エレン「食堂の中心で叫んだアイのようなもの」(125)


※推定エレアニ
※某所で見かけたモノが素晴らしかった
※ので、書こうと思う







勢いで始まる物語がある。

あるいは恋も同様に。


某日昼過ぎ。

その日アニはほんの気まぐれ、あるいは暇つぶしでエレンと過ごしていた。

前に格闘術訓練の相手を頼まれたのを思い出したのがきっかけだった。
そのときは「一人でやってなよ」と断った。
あっさり引き下がったから、元から引き受けてくれるとも期待していなかったのかもしれない。
そしてその際に「一人で二役やれってのか」という溜め息交じりの返答も思い出した。


オラッ!
一人で誰もいない的に襲いかかるエレン。

ふっ!せっ!
立ち代わり思い切り空気を投げ飛ばす動作をするエレン。

ぐえっ
立ち代わり情けない声で吹っ飛んでいくエレン。



糞真面目な表情で行うのはやめてほしい。


そんな空想が変なツボに入ってしまった。
後で振り返ると何が面白かったのかまるでわからないが。

ああ、さっきからアイツのことばかり考えている。
これが恋ってやつかしら。

多分、絶対に違う。

違うだろうが、自分でわかっているので何も問題はない。
そんな妄言を心中で嘯く程度には妙な高揚を覚えているのだ。

それ故、一人で突然吹き出して声を殺して笑い出してしまったのも仕方がない。
幸い周りに誰もいなくて本当に良かった。










「…………おい」


足元から声。

しかしアニは慌てることもなく、むしろ仕方なさげに下方に視線をやる。



何故か仰向けに倒れた状態でアニの方を睨みつけるエレン・イェーガーがいた。



どうして床なんかに転がっているのだろうか。

溜め息を吐きながら手を差し伸べる。

果たして誰の仕業だったのか。


エレン「しばらく人の顔見ていきなり噴き出したと思えば投げ飛ばして、挙句見下ろして溜め息ってのはどういう了見だ?喧嘩売ってんならそう言え」

アニ「あんたが、悪いんだよ……」

エレン「え。俺、何かしたか……?」

アニ「…………」

エレン「…………」

アニ「……馬鹿みたいな面してたから、つい?」

エレン「よし、表出ろよ」



図らずも格闘術に付き合うことになりそうだった。


アニ「ゴメン冗談、さすがに私が悪い。大丈夫かい?」

エレン「だろうな。オレ声かけただけだしな」

アニ「そうだね。思い出し笑いさ。見られたら、恥ずかしいだろ」

エレン「照れ隠しで足払いから投げ技まで極めるのが最近の流行りなのか?」

アニ「あんたにだけだから安心しなよ」

エレン「わけわかんねぇよ」

アニ「暇なら……前言ってたけど、組手?付き合うよ」

エレン「ん?おう、今いいのか?」

アニ「は。一人じゃ、大したことできないでしょ?」



互いに熱が入ってしまい、遅くまで自主練は続いた。


食堂。
就寝時間の数刻前。

食事を終えてほとんどの者は自室に戻っており、室内には数えるほどの人数しかいない。



エレン「悪いな、遅くまで付き合わせちまった」

アニ「別に構わないよ。誘ったのこっちだしね」

エレン「お前って意外といい奴だよな」

アニ「は。勘違いしてないでよ。ただの気まぐれだよ」

エレン「ならその気まぐれに感謝だな。次もあることを期待しとくわ」

アニ「本人に言わないでよ」

エレン「誰に言えばいいんだよ」


アニ「……ん」

エレン「ん?」

アニ「手の甲、擦ったの?」

エレン「あんだけやりゃな。まぁ痛くはないし」

アニ「ふーん……」

エレン「問題ねぇよ」

アニ「あんたの手」

エレん「あ?」

アニ「おっきいね」

エレン「お前のがちっちゃいだけじゃねえか?」

アニ「そう?」

エレン「ほら」ピト


エレン「指、結構長いんだな」

アニ「そうだね」

エレン「あと思ってたより柔い」

アニ「あんたはごつごつしてる」

エレン「手の甲も」

アニ「ん」

エレン「あ、わり」


アニが右手を差出し、エレンが左手をそれに重ねた。
さらに手の甲の方にもエレンの右手が添えられ、握られているような状況。

そこでぱちりと、視線がかち合った。


アニ「…………」

エレン「…………」

アニ「ねえ、その……」

エレン「お、おう……」

アニ「…………」

エレン「…………」


エレン「…………」

アニ「…………」

アニ「……恥ずかしいん、だけど」

エレン「そう、だな……」

アニ「…………」

エレン「…………」

アニ・エレン(なにこの空気……)



手の平を合わせたまま見つめ合う二人。
沈黙は続く。


ユミル「いや、離せよ」

サシャ「まあまあ。ここは大人な対応で見て見ぬフリをしながら黙って見守ってあげましょう」

クリスタ「ユミル邪魔しちゃ駄目だよ?」



外野がいたが当事者たちが気付いていないので問題はない。


エレン(近ぇ……)

アニ(なにやってんの私……)

エレン(けどここで目を逸らしたら変な感じになりそうだし……)

アニ(なにこの妙な空気……早く離しなよ……)

エレン(コイツ顔紅くなってないか……?)

アニ(何考えてるのさコイツ……なんか紅くなってない?)



平時なら多分、お互いこの程度のスキンシップはどうでもなかった。
ただその時は、昼からのこともあってか妙なタイミングが重なったのか妙な雰囲気になってしまったのだ。

そうしてその状態のまま沈黙が続く。


ライナー「…………食堂のど真ん中で何やってんだあの馬鹿共は」

ジャン「面白すぎんだろ。なんだこの状況、アレで愛してるだとか言い出したら笑い堪える自信がねぇぞ」

マルコ「はは、まさか。ほら、そういうのから遠そうな二人だし」



当事者たちが沈黙していても外野には特に関係ない。


アニ(なんか熱くなってきたかも……)

エレン(やべえ手とか汗かいてきてねぇかな……)

アニ(大体なんで手掴んだままなのコイツ馬鹿なの?なんなの?)

エレン(なんで動かないんだよ馬鹿か?蹴られてもいいからどうにかしろよこれ)

アニ(……やばい汗かいてきたかも)

エレン(コイツの体温かわかんねぇけど手やべえ……)



思考だけは目まぐるしいが、二人とも依然動かぬまま時間が過ぎていく。


ユミル「いや、だから離せよ」

クリスタ「ユミルしっ!今凄くいい感じだから!」

サシャ「二人とも小声なあたり空気読んでますね。あ、向こうでライナーたちも何か話してますね」



二人の時間は止まっていても周囲は増して盛り上がる。


アニ(うわ……なんかもう、とにかくだめだ)

エレン(なんだこれ睨めっこかなんかかよ……)

アニ(沈黙長すぎて逆にもう動くタイミングがわからないし……)

エレン(何も思いつかねぇ、つか頭はたらかねぇ……)



やがて思考すら停滞しそうになる。


ジャン「長えよ。どんだけ見つめ合ってんだよ。向こうでクリスタたちも騒いでるしよ。小声で」

ライナー「そうだな。結婚しよ(小声)」

マルコ「(小声)って言いながら心の声漏らさないでよ。あと全然小声じゃなかったし」



雑談にも花が咲く。


アニ(うわどうしたらいいのさ、考えが進まない、というかもう、なんで私こんなことになってんのああもう)

エレン(うお頭真っ白になってきた、なんか周り話してるし、くっそホントもう助けてくれ)

アニ(変なこと言ったら意識してるみたいだから、普通に、いつも通り、感情を捨てて……)

エレン(やべえどう動いたらいいのかまとまらん、てか結婚がどうとか小声とかなんだよああもう)

アニ・エレン((〜〜〜〜!))



そうした長い沈黙の末、先に動いたのはエレンだった。


エレン「…………っ」

アニ「っ!」



解答が見つかったわけではないが、耐え切れなかったエレンが何かを言おうと口を開く。
が、言葉が出てこない。

それでもアニにとっては動くきっかけにはなっただろう。

けれど、二人とも気まずさと羞恥に思考がやられていた。
互いに次のアクションを起こせない。


しかし、見切りでも先に動き出したエレンはもう止まることは出来ない。



エレンの錆びついた頭が正確さを置き去りにフル回転する。

アニはとりあえずもう頷いとけばいいやと思考を停止している。

周囲は談笑しながらやんわりとそれを見ていた。

そして再度の長い沈黙の末に、漸く、


エレン「…………っ」

アニ「」コクリ










クリスタ(?何も言ってないよね?)

サシャ(なんで今アニ頷いたんですかね、何か伝わってるんですか)

ユミル(愛だな、愛、ぶふっ)



ジャン(やっとどうにかなんのかよ。向こう静かに盛り上がってんな)

マルコ(こんなに詰まるエレンも珍しい気がする)

ライナー(結婚しよ)


エレン「…………け」

アニ「…………」















エレン「結婚しよ」

アニ「そうだね」コクリ


ライナー「は?」

クリスタ「え?」

ジャン「あ?」

ユミル「お?」

マルコ「ん?」

サシャ「えっと……プロポーズ成功ですかね?」


こうして二人の静かな戦いは幕を閉じた。
突然始まって唐突に終わった。

一体誰と戦っていたのかは当事者の二人にすらわからない。
ついでに自分たちが何を口走っているかもわかっていなかった。

始終わからないことだらけだった。

そして閉戦に伴って復旧しつつある頭でさきほどのお互いの言葉を振り返る。
本当に何を言っているかわけがわからなかった。

とにかく、妙な時間だった。
夢と言われればそれで納得してしまうかもしれない。

しかし、その戦いを見守る者たちがそれの証人なのだろう。



現に、


ジャン「結婚しよ」ギュッ

ライナー「そうだね」コクリ



エレン・アニ「「っ!?」」



それに続いて、


サシャ「手を握ったままそんなに見つめられると照れちゃいますよ。他の人たちも見てますし」テレテレ

ユミル「見せつけてやりゃあいいんだよ」キリッ



エレン・アニ「「っ!!?」」



そして、


マルコ「もうみんな悪ノリしすぎだって。でも二人が、なんていうか、そういう仲だったなんて気付かなかったよ」

クリスタ「大丈夫だよ、私はお似合いだなぁって思ってたもん。えへへ。後で詳しいこと、聞かせてね?」



何も問題はなかった。

彼らが、この歴史の証言者なのだから。


マルコ「おめでとう」

クリスタ「おめでとう」

ジャン「おめでとう」

ライナー「おめでとう」

ユミル「おめでとう」

サシャ「おめでとう」



集う仲間たち。

手向けられる祝福の言葉。

暖かかな拍手と共に包まれる二人。


なんだこれ。

いや、考えるだけ無駄なのだろう。
そういう大きな流れなのだ。
身を任せる他に術はない。

思考を放棄して、それに応える。





エレン・アニ「————ありがとう」


再びお互いに目を向ける。

そこで、本当の意味で二人は互いに向き合ったのだ。
視線だけでない。
想いだとか、あるいは、心と呼ばれるものが通じ合った気がした。

例えそれが気のせいだったとしても、互いに相手を理解しようと、本気で相手を汲み取ろうという意志がそこにあった。



ある種の境地に達した二人は考える。

自分たちが生きてきた今までの事を。

様々な思い出が、走馬灯のように駆け巡る。



————お父さんから教わったもの……ずっと、大切にするから。

————守れなくてごめん……、オレ強くなるから。だから見ててくれ、母さん。


ねぇ、ごめん。私……こういう時、どういう顔したらいいのかわからないよ。

……笑えば、いいと思うぜ。

そっか……うん、そうだね。

ああ。





————父に、ありがとう。

————母に、さようなら。

————そして、全ての子供達に、おめでとう。





(終わり)

なんだこれ

ここまでお読み下さった方にはありがとうございます。
時間を無駄にしてとても残念だという方には私が無能なばかりに申し訳ありません。

※以下推定おまけ
※あるいは蛇足の物語





ジャン(で、まだ手を重ねたままで動かないんだがどうしたいんだこいつら……)

よくわからないノリになってしまい未だ放心の二人。
視線は下方に落ちて最悪の状況からは抜け出しているが、重ねられた手はそのままだった。

ユミル(誤って接着剤でもつけちまったせいだとか言われたらもう納得するわ)

それを改めて認識したライナーが特に理由のない思い付きで喋りだす。

ライナー「キスだな」

マルコ「うん?」

サシャ「はい?」

クリスタ「えっ?」

ライナー「キスだな」

ジャン「……ああ、そうだな。キスだわ」

ユミル「……ああ、とびきり熱いヤツ頼むわ。クリスタも期待してるし」

クリスタ「えっ!?なんで私!?や、確かにちょっと見てみたいけど……」

エレン・アニ「「っ!?」」

マルコ(この大きな流れには逆らえない……ごめんね二人とも)



二人とも限界だった。
互いを意識し過ぎている。
これ以上押されたら引き下がれないほどに。

だというのに。



ライナー「ここまで見せつけて、お前らは……兵士として最後まで責任を果たさなければならない……俺はそう思う」

サシャ「ふふん、そうですね。そして私たちは熱いキッスを見届ける義務があります」

ジャン「おう、いけ!キスだ!キス!」

ジャン・ユミル「「キス!キス!」」

ジャン・ユミル・マルコ・サシャ「「「「キッス!キース!キース!キース!」」」」

再び見つめ合う二人。
相手の顔が熱に浮いている事実に言葉が紡げなくなる。

エレン(照れると手が出るんじゃなかったのかよ……そんな熱っぽい目で見んなよ)

アニ(こいつに限ってこんな流れで、ってのはない……と思う)

エレン(……駄目ならぶん殴って止めてくれるだろうし……、俺は……)

アニ(ないと思う、けど、万が一求められたら……、私は……)

互いを信頼して、と言えば聞こえはいいが最後のラインを互いに投げての決断だった。
ただ、相手のそれをすべて許容するという覚悟の上で。

……っ!

エレンがアニとの距離をわずかに詰めた。

ライナー(本当にやる気か!?もしかすると俺は……とんでもない賽を投げてしまったんじゃ……)

クリスタ「いいぞエレン!ここまできてるのに今更やめるなんて無しだからな!理性だとか人の目だとか気にしてるなら、そっと出ていくから、もうそのまま押し倒せ!」

ライナー(空気にあてられたのかクリスタが暴走した……結婚したい)



もう誰も彼もまともでなかった。

「「「「キッス!キース!キース!キース!」」」」

悪ノリが過ぎ、四人のやまないキスコール。

「何躊躇ってんだよ!自分に正直になれよ!アニだってもう目瞑って覚悟決めてんだぞ!言わせんな恥ずかしい!」
「っ!!?」

興奮し、叫ぶクリスタ。羞恥を煽られるアニ。

「っ!」

覚悟を決めるエレン。

「結婚しよ」

呟くライナー。

時刻は既に深夜帯に踏み込んでいる。

完全なる夜のテンション。

そして二人の距離が、限りなく零に————










————ガチャッ、ギイイィィ



「こんな時間に何を騒いでいる貴様ら」

突然現れる教官。

「「「「キー……す……」」」」

静まる一同。冷める熱気。

(やべえ)

そして沈黙。

キース(……なんだこの状況は……騒ぎの実行犯は周りの六人、か。レンズとボットは意外だが……、中心にイェーガーとレオンハート。そして二人のこの状況……なるほど、しかし……)



振り上げた腕をしずしずと下ろす一同。
繋がったままの二人。

教官の次の言葉を、皆固唾を呑んで見守った。

キース「……丁度、物資の搬入時期で人手を集めようと思っていたところだ……貴様らにすべて任せるとしよう。血気が有り余っているようだからな」

ライナー「は!了解であります!」

ユミル(っぶねー……いや、これで済ましてくれるのか?)

マルコ(ぐっ……楽しんでないで早く寝ればよかった)

キース「万が一次にこのようなことを見かけた場合……、わかっているな?」

クリスタ「は!寛大なご対処に感謝致します!」

ジャン(うおおお!教官マジ教官!)

サシャ「やれやれですね」フーッ

ジャン・ユミル「「飯抜きにされたいのか黙ってろ馬鹿!」」

キース「……わかったらさっさと寮に戻れ」ギイイィィ

サシャ「すいませんでした」フーッ

ジャン「お前もうホント黙ってろよ」

マルコ「……早く寮に戻ろうか。色々疲れたよ」

クリスタ「うん。なんか変なテンションになっちゃったし」

ライナー・ユミル((結婚しよ))

サシャ「じゃあ、アレですね」

ユミル「あ?どれだよ?」

サシャ「早くチューしてもらいましょう」

…………。

一同「っ!?」

サシャ「もう眠いですし。それだけ見届けて戻りましょう。ね、皆さん」

一同「…………」



何とも言えぬ生温い視線が二人を襲う。



エレン(……ああ)

アニ(もういいや……)

周囲が見守る中、責任を果たした二人は何を語ることもなく食堂から夜の闇へと消えて行く。
結局、最後の最後までその手を繋いだままに。



翌日二人は結婚した。



(終わり)

※蛇足・前日譚





エレン「じゃあ勉強見てくれよ」

アニ「…………は?」

エレン「馬術でも技巧でもいいぜ?」

アニ「……いや、なんで私があんたに付き合わなきゃならないの?」

エレン「なんでって言われてもな……」

アニ「それこそさっきも言ったけど一人でやってなよ」

エレン「教えてくれって言ってんだが」

アニ「教えるのと教わるの二役すれば?」

エレン「意味わかんねぇ」

アニ「あんたさ……私がそういうのに親切に付き合ってあげるような人に見えるの?」

エレン「だからこうして頼んでんだろ。礼ならする」

アニ「どんな?」

エレン「俺にできることなら、なんでも」

アニ「……、……じゃあ、一回だけ付き合ってあげる」

エレン「ホントか」

アニ「もっと嬉しそうにすれば?」

エレン「いや、じゃあ一応聞くけどよ、お前の見返りは」

アニ「次から付きまとわないで」

エレン「そんなんだろうと思ったよ」

アニ「大体、先に断ったのはそっちじゃなかった?」

エレン「ぐ。あの時…何で…だろうな…。素直に頼んどけばよかった」

アニ「ホント残念だよ。折角のチャンスだったのにね」

エレン「前よくてなんで今駄目なんだよ。尚更諦めらんねぇだろ」

アニ「あの時が気まぐれだったんだよ。気の迷い」

エレン「あの時のオレがバカだった。だからこの通り」

アニ「駄目」

エレン「ちょっとは考えろよ」

アニ「それに、私じゃなくてもいいだろ」

エレン「格闘術に関しちゃお前がいい」

アニ「知らない」

エレン「って言うだろ」

アニ「そうだね」

エレン「じゃあ他から崩していくしかないかと」

アニ「何、つまり……私と仲良しごっこして好感度をあげていこうって?」

エレン「どうしてそうヒネた言い方すんだ。まぁ仲良くしたいってのはそうだけどよ」

アニ「私は別にしたくないんだけども」

エレン「触れ合わないことには始まらないだろ。人との関係ってやつは」

アニ「……何言ってんの?柄じゃないにもほどがあるだろ」

エレン「言ってて思ったが……言うなよ」

アニ「中途半端な説教くさいし。あんたから人間関係について講釈されるとは」

エレン「そんな風なことを誰かから聞いた気がする」

アニ「あんたってホントめんどくさい奴だね」

エレン「そのまま折れてくれると嬉しいんだが」

アニ「めんどくさい」

エレン「そんだけお前の技術は魅力的なんだけどな。わかんねぇか?」

アニ「……、……わからないね」

エレン「はぁ……そうか」

アニ「……そうだよ」

エレン「しつこく言って悪かったな」

アニ「……ただ」

エレン「ん?」

アニ「訓練中くらいは、組んでやってもいいけど?」

エレン「ホントか!」

アニ「嬉しそうにしてないでよ」

エレン「どっちなんだよ」

アニ「まぁ……それでいいんでしょ?」





結局それがきっかけで勉強や自主練にも付き合ってもいいと言い出すだなんて、
今のアニは思いもしていない。



(終わり)

………こんなこと、するつもりなかった

ずっと……曖昧なままでいたかった……

怖いんだ……

あんたみたいな……真っ直ぐな奴は……



……そうか

色々と悪かった

さっきのも忘れてくれ

…………違う……違うよ、そうじゃないんだ……

私だって……

あんな流れだからって……なんでもない奴と、あんなことしない

だから、わかってよ……

あれは、ただのきっかけなんだ……

たぶん……きっと、ずっと前から……私は……もう



お前……それ……

俺がバカでただ勘違いしてるわけじゃないよな……?

本気にしていいのか……?



バカ……

他に……言うことがあるだろ

私はあんたみたいに強くないから……

もっと……ちゃんと言葉にしてくれないと……駄目なんだよ……

……手、握っていいか……?



ん……



……アニ

……お前、すげえ可愛いよ……

その、なんていうか……綺麗だと、思う……



……ふふっ、そういうの似合わないよ

嬉しいけど、そういうのじゃなくて……



ああ、わかってる……

アニ……その……オレは、お前のこと……

1レス目で言ったのを指しているなら某イラスト投稿サイトで見かけたモノで
手を重ねて紅くなってるエレアニ絵です

興味ある方は探すの大変かもわからないですが作者様の迷惑にならない程度の良識で是非

…………好きだ



……うん



……好きなんだ



……うん



あ……愛してる……



……ふっ、だからそういうのは似合わないって

あ、あぁ……わりぃ……

なんて言ったらいいのかわかんねぇけど……

お前のこと、好きだし……

お前にも……そう思ってほしいと、思ってる



……うん

私も……

その…………あんたが……

……す…………好き、だ……



……ははっ、似合わないぞお前



うるさいよバカ……

でも……すげぇ嬉しい



……うん



……ははっ、現実だよな、これ

昨日から色々あり過ぎた



……ふふっ、確かに

大体、結婚ってなにさ、色々飛ばし過ぎだろ



好きだとか…あいし……まぁ……

そういうのの延長だって考えれば、いいと思うぜ



……そうだね

冗談ぽい響きが……愛してるだとかよりは、言葉に出しやすいのかもしれない

なぁアニ



うん



好きだ



うん……知ってる



結婚しよう



……うん。いいよ

ライナー「…………だからアイツらはなんで食堂のど真ん中なんぞで……もうどうでもいいかそんなことは」

ユミル「愛の力は偉大だな……ぶふっ」

クリスタ「凄いところに立ち会っちゃったね……なんかちょっと泣きそうかも……」

ジャン「マジか。いや、マジか」

マルコ「ホントどうしてこうなったんだろうとしか」

サシャ「ふふん、最初に気付いてみなさんを呼んだ私とライナーに感謝してくださいね!」

明け方、食堂に向かう二人をたまたまサシャが見つけた。

そしてその時たまたま兵舎を歩いていたライナーに声をかけた。

休日の朝も早い時間だというのに。



二人ともたまたま早く起きたのだと言っていたが、昨晩の出来事から寝ていない。

言ってしまえば、心配だった。



「俺たちの悪ノリもあった。どうなるかわからないが、黙って見守ってやろう」



昨晩あの後、ライナーはそんな風なことを言ったが、だからといって文字通り黙って見ていることはできなかった。

しかし、何かあったときに自分だけじゃどうしようもないかもしれない。

そう判断して昨晩の協力者を集めたのだが、それも杞憂だったらしい。

サシャ「結婚しよ、って愛してる、とどっちが上なんですかね?」

ユミル「知らねぇよ。あいつらで勝手に決めたんだからあいつらに訊けよ」

マルコ「愛してるの代用みたいなこと言ってたし、イコールなんじゃないかな」

クリスタ「好きだよ……愛してる……結婚しよ……。うん、結婚しよって方が冗談交じりな感じで言いやすいかも」

ジャン「何の談義だよこれ」

ライナー(結婚しよ)

食堂の外で顛末を聞いた六人はそこから離れて資料室に集まっていた。
二人から話してくるまでは何も訊かなかったことにするということでひとまずの話し合いは終わった。



クリスタ「わかってると思うけど、他のみんなには内緒だよ?」

ユミル「えーこんな面白そうなこと……わかったわかったそう睨むなお前ら」

ジャン「……ま、あいつにしちゃ頑張ったと思うぜ。盗み聞きなんて趣味の悪い真似しなくてもよかったな」

マルコ「もう素直に良かったねでいいんじゃないかい?とりあえず、変なことに本当にならなくてよかったよ」

ライナー「ああ、そうだな。……さて、もうここに居ても仕方ないだろう」

サシャ「そうですね。朝食にもまだ早いですし、戻りましょうか」



若干不服そうにしているのもいるが、仕方ないなと笑って納得したようだ。

ユミル「おいサシャ、なんか上手いこと言って締めろよ」

サシャ「ええっ!なんで私なんです!?」



五人の生温い視線が集まる。
うっ、と呻くサシャ。

やがて諦めたらしく、
上手いことは言えないですけど、と前置きをして、










サシャ「仲良きことは美しきかな、ってことで————解散!」



有り触れた言葉でその場を締めて、六人は日常に戻っていくのだった。



(終わり)

冗談交じりでなんか言ってないで本当に結婚しろよお前ら

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