【IS】千冬「IS……なのか!?」【ACfa】(334)

 for Answer

 人類のために戦ったリンクスがいた。

 人類の未来のために戦ったリンクスがいた。

 しかしながら、彼らのどちらが勝とうと、そこに人類の意志は存在しなかった。

 それも、これですべて終わり。

 人類はリンクスの脅威から解放され、今度こそ真の選択を迫られるだろう。

 発展を望み壊死するか、現実から目を逸らし生き延びるか。

 何を選択するかは、これから生きる人類に託すとしよう。

 ……これが俺の答えだよ。セレン。

 ああ、俺もこれで終わりのようだ。

 そうだ、貴女に報告があるんだ。

 だから、叶うなら貴女と同じ地獄に……。

千冬「おい、起きろ」

 声が聞こえる。

千冬「起きているのだろう。早く起きろ」

 瞼が重い。

 体の節々から痛みがこみ上げる。

 もしかして、俺はまだ生きているのだろうか。

 だとしても、そう長くもないだろう。

 この声の主がすぐに俺を処刑する。

 当たり前だ。俺はそれだけのことを人類にしたのだから。

「ここはどこだ」

 目を塞がれている。いや、手も縛られているようだ。当然か……。

千冬「お前に質疑の権利はない。貴様は何者だ」

 何者だ……?

 俺のことを知らないほど辺境の地……いや、起こした規模を考えると在りえない。

 どういうことだ。

「残念ながら名前はないんだ。言うなら第二のマクシミリアン・テルミドールってところか」

千冬「マクシミリアン・ロビスピエールとテルミドールの反動。貴様、革命家か」

「何を言っている。革命は既に完了したはずだが?」

 彼らが考えていたのと違う、最悪の結末で。

千冬「……」

「……どうやら情報というより、認識に食い違いがあるようだ。ここは一つ、意見交換を申し込みたい」

千冬「許可する」

「ここはどこだ」

千冬「ここは日本のIS学園という場所だ」

 IS? いったいなんだそれは。

「……有澤重工43代目社長の名前は?」

千冬「知らんな……」

 これは一体どういうことだ?

「GA、インテリオル、オーメルという企業に聞き覚えは……?」

千冬「どこも聞いたこともない名前だ。おそらくISにかかわっているのだろうが、一体どこの中小企業だ?」

「……はははっ、アイツらが中小企業か。面白い。俺から見たら相当いかれた人間だ」

千冬「ああ、それは私からお前を見ても同じことだ。お前の言っていることは意味不明だ」

「それで、お前は俺に何を求めている」

千冬「お前とあのロボットの情報を知りたい」

「ロボット?」

千冬「お前が乗っていた変な機体の話だ」

「……人型兵器アーマード・コア。通称、ネクスト」

千冬「……」

「やはり知らないか」

 ネクストに関わっている企業を知らないのなら当たり前の反応か。

「ならこちらかも質問だ。お前が言っていたISとはなんだ?」

千冬「……女性にしか扱えない世界最強の兵器。インフィニット・ストラトス」

 インフィニット・ストラトス。

 聞いたことのない名前だ。

「聞き覚えないな」

千冬「そうか」

「なあ、俺のネクストを見たのだろ? よければそこまで案内してもらいたい。ここでは話にならない」

千冬「あの黒いの奴か」

「その黒いのであっている」

千冬「了承した」

 手錠が外される金属音が聞こえる。

 それから目隠しを外され、目に光が入る。

 最初に写ったのは長い黒髪の女性……その姿はまるで

「セレン……?」

千冬「? 誰だそいつは」

「いや、悪い。忘れてくれ」

 俺は馬鹿か。

 彼女が生きているわけがないだろう。

 俺が彼女を殺したのだから。

千冬「今から案内するが、常に監視されていることは忘れるな」

「構わない。案内してくれ」

千冬「昨日の話だ。一般試験をしている最中、そのボロボロのネクストとやらが降ってきた。
もちろん試験会場は大混乱。ネクストはすぐに地下に運ばれて、中を開けてみればお前が入っていたというわけだ」

「そうか。そうだったのか」

 この溶け口、英雄の死に間際に付けられたものだ。

 これほどの損傷だと、もう動かすことはできないだろう。

「コジマ汚染は知っているか」

千冬「知らんな」

 俺はどうやらあの死闘の後、何故かこの世界にやってきた。

 コジマ粒子に汚染されていない、平和な世界に。

 仮にこの世界が妄想だとしても、それもまたいいかもしれない。

 これが夢ならば、いつか覚めるだろう。

「この機体はもう廃棄した方がいい。これは厄災しか生み出さない」

千冬「こちらはそういうわけにはいかない。まだ秘匿とされているが、表に出たら研究者どもから引っ張りだこだろうさ」

「好奇心猫をも殺すという。興味本位で首を突っ込むなら、人類が滅びるぞ」

千冬「……脅しのつもりか?」

「脅しじゃない。俺の世界だと人類は滅亡の危機にまで追いやられた」

千冬「俺の世界……やはり、こことは違う技術で作られた機体なのか」

「ああ」

千冬「そういうことなら秘密裏に処理するとしよう。私とて世界を滅ぼす気にはなれない」

「感謝する」

千冬「気にするな。それと、お前にもう一機見てもらいたい」

「もう一機?」

千冬「おそらく、お前たちの技術で作られた――ネクストだ」

 地下施設の奥深く、その赤いネクストは確かに存在していた。

 見たことのない機体、おそらく白い閃光と同じく独自のパーツで作られているのだろう。

 しかし、どちらにしても……。

「ああ、これもネクストで間違いない。これを一体どこで?」

千冬「知り合いから厳重に管理するようにと頼まれた」

「そうか。しかし、これも直ぐに破棄した方がいい。これもネクストということは――」

『――適合者を確認』

 突如ネクストから音声が響く。

千冬「貴様、一体何をした!?」

「知らん。俺も初めてのケースだ」

『環境を世界と同期――失敗。当機から異常性(イレギュラー)を確認。

 ダウングレードを開始――完了。再び環境を世界と同期します――完了。

 搭乗者を捕獲します』

 突如ネクストが手を伸ばす。

 俺は為す術なく捕まると、コクピットに押し込まれAMSプラグがネクストに繋がれる。

『完了。続いてシステムの最適化を開始します』

千冬「これは……」

『完了。システムの再起動を行います』

「なんだこれは」

千冬「IS……なのか!?」

 自分の体に目を落とす。

 変形を為したネクストはとてもネクストとは思えない形となっていた。

 これがIS……!?

『これより、当機は貴方に従属します。イレギュラー殺し』

SS速報落ちててむしゃくしゃしたから投稿した。
とりあえずはじまりはこんな感じだけど需要あったりするのかね?

そもそも主人公とISにした元の機体のスペックが高すぎてIS組が勝てるイメージがないってのが
→戦っても蹂躙確定

需要あるのか。
なら夜に辺り投下します。

速報がまだ落ちてたらここに投下ってことで一つ。

そして脱字というか脱行をいくつか発見。
>>13の冒頭に地の文が数行入るのと
システム再起道完了の台詞

>>13の冒頭は地下施設に壊れかけの主人公のネクストがあったこと

システム再起道時の台詞は
『システムSeraphの起動を確認』
からの
『これより、ry』

とりあえずはオルコット戦
良心が痛む

「Jaded Tier」

千冬「ジェイド・ティーア。英語とドイツ語の混合か。随分悩んだようだがそれでいいのか?」

「構わない」

千冬「……そうか。それでそのISの名前は何にする」

「ストレイド」

千冬「今度はすんなり決まったようだな。ストレイド――いい名前じゃないか」

 ストレイド、セレンがつけてくれた最初の名前。

 俺の初めてISに名前をつけるなら、その名前がふさわしい。

 あの世界でやったことを、決して忘れないようにという意味もあるが。

千冬「それなら名前も他のに変えた方がいいのではないか? マクシミリアン・テルミドール。男のIS乗りにはピッタリではないか」

「テルミドールはあの世界で死んだ。それでいい」

千冬「革命か……その世界で一体何があったというんだ?」

「ただ歪んでいただけだ。俺も、そして世界も」

千冬「その果てでジェイドか。まあ、お前がそれでいいのなら何も言わん。好きにしろ」

 その後、様々な書類を片づけるとIS学園の寮に案内された。

 結論だけを言うと俺はこのIS学園に通うことになった。

 学園が始まって以来の男のIS乗り、その二人目としてデータが欲しいらしい。

 もっとも、俺のデータというよりも俺のものになったIS ストレイドのデータといった方が正しいだろう。

 ちなみに一人目の男の名は織斑一夏、織斑千冬の実の弟。

 どうやら彼も今年からこの学園に入学するようだ。

千冬「今日からここがお前の部屋だ。今日はゆっくりと休め」

 千冬に一礼すると部屋のドアノブを掴みドアノブを開けようとする。

 しかしドアノブを回した瞬間に部屋の中から人が動く生活音が聞こえる。

ジェイド「千冬、ちょっといいか?」

千冬「なんだ? あとこれからは織斑先生と呼べ」

ジェイド「了解した。それより部屋の中に誰かいるようだが」

千冬「そんなはずは……あっ」

 そういうと千冬はちょっと待っていろと言い残すと部屋の中に入っていった。

 俺は千冬が出てくるまで壁に寄りかかって待っていたのだが、しばらくすると部屋の中から黒髪の女が何故か俺を睨みながら荷物を抱えて出て行くのだった。

一夏「俺は織斑一夏。君は?」

 織斑一夏の第一印象は、飄々として奴、だ。

 女尊男卑の世界で常にヘラヘラしてるのが気に入らない。

ジェイド「ジェイド・ティーア」

一夏「ジェイド・ティーア、ティーアは呼びにくいからジェイドって呼んでいいか?」

ジェイド「ああ、お前のことも一夏でいいか?」

一夏「もちろんいいぜ。それにしてもよかったよ。まさかIS学園で男友達ができるって思ってなかったからさ」

ジェイド「ああ、確かに。心理学上、女性の中で男性一人だと自殺する確率が高いらしいから安心だな」

 昔、出撃前にセレンがそう言っていたことを思い出す。

一夏「うぇ、聞きたくなかったぜそんな情報」

ジェイド「俺も他の人に聞かされた話だ。その情報が本当かどうかは疑わしいものだ」

一夏「あはは、まるでお婆ちゃんの知恵袋みたいな話だな……」

 使い方を間違っているとはいえ、お婆ちゃんの知恵袋扱いされたらお婆……セレンは怒るだろうな。

ジェイド「ああ、そうだな」

 セレンは喜々としてそういう知識を披露するからなぁ。

一夏「面白い知り合いがいるんだな。とにかくこれからよろしくなジェイド」

 俺と一夏は1-Aの教室の前で待たされていた。

 今頃教室の中では山田という先生と、千冬が俺たちのことを紹介しているらしい。

 織斑一夏の第一印象でヘラヘラしていると言ったが、それは取り消そう。

 どうやら、彼は分け隔てなく人と接しようとしているタイプのようだ。

千冬「というわけで二人とも入ってこい」

一夏「行こうぜジェイド」

ジェイド「ああ」

 千冬がそういうと一夏と俺は教室のドアを潜り1-Aの中に入った。


一夏「俺の名前は織斑一夏。ジェイドと俺は男だけど、それでもみんなよろしくな」

ジェイド「ジェイド・ティーアだ。一夏共々、よろしく頼む」

千冬「突然だが、これからクラス代表を決めてもらう。立候補者はいないか?」

セシリア「それなら、わたくしが立候補しますわ」

千冬「なるほど、ほかに誰かいないか? なんなら推薦でもいいぞ」

「はーい。それなら織原君がいいと思いまーす」

「私はジェイド君がいいと思います」

 推薦されるとはどういうことだ?

 俺は一夏と違って愛想よくしているつもりはないのだが。

千冬「そうか。さて、どう決めたものかな」

セシリア「それなら専用機もちでイギリスの代表候補生であるわたくしがふさわしいと思いますわ」

千冬「水を差すようで悪いが、一夏はまだ届いてないだけで二人とも専用機持ちだぞ」

セシリア「それでも、所詮はIS歴のないひよっこ。代表戦を考えるとわたくしがなるべきですわ」

セシリア「それに、男がクラス代表だなんて、いい笑いものですし」 

一夏「っ! それはどういうことだ」

セシリア「そのままの意味ですわ。男と女、世間でどちらが偉いか知っていますか織斑さん」

一夏「そんなこと誰だって知っている。女が偉い。それがなんだって言うんだ」

セシリア「なら私に譲ろうとは思いませんの?」

 確かセシリア・オルコットといったか。ずいぶんと彼女はいい性格をしているようだ。

一夏「思わない。お前最初に言ったよな? 男が代表だといい笑いものだって」

セシリア「ええ、いいましたわ」

一夏「つまりはそういうことだ。結局お前は自分の見栄の為代表になりたいだけだ」

一夏「男に代表を奪われたと祖国から笑われたくない。ただそれだけの話だろ」

セシリア「そんなことありませんわ! わたくしは――」

一夏「――みんながお前と同じ気持ちなら俺たちが推薦されるわけがない。違わないか?」

セシリア「それは……ふぅ。確かにそうですわね自分の被は認めましょう。それで、あなたはクラス代表を実力で決めれば問題ない。そうですわね?」

一夏「ああ」

 どうやら彼女は実力勝負に持ち込むつもりのようだ。

 クラス代表戦があることを考えると妥当な案ではある。

 しかしIS歴が低い相手に実力勝負とは、意地悪なやつだ。

セシリア「わかりました。ならばイギリス代表候補生のわたくしがあなた達に決闘を申し込みます。クラス代表はその結果で決めましょう」

一夏「それなら俺も文句ないぜ。ジェイドもそれでいいよな?」

ジェイド「いや、推薦してくれた人には悪いが辞退させてもらう」

セシリア「あら、怖気づきましたの?」

ジェイド「何より戦う理由がない」

セシリア「いえ、ありましてよ。この中で誰が一番クラス代表にふさわしいかはっきりしますわ」

ジェイト「それ自体がくだらない」

セシリア「どういう意味ですの?」

ジェイド「そもそも、ISとは兵器だ。兵器とは暴力だ。引き金を引けば簡単に人が死ぬ」

ジェイド「ファッション感覚で着こなし、自慢をし、殺す覚悟も殺される覚悟もなく扱うようなものじゃない――ごっこ遊びがしたいなら一人でやるんだな」

ジェイド「それともお前はさっき、俺と一夏を殺すつもりで決闘を申し込んだのか」

セシリア「っ! そんなことあるわけないでしょう!」

ジェイド「所詮はその程度の覚悟だ。兵器を使った決闘は言うなら殺し合いだ。そんなことすらわからないヤツらと戦って何になる」

千冬「ジェイド・ティーア!! ISには絶対防御という機能がある。ISのエネルギーが切れない限り死ぬことはない。言いすぎだ」

 なら、エネルギーが切れたら後ならばどうだ。そもそも相手がISを装備していなかったら場合はどうする。

 例えどんな理屈を並べようとISが兵器だということは変わらない。

 そんな反論が脳裏に浮かぶが口に出すことはなかった。

 どうにも、彼女と被ってしまう。

ジェイド「……少しばかり言い過ぎたようだ。謝罪する」

セシリア「いいですわ。あなたが野蛮な人だということは充分にわかりましたから」

セシリア「常識的に考えて、ちゃんとルールを決めてから戦うに決まってるでしょう」

ジェイド「野蛮か。言いえて妙だな。どちらにしろ、俺はくだらないことで戦うつもりはない」

セシリア「あら? あれだけ大きな口で叩いておいて、もしかして戦うのが怖いのですか?」

ジェイド「そんな安い挑発に乗るとでも?」

セシリア「少しは知能があるようですわね」

千冬「お前らそこまでにしろ。ジェイド、お前も参加しろ。くだらないというのならお前の実力を見せてみろ」

ジェイド「……勝ち残ったとしても、俺は代表を辞退する。それでもいいか?」

千冬「その時はお前の好きにしろ」

セシリア「上等ですわ」

千冬「織斑もそれでいいか?」

一夏「あ、ああ」

セシリア「ふふふ、初めてですわ。ここまで私を怒らせた殿方は」

 それから数日後の放課後、第一回戦が始まった。

 対戦するのは俺とセシリア。

 一夏は専用機の都合で後回しとなった。

 審判は公平のため千冬と山田先生の二人でやることに。

 そして観客席には一夏を除く1-Aの生徒達に加えて、他のクラスの生徒達も集まっている。

 一年の専用機持ち同士が戦う。

 それだけで見るに来る価値はあるのだろう。

 特に他クラスの代表にとっては。

セシリア「あなたには絶対に負けませんわ」

ジェイド「そうか。悪いがこちらも本気でやらせてもらう」

セシリア「上等ですわ」

 AMSの接続を、より深いところまで接続する。

 一次接続、二次接続、そして三次接続。

千冬「準備はいいか?」

セシリア「もちろんですわ」

ジェイド「アア」

千冬「それでは――始めっ!」

 空中で敢えて棒立ちになると、俺はストレイドの武装を再び確認する。

 パルスキャノンにチェーンガン、マルチミサイル、光波付きの黒月光剣に自分のネクストから回収した月光剣。

 設置型オービットに自機周回型オービット。

 さらにECMスモークによる光学迷彩にプライマルアーマー。

 そして最後に連続照射型のアサルトキャノン。

ジェイド「バケモノガ……」

 そのすべての武装が、まるで自分の手足のように感じられる。

 それは二次接続時の話で、三次接続の境地はその上にあるのだが。

セシリア「油断大敵ですわ」

 俺から距離をとった彼女は挨拶とばかりにレーザーライフルを撃ってくる。

 俺はその攻撃を見もせずに機体のEN残量、そしてコジマ粒子の代わりにENを使用されているPAの減り具合を感じ取る。

 PAにレーザーが当たり、PAで減衰されたのちに機体に直撃する。

 ISと化した際、どうやらストレイドにも絶対防御が付加されているようだ。

 故にエネルギー残量つまりはEN残量で勝敗が決める。

 そして今の攻撃では、どうやらEN残量は一割も減っていない。

 PAで減った分のENが再びPAに回され、ENの自動回復が開始される。

 エネルギーを消費するだけのISとENが自動回復よう設計された元ネクスト現ISの戦い。

 機体性能の時点で俺の方が圧倒的に優位のようだ。

 セシリアはビット型の武器を複数散布させ、次の攻撃に備えている。

ジェイド「タメスカ」
 オバードブーストのハッチが開き、コジマ粒子を使用しない代わりに大量のENが消費される。
セシリア「なっ!?」
 セシリアは急激に距離を詰められ驚いているが、俺からしてみれば
ジェイド「オソイ」

 標準型中量ネクストのオーバードブースト時の平均速度、それを大きく下回っている。

 コジマ粒子を使用しないのなら、出力はこんなものだろうか。

 速度は体感的に半分程度。

 しかし、これだけ遅いのなら、更にブーストを吹かす余裕がある。

セシリア「!?」

 オーバードブーストに加え、クイックブーストをメインとサイドで交互に吹かせる。

 AMS三次接続特有の――複雑な立体的な挙動でセシリアに迫り、そして彼女を追い抜いた。

 そしてセシリアを追い抜くと、彼女が振り返る前に光学迷彩を展開し、両手のブレードを展開しながら大きく旋回する。

セシリア「一体どこに!?」

 彼女は振り返ると俺を見失ったと思ったのか、くるくる回りながら俺を探し始める。

 そこで俺は月光剣を構えて真正面からセシリアに突撃する。

 月光剣の刀身が伸び、右の剣は黒い光を、そして左の剣は白い光を纏いはじめる。

 セシリアの目の前で光学迷彩を解くと、二つの月光剣がセシリアの機体を襲う。

 しかし様々なネクストを切り裂いてきた月光剣は、ISの絶対防御によって一刀両断にすることはできず、エネルギーを大きく削り、吹き飛ばすことしかできない。

セシリア「っ!?」

 セシリアが突然の奇襲と突然の反動で怯んでいるうちに、彼女に見えないよう上空にオービットを発射する。

 その後も悟られぬよう、チェーンガンをばら撒きながら後退すると彼女が口を開いた。

セシリア「くっ、そんな雑な攻撃でっ!」

 セシリアはビットで反撃するが、それを最低限のブーストで躱すとパルスキャノンを放つ。

 通常のネクストなら、これだけENを消費し続ければ、そろそろENの回復量が追い付かずに機動力が落ち始めるころだ。

 しかし、どうやらストレイドはブーストの出力を下げる代わりに消費ENを減らしているようだ。

 加えて、元からのEN回復量も並みではない。

 あれほど連続でENを消費したにも関わらず、ENは減るどころか、逆に回復しているようにすら思える。

 リンクス時代にこんな性能のネクストと戦うことになっていたら、そう思うと末恐ろしい。

 セシリアがパルスキャノンを避けると、一発の垂直ミサイルを発射する。

 距離は充分に取っている。ここはオービットの射程外。

セシリア「はっ、そんな攻撃……なっ!?」

 セシリアが空を見上げ上空のオービットの存在に気付くと、思わず言葉を漏らした。

 そして落下するミサイルに複数のオービットが反応して、迎撃行動を始めた。

 結果、アサルトセルを連想させるオービットの弾幕にセシリアの機体が飲み込まれた。

セシリア「きゃああああっ!!」

 これでも勝負はまだついていないらしい。

 それなら、この兵器なら。

 高度を上昇させながら背中にある武装の一つ――アサルトキャノンを動かす。

 銃身に格納されている銃口が伸ばし、銃身が脇の下を通し右腕部に装着する。

 銃身を右腕部に固定すると銃身が機体のENを喰らい始めた。

 機体が活動できるギリギリまでENを絞り、回復されていくENを更に吸い上げ続ける。

 EN不足でアラートが鳴り始めるが、それでもお構いなしに。

 耳元で鳴るアラート音をまるでどこか遠くのことのように思いながら、最小のEN消費でホバリングを開始する。

 そして銃身に集められたENはついに目に見える形にまで圧縮され、光始めた。

 銀翁のアサルトキャノンとは違い、緑ではなく青い光。

 コジマ粒子に頼らない純粋なENの光。

 オービットの攻撃を受け、力なく落下し始めるセシリアにその銃口を向けて構える。

「オワリダ」

千冬「やめろジェイド! 試合はお前の勝ちだ!」

 ようやく終わったことにため息をつくと、上空に銃口を向けてアサルトキャノンを解放する。

 放射され続けるアサルトキャノンはバリアーを破壊すると空にまでたどり付き、空を覆う雲に穴を開けていく。

 コジマ粒子ではなくENを使っているというのに銀翁のそれとは桁違いの威力だ。

ジェイド「バケモノガ」

 思わずそう呟いていた。

 数秒間の放射が終わると、EN不足のアラームが鳴りやみ、枯渇していたENの回復が始まる。

 俺は機体のENが回復しきったのを感覚的に確認すると、AMSを一次接続に接続しなおして地上に降りる。

 地面に座り込んでいるセシリアに近づいた時だった。

セシリア「ひっ……」

 彼女は酷く怯えた表情を浮かべていた。

 そして周りを見回して気付く。脅えていたのは彼女だけじゃなかった。

 試合を見に来ていた一組の人々が、そして他の観客達が自分達と違う別の何かを見るように俺のことを見ている。

 その視線には見覚えがある。

 まるでリンクス時代の、あの時のようだ……。


 あのときも今も、彼らの眼に俺はどう写っているのだろうか。

千冬「ジェイド……寮に戻ってゆっくり休め」

ジェイド「……了解した」

 What are you fighting for?

 英雄に問われた問いを思い出す。

 For Answer……

 あの時は目的があった。答えがあった。

 だが今はどうだ。

 俺は今、何のためにISに乗っているのだろうか。

 そんなことを思いながらISを解除すると、静かにその場を後にするのだった。

大量虐殺√の主人公にA.C.E.R版のナインボール・セラフを使わせたら9手で倒されてもしかたないね

試しに書いてみて、想像以上にアレがアレでアレだった

PTSD、いいなぁ(ボソッ
PTSDになってもワンサマーならきっと……

ちなみに千冬さんが止めてなかったらアサルトキャノンの照射が終わる前にエネルギーきれて普通にアボーンだよな

うわあ……
>>1に変な知恵付けさせるからセシリアさん超目立ってるじゃないですか!


もっぴー、鈴、無人機がかわいそうな展開に……

何故かID変わったようだけど>>1です……コテハンつけた方がいいのだろうか

今回は展開変わって前回のせいでボッチ回

最初セシリアはヘタレかわいい感じにしようと思ってたんだけどなぁって感じ


あとAC知らない人も見てくれてるみたいだから戦闘のところ三人称にしてちょっと解説加えてみましたよっと

一夏「もう終わったのか? お疲れ様……ジェイド?」

ジェイド「なんだ?」

一夏「顔色悪いけど何かあったのか?」

 織斑一夏はセシリア・オルコットとの戦いを見ていない。

 まだ彼は手の内を探る段階に達しておらず、ISの基本的なことを彼の幼馴染から習っているところだ。

 それが今一夏の隣にいる篠ノ之箒だ。

箒「お前は……」

ジェイド「会話をするのは初めてか。篠ノ之箒」

箒「どうして私の名前を知っている」

一夏「何故って同じクラスだからだろ?」

箒「お前はたった数日でクラス全員の名前を覚えるほど暇か?」

ジェイド「簡単なことだ篠ノ之束を調べていたら、お前の名前に行きついただけだ」

 IS研究の第一人者、篠ノ之束。

 467個のISコアを開発したのちに行方をくらませた天才。

 世の中に偶然がないのなら、あのネクストをISに仕立て上げた疑いのある人物。

箒「それで調べてどうするつもりだ」

一夏「おい、箒いい加減に」

箒「お前は黙ってろ。一夏」

ジェイド「別に、どうにもしないさ」

箒「嘘をつくな」

ジェイド「……話すだけ無駄だな。一夏、先にシャワー浴びるぞ」

箒「まだ話は終わっていない!」

一夏「箒、いい加減にしろ。ジェイドは試合で疲れてるんだ。少しは察しろよ」

 数日学校で過ごしたからわかる……篠ノ之もお前にだけは、いや、何も言うまい。

ジェイド「お前も試合が近い。俺に構わずやるべきことをやったほうがいい」

 その必要も、ないかもしれないが。

千冬「昨日の試合、どういうつもりだ」

 翌日、案の定千冬に呼び出された。

 セシリアが授業に出ることを拒否したことも原因の一つだろう。

ジェイド「戦えと言われたから戦った。あなたの言ったことだ」

千冬「確かに私にも被はある。だが私はセシリアを殺せと言った覚えはないぞ」

ジェイド「……」

千冬「お前が一番わかっているのだろう。もう少しでお前はセシリアを」

ジェイド「確かにあれは俺のミスだ。まさかあそこまでとは思わなかった」

千冬「ジェイド、もうあの武器は使うな。今度こそ取り返しのつかないことになる」

ジェイド「もう遅いかもしれないがな」

千冬「……」

ジェイド「PSTD、別に珍しいことじゃない。戦場ならな」

千冬「ここは戦場じゃない、学び舎だ。そのことを忘れるな」

ジェイド「肝には銘じておくよ」

 織斑千冬の次は、寮でその弟に問い詰められる。

 おそらく、彼の耳にも話が入ったのだろう。

一夏「ジェイド、昨日の試合何があった」

一夏「山田先生から連絡があった。俺がクラス代表になるそうだ」

ジェイド「そうか」

一夏「そのときにセシリアがクラス代表を辞退したと聞いた。何があった」

ジェイド「ISとは兵器だ。兵器は暴力だ。人を傷つけることもある。つまりはそういうことだ」

一夏「千冬ねえが言ってただろ。ISには絶対防御がある。そんな説明で納得できるか」

ジェイド「ISの絶対防御は完璧じゃない。例えば一夏、喜怒哀楽その類の感情をISは防げるだろうか?」

ジェイド「答えはノーだ。絶対防御と言えど、防げるのは肉体的損傷だけだ。精神的損傷は防げない」

ジェイド「昨日、俺はセシリア・オルコットと戦った。その時の様子は他の人から聞いた方がいいだろう」

ジェイド「その結果として、彼女は心に傷を負った。クラス代表を諦めてしまうほどの」

ジェイド「これ以上、俺から言えることはない」

一夏「……」

ジェイド「一夏もよく考えた方がいい。ISとは本来、こういうものだ」

ジェイド「What are you fighting for?」

一夏「え?」

ジェイド「いつか、お前の答えを聞かせてくれ」

 それから織斑一夏との交流はめっきりとなくなった。

 いや、取らなくなったというのが正しいだろう。

 いくら未遂だとしても、危うくセシリアに止めを刺そうとしていた事実は変わらない。

 いくぶんか脚色されているようだが、とにかく一夏にもその話は回ったようだ。

 最近ではセシリアも登校するようになったが、まだISの訓練は控えているらしい。

 結局クラスの代表は織斑一夏がなることになった。

箒「代表戦までもう少しだな」

一夏「ああ、あと一週間。専用機持ちも四組しかいないから、なんとかなるかもな」

箒「自惚れるなよ一夏。私もお前も、まだまだ覚えることが一杯あるんだからな」

「それにその情報も古いしね」

鈴「やっほー、一夏」

一夏「……お前、もしかして鈴か!?」

鈴「ふーん。前よりいい面構えになったじゃない」

箒「一夏、もしかして知り合いか?」

一夏「知り合いも何も幼馴染だ」

箒「何を言っている……?」

一夏「ああそっか。箒とほぼ入れ替わりで来たんだっけ」

一夏「言うなればセカンド幼馴染だな」

鈴「セカンドって響きには納得いかないけど、まさか一夏があの一組代表だなんてね」

一夏「何の話だ?」

鈴「とぼけちゃって、聞いたわよ。クラス代表決定戦のこと」

 鈴がそういった瞬間、クラスが静まり返える。

 クラスではその話はタブーとされている。

 特にセシリアの前では。

セシリア「っ!」

 口元を抑えてセシリアが机に蹲る。

 その周りにセシリアを心配したのか女子が集まってセシリアの介抱をしている。

鈴「何なの? まあいいや。とにかく代表戦はよろしくね一夏」

一夏「ん? もしかして鈴も代表なのか?」 

鈴「2組代表凰鈴音。私も専用機持ちだから覚悟しときなさい」

 そう言うと彼女は1組から出て行った。

 さて、人の噂は75日と言うが、俺の噂は後何日で消えるのだろうか。

 ネットを開き、調べ物をしているとストレイドに通信が入る。

千冬「貴様、今どこにいる」

ジェイド「寮の自室だが?」

千冬「ふざけてるのか。今日が何の日か知っているだろうな?」

ジェイド「クラス代表戦。代表と同じ部屋で忘れるわけないだろう」

千冬「ほう、知っていて来ないとはいい度胸だな」

ジェイド「結果だけなら一夏から直接聞くさ。わざわざ見に行く必要はない」

千冬「嘘をつくな。最近織斑とまともに口を聞いていないことは調査済みだ」

ジェイド「あまり言いたくはないのだが、口を聞かなくなった事件の元凶は誰だったか」

千冬「それ以降、現状を改善しようとしないお前が悪い」

ジェイド「ふん。まあ、気が向いたら向かうさ。切るぞ」

千冬「おい――」

 ……セレン。

 この世界に来て、色々調べてわかったことがある。

 どこの世界でも、根っこのところで腐っているようだ。

 学園に警報が鳴り響く。

 やっぱり来たか。

 俺の考えが正しいのならそう危惧することでもない。

 情報収集のついでに彼らに発信してるだけだ。

 私はまだ生きている、と。

 警報が鳴り、しばらくするとストレイドに通信が入る。

 千冬からだとたかをくくっていたが、ディスプレイに表示された名前に少し驚いた

セシリア「あの、聞こえていますか?」

 通信状態が悪い。

 雑音やノイズをたくさん拾っているが、聞き取れないほどでもない。

ジェイド「ああ、聞こえている」

セシリア「っ……アリーナに侵入者が入ったことは知ってますわよね」

ジェイド「ああ」

セシリア「お願いします。織斑さん凰さんを――二人を助けてください」

ジェイド「……わかった」

セシリア「あ、ありがとうございます。今二人はアリーナで――」

ジェイド「……」

 トラウマを作り出した本人の声を聞くのですら辛いだろうに、通信とは恐れ入る。

 ただ働きの依頼――よくよく考えれば古王と一緒に受けて以来か。

 アリーナを占拠する不明ISの撃破。

 ストレス解消にちょうどいいか。

 アリーナにたどりつくと、アリーナ―で全身装甲のISと対峙する二人の姿が見える。

 一夏のISが百式。彼専用に開発されたISだと聞いている。

 もう一機は甲龍、燃費と安定性に趣を置いたISだった気がする。

ジェイド「織斑一夏、凰鈴音」

一夏「ジェイドか! 助かった。援護頼む!」

 久しぶりに名前を呼ばれて一夏は嬉しそうに返事をする。が、しかし

ジェイド「悪いが一人でやらせてくれ。今はそういう気分なんだ」

鈴「ちょっとあんた! 何かって言ってるのよ!」

ジェイド「ならいい。好きにやらせてもらう。とにかく、アイツは俺の敵だ」

 その時だった。

『撃破(イレギュラー)対象を確認。Seraphシステム作動』

 地下施設で聞いた音声がISから流れる。

 あれ以来一度も流れなかったというのに、どういうことだろうか。

『システム通常モードから戦闘モードに移行します』

『武装の制限を解除、EN残量に注意してください』

 ああ、もしかしてこれが噂に聞く、

鈴「まさか、第二次移行!?」

 EN武器の出力上限があがってる。

 EN残量注意ということはEN消費量も相対的に上がっているのだろう。

ジェイド「一夏、そういえば俺が戦うところ、見たことなかったよな」

一夏「あ、ああ」

ジェイド「ならついでに見せてやるよ」

ジェイド「リンクスの力と、反英雄の力量を!」

 ジェイドはAMSを三次接続にすると、オーバードブーストで敵ISに接近する。

 脳と機体の統合制御体を直結させるシステム、Allegory-Mainpulate-System――通称AMS。

 脳に電気信号を流し、情報として処理することで極めて高い反応速度、及び制御能力を得ることができる。

 それはAMSなしだと「極めて統制のとれた十数人のチームが必要」とすら言われている。

 これがリンクスが瞬間時速数百キロの高速戦闘を行える秘密である。

 しかし、それはあくまで一次接続までの話。

 二次接続、三次接続になると、流れる電気信号の量も、得られるものも、文字通り次元が違う。

 二次接続になると自分の体と同程度の姿勢制御を、三次接続になると人体よりも複雑な姿勢制御が可能で、

 三次接続したリンクスの中には、瞬間時速数千キロの超高速戦闘ができるほどの反応速度を得た者もいる。

 もちろん、脳に電気信号を流せば流すほど人体に掛かる負荷は大きい。
 
 中には電気信号を流しすぎて、精神にまで影響が出ていた者がいたほどである。

鈴「馬鹿! 正面から向かったら」
 
 敵ISの腕からビーム砲撃が放たれるも、クイックブーストで回避しながら敵の死角に回り、パルスキャノンを叩き込む。

 敵ISは長い腕を駒のように回転させ、ビーム砲撃を放ちながら接近してくる。

 オーバードブーストでビームを避けながら敵ISに接近し、機体がぶつかる直前でクイックブーストを吹かせる。

 クイックブーストもまたAMSから得る高姿勢制御を利用し、前後左右への瞬間的な高速移動を可能としたものである。

 ジェイドは敵に当たる直前に、横に避け、反転しつつ、相手の後ろに回り込み、プラズマキャノンを敵ISに叩き込んだ。

 三次接続をしているジェイドもネクスト戦ではここまでの芸当はなしえないが、IS程度の相対速度で超高速戦闘ができるほどの反応速度、姿勢制御があれば話は別のようだ。

 ジェイドは更に自機周回型オービットを発射すると、両手の月光剣にENを回す。

 間合いを詰めて敵を切り裂き、反動で仰け反り間合いが空くとクイックブーストの量を調節して間合いを詰める。

 敵ISのレーザーをスラスターの推力だけで避けるとオービットの射撃で相手の隙を作る。

 体制を整え再び間合いを詰めて切る、切って、切って、切りまくる。

 そして敵ISが片膝を着くと、ジェイドはオービットの出力を上げると一斉に射撃する。

 オービットバースト。第二次移行後の制限解除でできるようになった本来のオービット最大出力での射撃。

 様々な角度からオービットバーストを叩き込まれた敵ISは沈黙し、完全に機能を停止した。

 その光景を見ていた凰鈴音は後に語る。

 その一連の流れは、まさに鬼神のごとき暴れっぷりだったと。

セシリアに関しては悪乗りした>>1が悪い

出番らしい出番がセシリアの代わりというかわいそうなもっぴー
出番を削られたかわいそうな鈴
ストレス解消でフルボッコにされたかわいそうなゴーレムⅠ

次やるとするんならセシリア復活させて一夏さんにスポット当てさせるんじゃないんでしょうか

はぁあ? PSTD?

ふざけるな。セシリアは妄想癖あるようチョロインでヘタレかわいいんだよ。PSTDでトラウマ付けられて誰が喜ぶん?書き直せ。一体だれだよこんな糞展開書いた奴は!

ということで84以降にレスはなかった。いいいね?書き直す

なん……だと。
もしかしてPSTDチョロルート需要あるの?

PSTDってなんなんですかねえ

>>119
人だもの、間違えもするさ……。

PTSDのチョロインね。把握した。

相手の攻撃よけれないからひたすらガチタンでプレイしてる
俺にはうらやましい戦闘シーンだw

>>123
Another Century's Episode R やろう
ナインボール=セラフ実際にこの話以上の戦闘ができるよ!(宣伝)

ジェイド「敵ISの沈黙を確認。ミッション完了」

 戦闘モード、これがこの機体の本当の火力なのか。

 EN残量も残りわずかしか残ってない。

 戦闘モードではもっとEN管理を徹底しなければ、この機体を乗りこなしてるとは言えないか。

 アリーナを出ようと上昇すると、一夏が俺の前に立って口を開く。

一夏「なあジェイド。そろそろセシリアのこと、なんとかできないか?」

ジェイド「全ては彼女が決めることだ。例え学園を去る事になったとしても、俺には関係ない」

一夏「関係……ない?」

ジェイド「残存するコアはたった467個。それに比べて、人の代わりは掃いて捨てるほどある」

一夏「掃いて捨てるって……」

ジェイド「そういうものだろ」

 通信機から千冬の声が流れる。

千冬「それはどこの世界での話だ? この世界か。それともお前のいた世界か」

一夏「千冬姉?」

ジェイド「変わらんさ。インフィニット・ストラトスも、アーマード・コアも」

ジェイド「ネクストが世界の中心だったように、ISがこの世界の中心だ」

ジェイド「どちらの世界も力が全てだ。なら意思のない者はここにいるべきではない」

千冬「そうか……そうだったな。ジェイド、お前は少しだけ間違っている」

ジェイド「どういうことだ?」

千冬「何もお前の考え全てを否定するつもりはない。私も軍隊で教官をやってた時期があるからな」

千冬「だが、IS学園は軍とは違う」

千冬「ここはあくまで、ISの操縦を実戦形式で学ぶところだ」

ジェイド「それは甘い考え方だ」

千冬「そうだな。お前の世界ではそうだったんだろうさ。だが、ここはお前のいた世界じゃない」

千冬「あの世界で死んだ。そう言いながらいつまでその世界のことを引きずっている」

ジェイド「もちろんリンクスとして死ぬまでだ」

千冬「この世界に、ネクストは存在しない」

鈴「……ネクスト? お前のいた世界?」

ジェイド「リンクスとはAMSを仲介して繋がった人外のことだ。そして俺はまだ、このISと繋がっている」

千冬「そうか。どうやらこの世界に生きるジェイド・ティーアはまだ存在していなかったようだ」

千冬「おいそこの二人、そいつの目を覚ましてやれ。私が許す、叩き潰せ」

ジェイド「……正気か?」

鈴「ほ、本気ですか先生!?」

千冬「やるのかやらないのか、どっちだ」

一夏「わかった。俺がやる」

鈴「一夏っ!?」

千冬「いい返事だ」

「そうか……そうだな」

 ジェイド・ティーアは所詮仮の名前だ。

「そうか。なら覚悟しろ。今から戦うのはジェイド・ティーアじゃない」 

 織斑一夏が剣を構え、少しずつ距離を取り始める。

「カラード、ORCA、暫定ランク1:Unkown 通称首輪付き」

 リンクス時代――リンクスを殺して回った時から残っているのはこの武装のみ。

「イクゾ」

 左の月光剣から白い光が噴き出し、

 抑揚のない声が無名の男から発せられた。

千冬「これで、あの世界で生きたお前は死んだ」

 芝生の上に立つ彼女はISを展開したまま膝で立っている俺にそう言った。

千冬「これからはこの世界で生きろ」

 見上げる空には二つのISの姿が見える。

 油断をしたと言えばそれまでだ。

 PAを引き裂いた織斑一夏の一撃に、静観してると思われた凰鈴音の直前の援護。

 武装はリンクス時代よりも劣っているが、本来の機体性能は今の方が高い。

「負けか」

 絶対防御がなければ、俺もISも無事ではなかっただろう。

『システム、通常モードに移行します』

 そう無機質に響く声が、自分の負けをより一層実感させる。

千冬「手間をかけさせるな。『馬鹿者が』」

 ふと、千冬の面影に彼女が被る。

「……セレン、俺はどうすればいい」

 気づいたらそう問いかけていた。

千冬『甘えるな。答えは自分で見つけろ』

「…………織斑千冬、迷惑をかけた」

千冬「本当だ。まさか、また他の人間と間違えられるとはな」

 彼女はセレン・ヘイズではない。また彼女も織斑千冬ではない。

千冬「ここは戦場じゃない。自由に生きてみろ。今の私に言えるのはそこまでだ」

 すべては千冬の言葉だが、何故か彼女にもそう言われたような錯覚を感じてしまう。

「……そうか」

ジェイド「ISは兵器だ」

 その日の夜、寮の部屋からセシリア・オルコットに思うままに告げる。

 もしISの通信を切られたのなら、その時はそこまでだ。

ジェイド「……引き金を引けば、人は死ぬ」

セシリア「……」

ジェイド「殺すか殺されるか。今まで俺は、そういう世界で生きてきた」

ジェイド「だからこそ、トラウマを乗り越えるかどうかは、お前自身の問題だと思っていた」

ジェイド「自分には関係ないと、そう思っていた」

ジェイド「……俺はトラウマを負わせてしまったことを許してほしいとは言わない」

ジェイド「気が済むのなら、一生恨んでくれて構わない。俺に何をしたとしても許容しよう。ただ、すまなかった」

セシリア「そうですか。もう切らせていただきます」

 そこで通信が途切れる。

一夏「……お疲れ様」

 隣で通信を聞いていた一夏が声をかけてくる。

ジェイド「お前にも迷惑をかけた」

一夏「気にするなって。それにこういう時はありがとうって言うんだぜ」

ジェイド「…………ありがとう」

 次の日の朝、ストレイドにはセシリアから一通のメッセージが届いていた。

 今はただのインターバルですわ。それでも責任を感じてるのなら、私のリハビリに手伝いなさい。

 その一文にどれだけの時間がかかったのか、その中に込められた彼女の感情は、メッセージが届いた時間からも推し量れる。

 一晩考えた末に彼女がそういうのなら、もう少しだけ、IS学園の生徒としてこの学園に通うことにしよう。

体感的に短いようで長い間ありがとうございました。
これで起承転結、いい感じに(見えるように)終わったんじゃないんですか?

ただ残念だったのは>>1本人が悪乗りをした結果、続きを投下するまで時間がかかったこと
いろいろとアレがアレでアレだった

チョロインことセシリアともっとアレして良いのよ?

>>142-147
騙して悪いが、構想だけは浮かんでるんでな
続けさせてもらうぞ

真耶「今日はなんと! 転校生を紹介します!」

シャル「シャルル・デュノアです。こちらに僕と同じ境遇の方々が居ると聞いてフランスから来ました。みなさんよろしくお願いします!」

 その日、フランスから一人の生徒が転入してきた。

「「「キャーー」」」

 女子が黄色い悲鳴を上げているが、臭いにもほどがある

 シャルル・デュノア。フランスの有名なIS企業、デュノア社と同じ名前。

 鬼が出るか蛇が出るか。

千冬「静かにしろ!」

 千冬の一喝で教室が静まり返る。

千冬「まだ連絡がある。今日の演習は二組と合同で行う。各自で着替えて第二グラウンドに集合するように」

千冬「それとジェイド、お前は今日中に荷物をまとめて篠ノ之の部屋に移動しろ」

箒「ちょっと待ってく――」

セシリア「ちょっと待ってください!」

千冬「なんだオルコット。何か言いたいことでもあるのか?」

セシリア「もちろんです織斑先生。私が今療養……リハビリ中ということは知ってますわよね?」

千冬「ああ、そうだな」

セシリア「でしたらわたくしと同じ部屋にしてくださいません? その方が今より効率がいいですわ」

千冬「篠ノ之は二人部屋で一人だからそこに――いや待てオルコット、お前は今何と言った?」

セシリア「だからリハビリの為に彼を――」

千冬「――そこもだが、今より、とはどういうことだ」

セシリア「あっ……」

千冬「ジェイド・ティーアその場に立て」

千冬「よし、それではセシリアの部屋で何をしているのか話せ」

ジェイド「マッサージと催眠を少々」

「催眠!? ちょっとセシリア、大丈夫!?」

「でも本人も望んでるわけだし……」

「キャー、セッシーとティアーのエッチー」

セシリア「別にわたくし達は ―― 」

千冬「 ―― 静かにしろ!それよりもジェイド、詳しく説明しろ」

ジェイド「詳しくか。要点だけまとめると快眠できるように――つまりはリラックスした状態で睡眠するための催眠誘導。後はより効果を高めるためのマッサージとそのメンテナンス。これでいいか?」

千冬「あ、ああ。それでだオルコット、お前の案は認められない」

セシリア「どうしてですの!?」

千冬「お前は私物が多すぎる。事情というものがあるからな。これ以上は言うことができない」

箒「なら、どうしてジェイドなのですか。別に彼じゃなくてもいいでしょう」

千冬「お前は織斑と仲が良すぎる。何かあると私たち教師の問題になるからな。それともお前は転校生にいきなり女と同じ部屋で暮らせというのか?」

 なるほど、それが理由か。

 教師の問題と言いつつ本音は……ブラコンが。

箒「そんなことは……」

千冬「それにお前がアイツを一夏よりよく思っていないことは知っている。なら間違いも起きないだろう」

千冬「織斑、デュノアの面倒は任せたぞ……解散!」

一夏「俺たちはアリーナの更衣室で着替えるんだ。実習のたびにこの移動だから早めに慣れてくれよな?」

シャル「う、うん……あのジェイド君、なんかごめんね」

 自分のせいで部屋を移動させられたことに少なからず思うことがあるのだろう。

ジェイド「ジェイドでいい。それと気にするな。それよりも困ったことがあったらいつでも一夏を頼れ」

 少し前なら、こんなことを口にはしていなかっただろう。

 俺も少しは変われたのだろうか。

一夏「おい、たまにはジェイドも手伝ってくれよ?」

ジェイド「一夏一人で事足りるだろう? まぁ、その時は手伝うさ」

一夏「ん? どうしたシャルル?」

シャル「ねえ、その首のは何なの? 何かの機械?」

 そういうとシャルルは俺の首筋にあるプラグを指さした。

ジェイド「まあ俺のISを動かすために必要な物と思ってくれていい」

シャルル「ということはやっぱり二人とも専用機持ちなの?」

 ……さっき仄めかした俺と違い、一夏も専用機を持っていることはまだ知らないはず。

 いや、考えすぎか。

 俺のISと違い、一夏のは企業が手配したものだ。

 どこかからかその情報を聞いていたのだろう。

 デュノア社の連中……何を考えてる。

一夏「まあな。ちなみにシャルルは?」

シャルル「うん。僕も専用機持ちだよ。それにしても二人とも専用機持ちか。ちょっと楽しみだなー」

 シャルル・デュノア。

 おそらくは自社のISの宣伝も兼ねているのだろうが、どうにも怪しい奴だ。

 着替えを終わらせると、第二アリーナで合同演習が始まった。

 一夏とシャルルは先生に言われたとおり演習を熟しているのだが、その頃俺は、織斑千冬の隣で演習の光景を眺めていた。

 理由は今もISを操縦して演習を行っているセシリア・オルコット。

 最近になってようやく演習にも復帰できるようになった彼女だが、この段階でストレイドを見てしまうと再び恐怖でISに乗れなくなってしまう。

 それを危惧しての配慮だそうだ。

千冬「どうだ? やっぱり暇か?」

 千冬は演習の様子を見ながら口を開いた。

ジェイド「いや、そんなことはない。どうすれば訓練機で専用機に対抗するか。これはこれで色々考えさせられる」

 訓練用IS――打鉄。

 専用機を持っていない人々にはこの機体が配備されている。

 しかしながら、基本的武装が剣だけである。

 専用機と比べると、些か以上に低スペックなISと言える。

千冬「そうか。それで――勝てそうか?」

ジェイド「それは相手の力量と機体によって代わる。さすがにあの機体でストレイドと戦えと言われたら、泣くぞ?」

千冬「それはお前のISが規格外すぎるだけだ。たとえば織斑の白式とならどうだ」

ジェイド「そうだな。白式は武装がシンプルな分まだ戦いやすい方か。零落白夜にさえ気を付ければなんとかなる」

ジェイド「一夏以上の剣術の持ち主か、または捌き方を知っているならチャンスはある。武装を代えての引き撃ちは……機動力的に厳しいな。百式の機動力を考えると逆に接近し、零落白夜以外をカウンターで削っていく方が無難だな」

千冬「ならブルー・ティアーズは?」

ジェイド「それは今の話か? 昔の話か?」

千冬「今だと話にすらならんだろう」

ジェイド「一夏と違って積み上げてきた物が違う。如何にして相手に距離を取らせない立ち回りができるか。正直厳しいな」

千冬「なら凰はどうだ?」

ジェイド「あの見えない砲撃を何とかしないことにはまず無理だ。現実的ではない方法なら双天牙月を弾いて奪い、近接戦でねじ伏せるという荒業もあるが」

千冬「確かに現実的ではないな。だが専用機に勝つとはそういうものだ」

ジェイド「量産機とはいえ、力の差がありすぎるのはどうかと思うが」

千冬「なんなら、試してみるか?」

ジェイド「どういうことだ?」

千冬「確かにお前の言う通り専用機持ちとそうでない者の格差が問題でな。この時期になると生徒のやる気が低下する傾向がある」

ジェイド「それで専用機じゃなくても充分に戦える――それを証明しろと?」

千冬「その通りだ。無様な戦いは見せられない。やれるか?」

ジェイド「そのために俺も着替えさせたのだろ」

千冬「それならいい――全員集まれ!」

千冬「それでは――始め!」

 ジェイドは剣を構えると、量産型IS打鉄の性能を感覚的に解析する。

 もちろん、彼のIS――ストレイドと比べると性能は圧倒的に低く、武装も貧弱だ。

 だがしかし、この世界で作られた純正ISだからこそある機能――ハイパーセンサーの性能を解析する。

 ハイパーセンサー――曰く、コンピューターより早く思考と判断、実行ができる代物。

 もちろんながら、純正ISである打鉄にはAMSが採用されていない。

 反応速度はハイパーセンサーで代用が効いているが、機体の制御能力は変わらない。

 おおよそ一次接続の十分の一以下、三次接続での戦闘に慣れているジェイドからするとその点に不安を感じずにはいられなかった。

 しかし、ジェイドは瞬間加速――通称イグニッションブーストで一夏に詰め寄り切りかかる。

 一夏はそれを易々と切り払い、更に雪平二型を振り下ろし反撃に出る。

 ジェイドはそれを際どいタイミングで防ぐも、その圧倒的なまでの機体性能の差に冷や汗が流れる。

 全力で撃ち込んだ攻撃を易々と切り払われ、反撃を予測して守りに入っても後手の後手。

 初めて乗る打鉄でイグニッションブーストをする彼も彼であるが、性能の差まではどうしようもない。

 性能の差――そのことを痛感するが、それでも彼は一夏から離れない。

 零落白夜――依然彼のIS、ストレイドはその一撃の前に敗れている。

 故にその恐ろしさも、また弱点も知っている。

 発動するまでにわずかながら時間が掛かること、そして何より、その攻撃が自信のシールドエネルギーを喰う諸刃の剣であること。

 一夏の白式にはストレイドと違いエネルギーを回復する手段がない。

 発動させるわずかな時間すら与えないというのがジェイドが見出した打鉄の対百式の答えだ。

 だからこそ、ジェイドは今一夏から離れることができない。

 ジェイドにとって幸いなことに一夏の主武装もまた近接武器ある雪平二型のみ。

 現段階の話ならば、一夏よりもジェイドの剣術、術理の方が上である。

 一夏が切りにかかってくるところに、ジェイドも同じタイミングと一夏と同じ太刀筋で雪平二型に切りかかる。

 それはジェイドがかつて倒した真改が使ってきた極意であるが、説明するだけなら簡単である。

 切落――すなわち相手と同じ運動ベクトルに、相手以上の運動量を叩き込むだけ。

 しかしながら、打鉄では全力の白式を超える運動量を出すのは不可能である。

 故に、ジェイドは打ち負けた瞬間に、二撃目を繰り出す。

 その一撃を受けた白式はシールドエネルギーを大きく減らす。

 ある程度相殺された一撃と、まともに受けた一撃。

 比べるまでもなく一夏の方がより多くエネルギーを減らしている。

 そして"打鉄"が"白式"を削り始める。

 一夏の一撃を切落、一夏が二撃目を防ごうとするもそれもまた切落す。

 そしてお互いにシールドエネルギーが三割を切ったところで、一夏がついにジェイドから距離を取ろうとする。

 後方へのイグニッションブースト。

 それをジェイドはイグニッションブーストで追いかけるも、ここでもまた機体性能の差が出てしまう。

 そしてついに一夏は零落白夜を使用する。

 自身のシールドエネルギーの大半をつぎ込むと、一夏はジェイドに突撃する。

 おそらく、この時にイグニッションブーストで逃げれば一夏が自滅してジェイドが勝っていただろう。

 しかしジェイドは零落白夜を切落すべく剣を構える。

 例え負けるとしても、無様に勝ちを拾うという選択肢はジェイドの中に存在しない。

 そして打鉄と白式の剣がぶつかり合った。

千冬「そこまで!」 

 生徒から歓声が上がる。

 それが健闘に対する声なのかはわからない。

 しかし、負けたというのに悪くない気分だと。

 動かなくなったISの中でジェイドはそっと笑みをこぼした。

 その日の夜、俺は療養の一環としてセシリアの部屋に訪れていた。

セシリア「んっ! ……ああんっ、はぁっ……んっ!」

 セシリアの俯せに寝かせて首回りをマッサージしているのだが、どうにもやりづらい。

 特に、相部屋の子が隣でニヤニヤと笑みを浮かべているのが何とも言えない。

 たまにセシリアの耳に口を近づけ、何かしらを呟いているのだが、そのたびに

『そんなことありませんわ』とセシリアは顔を赤くして答えている。

「ねね。もっとさ、下の方とかしなくていいの?」

ジェイド「……首回りが一番効果的だ。なんならとても詳しい解説を交えながら――」

「――それは別にいいかなー。ほら、もっと腰回りとかも……ねっ?」

 マイペース過ぎてため息が出てしまう。

 セシリアの肩をつかみ、背骨を軸に体をゆっくり反らせていく。

 すると目を輝かせながらセシリアの耳元で何かを呟く。

セシリア「うっ……」

 セシリアは顔を赤く染めるもまだマッサージは終わっていない。

 正面からセシリアの肩に手の平を当てると一定の間隔で三回、肩を押す。

セシリア「んっ! ……んっ!」

 それを数セット、左右で行う。

 今日はこんなものでいいだろう。

ジェイド「セシリア、もういいぞ」

セシリア「えっ……えぇ、そうですか」

「ええー、もう終わりなの?」

 口を膨らませてぶーぶーと抗議してくるが、これ以上やっても効果は少ないだろう。

ジェイド「流石に一時間以上はこっちも疲れるからな」

ジェイド「それとセシリア、右肩の筋肉だけ張っていたぞ」

ジェイド「体のバランスを気にするならこれから朝起きたら両手を前から上に挙げて両手を下ろす運動をしたほうがいい」

セシリア「は、はい」

ジェイド「それとまた体を支える足の重心が外向きになっていたぞ。足を歪ませたくないなら足の内側で歩くことを心掛けたほうが――気になるなら前屈を――」

セシリア「はい……はい」

 他にも姿勢の話や授業終わった後にできる簡単な運動等次に次と教えるが、セシリアは生返事のみでおそらく半分も頭に入っていないだろう。

ジェイド「それじゃ次始めるぞ」

セシリア「わかりましたわ!」

「へへへっ、ついにきましたか」

ジェイド「……言っておくが、もう邪魔はするなよ?」

ジェイド「……」

 マッサージの後、セシリアをベッドに寝かせて催眠誘導をしていたのだが、毎度のことにため息をつく。

「いやあ、何度見てもすごいね」

 その光景を真横で見ていた相部屋の子が静かに声をかけてくる。

ジェイド「ああ、本当にな」

ジェイド「十分ほど時間をかけてやるというのに、まさか三分もたたずに寝てしまうとは……」

ジェイド「これだと本当に効果が出ているのかわからんな」

 少なくとも、俺がセレンにしてもらった時は寝てしまうことはなかったのだが……

「いや充分でしょ。あの時は毎日眠れなかったようだからねぇ」

ジェイド「ならいいのだが……」

 そう言うとセシリアの頭をゆっくり持ち上げ、俺の膝の上から枕に移す。

ジェイド「本当にすまないことをした……」

 気が付けば、そう言いながらセシリアの頭を撫でていた。

「私はその試合を見てないけど、もう気にしなくてもいいと思うな。それにセシリアは強いからね」

「それで、セシリアとはどこまで進んだのかな?」

ジェイド「ISの方は二組の凰に頼んである。俺にできるのは治るまでこうしてることぐらいだ」

「そうことじゃないんだけどなぁ……」

 呆れながら彼女はそう言うが、俺にはあまり時間が残されていない。

 俺が彼女にできるのはここまでだ。

ジェイド「それじゃ失礼した。お休み」

「はいよーおやすー」

箒「どうして私がお前と同じ部屋なのだ」

 自室になった箒の部屋に戻ると彼女がそう愚痴る。

ジェイド「俺に言うな。俺だって好きでお前と同じ部屋なわけじゃない」

 ベッドの手前に立つとストレイドを展開する。

箒「何をするつもりだ」

ジェイド「特に何も。それに許可もとってある」

 箒にそう告げるとAMSを三次接続にする。

 体の神経がストレイドと繋がる。

 脳に多大な電気信号が送られているが、今はそんなことはどうでもいい。

 そして数分後、ISを解除するとベッドに横になる。

箒「何をしていた」

ジェイド「わざわざ言う必要もないだろう」

 わずかに頭痛を感じながら、箒の顔を見ずに答える。

箒「人の部屋で勝手にISを展開しておいて、何を言っている」

ジェイド「許可はとってあるって言っただろう?」

箒「……」

 どうやらそれだけでは納得してくれないようだ。

 毎日言われるのも面倒だ。

ジェイド「一日に一回乗らないと、気持ち悪くて眠れないんだよ」

箒「どういうことだ?」

ジェイド「……AMSに接続すると、様々な後遺症が出る。頭痛や吐き気、最後には幻肢症状まで出てくる始末だ」

箒「幻肢?」

ジェイド「本来なら無くなったはずの手足の感覚が残ってるという意味で使われているが、まあ間違っていない」

ジェイド「感覚が鋭敏になりすぎて、機体の一つ一つのパーツが忘れられない。まるで体の一部をなくしたような喪失感」

ジェイド「それがとても気持ち悪くてな。本来なら訓練の間だけでも充分なのだが、今は出来ないからな」

箒「そんな……それではまるで中毒症状ではないか!」

ジェイド「そうだな。最近では熟睡すら叶わん」

箒「ならどうしてっ!」

ジェイド「そうするだけの理由があった。昔も、今も。今日はもう時間が遅い。お前も早く休んだ方がいい」

とりあえず今日は終わり
時間かかって申し訳ない

真耶「え、えっと、今日も嬉しいお知らせがあります。また一人クラスにお友達が増えました。ドイツから来た転校生のラウラ・ボーデヴィヒさんです」

ラウラ「……」

千冬「挨拶をしろ! ラウラ」

ラウラ「はい、教官」

 教官?――千冬は軍で教官をやっていたと言っていた。つまり彼女はその時の教え子か。

ラウラ「ラウラ・ボーデヴィヒだ!」

真耶「……あのー以上ですか?」

ラウラ「以上だ」

ラウラ「貴様が織斑一夏か……」

ジェイド「残念ながら一夏はあっちだ」

 そう言うと箒を指をさす。

ラウラ「貴様、馬鹿にしてるのか」

ジェイド「敵意満々って奴に、本人を教えるとでも思ってるのか?」

ラウラ「ほう、いい度胸だな。貴様、名前はなんという」
ジェイド「教えるとでも思ってるのか?」

「ティアーだよー」

 そのゆったりとしたもの抜けた声に思わずため息をついてしまう。

ラウラ「ティアー?」

「うん、そうだよー」

 布仏本音――生徒会で書記をやっている独特の雰囲気を持っている恐ろしい子だ。

 その雰囲気に飲まれてしまうといつの間にか毒気を抜かれてしまう。

ジェイド「違う。ジェイド・ティーアだ。いい加減に――」

本音「――まあまあ、いいじゃないティアー」

ラウラ「ジェイド……ティアー」

ラウラ「……」

 何かを言いたそうにするも、言いとどまり、自分の席へと戻っていった。

 彼女も飲まれて勢いを失ってしまったのだろう。

 ラウラ・ボーデヴィヒ――一夏に何の用があるというのだろうか。

箒「なんなのだあいつは」

ジェイド「きっと前に千冬が言っていた軍の教え子だろうな」

一夏「ドイツからって言ってたから辻褄はあってるな」

箒「それと、お前もだ!」

ジェイド「?」

箒「どうして! あそこで! 私を指さす必要が! あったのだ!」

ジェイド「一夏から一番離れてて、かつシャルルに近いからに決まってるだろう。まあ今考えたのだが」

箒「貴様という人間は……!」

ジェイド「実害は何もなかったんだ。別にいいだろ」

セシリア「そうですわ。それにジェイドさんが誤魔化したおかげで一夏さんにも害がありませんでしたし」

箒「……どういうことだ?」

セシリア「気づきませんでしたの? ラウラさん、一夏さんの名前を聞いた時の目がその……」

シャル「親の仇を見るような目だったね。一夏、何か心当たりないの?」

一夏「いや、俺にはぜんぜん」

セシリア「となると嫉妬でしょうね」

シャル「あはは、優秀な姉がいるってのは大変だね」

箒「……」

ラウラ「どうしてこんなところで教師などをやっているのですか教官!」

千冬「私には私のやる事がある。ただそれだけだ」

ラウラ「ここの連中はISのことをファッションか何かと勘違いしています!」

ラウラ「こんな腑抜けたところで教師をするなんて……」

千冬「お前もか……少し言葉がすぎるぞボーデヴィヒ」

ラウラ「……しかし!」

千冬「少し見ない間に偉くなったもんだな」

千冬「15歳でもう選ばれた人間か……恐れ入る」

ラウラ「……違います! 私はただ……!」

千冬「寮に戻れ、私も暇じゃない」

ラウラ「……くっ!」

千冬「……そこで何をやっている。盗み聞きとは感心しないな」

ジェイド「盗み聞きするつもりはなかったのだがな。俺も話がある」

千冬「なんだ。言ってみろ」

ジェイド「今度の開かれる学年別トーナメントのことでだ」

ジェイド「今度の開かれる学年別トーナメントのことでだ」

千冬「……わかった。お前のエントリーを外せばいいんだな」

ジェイド「話が早くて助かる」

千冬「お前もさっさと帰るなりしろ。トーナメントに参加しないにしろ、他にもやることがあるだろ」

ジェイド「そうだな。失礼した」

シャル「ねえ、一夏」

一夏「ん?」

シャル「少しISの相手になってよ。その後ジェイドもいいかな? 二人の専用機の性能を見たいんだ」

一夏「俺はいいけど……」

ジェイド「今頃セシリアがリハビリをやってるところだから無理だな。それでもアドバイスならできると思うが」

シャル「うん。それでもいいよ。それじゃ行こ」

「ねえ、なんかアリーナで喧嘩してる人がいるらしいよ! なんでも専用機持ちの一年生同士だって!」

 ……俺達以外だと、四組に一人、あとはラウラと凰と――セシリア

ジェイド「急ぐぞ」

シャル「えっ、どうしたの?」

 アリーナに到着すると、たくさんの人が集まっていた。

 一年の専用機もち同士の喧嘩、そのふれ込みのせいもあるのだろう。

 しかし、目の前で繰り広げられてるのは、一方的な暴力であった。

シャル「なにこれ……」

一夏「鈴とセシリア、あれはラウラか!?」

 ワイヤーブレードに首を絞められ凰、セシリア共々地面に引きずられている。

 あのままでは……。

シャル「あのままだとISが強制解除されて、命が危ないよ!」

 ストレイドを展開、光波ブレードならバリアー突破できるか?

一夏「おい、ジェイド!」

 黒月光剣から一筋の光波が飛ぶ。

 光波はフィールドを覆うバリアーに衝突してひびが入るも、破壊するに至らない。

 そしてジェイドは更に同じ個所へ光波を三連射する。

 ひびはさらに大きくなり、バリアーが破壊された。

シャルル「あれが、ジェイドのIS……」

 フィールド内に侵入するとパルスキャノンを連射する。

 セシリアと凰に当たらないように、ラウラを威嚇するように射撃すると、ラウラはワイヤーを巻き戻して距離を取る。、

ラウラ「模擬選に飛び入りとはどんな輩かと思っていたら、なんだ獣じゃないか」

 獣……ドイツ語がわかるならそうなるか。

ラウラ「それが貴様のISか。ちょうどいい。朝の一件、覚えているだろうな」

一夏「落ち着けジェイド」

 一夏とシャルルもフィールドに入ってきたようだ。

ラウラ「貴様が織斑一夏か?」

一夏「ああ、そうだ」

ラウラ「私はお前を認めない――と言いたいところだが、先客があるのでな。貴様は後だ。そこの獣、躾をしてやる――構えろ」

 そういうとラウラは戦闘態勢に入る。

 このままではISが解除されたセシリアと凰が危ない。

ジェイド「一夏、セシリアと凰を頼む」

ラウラ「なんなら二人でかかってくるか? 私は構わんぞ」

千冬「そこまでにしておけボーデヴィヒ」

ラウラ「な……教官!」

ジェイド「千冬?」

千冬「織斑先生と呼べ。模擬戦をするのは一向に構わん」

千冬「だがな、アリーナのバリアーを破壊したり、殺人未遂のようなことが起きれば黙ってはいない」

千冬「勝負はトーナメント戦に持ち越しとする」

ラウラ「教官がそう仰るなら」

千冬「お前たちもそれでいいな?」

シャル「はい!」

一夏「あ、ああ」

千冬「教師にははいと答えろ!」

一夏「っ! はい!」

ジェイド「はい」

千冬「……そうか。では、学年別トーナメントまでアリーナの使用及び模擬戦を禁止する! 以上だ!」

真耶「えっと……二人のISなんですがトーナメント戦までの修復は不可能です」

鈴「それくらい何とも無いわよ! 私は出るわよ!」

真耶「駄目です! 鈴さんは怪我もしているし参加はさせられません!」

セシリア「……」


鈴「なんで私だけ……!」

セシリア「鈴さん、ごめんなさい。わたくしが頼まなければ……」

鈴「……はぁ、もう仕方ないわね! そこの三人! なんとしてもアイツに勝ちなさい!」

シャル「うん、任せて」

一夏「おう!」

ジェイド「……」

一夏「ジェイド……?」

 一夏が怪訝そうにこちらを見ていると唐突に病室のドアが開き、一組の人たちが病室に流れ込んできた。

「織斑君(デュノア君)(ジェイド君)私とパートナーになってください」

 今はそういう気分ではない。

 ラウラ・ボーデヴィヒ――彼女は昔の俺と同じだ。

 ならば俺に彼女のことを咎めることはできないだろう。

 しかし――

ジェイド「すまないが、他を当たってくれ」

「お、織斑君たちは?」

一夏「お、俺はシャルルと組むことにしたから」

「ちぇっ、そうだよね……デュノア君かジェイド君、どっちか余ると思ったのになあ」

試合当日――

シャル「それで、ジェイドはパートナーどうしたの?」

ジェイド「ああ、結局誰にも頼まなかったよ」

一夏「それじゃパートナーは……」

ジェイド「余り者同士でやるさ。それにこれは個人的な問題だ。知り合いを巻き込むわけにはいかない」

一夏「そうか。でもどちらがラウラと当たろうと、恨みっこはなしだぜ?」

ジェイド「了解した。それとお前たちと当たるのも楽しみにしてる」

一夏「ああ、俺もだ」

シャル「あはは、それよりほら、組み合わせ発表されるよ」

 更衣室にあるモニターに組み合わせが張り出された。

シャル「えっ」

一夏「嘘だろ……」

 一夏とシャルルとは準々決勝まで当たらない。

 問題なのは俺のパートナーの名前だった。

 ラウラ・ボーデヴィヒ――俺のパートナーの欄に、確かにそう書いてあった。

ちょっと急なアレが入って投稿ペース落ちそうです。
余った時間で少しずつ書き溜めていく感じになりそうなんですが
一気に投下する(時間間隔かなり空く)場合とこまめに投下する場合どっちがいいですか?

これ以上ネクストの装備を作中に出す予定はないですかね。
ストレイドの装備に追加はないというよりか
moonlight*2(ACfaの白と光波付きの黒)
チェーンガン
パルスキャノン(最初の描写で説明し損ねたけど、どちらかというとパルスマシンガンに近い)
二種オービットにマルチロックミサイル
PA(コジマ粒子使わない劣化版)に光学迷彩
アサルトキャノン(ナインボールセラフの劣化版)
……追加する必要がないという

化け物機体をISにするため性能面でかなり劣化させたつもりけど
これ以上武装追加したら……
アサルトキャノンで我慢を

あと元がどのくらい化け物機体かというと
パルスキャノン撃ちながらQBしてもEN切れ起こさない
パルスキャノンとオービットの併用だけで頑丈な敵があっという間に溶ける
アサルトキャノンは胸部が開いてノーモーションで出る
しかも旋回性能が高い
アサルトキャノン後すぐにPA展開が可能
PAは実弾だとダメージが通らない
飛行形態に変形可能
飛行形態でミサイル撃ったりチェーンガン撃てる
光学迷彩時ロックされない
貫手からのオービットの攻撃、そのままノーモーションでアサルトキャノンとかあったりする

纏めると暴れてもEN切れを起こさない程度のEN出力と容量がある。
アサルトキャノン直後にKPが回復したり、ダメージが通らない程度のKP出力を持ってる

12日以降と言ったな。アレは嘘だ
……参考となる資料(原作)があるだけでこうも変わるは
そしてなぜか一部エミール風に

 こうして学年別トーナメントが開催されて数日が経過した。

 第一回戦。俺とラウラの試合は試合ではなく、ラウラによるただの蹂躙だった。

 相手は為す術もなくシールドエネルギーを削られて、数分と立たぬうちに試合は終了した。

 第二回戦。ラウラは上空に待機し、俺が対戦相手の相手をした。

 相手の動きに合わせて手加減するも、三分も経たず相手のシールド残量が0になった。

 第三回戦はラウラが、第四回戦は俺が戦闘を行い、俺達は順調に勝ち進んだ。

 そして次は第五回戦、準々決勝。

 対戦相手は順調に勝ち上がってきた一夏シャルルペアー。

 明日はついに一年の専用機同士の戦いとなり、かなりの注目を集めていた。

箒「試合に手を抜いて、お前は何を考えている」

 俺がベッドに横になると、箒がこちらを見ずにそう呟いた。

 部屋では干渉しないようにしていた彼女が何か話しかけてくるのは稀なことだ。

 それが何を指しているかというと、彼女は今、怒っている。

ジェイド「手を抜かなければ試合にすらならない」

箒「相変わらずな奴だな」

 剣道というスポーツを経験している彼女からするとよく思わないのだろう。

 全国を制覇しているのならなおのこと。

ジェイド「力を誇示するのは簡単な事だ。相手を切り伏せるのはなお簡単だ」

ジェイド「確かにお前の言おうとしてることには一理ある。だが圧倒的なまでの力は、ただの暴力だ」

ジェイド「しかし、お前の言いたいことは間違っていない。むしろ正しい」

ジェイド「明日、もしラウラが二人に負けるようならばその時は俺も今できる全力で戦おう」

箒「もしかしてお前は、パートナーがやられるまで黙って見ているつもりか」

ジェイド「互いの戦いに干渉しない。それが俺たちの最低限の取り決めだ」

ジェイド「ラウラが助けを求めないなら、それを破ることはできない」

箒「……そうか」

 そこで箒との会話を着ると瞼を閉じて体を休める。

 しかし眠気が訪れることはなく、代わりに訪れたのは脳の酷使による頭痛だけだった。

一夏「ついにだな」

 一夏はモニターに視線を移すと何かを決意するかのように表情を引き締める。

 おそらく、彼は今ラウラのことを考えているのだろう。

シャルル「それで、ジェイドは今日どうするの?」

 シャルルも着替えを終えたのか男子更衣室の隅からこちらに向かって歩いてくる。

 その理由についても大まかな検討が付いている。

 シャルルのISの正式名は『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』。

 男のIS操縦者は織斑一夏が初めてである。

 だとするとシャルはいつISの起動に成功したのだろうか。

 シャルが転校してきたのが六月の始まりで、今はあと数日で七月になろうかという日にちである。

 ISの知識はともかく、操縦期間は一夏以下のはずである。

 そうなるとシャルはいつISの基本操作を覚え、いつ武装を把握し、いつ射撃訓練を終え、いつ機体を二度も弄ったのだろうか。

 あることを仮定すれば辻褄が合うのだが、まだ確定できるほど自信は持てないが……。

ジェイド「仮にも対戦相手に情報を与えるとでも?」

一夏「それもそうだよな」

ジェイド「答えたとしても今まで通りやるだろうとしか言えないだろうがな」

シャル「そこまで言うともう答えてるようなものだよね」

ジェイド「とりあえずまずは一人に集中した方がいい。ラウラはラウラで普通に強敵だぞ」

一夏「ああ、わかってる」

ジェイド「そうか。二人のコンビネーション、期待してるぞ」

 そう言い残すと二人より先に更衣室から出て会場へと向かった。

ラウラ「ようやくお前とか。待ちに待ったぞ」

一夏「そうだな。それはこっちも同じ気持ちだぜラウラ」

 当たり前だ。五機しか参加していない専用機が四機もそろっている。

 準々決勝で当たるのもまだ早いぐらいだ。

 そんなこと考えているとカウントダウンが始まった。

 試合開始まで5、4、3、2、1……。

「「叩きのめす」」

 ラウラと一夏が同時に口にする。

 一夏は零落白夜を発動させると瞬間加速を行いラウラとの距離を詰める。

ラウラ「ふん……」

 ラウラが右手を突き出すと一夏のISの動きが止まる。

 これが彼女の機体――シュヴァルツェア・レーゲンの武装の一つ。

 慣性停止能力。通称AIC。

 空間圧作用兵器に似たのエネルギーで空間に作用を与えてるため、零落白夜に触れれば無効化されてしまう。

 おそらく雪平二型にではなく一夏自身にかけているのだろう。

ラウラ「開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな」

一夏「そりゃどうも。以心伝心でなによりだ」

ラウラ「なら、次の一手もわかるよな?」

 シュヴァルツェア・レーゲンの武装の一つ、右肩のレールカノンからリボルバーの回転音が響く。

 つまり、今レールカノンの安全装置が外されたということだ。

シャル「させないよ」

 一夏の頭上から現れると、六十一口径のアサルトカノンが火を噴いた。

 ラウラのレールカノンに着弾すると、レールカノンから砲弾が発射される。

 どうやら発射直前だったようで、狙いをずらされた砲弾は明後日の方向へ飛んで行った。

 ラウラは舌打ちをつくと、追撃してくるシャルルの攻撃を、ワイヤーを使った急後退で退避して間合いを取る。

 俺もラウラの反対方向へと距離を取ると個人間秘匿通信(プライベート・チャンネル)を開く。

ジェイド『よう、手出しは無用か?』

ラウラ『当たり前だ』

 その返事だけを聞くと通信を切りに、ストレイドを上昇させるとアリーナの脇で滞空する。

 その間にも、戦闘は新たな展開を見せ続ける。

 ラウラはワイヤーブレードを駆使してシャするとナインボールルルを一夏から引き離し、プラズマ手刀を展開して一夏のシールドエネルギーを削っていく。

 右から、そして左からの連撃を一夏は押されながらも防いでいるが、いつ直撃してもおかしくはない。

 シャルルはというとワイヤーブレードに苦戦している。

 射出と回収。合計六本のワイPに新たなヤーブレードを効率よく回しているため、牽制が途切れていない。

 恐るべきは、近接戦闘を行いながら牽制を行っているボーデヴィヒの実力か。

 一夏はラウラから離れない。一夏の武器は雪平二型一本のみ。

 下手に距離を取るとワイヤーブレードとレールカノンの攻撃を掻い潜らなければならない。

 そう思い込んでいるのだろう。

 そしてラウラは瞬間加速で距離を取りながら両手のプラズマ手刀を解除すると、両手を交差する。

 一夏の動きが止まったので、おそらくAICを発動させたのだろう。

 ワイヤーブレードはシャルルの牽制に使っている。

 残っている武装はレールカノンのみ。

 対ISアーマー用特殊鉄鋼榴弾。

 当たり所が悪ければ一撃で勝負が決まるほどの代物である。

 ……詰めが甘い。

 発射された砲弾がシャルル・デュノアの盾に着弾する。

 どうやらAICにも弱点が、いや、ラウラにも弱点があったようだ。

 AIC発動中は周りへの集中力が散漫になるようだ。

 故に単調になったワイヤーブレードは掻い潜られ、シャルルの接近を許してしまった。

 シャルルは持っている両手の武装を捨てると新たにそれぞれ俺もう武装を取り出す。

 ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡには二十の武装がある――とシャルルは言っていた。

 それを瞬時に切り替え、どの距離からでも一定のリズムで攻撃する戦闘スタイルが得意である。

 そしてシャルルは切り替えずに武装を捨てた。

 つまりこれはシャルルの布石なのだろう。

 ラウラはそのことに気付いているのかどうか。

一夏は再び零落白夜を発動させる。

 ラウラは右手を突き出してAICとワイヤーブレードを駆使して一夏を狙う。

 零落白夜が一撃必殺であることを考えると妥当な選択である。

 しかし、それは一夏にパートナーがいない場合の話だ。

 シャルルはマシンガンでラウラを牽制する。

 当然ラウラはAICを中断して後退しながらワイヤーブレードを操るしかない。

 しかしそれもシャルルに防がれてしまい、ついに一夏の接近を許してしまう。

 一夏は剣の切先を体の前に向け刺突するも、寸前のところで一夏の動きが止まる。止められる。

ジェイド「終わったな」

 そう確信すると設置型オービットを射出してその時を待った。

ラウラ「腕に拘る必要はない。動きさえ止められれば――」

一夏「忘れているのか? 俺たちは――二人組なんだぜ?」

ラウラ「!?」

 ラウラが気づくが、もう遅い。零距離まで接近していたシャルルがショットガンの六連射を叩き込んだ。

 ラウラのレールカノンが轟音をあげながら爆散する。

ラウラ「くっ……」

シャルル「一夏!」

一夏「おう!」

 再度雪平を構えなおす。これで終わ――

『――警告! ロックオンを確認――警告!』

 ハイパーセンサーの警告が鳴り、咄嗟にラウラから距離を取る。

 すると先ほどまでいた地点に複数のレーザーが着弾する。

ラウラ「なっ!?」

 狙われた俺より、警告を受けていなかったシャルルより、ジェイドの味方であるはずのラウラが一番驚いていた。

 ジェイドはパルスキャノンとチェーンガンを構えると、一夏とシャルルの足元目掛けてばら撒いた。

 二人はそれを難なく避けると、俺とラウラの両方を見張れる地点まで距離を取る。

 するとラウラから個人間秘匿通信が開かれた。

ラウラ『邪魔をするな。私はまだ――』

ジェイド『――今のお前では無理だ』

 ジェイドはラウラの言葉を切ってそう答えると正面からラウラに向かってゆっくりと飛行する。

ジェイド『今の一撃で勝負はついた。交代だ』

 ジェイドがアリーナの中央まで移動すると、一夏とシャルルは距離を取ったままジェイドの背後に回る。

ラウラ『ふざけるな。私はまだ戦える』

ジェイド『戦況判断ぐらい出来るだろ。結果は変わらん』

ラウラ『なら――』

 一本のワイヤーブレードがジェイドの右腕に絡まる。

ジェイド『何のつもりだ?』

ラウラ『お前を倒して――なっ!?』

 ラウラはワイヤーブレードでジェイドを引っ張るもびくともしない。

 それどころか逆に引っ張られているような気さえ覚えていた。

ラウラ『それならっ!』

 ラウラはワイヤーブレードを巻き戻した。

 ピクリともしないジェイドの代わりにラウラがジェイドに引っ張られ、急接近する。

 左手を突き出し、右手にプラズマ手刀を展開し、右手を引き貫手の体制を取る。

 AICの拘束はジェイドを捉え、身動きを奪った。

『システム、戦闘モード』

 無機質な声が響くとジェイドの後方から一筋、オービット最大出力のレーザーがラウラに直撃する。

 シールドエネルギーが絶対防御を発動させるものの、シールドエネルギーを大きく減らす。

 そして相殺しきれなかった衝撃がラウラの体を貫き、苦悶の表情を浮かべる。

 AICの拘束から解除されたジェイドは、左手でラウラの頭を掴みオービットを射出させ、レーザーでラウラを貫く。

 絡まっているワイヤーブレードが解けると、振りかぶってラウラをアリーナ脇に向けて投げ飛ばした。

 ラウラは派手に転がり、壁に衝突するとその場で動かなくなる。

ジェイド『頭を冷やして考えろ。どうして負けたのか、どうすれば勝てていたのか』

ラウラ『くそ……』

 ジェイドは回線を切ると振り返って一夏達と向き合った。

一夏「いや、こっちは待ってたんだぜ?」

シャル「これでこっちも残りを考えずに戦えるからね」

ジェイド「そうか。悪いが、ここから先は取りにいかせてもらうぞ」

シャル「なかなか言うね。ジェイドも」

一夏「気を付けろよ。ラウラが一番強いと言ってたけど、おそらく最強はジェイドだぜ」

シャルル「そうみたいだね。なら、様子を見ながらじっくりと、かな」

一夏「わかった」

ジェイド「作戦会議は終わりか? なら行くぞ」

 一夏とシャルルのハイパーセンサーが複数の警告を鳴らす。

『――警告! ロックオンを確認――警告!』
『――警告! ロックオンを確認――警告!』
『――警告! ロックオンを確認――警告!』
『――警告! ロックオンを確認――警告!』

一夏「なんだ!?」

シャルル「っ! 一夏下がって」

 オービットとミサイルが射出され、チェーンガンとパルスキャノンがそれぞれシャルルと一夏に向けて放たれる。

 ジェイドは射撃しながら上昇して制空権を取ると、固定砲台のごとく攻撃を始めるのだった。

 この時、会場にいた者はその弾幕に目を奪われていた。

 しかしそのせいで、ある異変の前触れに気付いた者はほとんどいなかった。

 こんなところで負けるのか――少女は自分に問う。

 私は負けられない。負けるわけにはいかない――そう少女は自答した。

 ラウラ・ボーデヴィヒ。それが今の少女の識別記号。

 最初に付けられた少女の記号は――遺伝子強化試験体〇〇三七。

 ただ戦いのために生み出され、育てられ、鍛えられた。

 そして性能面において最高の烙印を押された少女は、ある時を境に出来損ないの烙印を押される。

 世界最強の兵器――インフィニット・ストラトスの存在が、少女を取り巻く環境を変えた。

 ISとの適合性の向上を目的とした疑似ハイパーセンサーの移植。

 理論上の危険性はない――そのはずであった。

 しかし結果は異なり、少女の左目は金色に変色し、そこから少女の転落が始まった。

 越界の瞳と呼ばれるその目は常時稼動状態制御不能となり、それがIS訓練の遅れを取る原因となった。

 こうして少女は出来損ないの烙印を押された。

 そんな少女を救ったのはモンド・グロッソ初代覇者――織斑千冬だった。

 そして少女は彼女の指導の下、再び部隊最強の地位へと上り詰める。

 こうなりたい。この人のようになりたい。

 少女がそう憧れるのは無理もない話だ。

 そして少女は彼女に聞いた。どうすれば強くなれますか、と。

 私には弟がいる――そう切り出す彼女の表情を見て、少女は唖然とする。

 今まで彼女が見せたことのない表情。それは少女の憧れた姿からかけ離れて姿だった。
 故に少女は認めない、その弟の存在を。

 ここで負けるわけにはいかない――少女は決意する。

 あの男はまだ動いている。動かなくなるまで壊さなければならない。

 邪魔をする者ごと叩き伏せるために――力が欲しい、少女は強くそう思った。

 その心の呟きに何かが答える。

 汝はより強い力を欲するか? ――その問いに少女は答える。

 本当に力があるのなら、それを得られるなら、何から何までくれてやる。

 だから私に力を、比類無き最強を、唯一無二の絶対の力を、私によこせ!

 その瞬間、少女はなにかに飲み込まれた。

 その異変に真っ先に気付いたのは制空権を取り全体を把握していたジェイドだった。

 その次に、会場で試合を見ていた人々。そして最後は攻撃が止んだことに対して違和感を覚えた一夏達。

 そして一夏達が気づいた時には既に、シュヴァルツェア・レーゲンは原型を留めておらず、泥状の黒いなにかとなっていた。

ラウラ「――!!」

 突如、ラウラは喉を裂かんばかりの言葉にならない絶叫をあげた。

 黒い泥状の何かはラウラを飲み込み、電撃を放ちながらその姿を変えていく。

 そしてシュヴァルツェア・レーゲンだったのものは全身装甲のISに似た何かとなった。

一夏「雪平……」

 黒いISの手に握られてる剣を見て一夏はそう呟いた。

 そして雪平二型を握りしめると、中腰で構える。

 一夏が雪平二型を構えた瞬間、黒いISは一夏の懐へと飛び込んだ。

『――警告! ロックオンを確認――警告!』

 上空に張り巡らされたオービットが一夏めがけてレーザを放つ。

一夏「っ!」

 一夏はそれを後退して回避すると黒いISの剣の切っ先が目の前を過ぎる。

ジェイド「悪いが抑えてくれ一夏。これはパートナーの不始末だ」

一夏「邪魔するなジェイド! 邪魔するならお前も――」

 ジェイドは右手の月光剣を二度振るい、一夏に向けて光波を二度放つ。

 黒いISはジェイドの懐に飛び込むと必殺の一閃を放つ。


 しかしそれはストレイドの両手の月光剣で難なく受け止め、弾かれる。

 どうやらシュヴァルツェア・レーゲンよりも、黒いISよりも、ストレイドの出力の方が勝っているようだ。

 一夏は放たれた一撃目の光波を躱すが、先読みされ飛んできた二撃目をまともにくらいISが強制解除される。

 シャルルが駆け寄り一夏を退避させ、ジェイドが黒いISと交戦する。

ジェイド『無様だな。こんな醜態を晒してまで勝ちたかったのか』

 ジェイドは交戦しながらラウラに話しかける。

 が、ラウラからの返答はない。

ジェイド『声すらも届かぬか。これならまだ前のお前の方がマシだな』

 上空に浮かぶオービットのレーザーが黒いISに降り注ぐ。

 オービットを敵と認識した黒いISはオービットに斬りかかる。

ジェイド『所詮は自動人形か。なら人との違いを――ハードウェアの限界を見せてやる』

 ジェイドは斬撃を避けさせオービットを回収すると、光学迷彩を展開する。

 ECMスモークによる光学迷彩はかつてのセシリアがそうだったように、ハイパーセンサーをもってしても認識することができない。

 故に黒いISは気づくことはなかった。自分のまさに目の前で、武器を構えられていることに。

 構えを解いた無抵抗の黒いISにジェイドは斬りかかる。

 頭と左腕を落とし、外部装甲の一部を破壊して、黒いISを地面に叩き落とす。

 ジェイドが残したのは両足と右腕部と雪平を模した剣のみ。

 光学迷彩と両手の月光剣を解くと、ジェイドは個人間秘匿通信を開く。

ジェイド『頭は冷えたか、一夏』

一夏『おかげさまで』

 ジェイドが黒いISと交戦している頃、一夏はパートナーのデュノアからエネルギーを供給してもらっていた。

 そして一夏は一極限定モードでISを展開する。

 展開したのは雪平二型とそれを振るうための右腕装甲のみ。

ジェイド『美味しいところはとっておいた。決めろよ一夏』

一夏『ああ、行ってくる』

 一夏が零落白夜を発動し、雪平二型を腰に添え、居合の構えで黒いISへと向かう。

 黒いISは刀を一夏めがけて振り下ろす。

 一夏はそれを切り払うと直ぐに頭上で構え、黒いISを真っ二つに切り裂いた。

 黒いISに紫電が走り、黒いISの中からラウラが排出される。

 こうして非常事態命令が発せられる前に、この事件の幕は閉じた。

 シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されていたVTシステム、そして無所属正体不明のISの圧倒的な性能が政府と企業の耳に入る。

 もちろんそれは、IS開発の第一人者である彼女の耳にも届いていた。

参考書あると楽だな。一巻のセシリアの絵……いいと思います

>>257
これは酷い。というか何が起きたw

ラウラはワイヤーブレードを駆使してシャルルを一夏から引き離し、プラズマ手刀を展開して一夏のシールドエネルギーを削っていく。

 右から、そして左からの連撃を一夏は押されながらも防いでいるが、いつ直撃してもおかしくはない。

 シャルルはというとワイヤーブレードに苦戦している。

 射出と回収。合計六本のワイヤーブレードを効率よく回しているため、牽制が途切れていない。

 恐るべきは、近接戦闘を行いながら牽制を行っているボーデヴィヒの実力か。

本当に何が起きたし……

ACfaでは10年前に企業がクーデター起こして解体されてる

ISの世界観で言うと、ISを開発した企業が世界に公表する前にクーデター起こした感じ

んで人はコロニーに押し込まれてて
国籍の代わりにコロニー名で呼ばれてるっぽい
(前作のアナトリアにいた別主人公がアナトリアのリンクスと言われてた)

だからたぶんACfaの人に国を語らせると
過去の統治体制とかそんな感じ
国籍は言い方が変わったレベルかと

 教師人からの事情聴取を終えると、食堂に行く一夏達と別れて自室に戻った。

 誰もいない自室の自分のベッドに倒れこむと、襲ってくる頭痛と飢餓感、そして幻肢症状。

 枕に顔を埋めてベッドシーツを握り奥歯を噛み締めて堪える。

 思っていたより脳にダメージが蓄積されていたようだ。

 今日の試合では三次接続すらままならず、もう幻肢症状を抑えることが難しい。


 仮に無理に三次接続をして一時的に不快感を解消したとしても、今度は脳に負担がかかって頭痛が悪化するのは言うまでもない。

 こういう時、セレンが居てくれれば――最悪セシリアが入院してなければ、彼女に施したセレン直伝の催眠療法の真似でなんとかなるかもしれないが……。

箒「戻っていたのか」

 それから何分立っただろうか。

 痛みと餓えと不快感に耐えていると、箒が帰ってきた。

 何故か不機嫌そうであるが、言葉を出すのすら気力がすり減りそうなので寝ている体を装う。

箒「どうせ起きているのだろ。伝えろと言われたから伝えるぞ」

箒「今日から男子も大浴場を使えるように調整したらしい。今日がその日だから入りたいなら行ってこい」

 連絡事項なので手を挙げて応える。

箒「……具合でも悪いのか?」

 ストレイドを一極限定モードで展開する。

 右腕と調整用の空中投影ディスプレイ、それと球体型のキーボードを展開するとキーボードを握り文字を入力する。

『試合で疲れている。察しろ』

箒「そうか。それはすまなかった」

 それからさらに時間が過ぎ、不快感がある程度収まったところで顔を上げる。

 窓の外を見ると日が昇り始めており、徐々に辺りが明るくなっていた。

 翌日の朝のホームルームに、シャルルとラウラの姿が見えなかった。

 ラウラは昨日の負傷、加えて事情聴取う等で休んでいるとして、シャルルはどうしたのだろうか。

 シャルルと同室の一夏を見ると、彼も教室を忙しなく見渡している。

 どうやら一夏もその辺の事情は知らないらしい。

山田「み、みなさん、おはようございます……」

 副担の先生が覚束ない足取りで教室に入ってくる。

 何かあったのだろうか。

山田「今日はですね……みなさんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと……」

 要領を得ない説明だが、どうやらまた転校生がきたらしい。

 その転校生という部分にクラスの皆が反応し、騒がしくなり始めた。

 今月になって三回目、しかも一学期の終わりが近いこの時期に、だ。

山田「じゃあ、入ってきてください」

シャル「失礼します」

シャル「シャルロット・デュノアです。みなさん、改めてよろしくお願いします」

 女子の制服を着たシャルル……シャルロットが礼をする。

 一夏をちらりと見ると、彼もクラスのほとんどが口を開けて唖然としている。

山田「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです。はぁ……また寮の部屋割りを組み立てなおさないと……」

「え? デュノア君って女?」

「って、織斑君、同室だから知らないってことは――」

「ちょっと待って! 昨日って確か、男子が大浴場を使ったわよね!?」

「ってことはジェイド君も!?」

 教室が喧騒に包み込まれ、すぐにそれは溢れかえった。

 ――俺は使っていないが一夏を見ると額に薄らと汗が流れている。

ジェイド「ちょっと待て。確かに俺は昨日一夏と大浴場を使ったが、俺と一夏の二人だけだったぞ」

箒「嘘をつくな。お前は昨日、帰ってきてから一度も部屋を出なかっただろう」

 箒が黙ってくれることに期待してそう嘯いたのだが、その望みは儚くて散ってしまった。

 箒がそいつ(一夏)がどうかは知らんがなと言った瞬間、教室のドアを蹴破る勢いで開かれた。

鈴「一夏ぁっ!! 死ね!!」

 ISを展開させると両肩の衝撃砲が解放される。

 そう思った瞬間に、凰鈴音の動きが止まった。

鈴「何のつもりよ。あんた!」

ラウラ「ふん、そいつが死ねば教官が悲しむのでな」

 鈴の背後にはシュヴァルツェア・レーゲンを展開しているラウラが立っている。

 ラウラがAICを解除すると頭が冷えたのか鈴はISを解除した。

 ラウラはそのまま教室の中に入ると片方のプラズマ手刀を展開し、俺にその切先を向ける。

ラウラ「ジェイド・ティーア。お前に聞きたいことがある。どうしてお前はそこまで強い」

 教室が静まるとクラスの視線が俺に集まる。

 一度目を閉じて考えをまとめるとゆっくりと口を開いた。

ジェイド「神話において、神とは力だ。そう説いた者がいる」

ジェイド「力を持つ者が善で、持たない者は悪である、と」

ジェイド「確かにそれは間違ってはいない――俺はそう思う」

ジェイド「そしてまたこう説いた者もいる」

ジェイド「善とは権力の感情と権力を欲する意志を高揚するすべてのものである」

ジェイド「また悪とは弱さから生ずるすべてのものである、と」

ジェイド「その意見もまた正しいと俺は思う」

ジェイド「一つ目は偶像としての強弱、二つ目は人間個人としての強弱」

ジェイド「元々強さとは一つに括られるものではない」

ジェイド「俺を強いと思うなら、それは俺という人間個人を見ているのではなく、俺という偶像を見ているからだ」

ラウラ「偶像……」

ジェイド「お前は昔の俺と少し似ているからな。そういう部分にしか目がいかないのだろう」

ジェイド「俺はかつて偶像としての力を欲し、他の全てを捨ててきた。だから俺という個人は非常に弱い」

ジェイド「その辺の強さを学びたければ、織斑一夏に教えてもらえ」

 ラウラは目を閉じて間をおくと口を開いた。

ラウラ「……織斑一夏、教えてくれ」

一夏「そうだな。強さってのは心の在処――己の拠り所。自分がどうありたいかを常に思うことじゃないかと思う」

ラウラ「どういうことだ?」

一夏「自分がどうしたいのかわからない奴は、強い弱い以前に歩き方を知らないもんだ」

一夏「やりたいようにやらないなら、それはもう人生じゃないだろ」

 その会話を聞きながら、俺は彼女の最期の言葉を思い出していた。

 セレン・ヘイズ。俺のオペレータで、俺の恩師で、俺の手で殺めたリンクスだ。

 アルテリア施設、カーパルス。その時の依頼を俺は今でも覚えている。

 アルテリア・カーパルスの占拠。一億の人を殺した直後に送られてきた依頼。

 俺とその時の相棒、古王は敢えてその依頼を受けた。

 最初に現れた三人のリンクスは、ウィン・D・ファンションとロイ・ザーランド――そしてセレン・ヘイズ。

 その時のカラードの残像戦力を考えるとある意味打倒な線であった。

 ランク1と10はカラードを抜け、ランク2、4、6、10は衛生掃射砲襲撃、防衛時に命を落とした。

 ランク5、9はアルテリア防衛時に命を落とし、ランク8はどこかに身を隠している。

 そしてランク9ことアナトリアの傭兵――リンクス戦争の英雄はホワイトグリントを失い、まだ戦場に出れる状態ではなかった。

 生き残りの二桁では話にならず、リンクスとして戻ったセレンにネクストを与え、送り込んだのだろう。

 後にORCAの生き残りの二人が乱入してきたが、最後には俺と瀕死の彼女だけが残った。 

『……当然か。私が見込んだのだからな』

 そう呟いた彼女に俺は俺のやりたいこと、俺の目的を口にした。

『未来は人類が決める。それは俺達リンクスが力づくで決めることじゃない』

 彼女にとどめを刺すために月光剣を展開した時だった。

『それがお前の、お前が出した答えなんだな。そうか……よかった。やっぱりお前は、私の最高傑作だ』

 どうして嬉しそうにそう言ったのか、あの時は分からなかった。

 彼女は俺のパートナーだった。もしかしたら俺個人の成長が嬉しかったのかもしれない。

 そうだとすると彼女はリンクスであるのに本当に強い。

一夏「――だから、お前も守ってやるよ。ラウラ・ボーデヴィヒ」

 俺にも時間が残されていたのなら、彼女のような強いリンクスになれたのだろうか。

 教室から女子の歓声が上がる。告白めいたことを言ったことに一夏は気づいていないようだ。

ラウラ「そうか」

 ラウラはそういうとISを解除すると、自分の席に戻ろうとする。

千冬「おっとラウラ、そして凰、貴様らは忘れているようだから言っておくぞ。領地内でのISの無断使用は厳禁だ」

 教室の隅に寄りかかっていた織斑千冬は鈴の頭を掴むとそのまま握りしめる。

千冬「それと凰、生身の人間を攻撃しようとするのはどういう要件だ?」

鈴「ち、ちふ、織斑先生誤解です!」

千冬「言い訳する元気があるのか。どうだ? 校庭でも走りたくなってきたのではないか?」

鈴「はい! 走りたくて仕方ないです!」

千冬「そうか。ならISを展開したまま10周走ってもらおうか。もちろんPICと補助動力は入れるなよ。ISは無断使用してしまうほど好きなのだろう?」

鈴「はい! 走ってきます!」

 こうして事なきを得たラウラはほっと胸を撫で下ろしながら自分の席に戻るのだった。

 その日の夜、相変わらず眠れぬ夜を過ごしていると、ゆっくりとドアが開けられ、誰かが部屋の中に入ってきた。

 俺は聞き耳を立てると微かな足音を拾い侵入者の動向を伺う。

 侵入者はドアを閉めるとゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

 俺のベッドの前で立ち止まると、今までより少し大きな音が響く。

 衣擦れのような音が聞こえ、それが落ち……

ジェイド「何をやっている」

ラウラ「やはり気付かれたか。流石だな」

 体を起こすと侵入者――ラウラ・ボーデヴィヒを見る。

 身に纏っていた服は既に脱がれており、その身には何も纏っていなかった。

 そして今は脱いだ制服を手で畳み一夏の椅子に置いているところだった。

ジェイド「ああ、一夏に用だったか。悪かったな」

 そう言って再び横になると予想外の一言を浴びせられる。

ラウラ「何を言っている。お前に用があって来たのだ」

 思わずもう一度体を起こすとラウラを直視する。

 左目の眼帯も外しており、月夜に浮かぶ銀色の髪とその金色の目に目を奪われる。

ジェイド「何の冗談だ?」

ラウラ「冗談などではない。私はお前の強さに惚れた。だから、お前は私の嫁とする。異論は認めん」

 人差し指で俺を指すとそう宣言する。

ジェイド「どうして一夏ではなく俺なんだ?」

 俺は一夏より劣っている。

 こと人間性という面ではそれは覆りようはない事実である。

ラウラ「確かにお前は教官の弟のように気の利いたこと台詞も言えない」

ラウラ「それでも、私の気持ちは変わらない」

ラウラ「それにお前も言っていただろう。お前と私は似ていると」

ラウラ「私もそう思う。だからこそお前のことが気になった」

 そしてお前のことを好きになった、とラウラは続けてそう言った。

 そこまで言われれば、何かしらの返答はしなくてはならない。

 特に俺の場合はずるずる先延ばしにしてのは相手に失礼だ。

ジェイド「そうか。だが、諦めた方がいい」

 そう言うとラウラの表情が曇る。

ラウラ「お前のこと変な名前で呼んだから、それで怒っているのか?」

ジェイド「お前に非はない。ただ、そう遠くない内に俺が死んでしまうだけだ」

 ラウラは目を見開いて驚いているも、これはもう覆しようのない事実である。

 ラウラは目を見開いて驚いているも、これはもう覆しようのない事実である。

 AMS接続による脳の酷使と何よりコジマ粒子によるコジマ汚染。

 脳は悲鳴を挙げ続け、体内に残留するコジマ粒子がこうしている今も体を蝕み続けている。

ジェイド「おそらく後数年、悪ければ数か月でこの命は尽きる」

ジェイド「言っただろう。この力を得るために、他の全てを捨てたって」

ラウラ「……」

ジェイド「だから諦めた方がいい。その果てに訪れるのは悲恋だけだ」

ラウラ「……ない」

 ラウラがそう呟くと俺はラウラに押し倒し、唇を奪われる。
 
 突然のことで固まっていると、ラウラは唇を離す。

ラウラ「関係ない。異論は認めんと言ったはずだ」

ラウラ「私のことが嫌いじゃないのならそれでいい」

ラウラ「例え明日死ぬというのなら、その死ぬ瞬間まで私の嫁でいろ」

 堅牢で強い意思が感じられるほど、ラウラはまっすぐに俺を見つめている。

 互いが互いを似ていると言っていたが、少し違っていたようだ。

 ラウラは俺より遥かに強く、俺はラウラより遥かに弱い。

 返事を言葉にすることができず、ただ彼女を抱きしめたのもそういうことなのだろう。

くぅ疲云々カンヌン
あと衛生掃射砲襲撃、防衛って言ったけど衛星軌道掃射砲襲撃・防衛でした。
厳密には衛星破壊砲基地襲撃だけど……
あとその時の簡単な>>1の脳内纏めを

銀翁、主人公防衛
ローディー(rank4)、スティレット(rank6)、リザイア(rank12)、イクリプス(AF)襲撃
企業も本気(ry

主人公イクリプス落としてローディ先生とタイマン。

後方からリリウム(rank2)と王小龍接近。
ハリ(rank10)がアレサで登場。リリウムと王小龍と対決

ハリ、リリウムを落とすも王小龍に撃破される。
主人公は先生撃破、銀翁も二人を撃破。
王小龍撤退。

銀王の呟きで主人公は人類に未来がないことを知る。
背後から銀王を撃ち、クレイドル21へ

みたいな

クレイドル21じゃなくてクレイドル03か
後は嘘予告でも流しておきますか

ラウラ「――尾行されてるな」

セシリア「私の手作りですの」

一夏「ん? もしかして初めてなのか?」

ジェイド「これは……美しい」

箒「お前も、何かの為に戦っているのか?」

束「こういうの盗人猛々しいって言うんだよね」

箒「やれる。この赤椿なら!」

一夏「アイツを見捨てるのかよ!」

『環境を世界と同期――完了』

『機体を搭乗者に合わせて最適化――完了』

『ナインボール=セラフ、起動します』

oh……ミススペルアルネ
>>318
先延ばしにしてのは→先延ばしにするのは

>>320
押し倒し→押し倒され

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月30日 (月) 18:21:50   ID: SHG3fGa4

うーん、この最後のやっつけ感

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