クラリス「教会へようこそ」 (26)

 
クラリス「皆様こんにちは。シスター・クラリスでございます」

クラリス「教会へようこそ。の時間ですわ」

クラリス「私の使命は、一人でも多くの人に、幸せをお届けすること」

クラリス「この番組が、その手助けとならんことを……」

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クラリス「まずは、クラリスの救済キッチン。のコーナーでございます」

クラリス「私はシスターとして、清く慎ましい生活を徹底して参りました」

クラリス「その結果……日々の食卓は、ごはんこそ全てだと悟ったのです!」

クラリス「そして、ごはんをもとに、あらゆる食卓に一層の彩りを。そのためには……」

クラリス「丼こそが、願いを叶えてくれる、最高の料理だと気付きました……!」

クラリス「私が清貧の末に発明した、丼を紹介しましょう!」


 
クラリス「最初に紹介するのは、丼の中の丼でございます」

クラリス「丼とは、なぜ美味しいのでしょうか。それは、ごはんが美味しいから」

クラリス「では、その美味しいごはんに、ごはんを盛り付けるとどうなるのか……?」

クラリス「私はとても恐ろしい発明をしてしまいました……」

クラリス「ご覧下さい。これが、ごはん丼でございます!」

 
クラリス「ああ、神々しいですわ……」

クラリス「白く清く美しい……ごはん。なんと素晴らしいのでしょうか」

クラリス「さっそく、頂いてみましょう」

クラリス「いただきます。はむはむ、はふはふ!」

クラリス「ああ、おいしいですわ……!」

 
クラリス「……ごちそうさまです」

クラリス「やはり、お米は人類の宝でございますね」

クラリス「美味しいものに美味しいものを掛け合わせれば、より美味しくなる……」

クラリス「我らが主よ、あなたの与えたもうた恵みに感謝します……」

クラリス「アー米ン……」

 
クラリス「さあ。続けてご紹介したいところですが、なにぶん、丼とは大盛りですので……」

クラリス「お腹が空くまで次のコーナーへ参りましょう」

クラリス「丼は、おやつにも食せる、素晴らしい料理ですもの」

クラリス「慌てる必要は、ございません」

 
クラリス「続いては、クラリスの救済相談室のコーナー。でございます」

クラリス「シスターとは、迷える子羊を導いてこそ聖職者たりえます」

クラリス「恋に仕事に、あらゆる悩みのご相談に乗りましょう」

クラリス「どうぞ、方舟に乗ったおつもりでいてくださいまし」

 
クラリス「記念すべき一人目の相談者は、Kさんでございます」

「よろしくおにゃーしゃー☆」

クラリス「ようこそいらっしゃいました、Kさん」

「おっすおっすクラリスちゃん! お服、カワイイカワイイね☆」

クラリス「そうですか? ふふっ、ありがとうございます」

 
クラリス「それで、本日のご相談とは?」

「そうなのー……あのね、あの人のことを思うとね、お胸がきゅんきゅんするの……」

クラリス「ふむふむ」

「いっつもいっつも、心がイタイイタイなの。これって、ビョーキ?」

クラリス「なるほど。Kさんは、その人のことを考えるだけで、心がときめいてしまうと言うのですね」

「うん……ときめきときめきー……」

 
クラリス「Kさんは、その人とどういうご関係でしょうか?」

「えっとね、大切な人……なんだにぃ」

クラリス「お互いに、なくてはならない関係……ということですね」

「そーそー! もう四六時ちゅー、一緒なんだにぃ☆」

クラリス「とても貴い存在……素晴らしいではありませんか」

「えへへ、すばらしー☆」

 
クラリス「よくわかりましたわ。Kさんとえっと、その方……」

「Pちゃんだにぃ」

クラリス「Pさん。そのPさんとKさんは、切っても切れない絆で結ばれているに違いありませんわ」

「きずな……?」

クラリス「そう……つまり、KさんはPさんに恋をしているのです!」

「こ、恋にょわー!?」

 
クラリス「あなたにとってかけがえのない人……それこそが、あなたの愛する人に他なりません」

「あ、愛かにぃ……!?」

クラリス「愛、愛。らぶでございます」

「ら、らぶ!」

クラリス「Kさんは知らず知らずのうちに、Pさんを愛していたのでございます」

「つまり、Pちゃんにメロメロってコトかにぃ!?」

クラリス「めろめろもめろめろ、ぞっこんですわ」

「ぞっこん……!」

 
「で、でもでも、どうすればいいんだにぃ……?」

クラリス「悩む必要はありません。想いのままに行動すれば良いのです」

「想いのまま?」

クラリス「愛するがままに、Pさんに想いをぶつければ、全ては上手くいきましょう」

「ぶつける……ぶつければいいのかにぃ?」

クラリス「ええ。己を信ずればきっと救われますわ」

「なるほどなるほど☆」

 
クラリス「悩みは解決されましたか?」

「もっちろん! もーカンペキだにぃ☆」

クラリス「それはそれは、良かったですわ♪」

「ありがとー、クラリスちゃん! おっつおっつばっちし☆」

クラリス「ふふっ。私でよければ、いつでもご相談に来て下さい」

「んじゃんじゃ、Pちゃんとはぴはぴしてくゆー☆」

クラリス「神の祝福があらんことを……」

 
クラリス「おや、またお腹が空いてきましたね……」

クラリス「では次の丼をご紹介いたしますわ」

クラリス「せっかくのおやつ時ですもの、おやつが食べたいでしょう」

クラリス「ご心配なく、おやつの丼をご紹介いたします! その名も、ドーナツ丼でございます!」

 
クラリス「ほくほくと炊き上がった白米に、こんがり焼けた香ばしいドーナツ……」

クラリス「まさにアダムとイブの如く、出会うべくして出会った二人でございます!」

クラリス「ああ……色のコントラストが鮮やかで眩しすぎますわ……」

クラリス「我慢も限界です、いただきますっ」

クラリス「はむはむ、はふはふ!」

クラリス「ふわ……なんと美味しいのでしょう!」

 
クラリス「……ごちそうさまでした」

クラリス「聖書にも書かれていない、素晴らしき体験をした思いですわ……」

クラリス「この丼の創造に尽力されたドーナツの女神、Nさんへ感謝を」

クラリス「アー米ン……」

 
クラリス「さて。二人目の相談者は、Rさんでございます」

「よろしく、クラリスさん」

クラリス「なんなりと、ご相談くださいまし」

「ありがたいな。周りの人には、中々話しにくいことだからさ……」

クラリス「さようでございますか。でしたら、このシスター・クラリスにお任せ下さい♪」

「うん。じゃあ、聞いてくれる?」

 
「私さ、気になる人がいるんだ。気になる人」

クラリス「気になる人……ですか」

「ずっと長いこと一緒にいる人。たぶん、私が出会った中で、一番仲が深いかな」

クラリス「まあ。羨ましいですわ……」

「ありがとう。それでね、それ以上、仲が深まらなくなっちゃったんだよ」

クラリス「と、いいますと」

「友達以上、恋人未満……って感じかな」

クラリス「ふむふむ」

 
クラリス「Rさんは、それ以上の領域へ進むことを、望んでいらっしゃるのですか?」

「……そりゃ、まあ。運命の相手だし」

クラリス「あらあら。運命の相手! なおさら、結ばれたいですわね」

「ん、そうなんだよね。それで、どうすればいいんだろう?」

クラリス「お相手に、えっと……」

「あー……Pさん」

クラリス「Pさん。Pさんは、どう思ってらっしゃるでしょうか?」

「あの人が……?」

 
クラリス「私がRさんに言葉を授けることは容易ですわ」

クラリス「でも。そうだとして、相手の気持ちはどうなってしまうのでしょう?」

「相手の気持ち……」

クラリス「悩みを持つのは良いことですわ。でも、それは決して、自分だけの物ではないのです」

「そっか。相手のことでも、あるからね」

 
クラリス「一人の悩みから、二人の悩みへ。素直に分かち合うことで、より仲が深まるでしょう」

「なるほど……」

クラリス「ですから、Rさんはただ、素直に打ち明ければよいのですよ」

「そうすれば……そうすれば、ちょっとは進めるかな?」

クラリス「私はシスター・クラリス。嘘はつきませんとも」

「ふふ、そうだね。ありがと、クラリスさん」

クラリス「ええ。お役に立てて、嬉しいですわ」

 
「じゃあ、まずはメールでも送ってみようかな」

クラリス「積極的な姿勢は素晴らしいことですわ」

「ん……あれ、メールがきてる。『やっほー☆皆見て見て! Pくんと夜景でーと記念写メ☆』」

クラリス「まあ……」

「……」

クラリス「……」

「積極的な姿勢は素晴らしいことだよね」

クラリス「積極的な姿勢は素晴らしいことですわ」

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