ミカサ「ああエレン姫!目をお覚ましください!」(144)

エレン「……」

ミカサ「姫……」

ミカサ「私がもっと早く駆けつけていれば……」

エレン「……」

ミカサ「お許しください、エレン姫」

ミカサ「せめて愛の口づけを……」

エレン「だーーーーーーーーっ!!」




ミカサ「!?」

アルミン「ちょっとエレン!いいところだったのに!」

エレン「やっぱり無理だ!ミカサとキスなんて!」

アルミン「いい加減にしてよ!これでもう7回目だよ!?」

ミカサ「……エレン、さすがの私も傷つく」グスン

エレン「お、おい泣くなよ!ってかお前よく恥ずかしくないな!」

ミカサ「? 家族でキスは普通。何も恥ずかしがる必要はない」

エレン「そもそもなんでお前が王子様で俺がお姫様!?逆だろ!」

ユミル「仕方ないだろエレン……満場一致で抜擢されたんだからよ」クックック

エレン「~~~~っ!」

ジャン「あ……あんにゃろう……!」

ジャン「なんて贅沢な……!」

マルコ「ま、まあまあ」

ジャン「っていうか何だよこれ!なんで上位10人がこんなことしなくちゃいけねーの!?」

マルコ「仕方ないよ。卒業式の余興で出し物をするのは長年の伝統なんだ」

ジャン「~~~~っ!」

ユミル「あー、10番内に入らなくてホント良かったぜー……くっくっく」

アルミン「はぁ……埒が明かないから別のシーンに移ろうか」

アルミン「ミカサ、あっちでエレンとキスの練習してて」

ミカサ「喜んで」ヒョイ

エレン「はぁ!? ちょ、おい!!」ジタバタ

ミカサ「行こうエレン。私たちの愛の花園へ」

エレン「は、離せミカサ!やめろおおおお!」ジタバタ

クリスタ「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?」

ライナー「女王様であります」

クリスタ「ほっほっほ、その通り。この世で私の美貌に勝る者などいない!」

ライナー「ええ全くです」

クリスタ「……」

クリスタ「で、でももしかしたら……そのうち現れるかもしれぬな」

ライナー「何をおっしゃいます。女王様の美しさに敵う者などいるわけがない」

クリスタ「い、いやしかし……ほら例えば、最近やって来た召使いの娘とか」

ライナー「あり得ません。今の私はあなた様に夢中です」

クリスタ「な、何を言うのだこの鏡は!ええい!」ビシバシ

ライナー「ああっ!お許しください女王様!ああっ!」

アルミン「気持ち悪いよライナー!!」

ライナー「なぜだ!俺の渾身のアドリブを!」

アルミン「だからアドリブやめてよ!ちゃんと僕の台本に従って!」

ライナー「ぐぬぅ……」

アルミン「クリスタもクリスタだよ!途中で変なことしない!」

クリスタ「ご、ごめんアルミン……つい熱が入っちゃって」

マルコ「今日も仕事キツかったねハイホー」

コニー「? 仕事なんてやってねぇじゃ……いでっ!?」

ジャン「そうだなハイホー。仕事キツかったなハイホー」

ベルトルト「早く帰らないとハイホー」

サシャ「お腹が空きましたハイホー!」

アニ「……ハイホー」

ガチャッ




マルコ「むっ!誰かが僕らの家で寝てるぞハイホー!」

サシャ「本当だ!不法侵入ですよハイホー!」




エレン「……」スヤスヤ




ベルトルト「……しかしなんて美しい人なんだハイホー」

コニー「頭大丈夫かベルトルト。あれ女装したエレ……ぐはっ!」

ジャン「ああほんとうだ。なんてうつくしいひとなんだ」イライラ

アニ「……」

アルミン「カットカット!」

エレン「!」

アルミン「コニー、真面目にやってよ!これお芝居だからね!?」

コニー「?」

アルミン「マルコ、ベルトルト、サシャはいいとして……」

アルミン「ジャン!もっと演技に集中して!」

ジャン「……これでも結構努力してんだけどなぁ」ピキピキ

ミカサ「ジャン」

ジャン「! ミカサ」

ミカサ「さっきの台詞には気持ちが込もってなかった。どうして?」

ジャン「いや、どうしてって言われても……」

ミカサ「エレンはあんなにも美しい。あの姿を見て感動しない人はおかしい」

ジャン(おかしいのはお前だよ……)

アルミン「それとアニ!」

アニ「」ピクッ

アルミン「恥ずかしがっちゃダメだよ!そういう姿がかえって恥ずかしいんだからね!」

アニ「……別に恥ずかしがってなんか」

アルミン「じゃあちゃんと言えるよね!『ハイホー!』」

アニ「……」

アルミン「『ハイホー!』」

アニ「……」

アルミン「『ハイホー!』」

アニ「……」

アニ「は……ハイホ……」

ライナー「ぷっ」




アニ「……」

ライナー「!」

アニ「……あれ、こんなところに蹴りやすそうな鏡が」ドゴッ

ライナー「ぐほっ!?」

クリスタ「だ、だめだよアニ。そんなことしちゃ……」

アニ「クリスタ、さっきの演技良かったよ」

クリスタ「えっ」

アニ「アルミンはああ言ったけど、私は好きだった」

クリスタ「ほ、ほんと!?」パァァ

アニ「もう一回見せてよ」

クリスタ「も、もちろん!」

クリスタ「何を言うのだこの鏡は!ええい!」ビシバシ

ライナー「!! ああっ!女王様!」

アニ「気色悪い鏡だねハイホー」ドゴッ

ライナー「お、お前はいい!お前はやめ……」




ビシバシ!
ドゴッ!ドゴッ!




アルミン「あぁもう……本番まで日が無いのに……」

アルミン(こうして僕たちは日々練習を重ねていったが)

アルミン(一癖も二癖もある上位10人をまとめ上げることなど容易ではなかった)


アルミン(結局、一度もまともに通せることなく……)

アルミン(大きな不安を抱えたまま、ついにその日を迎えた)

ガヤガヤ ガヤガヤ…
ザワザワザワザワ…




ミリウス「いよいよか」

トーマス「いよいよだなぁ」

ミーナ「今年は寸劇やるんだっけ?」

トーマス「ああ、でも『寸』ってほど短くないらしいよ」

ユミル「アルミンが気合い入れて台本書いてたからなぁ」クックック

ミーナ「へぇ~!すっごく楽しみ!」

フランツ「純愛モノなら僕らがうってつけなのに」

ハンナ「仕方ないよフランツ、出し物は上位10人がやるって決まりだから」

ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!




ミリウス「おっ、開始のブザーだ」

トーマス「始まるぞ」

ミーナ「きゃー!」








アルミン「むーかしむかし、あるところに」

アルミン「美しい女王様が住んでいました……」

アニ「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」

ライナー「……女王様であります」

アニ「ふん、その通り。この世で私の美貌に勝る者などいない!」








ミリウス「あれ?アニ?」

トーマス「女王様役はクリスタって聞いてたけど……」

ユミル「アルミンが変えたんだよ。アニの方が女王役に向いてるってな」

トーマス「えぇ~!?」

ユミル「ったく……余計なことしてくれたぜ」

アルミン(……うん、いい感じだ)

アルミン(やっぱり小人役よりもハマってる)

アルミン(クリスタには申し訳ないけど……キャストチェンジは正解だったみたいだね)








ライナー「……ですが、じきにあなたは一番ではなくなります」

アニ「!?」

ライナー「後にあなたよりも美しい人間が現れ、あなたは二番になるでしょう」

アニ「な……」

ライナー「……」

アニ「何を言うのだこの鏡は!この世で一番美しいのは私だ!」

ライナー「いいえ違います。あなたは永遠の二番です」




アルミン(……ん?)




アニ「あり得ない!一体誰なのだ!その一番美しい人間というのは!」

ライナー「それは……」










ライナー「クリスタ・レンズです」

一同「!?」










アニ「……誰だそれは」ピキッ…

ライナー「小柄で金髪ロングで大きな瞳がとても可愛い」

ライナー「神様、女神、天使などの異名をもつ我らの癒しです」

アニ「……ほう、クリスタとかいう娘はそんなにも美しいのか」ピキピキッ

ライナー「美しいなんてもんじゃありません。結婚したい」

ライナー「あの方に比べれば、あなたなどミジンコ一匹にも満たないでしょう」

アルミン(ちょっとライナー!台本と違うよ!!)








アニ「……ほう、そうか。ミジンコ一匹にも満たないか」ピキピキッ

ライナー「ええ、私は嘘など吐きません。魔法の鏡ですから」フーッ

アニ「……フッ……フフ」

アニ「そうか……それは……」




アニ「とんだ不良品だったな」ドゴッ

ライナー「ふゴッ!?」

ドゴッ!ドゴッ!




アニ「鏡のクセになかなか割れぬな」

ライナー「ごはっ……あ、甘いですよ女王様……」

ライナー「この程度の攻撃、あなた様をクリスタに置き換えれば何の苦も……!」

アニ「相変わらず気色悪い鏡だね」




ドゴッ!ドゴッ!




アルミン(あぁもうメチャクチャだよ……)

ライナー「」チーン

アニ「ふん……ようやく黙りおったか」

ライナー「」

アニ「しかしマズいことになった」

アニ「クリスタとかいう娘も……潰さねばならんようだな」









クリスタ「……」カタカタカタカタカタ

ミカサ「クリスタ!しっかり!」

クリスタ「ど、どうしようミカサ!私もやられちゃう!」

ミカサ「落ち着いて。あれは演技。むしろアニはよく立て直した」

サシャ「でもマズいですよ、これ」

マルコ「どうしよう。もう思い切って中止にしようか?」

ミカサ「それは駄目。私とエレンのキスシーンがなくなる」

ジャン「むしろなくなっ」

ミカサ「ここまで来たら後戻りはできない。今の設定のまま続けよう」

エレン「はぁ!? このままの設定って……台本は!?」

ミカサ「そんなものない。ここからは完全にアドリブ」

ミカサ「私たち上位10人の……腕の見せどころ」

エレン「……!!」

ミカサ「大丈夫。アルミンならきっと合わせてくれる」

エレン「俺は……アルミンに任せてみようと思う」

アルミン「!!」

エレン「しょせん俺達は素人だ。バラバラにやったって、うまくいくはずがない」

エレン「だったらここは座学トップのアルミンに賭けた方が良いんじゃねえか?」

マルコ「なるほど、そうかも知れないね」

アルミン「エ、エレン……」

エレン「頼むアルミン、俺はどんな結果になろうと、お前の判断に従う」

エレン「この絶望的状況に、活路を開いてくれ!」

アルミン「……」

ジャン「……しょうがねえ、俺もアルミンの作戦に乗るぜ!」

クリスタ「わ、私も……」

コニー「もうそれ以外ねえよな、アドリブとか言われても、俺分かんねーし」

サシャ「わ、私もそれでいいです!」

アルミン「み、みんな……」

エレン「……ミカサ」

ミカサ「エレンが、そこまで言うのなら……」

エレン「決まりだな!」チラッ

アルミン「わ、分かった……何とかやってみるよ!」

エレン「頼んだぜ!アルミン!」


勢いで引き受けてしまったとはいえ、この状況からどう挽回すべきなのか
やはりネックになるのはお姫様役の問題だ
ライナーが勝手に「クリスタ」と叫んでしまったこと、これはもう取り返せない……!


アルミン「どうする……どうすれば…………」

コニー「おい!早く次のシーン行かねえとマズいぞ!」

ジャン「アルミン!とにかく姫役をクリスタに変更して続行するぞ!聞いてんのか!」

サシャ「わ、私はどうすれば……」


もはやこれは劇を完成させて済む問題ではない
劇をある程度形にして終わらせることができたとしても、展開によっては今日の出来事が将来の遺恨となりかねない
既にエレンとのキスシーンを揺るがされたミカサは、時間と共にその怒りのボルテージを高めている
ここでしくじれば、ライナーが削がれて済む問題ではなくなる……!


アルミン「……くそっ!」

かといってキャストを安易に変更しても、このメンバーでは劇の進行に支障をきたす可能性が大きい
急な変更に従ってくれそうなのは、ベルトルト、マルコ、コニー、サシャ、クリスタの5名
しかし脚本の内容を誤認することが多いコニーと、突発性奇行が目立つサシャ、不測の事態に過呼吸寸前のクリスタ、この3名は頼りにならない
あてにできるのは残りの2名のみ……


ライナー「俺の役はもう終わりか。早くクリスタ姫を拝みたいぜ」


黙ってろよゴリラァァ!!


マルコ「……やっぱり、練習通りの進行で行くしかないんじゃないかな?」

ベルトルト「もうそろそろ3分経つ。決断するしかないよ」

ミカサ「今まで通りで問題ない。私は完璧に演じ切ってみせる」

エレン「お前ら少し黙ってろよ!今アルミンが必死に考えてんだろ!」

ライナー「なあアルミン、俺は急遽王子様役になっても構わないぞ?」

アルミン「…………ミカサ」チラッ

ミカサ「……」コクッ


ヒュッ

ドゴッ!!

ライナー「ごふっ……!」

バタッ…

クリスタ「ア、アルミン……やっぱりわ、私が、お、お姫様役……やる、から……!」ガクガクガク

アルミン「……いや」

クリスタ「え?」

アルミン「クリスタはお姫様とは別の役に変更してくれ」

アルミン「次のシーンは……マルコに行ってもらう!」

~お姫様危うし!放たれた刺客!~

マルコ(猟師)「俺は女王様の命によりお姫様を狙う猟師! クリスタ姫はどこだ~?」キョロキョロ

マルコ(猟師)「……おお!見つけたぞ!」

マルコ(猟師)「あそこで花と蝶に戯れるあの姿は、まさしくクリスタ姫!」


コニー(蝶操作)「フンッ、ハッ、フンッ」バッ ババッ

サシャ(花揺らし)「たぁー!とぉーとぉー!やぁー!」ガサガサ… ガサ…

エレン(姫)「う……うふふ、ふふ……」ヒクヒク

――舞台裏少し前――

ジャン『エレンの配役は変えないだと?』

アルミン『うん、エレンには、劇の間だけクリスタと名乗ってもらう』

アルミン『今さら役をゴチャゴチャ変えたって余計混乱するだけだ。それなら、名前だけ変えて辻褄を合わせるしかない』

ミカサ『さすがはアルミン。素晴らしい采配に感心する』

マルコ『…いいかも知れないな』

マルコ『幸い、エレンはまだ有名人じゃないからね』

ベルトルト『…確かに、エレンが巨人の肉体を生成し自在に操れることは、僕たちを含めまだ誰も知らない』

コニー『!!?』

アルミン『その通りだベルトルト。さほど有名になってない今なら、エレンをクリスタと言い切っても誤魔化せると思うんだ』

サシャ『言われてみれば、何となくエレンの顔は「クリスタ」って名前が付いてるような気がします!』

ジャン『へへっ、考えたなアルミン!……ま、それで行くしかねえよな』

エレン『……やるしか、ないか!』ゴクッ

エレン『大岩作戦の時にいっぺんにバレそうだけど、もうその時には劇どころじゃないからな』

マルコ『……よし!衣装もバッチリだ!行ってくるよ!』

アルミン『頼んだよ、マルコ!』

コニー『ちょっと待ってくれ! 俺だけ話に付いていけないのは、俺がバカだからじゃないよな!?』

アニ『アンタは蝶役だろ?さっさと行ってきな』

サシャ『ほら、行きますよ?コニー』グイッ

コニー『ちょっ、おい!……くそっ!後で説明しろよ!』

――――――

マルコ「あれがクリスタ姫……」

マルコ「片手で抱きかかえやすそうな腰周り…」

マルコ「全身から放たれる攫ってくれオーラ…」

マルコ「重い物でも担いで背負っていたら、思わず近くまで行って助けてあげたくなる儚げな姿…!」

マルコ「何て……何て美しいんだ!」

マルコ「あんな美しいお姫様の命を奪うだなんて、俺にはできない!……よし!」

ガサガサッ… バッ

エレン「あら……?」

マルコ「クリスタ姫、女王様があなた様のお命を狙っております」

マルコ「マルコ「クリスタ姫!私は女王様の家来の猟師にございます!」サッ

エレン「えっ? 一体どうされたのです?」

あなたが生きていると知れば、女王様はきっとあなたを許しはしません」

マルコ「でも今ならまだ逃げることができます。ささ、お早く!」

エレン「クリスタ……?」

サシャ「……クリスタ姫ー、早くお逃げくださーい」ガサッ ガサッ

コニー「ク、クリスタ姫ー、すぐに逃げるんだチョウ、早くしないと殺されてしまうチョウ」ブンブンッ

エレン「……??」



アルミン「エレーン……!」



エレン「あ、俺か! はい逃げます!」バッ

マルコ「クリスタ姫、どうかご無事で……」

チャーンチャーン♪


アルミン「ふぅ~……危なっかしいな、エレンは……」

ミカサ「アルミン、もう私の準備はできてる。早くお姫様を殺すべき」

アルミン「ちょっと待っててよ、ミカサの出番はもう少し先だから」

マルコ「いやぁ、一時はどうなることかと思ったけど、何とかなったみたいだね!」

ベルトルト「後は、予定通り僕が毒入りのジャガイモをエレンに渡せば、ほぼ元通りだね」

アルミン「ふふっ、だからクリスタ姫だってば。ベルトルトも気を付けてよ?」

ベルトルト「おっといけない。そうだったね」ニコ

ガバッ

ライナー「ん……? 俺はどうしてたんだ??」キョロキョロ

アルミン「あ」

ミカサ「チッ……浅かったか」

クリスタ「ライナー、大丈夫?」

ライナー「あ、ああ、問題ない」

アルミン「ライナー、今は無理をせずに寝ていたほうがいい」

ライナー「ん?そうなのか? ベルトルト、劇はどうなったんだ?」

ベルトルト「今から僕が行商人の老婆に化けて、クリスタ姫を抹殺しに行くところさ」

ライナー「何ぃ!? そんなことは許さん!」バッ

アルミン「ちょ! ライナー!声が大きい! 客席に聞こえる!」

ジャン「おいライナー!落ち着け! クリスタ姫っつうのはエレンのことで!」

ベルトルト「参ったな、君は思い違いをしてるんだよ」グググ…

ライナー「黙れ! 天使、いや女神に手をかけようだなんて、例えお前が巨人に変身しても絶対に許さんぞ!」グググ…

クリスタ「あ、あわあわあわわわ……」


もうしばらくしたら老婆登場のシーンなのに、ベルトルトが動けない
このままじゃ、またしても劇が中断してしまう
あのゴリラを何とかしないと……


アルミン「ラ、ライナー! 君に大役を命ずる!」

ライナー「ん?何だ?」グググ…

アルミン「コホン……君には小人役のクリスタを守ってもらいたいんだ」

ライナー「何っ!?……詳しい話を聞かせてくれ」サッ

アルミン「もうすぐ小人たちが仕事を終えて家に帰ってくるシーンに入る」

アルミン「帰り道の途中で不測の事態が起こるかも知れない」

アルミン「君には、クリスタにもしもの事があった時のためのボディーガードの小人をやって欲しいんだ」

ライナー「何だと!そんな役があったのか!」

アルミン「そしてこの役を任せられるのは、君しかいないんだ、ライナー」

ライナー「……分かった、その大役、心して引き受けよう」

アルミン「しかしクリスタの護衛には万全を期す必要がある……ミカサ!」

ミカサ「?」クルッ

アルミン「君には急遽、新しい小人「仮面の小人」をやってもらう」

ライナー「なるほど、確かにミカサがついていれば、どんなことがあろうとクリスタを守り切れるな!」

ミカサ「??」

アルミン「頼むミカサ……もしライナーが何かしでかしそうになったら……君の拳で……」ボソボソ

ミカサ「!……分かった。引き受けよう」

ジャン「おい急げ!もう小人登場のシーンだぞ!」

~未知との遭遇!小人たちとの出会い!~

ガチャ…

ジャン「いや~今日も仕事したな~!」

サシャ「そうですね~、今日はごちそうたっぷり食べたいですね~」

クリスタ「あ~疲れた~」

ライナー「……」

ミカサ(仮面)「……」

コニー「ん? おい待て、ベッドに誰かいるぞ?」

エレン「ふわあぁ……ごめんなさい、勝手にベッドを使ったりして」

コニー「お、お前は一体誰だ!?」

サシャ「怪しいヤツ! 今日の晩メシにしてしまいましょう!」

ジャン「待て待て! とにかく話を聞いてみよう!」

エレン「私、追っ手から逃れてきたクリスタ姫と申します」

ライナー「ん??」

コニー「追っ手? 何の話だ?」

エレン「実は私、女王様に命を狙われてるんです」

エレン「女王様が私のことを諦めるまで、しばらくの間、ここで匿って欲しいんです」

ジャン「ふうむ、なるほどな! きっとアンタのその美しさにやきもちを焼いたんだろう!

サシャ「あの嫉妬深い女王の考えそうなことです!」

ライナー「ていうか、こいつはエレンだろ」


サシャ「エッ……」

ジャン「……オイ」

コニー「ライナー……!」

エレン「わ、私はクリスタ姫ですよー?」

ジャン「あ、いや、悪いな、クリスタ姫」

ジャン「コイツは勝手に自分の考えた名前を、人に付ける悪い癖があって……」

ライナー「いや、お前はどう見てもエレ―――」


ドゴッッ!!


ライナー「」

バタッ…

ミカサ(仮面)「始末完了」

ジャン「……よ、よし!女王が諦めるまで、アンタはここで暮らすといい!」

エレン「本当ですか? ありがとうございます」

チャーンチャーン♪



アルミン「ふぅ、やっぱりミカサは頼りになるな」

マルコ「でもどうするんだい?アルミン」

アルミン「え?」

マルコ「気絶したライナーを置きっぱなしにしてたら、場面が不自然にならないかな?」

アルミン「それは大丈夫さ……ほら、ミカサが持って来てくれた」

ミカサ「ゴリラの拘束を頼みたい」ズルズル…

マルコ「なるほど、ちゃんとそこまで見越してミカサを投入したんだね」

アルミン「そうさ、そしてこの小人一人の外出にも、ちゃんとした意味がある」

マルコ「さらに準備していたのかい?」

アルミン「まあ見ていてよ……ミカサ、頼んだよ?」

ミカサ「了解」コクッ

~さらば姫様!毒撃の老婆!~

ミカサ(仮面)「……」テクテクテク…

アニ(ナレーション)「小人の一人が気ままに散歩していると、そこに怪しい人影を見つけます」

ミカサ(仮面)「!」サッ

ミカサ(仮面)「あれは……」ジー

ベルトルト(老婆)「ヒーッヒッヒッヒィ! 家来どもは頼りにならない!」

ベルトルト(老婆)「こうなったら自分でクリスタ姫を始末してやるよ!」

ベルトルト(老婆)「この毒入りジャガイモを使ってな!」バッ

アニ(ナレーション)「何ということでしょう。女王は老婆に化けて、クリスタ姫の命を奪おうと追って来ていたのです」

ミカサ(仮面)「これは一大事」

ミカサ(仮面)「クリスタ姫に知らせないと」

タッタッタッ

アニ(ナレーション)「女王の企みに気付いた小人、果たしてこの危機をクリスタ姫に伝えられるのでしょうか?」



マルコ「……なるほどぉ、これならミカサ一人が家から出て行ったのも自然になるね」

アルミン「うん、順調だ。後はクリスタ姫が教えた通りにできるかどうか……」

ガチャ…

ミカサ(仮面)「はぁ、はぁ」

コニー「あ、戻ってきた」

クリスタ「お帰りなさい」

ジャン「どこ行ってたんだよ」

サシャ「夕食の準備、一緒に手伝ってください」

ミカサ(仮面)「クリスタ姫の一大事、早く伝えないと……」

ジャン「クリスタ姫? 姫ならまだベッドに腰掛けてるぞ?」

ミカサ(仮面)「分かった」タッタッタッ

ガチャ

エレン「あら小人さん、何か用かしら?」



アルミン「……!」ゴクッ



ミカサ(仮面)「……」

エレン「……?」

ミカサ(仮面)「エレ……クリスタ姫」

エレン「は、はい」

ミカサ(仮面)「あなたは、今すぐ毒入りのジャガイモを食べて死ぬべき」

エレン「……え?」



アルミン「ミ……ミカサァーーッッ!!」

マルコ「アレレ……」

ミカサ(仮面)「あなたは毒殺されないと、王子様に見つけてもらえない」

エレン「ミ……小人さん??」

ミカサ(仮面)「生きていても、王子様と会えなければ何の意味もない」

ミカサ(仮面)「だから……むぐっ」

ジャン「いや~!度々悪いなクリスタ姫!」

ジャン「コイツは思っていることと逆のことを言う悪い癖があってな!」

ミカサ(仮面)「……」バタバタ

エレン「は、はぁ……」

ジャン「クリスタ姫!コイツがこれだけ言うんだ!」

ジャン「もし怪しい人が訪ねて来ても、絶対に心を許しちゃいけないよ!?」

エレン「あ、はい……」

アニ(ナレーション)「しかしクリスタ姫はやってきた老婆の甘言に騙され、ジャガイモの毒であえなく命を落としてしまうのでした」

ジャン「何で死んでしまったんだぁ!クリスタ姫~!」

コニー「生き返ってくれよぉ!お姫様~!」

クリスタ「死なないで~!うわぁ~ん!」

サシャ「クリスタ姫ーー!」

アニ(ナレーション)「嘆き悲しむ小人たち、そこへ一人の男がやって来ました」

ミカサ「ここに美しい姫が眠っている気がする」キリッ




マルコ「いやー、一波乱あったけど、ジャンの機転で何とかなったみたいだね」

アルミン「何でそうやって……勝手なことばっかり……」ブツブツ

マルコ「あ、ホラ!王子様がクリスタ姫を見つけたよ!いよいよ劇のフィナーレだ!」

エレン「……」

ミカサ「なんと美しい……せめて一度だけでも口付けを」グワッ!

エレン「……!?」サッ

ミカサ「……クリスタ姫、あなたは死んでるのだから、ガードしてはダメ」

エレン「……」プルプルプル

ミカサ「往生際が悪い」

ミカサ「私の口付けを受けることはもはや運命、逃げてはいけない」

ミカサ「この手はどかしておこう」パシッ

エレン「!」

ミカサ「では口付けを」ズイッ!

ジャン「あ~~~っっ!!」

コニー・サシャ・クリスタ「「「!?」」」

ジャン「エレン!やっぱ許さねえぞ!」

ドタドタドタ

ジャン「役に選ばれたぐらいでミカサとキスだなんて、ぜってぇ認めねえ!!」

ドゴオッ!!


ジャン「ぐふぅ!!」

ミカサ「今は私とエレンの大事な瞬間。誰にも邪魔はさせない」

ジャン「くっそおお!……そこをどけ!ミカサァ!!」

ミカサ「断る」スッ…


ドガッ! バキッ! ガゴッ!

ジャン「へぶっ!おご!はがっ!」

エレン「おい止めろ止めろ! 生き返った!今生き返ったから!!」ガバッ

ミカサ「それはめでたい。では復活の印にキスを」

ジャン「させるかあああ!!」

ミカサ「……不毛」


ガスッ! ズゴッ!

ジャン「うごっ!ほべっ!」

マルコ「中止中止ぃ!ジャン!もう止めて! ミカサも!!」

アニ(ナレーション)「…………」

アニ(ナレーション)「こうして、クリスタ姫は王子様の愛と小人たちの謎パワーにより、奇跡の復活を遂げました」

アニ(ナレーション)「その後お姫様と王子様は、小人たちのとの小競り合いを繰り返しながらも、幸せに暮らしました」

アニ(ナレーション)「めでたしめでたし」ペコッ

パチパチパチパチパチ……(拍手)

マルコ「あーあ、結局最後はこうなっちゃったかー」

マルコ「ま、これもジャンらしいと言えばらしいよね」

アルミン「」

マルコ「あれ?アルミンどうしたの?」

マルコ「謎の縦線がいっぱい入ってるし、色も付いてないよ??」ユサユサ


アルミン「」


パタッ…

マルコ「アルミン……」




マルコ「アルミーーーンッッ!!!」






後からミカサに聞いたんだが、フィナーレのクリスタ姫はこの上なく綺麗な姿だったって話だ
できることなら、俺もその御姿をご拝顔と行きたかったぜ
全く、こんな大事な時に気を失っていただなんて、俺もヤキが回っちまったようだ

いろいろと記憶が曖昧な所があるが、俺に言えることは唯一つ
クリスタは女神
そしてクリスタと結婚したいってことだ

じゃあそろそろ俺は兵士の任務に戻らないといけねえ
生きていたらまた会おうぜ!


力の限り FIN!!!!!!

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