ミレイ・アッシュフォードの秘めたる想い (185)

この話は、R2の12話
キューピットの日の後の話。

アニメだと、キューピットの日が終わってすぐにミレイがニュースキャスターになってるけど
その前にあった出来事を書いたものです。

よろしければ、暇つぶしにお付き合いください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377972577



わたしの名前はミレイ・アッシュフォード。

現在アッシュフォード学園を3.5年で卒業し、もう間もなく社会人になる。
今は本当の本当に最後のモラトリアムを過ごしている。

学校もなく、会社の研修もまだだからやることもなくも暇だ。

学院にいたころは本当に楽しかった。
生徒会長で、しかも理事長の孫ってので色々無理もできたし。

あの頃が懐かしい。

と言っても今でもトウキョウ租界にいるから、皆に会おうと思えば会える。

そうだ、シャーリーに会おう。
彼女はこの前のキューピットの日で……ルルーシュと結ばれた。

それは喜ばしいことだ。

可愛い後輩2人が思い人と付き合えるだなんて…

からかい半分、お節介心半分でシャーリーにその後どうなっているのかを聞きたいと思った。


思い立ったが吉日、早速シャーリーに電話を。

Prrrr

『はい、シャーリーです。どうしたんですか?会長』

「こ~ら。もう会長じゃないわよ」

『あ、本当ですね、かいちょ、っととと。
 やっぱり急には無理ですよ~』

「まったくもう。じゃあ早く直してよぉ?」

『はい…善処します。ところで今日はどうしたんですか?』

「ああ、そうだったわね。
 今日ね、暇だから今からちょっとお茶しない?」

『お茶、ですか?はい、大丈夫ですよ』

「そ、今からでも大丈夫なの?」

『はい、空いてますよ』

「ならいつものカフェで待ち合わせね」

『わかりました~』

「じゃあまた後でね~」

『は~い』

ガチャン

よし、そうと決まれば早速準備をして行かなきゃ。



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―――――――――――――


「あ、かいちょ~遅いですよ。会長から誘ったのに」

「ごめんごめん、用意に手間取っちゃって」

オーダーを聞きに来たウェイターにブレンドを頼み席につく。

「ところで、今日はどうしたんですか?」

「いや~暇だったもんだから」

「そうなんですか?てっきり忙しいかと」

「会社の研修とかはまだだからね~。モラトリアム続行中よ」

「会長はこのままトウキョウ租界にいるんですか?」

「うん、仕事先もトウキョウ租界にあるしね」

「会長ってどこに就職したんですか?」

「にっしっし~それは内緒だよん」

「え~?教えてくれてもいいじゃないですか~」

「もう少ししたら分かるからそれまで待っててね❤」

「?」


「そ・れ・よ・り~」

「…なんですか?そのいやらしい笑顔は」

「ルルーシュとはどうなの?」

「…かいちょ~」

「ちょ、どうしたのよ」

「それが……ルルと全然会えなくて~」

「ええ?なんでよ」

彼女の説明によると、
気持ちが通じ合ってキューピットの日で帽子を交換したわけじゃないこと、
ルルーシュがシャーリーを好きかはまだはっきりしていないこと、
シャーリーはルルーシュを本当に惚れさせると言って帽子を奪った、
ということだった。

その説明を聞いて、私の心がトクン、とはねた。

なんでだろう。

…多分、シャーリーが可哀想と思ったから、だろう。


「まったく、ルルーシュははっきりしないんだから」

「ぅぅ~かいちょ~どうしたらいいんでしょう…」

あらあら、可哀想に。

ここは私が一肌脱ぎますかね、皆の会長として。

「ここは私にまっかせなさ~い。私に妙案があるわよ」

「みょうあん~?また変なこと思いついたんだすか?」

「変なこととは失礼な!大丈夫、悪いようにはしないわよ」

そう、これはルルーシュとシャーリーの関係を進めるための一手。

私には、関係ない…



―――――――――――――――
―――――――――――――


<ルルーシュside>

携帯が鳴っている。

開いて確認するとメールが1通。
差出人は……会長か。

開いて中を確認する。

『はろはろ~。
 ルルーシュ君、元気にしていたかな?
 私、ミレイ・アッシュフォードはこの度、目出度く卒業することとなりました。
 つきましては生徒会の面々で卒業旅行に行くこととなりました。
 日程は××日から3泊4日。
 場所は私の独断で決定しま~す。
 行きたいか、行くのか
 返事ちょうだいね~❤』

…まったく、会長は変わらないな。
卒業したのだって先週の話なのに。

会長には恩がある。
それにアッシュフォード学園と生徒会は俺の居場所だ。
だから出来れば卒業旅行には行きたい。


しかしこんなことをしている暇は俺にはない。
今は蓬莱島にいる日本人を何とかまとめなければならない。
中華連邦の後処理も残っている。
俺の計画を進めるためにはこんなところで足踏みしている余裕なんてない。

会長には悪いが断りのメールを入れておこう。

「なんだ、そんなに携帯を握りしめて。
 テトリスか?」

C.C.か。

「私もゲームがしたい。よこせ」

「ちょ、ちょっと待て!!取り上げるな!」

「ん?メールか?」

「おい!勝手に見るな」

「……なんだお前、旅行に行くのか」

「行かん。俺にはそんな余裕などないのだからな」


「まったく、これだから童貞坊やは童貞のままなんだ」

「意味が解らんぞ!」

「お前はなんのために黒の組織を結成したんだ?」

「なぜって…もちろんブリタニアに対抗するための軍事力を得るためだ」

「そう、お前は一人ではブリタニアには勝てない。ギアスがあろうともな。
 なら、なぜ一人で全てをしようとする?」

「っ!!?」

「指令を出して人を動かせばいいだろう。
 何もお前が全てこなさなくちゃならないわけでもないだろう。
 それに、お前はなぜ未だに学生をしている?」

「なぜって…卒業していないからだろう」

「違う。そういうことを言いたいんじゃない。
 では、なぜお前は卒業しようとしている。
 それはナナリーを取り戻したあとに帰るためだろう」

「そうだ。俺はそのつもりでいる」


「ならアッシュフォード学園と生徒会はお前が帰る場所だ。
 そこを疎かにするのか?
 ナナリーを取り戻してどうする?
 荒野の砂漠で二人で暮らすつもりか?」

まったく、こいつは…

「歳をとりすぎてお節介になってるんじゃないのか?」

「はっ、まさか?
 私はC.C.。お前の共犯者なだけだ」

「そうか、ならば必要な指示は適時だす。
 仰ぎたい場合には俺に連絡をしろ」

「ならば旅行には」

「ああ、行くとしよう」


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―――――――――――――


<ミレイside>

「じゃーーん!
 とおちゃく~!!」

「会長」

「こ~ら、ルルーシュ。私はもう卒業したんだから会長じゃないでしょ」

「…先輩、ところでここはどこなんですか?」

「ん~ルルーシュから先輩ってよばれるのは久しぶりね。
 けどルルーシュ~?わたしは会長だけでなく、学校も卒業したのよ?」

「ミレイ」

「わお。呼び捨てなんてドキッとする~。
 リヴァルも、ちゃんと呼び方変えてよね」

「わかった、ミレイ…」

「ニコニコ」

「さん」

「リヴァルは根性なしね~」


「それでここはどこなんです?」

「ここは温泉街よ」

「温泉街、ですか」

「そうよ~。
 たまには温泉に浸かって疲れを癒すのもいいでしょ?
 それに海も近いし海水浴とかバーベキューもできるんだから」

「ミレイ、もしかしてそれら全部を?」

「ええ、最後のモラトリアムなんだもの。
 やれることは全部やっとかなきゃ!」

「はあ…疲れを癒しに来たのか、それとも疲れに来たのか分からないですね」

「若いのにぐちぐち言わな~い。ほら、とりえあえず旅館に行くわよー!」

「はいはい」

私の修学旅行にやって来た。
と言ってもこれはあくまで名目上のものであって、本当の目的はシャーリーとルルーシュの関係を進めるためのイベント。


参加者は私にルルーシュにシャーリー、後はリヴァル。
スザクやニーナにも声をかけたけど、両方ともお仕事が大変みたい。

はあ、仕事って大変ね。
って、私ももうちょっとしたら同じようになるのか。
それは気が重いな。

4人で歩いて今日から宿泊する旅館へ。
温泉街だからか道中にも色々なお店がある。
後で見に来なくっちゃ。

しばらく歩くと目的の旅館に着いた。
山際にあるこじんまりとした旅館。
豪華さはないけど雰囲気がある。

「ようこそいらっしゃいました。本日は当館をお選びいただき誠に有難うございます」

「今日予約をしていたミレイ・アッシュフォードです」

「ああ、アッシュフォード様。お待ちしておりました。では早速お部屋の方へご案内いたします」

なんでニッポンの旅館ってこんなにヘコヘコするんだろ?
こっちまで恐縮しちゃう。


軽い施設案内を受けながら部屋まで到着。

「こちらがアッシュフォード様のお部屋になる椿の間と桔梗の間となります」

女性陣は椿の間で、男性陣は桔梗の間で宿泊することに。

早速部屋に入り、荷物を置いてシャーリーを連れて桔梗の間に。

「入るわよ~」

「入ってから言わないで下さいよ…
 それより、ミレイが旅館だなんて意外ですね。
 てっきりホテルにするものだと」

「一度くらい畳の部屋に泊まりたかったんだよね~」

「そうですか。それで、今後の予定は?」

「ん~どうしよっか」

「…いきなりノープランですか」


「いいじゃなーい。皆で決めれば。
 シャーリーは何したい?」

「私ですか?
 私は…せっかく来たからとりあえず温泉ですかね?
 海とかは明日でもいい気がします」

「そっか、リヴァルは?」

「俺はミレイさんと混よ

「ルルーシュは?」

「俺もシャーリーの意見に賛成です」

「よ~し。じゃあ温泉に入ろ~!!
 他の宿の温泉はまた後日と言うことで、今日はここの宿のでいいよね?
 そ・れ・よ・り~」

「なんですか?また変なことでも思いついたんですか?」

「変なこととは失礼な!
 温泉って言ったら浴衣を着るでしょ?
 だから作ってきちゃいました~」

「…だからミレイの荷物はあんなに大きかったんですね」

「そのとーり!はい、これがルルーシュの。
 これはシャーリーで、これがリヴァルの」

「ミレイさ~ん!!俺、一生これを大事に着ます~!!!」



「リヴァル、お前はこの兎の着ぐるみを着続けるのか?」

「え?」

「しっつれいね~。ちゃんとした浴衣じゃない」

「原型は浴衣ですが、浴衣に尻尾はついてないですし、フードもないですよ」

「フードなかったらウサミミつけらんないじゃん。
 と、いうわけで今日はこれを皆着てね~。
 会長命令!」

「会長じゃなくなったのでは?」

「細かいことは気にしな~い!さあ、温泉に行くわよ!」

この旅館は貸切露天風呂があるのが売りみたい。
今日は今すぐ入るから、予約制の貸切風呂は無理みたい。
また後日にシャーリーとでも入ろっと。


皆で大浴場の方まできた。

「じゃあ、とりあえず何時間入ろっか~」

「別に何時間でもいいんじゃないですか?もう今日は日が暮れますし。
 早く上がれば部屋で自由時間ということで」

「おっけ~。じゃあまた後でね~」

「じゃあね、ルル」

「ああ」

「ぅぅ、ミレイさ~ん」

「ほら、行くぞリヴァル」


脱衣場でパッパと服を脱いでいく。
女子寮じゃ皆バスルームで裸の付き合いをしてたから、今さら恥ずかしいなんて思わない。

タオル一枚を肩に巻いていざ浴場へ。


「うわ~色んなお風呂があるわね~」

「本当ですね。
あ、会長!わたし露天風呂が入りたいです!!」

「そうね~じゃあ行きましょうか」

扉を開けて屋外へ。
そこにはオーシャンビューの広がる露天風呂が。

「お~!絶景かな~」

「すごくきれいですね!会長」

さっそく二人して浴槽に。

檜風呂だから檜の匂いがまたいい。

「んん~~!!気持ちいい~!」

「安らぎますね~」

「効用はっと…美肌かぁ。よかったね、シャーリー」

「な、なんで私に言うんですか!?」


「も・ち・ろ・ん~ルルーシュに見せるために決まってるじゃな~い」

「見せません!!」

「そうなの?もったいな~い」

「もったいなくなんてありません!!」

「こ~んなきれいな体見せられたらルルーシュだってイチコロよ」

そう言って私はシャーリーの体を撫でる。

「ちょっと会長!親父くさいですよ!
 それに、それを言ったら会長の方がプロポーションいいじゃないですか」

「まあね~」

「いいなぁ~私も会長くらいプロポーションよかったらルルだって…」

胸がズキッとした。

「まあでも、ルルーシュは見てくれで選ぶような奴じゃないしね」

「さっきと言ってること違うじゃないですか」


「まあまあ。けど、旅行の間に何とかなりそ?」

「分かりません~。だってルルいつも通りなんですもん」

「まああいつはポーカーフェイスだからね~
 内心じゃシャーリーにドキドキしてるかもよ?」

「そうだといいんですけど…」

「女は度胸よ!押して押して押しまくれ!」

「は、はい!」

私は何を偉そうに言ってるんだろう。
自分ができなかったことを他人にやらせるなんて。



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<ルルーシュside>

現在、時刻は4時過ぎ。
今から風呂に1時間入れば5時になる。
旅館の夕食はどうなっている?
大広間か?それとも部屋か?時刻は?
クソ!!わからない。

仮に夕食が7時だと仮定すると2時間。
2時間…その間に何ができるだろうか。
とりあえず遠出は無理だ、足がない。
なら旅館のお土産屋で土産を買うとしよう。
ナナリーは何が欲しいだろうか。
温泉まんじゅうか?しかし食べ物では賞味期限がある…
いや!賞味期限が切れるまでにナナリーを救い出せばいいんだ。

なら食べ物でも問題はない…
買うべきものは温泉まんじゅうにご当地スイーツ、とりあえず今日はそれだけでいいだろう。
また明日にでも会長が温泉街で買い物を提案するだろう。

なら買い物に2時間は不要だな。
1時間あれば風呂上りのコーヒー牛乳を1杯飲んで、頭を乾かして、汗が引くのを待っても余裕だ。
なんならリヴァルと卓球をやってもお釣りがくるくらいだ。

ならこの2時間、俺はどう動くべきか…


「お~いルルーシュ~。早く行こうぜ~?」

「見えた!」

「はぁ?」

「リヴァル。まずは檜風呂の内湯で30分、心と体を休めよう。
 その後、サウナで20分を2本。インターバルは水風呂10分だ。
 その後は露天風呂で30分開放的な気分を味わい、
 最後に内湯のにごり湯で10分間、疲労回復を図る。
 いいな」

「お、おう」

「ではまず檜風呂に行くぞ」

ははは!完璧だ!
俺の作戦に穴などない!!!


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<ミレイside>

ちょっと長風呂し過ぎちゃったみたい。
シャーリーは長風呂ができない性質なのか、早々に上がってしまった。

お風呂を上がり、部屋へと戻る途中…

「あれ?ルルーシュ。なにしてるの?」

「ミレイ。今お土産を選んでいるんですよ」

「もう?まだ旅行は始まったばっかだよ?」

「ええ、ですが時間は有効活用しなければならないですから」

「せっかちねえ」

「几帳面と言ってください。そうだ、ミレイ。
 この中で女性が好みそうなスイーツを選んでくれませんか?」

「え?女性?
 な~に~?ルルーシュ~、女性にでも渡すの?」

「はい」


え?嘘?
ルルーシュが女性にお土産?
シャーリーは…一緒に来てるから渡すはずもない。
私も同じく。

…じゃあ、誰に渡すんだろう。

「ミレイ?」

「あ…っと、ごめん。
 ん~これなんかいいんじゃない?」

「そうですか。ではそれにします。ありがとうございます」

「う、ううん」

「あ、そうだ。ミレイ。
 晩御飯はどこで何時からですか?」

「晩御飯は7時から椿の間で…ってなんでガッツポーズ?」

「あ、いえいえ。ではそれまでどうしましょうか」

「ん~あんまり時間もないしとりあえず部屋で待ってようか」

「そうしましょうか」

ルルーシュと並んで部屋まで歩いてく。


ルルーシュ、やっぱり身長伸びたな。

「あ~私の作った浴衣、フードかぶってないじゃん」

「着ただけでも褒めてくださいよ」

「だーめ。それはフードもかぶって完成なんだから…
 よし、完璧ね」

ワイヤーを通してるからピンと立ってるウサミミ。
その下の無表情な彼とのギャップに笑える。

部屋の前にたどりつく。

「あ、今からちょっと下着片づけたりするから時間置いてきてね」

「ミレイ、もうちょっと慎みをもってください…
 わかりました」

手で顔を覆いながら桔梗の間に入る彼。
そこは顔を赤らめてもいいんじゃないかな?


私も早く部屋に戻って片づけなきゃ。

「あ、会長~ご飯まだですか~?
 もうお腹ペコペコなんですけど~」

「シャーリーは子供みたいね。
 大丈夫。もうすぐよ。
とりあえずここでルルーシュとかも食べるから、そこの散歩中の下着はしまっておいた方がいいわよ~」

「あわわ」

大慌てで散乱した衣類を片付けるシャーリー。
そんなにすぐには来ないんだけど。
純粋で可愛いわね。

しばらくしてルルーシュ達がやってきた。

コンコン
「ミレイさ~ん、もう入っても大丈夫ですか~」

「いいわよ~リヴァル~」

「失礼しま~す」

「失礼します」

「あ~ルル、フードかぶってる~
 かわいい~」

「これは…さっきミレイが」

「ルル、似合ってるよ?」

「ふん。男に可愛いなどと、とてもじゃないが褒め言葉ではないな。
 それにシャーリー、お前の方がよっぽど似合っているぞ」

「え!?……そぉ?ありがと…」

まあまあ、初々しくて見てるこっちが恥ずかしくなるわ。


そんなことをしてたらいつの間にか夕食の時間に。
仲居さんが甲斐甲斐しく給仕をしてくれて、食膳の上はあっという間に夕食で埋め尽くされた。

「うお~おいしそうだ~」

「こ~らリヴァル。皆でいただきますしてからでしょ」

「クスクス。なんだか会長、お母さんみたい」

「あんた達がしっかりしてればこんなこと言わないわよ~。
 んじゃ皆、手を合わせて
 いただきま~す」

「いただきます」
「いっただきまームシャムシャムシャ」
「いただきま~す、あリヴァルずるい」

食膳の上には海の幸、山の幸が所狭しと並べれており、一人用のコンロの上にはミニスキヤキまで用意されている。
まさに贅沢ってかんじ。
食べきれるかな?


「ってか、ルルーシュがご飯食べるのって似合わないわね」

「そんなこと言ったらミレイだってそうですよ。それにシャーリーも。
 唯一似合うのはリヴァルくらいでしょう」

「なんか言った?」

「いや、お前が男らしいという話だ」

「え?そっか~?ガツガツガツ」

「シャーリーはこういった和食でも大丈夫なのか?」

「私?私は結構なんでも食べられるよ?」

「さすがだな。ミレイは?」

「私はこっちに来て長いからね~。刺身も今じゃ大好きよ」

「それはよかった。というかそういうことも事前にチェックしとくべきでは?」

「まあいいじゃ~ん。皆食べられるんだから結果オーライよ」

「まったく」
ため息をつきながら器用に焼魚の小骨を取り除くルルーシュ。

それだけでも絵になるってのは卑怯だと思う。


夕食は賑やかに進み、お櫃をお代わりするくらいに食が進んだ。
まあ食べてたのはリヴァルとシャーリーだけど。

食事も終わって一休み。
温泉街の夜は早い。
今からどこかに出かける、なんてことはできない。

「今からなにしよっか~」

「はい、会長!トランプとウノならあります!」

シャーリーはお泊まりが楽しみだったようだ。

「俺はもう一度温泉に行きます」

ルルーシュ…あなたって子は。本当に協調性の欠片もない。

「え~?ルル~トランプしようよ~」

「寝る前に汗を流しておきたい。
 それに、今日はまだ初日だ。明日もあるんだから早々に寝た方がいいんじゃないのか?」

「まだ眠くないも~ん」

「ならシャーリー、お前も温泉に行ったらどうだ?
 温泉には疲労回復や冷え症などの改善効果もあるからな」

ルルーシュはそう言うと立ち上がって部屋を出ようとする。


今、「会長命令で皆でトランプよ!」と言ったところでルルーシュは「結構です」とか言って断るだろう。

「じゃあ私もせっかくだし温泉にいこうかな~。シャーリーも行こうよ」

「ん~…はい、さっき入れなかった温泉もあるし行きます」

「リヴァルはどうするんだ?」

「俺はもう今日はいいや~さっきのお前の過密スケジュールのせいで疲れちまった」

過密スケジュール?なんだろう。

「そうか、ならばタオルを取りに部屋に戻るからお前も一緒に来い」

「へいへ~い」

「ではミレイ、シャーリーおやすみなさい」

「はいは~い」

「またね、ルル」

ルルーシュ達が部屋へと戻っていく。


「なら、わたし達も行こっか」

「はい!」

女二人で大浴場へ。

シャーリーがさっきは入れなかった内湯のジェットバスに入りたいと言い、私もそれに付き合う。

「ま~ったく、ルルーシュはマイペースね~」

「会長もそう思いますよね!」

「まあでも、まだまだ旅行は続くんだし。それに」

「それに?」

「明日は海にでも行きましょうか?」

「海?やった~」

「あんたは泳ぐの好きね。け~ど、シャーリ~?泳ぐのが目的じゃないでしょ?
 そのナイスバディをルルーシュに見せつけて虜にしなきゃ」

「あ、あわわわ」

腕で胸を隠す彼女。本当に純粋無垢で可愛い。

「大丈夫。あなたならあの唐変木さえ振り向かせられるわよ」

そう、あなたのような真っ直ぐな愛があるなら…。



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今日はここまでとします


「あっさよ~!!起きなさ~い…ってルルーシュは起きてるのね」

「はい、おはようございます」

「うむ、おはよう。でも意外ね。あんたはてっきり低血圧だと思ってたわ」

「ええ、低血圧ですよ。でも、それを言い訳に起きないほど俺は怠け者じゃないですよ」

本当にしっかりしてること。

自己管理ができているのはいいことだけど、彼のはどこか危なっかしい。
まるで、一生懸命背伸びをする子供の様な…。
出来ないことも自分一人でやろうとする彼。

危なっかしくて見てられない。
いつかパンクしそうで…

だからついつい気にかけちゃう。


そう、私の彼に対する思いは、いわば弟を気遣う姉のようなものだ。

「朝食も私達の部屋だから、リヴァル起こしてこっちに来てね~」

「分かりました」

「あ、そうそう。今日は朝食食べたら海に行くから」

「はい」

それだけを言い、桔梗の間を後にする。
ってかルルーシュ、起きたとか言いながら浴衣がはだけてるのはどういうこと?
やっぱり低血圧なんだろうな。

心臓に悪いったらない。


朝食も、昨晩の夕食に比べてボリュームは劣るが、それでも相も変わらず品数は多い。
朝からご飯とか「これぞ旅館」って感じ。
あ、この味噌汁美味しい。いつもと味が違うわね。
ルルーシュ曰く「それは赤だしといって赤味噌を使ってるんですよ」とのこと。
こいつはなんでこんなことまで知ってるんだろう。
知らないことなんてないのかな。


朝食を終えて、それぞれの部屋で水着の上から服を着て、いざ海水浴へ。

行きしなに貸切露天風呂の予約表を見る。
午前中は埋まっているが、午後からは空いているようだ。

「ねえ。貸切風呂、今日予約しちゃう?」

それにルルーシュが答える。
「それって一つしかないんですか?女性だけで入るんですか?
それとも時間を分けて入るんですか?」

「貸切風呂は3種類あるけど。
皆で水着着て入ればいいじゃない。水着なら今から見られるんだから問題ないし。
それに、せっかく皆で来てるのにずっと別々のお風呂ってのも味気ないでしょ。
シャーリーはそれでもいいよね?」

「え!?う~ん…そうですね。水着なら海で見られてるから別にいいですよ」

「っと、言うわけで、女性陣からはOKが出たから問題ないわよね」

「ミレイさんと混浴!!」

「…分かりました」

「OK~じゃあ予約しとくね」

今日はいつ帰って来るのかまだ分からない。
だから夜にとっておくとしよう。


よっし、じゃあ海に行くわよ~!」

旅館を出てちょっと歩けば、すぐ砂浜に着いた。
ここは旅館のプライベートビーチとかじゃないからパラソルとかないみたい。
ならレンタルするしかないか。

皆を引き連れて海の家へ。
そこでパラソルとリゾートチェアーを借り、適当な場所にパラソルを立てる。

「よ~し、じゃあ泳ぐわよ~!!」

そう言って私は上に着ていた服を脱ぎ捨てる。

ルルーシュはまた手を顔にやり、ため息。
あれ?これってはしたないの?

水着姿なんて見られても減るものじゃないし、むしろ自分のプロポーションには自信がある。
だから、水着姿を見られることに別に羞恥心はない。

一方、シャーリーはと言うと皆と離れてタオルで隠しながら脱いでいた。
あれはあれでエロい気がするけど、ルルーシュはあっちの方がいいんだろうか。

とりあえず、全員が水着姿になったということで早速海へ。


海水はまだ朝と言うこともあって冷たくて気持ちいい。
波が足裏の砂をさらっていく。サラサラとした感覚がこそばゆい。

でも遊んでばかりもいられない。
今回の旅行には目的があるんだから。

「ルルーシュって泳げるの?」

「馬鹿にしないでください。俺だって泳ぐくらいできますよ。ただ…」

「ただ?」

「体力には自信がありませんがね」

「ぷぷ。じゃあ浮き輪でも借りてこようか~?」

「結構です!」

「そう。ならシャーリー、こいつ見ててやってね」

「え?私?」

「溺れられても困るから。その点、あんたならいざというとき人一人ぐらい抱えて泳げるでしょう?」

「は、はい。それくらいなら出来ますが」

「んじゃそういうことでよろしくね」

私は返事も聞かずに沖へと泳ぎだした。


ルルーシュとシャーリーを二人っきりにする。
事態が動かないなら何らかのテコ入れが必要だが、まだそんな時期でもない。
とりあえず二人の時間を作るだけでも変化はあるだろう。

沖合に出るにつれて海水の温度が下がる。
立ち泳ぎをしてみると、下の方はかなり海温が低い。
その冷たさと、足がつかないことに急に怖くなってくる。

急に足が攣ったら…
そんな妄想が頭から離れない。
恐怖に体が支配される。
動きがぎこちない。

ふと砂浜の方を見ると、ルルーシュとシャーリーが二人でいるのが見えた。
遠い…
距離にしてはさほど遠くないだろう。

けれど遠い。
私はそう感じた。


「ミレイさ~ん!準備体操もしてないのにそんな沖に行ったら危ないって」

「リヴァル…」

身体が急に軽くなる。

「大丈夫よ、私だって自分で大丈夫かくらいちゃ~んと分かってますから」

「そうだけど、もうちょっと浜の方に戻りましょうよ~」

「だ~め、今はシャーリー達を2人っきりにしてあげたいの」

「ああ…なるほど。そういうことだったのか。
 俺にも言ってよ~、水臭い」

「そうだったわね、ごめんリヴァル。
 じゃあ協力してくれる?」

「もっちろん」

リヴァルが私を好いてくれているのは嬉しい。
けれど、どうやっても彼をそういう風には見れない。
彼は…そう、ルルーシュより出来の悪い弟、ってかんじ。


「じゃあミレイさん!俺達は俺達で二人っきりですね」

「え?ええ、そうなるわね」

「じゃあ、こっちはこっちでよろしくしませんか?」

訂正。かなり出来の悪いませた弟、だった。

「ふふ~ん。じゃあ私を捕まえられたら考えてあげてもいいわよ」

そう言って私は更に沖へと泳ぎだす。
今は浜の方には行けない。
行きたくもない。


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―――――――――――――


<ルルーシュside>

ミレイが沖の方へと泳いでいく。
あの人はそんなに泳げたのか?
いや、生徒会にいるシャーリーやカレン、スザクのような体育馬鹿に比べたら、彼女の運動神経は普通のはずだ。
ただ単にお転婆で活発なだけ。

まったく、見ていて危なっかしい。

「リヴァル、会長が沖の方へ行っていて危ない。お前もいっしょに行け」

「りょうか~い」

「ね、それでね、ルル…何しよっか」

ふむ、肉体労働は俺の肌には合わないが…
せっかく来たんだ。

「シャーリー、泳ぎを教えてくれないか?」


「え?ルルって泳げるんじゃ」

「ああ、泳げるさ。
 ただ泳げるのと、泳ぎが上手なのはまた別問題だ。
 俺にも泳ぎの秘訣を教えてくれ」

「秘訣?ん~そんなの考えたことないしな~」

シャーリーは理論派ではなく直感で動く肉体派だからな。
教えるのは苦手か。

「じゃあ、ルルの泳ぎを見せてよ。
 それで、変なところがあったら指摘するから」

「ああ、よろしく頼む」

その後もみっちりとシャーリーの水泳教室が開かれた。

少しは手加減と言うものを覚えた方がいい…
そんなに本気でやられても俺は水泳選手になるつもりなんてないのだから。
おかげで全身が気だるい。
いや、これはぜひとも温泉に浸かって疲れを癒すべきだ。

そう考えると今からでも温泉が楽しみになってきた。


―――――――――――――――
―――――――――――――


<ミレイside>

泳いだりビーチバレーをしていたら時刻は正午を回っていた。

「お腹が減ったわね。お昼どうしよっか~」

「ミレイはまだ泳ぎ足りないですか?」

「ううん、もう十分泳いだかな?」

「リヴァルやシャーリーは?」

「俺も十分かな~」

「私も」

「じゃあミレイ、皆も満足したようですし場所を移しては?」

「そっか~じゃあバーベキューしよっか」

「今からですか?」

「だいじょ~ぶ!食材はあっちで買えるからね。手ぶらでおっけー!」

「お、バーベキューい~ね~俺はミレイさんに賛成~」

「私も!泳いだからお腹減っちゃった」

「皆も賛成の様ですし、ではバーベキューにしましょうか」

「よ~し、じゃあ皆の者行くぞ~!」


皆を引き連れてバーベキュー場へ。


と言っても同じ海岸にあるからすぐに着いた。

さすが海沿い、食材は肉や野菜だけでなく、海鮮も揃えられていた。
皆もせっかくだからと海鮮物も頼んだ。

コンロをレンタルしていざ調理!

「で、ルルーシュ達はちゃんと火を熾せるの~?」

「馬鹿にしないでください。ライターがあれば点けられて当然です」

「あっそ、じゃあ火を熾すのは男達の仕事ってことで、よろしくね~。
 こっちはこっちで用意してるから」

テーブルを拭いてコップやお皿を置く…終わった。
まあ食材は切ってあるし、後は焼くだけだからやることなんて特にない。

とりあえず、ルルーシュ達が早く火を熾してくれないことには始まらない。

「おいリヴァル!なに適当に置いている!!」

「え~?こんなもん、炭が多い方がいいだろ~?」

「馬鹿か!!火力があり過ぎても肉が焦げるだけだぞ!!!
 何事にも適度というものがあるぞ!」

「じゃあどうすりゃいいんだよ~」


「ふ、俺に任せろ。
 そもそも木炭は木材からでできており、木炭には無数の穴が存在する。
 そしてその穴には何があるか…当然、空気だ。
 そしてその空気には断熱効果がある。
 よってここから導き出される最適の形状は『煙突』だ。
 まずは炭の欠片を下に敷き、その上に棒状に絞った新聞紙を『井』の形に組んでいく。
 そして出来たがった櫓を縦に置いた炭で取り囲む。
 そうすると断熱効果も高く、かつ必要な酸素は下から取り込める最適の形状が出来上がる。
 後は真ん中に小さな木炭の欠片を置き、その付近に燃えた新聞紙を投入すれば…
 2分もすれば火が点く」

「へえ~、ルルーシュ。お前よく知ってたな」

「ふ、このくらいは一般常識だ」

「へえ、ルルーシュ。よくそんなの知ってたわね。
 あんたはてっきり頭でっかちで行動が伴わかったり、アウトドア系はからっきしだと思ってたのに」

「ふ、ミレイ。それは俺のことを馬鹿にし過ぎですよ」

「あ~ルルも知ってるんだ~私もそれ知ってるよ!
 前にね、水泳部でバーベキューに行くことになって、ネットで調べてたら書いてあったんだ。
 確か…たしめてガッテ○でやってたやつだよね」

「…」


「ルルーシュ、あんた…」

「なにが悪い!出典が本だろうとテレビだろうと点けば官軍だ!!」

「まあ確かにね。あ、もう火が点いてる。
 よ~しよくやった~!では、いざ焼か」

「待ってください、ミレイ。ここから先も俺のターンですよ。
 まずは火の通りが遅い野菜から。そして次に火の通りやすい野菜を置き、その次に各種肉、海鮮、最後にタレ付きの物を焼きます」

「ルルって鍋奉行だったんだ~」

「いや、この場合は鍋じゃなくてコンロ奉行ね」

その後もルルーシュがコンロを仕切っていたから私達は何もせずに食べ物にありつくことができた。

よし、じゃあこの機会に午前中の成果を聞くとしますか。

「シャーリー」

「モグモグ……ん?なんですか?会長」

「午前中はどうだったの?ルルーシュと二人っきりだったけど」

「ん~よく分からないんです…」


「分からない?」

「はい…いつも通り無表情は無表情だったんですけど。
 たまに私が近づいたり体に触ると顔を赤らめて…
 あれは多分照れてるんだと思うんですけど」

ルルーシュが照れを表に出す。
それだけでもかなりシャーリーには望みがあると言えるだろう。

「あの仮面かぶったようなポーカーフェイスを崩すなんて脈ありよ!
 それじゃ、これからも押して押して押しまくりなさい!」

本当に無責任な発言だ。
けど、シャーリーなら出来るだろう。
この子は誰とでも距離が近い、それが好意を寄せるルルーシュとなら尚更だ。

「分かりました!」

「じゃあ、とりあえずは~あいつ、さっきから焼いてばっかだから、
 『ア~ン』、して上げれば?」

「あ、あ~ん、ですか」

「そうよ、ア~ンよ」

「や、やってみます」


右手と右足を一緒に出しながら彼女がルルーシュに近づく。

「ル、ルル!さっきからやいてばっかりでたべれてないよね?」

言葉が棒読みだ。

「いや?俺は俺のペースで食べているぞ」

「そ、そう?ルルは細いんだから一杯食べなきゃ
 ほ、ほら…… あ、あ~ん」

「別にこれを食べても胃袋の限界は一緒であって食べる量に変化はないし、体重も太らないぞ?」

「い、いいの!!ほら、早く!!」

「あ、ああ。じゃあ、もらうぞ。あ~ん、モグモグ…
ん?この肉は少し脂身が少ないのか?ならば焼き過ぎれば固くなる…
少しレアで焼く方がいいのか…」

……あれはなんだろう。

可愛い女の子からあ~んをしてもらって、食べた食材の状態を確認して焼き方を微調整している。

言葉にすると、まるで何かの実験のようだ。


もしかして、ルルーシュは計算して色恋沙汰を避けているのではなくて、下手をしたら天然で避けてる部分もあるのではないだろうか。

そうなってくると厄介だ。

計算して避けているなら、避けきれないだけの物量作戦にでることができる。

けど天然だと話は別だ。
押しても押しても全てが空振ってしまう。
そうなれば物量作戦も意味がない。

これは少し考えを変えた方がいいのかもしれない。

涙を流しながらシャーリーが帰ってきた。
「が、がいじょ~やったけど効果がありません~」

「ええ、そうみたいね。少しやり方を変えないとダメね」

かと言ってどうしたものか…

あいつを振り向かせるには基本的には押さなきゃどうしようもない。

押し方を変えようかな?

ド直球の好意が向けられたらさすがにあいつも勘違いはしないだろう。
それを計算では避けきれないだけ放り投げる。

でも、それはそれでウザがられそうだ。


まったく、なんてめんどくさい男だろう。
普通、シャーリーみたいに可愛い女の子が好いてくれたらコロリとやられるはずだ。

あれ?
じゃあ、なぜルルーシュは転ばないのか。

1、実はゲイ。
……可能性はなきにしもあらず、ってところかな。スザクと異様に仲がいいし。

2、他に好きな子がいる。
……これは可能性がある。だって昨日、女に送る土産を買っていた。
私に心当たりのある範囲で、あいつが渡しそうな女と言えば…咲世子さんかな?
けど咲世子さんに送るお土産をわざわざ私の意見を聞くだろうか。

つまり、それだけお土産を送る相手を喜ばせたかったってことだろう。
なら、誰に送ろうとあの土産はルルーシュにとって特別な相手なはず。

そう考えると、1より2の方が可能性が高いかな。

あいつが好きな奴…誰だろう。

彼の性格から年下はないだろう。馬鹿で話が合わないとか言いそう。
それなら同い年も厳しいか。ルルーシュ、頭はいいし。

なら年上……?


ない、ないない。私ってことはない。

けど、年上なら納得もできる。

ん~けど、あいつに直接聞いても答えてくれないだろうな。
かと言って、あいつが色恋沙汰を他人に相談したりはしないだろうし、周りに聞いても意味なし。

ムムム……シャーリーはなんでこんな愛想ない奴好きになったんだろ。

どうしたものか……あ!
ひらめいた。

「よし!シャーリー、とりあえずあいつに好きな奴がいるか調査するわよ!」

「ルルーシュに好きな人?いるのかな~」

「それを確認するのよ」

「分かりました!でも、どうやってですか?」

「それはね~ムフフ」

「?」



―――――――――――――――
―――――――――――――


「一度やってみたかったのよね~これ」

「大丈夫ですか?旅館には許可をとってあるんですか?俺は知りませんよ」

「だいじょーぶ!ちゃんと説明はしたから」

「本当ですかね」

今は帰ってきてから、予約していた貸切露天風呂に入ってる。
この貸切風呂は海に面していて、今は海と星空が見えている。
予定通り、水着を着て4人全員が入浴している。

「露天風呂で日本酒なんて、乙じゃない?」

「ミレイは親父くさいですね」

「親父くさいとはなによ~風情があるって言いなさい」

酒はなんで飲んでるのかって言うと、単に私が飲みたかったというのもあるけど、当然それだけじゃない。

ルルーシュにも飲ませて酔わせる作戦だ。

それに温泉で代謝が上がってる状態なら効果は抜群だ。

名付けて、「酒と温泉で裸の付き合い」作戦だ。


この作戦にはシャーリーはもちろん、リヴァルもすでに抱き込んである。

あの真面目なシャーリーが飲酒を許すなんて。それだけ必死なのね。

「ってか私ばっかり飲んでも仕方ないじゃ~ん。ほれ、皆も飲め~!」

「ミレイさん、いただきま~す」

「あ、私もちょっとだけなら…日本酒って飲んだことないんですよね」

「おいおい…ミレイやリヴァルはともかく、シャーリーは酒を飲めるのか?」

「だ、大丈夫。ちょっとだけだから」

「まったく、皆ほどほどにしておけよ」

むう、さすがKY。
皆飲んでるのに飲もうとしないとは…

「ほ~ら、ルルーシュも飲みな」

「いえ、俺はいいですよ」


「なに~?私の卒業を祝ってくれないの?」

「それとこれとは別ですよ。もちろん、ミレイの卒業は祝福していますが」

「なら1杯だけ付き合ってよ。あんただって酒くらい飲めるでしょ?」

「ふう…強情ですね。分かりました。1杯だけですよ」

誰が一杯で終わらせるか。

「では、グビッグビッ ゲホッゲホッ!」

「ちょ、ちょっと、大丈夫」

「ええ、大丈夫ですよ会長…ヒック」

あれ、目すわってない?
それに会長に戻ってる。

「ちょっとルルーシュ、大丈夫?」

「はい、俺は大丈夫です。何ともありません」

「酔ってる?」

「そうですね、少し酔ってしまったかもしれません」

「マジで!?」

「はい、本当に、嘘偽りなく、少し酔ってます」

一杯で終わってしまった。


ルルーシュが酔うとこうなるのか。
見た目とかは変わらないけど、なんていうか素直だ。

「ちょっとリヴァル、これどういうことよ」

「俺だって知らなかったんだって!ルルーシュがこんな酒に弱いなんて。
 けど、たしかにこいつ、ギャンブルとかはするけど酒とかは飲まなかったな」

そう言えば。彼が飲酒をしているイメージはあまりない。

けど、これはチャンス。
予定通り彼が酔ったんだから、色々聞いてみるか。

「ルルーシュってどんな子がタイプなの?」

「タイプ……ですか。そうですね、自分をしっかり持っている子が好きですね」

自分をしっかり持ってる子…抽象的で分かりにくいな。

「見た目とかは?」

「見た目は特にありません。確かに、美しい人や可愛い方がいいとは思いますが、並の容姿を備えていれば十分ですよ」

こっちもなんかはっきりとしないな。
もっとこう……髪の長い子が~とか、細い方が好きだとかないのだろうか。

「好きな芸能人とかいないの?」

「女優やアイドルは特に」


「う~ん……そうだ!私は?」

「会長?」

「そ、わたし。私のことどう思う?」

「会長…ですか。そうですね。
 会長は明るくて気さくで、誰とでも分け隔てなく接することができる人だと思います。その点は好ましいと思います。
 それに優しい。
 一見、破天荒で自分勝手に見えますが、その実は他人のことをよく見ており、周りに合わせて自分のなすべきことや演じるべき役割をしている。
 それに外見も美しい。顔は目鼻立ちがはっきりしており、髪もサラサラのブロンズヘアー。
 更に、俺は会長に感謝しているんです。
 会長がいなかったら俺はアッシュフォード学園で生活することは出来なかった。
 だから、とても会長には感謝しています。
 会長、あの時はありがとうございました」





は、恥ずかしい~~~!!!!!

こんな目を見つめ合ってベタ褒めされたら照れちゃうって!!

それに私のこと、よく分かってくれてる。
まあ、長い付き合いだしね。

それより、私がいなかったらアッシュフォードで生活できなかったって…なんだろう。

あ、クラブハウスを貸してることか。
あれ?でもなんでルルーシュって男子寮じゃなくてクラブハウスで生活してるんだっけ……?
確か、誰かのためだった気がするけど……

ダメだ。思い出せない。

「じゃあじゃあ!俺のことどう思ってんだよ」

リヴァルがイタズラっ子のような顔でルルーシュに聞く。

「リヴァルか…そうだな。俺はお前のこと好きだぞ。
 俺みたいな偏屈にも普通に付き合ってくれる得難い友人だと思ってる」

「そ、そっか……なんか面と向かって言われると恥ずかしいな」


「じゃ!じゃあ、私は!?」

ここで本命のシャーリーが質問する。

「シャーリーか……
 シャーリーは同学年では一番仲のいい女友達だ。
 性格は品行方正で優しい。それはシャーリーの美点だ、誇っていい。
 それに容姿も正に美少女といって差し支えない程整っている。
 シャーリーも、リヴァル同様俺のような奴に対しても普通に接してくれる得難い友人だと思っている」

「そ、そうじゃなくて!」

シャーリーが口をもごもごさせている。
そりゃそうだ。
相手が酔ってるからって面と向かって自分のこと好きかなんて簡単には聞けない。


「あ、あのね?ルル……私のこと女性として、好き?」

「……女性として、か。
 率直に言えば分からない。
 もちろん俺は君のことが好きだが、それが友人としてのものなのか、それとも女性に対する好意なのかは判然としない。
 それに、仮に女性として好きだとしても、それが付き合いたいほどの強度をもっているかも不明だ。
 よって、今のところ俺が君に抱いている好意は、
 『少なくとも友人としては好いているが、一人の女性として好きかは分からない』
 と言ったところだ」


酔ってるくせに理論的なしゃべり方するわね。

「そ、そっか……えへへ、ありがと。ルル」

シャーリーは照れたような、けれどどこか残念のようなぎこちない笑顔を浮かべる。

そりゃそうだ。好きだと面と向かって言われたがそれが女性に対するものなのかは分からないと言われたのだ。
今までとあんまり変わらない。

けど、ルルーシュは分からない、と言った。つまり、望みがないわけではない。

それが分かっただけでも成果はあったんじゃないだろうか。

あ、そうだ。大事なこと忘れてた。

「ルルーシュ、あんたって好きな人いるの?」

「好きな人ですか。今は特定の女性に好意を寄せていませんよ」

あれ?じゃああのお土産はやっぱり咲世子さん?

「あのお土産って誰に上げるのか、聞いてもいい?」

「大丈夫ですよ。あれは妹への物です」

妹?ルルーシュってロロ以外に兄弟いたっけ?
それに、確か彼は身寄りがなかったはず…
妹さんもどっかの学生寮にいるのだろうか。

ん~なんか引っかかるな。


「へえ~妹さんにか。
 お土産をどうするか私に聞くくらいなんだから、大切にしているのね」

「はい、世界で一番愛しています」

愛してる……兄弟愛?
でも普通、いい年した兄が妹を「愛してる」というのだろうか?
もしかしてシスコンってやつ?

「すいません、少し眠くなってきました。
 それでは先に失礼します。おやすみなさい」

「え、ああ。お休み~」
考え事してたから素で返しちゃった。

「ってダメダメ!こんなとこで寝たら溺れるから……
 って本当に寝てる!!
 ……起こすのも悪いし、リヴァル。
 ルルーシュ運ぶの手伝って」

「へいへ~い。
 優しい友人様が介抱してあげますよっと。
 うお!?ルルーシュでも力抜くと重いっ、な。
 よ~し、いくぞ~ルルーシュ~」

リヴァルがルルーシュの脇の下から持ち上げ、私が足の方をもってとりあえず更衣室へ。


リヴァルにルルーシュを拭いてもらって、着替えは部屋ですることに。

私達も体を拭いて、水着の上から浴衣を着こみ、再度ルルーシュを持ち上げて桔梗の間まで彼を運んだ。

後はリヴァルに任せるか。

私とシャーリーは部屋に戻って、着替えとかを持って再度大浴場へ。
さっきは水着着てたから体とか洗えなかったし。

体を流し終わって周りを見るとシャーリーは……いた。
また露天風呂の方にいる。彼女は露天風呂が気に入ったようだ。

「シャーリー」

「あ、会長」

「夜は夜で夜空も見えていい感じね」

「はい。私、露天風呂が気に入っちゃいました」

「そう」

でも、そう言ったシャーリーの顔には少し曇りがあった。


「どうしたの?」

「ルルのさっきの言葉を考えていて…」

「そう」

「どうやったら好きになってもらえるんだろう」

「難しいわね、だって自分だけじゃなくて他人の主観もかかわるんだから。
 簡単に言えば相手がいいって思えるような自分だったらいいわけだし、
 その人が好みそうなキャラを演じたり、そういう行動をとればいいんだけど…
 かと言ってそれは本当の自分じゃないからいずれはガタがきたり、バレちゃって冷められたりするでしょうね。
 だから、ありのままを見せて好いてもらえれば一番よね」

「ふえ~会長は恋愛経験豊富ですね」

恋愛経験?

そんなものない。
今まで、誰かと付き合ったことなどない。
良くて親が進めるお見合いを破談させまくったことくらいだ。

「会長は好きな人いないんですか?」


ビクッとした。

なんでだろう。

予想していなかった質問だから?

聞かれると困るから?

困る?
困ることなど何一つないではないか。

「いないわよ」

「ウソ」

え?

「会長は嘘吐きです」

「ちょ、ちょっとどうしちゃったの?もしかしてあんたも酔っちゃったの?」

「そうかもしれません。けど、意識はしっかりしてます」

「じゃあ嘘吐きってどういうことよ」


「好きなんですよね?


 ルルのこと」

っ!!
私がルルーシュのことを?

そんなわけない。
あいつは昔っから知ってる友達。

それ以上でも、それ以下でもない。

「馬鹿ね。そんなわけないでしょ」

「まだ嘘を吐き続けるんですか?はっきり認めたらどうですか?
 ルルのことが好きだと」

「あなたに私の何が分かるって言うの!!」
思わず立ち上がってしまった。

「分かりますよ。だって私と同じ顔をしているんだから」

「っ!」

「気づくのが遅すぎましたね。すいません会長。
 いままで無神経に相談したりして…
 でももうやめにしませんか?嘘を吐くのは?」


嘘?私は嘘を吐いてるの?
そんなことはない。
私のことは私が一番知っている。

「そんなこと……ない」

弱々しい否定。

「会長。
 会長から見て私はそんなにみじめですか?駄目に見えますか?」

「別に……そんなことは」

「私っておっちょこちょいだし器用じゃないし見ていて危なっかしいところがあるって思います。
 けど、会長と1歳しか違いません。私ももう大人です。
 会長に憐れまれるほど弱くないです」

「シャーリー、違うの!そんなつもりは」

「なら……ならなぜ私にルルを譲ろうとするんですか?」

「別にっ……!そんなつもりなんて」

「私は会長に憐れまれるほど弱くありません。
 だから会長。もう気を遣わないでください。
 そして、自分に正直になってください」

「…私、ちょっと湯あたりしちゃったみたい。
 先に上がるわね」


湯あたりなんてもちろんしていない。
けど、今は一秒たりともここには……シャーリーの前にはいたくなかった。

「…すいませんでした、会長」

すいませんでした。
何に対しての謝罪だろう。
今の会話が失礼だと思ったのだろうか。
それとも、さっき言ったみたいに私に相談していたことに対してだろうか。

どっちでもいい。

とりあえず、今はここから離れたい。

脱衣所で体を拭き、浴衣を着て部屋に戻る。
けど、シャーリーもいずれこの部屋にやってくるだろう。
今は気まずくて顔を合わせたくない。

私は旅館の中にあるバーに足を運んだ。


この旅館はおもしろいことに、旅館なのにバーがある。
バーと言ってもカクテルとかではなくて、日本酒や焼酎、他には緑茶などがいただける。

バーはフローリングで洋風なのだが、椅子は長方形の木製の台のようなものの上に座布団が置かれており、和洋折衷な雰囲気だ。

全体的に木でできており、間接照明とともに落ち着いた雰囲気を醸し出している。

とりあえず、この地の地酒を味わえると言うことで、それをもらった。

酒を飲んでいても考えるのはシャーリーの言葉。

私は嘘を吐いているんだろうか?
誰に?
シャーリーに?
それとも、自分自身にだろうか?

私はルルーシュのことが好きなのだろうか。

彼の目線に、彼の行動に、彼の言葉に今まで心がさざ波立ったこともあった。

キューピットの日に、私はルルーシュの帽子と引き換えに部費を10倍にすると言った。
あれは、ルルーシュほどの人気がある男の子に賞金を掛ければ祭りが盛り上がると考えたからだ。


でも、本当にそれだけだろうか。
私は少しだけ本気だった。

何に?
彼を独占することに?
それは弟みたいな彼に対する、子供じみた独占欲だったのか?


「私を憐れんでいるのか」

シャーリーはそう言った。

そんなつもりは毛頭ない。

ルルーシュもシャーリーも私にとっては大事な生徒会のメンバーで、可愛い後輩だ。

そんな二人が結ばれればいいなと思っている。

けど、やっぱり…

私はシャーリーを見くびっていたのかもしれない。
私がなんとかしてあげなければと、親心にも似た感情を抱いていた。

しかし、彼女はそれを不要だと言った。
彼女が自律したことを喜ばしいと思うとともに、少し寂しくも思う。


けど、彼女は私の手から巣立っていた。
いいや、始めから私の保護なんて必要なかったのかもしれない。

それはルルーシュだって同じだ。
弟のように感じているが、ルルーシュ自身はそう思ってないだろう。
彼は同世代の中でもしっかりしてる方だ。
だから、彼も始めっから私の保護などいらなかったのだ。

なんだ、気づけば私の手の中には守るべきものなど何一つなかったのだ。

それなのに、私はいもしない雛を両手に抱え、何もできないと喚いていたのだ。

恥ずかしい。

これじゃどっちが先輩か分からない。

守るべきものがなくなった、いや……なかった私。
そこにある物は何だろう。

多分、いや、これは絶対に彼への想いだ。
ルルーシュに対する



愛しいという―。


なんだ、認めてしまえばこんな簡単なことだったのか。
私は今まで何を意固地になっていたんだろう。
1人で笑いがこみあげてくる。

今の私ならなんだってできる。
そんな全能感さえ湧いてくる。

今だったら素直に言える。

ルルーシュが好きだと。


ならやることは一つ。
私の全てを彼にぶつけることだ。

その前にやらねばならない。
私の気持ちを気づかせてくれたシャーリーに対して、お礼をしよう。

そう思い立つと羽のように身が軽かった。

バーを出て自室へ。
扉を開けるとシャーリーがテラスで涼んでいた。

テスト


「あ、会長……さっきは、すいませんでした」

本当に彼女はあの時酔っていたのかもしれない。
だから、気が大きくなってあんなことを言ったのかもしれない。

「ううん、私は気にしてないわよ」

「そ、そうですか」

「それに、シャーリーのおかげだから」

「ん?何がですか?」

「私もルルーシュが好き」

「っ!」

「そう素直に認められたのは、シャーリーのおかげ。ありがと」

「そう、ですか」

「だから!これから私達はライバルよ!!」

「ライ、バル?」


「ええ、そうよ!ルルーシュをかけて、私達はライバル」

「会長が、ライバル…」

「な~に~?もしかして怖気付いちゃったの?ならルルーシュは私がもらうわね」

「そ、そんなことない!ルルは渡しません!」

「そ、じゃ互いに頑張りましょ」

「は、はい!」

そこから先はガールズトーク。
ルルーシュのここが格好いいとか綺麗だとか、ルルーシュのここは嫌だとか鈍感だとか。

ルルーシュを肴に二人で盛り上がった。

この話は二人だけの秘密だ。



―――――――――――――――
―――――――――――――

見てる人いないだろうけど一応
ちょっと抜けます

戻りました
ってか見てる人いたのか……

レスなさ過ぎて落とそうかと思った


朝、自然と目が覚めた。
酔いとかも残ってない。
体も軽い。
これも、心のつっかえがとれたからかな。

隣を見ると、シャーリーはお布団の中でぐっすり寝ている。

よし!そうとなれば先手必勝!

隣のルルーシュの部屋に強襲よ!

部屋を出て廊下を数歩だけ歩いて隣の部屋に。
鍵は……今日もかかってない。
よし。

抜き足、差し足で部屋に侵入。
フローリングの短い廊下を抜けて、居間の扉を開けると……

「会長、おはようございます」

畳の上に座っているルルーシュと目が合った。

今日も私より早起きか。
寝てたら添い寝してやろうと思ってたのに。


「おはよ、今日も早いわね」

「無性に喉が渇いて」

そりゃ昨日酔って寝ちゃったからね。

「それに、頭が少し痛くて……昨日の記憶も少し曖昧なんです」

昨日……
『外見も美しい』―。
昨日の彼の言葉が蘇った。

「ミレイ?顔が赤いですが、風邪でもひきましたか?」

「う、ううん!大丈夫!それより、あんたこそ二日酔い大丈夫?」

「大声を出さないでください……二日酔い?これは酔ってたせいなんですね。
 ということは昨日はお酒を飲んでたんですね」

「そうよ」

彼が記憶がないと言うから一通り説明をした。
もちろん、私達にあんなこと言ったということは省いて。


「っていうかルルーシュ。すごい格好ね」

彼は私が渡したウサちゃん浴衣をはだけさせて、その下には昨日着ていた水着を履いていた。

「起きたらこの格好でしたから。リヴァルがこうしたんでしょう」

まあ、男友達を着替えさせるってのも躊躇するか。

「それより、俺は今からお風呂に行きますが、会長は?」

「お風呂?」

「ええ、結局昨日は体を洗えてないので」

「そっか、じゃあ私も朝風呂にでも行きますか」

と、いうわけで私も部屋に戻って用意をし、二人そろって大浴場へ。

ロビーを通りがかったら、貸切風呂の予約表があった。
見ると、貸切風呂は今は全て空いていた。
そりゃそうか。
こんな早朝からお風呂に入る人は少ないだろう。

「どう?ルルーシュ。
 私と一緒に貸切風呂なんて」

「入ってない種類もありますからね。
 でも今は大浴場にします。じゃないと体も洗えませんから」


「あら?貸切風呂で洗えばいいじゃない」

「水着を着たままですか?」
苦笑して彼が言う。

「ううん、裸で入ればいいじゃない」

「……ミレイ、冗談はほどほどにしてください」

「冗談じゃないわ。私、別にあんたとなら裸でお風呂に入ってもいいわよ」

それは本心だ。
そりゃ、ちょっと恥ずかしいけど好きな人と貸切露天風呂とか夢のようだ。

「……遠慮しておきます」

この臆病者め。

そういうわけで別々に大浴場に入ることに。

大浴場は誰もおらず、私の貸切だった。
サウナに入り軽く汗を流し、体を洗って露天風呂へ。
わたしも露天風呂が気に入った。

海が太陽の光を浴びて燦々と輝いていた。
この景色を独り占めだなんてすっごく贅沢だ。

その後は、再度軽く体を洗って出てきた。
昨日もお風呂に入って綺麗にしたし、大浴場ももう何度も入ったから飽きてきた。


あ、そういえばルルーシュと待ち合わせしてなかったな。
どうしよう、勝手に帰っちゃったらあいつ、私を待ち続けちゃうかも。

勝手に男風呂に入るわけにもいかないし。

とりあえず、ルルーシュを待つためにロビーの一画に腰を据える。
ここからは庭園が見える。

今は夏だから紅葉とか桜とか色鮮やかさはないけど、それでも計算し尽くされた庭は美しかった。

「すいません、お待たせして」

そう言って彼は私の前にコーヒー牛乳の瓶を1本置いた。

「お、分かってるわね~」

「当然です。温泉の後にはコーヒー牛乳です」

そう言って二人でコーヒー牛乳を飲む。
これだけでもなんか楽しい。

私は抑えきれずニヤニヤしてしまう。


「どうしたんですか?」

「なんでも。けど、朝食までもうちょっとあるし、散歩でもしない?」

「散歩ですか」

「ええ、この旅館の周りをぐるっと、庭園とか見ながら」

「ええ、では付き合いましょう」

彼と並んで旅館内の庭園を見て回る。

彼は今は旅館の用意した浴衣に茶羽織を着ている。
私が用意したのは1日目に渡していたから着替えたのだろう。

それにしても……ブリタニア人のくせに浴衣が似合うこと。
またルルーシュの新たな一面が見られてうれしい。

ぐるっと庭園を見て回ったらいい時間になった。そろそろ朝食の時間だ。

「ルルーシュ。そろそろ部屋に戻ろっか」

私は勇気を出して彼の右腕に抱き付く。


「ええ、そうしましょうか」

彼は驚いた様子もなく、払いのけることもせず歩き出した。
歩調は短め、私の歩幅に合わせてくれている。

紳士か!

二人腕を組んで部屋の前まで。
とりあえず、ルルーシュはリヴァルを起こすことに。
私も部屋の片づけをしたりシャーリーを起こさなくては。

扉を開けるとシャーリーはすでに起きていた。

「あ、会長。おはようございます。どこに行ってたんですか?」

「朝風呂にね。それと、ルルーシュとデート❤」

「デ、デート!!!?」

「そ、お風呂上りにちょろっと二人で散歩にね」

「いいなぁ~」

「うふふ、恋は先手必勝よ」

この様子だと、シャーリーも酔いは残ってないみたい。よかった。


部屋を片付けて男達を招き入れ、仲居さんが用意してくれた朝食を食べながら今日の予定を決める。

「今日どうしよっか。明日は正午には帰りの電車に乗るから実質最終日だけど。また海?」

「それもいいですが、せっかくの温泉街ですから他の温泉にも行ってみたいですね」
 ルルーシュって実はお風呂好き?

「そうだね、それにそろそろお土産とかも見ときたいし」
 シャーリーは水泳部の子たちにあげるのかな?

「俺はなんでもいいっすよー」
 リヴァルは特に意見なしっと。


「よし、じゃあ今日は午前中は海、正午前から温泉街を巡ってみましょう」

「はい」「は~い」「ミレイさんの水着…」

そんなわけで朝食を食べ終わったら、昨日と同じく水着を着こんで海岸へ。


「ルルーシュ~ちょっと日焼け止め塗ってくれない?」

「嫌ですよ。シャーリーにでも頼んでください」

「私の柔肌に触れるチャンスよ?」

「結構です」

まったく。こいつは本当に男色家かもしれない。

「ルル、じゃあ私がルルに塗ってあげようか?」

「ああ、じゃあ背中を頼む」

シャーリーがルルーシュの背中に回り込み、日焼け止めを塗る。
ふと、シャーリーと目があった。

ニヤリ。

シャーリーがニヒルに笑る。

おのれ小娘め~!!!

ここで引けを取ってはならない!


「ルルーシュ、海の方に行こう!」

そう言って彼の右腕に抱き付く。

「ちょ!ミレイ!あ、当たってます!」

「ん?あぁ、胸のこと? 大丈夫、当ててるのよ」

「あ~会長ずるい!ルル、今日も私が泳ぎを教えてあげるね」
 シャーリーが対抗して左腕に抱き付く。

「ちょ、二人ともやめてくれないか」

「シャーリー、私が先だったからあなたが離れなさい」

「嫌です。いくら会長でもそれは聞けません」

「おい、俺を無視するな!俺は二人とも離れろと言っているんだ!」


リヴァルが涙ぐみながら私を見る。
「ミ、ミレイさん!こ、これはどういう…」

ルルーシュは少し天然だ。
そうでなくともノラククラリと躱されるかもしれない。

もうはっきり言ってしまった方がいいだろう。
それに、意識してもらわないことには始まらない。

「ごめんね、リヴァル。私、ルルーシュのこと好きになっちゃったの。
 ん?ちょっと違うかな?
 好きってことに気付いたの」

それを聞いてリヴァルが膝から崩れる。
「そ……そんな」

「ごめんね~リヴァル。けど、私も本気なの」

「…」
リヴァルがすくっと立ち上がる。


「ルルーシュ、勝負しろ」

「は?なぜだ?」

「うるせえ!男なら拳で応えろ!!」

「リヴァル!!!
 殴っていいのは殴られる覚悟のある奴だけだ!!

 

 あ、ちょっと待て!!
 今は両腕がふさがってブヘっ!!
 待て、止めろ!!!」


「ちょっと!!ルルの綺麗な顔に傷ができるじゃない!!」

「リヴァル!止めなさい!」


リヴァルの目に涙が浮かぶ。強く言いすぎた?

「うっ…うっ、うわ~~~」
突然叫んだかと思うと、リヴァルは涙を流しながら海へと入っていった。

……そっとしておきましょう。

「大丈夫?ルル。怪我とかしてない?」

「あ、ああ。大丈夫だ。それよりミレイ…」

「ん?なあに?」


「その……さっきの…」

「ん?なあに?好きってやつ?」

「え、ええ。あれは何の冗談ですか?」

「冗談?そんなわけないじゃない。いくらルルーシュでも怒るわよ」

「え?あ、はい」


「ルルーシュ。私ね、あんたのこと前から好きだった。多分、ずっとずっと前から…
 それに昨日気付けたんだ、シャーリーのおかげで。
 だから、今日からはガンガンアプローチするから、そのつもりでね❤」

「え、ええ……えっ!!?」

「ほ~ら早く、海行こう」
彼の腕をひく…とシャーリーまで釣れた。

「ちょっと会長!話は終わってません!
 今日も私がルルに水泳を教えるんです!ね?ルル」

「ルルーシュは私と泳ぐのよ!」

「ちょっとルル!会長とは泳がないって言ってよ」

「ルルーシュ!私とシャーリー!!どっちをとるの!」


―――――――――――――――
―――――――――――――

今日はここまでです。

おやすみなさい

再開します


<ルルーシュside>

午後は予定通り、温泉街を見て回っていた。
今は温泉街にある旅館で入浴中。
ここの旅館は海沿いではないため露天風呂はオーシャンビューではないが、庭園の中に作られており落ち着いた雰囲気の岩風呂だ。

その露天風呂に肩までつかり、ため息を吐く。

どうしてこうなった…?

午前中の海ではシャーリーとミレイのバトルは一向に収まらなかった。
午後も、温泉街を歩いているときは両腕に彼女らが抱き付いてくる。
そんな状態では注目の的になり、俺は一人になりたくて土産屋よりも温泉に入ることを希望した。

因みにリヴァルはいない。
今頃、桔梗の間で枕を濡らしているのだろう……あいつには悪いことをした。


そもそも、俺は会長の卒業を祝うために卒業旅行に来ていたはずだ。
よし、そこまでは合っている。

昨日まではシャーリーと一緒にいる時間が比較的長かった。

しかし今日、朝起きるとミレイが来て一緒に風呂に行き、その後腕を組んで旅館の庭園を散策したりとミレイといる時間が長くなった。

そして海に来たら両腕にミレイとシャーリーが抱き付いてくた。

意味が分からん。

どこでこうなってしまった。
どこで間違えた。

ミレイの行動がおかしくなったのは今日からだ。
よって原因は昨日の夜か、今日の朝に起こったのだろう。
ミレイ曰く、シャーリーのおかげらしいが…
朝からミレイと一緒だったが、シャーリーと特別な話をしている様子はなかった。
それに、朝はシャーリーを起こすと言っていた。

よって原因は昨日の夜にあったと推測される。
それが、シャーリーを見ていてなのか、話した結果なのか…
そこから先は判断材料が少なすぎるな。


それに今さら原因が分かったところで、ミレイが好きだと言っている以上意味はない。
よって原因究明は現状打破には繋がらない。

現状、ミレイとシャーリーが俺を取り合ってる。
両手に花だが、当事者ともなれば話は別だ。

解決策としては
1両方振る
2両方と付き合う
3片方を取る
4とりあえずは白黒つけずに済ます
が考えられるが……

俺は誰とも付き合う気はない。

今はブリタニア帝国を潰し、ブリタニア帝国が支配することで守られている
まやかしの平和を否定するために黒の騎士団を用いて戦っている最中だ。

そんな状態で彼女など作る気もなければ作れるわけもない。

俺は日本にいる時間も短い。付き合ったとしても俺の影武者をしている咲世子とデートすることになるだろう。


それに、彼女ができればそれは俺のウィークポイントになる。
何らかの事情で彼女の存在が敵にばれれば人質に取られなかねない。
そうでなくとも害が及ぶ危険が高まる。

なら、好きな者ほど遠ざけておくべきだろう。

なら解決策として2と3はとれない。

さらに、中途半端に期待を持たせるのも相手に悪い。

シャーリーもミレイも俺にとっては大切な人だ。
無碍に振るのは憚られる。

しかし、だからこそ振らねばなるまい。
不誠実にほったらかすことはできないし、何より出来るだけ遠ざけて彼女らの安全を図る必要がある。

よって解決策の4もなしだ。

従って、俺が採るべきは1、両方振るのがいいのだろう。

これが合理的な結論なのだろう……


だが、その結果彼女らが俺から離れていったらどうする?
仕方ないで済ませられるのか?
大切な人を傷つけて、それでもよかったと思えるのか?

俺は昔みたいにナナリーのためだけに戦っているわけじゃない。
黒の騎士団のためにも、そして自分自身の幸せを掴むためにも闘っているんだ。

なのに、俺とナナリーの帰るべき場所であり、また俺の幸せでもある生徒会を俺が潰しては意味がない。

ミレイが騒がしく何かを企画し
シャーリーが元気に笑い
カレンは病弱キャラをやめて皆に言いたいことを言い
リヴァルと馬鹿をやって
そして、スザクが空気を読まずに行動し
ニーナが傍らで皆の騒ぎを眺め
ナナリーが優しげに微笑んでいる。

そんな暖かい雰囲気の場所に戻りたかったのではなかったか。


それなのに、ニーナとスザクはブリタニア軍に入り、
ミレイとシャーリーは離れていき、
カレンは今やブリタニアの捕虜だ。
残ったのはリヴァルだけ。
いや、リヴァルも俺から離れるかもしれないな。

そうなっては、ナナリーとの帰る場所も、俺の幸せも失われる。

しかし……
一緒にいたいがために恋人になるのは間違っている。
それに俺が一緒にいたいと願っても相手が嫌だと言えば仕方ない。
無理に縛り付けることはできない。

だから、交友関係が続くような振り方をする、
というのが妥協点か。

ふぅ……とりあえず、旅行中は保留しておこう。
せっかく皆で旅行をしているんだ。
今振って雰囲気を悪くすることもないだろう…


―――――――――――――――
―――――――――――――


<ミレイside>

今は3人で土産物屋を覗いている。
海沿いの町だから鮮魚や加工品がたくさん並べられている。
でもこれを持って帰るのは…

後は、ルルーシュ曰く「漆」が有名みたい。

黒色の表面に金色で模様が描かれたものや、見る角度によって白・緑・青・紫に見えるもの(螺鈿と説明書きされている)など、色んな種類のものがある。

これなんていいかな、可愛いし。それにエリア11…ニッポンって感じ。

「ルルーシュ、漆器とかどう?」

ルルーシュはお菓子エリアにいた。
「もう、ルルーシュ。そんなお菓子どこでも帰るわよ。なんならトウキョウ租界でもね」

「いや、しかし……女性は甘い物が好きですからこういったものの方がいいかと」

「女性って、それも妹にあげるの?」


「っ!……ミレイ、今なんと」

「え?だから、それも妹にあげるのって」

「なぜ俺に妹がいると知っているんですか?」

「昨日自分で言ったんじゃん。あ、酔ってたから覚えてないか」

「そ、そうでしたか。ミレイ。俺に妹がいることは内緒にしといてください」

「え?別にいいけど。んで、そんなどこでも買えそうなお菓子より、こういった旅行先ならではの物の方が女性は喜ぶわよ」

「そうなんですか」

「そうよ、女って限定品とか期間限定とかあなただけって言葉に弱いものなのよ」

「では、俺もなにか漆器を買いますよ」

「そ、じゃあ一緒に選ぼ❤」

彼の右腕に抱き付く。彼は困ったように苦笑するだけで払い除けたりしなかった。
それって少なくとも嫌われてないってことかな?


彼と一緒に商品を見て回る。

ふと彼が私に尋ねる。
「ミレイは髪を留めたりしないんですか?」

「ううん、家ならたまに括ったりするわよ。やっぱり邪魔だし」

「そうですか…なら」
そう言って彼が一つの髪留めを手にする。

「これなんてどうですか?」

それは、螺鈿で2頭の蝶が描かれたバレッタだった。

「あら、可愛いわね。いいと思うわよ」

「なら、これをプレゼントさせてもらってもいいですか?」

「いいわよ~……って私に?」

「ええ、この旅行も結局はミレイが企画したものですから。
 ミレイの卒業祝いに」

「本当にいいの?」

「今さらミレイに社交辞令で言いませんよ」

私はそのバレッタで髪を留めてみた。


「よく似合ってますよ」
彼が褒めてくれた。

店内にある鏡で見てみる。
キラキラと蝶が光って可愛い。

「どうですか?」

「うん、いいと、思う……」

「なら、これでいいですか?」

他の髪留めも見てみるがこれが一番可愛い。

「うん、私これが一番好き」

「そうですか、ならそれをプレゼントさせてもらいます」

そう言って彼は私の髪を留めていたバレッタを取った。
その拍子に彼の手が私の頭に触れる。

それだけで心臓がバクバクと騒ぎ出した。

彼はバレッタを手に持ち、他にも買うべきものがないか店内をウロウロ。

結局、漆器を何点かと螺鈿のバレッタをもう1点購入した。


「すいませんミレイ。ラッピングとかはやってないみたいですね。
 このままでもよかったですか?」

「うん、別にいいわよ」

何の色気もない土産屋の袋を一つ渡される。
私は早速バレッタを取り出し、それで髪を留めた。

「もう使うんですか?まるで子供ですね」

「いいじゃない。プレゼントだって使ってこそ意味があるんだから」

私の髪の上でキラキラの光る2頭の蝶。
もしかしたら、ルルーシュから初めてプレゼントをもらったかもしれない。

嬉しい。

たったこれだけのことで、私は叫びだしたいほどの幸福感に胸が一杯だった。


―――――――――――――――
―――――――――――――


土産屋や他の旅館の温泉を入って温泉街を満喫した後、宿泊している旅館に帰還。

色々回ったからちょっと疲れちゃった。

夕食までは時間があるけど、今はのんびりしてたい。

「会長の髪留めいいなあ~」

隣で畳に寝っ転がってたシャーリーが妬ましそうな目でこちらを見る。
ルルーシュからのプレゼントであることは彼女に言ってある。

「ふふーん、いいでしょ~。ルルーシュからのプレゼント❤
 ま、卒業祝いだしシャーリーも半年後にはもらえるかもね」

「くれるでしょうか、ルル……催促しないと貰えなさそう」

「まあ女心に疎いからね。いいじゃない、催促すればもらえるんだし」

ま、私は彼から自発的にもらえたんだけど。

「それより大丈夫かしら。隣じゃルルーシュとリヴァルが二人っきりだけど」

「ルルが任せろ~っていってたんだし大丈夫だと思うんですけど…心配ですよね」

「ルルーシュ弱いからね~」

「ルルがいじめられてたらどうしよう!?」

「いじめって……まあ、ケンカしてたにせよ話合いにしろ、もう決着も付いたことでしょう。
 ちょっと見に行きましょうか」

「は~い」

部屋を出て桔梗の間の扉を開ける。
怒鳴り声とかは聞こえないから一安心かな。

居間へと続く扉を開けると、二人して和座椅子に座ってTVを見てた。
……なんか拍子抜け。

「あれ、ミレイさん。どうしたの?」

「どうしたのって……あんた達の様子を見に来たのよ」

「ああ、もう大丈夫。ルルーシュとも話し合ってけり付けましたから」

「そう」

何を話し合ったんだろう。ま、仲直りしたならいいか。


「それよりリヴァル、お土産よかったの?」

「あ~別にいいっすよ。特別渡したい相手もいないし」

じゃああとやり残したことは…温泉も満喫したし、海水浴やバーベキューも行った。
お土産も買ったし…後は

「そだ!貸機風呂どうしよう。あと2種類も残ってるけど」

「今日と明日の早朝に入ればいいんじゃないですか?」

「なんでルルーシュは他人事なのよ。皆で入るの」

そこでルルーシュが嫌そうな顔をする。

「大丈夫。もうお酒は飲まないし、それに…本当に最後だから」
 私が就職したら生徒会メンバーで遊べる機会もぐっと減るだろう。

「分かりましたよ」
 やっぱりルルーシュって優しいわね。

「じゃあ会長、とりあえず私どっちか空いてるか確認してきます」

「よろしくシャーリー」

シャーリーがドタドタと部屋を出ていく。
走って大丈夫かしら。
旅館の人に怒られてなきゃいいけど。


しばらくするとシャーリーがまた走って帰ってきた。
どうやら怒られたりはしてないみたいね。

「かいちょ~、両方空いてたんで今日は海じゃなくて山が見える方にしました。
 夜だと海が見えないと思って」

「そう、ありがと」

ルルーシュと二人っきりで入れないのは残念だけど、卒業旅行だし仕方ないか。

その後は夕食までダラダラとし、最後の夕食を食べた。
明日にはもうこれが食べれないと思う残念だ。

小休憩を挟んで貸切風呂へ。
今回のは山の景色が楽しめる露天風呂、浴槽は御影石。
灯りは灯篭でとられており、柔らかい光が幻想的な雰囲気を醸し出している。


今日も全員水着着用だから体は軽く洗って早速湯船へ。

ルルーシュの隣に腰を下ろす。


「ミレイ、少し近すぎでは」

「大丈夫、抱き付いたりしないわよ」

抱き付きたいけど、そんなことをしたらまたリヴァルが沈んでしまう。
皆で旅行してるんだから自重しなくちゃ。

今日寝れば旅行はほとんど終わってしまう。
そう思うとやはり寂しい。

明後日からは学校で皆に会えないし、私はそろそろ社会人になる。
それに、なによりルルーシュに会えない。

どうすればいいんだろう。

やっぱり告白すべきなのかな。
デートとかはしなかったけど、私とルルーシュの付き合いは長い。
もうかれこれ4年以上の付き合いだ。

だったら彼も私の為人をちゃんと理解してくれているだろう。


振られるのは怖い。

けど、振られたからってなんだ。

多分、振られたところで私は変わらないだろう。
依然としてルルーシュを愛しているはずだ。

それほどに彼に対する想いは強い。

なら迷うことはない。
頻繁に会えなくなる前に告白をしよう。

「…レイ、ミレイ」

「え?あ、はい!」

「どうしたんですか?湯当たりですか?」
ルルーシュが心配そうにのぞきこむ。

……最近のルルーシュは変わった。
なんとなくそう感じる。


昔はもっと孤独だった。
生徒会室にいても、どこにいても、何をしていても……

彼の周りには明確な線が引かれていた、誰も入れない。

しかし最近はそうでもなくなった気がする。
相変わらず線引きはされているが、その線引きの内に他者が入る余白が生まれたような気がする。

そして、その線の内側に入った者にはとても優しい。

そんな気がする。

「大丈夫、ちょっと考え事してただけだから」

「そうですか」

思い出話に花を咲かせるリヴァルとシャーリー。

後輩3人は同い年。あと半年は一緒に学生生活を楽しむのだろう。
いいな。

なんで私だけ1つ上なんだろう。

無性に泣きたくなった。


けど悲観ばかりしても仕方ない。

私は後悔したくない。だから、やっぱりルルーシュには告白しよう。

そう決意した。


貸切風呂の時間は30分。

色々話す時間もなくタイムリミットが来た。

その後はその足で直接、大浴場に行って綺麗に洗って上がってきた。
今日はお風呂の入り過ぎで逆に肌が痛みそうだ。

お風呂を上がり、バスタオルを置いてまた外へ。

コーヒー牛乳もいいけど、結局昨日も飲めなかったから再びバーへ。
シャーリーは誘っても来なかった。
まあ無理に飲ませても、ね。


バーに入るとルルーシュがいた。

「おい未成年、なに飲んでるんだ」

「なんだ、ミレイですか。驚かさないでくださいよ」

「驚いてない態度で言われても。それよりあんた、酒飲んで大丈夫なの?」

「確かに強くはないですけど、昨日のは温泉に入ってたから特別酔いやすかったんですよ。
 それに、日本酒はどうも体に合わないみたいで。
 だから今日は地元のワインを飲んでます」

確かに、彼の手元にはワイングラスに赤い液体が満ちていた。
ワインが良く似合ってる。
どこぞの貴族の様だ。

私も彼の横に座り、黒ビールを注文する。

「それじゃ、乾杯」

「ええ、ご卒業おめでとうございます」

何度も言われた言葉だけど、彼から言われると嬉しいと思う気持ちと、切ない気持ちが湧きあがってきた。


「それより、ミレイは今後どうするんですか?」

今後、とは進路のことだろう。

「就職よ。もう決まってるの」

「そうでしたか、エリア11を離れるんですか」

「ううん、勤務地はトウキョウ租界だから一人暮らしはするけど離れないわよ」

「そうですか、ならまた会えますね」

彼が私に会いたいと思ってくれている。
嬉しい。

「私の部屋に泊まりに来てもいいわよ」

「女性が軽はずみに男性を家に招き入れるのは感心しませんね」

「あら、大丈夫よ。こんなの言うのあんたにだけだし」

「それは、何とも返答しがたいですね」

むむう。こいつのポーカーフェイスを崩せない。


今は二人っきりだし腕に抱き付いちゃえ。

「…ミレイは見かけによらず甘えん坊ですね」

「そうかしら?」

「ええ、見た目は姉御肌というか。頼られる側だと思ってました」

「頼られるのももちろん嬉しいわよ。けど、私だって誰かに甘えたいわけよ」

「そうですか」
結局ポーカーフェイスは崩せず。
けど、彼の温もりを感じられるだけで十分幸せだ。

とりあえず、今はここまでとします。

ちょっと書き溜めのオチが気にくわないから練り直してきます

ここから一気に終わりまで行きたいと思います。

この話は二人の過去がちょっと関係していて、それは
無印の「Sound Episode 5」というCDに収録されている「ミレイ との 際会」
で知ることができます。

ssが分かりにくかったらちょっと見てみてください。
文章に起こしてるサイトもあるので。

では再開します


せっかく二人きりなんだ。
明日には皆で帰るだけだし、帰ってからも時間がとれるか分からない。

告白しよう。
決意は意外にもすぐに固まった。

そうと決まれば場所を移そう。

「ねえルルーシュ。ちょっと夜風に当たりたいから散歩にでも行かない?」

「今からですか?」

「ええ、明日はすぐに出ちゃうでしょ?だから、最後に砂浜でも散歩しましょう」

「分かりました。今回の旅行の主役ですからね、付き合いましょう」

彼と二人して旅館を出る。


温泉街で、旅館が山際にあるもんだから辺りは暗い。

ポツポツとある街頭を頼りに砂浜に降りる。

海は漆黒で不気味に映る。

けれど明かりがない分、星がいつもより多い。

「あっと言う間だったわ~」

「旅行がですか?」

「それもだけど、学校生活が」

「そうですか」

「通ってる最中は『もう嫌だ~』って思ってたけど、卒業しちゃうと寂しいもんよ。
 だからルルーシュ、あなたも後悔しないように残りの学生生活をエンジョイしなさい」

「ええ、覚えておきます」


「思えばあんたとも長い付き合いね」

「そうですね。4年と半年ですか」

「出会ったときは、あんたの方が小さかったのにね~」

「そうでしたか?」

「ええ、そうよ。それなのに今じゃあんたの方が高くなって」

「でもあまり変わらないですけどね、ミレイは身長が高いですし」



二人、腕を組んで夜の海岸を歩く。

言葉にするとロマンチックだが、サンダルに砂は入るし、暗くて怖いしでいいとこなしだ。

けど、周りに邪魔されず彼といられる。


「ねえルルーシュ」


「何ですか?」


彼の腕から離れ、数歩歩く。


後ろを振り返り、ルルーシュの顔を正面から見る。



「私、あなたが好きよ。ずっとずっと好きだった。





 私と付き合ってくれないかしら?」


もっと緊張するかと思った。


けど、思いのほか、想いはすんなりと言葉となった。


「ミレイ……」




沈黙が痛い。








「すいません、俺はミレイとは付き合えません」



そっか。



私、振られちゃったんだ。


「理由を聞いてもいい?」

「……ミレイのことは好きです。ですが、それは女性としてではありません」

「他に好きな人でも?」

「いいえ、そういうのはいません」

「あなた好みの女性になれるように努力するわ。それでも、駄目かしら」

「そう言うのは違うと思います。人の好みに合わせて自分を変えるなんて。
 ミレイは今のままで十分魅力的ですよ」

けどあなたは振り向かせられなかった。


「ルルーシュは誰かと付き合いたいとか思わないの?」

「そういうのは縁の問題ですから。いい出会いがあればいずれは」

「嘘。ルルーシュ、本当は今は誰とも付き合う気ないんでしょ」


「……なぜそう思うのですか?」



「だって


 ナナリーのことで頭一杯のシスコンなんだから」


<ルルーシュside>

ナナリー、だと!?
なぜそれをミレイが覚えている!?

ナナリーに関する記憶はシャルルのギアスによって書き換えられたはずだ。


「ナナリーとは誰ですか?誰かと勘違いしているのでは。俺にはロロしか兄妹がいませんよ」

「あのロロって子、誰なの?いきなりルルーシュの弟ってなってるけど、あれは本当にあなたの弟なの?」


ロロにも気づいている!?

どういうことだ!



もしかして……


ミレイはシャルルのギアスを破ったのか!?

いや、でもあり得ない話じゃない。
ユフィも俺の命令に抗っているような様子を見せていた。

ギアスはその者の願望を具現化した能力だ。

シャルルの能力は記憶を書き換える能力。
ならば、シャルルの願望は過去を変えたいとかそういうことだろう。

なら、ギアスよりも強い想い、願望がある場合どちらが勝つのか。

そんなものは分からない。
だが現にミレイはシャルルのギアスを打ち破っているではないか。
それだけミレイは過去を、皆で過ごした日々を大切に思っていたのかもしれない。


どうすればいい。取り繕うか?
ミレイは今、俺が味わったような違和感を感じていることだろう。

ナナリーが消え、代わりにロロがいる世界―


それをどうやって取り繕う……


無理だ。
俺一人が嘘を言ったところで他人と話がかみ合わなければおかしいことに気付く。

ならばギアスをかけるか?

ミレイにか?

そんなことはできない。彼女は俺にとって大切な人だ。
そんな人に絶対服従のギアスなどかけれるわけがない!


「ミレイは……ナナリーのことを覚えているんですか?」


「え?うん、当然じゃない。あんたと同じくらいナナリーとも長いんだし」


覚えていることを当然だと思っている。
なら他の者とナナリーやロロについて話した形跡はなさそうだな。


「けど不思議なのよね~。
 ちょっと前まではロロがいて当たり前だったんだけど、
 昨日なんでルルーシュがクラブハウスで生活しているのか思い出そうとしたのよ。

 んで、始めは分からなかったんだけど、
 よくよく考えたらナナリーが車椅子だったから寮じゃなくてクラブハウスで生活してたのよね……

 思い出せばそうなんだけど、なんでそんなこと忘れてたんだろ。
 それにロロなんて最近会ったのに、昔からの知り合いみたいになってるし……
 なんだろ、これ」



彼女がシャルルのギアスを破ったきっかけが、俺との初めての出会いとは……


彼女はそれほどまでに俺のことを思ってくれていたのか。


誰にも頼らず、誰も信じず、友はスザクだけだった俺……

彼女は俺が不遜な態度をとっていたにもかかわらず、ナナリーとの平穏な生活を与えてくれた。

俺はそれまで「ありがとう」などと、他人に感謝することはなかった……
当然だ、誰にも頼らず生きてきたのだからな。


「……ミレイ」

「なあに?」

「4年前、俺とナナリーのためにクラブハウスを用意してくれた感謝を俺は忘れたことはない。
 ありがとうございました」


「ふふ、どういたしまして」


本当に失いたくないものは遠ざけておくものだ―。

以前C.C.が言っていたな。


果たして本当にそうか?

俺はナナリーを、ナナリーとの生活を守るために黒の騎士団を結成した。
ナナリーを直接黒の騎士団内で保護はしていなかったが、
それでも俺の傍に置いてナナリーの安全を守ってきた。


それが間違いだと?


いいや、大切な物ほど自分の傍におき、自分の力で守るべきだ。

遠くにやったからと言って誰が守ってくれる?他力本願もいいところだ。

それにナナリーが攫われたときに思ったではないか。
プライドやナナリーからの信頼など捨てて黒の騎士団内で保護すればよかった、と。



ミレイにギアスはかけれない。それは彼女が俺にとって大切な人だからだ。

大切?
何故そう思うのか……

彼女は生徒会の一員だ。
俺が帰りたい、大切にしたい場所の一員だ。

だが彼女は最早卒業して生徒会役員ではない。
なら最早俺にとってはどうでもいい人なのか?
彼女は生徒会室に飾られた調度品なのか?

いいや、決してそんなことはない。

俺はバーで彼女がトウキョウ租界に居続けると聞いて、また会えると思った。
そして、そのことに安堵した。

俺はミレイが好きだ。

だがその「好き」とはなんだ。



ミレイにギアスはかけれない。それは彼女が俺にとって大切な人だからだ。

大切?
何故そう思うのか……

彼女は生徒会の一員だ。
俺が帰りたい、大切にしたい場所の一員だ。

だが彼女は最早卒業して生徒会役員ではない。
なら最早俺にとってはどうでもいい人なのか?
彼女は生徒会室に飾られた調度品なのか?

いいや、決してそんなことはない。

俺はバーで彼女がトウキョウ租界に居続けると聞いて、また会えると思った。
そして、そのことに安堵した。

俺はミレイが好きだ。

だがその「好き」とはなんだ。


友達か?人としてか?それとも…

彼女は俺とナナリーがブリタニア皇族であることを知っている数少ない人物だ。
俺を皇族と知りながら普通に接してくれるミレイ。

コロコロと表情が変わる彼女。それはまるで宝石の様だ。

周りの人を気遣える優しさ、頼られたら嫌とは言わずに精一杯頑張る人情の厚い性格。

本当は甘えん坊な彼女

目を惹く美しい顔

魅力的な体



全部、独り占めしたい。

それを、俺だけのものにしたい。




なんだ、こんな簡単なことだったのか……


<ミレイside>


「あ~あ、振られちゃったか。でもね、ルルーシュ」

「なんですか?」

「私は諦めないわよ。1回振られたくらいでへこたれるミレイさんじゃないんだから」


確かに心は傷ついた。
この傷が癒えるには時間がかかるだろう。


でも、いつかは絶対またルルーシュにこの気持ちを伝えるだろう。
彼が想いに応えてくれるまで。



「いいえ、その必要はないですよ」

心が、凍りつく。


必要がない?
それは望みがないと言うことだろうか。
一生?永劫未来?


それほどまでに彼と私との間には距離があったのか。



ショックだな……


ルルーシュがこちらに歩を進める。
私の1歩手前で止まり、私の右手をとる。



「ミレイ。先ほどはあなたとは付き合えないと言いましたがあれはなしです」


「え?なし?え?」


「ミレイ・アッシュフォード。

 


 あなたが好きです、誰よりもあなたを。

 俺と付き合ってください」





「……は?」


ちょっと待って、意味が分からない。

わたしが告白して、振られて、それがなくなって、今度はルルーシュから告白してきて…



あ、自分からしたかったのか。

いや、なんか違う気がする。

え?
とりあえず私、今ルルーシュから告白されてるんだよね?



じゃあ返事しなきゃ

「は、はい。よろしくお願いします」


これで合ってるかな?


「そうですか、ありがとうございます。ミレイ。
 では、これで俺とミレイは彼氏彼女ですね」


「え?ええ、そうね」


ルルーシュと私が恋人……


「えーーーーー!!!!」

「……ミレイ、急に叫んでどうしたんですか?」

「え?え?ルルーシュと私が恋人になったの?」

「え?はい。俺の告白にミレイが応えてくれましたから」

「そっか……いやでも!さっきルルーシュ私のことは振ったわよね?」


「それは忘れてください」

「無理無理無理!え?私のこと好きなの?嫌いなの?」

「ミレイのことは好きです。それにやっと気付けました」

「気付けた?じゃあ、さっき振ったときは好きじゃなかったってこと?」

「女性として愛してるとは気づいていませんでした」

「あ、あい……」


駄目だ。顔が赤くなってるのが自分でもわかる。

でも、ルルーシュが私を好きになってくれた。

彼と恋人になれた。

胸が何かわからないものにキューっと締め付けられる。


私は衝動を抑えきれず彼に抱き付く。

「やった~!!」

「っとと、いきなり抱き付いたら危ないですよ」

「彼氏なんだから彼女くらい抱きとめなさいよね」

彼氏なんだからー

駄目だ、ニヤニヤがとまらない。


<ルルーシュside>

ミレイが俺に抱き付く。

っと言っても身長が変わらないから抱きしめられてるとも言える。

ミレイが俺の恋人になった。

これで守るべきものがまた一つ増えた。

ナナリー、黒の騎士団、俺の幸せ、それにミレイ。

今更ひとつ増えたくらいでどうと言うことはない。
俺なら全てを完璧にやれる。


それに、俺が自分の幸せのために動いて誰に文句が言えようか。

俺にはギアス―王の力がある。王ならば我が儘でもいいじゃないか。
俺は全てを欲し、すべてを手に入れる。

ミレイを絶対離したりはしない。

そうだな、ミレイの身の安全を保障するためにはどうすべきか…


黒の騎士団のいる斑鳩かどこかで保護するか?ゼロの愛人とでもしておけばいいだろ。
それとも黒の騎士団のスパイをミレイの周りに配置するか…
なんならディートハルトにゼロの恋人の偽情報を拡散させてもいい。

やり方はなんだってある。

俺は全てを手に入れてやる。


<ミレイside>


「そうだ」

「なんですか?」

「クラブハウスの件、お礼は言ってもらったけど見返りをもらってなかったわね」

「そうでしたね。何を渡せばいいですか?金ですか?物ですか?」

「そんなものいらないわ。あなたの身体をちょうだい、ルルーシュ」

「…は?」

「だって当然でしょ?私はあの時あなたに信じてもらう代わりに自分の体を賭けたんですもの。
 あなたも身体を賭けるってのが筋ってもんでしょ?」

「いや、俺はべつにミレイの体に賭けたわけじゃ」

「男のくせに後からグジグジ言うの~?」

「くっ、俺の身体を使って何をするつもりですか」


「これよ」




チュ


触れるだけの軽いキス。


「私のファーストキスよ。光栄に思いなさい。

 

 愛してるわ、ルルーシュ。


 これからもよろしくね」




終わり

テスト


~エピローグ~


今日こそはルルーシュの布団に忍び込む!

今日は昨日より早めに起きた。
これならルルーシュよりも早いはず!

今日も……鍵はかかってない。男だからいいけど不用心ね。


足音を殺して居間の扉を開ける……と、そこには誰もいなかった。
なら!

そろりそろりと寝室に近づく。
そ~~っと扉を開けると……ルルーシュはまだ寝ているみたい。


私の勝利は目前だ!


そーっと彼の布団に近づき、顔を覗き込む。

眉間に皺が寄っている。
寝ている……のかな?
寝てる時まで難しそうな顔をして……

それがなんだか可愛く思えてしまう。

ダメね。惚れた弱みってやつかしら。

彼の布団をそっとめくり、布団のお邪魔する。

彼の匂い、彼の温かさに包まれる。

は~幸せ。

ここまで来たらもうちょっとと欲が出てしまう。
彼の腕を操作してギュッと抱きしめてもらう格好をとる。

なんて幸せなのかしら……

彼の首筋や頬にキスをする。
愛おしくて仕方ない。


っと、彼が少し目を開ける。

そりゃこれだけ好き勝手動けば起きちゃうか。

「おはよ、ルルーシュ❤」

小声で彼に囁く。

低血圧のせいか、彼の動きが鈍い。

「……ミレイか…なにしてるんだ?」

「添い寝❤」

「……ミレイ!?」

彼が驚いて声を上げる。
私は急いで手で彼の口をふさぐ。

「ちょっと、リヴァルが起きちゃうじゃない!」
小声で彼をたしなめる。


「あ、ああ…すいません。
 いや、リヴァルが起きてもいいでしょう」

「ダメ。私が添い寝に来たのがバレちゃう。それに」

「それに?」

「今から二人っきりで露天風呂に行くんだから」

「…露天風呂に?二人で?」

「そうよ」

「リヴァルとシャーリーはどうするんですか?」

「せっかく恋人になったんだから二人で入りましょうよ」

「……はあ、分かりました」

はあって何よ、はあって。


彼が静かに布団から抜け出し居間の方に。私もそれに付いていく。

彼が干していた水着を手に取り…

「あ、ルルーシュ。水着はいらないわよ」

「…裸で入れとでも?」

「カップルなんだからいいでしょ?タオルだけでもいいじゃない」

「ミレイ、こういうことには順序というものがあって」

「すと~っぷ。ルルーシュ、よく考えて見なさい?
 前は水着で入ったのよ?それより露出度が下がるタオルなら文句を言われる筋合はないわ」

「……水着は元々他人に見られることを想定しているものです。
 タオルは違うでしょう」

それは女の子が言う台詞だ。

「私は別にルルーシュになら見られても構わないわ。
 ルルーシュは見られるの嫌?」

「タオルで隠してるなら別に…」

「なら問題ないじゃない。行くわよー」
彼の返事を聞かずに腕を掴んで歩き出す。


彼は諦めたのか素直についてきた。
ふむ、4年間もの間振り回した成果だ。

予約表は案の定、真っ白。
一番上に名前を書いていざ貸切風呂へ。

扉を開けて更衣室へ。
当然、仕切りなんてものはない。
さすがにちょっと恥ずかしいわね…。

ルルーシュが気を利かせたのか、パッパと上を脱ぎ、タオルを巻いて下も脱ぐ。
「ではミレイ、先に行ってますね」

「え、あ……うん」

私が誘ったんだから……
それに、水着よりは露出しないし…
よし!

気合を入れて服を脱いでいく。
タオルを胸元で絞め、下着も脱ぐ。

扉に手を掛け深呼吸。
よし!


扉を開けると海が見えた。

2日目に入った皆で入った露天風呂は檜風呂だったけど、こっちは樽風呂。

ルルーシュはシャワーの前で頭を流していた。

「ルルーシュ、背中流してあげるわ」

「え、ありがとうございます」

タオルを泡立てて彼の背中を流す。

「ルルーシュの背中って小さいわね~」

「…そんなことはないです。男ですから大きいはずです」

「身長はあるけど横幅がないわね」

「くっ、ならば帰ってからはプロテインの摂取量を」

「肉よ、肉。肉を一杯食べなさい。あとは適度な運動ね」

「…分かりました」

「はい、終わったわよ」


「ありがとうございます。では俺も」

「ありが…あ」
体はバスタオルに覆われている。
背中を流してもらうなら当然、これは外さなきゃいけないわけで……

「私はいいわ。だってタオルあるし」

「そうです、ね」

私はシャワーで軽く体を流し、彼と一緒に浴槽へ。

マナー違反だけどタオルはさすがにとれない。

樽風呂で大きさもそれほどないから、必然的に彼と密着する。

「ミレイ、そんなに密着するほど小さくないですよ」

く、ばれたか。


「でもいいでしょ。恋人なんだから」

彼の体にしがみつく。
彼氏とオーシャンビューの露天風呂に一緒に入るなんて夢のようだ。

彼の顔を覗くといつもの仏頂面。
私が抱き付いてるのに……

そんなに私の体は魅力がないのかしら。

せっかく二人きりなのに……

学校だけでなく、もう一つの方も卒業……

ってダメダメ。
私から欲しがったら私がいやらしいみたいじゃない!

それに、男の人って一度エッチしたらそればっかりになるって雑誌に書いてあったし…

そりゃ、私は彼とそういうことをしたいと思うし覚悟は出来てるけど…


それとなく胸を彼に押し付ける。

彼の眉間に皺が寄る。
お?反応あり。

更に彼の体に密着する。
今度は口が真一文字に。
ししし。効いてる効いてる。

「ミレイ」

「なあに?」

「俺はミレイのことが好きです」

「え?あ、ありがと」

「だから、ミレイを大切にしたいと思います」


つまり、遠回しに『今はそういうことはしない』ということだろう。


けど、大切にしたいって……なんかプロポーズ見たい…

ダメだ。顔が熱い!
私を惚れさせるつもりか!……いや、もう惚れてるんだけど。

まあ、焦ることはないか。

彼と私の『恋人』と言う関係は始まったばかり。

これから色んなことがあるだろう。
デートしたり、ケンカしたり、仲直りしたり、すれちがったり…

けど、彼とならそれらを全部楽しみたい。

焦ることはない。

彼への想いもゆっくりと育ててきた。

彼との関係もまた、ゆっくりと、大切に育てていこう。

「じゃあルルーシュ」

「何ですか?」



「用意ができたら、ルルーシュの方から襲ってね❤」



おしまい

見て下さった方、ありがとうございました~

趣旨?変わってる?

ああ、「その前」ってのは時系列の話で、この話をアニメに続かせるつもりはなかったんですよ。

趣旨ってそういうことで合ってるかな

またギアス書いてね

>>172
今またコーネリアとルルの書き溜めてます。

今度はギャグっぽいの。

よかったらまた見て下さい。

了解です できたら誘導をお願いします

>>174

無知ですいません。

新しくスレ立てしたら、そのURLをここに貼ればいいってことでしょうか?

そういうことです 新作も楽しみにしています

>>176
頑張ります。

暇でしたらこちらを

ルル「もっと風俗を活用せよ…か」
ルル「もっと風俗を活用せよ…か」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376374481/)

>>177
お前だったのか

>>179
おう、あの駄作を書いたの俺だ!

酉を使い分けてるんです

>>180
ルルが女キャラをおとしまくってハーレムをつくるSSがみたいと
リクエストしてみたり

>>182

ハーレムものですか

ネタが今のとこないんで書く予定はないですが
ちょっと考えてみます

宣言していたとおり、ルルーシュとコーネリアのssをやっています。

よろしければ見に来てください

ルルーシュ 「コーネリア、俺のものとなれ!」
ルルーシュ 「コーネリア、俺のものとなれ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378460799/)

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