャン「あいつも餓鬼じゃねえんだ、解散式の夜には帰ってくるだろ」

アルミン「……ジャンは、僕達がシガンシナ区出身だって事は知ってるよね?」

ジャン「ああ、知ってるが……」

アルミン「5年前、巨人が進撃してきたその日。エレンは巨人によって、母親を亡くしたんだ」

ジャン「ッ! そうなのか……?」

ミカサ「……そう。そして私も、母を失った」

ジャン「……」

アルミン「最初は、何の変哲もない平凡な日常だった―――」

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――――――――――
――――――――――――――


ミカサ「―――エレン」

ミカサ「エレン!」

エレン「……!」

ミカサ「もう帰らないと」

エレン「……ミカサか」

エレン「……今は何時だ?」

ミカサ「分からない、けどもう夕方」

エレン「そうか、早く帰るぞ」

ミカサ「あ、待ってエレン」

エレン「早く来い! 走るぞ!」


ミカサ「何も、走らなくても……」

エレン「いいから走れ」

ハンネス「お、エレンじゃねえか」

エレン「ハンネスさんか……」

ハンネス「なに急いでんだ?」

エレン「ハンネスさん、街の警護は頼んだぞ」

ハンネス「お、おい! 行っちまった……ミカサ、あいつに何かあったのか?」

ミカサ「分からない……さっきからあの調子」

ハンネス「そうか……まあ、エレンが元気で何よりだ! ハハハッ!」

ミカサ「……」


エレン「時間がねぇ……!」


ガチャ!


エレン「母さん!」

カルラ「エレン、遅いじゃない! 何かあったのかと心配したのよ!」

エレン「それより父さんは!」

カルラ「お父さんは診療に行ったわ……エレン、何か言うことはないの?」

エレン「遅くなったのは謝るから、早くこの家から出よう!」

カルラ「家から出る? また何を言ってるのあなたは」

エレン「お願いだ母さん! 今すぐこの家から出てくれ」

ミカサ「……ごめんない、帰るのに遅れた」

カルラ「あ、ミカサ。何だかエレンが変なの」

ミカサ「変……?」

エレン「俺は正常だ! ミカサ、お前からも言ってやってくれ」

ミカサ「さっきからエレンはおかしい。眠りから覚めた途端、急に走り出したりして」

ミカサ「もしかして、寝ぼけているの?」

エレン「そんな訳ねぇだろうが! 母さん、早く来てくれよ!」

カルラ「ちょ、ちょっと……分かったから手を引っ張らないでおくれ」

ミカサ「……よく分からないけど、今のエレンは真剣そのもの」

ミカサ「行こうおばさん。きっと何かある」

カルラ「そうね……こんな真剣なエレンは始めてだわ」

エレン「よし―――」


―――ドオォ!!



ミカサ「ッ!!」

カルラ「な、何だい今の地震は!?」

エレン「クソッ! 早くこの町から出るぞ!」

カルラ「ちょ、ちょっとエレン!」

エレン「ミカサ、アルミンを頼んだ!」

ミカサ「え……? エレン、何処に行くの!」

エレン「決まってんだろ! 船に乗って避難するんだよ!」


エレン「走って母さん!」

カルラ「何、あの煙は……」

カルラ「頭……?」


―――ドッゴオォォ!!


カルラ「うっ!?」

エレン「……!」

カルラ「い、家が……岩で潰された……」

カルラ「まさか、あんた……この事を知ってて……?」

エレン「……後で説明するから、今は早く逃げよう!」

カルラ「え、ええ……!」

―――ウォオオオオ!!

ズシン!

エレン「もうこんな所まで来やがった!」

カルラ「エレン、アルミンとミカサは大丈夫なのかい!?」

エレン「ああ、あいつらは絶対に死なない! 大丈夫だよ!」

カルラ「そう、なら良かった……!」

エレン「よし、見えてきたぞ!」

エレン「あの角を曲がって真っ直ぐ行けば、ここから出れる!」

カルラ「……エレン。あなた達は、絶対に生き延びるのよ」

エレン「は? 何言ってんだよ母さん?」

カルラ「そして忘れないで、私があなた達を愛していた事を」

エレン「だから何言ってんだよ。今回こそ絶対に助けるんだ」

カルラ「……」

エレン「ほら、この曲がり角を曲がれば―――」


グチャ


ハンネス「来い、こっちだ二人共!」

アルミン「はぁ……は……!」

ミカサ「……エレン……おばさん……」

ハンネス「大丈夫だミカサ。二人は誰よりも早く船に向かったんだろ?」

ハンネス「今頃、二人はもう船に揺られながら内地に出航してるはずだ!」

アルミン「そうだよミカサ……! ハンネスさんの言う通りだ……!」

アルミン「僕のお祖父ちゃんも船に乗ってるんだ。エレン達も絶対乗ってるよ!」

ミカサ「……うん!」

ハンネス「後もう少しで着く。それまでの辛抱だ」


ハンネス「ハァ……ハァッ……!」

エレン「……」

ハンネス「ッ! エレン、エレンじゃねえか!?」

ミカサ「え……?」

アルミン「船に乗ってなかったのか!?」

エレン「……」

ハンネス「おい、何でお前血塗れなんだ……!?」

エレン「……」

ハンネス「それに、カルラはどうしたんだよ……!」

ミカサ「エレン、おばさんは……? 船にいるの?」

エレン「………」

アルミン「エレン、答えてくれよ! 一体何があったんだ!?」

エレン「…………また、救えなかった」


ミカサ「……!」

アルミン「じゃ、じゃあまさか……お母さんは……」

エレン「は、ははは……は」

ミカサ「エレン………?」

ハンネス「……」

エレン「あははははは!」

アルミン「え、エレン…… どうして、笑ってるの……?」

エレン「あーいや、すまん。余りにも可笑しくてついつい失笑しちまった!」

アルミン「何が、可笑しいんだよ……?」

エレン「ひひ、分かり切ってた事じゃねえか。この世界は残酷なんだ」

アルミン「……だから、何が可笑しいんだよ……!? 君のお母さんが死んじゃったんだぞ!?」

エレン「そんなの知ってるっての……そんなに怒んなよ」

アルミン「なら―――」

エレン「なんかもうどうでもいいや」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月23日 (土) 12:21:05   ID: 7U0Lk_BQ

面白かったし、泣けた

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