ネロ「にっこにっこにー♪」 (21)

コーデリア「あら、どうしたのネロ?」

エル「……カワイイ///」

シャロ「似合ってn——コーデリア「とっても素敵よネロ! かわいいわ!」

ネロ「でしょー? まあ、僕くらいになると何やっても様になるんだけどね」

 昼下がりのミルキィホームズの四人部屋で譲崎ネロが奇妙な言葉を奇妙なポーズとともに言い放った。

ネロ「なんかいきなり思いついてさー。よくわかんないけど言ってみたくなったんだ」

コーデリア「アイドルなんかが言ってそうよね〜みんなはそこらのアイドルよりもずっとかわいいけどー!」

エル「///」

シャロ「けど正直さむ——ネロ「アイドルだ!」

コーデリア「どうしたの突然大声出して?」

ネロ「アイドルだよ! みんながアイドルになってお金を稼ぐんだよ! 明智だってなれたんだから僕たちになれないわけないよ」

コーデリア「みんながアイドル……いいわぁ〜」

エル「アイドルなんて……そんな///」


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ネロ「あ、でも僕はやらないよ。プロデューサー業に専念するからね」

シャロ「ネロはアイドルしないんですかー?」

ネロ「当たり前じゃん! なんで僕がわざわざ苦労してお金稼がなきゃいけなのさー」

コーデリア「けど私はネロのアイドルしてる姿も見たいわ〜エリーもそう思うでしょ?」

エル「はい……すごく、いいと思います///」

ネロ「エリーまで何言ってんのさ。僕はやらないったらやらないからなー」

シャロ「私もネロのアイドル姿見たいですー」

コーデリア「そうねぇ、ネロがやらないのなら私たちもアイドルなんてやらないわよ?」

ネロ「みんなしてなんだよー。そこまでして僕も巻き込みたいの?」

コーデリア「元々提案したのはネロで私たちが巻き込まれてるのだけどね」

ネロ「うぅ〜エリーは? エリーは僕に働けなんて言わないよね?」

エル「私も……見たいです///]

コーデリア「さ〜て、これで3対1よ。観念してネロもアイドルしましょう? みんなですれば楽しいに決まってるわ」

ネロ「しょうがないなー。今回だけだからな」

コーデリア「決定ね。それで、どうするの?」

ネロ「どうするって?」

コーデリア「どうするって……何かアテがあるんじゃないの?」

ネロ「ないよ。あるわけないじゃん」

コーデリア「ないのにどうやってアイドルになるつもりなの?」

ネロ「アイドルなんて適当にかわいい服着てもてはやされるんじゃないの?」

エル「違う……と思う///」

ネロ「え、違うの!?」

コーデリア「そんな甘い話があるわけないでしょ」

ネロ「そんなー! 僕の計画がーはぁ……」

シャロ「じゃあこころちゃんに頼りましょう! こころちゃんならきっと何とかしてくれますー」

ネロ「それだよシャロ! さっそく明智のとこに行こう!」

 言うより早くさっさと部屋を飛び出すネロ。

コーデリア「私たちも行きましょうか。ネロ一人じゃ明智さんを困らせるだけだわ」

<ハヤクシロヨー! ナニシテンノー

エル「そう……ですね///」

シャロ「こころちゃーん。シャロですよー」

シャロ「こころちゃーん。シャロですよー」

小衣「小衣ちゃん言うな!」カメンパンチ

シャロ「あう〜」

小衣「で、何の用で来たわけ? 小衣たちも暇じゃないんだけど」

ネロ「明智! アイドルのコネ貸して!」

小衣「いきなり来て何よ」

コーデリア「明智さん、実は……」

カクカクシカジカ……

小衣「バカがアイドルやりたいから小衣にその時のコネを使いたいってわけね」

ネロ「そういうわけだから僕たちを稼げるアイドルにしてよ! どっかの偉い人に紹介して」

小衣「するわけないでしょ」

ネロ「なんで!?」

小衣「大体小衣ももう離れて長いし、売れっ子だったしIQ1300の小衣でもできないことはあるわよ。テレビ局のコネなんて持ってないし」

ネロ「なんだよー! 使えないなー明智は」

小衣「仕事の邪魔しておきながら何言ってんのかしらアンタは」

ネロ「明智が使えないからだろー!」

小衣「何よー!」

ネロ小衣「「ぐぬぬぬ!」」

シャロ「二人ともケンカはよくないですよー」

ネロ小衣「「シャロ(シャーロック)は黙ってて」」

シャロ「あう……」 

くずうううううううぅぅぅぅぅぅ

球磨川『やれやれ』『喧嘩はみっともないぜ』『オールフィクション』『お馬鹿さん×2の闘争心を無かった事にした』

??「小衣ちゃんはいるかな?」

小衣「小衣ちゃんって言うな! ってあんた誰?」

???「覚えていないかな? 私はTV局の偉ーい人だよ」

ネロ「TV局の!?」

コーデリア「偉ーい人!?」

偉ーい人「そうだとも。今日は小衣ちゃんに話があってきたのだが……」

小衣「小衣に? 何の用よ」

偉ーい人「実は小衣ちゃんにもう一度アイドルに戻ってもらいたくてね」

小衣「いやよ。小衣には仕事があるし。どうしても必要ならそこの四人連れていきなさいよ」

偉ーい人「ふむ、中々よさそうな子達だね。どうかね? アイドルをする気はあるかな?」

コーデリア「いいんですか?」

偉ーい人「いいとも。磨けば光りそうだ」

ネロ「お金は!? 売れなきゃやらないからね?」

偉ーい人「それは君たち次第だがね、見込みはあるよ」

ネロ「じゃあやる! みんなもいいよね?」

シャロ「いいですよー」

エル「恥ずかしいですけど……やります///」

偉ーい人「決定だね。それじゃあ、さっそくだけど明日からここに来てくれるかな?」

ネロ「おっけー! これでやっと貧乏生活から抜け出せるよー」

 こうして、ご都合主義な展開でアイドルへの第一歩を踏み出すミルキィホームズ。

ネロ「昨日のおじさんが言ってたのってここだよね」

エル「すごく……大きいです///」

シャロ「おっきいですねー」

コーデリア「でも昔は小さかったそうよ。明智さんの大ヒットで大きくなったみたいね」

ネロ「明智がいなくなって稼ぎ悪くなったからもう一回呼び出したかったのか。もしかしてあんまりおいしい話じゃないのかなー」

偉ーい人「おお、君たちか! 待っていたよ、入ってくれたまえ」

<応接間>

偉ーい人「さて、君たちはこれからアイドルを目指すわけだが……いきなりアイドルになることは不可能だ」

ネロ「えー! 話が違うよー!」

偉ーい人「アイドルになるために必要なものはなんだと思う?」

ネロ「そんなの知らないよ。なんか歌って踊ってたらいいんじゃないの?」

偉ーい人「視聴者目線ならばそれでいいかもしれんがアイドルの本質は煌びやかであればいいというものではないのだ」

コーデリア「つまり……どういうことなんですか?」

偉ーい人「アイドルは外見が良ければいいのではない。売れるだけの存在ならば別に財力にものを言わせればいい。だが、真にアイドルになりたいと思うのならばそこには強固な背骨が必要になる!」

シャロ「背骨ならみんなありますよー?」

偉ーい人「そういう話ではないんだ……要はアイドルをアイドルたらしめるのは外見のよさではない。人の知らないところで行われる汗と涙を流した努力なのだよ」

コーデリア「努力……」

偉ーい人「そう、努力だ。最近は視聴者のニーズも変わりつつあるが基本的に人間はがんばっている人間が好きなのだ。その中でも特に好きなのが見えない努力だ」

ネロ「見えないのにどうやってわかるんだよ」

偉ーい人「見えない、というよりも努力していることを公言しないことだ。努力は口に出すと途端に安っぽくなる。すると人は裏でこいつは本当に努力をしているのかと邪推したくなるのだ。だが、本当に努力をする者はその雰囲気を感じることができる。見えずとも感じられる努力が人は好きなのだ」

ネロ「ふーん……まあ、稼ぐならお客さんには長くついてもらいたいしね。適当に頑張ってあげるよ。で、何すればいいの?」

偉ーい人「そうだな、まずはグループ名を決めてもらいたい。そのあとはレッスンして実力をつけてもらいたい」

シャア「わかりましたー」

コーデリア「本格的にアイドルするって感じになってきたわね。それで、名前どうしましょう?」

エル「……///」

シャロ「わかりました! ミルキィホームズにしましょう!」

コーデリア「そうね。私たちといえばミルキィホームズよ!」

エル「いいと……思います///」

偉ーい人「そうか、では君たちのグループ名はミルキィホームズで決定だね」

 そして、新生アイドルグループミルキィホームズは過酷なレッスンをこなしついにアイドルデビューの初舞台、ライブ会場に立っていた。照明に照らされた四人はそれぞれのイメージカラーのアイドル衣装に身を包みレッスンの成果を見せつけていた。ちなみにアイドル衣装は自身の探偵服を可愛くアレンジしたものである。

ネロ「にっこにっこにー♪」

<ゥォォォォォォニッコニッコニー!
<クズウウウゥゥゥゥ!

 ネロは小悪魔系アイドルとして活動する

シャロ「みなさーん、シャロですよー」

<シャロチャーン! オレタチデスヨー!
<シャロチャンマジ天使!

 シャロは活発で明るく純真無垢な性格から天使系アイドルとして崇められ幅広いファン層を持つ

エル「あんまり……見ないでください///」

<ムクムクデス! ムクムクデス!
<ムクムクデス! ムクムクデス!

 エリーは恥じらう姿とそのボディにやられたファンの心を掴んでいる

コーデリア「お花〜♪」

<コーデリアサンマジお花畑!
<他のファンと一緒にしないでいただきたい

 ファン数こそ他には劣っているがその熱烈なファンの固定率は一番高かった。また、年齢の高い層が彼女のファンにいる。

 四人ともそれぞれの味を生かし、うまい具合にアイドルグループの形を作っていた。そして彼女らの活躍は厄介払い程度にしか考えていなかった明智の予想をはるかに上回る勢いで伸びていき、ついにテレビで彼女らの姿を見ない日はないほどだった。

探偵より向いてるのではないだろうか

 ある時はバラエティで、ある時は音楽番組で、ある時はドキュメンタリーで、ある時はドラマで、ある時は雑誌で、ある時はCMで。活躍の場を選ばずに躍進する姿に誰もが彼女らを称賛した。
 
 そして飽きるほどの仕事をこなしたミルキィホームズはいつの間にかバラバラに仕事をするようになり……四人そろっての仕事はもはや冠番組の「ミルキィホーム」でしか合わなくなった。かつてその番組では四人の息の合ったトークが一番の売りで視聴率もとても高かったのだがここ最近はどこかかみ合わないようなそんな違和感を感じさせていた。

ネロ「エリー、なんでさっきはちゃんと言えなかったんだよ」

 ネロの怒りは単純。ネロとエルの企画進行に一緒に言う言葉をワンテンポずれてしまった、ただそれだけのこと。

エル「ごめんなさい……」

ネロ「謝ってすむなら警察はいらないんだよ! もー本当にエリーは使えないよね。いっつもミスするときってエリーからだよね」

コーデリア「ネロ、言い過ぎよ。エリーだって調子が悪いときだってあるわよ」

ネロ「そんなの言い訳じゃないか。プロなら不調だろうと仕事をちゃんとこなすべきだよ」

コーデリア「ちょっとネロ……」

エリー「コーデリアさん……いいんです、ネロの言う通りですから」

ネロ「わかったら次からは直してよね」

シャロ「どこ行くんですか?」

ネロ「他の共演者とか、芸能界の権力ある人たちに挨拶してくる」

 ネロが去った楽屋には重い沈黙が漂っていた。

コーデリア「ネロ……変わっちゃったわね。昔はあんなに仲間を責めなかったのに」

シャロ「なんだかネロが遠くにいるみたいです……エリーさん、大丈夫ですか?」

エル「大丈夫……私がミスしちゃったから、みんなまで」

コーデリア「いいのよエリー。仲間は支えあうためにいるもの」

シャロ「そうですよエリーさん。私たちを頼ってください」

エル「シャロ……コーデリアさん……ありがとう」

 しかしエルの調子は優れず、ネロとの溝も深まるばかりだった。そしてついに、エルは倒れてしまった。

エル「お仕事あるのに、時間を割いてくれてありがとう……私は大丈夫だから」

コーデリア「そんなこと言わないでエリー。私たちはお仕事よりもエリーのほうが大事なんだから」

シャロ「そうですー。お仕事も大事ですけどやっぱりみんながいることのほうが大事ですー」

コーデリア「みんなで、いられたらよかったのにね」

 視線の先にはテレビに映ったネロの姿があった。

エル「ネロ……」

コーデリア「どうしてこうなっちゃったのかしら。私はみんなで楽しくアイドルができたなら、それでいいと思っていたのに」

エル「ネロは悪くないです……ネロはがんばってますから」

シャロ「エリーさん……」

アイドルユニット「ミルキィホームズ」の栄光と失墜みたいになってきたな

コーデリア「ネロ、ちょっといいかしら」

ネロ「何? 次の現場いかなきゃならないから手短にしてよね」

コーデリア「今エリーがどんな気持ちでいるか。考えたことある?」

ネロ「そんなのないよ。大体エリーはいちいち大げさなんだよ。ただの風邪で同情さそうなんてさ」

 コーデリアは手を強く握りしめた。

ネロ「プロ意識が低いんだよ。ファンはころっと騙されて心配してくれてるんだろうけど、僕にはわかるんだ——」

 コーデリアがネロの頬を平手で打った乾いた音が楽屋に響いた。

ネロ「いっ……何するんだよコーデリア!」

コーデリア「あなたは……何もわかってないわ。そんな人に成り下がってしまったのね。もうついて行けないわ、ここでさよならよ」

ネロ「……やめるんなら、今まで稼いだお金全部僕に渡してよ。じゃないと勝手に抜けるなんて認めないからね」

コーデリア「——いらないわ、そんなもの。そんなにお金が大事ならお金だけ愛していなさい」

ネロ「なんだよ……なんなんだよ、わけわかんないよ」

 フラフラな足取りで次の現場に向かったネロ。しかしNGを出すばかりでまともに仕事にならなかったらしい。

エル「コーデリアさん、最近お仕事に行ってないんですか?」

コーデリア「ええ。もういいのよ……そうだエリー、何かしてほしいことある?」

 コーデリアは務めて明るい口調でエルに訊ねた。

エル「そんな……ご迷惑かけるわけには」

コーデリア「そんなこと気にしなくていいのよ。そうだ、テレビでもつけましょう」

 そしてテレビに映し出されたのは一人で活動するネロだった。華やかなテレビの印象の中で彼女は一際みっともなく見えて……小さく見えた。

コーデリア「見たくないわよね……消すわ」

エル「待って……もう少しだけ、見させてください」

 たとえ一人になっても、彼女はアイドルとして気丈に振舞っていた。その姿はかえって彼女の孤独を感じさせられた。

コーデリア「そういえばシャロはどこへ行ったのかしら? いつのまにかどこかへ行ったきりなのよね……心配だわ」

エル「ネロ……」

 その呟きはテレビの音にかき消され誰にも届かずに、すぅっと流れた。

ネロ(なんなんだよみんな……勝手にどっかへ行っちゃってさ。僕らは四人で一つのアイドルグループだろ?)

ネロ(そう思ってたのは僕だけだったのかな……って、もう考えちゃだめだ。もうシャロもコーデリアも、エリーも帰ってこないんだから)

ネロ「仕事……少ないなぁ」

 かつては白い場所さえなかったほどに書き込まれていたスケジュール表には今では小さくぽつりぽつりとレッスンが描かれているだけだった。暇になった時間をつぶすのにネロはネットの自分たちの評判を書かれた掲示板を覗くようになった。
 そこにはかつてファンだった人間たちもいるのだが誰一人としてミルキィホームズを支持する人はいなかった。

ネロ「みんなだけじゃない……知らないやつも僕を悪く言う。そんなに僕が憎いのかよ」

 特に書かれていることはネロとエルの不仲説から起こった内部崩壊を揶揄するコメントだった。どこから漏れたのかほんの少しの事実がネットの世界では尾ひれがついてまるでネロがエルをいじめていたかのように書かれネロを擁護する人は誰もいなかった。

ネロ「エリー……」

 少ししてネロのスケジュールに久しぶりの仕事が訪れた。ネロはこれを最後のチャンスと考えて必死でレッスンをした。そして仕事当日、仕事内容はアイドルとのフェス対決だった。その相手が

ネロ「明智? なんでここにいるんだよ」

小衣「ちょっと頼まれてここまできただけよ。ったく、あのバカ……小衣をくだらないことで呼ばないほしいわ」

ネロ「なんか知らないけど今日の相手は明智なんだな! 負けないからなー!」

 しかし、勝負内容はひどいものだった。客の支持は全部明智のもとへ集まった。

ネロ「こんなはずじゃ……わかった! お前自分のファンだったやつばっか集めたんだな!  卑怯者ー!」

小衣「あんたに勝つのにそんな小細工必要ないわよ。少なくとも、今のあんたにはね」

シャロ「ネロ……」

ネロ「なんだよ……シャロ。僕を笑いに来たのか」

シャロ「違います! 私はただ、ネロに……」

ネロ「うるさいな! 聞きたくないんだよ!」

シャロ「ネロ……」

ネロ「みんな勝手だ……勝手にいなくなる。そんなみんな、大っ嫌いだ!」

 バチーンッ!と小気味いい音を鳴らして小衣はネロの頭を仮面で叩いた。

ネロ「……っ! 何するんだよ明智!」

小衣「勝手なこと言ってんのはどっちよ。本気でいってるなら次は本気で打つわよ」

ネロ「……」

小衣「小衣が今日ここに来たのは、シャーロックに呼ばれたからよ」

ネロ「シャロが……?」

シャロ「はい。ネロがなんだか遠くに行っちゃうような気がして……本当は私がネロを止められたらよかったんですけど、もう私じゃあどうしようもなくって。それで……それで」

小衣「仲間にここまで心配されてるのにも気づかないで今まで何を見てたのよあんたは。まあ、どうせ目先の利益ばっかり見てたんでしょうね。じゃないとこんな情けない負け方しないわよね」

 言い返す言葉もないのかネロはただ黙っていた。

小衣「シャーロックが小衣のところに来たときは驚いたわ。迷惑をかけられたことはあるけど純粋に小衣を頼ってきたことはなかったもの。それも今にも泣きそうな切羽詰まった顔なんて見たこともなかったわ。小衣の知ってるシャーロックはいつも馬鹿みたいに明るくて、あきれるくらいに優しい顔をしていたわ」

小衣「だから小衣は決めたのよ。シャーロックを悲しませた大馬鹿にがつんと言ってやるってね。あんたのことよ、譲崎ネロ!」


小衣「あんたの一番大事なものは�何か"、考えなさい。小衣の言いたいことはそれだけよ。そこから先はどうするのかあんたが決めなさい」

 小衣が去った後、場にはすすり泣くシャーロックとネロが残された。

ネロ「……シャロ、ごめん。僕ちょっとどうかしてたみたい」

シャロ「いいんです、ネロがネロのままでいてくれたら私たちはそれで」

ネロ「シャロ……」

シャロ「エリーさんとコーデリアさんのところに行ってあげてください。二人ともネロに会いたいと思ってます」

ネロ「わかった」

ネロ「……シャロ、ありがとう」

 小さな声でとても聞こえなかったが、シャロには何となくなんと言ったのかわかった。だからシャロは安心して眠ってしまった。実は明智を探してシャロは数日の間ろくに眠らずに走り回っていたのだ。

小衣「まったく……帰ってきてみれば無防備に寝て。何かあったらどうするのよ」

 スヤスヤと眠るシャロを明智は自分の元へ引き寄せて膝の上に乗せる。

小衣「今回だけなんだからね。このIQ13000の小衣の膝で眠れるんだからいい夢見ないと許さないんだから」

シャロ「小衣ちゃーん……」

小衣「小衣ちゃんって夢の中でまで言うな」

 屋根裏部屋に変える途中、ネロは小衣に言われたことを自分なりに考えてみた。しかし、いくら考えても考えはまとまらずもやもやとしている間に扉の前にまで来てしまった。勇気を振り絞って扉を叩く。

コーデリア「ネロ……」

ネロ「コーデリア。エリー、いる?」

コーデリア「いるけど……何の用なの?」

ネロ「別に……なんだっていいじゃん。僕はエリーに用があるんだよ」

コーデリア「今エリーにあなたを会わせたくないわ」

ネロ「そんなことコーデリアに決められたくないよ!」

コーデリア「とにかく、今日は帰って」

ネロ「だから……」

コーデリア「第一、エリーに会ってどうしたいのよ?」

ネロ「それは……」

コーデリア「答えられないんでしょう。なら尚更会わせるわけにはいかないわ」

 結局ネロは部屋に入れてもらうことができなかった。

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