エレン「みかん箱…」(797)


初投稿です。

よろしくお願いします。

なんか最近臭いのが多いな


~~~ プロローグ ~~~

アルミン「さぁエレン、この箱に入るんだ」

ミカサ「アルミン、私はやっぱり賛成できない、こんなこと」

エレン「そ、そうだよ。やめようぜアルミン。こんな事しなくったって…」

アルミン「何言ってんの二人とも! これはエレンのため、ひいては皆のため、3つの兵団全てで合意された決定事項、精神鍛錬の訓練なんだよ?」

アルミン「それともエレン、君はこれくらいの事もやってのけられないヘタレだって自分から降参するつもりなのかい?」

アルミン「それにミカサ。君や皆の望みも叶うんだよ? ここで投げ出してしまって後悔しないと言い切れるかい!?」

ミカサ「そ、それは…っ!」


アルミン「ね? わかったら大人しくしてて」

エレン「………だけどよぅ」ウルウル

アルミン「チッチッチ! 以後セリフは全て『ネコン語』だ」

エレン「………に、にゃあ」

アルミン「よくできました!」ニコッ

ミカサ(か、可愛い!! やっぱりここは涙をのんで、エレンには頑張ってもらおう///)

アルミン「じゃあ、僕らはあっちで待機してるからね」

ミカサ「頑張って」

エレン「み、みぁう(う、わかった)」

アルミン「そうそう、その調子その調子。じゃあねエレン」タッタッタ

ミカサ「終わる頃には迎えに来る。ので、寂しくてもしばらく我慢して(泣)」タタタタタタ



エレン(…二人とも本当に行っちまいやがった)ゴソゴソ

みかん箱(ちーっす。エレンさんちーっす)

エレン(俺……どうしてこんなことに…)ポロッ

みかん箱(エレンさんの泣き顔ほんま可愛いわあ)

エレン(!っくそう! 泣くな俺! こんなん何でもねえ!)ゴシッ

みかん箱(まあまあ。一緒に頑張りましょなあ)

捨てエレンか…


アルミン「エレンってば始まったばかりなのにもう泣きそうだったね」

ミカサ「エレンはああ見えてとても寂しがり屋だから」

アルミン「まあね。本当の意味で一人で放り出されたのはこれが初めてだろうし」

アルミン「でも、だからこそ精神鍛錬になるんだ。全てエレンのためだ」

ミカサ「そう。そして私たちのため」

アルミン「あ、見て! 早速誰か通りかかったようだよ」

???「おい貴様ら!」

うんかわええ

続けてください


アルミカ「「ビクッ」」

アルミン「キース教官!」

ミカサ(この私がハゲごときに背後を取られた? 不覚!)

キース「貴様らの任はイェーガーを箱に入れたあと速やかに報告に戻る、だった筈だが?」

キース「それがこんな所で何をしている?」

キース「よもや各々に課せられている鍛練をサボろうとしているのではあるまいな!?」

アルミン「いえ! 僕らはせめてエレンが最初の人物に遭うまで見守ろうとしていただけです」

ミカサ「」コクコク


キース「そうか。なんとも美しい友情だな。しかし、それは規定違反だ」

キース「貴様らはイェーガー訓練生が失格になってもよいのか?」ギロッ

ミカサ「! いいえ」

アルミン「いいえ決してそのようなことはありません!」

キース「ならば今すぐ立ち去れ」

アルミカ「「ハッ!」」タッタッタ


キース「さて。後ろ髪を引かれる思いなのは私も同じだが…」

みかん箱(あんさんには引かれる髪ないやんけ)

キース「戻るとするか…」

みかん箱(聞こえてないのか、聞こえないフリなのか)

キース(うわぁあああぁぁぁぁあああん!!)コバシリ


~~~ ピクシス指令編 ~~~



みかん箱「だれか ひろってください」

ピクシス「おお、ここに居たか。エレン訓練兵よ…」スッ

エレン(わ! ピクシス指令だ。いきなり大物!)

エレン(うっどうしよう…ネコン語で話していいものか…)

ピクシス「うん?」ニコニコ


ピクシス「うん?」ニコニコ

エレン「(ええいどうとでもなれ!)にゃっ!」敬礼

ピクシス「おりょ? おぬし猫だったか?」

エレン(え? 俺、間違えてた?)

ピクシス「むぉっほっほ(笑) 冗談じゃて」

エレン(い、意外と人が悪いなこの爺さん)


ピクシス「いや冗談というより願望といったところか」

ピクシス「わしは無類の犬好きでな。おぬしが犬だったらそのまま連れて帰ろうかと思うとったが」

エレン「に、にゃー(それはちょっと…)」

ピクシス「そうか残念じゃったの。まぁそれはよい」ドレドレ

エレン「にゃっ!?」


ピクシス「これはいかん。鼻が乾いておるぞ」ハナツンツン

エレン(!?)

ピクシス「なんじゃ、にくきゅうはないのか」オテテサワサワ

エレン「にゃあ、にゃおん(はぁ、すいません…ん?)」

ピクシス「鑑札はついておらぬようじゃの」ミミピラッ

エレン(あぅふ耳っらめえぇぇ!)

ピクシス「うむ。ノミもおらんようじゃ」ムネナデナデ

エレン「にゃあ。にゃあ(いやあのノミって…)」

ピクシス「おっと時間じゃ。それではな、エレン訓練兵。恙無く訓練を終えるように」

エレン「にゃ!」敬礼



エレン「にゃあ。にゃあ(いやあのノミって…)」

ピクシス「おっと時間じゃ。それではな、エレン訓練兵。恙無く訓練を終えるように」

エレン「にゃ!」敬礼



エレン(ふぅ~っ。やっと解放された)

エレン(それにしても徹頭徹尾犬扱いだったような…)


 ごめんなさい。まちがえちゃった(泣


~~~ エルヴィン団長編 ~~~



エルヴィン「おや。君は…」

エレン(エルヴィン団長!)

エルヴィン「ん? なになに?」

みかん箱「だれか ひろってください」

エレン「に、に、にゃあーん」


エルヴィン「ああ! そうか。そういえば特別訓練の通達が来ていたね」

エレン「……に、にゃ(は、はい)」

エルヴィン「はっはっは! ようし、どれどれー?」ヒョイ

エレン(うあいきなり!脇すくって持ち上げないで!)

エルヴィン「おー元気な男のコだねえw 大人しいし毛並みもいい」ニッコリ

エレン(どこ見てんすか! つか、お願い! おろして下さい!)


エレン(頼むからおろしてえ!)フルフル

エルヴィン「んふふ(楽しい)」ニコニコ

エレン(いやあのえっと)ドキドキ

エルヴィン「ははは。そんな顔するな。はいここにお座り」ニカニカ

みかん箱「オアエリ」

エレン「に、にゃおん(き、恐縮です)」

エルヴィン「ふふふ(楽しい。やみつきになりそう)」ナデナデ

なんでおっさんしかこないんですかねぇ…(歓喜)


エレン(なんか笑顔が邪悪なんだけどこのヒト…)アセタラー

エルヴィン「どうだい?気持ちいいかい?」サワサワ

エレン「にゃー(どっちかっつーと恥ずかしいです)」

エルヴィン「おや?恥ずかしいのかな?(楽しくて止められない)」シツコクナデナデ

エレン「にゃあん。みゃおん(あれ変だな。だんだんキモチよくなってきた?)」


エレン「みゃ…ゴロゴロゴロ」

エルヴィン「喉鳴らしてる。ふふ可愛いなあ」

みかん箱(む。このままではアカン)

みかん箱「オッサンちょっとしつけーぞ。ひろわないんだったらもう行け」

エルヴィン「おや、もうこんな時間か」


エルヴィン「せっかく懐いてくれたところを悪いんだが…」

エルヴィン「この後会議でね。名残り惜しいが、もう行かないと」

エレン(ハッ!? 俺は今何を…?)パチクリ

みかん箱(よしよし。理性を取り戻したな)

エルヴィン「じゃあな。訓練しっかりな」スタスタ

エレン「にゃ!(ハッ!)」敬礼

なんでこういうことをしているのか解らん
もう少し説明の描写いるだろ。
訓練兵時代なのか、調査兵団入団後なのか解らん。
調査兵団入団後なら、なんでキースが出て来るんだよ

面白いです期待しています

>>25
シリアスものじゃないんだから、『ssだから』で説明つくだろ

>>25 ssに何を言ってるんだ


 今日はここまでで。
 このあと小鹿隊長+部下やらリヴァイ班やらが通りかかる予定。
 
 女の子書きたい。リコvsペトラとか、書けるといいなあ。

おつおつ

104期生は通りかからないのか!?


 ここまでって言ったけど、すいません。内容を忘れないうちに小噺はさみます。

 >>25 説明は話の流れの中でと思っていました。

 >>30 この放置プレイの後、なだれ込んで来る予定(未定)です。

 小噺①


千の枝は満月の光を遮ろうとするも、青白き光は地の草々を撫でるかのように差し込んでいた。

天空に架かるは銀河、幾億の星の営みがその「時」を告げていた。

何処から迷い込んだか、一羽の白鳥がついとその光の中に降り立つ。

何故こんな夜更けに睡りもせずこんな寂しい場所へ…そういぶかしんでいると、白鳥はその細い首を天へと伸ばした。


瞬間、風が戦ぎ、白鳥の姿が揺らぐ。

エレンが化身を解いたのだ。

「アレガ、デネブ、アルタイル、ベガ…」

血の色を失くした唇が星の名をなぞって震えている。


「君が指さすSommerliches Dreieck(ゾマーリヒェス ドライエック:夏の大三角)」

一切を目撃していた唯一人が木の陰から姿を現した。




『ってジャンかよっっっ!!!』

『そこはミカサだろふつー!!!!!』


すいません、最近こういう夢を見たもので(汗
自分のツッコミで目を覚ましたんだorz

うわぁ…
つまんな

これはひどい
つまらなさすぎる

エレンが主役ってのもなあ
輪をかけてつまらなくしてるわ
もうssにエレンいらないよな

そっか…



~~~ 小鹿ことキッツ・イアン・リコ・ミタビ編 ~~~


小鹿「お前たち今度の企画書には目を通したか?」ザッザッザッ

リコ「はい。今期より新兵の各兵団への入隊を指名制にするとか」ザッザッザッ

小鹿「キースの奴めがゴリ押ししたらしい」ザッザッザッ

イアン「それほど104期生の出来に自信があるということでしょう」ザッザッザッ


ミタビ「今までは成績上位者はほぼ憲兵団に入隊してしまい、各方面への人手不足は深刻になりつつあります」

ミタビ「優秀な兵をこちらから引き抜けるのなら願ってもないこと」

リコ「上から指名されて嬉しくない新兵はいないでしょう。士気も高まり、戦果向上に繋がる良案かと」

小鹿「ふん。それはどうかな」

リコ「と、いいますと?」


小鹿「どこかの若造は5位という高成績にも関わらず、調査兵団以外には行かないとゴネているそうだ」

小鹿「しかももっと腹立たしいことに、その若造に中てられた馬鹿どもが其奴の言動に影響されつつあると聞く」

小鹿「たかだか一兵卒の意気がりで周囲の人間が中てられるなどという馬鹿なことがあってはならん」

小鹿「優秀な兵士とは我々上の人間の指揮に服従し得る者の事だ」


リコ「なるほど。兵団にスタンドプレーは必要ない、と」

リコ「件の者の言動は、兵団組織への反抗だとお考えなのですね」

小鹿「それ以外の何だと?」

リコ「それなら今度の企画案は今後そういう輩を出さない意味でも有効なのでは?」

リコ「我々には一部のはねっ返りを矯正している暇などない。それこそ時間の無駄です」


イアン「しかし、それは」ピタッ

小鹿「ああ、あれだ。その馬鹿は」ピシッ

小鹿「見ろ。あの悪人面。法を法だと思っておらんような凶悪な目を」グヌヌ



みかん箱「だれか ひろってください」

エレン「(また誰か来た)にゃあ」


リコ「………」ジィ






リコ「………(ね、猫ちゃんだ///)」パァ

イアン「猫…ですね。思いのほか可愛いですが」

ミタビ「猫…にしか見えませんね」

小鹿「お、おい。貴様ら何を言っt」


イアン「そうかあ15歳ってこんなんだったなあ…」

ミタビ「人間の15歳は猫だと生後1年ぐらいだ。知ってたか?」

イアン「俺が15歳の頃は…こんなに可愛くはなかったな」

リコ「やっぱりイアンも可愛いって思うか? 可愛いよなあれ絶対///」

リコ「あ~可愛いなあ~触りた~い!」ウズウズ


リコ「隊長、もっと近づいてみましょう。ほら可愛いですよ!」トットット

小鹿「ま、待て! どこの馬の骨とも知れんy」

イアン「隊長、あれは馬じゃなくて猫ですよネ・コ!」

ミタビ「怒らせるようなことをしなければ何もしてきませんよ」

小鹿「わしはそういうことを言っているのでh」ドン

リコ「あーもー我慢できないっ! 撫でたい!触りまくりたい! もふもふさせてぇ~!!」ダダダダ


みかん箱「いらっしゃ~い」

エレン「みぁあ(何かすげぇ勢いで寄って来ちゃったよ)」

リコ「猫ちゃん!」ガッヒョイ

エレン(うお!? いきなり掬い上げ?)

リコ「猫ちゃん猫ちゃん猫ちゃん///」エンドレス

エレン「み、みぃ!(ちょ怖い!)」


イアン「おいおいリコ、そんな急に触ると猫が驚くだろう?」

リコ「そんにゃことにゃいでちゅよねー。猫ちゃんはリコたん好きでちゅよねー♪」

エレン「みゅ…(突然そんなこと訊かれても…)」

リコ「ほら!みゅって言った!好きって言った!!」

エレン「にゃーっ(言ってねぇよ)」


イアン「あダメだ…これ猫好きの中では一番ダメ下僕と言われてるヤツだ」

みかん箱「まあまあ。よきかな、よきかな」

小鹿「ゼェ…ハァ…お前ら人の話をk」

リコ「そうだ、餌をやろう。何かないか」マサグリ

リコ「あ~上げられそうなの何も持ってない」ガックリ


リコ「イアン、何か持ってないか!?」

イアン「あいにくと」

リコ「ミタビは?」

ミタビ「いや猫の餌なんか持ち歩かないってふつう」

リコ「もう役立たず!」


イアン「…(ちょ、普段よりきつい。何なのこれ)」

ミタビ(猫の餌って言ったことにツッコミはないのか)

小鹿「お前r」

リコ「ごめんねぇ~猫ちゃん。ごはん欲しいよねぇ?」

エレン「にゃあ(いや別に)」



リコ「だよね! よしっ今から取りに行って来るから、ここで待っててね!」

エレン「にゃ~(いやだから要りませんって)」

リコ「そうだ! 猫ちゃんは私のだって証を付けておかないと」ゴソゴソ

エレン「みゃっ!?(首にリボン…だと…!?)

みかん箱(しかも真っ赤)


リコ「よしっと。じゃあ行ってくるからイイ子でお留守番しててね~~~」ドップラー

イアン「暴走してるなあリコ。あいつあんな奴だったんだな」

イアン「それにしても…(チラッ)プッ、似合う似合う」クスクス

エレン(これ外したい)カリカリ

イアン「おっと、ダメだよ…えっとエレンだったか、一切の抵抗は禁じられている。これは訓練なんだから」

エレン「にゃあ(そうだった)」


イアン「まあ堪えてくれ」プププッ

エレン「にゃ~ん(了解しました)」

小鹿「お、おっお前たちばかり楽しんで…っ、ず、ずるい!!」ジタバタジタバタ

イアン(参加したかったのか)

ミタビ(参加したかったんだ)


イアン「もう行きましょう隊長。急がないと定時報告会に遅れますよ。」

小鹿「ま、待て!せめて一撫でさせてくr」

イアン「はいはい後でねー」ヒョイッ

イアン「ではな猫ちゃん(あ、やべぇ、リコの口癖うつっちゃった)」スタスタスタ

ミタビ「夜は冷えるからな。気をつけろよー」フリフリ

エレン「にゃっ!(お疲れ様でしたっ!)」


 今日はここまで。
 これでプロローグはあと半分です。長いな。

人間かそれとも猫?

エレンって巨人絡まなければ猫みたいだよな
猫目だし

プロローグってなんだっけ?

稲中の田中みたいに箱詰めされてどっかに送られる話かと思ってたらこんなことに


エレン「ハァ……(精神的に疲れた。思ってたよりずっと過酷だぞこれ)」

みかん箱(少し眠ったら?)

エレン(ちょっとだけ横になるか)

みかん箱(……………)

エレン「」zzzzz



小噺② 挟みます。


輝線を放つエンジェルハイロウ。万里を駆ける光子翼。

黄金の甲冑、右手に聖剣、左手に金剛楯。

それらはみな喪われた

この世に生れ出る時に・・・




その昔、神々と戦い、天の淵よりも彼方へと敗走を強いられた「神々よりも古き民」の_裔なるレギオン



   ・・・エレンよ目醒めなさい


エレン「ここはどこだ」

エレン「…寒い」

   ・・・いきなさい

エレン「…母さん?」

   ・・・いきなさい

エレン「…父さん?」


   ・・・いってらっしゃいエレン

エレン「ミカサ…?」




エレン「この姿では、もう天使には見えないな」


エレン「罪よ、死よ、俺を通してくれ」

罪「我が君………」

死「我が主………」



かくして楽園への扉は開かれ、物語は始まった。


~~~ リヴァイ班の皆さん編 ~~~


エレン「!」パッチリ

エレン(ゆ、夢? …あれ?)

エレン(…なんかスッゲー長い夢を見ていた気がするんだけど………)ドキドキドキ

みかん箱(エレンさんの涎ゲットォー! ご馳走様でした)


エレン(何だったけ。思い出せねぇな…)

ペトラ「じー…」

エレン「へ? わっ!?」ビックリ

ペトラ「キャッ!?」ビクッ

エレン「あ…(しまった!)」


ペトラ「? えーっと…」コンワク

エレン「に、にに、にゃあ…?」

ペトラ「……………何してんの?」

エレン「にゃ~ん(何してると言われても)」

ペトラ「あー…それ猫の真似? どういう状況なのこれ?」

エレン(困ったな…このシチュエーションは想定外だ)


ペトラ「君、ほんと見た目猫みたいだねぇ。フフッ。あ、ごめんね、笑ったりして」

ペトラ「どんな理由でこんなことしてるか判らないけど…」

エレン「みゃあ(気にしないでください)」グゥウ~

みかん箱(おや腹の虫が。そういや昼餉抜きでした)

エレン(うわ/// 聞こえたかな)チラッ


ペトラ「お腹空いてるの? これ、良かったら…食べる?」

エレン(ハム! えっ? こんな豪勢なものを?)

ペトラ「ほら遠慮しなくていいから」ニッコリ

エレン「みゅ?(ホントにいいのかな?)」

ペトラ「ふふっ。今日はねぇ、特別な日なんだぁ///」

エレン(それじゃ戴きます)アムアム


ペトラ「実はね…うふ。リヴァイ班への編入が決まっちゃってー///」

エレン(!! リヴァイ兵士長の!)ピク

ペトラ「今から同僚とお祝いするんだ」ニッコニコ

ペトラ「ほら、あっちに居るのがそう」ヒラヒラ

ペトラ「ねえこっち来てー。不審物じゃなくて訓練兵の制服着てる男の子だったー」


ペトラ「お腹空かせてるみたいなの。食料少し分けてあげてもいいと思う?」

グンタ・エルド・オルオ「「おー」」ゾロゾロ

エレン「(凄い人たちじゃないか。挨拶しなきゃ)なーん(よろしく)」ペコッ

グンタ「懲罰でも食らってんのか?ボウズ」

エルド「最近じゃこんな罰を科してんのか?」


オルオ「なんだお前ら知らなかったのか?こりゃアレだ。新兵のお披露目だ」

ペトラ「はあ? どうしてお披露目でこんな真似させられてるのよ?」

エレン(そうだよ。お披露目とか聞いてないぞ。これは精神鍛練だって教官も言ってたし)

オルオ「今期から訓練兵団卒業生は指名制に移行するんだとよ」

オルオ「どうして俺がそんな情報を知っていると思う? それはな…」

ペトラ「そんなの聞いたことないよ」



グンタ「そういやそんな話をエルヴィン団長がしてたような…」

オルオ「そら見ろ。たぶん今頃その会議の真っ最中だぜ」

エルド「つまり、まだ採択されたわけではないってことだろ」

グンタ「なんだ、そうなのか」

ペトラ「いや、だから、決まってもないのに何で今から新卒業兵のお披露目やってんの?」


エルド「そりゃ…何でだ?」

エレン(…指名制とか、今初めて聞いた俺に訊かれても……)

オルオ「ああ、それな。今朝兵長の部屋に忍b掃除に行ったら連絡係がこれを置いて行った」ヒラヒラ

オルオ「チラッと中身読んだところでは、今までは憲兵団への入団は成績上位者10名にのみ限られていたが」

オルオ「キース教官ってのが、その枠組を越えて訓練生を何人か入団させるべきだと主張してるらしい」


オルオ「で、この企画案を上申した、ってことだな」

オルオ「お披露目はその一環ってぇワケだ」

ペトラ「ちょ、それ見せて」パッ

ペトラ「……ホントだ。そう書いてある」

ペトラ「うん?でもこの子、添付された資料によると成績は5位だよ?憲兵団に入るには何の問題もないじゃん」


エルド「いや待て。ここに『当該者は調査兵団入団希望』とあるぞ」

グンタ「つまり、こいつは憲兵団を蹴って俺たち調査兵団に入りたいってか」

ペトラ「頼もしいじゃない!」

ペトラ「つまり、これは私たちへの自己紹介的なお披露目ってことね」

ペトラ「あ、もっと食べる?」ニコッ

エレン「にゃあ(はい)」ヤッター


オルオ「おい、それ俺達の酒の肴じゃないか」

ペトラ「いいじゃない。ケチケチしない」

グンタ「おーい、猫にイカは御法度だぞ」

エルド「塩辛もな。塩分多いから腎臓によくない」

ペトラ「猫って…この子どう見ても人間でしょうが」ナニイッテルノ


エルド「ここ、裏表紙の花丸で囲ってあるとこ見ろ。『これ猫だから。間違えないでね』とある」ホレ

ペトラ「……………」チラッ

ペトラ「なんか、さぁ…君の教官、変わった人みたいだね」

エレン(うーん、否定するべきなんだろうけど…)

みかん箱(無理せんでもええんとちゃう?)


グンタ「おいオルオ。この書類、表紙に極秘印が押してあるんだが…どこから持って来たって?」

オルオ「だから兵長の部屋の机の上にあった」

エルド「リヴァイ兵長の名前の下に気付の朱印もあるが…連絡係はいつ持って来たって?」

オルオ「今朝早くだよ」

ペトラ「…リヴァイ兵長は、これ読んだの?」

オルオ「いや。兵長が読まれる前につい懐に入れちまって」ハハハ


グンタ・エルド・ペトラ「「「………」」」

エレン(あー…)

グンタ・エルド・ペトラ「「「 バ カ 野 郎 !! 」」」

グンタ・エルド・ペトラ「「「本人(エレン)の前で極秘内容を喋っちまったじゃねぇか!」」」

グンタ・エルド・ペトラ「「「しかも肝心のリヴァイ兵長が書類に目を通してない!」」」


グンタ・エルド「「急いで宿舎に戻るぞ!」」ドドドド

オルオ「お、おい、待ってくれぃ」ダダダダダ

ペトラ「ごめんね、えーっとエレン、だっけ? 後でご飯持ってくるから、この事は誰にも言わないでー!」ドップラー

エレン「にゃ~(早ぇ!)」(もうあんなところに)

エレン(あ、お礼がまだ…。敬礼すんのも忘れた)チョットヘコムワ


~~~ リヴァイ兵長編 ~~~


エレン(それにしても…)

エレン(どういうことだ? これは実は訓練じゃない?)

エレン(う~ん…。まいったな…先刻からとっくに頭が限界なんだが…)

みかん箱(まぁまぁ。考え過ぎはよくないでっせ)


みかん箱「(おっと!もう次が来た) だれか ひろってください」

エレン(ん? まだ誰か……)

リヴァイ「……」ザリッ

エレン(!!!!! リヴァイ兵長! なぜ今ここで遭っちゃうんだ!?)


リヴァイ「……………」ジトッ

エレン「……………」

リヴァイ「……………」

エレン「……………」

リヴァイ「……………」

エレン「……………」


リヴァイ「……………」

エレン「……………」

リヴァイ「……………」

エレン「……………」

リヴァイ「…オイ…クソガキ」

エレン(!!!)ビクッ


リヴァイ「これは…どういう状況だ?」

エレン「(冷や汗ダラダラ)………」ウルッ

リヴァイ「(イラッ)オイ…さっさと答えろグズ野郎」

エレン「………にゃ、にゃお~ん(怖ぇ)」グスン

リヴァイほぅ…悪くない…」ニヤリ☆

エレン(!!!!!)ゾゾゾォオ


<リヴァイ兵士長の日誌>

 ※ 註:コピペ改変です。



ちょっとムシャクシャしてるから、ちょっとエレンを虐待しようかと思う。

他人の目に触れるとまずいので家に連れ帰る事にする。

嫌がるエレンを風呂場に連れ込みお湯攻め。 充分お湯をかけた後は薬品を体中に塗りたくりゴシゴシする。

薬品で体中が汚染された事を確認し、再びお湯攻め。 お湯攻めの後は布でゴシゴシと体をこする。

風呂場での攻めの後は、全身にくまなく熱風をかける。 その後に、乾燥した不味そうな塊を食わせる事にする。

そして俺はとてもじゃないが飲めない白い飲み物を買ってきて飲ませる。

もちろん、温めた後にわざと冷やしてぬるくなったものをだ。

その後はトリガーの先端に板状の刃が付いたきらきらした物体を左右に振り回してエレンの闘争本能を著しく刺激させ、体力を消耗させる。

ぐったりとしたエレンをダンボールの中にタオルをしいただけの質素な入れ物に放り込み寝るまで監視した後に就寝。

こうしてエレンを虐め上げてやろうと思う。


 だって、これしか思い浮かばなかったんだ\(^o^)/



 これのエレン視点を書くべきだろうか…?
 でも、そしたらエロまで書きそうだorz

 俺はノーマル俺はノーマル俺はノーマル俺h

エロはいらんでなんとかいけんか

なんだよこれ完全に優しい飼い主に拾われた猫じゃねえか



~~~ おまけのハンジさん編 ~~~



みかん箱「エレンさん拉致られちゃった…」

みかん箱「うなじ摘ままれて行っちゃった…」

みかん箱「あのチビの前に手も足も出なかった…」

みかん箱「箱だけに。なんつって」

みかん箱(……さむい……)


リコ「ごめんね~猫ちゃん! お待たせ~!」タッタッタ

ペトラ「エレ~ン! ご飯~!」トコトコトコ

みかん箱「おや、鉢合っちゃった」

リコ・ペトラ「「……………」」バチバチッ

リコ・ペトラ「「その手の中のものは…」

リコ「チーハンセット…と、水筒?」

ペトラ「猫まっしぐら…と、猫用ドレス?」


リコ「こんな所で何をしている?」ジトッ

ペトラ「そっちこそ、そんな物抱えて何してるの?」ギラッ

リコ・ペトラ「「これは、猫ちゃん・エレン に…っ!!」」

リコ・ペトラ「「余計なお世話…っ!!」」

リコ・ペトラ「「……………」」バチバチバチッ


リコ・ペトラ「「それより、猫ちゃん・エレン は、どこ…っ!!」」ガッ

リコ・ペトラ「「貴方には関係ないでしょ…っ!!」」ドン

リコ・ペトラ「「……………」」

リコ・ペトラ「「ふんっ!!」」プイッ

リコ「猫ちゃん! どこぉ~!?」

ペトラ「エレ~ン! 出ておいでー!?」


リコ・ペトラ「「ちょっと!! 邪魔しないでよ…っ!!」」

リコ・ペトラ「「そっちこそ、もう帰ったら!? …っ!!」」

ハンジ・みかん箱「「いやあ~綺麗なユニゾンだねぇ」」ニコニコ

ペトラ「分隊長!」

リコ「ハンジ?」


ハンジ・みかん箱「「二人とも一足遅かったねー」」ニッコリ

ハンジ・みかん箱「「エレンならリヴァイが拾って行ったよ」」

ハンジ・みかん箱((おや、私達も気が合うね))クスッ

リコ・ペトラ「「………(人類最強が相手…ダメだ敵う訳ない)」」

ペトラ「………(石化中)」フラァ

リコ「………(真っ白の灰)」ヨロヨロ


ハンジ「おや帰るのかい? じゃあ気を付けてお帰り~」ブンブン

ハンジ「あ~あ。すっかりしょげちゃって」オミオクリ

ハンジ「バックに凩背負って、心なしかフラついてるよ」ニャハハ

ハンジ「……さて……。私は…箱を回収に来たんだった…」

みかん箱「!」バコッ ガッ ヒューン

ハンジ「え?」パッ

みかん箱「あーれーーーた~す~け~て~~~!」

ハンジ「えええぇぇえ!?」ボーゼン


~ 所変わって訓練兵団宿舎内 ~



ハンジ「アルミンッ! いるかい!?」ドドドドド

アルミン「ハンジさん?」

ミカサ「何があったの? ハッ!まさかエレンに何か…!?」

ハンジ「いや、ハァ、エレン本人は無事だ。ハァハァ、今はリヴァイの家に居る。ハァ」


アルミン「では何が…」

ハンジ「箱が盗まれたっ!」フー

ミカサ「あ…」マッサオ

ハンジ「我々以外にも秘密に気付いた者が居るんだ!」

アルミカ「「!!」」

ハンジ「…場所を変えよう。付いて来てくれ」


   これでプロローグは終わりです。

   これからやっと本編に突入。


* 23日前 *


アルミン「それは季節外れの嵐が吹き荒れていた晩だった。

     雷鳴のせいで眠りが浅かった僕は、誰かが僕らの部屋に入って来たことに気付いた」


アルミン「…どう、したの……?」


アルミン「入って来たのはミカサだった。ミカサは静かに泣いていた。


     ミカサは僕の隣で寝ているエレンをちらりと見やると、彼の事を起こしてしまわないよう気遣いながらも、

     震える小さな声で、しかしはっきりと僕に告げた」


ミカサ「ごめんなさい、アルミン。…私……」

アルミン「何を謝ってるの?」


ミカサ「…わた………った…っ」






ミカサ「…私………ヱレンを殺せなかった…っ!」

ん?


* リヴァイによるエレン拉致から10日前 *



~  調査兵団・ハンジの私室兼研究室 ~



ハンジ「やあ皆揃ったね」ニッコニコ

アルミン「あの、分隊長…僕とミカサは当事者だから分かるとして…」

ミカサ「なぜマルコがここに居るの?」チャキッ

マルコ「お、落ち着いてミカサ。アルミンも」



マルコ「僕が此処に居る訳はとても一口では説明出来ないんだ」

ハンジ「うん。君達の相談を受けて色々調べていたら、偶然にもマルコとも話す機会があってね」

ミカサ(相談…? あれは事情聴取、俗に言う取り調べでは?)

アルミン(正確には相談じゃなくて尋問だったよね…)

マルコ(まるで世間話をしたかのように聞こえるけど、あれは拷問に近かったよ…)

ハンジ「で、事情を聴いてるうちに…ミカサとアルミンの抱えてる問題にすっっっごく関係があるって判ったんだ!」


ハンジ「それでね、我々がそれぞれ持っている情報を共有し、今起こっている事の全てを把握する必要があると思ったんだ!」

ハンジ「真相を探り当て、問題を解決するにはそれしかない!」

ハンジ「じゃあ…最初から詳しく話してもらおうか」

マルコ「ちょ、ちょっと待って下さい。その前に訊きたい事が!」


マルコ「…そこにいる……ヱレン? 君なのかい?」

ヱレン「そう。俺がヱレンだ」

マルコ「! 話せるのか!?」

マルコ「エレンと全く見分けが付かないじゃないか!?」

ハンジ「はいはい、彼自身の話は後」パンパン


ハンジ「今は時系列順に話を進めよう。ここは各自頭を整理する意味でもね」

ハンジ「では、ミカサ。何があったのか話してくれ」ドサッ

ハンジ「…今度は例の『箱』の件も含めてね」

ミカサ「………はい。

あれは、15日くらい前のこと。


訓練兵団の解散式を間近に控え、エレンと私は他の皆と一緒に身の回りの物を整理していた。

エレンが捨てようとしていた物の中には5年分の本や雑誌の切り抜き、古い広報紙などの束がかなりあった。

エレンは仲間にも愛されているのでプレゼントもよく貰っていた。そのパッケージや包み紙も小さいながら沢山あった。

それに小さくて着られなくなった服も混じっていた。バザーに出しても売れ残ったものや、下着類などがあったと思う。

エレンはそれらを惜し気もなくゴミに出したけど、私にはどうしてもゴミには見えなかった。どれも大切な思い出の品だった。ので、後でこっそり回収した。


けれど、その事がエレンにバレたら、また機嫌を損ねてしまう事は解っていた……。私は思い切ってそれらを一纏めに保存するためにリサイクルする事を思いついた。

紙を溶かし、服や下着類は亜麻や木綿製品ばかりだったので細かい繊維状にして、それらを丸ごと漉いた。

漉紙作業は井戸の側で行った。その時サシャとコニーも手伝ってくれた。

二人は山育ちで自給自足の生活に慣れていたので、紙を漉く手伝いもお手のものだった。あれはとても助かった」


ハンジ「その再生紙でみかん箱を作ったわけだね」

ミカサ「最初は、みかりん箱だった。…の筈だった。

乾燥させて出来上がった厚紙を折って箱にしていると、クリスタが来て…」

クリスタ『それ、ミカサが作ったの? 良く出来てるね』

ミカサ「と褒めてくれた。そして…」


クリスタ『今は寮中同じようなダンボールだらけだよ』

クリスタ『見分けつかなくなって困らないように、ミカサのだって判るようにしておいた方がいいよ』

ミカサ「…と忠告してくれたので、私は箱にエレンを描く事にした。

絵の具はジャンに借りた。どうしても使ってくれと言うので借りた。けれど、エレンの瞳の色に似た金色は無かった。

仕方なく黄色で塗ることにした。けれど、箱の地の色と混ざって、黄色はオレンジ色にしか見えなかった。…悲しかった。


通りかかったサシャも、エレンの大きな瞳のつもりで描いたそれを蜜柑と間違えて頭から突っ込んで来た。…悲しかった。

サシャを成敗した後も涙を堪えていると、ミーナが傍に来てくれた。私が理由を話すと慰めてくれて…」

ミーナ『ねぇ気を取り直して。そうだ、ここ、真ん中にみかりんの名前を書いておけば良いんじゃないかな』

ミーナ『そしたらさ、このミカン、じゃないや、ちょ待って落ち着いて! これがエレンの目を描いたんだとは誰にも気付かれないと思うよ』

ミカサ「…そう、言ってくれた。


私は、私の失敗を誤魔化せるならと思い、ミーナに同意した。ミーナが書いてくれると言うので任せた。

そしたら、ミーナは『みかりん』の『り』を書き忘れてしまった。みかりんはみかんになった。…悲しさを通り越して惨めだった」グスッ

ハンジ「そうか…それはかわいそうにね…」グスン

アルミン「………(この二人バイオリズムが似てる)」

マルコ「………(サシャはともかく…ミーナ何やってんの)」


ハンジ「それで、その箱をどうしたの?」

ミカサ「箱は一応の完成をみたので、寮に持ち帰る事にした。

今思えば、問題はこの時だった。

帰り道で、私は、エレンが裏山の方へ一人で歩いて行くのを見かけた。

勿論、私はエレンに気付かれないよう後をつけた。

エレンは山奥をどんどん進み、もう何年も前にうち棄てられたガス採掘場まで行き…そして、そこで…」


ハンジ「うんうん。続けて続けて」

ミカサ「エレンは泣き出した」

ハンジ「どうしてかな? わかるかい?」

ミカサ「思い当たる事はいろいろ。

まず、そんな所へ行った理由は、誰にも泣くところを見られたくなかったから。

エレンは、本人は決して認めたがらないけど、けっこう泣き虫。


泣いていた理由は、たぶん、お母さんのことを思い出して切なくなったか…

あるいは、ようやく自分の手で巨人を駆逐することが出来るようになるのだと感極まったか…

直前に解散式を目前に不用品の整理をしたりしていたから…

仲間との友情や月日の流れを思い返して胸を突かれたのかも…とにかくいろいろ。

いずれにせよ人が感慨深い何かを思い起こす時に流す美しい涙だった」


ハンジ「エレンのこと良く観てるんだねぇ。好きなのかい?」

ミカサ「…そんな…家族です///」

アルミン「…(ハイお約束のセリフ入りましたー)」

マルコ「…(ヱレンも居るのに。いいのかなー?こんな話…)」

ハンジ「で? それからどうなったの?」


ミカサ「エレンはきっと泣いているところを見られたくない。ので、私がそこへ出て行くのは憚られる。

結局どう振る舞えばいいのか分からず、私はしばらくその場に立ちつくしていた。

でも……気が付くと、私はエレンの涙が落ちて染み込んでいる場所に座り込んでいた」



ミカサ「泣かないでエレン」ナデナデ


ミカサ「独りで泣かないでエレン」サワサワ

ミカサ「こんなところで独りになんかならないで」ペタペタ

ミカサ「もっと私に話して欲しい」コネコネ

ミカサ「もっと私に頼って欲しい」グッチョグッチョ

ミカサ「私はいつもエレンの傍に…」パンパン パンパン



ヱレン「ミカサ………」



ミカサ「! エレン!?」





ミカサ「………///」

マルコ「はあ? 要するに…え!?」

ハンジ「うん!どうもそういうことらしいんだ!


エレンへの愛が滾り過ぎちゃったミカサがエレンの涙に含まれるっと何て言ったっけ?エレンニウム?が混じった粘土を捏ね繰り回していたらいつの間にかエレンそっくりの等身大の全身像を造り出しちゃってた挙句なぜだかエレンに瓜二つのその像がピュグマリオンの造ったガラテアよろしく目の前で動き出しちゃったよもうビックリでもエレンへの愛情が昂ぶった結果出来ちゃったヱレンなんだしエレンのヱレンだしヱレンはエレンの一部だしまっいっかーテヘペロ、ってワケだね」フーッフーッ


ミカサ「……///」コクッ


アルミン「すごいなーハンジさん一息であんなに喋れるなんてー(棒)」

マルコ「え?そこ!?感心するのソコなのアルミン!?」



ハンジ「で、ヱレンを寮に連れ帰ってしまったんだったね」

ミカサ「はい…」


ミカサ「幸いにも…寮に着くまでの間も、寮に入ってからも、誰にも見つかる事はなかった」

アルミン「エレンにも皆にもヱレンの存在を悟られないよう…僕にさえ3日間も隠してたんだからねぇ……」

ハンジ「女子寮に連れ込むなんて、やるねえミカサ」ニヤニヤ

ミカサ「で、でも、私室には入れてない///」

ミカサ「女子寮の階段下の物置に空きがあった。ので、みかん箱を入れ、ヱレンにはその中に隠れていてもらった」

マルコ「ふぅん…階段の…うん?」


マルコ「あ あ あ あ あ!!」ガバッ

アルミン「び、びっくりしたじゃないか。どうしたのさ?」

マルコ「それッ、そ、それッ! 見られてる!」アタフタ

ミカサ「そんなはずない。あの時、女子寮の中には人の気配など無かった」

アルミン「うん、そんな気配があればミカサが野良猫よりも早く察知しているだろう…」ウーン


アルミン「マルコ、確かなのかい?」

マルコ「いや違うんだ! そうじゃなくて!」ジタバタ

マルコ「寮でじゃないんだ! ガス鉱跡でだよ!!」

マルコ「ミカサがヱレンを精製したところをハンナに!見られてたんだよッ!!」


アルミン「そんな。だって、おかしいじゃないか。もし見られていたなら、今日まで噂になってないのは何故なんだ?」

ミカサ「アルミンの言う通り。見られていたとしたら大騒ぎになっているはず」

ハンジ「お待ちよ、アルミン、ミカサ」

ハンジ「マルコの話を最後まで聞いてから判断しよう」


ハンジ「マルコ、あの噂話、もういっぺん最初から話してくれない?」

マルコ「はい。…これは噂話というより、途中から聞こえてきた話で…」

マルコ「本筋の後半はミーナからの又聞きになるんだけど」

マルコ「ミーナとハンナが食堂で揉めていた時、ちょうど僕が通りかかって…」


   *   *   *

ハンナ「本当なんだってばっ!」

ハンナ「私、フランツとのデートの場所を探してて」

ハンナ「ガス鉱跡の事務所の2階に居た時、偶然窓から下を見たら、そこにミカサが居たの」

ハンナ「何してるんだろうなーって思ったからジッと見てたら…」


ハンナ「ミカサが地面に手を置いたと思った次の瞬間、みるみる地面がせり上がって来て、盛り上がった土の塊の中からエレンが出て来たのよっ!」

ミーナ「ちょっとぉ! 話を盛り過ぎでしょー」

ハンナ「盛ってないって! ちゃんと聞いてよ!」

ハンナ「でね、私が驚いて固まってたら、二人はそこで抱き合って…」

ミーナ「……それハンナの見間違いよ…」ムスッ


ハンナ「私これでも視力は良いのよ。絶対、見間違いじゃないって!」

ハンナ「しかもね、その後二人は何も無かったみたいに仲良く腕組んで帰っちゃったのよ」

ミーナ「そんなこと…あるわけないよー」

ハンナ「確かに見たんだって!」

ミーナ「面白(くな)い話だけど、そういうのは皆で百物語でもやる時にした方がいいよ」



ハンナ「怪談噺をしてるんじゃないってば!」

ミーナ「はいはい夢でも見たんでしょ」

ハンナ「ミーナまで。フランツと同じだ、私が夢を見てたって言うんだ…」フルフル

ハンナ「わかった! もういいっ!」バッ タッタッタッ バン



マルコ「めずらしいなぁ二人が喧嘩なんて」


ミーナ「あらマルコ。さっきのは…何でもないよ」

マルコ「そうか? ハンナのやつ相当怒ってたみたいだけど」

ミーナ「あはは。季節外れの怪談噺を聞かされてただけだよ」

マルコ「怪談?」

ミーナ「何でも…ミカサが廃坑になったガス掘削施設の辺りでエレンを土から掘り起こした、とかどうとかって話をね…」


マルコ「何だそれ。まるでゾンビ映画みたいだな」

ミーナ「映画…そうね、ただの作り話なら怖がってみせても良かったんだけど…」

ミーナ「話の主人公がエレンとミカサってところがさあ…」ハァ

マルコ「ああ、それで君の機嫌も悪いんだ」ニヤニヤ

ミーナ「ち、違うわよっ!///」プイッ


ミーナ「ただでさえ死に急ぎ野郎なんて仇名つけられて気の毒なのに」スクッ

ミーナ「お噺の中でったって…何も死なせなくてもいいじゃないの!悪ふざけが過ぎるのよハンナのバカあああ!色ボケがあ!リア充爆発しろ!うわああああん!!」ダダダッ

   *   *   *

マルコ「って事があって」


アルミン「そうか…」

ミカサ「…ねぇアルミン、リア銃ってどんな武器? 私、聞いたことない。爆発の威力は?」

アルミン「うんミカサそれはね、とにかく凄い武器なんだ。殊に対・毒男喪女には圧倒的威力を発揮し生存率0パーセント、時には倦怠期に入った気団鬼女すら精神崩壊を齎しかねない…」

マルコ「おーいアルミーン気持ちは分かるが戻って来ーい」


ハンジ「ふーむ。見たのはハンナだけかな?」

マルコ「見たと言っていたのはハンナだけですね」

マルコ「ハンナはフランツとミーナに話しただけのようです。二人に話しても相手にされなかったので他に話す気も失せたようでした」

ハンジ「ソレわざわざ確認したの? 下手に突くと返って思い出したりしないかな?」

マルコ「そこは慎重に探りを入れてみました」


マルコ「というか、数日後には当の本人が覚えてなくて」

マルコ「ガス鉱跡に行った事自体もデート場所を探して行った事がある、程度の記憶しかないようでした」

マルコ「ですから、今のところハンナとフランツは無関係だと思います」

ハンジ「アルミン、どう思う?」

アルミン「冷静沈着なマルコが判断した事ですから信用できると思います」


ハンジ「ミカサは?」

ミカサ「マルコの判断なら私も同意する。アルミンの判断も」

ハンジ「ヱレン?」

ヱレン「マルコの効率的な考えとか、よく気が回る所とか…俺は知ってる。だから信頼してる」

マルコ「!」バッ


ヱレン「俺には…エレンと同じ記憶が…あるから…」

マルコ「あ、あり、がとう…///」

マルコ「何だか…不思議な気分だね」

マルコ「ヱレンは…怒らずに聞いてほしいんだけど…ヱレンって…エレンより柔らかい感じがする」

マルコ「どうしてかってずっと考えてたんだけど…ヱレンが微笑みを絶やさないからなんだ」


マルコ「最初に会った時は、まるで見分けが付かなかったけど…今なら二人が並んでても判ると思う」

ヱレン「さすがだなマルコ。ハンジさん、こいつのこういうところが信頼する因(よすが)なんです」

ハンジ「なるほど。(同期の贔屓目ってわけじゃないんだね)わかった」

ハンジ「それじゃあ、そのミーナって子はどうなんだい? マルコの他に、誰かに話さなかったかな?」

マルコ「うーん…いやそれは無いと思います」


マルコ「あと、ミーナと同じ4班の皆も…おそらく無関係でしょう」

アルミン「僕も4班の一人ですけど、彼らがそれらしき言動を見せた事は一度もありません」

ハンジ「そうか…」

マルコ「あのぅ…ハンジさん…」チノケ サーッ

マルコ「…どうしましょう…また一つ…問題が……」


マルコ「話しながら気付いたんだけど……」

アルミン(うっ、イヤな予感が…)ゾゾゾッ

ミカサ(アルミン?)

マルコ「あの後、ミーナが出て行った扉の所でクリスタとすれ違いになってたんだけど…」

マルコ「その時、クリスタと目が合ったっていうか…直ぐに向こうが目を逸らして…」


マルコ「何か不自然な態度だったような気が」

マルコ「クリスタがいつから其処に居たのか判らないし」

マルコ「ひょっとしたら話を途中から…もしかしたら、だけど…全部聞いていたのかも…」



ハンジ「はあッ!?」


ヱレン「……………」

アルミン「……(ああ~予感的中)」

ミカサ「…では、ヲイナーの製作者はクリスタなの?」

ヱレン「ミカサ……ヲイナーって?」キョトン

ハンジ「うん! ヲイナーっていうのはね! 昨日新たに現れたドッペルゲンゲルさっ!!」


ヱレン「!!」

ハンジ「でも悪いけど…ヱレン、その話はまだ後だ」

ハンジ「その前に、マルコに事態を把握して貰うために、アルミンの話を聞かなきゃ!」

アルミン「………そうですね…」ドヨーン

ミカサ「……………」ドヨーン

マルコ(あ、あれ…? 二人がいっきに暗い顔に?)


    今日はここまで。誰も見てないだろうけど。。。

    夏休みは稼ぎ時なので(円盤買うため)、更新は亀になるかと…

いや見てるよ乙


乙!


》151、 》152、 》153 ありがとうございます!

   こんな駄文を読んで戴いた方々により多くの幸福が配分されますように!


アルミン「あれは…今から約2週間前、嵐が来た夜…」

アルミン「僕の部屋にミカサがやって来て……」

   *   *   *

アルミン「どうしたの?」

ミカサ「ア、アルミン…ぐすっ…どうしよう…すんっ」

アルミン「落ち着いてミカサ。何があったのさ?」


ミカサ「わた、私は…エレン…エレンのために……」

アルミン「エレンがどうかしたの? (エレンは…隣のベッドでグッスリだよね?)」チラッ

ミカサ「エレンのために…ぐすっ…違う…私自身の弱さから目を背けるために……」

ミカサ「…レンを殺そうとしたけど…ぐすん…できなかっ…うっうっ…」ズビ

アルミン「は!?」


アルミン「殺すって……ああそういう夢を見たとか?」

ミカサ「違う。夢の話ではない。ぐすん」

ミカサ「夢ならよかった。夢ではないから困る」ハナチーン

アルミン「夢じゃないって…じゃあ何なの?」

ミカサ「アルミン、一緒に来て欲しい。このままではヱレンが死んでしまう」グイグイ


アルミン「ミ、ミカサ!? 何言ってるのさ!?」ズルズル

ミカサ「しっ!静かにして。すぐそこだから」グイグイグイ

アルミン「だから! 何言ってるか分かんないよっ!ちゃんと説明してよ!」ズルズルズズー

ミカサ「声が大きい。皆が起きてしまう。静かに」ズンズン

アルミン「ねぇ、エレンならさっき僕の隣で寝てただろ? ミカサも見たよね!?」ズルズルガッコンズリズリ

ミカサ「エレンは寝ている。ヱレンは怪我をしている」ズンズンズン


アルミン「待って待ってミカサ、ここ女子寮だろ!?」ズルズル

ミカサ「緊急事態だし、アルミンならば問題ない」グイグイ

アルミン「いや、問題だr…!!」ズリズリ ポイッ

ミカサ「アルミン、紹介する。これがヱレン」バン

ヱレン「おう。って挨拶すんのも何か変だけど。やあアルミン」ニコ




アルミン「………みかん箱にエレン…?」

アルミン「えっと、ミカサ? …エレンは無事みたいだけど?」

ミカサ「…さっきまで確かに血が…」

アルミン「やっぱり寝惚けてたんじゃないか」ハァ


ミカサ「ヱレン、私が付けた傷は!?」

ヱレン「あぁ…もう治った…」ケロリ

ミカサ「本当に?」ガバッ

ミカサ「治ってる…」

アルミン「ん? 何この違和感…」


アルミン「エレン、服の…首のとこ、その染み…?」ゾワ

ヱレン「あ、これ。気にすんなアルミン」

ミカサ「アルミン、問題は解決した。手間を取らせて悪かった。もう寝て」

アルミン「あれだけ大騒ぎしておいて、それ!?」

ヱレン「ごめんな?アルミン。もう大丈夫だから部屋に戻って休めよ」

アルミン「ああ…え? エレンは?」


アルミン「…っていうか、エレンはいつ此処に来たの? さっきまで部屋で寝てたよね?」

ヱレン「俺はずっと此処に…いや何でもない」

アルミン「よく見ると何箇所か傷痕が無い…違和感はこれか……」ジーッ

アルミン「………」

アルミン「……………」グラッ

アルミン「…………………………」クラクラクラクラッ


ヱレン「アルミン?」

アルミン「ねぇ……エレンって双子だったっけ?」

ヱレン「いや?」

アルミン「実は生き別れの兄弟が居たとか?」

ヱレン「そんな話聞いた記憶はねぇな」


アルミン「エレンは知らなかっただけで、そっくりな親戚が見つかったとか?」

ヱレン「いいや? そんな事実はねぇぞ?」

ミカサ「エレンの家族は私だけ。忘れたの?アルミン」

アルミン「ひょっとして、エレン本人?」

ミカサ「アルミン、さっき自分でエレンは部屋で寝ていると言ったでしょ?」


アルミン「だよね。……じゃあ、誰かがエレンに化けてるとしか…」

ヱレン「そんな奴がいたら俺も見てみたいな」クスッ

アルミン「それとも本当に……エレンって実は幽体離脱とか出来る?」

ヱレン「ぷっ。何だよそれ。あははは!」カタポンポン

アルミン「実体が…ある…」アタマグルグル


アルミン「わかったっ! エレンは瞬間移動術を覚えたんだ! そうだろ!? そうだと言ってくれ!!」ガバチョ

ヱレン「ちょっアルミン! そんなに強く引っ張ったら服が破けちゃうだろうが!!」

アルミン「!!」コエニナラナイヒメイ

アルミン「なななな何てことだ! どっからどう見てもエレン本人だ…なのにエレンじゃない…」ガクガクガク

アルミン「一体どうなって…!?」ブルブル


ミカサ「アルミン。信じられないだろうけど…よく聞いて」

ミカサ「これはエレンじゃない。ヱレン。私が造り出してしまったもの」

  * 数時間後・・・

アルミン「まだ信じられないけど…でもこの目で確認したんだ。ありのまま受け入れるよ…」ハァ…

ミカサ「ありがとうアルミン」ホッ

ヱレン「さすがアルミン、頭柔軟だなあ」ニコニコ



アルミン「…微笑ってるけど、ヱ、ヱレン?」

ヱレン「ん?」

アルミン「ミカサに聞いたところだと、君は…そのぅ…」

ヱレン「うん?」ニコッ

アルミン「!! き、君は、その…っ、ミ、ミカサに殺されかけたんじゃないの!?」ズバッ


ミカサ「………」ズーン

ヱレン「ああそれ。殺されかけたってぇほどのことはされてねえよ」ニコニコ

アルミン「そうなの!? それにしてはミカサの動揺っぷりがハンパなかったんだけど」

ミカサ「いいえ、私は本当に殺しかけた。ヱレンの喉に刃を押し当てた」

ミカサ「手が震えて…確かに刃が喰い込んだ。実際に血も流れた…」ドヨーン


ミカサ「血を見た瞬間、我に返った。私は慌てた」

ミカサ「ヱレンの傷口を確認して重症だと思った。だからアルミンを呼んだ」

ミカサ「なのに傷はもう塞がっていた。血の跡も最初見た時より少ない…」

ミカサ「…どういうことなのか、さっぱり解らない…」

ヱレン「ミカサ、そんなに気にすることはねぇぞ?」


アルミン「そ、そうだよミカサ。結局、大事には至らなかった訳だし」

ヱレン「今度はし損じないように頼むぜ」

アルミン「そうそう今度は…っはああ!?」

アルミン「ヱレン! のほほんと構えておきながら何サラッと物騒な事ほざいてんの!?」カッ

ヱレン「あれ? 2人で俺に引導を渡してくれるんじゃないのか?」


ミカサ「!」

アルミン「なッ!? 何バカなこと言ってるのさ!? もうっ!怒るよ!?」

アルミン「これじゃ死に急ぎ野郎じゃなくて死にたがり野郎じゃないかっ!!」

ヱレン「おーおっかねぇな。ハハハ」ケラケラ

アルミン「冗談なら冗談に聞こえるようなものにしてよ!」


ヱレン「冗談を言ったつもりはないけどな」

アルミン「まだ言って!」

ヱレン「でもよう?アルミン…俺はここに存在してていいのか?」

アルミン「………は?」

ヱレン「俺が存在すんのは『間違い』だろ?」



ヱレン「そりゃあ俺だって出来れば死ぬ前に一匹残らず巨人を駆逐したい」

ヱレン「そして外の世界を見てみたい…」

ヱレン「俺の気持ちは…俺の心も体もエレンと同じだ。何もかも」

ヱレン「でもなあ…だからこそ…考えちまうんだ」

ヱレン「俺、考えるの苦手だけど、俺なりの考えは持ってる」


ヱレン「その考えによるとだなあ…俺はこの世界のもんじゃない。だからこの世界に居ちゃいけないんだ」

アルミン「! 違ッ」

ヱレン「違わないさ、アルミン」

ヱレン「こうして俺が存在することで、ミカサがこんなに苦しんでいる」

ミカサ「!」


ヱレン「アルミンだって…現に今、困ってるだろ?」

ヱレン「それは俺が不自然な存在だからだ。エレンという唯一無二の魂を穢してる存在なんだ」

ヱレン「だから…」

アルミン「っ! 違う違う違うッ!! それは違うッ! 違うよヱレン!!」

ミカサ「違う! ヱレン! 聞いて!」


ミカサ「確かに私は貴方を殺そうとした。実際、刃で傷も付けた。でも、殺したかったわけじゃない!」

ミカサ「私は混乱してただけ!」

ミカサ「私を突き放すエレンと笑いかけてくれるヱレン…」

ミカサ「2人の差に混乱して…!」

ミカサ「ヱレンが…本当は私の見ている都合のいい夢なんじゃないかって……」ウルッ


ミカサ「これは夢だから…」

ミカサ「私は、この残酷な世界に向き合う事から逃げているだけではないのかと思うようになった」ウルウル

ミカサ「でも、それは…美しいものだけを見て腐っていくのと同じ…」

ミカサ「夢なら醒めてしまう。醒めてしまった後で傷つくよりも…自分の手で決着を付けようとした」ポロッ

ミカサ「でもそれは根底から間違いだった」ポロポロポロッ



ミカサ「何のことはない。私はまだ混乱していた。それだけ」

ミカサ「でも今は違う。さっきまでとは違う! だからっ!」サメザメ

ヱレン「泣くなよミカサ。お前、思い違いしてるぞ?」ナデナデ

ミカサ「?」

ヱレン「俺、いや、エレンはなあ、別にお前を突き放した事なんかねえよ」


ヱレン「あれでもエレンはお前のこと、ずっと追い駆けてるんだぜ」

ヱレン「ミカサと対等の位置に立って、同じ世界を見ようとしてるんだ」

ヱレン「喩えるなら、同じ高さに伸びようとしてる若枝が先に伸びてた隣の梢を避けようとしてるだけさ」

ヱレン「それは突き放してるとは言わないだろ?」

ヱレン「エレンはミカサにも、アルミンにも、今は見守っていて欲しいと思ってるだけだ」


ヱレン「絶対に嫌いだとか鬱陶しいとか思ってねえからな!」

ヱレン「同じ思考の俺が言うんだ。間違いねえ」

ヱレン「怒ってるように見えるのは、ありゃ照れ隠しだし」テレッ

ヱレン「家族なんだしよ!」

ミカサ「エレン…ヱレン…!」パァ


アルミン(……どうしよう…ヱレンの方が大人だ)

アルミン(エレンがヱレンくらい大人な対応をしてくれていればミカサが混乱することもなかっただろうに)

アルミン(とにかく今は二人の罪悪感をどうにか払拭しないと…)

アルミン「コホン。…正直、ヱレンの指摘した通り、僕は困ってた」

アルミン「でもそれはヱレンをどうにかしようと思っての事じゃない」


アルミン「そもそもヱレンを殺すなんて端っから出来るわけない」

アルミン「僕とミカサはエレンの友達で家族だ」

アルミン「でもそれは、ヱレン、君に対しても同じだ」

アルミン「念のために言っておくけど、ヱレンとエレンを同一視してるわけじゃないよ」

アルミン「ヱレンをエレンと同じだと認めた上で、ヱレンとしてエレンとは別に付き合うって言ってるんだ」


ミカサ「ヱレン、私も! エレンとヱレンと私、3人で家族!」

ヱレン「ぁ」



アルミン「それとね…」

アルミン「ヱレンは殺して欲しいって言ったけど、それはヱレン自身に生きているって自覚があるからだよね」


アルミン「死とはね、ヱレン…生きている者にしか認識できないんだよ」



アルミン「だから、ヱレン! 僕は君の生きる道を探そうと思う!!」

アルミン「その為の苦労なら厭わない!」



ヱレン「アルミン…」

ミカサ「ヱレン、生きて」

ミカサ「皆でヱレンが生きる道を見つけよう。ヱレン、それでいい?」



ヱレン「ああ……あぁ、そうだな」


ミカサ「でも具体的にはどうすればいい?」

アルミン「うん、まずは今迄にヱレンのようなケースがなかったか調べてみよう」

アルミン「兵団の資料庫を漁ってみるよ」

ミカサ「私も手伝う」

アルミン「いや。ミカサはヱレンの保護に努めて。周囲に気を配り続けるのは骨だけどね」

ミカサ「わかった。それくらいのことは造作もない」


アルミン「それと、当分エレンには気付かれないようにしよう」

アルミン「2人が遭っちゃったら、どうなるか…」

アルミン「引き逢わせるにしたって、ある程度調査を進めておいてからじゃないと」」

アルミン「他にも問題は山積みだけど、なるべくならこれ以上のハプニングは回避したい」

アルミン(……まぁ、無理そうだけど、それは言わないでおこう…うん)


ヱレン「俺は?」

アルミン「そうだな…ヱレンの身体能力が知りたいところだけど…」

アルミン「エレンとどこまで同じなのかデータを採る必要がある。でも誰かに見つかるリスクは犯せない」

ヱレン「それじゃ俺はその方法をゆっくり考えてみるってことで」

ヱレン「時間はあるしな」ニコッ


アルミン「うん。頼んだよ(やっぱりヱレンの方が愛想がいいなあ)」

ミカサ「空が白み始めた。急かして悪いけど、誰かが起きてくる前に部屋に戻ろう」

アルミン「そうだね。いったん解散しよう」

   *   *   *

アルミン「という訳で、僕はその日から時間を見つけては資料庫を調べてた」


     ちょっと休憩代りに小噺入れます。

     進撃deコピペ改変です。


ユミル「おーい、おまいら、夕食できますた。www食堂に集合汁wwww」

クリスタ「詳細キボンヌ」

ミーナ「今日はカレーですが何か?」

サシャ「カレーきたー」

コニー「キター」

ジャン「カレーごときで、騒ぐ奴は逝ってよし」

ミカサ「オマエモナー」

アルミン「糸冬了」


エレン「再会」

ジャン「再会すんなDQNが!それより、肉うpキボンヌ」

ベルトルト「ジャガイモうp」

アニ「↑誤爆?w」

ライナー「たまに(ね)ぎage」

クリスタ「ほらよ肉>104期生」

サシャ「神降臨」

ライナー「たまねぎage」


マルコ「糞たまねぎageんな!sageろ」

ライナー「たまげぎage」

アルミン「たまねぎage厨UZeeeeeeeeeeeeeeeee!!」

ベルトルト「ageって言ってあがると思ってるヤシはDQN」

キース教官「痛い104期生がいるのはこの食堂ですか?」

エレン「氏ね」

ミカサ「むしろ生きro」

ライナー「たまねぎage」

ベルトルト「ライナー、必 死 だ な(藁


     節子それ改変ちゃう。名前変えただけや。(AA略

     誠にあいすみませんorz

     でも、こんな日常ならよかったのにな…


   少し時間が出来たので投下します。

   最初にお願いするべきでしたが、誤字・脱字などがありましたら御指摘願います。


マルコ「た、大変だったね…」

アルミン「まぁね…」

ハンジ「アルミン! 続き!続き!」

アルミン「…資料庫には思うような収穫はなく、3日4日と無駄に時間は流れていった…」

アルミン「図書館で昔の文献を探してみたりもしたんだけど、それもハズレだった」


アルミン「打つ手がなくなった僕達は、また3人で集まって知恵を絞ってみたんだ」

アルミン「そしたら、ヱレンが資料庫にない手掛かりを探す方法を思い付いてくれた」

ヱレン「手掛かりっていうほどのもんじゃないけどな」

ヱレン「資料庫にないって事は報告が上がってないって事じゃないかって考えたんだ」

ヱレン「つまり、市井で情報が止まってるって事だ」



ヱレン「こんな異常な事が、もし自分の身に起こったら…マルコならどうする?」

マルコ「それは…一人で背負い込むのは無理だろうし…」

ヱレン「そう、迷うだろうし、脅えて悩みもするだろうけど…」

ヱレン「結局、誰かに相談するしかないだろ?」

ヱレン「ではその誰かとは? 司祭かもしれない。医者かもしれない」



ヱレン「少なくとも、秘密を打ち明けられても他言しないと確信出来る人物の筈だ」

ヱレン「もしかしたら、思い切って医者に見せたかもしれない」

ヱレン「司祭が告解で聞いた事は決して書類にはならないが…医者ならカルテを書くだろ」

マルコ「ああ…なる…」

ヱレン「俺の…エレンの父親は医者なんだ。それで思い付いた」


マルコ「でも、医者の家を一軒一軒捜し回るのは骨だろう?」

ヱレン「それなんだが」

ヱレン「15年以上前、シガンシナ区で原因不明の病が流行った後、治療法の研究の為に<治療が済んで1年を過ぎたカルテ>を医師会で保存する事になったのは知ってるか?」

マルコ「いや、知らなかった」

ハンジ「その研究は今も継続されてるよ!」


ハンジ「現在、医師会では病気の解明と治療法の開発を効率良く纏めるため、巷医・典医の別を問わず籍を置くよう強制されている」

ハンジ「だからこの辺りのカルテならトロスト区医師会会館にほぼ全部集められている」

ヱレン「後は、中央の学会が全国の写しを持っていると言われてる」

ハンジ「うん。中央学会は王様のための機関だからね」

マルコ「……(王様……)」


ハンジ「5年前の巨人の襲撃の後も流行病が蔓延したが…」

ハンジ「我々調査兵団もそこまでは手が回らない」

ハンジ「やはり専門家である医師会に任せる方が手っ取り早いって事もあってね」

ハンジ「何せ設備の規模からして違うし…」フゥ

ハンジ「医師会には多額の予算と後援会からの寄付で潤沢な資金があるからねぇ」


ハンジ「資金不足の我々には羨ましい限りだよ…」

ハンジ「でもまあ学会とは違って、医師会の人たちは話が分かる人もいるんで助かってる」

マルコ「そうなんですか…」

アルミン「また話が逸れちゃいましたよ、ハンジさん」

ハンジ「おっと。ごめんごめん」


ハンジ「私が言いたかったのは…」

ハンジ「流行病が終息すると、何故か…奇病・難病の発生率が高まるって事なんだ」

ハンジ「そういう意味でもヱレンの所見は正しいと思うね!」

マルコ「へぇ。すごいんだな」

ヱレン「いや、そんなことは…。それより話を」


アルミン「うん。兎も角、ヱレンの発案で医師会会館を当たろうって事になって」

ミカサ「アルミンと私とで会館に忍び込んだ」

ヱレン「俺は一応、そ れ 犯 罪 だ か ら な、って警告はしたぞ」ハァ

マルコ「は、は…」タジ

マルコ「まさか捕まりそうになった、とか…」


アルミン「捕まったよ。あっさり、ね…」ガクッ

ミカサ「私ひとりだったら突破出来た」ムスッ

ハンジ「運が良い事に、私がその場に居合わせてね!」ニマ

アルミン「いえアナタに捕まったんですけどー(棒)」

ミカサ「まさか上から檻が落ちてくるとは思わなかった…」フルフル


マルコ「お、檻…」アゼン

ハンジ「その晩、医師会から巨人の吐瀉物の成分結果が出たって連絡貰ってー」

ハンジ「行ってみるとこれが案外待たされちゃってー」

ハンジ「守衛さんと世間話してたら最近ネズミがよく出るって話になってー」

ハンジ「時間潰しに巨人用の防護柵をネズミ捕り用に改造してたらー」


ハンジ「たまたま捕れたのが人間2人だったってだけさ!」

マルコ「ネズミ捕…プッ」クスクスクス

アルミン「うぅ…」ジワ

ミカサ「……」ジト

マルコ「それで、ハンジさんに事情を打ち明けて、協力してもらう事に?」


アルミン「不法侵入の理由を白状しないと『擽刑』にすると脅されたからね…」ズーン

ミカサ「私は拷問には耐えた!」アセアセ

ミカサ「でも保護者を呼ぶと言われてエレンにバレると思った。仕方ないので全部話した」ドヨーン

ハンジ「でも結果的には私に見つかって君達は幸運だったよ!」

ハンジ「タイミング的には、巨人の謎に関わる書類を奪いに来た細作かと疑われてもしょうがない」


ハンジ「こと巨人の正体に関わる件では、どうしても皆ピリピリしちゃうからね!」

ハンジ「解析結果を受け取りに行ったのが私でなくリヴァイあたりだったら…」

ハンジ「君達は否応なく裁判に掛けられていたよ」

ハンジ「脅すつもりはないけど、そうなっていた可能性は高い!!」フーッ


ヱレン「はい、本当に運が良かったです」ニッコリ

マルコ「……」

アルミン・ミカサ「………」グッタリ

マルコ(アルミン…この人、いつもこんなにテンション高いのかい?)ヒソヒソ

アルミン(まぁね。だいたいこんな感じかな)ヒソヒソ


ハンジ「それなのに! こんな危険を冒してまで真相を究明しようという、その熱意に感動したよ!」

ハンジ「だから、どうしてもヱレンに逢いたくてねッ!!」

ヱレン「直後、奇行種の襲来に遭いました」

ハンジ「あはは! ヱレンはお茶目だなあ! 可愛い可愛い」グリグリ



 * 訓練兵団 女子寮・空き部屋



アルミン「…というワケで、ごめんヱレン」シュン

ミカサ「ごめんなさい…」ショボーン


ハンジ「つまり…今、私の目の前に座ってるこの子は、エレンではなくてヱレン……」

アルミン「俄かには信じられないでしょうが、そういうことになります」



ハンジ「うぉおおお!! うぉおおおぉ!!」バババッ

アルミン・ミカサ「「!?」」ビクウッ

ヱレン「?」


ハンジ「ヱレぇン!! その体触っていいぃぃぃ!?」ドン

ハンジ「ねぇ!? いいよねぇ!? いいんでしょ!? 触るだけだから!!」

ヱレン「ハ…ハンジさん!? ちょっと待って」タジッ

ハンジ「うおおおおお」ススススス

ハンジ「つッ…めた!!」バッ



ハンジ「厚手のラテグロ(医療用手袋)の上からでもクッッソ冷たいっぜ!!」バンザーイ

ハンジ「これ!! すッッげえ冷たいッ!!」ピョンピョン

アルミン「分隊長…テンション高ひ……」イテテテ

ハンジ「ねぇ!?」ギュルン

ハンジ「ヱレンは感じないの!?」マジッ


ヱレン「!」

ハンジ「その体の中どうなってんの!? すごい見たい!!」ズイッ

ミカサ・アルミン・ヱレン「「「やめてください!!!」」」

   * スッタモンダ スッタモンダ …しばらくお待ちください。

ヱレン「ふぅ…正直このまま解剖されるんじゃないかと思いました」ニコ


ハンジ「しないしない! ハハッ! 興味はあるけど」

アルミン・ミカサ「「!!」」ガタッ

ハンジ「死んでしまったら困るからね」ニマニマ

アルミン・ミカサ「「………」」ストン

ハンジ「でも明日からの実験にはヱレンにも協力してもらいたい」キラーン


ヱレン「実験…ですか? オレが何を…?」

ハンジ「それはもう…最高に滾るヤツをだよ」フー フー

アルミン・ミカサ「「!!」」ガタタッ

ヱレン「?」キョトン



   *   *   *



ハンジ「それが今から1週間前さ」

ハンジ「実験の為、夜になってからヱレンの身柄を私のラボに移して…」

ハンジ「翌日はアルミンが欲しがっていたデータ…ヱレンの身体能力値を測定した」


ハンジ「ああ! もちろん秘密裡に行うために訓練施設まるごと貸し切って事前に人払いもしたし!」

ハンジ「団長には不審に思われないよう偽の報告書も作った」フフフ

ハンジ「ついでにヱレンの体液、表層細胞、及び遺伝子情報も採取させてもらった」ジュルッ

ハンジ「これは秘密だけどねっ!!」ムハー

ミカサ「!!」ガタッ


ヱレン「自分でバラしちゃってますよ? ハンジさん」ハハハ

アルミン「興奮の余り、秘密にしようとしてた相手の前で言っちゃったね……」ヤレヤレ

マルコ「ははは(乾いた笑い)」

ハンジ「能力値を比較した結果、ともに全くの同一物であると判った」

ハンジ「唯一の違い! それは、記憶だったッ!」


アルミン(もう周りが見えてないよ、この人)ハァ…

ミカサ(いつか私がしかるべき報いを…)ギリッ

マルコ(なんだろ…いつも振り回されてるアルミンの気持ちが分かるよ…)ハァ…

ハンジ「総てが同じだと思われたのに、エレンとヱレンとでは15日前からの記憶が合致しなかった!」

ハンジ「これは当然でもある!」


ハンジ「2人は遺伝子レヴェルの双子であり、ヱレンはエレンの能力の全てを転写したような存在だったが…」

ハンジ「15日前を境に取り巻く環境が変わってしまい、今では思考にかなりの差異が生じている」

ハンジ「まるで“生年月日の異なる一卵性双生児”みたいな“有り得ない”存在!」ゴゴゴゴォ

ハンジ「これって、すっっっごい面白いと思わないか!?」ワクワクテカテカ

マルコ「は、はぁ……」


アルミン「………」グッタリ

ミカサ「………」モゾモゾ

ヱレン「だからってもう1人作ろうって発想がもう……」ボソッ



マルコ「はいぃぃい!?」


ハンジ「そうなんだ! いろいろ試行錯誤してみた!!」

マルコ「ど、どうなったんですか…?」ビクビク

ハンジ「うん。複合型可塑体は脆くてね…」

マルコ「すいません、何を言ってるのかわかりません」

ハンジ「ああ、ごめん。最初から説明しよう」


ハンジ「ヱレンの体は純粋な粘土(プレーンクレイ)で作成されてる」

ハンジ「これを便宜上、単純型可塑体と呼ぶ」

ハンジ「それ以外、例えば粘土以外の物質が多く含まれている素材がある」

ハンジ「そっちは複合型可塑体と呼んでる」

ハンジ「さて。ここで基本的な質問だが」


ハンジ「マルコ、粘土って何かな?」

マルコ「は? 粘土ですか? 粘土は粘土なんじゃないんですか?」

ハンジ「質問を変えよう。粘土の定義とは?」

マルコ「はぁ…わかりません」

ハンジ「粘土ってのは砂礫が風化したもので」


ハンジ「粒の大きさが0.002mm以下のものを指し」

ハンジ「可塑性と粘性を持ち、粘土鉱物を含有するものの総称だ」

ハンジ「粘土の性質を決定するもの、粘土鉱物こそが粘土の主成分と言える」

ハンジ「通常では、主成分はシリコンなどのミネラルを基本とする」

マルコ「はぃ……(何が何だかサッパリなんだけど)」


ハンジ「ところが、分析の結果によると…」

ハンジ「ヱレンの場合、シリコンの代わりにミカサの言うエレンニウムに置き換わっていた」

ハンジ「因みにここで言うエレンニウムとは」

ハンジ「エレンの遺伝子情報を含み更に特質を純化したものと思って欲しい」

ハンジ「エレンニウムの他は一般的な粘土と同じだ。ケイ酸、アルミニウム…」


ミカサ「ヱレンの中に…アルミンニウム?」ピクッ

ミカサ「ミカサニウムは!? ミカサニウムは入ってないの!?」ガシッ

ハンジ「ちょ、ちょおっと! アルミンニウムじゃなくてアルミニウムだよ! ぅぷ」グルングラグラ

アルミン「ミカサ、落ち着いて! ねっ!?」ベリベリベリッ

ミカサ「わ、わかった。もう落ち着いた」ソワソワ


マルコ(うひゃあ…全然落ち着いてない)

アルミン(あー胃酸過多だ)

ミカサ(不公平。なぜミカサニウムはないの?)

ハンジ「まあ兎に角、主要ミネラルは判明した」

ハンジ「それから微量の酵母も検出したけど、これはあの辺りの土地の成分とも合致する」


ハンジ「要するに粘土自体はありふれた物質で何の特徴もなかった」

ハンジ「しかし、さっきも言ったが、粘土の主成分はミネラルだ」

ハンジ「ヱレンはエレンニウムによってヱレンたらしめられていると言える」

マルコ「ヱレンはエレンニウムによって存在を決定づけられている、という事ですね」

ハンジ「その通り!!」


ミカサ(不自然。なぜミカサニウムはないの?)

ハンジ「この結果を見て、私は他の人間でもドッペルゲンゲルを造れるのではないかと考えた」グググッ

ハンジ「だって楽しいじゃないか! もう1人自分が居れば仕事も捗るし思うさま議論も出来るッ!!」

ハンジ「だから試してみたんだよ!」

ハンジ「先ずは自分でねっ!!」


マルコ「ど、どうなりました?(この人が2人になったら…ゾクッ)」

ハンジ「…ダメだった。変化なし」シュン

ハンジ「で、この際もういいや手当たり次第ヤっちゃえと思ったんで」

マルコ(おいおい!)

ハンジ「ミカサとアルミンでもやってみた」フンッ


マルコ「……」チラッ

アルミン「……(何も言ってくれるな)」

ミカサ「……(不平等。なぜミカサニウムはないの?)」

ハンジ「何故かこれもダメだった」ショボン

ハンジ「だもんで、えーい毒を食らわば皿までだぜ!ってな勢いで」


マルコ(ちょっと! ちょっとちょっと!!)

ハンジ「知り合い全員のサンプルぶち込みまくったんだけど…」

マルコ「失敗だったんですね…(ホッ)」

ハンジ「うん…」

ハンジ「まぁ、ここまでは単純型可塑体つまりプレーンクレイを使った実験結果だ」


ハンジ「ここまでの分析で、ヱレンの体はエレンニウムが風化せず細胞が賦活化されたままである事が判明した」

ハンジ「だから私は細胞が枯死しない方法を探して、複合型可塑体を作り出そうとした」

ハンジ「最も高確率で有効な方法は酵母を使うことだった」

ハンジ「知っての通り、酵母は食品類の腐敗を極端に遅くする」

ハンジ「これは細胞を老化させない何かが働いているって事だ」


ハンジ「もうひとつ。実は医師会の研究で面白い記載が見つかってね」

ハンジ「我々の唾液にはパロチンが含まれている」

マルコ「何ですか?それ」

ヱレン「耳下腺や顎下腺から分泌されるホルモンだよ」

マルコ「…ごめん、わかんない」


ハンジ「このパロチンというやつは、骨や皮膚を作る作用があって」

ハンジ「しかも年齢には関係なく作用する優れものでね」

ハンジ「俗に言う若返り効果があるんだ!」

ハンジ「まったく! 我々の体は神秘に満ちてると思わないか!?」

マルコ「そうですね(半分もわかんないけど、ここは話を合わせておこう)」


ハンジ「それで、私とヱレンとで、このパロチンを何とか応用出来ないかと考えた」

アルミン「詳しく調べたところでは、パロチンはローヤルゼリーにも含まれてるらしいから」

アルミン「僕とミカサとで養蜂場巡りをしたんだ」

ミカサ「…」コクッ

マルコ「そこまでしたんですか…。それで?」


ハンジ「うん、酵母とパロチンを混ぜた複合型可塑体はある程度細胞を賦活化させる事は出来たものの…」

ハンジ「粘土と細胞の結合には至らず終いでね」

ハンジ「どうしてなのか分からないんだが…」

ハンジ「エレン本人から分離したエレンニウムでないと、こんな現象を引き起こせないらしい」

ハンジ「それならばと、ヱレンの表皮細胞から抽出したエレンニウムを使って何度も実験してみたんだけど…」


ハンジ「それも上手くいかなかった」ショボーン

ハンジ「基本、エレンとヱレンのエレンニウムは同一のはず…」

ハンジ「そうでなければ、ヱレンはヱレンじゃないからね」

ハンジ「それなのにこの結果だ」

ハンジ「何が原因なのか全く解らなくて、ほとほと困り果てていたんだ」ガックリ


ヱレン「俺にも、俺を造ったミカサにも解らないんです。仕方ないですよ」

ハンジ「いや、わからないで済ませては駄目なんだよ!」

ハンジ「わからないなら、わかればいい…」

ハンジ「そういう訳で、エレンニウムだけが特殊らしいと判明したのは大きな収穫だった」

ハンジ「だから実験を続けるためにもっと量が欲しいなーって思ったんだけど」


マルコ「まさかエレンに手を出したんじゃ…」

ミカサ「まさか。エレンに手を出していいのは私だけ」

マルコ「あ、はは…そ、そう」

ミカサ「そう」コクコク

ミカサ「なので、エレンに泣くよう頼んだら断られた」


アルミン「ど直球なのがミカサらしいよね」ハァ

ミカサ「頼んでも頼んでも断られ続け…ついに怒らせてしまった」ウルウル

マルコ「そ、そう」

ミカサ「でも体液なら何でもいいとハンジさんに聞いたので」

ミカサ「食堂で唾液を採ろうとしたら避けられ…」



ミカサ「格闘訓練で汗を拭おうとしたら断られ…」

ミカサ「寝ている隙に精液を採取しようとしたら気付かれ…」

ミカサ「お風呂場では追い出され…」

ミカサ「トイレでは騒がれ…」

ミカサ「あと、部屋で…」



マルコ「まだあるの!?」

マルコ「そう言えば、エレン、最近愚痴ってたっけ…」

アルミン「一つ一つの揉め事が積み重なっちゃって、エレンがピリピリしだしてさ」

アルミン「最近じゃ僕のことまで警戒して、すっかり近寄り難くなっちゃったよ…」

ハンジ「いっそ私が出向いてってエレンに接触しようかと思ったけど」


ハンジ「アルミンとミカサに禁じられちゃって」ムムム

マルコ「まあ当然無理でしょうね」



ハンジ「でもエレンニウムは身近なところにあった」

マルコ「え…?」



ハンジ「わからないかい?」

ハンジ「みかん箱だよ!」

ハンジ「思い返してみてごらんよ! あれはエレンニウムの塊じゃないか!!」

ハンジ「みかん箱はそもそも何で作られた?」

ハンジ「エレンの触った本、紙だ! それに衣類だ!」


ハンジ「では、それに付着・浸透しているものは?」

ハンジ「エレンが分泌した皮脂、汗、涙、唾液、剥がれた表皮、髪の毛、etc.etc.」グググ

ハンジ「まさに宝の山だと思われた!!」ドンッ

ミカサ「そう、あれは宝の山」ウットリ

マルコ「ま、まさか…」





アルミン「ところが、みかん箱はいつの間にか偽物にすり替わっていたんだ」

ヱレン「え? そうなのか?」


ハンジ「ヱレンを引き取った後でみかん箱の事に思い至って」

ハンジ「ミカサに取りに行ってもらったら…」

ミカサ「全くの偽物が置いてあった」

ミカサ「みかん箱の場所は誰も知る筈がないのに」

ミカサ「絶対に犯人を捕らえて、この手で制裁を」ギリギリギリ



アルミン「絶対しちゃダメだよミカサ」アワアワ

ミカサ「確約は出来ない」フーッ フーッ

ヱレン「………あ」ポン

ヱレン「あー、悪い」

ヱレン「みかん箱のことならサシャも知ってる」


ハンジ・マルコ「「は!?」」

アルミン・ミカサ「「なぜ!? どうしてサシャが!?」」

ヱレン「俺がサシャに見つかったから」

ハンジ「勝手に出歩いたのかい!?」

ヱレン「違いますよ」



ヱレン「毎回ミカサが持って来てくれる食べ物の匂いを嗅ぎ付けたようで」アハハ

ヱレン「物置に引き籠るようになった当日のうちにバレた」

ミカサ「サシャの嗅覚なら有り得る。迂闊だった」クッ

ハンジ「何てこった…」アタマカカエ

ハンジ「ヱレン、どうして今迄その事を言わなかったの?」


ヱレン「すいません。何故なのか自分でもよくわかりません」

アルミン「そ、それでサシャに何て説明したの!?」

ヱレン「いや何も」

   *   *   *

サシャ「エ、エレン!?」


ヱレン「サシャか。ビックリした。どうしてここに?」

サシャ「食べ物の匂いが…」

サシャ「それよりエレンこそこんなところで何してるんですか?」

ヱレン「んー? 皆から隠れてる」

サシャ「隠れて…?」



サシャ「あぁ…。エレンにも1人になりたい時がありますよね」

ヱレン「んー…どうかな?」

サシャ「それ、食べないんですか?」チラ

ヱレン「食うか?」

サシャ「いいんですか!? 戴きます!」


ヱレン「代わりに水くれないか?」

サシャ「パクパク…いいれふお…ムシャムシャ…あほへもっへひまふへ…ゴックン」

ヱレン「食うか喋るかどっちかにしろよ、まったく」クスッ

サシャ「えへへ// 御馳走様でした」パン

サシャ「じゃあ、お水持ってきます」


ヱレン「あ、俺のことは」

サシャ「わかってます。秘密ですよね」

ヱレン「おう」

     *

サシャ「エレン、いますか?」



ヱレン「また来たのか。腹が減って眠れないのか?」

サシャ「ひとりがいいですか? 迷惑ですか?」

ヱレン「いや、いいけど」

サシャ「また食べてないんですか?」

ヱレン「食欲なくてな。食うだろ?」


サシャ「わーい! 戴きます!」

サシャ「パクッ…あ、ほうは。お水ありまふほ…パクパク」つ

ヱレン「おう、ありがとな」ニコ

サシャ「へへんは、ひほりへはひひふはいんへふか?」

ヱレン「ハハッ何言ってるか分かんねえ」クスクス



サシャ「ん、ゴックン。エレンはひとりで寂しくないんですか?」

ヱレン「ん? 今はひとりじゃないだろ」

サシャ「ひとりの時に、です」

ヱレン「寂しくはないよ。何で気にするんだ?」

サシャ「…どうしてでしょう。わかりません」


ヱレン「何だそれ」ハハ

     *

サシャ「また来ました」

ヱレン「お前ほんとに暇なんだな」

サシャ「今日はお土産持って来たんですよ」


ヱレン「食い物か。珍しいな。明日は雨か雹だな」

サシャ「また水ばかり飲んでますね」

ヱレン「食欲はないんだ」

サシャ「昼間は食べてるようだからいいんですけどね」

ヱレン「何お前ストーカー?」


サシャ「違いますよっ」

サシャ「毎晩こんなところに引き籠ってるエレンこそ…」ムニャムニャ

ヱレン「?」

サシャ「その箱、そんなに居心地いいんですか?」

ヱレン「いいよ。狭いところって安心するだろ」ニコ


サシャ「猫みたいですね」フフッ

サシャ「私も入ってみていいですか?」

ヱレン「いいけど、狭いぞ?」

サシャ「では失礼して」ニパ

サシャ「へぇ暖かいんですねー」



サシャ「確かに安心感があります」

ヱレン「だろ」

     *

サシャ「来ましたー」

ヱレン「もはや日課だな」


サシャ「お邪魔しまーす」

ヱレン「おっ水サンキュ」

ヱレン「箱に入るのはいいけど、食い物零すなよ?」

サシャ「はい。これミカサが作った箱ですよね」

ヱレン「お前とコニーも手伝ってくれたんだろ」


サシャ「最初だけです。殆どミカサが作ったんですよ」

ヱレン「ありがとな」ニコッ

サシャ「な、なな仲間なんだから、ととと当然ですよ///」

ヱレン「何慌ててんだ? 零れるぞ?」

サシャ「おっとっと」ハグハグウマウマ


ヱレン「だから慌てるなって。もっとゆっくり食えよ」

サシャ「モグ…それはもっとここに居てもいいということですか?」

ヱレン「おう。だから落ち着いて食え」

サシャ「はい。じゃあ、ゆっくり食べることにします」ニコニコ

ヱレン「ん」


     *

サシャ「はい、お水です」

ヱレン「サンキュ」

ヱレン「もはや当然のように入り浸ってるな」

サシャ「はい。エレンだって私が来るの待ってたじゃないですか」


ヱレン「んーどうだろ?」

サシャ「そういうことにしましょう」

ヱレン「どうしてそうなる」

サシャ「だって一度も追い払わなかったでしょう?」

ヱレン「…そうだったな」


サシャ「そうですよ」ニコニコ

ヱレン「サシャは俺がここでこうしてる事を疑問に思った事はないのか?」

サシャ「最初に見つけた時は思いましたけど…」

サシャ「今はどうでもいいです」

サシャ「こうして一緒に居ると楽しいですし、エレンも微笑ってくれてます」


サシャ「エレンが寂しくないのなら、それでいいんです」

ヱレン「心配してくれてたのか」

ヱレン「それで俺に付き合って? すまなかったな」

サシャ「いいんですよ」

ヱレン「いや、本当に悪かった。サシャの優しさに気付くの遅くてさ」


サシャ「そ、そんなことないです」

サシャ「それより、今頃そんなこと訊いてくるなんてどうしたんですか?」

サシャ「エレンが何か話したいのなら聞きますよ」



ヱレン「話せない」


サシャ「はい」

ヱレン「いいのか」

サシャ「いいんです。話す事自体がエレンの負担になるなら聞きません」

サシャ「悩みがあったとしても、エレンなら自分でどうにかしようとするでしょうから」

サシャ「エレンの手に余った時に助けに入る事にします」


ヱレン「助けか。なら頼みたい事がある。いいか?」

サシャ「何でしょう?」

ヱレン「ここで会ってる事、話した事は誰にも言わないでくれ」

サシャ「最初からそうしてきたつもりです」

ヱレン「ここ以外では俺自身にも話を振らないで欲しい」


サシャ「他人のふりって事ですね。わかりました」ニッコリ

サシャ(これが秘密の関係ってやつですか。テレますね///)



ヱレン「ありがとう、サシャ」

    *   *   *


アルミン「それ最早デートじゃないか!」

マルコ「サシャを籠絡するとはね」

ミカサ「削ぐ。ズタズタに削いでやる」

ハンジ「何か…今何か思い浮かんだけど言葉にならなかった」

ヱレン「お前ら、どこをどう解釈したらそうなるんだ?」


アルミン(天然)

マルコ(タラシ)

ミカサ(どこで待ち伏せよう?)

ハンジ(こりゃ参ったね)

ヱレン「ずっと話してたけど、サシャは俺とエレンが別々の存在だとは最後まで気付いてない」


ヱレン「だから心配する事はないように思う」

アルミン「確かに僕らにさえ見分けはつかないけど…」

マルコ「でも僕は気付いたよ。本当に大丈夫かな?」

ミカサ「やはり削ごう」

ヱレン「待てって!」


ヱレン「サシャは約束を破るような人間じゃない。皆もそれはわかってるだろ」

アルミン「………」

マルコ「う…ん……」

ヱレン「それに、みかん箱を盗む理由もない」

ヱレン「ミカサの手伝いをして、それが大切な物だって知っているんだから」


ミカサ「どうしてそこまでサシャを庇うの?」

ヱレン「別に庇ってるわけじゃ…」

アルミン「……いっそサシャに訊いてみよう」

マルコ「そうか、正攻法でいった方が上手くいくかも」

ヱレン「え?」


アルミン「サシャを疑ってるからじゃない。協力を頼むんだ」

ヱレン「協力?」

アルミン「サシャが言ったんだろう?」

アルミン「エレンの手に余った時に助けに入る、って」

ヱレン「それはエレンへの言葉だ。俺じゃない」


アルミン「同じだよ」

アルミン「サシャはヱレンと居て、ヱレンと話した」

アルミン「でも、サシャには2人の区別がついてないんだろう?」

アルミン「それならサシャの言葉は2人に贈られたものなんだよ」

ヱレン「…2人に…?」



アルミン「そうだよ! エレンとヱレン、2人に平等にね」

マルコ「ここはサシャの好意に甘えていい場面だよ」

ヱレン「でも……サシャに迷惑だけは…」

ミカサ「かけない。約束する」

アルミン「うん!」


ハンジ「…なるほど。その手を試してみるのもアリかな」

ハンジ「こっちで起てた作戦もあったんだが、それにはエレンかヱレンを囮にする必要があってね」

ハンジ「アルミンの提案と私の作戦、どちらも危険な賭けに出るのは同じだが…」

ハンジ「やはりヱレンを人目に晒すリスクは大き過ぎる」

ハンジ「サシャって子がこちらに協力してくれるのなら、何も危険を冒す必要はないだろう」


ハンジ「みかん箱は元々ミカサの物なんだから、ミカサが探していても不自然ではない」

ハンジ「だから、ミカサがサシャに訊いてみてくれ。いや、何人かに訊くのがいいな」

アルミン「ついでに網を張るんですね」

ハンジ「そう! そして、みかん箱の在りかが判ったら何を置いても回収すること」

ハンジ「なるべく早い方が良い。マルコの話だと、既にみかん箱を悪用されてるかもしれない」


アルミン「既に? 何かあったんですか?」

ハンジ「今日マルコを此処に呼んだ理由だ。マルコ、あの話をしてくれない?」

マルコ「怪現象の話ですね」

アルミン「怪現象?」

マルコ「うん」


 ~ 10日前 訓練兵団宿舎・食堂 ~


エレン「何だか今日は人が少ないな」

ジャン「ミカサとアルミンが居ないと寂しいってか」

ジャン「いっつもベタベタ一緒に居やがって」

エレン「うっせえな。仲良くしてちゃ悪いのかよ」


ミーナ「あれ? エレンひとり?」

エレン「ミカサとアルミンは用があるからって出掛けてった」

ミーナ「じゃあ、隣で食べてもいいかな?」

エレン「おう、遠慮すんな」

ミーナ「(やり!)ありがと」


エレン「たまには同じ班の連中と食うのもいいな」

エレン「って、あれ? ナックたちも居なくないか?」

エレン「なあマルコ、ナックの奴見なかったか?」キョロキョロ

マルコ「さあ? 見てないけど」

ジャン「へっ。どっかの班長さんは自分の班もろくに面倒みれねえってよ」


エレン「何だと!?」

ジャン「やんのか!」

ミーナ「ちょっと! やめなよジャン」

ジャン「チッ。女に庇ってもらうのが板についてて気色悪ぃんだよ」

エレン「はぁ!?ムッ


コニー「エレン、ナックなら怪我して医務室行ったぞ」

エレン「おう、サンキュ」

エレン「ナックの奴、いつ怪我したんだ?」

サシャ「ナックは怪現象にぐうそうしたんですよ」ニュウッ

エレン「うお!びっくりした。いきなり生えてくんなサシャ!お前は筍か!」


エレン「それに、それを言うなら遭遇だろ。何だ、ぐうそうって」クスッ

サシャ「そうでしたっけ。えへへ。筍御飯は大好きです」

マルコ「サシャ、今何て?」

サシャ「筍御飯は美味しいです」

マルコ「イヤそっちじゃなくて。怪現象…?」


サシャ「はい。怪現象です。身長30cmくらいのUMAに噛まれたそうです」

ジャン「はぁ? 何だそれ。そんなの存在するわきゃねえだろ」ギャッハハ

ジャン「サシャ、お前は胃だけじゃなくて頭ン中にも芋詰めてんのか?」ゲラゲラ

サシャ「ひどいです!」ウル

エレン「よせよ! ジャン」ズイ


サシャ「エレーン」ウルウル

ミーナ(………)イラッ

コニー「でもナックが怪我をしてたのは本当だぜ。オレも見たし」

エレン「サシャ、その話、ナック本人から聞いたのか?」

サシャ「はい。そうですけど」



エレン「…俺、ナックを見舞ってくる」クルッ

ミーナ「待ってエレン。私も行く」

サシャ「マルコは一緒に行かないのですか?」

マルコ「うん。あんまり大勢で押し掛けてもね」

サシャ「そうか、そうですよね。では私も後にします」

ジャン「ケッ」


 ~ 9日前 訓練中 ~ 


  シュッ


ミリウス「おい…今の何だ?」ジャリ

サムエル「ん? 何がだ?」ザッザッ

コニー「お前ら早く進めよ。後がつっかえてんだよ」


ミリウス「いや、さっき目の前を何かが横切って…」

コニー「は?」

  シュッ シュシュッ ガツッ!

コニー「あっ!!」

サムエル「うぐっ! 痛え!」


ミリウス「お、おいっ? 大丈夫か!?」

コニー「な、何だ今の…?」

コニー「っと呆けてる場合か! 追い掛ける!」ダッダダダッ

  ヒュヒュッ ヒュン ザザザ…

コニー「クソッ! 早え! 見失った!」


   同日 訓練兵団宿舎・倉庫


エレン「サムエルとトーマスが怪我!?」

ジャン「同じ班で怪我が続くのは班長に問題あるからじゃねーの?」

エレン「何だと!?」

ジャン「あ゛あ゛?」


マルコ「やめなよ、2人とも」

コニー「エレンを責めるのは筋違いだぜ、ジャン」

コニー「怪我はUMAの仕業だし、トーマス達以外にも怪我人が出てる」

ジャン「まだ、んな事言ってんのかよ」

エレン「コニーも見たのか?」


ミーナ「どんなヤツだったの?」

コニー「それが素早いヤツでよ。何となく人の形っぽいって事しか判らなかった」

ジャン「おおかた野良犬かイタチとでも見間違ったんだろうよ」ヘラヘラ

ジャン「コニー、お前、UMAを見たと本気で思ってんのなら頭おかしいぜ」

コニー「なんだと!? てめえー!!」キッ


ジャン「じゃあ言うがな。怪我くらい誰だって負う」

ジャン「だが自分のミスで負った怪我をワケのわからないもののせいにして」

ジャン「だから自分にはミスは無いんだと主張するのはみっともないって言ってんだよ!」

コニー「だから、そういう事じゃないって言ってんだよ! 何てめえの主観を押し付けてやがる!」

エレン「もう、よせ!」スッ


エレン「行こうぜコニー。こんな奴もう相手にすんな」

コニー「ぉぅ…」ブスッ

ミーナ「3人で見舞いに行こう。ねっ?」ニコ

コニー「おう」ニッ

エレン「ならついでにあいつらの食事持ってってやるか」


マルコ「一体どうしたのさ? ジャン…らしくないよ?」

マルコ「さっきのは流石に言い過ぎだと自分でも思ってるんだろう?」

ジャン「別に。俺は思った通りを口にしただけだぜ」

マルコ「……最近ミカサの姿を見ないから苛ついてるのかな?」ボソッ

ジャン「ちっ!ちげーよ!! おら、俺らも帰るぞ!!」カァッ


 ~ 8日前 兵站往復訓練中 ~


クリスタ「ユ、ユミル、ちょっと待って!」ハァハァ

ユミル「あーもういいよ、ゆっくりで」

ユミル「おい、サシャ。休憩だ。水くれ」

サシャ「ええ? もうですか? さっき休憩取ったばかりですよ」


ユミル「仕方ないだろ。クリスタがへばっちまった。限界だとさ」

クリスタ「ご、ごめんね。皆の足を引っ張ってしまって…」シュン

サシャ「いいですよ。無理せず行きましょう」

  ドドドド

サシャ「あれ? 何の音でしょう?」


ユミル「あ? 音? お前の腹の虫じゃねえの?」

  ドドド ド ド ド ド  ガッ!

クリスタ「きゃっ!?」

ユミル「クリスタ!!」

サシャ「こ、これ何ねっ!?」


ユミル「伏せろクリスタ!」ビュン

サシャ「気をつけて! こいつら多分UMAです! 噛まれますよっ!!」ザッ

  ブン! ブンブンブン!

ユミル「ちっ! 何だこいつら? 当たりゃしねえ!」

クリスタ「いやー!! あっち行ってー!」バタバタ


ユミル「いいから伏せてろクリスタ!! 隙を見て逃げろ!」

  ザッ! ドスッ!    パラッ

ユミル「やった! でかしたサシャ!」

サシャ「いえ、倒せたのは1匹だけです。後は逃げられました」ハァハァ

クリスタ「それでもすごいよ! ありがとうサシャ!」


ユミル「あいつら何だったんだ? (クリスタだけを狙ってた?)」

クリスタ「UMAって最近みんなを襲ってるって噂のあれだよね…」

ユミル「どれ不届き者の顔を拝むとするか…って、おい! 死骸は何処だ?」

クリスタ「え? そこに……ええっ?」

サシャ「………消えちゃいましたね…」


   同日 同時刻 別のポイントにて

ミーナ「ミカサ、あとどのくらい?」ハァフゥ

ミカサ「あと1kmもない。すぐにゴール」

アニ「どうやら私らが一番乗りみたいだね」ハァ

ミカサ「2km後方にエレンの班がいる。油断は禁物」


ミーナ「えぇ? 後ろ…見えないのに? 判るの!?」

ミカサ「しっ! 静かに。何かいる…」

ミーナ「ぇ? (何かって何!? …熊? …猪?)」

ミーナ(ミカサがいるから熊でも平気だけど)

ミーナ(まさか…UMA!? だとしたら、いくらミカサでも…)ゾワ


アニ「…(何も聞こえないけど…まさか…?)」

ミカサ「 」スッ

  ヒュ! ・・・・・ボトッ

ミーナ「ひっ!?」

アニ「!」


アニ(今のは……)

ミーナ「な、何? 何を切ったの!?」

ミカサ「……わからない」

ミカサ「私は確実に仕留めた」

ミカサ「なのに死骸が…見当たらない」


 ~ 7日前 訓練兵団宿舎・食堂 ~


エレン「服が破かれちまった」ショボーン

クリスタ「エレン。それ、もしかして…UMAに?」

エレン「ああ」

コニー「マジかよ。さっきマルコも噛まれて医務室行ったぞ」


ミーナ「もう何度部屋を荒らされたか覚えてないよ」プンスカ

ナック「俺も今日で2度目だ」

ダズ「提出期限が迫ってるのに零れたインクのせいでリポートがパーだよ」グスン

トム「どうする? 教官に報告しても本気にされないし…」

エレン「ああ。今後UMAがどうのと言ったら即処罰だ!って言い渡されちまったしな」


サシャ「こんな時に限って、いつもなら頼りになるミカサやアルミンが居ないなんて…」

ミーナ「エレン、ミカサとアルミンは何をしてるの?」

エレン「確か…調査兵団に呼ばれて何かの手伝いに借り出されてる」

コニー「連日のUMA騒ぎで寝不足だ」

トーマス「このままじゃ体がもたないよ。僕なんかまだ血が滲んでる」


ライナー「俺も右手をやられた」

エレン「ベルトルトも脛を蹴られたんだろ?」

ベルトルト「う、うん…」

ハンナ「フランツが! 私を庇ってフランツがぁ!」

ミーナ「落ち着いてよ、大した怪我じゃないんだから」


クリスタ「アニ、それ痣になっちゃうよ。はい湿布」

アニ「ありがと…」

ユミル「クリスタなんか何度も襲われてるんだ」イライラ

サシャ「私もユミルもクリスタを守って何度か怪我を負いました」

エレン「一体、奴らは何匹いるんだ?」


エレン「こっちが探し始めると姿を見なくなる。何処に潜んでいるのやら…」

マルコ「それに何故あんなに凶暴なのか…疑問は尽きないね…」コトッ

エレン「おう、マルコ。もういいのか?」

マルコ「うん。平気だよ。心配かけてしまってごめん」

エレン「気にすんな。ここにいる者は皆被害者なんだ」


サシャ「……ここに居ないミカサやアルミンは別として…」

サシャ「一度も襲われていない人っているんですか?」

エレン「うーん……ジャンは?」

全員「「「「「「「 !!! 」」」」」」」

サシャ「そう言えば、ジャンが被害に遭った話は聞いた事がありません」


ジャン「黙ってろ芋女!」

コニー「確か、UMAなんて存在しないんだったよな? ジャン?」

コニー「ジャンに言わせれば、オレたち皆、頭がおかしいんだとさ」

全員「「「「「「「……………」」」」」」」

ジャン「な、何だよっお前らその目はっ!?」



エレン「ジャン…」

ジャン「あ゛?」

エレン「 」ジーッ

エレン「皆……ジャンはシロだ」

エレン「頭にコブがある」


ジャン「………」イライラムカムカ

マルコ「UMAなんていないと大見栄切った手前…」

マルコ「今さら『UMAを見ました』、『殴られました』なんて恥ずかしくて言い出せなかったんだね」ハァ

エレン「意地っ張りだからな」

ジャン「お前に言われたかねぇよ!」カッ


エレン「で?」

ジャン「は?」

エレン「このままヤられっぱなしでいいのか?」

エレン「反撃する気はあるのか訊いてるんだよ」

ジャン「!! ったりめーだ!」


ジャン「明日から休み時間返上でUMAを狩ってやらあ!!」

全員「「「「「「「おおおおお!!」」」」」」」

エレン「一匹残らず! 駆逐してやる!!」

全員「「「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」」」


   *   *   *

マルコ「そんなこんなで、エレンとジャンが中心になってUMAを狩ることになった」

アルミン「知らなかった…。そっちはそっちで大変だったんだ」

アルミン「しかもミカサは一度UMAと遭遇してたのか」

ミカサ「すっかり忘れていた」


ヱレン「俺の事で随分世話を掛けちまってるからな…」

ミカサ「私にとってUMAとの遭遇は些末事。そんなものに携わるよりヱレンの世話をする方が有意義。私はヱレンの世話が出来て嬉しい」

ミカサ「ただ…エレンも水臭い。UMAに煩わされていたのなら相談して欲しかった」シュン

アルミン「いちどきにあれもこれもやるのは無理だよ」

ミカサ「無理ではない。できる」


ハンジ「まあまあ。とにかく続きを聞いてくれ」ピラピラ

マルコ「目撃者の話を整理してて、UMAは複数居る事が判った」

マルコ「みな大体20~30cm程の身長で、金髪と黒髪の2種類」

マルコ「出現時間もまちまちでさ。行動は凶暴。噛み付いたり蹴ったり物を壊したり…」

マルコ「1週間前、僕を噛んだのは金髪の方だった」


マルコ「ここ見て。左手首の上。だいぶ薄くなったけど」つ

アルミン「歯型…だね」

ヱレン「この歯列…小型なだけで人のそれと良く似てるな」

ミカサ「確かに小さい。子供でもこんなに小さくはない」

ヱレン「噛まれた後、化膿したり発熱したとかは?」


マルコ「いや、大丈夫だったよ。すぐに消毒したしね」

ヱレン「そうか。良かったよ、マルコが無事で」ニコッ

マルコ「うん、ありがとう」テレ

マルコ「ヱレンの言うように、UMAは人の姿に近かった」

マルコ「それで、ちょっと思い当たる事があって…」


マルコ「エレン達が宿舎のあちこちでUMAを待ち伏せしてる間…」

マルコ「僕は独断である事を調べてみる事にしたんだ」

ハンジ「そして私が図書館でマルコとバッタリ」

マルコ「同じ本を手に取ろうとしてて…気付いたらラボで質問責めに」トホホ

ハンジ「あまり常人の気を引くような本じゃなかったから、逆に気になってね」


アルミン「何て本?」

マルコ「ものの本性について」

ミカサ「何?」

アルミン「医聖の著書で、ホムンクルスについての記述があるんだ」

アルミン「ホムンクルスっていうのは人工生命体の事だよ」


ハンジ「ヱレンの研究をしていれば無視出来ない記述だからね」

ハンジ「そこへマルコが現れたら、何か知ってるんじゃないかって誰だって深く勘繰るってもんだろう?」

ハンジ「私は世の中には偶然なんてものはないと思っている」

ハンジ「全ては必然によって動かされている。神は賽を振らない」

ハンジ「そして一連のUMA騒ぎを聞いて、ピンと来たんだ」


ハンジ「誰かがヱレンのようなドッペルゲンゲルを造ろうと試み、失敗した」

ハンジ「それがUMAの正体なんじゃないか?とね」

アルミン「ヱレンのように等身大で作ったんじゃなく、人形のようなサイズで何体か試作した?」

ミカサ「あるいは複数の人間が同時期に作った?」

ハンジ「私は複数の人間が関わってると思う」


ハンジ「聞く限り、明らかな特徴だけでも金髪と黒髪が居たんだ。同じ素材からは2種類も作れない」

ヱレン「1人が複数の素材を使ったかもしれません」

ハンジ「そうだとすると、その人物は誰がエレンのような特質を持っているのか、その素材となる人間を何人も把握している事になる」

ハンジ「それはつまり、我々の研究より先んじているって事だ。有り得ないね」

ヱレン「単に手当たり次第に作っただけだとしたら?」


ハンジ「それだと数が多過ぎるんだ。量産するのには目的があるんだと思う」

ハンジ「余り考えたくはないけど…ヱレンのように等身大の完全体を作るためなんじゃないか?」

ヱレン「等身大で作る事が最終目的ではないかも」

ハンジ「では、人形サイズで作る意味は?」

ヱレン「……」


アルミン「ハンジさんは昨日現れたヲイナーがUMAの完成体だと思ってるんですね?」

ハンジ「ヲイナーの分のサンプルが揃わないと断言は出来ないが…ほぼ間違いないだろう」

ハンジ「問題は、ヲイナーが別素材を基に作られたか否か」

ハンジ「もしも…みかん箱が悪用され、完成に一役買っていたのだとしたら…」

ハンジ「一体…誰が我々をまんまと出し抜いてくれたんだろうね?」ギリッ


アルミン「……そうか。そうなりますね…」

ヱレン「…あれ? ヲイナーの分のって事は…UMAのサンプルは手に入ったって事ですか?」

ハンジ「うん! マルコが頑張ってくれたよ!」

アルミン「どうやったの!?」

マルコ「いや、それが…」


 ~ 5日前 女子寮(クリスタの部屋)の外 中庭の茂み ~


エレン「本当に此処でいいのか?」

サシャ「はい。今のところクリスタが一番被害を蒙っていますから警護を固めないと」

ジャン「だからって何でエレンが女子寮の前で待機すんだよ?」

ミーナ「ジャンも居るじゃん」


マルコ「一応、僕もいるんだけど…」

サシャ「仕方ありません。女子寮の中には男子は入れないですから」

エレン「中の警護は?」

サシャ「ユミルが付ききりです。廊下と階段前に女子が3名ずつ待機してます」

ジャン「ライナーとベルトルトも来てたはずだが?」


マルコ「建物の反対側で待機してるはずだよ」

エレン「2人だけかよ。手が足りなくないか? 俺、あっちに回ろうか?」

ミーナ「あっち側はすぐ近くに塀があって狭いからね。2人で十分じゃない?」

マルコ「クリスタの次に被害に遭ってるのはエレンだろう?」

マルコ「一昨日・昨日と、別々に張り込んで失敗したよね」


マルコ「エレンとクリスタには悪いけど…」

マルコ「今日は2人になるべく近くに居て貰って、UMAを誘き寄せる囮の役をやって欲しい」

エレン「そりゃいいけど…」

マルコ「ここ以外に現れた場合のことを心配してるんだったら、コニー達に周囲の警戒を頼んである」

マルコ「まあ十中八九、ここに来ると思うよ」


マルコ(どう考えてもUMAは2人に引き寄せられているようだからね)

ジャン「奴らが襲って来たら全員で囲い込んで…」

サシャ「一網打尽にするチャンスです」

エレン「おい…こんなに厳重だとUMAが寄って来ないんじゃないか?」

マルコ「それは杞憂だね。来たよっ!!」


ジャン「げっ! 何匹いるんだよ!?」

サシャ「2…5…10…23匹!」

ジャン「数える暇があるなら囲い込め!」

エレン「競争だ、ジャン。どっちが多く狩るか」ニヤリ

ジャン「おうよ! 後でてめえの吠え面拝んでやるぜ!」ヘヘッ


ベルトルト「ほら、始まってただろう?」タタタタ

ライナー「おう。やるぞ!」ドドド

  ワー! ワー!

マルコ「ライナー! ベルトルト! 丁度いいところに」

マルコ「あ、そうだ。1匹は生け捕りに…って、これでは誰も聞こえてないね」ガクッ


コニー「何だよ! もう始めてんのかあ?」タッタッタッ

マルコ「コニー! どれでもいい、生け捕りにしてくれ!」

コニー「はあ? この混乱状態で? 無理無理! 他に言ってくれ!」

  ギャー! オオ! ウワナンダヨ! オスナヨ!  

マルコ「……だよね」


マルコ「仕方ない。自分で何とかするか…」

  オスナッテバ! オセオセ! ソッチ行ッタゾー! 逃ガスナー!

マルコ「1匹が逸れて倉庫の方に逃げた? チャンス!」ダダダッ

  ヒュ! ヒュヒュッ!

マルコ「…居る。何とか捕まえないと…」


マルコ(でも暗くてよく見えないな…どうするかな?)

  ガァア!!

マルコ「うわ!」

  ドゴッ! ………パラッ……サラサラサラ……

ベルトルト「……そこにいるのは誰?」


マルコ「! ベ、ベルトルトかい? 僕だ、マルコだよ」

ベルトルト「マルコか。危なかったね……」

マルコ「あ、ありがとう。助かったよ…(何だ? さっきのベルトルトの目つき)」ドクンドクン

マルコ「それにしても、ベルトルトは何時ここに?」

ベルトルト「…僕は…マルコが来る少し前に…」


マルコ「? そう…かい?」

ベルトルト「うん…」

マルコ「そ、そうなんだ…。(あれ? さっきのは気のせい?)」

マルコ「あ、ところでさっきのUMAは?」

ベルトルト「ああ、いきなりだったから咄嗟に踏み潰してしまったよ」スイッ


マルコ「何もない…ね」ジッ

ベルトルト「うん。何も残らないようだね」

ベルトルト「もう此処には居ないようだし…出ようか」スタスタ

マルコ「う、うん」

マルコ(………どうする? 一応あれを…そ、そうだ!)ブチッ ポイッ


マルコ「あっと。今何か落とした? 何だろ?(態とらしいか?)」キョロキョロ

マルコ「あ、ボタンが無いや。さっきのはそれか(いや迷うな!やり抜け!)」

マルコ「ごめんベルトルト、ボタンが飛んで…替えを持ってないから見つけないと」

ベルトルト「探すの手伝うよ」ピタ

マルコ「いや、いいよ。さっきも助けられたのに、そこまでして貰ったら立つ瀬が無いよ」


ベルトルト「そう? じゃ、先に行ってるよ」スタスタスタ

マルコ「うん」

  …パタン…

マルコ(…さて、と)

マルコ(やっぱり。良く観ると地面とは違う色の土がある)


マルコ(これ、UMAの死骸…だよね?)

マルコ(これだけでも回収しないと。えっと、入れ物…入れ物…)

マルコ(ハンカチでいいか)

マルコ(そうだ、ベルトルトが訊いてくるかもしれないからボタンも一緒に包んでおこう)クルクル

マルコ(とにかくハンジさんに分析して貰わないと)スタスタ


エレン「マルコ! 何処だ!?」

マルコ「ここだよ。エレン」

エレン「無事か? 怪我は!?」

マルコ「ないよ。大丈夫」

エレン「途中で姿を見なくなったから、また怪我したのかと思ったぞ。無事なら良かった」


ジャン「おー、マルコ。何処行ってたんだ? もう片ぁついたぞ」

マルコ「みんな駆逐しちゃったの!?」

ジャン「どっかの死に急ぎ野郎みたいな言い方はよせやい。まあ、俺らが本気出せばこんなもんだろ」ハハハ

サシャ「エレンは何匹倒しましたか?」

エレン「6匹だったかな?」



サシャ「流石ですね。私は3匹です」

コニー「俺も3匹だ。まあ俺は後から駆け付けたからよ」

ミーナ「ジャンは何匹? エレンと競争するって言ってたよね?」

ジャン「ちっ。細けぇ事を」ブツブツ

マルコ「いいから教えてよ。何匹?」


ジャン「…5匹だよ。っくしょう!」

ミーナ「何だーエレンに負けたんだー。あ、私は2匹ね」

ライナー「俺も3匹倒したぜ」

マルコ「サシャが全部で23匹って言ってたから…」

エレン「あと1匹…討ち漏らしたか?」


マルコ「いや、倉庫の中へ逃げ込んだ奴が居たけど、そいつはベルトルトが駆逐したから、計算は合うね」

コニー「よっしゃあああ! 終わったあ!!」

サシャ「バンザーイ!」

クリスタ「みんなー!!」パタパタパタ

ユミル「クリスタ、そんなに急ぐなよ。また足がもつれて転ぶぞ?」ポテポテ


クリスタ「本当にありがとう! もうこれで怖い思いをしなくて済むよ!」

ユミル「ま、お前ら良くやったよ」ポリポリ

クリスタ「お礼は何がいいかな? 私に出来る事なら何でも言ってね!」

ライナー(結婚しよ)

サシャ「それならクリスタのシフォンケーキがまた食べたいです!」


エレン「え、別にいいよ礼なんて。なあ?」

ジャン「俺もいらねえ。そもそも全員が被害者だったわけだしな」

コニー「だな」ウンウン

サシャ「ええー?」ションボリ

クリスタ「ううん、やっぱりお礼はさせて」



クリスタ「だって助けて貰ってばかりなんだもん」

エレン「そんなに気を遣わなくてもいいぞ?」

クリスタ「違うよ。このままなら、私、何も出来なかった自分を責めちゃう。それが嫌なの」

クリスタ「サシャのリクエストでいいなら、明日シフォンケーキ作るよ。それで皆に食べて欲しいな」

サシャ「クリスタはやっぱり神様ですぅ!!」ヒシッ


ユミル「おい、離れろサシャ」グイッ

マルコ「エレンも気を遣い過ぎじゃないかな」クスッ

マルコ「まあ、ここは皆お疲れ様でしたって事で有難く戴こうよ」

サシャ「甘いものを食べたら疲れも取れます」ニコニコ

エレン「そこまで言われちゃあなぁ…」ポリッ


     何だか重いので、今日はここまでにします。

     書き込む度に固まるから心臓に悪い…

乙です!


   *   *   *


マルコ「…という訳で、捕まえたというには語弊があるかな」

アルミン「やっぱり消滅したのか…」

ヱレン「……」

ミカサ「私の時と同じ。遺骸は残さず、ただ消滅するだけ」


マルコ「うん。跡には土埃のようなものが少々残っていただけだ」

アルミン「殆ど形が残らないなんて…」

ハンジ「どう考えても自然の産物ではないだろう?」

アルミン「そうですね」

ヱレン「……………」


ミカサ「ヱレン…?」

ハンジ「心配ないよ、ヱレン!」

ハンジ「今、自分もそのうち消えるんじゃないかって考えていたんだろう?」

ハンジ「大丈夫! 君は消えたりしない」

ハンジ「マルコが持ってきてくれたサンプルを調べた結果、UMAの素材は宿舎の土嚢と一致した」


ハンジ「UMAは河川から採ったただの土砂が使われていたんだ」

ハンジ「土砂には粘土のような可塑性は無い」

ハンジ「まあ、水分を含む事で形状を保っていたらしいが、それだけに過ぎない」

ハンジ「砂の彫刻のようなものだよ。ちょっとした事ですぐに崩れる」

ハンジ「だから、鉱物ミネラルがどれほど強固な特質を発揮させていたとしても…」


ハンジ「砂の粒子同士を結合させていた水分が時間を経て蒸発してしまえばUMAの体は分解していたはずだ」

ハンジ「頑張って退治した皆には身も蓋もない言い方だけど…」

ハンジ「UMAは放っておいてもそのうち崩壊する運命だった」

ハンジ「ヱレンとは違う。だから安心おし」ニッコリ

ヱレン「はい…」


ハンジ「惜しむらくは、1種類しかサンプルが採れなかった事だね」

マルコ「あの場では人が入り乱れていたんです」

マルコ「23匹全部のサンプルを採取するのは流石に無理ですよ(涙目)」

ハンジ「いやいや。良くやってくれたよ」

ハンジ「後は起源になった人間を特定する為に104期生の生体サンプルを採取してくれればいいんだからさ」ニコニコ


マルコ「えっ!? それ全部僕がやるんですか!?」

ハンジ「他に誰が?」

マルコ「………」ガクッ

アルミン「どんまい、マルコ」

ミカサ「うどんうまいマルちゃん」ボソッ


ヱレン「ぶッ…!」

ミカサ「………(い、言わなければよかった)///」

ヱレン(ミカサ!?)

ハンジ「ん? どうした?」

ヱレン「(聴こえたの俺だけ!?) いえ、何でも…」ゴシゴシ


マルコ「まぁやるだけやってみます…」

マルコ「丁度、汗をかく機会ならあるし」

ハンジ「どんな?」

マルコ「実は、あの後…」


   *   *   *


エレン「おはよう。朝から良い匂いがするな」

クリスタ「おはよう、エレン。ちょうどシフォンケーキが焼けたところだよ」

サシャ「冷まさなくてもいいです。今すぐ食べましょうよ!」

ユミル「だめだ! 手ぇ出すな」


ミーナ「それでね、エレンが(ry」キャッキャ

ジョシー「本当!? すごーい!」キャッキャ

ライナー「で、俺が(ry」ワイワイ

コニー「そこでオレも(ry」ワイワイ

ダンスィ「へえっ! それから?」ウンウン



エレン「いつにも増して騒がしいなあ」

マルコ「おはよう、エレン。昨日の今日だからね」

エレン「おはようさん、マルコ」

ジャン「よう」

エレン「おう」


ミーナ「そしたらジャンが(ry」

ジョシー「なぁにそれー? フフフフ」

マルコ「本当、賑やかだねえ」

ジャン「……エレン」ムス

エレン「何だよ」


ジャン「お前に決闘を申し込む! リベンジだっ」

エレン「はあ?」

ジャン「UMA狩りの数では負けちまったからな」クッ

エレン「気にしてたのか。確かに競争だって煽ったけど、あれはあの場の雰囲気で…」

ジャン「いいや、負けは負けだ。だからリベンジしたい。受けるよな?」


エレン「決闘って…いつもの、チェスでいいのか?」

ジャン「おう!」

エレン「昼休みでいいか?」

ジャン「いいぜ!」

マルコ(ああもう…朝から疲れさせないでくれよ)ハァ


 * 次の日


エレン「ジャン!」

ジャン「あ?」

エレン「夕食後、付き合えよ。昨日のケリをつけようぜ」

ジャン「いいだろう。どうせ返り討ちだがな」


サシャ「昨日のケリって何です?」

ミーナ「昨日、チェスで勝負したんだって」

サシャ「引き分けたんですか?」

クリスタ「ううん。先にジャンが一勝して、二回戦に入ったところで時間切れになったの」

ユミル「あん時のエレンの顔! 思い出したら笑えてくる。ギャッハッハッハ!」


サシャ「勝ち逃げですか」

ジャン「勝ち逃げってどういう言い草だ? 普通に俺の勝ちって言えばいいだろうが!」

エレン「次は負けねえ!」

ミーナ「ズルイよねー。チェスはジャンの得意分野じゃない」

サシャ「エレンの得意な分野は?」


ライナー「対人格闘以外でエレンの得意なものって言ったら…バックギャモンかな」

クリスタ「強いの?」

ライナー「俺とベルトルトとアルミンが一度も勝った事がないくらいにな」

クリスタ「へえ、アルミンよりも…」

ユミル「ほーう?」


ミーナ「じゃあ、今日はバックギャモンで勝負してみたら?」

エレン「いや、チェスの借りはチェスで返す」

ジャン「いんや。バックギャモンでいいぜ?」

ジャン「得意になって自惚れてるその鼻をへし折ってやるさ」

エレン「誰が自惚れてるって!?」


エレン「お前こそ、その強気な鼻っ柱挫かれて泣くなよ」

ジャン「何だと!?」

クリスタ「どっちが勝つかな?」ドキドキ

ユミル「おーい、どっちが勝つか賭けようぜ!」ニヤニヤ

マルコ「どうして2人ともそんなに血の気が多いのさ」ハァ


 * また次の日


ジャン「俺と九柱戯(ケーゲル)で勝負しろ!」ビシッ

エレン「ケーゲル? 何だそれ?」

マルコ「貴族の間で流行っている遊戯だよ。確か屋内でやるとか」

サシャ「これは訊かなくても判ります。ジャンが惨敗したんですね」


ミーナ「そりゃあもうケチョンケチョンにね」

クリスタ「本当に強かったね」

ユミル「クリスタぁ、あんなもん、ただ運任せのゲームじゃないか」

ジャン「そうとも。あんなもん!」

エレン「自分からOKしといて(負け惜しみかよ)」


ジャン「やっぱり頭を使うと同時に体を動かすゲームでないと遣り甲斐がないぜ」

ジャン「だろ?」

エレン「…そりゃ一理あるな」

マルコ「でもジャン、ケーゲルなんて何処でやるの?」

ジャン「マルコ、憲兵団に入るんなら王族の遊戯くらい知っておかねえとな」


ジャン「王が始めて、貴族の間で流行り、それが商会のお偉いさん方にも広まったんだと」

ジャン「そんで、とうとうこの地区にもケーゲル場が出来たんだよ」

ミーナ「内地で流行のゲーム? 何それ面白そう!」

エレン「ええ? 何でわざわざ」

エレン「いつものようにチェスで勝負すりゃいいじゃないか」


ジャン「てめえ、チェスじゃ負けてるだろうがっ!」

エレン「まっ!」カッ

エレン「そういうお前はバックギャモンで勝った事ないだろ!」

ジャン「ばっ!」キッ

ジャン「俺もお前もやった事ないゲームで公平に勝負してやろうって言ってんのによ!」


サシャ「出ましたよ。ジャンの遠回しの愛情表現が」

ジャン「黙ってろよ芋女!」

ジャン「エレン。やるのかやらねえのか、どっちだ!?」

エレン「え? やだよ」

ジャン「てンめぇえええ!!」ムキーッ


マルコ「まぁまぁ、2人とも」アセアセ

ミーナ「ねぇエレン、行くだけ行ってみようよ!」ワクワク

マルコ「僕もやってみたい、かな…後学の為にも」

ユミル「お貴族様のお遊戯か。そいつは頗る興味をそそられるねえ。私らも行くか?」チロッ

クリスタ「わ、私は…別に…」ソワソワ


ユミル「いいから楽しもうぜ、クリスタ。お前、案外上手いかもしれないしな?」ニヤニヤ

クリスタ「……」

サシャ「皆で行きましょうよ! お弁当持って。おやつにケーキ食べて!」ジュルリ

コニー「ちゃっかりケーキの催促かよ。サシャ、お前凄いな」

ライナー「(クリスタが行くなら)俺も参加していいか?」


ベルトルト「み、皆が行くなら…」

アニ「その…私も混ぜてもらってもいいかい?」

エレン「多数決かよ。まぁ、いいか…」ハァ

ジャン「よしっ! 決まりだな!」グッ

ジャン「日程が決まったら知らせる。じゃあな」スタスタスタ


  ワーワー 楽シミー ドンナ服着テイク? エー?  ガヤガヤ

エレン「…何だか…うまく乗せられたような…」

マルコ「はは。そうだね」ニッコリ

マルコ「でも…所属兵科が決まれば、もうこうして一緒に過ごす機会は無くなるね…」

マルコ「そして、生きて再会できる保証も無い…」


マルコ「皆…別れの前に少しでも平和な記憶を持っておきたいんだよ…」

エレン「……そう、だよな…」

マルコ「うん」

エレン「マルコ、ジャンに伝えてくれ。俺が勝つに決まってるって言ってたとな」ニヤリ

マルコ「OK。わかった」クスクス

エレン「じゃあな。おやすみ」

マルコ「おやすみなさい」


   *   *   *


マルコ「…という約束があるので…事を上手く運べば可能な筈です」

マルコ「104期生全員参加で、次の休日にケーゲル大会を開催すれば」

アルミン(いいなぁ…皆でケーゲル大会…楽しいんだろうなあ)

ミカサ(ケーゲル…どんなゲーム? エレンの身は危なくはないのだろうか? 心配…)


ハンジ「いいね! いいね、それっ!!」バッ

ハンジ「宿舎を無人に出来る。みかん箱を探すのに好都合じゃないか!」

ミカサ「!」

ハンジ「大会中に104期生のサンプルも採れる!」

ハンジ「参加賞として全員にミニタオルを渡せばいい」



アルミン「ミニタオルは使われないで持って帰られる可能性があります」

アルミン「汗を拭かせるのならミニナプキンで十分でしょう」

ハンジ「そうか!」

ハンジ「ミニナプキンなら使い捨てにするよね。後はゴミとして纏めて回収すればいい」

ハンジ「次の休日は…2日後だね」フム…



ハンジ「では、それまでにヲイナー捕獲作戦を遂行しよう」ニヤ


ハンジ「ごめんねヱレン、待たせてしまって」

ハンジ「先程から私とマルコがヲイナーと呼んでいるものの説明をしよう」

ハンジ「先ずは目撃したマルコに話してもらおう」

マルコ「はい」

マルコ「ヲイナーを見たのは昨夜、就寝時間を過ぎた後です」

マルコ「その日の最後の点呼が終わると、エレンが外に出ようとしたので呼び止めたら…」


   *

マルコ「エレン、もう就寝時間だよ? こんな遅くに何処へ行くの?」

エレン「さっきまで外で自主練をやっててさ」

エレン「点呼時間になったので慌てて宿舎に戻ったはいいが…」

エレン「うっかり上着を忘れたらしい。今から取りに行く」


マルコ「今から? どこ?」

エレン「この先にこじんまりとした森があるだろ?」

マルコ「うん」

エレン「その森から少し入った所にある小さい湖の手前」

マルコ「じゃあ僕もそこまで同行しよう」


エレン「え? いいよ。先に寝てろよ」

マルコ「違うんだ。今の時期になると白鳥座の辺りで流星群が観られるんだよ」

マルコ「そういうの好きで…毎年観察してるんだ」

エレン「流星群か。アルミンも好きで、よく誘われたっけ…」

マルコ「ああ、彼も天文ファンなんだ」


エレン「よくアルミンとミカサと3人で天体観測したもんさ」

エレン「今度アルミンを誘ってみるといい」

マルコ「そうだね」

マルコ「そう言えば、アルミンとミカサはどうしてるんだろう?」

エレン「調査兵団の分隊長からの依頼で、巨人の謎に関する実験を手伝ってるらしい」


エレン「ミカサは総合成績トップの逸材だし、アルミンは座学トップの秀才だからな」

エレン「手伝いに借り出されるのも納得だよな…」

マルコ「寂しいね」

エレン「べ…別に……」クルッ

エレン「早く行かないと上着が夜露で湿る。一緒に行くなら急いでくれ」


マルコ「あ、ちょっと待って。上着を探すならカンテラを持って行かなきゃ」カチャカチャ

マルコ「お待たせ。行こうか」

  ・・・湖岸・・・

マルコ「へえ、いいところだね。空が良く見える」

マルコ「白鳥が岸縁で眠ってる。起こさないようにしないとね」


マルコ「白鳥の湖で白鳥座流星群を眺める。最高だ」

エレン「えっと…確かこの辺の木に上着を引っ掛けておいたはず…」キョロキョロ

エレン「お、あったあった」

マルコ「見つかった? 良かったね」

エレン「おう」


マルコ「エレンは此処でどういう自主練をやってるの?」

エレン「んー? 主に走り込みだな。湖を一周するとか」

エレン「砂地を走ると負荷が掛かるからな。地味に効くんだ、これが」ニコッ

エレン「たまに泳いだり。な」

マルコ「へえ…以前からエレンって熱心に訓練してると思ってたけど」


マルコ「やっぱり、こういうところで差を付けられちゃったんだね…」

エレン「俺は『持たざる者』だからな。人より努力するしかない」

マルコ「…そんな事はないよ。(参ったなあ…エレンに比べたら僕の努力なんて努力の内に入らないよ)」

エレン「上着も見つかったし。どうせだから流星群も観てから帰るか」

マルコ「うん。今年は相棒が出来て嬉しいよ!」


 ・・・十数分後

マルコ「あっ流れた!」

エレン「おっ! また流れた!」

マルコ「今年は豊作だねえ」

マルコ「エレンは…流れ星に願い事とか…やらないの?」


エレン「マルコはそういうのやるのか?」

マルコ「気が向いた時にね。信じてるわけじゃないから」

エレン「そうか…」

マルコ「うん。験担ぎなんて意味ないと思うけど、心の平穏を保つくらいには意味があるよ」

エレン「なるほど…なぁ…」


マルコ「エレン?」

エレン「いや、何でもない…」

 ・・・さらに十数分後

マルコ「わあ! エレン、今の観た? …エレン?」

エレン「………」ウトウト


マルコ「エレン? 眠いなら帰ろう?」

エレン「………」zzz

マルコ「起きてよ、エレン」ユサユサ

 ガサッ …パキッ

マルコ「何だ今の音?」キョロ


マルコ「…気のせい?」

 シーン・・・

マルコ「エレン、起きろ」ユサユサユサ

 ザッ ヒタヒタヒタ

マルコ「足音? え!?」


???「………」スゥ…

マルコ「ッ…!!」

マルコ「わああ! エレン!!」

エレン「! ごめ、寝て…マルコ!? 何だこれッ?」

 バキッ!!


マルコ「エレンーーー!!」

 ズルッ ズズズ…

マルコ「ま、待てっ! こいつ! エレンを離せ!!」

 ヌルッ

マルコ「な、な何だ? これ!? 掴めない!?」


マルコ「エレン! エレン!!」

 ビチャッ …ヌルッ 

マルコ「ぶ、武器っ! 何かないか? こいつを止めないとっ!!」

マルコ(手に何か当たった! 何だ!? 何でもいい!!)

 ブン! ビュン! ボゥッ


マルコ(咄嗟に掴んだけどカンテラだったのか。でも何も無いよりマシだっ)

???「………」ビクッ

マルコ(!? 怯んだ!? いける!)

???「………」ザッ ザザザザッ

マルコ「逃げられ…いや、今は…エレン!大丈夫か!?」


マルコ「しっかりしろ! エレン!!」

エレン「…ウッ」

マルコ「エレン!」

エレン「…マ、マル、コ…? 俺…どうし…」ウッ

マルコ「大丈夫? 立てる?」


エレン「ぁ、ぁあ…俺、流れ星見ながら寝ちまったのか」

マルコ「何言って……」

マルコ「!!」ハッ

マルコ(そうだ、これ…先日のUMAとよく似た……)

マルコ「エレン、訳は後で話すから、とりあえず宿舎に戻ろう?」


エレン「あ? あぁ…」グラグラ

マルコ「ほら僕の肩に腕を回すといいよ。歩けるかい?」

エレン「ぁ…ぅん…」ユラリ

マルコ(急いで戻らないと。あんなのがまた来たら僕じゃ対処出来ない)

マルコ(それにしても…これは一体どういう事なんだ?)

マルコ(この世界は…今、何が起こっているんだ!?)


   *

アルミン「エレンを一撃で気絶させた!?」ガタッ

ミカサ「そいつを見つけ次第、私が必ず報いを受けさせる」ギリッ

マルコ「そうなんだ。しかも、あの型はエレンの格闘術に似てた」

マルコ「それに、あの体…」


ヱレン「どんな?」

マルコ「僅かに乳白色って言うのかな? 水のように全身半透明だった」

マルコ「エレンの腕を持って引き摺って行こうとしたから、程々の腕力もある」

マルコ「そいつを止めるために腕を掴んだんだけど、スルンと逃げられてしまった」

マルコ「どういう事か分からないけど、ある程度伸縮自在って感じだったな」


アルミン「体型は? 身長とか」

マルコ「うーん、背はエレンくらいか少し低かったかな? UMAとは違って、完璧に人間と同じ姿形をしていた」

ミカサ「どんな顔だった?」

マルコ「それが……思い返してみると…エレンに似ていたような気が…」オドオド

ミカサ「バカな!」ガタンッ


アルミン「マルコ、もっとよく思い出して」

マルコ「…エレンと同じ髪型で、大きな目で…目は虹色だったな」

マルコ「いや、その、見間違い…かも。カンテラを振り回した時に一瞬だけ見えただけだから…」

ハンジ「マルコとエレンの他に誰か目撃した者は居ない?」

マルコ「はい。今日一日ずっと耳を澄ませていたんですが、それらしい話題は何も」


ミカサ「エレンは何て?」

マルコ「それが…本人は夢を見たんだと思ってるらしい」

マルコ「僕だって、あいつの腕を掴まなかったら幻覚かと思っていただろう」

アルミン「そいつは…喋らなかったの? 一言も?」

マルコ「うん。覚えている限りでは」


マルコ「UMAも喋ったりしなかったし。ヲイナーが話せるのかどうかなんて念頭にもなくて…」

マルコ「第一、僕はヱレンが話すのを見て驚いたくらいなんだから…」

アルミン「そうか。そうだよね…」

ヱレン「…ハンジさんは、どう推測されたんですか?」

ハンジ「うん…そうだねえ…」


ハンジ「ややこしい話なんで長くなるけど…」

ハンジ「ヱレンはエレンニウムによって存在を決定づけられたと言った事を覚えているかい?」

ヱレン「はい」

ハンジ「それに関連して2つの面白い事が分かった」

ハンジ「とある医師の研究論文のお陰でね!」


ハンジ「1つは、我々生きものの細胞で分化万能細胞なるものを作る事が出来るらしい」

ハンジ「これに遺伝子情報を流し込むと、元の素体が作られる事が解ってきた」

ハンジ「ここで思い出して欲しいのは、最初ヱレンの体は単なる粘土に過ぎなかったって事だ」

ハンジ「ヱレンは気が付いたらミカサの前に立っていた」

ハンジ「その瞬間、ヱレンは有機生命体として意識を持った、と考える」


ハンジ「それに、ヱレンが怪我を負った時、すぐに治ったと言ったね?」

ハンジ「粘土に我々のような自然治癒力があるだろうか?否!」

ハンジ「つまり、だ。この結果から想定するに…」

ハンジ「エレンニウムには、無機・有機を問わず物質を分化万能細胞のように変化させてしまう性質があるんだ!」


ハンジ「2つ目は、バイオイナートに関してだ」

ハンジ「ある種の鋼を生体内に置くと繊維性皮膜を形成する事が知られている」

ヱレン「はい。知ってます。欠損した骨の代わりに埋め込んで、生体自身に結合組織を造り出させたりするんですよね?」

ハンジ「そう。有り体に言えば、人工骨や挿し歯のインプラントとかだね」

ハンジ「繊維性皮膜は結合組織という事でもある。これは?」


ヱレン「えっと…結合組織は…」

ヱレン「各器官や上皮を形成する蛋白質を疎性結合組織」

ヱレン「靱帯や腱を形成する繊維細胞を密性結合組織」

ヱレン「脂肪細胞を脂肪組織」

ヱレン「リンパ器官を保つための軟骨格を形成する細網組織」


ヱレン「これらの4種類が有ります」

ハンジ「流石に医者の息子だね! 正解!」

ハンジ「そういう結合組織を形成する元となる鋼質ミネラルをバイオイナートと呼ぶ」

ハンジ「バイオイナートによって繊維性皮膜の形成を促すミネラルの転位物質をヲイナートと呼び…」

ハンジ「ヲイナートを注入されて出来た可塑体をヲイナーと言う!」


マルコ「…ヲイナー…」

ハンジ「うん。これらを纏めると…」

ハンジ「エレンニウムは分化万能細胞と同じ特性を持ち、且つバイオイナートとして遺伝子情報を培地に伝える事が出来る!」

ハンジ「エレンニウムは培地と情報の2役をこなす完璧な鋼質ミネラル、いや原形細胞だって事だ!」

ハンジ「そして……」


ハンジ「エレンの遺伝子情報=エレンニウムを混ぜられた粘土がヱレンになったように…」

ハンジ「誰かの遺伝子情報=ヲイナートが混ぜられた何らかの培地が、可塑体ヲイナーとして出現した」

ハンジ「…という事だ」

ハンジ「UMAは、その素体が可塑性を持たぬ砂であったが故に細胞の培地とはならず、可塑体としては不完全だった」

ハンジ「然して、ヲイナーは砂でも粘土でもなく、細胞の培地たるに充分な素体で作成された可能性が高い」


ハンジ「すると浮かび上がってくる疑問は4つ」

ハンジ「ヲイナーの元が誰なのか?」

ハンジ「ヲイナーの素体、培地には何が使われたのか?」

ハンジ「何故、エレンだけが特殊であると思われた特質を持っているのか?」

ハンジ「そして何故、他の可塑体はエレンに執着するのか?」


ハンジ「これらを解決するには、ヲイナーを捕獲するしかない」

ハンジ「いいかい?」

ヱレン「はい」

ミカサ「わかりました」

アルミン「了解しました」

マルコ「はい。了解です」

ハンジ「宜しい」ニッコリ


ハンジ「作戦を実行するにあたり、残念ながら我々には時間的猶予があまり無い」

ハンジ「よって現状で取り得る作戦は至ってシンプルなものとなる」

ハンジ「だが作戦ってのはシンプルな方が成功率も高い」

ハンジ「従って明日の作戦はヲイナーの捕獲のみとするが…」

ハンジ「作戦を成功させる事でヲイナーの製造者に我々への対抗策を練るような時間を与えない事も重要なんだ」


ハンジ「成功の暁には製作者を割り出し拘束する事も可能となるだろう」

ハンジ「具体的には、ヲイナーを囲いの中に誘き寄せ、捕らえる。これだけだ」

アルミン「どうやって誘き寄せるんですか?」

ハンジ「囮を使う。これはエレンにやらせる」

ヱレン「待って下さい! その役は俺が」


ハンジ「いや、あんたは外に出なくていいから。と言うか出ちゃ駄目だ」

ハンジ「ヱレンがエレンと鉢合わせになるのは避けたい」

ヱレン「……………」

アルミン「エレンがヱレンを拒絶する可能性があるから…ですか?」

ハンジ「いいや。違うよ」


ヱレン「!?」

ハンジ「寧ろ、ヱレンがエレンに期待し過ぎないよう頭を冷やす期間を置くためさ」

ハンジ「私の言っている意味、解るかい?」

ヱレン「わかりません」

ハンジ「そうだろうね。だから駄目だ」


ハンジ「ミカサとアルミンには今晩から訓練兵団に戻ってもらう。マルコも一緒に帰っていい」

ハンジ「ミカサ、エレンの警護は任せる」

ミカサ「命に代えても」コクッ

ハンジ「アルミン、マルコもだ。いいね?」

アルミン「はい!」

マルコ「善処します」


ヱレン「ハンジさんは?」

ハンジ「私はこれからアルミン達と訓練兵団まで行って、キースと商会の会合をセッティングしてやるのさ」

ハンジ「聞くところによると、キースが上申書の草稿を書いているそうだ」

アルミン「上申書?」

ハンジ「憲兵団への入団希望者は今年10名に満たないらしいな?」


ミカサ「エレンと私は調査兵団に入団を希望しています」

ミカサ「しかし、上位10名以外にもアルミンやミーナなど注目すべき成績優秀者は数多く居ます」

アルミン「僕は憲兵団へは行かないけど…」

アルミン「でも、確かに成績だけで所属を決められたり、熱意を認められない人は気の毒だと思う」

マルコ「エレンも言ってたね、おかしい、って。ジャンですら愚策と断じてた」


ハンジ「それだよ」

ハンジ「成績10位以下の者でも優秀な新兵は数多くいる。彼らの多くが憲兵団を希望している旨を汲み上げ推薦したい。依って、今迄の法を改正し、候補生の推挙と各兵団からの指名制の2つを新たに導入するべき」

ハンジ「…という、言わば意見書だね」

アルミン「そんなことを…」

マルコ「教官…」


ハンジ「ま、却下されるだろうけどね」

マルコ「えっ?」

ハンジ「憲兵団は王侯貴族と同じ、保守派だからね」

ハンジ「法を是正するなんて考えてもいない」

ハンジ「ましてや兵団が政治に介入するのを好しとする筈がない」

アルミン「………」グッ


ハンジ「だが、王侯貴族と言えども、最近の商会の勢いは無視出来ない」

ハンジ「政界を動かそうとするならば経済界の力を以ってするに如くはない」

ハンジ「ああ勿論、王政をどうこうする心算なんて私には無いよ」

ハンジ「今だけ…キースに期待を持たせられれば良いんだ。兵団を左右するほどの趨勢から賛成論が出れば軍規改定どころか法律改正も大いに有り得る…とね」


ハンジ「商会側も、そろそろ王侯貴族に自分達の力を見せつけたいと思っている」

ハンジ「商会のお偉いさんの中には教会の遣り方に反発する者も出て来た」

ハンジ「連中は巨人さえいなければ壁の内外の開拓をやりたくて仕方ないんだ」

ハンジ「それに自分達が貴族と対等の権勢を手に入れた証を立てる事にも熱心だ」

ハンジ「教会が嫌う壁への着手を狙って、手始めに街中の増改築を行っている者もいる」


ハンジ「ケーゲル場の建設なんか良い例だよ」

マルコ「そんな…」

ハンジ「ただね…商会も利権の発生する所では一枚板ではなくてね」

ハンジ「この世界の状況は複雑すぎるみたいなんだよね…」

アルミン「でも…そんな会合なんかセッティングして…いいんでしょうか…?」


ハンジ「良くはないね」

ハンジ「でもキースなら結果はどうあれ無駄だとは思わないだろう」



マルコ「商会の人がそんな都合良く会合に乗ってくれるでしょうか?」

ハンジ「それは大丈夫。元々これは商会の役員から持って来た話なんだ」


ハンジ「エルヴィン団長のお伴でパ出資者達との夕食会に参加した時だったかな」

ハンジ「工匠組合から商会連盟に移籍してきた成金が居てね」

ハンジ「商会の役員職を金で買ったはいいが、その方面のツテが無かったらしく商談が思うように捗らないとか言っててさ」

ハンジ「各兵団への出入りは古参の出資者が握ってるからね。新参者には厳しいらしい」

ハンジ「で、まずは兵団に出資するところから始めないと、とか適当に言い包めて…」


ハンジ「兵卒の数が増えればお金も掛かる、新兵を増やすには訓練兵団にお金を落としてやる事だって言ってやったさ」

ハンジ「その成金は憲兵団に恩を売りたかったようで、その話には乗らなかったけど」

ハンジ「キース教官の提案が通れば憲兵団も人が増えるから、そうなれば新たに出資を募るだろう」

ハンジ「ってな事を吹き込んでおいたら、会わせてくれってさ」ハハハ


アルミン「………(腹黒)」

マルコ「………(策士)」

ヱレン「………(乙)」

ミカサ「………(この抜かりなさ、見習わなければ)」



ハンジ「私はねぇ…自分の身勝手さを自覚している」


ハンジ「今回も…散々人を振り回しておきながら、この機に乗じてヲイナー捕獲を秘密裡に行いたいだけだしね」

ハンジ「だが、人の目ってのは大きな方へ向けておけば裏で何が起きていても気付かないし、見えたとしても気にしない」

ハンジ「我々が直面している異変を誰にも悟られぬためには、より人の気を引く大事を起こさなくてはならない」

アルミン「……」

マルコ「……」


ミカサ「?」

ハンジ「おや? まさか君たち、捕獲作戦を訓練兵団の宿舎内でやる心算だったんじゃないだろうね?」

ミカサ「エレンを囮にすると言うから、てっきり…」

ハンジ「はは、まさか。囮とは言っても接触なんてさせないし、エレンには見られないよう注意は払うよ」

ハンジ「これだけは譲れないって条件だ。ヲイナーを捕獲するのに街中は避けたい。誰にも見られたくない。何よりエレンに気付かれたくない」


ハンジ「では、何処で捕まえよう? 条件に適うのは何処だと思う?」ニヤニヤ

アルミン「宿舎の外…は、エレンを連れ出す理由が無いし…」

アルミン「訓練場は広過ぎてダメだ…」

ミカサ「食糧庫だとサシャに見つかる。厩舎では馬に騒がれてしまう」

アルミン「倉庫なら十分な広さがあるけど、警備兵の目があるし…」


マルコ「ヲイナーを見た湖では?」

ハンジ「辺りに遮るものが樹木しかないのだろう? エレンも見てしまうよ」

マルコ「エレンにも見せないとなると…難しいな…」

アルミン「古城まで行けば人目は無いだろうけど、馬が必要になるし…」

ヱレン「ハンジさんは教官達を外出させたいんですよね?」

ヱレン「もしかして…ハンジさんが想定している場所は教官の宿直用のコテージですか?」


ハンジ「うん、そうだよ!」

ハンジ「あそこなら訓練生の宿舎から少し距離があるし、街からは遠い。関係者以外誰も来ない」

ハンジ「今はコテージとして使われているが、元々はシェルター付き別荘でね。鎧戸を下ろせば周囲と隔絶されるんだ」

ハンジ「さらに中央には要人警護用に特別に誂えた部屋があり、其処も鎧戸が下りる仕組みになっている」ガサゴソ

ハンジ「ああ、あったあった。 ごらん。これはその設計図だ」パサッ


ハンジ「急な事で悪いが、今この場で間取りを頭にたたきこんでくれ」

ミカサ「これを持って行ってはいけないの?」

ハンジ「一応、機密文書だからねぇ。すまないが持ち出し禁止だ」

アルミン「写しを取るのも駄目ですか?」

ハンジ「んー、書き写すくらいならいいか。でも急いでくれ」

マルコ「あ、僕も念のためにメモっておきます」カキカキ


ハンジ「では最終確認をしよう」

ハンジ「先ずは作戦の段取りだ」

ハンジ「明日、訓練が終わる夕刻から深夜まで、教官をコテージから遠ざける」

ハンジ「エレンを中央の部屋に配置し、守り通す」

ハンジ「我々は中で待ち伏せておき、ヲイナーがコテージ内に侵入したら…」


ミカサ「袋の鼠」

ハンジ「そうだ」

ハンジ「各自、今夜やる事は…」

ハンジ「まず私が教官達に会合の話をし、全員参加を呼び掛ける」

ハンジ「留守中の当直にはミカサを推す」


ミカサ「当直は2人2組で交代制…」

ミカサ「わかった。私がエレンとアルミンとマルコを指名する、あるいはさせる」

ハンジ「そうだ。私もフォローするから安心するといい」

ハンジ「アルミンは作戦開始時までエレンの周囲を警戒」

アルミン「はい!」


ハンジ「マルコは引き続き皆の様子を探ってくれ」

マルコ「了解しました」

ハンジ「何か質問は?」

ミカサ「ありません」

アルミン「ありません」

マルコ「ありません」

ハンジ「ありがとう。君達のお手並みに期待してるよ」ニコニコ


ハンジ「では訓練兵団まで行ってくるよ。ついでに下コテージの下見をしとくかね」

ハンジ「じゃあ、ヱレン、お留守番頼んだよ」ヒラヒラ

ヱレン「はい。行ってらっしゃい」

アルミン「終わったら直ぐに戻って来るからね。おやすみ、ヱレン」

ヱレン「ああ。おやすみ、アルミン」


マルコ「また会いに来るよ。おやすみ、ヱレン」

ヱレン「おう、待ってるぞ。おやすみ、マルコ」

ミカサ「心配しなくていい。すぐに戻る」

ヱレン「ミカサ、ちょっと…」

ミカサ「ヱレン?」


ヱレン「作戦が始まったら、この本をエレンに渡して欲しい」つ

ミカサ「これ? …著者…グリシャ・イェーガー!!」

ヱレン「ハンジさんに貰ったけど、俺はもう読んだから……」

ミカサ「ヱレン……」ジッ

ヱレン「………」フイ

ミカサ「わかった。必ず渡す」ギュッ


ヱレン「ありがとう。おやすみ、ミカサ」

ミカサ「おやすみなさい、ヱレン」

   …パタン…

ヱレン「参考にした研究論文の著者が父さんだったなんて…」

ヱレン「しかも一介の医師の論文が王立図書館に収蔵されていた?」

ヱレン「ハンジさんは知ってて黙ってたのか、それとも……」


    今日はここまでです。
    下書きが消えてしまったので思い出しながら書いた。

    下書きの方が出来が良かった。泣きたい。。。


 ~ハンジによるヱレン連行の7日前(=リヴァイによるエレン拉致から17日前)~



みかん箱「ヱレンが眼鏡の分隊長に連れてかれちゃったよ」

みかん箱「オレ、全く出番が回って来ないんだけど?」

みかん箱「何か忘れられてるっぽくない? どういうことなの?」

みかん箱「あ、オレの言葉遣いが一定じゃないのは、元がいろーんな雑誌だったからだ。決して設定ミスではない」

みかん箱「え? そのわりにボキャブラリーが貧困だって? やかましいわ!!」


 トントン…トントコトントン…トントン

サシャ「今晩は、エレン。って、あれっ?」

みかん箱「来てくれたんだ、サシャ。いらっしゃい。でも、ヱレンなら居ないよ」

サシャ「エレン、どうしたんでしょうねえ。今日はまだ来てませんねぇ」

みかん箱「来ないんじゃなくて、連れてかれちゃったんだってば」


サシャ「…今日はもう来ないのかな?」

みかん箱「ごめんなサシャ。ヱレンはいつ戻るのかさえ判らないんだ」

サシャ「残念ですね。とりあえず、水だけ置いて帰りますか」

サシャ「おやすみなさい、みかりん箱ちゃん」

みかん箱「サシャは優しいねぇ。ちゃんとオレにも声をかけてくれるんだから」


 * 翌日(6日前)


ジョシー「うーん、いつもなら手近にあるのに、探し始めると見つからないなあ」

みかん箱「ん? 誰かの声が…」

 ガサゴソ…ガチャッ キィ…

ジョシー「あ、あったあった! こんなところに」キャピッ

みかん箱「ちょ、何でオレを畳むんだよ!」


みかん箱「って、おい! そっちは男子寮じゃないか」

ジョシー「ジャーン! ダンボール見つけたけど、要る?」

ジャン「おう、サンキュ。助かったぜ」

みかん箱「向かった先があろうことかジャンのとこ! 何でジャンだよ? ありえないジャン!」

みかん箱「ジャンのヤツ、とうとうミカサ姐さんの持ち物に手を出しやがって!」


ジョシー「良かったあ。また何かあったら…私で良かったら言ってね///」

ジャン「お? お、おう。ありがとな」

ジョシー「えへへ/// またねっ」パタパタパタ

みかん箱「んん? どうも思ってたのと様子が違う?」

みかん箱「どうやら、さっきのジョシーはジャンの事が好きらしいな。ジャンのためにオレを見つけ出したってわけか」


ジャン「フフフン、フフーン♪」

みかん箱「ジャンのヤツ、鼻歌なんか歌いやがって。機嫌良いな」

みかん箱「って、おいこら! 何勝手にオレん中にガラクタ詰めてやがんだよ!」

みかん箱「オレのスマートな体型が崩れるだろ! ったく!」

ジャン「フフーン、フフフフーン♪」ガサゴソ


 * その翌日(5日前)


ジャン「これで大方は片付いたかな?」キョロッ

ジャン「ちっくしょ重てぇ!」

みかん箱「おいジャン! オレ持ち上げてどこ行くんだよ?」

ライナー「えらく大荷物だな? ジャン」


ジャン「ああ、これ? UMA騒ぎで壊れた備品とか汚れちまったモンとかな」

ライナー「そんなにあったか。お互い大変だったよな」

ジャン「おう。さっさと片付けねぇとな。じゃ、お先ー」スタスタ

みかん箱「おい、ここ焼却炉じゃん! 何でオレごと棄てやがる!?」

みかん箱「ジャンってば、おいっ! オレを置いて行くなぁあああ!」


みかん箱「ありえねえ! 焼却炉だぞ? 今まさに目の前で轟々と火ィ吹いてんのよ? 地獄の熱さよ!?」

ミーナ「よいしょっと。まだ火は入ってるね。間に合ったあ」

みかん箱「ミーナ!? ミーナ! 助けてくれ!」

ミーナ「あちゃ~ゴミで一杯だよ。…ん? あれっ!?」

ミーナ「この箱…見覚えが……ミカサのじゃない?」ズズズ ザザッ


みかん箱「た、助かったぁ! マジで死ぬかと思ったぜ」

ミーナ「やっぱり間違いないわ。私の字だもん」

みかん箱「みかんの文字はミーナの直筆だからな。オレの事を覚えていてくれてありがとう」

ミーナ「変ね…ミカサがこの箱を捨てる筈ないわ」

みかん箱「さすがにミーナはミカサ姐さんの事情に明るい」

ミーナ「きっと何か手違いがあったんだ…回収しておこう」スタスタスタ

みかん箱「ミカサ姐さんの部屋まで運んでくれた! ミーナ、この恩は忘れないよ!」


 * そのまた翌日(4日前)


サシャ「おはようございます! 不燃物回収の時間です」

みかん箱「おお! おはようサシャ。部屋で会うなんて初めてだね」

サシャ「あれ? 皆さんもうお出掛けですか。ではゴミはナシって事で失礼しまーす」

サシャ「あれれっ? ここにあるのは…エレンお気に入りの箱ではありませんか」

みかん箱「エレンじゃなくてヱレンなんだけどな」


サシャ「道理で昨晩は見ないと思いました」

みかん箱「昨晩も物置部屋覗いたんだ…」

サシャ「どうしたんでしょう? ミカサが回収したのでしょうか?」

サシャ「でも、エレンはこの箱を気に入ってましたよね…」

サシャ「箱がないとエレンはあの物置まで来てくれなくなるかもしれません…」


サシャ「……戻しておきましょう」

みかん箱「そうきたか」

みかん箱「堂々と持ち出すんだね…サシャ…」

サシャ「ふふっ///」スタスタ

サシャ「おっと。今クリスタと擦れ違ったぞ? サシャ」


みかん箱「気にしてないね…バッチリ見られてしまったのに」

みかん箱「まずい予感」

サシャ「はい、あなたの定位置ですよー。エレンが来たらよろしく言っといて下さいね」

みかん箱「はい。って何で了承してんだオレー!!」

 パタン…パタパタパタ…


 ガチャッ!

クリスタ「……これが例の…」

みかん箱「案の定、来たね。クリスタ」

みかん箱「例の、って何? 何か不穏な感じがするんですケド」

クリスタ「ハンナの言ってる事が正しければ、この箱からエレンのそっくりさんが出てくるんだよね?」

みかん箱「はあ!? どうしてそう思った!?」


クリスタ「方法は大体分かってるから、後は実行あるのみね」スタタタッ

みかん箱「あのー、変な誤解があるようだけど?」

みかん箱「今度はクリスタに攫われた。抵抗出来ない我が身が恨めしい」

みかん箱「ベッドの下に追いやられてしまった。暗いよ狭いよ怖いよう」

クリスタ「明日は私だけのエレンが手に入る。うふっ/// うふふふっ///」


ユミル「おっ、クリスタ、ゴキゲンだなあ。何か良い事あったのかあ?」

クリスタ「えへっ/// な・い・し・ょ」

ユミル「そう言わずに教えなよ。擽りの刑にしてやるぞォ?」

 いちゃこらいちゃこら…しばらくお待ちください。

みかん箱「オレ、クリスタが分かんねぇ…」


 * 翌日(3日前)


みかん箱「どういう経緯でクリスタが誤解したのか一晩考えたんだが…分からない」

みかん箱「まあ…クリスタにスリスリサワサワされるのは嫌いじゃない、ってか役得?かもだけど」

クリスタ「うーん、どうやったらエレンが出て来るんだろ…?」

ユミル「おいクリスタ。お前さっきから何してんだ?」

クリスタ「ユ、ユミル! いつからそこに?」


ユミル「いいから答えな。事と次第によっちゃあ…」

クリスタ「こ、この箱を撫でるとエレンが出て来るのっっっ!」

ユミル「…ハァ? クリスタ、どこで頭を打った?」

クリスタ「頭なんて打ってないよ! 違うのっ!」

クリスタ「ハンナがミカサが黒魔術を使ってるの見たって言ってたから!」


ユミル「やっぱりおかしい。今すぐ医務室行くぞ」グイグイ

クリスタ「本当なのっ! もうっ! ワケを話すから聞いてよ!!」

 ぺちゃらくちゃら ぺちゃらくちゃら …30分経過

ユミル「悪いが信じられないね」

ユミル「あたしも長いこと世の中を見て来たけど、そんな話は聞いた事がない」


クリスタ「でも、ミカサは東洋人の生き残りだっていうし…」

クリスタ「東洋の神秘って、そんな事も可能にしちゃいそうじゃない?」

ユミル「だから! そんなの有り得ないって! 夢見過ぎだ」

ユミル「まったく! こんなもんがあるから!」ゲシッ

みかん箱「痛ぇ! 蹴られた!」


クリスタ「だ、駄目ぇ! それはミカサのものだから壊しちゃダメ!」

ユミル「うっ…そ、そうだった」

ユミル「いくらあたしでもミカサを敵に回すのはちょっと…(冷や汗)」

ユミル「こいつはミカサに返す。あたしが直接渡すからな。いいな?クリスタ」

クリスタ「う、うん……」モジモジ


ユミル「じゃあ、それまで隠しておくから。部屋出てろ」

クリスタ「わかった……」トボトボ

みかん箱「で、考えあぐねた末に隠した場所が天井裏かよ」

みかん箱「なあ? ユミルがオレの事これきり忘れちまったらどうなるんだ?」

みかん箱「年末の大掃除までこのままか?」


みかん箱「このままここでカビ生やして朽ちて腐っていく…なんて事はないだろうな?」

みかん箱「……………」

みかん箱「おーい! 誰かあ! おおおーい!」

 ガタッ…ゴソゴソ…カタン…コツ…コツ…ギシッ

みかん箱「本当に誰か来た!? 捨てる神あれば拾う神あり。月夜半分闇夜半分」

みかん箱「思わず世を儚んだが…有難う神様!」


みかん箱「暗くて誰か判らないけど…どちら様?」

アニ「ここなら誰も来ない。さ、話を聞かせてもらおうかね」

みかん箱「へ? 誰かと思ったらアニ!? しかも激おこ?」

ベルトルト「いや、本当に僕達には身に覚えが無いんだよ」

ライナー「本当なんだ、アニ。信じてくれ」


みかん箱「相手はベルトルトとライナー兄貴!?」

みかん箱「何故かアニが激おこプンプン丸だよ。一体どうなってる?」

アニ「ハッ! UMAを見た後で誰があんたらの言い訳を信じるとでも?」

みかん箱「UMA? これは予想外の単語が出て来たぞ」

アニ「どう見てもアイツらはあんた達2人のミニチュアだった」


アニ「さっさと吐いたらどうなんだい?」

アニ「私に内密であんな作戦を仕掛けた理由は?」

ベルトルト「だから! 本当に僕達は関与してないんだ」

ベルトルト「UMAが僕達にそっくりだった理由も解らない! 何も知らないんだ!」

ベルトルト「第一、僕達があんな作戦をあんなタイミングで実行すると思うかい?」


ベルトルト「事がここまで進んでいるのに、そんな無駄な事をする訳がない」

ライナー「そうだぞ!? 俺達は遊んでるんじゃないんだ」

アニ「ふん、どうだかね」

みかん箱「い、今、もの凄い事を耳にしたような…」

みかん箱「UMAが2人の…?」


ライナー「ハッ! そ、そうだ、ミカサの仕業じゃないのか!?」

アニ「ミカサ? どうしてここにミカサの名前が出てくるの」

みかん箱「アニがムカ着火ファイヤー・モードになった」

ライナー「そりゃお前、ミカサはエレンを造ったらしいから…それで」

ベルトルト「ええっ!? 何それ!?」


アニ「どういうこと?」

ライナー「いや、お前に呼び出されてこの場所まで這って来る間に、下の部屋からクリスタとユミルの会話が聞こえてきてな…」

アニ「この危急時にデバガメとは情けない奴!」ゲシッ

ライナー「ぐぁ!」プシュー

みかん箱「うっわ、アニの踵落としが炸裂!」

みかん箱「しゃがみ込んだ姿勢からでも繰り出せるとかどんだけだよ」


ベルトルト「うわあ! ライナー! しっかり!」

アニ「いいから、その話、もっと詳しく話しな」ゲシッ

みかん箱「アニがカム着火インフェルノーォォォオオウ・モードに!」

 かくかくしかじか …30分後

ライナー「それで…それに、それ以来ミカサの姿を見ないし…」


ベルトルト「た、確かに…」

アニ「………」

ベルトルト「あ、アニ…?」コワゴワ

アニ「ライナー…それって、この箱の事かい?」チラッ

みかん箱「!!」ビクッ


ライナー「あ、ああ、そうだ。それだ」ビクビク

アニ「 」ニチッ

みかん箱「!! 激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム!」

アニ「わかった。もういいよ」スチャッ

ベルトルト「……(ホッ)じゃあ僕達への疑いは晴れたんだね」

ライナー「……(ホッ)なら、もう帰ってもいいよな?」

アニ「あぁ…」ガッ

みかん箱「アニ! 爪! 爪が食い込んでるぅぅぅ!」


アニ「……そうだ」クルッ

ライベル「「!」」ビクッ

アニ「悪かったわね」フフフ…

ライベル「「!!」」ゾゾゾゾォ

 ガタン…シュルッ…カツッ…ン

アニ「……」スタスタスタ

みかん箱「アニ、オレを拾ってくれたのはいいけど…」


みかん箱「な、何もしない、よな? な?」

みかん箱「アニ…どこまで行くの? 黙ってないで何か言ってくれよ」

アニ「…どう言って切り出せばいいかな?」

みかん箱「え?」

アニ「脅すのは得策じゃないし…かと言って煽てるのは苦手だし…」ザリッ


みかん箱「ここは…倉庫? 今晩は倉庫に置き去りにされるワケ?」

アニ「何とかハンナに話を訊かないとね」スタスタスタ



クリスタ「っもうユミルったら。何も取り上げなくてもいいじゃない」

クリスタ「こうなったら何とかみかん箱を取り戻して…」

クリスタ「ハンナに詳しい遣り方を訊こう。うん、そうしよう」


 * 翌日(2日前)


 ガラッ …ガサゴソ

キース「おお、あったぞ。使えそうな箱が」

みかん箱「…はよ…ざいます…」

みかん箱「うぅ、考え過ぎて頭痛い。寝不足気味で朝日が眩しい」

キース「少し大きいが、まあいい。何しろ上申書100部は嵩張るからな」スタスタ


キース「…余裕を見てもう100部刷るべきだったかも…」

みかん箱「…ん? …キース教官? 何の話ですか?」ハッ

みかん箱「あっ! ここ、教官室じゃないか!? これはマズイ!」

キース「搬入までに各兵団宛てに仕分けもしないと…」トン

みかん箱「まさかオレ…内地に送られるんじゃないよな!?」


 * 同時刻


ミーナ「ない」

サシャ「ない…」

ユミル「ない!」

クリスタ「ない!?」

アニ「ない!!」


「「「「「「ここにあったはずなのに!?」」」」」」

随分長いSSだな


    長いですか……

    すみませんorz

楽しいから問題ない

終わってから読むんだから
早くしてくれ


     >>522 ありがとうございます。

     自分でも呆れるほど長くてショボい話ですが、もう少しだけお付き合い下さい。


     * その日の午後


アニ(こうなったら急いでハンナに話を訊いた方がいいね)

アニ(ハンナがこっそり出掛けようとしてる!)

アニ(こっちは倉庫がある……そうか、フランツとの逢い引きかな)コソコソ

アニ(思わず後をつけちまったけど…どうしよう? 2人が出て来るまで待つか…)

アニ(いやちょっと待って。あれは…クリスタ?)


アニ(どうしてクリスタがこんなところをウロウロしてるの?)

アニ(まさか! 同じような目的で!?)

アニ(となるとマズイな。こっちが先手を打たなきゃ)

アニ(いっそ中に入る? クリスタなら入って来ないだろうけど、ハンナ達のイチャイチャを見せつけられるのもねぇ…)

アニ(クリスタが入り口に座り込んだ? あれは長期戦も辞さないって構えだ)

アニ(いよいよマズイなあ)

アニ(仕方ない。中で機会を待とう)スルスルッ


アニ(そういや、資材専用の倉庫って滅多に入らないから覚えてなかったけど)

アニ(もっと暗いのかと思ってたら、そうでもないね)キョロッ

アニ(ああ、採光用に天窓があるんだ)

アニ(ハンナとフランツに見つからないよう、もう少し奥に行って隠れよう)

アニ(それにしても仲のよろしいこって。どうせなら例の話にならないかなぁ)ぼー…


 ガンッ …ギュィイイン…ゴォォオン…


アニ(! び、びっくりした! 何? 今の?)

アニ(近くで何かのモーターが回り出した音みたいだけど…)

アニ(ビクッってなった時に、どっかにぶつけて掌に裂傷が)ピリピリピリ

アニ(ま、いいけどさ。こんなもん、すぐ治るし)

アニ(いや、ここで蒸気が出たら…2人に気付かれてもヤバイ)キョロキョロ


アニ(あ、この缶樽の中身ってアルカン? ついてる!)

 パカッ …ネチョ…… ポタッ

アニ(しまった、滴った血が中に入っちゃった)アセアセ

アニ(何とか掬い取らないと、誰かが此処に侵入したってバレたら余計な詮索が入る)

 ヌチャッ… …ネチョ… ニュルン …プルルッ

アニ(!! こ、これは…っ!!)


アニ(そっか。こんな簡単な事だったんだ…)

アニ(あっだめだめだめ! 私じゃない! 私じゃだめ!)

アニ(私がもう一人出来たって…)

アニ(欲しいのはエレン。エレンなんだ!)

アニ(エレンの、あの真っ直ぐな目が、私だけを見てくれたら!)


アニ(そうさ。あいつはいつだって真っ直ぐで…)

アニ(…父さんでさえ私を見ようとしなかった)

アニ(同郷のヤツでさえ私と目を合わせようとしない)

アニ(正体を隠しているんだから当然とはいえ、同期の皆は私を見てはいない)

アニ(本当の私がこんな深みに居るって事に誰一人気付きもしない)

アニ(そう思ってたのに…)


アニ(エレンは違った。エレンだけが違った)

アニ(どうして惹かれずにいられるだろう、あの瞳に、あの純粋な心に)

アニ(あの目は澄み切っていて、鏡のように覗き込んだ私の全てを映すけれど…)

アニ(同時に、息苦しさも胸の痛みも総て吸い込んで、無垢だった頃の自分を見せてくれる)

アニ(その無垢な自分をエレンもまた見ててくれる…そんな気がして……)


アニ(錯覚かもしれない。勘違いかもしれない。儚い期待なんだろうけれど)

アニ(綺麗な私を見せてくれるあの目にもっと映していて欲しいんだ)

アニ(嗤われるだろう。嘲られるだろう。こんな執着)

アニ(それでもいい! それでも私は…っ!)

アニ「エレン……エレン……」


??「…アニ……」

アニ「…エレンが……」

??「……?」

アニ「エレンは…もっと…こんなで……」

??「こう?」

アニ「うん」


??「こんな?」

アニ「そう。だいぶ似てきた」

??「どう?」

アニ「うん。凄く良い」

??「私はずっとこのまま?」


アニ「私、じゃないでしょ? いつも俺って言ってるじゃない」

エレニ「俺はずっとこのままで?」

アニ「うん」

エレニ「いいよ。それがアニの希みなら」

アニ「! エレン!!」


   * 倉庫・ロフト


アニ「あんたはさ、黒髪じゃないんだね」

エレニ「そりゃあ俺の基はアニだからな」ナデナデ

アニ「そっか…元が私だから…」

エレニ「エレンが造りたければエレンの血を手に入れないと」ナデナデ

アニ「……そ……う……なんだ……」ウトウト


エレニ「エレンを連れて来ようか?」ジッ

アニ「……エレン…を……造…る………」

エレニ「そうだよ。連れて来ようね」ナデナデナデ

アニ「………」zzz…

エレニ「私だけのエレンを造るために」フッ


 ~ エレン拉致から9日前 ~


ミカサ「おはよう、エレン」

アルミン「おはよう」

エレン「おう、おはようミカサ、アルミン」

エレン「しばらく振りに会った気がするぞ」

ミカサ「ちゃんとご飯は食べてた? 訓練中に怪我しなかった? 睡眠は十分取っていた?」

エレン「やめろって、ミカサ」


エレン「お前、相変わらずだな」クスッ

ミカサ(エレンが微笑った!)ピク

アルミン「ミカサ」クイクイ

ミカサ「(そうだった) エレン、今夜は当直の教官は居ない。私が代理を務める事になった」

エレン「え、そうなのか?」


ミカサ「そうなの。それでエレンにも手伝って欲しい」

アルミン「僕とマルコも任に就くんだ」

エレン「すると俺も含めて4人か。いいぞ」

ミカサ「ありがとう、エレン」パアッ

サシャ(さっきまでみかん箱が何処にあるのか訊いてきたミカサとは別人のようです)ヒソヒソ

ミーナ(焼却炉の傍で見つけたと言った途端、縊り殺されるかと思った)ヒソヒソ


ジョシー(どうしよう。あの箱がミカサのだったと聞いたのはジャンに手渡した後だったのよ)ガクガク

ジョシー(代わりに別の箱を置いといたのも私だけど…ミカサに正直に話すべき? でも死にたくない)ブルブル

ユミル(今ならミカサの機嫌は良さそうだが…謝っても許して貰えるかどうか…)ゲッソリ

クリスタ(やっぱり私のせいよね…みかん箱を失くしたってミカサに言ったら…反応が怖いっっっ)ウルウル

アニ「おはよ」

ライナー(いつも仏頂面のアニが2日連続で機嫌が良いなんて怪し過ぎる)

ベルトルト(あれから一転してあの調子だ。これは何かある)


ライナー(変と言えばクリスタもだ。思い詰めた顔をして…)チラチラ

ライナー(…可愛いじゃねぇか。結婚しよ)ムフッ

クリスタ(それにしても…ハンナがエレンの作り方を忘れていたなんて…ショック!)

クリスタ(こうなったら何としてもみかん箱をゲットしてやる!)

クリスタ(最初の方法で何度でもやってみよう)

クリスタ(そうよ。やってみなきゃわからないんだ!)

クリスタ(とにかく今はミカサに謝って、みかん箱探すの手伝うって言わないと)

クリスタ(私が自由に動くためにはこれしかない)グッ


ミーナ(アニとクリスタの表情が対照的…どういうこと?)

サシャ(クリスタとアニの様子が…あれは何か悪い事を企んでいる顔です)

アニ(それにしても…ハンナに訊くまでもなかったのはラッキーだった)

アニ(近くにあったアルカン樽が私の疑問に全て答えてくれた)

アニ(こうなれば後は何とかエレンの血液をゲットするだけ…)

アニ(何とか対人格闘訓練の時にエレンと組まないと)

アニ(エレンに怪我させるのは心が痛むけど、擦り傷程度ならいつもの事だし…)

アニ(後はもう一人のエレンが手伝ってくれる)ポッ


   …午後…

サシャ「エレンがミカサに独占された一日でした」ガックリ

ミーナ「やっぱりミカサには敵わないのかな…」ポツリ…

ユミル「まさかミカサが許してくれるとはね…正直になるのもたまには良いってか」ホッ

クリスタ「ミカサに断られてしまった…まさか気付かれてるの!?」

ジョシー「い、いいい命拾いをしたっっっ!!」ドキドキドキドキ

ジャン「マルコの奴、いつの間に。ミカサと夜警当番なんて羨まし過ぎる!(涙目)」

アニ「結局、一緒に訓練するどころか、エレンに話し掛ける事さえ出来なかった……」ボーゼン


   * 宿直用コテージ


エレン「へぇ…宿舎の当直室とは違って、こっちはバカでかいなあ」

アルミン「元はこの地方の豪族の別荘だったそうだからね」

エレン「アルミンは何でも詳しいなあ。博学なところとか尊敬するぞ」

アルミン「い、いや、たまたま知ってただけだよ(苦笑)」

マルコ「そろそろ配置に着かないと」


ミカサ「エレン、合言葉は覚えた?」

エレン「えっと…『ソイレントグリーンは人間だ』だっけ。ってかコレって何?」

ミカサ「ただの合言葉。意味は無い。有るけど無い」

アルミン「ほ、ほら、合言葉なんだから、誰もが思いつくような言葉じゃダメだからね」

マルコ「そうそう。山、川とか、フラッシュ、サンダーなんて誰だって想像できるからね」ハハハ


エレン「なるほど。確かにその通りだな」

ミカサ「私のは『雄鶏は皆を起こそうと夜明けに鳴く。だが梟はまだ夜であると知っている』」

アルミン「僕の合言葉は『狐がうろつき主人は眠る。これが我々だ』だよ」

マルコ「僕のは『月曜日か!月曜日のバタースカッチプディングは最悪なんだ』だね」

エレン「…長くないか?」


アルミン「いいんだよ長い方が。声を聞き間違える事もないだろう?」

エレン「そうか、そこまで考えての合言葉だったんだ」

アルミン「じゃあ、もういいね。配置に着こう」

ミカサ「エレン」

エレン「何だよ?」

ミカサ「これ」つ


エレン「何だこれ? 本か? ここで勉強してろって?」

ミカサ「よく見て」

エレン「著者…!! ミカサ、これ何処で?」

ミカサ「ハンジ分隊長から(ヱレン経由で)回ってきた。エレンが持っていていいって」

エレン「ミカサ…もしかして、お前、この本の為に調査兵団の手伝いをやってたのか?」


ミカサ「ううん、違う。でも、これはエレンの元に来るべくして来た本。大事にして」

エレン「あ…ありがとう! ミカサ」グッ

ミカサ(エレンにハグされた! エレンにぎゅってハグされた///)ポッ

ミカサ(ヱレン、ハンジさん、ありがとう!)

ミカサ(この恩は必ず! 末代まで祝ってやる!)


ミカサ「では私はもう行く。本は時間までこの部屋でゆっくり読んでいるといい」

エレン「おう。じゃ、また後でな」

 …パタン…

ミカサ「さて。この部屋の鎧戸を下ろせば…」

 ポチ …シュウウゥゥゥ… …シュウゥゥ… …シュゥ… カタン カタン カタン カタン カタン

ミカサ「用意は整った。後は迎え討つのみ!」スラッ チャキッ


   *

エレン「ん? 何か妙な音と振動が…?」

エレン「あれ? ドアが開かないぞ?」ガチャガチャ

エレン「外からしか開かないのか? そんなわけねぇか」

エレン「外の音がプッツリ聞こえなくなったけど、あいつら大丈夫か?」

エレン「……まっいいや。交代時間になりゃ気付くだろ。今は本の方が気になるしな」

   *


マルコ「あいつ…ヲイナーは、来るかな?」

アルミン「たぶん、直ぐに」

ミカサ「エレンは予定通り中央の部屋に」

アルミン「お疲れ。もっと何か訊かれると思ったけど、案外素直に従ってくれたね」

ミカサ「本を渡して来たので、そちらに気を取られている」

マルコ「外壁の方の鎧戸は?」

ミカサ「ヲイナーが侵入したのを確認してからアルミンが下ろして」


マルコ「後でハンジさんも駆け付けるって言ってたけど」

ミカサ「鎧戸が下りていた場合はそのまま外の見張りに立ってくれる」

ミカサ「マルコは勝手口へ回って待機して」

ミカサ「私は中央の部屋の護りを固める」

ミカサ「異常に気付いたらお互い口笛で知らせ合う」

アルミン「了解」スチャッ

マルコ「了解だ」ジャキッ

ミカサ「では宜しく」


    …数分が経過…

アルミン(締め切ってるせいかな? 何だか蒸し暑い)

マルコ(まずい。緊張して手が震えてきた)

 …カタン…

マルコ(! き、きき来た!?)

ハンジ「マルコ! マールーコ! 開けておくれ!」ドンドンドン

マルコ「な、何だ、ハンジさんか」フーッ

ハンジ「やれやれ。間に合った」ニパー


マルコ「馬を飛ばして来たんですか?」キョロキョロ

ハンジ「ああ。繋ぐ手間が惜しくてね。早く入れてよ」ギュウギュウ

マルコ「駄目ですよ、馬は繋いでおかないと」グイグイ

 ガターン Piiiiーーー!!

マルコ「口笛!? しまった!」


ハンジ「うおっ!?」

 ガシャーン! ガシャーン! ガシャーン!

ハンジ「鎧戸がっ!!」

マルコ「行きます! すいません分隊長!」ダダダダ

ハンジ「くそっ!! 一歩遅かったか」

ハンジ「いや、侵入経路を探ればどっちから来たのか判る! 足跡を見つけよう」ザザッ


マルコ「アルミン!」ダダダッ

アルミン「……ぅ…う………」クラッ

マルコ「しっかりしろ、アルミン! 奴は!?」

アルミン「あ、あいつ…切りつけたのに刃が素通りした…っ!」

アルミン「僕は投げ飛ばされて…このザマだ…クソッ!」

アルミン「行ってくれ、マルコ! 僕に構うな。エレンを守るんだ!」

マルコ「わかった!」バッ

マルコ「外にハンジさんが来てる。出来れば指示を仰ぐんだ」ダンッ


   *

エレン「何だ? また振動を感じるが…これじゃ本も読めねえ」

エレン「夜だから巨人の襲撃ってわけではなさそうだし…地震か?」

エレン「…さっきから…俺の目の錯覚か? このテーブル浮いてないか?」

エレン「え…? いや違った…テーブルの脚が伸びてる?」

 ギギギ …ガシャン… カチッ

エレン「はぁ? 何だこりゃあ!? 俺の背丈より高くなっちまったぞ?」


エレン「どうなってんだ?」ヒョイ

エレン「テーブルってぇより、でかい箱みたいだな…」

 カチリ! シュウゥゥ…

エレン「えっ!? テーブルの下に潜った途端にまた動き出した!」

エレン「ゆ、床がっ! テーブルが俺ごとめり込んでく!!」

エレン「やっべぇ! 早くこっから出ないと!!」


 シュゥゥウ…ウィィィイイイ…ィィイン

エレン「ダメか。くそっ。一体どこまで降りるんだ?」ガンガン

 ポーン! ガーッ

エレン「?? こ…れ…? ここどこだ?」

エレン「まさか…地下か!?」


   *

ミカサ「くっ…! こちらの刃は素通りするのに、こいつの攻撃は当たる!」ビュッ

ミカサ「なぜ!?」ガキン

エレニ「なぜだろうな?」クスクス

ミカサ「エレンの顔で嗤うな!」ビュンビュン

エレニ「おっと。危ないじゃないか、ミカサ。俺を殺すつもりか?」

ミカサ「黙れ!」ブン


エレニ「お前の相手ももう飽きたぞ。ここを通してもらう」シュルン

ミカサ「ま、待て!!」バッ

マルコ「ミカサ!」ダダダダ

ミカサ「行かせない! 行かせるものか!」ザクッ ザクッ

マルコ「な、何だ? そいつ…まるで融けた蝋燭みたいに隙間から中へ…っ!!」

ミカサ「切っても突いてもダメージを与えられない! どうすれば!?」

マルコ「エレン! 逃げろ! 聞こえてるか? エレーン!」バンバン


ミカサ「だめ。たぶん、中には聞こえない」

ミカサ「でも、鎧戸が下りている限りヲイナーにはエレンを連れ出す事は不可能」

ミカサ「なので、あいつが出て来るところを狙う」ギン

アルミン「ミカサ! マルコ!」タタタ

ミカサ「アルミン! 怪我を!?」

アルミン「大丈夫。それより奴は?」

マルコ「中だ」

ミカサ「ごめんなさい。阻止出来なかった」

アルミン「! じゃあ…奴は今、エレンと対峙してるのか」


マルコ「アルミン、ハンジさんは何て?」

アルミン「それが、どうも近くに居ないみたいなんだ。連絡は取れなかった」

マルコ「そうか…」

マルコ「もしかしたら、ヲイナーの製造者が近くに来ていないか確認してるのかもね」

アルミン「かもしれない。どちらにせよ今は僕らだけでこの場を切り抜けなきゃ」

ミカサ「エレン……無事でいて……」ギュッ


マルコ「…ねぇ、鎧戸を上げて、僕達も突入した方が良くないか?」

マルコ「当初の予定だと、エレンとヲイナーは遭わせないようにする筈だったけど、それはもう崩れちゃったし…」

アルミン「そうだけど…エレンが倒しちゃう可能性も無くはない…どうだろう…どうしよう」

ミカサ「アレは切りつけても刺しても平気そうだった。なまじかな手段で対抗出来るとは思えなぃ…」

アルミン「ミカサ! 弱気になってどうするんだ! エレンを信じようよ」

マルコ「そ、そうだ。エレンは対人格闘術に秀でてる。もしかしたら…!」

ミカサ「でも…アレがエレンと同じなら…そんな筈はないけど…万一、エレンと同じなら…」


アルミン「自分と同等以上の相手とならエレンはやり慣れてる。やられっ放しはないだろう」

マルコ「じゃ、じゃあ、このまま何もしないで待つのか?」

アルミン「目的はあくまでもヲイナーの捕獲だ。奴を逃がさない事が重要なんだ」ブルブル

マルコ「……鎧戸が下りている限り、エレンが敵の手に落ちる事はない、か…」

マルコ(でも、これじゃ蛇の生殺しと一緒だ。奴にあんな特質があったばかりに…)

マルコ(…特質? 体を自在に変形させられる特質……半液体のような……)


アルミン「ねえ…ここに樽か何か、密閉出来る容器はあったっけ?」

マルコ「同じ事を思いついたみたいだね」ニッ

ミカサ「樽? なら、台所の奥に半地下への入口がある。そこの貯蔵庫に酒樽があったけど…」

マルコ「僕がそいつを取って来るよ」スクッ

アルミン「お願いするよ。僕はこの部屋の周りを点検して他に隙間がないかどうか確かめておく」

ミカサ「わかった」


   *


エレニ「……いない」

エレニ「騙された? 罠だったの?」

エレニ「いや、エレンがこのコテージに入るのは確かに見た」

エレニ「って事は、どっかに抜け道があるのか…」

エレニ「どこ? どこかにそれらしいものは……」キョロキョロ

 ウィィイイイン……

エレニ「何? 何の音? どこから?」

エレニ「床!?」

エレニ「床がスライドして箱が現れた!?」


ハンジ「まだ居てくれて良かったよ」

エレニ「誰だ!?」

ハンジ「調査兵団分隊長、ハンジ・ゾエだ。宜しくお見知りおきを頼むよ」

ハンジ「で、あんたは?」

エレニ「エレンはどこ?」

ハンジ「やれやれ、礼儀がなってないね。こっちは名乗ったんだ、そっちも名乗ってもらおうか」

ハンジ「それとも名前はまだ無いのかな? あんたの創造主は何て呼んでる?」


エレニ「名前ならある。けど、あんたに名乗ってやる気はないよ」

ハンジ「じゃあ当然、あんたを造った人間の名前も教えちゃくれないんだろうね」スチャッ

エレニ「当然、な」スッ

ハンジ(あの構え…! なるほど…手強そうだ)

エレニ「エレンの居場所はその下か。退きな」

ハンジ「大人しく捕まってくれりゃいいと思ってたんだけど、やっぱりそうはいかないか」

ハンジ「ミカサの造ったヱレンは良い子なのに、あんたはどっか捻くれてるようだね」

エレニ「!」カッ


エレニ「それで挑発してるつもりか? 俺の性格がどうでもあんたには関係ないだろ」

ハンジ「私はただ、あんたらには製作者の気質が反映されるのかと思ってね」

ハンジ「見たとこ、ヱレンと同じで、あんたも見た目はエレンそっくりだが、性格がだいぶ違う」

ハンジ「答えてくれないかな? それはエレンにもある性格の一部かい? それとも製作者の影響?」

エレニ「それを知ってどうする?」

ハンジ「単に興味があるから、なんだけど…」

ハンジ「答えるとマズイ? それって製作者が特定されるからか?」


ハンジ「まあ、見た目だけでもある程度は推測出来るけど。例えば…」

ハンジ「あんたは金髪だけど、それは元になっている製作者が金髪だから、とか?」

エレニ「もう黙れ!」ブン

ハンジ「おっと!」ガキッ

ハンジ「ふんっ!」ビュッ

エレニ「無駄だ」ニュルッ

ハンジ「そうか、あんたはエレンから造られたんじゃないんだね?」


ハンジ「その外見は自由に形を変えられる。あんたはエレンに化けてるだけなんだ」

エレニ「フッ。だから?」

ハンジ「そこまでの執念が……哀れだと思ってね」

エレニ「!!」ギロッ

ハンジ「!?」

 ビュルッ ズズズズ…

ハンジ「逃げるのか? 待て!!」


ハンジ「しまった! 下へ向かわれては…っ!」

 ガコン! ガガガガ

ハンジ「鎧戸が? 外から開けたのか!?」

ミカサ「エレン!」バッ

ハンジ「ミカサ?」

ミカサ「ハンジさん!? どうして此処に? エレンは!?」

ハンジ「エレンは厩だ! 今、ヲイナーが後を追って行った!」


アルミン「エレンが厩に? どういうこと!?」

ハンジ「それは後だ!後! って、イタタタ」

マルコ「あっすみません!ってハンジさん!? いつの間に!?」

ハンジ「何だいその樽は? 早く退けて!」

ミカサ「先に行きます!」タタタタ

アルミン「僕もっ!」ダダッ

ハンジ「皆、説明するから走りながら聞くんだ」タッ


ハンジ「ヲイナーの侵入経路を割り出そうと足跡を探しているうちにエレンと出遭した」

ハンジ「エレンが言うには、部屋の床下に在った秘密の脱出口が厩舎に繋がっていたんだ」

ハンジ「エレンにはそのまま厩舎に居るよう指示して、私はその通路を逆行してあの部屋に辿り着いた」

ハンジ「部屋にはヲイナーが居たが、逃げられちまってこのザマだ。今ヤツは同じ通路を辿ってエレンの下に向かっている」

ハンジ「マズイことに、エレンはそれを知らない」

ミカサ「ヲイナーの体は流動性がある。捕まえるのは困難を極める」

ハンジ「ああ、私も見たよ…。目の前で氷が溶けるように床下に逃げ込むところをね」


ハンジ「だが立体機動装置を付けているわけじゃない。飛んで逃げられはしない」

アルミン「ヲイナーの製作者が近くまで来ているって事はないでしょうか?」

アルミン「逃走を援助されたら…僕らには打つ手がありません!」

ハンジ「おそらく…それはない」

ハンジ「君達には言ってなかったが…宿舎と周辺は昨日からずっと部下に見張らせている」

ハンジ「誰かが出入りしたら知らせが来る。知らせが無いって事は誰にも動きが無いって事だ」

ハンジ「ヲイナーの動きは見逃したようだが、あんなものが居るのは想定外だったからね」


マルコ「見えてきた!」

ミカサ「!」ダッ

ミカサ「エレン!」ダン

ミカサ「エレン!?」ヘナヘナ

ハンジ「どうした!?」バン

ミカサ「…気を失っているだけ。怪我もしてはいない」ホッ


ハンジ「ヲイナーはっ!? いない!?」

マルコ「クリア!」

アルミン「こっちもクリアです。ヲイナーは居ません」

ハンジ「エレンに気付かず逃げたのか? それともサンプルを採るだけに留めたのか…」

ヱレン「サンプルは採られていません。エレンは俺が気絶させたんです」

ハンジ「その声、ヱレン!? どこ!?」

ヱレン「ここです。今下りますから」スタッ


ハンジ「梁の上に…呆れた。ずっと居たのかい?」

ヱレン「ええ、まあ」モジモジ

ハンジ「何してんの!? あんたは!! 留守番してろって言ったよね!?」ガミガミ

ヱレン「すみません。手が足りないかと思ったので…」シュン

ハンジ「……いい。この話は後にしよう。ヲイナーを見たかい?」

ヱレン「見ました。けど、接触は避けるべきだと判断して、敢えて追い駆けませんでした」

ハンジ「いや、それでいい。冷静で良い判断だったよ」

マルコ「ま、待って! 確認したい!」

アルミン「マルコ?」


マルコ「ヱレン……今日は『月曜日か!』?」

ヱレン「『月曜日のバタースカッチプディングは最悪なんだ』」ニッ

マルコ「よ、良かった! 間違いなくヱレンだ」ペタン

マルコ「あいつ…ヲイナーが君そっくりだったから、僕…」ウルッ

ミカサ「ヲイナーは金髪。間違えるのがどうかしている」ムッ

マルコ「フードを被ってたらそれも分からないじゃないか(涙目)」

アルミン「そうだ…髪を染められたら見分けるのは難しくなるのに、どうしてそうしなかったんだ?」

ハンジ「!」


ヱレン「可塑体の材料は染色が不可能な物質という事でしょうか?」

ハンジ「うーん…不可能って言うより、精製の過程で漂白された物質なのかも…」

アルミン「そうだとすると、ヲイナーの髪の色はヲイナートのせいではなく漂白剤の影響なのかもしれないと?」

マルコ「だとしたら、基になった人物の特定は難しくなるね」

ハンジ「どうしても思考の行き着く先はヲイナー捕獲の後になるか…厄介だな」フゥ…


ハンジ「結果は惨敗だったが、この失敗を踏まえて次の作戦を練るしかない」

マルコ「次………」

ハンジ「次のチャンスは…ケーゲル大会の日だ。必ず仕留めるよ!」

アルミン「流動体を捕まえる案があるんです。聞いて貰えますか?」

ミカサ「ハンジさん、エレンをコテージに戻さないと。ベッドに寝かせてあげたいの」クイクイ


ハンジ「あ? ああ、そうだね。ごめんごめん」ハハッ

ハンジ「よし。では今日は解散。明日また集合しよう」

ハンジ「…っと、そうだ。ヱレン、勝手にラボを抜け出した罰は与えるからね!」メッ

ハンジ「ったく。ヱレンは良い子だと思ってたのに。帰ったらお仕置きだ」ブツブツ

ヱレン「は、はは…」(思わず後退り)


     流石にこの時間は重い。書き込めません。

     今日はここまでにします。m(_ _)m


 ~リヴァイ兵長によるエレン拉致から7日前(=ケーゲル大会の日)~


 * 遊戯場前

ライナー「ちょっと早く来過ぎたな」

ベルトルト「全く知らないゲームをやるのって緊張するね」

ライナー「だな。女子(特にクリスタ)の前で恥は掻きたくないぜ」

ユンゲ「おーい、ライナー兄ちゃーん、ベルトルト兄ちゃーん」

シュヴェスター「こんにちは」


ライナー「おう、お前達か。元気にしてたか?」

ユンゲ「うん! 兄ちゃん達は?」

ベルトルト「ああ、元気だよ」

シュヴェスター「ベルトルト兄ちゃん、遊んでー」

ベルトルト「あ…ごめん、今日は訓練兵団の皆と約束があるんだ」

シュヴェスター「ええ~? つまんなーい」プゥ

ベルトルト「ごめんね。また今度遊ぼう?」


ユンゲ「訓練兵団の皆って、ここで?」

ライナー「おう。今日はケーゲルで誰が一番かを決めるんだ」

ユンゲ「すげえ!」

シュヴェスター「かっこいー!」

コニー「コラコラ、そこの2人。幼児に手を出したらダメだろ」


ライナー「コニーか。お前なあ、現れるなり人聞きの悪い事言うなよ」

ベルトルト「そ、そうだよ。誤解されるじゃないか」ドギマギ

サシャ「あー挙動不審(笑)。おまわりさん、こいつです」

ライナー「こ、こらサシャ! ふざけるなって」

ミーナ「えーなになに? やだーソッチに走っちゃったの?」

ライナー「お前らな…」


アルミン「ミ、ミカサ? 何冷静にレクチャーしてるのかな? ハハ、ハ」

ジャン「いいか?このミカサはな、俺らの中では一番強い兵士なんだぞ」

ユンゲ「すっげー! 姉ちゃんてすげぇんだな!!」

シュヴェスター「お姉ちゃんも兵士?」

クリスタ「そうよ」

シュヴェスター「きれー…」

ユミル「おっまだ小さいのに良くわかってるじゃないか。お前中々見どころがあるぞ」

マルコ「うん、この幼さで大した審美眼の持ち主だね」


 >>592 間違えちゃった(涙)
 
 正しくは ↓


ミカサ「不審な人物が寄って来たら先ず鳩尾に頭突き、そして金的を」

アルミン「ミ、ミカサ? 何冷静にレクチャーしてるのかな? ハハ、ハ」

ジャン「いいか?このミカサはな、俺らの中では一番強い兵士なんだぞ」

ユンゲ「すっげー! 姉ちゃんてすげぇんだな!!」

シュヴェスター「お姉ちゃんも兵士?」

クリスタ「そうよ」

シュヴェスター「きれー…」

ユミル「おっまだ小さいのに良くわかってるじゃないか。お前中々見どころがあるぞ」

マルコ「うん、この幼さで大した審美眼の持ち主だね」


ユンゲ「こっちのお姉ちゃん達も美人ー」

アルミン「ぼ、坊や。僕は男だよ(涙目)」

エレン「ぷっ」

アルミン「エーレーン~? 何がおかしいのかな~?」ムス

シュヴェスター「あたし、こっちのお姉ちゃんのが美人だと思う」

エレン「は? …えっ? 俺のことか!?」

アニ「ぷっ。…ぅ…くっくっく」

アルミン「ブーメラン来たあ! 僕を笑ったバチが当ったね」


ジャン「よく見るんだ幼女よ。この死にいそ…猫目小僧のどこが美人なのかにゃあ?」ヒクッ

ミカサ「貴女!」ドン!

ジャン「おわっ!」デングリガエリ

ミカサ「貴女は素晴らしい感性の持ち主」お手々ギュ

ミカサ「どうかそのまま、周囲に流されず育って欲しい」

エレン「ちょっ、そこは間違いを是正しろよっ」


ミカサ「世の中、強いものが正義。美しさこそが正義」

ミカサ「エレンは成績5位、あっち(ジャン)は6位。どちらが正しいか。判るわね?」

ユンゲ「エレン」

シュヴェスター「エレーン」

ミカサ「貴方たちはとても賢い」ナデナデ

サシャ「これが洗脳というものですか」

ミーナ「まあね、エレンもアルミンも見ようによっては女性に見えなくもないというか…」


ミーナ「ロンTワンピにレギンスのミカサと白シャツにスキニーのエレン…」

ミーナ「こうして並んでるところを見ると、若干エレンの方が細いし小さい…」

ミーナ「パッと見、着こなしも…ハッ!?」

ミーナ(何てこと! 何気に同配色で長さも一緒! これは狙ったペアルック!?)

ミーナ(しまった!)←花柄フリルのツーピース

アニ(やられた!)←カシュクール・イン・ノースリーヴとレースのプリーツスカート

サシャ(皆さんお洒落ですねぇ)←ミリタリ調シャツとボックスプリーツキュロット

クリスタ「ま、あ…いいんじゃないかな?」←チュニックブラウスにショートパンツ

ユミル「(腹を抱えて悶絶中)」←ジャージ部魂、違った、カットソーとジーンズ


     ※因みにヤロー共はTシャツにジーンズかチノパン。ごく普通。

     ※綺麗なお姉さんに「その服は何て言うんですか?」と訊き回った俺はどう見ても獣の巨人でしたorz


エレン「なぁ、勘弁してくれ」

マルコ「はは。まあまあ」

マルコ「そろそろ中に入ろうよ。往来でこんな大勢が騒いでると近所迷惑だ」

ジャン「おう、そうだな。じゃ行くか」

ライナー「じゃあな、お前達。また今度遊んでやっから」

ユンゲ「うん! 兄ちゃん勝てよー」

シュヴェスター「がんばってねー!」

ベルトルト「うん。ありがとう」


マルコ「随分と慕われてたようだけど、よく遊んでるの?」

ライナー「ああ、前にちょっとな」

ベルトルト「あの子たち、遊び場が無くて…」

ベルトルト「でもまだ小さいから遠くへは行けないだろ?」

ベルトルト「だから、瓦礫の山なんかで遊んでるのを見て、つい…」

ライナー「ベルトルトと2人でちっとばかり瓦礫を片付けて遊び場を作ってやったんだよ」

マルコ「それは良い事したね」


ライナー「あいつら調査兵団に憧れててよ。俺達が兵士だってわかると、凄い凄いって感激してたな」

ベルトルト「う、うん…」

ライナー「一緒に調査兵団ごっことかしてな。結構楽しかったぜ」ニカッ

マルコ「そうなんだ。子供好きなんだねぇ」ニコニコ

マルコ「あ、意外だって意味じゃないよ? 面倒見がいいねって言いたかったんだ」

ライナー「わーかってるって。ハハハ」


ミカサ「今日はヲイナー捕獲のチャンスだったかもしれないのに」ヒソヒソ

ミカサ「こんな事をしていていいのかしら?」

アルミン「仕方ないよ。ハンジさんにどうしても外せない用が出来たんだから」

ミカサ「それなら私たちだけでやればいい。違う?」

アルミン「それは無理だよ。僕らは失敗したばかりじゃないか」ヒソヒソ

アルミン「コテージの完璧な防御すら破って来るような相手なんだ。もっと厳密な作戦を立てないと」

アルミン「ハンジさんもきっとそう判断したんだよ」


アルミン「それに、この調子だとマルコ1人じゃサンプル採取も大変そうだと思わない? 僕達が手伝わないと」

ミカサ「……そうね。わかった」

エレン「おーい、ミカサ!」

ミカサ「何? エレン」ビュッ

アルミン「……時々、ミカサって瞬間移動するよね」

マルコ「ははは。そうだねえ」


 * 遊戯場内


アルミン「じゃあ皆、ゲームを始める前に注意事項があるから聞いて」

アルミン「フロア内はレンタルのシューズに履き替える事。土足厳禁だよ」

アルミン「僕とマルコが受付をやるからサイズを言ってくれ」

マルコ「シューズと一緒に参加賞のミニナプキンを渡すから汗を掻いたらこれを使ってね」

マルコ「使い終わったナプキンは包装の袋に入れて、散らかさないように」

マルコ「ゴミは僕が後で回収するね」


アルミン「次にケーゲルのルールを説明する。(~説明中~)以上だ」

アルミン「何か質問は? 無いなら進めるよ」

マルコ「今回は参加者が多いので、最初は4人1組のチーム戦だ。4人が交代で1投ずつ投げる」

マルコ「最終的に2チームが残ったら、そこから1対1のトーナメント戦になる」

マルコ「それじゃあ、チームを作った者から順番に登録を済ませてくれ」

 ワイワイ ガヤガヤ ザワザワ ドヨドヨ…

ジャン「4人か、誰と組むかな。俺とマルコと…」


ミカサ「ジャン、私とアルミンを貴方のチームに加えて欲しい」

ジャン「えっ!? どどどどうした? お前はてっきりエレンとチームを組むとばかり」

ミカサ「エレンは自分の班の人達とチームを組んでしまった」

ジャン「そ、そそ、そうか」

ミカサ「私と組むのがイヤなら他を当たる」

ジャン「めめめ滅相もありません! かか歓迎するぜっ!」

ジャン(やった! なんてツイてる日だ!)コオドリ

ミカサ(要は私とエレンが最後まで勝ち残ればいいだけ。2人でケーゲルを制す。これだわ)


ミーナ「あっズルイ! ミカサとジャンとマルコ、成績上位者3人と知将アルミンのチームなんて」

アニ(ミーナの誘いを断れなかった。よりによって後の2名がフランツとハンナだなんて…)

クリスタ(私とユミルとサシャとコニー。こっちだって成績上位3人が同じチーム)

クリスタ(ううん、実質ユミルも上位と同じくらいの実力の持ち主なのに…)

クリスタ(何でだろう? 勝てる気がしない…)

ユミル「まーた何やら考え込んでやがるな? ちっとは力抜いて楽しめっての」

ユミル「あたしは楽しむぞぉ! こんなバカ騒ぎ、滅多に出来るこっちゃないんだから」

サシャ「お腹が空きました。コッペパンを要求します」ボー…

ユミル「ほら、こいつみたいに自然体で行け自然体で」

クリスタ「う、うん」


コニー「なんだよ、靴のサイズ合わねえぞ? 子供用ならある? ふざけんなー!」

ユミル「…あいつには気負いも衒いも無いな…ただのバカだ」

クリスタ「だ、だめだよ、そんなこと言っちゃ」

エレン「よう。1回戦、俺達と当たるのはお前らだってな?」

サシャ「エレン達とですか!」

クリスタ「(やったぁ!) よ、よろしくねっ」

ユミル「まっお手柔らかに頼むよ」


エレン「あ、そうだ。サシャ、これ食べてくれ」つ

サシャ「蒸しパァン! いいんですか? でも、どうして?」

エレン「えっと…水をくれた?お礼? 朝市で買ったからまだ温いぞ」

エレン(昨日、上着のポケットから「水をくれたサシャにお礼を」って書いたメモが出てきた)

エレン(いつ書いたのか分からねえけど、あれは俺の字だったし)←本当はヱレンが書いた

エレン(そんな覚えは無いんだけど…世話になったもんはちゃんと返さねえとな)

サシャ「ああ! 水の。えっ? でも…」


エレン「それじゃダメか? (食い物以外の方が良かったのか?)」ジッ

サシャ(あ、そうか、約束した事を覚えてるか確認してるんですね)

サシャ「いいえ、これでいいです。有難くいただきます!」ニコニコ

エレン「そうか。よかった(ホッ)」ニコッ

サシャ(あ、安心した顔だ。やっぱりそうだったんや)ニコッ


クリスタ(目の前で繰り広げられているこの光景は何? 何なの?)

ミーナ(サシャが何歩もリードしているですって? 冗談じゃないわ)

アニ(どういう事よこれ? たかが水でエレンを釣れるなら私だってやってやる)

ミカサ「サシャは少々馴れ馴れし過ぎ。ズタズタに削いでやる」ボコッ バキッ ゴトッゴトゴトッ

アルミン「うわっケーゲルの球がっ! 一瞬で粉砕された!」アワワワ


ジャン「み、見なかったフリ見なかったフリ」ガクガク

マルコ(お、同じくスルーの方向で)ブルブル

マルコ「で、では、幹事の僕から開催の言葉を」

マルコ「これより訓練兵団104期生による第一回ケーゲル大会開催を宣言します!」

全員「「「 う お お お お!!!」」」


支配人「コラー! レーンを走っちゃいかん!」

支配人「球は転がすように投げるんじゃー! ドッヂボールじゃないんだぞ!?」

支配人「だから球は離せ! 頭からピンに突っ込むんじゃない!」

支配人「どうやったら隣の隣の隣のレーンに球が行くんだよ? 常識ねえのか貴様ら!」

支配人「一度に9つも球を投げるな! 詰まっちまっただろーが!!」

支配人「待て! それは私の頭だ! 離せ!離しやがれ!! ぎゃあああ!」



支配人「もうやだ、こいつら。辞めてやるこんな職場(号泣)」


   完全にまるまる1章飛ばしてましたorz

   何やってんだろ? まだ熱中症が治ってないのかもですorz

   本来なら>>586>>588の間に入るだったもの ↓


大会の2日前になります。


   * ハンジのラボ


ハンジ「さて、と。お仕置きの前に話しておかなきゃね」カタン

ハンジ「ヱレン、さっきは何で嘘を吐いたんだい?」

ヱレン「どの嘘の事でしょうか?」

ハンジ(どの、だって? 幾つも嘘を重ねてたのか!?)

ハンジ「……全部。理由を話してもらおうかな」ピキピキ


ハンジ「ヲイナーを見ていながら後は追わなかったというのは嘘なんだろう?」

ヱレン「嘘じゃありませんよ」

ハンジ「……本当に?」

ヱレン「はい」

ハンジ「どうして?」

ヱレン「え? ミカサやハンジさんが居ながら取り逃がした相手でしょう?」パチクリ

ヱレン「碌に訓練もしてない俺が敵うワケないじゃないですか」


ハンジ「あんた、そんな殊勝な玉だっけ?」

ヱレン「ひどいなあ」クスクスクス

ヱレン「確かに殊勝な性分ではないですけどね」

ハンジ「なら、嘘ってのは?」

ヱレン「その前に言った事ですね。接触はしました」

ハンジ「話したのか!? ヲイナーと!?」

ヱレン「まあ…二言三言……」


ハンジ「な」

ヱレン「内容なら言えません」

ハンジ「っはあっ!?」

ハンジ「何を考えているんだ! ヱレン! あんたはっ」

ヱレン「ゲーム」

ハンジ「は?」

ヱレン「ゲームを持ち掛けてみました。あっちは承諾してくれました」

ハンジ「な、何を勝手な!」


ヱレン「ハンジさん……」

ヱレン「ヲイナーはもう長くない」

ハンジ「わ、判るの!? どうして!?」

ヱレン「それは…ただ判ったとしか」

ハンジ「……ヱレンがまた嘘を吐いていても私には分からない。なのに、そう言うのか?」

ヱレン「ハンジさんにはもう嘘は吐きませんよ。今だって直ぐバレたじゃないですか」

ハンジ「どうだか…」フゥ


ハンジ「それなら、後どんな嘘を吐いたのか言ってごらん」

ヱレン「それだけですよ。それひとつきりです」

ヱレン「本当ですよ。だって俺、ハンジさん好きですから」

ヱレン「嫌われたくないですから、もう嘘は言いません」

ヱレン「構って欲しくて、つい、どの嘘の事でしょう、なんて言って気を引いたりして…」

ヱレン「俺ってバカですよね」シュン

ハンジ「……ヱレンって……」

ヱレン「はい?」

ハンジ「いや、いい」


ハンジ「それで? ゲームって何をするんだ?」

ヱレン「かくれんぼです」ニコッ

ヱレン「明後日のケーゲル大会で皆が留守の時に、俺とあいつだけでやります」

ハンジ「そんな無茶苦茶な!」ガタッ

ヱレン「ハンジさんにはジャッジとしてその場に居て欲しいんです。駄目ですか?」

ハンジ「えっ? 私も行っていいの?」

ヱレン「当たり前じゃないですか」キョトン

ハンジ「えっ? そうなの!? あー、何だぁ、そうなんだあ!」ワクトキ


ヱレン「はい。その代り、明後日の作戦は中止して貰えませんか?」

ヱレン「ミカサとアルミンとマルコをケーゲル大会に行かせてやって下さい」

ハンジ「ヱレン、まさか3人を遊ばせてやりたいから、こんな馬鹿な事を企んだの?」

ヱレン「まぁ…そういう打算が全く無いとは言い切れませんけど」クス

ヱレン「あの3人が居たら、俺の勝算が狂うんです」

ハンジ「勝算? ヲイナーを捕まえる勝算があるの!?」

ヱレン「はい。ありますよ。でなきゃこんなゲームを仕掛けたりしません」ニコ


ハンジ「どんな!?」ガバッ

ヱレン「今は言えませんんん離してぇ服が破けちゃううう」

ハンジ「ばっ// 急に艶っぽい声を出すんじゃないよ!」ドキドキ

ハンジ「あー焦った。って何で私が焦るんだ」

ヱレン「ねぇハンジさん、いいでしょ? いいって言って下さいよぅ」

ハンジ「こら! 色仕掛けとかまだ早いぞ?」

ヱレン「色仕掛け?」キョトン

ハンジ「……あーいや、いい。何でもない」ピラピラ

ハンジ(穢れた大人の歪んだ視点で見てました。すまぬ)ガクッ


ハンジもういいよ。わかったから…条件を呑むよ」

ヱレン「やった!」ニコニコニン

ヱレン「ありがとうハンジさん!」

ハンジ(私としたことが…いつの間にか絆されちゃったのかねぇ)

ヱレン「じゃあ早くして下さい。あ、あんまり痛いのはちょっと…」

ハンジ「へ? 何の話?」


ヱレン「お仕置き。…するんでしょう?」オズオズ

ハンジ(うは! サド心を擽られ…って違う違う)ブンブン

ハンジ「コホン。いや、あれは冗談だよ」

ハンジ「日付も変わったし、もう休んでいいよ」

ヱレン「え、いいんですか? ラッキーv」

ハンジ(私も甘くなったもんだ…)


ハンジ「ヱレン、最後に一つだけ訊くけどさ…本当はエレンに逢いに行ったんじゃないの?」

ヱレン「そうです。エレンの顔を見て、俺、自分が何を欲しがっていたのかやっと解りました」

ヱレン「ハンジさんの言う通りだったんです、俺はエレンに期待していた…」

ヱレン「俺の存在を否定しないで欲しい。俺を認めて欲しいんだって」

ヱレン「その上で、一緒に居る事を許して欲しい、ついでに家族と認めて欲しい」

ヱレン「俺が持つ総ての欲を受け入れて欲しい、って思ってたんだと…解りました」


ヱレン「解ってただけじゃない、受け入れるよう迫る心算だった事にも気付かされました」

ヱレン「エレンと俺は同じなんだから、俺を拒絶するのは自分を拒絶する事なんだって」

ヱレン「おかしいですよね、そんな理論武装をすれば思い通りになるなんて考えてた…」

ヱレン「俺が暴走しそうだって事、ハンジさんには初めから判ってたんですよね?」

ヱレン「だから…俺を止めたんでしょう?」

ハンジ「ああ。そうだ」


ヱレン「エレンは俺を受け入れない?」

ハンジ「そうじゃない」

ハンジ「多分さ、多分だけど、エレンはヱレンを受け入れるだろうよ」

ハンジ「問題は、ヱレンはエレンに拒絶されたら生きていけないと思い込んでる事にある」

ハンジ「逆説的に聞こえるかもしれないが…」

ハンジ「独りに耐えられない人間は誰とも生きていけないんだよ…ヱレン」

ヱレン「……ハンジさん、も…?」

ハンジ「そうさ。誰もが皆ね」

ヱレン「…そう、なんだ……」


ハンジ「そうそう。ま、泣くんじゃないよ」

ヱレン「泣いてませんよ」クスッ

ハンジ「そこは泣くところなんだよ」

ヱレン「そうなんだ」クスクス

ヱレン「では、お先に休ませて戴きますね。分隊長、おやすみなさい」

ハンジ「ああ、おやすみ」

 …パタン…

ハンジ(ふぅ、子守って大変。でも不思議と悪い気はしないんだよね。うん)



 * ヱレンの部屋


ヱレン「そこ(天井裏)に居るんだろう?」

ヱレン「つけて来たのは知ってる」

ヱレン「今の遣り取りは聴いてたよな?」

ヱレン「こういう次第だ。明日、楽しみにしてろよ」



エレニ「……そっちこそ約束を忘れるなよ」


   前回は前後してすみませんでした。

   宜しければ、>>586>>616~631→>>588~614→>>633の順でお読み頂けたらなぁ、と。

   あと、今回は短いです。すみません。


 * ケーゲル大会の日の同時刻 訓練兵団宿舎敷地内


ハンジ「ここはグラウンドのド真ん中じゃないか」

ハンジ「こんな人目につく場所にヲイナーが来るって?」

ヱレン「ええ、もう来てますよ。 だろ?」

エレニ「チッ。流石に目敏いね」ニュルン

エレニ「それより、何だよヲイナーって? 勝手に変な名前付けてんじゃねぇよ」


ハンジ「そりゃ、あんたが名乗らなかったからさ」

ハンジ「ヲイナーってのはあんたに付けた名前じゃなくて」

ヱレン「ハンジさん、話の腰を折って悪いんですが、それ長くなるでしょ」

ヱレン「その話はこいつを捕えてからにしましょう」

エレニ「ハッ! 随分と強気に出たもんだ」


ハンジ「ヱレン、本当に大丈夫かい?」

ヱレン「はい。俺を信用して下さい」

エレニ「分隊長殿。あんたは唯のジャッジなんだよな?」ジロ

エレニ「なのに御丁寧に立体機動まで付けて…」

エレニ「本当は2人がかりで俺を挟み討ちにしようってんじゃないのか?」


ヱレン「いや、ハンジさんは手は出さない。ゲーム中は建物の屋根に登ってて貰う」

ハンジ「信用してもらうしかないね」

エレニ「信用、ね。どうでもいいさ。早く始めようじゃないか、下らないゲームを」

ヱレン「ハンジさん、お願いします」ペコッ

ハンジ「…わかったよ」プシュッ ガキン シュルルル


ハンジ「こっちはオーケーだ」

エレニ「そうだ。あんたに一つ言いたい事があったんだ」

エレニ「この間の、あの体たらくは何だったんだい?」

エレニ「飼い猫みたいに甘えちゃってさ。とてもじゃないが聞いてられなかったよ」

エレニ「ハンジっていったっけ? 随分と気を許しているみたいだけど、あんなのが好み?」


ヱレン「え? だって世話になってるし、善い人だし、結構美人だし」

ヱレン「何ていうか…姉さんみたいだろ?」

エレニ「ママみたいって言わなかった分だけマシかね…」ボソ

ヱレン「すまん、よく聴こえなかった。何だって?」

エレニ「砂吐きそうだって言ったの!」


ヱレン「お前、砂で出来てないだろ? 何言ってんだ?」

エレニ「………(つ、疲れる)」

ハンジ「いーいぃ? 私の合図でゲーム開始だからねー!」

ハンジ「3つ数えて腕を振り下ろしたらそれが合図だよー!」

エレニ「まぁ、あんた達が何を企もうと問題ないさ」


エレニ「私には特別な能力があるからね。捕まえられる訳がない」

エレニ「全くの無駄だったね」ニヤリ

ハンジ「行くよー?」

ヱレン「お前さ…」

ハンジ「3」


ヱレン「唇渇いてるぞ」

ハンジ「2」

エレニ「それが?」

ハンジ「1」

ヱレン「剥がれ落ちてる」


ハンジ「始め!」ブン

エレニ「え!?」バッ

ヱレン「良かったよ、自覚が有ってくれてさ」

エレニ「な、何言ってんだい!?」

ヱレン「そうなった原因は、お前の言うその特別な能力を繰り返し使ったせいだぞ」


ヱレン「だから『落ちる』んだ、アポトーシスってやつだ」

エレニ「まさか、あんたも?」

ヱレン「いや、おれには流動化の能力は無いし、そんな症状も今のところは出てないが…」

ヱレン「原因には心当りがある。知りたくないか?」

ハンジ「…? 合図が伝わらなかったのかな?」


ハンジ「どうして2人共つっ立ってるの?」

ヱレン「お前にその気があるなら、一緒に解決策を見つけてやらない事もないが…」

ヱレン「どうする? まだ逃げるか?」

エレニ「正気かい? あんたには何の得も無いだろ?」

ヱレン「俺さ、動くか動かないかを損得で決めた事は一度も無いんだけどな」


ハンジ「何を話し込んでるんだ? この期に及んで…説得してるのか?」

エレニ「じゃあ何の為に…」

ヱレン「俺がバカだからだろうな」

エレニ「私を上手く言い包めようってんだろ。バカバカしい。そんな手に乗るもんか」

ヱレン「違うって。まあ聞けよ。一つ思い付いてるのは…(耳打ち中)…」


エレニ「何を酔狂な。分かってんの? 死ぬんだよ!?」

ヱレン「うーん…いや大丈夫だろ。たぶん」

エレニ「ばっ、バカか!? あんた」

ハンジ「ヲイナーに逃げる素振りが無い…どうなってる?」

ヱレン「それよりも大事な事があるんじゃないのか?」


エレニ「何の事だよ?」

ヱレン「アニの件だよ。追及されたら困るよな?」

エレニ「うっ。気付いてたのか…」

ヱレン「そりゃあ、あれだけ所作振る舞いが似てりゃ気付くって」

ヱレン「俺もエレンには執着してるからな。わかるんだ」


ヱレン「お前もアニの傍に居たいだろうけど、このままじゃアニを押し潰すぞ?」

ヱレン「だからさ…離れた方が、きっと楽になるんだよ」

エレニ「あんたの下につけって?」

ヱレン「いいだろ」ニッ

ヱレン「来いよ」


ハンジ「どうする? 声を掛けるか?…逃げられるか」

ヱレン「こっちに来いよ」ズイッ

ハンジ「いや、ヱレンが動いた。もう少し待とう」

エレニ「………でも…」

ヱレン「迷うな。来い」


エレニ「……………わかった」

エレニ「 降 参 だ !!」アームズライズ

ヱレン「そんじゃタッチ、っと。ハンジさーん、俺、勝っちゃいましたー。もう降りて来て下さーい」ニコニコ

ハンジ「……えっ!?」ズルッ

ハンジ「どうなってるのおぉぉおおお!?」


 * ハンジのラボ


ハンジ「今度こそ全部話してもらうよ」ドサッ

ヱレン「今後、ミカサ達を巻き込まないと約束してくれるなら話します。104期生を調べる事も止めて下さい」

ハンジ「そいつは勝手過ぎないか?」ギロッ

ヱレン「ダメなら俺もこいつもハンジさんの前から消えます」

ハンジ「答えはノーだ。私にはあんた達の話を検証する手段がない」

ヱレン「信じてもらうしかありません。信じられないのなら、初めから話しても無駄です」

ヱレン「聞くか聞かないか、今ここで選んで下さい」

ハンジ「…ハァ…わかった。聞かせてもらおう」


ヱレン「以前、ハンジさんは疑問点を4つ挙げましたよね? その内の幾つかにお答え出来る…と思います」

ヱレン「先ず最初に俺達が生まれる条件から話します」

ハンジ「条件?」

ヱレン「はい。ハンジさんの調査には抜けていた要素です」

ヱレン「それは光と音です」

ハンジ「光と音?」

ヱレン「光は言うに及ばずですが、音はもっと重要なファクターです」

ヱレン「細胞を賦活化するためにヲイナートが必要とするのは7.5Hzの振動波です」

ヱレン「偶然にもこれは脳のα波と同じ周波数ですが、その共振周波数が探知出来れば証明される筈です」


ハンジ「どうやって確かめればいいのさ? そんなの」

ヱレン「俺の場合は難しいかもしれませんね」

ヱレン「覚えてますか? 俺の生まれた日の2日後は稀に見る嵐だったこと」

ヱレン「気象記録では、俺の生まれたその日に壁外では嵐が発生してました」

ヱレン「恐らく、嵐が近付いていたために空気振動が超低周波を作り出していたんだと思います」

ヱレン「ですが、こいつの場合は倉庫が鍵です」


ハンジ「あんたは資材倉庫で生まれたんだっけ?」

エレニ「はい…」

ハンジ「超低周波なんて普通の人間の耳には聴こえないけど…何か気付いた事は?」

エレニ「その時、何かのモーター音は聴こえてましたけど…」

ハンジ「そうか。可聴域の音だから関係あるかどうかは判らないけど、一応何の音だか後で調べてみよう」

ヱレン「そうだ。超低周波が出ている方向を検知する方法を思い付きました」

ヱレン「倉庫には食糧庫用の予備の酵母が積んであります。その酵母の出芽を観察してみたら良いかと」


ヱレン「他のどの生物にも共通して言える事ですが、共振周波数に影響されないものはありません」

ヱレン「特に酵母の場合、特定の周波数に反応して胞子の成長に偏向が生じるんです」

ハンジ「磁石に引き寄せられる砂鉄みたいにかい?」

ヱレン「そうです」

ヱレン「他の微生物とは違い、酵母は光合成能を持たないので光の干渉は考慮に入れる必要がありません」

ハンジ「養分となる有機物への胞子の伸長を除外すれば周波数の発生源が特定出来るな」フム

ハンジ「ヱレンの言う通りなら、実験で検証出来るだろうけど…」

ハンジ「問題は、現在、超低周波を任意に発生させる技術が無いって事だね」

ヱレン「開発部の尻を叩いてやることですね」

ハンジ「そりゃいい」アハハ


エレニ「……ヱレン、あんたって何者?」

ヱレン「どういう意味だ?」

エレニ「今の話、俺にはさっぱりなんだけど…」

ハンジ「そうか。そうだなあ…譬えるなら…」

ハンジ「お母さんのお腹の中の赤ちゃんが覚醒するには、お母さんの心音が聴こえていないとダメですよーってこと」

ヱレン「大雑把だなあ」

ハンジ「そう外れちゃいまい?」フフ


ハンジ「本来のエレンは名医の御令息だからね」

ハンジ「ヱレンは兵士として訓練に参加する事が出来なかった分、御父上を見習って医学や科学を勉強してたもんね」

ヱレン「科学に関してはハンジさんという良い師匠に恵まれていたお陰です」

ハンジ「師匠! …何て甘美な響き…///」ムハー

ヱレン「俺が何者かはさておいて。お前がアルカンで造られたのは判ったよ」

ハンジ「そうなのかい!?」

エレニ「ええ、まあ…」


ヱレン「倉庫に備蓄されている物質で大量にあって粘度を持った分散質で漂白剤が使われていて可燃性の物と言ったら、答えはアルカンしかないじゃないか」

エレニ「漂白剤?」

ヱレン「俺に化けるのに髪の色を変えなかったのは漂白剤のせいで染色出来なかったからだろ」

エレニ「そうだけど」

ヱレン「倉庫にある他の物質、例えば灯油なんかだと簡単に色づけ出来るんだよ」

ハンジ「待って。一つずつ確認させてよ!」

ハンジ「何で大量にある物だって思うの?」

ヱレン「一人分の体積に相当する量が無くなってたら騒ぎになるでしょ? 大量にあるからまだ誰も気付いてないんですよ」

ハンジ「粘度は解るが、分散質というのは?」

ヱレン「こいつの流動化能力は、そもそも素材が分散質だったからで、獲得能力のはずはないんです」


ヱレン「俺の素材となった粘土にも、粘度があり可塑性に富んでいましたが、流動性はありません。つまり素材の質が能力を決定したんです」

ヱレン「同じく、ガスや灯油ではゲル化出来ないし、ナパームやセメントではゾル化出来ないんです」

ヱレン「ゲル化とゾル化を繰り返す、これをチキントロピーと言いますが、それが出来るのは、両方の特徴を持ったコロイドであるアルカンしか有り得ないんですよ」

ハンジ「可燃性を条件に入れたのは?」

ヱレン「マルコがカンテラを振り回した時、怯んだ様子を見せたって言ってたから…」

ヱレン「さっきの話で言うと、こいつが仮に洗剤のような不燃性の高いコロイドで出来ていたら、火や熱を恐れる必要は無いわけで」

ヱレン「流動体化して逃げる事も出来たのに、それをやらなかったのは、カンテラの熱で一時的に体が融解したからじゃないのか?」

エレニ「そうだ。その通り…」


ヱレン「自分の意志で行うチキソトロピーとは違い、熱融解によるゾル化は一種の細胞破壊です」

ヱレン「熱で分子間の間隙が拡がるとヲイナートも分断されたんでしょう」

ヱレン「冷えて分子間の架橋が繋がるまで自己修復が出来なかった筈だ」

エレニ「た、確かに」

ハンジ「なるほど」


ヱレン「ですが……」

ヱレン「こいつの、その特殊な能力のせいで、こいつは死にかけてます」

ハンジ「えっ!? どういうこと!?」

ヱレン「ハンジさんも父さんの論文を読んだでしょう?」

ヱレン「人の細胞の核にはクロモソームがあり、その末端小粒は細胞分裂の度に短くなる。その現象こそが細胞老化だと」

ハンジ「御父上は他ならぬ王の命で禁断の研究をなさっていたと思える節があったが…」

ヱレン「そう、末端小粒を合成する酵素があれば細胞は増殖を繰り返す、と記されていましたね」


ヱレン「通常、人の末端小粒は複製の度に目盛が短くなるわけだけど、エレンの末端小粒はその長さに制限が無い。…としたら?」

ハンジ「細胞の不死化!?」

ヱレン「そこまで目論んでいたかどうか…でも兎に角、驚異的な再生能力は有しているでしょう」

ヱレン「俺も生まれながらにその再生能力を持っている。エレンと同じだから。でも、こいつは…」

ハンジ「チキソトロピーを繰り返したせいで、その酵素が失われてしまったってこと?」

ヱレン「いいえ、もっと深刻です。恐らくは酵素が形質転換してしまった」

ヱレン「元々細胞が有していたプログラミングによって起こる細胞死が加速してるんです。このままチキソトロピーを繰り返せば早晩死ぬ事になります」


ハンジ「アポトーシスか! そりゃあ……」

エレニ「……覚悟はしてたよ。俺にはそれが報いだってね…」

ヱレン「助けるって言っただろ? 信じたから付いて来たんじゃないのか?」

ハンジ「で、でも、どうやって…?」

ヱレン「UMAが…」

ハンジ「? 何で今その話に飛ぶの?」

ヱレン「UMAがエレンに引き寄せられたのは、生き延びる為だったんじゃないかな?と思うんです」

ヱレン「エレンニウムは不死の妙薬、そう捉えて考えてみたら色々と符合しませんか?」

ヱレン「ハンジさんも言ってたでしょ? 何故、他の可塑体はエレンに執着するのか?って」

ハンジ「死期が近い事を察したUMAが本能的に再生への手掛りとしてエレンニウムを補充する為に襲っていたと?」


ハンジ「ん? ちょっと待って。…それじゃクリスタって娘が襲われてたのも彼女が酵素を持ってるから?」

エレニ「いえ、それは違う、…と思います」オドオド

ハンジ「何か知ってるの?」

エレニ「い、いえ…クリスタは単に…好かれてただけ…のような…」ボソボソ

エレニ「ほ、ほら、エレンだけは噛まれたりとかは無かったっていうか…」ドギマギ

エレニ「UMAはエレンの近くに居る人間を追い払おうとして…るように見えました」ソワソワ

ハンジ「…あんたもエレンに固執してた?」

エレニ「正直言って……はい」

ハンジ「それは、好きだから、じゃなくて?」

エレニ「あ…ぅ……」

ハンジ「それは自覚が無いって事か…」


ハンジ「つまり? ヱレンはこの子にエレンニウムを補給する事でアポトーシスを食い止められる、って言いたいワケね」

ヱレン「ご明察」ニコッ

ハンジ「どうやって? エレンから分けて貰うのかい?」

ヱレン「それが理想ですけど」

ヱレン「他にどうしようもなけりゃ、俺とこいつが融合して再分裂すれば良いんじゃないですか?」

ハンジ「はああ!? 何それ!?」ガターン

ハンジ「おおおお怒るよっ!? 幾ら何でもそりゃ無茶苦茶じゃないかっ! 正気の沙汰じゃないっ!!」バーン

ハンジ「あんたもっ! そんなんで納得して付いて来たってのか!?」ギッ


エレニ「ち、違うっ! わた、俺はあんたにそれを止めて欲しくて!!」アタフタ

ハンジ「………何だ、そうなの。ふーん」ストン

ハンジ「わかった。じゃあ早速エレンを拉致しようか」ケロッ

ヱレン「ですね」ニコニコ

エレニ「は!?」

ハンジ「ミカサ達を巻き込まないでやるには…」

ヱレン「んー…勘付かれないようにしないと、ですね」

エレニ「ちょ、ちょっと!?」


ハンジ「何時がいいかな?」ワクワク

ヱレン「何処でやるかが重要でしょ?」テカテカ

エレニ「こ、このマッドサイエンティストども! 少しは罪悪感とか持てよっっっ!!」

ハンジ・ヱレン「「え~?」」

エレニ「え~?じゃないっ! ハモるな!」ゼーハーゼーハー


 ~ 数日後 ~


ミカサ「ヱレンには会えない?」

ハンジ「今は衰弱がひどくて面会はちょっと無理だね。悪いけど…」

ハンジ(ごめんねミカサ。体調が思わしくないのはもう一人の方なんだけど、ヱレンとの約束で皆を巻き込めなくなっちゃったんだよ)

ミカサ「私が遊んでいた間にヱレンは体調を崩した。ヲイナーの行方も判らないまま。これではエレンに申し訳が立たない」涙ポロポロ

アルミン「泣かないでよ、ミカサ」オロオロ

マルコ「もしかしたら、だけどさ、ヲイナーはUMAと同じでもう消滅したのかもしれないよ?」

アルミン「そう言えば、あれきり姿を見せないし…その可能性はなくもないね」


ハンジ(この子たちがそう思っててくれれば、こちらには好都合だけど…)

ハンジ「ヲイナーの件はこちらで引き続き調査を行うよ。皆はエレンの警護に専念しておいてくれ(と言うしかない)」

ハンジ「で? エレンも倒れたってのはどういう事なの?」

ミカサ「以前からグリシャおじさんの事を思い出そうとすると頭痛がするって。時にはその痛みで気を失ってしまう事も…」

ハンジ「そんな持病があったの? どうしてコテージで倒れていたのかな?」

アルミン「ヲイナー捕獲作戦で逃げる時、おじさんの本をコテージの何処かに落としたらしくて、コテージを探し回っている時にキース教官に見つかったらしいです」

アルミン「その時、エレンがコテージの見取り図を書いたメモを持っていて、筆跡から僕が書いたものだとバレて、夜警の任に就いていた僕達も呼び出しを…」ショボン


ハンジ「それで、キースは何て?」

アルミン「エレンの体調が治ってから然るべき処罰を下すそうです」

ハンジ「ふーむ」

ミカサ「私達に内緒で事を進めるなんて。ヱレンもヱレンなら、エレンもエレン」

ミカサ「一人で勝手な行動をとって私を置いて行こうとする」グスングスン

アルミン「まあ、それがエレンだしね。僕らは付いて行くしかないよ」


マルコ「ヱレンの体調が悪い時に、エレンまで倒れたんだもの。心配だよね…」

マルコ「でも、教官室に呼ばれたお陰で、みかん箱の在処も判ったし」

ハンジ「キースが何処でみかん箱を手に入れたのか気になるけど、彼が何も気付いていないのなら…」

ハンジ「みかん箱ごとエレンを引き取るチャンスなのかもね」

ハンジ「まあ任せてよ。キースは私が説得してみせるからさ」ニッ


 ~ リヴァイによるエレン拉致の前日 ~


ハンジ「具合はどうだい?」

ヱレン「あまり…良くありません」

ハンジ「これまでのところ準備は万端だが…急がないとマズイね」

エレニ「…ハァ…もう、いいよ。ハァハァ…私はもう…助からないんだろ? …ハァ」

ハンジ「何言ってんの。諦めちゃ駄目だよ!」


ヱレン「そうだぞ? 明日の夜にはきっと治ってるさ」

エレニ(こうして最期を看取ってくれる人が居るだけで、私は幸せだね)

エレニ(アニ、あんたも幸せになってくれると良いけど…)

エレニ(あんたへの天罰は、私が全部引き受けるからさ)

エレニ「…そうだね……」


ハンジ「少し眠っておいで。ね? 明日に備えなきゃ」

ハンジ「エレンを連れて来るのは無理だとしても、みかん箱を回収出来れば良いんだから。楽勝だよ」

エレニ「…はい」

ヱレン「安心しろ。俺が傍に居るから、目を瞑っても大丈夫だぞ」

エレニ「うん」


 ※ こうしてプロローグが展開されたのでした まる



     今日はここまでです。

     読んで頂いている方へ。いつも有難うございます。

おつです!


 ~ リヴァイによるエレン拉致の当日 ~


ヱレン「ハンジさんも出掛けて行った。今なら邪魔は入らない」

エレニ「ふぅん。じゃあ今はあんたと2人きりなんだ」

ヱレン「気分はどうだ?」

エレニ「辛くないって言ったら嘘になるかな」

ヱレン「そうか…」


ヱレン「じゃあ、今、死ぬ代りにもう少しだけ苦痛を味わえと言ったら…怨むよな?」

エレニ「そういう言い方嫌いだね。まるで生きる事が苦痛みたいだ」

ヱレン「…かもな」

エレニ「あんたには苦痛でしかないの? 嘘だろ」

ヱレン「死なないってのは時間を支配するようなもんだ」

ヱレン「寂しさと孤独はまったく無関係だとハンジさんは言ったが…」

ヱレン「時間を支配するのは罰を受けたようなものだ。苦痛だけが降りかかってくる」

ヱレン「考えてもみろ。エレンもアニも存在しない世界を」

ヱレン「知っている人間が誰一人存在しなくなった世界を想像出来るか?」

ヱレン「ずっと遠くまで過ぎ去った世界で独りだぞ? 耐えられるか? そんなの」


エレニ「どうしちゃったの? あんたさ…病んでるよ。らしくない」

ヱレン「俺は永遠を捨て去りたい。お前にも永遠を諦めてもらう」

エレニ「昨日言ってた事、本気だったんだ…?」

ヱレン「お前が嫌なら…仕方がない」

エレニ「どうだろうね? 私ばかりが得するってのは…」

ヱレン「そうじゃないさ。俺は生まれ変わるんだ。お前も」

エレニ「私が私じゃなくなって、あんたがあんたじゃなくなる…それを生まれ変わるって言うの? 知らなかったよ」


エレニ「エレンを待てないのかい? それか、アニに打ち明けるとか…」

ヱレン「そして、どうする? エレンかアニを俺達の事情に巻き込んで、それから?」

ヱレン「助けて貰う代りに罪を背負わせるのか。それでお前は平気か?」

エレニ「そんな事は……」

ヱレン「お願い、だ…一生に一度の」

エレニ「…(溜め息)…わかったよ。乗ろうじゃないか、その話」

ヱレン「すまん」

エレニ「違うでしょ?」

ヱレン「…ありがとう」

エレニ「うん」


エレニ「どうすればいい?」

ヱレン「俺が手を噛む。お前は変身能力で傷口から侵入してくればいい」

ヱレン「完全に同化してしまわないよう注意してくれ。再分化の為には意識の個別化は必要だから」

エレニ「その後は?」

ヱレン「エレンニウムがお前の細胞を取り込んで再生させ始める」

ヱレン「同時にお前の情報を一部引き取って、俺の細胞の末端小粒にプログラミングを施す」


エレニ「ちょっと疑問なんだけど…そんな事が自由に出来るの?」

ヱレン「出来る。解るんだ。『彼らの記憶が教えてくれる』から」

エレニ「は!?」

ヱレン「俺と同化すれば解るよ。さあ」

エレニ「決心したんだものね。わかった、やるよ」コク

ヱレン「いいか? やるぞ」ガリッ

ヱレン「お前に再生の蘇りを、俺に永遠からの脱却を」

エレニ「…」

 ニュウッ シュルシュルシュル …ドクン…ドクン…ドクン…


エレニ「…ぁ」

エレニ「わかる…自分が生き返っていくのが…」

エレニ(…気持ちいい…何なの?これ)

エレニ(これ…まるで、セックスしてるみたい///)

ヱレン(なあ、おい、思考だだ漏れなんだけど///)

エレニ(ええっ!? ちょっと! 覗かないでよっっっ!!)

ヱレン(無理言うなよっ! 融け合ってんだぞ? 彼我の境目なんて曖昧になってる)

エレニ(心と意と体の一体化がこれほどのものだとは…)

ヱレン(元々総ての生きものは一つの細胞だったって説があったな)


エレニ(わかる、その情報はもっと先にある…待って、『彼ら』にアクセスしてみる)

エレニ(これかな? 共通祖先説とか原始生命体説とかって言われてる生命起源説ね)

ヱレン(でも、その理論は完全じゃない)

エレニ(これだけの情報量を一体どうやって?)

エレニ(もっと奥を探れば…)

ヱレン(それ以上は知らない方が良い)

 …プツン…

エレニ「どうして!? …あ」

ヱレン「治療完了。お疲れ」ニコッ

エレニ「いつの間に…」

ヱレン「始めてから2時間以上経ってるって」

エレニ「えっ嘘っ!?」


ヱレン「てか、退いて。重い」

エレニ「いい、いつの間に!?」アワワワ

ヱレン「お前が倒れて来るから受け止めたんだけど」ポリ

エレニ「受け止められなかったって? 私はそんなに重くないよっ!」ゲシッ

ヱレン「ってぇ!」

エレニ「あっごめん!」

ヱレン「すっかり良くなったな」クスッ

エレニ「えっ? ああ、うん。元通りさ」

ヱレン「元通りじゃない。変身能力は無くなったはず」

エレニ「そんなもの、どうだっていいさ。気にしないで」

ヱレン「そうか?」

エレニ「くどい!」


エレニ「それより鏡! 鏡!」キョロキョロ

エレニ「ああ良かった、顔はエレンのまんまだわ」

ヱレン「その悪人顔だと苦労するぞ? アニの方が良かったのに」

エレニ「いいの! 私はこっちのが気に入ってんのよ」フフッ

ヱレン「…さいですか。(うーん、複雑な心境だ)」

ヱレン「あのさぁ…それでだな…」

エレニ「判ってる。言わなくてもいいよ」

ヱレン「治ったばかりで悪いな」

エレニ「融合してた時にあんたの考えはなぞれたからね。異論は無いよ」


ヱレン「これは試練の始まりだぞ? ここで下りてもいいんだ」

エレニ「あんたっていつも自分で言い出しておきながら引き止めようとするんだね」クスクス

エレニ「大丈夫さ、私はそんなに弱くない。余計な心配だね」

ヱレン「そうか…」

エレニ「そうだよ」

エレニ(私とヱレン、2人の関係が2人しか知らない理由でずっと続くんだ)

エレニ(これ以上の幸せってないよ)

エレニ「じゃあね。暫くの間お別れだ」


ヱレン「また逢える日を待ってるよ、“エレニ”」

エレニ「あはは、残念でした」ニッコリ

エレニ「生まれ変わったのよ、私は。もうその名前は使わない」

エレニ「じゃあね!」スッ

 …パタン…

ヱレン「最後の最後で最高の笑顔を見せやがって」

ヱレン「ごめんな。……ごめん」ポタッ

ヱレン「? 俺…泣いてるのか?」ポロポロッ

ヱレに「そうか、エレニ、お前…俺に涙を、泣ける能力を分けてくれたんだな」


 × ヱレに「そうか、エレニ、お前…俺に涙を、泣ける能力を分けてくれたんだな」

 ○ ヱレン「そうか、エレニ、お前…俺に涙を、泣ける能力を分けてくれたんだな」



     誤字で台無しだよorz


 * 訓練兵団宿舎内


クリスタ(あ、また。ミカサとアルミンがこっそり会ってる)

クリスタ(何を話してるんだろ。よく聴こえない)イライラ

クリスタ(ユミルは夢だとか勘違いだとか言うけど…)

クリスタ(やっぱり、ミカサがエレンを作ったってハンナが言ってたのは本当なのよ)

クリスタ(ミカサが話すエレンの様子と実際のエレンの行動とが噛み合わないもの)


アニ(クリスタ…ずっと聞き耳立ててるね。ミカサの話が気になるってところか)

アニ(やっぱり、クリスタも色々と勘付いてるんだ)

アニ(あの夜以来、私のエレン(エレニ)が帰って来ない…)

アニ(もしかしたら、ミカサに、もう……かも)

アニ(いやだ! そんなの考えたくない)ブンブン


ハンジ「アルミンッ! いるかい!?」ドドドドド

クリスタ(!? あの人、誰?)

アニ(あの様子、只事じゃないね)

ミカサ「まさかエレンに何か!?」

クリスタ(エレン!? 今、エレンって言った!)

クリスタ(ミカサが言ってるのはもう一人のエレンのことよね?)

アニ(エレン!? どっちのことだろ?)

アニ(やっぱり私のエレン(エレニ)は、あの人に捕まってるってこと?)


ハンジ「……盗まれたっ!」

クリスタ(何のことだかわからないけど、何か大変なことが起きてる?)

クリスタ(盗まれた…って、もしかして、みかん箱のこと!?)

アニ(エレンが盗まれた? それとももう一人のエレン(エレニ)の方?)

アニ(いや、待て、落ちつけ私。盗まれたって言い方はおかしいよ)

ハンジ「我々以外にも秘密に気付いた者が居るんだ!」

クリスタ「!!」ドキッ

クリスタ(ば、ばれた!? ばれちゃった!?)ヘナヘナ

アニ(それとも私のエレン(エレニ)がみかん箱を盗んだ? という事は、私の元に帰って来る?)

アニ(なら、こうしちゃいられない。迎えに行かなきゃ!)サササッ

クリスタ(え~ん、どうしよう? どうすればいいの?ユミル…)

クリスタ(ハッ! そうよ、ユミル! ユミルに相談しよう!!)ダッ


ハンジ「…場所を変えよう。付いて来てくれ」

アルミン「直ぐにマルコを呼んで来ます!」タッ

ミカサ「ハンジさん…2人分の気配が」ヒソヒソ

ハンジ「そのようだね。(上手いこと罠に掛かってくれるといいけど)」ヒソヒソ

ハンジ(さて、どうしたものか…)

ハンジ(みかん箱を目の前で奪われた時は、思わず怒りに目が眩んだが…)

ハンジ(何だろう? 何か引っ掛かる…)


 * 少し時間を遡って…ハンジのラボ兼私室


ハンジ「ヱレン、みかん箱が…こ、これは!?」

ヱレン「ハンジさん……」グスッ

ハンジ「ど、どうしたのっ!?」

ハンジ「このシーツにべっとり付いてるのは…アルカン? これ、まさかっ!?」

ヱレン「いっちゃいました。ついさっき……」

ハンジ「逝っちゃっ(絶句)……そう。思い返せば気の毒な子だったね…」ナデ…

ヱレン「……………(ごめんなさい、ハンジさん)」


ハンジ「ヱレン、そんなに気を落とさないで。って言っても今は難しいだろうけど」

ヱレン「いえ、大丈夫です」

ハンジ「こんな時に何だけど…みかん箱がまた奪われた…」

ヱレン「え?」

ハンジ「面目無い…」

ヱレン「エレンは!?」

ハンジ「無事だ。今はリヴァイの家だろう」

ヱレン「みかん箱を奪った相手は? 見ましたか?」

ハンジ「いや。フードで顔を隠してた上、この暗さだ。判らなかったよ」

ハンジ「だが、恐らくこの子の創造主だと思う」

ヱレン「では、直ぐにでも追い掛ければ…(上手く逃げてくれたんだ)」


ハンジ「敵さんは立体機動を装備してて追い掛ける事も儘ならなかった」

ハンジ「今から捜索するのでは遅きに失した。これは痛いね」ハァ…

ヱレン「いえ、今からでも捜索しましょう」

ヱレン「こいつの時と同じ精製方しか知らないなら、場所は限られています」

ハンジ「アルカンの貯蔵場所か。それならそう多くはないな」

ヱレン「警備兵の目を逃れようと思えば行くべき場所は一箇所だけです」

ヱレン「訓練兵団の倉庫の見張りは常駐制ではなく巡回制です。いつでも入り込めます」

ハンジ「犯人が巣穴に戻るって?」


ヱレン「はい。訓練兵の身分では。不意打ちで点呼されたらどうしようもないですからね」

ハンジ「そうか、そうだったね。訓練兵の方が時間的制約が有るんだった」

ハンジ「よし。それなら今から出動だ」スクッ

ハンジ「こんな事になったんだ、ヱレンとの約束は白紙に戻すが異論は無いだろうね?」

ハンジ「手が足りないんだ、ミカサ達の協力を仰ぐ」

ヱレン「はい。構いません」

ハンジ「じゃあ行って来る!」バッ

ハンジ「ああ、そうそう、今度勝手に出歩いたら巨人の餌にするからね! わかったね?」

ヱレン「は、はは…わかってます(苦笑)」


 *


ヱレン「ここまでは何とか計画通りに事が運んでるみたいだな」

ヱレン「あとはエレニ次第だが……さて」

ヱレン「やきもきしててもしょうがない。後片付けでもやって時間潰そう」

 …お掃除タイム… という名の証拠隠滅タイム

リヴァイ「おい、ハンジ! てめえ、これはどういうこった?」バーン

ヱレン「!?」ドキーン


リヴァイ「何だこの注意書きは? なぁにが『これ猫だから。間違えないでね』だ」

リヴァイ「こりゃあ、てめえの字だろうが? 悪ふざけにも程度ってもんが…」ハタ

ヱレン「あ、あの…へいちょ…?」

リヴァイ「…てめえ、ベッドに居ねえと思ったら。何でこんなとこに居やがる?」ギロ

ヱレン「は? え?」

リヴァイ「大人しくしてやがったのは猫被ってやがったのか」

リヴァイ「相変わらず汚ねぇな、ここは。てめえもこんなとこで油売りやがって」ムス

ヱレン「はい? いえ? ええ?」


リヴァイ「ガキは寝る時間だろうが。ケツひっ叩かれてえのか」イラッ

ヱレン「え? ちょっ?」

リヴァイ「オラ、帰るぞ」グイッ

ヱレン「へ?」

リヴァイ「そう言やぁハンジは何処だ?」

ヱレン「えっと…その…」

リヴァイ「チッ。居ねえもんは仕方ねえ。後でたっぷり説教してやる」

リヴァイ「大方…クソがなかなか出てこなくて困ってんだろうな」

ヱレン「ハハハ…(言いたい放題だよ、この人)」


リヴァイ「てめえも夜更けにフラフラしてんじゃねえよ。今から反抗期か、ああ?」

ヱレン「ぃぇ…」

リヴァイ「これだから猫は嫌いなんだ。言う事は聞かねえし。餌は好き嫌いしやがるし」

ヱレン「ぁ…」

リヴァイ「風呂は嫌がるし。ドライヤーを怖がるし」

リヴァイ「気紛れで、我儘で、外に出たがる割には自力で帰って来れねえし」

リヴァイ「相手をしねえと拗ねるし。かと思えば、構ってるといきなり毛を逆立てるし」

リヴァイ「まったく。可愛げのねえ」ブツブツ

ヱレン「………」ポカーン


ヱレン「(つまりは…この人、ただの猫好き?)プッ。ククッ、クスクスクス」

リヴァイ「てめえ…何笑ってやがる」

ヱレン「す、すいません兵長!」

リヴァイ「少し臭うな。あんなグロいとこに入り浸ってるからだ。帰ったら風呂入り直すぞ」

ヱレン(なるほど、兵長は潔癖症っと。メモメモ)

ヱレン(ってか、エレニの奴、仕事早過ぎだろ)

ヱレン(兵長の様子からすると、エレンって気に入られてたんだな)


ヱレン(ハンジさんを介してエレンと入れ替わる計画だったのに、前倒しになっちゃったなあ)

ヱレン(ここで下手に逆らって兵長に俺の正体が知れるとマズイし、どうしたもんかなあ…)

リヴァイ「早くしろ! このグズが!」

ヱレン「兵長…。兵長って口悪いですよね」

 ボカッ

ヱレン「いってぇ~!」

リヴァイ「喜べ。しっかり躾け直してやる」ニヤリ☆


 * 再び訓練兵団宿舎内


ユミル「エレンが居なくなったぁ? って、そりゃあたしらには関係ないだろ!」

クリスタ「ユミルってば声が大きいよ」

ミーナ「!」ピクリ

サシャ(今、エレンの名が出たようですが?)ピクピク

ミーナ「クリスタ、その話、詳しく聞かせて?」

サシャ「わ、私も聞きたいですっ」

クリスタ(ああん、もうっ! 内緒で話したかったのに、これじゃ台無しだよ)


クリスタ「さっきミカサのところに…そ、そうだ!あれ調査兵団のハンジ分隊長だ!」

サシャ「ああ、ミカサたちが手伝いに行ってた人ですね」

ミーナ「そのハンジ分隊長が?」

クリスタ「それがすっごく慌てた様子で、ミカサのとこにエレンが居なくなったって知らせに来て…」

ユミル「いやいや、今日はアレだろ? 懲罰くらって街頭パフォーマンスの日だろ?」

ユミル「きっとどっかでサボってやがんのさ。はいお終い。寝よ寝よ」

ミーナ「違うわよ! 更なる精神鍛錬の為の課外訓練だって聞いたわ」

サシャ「え? 調査兵団の方々との懇親会に参加してるって聞いてましたけど?」

ジョシー「私が聞いたのと違う。働き詰めのミカサの代りに今日だけエレンが手伝いに行ったって…」

クリスタ「えっ? どうして皆の話が食い違ってるの?」


クリスタ「変だよ…だってハンジ分隊長の話ぶりからすると、今までずっと一緒に居たみたいだったよ?」

クリスタ「それに、みかん箱が盗まれたって…」

ユミル「それホントか!?」ガシッ

クリスタ「う、うん。そう言ってた。秘密がどうの、って(涙目)」

ユミル(みかん箱ってそんな大事なもんだったのか? やばい!)

サシャ(秘密って、それ私とエレンとの約束の事でしょうか? エレンは窮地に陥ってると?)

ミーナ「あ! あれ! 今、窓の外通ったの、アルミンとマルコじゃない?」

サシャ「ホントですね。歩いてる方向からして兵舎の外へ向かっているようです」


クリスタ「ほらっ、2人も捜しに行くんだよ。どうしよう?ユミルぅ」グスッ

ユミル「…あたしたちも捜しに行こう」バッ

コニー「俺も行くぜ」

サシャ「コニー? それにジャンまで? 皆さん、いつから聞いていたんですか?」

コニー「違ぇよ。俺はアルミンの様子が変だと思ってよ」

ジャン「俺はマルコの顔色が変わったのが気になってな…」

ミーナ「どっちにしろ盗み聞きには変わりないじゃない」


クリスタ「ライナー、アルミンとマルコは何て話してたの?」

ライナー「お、おう(結婚しよ///) そうだな、確か…アルミンが箱が盗まれたとか言って…」

ジャン「マルコがエレンは?って訊ねて」

ライナー「アルミンがもう居なかった、って答えていた」

クリスタ「誘拐じゃないっ!! ねえ、それって誘拐されたんだよね!?」

一同「「「「「誘拐? エレンが誘拐された!?」」」」」ザワザワ

ベルトルト「い、いや、そうとは限らないんじゃ…」

ジャン「だよなあ。あんな死に急ぎ野郎を誘拐してもな。ハハハ」


ライナー「いや、わからんぞ? あいつは昔ミカサと一緒に人攫いに攫われそうになったらしい」

サシャ「何ですかそれ!? 決定的じゃないですか!」

一同「「「「「おい、やっぱり誘拐だってよ!」」」」」ドヨドヨ

ミーナ「私、捜しに行くっ! 私のエレ…班長は私が取り戻すわ!!」

一同「「「「「俺達も行くぞ!! エレンを取り返せ!!」」」」」

ベルトルト(この前のUMA狩りの時といい、大会の時といい、今といい、何なの?皆のこのノリ)


ベルトルト(僕にはとても付いて行けそうにないや。正直、そんな義理も無いし)

ベルトルト(ライナー、冷静に。ここは断って)←必死に目配せ

ライナー「よしっ! 行くぞベルトルトォ!!」

ベルトルト「ええっ!? 誰よりもノリノリ!?」

ミーナ「それでは各自捜索開始!」

一同「「「「「おおー!!」」」」」


   *

アルミン「850年」

アルミン「行方不明のエレン・イェーガーを捜索するため、104期生がこの夜巻き起こした騒動は」

アルミン「あまりの狂騒ぶりから、後に『半月夜の餓狼事件』と名付けられ」

アルミン「一般市民の大顰蹙を買っ…」

アルミン「一般市民の間で永く語り継がれる事となった」



アルミン「…ねぇ……ちょっと、ゴリ押しが過ぎるんじゃない?」

ミカサ「いいの。皆がエレンの為にした事は善い事。永遠に記録に残すべき」

アルミン「………(皆、記憶から消し去りたいと思ってると思うけど…)」

アルミン「そ、そうだね(冷や汗)」


   風呂敷たたむよ! もうちょっとで終わるよ!

   涼しくなったとたん風邪ひいたよ! だからどうだって話だね…


   皆様、くれぐれも御体お大事になさってください。


   急に忙しくなりました。あまり時間が取れませんorz

   ここって、どれ位で流れちゃうんでしょう?

   とりあえず保守がわりに「あらすじ」置いておきます。


☆ わかりやすい「ここまでのあらすじ」 ☆



ミカサ「みかん箱とエレン人形作ったった。命名ヱレン」

ヱレン「ミカサ乙」

アルミン「エレンとヱレンと僕は……ズッ友だょ……!!」

サシャ「実は私がヒロインらしいです」

ミーナ「リア充、爆発しろ!」

ハンジ「ひゃっほー! 新しいオモチャが手に入ったよ!」

クリスタ「こちらスネーク。みかん箱奪取に成功した。敵にはry」

ライナー「いたいけな少年と妹のために…」

ベルトルト「瓦礫を撤去した…」

少年と妹「調査兵団KAKKEEEEEE!!」「△!!」


UMA「可愛い女の子だと思った? 残念! 遊馬ちゃんでした!」

マルコ「遊馬に咬まれた結果がこれだよ!」

エレン「遊馬、駆逐したった」

ジャン「エレンをボウリング・デートに誘ってみる」

アニ「エレン製造方法ヒント、キター! これで勝つる!」

エレニ「ごめんアニ。あたしヱレン側に寝返るわwww」


 * 風呂敷たたむよ ←今ココ


エレン「プロローグと称したイジメ?勃発」

アルミン「僕は万能ではない設定だそうだよ」

みかん箱「ズッ友とは何だったのか?」

リヴァイ「汚い猫を見つけたので虐待することにした」

>>716
かっとビングww

支援

あげ


 >>717 楽しんでいただいたようで、なによりですw

 >>718>>719 ありがとうございます!!


   永いこと書き込めなくて、すみませんでした。

   結末(オチ)はミエミエですが、どうかお付き合い下さい。


 ~~~ ケーゲル場の裏手 とある一室 ~~~


みかん箱「ようやくエレンさん経由でミカサ姐さんのとこに帰れると思ったのに」グス

エレニ「ふぅ、やれやれだよ」

みかん箱「ここどこだよ? ミカサ姐さぁあん!」

エレニ「(しげしげ)…ふぅん、これが…」ジッ

みかん箱「何だよ? 何見てんだよ?」

みかん箱「んん? あれ? ヱレン? エレン…さん…?」

みかん箱「じゃないよな? 何かが違う…えっと、なぜ金髪? イメチェン?」

エレニ「あんたが私らと同じ形態で生まれて来ていたら、話は早かったのにね」

みかん箱「はい?」

エレニ「今からあんたを人間にしてやるよ」

みかん箱「…へ!?」


エレニ「ヱレンの知識に拠れば、紙を漉いた時に紙力増強剤を混ぜてる筈なんだ」

みかん箱「ええまあ…そうですけど…。つーか、どうやって? 人間?」

エレニ「通常は増強剤には澱粉を使うそうだけど…」

エレニ「食糧になる澱粉をミカサが私用に使うはずないってヱレンは言ってたな」

みかん箱「ミカサ姐さんはそういうところキッチリしてますからね」

エレニ「だから、たぶん澱粉の代りに膠を使っただろうって」

エレニ「確かに、皮革加工の副産物である膠なら簡単に手に入るし、無くなっても誰もさほど気にしない」

みかん箱「すげえ。読み通りだよ」

エレニ「尤も、膠を更に精製して食料用ゼラチンも作ってるはずだけど…あんまり配給された事はないな…」

みかん箱「ゼリー美味しいってサシャが言ってたなあ」

エレニ「とにかくさ、その膠のお陰で、あんたの中のエレンニウムは今もカプセル様のゼラチン膜の中に保護されてるらしい」

エレニ「だから、エレンニウムさえ賦活化してやれば、人になるのは簡単だよ。ってさ」


エレニ「あと必要なのは超低周波の照射だけど」

エレニ「ヱレンの話だとケーゲル場の設備にはガスタービン・エンジンが採用されてる」

エレニ「そのせいで施設周辺には断続的に超低周波が発生してるんだって」

エレニ「UMA騒ぎもケーゲル場の建設後だから…やっぱり、そういうことなんだろうね」

みかん箱「一人で納得しちゃったよ。まあ、こっちも大人しく聞いてたけど」

みかん箱「それで…オレを人間にして…何をする、いや、させる気だよ?」

みかん箱「って、話が通じるわけないか。ま、いいや。人になったら訊いてみるか」

 …(再加工工程を詳しく書くと何故かグロいので割愛)…

エレニ「気分は、どう?」

みかん箱だったもの「存外に良いものだよ」

エレニ「じゃあ早速だけど、記憶の並列化を済ませよう」

エレニ「あんたもそのうち自然と覚醒するだろうけど、それを待っていられるほど時間を持て余しちゃいないのが現状でね」

エレニ「ヱレンでさえ覚醒には半月近くもかかったっていうし」


みかん箱だったもの「覚醒? 並列化? どうやって?」

エレニ「これ」

みかん箱だったもの「注射器? そのスピッツの中身は?」

エレニ「ヱレンの血だよ。あと抗凝血剤(ヘパリン)」

みかん箱だったもの「輸血すんの? 俺、注射怖いんだけど…」サーッ

エレニ「らしいねえ」ニヤッ

みかん箱だったもの「どうせなら俺を作る時に混ぜてくれりゃ良かったのに…(涙目)」

みかん箱「そうすりゃこんな手間かけずに済んだんじゃないか?」

エレニ「冗談でしょ。それで人間化に失敗したらヱレンの血が無駄になるじゃない」

みかん箱だったもの「………」

エレニ「これは<彼らの記憶>を自在に呼び覚ます為のトリガーなの」

エレニ「恐らく、ヱレンはエレンに使ってもらおうと作ったんじゃないかな?」

エレニ「生き延びてもらうために…」


みかん箱だったもの「そんな大事なものを何故俺に…?」

エレニ「さあね。自分で考えな」

エレニ「直ぐに効いてくると思うから、今はこれからやらなければいけない事を話すよ」

エレニ「ヱレンからあんたに頼みがあるんだ」

みかん箱だったもの「それ!聞きたいと思ってたんだ。何故オレを人型にしたのか」

エレニ「では単刀直入に。エレンの父親、グリシャ・イェーガー氏を捜して欲しいんだ」

みかん箱だったもの「父さ、いや、えぇっと、先生を?」

エレニ「うん。エレンは兵士になってお母さん、カルラさんの敵、人類の敵を駆逐する事を最優先にしてるから…」

エレニ「お父さんの事が気になっていても、じっくり捜している暇なんてない」

みかん箱だったもの「だよな」

エレニ「そういうわけで、あんたを作ったのは人手が欲しかったからだけど…」

エレニ「実のところ、私らがエレンの近くに居たんじゃ色々とまずいんだ」


エレニ「金髪のままの私はともかく、あんたとヱレンはエレンと同じ顔、同じ姿だからね」

エレニ「私たち3人はバラバラに行動すべきだって、ヱレンが」

みかん箱だったもの「うん、いいんじゃないか。もっともな話だ」

エレニ「エレンはこのまま調査兵団に入団するから…」

エレニ「主な活動拠点は当分の間ここウォール・ローゼとウォール・マリアの往復になる」

エレニ(アニの方は憲兵団に入って拠点をウォール・シーナに移すだろう)

エレニ(アニとは袂を分かった私は、シーナには近付けない。だから…)

エレニ「私は理由あってシーナを探索することができないの」

エレニ「そして…ヱレンは一足先に壁外に行くって言ってる」

みかん箱だったもの「壁外って…ウォール・マリアの外に?」

みかん箱だったもの「わざわざ巨人の活動領域へ行くって?」

みかん箱だったもの「そんな危険なことは俺にやらせてくれればいいのに」


エレニ「本当は…全部ヱレンが一人でやろうとしてたけど…」

エレニ「私を助けるために、ヱレンは寿命を削ってしまった」

エレニ「私も助けられたとはいえ…先はそう長くない」

エレニ「だから最も危険な領域の探索をヱレンが請け負う代りに、私はエレンとミカサを見守る使命を引き受けたの」

エレニ「あんたには…エレンとミカサのため…家族を今一度一緒にしてあげるために」

エレニ「捜して欲しいんだ、ウォール・シーナに潜入して、グリシャさんを!」

エレニ「ヱレンからの情報では、王立図書館の医学資料室に手掛りがあるって」

みかん箱だったもの「手掛り?」

エレニ「そこにグリシャさんの本があったそうなの」

エレニ「閉架式図書だから特別の手続きを経て専用ブースのみでしか閲覧できないらしいし、当然持ち出しも厳禁」

エレニ「そこまで厳重に保管してある初版本なの」

みかん箱だったもの「それを取ってくればいいのか?」

エレニ「違うよ。本自体はエレンも持ってる」


エレニ「重要なのは、王立図書館に収蔵された前後の経緯よ」

エレニ「誰が持ち込んだのか?とか、今までに閲覧したのは誰か?とか」

エレニ「その中からグリシャさんに繋がりそうな人を捜して、そこからグリシャさんの居所を追うの」

エレニ「ただし、藪を突いて蛇を出すって事もあるかも…」

エレニ「それでも、これがどれほど危険な捜査だとしても、やってもらうしかないわ」

みかん箱だったもの「なるほど。そいつはまた…重大な任務だな」

みかん箱だったもの「もちろん否も応もないさ。引き受けるよ」

みかん箱だったもの「ってより、息子としての当然の義務だな」

エレニ「ありがとう…っ!」

みかん箱だったもの「こっちこそ、恩義に報いる機会をくれてありがたい」


エレニ「そうだ。ヱレンからあんたに贈り物があるんだ」

エレン「あんたの名前さ。受け取って欲しい、って」



みかん箱だったもの「これ…記憶にある」

エレン「ヱレンによると」

みかん箱だったもの「わかってる。弟か妹が出来たら付けようね、って母さんが父さんに言ってた…」

エレニ(ああ…もう覚醒したんだ……)

みかん箱だったもの「でも、いいのかな? 俺が名乗っても…」

エレニ「いいんじゃない? あんたも家族なんだし」

みかん箱だったもの「その言葉、有難く受け取っとくよ」

エレニ「じゃあ、後は解るね」

みかん箱だったもの「おう」

エレニ「頼んだよ。時間がないから私はもう行くけど、くれぐれも気を付けてね」

みかん箱だったもの「お前こそな」


 ※ というわけで(?)みかん箱の人としての名前は既出の小噺の中にヒントがあります。

   遊びだし、もう話には関わってこないので、敢えて答えは書きません。あしからず。


 ~~~ リヴァイの家 ~~~


エレン「? 気のせいか? 何か音がしたような…」

 …コン コン…

エレニ「エレン?」

エレン「誰だお前? フードなんて被って…」

エレニ「名前? う~ん…」

エレニ「今はとりあえず、ソイレント・グリーンとでも名乗っておくよ」クスッ

エレン「はあ? どっかで聞いたような…って、合言葉か」

エレン「ん? 待てよ? ちょっと違う、ような…?」

エレニ「いいからさ、ここ開けてよ」

エレン「ちょ、おま、窓から入って来る気かよ」


エレニ「伝言があるんだ、早くしてよ」

エレン「何だよ?」

エレニ「君にあげた本の元の持ち主から伝言」

エレン「元の持ち主? それって誰だ?」

エレン「…(ハッ!) まさか親父か!?」

エレニ「ごめん、違うんだ」

エレニ「大事な事だから聞いて。これから起こる事について……」



エレニ「わかった?」

エレン「は? ぜんぜんわからんのだが?」

エレニ「今は仕方ないかもね。その内、思い当たるよ、きっと…」


エレン「いや、だから、ちょっと待て。何でケーゲル場を壊さないといけないんだ!?」

エレニ「すまないが長居は出来ないんだ」スッ

エレニ「あ、そうそう。伝言の内容と俺の事は他言無用にね」スタッ

エレン「待てって! おい!」バッ



エレニ(あらら。追い掛けて来ちゃった。どうしよ?)タタタ

エレン「待てよッ!」タタタタ

エレニ(ふふ。本物のエレンに追い掛けられるのも悪くないね)

エレン「待てって言ってるだろ! 説明しろ!」

エレニ(でも、顔を見られるわけにはいかないからね)

ミカサ「その声は!」タッタッタ


ミカサ「エレン!?」ザザッ

エレニ(! あちゃー、前からミカサが。兵長の家までエレンを迎えに来たのか)

エレニ(とりあえず路地に入って)ダッ

エレニ(塀を越えて逃げるしかないね)ヒョイッ

ミカサ「エレン!」

エレン「ミ、ミカサ!? 今、誰かと擦れ違わなかったか?」

ミカサ「いいえ?」

ミカサ「それより、エレン! 何か…ひどいことはされなかったの?」

エレン「ね…ねぇよ、そんなことは」シドロモドロ

エレン(全裸に剥かれて風呂に入れられたとか、あーんして食べさせてもらったとか)

エレン(普段のミカサ以上に甲斐甲斐しく面倒見てもらったなんて口を滑らせた日にゃ…)

エレン(兵長とミカサの両方にぬっ殺されるッ!)ゾワッ


ミカサ「エレン…顔色が良くない…やっぱり何か…」

エレン「そ、そんなことないって!」

エレン「それより、お前こそこんな所で何してんだよ?」

ミカサ「わ、私は…エレンがリヴァイ兵長に連れて行かれたと聞いて…」

ミカサ「皆が貴方を捜してちょっとした騒ぎになってしまった」

ミカサ「ので、エレンの訓練は中止になった」

エレン「あ、それで迎えに来てくれたのか。わざわざ悪かったな」

ミカサ「ううん。いいの…」

エレン「そんじゃ帰るとするか」

ミカサ「………」

エレン「ん? どうした?」

ミカサ(刺すような風……あの日も…こんな夜だった…)


ミカサ(あの時、エレンが助けに来てくれなかったら…)

ミカサ(今の私は存在さえしてない)

ミカサ(エレンがいなければ私は私じゃない)

ミカサ(もう大切なものを失いたくない!)

ミカサ(エレンにも二度と味わわせたくない!)

ミカサ(あんな…独りきりで…途方にくれて…寂しくて寂しくて…)

ミカサ(心が寒さで凍えそうになって……)

ミカサ(そう、あれは心を凍らせる)

ミカサ(そして凍りついた心ほど無為で残酷なものはない)

ミカサ「…(あんな思いはもういや。あんな…)…寒い……」

エレン「…」スッ

エレン「ちゃんとマフラー巻いておかないからだろ」シュル

エレン「ほら。これであったかいだろ?」

ミカサ「……あったかい…」


ミカサ「……」ジッ

エレン「なんだよ?」

ミカサ(エレンは変わらない。あの時から変わってない)

ミカサ(エレンはここにいる。私は……)

ミカサ(どうして私はエレンが遠くに行ってしまうと思ってしまうのだろう?)

ミカサ(エレンは目の前にいる。確かにいる)

ミカサ(なのになぜ希薄に感じるの? 陽炎のように消えると思うの?)

ミカサ(私はただ…ただこの美しさをずっと見ていたいだけなのに…)

ミカサ(ああ! そうか)

ミカサ(美しいものは短命だって知ってるからだ)

ミカサ(美しさの本質に寄り添う儚さがエレンの裡に見えるからだ)

エレン「ほら」クイッ

ミカサ「!」


ミカサ(エレンに袖を掴まれた! エレンから掴んできた!)

ミカサ(エレンはここに存在してる。なのに…)

ミカサ(私は何を考えてたの?)

ミカサ(私がエレンを守るんじゃなかったの?)

ミカサ(私にとってエレンは世界そのもの)

ミカサ(私は私の世界を守り抜くの。そう誓ったはず)

エレン「早く帰ろうぜ。オレ達の宿舎に」

ミカサ「…うん」

ミカサ「帰る…」



ミカサ(エレンと私の…世界に)



ミカサ(残酷な日常で綴られた美しい世界に)


   エレンさんがミカサを殴ろうとしたなんて、そんな事あるわけないじゃないですか。やだー。

   きっとね、あの時はケーゲル場を破壊しろって言葉を思い出しただけなんだよ…



   と、無理矢理こじつけてみますた。


 ~ おまけ・その後のエレニ ~


エレニ「あー、おなかがすいた」

エレニ「ガス欠だし、足も痛い。もう歩けない」

エレニ「こんな路地で座り込んでるの誰かに見られたら…」

エレニ「とは思うんだけど…おなかすいたあ」

 ぐぅ~ きゅるる…

エレニ「う、うわわ///」

エレニ「こんな恥ずかしい音聞かれたら…死ねるわ」ガクッ

エレニ「ううん、聞いた奴ぶっ○せば良くね?」ピン!

エレニ「言ってる傍から話し声が! 誰か来た!」


 『立体機動装置つけた猫が、俺にブレード突きつけてきた』

   ※ 包丁猫のコピペ一部改変です。



エレニ「おかね ちょうだい」

グスタフ「お金? いくら?」

エレニ「さんぜんえん」

グスタフ「いいよ。はいどうぞ」

エレニ「固いのも欲しい」

グスタフ「小銭のこと? 全部持てるかな」

アンカ「何買うの?」

エレニ「携帯食糧。いっぱい買う」

アンカ「そっか。でもお店遠いよ? 一緒に行く?」

エレニ「…いく」

グスタフ「装備と刃は重いから置いておきなよ。後で取りに来ればいいから」

エレニ「うん」



グスタフ「食糧いっぱい買えてよかったね」

エレニ「…うん」

アンカ「重いでしょ? それずっと持って歩くの?」

エレニ「…重いの」

アンカ「家に置いておく? 好きなとき取りくればいいじゃん」

エレニ「…うん」



グスタフ「外寒いよ?帰るの?」

エレニ「・・・」

アンカ「泊まる?」

エレニ「・・・そうする」


 ~~~ 数日後 ~~~


アルミン「終息宣言? それは、もう全て片付いたという事でしょうか?」

ハンジ「うん。そうなるね」

ハンジ「あの後、みかん箱を抱えて宿舎の裏から逃走した犯人を空家に追い詰めたまでは良かったが…」

ハンジ「我々が突入した瞬間に閃光弾をぶっ放されるとは思いもしなかった」ムスッ

ヱレン(俺もエレニから話を聞いた時はヒヤヒヤしましたよ)

ヱレン(しかも、エレニを追ってアニまであの場に居たっていうんだから)

ヱレン(まあ、アニが閃光弾を撃ってくれたお陰で逃げられたそうだけど)

ハンジ「まさか犯人も含め、ドッペルゲンゲルが複数居たとはね」


ハンジ「調べによると、犯人2人の正体は訓練兵とは何の関係もない犯罪者だった事も判明した」

ヱレン(誘拐の手配犯を上手く誘い出して身代わりに仕立てたんだけどね)

ヱレン(それに関しては書類を放っておくようなルーズな仕事ぶりだったハンネスさんに礼を言わないとな)

ヱレン(以前ちらっと見た人相書きを覚えていて良かった)

ヱレン(ヲイナーと記憶を共有したのも今思えば僥倖だった)

ヱレン(ヲイナー、いや、アニが町で奴らを見掛けていなければ、こんな作戦は取れなかったからな)

ハンジ「何もかも、こちらの想像とは違い過ぎたよ」

ヱレン(つまり、ヲイナーと用意した案山子と乱入してきたアニは…)

ヱレン(ハンジさんから見ると犯人一味に見えて)

ヱレン(人攫いの賊にとっては自分達以外は全員兵士だと勘違いしたわけだ)

ハンジ「あの時、動転した犯人が火の点いた薪を振り回したりしなけりゃ!」

ハンジ「犯人を取り押さえ、ドッペルを捕獲してたんだ」クッ


ハンジ「何より私の大切な部下達を火災に巻き込んでくれてッ」ギリッ

ハンジ「誰も怪我しなかったものの、部下達には申し訳ない気持ちでいっぱいだ」ションボリ

マルコ「で、でも、主犯の2人は死亡したんですよね?」

ミカサ「襲ってきたんだから、返り討ちに遭うのは当然」

ハンジ「詮方無し、さ。正当防衛の範囲内で処理されたよ」

ハンジ「ただし、団長からは予定外の行動をしたかどで大目玉を食らったけどね」

ヱレン「でも、ご無事で良かったです」ニコッ

ハンジ「みかん箱も燃えちゃったけどね…」シュン

ミカサ「それは残念だけど、命には代えられない」

ミカサ「ので、これで良かった。…です」

ハンジ「ごめんねえ」

ミカサ「騒ぎの種が無くなったと思えば。返ってすっきりしました」


マルコ「でも…その犯人達、ドッペルを作ってどうするつもりだったんだろう?」

ハンジ「人攫いや強盗を繰り返していた連中だから…さてね?」

ハンジ「売り飛ばすつもりだったのか、仲間として共に犯罪を重ねていたのか…もう誰にもわからない」

ハンジ「だが、どちらにせよ、恐らく素体となった被害者は此の世には居ないだろう」

ハンジ「ドッペルも、あれで絶滅したのだと思う…」

ヱレン「…」

ハンジ「………」チラッ

ハンジ(ヱレンが最期を看取った子も、名乗らなかったのは名前を付けて貰ってなかったからなんじゃ?と思える)

ハンジ(こんなことなら、私が付けてやれば良かったのかもねぇ…)ハァ…



ハンジ「結局、諸々の失敗は偏に私自身の疑心暗鬼に因るところが大きかったのさ」

ハンジ「策を弄し過ぎて、逆に振り回されてしまった」

アルミン「結果が判っていても正しい選択が出来たかどうかなんて分かりません」

アルミン「こうなるしかなかったんだ、と…僕は思います」


 *


ヱレン「じゃあ俺はこれでリヴァイ兵長の所へ帰るよ」

ミカサ「ヱレン、今からでもエレンに理由を話して逢う事だって出来る」

ミカサ「どうして一緒に来てくれないの?」

ヱレン「ん…まだ用が残ってるからな。それが済んだら、その時はな」

ヱレン(ごめん、ミカサ。俺、どんどん嘘が上達してるよな)

ハンジ「その用事って何?」

ヱレン「いや、それが…兵長が今度の壁外調査に俺を連れて行くって」

ヱレン(なんてな。嘘だけど。俺から連れて行ってくれるよう必死に話を振ったんだ)

ヱレン(壁外へ出るチャンスを逃してなるかよ)


ハンジ(ははぁん。リヴァイったら…陥落したな?)

ハンジ(ヱレンに頼まれると…何というか…断れなくなるんだよね)

ハンジ(あざとイェーガー……恐ろしい子!)

アルミン「断れないの?」

ヱレン「冗談だろ。断ったりしたら何されるか。俺まだ死にたかねぇぞ?」

マルコ「巨人の脅威より恐れられているリヴァイ兵長って一体…」gkbr

ハンジ「まっ、仕方ないさ。リヴァイが飽きるまで付き合ってやってよ」

ハンジ(と、話を合わせておいて。後で締め上げるからね。ヱレン)ニカッ

ヱレン(さすがハンジさん、気付いたな。さっさと兵長の部屋に逃げ込もうっと)

ヱレン「そういうわけだ。悪いけど、エレンの事は頼むよ」

ヱレン「ミカサ、アルミン、頼りにしてるぞ」

ミカサ・アルミン「「任せて」」

ヱレン「マルコも。憲兵団に行っても、こいつらの事、気にかけてくれると嬉しい」

マルコ「心配しないで。何があっても僕達は仲間だ」


 *


マルコ「…あの時、どうして気付かなかったんだろう?」

マルコ「よくよく思い返してみれば、あれは別れの挨拶じゃないか」

マルコ「ヱレン…君は何処に居るの?」

マルコ「エレンに逢うまで、君は死んだりしないよね? 帰って来るよね?」

マルコ「エレンには助けが必要だよ」

マルコ(だって、あんな…あんなこと…)

マルコ(エレンが巨人になってしまったなんて…っ!)

マルコ(ヱレン、君は何か知っていたんだろ? 僕達に納得のいく説明が出来るだろう?)

マルコ(あぁ…ごめん。責めているわけじゃないんだ)

マルコ(ただ、さ…自分が情けなくて…。もっと早く全部気付いていれば…)



ジャン「…オイ」

ジャン「お前…マルコ……か……?」


   もう少しエンディングを付け足したら、後はエピローグを残すのみです。

   パソが熱暴走しそうなので、今日はここまで。

   お読みいただいて、ありがとうございます。

終わったのか?
ヱレンとサシャが一緒に箱に入って会話してる所何故か好きだったなあ。
物語自体は良く判らん頭悪いし。もう一度初めから読んでみる。
エピローグまでには理解しとくわ乙

支援


  >>751>>752 ありがとうございます!!

   わかりにくい話ですみません

   文才と構成力のない俺が悪いんですorz


 ~~~ トロスト区攻防戦の最中 ~~~


ダンスィ「み、皆さん、おお落ち着いてっ、ひ、避難をを…っ!」

ジャン「ばっかやろう! てめえが落ち着け!」

ジャン「パニック状態の避難民に落ち着けなんて言って聞き分けるわきゃねえだろ」

ジャン「死にたくなきゃ走れー!! 門まで走れ!! 急げー!!」

ジョシー「ジャン、そんなふうに煽ったら怪我人が…。習った通り、静かに誘導した方が」

ジャン「仕方ねえだろ、こうなりゃ『なるべく多くを』避難させるしかねえ」

ジャン「静かに誘導なんて、一旦パニックになっちまったら何の効果もねえんだよ」


シュヴェスター「うわあぁぁん! お兄ちゃーん、どこぉ?」

マルコ「ジャン、ここは任せるよ」

ジャン「お、おいっ!?」

マルコ「君、大丈夫かい?」

シュヴェスター「お兄ちゃんがどこにもいないのー」ヒック…ヒック…

マルコ「あれ? 君は確か、ケーゲル場の前で会った…」

ユンゲ「居た!」

シュヴェスター「お兄ちゃん!」ヒシッ

ユンゲ「手を離すなって言ったろ。ほら」

シュヴェスター「うん」ギュッ


ライナー「見つかって良かったな」

ユンゲ「ありがとう、ライナー兄ちゃん。マルコ兄ちゃんも」

シュヴェスター「ありがとー」

ベルトルト「小さい子達だけで大通りを行くのは危ない」

ベルトルト「巨人が此処に到達する前に建物内を突っ切って裏道を行った方がいいかも」

マルコ「僕が送るよ」

ライナー「俺達も行こう」

アニ「……」


ライナー「よし、ここを突っ切って行こう」

シュヴェスター「巨人、おいかけてくる?」

ユンゲ「大丈夫だよ。ライナー兄ちゃん達がやっつけてくれるさ」

ライナー「おう、任せろ」

シュヴェスター「まかせるのー」キャッキャ

ベルトルト「……」

アニ「……」

マルコ「君達、お父さんお母さんとは何時逸れたの?」

ユンゲ「はぐれたんじゃないよ。オレたち、二人で遊びに来てたんだ」

シュヴェスター「お砂場で遊んでたのー」


マルコ「ああ、前に言ってた、ライナーとベルトルトが作ってくれた砂場の事かな?」

ユンゲ「うん。いつもそこで調査兵団ごっこをしてるんだ」

シュヴェスター「かっこいいのー」

マルコ「へぇ。調査兵団ごっこかぁ。勇ましいねえ」

ユンゲ「巨人を削いで倒すんだ! 手でガーッて壊すとスカッとするんだ」

マルコ「巨人をやっつけちゃうんだ? 強いんだねえ」クスクス

シュヴェスター「つよいのー」ニコニコ

シュヴェスター「お砂で巨人つくるのー。ガーッてこわすの。楽しいのー」

マルコ「そうか、砂で作った巨人を倒すんだ?」ニコニコ

マルコ「今までに何体くらい駆逐したのかな?」

ユンゲ「いっぱい! いーっぱい駆逐した!」

シュヴェスター「いっぱーい!」


マルコ「凄いねえ。じゃあ階級は団長クラスかな?」

ユンゲ「オレ、兵士長がいい! リヴァイ兵長かっけーんだもん」

シュヴェスター「あたし、ぶんたちょー」

マルコ「分隊長のことかな? ハンジ分隊長に憧れ?」

マルコ「それは…やめておいた方がいいよ……」

シュヴェスター「?」

マルコ「あ、いや、気にしないで」

ユンゲ「ねえ、マルコ兄ちゃん…オレたち、あそこに戻れるかなあ?」

マルコ「! 戻れるよ!」

シュヴェスター「またお砂なくなっちゃうかなぁ?」

マルコ「無くならないよ。大丈夫だから」

シュヴェスター「前のはいなくなったのー。おいといたのに消えちゃったのー」ショボン


マルコ「消えた? 砂の巨人が?」

シュヴェスター「うん。がんばって作ったのに、にげたー」

マルコ「逃げた? 砂? 砂が?」

ユンゲ「うん。だからそう言ってるじゃないか」

マルコ「…何体くらい作ってたの?」

シュヴェスター「んっとねぇ…さんじゅ?」

マルコ「…それ、どれくらいの大きさなの?」

ユンゲ「膝くらい。で、でも! 小さいけど巨人なんだぞ!」

マルコ「そ、そうだよね。小さくても巨人は巨人だ。…因みに、消えたのはいつ頃?」

ユンゲ「え? えっと…? 先月だったと思うけど…よく覚えてない」

マルコ「あ、いや、ごめんね。覚えてないか。そうだよね」

マルコ「大丈夫、新しい砂を入れれば、また遊べるよ」


シュヴェスター「うん! 今度はライナーお兄ちゃんとベルベルお兄ちゃんもおケガしないでね」

マルコ「怪我? 二人は怪我してたの?」

シュヴェスター「うん。汗いっぱいかいて、ガレキどかしてくれたとき」

ユンゲ「瓦礫の破片で指切ってた。血が出てるのに砂を入れてくれたんだ」

マルコ「そう……」

ライナー「……」

ベルトルト「……」

アニ「……」

マルコ「! 待って。出口のところに人が…」



エレニ「おーい君達、親御さんが迎えに来てるよ」

エレニ「ほら、お子さんたちは無事ですよ」


シュヴェスター「ママ! パパ!」

ユンゲ「うわあん! 会いたかったよお!」

ライナー「おお!良かったな、お前達。無事に避難しろよ」

エレニ「気をつけてお帰り」



マルコ「お前は……ヲイナー!? 生きて…? いや、何故此処に!?」

 ドシュッ

エレニ「!」

マルコ「ぐ…ふっ…」

アニ「ごめんなさい…」

マルコ「ア、アニ…なぜ…」

アニ「ごめんなさい…」


ベルトルト「マルコ、気付いたんだろ? あの子達の話で気付いたんだよね?」

マルコ「ベ……ル………」

ベルトルト「UMAが僕達の分身だって…知られてしまったね」

ベルトルト「こうなったら…気の毒だとは思うけど」

ライナー「ああ、永久に口を閉ざしてもらうしかないな」

マルコ「そ、そうか…やっぱり君達は……」

マルコ「い、今迄だって、ヒントは沢山あったんだ」

マルコ「全てを見てきたのは僕だけだったんだ」

マルコ「エレンが巨人化した時に…真っ先に…僕が…僕こそが気付くべきだった」

マルコ「神出鬼没なこと、異常な再生能力、UMAが倒された後に死体を残さないこと」

マルコ「巨人との共通点がこんなにあったのに…っ」

マルコ「特殊な体質の者が、即ち巨人化出来る人間の事だって」

マルコ「そして、その裏切り者が…エレンの近くに居て、人類の中に紛れてるって…っ!」


エレニ「それ以上喋るんじゃない、マルコ」

マルコ「お前も…うっ」

エレニ「直ぐに手当てするから」

マルコ「な…に……?」

アニ「そう…やっぱり寝返ってたの」

マルコ「ね…寝返った?」

エレニ「アニ…」

ベルトルト「アニ、こいつは?」

アニ「あたしの……さ」

マルコ(アニが…こいつを造ったのか!)

ベルトルト「アニ、どうするんだ?」

アニ「さあ? どうしようね?」


エレニ「寝返ったのは事実だけど、それはアニ、お前の為だ」

アニ「最初の言い訳がそれかい?」フン

アニ「御為ごかしを言うにしても、もっと他に言うべき事があるんじゃないの?」

アニ「あんたは、あたしの好意を、愛情を踏み躙った!」

アニ「こんな処にノコノコ出て来て! 許してもらえるとでも思った?」

エレニ「いいや。そんな厚かましい事は考えてもいない」

アニ「だったら何!?」

エレニ「愛してるよ、アニ。それだけ言いたかった」

アニ「そんな言葉が免罪符になるとでも? 馬鹿にすんじゃないよ!」

エレニ「愛してる。お前が俺を憎み続けていようと、俺はお前を愛してる」

アニ「っ!!」

エレニ「だから…今は俺に自由をくれ」


エレニ「何時とは確約出来ないが、必ずお前の元に戻って来るから」

アニ「ふざけないで!」

エレニ「アニ…」

アニ「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるなあッ!!」

アニ「愛してるなら自由にしろ? そんなの、あたしが一番言いたかった!」

アニ「やりたくもない格闘術を強制されて! 聞きたくもない理想を聞かされ続けて!」

アニ「お父さんはあたし自身を見てくれる事なんて無かったじゃないの!」

アニ「あたしを女の子として見てくれなかったじゃない!」

アニ「エレン! あんたにはもっと労わって欲しかったのに、どうしてわかってくれないの!?」

アニ「優しさってものをはき違えてるから、こっちも間違った期待を持っちゃうのよ!」

エレニ「…アニ……」

アニ「………っ!」


エレニ「でも…アニ……今だって仲間を、エレンを大切に思ってるだろ?」

エレニ「お父さんのことを切り捨てられなかったように」

エレニ「あいつの、そういう鈍いところも含めて、それでも慕う気持ちを否定できない、だろ?」

エレニ「人を…好きになるってそういうことだもの」

エレニ「思いを抱いているなら…同じ思いでいてほしいと期待するのは当たり前のことだ…」

アニ「だって……だって……」

エレニ「アニ…」

エレニ「エレンが復讐に駆られている姿を見て何を思う?」

エレニ「正義を追及する姿を…そして他の人たちが犠牲になっていく有様を見て…」

エレニ「あの光景は…残酷ではあるけれど…」

エレニ「残酷であるが故にとても美しいと思わないか?」

アニ「…思」


ベルトルト「悪魔の囁きだな」

アニ「!」

ベルトルト「互いの思想が食い違っている事は残念だとは思うけれど」

ベルトルト「君がアニに造られたのなら、無駄だと解るはずだ」

ベルトルト「情に訴えかける君の遣り口では僕達の大義を払拭するほどの力はないよ」

ベルトルト「残念だったね」

エレニ「どうしても、か?」

ベルトルト「どうしたって僕達と彼等とでは分かり合えないさ」

ベルトルト「彼等は僕達にとっては異質の者達なのだから……君もね」

エレニ「!」

 ザシュッ …ドサッ… ゴロン


アニ「___!!」

ベルトルト「アニ、君に断りを入れる前に君の持ち物を処分しちゃったけど…」

ベルトルト「別に構わないよね?」

アニ「……………」

ベルトルト「目は覚めたかな?」

アニ「……………」

ベルトルト「しっかりしてくれよ。僕達は故郷に帰るんだろう?」

アニ「……そう………だね………そう…だった………」

アニ「約束……したんだ……帰るって……………」

ベルトルト「そうだよ。帰るんだ」

ベルトルト「あれは…」チラッ

ベルトルト「悪い夢だ」

アニ「………夢…」


ライナー「お、おいベルトルト、エ、エレンの首を切り落としちまって…どうするんだ!?」

ベルトルト「……ライナー、君もしっかりしてくれ。これはエレンじゃない」

ライナー「エレンじゃない?」

ベルトルト「そうだよ。ただの人形さ」

ライナー「そ、そうか? そうは見えんな」

ベルトルト「そうなんだよ。これはただの人形で、エレンじゃない」

ベルトルト「僕達の仲間でも同志でもない」

ライナー「……そうだった、かな?」

ライナー「…お前がそう言うんなら…そうなんだろうな」

ベルトルト「……………(溜息)」


マルコ(こ、こいつら、元仲間まで手に掛けて!)

マルコ(……僕も逝くのかな。悔しいな)

ライナー「おい、こいつどうするんだ? このままにしておくとマズイだろ」

ベルトルト「燃やせばいい。いいね?アニ」

アニ「あたしは……早く此処を離れたい」



  シュッ… ボッ …パチッ パチパチパチ… ボウッ



ライナー「マルコはどうする? まだ息があるみたいだが」

ベルトルト「通りに放置したらいい。腹を空かせた巨人が見つけて食ってくれるさ」


マルコ(外道どもめ。お前達みんなエレンに駆逐されちまえ)

マルコ(そうだ、エレンは大丈夫なのかな? ずっと巨人のままって事はないよね?)

マルコ(あのままだったとしても、ミカサなら付いて行きそうだけど)

マルコ(ハンジさんが何とかしてくれるかも。だといいな)

マルコ(ヱレン、君は答えを知っているのかい?)

マルコ(僕は自分が情けないよ。裏切り者を告発することすら叶わないなんて)

マルコ(ジャン、心残りがあるとすれば、君の事かな)

マルコ(ごめんね…僕は先に逝くけど……君は当分来なくていいからね)



 ズシーン ズシーン



    …ァアァアアァァ…


ジャン「…マルコ…何があった?」

ジャン「だ…誰か……」

ジャン「…誰か…」

ジャン「コイツの最期を見た奴は…」



ジャン(なぁ…マルコ)

ジャン(もう…どれがお前の骨だか…わかんなくなったよ…)



ジャン「オレは決めたぞ」

ジャン「オレは…」

ジャン「……」



ジャン「オレは…調査兵団になる」


 ~~~ 王立図書館 ヴァーレス・エンデ ~~~



みかん箱だったもの「図書館ってのは知識と記録の宝庫だよな」

みかん箱だったもの「考えようによっちゃあ、脳の外部拡張みたいなもんだ」

みかん箱だったもの「なあ?そう思わないか? こそこそ窺ってないで何とか言えよ」

リッター「閣下、あれが件の仔猫です」

ヘルツォーク「うむ。予定通りであるな」

リッター「はい。想像通りの愚か者めにございます」

フュルスト「警護の目を潜り幾度も忍び込めた辺り、そう愚かでもないようだが」

グラーフ「然り。ただ今回は此方が少しばかり上手を行けましたな」


リッター「して、如何なさいますか?」

ヘルツォーク「なかなか可愛い顔をしておる。飼い馴らすのも一興よな」

みかん箱だったもの「勝手に人の進退を決めないでくれ」

リッター「閣下の御前である。控えよ!」

ヘルツォーク「構わぬ」

リッター「……」

みかん箱だったもの「お見受けしたところ、皆様貴族でいらっしゃるようですが…」

みかん箱だったもの「俺ひとりに仰々しいお出迎えをして頂いた訳は聞きたくないですね」

ヘルツォーク「ほっほ。面白いのう。聞きたくないとは」

みかん箱だったもの「そりゃあもう想像ついちゃってるんで」ニコッ


ヘルツォーク「では何が聞きたい?」

みかん箱だったもの「本の閲覧者のリストが偽物なのは直ぐに判ったけど…」

ヘルツォーク「ほう?」

みかん箱だったもの「本物が存在するのか聞きたいね」

フュルスト「本物はある。が、お主は気にせずともよい」

みかん箱だったもの「…まぁ、これも予想通りの答えだな」

みかん箱だったもの「けど安心したよ。つまりはあんたらも親父の行方は知らないって事だよな」

ヘルツォーク「ふ。成程、賢しいのう」

  バン!


フライヘア「閣下! 其の者はエレン・イェーガーではございません」

ヘルツォーク「む?」


フライヘア「本物のエレン・イェーガーはエルヴィン・スミスの策略により召喚不能に!」

フライヘア「審議会にてイェーガーの価値を説き、壁外調査に連れ出すもよう」

ヘルツォーク「ふむ。まあ、どちらでもよい」

フライヘア「閣下?」

ヘルツォーク「此の者が…あれは何と言ったかな?」

グラーフ「超低周波発生器の事でございますか?」

ヘルツォーク「うむ。その機械によって作られた記憶保持者には違いないのであろう?」

リッター「御意にございます」

ヘルツォーク「ならば重畳。必要なものさえ手に入ればよい」


フュルスト「超低周波発生器が目立たぬよう隠れ蓑としてケーゲル場まで造らせましたからな」

ヘルツォーク「実以て。超低周波発生器を稼働させる為にガスタービン・エンジンの開発にどれほどの投資をしたことか」

みかん箱だったもの「それもこれも<彼らの記憶>を奪う為に? そりゃ御苦労なこって」

フュルスト「ふ。さても強気な仔猫めにございますな」

ヘルツォーク「そのようだ」

フュルスト「おぬし、もう少し真剣に自身の心配をしたらどうだ? おぬしの態度如何で此方も情けをかけてやれようほどに」

みかん箱だったもの「ふん。御親切に涙が出るね」

グラーフ「如何でしょう。直接<記憶>を取り出すか、グリシャを誘き寄せる餌にするか」

リッター「閣下の御心のままに」

ヘルツォーク「そうさな…。うむ。リッター、ぬしに任せる」

リッター「は」


みかん箱だったもの「言っとくけど、俺もエレンと同じ超再生能力の持ち主なんだが?」

リッター「心配は要らぬぞ、スワンプマン」ニヤッ

みかん箱だったもの「よせよな。俺は入れ替り魔じゃねえっての」

リッター「ならばクローンと呼ぶか?」

リッター「プラナリアという生きものを知っているか?」

リッター「どこをどう切り刻んでも再生するという下等生物だ。…が、実は刺されるとあっけなく死ぬそうだ」

リッター「おぬしは刺されても平気かな? 死にはせずとも苦痛には変わりなかろうな」

みかん箱だったもの「ハッ! お前らはその下等生物にすら劣るよな」

リッター「虚勢を張るのも限度があるだろう? 逃げ場も無いしな」

みかん箱だったもの「チッ!(確かにその通りだが…腹立つなあ)」

リッター「大人しく<記憶>を渡せば命だけは取らずにおいてやろう」ズイッ

みかん箱だったもの「そのセリフ、悪党そのものって感じで笑えるね」ススッ


フライヘア「強情な。逆らう気を失くさせてやりましょう」

フライヘア「先程掴んだ情報です。お前の同類は死にました」

みかん箱だったもの「な!? 今何て!?」

フライヘア「エレニと呼ばれていたクローン体は或る者達の手に掛けられ、骸は燃えて無くなったと言ったのです」

みかん箱だったもの(エレニが…そんな…)

フライヘア「お前達の動向は全て我等に把握されているのです。許より逃げ隠れなど出来ませんよ」

みかん箱だったもの「……っ!」

みかん箱だったもの(エレン、ごめんな。どうやら俺はここまでのようだ)

みかん箱だったもの(エレニ、仇を取ってやれなくてすまない。許してくれ)

みかん箱だったもの(ヱレン、約束は当分果たせそうにないが…わかってくれるよな?)

みかん箱だったもの(エルヴィン団長がエレンを守ってくれてる間は、こいつらの思い通りになる訳にはいかない)


フュルスト「あまり怖がらせるでない。見よ、仔猫が逆毛を立てておる(笑)」

みかん箱だったもの(…とすれば、残る手立ては一つ…)



 ピカッ! パァアアアアア ア ア ア!!



ヘルツォーク「な、何だ!?」

リッター「ぬ!」

フライヘア「閣下! 危のうございます! こちらへ!」

グラーフ「……ぬかったな。結晶化能力まで有していたとは…」


フライヘア「これは…? 水晶でしょうか?」

リッター「刃が! ヒビひとつ入りません!」

フュルスト「……逃げられましたな」

ヘルツォーク「な、何とかせい!!」

フュルスト「無駄でしょう。報告には如何なる手段を以てしてもこの水晶は破壊不可能とありました」

グラーフ「こうなれば、何としてもエレン・イェーガー本人を王都に召喚すべきでしょう」

ヘルツォーク「何でもよい! 誰でも構わぬ! そち達に一任する!!」

ヘルツォーク「何としてでも余の前に生贄を差し出すのだ! わかったな!?」

全員「「「「「はッ!」」」」」




みかん箱だった結晶体(晶面内を反射する光は凍りついた時間)

みかん箱だった結晶体(暫し時を止め、俺はエレンの招請の声を待とう…)





みかん箱だった結晶体(10年でも100年でも)

みかん箱だった結晶体(たとえ1万年が過ぎようとも…)



みかん箱だった結晶体(エレン、君を待ってる)


   これにて 本編、終了。
  
   着地どころか墜落したもよう\(^o^)/


 ~~~ エピローグ ① ~~~


 ※ プロローグで出した有名コピペ(改変済)の続きで、これもその改変です。

 ※ リヴァイ兵長はヱレンの事をエレンと呼びます。多分、兵長にとってはどうでもいい事なんですよ。



<兵長の日記>

汚い仔猫、もとい、エレンを見つけたので、虐待するため ハンジのラボから回収して来てから3日が過ぎた。

その間、ずっと薬品を体中に塗りたくり、俺の嫌いな白い飲み物を、たっぷりと飲ませた。

だいぶ効いているようだ、手足を伸ばして俺に腹を見せて『ン~~ン』と声を漏らすようになった。

覚悟しろよ!これからもこの攻撃は続けていくぜ。


   *

乾燥した不味そうな塊が無くなったので、買いに行くことにする。

だが、コイツは逃げるタイミングを狙っていたのだろう、俺が部屋を出ようとするとダッシュをしてきた。

ドアのノブに手をかけると、足元に纏わり付いて離れない、更に頭を傾けて擦り付けてくる。

邪魔者にはお仕置きが必要だ、

俺は首根っこをヒョイとつまみ、ベッドに置いて顎の下をくすぐり続けた。

「何をする!止めろ」とでも言ってるのか『ひッ、ひゃうっ!』と鳴いてるが止めない。

それを10分程していると、グタッとして俺のベッドでダウンした、良い気味だ。

ダウン間際に最後の抵抗か?指を軽く噛みやがったが、俺様には全く効かないので好きにさせてやる。


帰ってきて早速、円筒状の入れ物から取り出したネチョネチョした物体を食わせる。

余程、腹ペコだったのだろう、凄い勢いで食べ始める。

馬鹿なクソガキだ。アゴが弱くなるぞ、高級品で軟らかいからな。

そろそろ寝ようと、電気を消してベッドに入るとあろう事か、先にもぐりこんでいやがった。

追い出してやろうとしたが、体が温かい事に気付く。

最近寒くなってきたところだ、今日からは一緒に寝ることにしよう。


   * *

壁外調査中、折り悪しく巨人どもと遭遇。

エレンのやつは果敢にも爪を立てて反撃してやがったが、

あっけなく転がされるだけに終わった。

何時間特訓してやったと思ってるんだ、グズめ。

が、耳から血を出していたので慌てて引き取に行った。

今度からは戦闘は避けろと教えこむことにする。

   * *


たまにエレンより少し大きいくらいの専用ダンボール箱(檻付)に入れて馬車に乗せて振動攻撃

そして白衣を着たモブリット、ケイジの2名に押さえつけられ、

術衣のハンジに針を刺してもらう。この時の悲鳴にはさすがに耳を覆う。

ハンジに金を渡し、来月も来ると約束する。


   *

元気がなくなったのでここぞとばかりハンジのラボ(診療室)へ何度も行く。

声もあまり出ないようだ。  

ある日か細い声で、一言「兵長…」と俺につぶやいた。

恨み言だろうか・・・

次の日静かに息を引き取った。



燃やしてもらい、呪文を唱える司祭にさらに攻撃してもらう。

今もなお。司祭の元に通う まだ私の攻撃は続いている・・・


~~~ エピローグ ② ~~~


 ※ 第57回壁外調査・反撃前夜


ユミル「あ、あのさ…ミカサ…」

ミカサ「? なに?」

ユミル「その、ほら、あの…」

ミカサ「いつものユミルらしくない。言いたい事があるならハッキリ言って」

ユミル「あ、あの…前にあんたが作ってた箱のことなんだけど…」

ミカサ「それが?」

ユミル「あれ、失くしたの…実はあたしなんだ……」

ミカサ「?(何か行き違いがあるのは判る。けど、どうすればいいの?)」


ユミル「本当にすまない! 悪いことしたって思ってんだ」

ミカサ「気にしないで」

ユミル「ゆ、許してくれるのか?」

ミカサ「許すも許さないもない。私達は仲間で友達。ので、本当に気にしないでいい」

ユミル「そ、そっか」

ミカサ「? ユミルがそんなに気に病んでいたとは知らなかった。気付かなくてごめんなさい」

ユミル「えっ? い、いいよ、そんな…謝ることなんてないよ」

ユミル「ほ、ほら、あたしってこれでも結構細かいトコ気にしちゃうんで」

ユミル「いい加減そういうトコ直したいなあ…って、そうじゃなくて」

ミカサ「?」


ユミル「あ、あのさっ」

ユミル「よけりゃ…これ、貰って欲しいんだ…」

ミカサ「? これ? いたずら?」

ユミル「違ぇよ! い、いや、ま、そういう名前だけどさ」

ユミル「まあ見てなって。ほら、これをここに置くだろ? …すると、ほらな?」

ミカサ「か、可愛い…っ!」

ユミル「だろ。クリスタも欲しがってさぁ、結局あたしの分と3個も買っちまったよ」ニコニコ

ユミル「他にも色々あったけど、ミカサならやっぱコレかな?って」

ミカサ「あの時のエレンのよう。勿論エレンの方が圧倒的に可愛いけれど、みけねこも可愛い」


ミカサ「これ、貰っていいの?」

ユミル「ああ。勿論だ。気に入ってくれたみたいでホッとしたわ」

ミカサ「ありがとう!」ヒシッ

ユミル「お、おう/// (何赤くなってんだあたし)」

エレン「あれ? ミカサが珍しい事やってると思ったら、相手はユミルか」

ユミル「んふ。愛しのミカサが自分以外の奴にひっついてんの見て嫉妬ですかあ?エレン君」ニヤニヤ

ミカサ(エレンがヤキモチを? ということは…///)ボー

エレン「はあ? どうなってんだ、お前ら?」

ユミル「まあまあ。ちゃんと返してやるよ。ほれ、受け取りな」ニヤニヤニヤ


ミカサ「(ハッ!) エレン!!」キラキラ

エレン「お、おう!」ドキッ

ミカサ「見て! ユミルから貰ったの」

エレン「何だ? どれどれ…」



エレン「みかん箱…」

貯金箱「にゃぁ~ん♪」



   ようやく終わりました。無駄に長くてすいませんでした。

   でも800手前で完成したよ! 行数変更して切り上げたけどw

   ホントは1000超えすると判ったんでエピソードを半分削ったんだorz


 
 ここまでお付き合い下さって有難うございました。

 支援いただいた方には本当に感謝しています。



   少しでも楽しんで戴けた事を願いつつ…

      さ、もっと面白いスレに行こうぜ☆

面白かったぞ乙
また気が向いたら何か書いてくれ

良かった

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