智「さあ、おとぎ話をはじめよう」 Re:3 (1000)

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 SS速報VIP 智「さあ、おとぎ話をはじめよう」 Re:2

 このスレはブランド暁WORKSのゲームタイトル、るいは智を呼ぶ、るいは智を呼ぶFD-明日の向こうに視える風-、
 並びにコミュ-黒い竜と優しい王国-の前者寄りのクロス作品です。
 両方共に多大なネタバレを含みます。(【閲覧】さんや『伝説』の事など)
 これからるいは智を呼ぶ、或いはコミュをプレイしようと思っている方は見る際にご注意ください。

 セーブデータ1(一スレ目)は保存してある状態で、セーブデータ3(二スレ目、三スレ目)の一周目が終了しました。
 只今EXTRAの安価物語を行なっております。
 ご新規の方は二スレ目から見ることをオススメします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363440428

 真耶「智が相手してくれないから安価で世界を導く」

 現好感度
 十五日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆


 前スレ>>998から十六日目の続きです。

真雪「そういえば前買ってたゲーム、どうでした? 初心者には中々に難しいと思いましたけど」

智「ああ、うん、あれね……すごかった」

 近くのコンビニでビニール傘を買い、雨の降る街を並んで歩く。

真雪「えと……つまり?」

智「……楽しかった、ってことかな。 一晩中やってコンプリートしちゃったし」

 柚花さんの眼が丸くなった。
 そして、不敵に笑う。

真雪「ふふ……どうやら、素質があるようですね」

智「えと……柚花、さん?」

真雪「真雪、でお願いします。 私も智さんって呼びますから」

 不意に、そう提案される。
 別に拒否する理由など、特にないのだけれど。

真雪「私、ネットでは知り合いは結構いますけれどリアルではこっち系のはそんなにいなくて。 同性ともなると尚更なんです」

真雪「だから、まぁお近づきの印に、ということで」

 オタク趣味は、中々に難しい。
 最近は某軽音楽のアニメや某魔法少女のアニメで急激に表にも普及し始めているけれど、それでもコアな部分、特にエロゲともなると中々にいないのだろう。
 一人ぼっちは、さみしい。
 それは僕が、僕らが一番良く知っていることだ。

智「うん、いいよ。 真雪」

 先程も言ったとおり、拒否する理由などない。
 それだけではなく、寧ろそうしたいという気持ちも湧いて出てきてしまった。
 僕の言葉に答えるように、真雪は笑った。

真雪「それじゃあ今日は、ゲーセンからの本屋巡りと行きましょう」

真雪「本当なら次のゲームも紹介したいところですけど、こっちの街には無いみたいですし漫画やラノベで私のお勧めを教えてあげますので」

 満面の笑みを浮かべる柚花さん……いや、真雪。
 人に言わせればだらしない顔、と言われそうだけれど。
 名前一つ呼ぶだけでこんな顔をしてもらえると思うと、悪くない。

真雪「まずはゲーセンですけど。 智さんはどんなジャンルが好きですか? 音ゲーとかクイズゲーとか格ゲーとか」

真雪「カードを買ってやるタイプの奴もありますけど、ぶっちゃけ途中から参入するのはお金もかかりますからお勧めはしませんね」

真雪「メダルゲームもいいですけど、結構単調なので――――」

 ……オタクは自分の趣味になるとエネルギッシュだ、とはよく言うけれど。
 これは、明らかに想像以上で。

智「あはは……」

 この柚花真雪と付き合うには、それなりの覚悟が必要なようだった。

 柚花真雪 の好感度が沢山上がりました。

 十六日目を終了します。

 十六日目終了

●皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆ 
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 十七日目、行きますですか?

 ■十七日目■


 水曜日。
 今週もあと半分。
 テレビを付けてお天気番組を回すと、丁度噂の結奈ちゃんが映っていた。

智「この娘がそうなんだ」

 アイドル風のふりふり衣装、その体型も合わさって男子の保護欲をくすぐる。
 そもそもロリコンはごく自然な思考だ、というのが聞いたことがある。
 小さいもの、或いは弱いものを可愛いと思い、大切にしたい、守りたいと思うのは生物として当然の本能なのだと。
 それに対して性的思考を抱き、実行に移す……即ちペドフィリアは問題だけれど。
 それに日本人は元来にして幼い娘を嫁に迎えるということが多かった。 医学が発達する前では寿命も短いし、初潮が来てすぐに結納する、というのも珍しい話ではなかったらしい。
 ……ちなみに僕はロリコンじゃない。 大きいのも、小さいのもいけるだけだ。
 それはそれで、問題だけど。

智「さて、と」

 テレビの電源を消し、身体を伸ばす。
 バキバキ、と背中の関節が鳴る音が部屋に響く。

智「疲れてるのかな」

 マッサージをしてもらおうにもしてくれる人がいない。
 生業にしてる人に行ったら、きっと骨格でバレてしまう可能性もあるし。
 ……ゆっくり寝て、治すしかないか。

智「行ってきます」

 誰もいない部屋に投げかけて。
 今日も僕は、家を出る。

 ↓1

智「ただいまー」

智「おかえりー」

 一人お出迎えごっこ。
 以前にもやったことがあるけど、一人の家で寂しくなくなると最近マイブーム。
 ただしやった後に虚しくなる。

智「……ご飯つくろう」

 今日はスパゲッティ。
 茹でたパスタにオリーブオイルとキノコ数種類をあわせる簡単なもの。
 お好みに併せて色々な具材を投入するのもあり。

 大体一人分のパスタを鍋にひろげたところで、家のチャイムが鳴る。

智「はぁーい」

 パタパタとエプロンを来て玄関に駆けるのは新妻の様。
 僕は男で、迎える相手も誰もいないのだけれど。
 鍵は開けず、外に向かって投げかけた。

智「どちらさまー?」

『トモー』

 抑揚のない声。
 しかし、それの主が誰だかすぐにわかった。

智「るい!? 待って、すぐに開けるから!」

 直ぐ様鍵を開けると、るいが雪崩れ込んでくる。

智「わっ、わっ」

るい「トモーお腹すいたー」

 なんとかるいを受け止めて、その言葉を聞く。
 呆れた。

茜子「茜子さんも居ます」

智「……なに、どういうこと? 花鶏も居たりはしないよね?」

 話をまとめると。
 ちょっとした喧嘩……までは行かないけど、行き違いというか。
 そんなこんなでるいと茜子は花鶏の家を追い出されてしまったらしい。
 しかし捨て台詞が『今日は帰ってくんな!』の辺りが花鶏らしい。

るい「それで晩御飯も食べてないんだよー、トモー、何か恵んでー」

茜子「茜子さんに食べ物を恵むと徳ポイントが上昇します」

智「徳ポイントが上がると何になるのさ」

茜子「茜子さんが家に住み着いて、その家に福を齎します」

 どこの座敷童子。
 兎角、放っておくわけにも行かないので家にはあげることにした。

 追加で四人前のパスタを作って、ごちそうさま。
 三人前も平らげたるいは満足そうに自分のお腹を撫でていた。

るい「おいしかった~やっぱ、トモはいいお嫁さんになるよ」

智「そもそも相手が居ないけどね」

茜子「売れ残ったなら茜子さんが養われないこともないです」

智「それって全部僕に押し付けるってことだよね」

 DVよりも酷い。

智「もう。 今日だけなんだからね」

茜子「と、ツンデレっ娘貧乳タイプがおっしゃられております」

智「茜子、ベランダで寝る?」

茜子「おお勇者よ、これしきでキレるとは情けない……」

 こそこそと布団の下に避難する茜子。
 そうなってしまえば手出しは出来ず、僕は溜息をつくほかなかった。

るい「……ねートモー、ここに住まわせてよー」

智「だめ」

るい「花鶏の家の料理、おいしくないんだよー」

 そんなこと言われても。
 切り詰めれば二人分の生活費を捻出できないことはないけど、問題はもう一つ。
 僕の呪いだ。
 一日二日なら、なんとかなる。
 しかし一緒に住むとなると、いつかはボロが出る。

智「だめったら、だめ」

茜子「そうです、この家には茜子さんという精霊が既にいるのです。 暴食王はお帰りください」

るい「あん?」

 何か。
 何かが、るいの琴線に触れた。

るい「ちょっとアカネ、どういう意味さ」

茜子「そのままの意味です。 この家には、どちらかで十分ということです」

智「ちょっ、ちょっと二人とも?」

 なんなのこの空気。
 いつもにもまして、おかしい。
 るいと茜子という異色の対峙がその空気を更におかしくしている。

るい「…………」

茜子「…………」

 茜子はベッドの下から這い出て、スカートの縁をほろう。
 そしてベッドを挟んで、二人して睨み合う。

智「や、やめてよ。 喧嘩はよくないって」

 少なくとも、殴り合いに発展したら茜子がやばい。
 るいの〈才能〉も危ないけれど、それが茜子の身体のどこかに直に触れただけで、踏んでしまう。

るい「……だったら、トモが選んでよ」

 茜子から目を逸らさず、るいはそう提案した。

智「え……」

茜子「賛成です。 ここではっきりしておいた方がいいです」

智「え、ちょっ、ちょっと待って、今日はちゃんと二人とも泊めるから、落ち着いて」

 そういう問題じゃない、というのは僕もわかってる。
 けどそういうしかない。 この場を収めるためには先ず二人を落ち着かせる他ない。

るい「トモ、お願いだから今ここで決めて。 選ばれなかったら選ばれなかったで、私もちゃんと納得するから」

茜子「同感です。 今日泊める泊める止めないは関係なく。 私とるいさん、どちらかを決めて下さい」

智「そんな、そんなこと……」

 そんなこと、言われても。
 なんで。
 なんでこんな状況になったの?

 二人は、僕に何を選ばせようとしているの?
 話を逸らそうにも、この二人はきっと納得しない。
 ならば、ここで二人の問いに答えを出すしかないのだ。

 僕は、僕が選ぶのは――――


 ↓1

智「…………」

るい「智」

茜子「智さん」

 二人が僕を呼ぶ。
 選択が迫られる。
 どうして、何故。 そんな疑問がぐるぐると頭の中を巡って。
 絞りだすように、僕は答えを出した。

智「……あ、茜子。 どちらかをずっと泊めるのだとしたら、茜子に、なる」

 理由は、ある。
 一つは、二人の呪い。
 茜子は人に触れられない。 これはまだ、家の中では大丈夫。
 しかしるいは、人と触れ合えば触れ合うほど踏む可能性は上がる。
 自惚れるつもりはないけれど、るいは僕になついている、と思う。 そうすると心を開放しすぎて口を滑らすのも時間の問題に思える。

 二つ目は単純に身体の丈夫さだ。
 茜子も宿なしでそこそこの修羅場はくぐってきているのだろうけれど。
 るいと比べてしまうと、どうしても『もしも』のことを考えてしまう。

 そうすると、どうしても。 茜子になる。
 なって、しまう。

茜子「…………」

るい「…………そう」

 るいは、見るからに落ち込んでいて。
 対象に茜子は、心なしかホッとしているように見えた。

 出来れば、答えなんて出ないほうがよかった。
 理由なんて考えずに、度外視して、或いは二人とも同じ条件で。
 どちらも選ばない、否、どちらも選ぶ。 それが理想で。
 でも、現実は。

 僕は、茜子を、選んでしまった――――

るい「……じゃあ、私……行くね」

智「待っ――――」

 僕が止めるよりも早く。
 るいは僕の家を飛び出した。
 まるで、僕らから逃げるかのように。

 駄目だ。
 これだと、駄目だ。
 このままだと、駄目だ。

 言いようのない危機感が僕の脳裏に走る。
 僕は、どうすべきだ。
 何を、すべきだ。


 ↓1
 1 るいを追いかける
 2 動けない

智「……っ!」

 るいを追いかけようと、足を踏み出す。
 が、後ろから服の裾を掴まれて踏みとどまった。

智「茜子っ……!」

茜子「…………」

 茜子の表情は読めない。
 無表情なのではなく、俯いているからだ。

智「茜子、離してっ……! 僕は、るいを……」

茜子「ごめんなさい」

 不意を突かれた。

茜子「……私、どうかしてたんだと思います」

茜子「こんなことにするつもりはなくて、でも言わなきゃいけなくて」

茜子「……本当に、ごめんなさい」

 わかってる。
 悪気がないのは、わかってる。
 誰だってそうだ。 僕だってそうだ。
 皆が皆、良かれと思って、行動をする。
 それで、世界は回っているのだから。

茜子「……私が言えた義理ではないですけど。 るいさんを、お願いします」

 ぺこり、と頭を下げる。
 裾を掴んでいた手を離して、僕は開放された。

智「……うん。 すぐに帰ってくるから、待ってて」

 小さく頷くのを見届けて。
 僕も、家を飛び出した。

 るいは、案外すぐ近くで見つかった。
 今にも消えそうな街灯、その真下で体育座りをして丸くなっていた。

智「……るい」

るい「…………」

 返事はない。
 僕はるいと一メートルぐらいの距離で立ち止まる。

智「…………」

 僕にかける言葉はない。
 どんな理由があろうと、僕がるいと茜子で二択を出されて、選んだのは茜子だった。
 その僕が謝って理由を告げたところで、言い訳にしかならない。

 数分か、数十分か、或いは数十秒か。
 沢山の沈黙を経て、ようやくるいは口を開く。

るい「……なんで、さ」

るい「なんで、来たのさ」

るい「智はアカネを選んだんだよね。 アカネの方が良いって言ったんだよね」

るい「それなのに、なんで私を追いかけてきたのさ」

るい「私……いらないんでしょ?」

智「違うよ……」

 違う。
 僕は、確かに茜子を選んだ。
 けれど、るいが要らないだなんて。 そんなこと、一言も言った覚えはない。

るい「じゃあ……」

 ギリ、と。
 歯を食いしばる音。

るい「じゃあ、どうしてアカネを選んだの!? 私じゃなくて、なんで……なんで!?」

智「……ごめん」

 僕には、ただそういうことしかできない。

智「何を言っても、るいには言い訳にしかならない」

 でも――――
 それ、でも。

智「いらないわけがない。 るいは、僕の、僕らの大切な仲間で、友達だから」

智「るいがいなくなるっていうんなら、僕は……きっと、僕も、いなくなるよ」

 誰かがいない同盟なんて、なんの意味もない。
 るい、花鶏、こより、伊代、茜子。 それに央輝、惠。 たまに宮和。
 誰かが欠けてしまったら、それはもう同盟じゃない。
 少なくとも、僕はそう思う。

るい「…………」

智「…………」

 再びの沈黙。
 街灯が、ジジジジッと音を立てた。

るい「……ずるいよ、智」

るい「そんなこと言われたら、勝手にいなくなれないじゃん」

智「……うん、知ってた」

るい「ずるい。 本当に、ずるい」

 るいは頭をぶんぶんと振って、膝に顔を埋める。
 そしてそれも止み。
 小さく、言った。

るい「でも、それが智で。 私は、そんな智が好き」

智「…………」

 ありがとう、とも。
 ごめんね、ともいわない。
 ただ僕は、沈黙をもってるいを受け入れる。

 一歩。
 また一歩。
 るいとの距離を詰める。
 
智「帰ろう。 茜子も待ってるよ」

るい「…………」

 顔を上げて、僕の差し出した手を見て。

るい「……うんっ」

 そして、それを力いっぱい、掴んだ。

 皆元るい の好感度が少し下がりました。
 茅場茜子 の好感度が上がりました。

 十七日目を終了します。

 十七日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆
●鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 本日はこれにて。
 本編じゃ限りなくありえない修羅場ですね。

 ちなみに>>23で2を選んでたら茜子と二人きりENDでした。

 それでは、また。

 修羅場を起こしたら暫くおきないだなんて誰もいってませんし……

 はじめるでー

 ■十八日目■


 和久津智の一日は、着替えから始まる。
 ベッドの上はるいに占領されてるし、下は茜子。
 故に僕は昨日入れなかったシャワーを浴びて、それのついでに着替えることにした。

智「ふんふんふふんふーん」

 今朝のるいは遅い。
 茜子は……どうなのだろう、わからない。 もしかしたら、ベッドの下で既に目をさましていたのかもしれない。

智「すっきり」

 丁寧に髪を拭いてドライヤーで乾かしつつ、トースターにパンを入れる。
 今朝のパンは三人分、色々考えると二つが限度。
 残念だけれど今日の僕のパンは焦げ目がついていない普通の食パンになりそうだ。

智「朝食は、適当でいいかな」

 手を込んだ料理を三人前、と考えると食費がこむ。
 結局昨日選んだ茜子がこのまま僕の家に泊まるのかもわからないし、今のうちから節約しておこう。
 髪を乾かし終えた僕に待っていたのは、一枚目のパンが焼けた音だった。
 それを入れ替えて、同時にフライパンを火にかける。
 片手間に卵をその上で割り、目玉焼きをつくる。

智「あっ、双子だ」

 そういえば、双子だけの卵パックというものもあるらしい。
 料理の見栄え的に、面白いものもつくれそう。

智「……よしっ、出来た!」

 朝食はパン+目玉焼き。
 乗せてもよし、分けてもよし。

智「それじゃあ、二人を起こしますか」

 恐らく今日で一番手間のかかる作業。
 それに僕はとりかかるのだった。


 ↓1

るい「今日のご飯、これだけ?」

 るいが犬耳を萎れされる。
 そんなこと言われても仕方がない。

智「節約は、できるときにするものなの」

 茜子は少量で十分なのか、だされた食事に何も文句は言わない。
 どちらが手間のかからないといえばやっぱり茜子になるのだろう。

るい「むー……アカネ、半分頂戴!」

茜子「これを与えることによって、どのような利益が我が社にありますか?」

るい「え? えっとー、私が満足感を得られまっす!」

智「不採用」

 再び、るいの耳がうなだれる。
 どうしようもない。

 同時に、ピンポーン、と来客を告げるチャイムが鳴る。
 こんな朝早くから?

智「一体誰だろう」

 そういえば前に任甫さんが来たことがあったような。
 よもや朝食をおごってくれというわけではないだろう。
 僕は少しばかり戦慄しつつ、ドアを開く。

こより「おはよーございますともセンパイ! 本日はお日柄も良く!」

智「こより」

 花丸印のうさぎっ娘。
 こんな朝早くからこよりが僕の家を訪れることなんて珍しい。

智「どうしたの、こんな早く」

こより「はいっ! 実は、ともセンパイさまにご報告したいことが出来たのですっ!」

智「報告? どんな?」

こより「そりはですね……」

茜子「おや、ミニウサギっ娘妹型ではないですか」

こより「あ、茜子センパイ!? どっ、どーしてともセンパイの家に!?」

 気がついたら茜子が僕の背後に立っていて、こよりも、ついでに僕も驚かせる。
 騒ぎを聞きつけたのか、るいも居間から駆けてくる。

るい「なになに、どーしたの……ってこよりじゃん! おっはよー!」

こより「る、るいセンパイまで!? いっ、一体どーいうことッスかともセンパイ!?」

茜子「ミニウサギは見た! 貧乳ボク女の爛れた日常!」

こより「爛れちゃうんですか!?」

智「爛れないよ!」

 もう、めちゃくちゃだった。

 閑話休題。
 かくかくしかじかと説明を終えて、ようやく一息。

こより「なるほど、るいセンパイと茜子センパイはともセンパイの家に一時退避してたってことですね!」

智「理解が早くて助かるよ」

 ここが花鶏や宮和だったらもっと拗れていただろうし、こういう素直さはこよりの美徳だ。

こより「はいはい! 鳴滝もともセンパイの家にお泊り会したいッスよう!」

智「あはは……機会があれば、ね?」

茜子「泊める気はないそうです」

こより「即刻振られた!?」

智「あ、茜子!」

 怒鳴りつけるよりも先に、茜子はベッドの下から出した首を亀のように引っ込める。
 全く、かき乱すだけかき乱して……

智「そ、それよりさ。 報告したいことがあったんだよね?」

こより「あ! そうでしたそうでした! すっかり忘れてました!」

 そもそもの目的を忘れちゃ、だめじゃない?

こより「そもそもの始まりは、今朝、偶然夜中に起きてしまった鳴滝が散歩をしていた時のことでした」

こより「流石に明け方の街は人気がなくて、自由に滑れたんですけど……そこで鳴滝は見たのです!」

るい「何を?」

こより「ともセンパイでした!」

智「えぇっ!?」

 僕に夢遊病のケはないし、明け方に散歩に出る趣味もない。
 だから勿論、人違いなわけだけど。

智「見間違え、じゃないの? 僕はるいや茜子と家で寝てたよ?」

こより「いーえ! あれはともセンパイそのものでした! 違うトコと言えば……服装が和服ってだけですよう」

智「僕、和服なんて持ってないよ」

 調べてもらえばすぐにわかると思うけれど。
 僕の服は全部クローゼットの中、その中に和服がないことなんて一目瞭然だ。

こより「つまり! あれはともセンパイのドッペルゲンガーなのでは!?」

るい「ノーヘル厳顔?」

智「意味がわからないよ」

 ドッペルゲンガー。
 日本語訳にすると、写し影とかそんな感じになるのだろうか。
 妖怪や都市伝説の一種で、自分と同じ顔をもつそのドッペルゲンガーに遭遇すると数日中に死ぬと言われている。
 って、

智「もし本当だったら僕死んじゃうよ!?」

こより「大丈夫です! 鳴滝、遭遇しても死んでない事例とか知ってますから!」

智「……対処法って、共通したのがあったっけ?」

こより「……ええと……」

茜子「駄目だこりゃ」

 茜子が溜息を吐いた。

こより「ま、まぁなんとかなるんじゃないでしょーか!? 鳴滝達は、今までも綱渡りをしてきたわけですし!」

智「……うん、そうだね」

 呪いを踏むか、踏まないか。
 僕らの生活は地雷ばかりだ。
 いつの間にか踏んでしまった――そうなったら遅い。
 だから常に緊張の糸を張り、なんとか地雷の位置を事前察知して避けるのだ。

 そんな理不尽な呪いに振り回されてきた僕ら。
 意味不明なドッペルゲンガーなんかに負けてなんか居られない。

茜子「呪われた世界。 やっつけるんでしたよね」

智「うん」

こより「なんです、それ?」

智「なんでもないよ、ちょっとした戯言」

 さて。
 もうそろそろ学校に出かけなければ。
 こよりも今から行くなら全力疾走でギリギリだろう。

智「さっ、こよりはもう出なよ。 僕らも片付けたらすぐに出るから」

こより「はいっ、それではともセンパイ方! また放課後です!」

 こよりは手慣れたようにインラインスケートを履くと、すぐに家を出て行った。
 僕も三人分の食器を片付けて、火の元やガス、水が止まっているかを全て確認した。

智「それじゃ、僕らもいこうか。 今日のことは、放課後にでも決めよう」

茜子「異論はありません」

るい「それじゃあ今日も、はりきっていこー!」

 るいの掛け声に続いて。
 天気の良い、木曜の朝。 僕らはそれぞれの日常へと向かうのだった。

 ボーナス安価を行います。

 ↓1のキャラクター一名を対象。
 そのレスのコンマにより好感度上昇が変化します。
 01~50で小上昇。
 51~80で中上昇。
 81~00で大上昇。


 ↓1

 好感度変化はありませんでした。

 花城花鶏 の好感度が少し上がりました。

 十八日目を終了します。

 十八日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆
●花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 申し訳ございません、本日は眠いので真に勝手ながらここまでにさせて頂きます。
 一応明日もやる予定……ではあります。 何時になるかは少し想像ができませんけれど。

 あと、そんなにバッドエンドが嫌ならすぐにエンディングに入ればよかったのに……と■■さんがおっしゃられています。

 それでは、また。

 あと三十分ぐらいしたらやるでー

 ■十九日目■


 本日、金曜日。 天気は晴れ。
 とりあえず今日を乗り切れば休日。
 勝手な都合で自主休校することの多い僕だけれど。

智「うん、良い感じ」

 味噌汁を飲んでホッと一息。
 今日の朝食は和食。
 白米に納豆焼き鮭味噌汁のこれぞ和食! という和食だ。
 と言っても焼き魚はフライパンを使って焼いたムニエルもどき。 完全な和食とは言い難いけれど僕にしてみれば和食に違いない。
 フレンチとかが好きな僕だけれど。
 たまには無性に和食が食べたくなるのは、やっぱり日本人だからかも。

智「いっただっきまーす!」

 手を合わせて誰にいうでもなく。
 僕は一日の活力である朝食を頂く。


 ↓1

るいとの喧嘩の仲裁のため花鶏家に

 ぶっちゃけそれ済んでます……
 るいと茜子は無事、昨日花鶏の家に帰りましたまる

 というわけで>>50の再指定でお願いします。
 五分経過でも来ない場合は↓1で

智「そういえばさ、花鶏のバイクって格好いいよね」

 溜まり場(その二)にて。
 ふと話題を振ってみた。

るい「ああ、あの私達をひき殺そうとした?」

花鶏「……言い方に悪意があるわね。 また家を追い出されたいのかしら」

るい「そうなったらまたトモに泊めてもらうもんね。 べー、だ」

花鶏「そんなこというなら……寧ろわたしが智の家に泊まりに家を出て行ってやるわ!」

智「絶対嫌だよ!?」

伊代「このレズを家に泊めるとか、猛獣の檻に手足を縛られて放り込まれるようなものね」

こより「ですです!」

茜子「百合猛獣アトリンが出たぞー!」

花鶏「あんたらねぇ…………!」

 壮大な花鶏アンチ、今此処に爆誕。
 正直言って、この同盟唯一の汚点といっても過言ではない。
 百合属性さえなければ。 そう思ったことが何度あったことか。

花鶏「もう怒ったわ! そこのおっぱい! そしておチビ! ついでに智! 覚悟しなさい!」

智「なんで僕まで!?」

 とばっちりだった。

 みんなと過ごす日常は楽しい。
 時間はあっという間に流れていき、日は暮れていく。

伊代「そろそろお開きね」

こより「日が長くなって来ましたけどやっぱり暗くなりますねー」

伊代「当たり前じゃない。 まぁ、寂しい気持ちは分からなくもないけどね。 そんなに寂しいなら、休みだけど明日もまた……あっ」

るい「……っへへ、明日のことなんてわっかんない!」

 一瞬もの暗くなりかけた空気をるいは笑って吹き飛ばす。
 伊代が罪悪感からごめんなさいというより先に、僕は切り出す。

智「僕だってわかんないよ。 明日の天気から何から」

茜子「茜子さんは超高性能解析器で明日の天気だけをシュミレートすることができます。 ピピピピガガガガガガ」

こより「超高性能なのに、明日の天気だけですか?」

伊代「……突っ込むところ、他にもあると思う」

花鶏「そうね。 伊代の前とか、後ろとか?」

伊代「セクハラ禁止っ!」

茜子「レズレズからセクハラをとったら何も残りません」

花鶏「茅場。 ちょっと表出ろ」

茜子「初めてなのでやさしくしてください」

花鶏「誰がするかっ!」

 そんなこんなで、公道に出て。
 そこで立ち止まり、別れの挨拶を。

伊代「それじゃあね。 気をつけて帰るのよ」

こより「さようならですセンパイ方!」

茜子「さらば、友よ! です」

るい「んじゃーねー!」

花鶏「ええ、またね」

智「うん、それじゃ。 また、明日」

 僕の言葉に対する返事はないけれど。
 それでも皆、心のなかで返事をしてくれた気がした。
 皆と別れて、空を見上げながら歩く。
 都心から程近いこの街の空は、お世辞にも綺麗とは言い難い。
 一際輝く星がいくつか単独で見えるだけ――――

花鶏「智っ!」

智「……花鶏?」

 かけられた声にくるりと振り返ると、花鶏が少しだけ息を荒げつつそこにいた。

花鶏「智、案外歩くの速いわね……追いつくのに少し時間がかかったわ」

智「どうしたの、何かあった?」

花鶏「いえ、ちょっとした野暮用よ。 ついてきてもらえるかしら」

智「おばあさんおばあさん、その大きなお耳とお口と尻尾はなぁに?」

花鶏「それはね……あなたを食べてしまうためのものよ!」

智「きゃーきゃー」

 数分の追いかけっこ。
 別に花鶏も本気で来ているわけではなくて。 その手は僕の局部を狙っていたような気がするけれど。
 ちょっとした、遊びの鬼ごっこだった。

智「そういえば、二人はいいの?」

花鶏「ああ、ちゃんと鍵を渡しておいたわ。 帰り遅くなるからって」

智「僕に追いかけるためにわざわざ?」

花鶏「好感度アップのために、といってもらえないかしら」

智「好感度上昇はありませんでした、と」

花鶏「つれないわね」

 花鶏が口元を吊り上げつついう。
 狩人的には手応えのある獲物のほうがいいのだろうか。
 力技で襲われたら、一溜りもないけど。

花鶏「ついたわ。 少し待ってて、すぐに着替えてくるから」

 そして、花鶏の案内で街中を歩くと、ついた先はパーキングエリアだった。
 ライダースーツを取り出すと、近くのトイレに向かったらしい、そう言い残してこの場を去っていった。
 すぐに戻ってくるけれど、少しばかりの暇。 僕はバイクに視線を移す。

智「……格好いいよね」

 バイクそのものもそうだけど、それに跨がる花鶏の姿も。
 ライダースーツはぴっちりしてるから着れないかもだけど、僕もバイクに乗ったら格好よく映るのだろうか。
 一応免許も取れる年齢。 遠出をするのに自転車は少しばかり面倒にもなってきたし。
 将来性を考えると、ここで免許をとっておいた方がいいのかも?

花鶏「おまたせ」

智「あ、早かったね」

花鶏「当たり前よ。 なんてったって、可愛いうさぎちゃんを後ろに乗せるんだから」

智「それってつまり……送ってくれるってこと?」

花鶏「智が望むなら、このままホテルに直行でもいいけど?」

智「謹んでお断りします」

花鶏「冗談よ。 智を調教するなら、わたしか智の家がいいわ」

智「そっちの方が冗談でほしかった!」

 花鶏の言動はわりと洒落にならない。
 油断してたらすぐに噛み付かれそう。

花鶏「それはさておき。 智、乗りたがってたでしょう?」

智「へっ?」

花鶏「あら、違ったのかしら。 わたしの前でこのバイクの話をするときは大体後ろに乗りたいって意味なのだけれど」

智「それでそのまま?」

花鶏「ええ、ベッド一直線」

智「あ、僕用事思い出したから帰るね」

花鶏「待ちなさい、智」

 和久津智 は にげだした!
 しかし 回りこまれてしまった!

花鶏「大丈夫よ、別にそんなことはしないわ。 本命には、手を出し辛いものなの」

智「それって、つまり?」

花鶏「そこらの女の子より智の方が好き……っていわせんな恥ずかしい」

 花鶏は赤面して顔を背けた。
 こんな可愛らしい表情も出来たんだ、と少しばかり顔が綻ぶ。

智「それじゃ、乗せてもらおうかな」

花鶏「ええ、遠慮無く乗りなさい」

 女の子の腰を掴む。
 なにか、もにょる。
 こんななりでも、最近性欲がなくても。 男の子だもん。
 発進する前に、バイクのボディを撫でながら言う。

智「バイクっていいね。 僕も免許とろうかなって思ったんだけど、花鶏ってどのくらいでとれた?」

花鶏「わたし? そうね、時間もあまりなかったし三ヶ月ぐらいかかったかしら」

花鶏「それにしても智がバイク? 以外……いや、ありかも」

 僕のライダースーツ姿を想像でもしたのか、花鶏はいやらしい笑みを浮かべる。
 それには苦笑いしかすることが出来ない。

花鶏「ふむ、そうね。 智、わたしに任せてくれれば一ヶ月で一発取りさせてあげるわ」

智「え? 教えてくれるの?」

花鶏「ええ。 智と一緒にバイクで出かけるとか、楽しそうじゃない」

 花鶏の笑顔。
 その下にはいつものような下心は見えなかった。

智「……それなら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

花鶏「言っておくけど、わたしのレッスンは厳しいわよ。 一発でとれなったら膜貰うから」

智「嫌だよ!?」

 そもそもないし!
 くすり、と花鶏はまた笑う。

花鶏「今日わたしの家にこのまま向かって、泊まっていく? すぐに練習できるけれど」

花鶏「心配しなくても、いきなり手を出したりはしないから」

智「逆にそういう言葉が心配を煽るんだけど……」

 でも、花鶏の善意だ。
 どうしようか?


 ↓1

智「それじゃ……お言葉に甘えることにしようかな」

花鶏「よっしゃ! それじゃ、張り切って行くわよ!」

 花鶏はようやく、バイクを発進させる。
 流れる風が心地いい。
 僕も免許をとったらこんな風をいつでも感じることができるのだろうか。

智(多分、花鶏と一緒だからかな)

 二人のりもいいかもだけど。
 一緒に峠にいくとかもいいかも。
 今日のとはまた別の風を感じることが出来そう。

智(そういえば、花鶏は本命には手を出せない、とかいきなり手を出さない、とか言ってたけど)

智(まぁ念のため、るいに護衛は頼んでおこう)

 その日の夜。
 眠りに落ちかけてた僕の耳に、『なんで皆元がここにいんのよ!』という声が聞こえたのだった。

 皆元るい の好感度が少し上がりました。
 花城花鶏 の好感度が上がりました。

 十九日目を終了します。

 十九日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 二十日目に続けますか?

 ■二十日目■


 朝起きた僕の隣には、るいが寝ていた。

智「…………」

 僕、なんの為にるいに護衛を頼んだんだっけ?
 A,花鶏に襲われないため、ひいては呪いを踏まないようにです。
 ……まぁ、添い寝だけならいいか。 襲ってくるわけでもないし。

るい「むにゃむにゃ……トモちんのちくまよおいしー……」

智「……ちくまよって誰が作ってもちくまよだと思う」

 別に僕のじゃなくても。
 ……さて、そろそろ起きなければ。
 いや休みだからいつまで寝ててもいいんだろうけど。
 花鶏がいつ襲いかかってくるのかもわからないし、るいにこのまま抱きつかれでもしたら危ないどころじゃない。

智「ありがとね、るい」

るい「……えへへへへ~」

 撫でると、心地よかったのかそんな声が漏れた。
 そんなるいに微笑みを投げかけて、僕は客室を出た。


 ↓1

 朝食を食べた後、僕らは伊代とこよりに連絡して溜まり場へ向かう。
 今日の溜まり場はその一、高架下。
 日が照っていると屋上の方は結構に暑苦しい。

こより「センパイ! おはようございます!」

智「おはようこより。 伊代もおはよう」

伊代「おはよう。 珍しいわね、あなた達が全員一緒だなんて」

茜子「この姑息な悪女は昨日、淫乱セクハラー三世の家に泊まったのです」

こより「えぇっ!? だ、大丈夫ですかともセンパイ!? 膜とか破れてないですか!?」

るい「だいじょうぶ! るいねーさんがしっかり守ったから!」

伊代「そ、そう。 それなら安心ね」

花鶏「全くよ。 散々口説いておいたから昨日こそ喰えるかと思ったのに……」

智「やっぱりあれらの言葉の数々は僕を油断させるためだったんだね……」

 抜け目の無い……というより欲望に忠実な。
 花鶏はゆらり、と動いて一瞬にして伊代の背後に回り込んだ。

花鶏「仕方がないから、このおっぱいで我慢するわ……っと!」

伊代「わっ、ちょっ……! やめなさ、あんっ!」

茜子「おおっとー! 大魔王エロペラーの胸揉み攻撃が炸裂ー! メガネ委員長は逃げられないー!」

 花鶏が伊代の胸を揉みしだきにかかり、茜子がそれを煽る。
 それにしても。

こより「伊代センパイの胸、いつ見てもデカイですよねー」

るい「そうだね、何か特別なこととかしてんのかな」

智「…………」

こより「ともセンパイ?」

智「えっ!? あ、ああ、どうだろうねー」

 思わず見とれてしまっていた。
 どうすればあんな大きな胸が出来上がるのだろうか。

伊代「いい加減に……しろっ!」

花鶏「ぐふっ……ぶべらっ!?」

 肘打ち、からの伊代アッパー。
 効果:花鶏は死ぬ。

伊代「はぁ、はぁ……」

るい「さっすがイヨ子、すごい胸だったねー」

伊代「それ、褒められても嬉しくない……」

こより「しっかし、やっぱり伊代センパイの胸は反則ッスよう!」

茜子「そうですね。 そこの姑息貧乳も見とれていたようでしたし」

 バレてた!?

伊代「ええっ……いやでも、反則とか言われても困るわよ。 それにほら、あなただって大きいじゃない?」

るい「るいねーさんも自信はあるけど、流石にイヨ子には負けるよ」

こより「そうですよう! さらっとるいセンパイに標的を移させて逃げようとしないでください!」

伊代「へっ!? そ、そういうわけじゃ……」

 こよりが軽くキレる。
 ロリっ子貧乳のこより的には、やっぱり胸が大きいのに憧れるのだろうか。

こより「もーこうなったら、伊代センパイの胸を徹底的に解析しましょう!」

茜子「OK、赤猫さんも賛成します」

花鶏「おっぱいのおっぱいをおっぱいするときいて!」

るい「花鶏は寝てろ」

 反射的に起き上がった花鶏をるいは再び沈黙させる。
 そして残された伊代とこより、茜子。
 この二人が伊代を襲う光景は、なんというかシュールだ。

こより「そりではともセンパイ! 指令をお願いします!」

智「えぇっ!? なんで僕!?」

こより「なんでも何も、我らが貧乳連合の総帥ですので!」

 いつから僕そんなに大出世したの!?
 きっとこより的には、一番年上で身長も高くて、それなのに胸がないから、だろうけれど。
 僕は女じゃないけど……なんか、悲しくなった。

茜子「それでは指示をお願いします」

智「…………」

 この状況でどうでもいい、とか否定すると僕まで巻き込まれそうな気がする。

智「やるしか、ないのか……」

 伊代に心中で謝りつつ。
 僕は何をするかを頭のなかで巡らせる。


 ↓1

智「そうだね……じゃあ、数値をとってみようか」

こより「数値、でありますか?」

智「うん。 こよりの数値を100と仮定して、それからどれだけ左右されるかって感じかな」

こより「なるほど! わかりましたともセンパイ!」

伊代「えっ、ちょっとあなた。 ……冗談、よね?」

 伊代が少しばかりひきつった笑みを浮かべる。
 僕はそれににっこり笑って返した。

智「ごめんね、伊代」

 実は少しだけ僕自身も、興味あるんだ。

伊代「うっ、裏切り……っ、ちょっとやめっ……! いたっ!」

こより「およ?」

伊代「や、やるならもっと優しく……!」

茜子「そうは言っても下の口は正直だぜぐへへへへ」

伊代「誰が! ……っ!」

 慣れていないこよりの胸揉みは少しばかり痛いようだ。
 花鶏の技術がどれだけ優れていたのか確認させられる。

こより「計測完了しました!」

智「お疲れ様」

 満足した風なこよりと、汚された風で息の荒い伊代。
 この状況を切り取って起訴されたなら負けは確実だろう。

こより「感触、大きさ、弾力、重さ、あらゆる数値が鳴滝を上回っていました!」

茜子「200……300……400……ば、ばかなー! まだ上がるだとー!」

智「ふむふむ……」

こより「あ、でも感度だけは鳴滝の方が良さそーです! 小さいほうが感度がいいというデータは本当みたいですね!」

るい「そーなんだ?」

伊代「ふぅん……いいこと聞いたわ……」

 ゆらり。
 伊代が黒いオーラを発しつつ、立ち上がった。

智「い……伊代?」

伊代「小さいほうがいい……つまりその子より、あなたのほうがいいのかしら? これは、確認すべきじゃない?」

智「っ……!?」

こより「あ、そういえばそうなりますね!」

 駄目だ! こよりがやる気になった!
 逃げ、逃げ……逃げなきゃ!

伊代「あなた! あの子捕まえて!」

るい「合点!」

 逃げ出した僕はものの数秒で捕まる。
 スプリンターをも凌駕するるいに僕が逃げれるわけもない。

智「はっ、離してるい!」

るい「だめだよートモちん。 ちゃんと検査は受けなきゃ」

智「非公式! 非公式だから!」

 誰か! 誰か!
 るいはだめ、こよりもだめ、伊代もだめ!
 花鶏は気絶してるし、茜子も頼りにならない!

伊代「さ、大人しくしなさいな」

こより「だいじょーぶですよともセンパイ、鳴滝、伊代センパイので多少慣れましたから。 すぐに済みますって」

智「そういう問題じゃないのぉおおおおお!!!」

 やぁの!
 やぁの!!

 こよりの手が僕に迫る。
 みんなが笑っている。
 悪意は、多分ないのだろうけれど。 
 僕には悪魔の微笑みにしか見えなかった。

 こんなくだらないところで。
 僕は、僕は…………



 バキン! と。
 何処か遠くで、ガラスのようなものが割れる音がした。




 END:『世にも下らない結末』

真雪「出張版! 教える、真雪先生のコーナー!」

真雪「どうもこんばんわ、柚花真雪こと真雪先生です」

真雪「出張版! 教える、真雪先生のコーナー! ではゲームオーバーになったあなたに、様々ヒントをさしあげます」

真雪「とりあえず今回の敗因は女性特有のことに突っ走ってしまった件ですね」

真雪「数値化、とか余計なことをしなければ問題はなかったかもしれません」

真雪「ちなみに死の直前に安価がなかったのは、どうしても避けようがなかったから、運命の袋小路だったから、ですね」

真雪「まぁ某キャラの隠しステータスが高ければ回避できました」

真雪「ちなみに死んだ後やり直しした場合、『その日はなかったこと』になって前日のステータスのまま翌日に進みます」

真雪「今回の場合は十九日目終了時のステータスで二十一日目に進むということですね」

真雪「さて! それでは記念すべき初のバッドエンドではヒントを二つさし上げましょう!」

真雪「一つ目。 ステータス画面につく●はお察しの通り爆弾です。 ステータスが☆6以上で一定期間放置すると出現します」

真雪「爆発、というかこれがついた状態でも放置するとヤバイことになります。 ので早めに処理することをオススメします」

真雪「二つ目。 制限時間について」

真雪「実はこのモード、制限時間が設けられています。 その期間が終わると、やり直しもできないままバッドエンドですのでご注意ください」

真雪「ま、とある条件を満たせばそれでもハッピーエンドは迎えられるんですけどね」

真雪「……と、今回はこんなところですね」

真雪「それではみなさま、セーブデータはきちんと――――」

 ブツンッ

 >>84
 やり直しを要求しますか?(残り三回)
 1 はい
 2 いいえ

1

 二十日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 今回はここまでです。
 初バッドエンド、お疲れ様です。
 真雪先生ENDももしかしたらあるかも?

 それでは、また明日。

 申し訳ありません。
 また明日と言っておきながら今日はむりぽです。
 本当に申し訳……

 やってもだいじょうぶでございましょうか?

 ■二十一日目■


智「…………っ!?」

 悪夢、だったような。
 冷や汗をダラダラと垂れ流して、僕は自室のベッドに横たわっていた。

智「夢……?」

 汗を拭う。
 べっとりとした嫌な汗。 僕が悪夢を見たことを証明する。
 そう、悪夢だ。

智「夢で、よかった……」

 ホッと、一息。
 アレが夢でなかったなら、いろんな意味で僕の人生は終わっていた。
 時計を見ると、まだ朝の五時。
 しかし、二度寝するつもりにはなれなかった。

智「……起きようかな」

 今寝たら、悪夢の続きを見るような気がして。
 僕はその夢を振り払うように顔を洗いに洗面台へ向かうのだった。


 ↓1

智「時間あるし、たまには手の込んだ料理でも作ろうかな」

 完全に覚醒した僕はキッチンに立つ。
 というよりは、何かをしてないといけないような気分だったのだ。

智「何にしようかなー」

 冷蔵庫と相談。
 キャベツと薄い豚肉が若干多く余っている。
 パッ、と他もみてみるとジャガイモや人参などの野菜類もあった。

智「肉じゃがかぁ……いいかも」

 お袋の味、ということで。 親の料理を鮮明に覚えているほど食べた覚えは無いけど。
 しかも、ただの肉じゃがじゃない。
 肉の代わりにロールキャベツを投入した、ロールキャベツじゃがだ。
 そのロールキャベツも肉がひき肉でないから一工夫。
 ……とはいっても、単純に肉とキャベツを重ねて同時に巻きつけ、竹串で一突き。
 大きすぎる場合には切ってもオーケー。

智「これを基本的に煮込むだけー」

 とは言っても、あまりにやり過ぎるとジャガイモや野菜が煮崩れしてしまう。
 ので先にロールキャベツ(もどき)だけを弱火で少しばかり煮込んでおく。
 肉の旨味も出るし、その汁をキャベツも吸い取る。 一石二鳥だ。

 全ての具材を投入して暫し放置。 今のうちに朝食も作っておく。
 使用するのは先ほどついでに皮を向いておいたジャガイモと人参、他にピーマンやパプリカ、ヤングコーン。 カボチャなどがあってもいい。
 こちらは温野菜にしてディップソースを付ける。 所謂バーニャカウダだ。
 案外簡単に作れるのでおかずの一品として案外優秀。 ソースを付けなければ余った野菜はそのまま他に流用もできるし。

 出来ればジャガイモはミニサイズのがあればいいのだけれど、なければないで仕方がない。
 それぞれを適度な大きさ、大体一口で食べれるサイズに切る。
 それらをサッと茹でて、次に蒸す。
 百円均一などでもあるような容器にいれてレンジに入れるだけで十二分。

 その合間合間にディップソースを作ることも忘れなく。
 アンチョビ、にんにく、オリーブオイル。 和風にしたいなら若干、ほんの少しばかりの麺つゆをいれてもいいかも。
 僕はチーズも一緒に混ぜて僅かにとろみを付ける。
 冷めてしまうと固まりやすくなるのが玉に瑕。

智「完成ー」

 そんなこんなで出来上がる料理。
 おかずの一品とは言ったけれど、小腹しか空いていないならこれだけで大丈夫だ。
 野菜だけでヘルシーだからダイエットにもいいかも? 効果は保証できないけれど。

智「……そういえば、これ央輝結構好きだったっけ?」

 なんとなく記憶に引っかかるような?
 簡単にできてそれなりに量も確保できる。 ソースで味も千差万別。
 そんなこれが央輝には結構好評だった……ような気がする。
 ちなみに、まだ朝食には早い時間。

智「ようし」

 肉じゃがモドキの火を止めて、蓋をする。
 温野菜とソースを別の容器に移し、零さないように手提げの袋にいれた。

智「おっすそわけっ」

 お裾分け、で簡単にいける距離ではないけれど。
 今から行ったら向こうでもう一品程度作れるだろう。
 僕は央輝に連絡を入れておき、うきうき気分で外に出かけた。

央輝「ふぅ」

 央輝が満足そうに息を吐く。
 央輝は他の場所にいたらしい、僕がいつもの家についた時にはまだ居なくて、少し遅れて慌てた様子で隠れ家にやってきた。
 『いきなり無茶を言うな!』 というのが央輝の弁だったけれど急いで来てくれたのだから楽しみにしてくれたのだろうか。
 順調に餌付け出来ている。
 にやり、と僕はほくそ笑む……ようなことはなく。
 事実、るいよりは食べる量が少ないしなんでもうまいうまいと食べてくれるから餌付けは出来ているのだろうけれど。
 だからといって、僕は央輝に何かをするというわけでもない。
 ……まぁ、若干無理を言ったりはすることもあるかもだけれど。

智「お粗末さまでした」

央輝「ああ」

 並んで食べていた僕も食事を終えて、食器と僕が入れてきた容器を洗面台へさげる。
 洗いながら、僕はベッドに腰掛けている央輝に話題を振った。

智「今日は此処じゃないところに居たみたいだけど、何してたの?」

央輝「……隣街に用事があってな、向こうで泊まっていた」

智「そうなんだ? じゃあ急いで帰ってきてくれたんだね」

 面倒なら嫌だって言ってくれて構わなかったのに、と続けると央輝は憤慨する。

央輝「オマエがっ! 料理を多く作りすぎたからこっちに来ると一方的に言い出したんだろうが!」

央輝「オマエのことだ、アタシが連絡を返した時には既にここに向かっていたんだろう?」

 そのとおり、大正解。

央輝「……全く。 確かにオマエの飯は美味いが、これだけでは納得がいかん」

智「え、まだ食べ足りなかった?」

央輝「そうじゃない」

 即答される。 そうだろうとは思った。
 央輝が言っているのはきっと……

智「じゃあ、夕食も食べる? 僕の家で、だけど」

央輝「……仕方があるまい。 そうでもしないと元が取れないからな」

 全く、素直じゃない。
 央輝にバレないように笑いつつ、僕は洗い物を終えた。

智「それじゃあ、夜は僕の家でということで」

央輝「ああ、楽しみに……いや、なんでもない」

 若干赤くなる央輝。 あくまで『夕食はオマエが一方的に、イヤイヤなアタシを誘った』ということにしたいらしい。
 また笑ってしまう。 今度は真正面から見られてしまった。

央輝「オマエ…………っ!」

智「ごめんなさーい」

 狭い隠れ家の中を逃げまわる。
 央輝との、短いけれど楽しい一時だった。


 ↓1
 (このまま中で央輝と駄弁るか、外に出るか。 外に出る場合人物指定or行動指定、或いは両方可)

智「それじゃ、また後で」

央輝「……ああ」

 すっかり不機嫌そうになった央輝に軽く笑顔を振りまきつつ。
 僕は央輝と別れて、外を歩くことにした。
 今日は休日だし、一緒にゆっくりしていてもよかったのだけれど。
 休日だからこそ、何か新しい発見があるかもしれないと思ったのだった。
 それが吉か凶かはさておき。

智「あっ」

いずる「おや、面倒屋くんじゃないか。 久しいねえ」

 少し道を歩くと、見知った顔。
 蝉丸いずる。 曰く語り屋、ヒントをいう街人A。 僕に言わせれば胡散臭いので、花鶏に言わせれば騙り屋。
 るいを助けたことがあるとかないとか、よくわからない人だ。

智「これは吉? それとも、凶?」

いずる「こんな美人を捕まえておいてえらい言い草だ。 遭遇料をとってもいいかい?」

智「迷惑料ではなく?」

いずる「おや、そっちもとっていいのかい。 なら見物料と、あと迷惑料をとってもいいかな?」

智「迷惑料×2!?」

いずる「ちなみに二つ目の方は『これから迷惑をかけるぜ』といったようなものさ」

智「迷惑をかけられるのにこっちが払うの!?」

 全部謹んでお断りしておいた。

智「それで、いずるさんはこんなところで何を?」

いずる「何を、とは?」

智「とぼけないでください。 何も、無為に過ごしているわけではないんでしょう?」

 この胡散臭い人とは結構な頻度で遭遇する。
 その度に、例えば占いだったり、例えば怪しげな壺を売っていたり、例えば変なドリンクを渡されたり。
 例えていうなら、低頻度のレアモンスターみたいな。
 ただし、一部のメタル系とは違って経験値も高いわけでもなく有り難みも少ない。

いずる「私が暇で暇でしょうがない日があっちゃイケナイって言うのかい? 酷い子だねぇ、親御さんも草葉の陰で哭いているよ」

智「村人Aは基本的に年中無休ですけどね」

いずる「たまにはよく似た、他の人に入れ替わっているかもしれないよ?」

智「そんな証明しようのない論題はどうでもいいですから」

いずる「つれないねえ」

 パッ、とどこから出したのかセンスを広げて口元を隠す。
 妙に様になるのはその妖艶な雰囲気があるからだろうか。
 僕のストライクゾーンからは外れているけれど。

いずる「半分仕事、半分休暇、といったところさね」

智「半分?」

 プライベートで仕事をしているとか、そういうのだろうか。

いずる「いやいや、ちょいと遠縁の知り合いに仕事を頼まれてね。 少しばかり街を離れるから、依頼の結果を渡して欲しいとか何とか」

智「……僕、何も言ってませんけど」

いずる「聞きたそうな顔をしていたよ」

 袖の下からピッ、と一枚の封筒。
 その依頼というのは、情報の収拾だろうか。 なんだか探偵みたいな仕事だ。
 もっとも、遠縁とは言えどもこの人の血筋。 一筋縄じゃいかないのだろうけれど。

智「それを渡すの?」

いずる「ああ、そうさ。 丁度、こうやってね」

 いずるさんは無造作にそれを肩越しに後ろへ。
 自然な動きで、それはそのままいずるさんの後ろを歩いていた男性の手に渡る。

「ご苦労」

 まるで鉄のように冷徹で重い声が通り過ぎていく。
 気付いた時には既に背中しか見えない。
 しかしその背だけ見ても、異様な程の力強さがあった。
 威風堂々とした、まるで自分から一歩も人を避けることなどはしないだろうその歩み。
 彼の生き様をそのままに示しているように思えた。

いずる「……ふむ、珍しいね。 彼自信が自ら来るなんて。 ま、相も変らず素っ気ないけどさ」

智「……知り合い?」

いずる「まぁ、そうさね。 アレの今の取引相手である私の遠縁も、元を辿れば私が紹介したわけだしねえ」

 もう彼の姿は人混みに紛れて見えない。
 けれど、そこには確かに存在感があった。

智「アレ……何?」

いずる「ふむ。 依頼人の守秘義務があるから、直接的には言えないが……そうだね」

 少しばかり逡巡し。
 そして答える。

いずる「あれは、『王様』だよ」

智「王……」

 僕は何故か、王だと言う彼の姿をいつまでも目で追っていた。
 その気配が、本当に消えてしまうまで。

 ボーナス安価を行います。

 ↓1のキャラクター一名を対象。
 そのレスのコンマにより好感度上昇が変化します。
 01~50で小上昇。
 51~80で中上昇。
 81~00で大上昇。


 ↓1

 尹央輝 の好感度が上がりました。
 我斎五樹 と遭遇しました。

 冬篠宮和 の好感度が沢山上がりました。

 二十一日目を終了します。

 二十一日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
●茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 寄り道してる余裕あるんですかねぇ……

 とりあえず今日はこんなところで。
 明日もやります。 明日は11時ぐらいだと思います。
 それでは、また。

 はじまります~

 ■二十二日目■


智「なんだか、休んだ気がしないなぁ」

 制服のリボンを整えつつ、カレンダーを横目に見て一息。
 日曜日はまだしも、土曜日の記憶だけすっぽりない。
 多分、深く記憶に残る出来事がなかっただけの話なのだろうけれど。

 世界は五分前に作られた、と誰かが熱弁した。
 神様という存在はたった五分で、ありとあらゆる歴史を作り、ありとあらゆる記憶を作り世界を完成させたらしい。
 だとしたら僕は明らかに未完成ではないかと思う。
 いやその記憶の話ではなく、この呪いの痣的に。

智「いっそ、記憶だけだった、ってことにならないかな」

 僕は、僕らは本当は全く呪われてなんかいなくて。
 ただその記憶があるだけで、呪われていると思い込んでいて。
 それで、呪いなんか踏んでも問題ない――――なんて。

智「そんなこと、あるわけないよね」

 実際に踏んでみるわけにもいかない。 こちとら生死に関わる。
 僕は痣のある右肩らへんを鏡越しに見る。
 今は制服を着ているから、外からは全くわからないけれど。
 それを左手でそっとつつみ、僕は溜息を盛大に吐くのだった。


 ↓1

智「あれ、今日は茜子だけ?」

 溜まり場(その一)についた僕は少々拍子抜けした。
 日陰に猫が集まりに集まって、その真中で茜子が相手をしているシーンに遭遇したから。

茜子「お絵ラ咬みませボサ間エミュー?」

智「!?」

茜子「失礼。 猫語の共通言語がつい出てしまいました」

智「猫がそんな人語っぽいもので会話してたらびっくりするよ……」

 茜子の手元で撫でられていた黒い猫が野太い声を上げた。
 勿論、僕らがよく知る擬音で。

智「…………」

茜子「どうしたんですか? こっち、来ないんですか?」

智「いや、僕が入っても大丈夫かなって」

 高架下の日陰には茜子猫軍団がこれでもかというぐらいに寛いでいる。
 僕が入ったりして、猫達が逃げて行ったりしないだろうか。

茜子「割と人には慣れてますから、大丈夫です」

智「そう? じゃあお言葉に甘えて」

 日向から日陰に移動すると、何匹かの猫がこちらを向いた。
 けれど逃げるようなことはしない。 若干尻尾がゆらりと動いた猫もいるけれど、それだけだ。

猫「にゃー」

猫「にゃー」

智「にゃー」

 ごろん、と寝返りをうちつつ鳴く猫に適当に返事を返す。
 ところで、猫は猫でも種類が違う。
 勿論同じ猫もいるだろうけれどほとんどが雑種だろう。 そんな猫同士でも言葉って通じるのだろうか。

智「どう思う、茜子?」

茜子「そうですね。 そのうち木の実同士の核融合で太陽系宇宙戦争が始まるのでは?」

智「うん、なんの話だかわからないけどそれは明らかに間違ってると思うよ」

茜子「なんと、第七次の原因にもなったそれが間違いっておられますか」

智「ちなみにそれ、今何次なの?」

茜子「只今第二十二次です」

 宇宙戦争、頻繁に起こりすぎだと思う。

茜子「ところで、さっきの話ですが」

智「さっきって言うと」

茜子「あなたがここに来た瞬間です」

 茜子はその手を止めた。
 黒猫はその無表情を全く変えず、そのままくねくねと地面に背中を擦りつけていた。
 撫でて欲しいのかな、と思うけれどこれで撫でたら嫌な顔をするから困る。

茜子「それはこちらの台詞なのでは?」

智「ん? 撫でられたら嫌な顔をするって……僕そんなことあったっけ?」

 確かに花鶏にそんなことをやられたら次に何処に手が伸びてくるかわかったものじゃないけど。
 るいなら別に……

茜子「そうではなく」

智「え?」

茜子「…………あなた、ここに来た時茜子さんに何を言ったか覚えていますか?」

智「……ええと」

 学校を終えて。
 多分、今日は暑いから、日陰のほうがいいかなって思って。
 それでこっちに向かうと茜子しかいなくて。 それで。

智「確か……今日は茜子だけか、って」

茜子「そのザルのような脳にはちゃんと残っていたようですね、安心しました」

智「ザルって……」

 いつになく辛辣。
 気にしてもしかたがないので、頭を切り替える。

 さて。 茜子はつい先ほどなんて言ったっけ。
 それはこちらの台詞、と。 確かそういった筈だ。
 つまりそれは……

智「僕が一人なのか、ってこと?」

茜子「…………」

 茜子の表情は揺るがない。
 何を考えているのかわからない、何も考えてすらいないのかもしれない。
 けど多分だけど……『是』と言っているような気がした。

智「うーん?」

 確かに、偶然あった皆と一緒に来ることはたまにあるけど。
 本当にたまに、だ。
 それほど多いわけじゃないし、『他の人はいないのか』、なんて言われることはない……と思う。

茜子「逆ですよ」

智「うん、わかってる」

茜子「いいえ、わかってません」

 茜子は呆れたような表情を見せる。
 むっ、としてしまう。 逆だ逆だっていわれて、僕の思ったことは逆じゃないわけじゃないだろう。

智「茜子が言いたいのは、僕以外に他の人がいないのかってことでしょ? 何が違うのさ」

茜子「ですから、逆、です」

 茜子はそれしか言わない。
 不服ながらも、今一度考えてみる。
 僕は茜子に、『茜子しかいないの?』と聞いた。 その逆、らしい。
 つまり茜子が僕に『貧乳ブルマしかいないんですか』と言っているのだろう。
 何が違うのだろう。

 気づくと、茜子はじっと僕の瞳を覗き込んでいた。
 その髪色と同じ青色の眼。 花鶏よりは少し濃い、青色の眼。

智「…………ええと、逆、だっけ」

茜子「……はい。 わかりましたか?」

智「多分、分かった……かも」

 誤魔化すように髪をくるくると弄ぶ。

智「つまり、ええと……」

茜子「そうです正解ですおめでとうございます」

智「早いよ!?」

 皆が居ないのか、聞いた訳じゃなくて。
 その逆。 僕の周りに皆がいないのか、つまり僕一人しかいないのかを聞いたわけだ。
 前者でも意味は伝わるとは思うけれど、後者のほうが伝わりやすい……気がしないでもない。
 つまり、『皆がいないこと』より『僕が一人でいること』に重きをおいたわけだ。

茜子「最近、他の人と遊んでばかりな気がしますから」

智「女の子ばっかじゃん……」

茜子「ハーレムですね、わかります」

 茜子はぺしぺしと、猫パンチで僕の靴を叩く。
 猫はツンデレと呼ぶのにふさわしいいきものらしい。
 呼んでもこないのに、構わないとあちらから来るのだ。 立派なツンデレ。

茜子「智さん」

智「ん……なに?」

 茜子が僕のことを名前で呼んでくれたのはいつのことだっけ。
 ああ、そうだ。 伊代と宮和が口喧嘩を繰り広げてくれた時だ。
 あと、るいとどちらが僕の家に泊まるか、というのを議論していた時も。

 そしてそのどちらも、僕は茜子を選んだ。
 きっとその時から、僕の心は決まっていたのだ。

茜子「……懐いた猫には餌をやらない主義ですか」

智「その言葉初めて聞いたよ」

 そんなことはない。
 茜子は分かり辛い。
 その表情の変化が他の皆に比べて乏しいのに加えて、意味不明な言葉をよく口走るから。
 言ってくれないとわからない。
 ……なんて。

智「僕が言えた義理じゃないかも」

茜子「全くもって、そのとおりです」

 その言葉に僕は苦笑するしか無い。
 甘んじて受け入れよう。
 散々放っておいた僕が悪い。 そんな気がする。

茜子「そういえば、智さんが他の人と話したり遊んだりしていると少しばかりイライラします」

智「あはは……そっか」

 茜子は女の子で、僕も一応女の子で。
 きっと茜子のそれは恋心ではないのだろう。
 心の許せる一人しか居ない親友、それが他の人と親しくしていると嫉妬してしまう。
 多分、そんなものだ。

茜子「ですので」

 それは多分茜子もわかっているけど。
 それでも、多分。
 こんな、恋心のような、複雑怪奇な心地よさに浸かっていたいのだ。

茜子「あまり他の人、見ないようにしてください」

智「善処するよ」

 僕の周りは女の子ばかりだから、中々に難しいけれども。
 茜子の一世一代の大告白。 僕にはやはり無碍にすることは難しい。

茜子「家にも、泊めて下さい」

智「うん。 約束したもんね」

茜子「あとは、たまにでいいですから」

 そっと、抱きしめて下さい。
 茜子は確かに、そう言った。


 僕らはみんな呪われている。
 みんな僕らに呪われている。
 僕らが本当の恋人同士になるのは、きっと遠い未来。 或いは一生来ないかもしれない。

智「天気もいいし、街に出ようか」

 皆も来る様子はない。
 ならば別にいいだろう。 二人きりの同盟活動。
 もとい、デート。

茜子「茜子さんは茜子猫軍団の面子を増やしつつ存じます」

智「それじゃ、路地裏でも回っちゃう?」

 思い通じ合わせた後の記念すべき初デートは、路地裏巡り。
 普通では絶対に有り得ないけれど、これでいい、これがいい。
 だって、僕らだって普通じゃないんだから。

 そうして僕らは歩き出す。
 後ろには沢山の猫をつれて。
 そして。

茜子「ねぇ、智さん」

智「なに?」

茜子「気をつけてくださいね」

 茜子はそっと、僕の制服の袖を掴んだ。

 そうして僕らは歩き出す。
 後ろには沢山の猫をつれて。
 そして、影を一つに重ねて。
 

 僕らはみんな呪われている。
 みんな僕らに呪われている。
 僕らが本当の恋人同士になるのは、きっと遠い未来。 或いは一生来ないかもしれない。

 けれど。
 この瞬間は、決して嘘なんかじゃないから。
 触れ合えなくとも、欺くことしかできなくても、呪われていても。
 それでも、それでもこれだけは本物だ。

 大切なこの蒼い猫と、通じ合ったこの瞬間だけは。
 決して、絶対。
 例え、どんなことがあろうとも、思い出の中で輝き続ける筈だから――――

 茜子Normal END:『嘘のような、本物の気持ち』

 二十二日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
☆茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 ???   
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 二十二日目、茜子ノーマルエンドです。
 一応、一周目はここで終わりになるわけですけれど……
 次、如何します?……って聞いても時間が時間ですから余り人もいませんよね。

 とりあえず、また。

 大体落ち着いた。
 多分今日少しだけ書きます。

 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――



 一つ、二つ。
 彼女の目の前には光の破片があった。
 此度、開拓した二つの未来。 その世界。

「こっちは、要らないわ」

 ブツン、と。
 強制シャットダウンのような、或いは無理矢理電源を引き抜くようにその未来を踏み潰す。
 それは失敗した世界。
 判断を誤って、袋小路に陥ってしまった世界。

 トライアンドエラーだったのだ、それはいい。
 問題はもう一つの方。
 試行錯誤の末に辿り着いた、仲間の一人との未来。
 決して、出来はいいとはいえないけれど。 辿りついた平和的な一つの世界。

 彼女はそれをじろりと眺める。
 採点結果を待つ受験者の気分。

 そして、彼女は。
 そっと、その未来も摘み取った。

 あっ。
 思わず、そう声が出てしまっただろうか。
 彼女は、変わらない歪な瞳でこちらを見る。

「よく、出来ていたとは思うわ」

「だけれど、この程度の未来は数多にあるの」

「だから、言ったでしょう。 期待をしても、熱意を持っても、打ち砕かれるだけだって」

 わかってはいた。
 彼女が、『智』が求めた未来はそう簡単に見つかるわけがないと。

「それでも――」

「それでも、と願うなら」

「また、挑ませてあげるわ」

「時間はまだ、沢山、あるみたいだから」

 そうして。
 この物語は、一時、幕を閉じる。
 まだ、終わらない。
 諦めない限りは、きっと――――。



 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――

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 惠ルート チャプター36

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 はじめから

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 夜子ルート Clear
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 どれを選びますか?
 >>138

EXTRA4

 →EXTRA4 『和久津姉弟のとある一日』


 了解しました。
 このEXTRAは一回で終わらせるつもりなので本日はやりません。
 恐らく、早くて明後日になるかと思います。

 それでは、次回。

 大きく時間取れたので行きますです。
 今回で終わらせるつもりですけれど、出来なかったら申し訳。

 それではいきます。

 本日未明。
 僕はこっそりとベッドを抜け出す。
 運良く、いつもなら僕を縛っている手足はなく、無事に抜け出すことが出来た。

 ううん、とそれは寝返りをうつ。
 僕を追いかけて空に手を伸ばすが、それは届かない。
 小さく僕の名前を呼ぶ声に後ろ髪を引かれてしまう。

智「……ううん、だめだめ。 このまままたベッドに入ったら、また寝ちゃうし」

 二度寝。 甘美な響き。
 けれどその結果は言わずもがな、僕より先に今はベッドに篭っているのが起きてしまう。
 そうなったらどうなるだろう。
 決まってる。
 朝食が作られてしまっているのだ。

智「……いやね、別にいいんだけどさ。 でも、ぶっちゃけ僕の作ったほうがおいしいし……」

 寝返りをうった。
 ビクッ、と反射的に震えてしまう。
 しかしそこにあったのは安らかな表情。 惰眠を貪る我が姉の姿。

智「……心臓に、悪い」

 思っていても、言っていいことと悪いことがある。
 姉さんには料理と体型がそれに当てはまる。
 弟である僕と同じ、或いは劣っているというのはそんなに嫌なことなのだろうか。

智「まぁ、比べられはするけどさ」

 僕らは互いが互いに比べられる。
 それは姉弟だから、双子だから。
 なまじ二人とも出来てしまうものだから、尚更。

 手探りで台所にたどり着き、そこだけ電気をつける。
 今日は和食のつもりだったらしい、台所には昨日まで冷凍してあった鮭が置かれ、自然解凍されている。
 炊飯ジャーは景気よく湯気を噴出しており、もう十分もすれば出来上がるだろう。

智「さて、じゃあ僕も作っちゃおうかな」

 例え途中で姉さんが起きても、既に作り始めている僕を押しのけてまで作ろうとは思うまい。
 ……多分、だけど。

智「いやいや、流石にそこまでは……」

 多少、我侭をいう姉だけど。
 結構、無茶をいう姉だけど。
 度々、暴論をいう姉だけど……

智「……起きるより先に、作ろう。 うん」

 嗚呼。
 姉とは何ぞ、理不尽成るや。
 世間一般での姉弟関係は、大多数が弟が理不尽な思いをすることが多いらしい。(僕調べ)
 僕もその例に漏れていないと言えるだろう。
 その最たることが学園生活だ。

 僕は、学校に女装して通っている。
 それこそ、姉さんによる理不尽な言動によって。

 ――あなたは、スカートです。

 そう言ったのは死んだ母さん……ではなくて、実の姉だった。
 それも、今の南総学園に入学する直前の日に。
 何故か。

真耶『そっちの方が、智が可愛いもの』

真耶『あと、面白そうじゃない?』

 面白くない、全く。
 けれどそういった僕の言葉はやはりというか、受け入れられなくて。
 結果、不条理な現実に直面してしまったのだった。

智「そろそろ焼けたかなー」

 野菜を炒める手を一瞬止めて、キッチンに備え付けのグリルを覗き見る。
 うん、良い感じ。
 香ばしい香りもして、食欲を唆る。

 続いて炊飯ジャーが白米が炊けたと自己主張する。
 野菜炒めの火を若干弱め、杓文字を少しばかり水で濡らしてから白米をかき混ぜる。
 そのついでに、二弾重ねの弁当箱の一段目に一杯よそる。 それを二つ。
 それをそのまま弁当にする……のではなく、先にラップをかけて冷蔵庫へ。
 生ぬるいままだと菌が繁殖しやすいから、冷やし飯にするのが吉。

智「これでよし、と」

 昨日の夕食の余りと今朝の野菜炒めを弁当の二段目に詰めて。
 それで更に余ったものを今朝の食事に。

 皿に盛った朝食を居間に持って行き、姉さんを起こして朝ごはん……のはずなのだけれど。
 僕がそれらを持って居間に行ったら、姉さんは既に起床してカーテンを開き、窓の外を眺めていた。

真耶「おはよう、智」

智「おはよう、姉さん。 朝ごはんできてるよ」

真耶「ええ、勿論頂くわ」

 今日のお咎めは無し。
 それにほっと胸を撫で下ろしつつ、僕は茶碗にご飯をよそってお箸と一緒にテーブルに並べる。
 洗面所でパッと顔だけ洗ってきた姉さんも戻ってきて、二人して正面で向かい合う。

真耶「頂きます」

智「頂きます」

 鏡合わせのように手を合わせて小さくお辞儀。
 ここまでして、ようやく、僕らの一日は始まりを告げるのだ。

 朝食後は決まって、僕が身支度を整えている間に姉さんが着替える。
 先に着替えているときはその限りではないけれど、二人とも寝間着のままの場合はそうなる。
 女性の身支度は長い……とはいわないけれど、少なくとも僕より姉さんの方が長いのは事実で。
 ならば効率の良い方がいい。

智「姉さん、終わったよー」

真耶「ええ、今行くわ」

 姉さんの髪は僕の二倍程ある。
 それも時間のかかる一因だろう。

 鏡をみて、制服のリボンを整える。
 入学当初はよく曲がってしまっていて、姉さんが他の生徒の前で『タイが曲がっていてよ』的なことをよくやらかしてくれた。
 今ではそんなことはほとんどなくて、曲がっていても姉さんより先に宮和が気付く。
 あのほんの些細なことに気付く注意力に姉さんが若干張り合おうとしているのは多分気のせいじゃないだろう。
 くるり、と鏡の前で一回転。
 街中でやったならきっと、視線が僕の太ももの辺りをくすぐるに違いない。

智「……スカート、未だに慣れないな」

 いや、慣れたら男として終わりなのだろうけれど。
 一年以上経った今でも慣れないのは相当ではないだろうか。
 人間とは順応する生き物だ、とは誰の言葉だっただろう。

真耶「智? どうしたの、そんなに肩を落として」

 鏡を見て落ち込んでいると、姉さんが後ろから声をかけてきた。
 一つに結われた長い髪が揺れる。

智「速いね、もう終わったんだ」

真耶「今日は跳ねも少なかったから。 それより鏡でも見て、どうかした?」

智「ううん、なんでもない」

 自己嫌悪、なんて言おうものなら寸劇が始まるに違いない。
 或いはあからさまに不機嫌になってみせて、『ふぅん、智は姉さんのやることに不満でもあるのかしら』とでもいうに決まってる。
 それに対する僕の答えはいつも決まって、『……そんなことないよ』、だ。 答えるのに少しばかり躊躇いがあるのがポイント。
 姉さんはそれに絶対に気づいていて、そして笑顔で『そう、それならよかった』と言うのだ。
 本当、世界って理不尽。

真耶「それじゃあ、行きましょうか。 あんまり遅れると、隣の人にあってしまうしね」

智「それは嫌だね。 それなら早く行かないと」

 お隣さんと遭遇するのは本当に心臓に悪い。
 僕にその気はなくとも、気付かれてしまったら一巻の終わりなのだ。
 彼の所為で、どこか遠くに出かけるときも女装でなくてはいけなくなったのはあまりにも有名な話。

真耶「授業道具はもった? ハンカチとちり紙は? スカートも忘れてない?」

智「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても」

真耶「どうかしら。 智は昔から、肝心なところで忘れること多いじゃない」

 それにしてもスカートは履いているのだから、見ればわかる。
 そのことを告げると、姉さんはクスクスと笑う。

真耶「そこは、冗談よ。 う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 カチャリ。
 扉をあけて、僕らは外の世界へと飛び出した。

 通学途中、若干の視線をその身に受ける。
 二年生の和久津家の美人姉妹(この状況においては僕は『妹』でなければならない)は南総学園において知らない者は居ない、らしい。
 お姉様肌の姉、孤高な優等生の妹。
 それぞれのファンは五十人もくだらなく、姉妹共通を含めると倍以上もいるらしい。
 らしいらしい、というのはそれが噂でしか聞いたことのない話だからだ。
 その噂の張本人はというと。

真耶「今日は、アレはいないのね」

智「アレって……」

真耶「姉さんにとっては、智に近寄る不届き者、といったところなのだけれど?」

 冬篠宮和。 その噂を教えてくれた張本人。
 曰く姉さんより僕の方のファンで、僕らに一番近い立ち位置な天災さんだ。
 そんな宮和を姉さんはあまり快く思っていないのは言葉の節々ににじみ出ている。

智「姉さん、宮は事情を話さなくてもちゃんとフォローしてくれるいい子なんだから」

真耶「どうだか。 本当は智の身体狙いで、ふと二人きりになった拍子に剥かれてしまうかもしれないのよ? そうなったら智、きっと退学ね。 社会的に抹殺されてしまうわ」

智「そんな子じゃないのは姉さんもよく知ってるでしょ」

 わかっていてこんなことを嘯く。
 弟がとられると思ったら気が気でないのだ、きっと。
 皆は僕がシスコンだと良く言うけれど。 実は姉さんの方がブラコンなのだ。
 実際にそんなことを口にしたら、逆に口にすることもできない何かが待ち受けているだろうけれど。

真耶「それじゃあ智。 今日は昼食の約束があるから、放課後に。 いつもの場所、でいいのよね?」

智「うん、多分。 別の場所になったらすぐに連絡するよ」

 姉さんは友達が多い。
 そりゃ、性別を偽らなくていいのだから自由に振る舞えるのだろうけれど。
 なんとなく、羨ましい。
 ……いや、別に女の子に囲まれているのが、じゃなくて。 単純に、友達が多いのが、だ。
 僕の友達、というか気兼ねなく話せるのはクラス内には一人だけしかいないから。

宮和「おはようございます、和久津さま」

智「わっ!?」

 何の気なしに開いた教室のドアの影から、宮和が生えてきた。
 まるで待ちぶせしていたかのような素早さ、心臓に悪い。
 バクバクいう心臓を抑えながら、宮和に返事を返す。

智「お……おはよ、宮」

宮和「はい。 今朝も和久津さまは見目麗しく、宮はドキがムネムネしてしまいます」

智「……それ、誰から習ったの?」

宮和「ネットの知人がこういう場合に使えばよろしいと」

 宮のネットの知人さん。 お願いですからこれ以上変人にしないで下さい。
 切なに。

緋本「和久津さん、おはようございます」

智「おはようございます」

 緋本さんこと〈赤色〉さん。
 姉さんをライバル視している、グループ大好き派閥大好き人間さん。
 度々僕を誘ってくるところをみるに、対姉さんへの切り札としてでも利用したいに違いない。
 魂胆が見え見えな上に僕にその気はないから、袖であしらうのが常だけれど。

緋本「ちょっと小耳に挟んだのだけれど、いいかな」

智「うん、時間あるし構わないけど」

緋本「ええとね、和久津さんが下級生に転校してきた不良っぽい子と仲良くしてるって話を聞いたんだけど、本当?」

 下級生に転校してきた、不良っぽい子。
 思い当たるのはたった一人。

智「央輝のことなら、一応、他の人よりは仲がいい……つもりだよ」

緋本「へぇ、そうなんだ。 じゃあ、お姉さんは?」

 なるほど、そうきたか。
 というより最初からそれを聞きたかったのだろう。
 嘘をついても仕方がないし、僕は二人の顔を合わせた時の様子を思い出しつつ。

智「僕経由で顔は知ってるけど、そんなに仲がいいわけではないかな。 火と油、みたいな」

 央輝は結構短気だから、姉さんのような飄々とした人間には合わない。
 姉さんもそれがわかっていて、油を注ぐだけ注ぐ。
 さっきの言葉だと、微妙に誤解がまざるかな?正しくは、 火に油を注ぐ関係、だ。

緋本「ふぅん、そっかそっか。 ありがとう、和久津さん。 今日も一日頑張りましょうね」

智「うん、お互いにね」

 僕の返事に僅か思案顔を浮かべ、満足したようにお礼をいう。
 僕もそれに表面の笑顔で返して、席に向かう。

宮和「悪、でございますね」

智「何が?」

宮和「央輝さんと真耶さまの関係は、私にはそれほど悪いようには見えません。 それを、和久津さまは息をするように嘘をおっしゃられたので」

智「嘘も方便、だよ」

 そもそも火と油の関係は嘘ではないし、とりたてて仲がいいわけでもない。
 可もなく不可もなく、な返事なわけだ。
 それで勘違いしても、僕には知ったこっちゃない。 いや、大きな問題になったら困ってしまうけどその時はその時だ。

 丁度よくチャイムが鳴る。
 宮和を席につきなよと促し、鞄から筆記用具を取り出す。
 今坂先生がやってきて、日直が号令をかける。

あやめ「おはようございます」

緋本「おはようございます」

宮和「おはようございます」

 混じり、僕も礼を深々と下げた。
 今日も一日、かんばりましょう。

 一日はあっという間。
 六限の授業は瞬きの間に過ぎていく。

智「時間って、有限だよね」

宮和「哲学ですわ」

智「相対性理論って偉大」

宮和「和久津さまは勉強がお嫌いでしょうか」

智「宮は大好きだもんね」

 こんな人間も珍しい。
 絶滅危惧種だ、旧帝も夢じゃない。

智「好きか嫌いかで聞かれたら、嫌いじゃないとだけ」

宮和「相変わらずのツンデレさまですね」

智「そういう最近作られた言葉も勉強の内?」

宮和「最近は、ライトノベルと呼ばれるものにも手を伸ばそうかと」

智「やめなさい」

 宮和はどこまでも知識を追求する。
 その癖影響の受けやすい困った探求者だ。
 純粋培養しろ、とは言わないけれど曲がった知識を蓄えられても困る。

宮和「そういえば、最近は男の娘、というのが流行っているようでして」

智「……っ、へっ、へぇ。 そっ、そうなん、」

宮和「風の噂によると、この学園にも女装した男性の方が紛れ込んでいるとか」

智「だ……っ!?」

 ガタッ、と。
 とっさに、鞄を持って立ち上がる。

宮和「? どちらへ?」

智「え、えと……よ、用事思い出した! 僕もう行くね!」

宮和「なるほど、例の場所、でございますね。 わたくしは今日は用事があるので、皆さまによろしくとお伝え下さい」

智「う、うん! じゃあね宮、また明日!」

 誰!?
 誰さ、宮に変な噂を教えたの!?
 絶対不審に思われたじゃん!?
 もう泣きたい!

智「うわぁああああああああんっ」

あやめ「あっ、和久津さん、廊下を走ってはいけませんよ」

 音量を抑えながら走っていたところを今坂先生にたしなめられた。
 満足に感情を爆発させることすらできない、僕の人生って一体……

 僕らは、同盟だ。
 同盟というよりは、合同?
 寧ろ連盟? 同じようなものだけれど。
 ……が、似た言葉を並べてもしっくりこない。

智「どうしてかな?」

伊代「智が知らないもの、わたし達が知るわけないじゃない」

 身も蓋もない言葉で切って捨てられる。
 しかしそれで終わらないのがこの同盟(仮)だ。

伊代「でも、そうね。 なんとなく、わからないでもないわ」

るい「うーん……結束、とか?」

こより「ふつーに仲間でいいんじゃないでしょうか!」

花鶏「花城花鶏とその周辺の爛れた関係、とかいいんじゃない?」

央輝「やめろ、気色悪い」

茜子「ふむ、では茜子さんの愉快な仲間たちで」

惠「それなら全員の名前から一文字をとってみるとかいいんじゃないかな。 例を挙げるなら、とまるあこいあいめみ、とか」

智「適当すぎるよ!?」

 このグループには圧倒的に突っ込み分が不足していると思う。
 下手をすれば皆ボケに回ってしまうし。

 僕らに共通点はない。
 幼馴染だったとか背景もないし、これといって結ばれた理由はない。
 けれど出会ったのはなるべくしてなった、というべきだろう。
 そうとしか言い様がない。

 僕らは二人だった。
 それが三人になって、四人になって。
 五人に増えて、六人、七人を経て八人、九人となって。
 つい最近、遂に二桁の大台に入ったのは記憶に新しい。

伊代「一文字とるにしても他にもやりようがあるでしょうに!
    そうやってただ単純に並べなくても、ほらなんていったっけ、あの……アナグラム、だっけ? それにするとか!」

花鶏「伊代ちゃんのアナをアナグラムする?」

るい「意味わっかんねーよ」

惠「アナをアナグラム……つまり鼻、耳、口などの穴を全てランダムに変えるということだろうか」

こより「惠センパイ、花鶏センパイのいうことは真面目に考察しないほうがいいッスよう」

花鶏「なんて言い草! そんなこというならわたしがこよりちゃんの穴という穴をアナグラムにするわよ!」

こより「ひっ、ひぃーっ! お助け――――っ!!」

茜子「これが第三次アナグラム対戦―ところでカレーライスとハヤシライスのどっちが好き?―の幕開けになるとは、誰も予想だにしていなかったのだった……」

央輝「カレーライスは知ってるが……ハヤシライスはなんだ? 食い物みたいだが……」

るい「え、いえんふぇーハヤシライス知らないの!?」

伊代「嘘、本当?」

央輝「悪かったな。 割とまともなモノを食べられるようになったのは最近の話なんだ」

 くるくると万華鏡のように移り変わる。
 別の言葉で表すなら、僕らという色が混ざりあって様々な色に変わっていくとでもいうのだろうか。
 ただ傍から見ているだけでも、十二分に楽しい。

 瞬間、キィ、少しばかり錆びている屋上の扉が開いた。
 風が舞い込み、髪をはためかせる。
 いつものような不敵な笑みを浮かべて、本日の欠席者を除く最後の一名がやってきた。

真耶「なぁに。 随分と楽しそうだけれど」

るい「真耶、やっときた!」

伊代「智は早々に来てたのに、遅かったじゃない。 何をしてたの?」

真耶「ちょっと、学園中に噂を流してたの」

央輝「また下らない話だろう。 アタシの時みたいなな」

 央輝が姉さんに流された噂はというと、実は央輝は家では兎を飼っていて一人は本当は寂しいのだという噂。
 それが元で央輝も孤独ではなくなったようだ。
 兎を飼っているのは嘘だけれど、ツンツンしているのは照れ隠しだということが周りに露見してしまったのだろう。

真耶「あら、まだ怒っているの? いいじゃない、減るものじゃないのだし」

央輝「うるさい、減るんだよ、何かが」

花鶏「……それで? 今回はどんな噂を流したの?」

 女の子というのは噂好き。
 言い方を変えれば、話題が好きなのだろう。
 よっぽど深い話をしていなければ、四十秒に一度話が変わるらしい。
 逆に言えば、話題を沢山持っていれば持っているほど、話の場を制することができるわけだ。
 ……特に意味は無さそうだけれど。

真耶「大した話じゃないわ。 私も少し聞いたような覚えがあるだけで、真偽もわからないし」

惠「へぇ、真耶でもわからないなんて珍しいね。 それで、どんな内容なんだい? 僕も少しばかり気になるから、教えてくれないかな」

真耶「ええ、いいわよ」

 くるり。
 まるで舞うように一回転。 髪が回転方向に姉さんを追いかける。
 意味はなく、しかしそれに意味があるようにすら錯覚する。
 そして、告げる。

真耶「……『実は南総学園には女装した男の子がいるの』」

智「ぶフっ!?」

るい「と、トモ!? どうしたの!?」

 いきなり吹き出した僕に視線が集まる。
 弁解するように、口早に言葉を走らせた。

智「そっ、その噂を流したの姉さんだったの!?」

真耶「あら、智はもう聞いていたのね。 ならこの話を流したのは正解だったかしら。 信憑性のある噂ほど、広がりが速いものだし」

こより「ええと……どういうことですか?」

真耶「う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 姉さんは笑う。
 まるで悪戯を思いついた子供のように。

 嫌な予感がする。
 そう思うけれどもう遅い。
 僕が姉さんの口を塞ぐよりも速く、姉さんは言葉を走らせる。

真耶「実はね、智は女装した男の子にしか欲情できないの」

智「――――っ!?」

 なんてこと言ってるの!?
 寧ろ女装のじょの字も見たくないよ!?

茜子「ふむ、つまり。 見た目は貧乳、頭脳は僕っ娘。 果たしてその正体は倒錯趣味の変態おなごだったというわけですか」

伊代「不純……不純だわ。 ただの男の子ならまだしも、女装した男の子だけだなんて。
    確かに、可愛い男の子は筋肉だらけのむさ苦しい男よりはいいかもしれないけれど、それでも限度ってものがあるじゃない?
    そもそも女の子の格好だなんて、あなたもしかして人畜無害な顔してても影で花鶏みたいに女の子とよろしくやってるんじゃ……」

こより「だっ、大丈夫ッスよともセンパイ! 鳴滝はともセンパイが変態さんでも、ちゃんと仲良くしますから!」

智「いいながら僕から距離をとらないで!?」

 僕を一人にしないで!
 そんな眼で僕を見ないで!
 そんな趣味は全くもってないし、事実無根だから!

花鶏「認めない……認めないわ」

花鶏「智ちゃんが男を好きだなんて認めない……女の格好をした男じゃなく、女そのものを教えてあげるわ!」

智「うわっ、ちょっ……!」

 襲い掛かってくる花鶏を紙一重で躱す。
 やばい、眼が本気だ!
 捕まったらヤラれる! それどころか本格的に変態の烙印を押されちゃう!

花鶏「このっ! 逃げんな!」

智「やっ! やぁの、やぁの!!」

 逃げる僕、追う花鶏。
 その追いかけっこは、僕が遂に捕まってからるいが乱入してくるまで続いたのだった。

こより「日も、長くなって来ましたねー」

伊代「そうね。 でも、明るいといってもそろそろ帰らなくちゃ。 暗くなるのはあっという間だから」

 時間はもうすぐ五時半を回る。
 朱く輝いている太陽は、綺麗に映えていた。
 それを眺めながら、央輝はぼやいた。

央輝「アタシは、昼間より夜の方が好きだがな」

惠「これまた、どうしてだい?」

央輝「眩しいんだ。 こっちに来るまでは路地で生活していたからな」

智「ああ、だからあの帽子被ってるんだ」

真耶「けど、最近は被ってないことも多いわよね」

央輝「……夜の方が好きというだけで、昼間が嫌いなわけじゃない」

 ぷい、と央輝は顔を背けた。
 立派なツンデレさま。 今日宮和がいたらきっとそういっていただろうし、そうなったなら央輝も顔を赤くして怒ったに違いない。

花鶏「……なんで、わたしは智や真耶と同じ学校じゃないのかしら。 もし一緒だったら、央輝ちゃんと真っ先に仲良くなったのに」

伊代「花鶏は仲良くなるの意味が違うでしょ意味が」

こより「けどけど、誰かいるだけでも嬉しいのは事実ッスよう! 鳴滝も、ともセンパイの学校にいこうかなー」

智「その頃には僕ももう卒業してるんだけどね」

 皆が一緒の学校に通っていたなら、どれだけ楽しいだろうか。
 年齢差もあるから、実現不可能にも程があるけれど。 想いを馳せずにはいられない。

るい「ええと、智と、真耶と。 いえんふぇーと、宮。 四人もおんなじ学校だもんねー」

惠「そのわりには、全員揃う日は少ないけれどね」

智「同じ学校だからって、放課後の予定が一緒なわけじゃないからね」

 南総の四人が揃っても、フルメンバーで揃う日はあまりない。
 全員が揃ったのは両手で数える程しかないのではないだろうか。
 そもそも十人になったのがここ最近というのもあるだろうけれど。

茜子「ドキドキ茜子さん裁判によりますと、全員が揃った時……地球は滅亡する!」

花鶏「な、なんだってー! ……って、だったらもう何回地球滅んでるのよ」

茜子「アウチ」

 ベチ、と花鶏の手痛い突っ込みを頭に喰らい、茜子は頭を押さえる。

智「でも、皆揃ってちゃんと話をしたことってないよね」

伊代「そうね。 いつもなあなあで解散してるし、腹を割ってはなしたこととかは無いかも」

智「うん、だからさ。 今度皆で旅行とかどうかな? 親睦会的な、ね」

 何かの切っ掛けがあったわけじゃない。
 いや、細かく見ればあったのだろうけれど、強く結ばれた絆とか、そんなのは僕らにはない。
 だからこそ、ここいらで一度仲を深めよう、との提案だった。

 それに真っ先に賛同してくれたのは、意外なことに姉さんだった。

真耶「いいんじゃない? 私は、智の考えに賛成するわ」

智「姉さん」

 珍しい、と思った。
 姉さんは寧ろ、反対するかもと思っていたから。
 必要以上に仲を深めることは良いと思っていないような気がしていた。
 そんな考えが見通されたのか、姉さんは僕を見て微笑む。

真耶「可愛い妹の提案だもの、無碍になんてしないわ」

 こういう時でもさらっと『妹』と出てくる辺り、姉さんは徹底していると思う。
 姉さんの言葉を受けて、皆は顔を見合わせた。

るい「……うん、いいじゃん、旅行! るいねーさん、温泉とか入りたい! 皆で裸の付き合い!」

花鶏「わたしは海がいいかしら。 皆の水着……伊代や宮のでかっぱいもいいけど、こよりちゃんや央輝ちゃん、そして智ちゃんと真耶ちゃんのちっぱいも捨てがたいわ……!」

こより「鳴滝はセンパイ方と一緒ならどこでもいいですよう!」

伊代「わたしも。 一週間とかじゃなくて一泊二泊なら多分大丈夫よ。 あっ、勿論学校休みの日だからね! サボりとかはダメよ!」

茜子「茜子さんは猫がいるところが良いです。 そしてカヤー・バ・アー・カネコとして君臨するのです」

央輝「アタシは、どこだって構わん。 ただ、一つだけ言うなら……なるべく金のかからない場所がいい」

惠「僕は……そうだね。 僕の意見を言わせて貰えるなら」

 惠は何故か、一呼吸置いて。

惠「皆が、絶対に楽しめる場所。 そんなところがいいかな」

 柔らかな笑みを浮かべて。
 惠はそう言ったのだった。

 帰り道。
 僕と姉さんは並んで、手を繋ぐ。

真耶「今日の智は上機嫌ね」

智「そういう姉さんも、少し機嫌いいんじゃない?」

真耶「そうかもしれないわね。 う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 空は、濁っていた。
 けれどその合間から月が顔を覗かせている。
 整った満月ではない、けれど淡く、綺麗に輝く半月が。

真耶「……智。 少し、聞いて貰えるかしら」

智「なあに、姉さん」

 姉さんがこう改まって話をすることなど珍しい。
 だから僕は、そう緊張することはないと意味を込めて、いつもと同じように返事を返した。
 くすり、と姉さんは僅かに微笑む。

真耶「私はね、必要以上に他の人と関わらない。 関わっていても、一線は引く。 そういう風にしてきたつもりだし、智にもそれをさせてきたつもりだったわ」

智「……うん、知ってるよ」

真耶「だって、どんなに仲が良くても、別れはいつかやってくるから。 それが喧嘩だろうと、自然に疎遠になっただろうと、或いは死だろうと。 別れは、決して逃れられない」

真耶「そしてそれに直面した時――――きっと、悲しんでしまうから」

真耶「悲しむくらいなら、最初から出会わない方が、踏み込まない方がいい。 そう思っていたわ」

 姉さんが他人と一線を引いていたのは知っていた。
 けれどそんな理由があると聞いたのは、初めてのことだった。

真耶「けど、違うのね」

真耶「別れは辛いものだけれど。 誰か出会う喜びは、心通じた愉楽は、それを遥かに凌ぐほど綺麗で、純粋で、素晴らしいものなんだって」

真耶「智と、皆を見てて、最近気がついたの」

 姉さんは、僕を見た。
 僕も姉さんを見る。
 そして姉さんは破顔した。

真耶「ありがとう、智」

 何もかもを見透かしたような、微笑みではなくて。
 至純な、無垢な、満面の笑み。
 それを見て、僕も嬉しくなった。 この姉さんの笑顔を実現したのは、僕なんだと思うと、果てしなく心が満たされていったのだ。

 そして僕らはまた空を見上げる。
 ちょっと目を離したぐらいで、空の光景は変わらない。
 けれどほんのちょっとだけ、曇が晴れたような気がした。

真耶「それでね、智。 ものは提案……というより、もう別にいいと思うからいうのだけれど」

智「? うん、なに?」

真耶「もう、女装は続けなくていいわ。 好きなように生きて、好きなように恋をして、好きなようにしなさい」

真耶「そして、幸せになりなさい」

真耶「それが、今の私の願いだから」

 僕が幸せになること。
 それが姉さんの願い。
 僕は、それに小さく首を振った。

智「まだ、僕はこれをやめないよ」

智「そりゃあ、なんで女装なんか、って思ってた。 今も少しだけ思ってる」

智「けど、姉さんは今だけじゃなくて、昔からずっと僕のことを考えていてくれたんだ」

 女装をした僕は、一線を引かざるをえない。
 踏み込もうとしても、尻込みをしなければならなかったのだ。
 この姿が故に。
 それも、姉さんが僕を思ってのことだった。
 必要以上の悲しみを僕に齎さないように。

智「僕がこれをそんなすぐにやめたなら、そんな姉さんの想いを否定することになるから」

真耶「でも、私は間違ってたわ」

智「間違ってないよ」

 誰かを、家族を想う気持ちに、間違いなんてない。
 その方法が捻じれ曲がっていたとしても。
 その方法が歪んでいたとしても。

智「間違いなんて、あるわけがないんだ」

智「それにね、まだ僕に恋とか、そういうのは早いと思うんだ」

 一応、二十歳は超えているけれど。
 周りに、女の子も沢山いるけれど。
 そんなことよりも、もっと重要なことがある。

智「僕は、姉さんと一緒にいたい。 別れがいつか必ず来るのなら、それまでに沢山の思い出を作りたい」

智「それって、とても綺麗で、純粋で、素晴らしいものだと思うから」

 ね、と姉さんの顔を覗き込む。
 姉さんは少しだけ、きょとんとして、そしてまた笑う。

真耶「そうね。 思い出、沢山作りましょう」

真耶「私だけじゃなくて、皆との思い出も。 これから沢山、沢山」

智「うん。 時間は、まだまだあるんだから」

 実際には、もう数分もないのかもしれない。
 例えばトラックが飛び出してきて、僕と姉さんが二人揃って轢かれる可能性も零ではない。

 けれど、願うことぐらいは許されてもいい筈だ。
 想いを馳せることぐらいは許可して貰えるはずだ。


 どうか。
 どうか。
 どうか、この平和な日常が、一秒でも長く続いていきますように。


 月は、答えるように僕らの往く道を照らしていた。

 EXTRA4 『和久津姉弟のとある一日』――――Clear

 ほのぼの予定にシリアスを混ぜてしまうのは私の悪い癖。
 当初は暁Worksのキャラ総出でパラレルワールドを繰り広げる予定でしたが変更しました。
 多分、今回辺りから更新頻度が週一か二週一に戻ると思います。 申し訳です……

 次回は……とりあえずモード決めるのに安価ださなきゃいけないので明日で。
 多分モード決めだけです。

 それでは、また明日。

 Save1
 惠ルート チャプター36

 Save2
 はじめから

 Save3
 夜子ルート Clear
 (New Game)

 Chapter Select

 EXTRA

 どれを選びますか?
 >>172

 ロードしています……

 セーブデータが破損しています。

 チャプター32からの再開になりますがよろしいですか?

 また、32~36まで同じ道筋を辿ることも保証出来ません。

 それでもいいならはいを、嫌ならいいえをお選びください。


 >>174
 1 はい
 2 いいえ

 ええと……レスがなくて、もしかして誤解か何かありそうですから付け加えさせて頂きますと……
 VIPでやってたときは数日完結予定の急ごしらえだったので、自分でもおかしいと思う超展開でして。
 なので、第三章(三宅を倒した直後)からやり直してシナリオの完成度を高めたいというのが>>173でして……
 いかがでしょうか……?

 勿論、嫌だというなら超展開になるあのシナリオのまま進めたいと思います。
 皆さまの率直な意見をお聞かせ願いたく。

 ――――雨が降っていた。


 砂嵐のようなノイズがカーテンを締め切って部屋に閉じこもる僕の耳を覆う。
 その曇り空は果たして、僕の心を表しているようだった。

 部屋の中は真っ暗闇。
 カチリ、カチリと雑音に混じって時を刻む音。
 ああ。
 僕は一体いつから、こうしていたっけ。

 枕元に転がっている携帯をふと見遣る。
 表示されている時間は二十二時。
 何時の? 携帯を開いて、日付を確認する。
 そこには、あの日――僕らがソリッドを斃した日より二日も経過した日付が表示されていた。

 僕は、三宅は、ソリッドのコミュは、屑だ、最低だ、と思っていた。
 心のどこかでそう奴らを貶めることで正当化しようとしていた。
 けれど、無理だ。
 最初は、事故だった。 どうしようもなく、正当防衛、いや厳密には過剰防衛になるのだけれど、結果的にそうなってしまっただけだった。
 けれど今回は、望んで、引き金を引いた。
 覚悟はしていたつもりだった。
 けれど結局はこのざまだ。 情けないったらありゃしない。

 命を奪うということ。
 例えどれだけ相手が悪いやつで、死んでも仕方がない存在なのだとしても。
 自ら手を下すのは、存外、心にクルものがあった。
 だから、あの日からこうして、家に閉じこもっているのだ。

 開いた携帯の隅。
 未読のメールがある、という表示。
 そういえば、この二日間は食事も最低限で後は学校にも行かずに思考の迷路で彷徨っていたような記憶がある。
 優等生が、とんだ不良さんだ。

智「…………」

 メールを見ずに、また迷路に潜ろうとする考えを振り切る。
 きっと、このままだったらいつまでも引きずってしまう。
 ……いや、忘れてはいけない。 命の重さを忘れてしまったその時こそ、僕らはあいつらと同類になってしまう。
 それでも、前を向かなきゃいけない。
 僕の世界は、僕一人で完成するものではないのだから。

 メールを開く。
 学園の知り合いが何人かと、宮からは思いの外少なく、一通だけ。
 内容は、『和久津さまの体調がすぐに良くなることをお祈りしております』とだけ。
 顔を見ずとも僕の様子を察する。 宮らしい、と思った。

 勿論、メールはそれだけじゃない。
 伊代と、こよりと、花鶏と。
 開いていみると、花鶏のメールにるいと茜子も混じっていた。
 温かい、陽だまりのような。
 一部は少しばかり個性的でおかしなのも混ざっているけれど、それでも僕の日常を感じさせた。

智「……皆に、会いたいなぁ」

 どうしようもなく、そう思った。
 屋上で、担架下で、或いは街中で。
 馬鹿な話をして、笑って、泣いて、怒って、そしてまた笑う。
 そんないつもの日常に、戻りたい。

 完全ないつも、にはもはや決して戻れない。
 僕は悪人といえども彼らを斃してしまい、その生命を摘んだ。
 けれど、戻りたい。

 ……違う。
 いや、戻りたいけれど、それも勿論だけれど。 それ以上に、戻らなきゃいけない。
 だって、僕らは、仲間なんだ。 同盟なんだ。
 喜びも悲しみも分け合う、利害一致の関係。 今はそれよりも尚、複雑で大切な関係。
 このままだときっと、皆は僕を心配する。
 心配して、どうなるかなんて、わからないけれど。 いい方向ではないことは確かだ。

 だから、僕は前を向かなければいけない。
 再び、そう自分に言い聞かせる。
 忘れるわけじゃない。 心に刻み付ける。
 ふと一人の夜に思い出して、苦しむ。 そんなことがきっと未来続く。

 けれど、それで構わない。
 人を殺すとは、つまりそういうことなのだから。
 一人でその罪の重さを背負い、懊悩する。 僕らは五人だったけれど、きっとそれは変わらない。
 そしてそれは他人に話すことなく、心にしまっておくべきものなのだ。
 人に吐き出して、悪く無いといってもらって、許してもらうなんて。 それは逃げでしかないから。
 そんなことをしたら、僕は人間でなくなってしまう気がするから。

智「……忘れないよ」

 脳裏に過ぎる。
 そこにあるのは、三人の男たちの死に際の表情。
 顔も見たくない、最低の人間だったけれど。
 それが、僕の、僕らの義務だから。

智「忘れない」

 繰り返すように呟いて。
 だから明日こそは、絶対に外に出ようと決意して。
 僕は、いつしか眠りに落ちたのだった。

 そして俺も眠りに落ちるのだった……
 ……すいません。 久々の更新なのに……三月の連続更新は一体なんだったのか……
 時間があれば、明日ってか今日の……そうですね、二、三時過ぎぐらいからまた少し書きますです。

 今日の天気は快晴ときどき晴れ。
 実際にそんな言い方をするのかは知らないけれど、空を見る限りそんな感じ。
 街中を歩く僕の背を視線が擽る。
 最近は、こんなのも気にする余裕すらなかった。

智「余裕超大事、『超』、超大事」

 意外に汎用性のある繰莉ちゃんの口癖を呟く。
 本人に聞かれでもしたら、冗談で著作権侵害ーとか言われるだろうきっと。

 さて、今日の溜まり場はどちらだろう。 
 昨日は雨、それなら今日は?

智「屋上で決まりかな」

 午前中の日差しで屋上の雨水は大体が蒸発していると思う。
 加えて高架下の方は水辺近くで、よく晴れた日だと湿気が強い。
 雨の次の日ともなると尚更。
 雨の降っていない夏の日ならきっと、涼しいに違いない。

 ……それはさておき。
 皆と会うのは、本当に久しぶりだ。
 帰る場所とは違うかもしれないけれど、居場所という意味では相違ない。

智「でもただいま、はおかしいかな」

 第一声を考えて、僅か苦笑い。
 そんなことをしなくても、きっと皆は快く迎え入れてくれるだろう。
 いや。 きっと、なんて曖昧なものではなく。 確実に、だ。
 そんな信頼を胸に秘めて、僕は階段を昇るのだった。

こより「あ! ともセンパイだぁ!」

るい「えっ、トモちん!?」

 屋上のドアを開けるなり目敏くこよりが反応し、続いてるいもこちらを向く。
 二人だけではなく皆が僕を確認して、一瞬だけ驚きを見せた後笑顔に変わる。

智「どもども」

 えれに対して僕も笑顔を返しつつ、皆の傍に近寄る。

智「ごめんね、暫く休んじゃってて」

花鶏「本当よ。 お陰で智ちゃん分が足りなくて禁断症状が起こるところだったわ。 これはすぐさま補給しないとっ!」

伊代「やめなさい」

 僕に飛びかかろうとする花鶏を伊代はその後ろ襟を掴んで無理矢理止める。
 グエッ、と鳥が首を閉められた時のような声が漏れた。

伊代「それよりあなた、大丈夫なの? メールの返事とかも全然なかったけど……」

智「うん、大丈夫。 ごめんね、心配してくれてたのに返事の一つのよこさないで」

伊代「いいわよ、そのぐらい。 便りがないのはいい便りっていうじゃない」

 いいつつも、伊代は安堵した表情を浮かべる。
 その言葉は僕も聞いたことがあるけれど、実際に元気な顔を見るに勝るものはない。 

こより「それにしても本当、随分遅かったですよね! 鳴滝、ともセンパイの学校に突撃とかも考えちゃいましたよう!」

智「流石にそれはご勘弁……」

 そもそもこっちを休んでいた期間中は学校にも出てなかったし……
 一応僕は孤高のお姉様なわけでして。
 仮にこよりが突撃して本当は面倒見のいい人なんだ、とか思われたりするとそういう嗜好を持つ人が僕を狙うのも無きにしもあらず。

茜子「つまり、僕っ娘タイプブルマは茜子さん達が来ないのをいいことに学園ではイチャコラしているとそういうことですねわかります」

智「全くわかってない上にそのネタはそろそろやめてくれない!?」

 花鶏がそのブルマの下はどうなっているのかしらとか言い出してバレでもしたら責任とれるの!?
 真に遺憾っていうレベルじゃないよ!?

茜子「ところで」

智「聞く気なし!?」

るい「まー、まー。 アカネも寂しかったんだよ、きっと」

茜子「べっ、べつにさみしくなんかないんだからねー」

こより「全然ツンデレに聞こえませんね」

 たはは、とこよりが苦笑する。
 それも意に介さず、茜子はこほん、と一つ咳払い。

茜子「ところで、僕っ娘タイプジャージモドキはどこに?」

 そういう分け方なんだ。
 それなら別に僕のことはブルマじゃなくてスカートで良かったと思う。

花鶏「そういえばそうね。 智、惠はどうしたのかしら」

智「惠も来てないの?」

 僕の言葉に、少しばかり動揺が広がる。
 茜子と花鶏の問いで大体想像はついていたけれど。 惠もまだ出てきていないようだ。
 あんな飄々としている惠でも、人を殺すのはやはりクルものがあるのだろうか。

るい「トモ、惠と一緒だったんじゃないの?」

智「実は用事自体は三日前に終わってたんだ。 この二日間は療養というか、なんというか」

 詳しく話すのは憚られる。
 これはあくまで、僕らだけの問題だったから。

こより「そーだったんですか?」

智「うん。 だから、惠も家にいると思うよ」

るい「それなら、トモもいることだし惠のところに行ってみようよ!」

伊代「ちょっと、その場のノリでそういうのを決めるのってわたし、良くないと思うの。
    確かに前に遊びに行った時のお礼とかも全然していないし、顔を見たくはあるけれど。
    この娘みたいに連絡も返せないほど疲れている可能性だってあるわけじゃない? それならありがた迷惑になるんじゃ、」

智「大丈夫だよ」

 伊代のイケてない説得を切り伏せて、僕は言う。
 大丈夫。
 それは同じ経験をした僕が一番わかってるはずだ。

智「多分、惠も遊びに来てくれた方が喜ぶと思うよ」

 少なくとも、僕はそうだ。
 呪われているこの身、誰にも頼れないこの人生。
 誰かがいてくれるだけで、すごくありがたい。
 それが同じ境遇を持つ仲間だとしたなら、尚更。

伊代「そっ、そう? それなら……少しぐらいはいい、のかしら」

茜子「ハッキリしませんね、このダメダメガネ」

 茜子の言葉が伊代に斬りかかる。
 致命傷でなくとも多少なりともダメージは与えられたようだ。

花鶏「まぁいいんじゃないかしら。 智の言うとおり、広い家に少人数しかいないとガランとして寒々しいもの」

るい「花鶏には私らがいるじゃんよー」

茜子「いるじゃんよー」

花鶏「ええいくっ付くな鬱陶しい」

 なんでわたしの家に止まっているのが智やこよりちゃんじゃないのかしら、と花鶏はぼやく。
 例え花鶏の家しか選択肢がなかったとしても、僕は花鶏の家には泊まらない、絶対。

るい「よーっし、んじゃ決まったところで、メグムの家にしゅっぱーつ!」

こより「お~っ!」

 この同盟はやっぱりこの二人がいないと始まらない。
 そして伊代がはしゃぎすぎよ、と呆れながらも楽しそうに呟き、花鶏は本当に呆れる。
 茜子は猫を連れながら意味不明な事を言って、そして僕が皆をサポートする。
 誰が欠けても始まらない。皆がいなくちゃ意味が無い。
 勿論、惠も含めて、だ。

 そんなこんなで、僕らは惠に会いにいくことと相成ったのだった。

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 ???←次ここ


 今日はここまでー
 少なくともこれから一週間に一つづつ更新出来ればいいなぁ……難しいかな……

 靄が掛かった感じだなぁ……
 一週多く貰った(事後承諾)のに……むむむ……
 ぼちぼち始まりますです

るい「はー、いつ見てもすごいなー」

智「本当にね。 花鶏の家もすごいけど、此処は別格な気がする」

 蔓に隠れた表札は大貫。
 そういえば、前に聞きそびれたことを思い出した。
 あの時は困ったような顔をしたから嫌ならいいと言ったけれど……気ならないといったら嘘になる。
 でも、きっと折をみて話してくれるだろう。
 なんてったって、僕らは仲間なんだから。

 蔦に覆われたインターホンを押す。
 普通にピンポーン、ではなく、正しくベル、とでもいうような尊厳ある音が鳴り響いた。

こより「ふへぇ、こんなインターホンもあるんだ」

花鶏「……いいわね。 家のチャイムもこういうのにしてみようかしら」

伊代「物珍しいからって、またそういう……」

智「でも評判にはなるかも?」

茜子「プロデュースは茜子さんにおまかせあれ。 どんな事実も嘘も面白おかしく広めておきますぜ」

伊代「嘘は駄目でしょ嘘は」

 そんな感じで暫く駄弁っていると、以前に見たメイドさん――もとい、佐知子さんが顔を覗かせた。
 内部からカメラで僕らを確認したのか、迷うことなく扉の鍵を開ける。

佐知子「いらっしゃいませ、皆さん。 惠さんに会いにいらしてくださったんですか?」

るい「そうそう! メグム、最近顔出さなかったから元気かなって思って!」

こより「ですです!」

 るいとこよりの元気が有り余っている返事を聞いて、佐知子さんは笑みを深める。
 僕らがそう言って来てくれたのを本当に喜んでいるような、母親が子を見守っている時にもよく似た表情。
 ふと思ったのけれど佐知子さんは果たして幾つぐらいなのだろう。 よもや三十を超えているということは無いと思うけれど。
 思案顔になる僕に、佐知子さんはどうかしましたか?とでもいいたげに首を若干傾げた。
 ……女性に体重と年齢の話は禁句。 例え、僕が女の子だったとしても。
 優しそうだからって無神経に訊くと痛い目を見るのは明白だ。

智「それで、惠の様子はどうですか?」

佐知子「ええ、相も変らず、元気ですよ」

 その言葉にほっとするのと同時、疑問が鎌首をもたげる。
 いつも一緒にいる家の人にも変わりなく見えるということは逆に危ないのではないか。
 自分の中に貯めこんでしまっているのか、それとも、なんとも思っていないか。
 前者ならいつ爆発するかわからないし、後者は危険思想すぎる。
 ……いや、今考えるのはよそう。 決めつけてかかるのは思考を固定化してしまうから。
 百聞は一見に如かず。 実際に惠に会って、確かめよう。

伊代「あの子は、今ここに?」

佐知子「いえ、今は少し出かけていますが……きっと、すぐにお戻りになります。 それまで、中で待つのは如何でしょう?」

花鶏「あら、家主がいないのにいいのかしら?」

佐知子「ええ、きっと惠さんならすぐにでも中へ招くと思いますので」

茜子「それでは、丁重にもてなすといいです」

伊代「こら、あなたはもう! 少しは遠慮っていうものを覚えなさい!」

 それを見て、佐知子さんはクスクスと笑う。
 一見無邪気ともとれるそれを見て、僕も思わず表情が綻ぶ。

佐知子「それでは、ご案内します」

 そういって、佐知子さんは扉を抑えるように僕らに道を譲った。

 通されたのは前にも来た大広間、食堂。
 惠用の席をあけて、僕らは席に着く。

佐知子「では紅茶と茶菓子を持ってきます。 それまでごゆっくりしていてください」

 流石メイドさん。主君のいないところでもさぼらない。
 佐知子さんは笑みを絶やさずに小さく一礼して、部屋の奥に姿を消した。

花鶏「それにしても、惠はどこに出かけているのかしら」

伊代「そうね。 まああの子の事だからどこにいても不思議じゃないけれど」

智「確かに、どこにでもいて、どこにも居ないような感じがする」

 人はそれを掴みどころのない人、と言う。
 惠はそれを素ではなくわざとやっている気がする。
 僕らはみんな呪われている。 そうでない人だって、多少の嘘をついたりして距離を測ったりはする。
 だからそういうのもしかたがないのかもしれない、けど。

茜子「……? 茜子さんに何か?」

智「ううん、なんでも」

 茜子もわかりやすい距離の測り方をする。
 触れられてはいけない、というそれだけで致命傷になり得るものだから当然なのだけど。
 惠のそれはこういうのとは、少し違う気がするのだ。
 単純、みんなより一緒にいる期間が短いからそう感じるだけなのかもしれないが。

 ふわり、と。 僕の嗅覚が花の香を捉える。
 陶器のカチャッ、と立てる音に全員が振り返った。

佐知子「お待たせしました」

こより「良い匂いですねー」

伊代「本当ね。 この香りは、アレ……かしら?」

佐知子「はい。 薔薇、です」

 相も変わらない笑顔で答えて、これまた高そうなカップに順に注いでゆく。
 花鶏もその香りをじっくりと嗅いで、ふぅ、と溜息ではない息を吐く。

花鶏「結構いいものみたいね、家にも欲しいくらい」

茜子「没落貴族が知ったような真似を」

花鶏「なんだと茅場!アンタ今日の夕食はセロリだけにしてやるわよ!」

茜子「どうもこんにちは、いつもニコニコあなたの愛玩奴隷茜子さんです」

花鶏「いらないわよそんなの。 アンタを弄るぐらいなら、智ちゃん……いや、こよりちゃんでもいいわね。 いっそ両方とか!?」

 あたかも名案を思いついたように花鶏が目をギラギラと光らせる。
 身の危険に予想外のところから繋がった!
 なんていうか、花鶏のセクハラは時と場所を選ばない。 少しぐらいは選んで欲しい。

 あー……もう無理
 多分明日っていうか今日も来ます
 とりあえずきりのいいところまで書かないと……

 あ、あと皆さま、励まし(?)の言葉どうもありがとうございますです
 とても、本当に励みになっておりますです

 遂に発売しましたね。 厳密にはまだで、自分も読んでませんけれど
 これで続編が発売されまくれば今度こそお払い箱になる可能性が微レ存……


 それでは、つらつらと。
 眠くなるまで、いきます。

智「そういえば、惠は何をしにいったんですか?」

 全員の紅茶を入れ終えた佐知子さんにお礼をいい、ついでに聞いてみる。
 いや、普通に学校、ということもありえるけど。
 あのルックスだ、僕とは違う意味で、女の子からの黄色い声を浴びているに違いない。

佐知子「さあ……惠さんはいつも行き先は告げないので」

 返ってきたのは僕の考えていたことと違う方向の答え。
 一応、僕らも学校に行ってからここに来ているのだけれど……
 まぁ学校に行っているのなら、『少し出かけている』なんて言い回しはしないか。

伊代「そういうのって心配にならないんですか?」

佐知子「惠さんは、あの性格ですから。 一日二日帰ってこないこともよくありますので」

花鶏「つまり、慣れてるってことね」

佐知子「ええ。 つい最近も数日戻りませんでしたが、ちゃんと無事に帰ってきてくれましたから」

 幾つかの眼が僕に向く。
 それに対して僕は乾いた笑いしか出て来なかった。
 そのいなくなっていた数日で命懸けのやり取りをしていただなんて誰が信じてくれるだろう。
 僕らのこととか、例の都市伝説のこととかを知っているのならまた話は別になるけど……
 もし知らなかったらと考えると、わざわざ危険を犯す必要はないだろう。

こより「あや? とどのつまり、鳴滝たちが此処にいても惠センパイが帰ってこないことも?」

伊代「あ……」

 伊代がやっぱり家主が帰ってくるかもわからないのに家に上がるのはまずかったんじゃ? とでもいいたげな顔をする。

 それを口に出すより先に、佐知子さんは微笑みを浮かべつつ先回りをする。

佐知子「大丈夫ですよ。 惠さんは勘の強いお人ですので、皆さんがいるならすぐにでも戻ってきますから」

 何の確信もないその言葉。 
 けれど長年の付き合いのようなものを感じさせ、僕らを納得させた。

るい「すごいねー、メグムのこと、よくわかってるんだ」

佐知子「いえ、そんな……」

 単純に褒められたからか、佐知子さんは顔を少しばかり赤らめる。
 きっと雇われとして家主を知っておくのは当然だと言いたいのだろうけれど、それでもすごいと思う。

こより「言わなくても通じ合えるっていいですよねー」

花鶏「わたしにかかれば一晩で以心伝心出来るようにしてあげられるけど? 主にエロ方面で」

こより「そ、そりはご勘弁……」

茜子「今日も今日とて、エロリアンの脳内は桃色一色でしたとさまる」

智「その言い方だと花鶏の脳内がいつも桃色だって言ってるみたいだけど」

るい「えっ、違うの?」

伊代「……違わないわね」

 被害者その一が言って、それに被害者その二が頷く。
 そして僕(被害者その三)もそれに同調した。

花鶏「……え、何よこの空気。 わたしだけ悪者? おかしくない? わたしは愛の伝道者よ!?」

伊代「哀、の間違いじゃないの?」

茜子「これぞまさしく、間(あい)違いですな」

智「それは少し無理矢理がすぎると思う」

 駄弁り、談笑、無駄話。
 時に佐知子さんも織り交ぜて、皆で笑いあう。

 『そういえばさ、知ってる?』
 そんな言葉からまた、会話の輪が広がる。
 思いもしなかった考えが飛んできて、一瞬驚き、また言葉を返す。
 まさに千変万化。
 くるくる変わる万華鏡。

「何やら楽しげな声が聞こえたと思ったら。 僕も混ぜて貰えるかな?」

 そんな場所にまた一人。
 この屋敷の主を、僕らは笑顔で迎え入れる。

智「おかえりなさい、惠」

 さまざまな、それこそ僕にしかわからない意味を込めて。

惠「ああ、ただいま」

 惠もまた、同じように。
 深読みなんてしない。 そうしなくても大体の意味は伝わる。
 それが、きっと仲間ってものなのだろうから。


 そうして僕らはまた集ったのだ。
 この、どうしようもないくらいに呪われている世界に。
 この、果てしなく底も見えないぐらいに優しい世界に。

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 幾ばくかの平穏
  34 ??? ←次ここ


 今日はここまで。
 体力が残ってたら、明日……つまり日曜に来るかもです。

 そういえば、>>206の微レ存の使い方間違ってましたね、申し訳。
 微粒子レベルどころじゃなくてもっと可能性は大きいですねわかります。

 でも、一人でも見てくださる方が居る限り更新は続けます。 相変わらず、遅い更新になると思いますが……
 止むに止まれぬ事情が無い限り、こちらから一方的にやめるということはないのでご心配なく。

 それでは、また。

 体力殆ど残っとらんですよ……
 書き始めますけれど書き込みがなかったら寝落ちと判断してくだしあ

 惠を加え、和気藹々と過ごす。
 たった一人加わるだけでまた、話題のバリエーションは拡大する。
 意味深長な発言をする惠のことだ。 ただの掛け算よりも更に多いだろう。
 茜子とペアにするだけでも無限の可能性が存在すると言うのに。

こより「全く関係ありませんが、この中で彼氏が出来るのって誰が一番なんでしょうか?」

花鶏「彼女、ならすぐにでも作れるけど」

智「そこでなんで僕を見るの!?」

るい「トモは私んだ、絶対渡さねー」

惠「おや、るいと智はできていたのかい? 知らなかったな、遅ればせながら、これはお祝いをしないといけないね」

伊代「いやそこは本気じゃないから……」

茜子「茜子さん達は重大な勘違いをしていたようです……つまり、レズは三人居た!」

伊代「一人だけでも大変なのにそんなにいたら困るわよ!」

 生真面目な伊代はわざわざボケに対して対応する。
 そういうところが尚更悪戯発言をヒートアップさせると思わないのだろうか。
 きっと、思ってない。 それが伊代だ。
 とことん、イケてない。

花鶏「正直な話」

 紅茶を一口。
 空になったカップを確認して、佐知子さんがすかさず注ぐ。
 それを尻目に、花鶏は続けた。

花鶏「男の何処がいいの? あんなの年中発情期の野蛮な獣じゃない」

るい「るいねーさんもよくわかんないけど、男も花鶏にだけは言われたくないと思う」

伊代「そうね。 あなたの行動は割と目に余るものがあると思うわ。
    確かにクラスの男子とか、知らない人も胸を見てくることはよくあるけれど、それを公言することは少ないもの。
    そもそもあなたが女の子だからセーフなのであって、本来ならわたしの胸を触ることとかイケないことなんだからあなたはちゃんと自分の身を顧みて……」

花鶏「はいはい、わたしが悪うございました」

 コレさえなければそこそこ優良物件なのにと嘆息をつく花鶏。
 根っからの委員長タイプの伊代は、色んな面で損しているはずだ。
 呪いがあるから仕方がないといえば仕方がないけれど、これで委員長でないのが不思議なくらい。

智「ところでこよりはどうなの? 前に言ってた行方知らずの王子様の件は何か進展はあった?」

こより「いやーそれが全然。 お母さんに聞いても知らないって言うばっかりで……鳴滝と二人きりで会っていた記憶があるので当然かもしれませんけど」

惠「何の話だい?」

伊代「ああ、この子には昔将来を誓い合った人がいるらしいのだけれど、その人の顔も名前も覚えていないの」

 へぇ、と惠は相槌を打って思案顔。
 そして若干の微笑みを湛えながらこよりに言う。

惠「人との出会いは一期一会、という。 けれどきっと、その時の思い出を大切にしていればまたその人とは出会えるのではないかな」

惠「出会いというのは、どんな形にしろ意味があるものだからね」

 ともすれば恥ずかしい台詞。
 けれど惠がいうと、とても様になっている。

るい「メグムって、案外ロマンチストなんだねー」

伊代「そうね、そういう言葉がすらすら言えるのはすごいと思うわ。 ふざけてなんていないで、いつもそうしていればいいのに」

 伊代をして、褒め言葉が飛び出した。
 それには花鶏が慄く。

花鶏「お、おかしい……わたしだって同じようなことは数多く言ってきた筈なのに。 なに、この反応の差は……!?」

智「花鶏も、様にならないわけじゃないんだけどね」

こより「花鶏センパイのは下心が見え見えなんですよう」

茜子「茜子さん製の物欲センサーが物凄い勢いで反応しております」

 茜子でなくともバレバレだ。
 初対面で綺麗な人からのディープキスをコンボされた僕が言えたことではないけど。

智「……っ」

 ぶるっ、と来た。
 別に寒いとかそういうわけじゃなく、生理的な感覚。
 佐知子さんの紅茶がおいしくて、結構飲んでしまったことを今更ながら少し後悔。
 少しばかり残っていた紅茶を煽り、椅子を揺らして立ち上がる。

智「僕、ちょっとお花詰みに行ってくるよ」

花鶏「なら私は智のお花をウブッ」

伊代「自重しなさい」

 暴走気味の花鶏を止めてくれた伊代に感謝だ。
 そう思いつつ通路へ向かおうとすると、佐知子さんも音なく立ち上がった。

佐知子「案内しますね」

惠「それには及ばないよ、佐知子。 僕が行こう。 丁度花が咲きそうな頃だったんだ」

智「あ、そうだったんだ。 それじゃあ、お願い出来る?」

惠「断る理由はないかな」

 佐知子さんは少しばかり自分もついてくるか迷ったようだけれど、惠が手で制すると諦めたように席についた。
 惠は僕にまた微笑みかけて、促す。

惠「それじゃあ、案内するよ」

智「うん。 それじゃちょっと行ってくるね」

こより「お早いおかえりをー」

 こよりの声に見送られ、僕らはトイレに足を向けるのだった。

惠「智、少し聞いてもいいかな」

智「なに? 皆に聞かれちゃ困る話?」

惠「そういうわけじゃないさ。 ただ、智は大丈夫か、と思っただけでね」

 それはきっと、先日の件を指している。
 大丈夫、ではない。
 数日で傷はかさぶたになりかけているのかもしれないが、心には楔が打ち込まれたままだ。
 大丈夫なわけが、ない。
 でも。

智「みんなが、いるから」

 僕の居場所。
 どんなことがあっても、なにがあっても、何も聞かずに受け入れてくれる皆が居る。
 それを聞いて、惠は目元と口元を綻ばせた。

惠「そうか。 それは良かった」

智「惠も、その中に入ってるんだからね?」

 豆鉄砲を食らった鳩のような表情を見せた。
 結構レアな気がする。

智「惠も、僕らの仲間だ」

智「それは僕だけじゃなくて、みんな思ってるはずだよ」

智「現に、心なしかいつもよりはしゃいでいる気がするし」

 それは、紛れも無い事実。
 きっと僕も含めてだけど、暫く離れていた惠を暗に励まそうとしているのだ。
 そういう行動を行うのが仲間でなくて、一体なんなのだろうか。

惠「……もしそうなら、それほど嬉しいことはないな」

智「もし、じゃなくて、そう、なんだよ」

 その言葉に、惠は少しばかり困った様な、はたまた照れているような顔を見せる。
 そうして、少しの間を置いた後に惠の口が開く。

惠「――――ゴプッ!?」

 惠の口から飛び出したのは、赤黒い、それと。
 そんな、濁った音だった。

 今日はここまでー
 おやすみです。

 本少しだけ読んで思ったけど
 昔に比べて原作と雰囲気というか字体が離れて行ってる気がする……
 ちゃんと原作やり直して、未だ厳重に保管されているドラマCDも聞いたほうがいいかな

 あ、今日やります。

惠「がっ……ゲホッ、ッ……ゲホッ!!」

 床が、壁が、服が、何もかもが赤に染まっていく。
 口元と胸を押さえて、力が抜けて膝から崩れ落ちる。

 僕はそれを、どこか現実離れした視線で見ていた。
 我に返ったのは、次に惠が咳き込み、また血を吐き出したその瞬間。

智「惠っ!?」

惠「ゲホッ、ゲホッ……馬鹿な、どうしてこんなに速く…………っ!」

智「惠、喋らないで!」

 意識はある。 ならば無理をすべきではない。
 安静にして……いや、これは最早、それを通り越している。
 僕一人でなんとか出来る状況じゃない。

 その手を握りしめ、あらん限りの声で叫んだ。

智「誰か、誰か!! 惠が!! 誰か、速く来て!!!」

 惠の手に入る力が弱まる代わりに、僕は強く握り締める。
 その手も、制服すらも赤く染まり始めた辺りでようやく、足音が聞こえてきた。

るい「トモ、メグム!」

佐知子「何かあったんですか……っ!?」

 皆の顔が僕と惠を見て驚愕に染まる。
 それからは、あっという間だった。

 佐知子さんが惠を背負ってベッドルームへ向かって。
 伊代と茜子は浜江さんを呼びに言って。
 そして僕は、ただそれを見ていることしか出来なかった。

伊代「病院に行かなくていいだなんて……どういうことですか!! 取り返しのつかないことになったらどうするんですかっ!?」

 服装もそのままに、ベッドに横たわる惠。
 シーツもその服装も、惠が咳き込む度に変わらず赤く染まっていく。
 そんな惠を病院へ連れていかなくてもいい、と言ったのは他ならぬ佐知子さんだ。
 そんな佐知子さんに、伊代は食って掛かった。

伊代「もしかしたらって時にはもう遅いんですよ! そうなったら、助からないかもしれないんですよ!」

佐知子「でも……それでも、惠さんは行かなくても大丈夫だって……」

 そう言う佐知子さんの瞳は、心配そうに惠へ向けられる。
 心配していないわけがあるわけがない。
 けれど、その心配は、伊代の行ったこととは別の何かに向けられているような気がした。

るい「……トモ、大丈夫?」

智「えっ……ああ、うん。 だい、じょうぶ」

 不意にるいに話しかけられて、とりあえずの笑いを顔に貼り付ける。
 僅かに納得のいないような顔をするが、それは伊代と佐知子さんに向けられた。
 それ程に、僕は酷い顔をしていたのだろうか。
 手の平で顔を拭う。 惠の赤黒い血が滲んで付いていた。

智「…………」

 じっと、それを見る。
 血まみれの惠。 それに駆け寄る僕。 手についた血。
 既視感。
 デジャヴなんかじゃない。 これは、そう。 実際にあった。 そんな昔でもない。

『どうだい、随分とよくなっているだろう?』

 そう言ったのは、誰だったっけ。
 そう、それは…………

 一歩、前に。
 るいとこよりの心痛な視線が僕に向けられるが、大丈夫だと同じく視線で返す。
 そして、一方的に捲し立てていた伊代に向けて、僕は言う。

智「伊代。 僕も、病院に行かなくても大丈夫だと思う」

伊代「なっ……あなたまで!」

 振り返り、伊代は目に見えて憤慨した。
 どうして自分の言いたいことを誰も理解してくれないのか。 その表情は雄弁にそう語っている。

伊代「おかしいわよ! 血を吐くほどなのに、病院に行かないだなんて! この子が死んでもいいって――――」

花鶏「その辺にしておきなさい」

 僕を押しのけて、花鶏が伊代の怒りを引き受ける。
 この場に置いて花鶏はどこまでも冷静だった。
 自分とは温度差のあるその対応に伊代は僅かにたじろぐ。
 
花鶏「何も考えなしに大丈夫だなんて言うわけない。 そうでしょう、智」

智「……うん。 勿論」

茜子「私、気になります」

 じろり、と茜子が僕の顔を覗き込む。
 建前と本音の確認、といったところだろうか。
 僕は最初から隠すつもりはないけれど、それでも確認しておくことがあった。

 僕は惠を見る。
 惠は事の成り行きを意識混濁しながらも見守っていたようで、僕と視線が合わさった時に僅かに首を縦に振る。
 お墨付きだ。

 きっと、ここにいる全員が僕の言葉に耳を傾けている。
 それならば事実を言うだけではまだ足りない。
 だからまず、僕はこう切り出す。

智「惠は僕らと同じで呪われている。 それは、みんな知っての通りだよね?」

伊代「っ、あなたそれっ……!」

 伊代は言うやいなや、佐知子さんと浜江さんに顔を向けた。
 伊代が危惧するのも最もだと思う。

 けれど、多分二人共知っている。
 心配しているように見えて、どこか違和感を感じたのはそうであるから、だ。
 だから、心配は無い。
 惠の秘密をここまで守っている二人ならば、僕らのこともきっと秘密にしてもらえるだろう。

智「そうですよね、佐知子さん、浜江さん」

佐知子「あ、え……? み、皆さんと同じ、というのは……? あ、いえ、えっと、惠さんは…………」

 しどろもどろになる佐知子さん。
 混乱するのも無理もない。
 一度にこれだけ同類の人間が現れるというのは、当の本人でも中々に信じがたいことだろうから。

花鶏「……なるほど。 つまり、そこの二人は惠が『聖痕』を持っていることを知ってたってわけね」

 理解の早い花鶏は、僕と佐知子さんの会話を見て理解する。

智「うん。 それに加えて惠の才能は多分『回復』だ。 どこまで出来るのかわからないけど、致命傷があっという間に治ったのも僕は見てる」

こより「え、っていうことは……お二人とも、惠センパイが大丈夫だってことを初めから知ってた……?」

 こよりの思考もようやく追いつく。
 それに対して佐知子さんと浜江さんは互いに一瞬だけ視線を交わす。
 そして観念したように口を開いた。

浜江「……如何にも。 私達は惠さまが無事であることを知っておる」

伊代「そ、それなら、もっと早く言ってくれれば……」

茜子「呪いも才能も知らない人に、それを説明しろという方が無理な話です」

 茜子の的確な言葉に、伊代は言葉を失くす。
 ただ一言、ごめんなさいとだけ告げた。
 佐知子さんもばつの悪そうな表情をしてから。

佐知子「……そういうわけですから、今はわたし達だけにして下さい。 あと、智さん。 着替えを用意しておきますから、浴室の方へどうぞ。 その服装では、外も出歩けませんから……」

智「あ、はい。 すいません」

 そこでようやく、僕は自分が血だらけの服装であることを思い出した。
 思わず礼を言ってしまったのに対して、佐知子さんは、

佐知子「いえ、こちらこそ。 本当のことをいうことが出来ず、申し訳ございません」

 と、頭をさげるのだった。

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 幾ばくかの平穏
  34 居場所と、才能と、隠し事
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 今日はここまでです。 この辺りから差異が生まれてくるはず。
 それでは、また。

 というかCS化とかなにそれきいてない。 

伊代「いくらなんでも、尋常じゃないわ」

 伊代がいう。
 明らかに常識を逸していると。

伊代「あの子の〈才能〉が治すことって言ったってあの様子で病院に行かないっていうのは変よ。 ちゃんと医者に見てもらって直してもらうべきだわ」

花鶏「……病院には行けない理由が、あるんじゃないの」

るい「病院に行けない理由って……」

智「そういうこと、だろうね」

 惠の〈才能〉が回復なら、その逆もまた存在する。
 即ち、それは〈呪い〉。

 暗い影が僕らに落ちる。
 僕らはみんな呪われている。
 〈才能〉を持つにしても持たないしても〈呪い〉は平等で、犯したら死を代償にやってくる。

智「僕もダメだよ。 病院には死んでも掛かりたくない」

花鶏「智はそういうタイプなのね。 わたしも、あまり試したくはないタイプだけど」

 花鶏がポツリとそう漏らす。
 花鶏もあまり冷静ではないのだろう。 でなければ、自ら〈呪い〉に触れることなんてしない。
 ……勿論、僕も。

茜子「……とにかく、あなたは言われた通りそれを洗い流してきてはどうですか?」

こより「そうですね……ともセンパイ、酷いですから」

 何がとは言わないし、聞かない。
 きっと、外見だけでなく内面もだろうから。

智「……うん。 それじゃあちょっと行ってくるよ」

 踵を返して、僕は広間を後にする。
 ただでさえ重苦しい空気が、僕一人になることで更に重くなる。
 嫌でも、思考を巡らさざるを得なくなる。

 惠の〈才能〉は回復。 それは佐知子さんや浜江さんも認めたし、確定としていい。
 問題はその〈呪い〉と、惠が倒れた時のあの言葉。

惠『ゲホッ、ゲホッ……馬鹿な、どうしてこんなに速く…………っ!』

 あの言葉は、よくよく考えると明らかにおかしい。
 まるで惠がそうなることを知っていたかのようだ。
 そうなる事自体は不思議じゃない。 単純に惠が病気だということを前提とすれば。
 けれど。

智「惠には、回復の〈才能〉が……」

 惠の才能は、ただの外傷を治癒するだけのものなのだろうか。
 疾患や体質などの、傷の原因になる病気は治せない?
 ……考えても、埒が明かない。 手っ取り早いのは聞くことだ。
 けれど、どこかでそれを躊躇ってしまう僕がいた。

 脱衣所に行くと、そこには既に佐知子さんが居た。
 佐知子さんが僕の服をすぐ回収出来るように脱衣所内で待つと言って、一悶着があったのだがそれはさておき。

 花鶏の家のお風呂にも負けない、大浴場。
 湯の満たされたそれの端に浸かり、ぐるりと見渡す。

智「そういえばあの時は皆が乱入してきたから余り考えなかったけど……」

 大浴場に一人は、広すぎる。
 もしかしたら惠は佐知子さんや浜江さんと一緒に入っているのかもしれないけれど、それでも、だ。
 僕ですら、あの家の狭さで寂しいと感じることがあるくらいだ。 何倍もの広さを持っているここで、三人だけ。
 それは、想像を絶する孤独さだろう。
 呪いがあり、心の開ける人も少なく。 頼れる人はいない。

 風呂から身を上げて、シャワーを浴びる。
 汗や汚れが流れ落ちていくけれど、僕の心に引っかかるこの懸念は流れはしなかった。

 惠は、きっと苦しんでいる。
 病気で、呪いで、孤独で。
 なんとかしてあげたい。 ただ、僕はそう思った。

 キュッ、とシャワーを止める。
 ぽたぽたと、髪先から水滴が滴り落ちる。

 A、B、Cという問題があります。
 AとBは、Cという問題があるから成り立っています。
 さて、問題を解決するにはどうすればいいでしょうか。

 答えは簡単だ、誰でもわかる。

 でも、だからってどうしたらいいのか。
 ヒントを出してくれるような街人Aは居ない。 いるのは語ってくれる人だけだ。
 僕らは僕ら以外に頼れる人など居らず、そして誰もがこの状況を打破する方法を知らない。

智「でも、だからって……」

 諦めてしまう?
 ……そんなこと、できるわけがない。
 同類を、仲間を、友達を見捨てることなんて、僕には出来ない。 その苦しさを知っているのだから。

 考えろ。
 僕には、僕にだけ、皆と違って〈才能〉はない。
 だから、考えろ。
 例え、正攻法ではなくとも。 僕の知る何もかもを、泥塗れになっても解決する覚悟で。


『前に聞いた。 お前達の呪いは女性にしかないのだと偉そうな奴が言っていた』


 瞬間。
 脳裏に、ふと、閃いた。

 周りを見渡す。
 場所は全然違うし、よもやここに、彼女がいるわけもない。
 けれど、ここだった。
 奇しくも、風呂場での出来事だったんだ、あれは。

 気がついたら、僕は風呂場から飛び出していた。
 着替えもすぐに済ませて、広間へ直行する。
 勢いよくドアを開いた僕に、皆が注目した。

るい「トモ? どうしたの、そんなに慌てて……」

伊代「あなた、まだ濡れてるじゃないの。 ちゃんと髪乾かさないと髪質が痛むし、風邪も引くし、いいことなんてないわよ?」

 何かをいう皆を無視して僕は自分の荷物のところへと向かい、必要最低限のものだけを準備する。
 準備も整ったところで皆に向き合って、口早に言う。

智「みんな、ごめん! 急用が出来たんだ、ちゃんと後で説明する!」

 思い立ったが吉日、ではないけれど。 今は一分一秒が惜しい。
 何故かはわからない。 けれどそうしなければならない気がした。
 きっと、今まで目の前に転がっていたヒントに気が付かなかった僕自身への呆れも混じっている。

 だから。
 ここから一気に、今までの失態を取り戻すために。
 僕はこの屋敷を後にするのだった。

 今日はここまでー
 シナリオ自体は変わらなかったという不思議。

 一人、僕は夜の街を駆ける。
 街には仕事の終わったサラリーマンや部活の終わった学生が溢れかえっていた。
 その間をすり抜けるようにして走りぬける。
 惠は結果的に回復できるとはいっても、事態は一刻を争う。
 発作、というのがどの程度の周期なのかはわからないけれど、苦しんでいる仲間をこれ以上ただ見ていられないから。

 そして駅についた時、僕はただ愕然とした。
 無論僕だけではなく、駅構内も。 ロータリーのタクシー乗り場は行列が出来ているし、バス乗り場もそれに漏れない。
 混乱していると、ふと耳に声が届く。

「あ、えっと……和久津、さん? き、奇遇だね、こんなところでなんて」

 振り返ると、南総学園の制服を着た男子がいた。
 記憶をパッと思い返す。 朝、廊下でたまに特攻隊の様に挨拶をしてくる男子と一致する。
 逸る気持ちを押さえて、優等生スマイル。

智「こんにちは……ううん、こんばんは」

「あ、う、うん。 こんばんは」

 それっきり言葉を失くす。
 何故か上から下まで凝視されているような気がして、気がつく。
 そういえば僕、お風呂上りだった。 加えて、着ている服も制服じゃない。
 惠のものか、佐知子さんのものかわからないけれど、僕の私服よりも女の子女の子していた。

「え、えっと……そ、その。 その服、に、似合って――――」

智「丁度良かった、聞きたいことがあるの!」

 変なフラグが立つより速く、僕は問いかける。
 なんで電車が止まっているのか、その理由を。

「ええと……よくは知らないんだけど、新都心……あっ、高倉のことなんだけど。 の、駅が破壊されたらしい」

智「は……破壊?」

「うん。 えっと……ほら」

 携帯を取り出すと、トップ画面に表示されていたネットニュースを見せてくる。
 そこには間違いなく、『テロか否か、新高倉駅破壊』の文字が浮かんでいる。

「これのせいで上下線は両方とも運転見合わせで、帰宅難民も大勢……」

 そこではっ、としたような顔になり僕を見る。
 ぱっと見、私服でこの時間に駅にいるのだからどこかへ帰るように見えなくもない。
 いやでも、髪も濡れているんだし逆にこれから出かけると考える方が自然なのだけど……恋は盲目、だろうか。
 僕からしたら絶対的に恋愛対象にはならないから、それがよくわかる。

「も、もしかして和久津さんも? そ、そうだ、もし、もしだけど、よかったら――――」

智「どうもありがとう! 僕、急いでるから!」

 言うやいなや、彼に背を向けて人混みに紛れる。
 自分だけの用事を済ませるだけ済ませて、相手には何一つ言わせない。
 人混みを抜けながら、僕って悪女になりそう、と思った。

 しかし――駅の破壊?
 規模がどの程度か把握できていないけれど、数時間も止まるとなると相当だ。
 餅は餅屋へ、ではないけれど。 詳しく聞くべき人に聞く。
 確実なのは繰莉ちゃん。 時点で芳守、大穴でアヤヤ。

智「……ここは堅実に」

 繰莉ちゃんの電話をコール。
 そのテロもどきがあってから電波が混み合っているようで、中々繋がらなかった。
 家に向かう道で行うこと十数回目。 プツッ、という音とともにようやく、数日前に死闘を共にした声が聞こえた。

繰莉『はぁーい、探偵事務所くるくるくるりんへお電話頂きありがとーございまーす』

智「…………」

 思わず通話終了のボタンを押しかけたけれどグッ、と思いとどまる。
 こんな時でもやはり探偵は探偵だ。 世の中の探偵を一緒にしてはいけないとおもうけれど、そういうしかない。

智「久しぶり、繰莉ちゃん」

繰莉『おんやぁ、ともちゃん。 お久しぶりだね、元気にしてた?』

智「そっちは、元気みたいで」

 精神的にも、肉体的にも。 ちょっとだけホッとした。
 精神はまだしも、今回のテロで肉体がやられてしまえばどうしようもないから。

繰莉『なんとかねぃ。 ともちゃんが知りたいのは、皆のこと? それとも駅のこと?』

智「……珍しいね、繰莉ちゃんがすぐに本題に入るなんて」

繰莉『なんてったって、超・探偵だから。 今が稼ぎ時』

 要するに案件が溜まってる、ということかな。 中々電話が繋がらなかったのも、電波のせいだけではなかったのかも。
 それも同じ情報を順繰りで使えるのだから割のいい。
 集める際のデメリットが、最悪死ぬことというのはさておき。

智「とりあえず、両方で」

繰莉『あーちん達は平穏無事。 まぁマクベスの身バレはしてないからこのまま潜伏すれば問題ないんじゃないかな』

繰莉『それで駅の方だけど。 まー、なんとも酷い。 マクベスじゃ十中八九負けるっていうレベルかね。 それを斃したあきちゃんは流石ってとこかにゃあ』

智「……え?」

 思わず、呆けた声。
 話の因果関係が掴めなかった。

繰莉『あれれ、もしかして知らない? コミュネットでも噂になってるんだけど……』

智「……ごめん、詳しく教えて」

 意外だ、という声を漏らした繰莉ちゃんに僕はそうお願いする。
 まずされたのは、『高速の怪物』の話。
 大体僕らがソリッドを斃した辺りに現れて、高速道路で何人もの人を葬ったアバターの話。
 それが、駅を壊したものの正体だと。 暴走して我を失ったアバターの成れの果てだと。
 それを今日、瑞和率いるバビロンと最強の一角と呼ばれるエル=アライラーが斃した、という。

繰莉『実際にはそれだけじゃなくて、色々あったんだけど……こっちから手を引くんだろうし、ともちゃんには関係ないかな』

智「……そう」

 言いたいことは、あったけれど。
 僕にとってはやっぱり、皆が――同盟が大事で。
 その言葉を飲み込まざるを得なかった。

繰莉『ともちゃんにあげられる情報はこの辺かにゃー。 あーちんとかに伝言あるなら、伝えておくよん』

智「ええと……無事なら、全部終わったあとに一報だけ欲しいってことぐらい……かな。 あっ、あと一つ聞きたいことあるんだけど!」

繰莉『お? なんだね助手君』

智「カゴメさんの連絡先とか、わかる?」

 一瞬の静寂。
 思わず僕も、急いでいる足を止めてしまった。

 多分、だけれど。
 真意を測りかねているのだと思う。
 当然だ、僕とカゴメさんには接点など殆ど無い。 強いて言うなら、マクベスとバビロンコミュ間の繋がり程度のものだ。
 だから、わかるわけがない。
 いくら事前に用意して情報を整理する超探偵とは言えども。 繰莉ちゃんに僕と彼女の関係がわかるべくもない。
 〈呪い〉の存在を知らないことには、絶対に。

繰莉『……あきちゃん経由じゃ駄目?』

智「それなら僕だって知ってるし、出来れば本人に直接がいい」

繰莉『…………』

 沈黙、というよりは長考。
 繰莉ちゃんにしては珍しい考えこみ。

繰莉『……わかった、先方には伝えておくよん。 多分すぐ連絡が来ると思う』

智「うん……うん。 ありがとう」

 きっと、何か事情があったのだろう。
 そこを僕の声色から感じ取ったのか、無理を通してくれて本当に感謝する。

繰莉『それじゃ、謝礼はスイス銀行に』

智「次にあった時に、ね」

繰莉『ん。 じゃーねぃ』

 そういうと、繰莉ちゃんは僕の返事も待たずに電話を切った。

 丁度家は目の前。
 僕はポケットに携帯を仕舞い、自転車のナンバーロックを解除してその進路方向を高倉市へと向ける。

 カゴメさんから電話が来たのは、自転車を漕ぎ始めて五分もなかった。

    第四幕
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  33 幾ばくかの平穏
  34 居場所と、才能と、隠し事
  35 手がかりを求めて
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 おわーり。
 眠い……

智「ふっ、ふっ、ふっ……」

 自転車を漕ぐ。
 汗が額を、頬を伝って地面に滴り落ちた。
 僕はそれに見向きもせず、ただ自転車を漕ぐ。

 何かを考える余裕は最初の数分だけ。 それからはとうになくなっていた。
 命短し恋せよ乙女。 どちらかというと、時は金なり。 沈黙は金。 つまり時間とは沈黙?
 なんて詭弁。
 A=B、B=CならばA=Cが通じるのは本の中か、理論上の中だけの話。 世の中はそんなに単純じゃない。

智「――――はー、はー……」

 路肩に止めて、小休止。
 隣町まで漕ぐなんて初めての経験だったけれど、もう少し簡単な物だと思っていた。
 マイペースで時間に限りのない状況ならまだしも、全力疾走で漕ぐのがここまで辛いなんて思ってもみなかった。
 車の免許とか、考えてみようかな。

智「ふう、っ……!」

 足に力を込める。
 放り投げだしたらぷるぷる震えて使い物にならなくなりそうだ。 いつかのレースの翌日もそうだった。
 限界を超えた先に見えるものがあるとか言うけれど、そんなものを見なくてもいいようにするのが僕のやり方。
 肉体労働は専門外。 無敵乙女にまかせておきたい。
 けれどそうも行かないのが今の状況で。

 やっぱり、世の中はそんなに単純なんかじゃない。

 家を出てからすぐに、カゴメさんから電話があった。
 その声は若干不機嫌気味のもの。

カゴメ『私だ』

 ぶっきらぼうに言うのはイメージ通りだけれど、その声には底冷えするような怒気が含まれていた気がした。
 繰莉ちゃんが何か言ったのかな……と戦々恐々としつつ、僕も口を開いた。

智「こ、こんにちは……」

カゴメ『用は何だ。 さっさと要件を言え。 でなければ次に会った時お前の命は無いと思え』

智「怖いよ!」

 向こうでも同じような突っ込みが聞こえた。
 どうやら瑞和も居るらしい。
 少しばかり逡巡する。 果たしてここで話して、向こうで口を滑らせないかどうか。
 カゴメさんは多分、基本的に賢い人だ。 僕をただの生えてしまう呪いを負っている女だと勘違いしたこともあるけれど、普通はそうではない筈だ。
 どちらにしろ、ここにしか頼る宛はないし、今言わないときっと公開する羽目になる。
 口の中に含むように息を吸い込み、そして電話ではなく、今まさに目の前に居る人物に話しかけるように言葉を結ぶ。

智「僕の、僕らの――〈呪い〉の話。 カゴメさんが知ってることと、あとそのことを教えてくれた『偉い人』について教えて欲しいんだ。 出来れば、会わせても欲しい」

 僕らが呪いについて知っていることは、あまりにも少ない。
 ヒントなんてものも転がってないし、ダンジョンの再奥に宝の地図が眠っているわけでも、協会で寄付金を払えば治癒できるわけでもない。
 だから藁をも掴むような想い。
 僕のことを生えている女だと思い込んだように、カゴメさん自身も多くを知らないどころか曖昧な知識しか持ち合わせていないのだろう。
 だからして、本命は後者。
 僕らの呪いを語っていた人物。 その人に会うことが出来れば、何かしらの進展が得られる……かも、しれない。

 長い沈黙。
 目の前のカゴメさんは腕を組み、値踏みするような視線で僕を見ていた。
 すると彼女はどういうわけか、視線を外して呆れたように鼻息を吐いた。

カゴメ『いいだろう。 さっさと来い、でなければ私も保証はできん。 近くまで来たら暁人の携帯にでも連絡しろ』

智「うん……うん。 ありがとう」

カゴメ『…………』

 プツッ、という音が耳に響く。
 最後に鼻で笑われたような気がしたけれど。
 兎角、僕の希望は紙一枚、糸一本で繋がった。

智「よし……よしっ!」

 そうして気合をいれて自転車を漕いだのも束の間。
 十分も経った頃には、すでに何も考えないで自転車をただ漕ぐだけのマシンになっていた。

 そして今現在。
 数回の休憩を挟みながら自転車を漕いで、ようやく見慣れた場所にいきついた。
 もはや、漕ぐ気力もない。
 何も考えないで、ただメールの送信画面を開いて空メールを送る。
 ようやく、一息。
 何の気なしに空を見上げると、暗くなったばかりの空にはちらちらと煌く星が一つ二つ。
 視界の端っこを流れ星が流れ、誰かがそれに感嘆し、願いを捧ぐ。

 ここまでは中間地点。 これからは折り返し。
 深い溜息を一つついてから、僕は傍らの自転車を押して住宅街へと向かう。

 駄目だ眠い
 ここまで。
 あーもー、たまにしかできないんだからもう少し保てよこなくそ。

 危ない
 つい寝てしまうところだった……

 出来るところまで。

暁人「よう、久しぶり」

 マンションの前ではその家主さん達が既に待ってくれていた。
 片手を上げてテンプレ挨拶を投げてくる瑞和に僕も頷き返す。

智「うん、カゴメさんも。 こんな夜遅くにごめんね」

カゴメ「全くだ、私の貴重な時間を潰した罪は重い」

智「そこは、本当にごめんなさい。 でも、どうしても今すぐじゃないといけないんだ」

 申し訳なく、けれど力を込めて。
 そんな風に頼む僕に対し、カゴメさんはやはり鼻で笑う。

カゴメ「これで、貸し借りは終わりだ」

智「? うん」

 貸し借り? 何の話だろう?
 もしかして僕はカゴメさんの借りを上限まで借りてしまったということだろうか。
 だとすれば……返済が怖い。
 カゴメさんは何を考えてるかわからない。 僕の身近な人物で例えるなら、茜子と央輝を足してニで割ったような感じかな。
 且つその突飛な発想を実現できる能力があるのだから性質が悪い。
 戦々恐々としてる僕を庇うように、瑞和がカゴメさんをなだめる。

暁人「まぁとりあえず家に入るか。 これから何するにも遅いし、俺達も少しこれからのことを話さなきゃいけないし」

智「そういえば、なんか色々あったみたいだね?」

暁人「ま、そんなとこ」

 瑞和は呆気無く、その話を打ち切る。
 繰莉ちゃんも匂わせていた。 『実際にはそれだけじゃなくて、色々あった』と。
 どうやら簡単に知ることのできる以外の情報を握っているらしいけれど僕には触れてはいけないことだと思う。
 向こうが、僕の事情に関して一切触れてこない様に。
 その不可侵は守られるべきだ。

カゴメ「暁人、続きはまた後でだ。 先にこっちの方から片付ける」

暁人「ああ、構わん。 ちなみに俺は席を外したほうがいい……よな?」

智「……うん、できればそうして貰えると助かるかも」

カゴメ「終わったら一つだけ教えてやる。 だからそれまで尻尾を振って待っていると良い」

暁人「俺は犬か!」

 そう突っ込みつつも、瑞和はシャワールームへと消えた。
 単純に扉を一つ挟んでも話し声を聞こうと思えば聞こえるし、シャワーというのは割といいのかもしれない。

カゴメ「本題だ」

智「うん。 でも、その前にごめんね、本当に。 言い訳をするつもりはないけど、こっちも切羽詰まってるんだ」

カゴメ「初めから、そういう約束だ」

智「……うん。 ありがとう」

 さて、と一つ前置き。

カゴメ「私の知っている情報は少ない。 少し興味を煽られたから個人的に聞いてみた」

智「うん、それでもいい。 先ずはカゴメさんの話を聞きたい」

カゴメ「『特別な能力と呪いを持つ人物達』の観測と報告。 後はその人物達がその血を継ぐ一族の女に定期的に発生するという話だけだ」

智「定期的?」

カゴメ「なんでも毎回数代置いて、だそうだ。 発生する時は大体同世代だという話も聞いた」

 そういえばこよりも、お母さんたちはお姉ちゃんにはなかったからもう消えたのかと思ってたけど~とか言ってたような気がする。
 あれはつまり、世代の調節のためもあったのだろうか。
 もう少しこよりのお姉ちゃんが生まれるのが遅かったなら、そちらに呪いが付いていた可能性もある。

カゴメ「私が知っているのはこのぐらいだ。 お前の持っている情報を提供すればこれ以上の情報を得られる可能性もある」

智「とはいっても、情報がないからこうしているわけだし……」

カゴメ「ヤツらは何よりも情報を欲している。 例えば、今代の能力と呪いの所持者。 或いはその中身。 これだけでも十二分だろうな」

智「……つまり、僕だけでも交渉の席につくことは可能だということ?」

カゴメ「お前がヤツらの情報網から漏れていたなら、な。 ヤツらは今代の人間一人を飼い慣らして情報収集をしているらしい」

 はっ、とする。
 可能性として、僕らの中にそれが紛れ込んでいるかもしれない。
 そう考えてしまって、僕は自己嫌悪に陥った。 皆に限って、そんなこと。 そう思いつつも、心のどこかではそれを完全に否定は出来ない。
 だって、僕らは互いの能力や、才能の中身すら知らないのだから。

 るい、花鶏、こより、伊代、茜子、そして惠。
 或いは僕らじゃない、八人目の可能性。
 そのどちらも捨てきれない。

智「その確認も含めて、会ってみるしかない、ってことか」

カゴメ「どちらにせよ、今日できることはない。 寛いでいけ」

智「……ここ、瑞和の家だよね?」

カゴメ「気にするな」

 乾いた笑いしか出てこない。
 どこまでも傍若無人だ。

智「……あれ、そういえば」

 今更ながらに気がつく。
 まだ日を跨いではいない。 健全な学生が寝るには少し早い時間だ。
 だから、気になった。

智「紅緒や真雪はどうしたの? どこかに出かけてるの?」

 一瞬、鼻白む。
 というより、あのカゴメさんが凍った。

 しかし、それもほんの一瞬。
 次の瞬間には僕が会った時にいつも目にするポーカーフェイスで、さらりと答える。

カゴメ「和久津、もう寝ろ」

智「……えっ、」

カゴメ「はやく、しろ」

 二の句を継ぐより先に、有無を言わせぬカゴメさんの圧力。
 圧倒的なそれを前に、僕はただそれに頷くしかなかった。

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 幾ばくかの平穏
  34 居場所と、才能と、隠し事
  35 手がかりを求めて
  36 最強さんと
  37 ??? ←次ここ


 一ヶ月、放置で本当、申し訳ありませんでした!

 今回から一ヶ月ぐらいは少し良い頻度で投下……したいなぁ、と、思っております。
 三月と比べたら圧倒的に低いですが……五日に一回は、絶対。

 それでは、また。

 長らく、おまたせしました。
 雷うざい。 ルーターとモデム変えなきゃいけなくなったし……

 それでは、書き始めます。

 見慣れない部屋。
 少し置いて、僕は今田松市ではなく高倉市にいることを思い出す。
 ベッドの傍らに置いてあった時計が指す時刻は丁度六時。
 習慣ってすごい。

智「んっ……んー」

 ぐぐぐ、と身体を伸ばしてほぐす。
 寝間着もなかったから服はそのままに、若干皺になってしまっている。 佐知子さんごめんなさい。
 そういえば自転車を死ぬ物狂いで漕いできて、汗もかきっぱなしだった。
 自分の臭いはよっぽどでなければ自分でもわからない。 よっぽどでもわからない人はいるけれど。
 二人の反応を見て、あまりにもヤバかったらシャワーを借りることにしよう。

 それよりも、だ。
 夢。
 そう、夢だ。
 夢をみた……気がする。
 僕が僕を見ていた。そして、何かを呟いていた。
 今日の予定?明日の予定?それとも未来の話?
 ……覚えていないのだから、どうしようもないけれど。
 それでも、覚えていないのに夢を見たことを覚えているのはもどかしかった。

 部屋を出て居間にいくと、何かを焼くような音と食欲を唆る匂いが漂ってきた。
 台所を覗くと、手入れの届いている黒い長髪が揺れている。
 カゴメさんの朝御飯だ。
 僕の気配を察知したのか、振り向かずに声を投げかけてくる。

カゴメ「起きたか」

智「うん……おはよう」

カゴメ「座っていろ。 すぐにできる」

 遠慮無く、ソファーに座らせてもらうことにした。
 ちらりとだけ見えたパスタのパッケージと匂いからして、恐らくトマトパスタだろう。
 テレビもつげず、ただぼんやりと座っているとすぐにカゴメさんが大皿にそれを盛ってくる。

カゴメ「昨日は無事だったか?」

智「……?」

カゴメ「暁人が夜這いしていた」

智「嘘ッ!?」

カゴメ「嘘だ」

 何の気なしに、さらりと嘘を吐くカゴメさん。
 僕はそれに起こる事もできずにソファーに背中からずり落ちる。

カゴメ「浮気は罪だ」

智「……へ?」

カゴメ「心配するな。 実際にやろうとしたらその前に私が暁人を殺る」

智「いやいやいや……」

 僕のなんともいえない声の突っ込みも意に介さず、カゴメさんは扉の向こうへ消える。
 多分瑞和を起こしにいくんだろうけど。
 しかし、裸Yシャツ(パンツは履いている)で朝を起こす幼馴染……
 設定上だけならすごい羨ましいはずなんだけど、どうしてだろうか、あんまり羨ましくない。
 実際にいたら、悪くはない……のだろうけれど。

 食事を取りつつ。
 昨日話したとおり今日は外に出るとカゴメさんが言ったところで、瑞和も言う。

暁人「今日は俺も用事あるから、帰ったらいないかもしれない」

カゴメ「……コミュ狩り、か?」

暁人「ああ。 もう昨日のうちから呼び出しておいたんだ。 カゴメ、お前も気をつけろよ」

カゴメ「ふん、暁人が私を心配するとは十年早い」

暁人「早くねーだろ。なにせ俺達は、『パートナー』なんだから」

 ……なんだろう、話は読めないけれど、前に来た時より二人の仲が良くなっているように思える。
 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、だから態々割りこむような無粋な真似はしないけれど。

暁人「ごっそーさん。 それじゃ、すまんけど今日はよろしく。 智も、気をつけてな」

智「うん。 そっちも」

 社交辞令的に交わして、瑞和は身支度をしてから家をでる。
 僕らも食事を終えて、食事のお礼に洗い物をしてから準備をする。
 とはいっても、僕自身はこの身一つと貴重品が少し。 すぐに済んでしまった。

カゴメ「念のため言っておく。 当たる可能性はあまり高くない。 期待はするな」

智「大丈夫だよ」

 なんとなく。
 カゴメさんのその言葉には自身を持って言い返すことが出来た。

智「僕、勘はいい方なんだ」

 運、ではないけれど。
 多分、一つ目で当たりを引く予感がした。

 そうして辿り着いた一つ目の路地裏。
 そこに佇む『如何にも』な黒服の男性を見て、カゴメさんは若干驚きつつも、やはりといったような表情をする。

カゴメ「……喜べ和久津。 どうやら本当に当たりだ」

 僕が返事をするよりも先に、その黒服へと近寄る。
 が、当然のことながら彼らはカゴメさんの行く手をその身で阻んだ。

「……比奈織さま。ここから先は立ち入り禁止です」

カゴメ「邪魔だ。 去ね」

 話すら取り合わず、短く告げる。
 実際、るいとタメをはれるレベルのカゴメさんが本気を出せばこんな人たちなど軽く一捻りだろう。
 相手もそれがわかってる。 だから力で排除しようとはせず、どうにかして話だけですまないかと思っている。

「しかし……」

 そう紡ぐ彼らに対し、カゴメさんの指の骨が鳴る。
 それは威嚇だ。 どかないとやるぞ、という。
 身を僅かに引くが、しかしどかない。 どうやら根っからの仕事人らしい。
 けれど、それは無謀だ。 勇気や蛮勇ですらない。
 やられる。
 そう思ったけれど、その前に、また違う声が僕らの後ろからした。

「やめたまえ、『人類最大』。 彼らにも代わりはいるが、今は換えがじつに面倒なのだよ」

 そこにいたのは、オールバックにロングの髪というおかしな風貌のおじさん、とでも言うべき男性。

智「……『人類最大』?」

 思わず鸚鵡返し。
 カゴメさんのことを指しているのはわかるが、何のことなのか検討もつかない。
 ふむ、と彼は僕を一瞥し、しかしそれ以上の反応は示さずにコツコツを足音を鳴らしながら僕達に、正確には黒服たちに近付く。

「君達もだ。 仕事熱心なのはいいが、無茶なことはしないほうがいい。 私という天才が言っているんだ、聞き入れるべきではないかね?」

「ぷ、プロフェッサー架条……しかし」

 プロフェッサー……教授? の架条と呼ばれた男は顎を抑えながら先ほどから変わらずの、演技のかかっているような口調で言う。

架条「しかしも何も、『人類最大』は名の通り最強のアバター使いだ。 そこの彼女もね。 故に君たちの死には時間稼ぎもなく、特に意味はない。 それならばもっと命を大切にしたまえ」

 彼の言葉に、黒服たちは顔を見合わせ、渋々といった様子で引き下がる。
 そして今度はコチラを向く。
 好奇心旺盛な視線が僕を射抜いた。

架条「初めまして、架条植人だ。プロフェッサーと呼んでくれたまえ」

智「は、はぁ……」

 ……怪しいおじさんだ。
 プロフェッサーはなんとなく嫌なので、架条さんと呼ぶことにする。

架条「さぁ行き給え『人類最大』。 私という天才には一刻の時間も無駄にすると人類の損害となるのだが、君がそういうのならば私は従うしかないのだからね」

カゴメ「そうか。 なら先に行かせてもらおう」

 カゴメさんは架条さんの言葉にに対して何の躊躇いもなく横を通り過ぎる。
 僕も多少は動揺したけれど、此処を見逃せばどうしようもない。 架条さんを横目で見つつ、大人しくカゴメさんの後を追った。

 数ヶ所の角を曲がって行き着いた場所は、少し大きな広場のようになっていた。
 そこに立つのはブラウンのスーツを来た白髪の、これまたオールバックの男性。
 年齢は初老、といったところだろうか。
 その後ろに誰かいるのか、黒い帽子が少しだけみえていた。
 そして彼はカゴメさんを確認して、口を開く。

「君は……確か、プロフェッサー架条の調査対象ではないか」

 調査……対象?
 さっきの人類最大といい……何なのこの人達は。
 人を人として見ていないの……?

カゴメ「……あの時はまともに挨拶をしなかったな。 比奈織カゴメだ、覚えておくといい」

「比奈織君か、覚えておこう。 私の事は――」

カゴメ「『常務』、と呼べばいいのだろう?」

常務「その通りだ」

 常務、と呼ばれた初老の男性は先回りしたカゴメさんに何の動揺もなく即答する。
 その様子にカゴメはふん、と鼻を鳴らした。

常務「それで比奈織君。 君は私に何か用事なのかね?」

カゴメ「用事があるのは私じゃない。 こっちの女だ」

 そこにきて、ようやくこの『常務』とやらがカゴメさんの言っていた偉そうな相手だ、という事を知る。
 カゴメさんが避けて、僕が一歩前に出た。
 目を覗きこむ。
 無機質。 それが一番近い表現な気がした。

 その眼に僕は少しだけたじろぐ。
 この人が、僕らの呪いのことを知っている?
 カゴメさんを調査対象としか認識しない人が?
 ……どれだけ嫌だとしても、聞かなければいけない。 僕には呪いを解かなければならない理由がある。
 僕は自らを落ち着かせるためと鼓舞するため、大きく息を吸って、吐き出す。

智「……どうも初めまして、和久津智です。 実は僕たちの呪いのことを知ってると聞いて――――」

「おい待て! 今なんて言った……和久津、だと……!?」

 意を決した僕の言葉を挫いたのは常務の後ろ――黒い帽子をかぶった誰か。
 その誰かは僕の姿を見ようと一歩横にずれて。
 そして、僕も彼女を見る。
 そこには、どうしてここに! と思わざるを得ないような彼女がいた。

智「尹……央輝……!?」

央輝「お前……やはり和久津か…………!」

 どうして、どうして尹央輝がここに……!?
 パルクールレースで戦った、央輝がどうして!

常務「央輝……知り合いか?」

央輝「は、はい、お義父様。以前に少しレースで勝負したことがありまして」

常務「仕事では常務と呼べと言ったはずだ」

央輝「は、はい! 申し訳ありません常務!」

 この光景に、僕は目眩がする。
 あの央輝がこんなに腰を低くしている……信じられない。
 それに……お義父様? その人が呪いについて知っている?
 一体何者? 仕事? そもそも常務って何の常務?
 様々な情報が交錯して混乱する僕に、常務は落ち着いた口調で先を促す。

常務「……和久津智君。 どうやら、娘が世話になったようだ。 それで、君は何のようで私を訪ねた?」

 その言葉にハッ、とする。
 そうだ、今はそんなことはどうでもいい。
 僕が聞かなくちゃいけないことは他にあるのだから。

智「……あなたが、僕らの呪いの情報を持っていると聞きまして」

央輝「待て……僕らの、だと……? あの時お前の痣を見たのは見間違えじゃなかったにしても、お前の他にもいるのか!?」

常務「尹央輝、口を慎め。 今彼女は私と話している」

 グッ、と央輝は歯をかみしめ、僕を睨みつけるように見る。
 常務はさて、と口上を置いた。

常務「君の言う呪いがこの尹央輝と同じものならば……私達は確かに、その情報の蒐集、記録、そして保存をしている」

智「……同じかどうかは知りませんけど。 それを教えてくれませんか?」

常務「残念だが、我々は今言ったとおり、その情報を蒐集、記録、保存をするだけだ。 もし君の呪いが尹央輝と同じ物だとするならば、我々は君に、君らに手を貸すことはない」

智「そん――っ」

 そんな、バカな。
 折角情報を掴んだと思ったのに。
 また――離れていく。

常務「我々は情報を蒐集し、それの結末を見届け、保存し、そして忘れさる」

常務「我々は君らに手を貸すこともないし、行動を阻害することもない。 ただ君らが行ったことを集めるだけだ」

 常務が僕を見る目は、まるで路傍の石を見るような目だ。
 そしてその口ぶりは、淡々と説明するためだけのものだ。
 きっと僕から眼を話したらこの人は――十秒も経たずに、僕のことを忘れるだろう。

 僕が用意していた手札も、もはや意味は無い。
 交換条件など最初から無いのだ。
 彼――彼らは本当に『事象』を、僕らの呪いやアバターのことを調べ、集め、纏め、そして忘れる。
 ただそれだけが仕事なのだから。

常務「……尹央輝。 君は引き続き任務に従事を」

央輝「……はい、常務」

智「……央輝の、任務って…………」

 僕が呟いた独り言が聞こえたのか、常務はただ淡々と答える。

常務「尹央輝自身が持っている呪いについて、その手に入れた情報、或いは経過を逐一報告することだ」

常務「呪いについての情報に限り、尹央輝の情報は即ち私の情報でもあり、逆もまた然り」

常務「そして我々は君たちには一切関与しないが、尹央輝は我々の一員であり、観察対象だ。 彼女が手を貸すことは禁止はされていない。 彼女に聞きたくば聞くがいい」

常務「……残念ながらこれ以上君たちに時間を割いている余裕はない。 プロフェッサー架条を呼んできてくれ、比奈織カゴメ君」

 そんな常務の言葉に、カゴメさんは苛立ったように眼を細めて何も答えずに去る。
 僕もこれ以上は何も得られないと判断し、何も言わず唇を噛みつつ、再びカゴメさんの後を追った。

央輝「おいお前! ちょっとまっ……常務、失礼します! おい待て!!」

 央輝は暫く呆然とした後、慌てて常務に挨拶を済ませてから全力で駆けてくる。
 僕は今は酷くそれに答える気になれず、ただ路地裏を抜けて日の当たる場所に行くことだけに集中した。


 戻ると、架条さんが僕らが路地に入ったときのままの格好で立っていた。
 にやにやとしたような表情がうざったい。

架条「天才の時間をわざわざ減らすほどの、有意義な対話はできたかね?」

智「…………」

 僕はただ彼を一瞥して、返事もしない、足も全く止めないカゴメさんを倣い、彼女の後を追いかける。
 ……後ろにも黒一色の女の子をつれて。

    第四幕
    Chapter

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 本当に長らく、お待たせしました。
 今回でやっとこさ、VIPでやってた頃のに追いつきました。

 やっと……本当にやっとです……
 VIPから見てくださっていた方々には待たせてしまって、本当に申し訳ありませんでした。
 重ねて、お詫び申し上げます。


 それでは、また次回に。

 暫く歩いて、開けた場所に出る。
 街にはつい昨日あった駅でのテロの爪痕――とはいっても、僕は話でしか知らないけど――が残っており、以前に来た時よりちょっとした陰鬱さを感じさせていた。
 そこで立ち止まって、カゴメさんは立ち止まる。

央輝「オマエ、さっきの話を詳しく聞かせて貰うぞ!」

 ようやく歩みを止めた僕に詰め寄る央輝。
 でも僕はそれに答える気にはならなく、カゴメさんも央輝を一瞥しただけで僕へとまた視線を戻す。

カゴメ「それで、どうする。 これしか手がかりはなかったのだろう」

智「うん……」

 八方塞がり。
 さてはてどうしようか、などと戯ける余裕もなく、僕は憔悴する。
 このままでは、惠が死なないまでも、苦しみを永遠と味わう羽目になる。
 苦痛、というのは精神を蝕む。 精神が蝕まれると、いくら身体が無事でも、心がいかれてしまう。
 いうならば、拷問のようなものだ。
 傷が治ってしまう分、尚更酷い。

カゴメ「私の大きな伝手はアレだが、細かいものならまだある。 そっちで探ってもいいが」

智「ううん、これ以上は流石に迷惑をかけちゃう」

 その申し出は、素直に嬉しいけれど。
 そちらの世界から背を背けた僕がこれ以上彼女に頼るのは心苦しい。
 そうか、とだけカゴメさんは言って。

カゴメ「そういえば――――」

央輝「おいっ! 無視をするな!」

 遮るように口を割り込んだ央輝の直ぐ横を、ヒュン、と銀色の何かが飛ぶ。
 それは綺麗にビルの壁へ刺さっていた。
 ククリナイフ、というものだ。 現物は初めて見た。

カゴメ「黙っていろ溝鼠、邪魔だ」

 その手に持つのは二つ目のナイフ。 今度はきっと、脅しじゃすまさない。
 央輝も一応、一つの組織のリーダーだ。 腕には自身があるだろう。
 けれど多分、この人にだけは勝てない。 おそらく、絶対に。
 央輝もそれを肌で感じたのだろう。 忌々しげに、しかし冷や汗を書きながら僕へとひと睨みくれる。
 やはりそれすらもカゴメさんは無視して口を開く。

カゴメ「……これで最低限の義理は果たした。 後は偶然でも手が届く場所にいたら助けてやる。 アレにもそう言っておけ、後はお前の能力でどうとでもできるだろう、とな」

智「……アレ?」

 って、何? 誰?
 きっと僕はそう言いたげな表情をしていたと思う。
 しかしカゴメさんは言うべきことはいったとばかりに背を向けて、あっという間に人混みへと消える。
 残されたのは僕ら二人。
 僕じゃないもう一人の彼女は、カゴメさんがいなくなった後にその苛立ちを偶然転がっていた空き缶へとぶるける。

央輝「クソッ! 何だあの女は!」

 カンッ、と軽快な音を立て、それは放物線を描いて飛ぶ。
 尹央輝。 田松市の裏世界、その実力者。 どこくらいの実力者かというと、他組織に追われている人間(茜子)を諦めさせれるぐらいの。
 そして、カゴメさんの言葉が正しいなら。
 僕らと同じ、〈呪い〉を背負っていて。 あの人たちのスパイでもある。
 ……つい先程は話す気などさらさらおきなかったけれど。 僕に残されているのはこの黒い女の子だけだ。

智「……ねぇ、央輝?」

央輝「……なんだ」

 意を決して語りかけると、憤懣に満ちた返事が返ってきた。
 仕方がない、とは思う。 別格な人間を目の前にしたとはいえ、央輝にも央輝なりのプライドがあるのだろうから。

智「央輝も、僕らと同じだったんだね」

央輝「…………っ! そう、そうだ! オマエ、どういうことだ! やっぱりあの時みた痣は、見間違えじゃなかったってことだな!?」

 水に打たれたかのように、次々に質問を浴びせる央輝。
 まずはこれに答えなければ、まともな会話も望めない。

智「やっぱり、あの時僕の痣を見て固まったかと思ったんだけど……そうだったんだね」

央輝「じゃ、じゃあやっぱりアレは……」

智「うん、央輝の想像している通り。 僕は、僕らは――呪われている」

 いくら央輝がスパイであろうと、関係ない。
 僕に残された蜘蛛の糸だ。 慎重に手繰り寄せなければならない。
 そして僕は僕らのことを話す。
 るいのこと、花鶏のこと、こよりのこと、伊代のこと、茜子のこと。
 そして、惠のこと。
 順番に並べると、央輝の表情はみるみるうちに様々な表情が入り混じった、複雑なものへと変わっていった。

央輝「近くに七人も? なんだそれは……」

 驚きと、呆れ。
 情けなさと、不甲斐なさ。
 央輝にしてみれば、任務を果たすために必要な物は直ぐ目の前にあったのに手の中をすり抜けていったのだ。 
 これに落胆しないでどうしろというのか。

智「それで、僕らは呪いを解きたいんだ。 央輝は何か知ってることある?」

央輝「……残念だが、知らんな」

智「そっ、」

 そんな。
 僕には尻切れに、そう漏らすのが精一杯だった。

 あの人は、常務は意味深なことを言っていた。
 だからきっと、何かしらの情報は掴んでいるはずだと、そう思っていたのに。

央輝「アタシが知っているのは、この呪いは女にしか発生しないことと、呪いを受けている一族が十に満たないことぐらいだ」

 それは既に、カゴメさんから聞いていた。
 関係ないから断片的なことしか話してないのかと思っていたけれど、単純にそれしか情報がなかっただけだ。
 あの人達は僕にもそうしたように、あたかも『情報を持っている』ように見せかけ、欺いたのだ。

智「これで、また振り出し……かぁ」

 収穫といえば央輝が呪い持ちだと判明したことぐらいのもの、だろうか。
 皆にも紹介するべきなのだろうけれど……どうも、そんな雰囲気ではない。
 無理矢理に引っ張るにしても、央輝は強すぎるだろうから。
 その央輝はといえば、どうやら思考を巡らせているようで、ブツブツと何かをつぶやいている。

央輝「しかし才野原が……心当たりがないわけではないが、だとしたら、あれにも意味があるのか……?」

智「……何の話?」

央輝「……こっちの話だ」

 一瞬考えた後、央輝はそう言う。
 追求はしない。 したところでしつこいと言われるだけだろうし、きっと口は割らないだろうから。

智「一応、僕はこの後田松市に帰ろうと思うんだけど……央輝も来ない?」

央輝「……アイツらの顔も、もう一度確認しておきたいが……今はいい、機会を改める。 オマエの連絡先は、前のでいいんだな?」

智「うん。 もしこっちに来るじゃなくても、何かわかったら連絡してね。 こっちもそうするから」

央輝「ああ」

 分かったから速く行けとばかりに央輝は路地裏に身を隠して軽く手を振る。
 僕も答えるように軽く手を振りながら、その場を離れる。



 そして。
 瞬間、僕の脳裏に『しなければならない事』が閃いた。

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 幾ばくかの平穏
  34 居場所と、才能と、隠し事
  35 手がかりを求めて
  36 最強さんと
  37 『機関』
  38 黒い服の人と
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 おわーり。
 大体ここから、重ねてきた選択肢によるルート分岐です。
 具体的に言えば、チャプター3のとある選択肢による分岐です。

 次は八日……に、これたらいいな、という感じです。
 それでは、また。

 書きます。
 内容が少し纏まってないので若干遅くなるかもです。

 いつだったか。
 僕は黒い影に追いかけられた記憶がある。
 いつもは覚えていない……というよりかは、記憶の底に埋まっているのだろう。
 だって、それは――――紛れも無い死への恐怖だったから。

 僕がそれを思い出すのは、いつだって夢の中で。
 僕は家で、二人の男女に声をかけられながら『それ』に怯えていた。
 ありとあらゆる場所から、縦横無尽に、僕の命を狙う『それ』。
 幼かった僕は、それに戦慄し、怯え、恐れた。
 そしてその夢は、いつだって一つの声で終わりを迎えるのだ。

 忘れた頃に襲いかかるその悪夢は、まるで僕に、『忘れてはならない』と告げているようだった。
 それは命の危機を脅かす〈呪い〉に対しての僕の防衛反応なのかもしれないし、或いはトラウマか何かなのかもしれない。

 しかし、なまじ、『本物』を見たからだろうか。
 僕は、それに対して真の恐怖を感じはしなかった。
 いや、感じはした。 したのだけれど、それは思い出したからだ。
 黒い影に追われた、忌まわしい記憶を。

智「――――――」

 行きと同じぐらいの時間をかけて田松市に帰った僕が見たのは、死神だった。
 髑髏の面を被り、黒装束に身を包んだ人型。

 それは本当に、偶然だった。
 見て見ぬ振り、なんてこともできたのかもしれない。
 だけれど僕は、それを追いかけなければならない。 そう感じていた。

 これが気まぐれ、というにはあまりにも思い決断だということを僕は後に知ることになる。

 廃ビル。 田松市には、それが数多く存在する。
 その中の一つにいたのは、一人の男だった。 見覚えはない。
 酷く、焦燥している。 得体のしれない黒マントに追われ、気が気でない、というのが本音だろう。
 その見るからに暴力を振るうことを仕事としていそうな体躯からは想像もできない。

 人間、得体のしれないモノが何よりも怖いという。 相手が人なら人で、『どうしてそんなところに』や『なぜこんなことを』という疑問が生まれるので別の意味で恐ろしくはあるが。
 それよりも、『正体不明』というのが確かに恐ろしい。
 言葉が通じるかもわからない。 攻撃も通らないかもしれない。
 わからない、わからない、わからない。 抵抗する手段が、打つ手がなければ逃げるしかない。
 そして、追い詰められるのだ。

「………………」

 息を切らし、周囲に気を張る。
 巻いたか、或いは潜んでいるのか、追いかけてくるのか。
 冷や汗とも違う嫌な汗がじとじとと服を肌に張り付かせ、嫌悪感を抱かせた。

 それでも、待つ。
 待つ、待つ、待つ。
 実際には一分程だ。 が、彼には数十分にも感じられた。

 そして待てども待てどもそれは現れず。
 やがて、巻いた、逃げ切った、と歓喜すると同時。

 細長いそれが首に巻かれた。

「! ガッ、あ……ッ!?」

 首が強く引っ張られ、身体が中に浮く。
 死ぬ。 直感でそう感じた彼は迷わずロープに手を引っ掛け、一瞬開放された呼吸で『引き金』を引いた。

 僕は破壊音を聞いた。
 空中を舞っていた死神を見失った僕はそれだと判断し、ビルの中に駆け込む。
 そこにいたのは、錯乱し手当たり次第に壁を壊しまわる巨人。


 ■■■■■■■■―――――――


 アバター。
 危険だ、と判断して僕は直ぐ様瓦礫の影に身を潜めた。

「はっ、ハハッ! どうした、黒いの、やってみろ!! テメェが俺を殺るってんならこっちがテメェを殺ってやらぁ!!」

 何かが吹っ切れている男の声が響く。
 どうやらあの死神は、この声の主を狙っていたみたいだった。
 それが逆に、人気のない場所に逃げ込まれて切り札を出させる環境が整ってしまった、といったところだろうか。

智(もし見つかったら、僕も危ないかも……)

 見つかってからでは、明らかに遅い。
 これはもうこちらもアバターを出してから男も死神も制圧するべきだろうか。

 そう考えた直後だった。
 髑髏の面を被った『彼女』が呟いた単語が耳に届いたのは。

「――――マクベス」

 同時に。
 二つの弾が紅の竜に込められ、接続された。

 おわーり。
 遅筆ワロタwwwワロタ……

 お休みなさいです

 つい昼寝してたらこんな時間……流石に今からは無理……
 今日の昼間にちゃんと書きます。 今度こそ、絶対。

 音が消える。
 いや、実際にはある。 けれど僕がそれを認めない。
 代わりに流れ込んでくるのは、景色。
 朱い竜の知覚能力による、別次元の感覚。

智(なん……)

 なんで。
 なんで、マクベスが。

 装填された弾丸は二つ。
 僕と、もう一人の誰か。
 そしてそれは、今しがたこの竜の名前を呟き、召喚したあの死神に他ならない。

 なんで? どうして!?
 そう叫びたくても、言葉が出ない。
 まるで、そういう風になっているかのように。

「な、お、お前、お前も……っ!?」

 僕と同じく、男の動揺したような声。
 そしてそれはそのまま、単機接続であろうアバターにも伝わる。
 その隙を、『マクベス』は逃さなかった。


 ■■■■■■■■―――――――


 轟音。
 次いで、崩壊。
 吹き飛ばされた『巨人型』はビルの壁に激突し、周りを巻き込みながら倒れる。
 破壊されてはいない。 けれど、元々スペックの高い『竜型』の一撃をまともにくらって、再起するのは中々に難しい。

「お……おい……おいっ!? な、何やられてんだよッ!!?」

 不意の一撃を見舞われ、男は怒鳴るように叫ぶ。
 それは、とても悲壮感に満ちていて。

 ズン、とマクベスは地面を踏む。
 怯えたように短く悲鳴を上げた男は、ただ只管に叫ぶ。

「起きろッ! お願いだ、頼むから起きてくれっ、なぁ!?」

 倒れた『巨人型』は答えない。
 よもや立ち上がったところで、どうにもならない。

「…………」

 骸骨面の死神は、沈黙している。
 初めから、最後まで。
 その面の下にある表情は、全く予想すら出来ない。

 そしてマクベスは振り上げる。
 その鈎爪を。
 ただ振るうだけで、人間を豆腐か何かのように引き裂くその刃を。


 僕は――――

 >>323
 1 それから目を逸らしてしまった。
 2 それを止める、と命令した。

1

 →それから目を逸らしてしまった。


 目を瞑った。
 僕は、逃げた。
 目の前の光景から、逃げてしまった。

 悲鳴が聞こえた。
 耳を塞ぐ。
 死神は、彼女は――大きく、息を吐いた。

「…………」

 バサッ、とマントを翻し。
 アバターを消して、その場を去る。
 その場には僕だけが残った。

 数分遅れて、僕もその場を立ち去る。
 公衆電話にて匿名で警察に通報。 死体があります、とだけ。
 チラリと見た……見てしまった、男だったものは肩から腰にかけてバッサリと切断されていた。
 その場で吐かなかったのは、これ以上ない程に運がいい。

智「うぇ……」

 駅近くの女子トイレで、朝から何も食べていない胃の中のモノを全部吐き出す。
 酸っぱさと苦さの混ざり合ったなんとも形容し難い口内を仕方がなしにトイレの水ですすいで、口元を拭う。

智「……なんだって、あんなこと」

 マクベス。 それを召喚できるのは、限られている。
 惠、繰莉ちゃん、アヤヤ、芳守。 そして、僕。
 あの背格好からして、高倉市組は簡単に除外される。
 だから、つまり、それは――――

智「っ」

 その考えを払うように、パシャパシャと顔を洗う。
 冷静に考えよう。
 冷静に。

 そう、もしかしたら。
 もしかしたら、あのマクベスは僕らのマクベスじゃないかもしれない。
 僕らのマクベスによく似た、朱色の竜が他にいて、それの名前もマクベスというのかもしれない。
 それで、僕の接続圏内にマクベスが召喚されて僕は接続されたのかもしれない。

 『そんなわけないだろう』。
 鏡の向こうの僕が言う。

智「…………ッ!」

 ゴン! と額をぶつける。
 希望的観測、だなんてわかってる。
 そんなことはありえない、とか誰よりも理解してる。

 けれど、信じたい。
 それはありえないと思いながらも、信じたい。
 だから、疑おう。
 仮に、そう、仮に。 アレを惠だと仮定して、疑ってかかろう。
 そうでなかったなら、頭を下げればいい。 ごめんなさいをして、それでも許されないなら彼女の目の前から消えてしまえばいい。
 そうなったとしても、僕はきっと安堵するのだろうから。
 『ああ、惠が人を殺してなくてよかった』、と。

智「……そろそろ、行こう」

 溜飲もなくなった。
 顔を拭いて、身を正して。
 いつもの僕。 ちょっと、小首を傾げてもみたり。
 その瞬間に丁度、全然知らない人がトイレに入ってきて、僕を見て怪訝な顔をした。

智「…………」

 少しばかり赤面し、そそくさとトイレを出る。
 携帯電話を取り出して、惠に繋ごうと逡巡し。
 それをやめて、グループの中で最も上に来る人物の携帯へ電話を発信する。

 今回はここまで、です。
 いつも言っていますが、待たせてしまって申し訳ございません、です。
 それなのに乙とか、たまに感想とかいつも本当にありがとうございます。

 それでは、今回はこれにて。

 うーん眠い
 でも書くところまで書きますです。

るい「トモぉっ!!」

智「わわっ!?」

 惠の家に着いて、ただいま(この場合はお邪魔しますだけれど)を言うよりも先に、るいが飛びついてきた。
 事前に連絡をしておいたため、門の前に屋敷の元々の住人以外は揃い踏みだった。

るい「イヨ子や花鶏から連絡はあるって聞いてたけど、ほんっ、とうに心配したんだよ!」

智「……ごめんね、るい」

 返す言葉もなく、僕は素直に謝る。
 それもそうだ。 思いつきで皆の前を飛び出して、そのまま丸一日と少し、戻って来なかったのだから。
 テロのあった(という話の)新都心に向かったというのなら心配も尚更。

智「皆も、心配かけてごめん」

花鶏「本当よ。 これはどこかで埋め合わせをしてもらわなきゃ割に合わないわね」

伊代「またあなたは、そんなこと言う……」

 そんなことをいう伊代の表情も、どことなく安堵を含んでいた。
 こよりも若干るいと同じく瞳に涙を潤ませているし、全く揺らがないのは茜子ぐらいだ。

茜子「それで、どうだったのですか? 何か収穫はありましたか?」

智「うん……言い辛いけどあまり大きな進展はなかった……かな」

 皆に、僕らを見張っている機関がある、というのはあまりにも刺激が強すぎるだろう。

智「でも、一つだけ発見があったよ」

花鶏「へぇ。 じゃあ聞かせてもらおうじゃない、その発見とやらを」

智「勿論教えるよ。 でも、それより惠の様子は? 回復したの?」

 一番重要なのはそこだった。
 誰かが様子を見ているならそれでよし、そうでないのなら……いや、それは考えないようにしよう。
 僕の質問に皆が顔を見合わせて、答える。

伊代「……峠は越した、らしいわ。 今のところは〈才能〉で回復に向かってるみたい」

智「らしい?」

こより「一応、まだ予断を許さない状況らしくて……鳴滝達も、まだ会っていませんです……」

 心の中の黒いもやもやが、酷く膨れ上がる。
 予断を許さない状況。 それはつまり、まだまだ安心はできない、出歩くなどもってのほか、ということだろう。
 しかしそれはあくまでも、字面通りに受け取れば、の話だ。
 あのマクベスを使った『彼女』――あれが惠だとするのなら、その言葉はまるで信用出来ないものに変貌する。
 つまるところ、佐知子さん、浜江さん、この二人共が何らかの理由を持って惠を庇っている、ということになる。
 僕は屋敷を仰ぐ。

るい「トモ?」

 物理的に大きく、どこか壮大さすら感じたこの屋敷は、今となっては。
 外壁に絡みついている蔓も、生い茂っている草木も、静寂で落ち着く雰囲気も、全て。
 僕にとっては、訪れる者全てを拒んでいるように感じられた。

智「……ううん、なんでもない。 それより、中に入ろう。 佐知子さん達も居るんだよね?」

伊代「ええ。 そうだ、あなたの報告もそうだけどわたし達もただ黙って待ってたわけじゃないのよ?」

こより「はいっ! 何を隠そう、〈呪い〉のことについて誰かが研究していたノートを発見したのです!」

智「!?」

 もしそれが本当だとしたら、それはすごい進歩だ。 僕の情報なんて比べ物にならないくらいに。
 逸る気持ちを理性で抑えながら、僕らは陰鬱な雰囲気の漂う屋敷の中へ入るのだった。

佐知子「あっ……智さん、お帰りなさい。 すぐにお茶を入れますね」

 佐知子さんは少しばかり辛そうな表情を見せていたけれど笑顔で僕らを迎えてくれた。
 ――当然だ、疑われるわけにはいかないのだから。
 思わず過った考えを頭を振って打ち消す。
 確かに、疑いを晴らすためには疑わなければならない。 けれど親切心の何から何まで疑う必要はないだろう。

智「ありがとうございます。 それより、惠の様態は?」

佐知子「今のところは落ち着いています。 けれど大事をとって、面会は少し遠慮してもらえるとありがたいです」

智「そうですか……ああそうだ、ごめんなさい、佐知子さんの服でいきなり飛び出してしまって……」

佐知子「あっ、いえお構いなく。 最近はこちらの仕事に忙しくて全く私服は着てませんでしたから」

 それは一体、何の仕事ですか?
 そう口をついて出そうになったのを飲み込む。
 きっと、聞かなきゃいけない時もあるだろう。 けれどそれは決して今じゃない。
 もしそうでなかったなら、皆にも佐知子さんや惠にいらぬ容疑をかけさせてしまうことになるのだから。
 佐知子さんは僕が愛想笑いを浮かべるのを了解したと受け取ったのか、軽く一礼して厨房の方へと消える。

花鶏「それで、まずはどっちの方から話す? 智? それともわたし達?」

智「僕の方から話すよ。 と言っても、そんなに難しいことじゃないからすぐに終わると思うけど」

 尹央輝って、覚えてる?
 そんな質問から始まった僕の話は、とても簡潔だけれど皆に動揺を広げた。

茜子「まさかあのちんちくりん黒装束が同類だとは」

るい「……アカネも人のこと言えないよね」

伊代「そこはどうでもいいでしょ。 問題はあの娘もわたし達と同じってこと! ねぇあなた、それは確かなの?」

智「うん。 なんてったって、本人がそう言ってたから」

 厳密には誘導した、だけど。

花鶏「これで八人目。 ……なんていうかもう笑いも出てこないわ」

こより「そいえば、花鶏センパイは『聖痕』って言ってましたっけ」

 花鶏は何かにかけて〈呪い〉よりもその〈才能〉を重視しているような節が見られた。
 だから何人も何人も特別な〈才能〉を持つものがいて自分の価値が薄れてしまうとでも思っているのだろうか。
 こほん、と咳払いを一つ。

智「とりあえずこちらの話はこれだけ。 それで、皆の見つけたノートは? 現物があるの?」

花鶏「……ええ、ここにあるわ」

 また新しい痣持ちが見つかったことにショック抜け切らない花鶏の鞄の中から出されたのは、年季の入った本。
 若干くたびれていることに目を瞑れば、日焼けもしていないし保存状態はまだ良い方だろう。
 そのノートを僕に渡して、補足するように皆が言う。

 曰く、このノートを書いたのは前の屋敷の主であるということ。
 曰く、呪いを請け負っているのは八つの家系で、それは『八つ星』と呼ばれていること。
 曰く、このノートには呪いと戦う方法を調べたことが書かれているということ。

 そして、『何か』があれば呪いについてもっとよくわかる、ということ。
 その何かとは、ノート中にはロシア語で書かれていて、花鶏によると、『ラトゥイリ・ズヴィェズダー』、『ラトゥイリの星』……つまり花鶏の持っていたあの本であるということ。
 その言葉を横から聞くと同時に、僕はノートから目を離して花鶏の方を見る。

智「ってことは……花鶏の本があれば、呪いを解く方法がわかるってこと?」

花鶏「あくまで可能性だけれど。 呪いに関する秘密が書かれている、ってことは前々から知っていたわ」

るい「それならそうと、はやく言ってくれたらよかったのにー」

花鶏「わたしは態々『聖痕』を消すなんて考えなかったもの。 でも、今となってはそうも言ってられないわね」

 呪いの所為で惠は医者に行くことが出来ない。
 才能のお陰でその生命は保たれているけれど苦しみを紛らわすことは出来ない。
 それだけではなく、僕や花鶏自身も何か事故があれば死に直結する可能性があるのだ。
 きっと惠をみて、それを強く実感したのだろう。

花鶏「最も、このノートを見るに『特別な力があったから呪いを受けた』……つまり〈呪い〉を解いても〈才能〉は残るらしいわね」

花鶏「これも調べてみないとなんともいえないけれど、もし本当にそうなら〈呪い〉を解かない理由はないわ」

 最初から呪いしか無い僕は元より、惠も。
 兎にも角にも。 調べてみないことには始まらない。

智「それじゃあ、とりあえず今日のところは解散してまた今度集まるっていうのはどうかな。 数日してから日を改めれば、惠も落ち着いてると思うし」

伊代「そうね……あの娘のことは心配だけれど、ずっとここにいても仕方がないものね」

 予想通りの方向から同意が得られて、僕は皆の顔を一瞥する。
 皆も伊代と同じように、やむなし、といったような表情をしていた。

智「ところで花鶏は、ロシア語読めるの?」

花鶏「読めるには読める……けれど少しだけ。 あれは一見すると幻想物語だから特殊な言い回しや古語的表現も多い。 正直わたし一人じゃどうにもならないわね」

こより「それじゃあ辞書が必要、ってことですか?」

智「それもロシア語の古語も網羅したようなものを、か」

 値段もそうだけれど、そんな上等なものがそこらの本屋に売っているとは思えない。
 十中八九、取り寄せになるだろう。

茜子「少なくともその辞書が届くまではお預け、ということですね」

るい「ちなみにそれって、どのくらいかかるものなの?」

伊代「最短で三日、最長で二週間、ってところかしら……普通なら一週間以内に届くとは思うけれど」

智「じゃあ、一先ず僕が注文しておくよ。 花鶏、後でこれがいいってものがあったらメールで教えてね」

 佐知子さんの用意してくれた紅茶を一息に飲み干して。
 パン、と拍手を一度。

智「それじゃ、解散」

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 幾ばくかの平穏
  34 居場所と、才能と、隠し事
  35 手がかりを求めて
  36 最強さんと
  37 『機関』
  38 黒い服の人と
  39 真相を求めて
  → ???
  40 ??? ←次ここ


 おわーり。
 おやすみです。

 例えばの話。
 というのもこれは確定していない話で、そもそもそれが本当にそうであるかすらわからない話。
 とある友人が何か間違ったことに加担していると疑わしい状況。
 その彼、或いは彼女の真意がわからない状況で主人公は一体どうすればいいのでしょう。

宮和「それは、何かの小説のお話でしょうか」

智「うん、そう。 丁度上巻がいいところで切れてて、続きが気になるんだ」

宮和「それで和久津さまは、今朝から鬱積としておられたのですか」

 流石宮和、というべきか。
 僕は内にどうしようかと考え事を秘めたまま登校するやいなや、一瞬で見破られてしまったのだった。
 表情にはあまり変化を見せていなかったはずなのだけれど、ここまでくると警戒よりも感嘆が勝る。

智「結構なシリアス物でね。 僕なら一体どうするかなって考えてたらこう、悪い方にと」

宮和「……意外、ですね」

智「そう?」

宮和「和久津さまなら、きっとすぐに事態の解消に動くのではないかと」

 その間違ったこと、というのが盗難だとか虐めだとか。 そんなものならきっと、僕はそうしているに違いない。
 難しくはあるけれど、解決できない話ではないのだから。
 しかしながら、これはそんな簡単な話じゃない。 人の生死が関わっている話。
 しかもその相手は類で友、信頼するに足る、背中を任せられる可能性も持ちえる仲間。
 ともすれば、人間関係を全て台無しにしてしまいかねない。 一人の判断で全てを行うには重すぎる案件だから。

智「……じゃあ、宮ならどうする? 僕が、何か……例えば、どう見ても堅気じゃない人と取引みたいなことをしてたら」

 ふとふってみる。
 僕と惠の関係はある意味宮和と僕の関係に似ている。
 それは一方的に、相手のことを深くは知らない、ということについてだ。
 人となり、上辺や友人関係での性格は知っていてもその人間関係や私生活は知らない。
 類似する点も少なくない立場の宮和なら、僕に一体何をするだろうか。
 作られた孤高の僕と一線を画する天才、もとい天災の宮和ならどうやって解決するだろうか。
 あわよくば、それが事態を突破するためのヒントになればいい。 そういう考えもあっての問いかけだった。

 そんな僕の課題に宮和は少しばかり考えに耽る。
 その思案顔すらも品がある。 花鶏も絵になるけれど、宮和のはそれとは違う上品さ。
 花が違うというか、畑が違うというか。
 おそらくは肥料も違うのだろうけれど、そんなことを考えていると宮和は答えを出したのか、いつもと変わらない口調で口を開いた。

宮和「宮ならきっと、胸に秘めてそっとしておく、と思います」

智「それは、どうして?」

宮和「和久津さまなら何かしらの理由があってのこととお察しします。 それを我先に、と行動を起こしたなら和久津さまの計画が崩れてしまうかもしれません」

宮和「そもそも前提としてあくまで疑いがある、ですので。 宮は、和久津さまがそのようなことを為さる筈がない、と信じます」

 きっと宮和は、そうして待ち続けるのだろう。
 僕が小説の話としてはぐらかした理由も何も聞かずに、僕が自ら話してくれるまで。
 確かに、それも一つの道ではある。
 見なかったことにする。 勘違いだったことにする。 夢の中だったことにする。
 けれど、それは――――逃げ、だ。
 別に宮和の考えを否定するわけじゃない。 けれど僕はほぼ確信に至っていて、それでも、と信じたいから疑うと、そう決めた。
 故に、宮和の考えをそのまま使うことはできない。

智(……けど、参考にはなった、かな)

 様子見、先延ばし。
 そこまで気長にすることはできないけれど、自分から僅かなアクションを起こして様子を見ることはできる。
 例えば、手札を広げてカマをかけてみる、とか。
 元々は考える時間を貰うつもりで皆と一時的に解散したけれど、やはり正解だったかもしれない。

宮和「しかし、ハードボイルドな和久津さまですか」

 宮和は確かに頭もいいし、その発言は度々参考になることもある。
 空気も読めるし、言わずとも行動に移してくれることもしばしばだ。
 けれど。

宮和「それもまた、素敵ですわ」

 ここまでの盲信は、参考にしなくてもいいかもしれない。

 今回はここまでです。
 遅くなった&少なめで申し訳、です。

 放課後。 学校を出たその足で、迷いなく郊外の屋敷へと向かう。
 けれどその淀みない足取りとは裏腹に、僕の頭はいっぱいいっぱいだった。

 これで正しいのだろうか。
 惠は本当のことを話してくれるだろうか。
 もし話してくれなかったら、僕は一体どうするべきだろうか。

 まだ後戻りはできる。 誰かがそう囁く。
 その弱気を、頭を振って消し去った。

智「僕は、惠を信じてる」

 言葉というのは不思議なもので。
 真実だと思っていなくても、例え嘘だと知っていたとしても。 それを口に出したなら事実になり得ることだってある。
 言霊、嘘から出たまこと、瓢箪から駒。
 つまるところ、言葉には何らかの力がある、というのが定説。
 まぁ、行き過ぎてしまえばビッグマウスだとか言われてしまうけれど夢は小さくより大きくの方が見晴らしがいい。
 けれど僕は小さく堅実に。 だから事実そのものを歪めるのではなく事実に辿り着くためのほんの少しばかりの勇気を。

智「ようし!」

 怖気という感情を片隅に追いやって。
 僕は自分を奮い立たせつつ、また一歩踏み出す。

 大貫邸に到着してチャイムを押すと、すぐに佐知子さんが門を開けてくれた。

佐知子「智さん、こんにちは。 昨日の今日で、どうかなさったのですか? 次に皆さんと来るのは、数日後かと……」

 少しばかり驚きを見せながら、佐知子さんはそう訊ねてくる。
 僕も愛想笑いを見せながら、声を若干潜める。

智「はい。 実は他の皆には内緒で、惠と話したいことがあるんです」

佐知子「話したいこと、ですか?」

智「ええ、まぁ。 僕と惠だけに共通してる知り合いについて、なんですけど……その人が高倉市に住んでて」

 まぁ、と佐知子さんは口元を抑える。
 新都心、高倉駅がテロに見舞われたというのは記憶に新しい。

智「その知り合いっていうのも、僕らと惠みたいな複雑な関係で……兎に角、多分直接話さなくちゃいけないことなので」

 暗に、あなたじゃ役者不足なので惠を出せ、と言ってみる。
 佐知子さんは少しばかり考えるような素振りを見せたあと、微笑みを浮かべて僕を門の内側へと導く。

佐知子「わかりました。 では、食堂の間でお待ちください。 私は惠さんを呼んできます」

智「すいません、無理を言って」

佐知子「いえ。 惠さんも回復してきて、きっと誰かと話したいと思っている頃でしょうから」

 それでは後ほどと言って裏口へ回る佐知子さんを見送って僕はほっと一息。
 嘘をつくのは忍びない。 けれど全てが嘘というわけでなし。
 それに。

智「この屋敷にも、何か大きな秘密があるかもしれないし」

 なんとなく、だけれど。
 きっとそれは、あの呪いの研究ノートだったり、大貫邸という名前だったりするのかもしれない。

 食堂のテーブルに着いて数分もしないうちに、彼女達は姿を表す。
 初めて会った時と同じ、ジャージ姿。 知っていて見ても、とても女性とは一目では判別できない。

惠「やぁ、智。 数年ぶりだろうか、変わらないね」

智「惠こそ。 具合はどう?」

惠「お陰さまで」

 数日ぶりに見る惠。
 最後に見た、あの血に塗れた姿が一瞬だけ重なるが今の彼女にはその面影や痕跡は全くない。
 健康体。 そう判断してもいいぐらいだと思う。

 惠は僕の真正面に座り、佐知子さんは一礼してから台所の方へと消えていく。
 きっとお茶でも入れに言ったのだろう。

惠「さて、それで何の話だったか。 そう、この宇宙の起源についてだったかな?」

智「あっち側の話、だよ」

 惠は口を紡ぐ。
 恐らく、高倉市の事件については聞き及んでいる筈だ。 噂では巨人が破壊した、ともある。
 知っている人なら、直ぐ様アバターだと結びつけることができるだろう。
 そしてもう一つ。

智「昨日さ、起動信号あったよね?」

惠「……さぁ。 あったかもしれないし、なかったかもしれない」

智「あったんだ。 そしてその時、僕は『繋がっていた』」

 手札を一枚。
 惠の顔色は変わらない。

智「その時、僕は田松市の町中にいたんだ」

惠「ふむ……つまり、阿弥谷、南堵、繰莉の誰かがこっちに来てアバターを召喚したということかい?」

 惠はその選択肢から自分を除く。
 それもそうだ。 惠は病気でベットに床していたのだから。
 動かない、動けない。 町中などに、居るはずもない。
 そこで僕は、また一枚、手札を切る。

智「その近くのビルの中で、人が死んでいたらしいね。 鋭利な刃物で斬ったように、コンクリートの壁ごと斬られていたらしいよ」

惠「それは、マクベスがやったと?」

智「だと、思う」

惠「……智。 一つ聞いてもいいかな?」

 小さく頷いて、先を促す。
 丁度、佐知子さんがティーポットとカップを持ってきた、その時だった。

惠「智は、僕のことを疑っているのかい?」

智「うん、惠がやったんじゃないかって疑ってる」

 即答。
 それでも、惠の表情は揺るがない。
 三枚目は情に訴える。

智「……疑っていて、こういうのもなんだけど。 僕は、惠を信じたい。 信じたいから、疑ってるんだ」

惠「疑いを晴らすことで、僕の身の潔白を証明できる。 智はそういいたいんだね?」

 カチャン、と目の前にお茶が置かれる。
 僕はその水面に映る惠に瞳を落として、また頷いた。

惠「ふむ。 佐知子、昨日の僕の様子を証言してくれるかな?」

佐知子「え? ええ、わかりました」

 惠に言われ、佐知子さんは語る。
 惠は倒れた日からその翌日の昼過ぎぐらいまで発作が収まらなかったこと。
 夕方過ぎぐらいに僕が戻ってきた時より少し前に様態が安定して回復し始めたこと。
 だから、一度も外出などしていない、ということ。

惠「というわけだ。 佐知子の証言は疑いを晴らすに足るかな?」

智「……うん、わかったよ」

 佐知子さんの入れてくれた紅茶を手に取る。
 香りと少しばかりの苦味が口に広がって、熱さを伴いながら喉を通過する。
 ふう、と一息。 カップを置いて、真っ直ぐに惠を見つめた。

智「佐知子さんも、浜江さんも。 そして惠も、僕達に嘘を付いているってことはわかった」

 切り札の、四枚目。

智「実は僕、マクベスが……惠が人を殺す現場を見ていたんだ」

惠「っ」

 惠の表情が揺らぐ。 が、すぐに元のポーカーフェイスを貼り付けた。
 しかしそれよりも致命的だったのは。
 ガシャン、と持っていたティーポットを床に落としてしまう程に動揺してしまった彼女の方だった。

佐知子「あ……」

 呆然と立ち尽くす佐知子さんを一瞥して。
 僕はやはり、と思いながらも告げた。

智「……やっぱり、あれは惠だったんだね」

惠「…………」

 その沈黙こそ、答だった。

 今日はここまで、です。

 次は……多分、クリスマス。
 なので安価です。
 ええと、るいねーさんと茜子さんだけは除外です。
 ちなみに姉さんやこよりんを選んだら大体バレンタインの時と同じ感じになりますのでご注意をば。(なるべく違う風に描きおろしますけれど)。

 とりあえず次レスはテンプレプロローグ、です。

 ――朝、目が覚めてから窓の外を見ると雪が降っていた。
 今日の日時は十二月二四日、所謂ホワイトクリスマスイブだ。

 ここも結構な都心だし、雪が降ることは案外少ない。年に一度二度あるかないかなんていつものことで、二桁になれば奇跡だろう。
 まぁそれはそれとして、つまり僕がいいたいのはクリスマスイブに雪が降るのは結構な確率だということ。
 そんな日に恋人同士で過ごせたならばそれはもう幸せなことだろう。

智「……今年は、人事じゃないかな?」

 いつもならば僕はただショートケーキでも買ってきて、料理も腕によりをかけて一人でお祝いをするところだけど。
 今年はそうじゃない。ちゃんとした予定がある。
 なんかふわふわする。気分が高揚している証拠だろう。でも、それも仕方が無いと思う。
 だって、今まではずっと一人だったのだから。いや、一人じゃなきゃいけなかったから。
 秘蜜が知られてしまった時はショックだけれど、ノロイも追ってこないし、こうしてイベントデーを楽しんで過ごせるのだから万々歳だ。

智「さて、と――」

 昨日より用意しておいた服に着替える。白を基調にした服装で、対照的に黒タイツを履く。
 無論のことながら、今日は冷えるらしいから手袋を履くのも忘れない。
 素早く身支度を整えて、鏡に写った自分に笑顔を投げかける。

智「うん、今日も女の子女の子♪」

 いつもなら自己嫌悪に陥るけれど今日はそうもならない。
 それ程までに僕は楽しみにしているらしい。


 >>162と、クリスマスイブを過ごすのを。

 間違えた――!
 >>162>>363に修正ですごめんなさい!

真雪さん

 まゆまゆ把握しました。
 それでは次回。

 →真雪と、クリスマスイブを過ごす。


 ――――――――――――――――――――。

 熱狂。 躁狂。 反響。
 眼下の彼らは、この真冬の寒さにも負けずに興奮の坩堝を引き起こしていた。
 僕らが一挙一動する度にまた歓声と喚声が湧き上がる。

 しかしながら、終わりを迎える。
 僕の赤と白で彩られた服装の裾がくるりと翻る。
 そしてステージ上に立つもう一人の彼女と手を合わせ、ポーズをとった。

 音楽が鳴り止むと同時、わっ、と会場は湧き上がった。
 そして僕は目の前の、僕と同じように若干のメイクをした少女と目を合わせる。

真雪『お疲れ様です』

智『真雪もね』

 そのアイコンタクトは僅か一秒にすら満たない。
 そして僕らは示し合わせたように、手を繋いでステージ下へ大きく手を振った。

 真雪と付き合ってから初めてのクリスマスイブ。
 それは、僕らのイベントコンサートで始まりを告げたのだった。

 真雪こと結奈と、僕こと結香の新しいシングルはなんとクリスマスソング。
 そんなわけで、今日は握手会的なCD発売なのだった。
 その歌のお披露目もそこそこに、直ぐ様CDの発売が始まる。

 アイドルの握手会とかだと、自分のナニを手につけてから握手をする人もいるとか聞いたことがある。
 僕らのファン層にはそういう人はいないと信じたい。

「結奈ちゃん、これからも応援してるからね!」

真雪「はいっ、ありがとうございまーす!」

 CDを手渡し、満面の笑みで握手する真雪をちらりと見る。
 そのアイドルスマイルは完璧だ。 完全無欠の偶像少女である結奈は今日も絶好調。
 ちなみにファンの数は真雪の方が7:3で圧倒的に多い。 真雪の方が若干先輩というのもあるのだろうけれど、多分外見的な要因もあるに違いない。
 女性ファン層はほぼ半分なのに対して、男性ファン……特に大きいお友達が圧倒的に真雪を支持している。
 まぁ、僕はストーカーは宮和だけで十分だから取り立てて男性ファンはいらないけれど。

「あ、あの! わく、じゃなくて結香ちゃん! 握手もお願いします!」

智「うん、いいよ」

 にっこりと微笑んで、彼女の手を取る。
 見覚えがある、多分学校の後輩。 わざわざ来てくれるとは嬉しい限り。
 ……いや、少し薄ら寒い気配もするけれど。

 そんなこんなで、求められれば握手をして、時には応援を投げかけられ。 はたまた一問一答の短い会話をして。
 時折混ざりこんできたるい達も捌きながら、イベント終了の時間は迫っていく。

智「ありがとうございました!」

真雪「ありがとうございました!」

 今回のイベントで用意していた分を全部売りつくし、僕と真雪は並んで頭を下げる。
 パチパチパチパチ、と最後まで残ってくれたファンの方達に見送られつつ、僕らは舞台を降りる。

 ようやく一息。 ほぅ、と吐く息は白い。 サンタを模した衣装は、屋外で活動するには思った以上に寒い。
 一応、カイロだとかタイツだとかで防寒対策はしているけれど長時間外気にさらされるとそれでも、だ。
 駅前でティッシュ配りとかしている人は本当、すごいと思う。

真雪「お疲れ様です、智さん」

智「うん、お疲れ様」

 スタッフの用意してくれていた毛布を受け取り、温かい缶コーヒーで身体を暖めながら真雪と互いを労う。
 真雪のサンタ姿は、その髪色も合わさってさながらサンタ見習いという様なイメージを抱かせる。
 対して僕は、言ってしまえばコスプレをしているようなものだった。

智「……やっぱり見た目って才能だよね」

真雪「もしかして喧嘩うってるんですか?」

 そういう真雪の表情はそんなに怒っているわけではない。
 そもそもこよりと同じく将来有望な真雪だ。 今は今で、この瞬間だけのステータスだと理解もしているだろう。
 オタク趣味に傾倒している真雪なら特に。

真雪「智さんも智さんで、色々と反則ですけどね。 それこそ才能でしょう」

智「いや、まぁ」

 確かに外見が男になるだけで色々危ないけど。
 それはそれで、やっぱり僕は男でいたいのだ。
 そんな複雑怪奇な気持ちも真雪はわかっているのか、周りに聞こえないように僕に囁く。

真雪「それに、智さんが男らしいのは私が知ってるだけで十分ですから」

 僕はそれだけで嬉しくなり、つい抱き寄せて一緒の毛布に真雪を包む。
 一瞬驚いたような表情をするが、すぐにそれは柔らかくなって僕の胸へと擦り寄ってきた。

真雪「……智さんの胸、温かいです」

智「そりゃあ、カイロ入ってるからね」

真雪「そういうことではなく」

智「知ってる。 冗談だよ」

 どうこうしている内に、ようやく挨拶回りが終わったのかマネージャーが来た。
 そのマネージャーも僕と真雪が一塊になっているのを見て目を丸くしていたけれど、すぐに表情を戻す。
 しかし、僕らはそのほんの一瞬、『これはこれで……』とでもいいたげな顔をしたのを見逃さない。
 なんだか、ほんのり百合を匂わせた写真集の仕事を持ってきそうな予感。
 真雪も同じくそれを感じ取ったのか、はぁ、と小さく溜息を一つ。

真雪「貸し、一つですからね?」

 多分真雪の方からそれは却下だと手回ししてくれるのだろう。
 本当、頭が上がらない。

 ミーティングを終えた僕たちは用意されていた車の中で着替えて、ひと通りスタッフ達に声をかけてから街へ繰り出す。
 時間は既に昼を大きく回っている。 デートをするには少し遅すぎる時間かもしれない。

智「どうしようか?」

真雪「そうですね……普通にゲームセンター、というのもいつもと同じですし」

智「自宅デートも、最近やったばかりだしね」

 真雪と二人で並んで街を往く。
 カラオケだボウリングだと案を出してみるけれどいまいちパッとしない。
 ショッピングだとか言ってみても真雪も僕も取り立ててファッションに興味が有るわけではないし。
 うーん、と頭を悩ませているとふと少女達が寄ってくる。

「あの……結香ちゃんと結奈ちゃん……」

真雪「いえ、違います。 人違いです」

 いい終わり前にきっぱりと真雪は切り捨てて、僕の手を掴みスルリと人の間をすり抜ける。
 僕は若干の愛想笑いを貼り付けて、そういうことだからと真雪に引きずられるようについていく。
 落ち着いて周りをよく見てみれば、僕らをチラチラと見る人間は存外に多かった。
 それもそうかもしれない。 少し前はちょっとマイナーな地方アイドルだったけれどアクセプターとのタイアップのお陰というか、せいというか、それが原因で全国的に有名になったのだから。
 僕の方は必ず真雪とセットでという条件付きだからまだしも、真雪はこの前ドラマで準主役級の子役もこなした。
 音楽番組だけでなく、バラエティなどにも出演する時もそう遠くないかもしれない。
 つまり何がいいたいかというと、僕らが並んで歩いていると変装もろくにしていなければ正体がバレてしまうのも当然、ということだった。

 人を避けるように街を練り歩き、到達するのは寒風吹く公園。
 今朝方降っていた雪が芝生に残っており、それがまた寒さを演出する。
 無論のことながらベンチも雪が残っているか、太陽によって溶けたそれで湿っており腰を休められる状態ではない。

真雪「少し、歩きましょうか」

智「……大丈夫?」

真雪「大丈夫です……多分」

 少し街を速く歩いただけで若干息を切らしているインドア派アイドル。
 一応歌って踊るのだから、体力は人並みにあるはずなんだけど……

真雪「…………」

智「…………」

 公園にいる子供達の声に混じって、真雪の息遣いがすぐ傍に聞こえる。 それだけで、会話は全くない。
 けれど、それは決して気まずい雰囲気とかそういうわけではなく、寧ろ心地よさすら覚える。

 きゅっ、と。 僕は手に軽く力を込める。
 真雪も答えるように僕の手を握ってくれた。
 やがて導かれるように、公園の端にある木陰に辿り着く。

真雪「ここでしたね、たしか」

智「……うん、そうだね」

 足をとめて、感慨深そうに言う真雪。
 それは、僕と真雪が付き合うよりずっと前。
 ネット上で叩かれていた真雪をつれだした時に来た場所。 つまり初めてのデートの思い出の場所、といったところだ。

真雪「……実はですね。 今日は初めからここにこようって決めてたんです」

智「……嘘でしょ?」

真雪「はい、嘘です。 けど、本当ですよ?」

 えへへ、とはにかむ真雪。
 僕の手を離し、まだ雪の残る芝をそっと撫でる。
 それもそこそこに、真幸は鞄を下ろして、それの中を探るように手をいれる。

真雪「いつ渡そうか、どうやって渡そうかって。 智さんの手を引っ張りながら考えてたら、自然とここに足が向いてましたから」

 そこから取り出されるのは、丁寧に包装された小さな長方形の箱。
 若干照れくさそうに、しかしそれでも真雪は両手でそっとそれを僕へと差し出してきた。

真雪「一日早いですけど。 メリークリスマスです、智さん」

智「わぁ、ありがとう真雪。 見てもいい?」

真雪「どうぞです」

 許可をもらい、なるべく丁寧に包装を剥がす。
 中から出てきたのは透明のプラスチックのケースで、その中には。

智「メガネケース、と……もしかして、メガネ入り?」

真雪「はい。 私と同じモデルの伊達メガネです。 カラーも同じですよ」

 智さん、変装してもあまり変わらないのでというのは真雪の弁。
 実際は、身に付けるお揃いの何かが欲しかったのかもしれない。
 それはきっと指輪やキーホルダーでもよかったのだろうけれど、真雪は自分といえばコレ、というものを選んだのだろう。

 それでも、僕はとても嬉しくなった。
 まずは形から……というには些か遅すぎるけれど。 カップルと表沙汰に出来ない僕らには少しでも形に見える繋がりが欲しかった。
 お揃い、というのはそれの最たるものだろう。
 僕はそのメガネケースを、更にその中からメガネを取り出してすぐに掛けてみる。

智「どうかな?」

真雪「似合ってます」

智「えへへ……本当にありがとう。 大事にするね」

 僕はメガネケースをプラスチックケースの中に戻して、バッグの中に滑りこませる。
 そして、今度は僕の番。 同じく細長い箱を、その手で取り出す。
 真雪みたいにお揃いだとか、そういうのではないけれど。 プレゼントとしては定番な、けれど真雪に似合いそうなものを選んだつもりだ。

智「それじゃあ、はいこれ」

真雪「おぉ……ありがとございます。 私も開けてみても?」

智「勿論」

真雪「それじゃあ、遠慮なく」

 決して高いものではないけれど、安い買い物ではなかった。
 けれど。 真雪の驚いた顔を見ることが出来ただけでも十分買った価値はあったんじゃないかなと僕は思う。

智「どう? 気に入ってもらえた?」

 それは雪の結晶のネックレス。
 本物と違って絶対に消えてなくなってしまうことはない、しかしその一瞬の美しさを形どったもの。
 それは一目見た瞬間から、真雪にぴったりだと思った。

真雪「……はい。 ありがとうございます、智さん」

 満面の笑みを見せて、真雪はそれを抱きしめるように胸に寄せた。
 それは、握手会で見たものと相違なく。 しかし、全く異なる笑顔。

 結奈としての真雪。 オタクとしての真雪。 接続者としての真雪。
 それぞれは、僕だけのものには確実にならない。
 また僕も同じように、真雪だけのものにはならない一面を備えている。
 例えばそれは学園のお姉様的な立ち位置であったり、結香だったりするのかもしれない。

 しかしながら、だ。
 今真雪が見せてくれた、この笑顔は。 その時抱いた、僕のこの想いは。 そして僕らのこの一瞬だけは。
 決して何者にも侵されない、侵させない。

 だって、僕は誓ったから。
 真雪が僕を守ると言ってくれたように。 僕もまた、真雪を支えていくのだと。

真雪「――――さっ、智さん! そろそろ行きましょう!」

智「……うん!」

 未来は予測なんて出来ない。
 今という時間はいつだって変動的だ。
 けれど、例えどんな未来が、どんな世界がこの前に待ち受けていたのだとしても。
 振り返ればそこにある思い出はいつだって、眩しく輝いているはずなのだから。


 そして、身を翻した真雪の首元から伸びたネックレスが太陽の光を浴びてキラリと光った――――。

 おわり、です、。
 どうまとめようかすごく迷った上に、あまり真雪らしさを出せなかった気が……
 次があればもう少し頑張りましょう。 しかし、果たして次はあるのでしょうか……?

 それでは、また。

 大変、お待たせいたしました。
 四周年(?)を迎えたばかりだというのにこの体たらく……誠に申し訳。
 もうすぐ大幅更新の予定ですが……果たしてどうなることやら。

 それでは、久しぶりですので手探りで書き始めます。

 カチ、コチと、時計の音だけが室内に響く。
 誰も彼もが動けない。
 重苦しい沈黙をようやく一飲みし、切り出そうとした瞬間に佐知子さんが惠を庇うように前に出た。

佐知子「違います! 惠さんがそんなこと! ああ、いえ、そうじゃなく、でも惠さんは……!」

惠「佐知子」

 纏まらない、未だ混乱して言うべきことも定まらない佐知子さんを惠は制する。
 これ以上何かを言っても墓穴なだけだし、そもそも既に見られていた時点で無意味だと悟ったのだろう。
 しかしそれでも、佐知子さんは感情を露わにする。

佐知子「惠さんっ! でも! 惠さんだって、好きでこんなことをしているんじゃありません! そもそも、見られること自体――――」

惠「佐知子」

佐知子「…………っ!」

惠「その割れた茶器を、処理したほうがいいんじゃないかな?」

 頭を冷やせ。
 惠は暗にそう告げた。
 佐知子さんは何か言いたそうに口を開けたり閉めたりしていたけれど、終ぞ言葉は出ずに頭を一度だけ下げて厨房の方へと向かう。
 恐らく、掃除道具をとりに向かったのだろう。

惠「……ふう」

 ぎし、と惠の座っている椅子が音を立てた。
 僕から視線を外した彼女は、どこか虚ろな瞳で暫しの間空を見つめる。

惠「全く、ままならないものだ」

 きっと、誰にいうでもない。
 それでも僕に聞こえるように、惠は続ける。

惠「真実は突き止められる。 悪事は白日の下に晒される」

惠「人智を超えた予知すらも絶対じゃない。 ならば、僕のやっていたことが露見してしまうのは当然のことだったのだろう」

 また一度、椅子が軋む。
 どこか遠くを見ていた筈の惠の目は、しっかりと僕を捉えていた。
 佐知子さんがどこか慌ただしく厨房から戻ってきて、異変に気がついた浜江さんも現れてここは自分がやるから席に座っていろと指示をした。
 その一連の流れを横目に見つつ、惠は僕へと問いかける。

惠「さぁ、智。 君の聞きたいことはなんだい? 僕は答えられないかもしれないが――できることなら、佐知子が話すだろう」

智「……佐知子さんが話すのは大丈夫なの?」

惠「ああ、佐知子は話すことができる」

 断定。 そして、確信。
 惠の呪いは、『自分のことについて告げることができない』だろう。
 思えば、惠の言動はいつも確信を得なかった。 何か感想を求めた時でも、喩えを引き合いに出したり、同意を求めたり。
 暖簾を腕で押すような、そんな僅かな感触しか得ることが出来なかったのだ。
 当然だ。 それこそが、惠の呪いだったのだから。

智「わかった。 でも話しを聞く前に聞いてほしい。 僕はこうして、惠の秘密を暴こうとしてる。 でもそれは決して興味本位から、なんかじゃない」

智「僕は、惠の仲間だ。 だから惠の背負っているものを知りたい。 真実を確かめたい。 そしてできることなら、それを共に背負いたい」

智「ただ、それだけなんだ」

惠「智……」

 惠は僕の言葉を認識し、一度頷く。
 そして佐知子さんを促して語り始める。
 才野原という存在に課せられたその血脈、その運命を。

 彼らの血筋は、代々心臓の疾患により短命だということ。
 早ければ十代には発症し、遅くても三十代にはその生命を落とすということ。
 そして。
 惠は既に、命を落としているということも。

 惠の才能は――――『命の上乗せ』。
 それも無条件に寿命を引き伸ばすわけではない。
 自分が一度死んでから、自らの手で奪った命をそこに重ねて生き返る能力。

 疑問を抱き、混乱に塗れ、希望を捨てず。
 そして辿り着いた真実。
 それが、この底の見えない絶望の淵だった。

智「そんなのって、ない……」

 ようやく、絞り出した言葉がそれだった。
 興味本位じゃない? 真実を確かめたい? それを共に背負いたい?
 仲間だから?
 そんな安っぽい言葉を吐いた僕が、とても小さく見える。

 惠は、何度も死んだ。
 何度も、何度も、何度も、何度も。
 つい最近のあの瞬間にだって、命を落とした。
 そして、また生き返る。 手ずから摘み取った命を使って。

 そこに、どれだけの業があっただろう。
 そこに、どれだけの葛藤があっただろう。
 自分の生の為に他人の生を奪い取る。 それがどれだけ罪深いことか、きっと惠自身知っているはずだから。

 だから、と。
 佐知子さんは続けた。

 誰かの生を奪う。 それは罪深く、繰り返す度にきっと耐えられない苦痛となる。
 だから、惠は思いついたのだと。
 誘うなら、罪深き生を。
 奪うなら、より軽い命を。
 使うなら、不必要なものを。
 罪のない人々を何の遠慮もなく踏みにじる『悪』を。

 しかし、それでも。
 それは、『罪』なのだ。
 人知れず『悪』を裁く『正義』であるとしても、それはやはり『罪』であり『悪事』なのだ。
 だから、惠は言った。 『真実は突き止められる。 悪事は白日の下に晒される』、『僕のやっていたことが露見してしまうのは当然のことだったのだろう』。
 どれだけ奪う命を選んだとしても。 どれだけ言い訳を重ねたとしても。
 惠はそれを知っていて、そして生き返る度に葛藤を重ねたに違いない。

 『あと何回この苦しみを味わえば』。
 『あと何回人の尊厳を踏みにじれば』。

 『あと何回』。
 『あと何回』。
 『あと何回』――――

 繰り返す度に摩耗していく精神。
 繰り返す度に感覚が麻痺していく心。
 いっそ狂ってしまったほうが、どれだけ楽だっただろう。
 けれどそれでも、自分のしてきたことから目を逸らしてでも、生きたかった。

 しかし、それすらももはや叶わない。
 僕が知ってしまったから。
 自らの罪を真正面から認めてしまったから。

 僕が話さなければいいだけ、と言うかもしれない。
 見てみぬふりをすればいい、と思うかもしれない。
 けれどマラソンで一度立ち止まってしまったらもう一度走りだすのが困難なように、大きな罪を背負いまた業を重ねるのはきっと難しい。
 ただでさえその精神は疲れきっているだから、尚更。

智「例え、このまま惠を見過ごしたとしても……惠は苦しむ」

惠「ああ」

智「例え、呪いを解いたとしても……惠は、救われない」

惠「……ああ」

 ――僕らはみんな呪われている。
 ――みんな僕らに呪われている。

 ああ、ああ。
 僕には、惠を救えない。
 それどころか、僕が真実を知ったことで惠は更に苦しむことになった。

 よかれ、と思った。
 助けたい、と思った。
 力になりたい、と思った。
 それなのに、それなのに。

 僕は、こんなにも、無力だった。

    第四幕
    Chapter

  32 小さな変化
  33 幾ばくかの平穏
  34 居場所と、才能と、隠し事
  35 手がかりを求めて
  36 最強さんと
  37 『機関』
  38 黒い服の人と
  39 真相を求めて
  → ???
  40 才能と血脈


 今回はここまでです。
 随分とおまたせして改めて申し訳、です。
 少なくとも惠√その1は新年度までには終わらせるつもりです。

 あと、数日後のバレンタインについてですが……どうしましょう?

智「う、ん……さむ……」

 朝の寒さに少しばかり身を捩らせる。
 今日は一段と冷えている。 ただでさえ布団が恋しいこの季節には辛いものがあった。
 僕の以前使っていたものよりも数段グレードの高い布団を何とか自分の身から引き剥がす。
 油断しているとあっという間にそれに包まって二度寝に入ってしまう。 それはいけない。
 そして隙あらば僕を夜這いもとい朝這いしようとしてくる彼女もいるのだから。
 学校ある日もあるし、それはもう。

智「うー……本当、寒いなぁ」

 着替えはなんとか自力でできるけど、片手が未だに少し不自由。
 食事を零したりするとまた面倒だから寝間着のまま居間へと向かう。
 勿論、松葉杖を使うのも忘れない。
 最近では痛みも殆どなく、大分動かせるようになってきたけれど長時間は身体に毒だ。
 完全に治るまではちゃんとする、というのは伊代の弁。
 ごもっともな話で。

 そんなこんなで少しばかり必死になりつつ廊下へ。
 すると窓から僕の視界に飛び込んできたのは、白の世界だった。

智「わぁ……」

花鶏「あら、もう起きてたのね智。 まだ寝てるなら襲ってしまおうかと思ってたのに」

智「あっ、おはよう花鶏。 それより外、すごいね」

 辺り一面雪景色。
 雪国でもないここらでは雪が降るのも珍しい。

花鶏「身体の方は平気? 最初の頃は冷やすと痛みがあったみたいだから」

智「うん、最近は殆ど痛みもないから平気だよ。 多分あと一、ニヶ月もリハビリを続けたら殆ど不自由なく動かせると思う」

 それに花鶏はほっ、と安堵の息を吐く。
 〈ノロイ〉に追われ、事故にあって半年以上。 リハビリも始めて、最近では杖がなくても少しだけなら動けるようになった。
 でも、ほんの少しだけ。 嗚呼、恋しき自由な日々。
 それでも献身的に尽くしてくれる花鶏がいるから、まだ耐えられるのだけれど。
 僕の身体が完治して、やっと僕らの恋愛は始まるのだ。

智「でもそれより、学校に行く方が大変かも。 タクシーを呼ぶにしてもこの雪だったらまともに動けなさそうだし」

花鶏「あら、そのぐらい休めばいいじゃない。 一日ぐらい休んだって罰は当たらないわ」

智「その考えが既に罰当たりだよ」

 でも、それもいいかもしれない。
 車が使えないとなると、きっと花鶏の手伝いが不可欠になる。 そうなると手を煩わせるし、今日の日が日だ。

智「それも、いいかもね」

花鶏「それじゃあ、食事にしようかしら。 智、一人で大丈夫?」

智「うん、平気……っと!」

花鶏「智!」

 松葉杖を滑らせて身体のバランスが崩れたところを、花鶏が危なげなく受け止める。
 『思考加速』の〈才能〉。 僕の為に使ってくれるのは嬉しいんだけど、反動で眠りが強くなるからあまり使ってほしくない。
 それだけで申し訳ない気分になるのも勿論だし、たまに寝てる時に暴走して襲ってくるときもあるから。

 そう考えると、寝ても覚めても僕は花鶏に襲われているような気がする。
 女の子扱いされることもしばしばだし、なんか理不尽。
 僕の身体が完全に自由ではない以上仕方のないことなのだけど。

智「ごめんね、花鶏」

花鶏「いいのよ」

智「でも、腰を撫でるその手を止めてくれると嬉しいな」

花鶏「……いいのよ」

智「よくないよ!?」

 無理に押し通そうとする花鶏を引き剥がす。
 松葉杖を構えなおして、身を正す。

智「とにかく! 移動には注意して行くから、花鶏はご飯の準備お願い!」

花鶏「……ふう。 わかったわ、デザートは最後にとっておくべきだものね」

智「花鶏!」

花鶏「ふふ」

 少しばかり笑って、花鶏は居間へと身を翻す。
 僕も溜息を吐き、しかし少しばかり頬がほころんでいるのを自覚する。
 そうして僕はゆっくりと注意しつつ、居間へと歩を進めるのだった。

 居間につくと、既に花鶏は準備を終えていた。
 どうよ、みたいな表情をする花鶏に、僕は苦笑で答える。
 そして席について手を合わせた。

智「じゃあ、いただきます」

花鶏「ええ」

 野菜中心の花鶏の食事にもわりかし慣れてきた。
 しかしるい達の言っていたパセリ丼が出てきた時は本当にどうしようかと思ったけれど。
 どうしても他のものが食べたい時は花鶏の手伝いを貰って僕が作ってるし今のところはうまく生活は回っている。
 恐ろしいほどに何もない、談笑をしつつの食事を終えて僕はフォークを置く。

智「ごちそうさま。 それじゃあ花鶏、学校に連絡――――」

花鶏「それより智、何か言うことはないかしら」

智「……学校に連絡、」

花鶏「と・も?」

 にこやかに言う花鶏。 少し怖い。
 何やら身の危険も感じる。
 ええと、と頭を巡らせて、なんとか反論。

智「花鶏は僕のことを知ってるのに、それを要求するのはおかしいと思うんだ」

花鶏「智は私の嫁よ。 嫁が妻に用意するのは当然のことだわ。 異論は認めない」

 ふっ、と髪をかきあげる。
 決まった、みたいな顔してるけど別にそんなことないからね。 ただの暴論だからね。

 言わずもがな、今日は二月十四日。
 全国的に言えば、バレンタインデー。
 雪が降ってるからちょっとおしゃれに言ってみれば、ホワイト・バレンタインデーなんてよくわからない風になってしまうけれど。

 まぁ異論も認めないみたいだし、ホワイトデーでもあるなら仕方ないよね。
 自己完結して、溜息を吐く。
 仕方がない。

智「はい」

花鶏「……えっ」

 ことん、とテーブルの上にラッピングしたチョコレートを置く。
 この身であるが以上、手製のものを作ることは叶わなかったから既成品だけれど。
 花鶏の言おうとしてるのは読めていた。
 驚いている花鶏を見て、笑顔で告げる。

智「ハッピー、バレンタインデー花鶏」

花鶏「あ……ありがとう」

 花鶏は動揺しつつもその包を受け取る。
 そしてぼんやりとそれを眺めつつ、わなわなと身体を震わせた。

花鶏「お、おかしい……! 本当なら用意していない智ちゃんにチョコをかけて、そのまま美味しく頂こうと思ってたのに……っ!」

智「やっぱり」

 花鶏が板チョコを沢山買っていたのは知ってた。
 だから多分そういうことだろうなぁという予想を立てて置いたのだ。
 得てしてその読みは当たって、無事に回避できたみたい。

花鶏「や、やっぱり……!? 智ちゃんはわたしをぬか喜びさせたの!? わたしを騙したのね!?」

智「騙してないでしょ」

 強いて言うなら、花鶏が勝手に勘違いしただけだ。
 しかしそれでも僕をチョコがけにできなかったことが悔しいらしい。

花鶏「ぐぬぬ」

智「ほら、学校に連絡するから受話器貸して」

花鶏「ぐぬぬ……!」

 何度も何度も唸りながら、若干恨めしそうに僕を横目に見つつ受話器をとりに席を立つ。
 そこまでやりたかったのか……と思いながら、窓の外を見る。
 曇りでいつもより暗いはずなのに雪のお陰でそんな気は全くしない。
 こんこんと白の雨が降り、そして積もり上がっていく。
 しばらくして、花鶏が戻ってくる。

花鶏「智。 学校に連絡しておいたわよ」

智「えっ、別に電話貸してくれるだけでよかったのに……」

花鶏「構わないわ、そのぐらいなら」

 立ち上がっている僕にツカツカと近付いてくる花鶏。
 もしかして強硬にでるつもり?と身を固める僕に花鶏は直前で立ち止まり、それを差し出した。

花鶏「はいこれ」

智「えっ……これ、って、チョコレート?」

花鶏「ええ。 予定とは違ったけど、智がくれたのにわたしがあげないわけにはいかないわ」

 少しばかり顔を赤らめて言う花鶏。
 透明の袋にラッピングした、手作り感の溢れるトリュフチョコ。
 きっと、花鶏もチョコレートを作るのはあまり経験がないだろう。 僕やるいと同じで貰う側だろうから。
 だから、慣れなくとも、それでも作ってくれた花鶏に、僕はとても嬉しくなった。

智「あはは……ありがとう、本当に」

花鶏「ええ、どういたしまして」

 次の瞬間にはその表情を隠してすました顔をする花鶏。
 それでも頬の赤みはまだ消えきってない。
 そんな花鶏に、僕は切り出す。

智「ねぇ、花鶏。 今日はさ、放課後ここで皆とパーティする予定だったじゃない?」

花鶏「ええ、そうね。 それがどうかしたの?」

智「それが終わって、まだ時間あったら……その、いいよ。 アレしてあげても」

 花鶏が頑張って作ってくれたチョコ。
 それに対して既成品だけじゃ、あまりにも吊り合わないだろう。
 瞬間、ほんの一瞬だけ驚いた表情を浮かべた花鶏は僕を抱きしめてきた。

花鶏「本当ね智!? 実は嘘だったとかはなしよ!?」

智「ちょっと花鶏! パーティ後の話だからね!」

 そう言っても、花鶏は離れない。
 それどころか抱きしめる力を強くした。
 決して僕を逃がすまいとでもいうかのように。

花鶏「むりムリ無理! 今からありがたく頂かせて貰うわ!」

智「あっ、ちょっと、花鶏そこはやっ……!」

 からん、と松葉杖が倒れて音を立てた。
 この不自由の身、花鶏に対向する術は果たして、僕にはなく。

 そして、爛れた明け方は暮れていったのだった――――。

 訂正、>>410
 そこまでやりたかったのか……と思いながら、窓の外を見る。
 ↓
 そこまでやりたかったのか……と思いながら立ち上がり、テラスに近付く。


 花鶏だからね。 当然こうなるよね。
 チョコレートプレイの話は書く予定無いです。 念の為。

 それでは、また。

智「…………」

 僕は言葉を持たなかった。
 あまりにも、打ちのめされてしまったから。

 凄惨な真実に。
 残酷な現実に。
 無慈悲な世界に。

惠「智」

 惠が僕を呼ぶ。
 これ以上、まだ何かあるのか。
 そう思った瞬間、僕は惠から非情な問いを突きつけられる。

惠「君が、選んでくれないか」

 ――――――――――ああ。
 これは、罰なのだろうか。
 この呪われた身で、誰かと友達になって、その誰かを助けたいと、そんなおこがましいことを思ってしまった僕への。

佐知子「惠さんっ! それは……っ!」

惠「いいんだ、佐知子」

 立ち上がり、その判断を咎めようとする佐知子さん。
 その佐知子さんも、惠が抑える。

惠「いいんだ。 智は、僕の力になりたいと言ってくれた。 それを共に背負いたいと言ってくれた」

 だから、僕が決める。
 命を奪うという選択肢。 それを決めてきたのはいつだって惠だったはずだ。
 ならば、この選択で想うのは紛れも無く惠の抱いたそれと同じ。

 惠は僕を憎悪と安堵を孕んだ瞳で見る。
 薄々と、感付いているのだろう。
 僕がどちらを選ぶのかを。

 惠は、沢山の人の命を奪う。
 しかしそれで、その何倍もの人々が結果的に救われる。

 惠が死ねば、奪われる命は助かる。
 しかしその犠牲で作られた世界は、更なる犠牲により続いていく。

 単純な足し引きだけでは決して測れない。
 道徳や法で言えば惠は絶対に許されない。
 けれどそれで助かる人も絶対、確実に存在するのだ。

智「……っ、僕、は…………!」

 選べない、なんて。
 そんなことは言えなかった。

 既に僕は一度選んでしまっているから。
 望んで、引き金を引いた。
 僕らの世界を守るために。

 喉がカラカラに乾く。
 絞り出した唾を必死で飲み込んだ。

智「僕は……僕、が」

 僕が、選ぶのは。
 僕が、望むのは。
 僕が、願うのは。

 →惠

智「僕、は……惠に、生きていて欲しい」

 それは、つまり。
 これからも多くの人間が殺されるのを許容し。
 そしてまた、惠が苦しんでいくのを選んだ、ということ。

惠「……後出しの情報になるけれど、〈呪い〉と〈才能〉は表裏一体の存在だ。 そしてそれを解く為には全ての痣持ちが必要となる」

惠「智は、それでも……僕を選んでくれるのかい?」

 初めて聞くその情報に、少し戸惑いつつも。
 それでも僕は、頷いた。
 それを選択したというその重さに、手が、足が、唇が震えながらも。

智「それでも……それでも、僕は……ッ!」

惠「これから一度でも僕が誰かを殺したら、もう智も戻れない」

 惠は何度も何度も確認をするように、僕に問いかける。
 本当にその選択肢であっているのかと。
 間違っていやしないかと。

 惠は、心の底で誰かが止めてくれるのを望んでいる。
 いやもしかしたらその自分の心にすら気付いていて、だからこそ必要以上に問いただすのかもしれない。
 自分では、もうどうすることも出来ないから。

 けれど、僕は首を振る。
 遅い、というのなら。 僕だって既に、手遅れだ。

智「僕だって、人を殺した。 惠だって、それは知っている筈でしょ」

惠「…………」

 あの、人の皮を被った獣共。
 しかしアレだって、紛れも無く人間だったのだ。
 最初の時の事故なんかでは決してなく。 僕らは望んで、あの人達を殺した。

 僕も、それを認めよう。
 あれは人間だったと。 本来なら、奪ってはならないものだったのだと。
 だから、もう手遅れ。
 僕らも、既にどこかの誰かに殺されてもおかしくない立場にある。

惠「…………」

 惠は目を閉じた。
 たっぷりと数分の刻を経て、珍しく大きな溜息を吐いた。

惠「佐知子。 どうやら僕の命運は、まだ尽きていないらしい」

佐知子「惠さん……!」

 惠の瞳の色は、未だ変わらず。
 きっと過酷な道を強いた僕を恨むだろう。 憎むだろう。
 そして同時に、生きていくことに大きな感情を抱くだろう。

 それでいい。
 それがいい。
 そうして僕に激情を持ち続けるということは、生きているという証明になるのだから。

惠「智。 少し前の寝屋で、話したことを覚えているかい?」

智「……うん。 勿論」

 まだ、僕らが繋がって間もない頃。
 この屋敷に皆で泊まった時に、少しだけ話をした。
 
 ビギナーキラー。 そして、それを意図せずして葬ってしまったこと。
 それに対して、僕はこう答えたはずだ。
 『因果応報』だと。

惠「……僕は、今こそその言葉を信じるべきなんじゃないかと思う。 智。 僕は君を信じてもいいのだろうか」

 因果応報だというのなら、きっと惠にも、そして僕にもそれは巡ってくるだろう。

 ――――それでも。
 それでも、だ。

 いつか巡ってくるサダメがあったとしても、それは決して今じゃない。
 だから、僕は大きく縦に頷いて、こう返すのだった。

智「信じてほしい。 僕が、惠を信じるように」

 長い、長い一晩。
 それはまだ、始まったばかりだった。

    第五幕
    Chapter

  41 問答の果て
  42 ??? ←次ここ


 本日はここまでです。
 もうすぐこの√は終わる予定……ですが、夜子√と違って尻切れ感の半端ない終わりになるかと思います。
 まぁ、大体は原作の方でやってますからね……

 次回は……とりあえず、近い内に。
 それでは、また。

 あれから、時間が経った。

 五年ぶりのテロ事件に、ここ近辺は大騒ぎ。
 規模の割に被害は少なかった、とはいったものの大勢の人が死んだ。
 一番規模の大きかった、『新都心の戦争』。
 そもそもの切っ掛けは、事件の首謀者として逮捕されたテロ集団の内輪揉め、ということになっている。
 少なくとも、表向きは。

アヤヤ「コミュ同士の戦争、かぁ」

 新しく建てられた慰霊碑を流して見ながら、ぼやく。
 繰莉先輩ちゃんのいうことには、そういうことらしい。

繰莉『『円卓』に、『レギオン』に。 それからその他もろもろ、揃いも揃って闇に葬られましたとさ』

 自分たちがこうして無事なのも、ただの偶然なのだという。
 そんな話を聞いて、なんだかよっしーとやるせない気持ちになった。
 被害者とは、何も死亡者を指すだけでなく。 行方不明者も指している。
 瑞和先輩とカゴメ先輩もその行方不明者の一人である。

アヤヤ「探そうと思えば、探せるんでしょうけど」

 人知の及ばぬ力。
 それを私は知っていて、そして持っている。
 その伝手を使えば、きっといつか辿り着くこともできるのかもしれない。

 しかし、だ。

アヤヤ「願うのは、いつもの日常で」

 誰かを倒したり、倒されたり。
 狙ったり、狙われたり。

 そんなのはもう沢山。
 敵だとしても味方だとしても、失われるのは悲しく、辛いことだと身を持って知った。
 それなら主人公でなくとも、ヒロインでなくともいい。
 ただ普通の日常を。 ただ普通の生活を。
 瑞和先輩が、争いから私達を遠ざけた通りに。

「アヤヤ」

 呼ばれ、振り返る。
 そこには我らが友人である芳守南堵ことよっしーがいた。
 携帯で時間を確認する。 待ち合わせ時間に差し迫っていた。

芳守「どうしたの? なんか悩み事でもあるような顔してたけど」

 流石、鋭い。
 知り合ったのは結構最近だけれども、これ以上無いくらいの親友になっていた。
 背負っているものが同じ、というのもあるのだろうけれど。
 その類友の問いに対して、一瞬だけ考えた後。

アヤヤ「んーん、なんでもないっ!」

 手を繋ぐ。
 瞬間、何かが私達の間を走る。
 それは、ここ最近たまに感じているもので、それは一種の救難信号でもあって。

アヤヤ「――今日はどこいこっか!」

芳守「――うーん……アヤヤの行きたいところでいいよ」

 けれど、私達はそれに見てみぬ振りをして、日常へと帰る。

 私達は、これでいい。
 いつか、この日常が壊される時にはきっとそれと戦うのだろうけれど。

 しかし、今はこれでいい。
 主人公でもなく、ヒロインでもなく、サブメインクラスですら無い。
 ただの脇役で、十分だった。

 空は高く。
 そして雲もまた、高い。
 そんな当然の事実を確認して、皆元るいは呟く。

るい「お腹へったー」

 それを示すように、その腹の虫がぎゅるるるると鳴る。
 大の字に寝っ転がっても誰も咎めないのは、ここはビルの屋上で、自分たち以外誰もいないからだ。
 それでもその行動を咎めるものは居るわけだが。

伊代「まったくもう、あなた最近いつもそれじゃない」

茜子「そうして腹ペコ魔神ルイ三世は一日に一度腹の音を鳴らすことでその能力を高めているのであった」

花鶏「何の儀式よ」

 やれやれと言った様子で、花鶏は溜息を吐く。

こより「たはは……でもでも、この時間だとるいセンパイでなくてもお腹すいてきますよね。 央輝センパイもそう思いませんか?」

 屋上の隅、少しばかりある日陰の中から足を踏み出さない黒装束の少女にこよりは振る。
 普段の彼女なら一蹴するだろうが、今日は気分がいいのか央輝は少しばかり考えた後に口を開いた。

央輝「そうだな……だがアタシも結構食べるとは思うが、ソイツは流石に、少し異常だ」

 その能力もな、とは心の中でだけ呟く。
 生き残る為に苦労して身につけた強さと互角に戦う能力は、彼女にとって脅威だった。
 無論、敵に回したくない、というだけであり勝てない、とは言わないが。

 朱く染まった空を伊代も仰いで、溜息を吐く。
 流れを変えるつもりで話題転換。 しかし話題に上がるのはいつもの事。

伊代「それにしても……今日は、あの娘達来なかったわね」

花鶏「そうね。 きっと、色々何かしているんでしょうけど」

 呪いを解こうと躍起になっていたのは、半年程前だろうか。
 花鶏の持っていた本……『ラトゥイリの星』に書いてあった通りに八人の呪い持ちを揃えた。 そして、儀式を行った。
 しかし、それは解けなかった。

 その時から智と惠は月に一度か二度、こうして溜まり場に集まらない時がある。
 一番呪いを解きたがっているのはこの二人だというのが同盟の共通認識で、そのために何かしているのだろうと踏んでいた。
 勿論呪いが解けることに越したことはないし、るいを始めとする六人もちゃんとした条件が揃えば呪いを解こうとするのだろうが。
 いっそ、このままでもいいかと思っているのは自分だけではないだろうと花鶏は思う。

花鶏「……ま、いないものは仕方がないわ。 こうなったら……」

 と、言い終わるや否や。
 花鶏は伊代に背後から抱きついた。

花鶏「このおっぱいで我慢することにするわ!」

伊代「ちょっ! まっ、またっ!?」

こより「はわわ……伊代センパイ、御労しや……」

央輝「全く、こいつらは……」

 狙われないように距離をとるこよりと央輝。
 我関せずと猫と戯れている茜子に、未だ(無論、食事をしていないので当然だが)回復しないるい。
 きっと来ないだろう助けに、伊代はそれでも嘆く。

伊代「み、見てないで誰か助けてー!」

 少しばかり木霊したその叫びに、外界で気付くものは何もなく。
 そうして少女同盟の日は暮れる。

 そして夜が来る。
 どこかの馬鹿がやらかした尻拭いに、夜に紛れる黒の竜は吠えた。


 ■■■■■■■■――――――!!


 七対十四の赤の瞳を煌めかせ、一瞬にして相対したアバターを戦闘不能に追い込んだ。
 破壊寸前まで追い込まれたアバターを見て恐怖した接続者は直ぐ様撤退をする。

 これに懲りたら二度とするまい、というのは暁人の弁だ。
 それに同調するのは紅緒ぐらいのもの。
 彼女と息のあっていたロンドはゴタゴタで少し擦れたのか、面倒臭いと口にするようになった。
 その他のメンバーも殆ど同意見。 しかしながらそれでも何かやるときにぼちぼちと集まるのは、暁人の人徳か何かだろうか。

 いや、とカゴメは頭を振る。
 きっとコレが類を見ない程の大馬鹿者だからだ、と結論付けた。
 放っておいたら何をするのかわからない。 だから見張りが必要だとでも考えているのだろう。
 全く世話の焼けるパートナーだ、と彼女は思った。

 久々に全員が集ったこともあって、この日は問題が解決した後も散り散りにはならない。
 とはいっても、どこぞの同盟とは違って全員が仲良く出来るというわけでもないのだが。
 やはり一番話すのは紅緒だ。 やれ何があった、やれ何があったと瑣末な出来事を報告する。
 とりとめのない話。 どこかで聞いた話、根拠の無い噂話。

 そして。
 都市伝説の話。

紅緒「そういえばさ――――」

 最近、黒装束の男女の二人組が出るらしい。
 そうして眼が向くのは暁人とカゴメだが、その内容を聞くにどうやら違う人間のことを指しているようだった。

 曰く。
 彼らは死神らしい。

 曰く。
 彼女らは罪を人知れず裁くらしい。

 曰く。
 彼、そして彼女は朱い竜を連れているらしい――――。


 きっと。
 いつか、些末を順番に片付けていく内に、追いつくのだろう。
 それは近い未来か、或いはずっと先のことか。

 しかし恐らく、そう遠い日ではないように思える。
 その『彼女ら』が予想通りの人物であったとしても、なかったとしても。
 その時はその時で、また唱えるのだ。


 それでも。


 ――――それでも、と。

    第五幕
    Chapter

  41 問答の果て
  42 未だ見ぬ終幕

  99 その後の話


 惠√その1終わり、です。
 夜子√でもチャプター99はありましたが、多分両方とも『仲良く』してるシーンだと思います。
 まぁ、そこら辺についてはおいおい。
 とりあえず今後の事も含めて、明日来ます。

 来ましたです。

 惠√その1はこんな感じの終わりでした。 チャプター42のアヤヤ視点、同盟視点、暁人ら視点を合わせて何があったか想像すると、多分大体あってます。
 呪い解かず√はどうしてもFDのものと似たりよったりになってしまうので……ごめんなさいです。

 ちなみに、その2とその3へのターニングポイントは前半に一つと後半に一つ。
 ぶっちゃけるとその2は呪い解く√でその3はコミュ関連で一騒動の予定でした。

 さて。
 それでは、安価タイムです。


 ※おしらせ※
 Save1とSave3が統合され、Save2のストットは消去されました。

 Save 惠ルート、夜子ルート Clear
     (New Game)


 Chapter Select

 EXTRA

  EXTRA1
  『真雪と智のアイドルユニット』 Clear

  EXTRA2
  『とある未来の小話』

  EXTRA3
  ???

  EXTRA4
  『和久津姉弟のとある一日』 Clear

  EXTRA5
  『真耶「智が相手してくれないから安価で未来を導く」』
  (二周目)

 どれを選びますか?
 >>441

EXTRA5

 ※注意※
 ※行動安価によって動きます。(最大一日三回です)※
 ※安価によってはキャラブレイクする恐れがあります※
 ※やり直し要求回数は三回までです※

 ※真雪先生からの注意※
 ※好感度☆6以上で数日間放置すると●(爆弾)が出現します※
 ※制限時間(厳密には制限日数)があります※

 あと個人的に補足。
 前回は安価回数が二回及び一回だとボーナス安価で好感度が上がりましたが、そのシステムを今回は廃止します。(再開未定)

 細かいところは、思い出したら追々付け足していきますです。

 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――



「ふぅ」

 彼女の溜息で、目が醒めた。
 ここに来る時は、初めての時以外は大抵そうだ。
 病的なまでに狂った瞳をちらとこちらに向けて、また息を吐く。

「また、来たのね」

「丁度よかったわ。 また退屈していたところだったから」

 思い出すのはつい先日のこと。
 いや、ここにおいては時間という概念があるのかも怪しいが。
 また、あの退屈しのぎのゲームを行うというのだろうか。

「刻は未だ溢ちず」

「未来は今なお訪れず」

「それなら、こうして欠片を紡ぐのも許されるでしょう?」

「う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 嗤う彼女に、返す言葉はない。
 反論をするつもりなどはないが、したところで無意味だということもわかっている。

「それじゃあ、始めましょう」

「退屈しのぎの、道標」

 あくまで彼女は、これを退屈しのぎだというらしい。
 それならば、その期待を裏切ってやろう。
 何度も繰り返して、望むべく未来を掴みとってやろう。

 例え、彼女がいくら諦めの言葉を投げかけてきたとしても。

 視界が、揺らぐ。
 足元が、覚束無くなる。
 そして視界が反転して――――



 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――

 ※お知らせ※
 『強くてニューゲーム』を行うことができます。
 前回までの好感度のみをそのままに、一日目から始めることができます。
 前回の最終好感度はこのようになっています。


 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆
  
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆


 強くてニューゲームを行いますか?
 >>446

Yes

6以上のローテーションとならなきゃいいけどww

 強くてニューゲームを行います。

 また、過去に見たENDは、
 茜子Normal END:『嘘のような、本物の気持ち』
 END:『世にも下らない結末』
 です。

 それでは、今日は一日目だけ行います。

 ■一日目 月曜日■


 ちゅん、ちゅん、ちゅん。
 小鳥の囀りが、僕の寝起きの耳をくすぐる。

智「っ、ぁ――――」

 温かい布団の中で、ぐっと伸びる。
 そしてまた眠りたくなる衝動を抑え、布団から這いずり出た。

智「今日も、いい天気」

 カーテンを開けて、朝日を浴びる。
 ベランダの手すりに掴まっていた雀たちが一斉に飛び立っていった。

 週の一番初め、気合を入れるべき日だ。
 さぁ、頑張っていこう!


 ↓1

 伊『代』……

 ごめんなさい、注意書き抜けてました。
 一番始めの安価は『行動安価』です。
 前回の例ですと、
 『宮と何時かしたデートの約束があった』
 『ピンクポッチーズで買い物』
 『エロゲープレイ』
 『性欲が溜まってるので一度抜く』
 などです。
 どうぞご理解頂けますよう。

 それでは改めて、ID:8VaBPY/Z0さんどうぞ。

 えー、十分経過で再指定がないので最安価です。

 ↓1

 学校を終えて向かう先は、駅裏の喫茶店。
 以前は寂れた携帯屋だったそこは、知る人ぞ知る隠れた穴場となっている。
 運良く一番奥の、人目につき辛い席を確保できてほっと一息。

 いつもなら溜まり場のどちらか、或いは両方に向かうのだけれど今日はちょっとした用事があるのだ。
 携帯を開いて、メールをもう一度確認する。
 差出人は伊代。 送信日時は律儀に十二時半と、昼休み中だ。
 噂通りのミニスカートを纏ったメイドウェイトレスさんからコーヒーを受け取って、その中身が半分を過ぎた頃、ようやく待ち人が現れる。

伊代「ごめんなさい! 先生に呼び止められちゃって」

智「ううん大丈夫、僕も今きたところだから」

 目ざとい伊代ならきっとコーヒーの残量に気付くだろうが、別にいい。
 きっと今の伊代も咎めはしないだろう。
 無意味な嘘だけれど、適度なそれは人間関係を円滑にするための潤滑油なのだ。

智「それで、話ってなに?」

伊代「ああ、うん。 えっと……あっ、すいません! この娘と同じものと、あと苺のパフェお願いします!」

 偶然隣の席まできたウェイトレスさんに注文を告げて、伊代は笑う。

伊代「どういう店でもそうだけど、場を借りてるのに最低限のものだけしか頼まないのってわたし許せないの。
    ほら、例えばファストフード店とかの無料チケットあるじゃない? それだけを頼んで他の何も落とさない人ってどうかと思うわ」

 時と場合によるけれど、解らなくもない。
 伊代ルールは割と細かいところからこういう道徳的(?)なところまで及ぶから侮れない。

伊代「それで……ええと、なんだったかしら」

智「伊代が僕を呼んだんじゃない」

伊代「ええ、そうなんだけど……そう! あの娘の話!」

智「どの娘のことさ」

 伊代の〈呪い〉については僕は知っている。 だから固有名詞を言え、だなんて無茶は言わない。
 けれど何のヒントもなくあの娘だなんて言われても、わかれと言う方がムリな話だ。
 伊代もそれをわかっているのか、もどかしくジェスチャーしつつ、言葉をひねり出す。

伊代「あの……わたし達の仲間の、ほら、すぐセクハラしてくる」

智「え? ごめんわかんないからもうちょっと詳しく」

伊代「だから、ほら! たまにベレー帽被ってて、クォーターで、銀髪で髪の長い……」

智「ん?」

伊代「だから!」

 何度も聞き返す内に、思わず笑いが漏れる。
 そこまで必死でジェスチャーしていた伊代もようやく僕が笑っていることに気付いて、ジト目で僕を見遣った。

伊代「……あなた、わざとやってたわね?」

智「ごめんごめん、必死になる伊代が可愛くて」

伊代「……もう」

 くすくすと笑う僕に、顔を少しばかり赤らめてる伊代。
 伊代は丁度運ばれてきたコーヒーを、誤魔化すように口に運んだ。

智「それで、花鶏がどうしたの? 変なことでもされた?」

伊代「別に、そんなことは……されてるけど。 というかそのことについてなんだけど」

 話を聞くに、伊代は花鶏のセクハラにほとほと参っているらしい。
 このことを相談するのは、被害者である僕か、時点でこよりにしようと思っていたそうだった。
 確かにるいや茜子は相談向きじゃないし、花鶏に至っては本人だけれども。

伊代「それでもう、あの娘ったら隙を見るなりいつもいつも……」

智「うんうん」

伊代「だからなんとかしてやめてほしいんだけど、あの娘って人に言われてやめるような人じゃないじゃない? だから……」

智「そうだねー」

 女性が愚痴を漏らす時というのはただ話を聞いて欲しいだけと聞いたことがある。
 意識下でも無意識下でも、結論は既に自分の中にあり、それを整理したりもやもやを吐き出したりするためにしているのだと。
 だから適当に相槌をうったり、相手の言葉尻を鸚鵡返しにするだけで会話が成立する、らしい。
 カップル間では否定したりするのはご法度。 僕と伊代は別にそういう関係ではないけれど、変に波風起こすこともあるまい。

 そう思いながらちらと、窓の外へと視線を移して。
 そこにある見知った姿が目に入った。


 ↓1

 ふわふわと宙に舞うツーテール。
 見間違うべくもなく、同盟最年少のマスコットこと、鳴滝こよりだった。
 若干曇っているガラス越しに、ばっちりと目があう。
 少しばかり驚いた様な表情を浮かべた後、満面の笑みで僕に笑いかける。

智「……そうだ、いいこと思いついた」

伊代「それで……ってえ? な、なに?」

智「ちょっとまってて! すぐ戻るから!」

 動揺する伊代をよそに、直ぐ様僕は表に飛び出しこよりを連れて戻ってくる。
 僕一人とは思っていなかったようだがまさか伊代と一緒だとは予想していなかったようで、こよりは驚いたように伊代の名前を呼んだ。
 伊代もこよりが近くいたことに驚きを隠さない。
 こよりの分と、僕のお代わりの分も追加で注文して、三人で席に着く。

こより「そりで、ともセンパイと伊代センパイはこんなところで一体何のお話を?」

智「実は、花鶏被害者の会を結成することになりまして」

こより「おぉ! なら、鳴滝も仲間に入れてくださいませ!」

智「あはは、だってさ伊代」

伊代「ええ、別に構わないわ。 とにかく、あのセクハラに一泡吹かせるわよ!」

 おー、と三人分の声が静かな喫茶店内に響く。
 そうして結成された花鶏被害者の会最初の活動は、注意しに来たウェイトレスさんに頭を下げるところから始まったのだった。

 鳴滝こより の好感度が少し上がりました。
 白鞘伊代 の好感度が上がりました。

 一日目を終了します。

 一日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆
  
 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆

 (リストの人数は随時更新します)


 やっぱり平日だからか、人少ないですね。
 いえ、そもそもここは住人自体あまりいませんけれど……

 週末にスレ更新確認する人もいるかもですので、次は日曜日に来ます。
 それでは、また。



張り付きがいないだけで読んでるのはそこそこいそう
コミュのメンツも出していいんだよな?

 >>460
 はい、コミュ面子もおkですよー


 自分が予想しているよりかは見てくれている方がいるようで、嬉しい限りです。
 それでは、十時を目安に始めます。

 ちなみに朝(一日の始め)のシーンは前回よりの使い回しですので悪しからず、です。
 前回の日時を超えたらまた新しいのを書かざるを得ませんが。

 それでは始めますです。

 ■二日目 火曜日■


 シャッ、とカーテンを開ける。
 朝日が差し込み、僕は思わず手でそれを覆った。

智「今日もいい天気ー」

 晴れだと、なんとなく嬉しい気分になる。
 そうだ、たまには布団を干そうかな。 干すだけで結構良い感じになるし。
 そういえばよく言うお日様の香りって、ダニとかの死骸のにおいらしい。
 ……そんな豆知識は丸めてぽいだ。

 そんなこんなで布団を干した僕は服を着こむ。
 今日も何かあったような。


 ↓1

 来る放課後。
 ぽかぽか陽気で眠くなっていく頭を振り、街へと繰り出す。
 一応校則には帰宅時の寄り道は禁じられているけれどそんなのはお構いなし。
 いいところのお嬢様である宮和ですら守っていないのだから、無いのと同じだ。
 そもそもとして、住まいが市内出ない人もいる。 それに混じって駅前まで出てしまえば、もはやなんてことはないのだ。

智「それにしても、いい天気だなー」

 朝からずっと続いている快晴空模様。
 風もいい感じに流れていて心地良い。
 それでも小動物には厳しいのか、路地裏の日陰には猫が丸くはなってないで、ぐにゃりと横たわっていた。

智「お?」

 猫は別に嫌いじゃない。 寧ろ家の近くにいたらミルクを献上するぐらいには好きだ。
 しかし転がっている猫を見て撫でたいと思ったのでは決してなく、それは見知った猫だったから。
 近づいて、しゃがむ。 顔を覗き込み、ゆっくりとまばたき。

智「君は……確か、メガロガルガンだっけ?」

 茜子親衛隊(僕称)の一匹。
 名前は全員覚えているわけではないけれど、三匹程度なら覚えていた。 その内に一匹だ。
 そんな彼(彼女?)は僕を確認して同じくまばたきを幾度か。
 そしてのっそりと起き上がって、一度鳴く。

智「……もしかして、ついて来いとか?」

 猫は存外に賢いらしい。
 人生に一度だけ喋れるとか、飼い主の身代わりになってくれるとか。
 色々オカルティックな噂もあるけれども、賢い猫なら喋るぐらいはしそうなものだ。

 僕の言葉には鳴き声すら返さず、そして路地裏へと消えていく。
 まぁ急ぐ用があるわけでなし。 僕は気まぐれで、メガロガルガンを追いかけることにした。

 たまに日の差し込んでいる路地裏。
 風が吹き抜けて涼しい。 これは猫達が好むのも理解できる。

 見失わないように早足で後をついていくと、ちょっとした広場に出た。
 なんだかゲームとかだとちょっとしたイベントのありそうな場所。
 というか実際あったなーと想うのは皆と出会った時のこと。
 まさか街の裏側に触れることになるなんてあの頃は思ってもいませんでした。

 それはさておき。
 そこには見知らぬ女子生徒がチンピラもどきに身売りされかけているなんてことは決してなく。
 見渡すかぎりの猫ネコねこ。
 そして、人が一人。

「にゃー、にゃー」

 僕の中で、猫のイメージは決まっている。
 ずばり、茜子だ。
 犬といえばるい。 兎と言えばこより。 そのレベルで猫と言えば茜子。
 なので、少しばかり驚いた。

「にゃ、にゃにゃー……にゃ?」

智「ええと……」

 小柄な体躯。
 身長の半分はありそうな、ウェーブのかかった長髪。
 顔にはピンクの円縁メガネをかけていて、総じて見ると世界中で流行ったハリウッド映画に出てくる魔法使いに少し似ている。

 しかしながら、だ。
 僕には決して、そんな知り合いなどいなく。

智「……どちら様?」

「そういう君は、不思議の国ならぬ路地の裏のアリスちゃん?」

智「そんな外国被れな名前じゃないんだけど」

「えー可愛いよ? 最近流行りのアイドルをプロデュースする携帯ゲー奴にもいるよ?」

智「そういう問題じゃなく……」

「でもさ、近頃はいろんな名前の人がいるからね。 アリスっていう日本人がいてもいいと思わない?」

智「まぁ、それは確かにいるかもしれないけど……」

「だから、君はアリスちゃんね」

智「なんでさ!?」

 会話のドッジボールだ。
 掴みどころがない。 セオリーが通じない。
 惠よりも酷い。

 そして気付いた。
 彼女はにまにまと楽しそうに笑っている。
 つまり、わざとだ。
 会話のペースに巻き込んで、いいようにしようとしているのだ。
 それならば、こちらも合わせるまで。

智「それじゃあ、あなたはチャシャ猫さん?」

「東へ西へ、北へ南へ。 行きたいところにご案内」

智「それなら猫さん。 行くべき道は、どちら様?」

「知らぬ、存ぜぬ。 そちらは畑違いだよん」

 心底どうでもいい、ね。
 なんだか煙に巻かれた気分。
 出遅れた分こっちの判定負けってところか。

智「それでチャシャ猫さんは何してるの?」

「んー、退屈絞り」

智「なにそれ」

「にゃんこには休息が必要なのにゃあ」

 ころりと転がると、猫が群がる。
 なるほど、サボりらしい。

 なんとなく茶番劇を繰り広げて見たけれど、一応知らない人だ。
 僕はこのまま立ち去ってもいいし、同じように寝転がってもいい。


 ↓1

 猫さんなるにゃあが何かわからねぇwww
 解説くださいwww

 僕も同じように、彼女の横にころりと転がった。
 すんすん、と鼻を動かして僕の匂いを嗅ぎに来る猫の頭に手を伸ばし、カリカリと撫でる。
 甘えるように鳴く猫に、僕も同じように鳴き声で返す。

智「にゃー」

「にゃー」

 にゃあ、にゃあ、にゃあ。
 大合唱が路地裏に響くけれど、咎める者はなく。
 どうしようもないくらいに、平和だった。

智(あー……猫、いいなぁ)

 底抜けの平和を味わって、思うのはそれだった。
 鳥になりたい、とか貝になりたい、とかいうけれど、生まれ変わったら猫になるのもまた一興かもしれない。
 そうして暫くの間にゃーにゃーして過ごしていると、不意に隣に横たわっていた彼女が立ち上がる。

智「……休息終わり?」

「まぁね。 繰莉ちゃん、こう見えても忙しい人だから」

智「そっか」

 繰莉ちゃん、と名乗ったチャシャ猫さんはぐにーと背伸びする。
 その仕草もまた、猫っぽい。
 多分、引き止めても無意味なのだろう。 猫は自由気ままなのだから。
 最後に振り返って、また悪戯っぽい笑みを僕に向けた。

「そんじゃあね、アリスちゃん。 道に迷ったら超・探偵にお任せあれ」

 よくわからない言葉を残して去っていく彼女を見送るように、僕はのっそりと起き上がる。
 結局最後までよくわからない人だった。

 けれどまぁ……機会があれば、きっとまた会うこともあるのだろう。
 僕はまた寝転がって、茜子が僕と同じように案内されて来るまで猫達と戯れていたのだった。

 蝉丸繰莉 の好感度が上がりました。

 二日目を終了します。

 念の為。
 三日目いきます?

 ■三日目 水曜日■


智「今日も張り切って行こう!」

 拳を天井へ掲げ、気合を入れる。
 たまにはこういうことをしないと、本気で自分が男であることを見失いそうになる。

智「たまには一日中男らしく振舞いたいなぁ」

 勿論そんなことをしたらまず呪いを踏む。
 そして隣人、任甫さんに見つかってきっと監禁ルートだ。
 怖い。

智「それじゃ、今日も元気に出かけることにしましょー、おー」

 自分で返事を呼び、そして自分が返事をする。
 これぞ、最強の自作自演!
 ……はぁ。

智「いってきまーす」

 兎角、僕は家をでるのだった。


 ↓1

るい「おなかへったよ~トモ~」

 縋るようにして僕に抱きついてくるるい。
 どうしてこうなっているのかといえば、るいがベースの演奏を終えたところに丁度僕が通りかかったからに他ならない。
 るいの燃費は悪い。 いや、あの化け物じみた身体能力を常時発揮しているとすればあながち悪いとも言い切れないのだけれど。
 それならベースをやめればいい、なんて酷いことは言えない。

 未来と約束できないるいは、何かを継続して続けることは難しい。 僕らと毎日顔を合わせるのすら奇跡的なのだ。
 そんな中見つけた趣味と引き剥がすことなんて僕には出来ず。
 しかし、だからといって何かをした後すぐに腹ペコになるるいを保護し続けることも僕には難しいのだ。

智「ほら、るい。 はなれてはなれて」

るい「むりだよーもう動けないー」

 さっきまでベース引いてたんじゃないの?
 動けないっていってるのに僕に抱きついてくるこの力は何?
 なんて、色々とツッコミたいことはあるけれど。

るい「きゅーん」

智「……はぁ」

 一応花鶏の家に住んでいるとはいえ、野菜中心の生活は厳しいだろう。
 仕方がない。 たまにはおごってあげよう。
 このまま抱きつかれているリスクと天秤に掛けて、僕は身の安全をとった。

智「そういえばさ、るいの腹ペコ度ってどういう風に決まってるの?」

るい「え? どーいう意味?」

智「えっと……単純にお腹いっぱい食べたら、野菜とお肉とどっちのほうがもつのかなって」

るい「んー……わかんない。 特に考えたことなかったなぁ」

 予想通りの解答が返ってきて、僕は苦笑する。
 単純に燃費が違うだけなのだから、多分よりカロリーの高い方がいいのだろう。
 だとしたら。

智「るいって辛いものとか大丈夫だよね?」

るい「うん、大丈夫だよ」

智「ん。 じゃああそこにしようか」

 香ってくるのはスパイシーな香り。 嗅ぐだけで涎が出てくる。
 高カロリーの食事の代表格といえば、これだろう。
 なにせ、太っている人はこれを飲み物とまで揶揄するほどなのだから。

智「カレー屋さん。 たまにはいいんじゃない?」

 チェーン店ではない、個人店にしては中々に広い店内。
 そこに入っただけで匂いが倍増した。
 そして同時にるいの腹の虫も鳴り響く。

「いらっしゃいませーご注文どうぞ」

智「あ、少し待って……」

るい「一番大盛りの奴で!」

 席についてメニューを見る前に、るいが宣言する。
 すると店員さんは少しばかり驚いたような表情をし、

「一番大盛り、といいますとあちらになりますが……」

 壁を指すと、そこにはでかでかとしたイラストと共に煽り文句が。
 『十人前カレー! 三十分以内に食べきったら一万円!』
 その値段も勿論、一万円。
 るいもそれを確認して、元気よく頷いた。

るい「それで!」

 その威勢の良さに、店内がざわめく。
 まじかよ、正気か、無理だろ、などなど。
 恐らく、数多の挑戦者達が挑戦し、そして倒れていったのだろう。
 けどまぁ、るいなら十人前程度食べきれるに違いない。

智「それじゃあ僕は普通のチキンカレーで」

 恙無く注文を終えて、先に出てくるのは勿論僕の注文した品。
 匂いに食欲をそそられていた僕はるいに断って先に頂く。

 一口食べると、カレー独特の風味が口の中に広がった。
 辛さもそこそこ。 食べ続けるのに障害ではない辛さ。
 うん、きっとこれならるいは行けるだろう。

 僕の皿の中が空になる頃、るいの空腹は頂点に達していた。
 当たり前だ。 完全に動けない状態、とは言わないまでも結構な空腹状態でカレー屋に入って十数分。
 るいでなくとも、我慢の限界は訪れる。

 そして僕の食べ終えた皿が下げられると同時、店内は戦慄する。
 というかるいが注文してから、誰一人席を立った人はいなかった。
 恐らく、久々に現れたチャレンジャーを見たいと思ってのものだろうと僕は結論づけていた。
 しかし、それは甘かった。

 店員三人によって運ばれてきた大皿。
 目算、二十人前はあろうかという量。
 採算などきっと元から考えていないそれにるいを知っている僕すらも驚愕する。

「また量増えてやがる……」

「前は十五人前ぐらいだったよな……」

「えげつねぇ……」

 囁き合う客達に混じって、店長の笑っている顔が見えた。
 食いきれるのなら食ってみろ。
 その顔がそう告げていた。

 二十人前を、三十分。
 如何にるいと言ったって、これは厳しいかもしれない。
 払うのは僕だ。 しかしるいはもしかしたら、僕に払わせなくていいかもとこれを選んだのかもしれない。
 もしそうだとしたら、ムリにでも食べるだろう。 そうして体調でも崩してしまったらいけない。
 そう思って、皿の向こうのるいに釘をさそうとした。
 まさに、その瞬間。

るい「――頂きます」

 るいの眼が、光ったような気がした。

るい「ごちそうさまーっ!」

 機嫌良さそうに店を出る僕ら。
 僕の手には、勝利金である一万円が握られていた。
 るい曰く、もし仮に駄目だったら僕が払うはずだったんだから貰うべきは僕、らしい。

智「それにしても……すごい食べっぷりだったね」

るい「わふっ」

 はにかむるい。
 しかしその彼女の二つ名は正しく暴食王だ。
 なにせるいは、あの推定二十人前のカレーを制限時間の半分ほどで食べ終えたのだから。

智「るいの実績は知ってても、流石に今日のは駄目かと思ってたよ」

るい「んー……いつもだったら、駄目だったかも」

智「えっ?」

 驚いた。
 出来ないことはない、と豪語するるいが駄目だったかも、なんて。
 それも、いつもだったら。
 今日はいつもじゃなかった?

智「じゃあ、どうして出来たの?」

 疑問が、つい口をついて出る。

るい「えっとねー、えへへ」

 るいは照れくさそうに笑った。
 そして、僕の顔を覗きこんで言う。

るい「智ちんにいいところ見せたかったから、なんて」

 多分それは、問いただすまでもなく本心だろう。
 もしかしたら、初めからそうだったのかもしれない。
 僕を逃がすまいと抱きついてきたのも、即座に一番の大盛りを注文したのも。

智「まったく、もう」

 こっちも照れくさい。
 顔を見合わせて、二人して笑った。

智「適当に、散歩しよっか」

るい「うんうんっ!」

 先ほどまでとは真逆の、なんとなく甘ったるい空気。
 僕らはそれにまだ浸っていたくて、夕暮れの町並みを遠回りしていくのだった。

 皆元るい の好感度が上がりました。

 三日目を終了します。

 三日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
●花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆
●茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆



 やることがきまっちゃってると、間に安価を挟む余地がなくて困る。
 いえ、別に全然構いませんのですが。
 というか速度出ないで本当申し訳ないです……

 質問などは随時受け付けています。
 次は、水曜日にします。 開始三十分~一時間前には通知しますが、多分十時ぐらいにやりはじめるかと思います。
 それでは、また。

 システムに関することは出張版真雪先生が教えてくれます。

 ちなみに朝の始めに関する安価についてですが。
 『○○と□□をする』が最も多い選択だと思いますが、『□□をする』だけでも大丈夫です。
 その場合、こちらの裁量により自動でキャラが出現しますが……(例:エロゲーを買いに行って真雪と遭遇)
 無論、安価出す場合もありますが。 まぁ●もありますし、キャラを指定したほうが確実性は高いですが。

 それでは予告通り、十時前後に始めます。

 んでは四日目から始めます。

 補足しますが、朝のシーンで言ってることとと安価内容は別に考えなくてもいいです。
 まぁ平日なら学校行くことが前提にありますけどサボっても問題は特にありません。

 ■四日目 木曜日■


 朝起きて、何か違和感。

智「……最近、何か変な気がするなぁ」

 変には変なんだけど、何が変なのかわからない。
 毎日学校には通ってるし、皆にも会ってる。
 何が変なんだろう……

智「わからないってことは大したことないとは思うんだけどな」

 心に留めておく、程度にしよう。
 とりあえずは今日もやることは沢山あるのだ。
 例えば、隣人、任甫さんの包囲網をくぐり抜けたり。
 例えば、今日も学校でばれない様に通ったり。
 例えば――――


 ↓1

智「どうして……」

 どうして、こんなことに?
 僕は頭を抱えた。
 それも、何故か可愛らしいエプロンを身に纏って。

 元々の発端はといえば。
 南総の料理部の人が何やらコンクールに出るらしい、という話。
 それで外部からの意見を求めていて、白羽の矢が立ったのが僕、ということだった。
 なんでも率直に意見を述べてくれそうだからだそうな。
 これも有名税。 食べるだけで、仮にも料理部だし変なものは出るまいとて了承したのが今朝のこと。

 何故か巡り巡って、僕が料理部の人と料理勝負をするということになっていた。
 僕が引き受けた際に、ポロッと『そういえば、和久津さまは一人暮らしをなさっているのでしたよね』と言ったのも原因だろう。
 しかし料理部の人もどうせなら、となったのが一番の理由に違いない。
 そのせいで見物人もそこそこいる。

 自分で言うのもなんだけど、料理はそこそこに上手だという自負はある。
 だからこそ、逃げ出したかった。
 いいお嫁さんになるだろう。 そう言われるのは避けたい。 いや、もうるいとかには結構言われてるけど。

宮和「和久津さま、和久津さま」

 振り向くと、宮和が同じくエプロンを来て立っていた。
 なるほど、手伝ってくれるらしい。
 僕と同じく、優秀な生徒で通っている宮和と一緒なら仮に料理部と同等に張り合っても不思議ではないという宮和なりのフォローだろう。

 そんなこんなで始まった料理対決。
 僕は名前はしらない白身魚の鱗取りをしながら宮和と相談をする。

智「宮って、料理はできる方?」

宮和「人並みにはできるかと。 和久津さまは」

智「僕は半分趣味みたいなところもあるから」

 朝食はそこそこ、昼食も同等。
 けれど夕食は下拵えもちゃんとする。
 たまに皆がアポなしで来ることもあるから油断できないんだよね。
 それになにより、ご飯は活力だ。 なるべくなら安くすませたいけれど、妥協はしたくない。

宮和「然様ですか。 それで、どのようなものを作りましょう?」

智「うーん」

 趣味全開でいくなら、洋食全開でやりたいところだけれど。
 折角宮和がアシスタントについてくれているんだから二人で作りたい。

智「ここは和食風でいこう。 宮は炊き込みご飯の具の処理をしてもらえる?」

宮和「はい、和久津さま」

 元気よく返事を返してくれた宮和に合わせて、僕も行動する。
 一汁一菜。 メインは魚で、バランスを取るためにスープには野菜多めで。
 それぞれに、あと一工夫欲しいところだけど……

宮和「こうして」

 頭を捻って考えていると、下処理をしている宮和が話しかけてきた。
 素知らぬ表情で、しかし温和な笑みを浮かべつつ。

宮和「こうして和久津さまと一緒に料理をしていると、何やら和久津さまと同棲をしているような錯覚に陥ります」

智「何言ってるの!?」

 いや、夫婦のようなーって言われるよりはまだいいけど!
 それでも同棲って結構吹っ飛びすぎだよ!

宮和「冗談です」

 宮和は目を細めて笑う。
 ポーカーフェイス、とも違うけれど。 宮和の表情は読みづらいの一点だ。
 軽く天然も入っているだけに、尚更。

智「もう……それでも、初めての共同作業には違いないけどね」

 逆に少し意地悪を口走る。
 ちらと顔を覗くと、少しばかり照れを浮かべていた。

宮和「できるなら、毎日でも」

智「はいはい、機会があればね」

 そんなこんなで軽い冗談を交えつつ、作業は進み。
 あっという間に、時間は過ぎていくのだった。

智「今日はありがとうございました」

「いえいえ、こっちも参考になったので。 こちらこそありがとうございました」

 結果は、料理部に軍配が上がった。
 一学生としては頑張ったと思うけれど流石に見栄えというか発想というか、そういうのが一歩及ばず。
 本来の約束通りに正味して、僕なりに感想を伝えた。
 参考になったかどうかはわからないけれど、得るものがあったなら嬉しいかな。

「和久津さん方も、料理上手なんですね。 もしよかったらこれからも料理部に来てくれませんか?」

智「あはは……機会があれば」

宮和「わたくしは和久津さまとご一緒ならいつでも」

 その場の全員が顔を見合わせて苦笑する。
 ごきげんよう、と挨拶を交わして僕らは並んで昇降口へと足を向けた。

智「流石に料理部だったね」

宮和「はい。 彩りもよく、味も申し分なかったです。 あれならばきっと、コンクールも大丈夫かと思います」

智「うん、そうだね」

 勝負に絶対はないから、断言は出来ないけれど。
 僕が見る限り、ハイレベルなものに纏まっていたと思う。
 宮和の言うとおりきっと大丈夫だろう。

智「さて、と。 じゃあ僕はここで」

 道端の分かれ道で立ち止まる。
 宮和は少しばかり首を傾げ、投げかけてきた。

宮和「何か用事でも?」

智「うん。 触発されちゃってね。 料理の本でも見てから帰ろうかなと」

宮和「和久津さまは、不良さま、でございますね」

智「それを言うなら宮だって、たまに寄り道しているでしょう?」

 くすくすと笑いあい、そして距離を開く。

宮和「それでは、ごきげんよう和久津さま」

智「ごきげんよう」

 小さく手を振る宮和に僕も手を振り返し。
 そして、僕は不意に口を開いた。


 ↓1

智「あっ、そういえば!」

宮和「はい、なんでしょう」

 背を向けていた宮和は踵を返して、また僕と向き合う。
 その何かを期待しているような表情をみて、少しばかり躊躇してしまうけれど。
 学校では言えないことだから、忘れないうちに言ってしまわないと。

智「前に宮が貸してくれた……その、ゲームあるじゃない?」

宮和「…………」

 一瞬の空白を置いて。

宮和「いかがでしたか?」

智「面白かったよ! 宮の言っていた通り、絵が常についている小説みたいなものって思って読んだら割と入り込んじゃった」

宮和「それならば、宮も進めた介がありました。 ちなみに和久津さまは、どのヒロインがお好きでしたか?」

智「うーん……皆可愛かったと思うけど、強いていうならあのグランドエンドの娘かな。 一番魅力が引き出されてたと思う」

宮和「なるほど、和久津さまはクールで幼い女の子がお好き、と」

智「なんだかそんな事言われると僕がイケナイヒトみたいなんだけど」

 いや、男の子+女子制服の時点で十分に危ない人なんだけど。
 それはさておきとして。

宮和「それでは次は、つい最近ネットの知人に送ってもらったものをお貸ししますわ」

智「へぇ。 どんなの?」

宮和「なんでも、双子の姉と弟が女学院で他の女生徒を堕としていく話だとか」

智「なにそれ!?」

 シナリオゲーじゃないの!?
 というかどこかで聞いたことあるよそれ!?

 そんなこんなで。
 新しいゲームの所為で、より一層バレやしないかと戦々恐々な日々をこれから過ごすハメになりそうだった。

 四日目を終了します。

 確認です。
 五日目へ行きますか?

 ■五日目 金曜日■


智「眠りが浅い……」

 頭がぼーっとする。
 今日は何故か何度も深夜に目を覚ましてしまった。

智「休みたいなぁ」

 優等生で通ってるわりには、最近欠席の多い僕。
 だから言うだけ。 サボっても誰も咎めはしないけれど、地位を保つためには必要なこと。

智「頭もスッキリしないし、シャワーでも浴びてから学校に行こうかな」

 シャワー室に向かい、寝間着を投げ捨てる。
 長い髪を丁寧に梳かしつつ、さっ、とシャワーを浴びる。
 女の人ってすごい。 髪が長くても毎日ちゃんと手入れしているのだから。

智「最近慣れてきてるけどね……」

 軽く自己嫌悪。
 けれど今日はシャワーも浴びたからそんなのに時間を無駄にしている余裕はない。

 今日も今日とて、頑張って生きよう。


 ↓1

智「少し、遅くなっちゃったかな」

 今日の僕は掃除当番で、少しばかり遅れてしまった。
 急いで、されど優雅に街中を急ぐ。

 さて。
 こうして街を歩いていると、僕は結構ナンパされる。
 無理に誘ってくる質の悪い人も多い。 そんな時に習っていた護身術が役立つわけなんだけど。

「や、やめてください……急いでるんです」

 持っていないとああいう風になるのだろう。
 どこからともなく聞こえてきた、力ないお断りの言葉を、人通りも多いし、きっとそこらのいい人そうなのが助けるだろうと素通りしようとして。

花鶏「そうやって嫌がるところも魅力的ね」

 聞き慣れた声が聞こえてきた。
 慌てて見やると、ライダースーツを身にまとった花鶏が女の子の顎をくいっと掴んでいる光景が目に入る。
 見覚えがあった。

智「すとーっぷっ!」

花鶏「あべっ!?」

 自分でも信じがたいスピードで花鶏を突き飛ばす。
 花鶏にとっても予想外だったのか、余裕で吹き飛んだ。
 危なかった! あのままだと、この子もきっとキスされてた!

智「ほら君も、今のうちに!」

「……あっ、はっ、はいっ! ありがとうございます!」

 少しばかりぼんやりとしていた女の子は僕の声にはっとなり、急いでこの場を後にする。
 あまりマジマジとみなかったけれども、そこそこに美少女だったと思う。 花鶏がナンパするのもわかるぐらい。
 遠くに走って行くのを見送ると、花鶏がぶつけた頭を押さえてゆっくりと立ち上がった。

花鶏「いたたた……あら、あの娘は……?」

智「もうあっちにいったよ、全くもう」

 きょろきょろと見渡す花鶏に呆れたように言う。
 そこでようやく僕に気付いたのか、驚いた表情で慄く。

花鶏「と、智ちゃん……ち、違うわ。 別にこよりちゃんや智ちゃんやおっぱいから浮気しようとか思ったわけじゃなくて、可愛い娘がいたからつい、つい」

智「僕やこよりや伊代は花鶏のものじゃないから!」

 この期に及んで伊代をおっぱい扱いとか酷い。
 じゃなくて!

智「ついじゃないでしょ!?」

花鶏「……はん! 別にいいじゃない、わたしが何しようがわたしの勝手よ」

 開き直った!?
 僕が唖然としていると、花鶏は僕との距離を詰める。

花鶏「どうしてもやめさせたいというなら、智ちゃんがわたしの彼女になるしかないわね」

 じゅるっ、と舌なめずり。
 そこで気付いた。 僕狙われてる!?

 思うより速く、花鶏の魔手が僕に迫る。
 抵抗しようにもうまく力を逃されて振りほどけない。

智「ちょっ! 花鶏離して!?」

花鶏「ふふふ……智ちゃんには、あの娘を逃した責任をとってもらわないと」

 ぐいっ、と引き寄せられて無い胸を弄られる。
 首筋にキスをしてきて、つい力が抜ける。
 花鶏本気だしてない!?

花鶏「大丈夫よ、力を抜いて……天国に連れて行ってあげるわ……げへへ」

智「あっ、ちょっ……やっ」

 花鶏が耳元で囁く。
 花鶏が豪語するように、その愛撫は確かに気持ちがいい。 このまま理性を放り投げてしまいたくなるほどに。
 しかし同時に、脳内でエマージェンシーコールが鳴り響いていた。

 このままでは、ヤラれる。
 いや、殺られる!

 花鶏だけならまだしも、ここは街中だしもし仮に生き延びたとしても社会的に死ぬ!
 だれか、何か!
 へるぷ、みー!


 ↓1

 僕は街往く人や野次馬を見渡す。
 すると、丁度見知った顔があった。
 茜子!

 花鶏の攻めが強くて、まともに助けも出せない。
 けど茜子なら! 目を合わせるだけでなんとかなるはず!
 茜子も絡み合ってる僕らに気付いて目を丸くしたがすぐに僕が助けを求めていることに気がついた。
 そして、発する。

茜子「いくのですにゃーども!」

花鶏「え、ぎゃあ!」

 茜子の号令と同時に、地を野太い声をあげながら猫が走る。
 そして猫に襲い掛かられる花鶏はようやく、僕を解放する。
 野次馬から残念そうな声が聞こえてきたが知った事か。
 しかし力が抜けている僕は地面にヘタり座ることとなり、茜子はしゃがんで僕に目線を合わせた。

茜子「これで、良かったのですか?」

智「う、うん……本当ありがとう。 助かったよ茜子」

茜子「全く……大魔人セクハラーにも困ったものです」

 茜子が溜息を吐くが、本当に、心からそう思った。
 超えちゃいけないラインを超えそうになっていた。
 しかし、僕はこうして生きている……ということはセーフだったのだろう。 よかった、本当によかった。

花鶏「ぐっ……この……しゃらくさいっ!」

 猫達に覆い被さられていた花鶏が猫達を弾き飛ばし、ゆらりと立ち上がる。
 ちなみに猫達は無事に地面に着地していた。

花鶏「やってくれたわね茅場……家主に恩を仇で返すなんてね……!」

茜子「OK、茜子さん理解しました。 このセクハラーは今直ぐサツケーに突き出すべきです」

 おっ、まだなにかあるのか? と野次馬がにわかに騒ぎ出す。
 しかし僕にはわかる。 空気が変わった。
 さっきまでとは全く違う。
 例えるなら、竜虎相見える、的な。

花鶏「へぇ……そう。 なら、容赦しないわよ」

茜子「それはこちらの台詞です」

 一触、即発。
 これは、やばい。
 なにかわからないけど、これはやばい。

 恐らく、原因である僕には二人をとりなす必要がある。
 僕は慌てて立ち上がって。


 ↓1にやめるように言った。

智「はい終わり!」

 ぱん! と両手を叩き、出来る限り大きな音をだす。
 そして茜子と花鶏の間に立ちはだかり、二人の顔を見る。

智「元々は花鶏が悪いんでしょ! これに懲りたらナンパとかもうしないこと!」

花鶏「……」

智「茜子もだからね! 茜子だって花鶏が本気かどうかなんて見ればわかるんだから、意地はらないでよ!」

茜子「……」

智「返事は!」

花鶏「……はい」 茜子「……にゃー」

 二人共しぶしぶと言った面持ちで、不満のありそうな表情を浮かべつつそれでも返事をした。
 なんとか収まったことに、安堵の息を吐く。
 そして周りに謝罪をしつつ頭を下げて苦笑いを振りまいた。
 周りの人間が散った頃、ようやく僕は二人とまた向き合う。

智「それじゃあ花鶏、それ着替えてから溜まり場にきなよ? 僕ら先に行ってるから」

花鶏「…………」

智「返事は?」

花鶏「……わかったわよ。 ちゃんと、すぐにいくわ」

智「ん。 それじゃあ茜子、いくよ」

茜子「……はぁ」

 茜子は未だ不満のありそうな、溜息を吐いた。
 溜息をはきたいのは、僕の方だった。

 花城花鶏 の好感度が沢山下がりました。
 茅場茜子 の好感度が沢山下がりました。

 五日目を終了します。

 五日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆ 
●鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆ 
●白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆


 爆弾の処理に追われる日々……
 まぁ意図的にシュラバーを起こして好感度下げるのもありですけどね。

 今日はこのへんで。
 明日も来ます。 何時になるかは未定ですが、遅くても十一時にはくるかと。
 勿論、始める三十分~一時間前にアナウンスはします。

 それでは、また。

 おまたせいたしました。
 では六日目から。

 ■六日目 土曜日■


智「すこぶる快晴っ!」

 と、いいつつ今日の天気は雨。
 太陽がなくなると、人類は一ヶ月も持たずに絶滅するという話を聞いたことがある。
 つまりそれほどまでに太陽の光というのは重大な役割を担っているのだ。
 精神的作用の他にも太陽を浴びないとビタミンDが人体内で生成されずに骨粗鬆症などを引き起こす恐れもあるらしい。
 太陽ってすごい。 僕は改めてそう思うのだった。

智「一日ぐらいお天道様も休みが欲しいよね」

 僕だって週一週二の休みを所望するのだから、年中無休で働く彼、或いは彼女はもっと休みが欲しいに違いない。
 そんなわけで、太陽がなくとも気合を入れる僕。

智「……とりあえず朝ごはんを作るところから始めようかな」

 そして僕はまた一日の予定を思い浮かべながらキッチンへと足を向けるのだった。


 ↓1

 あー……
 多分五日目のナンパされてた女の子=紅緒にするわけですか?

 ごめんなさいですが、諸事情でそれは無理です。
 五日目の娘とは別人判定でも面識ない故に難しいので、再指定お願いしますです。
 本当ごめんなさいです。

 多分雨の日だと、皆も集まりにくいだろう。
 だからといって、家で一日を無為に過ごすのは勿体ない気がする。

智「んー……じゃあ何か新しいことに挑戦してみるとか?」

 料理をするのもいいけど、スキルを何か身に付けるのもいいかもしれない。
 スキル、スキルかぁ。
 スキルといえば、伊代かこよりかな。 花鶏も一応お嬢様だし、音楽系のものが出来そうな気がするけど昨日のこともあるから却下で。

智「んじゃあ、今日はこよりで」

 伊代はお母さんが病気とか言ってたことがあった気がしたし、休みの日まで御足労願うのは可哀想だろう。
 その点こよりなら問題ない。 多分。

 思い立つが吉日、こよりに電話をかける。
 挨拶もそこそこ、本題へ。
 こよりなら〈才能〉からしていろんなことを覚えているだろうし、レパートリーは豊富だろう。

こより『ふんふむ……』

 こよりが頬に指を当てて思案顔しているのが目に浮かぶ。
 そうして数秒、こよりの楽しそうな声が弾ける。

こより『ぴこーん! 鳴滝思いつきました!』

こより『ずばり! ともセンパイも鳴滝と一緒にローラースケートをぜひぜひ!』

こより『そしたらそしたら! 街で美人姉妹的な感じで噂になるかも!?』

智「あはは……噂になるのは勘弁かな……」

 でも、ローラースケートか。
 シューズさえあればいいわけだし、いいかもしれない。
 こよりクラスまでに上達させるのは難しいけれど、そこまでになればメリットしかなさそう。

智「それじゃあ、教えてくれる?」

こより『勿論ですよう! ではでは、またのちほど!』

 そうして切られた数秒後、今度はこっちの携帯が鳴る。

智「はい?」

こより『あはは……今日は雨でした……』

 照れ笑いをしていそうな、申し訳なさそうな声。
 それに合わせて僕も笑い、今度こそ待ち合わせ場所を正確に告げるのだった。

 そうしてやってきた田松市市民体育センター。
 なんでも、こよりもここでインラインスケートの技術を学んだ(盗んだ?)らしい。
 シューズも無料でレンタルできるみたいで、練習場所にはうってつけだ。
 雨だからか、中々人も多いなかこよりのレクチャーは始まる。

こより「とはいっても、鳴滝も基本トレースしてるだけなので教えるのはできなかったり……」

 たははと笑うが、実際に覚えるにもそれが一番いいのではないかと思う。
 勿論最初の難易度は低いほうがいいが、既に適度にすべれるなら上手な人の真似をしたほうがきっと上達は速い。
 その旨を告げるとこよりは笑顔で一度頷く。

こより「それじゃあ……まずは、外周を何周かしましょう!」

智「そうだね。 僕も初めてだし、慣らす意味ではいいかも」

 そういって滑りだしたこよりの後を追う。
 歩く、走る、止まる、跳ねる。
 軽快に滑る姿に僕は改めて関心する。
 花鶏とるいから逃げ切ったスケーティング技術。 それは目を瞠るものがあるだろう。
 一方の僕はといえば、危なげがないだけで跳ねたりは難しい。

智「やっぱり、こより上手だね」

こより「てへへ……でも、実際は真似してるだけだったり」

 それでもそれを危なげなく実現できるというのは、こよりにもそのポテンシャルがあるというわけだ。
 例えばるいの剛力を再現しようとしてもこよりのスペックが足りないのだから。
 だから十分にすごいと思う。

 一人で暫く技を繰り広げていたこよりは僕に合わせて並ぶ。
 とはいっても、僕の周りをくるくる回ったり、バックスケーティングをしたりして、だ。
 一朝一夕で身につくとは思っていないけれど、最終的にはバックスケーティングは身につけたい。

こより「なんだか、滑ってるだけで楽しいですよう!」

 うさぎの耳よろしく、ツインテールが跳ねる。
 楽しげなこよりに、僕もなんだか楽しくなってくる。

智「そうだねー、たまにはこんなのもいいかも」

こより「冬とか、センパイ達みんなでスケートにいくのとかもいいかもですねー」

智「それいいねー」

 スケートする時は防寒具もバッチリだし、茜子もやることができるだろう。
 まぁ人とぶつかったり、とか万が一を考えると避けるべきだけど人のいないところならきっと出来る。

智「でもまぁ、今は先にこっちかな?」

こより「ですです!」

 くっ、とこよりは足を揃えてパラレルを行う。
 よし、真似をしてみようと足を揃えたところで。

智「わ、わわっ」

こより「と、ともセンパイ!」

 バランスを崩して転びそうになったところに支えようと近づいてきたこよりを巻き込んで、転ぶ。
 なんとか自分の身体を下に滑り込ませられてこよりのクッションになった。

智「いたた……こより、大丈夫?」

こより「と、ともセンパイが庇ってくれたから大丈夫ですー……ともセンパイは?」

 目を回しつつ立ち上がる。
 流石にバランスを崩した人を支える技量はもってなかったみたい。
 とりあえず僕も立ち上がって捻挫とかをしていないか確認する。

智「うん、僕も大丈夫」

こより「それならよかったです! もしともセンパイに何かあったら、鳴滝、センパイの面倒を一生見る所存です!」

智「や、怪我をしても遠慮しておくよ」

こより「がーん!?」

 ショックを受けたこよりの頭をぽんぽんと軽く叩き、その手を繋ぐ。

智「やっぱり、今日は技はいいかな。 ゆっくり、一緒に滑ろうか」

こより「……はいっ!」

 手を繋いで、また滑り始める僕ら。
 カーブで僕がこよりについていけなくて転んでしまうのは、それから十数秒後の話だった。
 お後が、よろしいようで。

 鳴滝こより の好感度が上がりました。

 六日目を終了します。

 六日目終了

●皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
●白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆


 【悲報】安価を挟むことができず、短篇集になってる件
 いやまぁ、それならそれで構わないんですけれど。

 あと前回、こよりと伊代は本来四日目終了時点で●付いていたんですがその時好感度表を乗せていなかったので六日目終了時点で●付き一日経過ということにします。

 七日目に行きますか?

 ■七日目 日曜日■


 一週間最後の日、日曜日。
 もとい、週末。
 けれど週末といいつつ、週の初めな気がするのはどうしてだろう。
 カレンダーによっては日曜日が初めのものと月曜日が初めのものに別れているためだと思われる。
 ちなみに僕は前者型。

智「だからといって、何かあるわけじゃないんだけどね」

 日曜日のイメージカラーは私的に白。
 まっさらな日って感じ。
 予定もまっさら。 正しく自由。

 僕はこれから予定を立ててもいいし、立てなくてもいい。
 二度寝三度寝もいいかも。
 さて――――今日は何をしよう?


 ↓1

 (やばい何を言っているのかわからない)

智「やっぱり、家にいるのはもったいないよね」

 思い、適当に服に着替える。
 溜まり場を適当に巡ったりして、誰かいたら一緒に行動するのもいいかも。

智「いってきまーす」

 誰もいない部屋に向けて告げて外に出る。

任甫「ん……?」

智「あっ」

 ――玄関の扉を開けると、そこはやばい人がいました。
 色んな意味で。

任甫「おはよう和久津さん」

智「あはは……ど、どうも」

 見ると、いくつかの雑誌をまとめてビニールテープで結んでいた。
 どうやら要らない雑誌の処分らしい。
 ……内容は確認しないことにした。

任甫「外出か? 今日はいい天気だ、どこに出かけるにも丁度いいだろう」

智「そ、そうですねー」

 見た目爽やかな普通にイケメンの隣人さん。
 しかしその傍らにあるのは僕にとって口にだすのも憚られるものだ。
 知らず知らずの家に距離をとろうと後ずさる。

任甫「ああいや、引き止めてすまない。 央輝の友人だからなるべくなら仲良くしたいからな」

智「そ、そうですねー……っ、!?」

 瞬間、ズルっと足が持って行かれた。
 何かを踏んだような感触があったが、もう遅い。
 僕はコントのように、背中から転んでいた。

任甫「わ、和久津さん! 大丈夫か!?」

智「さ、最近良く転ぶなぁ……だ、大丈夫です、多分……っつつ」

 見ると、掌から血が出ていた。
 どうやら庇った時に擦れてしまったらしい。

任甫「大丈夫じゃないじゃないか。 少し我慢してくれ……よっと」

智「ぎゃわ……っ!?」

 言うやいなや、任甫さんは僕を持ち上げる。
 俗にいうお姫様だっこで、だ。
 軽々と持ち上げるあたりやっぱり色々と鍛えてる人だなぁと思うけれどそれどころじゃない。

智「ちょっ……! お、下ろしてください!?」

任甫「そういうわけにはいかん。 そもそも俺が話しかけた為に注意散漫になったのが原因のようだからな、責任はとる」

智「いや、怪我したのは手だから、ちゃんと動けますから!?」

任甫「転んだのだから足を捻っていてもおかしくはないだろう。 安心してくれ、手当ての心得ぐらいはある」

 本来なら、暴れてでも下りるけど!
 ふとした拍子に股間にでも触れられたらどうしようもない!
 もし仮にそうなったら死ぬ! 物理的にも、精神的にも、肉体的にも!

 しかし、打開策は見つからず。
 任甫さんは刻一刻と自分の部屋への歩みを進める。

 ああ、やばい。
 あの部屋に入ってしまったら、二度と出られない気がする。

 おしりの穴がきゅっ、となる。
 やばい、やばい、やばい。
 頭のなかがぐるぐるとなるが、打開策は見つからない。

 やばい。
 やばい。
 やばい――――!


 ↓1

伊代「――――って、ちょっとちょっと!?」

任甫「ん……?!」

智「い、伊代ぉ……!」

 神様、仏様!
 ありがとう! 本当にありがとう!

伊代「わ、わたしはあなた達が知り合いだって一応知ってるけど! 傍からみたらその子を手篭めにしようとしているようにしか見えないですからね!?」

任甫「い……いや、俺はただ、和久津さんの怪我の手当をしようと、だな……」

 任甫さんが目に見えて動揺する。
 いいよ伊代! もっとやって!

伊代「ですから! 別にわざわざ家に連れ込む必要は――――」

任甫「っ! 寄るな巨乳!」

 伊代が一歩近づくと同時に、任甫さんは大声をあげて伊代を牽制した。
 その言葉に一瞬呆然としたかと思うと、伊代は顔を真赤にする。

伊代「な……きょ、巨乳って、あなた、そういうことは公共の場では……!」

任甫「だからよるな、来るな! よるなら、その巨乳を何処かへやってからにしてくれ!」

伊代「…………」

 伊代はどうするのこれ、とでもいいたげな表情で僕を見る。
 なんというか、可哀想な人だ。
 女(と勘違いしている)の僕や、央輝とは普通に触れ合えるのだから女が駄目、というわけではないだろうに。(好きの対象にはならないみたいだけれど)
 何か巨乳に恨みでもあるのだろうか。

 まぁ、それはさておき。
 よかった、これで解決の糸口が見えた。

智「あの……任甫さん?」

任甫「……なんだ」

 苦々しそうに返事を返す彼の顔色はよくない。
 本当に巨乳が嫌らしい。

智「僕、伊代に自分の部屋で手当てしてもらうので大丈夫……ですよ?」

任甫「……い、いや、しかし……」

智「任甫さんが話しかけてきたとはいっても僕の不注意が招いたことですから、気持ちだけ受け取っておきます」

 多分、僕一人だけでは駄目だっただろう。
 任甫さんは思案顔を浮かべて、仕方がないとばかりに頭を振った。

任甫「わかった。 だが、何か大きな異常があれば直ぐに教えてくれ」

智「はい。 その時は、すぐにでも」

伊代「そ、それじゃあ、わたしがあなたに肩を貸す――――」

任甫「来るな! そのまま手をあげてゆっくりと離れろ巨乳!」

 そろそろ、その声に反応して民家から他の人が顔を出してもおかしくない頃だ。
 さっさとすませてしまおう。
 任甫さんを促し、地面に丁寧に下ろしてもらう。
 足は……うん、大丈夫。 ちゃんと動くし、痛みもない。

任甫「そ、それじゃあ和久津さん、また今度」

智「え、ええ、また」

 僕が返事を返すやいなや、任甫さんは逃げるように部屋に入った。
 伊代が『わたし……悪いことしたかしら』と呟く。
 伊代は悪くない。 それは僕が保証する。

伊代「それじゃあ、さっさと傷の手当てしてしまいましょう。 あなたの部屋でいいのよね?」

智「うん、鍵は開いてるよ。 ところで、伊代?」

伊代「うん? なぁに?」

 確認するようにドアノブに手をかけた伊代に問いかける。

智「なんで伊代、ここにきたの? 伊代の家ってここからそんなに遠くはないけど、偶然寄るような場所じゃないよね?」

伊代「え……っ、と。 さ、散歩。 そう、散歩よ! 散歩ついでに、あなたと一緒に皆のところに行こうかと思って!」

智「そうなんだ? でも散歩にしたら、随分と遠くまで……」

伊代「はっ! 早く傷の手当てした方がいいんじゃないかしら!? 傷口から菌が入って、重傷になったら大変よ!?」

智「あ、ああ、うん」

 結局、伊代が散歩にしては遠くまで来た理由はわからなかったけれど。
 藪を突いて蛇出る。 君子危うきに近寄らず。
 頭の隅に追いやって、忘れることにしよう。
 任甫さんにお姫様だっこをされて、少し……ほんの少しだけ、ときめいてしまったことも、全部。

 ……ああ、自己嫌悪。

 白鞘伊代 の好感度が上がりました。
 姚任甫 の好感度が少し上がりました。

 七日目を終了します。

 七日目終了

●皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆ ★(ニ日目)
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆ ★(ニ日目)
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆


 エラー頻発で投稿してもスレage出来なくて泣いた。
 あと☆一つで任甫さんが●付きゾーンに入るんですがいいんですかね……?

 というか難易度下げましょうか?
 逆算すればわかるので公開しますが、現時点では三日放置で●がつく仕様です。
 でも同時に処理しようとすると修羅場が発生しますので、五日放置ぐらいに変更した方が難易度が丁度よくなる……かも?

 次回は、日曜に。 時間は同じぐらいで、同じくアナウンスします。
 それでは、また。

 あ、やべ。


 七日目終了

●皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆


 これが正しいですごめんなさい。

 んー……じゃあ爆発したら難易度少し下げましょう。
 その時に詳しく真雪先生が教えてくれると思うので。

 それでは三十分後に。
 

 ■八日目 月曜日■


智「…………」

 ぼんやりとした頭で、天井を見つめる。
 ああ、なんだかすごいいい夢を見ていた気がする。
 そういう夢に限って覚えていないのはどうしてだろう。
 人間嫌な事のほうが印象に残りやすいのだ。

智「きょうは……」

 身体を起き上がらせて、寝ぼけ眼を擦る。
 ぐぐぐーっ、と伸びて、腕の関節がこきこきと鳴る。

智「はぁー」

 ばたん、と再びベッドへ。
 いけない、このままだと二度寝してしまう。
 この時期の布団は、本当に魅力的で……誘惑が……

智「……よしっ」

 勢いをつけて、起き上がる。
 頭はバッチリ覚醒。 念のため両手で自分の頬を叩く。
 若干ヒリヒリするけれど、しかたがあるまい。

智「さようなら僕の布団、君の暖かさは忘れない」

 そういって、僕は後ろ髪ひかれながらもベッドに背を向けた。
 ……どうせ、夜にはこんにちはすることになるけれど。


 ↓1

智「爆心地?」

 ぱきっ、と口の中で音を立てるのは煎餅(こより持参)。
 たまにはこういう昔ながらのものもいいかなということらしい。

伊代「それって……あの五年前の?」

 その問いかけにこよりは頷く。

こより「ですです! 都市伝説巡り第二弾ということで!」

智「なにそれ?」

 爆心地についても、都市伝説についても。

花鶏「知らないの? 五年前にあった、大規模なテロのことよ」

るい「るいねーさんも知ってるよ! テレビですっごくやってた!」

 隣街である高倉市。 そこが何故、『新』都心と呼ばれるか。
 その理由である、大規模テロ。 高倉市の前身だったその街は、僅か一夜にして壊滅状態になった……らしい。
 五年前、というのは記憶があやふやだ。 よく覚えていない。

智「……それで、その爆心地? がどうしたの? 都市伝説第二弾って言ってたけど」

こより「それはですね! 何やら、幽霊が出るとの噂が!」

 しん、と静まり返る。
 それは恐怖にふるえているわけではなく、呆れから。

花鶏「前にもまして、眉唾ものね」

伊代「というか、前のも似たようなものじゃなかった?」

 前、というと。
 『少女Aに連れられて怪物が現れる』。 少女Aを幽霊とするなら、きっとそうなのだろう。
 皆で出向いてみたけれど、なんの成果も得られなかった。
 その後には何も、音沙汰すらない。

茜子「わかりました。 その幽霊の正体は、惑星キャットーからやってきた戦闘猫族なのです」

伊代「はいはいいいからあなたは黙ってなさい」

るい「それで、なんだっけ。 超・ニャー人?」

智「いや、そこは猫なんだから超・ニャーキャットじゃないかな」

伊代「あなた達も乗っからないの! そういうことするからこの娘も調子に乗るんじゃない!」

 怒られました。
 ところで、猫の本気は一般人に日本刀を持たせたのと同等という話がある。
 それなら戦闘猫族はどれくらいの実力をもっているのだろうか。
 じろ、と伊代に睨まれた気がした。
 ……閑話休題。

伊代「幽霊の出る、出ないはこの際置いておいて。 それでも、事故のあった場所に行くだなんて……ちょっと不謹慎じゃない?」

 伊代の常識的発言。
 しかしそれに対する反論はある。

花鶏「そうやって見ないふりをして遠ざけている状態が、正しく今ね」

 その言葉に伊代も詰まる。
 爆心地は、未だに復旧作業も進んでいないらしい。
 もう五年も経つというのに、だ。

花鶏「不謹慎不謹慎と口を揃えるのも結構なことだけど、過去も清算しなければ前に進めないわ」

 嫌な空気。
 流れを変えよう。

智「まぁ、でも一回言ってみる程度はいいんじゃない? 野次馬上等、僕らなんてそんなものでしょ?」

伊代「そりゃあ、まぁ……」

 何か危険があるわけでもない。
 前だってそうだった。 なら今回もきっとそうだ。

智「都市伝説巡り第二弾、行ってみようよ」

 そんなこんなで、実際に現場についたのは夕方の話だった。
 何故、といわれても。

るい『くんくん……なんか美味しそうな匂いがする』

 とか、

茜子『む……これは茜子さんのニャー軍団に入るべき人材の予感』

 とか。
 まぁ、色々。
 良くも悪くも、僕らは街を移しても僕らだったわけだ。

 けれど、そののんきな雰囲気もまとめて吹き飛んだ。
 そこにあったのは、終わってしまった世界だった。
 小高い丘の上。 恐らくは、子供達が多く遊んでいただろうベッドタウン。
 それらは既に、瓦礫の海。
 きっと、多くの死の上に積み上げられた過去の遺産。

花鶏「これは……思ってたよりも、酷いわね」

 花鶏が少しばかり顔を歪めて呟いた。
 過去のものになったとはいっても、ここにあったのは無数の死だ。
 それに何も感じないとしたら、どうかしている。

るい「ほんとう、幽霊とかいてもおかしくなさそうだねー」

 るいはあっけからんとした様子。
 こんな空気に置いてこの正確は重要な役割だ。
 少しでも、気が紛れる。

智「……さて」

 来てみた、はいいけれど。
 どうしようか。


 ↓1
 (捜索するかしないか、とか。 複数に別れる、とか)

 人いなさそうですね。
 ごめんなさい、今日はすっごく眠いので安価だけ置いて寝ます。

 ちなみに、捜索する場合は捜索する条件によって遭遇人物が分岐します。
 まぁ、爆心地にいる人なんてそう多くはないですから予想がつくかと思いますが……
 それでは、安価下で。

智「ぐっと、ぱーっで……わっかれましょっ!」

 結果。
 僕、るい、茜子組と、花鶏、伊代、こより組に別れることになった。

 無論、別れたのにも理由がある。
 一つは、誰かが具合が悪くなったら補助して離脱するということ。
 もう一つは、もし仮に何らかの非科学的存在がいるのなら人数が少ない方が目の前に現れてくれるだろうという打算だ。
 後者の方は、後付だけれども。

花鶏「ふっ……参ったわね。 わたしのハーレムが出来てしまったわ」

るい「コイツぜってー〈才能〉使った」

智「まぁ、まぁ……バランスは、いいから」

 花鶏の〈才能〉は言うまでもなく、思考加速。
 わかりやすく言うと、一秒を数秒、数十秒に引き伸ばす能力だ。
 つまるところ、皆が手を出した時の手の動きから予測してコンマレベルの後出しが可能だということ。
 じゃんけんなんかでも、絶対に敵はない。

茜子「ニャンダー仮面を見つけたなら直ぐ様連絡するのです我が下僕どもよ!」

こより「あれ、超・ニャーキャットじゃありませんでした?」

茜子「なんと勇者よ、あの伝説をしっておるのか!」

伊代「はいそこまで! あなたに付き合ってると日が暮れるわ!」

 茜子が長々と絡もうとしたのを、伊代がインターセプト。
 るいに茜子を引っ張ってくるよう命じて、僕らは一旦別れる。

智「そういえば、二人共携帯持ってないんだから僕から離れないでね? 皆と連絡取れなくなるから」

 辺りを見渡しながら、僕は言い聞かせるように言う。

茜子「はいわかりました。 ところでブルマ軍曹」

智「ブルマ軍曹って……それで、なに?」

茜子「既にあの筋肉ゴリラの姿が見当たりませんが」

智「えっ!?」

 慌てて振り返る。 そこには茜子の姿のみ。
 周囲をパッと見渡してみても、るいの姿は全く見えない。

智「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」

茜子「聞かれなかったですから」

智「そういう問題じゃないでしょー!?」

 もー!!
 喚きたい気持ちを押さえて、るいの行方を捜索する。
 時折、茜子もいなくなっていないかどうか振り返りつつ。
 ミイラ取りがミイラに、そして誰もいなくなった、だなんて洒落にもなりゃしない。

 運がいいのか悪いのか、るいはすぐに見つかった。
 しかしそれは、何かから隠れているように瓦礫の影から向こう側を覗きこんでいるという珍しい姿だった。

智「……なにやってるのさ」

るい「おぉっ!?」

 こそこそとしていたるいは正しく飛び跳ねるように驚く。
 そして僕らを確認し、安心したように息を吐いた。

るい「あーびっくりした……もートモちん、驚かさないでよ」

智「驚いたのはこっちの方だよ。 いきなりいなくなったりして……どうしたのこんなところで」

るい「あっ! そうそう、あれみてあれ!」

 思い出したように少し音声のボリュームを下げて、るいは瓦礫の向こうを指さす。
 そこにあるのは、ただの瓦礫の山。
 半分だけ崩れた、マンションの残骸。
 ……いや、違う。 それだけじゃない。

茜子「……人?」

智「多分」

 その瓦礫の前に、人が立っていた。
 遠くからだから目を凝らさないとよく見えない。

るい「制服着てるみたい……けど、ここらじゃ見たこと無いやつ」

 視力のいいるいが補足する。
 なるほど、言われてみればブレザータイプのような気がする。

 しかし、それにしても。

智「雰囲気が……」

 生きている人間に対していう言葉じゃないのだろうけれど。
 まるで生気を感じない。
 ふと目をこすれば、消えてしまいそうな程に希薄。
 アレが幽霊だと言われてしまえば納得するだろうほどの説得力がそれにはあった。

 そして気付く。
 幽霊の正体とは、あれなのではないかと。
 そもそもこんな場所だ。 肝試しにくる若者か、或いはオカルトハンターぐらいしか来ないに違いない。
 そんな中、あんな雰囲気の少女がいたら誰しもが思うだろう。
 『出た!』、と。

智「幽霊の、正体見たり枯れ尾花」

茜子「どちらかといえば、一年中咲いている花だと思ったら造花だったという感じですが」

 事実は小説よりも奇なり、とはいうけれど実際に奇妙な事があるというのは以外に少ない。
 それこそ、僕らみたいなものがそこら中に転がってるとは思いたくないし。

るい「それで……どうするの? 話しかけてみる?」

 るいは遠くの彼女を指して言う。
 どちらかと言えば、きっとるいは嫌だというだろう。
 俗世から離れて何かをしているか気にはなっているだろうが、人見知りするるいが積極的に人に話しかける理由は見当たらない。

 茜子はどうだろう。
 思うが、考えるよりも先にNO、だ。
 もしものことがあったらどうしようもない。
 僕らは相手を知らない。 仮に、茜子が急に抱きつかれでもしたらどうしようもない。

 色々と材料を並べて、決断する。

智「……今日のところは、やめておこう」

茜子「それがいいです」

 茜子もあの娘のただならぬ雰囲気は感じ取っていたのだろう。
 るいもうん、と若干安心したように頷いた。

智「それじゃあ、ばれないうちに退散しよう。 君子危うきに近寄らずってね」

 見合わせ頷くと、そそくさと僕らは移動を始める。
 最後に振り向くと、僕には彼女がこちらを見ているように感じた。
 感じた、というのも僕はるい程に眼がいいわけではないから前後ろどっちを向いているか、なんてわからないから。
 けれど、そう思ったのだ。

智「…………」

 きっと。
 機会があれば、また会うことになるだろう。
 僕は、彼女の存在を心に留めて、その場を立ち去るのだった。

 皆元るい の好感度はこれ以上上がりません。
 茅場茜子 の好感度が少し上昇しました。

 副島密 の存在を知りました。

 八日目を終了します。

 八日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 
 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 副島密   
 蝉丸繰莉  ☆☆


 とりあえず宿題のみです。
 そういえば、新作の発売もうすぐですね。 実は予約してないことは内緒です。

 次は水曜日を予定しています。
 それでは、また。

 来ました。
 あと30分ぐらいしたら始めます。

 ■九日目 火曜日■


智「ちぇっくちぇーっく」

 髪をとかし、身だしなみを確認する。
 前髪もピンで留めて、手櫛で整え。

智「うん、大丈夫」

 最後に、顔の表面にほんの薄っすらと生えている産毛を確認。
 本日もなんにも問題のないことにホット一息。

智「髭とか生えてたら、洒落にならないもんね……」

 その辺りは本当、この身体に感謝だ。

智「それじゃあ、いってきまーす」

 本日も、何事もありませんように。
 そう祈りつつ、僕は玄関を出る。


 ↓1

宮和「和久津さま、お待ちください」

智「? 宮、どうかした?」

 帰ろうと廊下を歩いていたところを宮和に呼び止められる。
 走らず、されど急いで。 そして、優雅に。
 それを地で行う宮和の歩きに見とれつつ、返事を返す。

宮和「スカートの端に、汚れが」

智「えっ、嘘っ」

宮和「少々、お待ちください」

 宮和がしゃがみ、僕のスカートの端を手に取る。
 なるほど、端っこも端っこ。 それも制服に若干溶けこむような薄い汚れだ
 これを見抜くとは、流石自称最強のストーカー、といったところだろう。
 ハンカチを取り出して軽く擦るが、あまり効果は見られなかったようだ。

宮和「……どうやら、今日ついた汚れではないようです」

智「あー……もしかしたら、昨日かも……」

 となると、あの時から僕は汚れに気付かなかったらしい。
 いくら汚れが見えにくいとはいえ、恥ずかしい。

宮和「和久津さまはそのような制服が汚れる場所に足を運んだのですか?」

智「ああ、うん。 ちょっと皆とね」

 靴を履き替えつつ、昨日のあらましを語る。
 それに関心したように、宮和はほう、と相槌をうった。

宮和「和久津さまは、冒険家さまでもあられるのですね」

智「そこまで高尚なものじゃないと思うけど」

宮和「宮も和久津さまとなら、どこまででも参りますわ」

 例え地の中水の中、とでも続きそうな勢いだ。
 それに対して僕は苦笑いで返して。

智「あはは……それじゃあ、今日にでも行ってみる? 冒険」

宮和「よろしいのですか?」

智「あはは……え?」

 冗談のつもりで口に出してしまったのが、今回の始まり。
 予想外だったのは、宮和が思った以上に知的好奇心が強かったということ。
 サブカルチャーにすら手を出す無類の探究家はオカルトの噂話もどうやら気になるらしかった。

 その後も、家の事とか色々引き合いに出してみたけれど、宮和の中では僕と一緒の冒険、というのがそれ程に魅力的だったのか。
 その全てに対して返されて、僕は結局、ニ日連続で幽霊探しに行く羽目になったのだった。

宮和「……なるほど。 つまり、本日もその御方がいらっしゃれば」

智「うん、噂の幽霊っていう確率は高いんじゃないかな」

 道すがら話すのは昨日のこと。
 あの女の子が僕の見間違いでないのはるいと茜子が証明している。
 第三者が観測するなら、それはもう彼女の存在は確実なものになるだろう。

智「でも、気分悪くなったらすぐに言ってね? なんていうか……重い場所だから」

宮和「存じています。 五年前の出来事は、色々なメディアでも取り沙汰されていましたから」

 なるほど、その上でならきっと心配しなくてもいいかもしれない。
 きっと僕らと同じで、探究心が勝ったのだろうから。
 それでも僕や花鶏ですらお世辞にも気分は優れなかったのだから、様子を見る必要はあるだろうけれど。

 学校帰り直で来たからか、昨日より大分早くついた。
 少しばかり興味深そうに残骸を見渡す宮和の手を引いて向かうのは、昨日女の子を見た場所。

智「確か、この辺だったと思うんだけど……」

 瓦礫の山。
 ベランダの手すりのようなものや、一階二階部分はその外見をなんとか保っているため、マンションだと推測するのは容易だった。
 五年経っても尚癒えていない爪痕に、僕の気分は少しばかり落ち込む。

宮和「和久津さま」

智「ん、なに宮」

宮和「これは……」

 見ると、同じ場所に積み上げられた花。
 花屋で売っているような上等のものではなく、しかし確かにここに捧げた者の気持ちを感じることの出来るもの。
 結構な高さまで積まれていて、一番上のものは萎んでいるとはいえ結構真新しいものだった。

智「これって、ひょっとして――――」

 僕が、そうだと口に出そうとした瞬間。

「何を、しているの?」

 後ろから、不意に声をかけられた。

 驚いて振り返ると、そこにいたのは少女。
 昨日は遠目でしか見えなかったけど、彩色は同じに思える。

 次に見るのは、その顔だ。
 僕らがここにいることに、別に驚いているわけでもない。
 何か墓を荒らしに来たのかと侮蔑に満ちているわけでもない。
 ただ、無機質。

 否。 感情は、あるのだろう。
 まるで、仮面を貼り付けているかのような。 そんな違和感を覚える。
 僕が警戒して距離を測りかねていると、以外なところから射撃が飛んできた。

宮和「冬篠宮和、と申します。 こちらは和久津さま、我らが学園の君でございます」

「学園の君」

智「違うよ!?」

 そんなお姉様ちっくな称号を承った覚えは一度もない。
 援護射撃なのか、それとも狙撃なのか全く判別がつかないよこれじゃあ!
 あちら方も出し抜けにそんなことをいうから目を丸くしてるじゃん!

智「こほんっ! えっと、僕は……」

「知ってる」

智「えっ? 僕の事知ってるの?」

「昨日来てた」

 ああ、そういうこと。
 ということは、やっぱりあの時はこちらを見ていたんだ。

智「確かに来てたけど、名前は知らないよね? だから一応、自己紹介」

「どうして?」

 素直に、彼女は首を傾げた。
 宮和が言ったから――じゃあ通じないだろう。 きっとこのどうして、はそういう意味ではないから。
 ならばどういうことなのかというと、頭を考えて言葉を紡ぐ。

智「純粋に気になるっていうのが一番かな。 じゃなかったら、昨日の今日で来たりしないよ」

「…………」

 彼女は考え事をするように、目を閉じて右手で肩にかかった髪を弄る。
 左手には小さな花。 きっと採ってきたのだろう。
 ここに、供えるために。

「副島密」

 うん?、と思った時にはそれが名前だと理解する。

宮和「ひそかさん、ですか。 どういう字を書くのでしょう」

密「ウ冠に、必ず。 その下に山。 でも、覚えてもあまり意味は無いと思う」

智「え?」

 言うと、僕らの間に割り込むように入り、そしてしゃがむ。
 そして左手にもつ花をまたその上に積み重ねる。

智「お供えしに来てるの?」

密「ううん。 これは、ついで」

 ついで?
 それなら、何をしにここに?
 問いかける前に副島さんは立ち上がり、空を仰いだ。

密「ここなら、来るかなって」

宮和「何が、でございましょう?」

密「……星?」

智「何故に疑問形」

密「わからないの」

 その声にやはり覇気はなく。
 きっと、彼女は何かを待っているのだろう。
 それが星かどうかはまた別として、ここに来ると確信しているのか、或いは来て去った後なのか。
 そこまで考えて、僕は馬鹿げた仮説を思いついた。
 その何かが来て去った後が、この瓦礫の果てなのではないかと。

智(ふざけてる)

 不謹慎にも程がある。
 そんな考えを、僕は頭を振ってかき消す。

密「……そろそろ行くね」

 他愛ない問答を繰り返して、また空を見上げる。
 すっかり朱色に染まった空は、もう今日という日が終わるということを雄弁に語っていた。
 返事すら待たずに立ち去ろうとする背を、僕は呼ぶ。

智「ねぇ、副島さん」

密「なに?」

智「また、来てもいいかな?」

 その言葉に、また彼女は考える。

密「もう来ないかも」

智「その時は……待ってみるかも?」

密「待つ?」

智「うん。 もしかしたら、来るかもしれないし」

密「……そっか」

 ほんの少しの間を置いて。

密「それなら、行かなくちゃね」

 副島さんはほんの少しだけ笑った――気がした。

 副島密 の好感度が上がりました。

 九日目を終了します。


 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆

 っとと、すいません。
 十日目にいきますですか?

 ■十日目 水曜日■


智「はむっ」

 テレビを横目に見ながら朝食を。
 今日の朝ごはんはいかにもな洋風。
 食パンに、スクランブルエッグに、ソーセージに、ベーコンに、チーズに……
 この形式は、案外嫌いじゃない。
 なぜなら食パンを活かせるから。

 一人暮らしようの小さな食パントースター。
 僕が一人暮らしするときに憧れて真っ先に買った、家で一番付き合いの長いものだ。
 そろそろ、多少ガタが来始めているような気がしなくもないけど、愛着のあるもの。
 完全に壊れてしまうまできっと僕はこれを使い続けるのだろう。

智「形あるもの、いつかは壊れる……」

 形あるもの、だけではないけど。
 形ないものもいつかはなくなってしまうかもしれない。
 壊れてしまうかもしれない。
 そのいつか、が今日明日でないことを祈るばかりだ。

智「ごちそうさまでしたっ!」

 パン!と手合わせ一つ。
 朝の補給は完了、それじゃあ今日も今日とて。

智「張り切っていこうっ!」


 ↓1

 チンピラって伊沢ですか? それともモブですか?

智「三日連続ー」

 記録更新。
 何の? と自分で突っ込む。

智「とはいっても、今日の用事は別に副島さんじゃないのよね」

 流石に三日連続も迷惑だろうし。
 今日のところは街の散策だ。

 新都心、と言われているだけあって賑わいは強い。
 田松市も結構な都会だと思うけれど、それとはまた別。
 こっちは雰囲気的には無法地帯?
 少し地下に潜れば、小洒落たショットバーとかありそうな感じ。

智「流石、新都心」

 繁華街を歩いてみる。
 こんな真っ昼間から数人の客引きがなんとか鴨をキャッチーしようと汗水たらしていた。
 毎日毎日ノルマもあるのだろう、大変だ。

智「っと、ごめんなさいっ」

 と、よそ見しながら歩くとつい人とぶつかってしまう。
 すかさず謝罪して、その場を取り繕う。 大抵の人も謝罪で通してくるところが日本らしい。
 が、今回はそうはならず、振り向き際に肩を掴まれる。

「おう、ちょいとまちな嬢ちゃん」

「ぶつかってきておいて、ごめんなさいだけはないだろ」

智(あ、ヤバイ人だ)

 確かによそ見をしていた僕にぶつかった原因の一端はあるかもしれないけれど、これは多分よそ見してなくても躱そうとしなければ躱せなかった類のやつだ。
 思うより早く、肩を強引に捻って手を離させ、一目散に逃げ出す。

 飲み屋とかが多いと、こういう手合いが増えるのも困りモノだ。
 というか真っ昼間から絡んでくる人がいるとは思ってなかった。
 こういうところも片倉市とは違う。 なんというか、一般人とそういう人との住み分けができているというか。
 絡むにしても滅多なところに行かない限りは向こうだとあまりないし。

 そうしてぐるりと街中を一周すること数時間。
 ナンパ絡み合わせて計七回。 一日に声を掛けられた回数では一番だ。
 こういうところも治安が悪いというか、なんというか。
 これはまた、皆でこっちに来た時には気をつけなければならない。
 ともすれば茜子も触れられかねないし、全員で纏まって歩くのがいいかも。
 いや、来ないのが一番いいのだろうけれど、こよりは最近都市伝説にハマってるらしいし田松市も大体見て回ってしまったからね……
 刺激が無いと、細胞は死んでしまうのです。
 けど、まぁ。

智(こんな刺激はいらなかったかなぁ、なんて)

 あまりに不用心すぎたようだ。
 南総学園というブランドもまた一つの要因かもしれない。
 私服で来ればよかった、と後悔してももう遅い。
 僕の周りには、少なくとも四人の男で囲まれていた。

「よう嬢ちゃん、さっきは良くも逃げてくれたな?」

智「あはは……どちらさまでしょうか」

「おう、とぼけんなよ」

「ちゃーんと落とし前はつけてもらうからな?」

 たかだかぶつかっただけで何の落とし前だ、といいたくなる。
 が、僕の身体を舐めるように見るのはつまり、そういうことなのだろう。
 ため息しか出ない。

 こうなったらもう、一気に制圧して逃げるが勝ち。
 そう思ってまずは目の前の男の股間を蹴ろうと、足に力を入れたところで。

「オイ」

「お、なんだチビ……ぶごっ!?」

「邪魔だ」

 内一人が、無様な声をあげて崩れ落ちた。
 その屍を踏みつけて現れたのは、小柄な、目つきの悪い――――

智(央輝?)

 ではなく。 しかし、央輝に通じる雰囲気を纏っていた。
 少年とも、少女ともとれる外見だけれど、直感で男かな、と思う。

「お前ら、この辺は初めてか?」

 一瞬で一人をのした少年の登場に、残り三人はにわかにざわめいた。

「そんなら丁度いい、ここが誰のシマかってのを教えてやるよ」

 言うが早いか、彼は手近な二人目の襟を掴んで無理矢理に引き寄せ、その顔面に膝蹴りを叩き込んだ。
 崩れたその体に追い打ちをかけるように、頭を踏みつけてコンクリートに叩きつける。

「……で、次はどっちがいい? そのぐらいは選ばせてやる」

 面倒くさそうに吐き捨てる彼に、残った二人は顔を見合わせて逃げ出す。
 地面に伏している二人は見捨てられた。 ありがとう、そしてさようなら名も知らぬ人。
 いや、やっぱりありがとうはなし。 危うく危ない目にあいかけたわけだし。
 しかし、それよりも、だ。

智「いっつ、クール」

「……馬鹿にしてんのか」

智「いえいえ! 滅相もない!」

 改めて、彼を見遣る。
 こよりぐらいの身長。 ほんの少しばかり伸びている髪。 そしてその童顔。
 見れば見るほど、少年だった。
 いや、もしかしたら本当に少年なのかもしれないけれど、この辺は誰のシマなのか教えると言ったところをみると結構な実力者なのだろう。

智「ええと……ありがとうございました?」

「礼は要らねぇよ。 アイツらが邪魔だっただけで、テメェはついでだ」

智「はぁ……」

 ついで、と言われると少し悲しいけれど。
 それでも助けてくれたことに変わりはないので再びお礼だけは告げておく。
 それに対して彼は鼻であしらう。

「次からは気をつけるこったな。 当分、この辺じゃああいうのは出ねぇと思うがよ」

智「うん、気をつけるよ。 忠告ありがとう」

「ケッ」

 わりかし素直に返したのだけれど。
 そうして彼が背を向けると、先程まで様子を見ていた人並みが少しばかり割れた。
 彼はそれを別段気にせずに、ずんずんと進んで人並みに消えた。

智「……ツンデレさんなのかな?」

 そう、あれこそが正しい『ツンデレさま』だ。
 今度宮和にも教えてあげよう。

 まぁ、その前に。
 次に数人でここに来る時は、少し変装してくることにしよう、と思ったこの頃だった。

 伊沢萩 の好感度が少し上がりました。

 十日目を終了します。

 十日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆


 一応、全キャラに好感度は設置してあります。
 まぁ、それがちゃんとしたエンドにつながってるかはまた別の話ですが。

 次は、土曜日を予定していますが……新作発売直後だからどうかな。 いえ、やりますが。
 それでは、また。

 来ましたです。
 それではいつもどおり、三十分後に。

 ■十一日目 木曜日■


智「今日の魚座は三位かぁ」

 何の気なしに見ていた星座占い。
 三位というのは十二ある星座の中からならいいのだろうけれど正直微妙だ。
 一位も言うほど良くはないと思うし。
 というか携帯などの占いでは順位が下のくせに総合運が上回っているということも多々存在する。
 つまりおざなりということだ。

智「でもまぁ、結果がいいと元気が湧いてくるよね」

 占いなんてものは、いいものだけを信じて悪いものは忘れてしまえばいい。
 そうそう悪い結果なんて出るものでもない気がするけれど。

智「そういえば胡散臭いのとかそういうのもやってそうだよね」

 なんか法外の値段を請求されそうな気がしなくもないけど。
 まぁ僕の目的は、目下占いよりも呪いを解くことの方が先決だ。
 今度あったらそれとなく聞いてみようかな。

智「それじゃあ、いってきまーす」

 そうして、僕は家を出た。


 ↓1

 女性服の流行り廃り、というのは激しい。
 勿論男性服にも流行りというのはあるし、女性服も普通に何年跨いで着れるものもある。
 それでもファッションというものがステータスになっている女性にとって、服の種類というのは重要なのだ。
 もっとも、大体制服を主流としている僕にはあまり必要はないのだろうけれど。

智「でも、最近はそうも言ってられないよね……」

 パルクールレース、というものがあった。
 つい先日も制服姿のまま絡まれてしまった。
 自分で言うのもなんだけど自分の見目はいいと思うし、学校内外でもそれは証明されている。
 それに毎日のように帰宅せずに街で遊んでいると、学校に告げ口でもされかねない。

智「で、あるからして。 僕には至急、変装が必要なのです」

 変装、といえばまずは性別から誤魔化すという手がある。
 しかし僕に至って、それは使用できないのだ。
 『僕』という存在そのものが男だとバレなければ問題ないというのなら話は別だけれど、実験てがらに命をかけるつもりはない。
 故に印象改革、ということになる。

 客観的にみて、僕はお嬢様然としている優等生だ。
 その印象を変えるとなると、真逆の方向が望ましいのだろうけれど。

智「汚らしい、とかいうつもりはないけどね……」

 偶然すれ違う、騒がしい女性達。
 その顔を見ると、厚化粧とまではいかないけれど化粧をしている感バリバリだった。
 ああはなりたくない。 逆に軽く見られそうで。

智「なら、どうしよう」

 ブティックのウィンドウに足を止めつつ僕は頭を悩ませる。
 やりやすいのは近しい人物なのだろうけれど、るいや茜子は僕には向いていない。
 こよりは出来ないことはないのだろうけれど、僕の女性にしてはそこそこな身長は妨げになる。
 やりやすいのといえば、明らかに周りに壁を作る花鶏や、真面目な委員長というのが正しい伊代か。

智「やるなら、伊代の方向かな」

 柔らかい、されど触れがたい。
 そのバランスを触れがたい寄りにして眼鏡をかける。
 なるべく仏頂面にでもしてみれば完璧じゃないだろうか。

智「そうときまれば、早速」

 僕は近くの店から順に、よさ気なものを探す。
 小道具である伊達眼鏡。
 眼鏡というのはそれだけで結構な印象を変える。
 恐らく、眼鏡というフィルターを通して、人相でも割りと重要な眼が屈折して見えるからだ。
 度が入っていればその違和感は更に増す。 そしてその眼鏡を外せば視界が悪くなるために目を凝らすというのもあるに違いない。

智「うん、多分この方向性で間違ってないかも」

 備え付けの小さな鏡を通して自分を知る。
 結構知的な感じにランクアップしたと思う。
 二つの三つ編みにして文学少女風、とかでもいいかも。

智「すいませーん」

 店員さんにアドバイスをもらいつつ、コーディネート。
 そうして完成した外見はなんというか、変装には違いないのだけれど。
 変装しているアイドル、みたいなそんな感じになってしまった。

 自画自賛ではないけれど、ルックスがいいと大抵の服装は似合ってしまうものだ。
 それを誤魔化すには、それこそ真雪みたいなアチャーと頭を抱えてしまいたくなるレベルのそれが必要だろう。

智「まぁでも、これはこれで」

 お似合いですよ、という店員の話を話半分に。
 制服を鞄に詰めて、その姿のまま街中に出る。
 相も変らず少しばかり目を引いている気がするが、いつもよりは少ない気がする、
 制服というジャンルは思った以上に根強い人気を誇るらしい。
 中古の制服がそこそこな値段で売れることからもお察しだ。
 そんなことを考えながら、街中を行く。


 ↓1
 (人物か事象)

智「……あれ?」

 電話をしながら歩く一つの影とすれ違う。
 向こうはこちらに気が付かなかったみたいだが、こっちは向こうに気がついた。

智「チャシャ猫さんだ」

 チャシャ猫さんとの出会いは記憶に新しい。
 寧ろあんな出会いをして忘れろという方が難しいだろう。
 それに結構な美人さんだとも思う。

 電話をしていて、無防備な後ろ姿。
 それを見て僕のいたずら心が首を擡げた。
 前は僕がからかわれたんだし、僕がいたずらしたって罰は当たらないはずだ。
 ついついー、と電話をしている彼女を追いかけ、電話を切ったところで一気に距離を詰める。
 そして、どんっ、と強めに背中を押して声をあげた。

智「わっ!」

「にょーっ!?」

 驚き声は人によって千差万別。
 だけれどステレオタイプとして、男性はうおっ!? で女性はきゃあっ!?だろう。
 にょーっ!? はない。
 そんな予想外な声をあげた彼女に対して、なんて声をかければいいのか悩んでいると眼鏡の向こうのジト目がこちらを見ていた。

「……あのねぇ。 見ず知らずの人にいきなり後ろから驚かすとか何考えてるのさ」

 そして説教が始まる。 若干切れている様子だ。
 もし仮にこれが初対面だとしたら印象最悪だろう。
 けど、それは違う。 多分向こうはこちらに気付いていない。
 もしこれが僕をからかうための演技だとしたらお手上げだろうけれど、眉間に青筋が少しだけ浮いている彼女はきっと気がついていないだろう。

「もし私が心臓悪い人とかだったらどうするのさ。 そういう悪戯っていうのは、十二分に下調べした上に時と場所を選んで――――」

智「ちょっと待って。 もしかして気がついてない?」

「?」

 もしかしても何も、気がついてないのは百も承知で。
 怪訝な顔を浮かべるチャシャ猫さんを前に、僕は眼鏡と帽子ととって髪を下ろした。

智「これで見覚えあるかな」

「……おお、アリスちゃん」

 心底驚いたように彼女は感嘆の声をあげた。
 まぁ会ったのも前の一度だけだし、わからないのも無理は無い。

智「前は化かされた気分だったからね。 こっちが化かしてみました」

「こりゃ一本とられた」

 文句なしにこちらの負けだと認めるチャシャ猫さん。
 それにちょっとばかしの優越感を覚えた。

智「それに、アリスちゃんじゃなくて。 僕は和久津智っていうんだ」

「ほうほう……トモちゃんね。 じゃあ、繰莉ちゃんは蝉丸繰莉ちゃん。 好きに読んでいいけど、繰莉ちゃんでいいよ」

智「どっちさ」

 と、頭に引っかかる。
 蝉丸?

智「もしかして、胡散臭いの……いずるさんの親族さん?」

繰莉「ほほう、いずるっちを知ってるとは中々の情報通だねぃ」

 眼鏡がキランと光る。
 あの人はヒント屋だから、情報通もある意味間違ってない。

繰莉「あの人は繰莉ちゃんの遠いとおーい親戚。 まぁ情報共有する程度の仲だね」

智「それって結構仲いいんじゃ……」

繰莉「親族の中では、わりといいほうだよん」

 ふふん、と少し胸を張る。
 それにどれほどの意味があるのかはわからないが。

智(……語り屋と、探偵ね)

 どちらも胡散臭いに違いないけれど、きっとそれなりの事情に精通しているだろう。
 蝉丸一族……侮れない。

 僕は戦々恐々としつつ、心にそれを刻みつけた。

 蝉丸繰莉 の好感度が上がりました。

 十一日目を終了します。

 十一日目終了

●皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
●花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆ 
●鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

●白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
●茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 同盟が纏まって●になってて草不可避。
 十二日目に行きますか?

 ■十二日目 金曜日■


智「ふー、今週ももう終わりかー」

 制服を着ながらカレンダーを見て、ほっと一息。
 今週も生き延びることができました。

智「まぁまだ終わったわけじゃないけどね」

 溜まり場に行ったり、遊びにいったり、泊まったり。
 週末だし、そんな予定も入るかもしれない。

智「まぁ、よっぽど油断しない限りは大丈夫大丈夫」

 今までだって、皆とそうやってこれたんだし。
 ……いや、お風呂とかお泊りとか、そういうのは少し危険だけれど。
 耐えられた事例もあるんだから、うん。 大丈夫。

智「うん、今日も女の子」

 くるり、と鏡の前で一回転。
 ふわりと浮くけれどそれだけ、わくわくさま鉄壁のスカートは今朝も現在。

智「いってきまーす」

 返事の返ってこない言葉を居間に投げかけ。
 そして今日もまた、日常へと出かける。


 ↓1

智「んー……いい天気」

 家に帰って、また着替える。
 昨日とは別の服。 数パターン用意しておくのは常識だ。
 まぁ手痛い出費ではあるけれど、必要経費。
 眼鏡と帽子は変わらないけれど。
 部屋にある姿鏡で自分を見て大丈夫だと一度頷く。

智「まぁ騙すつもりとか、そういうのはないけど」

 今日は、この変装着のまま皆のところに行く予定。
 皆を一瞬でも騙せたら万々歳。
 数人でも警戒させれば成功ってところかな。

智「問題は、どういう風に入っていくかだよね」

 できるなら騙せるまで騙すつもりだ。
 なら理屈はできるだけ並べておいた方がいいだろう。
 さて、どうしようかと頭を悩ませつつ、家を出た。

 今日の集合場所はビルの屋上。
 着替えで遅くなったために皆もう集合しているだろう。
 階段を一段上がる度に小さな喧騒が大きくなってくる。

 扉の前で一度立ち止まる。
 キャラクター的には小心者キャラ。 一人になれる場所を探していたらついた、ということにしよう。
 深呼吸して、扉を開く。
 油をさしていないせいで鳴り響く錆が嫌に大きく響いた。

伊代「あ、あの娘が来たみたい……ね……?」

るい「おっそいぞーっ! ともち……」

 皆の視線が一斉にこっちを向く。
 僕だろうと思って元気良く向かいいれようとしていた声は、尻すぼみに小さくなる。
 第一次遭遇は成功、といったところか。

智「あ……えと……」

 戸惑っているような素振りを見せる。
 出来る限り茜子と目を合わせないようにしつつ、苦笑いを浮かべた。

智「ご、ごめんなさい。 まさか、人がいるとは思わなくて……あの、帰ったほうが、いいでしょうか……?」

 か細い声で質問する。
 仮に男が(僕も男だけど)こんなことを言ったら、皆は声を揃えて帰れというだろう。
 しかし、びくびくとしている小動物キャラにまでそんな残酷なことをいう人はいない……と、思いたい。
 その予想通り、皆は顔を一瞬だけ見合わせて僕に告げた。

伊代「……いえ、大丈夫よ。 別にここもわたし達のものってわけじゃないし、気にしないでいいわ」

花鶏「袖振り合うも多生の縁っていうしね。 別に今日ぐらいなら構わないわ」

智「そ、そうですか。 ありがとうございます」

 ほっとしたように笑みを浮かべる。
 それにこよりは人懐っこそうに僕に近づいてくる。

こより「鳴滝は、鳴滝こよりと申します! おねーさんはお名前はなんて言うんでしょ―か!?」

智「え、えっと……そ、その……」

 すっ、と周りを見渡す。
 茜子と目を合わせた。
 表情が一瞬変化したかと思えば、承知したとでも言いたげに目を閉じる。
 流石茜子、やはり目を合わせただけで僕だと見抜いたようだ。

茜子「ふっ、この眼を持たぬものにはわかるまい……」

るい「何言ってんのさ、アカネ」

伊代「放っておきなさい、いつものことでしょう」

 役に立ってない!
 一応助け舟を要求したつもりだったのに!

智「え、ええと……」

 名前、名前、名前……適当に考えようにも、思いつかない。
 どうしようかと俯いて頭をこんがらがらせていると、いつの間にか距離を詰めた花鶏が僕の顔を持ち上げる。

智「あ、あの……」

花鶏「……ふぅん」

 あ、バレた。
 直感でそう思った時には、花鶏は僕の唇を塞いでいる。
 頭のなかまっしろ。

 なんでさ!?
 僕だってわかったんだよね!?
 だったらキスする必要とかなくない!?

 一瞬遅れてそんな疑問が湧き出る。
 ほわぁ、と声を上げるのは至近距離で見ているこよりだ。
 見てないで止めてほしい!
 そう思う間にも、僕の口内は蹂躙される。

るい「なにしとんじゃ――っ!!」

花鶏「ぎゃふっ!」

 るいの弾丸パンチが飛んでくる。
 弾き飛ばされた僕を、るいはそのまま受け止めた。

るい「トモ、大丈夫!?」

こより「えっ!? ともセンパイ!?」

伊代「えっ、嘘!」

 気付いていなかった二人が声をあげた。
 僕は疲れた様な表情をしつつ、まずはるいに答える。

智「な、なんとか……それより、るいも気がついてたんだね?」

るい「とーぜん! 一瞬誰かと思っちゃったよー」

 えへへーと笑うるいに合わせて、僕も笑う。
 そして昨日と同じように、眼鏡を外して帽子も脱ぐ。
 こよりと伊代の二人はるいの言葉に半信半疑だったようだけれどそれで僕を確信する。

こより「と、ともセンパイだぁ……全然気が付かなかったッスよう……」

伊代「本当にあなただったの……びっくりしたわ」

 多分るいが一番先で、茜子は二番目。 多分花鶏は僕の顔を間近で見て確信といったところだろう。
 こよりと伊代は騙せたのだから、成功でいいと思う。
 最も、それには大きすぎる犠牲を払ったような気がするけれど。

花鶏「くっ……もう少しで智ちゃんを私のものに出来たのに……!」

智「それはない」

 花鶏が悔しそうにしているのを一刀両断する。
 ……いや、まぁ。 花鶏は上手なんだけどね。
 如何せん、こちらも命に関わるものでして。
 とりあえず、判決。

智「三日間僕にふれないでね。 噂されたら恥ずかしいから」

茜子「妥当ですね」

るい「んだんだ」

 花鶏轟沈。
 永遠の眠れ。

 皆元るい の好感度はこれ以上上がりません。
 花城花鶏 の好感度が少し下がりました。
 茅場茜子 の好感度が少し上がりました。

 十二日目を終了します。

 十ニ日目終了 同盟

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 大体高好感度なら修羅場起きるんですが今回はシチュがよかったので起きませんでした。 いえ、少しばかり起きてはいますが。
 
 さて、今日はここまでです。
 次は四月一日を予定しています。
 それでは、また。

 赤い色を思い出す――――
 あのネタは冗談でもFD出すことは嘘でなければいいのに……

 それでは、いつもどおり焼く三十分後に。

 ■十三日目 土曜日■


智「…………」

 今日の僕は少しばかり低血圧。
 なぜなら今日は学校が休みで、昨日少し夜更かしをしたからだ。
 ゆとり教育バンザイ。 私学だと関係なかったりするけれど。

智「ふぁ……」

 いつもならあくびも優雅(?)に手で隠すけれどそんなことはしない。
 ここは僕の王国で、僕しかいない。
 故に気にする必要はないのだ。

智「……でも、そろそろ起きなきゃかな」

 時計は既に九時を回っている。
 いつもなら大遅刻だけれど今日は休みだから――なんていいわけは通用しない。
 平日の起床とは、日々の習慣がものをいう。
 ならば出来る限り近いほうがいいのだから。

 ぬくもりで僕を縛る布団をなんとか蹴散らす。
 本能が暖かさを求めるが、脳内会議で却下。
 そして一日は始まりを告げた。


 ↓1

 日付指定はできないですので、嘘告白ってことでいいです?
 いやまぁやることは変わらないんですが冗談じゃすまなくなる程度です。

智「あっ、花鶏ー!」

 僕は街中で花鶏を見つけて駆け出す。
 花鶏はその美貌もさることながら、凛とした雰囲気で一際人々から浮いていた。

花鶏「おはよう智。 今日も可愛いわね」

智「冗談」

花鶏「冗談じゃなく本気よ」

智「そりゃ見かけがいいなら粉かけたり毒牙にかけたり」

花鶏「英雄は色を好むのよ」

智「誰かれ構わないなら英雄じゃなく獣だよ」

花鶏「可愛い子猫ちゃんは狼に食べられてしまいました」

智「猫を被って牙を研いでいるかも?」

花鶏「毒を食らわば皿まで」

 花鶏が僕に手を伸ばすけれど、僕はそれをひらりと躱す。
 警戒していなければつかまったかもしれないけれど気をつけていればこんなもの。

花鶏「……つれないわね、子猫ちゃん」

智「耳隠して爪隠さず、だよ」

 なんとか回避しきってほっと一息。
 そんな僕に花鶏は手を差し出す。

花鶏「こっちが誘ったんだもの、エスコートぐらいはさせてもらえるわよね?」

 当然とばかりに、僕はその手を掴んだ。

 花鶏からデートのお誘いがあったのは、起床してすぐだった。
 特に何かする予定もないし、付き合うのもいいかと思ったのだ。
 最近花鶏に襲われてばっかりだったし、ちょっとした復讐を兼ねているのもある。

智「花鶏って、動物とか好きなの?」

花鶏「嫌いではないわ。 でも飼おうとは思わないわね」

智「あの広いお屋敷なら、探すのだけでも大変そうだもんね」

 きっとそういう意味ではないのだろうけれど、適当に勘違いした風にしておく。
 茜子の猫を触っているのも見たことはあるし、本当に嫌いというわけではないのだろう。
 まぁ親の反対を押し切ってあの屋敷に住んでいるのだからこれ以上つけこませたくないというのが本音だろう。

花鶏「智はどうなの?」

智「僕? 僕は好きだよ。 犬も猫も鳥でもなんでもござれ。 アパートじゃなかったら飼ってたかもね」

花鶏「そんなあなたにこれ。 夜も自動で温めてくれるすぐれものよ」

智「自動という名の手動でしょ」

花鶏「自由に動きまわるのよ。 主に身体を、手探りで」

智「寧ろ悪化してる」

 隙あらば助平心を出す花鶏をあしらう。
 きっと僕と花鶏だからこその距離感。 触れるか触れないか、そんな絶妙なもの。

花鶏「そういえば、バイクの免許は結局取るのかしら」

智「……ああ、そういえばそんな話も」

 花鶏に夜這いされて有耶無耶になったんだっけ。

智「ほしいにはほしいけど、余裕が無いかな」

 時間と、精神的なもの。
 お金は、頼めば遺産の中から融通してくれるだろうけれども。

花鶏「そう、残念」

 その口調は然程残念に思ってはいない。
 免許を取るとらないの話をした時に言っていた、一緒に走りたいというのは嘘ではないのだろうけれど。
 それでも花鶏的には誰かを乗せて走る方が好きなのだろう。

智「夜の王子様、だもんね」

花鶏「ええ。 智の席ならいつでも空いてるわよ」

智「遠慮……いや、うん」

 ここで僕の心の悪がひょっこりと顔を覗かせた。
 これはチャンスかもしれない。

智「花鶏、今日バイク?」

花鶏「ええ。 ライダースーツはコインロッカーに預けたわ」

智「じゃあ、今日載せてもらおうかな?」

 花鶏は少しだけ面食らったような表情をした後、笑みを浮かべて了承した。

智「……死ぬかと思った」

花鶏「大げさね」

 大げさだろうがなんだろうが、思ったことには変わりない。
 なにせビルの階段をバイクで駆け上がったのだ。
 花鶏に必死でしがみついていた腕もがくがくする。
 多少腕立て伏せでもして鍛えておこう。 そう思ったこのごろだった。

花鶏「……ほら、智。 見て」

 そう言って指差すのは下界。
 皆といつも集まっているビルよりもっと遠く、街全体を見下ろすことのできる場所から見る夜景はキラキラと輝いていた。
 眠らない街――と言ったら行き過ぎだろうけれど。

智「綺麗だね」

花鶏「ええ。 落とす時は大抵、ここに来るわ」

 そういって無邪気に笑う花鶏は、今回はその目的で来たようには思えない。
 だからこそ、ここで言う価値がある。
 視界を景色から外さないで、僕は花鶏を呼ぶ。

智「ねぇ、花鶏」

花鶏「なにかしら、智」

 花鶏もそのまま答えて、僕はそんな花鶏をちらと盗み見た。
 笑みを湛えたままの銀髪美少女。
 その肩に僕は、こてん、と頭を乗せる。

花鶏「……智?」

 疑惑に満ちた声をしてこちらを注目する。
 それを僕は軽く下から、上目遣いで必殺を放つ。

智「……今日は、帰りたくないな」

 ぷつん、という音がしたような気がした。
 気がついた時には僕は花鶏に押し倒されている。

花鶏「――――」

 息遣いも荒く、僕を見る。
 あ、これは駄目だ。
 花鶏の理性と本能のバランスが吹っ切れているのがわかった。

智「あっ、あとりっ、まって、まって!」

 それでも手がでる前に必死で呼びかけてみる。
 理性の最後の一滴が残っていたのか、反応はあった。

花鶏「な、なにかしら智ちゃん。 わたし、もう我慢できないんだけど……っ!!」

 なんとか。
 なんとか切り抜けなくちゃ、僕は――――!


 ↓1

智「こより――――! ヘルプ――――!!」

 僕は仲間を呼んだ!
 しかし! 誰も現れなかった!

花鶏「はぁはぁ、智ちゃんはぁはぁ、もういいわね? いいわよね!?」

 うん、わかってた。
 そんな都合よくいかないことなんて。
 でも……ちょっとぐらいは逃げられる可能性だってあったのかもしれない……

花鶏「それじゃあ」

 諦めに満ちた僕を、花鶏が、

 END:『狼少女、狼に食べられるのこと』

 間違えた。
  END:『狼少年、狼に食べられるとのこと』

真雪「出張版! 教える、真雪先生のコーナー!」

真雪「どうもこんばんわ、柚花真雪こと真雪先生です」

真雪「二度目ですが、出張版! 教える、真雪先生のコーナー! ではゲームオーバーになったあなたに、様々ヒントをさしあげます」

真雪「さて、今回の原因といえば……藪をつついて蛇が出た、雉も鳴かずば撃たれまい、といったところでしょうか」

真雪「冗談をいう相手と内容は選ぼう、ということですねわかります」

真雪「ちなみに最後の安価。 まぁ安価という体をとりましたが実際には活路を見出す抵抗やら、言葉やらを入れれば可能性はあったかもしれませんね」

真雪「まぁ相手はあの『怪奇! 手を触手のように操る女!』ですのでにげきれたかは運次第でしたが」

真雪「さて! それではヒントを差し上げましょう!」

真雪「前回、●のことを爆弾といいましたが、厳密には違うんですよね。 ●が一定期間で爆発する、なんてことは実はないんです」

真雪「ではどういうことかといえば、>>554でついている★。 これは手を滑らせてしまったのですが、これのように●がついた翌日から★が一つずつ増えていくのです」

真雪「これは●が解消されても元には戻りませんし、次に●がついたときには既についている★に加算されます」

真雪「☆が好感度というなら、★は病み度、といったところでしょうか」

真雪「この病み度が曲者で、各キャラのバッドエンドは勿論のこと他のエンドにも関わごにょごにょ……」

真雪「……と、今回はこんなところですね」

真雪「それではみなさん、選択肢は正しく――――」

 ブツンッ

 >>655
 やり直しを要求しますか?(残り三回)
 1 はい
 2 いいえ

 十三日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 まぁやり直ししないとゲームオーバーですからね……
 ちなみにステータスは十二日終了時と同じですが、念の為。

 ★はあくまで隠しステータスですのでこちらがステータス表示でミスしないかぎり見ることはできません。(根気よく数えれば判別は可能です)
 真雪先生もおっしゃっていた通り色々なendにも関わってくるのですが……まぁ難易度下げるといったので●発生日時を三日放置から五日放置に変更します。
 これで大分楽になる……はずです。 多分。

 申し訳ありませんが、今日は眠いのでこれにて失礼させていただきます。
 次回は五日の土曜日を予定しています。
 それでは、また。

 最近どころか三月は全体的に重かった気が……気のせいかな

 それではいつもどおり大体三十分後です。

 ■十四日目 日曜日■


智「…………?」

 朝、目が覚める。
 知らない天井……なわけがなく、いつも通りの僕の部屋。
 でも不思議な感じだ。 僕がここにいるわけがないような。
 いや自分の部屋で、今は朝なのだからここにいるのは当然なのだけど。

智「変なの」

 ベッドから降りて、ぐっと伸びる。
 この変な気分も、多分今日を過ごせば消え失せるだろう。

智「何しようかな……」

 折角の日曜日ということもあるし、何もしないだけ損だ。
 皆の顔を順に思い浮かべ――――

智「っ……?」

 すぐに止まる。
 何故なら、花鶏の顔を思い浮かべた途端に怖気が走ったからだった。
 でも、僕の頭には疑問符しか湧き出てこない。 確かにセクハラ要素は危惧すべきとはいえ、恐れる必要はないからだ。

智「……ま、まぁいいか」

 振り切るように頭を振る。
 今日の天気も、いつもと同じ晴れだった。


 ↓1

 さて。
 近頃、僕の中で若干のブームになっているものがある。
 それはエロゲーだ。
 大声でいうのは決して憚られることだけれど、案外に面白い。
 それは規則の厳しい宮和が親の目を盗んで購入・プレイすることからもわかると思う。
 まぁ僕も男であるわけだし、そういうシーンに多少なりとも劣情を感じることも一因と言えるだろうけれど。

智「まぁ、見事にハマっちゃったよね」

 真雪にも連絡をとって、お勧めを教えてもらった。
 その中から二つ。 コンシューマ版にもなっているゲームを選択した。
 わざわざ全年齢(とはいっても15、17歳以上対象だけれど)版にするぐらいなのだから一定量の売れ筋は見込める、つまり標準以上の面白さはあるのだろう。
 仮に見つかったとしても、試しに買ってみたんだといえば切り抜けられるのかもという打算的な考えも若干ある。

智「でも、そう簡単に知り合いと合わないよね」

 以前と同じアニメショップで購入した帰り、そんなことを呟いた。
 それがフラグだったのだと気付いたのは、それから数十秒後。
 僕がゲームショップの袋をほくほく顔で抱きしめているのを目撃された瞬間だった。

 一人、二人なら問題はなかったかもしれない。
 三人でも人を選べばまだ誤魔化せる。
 が、やはり問題はその人数にあった。

るい「あっれ、トモちん! おっはよーっ!」

こより「おはようございますですともセンパイ!」

 るいやこよりの人当たりのいい笑顔。
 今はもう昼すぎだからおはようじゃなくてこんにちはじゃない? というツッコミすら出てこない。

伊代「よかった。 今日はもうこないのかと思ってたわ」

茜子「これから茜子さん達は噂に名高い『チュー・ショック』とやらを探しに旅に出るところだったのです」

花鶏「もうそれ何かわからないわね。 ああ、一応言っておくけど昼食よ。 偶然会えたことだし、智もどうかしら」

智「あ、え、えっと……い、いや。 今日は、用事があるから……」

 厳密には、あった、だけれど。
 さっ、と袋を見えないようにする。
 るいやこより、伊代なら別にこの袋を見せてもなんら平気かもしれない。 深くは探求してこないだろうし、素知らぬ顔でグッズだよと答えれば信じるだろう。
 しかし、花鶏や茜子はそうはいかない。
 花鶏は気になったら奪いにくるぐらいやってのけるし、茜子は僕の嘘を簡単に見抜く。
 こうなってしまったら、鞄の中に入れていなかった迂闊さが悔やまれる。

智「だから、その……ごめんね?」

伊代「用事なら仕方ないわ。 気をつけてね」

智「う、うん。 皆も気をつけて」

 そういって皆の横を気をつけながらすれ違う。
 花鶏は別段警戒してないようで、茜子のみが少々疑惑の視線を向けてきているけれど目を見ようとしているために僕の手元には気が付かないようだった。

智(よし、切り抜けた!)

 そう思ったのも束の間。
 僕の手元で、がさりと小さくビニール袋が音を立てた。

るい「……あれ? トモちん、それなに?」

 ギクリ、とした時にはもう遅い。
 るいは僕の身体では隠しきれなかったビニール袋を指さしていた。
 藍色に近い青色のビニール袋は、気付いてしまったらもう気にしないことなどできないだろう。

智「う、うん。 ちょっと、本をね」

 ショップ名のついていない面をさっと見せる。
 青い袋なんて本屋とかならいくらでもある。 それにあのアニメショップでだって本を売っているのだから中身さえバレなければ問題はない……はずだ。

花鶏「ふぅん、ハードカバー? 智もそういうの読むのね」

智「そりゃあね。 かの有名な魔法使いの小説だってハードカバーでしょ?」

伊代「そうね。 確か文庫版のも出ていたとは思うけど、外国作品のはなんとなくハードカバーの方が雰囲気でるわよね」

るい「でも、本ならなんで隠してたの?」

 うまく話を反らせた、と思ったらるいが疑問という名の爆弾を投下してきた。
 そりゃあ、身体の後ろに回していれば、隠していたことぐらい察することができるだろう。

こより「そういえば、そうですね」

茜子「これは、僕っ娘貧乳の神秘があると見た!」

 カッ、と目を見開き僕に告げる茜子。
 そんなことを言って、反応しないわけがない人がこの場に二人。

るい「トモちんの神秘……」

花鶏「ふむ」

 僕のもつそれに二人して目を向ける。
 我が同盟きっての武闘派二人から逃げられる気はしない。

智「ちょっ、駄目だよ!」

花鶏「秘密とは暴かれる為にあるのよ」

 まるで示し合わせたかのように、二人で僕を挟撃する。
 そんな二人から一瞬でも逃げられるわけがなく、花鶏により手元からさっと奪われて袋の中身が開帳される。

花鶏「さて、中身はと……ん?」

智「あっ、あぁ~……」

るい「なになに、どんなの?」

こより「鳴滝にも見せてくださいよう!」

 皆して花鶏のもつそれに群がった。
 そして皆は見る。
 それが本などではなく、ゲーム……それも、成年以外購入禁止のそれだということに。

伊代「……ちょっと。 あなた、これ何?」

智「……じゅ、十八歳以上だから」

 最年少のこよりも、大人の事情で二十歳なのだ。
 必然、僕らは全員二十以上。 だから問題ない、問題ない……

伊代「問題大有りよ!? あなた、だって、女の子なのに……」

花鶏「あら、女の子でも持っている人はいるわよ。 現にわたしの知り合いも数人もっているもの」

伊代「いや、そういう問題じゃ……」

るい「んー、まぁ別にいいんじゃないの? トモちん可愛いし!」

こより「ですです! こういうのも、なんていうんでしたっけ……ギャップ萌え? ってやつですよう!」

茜子「これからはむっつりエロ貧乳と呼ばせて頂きます」

伊代「あなた達ねぇ……」

 思い思いに意見を述べる皆に伊代は呆れる。
 しかし、予想外にあまり気にしていないようだった。
 知らなかった一面の一つ、ぐらいの認識らしい。

花鶏「まぁ、無理に見たのはすまなかったわ」

 周りの目もあるからか、素早く元に戻して渡してくる。

智「いや、僕も隠したわけだし……見られたのは恥ずかしいけど、別にいい……かな?」

 うまく皆の中で消化してくれだようだし。
 基本的に男性がやるものだとはいっても、僕が男性だという結論にはならなかったのだろう。
 ほっ、と心の中で安堵する。

智「そ、それじゃあ、またね」

るい「ばいばーい!」

こより「まった明日ー!」

 元気っ子二人を筆頭に、口々に別れの挨拶を交わすと、僕は逃げるように帰路につくのだった。

 白鞘伊代 の好感度が少し下がりました。

 十四日目を終了します。

 十四日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 どこかで言い訳の発言安価挟む予定だったのに思った以上に皆が勝手に動いた……

 十五日目に行きますか?

 ■十五日目 月曜日■


智「朝だー」

 ガバッ、と一気に起きる。
 視界良好、空どころか思考に曇り一片なし。
 久々に良い感じ。

智「それでも気を抜いちゃいけないんだけどね」

 下手をすればパンを咥えながら走っていると曲がり角でぶつかるという行為で(死亡)フラグが立つこの身。
 学園内でもいつもついて歩く最強のストーカーもいることだから、気の一つの抜けやしない。
 外面を取り繕い、優等生の仮面を被り。
 和久津お姉様は今日も絶賛憂鬱中だ。

智「はぁー……」

 敵を作らないようにするのも大変なのでして。
 女子のイジメは怖いという。 この歳になると性的なイジメがあることも少なくない。
 ふとしたことでイジメにも発展する。 例え宮和などが居なくとも、真、気を抜けないのだ。

智「まぁでも、行かなかったら行かなかったで問題だしね」

 いつもの日常へ、やはり憂鬱を背負って僕は向かうのだった。


 ↓1

新たな出会い(コミュのキャラ)を探しに行く

新たな出会い(コミュのキャラ)を探しに行く

 修正
 >>668
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 ↓
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 授業後。
 僕は無言で席を立ち、せかせかと昇降口へと向かう。

宮和「どうかなされたのですか?」

智「宮」

 わりと早歩きだった僕に追いついた宮和は靴を履き替えている時に問いかけてきた。

宮和「随分と、お急ぎの様子でしたので」

智「……いや、別段急ぐ用事とか、そういうのはなかったんだけど」

 強いて言うなら。
 強いて言うなら、そう。

智「新しい出会いを探しに……かな」

 きょとん、とした表情の宮和はすぐに破顔する。

宮和「いってらっしゃいませ、お気をつけて」

 そうしてやってきた高倉市。
 今の僕の服装は、つい先日購入した変装着だ。

智(とはいっても……)

 わざわざこんなところまで出てきてやることといえば、あまりないんだよね。
 新しい出会いを探しにきた、なんて言ってみたものの、なんでそんな危険な選択肢をとったのか疑わしい。
 そもそも出会いって探すものじゃない気がする。

智「失敗したかなぁ……」

 ぼそりと呟く。
 まぁいいか。 以前見に来た時にまだ見舞われなかった区域もあるし。
 そこら辺をぶらぶらしていれば、何か見つかるかも?

 思い出すのは都市伝説探し。
 幽霊=副島さんはすぐに見つかったけれど、それ以前の少女Aやら、ニ、三mの怪物やらは見つからなかった。
 いい店も同じようなものだろう。
 名店なんて、一日や二日で見つかるはずがない。

智「下調べも重要なファクター」

 この情報化社会、情報がなければ生き抜けない。
 小さくは学校の派閥から、大きくは国単位の戦争まで。
 例えば今から人工衛星やら電話やらをなくしたら、戦争は成り立たなくなるだろう。

智「であるからして」

 世界では、情報が大事なのです。
 そして情報にも鮮度がある。 早ければ早いほどいい。
 といっても観光ならそれほど新旧の違いはない。 強いて言うなら、改装工事などに気をつける程度だろうか。

 そんなわけで。

智「すいませーん」

 露天商の人や、学生姿の人。
 ここら一帯を利用しているだろう人達に片っ端から声をかける。
 ロールプレイ、というわけではないけれど皆すら欺ける変装をしているのだ。 今の僕は、いつもの僕と別人として扱われても然程問題はない。

智「ふむふむ……ありがとうございました」

「いえいえー」

 人の良さそうな女生徒と別れて、メモる。
 駅を中心とした大まかな地図に先の彼女から聞いた色々な情報を書き加える。
 色々な人から聞いて数日は見るに困らない情報が集まった気がする。

智「次に皆と来た時に回れるかな?」

 ぱたん、とメモ帳を閉じて一息。
 次に来るのはいつかわからないけれど、あって困る情報じゃない。
 まぁ、当初の予定(?)だった新しい出会いはなかったけれど……

 赤みがかかった空を見上げる。
 そろそろいい時間。 帰ってご飯の準備もしなくちゃ。

 賑わいを見せる繁華街を通る。
 定時に終わって機嫌の良さそうなサラリーマン達が居酒屋に入っていく。
 少しちゃらそうな学生が同じく軽そうな女の子と歩いている。
 良くも悪くも、ここは新都心だ。

 そしてその中に、一つの姿を見かける。

智「あっ……ちょっ、ちょっと! そこの人!」

「あ?」

 僕が声をかけると、振り返る。
 小柄な体躯。 背伸びしているような服装。
 染めているような銀髪。 そして見るもの全てが敵だというようなつり目。
 間違いなかった。

智「あの……先日は、どうもありがとうございました」

「……誰だテメエ」

 胡散臭そうな占い師でも見るような視線で僕を上から下まで一瞥する。
 ああ、そうだ。 僕は今変装しているのでした。
 帽子と眼鏡を外してニコリと笑顔を向ける。

智「これでわかる……かな? でも助けてもらっただけだから覚えてないかも」

「…………」

 彼は僕の顔を見て思案顔を浮かべる。
 数秒の間を置いた後、思い当たったのかああ、と頷いた。

「あの雑魚共に絡まれてたやつか。 あんときも言ったが、別にテメエを助けたわけじゃねぇ」

智「でも、お礼ぐらい」

「いいっつってんだろ」

 取り付く島もない。
 偶然にしたって、折角見かけたんだからお礼の一つや二つ……

「おいチンピラ、善良な一般市民に絡んでんじゃねぇよ」

「あぁ?」

 突然投げかけられた声に彼は不機嫌そうに声の主を見遣った。
 僕も見遣ると、そこには普通の高校生然とした男子がいた。
 強いて違うところをあげるなら、そこそこに見目がいいぐらいだろうか。

「チッ……んだよ。 何しに来やがった」

「今言ったろ。 人の良さそうな奴に絡んでんじゃねぇって」

「俺が話しかけたわけじゃねぇ」

 言い訳のようにも聞こえるかもしれないが、事実だ。
 どうやら知り合いのようなので、僕もフォローするように話しかける。

智「そうですよ。 実は先日、男の人に絡まれているのを助けてもらって」

「……え? この伊沢が?」

伊沢「……なんだその目は。 ぶっ殺すぞ」

 伊沢、というらしい。 多分苗字だろうけれど。
 呼び捨てにしたら怖いので、さんを付けておこう。

智「はい、事実です。 それで、伊沢さん?にお礼を言っても受け取ってもらえなくて」

伊沢「ばっ……余計なこと言ってんじゃねぇよ!」

「ぷっ」

 伊沢さんが叫んだ途端、もう一人の男性は笑う。
 伊沢さんも恥ずかしいのか、少しばかり顔を赤らめて彼に噛み付いた。

伊沢「瑞和! テメエも笑ってんじゃねぇ!」

瑞和「だっ、だって……お前……ぷっ」

伊沢「チッ……!」

 伊沢さんに瑞和、と呼ばれた人は心底おかしそうに笑う。
 どうやら伊沢さんは、初めに感じた通り央輝と同じような人種らしい。
 つまり悪だけれど悪になりきれない。 たまに人助けはするけれど自分のためだと嘯く。
 それでそのことに突っ込まれたら、恥ずかしさに顔を真赤にして反論する。
 ここまで一致してるのも珍しい。

伊沢「……! テメエも何ニヤニヤしてやがんだ! ぶっ殺すぞ!」

 言われて気がついた。
 僕はいつの間にか笑っていたらしい。 そのことに怒りを向けてくる。
 が、その剣呑な言葉とは裏腹に感情が全く篭っていなかった。
 本当に、そこの瑞和さんじゃないけれど笑えてくる。

智「ふふふっ、あはははっ」

瑞和「ぷっくくくくく」

伊沢「て、テメエら…………!」

 笑う僕らに伊沢さんが本当に(とはいっても加減はしてあったが)爆発するまで、これから数秒もかからなかった。

 瑞和暁人 の好感度が少し上がりました。
 伊沢萩 の好感度が少し上がりました。

 十五日目を終了します。

 十五日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 僭越ながら、条件の絞り用がなかったのでダイスロールで決定しました。
 なんで最後の一人しかいない男子に当たったんですかね……

 さて、私情で申し訳ないのですがこれより学校が再開します。
 のでこれからは一週間に一度……つまり次回は十二日の土曜にやることになります。
 基本的に土曜の予定ですが、何か事情があったり、余裕があったりする時には随時連絡します。

 それでは、また。

 来ました。
 それでは、大体30分後ぐらいに。

 ■十六日目 火曜日■


 今日の天気は曇り。
 降水確率は三十%、まぁまぁの確率。
 十%でも降る時は降る。 まぁ折りたたみの傘を持っているから問題なし。

智「二つ、だけどね」

 何故かと問われれば、単純明快。
 例えば、るい。
 あの元気一発乙女力全開の彼女はまず大傘を持つか持たないかの二分の一。
 そして雨が降るときにはきっと持っていない。
 仮に雨降る街中で遭遇したら、いれてー!と抱きついてくるに違いない。
 死活問題だ。

智「……じとじとしてるのも嫌かな」

 雨そのものは嫌いじゃない、けど。
 温度が高く、汗が嫌な感じになるのは嫌いだ。
 好きな人はあまりいないと思うけれど。
 今日は、まだそういうのではないから運がいい。

智「今日の時間割は……」

 頭の中で思い浮かべ、鞄の中を確認する。
 仮にも優等生、忘れ物があってはならないのだ。

智「うん、大丈夫」

 それでは、今日も今日とて。
 和久津智、いきます。


 ↓1

智「ふぅ」

 昼休み。
 用(お花摘み)を済ませて、ハンカチで手を拭きつつ扉を出る。
 少し前はなるべく人の少ない、職員室付近のトイレを使用しているのだけれど一つの噂のせいでそうもいかなくなった。
 曰く、『和久津さまはお手洗いをしない』。
 いやアイドルですらそこまで偶像ではなくなったこのご時世、あくまで冗談のつもりなのだろうけれどその事実を知った僕は仕方なしに普通のトイレにいくようになった。
 男子トイレ(最後に見たのは随分と前だけれど)と違って個室しかない女子トイレは、大の方の音に気をつけることを除けば案外快適なのだ。
 ……念の為、周りの気配や盗撮のカメラ等には気を配っているけれど。

 そんな和久津さん家のトイレ事情はさておき。
 お手洗いを済ませた僕は目の前によく知る姿を見かけた。

智「宮」

 背筋をぴっ、と伸ばした優雅な歩き方。
 宮和はこの学内に置いても数少ない、『本物のお嬢様』だ。
 家柄という意味なら両手両足でも足りない程はいるのだけど、性格から何まで完璧なのは僕は宮を含めて片手で数えれる程しか知らない。
 まぁ天然もはいっている、『天災さん』でもあるけれど。

智「み……」

 声をかけようとして、やめた。
 少しばかり心に悪戯心が湧いたのだ。
 『和久津さま最強のストーカー』というのは宮和本人の弁。
 それならたまには仕返しをしてもいいかも、なんて。

 少し前に一過性の誤ちでヤバイことが起きたような気がするけれど気のせいだろう。
 どちらにしても、宮和なら酷いことになるまい。
 そう考えて、今日の昼休みは宮和の後をつけることにした。

 とはいっても、だ。
 特にこれといって特筆すべきところは特にない。
 それも当然のこと。 なにせここは学内で、奇抜な行動をとるわけにもいかないのだから。

智「……そもそも、宮って何してるんだろう」

 成人指定ゲームとか官能小説とか、人並みな欲求も勿論もっているのだろうけれど。
 それ以外の趣味は、と聞かれると、僕は然程宮和のことを知っているわけではなかった。
 大きい家で、外出にも厳しく、知識を蒐集するのが好き。
 この情報からいえば勉学が趣味と言われても納得してしまう。
 それだけではサブカルチャーに関しては何の知識も得られない為、インターネットにもそこそこ精通しているのだろう。
 ……なんとなく、だけれど。 プログラミングとかも齧っているような気がしてきた。
 もう何を学んでいたとしても驚かない。

 どうこうしているうちに、中庭へと出る。
 昼休みも半分を過ぎた。 既に昼食を終えた生徒達は、日のあたりのいい芝の上で談笑に耽る。

 雑木に隠れながら宮和の様子を伺うと、不意に視線がこちらへと向いた。
 一応僕の姿は隠れているはずだけれど。
 ドキドキと脈打つ心臓の音を感じていると声が向けられた。

宮和「和久津さま、そんなところに隠れて何をなさっておられるのですか?」

 心の中でほぅ、と息を吐く。
 どうやら宮和の目は誤魔化すことが出来なかったらしい。
 観念した僕は立ち上がって、宮和の言葉に少しばかり肩をすくめて答えた。

智「流石宮だね。 いつから気がついてたの?」

宮和「和久津さまがお手洗いを済ませた辺りから視線を感じておりました」

智「初めから!?」

宮和「はい。 和久津さまの気配なら、不肖冬篠宮和、いつでも感じ取れるように訓練してあります」

智「怖いよ!?」

 流石にそれはびっくりした。
 あの時宮和は僕の後ろを向いていて、完全に意識の外だったはずだ。
 気付いていて尚、素知らぬ顔で会話をしたり、ここまで歩いてきたりと才能の無駄遣いにも程がある。

智「ちなみにどうして、何もしてこなかったの?」

宮和「乙女の秘密、でございます」

智「僕も一応、乙女なんだけどね」

 にんまりと笑みを深めて宮和は答える。
 これには流石にお手上げ。
 どうしようもなく、折れず、曲がらずの精神は硬い。

 僕らは残りの時間を中庭で過ごす。
 周りの女生徒達がそうしているように、僕らは些細な、他愛ない話をしながらひなたぼっこを嗜んだ。

 予鈴が鳴り響く。
 楽しげに談笑していた生徒たちははた、とそれを一時的に止めて学校内へと足を向ける。
 僕らも例に漏れず、立ちながらスカートや靴下にくっついた芝を払いとばす。

智「時間だね。 行こうか。 次の授業はなんだったっけ?」

宮和「確か、数学の授業だったと存じています」

 数学かぁ、眠くなるなぁ。
 少しばかりゲンナリしつつ歩き始める。

宮和「ところで、和久津さま」

智「なぁに?」

宮和「今日の宮は、和久津さまからご覧になられて如何でしたでしょうか?」

 そう言って柔らかな微笑みを称える宮和。
 彼女の問いに返すべき答えを、僕は終ぞ口にだすことはできなかった。

 冬篠宮和 の好感度が上がりました。

 十六日目を終了します。

 十六日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 十七日目に行きますか?

 ■十七日目 水曜日■


 水曜日。
 今週もあと半分。
 テレビを付けてお天気番組を回すと、巷で噂の結奈ちゃんが映っていた。

智「この娘がそうなんだ」

 アイドル風のふりふり衣装、その体型も合わさって男子の保護欲をくすぐる。
 そもそもロリコンはごく自然な思考だ、というのが聞いたことがある。
 小さいもの、或いは弱いものを可愛いと思い、大切にしたい、守りたいと思うのは生物として当然の本能なのだと。
 それに対して性的思考を抱き、実行に移す……即ちペドフィリアは問題だけれど。
 それに日本人は元来にして幼い娘を嫁に迎えるということが多かった。 医学が発達する前では寿命も短いし、初潮が来てすぐに結納する、というのも珍しい話ではなかったらしい。
 ……ちなみに僕はロリコンじゃない。 大きいのも、小さいのもいけるだけだ。
 それはそれで、問題だけど。

智「さて、と」

 テレビの電源を消し、身体を伸ばす。
 バキバキ、と背中の関節が鳴る音が部屋に響く。

智「疲れてるのかな」

 マッサージをしてもらおうにもしてくれる人がいない。
 生業にしてる人に行ったら、きっと骨格でバレてしまう可能性もあるし。
 ……ゆっくり寝て、治すしかないか。

智「行ってきます」

 誰もいない部屋に投げかけて。
 今日も僕は、家を出る。


 ↓1

花鶏「今日は、私の家でエロゲやるわよ!」

 開口一番、花鶏がそんなことを言い出した。

智「なんでさ」

 思わずつい最近買ったゲームの主人公、その口癖が出た。
 いや、本当になんで?
 僕がそう思っているのが顔に出ていたのか、花鶏はふっ、と髪を掻き上げる。

花鶏「ついこの間、智ちゃんが持っていたでしょう?」

智「あれは……ほら、友達に勧められたものだから……」

花鶏「それでわたしも少し気になってね。 適当に良さそうなものを見繕ったのよ」

 聞いてない。
 僕はこれ見よがしに溜息を吐いたが、それも気にも止めなかった。

こより「それで、どーして鳴滝達とやるんですか? そういうのって、普通一人でやるものじゃ?」

花鶏「ふっ、決まってるわ」

 かっ、と花鶏は目を見開いて、力説する。

花鶏「女の子が恥ずかしがりながらエロゲをやるなんて、唆るじゃない!」

るい「あーいつもの花鶏だ」

茜子「産業エロ廃棄物として捨てることをお勧めします」

 花鶏の毒牙にかからない二人がツッコミを入れる。
 僕らが変にツッコミをするとちょっかいを出してくるからわりとありがたい。

伊代「はぁ……前も言ったけど、そういうのって男の人がやるものじゃないの? 女の子が、それも集団でやるなんて……」

花鶏「別に皆で交えるとか言ってるわけじゃないわ。 AVやエロ本を皆で見るのと同じよ」

 花鶏はよく、『男なんて』とか、『これだから男は』とか良く言っているけれど。
 そんな男より見境のない花鶏はもっと酷いんじゃないだろうか……

伊代「それにしたって本来複数人で見るようなものじゃないじゃない!
    仮にやるとしたって、一人で誰にも見られないようなところでやるべきよ!」

こより「うーん……でも鳴滝は、少しだけ興味あったり……」

るい「はいはーい! るいねーさんも! 花鶏が選んだってところがちょっち不安だけど」

伊代「あ、あなたたち……もう少し、恥じらいってものをね……」

花鶏「女だけしかいないんだから、いいじゃない別に。 女性誌のそういうコーナーを見るのと何ら変わらないわ」

伊代「う……」

 言われてみれば、と思ったのか、伊代は言葉に詰まる。
 そもそもとして、価値観の違いで花鶏に口で勝とうとするのが間違いだ。
 圧倒的な正論なら伊代は強いけどね……

智「茜子は?」

茜子「茜子さんは一生関わりがないことが確定しています。 故にお任せです」

 つまるところ、『どうでもいい』。
 興味、性欲がないとは言わないのだろうけれど、仮に好きな人が出来ようと触れることすらできないのだから。
 まぁ茜子らしいと片付けたところで、花鶏は反論がこれ以上ないことを確認する。

花鶏「それじゃ、わたしの家に行くわよ!」

 少しばかり乗り気のるいやこよりを尻目に。
 僕は人知れず、再び溜息を吐いた。

智「で」

 まぁ、僕自身は別に異論はなかった。
 座っていれば別にそういうシーンに入ってもバレにくいし、そもそも僕が買ったようなシナリオ重視のものだと思っていたから。
 けれど今更ながら後悔している。

 花鶏の家にあるパソコンとプロジェクターを使った大画面。
 そこに映しだされていたのは、まさに『そういうシーン』だった。
 固有CGで局部やモノが拡大されて、テキストと音声でそのキャラクターが嬌声を上げている。
 まぁ、それだけなら別に構わないのだ。 エロゲである以上、それは考慮していたから。
 問題は、それがゲームが始まってすぐに映しだされたことにあった。

 るいは何やら関心したようにスクリーンに食入り。
 こよりはひゃーと声を上げながらも台詞を追いかけて。
 伊代は気まずそうな顔をしながら皆と画面を交互に見比べ。
 茜子に至っては顔色一つ変えず……いや、少しばかり赤くなっているけれど、無表情のまま前を向いている。
 花鶏は一人後ろでPC操作をしているので表情は見えない。
 けど、大体何を考えているのかはわかる。

智「なんで陵辱なの!?」

るい「トモ、しーっ」

 僕の声に音声がかき消されたのか、るいが唇の前に指を当てる。
 それに僕は口を紡がざるを得なかった。
 ふふん、と花鶏がドヤ顔をしているのが目に浮かぶ。

 僕は仕方がなしに、音声に興奮する僕のそれを沈めるために心を落ち着かせようとするのだった。

 そのシーンが終わった後、時が遡る。
 ようやくシナリオと呼べるものが始まって、伊代とほっと一息。
 しかし、それも長くは続かないだろうと自覚していた。
 なぜなら僕も陵辱・調教ゲーは持っているから。
 これは舞台措置さえ整ったら、一つのシーンが終わっても十数分もプレイしたら次のシーンが現れるだろう。


 そうして数時間プレイした後、電源を落とす。
 単独陵辱から始まったこのゲームは手練手管でヒロインとその姉を二人同時に攻めて堕とすところまで終わった。
 立ち絵があったのは他にお嬢様キャラや教師もだったので、きっと彼女らも主人公の毒牙にかかるのだろう。

 ともあれ今日は終わってようやく一息。
 興味津々だったこよりは真っ赤になって今にも頭から煙を吹きそうだった。
 同じく興味を持っていたるいは、どちらかといえば感心しているような感じだ。 顔が赤いのには違いないが。
 伊代はもはや言葉が出ない様子。 普通に純愛していたならまだしも、陵辱で無理矢理だったから仕方がない。

茜子「実際、あんなことがあったら死ねますね」

 一応茜子も美少女の部類に入る外見を持っている。
 非力だし、このゲームのように無理矢理やられたら抵抗できないだろう。
 多分、両方の意味で言ったのだと思うけど。

 最後に花鶏を見る。
 僕が自分を見ているということに気がついた花鶏は先ほどの想像と同じように、胸を張って笑みを深めた。

花鶏「……とまぁ、男はこんなことを大体考えているのよ。 だから女の子同士のほうが健全ね」

智「…………」

 呆れが勝った。
 まさかそんなことを言うためだけにこの場を設けたわけじゃあるまいし。
 ……違うよね?

花鶏「それじゃあ、次はいつにしようかしら」

智「次あるの!?」

花鶏「当たり前よ。 次は女主人公の百合物の予定」

伊代「あなた……はぁ。 もう、いいわ…………」

 ツッコミすら諦めた伊代の嘆息が部屋中に響いた。

 花城花鶏 の好感度が上がりました。
 鳴滝こより の好感度が少し上がりました。
 白鞘伊代 の好感度が少し下がりました。
 茅場茜子 の好感度が少し下がりました。

 十七日目を終了します。

 十七日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 思った、というか気がついていたこと。
 前回のこのモードでは、最初の安価は名前だけでも通していたということ。
 そりゃ一日の中では安価だせなくもなりますよね。
 なんで行動含んでたと思ってたんだろう……

 そういえば、ハロレ結構好評みたいですね。
 やっぱり買おうかな……

 さて、今日はこの辺で。
 次回は同じく一週間後を予定しています。
 それでは、また。

 来ました。
 が、今日は所要で何時になるかわからないので一日分のみで、安価だけ置いておきます。
 誠に、申し訳です……

 ■十八日目 木曜日■


 和久津智の一日は、基本的に着替えから始まる。
 仮に今日が休みだとして、一日中家で英気を養うとしても寝巻きのままではいない。
 堕落しそうな生活。 夢は見るけれど現実に程遠いことは知っている。

智「ふんふふーん」

 トースターにパンを入れ、冷蔵庫を見る。

智「朝食は、適当でいいかな」

 時間がない、というわけではないが。
 下拵えもしっかりする夕食と比べたら、つい簡単なものになってしまう。
 弁当用にもつかえるものを選ぶのだから内容が単調になってしまうにしても仕方がない。
 アスパラベーコンに卵巻。 後はミニトマト辺りでいいだろうか。

智「あっ、双子」

 卵を割ると、そこには二つの黄色い目玉がこちらを覗きこんでいた。
 珍しいな、と思いつつもそれをかき混ぜ始める。

智「今日はいい日になりそう」

 卵を巻きながらそう呟いたところで、トースターが小気味良く音を立てた。


 ↓1

 今日の行き先は珍しく図書館。
 事の発端は伊代が先のエロゲ事件(仮)をしてこう主張したからだ。

伊代『成人向けという言葉を譲ったとしても、ゲームをやったり遊んだりするのはちゃんと勉強をこなしてからね!
    そもそも学生の本分っていうのは勉強で、学校によってはその学校そのものに補修だの補講だのがあるところもあるのよ?
    それなら、そういうことをしていないわたし達はちゃんと個人で勉強をするべきであって…………』

 以下略。
 つまるところ伊代の言いたかったことというのは、『皆で今度は勉強をしましょう』ということだった。
 先に趣味全開でエロゲをやろうと提案した花鶏は否定する術を持たず、勉強が苦手なるいやこよりも正論だけに反論する余地はなかった。
 図書館の六人がけの勉強机を占領して教科書やノートを広げている僕らは迷惑に他ならないだろう。

るい「うー……」

こより「あわわー」

 るいはとりあえず形だけ広げたノートとにらめっこ。
 こよりは目を回しつつ頭を捻っていた。
 茜子と花鶏に至っては勉強をする素振りすら見せなかった。
 というか花鶏は寝ている。

智「これは……」

 前二人はまだマシだけれど、今にも投げ出しそうな雰囲気。
 僕も勉強はあまり好きではない部類だけれどやらなければ命に関わる為に習慣は付けている。
 伊代はきっと性格的に、真面目にやっているタイプだろう。
 このままではメンバーの過半数が勉強会で勉強を投げ出すという結果になってしまう。

智「仕方がないか……こより、教えようか?」

 隣の席に座っているこよりに声をかける。
 するとこよりは声を掛けられたことに一瞬だけ驚いたがすぐに僕の言葉を飲み込んだのか笑顔になった。

こより「はいっ! ともセンパイが教えてくれるなら百人力ですよう!」

るい「ともちん~私にも教えてよ~」

 こよりをこえて反対側にいるるいが喜ぶこよりを見て文句を漏らす。

伊代「……あなた、一つ上じゃない。 どうやって今まで進級してきたのよ」

るい「テストは今まで鉛筆を転がしてしかやってないからね!」

こより「そこは胸を張るところではないと思いますです」

 その幸運に逆に尊敬する。
 というか寧ろほしいくらいだ。

茜子「茜子さんはニャー共のことを書き連ねていると終わっております」

智「……ちなみに、先生たちとの面談はどうしてるの?」

茜子「適当に返事していると帰されました。 ニャー共の魅力が伝わったのだと思います」

 それはただ匙を投げられただけだ。
 茜子の学校に熱血系の教師がいなくてよかったと思う。
 でなければどこかで触れられて呪いを踏んでいたかもしれないのだ。

伊代「それにしても……問題よ」

智「ああ、うん、まぁ」

伊代「そりゃあね。 得手、不得手はあるわ。 勉強が嫌いで、苦手になるのもわかる。 けどね」

 伊代はぎろり、と自分の隣へ視線を向けた。
 そこには今にも鼻ちょうちんを作りそうな銀髪の美少女がいる。
 というか花鶏だった。

伊代「勉強を全くしないこの娘が! なんで頭がいいのよ!」

智「どう、どう」

 花鶏は『わたしは何もしなくても成績いいから』と言って寝てしまったのだ。
 ちょっかいを出されて集中できないよりはましかなと思っていたが、伊代はずっとひっかかっていたらしい。
 でも花鶏はきっと、人知れず努力をするタイプだと思う。

伊代「あなたやわたしだって真面目に勉強しているっていうのに……」

智「良くも悪くも、花鶏はマイペースだからね」

伊代「……納得いかないわ」

 きっと花鶏は才能も使っているのかもしれない。
 伊代の才能だって割とチートじみているものだ。 それを使えば勉強にだって活かせる。
 けれどそれをしないのは伊代曰く『フェアじゃない』から。
 なんとまぁ、不憫な性格とも思う。

 そうこうしているうちに、るい、こより、茜子の三人がドロップアウトしてしまう。
 こよりには関しては教えると言ったのに、低きに流れてしまったらしい。
 楽な方に生きようとするのは人間の性。 きっと僕にも止められない。

 そんな三人を見て、伊代はこれ見よがしに溜息を吐いた。
 言ってもどうにもならないのだと悟ったのだろう。
 これで僕もあっちに行ってしまったらと考えると可哀想になってしまう。
 無論、そんな気はないけれど。

智「伊代、頑張ろう? 僕も一緒にやるから、ね?」

伊代「うん……ありがとう。 あなたがいるから、頑張れるわ」

 僕の言葉で少しばかり元気を取り戻した伊代と勉強を進める。
 時に質問し、時に教えあう。 これぞ正しき勉強会の形で。
 流石に邪魔をしようと思うだけの意地悪は皆の中になかったようで、僕らはそのまま、花鶏が起きる夕方まで二人の世界で完結していたのだった。

 皆本るい の好感度が少し下がりました。
 鳴滝こより の好感度が少し下がりました。
 白鞘伊代 の好感度が上がりました。
 茅場茜子 の好感度が少し下がりました。

 十八日目を終了します。

 十八日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 あーくそ眠い。

 今回は一日分しか出来なくて、改めて申し訳、でした。
 内容も心持ち薄い、というか不完全な気がしますし……そちらもごめんなさいです……

 来ました。
 例のごとく、大体30分後ぐらいに。

 ■十九日目 金曜日■


 本日、金曜日。 天気は晴れ。
 とりあえず今日を乗り切れば休日。
 勝手な都合で自主休校することの多い僕だけれど。

智「うん、良い感じ」

 味噌汁を飲んでホッと一息。
 今日の朝食は和食。
 白米に納豆焼き鮭味噌汁のこれぞ和食! という和食だ。
 と言っても焼き魚はフライパンを使って焼いたムニエルもどき。 完全な和食とは言い難いけれど僕にしてみれば和食に違いない。
 フレンチとかが好きな僕だけれど。
 たまには無性に和食が食べたくなるのは、やっぱり日本人だからかも。

智「いっただっきまーす!」

 手を合わせて誰にいうでもなく。
 僕は一日の活力である朝食を頂く。


 ↓1

「ああ――ああ。 駄目よ、それは」

 不意に引き戻される。
 頭痛が酷い。 少しばかり吐き気もする。
 目の前に広がるのは座敷。 そして、最早見慣れた彼女。
 それは、責めるような瞳でこちらを見下ろしていた。

「わたしの役割は、決まっているもの」

「そこには、わたしのいる術はないわ」

 どうやら、未来をねじ曲げようとしてしまったらしい。
 彼女のいう、『袋小路の未来』というやつだろうか。
 いや、どちらかといえば『見えざる未来』の方か。
 どちらにしても、『来ることのない未来』だったのだろう。

「未だ来ざる未来」

「来るべきその終末」

「わたしを求めるなら――そうすればいいわ」

「う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 遠く、遠く。
 深く、深く。
 意識がまた、海の底へと、森の奥へと落ちていく。

 十九日目を終了します。

 十九日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 世界を行ったり来たりさせるのも多少なりとも時間がかかるのです。
 二十日目に行きます。

 ■二十日目 土曜日■


 泥に沈むように、深い眠りだった。
 昨日、そう、昨日は……とても眠かったのだ。
 うつらうつらとしながら、学校でも必死に眠らないようにしていた。
 宮和との会話もそこそこに、満身創痍で家まで辿り着いて、眠った。
 眠って、眠って、眠ったのだ。

智「そのせいか、今日はばっちりだけどね」

 約十二時間にも及ぶ睡眠。
 これで眼が覚めないほうが嘘だというやつだろう。

智「疲れでもたまってたのかな」

 長時間の睡眠で凝った肩を揉みほぐしているとお腹が音を立てた。
 当然かもしれない。 昨日は夕食も食べないで眠ったのだ。
 なんとか、制服はハンガーに掛けたけれど。

智「……とりあえず、ご飯かな?」

 冷蔵庫には、何があったっけ。
 その中身を思い出しながら、僕は台所へと向かった。


 ↓1

花鶏「ガールズトークをしましょう」

 ずびっ、と花鶏は僕らを指してそういう。
 それに真っ先に反応したのはるい。
 無論、諸手を上げて賛成したというわけではなく。

るい「まーた花鶏が変なこといいだした」

 と、どちらかといえば否定的な。
 こよりは首を捻って、花鶏の言葉を噛み砕く。

こより「ガールズトークは、今まさにしているのでは?」

智「字面通りに受け取れば、女の子達の会話だからね」

花鶏「甘い、甘いわ! 紅茶に砂糖をニ十杯入れるよりも甘いわ!」

伊代「何その砂糖汁……うぅ、想像しただけで嫌になるわ」

 体重を気にする伊代は花鶏の例えにげっそりとする。

茜子「それで、その砂糖指数二十よりも甘いと言うのは?」

花鶏「どうもこうも! 女の子特有の甘酸っぱさがここには無いのよ!」

伊代「甘酸っぱさって……あなたは何を求めてるのよ。 まさか、あなたのよくやるレズ紛いのことじゃないでしょうね?」

 伊代のツッコミが冴え渡る。 ついでにその目つきも。

智「まぁ女子力っていう意味なら不足してるかも……?」

 そもそも女子力ってどういうふうに割り出されるのかはわからないけど。
 乙女力なら知ってる。 るいがだいたい100万乙女。

こより「あー……確かにそうですねぇ。 ともセンパイがダントツで高いぐらいで鳴滝たちはそれほどでも……」

伊代「え、わたしは? 料理とか、家事とか結構できるけど……?」

るい「イヨ子は、ほら……」

茜子「空気読めない。 マイナス五十点」

伊代「そ、そんなに……!?」

 るいが濁したのを茜子が拾う。
 伊代はそれに結構な衝撃を受けたみたいだけれど、僕もだ。
 男である僕の女子力が一番高いって……

花鶏「そう、そうなのよ! そんなわけで、わたしたちには女の子らしさが不足しているのよ! これは由々しき事態だわ!」

るい「っても、女の子だけなら大体こんなのじゃない?」

こより「ですねぇ。 アニメでよくやってるようなゆるーいのって中々……」

茜子「茜子さんは猫度に極振りですにゃー」

花鶏「くっ、こいつらは……! こうなれば、智! 何か話題を振りなさい!」

智「えっ、僕!?」

 突然に振られて、少しばかり驚く。
 花鶏は畳み掛けるようにして続けた。

花鶏「女子力の一番高い智が話題を振れば、他の皆の女子力も引き上げられるはずよ!」

 そしてそのままあわよくば、と考えているだろう花鶏の表情は他に見せられないものになっている。
 きっと、初めからそれが目的なのだろう。
 適当に男をとぼしめて、毒牙にかける。 花鶏のよくやる手だ。
 しかし、いい機会かもしれない。
 たまにはおおっぴらには聞けないようなことも、話題にあげてしまおう。

 例えば――――


 ↓1

智「うーん……それじゃあ、好きな男性のタイプ……とかは?」

 鉄板も鉄板のネタ。
 逆にいえば、当たりも外れもないハズ。

こより「はいはーい!」

智「はいこより君」

こより「こより君であります! ええと、鳴滝は昔約束した王子様です!」

伊代「本当、あなたは変わらないわねー」

 こよりは恋沙汰の話になると大体これだ。
 幼少の頃将来を誓い合ったというお兄ちゃん、もとい王子様。
 良くも悪くも、こよりは純粋だった。 思い出補正というものは思った以上に強力らしい。

智「るいはどうなの?」

るい「私? 私は……そうだ! ちくまよをお腹いっぱい食べさせてくれる人がいい!」

智「それはまた……」

 ハードルの低そうな……
 いや、高いのかな? 値段的に。
 お腹いっぱい、というのが肝だろう。
 甲斐性がないと大変そうだ。

伊代「わたしは……そうね。 キチンと、節度を守ってくれる人がいいわね」

茜子「茜子さんは遥か彼方、猫王国に君臨する――――」

伊代「それはいいから!」

 まともに答えようとしない茜子の言葉を伊代は遮る。
 確かに伊代と付き合うならしっかりした委員長タイプの人だろうけれど。

智「伊代には、どちらかというと問題児のほうが似合いそうな」

るい「あ、それわかる! なんていうか、イヨ子は不良に世話をやいてるのが合いそう!」

こより「それでそれで、少しズレてる注意をしてしらけさせて、悪事をやめさせるんですね!」

伊代「あなた達、褒めてるの? それとも貶してるの?」

 不良の悪行を止められるといっているのはいいことなのだろうが、その方法が自分の欠点を使った方法。
 きっとこの二人に限っては、悪気は全く無いだろう。

智「それで、花鶏は……聞くまでもないかな」

花鶏「ええ、そうね。 男なんて野蛮だわ」

 ファサッ、と髪を掻き上げる。
 仮に花鶏の隣に男が立つとしても、並大抵の人間では月とすっぽんだろう。

智「だろうね……あ、でも参考までに一つ聞いておきたいんだけど」

花鶏「あら、何かしら」

智「例えば……例えばだよ? 僕と瓜二つな男子がいたら、どうする?」

るい「トモちんによく似た男の子かー」

伊代「あなたに似て、きっと女子力も高いんでしょうね。 けど……」

花鶏「……ふむ。 場合にもよるでしょうけど、それなら悪く無いわ」

智「……あれ?」

 花鶏にだけ聞いたはずなのに、皆も同時に反応した。
 なんだろう、この空気。

智「そ、うなんだー。 へぇー。 そ、そういえばさー」

 嫌な感じしかしないので、無理矢理に話題転換しようとする。
 が、しかし。 それは当然のように阻まれる。

るい「それで、智はどうなの? 私達の中で、誰が好き?」

智「今日、学校で……」

こより「駄目ですようともセンパイ! ちゃんとともセンパイも言わなくちゃ!」

伊代「そうよ。 他の人に言わせて自分だけ言わないなんてフェアじゃないわよ」

智「宮、が……」

花鶏「嘘をついても無駄よ。 こっちには優秀なポリグラフがあるんだから」

茜子「どうも、ポリグラフです」

智「え、と……僕は……」

 右を見ても、左を見ても。
 まるで示し合わせたかのように、皆の言葉が繋がる。
 それは、どうしようもなく。

智「僕、は……」

 行き止まり――袋小路で。
 ならば、と。
 踵を返し、全速力で逃げ出す。

智「好みのタイプはいませんっ!」

こより「あっ、逃げた!」

花鶏「追うわよ皆元!」

るい「がってん!」

 ――――こうして、女子力あげようガールズトークの会は幕を閉じたのだった。

 僕がにげきれたかどうかと言うのは、また別の話。
 そういうことに、しておいてほしい。

 皆元るい の好感度が少し上がりました。
 花城花鶏 の好感度が少し上がりました。
 鳴滝こより の好感度が少し上がりました。
 白鞘伊代 の好感度が少し上がりました。
 茅場茜子 の好感度が少し上がりました。

 二十日目を終了します。

 二十日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 今日はここまでです。
 十九日目はどうしようか悩んだ結果、詰まれてしまいました。

 それでは、また来週、です。

 来ました。
 例のごとくあと30分ぐらいで始めます。

 ■二十一日目 日曜日■


智「んー」

 朝食を済ませて一息。
 週末はあっという間に感じる。
 皆と出会う前までは、家に閉じこもっていることも多かったというのに。

智「やっぱり、皆といると楽しいもんね」

 つい最近は、皆――同盟とばかり過ごしている気がする。
 いや、それを除いたら関係のある人は、両手で数えられるほどしかいない。
 その中にはあまり顔を合わせたくない人も多々居るし――やっぱり皆と会うのは自然なことだ。

智「今日もまた、何事もありませんように」

 窓から外を眺め、そんな些細な願いを呟く。
 そして僕は身を翻して、身支度を整える為に洗面台へと向かった。


 ↓1

 あなたは、スカートです。
 そもそも、この言葉自体が呪われているのだと僕は思う。
 いや、母さんは僕が死なないように、万が一もないようにとこれを告げたのだ。
 そこに感謝することはあれ、疑念を挟む余地は少しもないだろう。

 しかし、しかしだ。
 それは、絶対にスカートでなければならないのだろうか。
 断言できる、それはNO、だった。

 パンツルック。
 それは決して、男だけのものではない。
 男装の麗人、という言葉があるように女性も男性の格好をしても不思議ではないのだ。
 逆は問題であり、そしていつも女装をしている男性が男の格好をして男装だと言い張るのはどうかと思うのだけれど。

 兎角として、だ。
 たまには僕だってまともな格好をしたい!
 そう思って用意したのが、此度の男装セットだったわけだ。
 まぁさっきも言った通り、男である僕が男装をする、というのもおかしな話だけれど。

 それでも、それでも僕はこれを着る。
 Yシャツに似た形状のシャツに、デニムパンツ。
 ちょっと気取った感じにして、後髪はポニーテールで纏める。
 果たして、鏡の前に現れたのは女の子の僕(男装バージョン)だった。
 もう少し美形にすれば、どこぞの演劇で男役でもやっていそうな感じ。

 しかし、これならば目立つことはあるにせよ男だと思われることは非情に少ないと思われる。
 本来なら目立つことすらもあまりしたくないけれど、犠牲というものはつきものなのだ。

智「それでは、いざ」

 僕は晴れ晴れとした気持ちで、家を出たのだった。

 失敗した、と思ったのは街中に出てから。
 いつもより振り返られる回数が多いような気がした。
 それはきっと、女の人も僕の方に注目をするからだろう。
 南総の制服をまとっている時に僕をみるのは、主に同学年代の男子ばかりだった。
 しかし今はどちらかといえば、奇異の視線に晒されている。
 いや、そこまで好奇心のあるものではないのだろうけれど、それでも『今の、女だよな?』とかが聞こえてくるぐらいには危ういらしかった。
 そういえば、家をでるときに隣の人と遭遇しなかったのは今更ながら僥倖といえるだろう。
 下手をすれば変な方向に目覚められて、僕はかの家に拉致られていたかもしれなかったわけだから。

智「失敗したかな」

 なんて思えど今や後の祭り。
 しかし未だに死んでいないということは僕の本当の性別がバレてはいないということだろう。
 そもそも、僕のこの〈呪い〉には曖昧さが多すぎる気がする。
 伊代や茜子、央輝などは非情にわかりやすい。 固有名詞を読んだら、触れられたら、太陽に触れたら。
 太陽に触れる、というのが擬似太陽……つまり日焼けサロンなどのものに触れても大丈夫なのかは曖昧だが、わかりやすい部類だ。

 其れに比べて、僕の『本当の性別がバレてはいけない』というのは曖昧だ。
 例えば、そう。 皆から女性だと認識されている人……仮に僕としておこう、僕が完璧な男装をして、この人は男だと思われた時。
 それは果たして、呪いを踏むのだろうか?
 概念の問題だと思うけれど、僕=女性で認識した場合、目の前の男性=僕とはならないだろう。
 いや男性が僕だと思ったとしても、前提として僕=女性という認識があるなら、あれ、と疑問を浮かべるに違いない。
 それは恐らく、僕の本当の性別がバレたのだと言いがたいだろう。

 そもそも本当の性別を知られるとはどういうことなのか。
 僕……和久津智=男性だと結びつけることがその鍵なのだとすれば、僕の名前を知らない人に僕が男性だと思われても呪いは踏まない、ということになる。
 いや、例えば裸を見られたなら確実にアウト、というのはわかっているけれど。
 つまるところ、『和久津智』が知られているのか、いないのか。 それが焦点なのではないか。
 まぁ、思ったところで試そうとは思わないし、思えない。 それこそ命がけなのだから。

 とんとん、と階段をあがっていく。
 今日は少し早くきすぎたかもしれない。
 もしかしたら、皆まだ揃っていないかも。
 それなら、ちょっと遊んでみるのもいいかもしれない。
 そう思いながら、僕は屋上の扉を開いた。


 ↓1
 (同盟内メンバー。 複数可)

智「っと、おはよー」

茜子「! はい、おはようござ…………」

 扉を開ける。
 向こう側にいたのは、しゃがんで猫と戯れていた茜子ただ一人だけだった。
 その表情も 珍しいものを見た、とでもいうように固まっている。
 それ自体が僕にとっては珍しいものなのだけれど。

智「茜子だけ?」

茜子「…………あ、はい、いえ、我が第一の配下、ガギノドンがここに」

 茜子に腋の下から持ち上げられて、かかげあげられる。
 ニャァー、と野太い声が聞こえた。
 不満そうな顔をしているけれど、この猫はいつもこんな感じなので分かり辛い。

智「そっか。 ガギノドンも、おはよう」

 僕をじっと見つめて、鼻をすん、と動かす。
 それで興味を失ったように僕から視線を外し、答えるようにしっぽを一度だけ振った。
 無愛想な子。

茜子「それで、あなたは……こほん失礼、僕っ娘貧乳タイプMENはどうしてそんな奇抜な格好を」

智「別に言い直さなくていいから!」

 そっちの方が失礼だし!

智「それで、この格好の理由だっけ? うーん……これといってはないんだけど、強いて言えば皆を驚かせようと思って?」

茜子「まぁ、一目見て誰だかわかる分、前よりかはマシですね」

 前の時は僕の目を見てようやく、といったところだった。
 今回は面影も残していたし、すぐにわかったのだろう。
 それでも少しびっくりしたようで、ジト目で僕を見つめていた。

智「あはは、じゃあとりあえず、大成功ってことで」

茜子「それにしても、この溢れ出る乙女力……ば、ばかな、まだあがるだと――――!」

智「男装なのに乙女力とは如何に」

 茜子は僕の疑問に答えず、僕の靴を数回猫パンチで叩く。
 けれどそれだけ。 茜子は思い出したかのようにガギノドンを転がして、その腹部を撫でる。
 相変わらずマイペースだ。
 それがいいのだけれど。

茜子「……ところで」

 僕もガギノドンに触りながら遊んでいると、不意に茜子が口を開いた。

智「ん?」

茜子「それを着るのは、今日が初めてですか?」

 その質問がどういう意図をもつのか、少しわからなかった。
 まぁでも茜子のことだ。 何かきっと意味があるのだろう。 ないようなきもするが。
 しかし僕はそれに正直に、一度縦に頷いた。

茜子「……ふむ。 なら、いいです」

 何がいいのか。 なんだったら駄目なのか。
 そんな質問すら受け付けず、茜子はまた、僕から視線を逸らした。
 風に僕の纏めたポニーテールが少しばかり揺れた。


 ちなみに、その後に来た皆からも、中々に好評だった。
 もっとも、僕が女だと前提しての『格好いい』だったため、色々と複雑なのだけれど。

 皆元るい の好感度はこれ以上上がりません。
 花城花鶏 の好感度が少し上がりました。
 鳴滝こより の好感度はこれ以上上がりません。
 白鞘伊代 の好感度はこれ以上上がりません。
 茅場茜子 の好感度が上がりました。

 二十一日目を終了します。

 二十一日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 茜子は好きなんだけど、台詞とかの言い回しが少し難しい。
 ちなみに難しいけど、書いてて楽しいのは宮。

 二十二日目に進みますか?

 ■二十二日目 月曜日■


智「なんだか、休んだ気がしないなぁ」

 制服のリボンを整えつつ、カレンダーを横目に見て一息。

 世界は五分前に作られた、と誰かが熱弁した。
 神様という存在はたった五分で、ありとあらゆる歴史を作り、ありとあらゆる記憶を作り世界を完成させたらしい。
 だとしたら僕は明らかに未完成ではないかと思う。
 いやその記憶の話ではなく、この呪いの痣的に。

智「いっそ、記憶だけだった、ってことにならないかな」

 僕は、僕らは本当は全く呪われてなんかいなくて。
 ただその記憶があるだけで、呪われていると思い込んでいて。
 それで、呪いなんか踏んでも問題ない――――なんて。

智「そんなこと、あるわけないよね」

 実際に踏んでみるわけにもいかない。 こちとら生死に関わる。
 僕は痣のある右肩らへんを鏡越しに見る。
 今は制服を着ているから、外からは全くわからないけれど。
 それを左手でそっとつつみ、僕は溜息を盛大に吐くのだった。


 ↓1

 ここで、一つ言っておこう。
 僕は、お隣さん――任甫さんのことが苦手だ。
 別に嫌い、というわけではない、 そうじゃないんだけど、その存在が苦手だ。

 お隣さんだから、関わらなきゃいけないから、というわけではない。
 むしろそれだけならいい。 惚れられでもしない限り、一定の距離を保つことなんて造作も無い。
 しかし、そんなことはない代わりに彼は酷い地雷だった。

 彼の趣味は、というか性癖は、『女装子』、つまるところ女装した男の子だ。
 女は駄目で、しかし男色というわけでもない。 女装した男の子だけが好きらしい。
 僕の目の前で、『君が男だったらな……』ということもしばしばあるし。
 以前南総学園に男の子が女として通っているという噂が立った時の興奮様といったら、それはもう。
 正直、震えが止まりませんでした。

 とまぁ、そんな感じで。
 ピンポイント爆撃か、と突っ込みたくなるほどに僕の天敵さんなのだ。
 だから、苦手。 故に、苦手。
 なるべく会いたくない人ナンバーワンに君臨し続ける存在、それが任甫さんだ。


 さて、その任甫が今何をしているかといえば。

任甫「和久津さん、次はこっちの店を……」

 何故か、僕と一緒に買物……所謂デートもどきをしているのでした。

 この日、彼と出会ったのはただの偶然だった。
 僕は学校で推薦されていた参考書を買いにショッピングモールに行った。
 その一つのアクセサリーショップの前で頭を悩ませていたのが、任甫さんだったのだ。

任甫「……ん? ああ、和久津さんじゃないか。 奇遇だな、こんなところで」

智「あ、え、ええ……奇遇……ですね」

 確か、こんな会話から始まったと思う。
 すると任甫さんがこんなことを言ったのだ。

任甫「ああ、そうだ、丁度よかった。 少し、頼まれてくれないか」

智「え……ま、まぁとりあえず、聞いてみないことには」

任甫「実は、忌々しいことに女にプレゼント……いや、手土産をしなくてはならなくなってな。 如何せん、俺には女心というものがわからないし、わかりたくもない」

任甫「そこで、だ。 和久津さんならきっと、いいものを選んでくれるだろうと思ったんだ。 勿論、少しばかりだが礼はしよう」

智「はぁ……まぁ、そのぐらいなら」

 何か交渉事か何かに使うのだろうか。
 多分相手の気分を良くするかどうするかに用いるのだろう。
 まぁアクセサリーを見ていたということは多分デザインとかそういう系の話なのだろう。
 少しばかりアドバイスだけすればいいかな。

 なんて、思ってた僕は甘かった。
 その人に会うのは明日だという話で、やはり自分では判別がつきにくいから僕もついてきてくれ、ということになったのだ。
 仮にも引き受けてしまった以上、撤回するのは難しいだろう。
 なにせ相手は義の人だ。 約束は守るだろうし、守らない相手にはきっと容赦しないだろう。

 そんなわけで、僕は任甫さんに一日限りだけれど付き合う運びとなったのだ。

智「男性も女性も、プレゼント選びというのはあまり変わりません。 要するに相手の好きなものを選べばいいわけですから」

任甫「ふむ」

智「例えば任甫さんなら……ええと、ほら。 ああいう感じの本とか、好き、らしいじゃないですか」

任甫「ああ。 だが最近は不作が多くてな。 良作と呼べるものは一握りどころか片手で数える程度でしか――」

智「そっ、それはともかく」

智「男性も女性も、プレゼント選びというのはあまり変わりません。 要するに相手の好きなものを選べばいいわけですから」

任甫「ふむ」

智「例えば任甫さんなら……ええと、ほら。 ああいう感じの本とか、好き、らしいじゃないですか」

任甫「ああ。 だが最近は不作が多くてな。 良作と呼べるものは一握りどころか片手で数える程度でしか――」

智「そっ、それはともかく! 今のは極端な例ですけど、相手の好みに対して選べばまずハズレはないってことです!」

 所構わず趣味を語ろうとした任甫さんの言葉を遮って、僕は締めくくる。
 まぁ異性からそういう本を渡されたら困るというレベルではないのだけれど。

智「それで、相手の趣味はどんなものか知ってます?」

任甫「知らんな。 興味もない」

 僕は小さく、頭を振った。
 それでよく交渉の席につこうなどと考えたものだ。
 寧ろ相手を気分良くするために勉強しておくべきじゃないだろうか。
 確かにプレゼントも一つの手だけれど、相手が確実に喜ぶものでなければ意味は無い。

智「はぁ……じゃあ、イメージだけでもいいです。 知っていることを教えて下さい」

任甫「そうだな……まず、アレは俺たちの間では『マダム』と呼ばれていて――――」

 任甫さんが語るそのイメージから、手土産に使えそうなものを絞り込む。
 というかそもそも、アクセサリーは駄目だ。 デザインというのは個人の趣向に大きく左右される為に外れもひきやすい。
 だから僕が選ぶのは。

智「ワイングラス、とかいいかも」

任甫「ワイングラスか」

智「はい。 ティーセットとかでもいいと思いますけど、ワイングラスは普段使う人なら持ってて困らないし、使わない人だとしてもワンセットもっていても困らないものです」

 たまたま呼んだ客人がお勧めのワインを持ってきたりすることもあるだろう。
 そんな時に小洒落たモノを持っていたら、話の種にもなる。

智「それに、どこかから仕入れたものでなければ、店によってデザインが違うというのも大きいです。 その人が偶然見つけていたりしない限り、重なったりすることもないでしょうから」

 任甫さんは少しばかり悩んだ素振りを見せて、納得したように一度頷く。

任甫「ああ、それでいこう。 和久津さん、できればこのまま商品も見てもらいたいんだが……」

 心の中で小さく溜息を吐く。
 乗りかかった船だ、ここからは泳いで行けと突き落とすのは気が引ける。
 だから僕は、控えめにだれど頷いてしまうのだった。

任甫「重ねて、感謝する。 それじゃあ……まずは、あそこの店からいこう」

 そう言って指差すのは、ガラス細工が店先に置いてある場所。
 なるほど、確かにああいうところならおしゃれなものが売っているのかもしれない。
 そんな風に推理する僕の返事すらまたないで歩き出した任甫さんの後を、僕は慌てて追いかけた。

 その後も二、三軒の店を巡って。
 僕の意見も尊重しつつ、最終的には任甫さんが決めた。
 仮にもプレゼントなのだ。 参考意見をもらおうが勝手だが、決めるのは本人でなければ。

 そうして決めたグラスを下げて、僕らはカフェに席をとっていた。
 僕も任甫さんも、とりたてて自分のやりたいことではなかったみたいだから疲れてしまったようだった。
 紅茶を一口含んだところで、任甫さんが口元を釣り上げて礼を述べる。

任甫「助かったよ、和久津さん」

智「いえ、隣の好ということで」

任甫「それなら俺は、今のところ和久津さんに何も出来てはいないんだがな」

智「気持ちだけで結構です」

 本当に、心から。
 何かしたいと思うのなら、僕に近寄らないでください、せつなに。
 ともいえず。
 僕はまた、紅茶と共に言葉を飲み込む。

任甫「ああそういえば、礼だが……あった、これだ」

 そういって彼の懐から差し出されたのは、小さな長方形の箱。
 多分、大きさから見るにこれは……

智「ペンダント、ですか?」

任甫「ああ、それほど高くはないものだがな。 何かいいものが見つからなかった時の為に、目についた良さそうなものを買っておいたんだ」

任甫「これを、今回の礼として受け取ってくれ。 なに、他に誰かに譲る宛もないものだから遠慮することはない」

 そういって、テーブルに差し出されたそれ。
 それを見て、僕は。


 ↓1

 折角の好意だ、無下にすることはない。
 それに礼を受けって貰えなければ面目も潰れてしまうだろう。
 僕はほんの少しばかり迷った素振りをしつつも、それに手を伸ばした。

智「それじゃあ、ありがたく受け取らせて頂きます」

任甫「ああ、ありがとう」

智「いえ、こちらこそ」

 そういって、外向けの笑顔ではにかむ。
 瞬間、任甫さんがほんの少し怯んだような気がしたけれど気のせいだろうか。
 首を少し傾げると同時、任甫さんはカップの中身を一息に飲み干して立ち上がった。

任甫「今日のことは本当に感謝する。 後日改めて礼をさせてもらおう」

任甫「ああいや、和久津さんはゆっくりしていくといい。 俺はこの後用事があるからな」

 僕も行こうとカップに手をかけると、任甫さんはそう言って僕を抑えた。
 何か慌てるように早口だけれど、何かあっただろうか。

任甫「それでは、また会おう」

 やはり返事すら聞かず、僕に背を向けて立ち去っていく。
 確かに苦手な存在だけれど、嫌いな人では無いのは確かだ。

智「本当、あの性癖さえなければなぁ……」

 僕も紅茶を飲み干して去ろうとしたところで、もう一杯のそれが来る。
 どうやら立ち去った時に僕にと注文していたらしい。 きっとお代も全部払っていることだろう。
 本当に、あの性癖さえなければ。
 心の中でもう一度だけ呟いて、僕は二杯目の紅茶を飲み始めるのだった。

 姚任甫 の好感度が沢山上がりました。

 二十二日目を終了します。

 二十ニ日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
●冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 任甫さんが☆八ってどういうことなんですかねぇ……

 そして一日の初めのストックが切れてしまった……
 次からはそこも書かなきゃ……大体似たり寄ったりになると思いますが。

 それでは、次はまた土曜日に。
 来週からは忙しいので、もしかしたら二週に一度になる可能性もありますです。

 それでは、また。

 来ましたー
 では、例のごとく

 ■二十三日目 火曜日■


智「雨かぁ」

 今日の天気は雨。
 雨音こそしないものの、小粒で疎なれど確かに雨は降っていた。
 少し出歩く程度なら問題なく、しかしずっと外にいると確実に濡鼠となる。

智「降るなら降るで、しっかりしてほしいよね」

 僕が言えた義理ではないけれど。
 それでも傘を持っていくか持っていかないか迷うこの感じはちょっとした嫌がらせだ。
 できることなら、ベッドに飛び込んで二度寝とかしたい。

智「まぁちゃんと行くけどね」

 雨ごときで学校を無為にサボるのはない。
 いや、もし布団を外に干した日に雨が振るというのならフケるのも吝かではないけれど。

智「今日も、お世話になります」

 玄関の傘立てに立てておいてある水色の傘。
 それに一度だけ頭を軽く下げて、引きぬいた。
 傘はいたずらに使わなければ簡単に壊れるものではないけれど、この傘ともずっと付き合ってきている。
 そろそろ念か何か宿ってもいいのでは?

智「なんてね」

 付喪神だって百八年。
 それの一割に満たない年数でそんなことあるはずもなし。
 だからちょっとした冗談だけど、それでも大事に使おうという気持ちは変わらない。
 物持ちはよく。 節約の基本だ。

智「それじゃ、行こうか」

 僕は傘を広げて、雨降る外へと飛び込んだ。


 ↓1

 ぴちゃ、ぴちゃ。
 暗い世界に水音が響く。

 ねっとりとした、少しばかり甘い唾を流し込まれる。
 僕も負けじと、口の中に伸ばされる舌に同じくそれを絡みつかせた。
 気持ちよさに思わず息が漏れるが、その口も塞がれている為に艶っぽい吐息が出る。

智「んっ……ふっ、んんっ……」

 その間にも水音が零れ落ちた。
 唾と唾が混ざり合って小さな気泡を幾つも作り、それが互いに絡み合う舌をなぞる。
 それもまた、僕らが享受する快楽の一部と相成るのだった。

智「ちゅっ……ぴちゅ、ふぁ……ん…………っ!」

 ぴくん、と軽く身体が震える。
 下半身が、嫌に熱い。
 イってはいないけれど、軽く絶頂したような感覚。
 いや、きっとそう。

 名残惜しそうに最後まで舌を伸ばしてくるそれに僕は答えつつ、唇から離れていくことに一抹の寂しさを覚えた。
 それを証明するかのように、僕らの間で唾が糸を引く。

智「ふぁ……」

 興奮と悦楽で、頭がぼーっとする。
 瞑っていた眼を開くと、そこには既に見知った顔があった。

任甫「ふっ……気持ちよかったか、智」

 彼は僕の名前を呼んで、僕の頬にそっと触れる。
 その愛撫にちょっとした身体の震えで反応しつつ、答えを返す。

智「はぁ、はぁ……ふぁい」

 舌っ足らずになっている僕の顔は、きっと酷くとろけているのだろう。
 僕に触れるその手が火照った顔には気持ちよくて僕は自ら顔を擦り付けていた。

任甫「ああ……いい。 実に、いい」

智「んんっ……」

 顔の輪郭を確かめるように撫でると、先ほどまで口をつけていた僕の唇の前に指を置いた。
 僕は当たり前のようにそれを咥え、飴でも舐めるように舌の上で転がす。

智「ちゅるっ、くちゅ、れろっ……んちゅ、じゅるっ……」

 愛しく、気持ちいい。
 ただ指を舐めているだけだと言うのに、刷り込まれたかのようにその感情が僕を埋め尽くした。
 最後に口の中に溜まった唾を飲み干すと同時に、僕の口から指が引き抜かれる。

智「ぷは、はぁ……」

任甫「もう、準備はよさそうだな」

 なんの、なんて言うまでもなく。
 僕のも彼のも、極限までにそそり勃っていた。


 ↓1
 (攻めか、受けか。 希望があれば、やることも(本番禁止))

任甫「さぁ、スカートを捲って」

 言われるがままに、僕は制服のスカートの端を掴んで持ち上げる。
 今日に限ってはブルマは履いていなくて、直に下着が姿を現す。
 が、僕の勃っているそれに最早下着の意味など成していなかった。

任甫「こんな格好をして、こんなに可愛いのに。 いけない子だな」

智「んっ……!」

 下着の上から触れられる。
 それだけで僕の身体は大きく震え、脳髄に至るまで快感が走る。
 しかしそれで止めることはなく、何度も、何度も僕のそれに触れた。
 上に、下に。 撫でるように動かされるそれは、否応なく僕に絶頂への階段を登らせる。

智「んっ、ふっ……んんっ……!!」

任甫「いいのか? ただ撫でているだけなのに?」

 僕はそれに答える術を持たない。
 彼はニヤリと笑ったかと思うと、僕のパンツをずり下げて、僕のそれを露わにした。
 その衝撃ですらビクン、と生き物の様に跳ねた。 が、しかし絶頂には至らない。

 彼は僕の後ろにまわり、先っぽから透明な汁を出す僕のモノを掴んだ。

智「ふぁっ!」

 大きく起き上がるそれを、力で押さえつけられる。

任甫「それじゃあ、行くぞ?」

 もう片方の手は僕の腹部に回されて、無理矢理身体を密着させられる。
 彼の僕より大きいそれが、僕のお尻に押し付けられた。
 でも、それに余裕を配っている暇なんて無い。

智「あっ、あっ、あっ!」

 動き始めた歯車は止まらない。
 僕の意志とは関係なく、僕のそれを掴んでいる彼の手は初めはゆっくりと、そして緩急をつけつつも動きを止めない。

 口の中が嫌に粘つく。
 興奮していると、唾は粘性を強く持つらしい――なんて豆知識がふと思い浮かんだ。
 しかしオーガズムへと着実に向かっている僕はそんなどうでもいいことを悦びで埋め尽くす

智「っ、っ……! んんっ…………!!」

 唇を噛み締めて、声を抑える。
 もうすぐ、最後まで上り詰める。 その声は、どうしても恥ずかしい。
 幾度も聞かれているとはいえども、それでも、だ。
 だけれど彼は、そんな事なんてお構いなしに耳元で囁くのだ。

任甫「ちゃんと、声を出さなきゃ駄目だろう?」

 ぴりっ、と電撃のような、衝撃が走る。
 その囁きで、身体の隅々、脳に至るまで染み込んだ反射が、僕を更なる性感へと導く。
 それは、もはや声を我慢することなどできないぐらいに。

智「あっ! ああっ!! 駄目、だめっ!!」

 膝が震える。
 スカートを持ち上げる手にすら力が入らなくなる。

 一段と僕のそれを握る手は速さを増す。
 いまや、我慢などできるはずもない。

智「ぁ、」

 ごくん、と唾を飲み込んだ。
 次の瞬間、回避不能な快楽の極地が僕に襲いかかる。
 どうしようもなく、僕は白い欲望をひたすら、ただひたすらに吐き出した。

智「あぁああああああああああああああっっっ!!!」

 びくん、びくん、と大きく脈を、そして精液を射つ。
 それすらも知らない振りをして未だ動く彼の手は僕の一切合切を搾り取らんとする。
 五回より先は数える事も許されず、徐々に感覚の長くなる脈打ちは数十秒もの時を経てようやく収まりを見せた。

智「はぁ……はぁ……」

 ぐったりとして足から力の抜けた僕を、彼が支える。
 きっと、多分、本当に全部吐き出さされたに違いない。
 でなければこれほどに動けなくなるなど、ありえないのだから。

任甫「床をこんなにして、本当に、いけない子だ」

 彼はそういい、しかし振り向いた僕の唇をまた肩越しに奪う。
 まるで飴と鞭のようだ。
 口では僕を咎めつつも、こうして何かしらの愉悦を齎してくれるのだから。

任甫「さて……じゃあ次は、俺の番だな」

 そういって、彼は僕を持ち上げてベッドへと置く。
 うつ伏せの方がやりやすいのに仰向けにする理由は、僕の顔を見ていたいからだという。
 どうしようもなく、顔が紅くなる。

任甫「よいしょっ、と」

 僕の足を持ち上げる。
 そして一回り大きいそれが僕の秘部に押し付けられた。
 顔を見合わせる。
 思わず、笑みがほころんだ。

任甫「……行くぞ」

智「……うん。 きて」

 僕は手を伸ばして。
 そして、彼――任甫は、僕のへと、それを――――

智「――――――――――っ!!?」

 ガタン!と、音が響く渡る。
 頭が真っ白になった。
 現状を理解するまで、時間を要する。

 鴉の鳴き声。
 カチ、コチと鳴る時計。
 夕暮れの朱に染まる教室。

 それの意味するところは、つまり。

智「夢ぇ…………?」

 冷や汗を、一つ。
 なんて、なんて夢だ。 悪夢にも程がある。
 一番最悪だった点は、あの状況に何の違和感も覚えていなかった事だ。
 いや、こういう思考のまま夢に落とされるよりはマシといえばマシなのだろうけど。

智「それにしても、ないよ……」

 すとん、と椅子に座り直すと僕の男の象徴が立ち上がっているのに気付く。
 これは、朝勃ちと同じ現象だ。 うん、そうに違いない。
 まかり間違っても、あの夢に興奮したわけではない。

智「というか、誰も起こしてくれなかったのかな」

 時間を見ると、もう五時を過ぎている。
 宮和ですらスルーしたことにちょっとした違和感。

智「……まぁいいや、帰ろう」

 帰って美味しいご飯でも作って、シャワーに入って、そして寝よう。
 今見た夢は忘れよう。
 僕はそう思い、教室を出て帰路につくのだった。






 ――そのはず、だったんだ。




 二十三日目を終了します。

 二十三日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
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 姚任甫   ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 夢なので、好感度上昇はなしです。
 気力使い果たしたので、今日はここまでで……

 次は……頑張って来週来ます。
 ちなみに次は安価なしです。 理由は……まぁ、わかりますよね。

 それでは、また。

 ■二十四日目 水曜日■


智「っ……う、ん…………」

 意識が覚醒する。
 と、同時に猛烈な違和感。

智「あ、れ……?」

 いつもと違う匂い。
 いつもと違う感触。
 いつもと違う雰囲気。

 呆けた頭で感じたそれを整理して、ようやく僕はここがどこなのかを知る。
 いや、厳密には知らないのだけれど。
 つまり、僕は自分が知らない場所で寝ていたことを知ったのだった。

 混乱した頭で、起き上がりつつ辺り辺りを見渡す。
 じゃり、という音が鳴った。
 手に触れる冷たい感触。 ベッドの中にまで侵食していたそれは、正しく鎖だった。

 ……鎖?
 どうして?

 その先を確かめようと引っ張ってみると、ベッドの頭の壁に取り付けられていた。
 鎖の先は少し大きめの鉄板と強く接合されており、これでもかというほどに鉄板にはボルトが打ち付けられている。
 そのボルトの十字模様は、高温で焼かれたかのように解けていた。
 きっとこれでは、壁から鉄板もとい鎖を外すことは難しいだろう。

 それはつまり。
 その鎖のもう片方の先――僕の首についている首輪から僕が解放されるのは難しい、ということを指している。

智「何、これ」

 僕が首をぐっ、と引っ張ると鎖も答えるように金属音を鳴らして動く。
 現実逃避したくなるほど実感のない今の状態は、さながら脱出ゲームのスタート時のようだった。
 しかしながら、現実はそう甘くない。
 脱出できることを前提に作られているゲームと違い、現実では謎を解いて脱出、なんてあるはずもないのだ。
 ゴミ箱の底やテーブル、ベッドの下に何かの鍵があるわけじゃないし、壁にかかっている絵の裏にナンバーロック式の金庫があるわけでもなし。
 いや、調べていないから確定とはいえないけれど。
 それでも、そんな都合のいい状態になるわけがないのは人一倍理解している。

智「……まずは、情報を整理しよう」

 あくまで冷静に、慎重に。
 誰が何の目的で僕をこんな部屋に閉じ込めたのかを理解しなければ。
 もしかすると、或いは――死に関わる。

智「確か、僕は昨日、家で……」

 家で?
 違う。
 そもそも学校後、家に僕は帰っていない。

 そうだ。
 昨日は学校で寝てしまって、それで起きたら既に夕方。
 その後に買い物して帰ろうとか思いつつ、家に帰ろうとしていたんだ。
 僕の記憶は、そこで途切れている。
 そこからどうなったのかが僕は知りたいのに、靄でもかかったかのように思い出せない。
 仕方がない、一先ずどうしてこうなったのか、は置いておこう。

 深呼吸をして、心を再び落ち着かせる。
 推理小説で有名な、推理に必要な要素は三つある。
 即ち、フーダニット(誰が)、ハウダニット(どうやって)、ホワイダニット(なんで)犯行を行ったのか、ということ。
 その内のどうやって、は保留だ。
 次は、誰が、を推理するべきだろう。
 『誰』がわかれば、自ずと『何故』も見えてくる。

 その為に必要な要素は明らかに不足している。
 が、絞り込むことは可能なのだ。
 まずは部屋。
 僕の部屋より一回りか二回り程大きく、内装は特に凝っているわけではない。
 そして見る限り扉は二つで、窓はない。 その代わりなのか、壁には換気扇が回っていた。
 鎖の件も含めて、つまるところ、それなりの財産を持った人物であるということがわかる。
 二つある扉の片方が直ぐ様外につながっているわけではないだろう。
 もう片方のドアがどこにつながっているのかはわからないが、少なくともこの大きさの部屋を用意してもまだあまりある部屋がある家だと推測できる。

 ここで、僕の知り合いにこんな家、部屋を用意できる人は限られている。
 でも、誰もこんなことをする理由なんてないはずだ。
 ということは僕に接点のない、或いは僕が知らずの内に恨みを齎した人物だということ。
 そして目的は、僕への復讐か誘拐?
 瞬間、怖気が走る。
 ここまでして復讐をしたいなんていう負の感情は尋常じゃないし、ただの誘拐目的にしても生存率は極めて低い。
 僕的には不愉快極まりないけれど、外見は美少女と呼べるレベルだ。 それもお嬢様学校の制服を纏っている。
 仮に相手が男だとするなら、想像もしたくないことをされる恐れがある。

智「……どうしよう」

 どちらに転んでも命の危険性がある。
 幸運なのは、未だに誰も僕を見に来ないことだろうか。
 もしかしたらどこかに、鎖を切断できる何かがあるかもしれない。
 そう思って動き出そうとした僕の耳に、かちゃん、と片方のドアの鍵が開けられた音が聞こえた。

 緊張が走る。
 今の僕は、抗う術はない。
 手足が開放されている分まだ抵抗はできるけれど、今入ってくる相手が首輪の鍵を持っていなかったらどうしようもなくなる。
 つまり僕は、相手が何をしてこようと反撃できないというわけだ。

 冷や汗が流れる。
 心臓が激しく脈をうち、扉から目を逸らすことすらできない。
 そうして、ゆっくりと回りきったドアノブをは押し開かれ、招かれざる客の姿を現す――――。

「――ごきげんよう、和久津さま」

智「――――あ」

 その姿を確認すると同時、見知った姿の彼女は両手を前で重ねて、小さくお辞儀をした。
 見間違えるはずもない。
 なにせ彼女は、かけがえの無い友人の一人なのだから。

智「宮……?」

宮和「はい、和久津さまの宮でございます」

 ゆるりとした微笑みを湛え、宮和はその瞳をこちらへと向ける。
 反射的に立ち上がっていた身体から力が抜けて、ベッドへ腰掛ける。
 気が抜けた。

智「ああ、びっくりした……」

宮和「和久津さまでも、驚かれることはあるのでございますね」

智「そりゃあ、勿論。 僕の人生驚きっぱなしだよ」

宮和「ふふ、そうですね」

 ――昨日も、夢に驚いて跳ね起きていましたしね。
 笑顔でそう告げる宮和に、僕の思考が停止した。

 昨日、学校で僕の眼覚めた時。
 教室には誰もいなかった。
 誰もいなかったはずだ。 それなのに、どうして。
 どうして、宮は、そのことを知っているの?

 下げていた視線に、宮和の足元が入り込む。
 顔を上げると、宮和はいつもと同じ温和な表情でこちらを見下ろしていた。

 ――――いつもと同じ?
 違う。
 眼が、笑っていない。
 どろり、と。 変わらないように見えて、その奥深くがどうしようもないくらいに濁っている。

宮和「どうかなさいましたか?」

智「み……や…………?」

宮和「はい。 和久津さまの、宮でございます」

 噛み砕くように、宮和は再び告げる。
 先ほど繰り返したことをもう一度行い、理解した。

 僕は宮和がドアを開いた時、この状況が冗談か何かだとして処理した。
 質の悪い冗談。 でも宮和ならするかも、程度な考え。
 帰る途中の記憶のないところからして、きっと何らかの原因で道に倒れていた僕を宮和が拾ってくれたのだと。
 まるで、甘い砂糖菓子のようなそれは、果たして一分もしないうちにひっくり返された。 

 宮和が一歩、僕に踏み出す。
 僕は腰を引いて、下がる。
 じゃり、と。 僕の手にベッドの上に転がる鎖が絡みついた。

 宮和は前かがみになり、僕に視点を合わせた。
 息を飲む。
 濁りきった瞳の奥は、僕を写しているようで僕を見ていなかった。

宮和「和久津さまは、いけずです」

 不意に、宮和の口からそんな言葉が零れ落ちる。

宮和「わたくしの心を引き寄せてやみませんのに、こちらに見向きもしてくれません」

宮和「ただ、ただただ、共に居てくれるだけで、それだけで宮は幸せでしたのに」

宮和「和久津さまは、それ以上をわたくしに与えてくださり――――そして、見向きもしなくなりました」

 それは、何もしないより残酷なことであると宮和は言う。
 釣った魚に餌はやらない。 そんな言葉がある。
 既にそうなったいた、と。 そう宮和は言っているのだ。

智「僕は……そんな、つもりじゃ」

宮和「和久津さまはお優しい方ですから。 宮が一番知っていますわ」

宮和「……しかし、苦しいのです。 胸の奥が、和久津さまがどこかへ、誰かと行ってしまうのではないかと」

宮和「和久津さまがわたくしの所へ来ない時は、いつも、いつもそう考えておりました」

 至近距離で、僕は感情に溢れる宮和を見ていた。
 宮和の独白は続く。
 僕を見ていない眼をこちらへと向けて、言い訳をするかのように紡ぐ。

宮和「辛くて、苦しくて、悲しくて……和久津さまがいないことが、それほどに生き地獄で」

宮和「ですからわたくしは、考えたのです」

宮和「こちらから和久津さまの傍へと近づけばいいのだと」

宮和「和久津さまが宮だけを見てくれるようにすればいいのだと」

 ――――ああ、これは駄目だ。

 どうしようもないくらいに、理解した。
 狂っている。
 狂って、狂わされて、狂い尽くしている。

 宮和は壊れてしまったのだ。
 他でもない、僕が壊してしまったのだ。
 中途半端に近づいたから、こうなってしまったのだ。

宮和「――――和久津さま。 お慕い申し上げております」

 宮和は僕を押し倒す。
 最早僕に抵抗する理由や、拒否する権利はない。
 責任というわけでもないけれど。 宮和の劣情を受け止めなければならない義務が僕にはあった。

宮和「例え、和久津さまが男性の方であったとしても」

 それは例えではなく、事実として知っているのだろう。
 どこでそれを知ったのか、とか。 呪いを踏んだのにどうして僕はまだ生きているのか、とか。
 そんな疑問も溢れるけれど、それはもう過ぎたことだ。
 この期に及んで、そんなことはそんなことでしかない。
 僕らの関係は、もうどうにもならないところまで来てしまったのだから。

宮和「宮は和久津さまのもので、和久津さまは宮のもの、なのですから」

 ――――もし。
 もし、仮に次があるとするのなら。
 次は、もっとうまくやろう。

 近づきすぎず、宮和の気持ちをあくまで憧れで済ますか。
 或いは、僕らの友人関係を確たるものにするか。
 僕らが恋仲になる世界だって……もしかしたら、あったのかもしれない。

 それら全ての可能性を、僕は揺蕩う海へと解放して。
 そして、宮和の全てを受け入れる。

 宮和Bad END:『二人きりの完全』

 二十四日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 尹央輝   ☆☆☆☆☆

 才野原惠  ☆☆☆
★冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 二十四日目、宮和バッドエンドです。
 まぁ放置してましたしね。 当然ですね。
 ちなみに二周目はこれで終了になります。

 次回は観測地と真雪先生を予定しています。
 最後に、遅れてしまって大変申し訳ありませんでした。

 それでは、また。

 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――



「…………」

 彼女はぼんやりと、導いた二つの欠片を眺める。

「はぁ」

 暫くの刻を置いて吐出されたそれは、今までに見たことのないものだった。
 呆れが多分に含まれている。
 初めて見たそれに戸惑いつつも、当然ではないかという気持ちが後に続く。
 それ程に、間違えたことがわかる未来だった。

「まぁ……いいわ」

 くしゃり、と。
 何の躊躇いもなく、それらを蹴散らす。
 光の破片は見るも無残に、塵となって消えた。

「暇潰しには、なったもの」

 所詮、その程度。
 参考にすらなりはしない。

「まだ、挑むつもりかしら」

 その問に答える。
 時間が許す限り、この答えのない問題に挑戦するのだと。
 そう答えると彼女はやはり嗤った。

「う、ふ、ふ、ふ、ふ」

「そうね、これぐらいで諦めてたら――それこそ、つまらないものね」

 挑んだ回数は、二桁にも満たない。
 彼女が挑んだ回数は計り知れないけれど。
 それでも、時間が許す限りあがくのは、それこそ許される筈だ。

「どうせ、結末は同じだとしても」

「それでも――」

「それでも、と願うなら」

「また、挑ませてあげるわ」

 そうして。
 この物語は、一時、幕を閉じる。
 まだ、終わらない。
 諦めない限りは、きっと――――。



 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――

真雪「出張版! 教える、真雪先生のコーナー!」

真雪「どうもこんばんわ、バッドエンドに這い寄る混沌。 柚花真雪こと真雪先生です」

真雪「BGMは『新都心』でお送りしております」

真雪「さて、今回はキャラ個別Bad ENDですねおめでとうございます」

真雪「前回は、●がついた後には一日値ごとにカルマ値もとい、病み度が一つ追加されるのを報告したと思います」

真雪「一応隠しステータスとはいえども、面倒くさがらず毎回の好感度表を確認すればどのくらいヤバイのか確認できるわけで」

真雪「つまり、今回の教訓としては……捌ききれないのに好感度を上げるなー! ということです」

真雪「まぁぶっちゃけエンド分岐に関わる要素でもあるので一概にそうであるとはいえないのですが、今回の様に他の人にかまけて忘れてしまうのはちょっと……」

真雪「それでは今回のヒントは……『数ある道が全て絶たれた時、未来は開かれる』とのことです」

真雪「何のこっちゃさっぱりでしょうが、要するに簡単は救えないってことですね」

真雪「まぁ、真雪先生は皆さんの味方ですのでご安心ください」

真雪「今回はこんなところで、お暇しましょう」

真雪「それではみなさん、フラグ管理は慎重に――――」

 ブツンッ

 今回はこれだけです。
 次回、というか明日はモードセレクトですね。
 終わりが見えない(確信)

 明日の、そうですね、十一時ぐらいにモードセレクトを行います。
 それでは、また。

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 EXTRA

  EXTRA1
  『真雪と智のアイドルユニット』 Clear

  EXTRA2
  『とある未来の小話』

  EXTRA3
  ???

  EXTRA4
  『和久津姉弟のとある一日』 Clear

  EXTRA5
  『真耶「智が相手してくれないから安価で未来を導く」』
  (三周目)

 指定忘れ
 >>808

5

 ※注意※
 ※行動安価によって動きます。(最大一日三回です)※
 ※安価によってはキャラブレイクする恐れがあります※
 ※やり直し要求回数は三回までです※

 ※真雪先生からの注意※
 ※好感度☆6以上で数日間放置すると●(爆弾)が出現します※
 ※制限時間(厳密には制限日数)があります※
 ※●は病み度★を出現させます※
 ※『数ある道が全て絶たれた時、未来は開かれる』とのこと※

 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――



「ふぅ」

 彼女の溜息で、目が醒めた。
 ここに来る時は、初めての時以外は大抵そうだ。
 病的なまでに狂った瞳をちらとこちらに向けて、また息を吐く。

「また、来たのね」

「丁度よかったわ。 また退屈していたところだったから」

 思い出すのはつい先日のこと。
 いや、ここにおいては時間という概念があるのかも怪しいが。
 また、あの退屈しのぎのゲームを行うというのだろうか。

「刻は未だ溢ちず」

「未来は今なお訪れず」

「それなら、こうして欠片を紡ぐのも許されるでしょう?」

「う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 嗤う彼女に、返す言葉はない。
 反論をするつもりなどはないが、したところで無意味だということもわかっている。

「それじゃあ、始めましょう」

「退屈しのぎの、道標」

 あくまで彼女は、これを退屈しのぎだというらしい。
 それならば、その期待を裏切ってやろう。
 何度も繰り返して、望むべく未来を掴みとってやろう。

 例え、彼女がいくら諦めの言葉を投げかけてきたとしても。

 視界が、揺らぐ。
 足元が、覚束無くなる。
 そして視界が反転して――――



 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――

 ※お知らせ※
 『強くてニューゲーム』を行うことができます。
 前回までの好感度のみをそのままに、一日目から始めることができます。
 前回の最終好感度はこのようになっています。


 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 強くてニューゲームを行いますか?
 >>813

強くてニューゲーム!

 強くてニューゲームを行います。



 今日は時間もないので進めませんです。

 次回は今週の土曜……といいたいところですがわからないです。
 来週の土曜はほぼ不可能ですので、今週はなんとかしたいですけれど。
 行うとしたら九時半~十時半にアナウンスを行いますです。

 それでは、また。


 ちなみに、過去に見たENDは、
 茜子Normal END:『嘘のような、本物の気持ち』
 宮和Bad END:『二人きりの完全』
 END:『世にも下らない結末』
 END:『狼少年、狼に食べられるのこと』
 です。

 来ました。
 30分後ぐらいに始めます。

 ■一日目 月曜日■


 ちゅん、ちゅん、ちゅん。
 小鳥の囀りが、僕の寝起きの耳をくすぐる。

智「っ、ぁ――――」

 温かい布団の中で、ぐっと伸びる。
 そしてまた眠りたくなる衝動を抑え、布団から這いずり出た。

智「今日も、いい天気」

 カーテンを開けて、朝日を浴びる。
 ベランダの手すりに掴まっていた雀たちが一斉に飛び立っていった。

 週の一番初め、気合を入れるべき日だ。
 さぁ、頑張っていこう!


 ↓1

 放課後、僕は街を歩いていた。
 真っ赤に燃えるような夕暮れが街を照らして、彼らの眠りを急かす。

 そんな中、制服私服スーツごちゃ混ぜの人垣が。
 きっと流れてくるベースの力強い音が彼らを呼び寄せたのだろう。

智「流れのベースで生計を立てる……のは難しいとしても、プロレベルに追い付きそうな感じだよね」

 訳知り顔で呟くのも当然のこと。
 だってこれを奏でてるのはるいに他ならないから。
 もはや見なくてもわかる程に聞き慣れたこれは、一度だけ勧誘の誘いもあったことを覚えている。
 家無しで格好いいタイプの美人な高校生ベーシスト。
 これでもしメジャーにでも進出できればお涙頂戴のエピソードとして語られるに違いない。
 最も、るいはあくまでこれは趣味としているみたいでにべもなく断っていたのだけれど。
 仮に呪いがなかったとしたら、そんな道もあったのかもしれない。

智「僕は、どうなんだろう」

 呪い持ちには夢がない。
 いやあるにはあるのだろう。 環境がそれを許さないだけであって。
 しかし、仮にこれがなかったら。 そう考えても僕には想像もできない。
 例えばスポーツ選手。 例えば弁護士。 例えば研究者。 例えばパイロット。
 無限にある職業を思い浮かべても、しっくりとこない。

 僕に特技と言える特技は少ない。 強いて言えば料理だろうか。
 それでもトップシェフ、といえる腕前ではないだろう。 世の中のお母さん達よりかは一歩か二歩先の実力は持っていると思うけれど。
 それ以外といえば、この年齢まで性別がバレずに生き抜いてきたという自身と、その演技の才か。
 どちらにしても、その道を行く人には届きもしないレベルのものなのだ。

 流れてくる繊細な音楽に身を任せて思考していると、エコーを掛けて最後の一音が空気に溶けた。
 どうやら演奏は終わったらしい。
 ギャラリー達の拍手にるいは答えつつ、ベースをしまい始めるとその足は一歩、また一歩と街の喧騒に紛れていく。

 そしてベースをしまったケースを抱えたところで、るいは立ち去らずに待っていた僕を見つけた。

るい「おー、ともちん!」

智「こんばんは、るい。 今日も上手だったね」

 僕はそういうと、るいは照れるように頭を掻く。
 見知らぬ人たちに拍手で迎えられるのと、知り合いに面と向かって言われるのは少し違うらしい。

るい「ご飯食べたいご飯! いいところみつけたんだー」

智「そうなんだ?」

 るい程の大食いを僕は知らない。
 ということは、るいのいいところ、というのはつまり安くて量を食べられるということだろう。
 そう考えていた僕の考えは、店を見た瞬間に変わり、同時に納得した。
 『特大大盛りラーメン 制限時間内に食べれたら一万円』。

智「これは、まぁ」

 るいにとっては重要な糧であり、資金源だ。
 しかし、るいの口ぶりでは此処に何回か来たことがあるのだろう。
 他の店ではるいが一度来ると『お断り』の張り紙をするか賞金制自体を取りやめるというのに。
 そんな疑問も、るいが店の引き戸を開けた瞬間に氷解する。

るい「おやじー! いつものー!」

「来やがったな……! 今日こそは払ってもらうぞ……!」

 店内が戦慄する。
 同時に店員全員が忙しそうに動き始めた。
 テーブルを繋げたり、すごい量の面を茹で始めたり。
 おおよそ、勝たせる気などないという程に。
 そんな光景に唖然としていると、るいはなんてことのないように笑顔でいう。

るい「この店ね、あれ頼むと前回食べた量より多くなってるんだよねー」

智「…………」

 僕は心の中で、この店の冥福を祈った。
 るいが此処に来たのが何回目かわからないけれど、喧嘩を売るなんて……

 ――結果から言うとしよう。
 当然の如くるいは勝利して、賞金の十倍である十万を貰って店に出入り禁止にされた。

るい「えへへー」

 満足そうにお腹を撫でるるい。
 大量のラーメンを食べたお腹には、到底見えなかった。

 注文して暫く。 それから到着したのは、山盛りになったラーメン二つだった。
 るいに聞いた所、前回は片方だけで、単純に倍の量を用意したらしい。
 結果から知るとこれでも過小評価だと思うけれど、実際にはそんなことはなかった。
 いや、るい的にはきっとまだ行けたのだろう。 きっと食べたエネルギーを食べるエネルギーに即時変換して無限ループしているのだろうから。
 しかし問題はそれではなく、時間の方だ。
 一杯目を食べ終えたところで時間は半分を切っていた。
 十五分も経った麺は伸びていて、美味しくないのと同時に食べ辛い。
 しかし、それでもるいはなんとか時間制限内に食べきったのだ。
 その光景を見て、今度こそ勝てると踏んでいた店主が打ちひしがれていたのは言うまでもない。

智「本当、るいってすごいよね」

 少し前を振り返ったら、ふとそんな言葉が漏れていた。
 それを聞いてるいはきょとんとした後に破顔する。
 そんなことないよー、といいつつも嬉しそうな表情。

智「ううん、やっぱり、るいはすごいよ」

 思い出すのは、るいのベース。
 プロという壁に届きそうな程強い才能。
 僕はきっと、るいに嫉妬していた。

るい「智、怒ってる?」

 るいはそれを敏感に感じ取ったのか、少し不安気な顔をした。
 怒る要素などなにもないのに、そう感じたるいは、本当に素直だ。
 例え怒っていたのだとしても、触れなければ怒りをぶつけられたりすることだってないのに。

智「違うよ。 本当に、怒ってない」

 ただ、と僕は続ける。
 卑怯な気がしたんだ。
 僕の感情の機微を敏感に感じ取って、それが自分のせいなのだとしたらと恐らく考えた彼女に対して誠実であらねばと、そう思ったんだ。

智「――――僕には、才能がない」

 それは、呪い云々の話じゃなくて。 無論それもあるけれど。
 僕は、きっとなんでもできる。
 勉強ができる、運動ができる、家事ができる、話がうまい、人を欺ける。
 けれどそれは、決して人の域を逸脱しないのだ。
 その才能を持つ人には、絶対に届かない。

 しかし、るいは違う。
 呪いの所為で追いかけることは難しいとはいえ、才能がある。
 ともすれば、その分野のトップになることのできるほどのそれ。
 〈才能〉も含めれば、もっと広がることだろう。

 それはるいだけに留まらない。
 花鶏だって、こよりだって、伊代だって、茜子だって。

 僕だけが、持ってない。
 僕だけが、誰かが変われる。
 それは、僕が劣等感を覚えるになり得るほどのものだった。

智「なんて、ね」

 思いつくままに話して、僕は笑った。
 そんなのは今更だ。
 生まれた時から呪われていたこの身。 今生きているだけでも儲けものなのだ。
 僕より不幸な人なんてたくさんいる。 それこそ、生まれてくることすら許されなかった人だって。

 でも、ふと思ってしまう。
 誰かがとって変われる。 誰かの代わりでしかない。
 もし、そうだとするのなら。 僕は、どうして。
 どうして――――


 ふわり、と。

 柔らかい、女の子の香りが鼻孔を擽った。 


 気が付くと、るいが僕を抱きしめていた。
 街中で、唐突に抱きしめられた僕は少しばかり混乱を覚える。

智「ちょっ、ちょっと、る……」

るい「私、頭悪いからよくわかんないけど、これだけはわかるよ」

 るいはすう、と息を吸い込む。
 そして大声で。

るい「私は、智が好き!」

るい「頭が良くて、料理が上手で、なんでもできる智が好き!」

るい「誰かの代わりなんかじゃなくて――――智が好きっ!!!」

 ――ああ、るいには叶わないな。
 僕はやはり、そう思った。

 例え、権謀術数を張り巡らしたとしても。
 るいはきっと、その素直さで真正面から打ち破ってしまうに違いない。

 そんなるいが、僕のことを好き。
 それが本当の僕ではないとしても、きっとるいは関係がないというのだろう。
 なぜなら、それこそがるいなのだから。

智「ありがとう、るい」

 僕も、るいを抱きしめる。
 心からの、感謝を込めて。

智「僕も、るいが好きだよ」

るい「……うんっ!」

 るいは抱きしめていた腕を解き、そして瞬く間に僕の腕をとった。
 いきなりの行動に驚き固まる僕を引っ張り、るいは告げる。

るい「いこう、智!」

 どこへ、なんて野暮なことはいわない。
 ただ僕は、こう答えればいい。

智「うん、いこう。 一緒に!」

 そして僕らは、街に繰り出した。
 僕らの夜は、まだ始まったばかり。


 都会の空は、月すらも見えないほどに濁っていて、薄暗い。
 しかし、見えなくとも、そこには、確かに。
 無数の星が、瞬いている。

 皆元るいNormal END:『約束で結ばれなくとも』

 一日目

☆皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 ……るいエンドです。
 一日目で終わっちゃったじゃないですかーやだー
 いや別に構わないんですけど。 全然大丈夫なんですけど。
 さっき出てったばっかりなのに即観測地入りとか怒られませんかね。


 ちなみに表記修正。

 皆元るいNormal END:『約束で結ばれなくとも』
 ↓
 るいNormal END:『約束で結ばれなくとも』

 おっと忘れてた。
 次回は観測地のあと、モードセレクトします。
 ……と思ったけどいいや、System的には駄目だけどモードセレクトを先に行います。
 EXTRA5の場合、強くてニューゲームの是非も合わせてどうぞ。



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 EXTRA

  EXTRA1
  『真雪と智のアイドルユニット』 Clear

  EXTRA2
  『とある未来の小話』

  EXTRA3
  ???

  EXTRA4
  『和久津姉弟のとある一日』 Clear

  EXTRA5
  『真耶「智が相手してくれないから安価で未来を導く」』
  (四周目)


 >>830

5

 了解しました。
 一応確認しますが、強くてニューゲームはなしでいいんですね?

 来週は多分出来ませんです。
 再来週はわかりません。 来れるように努力はしますが……

 それでは、また。

 昨日はすいません、ふとしたら寝ちゃっていました。
 例のごとく、30分後から始めます。
 久々なので、いきなりエンドはやめてもらえるとありがたいです。(できれば、なので別にどちらでも構いませんが)

 では始めます。
 オープニングは変わりなしですので、読み飛ばしてもらっても構いませんです。

 ※注意※
 ※行動安価によって動きます。(最大一日三回です)※
 ※安価によってはキャラブレイクする恐れがあります※
 ※やり直し要求回数は三回までです※

 ※真雪先生からの注意※
 ※好感度☆6以上で数日間放置すると●(爆弾)が出現します※
 ※制限時間(厳密には制限日数)があります※
 ※●は病み度★を出現させます※
 ※『数ある道が全て絶たれた時、未来は開かれる』とのこと※

 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――



「ふぅ」

 彼女の溜息で、目が醒めた。
 ここに来る時は、初めての時以外は大抵そうだ。
 病的なまでに狂った瞳をちらとこちらに向けて、また息を吐く。

「また、来たのね」

「丁度よかったわ。 また退屈していたところだったから」

 思い出すのはつい先日のこと。
 いや、ここにおいては時間という概念があるのかも怪しいが。
 また、あの退屈しのぎのゲームを行うというのだろうか。

「刻は未だ溢ちず」

「未来は今なお訪れず」

「それなら、こうして欠片を紡ぐのも許されるでしょう?」

「う、ふ、ふ、ふ、ふ」

 嗤う彼女に、返す言葉はない。
 反論をするつもりなどはないが、したところで無意味だということもわかっている。

「それじゃあ、始めましょう」

「退屈しのぎの、道標」

 あくまで彼女は、これを退屈しのぎだというらしい。
 それならば、その期待を裏切ってやろう。
 何度も繰り返して、望むべく未来を掴みとってやろう。

 例え、彼女がいくら諦めの言葉を投げかけてきたとしても。

 視界が、揺らぐ。
 足元が、覚束無くなる。
 そして視界が反転して――――



 ――――ザザ――――ザザザザ――――ザ―――――

 ザザザ――――ザザ―――――――

 ―――――――――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――

 ■一日目 月曜日■


 ちゅん、ちゅん、ちゅん。
 小鳥の囀りが、僕の寝起きの耳をくすぐる。

智「っ、ぁ――――」

 温かい布団の中で、ぐっと伸びる。
 そしてまた眠りたくなる衝動を抑え、布団から這いずり出た。

智「今日も、いい天気」

 カーテンを開けて、朝日を浴びる。
 ベランダの手すりに掴まっていた雀たちが一斉に飛び立っていった。

 週の一番初め、気合を入れるべき日だ。
 さぁ、頑張っていこう!


 ↓1

 じっとりと、缶を見る。
 その缶には割り箸が合計で九本刺さっていた。

るい「トモちん、どうしたの? 早く引いちゃいなよ」

智「う、うん」

 缶を持つ花鶏をちらりと見遣る。
 ニヤリと笑みを浮かべて、チロと舌を出したような気がした。
 満場一致で用意した本人が一番最後に引くと決めたが、何か仕掛けを行っているのを否定出来ない。

 しかし、どうしてこんなことになったのだろうか。
 今日は街中で皆と合流して。
 その後、更に、宮和、央輝、惠と他の知り合いとも遭遇したんだ。
 まるで何かに引き寄せられたかのように……ってそれは流石に陰謀論が過ぎるかな。
 ともかく、僕らは偶然集まった。
 そんな僕らが何をしているのかといえば……

智「決めた。 これにする」

こより「じゃあ鳴滝はこれで!」

伊代「それじゃあわたしは……これで」

央輝「はぁ……なんでアタシがこんなこと」

茜子「茜子さんは余ったものにします。 余り物には福来たるのです」

 一番最初の僕が決めると、さっと皆も決めてしまう。
 そして全員が顔を見合わせると、せーのっ、と花鶏が音頭をとった。

「『王様だーれだっ!』」

 そう。
 僕らは、何故か花鶏発案(この時点で既に怪しい)の王様ゲームをしているのだった。

 王様ゲームをしましょう、と言ったのは花鶏だった。
 この真っ昼間からそんなことするの? と突っ込んでみたけれど何故かやる方向へと向かっていってしまったのは何故だろう。
 宮和はこれが噂の、などと言っているしるいやこよりに至っては面白そうで通っている。
 伊代も何故かまんざらでもなさそうな感じだ。
 まぁ普通に生活していればパーティでもないとまずやることのないゲームだろうし、遊びの一環としてはいいかもしれない。

 けど、発案が花鶏だ。
 クジを用意したのも花鶏だ。
 これが怪しくなくてなんと言おうか。

 希望を託しながら僕は自分の割り箸を見る。
 しかしそこには、無常にも数字しか書かれていなかった。
 それに気付いて数字を手早く隠しながらも皆の顔を見渡すと、約一名だけいやに不敵な笑みを浮かべた人間がいた。

花鶏「――わたしが王様よ」

 見せつけるように皆に権力を誇示する。
 ほらやっぱり! 絶対仕組んでたよこれ!
 何を命令されるのかと戦慄する僕らをよそに、花鶏はゲームを進める。

花鶏「それじゃあ……↓1をしてもらいましょうか」

 ↓1
 (誰(数字)が誰(数字、王様)に○○をする、或いは誰(数字)が○○をする)
 (数字と対応する相手はこちらで管理しています。 ちなみに花鶏が王様になったのは本当に偶然です。)

 追記
 数字の場合は、1~8までです。

 安価下

花鶏「2番と5番にはゲームが終わるまでバカップルになってもらうわ!」

央輝「はぁっ!? ちょっ、おまっ! ふっ、ふざけるな!」←5番

宮和「まぁ、央輝様がお相手なのでしょうか」←2番

 ちなみに僕の数字は7番。
 こういうのも何だけど、ホッとした。
 二人は犠牲になったのだ……

花鶏「ほら二人とも、今始めなさいすぐ始めなさい。 バカップルなんだからわたし達のことなんか気にしないでキスとか○○とか××とかしててもいいわ寧ろ推奨よ」

伊代「あなたそれただ自分が見たいだけじゃないの!?」

央輝「だっ、誰がやるか。誰が! そんな下らないことをやるんだったらアタシは帰らせてもら――――!?」

宮和「駄目です、央輝さま。 ルールには従わないと」

 逃げ出そうとした央輝を宮和が腰の辺りを抱きしめて食い止めた。
 一応堅気の人間のため、対応に困る央輝。 けれどそれは悪手だ。
 宮和は箱入りのお嬢様で世間知らずな部分も多少あるが、それ以上に賢く、強かなのだ。
 少なくとも本気で逃げるつもりなら、突き放すつもりでやらなければ。

宮和「央輝さま……お慕い申し上げております」

央輝「いっ、いや! やめろ! アタシにそんな趣味はない! 上目遣いでこっちを見るな!」

智「あれ、でも央輝、確かパルクールレースの時僕がほしいって……」

央輝「それは今関係な……!」

宮和「まぁ、和久津さまを? それならば宮は、央輝さまと仲良くなれる気が致しますわ……ぽっ」

央輝「頬を赤らめるな! アタシはそんな気は全くしない! だから顔を寄せるのをやめろ!」

 それにしても、この宮和ノリノリである。
 ……僕が当たったら、きっともっとすごかったのだろうか。
 想像したら少しばかり震えがやばい。

茜子「こうして、百合ん百合ん病は感染していくのだった。 ~完~」

 そのうち、央輝は抵抗しなくなった。
 そして、第二ゲームが始まる……!

「『王様だーれだっ!』」

 二度目の王様ゲーム。
 花鶏の命令通りイチャイチャしているカップル(といっても主に宮和が央輝に寄っている)を尻目に僕は割り箸を見る。
 そこに書いてあるのはやはり王の文字ではなく、数字だった。

惠「……ふむ。 つまりこれは、僕が命令する権利を手にした、ということでいいのかな?」

 温和な笑みを浮かべつつ見せるその割り箸には王の文字。
 二回連続花鶏ではなくてホッとした。
 惠は少し変なところもあるけれど、そういうところでの常識はわきまえているはずだ。

智「お手柔らかに頼むね」

惠「ああ、善処しよう」

花鶏「じゃ、惠。 命令をお願いするわ」

惠「ふむ……じゃあ、下1、というのはどうかな?」

 下1
 (ルールは先ほどと同様です)

惠「3番が8番に足つぼマッサージ、というのはどうかな?」

こより「あっ、はいはーい! 鳴滝8番です!」

花鶏「ということはこよりちゃんの足をわたしが自由にしていいのね」

こより「あ、れ……? も、もしかして……花鶏センパイが……?」

花鶏「ええ、そう……3番よ」

 ジュルリ。
 まるでカエルを前にした蛇の様に、花鶏の目つきが鋭くなった。
 それを見たこよりは一目散に花鶏から逃げ出すが、花鶏もそれを素早い動きで追いかけ始めた。

惠「おや、これは。 悪いことをしたかな?」

伊代「仕方がない……じゃない? だって数字なんて、確認のしようがないし」

るい「そうそう、メグムは悪く無いって! 悪いのはこのゲームを用意した花鶏なんだし!」

智「まぁ、あくまで足つぼマッサージだからね……変なところまで行きそうになったら止めればいいんじゃないかな」

 そんなことを話している間にこよりは花鶏に捕まり、そのスケート靴を脱がされる。
 というかそれだけに飽きたらず、靴下まで脱がそうとしていた。
 こよりはそれに必死に抵抗しているようだが、その際にパンツがチラチラとスカートの中から見え隠れしている。

智「ええと……あれはいいの?」

惠「靴下の有無はしていしていないからね。 セーフなんじゃないかな」

こより「あっ、あとりセンパ……っ! 痛っ……くすぐった……!」

花鶏「これが、こよりちゃんの御御足……いつもはインラインスケートの中に隠れている神秘が、今此処に……!!」

こより「ちょっ、あっ、だめっ」

 …………。

るい「智ちん? 前かがみになってどうしたの?」

智「えっ!? いっ、いやなんでもないよ!? それより、花鶏はやっぱり参加させないほうがいいんじゃないかな!? 今のうちに次の始めちゃおうよ!」

 落ちている缶と割り箸を回収して、7と8の数字だけを地面に捨て置く。
 残念だけどこよりには人柱になってもらおう。

 反対も特に出なかったので、皆に割り箸を引かせて僕が音頭を取る。

「『王様だーれだっ!』」

 出るのはやはり数字、王様ではない。
 けど花鶏が参加しない分、割と安心できるのはどうしてだろう。
 ……聞くまでもないよね。

茜子「茜子さんが女王です。 これからはクイーン・オブ・キャットと呼ぶがよいのです」

伊代「はいはい。 いいからさっさと命令を決めてね?」

 さらりと伊代も流すところに、茜子の扱いの慣れが目に見える。
 しかし無碍にされても茜子も特には反応を見せず。
 まずは、僕らを一瞥する。

 ……あれ。
 そういえば、茜子って嘘とか本当とかわかるんだよね。
 フェイントで番号をいうだけ言って、僕らの反応を見れば好きな人を指定できるんじゃ……

茜子「それでは、女王の命を下します」

 ↓1
 (人物指定可。 無論番号でランダムでも可)
 (こよりはマッサージで再起不能。 花鶏は地面に落ちている割り箸に気がついていて茜子もそれに気がついています)

茜子「1番の人――――」

 1番。
 自分の番号を呼ばれて、ドキリとする。

 やばい。
 僕にできる精一杯の抵抗は、茜子の眼から顔を逸らすことぐらいだ。
 しかしそれをしてしまえば僕がそうであると自分から言ってしまっているようなものだ。

 万事休す。
 もはや避ける術はない。

茜子「……にはゲームが終わるまでネコミミネコ言葉で過ごして頂きます」

智「――――なにそれっ!?」

るい「あ、トモちんなの?」

茜子「そのようです。 では和久津智よ。 猫の気持ちになって祈りなさい」

 白々しい、白々しい!
 僕を狙い撃ちにしたくせに!

智「いっ、いやいやいや! 猫言葉……はまだいいにしても、ネコミミなんてないし!」

花鶏「あるわよ?」

 すぽっ、と頭に何かはめられる。
 ぎょっとして振り返りつつ頭を確かめると、そこにはネコミミヘアバンドが取り付けられていた。
 そして花鶏がいい笑顔で起っている。

花鶏「よく似合うわ。 智ちゃんにネコミミをつけるならメイド服と、あとお尻に尻尾も追加したいところだけど今日のところはコレで我慢ね」

 こよりの方を見てみると、こよりは痛みと気持ちよさとくすぐったさでまるでレイプ後のように地面に倒れていた。
 服は乱れていないところをみると、実際にされはしなかったらしい。
 哀れ、こより。 安らかに眠れ。

智「……って今日のところも何も、今後そんな姿をする予定はないよ!?」

るい「智ちん、語尾語尾」

智「あ……ない、…………にゃ」

 王様の命令は、命令だ。
 宮和だって、こよりだって実行しているんだ。 ここでしなければ更に後悔したくなるようなことが待っていると思う。
 それを見て茜子は少しばかり満足そうにした。

茜子「ふむ、よい。 余は満足じゃ」

伊代「あなたは一体いつの人よ……」

るい「智ちんかわいー!」

智「あっ、ちょっ、お触り禁止! ……にゃ!」

花鶏「猫って大体ツンデレだから、言ったことと反対のこと……つまり今の場合はお触りをすればいいってことね!」

智「違うよ!? にゃ!!」

 僕はるいと花鶏から逃げつつ、ゲームの経過を考える。
 一つ目は宮和と央輝、二つ目はこよりと花鶏だけど実質こよりのみ。 そして三つ目は僕。
 とりあえず、これ以外の全員にも罰ゲームもどきを受けさせてやる……!

 いつぞやのUSO騒動の時とは逆の立場で、僕はそう思うのだった。


 その結果は……まぁ、また別の話ということで。

 皆元るい の好感度はこれ以上上がりません。
 花城花鶏 の好感度が少し上がりました。
 茅場茜子 の好感度はこれ以上上がりません。
 才野原惠 の好感度が少し上がりました。
 
 一日目を終了します。

 一日目終了

 皆元るい  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 花城花鶏  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 鳴滝こより ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 白鞘伊代  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 茅場茜子  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 尹央輝   ☆☆☆☆☆
 才野原惠  ☆☆☆☆
 冬篠宮和  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 姚任甫   ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今坂あやめ ☆☆
 瑞和暁人  ☆
 柚花真雪  ☆☆☆☆☆
 伊沢萩   ☆☆
 副島密   ☆☆
 蝉丸繰莉  ☆☆☆☆


 今日はここまでです。

 もう四周目ともなると好感度がすごいことに……
 というか任甫さんも放置しておくとヤバイんですよね……下手したらR-18入るのが微レ存……?

 最後に、大変おまたせして申し訳ありませんでした。
 これから冬まで、平常運転でいく予定です。

 次は、金曜の夜辺りを予定しています。
 それでは、また。

 金曜の夜といったな。 すまんありゃあ嘘だ。
 ……マジすいません……模試の後遺症で眠くて眠くて……
 今日こそきます……

 来ましたです。
 例の如く、30分後程あとに。

 ■二日目 火曜日■


 シャッ、とカーテンを開ける。
 朝日が差し込み、僕は思わず手でそれを覆った。

智「今日もいい天気ー」

 晴れだと、なんとなく嬉しい気分になる。
 そうだ、たまには布団を干そうかな。 干すだけで結構良い感じになるし。
 そういえばよく言うお日様の香りって、ダニとかの死骸のにおいらしい。
 ……そんな豆知識は丸めてぽいだ。

 そんなこんなで布団を干した僕は服を着こむ。
 今日も何かあったような。


 ↓1

 がやがや、といろんな機体から様々な音が鳴り響く。
 それぞれ単体ならまともなのだろうけれど、雑多な音が入り交じっているこの場所はもはや騒音場だ。
 他人の呟きなどまともに聞こえないし、大声で喋らなければ会話も成立しにくい。
 そんな場所でも、毎日賑わっているのだけれど。

るい「うっひゃー、相変わらずひっどい音!」

智「るいは耳いいもんね。 頭痛くなったりしない?」

花鶏「もうなってるんじゃないの?」

るい「なにおう!?」

 るいと花鶏は相変わらず。
 街中では人目をひく二人の騒ぎも、ここではノイズの一部でしかない。
 ゲームセンター。
 昨日の流れで集まった僕らは、遊び場の代名詞とも呼べる場所に来ていた。

宮和「ここがゲームセンターですか。 入るのは初めてです」

伊代「ほっ、本物のお嬢様……」

茜子「養殖とは大違いでごぜぇますね旦那」

伊代「誰が旦那だ」

央輝「……どうしてアタシが、昨日に続いて今日までも……あまり人目につきたくはないんだがな……」

惠「まぁいいじゃないか。 こうして皆と遊ぶ機会だって滅多にないことだろう?」

央輝「オマエだって、人のことを……はぁ、やめだ。 何かあれば責任はアイツにとってもらうことにする」

 なんか不穏な会話も聞こえてくるけど、ノイズだ。
 僕には何も、聞こえていない。

こより「センパイセンパイセンパイ! シューティング一緒にやりましょうよう!」

智「はいはい、でも皆だってそれぞれやってみたいのとかやりたいのとかあるだろうから、順番にね」

こより「はぁーいっ!」

 素直なこよりの頭をうりうりと撫でる。
 気持ちよさそうに擦り寄ってくるこよりは本当に小動物だ。

 まぁとにかく、ゲーセンに来たのだから遊ばなければ損だ。
 まずは、何から遊ぼうか。