にこ「お祈りメール……?」 (107)

にこ「はぁ……これで12連敗……?13連敗……?面接なんて、もう受かる気がしないわ……」

にこ「まあ、全てはこの履歴書の空白のせいだけどね」

にこ「アイドルとしてデビューするって息巻いて、大学卒業しても就職もせずに色々やってはみたものの、鳴かず飛ばず……」

にこ「さすがに危機感抱いて今さら就職活動してみたものの、世間は甘くないわね……」

にこ「はあ、もう25かぁ……」

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テレビ「では今日のゲスト、南ことりさんでーす」

にこ「!!!」

ダダダッ
ブツン

にこ「ハァ、ハァ……」

にこ「あいつ、またテレビに出てる……」

にこ「アキバ系アイドルとか言って売り出したかと思えば、またたく間にトップアイドルの仲間入り……。いまではあいつの顔を見ない日はないくらい」

にこ「どうして……?どうしてなの……?ニコの方があいつの100倍は努力してるし、アイドルへの想いだって……。なのに、なのに」

にこ「くそっ、くそっ……」


にこ「……ネットでもやるか……」

カタカタタッ

にこ「つい、かつてのメンバーのブログやフェイスブックを見てしまう……」

にこ「みんな、それぞれの道を歩んでいるようね。絵里は……弁護士かぁ。司法試験に受かったんだ」

にこ「希はスピリチュアルグッズのお店を経営。なかなか順調のようね。海未は日舞の家元を継いだのか」

にこ「凛は小学校の体育の先生、花陽は……OLのかたわら、相変わらずアイドルファンを続けているようね」

にこ「そして真姫は、もちろん医学部に在学中……。元気でやってるのかな……」

にこ「穂乃果の近況は分からないけど、みんな順調みたいね」

にこ「でも、みんなのやってることはニコのやりたいことじゃないから、別に羨ましいわけじゃない」

にこ「だけど……。だけどことり、あんただけは……」

にこ「悔しい。悔しい。けど……」

にこ「もう、追いつけないのかな……」 

ブルルルル

にこ「……メール?」

ポチポチ

にこ「!!!内定通知……!」

にこ「希望していたのとは全然違う仕事……。お給料も安い」

にこ「でも、定時には帰れる……。アイドル活動と両立できないこともないわ」

にこ「このチャンスを逃したら、もう……」

チラッ

にこ「すっかり色あせてしまった、μ’sの写真……」

にこ「何だかもう、遠い昔のことのようね……」

―半年後。


にこ「に……にっこにっこにー!」

シーン

にこ「あなたのハートににこにこにー!」

通行人A「……誰あれ?」

通行人B「さあ」

にこ「……誰も立ち止まってくれない……」

にこ「でも、せっかく回って来た地元商店街でのイベントの仕事……。ちゃんとやらないと」

にこ「それにしても、会社勤めとの両立は、やっぱりきつい……」

ガヤガヤ

にこ「ん……?何か騒がしいようね」

スタッフA「すいませーん、今からロケやりまーす」

にこ「ロケ……?ま、まさか、ニコのステージに……?」

スタッフB「あのステージ、じゃまだな」

スタッフA「ちょっと退かしてきます」

スタッフA「すいませーん」

にこ「は、はい!」

スタッフA「撮影の邪魔なんで、あっちいってて貰えますか」

にこ「は……」

スタッフB「じゃあ、ことりさんお願いしまーす」

にこ「!!」

にこ「な、なんであいつがこんなところに……」

ことり「はーい、今日はこちらの商店街にお邪魔していまーす」

にこ「そうか、ことりがリポーターの番組なのね……。あいつ、こんな仕事まで……」

通行人A「あっ、南ことりだ!」

通行人B「本当だ!本物の南ことりだよ!」

通行人A「いやーついてるなー今日は」

にこ「くっ、一般人への知名度も抜群という訳ね……」

にこ「たしかに最近はCM女王に君臨しているらしいし、主演ドラマは大ヒット、年末の紅白出場まで決定……。もはやアイドルの枠を超えた活躍をしているんだもの、当然と言えば当然か……」

ことり「えー、こちらのお店は……」

チラッ

にこ「!!」

にこ「今、目が合った……」

ことり「……今日も地元の方々で賑わって……」

にこ「ふ、ふふ。ニコの顔なんてもう忘れてしまったのかしらね」

にこ「それとも心の中で見下しているのかしら」

にこ「当然よね。このあまりの落差……」

通行人「ことりちゃーん!!」

スタッフ「はいはい押さないでください」

にこ「……」

商店街の人A「いやー南ことりの人気はすごいねえ」

商店街の人B「うちのイベントにもあれくらいの人が来てくれたらいいんだけどねえ」

チラッ

にこ「くっ……!」

にこ「見てなさい、ことり……!ニコはこのままでは終わらないわよ。きっと売れっ子アイドルになって、あんたを見返してみせる……」

にこ「その時まで待ってなさい、南ことり……!」

―数ヶ月後。


希「久しぶりやね、絵里ち」

絵里「ひさしぶりね。お店の方はいいの?」

希「店やったら、うちがいなくても大丈夫や。絵里ちの方こそ忙しいんとちゃうの?」

絵里「たまには息抜きもしないとね」

希「ふふっ」

絵里「?どうしたの?」

希「いや、絵里ちは昔と変わらへんなあって」

絵里「そうかしら……。あの頃の私とはずいぶん変わってしまったような気がするわ。最近は特に」

希「あの頃……って、μ’sやってた時のことやんな?」

絵里「……」

希「今でも思い出したりするん?μ’sのこと」

絵里「そりゃね」

希「……」

絵里「私にとっては、青春そのものだったんだもの」

希「青春、かぁ」

絵里「そうね。忘れることのできない青春の思い出……といったところね」

希「ほんとうにそれだけ?」

絵里「え?」

希「絵里ちの中で、μ’sはもう過去の記憶の中にしか、存在してないん?」

絵里「それは……」

絵里「でも、そんなことを考えても仕方ないわ。私はもう、私の道を歩き始めてしまったんだもの」

希「……」

絵里「私は、にこやことりのようには、なれなかったのよ」

希「……にこっち、最近がんばってるみたいやね」

絵里「この間もテレビで見たわ。少しずつだけど人気が出ているみたいね。ずっと苦労していたようだけど、思いは報われるものね」

希「そうやね」

絵里「でも……」

希「ことりちゃん……か?」

絵里「なんだか、大変そうだけど……」

希「実はこの前、電話で話したんや」

絵里「!!そうだったの……?」

希「うちも心配してたんやけど、思ったより元気そうやったわ」

絵里「ならいいけど……」

希「それにしても二人とも凄いなあ。アイドル……続けてるなんて。うち、尊敬するわ」

絵里「穂乃果……」

希「え?」

絵里「穂乃果は、どうしているのかしら?」

希「そう言えば、穂乃果ちゃんの噂は聞けへんなあ。元気にしてるんやろか」

絵里「……私ね、最近ときどき思うのよ」

希「ん?」

絵里「私がμ’sとして過ごした日々は、ほんとうに現実だったんだろうか、って。ひょっとして、あれは夢だったんじゃないか、なんて……」

希「……夢?」

絵里「そう。短くて儚くて、けれど決して忘れることのできない、そんな夢……」

希「絵里ち……」

絵里「でも、たとえ夢だったとしても、それを私に見させてくれたのは穂乃果なの。穂乃果がいなければ、私は……」

希「……」

絵里「穂乃果は今でも、アイドルへの想いを捨てずにいるのかしら……」

希「穂乃果ちゃんのことやから、きっと今頃、うちらの想像もつかへんような凄いことに挑戦してそうやけどね」

絵里「そうね。……だといいけど」

希「絵里ち」

絵里「え?」

希「穂乃果ちゃん……そしてにこっちもことりちゃんも、みんな強いから大丈夫や。あの子らは……」

絵里「……」

希「……うちや絵里ちよりも、ずっと強いんやから」

―さらに数ヶ月後。


スタッフ「お疲れさまでしたー」

にこ「はーい、おつかれさまでした」

スタッフ「いやー、ニコちゃんのおかげでこの番組も大評判だよ」

にこ「そんなぁ~。皆さんのおかげニコ!」

スタッフ「新曲も売れてるみたいだし、これからもよろしく頼むよ」

にこ「こちらこそよろしくお願いします~。今日はおつかれさまでした~」

にこ「……ふぅ……」

にこ「……この1年、血の滲むような努力をして、やっとここまでになることができた……」

にこ「トップアイドルとまでは言えないかも知れないけど、こうやってテレビのレギュラーもあるし、CDも売れるようになった」

にこ「十分、人気アイドルの仲間入りと言えるわ」

にこ「なのに、この空しさは何……?」

にこ「トップじゃないから物足りないの……?」

にこ「違う。そうじゃないわ。現状に満足しているわけじゃないけど、この空しさはもっと別の……」

アイドルA「にこさんおつかれさまでしたー」

にこ「あ、おつかれさま」

アイドルB「そういえばにこさん、南ことりと知り合いなんでしたっけ」

にこ「え……あ、まあ……」

アイドルA「最近名前聞かないよね。南ことり」

アイドルB「スキャンダルあってから、すっかり落ち目だよね」

にこ「……」

にこ(そう、ニコがここまでやって来れたのは、ことりを見返してやろうという思いがあったから)

にこ(今となっては、ことりの名前を聞いて悔しさに打ち震えることも、なくなった)

にこ(いや、むしろもう立場は逆転してると言ってもいいかも知れない)

にこ(でも……)

アイドルA「で、南ことりがどうしたの?」

アイドルB「いや、さっき客席によく似た女の子がいたなーって」

にこ「!!!」

アイドルA「本人だったりしてw」

アイドルB「まさか。うちらの番組なんか見に来るわけないでしょ」

にこ「どこに……どこにいるの?その子」

アイドルB「え?いや、だから客席にいたから、今頃はもう帰ってるんじゃないかな」

ガタッ

アイドルA「あれ?にこさん、どこへ……?」

にこ「今日はもう上がるわ。お疲れ!」

タタタッ

にこ「確かにニコはあの時……ことりを見返そうと心に誓った。その悔しさをバネに、ここまで頑張って来た」

にこ「でも、今なら分かる」

にこ「そんなこと……できるわけない。見返すなんて、そんなことできるわけ……ない!」

にこ「だって、アイドルでいることの苦しいことも辛いことも、今は全部分かっているから」

にこ「トップアイドルを目指してみんながどんなに努力しているかってことも、売れっ子になれるかどうかなんてほんの紙一重だってことも、ニコはよく分かってるから」

にこ「だから、今だってことりを見下すなんて、そんなこと……できない」

にこ「1年前のあの時も、ことりはきっと今のニコと同じような気持ちで……」

ハァッ、ハァッ

にこ「……ことり……どこ?」

にこ「もう行っちゃったのかしら……」

???「にこちゃん……」

にこ「!!!ことり!?」

ことり「久しぶり……だね」

にこ「ことり……どうして……」

ことり「にこちゃんが歌っているところを見たくて」

にこ「……!」

ことり「すっかり人気アイドルだね。おめでとう、にこちゃん」

にこ(ニコには……1年前のニコには、「おめでとう」の一言が言えなかった……)

ことり「じゃ、私帰るね。にこちゃんはきっと忙しいだろうから……」

にこ「待って!」

ことり「……?」

にこ「ニコは……ニコは……」

ことり「にこちゃん……?」

通行人A「あれ?あそこにいるの、矢澤にこじゃね?」

にこ「……!」

通行人B「ほんとだ。一緒にいる奴もなんか見たことあるな」

通行人A「あー名前が出てこないな。えーと……ああ、南ことりだ」

通行人B「そう言えばいたなそんな奴」

通行人A「熱愛スキャンダルで干されたよな」

通行人B「オワコンwww」

通行人A「糞ビッチだったわけだからな。仕方ない」

にこ「!!!」

ツカツカツカ

通行人A「……?」

ビターン!!

通行人A「痛っ!な、なにをー」 

にこ「謝れ!」

通行人B「……はぁ?」

にこ「謝れ!今すぐ土下座して、ことりに謝れ!」

ビターン!ビターン!!

通行人A「な、何だこいつ。基地外か」

にこ「謝れ!謝れ!謝れ……」

グスッ
ボロボロボロ

ことり「にこちゃん、もうやめて」

ガシッ

にこ「!!ことり……」

ことり「もういいの。ありがとう、にこちゃん……」

にこ「ことり……」

ガクッ

にこ「うっ、うっ……」

ボロボロボロ

ことり「にこちゃん……」

にこ「ことり……ごめん。ごめん……」

ことり「!!どうしてにこちゃんが謝るの……?」

にこ「ニコは、心のどこかであいつらと同じように思ってたの。ことりのスキャンダルが発覚した時、このまま干されてしまえばいいのにって……」

グスッ

ことり「にこちゃん……」

にこ「アイドル失格だよね。だってニコは、ことりのアイドルへの想いを汚したんだもの……。アイドルでいる資格なんてないよ……」

ことり「……」

にこ「ごめんね……ごめんね……」

ことり「……にこちゃん」

にこ「……」

グスッ

ことり「……ちょっと、歩かない?」 

続きは後ほど

ことり「ここは変わってないみたいだね」

にこ「ここは……」

ことり「この屋上で練習してたの、昨日のことみたいに覚えてるよ」

にこ「……ここにはよく来るの?」

ことり「ときどき。つらいことがあったりしたときに……」

にこ「……」

ことり「にこちゃん。ほんと言うとね、今の暮らしはけっこう気に入ってるの」

にこ「ことり……」

ことり「最近はね、近所の学校や幼稚園に歌いに行ったりしているの。子供たちはほんとうに喜んでくれるから……」

にこ「そうだったんだ……」

ことり「そりゃ、お金はあの頃のほうがたくさん貰えたけど、嫌な目にもいっぱいあったし……それに、根も葉もない噂とかも……」

にこ「じゃあ、あのスキャンダルはやっぱりデマ……」

ことり「……」

コクリ

ことり「でも、もしあのことがなかったとしても、きっとアイドルはやめていたと思う……。みんなからちやほやされていても、いつだって一人、ずっと孤独……」

にこ「……」

ことり「たぶんことりには、アイドルは向いてなかったんだと思う」

にこ「そんな……」

ことり「でも、にこちゃんは頑張って。ことりよりもずっとアイドルに向いてるし、大変なことも色々あると思うけど……」

にこ「……」

ことり「今日はにこちゃんに会えて、本当によかったよ」

にこ「ことり」

ことり「……?」

にこ「……一緒にやろう」

ことり「え……?」

にこ「ニコと二人で、もう一度やろう。一緒に、アイドルをやろう」

ことり「な、なに言ってるの?にこちゃん」

にこ「ニコ、気づいたの。ニコが本当に欲しかったものは、一人じゃ手が届かないものなんだって。こうやって人気が出た今も、心に穴があいてるような、そんな気がずっとしてて……」

ことり「……」

にこ「もちろん、アイドルとは孤独なもの、それは分かっているわ。でも、いくら人気が出てちやほやされても、μ’sとして活動していた頃に感じた喜びは、得られなかった」

にこ「ニコはもう一度、あの頃みたいな気持ちで歌いたい。踊りたい。だからことり、ニコと一緒に……」

ことり「……にこちゃん」

にこ「……?」

ことり「ありがとう。落ちぶれて仕事のなくなったことりに、声をかけてくれて」

にこ「そんなんじゃないわ。同情で言ってるんじゃない。ことり、あんたが思っているほど、ニコは強くないの。一人でいるのは……つらいのよ……!」

ことり「分かるよ、にこちゃん」

ニッコリ

にこ「じゃあ……!」

ことり「ごめん。でも、今は無理みたい」

にこ「え……」

ことり「誘ってくれたことは本当にうれしいよ。でも、やっぱりまだ、気持ちの整理がつかないから……」

にこ「そうか……そうよね」

ことり「ほんとうに、ごめんね……」

にこ「謝らないでよ、ことり。分かったわよ。でも、ニコは待ってる。いつまででも、待ってるから」

ことり「にこちゃん……ありがとう」

―同じ頃。


凛「真姫ちゃん真姫ちゃーん!」

真姫「ゔぇ!?り、凛?どうしてこんなところに……」

凛「凛はこれからかよちんとご飯を食べに行くところだにゃー。真姫ちゃんこそ何してるにゃ?

真姫「わ、私は大学の帰りよ」

凛「そっかー、真姫ちゃんはまだ学生さんなんだ」

真姫「と、特に用事がないならこれで……」

凛「水臭いにゃー!真姫ちゃんも一緒にいくにゃー!」

グイグイ

真姫「え?ちょ、ちょっと……」

真姫「はぁまったく……私だってそれほど暇なわけじゃないんだからね」

花陽「久しぶりだね、真姫ちゃん」

真姫「あ……ひさしぶりね、花陽」

凛「たまたまそこで会ったんだにゃー」

真姫「二人は、その……今でもこうして会ったりしてるの?」

花陽「うん。時々ご飯を食べに行ったりしてるよ」

真姫「ふぅん……」

凛「あれ?ひょっとして真姫ちゃんうらやましいのかにゃー?」

真姫「な……ば、馬鹿ね。そんな訳ないでしょう」

凛「どうだかにゃー」

花陽「真姫ちゃんは、まだ大学に通ってるの」

真姫「ん……まあ、そうね。医学部は6年あるから」

凛「大変だにゃー」

真姫「仕方ないわよ。うちの病院を継がなきゃいけないんだから」

花陽「そうだね……」

凛「『継がなきゃいけない』って言い方をするってことは、真姫ちゃんには他にやりたいことがあるの?」

真姫「べ、別にそういう訳じゃ……。だって、もうそれはずっと前から決まっていることだし……」

凛「でもそれは真姫ちゃんが決めたわけじゃないにゃー?」

真姫「な、何が言いたいのよ?」

凛「別にー?ただ、ちょっと聞きたかっただけにゃー」

花陽「凛ちゃん、だめだよ。そんな言い方……」

凛「……悪かったにゃ」

真姫「わ、私は……」

凛「……」

真姫「は、花陽こそどうなのよ」

花陽「えっ?」

真姫「今もアイドルの追っかけをやってるみたいだけど、それで満足なの?」

花陽「え……えっと」

真姫「どうなの」

花陽「それは、私も……。見ているだけじゃ、物足りないと思うこともあるけど……」

凛「……」

花陽「でも、μ’sをやってた頃とは違うんだから、仕方ないかな、って……」

真姫「ほ、ほらね。誰しもそういうものよ、凛」

凛「そうなのかにゃー……?」

真姫「私はね、子供の頃からいつもこう教えられたの。成長するということは、そのたびに何か大切なものを失うことなんだ、って……」

花陽「……!」

真姫「それがかけがえのないものであればあるほど、人はより大きく成長するのよ。私も、花陽も、μ’sの思い出に別れを告げて、大人になろうとしているわけ」

花陽「そう……だね」

凛「ふーん。だったら、凛は成長なんてしなくてもいいにゃー」

真姫「そ……そういうわけにはいかないでしょ。だって私たちは……」

花陽「……」

真姫「……どんなに望んでも、もうあの頃には戻れないんだから……」

凛「……」

真姫「……」

花陽「……あ、あれ?」

真姫「……え?」

凛「どうしたにゃ?」

花陽「ほら、この曲……」

真姫「あ……」

凛「……にこちゃんの曲にゃ!」

花陽「ああ……。にこちゃん、凄いなあ……。ほんとにアイドルになっちゃうなんて……」

真姫「ま、まあ、にこちゃんは“成長”なんて言葉とは無縁だから、ね。まったく……ずっと続けてられる、ってことには感心するけど」

凛「真姫ちゃんは、にこちゃんとは最近会ってるのかにゃ……?」

真姫「え……え……?な、何言ってるのよ。会ってるわけないでしょう」

花陽「そうなんだ……?」

真姫「花陽まで何よ。どうして私がにこちゃんと会わなきゃいけないの」

凛「どうしてって……」

花陽「にこちゃんの曲とかも、チェックしてないの……?」

真姫「そんな暇はないわよ。今流れてる曲だって、花陽に言われなかったら、きっと気づいてなかったわ」

凛「ほんとかにゃー?」

スッ

真姫「ど、どういう意味よ……って、え?それは」

凛「真姫ちゃんの音楽ライブラリを拝見だにゃ!」

真姫「わ、私の携帯!いつの間に……!返しなさい!」

凛「おっと。そうはいかないにゃ。どれどれ……?」

花陽「!!わあ、にこちゃんの曲がいっぱい……」

真姫「た、たまたまよ!たまたま見かけてダウンロードしただけよ!!早く返して!!」

凛「……たまたまにしては凄い数だにゃー」

花陽「PVの動画まで……」

真姫「返して!!」

グイッ

真姫「ハァ、ハァ……」

花陽「ふふ……」

凛「……まったく、真姫ちゃんは子供だにゃー」

真姫「な、何よ……?」

凛「なんだか難しいこと言ってたけど、凛から見れば真姫ちゃんが一番子供だと思うにゃ。そう思わない?かよちん」

花陽「うん……そうかもね」

真姫「私のどこが……」

凛「だって、そうやって自分の気持ちと素直に向き合えないところ、あの頃とちっとも変わってないにゃ」

真姫「……!」

花陽「真姫ちゃんがそうやって応援してくれてるって聞けば、にこちゃん、きっと喜ぶと思う。だから……」

凛「たまには会いにいってあげたらどうにゃ?」

真姫「わ、私は……。だ、大体、向こうだって忙しいだろうし……」

花陽「真姫ちゃん」

真姫「……」

凛「凛みたいに、自分の気持ちに素直に生きるのが一番だにゃ」

―数時間後。


真姫「……にこちゃんの家まで来ちゃった……」

真姫「ば、馬鹿ね私は。何を考えているのよ……。ずっと会ってなかったのに、連絡もなしに、いきなり……」

真姫「や、やっぱり帰ろう。そうよ、どうかしてたのよ……」

ドンッ

真姫「あ……す、すみません」

にこ「いえ、こっちこそ前を見てなくて……って……ま、真姫……?」

真姫「え?あ……にこ……ちゃん……?」

にこ「どうしたってのよ。なんでこんなところに……」

真姫「た、たまたま近くを通りかかったから、なんとなく……」

にこ「久しぶり……ね……」

真姫「そうね……。久しぶり……」

にこ「……」

真姫「……」

真姫「……と、とにかく元気そうでなによりだわ。じゃあ私はこれで……」

にこ「……上がってく?」

真姫「……え?」

ドキン

にこ「う、家に上がってくかって聞いてんのよ。ここまで来てくれたわけだし……」

真姫「で、でも迷惑じゃ……」

にこ「……」

真姫「……じゃ、じゃあちょっとだけ……」

にこ「ちょっと散らかってるけど……。お茶入れるから座って待ってて」

真姫「あ……。ほ、本当にすぐ帰るから」

真姫(にこちゃんの家で二人きりなんて、初めて……かな……)

にこ「お待たせ。あんたの口には合わないかも知れないけど」

真姫「な、何よ。別に私は……」

にこ「冗談よ。あんた、ほんとに変わってないわね」

真姫「に、にこちゃんこそ……。まだ、アイドルやってるんでしょう」

にこ「あたりまえでしょ。ニコはアイドルになるために生まれて来たんだから」

真姫「相変わらずすごい自信ね……。私も自信家だけど、こればっかりは敵わないわ」

にこ「そ、それより、今日はどういう風の吹き回しよ」

真姫「え……?」

にこ「ずっと、顔も見せなかったくせに……」

真姫「だ、だからちょっと近くまで来たから、よ、寄ってみただけよ」

にこ「ふぅん……」

真姫「……」

真姫(にこちゃん……少し、痩せた……かな……)

にこ「ねぇ」

真姫「な、何よ」

にこ「あんた、やっぱり医者になるの?」

真姫「え?」

にこ「大学卒業して、医者になって、親の病院継ぐつもりなの?って聞いてんの」

真姫「そ、それは……。もちろん、そのつもりよ。ずっとそのために勉強してきたんだし……」

にこ「今でも、歌は続けてるんでしょう?」

真姫「歌……?そりゃ、たまに歌ったりはするけど、あくまで趣味の範囲だから……」

にこ「……」

真姫「……どうしてそんなこと聞くの?」

にこ「別に。……つまらないこと聞いて、ごめん」

真姫(どうしたのかしら、にこちゃん。やっぱり、何だか疲れてるみたい……)

にこ「……何よ。ニコの顔になんかついてるの」

真姫「い、いや、えっと、ちょっと元気ないように見えたから」

にこ「へぇ、医者の卵ってすごいのね。人の心の中まで見えるんだ」

真姫「……何かあったの?にこちゃん……」

にこ「……」

真姫「……」

にこ「……ねえ」

真姫「なに……?」

にこ「……隣に座っていい?」

真姫「え?」

ドキン

にこ「……」

スッ

真姫「に、にこちゃ……」

にこ「あんたの体、暖かいのね。真姫……」

ギュッ

真姫「……!」

にこ「こうしてると、あの頃を思い出すわ」

真姫「?にこちゃん……?」

にこ「真姫はもう忘れちゃった……?ニコや、μ’sのみんなと一緒に、馬鹿みたいに練習やライブのことばかり考えて過ごしてた、あの頃のこと」

真姫「わ……忘れるわけないじゃない」

にこ「でも、ちゃんと思い出には蓋をして、今は自分の道を歩いてる」

真姫「そ、それは……」

にこ「別に責めてるわけじゃない。ニコはニコで、自分の道を歩いてるから。でも……」

真姫「……」

にこ「あの頃は、ずっとみんな一緒に同じ道を歩いて行けるんだって、甘い夢を見ていたのよ。ただ、それを思い出しただけ」

真姫「にこちゃん……」

真姫(もしかして)

真姫(もしかして、にこちゃんは私を必要としてるの……?)

真姫(歌を続けているかなんて聞いたのは、私に隣で歌って欲しいから……?)

真姫(ば、馬鹿ね私は。そんなことあるわけないじゃない。仮にもにこちゃんは人気上昇中のアイドル、私はもうただの学生。あ、ありえないわ)

真姫(にこちゃんはもう、私とは全然違う場所を歩いてる。今さら私なんか……)

真姫(でも、もし……)

真姫(ああ、何を考えてるの、私は……)

にこ「……どうしたの?真姫。ぼーっとして」

真姫「え?あ、いえ、な、何でもないわ」

にこ「……」

にこ(馬鹿げた考えだってことは分かってる)

にこ(真姫には、医者になるっていう大事な目標があるんだから)

にこ(でも、もし、ニコの隣にいて欲しいって、そう言ったらあなたはどう答えるの?真姫)

にこ(……って、どうもこうもないか。断るに決まってるわよね。だいたい、そんな大それたお願いをする資格なんて、ニコにはないわよね)

にこ(でも、もし……)

真姫「にこちゃん……」

にこ「真姫……」

真姫「あのね、もしかしてー」

にこ「もし私が今ー」

ピンポンピンポーン

にこ真姫「!!!」

真姫「だ、誰か来たみたいね……?」

にこ「な、なにかしら、こんな時間に……」

パタパタパタ
ガチャ

にこ「!!!ことり……」

ことり「ごめんね、にこちゃん、こんな時間に……」

にこ「ど、どうしたのよ」

ことり「?奥に誰かいるの……?」

にこ「……ちょうど、真姫が来てたのよ」

ことり「!……そうだったんだ。じゃあ、ことりは出直すね」

にこ「ちょ、ちょっと何言ってんのよ。上がっていきなさいよ」

ことり「……ううん、いいの。ただ、さっきの話の返事をしにきただけだから」

真姫(さっきの話……?)

にこ「べ、別にそんなに急いで答えてくれなくてもいいのよ?無理なお願いをしたのは、ニコの方なんだから……」

ことり「ありがとう、にこちゃん。でも、決めたの。ことりは、にこちゃんと一緒にやりたい」

にこ「え?」

真姫「!!!」

にこ「い……いいの?ほんとにいいの……?」

ことり「うん。もう決めたから」

にこ「ことり……」

真姫(二人で一緒にアイドル活動、ってこと……?)

真姫(そっか、そりゃそうよね。ことりはずっと一線で活躍してきたんだもの、パートナーとしてはこれ以上ない相手よね)

真姫(馬鹿な私……。なに一人で勘違いしてたんだろ。そうよ、あの二人は本物のアイドルなんだもの。私なんかとはもう住む世界が違うのよ)

真姫「ことり……」

ことり「!真姫ちゃん……!ひさしぶり……」

真姫「テレビでもよく見ていたけど、やっぱりこうして直に見る方がずっとかわいいわね、ことり」

ことり「もう、からかっちゃダメだよ」

真姫「じゃ、今日はありがとう、にこちゃん」

にこ「え?」

真姫「なんだか、二人で大事な話があるみたいだし、私はこの辺で失礼するわ」

にこ「ちょ、ちょっと。まだゆっくりしていけばいいじゃない。それにー」

真姫「お言葉は嬉しいけど、明日も朝から実習があるし、試験の勉強もしなくちゃいけないから」

にこ「!そ、そうよね……。真姫はお医者さんになるための準備が大変なんだものね……」

真姫「……そうよ。私は医者にならなきゃいけないの。だから……」

にこ「……」

ことり「……?」

真姫「……じゃ、じゃあ、またね。次に会う時までにトップアイドルになれるよう、祈ってるわ」

にこ「……あんたこそ、試験に落ちるんじゃないわよ。もっとも、受かったところで世間知らずのお嬢様ドクターってんじゃあ、先が思いやられるけど」

真姫「な、何よ。にこちゃんが病気になっても、絶対に診てやんないんだから」

ことり「もう、二人とも~。相変わらず仲がいいんだから……」

真姫「だ、誰が……」

にこ「な、何言ってるのよ」

ことり「はいはい」

にこ「……とにかく、元気でね」

真姫「……にこちゃんもね。じゃ、さよなら」

にこ「……さよなら」

真姫「……これで、よかったのよね」

真姫「にこちゃんとことりなら……きっと、もっと上を目指せるはず」

真姫「これでよかったのよ……」

ポロッ

真姫「!!やだ、私、泣いてるの……?」

真姫「どうして涙なんか出てくるのよ。私は医者になるんでしょう?そのために、そのために……」

真姫「!」

真姫「……そうか」

真姫「また、“成長”しちゃったのかな、私……」

真姫「その度に泣いてたんじゃ、お話にならないわね……」

真姫「もっと……もっと強くならなきゃ……」

―一方その頃。


にこ「……」

ことり「どうしたの、にこちゃん……?ぼーっとして」

にこ「え?ああ、別に何でもないわ」

ことり「……」

にこ(ニコには……ニコには、言えなかった)

にこ(「真姫、一緒にやろう」って、言えなかった)

にこ(ば、馬鹿ね。どうせ鼻であしらわれてたに決まってるわ)

にこ(でも、口にしてみるくらい……)

にこ(穂乃果なら……穂乃果だったら、きっと、躊躇わずに……)

にこ(真姫……)

続きは夜に

続きです

―それから数ヶ月後。


アナウンス「……本日の公演は、すべて終了しました。お気をつけてお帰りください……」

絵里「最高のステージだったわ……にこも、ことりも」

絵里「あの子たちは、どうやら自分たちの夢を掴みとったみたいね」

絵里「さてと、私は……」

???「絵里?絵里ではないですか?」

絵里「え?」

???「やっぱり……お久しぶりです」

絵里「!!海未……!海未じゃない!あなたも、あの子たちのライブを見に……?」

海未「ええ、まあ……」

絵里「やっぱり気になるのね」

海未「絵里こそ……ことりたちのライブにはよく来るのですか?」

絵里「もちろん!……と言いたいところだけど、なかなかね。今日はうまく時間がとれたから……」

海未「大変なのですね」

絵里「海未のほうこそ、大変じゃないの?日舞の家元なんて、私にはなかなか想像もつかない世界だけど」

海未「私は若輩者ですから、色々と大変なことはあります。でも、ことりたちに比べたら……」

絵里「そうね。あの子たち、本当に頑張ってる……」

海未「ええ……」

絵里「そう言えば、海未に聞きたいことがあるんだけど」

海未「……何でしょう?」

絵里「穂乃果とは、最近会っているのかしら?」

海未「いえ……会っていません」

絵里「!!そうだったの……。意外だわ。海未やことりはてっきり今でも連絡を取り合っているものだとばかり……」

海未「……」

絵里「……何かあったの?」

海未「実は……」

???「ゔぇ?あ、あなた達……」

海未「!?」

絵里「あら……」

???「エリー、それに海未まで……」

絵里「久しぶりね、真姫」

海未「あなたも……ライブに?」

真姫「た、たまたま近くを通りかかっただけよ」

海未「たまたま来るような場所ではないと思いますが……」

真姫「う、うるさいわね。別にどうだっていいじゃない」

絵里「ふふっ、そうね。確かにそんなことはどうでもいいわ。どっちにしろ、こうして3人で顔を合わせられるなんて、すごい偶然ね」

海未「いつ以来でしょうか……」

真姫「そ、そんなことより、何か大事な話をしてたんじゃないの、あなた達。なんだか真剣な顔をしてたみたいだけど」

海未「あ、いえ、大事な話というわけでもないのですが、穂乃果のことでちょっと……」

真姫「穂乃果の……?そう言えば今どうしてるの、穂乃果」

絵里「ねえ、二人とも。こんなところで立ち話もなんだし、ちょっとどこかのお店に寄って行かない?せっかくこうして会えたんだし、ね」

絵里「ダンス留学?」

海未「はい。穂乃果は今、海外にいます」

真姫「へぇ、そこまで本気で打ち込んでたなんてね」

絵里「……いつからなの?」

海未「大学を卒業してすぐ……。ですから、もうじき3年になります」

真姫「それにしても、私たちに黙って行くなんて水臭いわね」

海未「みんなと顔を合わせると、決心が鈍ってしまうから……と言ってました」

絵里「決心……?」

海未「ええ。向こうで結果が出るまでは、日本には帰って来るつもりはないと……。でも、μ'sのみんなと会ってしまったら未練がでてしまうから、と言って……」

絵里「そうだったの……」

海未「実は、私やことりが聞かされたのも、穂乃果が向こうに行ってからの話なんです」

真姫「で?どうなのよ。ものになりそうなの」

海未「それが、このところ連絡がなくて……。私もことりも、心配していたところなんです」

絵里「それは気になるわね……」

真姫「ま、穂乃果のことだから、何とかするんじゃないの」

絵里「あら、真姫、あなたは気にならないの?穂乃果のこと」

真姫「べ、別に。だいたい、私たちが気にしたって、仕方ないんじゃない」

絵里「ふふっ」

真姫「な、何よ。何がおかしいのよ」

絵里「相変わらず嘘が下手ね」

真姫「ゔぇ?だ、誰が……」

絵里「そんな嘘で騙されるのは、真姫、あなた自身くらいのものよ」

真姫「な、何を……。し、知った風なこと、言わないで」

絵里「ごめんなさい、怒らせるつもりはなかったの。ただ、希にいつも見透かされてるから、ちょっと私も誰かにやってみたくなっただけ」

真姫「……」

絵里「……今でも覚えてるわ。真姫が入学してきた頃のこと」

真姫「私が……?」

絵里「いつも不機嫌そうにしてる新入生のあなたが、私は妙に気になったの。でも、それがなぜなのか、自分では分からなくて……」

真姫「……」

絵里「そんな時、希にこう言われてはっとしたわ。『あの子、うちが出会った頃の絵里ちとそっくりやなあ』って、ね」

真姫「……!」

絵里「だから、真姫を見てると、まるで自分を見てるみたいで、ちょっと意地悪したくなっちゃうのよ」

真姫「……」

絵里「ねえ、海未。私は穂乃果のことが気になるわ」

海未「絵里……?」

絵里「私や真姫みたいなあまのじゃくがμ'sにいられたのは、穂乃果のおかげ。あの子がいなかったら、ずっと何かを待ち続けたまま、私は……」

海未「今も……」

絵里「……?」

海未「今も、何かを待っているのですか?絵里は……」

絵里「まさか」

海未「……」

絵里「……と言いたいところだけど、真姫にお説教した舌の根も乾かないうちに、自分に嘘をつくわけには行かないわね」

海未「じゃあ……」

絵里「私はまた、待ってるのかも知れないわね。あの日の放課後、穂乃果が手を差し伸べてくれた時のように……」

真姫「な、何言ってるのよエリー。しっかりしてよ。あなた、これから弁護士としてやって行くんでしょう?弱気になってるんじゃないの?」

絵里「そうね。真姫の言う通りかも知れない。私は、自分の進むべき道から、逃げ出したいだけなのかも知れない。でも……」

海未「でも……?」

絵里「今日、にこやことりのステージを見て、また分からなくなったの。自分が歩こうとしている道が、本当に正しいのか、って……」

真姫「ば、馬鹿なこと言わないで。今さらそんな……本気で言ってるの?」

絵里「分かってるわよ。馬鹿な考えだってことは。それに……」

海未「……」

絵里「……あの時と違って、穂乃果はいないんだし、ね」

真姫「そ、そうよ。穂乃果はいないのよ。いくら私たちが望んだところで、どうしようも……」

海未「真姫、あなた……?」

真姫「!!ち、違うのよ。あくまで仮定の話。別に私は何かを待ったりなんてしてないんだから」

海未「……」

真姫「……」

絵里「……何だか、ずいぶん遠いところまで来てしまったのね。私たち……」

海未「そうですね……」

真姫「……仕方ないじゃない」

絵里「μ's……。やっぱり、あれは私たちにとって、一時の夢みたいなものだったのかしらね……」

―ちょうどその頃、にことりの楽屋。


ことり「今日のライブは大成功だったな……。にこちゃんと一緒にやることにして、本当によかった……」

ドタドタドタ

にこ「ことり……ことり!」

ことり「ど、どうしたのにこちゃん?そんなに慌てて……」

にこ「これ、穂乃果じゃない……?」

ことり「え……?」

にこ「ほら、この記事……」

ことり「『日本人ダンサー、ブロードウェイデビュー』……?あっ、本当だ!穂乃果ちゃん……!」

にこ「ちょっと、どういうことよこれ。何で穂乃果がこんなところに……?」

ことり「実は……」

カクカクシカジカ

にこ「そうだったの……。消息が分からないとは思ってたけど、まさか海外に……」

ことり「連絡がなくて心配してたんだけど、穂乃果ちゃん、頑張ってたんだ……!よかった……」

にこ「それにしても凄いわね。誰でもできるもんじゃないわよ、これ……」

ことり「結果が出るまで絶対日本に帰らないって、穂乃果ちゃん言ってたから……」

にこ「でも、これでますます帰って来れないんじゃないの。忙しくなるんだろうし」

ことり「……!」

にこ「……」

ことり「穂乃果ちゃん……」

にこ「……ほらほら、しんみりしてる場合じゃないでしょ」

ことり「……」

にこ「ニコたちも、年末の紅白に年明けにはアルバム発売……。穂乃果に負けてるわけには行かないんだから!」

ことり「う、うん。そうだったね……!」

ことり(穂乃果ちゃん……おめでとう……!)

にこ(すごいのね、穂乃果……)

にこ(穂乃果……あんたは、あんたの場所を見つけたの?それとも……)

にこ(ニコは……いや、ニコたちの場所は……)

にこ(穂乃果……あんたなら、あんただったら、どうするのかしら……)

にこ(穂乃果……)

―数ヶ月後。


プルルル

ことり「海未ちゃんから電話だ……!」

海未「お久しぶりです、ことり……」

ことり「そうだね!久しぶり……。どうしたの、海未ちゃん?」

海未「いえ、CDがオリコン1位と聞きましたので、一言おめでとうが言いたかっただけです。忙しいだろうとは思ったのですが」

ことり「ううん、嬉しいよ、海未ちゃん」

海未「……体調を崩したりはしていませんか?ツアーなども始まるようですが……」

ことり「ことりは大丈夫だよ。にこちゃんも一緒だし、それに……」

海未「……」

ことり「穂乃果ちゃんのほうが、きっともっと大変だと思う」

海未「……穂乃果はかなり頑張っているみたいですね。この前もテレビで取材されてるのを見ましたが」

ことり「誰も知り合いがいない国に行って、一人で頑張って、オーディションで役を勝ち取るなんて……。凄いよ……」

海未「あなたも十分すごいですよ、ことり」

ことり「ことりは、まわりのみんなに支えられてのことだから……」

海未「それはそうと、やはり穂乃果は当分日本に帰って来れないようですね。レッスンやら次の舞台やら、スケジュールがぎっしりで……」

ことり「そうなんだ……。会いたいよ、穂乃果ちゃん……」

海未「私も会いたいです。でも……」

ことり「……そうだね。やっと夢を掴んだんだもんね。ことりたちが会いたいなんて言ったら、迷惑だよね……」

海未「……ええ」

ことり「とにかく、今日はありがとう、海未ちゃん」

海未「では、また……」

ことり「じゃあね」

ピッ

カチャッ

にこ「……ことり、ちょっといい?」

ことり「あ、うん。大丈夫だよ」

にこ「ついに、武道館公演が決まったわ」

ことり「本当?凄い……!やったね、にこちゃん!」

にこ「……そうね」

ことり「……?どうしたの、にこちゃん。あんまり嬉しくなさそう……」

にこ「嬉しくないわけじゃないわ。でも……」

ことり「……?」

にこ「ねえことり、あんたを誘った時にニコが言ったこと、覚えてる?」

ことり「え?えっと、確か……」

ことり「……にこちゃんの夢は、一人では手が届かない……」

にこ「そう。だから二人で頑張って、とうとうここまで来た」

ことり「……」

にこ「でも、駄目なの。それじゃやっぱり駄目なのよ……!」

ことり「にこちゃん……」

にこ「ねえ、ことり。私は誰?」

ことり「え……?」

にこ「言ってみて。私は誰なの?」

ことり「だ、誰って、にこちゃんはにこちゃん……」

にこ「違うわ」

ことり「……?」

にこ「ニコはただの矢澤にこというアイドルじゃない。μ'sのアイドル、矢澤にこなのよ……!」

ことり「……!」

にこ「やっと気づいたの。あの日、ニコはμ'sの一部になったんじゃない。μ'sが、ニコの一部になったんだって。それはことり、あんたも同じはずよ」

ことり「μ'sが……ことりたちの一部……」

にこ「それだけじゃないわ。きっと、他のみんなにとっても……」

ことり「!!にこちゃん、まさか……?」

にこ「ええ、そうよ」

にこ「……ニコは、μ'sの再結成を呼びかけてみようと思うの」

ことり「そんな……!ムチャだよ。だって、みんな普通のお仕事とかも……」

にこ「分かってる。ムチャだってことも、ニコの独りよがりだってことも承知のうえよ」

ことり「だったら……」

にこ「でも、μ'sは穂乃果の独りよがりから始まったんじゃない。違う?」

ことり「……!」

にこ「ニコはね、考えたの。穂乃果にあって、ニコにないものは何なのか……。穂乃果とニコは、何が違うのか……」

ことり「穂乃果ちゃんとの……違い……?」

にこ「本当にその夢を信じてるなら、本当にみんなを信じてるなら、独りよがりの想いをぶつけたっていいじゃない。ニコはそれを穂乃果から教わったわ」

ことり「……」

にこ「想いをぶつけることをためらうようだったら、それは相手を思いやっているようでいて、結局、単に自分がかわいいだけなのよ」

ことり「……そうだね……そうなんだよね」

にこ「だからニコは、みんなに声をかけてみる。一ヶ月後の今日、場所は秋葉原駅前……!」

ことり「……やろう、にこちゃん。やってみよう。
みんなに声をかけてみよう……!」

にこ「か、勘違いしないでよ。ニコだって、本当にみんなが駆けつけてくれると思ってるほどお花畑じゃないわよ?」

ことり「うん」

にこ「ただ、うまく行かなかったとしてもニコが一人でガッカリすればいいだけの話だし、やってみてもいいかなって……それだけのことなのよ?」

ことり「……優しいんだね、にこちゃん。ことりがガッカリしないように、そんな風に言ってくれて……」

にこ「ば、馬鹿ね。そういう訳じゃないわ。ニコはただ……」

ことり「はいはい」

にこ「まったく……。ま、とにかくやるだけやってみようってこと。当たってくだけろ、ってやつよ」

―そして、一ヶ月後。約束の日。


ことり「だいぶ遅れちゃったね……」

にこ「まさか、レッスンがあんなに長引くとはね」

ことり「みんな待ちくたびれてないといいけど……」

にこ「馬鹿ね。前から言ってるでしょう?本当にみんなが来てくれるなんて期待してちゃダメだって……。暇を持て余してる誰かが一人か二人いてくれれば、もうけものと思わなきゃ」

ことり「……にこちゃんこそ、本当は期待してる癖に」

にこ「そんなことないってのに。……ほら、もう着くわよ」

ことり(お願い。一人でもいいから、来てくれていますように……)

にこ(神様。誰か、誰か……たった一人でも構わないから……お願い……)

にことり「あ……」

ポツーン……

ことり「にこちゃん……」

にこ「……」

ことり「誰も……いないね……」

にこ「……」

ことり「も、もしかして、みんな帰っちゃったのかな?ことりたち、かなり遅れちゃったから……」

にこ「ふ、ふふ」

ことり「にこちゃん……?」

にこ「だ、だから言ったでしょ。期待しちゃダメだって」

ことり「……」

にこ「と、とにかく、これでもう未練もなくなったわ。まったく、こんなヒマがあったら少しでも練習しなきゃいけないってのに、何やってんだか……」

ことり「にこちゃん、泣かないで……」

にこ「ば、馬鹿ね。泣いてなんかないわよ。あんたも泣くんじゃないわよ、ことり。これからも、二人で頑張って行かなきゃいけないんだから……」

ことり「うん……」

にこ「さ、分かったら、とっとと帰って……」

???「にこちゃーん!ことりちゃーん!」

にこ「……!?」

凛「よかった……間に合ったにゃー!」

花陽「ま、待って……凛ちゃん」

ことり「凛ちゃん……花陽ちゃん……!」

凛「もー。かよちんが待ち合わせ場所を間違うからいけないんだにゃー」

にこ「あ、あんたたち……!どうして……」

凛「ん?今日ここに来るように言ったのはにこちゃんじゃなかったのかにゃー?」

にこ「そ、それはそうだけど……。あんたたち、これがどういうことか分かってるの……?」

凛「もちろん!」

花陽「μ's再結成……ですよね?」

にこ「あ、遊びじゃないわよ。覚悟は出来てるんでしょうね……?」

凛「あれー?にこちゃん、ひょっとして泣いてないかにゃー?」

にこ「!!そ、そんなわけないでしょ。それよりあんたたち、ここに来たからにはビシバシ鍛え直してやるんだから、そのつもりでいなさいよ……!」

凛「望むところにゃー!」

花陽「よろしくご指導お願いします……!」

ことり「これで4人……」

にこ「上出来よ。じゃあ、早速練習……」

希「おっ?ちゃんと集まってるみたいやな」

絵里「遅れちゃったけど、何とか間に合ったみたいね」

にこ「希……それに絵里!」

希「うちだけしか来てなかったらどうしようかと思ったけど、みんな感心やね」

にこ「こ、ここに来てくれたということは、あの、その……」

ことり「μ'sに……?」

絵里「もちろん、そのつもりよ」

ことり「で、でも大丈夫なんですか?お仕事とか……」

絵里「何よ。せっかくお誘いに乗ってここまで来たって言うのに、いきなり仕事の心配?」

希「絵里ちやったら大丈夫や。にこっちからの連絡を見て、絵里ちの方からうちを誘ってきたくらいやから」

絵里「ちょ、希……!」

にこ「二人とも……ありがとう……!」

花陽「これで6人ですね!」

希「いや、どうやら7人目も来たみたいや」

海未「すみません……。だいぶ遅れてしまいました」

ことり「海未ちゃん……!」

海未「どうしても外せない用事が出来たものですから……」

ことり「海未ちゃーん!」

ギュッ

海未「ちょ、ちょっと、ことり……?」

ことり「嬉しいよ!海未ちゃんが来てくれて……」

海未「こ、ことり!みんなが見ています……!」

希「相変わらず仲がええね」

絵里「でも、大丈夫なの?私が言うのも何だけど、仕事の方は……」

海未「私は大丈夫です。それに……」

海未「やる、と決めましたから」

絵里「……」

希「これで、残るは……」

凛「真姫ちゃんに……」

ことり「穂乃果ちゃん……」

にこ「ま、まあ、真姫が来ることはないでしょうけどね」

凛「えっ?」

ことり「にこちゃん、もう返事を貰ってるの……?」

にこ「そういう訳じゃないわ。でも、考えてもみなさいよ。真姫はお医者さんにならなきゃいけないのよ。こんなこと、やってる場合じゃないわ」

凛「それは……」

にこ「……きっと、ニコからの連絡を見て、呆れ返ってることでしょうね」

花陽「……」

???「確かに、呆れているところよ」

にこ「!?」

???「あなたたちと、自分自身の馬鹿さ加減に、ね」

花陽「ま、ま……」

凛「真姫ちゃん!」

にこ「あ、あんた、いつからそこに……?」

真姫「さっきからずっといたわよ」

凛「もー!真姫ちゃんは相変わらず水臭いにゃー!」

真姫「な、何よ。あなたたちがあまりにも馬鹿騒ぎしてるから、そっちに近寄るのが恥ずかしかったのよ」

にこ「ま、まったく……。別に、来たくないなら来てくれなくてもよかったのよ……?ごらんの通り、メンバーは十分集まってるんだから……」

真姫「!!ちょっと、それどういう意味?せっかく人が来てあげたっていうのに」

にこ「……」

真姫「なに黙ってるのよ。ちょっと、こっち向きなさいよ……!」

グイッ

真姫「……えっ?」

にこ「真姫……」

グスッ
ボロボロボロ

にこ「ありがとう……」

ギュッ

真姫「ちょっ、にこちゃ……え?」

にこ「嬉しい。嬉しい……」

ボロボロボロ

絵里「あらあら」

希「にこっちの想いが爆発しちゃったみたいやね」

にこ「真姫……真姫……」

真姫「み、みんなが見てるじゃない……!ちょっと、にこちゃん……!」

ことり「とにかくこれで8人……あとは……」

希「……そうやね」

海未「でも、穂乃果は……」

絵里「……確かに、さすがに厳しいでしょうね」

にこ「……そうかしら」

真姫「私たちは住んでる場所も近いし、多少忙しいくらいならどうとでもなるわ。でも……」

海未「穂乃果はニューヨーク……」

真姫「向こうの雑誌なんかも見たけど、批評家の評判もいいみたいだし、仕事は増える一方よ。とてもじゃないけど……」

絵里「それを投げ打って、日本に帰ってくるのは無理……」

海未「仕方ないですね……」

ことり「そうだね……仕方ないのかも……」

希「ふふっ」

絵里「?何がおかしいの、希……?」

希「いや、不思議な巡り合わせやなあ、と思ってな」

海未「不思議な……?」

希「うちらはみんな、穂乃果ちゃんが差し伸べてくれた手をとって、μ'sに入ったんや」

にこ「……」

希「穂乃果ちゃんのまわりにみんなが集まって、3人になり、6人になり、そして……今のμ'sになった。でも、そのμ'sが今度は、穂乃果ちゃんの帰りを待ってる……」

絵里「そうね。考えてみれば不思議な縁だわ」

真姫「……」

絵里「本当なら巡り合うことさえなかったかも知れない私たちが、こうして何年も経った今でも、一つの絆で結ばれているんだもの……」

にこ「当たり前じゃない。ニコたちは……μ'sなのよ」

絵里「μ's……。9人の、歌の女神……」

ことり「穂乃果ちゃん、帰ってきてくれるかな……」

海未「穂乃果……」

絵里「……もう少しだけ、待ってみる……?」

にこ「……でも、さすがにこれ以上は、もう……」

凛「……あれ?」

にこ「どうしたの?」

凛「今、あっちに穂乃果ちゃんみたいな人がちらっと見えたような……」

にこ「!!どこよ?」

凛「……見えなくなったにゃー」

にこ「もう、しっかりしてよ。待ち焦がれ過ぎて幻でも見たんじゃないの」

凛「おかしいにゃー……」

にこ「……さ、みんな……そろそろ行きましょう。いつまでも待っててもしょうがないわ。それに、こうして8人も揃ったんだし……」

???「……なー!」

海未「……?」

ことり「今、穂乃果ちゃんの声が……?」

絵里「え……?」

真姫「そ、空耳じゃないの……?」

???「みんなー!」

海未「ま、間違いありません!穂乃果の声ですわ!」

にこ「まさか……」

???「遅くなって、ごめん……!」

凛「あっ、あっち!」

穂乃果「ごめんねみんな……飛行機が遅れちゃって!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

海未「穂乃果!」

ハアッハアッ

穂乃果「よかったー、間に合って……。空港から走ってきたんだよ」

にこ「あ、あんた……」

絵里「ほんとに来るなんて……」

穂乃果「あ、あれ?どうしたのみんな?狐につままれたような顔して」

ことり「だ、だって……」

凛「い、いいのかにゃー?」

真姫「本当、呆れ果てて、ものも言えないわ……」

希「真打ちは最後に登場……と言ったところやね」

花陽「信じられない……!」

穂乃果「ちょ、ちょっと。いっぺんに話しかけられても返事ができないよー」

海未「ですが、穂乃果……」

穂乃果「あ、そうだ。えーと……」

一同「……?」

穂乃果「―ただいま」

一同「……!!」

穂乃果「ごめんね。みんなに黙って遠いところに行ったりして」

海未「そ、そんなことより!いいのですか、日本に帰って来たりして!」

穂乃果「大丈夫だよ。向こうのお仕事はちゃんと一区切りつけてきたし」

海未「しかし……!」

ことり「穂乃果ちゃん、ほんとによかったの……?穂乃果ちゃんの夢だったんじゃないの……?」

穂乃果「そうだよ」

海未「だったら……」

穂乃果「夢だよ……穂乃果の、一番大事な夢。それを掴むために、ここに帰ってきたの」

ことり「穂乃果ちゃん……!」

海未「穂乃果……!あなたって人は……」

にこ「……まったく、さらっと粋なことを言ってくれるわね」

穂乃果「にこちゃん。声をかけてくれて……ありがとう」

にこ「何言ってるのよ。μ'sはあんたがいないと始まんないのよ、やっぱり」

花陽「でも、本当に来てくれるなんてびっくりです……」

真姫「さすがに無理だと思ってたわ」

希「あれ?みんな悲観的やってんなあ。うちは初めから、こうなることは分かってたけどね」

絵里「またぁ……。ホントなの、希?」

希「もちろん。カードがそう告げてたんや」

にこ「と、とにかく。これで全員そろったことだし、場所を変えましょうか」

真姫「そうね……。さすがに注目を浴びてるわよ。ただでさえ、にこちゃん達は顔が知られてるのに……」

にこ「じゃあどこか人目につかない場所に……」

絵里「……ねえ。どうせなら、今ここで歌わない?」

花陽「え?ここで?」

凛「面白そうだにゃー!」

海未「し、しかし、こんな場所で……」

希「ええやん?この街はうちらの原点なんやし」

穂乃果「穂乃果も賛成!」

にこ「まったく……恥をかいても知らないわよ?ニコ達はプロだけど、あんたたちはロクに練習もしてないんでしょ?」

真姫「まあ、私はにこちゃんには引けをとらない自信はあるけどね」

にこ「な、何を……。見てなさい、真姫。ことり、プロの恐ろしさを見せつけてやるわよ!」

ことり「はいはい」

絵里「じゃあみんな、準備はいい?」

凛「OKだにゃー!」

にこ「それじゃ、行くわよ……!」

穂乃果「あ!待って、みんな」

一同「……?」

穂乃果「……大事な事を言い忘れてるよ」

花陽「あ……」

希「せやな」

凛「うっかりしてたにゃー」

穂乃果「みんな一緒にね。いい?」

ことり「……うん!」

海未「ええ」

真姫「……まったく、こういうところだけはしっかりしてるのね」

穂乃果「行くよ!?」

一同「……」
コクリ

にこ「……μ'sの」

絵里「……私たちの、新しい出発に向けて」

穂乃果「μ's、ミュージック……」

μ's「……スタート!!!!!!」

ーーおしまいーー

最後まで読んでいただき、ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月29日 (日) 22:34:00   ID: jeJTPUCx

感動した!

2 :  SS好きの774さん   2014年01月21日 (火) 06:31:33   ID: OjkMjZPx

すごい感動したありがとう

3 :  SS好きの774さん   2014年02月13日 (木) 22:55:39   ID: 3hEHKSp9

感動しました!!

4 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 22:55:52   ID: u4pU2DJO

感動をありがとう!!!!

5 :  SS好きの774さん   2016年02月04日 (木) 23:06:03   ID: akRfVjVF

この後の結末が知りたいっ!感動

6 :  SS好きの774さん   2016年03月16日 (水) 01:19:41   ID: Z7nwW7mF

いい話ですね。

7 :  SS好きの774さん   2016年03月30日 (水) 21:11:28   ID: ZtO_m_p1

何を歌ったのか? startdashかな?

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