ぼーけんするよっ!!(44)

※固有名あり


元は別な場所で書いてた話だけど、そこだと、ちょっとしたエロでも消され捲ってエロ書けないので、ここにエロ有りの書くッス




   プロローグ




 遥か昔、まだ人族と、機族と、魔族が、一つの大陸で隔たり無く共存していた頃。

 赤い月と、青い月と、金色の月が重なったその日……天災が誕生した。


 闇夜で山を震わせる産声を上げたのは、滅神竜エルガンド=ルールルーラー。


 人の言葉を話し、一キロメートルを越える全長、鋼の逆鱗で全身を覆われたメタリックシルバーのフォルム。そして全ての元素(マナ)の精霊達が恐怖し逃げ惑う圧倒的な存在感。
 元素の消えた土地は腐って黒く変色し、枯れ果て草木も生えない死土と化した。

 エルガンド=ルールルーラーは人を殺し、魔族を喰らい、機族を破壊する。
 もはや大陸の滅亡は決定的かと思われた。


 だが……その行進を止めたのは12のレジェンドと呼ばれた英雄達。
 四人が、四機が、四匹が集まって滅神竜を封印したのだ。


 それぞれ1/12ずつエルガンド=ルールルーラーの力を押さえ込み、やっとの思いで。

 そしてレジェンド達は自らの体を完全にカード化する事で寿命を取らなくし、カードは各種族の土地で厳重に封印を掛けて守られて来た。


 しかし先日、その内の一枚の封印が何者かによって解かれ、レジェンドカードが、姿を消した……





   『出発』





「でっ、それがボクとこの人とのセックスを、邪魔する理由になるの? ふぅっ……んんっ」


 月明かりが差し込むほの暗い部屋の中、演者が二人、傍観者が一人の静かな世界。

 傍観者の名は『マナ=エルナード』。ピンク色の髪を短いツインテに束ね、大きな瞳を潤ませ、部屋の入り口に立ったまま、目の前で行われている情事に頬を赤く染めている。

 ぢゅぷ、ぢゅぷ、ヂュプ、ヂュプ……


「ん、んっ、んっ、んっ♪♪」


 演者の一人は少女にも見違える少年。正確には少年でも無い。性別を自在に変化させる事のできる小悪魔、『深淵のエーヴィヒカイト』。



 その小悪魔はほぼ全裸で椅子に座る男性の足の間で膝立ちになり、股ぐらに顔をうずめ、自分の幼いペニスを扱きながら男の反り返った生殖器を咥え込む。

 最後の演者は椅子に座っている……座らさせられている男性。

 アイマスクを付けられ、口には拘束具を噛まさせられ、手は椅子の背もたれの後ろで、足は椅子の脚と、それぞれ手錠で繋がれて身動きが取れていない。

 ただただ、エーヴィヒカイトに黙ってペニスを弄ばれるばかり。



「んうっ!! うむぅぅぅぅっ!!」


 拘束された男性……と言うよりは、少年と言う呼び方が近い。

 体格は年相応よりやや小さく、生殖器だけがアンバランスに年相応を大きく越える立派さ。
 少年の名はリオ……『リオ=ストナー』。まだ12歳のあどけない子供。

 その子供が、不釣り合いなペニスを咥えられ、ねぶられ、裏スジまで丹念に舐め上げられて、熱い吐息と呻き声を漏らしている。

 端から見れば異様な光景……


「で、ですから、我々管理委員は……リオ君の力を借りたくて……って、まずは話しを聞いてください!!」


 だが、そんな光景に、マナ=エルナードは釘付けだった。


 小説の中でしか読んだ事の無い同性同士のまぐわいが、ほんの数メートル先で行われてるのだから。

 声を張り上げ、虚勢を表してはいるが、心臓はドキンドキンと飛び出そうな程に高鳴っていた。


「ふんっ……ちゅっ、んはぁぁぁっ♪♪ ふふっ、今からセックスするから、良いよ……オカズにしてオナニーしちゃっても?」


 無論、エーヴィヒカイトはマナの心情をとっくに理解してる。
 見たくなければ目を逸らせば良い。聞きたくなければ耳を塞げば良い。

 しかし、それをしないと言うのは、マナも気付いてるのだ。この場面を見逃せば、二度と見る事ができないだろうと。


 人としての威厳を保つか、欲求に身を任せるか。一世一代の葛藤。

 例えフレアスカートの中がぐちょぐちょに濡れていても、ショーツをベットリと張り付かせていても、痛いぐらいに拳を握り締めて理性を保つ。


「そっ、そんな事はしません!! それより、早くリオ君を解放してください!!」


 声を張り上げて、どうにかこうにか、理性を保つ。

 だが……マナ=エルナードの理性は、崩壊寸前のひび割れガラス。



「なら止めてみれば? 引き離されたら素直にヤメるよ? でも、断言してあげる……ここを逃したら、二度とチャンスは無い。さぁリオ……繋がろっ♪」


 振り向き、つまらなそうに言い放つエーヴィヒカイトのセリフは、マナに対して極上の束縛魔法。
 『二度とチャンスが無い』。その一言で、身体はその場に影縫われる。

 ただただ……ゴクリと喉を鳴らし。リオの太ももを跨ぎ、背中に手を回して抱き締め、幸せそうに微笑む小悪魔を眺めるだけ。


「ごめんねリオ? 女の子でするのも良いんだけど……この姿のボクも、もっと好きになって欲しいんだ。気持ちよく……んっ、するっ、からぁっ」



 シュルリ……

 エーヴィヒカイトは細い尻尾をリオのペニスの根元へ巻き付けると、角度を整えて自らの蕾へとあてがう。


「リオ、リオっ……りっ、ふんんっ!!?」


 そして難なく一番太い部分までを飲み込むと、ズブズブ音を立てて腰を下ろして行く。

 リオの胸と腹部に射精した精液を撒き散らしながら、ゆっくり、ゆっくり、粘膜の穴でペニスを柔らかく包む。

 ぢゅぷぢゅぷぢゅぷぢゅぷ……

「ふぁぁぁっ!! おっきぃ、お尻の穴が拡がっちゃうよぉぉぉぉっ♪♪」



 挿れただけでエーヴィヒカイトは背中を反らせ、黒い羽をピンと伸ばして開き、断続的に射精を続けながら身体を震わせる。

 気付けばマナはすぐ隣。まるで犬のように四つん這いになり、舌を垂らして熱い呼吸を繰り返しながら、二人の接合部を恥ずかしげも無く凝視していた。


「はぁっ、んふっ、はぁぁっ……」


 既に右手は太股の間を通り、ネバ付いたショーツを掻き分けて、秘部の中へ薬指がちゅぷちゅぷと出入りする。
 目に焼き付けるのは、腰だけを激しく振り立て、獣が交尾をするかのような同性同士のセックス。



 パン!! パン!! パン!! パン!! パン!! パン!!


「ちゅっ、んん……リオぉっ」


 エーヴィヒカイトは直腸全体を蠢かせてペニスをきゅっきゅと締め上げ、激しいピストンで腰を上下させる。
 愛おしそうにリオの左耳を口に含み、唾液で濡らして舐めながら、恍惚の表情で頬を赤く染めていた。

 サキュバスとインキュバス、その両方の力を持つ小悪魔。とてつもない快楽で精を搾り取り、男も女も破滅へと堕落させる、非情で、無情な、深淵の住人。


 だが、このエーヴィヒカイトは違う。自分の精をコントロールしない。しようとしない。

 サキュバスもインキュバスも自らの絶頂を自らで決め、与えられる快楽で達する事は無く、セックスは自分の失った魔力を補充する食事でしかないのだ。

 だから娼婦のように『イッたフリ』としてサービスする事は有っても、本気でイク事は絶対に無い。

 だが、だが、この小悪魔は……


「イッてリオ、イッてぇっ!!」


 このエーヴィヒカイトだけは例外も例外。

 本気で人間の子供に恋をし、奉仕するだけで精神的快楽により達してしまうほど、リオを愛してしまった。


 性別を自由に変化させ、少女の時は膣内で、少年の時は腸内で、リオの絶頂を受け止める。


「ふんんっ!!? り、おぉっ……お腹、あついよぉ♪」


 ビュルビュルと勢い良く精液を奥へ叩き付けられ、すぐに行き場を失って逆流し、お尻の入り口から溢れ出す。

 自らもまた、リオの腹部へ更なる欲を射精し、二人の下半身は真っ白に、卑猥に、デコレートされて行くのだった。



「はぁっ、はぁっ、もっ……さいあく、だよ」


 その光景を見上げるのは、一足先に果てたマナ=エルナード。
 床へ仰向けに寝そべり、肩で息をして、押し寄せる後悔で自己嫌悪に陥っていた。

 少年同士の濃厚なラブセックスをオカズにオナニーしてしまった自分を、バカバカバカ、とけなしていたのだ。

 だけど、とマナは思う。もし再び見る機会が有った時、自分は目を逸らせるのかと。

 そしてもし、



 そして、もし……

2

 人界の月、ルナ。機界の月、アルテミス。魔界の月、ヘカーテ。

 深まる夜空には三つの月が浮かび、それぞれ異なる色で世界を照らしていた。
 勿論それはこの場所……リオの家、その二階、三人が居る部屋も当てはまる。


「あの、マナ……さん? ボクよりも他の人に頼んだ方が良いと思うよ? ボク弱いし……カードだって、力を貸してくれるのはコイツを除いたら6枚しか無いし」


 そこで行われているのは、本来は一時間ほど前に始まるはずだった話し合い。

 テーブルを挟んでリオとマナが向き合い、お互いの言い分を言い合ってはコップに注がれた麦茶をすする。


 お互いに身なりを整え、マナの下着に関しては、洗濯所を借りて乾燥まで済ませた物を穿き直していた。

 エーヴィヒカイトは魔力で具現化した黒い普段着とベルトを纏うと、更にエプロンを身に付け、パタパタと浮遊しながら二人に麦茶を注ぐ。


「確かに、カードの所持枚数や魔力だけを見たらリオ君はまだ子供で弱いけど……でもね? この悪魔は別格なの。とっても強いんだよ?」


 話し合いの内容は説得。マナは、リオを、何度も説得していた。

 大きくクリクリとした瞳。女の子にしか見えない顔立ち。服装だってTシャツに半ズボンと言う特別なんて感じない少年を、一時間も説得している。



「まぁそれに、リオみたいな子供なら、管理委員から調査の依頼を受けて派遣された……なんて思われないしね。でもさ……本当にボクが居るから、リオが子供だから、って理由で選ばれたの?」


 エーヴィヒカイトはマナの説明に付け足して話し出すと、後ろからリオの首に腕を回して抱き着き、黒羽を畳んで休める。

 そして確認するのは、それ以外の理由。


「はい。その二つだけです」


 問われて口に手を当て、考え込むような仕草を見せるが、数秒で力強く首を縦に振った。


 嘘は付いてない。そう思わせる真剣な目で二人を見つめる、心からの懇願。テーブルに手を付き、心を込めて頭を下げる。


「あのっ、やっぱりゴメンなさ……」

「いいよ♪ リオと旅行できると思えば楽しそうだし」


 しかしマナの真剣さ、リオには届かず、エーヴィヒカイトには届いた。

 口を三日月の形に広げて笑う、最上級の悪魔は汲み取ったのだ。マナの思いを。

 だから……


「行ってあげるから、ヨコセ」


 だから悪魔は手を差し伸べる。もう片方の手で愛する者の口を塞ぎながら。



 ヨコセ。


 よこせ。


 寄越せ。




 ──お前の、カードをヨコセ。




「舐めるなよ人間がっ!! この旅が安全に済むはず無いだろっ!? なのにお前ら管理委員は安全な場所で見物か?」


 笑みだった表情は一瞬で激昂に変わった。目を細めて見据え、頭を下げるマナを啖呵を切りながら睨み続ける。

 瞳を金色に輝かせ、近場に居るだけで神経を削り落とすプレッシャー。


「リオが死んだらボクも死ぬ……それはいい。けど、リオが死んだら、お前も死ね!! 言ってる意味……わかるよね? リオもボクも、金は要らない。名声も要らない。そんな奴らにお願いをしようとしたら……これはもう、命を賭けるより他は無いんだ」



 ツーっと、マナの頬を汗が一筋垂れる。

 顔を上げない。上げれない。恐怖で、身体が動かない。両足だけが無意識に細かく震えるだけで。

 先ほどからテレパスでSOSを送っているのだが、一向に返事が来ないどころか通じない。


 ここまで追い込まれて、やっと、ようやく、部屋に差し込む月明かりが『白い』事に気付く。

 これは月明かり何かじゃ無いと……


 この偽物の月明かりは、
 この部屋に入り込む白光は、


 エーヴィヒカイトが産み出した魔力遮断結界、『ブライト=フィールド』。

 球体の光が家全体を包み、白く、淡く、部屋中を照らす。

ここまでやってから、深夜は雰囲気が違うと気付いた…


ここではもう貼んないので、落としてくださいm(__)m

レスつかないのはここではわりと普通ですよ。
支援するんで頑張って下さい


 
「それで、調査に赴いてくれるんだよね?」

 どうって事は無い。自分に言い聞かせる。たった、たったそれだけだと。
 覚悟を決め、大きく深呼吸して、リナは、ゆっくりと、顔を上げた。

「ぷはっ、いっ……イラナイイラナイ!! 貴方のカードなんて受け取れないよ!! 調査には行くから」

 そして二人のやり取りを聞いていたリオは、とんでもない展開に慌ててエーヴィヒカイトの手を振り切って遮る。
 要らない、要らないと、そりゃあ凄い勢いで手と頭をブンブンと。

 しかし、そんなリオの姿を見て少しだけ緊張が解け、同時にプライドが傷付くのを感じた。
 そして、そんなリオの姿を見て少しだけ、少しだけ、意地悪をしたくなった。


「そう頑なに断られちゃうと、逆にあげたくなっちゃうかも……かな?」

 再び深呼吸するとプレッシャーを押し退けて立ち上がり、無理やり笑顔を作って少年を見下ろす。
 一歩、一歩と、近付いて、一歩、一歩と、後退りするリオを追い掛ける。
 エーヴィヒカイトはテーブルに座って足を組み、主のコップに入った麦茶を飲みながら二人の様子を眺めていた。

「わきゃっ!?」

 これで大詰め。リオは部屋の隅に追い込まれて背中を壁にくっ付け、立ち塞がる女性を泳いだ目付きで見上げる。


 これから行われるのは、人族(じんぞく)でも、機族(きぞく)でも、魔族(まぞく)でも無く、純粋な『ヒト』だけが可能な主従の契約。
 マナはリオの手首を掴むと身を屈めて視線を合わせる。顔も鼻先がくっ付く程に近くへ寄せ、目を見つめてニコリと微笑む。


「私、マナ=エルナードは、リオ=ストナーをマスターと認め、死が二人を別つまで、力を貸す事を誓います」

 そして……


「んっ」


 一瞬だけ唇が重なり、


「んんっ!? えっ、えっ? あ、あのっ!?」


 すぐに離れた。キスしたのかどうかさえ不安になるほどの、本当に一瞬だけ。
 だけではあったが、リオは頬を耳まで赤く染めて俯き、俯いた先に居たリナの姿に驚く。


 いつの間にか手首を解放し、床に片膝と片手を着き跪いていたのだから。

「ほらリオ、そいつのカードをちゃっちゃと貰っちゃってよ」

 小悪魔はうんうんと首を縦に振るとリオを急かし、コップに残った氷を口の中で転がす。
 マナはジッとしたまま、ジッとしたまま、契約を待っている。


「もぅ、知らないからね? ふぅぅっ……カードクリエイション!!」


 二人が深く繋がる事を。ただジッと目を閉じて。


 描くのは五芒星。手をかざし、マナの頭上で小さな五芒星を描く。
 左手の人差し指と中指で、一辺、一辺、何も無い所へ指の軌道と軌跡で。

「汝(なんじ)、マナ=エルナードを、我が生涯のパートナーに迎え入れる!! 力の限り従えば、命の限り汝を守ろう!!」

 風が吹く、この部屋の中で。風が吹いて、三人の髪がなびく。
 それはリオを中心に渦を巻き、淡い緑光で輝きを放つ。

 この緑光は『マスターとしての質』。色の種類と濃淡によって魔力のキャパシティやクオリティ、果ては知識や術(すべ)まで……平たく言えば、この光だけで実力が分かるのだ。


 全8ランクが存在し、リオはその上から7番目。限り無く8に近い7、チャイルドクラス。
 良くも悪くも年相応の魔力で、こんな子供の下に就こうとする者はまず居ない。人懐っこいモジャーが関の山。

 ただ、ただ……


「う〜ん♪ やっぱりリオのは、いいなぁっ」


 リオの魔力は暖かく、優しく、柔らかく、周りに居る者に心から安心感を与えてくれる。
 エーヴィヒカイトも幸せそうに目を閉じ、リボンの結ばれた尻尾をピコピコと左右に振っていた。

 最後の仕上げ。描かれた五芒星はそのまま形を残し、中心から一枚のカードを浮かび上がらせる。
 トランプより僅かに大きい程度で、成人の手なら楽に収まるだろうサイズ。その端。


「クリエイションカード……ドロー!!」


 その端を人差し指と中指で挟み持ち、一気にカードを引きずり出す。

 五芒星の中から、無から、
 分子結合。
 粒子結合。
 元素結合。
 現界させて、カードを造り誕生させる。

 この一連の行程こそが、カードクリエイションと呼ばれる錬成術。


 やがて風は消え、光は消え、魔力は消え、カードだけがリオの手に残った。


「これからよろしくマナさん」


 そしてゆっくりとひざまづくマナに微笑み、


「よろしく、リオくん」


 マナも微笑んで見上げ、


「あはっ♪ よろしく……な〜んて、展開にはならないんだなコレが」

 それ以上に微笑むエーヴィヒカイトが、二人の安心し切った笑顔を一瞬で凍らせる。
 風が消え、光が消え、魔力が消え、リオの手に存在したカードは、既に小悪魔の手中に落ちた。

 微笑みが交差した刹那に、リオの手からカードを奪い取ったのだ。



「えっ、と……エーヴィ?」


 急展開。リオは一番最初に振り落とさた。ただただ、心配そうな声で名を呼び、隣に居る小悪魔の横顔を見つめるだけ。
 しかし、こちらの視線は交わらない。エーヴィヒカイトはひたすら真っ直ぐに、契約の終えたリナを見据えていた。


「お前は弱いし、リオが無駄に力を使うだけだから要らない。このカードは、お前が、自分で、持ってろ……つまり、『ディスタンス』だよマナ=エルナード」


 そしてスゥーっと流れるような動作で、カードを持った手をマナに向けて差し出す。


 ディスタンスとは……ビーム、フュージョンと並ぶ、マスターと従者とカードの関係性の事。

 『ビーム』は簡単に言えば初期設定。契約した後は必ずこの状態から始まる。
 従者は普段通りに生活し、カードはマスターが持ち、マスターが望んだ時だけその場所へ同意の元に従者が転送され、力を貸した後は再び戻る……と言う関係。


 『フュージョン』は、従者がカードと同化してマスターに力を貸す状態。
 完全に服従し、全権をゆだね、マスターの意思のみでいつでも召喚可能。従者はフュージョン状態で居る限り歳を取らず、傷を負ってもマスターから魔力を貰えばいつでも回復するが、力を貸した後はカードへ戻る……と言う関係。


 最後、『ディスタンス』は、従者がカードを持ったままマスターに力を貸す状態。

 ビームと同じく召喚されたままだが、こちらは常にマスターと行動を共にするパートナーとしての意味合いが近い。

 ビームよりも自由は少ないが現界したまま存在でき、更にフュージョンと同等の繋がりを得られる。だが、ディスタンスで契約する者は少ない。なぜか?


 それは、マスターが力尽きた時、従者もまた力尽きるからだ。

 ビームやフュージョンのカードはマスターの中に有り、マスターが力尽きた時に契約が切れて解放される。



 しかしディスタンスは、カードを従者自身が持っているので解放されない。
 深く繋がった関係は死さえ分かち合って、マスターと共に力尽きるのだ。

 故に……ディスタンスの契約をした者は、マスターを命懸けで守り、命懸けで支える。心からの忠誠の証。




「わかりました。でも、その言い分だとつまり私は……」


 何となく、『死ね』と宣告された瞬間に、リナはこの契約の事だと理解していた。

 伸ばされたエーヴィヒカイトの手からカードを受け取ると、カードは砂が風に運ばれるように、サラサラと分解され消えてゆく。


 そうじゃない。消えた訳では無くて、マナの中に戻ったのだ。そして再びマスターに取り出されるまではこのまま。


「そっ♪ ディスタンスだけど、あんたは普通の生活をどうぞ……傍で守るのはボク一人で良いし……ねっ? リオっ♪」

「えっ? あっ、わわっ!?」


 エーヴィヒカイトはニコリと極上の微笑みを見せると、そこが定位置だと言わんばかりに後ろからリオへ抱き着いて頬擦りを始める。

 まるで飼い犬のように尻尾を振って、触れ合ってるだけで「きゃうん、きゃうん♪」と鳴いて、顔から鎖骨に掛けてたくさんのキスを落とす。


 そんな光景を見て、マナは身体中の毒気を抜かれた気分だった。
 命を賭けろと言われて実際に賭け、大変な事態に陥ってるのは理解しているのだが、どうにも緊張できない。


「はぁぁっ……詳しくは後日に手紙で報告しますので、それまでに支度は済ませててくださいね? 頼みますよ……本当に」


 深い溜め息を吐いて立ち上がると膝を手で払い、また溜め息を吐く。

 このエーヴィヒカイトは強い。悪魔はどの種も絶品の二枚舌で気分屋で、マスターの精気を吸い付くし、殺してしまう者だっているほど。


 しかし、この二人の関係には、そんな心配は無いとマナは思えた。


「よろしく、お願いします……」

 話し合いの終わりに深々と頭を下げると、


「ふふっ♪ まぁ、無事に帰宅するのを祈ってなよ……途中途中で、きちんと手回ししてくれたら、その時は……マナ=エルナード、お前の願いを叶えよう。
 一晩だけ、男の子にしてあげるよ。『さっきの』に交ぜてあげる♪ ボク? リオ? 挿れたい? 挿れられたい? 考えといてねっ」


 また身体が熱くなるのだった。





    第1章





 ヒト に ナリタイ

 喜びを知った。
 怒りを知った。
 悲しみを知った。


 後は? ヒトに成る為に、足りない感情は?


「イケない、ヤメろディスミル」


 ゴメンねクリスティ……


「ミルさん!! そんな事は止めてください!!」


 ゴメンねカトル……

 ゴメンね、みんな。だけど、これしか残ってないの!! 考えつかないの!!
 私が唯一、唯一知らない感情……『恐怖』さえわかれば、私はヒトになれるのよっ!!

 だから、



 だからほらっ……





 泣きながら逃げ惑う、
   貴方の恐怖を見せて。




「ま、待てよっ!! この通り、手持ちのカードは全部やられちまった。お願いだから……見逃してくれっ!!」

 男のヒトが、ドゲザをしています。
 辺りには砕けたカードのカケラ達。

 このヒトのヒキツッタ顔が 恐怖 なのでしょうか? わかりません。
 ワカラナイから、




「『幾億の孤独(ミリオンダラー)』……」



 もう少し、アナタの恐怖を教えてくださいね。

>>25
エロ以外は、だいたいコピペして終わりですが、ゆっくりやってきますm(__)m

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