エレン「ミカサ、髪切れば?」ミカサ「やだ」(82)



ジャン「!?」



俺たちが訓練兵団を卒業した日のことを忘れたことはない。

ウォール・ローゼが突破された日。
初めて巨人に出くわした日。
仲間がたくさん死んだ日。

それから、補給班が任務を放棄して、本部に巨人が群がってしまい立ち往生したあのときの気持ちも。

俺はあのとき、ここで死ぬんだと思ったんだ。
ガスも補給しに行けない。撤退命令は既にでているのに、壁を上れない。
ここで、何も達成できずに、いつかこちらに気づいた巨人に食われて死ぬんだろう。

ああ、こうなることならば、訓練兵のうちに……世界がまだ少なくとも今この瞬間に比べて平和だったうちに

彼女に思いを伝えていれば、よかったと。



あれから結局俺は辛くも生き残り、友の屍を乗り越えて調査兵団に所属している。

死の淵に立たされたとき、あんなにも強く後悔したのに、俺はまだあいつに告白できていない。

死亡率の高い調査兵団になって、いつか壁の外であのときのような状況に立たされることは必然なのに、
俺はまだ踏み切れていない。

俺は最高に意気地なしのクソったれ野郎だ。
ああ、笑われても仕方ないさ。

そんな風に自嘲して日々を過ごしていた時だ。



エレン「髪切れば?」

ミカサ「やだ」


———!?

これは……ひょっとすると事態が好転してきたのか?
俺にもチャンスが巡ってきたのか!?

そうさ…俺は、今すべきことが分かる人間だ。


エレン「なんでだ?ちょっと長くなってきただろ」

ミカサ「もう少し伸びたら切るつもり」

エレン「そっか。まあいいけどさ」

ペトラ「エレーン!もうそろそろ城に戻るよー!」

エレン「はい! じゃあ、俺戻るわ。またな」

ミカサ「うん……」


ジャン「……」



ジャン(どういうことだ?)

ジャン(訓練兵のときに、ミカサはエレンに同じことを言われたとき、すぐ頷いて翌日髪をバッサリ切ってきたはず…)

ジャン(そして俺は地団太を踏んで血の涙を流したんだ……!)

ジャン(でもさっきのミカサはなんだ?髪を切ることを拒否した。エレンに対してだぞ!?そんなのあり得るか!?)

ジャン(ま、まさか!俺が以前ミカサの髪を褒めたことを、思いだして!?)

ジャン「うおおおおおおおおおおお……!」

アルミン「……ジャン、どうしたの?」



ジャン「俺もやっと報われたかもしんねえぜアルミン!あの死に急ぎ野郎が古城に隔離されてることも大きいかもな!!」

アルミン「?」

ジャン「こうしちゃいらんねえ!ちょっと行ってくる!」

アルミン「??」


コニー「ジャンの奴、色めき立ってどうしたんだ?」

アルミン「さあ……」



ジャン「よう、ミカサ」

ミカサ「ジャン……なに?」

ジャン「別に大した用じゃないんだが……あー、そのー、髪伸ばすのか?」

ミカサ「もう少しだけ…」

ジャン「俺もその方が、いいと思うぜ!サシャみたく、括れば立体機動の邪魔にもなんねえだろ?///」

ミカサ「そこまで伸ばすつもりはない」

ジャン「なんでだよ。せ、せっかく綺麗な黒髪をしてるんだ。もったいねーだろ」

ミカサ「……」

ミカサ「髪なんて、……私は、別に」



ジャン「まあ……髪だけじゃなくて、俺はその……モゴモゴ」

ミカサ「? なに、ジャン。よく聞こえない」

ジャン「い、いやっ!なんでもないんだ、悪い!」

ジャン「ええと。あー、そうだ。なんでお前、髪を伸ばそうとしてるんだ?」

ジャン「俺はぜひそうしてほしいが……前、エレンに言われたとき迷わず切ってただろ?」

ミカサ「……別に。ただの気まぐれ…」

ミカサ「理由なんて、ない」フイ

ジャン「……? そうか…」


アルミン「おーい二人とも、そろそろ戻ろうよ」

ミカサ「うん」スタスタ

ジャン「お、おう」



—————・・・
———・・・

馬の手入れ中


馬「」ブルルン

コニー「こら、ジャン。おとなしくしてろって」

ジャン「……」バシッ!

コニー「いって!!悪かったって!!」

サシャ「あっはははは!」



クリスタ「ねえ、ミカサ。ちょっと髪伸びてきたんじゃない?」

ミカサ「そうだろうか」

クリスタ「よかったら切ろっか?この間もユミルの髪切ったし」

ミカサ「じゃあ……お願いする」

ジャン「ほぁ!?!?」



ジャン「まてまてまて!!なんでだよ!!!」

クリスタ「わっ ジャン、どうしたの?」

ミカサ「?」

ジャン「ミカサ、この前切らないって言ってたじゃねえか!!」

ミカサ「たくさんは切らない」

ミカサ「顔の横のここらへんはあんまり切らないで、後ろだけ切ってほしい……できる?クリスタ」

クリスタ「うん、大丈夫だよ」

ユミル「こいつ手先器用だからな」

クリスタ「う…そこまでじゃないけど、まかせてっ。がんばるよ」



ジャン「ほ、本当に切っちまうのかよ?」

ミカサ「どうしてジャンがそんなに私の髪のことを気にするの?」

ジャン「え、いや……」

ミカサ「…?」


クリスタ(うわー)

ユミル(うわー)


クリスタ「ええと……ジャンもそう言ってるけど、どうする…?伸ばしたいなら、縛ればいいと思うし」

クリスタ「ミカサならどっちでも似合うと思うよ?ほら、ジャンもなんか悲しそうだし……ねっ!ミカサ!」

ミカサ「いえ、切る」

ジャン「……」


クリスタ(あわわ……)

ユミル(お前はよく頑張ったよ)ウンウン





ジャン(なんなんだよ!切らないっつったり切るっつったり、どっちなんだよ!)

ジャン(俺をもてあそんでるのかミカサ!?俺の気持ちを手のひらで転がして楽しんでるのか!?)

ジャン「あーっくそ今日も飯がうまいぜチクショー!」ガツガツ

サシャ「ですねー! あ、ミカサとクリスタ」


クリスタ「ちゃんとミカサの希望通り切ったよ」

ミカサ「ありがとう、クリスタ」

クリスタ「ううん」


ジャン(あああ……短くなってる)ガックリ


ジャン(いや、別に俺はもともと、ミカサの長い髪がどうしても好きってわけじゃなくって)

ジャン(昔、俺が褒めた髪をそのあとすぐに死に急ぎ野郎の一言でバッサリ切ったことがショックで)

ジャン(だからミカサが髪を切りたくないって言ったときに……まあ、ちょっと嬉しかったんだ)

ジャン(死に急ぎ野郎としばらく離れて、やっとミカサがエレン至上主義から抜け出して、俺にもチャンスが来るのかもってさ…)


ジャン「ハァ…」

コニー「元気ねえな、ジャン」

ジャン「なんでもねえよ」

わいわい
 ざわざわ

アルミン「今日の訓練でさ……〜〜」モグモグ

ミカサ「それは……〜〜」モグモグ

アルミン「ああ、そうか。そういう考えもできるんだね」

ミカサ「私も聞いた話だけど」スッ



ジャン「……あ」

ジャン(………ああ)

ジャン(……なるほど。そういうことか)

ジャン(お前が髪を切るのいやがった理由は、そういうことだったのか)

これは調査兵団の話か

>>25
うん




ミカサ「……ふう」

アルミン「今日は暑いね。ミカサ、マフラーはずせば?」

ミカサ「大丈夫。もう訓練は終わったし、あとは装備の手入れだけ」

アルミン「そう?」


ジャン「よお。なあミカサ、ちょっと話さねえか」

ミカサ「? いいけれど…」

アルミン「あ、じゃあ僕さきに行ってるよ。またね二人とも」

ジャン「わりいな、アルミン」



ガチャガチャ


ミカサ「装備の手入れをしながらでもいい?」

ジャン「ああ。構わない」

ジャン「なあ、お前が髪切りたくないってエレンに言ったのってさ……」

ジャン「顔の傷あと隠すためだろ?」

ミカサ「!…………ちがう」

ジャン「そうだろ。だから、クリスタに顔の横以外の髪なら切ってほしいって言ったんだろ」

ミカサ「傷は関係ない。ただ……そういう気分だった、だけ」



ジャン「うそつけよ。あいつがお前の顔の傷を見るたびに傷つくんじゃねえかって思ってんだろ?」

ジャン「巨人化して、あいつが制御できなくて、暴走した結果についちまった傷だからな」

ミカサ「これは私が避けられなかったからついてしまった、エレンは悪くない」

ジャン「じゃあなんで隠すんだよ」

ミカサ「……」

ミカサ「私はそう思っていても、エレンは気にする……」

ミカサ「あのことがあって間もなかった頃は、エレンは傷跡を見る度に、少し自分を責めてるように思えた」

ミカサ「私はエレンにそんなことしてほしくない。だから」

ジャン「やっぱりな」



ジャン「……お前はずっとそうなんだな。エレンのことがこれからも一番大事なんだろ」

ミカサ「……え、エレンは、家族だから。大事なのは普通」

ジャン「そーかよ。……はぁ」

ミカサ「…?」

ジャン「俺は一人で浮かれちまってバカみてぇだ」

ジャン(チャンスもなにも、最初から最後まで、こいつはあの死に急ぎ野郎のことしか考えてねぇんだ。俺の出る幕はないってことか…)

ジャン「ああーもう!くっそ!!なんでだ!」

ジャン「あいつのどこがそんなにいいんだよ!?」

ミカサ「あいつ……エレンのこと?」

ジャン「そうだよあの野郎だよ!!」


ミカサ「逆に、ジャンはどうしてエレンのことをそんなに嫌うの?」

ジャン「あ……ああ!?なんでってそりゃ……」チラ

ミカサ「……」ジー

ジャン「うっ…! あ、あいつはな!俺たちとはちげえんだよ」

ミカサ「どういうこと?」

ジャン「……俺たちだってな、男なんだから、本当はかっこよく『人類の平和のため、命を捧げてやる!』ってなんの迷いもなく言いてぇんだよ」

ジャン「巨人なんか怖くねえ、死ぬのなんか怖くねぇってな」

ジャン「だが、本気でそんなこと言える奴なんかいるわけねえ。死ぬのは怖いし、できれば安全なところにいたいって思うのはごく普通のことだろ?」

ミカサ「……」

ジャン「ミカサには力があるから、そうは思わねえかもしれないが」

ミカサ「いえ。……私だって、死ぬのが全然怖くないというわけじゃない」



ミカサ「もしこの世界が平和だったら……戦わずに生きたい。毎日野菜を育てて、洗濯をして、料理をして……」

ジャン(エプロン姿もミカサか…)

ミカサ「……話の腰を折ってしまった。続けて」

ジャン「えあ!? あ、ああ!」

ジャン「……俺はな、よく正直すぎるって言われるが、ただほかのみんなが周りに臆病者だって言われるのが怖くて口に出さないことを言っちまうだけだ」

ジャン「普通の人ってのは臆病なんだよ。毎年調査兵団に志願する兵士だって、本当は怖いけど、見栄か矜持でそれを隠して死地に赴くんだろ」

ジャン「なのにあの野郎は違う。根本から違うんだ」

ジャン「あいつは馬鹿みてーに強い。あんな奴見たの、俺は初めてだった」

訂正
エプロン姿も→エプロン姿の


ジャン「エレンは怖がってねえだろ。化け物みたいに精神が強靭だ。それでいて正論を掲げやがるから」

ジャン「……要するにだな、俺みたいな普通の人間からすると、見ててムカつくんだよ」

ジャン「あとはまあ、もうひとつくらい理由があるが……こっちは死んでも口にしねえ。ムカつくから」


ミカサ「……」

ミカサ「エレンが強い?」

ジャン「いや、あー、戦闘じゃなくてな」

ミカサ「……確かにエレンは強いけど、……誤解はしないでほしい」

ジャン「……?なんだよ」


ミカサ「さっき私の傷跡の話をした」

ジャン「ああ、そうだな」

ミカサ「エレンには傷跡が残らない」

ジャン「あ? あ、そうか。勝手に折れた歯が生えてきたりするんだっけか」

ミカサ「そう。どんなに傷ついても、傷跡が残ることはない」

ミカサ「でも、痛いのは同じ。私やジャンは、ケガをしたらみんなが心配する」

ミカサ「ずっと治るまで、痛いけど心配してもらえる」

ミカサ「でもエレンはすぐ治っちゃうから、……痛いのまで、傷跡と一緒になかったことになってしまうから」

ミカサ「エレンは強いけど、痛みを感じないわけじゃない。体も心も」

ジャン「……」

ミカサ「だから誤解しないでほしい。エレンも私たちと同じ人間」

ジャン「……」



ジャン「残らない傷跡か……。考えたことなかったな、そんなの。つーかあいつのことなんて」

ミカサ「ジャンは、ほんとう正直」

ジャン「よく言われる。まったく、あってもなくても面倒くせぇもんだな、傷跡って奴はよ」

ミカサ「傷なんて負わないのが一番」

ジャン「はっ、そうだな」

ジャン「悪かったな、引きとめて。装備の手入れは終わったか?」

ミカサ「ええ、ちょうど」

ジャン「じゃ、行くか。…………すまん、皆のところに戻る前にもうひとつだけ、いいか?」

ミカサ「なに?」


ジャン「俺が傷を負っても、ミカサは心配してくれんのか?」

ミカサ「……」

ジャン「……」

ミカサ「……」

ジャン「……えっ」ガーン

ミカサ「いえ、違う。ジャンが変なことを言うからびっくりしただけ」

ジャン「むりしていわなくてもいいぜ……?」

ミカサ「嘘じゃない。心配するに決まってる。ジャンも仲間だから」

ミカサ「私は…あんまり感情を出すのが得意ではないから、そう思われても仕方ないかもしれないけど」

ジャン「……ほんとか?」

ミカサ「仲間がケガをしたら心配するのは当たり前。私にとっても」



ジャン「……そっか。ありがとよ」

ミカサ「どういたしまして」

ジャン「戻るか」

ミカサ「うん」




アルミン「クークー」zzz
コニー「スースー」zzz


ジャン(……寝れねー)

ジャン(ミカサのこと、エレンのこと……俺は確かに誤解してたのかもしれねえな)

ジャン(特にあの死に急ぎ野郎。あいつと俺たちは違いすぎて、むしろ俺たちとは違う生物なんだろうと考えていたが……それも単なる思い込みだったかもしれねえのか)

ジャン(痛いもんは痛い、悲しいもんは悲しい、怖いもんは怖いってちゃんと感じる人間なのか。僅かでも)

ジャン(人類の希望だの巨人化だのでごたごたしちまったが、あの野郎も死んでいった仲間を思って泣くことがあんのか?)

ジャン(……)

ジャン(っつーかなんで俺はあの野郎のことばっか考えてんだよ気持ち悪いな!!)ゴロン


ジャン(まあ……ミカサが言うんだ、俺よりもっとあいつと過ごしたミカサが)

ジャン(俺たちが勝手に誤解しただけで、本質はそうなんだろうな。ただ外っ側が異常なんだろ)

ジャン(死に急ぎ野郎って最初に言ったのは俺だが、死に急ぐだけの理由があんのかもな……)

ジャン(そんで、ミカサがあれだけあいつにくっついてるのも、そんだけの理由があんだろ……)

ジャン(俺が知らない、あいつらだけの理由がな)

ジャン(ハァ……ますます俺に勝ち目がなくなったわけだ)

ジャン(なんで俺はミカサに惚れたんだよ……振られるまえから勝負はついてるようなライバルがいる奴によぉ)

ジャン(くそっ……)


ジャン(かといって、はい無理そうなんで諦めますって断ち切れるほど俺も器用な人間じゃねぇんだよ)

ジャン(馬鹿か俺は。なあマルコ、教えてくれよ)

ジャン(俺、こんな中途半端な状態で死んでもお前に会わせる顔ねえよ)

ジャン(お前の呆れる顔が一瞬でいま思い浮かんだぜ……ったく)

ジャン(ハッ、情けねえな俺は。どう頑張ってもかっこよくなれねえよ)

ジャン(悩んで怯えてばっかだ。エレン、お前とは違ってな)

ジャン(いや、お前も……悩んだり怯えたりすることくらいあんのかもな)

ジャン(………堂々巡りだ。もう寝るか)

ジャン(……)




アルミン「命短し恋せよ少年……ムニャムニャ」zzz

ジャン「うわっ!?……な、なんだ寝言かよ。びっくりさせんなよ」


数日後


エレン「オルオさん、今日の訓練でちょっと疑問点があるんでるけど……あ!」

オルオ「理解力のねぇ奴だな……しょうがねえ、言ってみろ」

エレン「すいません、同期とちょっとだけ話してきていいですか?あとで質問するんで」

オルオ「あぁ!?なんて図々しい新兵だ……チッ!さっさと行ってこい」

エレン「ありがとうございます」



エレン「おーい!久しぶりだな!」

ミカサ「エレン…」

アルミン「やあエレン!久しぶり」


ミカサ「元気にしてる?新人いじめとか大丈夫?」

エレン「全然ねえよ、やたら舌噛む人はいるけど」

サシャ「わー、久しぶりですねエレン」

クリスタ「あんまり会えないものね、私たち」

ライナー「よおエレン」

エレン「みんな変わりなさそうだな」


ジャン「よう。死に急ぎ野郎」

エレン「うげっ」

ジャン「おい、うげってなんだよ、うげって」

エレン「いや別に。てか死に急ぎってやめろって」

サシャ「二人はいつ会っても喧嘩腰なんですねぇ」



ジャン「まあいい。ちょっとこっち来いよ」グイ

エレン「お、おい?なんだよ?」

ジャン「ミカサも来い」

ミカサ「ジャン…?」


コニー「……あいつらなにするつもりだ?」

ライナー「行っちまったな」

クリスタ「ま、まさか喧嘩じゃないよね」

ユミル「ミカサ一強でKOだろ」


エレン「おいっ なんなんだよ!?俺 先輩待たせてるんだけど」

ジャン「すぐ終わる。オラさっさと手ぇ出せ」

エレン「手……? ほら」

ジャン「……」グルグル

エレン「は!?なんで包帯巻きはじてんだよ!?俺ケガしてねぇって!」

ジャン「いいから黙ってろバカ!俺だってしたくてしてるわけじゃねー!」

エレン「じゃあなんなんだよ!?」

ミカサ「……ジャン?」

ジャン「…これで手は終わりだ。で、最近ほかにどこケガしたんだよ」

エレン「なにお前……今日なんか気持ち悪くねえか」

ジャン「黙れ!ドン引きしてんじゃねえよ!!」



ジャン「さっさと答えろ」

エレン「ほかって言われてもな。このあいだの巨人化実験だと手だけだし……あとは訓練中に額と右腕だけかな」

エレン「でも、どっちにしろもう傷は治ってるから別にいいって。なにがしたいのかわかんねえけど」

ジャン「じゃあまず額だな」グルグル

エレン「だからっいいって言ってるだろ!?」

ミカサ「……」ガシ

ジャン「おう、ミカサ。そのまま抑えててくれ。暴れんじゃねえこの野郎!!」

エレン「ミカサもジャンもなんなんだよ!!離せって!」


ジャン「ふー。終わった」

エレン「……で、なにが目的なんだよ?」

ジャン「じゃ、思う存分心配してやってくれ、ミカサ」

ミカサ「……やっぱり私の話を聞いてこれを?」

ジャン「まあそれもあるが、俺も俺なりに考えてな。あとあいつらも呼ぼう」

ジャン「おーーーい!!お前らこっちに来てくれー!!」

エレン「なっ!?」


クリスタ「あれっ?エレンどうしたの!?その包帯……」

コニー「めちゃくちゃ怪我してんじゃねえか!」

サシャ「大丈夫ですか?」

ユミル「……さっきどこも怪我してなかっモガッッ!?」

ミカサ「……」シーッ

ユミル(ミカサ?おいなんだよ)


アルミン「……。エレン、痛むかい?」ギュッ

ライナー「……。おい、大丈夫かエレン?お前はよく一番につっこんでくからな、昔から怪我が多い」

ベルトルト「君もだけどね。随分痛そう……」

クリスタ「いつ怪我したの?」

エレン「いや、これは、さっきジャンが」

サシャ「ジャンにやられたんですか!?」

ジャン「ちげえ!!!」


ミカサ「……エレン」ソッ

エレン「な、なんだよ」

ミカサ「傷跡が残っていなくても、痛かったら痛いってちゃんと言ってほしい。一人で我慢しないでほしい」

ミカサ「私はあなたの心配をしたい」

ミカサ「私はたった一人のあなたの家族なんだから、頼ってほしい…」

エレン「……俺はもう兵士だぞ?お前に頼らなくっても」

ミカサ「……そういえば昔カルラおばさんに教えてもらったおまじないがある」

エレン「……?」

ミカサ「いたいのいたいの……とんでけー」

エレン「……」

ジャン(真顔……)


エレン「……ぶはっ!っはははは!」

エレン「俺もう子どもじゃねえんだから、そんなんやんなくて大丈夫だって」

ミカサ「…そう?」

エレン「ああ……。でもありがとな。みんなも」

アルミン「エレンにはたまにしか会えないからね、会ったときに一気に心配しとかないとさ」
 
コニー「お前って無茶するもんなー、よく。さすが死に急ぎ」

エレン「どういう意味だよ」

チッ チッ チィッ!!

エレン「やべ……オルオさんすげえ怒ってる。俺もう行くな。あー……その、ジャン」

ジャン「なんだよ」

エレン「よくわかんねーけど、その、なんだ。ありがとな」

ジャン「けっ、テメエに礼言われる筋合いねえよ」


アルミン「僕らもいこっかー」
クリスタ「そろそろご飯だね」

ゾロゾロ

ミカサ「ジャン」

ジャン「ん?」

ミカサ「ありがとう」

ジャン「べべっべっべつに俺は自分のためにやっただけだ!大したことしてねえっ」

ミカサ「ジャンのためにやったということは、少なくともジャンはエレンが嫌いではないということ?」

ジャン「はぁ!?嫌いっつーか……気に食わないのはそのまんまだが」

ジャン「まあ、もし俺があいつのこと誤解してたとしたら、後味悪いからな。ただそれだけだ」

ミカサ「……そう」


ミカサ「私もジャンのことを誤解していたかもしれない」

ジャン「俺のことどんなふうに思ってたんだ?」

ミカサ「立体機動はすごいと思うけど、すぐエレンに突っかかるし、周囲と諍いを生みやすくて、うるさい」

ジャン「…………そ、そんな風に思ってたのか?」ガーン

ジャン(いや、否定もできない…)ズーン

ミカサ「でも誤解だったと思う。悪かった」

ジャン「じゃあ……今はどんな風に?」

ミカサ「それは」

ジャン「……」ゴクリ

ミカサ「よく分からない」

ジャン「…なんだよそれ…」ガクッ


ジャン(まあでも、プラスの方に印象が傾いたんだよな?)

ジャン(そ、そうだよな…?)

ジャン(それでよしとするか…)ハァ


ミカサ「アルミンたちに続こう」スタスタ

ジャン「あ、ああ…」

ミカサ「……」スッ

ジャン(また顔の傷跡を髪で隠す仕草してるな。癖なのか?)


ジャン「あのさ、ミカサ」

ミカサ「なに?」

ジャン「俺は別に、顔の傷跡、いいと思うぜ?」

ミカサ「……」


ジャン「まあ女の顔に傷ってことで、否定的に考える奴もいるかもしんねえけどさ」

ジャン「俺はかっこいいと思うぜ!ほら、男に傷あったら勲章なんて言うじゃねえか!」

ミカサ「……」

ジャン「あっ いや別にお前が男とかそういうこと言ってるんじゃなくてだな……!」

ミカサ「私は別に、傷跡のことを気にしてない」

ジャン「…そうか?ならいいんだ」

ミカサ「でもジャンが励まそうとしてくれてることは分かった」

ミカサ「だから、ありがとう」

ジャン「……」カァー

ジャン「どういたしまして……」


ミカサ「じゃあ、先に戻ってる」スタスタ

ジャン「あっ お、おう…」

ジャン「……」ボー

ジャン「さっきちょっとだけど笑ったよな……」

ジャン「……っへへ、今日はいいことあったぜ」

ジャン(ハッ! つーかさっき結構いい告白のタイミングだったんじゃ……!?)

ジャン「がああああっ!俺はなにをしてるんだ!」

ジャン「何が現状把握能力が優れているだよ!!全くじゃねえか!クソ!クッソ!!」

ジャン「どうすんだよ。もうあんなチャンスねえかもしれねえじゃねえか……」

ジャン「新兵参加の壁外調査ももうすぐだっつーのに」

ジャン「これじゃ死んでも死にきれねー……」


ジャン「……いや、弱気になるな」

ジャン「死ななきゃいいだけの話だよな。……ああ、そうだ」

ジャン「死ななきゃ時間なんていっぱいある。次の壁外調査も、その次もその次も、生き残って」

ジャン「そうしてまた、チャンスを掴めばいいだけの話だな」



そうだ。
俺は元々、獲物を確実に捕えられるまで虎視眈眈と待つ、狡猾なタイプなんだ。
まあ、俺よりよっぽどミカサの方が狩人らしいが……

ただ生き残ればいい。至極単純な答えだ。


だから俺は死なない。死なずに生き残ってやる。

そしていつかあいつに告白する。
いつか絶対に。

俺は俺の幸せを、生き残ってもぎ取ってみせる。


「ジャンー!どうしたんだよ、早く来いよ!」
「ジャン?」

「ああ!今行く」


この残酷な世界で俺たちは、みなそれぞれ見える傷跡と見えない傷跡を背負って生きていくんだろう。

互いの傷をなめ合いながら、なんとかそうやって生きのびるんだろう。

傷だらけの俺たちは内地の奴らから見たらみっともなくてみじめかもしれない。

だけど構わない。

そうやって俺たちは前に進むんだ。

いつか、夢に見た未来を、この手に掴むその瞬間のために。

そのためならどんな傷を負ってもいい。

傷跡を背負って、前に進み続けてやるよ。



お☆わ☆り

読んでくれた方ありがとう
ジャンは将来イケメンになると思うジャン

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