バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~ (862)

※このSSは『とある魔術の禁書目録』のお話です
基本コメディ&日常、時々シリアス&戦闘入りますので要注意。地の文もたまーに入れます
主人公は上条さん、ヒロインは複数人(計三人)予定。一人目はバードウェイさんです
後の二人は出てからのお楽しみ……か、考えてない訳じゃないんだからねっ (´・ω・`)

ともあれ最後までお付き合い頂ければ幸いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1378160982



――プロローグ 「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」

――魔術結社『明け色の日射し』 極東アジトの一つ

バードウェイ「ふんふふーん!」

マーク「……」

バードウェイ「るる、ららーっ」

マーク「……」

マーク(どうしよう。ボスがすっげー悪そうな顔で上機嫌だ)

マーク(さっきから『聞けよ?早く聞けよな?』的な視線を感じるし……)

マーク「あ、あのー、ボス?」

バードウェイ「ん?なんだ?」

マーク「先程から随分ご機嫌なんですけど、何かありましたか?」

バードウェイ「んー?そう見えるかー?そうかー、分かってしまうかー」

マーク「ぶっちゃけウザ――じゃなかった!違いますからまず魔術武器を仕舞ってください危険です!」

バードウェイ「さっきも言ったが、お前はいつまで経っても学習しない奴だよなぁ」

マーク「い、いえいえいえっ!いっつもボスのご指導ご鞭撻にはっ!えぇそりゃもう夢にうなされるぐらいにっ!」

バードウェイ「その言い方も気に食わんが……まぁいい。私は今、非常に機嫌が良いんだよ」

マーク「あー、その、私はボスに『なんで機嫌が良いんですか?』って聞こうと思ってたんですよ」

バードウェイ「見れば分かるだろう、と言うか見て分からないか?」

マーク「すいませんボス。私には全然分かりません、つーか理解したくないです」

バードウェイ「これだよ、これ」 ポンポン

マーク「これ……ですか?」

バードウェイ「格安だったんだよ!なんと20セントで買えたんだ!」

バードウェイ「どうだ?中々良い買い物をしたと思っているが」

マーク「えぇまぁ、よく、馬車馬のように働きそうな感じですよね」

マーク「ですが、その」

バードウェイ「なんだ?何か言いたそうだな?」

マーク「はいボス。先程から、つーか部屋に入った時から疑問に思っていたのですが」

マーク「ボスが腰掛けているそれ。20セントで買ったのって、何ですか?」

バードウェイ「……おいおい、マーク。マーク=ギルダ○?」

マーク「違います。スペンサーです。Gジェ○には出ていません」

バードウェイ「Xラウンダ○とAG○システムってなんだったんだろうな?」

マーク「ボス、爆死したバカに追い打ちするのはやめてあげて、と思います」

バードウェイ「全ての因縁を決着したのが、ノーマルパイロットと第二世代を改修した機体ってのはどうなんだ?」

マーク「それを言ったら第四世代なのにご覧の有様だったF○ばどうなるんですか、ボス」

バードウェイ「そもそも主人公がアス○(明日野)で、企画・シナリオ・ゲーム制作の特級犯罪者が日野ってファンにケンカ売ってるな?」

バードウェイ「アセ○・キ○・フリッ○の頭文字を取るとアキフ。バカの名前が晃博(アキヒロ)ってのもちょっと疑っているんだが」

マーク「い、いや別に良いんじゃないですかね?どこかのゲームで主人公の名前をライターと同じにして大炎上した例もありますし」

バードウェイ「自分で今言ったろうが、ボスが腰掛けてる、って?」

バードウェイ「だったらこれはイス以外の何であると言うんだ?あぁ?」

マーク「いやでも」

バードウェイ「見ろ、この座り心地を!普通のイスとは比べものにならない弾力性!」

バードウェイ「安物のスプリングでは得られない満足感だろっ!」

マーク「ですからね?そういう事ではなく」

バードウェイ「そしてこの肌触りっ!まるで最高級の革のようなしなやかさだっ!」

マーク「私が問題にしているのはそこじゃなくって――」

バードウェイ「それになぁ、このイスには会話機能もついているんだぞ?どうだ!どう考えても凄すぎるだろう!」

バードウェイ「よーしマークに自己紹介してみろ!」

マーク「ですからボス。そういう事ではなく――」

マーク「――ボスが座っているのって、イスじゃなくて上条さんですよね?」

上条「……こんにちは。バードウェイのイスになった上条です……」

バードウェイ「なぁ?」

マーク「待って下さいよボスっ!?流石にこれはシャレにならないっ!」

マーク「ウチでこんな扱いしてるのがバレたら、イギリス清教とローマ正教とロシア成教全てを敵に回しますからっ!」

バードウェイ「いやでも、イスだろ?だって本人喜んでるし?」

マーク「……上条さん、幼女に座られて喜ぶ趣味があるなんて!」

上条「喜んで――ねぇよっ!?つー何?なんなんだよっこの展開はっ!?」

上条「違うよね?イスつったら、普通のイスに俺が座って、その上へバードウェイが乗ってだ!」

上条「『何だかんだ言っても、まだ子供なんだな』ってする所じゃないのっ!?」

上条「それが何っ!?連行されたら即『四つんばいになって、喋るな』だものっ!」

上条「なんか違うしっ!つーか誰得だよっ!?」

バードウェイ「世の男には金を積んでまで座ってもらいたい層があるようだが」

上条「マーーーーーーーーーーーークゥゥゥッ!?テメェんとこのお嬢様の教育はどーなってやがるっ!?」

マーク「ご褒美ですよねっ」 キリッ

上条「真性の変態がイターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

バードウェイ「まぁ気にするなよ上条当麻」 ポンッ

上条「冗談だよね?マジで俺30円ちょっと借りただけで、残りの人生イスになり続けるって事はしないよね?」

バードウェイ「……嫌、なのか?」

上条「……へっ?」

バードウェイ「私も鬼ではない。契約は守るし、お前が嫌というのであればそれ相応の扱いへと切り替えよう」

マーク「(契約は破らせない骨までしゃぶるって、それただの悪魔じゃねーか)」 ボソッ

バードウェイ「おいマーク、お前は霊装無しでイギリス清教潰して来い」

マーク「無茶ですよボスっ!?その命令のどこに意味がっ!?」

バードウェイ「ムシャクシャしてやった。反省はした事がない」

マーク「ボオォォォォォォォォォォスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥっ!?」

バードウェイ「とまぁスッキリした所で、上条当麻」

上条「な、何?」

バードウェイ「イス扱いした事を詫びよう。そしてこれからは血が通った扱いをすると誓うぞ」

上条「あぁいや分かってくれりゃ別に。俺だってケンカしたい訳じゃなかったんだし」

バードウェイ「なぁ、鉄の首輪と革の首輪、どっちが良いと思う?」

上条「待って!?それは俺の話じゃないよね?飼い犬とかペットの話をして居るんだよね?」

バードウェイ「んー、東洋人はSloe-eyedだから、やはり黒色で合わせるのがベターかな?」

上条「あ、ごっめーんっ!やっぱ俺イスが良かったわっ!つーか多分俺はイスになるために生まれてきたんだと思うよっ!」

上条「ほ、ほらっバードウェイって軽いからっ!上条さんの腕の負担には全然ならないしっ!」

上条「むしろっあれだよっ!柔らかくて色々と意識しちゃうからっ!気を遣っただけだからねっ!?」

マーク「上条さんも……!?」

上条「お前も見てないで助けろよ、なぁ?つーかなんでちょっと危機感覚えているの?」

上条「もしかしてお前も、一方通○の獣道を引き返せない所まで走ってる人?」

バードウェイ「そ、そうか?そこまで言うんだったらイスとして使ってやらなくもない」

上条「……イヌよりはまだ、イスの方が良いです」

バードウェイ「あぁそうそう上条。一つだけ言っておく」

上条「……何?イスとしての心構え?」

バードウェイ「まぁ追々慣れるだろうが――それ以前の問題、礼儀の話だ」

バードウェイ「お前も『明け色の陽射し』の一員となったのだから、これからは」

バードウェイ「私の事は『ボス』と呼べ」

――『明け色の陽射し』・極東支部(※上条のアパート)

バードウェイ「――と言う訳でお前も今日から『明け色の陽射し』の一員となった以上、迂闊な言動は慎むように」

バードウェイ「紳士たれ、とまで言わんが節度ある行動を頼むぞ」

上条「人間イスの刑は迂闊じゃないのか?どこら辺に節度あったっ!?」

バードウェイ「涙を呑んで上下関係を明らかにする必要があったのだよ、なぁ?」

マーク「ですね。見て下さいボスのお肌がツヤッツヤですから」

上条「お前らそれっぽい事言ってりゃ誤魔化されると思うなよ?俺だって出る所には出るんだからな?」

上条「つーかさ、ここ俺んちじゃねぇかよ!勝手に魔術結社の支部扱いすんなっ!」

バードウェイ「おんやぁ?イギリス清教のシスターが常在していた家が普通だって?」

マーク「今いらっしゃらないようですが、どちらへ?」

上条「あぁインデックスはイギリスに(以下略)」

マーク「ボケすらもスルーされるのは、ある意味ネタにされるよりも痛々しいと思います」

バードウェイ「弄られなくなったら終りだと思うんだがなぁ……まぁいい。暫く留守にするのであれば好都合だ」

上条「俺は?俺の都合も聞いた方が良いんじゃないの?」

上条「でもいきなりやって来てどうしたんだ?普通にくれば歓迎したのに」

バードウェイ「パトリシアを覚えているか?ほら、幼女の」

上条「お前もだからな?偉そうに言ってるお前と同い年だからな?……いや、流石に会ったばっかりだし、忘れもしねぇよ」

バードウェイ「今、学園都市に居るんだよ」

上条「へー……えぇっ!?入学させたのかよっ?」

バードウェイ「ここにだけはさせないから心配するな。そうじゃない。パトリシアは聡明だろう?」

上条「海洋地質学だっけ?そっちの専門紙に論文載ったって話は聞いたけど」

マーク「その実績を買われたようで。今回は『ゲスト』として学園都市へお呼ばれしました」

バードウェイ「青田買いという奴だ。オープンキャンパスさながら、学園都市ではこんなに施設が整ってますよー、ってな」

上条「期間は?」

バードウェイ「二週間だ。我が妹の優秀さに目をつけたのは評価に値するが、少々宜しくはない」

上条「そんくらいだったらまぁ、別にいいんじゃ?」

上条「前にも学園都市の油田プラント?か、なんかのプロジェクトにも参加してたって言うし。能力開発しないのであれば」

上条「人様の家庭事情に首突っ込むのもあれだけどさ、もうちょっと放任でも良くね」

バードウェイ「ダメだ!何を言ってるんだ貴様っ!」

バードウェイ「こんな危険な街に妹一人置いておける訳が無いだろう!」

上条「オイオイ、待ってくれよバードウェイ。確かにこの街は良い奴も悪い奴もいっぱいいるけどさ」

上条「流石にゲストを問答無用で巻き込む程、節操がないって事も無ぇよ」

バードウェイ「聞けばこの街にはロ×好きの超能力者達がいるそうじゃないか!」

上条「そっちの心配かっ!?つか×リがロ×言うなよ!……そっかー、有名になったなぁ一方通○」

上条「え、でも『達』ってどういう事。そんなにいっぱい居ない筈だけど」

マーク「私の調べた限りでは――まず、カキクケコ言う変態」

上条「知ってる」

マーク「次に真っ白な変態」

上条「……知ってる」

マーク「最後にビリビリする変態の三種類が確認されています」

マーク「許せませんよねっ!幼女とお風呂入ったり幼女とご飯食べたり幼女とシャンプーハット使ったり!」

上条「おいバードウェイ。お前達が調べたリストにはコイツは入ってないの?外国の都市よりも身内に居る犯罪者の方がタチ悪ぃよな?」

バードウェイ「バードウェイじゃない、ボスと呼べ」

上条「そもそも学園都市トップ3がアレなのは――待て待て。カキクケコと白いのはもう諦めてるけど、御坂は違うぞ」

上条「基本ストーカー二人に内外から狙われてる方だからね。あれ、そう考えると不憫になってきた」

マーク「噂の域を出ない話ですが、何でも『7、8歳ぐらいの幼女を手なずけようと色々している』そうで」

上条「あー……そういや佐天さんのトコで、フェ何とかってちっちゃい子、預かったっつってたっけ?」

上条「つか何?御坂、滅茶滅茶モテんのに彼氏作らなかった理由はそれかー……」

バードウェイ「(いや、まず間違いなくお前が原因だがな)」

マーク「(私も嘘は吐いてないので悪しからず、まる)」

バードウェイ「家族の心配をするのは当然の話だろう?」

上条「そりゃまぁそうだけど。動機は流石にアレだが」

バードウェイ「野暮用もあったが、それはついでの話だ」

上条「レアモンスターの配信でも待ってんのかよ」

バードウェイ「早く買わないと無料で野バスが手に入らないんだよ」

上条「あれなぁ。DLCばっか、デフォのキャラデザが同人未満のクオリティだっけ」

マーク「昔はドット絵だったのに、ポリゴンが増えて劣化するのもどうなんですかねぇ」

上条「またATMひぼた○☆3を探す一日が始まるぜ……」

バードウェイ「エル○シリーズを見習って欲しいものだが。まぁいいさ」

上条「ゴシッ○、ミハシ○と迷走しまくってるからなぁ」

バードウェイ「とにかく、だ。お前は我が結社の一員となったからには、その自覚を忘れないようにな」

上条「自覚もなにも強制だろうが!」

バードウェイ「……ま、私達がこの街を去るまでは体験入社という形を取ろう。適正があるかどうかのテストだな」

上条「ねぇマークさん。おまいらのボスはどうして人の話を聞かないの?」

マーク「いやぁこれでも結構緊張してあばばばばばばばばっ!?」

上条「敵の魔術師の攻撃かっ!?」

バードウェイ「おっとすまんマーク。間違ってこの尋問用霊装、スイッチが入ったまま押しつけてしまったようだな」

上条「……すっげービクビクしてるんだけど大丈夫?ここで死なれるとブチこまれるの俺だからね?」

マーク「かか、上条さん……!」

上条「なぁそろそろ止めてやれって。幾ら親しいからって、この扱いは良くないぞ」

マーク「ご褒美……です……!」

上条「変態プレイするなら帰ってくれないか?つーか俺を巻き込むな!」

バードウェイ「まぁこんな事を言うなよLolico013」

上条「人に勝手な魔法名つけんじゃねぇ!しかもロ×の後の数字が意味深だしっ!」

バードウェイ「その魔法名には『13歳以上は女じゃない』という意味が込められている」

マーク「おや、その名がNGなら上条さんは一桁でないとダメなタイプだそうですよ。ボス」

バードウェイ「まいったなぁ、そこまで真性だと矯正の仕様がないじゃないか。ちっ」

上条「せめて!せめて身に覚えのある事で責められるんだったら納得行くけどさ!」

上条「違うじゃん?俺そんな事一言もいってないじゃんかっ!」

上条「インデックスと何事もなく過ごしている時点でノーマルだよ!潔白だってば!」

バードウェイ「よし、その言葉忘れるなよLolico013?」

マーク「あーぁ、言っちゃいましたねー上条さん」

上条「……はい?」

バードウェイ「聞いての通り上条当麻の性癖はノーマル――つまり、私がここに宿泊しても何一つ問題がないって事だな」

上条「え、なに?」

マーク「いやーほんとはぼすがしんぱいなんですけどー、かみじょうさんならもんだいないですよねー」 (棒読み)

バードウェイ「だなぁ。『万が一必要悪の教会とかち合っても、上条当麻が緩衝材になれば戦闘しないで済む』だろうし、なぁ?」

上条「ハメやがったなチクショウっ!?そうか!お前ら人を防壁代わりに使おうってハラかよっ!」

バードウェイ「そこまで卑下しなくたって良いじゃないか、新入り?」

マーク「そうですよぉ、上条さんが一時的にウチの傘下に入るって事は、手を出した連中はその他大勢を敵に回すって意味ですし」

上条「て、事はなんだ?全部最初から仕込みだったのか?」

バードウェイ「当然だ。我ら『明け色の陽射し』イギリス屈指の魔術結社だぞ」

バードウェイ「奸智に長け、計略を以て武とする。そういう人種だな。伊達に『黄金』の名を継いでいないのだよ」

マーク「――って事を仰ってますが、実は行き当たりばったりです、はい」

上条「あ、そうなんだ?」

バードウェイ「……おいマーク」

見覚えのあるノリと勢い…!
>>1氏は過去に何か書いておられましたか?

>>13
こんな感じで。良かったら他のもどうぞ

上条「今日からアイテムの一員になった上条です!」
上条「今日からアイテムの一員になった上条です!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364862586/)

佐天「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!はっじっまっるっよーーー!」
佐天「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!はっじっまっるっよーーー!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367376694/)

とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』
とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373334420/)

インデックス「この向日葵を、あなたに」
インデックス「この向日葵を、あなたに」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375930011/)

マーク「本当ならば順を追ってお願いするつもりだったんですよ。けど上条さんの家まで行く途中、買い物をされているのをお見かけしまして」

マーク「『ここは任せろ。なぁに私の手にかかれば赤子の幻想をぶち[ピーーー]!』なんて挙動不審な台詞でボスが」

マーク「私らを先に行かせて説得しようとしたんでしょうが、ほら、ボスとLolico13ってケンカしたばっかでしょ?」

上条「そうだよな、って俺をその名で定着させるの止めてくれないか。割とマジで」

マーク「話しかけるタイミングがないままズルズル尾行が続いて、『あ、小銭切れた、チャーンス!』と」

上条「なんだよバードウェイ。別に気にするようなこっちゃねぇのに」

マーク「あんま言ってやらないで下さい。そもそもボスも何だかんだ言って、12歳のガキですからねー」

マーク「嫌いな相手なら、手足引きちぎって犬の餌にするぐらいは朝飯前なんですが、その逆となると――」

バードウェイ「……マアアァァクゥ?マーク・スペンサー?」

マーク「え、どうしたんですかボス?魔術武器なんて持ちだして」

バードウェイ「ちょおおおぉぉぉぉぉっと席を外すが、いいな?見るなよ?」

マーク「ボス、あの、ものっそい強い力で掴まなくっても、私は逃げ――イタタっ!?」

パタン

上条「おーいお前ら外で何して」

ズゥンッ!!!

上条「!?」

カチャッ

バードウェイ「と言う訳で新入り、今日から世話になるな」

上条「いや、それは別に良いんだけど。玄関から黒コゲの何かが見えるって言うか」

上条「赤黒い液体がじわじわとしみ出して、猟奇的な絵面になってますよ?」

バードウェイ「ま、あまり客扱いしなくても良いさ。私はこう見えても空気の読める人間で通っている」

上条「読んでないよな?面倒はごめんだと全力でお断わりしているからな?」

バードウェイ「空気は読むが、波風を立てないと言った覚えはない。むしろかき乱す方が好みだ」

上条「……最悪だっ、このガキ……」

バードウェイ「――少し真面目な話をしようか、上条当麻」

上条「ん、あぁ」

バードウェイ「正直、私達は『必要悪の教会』と抗争している訳ではない。ないのだが」

バードウェイ「少し前にこの街でパトリシアが襲われているのも事実だ。向こうは『手違いだった』で済ませたが」

バードウェイ「だが、だ。だがしかし」

バードウェイ「――妹にちょっかいかけられて、私が怒っていない訳ではないのだよ」

上条「……」

バードウェイ「そこら辺を加味した上で、私が君という緩衝材を間に置く事で、『連中とやり合わないでやろう』と言っているのさ」

バードウェイ「君にとっても悪い選択肢ではない、と思うがなぁ?」

上条「……バードウェイ」

バードウェイ「いいか?お前は言った筈だ――『他の連中を巻き込むのであれば、俺を使え』と」

バードウェイ「だから、『これ』は当然の義務として――」

上条「バードウェイ!」

バードウェイ「……何だ」

上条「それは、違う。そうじゃない」

バードウェイ「何がだ。はっきり言え」

上条「知り合いんトコに世話になるのに、『それ』は違うんだ。そんな事しなくたって」

上条「そんな理由じゃなくたってだ」

上条「ただ、普通に……あぁいやお前なら、多分こう言うんだろ」

上条「『妹が心配だから、様子見るために何日か泊めろ』って」

バードウェイ「はぁ?バカかお前、誰がそんな生温い事で納得するんだよ」

バードウェイ「私達はお前が思っている程、好き勝手は出来ないのさ」

上条「お前はそうかも知れないが、俺は俺の流儀を通すぞ。絶対に」

上条「バードウェイの立場がどうであろうと、お前は、お前だからな」

バードウェイ「こんな下らない事で本質を変えようしたって、所詮はアレだ。本質は変わらない」

バードウェイ「アメリカ産の安ワインにブルゴーニュのラベルを貼った所で、味は変わらない」

バードウェイ「私はな、上条当麻。お前に親愛の情など抱いていないし、異能以外に興味もない」

バードウェイ「ただそれが『結社』のためになるから利用しているに過ぎん。それでも」

上条「だからだよ」

バードウェイ「何だと?」

上条「最初から仲良くやろうつっても無理なもんは無理だ。ならせめて、形ぐらいから入ろうぜ?」

バードウェイ「……好きにするがいいさ。私は所詮ゲストに過ぎん」

バードウェイ「郷に入っては、という言葉もあるぐらいだし、まぁ、そのなんだ」

上条「うん」

バードウェイ「あぁっその期待した目を止めろ新入り!……だからといって直ぐションボリするんじゃない!言葉のアヤだろうが!」

バードウェイ「……その、あれだよ」

バードウェイ「パトリシアが学園都市に来ると言ったので、付き合いで来てみた」

バードウェイ「泊る所は……まぁ、探せば幾らでもあるだろうが、肩も懲りそうだし遠慮したい」

上条「肩凝る歳じゃねーだろ」

バードウェイ「煩い!……だから、その、暫く泊れる所を探しているんだが」

バードウェイ「泊めろ!これは命令だからなっ!」

上条「おけ、これから二週間よろしくな、バードウェイ」

バードウェイ「バードウェイじゃない、ボスと呼べ……あぁ、こちらこそな」

バードウェイ「――で、だ。取り敢えず上下関係を明確にする必要があると思うんだよ、なぁ?」

上条「え、違くね?『仲直りできたし、ウヤムヤにして今日は終り』って展開じゃないの?」

バードウェイ「『人を信じろ』とホザいてた奴に、確か私はドリられそうになった挙げ句、まんまと騙されたんだっけ」

バードウェイ「いやぁすっかり忘れていたが思い出してしまったなぁ、んー?」

上条「待って下さいバードウェイさん!顔が大魔王クラスの悪い笑顔になってますから!」

上条「そもそも騙す騙さないの話ならそっちが先に仕掛けたんだろっ!?」

バードウェイ「つまりお前に許されるでもなくイーブンだった訳だ。その上」

バードウェイ「あの女を守るためだと襲撃を喰らった私は!高校生に全力で頬を殴られた私は!むしろ被害者だと言えるんじゃないか!」

上条「あー……結果だけを見れば、うん」

バードウェイ「そうだよなぁ、立ち話も何だし座ろうか」

上条「あ、うん。今座布団出すからちょっと待っ」

バードウェイ「オイオイ新入りぃ、そうじゃないだろ?」

上条「ベッドに座んの?いいけど、お客さんに失礼じゃないかな」

バードウェイ「いや私にはイスがあるから、それでいいよ」

上条「イス?和室にそんな洒落たもんねーぞ」

バードウェイ「何を言っている。あるじゃないか――なぁ、イス?」 ポン

上条「あれあれー?バードウェイさんはどうして俺の肩に手を置くのかなー?」

バードウェイ「バードウェイじゃない、ボスと呼べ。おや、このイスは私が20セントで買った筈なのになぁ?」

上条「その設定は終わったんじゃ?」

バードウェイ「あぁそう言えばあの『事件』は、被害者行方不明で起訴猶予処分になったんだっけか」

バードウェイ「ちょっとアンチスキルのトコ行って、真相を全て話して来るかー」

上条「……なんて?」

バードウェイ「『背後から頭にドリルを突きつけられて、言う事を聞けと脅された』と」

上条「子供相手に最悪の犯罪者じゃねぇか俺っ!?」

バードウェイ「『さァお嬢ちゃんの履いてるストッキングを寄越すんだグヘヘヘヘヘ』」

上条「100%捏造だよね?あと俺報いっつーか、脇腹に9mm貰ってんだけど!」

バードウェイ「……あぁなんだお前、さっきからヤケにダダをこねると思ったら。そうかそうか」

バードウェイ「いや私も流石にそこまでは気が回らなかった。素直に謝罪しよう」

上条「フリだよね?そこまで溜め作っても、今から言う事は酷いんだよな?」

バードウェイ「跪いて四つんばいになれ、このイス野郎」

上条「その気の遣い方はおかしいっ!?喜ぶ人なんて少数だよねっ!?」

バードウェイ「マーク(仮名)なら喜んで泣くぞ?」

上条「ネタにしたって下品過ぎるっ!そもそも(仮名)つけるぐらいなら、最初から伏せてあげて!」

バードウェイ「ま、たった二週間だ。バカンスだと思ってお嬢様の我が侭の一つや二つ、叶えてくれたっていいだろう?」

上条「……そう言われると」

バードウェイ「――と、いう逃げ道を作り、自ら人間イスをしやすい環境を整えてくれる優しいボスを持てた奇蹟」

バードウェイ「お前はもっと感謝すべきだろうなぁ、主に私にだが」

上条「逆にハードルが上がってるわっ!最初から飛べる位置を越してるけども!」

バードウェイ「やかましい!ツベコベ言わずさっさと下になれ!」

上条「オイ馬鹿止めろ!?知ってるんだこの展開はきっとあのパターンだから!」

バードウェイ「はぁ?何を言ってるん――」

ガチャッ

パトリシア「ごめんくださーい。お姉さんがお邪魔してるって――」

マーク「パトリシア嬢をお連れしましたよー。まぁ明日でも良いとは思いましたが、早い方が――」

上条「……」 (※下・腰の上に幼女)

バードウェイ「……」 (※上・マウント状態)

パトリシア「……お、お義兄さん?」

上条・バードウェイ「違うっ!」

パトリシア「まさか本当にお邪魔しちゃったとは!くぅー、どうしましょうかマークさん!?」

マーク「大丈夫ですよパトリシア嬢。ここは落ち着いて数でも数えるとしましょうや」

マーク「慌てず騒がずクールに振る舞え。それが結――もとい、サークルの信条ですから」

パトリシア「流石マークさんですねっ」

マーク「この作品に出ているのは18歳以上18歳以上18歳以上18歳以上18歳以上……」

上条「今更かっ!?つーかそれ明らかに嘘情報だし!」

パトリシア「と、とりあえず私達は一時間ぐらい帰ってきませんからっ!じゃっ!」

マーク「ボスが大人の階段を……あぁまだ来てないから安心っちゃ安心ですが……」

パタンッ

上条「……」

バードウェイ「……なぁ、新入りぃ?」

上条「えっと……バードウェイ、さん?可愛らしいお顔が、ものっそい悪い笑顔になってますよ?」

バードウェイ「これもそれも、アレだな。貴様がボスの言う事を聞かないからだよなぁ。誰がどう考えても」

バードウェイ「……よし、二度と粗相しないよう――」

バードウェイ「――その体に教えてやるっ!!!」

上条「待て!このビリビリはっ!まず――」

上条「これで!最初からこの騒ぎでだっ!」

上条「二週間もつ訳がねあばばばばばばばはばばばばばばばばばっ!?」

バードウェイ「よーし跪いて許しを請え!」

上条「だからどうしてお前はやる気あばばばばばばばはばばっ!?」



――回想 スーパー

バードウェイ「……」

マーク「ボス?どうしました」

バードウェイ「……何がだ」

マーク「学園都市についてからずーん、と落ち込んでるような。テンションだた下がりなんですけど」

バードウェイ「重い日なんだよ」

マーク「来てねえクセに嘘吐くな――ってボス!交通標識で殴られたら死にますからっ!?」

バードウェイ「殴りはしないよ。ちょぉぉぉっと首を撥ねるだけだ」

マーク「発想がDI○なんですが……」

マーク「ま、まぁまぁどうしましたか?ご機嫌が悪いように見えます」

バードウェイ「あー、色々とな」

マーク「まっさかボス、上条さんに会うのが気後れしているとか?」

バードウェイ「おいおいマーク、マーク・キン○」

マーク「スペンサーです。生きた伝説と言われるベーシストと間違われるのは、幾らなんでも畏れ多すぎます、ボス」

バードウェイ「私を誰だと思っている?若干12歳にして『黄金』系の魔術結社を束ねる身だぞ!」

マーク「あ、上条さん?ご無沙汰してますー」

バードウェイ ビクビクビクッ

マーク「なーんちゃって。やだなぁボス、フラグ立ってないんですから、そうバッタリ会う訳ないじゃないですか」

バードウェイ「……ウソ?」

マーク「普通なら一生口聞いて貰えないレベルですけど、上条さんなら許してくれますって――」

マーク「あれ、ボス。『プリマ・タロッコ』取り出してどうしました?」

バードウェイ「『世界は22に別れ、千々に別れた世界で愚者は知識を求め旅に出る』」

バードウェイ「『無知の知たる蛮勇は蕃神を辿りて、黄泉へ下らん』

マーク「待って下さい!?街中でFool→Starコンボをぶっ放すのは危――」

バードウェイ「――さて、お祈りの時間は終わったなぁっ!」

マーク「殺す気っ!?」

ドォォォンッ!

バードウェイ「……さて、バカは不幸な事故によって消えてしまったが」

マーク「……ボ、ボス?……出来れば、救急車……ぐふっ!?」

バードウェイ「どうしたもんだろうなぁ」 ゲシゲシ

マーク「傷口がっ!?ヒールがめり込んでキモ――痛いですっ!」

バードウェイ(仲直り。仲直りなぁ?)

バードウェイ(何となくパトリシアに着いてきてしまったが、今更感が強いよな)

バードウェイ(ばつが悪いと言うか、きまりが悪いと言うのか)

バードウェイ(形はどうあれ、結果もさておき。バゲージシティの惨状を『ケンカしようぜ!』で済ますバカだ)

バードウェイ(あれだけ悲惨な舞台を作った原因へ対し)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……相手がなぁ。まだ指導者やそれに近い立場であれば、心理状態など手に取るように分かるんだが)

バードウェイ(カネ、信念、家、国家、民族。どれか一つ、もしくは幾つかの『柱』があって)

バードウェイ(それが行動原理となり、利害関係を辿ればある程度の思考は読める、が)

バードウェイ(バカ相手にはそれが通じない、と言うのがこの間の一件の教訓か)

マーク「……ボス……あの、上条さん、が……」

バードウェイ「お前はいつまで経っても学習しない奴だよなぁ、あぁ?」

マーク「違いますっ!あれっ、スーパーの入り口!」

バードウェイ ササッ

マーク「……ボス、何も電柱の陰に隠れ無くたって」

バードウェイ「……ハッ、隠れてなどいぬものか!私を誰だと思っている!?」

マーク「誤字かと思いましたが、噛んでるじゃないですか……あー、夕方ですし、学校帰りに寄ったんですかねー」

バードウェイ「……」

マーク「どうしましょうか?お宅まで伺うのが筋でしょうし、ここでお待ちするのがベターですかね」

バードウェイ「――いや、ここは任せろ。なぁに私の手にかかれば赤子の幻想をぶち殺す!」

マーク「やだ、この子錯乱してる」

バードウェイ「お前は暫く経ってから奴のホームで合流しろ。いいな?」

マーク「良いですけど。大丈夫ですか、色々な意味で?お前アタマ大丈夫?的な感じの」

バードウェイ「下僕の一人や二人、制御に戸惑うようなネンネじゃないって事さ」

マーク「ネンネも何も。まぁ良いですけど」

バードウェイ「任せておけ。心理戦は得意分野だ」

マーク(相手がフツーの相手なら、だけどな)

バードウェイ「……マークぅ?お前が思っているような『フツー』の相手なら、充分に読み切れるんだよなぁ?」

マーク「さーせんしたっ!」

――少し前 レジ

上条(インデックスも居ないし、食費がかからなくて済むけど)

上条(こういうのって一人だと料理するのが面倒で、ついつい総菜になりやすい――ってそれ、主婦の発想じゃねぇか)

上条(パスタと醤油。ソースはこないだ呑んじまったから、醤油とバターで適当に)

上条(ガーリックチップって残ってたっけか……?)

レジの子「――以上で1450円になりまーす」

上条(えっと……あ)

レジの子「1450円になりまーす」

上条(マズったなー……1420円しか持ってない。これは売り場に返してくるしか)

バードウェイ「――貸してやろうか?」

上条「マジか!?悪いっ!じゃ30円貸してくれ!」

バードウェイ「30円……20セントか。ほら」

上条「すまん、助かったよ――ってバードウェイっ!?お前だったのか!?」

バードウェイ「……30円に負ける存在力に少し凹むが……まぁ良いだろう」

上条「近くのコンビニで下ろすから――ってこっちこっち、袋に詰めるのはこっちでするんだ」

バードウェイ「キロ単位のパスタとビーンスプラァゥト……相変わらず苦労してるんだな、お前は」

上条「しみじみ言われても、それはそれで辛いんだが……」

バードウェイ「――あぁ、そうか。そうだな。そうすれば簡単か」

上条「バードウェイ?」

バードウェイ「……こほん。上条当麻、別に今の貸しは返さなくても構わないぞ。知り合いから取り立てる程、私も悪逆ではない」

上条「そうか助かっ――っていやいや!何か無理難題をふっかけられそうで怖いわっ!」

バードウェイ「心外だなぁ。もう少しお前は人を信じるべきだと思うぞ」

上条「それお前にだけは言われなくねぇよって言うか」

バードウェイ「だから、なんだ?無理に借りを返す事は無いからな」

上条「断る!絶対無茶振りが来るに決まってるもの!俺の人生そんなんばっかだよ!」

バードウェイ「とはいえなぁ。守銭奴でもあるまいし、立場上鷹揚な所を示さねばならない」

バードウェイ「そうだな……では一つ、頼みを聞いてくれないか?」

バードウェイ「それで貸し借りはフェアとしようじゃないか」

上条「あぁ構わないぜ。つーかそっちの方が俺も気が楽だ」

バードウェイ(よし!ヒットした!)

上条「……あれ?でも無茶振りを防ぐために借りを返すんだよ、確か」

上条「そうするとその借りを返す際に無茶振りが来たら……?」

バードウェイ「いやー助かったよ。こちらとしてもどう話を持ってくるか、悩んだんだが」

上条「その不吉な前置きを止めろっ!?嫌な予感しかしねぇしっ!」

バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」


――プロローグ 「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 -終-

――次回予告(※予定)

女「むかしむかし、ある所にこんな物語があった」

女「魔女の継母に虐待されていた兄妹……いや、姉弟は家出をする」

女「喉の渇いた弟は泉の水を飲もうとするが、『この水を飲んだものは虎になる』という声を聞いた姉は、水を飲ませるのを止めさせた」

女「次に弟はまた泉の水を飲もうとするが、『この水を飲んだものは狼になる』という声を聞いた姉は、水を飲ませるのを止めさせた」

女「再び弟が泉の水を飲もうとするが、『この水を飲んだものは鹿になる』という声を聞いた姉は、弟に忠告したが弟は構わず飲んでしまった」

女「すると弟は鹿の姿になってしまう」

女「姉は靴下留めで作った首輪で弟と自分を繋ぎ、森の中にある空き家で暮らし始めた」

女「ある日、鹿を狩りに来た国王に見初められ、姉は妃となって迎え入れられる」

女「しかし継母とその子は幸せを妬み、妃を殺してしまう」

女「妃の代わりに隻眼の娘を妃の身代わりにさせ、王を誤魔化した」

女「その夜、死んだ筈の妃は幽霊となり、我が子の世話をし始める」

女「その最後の日。王と妃が出会うと妃は生き返り、継母は火刑、隻眼の娘は八つ裂きにされ」

女「鹿となった弟は元の姿へ戻る。めでたしめでたし、か」

女「……」

女「……私は弟を失った」

女「泉の水を飲ませ、虎にし、狼にし、鹿にしてしまった!」

女「王を殺し継母を殺そうともしたのよ!けど!」

女「……弟は元へ戻らない。私が幾ら笑おうとも。私が幾ら泣こうとも」

女「何をしたってエリスはもう帰って来ないんだ!……ちくしょう、チクショウっ……!」

女「……これは、とある愚者の物語」

女「魂を失った亡骸にしがみつき、魂囚われた哀れな魔術士の物語」

女「『断章のアルカナ』第一話」

女「――『姉と弟』」


――次回予告 -終-


※今回投下は以上で終了。読んで下さった方には感謝を

乙です!
バードウェイSSは中々完結したのを見ないので、最後まで頑張ってほしいです!
ちなみに、更新間隔はどれくらいのつもりですか?

>>14
やはり貴方でしたか!!
乙です!!
今回も期待してます!!

>>32
いつも通り週一ぐらいを予定しています
……が、暑さが収まらず、胃壁が良い感じで削られてビタミン剤とタバコ以外受け付けない状態でして
今から検査ですが、もしかしたら物理的に缶詰になるかも知れませんので、その際は次回投下が遅れてしまったらごめんなさい

>>33
有難う御座います。上司からワンパターンだと言われる文体ですが、お付き合い頂ければ幸いです

一度、この>>1で銀魂を見てみたいは……

祝・8巻発売!

>>35
取り敢えずダメ元で好きなカプ書いてみようぜ。話はそれからだ (`・ω・´)



――断章のアルカナ 第一話 『姉と弟』

――某マンション

黄泉川「だーかーらっ醤油をきらしただけじゃんか?つか別に毎日使うもんじゃなし」

黄泉川「つーコトで今日はビーフシチューに決まってるじゃんよ」

一方通行「違ァンだよ!そうじゃねェェンだよ!お袋の味は肉ジャガに決まってンだろォが!」

黄泉川「いやー、ウチのかーちゃん肉ジャガばっか得意じゃんか?だもんでいい加減ウンザリしてるんじゃん」

黄泉川「醤油とみりんは好きだけど、月一ベースで食うようなもんじゃないじゃん?」

一方通行「お前のかーちゃンなんざ知らねェよ!俺は肉ジャガが食いたいつってンだァ!肉ジャガが!」

芳川「作ってあげればいいじゃない、『肉ジャガガ』。大人げないわよ?」

黄泉川「いやあたしは飽きたって言ってるじゃん?あと、おかんの手料理思い出して凹むじゃんし」

打ち止め「おいしくなかったのー、ってミサカはミサカはちょっとだけ表現を曖昧にしてみたり!」

一方通行「決まってンだろうが。じゃねェとここまでビーフシチューに拘る意味が分からねェし」

芳川「その理屈で言うんであれば、あなたがビーフシチューへの拘りも同じって事になるけど」

黄泉川「いやーおかんのメシは美味いじゃんよ?そうじゃなく、実家の雰囲気が苦手じゃん」

一方通行「ンだァ?俺みてェに捨てられた訳じゃァねェだろうが」

芳川「逆よ、逆。娘さんが可愛くて仕方がないらしくてね」

黄泉川「あ、こら!」

芳川「地元の有力者の一人息子とか実業家とか、事ある度にお見合いの話が出て来るんだって」

打ち止め「結婚!人生のハカバだよねーっ!ってミサカはミサカはウンチクを語ってみたり!」

一方通行「実家と気まずいからって、カーチャンの得意料理敬遠するなンざ、子供か」

黄泉川「……割と辛いじゃんよ。マジでマジで」

芳川「……あー愚痴ってたわね。こないだ書類取りに帰った時、親子でご飯を食べに行って」

芳川「出る話題のことごとくが『誰々が結婚した』とか、『子供が生まれた』とか。延々聞かされたらしいじゃない」

芳川「最後の方は『孫って可愛いんだろうねぇ(父親)』とか、『そうじゃんねー(母親)』って責められると」

黄泉川「……ホームに帰ったつもりが、いつの間にかアウェイになってたじゃんよ……」

打ち止め「よしよし、がんばったよね、ってミカサはミカサはなでなでしてあげるのだ!」

芳川「ミ“カ”サじゃなくって、ミ“サ”カね?何と間違ったか分からないけど」

打ち止め「進撃する巨人のおねーさんなのだよ!ってミサカはミサカはミカサを説明してみる!」

芳川「ゲシュタルト崩壊しそうな響きね」

一方通行「……下らねェ理由だよなァ、やっぱ」

芳川「ねぇ?同僚からは結構口説かれてるのに」

黄泉川「うっさいじゃんよ!あんたらに気持ちが分かって……そうだ!」

一方通行「偽でも恋人のフリなんてしねェからな、先言っとくが」

黄泉川「なんでじゃんよ!?別に一回や二回!電話口で適当話してくれるだけでいいじゃん!」

一方通行「ババアに興味ねェよ。ラブコメ担当はピッタリの奴がいンだろうが」

一方通行「つーか学生へ手ェ出した事になンぞ、センセェ?あァ?」

芳川「幾ら男日照りだからって、生徒にはちょっと……よねぇ」

打ち止め「ねぇねぇ良く分からないけど、わたしもお話に混ぜてってミサカはミサカは言ってみる」

黄泉川「こうなったら上条に頼むしかないじゃん……!」

一方通行「ノリノリでやりそうだがなァ――っと」

PiPiPiPi、PiPiPiPi……

一方通行 チラッ

From――クソメガネ

一方通行「……面倒臭ェ」 ガタッ

黄泉川「つーワケで今日はビーフシチュー!決定じゃんよ!」

一方通行「すンなよ!俺は食わねェからな!絶対だからな!」 パタン

芳川「急に機嫌悪くなったわね、あの子」

黄泉川「いやあれは『べ、別にあンたのために食べるンじゃないンだからね!』って解釈していいじゃんか?被保護者さん」

打ち止め「大体合ってるかもー、ってミサカは宿命のライバルの口調を真似てみる!」

――ベランダ

一方通行 ピッ

土御門『現在、おかけになった電話番号は使われておりません。にゃー、と言う電子音の後にメッセージを入れ――』

一方通行 ピッ

一方通行(肉ジャガ……どっかで食ってくるかァ?)

一方通行(ガス○……あの一人席に座るのはキッついぜ)

一方通行(チンピラ誘って食いに――)

PiPiPiPi、PiPiPiPi……

一方通行 ピッ

土御門『酷くない?電話切るのはボケ倒した後だと思うにゃー』

一方通行「お前は存在そのものがボケなンだがなァ……つかお前、死ンだって聞いてたンですけどォ?」

一方通行「今の時期、土の下は冷たくて良い気分だったかァ?」

土御門『なんだ一方通行、心配したのか?』

一方通行 ピッ

一方通行(メシ……面倒ォだなァ。マッ○で月見でも食うかァ)

PiPiPiPi、PiPiPiPi……

一方通行 ピッ

土御門『あーごめんごめん?もうボケないから話聞いて?』

一方通行「ふざけンな。ンな事言うためにわざわざ電話かよ」

土御門『この業界、死んだと思わせて実は生きてましたー、ってのはお約束だからな』

土御門『俺もちっとドジ踏んじまってこのザマだって』

一方通行「そォかい。つーか何?今日はお友達に助けて下さァい、ってェ用事?」

土御門『いんや。俺と同じく死に損なった奴の話をちょっとな』

土御門『少し前に猟犬部隊が再結成されたって話は?』

一方通行「ロシア行く前じゃねェのか?今はもォとっくに解体されてんだろ」

土御門『俺が噂を聞いたのは一週間前だ』

一方通行「……学園都市が約束なンぞ守る訳がねェとは思ってたンだが、意外に早ェな」

土御門『いやいや、それがどうやら違うらしい』

一方通行「あァ?なンでお前が言えンだよ」

土御門『学園側なら人や装備は無尽蔵に入ってくるだろ?それが「強奪」されたんだと』

一方通行「けっ。そンなン幾らでも偽装出来るじゃねェか」

土御門『俺も同感……なんだが。合理的じゃないんだ』

一方通行「あァ?さっさと言わねェと切ンぞ?」

土御門『普通、武器を奪うなりにしろ、お前とは――お前達とは約束をしている訳で』

土御門『「新入生」の時みたいに新しい団体やメンバーで襲撃かけるのが筋だろ?』

土御門『そうすりゃ「ぼくらとはかんけいないですゆえ」って言えるんだし』

一方通行「なンで今妖精さ○入った?ァ」

土御門『なんで妖精○んネタ知ってんだにゃー?』

一方通行「……一緒にアニメ見ろっつって大変なンだよ」

土御門『いい保護者してっけど、最近のラノベ頼りの業界ってどう思う?』

一方通行「ンな話したくねェよ。本題に戻れ」

土御門『デビルサバイバ○見てると、「なんでおか○っさん反射使わねぇの?」って思うよねー?』

一方通行「戻る本題間違えてンぞクソメガネ」

土御門『じゃなんで今更「猟犬部隊」を動かす必要があるか、って話になるだろ?』

一方通行「……本格的に『戦争』をおっ始めるってハラかァ?こないだレベル5のアンドロイド潰したばっかりなンだが」

土御門『に、してはヌルい。普通はお前達に知らせないよう準備を進めて、必勝態勢に入ってから攻撃を開始するだろう』

土御門『手段は荒っぽいわ、情報管理が杜撰過ぎるわ。それを餌にして釣りをしてるのか……』

一方通行「噂は広まってンのか?」

土御門『多分俺が知らせなくても、100時間もすれば街の情報屋でも聞けるだろうな』

一方通行「……何考えてンのか分からねェ連中は面倒だなァ、おい」

土御門『全くだぜ。だがまぁ精々気をつけ――あ、そうだ一つ忘れてたにゃー』

土御門『猟犬部隊を率いてる奴の名前だったな』

一方通行「小物の名前聞いたって、俺が分かるワケねェだろ」

土御門『いや、最初に言ったろ。「死に損なった」って』

一方通行「あァ?」

土御門『そいつ――「木原数多」って名前らしいぜ?』

――? 早朝

上条「……」 スースー

バシャァァンッ!

上条「ごぼっ!?ぼぼぼぼぼがっ!?」

 本来入ってくる筈の空気が消失し、息を吸おうと思いっきり吸い込んだ所で気管へ水が入る。
 むせって咳き込んでしまっても、入ってくるのは水の塊だけだった。

上条「ごぼっ!?ぼががっ!?こばぼっ!?」

 気管へと入り込んだ異物を体が拒否し、空気を求めて二度三度両手が探し求める。
 片手に何かとっかかりのようなものが当り、それを手がかりにして水から上がろうと――。

上条「がぼっ!?」

 ――と、した所で自身の頭を掴む何者かの腕に気づく。
 先程からもがいているのは、惨めったらしく足掻かねばならない原因は……。

上条(……あ、やば――)

 プツリ、と上条の意識が暗転する直前、体が軽くなる。
 引き上げられているのだ、と感じる間もなく床に転がされた。

上条「げほっ!げほっげほっ!」

 肺に溜まっている水を押し出しながら考える。どうしてこんな羽目になったのか、と。

上条(昨日は確か……あぁバードウェイが遊びに来たんだっけか)

上条(何か色々あって『明け色の陽射し』団に入っちまったけど、まぁその内飽きる……と、思う事にしておこう。俺の精神衛生上の問題で)

上条(俺とバードウェイ、戻ってきたパトリシアとマークの四人で少しお喋りして、ああっと)

上条(夜も遅いからパトリシアを送っていくって話になって)

上条(俺は確か……バードウェイのビリビリ猫グローブ?だかのダメージが残ってたから、寝ちまう事にしたんだったな)

上条「……」

上条(なんだろうな、あれ?あんな霊装作る必要があんのか?もうちょっと出力抑えれば、イタ気持ちいいって感じかも)

上条(……あ、でも肩こりがスッキリ取れてる。ちょっと欲しいかも、あれ)

上条「……」

上条(その後は……覚えてない。バードウェイには合鍵渡したし、勝手に帰って来たんだろうか?)

上条(マークがついてるから心配は要らないんだろうけど、まぁ)

上条(つーか何?ここどこ?)

上条(っていうかさっきから俺の背中をさすってくれてんのは、誰だ?)

 咳き込みながら、しかも寝起きで水に中へ突き落とされ、更には窒息寸前まで苦しめられた。
 途中で止まったのは害する気がない、または誰かが助けてくれたかの二択か。

 ようやく戻ってきた呼吸をややオーバーにしながら――最悪、横にいる相手に飛びかからないといけないので――ゆっくりと室内へ焦点を合わせていく。

上条(小さな窓とジメっとしているクリーム色の壁。風呂場、か?)

上条(スーパーで買ったシャンプー、3個98円の牛乳石鹸と軽石)

上条(ステイルが置いてったインデックス用のトリートメント?……って事はここ、俺んちじゃねぇか)

上条(あと、右手が引っ張られて痛い……なんだこれ?バスタブんとこの蛇口に手錠で結ばれてる……?なんで?)

上条「……けぼっ……」

上条(って事はだ。一連の事件の犯人は……あぁ、成程。ドSロリを昨日から下宿させてんだったか)

上条(あまりにも苛烈な朝の起こし方だって話?幾ら何でもやりすぎ、っていうか怒るべきだよなぁ、これは)

上条(起こしてくれたのは有り難いけど、言うべき事は言わないと……俺の命のためにもな!)

上条「……なぁ、バードウェイ。確かに俺を起こしてくれたのは嬉しい、けどこれは幾ら何でもあんまりじゃないかな?」

?「……んんー?」

上条「お前は優しい子なんだよ!だからやれば出来る筈なんだっ!」

?「優しいコナ○は睡眠薬を人に盛らないと思うよ?てかあれ、傷害だよね」

上条「コ○ンじゃねぇよ!?誰がバーローの話を――あ、あれ?」

?「ん?なあに、当麻お兄ちゃん?」

上条「……お前、だれ?」

?「あ、そっかぁ。自己紹介はしてなんいだっけ、失敗失敗」

?「改めまして、当麻お兄ちゃん。わたしの名前はねぇ――」

木原円周「木原円周、って言うんだよっ」

――『明け色の陽射し』極東アジト(※上条のアパート) 風呂場

上条「……待て待て。確かに顔は憶えてるけどもだ、取り敢えず落ち着いて話し合おうぜ」

円周「うんっ、いーよ」

上条「俺んちだよね、ここ」

円周「とりあえずびしょ濡れになっちゃったねぇ。とりあえず脱ごっか?」

上条「聞いてないよね?キミ今何に対して『いーよ』つったの?」

円周「あーぁ、わたしもびしょびしょだぁ」 ヌギヌギ

上条「脱ぐな脱ぐな脱ぐなっ!嘘吐けよっ!?お前腕以外全然濡れてな――腕、以外?」

円周「お兄ちゃん?」

上条「状況を整理したいんだけど、いいかな?良くなくてもするけども」

上条「俺んちだよね、ここ?」

円周「だねぇ」

上条「俺は全身ずぶ濡れ、しかも右手が手錠で固定されているよね?」

円周「蛇口にしっかりロックされてあるねー。しかもこれ合金製だから、市販の器具じゃ取れないし」

上条「3分ぐらい前、水の中に叩き落とされたんだけど」

円周「あー、ちがうちがう。バスタブの中で寝てたから、水を張っただけだよ?」

上条「……さて、現在この部屋には全身濡れまくった俺と、片腕しか濡れてない木原がいる」

円周「あ、円周って呼んで欲しいな?ね、いいでしょ?」

上条「そんな円周さんに問題です。俺を朝一で溺死させようとした犯人は誰?」

円周「えっと……」

円周「○ナン君じゃないかな?」

上条「オイ馬鹿止めろ!小さな巨人にケンカ売るんじゃねぇ!」

円周「あれあれー、毛○のおじさん声が変わってるよー?」

上条「コナ○君のフリして無邪気にDISるのヤメテあげて!?山○さんは降板ん時に号泣してたんだからな!」

円周「実質Bパートの主役なんだけどねー」

上条「そうじゃねぇよっ!俺が聞きたいのは高騰する声優のギャラじゃねぇ!」

上条「この惨状を作ったのって――」

円周「わたしだねっ!!!」

上条「人の台詞食いながらあっさり肯定しやがった!?」

円周「……お兄ちゃん、怒っちゃった?」

上条「そりゃ朝一でSA○ゴッコされりゃあなっ!」

円周「あ、じゃあ今から脱ぐからちょっと待っててね?」

上条「関係ねぇなっ!どっからその発想持って来やがった!?」

円周「え、体で払えって。お兄ちゃんの顔が言ってるし?」

上条「妄想だよね?俺どんだけエロ好きそうな顔してるんだ!?」

円周「じゃあ脱がない方が良いのかな?ブラだけつけた方が良いの?」

上条「全部着とけ?つーかお前ん中の俺はどんだけ鬼畜なの?」

円周「優しい当麻お兄ちゃん、だいすきーっ!」 ギュッ

上条「オイバカ離れろっ!つーか引っ張るな右手が痛いっ!」 ドンッ

円周「許してくれたお礼に――円周を、あげるね?」 ヌギヌギ

上条「トラップにも程があるよなぁぁっ!?どっち選んでも詰んでんじゃん!?」

円周「大丈夫、一生ここで円周と暮らそ?なんでもしてあげるから、ね?」

上条「病んでるーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

円周「あ、子供は二人がいいなー。女の子一人と男の娘一人」

上条「子供がガチ虐められるから止めよう、なっ?人生ハードゲームになって病むから!」

円周「一人目はねぇ、率?」

上条「親が円周で、子供の名前が率って問題ありすぎじゃねぇか!」

円周「二人目はπ(ぱい)?」

上条「男でも女でもその名前は重すぎる!?どんな体型に育ってもあだ名は『おっぱ×』の一択だから!」

円周「三只眼(さんじやん)は古いのかなぁ?」

上条「いや、どっちかっつーと後半以降置物状態、固定砲台の座すら失っていったし……」

円周「SLGで主人公の兄貴分として出て来るんだけど、成長値が低くて一般人だから装備も貧弱で」

円周「いつのまにかリストの肥やしになってるユニット的な?」

上条「仕方がねぇんだよ!ゲーム的に序盤から強いユニット出すとバランスがダダ崩れになるし!」

円周「もうっ!当麻お兄ちゃんってば、ワガママなんだから」

円周「こういうときはどうすればいいんだっけ――」

ジジッ

円周「うん、うんっ!そうだよね、数多おじさんっ!『木原』ならこういう時、こうすればいんだよねッ!」

上条「な、なんだよっ!?ち、近寄るなっ!」

円周「変な事しないから、ね?ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」

上条「な、何するの……?」

円周「ヒントいーちっ!――兄妹で出来ることぉっ!」 ジリッ

上条「おままごと、的な?」

円周「ヒントにーっ!最近は義理じゃなくてもおけ!」 ジリジリッ

上条「オーケー、じゃねぇよ!俺の想像でしかないけども!それは絶対に容認しちゃダメだと思う!」

円周「でも『俺○』ではお父さんの心配が100%的中しちゃって近親――」

上条「それ以上はかんべんな!俺も含めたファンの人は『義理とかサブヒロインに逃げなかった伏○先生マジ神猫!』って納得してんだから!」

円周「神猫って誉め言葉なのかな?要は『可愛イタイ』を遠回しに言ってるだけだと思うよ」

上条「あんの切ない結末に!どれだけ俺達黒○派が涙したと思ってんだコラアアァァァァァァッ!?」

円周「――っと、はいっきゃっちー、つっかっまっえったーっと」

上条「……えっ?」

円周「ごめんね、当麻お兄ちゃん。わたしはあや○ちゃん派だからね?」

上条「知ってた!何となくそんな気がしてたもんね!」

円周「さってと、それじゃ脱ごうっかぁ」

上条「もうヒントの欠片もねぇな!ストレートすぎるだろっ!?」

円周「うん、うんっ!そうだよね、病理おばさんっ!『木原』ならこんな時こう言うんだよねっ!」

円周「『へっへっへ!下の上条は素直じゃねぇか――』」

上条「言わねえなぁっ!俺その人知らないけど多分言わないと思うぜ!」

円周「よっしそれじゃキスから行ってみようか?あ、わたしも初めてだから――」

パァンッ!

バードウェイ スチャッ

上条「バードウェイすわぁんっ!助かったーーーーっ!」

円周「あっぶないなぁ。いくら旧式の銃だからって、頭に当たれば死んじゃうんだよ?」

バードウェイ「あぁすまない。殺そうと思ってたんだが、一撃でしとめられなかったなぁ」

上条「あ、あれ……どうしてバードウェイも殺気立っているの……?」

バードウェイ「ボスと呼べ……朝一で手錠プレイか。救いがたいな」

上条「無理矢理じゃねぇか!?状況よく見ろよ!」

円周「あれあれー?ねぇ、ジェラシー?嫉妬しているのー、へーえ?」

円周「お子ちゃまは邪魔しないでほしいな、ってキハラは言ってみたり!」

上条「バードウェイさんっ子供の戯言を真に受けないで!俺は無実ですから!」

バードウェイ「心配するな。私は仮にもボスだぞ?それ相応の器量がなければやっていけん」

上条「だよねっ!よっ、流石マニア系っ!」

バードウェイ「小娘を始末してから後ろの間抜けもキィィィッチリ送ってやる。続きはあの世で存分にすればいい」

上条「俺も死亡フラグ確定かよっ!?」

円周「ロ×コニアってあるのかなぁ?」

上条「ねぇよっ!?あってたまるか!あとその国は死んでも行ける資格は無いと思うぜ!」

バードウェイ「……と、言うか貴様何者だ?」

バードウェイ「このアパートに近寄る人間を監視させている上、無許可で入る人間は捕獲しろと命令してあるんだが」

上条「お前また勝手に話を進めやがって」

円周「監視……?あぁうんっ、わたし知ってるよ!そっかー、あの人達監視だったんだねぇ」

円周「てっきりストーカーか何かだと思ったから、めっ、って叱っちゃったんだよ。ごめんね?」

上条「具体的には……?」

円周「殺して“は”ないよ?早く殺してくれ、っては言ってたけど」

上条「何したの君?あんま聞きたくないんだけど、歴戦の魔術師相手にどんだけオーバーキルしたの?」

円周「ムカデ人――」

上条「はい待ったーーーーーーーっ!それ以上言ったら精神保たないから聞かないからなっ!」

バードウェイ「……面倒だなぁ、おい。あー、面倒臭い」

円周「だよねぇ?せっかく独りで大ちゃーんすだぜっ、って来たのに面倒だよねっ」

バードウェイ「じゃあまぁ――ここは一つ、スマートに行こうか」

円周「うん、うんっ!そうだねっ、数多おじさん!『木原』ならこんな時こうすればいいんだよねッ!」

上条「おい二人とも止めろ!?風呂場で殺し合うんじゃねぇっ!」

バードウェイ「返り血を落としやすくて、実にうってつけの場所だよなぁ」

円周「魔術、って言う能力を使う人なんだよね?常人とは脳の構造が違うのか、学術的興味を刺激するよねっ!」

上条「話を聞いてっ!?」

上条「誰かっ!?誰でも良いから助け――」

ガチャ

シェリー・クロムウェル「……おーい上条当麻ー。ドア開いてるわ、よ」

シェリー「……あん?」

上条(※全身ずぶ濡れ、手錠で拘束されている)

円周(※少し濡れてる。血生臭い。幼女)

バードウェイ(※右手はフリントロック式の銃、左手は魔術武器。幼女)

シェリー「……猟奇系の都市伝説ごっこ?」

上条「惜しいっ!お前が後10分遅れてたらそうなってた!そして間に合ってくれてありがとう!」

シェリー「あー……良く分からないけど、マカダミアナッツ、食べるか?」

――10分後 四人でテーブルを囲んで

上条「えっと、だな。取り敢えず自己紹介をしないかな?黙々とマカダミアナッツつまむのもアレだしさ」

上条「てか一人一箱割り当て、しかも六箱余るのって大過ぎじゃねぇのか?」

シェリー「禁書目録用に持ってきたんだけど、すれ違いになったみたいね」

バードウェイ「建設的な発言に聞こえるが、それは藪蛇だぞ新入り」

上条「なんでだよ」

バードウェイ「立場を曖昧にしておいた方が、表面上だけでも仲良くできる――こいつらがグレムリンだったらどうするつもりだ?」

上条「シェリーは前からの知り合いだし、円周が敵だったらもうどうにかなってるんじゃ?」

バードウェイ「トールと共闘して半殺しにされたバカは説得力が違うな。ま、騙す気があれば何をどうしたって意味はないか」

上条「ま、まぁ分かってくれたようで」

円周「諦めてられてるだけと思うよ?」

上条「スルーしたのに掘り下げるなっ……ああっと、俺は学園都市で学生やってる上条当麻です。よろしく」

円周「同じく学園都市に住んでる木原円周ですっ。円周って呼んでねっ」

バードウェイ「木原円周……オイオイ、『木原』のスプリーキラーか」

上条「スプリー?『お祭り殺し』?」

シェリー「大量殺人鬼のあだ名みたいなものよ。対象が無差別、短時間に大量やらかすから『お祭り』なんだと」

バードウェイ「バゲージシティでのキルレシオ121:1。しかも現地調達式――ジェイソ○型だからタチが悪い」

円周「てへぺろっ☆……あ、でももっとたくさん、めっ、しちゃった気がするけど」

上条「バゲージシティで保護した一般人じゃなかったのか……」

円周「当麻お兄ちゃんはお持ち帰りしなさい、って言われてたから殺しはしなかったよ?ホントだよ?」

シェリー「発想が虫レベルじゃねえか」

上条「あれはなぁ……いやいや、つーか円周」

上条「お前、何しに来たんだ?学園都市の命令じゃないよな?」

円周「鞠亜ちゃんを『ぐちゅぐちゃくぱぁ』ってしようと思ったんだけど、わたし負けちゃったんだよねぇ」

円周「だから『上条当麻』が足りないって分かったから、勉強しに来たぜっ」

上条「ごめん、誰が通訳して貰って良いかな?」

シェリー「何一つ分からないけど、野放しにしたらいけない人間だとは分かったわ」

上条「お前が言うな……ん、なに?」 クイクイ

バードウェイ「(更正させろ。割と素早く)」

上条「(この子をかっ!?)」

バードウェイ「(良く分からないが、お前を勉強しに来たんだから、ある程度言う事はきくだろ)」

上条「(いや、初対面から命の危険と生命の尊厳の危機をひしひしと感じるんだけど)」

バードウェイ「(『お兄ちゃん』だろ?少しの悪戯は笑って許してやれ)」

バードウェイ「(ガキの戯言に一々反応するのも馬鹿らしいだろ)」

上条「(まぁ、了解)……んじゃ円周さ?」

円周「お兄ちゃんはブラ着けてない娘はどう思う?」

バードウェイ「よし、戦争だな。表へ出ろ小娘が!」

上条「お前たった今自分で言った台詞を思い出せよっ!?」

シェリー「……なぁ、帰って良いかしら?顔見せに来て巻き込まれるのは割に合わねぇだろ」

上条「待って下さい!割と第三者挟まないと血みどろになりそうです!」

シェリー「……あー、円周だっけか。あなた、上条当麻の知り合いとのケンカ禁止ね」

円周「あなたは、だあれ?」

シェリー「シェリー=クロムウェルよ。イギリス清教だから学園都市に攻撃される筋合いは無いわよね」

バードウェイ「また飛び道具だな、これは」

シェリー「んで、人殺しも禁止。そうしないと追い出す――ってこいつが言ってた」

上条「あ、あぁあぁ!そうだな!」

上条(ナイスだシェリー!)

円周「んー……なんで?なんで人を殺しちゃいけないの?」

シェリー「そりゃアレでしょ、当然……なんでだ?」

円周「話の合わない相手をぶち殺しても構わないよね?」

シェリー「だよなぁ。お前良い事言うわね。ほら、マカダミアナッツもっと食え」

上条「最後まで頼りにさせてくれよっ!?あっさり寝返るんじゃなくさぁっ!」

バードウェイ「……なんだろうな、これ」

上条「あー……それじゃさ、えっと……円周はさ、甘いもの好きか?」

円周「大好きっ!当麻お兄ちゃんの次ぐらいに!」

シェリー「……信憑性が一気に消し飛ぶわなぁ」

上条「もしも、だ。バゲージで円周が死んじゃってたら、もう食べられないだろ?それは嫌だよな」

円周「うーん、嫌、かも?」

上条「他の人も同じなんだよ。生きてさえいればきっと良い事だってあるだろうし」

円周「他の人の『好き』を奪っちゃダメって事なの?」

上条「犯罪とか、そっちはまた別だとも思うけどな。取り返しのつく事とつかない事はある」

上条「でもそうじゃなかったら、無闇に人を傷つけたりするのはやめて欲しい」

円周「イマイチ理解出来ないけど……うん、当麻お兄ちゃんは『そう』してるんだよね?」

円周「それが『上条当麻』の強さって事なんだよね?」

バードウェイ「……」

シェリー「……」

円周「だったら勉強のためにも試してみるよ。しばらくは、だけど」

上条「余計な一言が不安を煽るけど、まぁ頼む」

バードウェイ「人類が狼を飼い始めた頃って、きっとこんな感じだったんだろうな」

シェリー「魔術師的にはガキの方が正しい気もするわね」

上条「んでシェリー、お前はなんで来たんだ?インデックスへのマカダミア係?」

シェリー「そんなにヒマじゃねえわよ。つーか居ると思ったのに」

上条「ま、まぁインデックスはイギ(以下略)だからいいとして」

シェリー「イギリスの美大で講師やってんだけど、学園都市から依頼があったの」

バードウェイ「よく引き受けたな」

シェリー「魔術がどうこうじゃなくって、鑑定してほしいって話……だった気がする」

上条「……大丈夫なのか?」

シェリー「ん、あぁイギリス清教には一言入れて許可は貰ってるわよ」

上条「そうじゃないんだけど……まぁいいか。んで、鑑定って何?」

シェリー「あー……?タローがどうこう言ってたかぁ?」

上条「太郎?桃太郎とか、民話の研究か?」

円周「タロットじゃないかなぁ?イェール大学から借りてるって数多おじさんが言ってたよ」

シェリー「英語圏じゃ語尾の“t”は発音しないんだ。現存する最古のタローはイタリア人が作ったやつだから、『タロッコ』が正しいのかもな」

シェリー「にしてもイェールか。ってこたぁスフォルツァ版だよなぁ……」

上条「へー、タロットの鑑定なぁ。少し前に流行ったダヴィンチの秘密の暗号とか?」

シェリー「……帰っていいかしら?ガキのお遊びに付き合うほどヒマじゃないわ」

上条「苦手か?」

シェリー「タロー――タロットの絵描いてんのは当時の画家だからな。そっから何か調べたいんだろ」

シェリー「つーかな、タロットに関しちゃ私よりも適任が居るでしょうが」

バードウェイ「……」

上条「ハードウェイ?」

シェリー「やっぱり『明け色の陽射し』か、魔術武器見てもしかしたら、とは思ったんだよ」

シェリー「レイヴィニア=バードウェイ、だな」

バードウェイ「だったらどうするイギリス清教?」

シェリー「おいおいお嬢ちゃんちょぉぉっと自意識過剰じゃねえかぁ?」

円周「端的に言うと?」

シェリー「面倒臭い。組織の抗争なんか興味ないの」

上条「それで済ませるのどうかと思うんだけど。ケンカは無しでね?ねっ!」

バードウェイ「自己紹介、まだ続けるのか?」

上条「あ、はい。お願いしますバードウェイさん」

バードウェイ「バードウェイじゃない、ボスと呼べと。まぁ紹介はするまでもないな」

円周「シェリーお姉ちゃんとレイヴィニアちゃん……愛称とか無いの?」

バードウェイ「煩いな。お前達と馴れ合うつもりはない」

円周「ニアちゃん、わたしはまどかお姉ちゃんって呼んでね?」

バードウェイ「……ほぉ?」

上条「ケンカいくない!堪えてっ!」

バードウェイ「参考までに聞くが、私が『お姉ちゃん』でないと判断した根拠は?」

円周「わたしはブラ着けてるんだよ?」

バードウェイ「やったんぞクラアアアアァァァァァァァっ!!!」

上条「だから抑えろって!お前の沸点はピンポイントで低すぎるっ!」

円周「お兄ちゃんにはさっき見せたよね?」

シェリー「未来に生きてんなジャパニーズ。源氏物語だっけ?」

上条「アレはアレで別の意味があって!育てるのを放棄するのが真性の人達だろっ!」

シェリー「レイヴィニア=バードウェイ、だな」

バードウェイ「だったらどうするイギリス清教?」

シェリー「おいおいお嬢ちゃんちょぉぉっと自意識過剰じゃねえかぁ?」

円周「端的に言うと?」

シェリー「面倒臭い。組織の抗争なんか興味ないの」

上条「それで済ませるのどうかと思うんだけど。ケンカは無しでね?ねっ!」

バードウェイ「自己紹介、まだ続けるのか?」

上条「あ、はい。お願いしますバードウェイさん」

バードウェイ「バードウェイじゃない、ボスと呼べと。まぁ紹介はするまでもないな」

円周「シェリーお姉ちゃんとレイヴィニアちゃん……愛称とか無いの?」

バードウェイ「煩いな。お前達と馴れ合うつもりはない」

円周「ニアちゃん、わたしはまどかお姉ちゃんって呼んでね?」

バードウェイ「……ほぉ?」

上条「ケンカいくない!堪えてっ!」

バードウェイ「参考までに聞くが、私が『お姉ちゃん』でないと判断した根拠は?」

円周「わたしはブラ着けてるんだよ?」

バードウェイ「やったんぞクラアアアアァァァァァァァっ!!!」

上条「だから抑えろって!お前の沸点はピンポイントで低すぎるっ!」

円周「お兄ちゃんにはさっき見せたよね?」

シェリー「未来に生きてんなジャパニーズ。源氏物語だっけ?」

上条「アレはアレで別の意味があって!育てるのを放棄するのが真性の人達だろっ!」

シェリー「あー、帰っていいかしら?顔見せと挨拶はもう充分でしょうし」

上条「出来ればトラとジェイ○ンと相部屋になってる俺の立場も、少しは考慮してくると有り難いんだけど」

シェリー「カマキリの交尾って知ってるかしら?」

上条「参考にならねぇなっ!要は逃げるしか生き残れないって話だろ!」

円周「ねーねー、シェリーお姉ちゃんは今日からお仕事なの?」

シェリー「いや、明日から顔出せって言われてるわよ」

円周「荷物はバッグ一つなの?」

シェリー「何よ?」

円周「そのお洋服で行くのは、ちょっとキツいと思うんだけど」

シェリー「キツいってなんだ、キツいって!普通のゴシックだろ!?」

上条「あぁいや似合うとは思うんだよ?その、日本人がしたら笑いを取れる格好でも、お前だと違和感はないし」

シェリー「だったらいいじゃない。てかお前凄ぇ事言ってるよな?」

バードウェイ「その歳でゴスロリ着るなよ。見ている方が気を遣うだろ」

上条「バードウェイっ!?言葉を選べって!そういうの本人が一番気にしてるんだから!」

シェリー「テメェも似たようなもんだろうが、つーかゴスロリじゃないわ――後、お前はやっぱり殺すな?」

上条「俺が悪いのかっ!?」

円周「最後の一線踏み抜いたのはお兄ちゃんだと思うけど。あ、だったらさ」

円周「みんなでお洋服買いに行こーよっ!仲良くしたいから、ねっ?」

シェリー「私には関係ねぇわよ」

円周「えーっ!?ねーねーっ、行こうよぉシェリーお姉ちゃんっ!」

シェリー「テメェに『お姉ちゃん』呼ばれる筋合いはねぇんだけどな――次、呼んでみろ」

シェリー「下顎を麻酔無しで引き抜くわよ」

上条「待て待て待て!シェリーも円周も落ち着け!つーか円周は気軽に馴れ馴れしくしない」

円周「売女って呼んだら鞠亜ちゃん激おこだし、おばさんも良くないんでしょ?」

上条「シェリー“さん”な?それで頼む」

シェリー「……ふん。付き合ってられねぇな」

上条「お前も話ぐらい聞いていけよ!つーか頼むバードウェイ!」

バードウェイ「ボスと呼べ……ま、手伝ってやるよ」

バードウェイ「――シェリー=クロムウェル。私の話を聞け」

シェリー「あぁ?」

バードウェイ「シンプルな話だ。君は私の忠告を聞かないと一生後悔する羽目になる」

シェリー「下らねぇわよ。後悔なんざ死ぬ程してる――それとも、あなたがさせてくれるって言うのかしら?」

上条(やばっ!ブチキレ寸前か!?)

円周(ふんふん。挑発して話を聞かせるのかー)

バードウェイ「とんでもない。君に屈辱を与えるのは私ではないさ。強いて言うのであれば、この『学園』だな」

シェリー「学園都市が……はっ!やれるもんならやってみやがれ!私はもう失うもんなんざ残ってねぇんだよ!」

バードウェイ「そう、言い切れるかな。ではクロムウェル、そこから窓の外を見てみろ」

シェリー「……」

バードウェイ「見るんだ。いいな?」

シェリー「……」

シェリー「――アレはっ!?」

バードウェイ「どうだ。これが現実だ」

シェリー「チクショウっ!?……クソが!学園都市はまだ私から奪おうってのかよ!?」

シェリー「私の尊厳すらも!残った矜持すらもかっ!?」

円周「(ねーねーお兄ちゃん?)」 サワサワ

上条「(なに?あと微妙な位置をサスサスするの止めて貰えるかな?分かっててしてると思うけど)」

円周「(お外、別に珍しいものはないよね?二人で何を言ってるの?)」

上条「(だよなぁ?特にどうって事無い朝の風景だよな)」

円周「(目立つのは繚乱家政の学生さん達の奉仕活動ぐらい、だよねぇ)」

上条「(路上のゴミ拾いだけどなー)」

上条「……なぁバードウェイ、さっきから何の話?」

バードウェイ「クロムウェルに聞け」

円周「どうしてそんなにダメージを受けているの、おね――シェリーちゃん?」

シェリー「……見えないのか、お前達にはアイツらの姿が!?」

上条「学生メイド達だよな。あ、舞夏もいる」

円周「鞠亜ちゃんも混じってるよねー。んー、挨拶した方が良いのかな?」

上条「あれは確かに学園都市じゃそんなに珍しくないけど。それが?」

シェリー「アイツらの服、おかしいだろ!?なんでメイド服なのラメ入りとかゴシック!ロリータ調のまであるんだっ!?」

上条「あー……多種多様な指向性に対応するため、かな?」

円周「一言で言えば『趣味』だよね、うん」

バードウェイ「さあぁっクロムウェル!想像してみるんだ!君がその格好で学園都市を闊歩している姿をだ!」

シェリー「や、やめろっ!?それ以上私の心を折るな!」

上条「いや、別に問題ないだろ?つーかメイド校との関連が分からん」

円周「さっきはあぁ言ったけど、シェリーちゃんにはよく似合ってると思うし……仕事着はちょっと、だけど」

バードウェイ「そりゃあなぁ?お前達は慣れているから、もしくは人よりも観察眼が優れているから『別物』だと分かる」

バードウェイ「だがな、新入りと――」

円周「円お姉ちゃんねっ」

バードウェイ「小娘以外はどう思うだろうな?」

上条「バードウェイさん、お顔が悪魔の顔してますよ?」

バードウェイ「空気読め、あとボスと呼べ」

シェリー「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

バードウェイ「流石は理解が早くて助かるよ、クロムウェル。聡い君は分かる……いや、理解してしまうんだ」

上条「そろそろ小芝居に付き合うのが面倒になってきたんだけど」

円周「もうちょっと待ってみよう?ダメだったら、私が二人をフレ/ン○するよっ」

上条「その人は知らないけれど碌な意味じゃねぇよなぁっ!?」

シェリー「……クソが!呪われろ学園都市!魔女のばあさんに呪われてしまえ!」

バードウェイ「無駄だよクロムウェム。君がここへ来たのは昨日か今日、だから何をしようと何を言おうと変わる訳がない。変えられる訳もない」

バードウェイ「そう!君がその『黒ゴスを着ている限り、メイド中の関係者だと思われる』んだ!」

シェリー「くそおおおおおおおぉぉぉぉっ!」

上条「……はい?」

円周「あー……なるほど」

バードウェイ「流石に、流石にその歳で生徒は思われないだろう。それはそうさ!当たり前の話だな!」

バードウェイ「だが君を見た学園都市の人間はこう思う訳だ――『あ、あのおねーちゃんメイド中学に憧れてあんな格好してるんだー』と!」

シェリー「……!?」

上条「なんでメイドに間違われる事ぐらいで凹んでんの?病気なの?」

円周「美術スキルが高い分、パチモンと間違われるのは屈辱の極みなんだと思うよ」

シェリー「……学園都市ぃぃぃっ!まさかそんなトラップを張ってたのかよ!」

バードウェイ「諦めたまえクロムウェル。むしろ君は私に感謝すべきだな」

上条「お前もドヤ顔で言ってるけど、中身は大した事言ってないからな?何となくイチャモンつけてるだけだからな?」

円周「(ねね、お兄ちゃん?)」 コスコス

上条「(なに?あと敏感な位置をコスコスするの止めて貰えるかな?確実に故意だよね?)」

円周「(やだお兄ちゃん……恋だなんてっ!)」 テレテレ

上条「(お前も佐天さん系の人?あの娘とジクソ○を悪魔合体するとお前になるよね?)」

円周「(真面目なお話、どんな格好を本人が納得してればいいんじゃ?)」

上条「(いやぁでも、あのメイド達と同系列で見られる、ってのは嫌なんだろ)」

円周「(繚乱ってメイドじゃないもんね。もうレイヤーさん養成校ぽいし)」

バードウェイ「さぁさぁどうするんだ?君に残されている選択は二つある」

シェリー「……」

バードウェイ「一つはこのまま黒ゴスを着続ける方法。シンプルで嫌いじゃない。私も良いとは思うよ、別に?」

バードウェイ「だがその代わり、君が滞在中、道を歩けば歩いているだけで『うっわーメイド厨だー』とドン引きだね」

バードウェイ「そしてもう一つの選択肢。そこのガキと一緒にどこかの服屋で買い物をするんだ」

バードウェイ「妥当ではあるが、まぁまぁ面白みはないね。私は正直こちらをオススメしない」

シェリー「……クソが!」

バードウェイ「さぁ!どうするシェリー=クロムウェル!信念を捨て衆愚に笑われるか、それとも妥協するべきなのか!?」

バードウェイ「君が、決めろ。道は私が提示した」

円周「(あのぉ、お兄ひゃん?)」 カミカミ

上条「(なに?あと人の首筋を甘噛みするの止めて貰えるかな?)」

円周「(別にこれ、そんなに大げさにする話じゃないよね?)」

上条「(つーかここまで引っ張って誰得的な感じでもあるし)」

円周「(――あ、オチ読めた。お兄ちゃんが得だよ、これ)」

上条「(どゆこと?)」

バードウェイ「さぁさぁ!?」

シェリー「……分かってた。いつかこんな日が来るんじゃねぇかって事は」

上条「どんな思考をしたら出先のメイド中とユニフォーム被るって発想になるの?テキトーだよね?何となくノリで言ってるだけだよな?」

シェリー「……すまない。私は信念を守れそうにない……!」

上条「どんな信念か分からないけど、量産型メイドに間違われたくないだけだよね?それ未満だって話だよね、信念が」

シェリー「……上条当麻」

上条「は、はい?」

シェリー「服を貸せ――この格好で服屋に行く事すら耐えらないっ!」 ヌギッ

上条「女の子がっ!威勢良く脱ぐんじゃありませんっ!?つーか黒ゴスの下の黒ブラって似合いすぎてもうねっ!」

円周「流石お兄ちゃん!ここまで考えての犯行だよねっ?」

バードウェイ「……ほぅ?」

上条「待てやっバードウェイ!?今のっ!今のどこに俺の関わる余地が――つーか脱ぐな脱ぐな脱ぐなっ!」

円周「おー、じゃ円周も脱ぐね?」

上条「お前バカじゃねぇの!?なんで連鎖して脱衣する方向にシフトしてんだよっ!?」

シェリー「良いから服出せよ、寒いだろ」

上条「お前はお前で羞恥心ってものを持とうぜっ?若い娘さんなんだし!」

シェリー「ガン見されてる奴の言うこっちゃないよなぁ、それ」

上条「いやだなぁシェリーさん、年上のおねーさんに弱いなんてのはデマデスヨ?」

バードウェイ「よーし新入り。オシオキの時間だ」

円周「あ、可愛い猫グローブだ」

バードウェイ「あぁこれは猫じゃなくてウサギ。ウサギには肉球がないんだ」

バードウェイ「スーパーふわふわウルトラかわいいミラクル虐殺肉ミンチ機能付きラブラブブリティ白ウサギグローブだぞ?」

円周「略すと虐殺ウサギグローブだね」

バードウェイ「よし、その名前採用――では」

上条「あばばはばばばばばばばっ!?死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ!?振動が!ビリビリがあばばばばばばばはっ!?」

シェリー「スラックス……ジーパンしかないのかよ。しかもダメージばっか」

上条「お前も勝手に人んちのタンスあばばばばばばばっ!?」

シェリー「ちょい丈が短い……あぁうん、なんでもないわ」

円周「だよねっ。お兄ちゃんは日本人体型だからね」

上条「お前らっ!?俺の心まで傷つけて楽しいのかっ!?」

バードウェイ「もちろん、楽しいなぁ!」

上条「全員、敵かあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


※今週分の投下は以上となります。読んで下さった方に感謝を
残りは大体半分ぐらい……やっぱ体力落ちてますねー

尚、インデックスヘイトヘイトと騒いでいる方はこっちへどうぞ
私がもしもインデックスさん嫌いならば、きっと以下のSSもつまらないでしょうから

インデックス「この向日葵を、あなたに」
インデックス「この向日葵を、あなたに」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375930011/)

あと30分ぐらいでハケますが、銀魂は『銀×月』でファイナルアンサー?

では銀月で短編を立てます……スレ荒れそうで怖いですが

無理にカプリングを作らなくてもいいんじゃないか?
あと十年後バードウェイってこんな感じかな?
ttp://kabegamu.com/wp-content/uploads/jormungand_1.jpg

トルルルルルルル、トルル――ガチャッ

打ち止め「もしもーし!ってミサカはミサカはお返事してみる!」

男の声『もしもし――ありゃミサカさんち?黄泉川さんじゃねーの?』

打ち止め「ここは黄泉川のおうちなのだ、ってミサカはミサカは繰り返してみた!」

男の声『あぁそうなん?面倒臭ぇシステムだな、バッファ足りてねぇんじゃねぇのか?』

打ち止め「そうなのってミサカはミサ――」

男の声『あーヤメヤメ。それよっかお嬢ちゃん、お宅に白モヤシいるだろ?』

男の声『オジサン、ソイツの知り合いなんだけど、ちょっと呼んでくれねぇかな』

打ち止め「あー、少し前にお出かけしたるみたいなの、ってミサカはミサカは帰ってこないかなーって、玄関を眺めながら言ってみる」

男の声『タイミングが悪ぃのなぁ。久しぶりに帰ってきたから挨拶に、って思ったんだがよ』

打ち止め「おじさん、あの人の友達なんですか、ってミサカはミサカは興味津々できいてみる!」

男の声『あーまぁモヤシの能力開発でちぃと縁があったってだけだぁな……しっかし居ねぇのか。そうかい』

打ち止め「およ?」 ガチャッ

男の声『そかそか。んじゃ、今からそっち行くわ』

一方通行「木ィィィィ原ァァアくゥゥゥゥゥゥゥンッ!」

男の声『なんだいるんじゃねぇか一方通行。つーかオジサン、若い子と話なんざぁ暫くぶり緊張しちまったよクソッタレ』

一方通行「お前ェ……!」

男の声『おいおいおい、「生きてたのか!」とか止めてくれよ?テメェ葬式に香典持って来た訳じゃねえだろ』

男の声『今ちょいと近くまで来てんだから、挨拶にでも行こうと思ったんだがなぁ』

一方通行「いいぜェ?何回でも超遠投してやンよ」

男の声『んが、今日はヤメだ。先約があるん挨拶だけにしとくわ。あー恩師をぶん投げたバカ相手に優しいなー、俺』

一方通行「恩師?はァ?頭ン中、どっかに落として来たンですかァ?」

男の声『――XX学区のデパート、いやアウトレットって言うんだっけか?』

男の声『今日はそこでお仕事すっから、ヒマだったら来れば?』

一方通行「……」

男の声『だよなぁ即答なんか出来ねぇよなぁ。ブラフかも知れねぇし、反対側の学区で騒動が起きるかも知れねぇ』

男の男『テメェを呼び出しといて、お嬢ちゃんかっさらう可能性も充分にあるって事だしなぁ?』

一方通行「何がしてェンだよ、木ィ原くゥンはよォ」

男の声『何、ってそりゃ嫌がらせに決まってんだろ。わざわざ「今から事件起こすから止めてみろ」なんつーのはよぉ』

一方通行「……はっ!バカじゃねェのか、つーかバラバランなったパーツ揃ってねェだろ、あァ?」

一方通行「俺はお前がなにをしようと興味もねェ。勝手にしやがれクソ野郎」

男の声『そう。んじゃしょうがねぇな。まぁまぁお前がそう言うんだったらそうなんだろうな』

男の声『張り合いが無いのも締まらねぇが、イージーモードも悪かねぇか』

一方通行「……もう切ンぞ?お前の下らねェ人生はウンザリしてンだよ」

一方通行「お前は一生の日の届かねェ掃き溜めで、呼吸すンのにも苦労してやがれ」

男の声『さて、一方通行さんに問題です』

一方通行「あァ?」

男の声『たった今俺ぁ「仕事」と言いましたが、実際の段階はどれか。三択問題です』

男の声『一、これから仕事をする。ヒーローさんが来れば助かるかも知れない』

男の声『二、今やってる最中である。ヒーローはダッシュで来れば間に合う』

男の声『三、もう既に仕事は終わった。ヒーローが来ても手遅れである』

一方通行「……クソが!死ね!」

男の声『ひゃはっ!答えは会場で俺と握手――』

ブツッ

打ち止め「ねーねーどうしたのってミサカはミサカは――」

一方通行「出かけンぞ。5分で支度しろ」

打ち止め「やったーーーーっ!アウトレットと言う名の小洒落たデパートに行くんだね!ってミサカはミサカはバンザイしてみたり!」

一方通行「いやァ、お前は浜……HAMADURA?」

打ち止め「はまづら?」

一方通行「そいつンとこて大人しくしとけ。フレなンとかの貸しがある以上、麦野に任しときゃ問題ねェだろ」

一方通行「……一応木原の被験者だったンだっけかァ、あいつも?」

打ち止め「あなたはどうするの、ってミサカはミサカは心配してみたり?」

一方通行「旧交を温めてくる、ってェ感じで、まァ?」

一方通行「次は大気圏までぶン投げとくわ」

――XX学区 商業地区

シェリー「……乗せられて来ちまったのもアレだが、人多いなぁ」

上条「まぁ230万人だか居るんだし、需要もそれなりに」

シェリー「あぁ鬱陶しい。服買ったらさっさと帰るわ」

上条「観光とか……は、興味ないんだよね」

シェリー「古いテンプル、聖堂や神殿とかは調べたいと思ってるわね」

シェリー「なんでも極東の島国には最強の『鋼』が眠るって話もあるぐらいだし」

上条「カンピオー○?それラノベの話だよね?」

シェリー「ていうかいつも思ってるんだけど。どうして日本側は天草式ぐらいしか魔術師が出て来ないの?」

上条「どうだろうなぁ。あんま会った事はないから分からないけど」

上条(土御門が来てるんだから、それなりに意識して住み分けてる感じか)

シェリー「それ以外はまぁ別に。学園都市には無いんでしょ、そういう所」

バードウェイ「無い、訳では無いが、徹底的に排していたな」

バードウェイ「どっかのバカに騙されてそれらしき所へ行ったが、魔術的要素は皆無、特定の何かをなぞった形跡もなし」

バードウェイ「大体守護神にネギ持たせて何がしたいんだろうか……?」

上条「おい!オワコン呼ばわりされながら7年目に入った○クさんディスるな!」

円周「あとネギは……うん、織○ちゃん良い子なのに、どうして蛇蝎の如く嫌われるのかな?」

上条「多分ツッキ○が敬遠される理由と同じだと思うよ?詳しくは分からないけど」

円周「シェリーちゃんは最新のモードとか知らないの?」

シェリー「興味ねえわよ、つーかファッション誌読むぐらいだったら――いや、そうでもないか」

上条「モードって?」

バードウェイ「『流行りの服』を小難しくした言い方だよ。お前の人生で使う機会は無いと思うが」

シェリー「衣装に魔術記号をもたせる奴も結構居るから、年代物の服飾は知らなきゃいけないの、よ……オイオイ」

シェリー「なんだぁ?デパートにオートクチュールって、どこの国だよ」

上条「バードウェイ?」

バードウェイ「ボスと呼べ。『お高い服屋』だと思っとけ」

円周「んー、シェリーちゃんは実用的なお洋服が好きなんだよねぇ」

シェリー「そうだけど。言ったかしら?」

円周「なんか、そんな空気出してるかも?」

バードウェイ「ゴスロリ普段着の奴は分からん。ガーリィでも着とけばいい」

シェリー「頭おかしいだろそれ」

上条「えっと……?」

円周「お兄ちゃん、ファッション誌とか読む?」

上条「立ち読みでちょいちょい。買う時は値段と相談で」

シェリー「の、割にはノーブランドのダメージジーンズばっかりだったけど」

上条「あれはねー……うん、元はフツーのボトムだったんだ」

上条「でもねっ!1エピソードが終わってみれば、ボロボロになってんだよ!」

シェリー「どういう話だよ」

バードウェイ「恐らく、日常生活がバイオレンス過ぎて」

円周「ケンカに巻き込まれたり、フラグを立てたり、立てたフラグをへし折ってビリビリーと」

バードウェイ「普通に買った普段着も気がつけばボロボロに、って話だろうな」

シェリー「不憫な奴……」

円周「話を戻すけど、ファッション誌でも『誰着るの?』の組み合わせがあるよね?」

上条「あー……罰ゲーム的な配色と、どう見ても浮きまくってるダサいブランドとか!」

バードウェイ「趣味は人それぞれ、また国によっての趣向もあると思うが」

シェリー「明らかに『場違い』なのはあるのよ」

上条「てっきりアレって俺のセンスがないもんだとばかり」

円周「ファミ○はクソゲーや深刻なバグ持ちもでも殿堂入るよね?」

上条「大丈夫!ファ○通だし!……あぁ、納得」

シェリー「だからまぁブランド関係無しに選べ、と。まさか学園都市にトラップがあったとは気がつかなかったけどな」

上条「罠、っていうか、別にいいんじゃね?と思うんだけど」

バードウェイ「だったらお前、常盤台の制服着てる社会人見たらどう思う?」

上条「ごめん。今のは全面的に俺が悪かった」

円周「んじゃお兄ちゃんも分かってくれた所で、入ってみようか」

シェリー「おい。ンな高ぇもんじゃなくてもいいわよ。どうせこっちに居る時しか着ないんだし」

バードウェイ「アーティストも結構だが、同行する他の人間にも気を遣え」

シェリー「知り合いは毎年シスター服しか居ないんだけどな」

上条「ま、まぁまぁ!俺達と遊びに行くとかあるだろうし?」

シェリー「だから馴れ合うつもりはねぇんだよ」

円周「すいませーん!ちょっと見繕って欲しいんですけどー」

シェリー「話を聞け!つか腕を引っ張んじゃねぇっ!」

店員「いらっしゃいま、せ?」 ジロジロ

上条「(どうしたんだろ。つーか店内スゲーなドレスコードでもあるのか)」

バードウェイ「(バッキンガムにTシャツズボンで乗り込んだ奴の言う言葉か)」

円周「(向こうじゃ階級で住み分けしてるしねー)」

シェリー「(あぁ居心地悪りぃ。さっさと買って出るぞ)」

店員「んー……あぁ!ご家族ですねっ!」

上条「なんでだよっ!?」

店員「え、だってホラ」

上条(※黒髪)

シェリー(※金髪)

円周(※黒髪)

バードウェイ(※金髪)

店員「ね、ほらパパママと娘さん二人のご家族ですよね?」

バードウェイ「支配人を呼べ!この店は教育がなっていないようだな!」

シェリー「……つーか髪の色だけだろうが。この国じゃ自動的に血縁関係に思われるのかよ?」

上条「まぁ変な組み合わせだしなぁ……円周?」

円周「ね、ね、おねーさん。わたしとレヴィちゃん、どっちが上に見える?」

バードウェイ「愛称変わってるぞ」

店員「んー、ブロンドのお嬢様の方が大人っぽい雰囲気ですねー」

円周「じゃっ今日から、レヴィお姉ちゃんね?」

バードウェイ「ふざけるな!妹なんて一人でたくさんだ!」

円周「あー、でもわたしの方が少しだけおっきいよねー……(縦にも横にも)」 ボソッ

バードウェイ「よーし貴様には皇帝→戦車→死神の即死付加付きコンボを決めてやろう」

店員「ごめんなさいねー?店内でカードゲームは禁止なんですよー」

バードウェイ「オイやめろ私に触るな!」

店員「飴ちゃん――キャンディ如何でしょうか?オレンジ?それともアップル?」

バードウェイ「ハッ!たかが食い物で吊られる程浅ましくはないぞ!」

店員「んー、そうなんですか?だったら、お店で暴れるのも良くないって分かりますよね?」

バードウェイ「それはまぁ……そうだが」

店員「じゃキャンディ両方あげるから、ママのお買い物に手伝って貰えませんかー?」

バードウェイ「……分かった」

シェリー「スゲーなジャパニーズ!『明け色の陽射し』を口だけで押さえ込んだぞ!」

上条「意外に弱いな魔術結社、あとママ云々は否定しろよ」

円周「ドS気取ってる人ほど、押しに弱かったりするんだよねー、○音様とか」

上条「あれはキャラだからな?天衣無縫ならぬ天衣無法な人、普通は有り得ないからね?」

シェリー「いいから行くわよ……面倒だわ」

上条「服買うのにこんだけ引っ張る必要性はねぇだろ、そもそも」

店員「――で、お客様。どのような商品をお求めでしょう?」

シェリー「あー……適当に見繕っ――」

円周「クロ○のワンショルダーに適当なボトム着せればいいんじゃないかな?」

バードウェイ「その選択肢は痴女まっしぐらだろ」

上条・シェリー「ワンショルダー?」

バードウェイ「ワンピースの肩一つのヤツさ――ってクロムウェルまで聞くのかっ!?」

円周「あー、本格的にダメなんだねぇ。お兄ちゃんには期待して無かったけど」

上条「俺だって少しぐらい分かるわっ!」

円周「わたしはシェリーちゃんにバレンシア○のジャンプスーツが似合うと思うんだけど、どうかな?」

上条「じゃ、じゃんぷすーつ?」

バードウェイ「動きやすいのはまぁ確かに。普段着として着るのはどうかと思うが。なぁ?」

上条「そう、だなっ!ジャンプスーツは動きやすい――動きやすいか?俺も着た事あるけど」

円周「意外……じゃないか。子供の頃よく着てそう」

上条「子供?子供着せていいもんなのかっ?」

バードウェイ「ちなみに会話は成立しているぞ?ここまでは、だが」 ニヤニヤ

上条「ウルセェなっこのドSロ○!楽しそうで結構じゃねぇか!」

シェリー「ちなみにそれはいつ頃?タンスん中には見当たらなかったけど」

上条「え!?ジャンプスーツって個人で持ってるもんなの!?」

バードウェイ「――はい、ありがとう新入り。優しい年下の女性が、今からたっぷり教えてやるからこっち来い」

バードウェイ「これ以上恥かく前に店の外へエスケープしたまえ。なっ?」 ポンッ

上条「やめろよっ!俺に優しくするなよぉっ!?生暖かい目で見るなっ見るんじゃないっ!」

上条「つかもう終了?ジャンプスーツって旅客機から飛び降りる時に着けるんじゃないの!?」

円周「言いたい事は理解出来るんだけど。そうするとスカイダイビング用のスーツ、街内でシェリーちゃんが着るんだよね?」

シェリー「人を色物扱いするのも大概にしろよジャパニーズ」

バードウェイ「街中を闊歩する絵面は知識欲を大いにそそられるが、ジャンプスーツとはツナギ――オーバーオールとも言うな」

上条「……だったらツナギでいいんじゃね?」

バードウェイ「小娘。後を頼む。私はこのバカにアパレル業界の厳しさを叩き込まねばならん」

円周「まっかされたっ!ビッ○系ファッションをお見舞いしてやるぜ!」

シェリー「……あぁもう面倒臭ぇなぁ。全部ぶち壊してぇ」

上条「おいコラしゃがんで床に何か描くのを止めろ!口寄せか?サス○がマン○呼ぼうとしてんのか?」

円周「中二病をこじらせると火○になっちゃうんだねー」

上条「なんか死亡フラグバリバリ立ってて辛いぜ!」

バードウェイ「よーし出ようか新入り。目立ってしょうがない」

上条「待ってくれないか?流石にデパートで暴れたら責任問題に繋がると思うんだよ。主に俺の保護者責任的な意味で」

バードウェイ「あぁそう言えばやらかしたんだったな。確かあの時は……学園都市側から、『不問にする』って通達が出た筈だが」

上条「え、どういう意味だ?」

バードウェイ「ま、二度目はないだろう。頑張って数百億単位の借金返済に切り刻まれろ」

上条「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?垣根featuring冷蔵庫はイヤアアアぁぁっ!?」

――数分後 自販機の前

上条 ピッ

自販機 ガチャコン

自販機の人工音声(cv.有栖川みや○)『ありがとうございましたー。さて今日の運勢は――』

上条(お、液晶でルーレット回ってる。何々……大吉でもう一本貰えると)

上条(よっし来い!俺の運勢!今こそハッピーボー○だ!)

自販機『わんわんっ!大凶!残念!』

上条(うん、知ってた)

自販機『今日もアナタの運勢は最悪!女の子に囲まれて、一見外からは羨ましそうに見えますが』

自販機『実際は胃壁と人生を磨り減らす一日になるでしょう』

上条「精度高ぇなオイっ!?どっかで監視でもしてやがんのかっ!あと今日“も”って悪意ありすぎだろ!」

バードウェイ「……おい。自販機と会話するのを止めるんだ」

上条「あ、ごめん。つい習性で。ボケは捌ける時に捌いとかないと、溜まって身動き取れなくなるんだよ」

バードウェイ「とにかく来い。テーブル――と言うのかどうか分からんが、まぁ席が空いてたぞ」

上条「あっち側がフードコートだからな。なんつーか、飛び地?」

バードウェイ「あぁ成程。服屋と食べ物屋が隣り合っていては臭いが移る」

バードウェイ「だから休憩所を兼ねたスペースを確保し、エア・クッションを置く、か」

上条「頭良いよなー、お前」

バードウェイ「ふふん。お前はもう少し私に敬意を払うべきだな、っとここで良いな」

上条(遠くの方にシェリー達が入っているテナントが見える。出て来れば直ぐに分かる席だ)

上条「コーヒーとオレンジジュースどっちが良い?」

バードウェイ「そりゃ当然オ――コーヒーで頼む」

上条「あ、なんだコーヒーはいけるクチ?」

バードウェイ「ブリテンと言えば紅茶だかね。嗜みとしては悪くないと思ってる」

上条「んじゃ、どーぞ」 パシュッ

バードウェイ「うむ、ご苦労………………にがぁ」

上条「あれ!?やっぱダメなの!?」

バードウェイ「べ、別にそう言う訳じゃない!ただこれはちょっと、日本の缶コーヒーにビックリしただけだ!」

上条(あー……そういやマーク言ってたっけか?味覚も年相応って)

上条「あ、ごめんな?やっぱ俺コーヒーの方が良いわ」

上条「良かったら取り換えて欲しいんだけど」

バードウェイ「そ、そうか?別に買ってくればいいだろう?」

上条「こちとら貧乏性だからなー。ほれ、オレンジジュースと交換だ」 パシュ

バードウェイ「……まぁ、良いだろう。ほらよ」

上条「ん、どーも」 ゴク

バードウェイ「あ……」

上条「ん、何?」

バードウェイ「あぁいや別に?全然全然気にしてないぞ?あぁ!」

上条「良く分からないけど……まぁいいか」

バードウェイ「……貴様の『それ』、どんだけ泣いてる女が居るんだろうなぁ」

上条「人聞きが悪いですよねっ!まるで俺が女の子を騙しているような!」

バードウェイ「禁書目録、神裂火織、御坂美琴、姫神秋沙、五和、アニェーゼ、オルソラ、食蜂操折、鳴護アリサ、『新たなる光』のチンピラ――」

バードウェイ「おっと数える指が足りなくなってしまったよ」

上条「ごめんな、謝るから指折って数えるのやめて貰えるかな?一本一本心が折れそうになるんだよ!」

バードウェイ「ハーレムもののアニメではよくある話さ」

上条「現実だよね?俺達が住んでるのはバーチャル世界とかそう言う設定はないよね?」

バードウェイ「『NiceBoat』事件を知っているか?」

上条「遠回しに刺されるっつってんのかっ!?」

バードウェイ「お前もう誰かと付き合った方が良いだろ。多分、他の面子から切られたり刺されたりビリビリされると思うけど」

上条「直接的に言えば許されると思うなよ!実は一部の娘が暴走するんじゃねぇかってガクブルだぜ!」

バードウェイ「さっきの占いもピンポイントで最悪だったしな……ふむ」

上条「……もう運で済ませられるレベルじゃないと思うんだよ、俺は」

バードウェイ「では少し占ってやろう」

上条「カード?タロットだっけか?」

バードウェイ「女の買い物は時間がかかる。少しぐらい労をねぎらうのも一興か」

上条「いやあの、朝からフルスロットルで疲労中なんですけど。出来れば一人で、寝たい」

バードウェイ「あのスプリーキラーに拉致監禁されるのがオチだと思うが。まぁそれはそれで人生だしなぁ」

上条「助けて下さい!?僕の人生まだ棒に振りたくないですからっ!」

バードウェイ「――と、人生に迷った時、占術があれば暗い行き先も明るくなろうというものだ」

上条「無理矢理まとめた感が……」

バードウェイ「ま、良い機会だ。お前も占いの一つや二つ憶えておけ。『明け色の陽射し』は霊装としてコイツを使う傾向が強い」

上条「右手があるから使えない、って思うんだけど」

バードウェイ「同様に我々『じゃなくとも使う』んだ。敵の魔術師がいつもいつも、ペラペラ自分の手の内を明かさんよ」

上条「対処するためにも覚えとけって?……でも親切だよなぁ、あいつら」

バードウェイ「結局、手持ち札でどうにかするしかないのさ。それがブタであったとしても、最弱だと知っていれば逃げ出す選択肢も取れる」

バードウェイ「ポーカーのルールも知らないのに、勝負しているのか私の近くにもいるな?」

上条「無謀だよねー、あっはっはっはー」

バードウェイ「ではタロットの講義と行こうか」

バードウェイ「タロットのルーツは古い。一説にはエジプトだと言われている――が、根拠となる証拠は、ない」

上条「嘘なのか?」

バードウェイ「とまでは言わないが、曖昧なんだよ、とても」

バードウェイ「例えばタロットの亜種にはアンク、十字の上に丸が乗ったシンボルを見た事はあるか?」

上条「テーブルに描くと……『♀』か?」

バードウェイ「正解。それが描かれているタロットもあるにはある」

バードウェイ「それ自体は金星のシンボルでもあり、同時にエジプト十字を示すものであり複雑なのだよ」

バードウェイ「だからといってそれが『エジプト魔術の流れを取り入れた』だけで、『エジプトに源流を持つ証拠とはならない』んだ」

上条「後から誰かが付け加えられたのかも知れないし、そうじゃないかも知れない?」

バードウェイ「ミックスジュースを飲んでみても、どの順番で入れたのかは分からない」

バードウェイ「それどころか誰が作ったのかも分からない」

上条「分かっているのは?」

バードウェイ「寓意の持つ絵柄と数だろうな。大アルカナ22枚、小アルカナ56枚で構成されている」

バードウェイ「特に小アルカナは1から14までのカードが四種類。実にトランプと酷似している」

上条「トランプの原型になった?」

バードウェイ「とも言われているし、逆にトランプから生まれたとも。全然関係無いという説もある」

バードウェイ「だがしかしトランプの成立年代は14世紀、また小アルカナを使ってトランプ遊びをしていた事もあり、境が曖昧だ」

上条「んー……む?」

バードウェイ「どうした?」

上条「いやさ、タロットもトランプも結局は趣味で、要は娯楽として使ってたんだろ?」

バードウェイ「流石に魔術師達は違うだろうが、そうだな」

上条「でも一般の人にとって、どっちだって構わない訳だよな」

バードウェイ「そう、か?嗜好品の一つであったのは間違いないと思うが」

上条「俺がもし、売り手の方だったら一緒にしちまうと思うんだよ」

上条「22枚のタロットだけだと占いにしか使えないから、トランプも一緒に抱き合わせて売った方が儲かるんじゃね、とか」

バードウェイ「……小アルカナの起源が大アルカナとトランプの抱き合わせ販売だと?」

上条「あ、いやもし売る方の立場となって考えればな、って話だ」

バードウェイ「……なるほどな。原型はどうあれ、広まっていった過程としてそういう道があった可能性もあるか」

バードウェイ「よくやった新入り!」

上条「いやぁ思いつきだよ?」

バードウェイ「褒美に跪いて靴を嘗めてもいいぞ」

上条「いやあのものっそいキラキラした目で言われてもね、それは一般の人にとって罰ゲームだから?喜ぶ人はごく少数だと思うし」

バードウェイ「日本でも歌になっていなかったか?」

上条「ARI-Projec○は飛び道具だからね!?結構好きだけどもなっ!ローゼ○無印第二期OPは神曲だし!」

バードウェイ「ともあれ、現時点で最古のタロット群は『ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット』と呼ばれている」

バードウェイ「15世紀にミラノ公スフォルツァ、彼が画家達に描かせたのが残ってる」

上条「ミラノって事はイタリアか。意外だなぁ、魔術っつったらドイツとかイギリスって感じだけど」

バードウェイ「いやいやイタリアだってローマ聖教のお膝元だしな?胡散臭さで言えば連中も負けてはいないよ」

バードウェイ「その、スフォルツァ版の中でも最古と呼ばれてるのが『キャリー・イェール版タロット』だ」

バードウェイ「これはキャリー家がイェール大学に寄贈し、その名で呼ばれるようになった」

上条「イェール……?偶然だな、シェリーもイェール大学から鑑定頼まれてる、って」

バードウェイ「気づいたか?まさに『それ』だよ。最古と呼ばれるタロットが、このタイミングで学園都市にあるんだ」

上条「ふーん?偶然にしちゃ出来過ぎだよなぁ、それって」

バードウェイ「そうだな。その通りだよ」

バードウェイ「『黄金』の遺産継承者であり、特にタロットの霊装を好んで使う我々と」

バードウェイ「偶然最古のタロットが同じ都市に出くわしたのだから、な?」

上条「あ、だったらさ。シェリーに頼んで見せて貰ったどうだ?」

上条「興味あるんだろ、その古いタロットとか」

バードウェイ「……貴様はもっと言葉の裏を読んだ方が良いぞ……?」

バードウェイ「偶然は重なる事自体偶然ではある、が」

バードウェイ「予め仕組まれた出来事をしては、作為と呼ぶんだ」

上条「え、何?なんかマズいのか?」

バードウェイ「『まだ』偶然だろうな。たまたまそーゆー事だってあるかも知れない」

バードウェイ「だがまぁ、『監視用の部下を戦闘不能にされた日に、たまたま襲撃される偶然』でも起きない限りは、な」

バードウェイ「歴史の勉強はここまでだ。次は実際に占いながら――あぁそうそう、お前はタロットの絵柄も知らないんだったか」

上条「王様とか、ライオンとか?」

バードウェイ「正確には皇帝だな。それはフランス野郎の僭王がアレした分、ややこしくなっているのだが」

バードウェイ「革命で王政を打倒した挙げ句、十年後にフランス皇帝が出来るとかフランス野郎は死ねばいい」

バードウェイ「連中が余計な事をしたお陰で、カエサル以降の皇帝を踏みにじった訳だ」

バードウェイ「では簡単に――0番のアルカナ、愚者だ」

上条「旅人のカード。あ、片足踏み外してる」

バードウェイ「よくタロットの解釈で言われているのは、『アルカナは世界を表す』そうだ」

バードウェイ「コイツ、この愚者が世界を巡り、徐々に知識をつけていく――と言われている」

バードウェイ「0番の愚者は1番の魔術師に出会い智恵を得て、2番の女教皇と話して客観性を学び、と言った具合に」

バードウェイ「最後のアルカナ、21番の世界に至って全てを知る……そうだ」

上条「なんで伝聞形式?」

バードウェイ「私はその説を支持していない」

バードウェイ「そもそもキャリー・イェール版大アルカナには番号はおろか、名前すらも入っていない」

バードウェイ「欠損部分があり、大アルカナが揃っていない状態でもある――が、まぁ?」

バードウェイ「その話は関係無い――だろう、おそらくは。私とお前の人生にそれが関わる訳はない筈だ」

上条「古いタロットはちょっと見たいけどなー。画家に描かせたんだろ」

バードウェイ「今で言えばイラストレーターと称する萌え絵師だな」

上条「人の夢砕くの止めて貰えないかな?情操教育に悪いと思うんだよ、主に俺の」

バードウェイ「どうしても気になるのだったら、クロムウェルに頼み込めばいいさ」

バードウェイ「前置きが長くなってしまったが、始めようか。何を占って欲しい?」

上条「センセイ!刺されないで済む未来が欲しいです!」

バードウェイ「心底どうにかしてやりたい気もするが。生憎私が丹誠込めて作った護符も、お前が持つと効力を失うしな」

バードウェイ「ま、魔力を介在しない未来指針であればある程度、と思っとけ。気休めにはなるだろうから」

上条「もう『あたったらラッキーだよね!』ぐらいの精度にまで落ちてないかな?」

バードウェイ「お前の本質はお前が決めろ。他者がどうこう言おうとも、自分で決めた線がブレなければいい」

上条「いい事言うなっ!」

バードウェイ ジーッ

上条「……いや、お前のパンプスを見つめられても。プレイはノーサンキューで頼む。俺はノーマルだし」

バードウェイ「では種類は恋愛――じゃなかった対人関係だな」

上条「今凄い間違え方したよね?」

バードウェイ「取り敢えず占いたい誰かを考えながら、タロットをシャッフルしたまえ」

上条「大丈夫?パキーンってしない?」

バードウェイ「保護用のプラスチックシートに入っているから問題ない。ま、壊れた所で寿命だ。私が子供の時から使っているものだし」

上条「今も子供――じゃ、ないですよねっ!?バードウェイさんはコーヒーも飲める大人ですよねっ!?」

バードウェイ「口の利き方に気をつけろ」 グリグリ

上条「アンチスキルに撃たれた所を足でつつくなっ!?痛みはないけど傷痕は残ってんだよっ」

バードウェイ「マーク=スペンサー(仮名)さんは喜んだんだが、贅沢な奴だ」

上条「スペースじゃね?言われるまで気づかなかったけど」

バードウェイ「オゥルトロップの名門貴族にスペンサー家と言うのが居てな。そっちと勘違いしてた」

上条「故ダイアナ妃殿下がそんな名前だったような……?どうせ本名はそっちっぽい気もするけど」

バードウェイ「ほらほら集中しろ。マークとの仲を占いたいのであれば止めない。むしろ嫌いじゃないぞ、決して」

上条「いよしっ!気合い入れるぞー!マーク以外との仲を知りたいなーっ!」

バードウェイ「今からするのは『ケルト十字法』という占いだ。使うのも大アルカナだけ、一部省略してあるし難しい要素はない」

上条「そりゃ助かるけど」

バードウェイ(――が、だ。上条当麻。占いには別の側面もある)

バードウェイ(相手が何を占うのかを事前に知っていれば、ある程度の絞り込みも可能――つまり!)

バードウェイ(この場合、『出た結果をお前との関係性に照らし合わせば、今まさに心の中で想っている相手の割り出しも出来る』訳だ)

バードウェイ(さぁて鬼が出るか邪が出るか……)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……パ、パトリシアだったら……?)

バードウェイ「――よし、殺すか」

上条「お前真顔で急に何言ってやがるんだっ!なんで暗殺指令が入ったっ!?」

バードウェイ「すまない。独り言だ――と、では一枚目から裏向きに置いてみようか」

上条「お、おう?」

バードウェイ「次に横にしてその上へ重ねる――そうそう」

上条「十字を切るように並べる、と……」

バードウェイ「周囲に円を描くイメージ。カードで線を結ぶ感覚だ」

上条「3、4、5、6……」

バードウェイ「最後は『塔』を積み上げるイメージだよ」

上条「――10枚目、これで終りか」

バードウェイ「あぁ。全体の形がやや歪だが内容とは関係ない」

バードウェイ「ではまず一枚目をめくってみようか。上下を反転させないように気をつけろ」

上条「最初に置いたのだよな?……っと」

バードウェイ「あぁ。それが現在の状況を表している」

【死神(逆)】

上条「あの、バードウェイさん?鎌持った骸骨が、めっさ笑ってるんですけど?」

バードウェイ「一応逆向きだから。この場合は『死からの再生』か?」

上条「てっきり『もう諦めれば?』的な意味かと。次は――」

【力】

上条「ライオンのカード」

バードウェイ「剛毅、または力のアルカナ。二番目は障害だから『自惚れ』か」

バードウェイ「三枚目と四枚目は顕在性と潜在性、続けてめくってみろ」

【教皇】

【皇帝(逆)】

上条「聖職者っぽいカードが連鎖した」

バードウェイ「顕在性は『誠実』、潜在性は『自分勝手』か。合ってるな?」

上条「え、俺が誠実だけど自惚れてて自分勝手だって事か!?」

バードウェイ「一概に否定は出来ないが、まぁバーナム効果もある事だし、心理分析は冗談程度に留めておけ。ほら、次」

バードウェイ(さて、次から相手を特定出来る結果が出る)

【恋人・逆】

バードウェイ「……行き違い、もしくはケンカ別れ……?」

バードウェイ(コイツと敵対していた人間は多いしな。聖人や天草式、シスターも大概そうか)

上条「なぁこれはどういう意味なんだ?」

バードウェイ「お前と相手の過去の関係。そして次が未来を示す」

【星】

バードウェイ(え!?恋人確定かっ!?)

バードウェイ「……」

上条「悪いカードなのかっ!?」

バードウェイ「あぁいやそうじゃない。そうじゃないんだが……うん、何故かイラつくな。リア充は死ねばいい」

上条「私見入りまくりなんだが……次」

【戦車・逆】

バードウェイ「発生する問題が戦車のリバース。不毛な闘争的に巻き込まれると」

上条「まぁいつもの事だけどねっ!」

【女帝】

バードウェイ「環境は女帝……あぁ女性のペースで行けって事か。良かったな、流されるままでオッケーだ」

上条「良いのか、それ?次は9枚目、最後から2番目っと」

【審判】

バードウェイ「……改善?それとも裁かれる?誰に?」

バードウェイ「あぁ刑法的な意味でか!流石はLolico13だな!」

上条「おいこら人混みで呼ぶな呼ぶな!定着しちまったらどうしてくれるんだっ!?」

バードウェイ「――さて、次が最後のカード。一応最終結果である」

上条「10枚目……行きます!」

【世界】

バードウェイ ブーッ!?

上条「吹くような内容なのかっ!?……あぁティッシュ、ほれ」

バードウェイ「す、すまん。いやだがしかしまさか」

バードウェイ(最後、意気投合か国際結婚って、なんだ?どう考えても上手く行くだろ、これは)

バードウェイ(意中の相手を知る以前に、知らせていいものかどうか迷うな)

バードウェイ(自己分析の中に自惚れが入っている以上、あまり調子に乗られても問題だし)

上条「ネタ抜きで悪いのか?」

バードウェイ「あー、まぁ大丈夫じゃないか。多分?」

上条「またフワッフワした言い方だなオイ!」

バードウェイ「頑張れ。君の未来はまだ決定していない」

上条「ドSの人から励まされた!?」

バードウェイ「お、二人が出て来たぞー。それでは行こうか」

上条「待って!?一体俺の未来にどんな酷い事が起きるのかをはっきりさせ――」

バードウェイ(収穫はゼロではない。『一度争った相手』で、しかも『国際結婚』か。不毛な闘争が気になるが、今更だろう)

バードウェイ(消去法で行けば禁書目録、神裂、天草式、アニェーゼに『新たなる光』のチンピラも入るか)

バードウェイ(後は……クロムウェルもそうか。脈はないだろうが、そんなもの分かりはしないしな)

バードウェイ(他に上条と争った連中、日本籍じゃない奴――)

ピーンポーンパンポーン

バードウェイ「……ま、そのぐらいか」


館内アナウンス『お呼び出しを申し上げます、お呼び出しを申し上げます』

上条「今時珍しい……携帯で連絡した方が良いんじゃないか?」

バードウェイ「持っていないか、電池でも切れたのだろう。スマートフォンはバッテリーを食う」

館内アナウンス『XX学区より起こしの……これ、本当に読むんですか?冗談じゃなく?』

上条「?」

館内アナウンス『……失礼しました。改めてお呼び出し申し上げます』

館内アナウンス『XX学区より起こしの、白くてヒョロくてウルトラマ○ぽい服を着たモヤシ。お連れ様がお待ちです』

上条「何やってんだ一方通行っ!?なんで迷子になってんの!?」

バードウェイ「ツレの方が迷子になったんだろ。そうじゃなかったら痛すぎる」

円周「だったいまーーーっ!ごめんねー?シェリーちゃんが中々うん、って言ってくれなくってさー」

シェリー「……あたしが悪いんじゃねぇぞ。つーかあの値段気軽にホイホイ出せる額とは違う!」

円周「んー、大丈夫!『研究費』で領収書切っといたから」

上条「何の研究?つーか俺達モルモット扱いなの?」

円周「『上条』を勉強したいな、って始めに言った筈だけど」

バードウェイ「ま、いいが――(ほら)」 ツンツン

上条「(何?トイレか?)」

バードウェイ「(誰が一々相談するか!そうじゃない、クロムウェルが新しい服を着たんだ。言うべき事があるだろ)」

上条「(似合ってるよ、的な?)」

バードウェイ「(もう少し感情を込めてだ。『明け色の陽射し』の一員たるもの、紳士であれ)」

上条「(いやでもわざとらしくないか?何か口説いてるみたいで、下心丸出しって言うか)」

バードウェイ「(言わないよりはマシ。ただしキモがられる可能性はある)」

上条「(めんどくさー……まぁ、やってみる)」

上条「あぁっと、シェリー?」

シェリー「あぁ?何よ?」

上条(あれ機嫌悪い?何かとっかかり間違えた?)

上条「あー、結局ツナギにしたんだ」

シェリー「ゴス服でうろつくのも何だしなぁ……あのメイド連中と同じカテゴリに見られるのは嫌よ」

上条「でも、外見はアレだとしっかりしてるぜ?」

シェリー「そこを否定するつもりはないわ。でも限度ってもンがあるだろうよ」

上条「ま、良い機会とは言わないけど、たまには別の服着るのもいいんじゃないか?気分転換すりゃ発想も変わってくるだろうし?」

シェリー「分かってんだけどなぁ、お前これ幾らするか知ってんのか?」

上条「高いっつっても五桁じゃ?ウチからすりゃ充分お高いけど」

シェリー「……六桁」

上条「マジで!?」

シェリー「どうなんだろうなぁ?これだったらお前のダサジーンズで手ぇ打った方が良かったかも」

上条「ダサいは余計だけど。よく買う気になったな」

シェリー「この子が出すって言う以上、買わねぇ訳には行かないでしょうが」

円周「いえーいっ!」

上条「お前も無茶すんなよ」

シェリー「つーかタベってても仕方がないし、今日はこれで解散か?」

上条「俺はそれでもいいけど。出来ればどっかでメシでも食おう――って何だよバードウェイ?」

バードウェイ「(話が逸れすぎだろうが!誉める展開はどうなった?)」

上条「(お?……ついうっかり。なんかシェリーって男友達と話してる感じで、つい)」

円周「(お兄ちゃんに、友達居たんだー……?ノイジー的な?)」

上条「(俺に無理矢理病名つけるのやめてくれ!分かったよ。言えばいいんだろ!)」

上条「なぁシェリー」

シェリー「おー?」

上条「綺麗だ」

シェリー「ぶっ!?」

バードウェイ「ストレート過ぎるだろうが!?」

上条「フツーに誉めただけじゃねぇか!」

円周「って言うか、これ、『お兄ちゃん的には素』って事かー。うんうんっ」

シェリー「テメェは……!まぁいい、行こうぜ」

シェリー(なーんか調子狂うよなぁ、こりゃ)

シェリー(いつからこんなヌルくなっちまったんだろ、私)

――同時刻 迷子センター

男「おー、来た来た一方通行。遅せぇよ、何やってんだよ?」

一方通行「……人をお子様扱いしやがったンは、お前かよ、あァ?」

男「ムキにならなくたって良いじゃねぇかよ。ケータイ聞くの忘れたんだし」

一方通行「つーかお前ェ――誰だよ?」

一方通行「俺の知ってる木原くゥンはンな常識人みてェな格好はしてねェ」

一方通行(気の抜けるアナウンスで呼び出されてみりゃ、クソ木原と似た口調の奴かァ?)

男「まぁまぁ暑くなってんじゃねぇよ。取り敢えず場所変えようぜ」

一方通行(……クソ!向こうが何をしてェのか分からねェ以上、付き合うしかねェ)

男「クレープとたこ焼きどっちがいい?」

一方通行「……いらねェ。何入ってンのか、わかったもンじゃねェだろ」

男「テメェは相変わらず悲しい生き方してるよなぁ……まぁいい。俺が奢ってやっから死ぬまで感謝しやがれ」

一方通行「つー事はァ、お前をぶっ殺せばチャラになるってェ話か?」

男「けっ。死ね」

一方通行「お前が死ね」

一方通行(口調はまァ似てねェ事もない。だがあいつを知ってりゃァある程度は真似出来る)

一方通行(外見は似ても似つかねェサラリーマン風の男だ。人混みであればどこにでも居そうな感じの、平々凡々としたよォな)

一方通行「……」

一方通行(あのレベル0の事を思えば油断は出来ねェか)

男「ほれ、買ってきてやったぞ白モヤシ。学園都市製たこ焼きとクレープどっちがいい?」

一方通行「……学園都市製たこ焼き……?」

男「遺伝子操作して足を増やしたんだと」

一方通行「意味ねェよな?足増やすよりも体積増やした方が真っ当じゃねェのか」

一方通行「ンな気味悪ィの食いたかねェ。クレープ寄越せ」

男「クレープは……まぁ、足増やしたんだと」

一方通行「クレープに足ねェだろ!?」

男「小麦の成長促進のために、根をいっぱい張らせる研究だとか」

一方通行「ン研究するより、実験しようと思ったバカども開頭してやれよォ。多分蜘蛛の巣張ってっから」

男「遠慮すんなよ、食え食え」

一方通行「遠慮じゃねェよ!学園都市の頭の悪さにビビってンだァ!」

男「お前も相変わらずガキじゃねぇか、なぁ」

一方通行「……つーかいい加減にしろよ、偽もンが。俺の知ってる木原数多じゃねェだろ」

男「ふーん?じゃあお前は俺をどう定義づけるんだ?ニセモノだったとして、その目的は何?」

一方通行「ど腐れ木原の元研究者、もしくは下っ端なンだろ?俺を引っ張り出してなンか企んでやがる」

男「なんか、とは何?この状況でお前さんを引っ張り出して、誰が、どう得するって?」

一方通行「そうなァ……あァ俺の個人情報と引き替えに、なンかさせようって魂胆じゃねェのか?」

男「おっと流石は一方通行さぁん、お利口でちゅねー」

一方通行「……遺言は、それでいいンだな?」

男「好きにすりゃいいじゃねぇか。フードコートで爆殺なんざネットニュースで一番になれんぞ」

一方通行「……」

一方通行(時間稼ぎ、かァ?それにしたっておかしい)

一方通行(俺を囲もうとするんだったら、別に『木原』の名前出さなくたって、勝手にすりゃいいだけだ)

一方通行(警戒レベル上げさせてなにがしたいンだ、こいつ)

男「そうなぁ……あぁ、あれ。あっこにガキどもの群れがいるの分かるか?」

一方通行「あァ」

男「お前結局、あーゆー『輪』に入りたかったんだよなぁ?」

一方通行「そりゃァ……!」

男「そうだ。『木原数多』しか知らねぇ情報だよなぁ」

一方通行「お前……本当に?」

男「で、どうなんだ?お前は輪に入れるようになったのかよ」

男「能力なんて欲しくなかった、つってたお前がよぉ?」

一方通行「……誰だよ、お前。クソ木原はあン時音速でぶん投げた筈ろォ!?」

男「ま、記憶のバックアップなんて珍しくもねぇって話だ。それより答えろよ、世間話ぐらいいいじゃねぇか」

男「データじゃ知ってるが、お前の口から聞きたい」

男「お前は今、何をしているのかってな」

一方通行「……別にィ?大した事ァしてねェな、これといって大した事はだが」

一方通行「ガキとメシ食ったり、ババアと買い物行ったり」

一方通行「バカなガキどものケンカ止めたり……まァ普通だなァ」

男「なぁ、一方通行。お前確かそんな『普通』が欲しいっつってたじゃねぇか?」

男「『能力を制御して、普通の生活がしたい』ってなぁ」

一方通行「……」

男「……お前は今、『普通』なのか?」

一方通行「俺ァ……あァ、まァ、そこそこだ」

一方通行「ガキのお守りなンざ、面倒臭ェとは思ってたし、正直今も思ってンだが、まァ」

一方通行「悪くは、ねェよ」

男「……そっかあ、良かった、良かったぜ一方通行」

一方通行「ウルセェよ」

男「俺ぁこう見えて心配してたんだよ。お前が一人でハブられてねぇかって。一人で便所メシ食ってねぇかとか」

一方通行「出て行くだろ普通。そこまでされても居着くなンて、どんだけメンタル強ェんだ」

男「――で、お前は『いつこっちへ戻ってくる』んだ?」

一方通行「――え」

男「え、じゃねぇよ。テメェ勘違いしてるよなぁ」

男「バカみたいに殺して殺して殺しまくったお前が、今更『普通』の生活なんざ、戻れる訳がねぇだろ?」

一方通行「違うだろォ!?俺は必死に償ってンだよォ!」

一方通行「もう一人だって!あいつらを不幸にはしたくねェ!するつもりもねェよ!」

男「――あれ、あそこ見えるか?」

一方通行「……正面の、服屋」

男「あぁあそこで働いてるねーちゃんだよ。見覚えは?」

一方通行「ねェよ。なンの話してやがる」

男「ん?お前がアイツの弟殺してんだよ?」

一方通行「……はァ?なンで俺が――」

男「『猟犬部隊』でアイツの弟雇ってたんだよ。名前は……あー……?ジョンだか、ジョセフだかそんな感じ?」

男「お前が、その手でぶち殺したんだよ。憶えてもねぇのか」

一方通行「……ァ」

男「なぁよぉ一方通行?お前昨日のメシ何食った?肉ジャガ?カレー?俺ぁジャンクフードが好きだが」

男「その『守りたいガキ』と一緒に、仲良くワイワイ食ったんだろぉな?えぇ?」

男「でもよぉ、お前の殺したジョージのねーちゃんは一人でコンビニ弁当だ」

男「一緒に食ってた弟さんは、もう帰ってこないんだからなぁ」

一方通行「俺の――」

男「『俺の責任じゃねェ』か?まぁそうだわな」

男「お前をぶっ殺すように命令したのは俺だし、そもそもそんな馬鹿げた命令を聞かなくちゃいけないヘマしたのもジョナサンだ」

男「でも『殺したのはお前』だぜ?」

一方通行「――ふ!」

男「次にお前はこう思う。『不可抗力だった』と」

男「そうだな、お前は好きで好きでしょうがない打ち止めちゃんのために命がけで戦ったよ。えらいねー、がんばったねー」

男「でも、『殺す必要はなかった』よな?お前の技術と能力の使い方次第では、足でも折りゃあ決着はついてた」

一方通行「――」

男「お前はなぁ、何も考えずに、殺したんだよ――1万人のクローンを殺したように」

男「要はお題目が変わっただけで、お前のやってる事ぁ何も変わっちゃいねぇんだよ。なぁ?」

男「可哀想に。ジョリーンのねーちゃん、弟を捜しに学園都市に引っ越してきたらしいぜ?」

男「ずっと一人で待つんだろうなぁ。誰かさんが殺した弟の事を」

一方通行「……仕方が」

男「あぁ?」

一方通行「仕方がねェだろ!あン時はそれしか出来なかった!」

一方通行「俺を殺そうとする連中に、一々手加減なンざ出来る訳がねェ!」

一方通行「誰だってそォだろうが!大切なもンとそうじゃねェもン天秤にかけて、どっち選ぶか考えて来たンだろうが!」

男「ん?あぁいやいや勘違いしてんな、お前。俺ぁお前が悪いなんざ一言も言ってねぇ、だろ?」

一方通行「じゃァなンだって出て来やがった!?何がしてェンだよ!?」

男「忠告だってさっき電話で言ったろうが」

一方通行「言ってねェよ!」

男「だっけか?んじゃまぁ、改めて忠告な」

男「お前の住む場所はそっちじゃねえよ。さっさと戻ってこい」

一方通行「……それが、目的かァ?」

一方通行「なンだかンだと因縁つけて、結局はそれじゃねェか!俺の力が欲しいんだろ!?」

男「忠告だっつってんだろバカが。お前、ハワイまで行ったらしいじゃねぇか、暢気な事だなオイ」

一方通行「だからなンだ」

男「御坂美琴に『お前も加害者』つったんだってなぁ?」

一方通行「あァ?だからどォした」

男「……ここまで言っても分からねぇのかよ。信じられねぇが」

男「お前がたった今、ジョジョぶっ殺した事に関して、お前は『割り切った』よなぁ?」

男「当時はイッパイイッパイで仕方がなかった、って」

男「でも、お前は御坂美琴に対して」

男「お前と同じく――いや、もっと酷いな。『騙された御坂美琴に対して加害者だと割り切った』んだ」

男「んな思考してる時点でもう――お前が『普通』の生活なんざ出来る訳がねぇ」

男「テメェのしでかした不始末、妹達を助けるために、何度も何度も勝てない相手に挑んでは、ボコボコにされた第三位をだ」

男「いつもいつもヘラヘラ笑って半殺しにしてたクソヤローは誰だ、あぁ?」

一方通行「ち、が」

男「お前はなぁ、一方通行。結局テメェ自身しか可愛くはねぇんだよ」

男「演算能力を失いたくねぇから、『俺は打ち止めを守りきる』なんて思いこんでるだけだって、いやマジで」

男「だって本当にお前が心の底から、後悔してるんだったらば、だ」

男「御坂美琴に対して『加害者だ』なんて言えるかぁ、普通?」

一方通行「……」

男「なぁ一方通行?お前は良くやったよ、周囲に溶け込もうとしたし、頑張って『普通』になろうとした。他の誰が認めなくたって、俺が認めるぜ」

男「でも最初っから無理だったんだよ。お前は人を殺しすぎた」

男「ホレ、よくマンガとかで『不良が良い事をして善人に見られる』パターンってあるよな?それだよ、それ」

男「まぁ大抵は女の子に惚れられて改心するって話なんだが、※ただしイケメンに限るって話で」

男「最初っから全身タトゥーでシャ×中のヤツは除外されんだわな」

男「今更善人ぶったって遅いんだ」

男「『普通』の人間はどぉして普通で居られるのか――そりゃ『最初から最後まで悪い事もしねぇから』だよ」

男「その対価として安寧な退屈な日常を謳歌出来る」

男「だからもう帰ってこいよ、な?お前みたいなクソヤローは一生クソ溜まりの中で足掻くしかねぇんだよ」

男「別に俺と来いってんじゃねぇ。だから――」

一方通行「……そうだなァ、俺ァほンっっっっっとに、クソだ」

男「……」

一方通行「自分で殺した数も知らねェし、誰を傷つけたのかも憶えてねェ」

一方通行「多少ましンなったかと思えば、第三位に暴言だなァ、いやいや」

一方通行「だが、なァ?ここで『はい、そーですか』つって?全部逃げたとしても、そりゃ」

一方通行「そうしちまったら、俺ァ最悪のクソだ。分かるか?」

男「『普通』の世界で悪党が何をするって?テメェの居場所なんざ、無いに決まってんだろうが」

一方通行「だかよォ。明るい所が苦手な動物のように尻尾撒いて逃げたって、そいつァ『逃げ』だ。償いとは程遠い」

一方通行「俺は、逃げねェ……!もう、嫌なんだよ!そういうのはよォ!」

男「そぉかよ。まぁ……いいんじゃねぇか、そういうのも」

男「あ、ちなみにさっきのジョなんとかの話は、全部嘘だ。前の猟犬部隊には家族が居ないクソッタレを選んでる」

男「はっきり言って、『外』じゃ死刑にされでも文句言えない連中ばっかだから、お前がぶっ殺しても感謝されるだろうな?」

一方通行「……お前は、ぶっ殺す!」 カチッ

男「まぁまぁ待て待て。そう焦るなって、つーか折角良い事教えてやったんだから、感謝の言葉ぐらいねーのか?」

一方通行「そうだなァ、楽に殺してやンぜ」

男「んじゃ遺言代わりに聞いていけよ。お前の能力、『反射』だが、破るにはどうすればいい?」

一方通行「時間稼ぎしてンじゃねェぞ」

男「それも有効だな。魔術を使わせたり、お前の知らないベクトルをぶつけたり」

一方通行「後はテメェの拳の返し、ぐらいだが。もォ喰らわねェぞ」

一方通行「距離取って『風』以外の攻撃ぶつけりゃ簡単に――」

男「そう、それだよ一方通行!お前の悪い癖だ!」

男「今、お前はこう考えてる。『目の前の自称キハラが近寄ってこないよう気をつける』とかだろ?」

男「実際、俺に攻撃されても反応出来るように、お前は一定の距離から近づいて来ねぇ」

男「だが、それは違う、見当違いも良い所だぜ……良いのか悪いのか分かんねぇけどな」

一方通行「……遺言はそれでいいのかァ、って何回聞かせンだ」

男「まぁまぁ聞けって、あと少しだからよぉ。今、お前が、本当に注意すべきなのは――」

ザクリッ!!!

一方通行「か……はァっ……!?」

男「『俺じゃなくって背後から近寄ってる木原』にすべきだったんだよ!なぁ!?」

少女「うん、うんっ!そうだよねっ!数多おじちゃん!」

少女「『木原』なら、こんな時こういう風にすれば良いんだよね……ッ!」

一方通行(まだガキ――なンだ?首から下げたスマフォのグラフが波打ってる?)

一方通行「ク、そがァァッ!」

少女「わきゃっ!?」

一方通行(なンだ?あっさりぶっ飛ばせたじゃねェか)

一方通行(腹にナイフもらっちまったが、この程度ならどうって事はねェ。血流コントロールなんざ、難しくも――)

男「ちなみにぃ?『手首の返し』をインストールしたのはそいつだけじゃねぇんだわ、これが」

一方通行「ンなっ!」

男「『新しい』猟犬部隊全員、近接格闘はお前に突き刺さるんだよぉっ!」

一方通行「――死にやがれ!」

グガシャアァッ!!!

男「く、ぎゃはははははげぶっ!?なんだ!俺ぁ死んでねぇぞ一方通行!」

一方通行「お前らまさか……!」

男「あぁ、あぁ!今度の猟犬部隊は『俺を含めて全員が家族持ち』だぜ!誰一人例外なく人質を取られてる、かも、しれねぇ!」

男「さぁどーする一方通行!?全員ぶち殺すのか!えぇオイっ!?」

一方通行 クイッ

男「ぎゃふっ!?」

一方通行(どォいう事だァ?『俺を含めて』?)

男A「……」 チャキッ

男B「……」 スチャッ

タタタタタタタタタタッ!

一方通行(H&KのMP5……サブマシンガンを警告無しでぶっ放す、だと?)

一方通行」「……ワケが分からねェ。ンな豆鉄砲でどォにか出来ると考えちゃねェだろうな!」

ドォンッ!!!

――少し前 フードコート

上条「食べたいもんのリクエストあるか?イギリスって……あぁごめんなんでもない」

バードウェイ「ブリテンの食事をネタにするのはやめて貰おうか。どこの国も家庭料理なんてそんなもんさ」

上条「あ、じゃあイギリスの郷土料理の店もあるぜ?インデックスにせがまれて来てたんだけど」

バードウェイ「日本料理を頼む。現地に来たのだから食べない理由はあるまい」

上条「自分でハシゴ掛けといて外すってどうなの?」

円周「イギリスならジンだよね。イギリスジン、なんちゃってー」

上条「おいバカ止めろ!俳優辞めて小説家になった水嶋ヒ○さんの『KAGERO○』をdisるな!」

円周「でもこないだ『原作殺し(オリジンブレイカー)』の子と映画の宣伝に出ていたような……?」

上条「台風被害にあった奄美大島にポプ○社の本500万円分送って、大顰蹙買った水嶋○ロさんの悪口は止めろ、な?」

バードウェイ「オリジンブレイカー?能力者か?」

円周「出た映画全て外すわ、栞○さんをビッ×にするわで大人気だよねっ!」

上条「そろそろいい加減にな?映画ヲタのメル友は『プロメテウ○の吹き替え聞いた時、×してやるって本気で思った』らしいけど」

上条「一応擁護しとくけど、そこで食った煮込み料理のパイ包みは美味かった」

バードウェイ「パスティだな。いやぁまぁ、そのなんだ」

バードウェイ「国ではファーストフード感覚で食べている物を、代表料理と呼ばれるのは抵抗がな」

バードウェイ「だからといってチキンティッカマサラを勧めるのも、それはそれでどうかと思うんだよ」

円周「あれはインド料理じゃ?あーでも日本のカレーも本場とは別物だしねぇ」

上条「どんな料理?」

バードウェイ「骨を抜いた鶏肉を香辛料で味付けし、タンドールと言う窯で焼いたのがチキンチィッカというインド料理」

バードウェイ「それにトマトとクリームを加えたカレーソースで煮込む」

上条「ほぼインドじゃん!?」

円周「アッパークラスはフランスかイタリア料理だもんねー、ミドルクラスだってあんま食べないんじゃ?」

バードウェイ「ワーキングクラスの料理だけが広まったせいでもある。勿論彼らもジョンブルには違いないのだが」

上条「シェリーは?何かあるか?」

シェリー「……あー、すまん。ちょっと気分悪ぃ。先帰るわ」

上条「そか?だったらタクシー乗り場まで案内す――」

シェリー「ウルセェっ!私に構うんじゃねぇ!」

上条「……シェリー?」

シェリー「黙れ。潰すぞ」

上条「分かった、良く分からないけど」

シェリー「……クソッタレが……」 カッカッカッカッ

バードウェイ「……ふむ。人混みで酔ったんだろうな」

上条「そう、か?なんかスッゲー辛そうに見えたんだけど」

バードウェイ「だとした所で私達に出来る事ないさ、上条当麻」

バードウェイ「『アレ』は私達が助けようとしたって、その手を振り払って行った」

上条「いやでもさ、気になるじゃん?」

バードウェイ「本人が救いを求めていない以上、まさに『救いようがない』って奴なのだよ、これは」

上条「んー……」

円周「あ、じゃあじゃあ。わたしが行ってこようか?お兄ちゃん達よりも、シェリーちゃんと仲良くなったと思うんだ」

バードウェイ「お前の場合は前科を知らないから、消去法だと思うぞ」

上条「んじゃ、悪いけど頼めるか?具合悪いようだったら、病院とか――カエル先生の所に連れてってな?」

円周「うんっわかったよ!……あ、じゃ、わたしのリュック持ってて貰えるかな?」

上条「任された……ってこれノーマッ○?ピンク色のノーマ○ドのぬいぐるみかと思った」

円周「中開けたら、めっ、だよ?」

上条「しないしない。早く行け」

円周「手首ごと噛み千切られるからね?」

上条「中に何入ってんの!?むしろ持ちたくないなっこれ!」

円周「あ、そーだちょっと屈んで貰えるかな?先払いでお駄賃ほしいなー、なんて」

上条「お、おう?」

円周「んっ」 チュッ

上条「おぉうっ!?」

円周「えへへっ!じゃ、行ってきまーーーーすっ!」

円周「あ、あとっわたしのアドレスはお兄ちゃんのケータイに入れといたからーーーーっ!」

上条「は、あははは、うん、アレだよね?子供だもんね?子供のお遊び、的な?」

上条「まぁまぁまぁまぁっ!良くあることですし?つーかこの展開はどっか別でもあったような?」

上条「あっれー?どこだっけかなー?なんか、ツッコミのしすぎで喉が枯れた記憶が微かに?」

上条「あぁそういえば喉も渇いたし、そーだね、近くの喫茶店でお茶でも飲も」

バードウェイ「――あぁ、すまない。全力で話題を変えようとしている最中に失礼するが、少し話が出来た。Lolico013、いや」

バードウェイ「ロ×コサーティーンよ」

上条「ゴル×じゃないですよ?スナイプしてませんからね?」

バードウェイ「その割には必殺の効果を誇っていたようだが」

上条「無理だものっ!?さっきは流したけど、人のケータイへいつの間にか電話番号登録するような相手にどうしろって!?」

上条「神出鬼没だし!殆ど都市伝説レベルの能力じゃんかっ!?」

バードウェイ「気がついたら魔法使いの資格を失っていたりしてなー」

上条「バードウェイさん?俺別に魔法使いになりたいとは思ってないからね?」

バードウェイ「ボスと呼べ……ま、食事でもしながら待つとしようか。これ以上事態が悪化するとは思えん」

上条「だといいんだけど」

バードウェイ「『だかしかし、この時上条はまさかあんな悲劇が起きるとは予想だにしてなかった……!』」

上条「お前結構ボケるよね?てっきりツッコミ側の人だって思ってたんだけど」

――WC

シェリー「……ふう」

シェリー(何やってんだ、私は)

 ため息を吐きながら、シェリー=クロムウェムは目の前の鏡を見つめた。
 ぼさぼさの金髪、目付きの悪い女の顔、真新しいスーツには少し浮いている感じがする。

シェリー(……まぁ、それなりには嬉しかった、が)

 上条当麻の言葉、世辞だと分かっていても僅かに心躍るものがあった。

 買い物もそうだ。他人と慣れ親しむ事すら避けていたシェリーが、久々に楽しかった。
 暴走気味の年下の少女に振り回されるのも、まぁ、悪くはない。

 だが。

シェリー(……だから、だからこそ……!)

 そんな自分が許せない。許す事は出来ない。何故ならば。

シェリー(エリスがここにいないというのに、少しでも心浮かれた私は何だよ?)

 友と呼べる存在は居ない。近づこうとした物好きも殆ど居ない。
 だからこそ、今日この場所で楽しんでしまった自分に吐き気がする。

 このクソみたいな世界に独り取り残された自分が。

シェリー(……チクショウ、分かってる。分かってるわ、エリス)

 心の中で何度もエリスに頭を下げる。けれどエリスの姿は笑うだけで何も答えはしない。
 ――死者はもう、何も語らない。

OL風の女「あのぅ、すいませーん?」

 手洗い場で凹んでいる姿を見とがめられたのか。

シェリー「……別になんでもねぇわよ」

OL風の女「いえいえそう言うんじゃなくって」

シェリー「キャッチセールスならお断わりだ。他を当たれよクソ野郎」

 本国ならば強盗の心配をするのだが、こっちは持っていたとしても精々ナイフぐらいだろう。
 オイルパステルを一閃させればそれだけで事足りる。

OL風の女「落としましたよ、これ」

シェリー「ケータイ電話だぁ?」

 親切心からだと気づき、ポケットの中で武器を離す。

OL風の女「いえ多分、これはあなたのですよ――ねぇクロムウェルさん?」

シェリー「……うふ、うふうふふふふっ」

シェリー「そっかぁ、敵かよ。いいよなぁ、単純で」

 カチリ、と心の枷が外れていく。長らく忘れていた、破壊衝動が鎌首をもたげる。

シェリー「石と鉄筋で包まれた棺桶で、血と錆の浮いたあなたのお墓を作ってあげ――」

男の声『おいおい、よしとけってクロムウェル。つーか随分キャラ変わってんじゃねぇか、オイ?』

シェリー(携帯電話から声?)

シェリー「誰だテメーは。なんで私を知ってる?」

男の声『忘れちまったのかよ。まぁ20年前に会ったっきりだし、こないだもすれ違いだし無理はねぇか』

シェリー「20年前だぁ?何言ってるのよ、あなた。私の知り合いなんて学園にいる筈がねぇだろ!」

シェリー(……そうだ。エリスを除いては、誰も)

男の声『……オイオイオイオイ。マジで忘れてんのかぁ?ったくどいつもこいつも薄情だよなぁ』

男の声『俺は木原だよ、き・は・ら。木原数多って研究者憶えてねぇか?』

シェリー「キハラ……?あぁクソ!ジャパニーズの名前は憶えにくいんだっつーのよ!」

男の声『エリスの能力開発と、魔術発動の実験に立ち会った男だよ』

シェリー「……!生きてたのかよ!?」

男の声『あぁ。顔の皮ちょいと剥がされちまったけどな。みっともねぇったらよ』

シェリー「……確かに、懐かしいは懐かしいが、今更何の用だ?『エリスを守れなくてゴメンナサイ』って言うつもりかぁ!」

男の声『そりゃ俺の言う台詞じゃねぇ。実験そのものは失敗したが、あの時点で適切な処置をすりゃ、あのガキは助かったぜ』

男の声『それをメイスで滅多打ちにしたのは、お前らのお仲間だろ?』

シェリー「仲間じゃない!私に、仲間なんて――居ねぇんだよ!」

男の声『そりゃ悪かった。そっちも色々と抱え込んでるみたいだし、俺だってあの後大変だったんだぜ?』

男の声『こちとら研究に邪魔なものは排すべき、ってぇ強硬派が調子に乗っちまうし』

男の声『……ま、それはいいとしようや。終わった話だ』

シェリー「……」

男の声『聞いてますかー?もしもーしっ?』

シェリー「終わらねぇよ!?何にも終わってなんかねぇじゃねぇか!」

シェリー「あの子が好きだった世界は!また性懲りもなく一つになろうとしてやがる!」

シェリー「何一つ!終わってなんか、ないっ!!!」

男の声『……まぁな。それは俺もちょいと思っていたんだが、まぁまぁ?』

男の声『どっちに転んでも良いように、お仕事している最中だしなぁ』

男の声『とにかくお前が変わらないようで安心した』

男の声『そんなお前だから、俺は安心して悪事を吹き込める』

シェリー「……あぁ?」

男の声『なぁ、クロムウェルさんよぉ。俺と一つ、取引をしねぇかい?』

シェリー「しねぇわよクソッタレが。あなたは私の欲しいものを持っていない。であれば取引なんか成立しないわ」

男の声『でもねぇな。こっそり回収しといたもんがあんだよ』

男の声『お前、体細胞クローンって知ってるか?』

――和食レストラン

上条「どう?そんなに悪くはないだろ?」

バードウェイ「……ふむ。これは」

上条「あ、意外と高評価?」

バードウェイ「シェフを呼ぶんだ!」

上条「いねーよ!殆ど調理された状態で来てんだっ!」

バードウェイ「しかしこれ以下の我が国の料理って一体……」

上条「いや、お前はいいもん食ってんじゃないの?ボスやってんだから」

バードウェイ「家でこしらえる分にはな。それ以外だと苦労が多いんだよ」

バードウェイ「行きつけの店を下手に作ってしまえば、そこが襲撃される恐れもあるし」

上条「魔術結社って言うより、マフィアじゃねーか」

バードウェイ「そうだなぁ。只の研究機関かと思えば、悪の秘密結社さながらの某学園都市もあるみたいだが」

上条「棚に上げるのは良くないよなっ!……ホント、どうなってんだろうな。この世界」

バードウェイ「『大切なものは目に見えない』。サンテグジュペリの言葉だったか」

上条「あ、知ってる。星の王子様」

バードウェイ「目に見えないのか、それとも見ようとしないだけなのか」

バードウェイ「形を失って概念になったヤツに縋り付く、それもまた人生だとは思うがね」

上条「シェリーの事、調べたのか?」

バードウェイ「たかだか一介の魔術師如きに興味もない。だが」

バードウェイ「先日の騒ぎ――魔術と科学の仲を裂こうとした件については知っている」

上条「あれってお咎めなしだったんだよな。よく『必要悪の教会』が粛正しなかった……しようとしてたら、乗り込んだけど」

バードウェイ「あぁそうだが……それだけじゃない」

バードウェイ「処罰されなかったのは、学園側からの陳情があったからだとか」

上条「ふーん?研究者としても貴重だって話か?」

バードウェイ「いや、私が調べた限りでは20年前の事件、その時のブロジェクトの学園側責任者だった。あぁっと」

バードウェイ「木原……アマル?アルマ?だが手を回したらしい」

上条「木原ねぇ。円周の親戚かな」

バードウェイ「珍しい名字なのか?」

上条「いやいや、かなり一般的な名前だよ。一度聞いて――みるのは、良くないよなぁ」

バードウェイ「誰が何と言おうとも終わった話だよ。関係者は処罰されたし、計画も頓挫した」

バードウェイ「結果的に、魔術サイドと科学サイドが同じ歩みに至る事はなかった訳だが」

バードウェイ「もしもソレが成功していたのであれば、どんな世界になったろうか」

上条「皮肉は皮肉だよなぁ。学園都市とイギリス清教が組んだのは良いけど、次はグレムリンだし」

上条「外に敵がいないと協力しあえないのは寂しいよな……」

バードウェイ「それにしたってどちらがいつ裏切るのか分からない。まぁ、頑張りたまえよ」 ポンポン

上条「最後に他人事かっ!?それっぽいアドバイスとかくれないのっ!?」

バードウェイ「魔術師は元来、己の信念にのみ従う。それ以外はどーでもいいのさ」

上条「面倒臭い……魔術師の人ってこんなんばっかか!?」

バードウェイ「一方通行に御坂美琴、あと麦野沈利を擁する陣営に言われたくはないな」

上条「一方通行は……うん、まぁアレだけど!麦野さんも……まぁまぁデレのないヤンデレ化してるけども!」

上条「御坂はかなり普通の方なんじゃ?」

バードウェイ「お前、好きな相手に包丁で斬りかかるタイプなのか?『避けるだろうから大丈夫!』とか言って」

上条「ギャグだからねっ!あくまでもフィクションであって俺以外にはぶっ放してないから!」

上条「……あれ今好きって言った?誰が?誰を?」

バードウェイ「口元にソースついてるぞ。ほれ、拭ってやるから動くな」

上条「勘弁してくれよ、自分で出来るし」

バードウェイ「そうか?では――あぁ小娘の話だったな」

上条「あっれー?今キングクリムゾ○発動したような……?」

バードウェイ「小娘なんかだと……まぁいいか。私は二週間で帰るんだし」

バードウェイ「今朝のような都市伝説ごっこを毎日繰り返すと思うと、胸が熱くなるな」

上条「俺を!俺をイギリスへ連れてって下さい!」

バードウェイ「ならば忠誠の証を見せて貰おうか!」

上条「まさかのここでドS発動しやがった!?――と、遅いなあの二人」

バードウェイ「現実から目を逸らしても、現実は追い掛けてくるぞ?」

上条「ま、まだ二週間あるしぃ!きっとその間になんやかんやでそげぶして解決する筈だしぃ!」

バードウェイ「その場合、BadEndからS○W BadEndに変わるだけだと思う」

上条「あれ?強調のsoだよね?決して別口のサイコ映画入ってないよな?」

バードウェイ「そんなに心配なら呼び出せばいいだろ」

上条「だな……あ。円周のアドレス以外にも、シェリーの電話番号も入ってる」

バードウェイ「どうやって調べたんだ。鑑定の依頼出したのって、小娘じゃないのか?」

上条「シェリー呼ぶ意味が無い、と思うけど。あ、ちょっとかけて来るわ」

バードウェイ「どこへ行く?」

上条「トイレでちょちょいと。席でするのはマナー違反、だろ?」

バードウェイ「リュックを忘れているぞー、『当麻お兄ちゃん』?」

上条「見た目はキャラクターもんの缶バッジつけてて、可愛らしいんだよなぁ」

バードウェイ「中にどんな凶器が入ってるのか……いや、凶器『だけ』が入っていると考えた方が、まだ精神的に安定するな」

上条「不吉な事言うなよぉ!俺だって不安なんだからなっ」

バードウェイ「ともかく持っていけ。私一人になった途端、爆殺とかやりかねないだろ」

上条「……なぁ、円周ってそんなに悪い娘かな?」

バードウェイ「善悪で言えば『どちらでもない』と思うよ」

上条「だよなっ、なっ!」

バードウェイ「善悪を知らないが故に危険だが。興味があればキリストの舌でも平気で引っこ抜くだろうし」

上条「だよなー、うん」

バードウェイ「ちなみにその缶バッジな。家に帰ったら『Happy Tree Friend○』で検索してみろ。出来れば動画で」

上条「有名なんだ?」

バードウェイ「予備知識なしで、見ろ。100%トラウマになるから」

上条「んな危険なもん人に勧めるなよっ……んじゃ、ちょっと行ってくる。あ、そうだ」

上条「長くなるかも知れないから、デザートでも食べてれば?あんみつパフェなんてオススメだ」

バードウェイ「はっ!パフェなんて甘ったるいモンはお子様が食べるモンだよ」

上条「……そーですかー」 ガチャッ

バードウェイ「……」

バードウェイ キョロキョロ

バードウェイ ピンポーン

店員「はーい、なんでしょうかー?」

バードウェイ「あんみつパフェセットを一つ頼む」

ガチャッ

上条「あ、バードウェイ。そういやさ――」

店員「はーいっ!注文繰り返しまーすあんみつパフェセットー、あんみつパフェセットをおひとつー!」

上条・バードウェイ「……」

店員「お時間少々お待ち下さーい!」

上条「……ごめん。ほんっっとーーにっ、ごめんなさいっ」

バードウェイ「気を遣うな!逆にいたたまれない!」

上条「いや別に意外って訳じゃないと思うし。多分マークとか、他の部下の人らも『あ、ボス可愛いなー』ぐらいにしか思ってないって!」

バードウェイ「貴様……侮辱も程々にしろ!」

上条「いやだからごめんって!好きなもんは好きで良いじゃねぇか!」

バードウェイ「立場上入り婿になるが、それでも良いって言うんだな!?」

上条「錯乱してるな?つーか結婚させてまで守るレベルの機密じゃねぇから!」

バードウェイ「……ならばいっそこの手で――」

上条「電話して来まーす!きっと前後の事は忘れてると思いますからっじゃっ!」 シュタッ

バードウェイ「……」

バードウェイ「……はぁ」

店員「ご注文のあんみつパフェお持ちしましたー」 コト

バードウェイ「ご苦労」

店員「……」

バードウェイ「なんだ?日本じゃチップは要らないと聞いたが」

店員「素直になれよツンデレ」

バードウェイ「支配人を呼べ!この店も教育がなっていないようだ!」

――WC

上条「……?」

上条(何か騒いでんなバードウェイ?『シェフを呼べ』ごっこしてんのか?)

上条(さて) ピッ

上条(円周とシェリーのアドレス、正しいんだろうか?)

上条(つーかこれ赤外線使ったログもないし、全桁打ち込んだのかよ)

上条(人間としてオーバースペック。つか聖人なのかなぁ、神裂とか鳴護みたいな)

上条(ま、もうちょっと常識を分かってくれれば、良い友達になれると)

グリッ

男C「両手を上に上げろ」

上条「そんな気はしてたっ!何かイベント起きると思ってた!」

上条「背後から背中にゴリゴリと硬いものが。うんまぁ慣れてますけどね!」

上条「サイフは後ろのポケットん中だよチクショーっ!」

男D「早くしろ」

上条(強盗じゃないのか?って事はどっかの誰かの関係者)

上条(手洗い場の鏡で映ってる姿は普通の人っぽい……銃は持ってないか、普通は)

上条「……いっそ強盗の方がどんだけ気が楽だったか……!」

男C「そのまま両手を後ろへ回せ。携帯は預かる――リュックもだ」

上条「借り物だから、ちょっと拙いっていうか」

男D「寄越せっ!」

上条「……知らないぞ、俺は」

男C「よし、そのままだ。動くなよ?」

上条(拘束する訳じゃないし、何がしたいんだこいつら?)

男D「武器は……持ってないな」 ポンポン

上条「普通は持ってないだろ。つーか何で俺?俺なんかしたっけ?」

男C「黙ってろ。こっちのは――」

上条「おい止めろっ!?それは開けちゃダメだって!」

男C「なんだと?やっぱり武器が――」

バシュッ!ガリガリガリガリッ!

男D「え?」

男C「う、ぁぁぁぁぁぁぁっ」

上条「言わんこっちゃねぇな!……うっわグロッ!?」

上条(円周のリュックから手を離した男、その右手は手首から先がない)

上条(噛みきられたような、腕の腱とか血管とかが飛び出て、床に血溜まりを作っている)

上条「あぁもうっ動くんじゃねぇ!」

男B「お前も動くな!」

上条「言ってる場合じゃねぇよ!応急処置しないと出血多量でショック死すんぞ!」

男C「……」 グラッ

上条「あぁもうっ意識が朦朧としてる!銃を置いて縛るもの寄越せ!」 パキィィンッ

男D「に、逃げる気だな!?お前がすればいいだろう!」

上条「誰かが腕を押さえてないといけないんだよ!早くしろ!」

男D「べ、ベルトで良いか?」

上条「あぁ!腕に巻いて……そうだ。そのまま、棒か何か間に挟んでグルグル締めるんだ」

男D「組織が壊死するんじゃ……?」

上条「出血多量で死なせたいのかよ!?」

男D「わかった……」 ギュッ

上条「後は救急車を呼んで、腕も拾っとけ。出来れば氷詰めたビニール袋か何かを貰って来ないと」

男D「待ってろ!直ぐ持ってくる」

上条「すまん。その前にちょっといいか?」

男D「なんだ?」

上条「お前も――眠ってろっ!」 バキッ

男D「ぐぉっ!?」 パキィィンッ

パタリ

上条「……よし、と。あーもーどうしてこんな惨状になった……」

上条「あのまま後ろから撃たれるわりはマシ……と、思うようにしたい、うん」

上条「……」

上条「この血みどろリュック、持ってかないとダメか……?」

――同時刻 フードコート

ダダダダダダダダダッ

一方通行「あァ鬱陶しい」 ガッ

 腕を一振りして斥力を生み出し、軽く吹っ飛ばす。

男G・H・I・J「!?」

 ベクトルを操作された風が銃を持った者を中心に吹き荒ぶ。
 近くにあったベンチを巻き込みながら、やや大雑把に男達を壁へ叩きつけた。

一方通行「……飽きた、つーか食傷気味っつーかなァ」

一方通行「中距離から豆鉄砲撃ってたって、俺を倒せる訳ァねェだろボケ!」

男G「ヒ、ヒイィッ!?

一方通行(さっきはクソ木原に不意を突かれて焦っちまったが、いざ能力を使えばどうって事ァねェ)

一方通行(てっきり煙幕でも張って近づいて来ンのかと思えば、距離取ってサブマシンガンで牽制)

一方通行(つかコイツら本当に猟犬部隊なのか?服は一般人そのままだし、武装も銃だけ)

一方通行(木原の野郎ならもっとえげつねェ――そう、俺が『殺さなくてはいけない』ようなシチュへ追い込む筈だなァ?)

一方通行(つーか訓練された連中の『凄み』も感じねェ。油断させるにしたって、雑すぎる)

一方通行(膨大な演算量の相手には、息を吐かせないラッシュで追い込むのか基本だろォ)

一方通行「……」

一方通行(――今もだ)

一方通行(ってェ事を考えてる隙に、敵が弛緩した瞬間を狙うのがセオリーの筈なンだが)

一方通行(それすらもしねェって怠慢にも程があンだろ)

 『木原』と名乗ったにしては脅威度が低い。以前は死ぬよりも悲惨な所まで追い詰められたのに。
 何かが、おかしい。『木原』とはこんなものではない。

一方通行(しねェ、のか?)

一方通行(……いや、『出来ねェ』ンじゃねェのか?)

一方通行(俺の『反射』をぶち破れるンだったら、人混みに紛れて奇襲すりゃいい)

 数撃てば当たる、ではないが。反射出来るだろうと高をくくっている相手に、初撃で致命傷を与えるのが最善だ。
 もしも作戦を立てる側であるなら、躊躇わずそうする。

一方通行(だってのにソレをしないってェのは――)

 どうしてこんな回りくどい方法を取ったのか。それはつまり。

一方通行「……クソが!最初から『あのガキ一人しか反射を貫通出来ない』のかよォ!?」

一方通行(クソみてェなこいつらは全部囮!木原っぽい何ンかもフェイク!)

一方通行(俺に一撃入れるためだけ、たったそれだけのためにこしらえた舞台、っつー事かァ!)

 ショーウィンドゥに傷口を映せば、周囲が異様に黒く変色し、組織がズタズタになってきていた。
 痛覚を遮断し、血流を抑えていたから気づけなかった。

一方通行(毒かよォ!また古典的な!)

一方通行(痺れがねェって事は消化毒……と、何か良く分からない添加物が入ってンな。あァ面倒臭ェ)

一方通行(全てが『後ろから俺を刺して毒を打ち込むため』の芝居……ってェなら、ヤバい毒なんだよなァ、当然)

一方通行(能力を使えば異物も簡単に排出出来るが、バッテリーを喰う)

一方通行(……つってもしない訳にはいかねェ……あァなンかクラクラしやがる)

一方通行(節約すりゃ20分。今から追い掛けて間に合うもンかァ?……って)

一方通行「眠ってろ」 グギィッ

男H「……んがっ!?」

 這いずって逃げようとした男に一撃。ズボンからこぼれ落ちた携帯を手に取る。

一方通行(通信機通信機っと……最近はスマフォでやりとりしてンのかよ。ハッキングされンだろォに)

一方通行(……あァご丁寧に。デパートのマップと全員の位置情報がリアルで流れてンのな)

 今居る場所には『G・H・I・J』のアルファベット。他にも幾つかの記号と名前が動いている。

一方通行(さっき逃げてったガキは……)

 『木原円周』。地図の大半を占める英字の中、日本語は異彩を放っていた。

一方通行(木原……まァこいつでアタリだろォな)

一方通行(コイツを――『反射』を貫通出来る人間をどォにかしねェと、いつまで下らねェ騒ぎに巻き込まれンだよなァ)

 まだ意識のある男達を蹴り飛ばし、一方通行は円周への追撃に向かう。

 だが、しかし。彼は気づかない。
 一方通行に注入されたものが、物理的な毒だけではないという事に。

一方通行「……だよなァ。俺ァ降りかかる火の粉を払うンだ。こいつァ正当防衛だしィ?」

 それが自分の――少なくとも、数時間前まで持っていなかった理屈である事に。
 木原数多と再会した際、植え込まれた『悪意』である事に。

一方通行(誰だってそォだ。大切なもンとそうじゃねェもン天秤にかけて――)

 毒は汚染する。思考を侵し判断を鈍らせ、麻痺させていく。

一方通行(――どっち選ぶか考えて生きてンだ。だから――)

 毒は融かす。嘗て決別した筈の『境』を軽々と乗り越えさせる。

一方通行「――ぶっ殺しても『仕方がない』よなァ……?」

 彼は、気づかない。

――同時刻 WC

シェリー「クローン、だぁ……?」

男の声『そうそう。髪の一本、血液の一滴さえあれば、同じ人間を造れるってぇ技術だ』

男の声『そいつでエリスを生き返らせるって話だ』

シェリー「……ハッ、アハハハハハハハハハハハハッ!」

 見当違いな言葉に笑いが漏れる。

男の声『んだよ、笑ってんじゃねーよ』

シェリー「20年前だぞ?エリスが居なくなったのは!」

男の声『だから?』

シェリー「あの子の細胞が残ってる訳ねぇわよ!墓でも暴くつもりか!」

男の声『「回収」しといたんだよ。あん時、俺がな』

男の声『血溜まりん中からフラスコでこっそりとな?』

男の声『……ま、生憎見つかっちまって、顔の皮剥がされた訳だが、無駄にはならなかった』

シェリー「……それは、エリスじゃない」

シェリー「あの子はもう、ずっとずっと昔に死んだのよ!帰ってくる訳がないの!」

シェリー「幾らどれだけ外見を似せようとしたって!魂の宿らない肉体は人なんじゃねぇっ!」

 それはいつだったろうか。シェリー本人が人ならざる存在へ向けた言葉。
 ゴーレムの『エリス』が彼でないのを分かっていたからこそ。人でない彼女が人として生きているのを羨んだ。

 結果、風霧を否定しようとしたのに、彼女の友達によって阻まれた。
 そう、今の立場と同じように。

男の声『じゃあお前はどうしたいんだ、シェリー=クロムウェル?』

男の声『お前はカバラに手を染め、仮初めの土塊を造り出している……俺は知ってんだよ』

シェリー「……やめろ」

男の声『こないだの襲撃の際、監視システムがテメェの台詞も拾ってんだ。確かゴーレムの名前は』

シェリー「やめろ!言うんじゃねぇっ!」

男の声『エリス、だよなぁ?』

 男の言葉は核心を突く。どれだけ言われても気にしていなければ揺るがない――逆に、図星であれば、些細な言葉でも動揺してしまう。

男の声『要はアレだよ、アレ。お前はエリスを自分の手で造り出したいのさ』

エリス「そん、なっ!そんなつもりはっ!」

男の声『イヤイヤ別にいいんじゃねぇか?死んだ知り合いの名前をつけるってぇのも』

男の声『ただ、俺が造る――造ってやるのは、正真正銘エリスの細胞を遣った「ホンモノ」だ』

男の声『お前が望むんだったら9歳でも30歳のエリスでもいいんだぜ?』

エリス「9歳だと……お前まさかっ!?」

男の声『あー、違う違う。別に作成済みって訳じゃねぇよ。学園都市の技術でな、好きな歳に成長させてからのクローンが出来んのよ』

男の声『多少寿命が縮むが、それだってゼロか1かだったら、お前さん1を選ぶよな?』

シェリー「わたし、は」

 エリスの居ない未来に生きる自分。紛いものに名前をつけ、執着を断ち切られないで居る。
 だがもし、今ここで、この男の言葉を受け入れさえすれば。

男の声『大丈夫。生まれたてのガキに教育も要らない。「学習装置(テスタメント)」って機械を使えば、記憶や人格をインストール出来る』

男の声『一般常識と、なんだったらお前の知ってる思い出でもフォーマットすりゃほら!エリスの出来上がりだ!』

男の声『別にバカ正直に「エリスです」って言う必要はねぇし、俺が学園側の戸籍でも用意してやっから、後は好きにすればいい』

男の声『そっちでも、なんつったか?ネセサリウスでも、ガキ拾ってきて兵隊にすんだろ?』

男の声『生物学的には人間だし、能力開発してないから理論上は魔術だって使えるぜ』

男の声『さてクロムウェル。どうするんだよ、つーか時間があまり無くてなぁ。出来れば直ぐにでも――』

シェリー「何を、させたいんだ?どうして私なのよ?」

 一度気づいてしまえば遅い。『自分を納得させる理由』探しに、気がついたら台詞が口を滑っていた。

男の声『そりゃお前が適任だからだよ?場所的にも、人間関係的にも』

シェリー「……どうせ汚れ仕事なんだろ」

男の声『いや、そうでもねぇよ。ただの家出娘をふん捕まえて欲しいってだけ』

シェリー「やっぱりあのガキ――円周、か」

男の声『そう「木原」円周だ』

男の声『あのガキ任務失敗してから逃げ回ってやがってなぁ。何度か捕まえようとしたんだが』

シェリー「小娘一人にゴーレム使えって言うのか!?」

男の声『相性の問題だ。あいつは見た目通りのガキじゃない。対人戦闘のスペシャリストのデータを参考にして動けるんだわ』

男の声『アレだな。ハリウッド映画の主役みてぇな感じか』

男の声『テロリストと人質と一緒にビルに閉じ込められても、半日ありゃ皆殺しにして生還する』

シェリー「……冴えないおっさん刑事かよ」

男の声『人質ごと全員だ。ある意味「木原」を越えてやがるんだよ』

男の声『まぁサイボークか強化服辺りを大量投下すれば確保出来るが、そう派手にもいかねぇし』

男の声『どうしたもんかと考えていたら、どっかで見た顔が来たもんだ。俺ってラッキーだよな?』

シェリー「捕まえた後、どうするつもり?」

男の声『「学習装置」を使って人格を書き換える。危なっかしくってしょうがねぇんだよ』

シェリー「んな下らねぇ事に私が付き合うとでも――」

男の声『いや、するね?お前はするしかねぇんだよ』

男の声『なんせ「それ」はエリスの人格をインストールさせるために必要な実験だからな』

シェリー「腐れ外道が……!」

男の声『しつこいようだが、これは「取引」だ。だから俺はあくまでも真摯に情報を流してんだよ』

男の声『今だって嘘を吐いて適当に誤魔化そうと思えば出来た。でも、しなかった』

シェリー「……」

 壊れる程強く握りしめた携帯電話。会話と会話の間に出来る無音部分に奇妙なノイズが走るようになっていた。
 少しだけ耳を話せば……どこか遠くから、微かな振動と共に爆発音が響く。

男の声『聞こえるか、クロムウェル?建物の中が随分騒がしいが、こいつぁ円周を確保するために部隊が動いている音だ』

男の声『本来ならばあいつはさっさと逃げ出している筈なのに、今も留まってる』

男の声『さぁて、「誰」を心配してんのかね?』

シェリー「あの子を、殺すのかよっ!?」

 たったの半日、いやたったの数時間しか付き合っていない相手。
 だが、無邪気に――少なくとも外見は――懐いてくれた人間を差し出せと言われて、納得は出来ない。

男の声『あいつは生きてて良い人格じゃねぇ、だが殺すのは忍びない――いや、勿体ない』

男の声『だからわざわざ人格の初期化で済ませよう、って話だぜ』

シェリー「テメェらは、狂ってる!」

 今も昔も。そう――戦わなければいけない相手は、魔術ではなく科学ではないのか?
 禁忌を軽々と踏み越え、生命の再設計や死んだ人間を破片から造り直してしまうような相手を。

男の声『あ、悪い。時間も興味がねぇから、その話はメールにでも頼むぜ』

男の声『その気があるんだったら、適当に確保しといてくれや。ウチの若ぇのが引き取りに行っからよ』

男の声『円周の居場所はそのケータイ使えば分かる』

シェリー「――待て!一つだけ聞かせろ!」

男の声『おう』

シェリー「あなたが取引を裏切らない保障は?」

 ダメだと心の中で誰かが叫んでいる。
 それはきっと遠い昔に遊んだ少年の声と似ているのだけれど。

 シェリーの心には、もう届かない。

男の声『信じろ、ってぇのが無理な話かも知れねぇな。俺だって昔は真っ当な研究者だった訳さ』

男の声『ぶっちゃけエリスのクローンだって造ろうとも思えば、機会も理由もあった――が、どうしても出来なかった』

 真摯そうに聞こえる言葉。だがその全ては嘘で塗り固められている。
 もう少し精神的に余裕があれば――いや、エリスの事でさえなければ、言葉の端々に潜む欺瞞を嗅ぎ取り、『取引』自体が嘘だと看過していただろう。

シェリー「……」

男の声『そこへ来て逃げ出した円周と、いつの間にか宜しくやってるお前の姿だ。俺ぁ思ったね。「こりゃ良いタイミングだ」って』

シェリー「……偶然、なのにか」

男の声『偶然は重なれば必然となる。そういう事だぜ』

 偶然は重なる事自体偶然ではある――が。
 全てが予め仕組まれた出来事であるならば、それは只の作為だ。
 誰かが、何かのために用意した舞台。

男の声『大丈夫だ。俺ぁお前の信念を踏みにじるつもりはねぇよ』

男の声『きちんと成功させる――今度こそな』

 言葉の毒、長い間他人を拒絶し続けた魔術師にも染み渡る。
 乾いた布が水をよく吸うように。瀕死の古木が根から吸い上げるように。

 『それが有毒だと分かっていても、飲まなければいけない』から。

 長い間惰性で生き続けてきたシェリーにとって、その取引はあまりにも魅力的で。

 喉が渇いた弟は泉の水を、飲む――そして人は獣になった。

※今週の投下は以上で最後となります。読んで下さった方に感謝を
一話4万字(原稿用紙100枚)で落ち着かせようと思ったんですが、今日投下する分を加えると既に5万字越えるんだどうしよう (´・ω・`)

来週が第一話終り+銀魂短編予定で……この調子で終わるんでしょうか

…気がつけばまた孤独な一人旅…

>>1は色々と博識だな…何者だ?

>>89
人生初の支援絵だと思った私の喜びを返せ ><

>>160
私と上司の正体(職業)はSS速報さんを卒業する際に明かすかも?まぁ年内ぐらいはお世話になるつもりですが

――和食レストラン

バードウェイ「……ふむ。中々悪くないな。たまには戯れに子供用の食い物を口にするのもいい」 パクパク

上条「……あのー、バードウェイ?」

バードウェイ「なんだ。遅かったじゃないか」

上条「ちょっと聞きたいんですけど」

バードウェイ「あんみつパフェセットが二つあるのは変じゃないからな。片方はお前用だ。感謝したまえ」

バードウェイ「まぁ冷めてしまっては元も子もないので、私が食べざるを得なかったのだが」

上条「冷めねぇもの元々氷菓だし。じゃなくって俺が聞きたいのは」

バードウェイ「あぁお前も食べたいのか?一人で注文するのも心苦しいだろうから、私も付き合ってやろう」

上条「そうじゃねぇよっ!?つーか気に入ったんだなあんみつパフェセット!俺も大好きだけどもだ!」

上条「レディースデイで女性デザート半額になるのに、男の割引はされなくて不公平とか感じてるけども!」

上条「それよっか気になるのは店内に倒れている男達だよ!」

バードウェイ「しつこいナンパでぶっ飛ばした。反省はしていないし、するつもりもない」

上条「嘘吐くなっ!幾ら色々終わってる性癖が集まる学園都市でも、お前がピンポイントで狙われるかっ!」

バードウェイ「――ほぅ?」

上条「ヒイィッ!?」

バードウェイ「貴様まだ上下関係について学習出来んようだなぁ……?」

バードウェイ「嫌いじゃない。嫌いじゃないぞ、そういう反抗的な奴は!なにせ」

バードウェイ「屈服させるまでの時間が!屈辱に打ち震えながら頭を下げる姿を見るのも――また、愛おしい……!」

上条「嘘嘘嘘っ!?バードウェイさんってばまるでさる王室の方みたいに髪綺麗だわ肌白いわでっ、男選り取り見取りですよねっ!」

上条「あー4年後が楽しみだなーっ!俺4年経ったら実家へ帰ってパン屋を継いであの子にプロポーズした後で水門を見に行くんだっ!」

バードウェイ「露骨な世辞はマイナス評価だが……まぁ貴様の『下』のラインが16だと知れたのは収穫だな」

上条「しまった……!?これは敵の魔術師の攻撃だ!」

バードウェイ「その『魔術師から攻撃を受けているゴッコ』も、そろそろイタイ中二病とさして大差ないと気づけ」

上条「そうじゃねぇ!そうじゃなくてこの惨状はどういう事だって聞いてんだよ!?」

バードウェイ「お前と同じだな。トイレへ立って暫くすると、店の客たちが示し合わせたように『バードウェイだな』と」

バードウェイ「面倒なので無視していたら、私のパフェを倒したので少々礼儀を教えてやっただけだよ」

上条「……妙に幸せそうな顔で気絶してやがるけど」

バードウェイ「『殺すな』と小娘に言ってある手前、この程度で殺してやる義理はないさ――と、すまないが右手で触ってくれ」

上条「ん、あぁ?」 ナデナデ

バードウェイ「あ、こらっ、髪が乱れるっ」

上条「さっき言ったけどもお前の髪ってすげー綺麗な。金髪ってのはもっと薄っぽい感じかなって思ってたけど」

上条「金の糸で編んでる織物みたいな感じ?実物を見ると違うなー、と」

バードウェイ「そ、そうか?ふふんっ、もっとやっていいぞ」

上条「地毛、なんだよな」 ナデナデ

バードウェイ「当たり前だ。誰が染めるか」

上条「テレビで見るのはキラキラしたイメージがあったから」 ナデナデ

バードウェイ「あれはボトロドブロンド――脱色した奴だな。連中のは干し藁色をしているだろ?」

バードウェイ「私のは天然のゴールデンブロンド。稀少ではあるな」

上条「その割に俺の知り合いは金髪率が高い気も……?」ナデナデ

バードウェイ「偶然だな。『取り敢えず金髪にしときゃガイジンっぽく見えんだろ!』という意味はないぞ、多分」

バードウェイ「――って違うだろ!?どうしてこの流れでお前が私の頭を撫ぜる必要性があるっ!?」

バードウェイ「しかも貴様相当手慣れているな!ちょっと気持ちよかったぞ!」

上条「そうなのか?俺の憶えてる範囲じゃ、お前ぐらいしか髪触った事無いけど」

バードウェイ「いいからっほら!こいつらの肩でも頭でも叩いてやれ!」

上条「へーい」 ポンッ

パキイィィンッ

上条「あ」

バードウェイ「やはり何らかの魔術か能力の影響下にあったのか」

上条「なんで分かった?」

バードウェイ「それは移動しながら話そうか。面倒はごめんだからな」

上条「面倒って?」

バードウェイ「端的に言えば、この施設で銃撃事件が起きていると言う事だ」

上条「大事だな!……いやでも、『面倒』って事は、つまり」

バードウェイ「……ちっ、お前は妙な所で聡いんだったか」

上条「巻き込まれたのはどっちだよ!?」

バードウェイ「座れ、取り敢えず落ち着け」

上条「けどな!」

バードウェイ「だから、座れ、と言っている」

上条「……っ」

バードウェイ「情報が錯綜している以上、下手に動くのは得策ではない。ではまず」

バードウェイ「今し方襲ってきたこいつらの携帯電話だ」 ゴトッ

上条「英字とここいらの地図、か?」

バードウェイ「トイレに二人、こっちに四人。寝ている馬鹿どもと同じ数だな」

バードウェイ「で、マップとリストを操作してみると」

上条「『木原円周』?」

バードウェイ「他にもこいつら――工作員もどきが動いていたり、生命反応が低下している所が集中していたりする」

バードウェイ「……うん?ここのトイレの奴も少し下がってるようだが」

上条「あ!そういや俺救急車呼んだんだった!魔法で傷の応急処置って出来ないのか!?」

バードウェイ「ステータスからすれば必要ないさ。それよりもフードコートの方が瀕死になっているようだが」

バードウェイ「通信機能もついているが、着いたり消えたりの繰り返しだ。男達の会話を聞く分であれば一方通行、木原円周が襲撃対象」

バードウェイ「代わりに何故かクロムウェルには手を出すな、だそうだ」

上条「……どういう事だ?まさかシェリーが敵側だって話かよ!?」

バードウェイ「とも考えられるし、魔術師サイドだから手を出“せ”ないかも知れない」

バードウェイ「そもそもこの情報が正しいとは限らない」

上条「はぁ?」

バードウェイ「見せパンってあるだろ?アレと一緒でわざと私達に通信機を奪わせ、攪乱させる」

バードウェイ「実は今、シェリーが連中に囲まれてる真っ最中かもな?」

上条「……誰が敵で誰が味方だ……?クソッ!」

上条「情報が少なすぎる!慌てて駆けつけてみれば、敵に囲まれていたんじゃ意味が無い!」

バードウェイ「以上が現在ある情報だ。さ、納得した所で帰るとしようか」

上条「え?」

バードウェイ「夕飯はソバが食べたい。カツオとソイソースの風味は絶品だと思うのだよ」

上条「あぁどうも……?じゃなくってだ!円周はどうする!?シェリー居るんだろ!」

バードウェイ「何故?どうして私が助けてやらねばならん?」

バードウェイ「『明け色の陽射し』にどう利害が絡む?」

バードウェイ「むしろここで揉め事を起こした方が、ゲストとしての立場が悪くなると思うがね」

上条「そりゃ……そうかも知れないけどさ!」

上条「目の前で困ってる人が居てだ!手を伸ばせる位置にいれば、誰だって助けようとするじゃねぇか!」

バードウェイ「本当にそうか?この事件、杜撰が過ぎるぞ」

バードウェイ「見ての通り工作員もどきはやっつけ。恐らくは何らかの魔術か異能の支配を受けた一般人だ」

バードウェイ「しかもご丁寧にお互いの位置情報がバレッバレの携帯電話を、さも奪ってくれと言わんばかりに持って居た」

バードウェイ「トドメはあからさまに怪しい『木原円周』の表示だ。これが罠でなくてなんだと言うんだ、えぇ?」

バードウェイ「『明け色の陽射し』のボスとしては、むやみやたらに関わる事は出来ない」

上条「……分かった。それじゃ、俺一人で何とかしてみるよ」

バードウェイ「……」

上条「一方通行が居るんだったら、合流すれば何とかなるだろ」

バードウェイ「……あのなぁ新入り。私はダメだ、と言っている」

バードウェイ「『結社としてのメリットがなければ』と」

上条「ん、分かるよ?だから俺が――」

バードウェイ「そうじゃない!……あぁもう面倒臭いっ!」

上条「……いやあの、時間無いからさっさと行きたいんですけど」

バードウェイ「お前は誰だ?」

上条「うん?」

バードウェイ「見習いとは言え、貴様も『明け色の陽射し』の一員じゃなかったのか?」

バードウェイ「ならお前が首を突っ込んだ以上、結社全員の問題となる。違うか?」

上条「……バードウェイ、お前!」

バードウェイ「あぁ。まぁ、その、なんだ。つきあってやらんでも無い」

上条「……面倒くさっ!?」

バードウェイ「ここは感謝の台詞だろうが!『私はお優しいボスを持てて幸運でした!一生忠誠を誓います!』って言う所だろ!」

上条「知らねぇよなんだそのローカルルール!?七並べにジョーカー入れるようなもんじゃねぇか!?」

バードウェイ「え、入れるだろ?」

上条「いや、入れないだろ――じゃ、ねぇっ!」

上条「あぁもう行くぞ!ってか最初っからンなやりとり必要ないだろ!」

バードウェイ「私だってしたくてした訳では無い!どっかの馬鹿者が初日に『俺は俺の流儀を通すぞ。絶対に(ドャァ)』したから!」

バードウェイ「てっきり『仲良くするためには形から。この流れだと助けに行くもんだ』ぐらいは言うと思っていたんだよ!」

上条「お前なぁ……」

バードウェイ「――ま、冗談はともかくとしてだ」

バードウェイ「この騒動、確実に『もう一枚何か』が絡んでいる。まるで薄気味悪いストーカーに観察されてるような」

上条「マークじゃね?」

バードウェイ「気がつくと机の上へ『親愛なるボスへ(はぁと)』って書かれたメッセージカートがあった気分だ」

上条「あ、俺犯人わかっちゃった。マークで始まり、スペースで終わる人の犯行だと思うよ?」

バードウェイ「ここで考えられるのは『暗殺』だな」

バードウェイ「素人の兵隊を用意しておいて、その隙に死角から思いっきりぶん殴る」

バードウェイ「対象はお前に私、一方通行、クロムウェル……誰一人死んでも、碌な結果にだけはならん」

上条「……分かってるさ。円周含めて、誰一人として死なせるつもりはねぇよ!」

バードウェイ「それで良い。お前は、それ“が”良い」

 ぐぃ、と上条は胸倉を掴まれ、顔が近づけられる……ただし身長差のせいで、大分前屈みになるが。

バードウェイ「世界にはいつだって人が死んでいるのに、それすら理解してない奴は多い」

バードウェイ「戦争になる前は『何故、戦争は無くならないのか?』と悩み」

バードウェイ「誰かが戦争を終わらせた後で『戦争しかなかったのか?』と言うような馬鹿者どもだ」

バードウェイ「誰もしないのであれば『お前』がしろ!武器と智恵は我々がくれてやる!」

バードウェイ「猟犬であり、魔弾であり、貴様は悪を撃つ剣であればいい」

バードウェイ「タクトは私が振ろう。お前は喉元に喰らいつくだけでいい」

バードウェイ「考えずに、走れ!行き先は私が誘導してやる!」

上条「……ありがとう、バードウェイ――じゃなかった、ボス」

バードウェイ「……ま、バードウェイで構わんさ。敬意のない敬称など豚の餌にでもくれてやれ」

上条「いや、敬意とか尊敬が無いって訳じゃないんだぜ?その歳でよく考えてるなーとか?」

上条「でもお前はちっさいから、守らなきゃなっても思うんだよ」

バードウェイ「生意気言うな馬鹿者。私を守るなんざ100年早いよ」

上条「ガキの台詞じゃねぇぞ、それ」

バードウェイ「ではいざ行かん、私達の戦場へ――店員、勘定を頼む」

店員「……」 ジーッ

バードウェイ「なんだ?」

店員「ナイスツンデレ」 グッ

バードウェイ「煩いぞ外野!後日この店には文章で抗議するからな!」

――ショッピングモール

 シェリー=クロムウェルの探す相手は意外とあっさり見つかった。
 高給文房具屋の一画、キャンバスやパン――昔は消しゴム代わりに使っていた、今では絶対に使わない――などの画材が並ぶ区画に木原円周はいた。

 GPS情報そのままだった上、目印もあった。一言で表すならば『食い散らかし』であろうか。
 必ずと言って良い程、異様な光景をまざまざと見せつけられる。
 どうせ木原数多の兵士であろうから同情はない。側に転がっている銃器から察するに、自業自得とはいえ、だ。

シェリー(これ、本当にあのガキ一人でやった事なのかよ?)

 間接が逆方向にねじ曲げられていたり、ホチキスの芯が動脈に刺さっていたり、画用紙で手首を切断されていた。
 中にはシャープペンで壁に貼り付けになっている男達。シュールな絵は猫と鼠が追いかけっこするアニメを思い出させる。

 学園都市製の『能力』であれば、身体能力の強化、物体の硬度を上げる、高速で投擲する、のどれかだが。
 一人に能力は一つだけであり、一人の人間が巻き起こした惨状では有り得ない。

 反対に魔術で再現するのは不可能ではない。ただ非効率であるいうだけの話。
 人を害する魔術なり霊装なりを用意する魔術師は多い。また一つだけではなく、ネタバレや無効化されてしまった場合に備えて、複数個用意するのも常識だ。

 しかし『メイン』――得意とする術式は大抵一つに絞られる。

 戦場へ行くに当たってライフル銃を何本も持つ兵士は居ない。それが行動の妨げになるだけでなく、あれもこれもと手広くスキルを学んでも同時に使える訳では無いからだ。
 なので一番己に適した武器を『メイン』として精度や威力を上げるに尽力するだろう。

 その挙動一つ一つが並の魔術師を遥かに超える『聖人』や、どこぞの魔術結社のボスでもない限りは。

 そう言った意味で言えば、目の前に広がる『これ』はとても効率的とは言えない。
 一つの武器に拘る訳でもなく、まるで『たまたま目の前にあった道具を使ってみました』と言う感じですらある。

シェリー(そういやガキが『スプリーキラー』つってたっけか?)

 短時間で多くの人間を殺傷した者へ送られる蔑称。中には栄誉に思う者もいるだろうが、思うが思うまいが狂ってはいる事実に違いはない。
 『お前が気に入らないから』と言う理由だけで、多くを死へと追いやった存在――の、筈なのだが。

円周「……」

 血溜まりの中、膝を抱えて座り込む姿はひどく弱々しく――年相応の少女にしか見えない。

シェリー「……よぉ」

円周「シェリー、ちゃん……?」

 最悪不意打ちで一撃入れてでも、と思っていただけに、素直な反応は意外だった。

シェリー「あークソ。女の子がンな顔するんじゃねわよ。血でベットベトじゃねぇか」

円周「むー、大変だったんだからねー――むぎゅ、あにするお?」

 持っていたハンカチで顔の返り血を拭いてやる。全身血塗れの相手にどれだけ意味があるのは不明だ。

シェリー「つーかね、何やってんのよ?これ全部お前が?」

円周「んー……多分?」

シェリー「多分て。憶えてねぇのかよ」

円周「帰ってきてからちょっと記憶が飛ぶんだよねぇ。鞠亜ちゃんに殴られたせいかも?」

シェリー「お前相手に一撃入れた相手ってどんなゴリラだ、そいつ」

円周「メイド学校の子だよ?ま、次は勝てばいっかー」

 くすくすと笑う。邪気の全くない笑顔で。
 しかしここまで来る途中にあった肉塊寸前の人間達を思えば、人格に問題があるとしか思わずにいられない。

シェリー「ここで話すのもアレだし、少し場所を変えるか」

円周「あっちの方にベンチがあったよ」

シェリー「ん」

 改めて円周という少女を観察してみてつくづく思った事だが、これは人間じゃない。『肉と血の詰まった容器』だ。
 動かしているのは何か別の、悪意とは次元の違う『欲』か?
 根底にあるのは何かの依存心?それとも機械でも入っているのか?

シェリー(……ふん)

円周「どうしたのシェリーちゃん?気分悪いんじゃ?」

シェリー「悪いのは今も悪りぃけど……なぁ、聞いていいか?」

円周「当麻お兄ちゃんだよっ!あ、でもシェリーちゃんもっ」

シェリー「好きな奴じゃねーよ!そうじゃないの、お前の事よ」

シェリー「お前の歳でこれだけボコスカ殺しまくってだ。良心は痛まねぇのかって話だよ」

円周「殺してないよ?」

シェリー「今日だけじゃない。バゲージでも派手にやったって聞いたぞ」

円周「んー……お仕事だしなぁ。趣味だって思われるのは心外かも」

シェリー「仕事ぉ?」

円周「スプリーキラーって呼ばれる人達は、大体『好きでやっちゃった』んだよね?」

シェリー「じゃ誰も殺したいとは思わなかったって言うのかよ?」

円周「あ、違う違う。そうじゃないよ、出発点から、違う」

円周「わたしが誰かを傷つけたのは『木原』だからだよ?『木原である事を求められたから、そうしているだけ』なんだよ」

シェリー「はぁ?」

円周「人を作っているモノってなんだと思う?」

シェリー「神様とか、そういうこっちゃねぇよな?」

円周「うん。構成しているって意味で」

シェリー「私が言うのもアレだけど、物質的肉体は必須だよな」

円周「だねぇ。それはどっちのサイドでも外せないと思うよ」

シェリー「出発点はどうしたって『そこ』だからな。グノーシスみたいに、肉体を否定する所からは始まらない」

円周「グノーシス主義は原始十字教が、男性にしか許されていなかった裏返しだと思うけど?過剰な女性賛歌は地母神信仰の影響かも」

シェリー「……こっちサイドまでイケる口かよ」

円周「お互いのラインを踏み越えないようにしているけど、史実を研究しない訳にはいかないしねー」

円周「えっとね……うん、人は肉体を持って色々なモノを詰めているんだよね?」

円周「信念だったり、記憶だったり、お仕事だったり、趣味だったり、家族だったり。大事なモノを内側に置いている」

シェリー「……あぁ、何となく分かる気がするわ」

円周「人生の優先度、とか重要度みたいな感じでねっ」

円周「でも逆にほぼ――中身が『からっぽ』であっても、その人は人間なのかなって」

シェリー「それは――どう、だろうな」

円周「わたしには足りないんだって。本来入っているべき感情とか、『木原』としてあるべきものが」

シェリー「『木原』が足りない?」

円周「例えばねー、うん。このお洋服、ステキでしょーっ?」

 返り血に染まった服をつまみ上げ、笑う。とてもじゃないが、愛想笑いすら出来る状況ではない。
 何かが欠損している。

円周「けど、このお洋服は店員さんに選んで貰っただけの、『この年頃の女の子ならこういう服を着る』から」

円周「だから、選んだんだよ?」

 ひゅう、と言う風の音が聞こえる。
 人工的な風以外は絶対に入らない、ほぼ密閉させた施設であるというのに。

 その風はとても、心を冷やす。

シェリー「……待て待て。お前確か、甘いもの好きだって言ってたよな?」

円周「『女の子は誰だって甘い物が好き』なんでしょ?」

 予想以上に……壊れている。いや、自我が無いと言うべきだろうか?

 シェリーは戦闘で一線に立つのは稀であるが、それ相応の修羅場は見てきた。
 明らかに気を病んだとしか思えない霊装や、新大陸で興った蕃神系の魔術にも触れ、狂気へそれなりに耐性は持っている。つもりではいた。

 だが目の前にある『これ』はなんだ?
 物が人の姿をした何か、に思える。

 また風が、ひゅう、と鳴く。心がささくれ立つ。

シェリー「……じゃあお前は。命令されたから、バゲージへ行った、ってだけの事なのか?」

 それはシェリーが使っているゴーレムと何が違う?
 軍隊が持つ鋼の兵器と比べてすら遜色ない。

円周「そうだねっ!興味もあったけど、一番の動機はそれかなー?」

円周「木原円周、っていう『筺(ハコ)』を満たすために頑張ってる、みたいな?」

シェリー「ふざけるな!そんな簡単に人が人である資格を失う訳が無ぇだろ!」

シェリー「ヒトの体に魂さえ入っていれば!それは立派な人間に決まってる!」

 何を口走っているのか、自分でももう分からない。
 この少女が希薄であればある程、シェリー自身の罪悪感は薄れるというのに。

シェリー「だ、大体お前は!テメェはあのガキが好きだって言ってたじゃねぇか!?」

シェリー「ほら、お前もきちんとした好き嫌いがあ――」

円周「――ね、シェリーちゃん?わたし、知ってるんだよぉ」

円周「シェリーお姉ちゃんもわたしと同じ、『足りない』んでしょ?」

円周「『本来ある筈のパーツを、永遠に無くしちゃった』んだよね?」

 ひゅう。

円周「ね、言ったよね?わたしの『筺』は全てが空っぽだから、こんなに」

 あぁそうか。この風の音は――。

 ひゅうひゅうと。隙間風が。

シェリー(私の『筺』の隙間から、吹く音かぁ……)

円周「わたしね、当麻お兄ちゃんもシェリーお姉ちゃんもだいっっっっ好きだよっ!」

円周「二人とも、同じ!わたしと同じで!」

円周「埋まらない『筺』を、満たされない『筺』を抱えてる――」

円周「――お揃いだよね、ねっ?」

 どこからか隙間風が吹く。

――ショッピングモール

 携帯電話の表示通り進んで行けば、一方通行を待っていたのは散発的な襲撃とゴミのような時間稼ぎだった。
 逃げ惑う客に紛れて攻撃する訳でもなく、ただ一定の距離へ入れば攻撃を受ける。
 非常に退屈なルーチンだ、と彼は考える。

一方通行(よっぽどこの『毒』に自信があンだろォな。大した意味は無かったンだが)

 体を蝕んでいた毒は既に体外へと排出されている。
 ただ、気づくまでの僅かな時間――毒の『溶媒』に使われた物質を、少し吸収してしまってはいた。

一方通行(つっても能力落ちる訳じゃねェし?むしろ――)

ト゚ォォォォォォォンッ!!!

男T「――!?

 悲鳴すらも巻き込んで襲いかかってきた猟犬部隊を沈黙させた。

一方通行(ちぃと制御が暴走気味になってンだが……まァ、いいか)

一方通行(この『普通』を守るためだったらなンだってする。俺ァ、そう決めたンだ……!)

 時間の無駄とも取れる不毛な――文字通り『一方通行』なやりとりは暫くすれば収まる。

 『木原円周』と地図上に表記されたポイントへ来てみれば。

一方通行(誰だ?あの女?)

 先程背後から刺した少女、木原円周の他にもう一人。
 ぼさぼさの金髪と真新しいスーツ――所々泥や血がついているが――を着た、褐色の肌の女。

一方通行(黄泉川と同じぐれェか……つかバレンシ○カ、30万近けェスーツじゃねェか)

一方通行(アンチスキルってェ訳がねェよな。どう考えてもクソ木原の関係者だろォが)

一方通行(一応声だけはかけっかァ)

一方通行「オイ!そのガキこっちに渡せ!」

シェリー「……アンタが……」

シェリー(木原が言ってた『若いの』はコイツか……白いな)

一方通行「早くしろ!こっちだってヒマじゃねェンだよ!」

シェリー(この、『薄い』ガキを渡すだけでエリスは――エリスの『外側』をした子は帰ってくる!)

シェリー(もう会えないと諦めていたエリスが!冷たい墓の下で眠ってるエリスと!)

シェリー(一緒に居てあげられるんだ!)

シェリー「……」

シェリー(けど……本当にそれで良いのか?)

 人が人であるのは。獣との一線を画すものがあるとすれば。
 それはきっと『信念』だろう。

シェリー(こんな単純に、『割り切って』しまう私が)

 人としての尊厳を失ってしまえば、それも魂の有無以前に。
 『筺』としての役割は無くなってしまう。

シェリー(人の形をした命あるモノをあっさり交換してしまえる私が)

 “人”でなくなった私が――。

シェリー(あの子の側にいても――)

一方通行「……どォすンだァ?俺ァここでやったって構わねェンだがよ」

一方通行(毒は排出したのに能力が不安定になってやがる。さっさとぶっ殺して帰ンのが得策だァな)

円周「……ね、シェリーお姉ちゃん」

シェリー「……そう呼ぶなっつったろ」

円周「わたしね、分かってるんだよ」

円周「シェリーお姉ちゃんは私を捕まえに来たんだよね?」

円周「そうじゃなきゃ『わたしなんかに興味なんて無い』んだから」

シェリー「アンタ……知ってた、のかよ?」

円周「当ぉ然だよぅ!だってだーい好きなシェリーちゃんの事だもん」

円周「『こんな時シェリー=クロムウェルはこうする』って、私“が”観察したんだから」

円周「……いいよ、わたしの部品であなたの『筺』が埋まるんだったら」

円周「うん、うんっそうだよねっ!こんな時はこうするんだよねっ!

円周「『上条』ならきっとそうするって!」

シェリー「……っ!?」

一方通行「……お別れは済ンだかァ?カミサマに祈る準備はオーケェ?」

一方通行「これ以上時間稼ぎされっと、オマエごとぶち抜くンだが」

円周「待っててくれてありがとうっ……えっと?」

一方通行「名乗る意味が分からねェ。どうせオマエにはもォ関係無ェだろ」

円周「白モヤシ?」

一方通行「……なンで俺の周りは口が悪りィ奴しかいねェンだ。それとも俺も知らねェ間に祭りでも起きてンのかァ?」

円周「人の恨みを買った憶えはないのー?」

一方通行「心当たりが有りすぎて分からねェ……ンじゃついてこい。ちっと場所変えンぞ」

一方通行(ライオン女の前は……流石になァ?)

一方通行(まァそれでいい。人は結局『割り切る』もンだからな)

シェリー「――てよ」

一方通行「あァ?」

シェリー「待てって言ったんだよ!」

円周「シェリーお姉ちゃん……?」

シェリー「……そう私を呼ぶなっつってんだろ。テメェは後でオシオキだ」

一方通行「……まァ?こンな展開になるたァ、思ってたンですけどォ」

一方通行「一応聞いてやンよ――どォしたババア?今頃ンなって情でも湧いたのかァ?」

シェリー「『割り切れ』ねぇんだよ、こっちは」

シェリー「どうやったって人の姿して人の格好して人の感情持ってやがんだよっ!だったら『それ』はもう人と何が違うのよっ!?」

シェリー「ねぇ、そうでしょ!?そう簡単に『割り切って』良い訳がないっ!」

一方通行「……そりゃァ、オマエがそう感じてるだけだよ。良いも悪いもねェさ」

一方通行「けどよォ、つか。この世の中『割り切る』のが筋じゃねェのか」

一方通行「……世の中にゃァなァ、人の外ヅラとDNA持って生まれてきた奴が居てだ」

一方通行「そいつらを雑草引き抜くよォにぶっ殺してたクソもいるってェ話なンだが。まァ?」

 自嘲する。もう、繰り返さないように。
 あんな悲劇はもう二度とごめんだ、と。

一方通行「でも、どこかで!絶対に『割り切らなきゃ』いけねェンだよ!」

一方通行「大事なもン守りてェんだったら!二択を迫られて切り捨てる展開だってあるンじゃねェのか!あァ!?」

シェリー「ふざけんな!信念なんぞ人の数だけ、それこそ一人にだって二個三個あるってもんだろ!?」

シェリー「その一つ一つに優先順位つけるぐらいだったら――最初から、語るな!」

 一度は一つの信念のために、捨てる決意をした。
 入れ物としての“ヒト”を捨て、畜生以下に堕ちる覚悟すらした。

 だが、しかし。

シェリー「約束を破るぐらいなら最初からしなければいい!」

 シェリー=クロムウェルを突き動かすのは『信念』。
 雑多な、しかも矛盾したチグハグなものであって、根底にある越えてはいけない一線がある。

シェリー「信念を守れないのなら最初から信念など持つな!」

シェリー「アンタはあれだよ。木原の犬だか息子だか知らねぇが、あのバカにそっくりだ!」

シェリー「テメェが――テメェらがやってんのは『楽』な方向へ進んでるだけだ」

シェリー「アレじゃねぇのかしら?二択だの割り切るだのって、それ。それの事なんだけと」

 矛盾してようがしていまいが、どれ一つの信念も疎かにしない。
 それが彼女を獣から掬い上げた。

シェリー「最初っから守るつもりもねぇんだろ、なぁ?」

 ぴくり、と色素の薄い一方通行の顔に青筋が浮く。

一方通行「……まァ、アレだ。血管ぶち切れそうになる楽しいお喋りは、ここまでにしようぜ」

シェリー「そうね。私も面倒になってきたわ」

一方通行「ってェ割には楽しそうだなァ、オマエェはよォ?」

シェリー「うふ、うふうふふふふふふっ!そりゃ楽しいですもの!とてもとぉぉっても!」

シェリー「暗い昏い闇い冥い墓場の筺にあなたの亡骸を埋めて、お花を飾るわ――」

シェリー「――テメェの脳漿ぶちまけてえぇっ!紅い鬼灯でデコレートしてやるよ!」

シェリー「来い、エリス!!!」

 地響きとともに土塊の巨人が立ち上がる。

一方通行「あァ……まァ、いいよなァ?『ここまで付き合ってやった』ンだからよォ」

 カチ、と電極の出力を上げる。

一方通行「CryCryウルセェンだよクソババア!泣くンだったらオマエの弱さに歯痒ンで泣け!」

 ドォォゥンッ!!!

 仕掛けたのはどちらが先か。
 ゴーレムが拳を振り、一方通行が掌を突き出す。僅かそれだけの攻防で辺りが砂煙で覆われる。

 が、『砂煙』である以上、どちらが摩耗しているのは一目瞭然な訳で。

一方通行「だよなァ。こォなるよなァ?」

 一方通行の突き出した腕はそのまま。ゴーレムは右腕の肘辺りまで崩れ落ちている。
 どちらかと言えば長期戦が得意な魔術師。片や制限時間付きではあるが、学園都市最強。

 瞬発力に於いて勝てる物ではない。

 が、一方通行は心の中で僅かに首を傾げる。

一方通行(一撃でぶち壊して、後ろのハバアごと潰すつもりだったンだがなァ?妙な力、つーか魔術師相手だとちっと面倒臭ェ)

一方通行(魔術を使わせられる、なンてェとンでも体験は一回キリだ。これ以上付き合うつもりもねェが)

 ドォン、と人型の土塊が床に手をつく。手応えがなさ過ぎる。

一方通行「オイオイもうオシマイってェ訳じゃねェだろう?俺をこれ以上怒らせンじゃねェぞ、あァ!?」

 実際の所、これだけの大質量を人型にして操る能力であれば、最低でもレベル3。継続時間によってはレベル4であってもおかしくはない。

 相手が悪すぎる――学園都市の人間であればそう諦観してしまう事であろう。
 そう、それが『只の能力者でしかない』のであれば。

シェリー「エリスが泣いている。可哀想なエリスが」

シェリー「でももう大丈夫。ウスノロの腕は私が造り直してやる、何度だって」

 ゴーレムが右手を引き上げると、床に着いていた場所に大きな穴が空いていた。
 周囲のコンクリートや鉄筋、果ては電気ケーブルも巻き込んで、新しい『腕』の素材とした。

シェリー「うふ、うふふふふふふっ!素敵、ね?素敵よね?」

シェリー「こぉんな鉄と石と錆で囲まれた場所なんざ、無尽蔵にエリスの素材が揃ってるって訳だ!」

シェリー「そしてぇ、それだけじゃねぇんだよ!」

 ズゥンッ!

 突然天井が爆発する――の、ではない。
 瞬間五芒星が浮かび上がり、大量の鉄筋やコンクリート片が爆砕四散した。

 一方通行の真上で。

シェリー「あっはははははははははははははっ!どぉしたどした能力者ぁっ!?まっさか、不意打ち喰らって死んだなんざ笑っちまうよなぁ!」

 念のため、万が一に備えて木原が裏切った場合に仕込んでいた魔法陣。
 本来であればゴーレムを作成するための物だが、既に喚んでいる場合には土や鉄を弾けさせる凶器となる。

 まともな能力者であれば不意を突かれ、能力の演算も出来ずに瓦礫の下敷きになったであろう。
 そう『まとも』な相手であれば。

 グォン!!!

 墓場から死者が手を突き上げるように、極々何の躊躇もなく一方通行は周囲のゴミを吹き飛ばす。
 辺り一面にガラスやコンクリートが突き刺さり、もしも買い物客や店員達が非難していなければ大惨事が起きただろう。

一方通行「あァ面倒臭ェ!土遊びはっかしてンじゃねェぞ!」

 再生する土人形。
 何度再生するとしても限界はあるだろうし、周囲のコンクリートを吹き飛ばしてしまえば物理的に不可能だ。
 しかしそんな事をやっていれば余裕で時間切れになる上、やったとしても『じゃ、次はこいつだ!』と新しい何かを仕掛けてくる可能性もある。

一方通行(物理的に、つったって物理法則もガン無視決め込ンでる連中だしなァ)

 本体を止めてさっさと木原円周を殺そう、そう結論づけで一方通行は手近にあった鉄筋を手に取る――。

 グシャッ。

一方通行「……あァ?」

 掴んだ筈の鉄筋はボロボロと握り潰してしまった。力の加減、普段の力では到底持てないため、多少ベクトルを弄ったが。
 二度三度と他も試してみるが結果は同様。手に取るどころか崩してしまう。

シェリー「どうした白モヤシ?あんまり怖くてパントマイムしてんのかよ」

一方通行「ウルセェ更年期障害」

シェリー「やかましい若白髪。ケツからションベン漏れてるわよ」

 安い挑発……だが、何か背中に違和感を覚える。
 反射的に傷口にやった手を見てみれば――血が。

一方通行「……はァ?」

シェリー「じゃねぇよテメェは。最初っから瀕死だったんじゃねぇか」

 ベクトル操作で出血や組織の壊死も抑えたのに、床には少なくない量の赤黒い血溜まりを作ってしまっていた。
 この傷は――。

一方通行「……そォか。あァ成程なァ。そかそか、そォいう事か」

一方通行「俺が『これ』に巻き込まれたのは、俺への嫌がらせじゃねェのか」

一方通行「だからっつって今更勧誘でもねェし、背後からぶっ刺すのも違う!」

一方通行「毒もメインなンかじゃねェ!全て!全てがダミーだったンだよ!」

シェリー「……なぁ、そろそろ殺していいか?ダメだっつってもスクラップにするけどよぉ!」

 『エリス』はゆっくりと腕を持ち上げる。
 一方通行は動かない――動けない。

一方通行「『体晶』か!そいつを使って能力暴走させンのが――」

シェリー「こいつがテメェの『割り切った』結果だ。土塊を抱いて……おやみなさい」

 身動きの取れない一方通行に土砂が降り注ぐ。
 体積からすれば精々数トン。常人からすれば良くて即死、悪ければ苦しみながら、死ぬ。

 普段通りのコンディションであれば、楽に跳ね返せる量。脅威ですらない。

 だが能力が暴走している彼にとっては絶望的な状況だ。

 銃弾であれば運動エネルギーを跳ね返せるし、向きを変える――最悪、急所から外すだけでもいい。

 しかし『大量の土塊』であれば、その重量と勢いを転換させる力が必要とする。
 先頭の土砂を反射したとしても、勢いが弱ければ次々と降り注ぐ土砂に呑まれるだけだ。

一方通行(……クソが!俺ァこンな所で終わる訳にはいかねェンだよ!!!)

 生存本能からか、はたまた誰かにかけられたリミッターでもあるのか。
 一方通行が最後の力を振り絞り、あの禍々しい『翼』を出そうとした瞬間。

 声が、音が、姿が。

 パキイィィンッ……!!!

 襲いかかる土砂を霞の如く打ち消し、周囲一帯を無へと還元する『翼』の発現を止めた人物は。
 いつものように、笑う。

上条「どうも。昨日から『明け色の陽射し』団に入った上条当麻です」

――ショッピングモール 震源地

シェリー「……テメェ、今更何しに来やがった!?」

上条「俺の方でも襲撃とか色々。ここに直行って訳じゃないしな」

バードウェイ「打ち払ったのは私なんだが、と私はキメ顔でそう言った」

上条「マシンガン持ってる相手に無理ですからっ!?バードウェイさんちょっと黙ってて!」

シェリー「そいつぁ何なんだよおぉっ?どうしてこのガキを殺そうとした?大体なんでテメェらが庇う必要がある!?」

シェリー「答えろよおぉっ!!!」

上条「……悪い。バードウェイ?」

バードウェイ「行ってこい。多分『それ』を一番望んでいるのは、クロムウェル自身だ」

バードウェイ「お前が『助けて下さいお優しいバードウェイ様』と懇願するまでは手を出さんさ」

上条「あぁ任せろ!……待って?それなんかおかしくない?」

シェリー「コントやってんじゃねぇわよっ!――エリス!」

 腕を無くしたゴーレムは周囲から補充を終えると、再び手を振り上げる。

シェリー「答えろよおっ!ソイツは、ソイツは私の敵だぞ!?」

上条「友達だからだ」

シェリー「なん、だと……?」

上条「俺はこいつが友達だと思ってる。だから助けるんだ」

シェリー「は、あはははははははっ!そぉかぁ、お前も『木原』だったのかよ!」

シェリー「学園都市はクソだと思ってたけど、ここまでとは流石にねぇ?」

上条「違うんだ!聞いてくれシェリー!一方通行はお前の言っている『木原』なんかじゃない!」

シェリー「だとしてもだ!ソイツは、只『何も入ってない』って理由だけで!」

シェリー「このガキを殺そうとしたんだぞ!」

上条「そう、だな。それはそうかも知れない。でもっ!」

上条「俺は止めるさ。なんか聞き分けの良い事言って、『割り切る』ような真似をしたら殴ってでも」

上条「悪い方向に行こうとしたら、止める。それが友達だって俺は思ってるからな」

シェリー「……優しいのねぇ、あなた」

上条「でもな、シェリー。シェリー=クロムウェル!」

上条「俺はお前だって友達だと思っている!だから!」

上条「目の前でバカやらしそうになってるお前を!俺は絶対に止めるんだよっ!」

シェリー「つまんねぇジョークだなぁ――潰せよ」

 ズゥンッ!

シェリー「ほらほら、どーしたぁ?ビビって動けねぇのかァ?」

シェリー「そこを早く退かないと、ミンチにしちゃうわよ?ね、ねぇっ?」

上条「退かない。俺は友達が傷つけられるのを黙って見てるつもりはないし!」

上条「友達が意味もなく傷つけるようとするのも、当然止める!」

シェリー「……そうかよ。じゃ死ねば?」

 再度ゴーレムは両手を高々と上げ、拳を組む――では、なく。
 二つの拳を融合させて一つの大きな石塊を作る。

シェリー「だよなぁ。そうだ!最初っからこうしちまえば良かったんだよ!」

シェリー「魔術だの科学だのウルセェんだ!全部ぶっ潰しちまえば関係ない!」

シェリー「みんなみぃんな壊れればいい!壊しちまうのがいいっ!」

 どおおおおぉぉぉぉぉぉんっ!!!

 魔術の言葉を切っ掛けに、ゴーレムの重い拳が振り下ろされた。
 辺り一面に飛び散る瓦礫と砂埃。

バードウェイ「……やれやれ」

 一方通行の治療を続けていたバードウェイは、手を休めずに周囲へ結界を張る。

バードウェイ「仮にも重傷人が居るんだ。もっとスマートにやれないもんかね」

一方通行「……随分と信用してンじゃねェか」

バードウェイ「あの馬鹿者が『手を出すな』と言った以上、私はそうするだけだ」

バードウェイ「『信頼』とは特に理解に苦しむ単語ではなかった筈だが、ボーヤにはまだ早すぎたかな?」

一方通行「……いやァ別に?その割には腕プルプルしてますけどォ?」

一方通行「なンかァ?今にも吹っ飛ばしてェンじゃ――」

バードウェイ「あぁすまん」

一方通行「――っ!?オマ、傷口に手ェ入っ――!?」

バードウェイ「ついでに盲腸もとっといてやろう。麻酔無しで」

 砂煙が晴れる。そこにあった姿は。

 石巨人が拳を振り落とした、その、僅か数センチ前。
 多少は風圧や四散した瓦礫で傷ついたものの、然程変わらない位置に上条が立っている。

シェリー「……どうしてよ……?」

シェリー「なんて『右手』を使わねぇんだよ!?テメェみたいなゴミグスが当たったら死ぬじゃねぇかよ!?」

シェリー「お前も!お前も私を残して死ぬつもりだったのか!?」

上条「……それは、分からないよ」

上条「もしかしたら車の事故とか、信じられない病気になって俺は――つーか、誰だって死ぬもんだ。そりゃ絶対に」

上条「それが友達であっても――いや友達だったら特に、そうそう簡単に『先に死なない』なんて不義理な約束は出来ないんだよ」

上条「お前はエリスを失った。エリスは命を失った。二人は逢う事は、もうない」

上条「けど!だからっつって全部が全部無くなった訳じゃねぇだろ!?」

上条「エリスがお前に残したものはある!思い出とか!信念だとか!」

上条「今のお前にはエリスから貰ったものが、いっぱい詰まってんじゃねぇのかよ!」

シェリー「私の、筺の中に……?」

上条「そうだよ!お前は二度と悲劇が起きないように学園都市まで乗り込んだよな?」

上条「俺は絶対に認めないけど、それだって立派な信念じゃねぇのかよ!」

シェリー「煩いうるさいウルサイっ!!!」

シェリー「分かってるわよ!私だってあの子からいっぱい貰ってた事ぐらい!」

上条「昔を大事にするのは大切な事だし!誰もお前を責めたりはしない!

シェリー「テメェにエリスの何が分かるんだって言うんだ!?」

上条「分かるさ!当たり前だろうが!」

上条「エリスは――少なくとも、そんな顔するお前の顔なんて見たくなかった筈だ!」

上条「いつまでも自分を責めて戒めて欲しくなんて、ある訳がねぇだろうがよっ!」

上条「なぁ、シェリー?今、今のお前を見て」

上条「お前の中のエリスは笑ってくれてんのか……?」

シェリー「ちく、しょう……チクショウっ!!!」

 ゴーレムがその両手で上条を捕まえる。

シェリー「どう、したの?逃げねぇのかよおおっ!」

シェリー「消しゃあいいだろうが、その『右手』で!」

上条「……さっきの一撃もだけど、俺は右手を使うつもりはない」

シェリー「あぁ?」

上条「俺の『友達』がだ。大事にしている親友の名前をつけた相手を――」

上条「――例えそれが魂のないゴーレムであっても、友達の親友をぶち殺すような真似は――」

上条「――絶対に、しない」

 ズゥン、と。

 思わずバードウェイが霊装を構え、一方通行がなけなしの力で鉄筋を投げようとした程の大きな振動は。

シェリー「……厄介だな、テメェは」

 ゴーレム=エリスが、また只の石と土へ還る音であった。

――ボロボロになったショッピングモール

上条「さて、と。これでどうにか解決した……のか?」

上条「まさかとは思うけど、この惨状俺達が支払うって事はないよね?ねっ!?」

バードウェイ「アンチスキルも来ているだろうし、『男達を追い払った』私達には関係無い話だな」

上条「よかったー……てか一方通行大丈夫か?」

一方通行「……ウルセェ」

バードウェイ「出血多量と能力が少し暴走気味」

バードウェイ「あとお前が金の心配を優先したから、ご機嫌斜めだそうだ」

一方通行「……オマエ、憶えとけよォ……?」

バードウェイ「そうだなぁ。体晶――毒抜きと傷の手当てをしてやったんだし、私は憶えておいても吝かではないよ?」

一方通行「……おい、三下ァ」

上条「うん?」

一方通行「相変わらずそっちの女といい、こっちのまな板といい、いい趣味してやがンなァ?」

上条「友達だからなっ!?そういう基準だったらお前だって大変な事になってるだろ!」

シェリー「……?」

バードウェイ「お前も頭以外にイタイ所はないか?そこ以外のケガは治してやろう」

シェリー「ウルセェわよクソチビ……あの子が、いねぇんだよ」

上条「あ、そっか。円周も追われてたんだっけ」

円周「おっにーーちゃーーーーんっ!!!」 ガバッ

上条「うおぅっ!?」

円周「怖かったーーーっ!白くてカキクケコ言う変態が、『さァ俺の巨人さァンは大きいよォ?』って!」

上条「言ってないよね?途切れ途切れに通信聞いてたけど、そんな下りはなかったよね?」

一方通行「つーかなァ。そっちのライオン女もそォなンだがよォ」

シェリー「何がなんだったんだ?誰が敵で誰が味方なのか、そもそも白いのが私達を攻撃したのは何故?」

一方通行「木原のクソ野郎が噛んでる、ってェ事以外知らねェぞ」

バードウェイ「そうだな。疑問を残したまま探偵は退場しないのがセオリーではある」

バードウェイ「推理小説でそれをしてしまえば非難囂々だが。ではこう考えられるのでないだろうか?」

上条「もったいつけるなよ」

バードウェイ「『事件はまだ終わってない』、と」

 グゥン、と何の脈絡もなく上条当麻の体が真横に吹っ飛ばされる。
 タイムラグを置いて、タァーン!と銃声が全員に耳へ届いた。

一方通行「狙撃か!?――おいっ!」

シェリー「ちぃっ!」

 倒れたまま動かない上条へ近寄る一方通行、ゴーレムを喚んで即席の壁にしようとするシェリー。

 魔術結社のボスは慌てず騒がす、携帯電話を耳へと当てる。

バードウェイ「マーク」

マーク『確保しました、ボス。予想通りです』

バードウェイ「ご苦労。通報したら先に帰っていて構わんぞ」

マーク『はい。ではボスもお気をつけて』

 切れた電話の代わりにどこからか杖を取り出し、クルクルと回す。

バードウェイ「さて、では謎解きを始めようか――と、その前に一方通行、寝ているバカを起こせ」

一方通行「狙撃されたンだぞ!?軽傷で済む訳がねェ……事も、ねェな」

 派手に吹っ飛んで擦り傷は負ったものの。それ以外に傷らしい傷は見当たらない。
 頭が一番のけぞったのだから、確実に弾丸は脳漿を撒き散らしていてもおかしくないのに。

上条「……いっつーーーーーーーーーーーーーっ!?あれ?今の何?バードウェイが何かしたの!?」

バードウェイ「お前はタロットを預けただろう?それのお陰だよ」

シェリー「魔術は効かないんじゃなかったのかよ」

バードウェイ「そいつ自身にかけず、『場』にかけた。良かったな、成功して」

上条「あのー、してなかったらどういう事に……?」

バードウェイ「――さて、ではここで私達の敵に初めて対峙する訳だが――」

上条「聞けよ人の話っ!?――って、お前」

 バードウェイが差している相手は――木原。
 円周という名を持つ――『木原』だった。

一方通行「ほォらみろ。やっぱり俺が正しいンじゃねェか!」

シェリー「だってソイツは――違うだろ!何でこんな回りくどい方法を取る必要があったの!?」

シェリー「自分自身を囮にするなんて正気じゃ――ない、のか……?」

バードウェイ「勘違いして貰っては困る。一方通行、君は正しいが間違っている」

バードウェイ「クロムウェル。君もその認識は正しいが、違う」

上条「どういう、事だよ?」

バードウェイ「私達が戦っていた相手、お前がその右手でぶっ殺さなければいけない相手。その名前は――」

バードウェイ「――『木原数多』だ」

 ジジッ、ザザザザザザザァッ。

 円周の首から下げているスマートフォン。そのグラフが激しく波打つ。
 初めは不規則に、間隔もバラバラ波の大きさもデタラメに。

 けれど徐々に整い。それは自然と聞き慣れたリズムへと移行する。

 どくん、どくん、どくん、どくん……。

 脈打つ鼓動は心臓の波長に酷似していた。

円周「『どぉしたもんだかなぁ。最後の最後までひっくり返されるたぁ思ってなかったんだが』」

一方通行「オマエえェェェェェェェェェェェェっ!」

バードウェイ「よせよせ。それは『木原数多』の本体ではないよ」

バードウェイ「スマートフォンを使ってハッキングでもしているのだろう、というかそれ以外にない訳だが」

円周「『普通こぉいうのはよぉ、崖の上ってぇ相場は決まってんじゃねぇのか?』」

バードウェイ「最近はそうでもない。探偵が昏倒するのが流行りだね」

円周「『あれって傷害及び不正薬物の使用だと思うんがだねぇ。公文書と私文書の偽造、元の年齢ならば実刑も喰らうか』」

バードウェイ「夢のない事を言うもんじゃない。ここはペラペラ犯人が語るのを期待して居るんだが、任せてもいいかね?」

円周「『面倒だ。テメェの推論から話せよ。違ってたら嘲笑ってやっから』」

バードウェイ「ふむ。では……まず小娘の記憶が曖昧になっている点に気づいた」

バードウェイ「私の愛称を『ニア』にしたかと思えば『レヴィ』に再設定」

バードウェイ「しかも『木原数多』を呼ぶ際に『おじさん』と『おじちゃん』の二通りあった。どう考えてもおかしいだろう?」

円周「『円周が表に出ている間は、俺も認識が曖昧だから――ってのは嘘で、テメェ自身をおじちゃん呼ばわりはしたくねぇだろ』」

バードウェイ「不自然と言えば朝の浴室もそうだな?恐らく能力が解かれるのを恐れた君は、『幻想殺し』の右手へ手錠をかけた」

円周「『表には出てねぇがな。そういう風に誘導したのは間違いねぇよ』」

バードウェイ「買い物に誘導したのも君か?」

円周「『選択肢は用意したし、誘わなければ介入してたが。誘ったのは円周の意思だな。俺がするまでも無かった』」

バードウェイ「そっちの白いのに吹き込んだのは……そうだな、『俺は今新しいブロジェクトをしている』とかそんなんだろ?」

バードウェイ「適度に挑発を入れて決裂させた後、背後から反射貫通でブスリとして撤退」

バードウェイ「赤くなった白モヤシは前後関係考えず、自分の能力を過信して追い掛けるに決まってるよ、なぁ?」

一方通行「ウルセェよ、まな板ァ」

バードウェイ「クロムウェルには、まぁクローンか。エリス=クローン」

バードウェイ「無抵抗の円周を確保させて心を揺らして、最後には保護するように仕向ける」

バードウェイ「そしてあからさまに怪しい堅気じゃない白いのが来て、二人は衝突する」

バードウェイ「――というのが推理だが、どうだろう?」

円周「『ほぼ正解。だがクロムウェルに関しちゃ俺が喋った訳じゃねぇ』」

円周「『別にこいつがフツーに身の上話でもすりゃ、似たようなその女も同情する筈だってな?』」

シェリー「テメェは……!」

バードウェイ「落ち着け。というより怒っても無駄だ」

円周「『だなぁ。鉛筆を立てりゃ自発的対称性の破れで倒れるぐらい当たり前だからなぁ』」

円周「『予想された結果が出た所で、はぁそうですか、って感じだし』」

バードウェイ「ともあれ舞台はそうして整えられた。クロムウェルと一方通行が対峙する」

バードウェイ「クロムウェルが勝てばそれで良し。一方通行も能力が暴走し、普段よりも電極の消耗が激しいハンディもある」

バードウェイ「地形相性がいいクロムウェルであれば、万が一勝つかも知れない」

円周「『いや、確率は20%ぐらいだと踏んでたぜ?』」

バードウェイ「逆に一方通行が勝てばそれでもいい」

バードウェイ「『どちらが勝っても魔術サイドと科学サイドの仲を断ち切れる』からな?」

円周「『そうかぁ?お嬢ちゃんが考えている程、単純な図式じゃねぇと思うぜ?』」

バードウェイ「一方通行を殺されれば学園都市は激怒するだろうが、クロムウェルはそうでもない。そうだな、その通りだ」

シェリー「小物扱いされんのも腹が立つんだがな」

バードウェイ「そう思った君は『更にプランを深くする』事にした」

バードウェイ「わざと私達へ情報を流し、二人の決闘を止めさせたんだよ」

バードウェイ「事前にウチの連中、しかも隠密行動に長けた奴を行動不能にして目と耳を塞ぎ」

バードウェイ「そっちは大方円周のリュックに仕込んだ、各種発信機で正確に把握していたと」

円周「『決闘なんてタチのいいもんじゃねぇと思うがね』」

バードウェイ「そして。私達が弛緩した一瞬。その隙を突いて――」

バードウェイ「『幻想殺しを暗殺。その疑いを両サイドへ向けさせる』」

バードウェイ「それがこの計画の全貌だな?」

円周「『だなぁ。もう少し「インストール」した連中が使えれば良かったんだが、今んとこ完全に再現出来るのはこいつしかいねぇしな』」

円周「『砂皿のシェアスキルは見ての通りだが、まだまだ精度が足りねぇ』」

円周「『……ま、お嬢ちゃんの推論でほぼ正解だな』」

円周「『クロムウェルが円周を殺せば良し、逆に一方通行に殺されれば良し』」

円周「『相打ちになれば最高だ!だが『幻想殺し』が居りゃあ防いじまう可能性もある』」

円周「『だったら防がしゃあいい。計画に首突っ込んできそうなら、最初から組み込めばいい』」

円周「『頭でも吹っ飛ばせばどこの勢力が殺ったかでグダグダになる――筈、だっんだがよぉ』」

円周「『予想外だったのはテメェだな、お嬢ちゃん』」

円周「『魔術を使って防いだ上、こっちのスナイパー即確保たぁ。全部読まれてたってぇことだわな』」

バードウェイ「私の専門は『勉強の出来るバカがしでかす騒動』だ。政治なり経済なり戦争なり」

バードウェイ「従って君がどう動くか、どんな狙いを定めてくるのか」

バードウェイ「フルオープンのインディアンポーカーよりも単純で、手に取るように読めてしまうのだよ」

円周「『……へぇ?』」

バードウェイ「プライドを傷つけられたかね、木原数多。だが私は何度でも言おう」

バードウェイ「君のような単純な相手を読むのは簡単だ。私の相手にすらならない」

バードウェイ「退屈だ。あぁ暇を持て余す」

バードウェイ「私はコイン一発をBETして、カード一枚しか貰っていないんだがね?せめて五枚は貰わないとゲームが出来ない」

バードウェイ「なぁ、あまり意地悪をしないで私も遊びに加えてくれたまえよ」

バードウェイ「こんなのはお遊びなんだろう?この程度の愚図な計画はジョークなのだろう?」

バードウェイ「たかが12歳の小娘に、学園都市屈指の研究者が読み負けるなんて事は無いよなぁ?うん?」

円周「『……名乗りな、お嬢ちゃん。テメェは今日この日から俺の敵になった!』」

バードウェイ「『明け色の陽射し』のレイヴィニア=バードウェイ」

バードウェイ「木原数多。君が何をしようと何を企んでいようと私に関係ないし、結社に影響しなければ見逃してやったのだが――」

バードウェイ「――貴様は我々に手を出した。その代償は払って貰う」

円周「『どうやって?お前は俺を知らない。俺がどこにいるのかも、どんな姿で居るのかも分からねぇよなぁ!』」

円周「『俺の銃はいつでもテメェを狙える!だがテメェの武器は俺に届かない!』」

円周「『貧相なフリントロック振り回しても!何十発何発撃とうとも掠りもしねぇんだよバカが!』」

円周「『ヒャッハァ!精々震えて眠るんだなお嬢ちゃん!』」

円周「『次に心安らかに眠れんのは、弾丸がテメェめり込んで棺桶の中だからなァっ!』」

バードウェイ「新入り。やれ」

上条「あぁ――木原数多」

円周「『よう「幻想殺し」。テメェの嘘はかーちゃんに許して貰えたのか?』

上条「お前は、俺の友達をたくさん傷つけたお前だけはっ!」

上条「――お前のそのふざけた幻想は、俺が必ずぶっ殺す!」

 パキィィィンッ。

 上条が円周の肩に触れると、スマートフォンに走っていた気味の悪いグラフは消える。
 すぅ、と前のめりに倒れそうになる小さな体を、慌てて抱き留めた。

バードウェイ「……幾ら天才、幾ら能力者と言っても、体にかかる負担は生半可なものではない、か」

 意識を失っているが、呼吸の間隔は穏やかで苦しそうな気配もない。

シェリー「……多分、そいつは知ってたんだ」

上条「何を?」

シェリー「テメェの頭の中に『もう一人』居るって事に。だからあんな」

シェリー「自分を差し出すような、真似を……しやがった!」

上条「……これからはもう、そんな事をしないように」

上条「そんな悲しい事をさせないように、俺達が」

シェリー「……分かってるわよ。言われなくたって」

打ち止め『おーーいっ!ウチの白い人見ませんでしたかーーってミサカはミサカは喚んでみたり』

番外個体『ヘーーーーイッ!生きてるかーーいっ!出来ればくたばってればいいぜ!』

上条「……愛されてんなぁ、お前」

一方通行「……ウルセェよ。その気遣いが、ウルセェ」

バードウェイ「と言うかネットワークがあるんだから、生死確認は簡単じゃないのか……あぁ!」

バードウェイ「良しお前ら、デカいのが来たら全員で『ツンデレ乙』と行こうじゃないか!」

上条「最後の最後で一番やる気になってるっ!?」

シェリー「ツンデレ……?確か凸凹コンビのちっこいのから借りた本に書いてあったような?」

上条「イギリスのシスターさんにまで侵食が始まっているのかっ!?」

――バッドエンド1

 新郎控え室。

上条「……」 ソワソワ

浜面「いやぁ大将。そんなにキョドっても仕方がないと思うぜ」

浜面「つーかあと少しだし覚悟を決めろって」

上条「いやでも俺が結婚なんて――結婚?俺が?」

浜面「今更何言ってんだ。緊張で眠れないのは分かるけどさぁ」

上条「……マジで?ドッキリじゃなくて?」

浜面「大将が覚悟決めたときは大変だったろ?下手すれば第三次世界大戦よりもシビアな戦いが!」

上条「いやあの、そんなスケールなの?みんなゴシップ好きなんか」

浜面「オティヌスが世界壊して大変だったじゃん」

上条「あれも実は俺のせいだったのか!?力は凄いけどやってる事はしょうもないな!」

浜面「出番を貰えなかった俺の立場は?ねぇ、どうして俺出たり出なかったりするの?」

上条「登場人物の多さじゃねぇかな?ほら、お前って『アイテム』の子達とハッピーセット状態だし?」

浜面「未だにっ!中々滝壺と二人っきりになれない俺の気持ちがっ!」

上条「マジで?……いやまぁ、分かるけどさ。そっちのドロドロとした人間関係も」

浜面「最近第三位が出張ると麦野の機嫌がディ・モールトっ!!!」

上条「俺はイタリア語知らないけど、多分それ違うよ?間違っている感じがするな?」

浜面「まぁまぁ憶えてないって言うけどよ。相手の子も可愛いし、別にいいんじゃね?」

上条「また人生の一大事に軽いなっ!?他人事かっ!?」

浜面「正直また思い切ったなー、って感じはするけど」

上条「そうなのか?つーか誰か教えてくれよ!」

浜面「でも直ぐ会うんだしさぁ。なんつっても一度選んだ相手じゃん?信じるのは大事だって」

上条「そうか……?あ、そうだ!浜面から見てどんな感じの子だった?」

浜面「可愛い系だな。おっぱい小さいけど」

上条「お前の基準はおっはいか……え、誰だ?小さいつったって、対象絞りきれねぇ」

黒服「新郎様、ご入場の準備を」

上条「マジで!?こんなフワッフワした気分で行くの、俺!?」

浜面「覚悟を決めろよ、上条当麻!」

上条「浜メン……」

浜面「ハマヅラな?ボケばっかだから、大将がボケられなくて寂しいのは分かるけど!」

上条「って言うかこれメイン一人称全員『私』なんだぜ……?始める前にちょっと考えよう?サイコロ振って決めるんじゃなくてだ!」

上条「……分かった。俺、彼女と幸せになるさっ!」

浜面「いよっし!よく言ったぜ!……え?」

上条「『え?』ってなんだ!?『え?』って!?今の俺の台詞の中におかしな所なんざねぇだろうが!?」

浜面「いやぁ……うん、まぁ?」

上条「はっきり言えって!場合によっちゃ逃走も辞さない!」

黒服「ホラ、行くぞ。予約が詰まってんだから!」 ガシッ

上条「離せっ!?話せば分かるからっ!」

黒服「そう言った犬飼は問答無用で暗殺されてんだよ!オイ、浜面そっち持て」

浜面「おぅっ!……なんで呼び捨て?お前初対面だよね?つかモブキャラだよね?」

黒服「煩い浜面。行くぞ」

上条「はーーーなーーーせぇぇーぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

――聖堂

上条「……来ちゃったわー、マジで」

新婦「……」

上条(誰この子?つーか誰?ちっさいし顔見えないし誰か分からない……)

上条(髪はショート……誰だよ、マジで)

上条(背丈も小萌先生……ぐらい?いやでも髪なんて切れるし)

黒服『新郎新婦の入場です!』

新婦「行こう?」

上条「ん、んんっ?そうだな」

上条(俺は腕を出して彼女をエスコートする。チャペル?だかの、戸を開けば)

ミサカ10032「ちっ、来やがったとミサカは舌打ちをします」

ミサカ12121「いやいや、それは良くないですよね、と言いつつも同じく舌打ちをします」

ミサカ13003「ぶってんじゃねぇよって、ミサカはそいつの態度にも舌打ちします」

ミサカ14444「ちっ」

ミサカ14445「ちっ」

ミサカ約一万人『ちっちっちっちっちっちっちっちっちっ……』

上条「ミサカ全員で舌打ちすんなよ!?チッチッチッチッうるせぇっ!千鳥か!」

上条(席の殆どはミサカ達、立ち見もミサカ、あ、写真撮ってるミサカに花つけてるミサカ……いかん、ゲシュタルト崩壊しそう)

上条(知った顔がないかと探してみると――)

上条(こちらを呪い殺しそうな目で見るインデックスと御坂オリジナル)

上条(何故かエロメイドの格好をして、式をぶち壊している神裂と五和。嫌がらせだよな、どう考えても?)

上条(本気で凹んでいるアニェーゼとニコニコ顔の、でも怖いオーラ出しているオルソラ達)

上条(他にはバードウェイとかレッサーとかの魔術結社組……あれ?)

上条(小萌先生も参列席にいる?だったらこの子は誰だよ)

神父「――では新郎、新婦のベールを上げて下さい」

上条「はい。じゃ――」

エリス(新婦)「……うん」

上条「アッ――――――――――――┌(┌^o^)┐―――――――――――――!?」

エリス「どうしたのとーま君?」

上条「エリスじゃん!?男じゃん!?野郎じゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇかっ!?」

上条「何で選んでんだよ、俺!?どこでフラグ管理間違ったの!?」

エリス「とーま君が、僕を選んでくれたときは嬉しかった」

エリス「クローンでも良いって、言ってくれたよねっ!」

上条「それ以前の問題じゃねぇか!?クローンでショタってどんだけ倒錯的だ俺っ!?」

上条「つーかお前も断れよっ!?断りなさいよっ!?」

シェリー「オイコラ上条!」

エリス「シェリーお姉ちゃんっ!」

シェリー「エリスを不幸にしたら承知しねぇからなっ!」

上条「お前も正気なら止めるでしょうがあぁぁぁぁっ!?何『結婚式に送り出す頑固な親父』的な役に入ってんのおおおっ!?」

エリス「とーま君、いっぱい子供を作ろうね?」

上条「出来ないよ!?構造上の問題で俺達どっちもH極だもの!」

エリス「ほら、あそこに僕らの愛の結晶が!」 スッ

上条「え、なに?俺の右手は常識すらも殺しちゃったの?出来れば俺も殺して欲しいんだけど」

エリス二号「フンガー」

上条「テンプレ的なゴーレムじゃん!?生きてないじゃん!?」

エリス「そんなっ!?まるで玉(鋼)のような子だって誉めてくれたのにっ!?」

上条「それは本当に俺なのか?頭が悪いにも程があるよな?」

上条「誰かっ!?誰が助けて――」

声「待ったああぁぁぁぁぁぁっ!」 バーンッ

上条「良かった……助けに来てくれたん」

ステイル(男)「その結婚、僕が預からせて貰うよ!」

上条「こぉぉぉぉろぉぉぉせぇぇぇぇぇよおおおおぉぉっ!一思いに殺しゃあいいじゃねぇぇぇかよぉぉぉぉぉぉっ!?」

 ズドオオォォンッ!!!

ステイル「ぐああああぁぁぁぁぁっ!?」

エリス「誰!?」

一方通行「……よォ」

上条「昔々女疑惑あって神様も否定しなかったけど、おか○っさんに決まって泣いた人が出た人キターーーーーーーーーっ!?」

一方通行「はっはァ!オマエがなんて言おうと、関係ねェンだよ!何故ならァ――」

一方通行「俺の愛は『一方通行』だからなァ!!!」

上条「ドヤ顔で言うような事じゃねぇな!?そんなに目新しいネタでもない!」

フレンダ「『や、やだ!もう俺の右手じゃ殺せない……!』」

滝壺「『そうさぁ、これがぁおれの能力……』」

滝壺「『――愛だっ!!!』」

フレンダ「『レータっ』」

滝壺「『いまずぃんっ!』」(超巻き舌)

フレンダ・滝壺 ヒシィッ!

上条「おいそのバカコンビ。お前ら揃って出る話間違えてるからな?巣へ帰れ帰れ!」

上条「こ、こうなったら――あ、シェリー!」 パシッ

シェリー「な、なによ?」

上条「俺と結婚してくれ!」

シェリー「……はい」

――黄泉川のワゴンの中 夜

シェリー「……?」 ムクッ

シェリー「……夢?」

シェリー(殺伐としたやりとりだったから、凄いアホな夢を見た?)

上条「おー、起きた?」

シェリー「ん、まぁ――あと、どんくらいで着くんだ?」

黄泉川「そうなぁ、30分ぐらいじゃん?先、あんたのホテルに回るじゃんか」

シェリー「……あー、ガキもいるしこいつら先にしてくれないか?」

黄泉川「まぁそんなに離れてないけど、分かったじゃんよ」

シェリー(あぁそうよね。取り調べで遅くなったのか)

シェリー(メシが遅くなって切れまくるバードウェイ、挙動不審なガキ……)

シェリー(二人とも上条の左右で、腕抱えながら寝ちまってる。まぁ?)

上条「……ん?あぁこいつら」

上条「魔術と科学の天才だっつっても、子供だからなぁ」

シェリー「微笑ましくは……ねぇよな」

上条「実態を知ってると、まぁ色々と複雑だけど」

シェリー「ガキは無邪気だ、とは言うが。そりゃあ親の願望かしらね」

シェリー「こうあって欲しい、こうに違いないっていう気持ち」

上条「かも、知れないな」

シェリー「……」

シェリー「なぁ、一つだけ聞かせろ」

上条「あぁ」

シェリー「この世界には手遅れになるもんだってあるわよね」

上条「……うん。それは、ある」

シェリー「例えばお前が私の立場になったとして、お前ならどうする?」

上条「俺は……多分、泣くよ」

上条「お前がやったみたいに八つ当たりするかも知れない」

上条「全部が嫌になってぶち壊そうとするかも?」

シェリー「……」

上条「でもそんな時にはきっと、俺の友達が全力で――あぁいや違うな、そうじゃない」

上条「ここぞどばかりに、日頃の恨みを込めて助走をつけてぶん殴ってくる気がする」

シェリー「……ふふ、何よそれ」

上条「それが友達じゃねぇかな、多分」

シェリー「……そう、なの?」

上条「俺の人生もまぁ、色々あって学園都市まで逃げてきたって感じもするけど」

上条「けどどこへ行ったって、どんな逃げ方をしたって」

上条「俺達は生きていかなきゃいけないんだ。それは絶対に」

上条「シェリー、お前の痛みは分からないけど」

上条「20年以上経って今でも傷が痛いのかも知れないけど」

上条「一緒に、エリスの話をしようぜ」

上条「エリスがどんな風に生きて、どんな風な最後だったのかとか」

上条「無理に笑う必要は無い。でも無理に泣く必要なんかもっと無い」

シェリー「ワケが、分からないわよ」

上条「あー、俺も思ったまま喋ってるだけだから、繋がってない気もするけど」

シェリー「でも、何となく分かるわ。あなたが『私と悩んでくれてる』って事」

上条「……うん」

シェリー「マジな話。私は今もぶっ壊してぇし、ぶっ殺してやりたい連中もいるわ」

シェリー「そう簡単に整理はつかない。一生エリスの事を忘れるつもりもない」

シェリー「だから――エリスの話を聞いてくれないかしら?」

シェリー「あの子がいたって事を。この世界で何をして、どんな事を考えて」

シェリー「私という『筺』の一部になっていったかって」

上条「……あぁいいぜ」

 ひゅう、と私の中で隙間風はまだ吹くけれど。
 時々胸を刺す痛みは中々消えてなどくれないけれど。

シェリー「ありがとう……ねぇ、あなた?良かったらで、いいのですけど」

 それはもう既に、私の一部だから。
 割り切る必要なんてないのだから。

シェリー「わたしの、ともだちになってくれませんか?」

 そう自然と、笑いかける事は出来た。

黄泉川「おー、いいじゃんよ?」

上条「アンタじゃねぇよっ!?つーか空気読めよっ!明らかにそういう流れじゃ無かったじゃん!?」

黄泉川「別にスタートがどっからだって良いじゃんよ?つかお前また弱ってる女の子につけ込む気満々じゃんか」

上条「俺が!いつ!そんな事をしたんですかァァァっ!?」

黄泉川「ちょい待ち、今ケータイ出すじゃんし」

上条「前見て、前っ!?アンチスキル兼先生が前方不注意はっ!?ダメだって!」

黄泉川「あーもうウルサイじゃんよ。ほれ上条、あたしのケータイ渡すから、登録しとけって」

上条「ハンドル離すんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 ねぇ、エリス?私は今きっと。

シェリー「……うふふ」

 笑って、います。


――断章のアルカナ 第一話 『姉と弟』 -終-

――次回予告

少女「むかしむかし、ある所にこんな物語がありました」

少女「ある夫婦は子供を授かります。けど身重になった妻は、魔女の庭に生えているラプンツェルを食べたくなります」

少女「夫は妻と生まれる子のため、魔女の庭へ忍び込み身を盗み出そうとします。でも」

少女「魔女に見つかり、それでも欲しいと懇願しました」

少女「すると魔女は実を好きなだけ与えるが、引き替えに生まれた子供を寄越せと言いました」

少女「やがて妻が産んだ女の子は魔女に連れて行かれ、ラプンツェルと名付けられます」

少女「彼女は森の中の高い塔に閉じ込められます。魔女はラプンツェルの長い髪をハシゴ代わりにし、窓から出入りをしていました」

少女「そんなある日、森を歩いていた王子が美しい彼女の声に惹かれ、閉じ込められたラプンツェルを見つけます」

少女「二人は何度も逢瀬を続け、やがてラプンツェルは妊娠しました。しかし激怒した魔女は彼女の髪を切り、荒野へと放逐してしまった」

少女「ラプンツェルが居ると思って彼女を訪ねた王子は、待っていた魔女から顛末を聞かされ絶望し、塔から身を投げて失明してしまいます」

少女「数年後、盲目のまま森を彷徨っていた王子は、男女の双子と暮らしているラプンツェルと再会しました」

少女「嬉し泣きするラプンツェルの涙が王子の目に落ち、王子の目は再び開き」

少女「王子はラプンツェルと子供達と国に帰り、皆で幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

少女「……」

少女「魔女は塔の中でラプンツェルにこう言ったんだよ、うんっ」

少女「『塔の外はとても怖い所。悪い人間がいっぱい居るんだから』」

少女「『お前みたいなダメな子は、外に出ちゃいけないよ』って」

少女「ラプンツェルは外へ出てしまった。生きる事の喜び、愛される幸せ、大切な伴侶を得た」

少女「でも、それは。本当に幸せなのかな?国へ帰ったラプンツェルは幸せになれたの?」

少女「何も考えず、何も恐れず、そうしていた方が幸せだったんじゃないかな?」

少女「私という『塔』は!ほら、まだこんなに空っぽだって言うのに!」

少女「ねぇ、誰が助けてよ!?わたしはっ」

少女「『木原』を求められて!『木原』すらも失ったわたしは――」

少女「……ねぇ、当麻お兄ちゃん。こんな時、『円周』だったらどうすればいいのかなぁ……?」

少女「……これは、とある吊し人の物語」

少女「『自分』という殻を失い、魂求めて彷徨う科学者の物語」

少女「『断章のアルカナ』第二話」

少女「――『ラプンツェル』」


――次回予告 -終-

※今週投下分は終了となります。読んで下さった貴方に感謝を
……今数えてみたら、第一話だけで約8万語なんですが (´・ω・`)
つか『学探』の方のプロローク~七話とほぼ同じ……地の文を書くと総量が増えますしねー

あと一応銀魂SS書きましたが、時間と構想切る余裕がなかったもので、ギャグ短編6000語となりました。銀さんしか出ないショートコントです
『断章』の方で少なかったネタ成分はこちらで補給して下さい。ギャグ苦手だから大変でしたー

銀時「かぶき町体操第一ぃぃぃぃっ!ハイッ!」
銀時「かぶき町体操第一ぃぃぃぃっ!ハイッ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380073704/)



――断章のアルカナ 第二話 『ラプンツェル』

――『明け色の陽射し』 極東支部(兼・上条のアパート) 深夜

上条 グーグー

円周 スースー

バードウェイ「……?」

バードウェイ「……ぁん……?」

バードウェイ(豆球……ベッドの上――三人でかっ!?)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……あぁ、そうか。確かアンチスキルとやらの取り調べを散々受けて)

バードウェイ(コンビニで買ったソバを食べて、そのまま寝たんだったか……)

上条 グーグー

バードウェイ(……まぁ、モール内を走り回ったしな。疲れもするだろう)

バードウェイ「……」

バードウェイ(人生初の男との同衾が『コレ』というのも、少々アレだなぁ)

バードウェイ(ま、ノーカウントで良いか。明らかにコレは別種だ)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……なんだ?眠れん)

バードウェイ(車の中で眠ったから?いや、熟睡は出来なかった筈だ)

バードウェイ(と、すれば別の外的要因――そうか!コーヒーか!)

バードウェイ(あんなクソ不味いもの飲まされて、と言うか苦くてかなわん。良く平気だな)

バードウェイ(カフェインを摂取するなら茶で充分と思うんだが)

円周 スースー

バードウェイ(コイツはコイツで『幻想殺し』の右腕に抱きついて寝ている。流石にバケモノでも自分を失うのは怖いのか)

バードウェイ(その『自分』とやらの定義も怪しい所だな。器が人の形をしていても、中身までそうとは限らん)

バードウェイ(被害者か加害者かの境は曖昧だが……まぁ今晩ぐらいは許してやらんでもない)

円周 スースー

バードウェイ イラッ

バードウェイ「……?」

バードウェイ(うん?どうしてイラついているんだ、私は?)

バードウェイ(ふむ……?)

バードウェイ「……あぁ!」

バードウェイ(そういえば昼間、このバカが小娘にキスされてやがったじゃないか)

バードウェイ(そうかそうか、そのオシオキをするの忘れていた。私とした事がうっかりだな)

バードウェイ(さて……虐殺ウサギグローブ――は、今一だな。慣れてしまったのか、肩こりが取れるとか言っていた)

バードウェイ「……」

バードウェイ(肩が凝る、のはジャパニーズ特有の現象だ。論文でも書いてみようか?)

バードウェイ(日本へ来て外国人が『肩こり』の概念を本国へ持ち帰り、という話はたまに聞く)

バードウェイ(あれは肩のマッサージが気持ちよくて、ただ単に依存症になった気もするが)

バードウェイ(まぁ今回はビリビリ無しだ。あまり連呼していると別のフラグが立ちそうな予感もするし)

バードウェイ(後は……リードでもつけて散歩か?悪くない)

バードウェイ(どちらが上なのか、教え込ませるのは実に好みではある)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……待てよ?確かこの間、日本のファッション誌を見たんだよ)

バードウェイ(そこに載っていたな――『NEXTサスペの新アイテム・ハーネス』と!)

バードウェイ「……」

バードウェイ(ハーネスは胴輪だぞ?基本馬に着用する馬具だからな?)

バードウェイ(首輪と違って負担が少ない分、20年以上前から犬用にも広まっているが)

バードウェイ(未来に生きている、と言うか死んだ方が良いと思うぞ。特に編集)

バードウェイ(お前らの頭がオカしいのは結構だが、『海外からそう見られる』んだからな?ネタじゃなくて)

バードウェイ「……」

バードウェイ(そういう意味で却下だ。躾がファッションだと思われるのは我慢ならん)

上条 グーグー

バードウェイ(……しかし気持ち良さそうに寝ているなー、こいつは)

バードウェイ(少しムカつくが……ふむ)

バードウェイ「……そうだ!」 ググッ

バードウェイ(近いな、と言うかまぁ……色々だ!色々あるんだ!)

バードウェイ(信賞必罰の言葉の通り、貴様には褒賞と罰を与える)

バードウェイ(褒賞は昼間の働きにだ。一歩間違えれば――最悪、木原数多が痺れを切らして狙撃しかねん状態で、だ)

バードウェイ(あっさりクロムウェルを口説き落とした功績――おや?なにかモヤッとするな?)

バードウェイ(そして罰だが――貴様はこれから起こる、人生最大の栄誉を授かった事を知らないだろう)

バードウェイ(……ま、こんなところか)

バードウェイ「……」

バードウェイ(クソガキは右頬にしたんだっけか。ならば私は反対側に)

バードウェイ(なんだろうな?既にこの配置的なものに作為を感じないでもないが。まぁまぁ?)

バードウェイ(光栄に思えよ、新入り)

バードウェイ チュッ

バードウェイ「……ふぅ。意外に大した事はなか」

円周「――って言う訳にはお顔が真っ赤だけど?」

バードウェイ「……」

円周「あ、ごめんねー?最初っから全部見てたし聞いてたし内心もエミュレートして読んでたよ?」

バードウェイ「き、さま」

円周「わたし、デバッグしてただけで眠ってなかったんだよね、うんっ」

円周「やっだもぅレヴィちゃんってば乙女だし!うん、うんっ!こういう時、『木原』ならこう言うんだよね……ッ!」

円周「『素直になれよツンデレ』」

バードウェイ「――殺すっ!殺してやるっ!木原全員皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

円周「きゃーおにいちゃんたすけてー」(棒読み)

上条「……ん?なに、どったの……?」

円周「レヴィちゃんがねーぇ」

バードウェイ「『世界は22に別れ、千々に別れた世界で愚者は知識を求め旅に――』」

上条「なんで呪文!?どうして真夜中に詠唱してるのっ!?取り敢えず霊装を仕舞えっ!」

円周「お兄ちゃんの寝込みを襲おうって」

上条「お前じゃないんだからしねーよ!んな物好きいる訳がねぇし!」

バードウェイ「……ほぉ?」

上条「え、なんでお前がキレてんの?」

円周「えーっ?本当なのになーっ」

上条「つーかね、何度も言うけどいい歳した――って言うにはちょっと早い娘さんがだな。そういう事しちゃいけません!」

上条「大体ロリ痴女の需要がどこにあるって言うんだよ!」

バタンッ

マーク「あるよっ!あるに決まってるじゃねぇかっ!!!」

上条「真性きやがったっ!?深夜に人んチ押しかけての第一声がそれかっ!?つーか近所迷惑と世間体を考えろ!」

マーク「永遠はあるよ!ここにあるよ!」

上条「あとファンと俺を刺激するから余計な事は、言うな?」

マーク「おっと取り乱しました。失礼を」

上条「いや割といつも取り乱しているよね?そっちがデフォだよね?」

マーク「ですが上条さん、いや!Lolico13!ご自身の魔術名を否定するとは何事ですくわっ!?」

上条「よーし俺は今から全力そげぶするからな?出来れば幻想以外も殺せるといいなーっ!」

マーク「ロ×の風上にも置けませんねっ!」

上条「風下にだって置けないよね?つーかその性癖は一生隠しとけ!」

バードウェイ「『――吊し人は罪を知り智恵を得て隻眼となる――』」

バードウェイ「『――短い旅の果てに旅人は魔術を友とし罪を母に迎え、法を従える女教皇とならん!』

マーク「あ、ボス!愚者→魔術師→刑死者→女教皇の4コンボはマズいです!」

上条「どんくらい?」

マーク「んー……このテレズマですと半分ぐらいでしょうか?」

上条「部屋の半分かっ!?ふざけんなよっ!」

マーク「いえ、アパート半分倒壊します」

上条「マップ兵器かっ!?つーか逃げろ円周――円周?いないなっ?」

マーク「あ、ベランダから逃げていきました。それじゃ私も失礼しまーす」

上条「あ、コラ待ちやがれ!?つーか何!?なんでこんな流れになってんの!?」

バードウェイ「はっはぁっ!貴様が犯した罪を数えろおぉっ!」

上条「犯して、ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

ズドォォォォンッ!!!

――学生寮

男「『――え、マジで?ケミカロイドって凍結しやがったのか?』」

男「『あー、あのガキどもが?暴走?……ふーん』」

男「『つか、つーかよぉ?アレの欠点ってペ×野郎向けの人形遊びだろ?耐久性がフィギュアに劣るっつー事なのに』」

男「『ジジイも軍用品として使えねぇから、相手にしなかったんだが……わかってねぇよなぁ、開発も』」

男「『そもそも能力主義なんて言ってる連中、「劣ってる連中を慰めるための言い訳」なんだよなぁ』」

男「『なんであーゆー手合いは、直ぐ暴力に走ろうとすんのかねぇ。おじさん悲しいぜ』」

男「『――で?お前は今何やってんだ?あぁ?』」

男「『いや、そろそろシャバの空気が吸いたくなったんじゃねぇか』」

男「『加群、病理、乱数。あとジジイもどっかに失踪してやがるし?どうしたもんかぁ、ってな』」

男「『導体と相殺に連絡取ろうにも、あっちはシカトしてやがるんだわな。これが』」

男「『加群も何だかんだ言って、最後は「木原」らしい最期だったみてぇだし……まだ動いてるっつー情報も入ってんだが。一応』」

男「『円周と那由他ぁ?あいつらはダメだろ。使い物にはならねぇよ』」

男「『……ま、少ぉし手ぇ加えりゃあ、化けるかも知れねぇが』」

男「『――あぁ。それじゃ出たくなったら連絡寄越しな。んじゃな』」

ピッ

男「――さてと……あぁもう時間かよ。面倒臭ぇが」

プツッ

工山規範「……」

工山「……あ、あれ?」

工山(ボクは何を……あぁ寝オチしてたのか。ヘッドギア落ちてる)

カチャカチャ

工山(……良し、と。これで今日も) ピッ

工山(『同期』させてっと――)

――『明け色の陽射し』 極東支部(兼・上条のアパート) 朝

バードウェイ「――さて、今日集まって貰ったのは他でもない」

円周「あ、お兄ちゃん、お醤油とってー?」

上条「おー……ってシェリー味噌汁の中にご飯を入れんな。行儀悪いぞ」

シェリー「あぁ……?昨日アンタもやってたじゃねぇか」

上条「昼と夜は良いんだよ。日本にはな、朝からぶっかけご飯を食べると、結婚式の日に雨が降るって言い伝えがあって」

シェリー「カツオブシも取ってくれ」

円周「はいどーぞっ、シェリーお姉ちゃん」

シェリー「アンタまた……まぁ良いか、面倒臭ぇ」

上条「聞けよぉぉっ!?大事な話をしてるんだからね、今!」

円周「よしよし」 ナデナデ

シェリー「あんまソイツを甘やかすな。癖になんぞ?」

上条「冤罪にも程があるわっ!?もうちょっと世界は俺に優しくてもいい筈だし!」

円周「大丈夫っ、お兄ちゃんならそーゆーのもアリだからっ」

上条「ありがとう……?いやいやっ、なんか納得出来ねぇな!」

円周「むしろ相性ピッタリだし?」

上条「どうしてこのパーティには中間が居ない?……今思えば、あの残念な金髪は癒しだったよなぁ……」

円周「うん、うんっ!こんな時あの金髪ならこう言うんだよねっ!」

円周「『まぁ結局、諦めた方が良いって訳よね?ふぁいおーゆり○っ!』」

上条「明らかにバランスが悪いだろう!全員ボケだぞ、俺が全部拾うなんて無理筋じゃねぇか!」

円周「って言ってる間にもボケ一つ流されてるしねー。可哀想なゆ○かちゃん」

上条「せめてっ!せめてもう一人ぐらいまともな子がいればっ!」

円周「ぶー。お兄ちゃん浮気は良くないよっ」

上条「お前の脳内設定で俺は兄貴なの?それとも恋人なの?そろそろはっきりしてほしいんだけど」

円周「最近はどっちもって多いよね?流行りなのかなっ」

上条「現実の話をしようぜ?俺達が住んでる所の話だよ!」

シェリー「え、でもアンジェレネから借りた本だと、大体同じ意味って書いてあったわよ?」

上条「すげーなラノベ!?つーか向こうまで侵食してやがるんだっ!」

シェリー「神裂もハヤ……なんとかってマンガをだな」

上条「おっとそれ以上は止めてくれないか!『むしろ最近あっちの方が出てますよね?』とか言うと俺が泣くんだからな!」

円周「うん、パトリオットは無いと思うんだよ。いくらなんでも他に見せ場作れたよね?」

上条「お前からも言ってやって下さい、ボスっ!」

バードウェイ「……」

上条「あれ、バードウェイ……?」

バードウェイ「――はい、貴様らが黙るまで5分かかりました」

上条「陰湿だな!」

円周「あ、お姉ちゃん。お漬け物も入れると美味しいよ?」

シェリー「ピクルスは苦手なんだよなぁ、私」

円周「このきゅうりはお味噌――豆をペースト状にした後、発酵させたのに漬けた奴だから、酸っぱくはないよ?」

円周「むしろ旨み成分が増えているから、甘みと風味が際だってるんだよね」

シェリー「へぇ……?興味なかったけど、日本のメシもイケるもんだなぁ」

上条「あの、すいません二人とも?そろそろバードウェイがぶち切れて魔術ぶちかますから、そろそろ話聞いてくれないかな?」

シェリー「朝のクソ忙しい時間になに話すっつーんだよ、あぁ?」

バードウェイ「そういう貴様こそ、毎日毎日その忙しい時間に人の家で食事を集りに来ているようだがな!」

シェリー「え、友達ってそういうもんじゃねぇのか?」

バードウェイ「……」

上条「……」

円周「……あー、うん」

シェリー「……そっか、悪ぃ事したわね。それじゃ明日からは――」

上条「待って!?合ってる!その解釈で合ってるからねっ!?」

上条「仲の良い友達の中に、きっと毎日メシ一緒に食ったりする時もあるって、なっ!?」

円周「あ、ごめんねお兄ちゃん?わたし友達はいないから、分かんないや」

上条「意外。お前の外面で騙される奴、結構居るんじゃ?」

円周「興味ない相手は無視するしねー。レヴィちゃんはどう?」

バードウェイ「私はまぁ……普通だな」

円周「普通にお友達が居ないんだねっ?性格キツいし、現実世界でのツンデレはタダの嫌な人だし」

バードウェイ「よーし、表で話そうか――主に肉体言語で!」

円周「うん、うんっ!辛いけど、とってもとっても辛いけどっ!降りかかる火の粉は磨り潰さなきゃいけないよねっ!」

上条「喧嘩禁止です!あと食事中にバタバタしない!」

シェリー「……なんつーか、私も寂しい奴だとは思ってたんだけど」

シェリー「意外と珍しくもない、のか?それともたまたまぼっち系が集まっただけかしら?」

上条「ま、まぁまぁ?今まで、アレだったけどさっ!これからは俺達が友達だしっ!」

上条「段々と慣れていけばいいから、な?」

シェリー「そう、よね?うん」

バードウェイ「……さて、話もまとまった所で――」

上条「あ、すまん。そろそろ学校行かないと時間がマズい」

シェリー「私もだな……ちっ、面倒臭ぇよっと」

円周「それじゃわたしも途中まで送るよー。お兄ちゃんだけだと、襲われてもどうしようも無いしねー」

上条「はっきり言われると傷つくんだが……」

円周「だーいじょーぶっ!わたしは当麻お兄ちゃんがゴミ虫でも愛しているからね?」

上条「……すいません。愛が!愛が重すぎるんですっ!」

シェリー「諦めろ。どーせ『可愛らしい解剖用カエル』程度の認識じゃねぇのか?」

上条「……せめてもっと素直な相手ならっ!」

シェリー「まぁ逆に考えるんだな。『愛されているウチは、死ねない』って」

上条「わぁいったっのしいっなー」(棒読み)

シェリー「んじゃ私は先に――あ、そうだ。上条、顔上げろ」

上条「はい?」

シェリー チュッ

上条「」

円周「あーーーーーーっ!お姉ちゃんとお兄ちゃんがちゅーしてるっ!」

シェリー「え、友達ならするんじゃねぇのか?本に書いてあったぞ?」

上条「『僕は友達が少な○』は、フィクションだ!タダの、物語だっ!」

シェリー「そ、そうなのか……?てっきり仲の良い友達ならすると思って……」

上条「待て待て待て待てっ!?そのパターン止めろって!」

円周「なんか鉄板になりそうなネタだよねー、それ」

シェリー「それじゃ先行くわ」 パタンッ

上条「待てコラシェリー!?マジなのかネタなのかをハッキリさせていけ!」

円周「――って、怒ったフリをして誤魔化そうとしているよね?ねっ?」

上条「お前もアレだな!……うんよし学校へ行こうかっ!」

円周「誤魔化すのが下手なのも程があるよねー。でもそんなお兄ちゃんも、いいなぁ」

上条「あ、すまんバードウェイ。食器とか流しに置いといてくれ」

円周「それじゃ、お留守番よろしくねー?」

上条「あ、おい手を繋ぐんじゃない」

円周「いいでしょ、ね?ちょっとだけ、停留所までだか――」

パタン

バードウェイ「……」

パタン

マーク「おっはようございまーす……?あ、ボス。本日も良い天気で。はい」

バードウェイ「……なぁ、マーク?マーク=R=ヒュー○?」

マーク「スペースです、ボス。世界規模のマルチ商法の創始者であり」

マーク「『母親が30歳で死んだから健康食品売ります』と言いながら、自分もアル中ヤク中で夭逝したバカじゃないです」

バードウェイ「今、我々が居るのはアウェーだし、相手も結構な相手だよなぁ?」

マーク「先日のやりとりを見れば、それ相応の難敵かと」

バードウェイ「その相手にだ。しかも今度は『私』と言う誤差を修正し、全力でかかって来る相手に」

バードウェイ「こんなグダグダでどうしろって言うんだっ!?」

マーク「いやぁ……まぁ、はい」

バードウェイ「なんだぁ?私が負けるとでも思っているのか?」

マーク「理不尽すぎますよボスっ!?罠じゃないですか!」

バードウェイ「……まぁいいさ。学校が忙しいというのであれば」

マーク「あのー、ボス?お顔がめっさ悪い感じになってますよー?」

バードウェイ「――ムリにでも付き合って貰うまでだよなぁ……!」

――停留所

円周「うーん、人いっぱいだよねぇ」

上条「気にはなってたんだけど、お前学校とか行かないの?」

円周「行ってもなぁ。あ、だったらさ!」

上条「俺の学校への進入は禁止だ。中学生、つーかお前背の高い小学生しか見えないから、絶対バレるって」

円周「ちぇーっ。世の中には何の脈絡も伏線もなく、合法ロ×の先生だっているのに」

上条「あれはまぁ……うん。そーゆーもんだとしか言えないけどなっ。エルフだから140歳、みたいな!」

円周「わたしは別にお勉強したい時には勝手にしてるから大丈夫だよ?」

上条「君に必要なのは情操教育とか道徳の部分だと思うけど」

上条(この子のぶっ飛んだ行動を見る分に、多分『暗部』の連中達と似たような扱いか)

上条(そういえば一方通行もフラフラしてるし、心配しなくていいのかな?)

円周「白い人は8兆円の借金バックれた人だからねー。まぁ元々の実験とかでちょっとした地方銀行並みのお金は持ってるけど」

上条「マジか!?すっげぇなぁ……ってあれ、俺今口に出してたっけ……?」

円周「大丈夫だよっ!お兄ちゃんの思考パターンは手に取るように分かるからっ!」

上条「学習するってそういう意味かよっ!?プライベートを尊重して欲しいですよねっ!」

円周「ってか観察して分かったんだけど、そんなに大した事は考えてないよね?アドリブに弱いし、言われてるほど女たらしでもないし?」

上条「よしまずそこから教えて貰おうか?俺の評価って他じゃなんて言われてるの?『暗部』でも有名ってどういう事?」

メイド服「取り敢えずで敵をハーレム要員にする異能の持ち主」

上条「心当たりは無いっ――よ?」

円周「てか魔術サイドの殆どが元敵だし?否定するだけの根拠に乏しいよねぇ」

メイド服「と、ウチの引きこもりが言っていた気がしないでもない」

上条「つーか誰だお前っ……雲川先輩の妹さん、だよな?」

雲川鞠亜(メイド服)「視線を顔から胸元に下ろすのは失礼だと言っておくよ。上条当麻、だっけ?」

円周「おはよー鞠亜ちゃんっ。お兄ちゃんは雑食で、何でもいけるクチだから気をつけてね?」

上条「そもそも視線を下ろした事実はないし、冤罪確定なんだが!」

鞠亜「バゲージで色々あった相手と仲良く手を繋いでいれば、噂が事実無根かどうかは分かりそうなものだと思う」

円周「鞠亜ちゃんもこの間はごめんね?次はもっと上手くヤるから?」

上条「日常シーンへ殺気を持ち込むも止めてっ!?」

鞠亜「君の実態を知らなければ『仲の良い兄妹だな』で、済ませられる話だけれどね」

上条「雲川も登校?つーか朝からメイド服なの?」

鞠亜「メイド服は私達にとって制服だからな」

円周「頭の悪そうな名前バッジと風俗にいそうな黒黄色シマシマは、正気なの?」

上条「だからお前はそういう事言うなって。人の嫌がる事は言っちゃいけないんだぞ?」

円周「そなの?そんな風には見えないけど」

上条「いやいや、そんな事ないって。誰だって自分の趣味を貶されれば傷つく――」

鞠亜「……良し!今のは中々良かったぞ!私のプライドが傷つけられてレベルアップだ!」

円周「ほらね?」

上条「あ、あれ?こないだはシリアスしか見てなかったから分からなかったけど、実はこんな子なの?」

円周「何となく方向性は理解出来るんだけど、屈辱の耐性をメイドで補強する意味がちょっと分からないよねぇ」

鞠亜「経験値がまた増えるっ!いいのか私!?」

上条「……あの、関係者だと思われたくないから、向こうへ行って貰えませんか?」

鞠亜「まただっ!また私の経験が!」

上条「すいません円周さん、キツいの宜しく。正気に戻してあげて」

円周「あ、胸のカップは私と同じぐらいかな?芹亜お姉ちゃんとは似てないよね?」

鞠亜「胸の話はするな。殺すぞ?」

円周「うん、うんっ!とっても気が進まないけどっ!売られたケンカは買わないといけないよね……ッ!」

上条「だからお前らはどうしてそんなに沸点が低いんだっ!?つーか雲川先輩に似てないし!」

鞠亜「姉ほど達観してないのは認めるが、年相応じゃないかね」

円周「加群おじさんを持ち出さなかったし、気を遣ってるつもりなんだけどなぁ」

上条「そんな気遣いはいらん。あと雲川先輩は中学ん時もあのままっぽい気がする」

鞠亜「ま、そんな訳で今日は朝から出向だよ。繚乱とは別の場所で実習さ」

上条「メイドの実習?へー、どっかのお屋敷でか」

鞠亜「いやメイド喫茶でだが?」

上条「メイド違うじゃんか!?何、お前らの学園のメイドってあーゆー所を目指してんの!?」

鞠亜「逆だな。店側から請われてレクチャーしに行くと」

円周「今は『メイド服さえ着てればメイドですが何か?』的な風潮だもんねー」

鞠亜「そういった悪しきエセメイド達を駆逐するためにも!我々が本物を示す時なのだよ!」

上条「オイコラ色物メイド。ドヤ顔でその台詞言う前に自分の格好顧みろ」

円周「イロモノ加減じゃ巷に氾濫するメイドもどきと大差ない、っていうかより酷いぜ、っていうか」

鞠亜「おおっとそれ以上私のレベルを上げるのはやめて貰おうかっ!CPが溜まりすぎて使い道に困ってしまうからな!」

円周「あー、分かる分かる。世界○とかでさ、攻略wikiやガイドブック全然見ないで進めて」

円周「後からやり直しすると大変だから、スキルポイントは必要最低限しか遣わない、的なの」

鞠亜「……でも本命はパーティに入れてないプリンセスとかビーストマスターだった日にはね。もう、ガッカリって言うのか」

上条「……もうヤダ……どうしてこの手の変人しか居ないのっ!?」

円周「っていうかさ。鞠亜ちゃんレベルアップしてるの?本当に?」

鞠亜「なんだね。私のライフスタイルに疑問でも?」

円周「なんか傍目には『詰られて喜ぶ変態女』にしか見えないんだけど?」

鞠亜「……」

上条「あー……確かに」

鞠亜「――と、言う訳で私はそろそろ行かねばならない。愚鈍なご主人様に仕えなければいけないからねっ」

上条「逃げんなコラ。目的と手段が逆転してんぞ」

円周「……んー」

上条「どした?」

円周「ね、お兄ちゃんと鞠亜ちゃんにお願いがあるんだけどぉ」

上条「ダメだからね?人体は気軽に壊しちゃいけないって約束したよな?」

鞠亜「なんだそのバイオレンスな約束は……?」

円周「わたしも鞠亜ちゃんと一緒に働いてみたいなー、って」

上条「なんでまた?」

円周「メイドさんのスキルがあった方が得じゃないかな?」

上条「一部だけだからね?殆どの人間は人生でメイドと接点無しで終わるからな?」

円周「その需要も結局『メイド服着た可愛い娘』だし?」

上条「否定しきれないのがアレだけど――大体、雲川が良いって言わないだろ?あっちは遊びでやってるんじゃないんだから」

鞠亜「んー、まぁ構わないよ」

上条「いいのかよっ!?」

鞠亜「誰かに教えるのは私の勉強になるだろうし、メイドの仕事を学びたいのであれば是非もないさ」

鞠亜「ただその代わりと言っては何だが、バゲージの遺恨は今後無しにして欲しいが」

円周「わたしが負けちゃったのはわたしが弱いからだし、鞠亜ちゃんを恨んではないよ?」

鞠亜「……その言葉が信じられれば良かったんだが」

上条「いいのか?本当に」

鞠亜「さっきも言ったがアバウトな店だし、一人増えるぐらいは問題ないだろう」

鞠亜「むしろ失敗すればするでオイシイ、らしい」

上条「なぁその店って本当にメイドさん必要としてるか?綺麗な服着た可愛い女の子だけだよね、欲しいのは」

鞠亜「おっと不用意な発言は控えて貰おうか!」

上条「……何?俺なんかまた言ったの?」

円周「フラグメーカーの仕様だしねー。ってワケでよろしくお願いしまーーーすっ!」

上条「いいか?雲川の言う事は守るんだぞ?」

円周「うんっ、勿論だよっ」

鞠亜「ここだけを見れば普通の兄妹に見えるな」

上条「人を殺すのはダメだからね?あと、解体して結果的に殺すのもダメ」

円周「再起不能は?間接を三つぐらい増やすとか?」

上条「悪い相手なら、まぁ一つぐらいは……?」

円周「白くてメンタルの弱いしましまが来たら?」

上条「被保護者さんに通報しなさい。全力で来てくれるから」

鞠亜「ごめん。錯覚だったよ、全て」

円周「やっぱり人数多いとツッコミ最低二人は必要だよねー。鞠亜ちゃんもウチに来なよ?」

鞠亜「全力で断る!これ以上風評被害を拡大させるもんか!」

上条「……何?そっちもなんか言われなき被害を受けているの?」

鞠亜「それも君のせいなんだがね、手癖の悪さ的な」

上条「冤罪だよっ!?何一つ俺関係ねぇし!」

円周「鞠亜ちゃんも油断してるとぉ――」

上条「やめろ。出会う人間片っ端から意味ありげに俺の悪口を吹き込むな!」

鞠亜「そういえば仙人のような姉もいつの間にか……!?」

円周「キーワードは『放課後・使われていない体育倉庫・写メ』だよねっ」

上条「お前らいい加減にしないと出るトコ出るよ?特にちっこいのは不穏当すぎるわっ!」

鞠亜「……姉のGだけでは満足出来ないって言うのかっ!?」

円周「むっ、流石おっぱいソムリエ上条当麻って言われるだけの事はあるねっ」

上条「前に言ったけど、普通の学校に使われてない倉庫なんて無いからな?予算着いてるんだから、余計な建物が増やせる訳がねぇっ!」

上条「あと円周さん?そのとても心惹かれる職業は実在するの?国家資格なの?それともガンダーラ的な所に行く必要があるの?」

プップー

鞠亜「あぁバスも来たようだし、取り敢えず今日一日は預かるよ」

上条「ゴメンナサイは?時間潰しでからかってた俺に謝る発想はお前らにないの?」

円周「じゃ、お兄ちゃんもお勉強頑張ってね?放課後のアレもっ!」

上条「ねぇ放課後のって何?意味ありげに言うの止めてくんないかな?」

鞠亜「ではまた」

円周「ばいばーいっ」

上条「いいかっ!面倒起こすなよ、絶対に!絶対だからねっ!」

円周「遠回しに『キハラって来い』って意味かな?」

鞠亜「曲解にも程がある。まぁメイドとしてのスキルは教えるから、暴れるのだけは勘弁だ」

パシュ、プップー

鞠亜「そうじゃないとあの『お兄ちゃん』にも迷惑がかかる。わざわざ私が釘を刺す必要は無いだろうがね」

円周「ここであのバスを追い掛けてって、バスジャックしたら楽しいだろうなー」

円周「お兄ちゃんが『何してんのっ!?何してくれてんだぁぁぁぁぁっ!?』って狼狽える姿は好きなんだよねっ」

鞠亜「……凄いのに慕われているんだな。流石に同情するよ」

円周「あ、鞠亜ちゃんも大好きだよ?」

鞠亜「おや?震えが止まらないんだが、風邪でも引いたのかも」

円周「そんなあなたに持ってて良かった木原印の風邪薬!」

鞠亜「――さて、実習先のメイド喫茶へ向かおうかっ!全力で行くぞっ!」

――学校

青ピ「カミやんお疲れだにゃー?」

上条「それ土御門の台詞……ってまだ帰ってねぇの?」

青ピ「みたいや。あンのアホ、可愛い妹ちゃん置いてどっこで遊んでんだか」

上条「まぁフラっと戻ってくると思うけどなー」

青ピ「そんなことよりもぉぉぉぉっ!カミやん!」

上条「突っ込む気力もねぇし。何?」

青ピ「今日は何とイギリスからの交換留学生が!」

上条「何やってんだあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?展開読めたものっ!」

青ピ「ちょ、どーしましてん?」

上条「二択だもんっ!分かってるしぃっ!?どうせまた開口一番それっぽい台詞大混乱ギャーでロ×条ペ×麻』とか呼ばれるんだろっ!?」

青ピ「あぁいや、カミやん?そうじゃなくって――」

上条「ってかね!すぐ男女の仲を疑うのは良くないと思う!カップリングとか考えるのはイケナイよぉっ!」

姫神「おはよう。でもそれを言ったら色々と破綻するんじゃ?」

上条「男女の仲にだって友情は成立するよな、なっ?」

ガラガラッ

小萌「はいはーい、おはようなのですよー。エキサイトしている上条ちゃんは席に着いてくださいなのですー」

上条「先生っ!ボク気分が悪いのでおうち帰ってて良いですかっ!?」

小萌「はーい単位ギリギリで落第寸前の子は、寝言を言わずにきちんとお勉強しましょうねー?」

上条「小萌先生まで俺の敵にっ!?」

姫神「ロシアに謎の失踪をしていたから。仕方がないと思う」

上条「あれだって俺の意思――だけども!帰還が遅れたのは俺の責任じゃねぇよ!」

小萌「――ってな訳で留学生です。皆さん仲良くして上げて下さいねー」

上条「覚悟決めだぞっ!ドS×リでもドS×ドでもかかってこい!」

青ピ「どっちも同じですやん」

上条「よーし来い!ツッコミの準備は万全だ!」

青ピ「なんでカミやんをここまで駆り立てるん……?」

ガラッ

マーク「初めまして皆さん。マーク=スペンサーです」

上条「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁくっ!?マーク=スペースっ!?」

マーク「一応偽名使ってんですから一秒でバラさないで下さい」

小萌「えと、偽名って?」

マーク「あぁお気になさらずリトルミス。チュッパチャップ○でもどうぞ?」

小萌「は、はぁ?」

上条「何で来やがった!?俺の平穏の地に何の用だよおぉっ!」

青ピ「いや、血涙流さずほどのもんじゃないですやんか」

姫神「上条君の知り合い?」

マーク「はい。同じサークル仲間でして」

小萌「あ、そうなのですか?ちなみにどんな?」

マーク「各国の食文化を勉強するサークルですよね?」

上条「あ、あぁまぁそんな感じで?」

マーク「留学生と言うよりも社会見学、ゲスト扱いで10日程お世話になりますが、よろしくお願いします」

青ピ「んー、なんか大人っぽい人やね」

姫神「外人さんは年齢不詳な感じなのかも」

上条「(大人だしなぁ、実際)」

上条(いやでもバードウェイや円周に乗り込まれるよりは、全然マシだ)

マーク「ちなみに妹もこちらに来ていますので、もしかしたら見学に来るかも知れません」

マーク「まぁその時は兄妹共々いじめないで下さいねー」

上条「……あぁなんだ。もうそこら辺は既定路線なのね?フラグは悪い意味で立っちゃってんのな?」

小萌「それじゃ上条ちゃんの隣の席で、面倒見てあげて下さいね?」

上条「……はーい」

マーク「よろしく……ま、人生諦めが必要かと」

上条「もう突っ込む気力もない……寝かせて……」

マーク「(じゃあ寝る前にボスからの素敵な伝言が御座います)」

上条「(いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!?)」

マーク「(あ、いえネタじゃなくマジな方です。えっと)」

マーク「(『白いのの意識が戻ったから、放課後集合』と)」

――放課後 一方通行の病室

バードウェイ「――さて、今日集まって貰ったのは他でもない」

シェリー「魔術サイドに白いのがちょっかいかけてきた件だろ?」

一方通行「今度こそ潰すぞババア?」

上条「病室でケンカしない!つーかシェリーは円周の事言えないからな!」

芳川「あのー、ちょっと良いかしら?今魔術って聞こえたんだけど」

一方通行「あァそりゃ学園都市製じゃねェ能力者だ。あンま突っ込むな」

芳川「……明らかに違うと思うんだけど、その説明じゃ」

一方通行「余計な所に首突っ込ンだら、出れなくなンぞ?」

芳川「オーケー。分かったわ」

シェリー「学園都市よりかは人道的だと思うけどな」

一方通行「そいつァ俺も同感だがなァ」

上条「まぁそっちは一方通行に聞いてくれ――ってかその人誰?」

バードウェイ「――っていう話をしようとしていたら、貴様らがぶち壊してくれたんだかなあぁぁっ!?」

上条「ごめんなさいっ!?つーかキレキレじゃないですか!」

芳川「帰っていい?と、いうよりどうして私が呼ばれたの?」

一方通行「黙っとけ。オマエは後で『学習装置(テスタメント)』について喋って貰うンだよ」

芳川「『学習装置』っ!?あれは廃棄されたって聞いたわよ!」

バードウェイ「何だ、何も話していないのか?」

一方通行「面倒臭ェ」

バードウェイ「……その面倒が他者に回ってくるんだが。まぁいい。前回は色々と混乱していただろうし、おさらいも兼ねて確認しようか」

上条「あ、ごめん。その前に一ついいか?」

バードウェイ「言ってみろ。お前好みの年上のおねーさんだからって、張り切るな馬鹿者」

上条「何で今俺怒られたっ!?……いやいやっ、一方通行の体って大丈夫なのか?今日まで意識無かったんだろ?」

一方通行「あァそいつァ嘘だ」

上条「そっかそれなら良かった――待って?」

バードウェイ「バカが吊られやしないと罠を張ったんだよ。結果はゼロだったがね」

上条「それもなんかなぁ……つか心配した俺の立場は?」

芳川「言っておくけど能力が不安定になってるのは本当よ。だからこの子にムリさせないでね?」

一方通行「黙ってろクソババア。オマエは俺のかーちゃンか」

バードウェイ「『体晶』だかの影響が抜けるまで、あと10日程。無理以前に暴走すればこちらの命が危ない」

一方通行「ウルセェよ」

バードウェイ「他に質問は?トイレに行きたいのであれば今のウチにしとけ」

シェリー「帰りてぇ」

バードウェイ「――ではまず。お前達に接触を取って来たのが『木原数多』で合っているな?」

芳川「待って?その人確か、失踪してる筈だけど」

一方通行「知り合いかァ?」

芳川「何十人もいる共同プロジェクトに入った事があるだけだから、会話は殆どしてないわ」

芳川「『天才』って言葉が物足りないぐらいの結果を出していた研究者ね」

芳川「専攻は能力開発、だけど。彼が何かしたの?」

一方通行「あァまァ。俺はクソ木原に呼ばれて行ったら後ろからブスリ、だ」

一方通行「だがそこにいたのはその木原数多じゃねェ。ただのガキで」

一方通行「そついが反射を貫通させやがったンだよ」

芳川「状況が理解出来ないんだけど……?」

一方通行「あァ。木原数多の方は何回か『手首の返し』?でボコボコにされたンだが、そいつは全く同じ精度でしやがったンだ」

一方通行「そン時に漏らしてた言葉が『インストール』だなァ」

バードウェイ「クロムウェル。お前はどうだ?」

シェリー「……」

上条「頼むよ、アイツをぶん殴るために必要なんだ」

シェリー「あー……私に接触した木原は『20年に死んだ奴のクローンを作ってやる』って」

芳川「……悪い噂は聞いていたけど、ここまでとはね」

一方通行「けっ!どォ見ても悪党顔だろォがよ」

バードウェイ「お前も大して変わらんが。他に何か言ってなかったか?」

シェリー「私が『それはエリスじゃねぇ!』って言ったら、『学習装置で記憶や性格をインストールすりゃいい』……クソが!」

上条「ここでも『学習装置』か」

バードウェイ「後は二人が顔を合わせて、ある小娘――木原円周を取り合った」

バードウェイ「片方は割り切るため、もう片方は割り切らないため」

バードウェイ「狙いはもう一つ深い所にあったんだが、まぁかいつまんで言えば『共倒れ』だ」

バードウェイ「両方をつぶし合わせ、そっちとこっちを仲違いさせる。それだけが目的」

バードウェイ「まぁそれはそこ馬鹿者が止めたので事なきを得たんだが」

上条「全ての黒幕は円周で、その円周は『木原数多』がインストールされていた……!」

バードウェイ「以上により我々は『木原数多』との抗争に突入した――ん、だが。問題が一つ持ち上がる」

一方通行「木原くゥンは俺がぶち殺してンだよなァ。確実に」

シェリー「あぁ?それじゃ仕組んだのは別の人間って事かよ?」

バードウェイ「『木原数多』が死んでる以上、そう考えるのが普通だ。けれど私は門外漢なので知らないんだよ」

バードウェイ「以上の事が他人にも可能かどうか、可能であればどんな人間なのか」

バードウェイ「専門家であるあなたの意見を伺いたい」

芳川「……元々『学習装置』はクローンに人格やある程度の常識や知識を植え付けるための装置よ」

芳川「でも生きている人間の人格を書き換えたり、他の人格を残したままインストールなんて聞いた事はないわ」

芳川「少なくとも私が関わっていた時の『学習措置』であれば、だけど」

一方通行「天井のクソが仕掛けたテロみてェに、誰かがやってンじゃねェの?」

芳川「……あのねぇ、確かに『学習装置』は人の記憶を書き込むのは可能よ?けど」

芳川「白いノートに書き込むのと、びっしり書き込んだノートを消して書き込むの。明らかに難易度は違うでしょう?」

芳川「天井亜雄は……まぁ、それなりに優秀な研究者であったけど、精々赤いペンで一行上書きする程度しか出来なかった」

芳川「それこそ『木原数多』級の人間じゃないと、『学習装置』の改良は不可能よ」

バードウェイ「技術的な意味で?それとも設備や開発予算的な意味で?」

芳川「両方ね――それより、こちらからも聞いて良いかしら?」

バードウェイ「魔術を学びたいのであればウェルカムだ」

芳川「えっと……?」

一方通行「冗談だ。流しとけ」

芳川「え、えぇ。それじゃ『逆』の可能性についても聞きたいのだけど」

芳川「あなた達の言う『インストール』は間違いじゃないの?」

バードウェイ「うん?」

芳川「『学習装置』を改良するよりも、例えば……その、円周って女性が、反射貫通の能力者だった可能性だってあるんじゃないかって」

バードウェイ「それは違う。何人かインストールさせられた人間が居て、そいつらをここで分析して貰ったんだよ」

芳川「他にも居るのっ!?」

バードウェイ「結果はクロ。この男は『異能を打ち消す』能力なんだが、こいつが触る前と後でスキャンした結果、脳の一部に電気の流れが違っていた」

芳川「データは見せて貰えないのかしら」

バードウェイ「白いのには送ったんだがな、後で見せて貰いたまえ――とにかく、そういう意味で自作自演と言う線はなくなった」

一方通行「つーかよォ。インストールってなンなンだ?あのガキは出来て他の連中は反射貫通出来なかったのは、どォしてだ?」

バードウェイ「想像でしかないが、元々身体能力系の能力者なのだろう。イメージした通りに体を動かす、的な」

バードウェイ「だからこそ何人かインストールされた中で、唯一反射貫通を正確に再現出来た」

上条「んー、俺からも質問」

バードウェイ「なんだ?」

上条「お前じゃなくて、先生っぽい人に――『学習装置』で記憶や人格が書き込めるんですよね?」

芳川「そうね」

上条「でも俺は御坂妹達に何回か触ってるけど、アイツらの記憶が無くなるとかは無かったけど?」

バードウェイ「ちなみにどんなエロい触り方をしたんだ?」

上条「そうなぁ、病院で――違うよっ!?誘導尋問だっ!?」

芳川「それは多分、あなたの異能が『不自然な状態を自然な状態にする』んじゃない?違う?」

上条「はい。知り合いの魔人――じゃなかった、暇人はそう言ってた」

芳川「育った人間には記憶と人格があるのが自然、無かった子達が時間を掛けて『学習』したのは不自然ではない」

芳川「でも既に記憶があるのに、上書きされたり書き換えられたりするのは」

上条「『不自然』であり、能力の対象になる、か」

シェリー「しかしその理屈で言えばマズかないか?」

一方通行「一回完全に記憶なり人格を消した後に書き込めば、もう元には戻らないって事だァな」

上条(俺の記憶が戻らなかったのもそのせいかも?完全に失った記憶は『自然』な状態になりようがないしな)

バードウェイ「まぁ『学習装置』が『実現可能』だと分かっただけでも良しとしよう。次は『木原数多』だ」

バードウェイ「私の推測からすれば十中八九グレムリンと縁がある」

バードウェイ「ハワイでのやりとりを知っていたり、そもそも二つのサイドをケンカ別れさせようとしたり、推測というのもおこがましいぐらいだ」

芳川「……ギズ○?」

一方通行「反学園都市の組織だ。ンなに可愛くはねェよ」

バードウェイ「従って資金力や技術力だけではなく、相手が科学と思っていたら魔術師が出て来る可能性も高い」

上条「なーんか防戦一方だなぁ、俺ら」

バードウェイ「でもない。下っ端どもを拷問――もとい、優しく訊ねてたら、色々吐いたぞ」

上条「今不穏な単語が出て来たっ!?」

バードウェイ「プチ拷問しちゃったゾ☆」

上条「可愛いけどもっ!何か、何か違うなあぁっ!」

芳川「インストールは?」

バードウェイ「家捜しやネットリ歴――もといネット履歴を調べ上げた」

一方通行「……俺がなァ」

バードウェイ「暇だったし良いだろ。で、出て来たのが、こいつだ」

芳川「……ヘッドギア?」

一方通行「なンでも一日一時間着けるだけでレベル3になれるンだと」

上条「その数字がまたリアルだな」

バードウェイ「『SEED』。『学習装置』の書き込み端末なんだろうな」

バードウェイ「最初は脳の一部分に代理演算……まぁ電卓?をインストールさせるから、確かに思考は早くなる」

バードウェイ「だが続けて使っている内に、インストールされるのは『木原数多』の人格データとなる」

一方通行「木ィ原くゥン、ついにウイルスになっちまったかァ。ま、ピッタリだけどよォ」

バードウェイ「ちなみにコイツを配ってたサイト並び関係者の自宅はついさっき襲撃した」

上条「危なぇな。誘えよ!」

バードウェイ「私の話を聞かなかったお前が悪い――別にお前のためなんかじゃないぞ?いいか、勘違いはするな?」

芳川「ねぇ一方通行、この子もしかして?」

一方通行「黙ってろ。当事者以外は知らねェ」

シェリー「あん?何の話だ?」

バードウェイ「『SEED』を送った住所を押さえたんだが、どうせ全てではないだろうし、ダミーも多いんだろうな」

バードウェイ「彼らがどこから入手したのかは調査中だ――が、まぁあまり期待はしない方が賢明か」

芳川「学園側に禁止って通達を出し――たら、きっとみんな欲しがるでしょうね」

上条「病んでる子は病んでるしなぁ。上に行きたい気持ちは理解出来るけど」

一方通行「雑魚はなにやったってェ雑魚なンだよ」

バードウェイ「さて、では話をまとめてみようか」

バードウェイ「……現時点で、『木原数多』が直接手を下した例はない」

バードウェイ「もしもネットの外、つまり現実世界に『木原数多』が存在するのであれば」

バードウェイ「そうでなくとも協力者が居れば、こんな回りくどい方法でなくともいい」

バードウェイ「で、あれば――回りくどい方法を『するしかない』理由があるのではないか?」

上条「誰かが『木原数多』に見せかけてるって考えは?」

バードウェイ「非効率過ぎる」

芳川「そうね。別にこの子達を確保したり、煽るのだって『インストール』した子を巻き込まなくても良いんだし」

バードウェイ「実際にそこから『SEED』の集配所が割れたのだしな」

バードウェイ「――ともあれ、それが現時点で分かっている事さ」

一方通行「面倒臭ェよなァ、ほンっと」

シェリー「クソはクソらしく車にでも轢かりてりゃいいのによぉ」

バードウェイ「おい、そこのコミュ障ども。お前らが『こんにちは』って自己紹介してれば、戦闘は避けられんだからな?」

バードウェイ「中二病丸出しで突っ込んだバカは、もう少し反省しろ」

上条「いやぁ、それちょっと無理なんじゃ?」

バードウェイ「あぁそうそう。お前に狙撃防止のアルカナを持たせているって言ったよな。覚えているか?」

上条「そりゃ当然。助かったぜー」

バードウェイ「あれは嘘だ」

上条「――え」

バードウェイ「タロット自体に魔術的な効果は今もあるが、お前が持っている時点で無効化されている」

上条「じゃ、じゃあじゃあこないだのは何だったんだよっ!?」

バードウェイ「アレは予め私が“場”に掛けた防御結界みたいなものだよ。クロムウェルは気づいていたようだが」

シェリー「流石に空気読むだろ」

バードウェイ「あの展開であれば『アメリカ魔法』で一発逆転が来るとは分かったからな」

上条「つ、つまり?」

バードウェイ「現在『木原数多』はお前に銃が効かないと思いこんでいるが、実際には効く効く。相性:◎」

上条「二倍ダメージかっ!?」

バードウェイ「ハッタリでもしておかないと確実にスナイプされるからな。感謝したまえ、私の偉大さに」

一方通行「はったりじゃねェか」

バードウェイ「さて、我々はヘッドギアの解析、並びにネット上にあるであろう『木原数多』の人格データを追跡する」

バードウェイ「幸いにもショッボい協力者しか居ないため、大した脅威にはなっていないのが現状だが」

バードウェイ「ともあれ現状はそのぐらいだ――で、芳川桔梗さん?」

芳川「何かしら?」

上条(綺麗な人には綺麗な名前がつくもんですねっ!)

バードウェイ「新入りは空気読め、後でオシオキだ」

上条「読んでるじゃん!?あ、いや思ってもないけど!」

バードウェイ「貴様はエロい事考えると鼻筋に血管が浮かぶんだっ……!」

上条「マジでかっ!?……いや、別になんともなくね?」

一方通行「……今時よォ、ンなベタネタで引っかかるかァ?」

上条「え?」

バードウェイ「マヌケの罪は二割増しにするとして――あなたの意見を請いたい、いや」

バードウェイ「『木原数多』へ対抗するため、あなたの力を貸して貰えないだろうか?」

バードウェイ「私とライオン女、それと貧乏そうな男には圧倒的に『そちら』の知識が足りない」

上条「ごめんよ?俺、学園都市側なのに、どうして一般人扱いなの?」

芳川「……ここまで聞かせられて、放って置くつもりはなかったけど」

芳川「いいわ。やりましょう」

バードウェイ「あなたに心からの感謝を――マーク」

マーク「――はい」

バードウェイ「必要な環境や設備、また報酬はそちらの男に言ってくれ」

芳川「分かった――その、報酬についてなんだけど」

芳川「『魔術』ってのを教えて貰う訳には行かないのかしら?」

バードウェイ「可不可であれば“可”だ。けれどそれは最低でも学園都市から決別する事を示している」

バードウェイ「それを良く踏まえた上で、覚悟をしたのでならば話を聞こう」

芳川「……」

一方通行「……オマエにゃ“それ”は向いてねェよ。どっかの非常勤講師が精々なのに、あっちもこっちも高望みし過ぎなンだ」

芳川「言ってくれるわね……で、えっと?」

バードウェイ「レイヴィニア=バードウェイだ」

芳川「芳川桔梗です。宜しく」

バードウェイ「では早速今後の方針なのだが――」

芳川「取り敢えずヘッドギアの分解と使われている部品の分析――」

一方通行「ダウンロードした人格データのCRC――」

上条「……なーんかする事ねぇなぁ」

シェリー「科学だしなぁ。タダの魔術師と学生の見せ場はねぇだろう」

上条「んー……シェリーも仕事帰りだったのか?」

シェリー「あぁ。呼ばれたんだよ。つっても片手間でも出来るようなやっつけだったけどね」

上条「へー、ってか結局そっちのどんな依頼だったんだ?」

シェリー「スフォルツァ版タロット、まぁ現存してる古いタロットの復元“推定”作業だな」

上条「推定?」

シェリー「あぁ。スフォルツァ版タロットはイタリアのミラノ公爵スフォルツァ家が画家に描かせたもんだ」

上条「そこら辺はバードウェイから聞いた。キャリー?なんだっけ?」

シェリー「『キャリー・イェール版タロット』だ。スフォルツァ版の中でも一番古い。つまり正真正銘最古のタロットよ」

上条「色が落ちたとかカビが生えたとか、そういう復元処置?」

シェリー「いや、そうじゃなくてだな。キャリー・イェールのアルカナは全部で11枚しかねぇんだよ」

上条「半分以下じゃんか」

シェリー「そうよ。だからまぁ、『残りの12枚を当時の画風で描かせたらどんな感じ?』ってのが、今回の計画」

上条「あー……半分以上ピースの欠けてるパズルを、残った破片から全体の絵を描く感じ?」

シェリー「それだなぁ。『こんな感じに描いたんですけど、当時の流行りの書き方で合ってますか?』ってのにダメ出しをする仕事」

上条「散逸したアルカナの復元なぁ。それ、そんなに価値があるもんなのか?」

シェリー「さぁ?そっちの魔術は専門外――でも、ないか。カバラとタロットは親和性が高いけど」

シェリー「ま、私には関係ないし、そもそも学園都市主導のプロジェクトだし?」

上条「魔術サイドから見たら?霊装にするとか?」

シェリー「あー……神話象った武器は多いがなぁ。でもタロットはちょっとアレだ」

シェリー「グングニールって知ってるか?オーディンの持つ槍。ゲームとかにも出てんだろ」

上条「あるなぁ。最上位系の武器だ」

シェリー「アレの名前を持つ霊装は大量にある。でもまぁ効果はまちまち」

シェリー「私の知ってる限りだと、雷喚んだり、ルーンのランダム精製だったり、貫通強化とかな?」

シェリー「何が言いたいかって言えば、普通の霊装がモチーフにするのは『神話』なんだよ。神の武器とか逸話とかを再現するんだ」

シェリー「けどタロットはそうじゃねぇだろ?」

上条「あー確かに。バードウェイの場合だと『タロットを使って寓意を再現』してるよな?」

シェリー「……お前、そういう勘だけは鋭いのな」

シェリー「だからまぁ?こいつらみたいに使う事はあっても、『タロットカードを再現したって意味はない』んだ」

上条「それが神様の武器でもない限りは、って話か?」

シェリー「大体そんな感じじゃねえか。タロットは『手段』であって『目的』じゃねぇ」

上条「タロットに関しての逸話とかないの?」

シェリー「『黄金』系の魔術師が好んで使う以外には殆ど……あぁ、まぁ今で言う都市伝説みたいなのは聞いたな」

シェリー「キャリー・イェール版を含むスフォルツァ版タロット、通称『プリマ・タロッコ』」

シェリー「『原初のタロット』って言う意味なんだが、このタロット群には共通点があんのよ」

シェリー「それは『どのデッキも共通して二枚だけ足りない』の」

上条「イェール版は11枚、他のも散逸してるだけじゃないのか?」

シェリー「んー、その可能性もあるかしらね?」

シェリー「けれど、幾つか残っているデッキの内、『悪魔』と『塔』のアルカナだけなくなっているのは不自然じゃない?」

シェリー「だから後にタロットを、というか古美術の収集家達はこう囁かれた」

シェリー「『タロットで“塔”を引いてしまうと、悪魔が現れて持ち主を連れ去ってしまう』」

上条「お、おぉう!都市伝説系の話だなっ」

シェリー「だから当時の持ち主達は意図的にその二種類のアルカナを廃棄した、という噂」

上条「すっげー縁起の悪いカードだから、最初から存在しなかったとか?」

シェリー「それだと後年のタロットに悪魔と塔があるのはおかしいじゃない?」

上条「教会とかに配慮……も、今更っぽい気がするし」

上条「それじゃ今回の事件とタロットの復元は無関係かぁ……いやでも、タイミングが良すぎるって」

上条「前に言ってたけど、『木原数多』がシェリーを罠に嵌めるために喚んだんじゃないか、って」

シェリー「やりかねないけど……なーんか不自然なんだよなぁ」

上条「どこが?」

シェリー「バードウェイはそう睨んでるんだろうけどよぉ。それにしちゃ手が込みすぎてる」

シェリー「再現されたアルカナが異常な程、塗料からキャンバス、描き方も完璧に当時のやり方を模倣してんのよね」

シェリー「ホンモンだっつって売ったら高値がつくレベルよ」

上条「カモフラージュ的な奴かも?」

シェリー「だったらもっとやっつけ的な感情が入る筈だ。私の勘だけども」

シェリー「……まぁ何にせよ。仕事は今日で終りよ」

上条「え、帰っちまうのか?」

シェリー「別口で誘われている仕事もあるんだが、クソ木原をぶん殴るまでは帰らねぇ――帰“れ”ねぇわよ」

上条「寂しいような、残念なような」

シェリー「だったら遊びに来い。ウチの女子寮は慢性的な人手不足だし」

上条「パシリ前提じゃん!?」

シェリー「何だったら管理人にでもなっちまえ。オルソラと神裂のどエロい体が毎日拝めるぞ?」

上条「べ、別に俺はそんな事じゃ心轢かれないからなっ!やめろよっ!それ以上余計な事は言うなよっ絶対に!」

シェリー「キモノ?の下って下着着けないんだなぁ」

上条「取り敢えず英語は話せないとダメかな?家事全般は出来るし、就労ビザはそっちで何とかなんない?」

バードウェイ「おい、そこの話についていけない残念なガキども。そろそろ戻ってこい」

バードウェイ「――と、言う訳で専用の部屋は用意してある。マーク、お連れしろ」

マーク「はい。ではこちらへどうぞ。表に車を回して御座いますので」

芳川「じゃ、さっき言った通りに」

バードウェイ「頼む」

一方通行「俺ァネットの方か――って待て待て。どォして俺もローテに入ってンだ」

バードウェイ「元の恩師だろ?死者は墓場へ返してやる義理もあると思うがな」

一方通行「……墓穴掘ったのも俺なンだがなァ」

バードウェイ「クロムウェルは私と外回りだ。着いて来い」

クロムウェル「私もか?」

バードウェイ「嫌とは言わせんぞ。お前のゴーレムは探知系も結構イケる筈だ」

クロムウェル「あー、禁書目録探しに見せちまってたかー」

バードウェイ「ヘッドギアのソフト面やウイルスの配布先は、私達だとどうしようもないからな」

バードウェイ「だからハード面から探すぐらいはしないとな」

上条「そっか。それじゃ」

バードウェイ「あぁお前は別行動だよ。もっと大切な役割がある」

上条「……マジで?俺要らない子じゃない?」

バードウェイ「そうだ。お前にしかできない事だ」

上条「……良し!言ってくれバードウェイ!」

バードウェイ「夕飯はテンプラ、出来れば鳥肉のテンプラがいい。なんだっけかな?あの葉っぱ?」

クロムウェル「三つ葉?」

バードウェイ「それも頼む」

クロムウェル「それじゃ私は肉無しの掻揚げで。タマネギ入れるの忘れるなよ」

バードウェイ「……貴様は朝だけじゃなく、夕飯もねだりに来るのか……?」

上条「えっと、あの……なんつーか、俺の想像してたのと違うよね?」

上条「どっかに乗り込むとか!尾行するとか!そーゆー事じゃねぇの!?」

バードウェイ「……あのなぁ、上条当麻?よく考えてみろ?」

バードウェイ「『SEED』自体はレベル3になれるって触れ込みだ。分かるよな?」

上条「あ、あぁ」

シェリー「つまり実質それ以下の連中を相手しかいねぇって話だ」

上条「レベル低い強敵だっているかも!」

バードウェイ「こんな胡散臭い、中二病をこじらせでもしないと着けられないような、痛々しい帽子をだぞ?」

バードウェイ「真に受けるような連中だったら、下地からして大した連中じゃないだろう?」

上条「元々ゴミみたいな相手しか引っかからない?」

バードウェイ「そう思わせておいて、という罠の可能性もあるが。まぁそれを言ったら始まらん」

バードウェイ「ともあれ人手は足りている。お前は夕飯の事だけ考えろ」

上条「えっと――『マークさん、お前んとこの結社、明らかにブラック結社だよね?』っと」

バードウェイ「泣きそうな顔でメール打つんじゃない!文句は本人へ直接言え!」

シェリー「あー……ほら、だったら円周の能力でも聞いとけば?」

バードウェイ「あれもある意味、お前しか出来ないよなぁ」

上条「俺って『円周係』なの?」

バードウェイ「適材適所だ、がんばれー……っと、そうそう。言い忘れてた」

上条「何?天ぷらソバにでもしろって?」

バードウェイ「そんなハイブリッドがあるとは……!?……ではなく、ここでの会話は秘密にしとけ」

上条「はい?」

バードウェイ「『木原』に聞かれると少々拙い。だから情報が漏れるリスクは最低限に抑えるべきなのだよ」

上条「それは……理屈は分かるけどさ!」

バードウェイ「納得はしてないって顔だな」

上条「でもそれは円周に変な人格がインストールされていたからであって!」

バードウェイ「成程。君の理屈は理解出来る。しかし君は事態を理解してはいない」

バードウェイ「別に洗脳などしなくとも、幾らだって協力は出来るだろう?例えば――」

バードウェイ「『最初から木原円周は向こう側で、スパイになるために潜り込んできた』とかな?」

上条「お前それ本気で言ってんのかよ……!?」

一方通行「……おい。そりゃァそのちっこいのが正論だァ」

バードウェイ「ちっこいは余計なお世話だよ、白いの」

一方通行「『木原』ってェのはそういうもンなンだよ。少なくとも一長一短で更正するよォな奴じゃねェ」

上条「でもほら、信じるのって大事じゃないかな?子供は信頼に応えたい、ってやる気を出すような感じで」

上条「お前だってそうだったろ?打ち止めとか居なかったら」

一方通行「……買いかぶってくれンのは、反吐が出る程嬉しいンだがよォ。そいつァお前の理屈だ」

一方通行「俺がモルグへ送った連中は少なくねェ。そいつらの家族からすりゃァ悪党だってェのは今も変わらねェだろォ」

一方通行「オマエみてェに不殺を貫く義理はねェし、そっちの方が良いと判断すりゃ迷いもねェし」

一方通行「そンな俺だから言わせて貰う。『木原』は、あの『木原』は鬼子だァな」

一方通行「あンなガキっぽいナリをしてンのも全部擬態で、本性は虫みてェな野郎だって可能性もある」

一方通行「気ィ許したつもりでも、実は喉笛に食いつかれてンのはどっちだ、ってなァ?」

上条「……その、さ。俺は、まぁ人を見る目はないし、はっきり言やぁ不幸だけども」

上条「それでも、信じた相手に裏切られた事はないんだよ」

バードウェイ「ふん、皮肉のつもりか?」

上条「お前は違うだろ。裏切ったフリをして、世界を救おうとしただけだ」

上条「でも、結局はまた、戻ってきてくれただろ?俺を信じてくれたよな?」

上条「お前もそうだよ一方通行。確かにお前はそう『割り切って』生きていこうとしたんだと思う」

上条「だからもし、お前の前にお前が殺した奴の家族が来たら、俺も一緒に頭を下げるよ」

上条「そんな『価値』がある友達だって、そんな事が出来る相手だって教えてくれたのはお前じゃないのか!?」

上条「お前が打ち止めにした事は、誰が何と言おうと『正しい』よ。それは俺が、保証する」

一方通行「……バカじゃねェのか?ほンっとォに」

上条「目の前子供一人助けようとして、学園最強を失いそうなったバカに言われたくはねぇよ」

シェリー「バードウェイ」

バードウェイ「……わかったよ。ならばそれもお前の『運』に賭けてみよう」

バードウェイ「情報云々に関してはお前に任せる。好きに話せばいい」

上条「ありがとう」

バードウェイ「上条、上条当麻!」

上条「……ああ」

バードウェイ「ただ一つだけ約束をしろ。私はお前を『信じた』、だから――」

上条「――俺もお前を『信じる』よ。何があっても」

バードウェイ「結構。では作戦に移りたまえ」

上条「了解――っとそうだ、バードウェイ」

バードウェイ「何だ」

上条「もし円周が何かして、危なくなった時には俺が責任取るから」

バードウェイ「生意気言うな。私を守るなんざ10年早い」

上条「あれ、周期短くなってね?」


※今週の投下は以上となります。読んで下さった方に感謝を

――広告

※ネタバレを多々含みます。原作小説・コミックス・アニメ見てない方は要注意


佐天「ちゃんらーーーーーーーーーーーーーんっ!いっえーーーーーーーーーーーいっ元気だったかヤローどもっ!」

佐天「テレビの前のみなさんに、モニタの前のみのさんは元気かなー?んー?」

上条「みなさんな?“みの”さんじゃないからな?」

佐天「『右手は既に成人しており、本体の自分の責任が問われるのはおかしい』」 (キリッ)

上条「みのもん×ネタでごり押しするの止めよう?確かに放送していた当時は無かったネタだけど」

佐天「道義的責任ってどういう意味なんでしょうね?」

上条「『俺達の嫌いな日本人を攻撃するための難癖、ただし民主×が与党の時には使わない』じゃないかな?直近の民意と同じで」

佐天「いやぁ東京オリンピックも決まりましたしー、良い事ばかりですねっ!」

上条「そうだね、一部のバカが『同調圧力』とか言って『気に入らない俺の意見も尊重しろ!』とか寝言ほざいてるけどな」

佐天「そう言えばあたしとフェブリちゃんのお風呂シーンって要りますっけ?」

上条「大人の事情でね!話の展開で初春さんが荷物を確かめるためにも必要だったよ!」

佐天「『佐天さん巨乳説』もあながち根拠の無い話ではない、と?」

上条「アレなぁ……うん。色々と問題あるんじゃねーの?佐天さん細いし、結構あったような……?」

上条「つーかさ、何で佐天さん衣装とか髪型とか変えまくってんの?ポニテとかポニテとかポニテとか?」

佐天「いやいやっ、あたし関係ないですってば!神裂さん十八歳に悪くて悪くて」

上条「オイオイ制作、力入れすぎじゃねぇかなぁ?」

佐天「『アイテム』さんも、原作そのままの衣装使い回しでビビリましたっ!」

上条「いやぁ良いと思うんだけどさぁ。うん?」

佐天「――はいっ!と言う訳でつかみもオッケーです!番宣ですっ!」

上条「え、今の愚痴流れんの!?痴漢疑惑も全部!?」

佐天「どーせ見てる人なんか居ませんって。番組の間の紹介番組ですし、別枠で一本撮るような内容でもありませんし?」

上条「まぁ宣伝だけだしなぁ、基本」

佐天「あ、それじゃ何かやっちゃいます?『学探』らしく、ちょい怖エロ不思議な話でも?」

上条「エロは皆無だよね?ヌレなんとかさんお盆編で入れようかなって思ったけど、メインとはかけ離れているから外したんだし」

佐天「あれ意外と人気あったから、地の分入れて別番組として放送するかもですねー」

上条「でもなーんか中途半端なんだよなぁ?食蜂さんのキャラが濃すぎるのかな?」

佐天「所詮おっぱい大きい人には勝てないんでしょうかねぇ。なんかノーブラっぽい感じですし」

上条「……あれは卑怯過ぎやしないか……?」

佐天「ある意味『能力絶対主義』を体現している気も。金髪さんはよくやってますってば」

上条「ネタ抜きで人気が今一なんだよなぁ、『声優はアタリだよね!』的な意見もあるが」

佐天「ま、それはさておき何かありますか?怖い体験したとか?」

上条「そーなぁ……?私生活では死にそうになってるけど、いつもの事だし?」

佐天「文庫本30冊前後に渡る大冒険ですねっ!」

上条「ステマじゃないよ?確かに読む人が広がるのは嬉しいけども、俺にギャラが入る訳じゃないからね!」

佐天「あたしもまぁ……あ、そういえば!ヌルっとした人に追い掛けられました!」

上条「コミックスの話な?なんかいいの、あれ?他にも新キャラ目白押しなんだけど」

佐天「神様と神様が打ち合わせしてる時点で、あっれーっ?って感じですけど」

上条「超電磁砲側のキャラ比重がね、うん」

佐天「『実はお守りを貸していた』というフラグが!ついに本編でもあたし無双来ますかね!?」

上条「食蜂さんみたく『本編?なにそれオイシイの?』状態だったのに、気がついたらガッツリ食い込んでいるのもどうかなぁ?」

佐天「では次回予告こんなんどうでしょ?――『次回予告・科学と魔術が交差しないセカイで上条が見たものとはっ!』」

上条「あー、一回壊れた世界を再構成的な?」

佐天「『魔術も進んだ科学もないセカイ』で、フツー代表のあたしがヒロインで学園ドラマ!」

上条「ありそう。ヒロイン云々はともかく、その展開確定じゃねぇかなぁ?」

佐天「食蜂さんが小説版で堂々と伏線回収に来ましたし、ネタ抜きで出るかも?」

上条「どうだろうなぁ?割とイッパイイッパイって言うか、そろそろどうにかしないと飽和状態だと思うんだけど」

佐天「ヒロイン使い回しは斬新ですけどねー。逆に言えば『ただの酷い男』ですから」

上条「胸がイタイ言葉ですよねっ!身に覚えはないですけども!」

佐天「禁書雑談スレでも誰かが言ってましたが、オティヌスさんも次巻で『びいえぇぇぇぇんっ!』っなっちゃってる可能性が」

上条「あー黒夜さん的な?」

佐天「何故か浜面さんのオプションになってて驚愕しましたよ」

上条「だよね?あの流れってそういう流れだよな?……いやー」

佐天「おっ、ハーレムキングの上条さんとしては何か言いたそうですなー」

上条「その称号に思い当たる節はないけど、『大丈夫?』って」

上条「浜面良い奴なんだけど、つーか多分俺が小説とかマンガ描くんだったら、あーゆー三枚目にすると思うんだよ」

上条「『劣等生』の達○さんとか、『友人○』の夏○とかじゃなくて」

佐天「流行りですしねー。シリアス時のギャップ萌え的な」

上条「でもこの禁書世界で果たして主人公としてやっていけんのかなって」

佐天「対麦野さん戦ではミラクルの大安売りでしたけど、オブジェクトの方みたいに?」

上条「クウェンサーとヘイヴィアは正規の軍人プラス天才だろ?どうにもハマーが活躍する下地的な説得力がなぁ」

佐天「NARUT×も気がつけば『あの名高い○○一族の××!』みたいに、完全に血統もしくは師匠自慢になってますし」

上条「全員エリートなんだよなぁ。リ○だって『実は体術の超天才』だし、無いのは……テンテ○とサ○ぐらい?」

佐天「あの方は王国民の加護がありますゆえっ!」

上条「妖精さん入ったの?確かにあれ可愛いけど、俺『最果てのイ○』初回版が音声無しのはまだ許してないからね?」

佐天「当時ですらボイス当たり前なのに、どうして入れなかったんでしょうね?」

上条「何年か経ってから『完全版』としてフルボイス版出たけどなー」

佐天「これは特定のライターさんをdisってワケじゃないんですけど――」

上条「おいやめろっ!誰にケンカ売るつもりだっ!?」

佐天「鬱シナリオとかバッドエンドしか書かない人って、何か違くありません?」

佐天「あー、いえいえ。悲劇的な文学はメジャー、ってかむしろそっちの方が多いですし、それが悪いとは思いませんよ?」

佐天「んでも最近の『鬱合戦』的な、悲劇シナリオの量産化はどーにも違うような気がします」

上条「あー……なんだろうな。なんか悲劇的な話が過大評価されてる感じだよな」

佐天「インデックスさんの『向日葵』も話的には悲劇で終わらせた方が『締まる』んですね、えぇ」

佐天「作品のインパクトとして読者の方にも残りますし、続編的なもので補完すればそれはそれで満足するでしょうし」

上条「でもなんか嫌なんだよ、そういうの。『良い子は幸せにならないといけない』ってのが絶対であって」

佐天「まぁ商業作品じゃないですし、反響その他は最初から度外視だった、ってのもあるんですが」

上条「随分話が脱線しちまったけど、なんか小話無いの?」

佐天「弟のメル友さんの話で良ければ」

上条「だから縁切った方が良いって!」

佐天「これは白木○で隣に座ったヤク×の会話を再現したものです。あ、勿論名前とかは適当に変えてありますよー」

上条「あーうん。何?また実話系なの?割と変な体験してるよね?」

佐天「ではカンペ渡しますんで、兄貴役お願いしますね――『兄貴、俺、もうダメかも知れません』」

上条「『なんでぇな。どうしたんじゃワレ』……無理な方言使うのやめよう?ギャグになるから」

佐天「『こないだ“オレオレ”したんです。でも、そしたら』」

上条「『何?ノルマこなせなかったんか?』」

佐天「『もしもしオレオレ、俺だけど――ってしました。いつものように。そしたら』」

佐天「『……タカシ?タカシなのっ?っておばさんが』」

佐天「『だからわし、俺タカシだけどカネが必要になってん!早く振り込んでくれないと――って』」

佐天「『でも、そのおばさん電話口で、タカシ、タカシぃって泣きだしたんです』」

佐天「『なんか気味悪くなって、切ろうとしたんですわ。そしたら、そのおばさんがいきなり――』」

佐天「『――タカシぃ!あんたもう死んでんねんで!って』」

上条「……」

佐天「……」

上条「……え?マジで?マジ話?」

佐天「五年ぐらい前の話ですけどねー、実話です」

上条「モニョる感がハンパねぇんだけどっ!何つったらいいか分からないが!」

佐天「まぁ人間のクズだしいいんじゃね?って笑い話でしたー」

上条「笑えないだろっ!?つーか事はおばさんちにタカシ今も電話掛けてきてるって事じゃん!?」

佐天「親孝行ですよね?」

上条「ウルセェっ!そのポジティブシンキングがウルセェよ!」

上条「ポニテなんて凄い似合ってたからな!次々と新規ファン開拓するの止めて貰えないかなっ!?」

佐天「おっと途中から褒め殺しになってますが――ここで宣伝ですっ!」

佐天「次の日曜日、2013年10日6日、池袋サンシャインシティでSS速報の同人誌が出る事になりましたーっ!」

佐天「サークル名は『SS速報同人部』!本の名前は『別冊SS速報第1巻』だそうですっ!」

上条「あー確定したんだ。良かったー」

佐天「参加した作家は>>1のも含めて6名程、推薦とか宣伝は集まらなかったので、今回は掲載を見送ったそうです」

上条「まぁ……誌面だってタダじゃないんだから、勧めにくいよな。うん」

佐天「尚、前に書きましたけど、基本無料で配布」

佐天「ですが、側に空ティッシュ箱か缶を置くそうなので、現金的なモノを入れて下さると嬉しいとの事です」

上条「作って下さってる方は時間や印刷とか、色々なものを犠牲にしているから、せめて見合う対価は貰っても良いと思うけど」

佐天「人気がなければ第二巻、三巻は出ないでしょうし」

上条「俺らが出る話は『「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!出張版!」 『藤娘』』か」

佐天「あたし達二人がたまたま泊った旅館で次々と起こる怪現象!?」

佐天「意味もなく喋るミイラや誰が世話していたのか不明なピラニア!」

佐天「果たして二人は無事に脱出できるのくわっ!」

上条「違うね?それ弟切○だよ?」

上条「実際にはいつもと同じテンションでグダグタしかしなかった筈だけど」

佐天「ちなみに>>1はこのお話を公開するつもりはありませんので、読むには冊子しかないんですねー」

上条「あんま言いたくないけど、>>1の話って別に金出す程面白いかと言えば……うーん?」

上条「他に寄稿された方は面白いと思うけど」

佐天「会場にお立ち寄りの方は是非いらして下さいねっ!」

上条「お願いします。割とマジで発 ◆DiH/DBdYeoさんに迷惑かけたくないんです」

佐天「全部捌けたら『学探』のセカンドシーズンが来るかもなっ!」

上条「あー、まぁ反響次第だな。番組改編の時期だし、スペシャル一本あってもおかしくないっちゃないけど」

佐天「次のシリーズ、『レッサー「這い寄れ!レッサーさん!」』の準備で忙しいんでしたっけ?」

上条「止そう?『学探』のネタ予告がいつの間にか現実化してるんだから、不用意な事は!」

佐天「まぁそんな感じで!冊子でボクと会おうぜっ!約束だあっ!」

上条「……真面目にお願いします。会場に行った方は是非お立ち寄り下さい」


――広告 -終-

※行かれる方は本気でお願いします

――とあるメイド喫茶

カランカランッ

円周「『お帰りなさいませっご主人様!何名様でいらっしゃいますかー?』」

上条「取り敢えず雲川さん呼んでくれないかな?ぶん殴って説教するから」

上条「半日会わない内に、そのあつらえたようなミニスカメイド服を着せたバカを呼べ!」

円周「『鞠亜ちゃんご指名入りましたー!』」

上条「そういうシステムなのかっ!?完っ全にっいかがわしい店じゃねぇかよっ!」

円周「あれあれー?当麻お兄ちゃん、いかがわしいお店ってどういう意味?」

上条「へ?お前何で突然素に戻って」

円周「いかがわしいってどういう事?何をするのが、ダメなの?ね、ねっ?」

上条「あ、あれ?どうして俺はメイド喫茶の入り口で言葉責めをされているの?」

円周「お兄ちゃんはどんな事を想像したのかなー?具体的にどんなイケナイ想像しちゃったの?」

円周「ほぉら、円周に教えて?ねっ?」

上条「もう何か空気違うしっ!?つーかお前が俺をお兄ちゃん呼ばわりすっと、周囲から何故か殺気が飛んで来るんだよ!」

鞠亜「……おいそこの変態エセ兄妹。営業妨害にも程がある。帰ってやれ」

円周「うん、うんっ!帰ってからヤるよっ!」

上条「帰ってもやらねぇよ!ヤらねぇよっ!?」

鞠亜「あー、すまない先輩。今丁度、というか二時間ぐらい前から満席でな」

上条「いやあの円周迎えに来ただけだから、お構いなく?」

鞠亜「……ふふっ!たった数年先に生まれただけの相手に、先輩と呼ばせられる屈辱!また経験値が上がるぞ!」

上条「構えよ!客じゃねーけど必要最低限の礼儀は持て!」

鞠亜「やれやれ、困ったちゃんなご主人様だな――だが、それがいい!」

上条「……父さん母さん、都会はとても怖い所です……!」

円周「実家のパパとママ、元気でやってるかなー?」

上条「うん、お前の両親じゃないけど元気だよ?」

円周「やったねお兄ちゃん!家族が増えたよ!」

上条「それの元ネタは夢も希望もない最低のお話だからな?」

円周「今日はねー、鞠亜ちゃんが来るって告知してあったから、お客さんいっぱいなんだよー?」

上条「……どう考えてもメイドのスキル上達以前に、商売ネタになってるよな?」

鞠亜「エセメイドを量産させるのは諦めるとして、せめて質を上げようとする方針なんだがね」

上条「事態の解決どころか、その内悪貨が良貨を駆逐する勢いなんだが――つか帰るぞ」

円周「遅番の人来るまで30分ぐらいだし、もう少しだけいちゃダメかな?」

上条「そんぐらいだったら、まぁ」

鞠亜「それでは店内でお待ち下さいご主人様――と、言うべきなのだろうが、生憎満席でね」

上条「あぁ気を遣わなくってもいいって。近くのコンビニで立ち読みでもしてっから」

円周「店内にお兄ちゃんの知り合いとかいないの?メイド好きの一人や二人、居そうだけど?」

上条「いないっ――事はないけども!流石にそこまでアレな知り合いは居ないよ」

円周「それじゃ、さっきから手を振ってるあの人はだぁれ?」

海原『やぁっ奇遇ですねっ!』

上条「……他人です。知りません」

海原『守ると言っておきながらロシアまで出張させた上条さんではないですかっ!』

上条「……あれ、俺が悪いのかな?確かに動機はそうだけど、『知り合いのために核ミサイル止める』って……?」

円周「まぁ『知り合い』のためだったらそこまではしないよね。『知り合い』なら、だけど」

上条「うん?どういう意味?」

円周「『はーいっ!ご主人様お一人ご案内でーーーっす!』」

鞠亜「どうぞこちらへ、ご主人様」

上条「あぁどうも」

鞠亜「……格下の相手を丁寧に持てなさなくてはならない!これは人間耐久度がまた上がるっ!」

上条「お前もどっかおかしいよね?円周の事あんま強く言えないぐらい、何か病んでるよね?」

――同席中

海原「お久しぶりです。海原です!」

上条「知ってる。つーか誰に自己紹介してんの?」

海原「そんな事よりも中学生!メイト喫茶でジュニアハイスクゥゥルが合法的に拝めるとは中学生!」

上条「その語尾止めない?」

海原「自分を常盤台マニアだと思わないで頂きたい!」

上条「ふと思ったんだけど、お前って本当は幾つなの?ガワは中学生ぐらいだけど、中はオッサンだったら偉い事になるよね?」

海原「何を仰いますやら。自分は御坂さんLOVEであって決して中学生が好物でありません!――んが!」

海原「ただ、愛しているのですっ!!!」

上条「もうちょっとボリューム落として?周りの人らも、うんうんって頷いてるし、どんだけこの店は終わってんの?」

海原「見て下さいよお義兄さん!ほら、妹さんのメールアドレス貰っちゃいました!」

上条「少し頭冷やそうか?俺に殴られるのと、俺に殴られてから一方通行にシバかれるのどっちがいい?どっちも?」

上条「つーか没収だ。名刺寄越せ」

海原「あぁっ!せっかくジャンケンゲームで勝って貰ったのに!?」

上条「えっと……『hamadura-superstars-item-no-mens@doXXXXne.jp』……?」

上条「……ごめん、コレ返すわ。俺が悪かった」

海原「流石お兄ちゃん!心が広いですね!」

上条「確認するけど、それ円周から貰ったんだよな?」

海原「はい!『寂しくなったらここに掛けてね?』と!」

上条(あー……自分のアドレスとは言ってないからセーフ、か?)

上条(浜面、エロサイトにでも登録したのが流出してんぞ)

円周「お待たせしましたーっ!お兄ちゃんご主人様っ!」

上条「エロゲで言いそうだよね?……って俺、頼んでないけど?」

円周「店長からのサービスなんだって。オムライス嫌いじゃなかったよね?」

上条「むしろ好きだけど。んじゃ遠慮なく」

円周「あ、美味しくなる魔法を掛けるからちょっと待って?」

上条「やめろよっ!?痛々しいんだろ、どうせっ!?」

円周「『ふんぐるいむぐるうなふ――』」

上条「期待は裏切ったけど喚ぶな喚ぶなっ!?この世界でサス○ェの次に面倒臭ぇ連中とコンタクトとるんじゃねぇっ!」

海原「蕃神系の魔術師は新大陸に多いようですよ?」

上条「的確なアドバイスありがとうな!神様今Sのオマケで話書いてるみてぇだけども!」

円周「お、おいしくなぁーれっ!きゅるるんっ?」

海原「恥ずかしがってるその様子を激写――」

上条「――ってしてるバカに『幻想殺し(簡易版)』」

海原「冷たっ!?いきなりお冷やぶっかけるなんて酷いじゃないですか!?」

円周「ごめんねー、ご主人様?店内では撮影禁止だからね?」

円周「誰だって不意打ちで撮られるのは嫌でしょ、うんっ」

上条「良かったー、その程度のモラルはあんのね」

円周「だからまず『勝てばラミカプレゼントゲーム』をクリアして貰わないとっ。一回500円だけど」

上条「金次第っ!?良識ねーじゃん!?風俗と何が違うよっ!?」

円周「どんな美人さんでも老いるんだから、稼げる内に稼いだ方が良いって思うんだけどなぁ」

海原「ですよね。反原発で元アイドルのババアがヌードとか、誰得状態ですし」

上条「……いいのかなー?女性から反発来そうな感じもするけど……?」

円周「女性の敵は女性なんだよ、お兄ちゃん」

海原「中には『家庭を持って子供が小学生になったらパート出て、後はちょいちょい趣味で生きよう』って専業主婦を望む方も居ますしねー」

円周「でも何故かそういう人は同性から『お前のようなヤツが女性の地位をダメにしてるんだ!』って責められて」

海原「普通であればそういった生き方も尊重されて然るべきなのに、『女性平等論者』からは目の敵にされる、と」

円周「『自分達以外の生き方を認めない』ってのがデフォだし、よくある話だよねっ」

上条「……お前らなんでそんなに詳しいの?飲み屋で上司から愚痴られたの?」

円周「まぁまぁそんな事は良いから食べてみてよ?」

海原「美味しかったですよ」

上条「不安だけど、頂きます――ん?」

円周「どうどう?」

上条「美味い、のは美味いけど。これって、俺の味だよな?お前が作ったの?」

円周「一昨日作ってくれたの『覚えた』んだよ?ね、ね、良くできてるかな?」

上条「……あぁ、うん。良いと思うけど」

円周「良かったーーっ!それじゃご主人様、ごゆっくりーっ」

上条「おー……ってお前時間を忘れるなよ!」

円周「いえっさーーーっ」

パタパタパタ

海原「新しい妹さんですか?」

上条「だったら楽だったんだけど。んー」

海原「あまり嬉しくなさそうな?成長する妹に対して感情を持て余すんですね、分かります!」

上条「おい変態。妄想はフィクションだけにしとけ?」

海原「では何でしょうか?悩み事でも?」

上条「やけに突っ込んでくるなぁ、今日は」

海原「……まぁたまには、そういうのも良いんではないかな、と」

上条「たまにはね……まぁ、たまにはいいか」

海原「えぇ。自分で良ければ聞きますよ」

上条「知り合いの話なんだけど」

海原「性欲を持て余す?」

上条「ごめん、俺今からお前を殴るわ?せーのっ!」

海原「ジョークですって!ジョーク!」

上条「あとせめて感情ぐらいにしとけ。色々と問題あっから。えと、なんだっけ?」

上条「……俺は一人っ子だから分かんないけどさ。弟なり妹が居たとして」

上条「そいつらは兄貴や姉貴の真似をするんだって?」

海原「……これはまたピンポイントで来る話題ですね。いやはや、なんとも」

上条「例えばオモチャとかも、上の兄姉が持ってるのを欲しがる、みたいなの」

上条「それっていつまで続けりゃ良いと思う?」

海原「兄の背中を追いかける妹、ですか……自分にも心当たりがありますが」

上条「お前、兄妹いるんだ?」

海原「というよりは兄妹弟子みたいな感じですかね。尤も、付き合いは長いので家族のそれに近いと思います」

上条「……その割に中学生ヒャッホウ!は、どうなの?反省しないの?」

海原「自分から言える事は『好きにさせとけ』でしょうか」

海原「『真似するな!後を追うな!』と言った所で聞きはしないでしょうし」

上条「……」

海原「いつかきっと、後ろを追いかけるよりも大切な何か見つける――それが普通ではないかと」

上条「……だな。それが『普通』だよなぁ」

海原「でももし、それが。妹が、例えばの話」

海原「自分の『隣』に並ぶのを望んだとすれば」

上条「……うん」

海原「……どうしましょうか?」

上条「考えてないんかいっ!?」

海原「いえ、お話も結構ですが、その前にすべき事があるのではないかと」

上条「何?」

海原「冷めますよ、オムライス?」

上条「……まぁ、それはそうか」

海原「考えるのはいつでも出来ますし、最悪棺桶に入ってからは暇になるでしょうからね」

上条「……お前、結構計画性ないよな?衝動的っつーか、外見に反して熱いっていうか」

海原「人の生き様は外見に出ると言いますが、借り物ですしね。自分は」

海原「故郷では『メキシコに吹く熱風!』と呼ばれるぐらいですし」

上条「サンタ○?柱の男だよね?シュトロハイ○から命名されたのに、カー○達からもなんでそう呼ばれてんの?」

海原「あぁ失敬。どうぞ召し上がって下さい……これからは自分の独り言と言う事で」

上条「……?」

海原「ここ数日、いえ下手をすれば一週間以上前から、妙な魔力の流れを感じます」

海原「自分には興味がないので放置していたのですが、少し気になりまして」

海原「ほら、選挙とか役所の広報カーとかあるじゃないですか?スピーカー鳴らして近づいてくるの」

海原「それと同じで妙な魔力も高まるにつれ、漸く正体が掴めてきた、ような気がします」

上条「随分と慎重な言い方だな」

海原「どうせまた一枚噛んでいるのでしょう?なら余計な先入観は与えず、自分の感想を直に伝えた方がいいかと思いまして」

上条「……それじゃ、お前ここで待ってた――」

海原「――のは、勿論タダの偶然ですけど。だからこれは世間話です」

上条「うん、知ってた」

海原「ベースは、恐らく十字教徒系の魔術、でしょうか。この街に大規模な儀式魔術を展開しようとしています」

上条(バードウェイが何かしようとしてるんだろうけど、またアイツ事後承認で動いてんのか)

上条「街ごと?」

海原「どんな種類のものかは分かりませんが……どうにも、不気味でしてね」

上条「良くない術式だって思うのか?」

海原「とは言いません。言いませんが、不気味と言いましょうか」

海原「アステカ帝国の最期はご存じでしょうか?……まぁスペインに滅ぼされて、今も尚間接的に十字教の支配下にあるのですが」

海原「帝国を滅ぼす際、動員された魔術師の『ニオイ』がするんです」

上条「ぶっちゃけるけど、今はイギリスの魔術師と共闘してるんだ。それじゃないのか?」

海原「いえ……いや、違うような気がします。イギリス――イングランドはイギリス清教でしょう?」

海原「スペインはローマ正教系。どうにもそちらのニオイがすると言いましょうか」

上条「俺の知り合い以外にも誰かが動いている、か?」

海原「あくまでも可能性ですが」

上条「その話、直接言ってやってくれないか?俺に伝えるだけじゃ、分からない事もあるだろうし」

海原「……すいません。それは出来かねます」

海原「あなたを信じていない訳でもないのですが、あなたが信じると決めたお相手までは、流石に」

海原「仮に学園都市へ攻撃を仕掛けようとしているのであれば、自分が会いに行くのは消されに行くようなものですし」

上条「いやぁ、そういう奴じゃないと思うけどなぁ」

海原「自分はセーフティみたいなものだと考えて下さい。危険な術式であれば、一も二もなく介入しますから」

上条「そりゃありがたいけど」

海原「勿論、あなたを敵に回したとしても、ですが」

上条「忠告……警告どーも。ま、お手柔らかにな」

海原「そちらこそお友達を大切に。外見がそうであっても決して油断なさらぬよう」

上条「後から刺す気満々じゃねぇか」

海原「それは自分のキャラではありませんが、臨機応変で。ではこの辺で失礼します」

上条「悪いな、なんか。待ってて貰っちゃって」

海原「おや?偶然だと言いませんでしたっけ?」

上条「そうだった。んじゃまた」

海原「えぇ。出来れば会わすに済む事を祈って」

――帰り道 夕暮れ

上条「おつかれー。大変だった?」

円周「そんなには?メイドさんも大変だなっては思ったけど」

上条「アレはメイトじゃなく、コスプレしたウェイトレスさんの仕事だと思うけど」

上条「あ、でもお前ちょっと恥ずかしそうにしてなかった?オムライスに妙な呪い掛ける時とか?」

円周「演技に決まってるじゃん?恥ずかしがった方がお客様も喜ぶし」

上条「……え!?って事はよくマンガやアニメでネタにされるような話は」

円周「お金のために割り切ってるよ。むしろ「バカじゃねーの?」って笑ってると思うし?」

上条「営業妨害になんねぇかな……」

円周「やってる方はプロだからねー。むしろ広まったら広まった勝ちみたいな?」

上条「バカしてるつもりがされていたり?」

円周「メイド喫茶も初めの頃はそうだったんだって。17歳の先輩が言ってたよ?」

上条「年齢はスルーするとして。まぁ最初は色物だけど、色物として取り上げられていく内に定番になっちまったしなぁ」

円周「だから後は差別化――ご飯が美味しかったり、女の子がお料理したり、色をつけるんだって」

上条「お前も作ってたんだっけ」

円周「キッチンのバイト募集中だから、一緒にやろーよーっ?ね、いいよねっ?」

円周「従食もつくし、鞠亜ちゃんルートにも入れるし、いいことずくめだよねっ!」

上条「勝手にルートを固定するな!……普段ならやるかもだけど、今はいつどんな事が起きるか分からないからなぁ」

円周「むー。それじゃわたしもダメかな?『良かったら明日も』って鞠亜ちゃんから誘われてるんだけど」

上条「あ、気に入ったんだ?情操教育には良くないと思うけど」

円周「え、好きじゃないよ?全然?」

上条「――はい?」

円周「別に嫌いって訳でもないけど。んー?どっちかっていったら『どうでもいい』かな?」

上条「うん?それじゃなんでやってんだ、つかやりたがったんだ?」

円周「『若い女の子は可愛いモノが好き』なんだよね?だから」

上条「えっと……もうちょっと分かり易く頼む」

円周「って聞かれてもなぁ。シェリーお姉ちゃんにも説明したんだけど、分かって貰えなかったみたい」

上条「こないだの話だよな?無線が切れ切れでよく聞こえなかったけど、『筺(はこ)』がなんとかって」

円周「それそれ。人は肉体の中に色々なモノを詰めてるよねって」

円周「信念、記憶、お仕事、趣味、家族……あとお友達とか?」

円周「でも逆に――中身が『からっぽ』であっても、その人は人間なのかなって」

上条「……それ、ちょっと場所移そうか。そこに公園あるし、少しぐらい寄り道したって良いだろう」

――公園

ガコンッ、ピピピピピッ……

自販機(cv.成瀬未○)『はっずれー。残念でしたねーっ』

上条「……まぁ、いつもの事だけど」

円周「こう言うのはゲームセンターのプライスマシンと同じで、一定額に達するまで絶対に当たらない仕組みなんだよ」

上条「そうなのかっ!?てっきり運が悪いのかとばかり」

円周「『設定額まで貯まりきった自販機に出くわす』事自体は運だと思うけどねー」

上条「単純な運だけじゃないって分かっただけとでも良しとしよう……椰子の実サイダー?」

円周「――は、お兄ちゃんどうぞ。わたしはコーヒーが好きかなぁ」

上条「寒いしなー」

円周「あっちのベンチ開いてるね、行こうっ?」

上条「ん」

円周「あ、お兄ちゃん、先座ってー」

上条「お、おぅ?」

円周「しっつれいしまーーーすっ!」 ポスン

上条(円周が膝の上に乗っかってきた……軽いな)

円周「ごちそうさまでしたーっ」

上条「飲むの早ぇなオイ」

円周「言われてみれば喉渇いていたかも?」

上条「店内は結構暑い、っていうか熱気ムンムンだっだよなぁ」

円周「流石に雲が出来る程じゃあないけど、お客様はみんな薄着だよねっ」

上条「え、エコで良いんじゃないかな?」

円周「お店のご主人様は、どうしてみんな黒い服しか着てこないの?仕様?」

上条「CPを別の所に割り振ってるから、ファッションまでは気にしないだけじゃないかな?」

円周「携帯でパンツ撮ろうとした集中力を別に回して欲しいかも」

上条「……一応聞くけど、そいつどうした?」

円周「指の関節を一つ“ずつ”増やして、アンチスキルに突き出しておいたよ?」

上条「まぁ……自業自得かぁ?」

円周「――で、お話しってなぁに?みんなの前では出来ない事?」

上条「あー、まぁ。お前が『足りない』ってのは何かなって思ってさ」

円周「わたしには足りないんだって。本来入っているべき感情とか、『木原』としてあるべきものが」

円周「まぁそれはわたしの能力も関係してるんだけどねぇ」

上条「そういや聞いてなかったな。つか聞いてもいいのか?」

円周「別に内緒にするつもりはなかったんだけど――そだね、見て貰った方が早いかも」

円周「あっちにさ、ド下手なストリートダンス踊ってる女の子達がいるよね?」

上条「いる……な。下手かどうかは分からないけど」

円周「んー、あぁいう子達は形から入るからねー。まぁそれもアリだと思うけど」

上条「何かマズイの?ヒップホップ系?だかのだらーんってした格好じゃん」

円周「元々はアメリカの貧民層発祥の音楽スタイルだからねぇ。そういった子達は親兄弟のお下がりしか貰えないとか普通だし」

円周「ラッパーが元ギャングはザラで、死んじゃった大物の中には麻薬の運び屋さんとかも居たりするし」

円周「ムーブメントが起きると、憧れた人達がサイズの合ってない服をわざわざ買うとか逆だよねー。明らかに」

上条「ブルース歌手が大金持ちになったりとか?」

円周「今じゃ『俺は金持ち万々歳』的な歌詞も多いし、プロモーションビデオを見てると美人のねーちゃん侍らせてばっかだし、なんだかなぁって」

上条「……日本にもいそうだもんなぁ。親の金で四大入って新品のフーディ着てラップ歌ってる奴とか」

円周「外人さんが片刃の曲刀持ってサムライごっこしてるのと同じだよねぇ」

円周「剣術が幾ら上手になっても、日本人からすれば笑っちゃうだけだよ。それと同じ」

上条「随分辛辣だけど、まぁそれはそれでいいんじゃいないかな、うん」

上条「本人が好きでやってるなら、誰に笑われたってさ」

円周「お兄ちゃんは甘いなぁ。でもそう言う所は愛しているよっ!」

上条「はいはいどーも」

円周「もういいかな。んじゃちょっと見ててよ、っと」

上条(そう言うと円周は膝の上から下り、彼女曰く『ド下手なストリートダンス』を披露し始める)

上条(俺との雑談中に見ていた子達のと、寸分違わずに。途中で少しトチる様子も正確に再現している)

円周「――はい、ありがとうございましたー。これがわたしの能力『卓上演劇(テーブルトーカー)』だよ」

上条「凄げぇな。見ただけでコピーできるのかよっ!」

円周「ううん。出来ないよ?」

上条「いや、したじゃん今っ!」

円周「んー、なんて言ったらいいのかなぁ……?これは低能力(レベル1)なんだ、お兄ちゃん」

上条「そう、か?少なくても異能力(レベル3)ぐらいはあると思うんだけど……あ!なんかすっげー疲れるとか?」

円周「別に人並みじゃないかな、ってそうじゃなくて。本当にレベル1なんだって」

円周「分類的には電気能力者で、外部入力で相手の動作を覚えて、体に電気信号を流して再現するってだけの」

上条「いや、お前の見る限りだと充分なんかに使えそうだろ?」

円周「その『外部入力』ってどうすると思う?」

上条「外部って、そりゃ憶えるんだろ?パソコンみたいに取り込めないから」

円周「その『憶える』のに『何時間も何日もかかる』んだって、普通は」

円周「だってそうだよね?普通の人だったら完全記憶能力でも持ってない限り、人の動作を憶えるなんて無理だし」

円周「『卓上演劇』は『自身の記憶にある動作を、正確に再生出来るだけ』の能力なんだよ」

上条「……つまりアレか?お前が今のストリートダンスをうろ覚えだったら」

円周「当然うろ覚えにしか再生出来ないよ?」

上条「意味無ぇなその能力は!」

円周「だから汎用性も低いし、応用しようにも机上の空論だし?見て憶える自体は誰だって出来るから」

円周「目の前で絵を描いた人が居るとするよね?理論上は『卓上演劇』を使えばその人と同じ絵は描けるんだ。でも」

円周「『下書きから塗りまで全ての動作を記憶し続けるなんて、まず不可能』だよね?」

上条「……ホンっとーーーにっ、使い道ねぇな」

円周「あくまでも『自分の思い通りに体を動かせる』能力だし?逆に同じサインを数百枚書くとかは向いてるよねっ!」

上条「そんな状況一般人には生涯来ないよ?」

円周「いやー?鳴護アリサちゃんから泣きつかれたり?」

上条「仮にそうなったとしても、サイン色紙楽しみにしてるファンの人に申し訳ないだろ――あれ?待て待て?」

円周「年上好きにとってはシャットアウラお姉ちゃんの方が好みだよね?」

上条「俺はジェントルだからムキになって否定はしないけども!……いやいや、そうじゃなくてだよ」

上条「お前今使ってたよな?目の前で、たった数分ぐらいしか見てない踊りを正確に再現したよね?」

円周「したねぇ」

上条「もしかしてあっちで踊ってるあの子達知り合い?前から観察してたとか?」

円周「興味ないから自信はないけど、今日が初対面だと思うよ?人も踊りも」

上条「じゃあなんで、つーかどうやったんだ?一回見たぐらいじゃ、完全記憶能力でもない限りは――」

円周「あ、お兄ちゃん気づいちゃった?それが『木原』なんだよ」

上条「数分間の体の動きを完全に記憶したのかっ?」

円周「んー、足りないよ?それだけじゃ『木原』に届かないかも」

円周「あの日、数多おじちゃんにハッキングされた時から、わたしはスマートフォンもデータ端末も首から下げてないけど」

円周「あれは一体何のためだったと思う?ね、答えて答えて?」

上条「話の流れからすりゃ『外部からの入力』か……?あのグラフだけで?」

円周「あったりーっ!お兄ちゃんにはわたしをプレゼントーーーっ!」

上条「……」

円周「あ、あれ?引いちゃった?」

上条「……なぁ、円周」

円周「なぁに?」

上条「グラフだけの入力で個人を再生してしまった、それが――」

円周「わたしの『木原』だね?」

上条「凄い、けど。それはただの模倣だろ?」

円周「だけじゃない、ってのはお兄ちゃんも第一位相手で分かったでしょ?

円周「わたしは『木原数多』の戦闘データを再生出来れば反射も貫通出来た」

円周「それだけじゃないよ?中には人格パターンも戦闘データも入ってるから、それを脳内で『卓上演劇』すれば――」

円周「その人と同じ思考、同じ動きが出来るんだよぉ。ね?凄いでしょ?」

上条「再生とか!でもお前の体は子供で!」

グシャッ

上条(円周は笑ったまま、スチール缶を親指と人指し指だけで握り潰した)

上条(大人だって無理……どうなってる!?)

円周「――って考えるんだろうけど、それは『生物のリミッター』を外してるから」

円周「ソフトウェアにバードウェアの性能が足りなくって再現出来ない、って問題は解決済みだし」

上条(思考を読まれた?読心能力?)

円周「あー、違う違う。『上条当麻ならこう考える』って思ってるだけだから、能力は関係ないよ?」

円周「付き合いの長いお友達が、何となく行動パターンが分かるってぐらいの話だから?」

上条「……いや、俺ら出会って一週間経ってねぇだろ?」

円周「あれぇ?『勉強』してるって言わなかったっけ?ま、いいや」

円周「で、その『生物のリミッター』は力加減だね。全力で人を殴ったら、殴った拳も折れるからセーブしてる的な」

円周「それを任意で調整出来るってだけだし?『木原』の中じゃ基本的な能力だよねぇ」

上条「……大丈夫なのか、それ?」

円周「えっ?」

上条「その、なんか危険そうだよな?自我を失ったり、とか」

円周「そうだねぇ。たまーに境が曖昧になるぐらいだけかな?」

上条「……お前もうその能力使わない方が良いんじゃねぇのか」

円周「だから能力自体はレベル1なんだって。わたしの使い方が上手なだけで?」

円周「例えば肉体硬度を上げられる能力があったして、それは使い用だよね?」

円周「格闘技に長けた人間であれば相性抜群だけど、研究職だと何の役にも立たないっぽいし」

円周「たった『隠し芸でウケを取る程度の能力』であっても、『木原』であればこういう風に使うんだねっ」

上条「……他人の行動や戦闘パターンを再生?能力は流石に出来ないだろうけど、それって反則じゃねぇのか」

円周「過大評価してくれるのは嬉しいけど、まだまだ足りない。『木原』が足りないんだよ」

円周「『卓上演劇』の欠点は幾つかあるけど、この間鞠亜ちゃんが拳で教えてくれたのは『癖』なんだって」

円周「どんなデッキでも、戦闘パターンを無数に持っていたとしても、選択するのは『わたし』って個人でしょ?」

円周「だからパターンが読みやすい、的な?」

上条「同じデッキであっても、初心者と熟練者じゃ強さが違うもんな」

円周「あとは『どうやっても本人はなれない』かなぁ」

円周「模倣はどんなに上手くやっても模倣に過ぎないし、思考パターンをどれだけ積んだって本人にはなり得ないからねー」

上条「充分脅威だと思うけど、それ」

上条「格闘術?とか銃とかの名人を『卓上演劇』で使えば」

円周「当然出来るよねっ!……あ、けど今は断線してるから二人分ぐらいしかストックはないけど」

円周「木原加群の研究データの半分だけ、後は『上条』の行動データをラーニング中みたいな感じ」

上条「加群、グレムリンではベルシって呼ばれた人だっけ。雲川さんの先生でもある人……」

上条「話逸れるけど、『木原』ってのはそんなに酷い一族なのか?」

上条「加群さんや円周ぐらいだったら、まぁ?昔の一方通行や黒夜みたいなもんだし?」

円周「その二人を『酷くない』カテゴリに入れてるお兄ちゃんには戦慄すら覚えるけどね。んーと、『木原』はねーぇ」

円周「『科学のためなら自分を含めた全てになんだってする』人の集まりかな?ど」

上条「マッドサイエンティストの集まり、つったら悪いか」

円周「お兄ちゃんが想像しているのを数倍悪くしたので正解、かな。でも逆に言えば『科学に関係無ければどうだっていい』んだよ」

円周「木原加群は一度『木原』を止めようとして、学校の先生になった。確かに病理おばさんが諦めさせたけど、基本的には無視だったし」

上条「良くも悪くも研究にしか興味がないのか?」

円周「逆に必要だと思ったら同じ『木原』でも躊躇なく遣い潰すけど、わたしみたいに?」

上条「……木原数多には貸し一なんだよな。近い内に取り立てるつもりだけど」

円周「――それじゃ、わたしが『足りない』話に戻るけど。正しくは『補充してない』が正解かも知れないね」

円周「さっきも言ったけど普通は憶えられないよね。人一人の思考・行動パターンなんて無理だし?」

円周「外部からの補助があったとしても、限界はあるよ。だから」

円周「『普通じゃない方法』を採っただけだから」

上条「お前……それじゃ!?」

円周「流石お兄ちゃん、分かっちゃったかぁ――ってまぁヒントは色々出てるけど」

円周「『学習装置』に『卓上演劇』を組み合わせてあるんだよ、うん」

円周「オンラインゲームでさ、端末であるハードディスクに背景とか音楽とかの一部データをインストールするじゃん?」

円周「他のデータは適宜ダウンロードして、読み込みを早くする、みたいな?珍しくもないよねぇ」

上条「だから、だからってお前はっ!」

円周「大丈夫だよぉ、当麻お兄ちゃん。わたしは『脳内バッファに基幹データを確保』してあるけど」

円周「それは別に生きていくには必要のない情報の所へ、上書きしているだけだから」

上条「本当か?つかそれってどこだよ!?」

円周「ここでやっとお兄ちゃんの最初の質問、『足りない』に戻るんだよ、やったねっ!」

円周「データがあるのは『視床』。嗅覚以外の感覚神経を大脳へ中継する所であり」

円周「感情の発現や運動の促進とかをする働きがあるみたいだねー」

上条「それじゃお前は、誰かに感情を消されたって言うのかよ!?」

円周「だーかーらっ!言ってるじゃない、お兄ちゃん。お兄ちゃんには『木原』が足りないって」

円周「確かに一人じゃ出来る事じゃないから、数多おじちゃんに手伝って貰ったけど。それは」

円周「うん、うんっ!そうだよね、わたしが『木原』になるためだったら仕方がないんだよねっ!」

上条「まさかお前、自分の意思で……?」

円周「んー、生命の危機に関する感情系は消さなかったけど、それでこの間ムキになって鞠亜ちゃんには負けちゃったし」

円周「だからって全部消す訳にはいかないよねぇ、流石に」

上条「……あぁ、そうか。何となく、そんな感じはしてたけど」

上条「お前は大体、いつも笑ってるけど――全然楽しそうじゃなかった」

円周「そうなのー?」

上条「テレビとかで無理矢理演技してるような、そんな感じだったし」

円周「……そっかぁ。お兄ちゃんに看過されるなんて余っ程ダメなんだろうなー」

上条「その言い方もどうかと思うが……あ、でもさ、お前本当に感情がないの?」

上条「俺に無茶振りしたり、俺に無理ネタ振ったり、俺にバードウェイし向ける時なんか生き生きとしてっけど?」

円周「どーだろ?お兄ちゃんとシェリーお姉ちゃんは大好きなんだよ」

円周「でもそれって同じ『筺』だからかなー、って思ってたんだけど」

円周「お姉ちゃんは心におっきな『隙間』があるから、だからわたしと同じだ!って感じたんだぁ」

上条「その理屈じゃ俺も何か」

円周「あるよね、お兄ちゃんも?」

円周「人には言わない――言えないけど、決して塞がらない『隙間』みたいなの?」

円周「そんな傷があるから、わたしと似ているから懐いたんだよ、きっと」

上条「……これは、シェリーが言ってたんだけど」

上条「お前を引き渡せばエリス・クローンを作ってくれる、って言われたのを知ってて。それでもお前は行こうとしてたんだよな?」

円周「……笑わない?話しても良いけど、笑っちゃヤダよ?」

上条「笑うような所は一切無かったと思うけど。約束する、笑わない」

円周「約束ね?破ったら社会的にハリセンボン呑ますからね?」

上条「初めて聞いたなそのっ脅し文句!?社会的にってどういう意味だっ!?」

円周「わたしは『木原』じゃないし、でも『普通』でもない。だから」

円周「わたしっていう『パーツ』でお姉ちゃんが満たされるんだったら」

円周「まぁいいや、って」

上条「……うん」

円周「あーーーーーっ!?お兄ちゃん約束破ったし!」

上条「違う違う!そう言う意味で笑ったんじゃない!お前がおかしくてとかじゃねぇよ!」

円周「ちょっと待ってね?今ハリセンボン用意しちゃうから。あ、でも吉×まで行くの面倒だなぁ」

上条「お前っ俺に何食わせようとしてんのっ!?まさか芸人の方かっ!?」

円周「クールー病が怖いけどねー。脳がスカスカになったら、わたしが一生面倒看てあげるから、ね?」

上条「……待とう?お前は本物のヤンデレなんだからな?」

上条「えっと……あぁ、今笑ったのは安心したからだよ。お前には『足りなく』なんかねぇって」

円周「わたしが?」

上条「あぁ。もしもお前が言う通り、情も何もないような奴だったらシェリーを助けようだなんて思わないし、好きになったりしない」

円周「そう、なの?わたしは『足りない』んじゃないの?」

上条「俺の友達にはクローンの奴が何――千人か居るけど、そいつらは『造られた体』なんだよ」

上条「でも、だからって卑下する訳じゃないし、今はまだぎこちないけど立派に生きてる」

上条「円周の理論だと、そいつらの『筺』は偽物だかに魂も宿ってないって事になるのか?」

円周「そう、なのかな……?良く分かんないけど」

円周「……なら、わたしは『筺』が本物だから、宿ってる魂は正しいって事……?」

上条「違うさ。それはどっちも間違いだ」

円周「……どゆこと?」

上条「魂が宿ってようがいまいが、『筺』が自然なものなのが不自然なのか――」

上条「――別にどっちだって構わねぇって話だな」

上条「『人間』の定義は分からないし、分かってる事の方が少ないと思うけど」

上条「少なくともそいつらが人と同じような格好してて、意思疎通が出来るんだったら」

上条「誰か他人のために、自分を投げ出すような事が出来るんだったら、それはもう人間以外の何者でもないと俺は思うし。何より」

上条「お前らは、俺の友達だって事実は変わらない。それは絶対にだ!」

上条「もしも誰かがお前や妹達を『こいつらは人間じゃない!』なんて言うかも知れない」

上条「生まれてきた事すらを否定されるかも知れない。でも、そん時は!」

上条「俺が、そいつらの幻想をぶっ殺す!」

円周「でもっ!わたしは『木原』の落ち零れだしっ!」

上条「……勉強が出来る出来ないんだったら、俺も落ち零れだなぁ」

円周「『木原』が足りないって!『木原』らしくないって!」

上条「お前を遣い潰そうとするなんて、そんなの身内でもなんでねぇよ。『木原』なんて止めちまえ」

円周「え」

上条「お前は確かに『木原』だった。それは絶対に変わりはない。事実なんだからな」

上条「でも、だからっつってこの先ずっと連中の流儀に従う必要はないだろ?」

上条「人が同じ生き方をずっと強いられなきゃいけないなんて、それこそやっちゃいけない事だろ」

円周「……『木原』を捨てるの?」

上条「感情が無いだなんて言うけど、少なくともお前は『木原』に対して家族愛みたいなのは持ってんだろ?」

上条「形は歪かも知れないけど、身内を頼りたいってのは誰だって持ってる『感情』だ」

円周「お兄ちゃん……わたし」

上条「どんな教育されたのかは分からないが、お前は、お前だよ」

上条「普通ではないかも知れない。でも感情をそこそこ持った女の子だ」

上条「……なんつーか、まぁこれは俺の考えだけど。そもそもが、だ」

上条「笑って人の間接へし折って笑うようなお前が、『木原』だと『筺』だのって拘る事自体」

上条「『円周』らしくはねぇな、って思う」

円周「わたし、らしく」

上条「子供はいつか親兄弟から離れる時が来るし、お前はちっとそれが早かったたけの話」

上条「お前には俺とかシェリーとかがいるし、友達に迷惑かけちまえよ」

円周「……えぐっ……!」

上条「……今まで一人でよく頑張ったな?偉かったぞ」

円周「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ!」

上条「……うん」

円周「お兄ちゃんのお嫁さんになるねっ!」

上条「いいシーンが台無しだなっ!?どっからその発想出て来やがった!?」

円周「え、『木原が嫌なら上条にしてやんぜ!』ってプロポーズが?」

上条「一言も言ってねぇ!?」

円周「お兄ちゃんっ」 ガシッ

上条「ちょっ!?急に抱きつくな!」

円周「……」

上条(――ってまぁ、強がっているのはバレバレで)

上条(腕の中で声を殺して泣きじゃくる――多分、生まれて初めて『安心』して泣いてる女の子を。つか今の俺達の姿を見た人は)

上条(『仲の良い兄弟だな』って思うんだろう)

円周「……よっっし!お兄ちゃんゲットだ!……」

上条「気のせいなの?もう少し空気読もう?せめて小声で言うとか考えなかった?」

上条(……まぁ、そんな感じで。また少し仲良くなった、んだよな?俺騙されてないよね?)

――上条のアパート 夜

バードウェイ「――とまぁ今日は収穫無し。本格的な行動はSEEDの解析待ちとなる」

円周「あ、ごま油で揚げるんだ?サラダ油じゃなくて?」

上条「んー、まあ毎日食べる訳じゃないし、少しぐらいは贅沢したっていいだろ」

シェリー「へぇ。これがテンプラか……家庭用コンロで出来るものなの?」

バードウェイ「幸いにして良いスタッフも集められたし、時間の問題だろうな」

上条「学園の外の電気コンロじゃ火力が足りないけど、まぁ突っ込むな。色々あるから」

シェリー「フライヤーってのを見たんだが、あれは実用的じゃないのか?」

上条「あれは素材自体に油分がないと美味しくないらしい、って通販マニアが言ってた」

上条「フライドポテトを作ってみたら、風味のないマッシュドポテトが出来上がったって」

円周「水と空気で揚げてるからねぇ。どうしても物足りなく感じちゃうだろうし」

シェリー「どんな感じか興味はあるわね。借りて来られねぇかな?」

上条「他のクラスの女子が借りたいっつってたかな?――っと、油に入れるから離れててくれ」

円周「はーいっ!」

ジュゥゥゥゥッ

バードウェイ「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁみぃぃじょぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

上条「ヤダ霊現象っ!?」

円周「はいはい、お兄ちゃんは料理中で危ないからねー?レヴィちゃんはこっちでわたしと遊んでよ?ねっ?」

バードウェイ「……どけ小娘!私は今からそのバカの顔面をカラッと揚げねばならん!」

上条「人の顔面で何するつもりだっ!?つーか目が離せないのに後ろで何騒いでやがるっ!?」

シェリー「あー、あれだな。鍋の中にぶち込むだけだろ、台詞から察するに」

上条「死ぬよっ!幾ら学園都市だからって無茶すれば!多分!」

円周「絶対とは言い切れない所はアレだけどねぇ。ってレヴィちゃん、テレビでも見て待ってよう?」

バードウェイ「オイ貴様!軽々しく私に触れるなっ!」

円周「よいしょっと。あ、軽いねぇ」

バードウェイ「さーわーるーなっ!子猫みたいに抱きかかえるんじゃない!」

円周「たかいたかーいっ!」

バードウェイ「……もう殺す!」

円周「……うん、うんっ!そうだねっ、そろそろカビの生えた魔術結社も賞味期限切れなんだよねっ!」

円周「こんな時加群おじさんだったら、こう壊すんだよね……ッ!」

上条「俺の背後で殺し合いするの止めてっ!?誰か助けて上げてえぇっ!?」

シェリー「こんぐらいで騒いでんじゃねぇわよガキども」

上条「おおっ!頼むぜシェリーさん!」

シェリー「任せろ……友達だろ?」

上条「……あぁ!」

シェリー「いいか、アンタ達?今はガキかも知れないけど、誰だって成長するもんだ」

シェリー「いつまでガキみたいな事ばっかしてっと、体だけデカい最悪の大人になるわよ?」

バードウェイ「だがなぁ。20姉前の思い出し殺意で、科学サイド皆殺しにフラッと来た奴にだけは言われたくないな」

円周「しーっ!レヴィちゃん酷い事言ったらダメだよ!お姉ちゃんはアーティスト気取ってるんだから!」

バードウェイ「おっとすまない。そうだな、お前はアーティスト()だもんな?少々変人であっても許されるもんな?」

円周「ごめんね、お姉ちゃん?悪気があって言ってる訳じゃないんだよ」

円周「どんだけ痛々しかろうと、そろそろゴス着れる上限に達してるけど、別に悪いっては思ってないからね?」

円周「ただそれが痛々しいだけだからねっ?周りは気を遣ってるってだけだから、うんっ、大丈夫だよっ!」

上条「オイバカヤメテあげて!?元からメンタル弱いシェリーさんをはぐれ悪魔超○コンビがイジるのやめてあげてぇぇぇぇっ!?」

シェリー「……なぁ……?」

上条「は、はい?」

シェリー「アンタがもし道に迷った時には夜空を見上げればいい」

上条「どうしたの?本格的に世迷い言言い出したんだけど!?」

シェリー「そうすりゃクソ汚ぇ都会の空気であっても、薄ぼんやりと星の明かりが見えるじぇねぇか」

シェリー「……私は、そのどれかになって見守っててやるから、な?」

上条「詩的な表現で絶望的な事を言い出したな!?つーかメンタルが弱すぎじゃねぇか!」

上条「っていうかそんな気分で夜空見上げたくないもの!だって夜空見上げる度に『あ、シェリーだぁ』ってしんみりするもの!」

バードウェイ「――と、そろそろ出来たんじゃないか?」

円周「だね、運ぶの手伝うよー。お姉ちゃんはテーブル片付けてといて」

シェリー「ん、あぁ。そうだな」

上条「ちょっと待とうか?お前ら今の全部お芝居なの?俺担ぐために仕掛けた、ねぇ?」

バードウェイ「と言うか平然と全て調理するのもどうかと思うが」

上条「現実逃避してたんだよ!『これキレイに揚げ終わったらケンカは終わってる!』って夢の世界で願ってたんだよ!」

円周「あ、ソバはザルだよね。ん、付け合わせの刻みノリも用意してと」

上条「お前らなんだよおぉっ!?とーしてそんなに連携良くなったのぉぉっ!?」

シェリー「めんつゆは……あ、希釈しないでいいのかよっと」

バードウェイ「柚醤油を入れた方が好みだが」

円周「あーそれ和風レストランぐらいにしかないよ?ご家庭じゃ使う機会が中々限られるからねぇ」

円周「ポン酢とレモン果汁で代用――ってお兄ちゃん?みんなで食べよ、ねっ?」

上条「……お前ら妙に馴染んでやがるよな?特にジョンブル二人」

バードウェイ「察しろ。大英帝国として世界の40%を持っていたのにも関わらず、何故かイギリス料理が碌なモノがないという現実に」

シェリー「普通は植民地の美味いモノ取り入れるのに、それをしなかった国民性だからなぁ」

上条「……それって家の近くにピザ屋とイタ飯屋と牛丼屋があるから、中々料理が出来ない一人暮らしの発想じゃ……?」

バードウェイ「その例えを否定する要素がない」

円周「ニューリベラリズムの行き着いた先が料理を作らない母親だからねぇ。国民性ってだけじゃないと思うけど」

バードウェイ「利便性を追求して分業制に特化し続け……まぁそれがいいのかどうかは分からんがね」

上条「メシを見るにアイタタな結果になってんじゃねぇか」

円周「イギスがネタ抜きで再興を謀るんだったら、魔術王国でも目指した方が良いかも?ポッタ○も大人気だったじゃん」

バードウェイ「残念。この世界に魔術は存在しないのだよ」

シェリー「バラした日にゃ大混乱は必至だろうしなぁ」

上条「つーか狭い!お喋りは食いながらでいいだろ!」

三人「はーい」

※今週の投下は以上となります。読んで下さった方に感謝を

尚、>>270からの宣伝のSS速報の同人誌版、二時間で完売したそうです
んで一応郵送もやる(あんまり多い場合には出来ない)かもなので興味がある方は下記までどうぞ

■ コミケにSS速報で何か作って出してみない? 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368282039/)

――食事中

バードウェイ「――シェフを呼べ!」

上条「えっと……『ボスのテンションがダダ上がりなんですけど、どうすれば?』っと」

バードウェイ「言いたい事があれば直接言え、直接。マークにメールで愚痴るんじゃない」

上条「つーか気になってたんだけど、マークは?」

バードウェイ「芳川桔梗の警護だな。襲撃に備えて何人か配置してある」

上条「マークってそんなに強かったんだ」

バードウェイ「プロの魔術師程度ならばまず負けん……と、いいなぁ」

上条「希望かい」

バードウェイ「慎重になりすぎる所がある。例えば相手の力を見極めてから攻撃する、とかな」

シェリー「タロットってぇのはそういうもんじゃねぇか。相手の防御に合ったぶち破り方を探るんでしょうから、むしろ近道じゃ?」

上条「すまん。意味が分からない」

円周「目の前に壁があって解体しましょう。材質を調べてブルーシートを張って、埃が立たないように放水しながら壊すのがマークさんのやり方」

円周「ジョンブル組二人は『壊れるまで殴ればいいんじゃね?』派」

バードウェイ「合ってはいるが、クロムウェルと同じ扱いは止めて貰おうか。コイツはそれ以外に方法がないからだ」

シェリー「……いや、ゴーレム以外にも術式は持ってるからな?基軸をゴーレムにしてるってだけで」

上条「分かったような分からないような――って、いい加減情報交換しようぜ」

上条「一応円周の能力も聞いといたし、きちんと共有しておいた方がいいと思うんだ」

円周「お兄ちゃんに頼らなくても教えたのにー。水くさいなー」

バードウェイ「適材適所だ。まぁソイツと情報を共有するのは一抹の不安を覚える所ではある」

円周「信用ないなぁ」

バードウェイ「――だが、まぁ逆に考えろ。『木原円周』よ」

上条「バードウェイ……?」

バードウェイ「君のおじさんにも言った事だが、君達がどこで何をしようが、どんな人道を踏み外した研究をしていようが、私には関係ない」

バードウェイ「だからまぁ君もグレイであり、一応、渋々、仕方が無く、本当に極めて不本意な事に」

バードウェイ「どっかのバカ兼天然人たらし兼新入りが突っ込んだ以上、助けざるを得なかった訳だが」

上条「……あれ?遠回しに非難されてる?」

シェリー「ダイレクトに『自重しやがれ』って言われてんのよ」

バードウェイ「だが、もし一度信頼を得ておいて裏切るのであれば、それ相応の覚悟を持つ事をお勧めしようか」

バードウェイ「今までは『存在を許しておいてやった』だけの相手が、『明確な敵』へと変わり堂々と排除出来るんだからな?」

円周「あー、しないしない。だってメリットがないよね?わたしがレヴィちゃん達を裏切るって事は、何らかのリターンがないと」

上条「『あればするし?』みたいな感覚はやめなさい」

円周「数多おじちゃんは何でトチ狂ったのか分かんないけど、学園都市とイギリスはグレムリンって言う共通の敵を持ってる訳でー」

円周「イギリス清教を切ってまで、今の学園都市に何の得があるのか?『木原数多』がどう利益を得るのか?って答えが出ないんだよ」

シェリー「グレムリンは学園都市潰しを標榜してんだから、クソ木原は単独で動いてんじゃねぇのか?」

上条「だったら何がしたいんだろうな……?」

バードウェイ「考えられるのはアイツ自身が『向こう側』へ行ってしまったとかだな。木原加群という前例がある以上、それもアリだ」

バードウェイ「ただそこまでして何が得られるのは、甚だ疑問ではある」

円周「『グレムリン傘下の学園都市』とか?でもおじいさんから重宝されていた数多おじちゃんが、地位を捨ててまでする意味がないし」

上条「おじいさん?」

円周「ボトルシップみたいなんだって。揺らしたいよねっ」

バードウェイ「面倒はごめんだ、お前も自重しろ。というかあの超ニートが出張る……あぁ頭が悪い方の右手狩りには出たんだったか」

上条「……俺?」

バードウェイ「お前は救いようがない方だな」

上条「悪口だよね?それもう俺怒っていいんだよね?」

円周「流石お兄ちゃんっ!言われるままにイギリス行ってクーデターを秘密裏に鎮圧したと思えば、その足で第三次世界大戦を終結!」

円周「今時007でも出来ないような行動力だよねっ!」

シェリー「常日頃仲間だ友達なんだを連呼しつつ、実際には最初から最後までぼっち旅。有り難くて泣きそうよね?」

上条「悪かったよ!あん時はテンパってたんだって!」

シェリー「つーか確か露出狂女の貸しがあったよな、テメェとは」

上条「……いやまぁ気持ちは理解出来るし、あそこで抵抗するのもアリだとは思うんだけどさ」

バードウェイ「アレは逃げて成功だったのさ。ヘタれのキャーリサ殿下が“誰も信用できない病”をこじらせた喜劇だ」

バードウェイ「誰かさんは誰も信じずにクーデターを起こし、誰かさんは誰も信じずに世界を救おうとし」

バードウェイ「そして誰かさんは誰も信じずに解決しやがりました、とさ。めでたしめでたし」

上条「……あれおかしいな……?ここ俺のホームじゃなかったっけ?いつの間にアウェイに?」

シェリー「せめてなぁ?天草式の連中は心中してでも突っ込む気満々だったってのに、どうやった連中を撒けたんだとか疑問もあるし」

上条「土下座した方が良いのかな?俺が謝ればいいんだろっ!それで気が済むんだよなぁっ!?」

円周「それでレヴィちゃん達は何か分かったの?」

バードウェイ「大した成果は出ていないが――」

上条「っとごめん、今の間に洗い物しとくわ」

バードウェイ「デザートはリンゴで頼む」

上条「無いよ!」

シェリー「帰りがけスーパーで買ってきといた」

上条「用意がいいな。つーか女の子三人も居て手伝う気はねぇのかよ?」

シェリー「よし、じゃあ私がリンゴを芸術的に剥いてやる」

上条「あ、ごめん?座ってて?」

円周「シェリーお姉ちゃんの場合だと、美術スキル以外に手を出すと大失敗ってイメージが」

シェリー「テメェらの顔の顔も剥がしてやろうか?」


――夜

上条「終わったー。あとリンゴどーぞ」

バードウェイ「取り敢えず新入りは正座だな」

上条「どうしたっ!?俺が洗い物をしてる間にどういう結論が出たのっ!?」

シェリー「いやぁ流石にローティーンにプロポーズは、引く」

上条「お前どんだけ脚色しやがった!?」

バードウェイ「そもそもロリコ×は『自分よりも弱い相手にしかどうこう出来ない』というメタファーがだな」

上条「その学説、一時期流行ったけど科学的根拠は皆無なんだよね?ゲーム脳と一緒で」

円周「そんなっ!?夕日をバックに『俺は円周率に詳しいんだ、3.7564……』って言ってくれたのは嘘だったの!?」

上条「嘘だろ全部!幾ら俺だって円周率を『みなごろし』とは言わん!カイワレ総理とは違うんだ!」

シェリー「そもそも円周率を持ちだして口説くって、どういうシチュなんだよ」

バードウェイ「――と言う訳で、今度は家庭で作る手巻き寿司を頼みたい訳だ。いいな?」

上条「どっからどう話が跳んだらその展開になるの?……いや、作るけどさ」

バードウェイ「ポテトサラダの手巻き寿司があると聞いたんだ」

上条「いやー、こないだの広告に載ってたけど、日本に十何年か住んでるけど初めて見た」

バードウェイ「しかし『卓上演劇』か……宴会芸程度の能力を、よくまぁ最悪に応用させるんだ」

円周「『人の動作を見て覚えて真似出来る』のは、時間さえあれば誰だって出来るしねぇ。それだけじゃ面白くないかなぁって」

バードウェイ「一つ聞くがシングルタスクなんだよな?」

円周「だねぇ。マルチタスクが出来れば異能力(レベル3)ぐらいだったと思うけど」

シェリー「シングルタスク?」

上条「パソコンの用語、だと思う。シングルが単独処理、マルチが並列処理」

シェリー「うん?」

上条「そうだな。例えば――」

バードウェイ「――『Hello, world!』と三秒間メッセージの出るプログラムを作るとしよう」

バードウェイ「構文は『mes “Hello, world!”』と『wait 300』、『End』。それぞれ『文字を書く』『三秒待つ』『終了させる』の意味だ」

バードウェイ「言語によってはバッファを確保したり、変数・変列型の宣誓を必要するのだが、ここでは省く」

バードウェイ「シングルタスクとはそれを記述されている順番に実行する。一度に一つずつの仕事しか出来ない訳だ」

バードウェイ「対してマルチタスクとは、同時に幾つのも仕事を並列して処理出来ると」

バードウェイ「デュエルタスクであれば『Hello, world!』を同時に二つ、それ以上であれば性能の許す限り幾らでも並列処理出来る」

シェリー「それがどうしてコイツの能力に関わるのよ?」

円周「チェスや将棋とかで人と機械が勝負するよね?あれは何千何万の選択肢を計算するの」

円周「ここのマスへこの駒を進めた場合、進めなかった場合って感じに。全部の選択肢を想定し、最善のモノを選択するだけ」

シェリー「あー……あれか?多次元宇宙みたいなもんか?犬が吠えた世界と吠えなかった世界とか、どんどん枝別れする世界の中で」

円周「自分に相応しい世界を選択する――まぁ能力の根幹でもある『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』も原理は同じだけど」

バードウェイ「もし小娘にマルチタスクが出来ていれば『木原数多の思考パターンを持つ木原加群』、みたいな最悪が誕生していたろうが」

円周「行動パターンと思考パターンが分けられたら、もっとえげつない戦い方出来て楽しいだろうしねぇ」

円周「思考パターンを複数、並列処理で走らせて最善のモノを取捨選択――って、お兄ちゃん?どうしてうなだれてるの?」

上条「科学サイドの端くれである俺の立場はっ!?ようやく出番が来たと思ったのに!」

上条「つーかどうしてボスはプログラム知ってるのっ!?構文からして中級言語っぽい感じだったけど!」

バードウェイ「そりゃ勉強したからに決まってる。踏み込むかどうかは別にして、“そちら”のやり方を知っていて損はあるまい」

バードウェイ「あと気持ち悪いからバードウェイと呼べ」

円周「ちなみに木原数多が『インストール』するのも同じ原理だよ。人の思考のメインを奪って操作する、みたいな感じで」

円周「人間の交感神経・副交感神経以外は、基本シングルタスクだしねぇ」

上条「……頭痛い」

バードウェイ「よくやった!よく気づいたな!あぁ確かにお前は頭イタイんだっ!」

上条「追い打ちは勘弁な!……いやいや、円周の能力はいいんだってば。実際にシングルタスクだったから、こないだ利用されちまった訳だし」

上条「それとも他の人達もデュエルタスクにすれば『インストール』を防げる、とか?」

円周「んー、難しいかなぁ?構造上の問題だしねぇ」

円周「脳幹を半分に割ってぇ、左右で分けるとかハードの拡張無しにはまず無理」

バードウェイ「二つ程度が競合しても、無理矢理『木原数多』が勝ちそうな気もするがね」

上条「んじゃバードウェイの方、あれから何か進展あったのか?」

バードウェイ「『SEED』の分解と中のソフトウェアの分析。どちらもまだまだ」

バードウェイ「ただ芳川は初見で『アンバランスだ』とは言っていたな」

上条「やり方が?」

バードウェイ「ヘッドギアは手製らしい。工業製品として作られた訳では無く、ジャンクパーツから製作した可能性が高いそうだ」

シェリー「そうした方が身バレする確率を抑えられる?」

バードウェイ「そう言っていたな。またプログラムは白いの次第、つまり序列一位が手こずる程度には手の込んだ防壁だ」

上条「それって超高難易度じゃんか」

バードウェイ「ハードの話だが、『それにしてはしょっぺェ』との感想も上がっている」

バードウェイ「まずはサーキットが――」

上条「あの、バードウェイさん?出来れば結果だけを、ですね」

バードウェイ「『高校生が無理して作ってみました』」

上条「あー……」

バードウェイ「この件に関しての『木原』専門家のコメントは以下の通り」

上条「誰?そんなコメンテーター聞いた事が無いんですけど?」

円周「『最新のオンゲインストールしたのは良いけど、パソコン古くて処理落ちしまくり』」

上条「意外と身近に居たねっ、そういえばっ!」

シェリー「良く分からねぇが、しでかしてる割には装備が酷いって事かしら?」

バードウェイ「どうにも落差が酷くアンバランスだ、と繋がる」

シェリー「制作委託した相手がガキだった?」

バードウェイ「には、まず不可能な技術が含まれている。その割には下手だと」

バードウェイ「まるで使い慣れていない工具でやっているかのような……」

上条「『インストール』は出来たが体に馴染んでない?」

シェリー「それが妥当だろうなぁ」

上条「……ってかさ、反射の件でも思ったんだけど、『インストール』しても完璧に肉体を扱えるんじゃないのな?」

円周「『学習装置』でセッティングした上で、『卓上演劇』を使わない限りは難しいと思うよ」

バードウェイ「勝手知ったる肉体とは別に、人様の体を使おうって話だ。その程度のデメリットが無くてはおかしいだろうさ」

円周「そもそも数多おじちゃんの戦闘パターンが『金槌レベルの衝撃を顕微鏡の精度で』だからねぇ」

円周「聞いた事はないけど、わたしと同じ肉体制御系の能力者だったのかも知れないし」

上条「成程。だから余計に」

円周「正確に体をコントロール出来ないのが、もどかしいのかも知れないね」

上条「ビリビリがビリビリ出来ないようなもんか。ふむ」

バードウェイ「報告は以上だな――で、だ。明日からの予定なんだが」

円周「あ、わたしとお兄ちゃんはメイド喫茶勤務だからね?」

バードウェイ「……ほぉ?」

シェリー「お前ら、人が街中駆けずり回ってる時に何やってんだ?あぁ?」

上条「俺は決まってねぇし!確かに円周は許可したけど!」

円周「鞠亜ちゃんって言うメイドさんが居てだねぇ」

上条「相手は中学生だしっ!俺は別にメイド好きって訳じゃねぇよ!」

円周「その子のお姉ちゃんがGなんだって!やったよお兄ちゃん!薄い本が厚くなるねっ!」

シェリー「お前それ……いや、引くだろ。ないない、ないわー」

バードウェイ「人間ってどこまで汚くなれるんだろうな?」

上条「二人とも待ってくれないかな?犯罪者を、しかもシリアルキラーを見るような目で見るのは止めてくれないか?」

円周「あ、お揃いだねぇっ!」

上条「揃ってねぇよ!決してワンペアになんかなってねぇ!」

バードウェイ「おっとここに学園都市を襲撃したテロリストが一人」

シェリー「あぁ確かに。イリーガルの代表格、今やアメコミにすら登場するブラック・ロッジの首領様もいるじゃねぇか」

上条「す、スリーカード?」

バードウェイ「すまないが、ちょっと頭の後ろ見てくれないか?」

円周「どうしたの?」

バードウェイ「少し前にどっかのバカにハンドドリルを押し当てられてなぁ。いやー、物騒だなぁ学園都市って所は」

シェリー「表面上は治安も良いって聞いたんだが、随分悪い奴も居るのよね」

上条「そろそろ全員で結託して俺を罠へ嵌めるの自重して貰えませんか?俺の胃壁がピンチなんだよっ!」

シェリー「女三人に男一人の時点で諦めろ。ほら、少しぐらい触ってもラッキースケベって事にしといてやるから、な?」

上条「無理だよっ!よく知り合いから『ラッキースケベ()』とか言われるけど、それってタダ気まずくなるだけだからな!?」

上条「あとお前にその単語を教えた奴を教えろ!ちょっと行って幻想殺してくるからっ!」

円周「てへぺろっ☆」

上条「よっし俺は女の子に拳を振う事だって躊躇わないからな!絶対だぞ!絶対だからなっ!?」

円周「そんなにお兄ちゃんに問題でーす」

上条「な、なんだよっ!?」

円周「今のわたしの『卓上演劇』は『木原加群』の『人体破壊』がアクティブになってるんだよねぇ」

円周「ネットワークを介した外部入力が不可能だから、一人分のスキルしかないけど」

円周「んでもってぇ『リミッター』は常時外れているから、人一人を撲殺ぐらいは簡単だしぃ?」

上条「近寄るなっ!近寄るんじゃねえっ!?」

円周「あ、心配してないでね?お兄ちゃんを『学習』してる分、加群おじちゃんの『蘇生』部分に上書きしちゃってるからっ!」

シェリー「つまりそりゃ、アレだな」

バードウェイ「『壊すだけで元へ戻せない』、か」

円周「大丈夫?関節を外すだけだから、ねっ?」

円周「外す時に“は”痛みもないし?」

シェリー「外した後は折れたぐらい痛いんだっけかな、確か」

バードウェイ「しかも下手にそげぶすると、『卓上演劇』の動作が解除されるため、ただ力任せに外されるだけだしなぁ」

上条「ウソウソウソウソっ!そげぶしないからっ!冗談だしっ!」

円周「大丈夫っ!……じゃ、無かった。うん、うんっ!『木原』ならこんな時、こう言うんだよねっ!」

円周「『俺の愛はァ……一方通行だァっ!!!』」

上条「それ『木原』じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

――数日後 ある学生寮 昼

工山規範「あー……」

工山(今日もサボっちゃったかー……なんかこう、体だるいよな)

工山(病院に行――たって、意味はないんだろうし、どうしようか)

ピンポーンッ

工山「……?」

女性『すいませーん。工山くんいるじゃんかー?』

工山(……いや、ホントに誰?学校の先生?サボってるから……あぁ、様子を見に来てくれたのか)

女性『もしもーし?声だけでもいいから聞かせてくれるじゃん?』

工山(どんな人……?……あぁいかにも、って人だな)

女性『居ないじゃん?居留守使っても無駄じゃんよ、あんたはもう包囲されてるじゃんし!』

工山(不登校未満相手に包囲ってなんですか、つーか誰?『落第防止』の教師?)

女性『ほんとーーーにっ居ないじゃん?マジで?居留守使ってない?』

工山(……いやぁ、居留守も使いたくなると思うけど)

女性『後悔しても知らないじゃんよ?警告はしたじゃんね?』

工山(誰に言ってんの?)

女性『よし。居ないじゃんよ』

少年『――おゥ』

バキバキベキベキッ

少年「工ゥゥゥゥやァァァァァまァァァくうゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンっ!」

工山「んなっ!?誰っ!?白くてシマシマがドアぶち破って!?」

少年「いるじゃねェか。なにシカトしてやがンだ、あァっ!?」

工山「すいませんすいませんスイマセンッ!お願いだからアンチスキル呼ばせてください!」

女性「おー、ここにいるじゃんよ?」

工山「え、それどういう意味――げふっ!?」

少女「――動くな。私の質問へ簡潔に答えろ」

工山「だ、だれ……?」

少女「君は知らないでいいし、知る必要もない。が、不都合を感じるのであれば、『真っ昼間から殴り込む程度の暴力主義者』と認識してくれたまえ」

少女「次、私に余計な時間を取らせれば右手をへし折る。その次は左手、右足、左足をぺきりと行く」

少女「あぁ五回目から先は聞かない方が良い。これが片付けば遅めのランチでね、食欲を失うのはお互いに不都合だろう?」

女性「(随分手慣れてるけど、マジでしないじゃんね?)」

少年「(まァ、多分)」

少女「分かるだろ?だから慎重に答えるのをお勧めするんだが――どうだろう、私の“穏やかな”提案に従ってはくれないだろうか?」

工山 コクコクコクコクッ!

少女「結構。では君の名前は?」

工山「く、工山規範です」

少女「以前にアンチスキルの世話になっているようだが、理由は?」

工山「ある風紀委員の詰め所に不正アクセスを!でもそれはずっと前の話です!奉仕活動もしましたし!」

少女「ずっと前?具体的にはいつの話だね?」

工山「夏休みが始まる前、えっと具体的には――」

少女「そこまで結構だ。ふむ……成程、そうか。そうなるか」

工山「え、はい」

少女「ありがとう。君の協力のお陰で大体アタリをつける事が出来たよ」

工山「そ、そうですか……」

少女「すまなかったね。ドアはすぐにでも業者に――と、しまった。最後にもう一つ聞いてもいいかな?」

工山「はい?」

少女「『今日』は何月何日だ?」

工山「それは当然――あ、あれ……?」

少女「うん?憶えていないのか?まぁ無理もないか、君は学校に来なくなって『2ヶ月ほど経つ』のだから」

工山「――え?」

少女「では質問を変えよう、工山君。『昨日の日付はいつ』だ?」

工山「XX月YY日、だけど」

少女「それは丁度今日から二ヶ月前の日付だね――おい」

少年「……まァ、ちっと寝てろ」

工山「待っ――!?」

バタンッ

少女「そっちはどうだ?」

少年「こっちのモバイルから書庫(バンク)にアクセスした履歴が。普通消すだろうがァ」

少女「……チッ。予想以上に小物だったか」

少年「まァいいじゃねェか。『SEED』配ってた野郎確保したンだからよォ」

少女「この程度で潰せるようなら、最初から苦労していない――と言う訳で後は任せる」

女性「それはいいじゃんけど」

少女「後で新入りを向かわせるから、適当に殴って貰えば元に戻る」

女性「つーか何でいないじゃん?こーゆーのは真っ先に首突っ込むもうとする筈じゃんし?」

少女「一身上の都合によりメイドカフェでバイト中だ」

女性「……はいぃ?」

――とあるメイド喫茶

バードウェイ「――さて。では現在までの状況をおさらいしようか」

円周「『いらっしゃいませーーっご主人様っ!何名でいらっしゃいますかぁっ?』」

バードウェイ「昨日までに20人近く『木原数多』を叩きのめした訳だが、今一効果が上がっていない」

円周「『二ひ――二名様ですねっ!ではこっちへどうぞ萌え豚ご主人様っ!』」

バードウェイ「……奴は何を狙っている?潜伏するにしてもお粗末、ただ手駒を増やしているにしてもおかしい」

円周「『メニュー?メニューが欲しいの?欲しいんだったら、それなりの態度ってものがあるんじゃないかなぁ?』」

バードウェイ「だとすればどう考えたものか……お前はどう思う?」

上条「場所、変えない?」

円周「『’お待たせしましたご主人様っ!なるべく早く帰ってね!』」

バードウェイ「どうしてだ?」

上条「こんな雰囲気で出来る訳ねぇだろ!?つーか態度悪ぃなアイツ!?」

シェリー「そーゆー店じゃねぇのか?本で読んだけど、こんなもんだったわよ」

上条「リアルとフィクションの境は分けよう?イギリスだってポッタ○居ないでしょ?」

シェリー「ある意味『ローマの休日』は実現できそうな感じもする、かしら?」

上条「俺は関係ない俺はフラグ立ててない俺はキャーリサと会わない……っ!」

鞠亜「『お待たせいたしました、ご主人様』――休憩は30分だからな。早めにキッチンへ戻ってくれ」

上条「……はーい」

バードウェイ「多忙な『当麻お兄ちゃん』のためを思って来てやったんだが、やれやれお気にそぐわなかったか」

上条「悪意ですよね?冷やかしに来たかっただけですよね?」

シェリー「……お、カレー美味ぇな」

上条「いいんだけどさぁ、こう」

バードウェイ「芳川と白いのも誘ったんだが、一蹴されたよ」

上条「いやだから、帰って報告すればいいんじゃね?いつの間にかシェリーも住み着いたし?」

シェリー「仕方がないでしょう。ホテルを追い出されたんだから」

上条「ホテルの壁に油絵描いてりゃなぁ……」

シェリー「ガキ二人泊めてんのに一人増えたって構わねぇだろ」

上条「子供と大人の女性は違うんですよっ!主に外聞的に意味でねっ!」

シェリー「友達ってS××するんだろ?」

上条「夜○さんだよね?しかもそれ薄い方のだから、100%個人の妄想だからね?」

円周「人体改造はちょっと引くよねぇ」 トスッ

上条「いきなり話に混ざるな!あと俺の膝の上に座るんじゃねぇって」

バードウェイ「結局いつもの面子に落ち着いてしまった訳だが、まぁいい」

上条「え、マジで?メイド喫茶と言う名の金毟りカフェで作戦会議すんの?」

バードウェイ「日本の文化の一つとして興味はあった」

上条「ネタ抜きで止めてくれません?つーかメイドの発祥ってイギリスじゃなかったっけ?」

バードウェイ「正確には家事使用人だな。家令や執事以外にも従者とか、戦場にも使用人付きで行っていたから」

上条「……家来、みたいな感じで?」

バードウェイ「も、含むが、基本は主人の世話が優先される。食事やその他、軍馬の世話等々」

シェリー「そもそも騎士は貴族階級だし、金属鎧が主流になってくると一人では脱ぎ着出来ねぇんだよ」

上条「イメージと違うなぁ、それ」

円周「でも当時から主人による性的搾取は頻繁にあったし、中には週一でメイドの振りをしてくれる人を雇ったりもしてたしねぇ」

上条「どんだけアレな国なんだよ、イギリス」

円周「まぁでもそれが成り立つ程には裕福な生活や文化があった訳だし?いいと思うよ」

円周「はい、お兄ちゃん。あーんっ?」

上条「自分で食えるって……なんだろうな、喫茶店で食べるカレーが自分ちの味付けって言うのは、なんか、なんつったらいいのか」

円周「ウチは味にも拘ったお店になっておりますっ」

シェリー「男が作るんだったら、別にレトルトでもいいんじゃねぇの?」

バードウェイ「そこはそれ、母親以外のメシを食った事がない連中は癒しなのだろう。可哀想だから放っておいてやれ、な?」

鞠亜「オイお前たち営業妨害は止めるんだ。気持ちは分かるが、非常に分からないでもないが」

円周「現状で誰も損してないんだからなぁなぁで済まそうぜ、って話だよねーっ」

上条「まぁレシピ書いたの俺だけど、作ってるのはメイドさんもいるし?あんま言うのも」

バードウェイ「――と適度に周囲を牽制した所で本題と行こうか」

鞠亜「なんだね?悪巧みならば私も混ぜて貰おうじゃないか」

上条「帰って?お仕事しようぜ?」

鞠亜「……そしてまた私には経験値が溜まるなっ!」

シェリー「学園都市もアレよね?『濃い』よなぁ、どう考えても」

上条「個性豊かで良いんじゃないんですかね、はいっ。自由な校風もウリですし!」

円周「自由と無責任は別なんだけどねぇ――ってお話は?」

バードウェイ「良い話と悪い話、そしてどうでもいい話の三つあるが、どれから聞きたい?」

上条「どうでもいいってのは興味あるけど……でもホンットにどうでも良いんだろな」

上条「んじゃ良い話からで」

バードウェイ「今さっき穏便に話を聞いてきた工山規範は、時期的に見て早い段階で『インストール』されたようだ」

円周「最初の『木原』って事かな?」

バードウェイ「白モヤシが殺したと証言している後、時期的にも工山が不登校になった境と一致している」

バードウェイ「実際に奴の部屋には『SEED』の材料や、他の連中に発送したログも完全に残っていた」

バードウェイ「ここまでの一連の犯行、と言うか『木原数多』の親は工山だったと」

バードウェイ「発送先はアンチスキルが『お話』を聞くそうだ」

上条「それ……解決じゃね?」

バードウェイ「本当にそう思うか?」

上条「無理、だよなぁ……無駄に厄介だな、『木原』」

円周「いぇいっ!」

シェリー「誉めてねぇ――いや、誉めてるのか?」

バードウェイ「芳川と白いのの意見も同じだ。『ここまで手が込んでいるのに、これで終りな訳が無い』とな」

上条「それが悪い話?」

バードウェイ「ここまでは良い話。まぁ一応のケリはついたという意味で、良かったのかも知れないが。で、だ」

バードウェイ「悪い話は『インストール』の元データの事だな」

バードウェイ「ダミーの人格データ、と言うかネストとディレクトリをそれっぽく分けたハードディスクを用意して」

上条「簡潔にお願いします」

バードウェイ「『インストール』されるデータの場所を確認した」

上条「それ良いニュースじゃね?それを消しちまったら解決じゃん」

バードウェイ「データそのものは白いのがハッキングして消しんだが、暫くして再実験してみたら別のデータを『インストール』すると」

バードウェイ「どうやら学園都市のイントラの中に、幾つも存在しているようだ」

上条「イントラって?」

円周「会社や省庁とかで、内部のコンピュータだけを繋げて構築してるネット環境、かな?」

円周「学園都市は都市そのものが巨大な一つのイントラで作られてて、外部との接続を許してる状態だねっ」

上条「……学園都市のパソコンの中に、うじゃうじゃしてるって?」

バードウェイ「その理解でいい、か?……まぁ第一位が片っ端から消して回ってるのが現状だよ」

上条「……なんだかんだで、付き合い良いよな」

バードウェイ「同時に芳川がデータそのものを分析し、効率的に検出・排除出来るプログラムを組んでいる」

上条「完全にウイルスだな」

バードウェイ「以上、悪い話だ」

円周「悪いって言うよりも、面倒?」

バードウェイ「しかしそれ程心配はしなくていい。『勝手にファイルをコピーする』のは普通のセキュリティソフトで防げると確認された」

上条「って事はもう心配なくて良い、とか?」

円周「セキュリティの甘い人なんか掃いて捨てる程一杯だよ?『木原数多』がコピペするって可能性もあるし」

上条「何にせよ本人をどうにかしないと、かよ」

バードウェイ「そしてどうでもいい話だが……工山はハッキングが趣味らしい」

上条「ホントにどーでもいいなっ!……いやいや、大事じゃね?」

バードウェイ「つい三日前にも書庫(バンク)に侵入したそうだ」

上条「まさかそこにっ!?」

バードウェイ「個人データの中には紛れ込ませるのは、幾ら何でも悪目立ちすぎるだろう」

円周「誰かの個人情報が知りたかった、とか?」

バードウェイ「現在調査中だ。工山の行動も同じくだが、そちらの方もあまり期待しないでくれ」

上条「記録がない?」

バードウェイ「監視カメラの映像を見るに、全くと言っていい程外出してない」

円周「『SEED』の材料と発送は?」

バードウェイ「近くのコンビニで両方済ませている。材料の送り主は調査中、と……ふぁふ」

上条「あー、大変だったもんな色々と。先帰って寝てろよ」

円周「そこだけ聞くと凄い台詞だけど……あ、シェリーちゃんも寝てる」

シェリー「……クソつまんねぇ探知の連続で、それなりに疲れてんのよ」

バードウェイ「まぁ兎に角、今日は先に帰らせて貰うよ。いいか?きちんと送って貰え?」

上条「おうっ!ちょっと情けないけどなっ!」

シェリー「寄り道はさせないで、真っ直ぐ帰りなさいね?」

円周「はーいっ!」

上条「……なんだろうな、この屈辱感……?」

――バックヤード

円周「お疲れ様でーすっ!」

鞠亜「はい、お疲れ様。悪巧みはもういいのかい?」

円周「んー、一段落した感じみたいだし?」

鞠亜「それは残念。困っているんだったら、無理矢理にでも助けたんだが」

円周「情報戦だから鞠亜ちゃんより芹亜お姉ちゃんの方がありがたいかも」

円周「でも『木原』相手だから、下手に介入されると拙いかもねぇ」

鞠亜「木原、だと?」

円周「加群おじちゃんじゃないよ。数多おじちゃんの方」

鞠亜「本当に必要ないのか?先輩には借りが一つあるんだから、遠慮なんていらないんだぞ」

円周「『メイドさんハァハァ体で返して欲しい』、って言ってたっ!」

鞠亜「それを本当に言うようであれば、堂々と踏み倒せるんだがな。言わないから逆にタチが悪い」

円周「自分に対して強いられてるみたいにストイックなんだよねぇ」

鞠亜「そこら辺は男には珍しくない、んじゃないか?先生もそうだったし」

鞠亜「寡黙な人だったけれど、私達にはいつも優しくしてくれた」

円周「それが初恋?」

鞠亜「『初恋は叶わない』というジンクスがある訳だが、まぁ私もそのクチだよ」

円周「……うー、わたしの初恋は叶って欲しいなぁ」

鞠亜「先輩……しかないよな。ここで別の人だったら意外すぎる」

円周「鞠亜ちゃん……わたし、実はねっ!鞠亜ちゃんに殴られてからずっとずっと――!」

鞠亜「やめろ、それ以上私に近づくな!」

円周「――って話は共学よりも繚乱は多そう」

鞠亜「無くは無い。ただ私は変人扱いされているから、無縁だけども」

円周「ちょっと興味あるよねぇ」

鞠亜「……」

円周「何?やっぱりキスする?みんなにはナイショね?」

鞠亜「やっぱりの意味が分からないなっ!……いやそうじゃなく、君は変わったな」

円周「……ごめんね。わたし、鞠亜ちゃんとはお友達でいたいから、ね?」

鞠亜「そっちじゃないな。ボケ倒すの止めてくれないか?」

円周「舌を入れなければ、まぁ?」

鞠亜「それ男から一番嫌われるパターンだからね?……いやいや、そうでもなく」

鞠亜「変わったというのは性格だ。私が知っている『木原円周』はもっとサイケデリックな性格だった気がするよ」

鞠亜「……それともこちらが“素”なのかい?」

円周「よく、分からないけど」

鞠亜「急ぐ必要はない。現状の『誰も傷つけないで済む環境』が続けば、それで充分に学習は出来るだろうし」

鞠亜(急ぐ必要は、ない。ただ)

鞠亜(善性を獲得してしまえば、自身の過去の行いに押し潰されるかも知れない)

鞠亜(けれどそれは、『こちら側』に籍を置くのであれば避けては通れない)

鞠亜「……まぁ、どこぞのお人好したちが何とかするんだろうけど」

円周「だよねぇっ、いっつも死にそうな目に遭ってるもんねっ!」

鞠亜「思考パターンを読むんじゃな――ん?」

円周「気を悪くしちゃったの?ごめんね、つい癖で」

鞠亜「そうじゃないよ。何か今ひらめいた気がしたんだが……まぁいい」

円周「加群おじちゃんのお話でも聞きたい、とか?」

鞠亜「それは是非にでも聞きたいね。暴力を用いるのも吝かではないよ」

円周「芹亜お姉ちゃんから聞いてないの?」

鞠亜「ある程度は、だな。先生が『木原』としてどんな研究をしていたのかは全く」

円周「んー……あ、そうだ!丁度今、加群おじちゃんの思考パターンがアクティブになってるんだったっけ」

鞠亜「何?」

円周「うん、うんっ!こんな時、『木原加群』だったらこう言うんたよね……ッ!」

鞠亜「お前――っ!?また先生を侮辱するのか!」

鞠亜「先生は!先生はお前なんかに分かる訳が――」

円周「『“それ”は気にしないでいい。全てに100%正しい答えはまず有り得ないし、だからといって捨てていいとも限らない』」

鞠亜「だからそれは先生なんかじゃない!あってはいけないんだよっ!」

鞠亜「生者が死者を勝手に代弁するなんて!どんだけ傲慢な事だと思ってやがる!?」

円周「『君が私をある程度理解してくれるのは嬉しく思う。けれど、私も「木原」であるのは間違いないんだ』」

円周「『目的のために手段を選ばず、時として手段のためには目的を選ばない』」

円周「『同じ「木原」であるが故に、この「木原」が私の思考をトレースしやすいのもまた事実だ』」

鞠亜「……せん、せい……?」

円周「『……済まなかった。私は、私達の下らない闘争に、君たちやあの少年を巻き込んだ事を申し訳なく思う』」

円周「『敵は取ったが……だが、失われたものは二度と帰ってこない』」

鞠亜「……先生は、先生、なのか……?」

円周「『あくまでもエミュレーションだ。だから100の言葉の中で、私が現実で言ったであろう言葉は一つか二つかも知れない』」

円周「『聡明過ぎる故にクラスで孤立していた君だ。信じられないかも分かる。でも、だからこそ』」

円周「『私は聞いて欲しいと思う』」

鞠亜「やめろ!先生は!先生はなっ!」

円周「『君達の教師であった時、ほんの僅かな時間でしかなかったが――』」

円周「『――私は、とても幸せだった。穏やかでやりがいある仕事だったよ』」

円周「『だから、と言う訳ではないし、君が強く望めばこの「木原」は私の研究データの開示も拒まないだろう』」

円周「『でも、君達の中で――「君の中での木原加群は、無口な教師“だけ”でいたい」と願う』」

円周「『私のやって来た事、それを知られたくないと思うのは、私のエゴだろうか?』」

鞠亜「……バカヤロウっ!先生は、先生はなっ!そんな事は言わない!」

円周「『……そうか。君の中の「木原加群」は――』」

鞠亜「違う!そこじゃない!私の先生は――」

鞠亜「生きてる間は!こんなにベラベラ喋るような性格じゃなかったんだよ!」

円周「『……ありがとう、雲川鞠亜』」

鞠亜「アンタに言いたい事はいっぱいあったよ!私だけじゃなくて!他のみんなだってそうだ!」

鞠亜「それを黙って行きやがって!姿を眩ますなら眩ますで、サヨナラの一言ぐらい言われせたっていいだろ!」

鞠亜「だから!だからっ!」

円周「『あぁ』」

鞠亜「……ありがとう、先生」

円周「『……あぁ』」

――十数分後

鞠亜「――さて、と言う訳で通常業務へ戻ろうかっ!」

円周「鞠亜ちゃんお目々が真っ赤だし号泣したのもバレバレだし?」

鞠亜「君のロールプレイに付き合ってやっただけの話だよ。私クラスになると嘘泣きの一つや二つ当たり前だろう?」

円周「や、さっきから鞠亜ちゃんにハグされてお顔が痛いんだけどねっ」

円周「肋骨的なものがゴリゴリ頬に当たるって言うか?」

鞠亜「女の器量は胸の大小で変わりはしない。むしろ拘る方がどうかしている」

円周「『俺加群、ツルペタはぁはぁ』」

鞠亜「黙れ。殺すぞ……あぁ、そうか。そう言う事かっ」

円周「小学校の先生って性犯罪者の比率が高いんだよねぇ」

鞠亜「今その話をする意味が全く分からないんだが、そうじゃない。さっき感じた違和感だ」

円周「……ごめんね?あんまり上手く『他者再生』出来なかったかも」

鞠亜「違う!君が私に負けた理由の方だ!君の思考パターンは偏っているからだったんだよ!」

円周「んん?どういう意味?」

鞠亜「例えばイギリス人の行動・思考パターンを模倣するとしよう。でもそれには背景にある情報が不可欠だよね?」

円周「歴史とか民族性とか、ピューリタン――じゃなかった、イギリス清教とかも大切だよね」

鞠亜「だから君の再生が不完全すぎたのも、そこら辺の問題だったんだよ」

鞠亜「上っ面しか見てないんだ、そりゃ本物とかけ離れるのは当たり前」

円周「結局わたしに足りないのは、なぁに?」

鞠亜「それは……私が言うべき事ではない、と思うよ。言わなくても知っていると言うべきか」

鞠亜「でもそれは『足りない』んじゃないんだ。『足りなかった』んだ」

鞠亜「僅かではあるが君の中に存在し、これからも増え続け――て、欲しいと私は願うよ」

円周「むー、抽象的すぎるし!」

鞠亜「別に意地悪をしているんじゃない。ただそれは他人から知らされる類のものではないってだけで」

円周「寝癖?」

鞠亜「……気がつけばいつの間にか、と言う点では惜しいか。まぁ悲観するような話じゃ――」

ガチャッ

上条「おーいお前らー、そろそろ店長が戻ってこいって――」

鞠亜「……」 (※円周をハグしている)

円周「むに?」 (※鞠亜にハグされている)

上条「あー……うん、ごめんな?俺は何も見てなかったよ?」

鞠亜「待て上条当麻!君は致命的な勘違いをしている!」

上条「嫌いじゃない!俺は決して嫌いじゃないよ!うんっ!」

円周「あ、やっぱりお兄ちゃん百合厨だっだんだねぇ。ベンジャミ○先生のご本が多いと思ったら」

上条「て、店長には上手く言っとくから!心配はしなくていいぞっ!あと円周さんは帰ったらお話があります、主にプライバシーについて!」

上条「それじゃっ!」

鞠亜「ちょまっ!?」

パタンッ

鞠亜「……」

円周「……」 クンクン

鞠亜「まずいマズい拙いっ!?先輩の口から姉に伝わったら大惨事だ!死ぬまでこのネタでからかわれるっ!?」

鞠亜「君も弁解しなくては――」

円周「……ね、鞠亜ちゃん?」

鞠亜「な、なにかね?」

円周「鞠亜ちゃんって、いいニオイがするよねっ……!」

鞠亜「離せ私にはそういう趣味はないっ!」

円周「成程成程、一度組んじゃえば能力は使えないのかー。だったら力任せに押し倒せば良かったんだねぇ」

鞠亜「だからそう言うのはノーサンキューっ!誰かに見られたらどうするっ!?」

円周「『鞠亜ちゃんが見てる』的な?」

鞠亜「私のトラウマを刺激するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

――帰り道 夕方

円周「――って鞠亜ちゃんはトラウマがあるみたい」

上条「御坂さんちのスールみたいな感じか。でもまぁ本人同士がいいんだったら、別にいいんじゃね?」

円周「百合厨の人は心が広いよねっ」

上条「濡れ衣だなっ!俺はベンジャ○ン先生じゃなく黒○先生の方のファンだしぃ!」

円周「いやでも鬼ごっ○も百合百合しい花が咲いていた気がするけど……?」

上条「あんまり言うな、な?色々と問題があるから」

円周「でもあれで良かったのかなぁ?」

上条「本物じゃないだろうけど。間違った事は言ってないと思う」

円周「鞠亜ちゃんからは精度上がったって誉められたけど、原因が分からなきゃ意味はないよねぇ」

上条「まぁでもあんま良い事じゃない、って俺は思うけど」

円周「お兄ちゃんは反対なの?」

上条「判断そのものは正しいと思う。加群さんの『木原』時代のデータを渡さなかったり、思考パターンで話した内容も」

上条「けどそれは『木原加群』じゃないだろ?」

円周「精度の問題?」

上条「生命の尊厳の問題、かな?例えば円周が俺のデータを完全に『卓上演劇』したとする」

上条「生まれてからのデータ全てを完全に分析すれば、限りなく俺と同じ思考や行動が出来るんだろう」

上条「だからって俺じゃない、よな?」

円周「……うん。お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、代わりは存在しないって思う」

上条「それと同じで。どれだけ上手く、『木原加群』を再現したって、それはオリジナルじゃない」

円周「理屈は、分かるけど。言っている事も理解出来るけど」

円周「じゃあじゃあ、どうして鞠亜ちゃんは泣いちゃったの?最初は怒ってたのに」

上条「それも、ある意味同じだ。『雲川芹亜が何を考えているのか、それは雲川芹亜にしか分からない』だろ?」

上条「……まぁ、俺の想像だけど。嬉しかったってのは間違いないと思う」

上条「一度は正面から殴り合った相手に気を遣われた、とかじゃねぇかな」

円周「そっかぁ。喜んでくれたんだ……」

上条「単に雲川さんの欲しかった台詞を言っただけかも?明日にでも聞いてみればいい」

円周「……嫌がらないかな?」

上条「頑張れ」

円周「えーっ!?お兄ちゃん無責任すぎるしっ!責任取ってくれなきゃやだよぉっ!」

上条「路上でその言葉叫ぶの止めて貰えないかな?多分わざとだと思うんだけど」

円周「でもっ」

上条「人の嫌がられる事をして嫌われるのは当然だ。逆に人の喜ばれる事をすりゃ、好かれる、かも知れない」

上条「とにかく、勉強しろ。俺とかシェリーとか、練習相手はいるんだからな?」

円周「……」

上条「こればっかりは慣れて貰うしか――ってどした?急に立ち止まって?」

円周「あの、ね?今、気づいたんだけど」

上条「うん」

円周「わたしがもし、鞠亜ちゃんに酷い事して怒らせちゃったら、ゴメンナサイ、するんだよね?そうすれば許してくれるの?」

上条「取り返しのつかない事でもない限りは、多分大丈夫だと思うけど――お前なんかやったのかよ!?」

円周「そうじゃない、そうじゃないんだよ!鞠亜ちゃんには、そんなに酷い事はしてないと思う。でも――」

円周「――わたしが、『木原円周』が今まで殺してきた人は、もう無理だよね……?」

上条「それは……」

円周「その人を再生するデータも無いし!その人達はもう」

上条「そう、だな。それは円周の言う通りだと思う。けど――」

壮年の男性「あのー、すいません?ちょっといいですかー?」

上条「悪い、今立て込んでるから。他の人に頼んでくれ」

壮年の男性「道をお伺いしたいんですが――」

上条「――駅前じゃあるまいし、住宅地の真ん中で迷う奴なんていねーよっ!」

バキィッ!

壮年の男性「うぉうっ!?」

パキィィィンッ!

上条「……クソ!このタイミングか!待ってたのは、『これ』だったのかよ!?」

 周囲を歩いていた人間、仕事帰りのサラリーマンやOL風の女、数人の高校生たちがニヤリと同じ表情を作る。

男「『暫くぶりだなぁ、「幻想殺し」?』

 陽は地平に落ちようと傾き、闇が周囲を喰らい出す。

――同時刻 上条のアパート

シェリー「泥を掬い上げて眠りなさいな――エリス!」

 いつの間にか持ち込まれていた石膏像。のそりと一震えすると、玄関から殺到しようとする男たちを薙ぎ払った。

 だがしかしそれは陽動。
 本命である即死性のグレネードを“抱えたまま”の工作員たちが、窓ガラスを破って特攻してくる。

 『インストール』してあるが故に無謀すぎる行動。並の魔術師ならば対処出来ずに終わっただろう。

 しかし。

バードウェイ「――弁えろ」

 ズゥン!と象徴武器を一振りすると呪文も無しに衝撃が飛ぶ。
 一瞬で外へと投げ出された男たちは空中で誘爆した。

シェリー「……胸糞悪ぃぜ」

バードウェイ「手は抜くな。操られているとは限らん」

 元より気を抜ける状況ではない。だが、二人の表情はどちらかと言えば澄んでいた。

シェリー「……ガキ二人が居ねぇ分、教育に配慮しなくていいのかしらね?」

バードウェイ「おいおいクロムウェル。滅多な事を言うもんじゃ、ない」

 言葉はあくまでも諫めるように。しかし口から出る台詞は嬉々として。

バードウェイ「私達は『さっさと片付けて、助けに行かなければいけない』んだ。つまり――」

シェリー「『死ぬほど急いでる』んだから、まぁ――」

バードウェイ・シェリー「「――これは、しょうがない」」

 爆音が轟く。

――帰り道、帰れない道

 陽は完全に落ち、幾つかの街灯だけが周囲を照らす。
 オバケの一つでも出そうな雰囲気ではあるが、そちらの方がまだ幸運だったかも知れないが。

男「『どぉしたい?親の敵でも見るような目ぇして?』」

男「『あぁお前さんを一度殺した相手はちっこいシスターさんだっけか?そっちの敵はとらねぇのか?』」

 普段であれば堅実そうなサラリーマン風の男。しかし軽薄な笑みは、悪意たっぷりの言葉回しには心当たりが有りすぎる。

上条「お前らは『円周がこうなるのを待ってた』のか……!」

上条「俺達と仲良くさせる事で!『円周に善悪を学ばせる』ためだったのかよ!?」

 後ろに隠れる少女を庇うために前へ出る。それはいつもの事だ。

男「『あー、あっあー。そうじゃねぇな、それだけでもねぇよ。つか』」

男「『わざわざどうして弱らしたか、ってぇ所に答えがある』」

上条「捕まえようと!……してるんじゃ、ないのか?」

 わかってねぇなぁ、と肩をすくめる男達。
 余裕を見せているのか、彼らが包囲を詰める気配はない。

上条(時間稼ぎさえすれば……バードウェイ達が、来る……!)

男「『――的な事を考えてるんだろうが、生憎それはちぃと難しい。何故ならあっちも襲撃してっからな』」

上条「アイツらは、お前らなんかに負けない!」

男「『だなぁ。それはどうしようもねぇ現実だが――』」

壮年の男性「――あ、あのー?」

 先程一撃を入れて昏倒させた男が、頭を振って立ち上がろうとする。
 どう見ても一般人の彼は、事態を把握してそうにない。

上条(二人を守りながらどうにか?……いや、するしかない!)

上条「えっと、おじさんはこっちに!」

壮年の男性「は、はぁ?」

上条(せめて円周が普段通りなら、どうにかなったんだが)

男「『おー、そいつも守るのかい?大変だなぁ、ヒーローさんって奴ぁ』」

上条「……俺はヒーローなんかじゃない。けど、お前には一生――何回生まれ変わっても、分かりやしねぇよ」

男「『そいつぁ敵なんだぜ?銃持ってお前をぶっ殺そうとしたのに?』」

上条「フザケんなっ!?お前が命令したんじゃねぇか!」

上条「人の体を操って!動かして!好き勝手しやがったのはお前だろうが!」

 それは上条の辿り着いた結論。『操られているから仕方がない』と。
 不可抗力ではあるし、刑法でも無罪に当たるだろう。
 人間感情としても、いざ自身が同じ立場に立たされた時を考え、どうしても甘くなってしまう。

 けれど。『木原』はそれをも利用する。

壮年の男性「ねぇ、上条当麻君――」

壮年の男性「――『インストールする前から敵』という発想はないのですかな?」

上条「――え」

 瞬間、発光。
 振り向く暇も与えず、只の被害者であった男の手から離れた赤い光が上条の太股を貫通した。

円周「お兄ちゃんっ……?お兄ちゃんっ!?」

上条「お前――お前がっ!」

壮年の男性「お初にお目もじ致します。『グレムリン』の魔術師で御座いますれば」

 慇懃無礼に一礼。どこか執事を思わせる雰囲気のまま、魔術師は少し距離を取る。

円周「お兄ちゃん!傷が――」

 どくどくと穿たれた傷口から血は止まらない。
 傷痕を押さえようにも、華奢な掌からは防ぎきれない程に命が流れだしている。

上条「……」

男「『お?静かになったか?死んだとか?』」

円周「……木原おじちゃん、わたしはっ!」

男「『俺達を皆殺しにする、か?いいんじゃね?すれば?』」

魔術師「それは流石に困りますなぁ」

円周「……ふざけてるの?わたしは!確かに迷ってるけど!」

円周「当麻お兄ちゃんを傷つけた相手になら、なんだって――」

男「『まぁ落ち着け。そうじゃねぇ、お前が本気でするんだったら、難しくもねぇだろ。けどよぉ』」

男「『傷の手当て放っぽっときゃ、そのお兄ちゃんは死ぬだろうが?』」

円周「……っ!」

上条「……なにが、したいんだよ……?」

 息も絶え絶えに肺から押し出すように上条が呟く。

男「『あーそりゃ簡単だ――お前に「諦めさせる」ためだよ』」

上条「俺に……?」

男「『じゃねぇよ無能、お前なんかに価値はねぇ。そっちの「木原」にだ』」

 円周は上着を脱ぎ、止血帯を作ろうとする。しかしどこを縛ったらいいのか分からない。

魔術師「早く止血しないと死にますよ?動脈を破っているので、時間との勝負ですな」

 テレビのマラソン中継でも見るように、軽い言葉。
 何度も何度も円周は失敗を繰り返し……ようやく出来たのは、只キツく布を巻いただけの、お粗末な応急手当だった。

円周「……ごめんなさい、お兄ちゃん!ごめんなさいっ!」

上条「お前……どうして謝って……?」

男「『そいつは今「木原加群」をアクティブにしている。簡単に言うと人体破壊と蘇生のスペシャリストだ』」

男「『だから本来であれば、別に何一つ苦労する事無く、お前の傷口の手当も出来る――どころか、この場で簡易手術も出来た』」

男「『だが、こいつが現実だよ。上条当麻』」

男「『そのバカは「壊す」事だけを残して、加群の「治す」部分を消しやがったんだろ』」

男「『これが、現実。これが、「木原」なんだよ』」

円周「……ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさいっ!」

男「『善性がどうだっつった所で誰一人救えねぇ。助ける事なんて出来やしねぇ』」

魔術師「――まぁ、アレですな。『木原数多』さんが何をやっていたかと言えば――『待っていた』と」

魔術師「あなた方が『木原円周に善意を植え付け、自壊するのを待っていた』だけですよ。ただそれだけのお話」

 たたみ掛ける『木原』の悪意。
 出口の見えないトンネルを除くかのような、底の知れない悪意の塊。
 木原円周が獲得した善性に真っ向から反発する『悪性』の存在。

男「『生き方なんてぇのは絶対に変えられねぇんだよ!テメェがぶっ殺した、踏みにじった連中は生き返りはしねぇ!』

男「『「木原」に帰ってこい?そうすりゃ悩むも必要もねぇ。善性なんてクソだ!』」

男「『辛いんだったら、捨てりゃいい!モラルも正義もテメェが決めればいい!』」

男「『お前はもう、「木原」としてしか生きていけないんだよ――なぁ、「木原」円周!』」

 これがもし暴力であれば、木原円周は膝を突かなかったであろう。痛覚を遮断するか、『気にしない』事にして笑いながら拳を受け続けたかも知れない。
 これがもし脅迫であっても、木原円周は頭を垂れなかったであろう。大切なものが存在しない相手に、脅しが通用しないのだから。

 だか、しかし、けれども。

 自分の最も大切な存在――『理解』してくれる、受け入れてくれる人間の前で、まざまざとおのれの持つ業を暴き出された。
 獲得したばかりの『善性』により、自責の念に囚われた心をハンマーで打ち砕くように。

 もう、保たない。

円周「ごめんなさいごめんなさいごめ――」

 彼女の言葉を最後まで言わせず――いや、言わさず。
 くしゃり、と。そう、何でもないように、極々普通の事であるかのように、円周の髪を撫でたのは。

上条「――充分だ。もう痛くはねぇよ」

 『木原』が最悪であるのがいつもの事であるように。
 彼が立ち上がるのもまた、いつもの事だ。

円周「お兄ちゃんっ!?立ったら傷口がっ!」

上条「お前の痛みに比べりゃ、どうって事はねぇよ」

円周「わたし?わたしは別に――」

上条「じゃあ何で今、お前は泣いてやがるんだよ!」

 確かめる円周の頬に流れるものはない。
 だが、上条には見えている。

円周「わたしは何もっ!」

上条「分かるんだよ!お前は何も言ってないけど、お前はずっと泣いてたじゃねぇか!」

上条「誰にでもなれる能力なんて!お前が誰からも見てほしいって願望じゃねぇのか!?」

上条「でもそれじゃダメなんだよ!誰かになれるとかなれないとか、そう言う事じゃねぇ!」

 目の前の少女は、こんな傷ついてたのに。
 誰も助けなかったのは。

上条「お前が言わなきゃいけなかったのは、『助けて』って言葉だけだ」

――帰り道、終り

男「『ぶ、ぶはははははははははははははははっ!』」

 血を吐く――と言う吹く――上条の言葉にも、一層深さを増した闇には届かない。

男「『いいねぇ。格好いいねぇ、おじさんも一回ぐらいは言ってみてぇよ、その言葉』

上条「お前が――お前たち『木原』がこの子をっ!!!」

男「『あーまぁそうだわなぁ。それは間違いであり、正解でもあるんだが。今は関係ねぇ』」

男「『でもなぁ今のはちっと頂けねぇと思うぜ、俺は』」

上条「お前に何が分かるんだ木原数多っ!」

男「『分かるんだよ、分かっちまんだよ!俺は「木原」だからな』」

男「『テメエみてぇな甘っちょろいクソ野郎とは相容れない、ってぇ事がよ』」

上条「……つっ!?」

男「『あーもうホラ、無理してカッコつけっから、そうなんだってばよ――オイ!』」

魔術師「お待ちを――失礼します」

 背後に回っていた魔術師が上条に肩を貸し、ゆっくり地面へ下ろす。
 ベルトを外して足の根本を縛り、応急処置を始めた。

上条「なに、を」

魔術師「すいませんね、呪的防御がかかっていると聞いたものですから、少し強めにやってしまいました」

男「『ま、こいつはこんなもんか。んじゃまぁ――行くぜ?』」

上条「お前ら、何が――」

 集まっていた男達がバラバラの方向へ消え始める。
 一人は徒歩で暗がりへ歩み、一人は学生らしく自転車に乗り、また他の一人は駐めてあった車を動かす。

 代表格の『木原』――そして『円周』も同じ車へ。

上条「……待てよ!?どうしてお前ま――くっ!?」

魔術師「ですから安静に。ショック死してもおかしくない傷なんですから」

上条「ウルセェよっ!円周っ!」

 地を這う体力すらなく、上条は声を振り絞る。
 そんな彼に、彼女は『いつもの楽しそうな満面の笑み』で応える。

円周「……ねぇ、とーまお兄ちゃん」

円周「わたしも、『上条』になりたかったよ」

円周「そして出来れば、『そっち側』に居たかった」

円周「それは――『木原』じゃない、『円周』はそうしたかったよっ!」

 表情が心の底からでない事ぐらい、短いながらも濃密な付き合いをした人間には分かる。
 理解して、しまう。

上条「駄目だ円周っ!戻って来いっ、お前には帰れる家があるんだろうっ!?」

上条「家族じゃねぇけど、待ってる俺達が居るんだよっ!だから、だからっ――」

円周「……ううん、駄目なんだよ当麻お兄ちゃん。何故なら、それは――」

円周「『木原』なら、こんな時、こうしなくちゃいけないんだからっ!!!」

上条「……っ!」

 木原円周にトドメを刺したのは誰か?
 自分達が決定的に『違う』と思い知らしめたのは。

円周「だから、だからね、お兄ちゃん――」

 意識が暗転する。
 地面に倒れたのか、地面がせり上がって顔を殴ったのか、分からない程に疲労は蓄積していた。
 闇に刈り取られる意識の中、声ならぬ声を聞く。

円周「――その『右手』で、わたしを殺して、ね?」

――病院 朝

上条「――」

上条「……?」

一方通行「……目ェ覚めたみてェだな」 ピッ

上条「……一方通行……?」

一方通行「『起きた……あァ』」 ピッ

上条「……っ!?」

一方通行「大腿部の動脈損傷と筋肉裂傷、暫くベッドで寝てやがれってェのが医者の診断だァな」

一方通行「……つってもまァ、言う事聞きゃァしねェだろォってンで――」

上条「円周は……?」

一方通行「――俺がバカの世話任されてンだが、ぐらいは言わせろ。あー、木原円周な?」

一方通行「オマエを襲撃した連中は行方不明、あン時監視カメラは切られてた上、同時刻に『木原』が起こした事故でアンチスキルは後手後手だ」

一方通行「ンで、しょうがねェから工山ンちにあったリストから、虱潰しにやってンのが、ここ三日の間だなァ」

上条「……三日?オイそれじゃ!」

一方通行「血ィ流したオマエを保護してから寝っぱなしだったンだが」

上条「……悪い。俺――」

一方通行「……あァなンだ。それはもう手遅れなンだよ」

一方通行「『木原円周』はもう、この世界に居ねェってのがこっちの推測だ」

上条「……?どういう」

一方通行「状況証拠からオマエのボスが出した結論は、だ」

一方通行「『クソ木原はクソガキを諦めさせるのが目的だった』ってェ話……なンで俺が説明しなきゃいけないンだか」

上条「……おかしいだろっ!?そんなもんはっ!」

一方通行「……あァ『無理矢理ふん捕まえてフォーマットしちまえば良くね?』かァ?俺もそう言ったンだが」

一方通行「『インストール』された連中は、『木原数多』が出ている間の事は一切記憶してねェ。が、だ」

一方通行「あのクソガキは何となく憶えてる――電気系、しかも脳神経に介入できる異能なンだろ?」

一方通行「だから最初に『インストール』喰らった時にゃ、能力で不完全にガードを――」

上条「……そうじゃねぇよ」

一方通行「あ?」

上条「どうして円周なんだよっ!?あいつはまだまだこれからじゃねぇか!」

上条「やっとだ!自分のしてきた事に罪悪感を持って!これからどうしようかって所だったのに!」

上条「やって来た事に向き合おう、ってのが……悪い事なのかよ……?」

一方通行「……たまァに思うンだがなァ。人生の幸運、不幸ってェのは分からねェよな」

一方通行「俺みてェな最悪のクソッたれがあのチビと出会って、ちょい最悪のクソッたれになったンだが」

一方通行「てめェ自身のやった事に気遣ねェ方が幸せだったのかもしれねェよな?」

上条「……なぁ一方通行。それは――分からないよ」

上条「誰がどんな生き方をしようとも、他人から見て幸せだって思われなくても。本人が納得してりゃ、いいっては思う」

上条「結局、自分がどんだけ幸せかなんてのは、自分自身で決める話だからな」

一方通行「まァ……な」

上条「でもな、円周は違うんだ!泣いてたんだよ!」

上条「あんな顔して――『自分を消しに行った』奴が、幸せな訳ねぇだろうが!」

一方通行「あー、怒鳴るな怒鳴るな。そいつァクソ木原にぶつけてやれ」

上条「一方通行……?」

一方通行「どォせバカが突っ込むだろォから、肩貸してやれってェ言われてンだよ」

上条「……ありがとう」

一方通行「別にィ?礼を言われるよォな事ァしちゃいねェがだ。もしも、だ」

一方通行「記憶を消した後に書き込めば、そりゃもォ『右手』で戻らねェンだよなァ。分かってンのか、そこら辺?」

上条「あぁ、知ってるさ」

一方通行「以上を踏まえて『木原円周の体を乗っ取った木原数多』、なんつー最悪のシロモンが出来た日にゃ、オマエはどォすンだ?」

一方通行「『学習措置』で『木原数多』を消して、一から子育てでもするのかよ?」

上条「取り敢えず、一発殴る」

一方通行「……まァ、そォなンだろうォな」

上条「中身で誰であろうとながろうと、俺はあの子を助ける。中身がオッサンだろうが、関係は、ない」

上条「例え『木原数多』であっても――いや、あったからこそ、か」

上条「これからの人生を見捨てるつもりも、知らんぷりするつもりもねぇよ」

――車で移動中

芳川「――で?どこまで行けばいいの?」

上条「……どうしよう?」

一方通行「バカじゃねェの?オマエバカじゃねェの?何テンションだけで病室飛び出してンの?」

芳川「ウチの子がツッコミを入れる日が来るとはね……!」

一方通行「オマエもいい加減にしろよクソババア?ウチでもオールボケに囲まれてンじゃねェか」

上条「あなたは菩薩みたいな人だっ!結婚して下さいっ!」

一方通行「『あー、オレオレ。今オタクの新入りさンがさァ』」

上条「ごめんよ一方通行君?もうふざけないから携帯を俺に返して、ね?」

芳川「よ、よろしく?」

一方通行「オマエもバカの戯言本気になンじゃねェよ適齢期。つーか人の携帯で婚活サイトに登録してンじゃねェよ」

上条「もしもし?上条だけど」

バードウェイ『ん?どこの上条さんだ?生憎ネタで求婚するような知り合いは居ないもんでね』

上条「怒ってるじゃん!?……イタタ」

バードウェイ『あぁ、私の知り合いの頭イタイ上条さんか』

上条「もっとこう、なんつーかな!お前も人に対する思いやりを育てた方が良いよ?マジでマジで!」

上条「つーかお前らは――探してんだよな、やっぱり」

バードウェイ『お前が寝てる間、クロムウェルは不眠不休で探し回ってはいるが、進展はない』

上条「あ、そうだ!俺、グレムリンの魔術師とかち合ったんだよ!」

バードウェイ『現場に飛散した“術式ではない”テレズマがあった。だから我々も存在は把握している』

上条「そいつが妨害している、んだよな」

バードウェイ『学園都市側の監視カメラを拝借したい所だが、三日前に『木原』がやらかしたお陰で手が出ない』

上条「お前でも無理なのか?」

一方通行「時間さえ寄越しゃァ、まァ?そこいらのハッカーには勝てても、一流連中とツールも無しにやり合うのは専門じゃねェよ」

上条「アンチスキルから、黄泉川先生からはアクセスして貰えないのか?」

芳川「君が襲われた時、多発事故が起きたのよ。勿論、『木原数多』が人為的に引き起こしてものでしょうけど」

芳川「そっちの事後処理と対策でてんてこ舞いかしらね」

上条「そいつらを縛り上げても」

バードウェイ『何も出て来なかったよ。先日の工山規範しかり、逮捕された連中は有益な情報は何も持っていなかった』

上条「……完全に手詰まりじゃねぇか……」

バードウェイ『他に判明した事は――あぁその工山がおかしな事を言い出してな』

バードウェイ『とある実験で作った「ワクチン」で「木原数多」を消した所、「俺は工山じゃない!」と言い始めた』

上条「また随分乱暴な方法を――工山じゃない?」

バードウェイ『私に聞かれても分からんよ。記憶が混濁しているか、錯乱しているのか、その両方なのかも知れない』

バードウェイ『そもそも学園側の「書庫」では工山の顔写真が載っていて、それと彼だと証明しているのだからな』

上条「……」

バードウェイ『どうした?傷が痛むのかっ!?』

上条「確か、さ。今捕まってる工山は『書庫』にアクセスしたんだよな?数日前に?」

バードウェイ『お前が寝ている期間をそこへ足す必要があるが、そうだな』

上条「『今捕まってる工山は、本当に工山』なのか?」

バードウェイ『……何が言いたい?』

上条「工山が工山だって証明してんのは『書庫』だけだ。つまり」

上条「『書庫をクラッキングして、偽物の工山の顔と偽物とすり替え』れば――」

一方通行「本物の工山は好き勝手に動ける、かよ。クソ木原のやりそォなった」

上条「誰か工山の素顔を知ってる人は居ないのか?あと出来れば『書庫』を調べられるような凄腕のハッカーとか!」

バードウェイ『少し待て!今黄泉川に連絡を取って――何?』

バードウェイ『大丈夫なのか?……あぁ、分かった』

上条「居たのか!?俺達はどこへ行けばいいっ!?」

バードウェイ『風紀委員の中に一人凄腕のハッカーが居て、しかもそいつは工山を最初に捕まえたんだそうだ』

上条「そうか!だったらそいつの所に」

バードウェイ『――現在、ジュニアハイスクールで授業中なんだそうだ』

――貸倉庫 昼

 窓もなくモニタの光だけが光源となっている、ガランとした空間。
 荷物が天井近くまで重ねられていてもおかしくないのだが、あるのは数人の人影と机だけ。

 唯一の家具である机の上にはノートパソコン、それから伸びるケーブルが『SEED』と接続され、床に横たわった少女に被せられている。
 殺風景を通り越して異様な有様であったが、疑問を挟むような者は居ない。

魔術師「いよいよ、で御座いますなぁ」

工山「『まぁな。対して嬉しくもねぇが、肉体の有り難みを感じるとか、どんな幽霊だっつの』」

魔術師「肉体と精神は切り離して考えられませんしね。私達の方では肉体を『捨てる』と言う概念はありましたが」

工山「『結局の所、精神が剥離したとしてもそれを外部に伝える手段がなきゃ、死んじまってんのと変わりはねぇよ』」

工山「『そう言った意味でカミサマだのアクマだのは、存在しねぇのと同じだろうぜ』」

魔術師「唯物論に従えば、ですか?しかし実際に魔導書を紐解けば『異界』の知識が汚染してきますし、証明は成されているのではないかと」

工山「『汚染、ねぇ?発狂か廃人程度で済むってぇのも変な話だわな。もっとリスクがあってもおかしかねぇのによぉ』」

工山「『アレだ。エキノコックスって知ってるか?』」

魔術師「寄生虫でしたな。狼や狐から人が感染するとまず死ぬという」

工山「『いや早期発見なら助かる――じゃねぇ、あーゆー寄生虫ってのは中間宿主、終宿主ってのがあんだよ』」

工山「『まずは幼生が昆虫に寄生し、それを食った鳥や動物に行って成虫になるんだ』」

魔術師「……あの?これから昼食なのですが。ラザーニャとか言う、ラザニアに似たコンビニ弁当をですね」

工山「『だが本来入るべき宿主じゃねぇ場合、激しい拒絶反応を引き起こすんだよ』」

魔術師「宿主の構造が違いますからな」

工山「『テメェらの魔導書やら異界ってのもそうじゃねぇのか?お前らが持つべきじゃなく』」

魔術師「私達以外に使われるべきものである、ですか?科学のような、オカルトのような」

工山「『古代人が作ったオーパーツだの何だの言うがね。結局ソイツらと俺達が同じ種族だって保証はねぇ訳で』」

魔術師「暗黒神話大系によれば私達人類は、『彼ら』に奉仕する奴隷でありましたな」

工山「『まぁ何にせよ――』」

 キギイ、と。暗闇に少しずつ光が差す。

 何重にも架せられている鍵を。電子にも強固な戒めを事もなく引き千切り、動力を切った扉を軽々とこじ開ける。

工山「『遅かったじゃねぇか、ヒーローさんよぉ』」

上条「……そうだな。それはまぁ、認めるよ」

上条「散々あんたに振り回されたし、今もあんたの都合の良い光景なんだろうな。けど!」

上条「それも、もう――最後だ!」

工山「『上条さん超かっけー、俺がマジ惚れるわー、って』」

工山「『テメェはどう思いますか、なぁ?――「木原円周」さん?』」

 無造作に横たわっていた少女――木原円周。
 工山の呼びかけに応え、ゆっくりと体を起こす。

 頭にくっついていたヘッドギアを乱暴に引き剥がし、いつもと同じように、嘲笑いかける」

上条「円、周……?」

円周「おはようお兄ちゃんっ!大好きだよっ」

 しかしその笑みは。どうしようも無く違っていて。

円周「『――なんて言う訳ねぇだろうが、ボケぇぇっ!』」

 『インストール』は終了していた。

――倉庫

円周「『ヒャィィーハァッ!絶望しなぁ、「幻想殺し」さんよおっ!』』

 木原円周の姿と声を使い、簒奪者は高らかに謳い上げる。

円「『ここにゃテメェに救えるような奴ぁ居ねぇんだよ!』」

円周「『テメェだってアレイスターのプランからは逃げられねぇ!クソみてぇな悪夢の中で、ゲ×吐いて死に晒――』」

シェリー「死ぬのはテメーの方だよド腐れ野郎っ!!!」

 倉庫の入り口から最短軌道を描いて土塊が突進する。
 上条が止める間もなく、木原達を押し潰し――そうになる前。

 バキィィンッ

 側に控えていた魔術師が何らかの力を行使し、跳ね返した。

円周「『まだ生きてやがったかクソババアっ!』」

シェリー「オイオイ何言ってんだよ、オォイッ?あの程度で死ぬとか殺すとか、随分ヌルいんだなぁ学園都市ってぇのはよぉ」

円周「『よく言った!もう殺すっ!』」

シェリー「これ以上アタシから奪うんじゃねええぇぇっ!!!」

 再度突進しようとしたゴーレムが弾き返され、倉庫の壁をぶち抜いて行く。

魔術師「シェリー=クロムウェル様。ここは何分狭う御座います。お話は外にて賜りましょう」

シェリー「これはこれはご丁寧にどうも――テメェの血袋を泥で一杯にしてやるよ!」

魔術師「では、参りましょうか」

 魔術師二人が場所を移し、散発的に爆音が遠ざかる。
 室内に取り残されたのは三人――なのか、それとも二人なのか。

円周「『おーおー張り切っちゃってまぁ、何もかも遅ぇってのにどうしちまったんかねぇ』」

上条「……お前はシェリーと知り合いだったんだろ?何も思わねぇのか!?」

円周「『あぁ知り合いじゃねぇ。少なくともデータでしか知らない』」

上条「……あぁ?」

円周「『考えてもみろよ。人間一人分の記憶、ネットに保存するなんざ、どんだけ容量食うと思ってんだ』」

円周「『余所様のハードディスクに忍び込む、つっても限界はある。だから』」

円周「『俺は必要最低限の記憶しか、「こっち」に保存してねぇんだよ』」

上条「何?何を言ってるんだ?」

円周「『面倒臭ぇな。人間ってのは色々な記憶を憶えてんだよ。勉強した内容だけじゃなく、朝飯とか日常会話とかな』」

円周「『そういった細々とした記憶まで残すのは無駄だろ?』」

上条「『インストール』した連中も、か?」

円周「『あいつらはもっと断片的にしかしてねぇよ。使い捨ての兵隊に手間暇掛けねぇだろ』」

円周「『OSの再インストールと同じだ。ハードディスクをフォーマットした後、一から情報書き込むのが筋だが』」

円周「『一々記憶消すのは面倒だろ?だから少々齟齬が起きたとしても、ウイルス程度で済ませてやったんだ』」

円周「『だから兵隊どもはお前かワクチンで元へ戻る――くぅっ!俺って優しいな、なぁ?』」

上条「……円周は」

円周「『うん、きちんとフォーマットしといたぜ?記憶が入ってる所、丸々全部』」

円周「『だからもう、何をやったって戻りようがねぇ。元に戻るべき記憶が無ぇんだからな!』

円周「『――いいねぇ!その面ぁ!世界を救ったヒーローさんよぉ、たった一人のガキを救えない今、どんな気持ちだ?』」

上条「……お前は!お前だけは!」

円周「『――お前は「木原円周」を理解してない』」

円周「『こいつぁ小さい頃にあるバカに誘拐されたんだよ。理由は嫉妬だか、研究だか知らねぇが』」

円周「『窓もない部屋で何年も何年も、足枷嵌めて放置プレイだ』」

上条「……」

円周「『でも、こいつはある時、攫った連中を融かして帰って来た!「木原」らしくて結構だなぁ!そん時何つったと思う?』」

円周「『何年も監禁していた相手をぶっ殺して清々した?本当はいい人で殺したくなかった?違うね、こいつはそうじゃねぇ!』」

円周「『ただ「研究を見て欲しかった」んだとよ!たったそれだけの理由で、このバカはたまたま作った強酸で人をヤってきやがった!』」

円周「『その後はまぁ――お前も知ってるだろ?バゲージでもこっちでも善悪の区別無く、興味のためだったらなんだってするんだ』」

円周「『そんなバケモンが、人としての道徳に目覚めたからって、今更「良い子」なんてなれる訳ねぇだろうがよ!』」

円周「『何故理解出来ねぇんだっ!?俺をぶっ殺そうが、テメェらは誰も助けられねぇんだよおおぉぉっ!』」

上条「――黙れ。それはお前が決める事じゃねぇ」

上条「誰かを救うとか救わないとか、どうだって良いし、興味もない」

上条「俺が世界を救ったとか言うけどな!――俺は只、友達を助けに行っただけなんだよつ!」

上条「人殺しがどうした?悪い奴だったからどうだって言うんだよっ!だからっつっても――」

上条「円周や一方通行が、今俺の友達に変わりはしないんだよ!」

円周「『一万人ぶっ殺したクソガキと、劣化コピーのちょいクソガキ相手に、情でも移ったのかぁ?』」

円周「『救えねぇよ、テメェは。誰一人何一つ』」

上条「俺が誰かを救うんじゃない!俺はただ『助かりたいって足掻いている奴を引っ張り上げるだけ』なんだよっ!」

上条「――この、右手でなっ!」

 信じるものは何か?その信念は何なのか?
 逃げ場を奪われ、絶望しかできない状況に置かれても。

 上条当麻は、前へと進む。

円周「『聞いてましたかぁ?俺の話と俺の話と俺の話とか?つーか何、今更どうこう足掻いた所で――』」

上条「じゃ聞くけど。木原数多」

上条「俺は只、お前に近寄っただけだ。お前の言ってるのが正しければ、俺はお前に何も出来ない」

上条「円周の体使って、殴りかかって来られたら――俺は反撃も出来ないだろう。だってのに、だ」

上条「どうしてお前は『下がって』るんだ?」

円周「『……』」

上条「お前も思ってんじゃねえのかよ――『もしかしたら』って」

円周「『……く、ぎゃははははははははははははははははっ!』」

円周「『有り得ねぇよ!そんな訳はよぉぉっ!』」

円周「『最先端科学を征く学園都市で!その頂点に立つ俺がっ!』」

円周「『何かをし損じるなんて事ぁ――』

上条「最先端の科学がどうした?テメェらの身内も守れねぇような連中がっ!」

上条「テメェ自身も守れる訳がねぇだろうがよおぉっ!」

上条「円周!聞いてるんだろ!?木原円周!」

上条「お前はどうなんだっ!?このまま消えちまってもいいのかよっ!」

上条「何か言えよっ!どうして欲しいか言ってくれよっ!」

工山「『無駄だっつのによぉ。そんなに撲殺して欲しいんだったら、してやりゃいいじゃねぇか』」

工山「『ガキはもう素直にフォーマットしたんだろ。だから遠慮する必要は』」

円周「……お兄ちゃん」

上条「円周っ!円周なのかっ!?」

工山「『遊んでんじゃねぇよ。つーかお前も信じてんじゃね――』」

円周「『――ろせっ!ガキを殺せっ!』」

工山「『あぁ?……お前、マジなのか!?』」

円周「――お兄ちゃんっ、わたしをっ――」

円周「――助け、て……?」

上条「――了解。もう心配は要らない」

上条「俺は、その幻想をぶち殺してやるっ!!!」

 無造作に。軽く開いた右手で。

上条「――帰ってこい、円周」

 いつもように円周の髪を、撫でる。

 パキイィィィィィンッ!

 異能を消す力が、音が響く。

円周「……お兄ちゃん……」

上条「……あぁ」

円周「お兄ちゃんっ!わたし、わたしねっ!」

上条「……いいよ、それは――大切だけど、今は」

上条「帰ろう、お前の家へ?シェリーが完徹三日目に突入してフラフラしてっから」

円周「……うん、うん……ッ!」

工山「『オイオイオイオイ、何やってんだ俺?あぁ?』」

工山「『ノリノリで演技すっとこじゃねぇだろが!どう考えても記憶が戻る訳ねぇだろうが!』

工山「『奇蹟なんて起きねぇだろうが!お前は絶望して這いつくばるんじゃねぇのかよ!?』」

上条「工山、じゃなかった木原数多。お前が負けた原因はたった一つだよ」

上条「――お前は円周を知らない。あの子がどんな風に笑うのか、何をすれば喜ぶのか」

上条「この子が、どれだけ狡猾なのか、ってのも含めて」

工山「『……何だと?』」

円周「数多おじちゃんはさ『一度人格を乗っ取られた』ら、対策はしない方なのかな?」

円周「対抗策の一つも取らないで、漫然と過ごすの?自殺願望でもないとそれはないよねぇ」

工山「『何が出来るってんだよ!ネットも使えねえ、「学習装置」も無い状態でだ!』」

円周「わたしは能力を使って、記憶の複製と書き込みをしてたんだ」

円周「本来であれば感情が入ってる視床――わたしが能力を強化するため、調節した所にね?」

円周「だから本来記憶がある所の記憶は消され、『木原数多』が占有しちゃったけど」

円周「『元へ戻るべき記憶』が、別の場所に残っていたから、お兄ちゃんの能力で復旧は出来たんだよ」

工山「『出来る訳ねぇだろうが!人の記憶を一々手動で書き込んでいったら、どんだけかかると思ってやがるっ!?』」

円周「だっよねぇ。だからわたしの記憶はスカスカなんだけど、まぁまぁ?」

円周「バゲージより前、お兄ちゃんやお姉ちゃん、鞠亜ちゃんと出会う前の記憶なんて、要らないじゃん?」

円周「だから結構書き込み自体は早く終わってたんだけど、ねっ?」

工山「『……それでもだっ!お前の脳髄にあったのはフルインストールした「木原数多」と、みみっちい記憶の残りカスだろうがよ!』」

工山「『その状況下で、何をどうやったら「円周」を“主”だって考えるんだっ!?』」

 パキイィィィィィンッ!

 異能を消す力が、音が響く。

円周「……お兄ちゃん……」

上条「……あぁ」

円周「お兄ちゃんっ!わたし、わたしねっ!」

上条「……いいよ、それは――大切だけど、今は」

上条「帰ろう、お前の家へ?シェリーが完徹三日目に突入してフラフラしてっから」

円周「……うん、うん……ッ!」

工山「『オイオイオイオイ、何やってんだ俺?あぁ?』」

工山「『ノリノリで演技すっとこじゃねぇだろが!どう考えても記憶が戻る訳ねぇだろうが!』

工山「『奇蹟なんて起きねぇだろうが!お前は絶望して這いつくばるんじゃねぇのかよ!?』」

上条「工山、じゃなかった木原数多。お前が負けた原因はたった一つだよ」

上条「――お前は円周を知らない。あの子がどんな風に笑うのか、何をすれば喜ぶのか」

上条「この子が、どれだけ狡猾なのか、ってのも含めて」

工山「『……何だと?』」

円周「数多おじちゃんはさ『一度人格を乗っ取られた』ら、対策はしない方なのかな?」

円周「対抗策の一つも取らないで、漫然と過ごすの?自殺願望でもないとそれはないよねぇ」

工山「『何が出来るってんだよ!ネットも使えねえ、「学習装置」も無い状態でだ!』」

円周「わたしは能力を使って、記憶の複製と書き込みをしてたんだ」

円周「本来であれば感情が入ってる視床――わたしが能力を強化するため、調節した所にね?」

円周「だから本来記憶がある所の記憶は消され、『木原数多』が占有しちゃったけど」

円周「『元へ戻るべき記憶』が、別の場所に残っていたから、お兄ちゃんの能力で復旧は出来たんだよ」

工山「『出来る訳ねぇだろうが!人の記憶を一々手動で書き込んでいったら、どんだけかかると思ってやがるっ!?』」

円周「だっよねぇ。だからわたしの記憶はスカスカなんだけど、まぁまぁ?」

円周「バゲージより前、お兄ちゃんやお姉ちゃん、鞠亜ちゃんと出会う前の記憶なんて、要らないじゃん?」

円周「だから結構書き込み自体は早く終わってたんだけど、ねっ?」

工山「『……それでもだっ!お前の脳髄にあったのはフルインストールした「木原数多」と、みみっちい記憶の残りカスだろうがよ!』」

工山「『その状況下で、何をどうやったら「円周」を“主”だって考えるんだっ!?』」

工山「『消えて無くなるのはお前の方じゃ無かったのかよおぉっ!?』」

円周「うん、うんっ!それはねぇ、きっとわたしの能力のせいだと思うよ?」

工山「『「卓上演劇」如きレベル1がなんだってんだ!マルチタスク出来ない以上、データ総量の大きい方を優先するだろ!』」

円周「あー……ごめんね?わたしの本当の能力は『卓上演劇』じゃなく、レベル3の『他者再生(エミュレータ)』なんだよね」

円周「効果自体は『卓上演劇』とほぼ同じだけど、『複数の人格を同時起動出来る』――」

円周「――つまりマルチタスク出来るから、主はあくまでも『わたし』なんだよね」

上条「つまり?」

円周「パソコンでゲームをしても、OSを乗っ取ったりしないでしょ?」

工山「『テメェはぁぁっ!ガキが!「木原」の足りねぇクセしやがって!』」

円周「え、なぁに?数多おじちゃんまさか『わたしが本当の事を申告する』とでも思ったのぉ?」

円周「『木原』が足りてないのは、数多おじちゃんの方じゃないかなぁ?」

工山「『……』」

円周「あ、怒っちゃったー?許して、ねっ?」

工山「『……確かに。ここじゃあ俺の負けだぁな。ムカつくが認めてやるぜ』」

工山「『だがよぉ。ここで工山をぶっ飛ばしても、そりゃ俺じゃねぇ』」

工山「『テメェらは頑張っちゃいるが、結局今回も俺にゃ届かなかったんだよ!』

バードウェイ『――等と、勝利宣言をしても虚しいだけなんだがな』

工山「『バードウェイか!テメェ姿も見せずにどこにいやがる?』」

バードウェイ『少し野暮用でね。新入りに持たせた携帯電話で失礼するよ』

工山「『姿を見せねぇのはこっちも一緒――』」

バードウェイ『――では、ないよ?私達は君の居場所を特定している』

工山「『……へぇ?言うだけ言ってみ?』」

バードウェイ『君はこの学園都市のイントラ――つまりネット内に存在しているデータの塊だ』

バードウェイ『自己データを無限増殖していくウイルス、と言った方が良いのかな?』

工山「『く、ひゃはははははははははははははははっ!』」

工山「『そうだなぁ!俺は確かに只のデータの塊だ!「木原数多」なんて名乗っちゃいるが、本当はどうなのかも怪しいぜ!』」

工山「『「SEED」なんてぇ使うバカに乗り移る悪霊みてぇなモンかね?』」

バードウェイ『そんな良いもんじゃないさ。君は病気だよ、ペスト程度のな』

工山「『それで?俺をどうしようって?まさか「右手」でサーバー殴ってナントカしようってんじゃねえだろな、あぁ!?』」

工山「『ハッ!やれるものならやってるよな、とっくによぉ!分かってんだよテメェらが俺に手も足も出せねぇなんてのはよ!』」

工山「『屏風の虎と一緒だなぁ。テメェらの武器は届かねぇ!けど俺からの攻撃は届く!』」

工山「『今度こそ、百人!いや千人単位の「木原数多」で始末してやんぜ!』

バードウェイ『難しい話ではないよ、木原数多。君は“そこ”にいる』

バードウェイ『対象が分からなければ、術など掛けようがないが。まぁ逆に?』

バードウェイ『「居る」という「定義」さえしてしまえば、幾らでもやりようはあるんだ』

工山「『何を言ってやがんだよ、お嬢ちゃん?』」

バードウェイ『そもそも「人の定義」とは曖昧なものだ。右手を失った存在は人だろうか――と問えば、多くはそうだと答えるだろう』

バードウェイ『だが両手がない場合はどうなる?足だったら?首だけだったら?』

バードウェイ『シリンダーの中に浮かぶ脳髄だったら?それが「人」なのだろうか?』

バードウェイ『まぁ私は別に興味もないし――事も、ないか。が、それは境界線を越えるのでこちらから踏み越えはしないよ』

バードウェイ『だから私は魔術師らしく、魔術を掛けるだけの話』

バードウェイ『「体を捨て電気反応だけになった相手」にな?』

工山「『……あぁ?』」

バードウェイ『術式の名前は「ハーメルンの笛吹男(パイドパイパー)」』

バードウェイ『効果は中世で行われた鼠殺しだ――が、一部ポカーンとしている馬鹿者がいると思うので、解説しておこうか』

バードウェイ『中世、ハーメルンという街へ笛吹の男がやってくる』

バードウェイ『街では鼠が悪さをして大変困っていたが、笛吹は鼠の駆除を申し出る』

バードウェイ『男が笛を吹くと街中の鼠が現れ、男についていった。男は近くの湖に膝まで浸かると――鼠たちは皆溺れ死んだ』

バードウェイ『この後、報酬を貰えなかった笛吹は笛を吹き、子供達を誘拐してしまった――と言うオチがつくが』

バードウェイ『さてさて、聡明な木原アマ……なんとか君。有名な伝説をモチーフにした魔術、その効果はどうだと推測するかね?』

工山「『……自殺、か!』」

バードウェイ『黒死病を媒介したのは鼠とノミ。彼らを殺したとしても、死骸がそこら中に残ってしまえば新たな感染症が広がる』

バードウェイ『それを防ぐため、この術式は「人里離れた場所で自滅する」ようになっている』

バードウェイ『いやはや、人間の知恵だね』

工山「『……ハッ!そんなバカな事が出来る訳ねぇだろ!俺がどこにいるのかも――』」

バードウェイ『君が「フルインストール」する際、当然「全ての人格データを用意する」必要があるね?』

バードウェイ『そのデータの場所、ダウンロードした履歴はこちらで押さえている。君の育てた白いのが頑張ってくれたんだ』

バードウェイ『虫のように隠れていれば良かったのに、君は下手な欲を出して「本体」とも言えるデータ群を晒してしまった訳だな』

工山「『まだ、まだだ!他の俺が――』」

バードウェイ『あぁそりゃ他にも居るだろうな?君に「インストール」された連中が』

バードウェイ『でも君達は必ずネットで「同期」させて連絡を取るのだろう?そこら辺の流れも突き止めてあるし』

バードウェイ『そっちにも彼らが同期する度に「木原」だけが消えていく』

工山「『やめろっ!?コイツが、コイツの体がどうなっても良いのかっ!?』」

バードウェイ『ふむ、人質かね?ようやく事態の深刻さと魔術の脅威を理解出来たのは良かったのだが』

バードウェイ『生憎とそれは無理なのだよ、木原君。あぁその人間が無価値という訳では無いんだ』

バードウェイ『実はもう「笛吹男の魔術は掛け終わった後」なんだ』

工山「『――は』」

バードウェイ『新入りが長々と話している最中、暇で暇で仕方がなかったので、つい』

バードウェイ『だからもう、君が何をしようがしまいが、泣こうが笑おうが、本体のデータは「死んだ」んだ』

バードウェイ『残された君達は次に何をすればいいのか、同期して確かめるだろう?そうすればその者達も「自滅」スイッチが入る』

バードウェイ『安心したまえ。君の人格データに“だけ”効果を発揮するのは、工山君の偽物で実験済みだから』

バードウェイ「と、そろそろいいかな?――おい、新入り」

上条「――いえっさー、ボスっ」

バードウェイ『――あぁそう言えば。私の銃は届かない、君がそう言ったのを憶えているか?』

バードウェイ『だがまぁ私の専門は別なんだ。銃を使わなくとも魔術があるのさ』

工山「『バードウェイ!レイヴィニア=バードウェイっ!!!』」

バードウェイ『――ばぁーん、ってね?』

上条「死人は、墓へ帰りやがれえぇっ!!!」

パキイイィィィィンッ……!!!

――バッドエンド2

 居酒屋チェーン店。

浜面「――って訳でさぁ、俺悪くないよね?俺別に悪い事したんじゃないよね?」

上条「……」

浜面「ねぇ、聞いてんの大将?ねぇってばよ」

上条「お、おぉう?あー、ごめんボーっとしてたみたい」

上条(あるぇ?俺何でスーツ着て浜面と飲んでんだ……?)

浜面「俺が上司にメール出したらさぁ、激おこじゃんか?なにもそんなに怒らなくたっていいんじゃね?」

上条「ん、あぁ?誤字だろ?なんて入れたんだ?」

浜面「あー『小一時間立ったら』ってのをだな」 ピッ

ケータイ『濃い乳時間×ったら』

上条「アウトじゃん!?出る所に出たら完敗するぜっ!」

浜面「てか、こないだ嫁さんに指摘されるまで、『小一時間』を『濃い乳時間』だと信じてた」

上条「浜面君、お前大丈夫?社会人の常識以前に問題だよね――って嫁?お前に?」

浜面「いや、何言ってんだって。オタクの嫁さんとよく一緒にいるでしょーよ」

上条「俺もっ!?誰と!?エリスじゃねぇだろうなっ!?」

浜面「エリスぅ?また新しいラッキースケベ的な話?」

上条「いや、お前に言われるのは心外なんだけど……」

上条「つーか誰?俺誰と所帯持ってんの?またこの展開なの?」

浜面「……げふっ。あーでもあんたんとこの嫁さんは良いよなー。家事も出来るし料理も美味い、ある種男の理想的な感じじゃね?」

上条「メシが美味い、か」

上条(それで考えられるのは五和とオルソラ……いや、つか他に女の子の手料理食べた事ないっけか)

上条(土御門の妹さんはノーカンとしても、他に――あぁ。御坂は……既製品でしたっけ)

上条(あとレッサーは上手かどうか別にして『料理する』って言ってた)

浜面「いやでもウチの嫁のメシが一番ですけどねっ!えぇっ!」

上条「お前の嫁さんも気になってんだけど、結局滝壺さんになったの?」

浜面「えっ?」

上条「えっ?」

浜面「……それじゃそろそろ帰ろうぜ?あんま遅いと叱られっちまうし」

上条「誰に?お前の嫁の名前だけ教えて?なんだったら子供の名前でも良いから」

浜面「でもそっちは年下じゃんか?いいよねー、体もつのー?」

上条「露骨に話を逸らされたんだが……年下、ねぇ」

上条(って事はレッサー?オルソラは年下じゃねぇよな)

上条(つか五和って幾つぐらいなんだろ?タメぐらいって感じはするけどさ)

浜面「それじゃ――っとすまん」 ピッ

上条(あ、携帯だ)

浜面「『うん……うん、大丈夫だって!浮気?してないってば!』」

上条(あぁ、良い旦那やってんじゃんか。相手はスッゲー気になるけど)

浜面「『あぁ、コンビニで豆腐?わかった、了解、それじゃ――にゃあ』」

上条「待てやコラ!お前今『にゃあ』つったか?言ったよな?」

上条「お前散々ロシアまで行っといて最終的にはフレメアに着地したのっ!?不時着にも程があるだろ!どんだけ滑走路の手前に落ちたんだ!?」

浜面「よーしっ大将っ!それじゃまたなーーっ!」

上条「……よく麦野さんと滝壺さんに殺されなかったな。ある意味凄ぇけど」

――自宅前

上条(――と、まぁ自宅まで来ちゃいましたけど)

上条(住んでるアパートそのまんまってのも、どうかと思わないでもないけど。それはそれでリアル、なのか?)

上条(前回のエリスに比べたら、うん。男の娘じゃなきゃ、まぁまぁ的なね?)

上条「……」

上条「……よぉっし!行くぞっ!」

上条「たっだいまーーーっ!」

ガチャッ

円周・鞠亜(メイド服)「「お帰りなさいませ、ご主人様っ!」」

上条「あ、すいません。部屋間違えましたー」 クルッ

円周「――はい、確保―っと」 ガシッ

鞠亜「往生際が悪いんだな、君も」 ガシィッ

上条「離せっ、離せようっ!?アパートの一室にメイド居る時点でおかしいじゃねぇかよぉっ!?」

舞夏(メイド服)「おー、上条じゃないかー。玄関でなにやってんだー?」

上条「そりゃまぁ確かにお前はそうだろうけどさぁっ!俺が言ってんのはそうじゃないじゃん!?もっと一般的な問題だ!」

土御門(メイド服)「カミやんちじゃいつもの事だにゃー」

上条「おいクソメガネ?お前何やってんだ?暫く姿見えないと思ってたら、メイド好きが高じてメイドになったの?」

土御門(メイド服)「意外と暖かくて、秋口頃からは着やすいんだぜぃ?」

上条「着ないからな?着る必要性がないからね?あとお前が着てるのはレイヤーさん向けので、本職用のではないんだ」

円周「まぁまぁ良いから中へ、ねっ?」

鞠亜「そうだぞご主人様……全く、手がかかってまたレベルアップしてしまうじゃないか!」

上条「面倒臭っ!?個人メイドになっても面倒臭さそのままかっ!?」

――自宅

円周「今日も一日お疲れ様でしたー、お兄ちゃんご主人様―」

鞠亜「ご飯にするかね?それともお風呂?それでもなく」

上条「言わせねぇよ?ベッタベタのシチュってどういう事?今時、家帰ってメイドって何の話?」

円周「お兄ちゃん、忘れちゃったのっ!?酷いよ、あんなに情熱的にプロポーズしてくれたのにっ!」

上条「……なんつったの、俺?どんな取り返しのつかない事言っちゃったの?」

円周「『一生俺のメイドさんになってくれないかぶち殺す?』」

上条「脅迫っ!?途中からそげぶがくっついちゃってるけど、もしかしてそれ噛んでただけじゃねぇのっ!?」

上条「……いやでも、んな憶えねぇけど、それ自体はまぁまぁ合法だよね?都条例的なアレコレをさっ引いたとしても、自由の範囲だよな?」

上条「んじゃなんで雲川さん居るの?二人のメイドがお帰りなさい、ってそれもうお店だよね?」

円周「あー、それはわたしが鞠亜ちゃんを誘ったら、『経験値稼ぎなら?』って事で」

上条「はい?」

鞠亜「好きでもない男に抱かれるとかっ、これ以上の屈辱はないだろうな!」

上条「あのー、雲川さん?俺前も言ったかも知れないけど、心の病気は専門の人に診て貰った方が良いよ?ねっ?」

上条「雲川先輩には俺が言っておくから、取り敢えず帰れ、な?」

円周「いやでも個人の性癖はしゃーない、ってKAKER○先生も言ってるし?」

上条「性癖じゃねぇだろ!?……あぁいや、合ってのんか?つーかそれで良いのか?」

鞠亜「勘違いするなよっ!私は別に君の事が好きなんじゃないんだからなっ!」

円周「おー、本気で言ってるのに、なんかツンデレっぽい感じがするよねぇ」

上条「……ツンデレが発生しすぎて、色んな所で問題になってる気がするよな。マジで」

円周「BL系では宿命の敵同士のカプで、『なんでこの二人?』って聞くと」

円周「『あぁコイツ、ツンデレだからこうなんスよ』って真顔で答えられた事あるしねぇ」

上条「怖いから中身には触れないけど、大抵の男は女が好きなんだからね?ロ×であっても一応は」

円周「――あ、良い事考えたぁ」

上条「ごめんちょっと俺、書類忘れたみたいだから暫く――離せっ!?お前らの変態プレイに俺を巻き込むなっつってんだろ!?」

円周「よぉぉっし!それじゃ今日も経験値上げしよっかぁ!」

上条「助けてー!?誰か、誰かっ!?」

鞠亜「大丈夫、先輩。無理矢理されるのもそれはそれで興奮――じゃなかった、レベルが上がるぞ!」

上条「お前もう本末転倒すぎるじゃねぇか!?ちったぁ自分の言動顧みやがれ!」

円周「うん、うんっ!こんな時、『木原』ならきっとこう言うんだよね……ッ!」

円周「『もう諦めたらどうですかー?』」

上条「人生かかってんだよ!主に俺とか俺とか俺のが!」

円周「やだ……上条の下条さんは元気……!」

上条「話を聞けぇぇよおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

――倉庫

円周「――むー?」

上条「おはよー」

円周「……なんか今、4年ぐらい先の夢を見てた気がする……」

上条「ふーん?知りたいけど藪蛇になりそうだから、自制するな?」

円周「えっと、あれ?どうしたんだっけ?」

上条「『木原数多』をぶっ飛ばした続き。今、こっちに黄泉川先生達が向かってんだって」

円周「お姉ちゃんは?

上条「逃げられた。つか隣隣」

シェリー スースー

円周「こうやって見るとキレイ系なんだけどなぁ。言動が残念すぎて」

上条「自然体で良いんじゃね?……というかこのパーティ、これっぽっちも色気がねぇなぁ」

円周「お姉ちゃんは慣れてないってのもあると思うけど。そこは可愛いよねぇ」

上条「完徹しながら魔術使ってたんだから、あとで礼は言っとけ――お前は?記憶、とか」

円周「何が無くなってるのかが、まず分からないみたい」

上条「うん?」

円周「福袋を買いました。でも途中で落としました。さて、中身はなーんだっ?」

上条「逆に残ってる部分は?」

円周「専門知識は……数多おじちゃんも使うつもりだったみたいで、丸々残ってる、かも?」

円周「雑多な記憶のアーカイブは完全にフォーマットされてるや。腐っても『木原』だなぁ」

上条「……」

円周「でもまぁお兄ちゃん達の記憶はあるから、別に困りはしないけどねー」

上条「……ん、まぁそれで良いんだったら、まぁけど。そんなに気負うなよ」

円周「気負ってないよ?やだもうっ、お兄ちゃんってばシスコンさん?」

上条「……これから、だからな。これからだ」

円周「そうだねぇ。あとカップは二つぐらい上がって欲しいかなぁ」

上条「まだ早いよ、バーカっ」

円周「ぶーっ、おっきくなったもお兄ちゃんには触らせてあげないもん!」

上条「大きくなると良いなぁ。いつの話だか分からないけど――つーかなぁ」

 むにー、と円周の頬を引っ張る。意外に良く伸びた。

円周「むー、あにするお?」

上条「ガキが粋がるんじゃねぇよ。お前はまだ子供なんだから、さ」

上条「『木原』だかなんだか知らねぇけど、スプリーキラーとか言われてっけども、お前、只の、ガキじゃねぇか」

上条「自分のしでかした事に責任も持てない子供だよ……まぁ、俺もな」

 手を離して両手を見る。年相応とは言えない程、大小の傷痕が残っている。

上条「色々言われちゃいるけど、その実殆どは誰かに助けて貰ったり、人のケンカに乗っかったりした結果だしなぁ」

上条「あん時も、他のあの時も余計に首突っ込んで大怪我したり、やってる事はガキだけどさ。まぁでも」

上条「だから助けて欲しいって時には。次、お前がどうしようも無くなったら――」

上条「――きちんと『助けて』って言えよ、な?」

円周「わたしは」

上条「視床、だっけ?お前が能力を強くするために、上書きした所」

円周「感情を司るとこ、だけど」

上条「芳川さんに聞いたんだけど、人間の脳は一度書き込まれたらそれっきり、って訳じゃないんだと」

上条「お前が勝手に書き換えた所も、それなりに感情が表に出れば上書きされるって」

上条「……確かに、今のお前は『足りない』のかも知れない」

上条「元から少なくなってたのに、『木原数多』が消しやがったから、余計に」

上条「けどな、『お前』はそこに居るんだ」

上条「無くなったんだったら探せばいい。落としたんだったら拾えばいい」

上条「『足りない』んだったら、『足りる』まで詰め込んじまえよ」

円周「……うん」

上条「朝起きてバードウェイやシェリーとケンカしながらメシ食って」

上条「学校行って周囲をドン引かせて。メイドカフェ行ってカモ相手に金巻き上げて雲川さんとボケ倒して」

上条「日が暮れたら手ぇでも繋いで家に帰ればいいじゃねぇか。んなダラダラっとした毎日続ければ、その内きっと」

上条「お前ん中の、お前って『筺』は一杯になってんだよ」

円周「……そう、かな?わたしはここにいても、いいのかな……?」

上条「人の機嫌伺うような殊勝なキャラじゃねーだろ、お前は」

円周「……あはっ……お兄ちゃん、酷いなぁ」

円周「でも――うん、うんっ!分かったよ!」

上条「……そか」

円周「お兄ちゃんとしては三人とも行くルートなんだねっ!」

上条「全く理解してねぇな!?あれ、お前ラジオでも聞いてたの?」

円周「なんか未来予想図がハーレムルートになってるんだけど」

上条「例だ、例!わかりやすくしただけだっ!他意はねぇしっ!」

円周「って事なんだけと、どうかな――シェリーちゃん?」

上条「はぁ?何言ってんだ、おま――」

シェリー「……マジで?ほら、サブイボが」

上条「なんで起きてんだあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?つーか、まさか!まさかお前聞いて――」

黄泉川「なー、だから言ったじゃんよ?こいつはまた弱った女につけ込むじゃんて」

上条「先生までっ!?来たなら声かけろっ、かけろよおぉぉぉぉぉぉっ!?」

上条「も、もしかしてこれはっ!この展開は最悪のアイツが――」

バードウェイ「『だから助けて欲しいって時には。次、お前がどうしようも無くなったら――』」

バードウェイ「『――きちんと「助けて」って言えよ、な?』」 キリッ

上条「やーーめーーろーーよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?そういうテンションじゃねぇ時に持ち出すの卑怯だろうが!」

上条「つーか全員じゃんっ!?どうして俺、今良い事言ったのに!全部台無しだし!?」

バードウェイ「頑張れよ、『お兄ちゃん』」

シェリー「そうだぜ、『お兄ちゃん』。妹の面倒ぐらいしっかり看やがれ」

上条「え、俺この先円周係って事か!?ずっと!?」

黄泉川「まぁお前は一人ぐらい世話した方が力出るじゃんよ、『お兄ちゃん』」

上条「やだ妹が四人も出来たっ!?」

円周「まぁまぁ色々あったけど――」

円周「――これから、よろしくね、お兄ちゃんっ!!!」


――断章のアルカナ 第二話 『ラプンツェル』 -終-

――次回予告


――幽州。今ではない、いつか

野盗「おいおいお嬢ちゃん達よぉ、この橋通りたければ今履いているニーソ置いていきな」

愛紗「ふっ、野盗と思えばただの変態の群れか。我が青竜刀の露と消えるがいい!」

鈴々「にゃー?別に靴下ぐらい鈴々はあげても良いと思うのだ?」

桃香「だ、駄目よ鈴々ちゃん!?あの人達はその――」

愛紗「人の物を強引に取るのは良くないって意味ですよね!桃香様!」

桃香「え?あぁうんうんそうなんだよ!ちゃんと働いたり、自分で編まなきゃいけないんだよね!」

野盗「い、家には病で伏せっている弟が居るんだ!弟が『ニーソが、ニーソをペロペロしたい』ってうわごとを言うんだよっ!?」

愛紗「もう死んだ方が良いな、その弟」

桃香「っていうか時代考証がね?頑張ろ、もうちょっと考えてみよ?」

野盗「あぁもうやっちまえ、お前らっ!」

桃香「きゃぁっ!?」

愛紗「数が多い!」

鈴々「桃香お姉ちゃんっ!」

野盗「ひゃっはーっ!今夜はニーソでご馳走だぜ!」

男?「――よっと」 カ゚ッ

野盗「ぐああっっ!?」

男?「危ないから、俺の後へ」

桃香「は、はいっ」

野盗「だ、誰だテメェっ!男はニーソ履いてねぇからどっかいけ!」

愛紗「もし履いていたら奪うのか……?」

野盗「可愛は正義!」

男?「なんか数も多いし、斬ったら汚れそう――召喚、『ケルベロス』!!!」ヴヴウゥンッ

愛紗(なんだ?地面に広がった光の円から何かが出て来る!?)

鈴々(虎よりも大きいのだー……白い狼?)

ケルベロス『盟約により魔獣ケルベロス推参仕りました。我が牙、我が体、我が煉獄の炎は主がために』

ケルベロス『救世主(メシア)様、どうかご下命を拝する栄誉をお与え下さいませ』

桃香「喋った!?」

男?「からかうのはやめろって――パスカル、薙ぎ払え!」

パスカル(ケルベロス)『カズトおにーちゃんは変わらないよね――よっと』

ゴオオオオオォォォォォォッ!!!

野盗達「ぐああああああぁぁっ!?」

愛紗「凄い!辺り一面が炎で――」

鈴々「うー、もふもふしたいのだー」

男?「――大丈夫?怪我はない?」

桃香 ポーーーーーーーッ

男?「えっと?」

愛紗「あぁ大丈夫、助かった事に関しては礼を言おう」

鈴々「もふもふっ、もふもふしたいのだっ!」

愛紗「こら鈴々っ!」

男?「あぁ、いーよいーよ」

鈴々「本当なのか!?」

男?「パスカルが嫌だって言わなかったらな」

パスカル『うんいいよー。あ、でもシッポ引っぱったりはやー』

鈴々「わーい、なのだっ!」 モフモフモフモフッ

愛紗「喋る、狼……」

男?「別にケルベロスは珍しくもないと思うけど。あぁどっかのシェルターから来たの?」

愛紗「しぇ?すまない、聞き覚えのない単語だ」

男?「と言うか、ここどこだ?昨日までカテドラルに居たと思ったんだが」

愛紗「かて、どら?それも知らないな」

男?「参ったなー……あーでも姿をくらまそうとしてたから、丁度良いっちゃ良いのかも」

桃香「あ、愛紗ちゃん!ちょっとちょっと!」

愛紗「なんですか桃香様。引っ張らなくても」

桃香「そうじゃなくって!この人、管輅先生の予言にあった――」

 世界が乱れ、大陸が血によって赤く染まる時、人の英雄が現われる。
 それは天の世界より遣わされた救世主――ではない。決して“この”世界を救うために訪れた存在ではない。

男?「まぁなんか物騒みたいだし、近くの街まで送るよ」

 だが彼の者は紛れもなく救世主である。
 遠き所の、いつか、どこかの国を悪しき物から、そして正しき物から、人を救った存在。

桃香「あのー、あなたのお名前は――?」

男?「北郷、北郷一刀」

 彼の者は白き獣を友とし、この世界をも再び導かん。

パスカル『おにーちゃんはね、前の世界“も”救ったんだよ』

北郷「こら余計な事言うな。ってかお前今“前の世界”って言ったか!?」

 超ハードルート(現実→真・女神転生Ⅰ→現在)を辿った北郷一刀の、ある外史の物語が始まる――。


――次回予告 -終-

      ヽ      \   /   ____ヽヽ ___|__
    / ̄ ̄\   __/        /         |
         |     / ̄ ̄      /        / ̄|
         /    /          |         \_/
       /     \_        \        /
                         l|
                  __.-‐=ミ       厂_〉
               /:./ !_/ヽ>,   ./{__ フ
                  Y  |/= __=、 /:::::/i !
                |  ! | ヽ_ノイ:::::/丶
              /(__/ //!厶':::::_/)、
           〉  l// {:::::::厶 ト、{::::..、  ,   //
             / / // !l∧::::∠」::|' `ヽ::::メ、/_///
              ゝ{/ l l .!|  }:::::::::::::!   `ヽ:://r_)
            、_) ) ゝ, ト==!:::::::::::::::.   〃ヽ{/
           `ー ' ノ^ー/乂:::::://ミx=、

                {//TT==く-/: : : : }
               〈/ =イ|ヽ /:.,イ: :./

                  ∨ ||_!_/:.7 {: :/
                  `¨ !: : :' i: :′
                      l: : :' ./.:′
                       |:.:/_/:./
                    /: /.{{: :{
                   {: :/ ゞ=!
                  ,: :/  `¨
                  ノ:./
                {{: :.!

                   ゞ={
                 `¨

――次回予告

少女「昔々――ではない。かといって最近の話でもない、とあるおとぎ話」

少女「新大陸、カンザス住むドロシーはある日竜巻に家ごと飛ばされてしまう」

少女「行き着いた『オズの国』でドロシーは旅に出る。カンザスへ帰るため」

少女「大魔法使いの『オズ』が暮らすエメラルドの都へと向かった」

少女「ドロシーは出会う――臆病者のライオンと」

少女「ドロシーは出会う――脳の無いカカシと」

少女「ドロシーは出会う――心の無いブリキの木こりと」

少女「まぁアレだよ。ドロシー達は冒険した末、こう悟った」

少女「臆病者のライオンは『勇気』を手に入れ」

少女「脳の無いカカシは『智恵』を手に入れ」

少女「心の無いブリキの木こりは『意思』を手に入れた」

少女「かくしてドロシーは無事カンザスへと帰り来たる事が出来ましたとさ」

少女「めでたしめでたし」

少女「……」

少女「クロムウェルは『勇気』を手に入れ」

少女「小娘は『意思』を手に入れた」

少女「と、すれば差し詰め私は『智恵』かね。ふむ」

少女「――『それ』は必要ない。私はもう持っているものだ」

少女「至高にして唯一、輝かしい『結社』である我々の英知に欠けたる所など、無い」

少女「重ねて言おう。我らは望であり、朔たる存在では――無い!あってはならないんだ!」

少女「――などと、まぁ年相応に肩肘を張ってみても、だ」

少女「如何ともしがたい時代は抗する術もなく、千年王国は二度目の死を遂げた」

少女「ならば孤独に星を詠みあげながら征くのもまた、悪くはないかも知れないな」

少女「それもまた、アルカナの導きによって」

少女「……これは、とある星詠みの物語」

少女「『栄光』を失い、輝きを見上げ嗤う支配者の物語」

少女「『断章のアルカナ』最終話」

少女「――『オズの魔法使い』」


――次回予告 -終-


※今週投下分は終了となります。読んで下さった貴方に感謝を
二話目もなんだかんだで8万とんで373語。原稿用紙200枚ですね (´・ω・`)
……じゃないですね、20×20にページ設定弄ってみたら、396枚……うん

説明台詞ばっかりでしたが、まぁまぁ伏線回収で必要だったので
人気無いですねぇ、なんかむ

乙です

ラノベの文章量がどれくらいだろうか

>>369-385
ありがとうございます。最終話っつっても前二人と同じぐらいの文量(予定)なので、完結は早くても来週



――断章のアルカナ 最終話 『オズの魔法使い』

――4th.

――『明け色の陽射し』 極東支部(兼・上条のアパート) 朝

上条「うー……?」

円周 スースー

上条「……毎日ベッドから落ちる訳ねぇだろ。おーい」

円周「……んー……?」

上条「よいしょっと」

上条(ちょい寒くなってきた朝、円周の高い体温はカイロ代わりになりそう……扱いがペットっぽい気がする)

上条(鋭すぎる牙を気にしなければ、の話だけど)

上条(やったら軽い体を適当にベッドに投げ……いやぁ、定員オーバーかぁ?)

上条(シェリーがバードウェイを抱え込んで寝てる。バードウェイの方は苦しそうだけど、まぁいいか) ポイッ

円周「……むぎゅ」

上条(さって、俺は朝飯を作るとしましょうかね)

……

上条「おーいお前ら朝だぞー、おっきろーっ!」

円周「……おはよー」

バードウェイ「……ち。寝苦しいと思ったら、またコイツか……」

シェリー「……」

円周「お兄ちゃん、お姉ちゃんもおはよー。ほら立って?お顔洗いに行こ?」

バードウェイ「先に借りるぞ」

シェリー「だぁぁぁぁぁぁりぃぃっ……」

円周「お酒臭いなぁ、もう」

シェリー「黄泉川から誘われたのよ。しょーがねぇだろ」

円周「お酒始めたの最近なんでしょ?慣れてる人と同じペースじゃ潰れるってば」

シェリー「だりぃ……あー、肩貸して」

円周「しょうがない、ねっと!」

シェリー「おぅふ。世界が揺れてやがるぜ……」

上条「……なんかもう、最初の頃は考えられなかった光景だな」

バードウェイ「まぁ良くも悪くも馴染んだのだろう――と言うか、予想以上にダメ人間だな」

上条「芸術家って見るからに一芸特化っぽい感じだし、仕方が無いじゃないかなぁ」

バードウェイ「頭のネジが外れた連中と言ってやればいいのに」

上条「朝から飛ばしすぎだ――ってお前、意外と寝起きに強いのな」

バードウェイ「子供扱いは止めろ、と何度も言ってるんだが――体に教え込む必要があるのかなぁっ?」

上条「今日はサバの香油通し焼きだねっ!ほぉら焼き立てが一番美味しいんたぞぉっ!」

バードウェイ「うむ。日本に来た以上、和食を堪能せねばな」

上条(良かったー)

バードウェイ「オシオキは放課後でもいいだろう。楽しみにしておけ?」

上条「……それまでに機嫌治ってるといいなぁ」

……

円周「ごちそうさまでしたーっ!」

バードウェイ「ごちそうさま」

シェリー「あー……ごちそうさまでした」

上条「はい、お粗末様でしたー。っと円周、今日は早番だっけ?」

円周「遅番だねぇ。片付けとお洗濯はやっとくからねっ」

上条「悪いな」

円周「うーん、居候その三が役に立たないからねぇ」

バードウェイ「三じゃないぞ。最初にここをアジトにしたのは『明け色の陽射し』なんだが?」

バードウェイ「むしろ貴様らが要らぬ騒動をデリバリーしくさったんだろう」

円周「そうじゃなかったら今頃ラブラブだったのに、とか?」

バードウェイ「表へ出ろ。人形モドキに『恐怖』の感情を叩き込んでやる」

円周「うん、うんっ!そうだよねっ、こんな時『木原』ならこうするんだよね……ッ!」

シェリー「あー……円周、着替えー」

円周「あ、ごめんね?殺し合いは少し待ってて?」

上条「やめなさいお前ら。メシの量減らすぞ」

バードウェイ「だがしかしお前のその視線がクロムウェルから以下略そして目潰しっ」 ズブッ

上条「のぉぅっ!?また俺が理不尽に攻撃をっ!?」

円周「でもないと思うけど……んー、お姉ちゃんの体ってすっごく均整が取れてるよねぇ」

上条「実況だけするとか生殺し過ぎる!」

バードウェイ「不健全すぎる生活環境でどうにかしたオルソラを誉めるべきか、迷う所ではある」

シェリー「テメェら私の努力とかって可能性は考えねぇのかよ」

バードウェイ「違うだろ、実際。『必要悪の教会』でも依存しまくってると見るが」

シェリー「……合ってるけどなぁ。つーかアイツも私なんかに構ってねぇで、男の一人でも作ればいいのによぉ」

円周「ローマ正教のシスターさんって、結婚はアリなの?」

シェリー「あー……ちっこいの?」

バードウェイ「その名で呼ばれるのは酷く気に入らないが、実は可能だ」

バードウェイ「ローマ正教では司教未満は妻帯を許されている、と言う事になってはいる。が、女性が聖職に就く事自体が難しい」

バードウェイ「そもそも十二使徒自体に妻帯者が居る上、マグダラのマリア――イエスの母でない方のマリアが妻だった説もある」

バードウェイ「教会側は否定しているが、彼女は懺悔した娼婦と見なされる場合も多く――」

円周「あ、じゃあお兄ちゃんなんてどうかな?甲斐性以外はあると思うよ?」

上条「呼んだ?……つーかまだ目が痛くて、見えないんだけど」

バードウェイ「……まぁ、アレだ。したいならばすればいいだろう。イギリス清教に改宗しても、同じ神には違いないのだから」

シェリー「アンタ今20億人にケンカ売ったぞ?……って、スーツ着るの面倒だなぁ」

円周「あーもうっ、きちんと頭梳かして!」

シェリー「いいんだよ、これで。別に見合いの席じゃあるまいし」

バードウェイ「と言うかお前ら、時間はいいのか?」

上条「時計時計……げ。すまん、俺先に出るわっ!」

シェリー「待てコラ!私はまだ終わってねぇぞ!」

上条「お前は黄泉川先生が迎えるくるからいいじゃんか!俺はバス通学なのっ!――って、先に出るわっ」

バードウェイ「ならば、私も出ようか。鍵を忘れるなよ、小娘」

円周「いってらっしゃーーいっ!」

パタン

――通学路

バードウェイ「しかしまぁ馴染んだものだな、お前もあいつらも」

上条「その中にお前も入れとけ。最初の方はよく口喧嘩で殺し合いにまでなりそうだったよな?」

上条「今じゃすっかり――あれ?今朝もしようとしてませんでしたっけ?成長してないよね?」

バードウェイ「仲間の絆的なものを期待されても困る。どうせ、お前の家を出たら魔術結社、科学サイド、イギリス清教の三竦みへ戻るんだからな」

上条「それもなんか寂しい話だ……なんとか、ならないのか?」

上条「割と気に入ってるんだよ、こう言う穏やか――じゃないけど、まぁまぁ家族っぽい生活」

バードウェイ「それは禁書目録が帰って来たら言ってやるといい」

上条「……そうだよな。お前が居るのってパトリシアのついでだもんな」

バードウェイ「あと4日なのか、もう4日しかないのか。気分の持ちようだな」

上条「シェリーも、あんまこっちには居られないだろうし。円周はどうするんだろうな?」

バードウェイ「間違ってもお前の所で保護しようとするなよ?『必要悪の教会』がぶち切れる」

上条「科学サイドの元狂信派ですもんねー。実際にはほぼ被害者側だけど」

バードウェイ「人生とはそういうものだよ。別れがあれば出会いもある。それは仕方がない事だ」

上条「強いんだな、お前は」

バードウェイ「なんだね、いよいよ『明け色の陽射し』へ入る気になったのか?」

上条「この生活を続けられるんだったら、それも悪くねぇよなって」

バードウェイ「出来ない訳でもないが、それをするには多大な犠牲を支払わねばならない。お前も私も」

バードウェイ「……まぁ、どうしても、と言うのであれば手が無い訳でもないのだが」

上条「マジで?じゃ、それで行こうぜ!」

バードウェイ「……ぅ。ま、まぁまぁ、その内にな?」

上条「そっかー」

プップー

上条「バス来たんで、んじゃ」

バードウェイ「あぁ、勉学に励みたまえ――では、サヨナラだ」

上条「おー」

ガタン、プップー

バードウェイ「……さて、次は」

――自宅前 道路

シェリー「……おぅ」

バードウェイ「しかしアレだな、お前もそうやってれば少しは見れる外面だってのに」

シェリー「いーんだよ、私はこれで。一生喪服を着ていくって決めてんだから」

バードウェイ「魔術名にするぐらいだから相当なもんだとは思うが、まぁ程々にな」

シェリー「あぁ」

バードウェイ「ではな」

シェリー「待てよ」

バードウェイ「うむ?」

シェリー「あー……その、何よ。アレだ。アンタもあれだぜ」

シェリー「ガキはガキらしく、もうちっと他人を頼りゃいいんじゃねぇか?」

シェリー「世の中にはボランティアで解決してる物好きが居るみたいだし」

バードウェイ「お前にだけは言われたくない台詞だと思うがね」

シェリー「でないと私みたいになっちまうわよ」

バードウェイ「それは……まぁ、検討に値するな」

シェリー「やかましい。さっさと行っちまえ」

バードウェイ「言われなくても――では、またどこかで」

シェリー「願わくば敵同士で相見えない事を、ね」

――自宅

円周「お帰りなさいませっ、お嬢様!」

バードウェイ「ネタに走るのはやめろ。あと、朝一でお前のテンションは心に毒だ。一言で言えば、鬱陶しい」

円周「レヴィちゃんに好かれようとは思ってないけど、一応聞いとくねっ」

円周「それで?お兄ちゃんとお姉ちゃんにお別れはしてきたの?」

バードウェイ「そんな大層なものじゃないが、するだけはしてきた。まぁ理解してないのも居たとは思うが」

円周「普段お見送りなんてしないのねぇ。普通は分かると思うんだけど」

バードウェイ「何にせよ言うだけは言ったさ。どう受け取るかは本人次第」

バードウェイ「お前にも世話になっ――ってはないな。むしろ迷惑を散々掛けられまくった」

円周「わたしはレヴィちゃんにとっても感謝してるよ?」

バードウェイ「……ふむ。で、あれば疑問に思っていた事が幾つかあるのだが」

円周「答えられる――憶えている事なら、大体は」

バードウェイ「お前の『卓上演劇(デーブルトーク)』、じゃなかった『他者再生(エミュレータ)』は元々マルチタスクなんだよな?」

円周「だねぇ。秘密にしてたけど」

バードウェイ「ならば何故雲川鞠亜に負けた?『木原数多の思考を持つ、木原加群』であれば、彼女の想定を上回る事も出来たろうに」

円周「良く憶えてないから、殆どは想像になるけど――必要がないって思ってたからかも?」

円周「だって普通は『円周としての癖を読まれる』とは思わないでしょ?だからそこまで複雑な処理は避けていたんじゃないかな」

バードウェイ「『卓上演劇』で充分だろうと高を括っていた?」

円周「脳にかかる負担の軽減って言って欲しいけどね」

バードウェイ「下手に簡略化させて、必要な処理をショートカットしてしまった感じか」

円周「うんうん、そんな感じで」

バードウェイ「次にお前は今、『憶えていない』と言ったが、矛盾しているよな?」

円周「何が?必要な記憶以外は切り捨てたって言ったよね?」

バードウェイ「バゲージよりも前は忘れた、と言って居た筈だが――単刀直入に聞こう」

バードウェイ「お前、実は全然憶えてないんだろう?」

円周「……言わない?お兄ちゃん達には内緒だよ?」

バードウェイ「『明け色』の名に誓おう」

円周「大体九8日前ぐらい?」

バードウェイ「私達と接触した初日じゃないか!……どうしてそんな嘘を」

円周「お兄ちゃん、悲しいお顔するだろうから、何となく?あ、でもデータとしては断片的にあるんだよ?」

円周「ただ実感は全くないってだけで。人の書いたご本を読んでる感じかも」

バードウェイ「何だかんだで成長しているのか、お前は」

円周「記憶がないのに?経験が残せないのに?」

バードウェイ「禁書目録と同じだよ。記憶がリセットされていても、性質が変わりはしない――尤も、周囲がそう仕組んでいる気もするがね」

バードウェイ「と言うかその内外共に危険極まりない能力、何とかならないのか?」

円周「視床に『学習装置』でセッティングした所は、少しずつ記憶野へ移しているみたい?」

バードウェイ「芳川と何かやってたな、そういえば」

円周「記憶が大幅に無くなったから丁度いいって、桔梗おば――お姉ちゃんが」

バードウェイ「彼女も少し病んでいる気がするが……まぁ、感情が戻ってくるのは歓迎――出来る、のか?」

円周「情緒不安定になるかも知れないよねぇ」

バードウェイ「……では最後の質問だが――その前に『木原数多』の『再生』は出来るのか?」

円周「うん、データ端末とのリンクも復活したし、大丈夫だけど……?」

バードウェイ「『再生』中はお前の記憶はあるんだよな?」

円周「書き込み付加にすればバッファにしか残らないけど。何?秘密のお話なの?」

バードウェイ「お前達は知らない方がいいって話だよ。それじゃリードオンリーで頼む」

円周「うんっ――『……あぁ、やっぱり来やがったか』」

バードウェイ「私は君と初対面なんだが、そこら辺の整合性はどうなっているんだ?」

円周「『どぉもなってねぇよ。ただこのガキが「木原数多ならこう言う、こうする」ってのをデタラメにやってるだけだ』」

円周「『理屈自体は子供のゴッコ遊び。ただし精度は極めて高い』

円周「『ガキも知らない――通常は必要ない膨大なデータをストレージに保存し、適宜読み込む』」

円周「『肉体スキルに関してはほぼ100%再生出来るってぇ代物だぁな』」

バードウェイ「その代償に脳の魔改造が妥当とは思えんが――まぁいいさ。それよりも聞くがね」

バードウェイ「――『木原円周はエリスのクローン』だな?」

円周「『……根拠は?』」

バードウェイ「明確な返答ありがとう、木原数多。君に――今の君に何を言っても憶えていないだろうが、探偵役として最後の義務を果たそう」

バードウェイ「まず円周は幼い頃に誘拐された。しかし誰も助けはしなかった。何年もの間だ」

バードウェイ「狂犬よりも狂っている君達にしては、少々おかしな対応だとは思わないかな?」

円周「『一族同士の繋がりは薄いんだよ。別に珍しいこっちゃねぇ』」

バードウェイ「では次にコイツが『木原が足りない出来損ない』なんだったな?」

バードウェイ「ならば何故、この歳まで誰にも害されずに育ってきた?『木原』を植え付けられてもおかしくない筈だろう?」

バードウェイ「『善悪を判断しないバケモノ』ってのは、裏を返せば『誰も教えてやらなかった』状態なんだ」

バードウェイ「物好きの木原の誰かが、そこら辺を踏まえて『教育』してもおかしくはないのに」

円周「『俺が引き取って育ててた、っつーかぁ『学習装置』で頭ん中弄ったのは俺ですけどぉ?』」

バードウェイ「それも実は伏線なのだろう?ある程度――そうだな、エリス・オリジナルと同じ歳まで育ててから、クロムウェルに何かの実験名目で引き渡す」

バードウェイ「その際には記憶をフォーマットし、『エリス』としての記憶を植え付けた上で、というのが君のプランだった筈だ」

円周「『遺伝子操作して、性別いじくってまでかぁ?』」

バードウェイ「そこまでしないといけなかったのさ。『木原』には底意地の悪いおばさんが居るらしいし」

バードウェイ「実際君が退場してから、バゲージで使い捨てにされそうになったしね」

円周「『苦しい話だなぁ、おい。状況証拠だけって話』」

バードウェイ「よく陰謀論か語られる際、『証拠がないのが証拠』と言われるな」

バードウェイ「曰く、闇の勢力は絶大な影響力を持っていて、証拠全てを残さないんだ、と」

円周「『バカが信じそうなこった。グーグルアー○で不審船探すアホと同レベルだ』」

バードウェイ「……まぁ、それはそれで構わないと思うよ」

バードウェイ「例え『木原円周が最初からクロムウェルへ懐いていた』としても。それもきっと偶然なのだろうな」

円周「『……』」

バードウェイ「何にせよ、計画は潰えた。罪悪感なのか、それとも計画の再開の布石を望んでいたのかは誰も知らない」

バードウェイ「だが、君の残した遺産を使って騒ぎを起こした連中が居た」

バードウェイ「本来であれば君の記憶データは、『木原円周』へ残した手向けだったのかも知れないのに」

円周「『「SEED」だよなぁ。つかーあんな大騒ぎしてガキ一匹捕まえるんだったら、最初っからフルインストールしてるっつーの』」

バードウェイ「そうだな。誰かが何らかの手段を用いて、この一連の『木原』騒動を起こした」

バードウェイ「最初に『SEED』を作ったのは誰か?そして工山規範に『インストール』させたのは誰だ?」

バードウェイ「……死人を墓から引っ張り出して、弄んだのは」

円周「『検討は着いてんのか?』」

バードウェイ「どうやらこの話で私は探偵役ではなかったようでね」

バードウェイ「あくまでも第三者として物語に関わり、私はただの異分子だと思っていたのだが」

バードウェイ「ソイツはクロムウェルを学園都市まで呼び、『キャリー・イェール版タロット』を復元させ――」

バードウェイ「『木原数多』を殺すために『ハーメルンの笛吹男』の魔術を私に使わせたんだ」

バードウェイ「『明け色の陽射し』が数日掛けて作り上げた儀式魔術を乗っ取り――いや、同調してか」

バードウェイ「私達から盗んで行った。それが基幹だよ」

円周「『てぇ事はだ。最初からテメェが魔術を使う事は想定済みってぇ話かよ』」

バードウェイ「この物語の主役は私だったのだよ。君達は私を追い込むための手段に過ぎん」

バードウェイ「……情を移らせたのは木原円周ではない。まんまと一杯食わされたのが全てだ」

バードウェイ「だがまぁ『後』は私がケリをつける。少々乱暴になるので、良い子の諸君は寝る時間だ」

円周「『右手のにーちゃんにでも頼った方がいいんじゃねぇのか?』」

バードウェイ「ダメだな。これはもう――」

バードウェイ「――『明け色の陽射し』へ売られた戦争なのだよ」

――学校

上条「いやー、疲れたー」

青ピ「ってかカミやん疲れてる所しか見ませんけどぉ?――って、そうでもないよーな?」

上条「うん、まぁここ数日はそんなでもない。朝からちょっと決闘騒ぎがあったぐらいで」

青ピ「カミやんちはどんだけ緋色に染まってるの?それはもう日常とは言いませんやんか」

上条「俺以外が流血沙汰にならなかったら、まぁ平和ですよねっ」

青ピ「泣いているのは――ボク?悲しくなんて無いのに!」

上条「そうだぜ?割と良くある事だし」

シェリー「おい、上条は居るか?」

上条「あー、はい。どうしました」

シェリー「いや何って訳じゃねぇんだが、クソガキがだな」

上条「どっちの?」

シェリー「性格が悪りぃ方だ」

上条「どっちもじゃね?」

シェリー「外見が白いの」

上条「あぁ、はいはい。バードウェイがどうしたって?」

シェリー「スペースも来てない、んだな」

上条「いやだから、何かあったのか?」

シェリー「いやぁ、何もねぇんだがな。多分」

上条「うん?」

シェリー「……はっきり言った訳じゃねぇが――まぁいいか」

ガラッ

上条「なんだよ」

青ピ「あのぅ?カミやん先生?」

上条「なんだよ、つーか先生って何?」

青ピ「シェリー先生とのご関係は?」

上条「知り合い。ショッピングセンターでテロ騒ぎあったじゃん?あん時、黄泉川先生と一緒に世話になってさ」

上条「その縁で暫く美術講師引き受けたとかなんとか……?」

吹寄「ウチの学校は予算が少なくて、人も回ってこないからね」

上条「身内の人間を入れて予算節約……いや?シェリーって有名じゃなかったっけ?」

青ピ「そ、そうなんっ!?てっきりボクぁまたいつものパターンで同棲してるもんだとばかり!」

上条「やだなぁ、そんな訳ないじゃないですかぁ」

青ピ「そ、そうやねっ!ボクはカミやんの事信じていいんですよねっ!?」

上条「当たり前だろう!俺達親友じゃねぇか!」

青ピ「……カミやんっ、カミやぁぁんっ!」 ヒシッ

上条「お、おうっ!」

上条(こいつ名前なんつったっけ?)

吹寄「なにやってんるだか、三バカの二人」

姫神「決して嫌いじゃない。そういうのもアリだと思う。うん」

ガラガラッ

シェリー「あぁ今晩遅くなるかもだから、先にメシ食ってろ」

全員「……」

シェリー「バードウェイは……まぁ、気にすんな。どうせ間に合わねぇだろうし」

ガラッ

上条「あ、ごめん。僕ちょっとお手洗いへ」

青ピ「――ってな訳で、第百二十一回上条弾劾裁判を始めたいと思います!」

上条「待てやコラ!?弾劾って何?俺なんか悪い事したかよっ!」

姫神「この状況下でしてないっ思う方がおかしいと思う」

上条「姫神まで敵かっ!?俺は別に疚しい事はしていないさ!」

青ピ「ほー、マジで?マシでそう思うんでっか?」

上条「幾ら俺が年上のおねーさん好きであっても、困ってる同居人に手を出す程落ちぶれてねぇ!」

姫神「クロムウェル先生。どうしたの?っていうか聞いても良い話?」

上条「ビジネスホテルの壁に落書きしたら、ブラックリスト入りした上で追い出されたって」

吹寄「芸術家らしいエピソードではあるけど、ねぇ?」

青ピ「まぁ実際にやったらドン引きってぇ感じですわ」

上条「だから俺は仕方が無く友達の同居を認めたんだよ!どうだ、疚しい所なんかこれっぽっちもねぇ!」

青ピ「あー、ごめん、ごめんね。カミやん?ボクら疑っちゃって」

上条「俺が毎度毎度疑われるのは仕方がないけどさ、もうちょっと信用してくれたっていいんじゃね?」

土御門「それはさておき、褐色金髪美女ってずぅんごくエロいよにゃー」

上条「だよなぁ?エロいよなっ!」

一同「……」

上条「ち、違うんだ!これはきっと敵の魔術師の攻撃なんだ!」

上条「つーか今土御門居なかったかっ!?野郎の声が聞こえた気がした!」

青ピ「つまり『手は出してないけど、ものっそい意識はしている』でファイナルアンサー?」

上条「違うよっ!いや、違くないけどさっ!俺の話を聞いてくれよぉぉっ!」

吹寄「キリキリ吐きなさい上条当麻。骨は拾ってあげるから」

上条「委員長までそんな事言うのかっ!」

姫神「委員長じゃないんだけど。ずっと委員長と思ってた」

青ピ「ではホンモンの委員長からの命令ですわ。素直に言ったらええですやん?な?」

青ピ「別に誰がチクる訳じゃ無いですし、ここだけの話にしときますよって」

上条「だからそーゆーんじゃないんだって!」

ガラガラッ

シェリー「悪ぃ。やっぱ飲み会キャンセルだって――」

上条「そりゃまあ意識はしてるけど!だつてシェリー可愛いもんっ!」

上条「普段はズボラで格好もだらしないけど、結構根は優しかったり、気ぃ遣いだっりするし!」

上条「でも友達だから意識しないようにするじゃねぇ――」

シェリー「」

上条「えっと……何?どういう事?本格的にドッキリなのか?」

シェリー「……あぁ、いや別に?全然全然?な、ほら?」

上条「お、おぅっ!」

シェリー「その、私もまぁ、あれだし、まぁその――」

シェリー「――今日、早めに帰るわね?」

ガラガラッ

上条「待て待て待て待てっ!?違うんだ!そうじゃねぇんだ、いや違わないけども!」

上条「つーかお前らも無責任すぎるだろ!何全員目ぇ合わせないようにして席へ戻るのっ!?」

青ピ「……カミやん」

上条「な、なんだよ」

青ピ「やったね!明日はお赤飯だよ!」

上条「ウルセェよ!そんなんじゃねぇよ!」

上条「どう考えても家帰ったら気まずいだけに決まってだろ!?なあぁっ!?」

上条「お前らっ!責任取れって、きーけーよおぉぉぉっ!?」

――放課後

上条「……疲れた。精神的にどっと疲れた……」

姫神「お疲れ様。今回のは悪くは無いと思うけど。小萌先生とか大人を頼るべき」

上条「あぁうん、幾らなんでも俺だって分かってるけどさ。その」

姫神「あっち関係の人?」

上条「うん。元敵の、はい」

姫神「誰彼構わず味方にするのは悪い癖。主に私の個性に関しても不都合」

上条「それは姫神のご都合ですよね?ケンカせずに済むんだったら、そっちの方が良いんじゃねぇかなって」

青ピ「――オイ、カミやん聞いたかっ!?」

上条「何?これ以上俺を弄ったって何にも出て来ないよ?」

青ピ「校門のトコにメイドさんがビラ配りに――」

上条「何やってんだグラアァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

青ピ「――来てるんだけど、って最後まで言わせて欲しかったんですけど」

青ピ「って先に征かせるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

姫神「あ。窓から」

姫神「……」

姫神「よい子のみんなは窓から出ちゃダメ。うん。死ぬから」

吹寄「バカは死んでも治らない、の史上初の実験をしてみたい所だけどね」

……

――校門前

青ピ「前世ではアナタの兄だった気がしま――げふっ!?」

上条「ぜー、はーっ……ケガは、ないか……?」

円周「たった今目の前で傷害事件があった以外は、これといって特に?」

上条「……つか何やってんのおぉっ!?人んち学校でビラ配りか!?」

円周「新規のお客様を開拓しないといけないんだって、店長が」

上条「いっぺんお前のトコの店長と話をつける必要があるよね?中学生のバイト雇うのもどうかと思うけど」

円周「大丈夫だよぉ、店長17歳の女の子だしっ」

上条「そういう問題じゃねぇと思うが」

青ピ「……たか」

上条「あん?」

青ピ「またカミやんですやんかっ!?何?ボクらなんか悪い事しまし――」

円周「はいはーいっ、ごめんんねーっ?」 キュッ

青ピ「……ぅぐっ」 パタン

円周「お兄ちゃんにおイタしちゃ、めっ、だからねー?」

上条「あれお前何したの?人って軽く首筋抑えだけで気絶しないよね……?」

円周「あぁこれ?加群おじちゃんがよく使ってたスキルをシェアリンクしてるだけだよ」

円周「頸動脈を圧迫するだけだと、失神するまで数秒かかるんだけどぉ」

円周「動脈の血管を掌で包みながら、●●の方に●●●●●●するとぉ」

上条「はいストップー!それ以上は危険だから、ね?マジで洒落にならないから!」

円周「んー、抽象的に言えば『無理矢理パソコンの電源を落とす』って感じかな?」

上条「お前何やってんだ!?路上で人の知り合いに殺し技かけてんじゃねぇよ!」

円周「え?だったら掌底で●●を叩き折って●●に●●●●た方がいいって事?」

上条「即死じゃん!?つーか引くよ!メイドさんがラフプレイしまっくてたら、他のお客さん来ないものっ!?」

円周「わたしに優しくオトして欲しい人は、き・て・ねっ?」

生徒達『オオオォォォォォォォォっ!!!』

円周「はーい、ビラをどーぞ。ね?問題なかったでしょ?」

上条「……もうヤダっ!こんな学園生活普通じゃないし!」

円周「男の子はみんな、そーゆー時期があるって聞いたけど?」

上条「中二病はね……うん、特別になりたくてしょうがないって言うか。そういう時期は必ず来るけど」

円周「まぁお兄ちゃんも来てよ、ねっ?」

上条「その内気が向いたらって事で」

青ピ「是非お義兄さんと一緒に伺いますわっ!」

円周「わーいっ!」

上条「復活が早いのは今更だけど。コイツ、中身は虎より始末悪ぃぞ?」

青ピ「そりゃ当然魔族とのハーフやったら当然ですやんかー。カミやんってば当たり前の事を今更ですやん?」

上条「どっからその結論持ってきた?魔族って何?新しい食べ物か何か?」

青ピ「ネリ○さんをボクに下さああああぁぁぁぁぁぃいっ!」

上条「相変わらず未来に生きてんな!……居ないと思うけどなぁ、悪魔。居たら居たで話の収拾がつかなくなるし」

円周「知的好奇心は刺激されるよねぇ。そういうの」

上条「悪魔さん逃げてー!?ロズウェルの宇宙人みたいな末路しか思い浮かばない!」

――自宅 夜

円周「たっだいまーっ」

シェリー「……おー」

上条「お帰りー。ってお前らバードウェイと一緒じゃなかったのか?」

シェリー「あー……居ないのか?」

上条「まだ帰ってきてないから、そっちだとばかり」

上条「……探しに行った方が良いのかな?」

シェリー「やめときなさいな。相手はライフル撃ち込まれたって平然としてるガキよ?」

上条「強かろうが子供に変わりねぇし、監督するのは年長者の義務だよ」

上条「しっかし遅くなるなら遅くなるで、言ってて欲しいよな」

円周「あ、コイツ出したんだ?」

上条「そろそろ寒くなって来たろ?今夜は鍋にでもしようかなって」

円周「お姉ちゃん」

シェリー「……だな」

上条「どした?」

シェリー「はっきり言うけど、多分バードウェイはもうここへは来ないわ」

上条「来ないって、なんでまた?まだ4日あるのに」

円周「んー、馴れ合うのはゴメンだって事じゃないかな」

上条「馴れ合うも何も俺達は、少なくとも俺は友達のつもりだぞ?それがなんだって」

シェリー「『それ』も問題なんだよなぁ。アンタの無自覚な所もだ」

シェリー「魔術と科学が奇跡的なバランスで成り立っているのは理解出来るよな?その間で色々見てきたんだから」

円周「今までは『木原数多』っていう、学園都市にも都合の悪い存在と戦ってた訳でしょ?だからここにいられたんだけど」

上条「いやでも後少しなんだぜ?」

シェリー「『明け色の陽射し』はイギリス清教の敵だ。つーか『取り敢えずパトリシアを殺しとけ』って命令が出るぐらいのな」

円周「だからレヴィちゃんはお兄ちゃんに、そしてインデックスちゃん?へ気を遣ったんだよ」

上条「……そうか」

シェリー「私みたいな下っ端じゃなく、禁書目録が『許可』した形でありゃ多少は違うんだが。悪いな」

上条「いや、誰も悪くないさ。朝もバードウェイに言われたけど、いつかは元の三竦みへ戻るって言われてたし」

上条「ただそれがほんの少しだけ、早まっただけだし」

円周「お兄ちゃん……うん、そうだよねっ!」

上条「あぁっ!」

円周「減ったハーレムは適当に補充するもんねっ!」

上条「人聞きは悪ぃし全っ然分かってなかったし!?」

シェリー「まぁそんなに気にするなよ。生きてりゃ会えんだろ、簡単にくたばりそうな女じゃねぇわよ」

上条「だよなぁ。長生きしそうではあるけど――あ」

円周「なぁに?あ、お別れ会でもしたかったの?」

上条「それはしたかったけど。ってそうじゃなくって忘れ物が」

シェリー「あいつ何か持ってたかぁ?サイフとか携帯とか、ナショジオとサイエンス読んでた……か?」

円周「わたしやしシェリーちゃんと違って、バックはなかったしねぇ」

上条「いやぁ、それがなぁ……ぱんつ」

シェリー「……」 ズズッ

円周「うっわぁ……」 ズズッ

上条「引くな引くな引くな!?別に俺が盗ったって訳じゃねぇよ!?」

シェリー「いや今のは流石に冗談だけど。もしかして洗いに出したのが?」

上条「さっき洗濯してベランダに干してあるけど」

円周「雑誌類は綺麗に持っていったのに、また凄いもの忘れちゃったねー……あ、もしかして、別の意図があるのかも?」

上条「ぱんつに深い意味がある訳ないと思うが……」

円周「かあさんがーよなべーをしてー」

上条「寒い特に穿けってのか!?設定が無茶にも程があるすぎるだろ!」

シェリー「でも捨てるのもアレだし、だからって持ってても、なぁ?」

円周「ベストはわたし達から返す、もしくは知らんぷりして捨てる、の二択かな」

上条「最後の最後で妙なトラップ踏んだ感がしないでもない……まぁ、その話はそのウチ考えようか。うん」

円周「戦わなきゃ、現実と!」

シェリー「幾ら逃げても現実は追いかけてくるんだぜ?」

上条「無理ゲーじゃん!?俺が持ってても『きゃードーン!』されそうな気がするし!逆に捨てても『うそードーン!』される未来が見える!」

シェリー「骨は拾ってやるから、な?」

円周「なにそれすっごく見たい!」

上条「おいお前ら人の不幸を流すのってどうなの?血は流れているの?だとしたら何色なの?」

円周「……血、見たい?ね、見せてあげよっか?」

上条「嫌な予感しかいねえからノーサンキューだ!唐突にエ×スイッチ入れるのやめて下さい、ねっ?」

上条「……まぁでも真面目にな、お前らが帰る時には前もって言ってくれよ?」

上条「送別会――なんて、きちんとした形じゃねぇけど、それでもお別れは言いたいからな」

シェリー「私は……禁書目録次第だわな。あんまり刺激すっとヤクザ神父に燃やされそうだし」

シェリー「そもそもイギリスじゃなきゃ生きていけないって訳でもねぇから、お前らが年度変わりまで先生やったって構わねぇわよ」

円周「うーん。だったらわたしも出て行かなきゃいけないよねぇ。お姉ちゃんの面倒看るよ!」

上条「……そうしてやってくれ。シェリー一人にすると不安が。オルソラの気持ちが分からないでもない」

シェリー「ウルセェわよ。こちとら三十路近くまで一人でやってんだから」

円周「奇蹟に近いと思うんだよねぇ、割と」

シェリー「アンタには言われなくねぇぞ」

上条「んじゃメシの用意すっから、手ェ洗ったらテーブル片付けといてくれー」

円周「はーいっ!」

シェリー「スーツ肩凝ってしょうがねぇな」

上条(さて準備。一度は火を通したから、もう一回煮立ててれば良いか)

上条「……?」

上条「……しまった。一人分多いんだっけ」

――3rd.


――上条のアパート(※元・『明け色の陽射し』 極東支部)前 放課後

御坂 ソワソワ

上条「あ、どうも、こんにちは」

御坂「ぅえっ!?う、うんっ!どぉも」

上条「今日はいいお天気ですね?」

御坂「そうかな?台風来るって聞いたような」

上条「じゃ、さようなら」

御坂「うん……」

上条(……良し!)

御坂「ちょっと待って?どうして今の流れで私をスルーしようとすんのよっ!」

上条「え、だってお前直ぐ攻撃するじゃん!?だから穏便に済ませようとしたんですけどぉっ!」

御坂「アレは――挨拶代わりに決まってるじゃない!」

上条「ホラ!そういう所がだ!俺じゃなかったらこんがりと電子レンジになってんですからね!」

御坂「電磁波だから、電気よりも波に近い性質なんだけど」

上条「騙されないぞ!俺はもうビリビリするのは嫌なんだ!散々虐殺ウサギ喰らったんだからな!」

御坂「散々って――アンタ!一体どこの誰の電撃喰らったって言うのよ!?」

上条「え、食いつく所そこかぁっ!?」

御坂「信じられない……私、私信じてたのに!」

通行人A「おい……あの子って……」

通行人B「うっわー、泣かせてるし」

上条「待ってくれないかな?俺のホーム(家の近く)での好感度がダダ下がりなんだけど」

御坂「私が!私がどんな思いでビリビリしてたのか……分かってる癖に!」

上条「え、御坂お前――もしかして」

通行人C「よし行け!告白しろ!」

通行人D「いやぁ、この展開だとアレでしょ?どうせ」

御坂「ムシャクシャしてやってたに決まってるじゃないっ!!!」

上条「うん、知ってた」

通行人E「ヘタレた」

通行人F「ヘタレたよ、また」

通行人G「つーか気づけよ。バカじゃねぇの?フラグ立ってんじゃんか」

御坂「つーかうっさいわよ外野!散れ散れっ!」

上条「いやだから、あの御坂さん?俺んちの近くなんで刃傷沙汰はちょっと……」

御坂「うるっさいわね!大体アンタがいけないんでしょーが!はい、これっ!」

上条「これ?――メモリーカード?」

御坂「……何よ!頼まれたから持ってきてあげたのに、その態度って無いわよね!」

上条「そうなのか?……そう。悪かったな、ごめん」

御坂「ば、バカじゃないの!?そんなゴメンの一つぐらいで私が機嫌治すと思ったら大間違いなんだからねっ!」

通行人H「上条もげろ」

通行人I「まさか現実でお目にかかれるとは……あ、写メ撮っとこ」

上条「あー、それじゃ家上がってお茶でも飲んでく?」

上条「お茶請けが……きなこ棒ぐらいしかないけど」

御坂「はぁ?いらないわよ、そんな駄菓子ぐらいで釣られると思わないでよね!」

上条「そっか?折角上手く出来たと思ったんだけど」

御坂「食べるに決まってるじゃない!何言ってんのよ!」

上条「……なぁお前、躁鬱病って知ってる?」

御坂「誰がパラノイアだっつーの!」

上条「いやぁ……うん。つーかさ、一つ聞いていい?さっきから気になってたんだけど」

御坂「べ、別に通りかかっただけなんだからね!だからそのっ、ついでに持ってきてやった、的な感じで!」

上条「お前――なんで俺んち知ってんの?」

御坂「……」

上条「……」

御坂「――さ、さぁってと!それじゃお邪魔するわねっ!」

上条「誤魔化されてねぇよ!?何一つ大惨事のままじゃねぇか!」

通行人J「ちなみに女性のストーカー加害者は少ないけど、それは外見がそこそこであれば『まぁいっか?』で済ませるケースが多いんだ」

通行人K「まぁ合意であればオッケーってのもなんか。男は悲しいよね」

上条「ねぇそこの人?俺通報した方が良いのかな?っていうかおっきな声出した方が良いのかな?」

通行人M「もげろ」

通行人N「ちんこもげろ」

通行人H「上条はEDになればいいと思うよ。いやマジで」

上条「うるっせぇぞ外野!あと今、通行人Hはどっか見覚えがあるからな、なぁっ!?」

――自宅

御坂「お、おじゃましまーす……?」

上条「おー、いらっしゃい。あ、靴は脱ぐんだぜ」

御坂「……あんた。どんだけ私がお嬢様だって思ってる訳?」

上条「常盤台の子達はなぁ?俺知ってるのって御坂、白井、食蜂さんぐらいか」

御坂「あの女との関係を問い正したい所だけどねっ!」

上条「いやぁ憶えてないですし――あ、お茶入れるから、座布団どーぞ」

御坂「あ、はい。ありがとうございます」

上条「……なんで緊張してんの?付き合い長いのに、俺ら」

御坂「うっさいな!男の部屋に上がるのって初めてなのよ!」

上条「いや別にカレカノって訳じゃないんだから、取って食おう的なイベントも起きないし」

御坂「そ、そうよねっ!緊張なんかしてないわよ、全然っ!アンタも口開けてないで、こっち見なさいよ!」

上条「おーい、御坂さん?お前が今話しかけているのは洗濯機だ」

御坂「知ってたわよ!悪いっ!?」

上条「うん、知ってる方が色々悪いとは思うよ?――ってお湯沸いた。緑茶でいいな?」

御坂「あ、いえお構いなく。あ、でも意外ね」

上条「何が?」

御坂「一人暮らしの割には綺麗ってのがパターンじゃない?」

上条「パターンってなんだ。パターンって」

御坂「汚いって事じゃなくって、そこそこ散らかってて生活感があるって意味よ。あ、ほら」

御坂「ここに下着出しっぱなしじゃない。もー、私が本当の彼女だったら小言言われまく――」

上条「お待たせー。なに?」

御坂「……っ」

上条「はい?」

御坂「……ぱんつ」

上条「違うんだっ!?そうじゃないんだっ御坂さぁんっ!?」

上条「話を!まずは話を聞いてくれませんかっ!?」

御坂「……これ、女の子のよね?結構ちっちゃい子の」

上条「ち、違うっ!?これには事情があって!」

御坂「……ばーか」

上条「敵の魔術師がベクトルを一方通行でオティヌスはぁはぁ――へ?」

御坂「何構えてんのよ?私はあんたの事知ってるって言ったでしょ?」

上条「そ、そう、か?ビリビリしないの?」

御坂「あんたの方こそ私をどんな風に考えてんのよ。つーか失礼にも程があるじゃない」

上条「だ、だよねっ!俺達もう、誤解されるような付き合いじゃないもんねっ!」

御坂「取り敢えず、アンチスキルに自首しよう?そうすれば、執行猶予ぐらいで済むと思うんだ、うん」

上条「100%誤解ですよねっ!?何一つ俺を理解してねぇし、完全に犯罪者扱いじゃねぇかよおおぉぉぉぉぉっ!?」

御坂「待ってるから!私、アンタの事を待ってるから!」

御坂「例えば世界中がアンタを敵だっていっても、私はあんたの事を――!」

上条「出来れば別のシチュで聞きたかったけどなその台詞!つーか信じるって言ってる本人がまず信用してねぇよ!」

御坂「……それとも、私と逃げちゃおっか?」

上条「話を聞いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

――10分後

御坂「あー……居たわねー、あの子か」

上条「そうそう!ハワイに一緒に行った子だって!たまたま忘れてっただけだから!

御坂「んむぅ。困るって言うか、まぁ困るわよね。逆の立場だったらちょっと考えちゃうし」

上条「だよね?俺がおかしいんじゃないよね?」

御坂「じゃ私はその子を撃てばいいのね?」

上条「ごめんよ?俺やっぱおかしいみたいだ、お前の言葉何一つ理解出来ないもの」

御坂「大丈夫よ!レベル5なら一人や二人何とかなるって!」

上条「言わないよ?俺の御坂美琴さんはそんな物騒な事は!」

御坂「だ、誰があんたのよ!?」

上条「……あ、戻った」

御坂「そ、その代わりあんたは私のなんだからねっ!」

上条「戻ってなかった――いやいや、いつまでもボケてないでそろそろ本題を」

御坂「あ、このきなこ棒美味しいわね。作ったの?っていうか家庭で作れるの?」

上条「あぁうん。今日の料○でやってたんだ。ってか水飴ときなこの味しかしない筈だけど」

上条「てか、よく知ってんな?こーゆーの食べるんだ?」

御坂「実家に居た頃とか、ママに近所の駄菓子屋さんへ連れてって貰ってたし」

御坂「他にも仙台駄菓子だっけ?あの中にも入ってたような」

上条「予想よりも作りすぎちまったから、良かったら持ってくか?」

御坂「いいのっ!?」

上条「そんな驚かれても困る、っていうか人にあげるのもちょっとアレな代物だから」

御坂「通販で売ったら激売れ間違いなしね」

上条「誉めてくれるのは嬉しいけど、出来ればサミーを忘れないであげて?」

御坂「あー、メモリーカードね。佐天さんと一緒にいた男の人から渡して欲しいって」

上条「男の人……何?またあの子強い引きでトラブルを踏み抜いたの?」

御坂「って思って……これ、内緒ね?」

上条「約束する」

御坂「ここへ来る前に軽く中の動画見ちゃったんだけど。別におかしな内容じゃないっぽいわ」

上条「その判断は正しいと思う」

御坂「まぁザッと見た感じ、フツーに話してるだけみたいよ」

上条「ちなみにその人、彼氏さんとか?」

御坂「結構歳離れてたし、頼まれた、みたいな事言ってたから、ほぼ初対面みたいな感じかな。なに?気になるってか!?」

上条「……分かるよな?俺がどんな意味合いで心配してるか、お前なら!」

御坂「良い子なのよ?うん、どこに出してたって胸を張って良い子だって言えるんだけど――」

上条「どこにいたってトラブルを引っ張ってくるっていうか、何かデジャブを感じるけどもだ!」

御坂「あー……分かる気がする。誘蛾灯的な」

上条「内容はなんだったの?つーか緊急で見た方が良い感じ?」

御坂「でもないけど、まぁ見る?」

上条「えっとカメラカメラ……」

御坂「パソコンないの?って携帯で見ればいいじゃない」

上条「……お前も見るんだよな?」

御坂「ま、まぁ?」

上条「だったらカメラに入れて、テレビにケーブル繋いで再生、っと」 ピッ

――いつもの喫茶店(※動画)

麦野「……」

佐天「――はいっ!と言うわけでやって来ました!『新・学園耳袋!』今日は出張版ですよー!」

佐天「なんと今日はゲストがいらっしゃってます!その名は――」

麦野「……」

佐天「そーーーのーーーなーーーはっ!!!」

麦野「……」

佐天「えっと、すいませんガン無視って酷くないですかね?」

麦野「――はい?」

佐天「良かったー、聞いて貰えましたっ!さっ、お名前をどうぞ!」

麦野「麦野、です……?」

佐天「そーですかっ!本日のゲストは麦野さんって女性の方ですっ!見れば分かるねっ、すっごいキレーな人だぞ!」

麦野「はぁ、どーも」

佐天「ってかそのお洋服miumi○じゃないですか?もしかして、とは思ったんですけど!」

麦野「そう、だけと、よく分かったわね」

佐天「いやいやっ、とてもお似合いですよー、ってかモデルさんですか?背も高いし、実にセクシーな感じで」

麦野「その質問に答える前に、聞きたいんだけど良いかしら?」

佐天「どぞっ」

麦野「ここ、喫茶店よね?」

佐天「はいっ」

麦野「あなたはたまたま相席になった人よね?混んでる感じには見えないけど」

佐天「あいまむっ!」

麦野「なんでゲスト?っていうかいきなりハンディカム回して何やってるのよ?」

佐天「あ、ご存じじゃないですか?『新・学園耳袋』?」

麦野「耳袋ってのは江戸時代に書かれた怪談ものだっけ?」

佐天「それの現代版です。こう見えてケーブルテレビでも流れてるんですよー」

麦野「あ、そうなの?ごめんね、あんまりテレビ見ないから」

佐天「『新・学園耳袋』、日曜夜27時で絶賛放映中でーすっ!」

麦野「朝だよなぁ?それもう深夜じゃねぇし、日曜の夜に見る奴いねぇだろ」

佐天「あれ?今口調が?」

麦野「それで?なんでアタシがその番組に出てんのよ、つーかゲストって何?」

佐天「えっとですね、都市伝説ってご存じでしょうか?人面犬とか、花子さんみたいなの」

麦野「そりゃまぁ話ぐらいは」

佐天「番組がそんなあったかも知れない、無かったかも知れない話を追いかける、って主旨なんですが」

麦野「無かったかも、のはただの捏造よね?」

佐天「がぁっ!しかぁし!最近学園都市でも妙な噂が流れているので、ここは一つ街の方から話を伺えればな、と」

麦野「急に言われても――あー、知り合いで一人、好きそうなのはいるかー」

佐天「マジですかっ!?是非ご紹介をお願いしたいですっ!」

麦野「ん、まぁいいけど――(暗部って訳じゃなくなったし)暫く待ってれば来ると思うわ」

佐天「ありがとうございます」

店員「――すいません、お客様。相席をお願いしたいのですが」

佐天「あたしは別に構いませんけど」

麦野「私も別に」

店員「ありがとうございます――お客様、どうぞこちらへ」

壮年の男性「いやぁ申し訳ない。お友達の会話は邪魔しませんから、どうぞ続けて下さい」

壮年の男性「コーヒーを一つ下さいな。あと軽く食べられるものを」

店員「承りました。少々お待ち下さいませ」

佐天「外人さんですかっ?」

麦野「あ、こら!」

壮年の男性「いえいえその通りですからねー。ポルトガルから来ました――ってカメラ?」

佐天「今ちょっと学園都市内のケーブルテレビの企画で、都市伝説について調査してるんですよー」

佐天「宜しければおじさんもご存じのお話があれば、是非」

壮年の男性「都市伝説ですか?とは言っても在り来たりのものしか存じませんよ」

壮年の男性「私としてはこちらで流行ってるものに興味がありますが」

麦野「(ノリノリだな、おっさん)」

佐天「こっちで、ですか?うーん……白いカブトムシの大量発生以外、これといって面白そうなのはないんですよねぇ」

壮年の男性「実験動物的なものが逃げ出した――エイリアンアニマルみたいなものでしょうか」

佐天「ですかねぇ。チュパカブラスもその類って言われてますし」

壮年の男性「私も仕事柄、色々な所を歩き回っていると、ご当地モンスターは結構聞きますな」

佐天「ほうほう。どんな感じの?」

壮年の男性「それは――では、なく。学園都市の話では?」

佐天「いやもうぶっちゃけ目新しいの無くてですねー。次はどうしたもんかって困ってるんですよ」

壮年の男性「では定番的なものでいいのではないですかな?色物ばかりを追うのではなく、初心へ返る意味合いも込めて」

佐天「初心、ですか……あー、それじゃ『人攫い』なんて話がありますねぇ」

佐天「能力の高い子供がいつの間にか居なくなっていたり、みたいなの」

壮年の男性「……ここってそういう所なんですか?」

佐天「いやいやっ!違いますって、噂ですよ、噂」

佐天「あたしの友達には能力の高い人もいますけど、お二人はふつーにしてますからっ!」

麦野「(いやぁ、そいつらがレアケースって可能性もあるけど。実際『書庫』の改竄は日常茶飯事みたいだし)」

壮年の男性「日本では『神隠し』でしたっけ?カミサマが連れて行ったりする感じで」

佐天「あー、そっちの神様はお一人ですもんね」

麦野「人んちの信仰対象をお一人様みたいに言わないの」

佐天「あ、すいませんっ」

壮年の男性「いえいえ私も一応十字教徒ですけど、そんなに信心深いって訳じゃないですので」

壮年の男性「……神隠し――あぁ、そう言えばこちらにもありますね。有名な人攫いのお話」

壮年の男性「『ハーメルンの笛吹男』、とか」

――喫茶店

店員「お待たせ致しました。ではごゆっくりどうぞ」

壮年の男性「ありがとうございます」

佐天「あー、昔絵本で読みました。ネズミを退治するけど、子供も連れて行っちゃうみたいなの」

麦野「……あれってペストって説があるけど。だから耐性の弱い子供が一斉に死んじゃった、って」

壮年の男性「はい、その説もあります。ネズミは黒死病を媒介しておりましたし」

壮年の男性「墓地と納骨堂の関係から、土葬から火葬へと転じて行ったのも関係性がありそうですよ」

麦野「他にも十字軍遠征の暗喩と言うのもよく聞くわね」

佐天「子供達がですか?」

壮年の男性「猫も杓子も、という勢いでしたからねぇ。そもそも巡礼者を保護しながら行く小規模のクルセイドもありましたし」

壮年の男性「でも途中で力尽きたり、売られていったりと悲惨な最期もあったようですよ」

壮年の男性「そこら辺は『少年十字軍』に詳しく書かれて――確か日本のマンガにもあったような……?」

麦野「そこまでして結局、聖地を取り戻したのは第二次世界大戦後だしね。しかも正確には十字教徒じゃないし」

壮年の男性「それを言われると辛いものがありますな。当時ですら様々な国の思惑で振り回されてきましたし」

壮年の男性「同じ十字教国を襲撃したり、東方植民地を拡張したりと混沌とした状況になってましたから。えぇ」

麦野「オスマントルコは、異教徒の存在も税金付きで認めてたんだってぇから、色々と底が知れるわ」

壮年の男性「いえいえ。それは一概に言えませんよ」

壮年の男性「当時のスルタンはアンティオキア公国を滅亡させ、国民は殺すか奴隷にしてますから」

壮年の男性「それ相応の危機感を十字教側は抱いていたかと」

壮年の男性「実際、裏付けるように15世紀には帝国がヨーロッパへ侵攻していますからねぇ」

壮年の男性「彼の勇名轟くHELLSING――もとい、ヴラド=ツェペシュ公が活躍されたのもその辺りです」

佐天「あ、知ってます。外から攻めてこられないよう、ワザと残酷な刑罰をしたって王様ですよね」

壮年の男性「ですね。ただしドラキュラの作者であるブラム=ストーカー氏はアイルランド人である事を鑑みませんと」

麦野「『血を吸う貴族』で『ドラゴン』っつったら、ウインザー朝に『死ね』って言ってるのと同じよね」

壮年の男性「聖ジョージやア・ドライグ・ゴッホ等は王権の象徴たり得ますからな」

佐天「なる、ほど?」

壮年の男性「あぁ脱線しました。笛吹男の話でしたな」

壮年の男性「――その第9次クルセイドが終了したのが1272年」

壮年の男性「そしてハーメルンの街で子供が消えたのは1284年6月26日ですね」

佐天「そんなに離れてませんよね。でも参加したにしては、うーん?干支一回りぶんは近くもないような?」

壮年の男性「時系列を追えばその通りですが、当時は情報の伝達速度もカメのようですからねぇ」

麦野「……そうか。逆に避難するって考えもあるのよね」

壮年の男性「可能性ですがね。後の魔女狩りに関しても集団的なパニックに陥りやすい下地はあるようで」

壮年の男性「現在唱えられている説の中で、最も支持を集めているのが『東方開拓』です」

壮年の男性「子供達は親を捨てて、クルセイドで拡張した東方へと移り住んだと」

佐天「ご両親と別れてまで、ですか?」

壮年の男性「貧しい家庭であれば、遠くへ出稼ぎをする必要に迫られますし、全く珍しい事ではありません」

麦野「まぁそう言う時代だったって話ね」

佐天「でも、だからって笛吹男さんに全て責任押しつけるのもなんかって気がします!」

壮年の男性「日本では人が居なくなった場合、『神様が隠した』って考えるんですよね?」

佐天「神様っていうか、天狗とか、はいそんな感じですけど」

壮年の男性「『子供の失踪』という結果に対し、『神隠し』と言う原因を後付けしました。ここまでは宜しいでしょうか?」

佐天「えぇ。当時は世界情勢なんて分からないでしょうし、客観的に分析出来る人も組織も無かったでしょうからね」

壮年の男性「同様に私達は『子供の失踪』に『笛吹男』と言う原因を後付けしたんですよ」

壮年の男性「神様が怖いから、日本とは違う形になりましたが」

佐天「あー、なるほど」

麦野「つっても推論だけでしょうが」

壮年の男性「西洋では『狼男伝説』が数多く残っています。それこそ『リターナー』と同じぐらいの頻度で」

佐天「リターナー?初めて聞きます」

麦野「日本語の『黄泉帰り』って所じゃないかしら?」

壮年の男性「墓から戻ってくる死人はどこでも聞きますが、西洋は狼男が一杯居ます。それは何故か?」

佐天「狼さんがたくさんいたからでしょうか?」

壮年の男性「はい、つまり?」

佐天「え、えぇっと――パスいちで!」

麦野「何回ルールだ?……ああっと、アレよね。日本には『天狗』って伝説があった。だから天狗のせいにされた」

壮年の男性「西洋には狼が住む深い森があった。だから狼男のせいにされました」

佐天「はい?」

壮年の男性「例えば村で子供がいなくなったとします。日本では天狗の仕業。西洋では狼男に食われたと」

佐天「あー……はいはい。なんか分かったような気がします、はい」

麦野「ちなみに天狗は『あまついぬ』の略だから、一応犬の仕業で東洋共に共通はしてんのよね」

壮年の男性「加えて魔女もヤマンバも性質はよく似ていますし」

佐天「なんて言うか、二人ともお詳しいんですねぇ」

麦野「わたしは知り合いから聞かせられた。つーか詳しいなアンタ」

壮年の男性「私は商売柄色々と――と、そうそう」

壮年の男性「今では『人攫い』は誘拐全般の古い呼び方ですが、元々は東京周辺に出る怪異の事だったそうです」

佐天「え、そうなんですかっ!?」

壮年の男性「えぇ、と言っても山の方?らしいのですが」

麦野「……まぁ、昔は子供がいなくなれば大抵バケモンのせいに出来たからね」

ピピピピッ、ピピピピッ

佐天「あ、すいませんあたしです。ちょっと失礼しますね」

麦野「あぁ」

壮年の男性「お気になさらず」

麦野「……」

壮年の男性「……そう言えば」

麦野「あん?」

麦野「今では大変らしいですけどねぇ。そっちの市場も」

麦野「そっち、って?」

壮年の男性「人攫いではなく人買いの方です。貨幣経済の浸透と言いましょうか、弊害と言うべきなのか」

壮年の男性「昔はアレですよ。貨幣経済の信用なんて皆無でしたから」

壮年の男性「親が中々子を手放さず、『人攫い』専門の集団があちこちに居たんですね」

麦野「……そりゃな。ガキつっても農村じゃ充分に労働力になるんだから、早々手放しゃしねぇだろ」

壮年の男性「でも今はもうダメなんです。だってお金で買えますから」

壮年の男性「ソ連が崩壊して、旧東欧諸国は大不況に叩き込まれました。まぁ実際にそういう土地だったんですが」

壮年の男性「今じゃそこら辺を中心に、人買いのシンジケートが暗躍しているそうですよ」

壮年の男性「お金と引き替えに泣く泣く子供を売り渡す親がぞろぞろと。嘆かわしい話ですよねぇ」

麦野「お前――」

壮年の男性「そして質が悪いのは自国政府が無視している事ですな」

壮年の男性「社会保障費に大した予算は割けない。かといってそういった貧民達を放置しては犯罪の温床となる」

壮年の男性「なので『本来国家が保護すべき社会弱者を外国へ売り捌く』と」

壮年の男性「棄民政策。そして『貧困と犯罪の輸出』とでも言うのでしょうかねぇ」

壮年の男性「ほんと嘆かわしい限りですな」

壮年の男性「効率社会も結構ですが、親が進んで売り飛ばすのはいやはや――『私達』としても商売あがったりでして、はい」

麦野「私達、ってのは」

壮年の男性「昔は良かった。信仰と信心、そして隣人愛に守られた人々の手から無理矢理子供達を攫えば良かったのですから」

壮年の男性「『ハーメルンの笛吹男』の二つ名に相応しく、どこへ行っても恐れられましたとも。えぇ」

壮年の男性「現地の騎士達だけでなく、十字教徒や裏社会ですらも私達を敵と見なし戦っていた闘争の日々は遠く」

壮年の男性「今はやりがいもない、と言うか私達が出張る必要すらなく」

壮年の男性「僅かな金銭をマフィアにちょいと支払えば、それでもう売買は成立してしまうのですからねぇ」

麦野「――アンタ、何なのよ?どう考えてもカタギじゃねぇよなぁ、あぁ?」

壮年の男性「『宵闇の出口』の元ボスと言っても、科学サイドのあなたにはご理解頂けないかと存じますが」

麦野「分からないわね――取り敢えず、潰しとっかって事以外は」

壮年の男性「おやおや?無辜の一般人に手を上げるのは流石に」

麦野「それが遺言でいい――」

プツッ、ジジジッ

佐天「――あれ?麦野さんは?」

壮年の男性「あぁトイレ――じゃなかった、ミタライ?」

佐天「『おてあらい』ですよ」

壮年の男性「だ、そうですよ」

佐天「そうですか。えーっと、あれ?カメラが少しズレてる……」

壮年の男性「――そうそう。お聞きしたいのですが、こちらの住所をご存じでしょうか?」

佐天「えー、何々……行き方ぐらいは、はい。そんなには遠くないですよ」

壮年の男性「知り合いが『カミジョー』と言う方にお世話になっているそうで」

佐天「上条……上条当麻さんですか!?」

壮年の男性「お知り合いでしょうか?」

佐天「はいっ!何度かお話しさせて貰ってますよっ。そっか、上条さんの知り合いかー」

壮年の男性「はは、奇遇ですねぇ。まるで狙ったみたいです」

佐天「やだなぁ、そんな偶然ある訳無いじゃないですか」

壮年の男性「ですよねぇ。たまたま相席になるなんて、魔法でも使わない限りはとてもとても」

佐天「でっすよねー……あれ?でも席結構空いているのに、どうして相席になったんでしょうか……?」

壮年の男性「恋の魔法、的な?」

佐天「えー、ちょっと年上過ぎますって。あたしのお父さんよりも多分、上っぽいですし」

壮年の男性「それは残念」

佐天「今から会いに行かれるんですか?」

壮年の男性「出来ればサプライズさせてあげたいんですが、花束でも買っていきましょうかね?」

佐天「って言われても――あぁ、じゃこうしません?ビデオメッセージ!」

佐天「今からこのカメラにおじさんのメッセージを吹き込んで貰って、それを先に送っておきます」

壮年の男性「ほう」

佐天「最期に『実は俺も学園都市に来てるんだぜ!』で締めたら意外性ありますよね、ねっ?」

壮年の男性「それは中々楽しそうですが――メモリーカードは宜しいので?」

佐天「RAID?だかって内蔵HDDにも並列して保存するみたいですから、問題ありませんっ!」

壮年の男性「そうですか……本当にありがとうございます。いやぁ初対面の方に申し訳ない」

佐天「いえいえ困っている時にはお互い様ですから」

壮年の男性「――では、後でお友達は解放しておきましょう。お礼になるかは存じませんが」

佐天「……え、はい?」

御坂『おーいっ、佐天さーん』

佐天「あ、ちょっと失礼します――聞いて下さいよ御坂さん!この人――」

壮年の男性「……ふむ、残念。需要はありそうなのですが。まぁ仕方がないでしょうか」

壮年の男性「約束を守る相手には手出し出来ない……まぁベタですがねぇ」

壮年の男性「では改めて――上条当麻君」

壮年の男性「Eu sou seu inimigo.」

壮年の男性「Por favor, escolher voce ou algo para minha garganta, eu vou matar ou comer」

壮年の男性「――Por favor, siga-me. Me e seu inimigo」

ジジッ、ブツッ

――現在 上条の部屋

上条「御坂、今のメッセージって」

御坂「『私はあなたの敵です』」

上条「っ!?」

御坂「『あなたはが私の喉へ噛みつくか、私があなたを食い殺すか選びなさい』」

御坂「『――私を追いなさい。あなたの宿敵である私を』」

上条「佐天さんに連絡取れるかっ!?アイツは!」

御坂 ピッ……

上条「……」

御坂「……出ない」

上条「クソっ!お前ら最期に会ったのはどこだよ!今から急いで――」

佐天『――もしもーし?聞いてますかー……あれ?』

御坂「佐天さんっ!?佐天さんなのよねっ!?」

佐天『えぇまぁはい。あたし以外居ないって言うか。どうしましたか?』

御坂「大丈夫なのっ!?さっき話してた男が居たら、直ぐに離れてアンチスキルを呼んで!」

上条「あと出来れば人の多い建物に入ってくれ!」

佐天『はぁ……?良く分かりませんけど、あたし今病院にいますんで大丈夫かと』

佐天『一緒にいた麦野さん――女の人が体調悪くて倒れちゃったみたいなので、付き添い中です。はい』

御坂「良かった……」

上条「取り敢えずは、だけど。御坂、悪いけど」

御坂「黒子を行かせる――その前に、佐天さん?聞こえる?」

御坂「あの男はどこに行ったか、どこに行くとか言ってなかった?」

佐天『えっと……あぁ!言ってました言ってました、確か』

佐天『「ビデオレターを見終わったタイミングで、直接会いに行ったら驚くかな」って」

ズドォォォォォォォッ!!!

上条「御坂っ!俺の後ろに!」

壮年の男性「大丈夫、お友達に手を出してはいませ――あ、違います。そうじゃない。間違えました」

壮年の男性「確か、こんな時には――そうそう」

壮年の男性「『実は俺も学園都市に来てるんだぜ!』、でしたっけ?」

――半壊した部屋

上条「お前はっ……!

壮年の男性「木原さんのアジトでお会いしましたが、あまり憶えてはいらっしゃらないでしょう?そういう術式ですので」

上条「何しに来やがった、ってのは今更なんだよな」

壮年の男性「強いて言えば一つだけ誤解があるようなので、訂正して頂ければ幸いですな」

上条「なんだよ?まさか今更『敵じゃない』とか言うんじゃないだろうな!?」

壮年の男性「いえいえ、もっと根本的な事です。そしてそれはあなたのこれからにも関係する話」

壮年の男性「実は――私、そちらのお嬢さんに、ここの住所教えてないんですよねぇ」

上条「……はい?」

御坂「……」

壮年の男性「『あ、そういえば頼んだのはいいけど、住所教えるの忘れました』って、後をつけたらこの有様で」

上条「……御坂、さん?」

御坂「えっ……敵の魔術の攻撃よ!騙されないで!」

上条「え、今それ言うの?」

壮年の男性「間違いではないですが、ユダヤ陰謀論みたいに全責任を押しつけられましても」

上条「……いやまぁ、その件は置いておくとして、お前は何なんだ?『木原』の復讐なのか?」

上条「一体何がしたいんだよっ!」

壮年の男性「あぁすいませんね、上条君。あなたに直接用事はなかったんですけど」

壮年の男性「バードウェイさんが見当たらないもので、こちらへお邪魔すればもしかして、と」

壮年の男性「念のために確認しますが、お知り合いですよね?」

上条「――お前、バードウェイに何かしやがったのか?」

壮年の男性「いえ、そんなに大した事は特に。ただちょっとだけ――」

壮年の男性「当たったら蒸発する程度の術式で、隠れていたビルごと攻撃し――」

上条「お前えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

壮年の男性「――人の話は最後まで聞きましょうか。『戦車』」

 魔術師との間の空間、遮るものが何かも無かった所へ、くすんだ銀色の塊が現れる。
 馬に引かせるタイプの『戦車』、骸骨のレリーフの入ったそれが突進してくる。

 轢かれる。そう把握するよりも先に右手を動かす。

上条「『右手』を知らねぇのか!」

壮年の男性「はい。存じています」

 バキィィンッ、といつものように無力化させる音が響き――数瞬後、数百キロの鋼鉄の塊に上条は跳ね飛ばされていた。

御坂「ちょっ――と!」

 磁力を利用して壁を駆け上がった御坂に抱き留められる。

壮年の男性「そりゃ対策ぐらいはするでしょう?これは、アレです。クロムウェルさんのゴーレムと同じで」

 男がカードを取り出すと、戦車は男の前までバックしていく。

壮年の男性「異能の力を打ち消しはすれど、確定してしまった結果は消せない――鋼鉄の塊を動かす魔力は消せる、が」

壮年の男性「慣性で飛んでいくのはどうしようも無い。まぁ銃弾を撃ち込んだ方が早い気もしますけどねぇ」

御坂「鋼鉄?だったら――私が!」

 グゥン、と戦車が止まるべき位置を大きく越え、玄関もろとも男を破壊しようとする。

壮年の男性「――『愚者は天に昇りて皇帝となる』」

 魔力が男を中心に渦を巻く。当然魔力を知らない者には見えないが、御坂の電磁波を読み取る能力が異様な圧力を察知していた。

上条「野郎っ!」

御坂「ダメ!?あれは、ダメっ!」

上条「離――」

壮年の男性「――『皇帝は教皇を弑逆して星を堕とす』――」

 御坂の磁力が失われる程、周囲には魔力が荒れ狂う。
 バチバチと火花のように飽和状態となった空間に、審判者の声が轟く。

壮年の男性「――『そして下されるは永劫からの鉄槌』」

 誰の目にも見えるようになかった魔力――『天使の力』が明確な形となって現れる。
 ただ一振りの、しかし人の背丈を遥かに超える。

 『戦槌』が。

上条「だから効かねぇつっってん――」

 怒鳴るが早いか、一撃を入れようと。

壮年の男性「……残念。この程度でしたか」

 振り下ろされる狂気へ『右手』を突き出して消し去る――筈の力が、明確な質量を伴って押し潰してくる!

上条「なんだ……これはっ!?」

壮年の男性「あなたが打ち消す能力であれば、常に供給され続ける膨大なテレズマを叩き込めばいいだけの話。加えて」

 パァンッ。

上条「……ぐぁっ……!?」

壮年の男性「魔術師だからといって銃を使ってはいけない話もなく。私の所もバードウェイさんの所と同じで、純粋な魔術結社ではないんですね」

壮年の男性「……ま、言っても仕方がないでしょうが。それでは、ではでは」

壮年の男性「――おやすみなさい、上条当麻君。良い悪夢を」

 全てが吹き飛ばされる。
 壁、天井、床。それら全てを撃ち抜き、崩壊させていく

 受け止めずに投げ出せば、と言う考えが脳裏に浮かぶが、この規模で術式を発動した以上、下手に弾き飛ばせば、飛ばした先で二次被害を生みかねない。
 かといって手を離してしまえば、背後の御坂や下に住む住人達にまで被害が及ぶ。

 当然、術式を放った側にすれば、『他人を見殺しに出来ない』のですら、想定内だったのだろうが。

 アパートの消失は避けられない。だからといってこのまま抱えていれば崩壊に巻き込まれる。
 仮に万が一、『天使の力』が途中で消えたとして――物理的に、ただ当然の事実として。

 レベル0がアパートの崩落に巻き込まれれば、死ぬのは必然だ。

上条(やば……これ、詰んだ……か?)

 往生際の悪い男が、起きない奇跡を望む。背後に庇われてる少女の方は、まぁこれはこれで悪くないかも?と思い始めた頃。
 起きない奇跡は起きない変わりに、現れるべき必然は堂々と登場する。

少女「『世界は22に別れ、千々に別れた世界で愚者は知識を求め旅に出る――』」

少女「『――吊し人は罪を知り智恵を得て隻眼となる――』」

少女「『――短い旅の果てに旅人は魔術を友とし罪を母に迎え、法を従える女教皇とならん!』」

 ゴゥン。ただそれだけの音が響き。
 全てを押し潰そうとしていた『天使の力』は霧散した。

上条「……バードウェイ……!」

バードウェイ「違うな新入り。ここはそうじゃないだろう。こう言うんだよ」

バードウェイ「『馬鹿で愚かな俺を助けて下さってありがとうございます。とてもお優しくて将来性たっぷりの偉大な――』」

バードウェイ「『――ボス』ってな?」

――半崩壊したアパート

バードウェイ「それにしてもアレだな、私が居ない間に随分とシケた顔をするようになったじゃないか」

バードウェイ「つーか一人欠けた後に早速一人補充しようとするとは、中々大物ではある」

上条「違うよ!?なんでそんな話になってんのっ!?」

壮年の男性「甲斐性で御座いますなぁ、こればっかりは業かと」

上条「あれ?お前も敵なの?分かってたけどさ」

バードウェイ「えっと……なんだっけ?『岸田メ○?』」

壮年の男性「『宵闇の出口』の『Homem de ratoeira』……笛吹男(パイパー)と呼ばれておりますれば」

バードウェイ「一度殺したよな?」

笛吹男「えぇ、そちらも今朝方始末した筈ですが?」

バードウェイ「死体の確認もせずにさっさと立ち去った奴が、言うべき台詞じゃない」

笛吹男「そちらも同じでしょう。私に変装した部下の、顔の皮すら剥がずに立ち去ったみたいですし」

バードウェイ「そうだなぁ。お互いにミスがあったという事で水に流そうじゃないか」

笛吹男「ですなぁ、痛み分けですか」

バードウェイ「では改めて」

笛吹男「はい」

バードウェイ・笛吹男「殺す――」

 カッ!

笛吹男「これは――閃光弾っ!」

バードウェイ「――と、思ったんだが。今日はちょっと忙しくてね」

バードウェイ「揃ってしまった『断章のアルカナ』は暫く預けといてやるよ。もう少し借りたオモチャで寂しく遊んでいればいい」

笛吹男「『明け色の陽射し』のボスともあろうお方が、盗人相手に逃走ですか?いやはや過去の威光も地に落ちましたなぁ」

上条「テメェっ!」

バードウェイ「無駄だ。魔術を撃ち込んでも防がれるだろうし、お前が行っても『戦車』に撥ねられて終りだ」

バードウェイ「それより――行くぞ」

上条「バードウェイ?飛び降りてもここ五階――のおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

御坂「ちょっ!?待ちなさいよねっ!」

バードウェイ「これで落下制御魔術失敗したら笑い物だろうなぁ」

上条「笑えないよっ!?だって笑う前に死んじゃう、死んじゃうからっ!?」

――XX学区 路上

バードウェイ「ここまで来れば大丈夫だろう」

上条「……本当に?それ映画の世界だと死亡フラグだけど」

上条「つーか御坂は?地面に落下した時には居た筈だけど」

マーク「お嬢さんは私達の方で送り届けておきましたよ」

上条「ならいいけど、ってかすげー久しぶりだな」

バードウェイ「ご苦労だった。車を」

マーク「はい、ボス……少々混んでますので10分ほどかかるかも?」

バードウェイ「チッ。余計な気遣いを」

マーク「何の事か分かりませんが。暫しお待ち下さい」 サッ

バードウェイ「――だ、そうだ?」

上条「あぁはいどうも?ってかさ、アレなんなの?『木原』は終わったんじゃなかったの?」

バードウェイ「巻き込んでおいて気が引けるが、ここからは進む道を分けようか」

上条「バードウェイ?」

バードウェイ「君はそちら、私はこちら。線引きはきちんとしないとな」

上条「……えっと、バードウェイさん?」

バードウェイ「さんは不要だ。というか白いのもお前も外見で人を判断しすぎじゃないか?」

バードウェイ「あの魔術師は私達の方で始末をつける。君は『他の連中に累が及ばないか?』と案じているのだろうが、それはない」

バードウェイ「奴が人攫いする時には必ず魔術を使う。というか使わざるを得ない。子供であろうが、人一人を運ぶのは困難だからな」

バードウェイ「我々はそれを探知して的確に攻撃する――というか、して見せた」

バードウェイ「以後、奴が不用意に『そっち系』の魔術を使いはしない。居場所がバレるからな」

上条「アイツはもう俺や御坂達を巻き込まない?」

バードウェイ「それは私が生死不明だったせいだよ。以後は不用意な真似は出来んさ」

バードウェイ「私達を潰すまでは一切手を出さないだろう」

上条「……そうか。それじゃ俺はどうすればいい?」

バードウェイ「気になるようだったらお友達の側に居てやれ。ついでにフラグの一つも立ててやれば安心するだろう」

上条「あ、いやそうじゃなくって、お前を手伝うからどうすればって、意味で」

バードウェイ「やめろ馬鹿者、手を出すな。『アレ』は私達の獲物だ」

上条「お前……ムキになってんのか。お前らしくも――ない、事もないけど」

バードウェイ「……ならないといけないのさ。どうしても」

バードウェイ「魔術結社だなんだと言ってはいるが、その実態はマフィアと変わらん」

バードウェイ「名誉と闘争、表沙汰にならない歴史の表面下での戦争は当たり前だ――事実、連中を一度壊滅させたのは私だしな」

上条「……」

バードウェイ「お前も奴が不合理な動きをしていたのに気づかなかったかね?」

上条「そういや……知り合いの子と会ってたけど、人質には使わなかったり」

上条「さっき撃たれたのもペイント弾……ワケわからねぇよ」

バードウェイ「一応、ではあるが『関係無い人間を極力巻き込まない』という配慮をしたんだろうな。建前上は」

バードウェイ「馬鹿者が中途半端に首を突っ込んでいた手前、『灰色』として攻撃したんだよ」

上条「……あれ、どう見ても本気だよね?大人げないにも程があったよね?」

バードウェイ「奴がぶっ放す前、警告や知己かどうかの確認はしなかったか?まさか手を先に出したりはしてないだろうな?」

上条「家を壊したのはあっちが先だよ!」

バードウェイ「分かり易い解説どうも。筋は通しているのか、あぁ気分が悪い」

バードウェイ「アイツも『そう』なのさ。数百年――あぁいや、奴は笛吹男の後継を自称しているから700年以上か」

バードウェイ「だから『面子』を何よりも重んじる」

上条「お前への復讐なんだろ?だったら余計に放っとけねぇよ!」

バードウェイ「涙が出る程有り難い話をありがとう、上条当麻君。だがね、こうも考えて欲しいんだ」

バードウェイ「『魔術結社へ復讐しようとする男を、学園都市製の能力者の力を借りて倒した』と」

バードウェイ「我々は業界から笑い物にされるだろうね、確実に」

上条「それの――何が悪ぃんだよ!それで助かるんだったら――」

バードウェイ「ダメなんだ!そうじゃないんだよ!」

バードウェイ「確かに私の命は助かるかも知れない。結社の仲間達も命を落とさないで済むかも知れない」

バードウェイ「でも、私達の心が死ぬんだ。プライドが!魂が!そして存在意義がだ!」

バードウェイ「自分達の不始末、しかも相手が見かけ上は堂々と臨んできているのに、第三者の力を借りられる訳が無い!」

バードウェイ「私達が面子を失うって事は、そういう話なんだよ!」

上条「それは」

バードウェイ「……例えばの話。自分のミスから2万人近い命を生み出し、1万人が殺されたとしよう」

バードウェイ「どう足掻いても、逆立ちしたって勝てない相手に死をも恐れずに立ち向かっていった」

バードウェイ「それは何故だ?どうして彼女はその選択肢を掴んだんだ?」

バードウェイ「戦わない理由なんて、それこそ幾らでもあったろうに」

上条「……」

バードウェイ「……君が戦った理由と大して変わらない。他人からすればおかしな生き方なのだろう」

バードウェイ「魔術結社の矜持。今や朽ちかけてる古い樹の戯言かも知れない。けれど――」

バードウェイ「――それをしなければ、私が、私でなくなってしまう――」

バードウェイ「――死ぬなんかよりも、それはずっとずっと怖いんだ」

上条「……」

バードウェイ「だからもう、ここからは別れよう。上条当麻」

バードウェイ「魔術サイドと科学サイド。そんなものを気にしているのが馬鹿馬鹿しくなるぐらい」

バードウェイ「僅かな間だったが、楽しかったよ」

上条「バードウェイ……」

バードウェイ「では――こんどこそ、サヨナラだ」

――XX学区 路地裏の路地裏

上条「――って遅いなマーク。渋滞にでも巻き込まれてんのか?」

バードウェイ「そうだなぁ、時間帯で言えば混み合う――待て待て、違うだろ、そうじゃないだろ」

上条「道間違ったのか?大丈夫、そんな時には地図アプリがだな」

バードウェイ「道を間違ったのは私じゃない。お前だ、お前」

上条「先に歩いてないのにその無茶振りはどうかと思うんだよ、うん」

バードウェイ「いやいや、だから!お前は科学サイドだろうが!」

バードウェイ「え?じゃない!さも当然のように何着いて来ているんだっ!?」

上条「いやだって、手伝おっかなって?」

バードウェイ「……貴様はホンッッッッッとに人の話を聞いてないんだな、あぁ?」

バードウェイ「これは、私達の、ケンカだ」

バードウェイ「分かるか?日本語は通用するんだよな?肉体言語がいいって言うんだったら、そっちでもいいぞ?」

上条「そんなイジられかたは初めてだっ!?」

バードウェイ「何度も言ったが、面子やら誇りやらが魔術結社としての有り様だ」

バードウェイ「だから貴様が出る幕は――」

上条「いやいや、そうじゃない。違うんだバードウェイ」

上条「俺がお前の味方するってのはそう言う事じゃなくてだ」

バードウェイ「じゃあ何だ?何がしたい?お前の信念は私達の誇りよりも強固とでも言うのか?」

上条「そういう話でもねぇよ。信念に大小は無いだろうし、比べていいもんでもねぇ」

上条「つーか忘れてんのかお前。何回か言った筈だけど」

バードウェイ「何をだよ」

上条「俺は約束したじゃねぇか、だからだよ」

バードウェイ「……うん?」

上条「どんだけ偉かろうか、ボスだろうが、そんなは関係無ぇんだよ」

上条「『俺はお前を守る』って決めてんだ。それ以上でもねぇ以下でもねぇ」

バードウェイ「わ、私をか?貴様が?」

上条「前にも言ったけど、『他の誰かを巻き込むんだったら、俺を利用しろ』って憶えてるよな?それでケンカもしたけど」

上条「今回も、アレだ。俺はとっくに巻き込まれてんだよ!だったらする事は決まってんだろ?」

上条「俺が関係ない、筋違いだなんてよく言えたよな。大体俺は今――」

上条「『明け色の陽射し』の一員なんだろうが!」

――XX学区 路地裏の路地裏

バードウェイ「……ぅ、うん。まぁまぁ?なんだ、そのいいんじゃないか、たわしとしては」

上条「噛んでるよ?」

バードウェイ「煩いな!誰だって動揺するだろう!?その、一応確認するんだが、本気なんだよな?」

バードウェイ「……『明け色の陽射し』の一員的な話は?」

上条「こんな時に嘘吐くなんて有り得ねぇだろ」

バードウェイ「いやまぁ、うん――本気、か?本当の本当に?」

上条「何回言わせんだよ。いや、何度でも言うけどさ」

バードウェイ「そ、そうか……?いやでも、私の勘違いと言う事もあるし。まだまだっ私は騙されないぞっこの『幻想殺し』め!」

上条「『女殺し』的な意味は、無い。前にもどこかで言った気がするけど」

上条「――あ、そういやお前、大切なもの忘れてっただろ」

バードウェイ「な、何がだ」

上条「えっと――」

上条(ぱんつ、っては言いづらいよな?んじゃ遠回しでいいか)

上条「大事な、ものだよ。いつもは目に見えないけど、みたいなの」

バードウェイ「謎かけか。大体場違いな話だろうが!」

上条「いや、これは後回しにすべきじゃないんだよバードウェイ。大切なんだって」

バードウェイ「大切、なぁ――それは、もしかして、なんだが」

バードウェイ「とてもとても大切なもので、掛け替えが無くて――」

バードウェイ「――私が居なくなって、初めて気づいた、とか言うんじゃないだろうな?」

上条「……あぁ、その通りだ」

バードウェイ「それだとまるでプロポー――なに?」

上条「何、ってそりゃお前」

バードウェイ「」

上条「……お前が居なくなるまで気づかなかった!あって当然だと思ってたんだ!」

上条「普段は意識しないけどさ、やっぱりその、無くなったら気づくだろ!?」

バードウェイ「お前……いやでもっ!?流石にまだ、早いって言うか」

バードウェイ「誤解するなよ?私もまぁ、うん、嫌いじゃないとは思うんだよ」

バードウェイ「でもほら、こう言うのは段階を踏んで、的なのがあるだろうが!」

上条「好きとか嫌いじゃないだろ!必要だろ!俺にもお前にも!」

バードウェイ「お前は……」

バードウェイ(ここまで強烈に求愛されるとは……!)

上条(ぱんつって必要ですよね、はい)

バードウェイ「……分かったよ、上条当麻。そこまで言うのであれば、まぁ私も覚悟を決めよう」

バードウェイ「元々『結社』にとっては利用価値のある男だ。諸手を挙げて賛成こそすれ、反対する奴は八つ裂きにするから心配はいらん」

上条「お、おぅ?」

上条(ぱんつ穿くのが反対?マークが変態こじらせてんのかな?)

バードウェイ「苦労が無いとは口が裂けても言わんよ。だがしかしその全てから私はお前を護ろう。そしてお前は私を護れ」

バードウェイ「――死が二人を分かつまで、な」

上条「……うん?十年早いんじゃなかったのか?」

バードウェイ「4年弱早いっ!」

上条「なんだろうな、この周期?段々短くなってるけど。ん、そりゃ構わない――何か結婚式のアレみたいだな」

バードウェイ「馬鹿者が!そういうのはアレだっ!……もうちょっと、困るって言うか。いや!困らないけど!なぁ!?」

上条(あれ?俺また地雷踏み抜いたの?もしかしてすっごい大きいの)

バードウェイ「……やれやれ、とんだ『ローマの休日』になってしまったようだが。まぁ仕方があるまい」

バードウェイ「思えばお前がやたら私に構うのも、そういう縁だったのかも知れないなぁ」

上条「それ言ったら、お前は北極で助けてくれたじゃんか?借りは俺の方がデカんだからな」

バードウェイ「いやその、借りとか貸しとか、なんだ……アレだよ、『ファミリー』なんだから」

バードウェイ「助けて当然、助け合って当然だ……でもまぁ、お礼を言うのは、言ってくれるのは、嬉しい、かもな」

上条(ファミリー?あぁマフィアとかでよく言うもんな)

上条「取り敢えずは、あの魔術師ぶっ飛ばしてからだな。全部」

バードウェイ「……あぁ。あったなぁ、そんな話」

上条「大事じゃないですかねっ!?すっごく!」

バードウェイ「人生の一大事に比べれば些末な話だよ。正直、時間を割いてやるのも惜しいぐらいだ」

上条「さっきと言う事違ってやしませんか?……まぁいいから、行こうぜバードウェイ」

バードウェイ「――おい、新入り。私はバードウェイじゃない」

上条「え」

バードウェイ「レイヴィニアって呼ぶんだ!いいなっ!?」

※今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に深く感謝を
上司から「最後の最後でラブコメに戻るってどうなの?」って言われましたが (´・ω・`)
いやまぁ前二人は重いテーマ抱えてるから、解決しないとどうしようも無いって言うか、うん

最終話もしかしたら来週で最終回になるかも……次、何書こう……?

――路地裏

上条「しかし遅いなマーク」

バードウェイ「気を利かせたつもりなのだろう。もしくは『笛吹男』に襲撃されてるかもしれんが」

上条「ってか、ざっとしか聞いてないけど、車で移動とかあんま隠れてないよな?」

バードウェイ「奴らは学園都市側ではないからな。監視カメラや携帯のハッキングを恐れずに済む」

バードウェイ「むしろ霊装で会話する方が盗聴される恐れがあるぐらいだ」

上条「ふーん。つーか『ハーメルンの笛吹男』のハーメルンってドイツの街だったよな?」

上条「けどアイツ確か、『ポルトガルから来た』っつってるよーな?」

バードウェイ「詳しくは長くなるから歩きながら話そう。待っていても時間の無駄だ」

上条「わかった。けど、どこに?隠れアジト的なとこか?」

バードウェイ「……自分の格好を見てみろ。下手打ったコンビニ強盗みたいになってるから」

上条「ペイント弾喰らった場所がカラーボール食らったみたいになご覧の有様に……」

バードウェイ「その塗料自体に追尾用の魔術が――おい、動くなよ」 クンクン

上条「おぉいっ!?急に顔近づけてどーしたっ!表通りで人多いんだからなっ」

バードウェイ「……ふむ。特にこれといって問題はないか」

上条「えっと、絵面が危険な事になってますよ?つーか魔力感知したの?」

バードウェイ「いや、我慢出来ないほどキツい体臭だったらどうしようと」

上条「関係無ぇなっ!?それと10日以上一緒に住んでる奴が今更だろうっ!」

上条「……あ、俺っ銃弾だと思って撃たれた所に触ってるから、打ち消しちまったのかも」

バードウェイ「妥当な線だろうな。何せ『笛吹男』は『盗躁の魔術師』と呼ばれてるくらいだし」

上条「逃走、闘争?逃げていく方?闘う方か?」

バードウェイ「盗むと躁鬱の躁で、『盗躁』。派手にやらかして盗み出すって意味さ」

上条「どっかの怪盗三代目みたいなの想像した」

バードウェイ「奴らが主に盗んで――攫っていくのは『人』だ。それも子供に限る」

上条「っ!」

バードウェイ「魔術の実験に使って廃人にしたり、どこかへ売り飛ばしたり」

バードウェイ「『宵闇の出口』は元々『黄金の夜明け』と呼ばれていた、大きな魔術結社の一つでな」

バードウェイ「同じく枝分かれした『明け色の陽射し』の親戚だと言えなくもない――が!」

バードウェイ「私達が『効率的に統治する方法を探求する』のに対し、奴らの組織は『盗賊団』が前身、そして解体した後の今もだ」

バードウェイ「だからいつの間にか、奴らのボスは『笛吹男』と侮蔑と畏怖を込められて呼ばれるようになり――」

バードウェイ「――連中も嬉々として自称し始めたんだよ」

――輸入洋品店

バードウェイ「お邪魔するよ」 カランコロンッ

上条「おいっ!こんな高そうな店で買えないよっ!つーかスーパーでも苦しいぐらいなのに!」

店員「これはこれはボス。ようこそおいで下さいました」

バードウェイ「世話になる。爺は来ているな?」

店員「えぇ、こちらへどうぞ」

上条「顔馴染みの店?……あぁこっちのに来るのも三回目だっけ」

バードウェイ「そうではないよ。ここは『明け色』傘下の店だ」

上条「お前ら店まで経営してんのかっ」

バードウェイ「違う違う。ブリテンに本店があって、ここはその支店」

バードウェイ「ある意味アイルランド人と同じで、生活互助会みたいなものさ」

上条「宗教みたいなもん?」

バードウェイ「というか不思議に思わないかね。これだけデカい科学の街に、魔術結社の一つや二つや三つ、潜り込んでない方が不自然だ」

上条「……いいのかなぁ、これ」

バードウェイ「とはいえ、別に何か工作をしている訳でも、イリーガルな諜報活動をさせている訳でもない」

バードウェイ「たまたま、偶然にも、神の気紛れにより、我が結社の構成員の店があっただけの話」

上条「もしも誰かが捕まったら?」

バードウェイ「個人でした事だ。結社とは関係ない」

上条「ブラック企業じゃねぇか!?」

バードウェイ「ブラックロッジだよ?」

上条「うん、知ってた」

老人「『……ようこそおいで下さいました、レイヴィニア様』」

バードウェイ「『ご苦労。待たせたな』」

老人「『とんでも御座いません。この爺、お嬢様のご命令とあらばどこへでも馳せ参じますぞ』」

上条(見るからに職人って感じの人。仕立て屋さんなんだろう)

上条(てか会話内容は英語だから、半分ぐらいしか理解出来ない……頑張らないと)

老人「『何でもキャベツ野郎と抗争中だとか。ここは私が「鉄血の腕(アイアンブロウ)」にてお助け致します!』」

バードウェイ「『年寄りの冷や水だ、自制しろ』」

老人「『ですがお嬢様!』」

バードウェイ「『お前に何かあっては曾孫と私が悲しむ』」

老人「『……口がお達者になりましたなぁ』」

バードウェイ「『あとキャベツ野郎ではなく、その子孫だな。自称だし、コーカソイドには違いないだろうが』」

上条(キャベツがどうこうって……あぁ、今晩の献立か何か?)



バードウェイ「『お前の方こそ口に気をつけろ。我が大英帝国が植民地を失ったサムライの末裔だぞ』」

老人「『否定はいたしませぬが』」

バードウェイ「『そもそもアレはルーズベルトがアカの狗に成り下がった結果だよ――というか、さっさとやってくれ。時間が惜しい』」

老人「『それでは』――それでは、こちらへどうぞ、お客様」

上条「はい――お前は来ないのか?」

バードウェイ「……自分の下着姿を嫁入り前の淑女へ見せようとは、随分いい趣味をしているなぁ、貴様」

上条「違う!?そうじゃなくてだ。連中との絡みって意味だよ!」

バードウェイ「心配はいらん。というかしてもいない」

バードウェイ「だってこれからはお前が守ってくれるんだろう?」

上条「……言った手前守るけどさ。危機意識ぐらい持とうぜ?」

バードウェイ「言って事は守らないと。なぁ、『お兄ちゃん』?」

上条「気がつけば妹が四人!その内半分が俺より年上って……?」

――バットヤード

老人「ではお召し物を脱いでそちらへお立ち下さい」

上条「あ、はい」

老人「細かい採寸を致しますので、少しくすぐったいかも知れませんがご辛抱を」

上条「はい、大丈夫です――っていうか、代えの服を出してくれるんじゃ?」

老人「えぇ、それも致しますが、新しい服をつくのに寸法は知らねば――と、もしかして何も聞かされておいででない?」

上条「というか追ったり追われたりしてんのに、こんなんでいいかな、と」

老人「パイパーについての子細はご存じで?」

上条「こっちに来てからは多分、最初っから関わってます」

老人「……ふむ、だから。でしょうか」

上条「何がですか?」

老人「いえ独り言で御座います。では失礼致します」

上条「いやあの待って下さいよ。採寸はいいんですけど、何か服を仕立てるって事ですよね?」

上条「遠慮したいって言うか、貰う理由が無いって言うか」

老人「代々続いておるしきたりで御座いますれば、あまり深くはお考えにならない方が宜しいかと」

老人「所謂『新入り』へ対し、入社に当たって服をプレゼントされております。私の一族は代々仕立てる任を仰せつかっておりますれば」

上条「『明け色』のって事ですよね?」

老人「確かに金銭的な価値は……まぁ、ほんの少しだけ御座いますよ。ユニークなCloseの、衣服の形をしたゴミに比べればですが」

上条「口悪いなっ!?結社の人って全員そうなのかっ!」

老人「確かに新入りでは風格も経験も浅く、大抵はスーツが似合わない――『服に着られている』状態となるでしょう」

老人「ですが、それでよいのですよ」

老人「経験が無ければ積めばいい、風格もその内出て来るでしょう。結社の中で揉まれていけば、いつかは」

老人「『立派な服に見合った中身になる』、それだけの話で御座います」

上条「……」

老人「親が子供の成長を願って、少しだけ大きい服を買う。まぁそんなようなものですなぁ、要は」

上条「……期待されるのはプレッシャーもあるけど、ちゃんと応えたいなっては思う」

上条「そうじゃないと、相手の『信用』を裏切る事になるから」

老人「結構。それだけ知っていれば充分。まだ辞退されるおつもりでしたら、一発殴って叩き出す所でした」

上条「またまたー、ご冗談を……冗談ですよね?」

老人「お嬢様は孫娘のようなものですからなぁ。口先で騙すような男には容赦致しません」

上条「まぁちっさいのに良くやってるし。バードウェイ」

老人「癖の強い魔術師の集まりにも関わらず、裏切り者を全く出さない理由はそこいら辺にあると私は考えております」

上条「まず信頼しないと信頼してくれないって話?」

老人「それでも最初から信用に値しない、どころか会話する余地のない連中は多う御座います」

老人「ライム野郎の教会系魔術師なんか、内部監査と粛正が恒例行事ですから」

上条「……あんまり弁護はしたくないけど」

老人「ふむ?」

上条「アイツらの目的は『イギリスを守ろう』って事なんだから、それだけデカい組織じゃないと出来ないだろうし」

上条「面子集める上で色々と入り混じまうのは、何か仕方がないって気もするけど」

老人「ますます結構。共通の理念などと言う看板が無いと理解されておいでだ」

老人「余所様がどうであろうと、我々は我々のスタイルを守れば良いかと」

上条「でも個人的にはさ。連中も国が好きで人が好きでやってる奴も居て」

上条「それを、その事実を見なかったフリにも出来ないって言うか」

上条「……バードウェイの後見人っぽい人に言うのは、良くないとは思うんだけど」

老人「ほぅ、ご存じの上でも我を通されるか?」

上条「ちょっと前にあいつが『自分が自分じゃなくなるのは死ぬより怖い』って言ってたんだけど」

上条「……俺、頭悪いから正直良く分からなかった。でも」

上条「ガキを守るのは大人の役目だろ?『結社』――お前らが、今までしてこなかった事をだ」

上条「俺がしようって約束したんだよ」

老人「……クソ生意気な東洋人め。地獄へ落ちろ、サンドリヨンの継母に食われてしまえ」

上条「だから口悪ぃな!?バードウェイの口の悪さはお前らが影響したんじゃないのか!」

老人「採寸はもうしてやったから、さっさとそこにある予備のスーツを着て出て行け!シャツと一緒にハンガーにかけてる奴だ!」

上条「これ?」

老人「あぁそれじゃない!そんな若造が着る、ラペルの厚いみっともない奴じゃダメだ!」

上条「ラペルって?」

老人「スーツの下襟がラペル、上襟がカラーと言うんだ。幅広い不格好なラペルが流行ったのは、カブトムシとか言う若造の影響だ」

上条「ビートルズって言えよ。あんま知らないけど」

老人「いいか?ライム野郎の紳士ってのは、胸ポケットにハンカチを入れるもんだ。こういう風にさり気なく」

上条「あー、映画とかで見たような」

老人「けどワイドラペルだと引っかかるんだよ。ほれ」

上条「確かなんかみっともないかも。バランス悪い」

老人「そうそう。だから本場の人間は黙ってハンカチを差すもんだ。どうせ持ってないんだろ?くれてやるから持っていけ」

上条「マジで?いいの?」

老人「どうせ売るほど余ってんだから問題ない。店の客に一枚を二枚分の値段で売りつけるから心配するな」

上条「商売人として問題がありすぎるだろ」

老人「どうせ高く売れば高いだけ有り難がる馬鹿者どもだ。その筋の商品、一年程度見てれば分かるような違いにも、一生気づかないような連中だぞ?」

老人「スーパーの野菜売り場で腐りかけのキャベツ買って来ようが、目利きの問題だろうが」

上条「さっきと言ってる事違うな!ユニークなナントカはどこ行った?」

老人「物の価値に合ってるかどうか、って話だよ。ガキには理解出来ない」

老人「あぁそうそう。お前の名前はなんて言うんだ?刺繍するのに必要だろう、書いていかないなんて気が利かない東洋人だな」

上条「いやそこまでしてくれなくたって、別に」

老人「仕事なんだよ。じゃなきゃ誰が貧乏そうな東洋人の相手なんかするもんか。ここへ書いていけ」

上条「……ムカつくなぁ。えっと……」 カキカキ

老人「なんて読むんだ?最初の二文字がファミリーネームか?」

上条「名前が当麻、名字が上条だ」

老人「カミジョー……うむ、そうするとトーマ=K=バードウェイか。使徒トマスの名を生意気にも使ってやがる」

上条「……はい?」

老人「まぁ、何とか仕上げといてやるから。服に着られぬように精進しろ若造が」

上条「そりゃどーも」

老人「――あと『パイパー』には殺されるな。注文がキャンセルさせられたら、売り上げが減るからな」

上条「……分かったよ、じーさん。アンタも立派になった時の服を作ってくれるまで、精々長生きしやがれ」

老人「死ぬなって事だろ?最近の若いのは優しくて泣きそうだ」

上条「近いウチだよ。具体的には今月中に立派になってやるよ」

バードウェイ「――おい馬鹿者ども。レディを放置しといて意気投合してるんじゃない」

老人「いえ若造に礼儀を教えていたまでです――さっさと出て行け。仕事の邪魔だろ」

上条「わかったよクソジジイ。もう二度と来ないからな!」

老人「ふざけんな!ウチの女房が作ったマズいフランス料理をお見舞いしてると思ってたのに!」

上条「だったら丁度いい!さっき逃げる前に偶然袋詰めしていたきなこ棒をくれてやるぜ!」

バードウェイ「分かったから暇な時にやれ。今は一応抗争中だ」

バードウェイ「あときなこ棒は私にも寄越せ。割と好物だ」

――店内

バードウェイ「……本当に貴様は人と仲良くなるのは早いよなぁ」

上条「なんつーか変わったジーサンだよなぁ。お前の後見人みたいだって言ってたけど」

バードウェイ「私の前の前のボスの時代、マーク的な立ち位置にいた魔術師だ。今では引退して趣味で仕立人をしている」

上条「何か偏屈なイギリス人っぽい感じ」

バードウェイ「元々はフランス人で、ヴィシーの際のユダヤ狩りで嫌になってイギリスに亡命。それからずっと、だな」

上条「へー?凄い人なの?」

バードウェイ「彼の作ったスーツは必ず『明け色』へ入った人間へ送られる」

バードウェイ「今では流石に廃れたが、古参の中には生涯着続けた人間も少なくない」

上条「職人さんなんだなぁ……あ、もう一つ聞いて良いか?」

バードウェイ「あぁ私達の下着の替えとかも用意させておいたよ」

上条「いや、そーゆー事じゃ無くって。何で今このタイミングで日本の、しかも学園都市にいるの?」

バードウェイ「……」

上条「……」

PiPiPi、PiPiPi……

バードウェイ「おっとすまない。その質問は後日秘書を通して説明させるとしよう」 ピッ

上条「うん、意外とお前らが緩いのは最近分かってきたような気がする」

バードウェイ「『私だ――が、あぁウルサイウルサイ。もう聞いたのか』」

上条「っていうかお前も日本語で話す必要は無いと思うんだけど」

バードウェイ「パイパー対策でクイーンズよりもマシだろ?無駄だとは思うが――『こっちの話だよ、何?』」

バードウェイ「『……』」

上条(電話の向こうでパニクってるっぽいマークの声がする。緊急事態かな?)

バードウェイ「『……なぁ、マーク?マーク=ハン○?』」

上条「それK-1選手。最近『あっれー?こんなに強かったっけ?』って総合格闘技でも活躍してる人」

バードウェイ「『お前がどうしても言うのであれば、この件は白紙にしよう。何せお前の言う事は大抵間違っていないからな』」

バードウェイ「『いやいや謙遜は要らんよ。滅私奉公とまでは言わないが、お前の忠義にはいつも感謝している』」

バードウェイ「『――だが、それならば当然?「代わり」はいるんだろうな、あぁ?』」

バードウェイ「『「右席全員を倒す」程度の実力、そして「学園都市第一位を蹴散らす」程度の能力を兼ね備えた相手だよ』」

上条「イナイイナイ。そんなバケモノ居るワケが」

バードウェイ「少し自覚しろよバケモノ――『で、どうだね?』」

バードウェイ「『……ふむ?黙ってしまったなマーク。どうしたんだ?』」

バードウェイ「『流石に今のは私も大人げなかったか。流石に撤回するよ。条件も変えよう』」

バードウェイ「『では「正々堂々決闘」なんてどうかな?女を賭けて勝負は神話の時代からのお約束だ』」

上条(バードウェイさんが生き生きとして、ものっそい悪い顔で喋ってる……!)

上条(悪い子じゃないし、むしろ良い子なんだけど……未来の彼氏は相当苦労するだろうなぁ)

バードウェイ「『では本人に話を聞いてみようか』――なぁ?」

上条「はい?」

バードウェイ「将来を誓い合った男女を無理矢理引き離すため、マークが決闘したいと言っているんだが」

上条「今からそっち行って、寝言ごとをぶっ飛ばせばいいのか?」

バードウェイ「『――だ、そうだ。どうする?』

上条(このクソ忙しいのに何やってんだよマーク)

バードウェイ「『――そうだなぁ、その通りだよマーク。お前は理解が早くて嫌いじゃない』」

バードウェイ「『……いや、心配してくれるのは有り難いと思うし、お前の懸念も理解は出来る』」

バードウェイ「『だがあそこまで熱烈に求婚されてしまっては、覚悟を決めねばならない』」

上条(姉妹か親戚の結婚式でもあんのかな?)

バードウェイ「『了解した。では――何?何だと?』」

バードウェイ「『それは構わないが……』」

バードウェイ「おい。マークが何か話したいんだと」

上条「うん?――『もしもし』」

マーク『えっと……はい、まぁなんて言ったらいいのか、分かりませんが、その』

マーク『ご愁傷様ですっ!いやホンットに!』

上条「『いきなり何なの?お疲れ様です、のイギリスバージョンはその挨拶なのか?』

マーク『いやまぁスペンサー老がエラく気に入ったので、今更手遅れ状態になっていますが、まぁまぁ』

マーク『いいですか、上条さん!生きていれば絶対に良い事はあります!だから早まった真似はしないで下さいねっ!?』

上条「『ごめんな?何か心配してくれてんのは分かるんだけど、何を言っているのか、何一つとして分からないよ』」

マーク『あー……でも、よくよく考えれば俺もクソガキのお守りから解放される、んだよなぁ……?』

上条「『もしもーし?マークさーん?』

マーク『小間使い兼執事兼奴隷の仕事をせずに済む……!』

上条「『おーす?聞いてますかー?』」

マーク『さっさと出来れば結社は安泰。元々ボスの性別年齢も都市伝説みたいなもんだし、不利益はない、か』

マーク『よっし分かりました!そう言う事であれば私は全力でサポート致しますっ!』

上条「『よく分からないけど、お前自分の都合を何かよりも優先させたよね?よく分からないけどもっ!』」

マーク『分かりました!まぁ本人同士が幸せであるのなら、私は涙を呑んで認めましょう!』

上条「『声がとても笑っている気がするんですけど』」

マーク『それじゃ今日はメールで送ったホテルに泊ってください。そちらから歩いていける距離ですし、万が一であれば応援も短時間で、はい』

上条「『分かった』

マーク『あぁ後、上条さんにお願いがあるのですが』

マーク『実はボス、一人で眠るのが苦手でして、普段は抱き枕かパトリシア嬢を利用されているのです』

上条「『パトリシアが抱き枕扱いってのもアレだけど。んで?』」

マーク『えぇ当然ホテルには無いでしょうし、また襲撃の心配もありますので上条さんが代役で』

上条「『あぁうんいいけど』」

マーク『……コイツ本当に頭悪りぃよなぁ……』

上条「『え、なんだって?』」

マーク『定番の返しありがとうございます。後は……電気とか全部消してくださいね、じゃないと眠れませんから』

上条「『それも分かった』」

マーク『ではご武運を祈っております。明日の朝は応援を連れて伺うと思いますので、何事もなければ待機していて下さい』

上条「『了解。でもあんまりそっちも無理するなよ?死んじまったら、何にもならないんだからな』」

マーク『またまたぁ。上条さんだって「死ぬよりも大切だ」とか言って、色々な所に首突っ込みましたよね?』

上条「『俺は良いの。俺の知り合いは、ダメだ』」

マーク『そりゃ手厳しいですよ。ではまた明日』

上条「『んじゃまた』」 ピッ

バードウェイ「また碌でもない事を吹き込まれたんだろ?」

上条「いや細かい指示が幾つか……あ、メール来た」

バードウェイ「どれ――ホテルだな」

上条「今晩ここに泊まれって指示と、明日は朝一で応援を連れてくるって」

バードウェイ「応援……?無関係な連中は協力出来させられないんだが」

上条「雇った、とかそーゆー事じゃねぇの?」

バードウェイ「それも宜しくないのだよ。向こうがそうしてない限り、こちらがするのは拙い」

上条「あっちは『木原』騒動でやらかしまくってるのになぁ。ってかさ、連中がなんであんな事件仕掛けたんだ?」

バードウェイ「それも話すと長くなるのでホテルへ行こう。と言うか腹が減った。何か作れ」

上条「ホテルじゃ無理だろ」

バードウェイ「長期宿泊者用のビジネスホテル、と書いてある。簡単なキッチンが付属してあり、ツインルームがベースだそうだ、が」

バードウェイ「……あぁ、すまん」

上条「何?どったの?」

バードウェイ「個室だけでお前の部屋よりも広いな」

上条「言わなくていいじゃない?指摘しない方が優しさだって事もあるんだよ!?」

――ビジネスホテル

上条「――はい、メシ出来たぞー」

バードウェイ「……あぁ味噌汁は良い。疲れた体を癒してくれる……」

上条「ライスは売ってる奴、味噌汁もレトルトのだけど。グラタンは鍋とオーブンレンジで作ったんだからな」

上条「……いや、俺何回も言ってるけど、こんな事してる場合じゃないよね?」

バードウェイ「そこら辺は食事が終わったら話そう。面倒臭いからマークに丸投げしたい所ではあるが」

上条「つーか俺、『お前らが何かやってる』以外の情報が与えられていないんだが」

バードウェイ「おっと、『死ぬなら死ぬでも構わない』出力で術式かまされて、二度も命を助けられた男の台詞とは思えんなぁ?」

上条「そりゃ感謝してるけどっ!それと説明責任は別物でしょーが!……つか俺このネタ一生引っ張られそうな気がする」

バードウェイ「いいじゃないか。それはそれで楽しそうだ」

上条「……まぁどっちかっつーと、お前が無理難題ふっかけてこない方が気になるけど」

バードウェイ「どういう意味だ」

上条「『命を助けてやったんだから協力しろ』みたいな感じで」

バードウェイ「貴様は私をどう思っているのかね?」

上条「ドSロリのバードウェイさん」

バードウェイ「爆破――じゃない、融解したアジトに置いてきたビリビリウサギが惜しまれるな」

上条「……頼むっ!あれだけはっ、あれだけは壊れててくれっ!」

バードウェイ「と言うか何度かスルーしてしまったが、決して恥ずかしい訳でもないんだが、と三度前置きするんだが」

上条「超回りくどいな」

バードウェイ「バードウェイじゃない、レイヴィニアと呼べ」

上条「あー、うん、慣れたら追々な?」

バードウェイ「……でもまぁ人前は少しだけ、ほんの少しだけ躊躇するよなぁ。ふむ?」

バードウェイ「私も『トーマ』と呼ぶ必要もあるし、暫くは猶予期間と行こうか。お互いに」

上条「だなぁ……だなぁ?」

上条(何かスルーしちゃいけない気がするけど、大丈夫かな?)

バードウェイ「それより食べてしまおう。きちんとした飯を食うのは昨日の……朝食以来だ」

上条「四人で食った時ぶりか。随分大変だったよなぁ……ともあれ、いただきます」

バードウェイ「いただきます」

上条「グラタンはお代わりあるから遠慮するなよ」

バードウェイ「食事以外でも今までした事が無い――いや、たくさん食べる女は嫌い、か?」

上条「俺の作った飯なら逆に嬉しいかも」

バードウェイ「貴様はもう少し女性の機微について勉強――は、要らんな。これ以上面倒臭くなったらかなわん」

上条「……言葉の意味は良く分からないが、罵倒されている事だけは分かるからな?」

――食後

バードウェイ「……眠くなってきた」

上条「事情説明は?アレだよね、お前ら人のアパートぶっ飛ばしておいて、アフターケア無しってどういう事だよ」

バードウェイ「いいじゃないか、別に。お前が知ったからって物事がどうにかなるとも思えん」

上条「魔術に関しちゃそうだけど」

バードウェイ「あぁすまない、昨日の朝から寝てないんだよ……仮眠を取るから、暫くしたら起こしてくれ」

上条「あぁいーよいーよ別に?疲れてるんだったら、そのままベッドで寝ちまえ」

バードウェイ「おい新入り。ボスをベッドまで運ぶ栄誉を与えてやろう」

上条「へいへい。よいしょっと」

バードウェイ「お、てっきり猫の子状態で運ぶと思ったが、中々気が利くじゃないか」

上条「前にもあったよなぁ、ってうか路地裏でマフィアに絡まれてるお前を運んだのが最初だっけ」

バードウェイ「帰りの飛行機でパトリシアに自慢してやったら、盛大に羨ましがられたよ……というか、あの時以来か」

バードウェイ「光栄に思えよ?貴様の腕の中のレディを抱いているのは、父親以外ではお前が始めてだからな」

上条「どこ?どこにそんな人が――待て待て待てぇぇっ!?魔術武器振り回そうとすんじゃねぇっ!」

上条「つーかお前本当に眠いのかっ?何か説明が面倒だからとかじゃねぇの?」

バードウェイ「あーもーねむいなー。このままだと少しぐらいイタズラされても気付かないなー」

上条「お前らから俺はどんな目で見られているの?海原?それとも白い人?」

上条「――降ろすぞ?」

バードウェイ「ご苦労……なんだ、ここはラッキースケベで押し倒すシーンじゃないのかね?」

上条「だってあれフィクションだもの!現実には早々有り得ないよ!」

上条「ってかいつも言ってるけど、実際にあんな事故起こしたら、例えば仲が良ければ良い程気まずくなるよっ!」

バードウェイ「まぁいい……では、おやすみ」

上条「うん。洗い物終わったら来るからな」

バードウェイ「あぁ――あぁ?」

パタン

バードウェイ「……」

バードウェイ(うん……?今何か聞き捨てならない台詞を聞いた気もするな。よし、落ち着いて考えよう……)

バードウェイ(まずは……あぁスペンサー爺に許可は取ったし、本国にも伝わっているだろう)

バードウェイ(あの爺が気に入った、のだから誰も文句は言