少年「初めて友達ができた日のこと」(14)

少年「君は誰?」

 「……」

少年「お父さんとお母さんは?」

 「……」

少年「そっか、ぼくと一緒だね」

少年「どこか行く場所があるの?」

 「……」

少年「じゃあ一緒に行こうよ、このずぅっと先に綺麗な湖があるらしいんだ、そこに行こう」

少年「ぼくはね、昔、東の町に家族と住んでたんだ」

少年「でも、もうそこに住めなくなっちゃったから引っ越したんだ」

少年「途中でみんな離れ離れになちゃったけど……でも今もみんな元気だと思うよ」

少年「君はどこから来たの?」

 「……」

少年「へぇ……聞いたことのない所だなぁ」

少年「でも人がいっぱいいるんだよね?湖に着いたら今度はソコに行ってみたいなぁ」

少年「ぼく、あんまり家族以外の人と会ったことがなくてね、君が初めての友達なんだ」

少年「えへへ…ソコに行けたら友達いっぱい出来るかな?」

 「……」




少年「湖…まだかなぁ…」

少年「ごめんね、なかなか着けなくて」

 「……」

少年「ありがとう、一緒にがんばろうね」

 「……」

少年「湖に着いたら?そうだなぁ…そう言われれば君と水遊びすることくらいしか思い浮かばないなぁ」

少年「ごめんね、実はぼくお父さんに教えてもらっただけで湖を見たことがないんだ」

 「……」

少年「え?君は海を見たことがあるの?聞かせて!聞かせて!」




少年「君は物知りだね」

少年「そういえば君は何歳なの?ぼくよりお兄さん?」

 「……」

少年「えっ?ぼく?ぼくは……何歳だっけかな?」

少年「えぇーと、引っ越した時に9歳だったから今は……?」

少年「ごめん分からないや」

 「……」

少年「11歳?ああ確かにそれくらいかも、よく分かったね」

少年「で、結局君は何歳なの?」




少年「……うん…朝か」

 「……」

少年「おはよう…よいしょっと、うわぁ」

少年「痛てて…転んじゃった…」

 「……」

少年「大丈夫、自分で立てるよ…よっと」

少年「ふぅ…じゃあ今日も先に進もうか…」




 「……」

少年「お水ありがとう、大丈夫少し休めばすぐ良くなるさ…」

少年「それより前みたいお話を聞かせてくれないかい?退屈でしかたないんだ…」

 「……」

少年「そうだなぁ、このあいだ話してた花の話のつづきが聞きたいなぁ」




少年「ねぇ、さっき君に似た人が近くにいた気がするんだけど…見た?」

「……」

少年「そう……寝ぼけてたのかな…ごめんね、全然先に進めなくて…」

少年「大丈夫、大丈夫、明日にはきっと治ってるから……」




少年「……朝」

少年「! 体が軽い!」

少年「待たせてごめん!これで前に……」

少年「あれ?……どこ行っちゃったんだ」

少年「……そう言えば名前聞いてなかったな、何で聞かなかったんだろう…」






少年「あの子を探しながら進んで来たけど、先に湖に着いてしまったなぁ…」

少年「幸い、噂通り綺麗な湖だし周りには植物も少し生えてるし、ここを拠点にしてあの子を探すことにしよう」

少年「絶対一緒に水遊びするんだ!」











老人「ごほっ…ごほっ……」

 「……」

老人「やあ、…やっと会えたね」

 「……お久しぶりです」

老人「そんな他人行儀みたいなこと言うなよ…友達だろ?」

 「ええ……」

老人「…君を探して世界中を旅したよ……おかげで君ほどではないが少しは物知りになれたよ」

 「……」

老人「君のことも何となく理解しているつもりだ、君のしてくれたことも…だから今お礼を言うことにしよう、ありがとう…」

 「……私は自分がしたことが正しくないことではないと思います、ただ同時に間違っていないとも思っています」

老人「…君がそう思うならそれが答えなんだと思うよ、ぼくは」

老人「さて……君とも合流できたし、昔言った通りに君が来た場所に向かうとしようか…」

 「思い残すことは…?」

老人「ない…あっ、そう言えば君と水遊びするのを忘れてたな…」

 「クスッ…大丈夫です、向こうにも川が流れてますから」

老人「それはいい、湖にはもう十分入ったからなぁ」

 「長い道のりですけど大丈夫ですか?背負って行きましょうか?」

老人「大丈夫、大丈夫、それに昔みたいに一緒に並んで歩きたいんだ、今度はぼくがお話を聞かせてあげるよ」

 「それはいいですね」

 「それじゃあ行きましょうか…」

少年「あっ、待って、まだ名前聞いてなかったけ」

 「ああ、そう言えば名乗ってませんだしたね」

死神「私は、少年くんの友達の死神と言います、なにとぞ末永く仲良くしてやって下さい」

少年「よっし!じゃあ行こうか死神!」

死神「ええ、では早速お話を聞かせてもらっても?」

少年「ああ、種を蒔き歩く不思議なロボットと旅をしてね……」

END

中々素敵だな

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