千穂「真奥さーん」 真奥「ん?」 (38)

真奥「あれ、ちーちゃん。こんな道端で会うなんて奇遇だな」

千穂「エヘヘ。実は親戚からお菓子を貰ったので、おすそ分けしようとこれから真奥さんの家に行くつもりだったんです」

真奥「何時も悪いな。じゃあ俺も帰る途中だから一緒に行くか」

千穂「はい!」

真奥「それにしても今日も暑いな。この世界の夏は毎年こうなのか?」

千穂「毎年という訳ではありませんけど、ここ数年は確かに暑い年が続いてますね」

真奥「これが良く聞く地球温暖化ってやつか。あ~あ、雨でも降ったら少しはマシになるんだがな」

千穂「さすがにこの天気で雨は……あれ?」

ぽた……ぽた……ざぁぁぁぁ!!

真奥「なっ、本当に雨が降って来た! まさか俺にこんな力があったとは!?」

千穂「真奥さん凄いです……って呑気な事言ってる場合じゃありませんよ! このままだと私達びしょ濡れです!」

真奥「そ、そうだな。よし、魔王城までダッシュだ、ちーちゃん!」

千穂「はい!」

…………

真奥「ただいまー……って、あれ? 芦屋達居ないのか」

千穂「買い物ですかね?」

真奥「漆原の奴もついて行ったのかな、珍しい……まあいいや、とりあえず上がって」

千穂「は、はい。おじゃまします」

真奥「しかし確かに雨降って欲しいとはぼやいたけどいきなりはねーよな」

千穂「そうですよね。本当災難……くちゅん!」

真奥「大丈夫か、ちーちゃん? はい、タオル」

千穂「あ、ありがとうございます……って、きゃあ!?」

真奥「ど、どうした? いきなり悲鳴なんか上げて?」

千穂「ななな何でもありません! 何でもありませんからあまりこっち見ないで頂けますか?///」

真奥「? 別に良いけど」

千穂(どどど、どうしよう? 濡れたせいで服が透けて下着がががが///)アタフタ

千穂(幸いまだ真奥さんは気付いてない……まあ別に真奥さんになら少しくらいなら見られても良いかな~とは思うけど)

千穂(いや、やっぱり駄目! 今日の下着、あんまり可愛くないもん!)ブンブン

千穂(ていうか落ち着いて考えたら今真奥さんと二人きりなんだよね? 雨に濡れた男女が薄暗い部屋で二人きり……あわわ///)

千穂(何か変に意識しちゃたらドキドキしてきたよ。もしかして真奥さんも今こんな気持ちに……)チラッ

真奥「おお、凄い雨だ。この雨を俺の力で……やはり俺は魔王だな!」ヒャッホーイ

千穂(なってる訳ないですよねー。なんか分かってましたー)

千穂(それにしても濡れた真奥さんもカッコイイな~。この姿を見れただけでも役得だよ)ホクホク

真奥「なぁ、ちーちゃん」

千穂「あ、はい。なんでしょう?」

真奥「何時までも濡れた服だと風邪引くし着替えた方が良いと思うんだ。
で、さすがに下着は無いけどとりあえず上は俺のシャツとズボンで良いかな?」

千穂「え、真奥さんの?」ゴクリ

真奥「あ、さすがに俺のは大きいか。なら漆原の服の方が……」

千穂「いえ、真奥さんの服で大丈夫です! 大きいなんて事はありません! ぴったりですからお気遣いなく! むしろこっちの方が良いです、ええ!」ヒッシ

真奥「あ、そう。じゃあはい」

千穂(やったー! 真奥さんの服GET!!)

千穂「そ、それじゃあ早速着替えますね」

真奥「おう」

千穂「…………」

真奥「…………」

千穂「…………」

真奥「…………」

千穂「…………///」

真奥「…………?」

千穂「……あのぉ、そこに居ると着替えられないんですけど?///」

真奥「あ、悪い!?」

真奥「じゃあ着替え終わるまで俺、トイレに入ってるよ。俺も着替えなきゃいけないし」

千穂「あ、それなら私がそこで着替えて来ますよ」

真奥「良いから、良いから。じゃあ着替え終わったら教えて」ノシ

千穂「は、はい。ありがとうございます」ノシ

ドアバタン

千穂「……着替えようか。うん」

千穂(うわぁ、やっぱり下着もぐっしょり……とりあえずブラは外しとこう)ガサガサ

千穂「そしてこれが真奥さんのシャツ……」ゴクリ

千穂「…………」

千穂「…………」クンカクンカ

千穂(あ、やっぱり真奥さんの良い匂いがする……って何やってるの、私! 変態さんじゃないんだから!?)

千穂(は、早く着替えよう。あんまり遅いと変に思われちゃう)アセアセ

千穂(それにしても真奥さんの部屋で着替えるなんて……落ち着いて考えると凄い状況だよね)

千穂(しかもあのトイレの扉の向こうには真奥さんが居る。おそらく真奥さんもまだ着替え中……)ゴクリ

千穂(って、また私変な事考えてる! ああ、もう何も考えない! 無心、無心になるのよ、千穂!!)

ゴロゴロ……

千穂「へ?」

ピカッ!! ガシャアアアン!!

千穂「きゃあああ!?」

真奥「どうした、ちーちゃん!」ガチャ

漆原「何? 何、今の雷と悲鳴?」ガラガラ

千穂「ふぇ!?」

真奥「え?」←着替え途中で上半身裸

漆原「え?」←押し入れの中でさっきまで寝てた

千穂「…………」←パンツ一丁



千穂「……きゃあああああああああ!!!!!///」

パチーン! ゴスッ! ドガッ! メキッ! ブチッ! ゴキュ!

…………

千穂「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」←服着た

真奥「いや、謝るのはむしろこっちだから。頭上げてよ、ちーちゃん」ヒリヒリ

千穂「私、パニくっちゃって……本当にすいませんでした」ショボーン

漆原「まったくだよ……っていうか真奥は平手打ち一発なのに何で僕はこんなに殴られないといけないのさ……?」ボロボロ

真奥「バーサーカーもびっくりな暴れっぷりだったもんな」

千穂(うぅ、真奥さんだけならまだしも漆原さんにまで見られるなんて……)グスン

千穂「あの、漆原さん。やっぱりもう4、5発頭を殴らせてくれませんか? 記憶が完全に飛ぶ様に出来れば鈍器の様なもので……」

漆原「潤んだ目で何恐ろしい事言ってんの? やだよ! そんな事されたら記憶以外の物も飛んじゃうよ!?」

真奥「ていうかお前、部屋に居たんだな」

漆原「当たり前だろ、僕がここから出る訳ないじゃん。昨日夜更かししちゃったから押し入れで昼寝してたんだよ」

千穂「ま、まさか押し入れから私の着替えをずっと覗いて……あ、ここにある金づち借りますね」

漆原「寝てたって言ってるだろ! あ、さっきの事を含めて記憶が綺麗さっぱり消えました! だから金づち振り上げないで!?」

真奥「で、芦屋はやっぱり買い物か?」

漆原「ああ、僕が寝る少し前に留守番頼むって言って出て行ったから多分そうだね」

千穂「それで寝てたら留守番の意味ないじゃないですか……でも雨どんどん酷くなってますよ?
芦屋さん、大丈夫かな?」

真奥「くっ、スマン、芦屋。俺の起こした雨のせいで……」

千穂「あ、それまだ続いてたんですね」

漆原「それより僕、そろそろお腹空いて来たんだけど」グゥー

真奥「そういやもうお昼か。しかしこの天気だと芦屋が帰るまでまだ時間かかりそうだな」

千穂「なら私が何か作りましょうか?」

真奥「え、良いの?」

千穂「任せて下さい。あ、冷蔵庫の中身を見させて貰いますね」ガチャ

冷蔵庫の中
・氷
・長ネギ一本
・作り置きの麦茶 以上

漆原「……なんか作れそう?」

千穂「……や、焼ネギくらいなら(汗」

真奥「さすがに三人でそれはな……仕方ねえ。シェフに頼むか」

…………

鈴乃「それで私の所に来たと」

真奥「えっと、駄目かな?」

鈴乃「……まあ良いだろ。千穂殿も居るしな。上がれ」

真奥「助かるぜ。今度何かお返しするから」

鈴乃「そうか、期待せずに待っているとしよう」

漆原「何だよ、何処行くかと思ったらベルのとこかよ。昼飯うどん確定じゃないか……」ハァー

千穂「漆原さん、働いてもないのに食べ物で文句言っちゃ駄目ですよ」メッ

鈴乃「さてどうするか……よし、鍋焼きうどんでもするか」

真奥「この真夏にか?」

鈴乃「夏に食べる鍋もおつなものだぞ。それにお前も千穂殿もこの雨に打たれてきたのだろ?
なら体が温まる食べ物の方が良いだろ」

鈴乃「それに鍋ならみんなで食べられるしな」

千穂「良いですね」

漆原(まあ鍋ならうどん以外の具もたくさんあるから少しはマシか)

真奥「あ」

千穂「どうしました、真奥さん?」

真奥「いや、ちーちゃんの着替え。俺の貸すより鈴乃から借りた方が良かったかな~って」

漆原「それは無理な話だよ、真奥。佐々木千穂がベルのチンチクリンな服を着れる訳ないじゃん。
特に胸の辺りなんて天と地ほどの差が……」

鈴乃「ルシフェル、ちょっとこっち来い」

<ヤメテーソッチニハマガラナイカラー

千穂「あの、服なら真奥さんので大丈夫ですから」

真奥「そう? なら良いけど」

千穂(そういえばドタバタして忘れてたけど今私、真奥さんの服を着てるんだよね)

千穂(何だか真奥さんに包まれてるみたい……)

千穂(雨で冷えた体が暖かくなって来たのは……きっと夏の暑さのせいだけじゃないんだろうな)

千穂(真奥さん。私やっぱりあなたの事……)

千穂「~♪」

真奥「ちーちゃん、何ニヤニヤしてんの?」

千穂「え? あ、別に何でもありませんよ、あはは」

千穂「それより真奥さん」

真奥「ん?」

千穂「これからも、その、よろしくお願いしますね」

真奥「え? ああ、それは勿論だけど……いきなり何?」

千穂「ちょっと言いたくなっただけです。あ、鈴乃さん、私も手伝います!」

真奥「?」

千穂(外の雨は激しさを増すばかり)

千穂(だけどその日、私の心の中はとても晴々としていた)



真奥「……つかこの雨、マジでやばくね?」

…………

ごぉぉぉぉ!!!

芦屋「くっ、まさか特売に釣られ遠くのスーパーに来た日に限ってこんな嵐に出くわすとは……」

芦屋(だが目的の物は無事手に入れた。そして家には魔王さまがお腹を空かせて待っているはず……)

芦屋「アルシエル、今戻ります! 待っていて下さい、魔王さまぁぁぁ!!」

芦屋が嵐の中、魔王城に何とか帰還し、そして鈴乃の部屋で楽しく鍋焼きうどんを囲む真奥達を目撃するのはそれから30分後の事である。

おわり

ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。
アニメの二期が始まる頃までにはまた何か書くかもしれませんし、書かないかもしれません。

後少し前に『遊馬「アストラルが居るせいで抜けない……」』という遊戯王のSSも書いてみたので、もし読む機会があればこちらの方もよろしくお願いします。ではでは。

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