モバP「緋桜お嬢、でどうだ?」 (197)

「な、な、な、何じゃ、これはああああああああああ!!!!」

「こら巴、やかましい! もうちいと静かにせえや!!」



小学校の卒業を間近に控えたその日、うちの机には「シンデレラガールズプロダクション」と書いてある封筒が置いてあって。
またぞろ何かの勧誘かの、と思いながら開いた一枚目の紙には「書類選考通過のお知らせ」と書いてあって。

それから、うちの人生は変わってしまったんじゃと、思う。






村上巴(13)Pa

出身:広島 趣味:将棋、演歌

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363333991

巴「親父! これはいったい、どういうことなん!?」

巴父「んー? おお。一次選考通ったんか。これで一安心じゃ。来月頭には面接があるらしいけえの」

巴「一安心じゃ、って何なんよ! 何を勝手にこんなん申しこんどるん!?」

巴父「親がかわいい娘のことを売り込んだって何の問題もありゃせんじゃろうが」

巴「問題大有りよぉ! 大体、うちにアイドルなんてできるわけないじゃろうが!」

巴父「……それでも、やってもらわにゃあいけんのじゃ」キッ

巴「うっ……。な、なんで? どしたん?」

巴父「きちんと決まってから言おうと思っとったんじゃけどな、巴。お前には来年から……」

巴「来年から?」

巴父「東京へ、引っ越してもらう」

巴「……」

巴「はああああああああああ!!??」

〜・〜

友人「それで、大喧嘩しちゃったんだ」

巴「そりゃあそうよ! 何でもかんでもうちに黙って勝手に決めよってから、もうしばらく口も聞きたあないわ」

友人「あはは、アイドルは流石にびっくりじゃね……。巴ちゃん、そういうの苦手そうじゃもんね」

巴「……アイドルだけならまあまだ良かったんよ。うちが我慢すりゃあええんじゃけえ」

友人「?」

巴「引越しのことを勝手に決めたんが一番許せんのじゃ。……だってそしたら、あんたとも離れ離れになるじゃろ」

友人「……!」

巴「せっかく、仲良うなれたのに。離れ離れになるなんて、嫌で嫌でしょーがないわ。言うならもっと早う言えいうんじゃ、あのくそおやじ」ブツブツ

友人「ふふ、でも大丈夫だよ」

巴「何が大丈夫なんじゃ! ……あんたまさか、本当はうちのことが嫌い言うんじゃ」

友人「違う違う! そうじゃのうて」

巴「?」

友人「巴ちゃんがアイドルになるいうことは、有名になったら私もテレビで見れるいうことじゃろ? じゃったら離れとってもちったあ平気よお!」

巴「……!!」

友人「うち、手紙いっぱい書くけえ。絶対書くけえ。うちのこと忘れたら、絶対許さんけえね」

巴「……ありがとう」

友人「それにしても、何で引越しをせにゃいけんの? やっぱりお父さんの都合?」

巴「それが、全然教えてくれんのじゃ。親父はお前のためじゃとかお前の安全がどーの、とか言うとったけど肝心なところはよう分からん」

巴「……ただ、向こうでは寮生活になるらしいけえ、親父の仕事の都合とかではないみたいじゃの」

友人「寮生活!? じゃあ1人暮らしなん!?」

巴「もし面接受かったら、アイドル事務所の女子寮いうのがあるんと。ほいじゃけえ、そこで暮らすことになりそうじゃ。誰かと相部屋かもの」

友人「へー…… いいなあ、憧れちゃう」

巴「あの親父、それもあって申し込みよったらしい。ほんまにええもんかどうか分からんけどな。『有名になったら安心』、とか親父は簡単に言いよったけど、厳しい世界じゃろうしのお」

友人「私は、応援してるからね!」

巴「……おお、できるだけ頑張るわ」

〜事務所前〜

巴「ほんまに、来てしもうた……」

巴(一ヶ月も経つと、流石に冷静にもなる)

巴(うちにアイドルなんて、とてもとても向いとらんのは自分が一番よーわかっとるけど……)

P「あの」

巴(寮でお世話になる予定なんじゃけえ、ここで落ちたら全部の予定がおじゃんになってしまう)

P「あのー」

巴(腹ぁ、くくるしかないか)

P「あの、もしもし」ポン

巴「ひゃっ! な、何ね、あんた! うちになんか用なん!?」

P「その言葉…… もしかして、村上巴さんじゃないですか?」

巴「! 何でうちの名前。もしかして、どっかの回しもんか?」

P「あはは、回し者、って……。書類選考受けてた村上さんですよね。俺はそこのCGプロダクションのプロデューサーです」

巴「プロデュー、サー?」

P「面接を受けに来たんですよね? 良かったら、中へどうぞ。お茶でもお出ししますよ」

巴「はあ」

〜事務所内〜

ガチャ

P「ただいま戻りました」

ちひろ「お帰りなさいプロデューサーさん。……あ、その子」

P「はい。本日面接予定だった村上巴さんです」

巴「は、初めまして」

ちひろ「こんにちは。それじゃあ、お茶とお菓子用意しますから、面接室の方に座っててくださいね♪」

P「それじゃ、こちらへどうぞ」

巴「はあ……」

巴(言われるがままに着いてきてしもうたけど)

巴(ここ、怪しい事務所だったりせんじゃろうの?)

巴(まあ、あの過保護な親父が選んだんじゃけえ心配はない……か?)

〜面接室〜

P「座って楽にしてていいですよー」ポス

巴「……」ポス

巴(それより今は、合格することじゃの。とにかく、悪い印象になることは言わんように)

P「それじゃあ、面接を始めましょうか」

巴「はい」

巴(変な質問が来にゃあええんじゃけど)

P「えっと、お父さんがアイドルになりたいって薦めたってことでいいのかな?」

巴「は、はい」

巴(……書類に書いてあることと食い違っちゃいけんしの)

P「村上さん、アイドルになりたいと思う?」

巴「……はい」

P「んじゃ、採用」

巴(どうにかして、気に入られるような受け答えをせにゃあ……)

巴「……って、は?」

コンコン、ガチャ

ちひろ「お茶とお菓子をお持ちしましたよー」

巴「い、今何て言ったん?」

ちひろ「……って、またですか」

P「またです」

巴「ど、どういうことじゃ?」

ちひろ「この人、いっつもこんな感じなんですよ。私がこうやってお茶を出す頃には面接終わっちゃって、ただのお茶会になっちゃうの」

P「面接なんて建前みたいなものですもん。よっぽど態度や愛想が悪い人なら跳ねますけど、この子の場合はそれもないですし」

巴「……ぷっ。何じゃそりゃ」クス

P「ほら、笑顔もかわいいですし」

ちひろ「本当ですね」ニコ

巴「な、何を言うとるんじゃ二人して!」

P「まあ、強いて言うなら本人が強く拒否したときくらいだけど……。どうかな?」

巴「!」

このとき、確かにうちの前には選択肢があった。
流石の親父でも、面接に落ちた言うたらアイドルは諦めてくれるかもしれん。
受からにゃいけんと思うとったけど、万に一つでも、広島に帰ることができるかもしれん。

そんなことを考えんかったわけじゃないんじゃけど。
あんときの輝いた2人の顔を見とったら、何故か勝手にうちの口が動いとったんよ。

「親父がどうしても言うけえ来たんじゃけど。……それでも良ければ、よろしくお願いします」

「うん、よろしくお願いします」

「ええ、よろしくお願いしますね♪」



その、うちの選択は間違ってなかった。
今ならそう、胸を張って言える。

ちひろ「それじゃあ、改めて自己紹介でもしましょうか。私は事務員の千川ちひろと言います。分からないことがあったら、なんでも聞いてくださいね♪」

P「後でお金請求されるから気をつけてくださいね。東京っていうのはそういうところですから」

巴「!? ……分かりました」

ちひろ「ちょっと、嘘を教えないでください嘘を!」

P「じゃあドリンク少しおまけしてくださいよ」

ちひろ「それはできません♪」

巴「ドリンク……?」

P「ああ、それは気にしなくていいよ。それで、俺が村上さんのプロデュースをすることになるプロデューサーです」

巴「あんたがうちの担当になるん?……じゃのーて、なるんですか?」

P「あはは、敬語じゃなくてもいいですよ? うちの事務所、俺に敬語使うアイドルなんてそう居ないですから」

巴「……ほいじゃあ、そうさせてもらおうかの」

P「うんうん。村上さんもその方が自然でいいよ」

巴「それ」

P「え?」

巴「できればその村上さん、いうのやめてくれんかな。……あんま、苗字は好きじゃないんよ」

P「じゃあ…… 巴ちゃん?」

巴「呼び捨てでええよ。ほいで、敬語もいらん。うちが敬語使っとらんのにうちにだけ敬語いうのも変な話じゃろうし」

P「そっか。それじゃあこれからよろしくな、んーと、巴」

巴「おお、よろしく頼む」

ちひろ「私は巴ちゃんって呼べばいいのかな?」

巴「はい、それでいいですよ」

ちひろ「何で私にだけ敬語っ!?」

巴「え、いや、なんかちひろさんは変な迫力がある、いうか」

P「おお。巴、鋭いなあ」

ちひろ「鋭くないっ! 事実無根ですっ!」

P「すいませんすいません。ちひろさんは優しい事務員さんですよ」

ちひろ「今さらおだてたって、許してあげませんから、もう!」

巴「くくっ」

P「はは」

ちひろ「ふふっ」

「「「あははははは…………」」」

巴「ところでアイドルいうても、うちは何したらええんか全然分からんのんじゃけど……」

P「大丈夫、みんな最初はそんなもんだよ。今日、まだ時間ある?」

巴「え? ……あんまり遅うならんかったら大丈夫じゃけど」

P「じゃあ、レッスンと施設見学に行ってみようか。他のアイドルにも挨拶できるしね」

巴「おお、分かった」

P「というわけで、ちょっといろいろ回ってきます」

ちひろ「はーい……。変な迫力のある事務員さんはここで待機してまーす」

巴「ち、ちひろさん。そんなはぶてんといてくれえや」オロオロ

ちひろ「ふふ、冗談です♪ 気をつけていってらっしゃい!」

P「はぶて……?」

〜カフェテラス〜

巴「か、カフェテラスがあるんか」

P「そうなんだよ。エステルームやサウナルームもあるんだよ、変わってるよな」

巴「すごい設備じゃの……」

P「お、丁度3人いるし、あそこから行くか。おーい、友紀、藍子、夕美—」



友紀「お?」

藍子「あ、プロデューサーさんと……新しい子かな?」

夕美「こんにちはっ」

P「よっ。こちら、今日から新しく所属することになった、村上巴。仲良くしてあげてくれ」

巴「初めまして。村上、巴です」

藍子「それじゃあ、巴ちゃんですね。初めまして、私は高森藍子」

夕美「相葉夕美ですっ」

友紀「姫川友紀だよっ!」

巴「おお、分かった。ほいじゃあ、いろいろ迷惑をかけるかもしれんけど……。これからよろしくお願いします」

夕美「わ、広島弁だっ。何でも頼ってくれて大丈夫だよー」

藍子「うん。困ったことがあったら何でも言ってね」

友紀「ん、広島……? ということは、ナマーズの?」

巴「!」ピク

友紀「ふふ、やっぱり」

巴「あんたのその格好……もしかして」

友紀「そう、何を隠そうこのあたしはキャッツの大ファンなのさ!! 生まれたときからキャッツファン!!」

巴「ほ、ほーなんか……」オズ

友紀「あり? 食いつき悪い?」

P「友紀の勢いに引いてるんじゃないのか?」

藍子「まあ、女の子で野球好きは珍しいですから……」

夕美「そーそー。友紀が異端なんだよ」

巴「そ、そんなことはない思うけど……」

友紀「うーん、勿体無いなあ。ナマーズにもいい選手は一杯いるのに。来年辺りはいいところまで来ると思うんだけどなー」

巴「……!?」

友紀「ほらほら、『サムライ』後田とか有名だよ、知らない?」

藍子「残念ながら……」

夕美「全然知らないよっ!」

友紀「えー。プロデューサーは?」

P「まあ、名前くらいは。確かかなり前に大怪我しちゃった人だろ?」

友紀「そうそう! でも復活してカムバック賞をもらうの。それでも自分のバッティングに納得できなくって、インタビューで零した一言がかっこいいんだー」

P「へえ、何て言ったんだ?」

友紀「『後田は死にました。そして……」

巴「……今打ってるのは、彼の双子の弟です」」

夕美「お?」

藍子「え?」

友紀「おーーー!! やっぱ知ってるんじゃん!! 巴ちゃん、ナマーズファンなの!?」

巴「ほらあ、うちは広島じゃけえ……。そういう友紀さんはキャッツファンじゃないん? こんな細かい話まで」

友紀「んー? いやいや、私はキャッツ一筋だよ」

巴「なら、なんで……」

友紀「そりゃ、よその球団でもおんなじプロ野球選手だもん! 応援したくなっちゃうじゃん!!」

巴「友紀さん……」

P「でも、どうしてすぐ言わなかったんだ?」

巴「だ、だって……。万年優勝争いのキャッツファンからしたら、ナマーズなんて」

友紀「何それ! あたしは絶対、よその球団を馬鹿にしたりしないよ! ……でも、そっか。そんな心無いファンも、いたりするもんね」

巴「……すまん。疑ったりして」

友紀「よーし、じゃあ今度あたしと一緒に、野球見に行こう! ナマーズの応援も楽しそうだなって、ちょっと気になってたんだ!」

巴「え、ええんか? 実はうちも、あのドームはいっぺん行ってみたかったんじゃ」

友紀「お、話が分かるねえ! おねーさんが案内してあげるから、任しときなさい!」

巴「ほんまか!? ほいじゃあ、お願いするわあ。」

友紀「もちろん! いつがいいかなー、先発は外海がいいか、松内がいいか……。ああでも、ナマーズの原村くんも見たい!」

巴「おお、あの外海いうんはええピッチャーじゃのう。あんまり目立たんけど、キャッツのエースじゃ思うわ」

友紀「ふふん、なかなか目のつけどころがいいじゃないですかお嬢さん。じゃあ先発は———」

巴「このローテーションでいくと、確かこの日は———」

P「おーい、戻ってこーい……」


藍子「くす、もう完全に2人の世界ですね」

夕美「仲良く慣れそうな感じで、良かったですねっ」

P「確かに、すぐに溶け込めそうで安心したよ。おーい2人ともー。そろそろレッスン場に行くから、相談なら後で2人でやってくれー」

友紀「何を言ってるんですか、プロデューサーさん!」

巴「アンタも一緒に行くに決まっとるじゃろう!」

P「え、俺もか!?」

藍子(あ、この流れは。……夕美さん)コソコソ

夕美(合点承知っ)コソコソ

友紀「逃げようとしているそこの2人も! 後でスケジュールを教えることっ!」

藍子&夕美「えー……」

藍子「まあ、でも友紀さんと居ると」クス

夕美「なんだかんだで楽しいから、しょうがないかあ」ニコ

友紀「分かればよーし!!」フンス

巴(こんな感じでひとしきり喋った後、レッスンを見学させてもらって事務所での初日は終わった)

巴(プロデューサーもちひろさんも、友紀さんも夕美さんも藍子さんも。みんながうちを暖かく迎えてくれたこと)

巴(それでもレッスンは、思っていたよりハードであったこと)

巴(そしてそんなレッスンを、9歳や10歳の子までもがこなしていることなど、驚くことはたくさんあったんじゃけど。一番驚いたのは)

巴(……友紀さんがお酒飲める歳じゃったいうのは、黙っといた方がええんじゃろうな)

とりあえずここまで。
広島弁がこんな感じで読みにくくないかな。

大丈夫そうなら続きを明日の夜くらいに投下しに来ます。
速報初めてなので何か問題があれば教えてもらえれば幸い。

では。

今のところは特に問題ないよ。


サンキューユッキ

支援

http://i.imgur.com/ZAqNI6X.jpg
http://i.imgur.com/o70NQBz.jpg
http://i.imgur.com/Zn6eScc.jpg
村上巴(13)

http://i.imgur.com/dis1GD8.jpg
http://i.imgur.com/VE3mEpw.jpg
姫川友紀(20)

http://i.imgur.com/1KRUgnl.jpg
http://i.imgur.com/kem38o3.jpg
高森藍子(16)

http://i.imgur.com/MO8qJy2.jpg
http://i.imgur.com/RPXo0aH.jpg
相葉夕美(18)

広島弁の難しさでお嬢はあまり書かれんからの
期待

少し遅くなりそうですが今日中には必ず来ます
広島弁はとりあえずこのままいきますね

ついでに修正を

>>20
藍子(あ、この流れは。……夕美さん)コソコソ
藍子(あ、この流れは。……夕美ちゃん)コソコソ

>>16の頭にこれが抜けてました
P「巴は広島出身で寮生活になるから、寮でもいろいろ協力してあげてほしい。巴も困ったことがあったらこの3人に聞くといいよ」

あと>>25さん画像ありがとうございます

〜数日後・事務所〜

ガチャ

巴「む、ちひろさん、ただいま」

ちひろ「お帰りなさい、巴ちゃん。レッスンの帰り?」

巴「そうなんよ。ちょっと居残りでやっとったんじゃ」

ちひろ「あ、それで皆より遅かったのね。頑張るのね」

巴「そりゃあ、うちは新参もんじゃけえ。早う追いつかにゃいけんし、やるからには全力じゃあ」

ちひろ「ふふ、偉いわね。そんな巴ちゃんには、スタドリ半分おまけしてあげる」キュポ

巴「おお、ありがとう。ところでちひろさん、夕美さん知らんか? 先に帰ったはずなんじゃけど」

ちひろ「ああ、夕美ちゃんなら奥で作業してるわ。どうかしたの?」

巴「一緒に買い物行こうゆうて約束しとったんじゃけど…… 作業? 邪魔になるかね?」

ちひろ「ううん、そんなことないと思う。きっと面白いと思うから、行ってみたらいいと思うわ♪」

夕美「ふんふん、ふーん♪」ニコニコ

薫「ふふーん、ふーん♪」ピョコピョコ

巴「夕美さん?」ヒョコ

夕美「あ、巴ちゃんお帰りっ」

薫「巴お姉ちゃん! お帰りなさーい!」

巴「おお、薫も一緒じゃったんか、ただいま。ところでこれは、なんしょーるん?」

夕美「これはねー、ラベンダーの挿し木をしてるんだっ!」

巴「ラベンダー…… これがそーなん?」

夕美「あはは、花が咲くのはもうちょっと先だから、まだ分かんないかもね。でも、夏前には綺麗な花が咲くんだよっ!」

巴「ほおお。夕美さん、詳しいんじゃね」

夕美「私、ガーデニングが趣味なんだっ。これも家で余ったやつを持ってきちゃったんだよね。この事務所飾りっ気ないし、ちょうどいいかなって♪」

薫「夕美お姉ちゃん、よく事務所に綺麗なお花持ってきてくれるんだよ!」

巴「ほーなんか。ガーデニングかぁ……。うち、華はあんまり習うとらんかったけど、何かええねえ」

夕美「でしょっ! ラベンダーの香りは、人を落ち着いた気分にさせてくれるんだよ。ポプリができたら巴ちゃんにもあげるねっ!」

巴「ぽぷり……?」

夕美「んっとね、ラベンダーのお花で作ったお香みたいなやつのこと。とってもいい香りがするんだから!」

薫「へー……!!」キラキラ

巴「おお、そりゃあええ! 楽しみにしとるね」

夕美「ぜひぜひ! 自信作をお目にかけちゃうねっ」

薫「夕美お姉ちゃん、かおるは? かおるは?」

夕美「もちろん! 手伝ってくれた薫ちゃんには、お母さんのぶんと薫ちゃんのぶん、二つあげちゃおうかなっ!」

薫「わー! やったー!!」

巴(夕美さんと薫…… ええ組み合わせじゃの。ん? ゆみ、かおる……)

夕美「巴ちゃん? どうかしたの?」

巴「ああいや、なんでもない。それよりうちもなんか手伝うことはあるか? うちもちょっと知りたくなってきたわ」

http://i.imgur.com/Dk9E8Zi.jpg
http://i.imgur.com/i5K8Mnn.jpg
龍崎薫(9)

夕美「ほんとっ? それじゃあ薫ちゃんと一緒に、こうやって下半分の葉っぱを取っていってもらえるかな?」さっさっ

巴「む、了解じゃ!」

薫「かおるが教えてあげるよっ! あのねー、ここをこうしてー……」

巴「ふむふむ…… ん、分かった。薫の説明は、分かりやすいのぅ」ポンポン

薫「ほんと? えへへっ!」

夕美「それじゃあこれが終わったら、一緒にお買い物だねっ!」

巴「おうっ!」

薫「はーいっ!」

〜数週間後・事務所〜

ガチャ

巴「おはようございます」

ちひろ「巴ちゃん、おはよう♪」

巴「おはよう、ちひろさん。……プロデューサーは?」キョロキョロ

ちひろ「プロデューサーさんなら、衣装室にいるわよ。何か用事?」

巴「何か今日は話があるけえ、早めに来て欲しいゆうて言われたんじゃ。ほいじゃあ行ってみる」

ちひろ「はーい、行ってらっしゃーい♪」

〜衣装室〜

巴「プロデューサー? おーい、どこじゃ?」

P「おお、巴。ここだここ」

巴「そっちか。それにしても、だだっ広い衣装室じゃのう……。で、何の用なんじゃ?」

P「基礎レッスンも順調に来てるし、そろそろ売り込みのための準備をしようと思ってな。トレーナーさんたち、筋がいいって褒めてたぞ?」

巴「お世辞じゃお世辞。まだまだ実力が足らんいうことは……。うちがよう分かっとる」

P「素直に受け取っておいてもいいと思うが……まあ、慢心するよりはいい心構えだな。とはいえ、宣伝はそろそろしていこうと思ってるから。まずは写真なんだけど」

巴「写真、いうことは……。まさか、これをうちに着ろいうんか!?」

P「? そうだけど」

巴「む、む、む、無理じゃ無理! こがぁなヒラヒラした服、よう着れん!」

P「えー。巴に合いそうな衣装、一生懸命選んだんだぞ?」

巴「ほいでも、こんなんはさすがに無理じゃ! スカートすら普段着でもあんま穿かんのに」

P「巴は可愛いから、何でも似合うって。ほら試着試着」

巴「おだてても無駄じゃけえの! 着んもんは着ん!」

P「本心なんだけどなあ」

巴「んなっ……。え、ええけえ、もっと落ち着いたやつ持ってきんさい!」

P「んー。落ち着いた衣装、といっても。なんか希望があったりするか?」

巴「希望、いうてもなあ。和服みたいなんはないん?」

P「アイドルが和服っていうのもなあ。……あ、そうだ。確か奥の方にあれが」ガサゴソ

巴「?」

P「あった! これでどうだ、巴?」

巴「おお、これは……。着物か?」

P「そう、着物風のステージ衣装。前とある番組のために用意したんだけど、結局使わなかったんだよな」

巴「む、これなら、まあ……。ちいと着てみようか」

P「おう、そうしてくれ。巴のサイズは……これが一番近いか。ほい」ポン

巴「ありがとう。ほいじゃあ、ちょっと待っとって」

P「りょーかい。試着室はあっちな」

巴「分かっとる」

巴「待たしたの。どんな?」

P「おお! いいじゃないか、似合ってる! 巴はそれ、どうだ?」

巴「ちょっと丈が短いんが気になる言やあ気になるけど、さっきのよりはましじゃの」

P「そうか、巴は和路線の方が可愛さが引き立つのか……。他に被る子もいないし、その方向で考えてみるかな」ブツブツ

巴「……のう、そんな似合っとる?」

P「ああ、完璧。他所のプロへ行かれなくて良かったと思うくらい」

巴「ほ、ほうか……。そこまで言うなら、うちはこれでもええかな」

P「ん。また、サイズの細かい調整はしといてやるから、写真はそれでいこう。髪飾りとか、あったかな……」

巴「そこまで着飾らにゃいけんの!? うちは別に、このままでも」

P「そりゃそうだよ、この写真で判断するところだって少なくないんだから。ほら行くぞー」

巴「わ、分かった……」

〜撮影後〜

巴「……ふう。人に写真撮られるいうのも、意識したら疲れるもんじゃの。自然に笑うんは難しいわ」

P「その辺は慣れないと、なかなかな。だけどこれから人前で歌ったり踊ったりしてもらうんだから、慣れてもらわないと困るぞ」

巴「ほうかあ……。ほんまにうちにできるんかのぉ」

P「レッスンも上手くできてるし、大丈夫さ。最初はちょっと緊張するかもだけどな」

巴「緊張、のう」

P「はは、まあ頑張れ、応援してるよ」

(私は、応援してるからね!)

巴「……」

P「どうした、巴?」

巴「いや。……正式なデビューいうんはいつになるんかな、思うて」

P「そうだな……。そろそろ小さいイベントや、友紀たちのライブの前座とかでは出てもらおうと思ってるけど」

巴「下積み、いうことじゃの」

P「そう。ちゃんとした言葉を使うなら候補生って感じかな。だけど『アイドル村上巴』としてのデビューは、うちの事務所的には、Liveバトルに初めて勝利したときになると思う」

巴「ふぅん……分かったわ」

〜また数日後・事務所前〜

P「それじゃ、明日はCGプロのLiveの途中で新人お披露目って感じで出てもらうから。体調整えて、今日は早く眠ってくれ」

巴「も、もう明日か……。流石に、緊張するのう」

P「はは、事務所に忘れ物とかしないようにな」

ガチャ

藍子「あ、2人ともお帰りなさい」

P「おお藍子、ただいま」

巴「藍子さん、ただいま。……ん? 何か、いい匂いがせん?」クンクン

P「え? そういえば、確かに」クン

藍子「あ、やっぱり分かっちゃいます? 今ハーブティーを淹れてみてたんです」

巴「ハーブティー?」

P「へえ、そりゃすごい。ハーブティーなんて簡単に作れるのか?」

夕美「淹れるだけなら簡単ですよ。ハーブは夕美ちゃんが育てたものを使ってますから。実は、一度やってみたかったんです」

P「さすが夕美。あいつがいるだけで事務所の雰囲気が全然違うなあ」

藍子「くす、確かにそうですね。アイドル引退しても事務員さんとして雇ってみたらどうです?」

P「それも考えとかないとかもなー」

藍子「あ、そろそろ沸きますね。良かったら2人とも、一緒に飲んでいきませんか?」

巴「一緒してええんか?」

藍子「もちろん。お茶会は、お友達との方が楽しいんだよ?」

P「んじゃ、お呼ばれしようか」

巴「おお」

藍子「はい、どうぞ。ローズマリーですよ」コト

P「ん」

巴「いただきます」

ずずっ

P「おお、いい香り。おいしいな」

巴「なんか、つんとするの。これがローズマリーなん?」

藍子「うん。集中したり、気持ちを高めるのにいいんだって」

P「集中……。そうか、明日はLiveだもんな」

藍子「はい。私も巴ちゃんにみっともないところ見せないように、頑張りますね。プロデューサーさんもお仕事、頑張って」

P「ん、さんきゅ」

巴「藍子さん、ありがとう」

藍子「それと、よろしければお茶請けにこれもどうぞ」スッ

P「おお、クッキー?」

藍子「ええ、お口に合うかどうかは分かりませんが」

巴「ってことは……。これ、自分で作ったんか!?」

藍子「うん。最近お菓子作りにはまってるんだ。私、お散歩が趣味なんだけど、美味しい洋菓子屋さんを見つけちゃって。そこの店員さんと仲良くなってこっそり教えてもらったの」

P「へえ、そりゃあ楽しみだな」

藍子「と言っても、まだまだお店の味には遠いので、あまり期待しないで下さいね」

巴「もぐ。…………うまいっ!!」

P「もぐもぐ。うん、美味しいじゃん。お茶ともよく合うし」

藍子「本当ですか? それは良かった」

P「これでもうちょっと仕事も頑張れそうだよ。ありがとな、藍子」

巴「すごいのう、藍子さん。うちも明日、Live頑張るけえ!」

藍子「どういたしまして。ふふ、私も頑張るね、巴ちゃん」

〜とあるLive会場〜

藍子「会場へお越しのみなさん、こんばんは。盛り上がってくださってますか?」

夕美「盛り上がってるに決まってるよ、ねっ!?」

ワァァァァァァァ!

友紀「おー、みんな声でてるねー。あ、でも藍子ちゃんのときは静かになってたかな?」

藍子「わ、私の曲はそういう曲だから仕方ないですよね!?」

アハハハハハハ!

夕美「よーし、それじゃあ次は特別に、3人一緒に歌っちゃいますよっ!」

ウォォォォォォ!

友紀「みんなが元気になれるように、いっぱいいっぱい気持ち込めて歌うからねー!!」

ユッキィィィィィィ!

藍子「それじゃあ、いきます。曲は、『   』!」

ワァァァァァァ!

藍子&夕美&友紀「〜〜〜〜〜♪」

巴「……!」

P「よ、巴。どうだ、先輩たちのLiveは」

巴「みんな、すごいのう。あんなにたくさんのお客さんの前でも、自然体で、楽しそうじゃ」

P「やっぱり今日は、緊張してたみたいだな」

巴「人前に出ることなんて、そんなに無かったからのう。それでもまともに足が動いて、歌えただけましじゃあ思うで」

P「確かに足がすくんで動けなくなる子も、たまにいるからな」

巴「じゃろうのう……。しかし、あのレベルはとおいいわ。うちもよう前座で出してもらえたの」

P「はは、即興トリオの割にはうまくいったな」

巴「あ、あれ即興なんか!?」

P「そうなんだよ。明日は巴が参加するぞ、って言ったら、3人揃って『じゃあ3人で歌わせてください!』って。多分あれは……」

巴「……メッセージ、か」

P「だろうな。いつか巴も一緒に歌おう、っていう」

巴「一緒に……」



藍子&夕美&友紀「〜〜〜〜〜♪」にこっ



巴「!」

P「! はは、俺も久々に燃えてきたよ。巴を絶対、あいつらと同じステージに上げてやるからな」

巴「……うちも、あの人たちみたいになれるんかな」

P「なれるさ。俺が保証する」

巴「……」

巴(アイドルなんて、チャラチャラしたもんと思っとったけど)

巴(…………親父、これはちょっと感謝するで)ニッ

巴「のう、プロデューサー」

P「何だ?」

巴「正直に言うとな。初めは、あんたあうちを適当に採用したもんじゃと思っとった。すまん」

P「……まあ。あの面接じゃそう思われても仕方ないな」

巴「ほんで、うちもチャラチャラしたのは好かん。……ただ、この一ヶ月でアンタが本気なんは伝わったけえ」

P「おう」

巴「これからもしっかりうちを導いてくれ。ええの」

P「ああ、もちろんだ」

ちょろっと休憩

さっき書き溜め終わったんで、少ししてから残り今日の分はまとめていきます

〜女子寮・共同スペース〜

巴(とは、言ったものの)

巴(うちにアイドルなんてできるんじゃろうか。女らしさや可愛らしさなんて欠片もない、このうちに)

友紀「およよ、巴ちゃーん? どったのー?」

巴「あ、友紀さん……。いや、何でもないんよ」

友紀「んー、暗いぞ暗いぞ若人よー! にゃやみがあるなら話してみなー?」グイグイ

巴「ちょ、友紀さん、引っ張らんで……。この臭い、もしかして酔うとるんか!?」

友紀「はい! 姫川友紀、酔ってないっ! よっ!」

巴「…………」

友紀「何だ何だー、仕事の後に野球見ながら一杯やる、今年やっとできるようになったおねーさんの楽しみを馬鹿にするかー?」

巴「おっさんじゃないんじゃけえ…… そんで、キャッツはどうなっとるん?」

友紀「2点差で負けてますよー! もー、相手のピッチャー全然打てそうにないんだから!」バシバシ

巴「はあ……。それでこうなっとるわけか」

友紀「あたしのことはどうでもいいの! それより巴ちゃん、何で悩んでるの!?」

巴「え!? い、いや、大したことじゃあないんじゃけど……」

友紀「そーいう小さな悩みを解決するのもお姉さんの仕事だよ! 良ければ話してみなさい!」

巴「……いや、なんとなくなんじゃけど。やっぱりうちは、アイドルに向いとらんのんじゃないかって」

友紀「……」ピッ

巴「! 友紀さん、テレビ」

友紀「大したことじゃない。話、聞かせて?」

巴「ほんまに大したことじゃないんよ! ただ、うちには夕美さんや藍子さんみたいな女の子らしい趣味もないし、友紀さんや薫みたいに人を明るくできるわけでもないし」

友紀「…………」

巴「親父に薦められて、プロデューサーが採用してくれて。そんなんで、ほんまにみんなみたいになれるんかなあって」

友紀「……青いっ!!!」

巴「」ビクッ

友紀「けどその青さ、あたしは大好きだっ!!」

巴「な、何を……」

友紀「じゃあ聞くけどさ、巴ちゃんは嫌々アイドルやってるわけ?」

巴「いや、それは違うけど……」

友紀「でしょ? だって、そうでないと毎日居残りしてまで、あんなに練習しないもんね」

巴「それは、まあ……」

友紀「違ったらごめんね。だけどきっと、巴ちゃんが頑張りを届けたい相手とか。成長して、やってみたいこととか、あるんじゃないかな」

巴「……!」

(私は、応援してるからね!)

(〜〜〜〜〜♪)にこっ

(……うちも、あの人たちみたいになれるんかな)

(巴を絶対、あいつらと同じステージに上げてやるからな)

巴「……ん。ある」

友紀「でしょ? だったら、大丈夫だよ」

巴「でも……」

友紀「いーい、巴ちゃん。想いは、届くの」

巴「……?」

友紀「野球選手がヒーローインタビューでよく言うでしょ? ファンの声援が、打たせてくれました、って。スタンドには何万人もお客さんがいて、それぞれ思い思いの言葉を叫んでるはずなのに、不思議だよね」ピッ

ワァァァァァァァ!

アナウンサー『さあキャッツ、一打サヨナラのチャンスでバッターは4番の安部! ファンからは大きな声援が起こっています』

巴(あ、キャッツ、チャンスじゃ……)

友紀「だけどそれはさ、声そのものじゃなくて、観客の想いが選手に届いてるんだと思うんだ。だから私は、こう思うの。頑張って頑張って、一生懸命声を出せば、きっと、想いは届くんだって」

アナウンサー『まっすぐ2つで、早くもツーストライクと追い込まれた安部。4番の意地を見せることなく、このまま終わってしまうのか?』

友紀「あたしもさ、ステージの上でファンのみんなの声援をそんな風に感じたことがあるんだ。こんなあたしでもだよ? だからきっと、巴ちゃんの想いだって、届くよ。アイドルに向いてないなんて、そんなわけ、ない!」

アナウンサー『おおっとまたファール! 安部、粘ります!』

友紀「そんな気持ちが、ちょっとでも伝わればいいなって。あたしはほかの人に頑張れって言いたくて、応援してあげたくて、アイドルをやってるんだ。だからあたしは、こう言い続けるよ」


友紀「頑張れ、って」

巴「友紀さん……」

友紀「へへ、以上、酔っ払いの戯れ言でしたー! とにかくあたしが言いたいのは、巴ちゃんは」


カキーーーーーーン!!!


友紀「あーーーーーー!!!!」

巴「!?」ビクッ

4番菜々さんか(すっとぼけ)

アナウンサー『入ったあああああ! サヨナラ、サヨナラホーーームラン!! キャッツ、本拠地で劇的な逆転勝利—!!!』

友紀「み、見逃した、見逃した! でも勝ったーーーー! やったよ巴ちゃん!!」ユサユサ

巴「お、おお…… 良かったの、友紀さん」ガクガク



巴(締まらんのお…… でも)

巴(想いは届く、か。ええ言葉じゃ)

巴(ありがとう、友紀さん)



友紀「リプレイ! リプレイ早くーーー!!!」

〜さらに一ヵ月後・初のLiveバトル〜

司会「それでは結果発表に移ります。今回の新人ライブバトル、勝者は……」

ダラララララララララ

司会「CGプロダクション、村上巴さんです!」

P「やった!!」

??「にゃあああああああ!! 負けちゃったにゃ!!」

巴「……い」

P「巴?」

巴「いよっ、しゃあああああああああ!!」グッ

P「うお、びっくりした」

巴「す、すまん」

P「いやいや、喜んでいいんだよ。それが当たり前だ」

巴「ああ。やったんじゃな。ほんまに勝ったんじゃな!」

P「それじゃあ、今日は事務所で祝勝会だな! ご馳走用意してやる!」

巴「おお、プロデューサー、太っ腹じゃのう!」

〜事務所〜

藍子「みなさん、グラス持ちましたか?」

友紀「それじゃあ、巴ちゃんのLiveバトル勝利を祈って!」

夕美「かん、ぱーいっ!」

カツンカツン、カツン!

巴「みんな、ありがとう。うちが勝てたんは、みんなのお陰じゃあ」

藍子「そんなことないよ。巴ちゃんの、実力です」

夕美「いやあ、すごいよ巴ちゃん、一発勝利だなんてっ!」

P「ああ、すごいと思うぞ。他のやつはみんな、デビューまでに一回は負けてるしな」

友紀「そ、それを言わないでよぉ……」

藍子「あはは、苦い思い出ですね」

みくにゃん……

巴「え、ほんまに!? 3人ともか!?」

夕美「そうだよ。だから、巴ちゃんはほんとにすごいんだよっ!」

巴「な、なんか照れるのぅ……」

P「おおおお、喜んでる喜んでる」

藍子「ふふっ、可愛いですね」

巴「う。プロデューサー、やかましい! ……それより、これでデビューいうことでええんか?」

P「ああ。とりあえずしっかりとした持ち歌を作って、ソロでCDを出してもいいかもしれないな」

巴「CDか……。遠い世界じゃと思っとったけど、達成してしまったんじゃのう」

P「とはいえ、大変なのはこれからだからな。しっかり体調管理して、今以上に頑張っていってくれ。しんどいと思ったら些細なことでも報告すること。いいな?」

巴「おう、もちろんじゃ!」

P「……っと、そうだ、巴に手紙が来てたぞ」

巴「手紙?」

藍子「え、ファンレターですか!?」

友紀「そんな、まだ正式デビューもしてないのに!?」

P「んー、ファンレターというか……。巴の知り合いみたいだ。女子寮の場所が分からないから、事務所に送ってきたみたいだな、ほれ」

巴「知り合い? 誰じゃろ、う……!?」

P「どうした?」

巴「す、すまん、これは帰ってから読むわ」

P「そうか? まあ巴がそれでいいならいいけど」

友紀「まさか、彼氏だったりして……?」

夕美「えー! 巴ちゃん、すごいっ!」

P「何、彼氏だと!? お父さんそんなの許しませんよ!?」

巴「違うわ! 誰がお父さんじゃ、誰が!」

巴「……広島の、友達からじゃったんよ」

巴(そう、あの日帰ってから読んだその手紙は、友人からじゃった)

巴(忙しくて全然連絡もとっとらんかったのに、向こうは忘れることなく、手紙をくれた)


『連絡が無いいうことは、きっととっても頑張っとるんじゃろうね。待っとるよ。』


巴(そんな言葉が書いてあって、友紀さんの「想いは届くんだよ」という言葉をまた思い出して)

巴(いろんな気持ちがごちゃごちゃになって、その日ちょっとだけ涙ぐんでしまったのは、うちだけの秘密じゃ)

今日はここまで
広島弁が読みにくかったらいつでも言ってください

次は月曜か火曜の夜に来ます、多分次で終わり

読んでくださった方、本当にありがとうございます


サンキューユッキ

ちょっと今日明日難しくなってしまいました
水曜日の夜に来ると思います

読んでくださっている方がいらっしゃいましたら非常に申し訳ありません

待ってるよ

遅くなりましたが投下していきます

その前に再び訂正

>>60
巴「違うわ! 誰がお父さんじゃ、誰が!」

巴「……広島の、友達からじゃったんよ」

の間に、

藍子「じゃあ、誰からだったんですか?」を追加しておいてください

〜数ヵ月後・事務所〜

ドタバタ

巴「しつっこいぞプロデューサー! 無理じゃ言うとるじゃろーが!」ドタドタ

P「こら待て巴、話が違うじゃないか!」バタバタ


ちひろ「巴ちゃんも、すっかり事務所に馴染みましたねえ。CDの売り上げも順調ですし、言うことなしです」

夕美「そうですねっ! もともと元気な子だから、すぐ仲良くなれるとは思ってたけどっ」

友紀「ふふん、野球好きな子に悪い子はいないからね!」

藍子「それよりも、呼び方の方が……。ちょっと前から、藍子『姐さん』って言われるようになって、なんか照れちゃいます」

夕美「そうかなっ? 私は、新しい妹ができたみたいで嬉しいけどなっ♪」

邯壹″縺阪◆

巴「なんぼ言われても、こがぁなヒラヒラしたもんはよう着ん! 着ん言うたら着ん!」

P「けどこないだは、『こ、こんくらいのヒラヒラやったら、まぁ着たってもええよ、プロデューサー』って言ってくれたじゃないか」

巴「似とらん物真似はやめえや! それに、ありゃあ夕美姐さんたちとコラボじゃったけえじゃろうが!」



仁奈「巴おねーさんが夕美おねーさんの妹なら、仁奈も夕美おねーさんの妹になりやがりますね!」

夕美「あ、仁奈ちゃん。もちろん仁奈ちゃんも、可愛い可愛い私の妹だよっ!」ギュー

仁奈「むふー。もふもふしやがれです!」

友紀「仁奈ちゃんも巴ちゃんと仲良しなの?」

仁奈「はい! 巴おねーさんは良く遊んでくれるですよ! キグルミは着てくれねーんですが……」

藍子「巴ちゃんが、キグルミ。……くす、想像すると少し面白いですね」

夕美「羊のキグルミ着てるところとか、見てみたい気はするねっ!」

P「えー、でもこの前は割とノリノリだったじゃないか。一回着ちゃったら一緒だって」

巴「う、うちはアイドルなんてチャラチャラしたもん、興味ないんじゃ。でも親父がどうしてもゆうけぇ、ちっとばかし顔立てたるだけじゃけん」

P「ふーん、そうか。巴は興味ないのかあ」



仁奈「それから、巴おねーさんは仁奈の名前の意味も教えてくれやがりました! とっても勉強になったんでごぜーますよ!」

ちひろ「? 勉強?」

仁奈「はい! 仁奈の名前は『じんぎ』のじんだから、まっすぐな人間に育たなきゃいけねーんです!」ドン

友紀&夕美&藍子&ちひろ「あー…………」

仁奈「巴おねーさんは、とっても優しいおねーさんです!」

巴「……ほ、ほうじゃ。じゃけえうちがノリ気とか、勘違いせんでくれえよ?」

P「そうかそうか。まあそれはそれとして、次はこの衣装をだな」

巴「人の話を聞かんかああああああ!!!」



薫「巴お姉ちゃん、せんせぇと仲良さそうでいいなぁ……」

P「ぜえ、ぜえ。……巴。とりあえずこの話は保留だな」

巴「はあ、はあ。……どこまで行っても平行線じゃしの。どんだけ言われても、うちは着る気は全くないけえの」

P「その強がりがいつまで持つかな……。とまあ、冗談はこのくらいにして。今日は次の話だ」

巴「次?」

P「ああ。そろそろ、巴もキャッチフレーズを決めてもいいんじゃないかって話になってな」

巴「キャッチフレーズ、っちゅうと…… 仁奈の『きぐるみもふもふ』みたいな、あれか?」

P「そうそう、そんなやつ。……なんだ巴、キグルミ着たいのか?」

巴「アホなこと言いんさんな! ありゃあ、仁奈にぴったりじゃと思っとったけえ」

P「まあな。だからあんな感じで覚えやすいフレーズがあれば、売り出すのに有効なわけだよ。……なんか思いつくか?」

巴「うち、こういうのはセンスないけえのう…… んー……」

http://i.imgur.com/kfNFGZO.jpg
http://i.imgur.com/T4Na1kz.jpg
市原仁奈(9)

P「ま、こっちで決めてもいいんだけどな。自分で決めたほうがしっくり来るかもしれないし」

巴「んー……。あ」

P「お、何か思いついたか? 教えてくれよ」

巴「思いついたは思いついたんじゃけど、そのぅ……。笑わん?」

P「笑わない笑わない。約束するよ」

巴「ほいじゃあ、えっと……」

P「……」

巴「じ、『仁義の女』」


P「……」

P「…………」

P(お前、何歳だよ)

P「……うん、やっぱりこっちで考えとくな」

巴「…………おぉ」

P「……」クス

巴「!」

巴「こら! アンタ今笑ったじゃろ! 笑うな言うたじゃろうが!!」

P「いやいや、笑ってない笑ってない。全然全く笑ってないよ。あはは」

巴「笑っとるじゃろうが! 嘘つきんさんなー!!!」ポカポカ

P「い、痛い痛い。巴、勘弁勘弁」

巴「うぅ、もう……。プロデューサーのあほんだらぁ」

諸事象により思うように書き溜めができなかったので、短くてすみませんが今日はここまでで

次は土曜日の夜中に来れるはず
今度こそ終わると思います

読んでくださった方がいれば、ありがとうございました

お嬢可愛いよお嬢

乙様。
広島弁良いね!

あ、名前欄ミスです(>_<)

遅くなりましたが投下していきます

〜事務所〜

友紀「急に全員集合だなんて、プロデューサーどうしたのかな?」

藍子「何か、大事なお話でもあるんでしょうか」

夕美「お給料アップのお知らせとかかなっ?」

巴「そりゃあええの。それとも、全員でライブとかかのう。ほうじゃったらうちは嬉しいんじゃけど」

仁奈「仁奈、今日は頑張ったからねむてーですよ……」

薫「せんせぇが来たら、かおるが起こしてあげよっか?」

仁奈「かおる、お願いしやがります…… むにゃむにゃ」

ガチャ

P「悪いみんな、待たせたな」

ちひろ「お待たせしました!」

薫「仁奈ちゃん、せんせぇ来たよ! 起きてるよね?」

仁奈「うー、になはちゃんとおきてやがるですよー……」

薫「ほ、ほんとに大丈夫……?」

巴「ほいで、プロデューサー。大事な話ってなんなん?」

P「ふふ、安心しろ、悪い話じゃない。聞いて驚け、実はだな」

P「なんとこの6人で、ゴールデンの番組に出られることが決定しましたー!!」

ちひろ「みんな、拍手—!!」ぱちぱちぱち

一同「へえ、ごーるでん……」ぱちぱち、ぱ


一同(…………)ち


一同「ゴールデン!!!??」クワッ


夕美「す、すごいすごい! ゴールデンだってゴールデン! 私初めてだよっ!」

藍子「私もです……。深夜番組や、地方番組くらいなら出させていただいたことはありますけど……」

薫「せんせぇすごい! かおる、テレビに出られるんだね!」

仁奈「ご、ごーるでんって何でやがりますか? テレビですか?」

藍子「ただのテレビじゃないんだよ? みーんなに、見てもらえるの」

仁奈「ほんとですか? 外国のパパにも見てもらえるんでごぜーますか?」

夕美「んー、海外はちょっと難しいかもねっ」

P「どうやら、話題のアイドルを紹介しようっていう番組みたいだな。その手の番組にしては珍しく、よその子たちとまとめてって感じじゃなくがっつりワンコーナー貰えるらしい」

藍子「へえ、ワンコーナーもですか」

P「そうだな。今回は6人組ということで、3人ずつに分かれてお料理対決をする企画らしいぞ」

夕美「料理かぁ……。これは、練習しとかないとねっ!」

友紀「はー、ゴールデンかー。ナイターと被ったらどっち録画しよう……」

巴「そんなこと言うとる場合か、友紀姐さん!」

友紀「あはは、ごめんごめん、つい」

藍子「でも、どうして急にそんなお仕事が?」

P「いや、そもそもそのくらいの仕事が来ててもおかしくなかったんだよ。で、最近巴がブレイクしたからそれに乗っかって、じゃあ取り上げてみるか、となったみたいだ」

夕美「それじゃあ、このお仕事は……」

仁奈「巴おねーさんの、おかげでやがりますね!」

巴「う、うちの……?」

友紀「そうだよ! これまで頑張ってきた甲斐があったね! ありがとう、巴ちゃん!」

藍子「一緒に、頑張りましょうね」

夕美「みんな一緒にテレビに出られるなんて、すっごく楽しみだねっ♪」

薫「事務所のみーんなでテレビかぁ……。せんせぇ、かおる頑張るね!」

仁奈「みんな一緒がいーですよ」

巴「ゆ、夢みたいじゃ……」

P「あー、喜ぶのはいいんだがちょっと聞いてくれ」

藍子「? 何ですか?」

P「実は大きな仕事を無理して入れたおかげでな、ちょっと当日のスケジュールが厳しくなりそうなんだ」

友紀「?」

P「特に、友紀、夕美、藍子の3人。お前らは、午前中に他の場所で撮影をこなしてから移動してすぐこっちの撮影をスタートすることになる」

夕美「何かと思えば、そんなことっ? そんなの、今までだってやってきたから大丈夫だよっ」

P「ん、まあそれにしても大きな仕事だからな。体調と時間の管理はいつも以上にしっかりしておいてくれってことだ」

夕美「了解だよっ!」

P「巴、仁奈、薫の3人はスタッフへの挨拶も兼ねてかなり早めに入ってもらう予定だ。俺は友紀たちの方に付いていなくちゃいけないから行けないけれど、今回は特別にちひろさんが付いてくれることになってるから」

巴「ちひろさんが、か。分かった」

薫「分かりましたっ!」ピョコ

仁奈「了解でごぜーます!」ビシ

P「このメンバーでは初の大仕事だ。みんな、気合を入れて頑張ろう!!」

一同「おー!!!!!!」

〜後日・移動中車内〜


薫「えへへー、料理対決、楽しみだね。かおる、たくさん練習して来ちゃった」

仁奈「仁奈もです。包丁を使うときは猫の気持ちになるですよ!」

薫「あ、仁奈ちゃんも? 私もおかあさんにそう習ったんだー」

仁奈「けど、猫のキグルミはまだ持ってねーです……。ライオンで我慢するですよ」

薫「その方が強そうだから、いいかもね!」

きゃっきゃっ


巴「……楽しそうじゃの、2人とも」

ちひろ「変なプレッシャーが無さそうで良かったですね♪」

巴「おお、正直羨ましい。……ところでちひろさん、乗ってからずっと気になっとったんじゃけど」

ちひろ「何ですか?」

巴「後ろに乗っとる、この山のようなダンボールはなんなん?」

ちひろ「あー、それはクッキーらしいですよ」

巴「クッキー!? これ全部か!?」

仁奈「クッキー!? ほんとですか? 食べてもいーんでごぜーますか?」ヒョコ

巴「こりゃ仁奈、後部座席から頭出すな、危ないじゃろうが」

仁奈「ごめんなさいですよ」シュン

ちひろ「えっとね、それは藍子ちゃんが番組で紹介したお店からお礼にもらったクッキーなんだって。だから藍子ちゃんに聞いてみてからの方がいいんじゃないかな」

薫「大丈夫、きっと藍子お姉ちゃんなら分けてくれるよ!」

仁奈「はい! すっごく楽しみです!」じゅる



巴「……しかしちひろさんって、運転できたんじゃな」

ちひろ「そりゃできますよー? 大人のたしなみってやつです♪」

〜テレビ局、控え室〜


ちひろ「それじゃあ、今から共演する人たちとスタッフさんに挨拶に行くわね。準備はいい?」

巴「ええよ」

仁奈「準備かんりょーです!」

薫「はい! ……あっ!」

ちひろ「どうしたの?」

薫「あ、ううん、何でもないの! ただ、夕美お姉ちゃんにもらったポプリを車の中に忘れちゃった……」

巴「おお、車の中でも持っとったの。なんに使うんじゃ?」

薫「せっかくのテレビ局だし、控え室がいい香りになったらいいなぁって。でも、しょうがないや」

ちひろ「そうね、無くて困るものでもないし。……時間があったら、取りに行こっか」

薫「うん!」

ちひろ「じゃ、行きましょうか。……っと、そうだ。一つだけ気をつけておいてね」

巴「何じゃ?」

ちひろ「今日共演する人たちの中に1人だけ、大御所さんがいるの」

仁奈「おーごしょですか? ごしょごしょするですか?」

ちひろ「ふふ、違うわ仁奈ちゃん。大御所っていうのは、とっても偉い人で、怒ったらこわーい人のことなの。ちょっと気難しい人らしいから……。その人の前では特に、礼儀正しくね」

仁奈「は、はいです!」

〜大御所・楽屋〜

コンコン

ちひろ「失礼します。シンデレラガールズプロダクションの千川と申します。挨拶に参りました」

??「……おう」

巴(!)

薫(いつも優しいちひろさんの、こんな声……。初めて聞いたよぅ)

仁奈(れ、れーぎ正しくですよ)ドキドキ

ガチャリ

ちひろ「失礼します。こちらが本日共演させていただくアイドル3名です。他3名は撮影の都合で遅れておりますので、後ほど謝罪と共にうかがわせていただきます」

大御所「……ん」

ちひろ「ほら、3人とも」ツン

薫「あ……」かちこち

仁奈「え……」かちこち

巴「本日お世話になります、村上巴と申します。どうぞよろしくお願いします」ペコ

薫&仁奈「!」

薫「りゅ、龍崎薫ですっ! よろしくお願いしますっ!」ペコ

仁奈「市原、仁奈、で、ごぜーます。よ、よろしくおねげーします」ペコ

大御所「ああ、よろしく」

ちひろ「……それでは、失礼します」

ガチャリ

ちひろ「失礼します。こちらが本日共演させていただくアイドル3名です。他3名は撮影の都合で遅れておりますので、後ほど謝罪と共にうかがわせていただきます」

大御所「……ん」

ちひろ「ほら、3人とも」ツン

薫「あ……」かちこち

仁奈「え……」かちこち

巴「本日お世話になります、村上巴と申します。どうぞよろしくお願いします」ペコ

薫&仁奈「!」

薫「りゅ、龍崎薫ですっ! よろしくお願いしますっ!」ペコ

仁奈「市原、仁奈、で、ごぜーます。よ、よろしくおねげーします」ペコ

大御所「ああ、よろしく」

ちひろ「……それでは、失礼します」

バタン

〜テレビ局・廊下〜

薫「怖かったぁ……」

仁奈「すっごくどきどきしてるですよ……」

ちひろ「さすがに大物、って感じだったわね。巴ちゃん、ナイスフォローだったわよ♪」

薫「ほんと! 巴おねーちゃん、ありがとう!」

仁奈「お礼にもふもふしやがっていーですよ」

巴「おう……。うちも何喋ったか覚えとらんけど」

ちひろ「ふふ、何ですかそれ♪」

巴「すごい雰囲気じゃった……。世の中にはあんな人もおるんじゃのぅ」

??「あ、もしかして今日共演するアイドルさん達じゃない?」

巴「?」

ちひろ「あなた方は、今日共演される……」

芸人A「ども。今日はよろしくお願いします」

芸人B「僕もよろしくお願いします〜」

ちひろ「挨拶が遅れて申し訳ありません。今から楽屋に直接挨拶に伺おうと思っていたのですが……」

芸人A「ああ、かめへんかめへん。先に大御所さんとこ行ったはったんやろ?」

芸人B「僕らもそうするでしょうし。楽屋やのーてここで会ったのも何かの縁、ゆうことで」

ちひろ「そう言っていただけると助かります。CGプロです、今日はよろしくお願いします」

巴&薫&仁奈「よろしくお願いします」

芸人B「うん、よろしく」

芸人A「うわー、ようできた子たちやわー。まだ小学生とかとちゃうん?」

薫「は、はい!」

巴「うちだけ、中学生です」

芸人B「すごいな〜、僕が小学生とかのときこんな静かにできたかどうか」

芸人A「まあ無理やろな。騒いで怒られる姿が目に浮かぶわ」

芸人B「やかましい!」ポカ

巴「……くくっ」

芸人A「お、ウケたで」

芸人B「ほんまか? いや〜、こんなかわいい子たちと共演できるなんて嬉しいわ〜」

芸人A「僕らも若手で、番組とかまだまだ不慣れですから。何かあったら協力していきましょう! ほな、お嬢ちゃんたちもまた後で〜」

ちひろ「どうぞよろしくお願いします」ペコ

薫「優しそうな人たちだったね!」

仁奈「今度は、そんなにばくばくしなかったですよ」

巴「……まあ、やりやすそうな感じじゃああったの」

ちひろ「……」

巴「ちひろさん?」

ちひろ「あらごめんなさい、ぼーっとしてたわ。それじゃあ、こんな感じでいろんな人に挨拶に行くから。これまでみたいに大きな声で自己紹介してね」

薫「はーいっ!」

〜数十分後〜

仁奈「始まってもないのに、疲れたですよ……」

巴「ほんまじゃの……。まあでも優しそうな人ばっかりで良かったわ」

薫「ほんとだね! 大御所さんだけはちょっと怖かったけど……」

ちひろ「みんな良くできてたわよ。辛かったかもしれないけど、こういう仕事は信頼が大事だから、こういった挨拶は欠かせないの」

巴「ほりゃあもちろん、分かっとる。……ところで、プロデューサーたちはいつ着くん?」

ちひろ「そうねえ、そろそろ向こうを出発する頃だと思うけど。ちょっと連絡してみましょうか」

ちひろ「……! 電源切ってる間に、着信が8件!?」

巴「……は!?」

巴「な、何かあったんかの?」

ちひろ「そうかも……。待って、またかかってきたわ!」

ピッ

ちひろ『もしもし、プロデューサーさん!?』

P『! やっと繋がった! ちひろさん!?』

ちひろ『はい! どうしたんですか!? 予定ではもうそろそろ着く頃ですよね?』

P『それが、撮影はとっくに終わったんですが、乗る予定だった電車が人身事故でストップしてしまったらしくて』

ちひろ『え!? 大丈夫なんですか!?』

P『仕方なくタクシーで向かっているんですが、こちらも渋滞で…… どうしても間に合いそうにありません』

ちひろ『そ、そんな……間に合わないんですか!? 開始予定の時間まで一時間ですよ!?』

巴&薫&仁奈「!」

P『この調子だと、あと1時間以上はゆうにかかりそうで……。すみません、俺はとにかく謝罪の連絡などをしていますから、ちひろさんは巴たちと一緒にいてあげてください』

ちひろ『いや、しかし……』

P『……っと。着信みたいなので、切りますね。3人のこと、よろしくお願いします』

ちひろ『あ、ちょっと! プロデューサーさん!?』

ツー、ツー、ツー

ちひろ「…………」

薫「せんせぇ、間に合わないの?」

仁奈「もしかして、プロデューサー無しでやるですか?」

ちひろ「いえ、友紀ちゃんたちが来られないとなったら、多分今回の企画は無かったことになるんじゃないかしら。一応、彼女たちの方がメインという扱いだから」

巴「……! そんな」

薫「じゃあ、お仕事なしになっちゃうの?」

ちひろ「…………」

ちひろ「とにかく、私は事実確認とスタッフさんたちに謝罪をしてくるわ。事情を話せば、少しくらいは待ってくださるかもしれない」

巴「なら、うちも行く! うちも一緒に頭下げに行くわ」

ちひろ「……駄目よ。巴ちゃんは薫ちゃんと仁奈ちゃんを見ていて」

巴「な、何で? うちだってこのプロダクションの一員じゃないんか」

ちひろ「だからこそ、よ。小さい薫ちゃんと仁奈ちゃんを置いていくわけにも行かないでしょ?」

巴「う……」

ちひろ「ね。ここは、私に任せて」

薫「だ、だったらかおるもいくよ!」

ちひろ「!」

仁奈「仁奈もいくですよ。巴おねーさんとかおると一緒だったら、いーんですよね?」

ちひろ「……それでも、駄目です。2人にはきっと、辛いと思うから」

薫「辛くてもいいよ! かおる、せんせぇたちと一緒に、テレビやりたいもん!」

仁奈「仁奈もです! 仁奈も、たくさんれんしゅーしてきたですよ! みんなでもっともっとやりてーことがあるですよ!」

巴「薫、仁奈……」

薫&仁奈「」ジッ

ちひろ「……分かりました。ただし、しんどくなったら巴ちゃんに言って、控え室に戻ってくること。いいですか?」

巴&薫&仁奈「はい!」

すみません寝落ちしてました

今日の夜早い時間にとりあえず一度来ます

大御所って文字を見るとなんかドキドキしてくる

大御所で大嵐浩太郎思い出した俺は
いろいろと自分で台無しにしてしまった…orz

早い時間()

11時頃から投下できると思います

あ、>>107>>1です

スタッフA「……遅刻、ですか?」

ちひろ「はい、電車の人身事故と渋滞で……。本当に申し訳ありませんっ!」

「「「「申し訳ありませんっ!」」」」

スタッフB「はあ……。困るんだよねえ。このスタジオだってずっと使えるわけじゃないし」

スタッフA「そうそう。この後別の収録入ってる人もいるんだよ?」

ちひろ「本当に申し訳ございません! 今大急ぎで向かっておりますので……」

スタッフB「大急ぎ、って行ってもなあ……。もう後編集とかでもいいんじゃないかな? 今は大御所さんたちには食べてもらうフリだけして、さ」

スタッフA「あ、それいいな! 大御所さんを待たせるわけにはいかないからな」

ちひろ「! そ、そんな! それじゃあ番組としての質が……」

スタッフB「とはいえ、そちらさんを出演させる形にするにはそのくらいしか……」

スタッフA「極端な話、わたくしどもはこのコーナーを無しにして他に差し替えたっていいんです。そのことは、分かってらっしゃいますよね?」

ちひろ「…………はい」ギリッ

「何々、何の騒ぎ?」

「あー、なんかアイドルグループの3人が電車のトラブルで遅刻しそうなんだって」

「あ、それ今こっちにも連絡きた。しかも今渋滞に巻き込まれてるとか」

「うわ、まじかよ。スケジュール管理くらいしとけってんだよなー」

「はあ。売れてきて調子乗ってる人ってのはこんなもんかねえ」

「これ結構待たされる感じなの? 俺腹減ってきちゃったよ」

「あーあー。また帰るの遅くなんのかよ……最悪」

「ほんと何様のつもりだよ……」

「待たせて当然、とか思ってるんじゃね?」

「あーあ、やる気でねえ……」

「しっかりしとっても子供は子供、ゆうことかあ」

「ま、僕らにゃ関係ない話やな」

巴(……ぐ。好き勝手言いよってからに。……しかしこの雰囲気は、きついの)

薫「……っ」

仁奈「う、うう……」

巴「! 薫、仁奈」

薫「みんな、何か怖いよぅ……」

仁奈「お、怒ってるですよ。怒られるですよ」

ちひろ「……この辺が限界ね。巴ちゃん、2人と一緒に控え室へ」

薫「! 駄目だよ、まだ……」

ちひろ「でも、これ以上ここにいてもできることなんてないでしょう?」

仁奈「うう……」

薫「それは……」

巴(……)

巴(そもそも、悪いのは遅刻をしたうちらなんじゃ。それはどうあっても動かん)

巴(それを、認めた上で)

巴(何でもいいから、うちらにできること。せめてこの雰囲気を変えられるような。何か。何か……っ!)

巴(……!)

ちひろ「いいの。後は私が、なんとかするから」グッ

巴「ちひろさん。……ちょっと、待ってくれんか」

巴「薫、仁奈」

薫「なあに、巴お姉ちゃん!」

仁奈「なんでごぜーますかっ!?」

巴「2人とも、まだ何かしたいいう気持ちはあるんじゃの」

薫「う、うん。かおる、頑張るよっ!」

仁奈「このままじゃ帰れねーですよっ!」

巴「……なら、うちに考えがある。ちひろさん、車の鍵を貸してくれんか」

ちひろ「巴ちゃん、何を」

巴「うちも、このまま諦めるわけにはいけんのんよ。あの3人と、プロデューサーの分まで。……じゃって」



巴「うちは友紀姐さんから、大事な言葉を受け取ったんじゃけえ、ね」

ぶつぶつぶつ

ざわざわざわ

スタッフA「……なんか、雰囲気も悪くなってきたな」

スタッフB「まあ、何をするでもなくただ待たされてるわけだからなぁ。いらいらもしてくるだろ」

スタッフA「しかも、いつ到着するか分かんないわけだしな」

スタッフB「ほんと、いつ始まるんだか。いっそ撤収にしてくれればいいものを。……って、おい。あれなんだ?」

スタッフA「あれって? ……俺の目には、さっきのちびちゃんたちがダンボール運んでるように見えるな」

スタッフB「ああ、俺にもそう見える」


巴「ええか、2人とも」

薫「うん!」

仁奈「おっけーでごぜーますよ!」

巴(……ええか、村上巴。ここが正念場じゃ)

巴(声を張れ。臆したら負けじゃ)

巴(ここにいない人たちの分まで。うちはなんぼ恥をかいてもええ。……ただ)

巴(うちはうちの、仁義を通すのみ)

巴「」すぅ

巴「この度は、私たちのせいでお待たせしてしまって、大変申し訳ございませんっ!!」


ざわっ


スタッフA「おいおい、なんか始まったぞ」

スタッフB「余計なことして、いらいらを加速させなけりゃいいんだけどな……」

巴「お詫びといってはなんですが、私たちで小さな『お茶会』を開きたいと思います!」

巴(言うてみれば簡単じゃ。うちらに特別なことは何もできん。ただうちらにできることは、届くと信じて言葉にすることだけ)

薫「おいしいお茶に、クッキー! い、いい香りのお花も用意してますっ!」

仁奈「仁奈たちで、せーいっぱいおもてなしするですよっ!」

巴(子供のワガママ、言われてもしょうがないじゃろう。媚びてると言われても仕方ないし、否定はできん)

巴(……でも、1人のワガママじゃないんよ。こんな小さい薫や仁奈が頑張っとる。それに友紀姐さん、夕美姐さん、藍子姐さん。もちろんちひろさんもプロデューサーも、みんなの想いがこもっとるんじゃ)

巴(うちらが今日をどれだけ楽しみにしとったか。他でもないうちらがどれだけ申し訳ないと思っとるか。ありったけの謝罪と誠意)

巴「ですから、この通り! もう少しだけ、お待ちいただけませんでしょうか!」

巴&薫&仁奈「お願いしますっ!!」ペコ

巴(届いて、くれっ……!)

スタッフ一同「…………」ぽかん

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

巴(だめ、か……?)

??「ほう、クッキーね。ちょうど小腹が空いてたんだが、食べてもいいのか」

巴「!」

巴(や、やった!?)

巴「は、はい! 是非どうぞっ!」

巴(届い…… えっ?)


薫「え?」

仁奈「ええ?」


大御所「何だ、わたしには貰えないのか?」


巴&薫&仁奈「お、大御所さん!?」

巴「も、もちろん構いません。しかし……」

大御所「それじゃあ、ひとつ」スッ

大御所「……」さく、さく

巴「……」ゴク

大御所「…………む、うまい。お茶もあるのかな」

巴「は、はい! 足りなければコンロをお借りして沸かしてきます!」

大御所「ああ、いいよいいよ。火傷しちゃいけないから私がやろう」

スタッフA「そ、そんな! ちょっと待ってください、大御所さんにそんなことをさせるわけには」

大御所「なら、君がやってくれるかな」

スタッフA「……え? 自分ですか?」

大御所「嫌ならいいんだ」

スタッフA「い、いえとんでもありません! 行ってきます」タタタッ

芸人A「お、大御所さん……。ええんですか、料理番組の前なのに」

大御所「多少なら良かろう。君たちは食べないのか、こんなに美味しいのに」

芸人B「しかし……」

大御所「このクッキーを食べられない人は、よほどの味覚が変わっているのだろうな」

芸人A「味覚が変わってるって、そんな」

大御所「ふむ。番組の打ち上げは私の個人的な趣味で焼肉をお願いしていたんだが……」

大御所「そんな味音痴の人は、同席してほしくないものだね」にこっ

一同「「「!!!!!」」」ざわっ

「お、大御所さんがそこまで言うなら……」

「どうせ時間もあるしな」

「喉も渇いてたし、ちょうどいいか」

「ん、なんかいい匂いするな」

「ラベンダーかな? なんか、落ち着く」

「あ、これ美味しいかも」

「ほんとか? どれどれ……」

巴(……!)

巴(流れが、変わった……!)

巴「……って、呆けとる場合じゃない! 薫、仁奈!」

薫「う、うん! あの、く、クッキーが足りない人がいれば言ってくださーい!」

仁奈「仁奈たちがお配りするですよ! お代わりもいっぱいありやがります!」

巴「持ち場を離れられない人は持っていきます! 声をかけてください! 椅子は足りてますか!」

こっち、椅子が足りないよー

うちが持っていきます! 少しお待ちください!

バニラよりチョコの方が美味しいかも?

これもけっこういけるよー

このポプリすごいね、手作りなのかな?

はい! 夕美お姉ちゃんが作ったんですけど、かおるもお手伝いしました!

へえ、偉いね〜

仁奈ちゃん、その着ぐるみ暑くないの?

このぐらい、へっちゃらです!

お茶の追加が沸きましたよー

あ、こっちお茶欲しい!

こっちもー!

こっちはクッキーないよ!

はい、ただいま!


わいわい

がやがや

わいわい……

バタバタバタ

ガチャ!

P「申し訳ございません、CGプロです!! 大変遅くなりました!!」

友紀&夕美&藍子「大変申し訳ございませんっ!!」

がやがやがや……

P「って、これは、一体……?」

大御所「おお、やっと来たか。ほいじゃあ、早うやろうか」

巴「!」

スタッフA「CGプロさん、到着されましたか。それじゃあ時間が押してますので、すぐに準備を始めてください」

P「は、はい。おい、3人とも急いで着替えてくるんだ」

友紀「はいっ!」

P「あの、大御所さん。この騒ぎは一体……」

大御所「……あなたの教育のおかげかな。あの子達に、感謝しておくといいよ」

P「……?」

大御所「いや、なんでもない。後は、頼むからNGを出さないでくれよ」

P「は、はい!」

大御所「それと、あの巴とかいう子」

P「……巴が、どうかいたしましたか」

大御所「あの子と、1対1で話がしたい。後で呼んでくれないか」

P「わ、分かりました」

〜撮影終了後〜

(大御所さんが、巴を名指しで呼んでるんだ。悪いが一緒に来てくれないか)

巴(な、なんでうちが呼ばれるんじゃ……? やっぱり撮影前のあれか?)

巴(大御所さんが助けてくれんかったら、あんなに上手くはいかんかったじゃろう。その見返りに、何か求められるんじゃろうか)

P「……いいか、巴?」

巴「お、おう」

P「じゃあ、俺は外で扉の前に立ってるから。何かあったら呼んでくれ」

巴「……分かった」

巴(考えとってもなんも分かりゃあせん。当たって、砕けろじゃ)

こん、こん

巴「村上です。失礼します」

大御所「おお、入れ」

巴「村上巴、参りました。先ほどはお心遣いいただきありがとうございます」

大御所「ああ、そう固くならんでええ。敬語もいらんよ」

巴「! やっぱり……」

大御所「おお、気付いとったか。知っとったんかな?」

巴「いえ、気付いたのはついさきほど。少しだけ言葉が変わりましたので」

大御所「敬語じゃなくてええ、言うとるじゃろうが。……まあ、あんたの言葉を聞きよったら懐かしくなってしもうての」

巴「そうでし……。そうじゃったんか」

大御所「そうそう、そんな感じで孫を持つお爺ちゃんの気持ちに浸らせてくれえや」

巴「はあ、孫……」

大御所「同郷のやつはおっても、こっちにおると純粋な広島弁いうのは珍しいんよ」

大御所「それにしても、さっきはよう頑張ったの」

巴「……うち1人じゃあ、無理じゃったけど。大御所さんが助けてくれにゃあ、何もできませ…… できんかった思う」

大御所「ほうじゃの。今回みたいなことはそうそう無い。毎回こんなんでどうにかなるわけじゃないじゃろうし、運が良かった、言うことを忘れちゃいけんよ」

巴「……うん。ありがとう」

大御所「それでも、巴ちゃんはあの空気の中でよう頑張った。気持ちはよけ、伝わったで」

巴「……大御所さん」

大御所「のう、ところで。巴ちゃんは広島の、○○の方の出身か?」

巴「そうじゃけど…… 何で?」

大御所「そしたら、村上いうのはもしかして……」

巴「!」

大御所「……」

巴「…………」

大御所「……ほうか、やっぱりか。じゃあ、一つだけ聞かせてほしい」

巴「何じゃろう」

大御所「巴ちゃんは、ちゃんと楽しんでアイドルをやっとるんか?」

巴「……もちろんじゃ。今はちゃんと、自分の意思で上を目指しよる」

大御所「ほうか、ならわたしは何も言わん。それだけが聞きたかったんよ同郷のよしみじゃ、困ったことがあったら力になっちゃるけえ、ここに連絡してきんさい」

巴「は、はい! ありがとうございます!」

大御所「わしは応援しとるけえの」

ガチャ

巴「それじゃあ、失礼します」

パタン

P「巴! どうだった?」

巴「どうもこうもないわ。気のええおじさんとお喋りしてきただけじゃ」

P「……は?」

巴「それと、大御所さんの連絡先をもろうた。プロデューサーにも渡して、困ったことがあったら連絡してきんさい、と」

P「……はぁ?」

巴「同郷の人間と会うのは、気分がええもんじゃの。ほんまうちは、ラッキーだったんじゃ」

P「よく分からないけど……。今日はお手柄だったらしいな。収録中にちひろさんに聞いたよ」

巴「うちができることをしただけじゃ。うちよりも薫や仁奈の方をほめてやってくれえや」

P「いやいや、お前もよく頑張ったよ。ありがとな」ぽんぽん

巴「こ、子ども扱いすなや! ほんまに感謝しとる言うならもっとやり方があるじゃろうが!」

P「なんだ、お菓子でも買って欲しいのか?」

巴「それが子ども扱い言うとるんじゃー!!」

P「はははっ、お疲れ様」

巴「……あんたもの、プロデューサー」

今じゃけえ言えるけど、この日はうちの人生で一番疲れた日じゃった。
え? 気付いてた?

……まあ、そりゃそうか。この次の日、うちは初めてレッスンに遅刻してしまったんじゃけえね。
自分でもしょうがないと思うわ。寮についたらすぐ、ベッドに倒れるようにして眠ってしまったからのう。風邪引かんかっただけましじゃ。

それも今では、いい思い出じゃの。

少し休憩
もう少しで最後まで書きあがるんだけど、今日投下してしまうか明日以降に分けて投下するかついでに考えてきます

こんな時間の投下で読んでくださっている方がいれば本当にありがとうございます

乙です
大御所さん良い人だな〜

昨日同様寝落ちが怖いのと、やっぱりラストはもう少し詰めたいので完結は明日にしたいと思います

今日はあと少しだけキリのいいところまで投下することにします

〜・〜

巴「……」

P「どうした、緊張してるのか?」

巴「そりゃあの。うちにとっては、大舞台じゃけえ」

P「ようやく漕ぎ付けた、地元広島でのライブだからな。ご家族の方とかは呼んだのか?」

巴「一応、招待は送った。じゃけど、母親はともかく父親は来んじゃろうの」

P「何でだ? 確か巴って、お父さんの勧めで入ってきたんじゃあ」

巴「ほうじゃけど。最後は喧嘩別れみたいな感じになってしもうたからの」

P「……そっか」

巴「ん、まあでもそれは関係ない。うちは地元のファンの人のために、精一杯頑張るだけよ」

〜ステージ上〜

巴「みんな、今日は長いことうちの歌に付き合うてくれてありがとう!」

ワァァァァァァ!

巴(やっぱり、親父は来とらんの。……その代わり、友人が来とってびっくりしたけど)

友人「巴ちゃーん!!!」ブンブン

巴「はは……」

巴「うちもこの広島でこうやって歌うことができて、ほんまに嬉しい! けど、次で最後の曲なんよ」

エエエエエエエ!

巴「ふふ、ありがとう。ほいでもうちは、いつまで経っても広島が大好きじゃけえ! またすぐ戻ってくるで!」

ワァァァァァ!

巴「ほいじゃあ行くで! 最後の曲は、『   』!」

〜♪

巴(ほんま、自分勝手な親父じゃ)

巴(勝手に引越しを決めて、勝手にアイドル事務所に申し込んで)

巴(人がこんだけ頑張って広島戻ってきたいうのに、今度は見に来もせん)

巴(ほんまあの、くそおやじは。……っ!?)ピク



巴父「……」



巴(は!?)

巴(み、見間違いか!? 関係者席の券送ったじゃろうが、なんで一般客の方に!?)

〜♪

巴(……どうやら、見間違いじゃないみたいじゃの。あれは確かに親父じゃ)

巴(周りは若もんばっかりでおり辛いじゃろうに。なにあほなことしょーるんかいの)

巴(……まあ、でも最後に気付けてよかったわ)

巴(どんだけ成長したかそん目に焼き付けて帰れえや、親父!)ニッ

〜舞台袖〜

P「ふう、この曲で最後か。何の問題も無く終わりそうだな」

P「ん、巴、どこを見て……?」

P「! あれは、一度だけ挨拶に行った……」

P「……そっか。良かったな、巴」


P「けど、なんで関係者席じゃないのか……?」

ブルルルルル

P(ん。着信…… 大御所さん!?)

ピッ

P「はい、もしもし」

大御所「巴ちゃんのプロデューサーか?」

P「はい、そうです。どうなさいましたか?」

大御所「……巴ちゃんの周りに、気をつけてあげてほしい」

P「は?」

大御所「私に言えるのは、それだけだ。何かあったら、あなたが支えてあげてくれ」

P「そ、それはどういう……」

プツッ、ツー、ツー

P「なんだったんだ……?」

今日はここまでで

次は火曜日の夜10時くらいにきます
終わる終わる詐欺で申し訳ありませんが、もうほぼ書きあがってるので今度こそ終わります

こんな時間までお付き合いくださった方は本当にありがとうございました
コメントも全て、ほんとに励みになってます

七生を持って御支援を勤めさせて頂きます

アイマス+大御所=大野君という黄金方程式が頭からこびりついて離れない

こんばんは、投下していきます

その前に恒例のミス
>>140
×巴「はは……」
○巴(はは……)

で。では行きます

〜事務所前〜

P(あのテレビ出演から、うちの人気は右肩上がり。順調だな。俺も負けないようにしないと)

P「それじゃあ、今日も一日頑張っていきますか」

ガチャ

P「おはようございまーす」

ちひろ「あ、プロデューサーさん! 遅いですよ!」

P「あ、ちひろさん。おはようございます。……どうしたんですか、そんなに血相変えて」

ちひろ「どうしたもこうしたもありません! これ、見てください!」

P「これ、って。ただのパソコンのメールじゃないですか」

ちひろ「……読んでください」

P「ええ。中身は…… な、何だこれ!?」

ちひろ「『人気急上昇中のアイドル、村上巴の素性と家庭』。この記事を載せられたくなかったら、それ相応の心づけを送れ。……簡潔に言えばそう、書いてありました」

P「なっ……素性と家庭? 何なんですか、この記事は!」

ちひろ「巴ちゃんも有名になってきましたから。スキャンダルを狙っての記事なんでしょうね」

P「一体誰がこんなことを……」

ちひろ「分かりません。出版社は書いてありましたが、個人名はありませんでしたし」

P「くそ……」

ちひろ「……この出版社、でまかせギリギリの記事で、よくバッシングを受けているところです」

P「なら、これは事実とは……」

ちひろ「いえ。私も、軽く目を通しましたけれど。……こういう言い方は卑怯になるかもしれませんが、ウソは、書いてありませんでした」

P「なっ……。だって、この書き方じゃあ、巴の家がまるで」

ちひろ「昔から地域に根付いている土建屋が大きな権力を持つこと」

ちひろ「その発達の段階で、金融を始めとした多くの事業に関わり、多くの人間を傘下に置くこと」

ちひろ「……そして、多くの人間を取りまとめるのには、やはり『力』が最も分かりやすい決まりであること。これらは切っても切り離せない、シンプルな論理なんです」

ちひろ「それがトップの望むと望まざるとに関わらず…… ね」

P「な、何でちひろさんが、そんなことを……」

ちひろ「その話は後で。とにかく、今はこの人をどう対応するかなんですが……」

P「た、対応と言ったって。そのまま無視していればいいんじゃないんですか?」

ちひろ「それでもいいんですけど……」

P「けど?」

ちひろ「それには、ライブ会場にお父様がいらしている写真があるのが少々痛いですね」

P「写真、ですか?」

ちひろ「ええ。関係者席には居られないと思っていましたが…… しっかり写っています。社長として顔が出ている方なので、このことはこの記事にある程度の信憑性を持たせてしまうのではないかと思います」

P「……もしかして。大御所さんが言っていたのは、このことだったのか」

ちひろ「大御所さん? どういう関係があるんですか?」

P「この間俺に直接電話がかかってきて、言われたんです。『巴ちゃんの周りに、気をつけてあげてほしい』って」

ちひろ「そうですか……」

ガチャ

P&ちひろ「!」ガタ

巴「おはよう。……なんじゃ2人とも、えらいびっくりしよってからに」

ちひろ「ううん、何でもないのよ」

ちひろ(後で話しましょうか。巴ちゃんには絶対見せちゃだめですよ、さっきのメール)ヒソヒソ

P「そうそう、何でも無いんだよ」

P(もちろんです)ヒソヒソ

巴「変な2人じゃのう。まあ、何もないならええか」

P「そうそう、パソコンなんか特に何もないからな。触るんじゃないぞ」

ちひろ「!!!」

巴「ほう、パソコンのう……」ニヤリ

P「あ、しまっ……」

ちひろ(ば、馬鹿なんですかあなたは!?)ヒソヒソ

P(す、すみません)ヒソヒソ

巴「どれ、見してみい! おーかたこの間のゴールデンのときみたいに驚かせよう思うとるんじゃろうけど、そうはいかんで!」

P「や、やめろ、巴! 見るな!」

ちひろ「巴ちゃん、だめっ!」

巴「やめろ言われてやめる奴がおるかーや! どれどれー……」

ちひろ「ああ……」

巴「……」

巴「……何じゃ、これ」

P「巴……」

ちひろ「巴ちゃん……」

P「……巴は、気にしなくていいからな。これは、お前には関係のない話だから」

巴「……うちが、迷惑かけとるんか」

ちひろ「! 巴ちゃん、それは」

巴「うちがあの家の出じゃけえ、みんなに迷惑がかかるいうことなんか、これは」

P「……でも、お前が責任を感じる必要はないんだ」

巴「責任が無い……? この記事が出回ったら、うちだけじゃなくて事務所のみんなにも迷惑がかかるじゃないんか」

P「…………」

巴「見てみい、何も言えんじゃろうが」

P「巴……。でも」

巴「……やっぱりうちみたいなんが、アイドルなんてやっちゃいけんかったんかの」

P「巴、何を言って」

巴「……そもそも、親父に言われて始めたことじゃし。うちがアイドルを続けることで、みんなに迷惑をかけるんじゃったら」

巴「……じゃったら。うちが、辞めてしまえば」

ちひろ「馬鹿なことを言わないで」

巴「!」

P「ちひろさん?」

ちひろ「確かに、巴ちゃんの家のことだから関係ないとは言えません。でも」

ちひろ「他人の弱いところをスクープといってネタにするこのやり方は、絶対に許したくはないものです。でしょう?」

巴「それは、まあ……。けど、簡単に話が通じる相手でもないじゃろう?」

ちひろ「素直な気持ちは通じないかもしれませんね。だから大人の汚いやり方には、大人が対応するんです」

巴「大人、が」

ちひろ「ええ、そうです」


ちひろ「……それが、大人の役割ってものですよ♪」ニコ

P「……辞めるうんぬんは置いておいて。ひとまず俺たちに任せてくれないか。判断するのは、それからでも遅くはないだろ?」

巴「……分かった。じゃけど、うちは皆に迷惑をかけるくらいなら辞めた方がましじゃあ思っとるいうことを、覚えといてくれ」

P「ああ、覚えておくよ」

〜・〜

P「いよいよ今日ですか、例の記者が来るのは。……しかし、よく事務所まで出向いてくれることになりましたね」

ちひろ「こういう話は、直接会って証拠に残すのが基本ですから」

P「直接、ですか」

ちひろ「ええ。電話やメールで済ませることもできたでしょうが、後々禍根が残ることを恐れたのでしょう。ましてこちらのホームで交わした契約となれば、文句も出しにくいという考えだと思います」

P「なるほど。となると、これから決まることは、覆らないと思った方がいいと」

ちひろ「でしょうね。そんな隙は、残してくれないと思います」

P「少なくとも、あの記事が出ることは避けないとですね……。向こうの要求は、お金なんでしょうか」

ちひろ「…………」

P「ちひろさん?」

ちひろ「あ、ええ。お金だとは思います」

P「となると、全くの損害を出さずに終わるということは難しいでしょうね……。後はそれを、どれだけ抑えられるか」

P「……結局お金で解決するとなると、なんだか巴を裏切った気分になりますが。仕方ないですね」

ちひろ「巴ちゃんが気持ちを尽くし、気持ちでどうにかならない部分は私たちがどうにかする。その分担で、いいじゃないですか」

ちひろ「……私は、そのためにいるんですから」

P「え?」


ガチャ


ちひろ「どうやら、いらっしゃったみたいですね。では私たちは私たちなりに、『気持ちを尽くす』ことにしましょうか♪」

記者「お邪魔しやす、と……。CGプロのプロデューサーさんということで宜しかったですかね」

P「ええ、そうです」

記者「記事の方は、読んでいただけやしたかね。あっしにしてはなかなかの出来だと思うんですがね」

ちひろ「ええ、憎らしいほどに。付け入る隙もありませんでしたよ」

記者「そいつぁ結構。何せ、久々のスクープですからなぁ」

P「……スクープ、ですか」

記者「ええ、いい飯のタネでさぁ」

P「……」ギリッ

P「あなた方は。……あなた方はそんなことで、巴の『夢』を潰すというんですか」

記者「……はぁ。と言いますと?」

P「分かっているでしょう。あんなに悪意に満ちた記事が出回れば、あの子のイメージが変わる!」

記者「……はぁ」

P「そうすれば、せっかく着いたファンも離れるし、今後の活動にだって影響が出る! そんな簡単なことくらい、少し考えればすぐに分かるはずだ!」

記者「そのくらいで離れるファンは所詮そんなものでしょうし、新しい一面が出て新規ファンの開拓にもなるんじゃないでしょうかねぇ」

P「屁理屈を……!」

記者「本心なんですがねぇ」

P「……あなたは、この時期のスキャンダルがどれほど大事か、分からないんですか!」

記者「……分からなくてすいやせんねえ。何せ飯のタネなもんでして、『夢』なんて大層なもんじゃないんですよ」

P「……っこの!」

ちひろ「待ってください、プロデューサーさん。……私にも話をさせてください」

P「え……」

記者「ほぉ、こちらのお嬢さんは話が分かりそうだ。男ってのは喧嘩っぱやくていけないな」

ちひろ「やめてくださいよ。お嬢さんなんて年齢じゃあ、ありません」

記者「そうかい。では何と呼べば?」

ちひろ「『事務員さん』でも『千川さん』でも、お好きなように」

記者「その事務員さんは、あっしの言いたいことは分かっているというわけで?」

ちひろ「ええ。あなたのことはよく知っていますよ。……阿久徳、さん?」カタ、カタ

P「!?」

記者「……へえ。あっしはそんなに有名ではないはずなんですがね」

ちひろ「阿久徳又二。年齢42歳、フリーライターだが現在は○○出版と懇意」

記者「…………」

ちひろ「30を前に研究職の女性と結婚するが、5年前に離婚。2人の子どもの親権は母親にあるため、現在は都内の高級マンションに1人暮らし」

記者「!」

P「ち、ちひろさん?」

ちひろ「現在も慰謝料を払い続けているが、その割に高級車を2台所持…… 随分羽振りがいいことですねえ。収入と支出がデタラメですよ」

記者「……宝くじが当たったんですよ、宝くじ。年末にその辺でたまたま買ったやつがね。そりゃあ羽振りがよくもなるでしょう」

P「見え透いた嘘を…… どうせ今みたいに、誰かを」

ちひろ「……へえ、そうですか。確かに昨年末都内で当たった高額の宝くじは……」カタカタ

ちひろ「およそ85本。これだけあれば、阿久徳さんがその中にいてもおかしくなりませんねえ」

P「な」

記者「……あんた、何者だ」

ちひろ「言ったじゃないですか。しがない事務員ですよ」

記者「……待て。あんたさっき『ちひろさん』とか言ったか?」

P「え、ええ……」

記者「ちひろ、ちひろ…… どこかで聞いたような」

記者「……!」

記者「まさか、あの『100の情報網を持つ女』……?」

ちひろ「……懐かしい名前ですね。でも、それは昔の話です」


ちひろ「今の私はCGプロ事務員、『千川』ちひろ、です♪」

記者「せ、せん……!」

ちひろ「ですから、私たちはあなたのことをよく知っています。望みも、その他も」

記者「…………」

ちひろ「ですから、穏便に済ましてはいただけませんか。私はあの子の夢を守れれば、それでいいんです」

記者「……だからと言って、あっしも簡単に引く訳には行かないんですよ。おまんまの食い上げになっちまいますんでね」

ちひろ「ええ、分かっています。それにこちらの要求は、あの記事、あの写真を一切表に出さないこと。

ちひろ「それを無条件で通そうなんて、虫のいい話です」

記者「一切、ですね」

ちひろ「ええ、一切です。……ですから、これだけは用意しましょう」スッ

記者「……」

ちひろ「……」

記者「……これじゃあ少なすぎる。せめてこの3倍はもらわねえと」

P「なっ」

ちひろ「3倍ですね、分かりました。ではこちらの書類にサインをお願いしますね」

P「え!?」

記者「……ちっ。食えねえ人だ」

ちひろ「褒め言葉として受け取っておきますね」

ちひろ「では、以上で……」

バタン!

巴「プロデューサー! ちひろさん!」

ちひろ&P「!?」

記者「……」

P「今日は来るなって言ってあっただろ!?」

ちひろ「大丈夫よ、巴ちゃん。今、話はついたから」

巴「……ほんまか、そりゃあ良かった。ほいでその人が、例の記者さんか?」

P「……ああ、そうだ」

記者「村上巴、ご本人の登場ですか」

巴「おお。うちが、村上巴じゃ」

記者「あっしのことを怒ってますか? もし殴りたいなら、殴っても構いやせんぜ」

巴「いや。うちはそんなことはせん」

記者「……なら、何しに来たんで?」


巴「うちは、礼を言いに来たんじゃ」

P「!?」

ちひろ「!」

記者「……」

巴「大人のやり方に対応するのが、大人の役割じゃとちひろさんは言った」

記者「……へえ」

巴「なら、事実に対して単純に想いを伝えるのが子どもの役割じゃと、うちは思う。……じゃけえ」

巴「記事を載せんでくれてありがとう、記者さん」ペコ


P「巴……」

ちひろ「巴ちゃん……」

記者「……は。甘いお嬢さんだ。まあそれはそれで、バランスがいいのかもしれやせんがね」

巴「?」

ちひろ「余計なことは言わないようにしてくださいね」

記者「あらら、内緒だったんですか。これはひとつ貸しができましたかね、なんて」

ちひろ「……」

記者「はいはい。じゃああっしはこの辺で退散するとしやすよ」

記者「ときに、プロデューサーさん」

P「何ですか」

記者「そのお嬢ちゃん、大事にしてやんなさいよ。今時珍しい、まっすぐ芯の通った子だ」

P「……あなたにだけは言われたくない言葉ですね」

記者「はは、違いない。けど、勘違いしないでくださいよ。その子が活躍してくれた方が、あっしの『商売』的には助かる、ってだけのことなんでね」

ガチャ、バタン

P「な! まさかあいつ、また……」

ちひろ「いいえ、そういう意味ではないと思いますよ」

P「……え?」

ちひろ「さすがに『夢』とまでは言えないみたいですけれど、ね」

巴「……ちひろさん、プロデューサー。ほんまにありがとう」

P「俺は何もできなかったよ。お礼ならちひろさんに言ってくれ」

ちひろ「ふふ、礼には及びませんよ。巴ちゃんの夢は、私の夢でもあるんですから」

P「それにしても、なんであの人の名前を知っていたんですか? 初対面、ですよね?」

ちひろ「あれは、大御所さんのおかげです。独自のルートを使って、何人かにあたりをつけておいてくださったんですよ」

P「大御所さんが……そうですか」

ちひろ「ええ。後でお礼を言っておかなくちゃいけませんね」

P「そうします。しかしえらくあっさり引き下がってくれたものですね。もう少し揉める覚悟だったんですけど……」

ちひろ「彼らはいつも、あんな感じですよ。……なぜなら向こうにも、恐怖があったはずなんです」

P「恐怖?」

ちひろ「ええ。実際にリークすれば、万に一つくらいの可能性ではありますが、意趣返しに自分の身にも危険が及ぶかもしれない」

ちひろ「その恐怖がある限りは、妥協案にだって乗ってきますよ。内々に事を済ませたかったんでしょう」

P「……ということは、彼は始めから記事を掲載する気なんて無かったってことですか?」

ちひろ「その可能性は高かったと思います。もっとも、こちらの場合は万に一つなんて楽観するわけにはいきませんでしたけれどね」

P「ちひろさん、あなたは本当に一体……」

ちひろ「いつか、話す日は来るかもしれませんね。……けど今は、内緒です♪」

巴「……やっぱり、ただもんじゃ無かったんじゃのう」

ちひろ「いやですねえ、私はただの事務員ですよ。変な迫力なんて微塵もありませんよ♪」

巴「まだ根に持っとったんか、それ……」

ちひろ「な、何のことですかねっ?」

巴「くくっ、おかしな人じゃ」


巴(うち1人じゃあ、どうしようもないこともある)

巴(けど、うちのために動いてくれる人がおる)

巴(うちが、一緒に頑張りたいと思う人がおる)

巴(そんな人がたくさんできるなんて、前のうちは思いもしとらんかった)

巴(うちはこの事務所でアイドルをやって、ええんじゃ)

少し休憩
後はエピローグだけです

今日こそちゃんと終わります

〜・〜

「な、な、な、何じゃ、これはああああああああああ!!!!」

「こーら、巴ちゃんうるさい! 周りの人に迷惑でしょ!」


ざぁぁ、と。
一陣の風が吹きぬける度に薄桃色の桜の花が、めいめい気持ち良さそうに空を泳いだ。

その姿に、新たな場所で自由にいろいろな事を楽しめるようになった自分の姿を重ね合わせて。
共に散っていく花びらを、うちの周りにいてくれる暖かい人たちに見立てて。

少しだけ、決して長いとは言えない自分の人生を振り返ってしまったように、思う。

巴「そんなこと言うたって…… いきなりこんなヒラヒラの衣装着ろ言われたら、そうなるじゃろう」

友紀「ぶー。巴ちゃんが遅れてくるのが悪いんじゃんか。せっかくのみんなでのお花見なのに!」

P「はは、悪い悪い。俺と巴は朝は収録だったんだから、許してくれよ」

夕美「そんなプロデューサーには、はいっ! コップ!」

P「なんだこれ…… ビールか?」

藍子「友紀さん、プロデューサーさんが来たらまずは飲ませるって聞かなかったんですよ。他に飲める年齢の人がいませんから」

P「え、ちひろさんは」

ちひろ「」ニコニコ

P(見なかったことにしよう)

P「……あー、なるほどな。じゃあいただくよ、この後は仕事もないしな」

仁奈「仁奈は飲めるって言ったですよ! でも誰も許してくれやがらなかったんです!」

藍子「当たり前です。お酒は大人の飲み物なんですよ!」プン

P「しかしまあ、よくこんな場所を見つけたな。人もそこまで多くないし、穴場ってやつか」

夕美「この間、藍子ちゃんと少し遠出してお散歩したときに見つけたんですよっ!」

藍子「夕美ちゃんが、ちょっとこっち行ってみない? って言って。それで、見つけたんです」

P「へえ、お手柄だな。さすが2人だ」

友紀「……って、話が逸れてる! 巴ちゃんがこれを着る話でしょっ!?」

巴「じゃけえ、着ん言うとるじゃろーが! どーせ似合やあせんわあ!」

薫「そんなことないよっ! かおる、巴お姉ちゃんなら似合うと思うな」にこっ

P「お」

ちひろ「ふふ」

巴「か、薫ぅ……」

薫「えへへ♪」

友紀「よく言った薫ちゃん! ね、プロデューサーもそう思うでしょ?」

P「ん、ああ。可愛いと思うぞ」

巴「やかましい、適当言うなあほんだらぁ!」

P「いやいや、可愛いって。なあみんな」

薫「可愛いよ、巴お姉ちゃん」

藍子「可愛いですよ」

夕美「可愛いに決まってるじゃんっ!」

ちひろ「ええ、可愛いです」

仁奈「かわいーですよっ!」

友紀「ほら、可愛い」にやっ

巴「……っ! やめんか、可愛いは禁止じゃあっ!」

P「何でだ、皆が言ってるんだからいいじゃないか。巴は可愛いって」

巴「う、うるさいわプロデューサー! シメるぞ!」

友紀「ほらほらー、皆がこう言ってるんだよー? 巴ちゃんはどうするのかなー? 自分でできないって言うなら、お姉さんが脱がせてあげましょうかー?」ワキワキ

巴「や、やめい! さては友紀姐さん、もう酔うとるな!?」

友紀「はいっ! 酔ってない、よっ!」ビシ

巴「ほりゃあ、あんたが酔うとるいつものやつじゃろうがっ!!」

友紀「ひひ。今日のあたしはいけいけ姫ちんっ!!!」ベタベタ

巴「やーめーんーかーっ!!」

友紀「ああんもう、お嬢のいけずぅ」

巴「お嬢言うなっ! 付き合うとられるかっ!」ダッ

P「あ、おい巴!」ダッ

巴「はぁ、はぁ……。全く友紀姐さん、悪酔いしよってからに」

P「まあまあ、そう言うな。今日のお花見楽しみにしてたみたいだからな」

巴「おお、プロデューサー。あんたは飲まんでいいん?」

P「ん、まあ後でいくらでも飲めるだろうしな」

巴「ほうか。……全く、お嬢言うな、言いよるのに」

P「はは、言い始めたのは誰だったかな。妙にしっくりくるから、定着しちゃったんだよな」

巴「ちひろさんの陰謀のような気もするんじゃけどな。……全く、いつまで気にしょーるんじゃか」

P「は?」

巴「いや、何でもない。……まあ確かに、大人になりきれとらんうちにはちょうど良い呼び名じゃろ」

P「いいんだよ、それで。無理して大人にならなくても」

巴「そりゃあこないだの一件で分かっとるよ。うちは表でも裏でも、大人に助けられてばっかりじゃ」

P「……うん」

巴「それでも。せめて、仁奈や薫のお姉ちゃんではありたいとも思うんじゃ」

P「……ああ。それも、いいことだと思う」

巴「……しかし、綺麗な桜じゃの」

P「ああ、見つけてくれた夕美と藍子に感謝だな」

巴「……おお、そうじゃの」

巴「それにしても、あんたとこうして桜を見る日が来るとは思わんかった」

P「?」

巴「あんたと初めて会うたのは4月じゃったけえの。もう、一年になるっちゅうわけじゃ」

P「……そうか、もう一年にもなるのか。早いなあ」

巴「いろいろ、迷惑もかけたの。恩に着るで」

P「はは、そりゃあお互い様だ。俺が巴に助けられたことだって多いよ。何かお礼をしたいぐらいだ」

巴「お礼?」

P「ああ、お礼。一年間よく頑張ったご褒美ってことでもいいぞ?」

巴「お礼、のう……。……」

P「ああ、何でもいいぞ? 俺にできる範囲なら」

巴「……の、のうプロデューサー。じゃったら一つ約束をせんか」

P「約束? いいけど、何の」

巴「……プロデューサー、う、うちが大人になったら」


巴「……杯を交わせ。約束じゃ」

P「まあ、別にいいけど。巴がお酒を飲めるようになるのは…… 7年後か? それまで俺、健康でいられるといいなあ」

巴「……はぁ」

P「どうしたんだ?」

巴「……いや、なんでもない。それより縁起でもないこと言いんさんな。うちにはプロデューサーが必要なんじゃ、これからも頼むぞ」

P「必要?」

巴「……おお、うちのことを一番良く分かっとるのはあんたじゃけえの!」

P「そこまで言ってもらえると、プロデューサー冥利に尽きるってもんだな。約束、覚えておくよ」

巴「……ええんじゃの? うちは絶対忘れんで」ニヤ

P「ああ、願ってもない話だよ。20歳の巴なら、きっとかなりの美人になってるだろうしな」

巴「びじ……! うぅ、プロデューサー、うちの反応見て楽しんどるじゃろ!」

P「はは、流石にばれたか?」

巴「当たり前じゃろうが!」

P「まあでも、嘘は言ってないからな。新春ライブのときも今日の衣装も、似合うと思ってるのは本当だよ」

巴「……そう改まって言われると、なんかむず痒いの」

P「いい加減慣れろって。それに最初の衣装のときから思ってたんだが、巴には華が良く合うんだ」

巴「華?」

P「ああ、今日の桜なんかは特にな。友紀の気持ちも分かるってもんだ。……お!」

巴「どうしたんじゃ?」

P「……あのさ、キャッチコピー。いつだったか、決めるって話してたの覚えてるか?」

巴「おお、あったあった。まだうちのは決まっとらんのよの」

P「あれを思いついたんだ」

巴「ほんまか!」

P「ああ。今までもいくつか考えたんだが、唐突に閃いた。これしかないと断言できるくらいだ」

巴「ほいじゃあ、言うてみい。もしセンスが無かったらうちも思いっきり笑っちゃるけえの」

P「笑え笑え。……きっと『アイドル』村上巴にふさわしいものになっていくと思うぞ」

巴「ほおお、随分自信有り気じゃの。早よ聞かせえや、プロデューサー」ニヤ

P「ああ。名づけて——————」



その日その時の景色を、うちは一生忘れんと思う。
プロデューサーの声とともに、本格的な春の訪れを告げる暖かな風が心と体を吹き抜けて。
うちの視界を、真っ白に染めたんじゃ。




おわり

以上で終わりです
お嬢難しいのかss少ないので、頑張ってみたけど最終的にお嬢スレという名のちひろユッキスレ
ともあれ村上組のみなさん、特にいつもお世話になってる本スレのコラ職人に捧げるよ
貴重な巴のヒラヒラをありがとう

支援やコメント、画像張ってくれた方にはいくらお礼を言っても足りないです
思わぬ長期の投下となってしまいましたが、最後まで読んでくださった方は本当に本当にありがとうございました
ではおやすみなさい

乙乙乙

おつおつばっちし☆

おっつおっつばっちし

ちひろ……一体何鬼畜なんだ……


あと終わったならHTML化依頼しといでね

>>196
忘れていました、出してきます

ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom