【咲安価】京太郎奇怪綺譚:XXIII巻目【都市伝説】 (1000)

                                 ,.ー-‐.、
                               ヽ、   ヽ  __
                               /,..-ニ‐- '"_,..)
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      └! .i! .!┘   _   _             ,.'⌒   `,. l   !  ー"ヽ  ヽ
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       l .l ! l    .| |//          __. \  /  }  .}    ヽ/
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    __r' 」 l、゙、__| |ヽ ヽ_ヽ.∨ /__.ゝ ー’ノ___ ゙、`'   / ___
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〉 ./ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ }   ./  ̄ ̄ ̄
                        / ./.              ヽノ
                          ̄

・咲-saki-の安価スレです
・原作とは違う性格付け・設定付けをされたキャラが登場する可能性があります
・現実に実在する人物、団体とは一切関係がありません。ここ重要
・色んな意味で広い目で見てください
・何かおかしい事があればそれはフリーメイソンってやつの仕業なんだ


前スレ
【咲安価】京太郎奇怪綺譚:XXII巻目【都市伝説】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377269506/)

有志の方のひらめきひろこWIKI
http://www55.atwiki.jp/kikaikitan/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1378205285


スレ立て乙

立て乙ー

立て乙です

立て乙ー

立て乙

立て乙ー


1000取れなかった畜生

前スレ>>1000
おま、おま・・・

立て乙ー
前スレ>>1000 その発想は無かったww

明るい話題が欲しくて出来心でやった
取れるとは思ってなかった(KONAMI)

あ、明るい……?

ぱ、パッと見美少女たちのコイバナだし……

照と宥は一応都市伝説的に好きな人に首輪付けたいって性癖の共通点があるよね

アコチャーも都市伝説的なやつだし、姫子だけ趣味?

前スレ<1000
なんてことだ、なんてことだ

姫子も鎖で縛(って引きず)るで

前スレ>>1000
なんちゅう事を…
楽しみです(ゲス顔)

いろんな女の子に見守られて京ちゃんは幸せ者やね(遠い目)

だが、待って欲しい

この>>1はラブコメを期待していたにも関わらずバキに持って行った前科がある

つまり多分思ってたんと違うものがでるはず

怜の安心感と安定感

リアルの原典読んできた
クッソ怖かった、ちびるかと思った。ラストの独白でぞわわってなった

ただ、原典で、このスレでいう比丘尼さんが
「ヤバかったらまた本山に来い、あそこでならTちゃんのほうが強くなれる」
みたいなこと言ってたの。これってこのスレでもヒントにならないかな…?

ありえなくなさそう
そうすると本山ってどこになるんだろう。鹿児島か京太郎が生まれた寺か

ここじゃね?
http://i.imgur.com/AXptJjm.jpg

おもちという二つの山

>>23 そんな山があるのか、日本は広いな…

須賀京太郎の名前の由来についての考察


須賀=須賀の地

建速須佐之男命は櫛名田比売を妻として須賀の地(島根県安来市)に住んだとされる。

京太郎=京太郎山

島根県邑智郡邑南町にある標高827メートルの山

近くに日和という地域がある

某SSより抜粋

>>23
どんないきさつでそんな名前ついたのやら…
しかし島根県か、オカルト的ななんかもあるのかね

>>26
有名なやつだし、このスレで言うならもーちょっと掘り進められるな
その辺の京太郎関連の名前には京太郎(ちょんだらー)が由来って説がある

沖縄の京太郎は京都出身で、本人いわく海を渡って来たらしいし

>>21
リアルの怖さは「倒せない」って点に尽きるな
原典の語り部ポジはアコチャーな気がする

「対策はとれるけど根本的な解決にはならない」系だと「昔田舎で起こったこと」もそうだっけか
あっちも周囲への被害がすさまじかった覚えがあったが

俺提督、漸く長門さんお出迎え。長かった。むっちゃん3回もきてなかなかこなかったし歓喜

どこの誤爆だ提督?

すまん
誤爆だ

陸軍送りだな

猫が頻繁に出てくる呪いをかけてやろう

お前さんの長門、米軍に寝取られてたぞ

>>899
>巨大化ネタが面白かったので作ってみた


>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

>                          ___                       ,/   / /  |
>                 - /`ヽ-<_⌒                   ,/.... 〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ
>.               , ´         ヽ                 ,/.    | 優希の説得―――、
>              /               \                _{  __/. 乂__________ ノ
>              ,'                \ \_.          / / 〉'        |
>           {                  |` ̄ ̄.           コ/ / ̄   ζ     |
>              /イ         /7 从、}.              { /_,/-――┴- 、    | イヌ~~!!
>               `、ト       /.」ハ/|\{            ,○/.......::::..::..:::::...::::、○ミ|  キョウタロォオォォ~!!
>                 Ⅵ从/イ|/   ノ. `             /::/:::i::レ'W.ハ::::NVW::|::ト、:::\
>                |三三三三〈./                 ハ/ハ:::|⊂⊃ V ⊂⊃ フ::ハ∧|) ズンズン・・・
>  〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヾ::::::::ニ=- ,,_        r‐t、 `И::| "" r‐‐┐"" ノ:::ト;:/   _
>  | 人々の救助―――、   ::::::::::::::::::::::::::::ニ=-゙____ 、 ̄|``丶_ ゝ__ノ__ ノハ/レ...| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
>  乂__________ ノ :::::::::::::::::::::::::/:::::::.|lllllllllllllllllll|..\|..  __ ____ |++++++++++++|
>.        |∧::::::::::::::.|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::∧ lllllllllllllll|  |.... |≠≠| lココココココ | |++++++++++++|
>.        |=∧|:::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::\.::::/::::::::::::::::::∧゙llllllllllll|  |.... |≠≠| lココココココ | |++++++++++++|    | ̄ ̄ ̄ ̄|
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>.       r'':::::::::|:::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::::::::::::::::::::::/lllllll{[]}.. |.... |≠≠| lコココココ r──┬─t ++__|    |日日日日|
>L     ノ:::::::::.∧.:::::::::V::::::::::::::::::::::::::::::::::',::::::::::::::::::::∧..丁 ̄丁i.゙〉..H|≠≠| lコココココ |i i i i i |i i i |++「iiiiiii|i | ̄ ̄ ̄ ̄|日|

>⊥._    /:::::::::::::::.∧.::::::::V:::::::::::::::::::::::::::::::::',::::::::::::::::::::::|゙|├─┤| ̄|H|≠≠| lコココココ | ̄ ̄`| ̄`|++|iiiiiiii|kz| ロロロロロロ |日|
>iiiiiiii|... /::::::::::::::::::::.∧:::::::::V:::::::::::::::::::::::::::::::::',::::::::::::::::::::|l|├─┤|〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ
>iiiiii⊥../::::::::::::::::::::./   、::::::::V:::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::∧├─| ̄| 両方やらなきゃいけないのがTさんの辛いところだ。
>fエ| l /::::::::::::::::::::./ ココ. \::::::V:::::::::::::::::::::::::::.|::::::::::::::::::::∧. ─|三乂_______________________ ノ
>7ミ| /::::::::::::::::::::./..゙ココココゴ∨ニV:::::::::::::::::::::::∧::::::::::::::::::::::| ─|三三三三三三|≡≡|j |iiiiiiiiiiiii|iiiiiiii|====|iii|==| ロロ xzk㌍ミHiii|
>━/::::::::::::::::::/>、__...━ . マ(:::::ノ::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::人...━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
>. |::::::::::::::::::.//ニニ\彡イ::::「:::::::::::::::::゙〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ
>.....`ー=ニニ=--=ニ二ニ::::::::::::::::::::::::::::: | 覚悟はいいか、優希?
>....   /::::::::::::::::::::`丶、::::::::::::::::::::__......乂___________ ノ
>.    ゙:::::::::::::::::::::::::/ニニ\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::∧::::::::::::::::::∧
>.....  l::::::.>''"⌒V二二二 \::::::::::::::::::ー==彡:/│V::::::::::::::::∧
>.....  |/    ./二二ニニニ\::::::::::::::::\:::::/゙ニ| ∨::::::::::::::::ヘ

>.          ゙二二ニニニニニ\.::::::::::::::∨ 二l   V:::::::::::::::::∧
>         /二二ニニニニニニ`ニ=-=彡ニニ/  :|::::::::::::::::::::::;〉
>.        /ニニニニニニ/^ヽ二二二二ニニl′   |:::::::::::::::_彡′      〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ
>       /ニニニニニニ/  ニニニニ二二|  「|\ヽ::/  ‘,       | ──、俺はできてる!!
>.      /ニニニニニニ/   ニニニ二二二|  .|」  `|    :i.         乂___________ ノ
>..     /ニニニニニニ/    ニニ二二二二|    \  │    :|ヾ
>...    /ニニニニニニ/     ニ二二二二二|       `ト' :|│| | i丶
>....   /二二二ニニニ,:′   .ニニニニニニ二|        `弋,ノノ//≧tz
>.....  /二二二ニニニ/     ニニニニニ二二|        `¨´`'`寺:圭:ミ:、
>...... /二二二ニニニ/      ニニニニ二二二|                 `寺:圭:ミ:、
>......./.二二二二二/.       二二二二二二|                 `寺:圭:ミ:、
>...゙/.二二二二二/.       二二二二二二|                   `寺:圭:ミ:、
>_/.二二二二二/.       二二二二二二|                    `寺:圭:ミ:、
>. 二二二二二/          二二二二二二|                       `寺:圭:ミ:、

これができたらガタノゾーア戦も少しは楽だったかもね…

某所の支援AAか

腰の折れ具合が異常wwww
めっさグニャってなってるwwww

タコスwwwwwwww

初めてこれ見た時も思ったけどさ、これ遠近法的に京ちゃん別に巨大化してないように見えるよな

すみません、今晩無理そうです

明日に延期します、申し訳ない。明日は19:00開始で過去最長にする予定


http://i.imgur.com/U3BYyKS.jpg
http://i.imgur.com/fOBLcos.jpg
http://i.imgur.com/0DZACgJ.jpg
http://i.imgur.com/0X5GjtZ.jpg
前半戦も終了し、そろそろ彼女のターン



【咲安価】京太郎奇怪綺譚:XXII巻目【都市伝説】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377269506/991)
少なくとも>>1は不快とかそういうのはないですよー

前スレ>>1000
お、おう
とりあえず前向きに検討しておきます

>>31>>33
!すでのな

>>37
ごめんよタコス



なにこれこわい

正妻による前妻への逆襲ターン

7時スタートかつ最長というあたりにこのエピソードに対する>>1の思いを感じる

怜のぽっこりお腹なでなでしたい

太陽光線が殺人光線ってとある都市の第二位でも現れたのかと思った…

カピラリア七光線?

今回はまだいいですとも!ないよな?(せっかち)

明日か最ボスdあるかも

もう強化の余地ねえよ!ってぐらい強化イベント繰り返してるもんな
・・・その上でてるてるに勝てないんだが

武装増加、武装進化、ネクサス、ジュネッス、ジャイアントキリング、寺生まれ、複数格納に魔物格納・・・これ以上どうすりゃええねん

これから毎日竜華にご飯作ってもらおう
多分三年くらいすれば地球ごとカチ割りメガトンパンチできるくらいになるさ

>>51
黒としぐりの親子パワー

グリッター化すればいいと思うよ

いいですとも!じゃなく手のひら突き出して光よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!って叫べばいいのか

京太郎の空手教室が始まるんですね、わかります

読み返してたら京太郎が第一話の頃はめっちゃ喧嘩殺法なんだよね
でも今はかなり綺麗な戦い方しててその理由を考えるとちょっと感じ入るものがある

まず砕けた腕輪からだな
アレ、すこやんどっから持ってきたんだろ

wikiにはフリマで見つけたとか書いてあるが実際のところわからんな

現状京太郎は単独格納しか出来ない上に魔物格納も出来るかどうか怪しいんだよな。ネクサスでの容量拡張が前提だし

ここはケンジャキみたいに戦う流れも見てみたい
たとえ複数格納ができなくてもも無くても、照さんを倒せるはずだ 俺に・・・Tさんとしての資格があるのなら!

淡「」

ネクサス腕輪がないと絆テレパシーも遠隔格納もできないんだよな
赤マント回まで電話で格納してたっけ

思ったんだけどジュネッスって実際微妙じゃね?いや、システム的にはともかく
能力に指向性を持たせられないころたんと制御できない姫様は置いとくとしても
残りの魔物4人+ネクサス京ちゃんの5人で共闘したほうが普通に強くね?

問題なのはこのスレのゲームシステムと強さの基準。このスレは弱い奴が集まっても強い奴にはそう簡単に勝てないようになってる
判定値やステータスが分散すると数値以上に弱体化するのが問題

HP150ATK150DEF150判定値15一体
HP50ATK50DEF50判定値5三体
だと絶対に前者がかつ仕様ってのはかなり生々しい

攻撃サイド奪えない限りなにもできんからな
そう考えるとマスカレイドの能力って本当ウザかった

ファッキューマッス

数増やしても個々がそんなでもないとなー  ジュネッスが倒せない相手ならバラバラでかかっても倒せない相手だろうし

判定で勝ち続ければ照にも負けないしな
負けないだけだけど

流石に有り得ないと思いたいけど何時ぞやの復活都市伝説みたいにマッス復活とか増産とかないよな?
復活怪人よろしく思考の劣化とかあれば脅威度激減だし、ジュネッスシフトころたん&姉帯さんで殲滅できるけど

>>1の書く展開は予想できても出来なくても俺らをビビらせるから全裸待機しておけばおk
しかしなんだ、士栗死んじゃってから「どうせ死なないだろ」みたいに思えなくなったから緊張感が段違いだな

あのマッスはメーソンに改造されてるみたいだからすぐには再現できないんじゃね
復活してもすぐあそこまで邪悪にはならん…筈

劣化テルーくらい量産してくるかもしれないけど

では始めますねー


23話のコンセプトは京太郎vs照、怜vs照、怜&京太郎&照

朝までやってやるぜー



>>49
まだないよ(その目は優しかった)

>>52
そういえば竜華に会いに行った回数が少なすぎてステアップの原理書いたことなかったですね



どんなときでもひとりじゃない


http://i.imgur.com/PU6EUCr.jpg


投下はっじめーるよー

マジかよはよ飯食ってこよ

何時間やるつもりなんだよwwwwwwww

私こと宮永照の人生は、人から見たらどう映るんだろう。




二……いや、もう三年前になるだろうか。

私が街に居た期間では最大級の事件が起こった事がある。

三桁の都市伝説。都市伝説以外の工作員。世界規模の組織力。

そして、観測史上最大クラスと言われた現象型悪性都市伝説。通称『魔神』。

フリーメイソンによる、京くんの知らない最初の大侵攻。



大人達が命を懸けた。

明華も三尋木さんも小鍛治さんも手を抜かなかった。

警察の人達は、本当に傷だらけになりながらも頑張っていたと思う。

ただ。




皆が傷だらけになって頑張って足止めしていた敵を、一人でほぼ全滅させた私は。

本来、世界を揺るがすような巨悪であったはずのフリーメイソンですら止められなかった私は。

特性上仕留め切れなかったとはいえ、この魔神ですら超えてしまった私は。




流石に人間として終わり過ぎていると、そう思う。

前は21~05時くらいだったしへーきへーき

照さんラスボス討伐済みワロタ
チート過ぎるぞこの人

黒い彼に会った。

その中身を見た。

だから私には、彼が戦いの場に立ち続けた場合の未来が見えている。



ただ、あの黒い人は私にとっての京くんじゃない。

他の人には分からないような細かい違いも、私には分かる。

むしろ中身を覗いた時に、あの黒い人の中の『あっちの世界の私』の残滓に威嚇されたくらいだ。

こっちの世界にはこっちの世界の、あっちの世界にはあっちの世界の『私達』がある。

……小鍛治さんは、そう思っていなかったようだけど。



だから私には、あの黒い人が私に向ける視線に興味が無い。

あの黒い人が私に頼んだ事に、特に嫌がる事もない。

その視線に込められた感情への無自覚を、指摘することもない。



この魔神は、今の私じゃ倒しきれない。

負けはしないけど、いつまで経っても倒せない以上それこそ人類が滅びるまで戦い続ける事になる。

だから、封印するという事になった。

私と小鍛治さんで弱らせ、三尋木さんが彼女曰く「余り物」の素材で作った箱の中に引き抜いた核を放り込む。

そして、外から来た戒能さんという人が眠らせた上で封印。

その間の周辺被害は警察の方々が抑え、目的の場所まで移送する。



この都市伝説は、同質かつ格上の都市伝説が存在する。

目には目を、歯に歯を。


悪霊を鎮めるのにより大きな神仏、より大きな悪神に祈るのはよくある事だという。

つまり「話の通じる相手」に「話の通じない相手」をどうにかしてもらう、という事。

この魔神を超える日本史史上最大クラスの存在の首塚は、警察の交通規制で全力でかっとばせる前提の車でなら数時間もかからない。




朝廷に対する最大最強の反逆者。新皇平将門公の首塚が、そこに在った。

【平将門の首塚】



日本三大怨霊の一角、反逆皇平将門の首塚に関する『祟り』の都市伝説。



平将門公とは、平安時代中期に朝廷に反旗を翻した豪族の一人。

規模や影響・知名度を含めれば、後にも先にも彼以上の朝廷への反逆者は居ないと言われるほどの大人物である。

世に受け入れられない者達の代弁者にして、何故受け入れられなかったかの理由の証明者。



彼もまた神の血を受け継ぐ高貴な血の一人であったが、その末路は惨憺たるものだった。

彼は反乱を起こし、天を掴むまで後少しという所で全てを失い、その果てにただの一矢にて彼は散る。

彼の首は後に平安京にて晒し者にされ、笑いものとされる。

あと一歩という無念。その屈辱。その憎悪。それは、如何程のものであったのか。



彼の首が晒されてから三日後。

不気味な事に彼の首はひとりでに故郷に向かって飛んで行き、やがてどこかに落ちたという。

人々は彼を恐れ奉り、その荒御魂を鎮めんとした。

有名なものを挙げるなら、神田明神社と築土神社の二つの神社。

そしてもう一つが、前者と同じ東京都千代田区に存在する平将門公の首塚である。



神社は人々の祈りと尊敬。

首塚は人々の畏怖と崇拝を集めて、気が遠くなるほどの年月を重ねてきた。

その為か、この首塚には恐るべき祟りがあると多くの人達に信じられている。



関東大震災の後、無知な所員が首塚の上に仮庁舎を建てようとした。
結果、それに関わった者達14人が変死を遂げる。
仮庁舎は撤去された。


大戦争後、GHQがオカルティックだと一笑に付し撤去しようとした。
何も無い所でブルドーザーが転倒し、多くのアメリカ軍兵士が巻き込まれる大事故となった。
将門公の恐怖が海を越えて轟き、撤去は半永久的に中止となった。


アトラス制作陣は女神転生シリーズを開発する前に首塚へ参拝するのが恒例となっている。
しかし真・女神転生4開発の時だけは、恒例の参拝を欠かしてしまった。
インデックスは倒産した。とばっちりである。


しかし一方、お笑い芸人が首塚に蹴りを入れても仕事をしばらく来させないだけで許したりもする。



偉い人間の敵。極普通の人々にも嫌われる。しかしそうでない人間には結構慕われる。

この呪いは、まさしく生前の将門公そのものだ。

世界を揺るがし、人を脅かし、他者を祟る日本三大怨霊の一柱。




日本でもトップクラスの知名度を持つ、怨嗟の都市伝説。




http://irotsuku.com/a/_v5icybx/r/%E4%BA%AC%E5%A4%AA%E9%83%8E

京ちゃんの背後霊ktkr

>>1的にこれは予想外だったんだっけww

いつ終わるかもわからない。

だけど、私にしか出来ないこと。

私はフリーメイソンの切り札であるこの魔神を常に守る任に就く。



『この魔神』は危険過ぎる上に、外部からの襲撃時に周辺に被害を出さず且つ負けないという人材がまず私しか居ないからだ。

実際、何度か来たあの仮面に私以外を当てるのは少し無謀だと思う。

封印とは言っても、これは実際鍵をかけずに蓋をしただけに近い。

触れるだけですぐに解け、そしてそのままこの世界を灼き尽くすだろう。



そして、この封印をここで守り続けるという事は。

ほぼ無期限で、あの街に帰る事が出来ないということ。

京くんには隠しておいて欲しいと周りの人に頭を下げて頼んでおいた。

彼が知れば、代案も無しに絶対に認めようとしなかっただろうから。


小鍛治さんは、人柱じゃないかと最後まで反対していた。

明華は、傘で顔を隠していたからどんな顔をしていたのかもわからない。

他の大人達は、どうだっただろうか。



人柱という事に思う所はない。

これまでだってそうだったし、これからだってそうだと思うから。

そこに何かを思う事はない。

……ただ。




私が居なくて大丈夫だろうか。

そう心配してしまう、妹が居た。


あの人が隣にいてくれない事が泣きたくなる位に寂しい。

そう意識せずとも甘えてしまう、人が居た。




それから二…三年の時が経ち。

封印を『守りきれなかった』不甲斐無い私が街に帰ってきて、今に至る。

もうほとんど、時間は残っていない。



あと一週間と経たない内に、フリーメイソンは最終決戦を仕掛けてくる。

最終回間近っすね

フリーメイソンの首領。

『あれ』は京くんが折れて戦いの場に立つのをやめれば、興味を失う。

そういうものだ。アレは、害悪を極めている。


彼が巻き込まれる可能性としては、あとは私に対しての人質のみ。

それも明華や小鍛治さんとさんざん検討を重ねた。

後は、私が負けなければいい。

簡単な事だ。いつからか、私にとって勝つ事は負ける事よりもずっと簡単になってしまったから。



自分に出来る事を探すのはいい。

けど、しなくいいことを命がけでやる必要はない。

……それが、『私の代わり』っていう想いから来る行動なら尚更。


その気持ちは嬉しい。

けど、そう思えるのなら……逆に私も貴方にそう思っている事を、わかって欲しい。



貴方に平和に生きるために武器を捨てて欲しいと思っているのが、私だけではないというのもわかって欲しい。




今の彼は自身の本質を見失っている。

戦争は軍人に、レストランはコックに、パソコンはプログラマーに任せるべき。

餅は餅屋。彼には彼の、本来するべき仕事と輝かせるべき才能がある。


適材適所。

……私にそう思わせてくれたのは、彼なのに。



得意分野以外の場所でなら、誰かを頼れるように変われた。

私を変えてくれたのは、一人じゃなくしてくれたのは、彼なのに。

咲を素直に大事にできるようになった。友達だと思える人もできた。

仲間も出来た。十分過ぎるくらい、私は幸せだ。

これ以上求めるのは贅沢だけど……それでも、もう一つだけ欲張りたい。




あの人に、暴力の触れることのない平穏を。

それが叶えば、私にもう思い残すことはない。

 



太陽(カミサマ)に近づきすぎた英雄は



蝋で固めた翼をもがれ



地に堕とされる



 

俺にとって、彼女は最初の相棒だった。




最初は、才能の差だと思っていた。

けれど違った。



努力を欠かさない人だった。

例外を作ってはダメだと言っていた。


「今日は疲れた」「あんまり寝てないから」「やる気がしないから」

そういった理由を付けて努力を欠かしたツケは自分に返って来るのだと、そう言っていた。

……その果てに、頑張らなかったツケではなく『頑張ったツケ』を彼女が支払わされた事に、理不尽を感じた。



意志の強い人だった。

むしろ頑固というか、他人の言葉に重きを置かない人だった。

なのにその言葉の数々は核心を突き、重く、心に響く。

誰の影響も受けないくせに、人も世界も変えられる影響力を持っていた。



子供心に憧れた。

同級生が特撮やアニメのヒーローに憧れ真似していたように、俺にとっての彼女がそうだった。

そうなりたいと思える背中。

何度も見惚れた憧れの人。




最初は「ああなりたい」。

次に「ああはなれない」。

彼女にそう思わされた人は何人居るんだろうか。

最も、俺もその一人なんだが。




俺が彼女に抱いている感情は……一体何と言うべきなんだろうか。

俺にとって、彼女は想像すらしていなかった、二人目の相棒だった。




何もかもが照ちゃんと逆。

照ちゃんは一見強くて、それでも芯が強くない。

怜は一見触れれば折れてしまいそうに弱々しくとも、その芯が本当は誰よりも強い。

照ちゃんは自分を見上げさせて俺に成長を促すが、怜は俺と一緒に成長していってくれる。


たぶん、俺は照ちゃんと怜を無意識に比べてしまった事もある。

相棒という事で、どうしても色々と。そしておそらく怜にもそれはバレバレだ。

二人の相棒は、俺以上に俺のことを分かってくれているから。


ただ。


どちらが頼りになるとか、優れているとか、信頼できているとかは……考えた事も無かった。




咲は昔、怜に「京ちゃんがお姉ちゃんと同じくらい大切にしてる人初めて見た」と言っていた。

その言葉に、ひどく驚いた自分が居たことを覚えている。



能力とは関係なく。

ずっと先を見ていて、辿り着くべき未来を見ているような奴だった。

ただ、少しだけ、一人で歩いて行くには弱々しい女の子だった。

肩を並べて一緒に歩いて行けば、どこにだって行けると思えた。


未来を見ている彼女が笑顔でいる限り、誰もが明日に希望を持てたんだ。


俺がアイツに貰ったものが何なのかって言われれば。

それはきっとここまで見てきた希望の持てる『未来』だと、胸を張って言える。



……ああ、いや。そうだ。

思い出した。

そういえば、そうだった。



出会った順番で言えば。

怜は、照ちゃんが居なくなってこの役目を継いで初めて……俺が助けられた、人だったのか。

俺が助けたという意味でも、俺が助けられたという意味でも。




俺が彼女に抱いている感情は……一体何と言うべきなんだろうか。

 



ひとりたすければ



ひとりうまれたことになるのか



そのいのちは



よいいのちか



 

男の人は基本バカなんじゃないかと、うちは思う。

言うてもうちが親しくしとる異性なんて、一人しかおらへんのやけど。




危なっかしいと、出会ってすぐの頃は思っとった。

頼りになると、いつの頃からか思うようになっとった。

そばに居てくれると安心するのはうちだけの事じゃないと、そう確信できるようになっとった。



彼は変わっていく今日を愛していた。
誰かの笑顔を見た昨日を愛していた。
皆が希望を持てる明日を愛していた。

変わっていく日々ならば、それは不変である日々よりも良いものだろうと。

変わり映えの無い繰り返しのような毎日でも、その中の微々たる変化を愛していた。

変わっていくの毎日かずっと続いていけばいいと、祈っていた。

頑張る事でその変化をより良い方向へと導けると、信じていた。




そんな彼に運命を感じた。

うちがそれに恥じる事なんて、何も無い。




『この人は私が居ないとダメだ』って思わせる弱さに見合わない理想の高さ。

『この人と一緒なら何だって出来る』って思わせる安心感。


それがうちの知る、今日まで須賀京太郎というヒーローが他人に力を貸してもらえた理由。

世界一面倒臭い三角関係

照→←京→←怜
こういう状態だから三角関係とはまた違うという

>>92
これだけ見ると京太郎がTDN屑な件

一夫多妻制導入したらええんや!

……誰かの代わりなのかもしれんちゅうことは、薄々気付いとった。

うちを通して誰かを見ているような相棒の眼を、何度か見た。

それでも、その『誰か』にうちが負けていないことにも気付いとって。


それが悔しいようで、嬉しかったんや。



親友二人が卒業して、一人ぼっちになるんかなと思った時。

相棒の縁で知り合った友人達の声が、一人やないと知らせてくれた。

もうあの病院に居た頃の園城寺怜は居ないんやと、教えてくれた。



人聞きにしか知らんかった宮永照との出会い。

同類、同種、似た者同士かと思っとった。

……実際は、水と油。

決して相容れないと気付かされただけだったけれども。



彼が決断を迫られた時。

彼が迷いを見せた時。

あの場所で彼の本音を理解してたのは、うちだけやった。



彼のそばに居なかった宮永照。

自分自身を見失いがちな須賀京太郎。

二人に見えとらんかったものも、うちにだけは見えている。



思えば、咲ちゃんが帰ったのは……最後の最後まで、分かってたからなんやろか。

宮永照と須賀京太郎。

悔しい事に、この二人への理解なら……あの娘が、誰よりも深いんやろし。



だとしても、うちのやる事は変わらない。



いつものように、うちは―――

七人の嫁による正妻戦争勃発の予感

 



やがて失われるものに意味がないのなら



人の命もまた無意味だろう



時か 病か 刃か



いずれは奪われる



ならば今すぐ、死にますか?



 

心が折れる、音がした。

それが彼が気を失う前の、最後の記憶。



「……ん……あ、んん? なんで、俺、ここに……?」



目覚めた彼が身体を起こした場所は、彼の部屋だった。

裸だった上半身には服が着せられ、丁寧に布団がかけられている。

外見上、彼の身体にキズは一つもない。

……外見上、は。



「……ああ」

「俺、負けたんだった」

「……」


「ああ、なんだろうな、本当に」

「無駄だったって、言われた気分だ」

「力に起因する俺の価値、全部否定されちまったな」


「……」

「……疲れた」

「……なんか、もう疲れた」

「なんも……したくねえな……」


「……」

「……何も……考えたくねえな……」

「……」



『この世に公平なものはない』。

対等な条件で始めたゲームですら、プレイヤーの実力と才能という不公平が存在する。

公平なものがあるとすれば、超常の力が絡まない前提でのジャンケンや麻雀といった運勝負だけだろう。



宮永照は、世の不公平をその身で体現する少女だ。



彼女の圧倒的な力は、絆・努力・仲間・力・積み重ね・寺生まれ。

戦いの場で彼を支えていたそれらの支柱を、根本から叩き折った。

そうでもしなければ彼は止まらないと、正しく理解していたから。



事実。

今日まで一度も折れることのなかった須賀京太郎の心は、今ポッキリと折れてしまっていた。

パンプキン・シザーズか

京太郎「……」



死にたいくらい辛かった。

彼女達の戦わせたくないという気遣いが嬉しかった。

理屈の上で、これ以上自分が戦うべきではないと思っていた。

それでも何故か、納得の出来無い自分が居た。


少年の折れた心の中で、複雑な訳の分からない感情が混じり合う。



京太郎「……」



ただぼーっと、何をするでもなく、何を考えるでもなく、天井を見上げる。

悲しいような、痛いような、辛いような、混ぜこぜになった気持ちが溢れ出す。

それでも、涙は流れなかった。

少年の身体は、心が折れた今になっても、本人の意志を無視して強がりを続けていた。



京太郎「……」



少しだけ、寂しいという気持ちが彼の胸中に生まれる。

胸の中心に、穴が開いたような痛み。

それを和らげたいと、何か気を逸らすような会話がしたいと、そんな気持ちが心の裏面に浮かぶ。

それはぽつりぽつりと生まれては消え、生まれては消える度に長く心に残っていく。

彼は無意識の内に、そばに居てくれる誰かを求めていた。


やがて、その気持ちが本人に意識されるかされないかという所で。

彼の部屋のドアが開き、その向こうから見るだけで安心する顔が現れた。



怜「お、なんや起きとったか」

京太郎「……怜」



その時。

ドアの向こうから現れた少女が誰かによって、彼の運命は変わっただろう。

この世界において、それは園城寺怜だったというだけの話。

やっぱり怜がナンバーワン

ヒロイン確定なアレかな?

京太郎がくじけそうな時はいっつもそばにいるな

怜「……世界が終わってもうた、みたいな顔しとんなぁ」



怜の笑顔は、変わらず素敵なそれだ。

日陰で咲く雪のような白い花を思わせる、儚さと美しさを併せ持つ笑顔。

ただ、その笑顔が。今の京太郎には、少しだけ煩わしかった。



京太郎「……すまん、ほっといてくれ」

怜「なんでや?」

京太郎「一人になりたいんだ、だから……」

怜「いやや」

京太郎「……は?」

怜「相棒が嫌や言うてもうちはどこへも行かへんよー」

怜「一人になりたい言うても、一人にはさせへんで」



彼には、ちゃんと分かっている。

彼女が向けてくれる優しさも、気遣いも、そのあたたかな想いも。

分かっていた。……なのに。


その優しさが、今の彼には辛かった。

身勝手とは分かっていても、今は誰にも自分の前で笑っていて欲しくなかったから。

自分が笑えない時に、誰かが目の前で笑っているとわけもなく腹が立つ。

そんな当たり前の感情。

いつもは抑えられるはずの感情ですら、ひび割れだらけの心からは漏れてしまう。



京太郎「……いいから、どっか行ってろって言ってるんだよ」

怜「いやや」



感情が抑えきれない。

今の彼には、笑顔を作る余裕すらない。

優しさを取り繕う余地すら無い。


だから、そんなギリギリで一杯一杯の彼は。



京太郎「どっか行ってろって言ってんだろ! 目障りなんだよ!」

京太郎「鬱陶しいんだよ! 迷惑なんだよ! 嬉しくねえんだよ!」

京太郎「自己満足だけの看病がしたいならよそでやってろ! うぜえんだよ!」



それが八つ当たりでしか無いと分かっていても、動く口を止められなかった。

登場したけど結局大して出番無いまま終わりそうだなてるー

このスレの京太郎がちょっと人間味無いくらいの完璧超人ヒーローだと思ってたのがずっと昔に思える

てるーとの再会でいきなり地が露わになった感じだね

京太郎「……どっか、行けよ。出てけ」

怜「……」



言いたい事を言ったにも関わらず、彼の胸中に残ったものは爽快感ではなく自己嫌悪だけだった。

『自分が楽になるためだけに、拒絶している』。

その自覚から目を逸らせるほどに、彼はクズでも終わり切ってもいなかった。

そして自分で傷つけた心の痛みから逃げるように、部屋から出て行くように促す。

本来なら謝るべきだ。

それ以外に、彼の胸の中の痛みを取り除く事は出来ないのだから。


なのに逃げるように出て行けと命じている辺り、彼の折れた心が伺える。

しかし、彼は忘れていた。


園城寺怜が、どういう少女なのか。

彼女が何故、彼の相棒足り得たのか。

その理由を、折れた信念と一緒に見失っていた。



怜「いやや」

京太郎「お前、いい加減に――」



彼女は扉に向かっていくどころか、むしろ反対方向へと迷いなく進んで行く。

扉の反対、つまり、京太郎の方向へ。

強さに起因しない彼女の威圧感に一瞬怯んだ京太郎の眼前に、怜は滑りこむ。

そして彼女は、右手を大きく振りかぶり。



彼女の生涯で初めての、生まれて初めての渾身の平手打ち。

パァン……と。柏手ののような音が、部屋の中に響き渡った。



京太郎「……え?」

怜「いつまで、情けないツラしとんのや」



信じられないように片頬を抑える京太郎の身体にまたがるように、怜はその顔と顔を至近に近づける。

ヒロインの平手打ち入りましたー!

頭突きからビンタへの進化

怜「さっき言うたな、世界が終わったてもうたみたいな顔しとるって」

怜「あんさん今、『明日世界が終わるとしたらどうする?』って問われて答えられるんか?」

怜「ちゃんと、うちの目を見て」



ぴくりと、彼の身体が反応する。

無言であっても、これ以上無く露骨な反応だ。

彼は必死に目を逸らそうとしている。逃げようとしている。

それでも彼がマウントを取られている限り、彼の顔が彼女にしっかりと押さえられている限り。


彼は彼女の真っ直ぐな瞳から、目を逸らせない。



怜「大体何考えとったのかも、否定された考えが何かも分かっとる」

怜「強くなるだの、強さが足りないだの、強さが及ばないだの」

怜「……でも。あん時の言葉、忘れたん?」



二人だけが知っている言葉。

二人だけの約束。

二人が初めて一つになった時、交わした言葉。



―― 強くなるのが一番だ。でもそれが絶対じゃない

―― 俺達の弱さを乗り越えよう。一緒にさ

―― 強さも弱さも分かち合って、背負い合って

―― 一人じゃないなら、乗り越えて行けるはずだ



彼から彼女に送られた、始まりの宣誓。



京太郎「……あ」

怜「あの人と相棒だった時のアンタは、互いに強くなってく関係だったのかもしれへん」

怜「でも、うちとの関係は違うやろ?」



怜「うちらは一緒に、弱さを乗り越えていく関係だったはずや」



彼自身の言葉が、怜という鏡を経て跳ね返り、彼の心に染みていく。

強くなくても一緒に居てくれる相棒と強くなってから一緒に居たい相棒の構図

共に成長する相棒ってのも悪くない

怜「『一人じゃないなら、乗り越えて行けるはずだ』ってのはどうなったんや」

怜「な、相棒」



彼が言葉にするのも躊躇った、彼の心の奥底の本当の傷。

鏡の少女と傘の少女が彼を戦わせない決断に踏み切った、彼の心の痛みの源泉。

それが、核心だった。



怜「『明日』が、そんなに怖いんか?」



未来へ希望を抱けぬ恐れ。

大切な誰かの死が、彼に踏み出す一歩を躊躇わせていた。

踏み出した先にある死の可能性が、彼を迷わせる。



「分かんねえ、分かんねえんだ……」

「黒(アイツ)は、俺のその信念が間違ってるって言った」

「俺は間違ってないと否定した。何があっても、周りの奴らが信じてくれた自分の在り方を曲げるなと」


「あの子は言った。俺は間違ってないと」

「間違ってないけど、それでも変わって欲しいと言った」


「じゃあ、どう変わればいいってんだ」


「間違ってなかったのに、なんであの子は死んじまったんだ」

「誰も答えてくれないし、誰かに答えを委ねちゃいけないってのも分かる」


「だけど、だけど だけど だけど だけど だけど だけど!!!」


「踏み出した先の未来が、怖い」

「あの子が死んだ事に意義があったんだと証明する、そんな未来を俺は掴まなくちゃならないのに」

「あの子の死を無価値にしてしまう未来を掴んでしまうのが、怖い」



未来に希望があれば、可能性があれば、それを信じられれば。

彼は毅然とした態度で照達の申し出を却下し、照を超えることもなく戦いを続けただろう。

そしてその果てに、黒い彼と似た未来を辿っていた筈だ。

しかし、そうはならなかった。



青山士栗の死は、須賀京太郎に明日への不安を残していった。

それは良くも悪くも彼の『芯』に変革を促すもの。



今は亡き彼女からのバトンが、怜へと継ぎ渡される。

あぐりちゃんはそんなに気負って欲しくなかっただろうけどね

未来への不安を打算と可能性の考慮で薄めようとしたのが、照達の提案だ。

逆に言えば今の彼は、彼らしい答えを出すために必要ないつもの精神性を失っているとも言える。

未来への不安を抱えた彼を鏡と傘の少女達が見てしまった事が、今回の発端の一つでもあるのだから。


それを晴らせるのは、この世界で二人だけ。

そしてその一人が、ここに居る。



怜「な、相棒」

怜「未来への不安は簡単にはどっかに行ってくれんちゅう事はうちもよく知っとる」

怜「それでも……その不安なら、うちが晴らせる」



生気のなくなっていた彼の瞳が、少しだけ揺れる。



怜「相棒、小蒔に言ってたやん」

怜「貴女に明日をあげるけど、その明日で何をするかは貴女次第って、言ってたやん」

怜「相棒、うちを助けてくれたやん」

怜「明日に何が来るか怖がってないくせに、明日が来るか分からない事を恐れてたうちに」

怜「ちゃんと、明日をくれたやん」



明日を語る言葉は、怜の言葉だからこそ重い。

明日が無かった少女だからこそ、明日を語る言葉は響く。

そこに彼自身の言葉を加えるのだから、尚更だ。



京太郎「俺は……俺は、これから先、誰も死なせない自信がない」

京太郎「今よりも良い明日を掴める、自信が無い」

怜「そんなん、無くて当然や。言うたやろ? 必要なのは、全力を尽くす事と結果を受け入れる事やって」

怜「それに、な」



怜「大丈夫。うちは、もう相棒が誰も死なせんし、最高の未来を掴んでくれるって信じとる!」



京太郎「……お前、なんでだ?」

京太郎「俺が失敗したのも、死なせちまったのも、あの人の圧倒的な力も見てるのに……」

京太郎「なんでまだ俺を信じて、俺に任せようとしてくれるんだ……?」

怜「決まっとるやろ?」

怜「うちが笑えてることが、何よりの証明になるんやで」

京太郎「?」



ニッと笑う彼女の言葉に、思わず彼の目が点になる。

やっぱり分かってなかったかコイツ、という視線が彼女の瞳から彼の瞳へと向けられる。

その視線は、ほんのりと熱を帯びていた。



怜「うちはな、『京太郎』。アンタだからこそ救われたんや」

怜「あんな鉄面皮の天敵みたいな女が来とったら、病室の前で門前払いやっちゅうねん」

怜「あんなのと仲良くする未来も可能性も、うちの中にはないんや」

怜「そもそもあの女、依頼された相手しか助けへんのやろ?」



園城寺怜は、須賀京太郎がこの街を守ると立ち上がった時からの仲間だ。

そして、京太郎が何も持っていなかった時に最初に救い、救われた関係でもある。

だからこそ。

彼女は、『京太郎が戦い続ける価値』を証明できる。

彼女は、彼にしか守れなかった笑顔を知っている。

何故ならば、彼女の笑顔は――




怜「うちの笑顔は、京太郎にしか守れなかったんやで」

京太郎「――――」




何をしようと、宮永照には守れなかった笑顔だったのだから。



怜「意味はある。価値もあるんや、相棒」

怜「うちが今も笑えとることが、その証明になる」

京太郎に救えて照に救えない人が居るって証明か!

京太郎"が" 守った人だからな

むしろ殴る蹴るで解決できた事件すくないよね
アフターケアが大事

須賀京太郎が守ってきた、彼だけにしか守れなかった笑顔を傍で共に見てきた園城寺怜。

そんな彼女だからこそ、彼が戦う価値を証明できる。

彼が心奥で望む、彼が戦う価値の証明を言葉に出来る。

彼が未来に抱く不安を払う為の、一つの荒療治。


彼自身に彼が戦う未来への価値を、認めさせるために。

たとえその果てに最善の未来が、見つからないとしても。


怜は信じ、賭けたのだ。

京太郎自身の自身の本音と、自分の願いと、どの道を選んでも誰かが納得出来ないまま終わってしまう現状。

不確定の未来、先の見えない道、暗闇の明日。

そこに踏み込み、可能性の残る未来に賭けた。



怜は信じた。

自分が信じる相棒は、もう一度戦えば、宮永照にだって勝ってくれるはずだと。

絶対的な力量差を叩きつけられてなお、彼女は彼を信じていた。

その勝利の先で、誰も泣かなくていい未来を掴んでくれるはずだと、信じていた。

それに根拠は無い。全く無い。

ただ、その『期待』が……彼の心の中の種火を、蘇らせる。


今日という日に、彼の中で様々な人が育てた種火。

その種火が、新たな熱を持つ。



怜「な、相棒」

京太郎「……なんだ?」



だからこそ、ここで解決しておかなければならない事が一つだけ。

それを口にしようとするだけで、怜の小さな胸に痛みが走る。

それでも今、解決すべきだ。そこまで時間は無い。

彼を想うなら、他に人が来る前に終わらせるべきだ。


怜は深呼吸して、覚悟を決める。

語調だけは平坦に、自身の心の揺れを悟られぬように。

彼に必要な『決着』を、ここで彼自身に決めさせる。

彼女は言葉で、彼の無自覚だった急所を突いた。








怜「相棒って、昔あの照って人が好きやったんやろ? 無論、異性として」

京太郎「――――」



京太郎「は?」



京太郎「……」



京太郎「え、お前何言ってんの?」



京太郎「ん、あ、え?」



京太郎「待て待て待て」



京太郎「落ち着け落ち着けって、何言ってんだよ怜」



京太郎「いやいやいやいや」



京太郎「はっはっはっは」



京太郎「おいおいおいおいおい」



京太郎「ん、ちょっと待て、聞き間違いだったかもしんない」



京太郎「すまん、もっかい言ってくれ」




怜「相棒、アンタほんまにバカやな」

最重要イベントだ
セーブセーブ

京太郎ちょい落ち着けwwww

(ノ∀`) アチャー

これはいかんwww

これは京太郎答えんとなぁ

これは黒に童貞と馬鹿にされても仕方ない

完全に童貞の反応じゃないですかやだー

怜「初恋?」

京太郎「……は? い、いやいやいや!」

怜「本人無自覚かー、良かったんか悪かったんか」

京太郎「スタァァァァップ!!」

怜「自分で分かっとるんやろ? いい加減認めえや、話が進まん」



珍しく彼の顔が赤い。

今の彼の気持ちがどうであるかに関わらず、過去に彼が照に好意を向けていたのは確固たる事実だ。

そして最悪なことに無自覚なまま彼の中の初恋は、形を変えて彼の中で見失われてしまっていた。


だからこそ、彼の中で恋という概念は凍結している。

二年という無自覚の歳月は、彼の中の初恋を誰にも知られぬまま歪ませ彼の中に据え置いた。

この歪みがあった所で、彼が恋をする事が出来ないわけではない。


それでも、邪魔にはなるし障害にもなる。

まるで照の独占欲が形になったようだと、怜は辟易しつつ思った。



京太郎「いやいや待て待て、俺が照ちゃんに抱いてた気持ちはそういうのじゃなくてだな……」


怜「好きだったから、いいかっこしたかっただけやん」

怜「好きだったから、頼って欲しかっただけやん」

怜「好きだったから、その人が傷付く事だけが余計に苦しかっただけやん」


怜「アホくさ。小学生かいな」



そして、それに不随する夢のようなもの。

恋を起因にした夢など、思春期には珍しくもなんともない。

恋が歪んで沈んで行くのと一緒に、彼が抱いた夢達も一緒に沈んで行った。

後に残るのは、原動力を失ってしまった行き場のない熱量だけ。

夢もない。恋もない。小さな小さな歪みが、彼に少しの歪みを形を変えて表出させていた。



怜「その感情が昔の物か、今も続いてるのかは分からへん」

怜「それでも気づかないまま、忘れたままにするのはかわいそうやろ」

怜「その気持ちも、それを想った昔の相棒も」



怜「ちゃんと、終わらせてやらんと」


怜「そいで、またこっから始めればええんや」


怜「ちゃんと自覚して終わらせれば、相棒はまた始められるんやで」

つまり童貞には理由があったと

京太郎は初恋を引き摺るタイプだったかー
納得の童貞である

京太郎「……ああ、そっか」

京太郎「あの頃の俺、照ちゃんが好きだったのか」



始まりの気持ちがそれだった。

既に彼の中で、その気持ちは終わりを告げている。

彼がこの先宮永照にどんな気持ちを抱くかは分からない。

けれどこの古びて錆びついた気持ちに決着を付けなければ、気持ちを抱く事すら出来ないかもしれないのだ。


三年前に止まった想いの時間を、動かし始める。



京太郎「あれもあれもあれもあれも」

京太郎「……好きだった気持ちが原動力か。……なるほどなー」



夢を追う者や、一途に恋する者は魅力的に映るという。

彼の中の人を惹き付ける輝きの原料の一つは、まさしくそれだった。

かつての日に抱いた気持ちの残滓が、彼を鮮やかに彩っていたのだ。



京太郎「憧れの人って、そういうことか」



照に抱かされた数々の気持ち。

それこそが、彼がかつて失っていた夢だった。



京太郎「二年経っても、気付きすらしなかったのか俺」



けれどいつからかその気持ちは薄れ、消えてしまう。

平凡な少年が、近所の憧れのお姉さんへの初恋を卒業するように。

自覚がないからこそ、その消失は加速する。



京太郎「恋愛初心者ってレベルじゃねえぞ……」



ただ、問題が一つ。

恋と夢が消え去っても、熱が残ってしまったのだ。

それは火元がどこかへ行ったのに、散った火種が燃え続けているようなもの。


それは彼の本心ではなく、かつて抱いた本心の残滓にすぎない。

それは歪みだ。彼の心が正常に動作するためには邪魔にしかならないもの。



しかしそれも、今や園城寺怜に取り除かれた。



怜「いま、どんな気分や?」

京太郎「……めっちゃ恥ずかしいな」

照「NDKNDK」

黒「NDKNDK」

マッス「NDKNDK」

ネクサス・ジュネッス解除後。

格納されていた少女達は、格納前に居た場所へと弾き飛ばされていた。

そして格納されていなかった彼と親しい者も、腕輪を介した虫の知らせのようなものを感じ取っていた。

そして、そのまま何もせず連絡を待つようなお姫様気質の者はただの一人として居ない。



携帯は繋がらない。絆無線も消失。ならば、直接向かうしか無い。

子供も大人も男も女も問わず、彼と特別親しい者達が街を駆け始める。

そして早く着くのは当然、移動速度が速い者と行動開始が早かった者。


そして今、事務所にまた一人。



淡「ぜーっ、ぜーっ……」



二連戦にダメージの蓄積というハンディを、気力でものともしなかった少女。

大星淡は早く、かつ速かった。

彼女はすぐにでも京太郎に会い、その無事を確かめたくて仕方がなかった。

だと、いうのに。



淡「……そこ、どいてよ」

憧「嫌よ」



その入口を、先に着いていた誰かが塞いでいる。

高鴨穏乃の背に乗って先行した、新子憧がそこに居た。

よく見れば、何人か他にも事務所に入っていない少女の姿が見える。



淡「どいてよ、じゃないと、力づくで……」



何の変哲もない少女だ。

ホシガミの力なら、造作もなくどける事が出来るだろう。

……なのに。

なのに、何故だろうか。

力とか、そういうのを超えた次元。

精神の領域で、大星淡は彼女の無言で佇む姿に気圧されていた。




淡「(なんか、どけられる気がしない)」

ファッキューマッス

>>136
数千人単位で京太郎を取り囲んでNDKしてくるマッスを妄想してイラッと来た

この良妻オーラ
マジで良い女だなアコチャー

その姿が、どこか悔しげだったからか。

その姿が、何故か悲しげだったからか。

その姿が、訳もなく哀れだったからか。


その叫びは、真に迫る悲痛さが込められていた。



憧「……私には!」



憧「今アイツが立ち上がるのに、誰が必要なのか分かんのよ!」

憧「分かんないなら、お願いだから黙ってて……!」



今彼が立ち直るのに、誰が必要なのか私には分かる。

でもそれは、貴女達じゃない。

だから、せめて邪魔だけはしないで。


彼女の叫びには、暗に込められたそんなニュアンスがあった。

普通なら『何様だ』と、怒りの矛先を向けられてもおかしくはない。

それでも、彼女の訴えを聞く者がここで留まっているのは。


『誰が一番行きたいのを我慢しているのか』を、その叫びから誰もが肌で感じ取ってしまったからだろう。



憧「……まだ、私達の出番じゃないの」

淡「……ん」



ずっと待っていろという事ではないらしい。

……少し待つくらいなら良いかと、大星淡は妥協した。

この眼の前の少女に、少し同情に似た興味も湧いていたのもある。



淡「いいよ、信じても。えーっと……」

憧「……新子よ。新子憧」

淡「おっけ、アコね」



心配だ。

心配で心配で心配で心配だ。

大星淡の内心を覗ければ、ゲシュタルト崩壊しそうなほどに真っ直ぐな気持ちと心配の文字で埋め尽くされているだろう。

ただ、それ以上に……自分が彼に気合を入れるのは今じゃないと、彼女は勘でそう感じとってもいた。

愛されてるなぁ京太郎

アコチャー・・・

いわゆる正ヒロイン√

 



仲間を求めて/求められ、来たる


http://www.youtube.com/watch?v=o7AT9wfZNMw



 

新子憧が通したのは三人。

ほぼ同時に、最初にこの事務所に辿り着いた三人だ。

一人は走って。一人は龍門渕のリムジンで。一人は家が近かった。

そして何より、三人はここまで来ようとする行動の開始が早かった。


誰よりも早く、彼女達はこの場所へ出立しようと走りだしたのだ。



穏乃「ん、入っていい?」

怜「お、来た来た」

一「ちょっと前にね」

姫子「入るタイミングば伺ってたと」

京太郎「皆……」



それは、彼にとっての最初のパーティメンバー。

そして今この時だけは、特別な意味を持つ彼に力を貸した仲間達。



高鴨穏乃。

救われた事と関係なく、子供の頃からずっと彼のそばに居た少女。


国広一。

戦いではなく、言葉と共感と穏やかな日々で救われた少女。


鶴田姫子。

戦う力を使わなくとも、彼が必要な人を連れ体を張り、呼びかけ続けたが故に救われた少女。



ここに園城寺怜を加えた四人。

この四人は、京太郎に力が無くても笑顔を守れた少女達だ。



この四人が、証明してくれる。

この四人が、彼が今日まで戦い続けた価値を証明してくれる。

この四人が、彼が強くなくとも守れる笑顔の存在を証明してくれる。



彼の中の未来への不安を消し飛ばす。

彼の中で折れた心、失われた信念、見失っていた在り方を蘇らせる。

彼の中で消えかけていた種火に、新たに燃え盛るための熱を注ぎこんでくれる。



かつて怪人アンサーは、少年に告げた。

『「困難な情勢になってはじめて誰が敵か、誰が味方顔をしていたか、そして誰が本当の味方だったかわかるものだ」……小林多喜二の言葉だ。覚えておくといい』

その言葉をふと思い出し……ようやく、少しだけ。



少年は、微笑んだ。

>>1はFFも好きだな

しかしこの四人は改めてそう見るとその為だけに用意されたように見える不思議

フリーメイソンのアンサーさんは上の中程度の知識量って言ってたけど
あの比較的人間味のあるアンサーさんはどの程度の知識量なんだろ?

タカミーだった場合もぜひ見たいですね。

穏乃「ほら、顔上げなよ」

穏乃「いいものってのは、地面にゃぜったい転がってないんだから!」

穏乃「下向いてても良い事無いって!」



穏乃の言葉。

数十分前なら、彼はその言葉に心折られていたかもしれない。
しかし今は、その言葉でちゃんと前を向く力を受け取る事が出来ていた。

幼い頃より彼とともにあった大親友。
彼と性差を感じさせずに友情を育み、性差を意識する頃には友から仲間へとなっていた少女。

何度折れても立ち上がる、それが彼女の強さ。



一「弱い人の気持ちも、強い人の気持ちも分かってあげられる君は」

一「家族の居ない寂しさに共感できて、家族の居る幸せを教えてあげられる君は」

一「笑顔で、誰かを許せる君は」


一「周りにありのままの君を求められる、そんな君で居られると思う」



一の言葉。

家族に捨てられた共感、弱い人や寂しい人の気持ちが分かる事。
一と京太郎が仲良くなったのは、そんな理由。

誰かの気持ちをわかってあげられる君のままで居て欲しいと、彼女は願う。
彼女は誰かの幸せを願っても、強さなんて願わない。

ささやかな幸せの価値を知っている、そんな強さがある。



姫子「自分のカラに引きこもってる人は、無理矢理力づくや出てこなかよ」

姫子「私は、それを知っとーと」

姫子「貴方はそういう人に呼びかけて、外に連れ出せる人たい」

姫子「私は、それを知っとーと」


姫子「……だから、元気な貴方の方がよか」



姫子の言葉。

心無い仕打ちに心折られ、都市伝説に呑まれた少女。
彼女は呼びかける声に応えて、自分自身の力だけで心の闇に打ち勝った。

彼女の鎖は、心の絆。
誰かと繋がる、彼の在り方を具現化しようとしたかのようで。

繋がる強さも、彼女は得た。



怜「……士栗ちゃんが居なくなってから」

怜「相棒、ちゃんと泣いた? 泣いてへんやろ?」

怜「今なら、うちら以外誰も見てへんよ」



そして、怜の言葉。

彼女の強さなんて、今更語るべくもない。


声を押し殺して泣く少年の頭を抱きしめてその泣き顔を隠す彼女は、まさしく今代の彼の相棒に相応しかった。

ずっと泣いてなかったからな
泣いてたのはマホだけだった

>>148
前回どっかで同じような質問を見た気がする
その時は>>1は答えなかった覚えもあるけど、まあアンサートーカーくらいの知識量はあるんでね?くらいで

京太郎「なんつーか、恥ずかしいな」

京太郎「いつから借りて使える力の方に目が眩んでたんだか」



泣き腫らした顔を擦り、彼は不格好にも男らしく鼻を啜る。

その目に、もう迷いはない。

以前と同じ……いや、以前よりもずっと強い瞳の輝きがそこにはある。



京太郎「……俺を育んでくれる。育ててくれる」

京太郎「そんな人との出会い、触れ合い、日々が俺の宝物だったはずなのに」

京太郎「尊いと思ってのは、そっちだったはずなのにな」



士栗が見抜いていたように、彼の芯は経年劣化で腐っていた。

根幹となる気持ちが失われていた上に、その残滓が余計に残っていた事が原因である。

腐って折れた芯を取り除くには、荒療治かつ狙っていたわけではないが一度完全に折れる必要があったのだ。

強く、猛々しく、今度こそ自分ためだけに鍛え打ち上げた彼の芯を新たにそこに据えるため。

完全に折れなければ、大抵の事に彼の心は堪えることができてしまうから。



だが、今。腐った芯は取り除かれた。全ての残り火は消えたのだ。

後に残ったのは、今日という日に仲間達が残してくれた種火の芯。

それを芯に据え、彼は新たな熱を持つ。

新たな心。新たな熱。新しい自分。

自然に夢も持てる、何にも邪魔されず恋だって出来る。


チープな言い方をするのなら、彼は今日『生まれ変わった』のだ。



京太郎「力の継ぎ足しじゃなく」

京太郎「大切なのは、俺自身が変わって行くこと」

京太郎「何よりも大切だったのは、心の継ぎ足し」



それを求めて、最初に力を借りた四人。

その基準は、心の形質だったはず。

そこに一人が加わって、今の彼を表す形になったのだ。

五人目のパーティメンバーも、彼は心の形質で頼る相手を選んだのだから。



宥「……遅刻、しちゃったかな?」

京太郎「いいえ、まったく」

正ヒロインは遅れてやってくる

唯一無二のおもち

京太郎が、虚空に差し出す右手。

その右手に、もう霊石の連環は存在しない。

ネクサスも出来ない。ジュネッスも出来ない。魔物だって、相手によっては不可能だろう。



それでも、その右手に次々と手が重ねられる。



怜の右手。穏乃の右手。一の右手。姫子の右手。

まるで『あの夜』の再現だ。

松実宥が救われた、あの夜の再現。



宥「……私が、救われたのは」

宥「あの時伝わった気持ちが、あったかかったから」

宥「力で負けたからじゃないよ」


宥「私を救ってくれたのは、貴方の心」



ただ、一つだけ違う所がある。

あの夜敵でしかなかった宥が、京太郎の対面から向かい合うように歩み寄り。

彼女がその右手を、そこに重ねたこと。

重なる右手と絆の数が、一つ増えたという事だ。




「「「「「「 絆(ネクサス)っ! 」」」」」」




何も起こらない。

多重格納も無く、腕輪も無く、都合のいい奇跡もない。


……だが。

意味が無いなんて、誰も言いはしなかった。

>>155この後憧や淡が来るのでは…

ちょっと休憩。実は風呂も飯もまだなので
再開は00:10

一旦乙

一旦乙です

一旦乙
ゆっくり風呂入ってくれ

一旦乙



ガチで朝までやるつもりか

外野から見た感じでは、怜って初恋を自覚させ、ちゃんと終わらせようって言いながら
京太郎の恋心は自分に向いてるよって誘導してるように見える

一旦乙
絆の力を見せてくれ京太郎

眠ひ……いいですとも!までは無理っぽい
後は任せた

眠いとか言いつつも、いいですともの時間帯には皆マッスの如く現れるんでしょう?知ってる

眠いとか言いつつも、いいですともの時間帯には皆マッスの如く現れるんでしょう?知ってる

二重投稿申し訳無いですorz

今回はいいですともないで!

いいですもパワーの源である腕輪ねーしな

では再開ー

あいよー

前のオモイヤリは灰になっても活躍したんだ
腕輪もきっと砕けても頑張るさ

はいな

>>175
道具のヒロイン化が進み過ぎる・・・

今のオモイヤリは二世じゃなかった?

須賀京太郎は、宮永照に力に起因する価値を全て否定された。

彼女はそうやって、彼の中の力に起因しない価値を見つめ直させるつもりであった。



「いつまで、ここで待っているつもりですか?」

照「……今晩の間に、もう一回来るかも」

「勘ですか」

照「勘」



戦いの後も公園を動かず、何かを待ち続ける二人の少女。

二人は彼の幸せを願い、戦いをやめる事を望む最初の仲間達だ。


ただ、鏡の少女も傘の少女も、寺生まれの少年に対して心理的な距離があまりに近すぎた。

それは良い事でもあり、良くない事でもある。


距離の近さと絆の強さが比例するとは言わないが、それでもこの二人は友人で括るには違いすぎるのだ。

友人であると同時に、彼女らは年上の女性として年下の少年に接する。

彼女ら二人に健夜を加えた初期事務所メンバーの三人は、京太郎にどうしても保護者に近い視点で目線を向けてしまう。

それは少しだけ、彼に過保護になってしまうという難点を生み出していた。



彼の一人立ちと成長が三年前から急激に進んだ事が彼女らの失踪と同時期なのは、決して偶然ではない。



照「私は京くんをお見舞いして謝ってお話したいんだけど」

「京さんはここに来るんでしょう? なら、わざわざ行かなくてもいいじゃないですか」

照「……何考えてるの?」

「なーんにも考えてませんよ?」

照「……」



だからこそ、友人が必要だった。

友人は、過保護でも冷淡でもない距離で、彼に気持ちを向けるから。

彼の意思を汲み、彼が傷付く事を必要以上に恐れず、ただ『心安らぐほどに親しい他人』で在り続ける。

彼の心が新生するためには、折れる過程と友人によって蘇る過程の両方が必要だったのだ。

……それが誰かの思惑通りかは、別として。



照「まあ、いいけど」



二人の少女の思惑は、基本部分のみ一致する。

彼に戦いの場から手を引かせる、という部分だ。

ただし、そこには二人も意識していなかった穴がある。

二人共、かの提案に京太郎が納得していなかった事に驚愕していた。

彼の成長や変化を計算に入れていなかった事も原因であるのだが、それは新たな問題を表出させる。


それは彼を納得させる過程で、彼を肉体及び精神的に傷つけてしまう可能性が生まれた事だ。

この二人は、それも想定し気に病むほどに優しかった。

そうしなければ京太郎が将来的に取り返しの付かないことになってしまうと予想していても、それでもふと手控える程度には。



照「(……)」



宮永照は、自分が壁になるべきだと思っていた。

彼にとって越えられない壁。

彼を外界の悪意から守る壁。

砕けず、越えられず、超えられない絶対の壁。


女神の壁(ウォールマリア)とでも称すべき壁。

彼女の胸が壁のようだという件については関係ない。

壁は壁だ。凹凸はない。



照「(もし……)」

照「(ありえないことだけど、もし)」

照「(京くんが、私を超えられたなら……)」



そして、二人も意識していなかった穴とはこれのことだ。

須賀京太郎は、寺生まれの形質から期待されれば期待されるほど強くなる。

何より、彼女二人とて京太郎が照よりも強くなり、あらゆる困難を打倒してくれるのが最善だと分かってはいるのだから。

そして彼をよく知る二人だからこそ、彼に無意識の期待を向けてしまう。


「もしかしたら」「アイツなら」「ひょっとして」。


一回や二回の敗北程度で、彼女ら二人の中の彼の評価は覆らない。

彼女らは、無意識の片隅。ほんの少しの、砂粒のような意識の欠片程度の大きさではあったが。




この期に及んで、この状況で、二人は『須賀京太郎の勝利を信じていた』。

時代は可変乳なんだよ照

ウォールミヤナガ

鉄壁照

ウォールマリアを破壊しえる巨人を狩るのが、巨人狩りの力を得た京太郎という訳か

照「もし、京くんが私を超えられたなら……(バストサイズ的な意味で)」

ミヤナガさんちょーすごいよー!って巨人が言ってる

ドアが開く。



淡「突撃ーーーーー!!!」

京太郎「ん? わぷっ!?」

憧「こら淡突撃すんなって何回も言ったでしょうがーーー!!?」



そして開いたドアから、彼の部屋に雪崩れ込むように人が入り込んできた。

先陣を切る少女。

フライングボディアタック。

なんときっちり受け止めて抱きしめた少年。

気付けば廊下も事務所の外もそれなりの人数が居るのが見える。

皆、彼を心配して集まってきた者達のようだ。


誰も居ない事務所の電話が止まずに鳴り響いてる事に、今更ながら気づいたりもする。



京太郎「は、はははっ……なんじゃこりゃ」

憧「みんなアンタが心配かけたから来たのよ、まったく。反省しなさい」

京太郎「憧」

憧「なに?」

京太郎「ありがとな」

憧「……何よ、いきなり」

京太郎「なんとなくだ」

憧「……そっ、ま、感謝されて悪い気はしないけどね」



力無くとも。力貸せずとも。力及ばずとも。

こうやって集まってくれる絆に、価値が無いなんてあり得ない。

絆の価値は、本来力で証明するものじゃないからだ。

絆の価値が否定されただなんてバカな事を思っていた自分が恥ずかしい。

いつの間にか、少年の思考に羞恥と高揚が少し混ざっていた。



京太郎「なあ、憧」

憧「何よ」

京太郎「頼みがあるんだが、聞いてくれるか?」

憧「言ってみなさい。聞くだけ聞いてあげる」

京太郎「聞くだけとか言いつつ基本断らないお前が大好きだぜ」

憧「……ばっかじゃないの」

大好き発言をこの場で言うことの恐ろしさよ

憧ちゃんの愛人力

これは言質やね

現実で準備を整え、彼はまっすぐに心象世界へと向かう。

今なら出来る気がする事が一つ。

今でも出来ない事が一つ。


それを同時に解決する為に、今少年はここにいる。


真っ白な世界の中心で、仁王立ちする黒髪の男性。

京太郎と同じ顔をした彼は、立ち塞がるように不動の姿勢。

その閉じられた両の瞳の瞼が、ゆったりと上がっていく。



京太郎「なあ」

京太郎「もし俺が、お前の知恵を借りるとかじゃなく。手助けを求めるとかじゃなく」

京太郎「『対等な立場で力を合わせたい』って言ったら、お前どうする?」



士栗に関しての謝罪はない。

彼もあっちの世界でついぞ気付くことのなかった、宮永照への須賀京太郎の気持ちへの感想も聞くことはない。

それでいい。

彼ら二人は、それでいい。

ただ、成長の証と心構えを言葉と行動で示せばいい。

それだけで、伝えたい事は伝わってくれる。



黒「……くくっ、面白い事言うじゃねえか」

黒「(ああ、なんだ)」

黒「(無駄じゃなかった。価値があったのか、アイツの死には)」

黒「俺が他人の事なんて知ったこっちゃねえから嫌だ、とか言ったらどうする?」

京太郎「そんな事」



示せば伝わる。

心に刻んだ事、受け継いだ事、その死を受け止めた事。

彼女の死が無駄じゃないと、彼がこれからの生涯で証明し続けるという事。



京太郎「『口が裂けても』言えねえだろ? 俺達は」

黒「(こんな所にまで、生きた証を刻み付けやがって)」



痛みは無くならない。

けれど少しだけ和らいだと、黒い彼はそう腑に落とした。

霞さんの回でも言質を取られるようなことをしてたのに、懲りないな…

あ、あぐりちゃんの口癖うつってる

黒「おい、武器を構えろ」

黒「最後の仕上げのついでに『死超』の由来、教えてやる」

京太郎「……おう」



彼はどこまで行っても理想的なヒーローだ。

彼はどこまで行っても現実的なヒーローだ。



黒「この技は俺が死地を超える時によく使ってた技だって前に言ったよな」

黒「でもそれなら、普通死を越える技だろ? 死超って字にはならねえよな」

京太郎「ああ、それは前から思ってた」



彼は甘い。

彼は苦い。



黒「……この技はな。『死の運命を超えるための技』だったんだよ、最初はな」

黒「けどこの技が完成したのは、照ちゃんの死を超えた時だった」

京太郎「……」



彼は光。

彼は闇。



黒「もしも、もしもだ。お前がこの技を完成させて、照ちゃんの死の運命を超えることが出来たら……」

黒「……いや、なんでもねえ」

京太郎「……ったく」



彼の世界はまだ間に合う。

彼の世界は既に手遅れだ。



京太郎「任せろ。この技、お前の代わりにお前が望んだカタチで使いこなしてみせる」



彼は糧とし乗り越えた。

彼は傷とし刻み込んだ。



黒「……はっ、生意気言いやがる」



優劣は無い。


ただ先人と若輩として、教え教えられる関係であった。



そして今日から、完全に対等となる。

京太郎「んじゃ、言ってくる」

黒「合図の後、呼吸はそっちに合わせる。好きにやれ」

京太郎「サンキュー!」



時間をギリギリまで使い、修業を終える。

本来の主の居なくなった心象世界。

いつも通りに、誰も居ない虚空の中で黒い彼は佇んでいる。




黒「俺は結局、自分に勝てなかった」

黒「受け止めきれないと、もう嫌だと、自分自身から逃げ出した」

黒「……ついさっきまでのアイツみたいにな」



誰かに話しかけているわけではない。

これは彼の、独り言だ。

自身に向けた自虐の言葉であり、かつての仲間へ向けた懺悔の言葉でもある。



黒「そんで、『新しい自分』に期待してたのさ。笑えるだろ?」



この世界でやらかした、最初で最大の失敗がそれだった。



黒「けど、アイツなら」

黒「自分に勝てたアイツなら、あるいは」



黒いもうひとりの自分に勝った。

仲間の死を苛む自分自身に勝った。

少年は彼とは違い、自分自身に勝ち続けている。



そんな彼が、少年に向かって言葉を紡ぐ。

彼に聞かせるつもりはない。

この賛辞も激励も、少年がこの場にいいないからこそ素直に口に出来る言葉なのだ。


それを直接聞かせないのは、彼の中に在る最後の子供のような意地だった。



黒「かつての俺が出来た事は、全部出来るようになれ」

黒「かつての俺が出来なかった事も、頑張って出来るようになれ」


黒「そうすれば、きっと―――かつての俺が辿り着けなかった、そんな未来に手が届く」

京太郎「悪いな、何時間も待たせた」

照「別に」

京太郎「そか」



その言葉には、言外に彼の為なら何時間待ってもいいという彼女の認識が告げられている。

ま、それは今はどうでもいいのだ。

今重要なのは、彼が再戦のためにまたこの場所に赴いたという事実である。



照「……で、これは何?」

京太郎「ああ、手出しはしないただのギャラリーだから気にすんな」

京太郎「照ちゃんなら、どうせまた公園外まで被害出さないように加減できるだろ?」

照「ん」



先の戦いと違い、公園の周囲には人影がゾロゾロと見える。

斜向かいのベンチ、ビルの屋上、屋根の上、遊歩道、路地裏。

この戦いを見守るように、手出しの気配は見受けられない。

彼のピンチに力を貸そうとしている仲間のようにはとても見えない。


これが京太郎が憧に頼んだことだ。

『手出しは無用、けれど戦いを見守って欲しい』という彼の意思を周知させ、徹底させる役割。

そのお陰で、彼のピンチに駆けつけた者達は真夜中にも関わらず彼を見守るようにこの公園の周囲に集結した。



照「……でも、本気?」

照「もう、何も出来ないんじゃないの」



彼女の言葉は、確かに正しい。

もはや腕輪の力が使えない以上、彼は上位の都市伝説にすら歯が立たない存在だ。

最上位の上に座する最強である、宮永照に対向する手段は彼に存在しない。

これは虐殺にも見たないほどに悲惨な、ただの自殺だ。


それでも。



京太郎「大丈夫だ」

京太郎「さあ、やろうぜ」



彼自身、そして彼を見守る公園の周囲の者達は。


この戦いにおける、彼の勝利を信じていた。

さて、勝機はあるのか

告白して幸せなキスをして終了すればいいんじゃない(適当)

やべぇ トイレいきてぇ

この戦闘はオートか?

今回死超使って勝てたとしてもネクサスとかジュネッスが使えない京太郎に未来はにい

死を超える=新しい命をつくる=孕ませSEXみたいなエロゲ展開来ないかなぁ...

照「……」



宮永照の右手に、空間の螺旋が形成される。

小鍛治健夜直伝の、風ではない空間を歪め視覚化される純エネルギーの循環だ。

触れれば超合金ですら摩擦熱で蒸発する、それだけの破壊力。

そこに京太郎に直撃させたとしても、傷一つ付けず気絶させるだけの手加減を同居させる。


矛盾しているようだが、それを為せるだけの技術が彼女にはあった。

全力と手加減を交えた究極の一撃が、振るわれる準備を終える。



京太郎「ふぅ……シッ」



対する少年は、格納どころかヒーローシフトすら展開していない。

全くの生身。しかし、それでも余裕の表情だ。

まるで『何か』を確かめるように、彼は素の肉体で人類の頂点へと挑む。



照「……?」

照「(何か、考えがあるのかな)」



照の初撃は決まっている。

この右手を振り下ろし、叩き付けるように叩きこむ。

それが一番威力の乗る、重力に沿った攻撃方法だ。


京太郎の行動パターンは分かっている。

だからこそ、彼女はこの一撃で全てに決着を着けるつもりだった。


が。



照「……!?」

京太郎「……く、くくっ、あ、あははっ!」



その一撃は、空を切る。

京太郎は性格上、格上か詳細が不明な相手には一気に踏み込んで初撃に全てを懸ける傾向がある。

格上だろうが油断している先の先にて必殺の一撃を叩き込めれば、勝利の可能性はグッと上昇するからだ。

最初の戦いで、京太郎が照に対してそうしたように。


だからこそ、彼女はそう行動すると読んで攻撃の軌道を決め打った。


しかし京太郎は一歩たりとも踏み込まず、攻撃は彼の前方に着弾。


地面をひっくり返すだけにとどまり、両者の視界を塞ぐだけで終わりを迎えた。




照の一撃を京太郎が凌ぐという、奇跡が起きた。

オモイヤリを使いこなせるようになったのか?

照「(まぐれ?偶然?狙った? ……なんに、しても)」



砂煙の中で、人影を見つけそこに螺旋の一撃。

五感への妨害や干渉すら無効化する彼女の絶対性は、こういった時にも情報の取捨選択を有利にする。

発見から攻撃への移行まで、ほぼ一瞬の体制シフトからの攻撃。



しかし、それがまた空振った。



京太郎「……は、ははっ……奇跡みてーな事だよな、これ!」

照「……!」



一撃目。

あまりに貧弱に過ぎる素の肉体の彼は、一撃目の余波だけで手に持っていたオモイヤリを手落としてしまっていたのだ。

砂煙で視界を塞がれた彼は、そのオモイヤリに足を絡めて転倒。

彼の頭部があったはずの場所を照の右手が空振り、今に至る。



奇跡が二度、重なった。



跳ねるように立ち上がり、照と一定の距離を取る。

京太郎の視界には、今度こそと右腕を構える照。

知っている技だ。

右腕の螺旋を竜巻の槍と化し、遠く離れた敵へと放出する大技。

おそらく先ほどまでのような展開を恐れての事。

だが、それは京太郎も望むところだ。


今の彼の思考は非常にオカルティックかつ、非論理的なジンクスに近い思考。

ただそんなものの力の後押しがなければ勝てない確信ができてしまうほどに、互いの力量差は明らかだった。


彼が望んだものは、確固たる奇跡の後押し。



京太郎「(来いッ……!!)」



一度なら偶然。二度目なら必然。三度なら奇跡。四度なら運命だ。

彼は運命に至る、奇跡を心から欲していた。

もしも今また照魔境使われたら終わりかなぁ…全て見抜かれるから

マインドシャッフル来るか

エジソンは信じていたはずだ。自分の研究の結実を。それがもたらす世界を。

誠実な警察官は信じている筈だ。己が市民を守れる事を。自分達の仕事が平和をもたらす事を。

信じなければ、現実にはならない。心から信じるのならば、必ず現実になる。

ならば、心から勝利に繋がる奇跡を信じる者は―――



照「……」



照が左足を踏み込み、右腕をストレートの要領で押し出す。

一つの砲塔かつ発射台と化した右腕はまっすぐに京太郎に向けられ……た、はずだった。



照「!?」



その足元が、崩れる。

奇しくも彼女がその時踏み込んだのは、前回の戦いで京太郎達が大技を出した地点であった。

照には及ばずとも、星を砕く一撃の反動を受けた地面は、アンバランスに踏み固められ崩れやすくなっていたのだ。

そして照が新たに負荷を加えたことで、完全にその地盤は崩壊する。

地盤の崩壊に伴い、彼女の姿勢も崩れ直線的に発射された必殺技も大きくブレる。


そして必殺であったはずの螺旋は、彼の頬の表面を薄く裂いて飛んでいった。



京太郎「……へへっ」

京太郎「流れと運は、こっちに向いてきたみたいだぜ。照ちゃん」



スポーツの試合で、理屈に合わないリスクの高いプレーをあえてする事がある。

それはそのプレーを成功させる事で、試合の流れを自分達の方へと持ってくるという狙いがあるからだ。

戦いとは、流れである。

彼は小数点以下の奇跡の連続に賭け、そして勝利と流れを掴み取った。

流れと運。この二つを確実に掴み取らなければ勝てない。

それが彼の認識であり、どのみちこの賭けに勝てないようなら彼女には勝てないと思っていたのだ。




そしてこの流れの中で、彼は三度の奇跡に後押しされたジョーカーを切る。

京太郎「……行くぜ」

黒『おう』



彼の右目が、昏く染まる。

それと同時に、彼の肉体に展開されるヒーローシフト。

体の節々から漏れる黒い光が全身に展開された浅葱色の光と反発し合い、時に反応し爆発する。

暴れる光が肌を裂き、先の爆発と合わせ彼の全身を傷めつけていく。



黒『……やはり、無茶だ! 光と闇は反発する! 同時展開は……!』

京太郎「いいから続けてろ!」

黒『……っ』

京太郎「出来なくても、やるんだよ……!」



磁石のNとSを両立する。電気の+-の属性を複合させる。熱湯と氷を一緒にして混ざらないようにする。

今彼らがやっている事は、そういうものだ。

相反する逆の性質を混ぜあわせている。

それは本来、不可能な事。


けれど彼からすれば、宮永照に勝つという目標の方がずっと不可能だ。



京太郎「う、ら、あああああああああああッ!!」



遠のく意識を繋ぎ止め、気力で反発し爆発しそうになっている力を抑えこむ。

……だから、彼には。その声が幻聴だったのか、実際に聞こえた声だったのか。

今となっても、分からない。






「おにーさんは、ホント無茶するよねぇ」






彼の左目が、『桜色』に染まる。

水と油。絶対に混ざらない二つを混ぜるにはどうすればいい?

簡単だ。卵黄を混ぜてしまえばいい。

混ざらない二つのものがあるのなら、その二つを混ぜ合わせられる性質の第三のものを混ぜてしまえばいい。

黒と蒼が混ざらないのなら、そこに桜色を加えればいい。


黒色光と浅葱光の間に桜色光が混ざり、調和する。


光でもなく、闇でもない、その先へ。



TTTは今ようやく、属性を偏らせない真の姿を取り戻した。

光ですら本来の能力じゃなかったっていうのか…!

士栗ちゃん!!!!

やったぜ最終形態だ

TTT最終形態、しかも黒親子とのコンビ技・・・!

やべぇオラ、ワクワクしてきたぞ

光と闇がそなわり最強に見える

光と闇が(ry

なんか唐突に、遊戯王のゆうまとアストラルの融合シーン思い出して吹いた

強くなる力でもない。

弱くする力でもない。


善悪も光闇も好嫌も関係なく救うのが寺生まれであるはずなのに、そこに光も闇もあるはずがなかったのだ。


必要なのは、どんな相手にも創り出す勝機。

寺生まれは、どんな悪夢にだって勝つ事を望まれる。



照「……うん、そうだ」

照「私の知ってる君は、とことん諦めなかった」

照「か細い勝機でも見つけてきて、それを現実にしようとするんだよね」



宮永照は、最強無敵だ。

対する京太郎は、最弱無敵だ。

リアルは、その逸話の中で一度も負けなかった無敵の都市伝説。

寺生まれのTさんは、この全てのよき人達から無敵であって欲しいと望まれた都市伝説。


今ここに至り、二人の力は完全に拮抗した。



昔々、宮永照という少女が願った通りに。

彼女が孤独に耐え切れずに望んだ、対等な存在。

彼女の期待に応えたそれが、今彼女の眼の前に在る。



京太郎「ああ」

京太郎「譲れないものがあるんだからさ」

京太郎「……ただの喧嘩しようぜ。俺ら一度もしたことなかったしな」



力を封じる蒼。多種多様の黒。純出力の桜。

三つが噛み合わさって天より雪のように降り注ぎ、その場の全ての人間の力を封じていく。

そう、全てだ。


無敵の照も、発動者である京太郎も。



照「……っ、なに、これ、力が抜けて……」

京太郎「生憎器用な使い方ができなくてな。全員分の力を対等に抑えこむ位しか出来ねーんだわ」



完全に対等。だから今戦えばどちらが勝つかなんて、予想出来やしない。

『誰もが完全に平等かつ公平な競争の場を創る』。

それが、この力の本質だ。



京太郎「さあ、始めようぜっ!」

…お前身体的にはただの女の子であるてるてるとただの喧嘩する気なのか…

どこぞの裸エプロン先輩ですかね…

フジリュー版封神演技の太極図みたいやな

???『僕は悪くない』

【真・ヒーローシフト】



須賀京太郎のTTT(光)がTTT(真)に変化しました!

これにより、フィールドそのものをシフトさせる『真・ヒーローシフト』が使用可能となります!

これまでの破ァッ!系スキルは引き続き使えますのでご安心をー



真・ヒーローシフトはヒーローシフト展開中に上書きする形で使用する事となります。

戦闘中は戦闘参加者のステータスが完全に拮抗。

真・ヒーローシフト展開中は既存のステータスがほぼ無効化されてしまい、別処理の戦闘が繰り広げられます。



具体的には、ステータスが


HP:■■■


これだけになります。完全に互いのステータスが拮抗しているためですね。

保有技能も完全に無効化されるため、食いしばり系スキルなども無効です。


そして行動判定に勝利する度に、相手のHPが一つ減ります。

つまり実質行動判定のみの勝負になるわけです。

アイテムは使用できますが、回復アイテムは回復量にかかわらず■一つ分しか回復しません。ご注意を



相手の■を全て削りきれば勝利となります!

この場面でマッスがいたら戦闘終了後に京太郎の能力の範囲外から奇襲仕掛けてきたろうな…

なんかこう、パワポケで唐突に始まるミニゲームみたいな処理になったな…ww

これは余程コンマに自信がある人じゃないといけないな…

まさかの勝利条件変更
そこまで平たくせんでも

俺ら照の行動パターンとかわっかんねー!
爆砕点穴あるけどね

点穴使う?それともいつも通りこのスレのエスパー力を頼るか

一番安い回復剤を買い込めばいいってことだな

そもそも照って生身のステータスは弱いんだしなんもせんでもこっちが有利なんじゃねえの

・スキル追加(ジャイアントキリングと同じ場所に)

『死超』
効果:発動ターン、相手攻撃サイド確定時にそのターン受けるはずだったダメージに自身のATKを+し、相手のHPダメージとする。
一戦闘一回

【真・ヒーローシフト中効果】
効果:発動ターンの行動判定敗北時、それを勝利扱いに。
一戦闘一回

点穴いっと居たほうが良いかもしれん。頭も回らないし

>>231
だからもうステータス関係ないって

>>231
戦闘中は全員のステータスが強制拮抗
おそらく素の肉体の弱い強い関係無く平等な立場になってる

真シフト中の死超がチートすぎるww

あ、いや生身では弱いと言われまくってたから判定値補正も低いじゃないかと思ったんよ

前回の戦闘で相手の初手分かってて、死超の効果でとりあえず二回勝利は確定か
点穴序盤は温存でいいか

>>237
工藤!判定値ももう関係ないで!

発動宣言してないといけないからそこまでチートでもないな
判定負けがトリガーだから空撃ちしそうだ

俺は初手点穴使うべきだと思う
死超あいこでからぶるし

>>237
判定値無いよ

死超は劣化メリーさんか

ああ、死超自動発動ってわけじゃないのか
とりあえずHP1削れるまでは点穴温存でいいんじゃないか?神読みで完封する可能性あるし

死超のいいところは敵攻撃サイド確定時に自攻撃サイドにせずダメージ入るところだな
憧カラスやFSMみたいな攻撃サイド確定技能持ちにこそ有効

くるくると手中で回るオモイヤリ。

ぎゅいんぎゅいんと、彼女の手の外を回転する風の螺旋。



京太郎「しなくちゃならないでもなく。やらなくちゃならないでもなく」

京太郎「優しさの見返りを求めるでもなく。貴方の代わりに頑張るでもなく」



その回転の向く先は、互いの親愛なる眼前の敵へ。



京太郎「俺がそうしたいから、俺がそう在りたいからこの道を進んでいく」

京太郎「そこで誰かを理由や言い訳にしない」

京太郎「そう、決めたんだ」



照「そうなんだ」



そっけない返答。

彼の一世一代の宣誓に対しての返答としては、あまりにそっけない。

だが、彼は気にしない。



京太郎「とりあえず、卒業したら事務所継いで事務所もっとでっかくしてやるんだ」

京太郎「そんな、夢も出来た」



照「そうなんだ」



またしてもそっけない。

しかし、彼は気にしない。

ほんの少し、彼女が微笑んでくれたように見えたから。



それだけで、満足だ。



一拍の沈黙、一つの呼吸、一瞬の始動のフェイントの差し込み合い。



その後に、互いの初手が放たれた。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・アイテム使用
>>249

必殺

必殺

必殺

必殺

【#攻撃kagami】



必殺VS攻撃


宮永照の攻撃サイド確定!



須賀京太郎 残りHP:■■

宮永照 残りHP:■■■

固定パターンじゃないのか
ごめん

これまた攻撃パターン不定なのか…やっぱ爆砕出し惜しみはあかんな

これ士栗ちゃんと似たタイプの行動パターンか?
まあ次ターン点穴使用確定だな

受け継ぐだけでは意味が無い。

受け継いだものを組み合わせ、真に一体とする。

得たもの、学んだもの、貰ったもの。

それらを文字通り『身に付ける』事が大切なのだ。


いつからか彼はそれを忘れ、力を借りる事に甘えていた。

それは慢心だ。単純な力を借りる以外にも、彼の血肉となる事は多かっただろうに。



京太郎「……っ!」

照「それは、受けが甘いよ」

京太郎「う、おおおおおっ!?」



右腕の必殺を囮にした、彼女の投げ。

回避に専念し過ぎて足元がふらついていた彼程度なら、照でも転ばせる程度はできる。

盛大にすっ転び、京太郎は後頭部を打ち付ける。



京太郎「(不味い、次が来る!?)」



彼の中に、借りた力の多くは血肉となっていない。

しかし、なっているものもある。



照「……おぉ」

京太郎「あっっぶ、ねぇ……!」



怜の未来予知からの取捨選択は、彼の中に簡易の先読み技能を植え付けていた。

それを用いれば致命的な一撃のみは回避できる。

反撃の道筋こそ見つからないが、凌ぐことは可能となっていた。



京太郎「(しかしやべえな……このままじゃジリ貧か……!?)」




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・アイテム使用
>>258

防御 爆砕

爆砕使用からの必殺。
同じ手を二度使ってくるようなルーチンでさえなければ行動判定負けはないはず…

とどめに死超使いたいね

安価なら爆砕防御

爆砕必殺

攻撃
爆砕

【#防御リアル】



必殺VS防御


宮永照の攻撃サイド確定!



須賀京太郎 残りHP:■■

宮永照 残りHP:■■



爆砕点穴発動!


宮永照は、照魔鏡及び人間関係として須賀京太郎を熟知しています
なので京太郎の戦闘判断思考を先読みした上で行動を決定します。京太郎の戦闘判断の思考とは、つまりこのスレの皆さんの相談です
照は実質、皆さんがしたレスを全て閲覧することが可能なのと同義の情報を得ています
ここで皆さんがした相談は、全て形を変えて照に筒抜けだと思ってください

えっ

ファッ!?

マインドスキャンキタ━(゚∀゚)━!

いえーい、てるてる見てるー?

皆バラバラの安価を出そう(提案)

実質>>1とのガチバトルってことか

だったらなんで今回は防御してきたんだろ…
必殺か防御で割れてたんだから必殺出しときゃまず負けはなかったのに

>>267
行動が決まったのは>>254の時点だからな?

あくまで見るのは相談内容であって、安価出した後は関係ないってことじゃね?

と言うことは相談内容と安価内容は別にしろって事?
安価取る奴責任重大だな

びっくりした宮永照の攻撃サイド確定!は直ってなかっただけか

>>268
そういえばそうだったな…

ていうかこれ相談することで相手の行動縛れるってことじゃん!
次のこっちの行動は必殺でいこうぜ

OK必殺な

宮永照は、運動音痴である。

京太郎が可愛いと思わず叫びたくなった過去があるほど、彼女はその点に関してはポンコツだ。

なのに何故彼女が強いかといえば、戦闘センスの一言に尽きる。

運動音痴を補って余りあるほど、彼女は戦闘者としてのセンスがずば抜けているのだ。


そんな彼女は、一つ一つの行動のキレが京太郎のその上を行く。

だというのに、京太郎はそれら全てをしのぎ切り、あまつさえ反撃すら加えていく。

それ矛盾ではなく、純粋な技術以上のものが彼の中に積み重ねられているということだ。



照「……うん」

照「カッコよくなったし、強くなったね。京くん」

京太郎「……強くなった、ってのはちょっと違うかな」



ガキン、と双方の渾身の一撃がぶつかり合い、双方打ち合わせていたかのように距離をとる。



京太郎「貴女の方がきっと『強くなった』」


努力する天才である照は、当然のように京太郎よりも遙かに速いスピードで成長する。


京太郎「俺はスタートラインからして貴女より弱くて、そして貴女よりも『強くなって』はいない」


だから時間が経てば経つほど、本来二人の実力差は開いていくだけなのだ。


京太郎「俺は、『強くしてもらった』んだ」


けれど、彼は一人ではなかった。


京太郎「強さを貰ったんだ」


彼を鍛える者。教える者。導く者が居た。


それが彼と彼女の、圧倒的な差を埋め続けた。


そして今、まがりなりにも二人は拮抗している。



照「素敵」



虚仮の一念が岩をも通した証明が、そこには在った。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・アイテム使用
>>279

必殺にしとこうぜ!って空気もてるてるに読まれてるんだよなぁ…

防御

取り敢えず試してみよう
防御

ここで裏をかいて防御…!
外したらほんとごめん

防御

【#リア攻撃】



防御VS攻撃



須賀京太郎の攻撃サイド確定!



須賀京太郎 残りHP:■■

宮永照 残りHP:■

いけるやん!

お?マジでいけた?
割と冗談に近かったんだが

仕組み分かって最初のターンだから素直に乗っかってくれたけど次は裏の裏をかいてきたりしそうで怖い

ああ、これって照が空気読めないっていう…

じつは酉決めるまでの文字の数で決めてるのかも
必殺必殺必殺必殺必殺必殺必殺必殺ッ!

てるてる素直過ぎワロタ

なんでこんなにいい子なんだ

>>285
唐翌揚げにレモンかけちゃうてるてるは別の次元だろいいかげんにしろ

『死超』で勝ち確や?

おーし次も必殺や

>>284
仮に裏かかれても死超使えばなんとかなる……筈

今の照は、真・ヒーローシフトによって照魔鏡の発動が出来ない。

常時相手の思考を読むことが出来ないという、本人が意識しているかも分からないデメリットが有る。

京太郎は、そこに賭けた。

彼の知る、頭は良いが素直で優等生すぎる、ずる賢さの欠片もなかった彼女に賭けた。


この賭けに負けたなら、そのまま敗北を受け入れてもいい。

それだけの覚悟を背負い、踏み出した。


最初に照の一撃を、かわした時と同じ。

自分の行動パターンを思考し、未来を先読みする思考に乗せて、たった一度のフェイントを組み立てる。



照「……」

照「……?」

照「……!」



右から抜けるように見せかけて、足を交差し左へ抜けるクロスオーバー・ステップ。

がら空きの左を抜けるようにして一撃。



照「いつっ」



体重が乗らなかったからか、絶好のチャンスにも関わらず体勢を崩すにとどまった。

ただ、もうこの手は通じない。二度も使ってしまったが故に。

体勢が崩れた今の内に決めなければ、地力で劣る京太郎に勝機は残されていない。

ジリ貧の果ての、敗北が待っているだけだ。



京太郎「(ここで……決める!)」




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・アイテム使用
>>296

必殺

死超発動
防御

必殺 死超発動

防御

死超を使うのだ
防御で

…一応死超発動して防御で

死超
必殺

ぁぁぁぁ市長打ち忘れた…

まだ体力残ってますし・・・
もしかしたら勝ってるかも知れないし・・・

寝落ちかな?

それに死超読みで引き分け狙いの防御してるかもしれないしな

京太郎「……ふぅ」


脱力。
構えも解き、京太郎は隙だらけのその姿を晒している。


不審に思いついつも、この隙を逃す宮永照ではない。

照の右腕の螺旋が、至近から京太郎の胸部に叩きこまれ、勝敗に決着がついた……かに、見えた。



『死超』。

それは別世界の須賀京太郎が組み立てた、『究極迎撃マニュアル』である。

無数の武器。無数の能力。無数の戦闘技術。

それらを組み合わせ、無限のパターンを以てあらゆる攻撃に最大効率のカウンターを加える技術大全だ。



たとえば、パンチされたとする。

拳で迎撃するか?肘か?膝か?箒の柄か?銃か?針か?
防御するとしてどうする?拳を潰すか?本人へカウンターするか?体制を崩すか?
防御と同時に膝を踏んで折るか?拳の弱点である親指を狙い打つか?

そうやって、一瞬で数十万に等しい対応策を脳から引っ張りだして対応する。


これは脳に相当な負担がかるため、一瞬展開するのが限度だ。

それ以上は脳がパンクしてしまう、須賀京太郎の平凡な脳の限界である。

……それでも、だ。

別世界の京太郎が二年以上かけて作り上げた戦闘経験を元にした戦闘シュミレートからの対応策は、圧倒的な性能を発揮する。

体に馴染んだ動きではないから技術にこそ還元はされないが、ほぼ全ての攻撃に対してのカウンターが可能。

そして格納した仲間の能力ですら、この技術には応用が可能なのだ。



まさしくこれは、『須賀京太郎のための戦闘技術』の集大成。

究極のカウンターとも言える、無敵を屠る最強の秘技である。



オモイヤリが、螺旋の中心に差し込まれる。

台風の中心は無風。故に、中心を貫くように彼女の腕を沿ってオモイヤリを差し込めば……



照「えっ、あっ……!」



そのまま螺旋の回転を続ければ、オモイヤリという異物のせいで螺旋に腕が巻き込まれて腕が折れてしまう。

だから彼女は、螺旋を解除するしか無い。


そして京太郎は、素で貧弱虚弱な彼女へ妥当なトドメとして。



京太郎「ほれ、終わりだ」



PSPの画面にヒビを入れる程度の威力を込めた、人外威力のデコピンをお見舞いした。



照「ふぁきゅっ!?」

【#必リアル殺】



防御VS必殺



『死超』、発動!



須賀京太郎の攻撃サイド確定!



須賀京太郎 残りHP:■■

宮永照 残りHP:



宮永照の死の運命を、超えました!

凸ピンでやられる最強の女とは是如何に

サンキューイッチ
やっぱり同じ手は通用しなかったか

住民に今まで以上のプレッシャーを与える難敵だった
もう二度と戦いたくないねぇ

おお、死超で死を超えた・・・

よし
超えた

照「ふぁきゅっ!?」
かわいい(確信)

愚行権、という言葉がある。

『他人から見ればどんなに愚かな行いであっても本人が満足し周囲に迷惑をかけていないのであれば邪魔されない権利』

というものだ。



本来、京太郎の行いがどんなに愚かしく見えようと。

彼が決め、満足し、納得して進んで行けるのなら、それを止める権利なんて誰にもなかったのだ。

照の代わりになろうとした過去の京太郎が自己満足なら、京太郎を安全な場所で囲っておこうとした彼女らも自己満足である。

その根底に、思いやりがあるとしても。



照「……ちょっと、痛かった」

京太郎「ああ、ゴメンゴメ……なんで勝った俺より回復早いんだアンタ」

照「ステータスが戻ったら、素のスペックは自然回復含めて私の方が早いし……」

京太郎「……そうでした」



彼女の人外スペックに舌を巻く。

そして、戦いに決着がついた後の、余韻の静寂が終わる。

誰から、というわけでもなく。

周囲を囲む観客達から、彼らへと拍手が送られ始めた。



照「……? なに?」

京太郎「健闘を讃えてんだろ、勝者も敗者もどっちも含めて」

照「なんで?」

京太郎「なんでって……ああ、そうか」



彼女には、この拍手に馴染みがなくて当然だ。

きっと咲の方には、この拍手は馴染み深いものだろうけど。



京太郎「強すぎる奴の蹂躙でもなく、拮抗した互角の二人の戦いとか」

京太郎「リレーで一番取ったり、ビリッケツでも諦めずに走り続けたりする奴に送られる拍手」

京太郎「誰かが頑張った事自体を、褒め称えて称賛するあったかい気持ち」

京太郎「……そういうのだよ、これは」



照「……あ」

照「これが……」

照の欲しかったものか

TTT(真)は、彼の心奥の願いを反映した能力だ。

強すぎる人間。弱すぎる自分。

弱さ故の苦悩も、強さ故の苦悩も、彼はどちらも理解出来た。



彼のこの力は、全ての人間に平等な条件での戦いを強制する。

彼がシフトさせたフィールドの中では、誰もが対等な条件で戦わねばならない。

だからこそ、照は今戦いにおいて生まれて初めて健闘を讃えられている。



圧倒的な力で蹂躙し勝利するだけの人間を、褒め称える人間なんて居るわけがない。

だが互角の戦いで、精一杯頑張った結果の敗北であるのなら……人は、称賛する。


宮永照は元々、褒められたくて勝ち続けた人間だ。

しかし勝ち続けた果てに、勝ち続けた事を理由に賞賛されなくなった事が、彼女の歪んだ理由の根本。



彼女は今、生まれて初めて負けた上で賞賛されている。

勝ち続けた彼女は、その敗北と賞賛の嵐の組み合わせに戸惑うしか無い。

嬉しいのに、理解が出来ない。


その表情に困惑の色を浮かばせながらも、彼女はどこか嬉しそうだ。


嬉しそうといえば、京太郎はもっとハッキリと嬉しそうな表情を浮かべている。


京太郎は元々、彼女に自分以外の前でも作り笑いでない笑顔を浮かべられるようになって欲しかったのだ。


その可能性の片鱗が、この戦いの勝利の結果として見えた。


自分の望む在り方が許されたことより、照と肩を並べて戦う事が出来るようになった事より。



それが何より、彼には嬉しかった。

 



「まあ、茶番はここまでだがね」



 

(アカン)

ファッキューマッス(錯乱)

恒例になりそうなどんでん返し

マッスはもういないのになんでや!?

世界が、『ズレた』。

公園の中央部分、京太郎と照が居た場所だけが風景画にカッターナイフを入れたように切り取られる。

空間を切り取った、としか表現できない現象。


時間にして一秒足らず。

須賀京太郎と宮永照は、観客達の視界から姿を消した。




京太郎「な、に……!?」

照「私から離れないで、京くん」



二人は気づけば、見慣れぬ場所に居た。

空の覗ける闘技場。

空を飛べれば現在位置はすぐに分かるのだろうが、生憎と二人共空を飛ぶ技能は持っていない。

照は全快時でならジャンプすれば雲まで届くのだが、それは一旦置いておこう。


問題なのは、二人の眼の前に現れた人影だ。



「ようこそ、フリーメイソンの本部へ」



その言葉に、驚愕の返事を返す間も無く。

闘技場の端から、無数のナイフが飛来する。

そのナイフに、京太郎はおぞましさを感じるほどに見覚えが在った。

ナイフ自体は、照が一本残らず叩き落す。



照「ん」

京太郎「お前……バカな! 本体は叩き潰したはずだ!」



京太郎「なんで……なんで『マスカレイド』が、まだ生きてやがる!?」



マスカレイド「グ、がガガガッガガガガガガがガッガッがが」



「再生には手間取ったが、まあ再生産自体はそうコストは掛からないのだよ」

「知性までは再現できなかったのが、誠に残念だ」

ファッキューマッス(混乱)

ファッキューマッス

マッスさん、醜いお姿になって……

キタ―――――――――――――――――――――――――――!!!! お帰りマッスイヤッホウ!

ファッキューマッス

と思ったらこのザマ、なんてこった

あのずる賢さと作戦立案能力がないマスカレイドなんてルーのないカレーみたいなものだ

ファッキューマッス(同情)

ああまで梃子摺ったマスカレイドがこの様とは

次いで、地面から穴を掘るように大蛇が這い出てくる。

女性の上半身に、大蛇の下半身。



『姦姦蛇螺』だ。



ただ、石戸霞の時と同じ都市伝説だとは到底思えない。

尾まできっちり一直線に伸ばせば、その体長は明らかに100mはある。

そして何より、その身から感じる怨念が段違いだ。

体色もドス黒く、人間が元だとするのならおそらく第三段階の先。

もはや救いようがないほどに、症状が進行しきってしまっている。



姦姦蛇螺「■■■■■■――――――!!!!」



咆哮と共に発射される、紫紺の閃光。

即死効果を併せ持つ、姦姦蛇螺の毒性の光。

それを京太郎を庇うように立った照が、右腕の一振りで弾き返す。

リアルは無敵。即死程度では、リアルに歯が立つ道理もなく。



京太郎「……あれ……?」

照「どうしたの?」

京太郎「いや、なんか、あの姦姦蛇螺、どっかで……」



『主様、休ませるな。そのアマ余裕な顔してるが内心ひぃひぃ言ってるぞ』

『俺様の見た所、結構さっきまでの戦いが響いてるようだぜ』

『その女を確実に殺せる回答を出すには、もう少し追い詰めてくれ』


照「っ」

京太郎「回答? ……まさか」



京太郎の思考を遮るように、スピーカーから響いてくる声。

京太郎ですら完全には把握しきれていないポーカーフェイスの照の体調を見もせず、知る事が出来ていた特性。

事前に黒から教わっていた情報。


それだけあれば、答えは導き出せる。



京太郎「フリーメイソンの、怪人アンサー!?」

やべえよ・・・やべえよ・・・

朝から仕事なのに気になって眠れない……

ファッキューマッス!!

「どうかね、四天王の最後の一人は二番煎じではあるが『姦姦蛇螺』」

「君に随分と減らされてしまった……アンサー、マスカレイド、姦姦蛇螺、そして数合わせに私」

「この四人で新生四天王というのも、悪くない」


京太郎「……お前、フリーメイソンの首領だな」


「いかにも」


京太郎「会いたかったぜ……ぶん殴りてえって意味でな」

京太郎「会いたかったとか、女の子に対してしか使いたくなかったんだぜ? どうしてくれるんだよ」


「おやおや、それはすまない」


京太郎「すまないと思ってるんなら、姿ぐらい見せろよ」

京太郎「真夜中なせいで、お前シルエットしか見えねえんだ」


「おや、それはすまなかった」



姿の見えない首領が指を鳴らす。

すると闘技場をぐるりと囲むライトが、次々と点灯していった。

やがてライトは首領の頭上のものも点き、首領の姿を晒し出す。



フリーメイソンの首領は、男性の老人であった。

ただしその姿に、京太郎も照も見覚えが在った。



京太郎「嘘……だろ……?」


京太郎に至っては、その人がそこに居るという事自体が、信じたくない事実。

その老人は、京太郎が守ろうとしていた平和な日常の中の一つであったのだから。

しかし誤解のしようもなく。

その老人が自分をフリーメイソンの首領であると自白した以上、それは事実なのだ。



滅びの父。
世界の天寿。
福音の最終章。

世界の終わりを告げる悪魔。


そう呼ばれる悪の組織の頂点が、世界史に載る程の偉人と同一人物であるという衝撃。


この世界で知らぬ者は居ない、この世界に変革をもたらした人類最初の革新者。



アーバンレジェンド・ザ・ワン
『始まりの都市伝説』。



京太郎「大、沼……校長……!?」


大沼「いかにも」

あっ、童貞だ

なぜか笑ってしまった

シュール過ぎワロタ

童貞の人キターーーー!

ここで来るか…

やっべ状況なのにくっそワロタ

大沼童貞かよwwwwwwwwwwwwwwwwww

も、もしかして世界征服の目的って童貞卒業……いや俺の勝手な予想皆混乱

最初に紹介されて皆に知られてて絶望してラスボスかと思ってたが

おーぬまさんなんでこんなことを

大沼が、京太郎に笑いかけた。。

いや、正確には違う。

『笑ったと思えた』というのが正しい。



まるで目隠しして知恵の輪を解いたかのように、そこには不自然すぎる感覚だけが存在していた。

目で見ているはずなのに、視覚以外でその現象を観測したという奇妙な感覚。

どういうプロセスでこちらに笑いかけているのか、その内容がさっぱり頭に浮かんでこない。

この老人が笑いかけてきている確信があるのに、その笑顔を脳内に浮かべることができないのだ。

それはその笑顔を認識すれば存在が崩壊するという魂が無意識に感じた警告故の逃避か?

それとも、文字通り『次元が違う』存在に対しての絶対的な格の差が見せた『世界のズレ』、その向こう側が霞んで見えただけなのか?

この笑顔には、おぞましいほどの『真理』と、それに触れただけで人生を満足しきってしまうような堕落に近い『達成感』が内包されている。

『この笑顔』を真似しようとしてもそれは絶対に不可能だろう。

それは『こちら側』に居続ける事を選んだ人間には、到達できない奈落の底であり聳え立つ高山の頂でもある。



笑顔一つで、京太郎は魂の底から理解した。

この老人は、その肉体こそ手の届く範囲にありながら、その精神は決して自分には理解できない存在であると。

神を全知全能とするのなら、この存在は人類における悪への理解を極めた人知魔能。

神に対する悪魔のように、それは存在そのものが世界を冒涜しきっていた。



そう、その男は。

まるで悪魔のようだった。

陳腐だと言われようと、笑われようと、それ以外に表現する事が出来ないほどに、悪魔のようだった。

悪性を極めたそれは、人間には全く見えなくなってしまったほどに、悪魔のようだった。



人は、多くの正義と悪を持つ。

正義は正義と対立する事もあるし、利害が一致すれば正義と悪が共闘する事もある。

その点、その男は悪を極めていた。


一目で分かる。分かってしまうのだ。


その男はあらゆる正義を迎合せず、あらゆる正義を否定し蹂躙する。



その男は、悪を極めた結果、この世の誰よりも『正義の敵』として成り立ってしまっていた。



人類そのものの寿命。病巣。癌細胞として、その男の存在は成立してしまっていた。

お、俺は急展開過ぎて思考が回らなくなってきたぞ・・・!?

「随分、強引な手を使ったものだね。大沼」



呆気に取られる京太郎の前に、また新たな乱入者が現れる。

照が再度臨戦態勢を取るが、またしても乱入者の姿を見た途端、手が止まる。

京太郎も然り。だが彼の受けた衝撃は、照の比ではなかった。



京太郎「熊倉教頭!? 出張から帰って……ってそうじゃねえ!」

熊倉「相変わらず騒がしいやつだね、須賀。少し静かにしてな」

京太郎「ちょ、貴女には聞きたい事が沢山あって……!」

熊倉「どうせ、すぐに喋る気力もなくなるだろうけどね」

京太郎「……え?」



大沼「久しぶりだな、トシ」

熊倉「出来れば、会いたくなんてなかったんだけどねぇ」



トシは背後から一発でノシたマスカレイドの一体の仮面を剥ぎ取り、その素顔を確認する。

そして納得と、嫌悪と、後悔を顔に滲ませた。



熊倉「……本当に、どうしようもないやつだ。反吐が出るほどに」

熊倉「自分で殺した『息子』の『須賀未来』の顔を剥ぎとって、ゲスな手駒に貼り付けるなんてね」

大沼「死後もその尊厳を辱めているようで、興奮するだろう?」

大沼「我が子ならば、尚更だ」



京太郎「……え?」



その瞬間。

彼の思考は、過去最長の長さで、停止した。



大沼「それよりも、娘に久々に会えて何か感想はないのか?」

大沼「彼女は元気に働いてくれているぞ」

熊倉「希望はもう死んだ。あの姦姦蛇螺はもう、お前らの思い通りに動く玩具でしかないよ」



京太郎「……は?……え?」



思考の停止が、更に延長する。


永遠に思考を止めていたいほどの現実が、少年の前に立ち塞がっていた。

おいこら童貞じゃねーのかよふざけんな

童貞だけど童貞じゃなかったー

まて、養子をとったのかもしれん

って、そんな話してる場合じゃねぇ

さすがに 言葉にできないな

マスカレイドの影響元発見致しました!

須賀未来。

熊倉希望。


その名に、少年は聞き覚えがある。


忘れるわけがない。忘れられるわけがない。


その名は少年にとって、実の親と会える可能性を見つけ出す事が出来るキーワードなのだから。


だからこの会話の流れで。

この文脈でその名前を聞いてしまう自分が、この現実が、理解出来なかった。



いや、本当は分かっていた。

死に別れてもう二度と会えない可能性もあると、覚悟だってしていた。

今日、沢山の人に助けてもらって新たに据え直した強く硬い芯も在った。


だから少年は、まだ踏ん張れる。

一度折れて強くなった彼の心は、この残酷な現実にも向き合える。


そして何より、今はそばに彼の照が居る。

怜が居たなら、彼は怜に弱音を吐いていただろう。

しかし照の前でなら、京太郎は格好を付けようとする。


それが彼の内心に、上手く作用した。



京太郎「熊倉教頭」

熊倉「……なんだい? ふむ、前に会った時より、ずっといい目になったね」

京太郎「俺の……俺の、両親について、教えてください。そして」

京太郎「あそこでふんぞり返ってるクソジジイについても、詳しく」

大沼「いいじゃないか。待っててやるから、話してやるといい」

熊倉「……」



知らないままでは、戦えない。勝てない。

何故かは分からないが、京太郎の中にそんな確信が生まれていた。



熊倉「……」

熊倉「……孫の頼みなら、仕方ないかね」

そして、彼女の口から過去が語られる。



この夜の邂逅。語られた真実。世界の敵との交戦。



思えば、この夜にはもう始まっていたのだろう。



この街の守護者達と、フリーメイソンによる最終決戦は。




第二十三話・完

熊倉が姦姦蛇螺になってるのかと思ったら斜め上にえぐってくるなんて

【次回予告】




■■「■■■■■■」



■■■■■■■■■



■■■「■■■■■■■■■■■■■■■■」

■「■■■■■■■■」



■■「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」



■■■「■■■■」





第二十四話前編:X-Stream/極限の世界

おつおつ
え、何この不気味すぎる次回予告(不安)

京太郎エクストリームフラグ…?

次回予告が予告していない件

乙ー

乙ー

乙ー

本日の投下はこれにて終了。お疲れ様でしたー

きりよく12時間投下とかでも良かった気がしますが23話もうやることがないんですよね


さて、ラスボス登場です。ネクサスのラスボスなのでザ・ワン

後は閑話しつつ最終決戦で完結ですね


照は頭がいいけど照魔鏡無いと詐欺に引っかかる子というイメージがあったので一回だけはあの手段が通じるという裏設定



では、今夜というか今朝というべきかとにかく今日はこれにて。長時間のお付き合い感謝です

では、おやすみなさいませー

おつー

乙です
長く険しい戦いだった・・・

乙ー

おつおつ

11時間投下か

乙です

親父を素体にマスカレイドを作ったんじゃなくて単にデスマスク貼り付けただけか?


真ヒーローシフト、テルーみたいなキャラとも戦えるけどやっぱり1対1用かな
大量のマッスと姦姦蛇螺を同時にってのはやっぱり無理ゲー?
いや、、テルーを破ァ!で回復させればいけるかな
まだ3人分不安要素があるからなんとも言えないか

途中で寝落ちして起きたら終わってた。残当
やっぱりマッス復活&思考能力劣化してたか

未来、希望ってどっかの選管ですね

冗談で予想してた大沼プロがまさか当たるとは・・・

アーバンレジェンド・ザ・ワンってかっこいい

大沼プロ、ホモでロリコンで童貞とか三重苦じゃないですかーやだー

長時間投下すごいな
しかし一族郎党で殺し合いとは……

大沼プロがパルパティーン議長で脳内再生された

大沼プロ倒しても次がありそう……

24/26話
ポケモンで言えばポケモンリーグまで来たね

大沼プロとトシさんは第一話で登場済ですぞ

大沼さん本編仕事しろやって位無口なのにこっちではよくしゃべるな

相手が「アーバンレジェンド」なら、こっちは「アラフォーレジェンゴ」だ!
ということでハルちゃんとアラフォーが共闘すれば勝てる??

「今夜は私とあなたでダブルアラフォーだからね」
「アラサーだよ!」

京太郎の両親がカタチを変えて四天王入りしてた件
つか黒は確実に知ってたよなこれ。あの日記の破れた四人目の四天王って母親なんだろうし

26話中24話なんて、平成ライダーなら余裕で話詰めて来るな乙

やっと追いついたと思ったらもう最終決戦か・・・
あと、話の流れと全く関係なくてすまんが、遊戯王5D,sのFREEDOMの歌詞がこのスレとシンクロしてると思った。
http://www.youtube.com/watch?v=Jlrsu_fLX9c

 



【閑話その20 ビフォア・クライシス】



 

正しく生きていれば報われる。


優しく生きていれば幸せになれる。


わけもなく、そう信じていた。






これは、始まりに至る物語。

連日やるのか・・・(困惑)

実際咲キャラで悪役作るの困りそうだよなあ

――― 十数年前 ―――





「んじゃ、行って来るぜ親父!」

「ああ、行って来い」



快晴の青い天蓋の下。

『須賀未来』は父親と二人暮らしの家を出て、自転車にも乗らず走りだす。

既に成人近くに見える男性が少年のように走りだすその様は、どこか微笑ましさすら感じさせた。



「うっ、はー……冬の晴れた日の朝ってなんでこんなに気持ちいいんだろうな」

「夏はいっつも曇れ曇れって念じてたくらいなのによ」



都市伝説という概念が世界に生まれてから、十数年。

世界は未だ混迷の中にあったが、少しづつ落ち着きを取り戻し始めていた。

その混乱の始まりを告げたきっかけ、始まりの都市伝説(アーバンレジェンド・ザ・ワン)にして、混乱を収めた歴史の立役者。

ザ・ワンこと『大沼秋一郎』こそが彼の父であり、たった一人の家族だった。

50代のラインが見えてきた大沼は既に隠居しており、あと十数年もすれば地元の名士程度に落ち着くだろう。

それでも、彼にとって父は誇りであり、尊敬する目標の一人であった。



「相変わらず、この寺の階段なげー……」

「これも寺の苦行に組み込まれてるんじゃなかろうか」

「近所の体育会系御用達ってのは伊達じゃねえな、っと」



十数年後には取り壊されてから数年が経ち、多くの人間の記憶から風化してしまった寺。

新子神社と並び立つ、この街唯一の寺が階段を登り切ったその先にある。

そして、この寺を一人で維持している可憐な美少女が箒片手に空を見上げているのが見える。


どうやら彼女もまた、この快晴に心奪われた一人のようだ。



「おーい、希望ー」

「あ、未来くん。いらっしゃい」

まさにfatezero
末路が決まってるあたり特に

熊倉希望は、霧島神境出身の巫女だ。

霧島神境出身の女性は特例としてあらゆる祭事への参加が認められており、彼女が巫女でありながら寺の管理をしているのもその一環。


彼女は岩手で偶然旅の途中だった石戸女史にその才能を見い出され、幼い頃に鹿児島へ。

そこで修行を積み、その修業の最後に卒業課程としてこの街へ。

彼女はほどなく一人前として認められ、この街を離れていくだろう。



「また駄弁りに来たぜー」

「もう、ここは喫茶店じゃないんですよ?」

「希望の茶は美味いし、話も面白いからついな」

「もう、口ばっかり上手いんですから」



……それが、彼にとっては嫌だった。



「今日は逆にしてみましょうか」

「逆?」

「いつも私の話ばかりしてるでしょう? ですから、今日は逆にしましょう」

「私、貴方の話が聞きたいです」



いつも彼女しか話をしていないのは当然だ。

片方が片方の事を知りたいという態度を隠していなければ、自然と会話はそういう形に寄って行く。



「つっても、俺に話せる事なんてそんなに無いけどなー」

「そうなんですか」

「俺が話せる事と言えば……あ、親父の話でもするか」

「未来くんのお父さん?」



簡潔に、一言で言えば。

彼は彼女に惚れていた。

そういうことである。

故にこそ。今日彼は彼女に告げるため、言葉を二つ持ってきた。

どちらも今日まで言えなかった事。

口にするのにとびっきりの勇気が必要な、そんな今日まで隠してきた秘密。



「――ってな。変な親父だろ?」

「ふふっ、愉快な人じゃないですか」

「でも、感謝はしてるんだよ。血の繋がりがない俺を育ててくれたしな」

「……血の繋がりがない? どういうことでしょうか?」



これが、その一つ目。



「……親父は、結婚してないんだよ。独身だ」

「俺は生まれた時から親父に育てられて、この世界で生きてきた」

「親父の善意が無きゃ、そもそも俺は今ここに居ないって事だ」


「拾われた子供だったという事ですか?」


「いや、もっとヘンテコな存在さ。俺はな」



彼はこの世に、『現象』として生を受けた。

後にこの街にて生を受ける『口裂け女』と同種の存在。

自然現象の一つに過ぎないはずのものが、ヒトとしての意識を持ち自立を始めた生命体。



「……俺、人間じゃない。都市伝説なんだ」

「『寺生まれのTさんの父』って、知ってるか?」

そのまんまでワロタwww

【寺生まれのTさんの父】



寺生まれのTさんのエピソードに度々登場する、最強の対抗神話の父。

語られる事はありながら、物語自体にはその姿を表さない謎の人物。

Tさん自身が語る言葉から読み取る限りでは、Tさんを超える退魔の力を持つという。



その逸話から、特殊な力と特性を幾つか併せ持つ。


一つ、この都市伝説は対抗神話である。

寺生まれのTさんと同じく、この都市伝説は都市伝説に対して相性の上で有利に立つ事が可能。


一つ、寺生まれのTさんよりも強くなる。

寺生まれのTさんは、その逸話の中で何度も「親父には敵わない」と発言している。
よってこの都市伝説はその実力に関わらず、その時代における寺生まれのTさんよりも少しだけ強い力量を振るう事が許されている。


一つ、この都市伝説の息子は必ず『寺生まれのTさん』と成る可能性を内包する。

逆説的な証明ではあるが、父と子という関係性がこれを成す。



父と子。

人がそう在って欲しい願う祈りの向く先は、どこまで行っても子の方だ。

故にこれは単体ではそれほど強力な対抗神話にはならないし、人が望む定義によって突き動かされる事もない。

そして、何より四つ目の特性がある。



この都市伝説の保有者は、物語の中に登場する事を許されない。




希望の父となる、人々に望まれなかったもう一人の寺生まれの都市伝説。

運命すぎる

そうか、大沼さんはまだ童貞か

物語はら外れてしまうだけならまだよかったのに

「……」


「希望、今まで黙ってて悪かった」

「だけど、怖かったんだ」

「人間じゃないって知られて、距離取られるのが怖かった」

「……他の誰かならともかく、お前にそう思われるのが嫌だったんだ」



この時代における都市伝説の能力持ちは、世間一般には野に放たれた猛獣のような扱いをされている。

暴力事件で有名になった元ボクシングチャンピオンを想像して欲しい。

それで大体間違ってはいないはずだ。


後の時代で子供達に起きた革新によりマシにはなったが、それもこの時代にはない。

ライオンと仲良くしようとする者は居ない。その牙が首にかかっている事をまざまざと意識させられるのなら尚更だ。

ましてや、須賀未来は現象型の都市伝説。


人外だとか、危険人物だとかそういう話ではない。

災害だ。この世界における都市伝説の認識とは、人を脅かす災害でしかないのである。


だからこそ、彼は今日まで話せなかった。

だからこそ、彼が振り絞った勇気がどれほどのものか理解できる。



そんな、拒絶される事も覚悟で紡いだ彼の言葉。

それに対する彼女の反応は。



「……うん、よく頑張りました」



何よりも先に、彼の振り絞った勇気への賞賛だった。



「誰にも言えなかったんですね」

「ずっと、秘密を抱えているだけで打ち明けられなかったのは辛かったでしょう?」

「秘密を打ち明けられるその勇気を、私はすごいと思います」

「踏み出したその勇気は、貴方の強さです」

「だから私は、褒めこそすれ貴方を嫌いになんてなりませんよ」


「希望……」



頭を撫でる彼女の手のひらの感覚と、彼女の言葉。


未来は胸の奥から溢れ出しそうになる感情に、二つ目の秘密の暴露を決意した。


と、言うよりもう黙っているのが限界になっていた。

京太郎は母親似?

どこぞのヒューマノイドタイフーンみたいな扱いなわけか

ここで一旦整理したい。

彼と彼女の関係は、ただの友人だ。

コンビニで何度かチラチラと見かけ、帰り道が一緒になった時になんとなく話しかけ、散歩中に寺で再会。

そんな出会い。

劇的な何かなんて無く、今日まで平凡に日々を過ごしてきただけ。

その日常の中で、自然と目で追う回数が増えた。

気がつけば時間を作って会いに行っていた。

一日の中で彼女を思い、ボーっとする時間が増えた。

それだけだ。

漫画のような鮮烈な何かは無くとも、それが彼の恋だった。



「……希望」

「はい?」



ここで更に言葉を重ねよう。念の為。

彼が士栗と同じということは、世間知らずという点まで同じという事だ。

なので当然、彼は大真面目にこのセリフをのたまっていた。



「好きだ。めっちゃ好きだ」

「絶対に幸せにする。一生傍に居る。お前より先に死んで一人にしないって約束する」

「浮気もしない。大事にする。お前がしわくちゃのばあちゃんになってもずっと大好きだ」

「もう一回言っとく。好きだ、めっちゃ好きだ」


「俺と結婚して欲しい」



友人から数えきれないほどの階段と過程をふっ飛ばしての申し込み。

それに対する、あまりに結果の見えていた結末は。



「……はい、喜んで」



天然同士の両思いという馬鹿げすぎたラブコメ展開に、空の彼方まで蹴っ飛ばされた。



「……よ……」

「……よっしゃああああああああああああああああッ!!!!」




こうして、過程をふっ飛ばして築かれる家庭が仮定でなく確定した。

かゆいいいいいいい

未来と希望と絶望のはじまり

えんだああああああ

(この後の展開を思い出して)イヤァアアアアア

この後がなぁ

それから、多くの事があった。



熊倉希望はこの街に残る事を決め、色々あって未来は岩手の彼女の両親に挨拶に行く事に。

彼は文庫本一冊分の激闘をくぐり抜け、娘さんを僕に下さい!を父親に実行。

彼女の父親に怒り心頭ながら認められ、彼女の母親に希望の事を任される。

彼は「任されました!」と耳に残る声を残し、希望と一緒に岩手を去った。



戸籍の無い未来の為に籍こそ入れてはいなかったが、友人達を呼んでささやかな結婚式を開いていた。

派手ではないが、幸せだった。

新郎も新婦も、呼ばれた人たちが思わず笑んでしまうほどに、幸せだと全身で知らしめていた。

結婚式は一つの関係を終わらせて、新たな関係を始めるための愛の儀式。

未来へと続く、変わって行く関係を祝う冠婚葬祭の象徴たるものだ。

未来と希望。

この二人の名前が、何よりも明瞭にこの式に華を添えていた。



子供が出来た。

しかし不幸なことに彼の戸籍や、諸々面倒な事情が重なった。

それでも病院に行けないわけではなかったが、希望には両親以外にも頼れる大人が一人居たのだ。

周囲に石戸の婆様と呼ばれている、霧島神境の当主も頭の上がらない偉人の一人。

霧島神境で唯一二人の事情を知る、そんな女性だ。

その女性が、彼ら夫婦への助力を約束してくれた。



驚異的な事に、手配されやってきたオカルティックパワー産婆の安全性は病院のそれを上回るらしい。

恐るべき霧島神境。一時間もせずに来たという事は即ち日本中にゴロゴロしているという事だが、それがまた凄まじい。

かくして、寺で出産と言う名の戦いが始まった。

苦しむ希望。励ます未来。淡々と進めて行く産婆。


数時間の激闘の後、そこには元気な赤ん坊がこの世界に産声を上げていた。


この世界に自分の誕生を知らしめるように、喉の限界に達するまで泣き叫んでいた。


二人は、この第一子に『京太郎』という名を付ける。



かくして、この物語の主人公はこの世に生を受けた。

未来と希望が絶える物語

「最初の子ですし、ちょっとだけ凝りたいです」

「DQNネームとかは嫌ですし、一見ちょっと珍しい名前程度になるように」



「いいんじゃないか? 希望はそういうのにも詳しいだろうし」



「漢字だけを同じにして、読み方を二つ用意します」

「真の名前と、表の名前」

「これでベタな呪いなんかは弾けます」

「名前を、この子に贈る最初のプレゼントにするんです」



「そりゃいいな、浪漫がある!」

「で、なんて名前にするんだ?」



「『京太郎』です。京太郎(きょうたろう)と、京太郎(ちょんだらー)で」



「へー……いい感じだな。俺に名前の良し悪しのセンスなんてないけどさ」



「……ふふ、貴方にも認められて良かったです」

「この子がずっと健康で、幸せで居てくれればそれ以上望むことなんてない」

「京という感じの成り立ちを、知っていますか?」



「いや、知らないな」



「京という字は、高台の上に築かれた人の住まう場所を意味します」

「京という字は、その中に人が居て初めて価値がある事柄を表しているんです」

「他人を受け入れて、他人を許して、他人を自分の中に迎え入れられる……そんな人に、なって欲しい」

「……実は、こっそりそんな願いも込めちゃいました」



「……」

「希望がいい女だってのは知ってたけどさ」

「……きっと、希望は良い母親にもなれるな」




「もう、からかわないで下さい!」

「からかってねえって! ははっ!」

霞さんでさえ30m級だったのにこんな人が100m級とかどれほどの絶望を味わったのか

正しく生きていれば報われる。


優しく生きていれば幸せになれる。


わけもなく、そう信じていた。

京の字が格納の力に、か

信じていた。

信じていたのだ。

誰よりも信頼に足る人物だと。

どんなに尊敬しても足りないくらいの自慢の家族だと、そう思っていた。



「なんで……なんでなんだよ……親父……」

「親父、すげえ人じゃなかったのかよ……尊敬される人じゃなかったのかよ……」

「優しかったじゃねえか……頭だって撫でてくれたじゃねえか……」

「……俺が見習ってきたぐらい、優しくて、立派で、誠実で……なのに、なのに、なのに!」

「今まであれ全部ウソで、演技だったって言うのかよ!」


「答えやがれ、クソオヤジぃッ!!」



「さあな」



「……っ! ……ああ、そうかよ……!」



相対する男性二人。

……と、傍らに寄り添う、涎をだらだらと垂らし目は虚ろなどう見ても正常ではない女性が一人。



この庭園が、大沼によって燃やされて尚。

大沼の力により、全身を傷付けられて尚。

フリーメイソンという組織を乗っ取り、何をしていたか語られて尚。

大沼の重ねてきた罪と悪行を余す事無く伝えられて尚。



その『魔法』により、愛する妻を強制的に異形へと変えられて尚。


信じたかった親子の絆が、今彼の手で断ち切られた。



「この『蛇』は要改良だな」

「姦姦蛇螺をモチーフに作った我が組織だけのオリジナルだが、イマイチ安定していない」

「使う度に対象の精神を粉々にしてしまっては、あまり利便性が無いな」




「大沼ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

怒りのままに、未来は飛びかかる。

その拳には煮え滾る怒り。その胸には燃え盛る憎しみ。その瞳には、一筋の涙。

だがそれは、届かせるには絶望的に力が足りない。



「――――――」



大沼が口を開き、何かを呟く。

その口の動きは、あまりにも速すぎた。

既に人間の可聴域に無い密度の音声。1/1000にスロー再生してようやく言語として聞こえ始める速度。


それは、詠唱だった。

そして彼は、魔法使いであった。



氷。炎。雷。風。刃。光。闇。爆発。猛毒。衝撃。噴煙。音波。


それら一つ一つが必殺の威力を以って、対抗なんて出来やしない未来へと向かう。



「ぐあああああああああああああああッ!!!」



戦闘者としての圧倒的な格差。



「子が生まれた時点で、お前の役目は終わってるんだ。未来」



この世界で最もよく知られているファンタジーの技能。

限りなく万能で、限りなく非現実的で、限りなく夢見がちな者達に憧れられる。

誰もが、その力の名を知っている。




『魔法使い』とは、そういうものだ。

童貞のまま30歳を迎えると魔法使いになる】



悲しみの都市伝説。



魔法とは、『奇跡に理屈をつけたもの』である。

人は古来より普通ならば絶対に起きない事象の総称として、魔法という言葉を扱ってきた。


そしてそれを現実にするために尋常な手段では不可能だと考え様々な試みを試したりもした。

錬金術や黒魔術といったものがそれである。



呪文、道具、儀式、魔力、才能、素質、生贄、召喚、魔導書。

人は様々な理屈をつけ、条件を付け、フィクション現実問わず魔法というものを表現してきた。

何故ならば、「ノーリスクで何でもかんでも出来る」なんて魔法には、リアリティがないからだ。



現実がそうであるように、リアリティとはメリットとリスクのバランスによって成り立っている。

誰しも寝ているだけで金が入るような仕事には胡散臭すぎて就きやしないのと同じだ。

魔法は長い呪文がどうだの、魔力が足りないだの、必要な伝説の道具が足りないだの。

大きな効果のある魔法に対しては、相応のリスクを付加してリアリティを増加させる。

それが魔法の流儀である。



この都市伝説による『魔法』も、実質それだ。

上記のように理屈をつけてリアリティを付加することで、ありとあらゆる奇跡の行使が可能となっている。

おそらく途方も無いリスクと代価と月日を費やす覚悟があるのなら、世界すら滅する事が可能だろう。

無敵だって倒せる。不死だって殺せる。最強だって屠れる。

魔法とは、そういうものだ。

魔法によって世界が滅びるなんて、フィクションの世界では日常茶飯事であるとも言える。



この都市伝説の発現者に、事実上不可能な事は存在しない。

この都市伝説の発現者に、事実上叶わぬ奇跡は存在しない。



全能に次ぐ万能を成す都市伝説。

うわぁ……笑いたいけど笑えねぇ……

かなり最初の方に出てきたよね?

このスレで最初に名前が出た都市伝説がラスボスか
第一話の時からずっと考えてたんだろうな

一スレ目の>>10で出てる

第一話の冒頭で話が出てた
てか、不可能を可能にする奇跡って型月的な魔法でしたか・・・

不可能を可能にはできるが童貞を非童貞にはできない

「ぐ、が、あ、あ……」

「ちっく、しょう……」



既に未来は満身創痍。

実の息子を虫の息まで追い込んでおきながら、大沼の表情に後悔の色はない。

それどころか息子の苦しむ顔を見て、明らかに愉悦を覚えている。

異常。

異常だ。



「……アンタ、いったい何がしたいんだよ……」

「うん?」

「何が楽しくて、こんなことやらかせるんだよ!」



息子の嫁を玩具のように遊び半分で壊し。

今、自分の息子を苦しめながら殺そうとして。


その過程を、至上の至福として味わっている。

須賀未来にとって、一番長く共に時間を過ごしたはずの父親は。

今彼にとって、誰よりも理解できない存在となっていた。



「……未来」

「私は、お前を家族として愛していた。大切に思っていた」

「お前の未来が幸せであればそれもいいと、そう思っていた」

「誓って、この言葉に嘘偽りはない」


「だったら、なんでアンタは……!!」


「だがな……思ってしまったのだ、仕方ない」


「……思った? 何をだ?」



ただの言葉で。




「愛する家族を奪われ、穢され、裏切られ……」

「そうやって裏切られたお前も、愛する息子を傷つけてしまった私も」

「苦しみ、憎しみ、悲しみ、痛み、怒り、壊れそうなほどに狂おしく」

「そんな気持ちを抱くのかと思ったら……こらえきれなくなってしまった。すまないな」




けれど、歪み過ぎて終わり過ぎて気持ち悪過ぎるその言葉が、彼の心の時を止めた。




「……は、あ……え……?」

須賀未来には、理解できない。



「皆苦しむのが良いというのが私の嗜好でな」

「誰もが平等に、傷めつけられるのが至上であると思う」



須賀未来には、理解できない。



「寺生まれそのものの生産には難航していてな」

「お前は、純正の寺生まれを創るための材料だ」

「その時に、愛する家族を作りそれから苦しめて殺すという効率のいい計画を思いついた」

「お前自体は寺生まれを作った後要らなくなってしまうからな」

「お陰で、持つ事は無いだろうと思っていた愛する息子との生活という思い出が得られた」

「感謝している。愛しているぞ、未来」



須賀未来には、理解できない。



「おっと、お前の顔のデータを取っておくのを忘れるところだったな」

「これはお前の息子に使う機会があるかもしれん」

「私の配下でこれ以上ないと判断した下衆外道に勲章代わりとして与えるとしよう」

「それで、愛する息子の死を辱めているという背徳と罪悪感をしばらく楽しめそうだ」

「安心しろ、未来」

「お前の死は、絶対に無駄にはしない」



須賀未来には、理解できない。



「私とお前の間にあった絆が、無駄じゃなかったと証明しよう」



この男は、生来に先天的に純粋な悪であったわけではない。

だというのにその純粋悪と同じ行動をとっているかのような、余りにはっきりと感じられる異常な違和感。


まるで、後付けで絶対悪にされているかのような気持ちの悪さを彼は感じ取っていた。

都市伝説の暴走…か?
いや、30才童貞が魔法使いになるっていう都市伝説のどこがどう暴走したらこんな凶悪な奴になってしまったのだろうか。

まさか、リア充[ピーーー]的な理念に突き動かされているのか?いや・・・

裏ボス居るのかこれ

万能の上を行く全能の都市伝説とか出てくるんじゃないだろうな
やめてくれよ……

コトミー?
…いや、アレとはなんか違うような気がする

そもそも大沼とかに都市伝説の力与えた何かがいるんだよな

あれー?これ裏ボスいるかもしれんのか
しかも『この世全ての悪』クラスっぽい?

むかしむかし。


日本で三人の有志が立ち上がり、世界の平和を守ろうと一つ夢を掲げました。


十年の時が経ちました。

それでも、世界は動きません。



三人のうちの一人が、魔法の力を手に入れました。

三人は一躍有名となり、今一度夢の炎を再燃させました。



大沼。熊倉。石戸。

三人で組んでいたそこに、新たに一人が加わりました。

四人目は人間ではなく、けれど誰よりも人らしい、そんな都市伝説の少女でした。

新生チームが四人で結成され、彼らは世界を渡り歩きました。



最初の十年は平気でした。

みんなみんな彼らを讃え、応援し、助け合う事をよしとしました。

彼らに向けられる「ありがとう」がありました。

そこには、笑顔がありました。



けれど、次の十年には笑顔がありませんでした。

石戸はチームを抜けました。人々が、彼らに不満を言い始めました。


「何故助けてくれなかった」「手を抜いたんじゃないか」「バケモノ同士だから、人間はどうでもいいんだろう」
「近寄るな」「お前のそばに居ると巻き込まれる」「お前の腕力で触られたら死ぬかもしれないじゃないか」
「なぜ俺の命だけで財産も守らなかった」「あの子が死んだのは貴方のせいよ」
「気持ち悪い」「バケモノ」「殺すべきだ」「俺達もいつ殺されるか」
「被害出すなよバケモノ」「完璧にこなさなきゃお前に生きてる価値なんてねえぞ」
「もっと上手くやりなさい」「何だその目は」「番犬らしく従順にやってろ」
「生かしてやってんだからもっと感謝しろバケモノ」
「ふざんけんな、お前が失敗したからに決まってんだろ」



「お前のせいだ」



彼らに向けられる「ありがとう」は、なくなってしまいました。



そして。



都市伝説の少女は、バケモノと言われ殺されてしまいました。

理由は、『子供に敵意を向けたから』。

事実は、『いじめられていた子供を庇ったから』。


大人も子供も彼女をバケモノと呼び、罵り、無抵抗な彼女を殺しました。

そして、誰一人として殺人の罪には問われませんでした。



彼女は、人ではなかったからです。

都市伝説の少女は、大沼が好きでした。

大沼がどう思っていたのかは、分かりません。



それでも、その嘆きは彼に二つ目の力を目覚めさせました。



……いえ、言い方を変えましょう。



この世界は、彼に新たな役目を押し付けました。

そして、彼はそれを受け入れました。



この世界は理不尽でも無情でもなく、ただそこに在るだけのもの。

なのに、人はその世界を嘆きます。



今を受け入れ、責任から逃げず、あるがままに生きるだけで幸せになれるのに。



人はこの世界の思い通りにならない事を、全て『どこかの誰か』のせいにしようとします。



その『どこかの誰か』になる宿業を、かつて彼はこの世界全ての人間から押し付けられました。



今の彼の在り方は、この世のどこかで誰かが『こうであって欲しい』と願う絶対的な悪の理想像そのものです。

何があろうと、何が起ころうと、残酷に無慈悲に殺し尽くしても罪悪感の浮かばない絶対悪。



この世全ての人類の悪性。

その集合体であり、人類の闇ともいうべき部分の化身。




大沼秋一郎は正義の敵であると定義された、『悪』なのです。

アンリマユか

人類の悪性かー、寺生まれの対極だな

ってこれじゃまんまFateじゃねーか

Fateのアンリマユじゃねぇかww
京太郎はアフラ・マズダーになるしか無いね(錯乱)

確かここの戦闘システムもエクストラに影響受けたと昔言ってたような

【悪】



「景気が悪いのは政治のせい」
「政治家には無能しか居ない」
「最近の若いもんは、ゆとり世代は、団塊世代は、老害は」
「あの企業のトップは無能だ」
「先代と違って二代目はダメだ」
「あの有名人は会った事ないけどクズ」
「こいつのせいでこの試合は負けた」
「あの国のせいで」
「この子が死んだのはあの医者のせいだ」
「俺の生活が苦しいのは上司が無能なせいだ」
「親のせいで」
「子のせいで」
「だって、俺は悪くない」



人類全てが内包する悪性の果てに生まれた都市伝説。

正確には都市伝説と同質の噂の集合体にて成り立つ人類そのものの寿命。



ありとあらゆる出来事を多くの人々が『他人のせい』にすることで生まれるもの。

人はそれが事実であるかどうかに関わらず、見ず知らずの人間を悪人と断定する。

それが自分に都合のいいものであるのなら、その断定は事実として無意識の内に定着するものだ。



この世界で、見ず知らずの人間を悪人と断定した事のない大人なんて居ないだろう。

ニュース、ネット、友達の又聞き、雑誌の特集、風のうわさ、ネガティブキャンペーン。

実際に悪人であるかどうかに関わらず、人はそうやって無責任に人を悪に仕立て上げる。



「自分のせいじゃない」という無責任と責任転嫁が、誰かを悪へと押し上げる。

あくまで例えば、の話ではあるが。

民主主義で責任を誰かに押し付けようとした時点で、その国は既にどうしようもなくなってしまうのではないだろうか。



これはそうやって、ありとあらゆる悲劇と理不尽に満ちた現実のはけ口とされたもののための都市伝説。

事実はそうではない。これはただ誰かのせいにしたい愚か者の責任転嫁と八つ当たりでしかない。

しかし口にする者は皆、それが唯一無二の真実だと信じているのだ、



「なにもかも、あいつが悪い」



政治家を、有名人を、見知らぬ人を、偉い人を。

そうやって、今日もこの世界のどこかで人は誰かのせいにする。




正義の人柱と対を成す、人に望まれそう在り続ける悪としての人柱。

つまり羊先輩が原因だった?

なんもかんも政治が悪いをこっそりと連想させるようにしないでいただきたい!

羊が悪いよ羊がー

ジンギスカンの時間だね

未来は、隙を見て逃げ出した。

子供らしさを残す彼の性格が、この時ばかりは彼の追い風となっていた。


父親のとの喧嘩、したこともないそれに勝つイメージトレーニング。

思春期の男子のような彼の日々の妄想が、たった数秒だが現実とシンクロするという奇跡が起きたのだ。

かつて想像した動きと魔法をなぞる大沼に、対抗神話の渾身の一撃。

その隙を突いて、窓ガラスをぶち破って逃げ出したのだ。



「はぁっ……はぁっ……くそッ」

「もう、時間がない……俺もじきに死ぬ……だがなっ!」

「この子だけは……お前の狙いのこの子だけは……テメエなんかにゃ絶対渡さねえぞ、大沼ァッ!」



彼女との思い出が数え切れないほど詰まった寺の前を突っ切り、奥へと進む。

もう彼女の心がこの世にないと思うだけで、未来の瞳からは涙が溢れ出てしまう。

それでも、足は止められない。



「この子は、俺の……俺達の……」

「最後の希望で……未来なんだ……!!」



赤子を抱え、寺を飛び出す。

向かう先は決まっている。この子の未来を、繋げる場所だ。

しかしふと、彼の視線の先に映るものがあった。


それは、この場所に熊倉希望が派遣された真の理由。

彼女がこの寺に留まり続け、守り続け封じ続けていた封印。

未来は、その封印の『中身』を知っている。


噂で拡散したものが現象として再現されたデッドコピーじゃない。

過去に都市伝説の元となったオリジナル、正真正銘の本物がそこに在る事を知っている。



「……まさか」

「希望をあんな風にしたのは、この封印の中身も目的で……?」

「……いや、知った所で今の俺には何も出来ねえ。クソッ」



彼は悔しさを浮かべながらも、何の手も打てずに走り去る。

この寺は後にこの封印の中身を回収された後、取り壊される。

何もかもがフリーメイソンの首領、大沼秋一郎が思い描いたままに。





こうして、魔神『リョウメンスクナ』は、フリーメイソンの手に落ちた。

(アカン)




(アカン)

リョウメンスクナさん海の底のはずじゃないですかー! ヤダー!

お前さん飛騨にいるんやないんかい!!

アイエエエエ! リョウメンスクナ!? リョウメンスクナナンデ!?

>>444
原典だと確か一回別の寺に移送されちまってたから・・・

あれ?原典で叔父さんが海に投げ捨ててなかったっけ?

【リョウメンスクナ】



国呪いの都市伝説。

神を模した人の呪い。醜悪と悪性の権化。



かつて日本にはとある邪法の教団が存在した。

教祖の名は物部天獄(もののべてんごく)。

邪法外法も躊躇わず、命を命とも思わない悪の組織であったという。



その教団にて、『人間を使った蠱毒』という世にも恐ろしい儀式が執り行われた。

奇形児や子供を含めた人間を水も食べ物も厠も無いような密室に閉じ込める。

何人かは事前に刃物で刺すなどの調整を施し、生死の境に居る事を否応無しに理解させる。

人肉、糞尿、何もかもを口にし殺し奪わなければ生き残れない地獄の世界。


その果てに生まれる至上の呪いを、物部天獄は求めたのだ。



結果生き残ったのは、頭が二つのシャム双生児。

二面八臂の神『両面宿儺』を思わせる、神性と悍ましさを両立させる奇形の仔。

死にたくないという執念と呪いをその身に凝縮させたその子供を、物部天獄は迷う事無く即身仏とした。

最後の最後まで生き残ったにも関わらず、蠱毒の勝者の末路は餓死とミイラへの加工であったのだ。

その無念、怒り、憎悪はどれほどのものだったのだろうか。



その即身仏の呪いに、物部天獄は一つの方向性を決定づけた。

呪いに付加された指向性と形質は、たった一つ。


『 日 本 滅 ブ ベ シ 』



この都市伝説は、呪いによって稼働する限りその国を加速度的に滅びへと向かわせる。

たとえば、災厄。この都市伝説によって10年間に起こされた大災厄を挙げるだけでも、その規模は規格外だと断言できる。

桜島大噴火、秋田大地震、方城炭鉱爆発、函館大火事、東日本大水害、桐野炭鉱の爆発、親不知雪崩列車事故。


そして、関東大震災。


この都市伝説が10年間で命を奪った人間の数は、実に15万人を超えるという。



原典によれば触れるだけで心を壊され、目にするだけで短命の宿業を強要される。

封印には黒壇の箱が用いられ、どこかの寺に長きにわたって封印されているらしい。


スクナとは古来海の向こうから『かがみのふね』でやってきたとされる異人の事。

平将門と同じ朝廷の反逆者たる古代人スクナの骨を、物部天獄はその即身仏に埋め込み国呪いの完成形とした。



国を呪い、国を殺す、神もどきの都市伝説。

初期のネギに負けたリョウメンスクナなんて恐るに足らんですよ(錯乱)

俺が見たのは海とか出てなかった気がした

たしかマダラのスサノオもそうっだたけ

すまん上げちゃった

>>449
ラカン強さ表でラカン12000イージス艦1500魔法世界初期ネギ500でスクナ8000やで…
あれイージス艦6隻持ってくれば勝てる?(錯乱)

 



いつか終わる夢/終わらぬもの



http://www.youtube.com/watch?v=0g2Yp3EADwg



 

「なあ、京太郎……」

「お前は、どんな大人になりたい……?」



もう、未来の下半身は消え始めている。

人間ではない都市伝説には、死んだ後に死体が残るという権利すら与えられていない。

それでも、その右手は力なくとも我が子の右手を掴んでいた。


最後の最後まで、物心もついていない我が子に親子の暖かさを伝えようとするかのように。



「後悔はない」

「だけど、お前の歩んでいく未来を見たいっていうのは……未練だな」

「結婚式とか、想像してたりしてたんだぜ……ははっ……」



最後の力で我が子の名前だけを書き終えて、彼は力無く項垂れる。

彼が寄りかかっているのは、この街でも有数の善良な院長が運営している孤児院。

ここなら、安心して京太郎を任せられる。

というよりも、あまりにも人との繋がりが少ない未来には、誰も頼れる相手がいなかったからだ。


それでも未来は、自分が孤独だとは思わない。

右手から伝わるこの暖かさを知って、それでもなお孤独だと嘆く厚顔無恥さは彼には無い。



「なあ、京太郎……もし、もしもだ……」

「……お前が、大きくなって……立派に成長したら……」

「お前の母さん、助けてやってくれ……俺には、俺には……」

「俺には……力も、時間も、無いみたいなんだ……頼むよ」



返答はない。
当然だ。
赤子が言葉を理解するはずも、こんな頼みを聞けるはずもない。

……ただ。

赤子が、応えるように右手を強く握り返した。

それだけで、未来にとっては十分過ぎた。



「……ああ」

「……もう、心残りもねえや……」

「……先に……行って……待ってるからさ……」

「……希……望……追い……つ……会……」



須賀京太郎が、生まれて初めて誰かの期待に応えた瞬間。

風に吹かれ散るように、須賀未来はこの世界から消え去った。

これも一スレ目のすこやん孤児院回想に繋がるな

その日、その孤児院の院長は、赤子の泣き声に呼ばれるように門の前にやってきた。



「……ああ、やっぱり」

「もう、捨てるくらいなら責任をちゃんと考えるべきなのに」

「最近の親ときたら……男性の字? また珍しい」

「両親健在にしろ、シングルマザーにしろ、こういうのは女性が書く事が多いし……男片親かねぇ」



そこには籠に入った赤子と、三文字の名前の書かれた紙。

それと……なんとなく院長には、今さっきまで人が居たかのような暖かさが残っていたような気がした。

しかしそれも風が吹く度に吹き散らされ、気のせいだと思い込む。


赤子は、その右手を虚空に向けて握ったり開いたりしている。

まるで、今まで掴んでいた何か、消えてしまった何かをもう一度掴もうとしているかのように。



「ほら、泣かないで」

「よしよし……よーしよーし……」

「……なんで泣いてるのか、さっぱりだねぇ。この道数十年だが、さっぱりだ」



赤ん坊は、泣いている。

ミルクでもない。退屈でもない。おしめでもない。

あやしてもあやしても、泣き止む気配が無い。

赤ん坊が泣くのには、ちゃんとした理由がある。

だからこそ院長は泣き止んでくれない、泣き疲れる気配もないこの赤子に困惑している。


そして何より、「この子は悲しんで泣いているんだ」と思ってしまった自分に困惑している。

赤子が、何かを悲しむほどの知性なんて持っているはずがないというのに。



「……よしよし」

「大丈夫。今は泣いても、明日には笑顔になれるさ」



それでも。子供に接する時に信じるべきはマニュアルではなく感じたままの直感だと、彼女は知っている。



「この場所は、子供のためにある場所だから」

「子供に、未来と希望を与えるためだけにある場所だから」

「君にもきっと、いい場所であってくれると思う」



「ようこそ、歓迎するよ」




――そして、一つの前日譚が終わり。

少年と少女達の物語が始まった。

ああ思い出した叔父さんが日本海に沈めたのはリョウメンスクナに似たものを発見した人の話だ! すんません

閑話終了


>>82
いえす

>>368
顔をコピペして全部のマスカレイドにはっつけてます
実際はマスカレイドの本体に在る肉体コピペ元に一回貼っつけただけですが

>>384
うぇるかむ!



大沼さんのアレは基本『レッテル貼り』によって生まれたもんだと思っていただければ


このスレの最初の構想は勇者とお姫様と悪い魔法使いというテンプレ構図


スクナに関連する重要なキーワードは、黒壇、鏡、船、神、悪の組織によって作られた都市伝説、その首領によって操られているということ



では今夜はこれまでです

帰ってきた時間の関係とはいえいい加減実質二徹はねむい

おやすみなさいませー

乙ー

乙ー

おつおつ

乙~

乙です
大沼さんは童貞こじらせちゃったのか

スクナ、アンサー、姦姦蛇螺、マスカレイド、魔法使い

オーラスのボスラッシュとしては申し分ねえな

乙です

スクナ程度、都市伝説を捨てて純粋な人間として戦えばなんとかなるさ

>>466
しかも内二体は過去のボス、中ボスがパワーアップして帰ってきてるからな
隙の無い布陣だなぁ全く

そして話の大筋には関係ないかもだけど、大沼プロ時代の「都市伝説の少女」が何の都市伝説だったのか気になる

マスカレイドはぶっちゃけあの知性が鬱陶しいだけだから問題なく倒せるとして(現状アマルコブラックが使えないことは忘れよう)、
姦姦蛇螺も一度倒せた相手だ、恐れることはない(現状ヴァルゴが使えないことは忘れよう)。
怪人アンサーなんてどう考えても戦闘用の都市伝説じゃないし、リョウメンスクナはてるてるがどうにかしてくれるだろ

なんだ、余裕じゃないか(錯乱)

ラスボスのこと忘れてませんかねぇ…

>>468
つまり京太郎がシスコンになるのか・・・。
咲ちゃん大勝利?

スクナというと円空和尚の愛嬌ある仏像だったんだけど、こんな話もあるんだな。
知らんかった。

この世すべての悪とか倒せばそれでハッピーエンドになるのかね……
また新しい悪が生まれるとかありそうだし

>>474
まぁ、暫くは平和になるさ
また悪は生まれるけど、それでいいんじゃね?それが世の中なんだし
その暫くの平和を勝ち取ることに意味があるのさ

この世全ての悪倒して人類みんなで等しく背負うンゴwwwwww

余計なことすんなって思うかどうかよ

人類が自分を助けてくれるヒーローを求める→寺生まれ誕生
人類が責任転嫁できる文句の付けようのない悪人を求める→悪大沼誕生

もうこれわっかんねえな
新井が悪いと皆が言い続けた結果本当に新井が悪くなっちまった感じか

正直ラスボスが「実はこいつも可哀想なやつなんだよ」展開はあんまり好きじゃないんだよなぁ

>>478

分かる
ラスボスは最後の最後まで主人公と相容れないような奴であってほしい

つまりわた……マスカレイドさんが大復活してラスボス化ですね

首領「I'm your father」なオチだと思ってたらお祖父ちゃんだったでござる
ってかこれ「私を倒してもいずれ第二第三の……」フラグだよなぁ……人によって生まれたんだし、そういう感情が無くなるわけないし

あとマジで両目で親子パワー来たのが嬉しい
+両親パワーもくるか?これ

大沼プロ倒したら悪意吸収してダークザキ出てきそうな流れ

つまり大沼さん倒したら唐突にペプシマンが出てくるんですねわかりません

>>483
「プシュァァァァァァァァァ!!」

都市伝説の少女が死んだあと二人の男がどうなったのか、っつー対比だよなこれ

>>475
ナギ節みたいやな
京太郎は永遠のナギ節作った後消えちゃった怜か照を求めて誰だお前ってレベルで豹変して冒険するわけか

>>486
10-2なんて無かった いいね
復活エンドは良かったけどさ

録画してた今日のウィザード見たらこのスレの色んな人思い出してヤバい

津波てんでんこんばんわ

オリンピック決定おめでとういえーい
オリンピック関連の都市伝説はそういえば一度もやりませんでしたね


http://i.imgur.com/jJ2zIBV.jpg
慰めはいらないえいーい


あ、WIKI編集できる方にちょっとお願いが
リアルは2レス分の説明で一つの説明になっていますので、2レス目も追加をお願いできないでしょうか
1レス分だけで完成させられるように出来なかった自分が悪いのですが。申し訳ない



今更ながら>>245あたりでvs照戦に痛恨の戦闘BGM挿入忘れ
http://www.youtube.com/watch?v=FhLfLUtBZA4
ごめんねてるてる



>>478
>>479
そう単純に言い切れるわけでもない結構複雑な感じになりますので24話をお待ちください

>>486
何故ユウナに京太郎を添えるし

>>488
笛木→黒
コヨミ→士栗
ソラ→マスカレイド
これもうわっかんねえな



http://natalie.mu/comic/news/98833
バン・・・ザド・・・

上の尿意・検尿・泌尿器科もじわじわ来る

やっぱ照はロードブレイザーなのか

了解しました、後で追加しておきますー

リョウメンスクナの所読んでて思ったんだが、もしかして初代オモイヤリってリョウメンスクナ倒すのに必要だった…?

ビフォア クライシスやったからクライシス コアとアドベント チルドレンもやらないとね

思った。大沼を倒すのに力はいらない。
だれか一人京太郎ハーレムの中から差し出して童貞じゃなくすれば…
30過ぎてから脱童貞しても遅いんだっけ?

>>495
寺生まれに破ァされるがいい

>>495
お前の処女を捧げるんだ!さあ早く!

50過ぎると妖精になるって説を聞いたことあるな
ひょっとしたら70過ぎたらラスボスになるのかもしれん

>>495 アラフォー差し出せば完璧じゃね?

それは名案だ

大沼さんロリコンっぽいからアラフォーじゃ無理じゃないですかね

大沼「菊門」ペロリ

ホモでロリコンで絶対悪の魔法使いである世界最初の都市伝説保有者である主人公の祖父

これもうわっかんねえな

>>489
え?ヒロイン京太郎じゃないの?
とりあえずアーロンさんは黒で

もうトシさんでいいだろ

まず京太郎が童貞捨てないと・・・誰とかはともかく

この世すべての悪の影響でこんなことに
どこぞの正義の味方はやっぱりおかしかったんだな

やっと追い付いた…

麻婆の悪性は先天的で正義の味方の異常性は後天的なんだっけ
ここの二人は過程が真逆か

出先から失礼
次回の投下は間が空いて金曜か土日予定
前日にはアナウンスしますです


照戦の最初の奇跡の連続展開が「MIRACLE RUSHから始まる戦い」という意味合いだったと気付けた読者さんは居まいふふふ


>>492
ありですー

>>494
京太郎チルドレン?(難聴)

>>495
歳を考えろォ

>>508
Welcome!



http://i.imgur.com/4i5Xq8z.jpg

お、おおぅ・・・

7704時間wwwwww

俺はむしろその輪に入れる15時間のほうがやばいと思う

(いかんでしょ)

流石モンハン芸人

咲のOPが全体的にこのスレに馴染むのに逆に違和感がある

数日の内にとんでもないことになってる…

こんな時にかなり昔の話ですみませんが姫子かーちゃんの旧姓、あれ苗字としてはなんて読むのですか?もりひ?もりきさき?

スマブラ照ちゃんは僕のアイドルだったけどこのスレの照ちゃんも可愛くて哩わ

森 妃姫子(もり ひきこ)」

哩姫の地元の小城市で浮かぶのは小城羊羹や鯉料理かな…

誤爆すみません

なんてえ誤爆だ小城羊羹食いてえ

>>517
それは分かるんだけど確かママの旧姓が『森妃』でそこに娘の『姫子』が加わってもりひきこになるんだったよね?
だからこの森妃の姓単体でどう読むのかな、と思ったんだけど…

俺はもりきって読んでた

一(にのまえ)も九(いちじく)も十(もぎき)も実在の名字なのに森妃は実在しないという現実

>>516
森妃(もりき)ですー

>>524
>>522
ありがとうございます!スッキリしました


マスカレイドとの初対峙の時に京ちゃん、俺の知ってる奴か?みたいな事言ってたけどマスクの奥に何かを無意識に感じてたりしてたのかな?

黒は知ってたわけだしな
もしかしたらマスカレイドをそばに置いてたのも無意識の理由があったりして
時々意味もなく仮面外させたりとかしてたのかも

http://i.imgur.com/AFvm4SA.gif
NINJAが既に選ばれなかった安価の彼方なのが悔やまれます

唐突に決戦前って事で思い出したんですが以前、>>1がいつやったのかも覚えてない以前に好きなヒロインとか好きな回だとか聞いたのを覚えている方はいらっしゃいますでしょうか

最終決戦前なので大筋にはもう影響しないんですけどねー、ここまでで可愛いと思ったヒロインとか良かったと思った回とかひつまぶしに聞いてみたいな、と
>>1は他人に引っ張られて憧回書いたりもしてますのでー



投下時間を作れないというか帰れないのでこうやってお茶を濁す作戦

豊音と憧の回が好きですわぁ

憧が好きだなー
あの子が一番青春してる気がする

やっぱ怜回過去編かな
トンカラトンが散るシーンが一番好き

OGAWAさんのNINJAっぷりには思わず吹き出したよ
影縫い使ったときも大爆笑したけどさ

ヒロインといえば怜かなあ

のどっち回は原点にして頂点だと思ってる
でもやっぱ赤マント・寺生まれのTさんあたりの節目の回も格別だしなぁ

ヒロインとしてなら怜
ストーリーとしてなら宥

でもなんか人間くささとヒーローの定義の間で揺れてる京ちゃんも好き

宥か憧だなぁ
怜と照みたいに運命とかじゃなくて終始自分の意思でそばに居るってところがすごくいい

ヒロインは怜
ストーリーは憧
まぁぶっちゃけストーリー全部よかったんだけどね。伏線回収がこんなとこかって毎回思ってた

黒太郎の回が一番良かった
黒も、あの戦いで救われたのかな…

あえて咲を推す
でも咲本人もその辺照にとられてるって思ってるっぽいんで姉妹両方で
好きな回というか全部好きで選べない

姫子回
怜回
憧回
辺りかなぁ…?

怜回は未だにたまに読みに行くわ

怜回かな
あれは会心だった

ネクサス回かなぁ
あと黒戦前の準備のところ

はいモブサラリーマンが好きなキャラです

メリーさんだな
締めといい支援絵といい最高すぎる

可愛さはとよねぇ
格好良さは淡

でも一番好きな話は黒太郎決戦かな

ストーリー的には対赤マント戦
ヒロインは健気すぎる咏ちゃんかな

咲ちゃんかわいい

お気に入りの回ってのは特にあれだけどマスカレさんが暗躍して楽しそうなのは見てて楽しかった
そうなると士栗回かな?

マスカレは存分に暗躍して最後の最後に傷を残して不完全燃焼で散っていくとか恐ろしい敵だった

マスカレイドは今となっては滅多に見ないような
これぞ悪っていう敵だった

最後に後味悪く散るのも悪役っぽかったねぇ
それが今や意志無き人形という

「善でも!悪でも! 最後まで貫き通せた信念に 偽りなどは何一つない!!」
マスカレはまさにこの通りだな
とことん悪役を貫き通したその姿勢は下手なアニメや漫画の悪役より素晴らしい

>マスカレイド
最近の作品だとスマプリのジョーカーを連想したな

上でgif上がってるシンフォギアGの博士も中々
小物っぽいのが玉に瑕だが陰謀不意打ち精神攻撃洗脳なんでも御座れの素敵なゲス枠だよ

>>551
加えて顔芸にフリーダム杉田だからな

全知のアンサーに全能に近い魔法使いが加われば限りなく全知全能だよなってふと思った

赤マントと黒フード回のクライマックス感がぱなかった
咏ちゃん回はカタルシスがすごかった
あと煌先輩の晴れ舞台を邪魔させんと身体を張る京太郎さん格好良かったです

キャラは宥さんかな。能力説明が『死に方だけは選ばせてあげる』から『生き方だけは自分で決めた』に変化したのは熱すぎた

黒フード編は好きだったな
他はテンポの良さと引き換えに各ストーリーの背景がサラッと流されてる感を否めなくて個人的にイマイチ乗れなかったが
この話はそれまでの黒フードの暗躍や未来でのBADENDとかでしっかり書いてたから唯一スレの盛り上がりについていけた

敵としてなら誰が一番人気あんだ?マスカレイド?トンカラトン?

>>554
あれいいよな、細かい所読んでくとびっくりすること多い

俺はトンカラトンが一番好きかな
あとミ=ゴも地味に好き

どれもが素晴らしいと思えるほど内容が濃かったな…
ホント漫画かゲームが欲しくなる

甲虫とメリーさん。
前者は無意識下の暴走に於いても発言者本人の殺人を良しとしない影響を受けているのがよかったし後者は幼少期から一緒にいて青春真っ只中の今色々と拗らせながらも本質的なものが根本にあるのがいい

現象型はシンプルに『現象』『災厄』を感じられた猿夢とくねくね

その他も半身を探し求めるてけてけ、存在理由が明快なライダー、言わずもがなな黒フード、色んな意味で一筋縄ではいかない輝夜姫、何気に王道な感じのガタノゾーア、僕達に霞さん大好きと言うことを改めて教えてくれた霞ん蛇螺、言わせんな恥ずかしいな口裂け女、照ちゃん可愛いな現実なんかも、つまり皆好きだけど敢えて挙げるなら俺様じゃ無いほうのアンサーさん。
頭脳、心理戦てのもあるけど『ジュブナイル』って感じがして良かった。
マスカレイドとかは言わなくても皆挙げるだろ


『リアル』は原典知らなかったけど強過ぎとか可哀想とかよりも先に何故か色っぽいと思った。

ミ=ゴ戦のハラハラ感は異常

ミ=ゴとの戦いは、アイテムと仲間の必要性をわからされた。
やっぱ京太郎単体はまだまだ弱いな!

マスカレイドよりゲスいのなかなかいないよなぁと思ってたけどベクターさん普通にゲスすぎてやばい
しかしユベルといいベクターといい夕方に平気でこんなの放送する遊戯王ってやっぱり凄まじいな

並行世界での鬼柳さんとのライディングデュエルは難敵でしたね・・・

投下間隔空いて申し訳ない。明日夜前編投下ですー

皆さんの意見や感想も感謝です。参考にします
あの支援絵から生まれた憧回の評価が高いと憧回の予定すら立ててなかった初期の自分に言ってみたい


http://i.imgur.com/8Bbu35a.jpg
たまたま拾ったこの画像を見て十年前くらいかなーと思いつつコレジャナイ感を感じる日々



http://hamusoku.com/archives/8055526.html
ヒャッハー!!

エラそうに新聞なんて読みやがって!!!


ワロタ

ラオウもケンシロウも怜も出さずにこのインパクトか…

クソワロタ

汚物は消毒の存在感
やっぱモブでも凄いわ

そういえばワニの化石が日本でも見つかったらしいね

(ガンダムBD BOX CM風に)
いつの間にか、憧れたチンピラ達より年上になっていた
彼らにどれだけ近づけたのだろう……
あと何回、ヒャッハー!出来るのだろう……

出先から携帯で失礼
今夜21:00から投下開始しますー


もうちょい早く始めたかったんですが帰宅時間の兼ね合い上ぐぬぬ


>>569
そろそろロロンのパワーアップタイムでしょうか・・・



http://i.imgur.com/PikZLUQ.jpg
http://i.imgur.com/kf9YgHB.jpg
http://i.imgur.com/95xv5oH.jpg
http://i.imgur.com/fYnmDgS.jpg
http://i.imgur.com/EulNDy8.jpg
http://i.imgur.com/UImvdJd.jpg

「俺達!特攻野郎Aチーム!」

胸囲の格差社会

これが格差社会か

?
?
?
?
?
?)

簡略化してみた

文字化けしてるぜ

さあ、上げてこうか!


http://www.youtube.com/watch?v=haYlyrjqecw


投下はっじめーるよー

待ちくたびれたぜ

よし来た

強くない人間。

それは弱い人間だけではなく、ごく普通の人間も含まれる。

……そんな者達に、夢や希望とは別に必要とされるものがある。



自分のせいにしなくても済む、言い訳と悪役である。



衣食住の面で満たされず、生きる事自体に余裕がない内はいい。

飢餓、流行病、貧富格差、目に見える確かな脅威がある内はいい。

超えるべき壁、果たすべき夢、抱ける希望がある若い内はいい。



だが、それらが無くなってしまえば人どうなるのか?

緩慢に毎日を過ごし、希望も絶望も持てず、未来への『透明な不安』を抱えて生きる事になるだろう。



だからこそ、人には『悪』が必要なのだ。

そいつのせいに出来る、自分達が幸福でない事への言い訳となってくれる、そんな悪。

RPGで言う大魔王。悪徳大臣。邪神神官。魔獣の王。闇の化身。

何の躊躇もなく打倒できる、『正義に討たれるためだけに在る存在』。



例えばRPGで世界が滅亡しそうだと、そう語られた時。

『魔王が滅ぼそうとしている』と『特に理由は無く不可避の滅亡』と言われるのは、どちらが絶望的か?

そう考えれば簡単に答えは出るだろう。



その悪が一人死んだだけで、数え切れないほどの人が希望を得られる存在。

その悪性が正義に敗北した瞬間、誰もがこう思える存在。




「ああ、これで――私達は、幸せになれる」




悪い事の後には良い事しか待っていないとのたまうような、不幸と幸福が釣り合うとでも思っている愚かな錯覚。

それでも人は、悪/不幸が打倒され、正義/幸福がやってくる世界を心の底から望んでいる。



この想いがまず、人の根底に在る。

現実は、嫌いな奴が都合良く悪党で居てくれるわけじゃない。


悪党で無い人間が自分を不快にさせる、不幸にさせるなど日常茶飯事だ。

だから人は、何も考えずに殴り飛ばしてスッキリ出来る『悪党』を求める。

可哀想な過去とか、同情できる要素とか、仲間になりそうなフラグとか、そういったものが一切存在しない敵。


この老人はそういう定義で成り立っている。

この老人にどんな過去があろうと、どんな悲哀があろうと、それに全く他人が同情できない存在。




京太郎「……」

トシ「これが、全ての真実だ。アンタの両親も含めてね」

京太郎「……俺は、いや、俺の、両親は……」



だからこの時京太郎が大沼を見る視線に憎悪と使命感、そして少しの哀れみと同情が混ざっていたのは完全に筋違いというものだ。



トシ「一つ、勘違いを正しておこう」

トシ「……この男が誰かに望まれただけでこうなったと思っているのなら、それは間違いだよ」

京太郎「え?」



この世界という物語に、善性を引き出す者を加えたならば。その結末は、きっと善い方向へ向かっていく。

……それは、真逆の存在にも言えることなのだが。

人が勇者に望むのが勝利なら、魔王に望むのは敗北。

永遠に負け続ける人生、勝ってはならない人生、邪悪で在るが故の人生。

永遠に茶番劇の悪役で在れと望まれ、それを受け入れる者が正常であるはずがない。



何があろうと世界なんていう大雑把なものに、魂の底から滅んで欲しいと願った者が生来正常であるはずがない。



そう成ったのが後天的な事件であったとしても、そう成れるだけの要素は先天的に持っていた。

その点において、須賀京太郎と大沼秋一郎はどうしようもなく同類である。



京太郎「(……なんだ)」

京太郎「(なんでこんなに、この老人に……)」

京太郎「( 『手遅れだ』、なんて俺は思ってる……!?)」



照「(……照魔鏡が効きづらい……?)」

照「(何かしてる? してるとしたら、あの首領かな)」



同類だからこそ、対になるからこそ、この老人は対となる存在でしか倒せない。


……対となる存在が倒してこそだと、誰かが定義した。

【大沼秋一郎/アーバンレジェンド・ザ・ワン】


HP:?

ATK:?
DEF:?


・保有技能
『アーバンレジェンド・ザ・ワン』
全ての始まり。終わりの始まりを告げるもの。
希望の在る終わりを食い潰し、そうでない始まりを創る悪夢。
避けられなければ滅びるしかない、世界の天寿。
準備期間、かけた手間、払った代償に応じた保有技能を獲得する事が出来る。
ストック保有技能数138。能力詳細不明。

『ザ・ワン・シン』
人の八つ目の大罪「責任転嫁」。
決して自覚できない、無自覚の罪の集約体。
悪性の隷奴。人に望まれ、そう在るもの。
【大沼秋一郎】は、【寺生まれのTさん】以外との戦闘で戦闘不能にならない。


・特殊補正
『怪人アンサー』
【大沼秋一郎】【怪人アンサー】が存在する場において、両者と両者が共に仲間だと認識している対象に発動。
このスレにおける行動相談内容のレス、及びその場の全キャラのステータスを形を変えて対象に伝える事が出来る。

2ちゃんねる監視員アンサー

アンサーカンニングはやめてくださいおねがいします

無理だろうけど、相談は別スレを立てればふせげるな…

怪人アンサー強杉内
オーヌマさんもつよい

???「ワシの技能は138まであるぞ」

もう駄目だぁorz

その男は、生まれた時から他人と一線を引いていた。



それはその男が持っていた生来の性質から、周囲の人間がうっすらとした悪意を向けていたからか。

その男が周囲に向けるうっすらとした悪意を無意識に感じて、周囲が過敏に反応していたからかは分からない。

それこそ、鶏か卵かの話でしか無いのだ。


人間は自分を好きになってくれる人間を、無意識の内に好きになりやすい。

その男が最初に悪意を向けたのか、周囲が先にその男に悪意を向けたのか。

……今となっては、確かめるすべはない。



どこにでもいる人間の一人として終わるはずだった。

理由もなく好かれる不思議な魅力のある人間、理由もなく嫌われる敬遠されがちな人間。

社会に溶けこむ内に、後者のどこにでも居る人間の一人として終わるような、そんななんでもない男のはずだった。



狂ったとすれば、そのきっかけはきっと彼の初恋。



大沼は幼少期人に嫌われ、いじめられ、虐待され、道を歩けば不良に絡まれ、世の中の悪意を『どこにでもあるよくある事の範囲』で受け続けた。

生きる意味を、見出だせなかった。

だから、ふと思いつき。何の感傷も抱かず、無感情にその手首を浅く刃で切った時に気付いてしまった。

いや、正確にはその行動で得てしまった感情が、彼を狂わせた。




「なんだこれ――楽しい」




自傷行為が、この上なく楽しかった。

自分を殺していく感覚が、至福の恍惚を与えてくれた。

死に近づいていき、命が失われていく感覚に、絶頂すら覚えかけていた。

それも当然。この世全ての人類にとって憎まれる素質があるという事は……その人類に、大沼自身も含まれるという事。


大沼は、自分自身すら憎んでいた。

自分自身すら嫌っていた。自分自身の滅びすら願っていた。

そして、この世界に存在し続ける事が苦痛だった。



だからそんな嫌いな自分を苦しめてくれる死に、自分をこの世界から開放してくれる死に、彼は恋をした。



彼の初恋は、『死』に向けられていた。

へ、変態だー!?

そして彼は、初恋の相手を彩る生涯を送る事を決めた。

それは例えるのなら、好きな女の子にプレゼントを送り続けるが如く。

彼が求めた夢は、いつか来る死を何よりも価値のあるものにする事だった。



それが、彼にとっての最後の希望。



彼の行動はどこまで行っても利己的で、自分勝手。

だがまるで少年が抱く胸の内の夢のように、彼はまっすぐにその目的へと向かっていく。


仲間が出来た。
行動の結果、英雄と讃えられた。
感謝してくる名も無き人々も増えた。


だが、彼の内心を知る者は誰一人として居なかった。


それでいい。それでよかったのだ。

利己的な英雄も居る。歪んだ英雄も居る。海賊ですら結果的に英雄となる事がある。

その内心を多くの人々が知らないままで居たならば、彼は紛うこと無く人の味方であり正義の味方で居続けられた。


彼はその死を価値あるものと信じたまま、周囲は彼を正しい英雄と信じたまま、彼の物語は終わりを告げるはずだった。



だが、そうはならなかった。



英雄の末路は、信じた人々からの裏切りと相場が決まっている。

……ましてや、生来の性質が人から理由なく嫌われるというものであったのだから尚更だ。

それが最後の一押し。


今まで彼が越えようとしなかった一線を、悪意なき人々が超えさせた。


今まで彼が自身に向けていた悪意が、彼の中で完結していた悪意が、人と世界への失望から自身の外へと向けられる。



「世界から開放されたいのなら、世界の方を壊せばいい」

「恋した死を彩るために、世界も贄に捧げよう」



その初恋は、世界を殺す毒。



京太郎「アンタの目的は、なんなんだ? ……世界征服とか?」

大沼「世界の支配なんて面倒でやりたがる奴なんて居るわけがないだろう」

京太郎「まあ、だよな」

大沼「私はただ、人に滅んで欲しいだけだ」

京太郎「……それも、やりたがる奴は大概居ねえと思うぜ」



その存在は、在ってはならない、許してはならない、認めてはならない、罪科の坩堝。

そんな悪性の果てが従えるのは、答えを出す者・掌の上で踊る者・全てを呪う者。

【熊倉希望/姦姦蛇螺】


HP:1500

ATK:450
DEF:450


・保有技能
『一悪の砂』R:BAD.2
砂のように入り込み、混じり合い、拭えぬ不快感を擦り込む悪。
乾いた砂海に落ちた一本の針は、この手には二度と戻らない。
二度と、戻らない。
自身の判定値を+60する。
自身が判定値を用いた判定を行う度に対象を好きなだけ選択。
選択した対象を【即死】させる。

おお…もう…

チーム京太郎と同じく進化済みか・・・なんかやだよこれ!

純粋な悪意。

人間の持つ常識、倫理、知性、それらありとあらゆる概念を取り除いた先にある悪意。

それはすなわち。



大沼「……長かった。いや、あっという間だったのかもしれん」

大沼「来い」



子供が無邪気に捻り潰す……取るに足らぬ虫けらへの、純朴な殺意に似ている。



大沼「リョウメンスクナ」



大沼の声に呼応するように、世界に大きな穴が空く。

それは直径100mを超えるサイズながら、その奥の空間から這い出てくる人型の何かからすれば十分窮屈そうだ。

這い出てきた人型は、二つの顔に四つの手を持つ巨人。

……いや、魔神だ。


その手の一本にはその巨躯と比べても『大剣』としか呼びようのない刃。

その剣に、京太郎は見覚えがある。

過去の世界で生み出し振るい、最後に海に投げ捨てたはずの絆の剣。

それが今や黒く染められ、悪の手に渡り魔神の武器として振るわれているという事実。


ただそれだけで、京太郎の表情は怒りに染まっていた。

だが、その魔神への怒りはそれだけではない。

京太郎にとって、別世界の話であっても……この魔神は『家族の仇』なのだから。



その魔神の視線は、あらゆる命を命とすら思っていない。

踏み潰す虫けら。躓きすらしない石ころ。吹けば飛ぶゴミ。

あらゆるものを無価値と断ずるその見下した感情は、神の無慈悲さと傲慢さを凝縮したかのようで。


そこに慈悲が欠片も存在しない以上、この神はどこまで行っても人に崇め奉られない魔神でしかない。



「■■■■■■■■―――――!!!」



言語にならない、心を砕く咆哮。

耳栓をしている熊倉トシを除く魔神の敵たる少年と少女に向けられた凶声は、しかし二人の心を砕くには至らない。



魔王が率いるは、姦姦蛇螺。マスカレイド。アンサー。そして、両面宿儺。


相対するは、疲弊したリアル、同じく疲弊し腕輪すら失いまともに戦力にすらならない寺生まれ。


熊倉トシは、どちらにつく姿勢も見せていない。



……足掻く事すら出来ない絶望的な状況が、そこには在った。

トシさんちゃっかり対策してるのね

【リョウメンスクナ・改】


HP:?

ATK:?
DEF:?


・保有技能
『原典神話・両面宿儺』
都市伝説、人の噂に乗る前の原典そのもの。
原典の悪夢を崩すためには、原典の要素を含んだ刃が不可欠。
リョウメンスクナを封じた箱の素材『黒壇』による一撃を受けない限り、戦闘不能にならない。

『原典神話・α』
都市伝説、人の噂に乗る前の原典そのもの。
魔法によって複製・改造、後付けされた最先(いやさき)の派生技能。
『星』に属する力による一撃を受けない限り、戦闘不能にならない。

『原典神話・Ω』
都市伝説、人の噂に乗る前の原典そのもの。
魔法によって複製・改造、後付けされた最果(いやはて)の派生技能。
『月』に属する力による一撃を受けない限り、戦闘不能にならない。

『原典神話・始』
都市伝説、人の噂に乗る前の原典そのもの。
魔法によって複製・改造、後付けされた最新(いやさら)の派生技能。
『神』に属する力による一撃を受けない限り、戦闘不能にならない。

『原典神話・終』
都市伝説、人の噂に乗る前の原典そのもの。
魔法によって複製・改造、後付けされた最古(いやたか)の派生技能。
『鏡』に属する力による一撃を受けない限り、戦闘不能にならない。

全部乗せで倒されるフラグしかねえ…ww

これジュネッス必須じゃねーか

オモイヤリも腕輪も無いんですけど!

だから天照大神の面子が必須のなのか

須賀京太郎は、思考する。


宥と初めて相対した時、敵意よりも手を差し伸べたい気持ちで一杯になった。

黒と初めて相対した時、絶対に相手を認めてはならないという自身の定義からくる拒絶感が生まれた。

マスカレイドと初めて相対した時、取り返しの付かない未来を感じさせる嘔吐感が沸き上がってきた。


怜と初めて相対した時、共に歩む未来を感じた。

照と初めて相対した時、共に歩む運命を感じた。



彼はその時その時に気づくかどうかに関わらず、彼の人生に格別大きな影響を与える相手に何かを感じている。

この時もまた、大沼秋一郎に感じるものがあった。



例えるのならそれは……『核爆弾』。

触れてはならない。関わってはならない。なのに、放置していては全てが終わる。


それは過去に何の意思も持っていなかったはずの兵器が、一つの悪意に支配されてしまった末路を見ているようで。


いつ爆発するか分からない。

爆発すれば人類は終わる。

それでいて、その核爆弾は確固たる人類への悪意に包まれ突き動かされているのだ。

これ以上の『悪夢』はない。



昔がどうとか、話を聞くとか、都市伝説がどうとか、そんな事を論じている余裕はない。

これは、放置していれば人類そのものが終わる……そんな、世界を侵す猛毒だ。




大沼「そんなに嫌う事はないだろう? 私達は同じ道を歩む可能性のあった同類ではないか」

京太郎「……は?」

大沼「黒い寺生まれ……彼は実に私好みの歪み方だった」

大沼「彼と君が私と同じ人間だったということも、私は知っている」

大沼「私が全て『答え』を通して何を企んでいるかも知っていて、踊らせていたとも知らずに」

大沼「見ていて楽しい、実に滑稽なピエロだった」



……これは、挑発だ。

単なる煽りであり、そこから生まれる京太郎の感情を楽しみたいという大沼の悪辣な趣向でしか無い。

それは京太郎も分かっている。分かってはいても……それでも、爆発寸前だった。

右手を握って無言で静めてくれている照の存在がなければ、今すぐにでも飛びかかっていたことだろう。



照「京くん」

京太郎「……大丈夫。落ち着いてるよ」



そんな単なる侮辱に怒るほどに京太郎は、黒い彼に共感、同情、感謝の感情を抱き、受け継いだ責任と受け取った想いを深く刻み込んでいた。

腕輪が壊れたのが痛すぎる

宥さんに攻略された懐かしの携帯格納でアコチャー呼んで逃げるしかねえ!

アンサー対策にwikiに相談所作ろうかと思ったけど流石にズルか

>>1しだいだろうけど、それぐらいしてもいいと思う…

見ているだけで、悪意が抑えられない。

過去の因縁、傷つけられた人達、未来を歪まされた罪なき人々、狂わされた男、命を失ってしまった少女。

あまりにも多すぎる、奪われたもの。

憤怒、憎悪、嫌厭、侮蔑、拒絶、敵意、害意、悪意。


目の前の老人に口汚い言葉を叩きつけてズタズタに引き裂いてやりたいという気持ちが、老人を見る全ての人間の胸中に湧き上がる。
そもそも、理由なんて必要ではない。

この老人を見れば、この老人が何らかの魔法で偽装でもしない限り……ありとあらゆる人間が、彼を心底嫌悪する。

初対面であろうと、何の因縁もなかろうと。


全人類によって悪と定義されたその身は、既に全人類の天敵。

人である以上、この男を嫌わない事は本来不可能だ。

反存在と言っていい寺生まれと、あらゆる干渉を無視出来るリアルでなければ既に憎悪に呑まれている所だ。



そして、理屈抜きに嫌われるからといって、それが嫌われる理由が無いということにはならない。




大沼「私の現状好んで使う魔法の数は138。厳選してある以上、そのどれもが一級品だ」

京太郎「……それが、どうした?」

大沼「その内の三つは、『思考誘導』『暴走助長』『記憶干渉』」

大沼「私は都市伝説に手を加えるのが趣味でな……少しづつ、少しづつ手を加えさせてもらった」

京太郎「……? …… ……!」

京太郎「あ、あんた……まさか……!?」

大沼「『私を疑わず、君を憎み』『徐々に都市伝説を暴走させられ』『自分を支えるかつての思い出が欠けていく』」

大沼「くくくっ、ああ、本当に見ていて楽しかった」

大沼「思わず何度もにやけてしまったほどだ。彼は本当にいい役者だったよ」

京太郎「……っ、テメェッ!」



思わず冷静さを捨てて、彼が激昂してしまったのも無理は無い。



大沼「私のせいとでも言う気か? 否、本人が自分のせいだと認めていただろう」

大沼「彼が不安定でなければ、心を強く持てば、私の干渉に気がついていれば、どうにでも出来た事だ」

大沼「彼の暴走と蛮行、その罪は彼自身の責任だろう」

京太郎「お前がっ……、お前が、それを言うのかっ!?」

大沼「ああ、言うとも。彼と私の、何が違う?」

大沼「君を鍛え、都市伝説を改造し、都市伝説をけしかけ、罪なき人々を傷付け、悪を為し」

大沼「身勝手な者達がのうのうと生き続ける影で、そのツケを代わりに支払い続ける」


その微笑みは、相も変わらずおぞまし過ぎるが故に見る事が出来ない笑顔で。



大沼「……何も、違わないだろう?」



その言葉の羅列は、吐き気をもよおすほどに邪悪だった。

吐き気を催す邪悪

これは8レスかけた無駄無駄ラッシュ不可避ですわ

負けらんね~よなぁ

京太郎「アイツと、お前を一緒にするな!」



その叫びは、誰に向いたものだったのか。



京太郎「確かにアイツは、間違ったかもしれない」

京太郎「でもそれは、誰かに頼ればその時点で解決してた事で……テメエに同類扱いされる謂れはない!」

京太郎「アイツは、血ヘド吐きながらもたった二つの事しか望んでなかった!」

京太郎「助けられなかった人達の幸せと、自分がいつの日か大切に思う人達の手で裁かれる事だけだ!」

京太郎「アイツは……すべてが終わった後で悪が笑う事を、自分すら含めて許していなかった!」



目の前の悪か、自分の内か、それともどこか遠い世界か。



京太郎「最悪は、悪を為した自分自身を許す事だ」

京太郎「自分の罪を本当の意味で裁けんのは、自分の中の後悔と反省と罪悪感だけだからだ」

京太郎「アイツは最後の最後まで、どんなに堕ちても、貶められても、腐り果てても……」



それとも、許しを手渡す事が出来なかった京太郎自身の後悔か。



京太郎「自分だけは、許さなかった」



無慈悲な世界であっても、無意味に終わったんじゃないと少年は叫ぶ。

無価値な世界だからこそ、無意義に終わりを迎えのだと老人は見下す。



京太郎「もう一度言ってやる。お前とアイツを一緒にするな」

大沼「くくっ……流石寺生まれ。おりこうさんの模範生だな」



『立つ鳥跡を濁さず』という言葉がある。

だが、この老人は……人を焼き、街を灼き、世界を燒き尽くす。

灰になり真っ白になった世界の中心で、「世界は純白だから美しい」とのたまうであろう邪悪。

和解の余地はない。弁解の余地もない。改心の余地もない。

少年の中の確信は、続く老人の言葉で更に強く固まって行く。



京太郎「お前は……俺を育てて、何しようってんだ。何の得があったんだ」

大沼「私には、夢があるのだよ」

京太郎「……は?」

大沼「その夢に、君が必要だった」




しかしその言葉は少年には理解できず、受け入れられず、常識の埒外にある異常なものだった。

作るだけタダってことでwikiに相談所作っておきました
ただ>>1の言う通り余り使わなそう

>>610
サンキュー

サンキューウィッキ

「私が長年、研究していた魔法がある」

「この魔法には、祭具として概念上の人の善性と悪性の代表者が必要となる」

「そして、相手の命を奪う事で全人類の意識へ変革を促す事が可能なのだ」


「私が勝てば悪性へ。私が負ければ善性へと天秤が傾く」

「……この世界は、倫理の普及によりいささか善性に寄り過ぎだ。だから私のようなものが生まれる」



大沼のその独白のような言葉の羅列に、誰も言葉を挟めない。

だがそれは、この老人の迫力に押されたとか、そういうものでは決して無く。

もっと、おぞましい……汚物に触れたくないという誰もが自然に持つ気持ちに、何故か近かった。



「分かるか? 全てが! 全ての倫理が、逆転するのだ!」

「善が悪に! 人道が非道に! 光が闇に!」

「善も愛も倫理も常識も美風も道徳も良心も正気も仁義も法律も正義ですらも!」

「滅びるのだ!」



ほのかに上気した顔も、歓喜がにじみ出るその総身も、徐々に大きくなっていく声も。

まごうことなく嬉々として己の夢を語る者のそれであるはずなのに。

……その言葉の内容が、悪臭を放つ汚泥のようにおぞましい。



「道行く老人が買い物袋をぶちまけているのを見かければ、その落とした物を踏み潰すのが尊いとされる世界!」

「子供が車道の近くで遊んでいれば、その子供を車が通りかかった所で突き飛ばせと教えられる世界!」

「見知らぬ人の葬式に乱入し、大笑いして死体を踏み躙り歓喜を振りまくのが美徳とされる世界!」

「すれ違いざまに笑顔ではなく刃物を振りまくのが褒め称えられる世界!」

「意味も無く人を傷付け、価値も無く物を壊し、理由も無く人を殺す事が常識となる世界!」

「親が子を虐待し、教師が教え子に乱暴し、大人が子供を殺す事が素晴らしいとされる世界!」

「子供はペットを殺して育ち、友人を虐め虐められ成長し、やがて親を殺して大人になる!」

「誰もが憎み合い、怒り合い、啀み合い、苦しませ合い、罵倒し合い、殺し合い、そしてそれに歓喜を覚える!」



「ああ、なんという理想郷か。そして、その果てにこの世の全ての者達がこう讃えるのだ!」

 



『ああ、この世界はなんて―――素晴らしく、美しい』



 

悪事を成す俺達は素晴らしい

そんな世界クソくらえ

これはやばい
同情とかしてられる悪役じゃない
ガチで世界滅ぼしに来てる

これはアレだ
ネウロのシックスみたいなガッチガチの悪だ

黒い彼は、かつてこの世界を去る寸前に「世の中には、許すべきでない事ってのが確固としてある」という言葉を残していった。


だが、果たしてそれは京太郎への忠告と戒めだけだったのだろうか?

黒い京太郎が一度この魔法使いと戦っている以上……その言葉は、警告だったという可能性もあるのではないだろうか?



「そして、終焉が訪れる」

「人が人として『私に望まれるまま』にそう在り続けた結果、人は滅びる」

「だが、安心するといい」

「この世界の最後の一人が滅びるその瞬間まで……人はこの世界に何の疑問も持たず、安らかな悦楽の中に居るだろう」

「幸せと歓喜と邪悪の揺り籠の中で、人はかつて嫌悪した『悪』を讃えながら滅びるのだ」

「私は人類の終焉と最後の一人の結末を見届けた後、自害する」

「人類(おまえたち)を、私が死するその瞬間までの愉悦とする」



「これが、私の夢だ」



こんなにも邪悪な悪行を、夢としてこんなにも嬉々と語る。

その混在と歪みが『人はここまで手遅れになってしまうのだ』という事実を叩き付ける。

救いようもなく、助けようもなく、どうしようもなく……終わっている。



京太郎「そんな事、それこそ取り返しの付かない大惨事に……!」

大沼「面白い事を言うな、寺生まれ」



大沼「私のような者が人々に望まれ誕生する世界が、取り返しのつく世界だと思っているのか?」



照「……これは、ひどい」



和解の道なんて、最初から存在しない。

そんな事、分かっていたはずなのに。



京太郎「(なんだ……なんなんだ……!?)」

京太郎「吐き気が、止まらねえ……」

京太郎「そんな理不尽が許されてたまるか!」

京太郎「お前に会った事もない人の方が圧倒的に多いんだぞ!?」

大沼「私に限っては、大多数が加害者だ」

大沼「私は加害者にされた被害者で、人々は被害者になった加害者。その構図だけは否定出来ないだろう?」

京太郎「……今更、被害者面か。今まで、どれだけ罪を重ねてきたんだ?」

大沼「事実だ。罪は数えた事もない。私は討たれる者であって、裁かれるものではない故に」

大沼「それに、君が『理不尽』というのはどうなのかね」

京太郎「……どういうことだ?」



大沼「『正義が必ず勝つ』以上の理不尽など、この世界には無いと私は思っている」

大沼「須賀京太郎とその仲間以上の理不尽など、この世界には無いと言っているのだよ」

京太郎「……そんな、一言で……」

京太郎「そんな一言で、俺達のギリギリの場所で頑張ってきたこれまでを鼻で笑うつもりか……!?」



問答。

互いの言葉が互いの心を苛立たせる、完全に正邪対になる両者の罵倒にも似た問答。



大沼「人が好き勝手に生きた結果、こんなにも矛盾だらけで不完全な世界になってしまった」

大沼「一度リセットすべきだと思っているのは、私だけではないだろう」

京太郎「皆が皆それぞれ自分勝手に夢や理想を抱いてる。そんな世界は矛盾だらけで不完全なのは当たり前だろ」

京太郎「そんな素敵な世界が、俺は大好きだ」



互いが互いに、相手を打ちのめすために言葉に感情を乗せている。

そこには言葉の持つ分かり合うための力が、欠片も残されていない。

当然だ。この二人はその信念と、その信念の行き着く果てにある世界の結末が180°真逆なのだから。


この二人の心の根底に在る感情をそのままぶつけあうのなら、それは。



京太郎「俺達は人が善いものだって信じてる!」

大沼「私は人が悪しきものだと知っている」



この相容れぬ感情論のぶつかり合いに、終始する。

ポケスペのロケット団の正式名称を思い出す悪役だ

トシ「その辺にしときな、京太郎」

京太郎「っ、熊倉先生?」

トシ「コイツに対して善性を説くのは馬耳東風ってもんだ」

トシ「人が死んで変わってしまった奴に『人はいつか死ぬ』って言って励ますようなもんだよ」

トシ「うんざりするくらい言われてるし、何より心に響かない」

京太郎「……」

トシ「こういうもんなんだ。私達老人ってのは」



トシ「長い年月が重ねた妄執が、もう自分でもどうしようも無くなるのさ」

トシ「死人と変わらない。私達は他に為すべき事も存在意義も見付けられない亡霊だ」



歩み寄る――今日まで知らなかった事だが――京太郎の祖母。

そして、かつて大沼が背中を預けた仲間。

その視線に込められた感情、胸中の郷愁がいかなるものかは誰にも察せない。


トシの視線と、大沼の視線。

途切れた京太郎と大沼の会話、交差した視線が開戦の火蓋を切って落とす。



大沼「……さて、随分と問答に時間を使ってしまったな」

大沼「始めるとしよう。この世界の行く末を左右する戦いを」



大沼の掲げた右手と共に、この会場に蔓延る魔物達が戦意を昂らせ臨戦態勢へと移る。

状況は何一つ変わらず、京太郎と照にとって絶望的なままだ。


熊倉トシは相変わらずどちらに付くような素振りも見せず、ただ傍観に徹している。



京太郎「(さて、どうしたもんかな……)」



あえて相手が楽しむためだけの挑発に乗り時間を稼いだといっても、京太郎と照の回復量は微々たるものだ。

これ以上時間を稼いでもたかが知れている。

全知のアンサーと限りなく全能の魔法使いがいる限り、この場では無敵も希望も容易く砕かれてしまうだろう。


それに、逃走するにしろ敵か味方かも判別の付かないトシを置いて行って良いのかという問題もある。



トシ「私はここに残るよ」

トシ「コイツは私を殺さないだろうし、それにまだ話す事があるから」

京太郎「……貴女は、どっち側なんですか?」

トシ「『どっちにも付かない』。あとは、生き残ってから考えな」



ならば、後は一手を打ち込むだけ。

……けれど、京太郎が唯一思いつく『二人で生き残る』案には、問題があった。

照「……ん」

照「じゃ、京くんは逃げて、私がここで足止めだね」



その案には、彼が自身の過去の願いを否定しなければならないような一つの決断が必要だったから。

現実って「勝てば官軍、負ければ賊軍」だから大沼は悪役というより弱者代表みたいだな

『よんだかい?』

呼んでないから早く帰ってください

本人も悪いし人類も悪いし倒せばいいってわけでもないけど倒さないとやばい

まさにラスボス

スマブラスレにお帰り

照一人に戦わせない事。照一人に負担を抱えさせない事。照の隣に立ち、一人にさせない事。

照が他人を頼れるようにしたいというそれが、彼の過去の願いであった。


だからその決断には迷いもあり、苦渋もあり、躊躇いもあった。

だからこそ、踏み出せなかった。


しかし、ここで照が足止めしその隙に京太郎が逃走しなければ人類は詰む。

誰がどう見たって、この戦況で京太郎サイドに勝機なんか有りはしないのだ。


時間を稼ぐには最適のマスカレイドが居る。時間があれば答えを出せるアンサーが居る。

京太郎を即死させる姦姦蛇螺が居る。絶対に倒せない魔神リョウメンスクナが居る。

そして何より、ジュネッスを用いても勝てるかどうか分からない魔法使いが居る。


二人残って戦う選択肢を選んでしまえば、共倒れは確定だ。



照「大丈夫」

京太郎「……照ちゃん、けど」



けれど、理屈で感情が消せるのならば、人は悩んだりなんかしない。



照「ぶっちゃけ足でまといだから居ると困る」

京太郎「分かってたけどさもー!」



だから京太郎の背中を最後に押すのは、照の微笑み。

『大丈夫』と、彼を安心させるためだけに向けられた笑顔。

そんな笑みを向けられて、いつまでもウジウジしていたらそいつは男じゃない。


彼女は、覚悟を決めたのだ。



京太郎「……帰って来るって、約束してくれ」

照「うん、約束」



その覚悟に応えられなければ、男じゃない。



京太郎「(さて、どっから逃げる……? あのシャッター閉まってる非常口からが一番イケそうだが)」

照「舌、噛まないようにね」

京太郎「え?」



その言葉を不思議に思い京太郎が聞き返したのと。

照が京太郎の学ランの襟を掴んで、外へと投げ出すように闘技場の斜め上上空へと放り投げたのと。



闘技場に『反物質の砲撃』が叩きこまれたのは、ほぼ同時の出来事であった。

すこやんキタ━(゚∀゚)━!

よっしゃすこやんや

大沼「……むっ」



ドゴンッ、とビルの発破を想起させる大爆音。

巻き上がる土煙とあまりの破壊力に、さしもの大沼とその部下たる新生四天王も怯み警戒する。

その破壊力と撃ち出したであろう人物を、現代において知らない者は皆無であるからだ。



今日一日、小鍛治健夜が京太郎の前に姿を表さなかったのにも理由がある。

彼女も義姉として、家族として、京太郎のそばに居てあげたかったはずだ。

しかしその感情を押し殺し、今の義弟に必要なのは友人だと自身に言い聞かせ、自分のするべき事に徹した。


健夜の役割は、伏せ札である。

照から首塚に封印された両面宿儺が奪取されたとの連絡を受け、憔悴する京太郎を家族として最も長い時間見続け。

照と京太郎を会わせて後ろに下がらせようという提案を最初にしたのは、実は彼女なのだ。



照と京太郎が再会すれば、高確率でフリーメイソンが動く。

そうなった場合の最悪の結末を防ぐため、彼女はいつでも横っ面から叩けるポジションを確保していた。

事実、この砲撃による一撃は完全に意識外からの奇襲として成り立ったのである。



健夜「回収、行くよ」

「はいー」



しかし、援護射撃は一発だけ。

健夜は傘の少女のバスに乗り、ヒーローシフトの足裏放出滑空で着地しようとしている少年の確保に向かう。

回収したら即座に逃走。それが三人の間の暗黙の了解だ。


三人の間のフリーメイソン対策と言っても、そこまで綿密なものではない。

ただ今回良手となったのは、発信機を用いた二手。

照が発信機を持っていくという一手と、発信機が壊れた場合その時点での発信地点に健夜が砲撃を撃ち込むという一手。

事前の打ち合わせで決められていたこの二手が、この状況で最良に噛み合った。


照がこっそりと発信機を自分で壊し、フリーメイソンのアジトの位置情報と砲撃の合図を送る。

そして健夜による、安全な場所からの当たらなくてもいい全力全開反物質砲。

直接来る必要はない。健夜の衰えと照の特性を考えれば、健夜ですらこの場に直接現れるのも足手まといだ。

そしてこの砲撃は、一発だけでも意味があり、一発だからこそ意味がある。



健夜の現在の能力の精度と正確な位置が視認が出来ないであろう状況では、どうしても照への誤射の可能性が付き纏う。

そして人類の頂点とも言える健夜の火力では、照ですら万が一の可能性が存在するのだ。

一発だけ食らわせたのは、メートル単位で詳細な場所を掴めていないから下手に援護射撃が撃てないという事実を隠し切るプラフ。

この一発で誰かを仕留められなくとも、『小鍛治健夜の援護がある』と脳裏には刻まれたはずだ。

そのハッタリが、照への何よりの援護になる。



健夜「……無事で居てよ、照」

その一言は、誤射の可能性だけを心配した言葉ではない。

本来、無敵であるはずの照へ向けられるべき言葉でもない。


健夜は知っていた。

長年京太郎と照を年上の保護者として見守ってきたからこそ、気付いていた。



今の宮永照は、須賀京太郎によって長年の心中の歪みを正され穴を埋められたことにより。



強さの源泉たる胸の穴を埋められ、『弱くなっている』。

ですよねー

やっぱりかぁ

Oh…

なんてこった

私は弱いときにこそ強いってチョコレが言ってた

英雄の存在意義とは、自身の存在意義を消していくことだと誰かが言った。

だからこそ、誕生した時点で矛盾しているのだと。


この世界の矛盾を一つ残らず消すために、世界に望まれた矛盾の塊。

それが英雄であり、人にヒトでないと呼ばれる者達の宿命だ。


宮永照は今日、自分が助けるべき人と自分の力が無ければ討てない世界の矛盾の存在、その両者を知った。



土煙に紛れた照の必殺を、大沼は『格闘技能習得』『身体能力強化』『五感強化』『未来予知』の魔法の重ねがけでかわす。

かわす最中にすら魔法を重ねがけ、自身を強化していく。

しかしそれでもなお恐るべきは、いくら重ねがけした所で届く気がしない最強の少女だろう。



大沼「ふむ……宮永照。此方につかないか?」

照「……」



戦いの最中の突拍子もない提案に、ほんの僅かに照の眉がひそめられる。



大沼「此方につくなら、何でも望む物を用意しよう」

大沼「以前から思っていたが……何故君は、人が嫌いなのにそちら側に居る?」

大沼「嫌いなものは嫌いなままでいいだろう。守る必要も、義務もない」

大沼「悪い提案ではないと思うが」



その誘いに対する返答は、無口な照らしく……言葉ではなく、膨大な熱量と圧力を込めた竜巻。



大沼「……ぬっ」

照「悪いけど」

照「私は貴方ほど、人に絶望しちゃいない」



宮永照に対して。

神様は、力だけを与えて何も言わなかった。

悪魔は、お前は人が嫌いだろうと仲間に誘った。


少年は、君と一緒に居ると楽しいんだと言った。




照「それに、私が本当に欲しいものを、どうせ貴方は用意できない」

てるてるが欲しい物は大沼が[ピーーー]前提だしな

土煙が晴れる。

照の右にはマスカレイドの群れ。

照の左には進化を経た姦姦蛇螺。

照の背後には大剣を振り上げる魔神。

照の正面には百種の魔法を同時起動する魔法使い。



『しゃあっ、やっぱさすがの俺様だな!』

『答えは出た、主殿! この無敵少女をぶっ殺すぜぇ!』



そして、それら全てを統括する答えを出す者。

この場に、彼女の味方をする者は居ない。



照「あの人がしてくれた事は、誰にでもできる事だったのかもしれない」

照「でも、誰もしてくれなかった事だった」

照「だから、その恩返しになるのなら……こんな結末も、悪くない」



後悔も無い。悔いも無い。ただ――未練が少しだけ。

彼の事を思えば、彼が自分よりも強く、自分に守られなくともやっていける事を望むべきだったのに。

独占欲と庇護欲に負けて、守る事に拘って……自分のエゴで、彼を傷つけてしまった。


その事を謝っていない事が、たった一つの心残り。



照「大切な人と出会えた。大切な人を見付けられた。大切な人に優しくしてもらった」



可愛い妹も、頼りになる相棒も、もう一人でやっていけるだろうと……宮永照は、根拠もなく信じる事にした。




「だから――もう、一人だって怖くない」




世界を揺るがす巨悪、フリーメイソン。


首領の掛け声と共に、その悪意と総力が―――たった一人の少女に向けて、振るわれた。

おいばかやめろ
また救えないとか俺のガラスの心が壊れる!

おい死ぬなよ照生きて帰れ

アカン

これが――宮永照

これ以上の犠牲は京太郎の心が

が、翌日の朝。



照「ただいま」

京太郎「無傷で帰ってきやがったぞコイツ……!」



死亡フラグ?

アイツはもう消した!

忘れてはならない。

宮永照は、この世界において比較する対象が存在しないほどの理不尽である。



照「でもたぶん、次やったら負ける」

照「一回、魔法で防御抜かれた」

京太郎「……マジか」



しかし、代償は軽くはなかったらしい。

フリーメイソンと戦う限りでは、照はもう最強でも無敵でも無くなってしまったようだ。

そも彼女の問題を京太郎が解決した時点で、彼女はかつての無双の力を振るえないのだろう。



照「伝言、預かってる」

京太郎「伝言? ……って、言うまでもなく大沼だよなぁ」

照「『アジトは引き払う。が、闘技場はそのままだ』」

照「『三日後、かの闘技場にて待つ』」

照「だって。挑戦状だね」

京太郎「……常道なら、ありったけの戦力投入してリンチとか健夜さんにふっ飛ばしてもらうのが安牌なんだが」

京太郎「無理だよな?」

照「無理」

照「あのメンツ相手に、弱っちいのは足手まとい」

京太郎「今更魔法使いが健夜さん対策打ってないわけないしな」



京太郎「結局、投入できるのは俺達含めて数人だけか」

照「ん」

京太郎「……勝ち筋が今んとこ見えねえなぁ」

照「……そういえば、学校は?」

京太郎「え? ってうおっ、もうこんな時間!? やべえ遅刻する!」

京太郎「そう言えば照ちゃん学校どうすんの!?」

照「まだ秘密」

京太郎「秘密ってなんだよ! 行ってきます!」





照「相変わらず慌ただしい」

まだ囚われのヒロイン枠が……
強すぎて無理だった

ちょっと休憩。30分後再開

30秒遅かった……

ずこー

映画版龍騎のラストみたいな絶望的なシーンだと思ったら帰ってきやがったww

もうやだこのチート生物!

いや実は大沼がモシャスを使って照に化けている可能性

なんだよこのテルー

流石だな…

なんかサラッと帰ってくきてしまった
メインヒロインでなければこんなものよ!

>>654
魔法使いが女子高生に化けれる訳ないだろう

流石てるてるや! 俺ら如き塵芥どもが心配するような存在じゃなかったんや!(安堵)

弱体化したから格納クルー?と思ったが無理そうだな
鏡属性はマホに任せるか

今更だけど、フリーメイソンアンサー、答えが出たとかいいながらこれかよ
どんな答えだったんだろうかね

よし再開

http://i.imgur.com/zRNS4zz.jpg

こういう画像に触発されたりもするこのスレの人間関係。三日間仲間達との絆確認タイム開始ー

多分アンサーさんが「何故そこで愛ッ!?」と言わされるような問答があったんだろうな

ワカメ「楽しくてメガネがずり落ちてしまいそうだあぁぁぁ!」

京太郎「あっぶね、セーフ!」



京太郎が滑りこむように入った教室は、進級と共に変わった二年生の教室。

1-Bから2-Bへとクラス番号が数字しか変わらない上に、席順まで変わらないと来た。

これでは変化が無いように感じられるだろう。


それでもクラスのメンバーの大半が入れ替わったために、そのクラスには新鮮な空気と新たな人間関係が構築されていた。



穏乃「あ、おっはよー!」

憧「おはよ。この時間まで来ないのは珍しいじゃない」

モモ「おはよっす。遅刻ギリギリっすよー?」


京太郎「おう、おはよう。怜は?」


憧「体調悪いから休むって。メール来てない?」

京太郎「ちょっと待て……あ、やべえ来てた」

モモ「うっかりさんっすねー」

穏乃「風邪かな? ちなみに私は風邪引いた事あるからバカじゃないよ」

モモ「(……その思考が既に凄く馬鹿っぽいとか言っちゃ駄目っすかねぇ)」

京太郎「穏乃は可愛いな」

憧「ええ」

穏乃「え、なにその生暖かい視線」



例えば、1-Bの時にはこのコミュニティには居なかったニューフェイス。



京太郎「しかしお前ら三人仲良かったのか。知らんかった」

穏乃「んー? 仲良くなったのは最近だけどね」

憧「そりゃ、以前から面識があって同じクラスになって、話す機会が増えれば当然じゃない?」

京太郎「そういうもんか」

モモ「そういうもんっす」



無論それもあるだろうが、東横桃子の性格もあるだろう。

東横桃子が「影が薄い」と称されるのは、本人の超能力じみた影の薄さと自己主張を余りしない性格に起因する。

誰かの意見とぶつからないし、誰かに意見をぶつけない。

誰とも衝突しない彼女は、コミュニティの中心にはなれなくとも、どんなコミュニティにも馴染めるのだ。


誰とでも仲良くなれるというわけではないが、誰にも嫌われず排除されない。



これも、彼女の才能ということだ。

怜は本妻らしくラストかな

照もこのクラスに来たりして

京太郎「しかしどうやらこのクラスのバスト偏差値も上がってきたようだな」

憧「あ?」

京太郎「あ、すみませんテンション上がりすぎて調子に乗りました」

穏乃「ひ、貧乳は正義とか咲が言ってたし……」

モモ「声が震えてるっすよ」

憧「あんた無乳でしょ」

京太郎「ある日突然巨乳になっても喜ばないって断言するなら正義語ってもいいぞ」

穏乃「うがあああああああああああああ」

憧「正義の反対は、また別の正義なのよ……」

京太郎「正義を語るのは、それなりの覚悟が必要なのさ……」

モモ「急に息ピッタリになってきた二人に私どうすればいいんすかね」

京太郎「少なくともお前は正義だから胸張ってればいいんじゃね?」

モモ「なるほど!」



遠慮も礼儀もない、友人特有の気兼ねのない会話。

心地の良い距離感を保ったまま、いじったりいじられたり、話題を振ったり振られたり。

だから、一緒に居て楽しいと思えるのだろう。



モモ「で、この前の練習試合でその強豪に勝ったんすよ!」

京太郎「おお、やるな! 応援行けなくてすまん!」

モモ「良いって事っすよ、忙しいの知ってるっすから!」

モモ「それに桃の花言葉は『天下無敵』! 負ける気がしないっすね!」

穏乃「おお、なんかかっこいい!」

モモ「ふふん」

憧「(……桃の花言葉は『あなたに夢中』『あなたのとりこ』とかもあったような……)」

京太郎「んじゃ、次はちゃんと応援行くからさ」

モモ「約束っすよー?」

憧「(約束……あ、そうだ)」

憧「京太郎、ちょっとツラ貸しなさい」

京太郎「ん?」

穏乃「どっか行くの?」

憧「アンタは次の授業の準備してなさい」

穏乃「あいよー」

モモ「……ほほう」

憧「アンタは邪推しない」

モモ「ちぇー」

>あなたに夢中

ほう

>あなたのとりこ

ふぅ~ん

ところでモブちゃんへの謝罪は

京太郎「おい、あんま引っ張んなって」

憧「気にしない気にしない。男でしょ?」



京太郎の腕を引いて、憧が強引に引っ張るような形で教室を出る。

廊下には休み時間という事で人がまばらに見え、二人のように雑談の為に廊下に出ている者も少なくないようだ。



憧「約束、覚えてる?」

京太郎「……」

憧「思い出す素振りも見せない沈黙は肯定と同義よ。覚えてるのね?」

京太郎「……はい、覚えてます。なんでも言う事聞きますとも」

憧「なんでも、ねえ……ふーん……」

京太郎「(アカン)」



京太郎はあまり失言をしない。

失言をするのは気が緩む昔馴染みに対してがほとんどであり、この失言もその一つだろう。

もっとも、京太郎には「憧ならあんま無茶は言わないだろう」という打算もあったのだが。

しかし、京太郎は今理屈ではなく……不可思議かつ透明な身の危険を、感じていた。



京太郎「(なんだ?何が来る? いや、憧なら大丈夫だとは思うけど)」

憧「うーん」

京太郎「(あんま無茶なの来ませんように!)」

憧「よし、決めた」

京太郎「(何が来る!?)」

憧「アンタ、私の買い物に付き合いなさい」

京太郎「……え?」

憧「フリーメイソンの呼び出しは三日後の土曜だったわよね?」

京太郎「あ、ああ」

憧「なら、四日後の日曜の予定空けときなさい。怪我とか理由つけて約束すっぽかしたら承知しないわよ」

京太郎「――――」



彼は、彼女に少しの不安ですら抱いてしまった事を……その時、心底恥じた。



京太郎「憧」

憧「なによ」

京太郎「ありがとな」

憧「……先に教室戻ってなさい。私もすぐに戻るから」

京太郎「おう!」




憧「……はぁ」

憧「私、ひょっとして穏乃よりもバカなのかしら」

このスレのいい女筆頭!世界一位!

新生生徒会発足から既に数ヶ月が経過。

各々仕事に慣れ応用も利くようになった頃……と、思いきや。



和「ここ、間違ってますよ」

泉「あ、そっちの勘違いとちゃうんか?」

和「見れば分かります」

泉「あ、そーかい」


京太郎「……平常運転だなあ」

浩子「平常運転やな」

煌「平常運転ですね」



まったくもって馴染んでない二人組が、ここに居た。



京太郎「仲が悪い、ってわけじゃないんですけどね」

浩子「仲良くしようともせえへんからな」

煌「喧嘩するほど仲がいいって、本来あの二人のようなすばらな関係に与えられるべき称号なんでしょうね」



この二人は、この生徒会において唯一全く馴染まない水と油である。

何かがあったわけではない。あえて言うのなら、泉が一方的に突っかかっていると言うべきか。

泉は元々、ライバルを認定したり劣等感を刺激されて成長するタイプである。

泉にとって和は対抗意識を燃やすに足る相手であり、超える壁として申し分ないライバルだった。

和にとっても自分に対して真っ向から対抗意識を燃やしてくる相手は初めてであり、ほんの少しだけモチベを上げている様子。

「負けたくない」という気持ちは、なんだかんだで負けず嫌いな和の能力を引き上げるのだ。



水と油といっても、仲が悪いというわけではない。

互いが互いを刺激しあう、仲良しこよしをしないカタチの絆。

これもまた、友情の一つなのだろう。



和「あ、すみません。京太郎君」

泉「お、京太郎ちょいとええか?」


「「……」」


「「こっちを先に」」


「「……」」



京太郎「ジャンケンしろよ」

あれやな…帰ってこれない最終決戦手前に日常代表たちのとこ回るイベント的な…

京太郎「大沼…貴様を倒して、俺はこの地上を去る」

フラグを立てるのはやめようよ…

急にメイソンアンサーがキルバーンに見えてきたからやめろください

煌「……楽しいですね」

京太郎「忙しいんですよ!」

浩子「慌ただしくもあるなぁ」

煌「少しくらい浸らせてくださいよ! すばらくない!」



新入生達が沢山入ってきたことにより、この生徒会は多忙を極めていた。

何しろ部活の入部の申請、新規部活の設立申請、生徒と先生両方からの頼まれごととやる事があまりに山積みすぎるのだ。

それに加えて、今死ぬほど忙しいのは京太郎のわがままである。

……三日後までに、自分が受け持っていた案件を全て終わらせたい。

そんな、彼のエゴが原因だった。

それでも快く請け負ってくれた生徒会の仲間達は、ひどく人が良いのだろう。

彼の背中を押す手段を、彼女らがこれしか持っていなかったというのもあるが。



煌「京太郎君があの時向き合ってくれなかったら、このメンバーが居なければ」

煌「私は今頃、この役職の重圧に耐えられずに辞めていたかもしれません」

京太郎「どうしたんですか? いきなり」

浩子「分からんか? やっぱにっぶいなぁ」

京太郎「んぐっ」

浩子「『代わりなんかおらへんのやから絶対戻って来い』っちゅうこっちゃ。お分かり?」

京太郎「……あ」

煌「……貴方が戻ってこないかもしれないと考えて、今仕事をしてる人なんてここに一人も居ませんよ」

煌「全部貴方の背中を押すためです。ちゃんと戻ってきてください」

煌「戻ってこなかったら恥も外聞もなく大声で貴方の名前呼びながら泣きますからね」

京太郎「……ははっ、そりゃ嫌ですね。ちゃんと帰ってこないと」



そういえば思い返せば記憶の中の彼女はずっと笑ってるな、と京太郎は煌の笑顔を思い出す。

泣かせたくはないな、とも思う。

じゃあ負けられないな、と決心した。



泉「しゃあっ! 私の方が早い!」

和「私の方が丁寧です。いいですか、字というものは読めればいいというものでは……」

泉「負け惜しみ乙」

和「……いいでしょう。次は私の方が丁寧かつ早く終わらせて事実を突き付けてあげます」



浩子「ほな、そろそろアレ止めるか」

京太郎「……ですね」

煌「あははっ」

絆パワーが高まっていく

淡「ぐぬぬぬ……」

衣「むむむむ……」

小蒔「はい、声も出せないくらい集中してるのが望ましいですよー」


京太郎「……え、なにこの構図」



遅めの昼飯を取るために部室に向かった京太郎の視線の先には、何故か謎の幾何学的な謎アイテムを用いて謎の行動を取る二人。

そして二人に謎の指示を出している小蒔の構図。

もしや怪しい壺とかその類のアレか、と少年の思考は明後日の方向に向いていた。

入り口に立ち尽くしていた京太郎に真っ先に気づいたのは、以外にも一番集中していた様子の淡。



淡「よーっす! 昨日すがっちから来たメールさ、私達が鍵って話なんでしょ?」

衣「それで、渦中の三人で額を突き合わせて文殊の知恵を成さんと集まった次第だ」

小蒔「今は、私が子供の頃力を上手く制御するためにって石戸のお祖母様からもらった道具を試している所です」


京太郎「へぇー……世の中には便利なものがあるんですねえ」


淡「さっきまではコップに水入れて葉っぱ浮かべて色々やってたよ」

京太郎「それなんか違くね?」


衣「ストップウォッチを五分ジャストで止める修行を……」

京太郎「それもなんか違くね?」


小蒔「力を滑らかに全身各所に移動させたり、武器の周囲に纏わせたりですね……」

京太郎「だから違うって言ってんだろ! あ、でもそれだけは微妙に俺達にとっては必要だ! チクショウ!」



彼が昼飯を食う時間と余裕は、刻一刻と削られていくのであった。



淡「私なんかセンスあると言われたよ」

京太郎「……もしかして褒めて欲しいとか?」

淡「言わせないでよ恥ずかしい」

京太郎「大星淡さんは本当に磨けば削れる逸材ですね」

淡「磨けば光るんじゃないの!?」

衣「……乗り越えたか」

京太郎「悪いな、心配かけて」

衣「謝るのは、そこか?」

京太郎「……あの時と逆の立場になっちまった上に、あんな事言わせちまって、ごめん」

衣「許す」

京太郎「……ありがとな」

衣「元々衣は気にしてなかった。この謝罪は、お前のためのものだ」

京太郎「かなわねーな、本当に」

衣「何、お前が乗り越えた姿を見て……衣も本当の意味で、二人の死を乗り越えられた気がする」

京太郎「そか」

衣「そうだ」

京太郎「うりうり」

衣「撫でるな! こども扱いするなぁー!」



小蒔「霞ちゃんの両親の話、聞きました?」

京太郎「え? いや特には」

小蒔「霞ちゃん、お姉ちゃんになるそうです」

京太郎「マジですか!?」

小蒔「ええ。それで、霞ちゃんが両親から頼まれたそうです」

小蒔「『この子の名前を付けてやってくれ』、って」

京太郎「……!」

小蒔「……ちゃんと謝って、分かり合って、家族になれたんです。霞ちゃんは」

京太郎「そうですか……なんか、自分の事みたいに嬉しいですね」

小蒔「ですね!」

京太郎「ええ!」

小蒔「貴方と私達が出会っていなかったら、どうなってたのか、想像もしたくないです」

京太郎「俺はただのきっかけですよ。助けたのは貴女の彼女の絆で、現実に立ち向かったのは石戸先輩の勇気です」

京太郎「俺が居なくても、どの道……」

小蒔「それはないです。この出会いがなければ、きっと何も変わらなかったって……私にだって分かります」

京太郎「そうですかね?」

小蒔「そうですよ!」



淡「なんか、私友達増えたよね」

京太郎「そういやそうだな。ぼっち卒業か」

淡「ぼっち言うな! ……ねえ、今私頼りになってる?」

京太郎「一回や二回負けたぐらいで弱気になってんじゃねえよばーか」

淡「……っ! バカって言った方がバカだし! 次回から大活躍の私には弱気とかないから!」

京太郎「そうそう、そんぐらい元気な方がお前は魅力的だと思うぞ」

淡「病める時も健やかなる時もそばに居る最強ユニットだからね、私!」

京太郎「……それはまた違くね?」

アラフォー「呼ばれた気がした」

あわかわいい

三日間は、光の矢のようにあっという間に過ぎていく。



京太郎「……ん?」



帰宅途中に彼の視界に映ったのは、カフェで何かを飲みつつ談笑する三人。

楽しげにも見えるが、その眼には真剣味が感じられる。

その光景が、無性に気になった。



京太郎「こんちわーっす」



宥「……あ、こ、こんにちわ」

一「おつかれー。今日も授業が長かったね」

姫子「奇遇やね。帰宅途中?」

京太郎「そんな感じですね。何やってんですか?」



幸い、円形のテーブルには四つの椅子が備え付けられていたので少年はそこに座る。

位置は一の反対側。座りやすいようにと椅子を少し遠ざけた宥と、何故か寄せた姫子が対照的だ。



一「作戦会議」

京太郎「作戦会議?」

宥「べ、ベースは私達だから……」

姫子「私達はずっと出ずっぱりやけん、私達がしっかりしなかとって話になっと」

一「体鍛えてもしょうがないし、せめて頭をってね」

京太郎「なるほど」



京太郎が格納した仲間達の忠告や警告で助かった事は一度や二度ではない。

そもそも、戦闘に集中している京太郎は他の事柄に対する思考が疎かになって当然なのだ。

だから仲間達が分担して集中・警戒すれば、あらゆるアクシデントに対して完璧な対応が可能となる。


差し詰めこの状況は、同じクラスの一と姫子とぶらぶらしていた宥が偶然出会って話の流れで……といった所だろう。



一「怜は体調不良で、穏乃はここにいてもあんまり意味なさそうだしね」

京太郎「ひでえ! でもアイツに難しい事回さないでくれた気遣い感謝します!」

姫子wwwwww

一「こっちの話が纏まったらメールしとくからさ。まだ行くとこあるんでしょ?」

京太郎「あ、はい」

姫子「哩さんが卒業式の時のアレの事聞いてきたんやけどどうすっと?」

京太郎「アレ!? アレですか……保留で」

宥「ばいばい」

京太郎「宥さんも大学頑張ってください。じゃ、また」



三人と別れたその足で、彼は行き慣れた店へと向かう。

思えばこの店に始めてきた時から数年。彼女が待っていた時間を考えれば、十一年。

少年にとってこの店は、格別に思い入れのある店の一つだ。



咏「いらっしゃい、センパイ。なんかお買い上げ?」

京太郎「今日は顔見せと待ち合わせだけ。顔見せろってうるさかったのは咏ちゃんだろ」

咏「全く記憶にございません」

京太郎「おいコラ」

咏「あはは、冗談冗談」



会話が弾み、言葉がつらつらと並び、いつしか二人は開店中にも関わらずお茶を楽しんでいた。

貰い物というケーキと、これまた高そうな茶葉を手慣れた手つきで咏が淹れる。

和洋折衷でミスマッチかと思いきや、意外と合っているようだ。

ケーキは中くらいのサイズのものが三つに切り分けられ、二人が一つづつ口にしている。



咏「昔、聞いた話なんだけどねぃ」

京太郎「?」

咏「10を3で割っても割り切る事はできない。けど、人はケーキを三つに均等に切り分けることは出来るんだってさ」

咏「科学がどんなに頑張っても出来ない事を、人の手は成せるんだ……だって」

京太郎「へぇー、いい話だな」

咏「『三』って事で、何か覚えてたんだよね」

京太郎「割り切れるのは人の特権ってとこかな」




咏「……割り切る、か」

咏「実は私、数日前からすこやんに頼まれて色々手回してたりしたんだよね」

京太郎「何を?」

咏「センパイの役目が宮永姉に受け渡されてから、その後の展開がスムーズに行くようにする工作」

京太郎「……」

咏「結局、無駄だったけど」

咏「私、センパイの引退に賛成派だったんだよねって今更な話」



サクリとケーキに刺さる彼女のフォークの音が、少し悲しげに聞こえた。

悲しげというのなら、きっとそのケラケラと笑う偽笑の仮面の下にこそあるのだろうけど。

少年が何をした所で、その仮面はきっと剥がれない。



咏「だからまあ、私自身でもわっかんねーけど」

咏「割り切れてない、っていうか」

咏「……最後の戦いだって言われたって、心配というか」



それでも、少年には貼り付けた笑顔と心からの笑顔の判別くらいはつく。

今の彼女の笑顔は前者で、少年が嫌う方の彼女の笑顔だ。

笑顔の仮面があるからって、気持ちが読み取れないなんてことはない。

彼女が向けてくれる気持ちに対して、無自覚であっていいわけがない。


そんな彼女に対して、彼が取った応えるための行動は。


残り一個のケーキを、一口でパクリと食べることだった。



咏「……え?」

京太郎「……ふぅ、美味かった」

咏「え、いや美味かったじゃなくて」

京太郎「ここは売店だろ? 代価を払って、商品を得る場所だ」

咏「あ、うん、まあそうだけど。その行動の意味がわっかんねーという話で」

京太郎「このケーキは前金かつ代金な」



京太郎「咏ちゃんはこのケーキで俺が無事に帰って来て顔を見せる、って商品を買った。それじゃダメか?」



咏「……ははっ、ばっかじゃねーの、センパイ」

京太郎「バカとは何だバカとは」

咏「ほら、外で待ち合わせしてるっていう友達が待ってるよ? やたら背がでっかいの含めた五人」

京太郎「うげっ、もうこんな時間だったか」

咏「ケーキで買った商品の受取りは、早めがいいかな」

京太郎「……ああ、必ず届ける。じゃ、またな」




咏「あははっ……なんかもう、本当にあの人らしい」

マホ「あ、先輩!」

京太郎「ん? マホか」



とうとう、フリーメイソンとの最終決戦の前日となった。

土曜は学校の都合で授業があるため、自然と決戦は夜となる。

即ちこの時点で、最終決戦の火蓋が切られるまでに24時間と少ししか残ってはいない。



マホ「この辺りに何か用ですか?」

京太郎「あー、俺がヘマして気使わせちまった後輩への謝罪にな……」

マホ「?」

京太郎「ま、それはいいんだ。それより体調は万全か?」

マホ「勿論! 明日のマホ無双をお楽しみに」

京太郎「めっちゃ頼りになるなお前」



マホはいつだって気力十分だ。

天真爛漫で周囲に元気を振りまく、太陽の光を余す事無く反射する鏡のように。

その姿に、少しだけ京太郎も勇気づけられる。



マホ「あ、先輩。それからマホ聞きたい事があったんですよ」

京太郎「なんだ?」

マホ「嫌な予感、って感じじゃないんですが……なにか、感じません?」

京太郎「いや、特には。俺は一部女性陣見たく超能力じみた勘じゃねえし……」

マホ「なんというか、チリチリするというか」

マホ「士栗ちゃんが、何か警告してくれてるような……そんな感じです」

京太郎「分かった、こっちで警戒しとく。マホも気を付けてな」

マホ「はい! すみません、良く分からない感じで……」

京太郎「気にすんなって。じゃ、また明日な」



京太郎と別れた後、マホはふと空を見上げる。

ここ数日、ずっと晴れることもなく続く曇り空だ。



マホ「……嫌な天気」



人が、曇り空の時にだけ思う感情がある。

晴れでも、雨でも、雪でも、雹でも思わない、そんな感情。


……世界が、終わりそうだと。


曇り空を見上げる人々の心に、曇り空はそんな感傷を掻き立てる。

最終決戦、前日夜。



京太郎「……じゃ、明日頑張るために早く寝ましょうか」

健夜「そうだね」



義姉弟の間に、無駄な会話はない。

必要な会話は、既にこの数日で終わらせた。

二人に今必要なのは残りの時間を惜しむ愚行ではなく、体調を万全にする準備のみである。

姉弟で今更ということと、襲撃に備えて二人は同じ部屋で床についていた。



健夜「ねえ」

京太郎「……」

健夜「両親の話、聞いたよ」

京太郎「……」

健夜「もう寝ちゃったかな? それでも良いけど」

京太郎「……」

健夜「……寂しかったら、両親の代わりにはなれないけど」

健夜「でも、私はやっぱり貴方の義姉だから」

健夜「甘えたって、良いんだよ?」


健夜「家族なんだから」


京太郎「……」

健夜「……ごめんね、こんな事言って。もう聞こえてないかもしれないけど」

健夜「本当の家族じゃないから、迷惑かもしれないけど」

京太郎「……」



京太郎「ありがとう、姉さん」



健夜「……!」

京太郎「寝よっか」

健夜「うん!」

すこやんのヒロイン値がどんどん上昇していくだと!?
というか、寝るときに会話できるということは、もしかして同じ布団で寝とるんか…?

すっこやーん

最終決戦前総決算って感じだな

最終決戦まで、24時間を切った。

そんな、決戦前夜の夜。

魔物達が跋扈する、都市伝説達の王国、夜の世界。


そんな世界を駆ける、二つの影があった。



姉帯「ハァ……ハァ……くそったれ、何て事考えやがる!」

姉帯「俺が逃げ切れなければ……伝えられなければ、アイツは、終わる!」

姉帯「フリーメイソンの切り札は――」


「ふむ、存外しぶといな」



片や皆も知る、姉帯豊音の父たる姉帯刑事。

そして、彼を追いその生命を奪わんと攻撃を続けるのは……



「能力……いや、経験か。その凡才の身でよくぞそこまで練り上げた」

姉帯「お前に褒められても全く嬉しくないな、大沼」



フリーメイソンの首領、大沼秋一郎その人だった。



大沼「『時空のオッサン』か……その特性を、すっかり失念していた」

大沼「まさかこのタイミングで気づかれるとはな」

姉帯「そりゃあ不運だったな。不運ついでに見逃しちゃくれないか?」

大沼「君が知った事を口外しないと魔法で契約してくれるのならな」

姉帯「そりゃゴメンだ。どんな風に身体を弄くられるのか分かったもんじゃない」

姉帯「第一……こんな外道を放置しておくなんざ、警察官が許しちゃいけねえんだよ」

大沼「交渉決裂だな」



コンマ一秒の詠唱。

刹那に見たぬ光条の発射。

レーザーの如き魔法が姉帯の両足を貫き、その動きを封じる。



姉帯「グッ、があああああああああああああッ!!!」

大沼「まったく、心が痛むな」

姉帯「笑いながら言っても、説得力ねえぞジジイ……!」

物凄いシリアスな場面だが、咏ちゃんフォークどうすんだろうなーとか考えてる俺がいる

おやっさんがヤバい
なんか気付いたのか

大沼「非常に遺憾ながら、年上への敬意が見えないな」

姉帯「ガッ……!?」



まるでサッカーボールを蹴り飛ばすように、姉帯刑事の頭部を大沼が蹴り飛ばす。

これは致命傷には至らない。

大沼にとってのただの娯楽、暇つぶしの愉快な遊びだ。

そこに誰かの痛みと苦しみが伴う時点で、尋常では無いのだが。



姉帯「……ぐっ、ぎっ……!」

大沼「私にする事があるんじゃないか? 無様な、命乞いとか……」

姉帯「……ハッ」



逆らえば命はなく、逆らわずとも人としての尊厳を穢し尽くした上で殺すであろう悪性。

だがその悪性と相対し、傷めつけられ、玩具のように扱われてなお。



姉帯「……年食っただけのただのガキが」

姉帯「女にアプローチして、結婚して、ガキ作って、娘のおしめ変えてから出直してこい」

大沼「……」



一人娘を持つ父親は、娘が誇らしく思う父親のままだった。

その言葉への大沼の返答は、炎の魔法。

その炎が、魔王の気に食わぬ無力な勇者の顔を焼く。



姉帯「ぐ、が、あ、ぐ、ぎ、ぃッ!!!?」

大沼「身の程を知らぬ愚か者には、相応の仕打ちというものだ」

大沼「鏡を見てみるか? 見難く爛れた顔が見えるぞ」



姉帯「わらわ、っせん、なっ……男が、顔の傷ごとき、気にするか……!」



大沼「……何?」



姉帯「大人にとっての、男にとっての、共通の最悪ってのはな……」

姉帯「『醜い顔だ』って笑われることじゃねえ」

姉帯「『醜く生きた』って、笑われる事だ……!」



姉帯「テメエに媚びて、テメエより醜く生きてたまるかよ」

大沼さんが童貞馬鹿にされてキレた

やっぱり童貞って心が狭いわ
ソースは大沼さんと俺

カッコイイ親父だ

アプローチも結婚も子作りも子育てもおしめ変えもしてないけど義理の娘改造と息子なぶり[ピーーー]のはしたな

大沼秋一郎が、一歩だけ後ずさる。

それは蝋燭が燃え尽きる前の一瞬のような、生命が燃え尽きる前の一瞬の気迫に気圧されたからか。

それとも、実の娘のために、息子のように思っている少年のために、命を削って大人らしくあろうとするその強さに呑まれたからか。


大沼「何故、そこまで傷めつけられた上で笑う」


姉帯「俺からすりゃ、お前の笑いは不快で仕方がねえんだよ」

姉帯「大人が子供に笑うのは、大人になってもこんだけ人生楽しいぞって伝えるためだ」

姉帯「だからどんなに辛かろうが苦しかろうが、大人(おれたち)は笑うんだよ」

姉帯「子供に不景気な顔見せて不安にさせる大人はクズだ」

姉帯「子供から笑顔をかっぱらってく大人は、それに輪をかけてクズだ」


姉帯「ガキイジメて悦に浸って笑ってんじゃねえぞ、クソジジイ……!!」



大沼「……成程。『警察官』なわけだ」

大沼「だが、子供など。今は誰も見ていないだろうに」



魔法使いの両手から雷が迸る。

それは光の槍となり、もはや悲鳴すらあげる余裕のない男の身体へ殺到する。

残り少ない命ですら、あっけなく刈り取られていってしまう。



姉帯「か、ぁ……子供は、大人の真似しちまうんだよ……俺達が望むにしろ、望まないにしろ……」

姉帯「……見てないと……思ってる時でも、ちゃんと、あいつらは、見てるんだ」

姉帯「……豊音も、俺みたいに、あんな、に……家族に踏み込むのに、臆病になっちまってたしな……う、がほっ」



大沼「それをして、君に何の得がある」



姉帯「損得じゃねえ。大人の責任だ」

姉帯「お前は、果たした事なんてない責任だろうがな」



大沼「……」



詠唱一節。

空間に現れた長剣が、姉帯刑事の腹を刺し貫く。

その衝撃のまま、姉帯刑事は後方に吹き飛ばされ……この街を流れる、河に落ちた。



大沼「愚か者とは、ああいう者を言うのだろうな」



彼が止めようとした悲劇を止める者は、これでもう居ない。


夜が終わり、日が昇り、人々がこの街に満ち始め。


そして、少年の世界が終わりを告げる。

馬鹿めっ!河に落ちるのは生存フラグだ!

良かった、死ぬかと思ったら生存フラグだ!

なんだ死んだのかと思ったじゃねぇか

こういうのはおっさんの株が上がって、大沼の株が下がって見えちゃうね

京太郎「……?」



やけに寝覚めの悪い朝だと、京太郎は不思議に思う。

彼の寝起きは良い方だし、二・三徹した後にぐっすり寝た朝でも寝ぼける事は殆ど無い。

そんな自分の頭がぼーっとしている事に、どこか他人ごとのように珍しいと思考を回転させ始める。


やがて健常に戻った脳を確認し、彼は家を出た。



京太郎「行ってきまーす」



返事は帰ってこない。

まだ寝てんのかあの姉、とは思うものの本番は夜だ。

今寝溜めしておく事は愚策ではないと、そう言い聞かせて姉を甘やかす少年の姿がそこに在った。



京太郎「……?」



朝の寝覚めと同じ違和感。

登校途中はいつもなら誰かが声をかけてくれるはずなのだが、今日は全くそんな事がない。

それどころかいつも見る人達すら居ない。

街を歩く人影の数ですら、いつもよりまばらであるように見える。



京太郎「……」



マホの言っていた感覚が、おぼろげながら京太郎にも理解出来始めていた。

チリチリとした感覚。

どこがおかしいのかと問われても、どこがおかしいのか分からない。



京太郎「……学校行って、聞き込みして、作戦会議だな」



学校に急ぐ理由が増えたと、彼はペダルを漕ぐ速度を速める。

いつも荷台に乗っているはずの重さが、自転車を漕ぐ時にいつも感じていた背中の暖かさが。

感じられない事が、今だけは何故か無性に寂しかった。

ちゃんと死体を確認しろや!この甘ちゃんが!!

葦原涼「池ぽちゃ、海ぽちゃからの復帰なんて朝飯前ですよ」

学校に到着したが、そこでまた同じ違和感を感じる。

京太郎はこの学校に知人が多く、その人脈を使っての調査を得意とする探偵が本業だ。

だから昇降口から教室までの間で十数人と会話をこなす事すらある。



京太郎「……?」



そんな彼に視線を向ける者、声をかける者が一人も居ない。

その中には確かに京太郎の知人もいる。友人もいる。

だというのに、京太郎に気付いても声すらかけようとしていない。

相手によっては目が合っても、知らない人間相手にそうするように自然と目線を逸らしている。


違和感は、嫌な予感に変わる。



京太郎「(まさか)」



理性は既に結論を叩き出している。

ただ、感情がそれを否定している。

妄想に近い推論、それに認めたくないという感情が後を押し、否定のための証明へと走らせる。


教室には、新子憧の背中が見える。

良かった、彼女なら……と、京太郎の顔に安堵の色が浮かび始めた。



京太郎「よっす憧。なんかさ、今朝から変というか――」

憧「ん?」






















憧「アンタ、誰?」

うしとらか

なんだ無限月読か

これは仲間達が京太郎のことを忘れている中
タコスだけが京太郎の事を知っている流れだな・・・

アカン




アカン

え…  え゛
もうネクサスも何もできねぇじゃないか!!\(^o^)/

彗星を倒せたのも月島さんのおかげ

その言葉が、崩壊の序曲となった。




京太郎「……は?」

憧「初対面で呼び捨てとかやめた方がいいわよ。女の子はそういうの気にするから」

京太郎「おいおい、タチの悪い冗談はよせよ」

憧「……なんかやけに馴れ馴れしいわねアンタ。ちょっと気持ち悪いわよ」

京太郎「……おい、いい加減にしないとキレるぞ」

憧「キレたいのはこっちよ。先生呼ぶわよ?」



認めない。
認めたくない。

少年は憧がふざけているだけだと思い、その嘘を証明するための確実な物的証拠を突き付けんとする。

そこに理性はない。ただの感情に任せた、すがりつく希望を探す亡者の姿しかなかった。



京太郎「(俺の机……!)」


京太郎の机があった位置には京太郎ではない、他の誰かが我が物顔で座っている。

机についた傷や汚れから、それが京太郎の机でない事は明らかだ。



京太郎「(出席簿……!)」


このクラスの生徒一覧。

そこからは京太郎の名前だけが、すっぽりと抜け落ちている。



京太郎「(ロッカー……!)」


生徒の私物を収めるその場所は、京太郎のロッカーがあった場所がなくなりその分左詰めに右一列のロッカーがズレている。

これだけの大人数をただのイタズラで動かすなど、不可能だ。



そして。


京太郎「モモ……?」

桃子「ん? 誰か自分のこと呼んだっすか?」

京太郎「お前、この時間は朝練じゃないのか……?」

桃子「なんかやたら馴れ馴れしい人っすね……部活とか、夏前には辞めたっすよ」

桃子「続ける理由、なくなっちゃいましたし」

京太郎「――――」



ようやく、須賀京太郎はこの受け入れがたい現実を受け入れた。

 





この世界から、『須賀京太郎が生きた痕跡』が、一つ残らず消し去られている。





 

記憶消去よりはるかにやばいんですが

京太郎が単独で大沼に挑んで戦闘中にピンチになるも
最終的に皆が京太郎のこと思い出してそれが切欠でノアに覚醒する所まで予知したで!

京ちゃんいなかったら死んでる人いそうだが、果たして

怜とか大丈夫なのか……

怜は死んで姫子は同級生殺しちゃってるという

どっちかっつーとノエインか

穏乃「おっはよー! ……ん、憧、どうしたの?」

憧「ああ、おはよしず。いや別に何かあったってわけじゃないんだけどね」

憧「あそこに、変な男がいるでしょ?」

穏乃「あ、居るね」



穏乃「別のクラスの人?」



その言葉が、この場におけるトドメになった。



京太郎「あああああああああああああああッ!!」



咆哮し、集まる他人の目も気にせず、走る。

向かう先は生徒会室。



京太郎「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!」



受け入れがたい現実を否定するために、否定するための根拠を探して走る。

生徒会室は、彼が一年生の時からずっと頑張ってきた思い出の場所だ。

花田煌に向ける無意識の敬意と信頼が、彼をそこに走らせる。

しかし、ドアを開いた先に望む人物は居なかった。



浩子「ん? どちらさん?」

京太郎「あ、船久保、先輩……?」



知った顔がそこに在ることに、安堵を覚える。

しかしその安堵すら、一瞬で裏切られるのだ。



浩子「初めて見る顔やな。なんぼ用か?」

京太郎「……っ、あの、煌会長はいらっしゃいますか?」

浩子「何言っとるんや? 途中参加やけど、今の会長は私やろ」

京太郎「……え?」

浩子「煌ってあの人やろ? 去年生徒会の責任がどうとか能力がどうとかで辞めてった人」

京太郎「あ、あ、あああああああ」



……そうだ。そういう事なのだ。


『須賀京太郎が最初から居なかった世界』とは、つまりそういう事なのだ。

京ちゃんが精神的にまた死んでしまう

怜→病死
姫子→ひきこさんとして人を[ピーーー]
姉帯さん→村に拘束されたまま
衣→自殺
健夜&咏→過去で京太郎の助けがないため死亡した可能性あり

ヤバいのはこの面子ぐらいかな?

京太郎「あ、あ、あ、あ、あ、ああああっ!!」



これは夢でも幻覚でもない。

紛れも無い現実だ。地に足の着いた現実感が在る。

京太郎が最初から居なかった世界だから、そもそも鹿児島と岩手の皆はこの街に来てすら居ない。


豊音は既に手遅れになっていて。

姉帯父は分かり合うための機会すら得られない。

宮守の友人達はかけがえのない親友となるはずだった少女を失っている。


小蒔は変わる機会すら得ることが出来ず、ゆったりと鬱屈していく。

霞は両親と和解する機会も、自分の歪みと決着を着ける機会すら永遠に奪われた。

初美は二人のそんな姿を見て、形のない罪悪感を抱えて一生を過ごしていくのだろう。



京太郎「なんだよそりゃ、なんだよそりゃ、なんだよそりゃぁっ!!」

京太郎「ふざけんなぁあああああああああああああああああああッ!!!」



衣の姿が、どんなに探してもクラスにない。

彼女は、死にたがりだった。


姫子の姿が、どこを探してもない。

彼女の友人への復讐を止める者は、誰も居なかったのだろう。


宥に電話しても、繋がらない。

彼女の孤独は、半ば自暴自棄にフリーメイソンへと彼女を走らせた。


和が居ない。

彼女の後輩を止める役目を持つ者は、誰も居なかった。



京太郎「やめてくれよ、頼むから……」

京太郎「これがただの夢だって、だれでもいいから……笑い飛ばしてくれよ……」



誰も彼もが死んでいるわけではない。

黒い京太郎すら存在しなかったという事実からのバタフライ・エフェクトか、死んでいない者達も居る。

それでも……彼が成してきた奇跡は、行動は、過去は、全て無かった事になっていた。



須賀京太郎が今までしてきたことは全て無駄だったのだと、誰かがあざけ笑っているかのようだった。

>>726
それだと何で穏乃が生きてるんだ?

しずもん猿夢に執り殺されなかったのか

しずもんは京太郎居なかったから都市伝説に引っ張られなかったんじゃなかろうか

既に校舎のどこを歩いているかも定かではない。

おぼつかない足取り辿り着いたのは、皆の思い出の詰まった部室。

しかし……そこには、何も無い。


何年も人が入っていない事が一目で分かるほどに、埃が降り積もっていた。



京太郎「……」



逃避と拒絶が半々の意識の中、ふと聞こえた足音に振り返る。



淡「……」

京太郎「……あ」



言葉をかわさずとも、理解した。

その眼は、初めて会った時に垣間見せた大星淡の眼。

誰も彼もを平等に無価値にしか見れない、孤独だった時代の彼女の片鱗。

今では薄れて消え去ってしまっていたはずの彼女の目が戻っていた時点で、それは問うまでもない事実だった。



淡「ジロジロ見られるとキモいんだけど」

京太郎「……悪い。邪魔したな」



自然と彼の足は、校舎の外へと向いていく。

還らない思い出が、刃のように彼の心をめった刺しにしていた。



憧「……げっ、さっきの変なやつじゃないの」

京太郎「……」

京太郎「……約束……」

憧「え、なに? 約束? なにそれ?」

京太郎「……いや、なんでもない。迷惑かけて悪かったな」



これ以上、この学校という場所に居たくはなかった。

まだ希望の残っている、学校の外へと彼は繰り出した。


彼の生涯、初めての自分勝手な理由によるサボり。

そして生まれて初めて、学校という場所から逃避した瞬間だった。

>>730
ああ、極性が寄る設定か
じゃあ憧がメリーさん化してない理由にもなるな

なんというか京太郎のメンタルが弱くなり過ぎてて違和感が

今更これくらい
と思ってしまうな
マヒしてんのかなぁ?

京太郎には理解できている。

これは既に変革を迎えた現実で、時計の針は過去には戻らない。

過去と未来の間の辻褄を合わせるための時間跳躍はあれど、これは既に時間跳躍でどうにか出来るものではない。



無かった事を、無かった事には出来ない。


消された京太郎の過去の足跡は、どうやったって元には戻らない。


だから、この場で断言しよう。


大沼秋一郎を倒した所で、この都市伝説の謎を解いた所で。



『消えてしまった京太郎の過去の足跡は、絶対に戻っては来ない』。



消えてしまった絆は、絶対に戻っては来ないのだ。

……すみません、これは普通に心折れます

……分かっていた、はずだった。

そもそも『彼女』の生死に関わらず京太郎の存在が無ければ、開店する理由がない。

だから、この場所に。


三尋木萬物店が無いのも、三尋木咏が居ないのも、当然の道理だ。



京太郎「……」



歩く。歩く。歩く。

走る気力は既に無く、自転車はどこに置いてきたのかさっぱり思い出せない。

彼にはもう、電車に乗るだけの思考体系すら確立出来てはいない。



京太郎「……」



小鍛治総合相談事務所……が、あるはずの場所に辿り着く。

当たって欲しくない予想が当たり、彼の思い出の場所はまた一つ失われていた。

そもそもこの世界では、小鍛治健夜と須賀京太郎は家族ではない。


知り合いですらない……面識すらもない。

彼が姉と呼ぶ事を許された家族は、もう彼を抱きしめてはくれないのだ。



京太郎「……」



立ち尽くす彼の傍を、何人かで下校中の中学生が通り過ぎる。

その中には、夢乃マホの姿もあった。

彼女は京太郎を一瞥し、そして……



京太郎「……」

マホ「そういえば、今日の宿題――」



ただの面識のない通行人にそうするように、彼の傍を通り抜けていった。

パラレルワールドであってくれ・・・

枕返しの仕業か!?

やめて!!俺のライフはもう0よ!!

【胡蝶の夢】



都市伝説の一カテゴリー。

夢と現実が入れ替わった、という体験談を中心としたマイナーカテゴリー。

幸せな世界の夢を見ていたらそれは全て夢だった……という珍しくもない話の集合体。



夢と区別がつかない現実、現実と区別の付かない夢。

それらがくるくる狂々と廻り入れ替わり差し替わり、どちらが現実なのかどうか分からなくなってしまう。

都市伝説には、そんな夢と現実の逆転が度々確認されている。



この都市伝説は魔法によって調整され、二種の都市伝説の特性を中心に発現する。


片方は、『高一の出来事』。

高校一年生の夏から、両親の蒸発や就職、彼女とのカップル成立etc。
分不相応なほどに波瀾万丈でリア充な生活を送っていたが、全て夢だったという話。
高校一年生の時に始まった物語が、全て夢でしかなかったという物語。

現実では主役の少年は寝たきりであり、起きた後にはそんな波瀾万丈の欠片もない日常が待っていた、というエピソード。

ちなみにその彼女は、夢の中の世界で少年の心を覗いていたのだとか。


もう片方は、『時空のオッサン』にて語られる異次元世界のエピソード。

こことは違う世界に行った人間の存在が、元の世界では初めから無かった事にされてしまうという恐ろしい話。

異次元、平行世界、夢の世界は都市伝説において同質のものと語られる場合が多い。

京太郎の場合、この世界に来て起きて学校へと登校するまでの間がこれに該当する。



特定の都市伝説ではないマホと似たカテゴリーの都市伝説であることと、魔法による改造を受けたこと。


それらの要因により、これは『指定の人物の存在を最初から無かった事にする』という性質を持つ。


消しゴムによって消された字をそのままの状態で蘇らせる方法が無いように、無かった事にされた物は戻らない。

この世界に、無かった事にされたものを取り戻す方法は存在しない。


似たような物を用意する事が出来たとしても、それが限界だ。

似たようなものであって、それは決して失われたオリジナルではない。



だから、起動した時点で、全てが終わる。



悪意の魔法によって改造された都市伝説の、成れの果て。

黒がいないから明華と士栗は産まれる事すらないわけで
そういえば照も一回だけ京太郎がいなきゃ勝てなかったギャグ漫画みたいな都市伝説とやり合ってたらしいからヤバいかもしれない

孤独は、人の心を折る。

誰かに望まれる事が本質である寺生まれであるのなら、尚更だ。

ましてや彼は、出会った人達との絆と思い出を胸に抱えて生きる少年である。



幼馴染との思い出。
子供の頃友人と駆けた日々。
落ち込んで、励ましてもらった過去。
支え合って乗り越えた困難。
一緒にご飯を楽しく食べた記憶。
ワイワイガヤガヤと一緒になって騒いだ事。
一緒に怒られて、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に喜んだ事。
自分の心の問題を、乗り越えていった記憶。
死の運命にあった人達の命を、救えた過去。

守れた事が嬉しかった。
一緒に泣いてくれた事が嬉しかった。
手を差し伸べてくれた事が嬉しかった。
笑ってくれた事が嬉しかった。

笑顔が素敵だった。
楽しい奴らだった。
一緒に居て心が踊った。

大切だと思った。
大切だと思ってくれた。



けれど、それらの全てはもう京太郎の胸の内にしか存在しない。

もうそれは、存在などしなかった蜃気楼の残り粕でしかない。



誰も覚えては居ない。

あの楽しかった日々を、命を懸けて守る価値があると思った日々の事を、誰も覚えていない。

そして覚えていないどころか、多くの彼にしか救えなかった人達が命を落としていた。



そしてあの日々には、もう戻れやしないのだ。

それが、彼の胸の内を茨の刺のごとく苛んでいる。



今日まで彼を支えてきた絆(ネクサス)は、悪意によっていとも容易く消し飛ばされた。

この場合京太郎の目の中にいる黒太郎はどうなるんだろう?

やっぱり消滅?

キッつい

ふと気づけば、京太郎の足は宮永家に向いていた。

何故そこに足が向いたのかは分からない。

彼の友人の中で、誰よりも付き合いの長い二人が住まう場所。


自然と指は、インターホンへと向いていた。

だが、押せなかった。

その前に、現実は彼の前に無情に舞い降りる。



咲「あれ、どちら様ですか?」

咲「お姉ちゃんの……ああ、えっと、照の知り合いですか?」

京太郎「……っ」



最大の理解者の言葉は、最大に心傷つける刃となる。

失われた思い出の数も、濃度も、その価値も段違いであるのだから尚更だ。

その言葉は、深く深く心を抉る。



考える事すらせず、考えるだけの余裕すら無く、京太郎は今帰ってきたばかりの咲に背を向け、駆け出した。



咲「あ、ちょっと!」



自分の中に問いかけても、黒の残滓も桜の残滓も応えてくれない。

武器に問いかけても、どれ一つとして彼の手元にはやって来ない。

右手を見ても、そこに巻かれていた絆の象徴は存在しない。



今の彼を支える物は、この世界に何一つとして存在しなかった。

京太郎の生きた痕跡が消えるとなると、てるてるは弱体化してないってことだよね?
無敵のてるてるがいて大沼が世界を壊すことって可能なの?

辛いです。

もう終わりだあああああああああああ

京太郎「はぁ……はぁ……」



走り続けて、どこまで来たのか。

切れる息を整えながら、辺りを見回す。

そこは淡や咏との思い出のある、小高い丘だった。

誰も居ない。それがかえって、救いになってくれたような気すらしてきている。


そんな少年の懐の、携帯電話が鳴り響く。



京太郎「……ちょっと待て」

京太郎「俺の存在が最初から無かった事になっているのなら……この携帯電話も当然契約なんかしていない……」

京太郎「……」

京太郎「……どうやって、かけてきてんだ?」



疑問に思いながらも、その電話を取る。



『ちーっす、お元気ですかー。お元気なわけねーよなぁ! ぎゃっはははは!』

京太郎「……いや、誰だよお前」

『お前の敵さん側のアンサー様だよ。知らんのか?』

京太郎「ああ、お前が」

『そっの通り俺様です。しかしたまげたな、主様の言った通りだ』

京太郎「あ? 何がだ?」



『ショックは受けてても折れてはねーと来た。たまげるぜ、寺生まれ』



京太郎「……それがどうした」

『けけけけけ、そんなになっても俺らに戦いを挑もうとしてるのはキチガイじみてんぜぇ』

『時間は守れよ。今夜の夜までしか待たねえからな』

京太郎「そんだけか? 切るぞ」

『ああ、待て待て待て。主様からの伝言だ』




『今朝からずっと見ている。楽しませてもらっているぞ……だってよ』




その通話は、京太郎の携帯電話が握り潰された事によって終わりを告げた。

ブチギレ寺生まれ

携帯まで壊したらどうやって格納するんだよ

丘の上から、少年は街を見下ろしている。

街が一望出来るこのスポットは、若者やカップルを中心に根強い人気がある。

今は昼だが、夜景であればそれはもう見事の一言に尽きるだろう。


少年は、そこからこの街の光景を目に焼き付けていた。
焼き付けながら、自問自答を繰り返していた。



「諦める?」

「今日の夜、行かなくても責める人は居ない」



だからその声も、自問自答の声でしかないと勘違いした。



京太郎「諦めない」

京太郎「ここで俺が行かなきゃ、あいつらがこの街で何するかなんて目に見えてる」

京太郎「俺が行かなければ、この街に未来はない」



「一人でも?」



京太郎「一人でもだ」



「諦める事は、悪い事じゃない」



京太郎「何でもかんでも、諦める奴なんて居ない」

京太郎「人間大切な物があるのなら、諦めないで生きていくことなんて出来やしないんだ」

京太郎「ここで諦めると失われちまう大切なものが、俺には多すぎる」

京太郎「その大切な物が、俺の事を覚えてなくても」

京太郎「俺にとって大切なものだって事だけは、変わらないから」



「……ばか」



京太郎「……ごめんな、照ちゃん」



いつからか、少年の視線は自身の背後へ。
気づいていて続けていたのか、気づいたから振り返ったのか。



京太郎「覚えてて……くれたのか」

照「私、無敵」

照「世界を変える事が出来る魔法でも、私だけは変えられない」

京太郎「……ったく、照ちゃんはホントによー!」



悪夢の最大の天敵?

そんなもの、太陽に決まっている。

理不尽系ヒロイン(褒め言葉)キタ━(゚∀゚)━!

>>752
京太郎の存在抹消と共に契約切れてるって地の文に

照とかいう最強のヒロイン

かくして須賀京太郎と宮永照の二人は、二人きりで決戦の地に挑む。


……フリーメイソンの計画のまま、彼らの想定するままに。


彼らは既に、崖下へと続くレールを走る列車に乗っているようなものだ。


このまま行けば死あるのみ。

そして、その運命を変えられるだけの介入者が、この世界にはもう残っていない。


この世界にはフリーメイソンと、二人の勇者と、それ以外の人間しかもう存在しない。


絆は、砕かれたのだ。

希望は無い。





















……ただ、一つ。

この世界にいまだ残っている、ほんの小さな歪みの欠片。

今は誰の視界にも入っていない、誰にも気付かれていない、ほんの小さな蝋燭の種火のようなか細い光。

それが見える。



場所は、荒川病院屋上。

そこに立ち空を見上げる少女の右手には、かつて腕輪:Nexusと呼ばれた霊石の連環に巻かれていた一つの石。

脈打つように赤い光を放つ石を、少女は空高く掲げる。



「さて、そろそろ行かんとなぁ」

「あんま遅刻し過ぎて、うちがサボってるみたいに思われるんは勘弁やし」



少女は歩き出す。




希望は、まだ繋がっている。




END.
第二十四話前編:X-Stream/極限の世界

START.
第二十四話後編:X-tra-men/超常の者達

投下終了。お疲れ様でしたー、だから早くに始めたかったんですよー!


今回の存在抹消はまさしく消しゴム
綺麗に消したら戻せない、痕跡も残らない
照は消しゴムをかけてもラミネートかかってて消えない、フリーメイソンはそもそも消しゴムをかけてない

しかし例外もあり


そしてそろそろ半沢流に倍返しタイム



では、今夜はこれにて。ここまでお付き合いいただいた方も夜更かしして頂いた方も感謝です

私生活の忙しさのせいで投下間隔安定しませんが、ぼちぼちオーラスなので締めていきます


では、おやすみなさいませー

怜「倍返しや」


大ヒロイン戦争勃発


照のヒロイン力114…334…514…810…9800…530000…まだ上がるだと!?



フリーメイソン容赦ねえ
でも京太郎の相棒達が止まらねえ

乙ー


フリーメイソンより怖い照と怜のヒロイン戦争が始まるんですね、わかります

乙ー
タイトルでなるほどと
まさに極限の世界

おつー

X-tra-menってX-menの正式名称だっけ

乙ー
絆はヤワじゃないって信じてる

乙っす
やることがえぐすぎる
そして理不尽系無敵ヒロインが頼もしすぎる

乙です

     _          _              _         _
    /::::::;ゝ-──- 、._/:::::ヽ             /::::::;ゝ-──- 、._/:::::ヽ
    ヾ-"´       \:::::::|             ヾ-"´        \:::::|
    /   _     _ ヾノ            /   _      _ ヾノ
    |   /::::::ヽ    /::::::ヽ |              |  /::::::ヽ    /::::::ヽ |
    l  (:::━ノ ▼ ヽ━:::)l             l (::::::・ノ ▼ ヽ・::::::) l
    ` 、  、、、 (_人_) 、、、 /             `、 、、、 (_人_) 、、、 /
     ノ`ー 、_      /               | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|  トン
   _/((┃))_____i |_ キュッキュッ      (,,)           (,,)_
  / /ヽ,,⌒) ̄ ̄ ̄ ̄ (,,ノ   \        /  |   >>1乙!!  |  \
/  /_________ヽ  \    /   |_________|    \

仮に鉛筆で書かれていたものが消しゴムにかけらて消えたとしても、筆圧が強けりゃ字の跡が残る
つまり完全に忘れていても残滓くらいは残ってるはず……!

イッチの作品ってテンポいいよなぁ…
あと3話で終わりなんて信じないぞ!

よかった・・・

実は四天王との戦いで食らった一撃が洗脳系や都市伝説暴走系の魔法で、ラミネートの上から黒マジックで塗り潰されたような状態だから消しゴムをかけられてなくて決戦の時になって京ちゃんを裏切り絶望させる照はいなかったんだね・・・

照の安心感が異常
京太郎が自分との戦いですら照の勝利を信じてたのがなんとなく分かるってのがもう

大沼がおやっさんを始末してなければ速攻でどうにかできたのになー

出先からおはこんばんちわ

取り敢えず明日か明後日後編投下予定ですー



http://i.imgur.com/dawi3pN.jpg
http://i.imgur.com/Dx7Lhc8.jpg
http://i.imgur.com/mm71rl6.jpg
http://i.imgur.com/8uwnV6N.jpg
http://i.imgur.com/WC1CDaV.jpg
特攻野郎Bチーム!



>>661
どうでもいい裏設定

切り札の魔法と見せかけた見せ札の魔法で照の無敵防御を抜き、照の注意をそちらに逸らしつつその一瞬の隙を突く
大沼は各種魔法で疲弊した照の対策を封じた上で周囲の空間ごと宇宙の彼方に転移魔法で吹っ飛ばして窒息死狙い
しかし照はその瞬間地面を叩きめくりあげその穴の中に逃げるフリをして、土煙の中で無敵を解除するリスクを背負って大沼が仲間の援護に使っていたパネル式転移魔法陣に乗り、脱出しつつマスカレイドの一体を変わり身カモフラージュに置いていく
そして能力を再展開して大沼達が宇宙への転移魔法を発動している内にまともに理性も言語も保てていない姦姦蛇螺の口から胃の中に
十数秒後、照を倒したと勘違いして安堵して出来たフリーメイソンズの精神的な油断を突いて姦姦蛇螺の腹をぶち破り、粘液まみれのまま逃走
現在に至ります

って感じの戦闘をイメージしてますです
本編じゃ冗長なのでこういうのは脳内だけで本編ではカットしてます
てるてるの戦闘中の恥ずかしい告白じみたセリフもカット


>>733-734
このスレでやってきた事全部リセットされたようなものなので
加えて死人すら出ていて、取り戻す手段すらこの世界には残っていないという

>>764
いえす



http://i.imgur.com/87A9oc1.jpg
テレ東の安定感

ハブられこまきちゃん

やっぱりテレ東は違った

てるてるが粘液まみれ……ふぅ

ブレないそれがテレ東

流石だな…

あれ?じゃぁフリーメイソンは何か考えがあって照を逃したわけじゃなくて
素で取り逃がした上に傷一つ付けられなかったってこと?

マスカレイドのこれまでの所業が悪辣すぎたからそれらと比べちゃうとね
スケールのでかいラスボスより範囲が狭くてもネチネチとした中ボスが胸糞てのは珍しくもないですし

大沼が悪としてマッスを上回れるか余計な心配をするくらい奴は本当に悪役外道として完璧すぎた

胃の中……粘液……つまり胃液で服が融けたり……ふぅ
しかし状況が状況とは言え初恋云々の相手と一緒にいて思うことないのかね
こうなる前の3日間とかになんかあってもおかしくないだろうし

>>782
これがりぼんみたいな少女マンガ雑誌で連載してる話なら
ラスボス前に告白し男女として1線越えるシーンが合ってもおかしくないんだがね

そうなれば~を卒業できるね…

姫様じゃなくてアコチャーなんだと思ったけどそういや姫様はまだゲームに出てないのね

二章で仲間に裏切られて三章で未来の自分に否定されて四章で仲間が死んで五章で自分がやってきたこと全部無かった事にされて

境遇だけなら畜生の神に愛されてるな

黒太郎世界だとてるてるはメイソンにつくんだよな
じゃあ黒太郎の童貞を奪ったのはてるてるって線は消えるのか?

>>787
奪った後に裏切るってのもありじゃね?
最愛の人が的な

黒さんをこれ以上いじめるのはやめるんだ!
魔物が「自分を好きでいてくれる人に殺してもらえるなら嬉しい」って共通項持ってるのが凄く重くて誰か一人に絞る図が想像できない

では今夜も21:00開始します


もうちょい早く始めたいのですがうぬぬ
多分一月後まで決まってるスケジュール見る限りではあと二週間くらいでこのスレ完結できそうです


http://i.imgur.com/vH7DhbH.png
なんだか最近拾ったダンロン画像がネクサスってる件



>>780
いえす
言い換えれば警戒し過ぎ、能力が弱まった自覚があってリスクを背負い何でもする覚悟で居た余裕の無い照の行動を読み違えたという感じでしょうか
強すぎる奴より、負けて隙が無くなった準最強の方が厄介だったという話です

>>782
京照は初対面の時から十年以上経ってるくらいですしね
慣れといえば慣れ
照も心を許した相手には無自覚な肉体的接触が増えるタイプでしょうし




http://www.youtube.com/watch?v=ErgRY_FnXpg

やっぱOPだけ見るとエロゲですよねこれー

ああもうあと2週間か……

あっという間だろうな

ちょうど完結と被りそうだな

このてるてるの腕グルグルを見るたびにどうしても電童が思い浮かんでしまう

リアルシフトドリルファイナルアタックですねわかります

最後のいいですともは最終話かねぇ

いいですとも!

はえーよホセ

>>794
かっけぇですよね電童
ユニコーンドリルを推したい気分

>>796
あくまで想定ですがラストいいですともは時間制限無し、やることに意義があるけど参加人数に意味が無い感じにしたいと思ってます



http://i.imgur.com/eyTFjGT.jpg
特に意味のない画像



投下はっじめーるよー

来たか

絶望の中で最後の戦いになりませんように

【能力使用可能状況】

【今話中、腕輪:Nextの追加固有能力を使用出来ます】

【ネクサスシフト、ジュネッスシフトの維持可能時間を一日に延長可能】

【現在スキルストック 2/5 】



【最終決戦】



【使用しますか?】



>>806

yes

使うとも

当然使用
もう出し惜しみ無しでしょ

使う

使用する

 




失われたものは戻らない。



それでも恐れず、未来(さき)へと進んでいく者達がいる。



この物語は、未来(さき)へと踏み出す物語。




 

咲の二次創作なんだぜってことかね

未来(さき)と咲をかけてるのか

園城寺怜は、百人が百人不幸だと断言する境遇だ。


高校一年生時に『都市伝説過剰発現症』を発症し、以後は死を待つ身となる。

それから三年。

三年間、それからずっとベッドからも出られない囚人のような毎日を送っている。


友人達は皆卒業した。

彼女はもう通える見込みもないと自ら進んで休学も解き、既に中央高校を退学している。


医者の見込みでは……彼女は、成人まで生きていられる見込みすら無いという。



未来は視えても、未来が無い。

未来を知っても、変えられない。

未来そのものに、希望が持てない。



それが園城寺怜に振り下ろされた罪なき処刑、無情で無慈悲で理不尽なギロチンだった。



いつの日からか気だるげなだけだった彼女の目は死に、生気すら感じられなくなっていた。

儚さを感じさせたその身は既に死人と変わらず、肉は削げて頬は痩けている。

車椅子が無ければ移動すらもままならず、何ヶ月も真っ当に声を出していない声帯は声を出すのも一苦労だった。



そんな彼女がある日の朝、目を開ける。

彼女にとっての一日とは生きるための一日ではなく、死に一歩近づくためだけの一日だ。

万人にとっての清々しい朝でさえ、彼女にとっては死のカウントダウンを告げる死神でしか無い。


ただ白い天井を見て起きて、医師の質問に頷いて、何事も無く白い天井を見て穏やかに眠る。

それを繰り返してただ死へと近づいていく、自分が生まれた意味すら考え尽くしてしまった日々。

常人の心の強度であれば既に自殺しているであろう発狂確定の日常。

その日もまた、彼女の心の柱をほんの少し削り抉る日でしか無いはずだった。



ただ、その日の朝は、少しだけ毎日迎えていたはずの朝とは違っていた。



怜「……?」



彼女が身体を起こすと、シーツの上を転がる物が見えたのだ。

きた、これをリアルタイムで見るために、受験生なのに、塾をさぼったんだよ!

勉強しようよ!

まずは勉強だ受験生

勉強しろよ!夏休み終わってんぞ!

落ちたな(確信)

怜「……こんなん、寝る前にあったっけ」



この部屋には、怜の肌を含めて色のある物がほとんど存在しない。

天井も床もベッドもシーツも調度品も、怜の肌ですら真っ白で生命の気配は無くとも清潔感がある。

だからうっすらと赤く発光しているその小石が寝る前にこの部屋にあったのなら、絶対に気付いていたはずなのだ。

窓は開いていない為に外から放り込まれたという事もない。



怜「……」



ふと、気づけば彼女はその小石を両手で握り、祈るように胸の前でその両手を組んでいた。

……暖かい。

脈打つその小石は心臓のようで、彼女の全身にほのかな熱を送り込んでいる。

彼女の覚えていない誰かがいつかの日に褒めた、栗色のサラサラとした髪が揺れる。

彼女の覚えていない誰かがいつかの日に褒めた、宝石のような深い色の瞳が揺れる。


彼女の手の中で、何かの欠片のような、翼のようにも見える赤い小石が脈動を早める。



怜「……立てる」



死人のようだった肌にはいつしか生気が戻り、骨と皮しか無かった死体同然の肉体には力が注ぎ込まれていた。

今なら走る事は出来ずとも、怜がここ一年は諦めていた歩き回る事すら出来そうだ。

虚無しか湛えていなかった瞳には光と熱が篭っており、彼女の中で枯れていた筈の『意思』が蘇った事を如実に伝えてくれる。



怜「なら、行かないと」



怜は病に冒されていた身とは思えないほどに、軽やかに階段を歩き登っていく。

汗が噴き出る。息が切れる。慣れない運動に負荷をかけられた肉と骨が悲鳴を上げ、心臓と肺も彼女に文句を叩きつけている。

それでも彼女は階段を駆け上がり、屋上へと向かう。

身体が心に対してあげる悲鳴が、強く強く彼女に命の鼓動を刻みつけていた。



怜「はぁ……はぁ……うっ、ごほっ、こほっ……あ、あった……!」



屋上にて彼女が見つけた物は、一本の紐。

とても長い。そして、ちぎれたような箇所が一箇所あった。

そのまま使えばただの長い紐だが、彼女は何故かその紐のあるべき姿を知っていた。

この紐は複雑な組み方を経て、複数の輪を成し、その狭間に幾多の石を通すのだ。



この紐はあまたの霊石を繋ぎ連環を成し、その果てに腕輪の形を成すだろう。

生きねば……

絶望がデカいほど希望もデカくなるって藤田が教えてくれた

希望を繋げる役を怜に持って来たか

怜「探さないと」



園城寺怜。

彼女にはずっと、ぼんやりと感じていた違和感があった。

それはくだんの力に目覚めてから日に日に強くなっていき、今日この日にようやく彼女自身に自覚される。



……魂が、半分だけ足りていない。



彼女にとって己の魂は、欠けているような気がしていた。

感じの凸凹のように、対となる何かがあるような気がしていた。

誰かがどこかで、自分を待っていてくれているような気がしていた。



一心同体の残り半分を、彼女は求めていた。



一人で歩いていても、いつもは誰かが隣に居るような気がしていた。

歩き疲れた時、背負ってくれる誰かが居たような気がしていた。

自転車だって、誰かが漕ぐその荷台に乗るのが日常だった気がしていた。



誰かと握った手のぬくもりを、彼女は探していた。



いつしかその足は病院の屋上を降り、病院の外へ。

目指すべき場所は紐を通した石が、彼女の意思に応え伝えてくれる。

今日でも昨日でもない場所へと向けて、彼女は歩き出す。




そして園城寺怜は、欠けた己の半身を見つける小さな旅に出た。

彼女がまず通ったのは、一本道の路地。


夜になれば人も殆ど通らないだろう。

一部が車でも突っ込んで壊れたのか新しくなっている塀と、電柱の傍に添えられた花束から何かを推測する事は出来る。

しかし、それは怜がするべき事ではない。



怜「ひとつめ」



その花束に添うように、地面に転がっている石を拾う。

意志を、意志を、遺志を拾う。


加害者でもあり、被害者でもあり。

和(のどか)な日常すら許されなかったこの現実も、彼女は拾っていく。



怜「さて、次行こか」



失われたものは戻らない。


幻覚か、在りし日の残像か。


怜が去った後のその場所、世界が揺れて、手を振る二人の少女の影が見えた。

のどっち・・・

京太郎が助けた場所にあるのか……

うわー

あかん モブさんたちみんな死んでまう

次に彼女が訪れたのは、子供が元気に走り回っている公園。

子供達の親の姿もチラホラと見え、ここが幼児や小学生にとって格好の遊び場である事が見て取れる。

そんな公園のブランコに座りながら前後に揺れる、外見だけは小学生なために全く浮いていない少女が居た。



怜「こんちわー」

穏乃「え? あ、はい、こんにちわ」



考え事をしていた穏乃の視点からすれば、怜は突如現れた謎の人物にしか映らない。

怜は穏乃が座っていたブランコの隣のブランコに座り、そのまま漕ぎ始める。



穏乃「あの、貴女は?」

怜「気にしない気にしない。それよかどしたん? 遊ぶ子供達見て考え事しとった風に見えたけど」

穏乃「はぁ……確かに、そうなんですけど」



横の怜に向けていた視線を、穏乃は再び遊び回る子供達に戻す。



穏乃「……なんか、欠けてる気がするんです」

怜「なにがや?」

穏乃「……もう一人、居たような。大切な……ああ、なんかよく分かんない!」

穏乃「忘れてるって感じじゃないし、そんなに大切なら絶対忘れてるはず無いのに!」

穏乃「何か、誰か、何かよく分かんないけど、子供の時ここで遊んでる思い出に」

穏乃「一人、欠けてるような……なんだか、そんな……!」

怜「ふーん……な、気になったんやけど、さっきから握ってるその小石はなんなん?」

穏乃「え? これですか?」



ブランコに揺れる穏乃の右手には、宝石のように綺麗な石が握られている。



穏乃「帰り道で拾っちゃって……これを拾って、なんか気づけばこの公園に」

怜「へぇー……な、な、その石、うちにくれんかな?」

穏乃「え? いいですけど」

怜「ありがとさん」



穏乃から受け取った小石を、怜は慣れた手つきで紐に通して連環を成す。



怜「ふたつめ。ほな、またなー」

穏乃「あ、はい。さよならー」



失われたものは戻らない。



怜「さて、次行こか」

これもしかして石の欠片が世界線を引っ張って戻そうとしてんの?

毎度毎度だけど、メインヒロインだよね、こういう役割

怜「あれ、次どっちやっけ?」

良子「お困りですか?」

怜「あ、すみません。かくかくしかじかな場所を探しとるんですけど」

良子「その場所なら、まるまるうまうまで道なりに行けばおっけーですよ」

怜「あ、あんがとです。これで行けそうですわ」

良子「お構いなく、なんとなく、手助けすべきだと感じましたので」



次に彼女が訪れたのは、この街を両断する河に掛かる橋の一つ、その橋の下。

その橋の下には、真っ白なワニの背を撫でる少女が居た。



一「ねえ、ロロン」

一「ボクに向かって何度も吠えて、何を伝えようとしてるの?」

一「分かんないよ、分かんないけど……何故か、胸が騒ぐんだよ」

一「キミはこの胸騒ぎの答えを知っていて、その答えを教えてくれようとしてるのに、ボクには分からない」

一「なんだか、そんな気がする……」


怜「ヒトやない動物には、あの外道らは消しゴム不要と考えたんかな」


一「……っ、誰?」

怜「通りすがりの通行人や。お気になさらずー……お、あったあった」

一「あ、その小石はいつの間にかロロンが咥えてて、僕が何度言っても離さなくて……」



ワニのロロンが絶対的忠誠を誓う主に対し、その命令を無視してまで離そうとしなかった石。

しかし怜がロロンに近づくと、ロロンは唸るような鳴き声を一つ向け、怜へとその石を差し出した。

「頼んだぞ」と伝えるように、確固たる意志を持って差し出した。



一「え、ロロン?」

怜「ん、確かに受け取った。みっつめ……ほな、またなー」

一「え? え? あ、さようなら」



主人たる国広一は、いまだ何が起きているかも分からないようだ。

失われたものは戻らない。



怜「さて、次行こか」

メインヒロインとサブヒロインの差がここまで大きいとは思わなかった……!

これ都市伝説が裏ヒロインなんじゃね?  アンサーさんはよ

ロロンがメインヒロイン化するって?

ロロンさん…!

想いを託すロロンさんマジヒロイン

新子憧、高鴨穏乃、宮永咲…

みんなヒロイン力が高い女達だった…

しかし彼女達が小さく見える程…

園城寺怜は(ヒロインとして)格が違う…!

次に彼女が訪れたのは、とある公園。

昔に何か事件でもあったのか、他の公園と比べると人気があまりない。

そんな公園の一角に、花束を置く女性の姿。

女性とは行っても、その大人びた雰囲気と立ち振舞からそう見えるというだけで、年齢は大学生程度かもしれない。



怜「こんにちわ」

哩「……? こんにちわ」

怜「その花束、大切な人がここで?」

哩「……はい、可愛い後輩でした」



その話し方はイントネーションにどこかの方言のクセが残っているものの、初対面の人に向けられる整った標準語。



哩「単純に、被害者というわけでも無かったんです」

哩「ただ、あの子の復讐の動機は相応で……だけどあの子が受けた罰は相応でなくて……」

哩「……そう思ってしまうのは、身内贔屓なんでしょうね。死んでしまった子の遺族の気持ちもあるでしょうし」



そして、その右手には鮮やかな色彩の石。



哩「ずっと昔の事だったから、もう割り切れていると思ってました」

哩「ずっと昔の事でも、忘れる事は絶対に無いと思ってました」

哩「……なのに、いつの間にかポケットの中に入っていたこの石を見てから」

哩「『そうじゃない』『そんな終わりじゃなかった』って、自分の声がして……!」

哩「そげん『もしも』は無かったと! 私が一番良く知っとーに!」



自分にもよく分からない激情に震える彼女の姿は、今にも泣きそうで。

けれど、泣かなくて。

そんな彼女はもう子供じゃない、大人であるように見えた。



哩「……すみません、初対面の人に愚痴ってしまって」

怜「ええてええて、気にせんで……ほなお詫びって事で、その石貰ってもええかな?」

哩「これですか? こんなのでよろしければ」

怜「あんがとさん。うし、よっつめ」



失われたものは戻らない。



怜「さて、次行こか」



幻覚か、在りし日の残像か。


怜が去った後のその場所、世界が揺れて、涙を流す哩に寄り添う少女の影が見えた。

アンサーちゃんが敗北後に自分に待っている運命を質問される薄い本はよ

哩姫京が過去で決着付けた公園だな
哩さん辛いだろうに

救えなかった人の残滓と残された人の想いが合わさりこちらにダメージを及ぼす

欠片って幾つあんのかな

次に彼女が訪れたのは中央高校、その屋上。


去年まではこの学校の生徒会長のお気に入りの場所で、彼女が卒業してからは誰かが受け継ぐようにお気に入りの場所としたらしい。

その誰かを知る人なんて、もうこの世界には一人も居ないのだが。



怜「あ、先客。こんちわー」

煌「……こんにちわ」



しかし、その屋上には先客が居た。

学校全体を見下ろすように、どこか影のある物憂げな表情を向ける少女。

後悔のような、懺悔のような、悔恨のような、しかしそれらの全てを押しのける自虐的な感情が見える。

彼女は生来嘘が苦手なのだろう。

それは彼女が笑っていられる状況ならプラスであったのだろうが、今はどこまで行ってもマイナスにしかならない。



煌「園城寺さん、でしたか」

怜「あれ、うちのこと知っとるん?」

煌「……昔、資料で」

怜「あ、なーる。うちの事まで気にかけとったくらいのお人なら、いい生徒会長になれたんとちゃうかなぁ」

煌「無理ですよ」



彼女は対等な目線から生徒達と目を合わせるでもなく、屋上から一方的に生徒達を見下ろしている。

それは見下しているのではない。ただ、自身の後悔から下を向く事でしか人を見れなくなっているのだ。

花田煌は、前を向いていない。



煌「……なんだか、今になって気付くんです」

煌「無力も、役に立たない自分も、重圧も、責任も、誰かに必要とされない自分も」

煌「そういったもの全部全部気にせず突っ切ってしまった方が、楽だったのかもしれないって」

煌「私、逃げてしまった事を後悔してます」

煌「……私は、自分の自信の無さを理由にして、カラにこもったままだった」



彼女は、自身のカラを砕けなかった。

自分のカラの中に逃げ込んで、誰かが必要としてくれた期待に気づけなかった。



煌「……今更、本当に今更です」

煌「なんとなく、私も誰かに必要とされてたのかな、なんて思ってしまったから」

煌「そんな誰かなんて居なかったのに。なのに、こんな……!」



呻くように、祈るように、彼女は手の中に握った物を屋上から放り投げようとする。

そんな彼女に、怜がストップをかけた。

怜「あ、ちょい待ち。捨てるんやったら、それうちにくれへん?」

煌「……良いですよ、別に。ゴミだから捨てようとしただけですし」

怜「ん、いつつめ。あんがとなー」



放物線を描いて緩やかに放り投げられた石は、怜の右手によってキャッチされる。


失われたものは戻らない。


……この会話の中で、花田煌は一度も「すばら」と口にしなかった。



怜「さて、次行こか」

ダンガンロンパで苗木君が絶望の中でも進み続けるからこそ希望だって呼ばれてたの思い出した

希望は絶望に負けないって、ばあちゃんがいってた。

さっきからなんでみんな京ちゃんのお母さんの話ししてるの?

これ、3章までの話数分?
出てきた人も順番もそうだし
あ、咲いねぇ

次に彼女が訪れたのは同じく中央高校、その体育館。

体育館からは大きめのボールが跳ねる音やボールが床を叩く振動、シューズの底のゴムがキュッキュと鳴らす音が伝わってくる。

「もう一本!」「ナイッシュー!」と言った張り上げられる声は、聞いているだけで気合が入りそうだ。

そんな体育館の入口で、覗きこむようにぼうっとたたずむ少女が居た。



怜「やっほー」

桃子「な、わわっ!? ……や、やっほー?」

怜「ノリええなぁ。嫌いやないで、そういうの」



東横桃子のマメすら無い……マメすら見当たらなくなってしまった綺麗な右手には、絢爛な石。



怜「『混ぜてー』って言わへんの? あそこでバスケやっとる子達に」

桃子「……言わないっすよ。言う理由が無いっす」

怜「バスケ好きじゃないん?」

桃子「私、別にそれが好きだからって理由だけで部活に入るタイプじゃないっすよ」



好きだという事は否定しない。

ただそれだけを理由に迷いなく突っ走れるのであれば、影が薄いなんて言われはしないと、彼女は自覚している。



怜「夢とか、陳腐な言い回しやけどあったりしないん?」

桃子「……夢……っすか。『こんな風になりたい』って人なら、居たんすけどね」

桃子「結局私はその人に失望して、その人はもう卒業しちゃって……それだけの話しっす」



彼女が憧れた存在感のある人物、影の薄くない頼りにされて皆の中心にいる人物は、もう居ない。

その人物は東横桃子が自分の心に決着をつける前に、全てを背負ったまま桃子と向き合って話をする事もせずに去ってしまった。

桃子は自分の影と向き合い乗り越える機会すら、知らず知らずの内に奪われていた。

薄くもなく濃くもなく、いびつに歪んだ影は桃子にいつだって付き従い、目を逸らす事すら許さない。



怜「部活入って夢追いかけてー、とかはもうしないんか」

桃子「そんな『もしも』は無かったんすよ。しないっす」

桃子「……なんだか、誰かもなんでかも知らないのに、誰かに怒られそうな気がするっすけど」

怜「……もしかしたらその誰かは、もしもの世界であんたの夢を応援してた人かもなぁ」

桃子「あははっ、そりゃ素敵っすね」



失われたものは戻らない。



桃子「はい、この石どうぞ。欲しかったんっすよね? さっきじっと見てましたし」

怜「お、くれるんか? ほなありがたく。むっつめやな」




怜「さて、次行こか」

>>846
咲ちゃんは一番最後にもう一回出番があるから……
巫女さん軍団に関してはこっちに来てないから除外するとして、あと4~6くらいあるか

胃が痛い…

絆の数だけ石がある

あ、生きてるやつは意志があるし死んでるやつは遺志があるのか

セイクリッドセブンを思い出した

次に彼女が訪れたのは同じく中央高校、グラウンド。

今日のグラウンドを割り当てられたのか、女子サッカー部が元気に走り回っている。

走り回る部のメンバーもそれを見守る数人にも、園城寺怜の知る顔が何人か居た。



怜「こんちわー」

浩子「んん? あ、こんちわです」

怜「卒業生が何人か居るみたいやけど、なんかあったん?」

浩子「今日はOBが来てレギュラーしごいてくれてんですわ。先輩だから三年もきっちり上から抑えてくれますし」

怜「ふーん……竜華の方は時間の都合がついたからセーラの付き添いってとこかいな」

浩子「忙しいのに来てもらって本当に頭が下が……って、お二人の知り合いですかいな」

怜「まなー、船Qも頑張り」



走り回る顔ぶれの中には、泉の姿も見える。

きっとこの光景は最悪ではない、この世界に残された数少ない光景なのだろう。

けれど、次善以下だ。

園城寺怜は、この光景よりももっと最善に近い結末を知っている。

彼女は幸せな世界より最高に幸せな世界の方が良いに決まってるじゃないか、と。

胸を張って言えるくらいには欲張りだ。



浩子「……あれ? そのあだ名知ってるって、私と会った事ある人ですか?」

怜「さーなぁ、それより泉からなんか預かってへん? 練習中や試合中にポケットの中に物入れたくないとか言うて」

浩子「よく分かりますね……確かに、グランドで拾ったとかいう石を預かっとります」

浩子「これ拾ってからなんか泉が考えこんどるんで疫病神みたいですし捨てちゃいたいくらいですわ」

浩子「アイツ、何も考えてない時が一番強いくせして考えこんでよくプレシャーに潰される困ったちゃんですし」

怜「それうちのなんやけど、貰うてええかな?」

浩子「あ、そうでしたか。はいどうぞ」

怜「……そんなあっさり渡していいん? うちが嘘言っとるかもしれへんのに」

浩子「そんな石ころ自分の物にするために生徒会長相手に信用勝負なんてバカ居ませんよ。嘘言ってる雰囲気もないですし」

浩子「それに……まあなんとなくです」

怜「なんとなく?」

浩子「なんとなく、貴女がこれの本当の持ち主に返してくれる気がするんですわ」

怜「……あんがとさん。これでななつめや」



失われたものは戻らない。



怜「挨拶もせんでごめんな、セーラ、竜華」

怜「……うちかて、忘れとる姿を見るのが辛い相手はいるんや」



怜「さて、次行こか」

あ、チーム千里山だ

次に怜がどこかを訪れる前に、校門を出ようとする彼女の目には一人の少女が映る。

赤いマフラー。それはその少女自身が流した赤でなく、誰かに流させた赤。

赤い色なのに暖かみがない。厚着をしていても、その心はとても寒そうだ。



怜「何しとんの?」

宥「? ……今日の夜、待ち合わせてるから、それまで暇潰し」

怜「そか。制服は着とらんみたいやけど、ここが母校なん?」

宥「うん」



このまま何もなければ、彼女は今夜の最終決戦に参加するだろう。

……京太郎達と、敵対する形で。その場でその残酷さを知らないのは、宥自身だけという最悪かつ皮肉な形で。

場合によっては、躊躇い迷い動揺する京太郎の心の臓を、宥が振るった刃が抉り取るかもしれない。

それを笑って悪の一味は眺め楽しむのだろう。

最高の娯楽として、可能性として京太郎の殺害後に宥の記憶を擬似的に戻して苦しめるぐらいはやりかねない。

最低に最悪な、ありえる未来。



怜「これ、落としたで?」

宥「え? これ、私のじゃ……」



怜がここで彼女の足元に落ちていた、小さくも暖かな石を彼女に手渡していなければ、の話だが。



宥「……きもちいい……なんだろ、これ……」

宥「……ああ、なんだか……あったかい……」



進歩も進化もしていない、自分の外套の中で寒さに震える弱さ。

寂しさが生む孤独。孤独が加速させる寂しさ。

悪循環の中で彼女を蝕む冷たさを、その小さな石に込められていた人の体温に近い熱の欠片が和らげている。



怜「あ、勘違いやった。これうちのや、ここのつめやな」

宥「……あ」



ひょいっと宥から石を取り上げ、慣れた手つきで紐に通していく怜。

宥は名残惜しそうに手を伸ばしたが、結局自分の物では無いので口ごもるしか無い。

物理的であっても口先であっても、宥はここで他人に暴力を振るおうとはしなかった。


怜「……迷いがあったら、誰かに呼ばれててもサボってええんやで? ほな、またなー」

宥「え? ああ、うん、さようなら」



失われたものは戻らない。



怜「さて、次行こか」

これ、3章までの話数分?
出てきた人も順番もそうだし
あ、咲いねぇ

>>1、石のカウントズレてない?
細かいけど>>1のことだから石の数に意味とか持たせそうだし、気になったんでそこだけ

イケメン無罪と言う都市伝説を世界が発現すれば京太郎が重婚しても無罪になるね

>>855
たぶんだけど「京太郎の足跡を辿ってる」んだと思う
今回の都市伝説があれだし

怜「道順指示ありがとさん。助かったわ」

尭深「……家、近かったから。それに私の分まで電車代出してもらっちゃって……」

怜「ええてええて。こっちも助かったんやからおあいこや」

尭深「……うん、そうだね」

怜「お礼に今度あんさんが気に入る茶飲み友達連れて来たるわー。相棒も茶好きやったしな」

尭深「えっ」



次に彼女が訪れたのは、とある駅から歩いてほどない場所にある墓地。



怜「こんにちわ」

透華「あら、こんにちわ。貴女もお墓参りですの?」

怜「死者を悼む感じではあるなぁ」



余談ではあるが、ここは龍門渕邸から離れた位置にある共同墓地。

生まれながらの『一般市民とは違う』気品を振りまく龍門渕透華が居るには、どう見ても場違いな場所だ。

それでも彼女は白魚のような細い手の先を真っ赤にしながら、冷たい水と汚い雑巾で、一つの墓石を綺麗にしていく。

それをみすぼらしい、なんて言える者は居ない。

その光景は綺麗でなくとも、ただただ美しかった。



怜「……お嬢様っぽいのに、頑張るなぁ」

透華「お嬢様かどうかは関係ありませんわ。ここには、妹……のように思っていた子が眠っていますの」

怜「そか……な、ちょっと聞いてええかな?」

透華「なんでしょうか?」

怜「その子の死に関して今でも、後悔したり泣いたりする事はないんか?」

透華「ありえませんわね」

怜「うひゃあ、即答かいな」


透華「勿論、一度は脱水症状で倒れるまで泣きましたわよ? 泣かなければ、それはあの子に対して何も思ってないようで失礼です」

透華「ですがその涙はあの子の追悼と、自分の中の気持ちとの決着のためだけのもの。いつまでも泣いているのはただの甘えですわ」

透華「あの子の思い出は私の中に、それだけで十分」

透華「それなら後は、元気にやっている私の姿を見せてあげるのが最大の供養というもの」

透華「それが残された者の……あの子の死を背負いながらあの子の分まで生きている者の、義務ですわ」


怜「……かっくいー」

透華「? 何かおっしゃいました?」

怜「いや、別に」



天江衣や須賀京太郎、死を受け止めそこねて苦悩していた者達とは違う。

たった一人で誰の力も借りる事無く、死を真正面から受け止め、悲しみ、飲み込んだ少女。

目立ちたがる性格に相応な、天然の精神的強さと格好良さがこんな短時間で見て取れる。


……怜は、彼女が曲がりなりにも特定ジャンルにおいて『最強』と呼ばれる所以の一つを、この時ようやく理解した。

ポトりと、せっせと汗をかきながら墓を掃除する透華の背後にどこからとも無く小石が落ちる。

まるで月から落ちてきたかのようなそれを、怜は手慣れた手順で紐に通して行く。

月光の髪色の姉妹の絆、それは死をもってしても引き裂けなかった。



怜「それじゃ、うちは帰りますわ」

透華「お墓参りは良いんですの? どなたか、亡くなられた方に会いに来られたのかと思いましたが」

怜「当たり。んでもって、それはもう十分なんや」

透華「?」

怜「これで、ここのつめ」



失われたものは戻らない。


幻覚か、在りし日の残像か。


怜が去った後のその場所、世界が揺れて、透華を誇らしげに見守る少女の影が見えた。

衣が死んだ世界線か

さらっとたかみー出てきとる

透華はすげーな
安価で透華は選んでたら京太郎引っ叩く役目とか貰ってた気がする

怜「お」

憧「ん?」



次の場所へと向かう途中で、怜がショートカットに選んだ小高い丘。

それは今日に限って珍しくも相棒と時間差によるニアミスで、怜にとっては最大級に幸運なタイミングだった。

備え付けのベンチに座り眉根を寄せて唸っている、新子憧と出会えたのだから。



怜「そこなお嬢さん、何読んどるん?」

憧「……なんか今日は初対面で馴れ馴れしい奴によく会う日ねえ。昔クラスでやった、演劇の台本よ」



彼女は片手で頭を抑えながらも、もう片方の手で台本をめくり食い入るように読んでいる。

読み進めれば読み進めるほどに苦しそうに、辛そうにしながら、それでも彼女は読み進めるのをやめはしない。

その行動はひどく矛盾していながらも、強い意志によって敢行され続けている。



怜「台本なんか見て、唸るもんなんか?」

憧「……唸ってんのは、頭が痛いからよ」

怜「医者行ったらええんとちゃう?」

憧「薬出しとくけどなんでもないって言われたのよ……ああもう、今朝からずっとこうなの」



彼女はその原因に気付かない。気付けない。

それは違和感となって現れた事自体が奇跡に近く、それを取り戻す手段は存在しない彼女の過去。

違和感が痛みとなって表れたのは彼女だけであり、それ自体が彼女の性情を表していると言える事に。

彼女が今自分自身に与えている痛みは、苦しみは、懊悩は、彼女の魂がそれを失ってはならないと訴えているものだ。

欠けた『何か』を、そうやって自覚し続けるためのものだ。

たとえそれが、もう戻っては来ない過去の残像であろうとも。



怜「その台本のロミオ役って、誰だったん?」

憧「……クラスの誰かだったと思うけど、もう忘れたわよ」

怜「あんたがジュリエット役やったのに?」

憧「いちいちうっさいわね……! 朝のやつ思い出してまた頭痛くなってきたじゃない!」



その痛みを理解していながら、怜は憧に向けて重ねて言葉を紡ぐ。

それは新子憧の脳髄を非物理的に抉りながらも、その果てに彼女が何かを取り戻す事は決して無い。


園城寺怜のその時の表情を、見ていた者は誰も居なかった。

淡はまだだっけか

憧もやっぱり忘れてなかったんだな

>>865
モモ→(巫女さんズ→淡)→泉→宥姉→(怜パート)→ころたん→(黒青親子→咲さん覚醒→豊音→)憧
括弧で括ってあるのが今の所飛ばされてるor色々と回収不可能な足跡……まあ淡も魔物だし多分あるさ

憧ちゃんは無敵の力なんて持ってねーもんよ仕方ねえ

怜「な、ここって柵越えたら崖みたいになっとるけど」

怜「こっからうちとあんたがぶら下がって、誰かがここに来たとして」

怜「その誰かは、どうするんやろな」

憧「うっさい、うっさい、うっさい!」

憧「アンタが何か喋る度に、私の頭は割れそうになってんの分かってんの……!?」



それは期待か。巫山戯か。失望か。希望か。嫉妬か。同情か。それとも、それ以外の何かか。

……そのどれかであることは、間違い無いのだろうが。



怜「その髪飾り、誰に貰ったん?」

憧「こんなの、いつ買ったのかすら覚えて――」

怜「なんかの記念日に誰かからもらって、それで気に入ってずっと付けとるとか」

憧「――――」



新子憧の髪を留めるアザラシの可愛らしい髪留め。

園城寺怜は、その髪留めの由来を知っていた。

クリスマスの日に、誰かさんから貰った髪留めを、後生大事にしつつ見せびらかすように付け続けていた日々を知っていた。



だから憧が耐えられないとでも言うように、その頭痛から逃れるように、その髪留めを地面に叩きつけたのも当然の事だ。

だから憧が逃げるように、全速力でこの場から逃げ出したのは当然の事だ。

だからその涙を流す横顔が、怜にも読み取れた憧の苦しくてたまらない内心が、去り際に怜の心を薄く傷つけていったのも当然の事だ。


当然のように、それは自業自得だった。



怜「……あかん、ちょっといじめすぎた」

怜「ま」

怜「うちが悪かったし後で謝っとこ。だってしゃあないやん」



怜は地面に叩き付けられ、砕けて割れた髪留めの中から転がり出てきた石を拾い上げる。

何もそんな所に居なくたって良いだろうと、怜は内心ひとりごちる。

だから憧は頭痛に悩まされたりしてたんだ、と。



怜「これでキリよく十個、と」

怜「……憧がうちに思う所があるように、うちかて憧に思う所はあるっちゅうに」

怜「なんでも本音吐ける相棒に唯一吐いちゃいかん内容やしなぁ。難儀なもんや」



ほんの少しだけ自分を棚上げし、彼女は前へと進んでいく。

失われたものは戻らない。



怜「さて、次行こか」

リアルでクリスマスの日にやったクリスマス特別会の話だな
京太郎が憧にプレゼントした髪留め

あれ、京太郎がいなかったことになってんのに京太郎がやった結果が残ってんの?

怜「わざわざ署長さんが、ありがとうございますー」

藤田「いやなに。落とし物の中にあったその石に心惹かれて勝手に持って行って眺めていたのは私だしね」

藤田「不思議と、見ているだけでやる気が出てくる石だ。勝手に持っていた私が直接持ち主に渡すのがスジというものだろう」

怜「姉帯さんって方、今日はお休みで?」

藤田「無断欠勤だな、珍しく」

怜「……そうですか」



11個目。

気のせいか、警察官たちの活気が、とても熱のあるそれに感じられた。



怜「……三尋木家の実家とか、知らんけど」

怜「うちが唯一目にしてない絆やから、わっかんねーんやで」

怜「本人が居ないとなぁ」



12個目。

事実上のオカルトアイテム屋に改装される前の、老舗の駄菓子屋に転がっていた楕円の石。



竜華「怜! 探したで、病室抜けだして何を……」

怜「てい」

竜華「ぎゃふんっ なにすんやこん病人!」

怜「やかましい。身内贔屓もあって、今の竜華は色々と嫌なんや」

怜「なまじ何考えてたか誰をどう思ってたか分かったとった分な」

竜華「?」

怜「それにうちは抜けだしたんやない。主治医の許可貰っとるし、伝達ミスやないか?(大嘘)」

竜華「え、ホンマ? 電話して……ってあのお医者さん携帯嫌いやった!」

怜「なら病院まで走って聞きに行くしか無いなぁ」

竜華「ほな行ってくる! 怜はここ動くんやないで! 嘘だったら承知せえへんからな!」

怜「へいへい」

怜「(病院備え付けの電話にかければええのに、焦るとホントだめな子やなぁ)」



13個目。

竜華の頭をはたいた時、何故か竜華の服の中からコロコロと転がり落ちた球形の石に、気付けたのが怜だけだったのは道理だろう。




怜「……事務所に来れば、残りは全部集まると思ったんやけどなぁ」

怜「そう上手くは行かへんか」



14個目は東北の空から、雲を切り裂く流星のように。15個目は南西の空から、無垢な光の刃のように。

16個目は、何も無い筈のその建物から、家族の暖かみを伴って。事務所の前に来た途端、怜の手元に向かって飛来する。



怜「あと、四つ」

流星……彗星さんか!

>>871
ここまでの流れを見る限り石の周りだけ元の世界の痕跡が微妙に残ってる
たぶん石の方が気を使って髪飾りと同化して無かった事にならないように頑張ってたのかと
じゃないと普通中から出てこないし

まあ推測だけどな!

マホ士栗黒かなぁ?

「あら、苦労してるみたいね。これで17個目かしら?」

怜「……えっ?」

「まあ何やってんのかさっぱり知らないし分かんないけど、とりあえず代表者としてこれ置いてくわね」

怜「……うわぁ、ホンマどういう人間やねん、アンタ」

「困った時の子供の味方、学生の味方。人呼んでトイレの花子さん……ってね」

怜「ビビるわマジで」

「じゃ、私ジャンプ読んでから帰るわね」



怜「……アレと同級生でアレが生徒会長だった学校生活の可能性もうちにはあったんやなぁ。ちょっと想像できんわ」

怜「ま、そんなもしもの話は後でええ」

怜「あと、三つ」




「あと二つだよ」

怜「お?」

「なんか知らないけど、この石をアンタに渡せってガイアが私に囁いてんの!」

怜「メンズナックル理論を現実にしよった……!?」

怜「なんちゅう、恐ろしい子……!!」

「ふふん、ホシガミだしー?」

怜「『地球には意思がある』、かー……人類の記憶や善悪の行く末なんて、気にしとらんスケールなんやろな」

「よく分かんないけど『ジジイは応援しない』『お前の友達は応援する』ってさ、私に」

「……私友達居ないんだけど……ん、あれ? 居なかったよね?」

「まあ人間みたいな言語も意識もないからなんとなくだけどね」

怜「……うひゃあ」

「ガイアが何言ってのかさっぱり分かんなかったし、私帰るねー」

「……あれー? 私、友達居なかったっけ……」



怜「……」

怜「アカン、あの子ラスボスの素質アリや」

怜「とりあえず、あと二つ」

ガイアすげぇ
後は明……謎のあの人とか?

あと二人…ということは、マホ咲か?

会長ってすごい

改めてそう思った

あわあわぱねえ

流石だね

まあウルトラマンを2体も生み出したりする星だしな

ガイアさんデレまくりじゃないっすか

すこやんか黒マホ士栗か照か傘の人が持ってるだろう

つーかあの謎の女さんは記憶消えてないんじゃね?元々別世界の人だし

あわあわ√行く場合はガイアさんに「娘さんを僕にください!」って土下座しないとダメなのか

まぁジジイ勝ったら確実にガイア汚したり壊したりあるしね
>>886
事実上常に同居状態で見張られてるからいいんじゃね?
駄目ならそっこで局所的災害が起こりそうだけど

>指定の人物の存在を最初から無かった事にする

ってあるから須賀京太郎っていう括りなら消えてる可能性が微レ存

怜「そこな女子中学生」

マホ「はい?」

怜「悪いけど、このスチール缶の蓋開けてくれへん? 蓋がかったくてしょうがないんや」

マホ「む、それは難儀ですね! マホも力には自信ないですがおまかせください!」



スチール製のペットボトルのような缶は、蓋を回して外さなければ中身が出てこない。

そして時々、本当に時々溶接を間違えたように蓋が固くなっている時がある。

今の彼女達が苦戦奮闘しているスチール缶のように、だ。



マホ「うー……ダメです、無理でした!」

怜「んー、ホンマに?」

マホ「無理ったら無理ですよ! マホは自慢じゃないですけどスポーツテストでは全科目ビリッケツです!」

怜「ホンマに?」

マホ「え、あの、その」

怜「目、瞑ってみ」

マホ「あ、はい」

怜「よしよし、素直やなー。そんでもって、助けを求めてみ」

マホ「助け? 声を出せばいいんですか?」

怜「自分の外側の他人やない。自分の内側の他人や」

怜「一番頼りになるキミの友達は、誰よりもキミの心に近くにおる」

怜「うちを信じて、その友達を信じて、口を閉じて助けを求めて、さっきのスチール缶にもっかい挑戦してみ」

マホ「……は、はい!」

マホ「(自分の、内側に……?)」



集中。マホは目を閉じ、初対面の人の言葉を素直に信じ、自分の心の奥へ。

ひどく危なっかしい彼女だが、そんな彼女にを支える大切な人が居た。

それは書き換えられた世界に乗じて、その思い出と共に消え去ったかに見えたが――



マホ「……? わ、わっ!?」

怜「ん、やっぱ出来とったか」



その一人は、今でも彼女に加護を与えている。

直接無かった事にされたわけではない。

それでも、世界から存在ごと消されてしまいそうになっても、その友情だけは消されなかった。


マホの手によって口の部分が開けられるどころか、握り潰されている事がそれを証明している。



マホ「……あれ? なんで、私、泣いて……」

マホ「泣いてるの、私だけじゃない? ……貴女は、誰?」

マホ「私の中で泣いている貴女は……誰……?」

マホ「なんで、そんなに悲しそうなの……?」

士栗ちゃん……

そりゃ泣くよ…

士栗は覚えてるんだな……

無かった事にされるとは、そういう事。

この世界におけるマホは平穏無事に過ごし、友達と笑い、幸せな日々を送ってきた。

悲しむこともなく、苦しむこともなく、大切な人と死に別れることもなく。



そんな幸せが、今の夢乃マホには苦痛でしか無い。



マホ「……うっ、えぐっ、な、なんで……こんなに、悲しいの……?」

マホ「やだ、やだ、やだよ……!」



『全てを無かった事にして、幸せで平凡な、誰も傷つかなくて済んだ世界の過去にしてあげよう』。


そんな甘い誘惑があったとして、あらゆる人間が乗るかといえばそうではない。

少なくとも、夢乃マホは乗らない。


あの過去を。彼女が死んでいった悲しみを。自身の無力への怒りを。

残された意思を継いだ過去を、無かった事になんてしたくない。

悲しみを受け止めた過去の先にある今を、夢乃マホは生きていたからだ。



失われたものは戻らない。



彼女の記憶は、消し去られたまま戻っていない。

彼女がただ悲しんでいるだけなのは、彼女がただ涙を流しているだけなのは、そういう事だ。

悲しみを奪われた悲しみ、とでも言うべきか。



その涙が地へと流れ落ち……いつからかそこに転がっていた、桜色の石に受け止められる。

それは精一杯、マホの涙を拭おうとしているかのように。

その石を拾った怜は、マホの涙を『代わりに』拭い、その石を握りしめる。



怜「ごめんな、士栗ちゃんを守れなかった一人の私が、死後もキミをこき使うのはどうかと思うんやけど」

怜「……あの人、引っ張って来てえな」



手の中で、「任せて」と応えるかのように、桜色のほのかな光が瞬く。

怜が再び手のひらを開いた時、手の中の石は純色の桜色ではなくなっていた。

桜色には混じりけのない黒色が混じり、それぞれが溶け合うこと無くコントラストを描いている。



桜と黒。二色の遺志によって初めて完成する、そんな石がそこには在った。

二人が生きている間には成される事の無かった絆が、強く強く繋がれていた。

黒太郎…(´;ω;`)

この親子は本当にすれ違いばっかでもーだったけど

ちょっとうるっときた

画面が滲んだとです

怜「あと一つ」

怜「ま、やっぱ最後はここかいな」


最後に彼女が訪れたのは、出来れば会いたくないと思っているくらいの宿敵の生家。

宮永と表札を掲げられたその家に最後に一つがあるのだと、最初に手にした赤い石が告げている。

妹はいい。しかし姉が居れば喧嘩を売らずにはいられない。

おそらく、互いに。しかもこの時間が差し迫っているタイミングで。

そんな思考で恐る恐る、怜はインターホンを押す。



咲「はい、どちら様ですかー?」

咲「お姉ちゃんの……ああ、えっと、照の知り合いですか?」

咲「あれ、このセリフ今日二回目?」

怜「セーフ」

咲「え?」

怜「何でもあらへんよー。それよか、ちょっとええ?」


この家にあるという事は、この家の中に在るということ。

怜はいつの間にかあった小石、という条件で咲に心当りが無いか問う。

そこで「照に貸していたから返しに貰いに来た」と嫌いな奴をダシにしているあたり、怜は本当にしたたかだ。

なまじ間に合わせの理屈としては説得力がある上に、咲は少し天然が入ってるが故に。



咲「あ、今朝咲いてたこの花の植木鉢に置いてあるのがそうかな?」

怜「……ん、これやな」


最後の一つ。

それは山吹色と浅葱色が交じり合った、それぞれの色がそれぞれの色を映えさせる二色。

この宮永家にあるのが相応しい、最後の石に相応しい、



怜「相棒の石か」



腕輪を完成させる、意志だった。



咲「あ、あの」

怜「ん、なんや?」

咲「よろしくお願いします」

怜「……主語が無いと流石のうちもさっぱりやなー」

咲「あ、そのえと、その主語が分かんなくて、その。自分でも無茶苦茶言ってるってのは分かるんですけど」

咲「一人だと危なっかしくて、だから貴女にお願いしたくて、だけどそれが誰なのか分かんなくて」

咲「その、貴女ならお姉ちゃんくらいに頼れるんじゃないかって……すみません、全然要領得てなくて」



怜「……ん、任せとき」

咲「……! ありがとうございますっ!」

石が20個揃ったな!

怜が最初に拾ったのと合わせて21個…ってああそういうことか

 





そして、最後の夜が降りてくる。





 

フリーンメイソンアジト。

もはや京太郎の過去の存在を抹消した時点で、彼らの勝利は九分九厘決まっている。

油断して慢心して執着した上で、ほぼ確実に勝てるというレベルだ。

それでいて彼らは強者に挑む弱者のように、常にあらゆる可能性を模索し戦いに挑む隙の無さを見せている。



『主殿』

大沼「……アンサーか」

『なんつーか、用心深すぎってかやりすぎじゃね? 正攻法で潰せただろうに』

『まあ手法自体は俺様好み過ぎて勃起しそうだったがな! ギャハハ! アンサーに本来性別なんてねえけどさ!』



アンサーの言うことも最もだ。

これは蟻の巣を潰すのに、溶鉱炉から直接融解鉄を流しこむようなものである。

明らかなオーバーキル。

しかしその無駄を良しとするほどに、大沼は京太郎の絆そのものの排除にこだわった。

それは何故か?



大沼「須賀京太郎がこの世に生を受け、格納能力に目覚めるまで十数年」

『?』

大沼「そこからネクサスまで二~三年、そこからヒーローシフトまで三ヶ月」

『……ん、ああ、成程』

大沼「そこからジュネッスまで同じく三ヶ月、そこから真ヒーローシフトまでは二週間足らず」

『クカカカ、加速してんなぁ、主様』

大沼「そうだ。奴の進化速度は、加速している」

大沼「二週間あれば確実に。一週間で高確率に。三日あれば十分で、今の奴ならたとえ一日の猶予であっても……」

『奇跡が起こると?』

大沼「奇跡は起こる。奴が正道を歩み続ける限りは、必ず」

大沼「奇跡の女神は、悪人の為には決して微笑まないのだ」

『俺からすれば非論理的だが……まあ俺をその非論理的な頭で100は叩きのめしたアンタだ、信じよう』

大沼「……舎弟入りを望むアンサーなど、お前以外に居るまいよ」

『アンタほどの悪人もなぁ! グキャキャキャキャ!』



悪の頂点が、嗤う。

ひどく気味の悪い空間は数分間その場を支配し、やがて客人の到来により断ち切られる。



大沼「……ようやく来たか」

大沼「思えば、30年以上待たされたのかもしれんな」

大沼「寺生まれよ」

京太郎「照ちゃん」

照「何?」

京太郎「俺と一緒に、死んでくれ」

照「……喜んで」


死ぬ為にではなく、死を覚悟した上での約束。

死を覚悟した上で命を賭して戦いに挑まなければ、この戦いで二人揃って生き残る事は始まる前から不可能だと決まってしまう。

二人が進む先には、闘技場へと外部から入るための入り口。

鍵はかかっていないように見えるが、問題はそこではない。

問題なのは、扉を塞ぎ通さんとする姦姦蛇螺の巨大な姿。


須賀京太郎の前に立ち塞がる、実の母親の姿だった。



『あ、あー、てすてす』

京太郎「この声は……」



京太郎は、外部スピーカーから届くその声に聞き覚えがあった。

数時間前、携帯電話から彼の耳に届いた耳障りな声。



『やっほい、怪人アンサーだよん。いえーい、俺様の声聞こえてるー?』

京太郎「聞こえてるけどうるせえから黙ってて欲しいかな」

『いいのか? 俺は今夜のルール説明も兼ねてんだが』

京太郎「ルール?」

『儀式とゲームは似て非なるもの。魔法の成功率のためルールを定めておこうっていうこっちの都合だわな』

京太郎「……続けろ」



『まずはその姦姦蛇螺を倒してな。ま、倒せなきゃその時点で終わりだが!』

『そしたら闘技場まで廊下を通って来い。ま、廊下を生きて抜けられたらの話だが』

『闘技場で主殿とマスカレイドとリョウメンスクナがお待ちだ。そこで、決着だな』

『何、シンプルな話だろう?』



京太郎「(確かにシンプルだ)」

京太郎「(属性耐性を持たず俺を殺せる可能性のある姦姦蛇螺はここで実質の捨て駒か)」

京太郎「(俺達の今の実力を図るため、人の母親を捨て石みてーに……いや、その精神的動揺も狙いか)」


京太郎「(照ちゃんを殺すための対策は何人が持ってる?)」

京太郎「(何人が持ってても不思議じゃない。それこそ、この姦姦蛇螺だって)」

京太郎「(……せめて俺が照ちゃん格納出来るだけの容量があれば、弱点のカバーも出来たってのに……)」



『ああ、それと。これはアンサーとして答えを知りたいという個人的な欲求からなんだが』

京太郎「?」

『寺生まれ。お前、奇跡が千回くらい起きて勝ったとして、その後この世界でどうやって生きていくつもりなんだ?』

このアンサーさん、発言も性格もヤンキーみたいだなww

たかが奇跡1000回で倒せるんなら余裕だな!!(錯乱)

エグいこと聞くなぁ…
黒太郎と同じ道を辿ってるようなもんだしね

黒の過去知った京太郎なら折れずに生きられるわい

このぐらいの精神攻撃なら余裕で耐えるぐらいには慣れてしまった

『お前、何も残ってないだろう』

『誰もお前の事覚えてなんかないだろうしな』

『お前が死んでも、誰も気付かない。何も残らない』

『勝った所で、なにか素晴らしい優勝景品が授与されるってわけもない』


『なあ、答えろよ』

『お前が何を思ってこの場に立ってるのか、答えろよ』



悪辣な問い。

その問い自体が答えを求めない、問いという名の刃。

答え(アンサー)を求めない怪人(アンサー)。



京太郎「……ま、んじゃ相打ちだったって前提で話すか。負け後なんて語る意味ねえしな」

京太郎「もしも俺が相打ちになって、死んじまったとしよう」

京太郎「俺がありとあらゆる存在から忘れ去られて、生きていた事自体無かった事にされたとしよう」

京太郎「この先の未来に、俺の姿が無かったとしよう」



『絶望だなぁ』

『主様の儀式の件がなけりゃ、そうやって無価値に死んでいく可能性がお前は一番高――』



京太郎「それでもだ」

京太郎「それでもいい」

京太郎「それはきっと、無価値じゃない」



『は?』



京太郎「それが、俺の守った未来である事には変わり無い」

京太郎「それが俺の……『俺達』の、生きた証。無かった事にされたとしても、確かにあったあの日々の証」

京太郎「これからもそんな未来が続いていってくれるんなら、きっと無価値じゃないさ」



『その未来を笑って過ごす奴らは、お前の事なんて覚えてないんだぜ?』



京太郎「俺が覚えてんだろ。そいつらの笑顔も、そいつらが生きる価値も」



『イカれてんのか?』



京太郎「イカれてんのはテメエらだ」

京太郎「人間、死ぬ気で何かを守りたいって思う時もあるんだよ、理屈も損得も抜きで!」

京太郎「ヒトでもないヒトでなしには分かんねえだろうがな」

詠ちゃんの話にも通じるよな、これ
忘れられた相手とどう過ごすかっていう

クソ食らえだ

バカめと言ってやれ

相手が覚えてないからなんて理由にならねえとうたちゃんが京太郎に教えてくれたのさ

支援絵の、別の世界線の京太郎のことを思い出して吹いたww
ごめん…シリアスな場面が台無しだな。うん。

『なら、勝ったらどうする?』

『こう言っちゃなんだが、死んでこの世界の現実から逃げようとしてる感じにしか聞こえねーな』

『勝っちまった場合の事、ちゃんと考えてるか?』

『主殿は本当に慈悲のある御方……ぷっ、くくくくっ、やべっ、自分で言ってて笑っちまった』

『まあ慈悲はあるだろ。生きてた方がお前には地獄だろうしなぁ』

『死んでる奴は死んだまま。心が腐った奴は腐り果ててる。巻き込まれて死んだり再起不能な奴まで居る』

『こーんな世界でどー生きてくおつもりなんですかー、寺生まれさーん?』



京太郎「……そうだな、まずは都市伝説に飲まれちまった知り合いを助けに行くか」

京太郎「頑張って開放して、暴走状態から人間状態に戻してやるさ」


『ふんふん、それでそれで?』



京太郎「死んじまった人に謝って、供養もしないとな」

京太郎「これ以上誰かを死なせないように、事務所も建てなおさないといけねえし」


『……ふんふん、それでそれで?』



京太郎「精神的に参っちまってる奴らも、また笑えるようにしてやらないとな」

京太郎「これが一番時間かかりそうだ。が、一番やりがいもありそうだ」


『……それで?』



京太郎「やるべきこと、やりたいこと、やらないといけないことが多過ぎて絶望なんてしてる暇ねえや」

京太郎「そんでもってすぐにやらなくちゃならん事を全部終わらせて、自分の事をこなせる余裕ができたら」


『……できたら?』




京太郎「また、あいつらと友達になる。また一から始めようって決めたんだ」




『……俺達が、またお前の存在を消すかもしれんぞ』

京太郎「そうならないように今日ここで勝つし、そうなってもまた一から始めるさ」

『お前は覚えていて、相手は覚えてないんだぞ。何度やってもそうだ』

京太郎「じゃあ何度だって出会いをやり直して、友達になって、絆を結び直すさ」



京太郎「そいつらと友達になると楽しいって思い出が俺の中にあるんなら」

京太郎「それが楽しみで、そいつらと友達になるまでの苦労なんて屁でもなくなるだろ?」

京太郎「全部終わったら、まあ最初は妥当に咲か穏乃か憧に会いに行こうかなって思ってる」




『お前……お前……! 何この状況で、未来の予定や展望、希望なんて語ってやがる!』

『キチガイどころじゃねえ、人類史指折りクラスのバカか……!?』

それが寺生まれの京太郎だからな

すげえ、絶望どこに行った!

これが希望か

今まで折れた分だけ京太郎の精神も上乗せして強くなってるから折れることはないし……
上の中程度の知識を持つアンサーさんのデータベースの上を行く(良い意味での)バカだな、うん

京太郎戦後の黒太郎はこうして生きていったわけだもんな
それを知ってる京太郎がこんなとこで絶望するわけがない

安価やらコンマやらで京太郎を支援しなきゃいけない俺が何故京太郎に勇気づけられてるのか

この絆が最後の希望なんだな…

凄え人間味のあるアンサーさんだな

そこは>>1の文章力かな…

この程度の答えも出せずにアンサーさんを名乗るとはおこがましい

「せやで、今更気づいたんか?」

「憧なんかは、終始相棒を『バカ』って呼んどったのになぁ」



会話に集中し過ぎたのか、その場の誰もがその少女の接近に気づかなかった。

歩み寄るはもう一人の相棒。

強さを高め合う京太郎と照の関係と対となる、弱さを補い合う関係の片割れ。

その右手には繋がれた、か細くも強い光を内包する霊石の連環がある。



『……主様ぁ、マジで起きましたよ奇跡』

『どうやら世界ってもんはアンタが嫌いで、こいつらが大好きで仕方ないらしい』

『健気で真面目で誠実ってのは得ですなぁ、カカカカカカ』




京太郎「……怜?」

怜「ん」

京太郎「怜」

怜「はいな」

京太郎「怜ィ!」

怜「やかましい! 一回で聞こえとる!」

京太郎「あ、すみません」



未来、到着。



照「……何しに来たの」

怜「うちがアンタやったら、今は相棒の生存率上昇と独り占め状態解除で、フクザツな心境ってとこかいな」

照「……」

怜「分かっとる。けど、今だけは」

照「……一時休戦」

怜「そうこなくっちゃあなぁ!」



未来、最強、和解。



怜「ほれ、もう壊したり無くすんやないで」

京太郎「この腕輪とか、お前の記憶とか体調とか、どうやって……」

怜「この世界にあるありったけの元世界の残滓」

怜「奇跡を起こせそうな欠片、全部集めっきってしもた。これが正真正銘オーラスや」

京太郎「この腕輪で奇跡は打ち止めってか。上等すぎるな」

照「ん」



未来、希望、最強、集結。

怜ィ!

起きててよかった。確実に授業ねるけど。
感動で涙が止まらんな。

続きが気になるが明日、今日の朝から用事がどうするべきだ

燃え過ぎて燃え尽きそう

これは寝られない
例え課題や用事があろうとも

よし、コンビニで食糧調達してこよう

京太郎「二人共、呼吸は俺に合わせてくれ」

「「おうっ!」」



『何を……』



京太郎「目ん玉かっぽじって見とけ、お前らが切れなかった絆」

京太郎「お前らが消し去りきれなかった、絆の残滓」

京太郎「お前らが無価値と断じた、誰かと誰かの繋がりだ!」




京太郎「絆(ネクサス)ッ!」

京太郎「即席応用、アマートルシフトッ!!」



幾多の世界、数多の創作で語られてきた事だ。

『相反するもの同士を組み合わされば、それは爆発的な強さを持つ』。

園城寺怜と宮永照。

二人は性格も真逆、性質も真逆、世界が違ったとしても宿敵同士と断言できるほどの関係性だ。


だが、だからこそ今生まれたこの力の高まりを説明できる。

爆発とは物質が押し合い圧し合い、反発しあうが故の力。

今生まれたこの力は、宇宙の条理すら揺るがすほどの大爆発(ビッグバン)。



例えば強さを補い合う相棒関係と、弱さを補い合う相棒関係。

二つ揃えば、それは机上の空論ですら届かない最強となるのではないだろうか。



『……そうか、そうだったな』

『基本格納と魔物格納の数の比率を一対一にする。確かにそういう条件だった』

『ネクサス、ジュネッスと経験も十分だった。だが、一言だけ言わせてもらおう』



嵐が、雷が、焔が、純粋な余剰エネルギーが自然に呼応し形を変えている。

ありとあらゆる未来を統べる、何人たりとも触れえぬ最強の希望。

相棒二人を、相棒だけを、信じた二人をその身に飲み込んだ至上の光。



『今日生き残る答えがこの世界に存在しねからって、自分達で勝手に回答作ってんじゃねええええええええッ!!!』



京太郎「採点すんのはお前じゃねえんだからいいだろ。好きにやらせろや」



ネクサス・アマートルシフト!

アンサー切れたよww

アンサーざまあwwwwww

さよなら寝ようとしてた俺
こんにちは寝不足な俺

未来は自分たちで切り開いて行くんだよ

ネクサス・ジュネッスと来たからノアかと思ったが違ったか……

アマートルで色々ググッた

意味:愛する人、大切な人、手作りの贈り物

ファッ!?

ラテン語だったなたしか

【アマートルシフト】


怜と照を同時格納、以上! それ以外になんもないよ!



【アマートルシフト時、宮永照が参戦可能に】



【宮永照】

・アマールシフト時補正


MAXHP+200
毎ターンHP100回復

ATK、DEFそれぞれ+200
毎ターンそれぞれ+100

判定値補正+30
毎ターン+5



負荷がかかりすぎるため、宮永照の格納は5ターンしか持ちません。

怜の能力も一緒に使えるってことでいいんだよね?

このアンサーさ(もうさんつけなくていいや)、我々の中では一番の格下なんだろうな

強い(こなみかん)

このアンサーさ(もうさんつけなくていいや)、我々の中では一番の格下なんだろうな

【須賀京太郎】

HP:640

ATK:35
DEF:35

・保有技能

『比翼の鳥』
人一人にして人に非ず。翼片翼にて翼に非ず。
人物を指定し、己の中に格納する能力。
格納した人物に応じた能力と補正を得る。

『TTT(真)』
The Templehero T。今日は使わないので以下略。

〈装備〉
E:『腕輪:Next?』【防具】
ATK補正+15
DEF補正+15

E:『真・ルーベライズ』
効果:死亡・ゲームオーバーを無効にし、所有者をHP1で復活させる。

E:『ジャイアントキリング』
効果:巨大な存在に対する戦闘論理。特定の都市伝説との戦闘時に判定値+10。

・『真・オモイヤリ』【聖遺物】
ATK補正+30
DEF補正+30
ヒーローシフト中、行動判定で勝利する事で何かしらの「奇跡」を行使する。

・『フクツ・ゼシキ』【靴】
自身のATK、DEFを+5、判定値を+3する。
【高鴨穏乃】を格納して経過したターン数、この補正は重ねがけされる。

・『シュクジュ・ヘキ』【盾】
ATK補正+5
DEF補正+20
【国広一】を格納中、ターン終了時にそのターンに受けたダメージの1/4を回復する。

・『カタキウチ・ツラヌキ』【遠隔武装】
ATK補正+25
【鶴田姫子】を格納中、判定コンマが75以上の時『リザベーション・バースト』を発動する。

・『ハリコノトラ』【針】
自身のATKを0に減少させ、その減少させた分の数値をDEFに加える。

・『ヒトノワ』【遠隔武装】
効果発動宣言ターン、自身のHPを1まで減少させ減少させた分の数値をATKに加える。



【園城寺怜】

ATK補正+30
DEF補正+30

・保有技能

『未来余地』Ver.2
少し先の未来、時々遠い未来を認識する能力。
どんな未来でも、変えられる。
自身の判定値に+10する。
判定コンマで相手を上回った次のターン、相手の選ぶ選択肢を知る事が出来る。
奇襲・罠・不意打ちに類するものを無効化する。

『D&T』
「未来余地」の派生技巧。
命を削り、未来を識るくだんの本懐。
能力の使用を宣言する事で、それぞれの効果が適用される。
ダブル:MAXHPの1/4を消費して発動。戦闘終了・フォームシフト実行まで、自身の判定値を+10する。
トリプル:MAXHPの1/2を消費して発動。戦闘中、相手の選択した行動が常に表示される。

・適正武器
全て

武器呼んでも来ないとか言ってた気がするけど使えるの?

>>938
そりゃあ頭でっかちだけじゃ解決や対処はできないさ
ブレインとボディ、両方揃ってないと力は文字通り二分されるわけだし
何より全能だと思ってるタイプは自分の想定外のことが起きると途端に弱くなるわけだし

【熊倉希望/姦姦蛇螺】


HP:1500

ATK:450
DEF:450


・保有技能
『一悪の砂』R:BAD.2
砂のように入り込み、混じり合い、拭えぬ不快感を擦り込む悪。
乾いた砂海に落ちた一本の針は、この手には二度と戻らない。
二度と、戻らない。
自身の判定値を+60する。
自身が判定値を用いた判定を行う度に対象を好きなだけ選択。
選択した対象を【即死】させる。




【『ジャイアントキリング』発動対象! 判定値補正+10!】

母ちゃんつええ…

>>937
もちろん

>>942
書いてからなんですがネクサス中なんで当然のごとく無理っす
武器自体は腕輪受け取った時に呼べるようになりましたのでこの表示に


夜遅いですがもうあとちょっとですし次スレ立ててから一戦やりますかー

あ、書き忘れあったので>>936に追記


・都市伝説の保有技能による干渉を、全て無効化する


戦闘ダメージは普通にくらいます

判定はダブルで埋めるとして即死はどうするよ
ルベ頼みか?

あれ?死超は?

あ、やっぱ照がなんとかしてくれるよね
よかった

>>948
おそらく入れ違いだけど>>947だから即死は問題ないと思われ
ダブルでのビルドアップで問題ないんでね

行動パターンは霞さんと一緒と見ていいのか
爆砕点穴ないのがきっついなあ

TUEEEEE!!

てるてる最強や!強すぎて格納し過ぎると京ちゃん死にかけるとか前代未聞な事態になってるけど!

>>948
直前に>>1が答えを出してくれたね…やっぱてるてるってクソチートだわ

即死の可能性はなくなったから
判定と行動がわかればいいね

次スレー

【咲安価】京太郎奇怪綺譚:XXIV巻目【都市伝説】
【咲安価】京太郎奇怪綺譚:XXIV巻目【都市伝説】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379351548/)

>>949
書き忘れちゃったてへぺろ


『死超』
効果:発動ターン、相手攻撃サイド確定時にそのターン受けるはずだったダメージに自身のATKを+し、相手のHPダメージとする。
一戦闘一回


さて、戦闘準備ー

>・特殊補正
>『怪人アンサー』
>【大沼秋一郎】【怪人アンサー】が存在する場において、両者と両者が共に仲間だと認識している対象に発動。
>このスレにおける行動相談内容のレス、及びその場の全キャラのステータスを形を変えて対象に伝える事が出来る。

↑ところでこれって今回の状況下でも発動するの?そしてそれがお母さんの行動を変えることはあるの?
一応確認のため聞いておきたい

いいですとも!

それ重要やな

大沼はともかくアンサーはいる扱いになんのかねー

>>1ターン目ダブル使わずに死超使ってダメージ稼ぐか
行動様子見もかねて

そういや死超って不発でもストック消費するの?

>>957
いえ、大沼が居ないので

>>962
します

なら行動パターンは一緒か

あれま
じゃあ行動確定しなきゃ使えないね

まあ発言型の行動論理は個体特有なので霞さんと同じ行動なわけがないんですけどねー


ではではそろそろ


Last Engage

http://www.youtube.com/watch?v=LXvwLy4ZNEs



 

神曲キタ―――(゚∀゚)―――!
もう負ける気がしねえ

輪を成す連環、和を成す絆。

京太郎の右手にて輝く腕輪は、かつての日々のような強い輝きを使い果たしてしまっている。

それでも、今日この場においては無双の力を制御していることに変わりはない。



姦姦蛇螺「――――」

京太郎「――――」



声にならない裂帛の気合。

姦姦蛇螺は、人の聞こえる可聴域の声帯を既に失っているために。

京太郎は、この残酷な戦いの運命に言葉を失っていたために。


100mの尾から繰り出された、数百トンの豪鞭による一撃。

未来を見切り、的確な位置に叩きこまれた螺旋の一撃。



両者の初撃は拮抗し、相殺される。



京太郎「(いつか、誰かに頼まれた気がする)」

京太郎「(この人を、救ってやってくれって)」



誰かに言われるまでもない。

この人が自身の母であるのなら、京太郎にとっても、それは……



京太郎「誰に頼まれなくったって!」

京太郎「俺だって息子として、思う所くらいある!」



胸を張って救いたいと、そう叫べる相手なのだ。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・能力使用
・『死超』使用
>>970


希望判定
>>972

さあショータイムだ!

死超発動
必殺

小手調べかな

必殺
シチョウ

ksk

とりあえず初手はシチョウで良いと思われ

そい

早く出さないと判定値強化されるからな

【#攻撃希望】



必殺VS攻撃


3+0+50=53

0+9+60+6=75



姦姦蛇螺の攻撃サイド確定!



450×2-280+(75-53)=644ダメージ!


死超、発動!


644+280=924ダメージ!



姦姦蛇螺 残りHP:576



>>1がしょっちゅう忘れる未来余地の基本技能発動!

次の姦姦蛇螺の行動は『必殺』です


宮永照の能力に、少しづつ身体が慣れ始めました

ステータスが上昇します

む、霞さんとは行動パターン違うのか
次ダブル×3でいいよね?

とりあえず相手の行動が判明したから、これで判定コンマは実質61vs60でほぼ同等
ダブル二回打てば81vs60だから判定で負けることは無さそう

もう、人間には戻れない。

コーヒーカップの例えで言うのなら、熊倉希望はあの日、カップを真っ先に砕かれたのだ。

そしてその破片を玩具のように適当に組み合わせただけの代物が、この姦姦蛇螺。


須賀京太郎の母の亡骸を弄んで作られた、母が死してなお見続ける悪夢。



だから、京太郎が言う『救い』とは、つまり。



京太郎「……!」



ジャイアントキリングとは、モンスタハンターの龍を狩るシステムに近い。

相手の攻撃、回避、特殊能力その他諸々の予備動作。

弱点を庇う仕草や弱っている動き、つまりは身体が大きすぎて隠しきれない所作を見ぬく事。

それにより自分より何倍も大きな相手と戦っても、互角以上に戦う事が出来る戦術コンセプトだ。


そこに究極のカウンターたる『死超』が加われば。



姦姦蛇螺「――――ッ!?」



ダメージを蓄積させ、100mクラスの尾を根本から切断することすら容易い。



京太郎「ごめん。……こんな、俺が、こんな事言うのはどうかと思うけど」



沈痛な面持ちの少年に、彼の中の少女二人は声をかけない。

この戦いは、子と母の間だけで決着を着けるべきだと思っているために。

それでも彼を死なせないために、ありったけの力を、ありったけの集中力で繋ぎ止める。



京太郎「俺が貴女にできる親孝行は……これだけだった」



姦姦蛇螺の尾はいずれ再生する。

石戸霞との一件でそれを知っていた京太郎は、一気にその懐へと飛び込む。

その一撃で、母を安らかな眠りへと付かせるために。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・能力使用
・『死超』使用
>>981


希望判定
>>982

っと、すまん、このターンだけではお母さんを完全に削り切れないし次も未来余地発動するか分からんから不安定だな
一応ダブル×3だったら確実に勝てるとだけ。迷走しててすまんな

ダブル3回発動
攻撃

攻撃
ダブル*3

ダブル3
攻撃

【#必希望殺】



攻撃VS必殺


ダブル×3、発動!


2+4+50+5+30=91

8+2+60+6=76



怜×京太郎×照の攻撃サイド確定!



380×2-450+(91-76)=325ダメージ!



姦姦蛇螺 残りHP:251

台風を腕に巻き付けるだけのサイズに濃縮したような、ドリルですら赤子同然にしか見えない乱気流。

その螺旋は右腕に巻かれ、山吹と浅葱の二重螺旋を織り込んでいく。

姦姦蛇螺の胸の中心をえぐり込むその一撃が奏でた音は、まるでレクイエムのようで。


その一撃が、降りかけている幕の存在を意識させる。



京太郎「……っ!」

京太郎「くそっ……本当に、なんでこんな事に、なっちまったんだろうな」



ここに来てようやく、京太郎は気づく事が出来た。

それは壊れかけの玩具に刻まれた、子供の名前のようで。

誰かに踏み潰されてしまって音が出ない、親が子の好きな音楽を刻み込んだオルゴールのようで。

かすれかけ、壊れかけ、もう戻らない、過去に失われてしまった大切な何か。



京太郎「……ゆっくり、お休み」

京太郎「貴女の悪夢は、ここで終わる」



螺旋を解除。

浅葱色の退魔の輝きも解除。

その右手に込められているのは、純然たる山吹の煌めき。


決別の一撃に、彼は自分の心をありのままにぶつける一撃を選択した。



風を切る音と共に、二つの影が交錯する。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・能力使用
・『死超』使用
>>987


希望判定
>>989

防御

防御

おまかせあれ!

そいや

「……大きく、なったね」

京太郎「……うん」

「……二人は、彼女?」

京太郎「さすがに二股は、ねーよ……」

「もうちょっと……寄って、くれる?」

京太郎「こう、かな? ……あ」

「……こうやって、大人になっても……ずっと、頭を……撫でて……あげたかった……」

京太郎「……一回で、十分だよ」

京太郎「だってさ、俺、こんなに嬉しいし……!」

「……ごめんね。母親らしいこと、ぜんぜ……ん、出来なくて」

京太郎「してくれた、してくれたって!」

京太郎「ちゃんとしてくれた!」

京太郎「無効に出来たけど、ちゃんと対策だってしてきたけど!」



京太郎「貴女は誰だって殺せるはずのあの力を、俺に向けて一度だって使わなかったじゃないか!」



「……ふふっ、悪い夢の中で、少し暴れただけだよ」

京太郎「最初に会ったあの時だって、照ちゃんが庇ったように動いただけで俺に当たるコースじゃなかった!」

京太郎「ちゃんと、気持ち伝わったから! あんなになっても思ってくれてるって、伝わったから! だから!」

「……良かった。成長した貴方も見れたし……まんぞ、う、こほっ……あ、でも、一つだけ」

「一つだけ、お願いしてもいい?」

京太郎「何だ!? 俺に出来ることなら、なんだって……」



「お母さんって、呼んでくれる?」



京太郎「……な、なんだ。そんな事か」

京太郎「へへっ、実は俺もそうやって誰かを呼ぶのは初めてだし、楽しみだったんだ」



京太郎「だからもうちょっと、なんでもいいから話そう、『母さん』」



京太郎「……母さん?」



京太郎「……ああ、そっか。疲れたもんな」

京太郎「ごめんな、眠る前の気持ちのいい一時の微睡みの邪魔して」



京太郎「おやすみなさい」

京太郎「きっともう、悪夢は見ないと思うから」

【#攻撃誕生日】



防御VS攻撃



8+1+50+10+30+6=105

6+1+60=67



怜×京太郎×照の攻撃サイド確定!



480×2-450+(105-67)=548ダメージ!



姦姦蛇螺 残りHP:0



【母を悪夢の檻から救い出しました】



【姦姦蛇螺・熊倉希望の行動パターン】

数列を用い、0なら攻撃、2なら必殺となります

その用いられた数列とは、『須賀京太郎の誕生日』。すなわち0202です

防御を選択しないのは、彼女の目に映る景色には大切な守るものが何も映っていないから

京太郎の誕生日が行動パターンなのは、それだけが忘れまいとして彼女の脳裏に残っていた最後の記憶だったからです

おおう、行動パターンで精神攻撃とは…

おおう…なんつー嫌らしいパターンや

きっついなぁ

ママン……でも、これが最良だったんだよな

旧四天王最後の一人。

そして新生四天王最初の一人。

戦いの区切りを付ける役目として、姦姦蛇螺ほど相応しい役者は居なかっただろう。


京太郎は姦姦蛇螺を打ち倒し、十数年もの間苦しめ続けられてきた母を解放した。

父の無念を晴らし、父との約束を守ってみせた。



怜『相棒』

照『……大丈夫?』

京太郎「大丈夫、かどうかは分かんねえな。めちゃくちゃ悲しいし」



冷たくなった熊倉希望の手を握り、少年は数秒だけ目を閉じる。

再び目を開き、その両手を胸の前で重ねさせ、母の瞼を閉じさせる。

その魂が、安らかに眠れるように。



京太郎「でも、足は止まらない。たぶん大丈夫だ」

京太郎「俺は須賀未来と熊倉希望の息子だからな」

京太郎「最後の最後まで足掻いた二人の息子として、二人に恥じないように生きてかねえと」

京太郎「あの世の『父さん』と『母さん』が自慢できるような息子で居たいんだ」

怜『……そか』

照『無理は禁物』

京太郎「おう」



今までずっと京太郎が使わなかった、使おうとしなかった単語。

『父さん』と『母さん』という単語に、二人は少しだけ安堵する。

この試練は京太郎の心を折ること無く、むしろ叩き上げ鍛え上げただけに終わったようだ。

それは決して、京太郎の心が強いとかそういう話ではない。


ただ、両親は京太郎をちゃんと愛していて。それに京太郎が気付いたと、ただそれだけの話。




『愛し合ってる親子の殺し合いって見ててスカッとしますね』


京太郎「失せろ。お呼びじゃない」


『いいからとっとと先に進めって、俺が飽きてくるんだよ』


京太郎「……チッ」

闘技場へと続く、大きな扉を開く。

この先に続くのは、姦姦蛇螺すら比較にならないほどの試練。

悪夢が悪夢を覆い尽くすほどの、悪夢による終末だ。


だというのに、彼の右手の腕輪の力は常のそれより弱いと来ている。

むしろいつもより数倍強いくらいでちょうどいいだろうに、と少年は内心愚痴る。



京太郎「……まあ、今ある手札でやってくしか無いか」

京太郎「限りある手札をどう使って勝つかなんだよなぁ」

怜『うちやな』

照『私?』

京太郎「なんでそこで張り合うんだよ! どっちも温存できねえよ!」



少年は気付かない。

腕輪を紡いだ少女も気付かない

今まで少年の中の光を増幅するだけだった腕輪が、小さくとも固有の光を発している事に。


フリーメイソンですら気付かない。

この世界で本当の意味での規格外がなんであるかという事に、気付かない。



誰にも気づかれないままに、腕輪は赤く熱い律動を刻み、脈動する。



生きる意味を他人に見い出させる、決して諦めない寺生まれの右手の上で、脈動する。







第二十四話・完

>>1000なら希望は繋がる

>>1000なら希望は絶望には負けないんだ!

>>1000なら出来の悪い少年漫画ばりに昔の敵や仲間が助けに来る

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