ミケ「特別講師のミケ・ザカリアスだ」(43)

ナナバ「世話役を勤めさせていただきます、ナナバ・グランドレンです」

ミケ「…」クンクン

ナナバ「ぅわッ?!」

ミケ(…!この香りは…!)

ナナバ(うわ…何か笑ってる…)「えーと、ザカリアス講師?」

ミケ「ミケでいい」

ナナバ「はい、ではミケ。講義室で96期生が待っています。言いつけられたものは教卓の上に」

ミケ「解った、礼を言う」スタスタ…バタン

ナナバ「ふうー、噂通りの変わった人だった」

ナナバ「匂い嗅がれただけだけど」

ナナバ「十分ヘンな人だよ」

リコ「ナーナバ」肩ポン

ナナバ「ああ、おはよう」

リコ「今の、今日から来た特別講師ってミケ・ザカリアス?」

リコ「入団から3年で分隊長に上り詰めたっていうエリートじゃないか」

ナナバ「そうなのか」

ナナバ「名前しか聞いてなかったから知らなかった」

リコ「ナナバの世間知らずは筋金入りだからな」

リコ「で、変人の噂は本当だった?」

ナナバ「そう、それ。今日から来る講師は変人だからお前世話役、って言われた」

ナナバ「意味が解らないが言われたことはやる」

リコ「ナナバは変人に慣れてるからね」

ナナバ「…意味が解らないよ、リコ」

キンコーン

リコ「おっと、じゃ講習を受けてくる。…世話役は控え室から見れるんだっけ?」

ナナバ「ああ。…いってらっしゃい」

(さて…どうするか)
(プロフィールを読んだ限りでは、寡黙な人だとのことだけど…)
(寡黙な人が特別講師を受けるものかな)
(鼻が鋭いと言うことだけど…お茶は香りの薄いのと芳醇なののどちらが良いのか)
(未だに決められない、困ったな)

キンコーン 講義終了

ミケ ガチャ

ナナバ「ああ、ミケ、お疲れ様」

ミケ「…良い香りだ。これは?」

ナナバ「ハニーティーです」

ミケ「頂こう」ズズ…

(軽い疲れなら取れる、ほのかな甘さ)
(嗅覚を邪魔せずも豊かな香り。素晴らしい)
(やはり、この女は…)

ミケ「ありがとう、美味しい茶だった。…ナナバ・グランドレンと言ったな?」

ナナバ「はい、ナナバと呼んでください」

ミケ「ナナバ、君の成績は今期最優秀と聞いた。行き先は決まっているのか?」

ナナバ「は、最優秀かどうかは解りませんが、できるなら憲兵団に進みたいと思っています」

ミケ「憲兵団?」

ナナバ「無理なら駐屯兵団に」

ミケ「何故だ?やはり巨人は恐ろしいか?」

ナナバ「そりゃ、巨人は恐ろしいです。…私は同期より2歳上で」

ミケ「?」

ナナバ「下に弟が3人います。12歳と7歳4歳。父は死にました」

ミケ「ほう」

ナナバ「すぐ下の弟が10歳を迎えるまで、兵役を免除してもらったんです」

ナナバ「母と弟たちにあまり心配をかけたくありません」

ナナバ「なので壁内にいるつもりです。…兵士としては失格ですね」

ミケ「そうか」

ミケ「では私が君を守ろう」

ナナバ「…へ」

ミケ「君は調査兵団に来なさい」

ミケ「そして私の副官をしてもらいたい」

ナナバ「…副官、ですか」

ミケ「それなら待遇面でも壁内より良いはずだ」

(それにこの身のこなし…相当使える)
(憲兵団にはやれない)

ミケ「君が立派に兵士と呼べるようになるまで」

ミケ「私が守ろう」

フラフラ

リコ「おーい。おーいナナバってば」

ナナバ「…ああ。リコか。どうした?」

リコ「どうしたって言いたいのはこっち。フラフラしてるぞ、凄く珍しいぞ。何かあった?」

ナナバ(うーん…なんか凄いこと言われたような気もするけど…)
(やっぱりよく、解らない)

ナナバ「ミケに調査兵団に来いって言われた」

リコ「は?調査兵団って不人気No.1の命知らずの集団じゃないか」

リコ「人が足りないから今から勧誘かぁ?」

ナナバ「やっぱりそうかな?」

リコ「止めとけ止めとけ、わざわざ壁外に出て命を危険に晒すことないだろ」

リコ「ナナバは今期1番だよ?憲兵団だって余裕なのにさ」

ナナバ「リコは駐屯兵団だものな」クスクス

ナナバ「‘幼馴染のお兄ちゃん‘が待ってるんだろ?」クスクスクス

リコ「!…っくぅ!」

リコ「クソ、何で喋っちゃったんだろそんなこと!」

リコ「違うからな!イアンは関係ないから!そういうんじゃないから!」マッカ

ナナバ「あー、リコは可愛いなぁあ!」ギュー

リコ「うっさい!可愛い言うな!」バタバタ

ナナバ(…でも、ずっと憲兵団に行こうって思ってたのに)ギューギュー
(調査兵団に行かなきゃ、という気がしてるようだな、わたしは)ナデナデ
(…何故?)ギューギューナデナデ

リコ「解ったからもう放せ重い!」

3ヶ月後

キンコン 講義終了

ナナバ(…ふぅ)
(ミケの特別講義も今日で終了か)
(さすが調査兵団と言うべきか。実践的な立体機動制御だった)
(せめてあれくらい使えないと、分隊長なんてやってられないんだろうな)

ミケ「ナナバ。お茶をくれるか」

ナナバ「はい、ミケ。…どうぞ」

ミケ「今日は緑茶か。君も頂きなさい」

ナナバ「ありがとうございます、頂きます」ソファトスッ
(…3ヶ月ミケの周りをうろちょろして、こうやっていっしょにお茶飲んで)
(騒がしい弟どもやクソッタレな学生寮に比べたらミケは静か過ぎるんだけど)
(何でこんなに落ち着くんだ)

ミケ「今日で終了か。君には世話になったな」

ナナバ「いいえ、ミケ。わたしはお役に立てていません」

ミケ「いや、私は楽しかった。収穫も多かったと思う」

ミケ「次にここに来るのは勧誘会になるな」

ナナバ「ミケ、私も収穫がありました」

ナナバ「また会えるのを楽しみにしてます」

ミケ「ああ、それでは。…本当に世話になった、ありがとう」右手スッ

ナナバ 右手ギュ

ミケ「ではまた」スタスタ…ガチャ、バタン

ナナバ(…行ってしまった)
(調査兵団に来いって言われたのはあの時だけ、たった一回)
(あれ以来何も言われなかったな)
(…わたしはどうしたいんだろう?)

コンコン、ガチャ

グンタ「ナナバ?ここか?」

ナナバ「グンタ?どうした」

グンタ「明晩の解散式の後の追い出し会だけど、段取り聞いてるか?」

ナナバ「いや、今回わたしはミケに着いてて忙しかったからそっちには手を着けてないな」

グンタ「ミケ・ザカリアスか。さっきそこですれ違ったよ。…ちょっといいか?」

ナナバ「どうぞ」ソファポンポン

グンタ「(ナナバの横にドサッ)明日で訓練も終わりだな、おめでとう」

ナナバ「ありがとう、と言うべきか?お前はあと1年だね」

ナナバ「ミケの特別講習に潜り込んでたろう、為になったか?」

グンタ「ああ、凄く参考になった。あの人、言葉は少ないけど教えるのは上手いな」

グンタ「講義も面白かった」

ナナバ「そんなこと、本人に言えばいいのに」

グンタ「上官にそんなこと言えるほど不遜じゃねぇよ。…で、ナナバ。お前どこ行くの」

ナナバ「うーん…今、ちょっと考え中、だな」

グンタ「考え中?!憲兵団って言ってただろうが」

ナナバ「うん、そのつもりなんだけど。だったんだけど、かな」

グンタ「どこと悩んでるんだ?駐屯兵団じゃないよな。…調査兵団に行くつもりか?」

グンタ「ミケ・ザカリアスの世話は、やっぱり影響が大きかったか?」

ナナバ「だから悩み中だってば。何でミケが出てくるんだよ」

ナナバ「…まぁ、ミケの講義は面白かったから影響と言えば影響か?」

グンタ「ナナバは…壁内にいろよ。おばさんが心配するだろ」

ナナバ「それは解ってるよ。…なんでグンタに口出しされなきゃならないんだよ」

ナナバ「グンタは最初から調査兵団希望だったじゃないか」

ナナバ「反対される理由ないぞ?」

グンタ「ナナバが壁内にいてくれれば俺は頑張れる」

ナナバ「いっくら幼馴染だからって進路に口出しは違うと思うぞ」

ナナバ「それにわたしは戦える」

グンタ「…(ハッ)ナナバ、お前もしかして、俺が調査兵団に行くからか?」

ナナバ「は?…いやそれはお前の好きにしろよ。わたしはわたしの思うようにする」

グンタ「そうか、解った。待っててくれ。1年なんてすぐに追いつく」

ナナバ「そこに異論はないが、何か話が噛み合ってない気がする」

壁に守られて100年、人類は限られた範囲とは言えど平穏を得てはいる。
しかしそれは巨人の脅威が無くなったと同義ではなく、またこの平穏は仮初のものでしかない。
このままでは人類はいずれ先細り、不安から乱れていくだろう。
そのためにもこの平穏を、より確かなものにしなければならないのだ。
君たちは生産者という道を捨て兵士という道を選び、
人類の守護として命を使うことを選んだのだ!

「心臓を捧げよ!」

「「「「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」」」

「本日、諸君らは訓練兵を卒業する。
その中でもっとも訓練成績の良かった上位10名を発表する。
これはすなわち憲兵団入団の資格を得た10名でもある。
呼ばれたものは前へ」

首席:ナナバ・グランドレン
次席:エルド・ジン
5位:リコ・ブレツェンスカ
7位:ケイジ・クレーン

「これにて訓練兵団解散式を終える。以上…解散!」

「「「「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」」」

リコ「やったねナナバ!憲兵団じゃん!」肩バンバン

ナナバ「痛いよリコ、痛すぎる。…うーん、エルドに抜かれている予定だったんだけどなぁ」

エルド「圧倒的にお前が首席だったと思うぞ。誇れよ」

ナナバ「いや、嬉しいんだけど、わたしはみんなより2つも年上だろ?」

ナナバ「何だかズルした気分だ」

エルド「俺は次席に納得してるが?」

リコ「私も5位で納得してる。ナナバは雑用もマメだったし後輩の面倒もよく見てただろ」

エルド「立体機動術は俺のほうが上だがな。ま、総合点ではお前だ」

ナナバ「おまえら…」

ナナバ「ありがとう」

ナナバ「そういえばエルドも調査兵団って言ってたな。どうしてそんな危ないところに?」

エルド「俺か?俺はそうだな…」

エルド「やっぱり、壁の外が見てみたい」

エルド「人類を守りたい、とか言えたら良いんだが、俺は他人の為に人生を使えそうにないな」

ナナバ「壁の外、か…」
(グンタは「自分がどこまでやれるのか試したい」と言ってたな)
(自分の力を試したいか、というと…そうでもないなわたしは)
(壁の外、か…)

エルド「悩んでるのか?」

ナナバ「少しね」

エルドがナナバと同期だと、女型捕獲作戦の情報公開範囲に入っちゃわないか

上げちゃった!ごめんなさい

エルド「面白いな」

ナナバ「え?」

エルド「お前はなんというか秀才で優等生だったからな。最初から
『家族が心配するから憲兵団以外考えられない』とか言ってて
何でも出来るが面白味のない奴だと思ってたことがある」

リコ「天然でなければ、まー面白味はないかもな」

ナナバ「」

エルド「3年間ずっとそうだったろう。トップに入る努力もきっちりして、そのまま憲兵団に入るんだろうと思ってた」

エルド「こんな訓練期間最後になって、お前が行く先で迷うのは意外で面白い」

エルド「ちなみに、俺はお前が調査兵団に来てくれるなら賛成だ」

エルド「頼れる仲間は多い方がいい」

ナナバ「わたしは…お前にとって頼れる仲間なのか?」

エルド「勿論」

>17
そこは悩みどころでしたが、自分の中で一番据わりのいい設定にしました。

なるほど、期待

女子訓練兵舎

トコトコ
リコ「なぁ、ナナバ?」

ナナバ「うん?」

リコ「どうして今更調査兵団なんかで悩んでるんだ?
憲兵団を目指してきたんだろ?そのまま憲兵団でいいじゃないか。」

ナナバ「リコは、そんなに反対?」

リコ「決まってるだろ!お前は大事な友人だよ。
選べるのなら安全なところにいて欲しい。
むざむざ死にに行くようなことない」

ナナバ「…来いって、言われたんだよ」

リコ「調査兵団に?エルドか?」

ナナバ「ミケ」

リコ「ミケ…ザカリアス?あの狂犬?…どういうつもりだろ…」

ナナバ「狂犬?その話は始めて聞いた。変人だけど紳士だったよ」

リコ「ミケに、来いって言われたから行くのか?」

ナナバ「うーん、どう言えばいいんだろ…
そういう道もあるのか、と思っちゃった、かな」

ナナバ「憲兵団に行くんだと思っててそれなりにやってきてさ」

ナナバ「訓練はキツいけどこんなもんかなとか思ってるところもあって」

ナナバ「壁の中で、母親と弟たちを守って生きていく、それでいいって思ってたんだけど」

ナナバ「そしたら、ミケが…一人前になるまで守るから、来いって言ってくれたんだ」

リコ「それって…凄い殺し文句だな」

ナナバ「だろう?そういう道もあったのか、と思ってしまった」

リコ「自由を望む奴らと、命がけで外に出る?」

ナナバ「うん。エルドがわたしを認めてくれたように」

ナナバ「信頼できる奴らが仲間なら、外もそんなに怖くないのかもしれない」

ナナバ「やるだけやったなら、死もそんなに悪くないかもしれない」

ナナバ「そんな風に考えてるのに気がついた。つまりわたしは調査兵団に行きたいんだなって」

リコ「…言っとくけど、私は納得してないぞ?お前は憲兵団に行くべきだ」

リコ「でも、お前が…どうしたい、って言うのは聞いたことがない。だから引っ込んでやる」

リコ「いつか調査兵団が怖くなったら、いつでも私のところに来い。色々言う奴はいるだろうが、全部私が潰してやる」

リコ「それは、恥でもなんでもないんだからな?」

ナナバ「ありがとう、リコ。大好きだ」

リコ「ナナバ、髪が伸びてる。部屋に戻ったら切ってやろうか?」

ナナバ「お願いするよ。リコがいいよって言ってくれるなら、ずっとリコに切ってもらおうかな?」

リコ「お前の髪は猫っ毛過ぎて扱い辛いんだよ…いいよ、ずっと私が切り続けてやる」

ナナバ「ありがと、リコ」

調査団兵舎

コンコン…ガチャ
ハンジ「ミケ、いるー?」

ミケ「…(スンスン)」

ハンジ「今期入団の新兵の名簿来たよー。ミケ、早く見たいって言ってたでしょ?」

ミケ「…寄越せ」(パラ…)

ミケ パラパラ

ハンジ「あーそうそう、昇進おめでとうっ!兵士長だぁーっ」

ミケ パラパラ

ハンジ「いやー前兵長が食われちゃったからね!後はミケくらいしかいないもんねぇ」

ミケ「…お前だって昇進しただろう。それに俺は兵士長には向いてない、分隊長で…」

ミケ(…いた)

ミケ「十分だ」

ハンジ「んん?何だか気になる名前でもあったー?」

ミケ「昇進と言えばお前のほうが大抜擢だ。俺の補佐官から分隊長だからな」名簿パタン

ハンジ「人手不足だからねー生き汚いのが昇進するのは仕方ないよ」

ハンジ「編成のしなおしになるから、じきキースから収集かかるから、それまでミケも考えておいてね」

ミケ「解った」

ハンジ「ミケ、あのね?」

ミケ「?」

ハンジ「ありがとうね」

ミケ「…早く行け」

ハンジ「じゃあねー」

ガチャ…パタン

ミケ(育てば面白い奴を育てるのは当たり前だからな)

ミケ(礼を言われるほどのことじゃない、が…)

ミケ スンスン

ミケ(こちらに来る、か)

調査兵団練兵場

新兵 ザワザワ

コンコン
ナナバ「ミケ、時間だよ」

ミケ「今行く」

ナナバ「ハイ、みんな兵士長から挨拶があるから静かにね」

新兵 シーン…

ナナバ「ミケ、どうぞ」

カッカッカッ…ダン
ミケ「今期から兵士長を預かるミケ・ザカリアスだ」

一応ここで一区切りですがまだ続く予定…です。

今更ですがこれはミケとナナバが中心のお話です。
捏造・脳内設定ですがごく普通の話しになると思います。
SS初挑戦なのでぬるく読んでいただけたら幸いです。
更新は遅いです。

こういうの貴重だからな…
頑張ってくれ。気長に待つ。

補足。前体制はこう↓

団長:キース・シャーディス
兵士長:故人
分隊長:ミケ・ザカリアス(補佐:ハンジ・ゾエ)
同:エルヴィン・スミス(部下:リヴァイ)

新編成↓

団長:キース・シャーディス
兵士長:ミケ・ザカリアス(部下:ナナバ・グランドレン)
分隊長:エルヴィン・スミス(補佐:リヴァイ)
同:ハンジ・ゾエ

調査団兵舎:兵士長執務室

ナナバ「壁外調査?」

ミケ「2ヵ月後だ。冬が来る前にやっておかねばならないことがある」

ナナバ「…壁外…」

ミケ「…恐ろしいか?お前にとっては初陣だったな」

ナナバ「そりゃ、…怖いよ」

ミケ「動かせる兵が100人をようやく越した。キースに何か考えがあるようだ、人数が必要だったのだろうな」

ミケ「新兵の初陣も兼ねるからそう遠くへは行かないと思うが…」

ナナバ「…大丈夫かな」

ミケ「大丈夫、などとはとても言えない。いつだってな」

ミケ「ただ、…帰って来い。それだけを考えて出るんだ」

ミケ「今から徹底させろ」

ナナバ「了解」

ミケ「特に新兵は自分を過信するか臆病風に吹かれるかで冷静さを欠きやすい」

ミケ「落ち着いて状況を把握しろ。出来なければとにかく逃げろ。撤退命令を見逃すな」

ミケ「訓練兵時代にイヤほど聞かされただろうが、それが全てだ」

ナナバ「…了解」

ミケ「お前もだ、ナナバ」

ナナバ「解ってるよ」クス


――総員 戦闘用意

「目標は一体だ!!必ず仕留めるぞ!!」

「目標との距離400!!こちらに向かって来ます!!」

「訓練通り5つに分かれろ!!囮は我々が引き受ける!!」

「目標距離100!!」

「全攻撃班!!立体機動に移れ!!」

「全方向から同時に叩くぞ!!」

「人類の力を!!」

思い知れッッ!!

巨大樹の森の中

――ザッ、ザザザザザザザ
ハァ、ハァ、ハァ――

ナナバ(どうなってるんだ?!)

ナナバ(班員は?!戦闘はどうなった、巨人は?!)

ナナバ(――ミケ!!!)

「ナナバ!」

ナナバ「リズ!無事だったの?!」ダダダダダ

ナナバ「リズ!良かった」ギュウ

リズ「ナナバ――一体、どうなったの?どうして誰もいないの、どっちに逃げればいいの?」

ナナバ「リズ、落ち着いて。きっともうすぐ撤退命令が――」

リズ「食べられたのよ、巨人に。食べられた」

ナナバ「リズ?」

リズ「さっきまで、みんないたのよ。キャラハン。ジャック。シド。みんな、食べられた、食べられた」

ナナバ「リズ、リズ!落ち着いて!」

リズ「私に逃げろって言って、食べられた。私を逃がすために足止めして、食べられた。連携が上手くいかなくて、食べられた。ワイヤが絡まって、食べられた」

ナナバ「リズ!お願い、落ち着いて!逃げよう、こっちだ!」

リズ「キャラハン。特攻して食べられた。ジャック。逃げろって言ってた。シド。ジャックにぶつかって食べられた」

ナナバ「頼むよ、イヤだよ、リズ、逃げよう。イヤだよ、イヤだ」

リズ「食べられた。食べられた。食べられたよ。私も」

ナナバ「――リズ!」

ズシィン…

ナナバ「――なっ、んで…今…」

リズ「食べられるよ。ナナバ」

ナナバ「させない!リズ、ここにいて」

パシ!ギィイイィン!!!

ザシュ!!!

ナナバ「やった!!!…?!!!」

ズシィン…
ズシィン…
ズシィン…

ナナバ「な、ん、で…」

ナナバ(囲まれてる?!)

ナナバ(何で…どこもかしこもこんなに集まってるんだ)

ナナバ(何が起こってる?!)

リズ「きゃああぁぁあーああ!!」

ナナバ「リズ!」パシ!ギュイィィイン

ナナバ「クソ、どけよデカブツ!」

リズ「いやああああああああああああああああああ」パキン

ナナバ「リズ!」ギュイィィイ

ガッ

ナナバ(脚を?!)ボキッ「あああああああああ!」

バシュ!!!
ドッ

ナナバ「ミケ!」

ミケ「撤退命令が出た。逃げるぞ」ナナバカカエ

ナナバ「駄目だ!リズが、リズが捕まってる!」

ミケ「あれはもう駄目だ。置いていく」

ナナバ「イヤだ!ミケ、下ろせ!下ろせばかミケ!」バシバシ

ミケ「………」ギュイィィイン…パシ…ィイィン

ナナバ「下ろせよ!イヤだ、リズ、イヤだ!ちくしょう!」

ナナバ「チクショオオオ!!!」

ウォール・マリア内調査兵団駐屯所

ザワ…ザワ…

ナナバ「………」

ミケ「ナナバ」

ナナバ「あ、ミケ…」

ミケ「大丈夫か。脚はどうだ?」

ナナバ「単純骨折だから、安静にしてたらすぐくっつくって」

ミケ「そうか」

ナナバ「…」

ミケ「…」

ナナバ「あの、ミケ、…ごめんね」

ミケ「何の話だ」

ナナバ「助けてくれたのに、酷いこと言った。冷静じゃなかった。…リズは、確かにあの時はもう駄目だった」

ナナバ「ごめんなさい」

ミケ「気にしていない」

ナナバ「助けてくれて、ありがとう」

ミケ「…お前が生きていてくれて、本当に良かった。感謝する」アタマクシャクシャ

ナナバ「あは、何言ってるの」

ミケ「本当だ。20人、生還しなかった」

ナナバ「…え?」

ミケ(あの混乱の中で、ナナバを見失って)

ミケ(駄目か、と一瞬でも…思った)

ミケ(本当に…本当に良かった)

ナナバ「ねぇ、ミケ。聞きたいんだけど…」

ミケ「何だ」

ナナバ「巨人って、あんなに群れるものなの」

ミケ「…」

ナナバ「巨人の脅威は数だ。それは解ってるけど、あんなに一斉に出てくるの?」

ナナバ「どこに逃げても、巨人に囲まれた。たった一瞬でだ」

ナナバ「まるであの森に集められてたみたいな、妙な数と現れ方だと思ったんだけど」

ミケ「それは俺も、エルヴィンもハンジも感じたようだ」

ミケ「何か…あるかも知れない。キースに話して、異変を警戒…」


ドォン!!


ミケ「!!!」

ナナバ「!!!」

「何だァ?!」
「何が起こった?!」
「地震か?!」
「物見!一体何だ今の!」
「巨人だ」「巨人?!」
「頭を出してる!」「馬鹿な!!」
「壁が――」「壊されて――」


ドゴォン!!!
ドドドドドドドドド

ミケ「――負傷兵!動ける者は動けない者を先導して避難しろ!」

ミケ「来る気のある者は俺に続け!」

ナナバ「ミケ!わたしも!」

ミケ「お前は避難だ!ウォール・ローゼまで負傷者を連れて行け!」

ナナバ「…っ!了解!!!」

ナナバ「馬と運搬車を確認!降りるな、下ろすな!北上しろ!」

エルド「ナナバ!そこにいるのか?!」」

ナナバ「エルド!お前も怪我を…腕をやったのか。よし、エルドが先導してくれ」

ナナバ「私は後ろに付いて避難の始末をつける」

エルド「解った。お前の馬を用意する」

エルド「変な気起こすなよ!」

ナナバ「解ってるよ!」

ナナバ(何が――一体、何が起こって――)

ナナバ(ミケ!ちゃんと帰ってきて!)

エルヴィン「…これは…」

ミケ「壁が…破壊されている!」

ハンジ「シガンシナ区が…」

リヴァイ「………」

エルヴィン「住民の避難が優先だ。時間を稼ぐぞ」

ミケ「動けるのはこれだけだな?では散開。各々、巨人を駆逐しろ」

エルヴィン・ハンジ・リヴァイ「了解」

ミケ「生きて帰れ!」バッ

エルヴィン・ハンジ・リヴァイ バッ

ギュイィイィィン…

この後、鎧の巨人による突破でウォール・マリア陥落。
100年の平和は終焉を迎え、人類はウォール・ローゼまで後退。
調査兵団はその最精鋭たる数人のみの投入だったものの
多くの巨人を駆逐して住民の避難を助けた。

そして、一年後。
新体制
団長代理:エルヴィン・スミス
兵士長:ミケ・ザカリアス(補佐:ナナバ・グランドレン)
分隊長:ハンジ・ゾエ(補佐:モブリット・イング)
同:リヴァイ

キース・シャーディスは引責辞任。
トロスト区訓練兵舎にて南方訓練兵主任教官に就任。

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