スレイヤー問わず語り 巨人編(55)

スレイヤー「ん、んん……」

スレイヤー「おや…… いや、これは失敬。せっかく君が来てくれたというのに居眠りをしてしまっていた」

スレイヤ―「……そうだな、ここに来てくれたということは私の話を聞きたくなった、ということだな。それが謝罪の言葉の替わりでいいかね?」

スレイヤ―「さて、どの話をしようか……いや、すまない。耄碌した覚えはないのだが、寝起きというのはどうやら他人ならぬ身であっても頭の回転が悪くなってしまうようだ」

スレイヤー「……ふむ、そうだな。軽い話でもしながら考えるとしようか。君もいつもに比べて随分と早い時間に来たのだ、今日はそれなりに時間はがあるのだろう?」

スレイヤ―「さて、今私は転寝をしてしまっていたわけだが、そんなとき人は夢を見るものだろう?人は深い眠りの時ではなく、浅い眠りの時に夢を見ると聞いている。実は私もそうでね」

スレイヤ―「しかし、夢というのは不思議なものだ。取り留めもないようなことから、時に自らの想像を上回るような様々な出来事を見せてくれる」

スレイヤ―「ただ……目覚めてみるとどんな夢だったか大抵覚えていないのが虚しいところだ。尤も、どれだけ素晴らしい体験をしたとて所詮は己が心の内だけで終わってしまう夢そのものが虚しいのかもしれんがね」

スレイヤ―「だが、そんな儚いものであっても何故か強く心に残るものもある。君にもあるだろう?そういった夢が。私の見たある夢もそうだ。聞いてくれるかね?少々不思議な夢の話だ」

という感じでやっていきたいです。
スレイヤーっぽくない言動がこれからも多々ありますが……

ギルティギアのドラマCDとかクッソ懐かしいなおい

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スレイヤ―「私はかつてアサシンという組織を率いていた。簡単に言えば暗殺集団、しかしその根底にはダンディズムがあった。大義なき殺戮は行わず、法で裁けぬ者に制裁を与える。それが組織の理念だった」

スレイヤー「しかし、水は低きに流れた。流れてしまった。今の組織の在り様は私にとって甚だ不本意であった。故に私は自らが創り上げてしまった澱みにけじめをつけることにした」

スレイヤー「その時の様子を語るつもりはない。そうだな、簡単に言えば……死者に人生を捧げようとする哀れな若者に迷いを払わせるために組織を彼に預けておくことにした」

スレイヤー「ああ、ここまでは紛うかた無き現実の出来事だよ。この後のことが夢の話だ」

スレイヤー「ともあれ、私が成すべき事は終わった。もはやこの世界に私のような者は必要ないだろう。君らのような若者に世界を託し、私は隠遁することに決めた」

スレイヤー「この世界ではない、本来、我々異種が住むべき世界への隠遁だよ。一度旅立てば最早戻れぬその世界、我らの仲間は皆、彼の地へと旅立っていった」

スレイヤー「そして私も彼らに倣い、彼の地へと向かった。……いや、向かったはずだった、と言うべきか。何せ私は今こうして君に斯様に益のない話を聞かせているのだから」
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スレイヤー「……彼の地にて   化膿しそうな   彼女の目」

スレイヤー「う~む、いかんな。彼の地へと足を踏み入れた心境を歌ってみたつもりなのだが……勘が鈍るほど俳句から離れていたわけではないのだがな」

スレイヤー「そもそもだ。ここは彼の地ではないような気がしてならん。そんなはずはないのだが……どう思う、シャロン?」

スレイヤー「……そうだな、この地をよく知る私が確信を持てぬのだ。君に判るはずもないか……。ああシャロン、君を責めているわけではないよ?」

スレイヤー「のんびりと俳句を嗜むのは後にしよう。まずはここが真に私の隠遁先かを見極めねばなるまい。行こう、シャロン」

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スレイヤー「何の当てもなく歩き出した私だがそこに何らの不安はなかった。立ち塞がる障害などこの身一つあればたちどころに粉砕できる。まして傍らには愛する妻が、守るべき女性がいるのだ。何者にも負けるはずがない」

スレイヤー「しばらく歩いて行くとようやく生き物の姿を捉えることができた。かなりの距離があったが人の子とは出来が違うこの目はしっかりとそれを見ることができたのだよ」

スレイヤー「ただ一つ疑念があった。幾ら平坦な土地であったとはいえ、幾らこの目が世に言う千里眼に近き代物とはいえ、人間ほどの小さなものを視界に収めることができぬほどの距離が開いていたからだ」

スレイヤ―「どうしてだろうか?確かめてみる他あるまい?私はその人間のもとに向かうことにした。まぁ、人間とは言っているが私のように人の姿をした異種かもしれなかったがね」

スレイヤ―「そして近づくごとに謎は明らかになっていた。この目がそれの姿を捉えられたのは、それが人の形をしていながらも人間とは比べ物にならない大きさをしていたからだった」
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スレイヤー「ふむ、人ならざる者。それが即ち我々異種であるが…… 巨大な人の姿を取ることはあっても、もっと慎み深い装いをするはずなのだが」

巨人『…………』

スレイヤー「いやはや、一糸纏わぬ裸体とは恐れ入る。見事鍛え上げられた…わけでもない緩んだその肉体を白日の下に晒すその行為…… 逆に風流なのかもしれんな」

巨人『…………』

スレイヤー「気を悪くさせてしまったかね?すまない、ここにまだ来たばかりでね。そのスタイルがここの流儀だというのなら受け入れざるを得ないとは思うのだが……」

巨人『…………』

スレイヤー「……言葉すら交わせぬほどの無礼だったかな?ならば先ほどの失礼を詫びよう。我が名は…スレイヤー。貴殿の名は?」

巨人『…………』

スレイヤー「フム、この字になってから随分と経つがご存じなかったか?では、古き時より名乗りし生来の名をば……」

巨人『…………!!』バクゥッ

スレイヤー「……薄々そうではないかと思っていたが、やはり知性無き存在か。む、違うぞシャロン!私は最初から気づいていたさ。しかし、万が一ということもあるだろう?」

巨人『…………』バッ

スレイヤー「と、どうやら私たちを食べようとしているようだな。なるほど、そもそも闘争の始まりは生きるためだ。獲物を喰らうために戦う。そして、生きるために戦う…… 戦わなければ生き残れぬのが世の理だからな」
のだよ」

スレイヤー「……いかんな。下界に降りていた時の感覚が抜けきっておらんようだ。この世界の理があの世界と同等ともわからぬのに」

スレイヤー「では、君に闘いというものをご教授しよう。知性無き君に理解できればいいのだがね」

巨人『…………』ズンッ ズンッ

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巨人『…………』ズズゥ・・・ ン

スレイヤー「やれやれ、喧嘩相手にするには余りにも退屈だ。この地に住まう者が皆彼のように心無き者ばかりだとしたら…… 彼の地に来るべきではなかったな」


スレイヤー「尤も、ここが彼の地ではない可能性の方が高いがね。さて、行こうかシャロン。できれば早々に言葉を交わせそうな者と出会いたいものだ」

巨人『…………』ズモモ・・・

スレイヤー「そのまま寛いでいてくれても構わんかったのだが…… 仕方あるまい、もう少し相手をして差し上げよう」

巨人『…………』ヌゥゥ・・・

スレイヤー「しかし鈍いな…… はあああぁイッツレエエェイ!」

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スレイヤー「いやぁ、しかしこの巨人というのは正に人に嫌われるタイプだった。しつこいにも程がある!本当にそう叫んでもやったのだが、腕が折られようと足を吹き飛ばされようと私に立ち向かってきた」


スレイヤー「しかも戦っているうちに傷を負った箇所がどんどん再生していくのだ。その様を見て私はかの殺戮兵器、ギアを思い起こしていた」

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スレイヤー「……最早賞賛に値するタフネスだよ。頭を失いながらも尚向かってくるとはね。ム……?」

巨人'S『…………』

スレイヤー「仲間の救援に来たか、それとも血の匂いを嗅ぎつけて共食いをしに来たか…… 願わくば後者であってほしい。これ以上彼を相手するのは面倒だからな」

スレイヤー「行こう、シャロン」

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スレイヤー「そうして私は離れた場所から彼らを観察することにした。すると驚いたことに彼らは目の前に横たわる弱った巨人には見向きもしなかったのだ」

スレイヤー「助けるわけでも食べるわけでもなく…… 不思議な生態だった。知性ある人間が人道を重んじて同族を食すことを躊躇うのとはまるで違う」

スレイヤー「ただただ興味がない、そんな風であった。先も言った通り、生き物というのは生きるために戦い、獲物の血肉を喰らって生きる。我らのような者ならともかくね」

スレイヤー「考えられるのは大きく分けて2つ。彼らが身体に毒を持っているから食べられない、もしくは…… 単に食指が動かない。そのどちらかであろう」

スレイヤー「さて、その後もしばらく観察を続けたが、馬が通り過ぎても巨人たちは反応しなかった。ああ、もちろん馬の足が速くそもそも追いつけないから、とも思ったよ」

GGの巨人といえばポチョムキンさん

すげー脳内再生率
面白いんで期待

スレイヤー「しかしそれは違った。巨人たちは視界に入っているはずの馬を目で追うことすらしなかったのだ」

来たまってた!(感涙

スレイヤー「そのことからも、そして彼らが人間の姿を捉えた瞬間そちらに向かって走り出したことから見ても、巨人たちの捕食対象は人間なのだと感じたよ」

スレイヤー「ただ、そうなってくると次に気になるのは何故人間だけを狙うのか、だ。ところで君は、かつて存在していたというコアラなる草食動物のことを知っているかね?」

スレイヤー「彼らは他の生き物にとっては有毒な植物の葉、即ちユーカリの葉を食べることができた。何故か?それはコアラたちが植物に含まれる毒素を分解する力を持っていたからさ」

スレイヤー「そうして他の誰も食べぬものを糧としたことによりコアラはその種を維持できた。しかし、これは彼らの周りには同じく植物を食べる草食動物が多かったゆえの話だ」

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