ひたぎ「そういえば、あと少しでホワイトデーね」(195)

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 ──3月10日 戦場ヶ原宅──


 カキカキ… カキカキ…

ひたぎ「ねぇ、こよこよ」カキカキ

暦「……」カキカキ

ひたぎ「……初っ端から私を無視して、辱めるつもりなのかしら阿良……こよこよ」

暦「阿良々木くんで慣れてるんならそう呼べよ!」

ひたぎ「嫌よ。出来るならば私は〝コヨリン〟と呼びたいのよ、阿良々木くん」

暦「絶対に嫌だ。ていうかこの話何回目だよ!? 僕は決して折れないからな」

ひたぎ「……あらそう。それなら、チェーンソーでも持ってくるしかないわね」

暦「物理的に!?」

ひたぎ「ツッコミが的確じゃないわよ、阿良々木くん。そこは──」

ひたぎ「──『ひたピョンにチェーンソーなんて似合わないよぉ!』じゃないの」

暦「0点だよ!! なにちゃっかり自分の呼び名を〝ひたピョン〟にしてるんだよ!」

暦「それに、えと……ツッコミ所が多すぎて間に合わないわ!!」

ひたぎ「口篭るほど〝ひたピョン〟が気に入ったのかしら。それなら、これからはそう呼んで頂戴」

暦「やだ!! 僕はバカップルにだけはなりたくない!!」

ひたぎ「……可哀想なおつむなのね阿良々木くん。
    今までも私達が十分バカップルだったことが、自覚できていなかったのかしら」

暦「そうだったの!? ……うわっ! なんかそんな気がしてきたッ!!」

ひたぎ「……可哀想な存在なのね阿良々木くん。見ていて、
    なんだかよく分からないのだけれど……滑稽だわ」

暦「最後に核心をついてる!!」

ひたぎ「もう、冒頭にさっさと今回のテーマを言うつもりだったのに。
    阿良々木くんが下らないことで、話の腰をチェーンソーでぶった切ったからよ」

暦「そんな野蛮なことはしていない。それと、呼び名はいつものままでいいからな、戦場ヶ原」

ひたぎ「……」

ひたぎ「……阿良々木くん。それってつまり、
    私をいつまでも彼女っていう存在のままに留めておくってことなのかしら」ズイッ

暦「そ、そんなことはないけどさ……なんていうか、やっぱりこっぱずかしいんだよ」

ひたぎ「こっぱずかしい? なんでよ」

暦「いや、さ……僕の中のイメージで戦場ヶ原って、
  〝あなた〟って呼んでくれるような、そんな女性に見えるんだ」

ひたぎ「それってつまり、結婚前提で話が進んでいるのね」

暦「まあ、な……でもあくまでも僕のイメージだ。だからさ、お前と名前で呼び合うってことに、
  若干の違和感を覚えるっていうか、だから僕は──」

暦「──いつか戦場ヶ原を〝おまえ〟って呼びたいって、そういうことになるんだろうな」

ひたぎ「いきなりかっこいいことを言ってくれるじゃない阿良々木くん、惚れ増したわ」

暦「誤解するなよ、あくまでも僕が想像しやすかったことなんだから。
  お前もちゃんと言ってくれないと嫌なんだろ?」

ひたぎ「……そうね。阿良々木くんはまずは進学、就職、育児……それから、結婚だものね」

暦「……おい待て、僕達はデキちゃった婚をするのか?」

ひたぎ「私、ビッグダディに出るのが夢だったの。確か、あのお父さん再婚しているわよね」

暦「お前は僕をバツ1にしてから、それから結婚するつもりなのか!?」

ひたぎ「先に五人ぐらい作っておきなさいよ。そうしたら、私がまた何人か子供を産むから」

暦「新たな生命をまるでポケモンのガチ勢みたいに粗雑に扱うんじゃない! 僕の前の奥さんに謝れ!」

ひたぎ「あら心外ね阿良々木くん。私は子供一人一人に、愛情を持って接するつもりよ」

暦「ならいいけどさ……いや、いいのか?」

ひたぎ「そんな適当なところ、テレビに見られたら終わりじゃない」

暦「動機が不純だ!」

ひたぎ「また話がずれたわ、阿良々木くん。どうしてくれるのよ」

暦「どうもしねぇよ。あーもう端的に言っちまえよ、突然だっていいさ」

ひたぎ「……それもそうね。……──」







ひたぎ「──そういえば、あと少しでホワイトデーね」

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  ──────────


暦「ホワイトデーつっても、何を贈ればいいんだろうな。
  その点バレンタインデーって楽だな、ただチョコを渡すだけなんだから」

ひたぎ「それは違うわ、阿良々木くん。その人がどんなチョコが好きなのか、
    どうデコレーションしたら喜ばれるか……考えることはいくらでもあるのよ」

暦「そうか……ものが限定されてても、詳細がってことか」

ひたぎ「そうよ。私なんてチョコの中に血液を混ぜたのだけど……美味しかったかしら?」

暦「おい、冗談だよな!?」

ひたぎ「愛の形は人それぞれなのよ、阿良々木くん」

暦「うわああああああまじかよおおおおおおおおお!!」ジタバタ

ひたぎ「嘘で彼氏を躍らせる、これも愛故になのよ、阿良々木くん」

暦「……」

 
 正直ナトコロ、ホットシタ。

暦「……」カキカキ

ひたぎ「拗ねないでよ、阿良々木くん」

暦「拗ねてなんかない、ただ勉強がしたいんだ」

ひたぎ「もっと高尚な嘘をつきなさい阿良々木くん」

暦「ぐっ……戦場ヶ原、お前いつか友達なくすぞ?」

ひたぎ「ひどい嘘をつかないで頂戴」

暦「いやついてねぇよ!」

ひたぎ「元々友達なんていないもの」

暦「すいませんでしたァ!!」

ひたぎ「あら阿良々木くん。貴方は羽川さんが、
    私にとってどんな人に見えているのかしら」

ひたぎ「友達がいないってのも、嘘よ」

暦「わかりずれぇよ!!」

ひたぎ「理解力が乏しいわね阿良々木くん。
    私は阿良々木くんがついた嘘を飲み込んで、新たな嘘を生み出したのよ」キリッ

暦「だから友達なくすってのは嘘じゃねぇよ!」

ひたぎ「心配してくれているのかしら阿良々木くん。私とても嬉しいわ」

暦「……なぁ戦場ヶ原。僕が心配しているのはお前が素直に、率直に御礼を言っても、
  それすらも嘘に聞こえちまうってことなんだよ……」

ひたぎ「今の気持ちは本当よ、阿良々木くん」

暦「まあそうなんだろうけどよ」

ひたぎ「それに、他人が実害を被るような嘘は、私決してつかないわ。本当よ」

暦「嘘をつくな! 実際さっきのチョコの嘘で、最低僕はもどしそうになったぞ!」

ひたぎ「それはただ阿良々木くんが最悪だからよ」

暦「ひっでぇ!!」

────
──

暦「で、嘘の話はさておき、ホワイトデーの話だ」

ひたぎ「なんで私に聞くのよ、本来プレゼントってサプライズ的なものじゃないの」

暦「戦場ヶ原、僕に任せてもらってもいいのか?」

ひたぎ「信用できないわね」

暦「ほらな!」

ひたぎ「でも、どんなプレゼントだったとしても、それは阿良々木くんがくれたものなのだから、
    ありがたく受け取るつもりよ」

暦「……そう、なのか?」

ひたぎ「でも、それが許されるのは彼女である私だけだと思うけど……。
    ねぇ、阿良々木くん」

暦「なんだ?」

ひたぎ「何をあげるか迷っているのなら──」

ひたぎ「──その人がほしいものを、あげなさい」


 欲シガツテイルモノヲ、アゲル。

暦「……なんか、お前らしからぬ普通のアドバイスだな戦場ヶ原」

ひたぎ「……私の精一杯の照れ隠しよ」

暦「えっ、なんだって?」

ひたぎ「なんでもないわ」

ひたぎ「……阿良々木くん、貴方いつから、難聴を駆使する主人公に成り下がったのかしら」

暦「は……?」

ひたぎ「そうやって、都合の良いようにヒロインを弄んで楽しい? 阿良々木くん、悪趣味ね」

暦「いや、本当に聴こえなかったんだけど……なんなんだこの言われようは」

ひたぎ「とにかく、今後一切の聞き返しを禁ずるわ。もし破った場合は、
    ストーリーの流れを無視して、私が罰しにくると思いなさい」

暦「でもさ、話の流れ的に考えて……難聴って大事なことだろ?
  見る側はそこの駆け引きを含めて、作品を楽しんでいるんだろうし」

ひたぎ「勇気を振り絞って、本音を口に出したヒロインの気持ちにもなってみなさい。
    それを聴き返されたら──殺したくなるじゃない。ちゃんと聴けよってなるじゃない」

暦「僕の知ってるヒロインは『殺したくなる』なんて言わない!」

ひたぎ「きっとラブコメ作品の終焉に待っているのは、殺人事件ね」

暦「恐ろしいことを考えるな、お前は!」

ひたぎ「……とにかく、お願いを聞いてあげなさい。それが阿良々木くんの役目よ」

暦「おぉ、そうか……よし助かったぜガハラさん。流石は僕の彼女だな」

ひたぎ「あらそう、そう言われて光栄よ阿良々木くん。
    プレゼントは期待しないで待ってるわ」

暦「流石は僕の彼女だな!! 今のは皮肉だからな戦場ヶ原ッ!」

ひたぎ「一言多いのよ、阿良々木くんは」

暦「それはこっちの台詞だ!!」

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  ───帰り道───


 テクテク… テクテク…

暦「……おっ」

八九寺「あっ!」

 タッタッタッタ──

八九寺「キララ木さんっ」

暦「人を六角板状結晶の鉱石みたいな名前で呼ぶな、僕の名前は阿良々木だ」

八九寺「すみません、噛みました」

暦「違う、わざとだ……」

八九寺「……かみまみたっ!」

暦「わざとじゃない!?」

八九寺「髪伸びた?」

暦「主人公ってのは外見が変わらないのが基本なんだ覚えとけっ!」

────
──

八九寺「まだ町を出ていなかったんですね」

暦「そうだな。そろそろ引越しとかの手配もしなくちゃならないけど、
  とりあえずはまだここにいるつもりだ」

八九寺「てっきり真のニートに覚醒するのかと」

暦「別に僕は現在形でニートじゃねぇよ!」

八九寺「違うのですかっ!?」

暦「マジで驚かれた!」

八九寺「私、てっきり制服のコスプレをしたお兄さんとばかり思っていましたっ!」

暦「なにそのイタい人!?」

八九寺「冗談は止して下さいよ~……阿良々木さんは、
    阿良々木さんなんですからっ」ニコッ

暦「良いこと言ったつもりか! まず、冗談話を発展させるんじゃない。
  話はそれからだ!」

八九寺「でも阿良々木さん、仮に私が正しくないことを言っているとして、
    それを証明することは出来るのですか?」

バレンタインの化SS書いて、その勢いでホワイトデーのも書こうと思ってたんだけど、
途中挫折して、やっとスレ立てる余裕ができるぐらいまで終わったwww

まだ完結はしてないけど、今貼ってるのは書きだめ部分
まぁ不規則に出していきます

八九寺「ホワイトデー……ですか?」

暦「ああ、チョコ買ってくれただろ八九寺。そのお返しだ」

八九寺「はて……? 私が見ていた限りでは〝阿良々木さんが自身に向けチョコをプレゼントしていた〟、
    ようにしか見えませんでしたが」

暦「やっぱりそう思ってたんだな!?」

八九寺「だってアララ木さん、考えてもみて下さいよ。目の前に可哀想な人がいたら、  
    嘘をついてでも慰めてあげるのが人情ってものではないのですか?」

暦「子供はいらん知恵を回さなくてもいい。それより、
  僕の名前を憐れむような名前で呼ぶんじゃない!」

八九寺「まあまあ阿良々木さん、ほんの冗談ですよっ」

暦「お前の場合、ガハラさん並みに冗談が冗談じゃないって気がするぞ、八九寺。
  むしろお前の方がガキだし、あいつを凌駕しているかもな」

八九寺「私、えらく信頼されてますね」

暦「えらく警戒してるんだよ!!」

あ、あとアニメ化・偽しかみてないから設定は偽で止まってる
原作とは違う3月だと思うけど、そこはあしからず

八九寺「……それで、ホワイトデーですか」

暦「選ぶ自信がないから、だったら逆に選んでもらおうかなと思ってな。
  何かほしいものはあるか? 八九寺」

八九寺「つまり、槍投げしたんですね阿良々木さん」

暦「僕は古代ローマ人じゃないぞ」

 
 丸投ゲナ、八九寺。


八九寺「本当に何でもいいんですか!?」キラキラ

暦「スポンサーが僕だってことを踏まえた上で考えろよ?」

八九寺「あっ……そうですね……ん~……あっ! 阿良々木さん阿良々木さんっ!」

暦「おっ、何かほしいものが決まったか?」

八九寺「私、ブラックサンダーでいいです」

暦「今、〝で〟って言ったな!?」

八九寺「え、いえお気になさらずに……ブラックサンダー、美味しいじゃないですかっ!」

暦「断る!」

八九寺「いえ、無理をなさらずとも……私はブラックサンダー1つで……」

暦「もっと高いものを買ってやる!」


 …………。


八九寺「ヒャッホウ! さっすがです阿良々木さん!」

暦「……」

 
 乘セラレタ。小學生ニ、乘セラレテシマツタ。

八九寺「3DSLLがほしいですっ、『どうぶつの森』がやりたいですっ!」

暦「高い」

八九寺「『シルバニアファミリー〝あかりの灯る大きなお家〟』家具付き、家族は30人がいいですっ!」

暦「もっと高い!」

八九寺「ガルルルルッ!!」

暦「このっ──!」

──Round2──
 ────

八九寺「……」ハァハァ

暦「……」ハァハァ

八九寺「阿良々木さん……私……っ」

暦「なんだ……欲しいもの、決まったのか?」




 八九寺「家族が……欲しいです」




暦「……」

暦「……八九寺、それは出来ないよ」

八九寺「……そうですよね、分かっています。ただの、子供の我が儘ですから」

暦「……」

暦「でもな、家族の暖かさならプレゼントできるぞ」

八九寺「……えっ?」

暦「今日、僕の家に泊まれ」

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  ─────帰宅─────


暦「ただいま~……」

月火「おかえりーお兄ちゃ……」

八九寺「お、お邪魔します……」

 
 沈默。


月火「……さってと、警察警察っ♪」

八九寺「……!」

暦「お風呂に入るようなテンションで警察を呼ぼうとするんじゃない」

暦「ていうか、見えてるのか……?」

月火「なにお兄ちゃん。もしかして私が黙認するとでも思ったの?
   そこまで世の中ってうまく成り立ってないんだよ? それより警察」タタタッ

暦「まてっ!! 僕は悪くない! こいつは家出している女の子で──」

月火「あーはいはい、みんなそう言うんですよー」

暦「まるで警察のようにあしらうな!!」

火憐「おかえりー兄ちゃん。なんだー? やけに騒がし……」

暦「よぉ……ただいま、火憐ちゃん」

八九寺「お、お邪魔します……」

火憐「……兄ちゃん。いくら大切な兄ちゃんでも、
   成敗する対象になる時だってあるんだぜ? 許されないことだってあるんだぜ?」コキコキ…

暦「ま、待てよ火憐ちゃん……話を聞いてくれ」

火憐「む、何か言い訳があるのか兄ちゃん?」

暦「僕はただ、帰り道に迷っている小学生がいたから、助けてあげただけだ」

火憐「ふーん……そうだったの?」

暦「なー、八九寺ー?」チラッ

八九寺「そうですね。それに阿良々木さんのお蔭なのかは分かりませんが、
    不審者への対処法なども、かなり身につきました。ショック療法に近いですけど」

暦「」

火憐「覚悟ッ!!」

 ──Round3──
  ────

暦「ほら八九寺、自己紹介するんだ」

八九寺「初めまして、八九寺真宵、です……。
    道中迷ってしまって、阿良々木さんに拾われました。今晩だけお世話になります」ペコッ

暦「こいつも面白いやつでな、口が達者なんだよ」

月火「……どうやら本当に連れ去ったわけではなさそうだね」

暦「まだ言うか!?」

暦「さっきのはコイツの嘘だって言っただろ」

暦(そんな事、裏のまた裏話だけどな)

火憐「誤解して悪かった兄ちゃんッ!」

暦「……まあ、大事には至らなかったからいいけどさ。ともかく火憐ちゃんも月火ちゃんも、
  八九寺と仲良くしてやってくれ」

火憐「ラジャッ!」ビシッ

月火「うんっ。じゃあ真宵ちゃん。何して遊ぼうか?」

八九寺「え、えっと……」アセアセ

月火「別に焦らなくても大丈夫だよ?」ニコッ

暦(こいつらなら安心して見てられるな)

火憐「……じゃあ、兄ちゃんの新作エッチ本探しでもするか!」

暦「お前らボードゲームしようぜっ!!」

────
──

 カラカラカラカラ──

暦「4か……げっ、パソコンが壊れた、二万没収」

月火「ふっふふふ、運がないねお兄ちゃん。私大富豪だし少し分けてあげてもいいんだよ?」ペチペチ

暦「お札で僕の頬を叩くんじゃない。やめろ……やめろッ! 割と本気でイラっとくる!」

火憐「次、真宵ちゃんだぜ?」

八九寺「ああ、はいっ!」

 カラカラカラカラ──

八九寺「えっと……8ですね。……ストップ、結婚……!?」

月火「結婚マスだね。ほら、この男ピンを車にたてて──」

月火「──はいっ、おめでとう!」

八九寺「この年で結婚だなんて、私は厭らしい女ですー!!」

暦「法律的にアウトだよなこれ……」

月火「いや、そういうゲームじゃないからお兄ちゃん」

火憐「よーっし、次はあたしだな……よっと!」

 カラカラカラカラ──

火憐「……ん、1か……男の子が生まれる? あれ、あたし結婚してたっけ」

八九寺「デキちゃった婚だなんて厭らしいですー!!」

暦「子供が騒ぐことじゃない! ……火憐ちゃん、
   僕はそんな男と結婚するだなんて許さないぞ」 

月火「だからそういうゲームじゃないからお兄ちゃん」

八九寺「次、月火さんですよっ」

月火「うん、それっ」

 カラカラカラカラ──

月火「……9、か」

月火「…り、離婚……? な、なんで!? お金ならたんまりあるってのに!」アセアセ

八九寺「お金で愛は買えないんですね」

火憐「じゃあ男ピン抜くぞー」スポッ

月火「ああぁっ!」

暦「なんだかんだ言って一番楽しんでるな、月火ちゃん」


 月火チヤンノ、轉落人生ノ幕明ケダツタ。

────
──


火憐「おーい真宵ちゃーん!」

月火「お風呂はいろーっ」 

暦「……八九寺、着替えとかあるのか?」

八九寺「はいっ。このリュックの中に、粗方の生活用具は入っています」

暦「じゃあ風呂入ってこいよ。あいつらも待ってるぞ」

八九寺「すいません、いつもなら三人で入浴しているところを……」

暦「あたかも僕が、いつも妹達と風呂に入ってるかのように言うんじゃない」

八九寺「えっ、阿良々木さんはシスコンであると思ったのですが」

暦「あのな、お前は僕をどれほどの変態だと勘違いしてるんだ……?」

八九寺「変態は認めるんですね、私はそれでとても納得しましたっ」

暦「くそっ、納得させちゃったよ!」

八九寺「変態だから、妹さん達に混浴を強要してるんですよね、納得です」

暦「いや、その理屈はおかしい! 僕が納得できないぞ!」

八九寺「後ろから小学生を襲う人間が、とやかく言う権利なんてありません。 
    変態はどこまでも変態ですっ」

暦「ぐ……、小学生相手に論破された……ッ!」

八九寺「……」

八九寺「……それはそうと、阿良々木さん」

暦「ん、なんだ? 八九寺」



八九寺「私、とっても楽しいですっ!」ニコッ



暦「……ああ、良かったな」

火憐「ほーら、真宵ちゃーんっ」

八九寺「では、先にお風呂失礼しますっ」タタタッ

暦「……」

暦(どうやら、アイツへのプレゼントはこれで間違いなかったみたいだな)

prrrrr… prrrrr…

暦「……ん」カチャッ

 着信:戦場ヶ原 ひたぎ

暦「どうした、戦場ヶ原」ピッ

ひたぎ『良い笑顔だったわね、あの子』

暦「お前は、レーダー能力を保有しているというのか!?」

ひたぎ『索敵ってかっこいい言葉よね。そうは思わない? 阿良々木くん』

暦「いいや、加速装置ほどかっこいい言葉はない。そこは譲れないぜ戦場ヶ原」

ひたぎ『……ねぇ阿良々木くん、私はただ同意を求めたわけであって、
    別に対立するために話を振ったわけじゃないのだけれど……』

暦「あ、まあそうだな」

ひたぎ『もう、戦争しかないわね』

暦「僕が悪かった……!」

ひたぎ『あら降伏? 思ったより早かったわね。
    それより、定時報告会を始めましょう、阿良々木くん』

暦「あ? なんだその……定時報告会って、初耳だぞ」

ひたぎ『付き合っている人のことでいつ、どこで、
    どんな妄想をしたかを報告する場よ、阿良々木くん』

暦「そんな報告会いやだ!」

ひたぎ『あら、もしかするとだけど阿良々木くん……私のこと想っていなかったの?
    私のことなんて考えていなかったのね、戦争よ』

暦「僕が否定するための余裕を持たせろよ!」

ひたぎ『私の場合、今日妄想の中でコヨリンが〝卑猥な言葉縛り〟でしりとりを強要してきたわ』

暦「そんな話聞きたくない! それと、僕はそんなことしない!!」

ひたぎ『それで私負けちゃったわ……阿良々木くんってやっぱり、ムッツリなのね』

暦「全部お前の脳内知識だッ! いいか、 
  これからは妄想の中でも僕を暴走させるんじゃない、分かったな!?」

ひたぎ『……分かったわ。誰も、勝手に想像されるのなんて、気持ちのいいことじゃないものね』

暦「分かってくれたか」

ひたぎ『阿良々木くん、明日はギャルゲーを一緒にやるって妄想をしようと思っているのだけれど』

暦「許可とりゃいいって話じゃねぇよ!!」

 
 ナンニモ分カツテイナカツタ……。


ひたぎ『……あら、もうこんな時間。そろそろ通話を切らせてもらうわ』

暦「え、どうした突然。何か用事か?」

ひたぎ『神原が阿良々木くんに通話しようとしているのに、邪魔しちゃ悪いものね』

暦「お前は、この世界の概念か何かなのか!?」

ひたぎ『それじゃあね、阿良々木くん。お休みなさい』プツッ

 ツー… ツー… ツー…

暦「……」

────
──

 prrrrr… prrrrr…

暦「うわっ、本当にきたよ」

 着信:神原 駿河

暦「はい、もしもし」ピッ

駿河『私は神原駿河。どこにでもいる、ごく普通の女子高生だッ』

暦「……」

駿河『やぁ、私神原駿河。将来の夢は阿良々木先輩の乳首に齧りつくことだ』

暦「ごく普通どころか僕に対して害悪でしかないし、もしそれを通話している皆に言っているなら、
  神原ッ! 僕はお前を今から殴りに行かなければならない!」

駿河『む、そのきれるツッコミは阿良々木先輩か?』

暦「そもそもその返し方は、僕がお前に通話した時のものだぞ」

駿河『いやぁすまない! 今日少し暇だったので、電話帳に入っている名前欄を全て、
   卑猥な用語に差し替えてしまったのだ』

暦「暇でもそんなことしねぇよ!」

駿河『今必死に修復中なのだが……その際誰が誰だか分からなくなってしまってな。
   虱潰しに通話を掛けていたというわけだ』

暦「まったく、下らないことが好きな後輩だ」

駿河『阿良々木先輩は、パイ●ンなのだな。自身の陰毛を全て剃ってしまうとは……。
   いや、阿良々木先輩には敬服するばかりだ!』

暦「勝手に僕を全剃りにするな!! お前がそう登録しただけだろ!!」

駿河『いいではないか、仮に阿良々木先輩がパ●パンでは無いのだとすれば、
   逆にそれを真とし、自身の勇気強さを誇示することができるぞ。やったな、阿良々木先輩っ』

暦「いいか、今からツッコミが単発的になるからな。えーっと……」

暦「仮にってつけるな。パイ●ンの丸の位置をズラすな。
  そもそも女子がパイ●ンとか言うな。やったな、じゃねぇよ」

駿河『流石は阿良々木先輩だな、どの角度からボケようともツッコミが返ってくる。
   天晴れとしか言い表すことができないな!』

暦「そんなんで天晴れとか言われたくない……」

駿河『はっはっは、阿良々木先輩とのご歓談、楽しませてもらった。
   では、そろそろ切らせて漏らすぞ!』

暦「切らせてもらうだろ! >>1のタイプミスぐらい許してやれよ!」

駿河『いや、私は阿良々木先輩の甘いボイスを聴いたから、
   通話が切れた瞬間にも漏らしそうだし……強ち間違ってはいないのだ』

暦「冗談でも気持ちが悪い!!」


 ──その人がほしいものを、あげなさい


暦「……あ、それと神原。話が唐突に変わっちまうけどさ、
  お前、何か欲しい物はないか?」

駿河『む、本当に突然だな阿良々木先輩。その強引さも堪らない』

暦「ないんだな、それじゃあな」

駿河『冗談だ、それより何故にいきなりそんなことを?』

暦「……そろそろ、ホワイトデーだろ?」

駿河『……、あー……なるほど。つまりは、阿良々木先輩は自分で選ぶことを止め、
   貰った当人から欲しい物を訊こうって魂胆なのだな? 差し詰め、戦場ヶ原先輩の妙案であろう』

暦「名推理だな、きれいに当たってるぞ」

駿河『阿良々木先輩、私が欲しいのは阿良々木先輩からの命令だ、と言えば、
   それは選択権を盥回ししていることになるのだろうか?』

暦「……言っておくが僕に選択権を委ねたって、>>1はエロ方面に進める気は、今の所ないから、
  それはお前にとってあまり意味がないと思うぞ、神原」

駿河『そうか……ていうか阿良々木先輩、先ほどからこれでもかとメタフィクションな発言をしているが、
   大丈夫なのか? もしかしてそれが面白いとか思っているのか?』

暦「今のが一番キツいメタ発言だったよ!」

駿河『うーむ、咄嗟に何か欲しいものがあるかと言われると、
   いまいち自身が欲しているものが何なのか分からないな』

暦「ゆっくり考えてくれていいぞ。その代わり無理なことは言うなよ?
  僕にだって、出来るだけ希望は叶えてやりたいが、それでも限界ってものがあるからな」

駿河『そうだな……えっと、……あっ! 一つあったぞっ、阿良々木先輩!』

暦「おっ、なんだなんだ?」

駿河『私が案じた、新たな遊びに付き合って欲しい!』

暦「……それって、歯磨きのアレとか……みたいなのか?」

駿河『その通りだ、これは阿良々木先輩にしか頼めないことなのだっ』

暦「だろうな。僕以外にそんな遊びをさせるような異性が、お前にいるとは到底思えない」

駿河『む? いや、クラスの男子としても別にいいのだが……』

暦「……え、なにお前って、友達いるのか?」

駿河『そりゃいるさ、逆に何故いないと思ったのだ阿良々木先輩』

暦「べ、別に……」

駿河『今はただの女子高生だが、これでも私はスーパースターだったのだぞ?
   それに、そう……私はボーイッシュな方だし、今までも少なからず男子に間違えられたりもした』

駿河『外見も内面もこうだし、いつもクラスの男子とだって談笑したりしているぞ』

暦(そうだった。こいつって割とスペック高かったんだ)

暦「さいですか……」

暦「なんでか阿良々木先輩……自分がすげぇ情けなく見えてきたぜ……」

駿河『えっ、あ、すまぬ阿良々木先輩。気に障ることがあったのなら謝ろう』

暦「神原、これにいたってはお前のマシンガントークは全く関係ないよ。
  今のまま過ごせよ、友達は大切だぜ?」

駿河『お、おう。元々そのつもりだが……阿良々木先輩にまで念押しされたのだから、
   より気を引き締めなければな』

駿河『……阿良々木先輩。私が何故、先輩に新しい遊びに付き合って欲しいか分かるか?』

駿河『純粋に、阿良々木先輩が好きだからだ』

暦「神原……」

駿河『ただクラスの友人に奇異な目で見られたくないからって、阿良々木先輩と遊ぶわけではない。
   いや、そういうと嘘を言うことになる、
   多少はそういうことも考えた、私も一応は女の子なのだからな。だけれど──』



 駿河『──そういうこと抜きで、私はただ、阿良々木先輩と一緒に遊びたいだけなのだっ』



暦「……、……まったく、先輩におかしな遊びをさせるなんて、神原後輩は残念な後輩だな」

駿河『人間誰でも、残念なものなんてつきものだッ!』

暦「……そうだな。で、どんな遊びをするんだよ? 神原」

駿河『ふむ、そうだな。よし、では名前だけ伝えておこう。詳しくは明日、
   校門前でおち合ってからにしよう阿良々木先輩。題して──』

駿河『──〝老人体験〟だっ』

暦「まともすぎて逆に怪しい!」

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  ───翌日 3月11日───


八九寺「では、お世話になりましたっ」ペコッ

火憐「いっちゃうのか? ずっといてもいいんだぜ?」

暦「こらこら、そういうわけにもいかないだろ? コイツにだって……」


 家族。 


八九寺「そうです、私にも家族がいるので……また御縁があれば会いましょうっ」

月火「そうだよ火憐ちゃん、迷惑かけちゃ駄目だよ。
   ……またいつでも泊まりにおいで、真宵ちゃん──」

月火「──私達、もう家族みたいなものなんだから」ニコッ

八九寺「……っ!」

暦「……月火ちゃん」

火憐「そうだぞ真宵ちゃんっ! もう真宵ちゃんは私の妹同然なんだからな~」ナデナデ

八九寺「…………はいっ! 必ず、また泊まりにきますっ!」ニコッ

────
──

 テクテク… テクテク…

暦「楽しかったか? 八九寺」

八九寺「っ……、ふぁい……」グズッ

暦「……すげぇ、楽しかったんだな」

八九寺「こんな気持ち、久しっ……ぶりですっ。いい妹さんをお持ちですね……」ゴシゴシ

暦「よく我慢したな。でも僕は、別にあいつ等の前でだって泣いていいと思ったぜ?」

八九寺「笑顔で帰りたかったんですっ。子供の最強の武器は、笑顔ですからっ」

暦「……そうだな」

八九寺「……あっ、下着を忘れてきてしまいました…」

暦「僕が宝物にしておくから、心配するな」

八九寺「いい雰囲気で言っても騙されませんっ、
    空気を読まない阿良々木さんに私は絶望しました……」

暦「そうかよ。まぁ、また取りに来ればいいだろ?」

八九寺「はいっ、そうですね……──」クルッ

八九寺「では阿良々木さん、いづれまたお会いしましょうっ」タタタッ

暦「おう、またな」

 テクテク… テクテク…

八九寺「阿良々木さーん!」

暦「ん、なんだー、八九寺ー?」



八九寺「さいっこうの、プレゼントでしたーっ!」ニコッ



暦「……おう。八九寺、前みて走れよー!」


 僕ハ屹度、正シイ選擇ヲシタンダラウ。
 八九寺ノ明ル過ギル其ノ笑顏ハ、坂道ノ先ニ消エテイツタ。

────────────────────
 
  ─────────

 
 キコキコキコキコ──……

駿河「遅いぞ、阿良々木先輩っ」

暦「……まだ15分前だぞ。いつからいたんだよ神原後輩」

駿河「罰金だな」

暦「……宇宙人やら未来人やら超能力者が出てくるような、
  超人気SF作品の1シーンを真似るんじゃない。こっちが飲まれるだろうが」

駿河「まあ、実は私もついさっき来た所だ。では行こうか、阿良々木先輩」

暦「行くって、どこへ。公園とかか?」

駿河「阿良々木先輩の家だっ」

暦「僕ここまで来る意味なかったじゃん!!」

駿河「それは違うぞ、阿良々木先輩。いつも阿良々木先輩との雑談が楽しいから、
   こうして学校からの帰り道を再現したのではないか」

駿河「私は、帰り道での他愛もない雑談こそ……そう、そこに青春があると思うのだっ」

暦「それ、僕の徒労のこと、まったく考えられてないよな……」

駿河「……もう、できなくなるのだ」ボソッ

暦「えっ?」

駿河「先輩方は来年度からいないのだぞ? 話したくても、話せなくなるのだ」

暦「……、そう……だったな。じゃあ、歩くか」

 テクテク… テクテク…

駿河「単純にお話がしたかったのだ、阿良々木先輩。
   勝手な言い分だったな、まことにすまない」

暦「いや、僕も少し無関心すぎたよ。
  なんだかんだ言いながらも、僕だってもうすぐ引っ越すんだもんな」

暦「でもさ神原、文明の利器ってものがあってだな……。
  それに、別にずっと会えないわけじゃないんだし、あと一年したら僕達の大学にくるんだろ?」

駿河「では、阿良々木先輩。いつの時間に必ず通話をするとか、そういう習慣を決めないか?」

駿河「言わば、定時報告会だっ」

暦「それ、僕にとって不快になるだけのワードだな……」

駿河「む、何かあったのか?」

暦「いや、別に……」

駿河「ちなみに内容は、その日お互いがどんな妄想をしたのか、それについて語り尽くす場だっ」

暦「絶対に嫌だ!!」

 テクテク… テクテク…

駿河「……雑談って、何故にこんなに楽しいのだろうな、阿良々木先輩」

暦「あ? なんだ突然……それは多分、僕とお前だからだよ」

駿河「なるほど……私と阿良々木先輩は、きっと何かの縁で結ばれているのだろうな」

暦「そうかもしれないな」

駿河「ときに阿良々木先輩。だとしたら私達はどんな縁で結ばれているのだろうな」

駿河「私が考えるに……私達は『変態』という名の縁で結ばれていると思うのだ」

暦「……否定できないのが何より辛い!!」

駿河「例えて言うのなら、私と戦場ヶ原先輩は『スポーツ』の縁で結ばれていたとか……。
   そんなニュアンスで考えたところ、私達は『変態』という縁で結ばれているとしか結論付けられなかったのだ」

暦「……うわぁ! 思い当たる節がありすぎる!!」

暦「……いや、待てよ。『面白い人間』の縁、とかにできないのか、神原。
  お前はもちろん、僕も自分自身のことは面白いやつだと一応自負できるし」

駿河「私が証人となろう。阿良々木先輩はとっても面白い御人だっ」

駿河「ふむ、『面白い人間』の縁か。それも一理あるな……じゃあ、『ユーモアのある変態』の縁ってところか」

暦「足すんじゃない! 上書きしろ!」

────
──


駿河「……まあとりあえずは、私達二人の間にあるのは『SM』の縁ということでいいのだな?」

暦「全然違うぞっ!? 区切られた間、一体お前に何があったんだ!?」

駿河「……でも、深く考えなくとも、私達はどちらにしろ、いつか出会えていたというわけだな。
   阿良々木先輩に出会えたことに、何かの縁とかそういうことは、あまり関係ないのかもしれない。
   うん、きっとそうだな」

 
 自己完結シヤガツタ……。


暦「考えても無駄、か。そういう言葉で片付けられないのって、好きだぜ僕は」

駿河「私もだ阿良々木先輩」

 テクテク… テクテク…

駿河「……阿良々木、先輩」

暦「ん、どうした神原」

駿河「擽られると、どうしてああも身体が敏感に反応してしまうのだろうか」

暦「大分と話変わったな!? せっかくいい感じにまとめたんだから、今ので素直に雑談パート終わらせろよ!」

駿河「乳首を擽られた場合、快感が陰部の80~90%ぐらいらしいが……」

暦「こんなこと後輩の口から聞きたくなかった!!」

駿河「では、脇の下などはどれくらいの快感なのだろう。というより、脇の下であれだけの感覚なのに、
   では、おっぱいを触られたりしたら、どうなってしまうのだろう……!」

駿河「阿良々木先輩、揉んでくれ」

暦「くると思ったけど!」

 
 本氣デキヤガツタ。


暦「でもさ、神原。僕はそんなことのために、後輩の胸を揉むことなんてできないよ。
  先輩として、神原のことを──」

駿河「何を言っているのだ阿良々木先輩。私は肩を揉んでほしいのだが」

暦「またかああぁぁぁぁーーーー!!」

────
──

暦「神原。実はさ、僕今の流れ三回目なんだよ……」

駿河「そうだったか。ネタ被りとは済まなかった阿良々木先輩、私としたことが」

暦「それよりも、三回も同じことで釣られてしまった自分が不甲斐無くて……!!」

駿河「入れ食い状態だなそれは……よし、
   今度からは阿良々木先輩のことを〝小アジ先輩〟と呼ぶことにしよう」

暦「勘弁してくださいッ……!!」

駿河「それよりほら、阿良々木先輩。足を止めずに」

暦「あ、おう……」

 テクテク… テクテク…

駿河「阿良々木先輩」

暦「なんだよ」

駿河「揉んでくれ」


 三歩。


暦「僕はニワトリほど馬鹿じゃねぇよ!!」

駿河「……うむ、気負いするな阿良々木先輩。その私の心情を的確に読んだ上での返し、
   ニワトリだったら到底できないことだ」

駿河「それよりか、その先見の明で、阿良々木先輩なら後の世界の在り方を予見出来るかもしれないぞ。
   現代の佐久間象山の誕生だ!」
 
暦「本当にあったらいいな、そんな力」

駿河「阿良々木先輩。私の曾々孫の、セワシくんは元気でいるか?」

暦「知らねぇよ! 僕はネコ型ロボットじゃない、ていうか猫はもう沢山だッ!」

────
──

駿河「小学生の頃の卒業式練習の際、五年生と一年生の台詞の読む早さが合わなくて、
   しどろもどろになった経験は無かったか? 阿良々木先輩」

暦「……まあ、あったな」

駿河「その時の一年生の読む早さが、ちょうどドラえもんが道具を出すときの台詞の早さにそっくりでな。
   あれは私だけだったかもしれないが、すごく面白かったなっ!」

暦「うーん……何となく分かるかも。ていうかよくそんなことに気付いたな、
  小学生が面白がるようなことじゃないぞ、それ」

駿河「『みんなで通った、ガリバートンネル』」

暦「ガリバートンネル~、って感じか」

駿河「それだ阿良々木先輩っ! ハッハッハ!!」

暦「これ、絶対に声に出さないと分からない話だよな……」


駿河「……ときに阿良々木先輩。
   先輩は映画版の主題歌では、何が一番好きなのだ?」

暦「ん、難しい質問だな……僕は『のび太の小宇宙旅行(リトルスターウォーズ)』の主題歌かな」

駿河「やはり阿良々木先輩の審美眼、いや、感性は本物だ! 
   私もそれだと思うのだが、だったら『のび太の雲の王国』の主題歌も良いと思うのだ」

暦「うわぁ~懐かしい! レンタルビデオ店で借りたのを憶えてる! 
  お前も良いセンスだよ、神原」

駿河「いや、阿良々木先輩はやはり素晴らしい御方だッ!」
 
暦・駿河「ハッハッハッハッハ!」


 僕ハ──僕等ハ『ドラエモンノ縁』デ結バレテイルノダト、サウ確信シタ。

もうこんな時間か、誰か保守頼む
風呂はいって寝る、寝る前に少し書くかもしれないけど

────────────────────
 
  ──────────


暦「ただいま~」

駿河「お邪魔しますっ」

月火「おかえり~、ってお兄ちゃん? 
   今日はまた違う女の子を連れているんだね」

暦「それ、お前の台詞じゃないぞ月火ちゃん」

駿河「妹さんか? 初めまして、神原駿河だ。
   本日は阿良々木先輩の、性奴隷としてここに連れてこられた。
   以後、宜しくなっ」

暦「月火ちゃん、この通り、大分と頭のおかしい人間なんだ。仲良くしてやってくれ」

月火ちゃん「え、神原さんって……火憐ちゃんがいつも言ってる神原先生?」

暦「そうだ」

駿河「ツッコミが無いと思ったより、傷付くものがあるのだな……」

 ダダダダダダダダッ────

火憐「えっ、ええ!? な、なんで大御師様がここにっ!?」

駿河「おう、ペテロか。今日は阿良々木先輩との用で来た、戒律は破っていないな?」

火憐「はいっ!」

暦「僕の知らない所で何があったんだ!?」

駿河「いや、ただのお遊びだ阿良々木先輩、私らだけの師弟ごっこだ。でも、流石は阿良々木先輩の妹さんだ、
   ノリが他の子達より遥かに良い、群を抜いている!」

火憐「戒律の一! 『一日五エロ』!」

暦「てめーは僕の妹になんてこと教えてんだよ!?」

暦「お前らが初対面の時教えたじゃねぇか、『火憐ちゃんはバカだから気をつけろ』って」

駿河「うむ、それは承知の上だ。ただ阿良々木先輩、〝バカ〟ということは、良い捉え方をすればつまり、
   それは〝単純〟ということなのだ」

火憐「いや~」

暦「言っておくが火憐ちゃん、褒められてないからな」

駿河「ペテロはバカだが──あ、いや阿良々木先輩の妹さんなのに済まない……でも、
   この子は要領がいい。実際戒律をたててくれとはじめに言ったのも、ペテロなのだ」

暦「うん、真面目な話の腰を折るようで悪いけどさ。僕の妹を〝ペテロ〟って呼ぶのを止めるんだ神原」

駿河「それで結局、ケファがどうしても私の教えの元で、自身を磨いていきたいと言うので、
   私なりに悩み考え、きちんとした戒律をたててやったのだッ」

暦「悩み悩んだ末になんで『一日五エロ』がランクインするんだ!! そして神原、
  ペテロと呼ぶなと言ったからって、イエスが実際ペテロのことをそう呼んでいたかのように、
  火憐ちゃんのことを〝ケファ〟と呼ぶんじゃない!」

火憐「大御師様、兄ちゃんの部屋はこちらです」スタスタ

駿河「知っている、案内されるまでもないぞ」スタスタ

暦「……ったく、もしかしたらこの街で最凶のコンビかもしれないな……」

月火「仲良さそうだね二人とも」

暦「まあ、神原と会った時から、火憐ちゃんと気が合いそうだなーとか、
  頭の隅でそう思っていたけれど……」

月火「懐かしんでいるところ悪いけど、お兄ちゃんの部屋にあの二人だけでいかせていいのかな?
   私はたいへんなことになると思うんだけど」

暦「ナイス月火ちゃんッ!!」ダダダッ

────
──


結局ノトコロ、僕ト神原ハ家ヲ出ル事ト成ツタ。
例ノ遊ビハ、神原ノ家デ行ハレル事ニ成ツタノダケレド──
今囘ノ教訓ハ、決シテ僕ノ部屋デ、神原ト火憐チヤンヲ一緒ニサセテハナラナイト云フ事ダラウ。


駿河「なんだ、あれでは阿良々木先輩の家に行った意味がないではないか」

暦「僕の家にエロ本探しにきたんじゃないだろ、神原。
  それに僕の洗濯前のパンツを盗むためでもない」

駿河「できれば使用済みティッシュの確認もしておきたかったんだが」

暦「反省しろ!!」

暦「……まあ、それももちろんあるんだけど。なんかあいつ等見てたらさ、絶対聞き耳立てやがるなと思ってさ」

駿河「私の遊びの話か?」

暦「ああ。そう考えたら僕の家って、かなりのデンジャラスゾーンになるって言うか……。
  お前だってお婆さんに見られて嫌なことぐらいあるだろ、親しき仲にも礼儀ありだ」

駿河「いや、お婆ちゃんはもう私の全裸を見ても何も言わなくなったぞ」

暦「もう手遅れだった!!」

駿河「ほらっ、阿良々木先輩。走るぞッ」タタタッ

暦「っていきなりだなおい!」キコキコ─

駿河「私だけで、こんなに尺をとってしまっては、悪いのでなっ」タタタッ

暦「僕達は>>1が力尽きるまで、走り続けるぜっ!」キコキコ─

────────────────────
 
  ───神原駿河宅───


駿河「さあ、あがってくれ」

暦「お邪魔しま──って」

暦「……おい神原、僕にこの下駄箱の上に置かれているBL本を、片付ける権利をくれないか」

駿河「む、そこにあるのは登校前に読む用なのだが──」

暦「片付けさせろッ!!」

────
──

暦「ったく、少しは節度を弁えろってんだ」

駿河「朝にBL本は常識ではないのか……!? 朝刊に相並ぶほどのものだと、思っていたのだが……」

暦「朝っぱらから新聞読む代わりにBL本読む習慣なんて、世界中のどこにもねぇよ!!」

駿河「そもそも、あれはお婆ちゃんとの兼用であるし……」

暦「お婆ちゃん御用達なのかよぉーー!!」

駿河「私が引き込んだのだ。BLの素晴らしさを、熱弁してな」

暦「祖母公認か……逆に尊敬するよ神原」

駿河「……よし、ではそろそろ始めるか」
 
駿河「阿良々木先輩。アイマスク、それとゴム手袋を着用してくれ」

暦「お、おう。待ってくれ……よし、これでいいか?」


 實ノトコロ、神原宅ニ着クマデニ、
 〝老人體驗〟ノ大體ノ流レハ、レクチャーシテモラツテイタ。


駿河「うむ、準備は万端だなっ。では、少し待っていてくれ阿良々木先輩。
   お粥を作ってくる」

暦「おお、意外と本格的なんだな」

駿河「裸エプロンで作ってくるからな、阿良々木先輩」

暦「!?」

駿河「では、いってくる」スッ


 ちくしょう神原、やりやがるな。
このアイマスクは、老人の視力低下を再現するためなんかじゃない。
実際、僕がジジイになって目を悪くしたとしても、もし介護師のお姉さんが、
裸エプロン宣言なんてしやがった日には、無理やりにでも刮目するだろう。

 神原の真の目的は、このアイマスクによっておこる焦燥感を、僕に与えることだ──


────
──

暦「……」ムラムラ

暦(だから敢えて、〝裸エプロン〟と布石をおいてから、調理にでかけたわけか……)

駿河「できたぞっ、阿良々木先輩」カチャカチャ

暦「おお、そうか──」

駿河「ってうわぁ!」ガチャ-ンッ

暦「お、おいっ! 神原大丈夫か!?」

駿河「マスクを外してはいけないッ、阿良々木先輩!」

駿河「私は大丈夫だ、また代わりのをとってくるから待っててくれ」カチャカチャ

暦「そうか……次は気をつけろよ」

暦「……」
 

 あいつは本当に、食器を落としたのだろうか。
いや、落としていたとしても、その中にお粥はあったのだろうか──
神原なりのドジッ子アピールかもしれない。
五感の内の一つが欠けるだけで、こうも不安になるものなのか。不確定要素が多すぎる。


駿河「いやぁ先程は驚かせて済まなかったな。じゃあ……──」

駿河「ふぅー……ふぅー……」

暦「……ッ、……!?」

暦(か、可愛い……!!)

暦「か、神原……?」

駿河「ふぅー……よし、はい阿良々木先輩、アーンだ」

暦「あ、あーーん……──ッ!?」

暦「……!! あふぃッ! ……あっつ!!」

駿河「だ、大丈夫か……それで、お味はどうだ阿良々木先輩?」

暦「はぁ……はぁ……おい神原後輩。味はともかく、
  今お粥を冷ましてくれていたんじゃないのか?」

駿河「私はただ出産の際することになる、呼吸法の練習をしていただけだ」

暦「今すんなや!」

駿河「まあまあ……はい、もう一口。アーン……──」

暦「最早冷ますフリすらしてねぇじゃん!!」

駿河「おっと、忘れていた……ふぅー……ふぅー……」

暦「次は、ちゃんとやってくれてるんだろうな」

駿河「お粥を掬ったスプーンを前に、呼吸法の練習をしているから心配ないぞ、阿良々木先輩」

暦「呼吸の練習はどうしてもなのか!?」

駿河「ほら、アーンしないと食べれないぞっ。阿良々木先輩」

暦「あ、あーーん……っん」パクッ

駿河「どうだ、改めてお味のほどは」

暦「うん……まあ、お粥だな。うまいよ」

駿河「そうかぁ……! よかったッ!」

暦「……」

暦(今、裸エプロンで喜んでいるのかな……)ドキドキ

暦「……」ドキドキ


 …………。


暦「……あれ、神原?」スッ

駿河「んっぁ、いやっ」ビクッ

暦「ッ!? 目の前にいるならなんか言えよッ!」

駿河「手を伸ばしてきたから何をするのだろうと思ったら、
   そんなに私の二の腕を触りたかったのか、阿良々木先輩」

暦「に、二の腕ぐらいでそんな声あげんな!!」

暦(ゴム手袋で、実際どこを触ったか分からなくなっている……!)

駿河「別にいいではないか、むしろ女子高生はこういう声を常日頃出すべきだと思うぞ」

暦「お前だけだ!」

駿河「やはり行為に到る時となれば、色々うまくなくてはな。これは所謂発声練習だ!
   そうだ、バスケ部にも練習として取り入れよう」

暦「是非とも同伴したい練習だけれどッ!!」

────
──

暦「でもこの遊び、なんていうか……すっげぇ不安になる遊びだな」


 …………。


暦「……ふっふふ、もう騙されないぞ神原。早く声を上げないと、
  お前の苦手な擽りが待ってるぜ?」

 …………。

暦「……おいっ」スカッ

暦「あれ……神原ー?」


 …………。


暦「神原ぅーー!?」

駿河「……ククッ、あっはっはっは! 阿良々木先輩、
   放置プレイとは正にこういうことを言っているのだろうなっ。私の名前を不安げに呼ぶ阿良々木先輩、
   とても新鮮であった。私もサディズムに目覚めそうだっ」

暦「畜生いつか同じ目にあわせてやるッ!!」

駿河「はぁ……楽しかった。もういいぞ、阿良々木先輩。
   お蔭でいいデータが取れた、この遊びはアリだな」

暦「ったく、こんな遊び誰が楽し……!?」シュル─

駿河「む、どうかしたのか? 阿良々木先輩」キョトン

暦「本当に裸エプロンだったぁぁぁーーーー!!!!」


今日ノ事ハ、一先ヅ水ニ流シテヤル事ニシタ。
寧ロ、機嫌ガ良クナツタノデ、神原後輩ニハ晝飯ヲ奢ツテヤツタ。
改メテ──裸エプロンノ偉大サヲ目ノ當タリニシタ僕ダツタ。


────────────────────
 
  ──────────

暦「じゃあな神原、今日は楽しかったぜ」

駿河「こちらこそ。私の遊びに付き合ってもらって、ありがとう阿良々木先輩」

暦「いいや、バレンタインのお返しなんだから……これで良かったか?」

駿河「うむ! 感無量だッ。それと阿良々木先輩、定時報告会の件だが、
   毎週水曜の午後十時からで、問題はないだろうか?」

暦「それまだ引っ張ってたのかよ!? 全ては内容次第だ、
  妄言なんてものに、わざわざ通話代を掛けてはならない!」

駿河「そうか……わかった。では、毎週土曜の午後八時頃に、会いに行こう」

暦「そこまでして妄想雑談がしたいのかよ!?」

駿河「私は、自分の妄想を聞いてもらうためだけに存在しているからな。
   誰かに聞いてもらわねば、命を落としてしまうのだ阿良々木先輩」

暦「さっさと死んでしまえッ!」

駿河「……まあ、冗談はこれぐらいにして。では阿良々木先輩、また近い内に」

暦「ああ、またな神原」

 タッタッタッタッタ──

暦「……」

暦「……僕も帰るか」

暦「……」キコキコ─

 prrrrr… prrrrr…

暦「ん……はぁ?」カチャッ

 着信:神原 駿河

暦「まだ別れてから30秒も経ってないぞ、神原」ピッ

駿河『さっき言い忘れたことがあったのだ、阿良々木先輩』

駿河『……私達は縁で結ばれている。以心伝心の上位互換、それが私達を結んでくれている──』

駿河『──だから私は決して悲しんだりしないぞ、阿良々木先輩。これは別れではないのだからなッ』

暦「……当たり前だ。まったく、下らんことに通話代を掛けるんじゃない」

駿河『では改めて──また近い内に会おう、阿良々木先輩』

暦「ああ、改めて──またな、神原後輩」ピッ

────────────────────
 
  ────帰宅────


暦「ただいまー」

火憐「おっかえり兄ちゃん、大御師様はもう帰ったのか?」

暦「神原先生でいい、それとアイツに変なこと吹き込まれてないよな? 
  そもそも戒律ってなんだ」

火憐「戒律の二! 『長兄性癖ノ把握』!」

暦「オーケーわかった、神原を殴ってくるッ!」

火憐「ち、ちょっと兄ちゃん待てよー」ズルズル

暦「はぁ……まあいいや。妹がどう育とうと、僕の知ったことじゃないし」

火憐「戒律の三! 『近親相姦擁護ノ心』!」

暦「やっぱ殴ってくる!!」

────
──

暦「なぁ、ホワイトデーの話なんだけどさ」

火憐「えっ! 兄ちゃんあたしに何かくれるのか!?」キラキラ

月火「え、お兄ちゃん何かプレゼントしてくれるの?」キラキラ

暦「ただ考えて選ぶのを、放棄しただけだけどな。何か欲しいものはあるか?」

火憐「私、ベンチプレスが欲しいなー!」

月火「私は新しい浴衣が欲しい」

暦「まあ、なんとかしよう。お前らの場合、雑談で終わっていいよな」

月火「ええー、なんか私達の扱いがぞんざいじゃないお兄ちゃん? 
   やけに神原さんのパートが長かったし」

火憐「それは大御師様だからな~」

暦「どっちかって言うと、神原の場合収集がつかないだけだ」

月火「じゃあ私達も雑談すれば出番は増えるのかな?」

暦「おうよ。出番は勝ち取るもんだぜ月火ちゃん」

月火「うーんいいこと言うねお兄ちゃん。よし、じゃあなんの話しよっか」

 prrrrr… prrrrr…

暦「ん、誰だ?」

 着信:千石 撫子

月火「ん、戦場ヶ原さんから?」

暦「……月火ちゃん、どうやら勝ち取られたみたいだぜ……。話はまた後でな」

月火「……修行してきます!」タタタッ

火憐「えっ、何しにいくんだ月火ちゃんーっ」タタタッ

暦「……ったく」

暦「もしもし、千石か?」ピッ

撫子『こ、暦おにいしゃんですかっ!?』

暦「相変わらずだな千石は。そういえば、お前にもちょうど訊きたいことがあったんだよ。
  それで、千石はどうして僕に電話してきたんだ?」

撫子『どうしてって……意味は、無いけど……したくなったから、かな…』

 
 チクシヨウ、可愛イ。

暦「そうだったか、じゃあ一つ訊いていいか千石。お前、何か欲しいものはあるか?」

撫子『え、欲しいもの……? うーん……』

暦「別に容在るものじゃなくてもいいぜ。僕が一つ、何でもプレゼントしてやるってことだ」

撫子『えぇ! なにか……あったっけ、最近』

暦「ほら、もう少しでホワイトデーだろ?」

撫子『あ、あぁ……なるほどね』

暦「突然に欲しい物あるかって言われてもな、まぁまた日を改めてでも──」

撫子『ううんっ。あるよ、撫子…欲しいもの』

暦「おっ、そうか。なんだ千石、暦お兄ちゃんに教えてくれ」

撫子『暦……お兄ちゃん』

暦「え……?」

撫子『のっ! 考えたのなら、なんでも……』

暦「あ、僕が考えていいってことか、なるほどな…」

撫子『…うん……』

暦「あっ……えーっと…」

暦(なんだこの空気……千石は何でもいいのか。結局考えることになるのか……)

暦「……分かった、じゃあ一晩時間をくれ。明日には間に合わせるから、千石は暇か?」

撫子『ひまひま、すっごい暇だよっ。撫子友達いないもの、暦お兄ちゃんみたいに』

暦「その例えは嘘でも本当でも、どっちでも僕を傷つけているッ!」

撫子『愛と勇気だけが、暦お兄ちゃんの友達だもんね』

暦「実にそれっぽく聴こえるんだが、今ここで言う台詞じゃないぞ千石!」

撫子『ふふふっ……じゃあね暦お兄ちゃん。楽しみに、してるね』

暦「……ああ、それじゃあな千石。また明日」

撫子『うん……ばいばい、暦お兄ちゃん』

暦「……」ピッ

 ツー… ツー… ツー…

暦「……どうすっかなー」


────
──

暦「……もう9時か…」

暦(夕飯中も千石のプレゼントを考えてたのに……何も思いつかない。
  千石も千石だよな、僕のセンスをなんの根拠もなく信じちゃって…)

火憐「兄ちゃん、あたし先風呂入っていいか?」

月火「じゃあ次は私だねっ」

暦「入ってこい入ってこい、女の子が残り湯に浸かるもんじゃ……ん?」

暦(女の子……そうか、こいつ等がいるじゃないか!)

火憐「じゃ、いってきまーす!」タタタ─

暦「……月火ちゃん」

月火「え、どうしたのお兄ちゃん?」

暦「出番だ」

────
──

暦「と、いうわけで尺を貰ったぞ月火ちゃん。良かったな」

月火「でも話の流れに沿ってるのこれ……?」

暦「安心しろ、僕とこうやって話せているってことは何かあるってことだ」

月火「それならいいけど……」

暦「まあまあ、夜は長いんだ。ゆっくり話そうぜ」

月火「……うん、うんうん。そうだねそうだよねっ。
   せっかくの出番なんだもの……私、お兄ちゃんとたくさんお話したいなっ」

暦「そうこなくちゃ。……でさ、月火ちゃん」

月火「んー?」

暦「さっき『話の流れに沿ってるの』って言ったよな」

月火「言ったね」

暦「ストーリーってのは、主人公にアクションを仕掛けることによって、
  成り立っていると思うんだ。読者や視聴者は、
  〝主人公〟という存在に、自分を無意識に投影している」ペラペラ

暦「主人公がワクワクすればワクワクする、ドキドキすればドキドキする。
  ヒロインを登場させることによって、
  擬似的に女の子と一緒にいるという体験ができる…これが──シナリオ論だ」

月火「なんかすごい真面目な話だね……」

暦「だから月火ちゃんが僕の妹として作品に登場しているのも、しっかりと意味があるんだ。
  お前の声をあてている声優さんだって、すげぇ有名な人なんだぞ」

月火「なんかすごいメタな話だね……」

暦「お前はおっぱい担当だ」

月火「急にひどい話になったね!?」

暦「よく考えてみろよ月火ちゃん。僕がおっぱいを触ることによって、
  それを緻密に文章化することによって、読者や視聴者はそれを疑似体験することができるんだ。
  それってすごいことじゃないか」

月火「なんだか背筋がゾクゾクしてきたよ……!」

月火「ていうかお兄ちゃん!? まるで私が当たり前のように、
   おっぱい登場させてるみたいな言い方しないでくれる!?」

暦「お前の本体はおっぱいだろ?」

月火「私のことそんな目で見てたの!?」

暦「お前の知らないところでも、いつでも見ているぞ。
  僕はお前の、兄貴なんだからな」

月火「今そんな台詞を聞かされても、
   ただお兄ちゃんの元々低い価値が下がるだけなんだけど」

暦「でもさ、揉まれると大きくなるって言うぞ?」

月火「小さくなるとも言うよね。ものは言いようだよお兄ちゃん」

暦「それだ! じゃあこう思うんだ月火ちゃん、
  『みんなが私のおっぱいを求めてる』と」

月火「死ね」

月火「それよりおっぱいなら、羽川さんとかの方がいいじゃん。
   元々、『羽川のおっぱいハァハァ』とか言ってたんだし」

暦「あの時に既に、お前らのおっぱいで我慢するって結論に至ったじゃないか。
  羽川にそんなことはできないよ」

月火「もっと妹を労われ!」

暦「逆だ。もっと兄を労われ、だから揉ませろ」

月火「妙に正論くさいけど断じて違うっ!」

月火「もうこの話は終わり! これ以上は私の身体が危ない!」

暦「なんだ、もう終わりか? まだまだ尺はあるってのに」

月火「え、いや……違う話をしようってことなんだけど」

暦「お前とおっぱい以外の話をして何になるんだよ」

月火「お兄ちゃん、少し生き方を見つめ直した方がいいと思うよ」

暦「……じゃあ、なんの話をするんだよ」

月火「そう言われると……とりあえず、しりとりでもしようよ」

暦「しりとり~?」

月火「じゃあいくよー。しりとりの〝り〟」

暦「……りんご」

月火「ゴリラさん」

暦「おい」

月火「あっ、ごめんごめん。お兄ちゃん、〝ら〟からお願い」

暦「……ラスク」

月火「クシャトリア」

暦「アメリカ」

月火「顔」

暦「おっぱい」

月火「おい」

暦「別に間違ったことしてないだろ!?」

月火「台詞から『これが言いたかっただけだろ』ってオーラが滲み出てるよ!! 変態!」

暦「お前だって最近『Kanon』を見たからって、動物にさん付けしてんじゃねぇよ!」

月火「うぐぅ~……」
 
暦「吐き気がするからやめろ。そんな調子じゃ、ファイヤーシスターズの名が廃るぞ」

月火「別に私は火憐ちゃんみたいに強くないよ。
   実はお花が大好きな──乙女(おとめ)なんだよっ!」ニコッ

暦「全国の乙女(おとめ)に謝れ。お前の場合……、
  乙女(おつおんな)と言ったほうがそれっぽい」

月火「ダサ!? つかひどッ!」

暦「そこまで乙女になりたいんなら、
  いっそ『オツオンナ月火』に改名すればいいじゃないか」

月火「急に芸人臭のする名前になったね!?」

暦「……んーっ! やっぱりお前相手だと楽だなー」

月火「えっ、どうしたのいきなり」

暦「いやさ、他の奴らと話すと必ずといっていいほど、
  僕がツッコミに徹さなくちゃいけなくなるんだよ」

月火「あ~~……なるほど」

暦「お前相手だと僕がボケることができるからな。わざわざ僕がツッコミを入れなくても、
  オツオンナ月火のツッコミがある」

月火「そのあだ名やめて! ~~~~、……よし、一回リセットしよう」

暦「えっ?」

────
──

月火「これでよし」

暦「勝手に一段落おくな! そもそもお前に尺を取り過ぎだ!」

月火「まあまあ、本編の間話なんだし。またーりゆたーりしてもらおうよ」

暦「いやだ、僕もう戦場ヶ原と電話してくる」

月火「えぇ!? それじゃあ火憐ちゃんの出番はどうなっちゃうの!?」

暦「ぐっ……忘れてた」

月火「火憐ちゃんがお風呂から上がってくるまでが私の出番、
   そっから先は火憐ちゃんの時間なんだから。
   お兄ちゃんもなーなーに返答したりしないでよね」

暦「まぁ確かに、いくら小生意気な妹達も──僕の誇れる、妹達なんだもんな」

月火「今、いいこと言ったよお兄ちゃん!」

暦「いいこと言ったから終わっていいか?」

月火「ダメに決まってんじゃん」

暦「……」

月火「……お兄ちゃん、もしかして私達のこと、嫌いなの?」

暦「大好きと言ったら嘘になるし、大嫌いと言っても嘘になる」

月火「どっちつかずなんだね」

暦「大大だ~い好きだ」

月火「振り切ってたんだ!」

月火「じゃあなんで話してくれないのさ。兄妹だからって適当に流して……」

暦「……あのさぁ月火ちゃん。お前、勘違いしてるぜ。
  仲が良い──その相手が好きだからって、
  話を盛り上げてるってわけじゃないんだぜ、僕は」

暦「本当に馬の合った人間同士ってのは、互いに黙っててもギスギスしないような、
  そんな仲を言うんだよ。神原とかは例外かもしれないけど……」

月火「……」

暦「……」

 …………。

月火「……」パァッ

月火「お兄ちゃん、私そろそろお風呂入ってくるねっ」ニコッ

暦「おう、行ってこい行ってこい」

────
──

火憐「ふぃ~、良い湯だったー」

暦「まずは服を着るんだ火憐ちゃん、話はそれからだ」

火憐「今さら兄ちゃんと話すことなんてあるかー? ……んしょ」

暦「みんなとそれなりに話している中、お前とだけ話さないってのは、
  なんていうか、全てを破綻させてしまうかもしれない」

火憐「よくわかんねぇけど、じゃあ何話す? 上腕二頭筋の話でもするか」

暦「妹と筋肉の話なんてしたくないッ!」

火憐「じゃあ何だよ……兄ちゃんには何か話の種があるのか?」

暦「月火ちゃんとは前に、恋について語ったけど」

火憐「……あぁ、おっぱい云々の話のやつか」

暦「なんで知ってんの!?」

火憐「兄ちゃん。あたしは半径2kmの範囲内なら、
   耳打ちで話されたことだって聞こえるんだぜ?」

暦「すげぇ!? ていうかなんだその目茶苦茶な設定、
  お前は北斗新拳伝承者なのか!?」

火憐「走ると新幹線より早いんだぜ?」

暦「ひのうまポケモンかよ!? 僕だったから良かったものを、
  いや、そろそろ僕も突っ込みきれんわ!」

火憐「あ、目茶苦茶と言えば一つあったぞ。
   ハワイの女の子とモンスターの話があるじゃん?」

暦「あるな」

火憐「十数年後にパートナーの女の子をおいて、沖縄に行っちゃうんだよ」

暦「……あぁ、前、火曜日だったかにやってたやつか。木曜日だったっけ?」

火憐「沖縄に行っちゃったんだよ、あたしはそれが許せない……」

暦「まぁ、そうでもしないといつまでもハワイにいるままで、
  マンネリ化しちゃうってのもあるんだろう──」

火憐「ふんッ!」

暦「ぅわわぁ!? な、何しやがる火憐ちゃん!?」

火憐「兄ちゃんは何も分かっちゃいないッ、『オハナハ…カゾク』
   ってアイツも言ってたのに!」

暦「それさ、アニメ業界に対して言ってるならキリがないぞ」

火憐「後付け設定ってやつだよな……はぁ」

暦「そんなに病むなよ火憐ちゃん。
  新しい層に見てもらうには、しょうがないことなんだよ」

火憐「あたしの中のスティッチは死んだぜ……」

暦「最後の最後まで隠してたのに言っちゃったよ!」

火憐「まだ話は終わってないぞ兄ちゃん。沖縄編のストーリーに、
   〝リロに会える〟って回があったんだよ」

暦「へぇ、それはファン必見の話だな」

火憐「すごい感動した……それで、リロが十数年前に渡せなかった、
   ネックレスをスティッチが貰うって終わり方だったんだけど──」

暦「いい話じゃないか」

火憐「──次回予告の映像で、首に掛けてなかったんだよ」

暦「いい話じゃないな!?」

火憐「な、目茶苦茶だろ? そんなにネックレスがいらなかったのかな……」

暦「そこらへんは最早、制作側の問題とかになるよな」

火憐「あたしは愛を持って、作ってほしいって思うんだ」

暦「そうだよな、やっぱり作る側にもそれなりの愛がないと、
  モチベーションも上がらなそうだしな……頑張ろうぜ火憐ちゃん」

火憐「あたし達も、愛されるキャラになるってことか?」

暦「ああ。僕はともかく、お前ならきっと愛されるさ、
  もっともっと綺麗になれよ」

火憐「兄ちゃん……」

暦「……なぁ火憐ちゃん、少しちょっと遊ばないか?」

火憐「あ、遊ぶ? 別にいいけど……何するんだ兄ちゃん?」

暦「〝老人体験〟って言ってな……」

────
──

火憐「……で、あたしは目を隠して…」

暦「よーし、準備は万端だ」

火憐「なぁ兄ちゃん、これ本当に遊びなのか?」

暦「とっても楽しいぞー」

暦(主に僕がな)

火憐「そうかー、なんか見えないとソワソワするな」

暦「よし、お話ししようぜ火憐ちゃん。つかぬことを訊くけど、
  女の子ってどんなものをもらったら、喜んだりするんだ?」

火憐「それは愚問だと思うぞ兄ちゃん。プレゼントってのは、
   その人の想いによって、価値が変わると思うからな」

暦「……」

火憐「……あれ、兄ちゃん?」

暦「……」

火憐「……あれ」スカッ

暦「……」

火憐「…………」シュル─

暦「目隠しは取っちゃいけない火憐ちゃんッ!」

火憐「うわッ!? 兄ちゃん、いたなら返事しろよ!」

暦「だめじゃないか火憐ちゃん。
  〝どんな状況でも、遊びが終わるまでは絶対に目隠しを取ってはいけない〟、
  これが第一のポイントなんだ」

火憐「うぅ、これ、楽しいか?」

暦「まだ始めたばかりだろ? これから僕が、
  多彩な仕掛けを振り撒いていくからな、楽しみにしておけよ」

火憐「……じゃあ」

暦「……そうか、やっぱり気持ちが大切だよな。いやなにを隠そう、
  ホワイトデーのプレゼントをどうするか、って話なんだけどな」

火憐「なんだその話かー、あたしらに気なんて遣わなくてもいいのに。
   また、兄ちゃんにチョコを作ってあげたいぐらいだ」

暦「お前の場合はオガクズだろうが、カカオ豆砕いただけで何がチョコだ」

火憐「カカオ100%のチョコレートって言えば、それはもうチョコなんだぜ」

暦「せめて形を変えろよ!」

火憐「変えたろ?」

暦「もう一段階!」

火憐「ひとえに、愛だぜ兄ちゃん。愛さえあれば何でも許されるんだぜ」

暦「そうか、やっぱり愛だよな。愛ってやっぱりそういう、なんていうか、
  神秘的な領域のものだよな」

火憐「愛ならいつでも補給できるぞ」

暦「補給!? 現実的だな!」

火憐「今リッター161円だったかな」

暦「愛って液体燃料だったのか!?」

火憐「少し前までは140円台だったのに、中東辺りでの紛争で値段上がったんだよなー」

暦「高騰してんの!? ていうか輸入してるのか、愛を!?」

火憐「日本には真心が足りないんだよ、兄ちゃん」

暦「なんか深けぇぇぇぇぇぇ!!」

火憐「あたしなりの例えだぜ」

暦「馬鹿がよく考えたじゃないか。ていうか、目隠しが只者じゃない感を引き立たせてるな……」

暦「それで火憐ちゃん、そう言えばさ、いま僕全裸なんだよ」

火憐「へぇー──って何してんだ兄ちゃん!?」

暦「お前がその目隠しをしているからな。これくらいしないと、つまらないだろう」

火憐「いや、別に今さら兄ちゃんのはだ、裸なんてどうでも……」

暦「そうか。今な、お前の顔の目の前にあるぜ」

火憐「ッ!? な、なにがだよ」

暦「もう火憐ちゃんだって大人だろ、こういうことばっかりはさ。
  分からないとは言わせないぜ。あ、でも僕のだから気にならないんだっけか、
  なんかそれはそれで淋しいな」

火憐「で、でも本当はアレだろ? 実は脱いでないとかなんだろっ」

暦「そう思えばそうなんだろうよ。火憐ちゃんには選択する権利がある、
  それがその目隠しだ」

火憐「……、月火ちゃんは……まだ風呂、だよな?」

暦「だったらこんなことしないって……」

暦(まぁ、脱いでないけどな)

火憐「……」モジモジ

暦「……ほーれっ」

火憐「ッ……」ビクッ

暦(面白い)

暦「どうしたんだ火憐ちゃん、顔が真っ赤だぞ」

火憐「赤くなんか、なってないッ」

暦「恥ずかしいならちゃんと言えよ。僕が火憐ちゃんの立場だったら、
  多分恥ずかしいけどな」

火憐「ふ、ふんっ」

暦「」ニヤニヤ

火憐「全然、楽しくない……」

暦「僕は超楽しいからなー、ほ~れほ──」

 此ノ時、僕ハ侮ツテイタ、本音ヲ其ノママ吐露シテシマッテイタ。
 何故火憐チヤンノ前デ、態々逆撫デスルヤウナ事ヲ言ツタノダラウ。
 其レニ氣附イタ時ニハ──


火憐「」グジャッ

暦「…………えっ」


 火憐チヤンノ右ストレートガ、僕ノ股間ヲ、滅茶苦茶ニ潰シテイタ。


暦「えっ……あ、あぁ……ぎ──」ガクガク

暦「ぎゃあああああああああああああああああああーーーーーーーー!!!!」

火憐「」シュル─

火憐「……服、着てるじゃんか。兄ちゃんの馬鹿ぁー……!」タタタ─

暦「いっ、痛ってえええぇえぇええぇえぇぇぇああぁぁぁああぁあ----!!!!」

忍(ぬぅ……五月蝿くて寝れんわ、もう少し静かに痛がってくれんかの)

暦「ううぅぅぅ……ハァッ、ハァッ…──いってぇ……!!
  し、忍……忍出て来いッ!」

忍「……情けない限りじゃ、我が主様よ」スゥ─

忍「ッ……──」カプッ

暦「──……ッ…」

暦「……な、なんて妹だ…使い物にならなくなったら、
  どうするつもりだったんだ…」

忍(普通の人間だったら死んでおったわ。まぁ自業自得じゃ、
  お前様は何も言えんし、巨大な妹子のことは責められんわ)

暦「ふぅ……ふぅ…──助かったぜ忍、まぁまだ少し痛みが残ってるって言うか、 
  ムズムズと気持ち悪いけど」

忍「ッ……どれ、儂が手当てをしてやろうかの?」

暦「え!? まじで!?」

忍「カカッ、青いの。そういうことはお前様の女に頼むことじゃ、冗談じゃよ」

暦「……」

忍「そうそう、陰に戻る前に、一つ訊きたいことがあるのじゃが」

暦「ん、なんだ?」

忍「お前様が最近、女子共に何かお返しをしているのを陰から覗いていて、
  それが少し気になっての」

忍「執拗になんじゃったか……〝ホワイトデー〟という言葉を耳にしたが、あれは何じゃ?」

暦「日本だけの、比較的浅い風習だ。一ヶ月前にバレンタインデーがあっただろ。
  あれは女性から男性にチョコを贈るっていうイベントだけど」

忍「ふむ」

暦「ホワイトデーはその逆で、貰った女性に男性が、何かお返しするイベントだ」

忍「ほぉ……つまりは、儂もお前様から、何かもらえるという訳じゃなっ?」キラキラ

暦「は? お前にはいつもドーナツをやってるだろ」

忍「ガーン……! な、なぜじゃっ!? 確かあの時は、儂が一番愛している、
  〝ゴールデンチョコレート〟をプレゼントをしたはずじゃ。
  何か儂にもよこせ! ドーナツよこせ!!」

暦「結局ドーナツなんじゃねぇか!」

忍「それでもじゃ、次の休みの時……儂はいつもより多くドーナツを食べるんじゃ、  
  食べられるんじゃ、お前様なら分かるじゃろ?」

暦「僕がいないと何も買えないだろ」

忍「儂がいないと何もできんじゃろ。餓鬼の分際で何を言っておる、
  よくもそんな戯言を言えたものじゃの、戯けが」

暦「ぐっ……」

暦(痛いところをを衝かれた)

忍(今から貴様の大事な局部を、切り裂いても良いのじゃぞ?)ニヤッ

暦「恐ろしいことを言うな! 畜生ッ、心まで読まれちまう……!」

忍「脅すというのも忍びないのじゃが、我が主様よ。儂のことを改めて想い、
  崇め、ホワイトデーではいつもより多量のドーナツを献上するがよい、カカッ」

暦「……分かったよ。たまには奮発してやる」

忍「おぉっ!」パァッ

忍「うむ、それでよいそれでよい、カカッ!」

暦「ったく……まぁ、とりあえずありがとよ忍。
  ドーナツは、三日後ぐらいになるだろうから」

忍「うむ、では楽しみにしておるぞ、お前様よ」スゥ─

暦「……あ、結局何がいいのかあいつ等に訊いてない…」

────────────────────
 
 ──翌日 3月12日──


暦「ふぁ~……ん」

月火「あ、お兄ちゃんおはようっ」

暦「おお、月火ちゃん…火憐ちゃん、おはよう」

火憐「……ふんっ」プイッ

暦「……」

暦(まだ怒ってるか……)

月火「……?」

────
──

撫子『ぇ…せ、千石ですっ』

暦「……もしもし、千石。今日は空いてるんだよな?」

撫子『うん、大丈夫…』

暦「じゃあ、出掛けるか」

撫子『おでか、け?』

暦「ああ。その中で、千石のプレゼントも買ってやる。
  一日だけ、付き合ってもらっていいか?」

撫子『あ、うん…もちろんだよ暦お兄ちゃんっ』

暦「ありがとな、じゃあ家で準備だけして待っててくれ。
  僕が迎えにいくから」

撫子『分かった。じゃあ…また後でね、暦お兄ちゃん』

暦「おう」ピッ

暦「……よしっ」

 prrrrr… prrrrr…

暦「ん、千石か?」カチャッ 

 着信:戦場ヶ原ひたぎ

暦「……」ピッ

ひたぎ『あ、もしもし、ゴミ処理場の方でしょうか。
    粗大ゴミの廃棄についてお尋ねしたいのですが』

暦「確かに今は朝だし、時間的にも、間違っていない内容だ戦場ヶ原。
  だが僕が言いたいのは、大体オチが読める会話を展開するような、
  そんなつまらないヤツに成り下がっちまったのかよお前……ってことだ」

ひたぎ『朝から言ってくれるわね阿良々木くん、機嫌が少し悪いようじゃない。
    今から出掛けようとしていたのに、出鼻を誰かに挫かれたような感じの怒り方ね、可哀想に』

暦「お前に挫かれたんだよ!」

ひたぎ『あら、それは悪かったわ。
    私のアドバイスを実践できているのか、それが気になったのよ』

暦「言われるまでもなく順調だよ。今日もホワイトデーのお返しにいくところだ」

ひたぎ『そう……阿良々木くん、神原や羽川さんや、他の子達に時間を割くのも、
    私が言ったことなのだからもちろん結構だけれど──私もいることを、忘れないでね』

暦「分かってるよ。お前は。僕の彼女だろ?」

ひたぎ『許婚よ』

暦「……まぁ、それでもいいよ」

ひたぎ『なに、そのなーなーな返事、気に入らないわね』

暦「朝からがっつくなよ……」

ひたぎ『がっつく? なにその荒々しい表現、気に入らないわね』

暦「じゃあがっつくなよッ!」

ひたぎ『だって阿良々木くん、自分からは何もしないじゃない。
    だから私がリードしているのに、それをがっつくだなんて、醜い表現をしてくれるのね』

暦「いや…それはそれ、これはこれってやつだろ」

ひたぎ『……はぁ…私、なんでこんなお馬鹿さんと付き合っているのかしら』

暦「きっつ……!」

ひたぎ『きつい? 馬鹿という言葉を柔らげるために、頭に〝お〟をつけて、
    その上〝さん〟付けまでしたのよ? 阿良々木くんの分際で何を言っているのよ』

暦「分際! 分際って言ったぞッ!」

ひたぎ『恋って不思議よね。こうして私が阿良々木くんに呆れて、失望して。
    それでも私は、愛情を伝えられる……』

暦「お前にとっては誹謗することが愛情なのか!?」

ひたぎ『そうよ』

暦「断言しちゃったよ!」

ひたぎ『いえ、少し間違っているわね。どちらかと言えば布石と言った方が、
    聞こえがいいかもしれないわ』

暦「聞こえがいいって……」


 ダメジヤン、ソレジヤア……。

ひたぎ『例えば阿良々木くん。こんなストーリーがあるとしましょう』

暦「聞くだけ聞いてやるよ……」

ひたぎ『あるとても美人な女の子は、ずっと家のお手伝いをさせられていて、
    苛められて、みすぼらしい生活を送っていたわ』

ひたぎ『だけどある日、その子の前に一人の魔法使いが現れたの。
    一日だけお姫様になれて、その子はカボチャの馬車に乗って舞踏会にいったの』

暦「例えばじゃねぇよ! この話知ってるよッ!」

ひたぎ『それ……──ねぇ、話の腰を折られたくないとか言ってたのは、
    どこのどいつだったかしら』

暦「シンデレラだろ? お前が話していたのは。だれでも知ってる童話だ」

ひたぎ『いいえ、私が話そうとしてるのはシンデレラなんかじゃないわ。
    そもそも、シンデレラってもっと、醜い愛憎劇じゃないの』

暦「それ原作だろ! そっちだけを知ってるって、お前はどんな幼少期を送ってたんだッ!」

ひたぎ『そんなにおかしい? 私はこうしてしっかり育っているし、
    私のように子供には強く育ってほしいから、もし子供が出来たときには、
    寝る前に私が読み聴かせてあげようと思っているのだけれど』

暦「精神歪むわ!!」

ひたぎ『まぁともかく、下がるところまで下げて、最後に上げて終わる。
    そんなストーリーって素敵じゃない?』

暦「確かに、報われた感じがしていいかもな」

ひたぎ『阿良々木くんには、その主人公になってもらいたいのよ』

暦「とすると、お前は悪役なのか?」

ひたぎ『……は? どうしたら私が悪役になるのよ、阿良々木くん』

暦「お前はどうやっても悪役にしかならねぇよ!」

ひたぎ『私が何をしたって、私は阿良々木くんの彼女なのよ。
    つまり私はお話のヒロインにシフト出来るのだから、悪役になるわけないじゃない』

暦「それ、僕が何をされてもお前を振らないってのが前提になってるよな……」

ひたぎ『阿良々木くんが、私を振れるわけがないじゃない』

暦「……っ」イラッ

暦「……ほぉ、随分な自信じゃないか戦場ヶ原、お前のその自信家なところも、
  今日は少し気に入らないな」

ひたぎ『そう。つまり阿良々木くんは私のことを思ってないってことなのね。
    へぇ、あら、そう』

暦『別にそういうことで言ってるんじゃねぇよ。ただ僕をそんなに下に見ているお前が、
  僕とは違う世界にいるとか、そう思って……少し嫌だっただけだ』

ひたぎ『違うわよ、阿良々木くん。私はそういう意味で言ったんじゃなくてよ。
    ごめんなさい、言葉足らずだったようね』

ひたぎ『阿良々木くんが私のことを好きって思ってくれているように、
    私も阿良々木くんのことが好き。だったら互いに嫌いになることなんてない、
    ただそんな単純なことの再認識だったのだけれど──』


 壹息。


ひたぎ『──阿良々木くんのようなお馬鹿さんには、少し難しかったかしら』

暦「……やっぱり、捻くれてるよなお前って。捩れに捩れて、わけわかんねぇよ」

ひたぎ『ラブラブってことよ』

暦「みなまで言うな」

ひたぎ『……長電話も悪いわね。そういえばこれから出掛けるんでしょ?』

暦「おお、そうだな。悪いな戦場ヶ原、またゆっくり話そうぜ」

ひたぎ『ええ、楽しみに待ってるわ。じゃあね、阿良々木くん』ピッ

暦「……いくか」

────────────────────
 
 ────千石宅────


撫子「……で、どこにいくの? 暦お兄ちゃん」

暦「そうだな~…どこにいきたい、千石」

撫子「うーーん……あ、そういえば最近、
   新しくテーマパークが出来たんだって、隣町だけど」

暦「あぁ、そういえば月火ちゃんも行ったとか言ってたな。
  千石、お前電車賃はあるのか?」

撫子「うん、大丈夫だよ。暦お兄ちゃん」

暦「よし、じゃあいくか」

撫子「うんっ」

────
──

 プシュゥゥー… ──ガタンゴトンッ

暦「けっこう混むな……千石、こっちだ」

撫子「ま、待って暦お兄ちゃんっ」

暦「ほらっ、手貸せよ」

撫子「う、うん……」ギュッ

暦「……」

暦(電車が混んでいるのをいいことに、女子中学生と手を繋いでしまった。どうしよう)

暦(ドキドキする)

撫子「……ッ」ドキドキ

暦(なんか千石も頬を赤らめてるし、セクハラだとか思われないよな?
  もしそうなったらどうしよう、『妹です』とでも言うか?)

駿河「まるで妹系アニメの主人公だな、実妹以外にも〝お兄ちゃん〟と呼ばせるとは」

暦「…………ん!? なんでお前がいるんだよッ!?」

駿河「しぃー……! 偶然だな、阿良々木先輩」

撫子「あっ、神原さん。お久し…ぶりです…」ペコッ

駿河「おぉ、千石ちゃん、久方ぶりだな。ときに、二人だけで何処へいこうとしているのだ?」

暦「最近できたテーマパークだ。まぁ、ホワイトデー云々だよ」

駿河「なるほど、納得した。にぃに、生憎私は次の駅で降りるのだ…残念だな」

暦「にぃにとか言うなッ! その一言だけで虫唾が走る!」

駿河「それは私が言うからダメなのか? それとも〝にぃに〟という言葉自体に、嫌悪感を抱いているのか?」

暦「お前が使ってると、そこから物語の流れが瓦解する気がするッ」

駿河「そんなに違和感があるか……まぁ、二人とも楽しんできてくれ。
   せっかくの休みなのだから、思う存分遊んでもらうんだぞ千石ちゃん」

 ガタンゴトン── プシュゥゥー…

撫子「う、うぁ──はいっ。さよなら…神原さん」フリフリ

駿河「うむッ。……阿良々木先輩、ちょっと」

暦「なんだよ」スッ

駿河「あとでどんな如何わしいことをしたか、メールで教えてくれ」コソコソ

暦「しねぇよッ!!」

駿河「はははッ。では、さらばだッ」

 プシュゥゥー…

暦「まったく、何しに登場したんだ……」

撫子「……?」

暦「こっちの話だよ」

────
──

暦「おぉ、広いなー」

撫子「ふわぁ~……」キラキラ

暦「よし、どこにいくか千石。色々あるぞ」

撫子「お、お化け屋敷」

暦「お、いいなお化け屋敷。いきなり名指しなんて、そんなに大好きなのか?」

撫子「うん……すごい、楽しみ」

暦「よし……じゃあ、しゅっぱーつ」

撫子「ここから歩いてどれくらいなの、暦お兄ちゃん」

暦「え、えっと……──現在地から、三分って書いてあるな」

撫子「カップラーメンが作れるねっ」

暦「……なんだその、とても返答し辛い一言は」

撫子「日常会話だよ、暦お兄ちゃん」ニコッ

暦(しかし、女子中学生と二人きりで遊びに来て、楽しく会話している時点で、
  それは僕にとっては、非日常会話なのではないだろうか)

暦「僕って、幸せ者だよな~」

撫子「えっ、どうしたのいきなり?」

暦「いや、何でもない。それと千石、三分でカップラーメンを作れるって言ったけどさ、
  僕の大好きなホームラン軒の味噌ラーメンは四分なんだよ」

撫子「へ、へぇ~。でも、カップラーメンって少し短い時間にしたほうが、
   麺が固くて美味しいって聞くよね」

暦「……って、千石もカップラーメンとか食べるんだな。なんていうか、
  お前はそういう身体に悪そうなのは、食わないと思ってたよ」

撫子「そんなことないよ、暦お兄ちゃん。もう撫子中学生だよ?」

暦「ほんと何と言うか、時の流れを感じるなぁ……僕自身、あいつ等を基準にしてるきらいがあるから、
  千石も精神幼いとか、勝手にそう考えてたんだよな」

撫子「ララちゃん達だって、十分大人だと思うけど……」

暦「図体だけでかくてまさに〝馬鹿の大足〟ってやつだよ、あいつ等は」

撫子「ふふふっ、ひどい言い方」

暦「ハハッ──ほら、話している内に着いたぞ」

────
──

撫子「こ、ここッ、暦お兄ちゃん……」ブルブル

暦「怖いのが好きとかじゃなかったのかよ……」

撫子「怖い、怖いよぉ……」ギュッ

暦「ッ!? せ、千石……?」

撫子「ごめんなさい暦お兄ちゃん……少しだけ、くっつかせてッ…」ギュゥ…

暦「……しょうがないやつだな」

 ガシャン───!!

撫子「きゃああああああああああああああああ!!」ギュゥッ─

暦「いたいいたいいたいいたい──!!」

撫子「ご、ごめん暦お兄ちゃん……こう見えて、撫子強いんだよ?」

暦「今その自慢は、僕にとって不安になるだけのものだッ」

撫子「戦闘力は、えっと……100ぐらいかな?」

暦「お前なりに分かり易い例えを出したかったんだろうけど、
  ドラゴンボールの世界において、一般人の戦闘力は平均して、〝1〟ぐらいだ千石。
  〝100〟あれば、亀仙人と対等に戦えるぞ」

撫子「えぇ!? な、撫子そんなに強くな──」

 ウワハハハハハハ--!!

撫子「ひいいいいいいいいいいいいいい!!!!」ギュゥッ─

暦「いたいいたいいたいいたい──!!」

────
──

 結局、千石トノ御化ケ屋敷ハ、ドロップアウトト言フ、
 隨分ト微妙ナ終ハリ方ヲシタノダツタ。


撫子「ハァ……叫びつかれたよ…」

暦「僕も配慮やら物理的にやら、とにかく疲れた……何か飲むか?」

撫子「うん……ありがとう、暦お兄ちゃん」

暦「それと千石、そろそろ……腕から放れないか? いや、僕は別に構わないんd──」

撫子「うわわあぁ!! ご、ごめんなさい……」

暦「僕、少し傷付いたぜ……」

撫子「ご、ごめんなさい……」

暦「……いくか」

撫子「う……うん」ドキドキ

────────────────────
 
 ────数時間後────


暦「ふぅ……けっこう回ったなー」

撫子「そうだね、すごく楽しかった」ニコッ

暦「楽しんでくれたのなら、何よりだよ」

暦「あとは……──あっ、千石、ちょっとここで待っててくれないか」

撫子「お土産屋さん?」

暦「千石のプレゼント探しだ」

撫子「え? ……うん」

暦「僕が選んだほうがいいか? それとも千石が選ぶか?」

撫子「撫子ここで待ってる……暦お兄ちゃんに、選んでほしい」

暦「分かった。じゃあ──ほら、これで何か飲んでろよ、ベンチもあるし。
  やる気出して選んでくるからさ」

撫子「うんっ」

────
──

暦「普通に、雑貨とかも売ってるんだな」テクテク

 テクテク… テクテク…

暦「……ここらかな」

暦「…どれがいいかなー……ん」

 キョロキョロ… キョロキョロ…

暦「あれ、八九寺?」

八九寺「……あら、らぎさん。こんなところでどうしたのですかっ?」

暦「僕の名前を句読点で句切って〝あら〟を感動詞にして、
  あたかも自然な流れで、らぎさんって呼ぶんじゃない。
  僕の名前は阿良々木だ」

八九寺「すみません、噛みました」

暦「違う、わざとだ……」

八九寺「かみまみたっ」

暦「わざとじゃない!?」

八九寺「あらあららぎさん、どこに句読点が付くでしょうか?」

暦「国語の問題ー!?」

八九寺「さあ、どこでしょう」

暦「そりゃ──あら、阿良々木さんだろ」

八九寺「あら、あらら、蟻酸ですよ」

暦「化学の問題だったのか!?」

────
──

八九寺「ところで、どうしてここにいるのですか」

暦「それはこっちの台詞だ、ここは隣町だぞ」

八九寺「幽霊だって電車には乗れます。年中フリーパスですっ」

暦「ちっとも羨ましくない」

暦(あれ、でもよく考えたら──八九寺が電車に乗ってて、
  それを僕が痴漢をしたとしても、バレなくね?)

八九寺「羨ましくないと言った割には、何か希望に満ちた目をしてますね、阿良々木さん」

暦「電車に乗ったら、痴漢にはくれぐれも気をつけるんだぞ八九寺。
  お前が幽霊だからって、いくらフリーパスだからって、油断だけはするなよ」

八九寺「は、はぁ……」

八九寺「近所の方々から噂を聞きまして、せっかくなので来てみたのですよ」

暦「そうだったのか、僕も前に月火ちゃんからここの話を聞いてな」

八九寺「ほほう、お二人でベロチューデートですか」

暦「そんなふしだらなデートがあるかー!!」

八九寺「阿良々木さんだけは、私と同じピュアな心を持っていると思っていたのに……!」

暦「心がピュアだったら、ベロチューなんて言葉をさらっと使わねぇよ!」

暦「……それに、今日はデートで来たわけじゃないんだよ」

八九寺「ではお独りですか、淋しい人生をお過ごしですね」

暦「今すぐ反射的に毒づくその癖を、止めるんだ八九寺ッ!!」

八九寺「では、ご家族とですか?」

暦「今日はどこまでも外すな……千石にホワイトデーのお返しだよ。
  ここでいい物を選ぼうと思ってたところだ」

八九寺「なるほど、女の子へのプレゼントですか。
    乙女でしたらやはり──このストラップなどではないですか?」

暦「ハート型ねぇ……なんか在り来たりな気がして嫌だな」

八九寺「では──……こういう可愛いぬいぐるみなどでは」

暦「……もしかして、手伝ってくれるのか?」

八九寺「何を今さら。どうせやることもないですし、しょうがなく付き合っているだけですよ」

暦「……お前にツンデレは、似合わないな」

八九寺「べ、別に阿良々木さんのために手伝うんじゃないんですからねっ。
    ただ、たかれると思ってるだけですよっ」

暦「お前の場合ただ正直なだけだな!」

八九寺「ツンデレの方々は何かにつけて、男性に集る人種ですよね?」

暦「お前は戦場ヶ原に嫌われて当然だッ!!」

八九寺「でもその正直な心に、今のご時世を考えるならば賞賛を贈るべきなのかもしれません。
    世の中、結局〝金〟なのですから」

暦「そんなことないって! ほら、ラブコメのヒロイン達はとっても健気だと思うだろ?」

八九寺「きっとラブコメ作品の終焉は、主人公の遺産相続を賭けた地方裁判でしょうね」

暦「現実的だ……!」

八九寺「まぁともかく、外でお相手さんが待っているなら急がなければばりませんねっ。
    ふ~~~~む……」

暦「……ありがとうな、八九寺」

八九寺「いえいえ、お構いなくっ」ニコッ

────
──

暦「ただいま、千石」

撫子「おかえり、暦お兄ちゃん」

暦「少し遅くなったな……──はい、これ。気に入るかは分からないけど…」

撫子「っ……、……うわぁ~…!」パァッ…

撫子「カチューシャ…これ、本当に暦お兄ちゃんが選んだの?」

暦「だめ、だったか?」

撫子「ううん、めっそうもないよ。すごく、可愛いよ……」ニコッ


         以下、囘想。

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   ──────

八九寺「ややや!? ややや木さんっ!」

暦「どうした八九寺と言いたいところだが、まずはツッコませてくれ。
  八九寺、驚いた拍子だかは分からないが、僕の名前を感嘆文と繋げるな、
  何度でも言うが僕の名前は阿良々木だ」

八九寺「しつかみ」

暦「なんで略した!?」

八九寺「それより阿良々木さん、これ可愛くないですかっ?」

暦「ふむ、カチューシャか」


 豫メ八九寺ニハ千石ノ特徴、性格等ヲ説明シテイタ。
 何カ大人ブツタ對応デ、分カツタヤウデ居タケレド──
 其レガ、此ノカチューシャナノダラウ。


八九寺「彼女は──百万石さんは、前髪をあげているのですよね?」

暦「超大金持ちの大名みたいな名前にするな、あいつの名前は千石だ」

八九寺「荒稼木さん」

暦「僕ももうちょっと縁起良い名前にしてほしかったなー!!」

八九寺「きっと千石さんにとって、カチューシャは勇気の証なのですよ」

暦「勇気?」

八九寺「ですから、阿良々木さんが『千石、新しいカチューシャだ、それー!』
    と、プレゼントすればいいのですっ」

暦「元気100倍になるのか!? あいつにとっては願ったり叶ったりなんだろうけど!」

八九寺「とにかくっ! 私はこのカチューシャがいいと思います」

暦「……八九寺のお墨付きだ、間違いってことは絶対にないんだろう。
  八九寺がそういうなら、これにするか」

八九寺「もちろん私が選んだことは、秘密ですよっ?」

暦「わかってる、仮になんて説明すればいいんだよ」

八九寺「それもそうですね……では阿良々木さん、
    私はそろそろ帰ろうと思いますっ」

暦「そうか、ありがとな八九寺。気をつけて帰れよ?」

八九寺「はいっ」ニコッ

   ──────
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   囘想、終ハリ。

暦「ありがとう、暦お兄ちゃん」

暦「15時……そろそろ僕達も帰るか…──それ、つけて帰ろうぜ」

撫子「ぇ……う、うん…」

撫子「……、ど、どうかな?」

暦「うん、似合ってるぞ千石。黄色もいいじゃないか」

撫子「な、撫子は今からドラムを叩けばいいのかなっ?」フリフリ

暦「その叩き方はどちらかと言えば道頓堀の食い倒れ人形だけれど、
  そこのツッコミは保留にしておく。千石、これは神原にも言ったんだが、
  社会現象になりつつあった、超人気日常系アニメを真似るんじゃない」

撫子「じ、じゃあライブでバニーガール姿で演奏すればいいのかな…?」

暦「過度なパロディに飲まれるかは、それこそ神が知るってものなんだけれど、
  最低この話の世界が改変される恐れがあるから、マジで止めるんだ千石ッ!」

撫子「本当に暦お兄ちゃんってすごいよね。ここまできれいに突っ込まれると、
   何か賞をあげたいぐらいだよっ」

暦「それは、嬉しい限りだな」

撫子「でも、そのためには50ナデコを貯めなくちゃっ。
   面白いツッコミほど高いポイントが貰えるよ?」

暦「ほぉ、ちなみにさっきのツッコミは、千石からしてどうだったんだ?」

撫子「じゃじゃーん、トリプルナデコ~……なんだか〝トリプルノリコ〟みたいだね」

暦「ッ、どうして庵野秀明先生の初監督であるところの、
  『トップをねらえ!』で話題になった〝トリプルノリコ〟を例えに出したんだよ!
  分かり辛い上に、最低限である意味すらあってねぇよ!」

暦「ってお前へのツッコミ長いわー!!」

撫子「じゃじゃーん、ファイブナデコ~♪」

────
──

 ガタンゴトンッ ガタンゴトンッ─

暦「……ふぅ」

暦「……」

暦「あ、ほら千石……夕焼けが綺麗だぞ」

撫子「うん…」

暦「また、行けたらいいな。その時はまた、お化け屋敷に入ったり──…千石?」

撫子「……zzz」コテッ

暦「……疲れたよな、ゆっくり休めよ」


 僕ノ獨リ言二答ヘルヤウニ、千石ノ黄色イカチューシャガ、夕燒ケ色二光ツタ。

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   ──3月13日 戦場ヶ原宅──


ひたぎ「……」カキカキ

暦「……」カキカキ

ひたぎ「……ねぇ、阿良々木くん」カキカキ

暦「なんだ?」カキカキ

ひたぎ「私が言うことではないと思うのだけれど、長いわね」

暦「長いなー」カキカキ

ひたぎ「まぁ読んでくれる人がいるのなら、それはとても嬉しいのだけれど……。
    私から言えることは、もう少しで終わるってことぐらいね」

暦「ここカットしていいんじゃねぇのか? ホワイトデーは明日だし」

ひたぎ「ダメよ、私のおジャ魔女トークがあるのだから。もしカットなんかされたら、
    阿良々木くんが魔女ガエルみたいになるぐらいまで、殴り続けるわよ」

暦「こわッ!!」

ひたぎ「知ってる? 阿良々木くん。どれみちゃん達が高校生になって帰ってきた話があるのよ、
    みんな相も変わらず可愛いのよ」

暦「あぁ、ライトノベルで出たやつか。噂だけは聞いてたけど」

ひたぎ「昔はおっぱいメガネちゃんにあまり興味はなかったのだけれど、
    大人になって改めて見てみると、とても素敵できれいな子なのよ」

暦「おっぱいメガネちゃんとか言うなや!! 
  はずきちゃんのどこにおっぱい要素がある──って、呪文か…」


 パァーイパイオォーッパイ♪ プールプルルーン♪


暦「お前が変なこと言ったから、
  下手に羽川に似てるなーとか言えなくなったじゃねぇか」

ひたぎ「羽川さん?」

暦「いや、羽川に似てるなー、って思ってさ」

ひたぎ「あ……あぁ、確かに」

ひたぎ「役を取られてしまったわ、これほど悔しいことはないわね」

暦「いや、お前みたいなやつは日曜の朝に出てきちゃだめだろ……」

ひたぎ「あいちゃんは神原ね、スポ根なところもピッタリ。
    メインヒロインである私は、じゃあどれみちゃんなのかも……フフッ」ニヤニヤ

暦「だったらもっと主人公らしく無邪気に笑えッ!」

ひたぎ「……ぷっぷのぷー」

暦「可愛いけれども!!」

ひたぎ「それともう一つ、阿良々木くんにはOVAの『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』
    を、おぬぬめするわ」

暦「頼むからおぬぬめとか言うのはやめて!」

ひたぎ「これはね、どれみちゃん達が5年生の時の、描かれていなかったストーリーが凝縮された、
    ファンにとっては発狂するほどのものなのよ阿良々木くん」

暦「へぇ、ちなみに戦場ヶ原はなんのストーリーが一番好きなんだ?」

ひたぎ「それは──」

ひたぎ「──な・い・しょっ♪ よ、阿良々木くん」ドヤァ

暦「うまくまとめやがった!!」

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   ────3月14日────


暦「」コツコツ…

暦「……」ガラッ─

翼「おはよう、阿良々木くん」

暦「おはよう羽川、相変わらず早いな」

翼「相変わらずの流れだね」ニコッ

暦「……羽川。何か、ほしいものとかあるか?」

翼「えっ? どうしたの──…って、そういえば、今日ってホワイトデーだっけ」

翼「そうだねー……これといってほしいものってのは、ないんだけれど…」

暦「すぐじゃなくてもいい、ゆっくり考えてくれよ」

翼「うんっ、ごめんね。いまいちパッと思いつかないや。
  昼休みまでには考えておくね」

暦「ああ、分かった」

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  ────昼休み────

翼「阿良々木くん、ちょっといい?」

暦「ああ……──それで、決まったか?」

翼「ものって言ったら、少し違うのかもしれないんだけれど……それでもいいかな?」

暦「もちろんだ。僕の出来る限りのことだったら、何でも言ってくれ」

翼「想い出が、ほしい」

暦「ひと夏の?」

翼「今は3月でしょっ」

暦「想い出とは、また掴みどころのないお願いだな……」

翼「うん……私が旅に出るにあたって、やっぱり寂しくなると思うんだよね、
  自分で決めておいて恥ずかしいけど。ホームシックになるっていっても、
  なるアットホームを私は持っていないし」


 羽川ハ小サク息ヲツイタ、トテモ小サク。

翼「阿良々木くんとか戦場ヶ原さんを思い出して、
  それで旅を続けられたらなって。どうかな?」

暦「……よし、今までになかったかたちの想い出を作ろうぜ羽川」

翼「ありがとう、阿良々木くん」

────
──

暦「ひと夏の想い出はどうだ」

翼「句切ってから急にひどくなったね……」

暦「僕と一緒にお風呂に入ろう」

翼「怒っていいのかな?」

暦「……じゃあ、どうするか…」シュン─

翼「え、待って待って阿良々木くん、何でそんなに悲しい顔するのかなっ?
  そんなこと、望み薄どころか、絶対無理なことなのに……」オロオロ

暦「だめだ、お風呂以外思いつかない」

翼「色々まだあるでしょ!」

暦「……羽川、キスをしよう」

翼「そういうことしか思いつかないの!?」

翼「どうせだったら、形が残るもの、とか……」

暦「キスマーク?」

翼「そろそろ戦場ヶ原さん呼んでこよっか」ニコッ

暦「ごめんなさい、ボケすぎました反省してます……」

翼「阿良々木くん、〝ボケ〟なんていって言い訳してたらだめだよ?
  性欲にまかせて、良かれば実行しようとしてたでしょ、
  だったら素直に謝るべきだと思う」

暦「ごめんなさいッ……!!」

 
 深層心理ヲ讀取ラレテイル……。


翼「よしよし、素直でよろしい」

暦「分かった。真面目に考える……──あっ、写真とか?」

翼「写真?」

暦「みんなで写真を撮るんだよ、羽川。写真なら旅にも持っていけるだろ?」

翼「……うんっ。それいいよ阿良々木くん」

────
──

暦「ってなわけだけどさ、戦場ヶ原」

ひたぎ「阿良々木くんにしてはいい案じゃないの。
    羽川さんも、とても喜んでいたんじゃない?」

暦「ああ、学習塾跡の屋上で撮ろうと思ってるんだが、
  放課後になったらお前は羽川と神原を連れて、先に行っててくれ。
  すぐに僕も向かうからさ」

ひたぎ「あら、一緒に行かないの?」

暦「カメラを買うってのと、あと──八九寺を、探してくる」

ひたぎ「……あらそう、分かったわ。
    早く探してきなさいよね、あの子どこかで迷ってるんでしょう?」

暦「あいつは、そこらへんでウロウロしてるだけの、ただの小学生だよ」

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  ────放課後────


暦「はっ……はっ……!」キコキコ─

暦「八九寺ーーー!」キコキコ─

暦「戦場ヶ原にはああ言ったけど、当てになる場所なんてないんだよな…」

暦「あっ、それと──」ピッピピ…

 prrrrr… prrrrr…

神原『もしもし、どなただろうか? ちなみに私は神原駿河、変態だ』

暦「変態ってのは大正解なんだが、まずは携帯のディスプレイをみろ神原ッ。
  僕じゃなかったらどう弁解していたんだ」

神原『おぉ、その世界最強の男みたいな声は阿良々木先輩か』

暦「今この切羽詰ってる時に下らない声優ネタでボケるなアホッ!!
  みたいじゃない、そうなんだよ!」

神原『すまないすまない。で、どうしたのだ阿良々木先輩。
   今は戦場ヶ原先輩と羽川先輩と学習塾跡に向かっているぞ』

暦「神原、千石を迎えに行ってやれないか。僕は八九寺を探すのとカメラを買ってくるから、
  二人には先に行ってもらってくれ」

神原『了解した。あっ、あと阿良々木先輩、カメラなら私が持っているから、
   それに関しては心配いらないぞ』

暦「学校に持ってきてたのか?」

神原『いつも阿良々木先せ──おっと、おっとっと』

暦「誤魔化し下手くそだな!」

神原『はっははは、なんのことだ阿良々木先輩。分かった、千石ちゃんは迎えに行こう。
   ついでに新しいメモリーカードも買ってこよう、ではッ!』ピッ

暦「……まぁいい、それより──」キコキ─

暦(八九寺、お前はどこにいる……!)


 ……─、…──着─…忘れ────…て──……てし──た…。

暦(ッ……!? 待て、何か、何か当てになりそうなことがあった気が……)


 ……あっ、─……着を─…───忘れて………──しまい…─した──…。


暦(あいつが、何かを忘れて……どこに何を──……ッ!)


 ……あっ、下着を忘れてきてしまいました…。


暦「…もしかしたらッ──!!」キコキコ─

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  ────自宅前────

暦「ッ……ッ……」

暦「……」


 ヤツパリダ。


八九寺「……──阿良々木さんっ、おかえりなさい。丁度いいところにきてくれましたっ」

暦「……それは、こっちの台詞だよ」


 ヤツパリ居タ。


八九寺「私のお気に入りのパンツ、返してくださいっ!」

────
──

八九寺「羽川さんへのプレゼントに、写真ですか」

暦「最後にみんなで記念撮影して、大団円だ」

八九寺「阿良々木さんにしては、いいプレゼントなのではないですか?」

暦「なんだその他人行儀な言い方は、お前もくるんだよ」

八九寺「は?」

八九寺「いえ、いえいえ私は別に…」

暦「何言ってんだ。お前も友達だろ」

八九寺「写真、ですよね……」

暦「……写らない、とかか?」

八九寺「はい、実際試したことはないですけど…」

暦「だったら行くしかないだろ、羽川に挨拶もしたいだろ?」

八九寺「…分かりました、では……行きましょう」

暦「よしッ、じゃあ乗れよ。リュックは前のかごに置け」

八九寺「よい、しょっと。羽川さんほど、胸はありませんが…」ギュゥ…

暦(おほ)

月火「あーーーーーーーっ!!!!」

火憐「真宵ちゃんっ!」

八九寺「あっ、お二人とも、数日ぶりです」ニコッ

月火「えっ、何。真宵ちゃん大丈夫!? 攫われる前で良かった!」ヒシッ

暦「待て待て、ややこしくなるようなこと言うな!」

暦「……お前らも帰りか。丁度いい、火憐ちゃんと月火ちゃんも来い」

月火「え、行くってどこに?」

暦「みんなで記念撮影だ、羽川のためのな。
  じゃあ行く──」

月火「待ってお兄ちゃん。まず、火憐ちゃんに言う事があるんじゃない?」

火憐「月火ちゃんっ…いいよ」

暦「……」

月火「登校中に聞いたんだけど、言う事あるでしょ?」

暦「……八九寺、一回チャリ降りるぞ」

八九寺「はぁ……」

暦「……」

火憐「……」

暦「すいませんでしたァ!! ごめんなさい火憐ちゃん、悪ふざけが過ぎたッ!
  もうお前が嫌がることはしない、だから僕を許してくれェ!!!」

八九寺「うわぁ……これは何時ぞやの逆立ちより酷いですね、ドン引きです」

火憐「に、兄ちゃんっ。顔上げてくれよ、もういいから」

暦「え……?」

火憐「もう、気にしてねーよ。確かに昨日は傷付いたけどさ、反省してるんだろ?」

月火「反省してるんだよな?」

暦「も、もちろんだ」

暦(月火ちゃんはいつか殺します)

火憐「じゃあ、いいよ。兄ちゃん、あたしも思い切り殴ってごめん……」

暦「……なんで火憐ちゃんが謝ってんだよ、ほら──じゃあいくぞ。  
  暗くならない内に行かないと」

火憐・月火「「うんっ」」

八九寺「……阿良々木さん、一体なにを仕出かしたのですか?」コソコソ

暦「妹に目隠しさせて、『いま僕、全裸だぜ』って嘘をついた」コソコソ

八九寺「うわぁ……元からおかしな人だと勘ぐっていましたが、まさかここまでとは。
    さっさと社会にとっての害悪は捕まっちゃってくださいっ」コソコソ

暦「やっぱお前に言われるのが一番堪えるよ……じゃあ、出発ー…」キコキコ─

火憐・月火「「しゅっぱーつ!」」

────────────────────  

  ───学習塾跡、屋上───


暦「待たせたな四人とも」

ひたぎ「遅かったわね阿良々木くん、もう少しで日が沈んでしまうところだったわよ」

駿河「ひぃふぅみぃ……──なんだこの阿良々木先輩を囲む女性陣の数は……」

暦「そういうと、意識しちゃうからやめるんだ神原」

撫子「ララちゃんと、火憐お姉ちゃんもー」

月火「せんちゃんも来てたんだねっ」

火憐「久しぶりだなせんちゃん~」

ひたぎ「……で、阿良々木くん。この可愛げなカチューシャをつけた、可愛い女の子は誰?」

暦「千石、千石撫子だ。月火ちゃんとは同い年の中学2年生だ」

ひたぎ「そう、よろしくね。撫子ちゅわん」クネクネ

暦「怪しい動きで迫るなッ」

撫子「ふぁ、はいぃ……暦お兄ちゃん、このお姉さんは…?」

暦「こいつはせん──」

ひたぎ「戦場ヶ原ひたぎよ、阿良々木くんの彼女をさせてもらっているわ」

撫子「えっ……?」

暦(うわぁ……!)

駿河「そして私は阿良々木先輩の性奴隷だッ」

暦「ふざけんな神原ッ!!」

撫子「え、ぇえ……えぇ!」オロオロ

翼「初めましてだよね? 私は羽川翼、阿良々木くんの家庭教師をやってるんだ」

暦「今ここで家庭教師と言うワードは、あっち方面で認識されかねないっ!」

撫子「ふぇえぇぇぇ……」キュー─…バタン

月火「うわわぁ、ち、ちょっとララちゃん!?」

ひたぎ「あまりに混乱しすぎて、倒れちゃったのね。可愛いじゃない、この子」

暦「冗談とはいえ、中学生相手に高校生三人が結束していじめる図は、 
  あまりよろしくないぞ……」

八九寺「果たして、阿良々木さんが言えることなのでしょうか」ボソッ

暦「う、うるさいっ」ボソッ

翼「ふふふっ……撫子ちゃんが起きるまで、少しゆっくりしよっか」

ひたぎ「そうね。まだ日は落ちないし、三十分は明るいままだと思うわ」

駿河「いやぁ、夕日が綺麗だッ。亀仙人が消してしまうのがもったいないぐらいだ」

暦「それは月だろうが。もう一回、天下一武道会んとこ読んでこい」

────
──

ひたぎ「……阿良々木くん」

暦「ん、どうした戦場ヶ原」

ひたぎ「あの子、いるのよね」

暦「……いるぞ。羽川が空気を読んで、今は下の階で二人で話しているけど。
  羽川もこれを見越して時間を空けたんだろう、やっぱりすげぇよな、あいつって」

ひたぎ「そう。なんだか、こう大人数だと…あの子可哀想ね。その切なさは……そう、
    key作品の類のものね」

暦「真面目に話すのかボケるのかどっちかにしろッ」

ひたぎ「うぐぅ~……」

暦「可愛いから許すッ!」

ひたぎ「……阿良々木くん」

暦「なんだよ戦場ヶ原」

ひたぎ「待ってるからね」

暦「……ああ」

ひたぎ「ここまで引っ張っておいて、『これが僕からのプレゼントだ』
    とかいって、キスで終わらせないでしょうね」

暦「えっ」

ひたぎ「えっ? 聴こえなかったかしら。だから、他の子や羽川さん相手にこれだけ行動しておいて、
    まさか本命である私を、そんな適当なことで済ませたりしないわよね、って言ったのよ」

暦「いや、重さってものがあるだろ…?」

暦(え、ダメなの?)

ひたぎ「重さ、ねぇ……」

暦「キスなめんなよ?」

ひたぎ「え、別にそこまで求めているわけじゃないわよ……」

暦「なめるって、物理的に舐めるって意味じゃねぇよ!」

ひたぎ「まぁともかく、期待してるわ」コツコツ…

暦「あ、あぁ……」

暦(どうしよう、キスしか考えてなかった)

────────────────────

  ─────三十分後─────


月火「ララちゃん大丈夫? 立てる?」

撫子「う、うん……もう大丈夫。ちょっとだけ混乱しただけ」

駿河「それは立派な高校生だと千石ちゃんは思っていたけれど、
   実は私が阿良々木先輩の性奴隷であったことかっ?」

暦「それは混乱を通り越して警察沙汰だ!」

ひたぎ「うるさいわよ阿良々木くん。ほら、そろそろ撮るわよ。
    みんな阿良々木くん中心で固まりなさい。
    無礼講よ、どうくっ付いたってオーケー」

暦「お、おい戦場ヶ原。そのよく分からない前置きはなんなんだ……?」

翼「じゃあ私はお隣にお邪魔するね」

八九寺「では私は羽川さんの前にっ」

駿河「私も撮影係ではあるが、選択の自由を申し出るぞー!
   阿良々木先輩の股下はとっておいてくれー!」

暦「もう面倒だからツッコミを放棄していいかー!?」

火憐「んじゃああたしは月火ちゃんを肩車するぜー」

月火「うわわっ、たかーい! わははは止めてよ火憐ちゃんっ」

暦「千石ほら、隣こいよ」

撫子「え、でも……」チラッ

ひたぎ「あら、どうしたのかしら千石ちゃん。私まだ何も言っていないのだけれど」クネクネ

暦「だからその気持ちの悪い動きをやめろッ!」

ひたぎ「別に捕って喰おうとなんてしないわ。千石ちゃん、
    どうぞ阿良々木くんの隣に、座って頂戴。
    私は先頭で寝そべることにするわ」ゴロンッ

暦「今までだけでけっこう混沌としていたのに、ますますひどいことに!?」

ひたぎ「なにその煽り文句みたいな言い方、つまらないわよ」

暦「もう黙って寝そべってろ!」

撫子「じゃあ……」スッ─

駿河「うむッ、では私は羽川先輩の後ろに立とう。
   ではタイマーモード、オン!」

 ジー……──

駿河「っとと、……それでは、私は合図をとろう。
   残りが10秒だ! さあ、皆笑ってくれ。羽川先輩の宝物になるのだからな、
   今まで見せたことのないぐらいの満面の笑みでよろしく頼むッ!」

暦「妙に重々しくて笑えんわー!!」

 パシャッ─


 ────
  ──

ひたぎ「みんなで写真撮る時ぐらいツッコミを止められないのかしら。
    みんなにっこりよ、はい神原」

暦「僕だけ神原の方見てる……」

駿河「どうにしろ既成事実だ阿良々木先輩。皆いい笑顔だし、
   やり直しは効かないぞ? はっはっは!」

羽川「そうだよ阿良々木くん、ほら──」スッ─

羽川「〝みんな〟、いい笑顔でしょ?」

八九寺「」ニコッ

暦(見えるやつと、見えないやつがいるのかな)

暦「……そうだな、みんないい笑顔だ」

翼「……みんな、本当に私のためにありがとう」

ひたぎ「貴方のためなのだから当たり前でしょう?」

駿河「そうだぞ羽川先輩。それをその大きな胸に……めげずに旅立ってくれ」

暦「〝その大きな〟は余計だッ。僕からも今までありがとうと言わせてくれ。
  楽しかったぞ、お前といるの。
  まあ、お別れってわけでもないけどさ」

撫子「お、お達者で……」

月火「羽川さんッ、私達のことも忘れないでね!」

火憐「あたし達が頼ってばかりだったけど、今度会ったら何か埋め合わせさせてくれよ。
   月火ちゃんと二人で何かプレゼントするぜ!」

>>160
ララちゃんは月火ちゃんでしょ
撫子はせんちゃん...

>>165
その通りだよ……ご指摘ありがとう

>>155もみすってんな、ララちゃん→せんちゃん

翼「ありがとう……みんな、本当にありがとう」ニコッ

駿河「……では、解散かな。もう大分と暗くなってきた、
   中学生諸君も両親が心配する時間だろう」

撫子「そ、そうかもしれないです……」

暦「そうだぞお前ら、僕たちは少し話してから帰るから、
  月火ちゃんと火憐ちゃんは千石を送ってやってくれ」

火憐「アイアイサー! じゃあせんちゃん行くかー!」

月火「夜道は我々ファイヤーシスターズにまかせてっ!」

撫子「うんっ……では、みなさん…暦おにいちゃん、さよなら」

駿河「うむッ、3人とも達者でな!」

ひたぎ「またお話ししましょうね千石ちゃん。
    私、貴女がとてつもなく気に入ってしまったのよ」ニヤ

暦(こえーー……)

翼「うん、本当に夜道は気をつけてね。
  私もずっと旅を続けるわけじゃないんだから、また会えるわ」

八九寺「では御三方、また会いましょうっ」

月火「うんっ、じゃあねーみんなー!」

火憐「せんちゃん、足元に気をつけろよ。
   なんだったらあたしが肩車で…」

撫子「ち、ちょっと火憐お姉ちゃん…!」

暦「やっぱり心配だ……」

八九寺「おっと…じゃあ私もそろそろ帰らせていただきます。
    どうやら千石さんには私が見えていないそうですし、
    彼女たちちは別行動になりそうですが」

暦「おう、じゃあな」

八九寺「はいっ」ニコッ

駿河「ん? 阿良々木先輩、今誰にさよならを……?」

翼「うん、本当に夜道は気をつけてね。
  私もずっと旅を続けるわけじゃないんだから、また会えるわ」

八九寺「では御三方、また会いましょうっ」

月火「うんっ、じゃあねーみんなー!」

火憐「せんちゃん、足元に気をつけろよ。
   なんだったらあたしが肩車で…」

撫子「ち、ちょっと火憐お姉ちゃん…!」

暦「やっぱり心配だ……」

八九寺「おっと…じゃあ私もそろそろ帰らせていただきます。
    どうやら千石さんには私が見えていないそうですし、
    彼女たちちは別行動になりそうですが」

暦「おう、じゃあな」

八九寺「はいっ」ニコッ

駿河「ん? 阿良々木先輩、今誰にさよならを……?」

翼「うん、本当に夜道は気をつけてね。
  私もずっと旅を続けるわけじゃないんだから、また会えるわ」

八九寺「では御三方、また会いましょうっ」

月火「うんっ、じゃあねーみんなー!」

火憐「せんちゃん、足元に気をつけろよ。
   なんだったらあたしが肩車で…」

撫子「ち、ちょっと火憐お姉ちゃん…!」

暦「やっぱり心配だ……」

八九寺「おっと…じゃあ私もそろそろ帰らせていただきます。
    どうやら千石さんには私が見えていないそうですし、
    彼女たちちは別行動になりそうですが」

暦「おう、じゃあな」

八九寺「はいっ」ニコッ

駿河「ん? 阿良々木先輩、今誰にさよならを……?」

暦「ただの、僕の幻想の友達にだよ」

八九寺「ではっ」ニコッ タタタ─

駿河「そうか……私にもいっぱいいるぞ」

暦「お前の場合とは絶対違う気がする」

駿河「阿良々木先輩をガッチリ押さえつけるための、屈強な友達だッ!」

暦「まさかのサポートかよ!? それ最早友達じゃねぇよ!」

駿河「まあそいつ等はまた連れてくるとして、
   私も失礼させて頂く。中学生にああは言っていたが、
   うちも連絡なしだとお婆ちゃんが心配するのでな」

ひたぎ「そう、じゃあまたね神原。これからの受験、貴女らしく頑張りなさい」

暦「まぁ僕たちが心配するようなものじゃないけどさ、
  僕だって受かったんだ。神原は今までどおりやっていけばいい」


翼「違うかたちだけれど、お互い長い道のりだね。
  神原さんも頑張ってね」

駿河「…今の言葉を糧に私はいくらでもやれる、そう確信した…!
   ッ、ありがとう先輩方、一年だけ待っててくれ……──」

駿河「──ではッ」タタタ─

暦「おい、走って怪我するなよ神原、気をつけろよー……。
  …まったく、あいつも素直じゃねぇな」

 
 御前ノ知ラナイ、八九寺ツテ奴ト一緒ダ。


翼「……戦場ヶ原さん、阿良々木くんを少しだけ借りていい?」

ひたぎ「えぇ、いいわよ。じゃあ私は先に帰る──」

暦「ひたぎさん、少し待っててくれ」

ひたぎ「……分かったわ阿良々木くん。待ってる」

 ────
──

翼「まずはありがとうって言わせて、ホワイトデーのお返し、
  すごい良かったよ」

暦「改めて言われると、なんか恥ずかしいな」

翼「阿良々木くんたちに会えて、本当に良かった。
  旅をするにあたって、私は実は怖かったんだよ、
  この世界には、私の味方なんていなんじゃないかって」

翼「戦場ヶ原さんや真宵ちゃんやみんなのことを──私は初めて人を、
  心から信じることが出来るようになったの。
  一番最初は、阿良々木くんだよ」

暦「光栄だよ、羽川にこんなこと言われるなんて」

翼「最後に、聞いてくれるかな阿良々木くん」

翼「私──阿良々木くんのことが、好き。
  異性として、結婚したいぐらいに、好き」

暦「……そうか…羽川、僕すごい嬉しいよ。  
  僕もお前が好きだ」

暦「だけど……──僕は、お前よりも好きなやつがいるんだ。
  ごめんな」

翼「……うん、分かってたよ。ごめんね、分かってたのに……っ」

暦「泣くなよ羽川、お前は素直だな」

翼「ッ…これで、後腐れなく旅ができるよ……ありがとう、
  私を好きにさせてくれて」

暦「羽川、行ってこい。それで、もっと素晴らしいものを見てこい。
  世界はきっと、お前が思っているよりも、遥かに美しいぜ」

翼「うん、じゃあね阿良々木くん……──」

翼「──行ってきます」ニコッ


 羽川翼、僕ガ最初ニ好キニ成ツタ少女。
 心ニ闇ヲ抱ヘテイタ、其レガ怪異トシテ顯現シタ少女。
 長イ道ノリヲカケテ、羽川ハ──更ニ長イ道ノリへ、羽バ度イテ行ク。
 其ノ──綺麗ナ白イ翼デ。

────────────────────
 
  ─────────


ひたぎ「ふぅ、日もすっかり落ちたわね」

暦「あぁ」

ひたぎ「みんな帰っちゃったけど、阿良々木くん。
    この小汚い廃墟に、まだいる意味があるのかしら」

暦「あるよ、ここじゃないと綺麗に見えないからな」

ひたぎ「見える? 何がよ、勿体つけないで教えてちょうだい」

暦「……すわれよ、戦場ヶ原」

ひたぎ「……」スッ…

暦「っしょと……ほら、上を見ろ」

ひたぎ「……あら」

暦「今日が晴れてて良かったぜ……」

暦「あれがシリウス、プロキシン、ベテルギウス」

ひたぎ「知ってるわ、私が教えてんじゃないの」

暦「ははは……でもさ、これも戦場ヶ原の受け売りだけど、
  お前が僕に教えられることが限られるように、
  僕が戦場ヶ原にしてやれることにだって、限りがある。
  むしろお前よりも少ないぐらいだ」

暦「実際に今のだって、僕がお前に教えられたものであって、
  お前にあげるものじゃない」

暦「でも、知識も乏しい僕だけれど、
  それでも僕には絶対に自信を持って言えることがある」

ひたぎ「……なにかしら」


 暦「僕が世界で一番──戦場ヶ原ひたぎを愛しているってことだ」

ひたぎ「ズッキューン……この手の会話、何度目かしらね。
    自分の単純さに、本当に呆れるわ。何度焼き直ししたって、
    嬉しいものは嬉しいのね」

暦「ズッキューンとか自分で言うな……戦場ヶ原、
  僕のプレゼント、受けとってくれるか?」

ひたぎ「『どんなプレゼントだったとしても、それは阿良々木くんがくれたものなのだから、
    ありがたく受け取るつもり』と、言った筈よ」

暦「そうか……」

暦「……戦場ヶ原」

ひたぎ「はい、阿良々木くん」

暦「これが、僕からのプレゼントだ──……」


 學習塾跡ハ欝蒼トシテイテ、僕ラヲ受ケ容レルヤウナ情景トハ言ヘナカツ度ケレド、
 其レデモ夜空ガ僕ラヲ照ラシテ──靜カニ見守ツテイタ。

────────────────────
 
 ────3月15日────

火憐チヤント月火チヤンヘノプレゼントハ、トリ敢ヘズ置イテオクトシテ、
結局ハ金髮ノ少女ノ御話ヲシテカラ、此ノ僕ラノ物語ハ幕ヲ下ロスコトニ成ル。


暦「……」スー…スー…

忍「起きろッ起きろッ、朝じゃぞー!」ユサユサ

暦「……、ん…って、何してんだよお前」

忍「今日が何の日か分かるかのー?
  そう、今日は儂にとってのホワイトデーじゃ!」ユサユサ

暦「とりあえずどけよ、起きれないだろうが」

忍「どくどくー、わっははー!」

暦「テンションたか!?」

────
──


 實ノトコロ、休ミマデ待テナイト忍ガ言フノデ、
 ドーナツヲ買ヒニ行クノハ、皆ヘノ御返シガ終ハツテカラ直グ、ト云フトコロデ、
 互ヒニ合點ガツイテイタノダツタ。


暦「……」テクテク

忍(まだかのまだかのー)

暦(うるせぇよ! 今日も普通に学校なんだから、放課後までおとなしく寝てろ!) 

忍(しかしそう言われてものう……今日のために夜中、
  身体を休めたからの。今日は目が冴えているのじゃ)

暦(あーそうかよ。まぁとにかく黙ってろよ)

忍(良いではないか。学舎に向かう時ぐらい儂と戯れよ)

暦(ったく、しょうがねぇな。で、何を話すんだ?)

忍(そうじゃの……あ、昨日の接吻はどうじゃったか?)

暦「ぶッ!!!?」

暦(な、何を言い出すんだッ!)

忍(まぁ言うても初めてでではないからの。
  なに、ただの話題作りじゃよ)

暦(もう少し違う切り込み方をしてほしかったッ!)

忍(ハァ、まったく青いのお前様は……所詮はまだ、
  ただの小童と言うわけじゃな)

暦(うるさい。そりゃ何百年も生きれば恥もクソもねぇんだろうけどさ、
  そうだよ、僕がただの男子高校生だってことを忘れるなよ)

忍(子供じゃのう……)

暦(……お前にだけは言われたくなかった)

────────────────────
 
 ────放課後────


忍(さぁさぁ今はアフタースクールじゃ! 
  まるでアフタヌーンティーのうな洒落な言葉じゃのう!)

暦「……」

忍(アフタヌーンドーナツ……わっははー!)

暦「……うるさい」

ひたぎ「えっ? 何か言った阿良々木くん」

忍(はっ! ゴールデンチョコレートが儂を呼んでおる!)

暦「いや、何でもない…」

ひたぎ「あらそう、よく見ると少し顔色も悪いわね」

暦「…そうか? 戦場ヶ原、今日は僕こっちに用があるんだ」

ひたぎ「じゃあここで、じゃあね阿良々木くん」

暦「ああ、じゃあな」

────
──

暦「……」テクテク

忍(ドーナツとは、何故あれほどまでに美味なのか……うーむ)

暦「……忍、でてきていいぞ」

忍(そうかそうか、よし──日も良い感じに沈ッ!?」ゴンッ

忍「な、なにすんじゃい!?」

暦「だからうるせぇんだよ!! 一日中頭ん中で騒ぎやがって!」

忍「まぁまぁ、今日だけじゃ我が主様よ。
  何せ今日は、ドーナツデーじゃからの」

暦「最早ホワイトデーじゃない!?」

忍「おぉ! ここらはもうすぐ近くではないか! 走るぞー!」ダッ─

暦「って早すぎる!」

 ────
  ──

忍「今日も素晴らしく綺麗に陳列されておるのぉ……」

忍「して、お前様。今日こそは、
  ここの全てのドーナツを頂けるのかの?」パァッ…

暦「頂ける訳ないだろうが」

忍「っち、しけてるのぅ……いくらまでなのじゃ? 1200円ぐらいか」

暦「2000円だ、2000円出してやる。いつもの2倍だ」

忍「おお……おおぉ! 本当かっ!?」

暦「他のみんなにあれだけしておいて、
  お前だけぞんざいにするわけには、いかないからな。
  ましてや、お前なんだから」

忍「うむうむ。これでも、まぁ足りないぐらいじゃがのう。
  今日のところは、ここを及第にしておいてやるわい!」ニコニコ

暦「ふっ、可愛いやつめ」

忍「どれがいいかのぅ……どれがいいかのーっ」

 ────
  ──

忍「ッ……ふむッ…」モグモグ

暦「落ち着いて食えよ、ったく」

忍(儂もう、死んでもいい)

暦(キャラを壊しかねない台詞を吐くなっ。
  どんだけドーナツ好きなんだよ……)

忍「んぅ……っ……」モグ…モグ

暦「……まったく」

忍「っ……、ふぅ……」

暦「うまかったか?」

忍「……満足満足じゃ。あぁ、次が楽しみじゃの~ホワイトデー」ニヤニヤ

暦「まだ一年もあるぞ、気が早いな…」

忍「一年など寝ていればすぐにやってくるわい、カカッ」

暦「……」


 目ノ前ノ、ドーナツヲ頬張ツテイタ少女ガ、
 實ハ由緒正シイ吸血鬼ナノダト──僕ハ久々ニ實感シタ氣ガシタ。




 
                            ──完──

終わったくぅ~w

見てくれた人ありがとう
途中前作ネタ引っ張ってるとこがあったから張っておく↓

阿良々木暦「あ~そうかぁ、バレンタインデーかぁ……!」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52018684.html

まぁとにかく終わってよかった
支援してくれた方々ありがとう!

リアルで妹二人いる俺から一言
俺妹の京介まではいかないが、妹は悪いもんじゃないぜ(キリッ

>>171-173 なんで3回も書き込みしたんだ?
まぁただのミス、気にしないでくれ では

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