エレン「俺が、超高校級の幸運?」【※安価】(899)

・弾丸論破の世界観を借りたパロ(巨人のいない壁の中が舞台)
・別に殺人とかはないけど、夏のアニメを丸々楽しみたい人は閲覧注意
・プロローグを過ぎれば安価多め
・二作目(一作目は黒歴史)なのでご容赦をば

ミカサ「エレン・・・まさか貴方が選ばれるなんて・・・これで学校が一緒になった。うれしい」キラキラ

アルミン「す、すごいや、僕の友達が二人も希望ヶ峰の生徒だなんて!」キラキラ

エレン「・・・ああ、そうだな・・・」


俺の名前はエレン・イェーガー

医者の父とそこそこ美人の母を持つ点では恵まれているが、

それ以外――俺自身はその辺によくいる、ごく平凡な15歳男児だ。

強いて言うなら、幼なじみの片方が巷で人気のアイドルで、

周りからやっかまれることがあるくらいかな。

その幼なじみのミカサは、今度、内地にある全寮制の高等学校

――希望ヶ峰学園へ入学することが決まっていた。

もう一人の幼なじみであるアルミンと、俺の家で入学祝いをしようとしたとき、

俺にも同じところから入学案内が届いたのだ。

アルミン「エレン、嬉しくなさそうだね。希望ヶ峰学園といえば、学園側から選ばれたエリートだけが通える学校だよ」

     くじ引きで選ばれたとはいえ、本当に幸運じゃないか」

エレン「いや、それは別にいいんだけどよ・・・ミカサと一緒ってのがな・・・」

アルミン「ああ・・・ますますエレン離れしないだろうね・・・君たちのこと心配だよ・・・」ホロリ

そして時は過ぎ、故郷とアルミンに別れを告げて俺たちは入学した

各分野で若き才能を開花させた、超高校級のエリートがあつまるこの学校に

・・・

・・・・・

・・・・・・・

エレン(・・・あれ)ボー

エレン(なんで俺、机に突っ伏して寝てるんだ・・・?)



プロローグ「うぇるかむ to 希望ヶ峰学園」



エレン(そうだ。確か一番乗りでミカサと教室に入って・・・)

エレン(ここまでの旅で疲れたからちょっと寝ようって話になったんだ)

ミカサ「エレン・・・おはよう」

ネタバレ・・・とは行かないつもりだが、初見さんを悲しませたくないのでネタバレありとしておきます。ご注意

??「おお、やっと起きましたね! ねぼすけさん」モグモグ

エレン「誰だおまえ・・・食べながら喋るなよ、芋ッカスが散って汚ねえだろ」

サシャ「私ですか? サシャ・ブラウスですけど。ちなみに、この芋の名は『さやか』・・・」

サシャ「大粒なので丸ごと蒸かして食べるのが一番の品種です!」ガジガジ

ミカサ「エレン、彼女は超高校級の料理評論家。同級生」

エレン「同級生!? や、だから芋が飛んできてんだよ汚ねえなぁ!」顔フキフキ

??「お、やっと起きたな・・・こんなところでよく熟睡できたなぁ、お前」

??「へえ、彼がアイドル・ミカリンの幼なじみなのか。超高校級の幸運なんだって?」

ライナー「俺はライナー・ブラウン。超高校級の体育委員とか言われて編入させられた

     とくに実績はないが、まあよろしくな」

ベルト「僕はベルトルト・フーバー。一応、超高校級のマネージャーだ。

    主にアスリートのマネジメントをやってるけど、基本的にオールジャンル対応かな」

1,2の要素を混ぜてますが、1のほうが舞台設定等強めです

エレン「俺は・・・エレン・イェーガー。今年の『幸運』枠らしい」

ライナー「超高校級の幸運って、ガチで全国一般の満15歳からくじ引きで選定するんだったよな」

ベルト「それがミカサの幼なじみってわけだから、不思議な縁があるものだね」

ライナー「お前、今日はよく喋るな」

ベルト「どうせすぐ存在が駆逐されるからね、今のうちに話しとかないと」

ミカサ「当然。私とエレンの深い絆が生んだ結果。やはり私たちは離れられない」

???「ふっざけんなよ死に急ぎ野郎が!」

ライナー「び、っくりした・・・えーっと、ジョソ・キルトシシューだっけ?」

ジョソ?「ジャン・キルシュタインだゴリラ! ほとんどかぶってねえじゃねえか!」

ジャン「それより、エレンてめぇ!」ツカツカ

ジャン「なんの才能もない金魚の糞のお前が! のこのこと高校までついてきやがって!」ガシィッ

エレン「はなせよ、学ランが破けちゃうだろうが!」

ミカサ「二人ともやめて・・・エレン。喧嘩はダメ」

ジャン「あ、はい・・・///」パッ

エレン「くそ、いつまで経っても母親ヅラしやがって・・・」プンプン

???「なんだ、ジャン知り合いかい?」

ジャン「ああ、マルコ・・・不本意だが俺の活動の性質上、こいつによく会うんだよ・・・」イライラ

マルコ「彼女の幼なじみだっけ・・・やっかむのも無理はない」クス

マルコ「エレン。僕はマルコ・ボット。超高校級の指揮官だ。

    ジャンとは同郷だけど最近まで陸軍士官学校に通ってたクチなんだ。よろしく」

エレン「マルコ、だな・・・よろしく。で? ジャン、お前はどうしてここにいるんだ?」チラ

ジャン「当然だろ? 俺は泣くストーカーも黙るミカサ・オフィシャルファンクラブ会長だぞ?」

ジャン「超高校級の会長としてだよ!」ドン!

マルコはジャンと顔なじみってことにしてます

ミカサ「下手なジャーマネより使えるのは認めてる・・・」ペッ

エレン「唾吐きやがったw」

ジャン「生ツバ・・・」ジー

マルコ「地味に辛辣なことを言うアイドルだなあ・・・テレビとは大違いだ」

ミカサ「私は元々クールキャラだから大差ない。この業界、もっと黒い人は多い・・・」

???「つぎ俺! 俺はコニー・スプリンガー! 肩書きは超高校級の>>18――」

馬鹿

コニー「超高校級のバカなんだ! よろしくな!」ニッコー

エレン「なん・・バ・・・???」

コニー「ああ! パラメータ素早さ極振りの、すげえ究極のバカなんだってよ!」

ジャン「おい、この学校国税使ってんだろ? バカを育んでどうするつもりだ?」

コニー「入学前に理事会の人が来たときには、

   『個性を伸ばし、他のついずいをゆるさない人材に育てる』ってゆってたぞ」

マルコ「素早さ極振りなら、僕なら是非育てみたくはあるなあ」

ライナー「指揮官殿はそう見るのか」

コニー「まあ、いいじゃんバカでも。よろしくな、エレン!」

エレン「お、おう(ちょっと親近感わくのは何故だ・・・?)」


???「あ、そろそろ私も自己紹介いいかな?」キラキラ

エレン「? なんだ・・・なんか光ってるぞ・・・!?」

???「え? あ、また発光してるの・・・? まぶしくてごめんね///」キラキラ・・・シューン

エレン「止まった・・・」

???「私、クリスタ・レンズ。ちょ・・・超高校級のて、天使、らしいの

    ・・・自分でもよくわかんないけど////」モジモジ

ライナー(結婚しよ)

ベルト(天使だ・・・)

サシャ(なんでしょう、初対面なのに神様と讃えたくなるこの衝動は・・・!)モグ・・・!

エレン「え、天使ってやっぱいるのか!!! つ、翼は・・・!?」キラキラ

ジャン「は? いい歳してなにマジレスして・・・」

ミカサ「余計なことを言うな馬面・・・」ボソリ

ジャン「ぇ・・・」

ミカサ「イェーガー家および近隣住民の取り決めで、エレンはサンタさんの正体も知らない」ボソ

ジャン「マジっすか。シガンシナ区キメぇ」

ミカサ「エレンの純情は街の財産。私が言いたいこと・・・わかる・・・?」

ジャン「・・・Yes,Ms.」

クリスタ「翼・・・翼はないと思うけど・・・」

クリスタ(でも天使ってことで選ばれたんなら、私が知らないだけで、実はあったりして・・・///)クス

エレン「ないのか・・・」シュン

クリスタ「あ、でも、よく髪に天使のわっかがあるって言われるよっ」アセアセ

エレン「言われて見れば・・・」ジー

エレン「キラキラしてるのはそのせいか! 俺エレン・イェーガー。よろしく天使の人!」ニカッ

クリスタ(ちょっと世間知らずなかんじだけど・・・綺麗な男の子だなぁ///)

???「おい、クソしてる間になーに人の連れを口説いてんだ、ガキ」

ライナー「でたよ・・・そばかす」

そばかす「黙れゴリラ。なんだっけ、エレンだっけ? 私のクリスタに何かしたらぶっ殺すからな」ギュ

クリスタ「ゆ、ユミル・・・くるしいよっ///」

エレン「? なんかジャンみたいな奴だな」

ユミル「あんだとコラ」

ジャン「は、どういうことだ?」

ミカサ「べったりとして気持ち悪いってこと」

ジャン「ですよねー・・・・・・・ですよねえ・・・」

エレン「そうそう、そう言う意味ではミカサにも似てるな」

ミカサ「・・・・・・・」

ユミル「ブーメランwwwwブーメランwwwwww」

ライナー「おい、あんまりアイドル様を挑発するな。まあ俺には関係ないけどな」

ベルト「フラグだぞライナー。」

ミカサ「ライナー。ちょっとこっちに来て欲しい」ニコ

ジャン(笑顔なのにどこか冷たい、うっほおおおお↑)ハナヂタラー

マルコ「まったくジャンはだらしないなあ」フキフキ

ライナー「え? なんだよミカサ」

 スタスタ スタスタ 

 <エ、ミカサ、チョ・・・ッaa;ajlkdjl!!!!

 <ゴウン バキイイイイイッ ←何か粉砕される音

ベルト「さよなライナー」

クリスタ「屍たくさんふえるね・・・」ガクブル

コニー「アイドルってこえー」

???「なんだ・・・騒がしい奴らだね・・・」ムク

エレン(奥の席で机に突っ伏して寝てた女・・・起こしちゃまずかったか)

エレン「悪い。あの粉砕の音はすぐにやむから気にしないでくれ。洗濯機がたまにうるさいのと一緒だ」

ユミル「あれ生活音なのかよ・・・」

???「まあいい・・・あんまり馴れ合うつもりはないけど、名前くらいは言うよ・・・」

エレン「ああ。俺はエレン・イェーガー」

アニ「アニ・レオンハート」フイ

ベルト(無愛想だな・・・アニ・・・)

ベルト「アニは超高校級の格闘家だよ。女子高生ファイターとして総合格闘をやってる」

ジャン「ミカサのブレイクによって徐々に増えてる腹筋系女子の一人だな」ウンウン

ユミル「バカじゃねーの? 女はちょっとぽややんなお腹が一番だろ」

クリスタ「それはダメでしょ!」

エレン「へー。ベルトルト詳しいんだな」

アニ「・・・」ギロ

ベルト「・・・僕はスポーツには造詣が深いほうだからね・・・」

エレン「俺の家テレビも漫画も雑誌も禁止だったんだよなあ・・・」

コニー「えーっありえねえええ」

サシャ「うちなんて私が出演してる三分クッキングの録画のためにトルネ用意したんですよ!? 街で買ったんですよ!?」

コニー「俺も大概だけど、お前かなりド辺鄙なとこに住んでんだなー」

エレン「だからいっつも友達にこっそり漫画とか借りてたくらいだな」

エレン(そうそう、友達・・・あれ、誰に借りてたっけ?)

エレン(ミカサ・・・は家族だし、えっと・・・誰だっけ・・・)

エレン「・・・まあ、いいや。ところで、これでクラス全員か?」

マルコ「いや、あと一人いるよ」

???「あ、最後の一人が起きてたんだね」

マルコ「あ、アルミン。君もトイレだっけ」

アルミン「まあね。えっと・・・きみがエレン・イェーガー?」

エレン「ああ(なんだかおどおどしてひ弱そうな奴だな・・・)」

アルミン「僕はアルミン・アルレルト。きみってあのミカサの幼なじみなんだよね?」

エレン「家族みたいなもんだけどな」

アルミン「そっか。僕はどうしてこの学園に入学ができたのか、

     入学前に事故があっておぼえてないんだよ。でもきみと同じ幸運枠らしいよ」

エレン「へえ。よろしくな、アルミン」ニコ

アルミン「きみの笑顔・・・見てると落ち着くなあ」ニコ

エレン(確かに・・・こいつ見てると落ち着くなあ・・・初めて会ったはずなのに)

クリスタ「幸運枠って毎年1つなのにね」

マルコ「ああ、なんにせよ人数の少ない学校だから、一人くらい増えてくれた方が嬉しいけどね」


 <キーン コーン カーン コーン~♪


サシャ「チャイムですね。先公が来やがる前に片付けまひょう!」モグモグモグモグ・・・

エレン「だからさっきから汚ねえええんだよおおお!」


 < ガガ・・・プツッ

『あーまいくてすと、まいくてすと~。新入生のみなさーん、1階南、体育館へお越しくださ~い』


コニー「ドラえもんだ! スピーカーからドラえもんの声がする!」

ジャン「入学式か? なーんかここに来てからの記憶が曖昧なんだよなあ・・・」

ミカサ「そう、大人が一人もいない・・・」

マルコ「ミカサおかえり・・・ライナーは?」

ライナー「」マッシロ

ベルト「ライナー、真っ白に燃え尽きてるぜ・・・」


体育館

サシャ「すっっっっごく大きいですね」

エレン「ドッジボールとか楽しめそうだな」

コニー「ドッジってなんだ?」

アルミン「か弱き者の急所を狙い餌食にする、人間社会の縮図といって良いスポーツだよ」ニコ

ジャン「おい、壇上になんかちっさいぬいぐるみが置いてあるぞ」

マルコ「入学おめ! ・・・って書いたたすきを掛けてるね」

ベルト「眼鏡をかけた熊のぬいぐるみ・・・?」

ミカサ「・・・! エレン・・・なんだか危険なかほりがする・・・」

ジャン「で、でた~! ミカサの超直感。一流のアイドルに必要な要素のひとつだな」

ユミル「アイドルにジャンプ要素つけようとするのやめろよ・・・事務所の方針どうなってんだ?」



『オマエラ、私語はつつしんでくださーい』


クリスタ「ぬいぐるみが、しゃ、シャベッタアアアアアアアア」ドッキーン

ライナー(おどけた天使まじきゃわわああ)


『えー。ボクの名前はモノクマ。この学園の学園長・・・というキャラ作りに飽きたのでー』


コニー「あれ、ドラえもんの声がだんだん低く・・・?」

アニ「・・・」


『えー学園長のハンジ・ゾエでえす。皆さん入学おめでとう! うぇるかむとぅー希望ヶ峰学園!』


『希望ヶ峰学園は、将来性はなはだしい皆さんに切磋琢磨していただき、

 人類の希望となっていただくことが目的の、そんな高等教育機関です!

 突然ですが前任の学園長は理由あって退任したため、今日から私が学園長ぞえwww』

エレン「テンションたっけーな、オイ」

アルミン「男・・・女・・・? 声だけなら女に近い・・・人間なのは間違いないな」


『入学前にもご説明しましたとおり、皆さんは学園によって手厚く庇護されています。

 原則、巨大な学園の敷地内から外出することはできません。

 その代わり、ここにいる仲間たちと様々な試練を乗り越え、絆を深めてください』


ライナー「試練・・・? 行事じゃなくて・・・?」


『あー、心配はいらないよー。誰かが死んだり、殺されたり殺したりってことはないからwww』


アルミン「それはここにいる誰も予想していなかったのに、なんでわざわざ言うかな・・・」


『この学園では、試練、つまり問題が発生したらみんなの議論で解決していきます。

 民主的、かつ公平。だからこそ普段からのコミュニケーションが大切!』


アニ「くだらないね・・・」


『日々楽しく過ごしてください。それでは皆さん西側の寮へ移動してねーw』ブツッ シーン

ユミル「・・・なんだったんだ?」

ジャン「堅苦しくない感じは良かったが。唐突すぎてな・・・」

マルコ「ああ。特殊すぎる学校だから常識で考えるのは浅慮かもしれないが、すごく不安だ

    だけどみんな、ひとまず寮に行こう。歩いて学園内を把握するのも大事だと思うんだ」

ミカサ「マルコに同意する・・・」

アルミン「僕もだ」



 それから俺たちは寮に向かった。


サシャ「ぶっふぉ、食堂はビュッフェ形式れすか、もうたまりませんねぇええええ」

コニー「うわ、よだれが俺の肩に! きったねぇなああ!」

サシャ「食べ放題ですよ、料理評論家の血が騒ぎます!」

コニー「騒いでんのはお前の唾液!」

アニ「うるさいよバカども。ちょっと静かにしな・・・」

エレン「アニ、どうしたんだカリカリして」

アニ「この学園の存在意義に気がつかないなんて、運も頭も幸せな奴だね・・・」

エレン「なんだと・・・?」

ライナー「やめとけよ、幸運。格闘家に喧嘩ふっかけるなんてバカのすることだ」


『みんなそろってる?w 最後尾の人間が消えたりしていない?』


クリスタ「物騒なこと言わないでほしいなあ」

ベルト「ノシ 最後尾です。存在感は消えかかってます・・・」


『食堂の机にある自分の名前の封筒を開けてね』

ジャン「あれだな。俺のは・・・っと」

 <ガサゴソ

 < ゴソゴソ

エレン「・・・カードキー?」


『正確には 電子生徒手帳 です。 生徒手帳として身分証・校則が確認できるほか、

 寮部屋、各種教室のセキュリティカードキー、学園内マップ、生徒名簿など

 各種機能が搭載されています。

 非常に便利やけど一枚がお高いものですから・・・死んでも無くすんじゃねえぞwww』


アルミン(草はやしてるのに気迫が感じられる・・・)

『校則は各自確認。あえて言うなら消灯時間は毎日午後十時。寮からは出られなくなります』


サシャ「あれ。今 何時でしたっけ」

マルコ「午後六時だね・・・あれ、僕たちが学園についたのっていつだったかな、ジャン・・・」


『起床時間は毎朝七時。いいかい、

 本日は寮になれていただくため、寮だけで過ごしてください

 詳しい説明は明日以降ってことで。今日はおねんねしちゃいなYO!』


エレン「そりゃありがたい・・・なんだか身体がけだるいんだよなあ。

    考えるより、さっさと寝たい」


『最後に一つ。試練を乗り越えた者には、卒業が待っています』


『君たちが羽ばたく日を、心待ちにしています』

ユミル「わっけわかんねえ・・・どういうことだ・・・」

サシャ「ほんとですよ。理解力の低下が炭水化物の不足が原因ですね。食べましょう」

クリスタ「そ、そうだね。お腹もすいてき (クーゥ) ・・・たし・・・///」

アルミン「かわいい腹の虫だね・・・」

クリスタ「・・・//////」

ミカサ「マップによると・・・エレンの部屋の右隣は私。当然。左隣が・・・アルミン」

アルミン「ほんとだ。よろしく、エレン」

ミカサ(一応男だから・・・だが警戒は怠らない

    なぜだか、こいつにはヒロインの匂いを感じる・・・)

アルミン「なんだか背筋が寒いなぁ・・・風邪かな?」

エレン「俺、食欲もないし、今日は寝るわ。じゃあな」ノシ

ミカサ「だめ、ちゃんと食べないと」

エレン「お前はおれの母親か? 腹減ったら勝手に食うよ」スタスタ

ミカサ「エレン・・・!」

ジャン(構われやがって・・・くっそおおお)

ジャン「俺も食欲無い」ボソ

ライナー「大丈夫か? 顔色悪いぞ」

ジャン「お前じゃねえええええよ!! でもありがとな!」ヤケクソッ


マルコ(・・・ここに来るとき、来たあと・・・すべてが曖昧だ)

アルミン(この学園は守秘義務が強いことで有名だから、正確な所在地も秘匿している)

マルコ(その対策があるとは事前に聴いていたが。これほどとは・・・)

アルミン(今日はもう寮から出られない。明日から学園を探索してみないと・・・)


 エレンの部屋

エレン「ふー 長かった(プロローグが)」

『やあ。お部屋入り一番乗りのエレンくん♪』

エレン「!? どうして部屋にハンジさんのぬいぐるみが!?」

『学園長とはそういうものなのだよエレンくん』

エレン「・・・なんの用事ですか?」

『一言アドバイスをね。ここからが本番なんだけど。

 エレン。きみには重要な選択を迫られる時がくる』

エレン「選択・・・?」

『そう。そのとききみの選択によって君を取り巻く人間関係は大きく動くだろう』

エレン「・・・」

『あれこれ悩んでくれ。そして物語を動かして欲しいんだ。まあ、明日嫌でもわかるさ』

エレン「物語を・・・」

『君の幸運が本物かどうか・・・それは君しだいってことさ

 では、おやすみ。よい夢を・・・』


エレン「消えた!? ・・・なんだったんだ・・・?」


 神出鬼没なハンジさんに俺はどぎまぎしたが、すぐに眠気を思い出した。

 部屋は最低限の家具しかないシンプルなものだ。

 俺は事前に運び入れてあった荷物から部屋着を引っ張り出すと

 手早く着替え、実家のそれより幾分柔らかいベッドに、嬉々として沈んでいった――


プロローグ「うぇるかむ to 希望ヶ峰学園」 END

自己紹介パート長すぎた・・・駄文だわ・・・

明日からドキドキスクールライフの予定だから。お休みなさい

今更ですが、巨人のほうもアニメ派の人はネタバレ注意。
人間関係とか原作で出ているのを基準にしています・・・


「エレン・・・いってらっしゃい・・・」


 ・・・・
  ・・・・・・
   ・・・・・・・・


ミカサ「・・・エレン、エレン起きて」ユサ

エレン「・・・ん・・・? ふぁ・・・?」

ミカサ「エレン、起床時間過ぎてる。食堂に行こう」

エレン「・・・はよ・・・」トロン

ミカサ「」

エレン(なんだか、長い夢を見ていた気がする・・・覚えてねえけど)




第一章 「悪魔とパンツは紙一重」

 食堂

エレン「美味そうな匂いがする!」

ミカサ「エレン、よだれ出てる・・・かわいい」フキフキ

エレン「ん・・・ぐっ・・・いいよ自分で拭くっての!」

 ミカサを退けながら、俺は辺りを見渡した。

 俺の同級生たちしかいなかったが、どうやら3つの塊に分かれているようだ。


 グループその1

コニー「あ、エレン! おはよう、寝坊だぞー!」ニッコー

サシャ「ぐへへ。ビュッフェのおかずはどれも素晴らしいですよ。

    国税で贅沢しているという背徳感が味覚を鋭利にさせます」モグモグゥ

ユミル「すげぇゲスい奴もいたもんだな。若い頃からテレビに出てるからか?」

クリスタ「でも本当に美味しそうにほおばって・・・見てるこっちも幸せになるね・・・!」

ユミル「・・・ああ、そうだな・・・(結婚しよ)」


 グループその2

アニ「・・・」ズルル(何かをすすってる)

ベルト「アニ、もずくだけじゃダメだ。タンパク質もとらないと」

アニ「・・・うるさい」

ライナー「しょうがねえな。俺が何かとってきてやるよ」ガタ



 グループその3

ジャン「あいつらお気楽だな・・・この学校、マジで脱出できねえ造りになってんのに」ケッ

アルミン「早速調べたんだね」

マルコ「ああ。まずは寮の中をしらみつぶしにね」

アルミン「僕も生徒手帳を見ながら色々見て回ったんだ」

ミカサ「エレン・・・私たちも席に着こう。ふ、二人で・・・」

エレン「さて、どこに混ざろうかな」

ミカサ「」


 コニーのところは花があるし、会話も弾みそうだ

 ライナーのところはなぜかお通夜状態だな。アニは一人になりたそうだし

 アルミンのところはジャンがうぜぇけど、色々真面目な話ができそうだ


エレン「よし、>>52のところに行こうぜ、ミカサ」

エレン「コニーたちのところいこうぜ」

ミカサ「エレン、二人で・・・」フルフル

エレン「何言ってんだ。新しい仲間といつ話すんだ? 今でしょ」

ミカサ「・・・わかった・・・」シュン


 俺たちはトレイに朝食をのせて腰掛けた。

 席の都合上、俺はクリスタの左隣、ミカサは真向かいでサシャの右隣に座った。


コニー「大所帯だな!」

エレン「ああ、コニーだっけ。邪魔するぜ」

ミカサ「おじゃまします・・・」

エレン「それにしても男は俺たちだけか、なんていうか、花があるな!」ニッコー

ミカサ「・・・!」

コニー「あー確かに。俺、最初はジャンたちといたんだけど、

    あいつらなんだか会話が小難しくてさあ、ついていけないから」

サシャ「わたしが仲間にいれてあげたんれす! おバカさんが可愛そうらから!」モグモグ

クリスタ「あ、サシャったら、ほっぺにマヨネーズついてるよ」クスクス

ユミル「クリスタ、お前のほっぺにもついてるぞ・・・」ペロ

コニー「・・・!!??(ブスがクリスタのほっぺ舐めやがった!)」

クリスタ「も、もう!/// そういうの不意打ちはやめてって、いつも言ってるのに・・・///」

エレン「えーっと。ゆ、ゆ・・・」

ユミル「ユミル。そういやまともに自己紹介してなかったね」

エレン「ユミルさ、そういうの恥ずかしいからやめろよ。クリスタが困ってるぞ」

クリスタ「そ、そうだよ。人前では・・・」

エレン「ミカサもよくやってくるんだけど、なんだかぞわぞわして身体が変になるから

    天使だからって万能じゃないんだから、体調不良にでもなったらどうするんだ?」

クリスタ(え、ええ・・・!?///)

ユミル「なったらなったで看病するよ。いちいち可愛いクリスタが悪いのさ」

ミカサ「そう・・・かわいいエレンが悪い・・・」コクリ


ジャン「」ガタッ

アルミン「ジャン、どうしたんだい?」

ジャン「なんかあっちで重大な情報を掴める気がする・・・」

マルコ「気のせいだから、ほら。ジャンおすわり」ビシィ

ジャン「・・・」ガタ・・・

コニー(アイドルの素性を垣間見たんだが、俺、この場にいてよかったのか?)

サシャ「へえ。ふたりは幼なじみで恋人なんれすか」パクパク

ミカサ「いいえ、友人だけど、家族のようなもの・・・///」

サシャ「そうれすか。シガンシナの風習は独特なんれふね」ハムハム

ミカサ「だけどサシャ、貴女がそう捉えてくれるなら、むしろ嬉しい///」

サシャ「? えーと・・・つまり、

    手元のキッシュはもらってもいいと・・・そういうことですか?」

ミカサ「? エレンと私を恋人として認識するなら・・・」

エレン「あ、ところでユミル。お前って超高校級のなんなんだよ?」

ユミル「(会話のかみ合ってないあいつらは放っとくのか・・・)

    ああ、悪いね。それが覚えてないんだよ」

エレン「覚えてない?」

ユミル「そ。入学の前後をよく覚えてなくてさあ。自分がなんだったのか思い出せない」

クリスタ「私も、ユミルの肩書きを思い出せないの・・・

     でも喧嘩が強くて、ウォール・シーナにいた頃は『喧嘩番長』って言われたたし」

ユミル「だから『超高校級の番長』あたりかなって二人で話してるね」

エレン「俺も入学前後の記憶が曖昧だ」

コニー「俺もだな。エレンは昨日すぐ寝ただろ。夕食のときジャンとかと話したんだけどよ、

    全員記憶が曖昧で、アルミンみたいに全く覚えてないのも何人かいるくらいだ」

エレン「マジかよ・・・」

ユミル「それにこの寮、窓がないんだよな。気づいたか?」

エレン「そ、そういや俺の部屋も・・・!」

クリスタ「怖いよね・・・確かに秘匿性が高いから相応の処置をするって、

     理事会の人には聴いていたけど。これじゃあ・・・」

ミカサ「・・・軟禁」

サシャ「もぐもぐ・・・南京?」

ユミル「かぼちゃじゃねえ。まあ、そういうことだ」

コニー「まあ、ある程度の制限でこの学園を卒業できるなら、頑張ってみるつもりだけど」

エレン「・・・お前けっこう肝が据わってんのな」

コニー「そうか? 俺はここを絶対に卒業したいからな。バカだから気合いしかねえんだよ」

 キーンコーンカーンコーン


『みなさんご飯たべたー? 実は学園長の部下が作ったんだけど美味かったっしょ!?

 ところで、この学校でのすごし方を、電子生徒手帳にアップしたよ。見といてね』

 ピロリロリン

エレン「うわあ、何だ今の音?」

ミカサ「生徒手帳のアップデート音みたい・・・」

 ピッ


<<学園でのすごし方>>

一、授業は午前中のみ。午後は各々自己管理の下、友と切磋琢磨し己を磨くべし

一、問題が発生し、生徒諸君らでの解決が望ましいとされた場合、学級裁判を開廷する

一、本校が定める卒業基準を満たした場合、卒業試験を行うものとする

一、超高校級の不純異性交遊を禁ず。故意にこれを破った場合、おしりペンペン100回の刑とする

一、校舎は利用できる範囲が定められているが、諸君らの成長に応じ、順次各施設を開放する

ミカサ「・・・」

エレン「学級裁判・・・?」

ミカサ「不純異性交遊を禁ず・・・?」イラ

ジャン「や、ミカサさん、それは当たり前っす」

アルミン「学級裁判ってなんだか物々しいけど、つまりはHRってことでいいのかな」

マルコ「卒業基準ってどういうことかな。午前授業だけじゃとてもじゃないけど単位は取れないぞ」

ベルト「その基準になるまで一生卒業できない――とか」

ライナー「面白くねえ冗談だぜ、ベルトルト」


『ご明察!』


エレン「!!」

『その通り。この学校は他の高等教育機関とは全く異なる規格を持っています

 抑圧された閉鎖的空間の中、いかに逆境に打ち勝てる強さを得ることができるか

 それが鍵なのでーす。

 逆を言えば――弱いままではいつまでも卒業できないってことw』


ジャン「やっぱりそうなんだな・・・俺たちを閉じ込めるってのか!」


『ああ、そうだよジャン。外出なんて一切できない。この学園は50mの壁で囲われてるからね』


コニー「い!? 外出って許可制だろ? 理事会の人が入学前にゆってたぞ!」


『そうだねコニー。でもそれって、前の理事会の人だろ?』

人死には本当にないのかね?
後、ユミルとアルミンがキーパーソンか。

>>63 大丈夫。人が死ぬ予定は今のところないので

クリスタ「え、え・・・?」

ユミル「意味わかんねえ・・・この学校が特殊なのは有名だが、キチガイにも程があるぞ」


『なあに。単に外出ができなくなっただけさ。ここは慣れれば快適だよ?

 君たちよりずっと前にやってきて、ずーっと卒業しないおバカちゃんがいるくらいには』


サシャ「い、いくらなんでも・・・テレビ出演が滞ると、仕送りができず困るんですが・・・」


『気にしないで。君たちが世間から隔離されることで出る損害は、すべて国庫が補填する

 不自由なのは外出がないだけさ。

 卒業したいなら、そうだなあひとつヒントをやろうか』

サシャ「そ、それなら・・・」

エレン(学園に来た前後の記憶が曖昧なのはみんな同じ・・・外から隔離するため?)

アニ「・・・チッ」


『午後の自由時間。いろんな人と積極的に関わると良い。

 育んだ友情は、君たちを強くする。卒業の先にあるのは希望の未来――。

 じゃあ生徒手帳のマップを見ながら普通教室に来てね。9時から始業だよーw』


アルミン「昨日と同じく、不明瞭で一方的な説明だったね・・・」


 みんな不安げな表情を浮かべながら状況について整理しているようだった。

 最新の小綺麗な内装、豊富な食事。なによりも、この学園を卒業した場合の希望――。

 軟禁状態なのは自覚したが、ここが快適な場所であることもまた、みんな理解していた。

ライナー「・・・俺は別に外出できなくてもいい。・・・外に行く用事もねえし・・・」

ベルト「僕もだな・・・テレビが部屋にないのは辛いけど・・・」

ジャン「はぁ!? ふざけんな、ありえねえだろ! 俺は外に出る、今すぐにだ!」

マルコ「落ち着いてジャン」

クリスタ「外出できないのは不便だけど・・・元々この学校って、閉鎖的で有名だし・・・」

ミカサ「でも大人が一人もいないのは異常。いるのはあの眼鏡のぬいぐるみだけ・・・」

サシャ「そういやそうですねえ!」

マルコ「みんな、聴いてくれ。僕とジャン、それからアルミンは今朝から色々調べたんだけど」



 マルコたちの話は、まとめるとこんなところだ。

 ・寮には窓がない。マップによると敷地はとてつもなく広く、壁に囲まれている

 ・電話はできないが、インターネットは極度の制限付きでできること

 ・セキュリティシステムについて、知っているだけでも何重にもお金をかけてあるということ

 ・監視カメラがついているということ


クリスタ「か、監視カメラ・・・!? え、私の部屋にも・・・?///」

アルミン「(可愛い・・・)僕が見つけたのは廊下とか、共用施設だけで個室には見当たらなかった。

     もっとも、ミクロサイズのカメラだったらお手上げだけど」

ライナー「共用なら、まだわかる。アルミンだっけか、やるなあ、お前」

エレン「ああ、さすがだな、アルミン! ・・・あれ?」

アルミン「さすがって・・・昨日の今日でそう言ってもらえるなんて嬉しいよ」

エレン(なんでそんなセリフが出てきたんだ・・・?)

ミカサ(私もさすが・・・って思ってしまった・・・

    アルミンと会ったのは昨日が初めてなのに・・・?)

コニー「とにかく・・・俺は、今焦っても仕方ないと思うぜ」

ジャン「なんでだよ! 俺は出るためにこの学園を調べつくしてやるぜ!」

ミカサ「私も・・・ここにずっといてはいけない気がするから」

ジャン「ミカサもこう言ってんだ。脳天気にやってると、マジで脱出できねえぞ」

エレン(ジャンの言うことに・・・>>70
 
 * 今すぐ脱出を計らおう「賛成する」 or ここで闇雲に動くのは危険だ「反対する」

賛成しない

エレン「そりゃ、俺も閉じ込められるのは嫌だけど

    セキュリティの話を聞く限り素人じゃ脱出できねえよ」

ベルト「その通りだ。しばらくはおとなしくして、様子を見るべきじゃないか」

サシャ「そうですよ。ジャンはホームシックにかかるのが早すぎます」

コニー「そうそう。俺は普通にきっちり卒業したいからな。不便なところは我慢してやるよ。

    ここの連中って、それくらいの覚悟でここに来たんじゃねえのか?」

ジャン「・・・っク」イライラ

マルコ「ジャン、落ち着こう。君の調査には僕も付き合う。

    でも、ここで騒いでも仕方ないことだって事実だ」

ジャン「・・・ああ」

クリスタ「と、とりあえずご飯も食べたことだし、教室に行こうか」

 午前中の授業は、本当にあっけないものだった。

 さすがのジャンもマルコに諭されたためか、少なくともこの授業には不本意そうに参加をし、

 新入生全員そろっての初授業。先生は人ではなくハンジぐるみ(ライナー命名)だったけど、

 コニーが最終的に理解をするくらい丁寧で進度を備えた内容だった。

 その間は特に異常な点はなく、本当に、タダの進学校の授業風景を彷彿とさせた・・・。


 そして午後。エレンの部屋

エレン(さて、昼飯も食って一段落したし)

エレン(外に出て、誰かと話をしてみようかな・・・)ガチャ

本日はここまで。安価にお付き合いいただきありがとうございました。

ジャン人望ないジャン

 バッタリ

エレン「・・・っとアニ」

アニ「!・・・エレン」

エレン「そういやお前って俺の部屋の真向かいか。これからどっか行くのか?」

アニ「別に・・・部屋に帰るところさ」

エレン「そっか。気が向いたら来いよ。校舎の探索もこれからだしな」

アニ「・・・どうも」

 スタスタ ガチャン

エレン「相変わらずつれねえなー」

エレン(まあいいや)

 俺は電子生徒手帳を取り出した。

 先ほどミカサに教えて貰った機能だが、どうやら生徒の大まかな居場所が表示されるらしい。

エレン(ミカサは――いま洗濯室か。何してんだか)


 さて、誰と過ごそうか >>78

 * アニ以外と過ごせます

アルミン

 真っ先に思い浮かんだのは――アルミンだった。

 コニーと同じかそれ以上の童顔だけど、頭が良くて頼れる奴だ。

 あいつを見ていると、すごく安心する。

エレン(えっと・・・アルミンは一階の保健室か・・・具合でも悪いのか?)

 少し不安に思いながら寮を出ようとしたら、マルコに出くわした。

マルコ「やあ、エレン」

エレン「よ、急ぎ足でどうしたんだ?」

マルコ「ちょっとね。荷物が多いから部屋に戻ろうかなって」

エレン(ん? ほんとだ、両手にいっぱい何を抱えて・・・)

マルコ「あ、これかい? 一階の購買部に立ち寄ったら、ガチャがあったんだ」

エレン「バラの花束に、石仮面に変身ベルト、カラオケマイク・・・珍妙なものばかりだな」

マルコ「すっごく大きな筐体だったよ。いじってたらハンジぐるみが出てきて、

    ガチャ用のメダルをくれたんだ。ほら、何枚かあげるよ」

 俺はマルコから3枚のメダルを手に入れた。

エレン(二枚の翼が描かれたメダルだ・・・初めて見るコインだな)

マルコ「どうやら学園のあちこちにメダルが隠されてるらしいよ

    出てくるものは様々だし、何か役立つかもしれないからやってみなよ、エレン」

マルコ「わかった。ありがとな、マルコ」


 校舎で解放されているのは今のところ一階のみだ。購買部は一階中央部にあるらしい。


 アルミンのところに行く前に、ガチャを・・・>>81

 * 好奇心に火がついたので「回す」 or や、あとでいいや「回さない」

回すぜ!


エレン(せっかくだし、久々に回すぜ!!)

 俺は保健室を一度素通りして、その奥にある購買部へ向かった。

 ごちゃごちゃと乱雑に、ハンジぐるみグッズが置かれる中、

 中央に、目的のガチャ筐体は佇んでいた。

エレン(3枚ある。よし・・・)

 チャリン ガチャガチャ チャリン ガチャガチャ・・・

 ・・・・

エレン(おお、思ったよりはマシだった・・・でも使い所がわかんねえ)

 俺はコインと引き替えに次のアイテムを手に入れた。

 「スノードーム」「ひつまぶし」「月刊ラブドール」

エレン(寄り道は済んだ。アルミンのとこへ行こう)



 保健室  ガラッ

アルミン「エレン!? え、どうしたの?」

エレン「アルミン! なんでベッドに寝てんだよ。具合でも悪いのか」

アルミン「具合が悪いってわけじゃないけど、さっきまで検査してたんだ」

エレン「検査?」

アルミン「うん。僕ほら、記憶がふっとんじゃってるから、その検査をね」

エレン「そういや、お前どれくらい記憶がないんだ?」

アルミン「うーん。住んでたところがシガンシナなのはなんとなく覚えてるんだけど・・・」

エレン「シガンシナ? 俺やミカサと一緒じゃねえか・・・」

アルミン「そうだね、どこかですれ違ったことがあるかもしれないよ」ニコ

エレン「ほ、他に覚えてることは?」

アルミン「人間関係は完全に欠落してるなあ。社会通念は忘れてないから何とかなりそうだけどね」

エレン「家族や友達のことを忘れるなんて、寂しくないのかよ」

アルミン「覚えてないからね、ちっとも。・・・エレン、この学校に庇護――

     隔離されることは、ある意味助かったなって思ってるんだ」

エレン「・・・なんでだ?」

アルミン「ここでは誰もが新しい生活をすることになるだろう?

     僕と同じく、手探りで過ごしていくんだから。

     それって、僕みたいな奴には一番楽な環境だと思うんだ」

エレン「・・・アルミンは『卒業』したくないのか?」

アルミン「もちろんしたいよ。でも、今はその気力が、ジャンほどは無いんだ。

     ・・・本当は、何か大切なことを忘れている気がしてならない。

     誰かに、何かを伝えたかったんだ。でも、思い出せない」

エレン「・・・」

アルミン「そんなにも誰かのことを想ってたはずなのに、今はそれすら他人事のようなんだ。

     エレン、こんな僕だけど、この学園のことは調べていきたい

     だから・・・」

エレン「協力するさ。俺たちって幸運なんだろ? 何とかなるって」

アルミン「え・・・」

エレン「お前の記憶のことも、学園のことも、協力する。そうだ、ミカサも呼ぼう。

    あいつ、人見知りなんだけどさ。きっとお前なら大丈夫だ、そんな気がする!」

アルミン「・・・ぷ。くすくす」

エレン「・・・アルミン?」

アルミン「あははは!/// 僕、エレンのこと好きだなあ、ふふ」

エレン「な、なんだよ・・・人がせっかく・・・からかってんのか!?//」

アルミン「違うよ、ごめんごめん。・・・くすくす」

エレン「だからなんで笑うんだよ!」


 俺は何故か笑いっぱなしのアルミンとしばらく過ごした。

エレン(あ、そういや・・・ガチャのアイテムがあったな)


 使いどころのわからない代物だし、せっかくだからアルミンに・・・>>安価

 * スノードームをやる or ひつまぶしをやる or 月刊ラブドールをやる or あげない

あ、やべ、安価は>>88

ラブドールにしたいけどスノードームで

エレン「アルミン、これやるよ」ポス

アルミン「え、なに・・・?

     ・・・わぁ・・・スノードームだ! エレン、どうしたの、これ」キラキラ

エレン「購買部で手に入れたんだけど、お前好きそうだからさ」

アルミン「よくわかったね!! ・・・わー! すごい、雪の質感が綺麗だなあ」キラキラ

エレン(雪が好きなのか・・・? すごく喜んでくれたみたいで何よりだ)

アルミン「こういう自然を模したオブジェってワクワクするよ・・・本当に貰って良いの?」

エレン「おう、部屋にでも飾ってくれ」

アルミン「エレン、ありがとう!」ニコニコ

エレン(・・・なごむ・・・)ヘラ

エレン「じゃ、アルミン。俺ほかの奴にも話しかけてみるから。またな」

アルミン「うん。僕も色々施設を見て回るよ。じゃあね、エレン」


 俺は興奮冷めやらぬアルミンを残して、保健室を去ろうとした・・・

エレン(ん? 医療用ワゴンが鈍く光った・・・)ガサゴソ

エレン(お!)

 ついでに隠されたメダルを1枚見つけた!

明日仕事なのでここまでで。安価してくれた方ありがとうございました。

エレン(マジでメダル隠されてるのか。色々見て回った方がいいな)

 視聴覚室、普通教室、トイレ――近場をあされば、合計で2枚見つけた。

 俺はすぐにガチャを回しに購買部へ帰った。ちょっとした中毒である。


 チャリン ガチャンコ  チャリン ガチャンコ・・・

 俺はメダルと引き替えに次の物を手に入れた

 「きょうせいギブス」 「ミソビタンG」 「スズランの香水」


エレン(一階は教室は少ないし怪しいところもない。あとは広い体育館くらいか)

エレン(アルミンと話せて良かった。アルミンはああ言ってたけど――

    闇雲にただ逃げ道を探すだけじゃダメだ)

 俺に何ができるのかを模索して、この学園のことを理解していこう。

 全員が記憶に障害がある――それには、相応の理由があるはずなんだ。

 ここを去るのは、それを考えてからでも遅くはない・・・と思う。


エレン(他の奴は何か見つけたかな――)


 さて、誰と過ごそうか。 >>95

 * アルミン、アニ、ジャン以外と過ごせます

ベルトルト

エレン(よし、探索にのり気だったベ・・・ベ・・・

    あのモデル体型裏山な奴に話を聞いてみよう。場所は・・・視聴覚室か)

 ベなんとかの元に行こうと、通路を渡っていたら、

 校舎と寮の境界で、なにやら話し込むミカサとジャンを見つけた


エレン(・・・ん? なんか揉めてるみたいだな)コソッ

マルコ「あ、エレン」コソ

エレン「マルコ?」コソコソ

マルコ「しー」



 ジャンはアイドル(ミカリン)として活躍するミカサの公式ファンクラブ会長だ。

 ここ一年くらいは、ミカサの激務についていけず次々と病室送りになるマネの代わりに

 ミカサのマネージメントすらこなし、癖のあるファンたちを統率していた。

 やたら俺に突っかかってくるいけ好かない野郎だが、

 仕事中のミカサを支える献身的なところは尊敬していたくらいだ。


エレン(そのジャンが――)

ジャン「ミカサ、お前はいつまであいつにひっついてるんだ!!」

ミカサ「そんなの私の勝手・・・ジャンには関係ない」

ジャン「ミカサ、お前にはここを出ようとする意志がある。

    なのにどうして、あの馬鹿野郎の意見にすぐ頷くんだ」

ミカサ「・・・ジャン、確かに私は、ここい居てはいけないと、そう思っている」

ジャン「じゃあ行こうぜ。卒業なんてしなくてもいい、壁の外に出りゃいいんだ」

ミカサ「だけど。エレンを置いてはいけない」

エレン(・・・俺?)

ジャン「なんで、」

ミカサ「エレンが今は逃げないと決めたから」

ジャン「・・・っ! 軟禁だぞ? あの『卒業』ってのはいつの話になるんだ

    その間、俺の家族は? お前の家族は? お前のファンは? お前の夢は・・・?」

ミカサ「そう、私には夢がある。華やかで、大きな夢だ。

    ジャン・・・でも、ここが現実」

エレン(・・・)

ミカサ「エレンと貴方は似ていると思う。逃げるのか、少しでも戦うかの違い・・・それだけ」


 ミカサはそう言うと、寮の中に入っていった。


エレン(・・・ジャン・・・)

ジャン「ああ、俺は弱いよ・・・逃げたいんだ・・・

    誰もがお前らみたいに強いわけじゃない・・・クソ・・・」


 しばらく佇んでいたジャンは、やがて溜息をつきながら寮へ入っていった。

 俺は威勢のいいジャンしか知らない。俺にくってかかる鼻持ちならない野郎のことしか。


エレン(ビビってんだな、誰よりも・・・

    本人のいないところだと笑ってやることもできねえ・・・)

マルコ「・・・エレン、君とジャンは仲が悪いらしいね」

エレン「・・・まあ、あいつが俺のこと嫌いなんだけどな」

マルコ「ジャンはさ、僕かそれ以上にビビり屋なんだ。

    それでも、周りのことをよく見ることができる、本当はそんな奴なんだ」

エレン「ああ(それは、知ってたかもしれない・・・)」

マルコ「ジャンは弱い自分を知っているけど認めたくないから、今はあんなだけど・・・

    エレン、あいつのこと、少しでも気にかけてやってくれないかな

    僕ではどうしても、あいつに甘い気持ちで肩入れしちゃうから」


 ジャンの気持ち――わからなくもない。

 ここは充分快適だけど、家には父が居る、母が居る。

 あのぬるま湯のような心地良い空間に帰れないかもしれない恐怖――。


エレン(だから知りたい。どうして、ここにこうやって立っているのか)

エレン「・・・気が向いたらな、マルコ」

マルコ「ありがとう。きみには不思議な求心力があると思うんだ。

    エレン、あいつのこと慰めてやらなきゃいけないし、じゃあね」クス


 マルコは優しげな表情でジャンを追っていった。

 俺はそのまま、向かいの視聴覚室へ入ることにした。


 視聴覚室

ベルト「あ、やあエレン」

 ベルトルトは視聴覚室のパソコンの前に座って何か作業をしていた。

エレン「よう、べ、べ」

ベ「ベルトルト」

エレン「ベルベルト」

ベルベルト「惜しい、ベルトルト」

エレン「ベトベトル?」

ベトベトル「ちがうベルトりゅっ・・・・・・ベルトルト・・・クッ////」

エレン「(噛んだ・・・)冗談だ、ごめんごめん。ベルトルト何してるんだ?」

ベルト「ネットをね。僕のスマホ、使い物にならないからこっちで調べ物さ」

 俺はベルトルトの隣の席に腰掛けた。

エレン(俺ジュニアケータイしか持ってないから、ネットやったことない・・・)

ベルト「ハンジぐるみが言ってたけど、独自のOSを使ってるらしい。

    ブラウザもハンジ印だし。だから制限はキツいけど、情報がないわけじゃない」

エレン「(・・・ブラウザ?)???」

ベルト「・・・つまり、ネットでの調べ物は一応出来るってこと

    『そこで得られるの真偽は、君たちの判断に任せる』ってさ

    まあ、情報の取捨選択ってのは確かに自己責任だけど、怪しいなあ・・・ボソ」

エレン「ベルトルトは何を調べてたんだ?」

ベルト「ライナーは体育館の備品を漁ってるから、

    その間に僕はこの学園のことを手当たり次第検索してたんだ」

エレン「でも希望ヶ峰って秘密主義だろ? ないんじゃないか」

ベルト「そう、当たり障りのない情報しかなかったよ。

    ・・・エレン、僕が知りたいのは『卒業基準』なんだ」

エレン「そうか、普通の全日制とか単位制とか関係ないっぽいもんな」

ベルト「明確な基準を教えない・・・ってことは、あのメガネは

    僕たちにそれを突き止めて欲しいからそうしているんだ」

エレン「なるほど」

ベルト「焦らずゆっくり調べようと思ってね。以外と授業はまともだし、ご飯は美味しいし。

    エレン、よかったら一緒に調べないか?」

エレン「え? でも・・・」

ベルト「パソコン苦手そうだもんな。せっかくだし少し覚えたらいいよ。教えてあげる」ニコ

エレン「マジか、実は触ってみたかったんだ。ありがとな、ベルトルト」ニコニコ

 
 俺はインターネットの使い方をベルトルトに教わった。

 新鮮で、すごく楽しかった。

エレン「シガンシナじゃ子供のネット利用が禁止だったから、すっげぇ楽しかった!!」

ベルト「僕の故郷は回線こそ劣悪だったけど、規則は緩いからね」

エレン「でも途中から『プロテイン』とか『美顔体操』とか『ノンシリコンシャンプー』とか

    お前、意味のわかんないもの調べてなかったか?」

ベルト「あ、ああ・・・一応マネージャーだからね。

    管理しているアスリートのために、つい情報収集する癖があるんだ」

エレン「へえ、すげえなあ」

ベルト「毎日トレーニング漬けでも、あれで結構女の子らしいところあるからなあ・・・」クス

エレン「へえ、女子のマネージャーなのか?」

ベルト「え!? あ、まあね・・・あはは」アセアセ

エレン(教えて貰ったお礼に・・・何かプレゼントできねえかな・・・)


 ベルトルトにプレゼントを >>安価

 * ひつまぶしをやる or 月刊ラブドールをやる or きょうせいギブスをやる

   ミソビタンGをやる or スズランの香水をやる or やらない

またミスった、>>111さんお願いします

ミソビタンで。これリポビタンD的なアレよな?

うわあ。遊びから帰ってきたらPCが強制終了してた。セーブはこまめにしないとですねー・・・

ゆっくり書き直します・・・安価よろしければご参加ください

エレン「ベルトルト、これやるよ」ポイ

ベルト「え? ありがと・・・・・でぇぇええ!!!???///」

エレン「それ『疲れた身体にグンと効く』って書いてあったし、体調悪い時にでも飲んでくれ!」

ベルト「いや、これ世間的には超アグレッシブルな精力ざ・・・」

エレン「?」キラキラ

ベルト「いや、味噌汁味で美味しいよね・・・ありがとう」ニコ-

エレン「!」パアァァ

ベルト(ライナーがやったらぶん殴ってるところだけど、エレンならいいや・・・

    それにしても、サンタの件は嘘じゃないんだな。まるで箱入り息子って感じだ。

    『G』がゴールデンボールの略だってことも知らないんだろうなあ・・・w)

ベルト「なあ、エレン、君って周りから『放っとけない』なんて言われないか?」

エレン「? ああ、ミカサと・・・あと誰だかによく言わてたなあ。特に小さい頃は」

ベルト「だろうなあ」クス


 ガラリ


ライナー「よお、ベルトルト。まーだここにいたか」

エレン「おっす」

ライナー「おっ、エレンもか。ニカッ ・・・・・・・」ジー

ライナー(我が友よ・・・なぜ精力剤を大事そうに持っているんだ・・・?)

ベルト(ショウサイ ハ アトデ。イマ ハ ナニ モ イウナ)

ライナー「・・・・・・実は食堂に寄ったらサシャたちが面白いもん見つけてな

     特にこの学園には関係なさそうだが、お前らちょっと見に行かないか?」

エレン「行く!」

ベルト「僕はちょっと調べたいことがたくさんあるから、またの機会にね」

ライナー「わかった。後で飲み物でも持ってくよ。行こうぜエレン」

エレン「またな、ベルトルト!」ニコ

ベルト「ああ」クス

ライナー(随分仲良くなったもんだな。人見知りなお前にしては珍しい)ニヤ

ベルト(大体考えてることわかるけど。余計なことは言わなくていいからね、ライナー)

 食堂

コニー「ライナーおかえり! ベルトルトは?」

ライナー「あいつ忙しいみたいなんだ。だから、ほら、代わりにエレン持ってきた」

エレン「よ」ノシ

コニー「よ」ノシ

エレン「で、なに見つけたんだよ」

サシャ「こ、れ、です!」ドサァ

 サシャが奥の(確か食料庫)から、何か重そうな箱を持ってきた

エレン「(『悪魔の実』・・・?)なんだこれ すげえ硬そうなものがゴロゴロ入ってるな」

サシャ「『悪魔の実』。一緒に入ってた管理リストによると、正真正銘の食材らしいです!」

ライナー「総じて気持ち悪い形と色をしてるのが特徴だ。どうだ、興味深いだろ?」

エレン「不味そうだな・・・とても消化できる代物とは思えねえんだが」

コニー「だよなあ。でもサシャなんてみんなで喰おうとか、トチ狂ったこと言ってんだぜ」

サシャ「なに言ってんですかこのおチビちゃん!

    そこに未知の食材があるということは、新レシピ爆誕の希望がありまくりんぐです!」

コニー「もー。そんなこと言って、ずーっと飯の調査しかしてねえじゃん。

    すぐに終わりますーとか言うから手伝ってんのに。俺ここしか調べてねえしー」ハァ

エレン「『悪魔の実』ってちょっとググってみろよ」 

 ※覚え立ての言葉を使いたいだけ

ライナー「おお、いいな。だが、エレン、言い出しっぺの法則だ」

エレン「・・・・・・・・・・・・・・ちょっとひとっ走り行ってきまーす」


 俺は先ほどの視聴覚室で手早く検索してきた。(ベルトルトは相変わらず調べ物をしていた)

 とりあえず『ハン(ジ)サイクロペディア』というサイトで得た情報は・・・。

 ・食べると一定時間特殊能力を得ることが出来る類いまれな果実ですwww

 ・種類は複数ありますが、個数は一種類に一個しか実りませんwww

 ・不味いです。おすすめの食べ方は、冷やしてシロップがけw シwンwプwルw

 ・毒性はないですが、特殊能力によっては社会的地位に多大な悪影響を及ぼす可能性があります


エレン「――以上!」ハァハァ

ライナー「オイ、最後の項目に恐怖を禁じ得ないんだが」

コニー「とくしゅ能力! すげええ、ちょっと興味沸いてきた!」キラキラ

サシャ「リストによると、『ゴムゴムの実』、『メラメラの実』などは

    すでに持ち出されて誰かに食されているみたいです。上級生とかですかね」

コニー「それか卒業生とかかな。上級生ってそういやどこにいるんだ?」

ライナー「体育館の近くに防火扉の閉まった部分があった。

     多分階段だろうな。俺たちがいけない上の階にいるかもしれない」

サシャ「そんなのどうでもいいです! 見てくださいこの子たちを!

    『タベテー』『ワタシ ヲ タベテー』(裏声)って訴えかけてくる気がしませんか!?」ハァ//

ライナー「多分喰われたくないから、不味そうなフォルムに進化したんだと思うがな」


エレン「よーし、度胸試しだと思って一個喰ってみるか!」

ライナー「ははw 仕方ねえ、ちょっくらアニでも呼んでくるか」

エレン「え。あいつ部屋に籠もってると思うけど・・・」

ライナー「・・・だからだよ。ちょっと誘ってくるわ」スタスタ

コニー「度胸試しってんならもう一人くらい参加させようぜ」


エレン(そうだな、あと一人は・・・>>安価を誘ってみるか)

 * ベルトルト以外は参加してくれそうです

安価>>123で、すんません!

ミカサ

エレン(さっきのジャンとのやり取りも気になるし、ミカサを呼ぼう)


 俺は、なぜか今度は寮のトラッシュルーム(ゴミ捨て場)にいたミカサを引っ張ってきた


エレン「あんなクセぇとこいちゃダメだろ。臭いうつっちゃっても知らねえぞ」スタスタ

ミカサ「うん・・・ごめん」スタスタ

エレン「怒ってねえよ」


 食堂に戻った。度胸試しのメンツは、

 俺、ミカサ、サシャ、コニー、ライナー、アニの6人だ。

アニ「・・・・・・・・・」ゴゴゴゴ

コニー「ライナー? あのひとめっちゃ怒ってるよ?」ヒソ

ライナー「大丈夫だ。多分寝起きだからだと思う。参加してくれただけマシだ」ヒソ

コニー「ライナー? お前めっちゃ顔腫れてるよ?」ヒソヒソ

ライナー「大丈夫だ。俺が低血圧神拳くらった分、機嫌が直るのも早いだろ」ヒソヒソ

サシャ「アニ、来てくれてありがとうございます!」

アニ「別に・・・ただ小腹が空いたから・・・」プイ

サシャ「うんうん、この時間は女子力高いとおやつが恋しくなりますもんね~」ニコニコ

コニー「お前の女子力って食欲で換算されてねえか?」

ミカサ「悪魔の実って・・・エレン、食べちゃだめ」

エレン「大丈夫だって! 試してみようぜ、な」

サシャ「そうです、一人一種類ずつ、いってみましょう」

ライナー「お前テレビじゃ共演者の食事すら奪ってるくせに、今日はやたら気前がいいな」

サシャ「え? ・・・そりゃミカサとは前に一度共演したとき、

    メニューのほとんどを強奪してしまいましたからね。そのお詫びといいますか・・・」

ミカサ「? 貴女のこと覚えてない・・・」

サシャ「ガーン」

エレン(もしかして、サシャもちょっと怖いんじゃ・・・)

コニー「まあまあ。さて、誰から行く?」

アニ「・・・じゃんけん・・・」

ライナー「オーケイ。みんな手を出せ。『さいしょはグー』な」


 『最初はグー じゃんけん』

 『ぽん!』


エレン「俺が最初だな。じゃあフェロフェロの実って奴喰う!」

コニー「色が赤くてリンゴっぽいもんなあ。一番無難な奴選びやがって」

エレン「とったもん勝ちだぜ」

サシャ「果物ナイフとフォーク、はいどうぞ」ポス

エレン「俺が最初だな。じゃあフェロフェロの実って奴喰う!」

コニー「色が赤くてリンゴっぽいもんなあ。一番無難な奴選びやがって」

エレン「とったもん勝ちだぜ」

サシャ「果物ナイフとフォーク、はいどうぞ」ポス

エレン「さんきゅ」

 サクッ シャリシャリ 

エレン「あーむっ」パクッ

エレン「・・・・・」モグモグ

エレン「・・・・・・・・・・・・・・」モグモグモグモグ・・・ゴクン

エレン「・・・・・・・・・・・・・・・・まっずうううううううううううううう!!」ウルウル

コニー「不味いんか! やっぱ不味いんか!」キャー

ライナー「くっそ変に黙りやがって見てるこっちが緊張したわあああ!」

ミカサ「エレンが逃げずに食べた。それは、ズルい」

アニ「・・・・チッ」

エレン「ほんと・・・ほんっっっっっっとに、まずい・・・」ダバー

ミカサ「エレン、大丈夫? 吐く?」オロオロ

アニ「・・・泣くなよ・・・」

ライナー「どうだ? なんか身体に変化は起こったか?」

エレン「今のとこはなんとも・・・」

コニー「なんだ、つまんねえな」

サシャ「消化時間の問題かもしれません、次に行きましょう」


エレン「えっと、次に勝った奴は確か>>130だよな?」グス

 * こちらが設定した「実」に割当たります。運ですがお選びください

すみません、今日は寝ます。
安価はまた明日設定させてください。

訂正 >>128>>129の間に以下の文章が入ります。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アニ「あの、やっぱり私は・・・」ソロー

 ガシィ
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

では安価の続きから再開します。



エレン「えっと、次に勝った奴は確か>>133だよな?」グス

 * あらかじめ順番と能力を設定した「実」に割当たります。運です。

ライナー

エレン「確かライナーだったよな?」グス

ライナー「よし、気合いいれてくぜ・・・じゃあ、『フラフラの実』っての喰うぜ!」

コニー「わくわく♪」キラキラ

ライナー「ぱく・・・・・・・・」ムグ

ライナー「・・・・・・・・・・・・・・」ムグムグムグ・・・ゴクン

ライナー「・・・・・・・・・・・・・・・・ま、ず・・・」カラン

ミカサ「ライナー固まってる・・・そんなに?」

コニー「あれかな、飲み込んだあとにクるってのは逆にキツいのかな」

サシャ「・・・・・いや! まだ大丈夫! 私ならイケる!」

アニ「あんた何と戦ってんの・・・?」

エレン「ライナー大丈夫か。俺みたいに泣かないあたり強いなお前」

ライナー「ごれば・・きっづいわ・・・」フゥ・・・

コニー「来いよ、とくしゅ能力!」カモン!

ライナー「やあ、特になんとも。やっぱ紛い物かね・・・・・・ん、んぐ!!!??」

全員「!!!!???」

ライナー「ぐ、ああああああっ・・・く・・・っ」バタッ

全員「ライナアアアアア!!!」

ライナー「・・・・・・」ムクッ

エレン「起き上がった!?」

ライナー「・・・・うぅ」ジワァ

アニ「は!? 泣いてんの!?」ギョッ

ライナー「クソ野郎・・・アニの馬鹿野郎・・・」グスグス

アニ「ちょ・・・っ」

ライナー「お前はいつもそう、ベルトルトが頑張っても、冷らい態度ばっか・・・ヒック

     おれはともかく、ぶぇるとるとにくらい優しくれきねえのかああ」ウォオオオヲン

アニ「え、ぇぇええ???///」

エレン「なんぞコレ」

ライナー「ばあか ばあああああか! ヒック」グスグス

コニー「俺・・・これ何か知ってるぞ・・・」

ミカサ「私も・・・」

コニー「泣き上戸だわ。こいつ酔っ払いだ」

サシャ「ああ、『フラフラ』ってそういう・・・」

エレン「ライナーって泣くんだ・・・こんなに強そうなゴリラなのに」

ライナー「みんな俺をごりらって言う!ヒック 人間じゃないみたいに! ベソベソ

     俺はおまえたちとおんなじ人間! 好きでこんな風に生まれたんじゃらい・・」グス

ミカサ「よくわからないけど。アニ・・・貴女はライナーと知古ということ?」

アニ「ああ・・・ベルトルトもね・・・同郷だよ・・・チッ」

サシャ「自己紹介のときそんなこと一言も言ってませんでしたね」

アニ「面倒だからね・・・大体、私は長らく内地で一人暮らしをしてたし・・・」

コニー「ああ、古いってだけで特に仲良くないってことか」

アニ「そうだね。ライナーとは随分久しぶりに再会したんだ」

エレン(ライナー「とは」?)

ミカサ「ほら、みっともない。立って」スッ

ライナー「・・・やだ」グズ

ミカサ「・・・あ?」

ライナー「やだやだ、嫌だバーカ」ダバー

ミカサ「・・・」ピキ

アニ「こら、ライナー」スッ

ライナー「なんで、俺は、人じゃないんだ、人って言われたい。

     俺は、ちっとも、立派じゃな、」

アニ「ライナー」ギュ

コニサシャ「wha!!!?」

ライナー「・・・ぅ・・・」グス

アニ「まったく、あんたは昔から弱いね・・・クス」

エレン「なんか・・・」

エレン(アニって母さんみたいだ・・・)


 しばらくアニはライナーをあやし続け、俺たちも特殊能力?が途切れるまで待った。

 ・・・・・
  ・・・・・・・・・・・


ライナー「・・・・? なんか途中から覚えてないわー」

アニ「ああ、たいしたこと無かったから大丈夫」

コニー「そうそう。汚い絵面だったけど忘れてやる」

ライナー「? 気になるんだが」

ミカサ「酒癖によってはお前の屍が出来上がるところだったが・・・今日のことは水に流そう・・・」

サシャ「おっかねえアイドルですねホント」

エレン(やっべぇちょっとホームシック・・・おれマザコンなのかな・・・)

エレン「き、気を取り直して次行こうぜ次!」

コニー「だな、エレンとライナーは残念だったが、とくしゅ能力はマジもんみたいだし!!!」

エレン「えーっと、次は>>141だったっけ?」

ミカサ

エレン「ミカサだったっけ? 何喰う?」

ミカサ「エレンが食べたんだから、私も逃げない・・・逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」ブツブツ

コニー「アイドル顔色悪いぞ」

ミカサ「・・・・・よし、『ヌコヌコの実』を・・・食す!」ギラリ

ライナー「ちょっとかっこいい」

アニ「ちょっとかっこいい」

サシャ「このピンクの変な形した奴ですね? どうぞ」

ミカサ「はむ・・・・・・んぐんぐ・・・・ゴクン・・・・・・・・」

エレン「飲むの早!」

ミカサ「・・・・・・Sie sind das Essen und wir sind die J?ger !!!??」

コニー「え、今なんつった?」

アニ「・・・『てめぇは食い物、俺らは狩人』」

ライナー「あ、Mステで歌ってた新曲の歌詞か」ナットク

ミカサ「・・・・くっ」ウル

コニー「お・・・?」キュンッ

ミカサ「・・・あ、あああ・・・」フラ

エレン「ミカサ!? おいミカサ!!」ガシ

ミカサ「・・・・う・・・・・・・・・・・にゃあ」

エレン「・・・・・・にゃあ?」

 ニョキッ

コニー「おい、ミカリンの頭・・・なんか生えてるぞ」

サシャ「あれって、猫耳なんじゃ・・・・」

ミカサ「あう・・・・エレン、だっこ恥ずかしいにゃ・・・////」フルフル

ライナー「oh...」

アニ「・・・ヌコって猫のこと?」

ミカサ「エレン熱いにゃ・・・でも嬉しいにゃ・・・///」スリスリ

サシャ「仕草がガチ猫ですねえ。これミカリン的にも貴重ですよ」ほんわか

エレン「な、なんだよ・・・急に・・・ミカサらしくねえ」

ミカサ「エレンあそんで、あそんで」ペロペロ

エレン「あ、コラ鼻の頭なめんな! 猫かよ!」

アニ「いや猫だよ。」

ミカサ「エレンかわいいにゃ。好きだにゃ」ギュウウ

エレン「も・・・/// 恥ずかしいだろさっきから。母さんみたいなことすんなよ///」

コニー(いや普通の母さんはこんなことしねえだろ)

サシャ「ほんまどういう家庭で育ったんとね」

ミカサ「エレン、エレン。大好き」スリスリ

エレン「はいはい、俺も俺も。猫が言葉覚えたらこんなにしつこいのか?」ヨシヨシ

ミカサ「/////」ピコピコ

ライナー「あのミカリンがめっちゃ微笑えんでるぞ」

アニ「耳がピコピコしてる」

全員(わかりやすい・・・・・・・)



 しばらく猫化したミカサの我が儘に振り回された。

 ・・・・・・・なんだか悪い気はしなかった。


ミカサ「・・・・・? ん・・・。ハッ、私・・・どうなった?」

エレン「・・・・ふん///」

サシャ「可愛かったです」

アニ「かわいかった」

コニー「かわいかった///」

ライナー「可愛かった(記憶しよ)」

ミカサ「エレン・・・怒ってる?」シュン

エレン「怒ってねえ。普段からそれくらいすりゃいいのに・・・」ボソ

エレン(変に姉貴ぶったりせずに・・・)

コニー「ジャン居ないのがかwわwいwそwすぎるw」ププ

ライナー「あいつは洒落にならん。居ない奴のことを言ってやるな」

アニ「でも危険だね。確か不純異性交遊はおしおきされるはず」

エレン「あ?」

アニ「ミカサ、気を付けた方がいいよ。あんた達が家族と思っても、端から見れば男と女」

コニー「もう遅いような」

ミカサ「?・・・よくわかんないけど、気を付ける」

サシャ「あとは私とコニーとアニですね」

エレン「順番は>>安価だったっけ」

 * サシャ、アニ、コニーの順番をお書きください。

安価>>149さんでお願いします

 *ちなみにあと3つの実は 1. ○ワ○ワの実  2. シ○シ○の実  3. ガ○ガ○の実 です。

アニ、サシャ、コニーで


エレン「順番はアニ、サシャ、コニーだったっけ」

アニ「そう。じゃあ私は。このもこもこした『フワフワの実』で」

サシャ「それ、外見はなかなか可愛い方ですよね」

アニ「いただきます。ガブリ」

コニー「丸かじりってワイルドだなオイ」

アニ「モクモク・・・・・・・・ゴクン

   ・・・・・・噛み応えのない・・・・・・・・・・だ・・・・・・・・・・・・」ピシ

ライナー「とてつもない顔で固まってるな」

サシャ「外見が良くても中身がビターじゃなあ・・・」ガッカリ

アニ「何コレ、くるし・・・・っ////」


 ふわっ


アニ「ひゃっ!!!???////」グン

エレン「アニ!」

ミカサ「地面から浮いてる・・・!?」

アニ「な、な・・・・あっ!?」オロオロ

ライナー「落ち着け、大丈夫だ落ちないから! 落ち着いて深呼吸しろ」

コニー「泣き上戸兄貴カッケー」キラキラ

エレン「アニ~。すげえ、お前飛んでるぞ~!!!」キラキラ

アニ「んなこと・・・わかって、ッひゃあ!!」

 グルン

アニ「・・・・・・っ」

サシャ「ひっくり返っちゃいましたね」クスクス

ミカサ「・・・おへそ見えてる」

アニ「~~~~~っ!!!/////」ササッ

コニー(おお、なかなか綺麗なおへそだった///)

エレン(いいなー。俺みたいに出べそじゃない)

アニ「・・・ック」ワタワタ

ミカサ「・・・手を貸そう」

アニ「いら、ないっ」

ミカサ「・・・・・」ギュ


 くるん


アニ「・・・・・ハァ・・・ハァ」フワフワ

エレン「あんまり逆さだと血がのぼっちゃうもんな」

アニ「・・・手、離して」

ミカサ「うん」パッ

アニ「・・・・・・・・・ありがとう」

ミカサ「うん」

ライナー「おお、アニ、もうバランスとれるようになったのか。お前天才なんじゃないか?」

アニ「別に・・・このくらい・・・///」フワフワ

コニー「今までに比べるとちょっと『とくしゅ』っぽさがUPしたな!」

アニ「・・・・そうだね・・・・・・・」

ライナー(こりゃ結構楽しんでるわ。よかったよかった)


 しばらくアニの能力解除を待っていたが、これまでと違ってなかなか解除されない。

 そのため、アニがぷかぷか浮遊をした状態でサシャに順番が回ることになった。

サシャ「どちらにしよおかな、食のかみさまのゆうとおり!」

コニー「さあ、どうなる!?」

サシャ「食の神様が示したのは・・・・『シトシトの実』!」

アニ「シトシトねぇ・・・」プカプカ

ライナー(何時能力が切れても構わないように近くで待機せんと)ササ

サシャ「ふっ・・・・私は料理評論家として年間ウン千万稼いでんですよ??

    美しいコメントの一つや二つ、残して見せますよ」フフン


ミカサ「よく言った。じゃあ喰え」ガシ

サシャ「んぐ。ひょ、みはさ・・・っ押しつけらいれ///・・・モゴモゴ」

エレン(どうしたんだ、急にいじめっ子みたいに)

サシャ「んご、んぐ・・・・もぐ・・・・もぐ・・・・・ゴックン」

ライナー「ほら芋女解説しろよ」

サシャ「これは舌触りがなめらかでシルクを思わせますね。
 
    味は苦みがあるものの希薄で、そのぶん感触で楽しませるため

    スイーツ食材向きと言えrrrろろ5年走らせたタイヤの味がしますうう美味しいです!」

エレン「本職は身体張ってんなあ」パチパチ

コニー「お前すげえな、リアクション芸人もやってんのかあ!」パチパチ

アニ「・・・・不憫な・・・」プカプカ

ミカサ「サシャ。私の嗜虐心をくすぐる。罪な子・・・」

コニー(確かに、こう・・・イイ顔をするのは解る・・・)

サシャ「うふふふ・・・・・まあ、厳しいテレビ業界を生き抜いた故の鉄板メンタルですよ

    ・・・・・そこに、芋がある限り、私は、生きる・・・ガクっ」ッチーン♪

コニー「うぉっとっと」ガシィッ

ライナー「真っ白に燃え尽きてんぞコレ」

アニ「・・・・」フワフワ

エレン「さあ・・・・どうなる?」

サシャ「・・・う・・・あ・・・?」

全員「起きた」

サシャ「・・・・・・・」ポー

全員「・・・何も起こらない?」



 ポツ


エレン(えっ!? ほっぺたに水滴が・・・)


 ポツ
    ポツ ポツ

  ポツ ポッ   ポツ

   ポ ツ


ライナー「おいコレ・・・」


 ッザアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


エレン「総員食卓の下に撤退しろ! 大雨だぞコレ」ダッ

ミカサ「!」シュタッ

コニー「どこが『シトシト』じゃあ、ザアザアじゃねえかあああ!」ダキっダダダッ

サシャ「・・・? ハッこ、コニー!?////」

コニー「お前っっ重い!!」ゼーゼー

ライナー「アニ!」グイッ

アニ「悪いね、ライナー」フワァ

ライナー「しばらく捕まってろ、机からはみ出ちまうといけねえ」

ミカサ「・・・雨雲が出てる・・・雨を降らせる能力」

サシャ「なんですか、この人類の発展を揺るがし兼ねない能力は! 私ですけど!」

エレン(それにしても・・・一瞬なのに・・・)

全員(みんなズブ濡れで服が透けてる・・・・・・)

コニライ(女子どものブラがすごく・・・・/////)

アニサシャ(男子たちの身体が結構たくましい・・・//)

アニ「・・・!? あ、能力が・・・・」

 ドサッ

ライナー「お。アニの能力切れか」

アニ「・・・・・? !?・・・・ なんで濡れて・・・?」

ライナー「何でってさっき、え?」

アニ「なんでてめえが私の肩抱いてんだよ!!」


 バキイイィィィッ


ライナー「」チーン

コニー「あー。そっか」

ミカサ「能力の効果が切れたらその間の記憶がない。共通の法則?」

アニ「・・・?」


 アニが浮いている間に起こった経緯を説明した。


アニ「・・・あとで詫び入れるよ」

ミカサ「それがいい」

エレン「サシャ、せめて雨量の調節出来ねえか? シトシトって言うくらいだし」

サシャ「うーん」ムムム

サシャ「ご飯が炊けるくらいの雨量がいいご飯一合が炊けるくらいの雨量がいいご飯が炊ける」


 ザアアアアアアアアアァァァァァァァァァ・・・シト シトシト


エレン「・・・ふぅ」

コニー「この水、能力消えたら乾くよな? 乾かなかったら・・・掃除?」アセ

ミカサ「掃除・・・いや、考えるのはよそう」



 しばらく、ぽつぽつとどうでも良い世間話をしながら、サシャの能力が消えるのを待った。

 コニーの予想通り、能力の消失と共に、水たまりもサシャの記憶も消えた。


コニー「俺はあまりモンかあ。じゃんけん弱いんだよなあ」

ライナー「復活したわ。雨やんでよかったな」

サシャ「『悪魔の実』・・・あの強烈な味だけ残して記憶は消し去るとは・・・まさに悪魔」ガクブル

コニー「最後は『ガチガチの実』、いただきまっす! ぱっくん」

エレン「・・・」ドキドキ

コニー「モキュモキュ・・・・・モキュモキュ・・・・」

アニ「ガチガチなのにモキュモキュなのか・・・・」

コニー「モキュモキュ・・・ゴックン・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・ア、コレ ダメダハ。ナキソウ」グスン

サシャ「エレンタイプの反応ですね」

ライナー「コニー・・・大丈夫か? 気を確かにな」

コニー「・・・・・・・・・・・・・・」シーン

ミカサ「? 反応が・・・」

コニー「・・・み・・・・み な ぎ っ て き た ぜ ! ! !」

全員「!?」

サシャ「コニーどどどどどうしましたか!?」

コニー「俺の拳は今、ガチガチになってるぜ・・・・

    いける、今ならどんな壁でも壊せそうだ!!!!」

全員「それって・・・!?」

コニー「ああ・・・俺が一番『とくしゅ』能力っぽくて超嬉しい!

    この、鋼の拳があれば、ジャンみたいな無謀な脱出も出来るかもな!」ギラリン

ライナー「た、確かにバトル物っぽいな・・・!」

サシャ「性格もなんか『レッド』って感じです!」

アニ「バカ、止めといた方が・・・」

コニー「試しに見てみな、俺の拳をおおおおおお」バッキイィィィ


 コニーはそう言って、先ほどまでみんなで隠れていたどデカい食卓を

 その右手一つで見事にたたき割った!!!


男子「ヒャッハアアアアアアアアア!」

ライナー「鎧のような右拳! なんか妬けるぜ、その能力・・・!」

エレン「すっげえええ、コニーすっげええええええ!! 最強のハゲだ!!!」

アニ「器物損壊・・・知らないっと」フイ スタスタ

サシャ「見事です。輝いてますねコニー!」

コニー「これ。イケるんじゃね? このハゲ、今ならイケるんじゃね!?」

ミカサ「・・・エレン逃げよう」クイッ

エレン「? なんでだよ。ここで逃げちゃだめだろ!」ニコニコ

ミカサ「そうじゃなくて・・・」

エレン「?」ニコニコ

ミカサ「わかった。逃げない・・・」

コニー「よーし、今度は校舎の壁ブチぬいt」


『やあ、コニー。楽しそうだねw』


コニー「てみるのも楽しい気がしたけどやっぱりライナー殴ろうかなっ☆」

全員「・・・・・・・」


『いや、さっそく交流をしているようで何よりだ。絆は人を強くするからねw

 悪魔の実も、申し訳程度の数だけ保存してたけど、打ち解ける材料になって良かったよ』


全員「ハンジぐるみさん・・・オッスオッス」


『でもさあ・・・学園の備品を壊すのは・・・ふふふダメだよ。

 こっちも君たちを隔離してるから人のことは言えないかもだけどw

 そうだねコニー?』


コニー「・・・そっすね」

『ああ、いいよ。うん。壁壊すのもアリなんじゃない?

 君が目指してる卒業は出来ないけど、単に故郷に帰るなら出来るかもよ?

 
 壊しきる前に、まだ君が息をしていたらの話だけどね?』


エレン「・・・・・ぅわあ・・・」

コニー「全うに卒業・・・したいです。えへへ」


『悪魔の実の能力で性格にも変化があったようだから、今回は見逃すよw

 あ、でもたたき割ったテーブルの片付けだけは手伝ってね?www』


コニー「はい」


『この状況、酒の席に似てるから申し上げにくいんだけど・・・連帯責任だぞ?』


全員「はい・・・」

『よろしい。じゃ、お掃除ロボットを後でよこすよ、待っててね』ノシ


コニー「・・・・・俺の拳・・・まだこんなに熱いのに・・・」

ミカサ「仕方ない。私たちは、調子に乗りすぎた・・・・」

エレン「まあ、楽しかったし・・・ハハ」

サシャ「・・・・あ。」

ライナー「ああ・・・っ」


全員「アニは!!??」




アニ「・・・逃げるが勝ち・・・」


  -----------------------


 その後もちろん壊したものの片付けに追われ、時間はまるまるつぶれ、

 他のメンバー達にも一応ことの成り行きは話して夕食は盛り上がりを見せたものお、

 その間、不思議と俺の食べた実の能力は発現しなかった。

エレン(いや、俺が忘れてるだけなのかもな。自分のしでかしたことは覚えていないし)


 ・・・正直、充実した一日だったと思う。

 俺もミカサも友達は少ない方だったから、こうやって沢山の人間と話せるのは新鮮だった。

 こいつらと、もっと仲良くなりたい・・・素直にそう思えた。

 充足感に満ちた中で、俺は安らかに眠った。


 次の日はまたミカサが起こしに来て、平和に始まる――そう思っていた。


エレン「くー・・・くー・・・」zzzZZ...

???「・・・れん・・・ェレン・・・」ユサユサ

エレン「すぅ・・・・・・ん・・・?」

アルミン「エレン!!!」

エレン「ハッ!? ・・・あ、アルミン・・・!? おはよう・・・?」

アルミン「エレン・・・これは、一体どういうことなんだ?」

エレン「え・・・?」


 ずる・・・・・


エレン(? ・・・頭の上に何か乗って・・・?)

アルミン「エレン、どうして女子のパンツなんか被って・・・! とにかく下ろさないと」

エレン「は・・・?」

 コンッ・・・

 ガッチャアン


アルエレ「!!!」ビックゥ!

ジャン「おい、エレン! ミカサが部屋にいないみたいなんだが・・・・・・ッ!!!??」

マルコ「こら、ノック1回で突入は失礼だろジャ・・・・え?」

ジャン「おま・・・・それ・・・・女子の・・・!?」ワナワナ

マルコ「・・・・」ポカーン


 は ら り


エレン「なに・・・?」


 俺は頭上からずり落ちた物をつかんだ。

 凄くヒラヒラで、凄くスケスケ。黒の絹糸が柔らかな光沢を放つ。

 女の子の、ぱんつだ。


エレン「な・・・・ん・・・・・!?」

『あらあら、エレンちゃんたいへーん。どうしてそんなもの握ってるのかな?っ』


ジャン「ハンジ!」ギロリ


『ジャンくんガンつけすぎだよーまったくw

 いくら何でも他人のぱんつを被ってるなんて、これは学級の和を乱す状況だねええw』


マルコ「ハン・・・学園長、どういうことですか・・・」


『言っただろう、学園に降りかかる事件――試練は、君たちで話し合って解決するのさw』


アルミン「・・・・・まさか」


『じゃあ、みんなに報せてくるねええええええ!w』


アルミン「・・・・ッ余計なことを!」



 <ピンポンパンポーン・・・!



『えーまいくてすとーまいくてすとー。

 事件が発生しました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』



 不自然なほど明朗なハンジぐるみの声が、朝の寮内に響いた。






第一章「悪魔とパンツは紙一重」(非)日常編   END

※以上で一章の日常編終了です。最初ということで長丁場にし過ぎました

 次からは事件パートです。ご承知のように現段階で殺人事件は起こりません。基本アホな事件にしてます

 需要は少ないとは思いますが、細々と続けますので安価の際は是非ご参加ください。


 俺が大人だったら、今の状況を苦も無く覆せるのだろうか。

 あいにく俺は平凡なガキだ。

 状況が理解できず、ただ固まることしか出来ない、無力な人間だった。

 ただ一つ、本能的に解っていた。

 ここから先、このままでは何らかの『制裁』が待っている――と。



エレン「・・・・・」

ジャン「・・・・・」

マルコ「・・・・・」

アルミン「・・・・」


ジャン「事件って、まさかコイツがパンツ被ってるってコレか!?」

マルコ「エレン、とりあえずパンツ握るのやめようか」

エレン「あ? ああ・・・」パス


エレン(何が何だか・・・わからない・・・・・・)





第一章「悪魔とパンツは紙一重」 非日常編





 ドタドタドタドタ

 バン!


ユミル「話は聞いたぜエレン!」

クリスタ「ユミル・・・っ」

ユミル「てめぇ、女子のパンツ盗んだんだって?」

クリスタ「ハンジぐるみはそこまで言ってないよ・・・」

ユミル「・・・被害パンツはそれか・・・ったく、ハァ・・・見損なったぜ」


 なんで、俺はこんなに責め立てられてるんだ?

コニー「えーマジだったのかよ。ハンジぐるみの冗談かと思ったぜ」

サシャ「すっげぇ色気のあるおぱんつですね・・・誰のですか?」

ベルト「・・・・・」

ライナー「・・・・あー、エレン」


 なんで、俺はこんなにも冷たい視線に晒されているんだ。

 昨日、あんなに楽しく笑い合ったばかりの瞳が、今は鈍く、暗く、

 絶望に満ちた俺の顔を映し出していた。

エレン「・・・!! 俺はやってない! 朝起きたらコレがあったんだ!」

ユミル「女々しいぞこのタマ無し! 潔く認めやがれ!」

ジャン「まあ・・・確かに被ってたからな・・・」

エレン「こんなの知らねえよ。こんな・・・///」ウル

アルミン「待って、みんな。」ス・・・

 
 そのとき、アルミンが俺をみんなから隠すように前に立った。


アルミン「放送、聴いていなかったのかい?」

ユミル「・・・あ・・・?」

アルミン「『学級裁判』を開く・・・ハンジぐるみはそう言ったんだよ。

     何故エレンがこれを持っているのか、本当に盗んだのか。それを暴くのは今じゃない。

     寝起きの彼をこの場で責め立てるのは、提示されたルールに反している」



『そうですアルミンきゅん!』


ベルト「・・・ハンジぐるみ・・・」


『すべての経緯を明かすのは学級裁判で。

 君たちには事件の真実を暴いて貰い、クロをあててもらいます。

 クロが合っていれば、君たちの卒業基準に一定の+評価が加算されます』


コニー「犯人捜しを俺たちでしろってか? 卒業が絡むなら仕方ねえけどよ」

クリスタ「あの。クロが間違っていたら・・・?」


『クロが合っていればクロにおしおき、間違ってシロを当てた場合は・・・

 君たちがおしおきされます! ワックワクのドッキドキだよね!』



ジャン「お仕置きってのは・・・」


『クロの場合は罪に応じた量刑、

 誤審した場合の君たちには、卒業が遠のき、ここに閉じ込められる時間が長引きます』


ジャン「・・・はぁ?」


『これは試練だ。冤罪押しつけといて自分だけなにも無いなんて虫が良すぎるだろ?

 裁く側にも一定の責任が課せられる。どんな選択にだって、そこには重みが伴うもの。

 せいぜい慎重に、クロを探し出すといいよ』


ライナー「なるほどな」

アニ「・・・今きたんだけど・・・ハァ ハァ 状況は?」

ベルト「放送のとおりだよ。・・・ロードワークしてた?」

アニ「うん・・・フゥ フゥ」

ベルト「そう・・・・・」


『最後に一つ。被害者はミカサ。主観的な偏りを防ぐため、

 ミカサには発言権がないからね。じゃあ、捜査頑張って!』


エレン「・・・ミカサ・・・?」

ジャン「み、みみみミカサのぱん、ぱ!!?//////」

マルコ「ジャンどうどう。よし、みんな話は聞いただろう?

    一度整理して、どういう経緯でこうなったのか調べるべきだ」

サシャ「私はパスします。頭使うの苦手なんで」キッパリ

コニー「俺もー」スタスタ

マルコ「まあそれは自由だけど。結局クロをあてなきゃ僕たちの軟禁も続くわけだから

    犯人捜しのジャマになるようなことだけは止めてくれ」

サシャ「はーい」スタスタ

ユミル「・・・わかったよ。まずは被害者のミカサを探してくる」スタスタ

ライナー「エレン、お前何も覚えてないのか?」

エレン「・・・そもそも俺は、ぐっすり寝ていただけだ」

ライナー「そうか・・・わかった」スタスタ

ベルアニ「・・・」スタスタ

クリスタ「エレン・・・」オロオロ

エレン「・・・いけよクリスタ。どっちにしろパンツ被ってたのは事実だからな・・・

    見苦しいモン見せちまってすまなかった」

クリスタ「あの、私・・・」

エレン「ごめん、状況を整理したいから・・・・」

クリスタ「う、うん・・・」シュン・・・スタスタ

マルコ「ジャン、僕たちも調べよう」

ジャン「この死に急ぎ変態野郎が犯人で間違いないだろ。ミカサのパンツ被った時点で万死だわ」

エレン「(なんつう眼してんだコイツ・・・)ミカサのパンツなんか興味ねえ」

ジャン「んだと!?」

マルコ「ジャン、行 く よ。

    エレン・・・悪いけど、僕には君も随分疑わしく思える。

    僕たちも調べるけど、君を助ける結果になるかはわからない。じゃあね」

ジャン「チ・・・ふん」


 スタスタ・・・ガチャン


エレン「・・・ッ」ウルウル

アルミン「エレン・・・」ポン

 
 俺には感極まると涙腺が緩んでしまう、恥ずかしい悪癖がある。

 たまらず、体育座りで組んだ足に顔を埋めると、

 残ったアルミンがベッドの脇に腰掛け、俺のぼさぼさ頭に優しく手のひらを置いた。


アルミン「エレン・・・やったの?」

エレン「やってねえ!!!・・・クッ」グス

アルミン「やってないんだね?」

エレン「・・・ゔん」

アルミン「そうかい・・・信じるよ」ナデナデ

エレン「・・・え・・・どうして・・・?」

アルミン「エレン、僕たちもう友達じゃないか」ニコ

エレン「あ、アルミン~~!」

アルミン「ふふw エレン、こういうのは状況証拠で片付けられがちだ。

     君が犯人でないというのなら、僕たちでその疑いを覆すしかない!」

エレン「・・・ああ、そうだな。協力してくれ、アルミン!」

アルミン「ああ、エレン、君の社会的地位を守ってみせる!」

エレン(俺にいたずらするだけならともかく、ミカサの下着なんて使いやがって・・・

    犯人を突き止めて、ミカサに土下座させてやる!!!)


 アルミンの暖かい手のひらに、俺は少しだけ落ち着きを取り戻した。

 こんな事態に陥った原因を、突き止めてみせる。

 お仕置きされたくなければ、俺が俺を信じて突き進むしかない!



 「捜 査 開 始」

しばらく仕事が忙しかった。

1章再開します。



『やっほ、ホモみたいに仲の良いおふたりさんwww』


アルミン「ふ ざ け ん な よ。・・・茶化して楽しいんですか?」


『まあまあw これを届けに来たんだよ、見てね』ポス


エレン「これって」

アルミン「液晶タブレット?」


『それ、事件の最低限の情報が入ってるからね。メモもそれに書き留めると良いよ。じゃ』ノシ


アルミン「なになに・・・ほんとだ、『ハンジさんファイル』だって」ピッ



【ハンジさんファイル1】

 1.被害者はミカサ・アッカーマン(のパンツ)。昨日入学式後よりパンツを紛失。

 2.紛失物の形状は黒レースのランジェリーショーツ(面積小さめ)

 3.本日七時過ぎ、エレン・イェーガーが対象物を頭に被った状態で幸せそうに寝ているのを

  アルミンが発見。続けてジャン、マルコが目撃し事件発覚

 4.対象物を現場室内に持ち込んだ者をクロとする



エレン「全力で俺のことクロにしたそう。学園長の悪意が見えるよ」

アルミン「ゴメン、実際幸せそうだったから、僕もそこは否定できないや・・・w」

エレン「それは・・・・・・久々に寝付きがよかったから・・・」ぐぬぬ

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※ 犯人すぐわかるだろうけどネタバレはやめてあげてくださいね

アルミン「ふふふ。まずは部屋の状況を確認してみようか」

エレン「俺の部屋?」

アルミン「そうだよ、ちょっと荒らされてるけど現場検証は鉄則だからね!」ニコ


 俺たちは自室をくまなく見て回った。

アルミン「エレン・・・そういやちゃんと戸締まりしてる?」ガチャガチャ

エレン「あー。してねえ。そんな習慣ねえし」

アルミン「不用心だなあ・・・昨夜も?」

エレン「うん・・・・・・あ!」

アルミン「そう、つまり誰でも出入りできる環境ってわけだね」

エレン「メモしとかなきゃな!」


 >言弾『エレンの部屋の鍵』を入手


 ※「言弾(コトダマ)」・・・裁判で使うキーワードのことです。手がかりとでも思ってください。


アルミン「眠ったのはいつ?」

エレン「えっと、就寝時間の22時に部屋にもどって、シャワー浴びて・・・すぐ寝た」

アルミン「昨日、一昨日のの大まかな行動を教えて」

エレン「朝ミカサに起こされて、飯喰って授業でて、午後はお前とベルトルトと過ごして、

    んで『悪魔の実』喰ったわ。そういや。で、怒られて、食堂片付けて夕飯喰って。

    後は、コニーとライナーとマルコとで洗濯室で洗濯が仕上がるまでダベってたな

    結局就寝時間は守って10時前には部屋に引っ込んだし」

アルミン「まずは記録、と・・・」

エレン「で、一昨日はほら、疲れてたからすぐ寝た。たぶん一番最初に」

アルミン「あの後は結構みんな遅くまで起きていたから、君だけ早寝だったんだね」


 >言弾『エレンの行動』を入手


エレン「とりあえずはこんなところか?」

アルミン「まだだ、み、ミカサのパンツも大事な証拠だから・・・見ないと・・・・・・///」

エレン「あ、そうか」ヒョイ

アルミン「ダメダメダメ!! 軽率な行動は裁判員の心証を悪くするから!」

エレン「あー。そうだな」ポイ

アルミン「女の子呼んでこよう。それがいい///」

???「その必要はねえ」ガチャ

エレアル「ユミル!?」

ユミル「見張りも兼ねて見てやるよ。ほら、パンツ貸しな」

エレン「なに言ってんだ、ダメじゃないか、お前も男だろ」

ユミル「裁判するまでもなく私刑に処したるわボケ」

アルミン「ゆ、ユミルちゃんお願いしまーす!!」ヘラァ

ユミル「・・・・まあいい。ほら、容疑者イェーガー、とっとと外に行けよ」

エレン「なんだよ。つうか、お前ミカサを探すんじゃなかったのか?」

ユミル「ミカサは被害者として捜査には参加できないから、ハンジぐるみが別室に隔離だってさ」

エレン「え・・・!?」

ユミル「・・・人のパンツ被ってたてめぇもてめぇだが、

    被害者晒してわざわざ囲うっていうメガネのやり方もイケすかねぇよ」

エレン「・・・・・」フルフル

アルミン「エレン、行くんだ。僕はもう少しこの部屋を調べるから」

エレン「・・・・行ってくる」



 俺は勢いよく部屋を飛び出した。


エレン(そんな、ミカサ・・・・!

    隔離って、どこに居るんだ・・・ミカサ・・・!)ダッ

エレン「! ・・・いや、落ち着け・・・」ピタ

エレン(大丈夫。まずは、昨日のことをもっと広く思い出せ・・・)


 ハンジさんファイルによると、ミカサがパンツを紛失したのは入学の日。

 犯人は少なくとも俺がぐっすり寝るまでそれを持っていた可能性がある。


エレン(俺がミカサだったら。さすがにパンツを無くしたら間抜けだから、まず探す)

  
 確かミカサは昨日、少なくとも洗濯室とトラッシュルームに一人でいたはずだ。


エレン(力なげに突っ立ってたからおかしいと思ってたんだ・・・

    あのとき探してたんだとしたら・・・ちょっとくらい気にかけてやりゃよかった・・・)


コニー「よ、超高校級のパンツハンター!」ニコニコ

エレン「・・・っ! コニー・・・」

コニー「まあそんな構えんなって。まだ決まったわけじゃないんだろ?」

エレン「当たり前だ! 大体、ミカサのパンツなんか被って何が楽しいんだ」

コニー「ふうん。俺はてっきり、夜は『おさかん』だったのかなぁとばかり」

エレン「・・・?」

コニー「や、だって夜中お前の部屋の前通ったけどすっげぇドタバタしてたじゃん?

    パンツの話聞いて、ちょっと納得しちゃったんだ、けど・・・あれ、違う?」

エレン「・・・その話、詳しく」ギロ

コニー「あ、ああ・・・(こいつ、時々眼ヂカラやべぇんだよなぁぁ)」


コニー「俺が夜中、1時くらいかな。寝る前にホットミルク飲もうと思ったわけ。

    んで、食堂に行こうとしたら、お前の部屋らへんからさすっげえ音が聞こえたんだ」



 ギシ・・・ドタ

コニー『・・・ん?』

 ギシゥ・・・ガス・・・ドタン・・・ドスッ

コニー『なんだよ・・・うるせえな・・・。おい、うるっせぇぞ!』ドン!

 ギシ・・・・・・・・・・ シーン

コニー『ったく。エレンの奴か? やれやれ落ち着きのない奴だぜ』プンプン



コニー「――ってことがあった。ボケてなかったらお前の部屋だったと思うけど」

エレン「・・・その時間、俺は寝てるぞ」

コニー「え?」

エレン「いや、ありがとう。また気付いたことあったら教えてくれ」ノシ

コニー「お、おう・・・」

エレン(俺の部屋から廊下に漏れ出るくらいの騒音・・・?

    本当なら、俺がそれに気付かず今朝までぐっすり寝てたってのは・・・)


 >言弾『コニーの証言』を入手


エレン(一度アルミンのとこに帰るか・・・?)

サシャ「・・・・・・・・・」ジー

エレン「(うん、現場検証も途中だし)ってうぉああ゛!!!??」ビックー!

サシャ「・・・・へんたいです」

エレン「・・・違う!」

サシャ「普通ならあの現場だけで充分証拠になるでしょう?」

エレン「ぐぬぬ・・・それは・・・っ」

サシャ「・・・エレンはそういうことしないって思いたいんですけど・・・」シュン

エレン「・・・」

サシャ「所詮、他人の器なんてすぐには計れません。どんなに立派な大人でも、他人は他人

    今の私では・・・エレンの器は計れません」

エレン「・・・パンやるから捜査に協力してくれ」

サシャ「エレン、貴方のこと信じますよ」ワンワンッ

エレン(お前の秤は壊れてる)

サシャ「とは言っても、私あたまは良くないので・・・」

エレン「いや、昨日、できれば昨日、一昨日の就寝時間の様子を教えて欲しいんだ」

サシャ「私はどの夜も就寝前のポタージュ一気飲みをしたらさっさと寝に入りましたよ?」

エレン「変わったことはなかったか?」

サシャ「うーん・・・・。

    あ、そういえばジャンが、昨日ミカサの部屋の前を思い詰めたようにうろついてました」

エレン「・・・・・」

サシャ「・・・・・」

2人「くっそ怪しいジャン」

エレン「話しかけたのか?」

サシャ「ええ、まあ――」


サシャ『ジャン? なにしてるんれすか』モグモグ

ジャン『・・・お前か。お前にゃ関係ねえ・・・』ハァ

サシャ『ふーん。あ、ジャンの部屋は確か左側一番奥れすよ?』

ジャン『迷子じゃねえよ! ・・・くそ、出直すか・・・』


サシャ「って感じでした。迷子っぽくオロオロしてたんですよ」

エレン「就寝前だから午後10時ごろか・・・すげえ有益だった、サシャありがとう」


 >言弾『ジャンの行動』を入手


エレン「お前に信じてもらえるように、せいぜい学級裁判とやらで頑張ってみるから」

サシャ「好きにすればいいですよ。エレンが一生懸命なのは見てて解りますから」


 俺はサシャと別れて、一度自室へ戻った。


ユミル「よぉ。何か解ったか?」

エレン「まぁボチボチ。アルミン、情報を共有しようぜ」

アルミン「ああ」


 俺はアルミンと情報を共有した。

アルミン「ジャンがね・・・」

ユミル「みんな死に急ぎ野郎と口きく辺り肝が据わってるな。普通なら無視だぜ、無視」

エレン(それはそうかもしれない。なんだかんだ、あいつらって普通のガキとは違うんだ)

ユミル「じゃあパンツの検死結果でも報告してやろうかね」

エレン「そっか。ありがとな、ユミル」

ユミル「結果はね・・・・外傷無し、超綺麗なご遺体だったよ

    しかも値札までついてる。未使用どころかただ買っただけって状態だね」

アルミン「そうなんだエレン。これは朗報だよ!」

エレン「なんでだ?」

アルミン「え、なんでって・・・・・・・・えっと//////」モジモジ

ユミル「お前がどこぞのクソ虫みたいな変態行為はしていないってことの証明だろ?

    これが使用済みだったら証拠どころか、即極刑ってとこだからな」

エレン「・・・・えーと」

ユミル「てめぇがパンツでオナニーした形跡は万に一つもないってこと」

エレン「・・・・ああ! 当たり前だろ!?」ムッカー

アルミン(よかった。さすがに自慰は知ってたか。生徒名簿によると医者の息子らしいしね)

エレン「とにかくパンツは綺麗なんだな?」メモメモ


 >言弾『ミカサのパンツ』を入手

アルミン「それにしてもユミル、あけすけと物を言う人だね・・・」

ユミル「あ? 当たり前だろ? こっちだってペナルティあるらしいからな。

    言うべきことは言わないと見誤ることになるんだぞ」

エレン「そうだな・・・遠慮はいらねえ」

ユミル「そうそう。パンツ被ってたって事実はどうあがいても他人にゃ不快な話なんだ。

    お前が裁判で覆すべき点は、そういった印象そのものってこと」

アルミン「やるしかないんだね・・・」

エレン「ああ・・・アルミン何か気付いたことはあったか?」

アルミン「ああ。エレンのベッドなんだけど、これを見てくれ」


 アルミンはそう言うと俺にペラリとした何かを差し出してきた。


エレン「・・・・セロファン?」

アルミン「うん。よく見てよ」

エレン「ん・・・」ジー

エレン「・・・なんか・・・キラキラしてる?」

アルミン「うん。シーツがところどころキラキラしてたから、こうして貼り付けて採取したんだ」

エレン「なんなんだ、これ?」

アルミン「ラメだと思うけど。やっぱり心当たりはない?」

エレン「うん。そういう服とか持ってきてねえしな」

アルミン「そうか。一応メモしておこう。大事な残留物だ」

エレン(服とか以外だと、ラメってどんなものについてるんだ・・・?)


 >言弾『シーツのラメ』を入手

アルミン「それと、各寝室の防音――つまり現場の防音性を確認したんだけど」


 アルミンはそいうと、まず壁を軽く拳で叩いて見せた。

 
 ポス ポス ポス


エレン「見事に音が吸収されてるな。なかなかの防音性だ。てことは」

アルミン「そう。君の隣室で寝ていた僕には、君の部屋の様子がおそらく聞こえない。そして――」


 次にアルミンは俺に部屋の外に立つよう指示をした。

 閉め出されるようにしてしばらく待っていると・・・。



 ・・・ドス ドス ガス バキッ


エレン「! おい、何してんだよ!!」ガッチャ

ユミル「こんな、もんかね・・・っっ」バキッ

エレン「ユミル、おい何人のベッド蹴りつけてんだよ!」

ユミル「悪い悪い。やめるから」

アルミン「音、聞こえたんだね?」

エレン「あ? ・・・ああ。そうか・・・ドアは防音性が壁よりも弱い。廊下には音漏れがありえた。

    逆に言えば、廊下に人がいなければ、ひと暴れしても気付かれにくい・・・」


 >言弾『寝室の防音性』を入手


ユミル「あと・・・そうだ新しい靴跡があったんだ」

エレン「新しいの?」

ユミル「そ。シーツにさ、ブーツの足跡がぐちゃっと。床とは違う型のやつが

    擦れてるからちょっと解りづらいけど、特別大きい足じゃないね」

アルミン「足側のほう・・・・ほら」

 確かに端の方に、靴跡のような擦れたあとがあった。男でも女でも通用する足の大きさだ。

エレン「ほんとだ・・・俺は靴の履いたままベッドになんてあがらねえぞ」

ユミル「まあ普通はな」

エレン「俺の部屋に誰か入ってたってのはマジらしいな。しかも最低二つの靴跡だ」

エレン(・・・だが俺が被害者を持ち込んでいないって証拠にはつながらない)


 >言弾『シーツの靴跡』を入手


アルミン「ミカサの部屋に入れないものかな・・・」

ユミル「なんだお前も変態か」

アルミン「ち! 違うよ!!! 僕はただ、もし文字通り『盗んだ』っていうなら

     それが可能だったかどうかを検証したいんだ」

エレン「ミカサは俺とちがって用心はしてたぞ。絶対に鍵をかけてた。

    一応アイドルだし、その辺はジャンもよく知ってるはずだ」

ユミル「そうなると、幼なじみで気安い関係のお前がますます怪しいわけだ」

エレン「そうだろうな・・・」ハァ

アルミン「・・・ねえ、ハンジ学園長。視てるんですよね? 出てきてください」


『なんだいミンミン?』


エレン「!? どっから出てきたんですかあんた・・・っ」

アルミン「今更だけどカメラは全箇所だね・・・事件とは別にみんなで共有しないと」


『うんゴメンねwww趣w味wwww ・・・で、どうしたの』


アルミン「ミカサの部屋に入ることはできませんか? もちろんあら探しはしません」


『ぐふふふふ。いいけど、ちょっとだけよ?ww』


アルミン「じゃあ、先に他を調べたいので、入れるようになったら報せてください」


『うふふオッケー☆ 卒業のために頑張ってね! じゃまたねぇww』


エレン「ぶん殴りたくなるな」

ユミル「・・・・・・」

アルミン「軟禁して、事を荒立てて・・・僕たちの煽り耐性でも試してるのかな」

エレン「ああ・・・とりあえず、アルミン。他に調べるところはないか」


アルミン「エレンって昨日は午後のほとんどを食堂で過ごしたんだよね?」

エレン「ああ。ミカサも食堂ではずっと一緒にいたな」

アルミン「じゃあ食堂に行ってみようか。何かあるかも」

エレン「わかった。ユミルは?」

ユミル「誰がここ見張るんだよ。残るからクリスタに会ったらそう言っといてくれ」ノシ

アルミン「お言葉に甘えるね。じゃ、行こうか」ニコ

エレン「ああ(・・・ユミル、よくわかんねえ奴だな)」



 食堂


エレン「あ、ベルトルト・・・」

ベルト「・・・エレン」


 食堂ではベルトルトとライナーが何かを調べていた。


ライナー「ここも調べるのか?」

アルミン「ああ。一応ミカサが過ごしていた場所だからね」

ベルト「・・・特に手がかりはなかったよ。せいぜいミカサが昨日食べたものは

    『ヌコヌコの実』ってくらいで」

アルミン「うん。でもエレンの身の潔白を証明するためには、些細なことでも見つけないと」

ライナー「お前、エレンのこと偉く信用してるんだな」

エレン(・・・ライナー、ベルトルト。昨日とは大違いの、一歩引いた態度だ・・・)

アルミン「そうだね。エレンは友達だから」

ベルト「うん。君の賢明さは間違っていないと・・・思う」

ライナー「ああ。ミカサを隔離したり、わざわざ晒したり・・・

     学園長が面白がってやってるのは間違いないしな。お前も気の毒だぜ」

エレン「・・・ああ」


アルミン「じゃあ、昨日の様子を整理しようか」

エレン「ミカサたちと度胸試しをやったときは、俺が最初に『悪魔の実』を食べたんだ」

アルミン「なんの実?」

ライナー「・・・『フェロフェロの実』だ。確かあの時は効果が出てこなかった」

エレン「そうそう。俺だけ外れだったみたいだ。変わったことはそれくらいかな」

アルミン「うん。じゃあどんな実かも解らないんだね?」

エレン「ああ。不味いってことしか・・・。ミカサが食べてたのもすごく不味かった」

ライナー「特殊能力が出ている間のことは本人が忘れちまうらしい。俺も自分の時は覚えてない」

アルミン「・・・なるほど・・・」


 >言弾『悪魔の実の特性』を入手


エレン「それもメモするのか?」

アルミン「一番の嫌疑がかかっているエレンの行動を解明することは重要だよ」

エレン「そっか」

エレン「それもメモするのか?」

アルミン「一番の嫌疑がかかっているエレンの行動を解明することは重要だよ」

エレン「そっか」

アルミン「ねえ。今朝は僕がエレンを起こしに行く前、ほとんどの人は食堂にいたよね?」

ベルト「?・・・ああ。アニとミカサ、エレン、あとマルコがいなかったな」

エレン「そういや起きたとき起床時間の7時は過ぎてたのか? ちっとも覚えてない」

アルミン「そうだよ、お寝坊さん」

ライナー「ジャンがマルコとミカサを呼ぶって言って、アルミンがエレンを起こしに行った」

エレン「それが変なんだよ。普段ならミカサが俺を起こしに来るはずなんだよなあ・・・」

ベルト「僕たちは、マルコはしっかりしてそうなのに寝坊なんて意外だって話をしてたな」

アルミン「アニは・・・一人行動が好きそうだしね。朝はゆっくりしてそうだ」

ベルト「・・・アニは毎朝格闘家としての日課があるから、むしろ早起きだよ」


エレン「そうなのか?」

ベルト「ロードワークは欠かさないからね・・・

    あ、でも今日はギリギリまでミットでも使って技の練習をしてた筈だ」

アルミン「そうなの?」

ベルト「実はエレンの寝室に一番遅く来たのはアニなんだ。

    本人はロードワークって言ってたけど・・・直前まで打撃練習してた筈だよ」

エレン「なんで解るんだよ」

ベルト「呼吸の乱れ方が違ったし・・・何かいい『的』でも見つけたんじゃないかな」

アルミン「詳しいなあ。さすが。アスリートを支えるマネージャーだね」

エレン「うーん。まあ一応メモっとくか」

エレン(・・・ベルトルトってもしかして・・・)


 >言弾『ベルトルトの証言』を入手

アルミン「エレンの食べた実の能力がもし・・・」ブツブツ

エレン「アルミン?」


『やっほ、アルミン』


アルミン「ハンジぐるみか・・・相変わら神出鬼没だな」


『例の件、本人からも許可貰ったし、行こうか。ただし3分だけだからね』


エレン「お。よっしゃ、行こうぜアルミン」スタスタ

アルミン「ああ」

ライナー「なんだ、もういいのか」

アルミン「うん。調べるところは他にもあるしね

     ・・・・・そうだ、ライナー。ひとつ頼みがあるんだけど」

ライナー「? なんだよ」

アルミン「ちょっとね――」


 先にミカサの部屋の前に来た俺はクリスタとアニと鉢合わせした。


クリスタ「あの・・・ユミルを見なかった?」

エレン「ああ、俺の部屋」

クリスタ「そう・・・エレン、ありがとう」キラキラ

エレン(天使ってすごいなー。また光ってるぞ)

アニ「・・・エレン」

エレン「よぉ。アニ・・・お前も調査中?」

アニ「いいや。ちっとも・・・」

エレン「そうか。何か気付いたことがあれば・・・俺が嫌ならアルミンに伝えてくれ」

アニ「ああ・・・」

エレン「・・・!」ハッ

アニ「・・・なに?」

エレン「・・・・・いや、何でもねえ。じゃあな」ニコ


 クリスタと、多分偶然居合わせたアニを見送ったところで、ようやくアルミンの登場だ。


エレン「遅い」

アルミン「ごめん。ハンジぐるみは?」


『はーい。マスターカードキー持ってきたよ!』ポイ


エレン「へぇ。これって学園の外にも出られるのか?」


『んなわけねぇだろww ほら、時間ないよ』


エレン「・・・」ピピッ ガチャ


 ミカサの部屋は実家とあまり変わらなかった。

 トレーニング器具と化粧道具や姿見などが混在するカオス空間。


エレン(あいっ変わらず、ある意味華やかな部屋だな)

アルミン「・・・ぅゎぁ」

エレン「ミカサは『知力』のパラメータ以外はカンストしてるからな」


 そしてハンジぐるみも部屋に入り扉が閉まると――。

 ガチャ・・・ピピッガチャ


エレン「・・・鍵が掛かった・・・オートロックなのか!?」


『そ。一部の女子部屋は保護者たっての希望で、前の理事会がオートロックに変更済み。

 ミカサの場合は本人まる無視で、芸能エージェントが金積んできてねえ・・・グフフw』


エレン「なんだそれ・・・」


『いやホントにごく一部だよ。中には鍵を忘れたとき困るからって嫌がった子もいるから』


エレン(サシャかな)

アルミン(十中八九ユミルだろうな)


 >言弾『ミカサの部屋の鍵』を入手


『ほら、時間ないよ。さっさと調べれば?』


アルミン「アイドルの部屋だからやっぱり緊張しちゃうなあ・・・どきどき」

エレン「ミカサ荷物片付けてねえな。しょうがねえ奴」


『ほんっとだよ。人にはあんな重い荷物、行ったり来たり運ばせといて、ずっと放置

 部屋から部屋の間だけつっても、ハンジさん歳だからの腰痛いってのwww』


エレン「・・・部屋から部屋?」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さー残り時間少ないよっ!』ニコー


エレン(話そらしやがったな・・・)


 >言弾『ハンジの戯言』を入手


 俺たちはすぐに調べた。

 誰かが「盗んだ」証拠がないか、というところに焦点をあてて。

 だが、怪しい部分なんて、所詮ミカサじゃなければ解らないし、ましてやオートロックだ。

 残り時間も少なくなったとき――。


エレン「・・・・おい、これ」


 俺は机の横のくずかごから、あるものを拾い上げた。


アルミン「なにそれ・・・特別配送貨物の荷札?」

エレン「ああ。インクがかすんで読めないけど。俺たちの荷物を運んだ時の荷札だろ」

アルミン「あれ、でもミカサの荷札は・・・」


 いいながらアルミンは、まだ片付けられていないミカサの荷物を見つめた。

 ソコには「ミカサ・アッカーマン」と明記された同じ種類の荷札がつけられている。


エレン「これ。確か一配送につき一枚の親タグだ。なんであいつ、こんなものを・・・」


『はーい。終わり。美少女の部屋をハァハァしながら詮索なんて、オマエラほんとDTだね!』


 あっという間に部屋から追い出された。

 収穫といえるかどうかはわからないが、俺はその荷札を手にした状態で。


『じゃ、そろそろ私はアナウンスの仕事があるから、まったねえww』ノシ


アルミン「・・・どういうことだろう」

エレン「なあ、気になるんだが、なんとかこの荷札の人間を特定できないか?」

アルミン「僕も知りたいけど・・・かすれて全く読めないよ」

エレン「む・・・・・・あ、そうだ、不可視インクを使ってるかもしれない!」

アルミン「! そうか。輸送会社が配送時に使う、紫外線で見えるようになるインクだね。

     確かに、輸送ルートの一部でも書かれていれば・・・誰の荷札か解るかも」

エレン(確か食堂の裏に倉庫があった・・・あそこにいけば何か道具が・・・)


 >言弾『誰かの荷札』を入手

アルミン「でも、エレン。君は知識は偏ってるけど、やっぱり物知りなんだね」

エレン「ああ、昔友達に教えて貰ったんだ。本や図鑑がすっげぇ好きな奴でさ・・・

    今はもう、顔も、名前も、覚えてねえんだけど・・・」


 ズキン・・・


エレン(頭が痛い・・・)

アルミン「エレン?」

エレン「・・・・・・・・・・お前、なんでここにいるんだ?」ボソ

アルミン「え?」

エレン「? どうしたアルミン」キョトン

アルミン「え、あ・・・いや・・・ッ・・・?」


 > ピンポンパンポーン・・・


『えー、そろそろ眠くなってきたんで、学級裁判を始めようと思います。

 皆さん、一階体育館横の防火シャッター付近にお集まりくださーい

 クソしたい人はこの機会に行ってね。トイレ休憩は少ないからねw』


エレン「え?」

アルミン「そうか、考えを纏める時間を与えない気だな・・・」

エレン「行くしかないのか?」

アルミン「みたいだ。エレン、荷札は君が持ってて・・・数少ない手がかりになるかもしれない」

エレン「ああ・・・」

アルミン「僕、ちょっとトイレ行ってくるから。じゃあね」タタタッ

エレン「アルミン!!!」

エレン(・・・一人になると心細いな・・・、こういうときだからか・・・)

エレン「ミカサ・・・」

エレン(いや、ミカサはもっと・・・)


 防火シャッターがある場所に行くと、すでにアルミン以外の全員が集まっていた。

 すでにシャッターは取り払われ、上へと続く階段と、

 その横には随分と古風なエレベーターがあった。

 残念ながら。上階への道は、これまた頑丈そうな格子状のシャッターで覆われていたが。


ジャン「・・・・・・」

エレン(ここぞとばかりに睨み付けやがって。やっぱりこの馬面はいけすかねぇ)

ジャン「・・・怯えてんのか? 覚悟を決めて進めよ、エレン」

マルコ「・・・ほら、そういうファイトは裁判中にやればいいじゃないか」

ユミル「そうそう。そこでエレンの犯行を明らかにして弔ってやろうぜ」

クリスタ「ユミル・・・!」

アルミン「・・・ハァ・・・ゼェゼェ・・・僕が最後かな・・・ゼェ」

エレン(走ってきたのか・・・?)


『そろったね! じゃ、正面にあるエレベーターに乗ってね

 そいつが、オマエラを裁判場につれてってくれます!』


ベルト「そんなものをわざわざ用意してるのか・・・!?」

アニ「・・・面倒だね・・・」

コニー「ほんっとだよ。エレン、自白するなら今のうちだぜ?」

サシャ「パンツ盗んだ人、今どんな気分なんでしょう・・・」

アルミン「・・・行こう、エレン」

エレン「ああ」


 一人でずっとミカサが待っている。

 誰がこんなふざけたことをしでかしたのか、結局考える暇も与えては貰えなかった。

 だが、俺が知っている真実が一つだけある。

 ミカサは俺の大切な幼なじみで、俺があいつにくだらない悪戯をするなんてありえない。

 それを解って貰うために――どんなに苦しくても主張してやる!!!



 随分と長い間、エレベーターは地下に向かって動いていた。

 やっと止まって降りた先には、広く、内装の調えられた裁判場が待っていた。


『さ、まずは指定の席に立ってね』


 部屋の中央には俺たち生徒人数分の証言台が円状にぐるりと並んでいた。

 俺の左隣はミカサの席のようだ。顔写真のプラカードが立てかけられていた。


『立ったね? まずはルールを説明します』


『君たちには事件について様々な議論をしてもらいます。それはもう自由にどうぞ

 まあ犯人が自白するってのもありだけどね。面白くないからやめてね』


『最終的に、クロだと思う人間に、一人一票ずつ投票してもらいます。

 多数決で決定したクロが正解であれば、クロはその罪を天秤にかけた『おしおき』を、

 間違っていれば、本物のクロ以外の全員に『卒業』までが長引くペナルティが科せられます』


アルミン「議論の時間は?」


『ないけど、実質私が飽きるまでかなw それとペナルティの補足だけど・・・

 間違った場合はその都度、在籍年数5年加算・・・ってことでオナシャスw』


全員「・・・え」

マルコ「・・・・・・・・いい餌だな・・・・・」ボソ


『あっはっはw だから真面目にやれよってことw じゃあ、はじめよっか』


エレン「・・・・・くそ・・・」


 こいつの言うことはいつも唐突だけど、実際、これだけの人数を閉じ込める力がある。

 どうして、俺たちの大切な時間を奪おうとするのか、理解に苦しむけれど――

 だったらなおさら、正しい答えを導き出すしかない・・・!


 世にも奇妙なホームルーム・・・学級裁判が始まった。


 

 「学 級 裁 判 開 廷」

ちょっと休憩。すみません、裁判中はどうしても安価できそうにないです・・・

安価は日常編が基本ということでお願いします。




エレン「ハンジさん・・・裁判の前に訊いて置きたいんですが・・・」


『はいはいなんですか、イェーガーくん?』


エレン「・・・・・ミカサは、無事なんだろうな・・・?」ギロ


『えーあったりまえじゃーんw そんな人攫いみたいに言わないでくれる?』


エレン「・・・・・・・・」

ユミル「事実だろ・・・私たちは今日、ミカサの声を聴いていないんだぞ?」


『大丈夫だって、ちゃんと別室待機中だから。あとでいくらでも話せるからね』


マルコ「・・・・はじめよう、学園長が飽きたらそこで終わりだ」

エレン「ああ・・・」

サシャ「あの、皆さん、顔を伏せてみましょう。そして正直に、犯人は手を挙げましょう!」

アニ「それが通用すると・・・思ってんの?」

サシャ「大丈夫、誰にもいいませんから。さあ正直にっ!!」

ライナー「それじゃ意味ねぇだろが」

コニー「だってよエレン。ほら、目ぇ閉じててやるからお手々挙げろよ」

エレン「やるわけねぇだろバカ」

ジャン「バカども真面目にやれよ・・・ミカサのパンツの弔い合戦なんだぞ!!?」

ユミル「ああ、大いに同意するよ・・・バカ」

マルコ「相変わらず君たちは締まらないな・・・安心するよ」クス

コニー「俺としては、あのセクシーな下着をミカリンが持っていたことについて

    小一時間ほど語りたいんだが・・・2ちゃんあたりで」

クリスタ「・・・・・・コニー?」キラキラ

コニー「・・・ちょっとしたジョークですよ、うふふw(天使の笑顔がなんか怖い)」

アルミン「はぁ・・・とりあえず、事件の流れをまとめよう」



 ※ 裁判中、時に違和感のある発言が飛び出します。

   エレンは議論中に存在する嘘や矛盾を、集めた『言弾』をぶつけて論破します。

   また、必要に応じて自ら『言弾』を提示してゆきます。



マルコ「被害者はミカサが持っていたパンツ・・・発見されたのはエレンの部屋だったね」

クリスタ「朝七時の起床時間に起きてこないから、アルミンがエレンの部屋を訪ねて、」

ユミル「幸せそうにパンツ被って寝てるエレンを発見だっけ?」

サシャ「アルミンは大変な変態を発見! 続けてジャンとマルコも衝撃の現場を目撃!」バン

コニー「逃れられないエレンの性癖! 【使用済みパンツ】の運命や如何に・・・!?」ババン


 <言弾『ミカサのパンツ』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「コニー。お前が言いたいことは(何となく)解るが、俺はアレに変なことしてないからな」

コニー「なんで言い切れるんだよ?」

エレン「あのパンツはミカサが買ってただけの新品だ。タグもついてるし未使用品で間違いない」

ベルト「見たのかい?」

ユミル「私がね。めちゃくちゃ綺麗だったし。ひとまず、『使用済み』は言い過ぎだ」

コニー「そうか・・・わかった。ゴメン!」ペコ

サシャ「素直ですね」

ジャン「・・・・ホッ」

ライナー「おい、女子共は初っぱなからこんな話でついてこれるのか?」

ユミル「当然だろ」ドン!

サシャ「よくわかりませんがプロデューサーの下世話な話と同じ空気を感じます」

アニ「・・・知識としては・・・」

クリスタ「・・・・・・・・・ぁ/////」

ライナー(天使知ってんのか)

アルミン(天使わかってるんだな)


ベルト「だけど、それだけじゃエレンが不利なことに変わりは無いよ」

エレン「その通りだ」

アニ「そう・・・クロは、部屋に対象物を持ち込んだ者だからね」

クリスタ「持ち込んだってことは・・・」

ライナー「やっぱり部屋の主である【エレンしかありえない】んじゃねえか?」


 <言弾『エレンの部屋の鍵』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「アルミンがなんで俺を発見したか忘れたのか?」

ライナー「あ、そうか内鍵をかけてねぇのか、うっかりしてたわ」

アルミン「そう。エレンの部屋は誰でも入れた可能性があるんだ」

ジャン「・・・そいつが普段から不用心なのは確かだ。ミカサがよくそれを心配してたからな」

エレン(!・・・まさかジャンが俺を庇うような発言をするとは)

マルコ「なるほど。もしエレンが盗んだとしたら少し間抜け過ぎるね」


エレン「ジャン、悪い・・・」

ジャン「・・・・・」フイ

クリスタ「でも、それだけじゃエレンがやってないってことにはならないんじゃ・・・」

アルミン「そう。だってパンツがなくなったのは一昨日だからね。

     エレンが盗んでそのまま、今朝は施錠を忘れて事件が発覚ってこともありえるよ」

ジャン「そうだな。俺はその線が一番怪しいと思ってるぜ」ニヤ

エレン「そういうことか。お前らしい・・・」

エレン(そうだ。俺がやってないって証拠はない。だから、他の可能性を提示する他ない)

アルミン「あとは、第一発見者である僕がやったって疑うこともできるし

     つまりは全員が『部屋にソレを持ち込む』ことは可能だったと言えるね」

ベルト「・・・エレン以外の人間が持ち込んだ可能性があるんなら、

    1度、君の行動を確認した方がいいんじゃないかな」

エレン「ああ」



 <言弾『エレンの行動』を提示


 俺は初日――つまりミカサのパンツが行方知れずになったその日は、

 生徒の誰よりも早く自室に籠もって就寝、翌日はその多くを誰かと過ごした事を話した。


アルミン「エレンが単独になったことはほとんどないのはわかった?」

ベルト「そうだね。エレンが積極的にみんなに話しかけてたのは知っているよ」

エレン「午後十時以降の就寝時間――仮に『夜時間』とでも呼ぶか。

    夜時間を過ぎてからの行動は、俺の場合最小限だった」

コニー「確かに、俺は結構遅くまで起きてるけど、お前は見かけてねぇな」

ライナー「まずエレンの主張は『昼間の行動に透明性があり、夜時間に出歩いていない』だな」

ジャン「ハッ。みんなが寝静まる前に【怪しい行動する人間なんていねぇ】だろ」


 <言弾『ジャンの行動』をぶつける


エレン「それは違うな」


エレン「ジャン。そう言うお前は、昨日の夜時間・・・何してた」

ジャン「・・・は?」ギク

エレン「なあサシャ。昨日の夜時間、お前は食堂に寄ってから寝たんだよな?」

サシャ「そうですね。寝る前にポタージュを飲むと安眠効果があるので」

ユミル「それ芋女だけだろ」

エレン「そのときのことを話してくれ」

ジャン「・・・・」ギリリ

サシャ「えっと・・・・そうだ、ジャン! ジャンがミカサの部屋の前で迷子になってました!」

クリスタ「ジャンが?」

サシャ「そうです、ミカサの部屋の前を行ったり来たり・・・そわそわと

    私が話しかけたらそのまま去って行きましたけど」

ジャン「・・・くそ。余計なことを・・・」

アニ「・・・確かに怪しい」

コニー「はぁ? まさかのジャン犯人説?」

ユミル「・・・ジャン、お前何してたんだ?」

ジャン「・・・別に・・・・」

ライナー「おい。正直に言わないとお前が怪しまれるだけだぞ」

ジャン「・・・・・・・っ」

アニ「・・・・どうなの」

ジャン「・・・・・・・」

マルコ「・・・・・・・」

ジャン「・・・・確かに、ミカサに用があって訪ねた。事実だ」

ベルト「用事?」

ジャン「昼間、ミカサに突っかかっちまって・・・そのことを詫びようと・・・

    いなかったし、サシャにも見られたから昨日は諦めた・・・それだけだ」

クリスタ「なんだ・・・よかった」ホッ


アニ「なんで言うのを渋ったの?」

ジャン「お前らどうせバカにするだろうと思って・・・。

    ここを力尽くでも脱出するって、逃げようってミカサに話したんだ。で、フラれた」

コニー「恥ずかしかったのかw」

ジャン「・・・・ほらな」イラ

コニー「や、お前の気持ちもわかるけどねw

    ホームシックになるくらいなら最初から入らなきゃいいじゃんw」

ユミル「だがジャンはミカサの部屋の前にいたってことは事実だ。

    お前の言う【寝静まった後のアリバイがない】んなら、お前もエレンと同格の怪しさだ」


マルコ「いいや、ジャンにアリバイはある!」


エレン(予想通りマルコが来たか・・・)ホッ

ユミル「・・・へぇ?」

アルミン「マルコ、続けてくれ」

マルコ「ああ。昨日の夜・・・ジャンは僕の部屋にいた」

ライナー「ファ!?」

マルコ「昨日、コニーがふざけて食べたっていう『ガチガチの実』があっただろう

    あの話を夕食の時間に聞いたジャンは、あの後倉庫とか色々探ってたんだ。

    で、夜時間に僕の部屋で色々成果を報告して、そのまま寝こけちゃったんだよ」

ライナー「・・・・・・ふーん」ホジホジ

アニ「なんであんたが残念そうな顔するんだよ・・・」

コニー「マルコは幼なじみジャン。庇ってるってことはないのか?」

マルコ「絶対にない」


 マルコは真摯な眼差しで周囲を一望した。


マルコ「僕だって卒業したい。だから正直に言っている。

    僕は昨日完徹だったから、朝の七時前まで彼はぐっすり床で寝てたのを見てる」

サシャ「なんで完徹だったんです? お肌に悪いですよ?」

マルコ「・・・単に眠れなかったんだ。考え事をすると、どうもね」


マルコ「それに・・・もしジャンが憧れの女の子に酷いことする奴だったら、

    僕は彼の友人としてぶん殴ってやるさ。こんな席を設けるまでもない」


ジャン「マルコ・・・・・」パアァァ

エレン「ありがとうマルコ。

    ま、俺もお前がミカサのパンツをどうこうするなんて思ってねえけどよ」


ジャン「は? 仕掛けてきたのおまえ・・・」

エレン「一応、お前がどれだけミカサのためにやってきたか知ってるつもりだけど。

    だけどジャン、これに懲りて俺がやったに違いないって概念から少し離れて欲しい」

ジャン「・・・・・・くそ・・・悪かったよ・・・・・・」

マルコ「そうだな。一度『犯人は誰か』という追求はやめて、他の視点から考えよう」

アルミン「じゃあ、現場のことを話し合ってみようか」

エレン「俺の部屋を調べた奴は少ないと思うけど」

サシャ「ぶっちゃけ何も調べてないです」

ライナー「後で芋やるからちょっと黙っとけ」

サシャ「・・・・・・・・・・・・・・」オクチ チャック


クリスタ「えっと。ちょっと見た限りだと

     エレンの部屋はシンプルで、特に【怪しいところはなかった】けど・・・」


 <言弾『エレンの部屋の状況』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「現場には不自然な靴跡があった。前日までにはなかった靴跡だ」

アルミン「僕が見つけたんだ。あとユミルも見たよね?」

ユミル「ああ。擦れたあとだな。クリスタは捜査終了間際に現場に来たけど、気付かなかったか?」

クリスタ「うん。ごめんね、不注意だった・・・」シュン

エレン「落ちてた髪の毛は、けっこう色んな色が混ざってて誰が誰だか・・分かんなかったな」

ライナー「つまりハゲのコニーによる完全犯罪フラグが立ったな」

コニー「俺はサンピンハゲなの! 一応毛根はあるんだから本物に失礼でしょ!?」


ジャン「つまり。エレンの部屋に誰かが侵入したかもしれないってことか」

アニ「・・・それ、【エレンの靴の跡】ってことはありえるんじゃない?」


 <言弾『シーツの足跡』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「補足しておくと、床にあった靴跡は少し小さめだった。俺のよりはな」

アニ「そう・・・」

ジャン「お前より小さい・・・? となると女子か、コニーかアルミンくらいか」

エレン「それから、俺のベッドのシーツ上にはもう1つ、別の型の靴跡もあった

    これは大きさがでかくもないし小さくもない・・・」

コニー「つまり・・・それってよぉ」

ベルト「昨夜、エレンの部屋に複数の人間がいたってことかい?」

アルミン「そう。足跡の擦れた感じ、シーツについてしまっている・・・

     どうも争った形跡と考えられないかな?」

マルコ「そうか・・・エレン以外に現場にいた人間がいる」

クリスタ「その人達の誰かが盗んだかもしれないの?」

ユミル「いや、エレンだってグルの可能性はまだある。

    だが、昨日エレンの部屋にいたことを、私たちに黙ってる奴がいるってことさ」

サシャ「えええ?」ポカーン

ライナー「ひとつ訊きたい。靴の擦れた跡だけじゃ【争った根拠には乏しい】んじゃねえか?」


 <言弾『コニーの証言』をぶつける


エレン「それは違うな」


エレン「根拠はもう1つある。それは、夜時間にコニーが聴いた、現場からの不穏な『騒音』だ。

    コニーは1時頃、飲み物を求めて寮を移動中、俺の部屋で騒音を耳にしている。」

コニー「それって・・・。ああ、そうそう! 夜時間にエレンの部屋からすげえ音がしてさあ。

    ドタンバタン凄かったぜ。うるせぇから扉ドンしてやったら黙ったけど」

アニ「それってどんな音?」

コニー「なんつうか・・・殴り合いというか・・・絶対一人じゃ無かったな、あの音は」

ジャン「おい、エレン! お前昨日ぐっすり寝てたんだよな!?」

エレン「ああ、もちろんだ! だから俺はコニーからこの話を聞いて驚くしかなかった。

    本当に、夢も見ないほど熟睡していたんだ・・・」


ベルト「仮にエレンが寝ていたとすると、最低2人、部屋にいたことになる・・・」

サシャ「・・・・・」ジー

ライナー「・・・喋ってよし」

サシャ「ふぅ・・・。あの、でもエレンが寝ていたのも不自然ですし、

    それに両隣の人間にもその【騒音が聞こえていた】筈じゃないですか?」


 <言弾『寝室の防音性』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「部屋の防音性もアルミンたちが確認してくれたんだけど、

    ドアはたしかに防音性が今ひとつで、大きな騒音は廊下に漏れ聞こえる場合がある」

ユミル「だけど壁は、音をよく吸収していたね。お前達も後で壁つっつけば解るさ」

アルミン「つまり、エレンの隣室・・・僕とミカサには音が聞こえなかったんだ」

コニー「この俺の証言が役にたった? めっずらしー」ホエー

ジャン「・・・お前はバカであることを真摯に受け入れてるな」

ライナー「いっそ清々しいわ」

クリスタ「あとは、エレンが騒音のさなかで目覚めなかったことだね・・・」

マルコ「難しいね。だって廊下に聞こえるくらいの音だから、クスリでも盛らない限り

    室内の【当人が気付かないのはありえない】んじゃないかな?」


 <言弾『悪魔の実の特性』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「ひとつ・・・心当たりがある・・・」

サシャ「!・・・それって・・・」

エレン(昨日の度胸試し。あれがもし、尾を引っ張っているとしたら・・・)

エレン「みんな。昨日何人かで試した『悪魔の実』だけど、

    俺だけ何の効果もなかった。特殊能力が現れなかったのは知ってるな?」

ライナー「お前は何にも無くてガッカリだったな」

ベルト「そうらしいね」

エレン「もし、夜時間のうちになんらかの特殊能力が現れていたら・・・

    俺はその間、記憶の一切を無くしてしまう・・・と考えてみたんだが」

アルミン「エレンの食べた『フェロフェロの実』が遅効性だった可能性があるってことだね?」

ジャン「や、ありえねえだろ! 他の奴らはすぐに特殊能力が出たんだろ?」

ライナー「そうだな。俺が見た限りはみんなすぐに効果が出ていたぜ」

エレン「あの場にいた奴は思い出して欲しい。アニの能力、それからサシャの能力は

    かなり長時間継続されたし、逆にミカサはそれに比べると少なかった」


アニ「確かに・・・サシャの時は随分と長い間雨宿りしたね」

エレン「継続時間に個体差があるなら、効果が現れる時間にも差があって然るべきだと思う」

クリスタ「確かにそうかも・・・」キラキラ

マルコ「いいや。遅効性っていっても、食べてから何時間だ?

    夜時間までとしても、4時間は経過しているはずだよ。少し遅すぎやしないか?」

ベルト「それならマルコ、僕の話を聞いて欲しい」

エレン(ベルトルト?)

ベルト「僕もミカサが関わっていたって理由で昨日の度胸試しについて少し調べたけど・・・

    ハンジのうさんくさい情報ページで確認したら、

    『悪魔の実』の効果発現、持続時間については個体差著しいってことが明記されてた。

    具体的には、食後2秒の実から食後5日と3時間後の実まであるらしい」

アニ「・・・でも、それってハンジぐるみの作ったページだろ?」

アルミン「アニ。うさんくさいのは同意するよ。

     でも、その学園長がアクセスできる範囲でわざわざ公開している情報だ。

     この学級裁判の主催者側として、嘘を書くメリットがないと思わないか?」

アニ「・・・ふうん」

サシャ「マルコ、あれ常識的な食材じゃないです。クスリでもないし。

    なので・・・私もエレンの言うことは少しわかります」

マルコ「・・・なるほど。うん。納得できたよ。ありがとう」ニコ

エレン(思わないところでアシストが入った・・・)

ジャン「誰かが騒いでいたとき、エレンは寝ても寝ていなくても記憶がないと仮定しようぜ」

ユミル「そうすると、そこで何があったかを明らかにする必要があるな」

エレン(そうだ・・・それもまた、難しいことなんだよなあ・・・)


『はーいw 皆さん熱くなってるねえええええw イイヨイイヨーw』


 その時、今まで静観を決め込んでいたハンジぐるみが、突然間に割って入った



『ちょっとここらで休憩と行こうか。セーブポイントですw』


 こうして、一時的な休憩時間が与えられることになった。


アルミン「エレン、よく踏ん張ったね。ベルトルトのファインプレーだよ」

エレン「アルミン・・・どっと疲れた。まだ中盤かと思うと目眩がしそうだぜ」ハハッ

アルミン「エレン。犯人はわかった?」

エレン「・・・少し。・・・引っかかってることがある」

アルミン「うん」

エレン「『対象物を現場に持ち込んだ者』がクロ・・・これってまるで・・・」ギリ・・・


エレン(対象物は盗まれていないと、暗に言っているんじゃ・・・)


アルミン「・・・さすがエレンだ。僕も手助けはするけれど。これはきみの戦いでもある。

     エレンはできる限り、自分の言葉で周りからの印象を覆していってくれ!」

エレン「ああ。でも『フェロフェロの実』については俺は証明しようがない」

アルミン「大丈夫。それについては対策を打ってあるから」

エレン「対策?」

アルミン「うん。それじゃあ、また後で!」ノシ


 アルミンは笑顔でハンジぐるみの元へ駆けていった。


エレン(何する気なんだ。あいつ・・・)

ジャン「おい、死に急ぎ野郎」

エレン「・・・ジャン」

ジャン「悪かったな。お前が悪いって頭から決めつけてよ・・・」

エレン「しょうがねえよ。俺の部屋で起きてしまったことだからな。

    そういう言葉を掛けて貰えるだけで、『幸運』なのかもしれねえ・・・」

ジャン「・・・・・すまねえ。マルコはともかく、俺はろくに捜査してねえよ」

エレン「じゃあお前の仕事は、誰かの言葉に耳を傾けることだ。よろしくな」ノシ

ジャン「・・・・・どうしてお前は・・・・・いや、わかった。じゃあな」


 早く終わらせてやる。クロを特定して事件を駆逐してやる。

 ハンジぐるみの用意した水を飲んで一息つき、俺は決意を新たにした。


エレン(さっさと終わらせてやる。そんで・・・さっさとミカサの顔がみたい)







「学 級 裁 判 再 開」




『さてと。実は私がクソしたくて休憩挟んだだけなんだけどねwwうぷぷw


 学級裁判、再開するよー!』



クリスタ「えっと、エレンの部屋で争った痕跡があって、

     エレンは覚えていない可能性があるんだよね。それが『悪魔の実』の特性だから」

アニ「本人が覚えてないんじゃ、現場での出来事を証明できないよ。どうするの・・・?」

エレン「もう1回、俺がフェロフェロの実を食べるってのはどうだろう?」

アニ「・・・え?」

エレン「こうなると、俺が絶対に関与してないって自信もない。だけどそれは俺の意志じゃない。

    それを示すために、俺がどんな特殊能力を手に入れて、

    そしてどんな行動をした可能性があるかを実演できねえかな」

ユミル「おい、マジで遅効性だったら効果が出るまで何時間待たせる気だよ」


『そうだよw と言いたいところだけど。

 実は智将アルミン・アルレルトよりすでに提案を受けておりましてw』


全員「アルミンが?」

アルミン「うん。捜査中に実験をしようと思ってね。ライナー」

ライナー「俺は捜査中に『フェロフェロの実』をひと口喰ってる。まだ効果はなさそうだな」

ベルト「・・・不味そうに何かを食べてると思ったら・・・ハァ」

アルミン「自ら志願してくれたライナーに乾杯」

ライナー「(ほんとは裏取引がごにょごにょ)とにかく、すでに実験中なんだよ」

エレン「すげえ・・・用意がいいな・・・ほんと・・・」ホレボレ


『てなわけで、せっかくライナーが身体を張ってくれてるんだから

 しばらく待ってみてあげてw ねwww』


ジャン「ああ。そうだな」

コニー「待ってる間が暇じゃねえかー」

サシャ「そうですよ。休憩中に食い溜めた紅芋が消化されちゃいますよ」

クリスタ「じゃ、じゃあ他のことに注目しようよ・・・

     例えば、ミカサのパ・・・被害者はどうやって持ち出されたの、とか」

アルミン「(正解です天使)そうだね、実験結果が出るまで議題を移そう」

マルコ「無くなったのは入学式後。寮に案内されてから数時間中に、と推測できるね」

ジャン「つーことは、みんな荷物は自室に搬入されてた状態だから、

    そこから消えちまったんだろうな、やっぱり」

サシャ「ミカサはあの日は私たちと一緒にいましたよね」

アニ「そうだね・・・エレン以外は大体が食堂に集まってたから」

コニー「じゃあ、やっぱり寝静まった頃にミカリンの部屋へ【忍び込んで盗った】んかな」


 <言弾『ミカサの部屋の鍵』をぶつける


エレン「それは違うな」

コニー「な、なんで言い切れるんだよ」

エレン「男子は知らないだろうし、俺も知らなかったけど・・・

    女子部屋の一部は、オートロック式に改装されている」

ベルト「オートロック・・・!?」

エレン「そうですよね、学園長」


『そうだよ。ミカサの部屋は大人の事情でオートロック。

 だから外側からは絶対に開けられないw 夜這い()とかマジそれ無理だからwww』


ライナー「初耳だわ・・・」

ユミル「オートロックつっても全員じゃないからな。希望者のみだから。

    考えて見りゃミカサはアイドルだし当たり前かもな」

コニー「逆に、お前なんか間違って男子の部屋に侵入しても絶対気付かれないもんな」

ユミル「おっしゃ今夜お前の部屋行くわ。明日また事件が発生するかもだけど勘弁な?」ニコ

クリスタ「ユミル。女の子なんだからそんな・・・ダメだよ///」

ライナー(OH MY JULIET...)

ベルト「・・・そうなると、ひとつ気になることが出てくるな」

ジャン「なんだよ」

ベルト「ミカサの部屋を訪れた人間が盗んだ可能性があるってことじゃないか。

    つまり、部屋に入ることが出来た人間が、被害者を盗めた・・・」

エレン「そう。となると、旧知の仲である、俺とジャンが怪しいってところに結局行き着く」

ジャン「!?」

エレン「そう怯えんなよ。怪しいってだけだ」

エレン(そこを覆せる要素は、捜査中には見つけられなかったんだけどな・・・)グッ

アルミン「エレン・・・」

エレン「? アルミン?」

アルミン「エレン、視点を変えてみよう。君が疑問に思ったことを素直にぶつけるんだ」

エレン「・・・? それって・・・」

アルミン「怪しい人間は君たちだけじゃないだろう? エレン、ここまで言えば解るよね?」ニッ


 アルミンの言葉に、俺は一瞬目を丸くして、そして次の瞬間笑った。

 いいや、大丈夫だ。まだ出来る・・・・まだひっくり返せると。


エレン「・・・なあ、みんな」

クリスタ「・・・エレン?」

アニ「・・・・・・・・・」

エレン「これって、ホントに『事件』なんだろうか」

全員「・・・・・?」

アルミン「・・・・・・」ニヤ

エレン「なあ、どう思う・・・?」

アニ「・・・どう思うって、あんたがパンツ被ってたんだ、事件に違いはないだろう」

エレン「そういうことじゃなくて、俺たちはパンツが『盗まれた』ことを前提に議論してるだろ?

    じゃあなんで学園長は『パンツを盗んだものをクロとする』って言わないんだ?」


マルコ「!! 『対象物を現場室内に持ち込んだ者をクロとする』・・・

    言われてみれば、確かに回りくどい言い方だ・・・」

エレン「俺の部屋にパンツが持ち込まれたのも、偶然だったとか・・・?」

サシャ「それじゃ『事件』って言うよりは『事故』ですね!」

ユミル「ちょっと安易じゃないか? だが、盗んだとは言っていないな、メガネも」

アニ「根拠は?」

エレン「根拠?」

アニ「あるの? 無いのに言っているなら、あんたの言い逃れにも聞こえてしまうけど」

エレン「根拠というか・・・例えば現場の『争いの形跡』、つまり侵入者の存在だけど、

    まず俺が『盗んだ』としよう。それなら今朝の状況証拠も合わせれば

    間違いなく俺を『クロ』にするのは簡単だよな」

マルコ「そうだ。何よりも容易いパターンだと言えるね」


エレン「もし争いの内容が不都合だったとしても、俺が怪しいということを全面に、

    その時の様子をみんなに発言し、共有するのが普通だと思わないか?」

ライナー「裁判は多数決だからな。自分だけ容疑者の情報を持っていても仕方ないってことか」

エレン「そういうことだ。違うか?」

コニー「ちょっと待って。かっこつける前に、もう少しバカにも優しい論客になって!!」カッ

クリスタ「あ、あとでわからないところ復習しよ?」アセ

ユミル「バカの癖に時々まともな熟語使うのやめろよ」

ジャン「なるほど。エレン以外の人間の存在は裁判中早い段階で出ていた。

    今まで名乗り挙げてないなら、やっぱりそいつは充分怪しいってことだ」

アルミン「エレンの言うことに異議があるなら、侵入者は正直に名乗って証言して欲しい」


 シ ン ・・・・・・・・・・


アルミン「・・・手上げはなしか」


ユミル「ってことはコイツは名乗ったらよほど不利な状況になるんだろうな」

アニ「そうみたいだね」

ベルト「それで? 君の言い方だと、その侵入者でさえ『盗んでいない』ことになるけど・・・」

エレン「そだよ」

コニー「『そだよ』ってお前・・・それも根拠あんの?

    どういうことなの、俺とお前は同じバカキャラじゃなかったの???」

エレン「次に2名の侵入者――どちらかが『盗んだ』としようぜ。

    さっきも言ったように、ミカサの部屋には勝手に侵入出来ない。

    だが、入手出来た可能性はある」

ユミル「いやいや、侵入出来なけりゃ【手に入れるなんて無理】だろ?」


 <言弾『誰かの荷札』をぶつける


エレン「それは違うな」

ベルト「へえ・・・」

エレン「みんな、これを見て欲しい」


 俺はミカサの部屋で見つけた荷札を見せた。


サシャ「荷札・・・ですね。私たちの荷物についてたやつです」

ジャン「・・・? おい、名前消えてるぞ。コレ」

エレン「それ、ミカサの部屋で見つけたんだ」

アニ「・・・どうしてミカサの部屋に・・・?」

ジャン「こら、ちょっと待て、ミカサの部屋だとぅ!?」カッチーン

アルミン「ジャン。僕と一緒に学園長に入れてもらったんだよ。3分だけの捜査時間付きでね」

エレン「そ。一応学園長がミカサにも了承とったんだとさ」

アニ「良いって言ったの? ミカサが?」

アルミン「そうだよ。変なことは絶対してないから安心して」


『そうそう。私からも、捜査中は彼らが紳士で真摯であったことを証言しようか』


マルコ「これ・・・つまりミカサのってことかい?」

コニー「それがどうしたんだよ」

エレン「ミカサのじゃねえ。他の奴のなんだ」

クリスタ「他の・・・?」

アルミン「ミカサの荷札は、部屋にあった荷物につけられていたんだ」

ベルト「・・・これ、特別配送貨物の荷札だよね。物量制限で1配送に1つしか発行されない」

サシャ「そうそう。大人の人に訊いたんですけど、めっちゃお高いんですよね」

ベルト「・・・・・・・・ッ」

ライナー「ベルトルト? 顔色悪いぜ?」

ベルト「ああ、大丈夫・・・ということは、エレン。これはミカサ以外の荷札で間違いないんだね」

ジャン「なんでそんな物がミカサの部屋に?」

マルコ「・・・一度、ミカサの部屋に誰かの荷物が持ち運ばれたってこと・・・!?」


エレン「そう。その可能性は考えられるんじゃねえかって」

アルミン「僕たちが見たときはミカサの荷物だけだったけどね」

エレン「で、こいつが仮にパンツと対面できる可能性があるとすれば

    例えば搬入ミスか何かで、ミカサの荷物を手にすることが出来た・・・とか」

アルミン「つまり、初日にミカサの部屋には誰かの荷物が、

     誰かの部屋にはミカサの荷物が搬入されたってことだね?」

サシャ「だから誰かさんの荷札がミカサの部屋に落ちていたってことですか?」

ユミル「で、入学初日の夜時間に、正しい荷物と交換したってか。それならパンツも入手できるな」

ベルト「ちょ、ちょっと待ってくれ。単に偶然で荷札だけ入手していた可能性は?

    搬入ミスなんて、【根拠のない話】だろう!?」


 <言弾『ハンジの戯言』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「この上なく怪しい戯れ言が根拠なんだが・・・」


 俺は、ミカサの部屋に入った時、ハンジさんが言った言葉を思い出した。


エレン「ハンジさん、確かミカサの荷物について『部屋から部屋へ運んだ』って言いましたよね」


『え?っっww  なwんwのwwこwとwww?』


アルミン「『ほんとだよ。人にはあんな重い荷物、行ったり来たり運ばせといて、ずっと放置

      部屋から部屋の間だけつっても、ハンジさん歳だからの腰痛いってのwww』

     ・・・って言いましたよね? 一字一句間違えてないですよね」


『えw なにこの子こわいwww将来が楽しみすぎだなオイww

 そうですよ、ミカサの荷物は手違いで他の生徒と入れ替わってましたw

 夜時間に気付いたミカサの申し出で、私が荷物を運んだんですよw

 ま、誰かは言わないけどねwww おもしろくないから!』



サシャ「意地悪いです。さいてー!」

マルコ「みんな。自分の荷札をまだ持ってると自信があるなら手を挙げてくれないか」


 ベルトルト、アニ、コニー以外は全員が手を挙げた


ライナー「ミカサみたいにつけっぱなしだわ。つうかみんな大体そうじゃねえか?」

コニー「俺捨てたわ。トラッシュルームでさっさと捨てた。まあダストシュートに落としたから

    拾われることもないと思うけど」

ベルト「僕は単純に・・・部屋で捨てたよ。だからそれからどこにあるかは自信が無い」

アニ「・・・・私も、部屋で捨てたから・・・」

エレン「・・・・・・」

アルミン「そうすると、この荷札の主は偶然ミカサの荷物を手に入れた。

     そこからわざと盗んだか、さらに偶然が重なってパンツが手元に残ったかしたんだね」


ジャン「その後エレンの部屋に入った奴が同一人物だとすれば、

    盗んだ場合はやっぱり行動がアホってことになるな」

クリスタ「エレンが起きて騒いでもおかしくない騒音だもんね」

コニー「侵入者と荷札の持ち主が同一人物だったらモロ犯人じゃねえか」

エレン「・・・少なくとも侵入者なら、心当たりがある」

クリスタ「え!?」

ベルト「どういうことだい?」

エレン「・・・1人はミカサ本人だ」

ユミル「はぁ?」

エレン「あいつ、俺の部屋とか遠慮無く入るからな。被害者ってことで除外してたんだけど、

    俺の部屋に入るという意味では1番疑うべき盲点だったんだ。

    あとは、調子が悪いときだったら夜中によく俺の部屋に忍び込む癖がある」

コニー「アイドル何やってんの。ほんと何やってんの」

エレン「昨日の朝だってミカサが起こしに来たしな」シレッ

ジャン「じ、、、事実゛だぁ゛・・・・」ウワーン

ライナー「会長・・・お前結構懐の深い奴なんだな・・・!」フッ

エレン「もう1人は言ってもいいのかどうか・・・俺も今思いついたし・・・」

アニ「証拠があるって言うなら・・・言うべきなんじゃ、ないのか」

マルコ「そうだね。エレン、言ってくれ」







エレン「そうか。じゃあアニ・・・昨夜、俺の部屋で何があったか教えてくれないか」



全員「・・・・・・・」

アニ「・・・・・ぇ・・・・・・?」

サシャ「え、アニ? んん?」

ライナー「・・・・・・・・へ?」ポカーン

ベルト「ック・・・・根拠は!?」

エレン「あるよ」

ベルト「言ってみろよ! アニが無断で男の部屋に入るような人だと思ってるのか!?」

エレン「言ってねえよ。だから『何があったんだ』って訊いてんだろ」シレッ

ベルト「・・・・・・っこの!」

ライナー「ベルトルト! おい、落ち着けよ」

ユミル「知らなかった・・・ベルトルさんて叫ぶんだな・・・」

アニ「・・・・・・・・・・・・・・・」


クリスタ「・・・でも、エレン。どんな理由で・・・?」

エレン「ああ・・・・それは・・・・」


 <言弾『シーツのラメ』をぶつける


アルミン「・・・これだね?」


 アルミンは察したように、ラメの付着したテープを見せた。


サシャ「なんですかこれ?」

アルミン「エレンのベッドのシーツ上に、ところどころ付着していたものだ・・・」

クリスタ「・・・・これ・・・・!」



 俺は、アニをどことなく『母さん』みたいだと思っていた。

 それは、他の女子と比べると妙に落ち着いた雰囲気を纏っていたり、

 かといって昨日、泣き上戸となったライナーを優しく包んでやったり・・・

 でも、理由はそれだけじゃない。


エレン「・・・なあ、ベルトルト。お前って女子のマネージャーなんだよな」

ベルト「それが・・・今なんの関係が・・・」

エレン「確か、女の子らしいアスリートなんだっけ? 昨日言ってたよな」


 ベルト『毎日トレーニング漬けでも、あれで結構女の子らしいところあるからなあ・・・』


ベルト「・・・・・・だからなんだっ」

エレン「アニってさ、母さんとかと似た香りがするんだよな。

    ほんのりとした・・・・お化粧の香りがさ」


ベルト「・・・・・・・・・」

クリスタ「そう・・・これ、ボディパウダーとかルースパウダーのラメだよ・・・!」

コニー「なんだソレ」

ユミル「んだよソレ」

クリスタ「香料が練り込んであるの。良い香りがして、お肌のキメがととのうんだよ」

アニ「・・・・・・・・だから?」

ジャン「お?」

アニ「化粧品なんてミカサも持ってるだろ? アイドルなんだし」

ジャン「ミカサは化粧品なんて持ってない。全部メイク任せで普段はすっぴんだぞ」

アニ「・・・へぇ?」

エレン「次に荷札の持ち主が誰かだが・・・(アレさえあれば・・・)」


ベルト「・・・・・・・・・」

クリスタ「そう・・・これ、ボディパウダーとかルースパウダーのラメだよ・・・!」

コニー「なんだソレ」

ユミル「んだよソレ」

クリスタ「香料が練り込んであるの。良い香りがして、お肌のキメがととのうんだよ」

アニ「・・・・・・・・だから?」

ジャン「お?」

アニ「化粧品なんてミカサも持ってるだろ? アイドルなんだし」

ジャン「ミカサは化粧品なんて持ってない。全部メイク任せで普段はすっぴんだぞ」

アニ「・・・へぇ?」

エレン「次に荷札の持ち主が誰かだが・・・(アレさえあれば・・・)」

アルミン「エレン、これを使うんだ」パシュ

エレン「・・・!」パシ


 アルミンが突然、俺に少々デカ物な物を寄越してきた。


エレン(・・・これ・・・・! さすがだな、アルミン!)

コニー「なんだよそれ。懐中電灯?」

エレン「ブラックライトだよ。アルミンこれ、もしかして・・・」

アルミン「うん! 僕、寮の備品についてはチェックしてたからね

     持ち込めるようハンジに交渉するほうが骨が折れたよ」


『ほんと手強いわー。チート過ぎて記憶無いくらいでちょうど良いよね、アルミンくんww』


アルミン「・・・・・・・」

ユミル「ブラックライト・・・・って紫外線がどうたらこうたらの奴か」

コニー「つまりどういうことだ」

ジャン「みかんの皮の汁で文字書いたあと、火あぶったらその文字が浮き出るだろ? アレだ」

サシャ「それか!!!」

アニ「・・・・・・・・・・・・」ギリ・・・

エレン「ああ。不可視インクに手がかりがあるはずだ・・・・・」


 俺はブラックライトのスイッチを入れ、荷札にあてた。

 紫色の妖しげな光に照らされた荷札に、やがて文字が浮かび上がる。


 『ウォール・シーナ 東城壁ストヘス区 中央配送局 集荷 Kスクール特別配送貨物』



エレン「そうかよ・・・生徒手帳の名簿をによれば、

    ウォール・シーナからの生徒は、ユミル、クリスタ、アニの3人。

    その中でストヘス区出身なのは――」





エレン「――アニ。お前しか、いないんだ!」



ベルト「・・・・く、そ・・・・・・っ」

アニ「・・・・・・・・・・・・・」

アルミン「・・・アニ。きみの手首が見たい」

アニ「は? アルミン、あんた何を・・・」

アルミン「・・・見せてくれ。頼む」

アニ「・・・ハハっ。あんたってお人好しそうな顔しといて・・・そんな顔で私を見るんだ」


 アニはそう言うと、左手の甲を周囲に見せ・・・そして袖をまくった


アルミン「汗を掻きにくい部位なら残るもんだな・・・」


 アルミンは苦笑していたが、目が笑っていなかった。

 アニの手首は、白くてキラキラと輝いていた・・・・キラキラと。


アルミン「・・・ありがとう」


ジャン「そうか・・・じゃあ床の小さい足跡って、アニのことかよ!」

エレン「ベルトルト・・・お前、アニのマネージャーなんだろ?」

ベルト「・・・そうだ。『元』だけどね・・・」

エレン「途中から気付いていたんじゃねえのか」

ベルト「・・・・・・・・」

アニ「ベルトルト・・・もういいよ」

サシャ「? つまりアニがミカサのパンツを盗んでエレンにプレゼントしたってことですか?」

マルコ「君は今までなにを聴いていたんですかねぇ・・・」

サシャ「紅芋発電が燃料切れで、回転率がちょっと残念なんです・・・」


アニ「そう。ミカサの荷物に触れたのも私。エレンの部屋に入ったのも私」


エレン「・・・俺は、アニがパンツを盗んだなんてちっとも思わないぜ」

ライナー「アニがどうとか以前に、女子が女子のパンツを盗む意味がわからん・・・」

アルミン「この事件・・・いや、『事故』にはまだ解明されていない謎がある」

サシャ「『フェロフェロの実』ですね・・・? んなことよりパイの実たべたいです」タメイキ

コニー「やる気なかろうが、食い物については反応良いんだな」

エレン「そういうこと。ライナー・・・そろそろどうだ?」

ライナー「ちっとも」

マルコ「学園長! 裁判の一時中断を要求します!」


『え? ムリw』


ユミル「なんでだよ、あ゛?」ギロリ


『飽きたしww ユミルは小心者のワンワンの癖に威勢だけはいいなあw』


ユミル「っテメェ喧嘩売ってんのか!!?」

クリスタ「ユミル。喧嘩しちゃだめ! 裁判場が壊れたらいけないでしょっ」

ジャン「そこをなんとかしろ! してくださいハンジ様!」ズサアァァ


『ジャンいいわーw 今期スライディング土下座で膝を擦りむくランキング1位だね!』


コニー「純粋に実の能力も気になるから待ってくれよ」

サシャ「ライナーなにやってるんですか? こんな時の体育委員でしょう?」

ライナー「アホか。俺に出来ることなんて

     せいぜい6年連続で所属クラスを体育祭優勝に導くくらいだわ」

クリスタ「ちょっとすごいと思うけど」キラキラ

エレン「ちょ、クリスタが眩しいせいで不可視インクが消える・・・え!?」



ベルト「・・・・アニ」

アニ「・・・・・何勝手なことやってんの?」

ベルト「・・・・・・ごめん」

アニ「ほんと、おせっかいだね。マネージャーって」クス

ベルト「・・・君が決めたんなら、何も言わないよ」


ライナー「ここで俺が能力発動したらお前ら天才って呼んでくれよww

     ・・・あ・・・・・ちっ・・・が・・・・・・へん、・・・」バタッ

アルミン「天才だ(棒)」

ユミル「天才だな」

ジャン「天才がいるぞ」


ライナー「・・・・・・・・」

アニ「ベルトルト・・・私が変な行動に走ったら、止めてほしい・・・」

ベルト「? ・・・そんなに危険なのか・・・わかったよ」

ライナー「・・・・・・・・ん?」パチ

コニー「ktkr」

ライナー「・・・・・・・・・・・・・う、なんか力が入らん」モジモジ

ジャン「何も起こんねえぞ」

エレン(俺の喰った実・・・個人差はあるだろうけどやっぱり遅効性だった)

アルミン「おめでとうエレン。結果は実ったよ」

エレン「あとは、この実がどんなイレギュラーだったかを確かめて――」


アニ「・・・・・ゴクリ」

ベルトルト「・・・ごくり?」


クリスタ「・・・ら、らいなー・・・/////」フルフル

ユミル「あ・・・ライナー、お前、なんて・・・・///」

サシャ「ああああ。ひどい、ライナー・・・・・・」


女子「ライナーああああ!!!!!」ガバッ


ライナー「え?」

クリスタ「ライナー可愛いよ、こまった眉毛すごい可愛いよぉ///」チュ

ユミル「はぁはぁ・・・くっそ、良いケツしやがって・・・///」ナデナデ

ライナー「???」コンラン

サシャ「服の上からでも解るセクシーな胸筋・・・何食べたらこんなになるんですかぁ///」スリスリ

アニ「・・・・ライナー。子作りしよう」

ベルト「真顔で何言ってるんだアニ!」ギュウウウウ


ジャン「・・・・・・・・・」

コニー「・・・・・・・・・」

マルコ「・・・・・・・・・」

エレン「・・・・・・・・?」

アルミン「・・・・・・・・ハッ そうか・・・・『フェロフェロの実』・・・・

     つまり、フェロモンで異性を惹きつける特殊能力ってことか・・・?」


女子「らいなあああああああああああ」ギュウウウ

ライナー「いや、惹きつけるってか、ゴキブリホイホイ状態なんだが・・・

     助けて! 嬉しいけど 怖い! なんか怖いんだよおおお」

ジャン「羨ましいんだが・・・」

コニー「いや、確かにそうだけど。そこは妄想だけにしておきたかったような・・・」

ライナー「ぎゃあああ。こ、これ同性には効かないもんなのかね・・・?」ガクブル

マルコ「なんでそんな余計なこと言うかな君は・・・」


『くぉらてめぇら! 神聖なる裁判場でなにやってんだよ!!!

 これ以上やったら不純異性交遊でお仕置きしちゃうよ!!!

 ライナーは平常になるまで隔離させてもらうからね!!!!!』


 さすがに焦った様子のハンジぐるみが、女子達の餌?状態らしいライナーの回収を宣言した。


『出でよ! 我が最強の下僕よ!!!』

 
 パシュッ―― ビ ュ ウッ


 ハンジの呪文のような叫びのあと、風を巻き起こすように『ナニカ』が裁判場を駆け抜け、

 次の瞬間、ライナーは姿を消していた。


女子「ラ、らいなああああああああああああ!!!!!!(悲痛)」


 しばらく打ちひしがれていたた女子たちも、ライナーが敷地内で一番遠いところに隔離された

 というハンジぐるみからの報告を聞く頃には、随分と呼吸も頭も落ち着きを取り戻していた。


アニ「・・・そういうことだから」キリッ

ユミル「なにが『そういうことだから』だよ! ふざけんなよ!

    ライナーが覚えてなくても私らの心の傷になるだろがあああ!!!」

クリスタ「あ・・・私・・・なんてこと・・・・////」

サシャ「ぁぁぁ危うく下半身の珍味を食べるところだった・・・」ブルブル


エレン「でも、これで能力が解った。

    俺は『フェロフェロの実』の能力で、一時的に異性の理性を奪っていたんだな!」

ジャン「ストレートに『女子にペロペロされる身体になった』って言えよ」


ユミル「仮にもう1人の侵入者がミカサだったとしたら、特殊能力に包まれたエレンを巡って

    キャッツファイトが繰り広げられた・・・ということも考えられるな」

アニ「・・・・・・・」

ベルト「まさか、アニ。エレンに変なこと、したんじゃ・・・」

アニ「・・・・大丈夫だから」


『はーい。それじゃいい加減面倒だから投票ターーーーーイム

 手元にあるスイッチを押して、クロだと思う人に投票してね!』


アルミン「このタイミングで?・・・・これ、本当にクロを決める必要があるのか?」


『なに言ってんのアルミンきゅんw 事件なんだからクロがいるに決まってるでしょwww』


アルミン「そうですか。どうしても決める必要があるというなら・・・」

エレン「・・・・・・・・・」

全員「・・・・・・・・・・」





 「投 票 結 果」


  アニ・・・10票 無効票・・・1票(ライナー分)







『あー自分に投票したかー・・・・満場一致はツwマwンwネw

 でもまあ、よく頑張ったよ。おめでと、大正解! お前ら成績アップだよwww』


サシャ「アニ・・・ごめんなさい」

クリスタ「貴女はもう、自分で認めつつあったのに・・・」

アニ「いいや。エレンの部屋に持ち込んだのは事実だから・・・」

エレン「アニ・・・お前は確か『不純異性交遊』について警戒してたよな」


 俺は、昨日度胸試しの時、アニがミカサに掛けた言葉を思い出した。


 アニ『危険だね。確か不純異性交遊はおしおきされるはず』

 アニ『ミカサ、気を付けた方がいいよ。あんた達が家族と思っても、端から見れば男と女』


エレン「・・・何か理由があって部屋に踏み込んだんじゃないのか」

アニ「あんたも、あとアルミンもか。すごい推察力だね・・・完敗だよ・・・」

アルミン「アニ・・・じゃあ・・・」

アニ「いいよ、話そうか」



アニ「昨日、私は悩んでいた。入学式の夜、学園長のミスでミカサの荷物が部屋に搬入され――

   交換したのはいいけれど、ミカサのパンツが部屋に取り残されてるのに気付いたんだ」


アニ「万が一にも他の人間に、あんな派手でフリフリなパンツを見られたら、

   ミカサも可愛そうだろうと思って・・・私は夜時間になってから返そうと思った。

   ミカサには、夕方頃にそのことを伝えたんだ」


アニ「夜、訪ねようとしたら、ちょうどミカサがエレンの部屋に入っていくところだった

   ちょっと様子を覗いて、ちょっと注意してやろうと思っただけなんだ・・・」

--------------------------------------


ミカサ「・・・・・」ガチャ バタン

アニ(あいつ・・・せっかく昼間忠告してやったのに。

   幼なじみって言っても距離感に限度があるだろ・・・)スタスタ


 ガチャ


アニ「ミカサ・・・ちょっと」コソコソ

アニ「・・・・・・・・!?」

エレン「おい、ミカサ・・・どうしたんだよ? 今日は甘え癖がひどいぞ?」

ミカサ「エレン・・・なんで私を妹のようにみるの・・・?

    もっと、あなたに触れていたいのに・・・・////」

アニ「ちょ・・・っ」


 バタン


アニ「ミカサ、バカなことは止めろ! 部屋にだってカメラが隠されてるかもしれないだろ!?」

ミカサ「離して! エレン はあぁ・・・・////」

エレン「え? え? アニ?」

アニ「え・・・・エレン?」ドキィッ

アニ(なに、これ・・・・//// え////)

ミカサ「!!! そ、それは私が勇気を出して買ったパンツ///

    貴様、まさかソレを使ってエレンをたぶらかすつもりじゃ・・・!」

アニ「んなわけないだろう・・・・///

   ああ。でもエレンってなんて・・・子作りしたくなる顔をしてるんだろ////」

エレン「子作り!? オイこら、子作りってのは俺が18になってからじゃないとダメだろ

    ミカサもアニもどうしたんだよ!?」

アニ「ああ。シガンシナで変テコな性教育されたんだね・・・///

   バカなとこもすごく、可愛い・・・///」ジリジリ

ミカサ「エレン、この女はあなたをもてあそぼうとしてるの・・・////

    エレン。エレン・・・・」ジリジリ

エレン「え? なんか怖いんだけど・・・・」ビク

アニ「ちょっと、ミカサ。エレンと子作りするのは私だろ・・・?」ゴゴゴゴ

ミカサ「貴女の頭は残念。エレンは生まれ落ちた時から私の聖域(サンクチュアリ)」ゴゴゴゴ

アニ「・・・・・・・・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・・・・・・・」

エレン「なんか・・・カラダが気怠い・・・風邪かな・・・・

    お前らどうでもいいけど早く帰れよ。ハンジぐるみに怒られるぞ・・・」

アニ「・・・・ミカサ。決着をつけなければならないようだ・・・」スッ

ミカサ「そうだな・・・今この時、どちらが優秀な遺伝子であるのか・・・」スッ

エレン「なぁ・・・俺眠いからもう・・・・・・なんでファイティングポーズとってんだ?」

アニ「はぁあああああああああ!!!!!」

ミカサ「チェストオオオオオオ!!!!!」

エレン「は?」


 ド ォ ン


-----------------------------------------

アニ「・・・ミカサは腹筋系アイドルだし、私は格闘家。

   キャッツファイトが激しいドッグファイトに転向したのは、

   出会ってはイケない2人が出会ってしまったからだろうね・・・」

コニー「なにちょっとアンニュイに語ってんだよ」

アニ「・・・その後、止めに入ったエレンを間違って気絶させちゃって・・・

   パンツは、その争いの中でエレンの手元に渡ってしまったんだろうね。

   私たちはもっと広い場所を求めて部屋を出て、

   その後は寮の多目的室で一晩中格闘戦を繰り広げたんだ」

エレン「多目的室・・・ってなんだ?」


『寮には、一応非公開の2階があるんだけど、こいつらが争いをやめないからさあwww

 とりあえず朝日が昇るまで拳で語り合っちゃえYO! ってふたりに解放してやったのねw

 エレンの能力が消えてもファイトしてたけどねw』



ジャン「・・・・じゃあ、アニもミカサも、今朝食堂にいなかったのは・・・」

アニ「・・・そうだね、割と本気でミカサと殴り合ってたからだね。私は蹴りだけど」

エレン「そうか」


 <『ベルトルトの証言』を提示


エレン「ベルトルトはアニが今朝、捜査の直前まで

    ロードワークじゃなくて格闘をしていたって気付いたんだよな」

ベルト「そうだね。何で嘘をついたんだろうって思ったけど・・・」

アルミン「ベルトルト、きみは裁判の途中でアニがクロにあたると気付いたよね?

     ・・・アニを庇おうとしていた」

ベルトルト「昨日アニが荷物の入れ替えが面倒だってボヤいていたから、

      それで気付いてしまったんだ」


アニ「バカだよね。庇う必要なんかないのに・・・」

クリスタ「でも、アニ。どうしてクロだって言わなかったの?」

サシャ「そうですよ。色々あったとはいえ、わざとじゃないんですし・・・」


 ガチャン・・・


 その時裁判場の扉が開いた。

 俺たちが一斉に振り返ると、そこには不安げな表情をしたミカサが立っていた。


ミカサ「・・・・・・・エレン」

エレン「ミカサ! ミカサ!」


 俺はすぐさまミカサの元に駆け寄った。

 思えばミカサは仕事の時だって絶対に俺にどこへいくかを告げるから、

 こいつが無言でいなくなるなんて、初めてのことだったのだ。

 そう思うと、今ミカサの顔を見た瞬間、俺の心は安堵感で満たされた。


エレン「ミカサ! 大丈夫だったか? 変なことされてないか?」ギュ

ミカサ「///// だ、大丈夫・・・芸能人格付けランキングで別室待機してる時みたいだっただけ」

サシャ「それ、逆に言えば不安でハラハラしてたってことですね」

ミカサ「・・・アニは悪くない。私は、酷い暴言を吐いたし、

    アニは気に掛けてくれていたために、巻き込んでしまった・・・」

マルコ「いいや。アニにも非はある。早くから言えばばいいものを、ギリギリまで隠したからね」

エレン「アニ、どうしてなんだ?」

アニ「・・・・・・・・・自分勝手な理由だよ。

   私は、外に出たくない。出来ればずっとここにいたい・・・

   ここはとても不自然で気持ち悪い場所だけど、『外』よりはずっとマシだと思えるから・・・」

マルコ「それは何をもってそう思うんだ?」

アニ「何もないよ・・・・・・・・・直感。だからみんなの足を引っ張ったことは認める」


ユミル「・・・・・・・・・・そうかい。気持ちはわかるけどね。

    ここで一生楽しくやるのって、最高に自堕落で快適な生き方かもしれない」

マルコ「・・・・・・・・・・」

ジャン「・・・じゃあ、そのためにクロであることをして、

    下手したら俺たちの在籍期間が伸びても良かったってのか?」

アニ「・・・・・・・・・そう。私は私の直感を信じているから。

   ここから出てはいけないと、なぜかそう思っているから・・・・

   だから、罪を犯した『クロ』であることには変わりない」

コニー「お前が何考えてんのかわかんねえ・・・けど、」

サシャ「最後には認めてくれましたし、悪意のない真相で安心しました」



『いやー、いやな事件だったね・・・犯人みつかってよかったね!www』


エレン「なにが『事件』だ・・・ハンジぐるみ、結局お前が何もかも面白おかしく騒ぎ立てて、」

アルミン「偶然が重なった事故を、ミカサやアニ、エレンを傷つける『事件』に仕立てたんだ」


『うーん、まあそうだけど。世の中理不尽なことばかりって教訓になったでしょ?

 壁の外はもっと恐ろしいことだらけだよww 天才も二十歳過ぎればただの人、

 きみたちにはもっと希望を持って未来へ進んでほしいっていう親心さww』


エレン「黙れ! てめぇこそが本当の『クロ』だ、ハンジ・ゾエ!!!」


『・・・そう思うかい?』


エレン「ああ。俺はこの学園がどうしてこんな形で存在するのかわからない。

    でも、それを知ることで・・・いつかお前を、壁を駆逐してやる」


『ああエレン。君は昔から、純粋さと凶暴さを兼ね備えた獣のような子だったね。

 そうだ、私が敵だとしよう。それを屠るために、君たちはそれぞれ――

 希望そのものになって欲しいんだ』


アルミン「・・・・どういうことだ?」


『たとえ記憶が忘れても、魂に刻みつけるんだ。ふふ・・・・

 じゃあ、本日はこれにて閉廷。明日からはまた通常の授業になるからね』


ミカサ「・・・・・・・」ギロ

ベルト「ライナーは大丈夫だろうか」


『彼は今日中には返せると思うよ』


アルミン(ハンジはライナーに反応しなかった。相当離れた場所にいるか、

     あるいは女ではなく男なのか・・・)


『そうだ、ミカサとエレン。きみ達は不純異性交遊とみなされる行為をばっちりしてたから、

 それはそれで別におしおきするからね?』


エレミカ「は?」

ミカサ「いや・・・確かに私はアイドルとして恥ずべき行いをした・・・たとえ未遂でも!

    だけどエレンは悪くない!」

コニー「そうだよ! 何があったか覚えてないとか負け組過ぎるだろ!」

ユミル「そういう問題じゃねえだろ!」ボカッ


『いや、だめだめ。相手がミカサだからか本気で抵抗していなかったから(糞リア充が。)

 世間知らずなエレンのためにも、世の中は男に厳しいということを教えてやろうwww』


クリスタ「あわわ・・・・」

アルミン「エレン・・・・君の名誉は守られた筈だけど・・・あの、生きて・・・」

サシャ「みんなエレンのこと悪いとは思ってないですから・・・」

ジャン「あー・・・・あー・・・」


『あとで指示するからねw』


ミカサ「エレン、頑張ろう。あの、私も頑張る。ので、落ち込まないで」モジモジ


エレン「結局、俺が裁かれるのかよ!!!!!」

-------------------------

・アニ(クロ)

 女子のパンツを男子の寝室に持ち込み、また夜時間に騒いだ罪。

 1週間、常に笑顔で他人と接し、なおかつ現代文での音読を演劇風味に熱演することが義務に。

 ついでに反省文556枚が書き上がるまで蹴り練習禁止、という極刑に。

 無口なアニが多少なりとも生徒と打ち解けるきっかけの1つともなったが、

 蹴り解禁日には、ライナーの断末魔が学園中に響き渡ったという。


アニ「おはよ」ニコ

アニ「・・・うるさい」ニコ

アニ「バカじゃないの?」ニコ


一同(もはやアニを怖いとも何とも思えなくなってきた・・・)




・エレンとミカサ

 不純異性交遊に等しい行いをしたため。 
 
 1週間、寮の食堂と廊下を掃除。翌朝ハンジぐるみの部下がNG(メモ)を出すと期間延長。

 最初の4日間は全滅したため結局11日間の極刑となった。

-------------------------

 食堂


エレン「ミカサ、重曹溶かしてきて」フキフキ

ミカサ「わかった・・・」


マルコ「今日もやってるね、お掃除」

ジャン「ああ。そうだな。朝、食堂に置かれるメモ書きでダメ出しされまくるから熱が入るらしい。

    おいエレン! 今日こそしっかりやれよ!!」

エレン「るっせー! こっち来んな、床が汚れちゃうだろうが!」



マルコ「・・・・・・・」クス

マルコ「・・・ジャン。君がエレンと少し打ち解けてくれて嬉しいよ。

    エレンの、どんな理不尽な状況でも屈しない精神力は、君を強くしてくれるだろう」


『うぷぷww マルコ・ボットくん、ちょっといいかな?』


マルコ「背後から・・・っ。・・・いいですよ、場所を移しましょうか」



マルコ「・・・ここは?」


『まだ非公開の資料室だよ。と言っても閲覧できるのは一部の情報だけどね・・・』


マルコ「あなたのせいで、僕は随分と眠れない日々が続いていますよ。

    アニとミカサの騒動の日は衝撃的だった」


『でも一睡もできなかったおかげでジャンの無実を証言できたからいいじゃない?』


マルコ「・・・・・・・・・ジャンを残すのはしのびないし、彼は裏切られたと思うだろう。

    だけど、誰かがきっかけにならないと物事は進まない。

    エレンがその屈強な心で裁判に立ち向かったように・・・そうですね?」


『その通りだ。そしてふさわしいのはマルコ、君だと判断したよ』


マルコ「・・・・解りました。短い間でしたけど、お世話になりました」


ハンジ「ああ、マルコ。きみが外の世界で輝くことを願っているよ』ニコ


マルコ「・・・・・・誰かの礎になれるなら、僕はなんだって構わないさ」


 ・・・・
  ・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・


エレン「・・・・・・」


 ――俺とミカサのお掃除週間が明け、最後に合格のメモ書きを貰えたその日。

 マルコが条件を満たし『卒業』したと、唐突にハンジぐるみから報告があった。


ジャン「・・・・え?」

全員「・・・・・・・・・」


『彼はいち早く条件を満たしたため、卒業試験が行われ、見事クリアしましたw

 そのため卒業wwww おめでとうwww』


ジャン「・・・・マルコの部屋が今朝閉まってたのって」


『朝早く彼は壁の外へ歩き出したんだ。あそこはいま、何にもない空っぽの部屋だよ』


ジャン「嘘だろ・・・? あいつが、1人で・・・?」

ユミル「自分から卒業するって言ったのか・・・?」


『その通りです。みんなも、優秀な彼のようにいち早く卒業できるよう頑張ってねw』


エレン「どういうことだ・・・」

コニー「そんな、イキナリ過ぎるだろ・・・・」

ジャン「・・・・・・・・・・・・」


 俺たちは随分と放心していたように思う。

 指揮官と呼ばれ周囲の人間をすくい上げることに長けたマルコが、

 まさか自分だけのこのこと外に出るようなことは、絶対にありえないと。

 ハンジの嘘だろうと脳みそが拒絶をしていたのだ。


アルミン「・・・・・マルコ・・・」





第一章「悪魔とパンツは紙一重」 非日常編 END?


  生徒数 残り11人


 俺たちは随分と放心していたように思う。

 指揮官と呼ばれ周囲の人間をすくい上げることに長けたマルコが、

 まさか自分だけのこのこと外に出るようなことは、絶対にありえないと。

 ハンジの嘘だろうと脳みそが拒絶をしていたのだ。


アルミン「・・・・・マルコ・・・」





第一章「悪魔とパンツは紙一重」 非日常編 END?


  生徒数 残り11人



『――あ、あとさあ。以前も言ったけど上級生ってか万年留年してるバカがいてね。

 同期の人はみんな卒業しちゃって寂しい奴なので、

 マルコくんの代わりってわけじゃないけど、転校生的な扱いでクラスに、

 ・・・・迎え入れることに決めたから。よろしく』


 カツン カツン


 ブーツの踵を鳴らしながら食堂に入ってきたのは、年上にしては随分と小柄な男だった。


???「・・・・・・・・・リヴァイだ」


 凍えるような視線を向けるそいつに、俺たちはなおのこと無言になるほかなかった。




第一章「悪魔とパンツは紙一重」 非日常編 END


  生徒数 残り12人

以上で終わります。

少し掲示板の利用について利用者さんに迷惑を掛けたので、しばらく書くのは自重します。

お付き合いいただきありがとうございました。

しばらくぶりです。

>>221ミスがありました。×化粧道具 ○基礎化粧品 の意です。以下文章差し替え
--------------------------------------------------
 ミカサの部屋は実家とあまり変わらなかった。

 トレーニング器具と顔の手入れ道具、姿見などが混在するカオス空間。


???「エレン、この本を見て」

エレン(・・・誰だ・・・誰の声だ・・・)

???「ほら、世界ってとっても大きいんだよ」

エレン(・・・・・そう、なのか・・・・)

???「エレン、いつか、2人で外の世界を探検しようよ――」

エレン「ああ、そうだな・・・」







第二章「ボーイズ・ブルー」 (非)日常編


.





 食堂


ミカサ「エレン・・・また遅刻」プンプン

エレン「・・・わ、悪かったよ・・・・・・おはよ」

ミカサ「うん、おはようエレン」

アルミン「おはよう、エレン!」

エレン「はよ・・・・・飯、どこで喰う?」

アルミン「3人で食べる? それとも誰かに混ざろうか」

エレン「そうだな・・・」


 ――マルコ卒業との報から、5日が経過した。

 俺たちは相変わらず、午前中に勉強をして、それから午後は自由時間を過ごす。

 この壁の中の学園で。

 ---------------------------------


ジャン『あ・・・マルコが・・・嘘だよな・・・?』

リヴァイ『・・・・・・・・・』

コニー『えっとぉ・・・』チラ

リヴァイ『・・・・・・・・・』

コニー『・・・・こ、こんなに早く卒業できるんなら、俺頑張っちゃおう・・・かな・・・』

エレン『いや・・・早すぎるだろ・・・!? 頑張るもなにもねえだろ!!!』

ユミル『信じらんねえ・・・何考えてんだ、あの野郎』

ベルト『マルコは卒業の要件を満たしていた・・・ってことだよね』

ライナー『あいつなら、卒業の条件くらい教えてくれそうだが。意外だな・・・はは』

ミカサ『その条件・・・1人1人で違うというのは・・・?』

サシャ『そうかもしれませんね・・・そうであって、欲しいです・・・』

クリスタ『でも、せっかく少し打ち解けたのに。今の状況じゃ・・・』

エレン『ああ。マルコには外に出ないと会えないし、声も聞けない』

コニー『ちょっと、みずくさいよなあ・・・』

アニ『・・・・・・・・そうだね』

ユミル『なんにせよ、ちょっとした裏切り者だよなぁ? アニさんとおんなじようにさ』

クリスタ『ユミル! どうして終わったことを言うのっ?』

アニ『・・・・・・・・そうだね』

アルミン『裏切り・・・? そう、なのかな・・・』ボソ


ジャン『・・・わ、かんねえ・・・わかんねえ・・・よ・・・』

ミカサ『・・・ジャン・・・』


 ・・・・・・
   ・・・・・・・・
     ・・・・・・・・・・・


 さすがに入学後、10日で卒業したというマルコの話には、みんな開いた口がふさがらなかった。

 それでも、5日も立てば随分と平静を取り戻したものだ。

 マルコは『卒業』できた、俺たちもきっと出来るはずだと。

 ・・・ただ1人、彼の友人を除いては。


エレン「ミカサ、どうする?」

ミカサ「別に、どこでもいい。できれば、あの・・・ふたr、なんでもない」

エレン「そ。じゃあ・・・>>336たちのところに座ろうぜ」


 1.ベルトルトとアニ。今日は珍しく2人で食べているみたいだ。

 2.コニーとライナー。こちらも珍しいが、なにやら仲よさそうに話している。

 3.サシャはひとり。久々に1人大食い選手権をやっているみたいだ。

 4.クリスタとユミル。相変わらず仲良しこよしの二人組だ。ちなみに女子二人組だ。

 5.ジャン。最近は、もっぱら一人だ。さすがに顔色が悪いが・・・。

 6.・・・リヴァイさん。ほとんど喋らないし、誰も話しかけない。


 * 1~6の中から、朝食を共に過ごすグループを選択してください

5

エレン「そ。じゃあ・・・ジャンのところに座ろうぜ」

アルミン「え、ジャンのところに?」

ミカサ「で、でも、また、エレンのこと罵るかもしれない・・・」

エレン「いいよ。あいつってそんな奴だろ」シレッ


 俺は食事をトレーに乗せると、1人離れたところに座るジャンの元に座った。

 ジャンはちらりと俺を見て、ミカサを見て、アルミンを横目で見て。

 何事もなかったように、パンと牛乳だけの食事を再開させた。


エレン「おはよ。ジャン」

ミカサ「おはよう」

ジャン「・・・・・・・・・・・・ぁぁ」ボソ

アルミン「今日は体育の授業だって。ライナーの活躍がまた見られるよ!」ニッコー

ジャン「・・・・・・・・・・・・そうだな」モグモグ

エレン「なあ。お前、最近大人しいけどどうしたんだよ」

ジャン「・・・・・・・・逆にお前は、ハンジにたてつくようになったな・・・」

エレン「まあな。あいつのやることは気にくわねえからな。

    ジャンだって、早くここを出たいんだろ?」

ジャン「お前・・・最初は慎重派だったくせに、随分とした変わりようじゃねえか」

エレン「誰かさんみたいに物理的に壁を破壊しようなんざ、思ってねえぜ」ニコ

アルミン「エレン、煽るなよぉ・・・」コソコソ

ジャン「は・・・ここの連中って信用ならねえな。腹の内が読めやしねえ」

ミカサ「エレンの考えてることなんて、2秒でわかる」

アルミン「それは貴女だけです!!」

ジャン「おい・・・もうあっち行けよ・・・気分悪いんだ・・・」

ミカサ「・・・ジャン。保健室行ったほうがいい。次は体育だから」

ジャン「・・・・・ああ」フイ

エレン(ここのところ、ミカサとすら目を合わせようとしねえ)


 ジャンにとっては、やっぱり同郷のマルコがいなくなってしまったことが、

 とても堪えて居るのだろうと思う。俺も、ミカサがいなくなったら取り乱すかもしれない。

 マルコに真意を問い正そうにも、ここは陸の孤島みたいなものだ。


エレン「なあ、みんな単純だろ? 卒業したいって気持ちは一緒じゃねえか」

アルミン「そうだよ、ジャン。どんなに世間の常識と薄利していたとしても・・・

     ここから卒業さえすれば、僕たちは世界の希望たる人間になれる」

ミカサ「・・・ジャン。頑張ろう。私も頑張る。エレンも頑張る」

ジャン「は。何を頑張るってんだ?

    あいつ・・・マルコって俺の脱出計画を笑って聴いてたんだぜ?

    腹の底で何考えてたんだろうな・・・はは」

エレン「あいつ・・・マルコとは短い付き合いだったけどな。

    俺はあいつのこと、そんな性悪だとは思わねえよ、ジャン」

エレン(確かに、驚いたけど・・・この場の特殊性を考えれば、

    『卒業』に何か大きなからくりが隠されているってことは考えられる筈だ)


 マルコ『ジャンはさ、僕かそれ以上にビビり屋なんだ。

     それでも、周りのことをよく見ることができる、本当はそんな奴なんだ』


 俺は、以前マルコが言っていた言葉を思い出した。


エレン(あんなに優しい目でジャンを案じていたマルコのどこを、ジャンは信用できねえんだ)


 マルコ部屋は閉ざされている。あの向こうには何もないと、ハンジぐるみは言った。

 彼のことを追うことは、もう出来ないのか。

 ジャンの心には、もう誰の言葉も届かないのだろうか。


エレン「――ほんっと、お前にはあきれるぜ、ジャン」タメイキ

ジャン「・・・・・・・・・・・なんとでも言えよ」ガタ


 ジャンは立ち上がった。栄養価のなさそうな食事しかとらず、顔色は悪くなる一方だ。


ミカサ「ジャン。もっと食べた方がいい・・・」

ジャン「・・・・・・・気が向いたらな」スタスタ

アルミン「ジャン。保健室行っていいよ、ハンジぐるみには休むかもって伝えておくから」

ジャン「ピタ)・・・・・・・・ハッ。おまえはいつもお人好しだな。金魚の糞」スタスタ

アルミン「ぇ・・・・・?」


エレン「はあ? アルミンのこと言ってんのか?」

ミカサ「アルミンはいつも、誰とでも仲が良い。ジャンは罵りの語彙がないだけ」ドヤ

エレン「お前が『語彙』のことを言うのは、なんだか俺が許せねえんだよなあ・・・」

アルミン「・・・・・っあ・・・・ああ。そうだよ。ジャン、何言ってるんだろ・・・」

エレン(アルミンの奴、急にぎこちないけどどうしたんだ?)

アルミン「・・・・僕、やっぱりジャンが心配だ。ちょっと栄養ドリンクでも持っていくよ」

エレン「俺も・・・」

アルミン「エレンだとどうしても喧嘩になっちゃうだろ。たまにはミカサと2人で食べたらどう?」

ミカサ「・・・・! あ、あるみん・・・!!」キラ

エレン「えー?」

アルミン「ほらほら、幼なじみ同士、水入らずで食べちゃいなよ。じゃあね」タッタッタ

エレン「おい! ・・・・はー。この席失敗だったかな。

    ジャンのせいで胸くそ悪くなるばっかりだぜ。

    まだメソメソしてくれてた方が絡みやすいってもんだ」フン

ミカサ「・・・ジャンは、私のマネージメントすらやるようになったころ、

    よくマルコの話をしてくれた。彼は軍人の卵として、とても優秀だって」

エレン「『超高校級の指揮官』だっけ・・・そりゃすげえよ。エリートじゃん」

ミカサ「ううん・・・彼の人柄だとか、人前での振る舞い方、そういうことをよく話してくれた。

    『何年も歳を重ねたみたいに大人っぽいけど、でも純粋な奴なんだぜ』って。

    それで、指揮官として人前に立つときの姿を知ることは、

    きっとアイドルとしての私も勉強になるって。随分熱心に・・・話してくれた」

エレン「へえ。俺はあいつの殴りたくなるような馬面しか知らねえからな」ップン

ミカサ「そんなマルコがやったことは、端から見ると自分だけ最善の道をとるやり方」

エレン「敵前逃亡ってか・・・陸軍のこと詳しくねえけど」

ミカサ「少なくともジャンの知っているマルコはそんなことをしない。

    じゃあ、そんなマルコが何に向かって走って行ったかを考えると・・・」

エレン「あいつは、ビビりだから考えるのが怖いのか・・・」

ミカサ「そう。何より、私にはエレンがいる。エレンには私がいる」

エレン「ジャンには、もうマルコがいない――その差を埋めるのは簡単じゃねえってわけだ」

ミカサ「ジャンは、あのままでは本当に孤立してしまう」

エレン「ああ・・・」

エレン(そもそも、他人のことを気にかけてるアルミンなんて、まだ記憶が全然戻ってないんだぞ

    あいつだって辛いだろうに踏ん張ってるんだ・・・。ジャンだって、ジャンだって・・・)



エレン「・・・・・・バカジャン」ポツン

ミカサ「エレン。なんだか貴方も顔色が悪い。ちゃんと眠れた?」

エレン「ああ・・・いや・・・なんだか夢を見ていてさ。最近ぐっすり眠れねえ」

ミカサ「一緒に寝ようか?」

エレン「いいよ・・・ここは家じゃねえ。つうか、子供じゃあるまいし・・・」

???「よくもまあ、あの状態のジャンに話しかけようなんざ思ったな」

エレン「あ、ライナーか。おはよ」

ライナー「おう。はよ」

コニー「おはよー。俺、今日日直だから先行くわー」ノシ

ミカサ「うん」ノシ

ライナー「ジャンの奴どうだった?」

エレン「駄目だ。すっかり塞ぎ込んじまって・・・」

ミカサ「どんなことも否定的。彼には時間が必要」

ライナー「ミカサでも駄目となりゃあ、そうなんだろうな」

エレン「そういやライナー。お前昨日・・・『あの人』に話掛けるって言わなかったか?」

ライナー「え? ・・・・・あー・・・うーん・・・」

ミカサ「・・・あの人?」

エレン「耳貸せ」

ミカサ「うん」

エレン「・・・・リヴァイ先輩」コソ

ミカサ「! ・・・ああ・・・」


 ミカサは横目でちらりと、その人物を捉えた。随分と隅の方でただ1人、彼は鎮座していた。


リヴァイ「・・・・・・・・」モグモグ


 ――リヴァイ。

 『超高校級の兵長』という肩書きの、俺たちよりずっと先輩にあたる人物らしい。

 彼の情報というのはせいぜいその程度だ。

 なぜなら、誰も話しかけないし、本人も話さない。人物を知ることができないのだ。


ライナー「昨日、ベルトルトと話掛けたんだがな、

     『掃除が忙しい』って取り合ってくれなかったな」

ミカサ「あのチビ、『話掛けんな』と私たちに目で言ってる。ので、放っとくべき」

エレン「お、おい。仮にも一緒に閉じ込められたてる先輩だぜ、失礼だろ・・・」

ミカサ「やだ。それに、時々エレンを睨み付けてる・・・あのチビ」

エレン「え?」

ライナー「おいおい、脅かすなよ。兵長って言うくらいだから軍人だろ?

     エレン、何か目ェつけられるようなことでもしたか?」

エレン「いや・・・時々目が合うくらいだな。全然話したことねえや」

ミカサ「そのままでいい。あいつも、私たちと話すつもりはないから」

エレン(ミカサがここまで嫌うのも珍しいな・・・)

ライナー「エレン。お前案外いけるかもな。次はお前が行ってみろよ」

エレン「ああ・・・」

ミカサ「だ、だめ・・・」

エレン「そう言うなよ。誰だって、話してみないとわかんねえだろ」

ミカサ「・・・ぅ・・・」シュン

ライナー「先輩だから、俺たちよりは学園の構造に詳しいだろ。

     なんとしてでも話は聴いておきたいところだぜ・・・」

エレン「ああ・・・」


 キーンコーンカーンコーン・・・


『えー、おはようございます。本日は体育館で体育の授業があります。

 そのまえに、ひとつお知らせがあります!』


エレン「・・・・ハンジぐるみ・・・」

『みなさんの、真面目な姿勢を評価して、そろそろ行動範囲を増やしてあげようかなと。

 そこで、校舎の2階を解放することにしました。ぜひ利用してね!』


ライナー「・・・・聴いたか、お二人さんよ」

エレン「2階に上がれる・・・何か他に施設があるかもな」

ミカサ「午後は探索・・・」



 午前中、体育の授業ではバレーボールのチーム戦が行われた。

 ライナーが独断でチーム分けをしたところ、戦力の拮抗した熱い試合展開となった。

 まあ、ジャンは体調不良で欠席したんだけど・・・。

 意外なことに、ボールを浴びて鼻血を出したアルミンの代わりに入ったリヴァイさんが、

 黙々と地面すれすれのボールをすくい上げ、味方チームに貢献した。

 俺とミカサは対抗チームとして尽力したけど、最後は僅差で負けてしまった。

 体育館内、男子更衣室


エレン「ライナー、今日はすげえ面白かった。負けて悔しいけどさ」ヌギヌギ

ライナー「そうか」ヌギヌギ

ベルト「ライナーの才能なんだ。彼にイベントを組ませたら外れはない、って地元では有名だったよ」

コニー「いやー。兵長すごかった。身体やわらかすぎ」

アルミン「軍人だろうから、運動神経も並みじゃないんだろうね」フガフガ

エレン「アルミン、鼻血大丈夫か? ムリするなよ」肩ポン

アルミン「らいじょうぶ!!」

リヴァイ「・・・・・・・・チッ ウルセーナ」ヌギッ

エレン「・・・・・・・」

ライナー「・・・・・・」

コニー「・・・・・・・」

ベルト「・・・・・・・」

リヴァイ「・・・おい、見てんじゃねーぞガキ共」ギロ

エレン「ええぇぇ・・・腹筋ヤベェ!」

ライナー「(小さいのに)脱いだらガチムチじゃねえか」

ベルト「(小さいのに)やっぱり軍人なんだなあ・・・」

コニー「(小さいのに)何食べたらそんな風になれるんすか!?」

リヴァイ「イライラ・・・・・好き嫌いせず何でも喰え」スタスタ


 バタン


アルミン「着替えるの早いなあ」

ライナー「俺みたいにタッパねえのに。あの人1人殺してそうな目つきといい・・・」

ベルト「マルコも軍人の卵だったけど、それとはまた違うのかな」

コニー「なんかさ、男の勲章的な傷もあったぜ、背中に!!」キラキラ

アルミン「本人相当いらついてたよ、君たちの心の声(小さいのに)が聞こえてたんじゃない」アキレ

エレン(それで出たコメントが『好き嫌いせず何でも喰え』か・・・

    人嫌いで神経質そうだけど、俺は、なんか嫌いじゃねえな・・・)



 午前中の授業をひと通りこなし、昼食を終えたら自由時間だ。


エレン(さて、せっかくだから誰かと一緒に回ってみようか・・・

    よーし。>>354を誘ってみよう!)


 * ジャン意外は選択できます。

へーちょー


エレン(そうだな、思い切ってリヴァイさんを誘ってみよう。えっと――洗濯室か)


 俺は洗濯室に向かう途中、購買部でガチャガチャを回した。

 この前の学級裁判でなぜかハンジがご褒美にとくれたやつだ。


 * 「鋭利なハサミ」、「茨の鞭」、「男のロマン(イベント用アイテム)」を入手した!


 -----------------


 寮 洗濯室


エレン「あ、リヴァイさん・・・」ドキドキ

リヴァイ「・・・・・・・・」ジロ

エレン(シーツを洗ってんのか。マメだな)

エレン「あの、俺たち今日から校舎の2階が解放されたんです」

リヴァイ「ああ・・・」

エレン「一緒に見に行きませんか?」

リヴァイ「俺は見たことある。見たきゃ他の連中と行け・・・」ピッピッ スタート

エレン「いいじゃないですか! 色々教えてください」ニカッ

リヴァイ「・・・・・チッ 洗濯が仕上がるまでなら付き合ってやる・・・エレン」

エレン「えっ?」

リヴァイ「・・・・・あ?」

エレン「いや、俺の名前、知ってたんだなあって・・・」

リヴァイ「・・・・・・・ハァ ああ。知っている」

エレン「意外だな・・・。じゃ、行きましょうか」ニコ



 終始鋭い眼光を放つリヴァイさんと校舎2階へ向かう間、

 俺はあえて色々と話掛けてみた。


エレン「へー。じゃあマルコとは違って実戦部隊にいたんですね」

リヴァイ「ああ・・・・ここに来てから長い。もう鈍っちまってるが・・・」

エレン「すごいなー。で、階級が兵長かー!!!」キラキラ

リヴァイ「・・・・・・兵士長、だ」

エレン「実戦ってことは壁の外の紛争地帯にも言ってるのか。格好いいですね!」

リヴァイ「まったく。どこにいても、うるさい奴だな・・・」

エレン「え、あ。ごめんなさい・・・」

リヴァイ「いいや・・・気にするな」フッ

エレン(ちょっと。笑った・・・だと・・・!? いい人かもしれない・・・)タンジュン



 校舎2階。新施設――まずはプールだ。

 男女別の更衣室があり、そこから50mの屋内プールへつながっている。


リヴァイ「ここの更衣室は電子生徒手帳がないと出入りできない。男女でしっかり区別されている。

     あとはシャワー室が中にあるくらいだな。機能的な普通の屋内プールだ」


 男子更衣室から中に入ると、アニがプールサイドに腰掛けて、足をちゃぷちゃぷさせていた。


アニ「あ、エレン。・・・・・・と、リヴァイ先輩」

リヴァイ「・・・・・・・・・ああ・・・」フイ

エレン「こいつは、アニです。『超高校級の格闘家』なんですよ」

リヴァイ「よく知ってる・・・・・」ジロ

エレン「そうなんですか。やっぱテレビ見てる人にはおなじみなんだな、アニ!」

アニ「どうも・・・」

エレン「アニは、今ひとりか?」

アニ「うん・・・でも後でユミルたちと泳ごうって話になってる」

エレン「そうか・・・ユミルと仲直りしたんだな」


 ユミルは時々、アニが学級裁判でなかなか自供しなかった点を責めることがあった。


アニ「うん。言い過ぎたって、この前謝ってくれたよ。

   ユミルは悪くないし、私が軽率なことをしたのは事実なのに・・・」

エレン「あれって、『学園を出たくない』っていう直感なんだっけ・・・」

アニ「そう。なんでそう思ったのか、今でもよくわからないんだ」

リヴァイ「・・・・・・・壁の外は俺たちの日常であり、『現実』だ」

エレン「・・・・?」

リヴァイ「そこに行きたくない理由が、お前にあるんじゃねえか・・・」ボソ

アニ「?? ごめんなさい、よくわからない・・・そろそろ行くよ」スタッ

エレン「泳がないのか?」

アニ「まだ水着を用意してないし。食後にちょっとボーッとしてただけだから・・・」

エレン「そか。じゃあな」ノシ

リヴァイ「・・・・・・」

アニ「・・・・・・・ペコリ」スタスタ

リヴァイ「おい、次行くぞ」

エレン「もうですか?」

リヴァイ「あ? 今泳ぐのか・・・?」

エレン「それもそうですね・・・」


 プールは地図で言うと体育館の真上に位置する。

 そこから奥へ進んでいくと、今度は『図書室』の表札が見えた。

 重厚な木製の扉を開くとそこには・・・・・・

エレン「すっっっっげーーー!」

リヴァイ「馬鹿野郎。図書室ではお静かにしろ・・・」イライラ


 見渡す限り、本、本、本・・・。

 アルミンなんてとても喜ぶかもしれない。図書室ならではの香りに包まれた広い空間だった。
 

エレン「っすみません。だってシガンシナ区立図書館より大きいですよ・・・」コソコソ

リヴァイ「それはお前の故郷の行政がザンネンなだけだ・・・」コソッ

サシャ「あ、エレンこんにちは。・・・・と、リヴァイさん・・・コンニチハ」

エレン「何か探し物か?」

サシャ「クックパッドが閲覧できない鬱憤を、ここの料理本で晴らそうと思いまして」

エレン「くっくぱっど?」

リヴァイ「料理レシピのサイトだ・・・貧乏飯から本格飯まで作れる・・・」

サシャ「結構喋りますね・・・彼」コソコソ

エレン「ああ、やっぱ先輩だし、物知りみたいだぜ・・・」コソコソ

サシャ「とにかく、娯楽の少ないこの学園に一筋の光です。漫画もあるし」

リヴァイ「・・・エレン。ここは一通りの書籍は揃っている。

     奥の書庫にある持ち出し禁止書籍だって、読んでみて損はない。

     漫画も雑誌も置いてある・・・気が向いたら読むといい・・・」

サシャ「意外とお父さんみたいなこといいますね、彼・・・」コソコソ

エレン「ああ、なんか色々教えてくれる・・・」コソコソ

サシャ「えっと、リヴァイさん。私サシャです」

リヴァイ「サシャ・ブラウスだな・・・授業中寝るのは止めろ。いつかハンジに仕置きされるぞ」

サシャ「え!? どうしてそれを・・・目を開けたまま寝ているのに!」

エレン「お前さてはおバカちゃんだな」


 ガチャン

 その時、図書室へ新たな来訪者が現れた。


ジャン「・・・・・ああ、お前らか」

サシャ「ジャン! 午前は保健室で休んでたみたいですけど、大丈夫なんですか?」」

ジャン「ああ。お前ら、騒ぐなら外でやれよ」フイ

エレン「ジャン・・・ハァ 夕食の時間には戻ってこいよ。いいな」

ジャン「指図すんな」

エレン「っミカサが心配するだろうが・・・っ」

ジャン「・・・・・・・」ガタ


 ジャンは俺の言葉を無視すると、机の一つに、図書室の備品である卓上ランプを持ってきて

 コンセントを電源に繋ぎはじめた。どうやらここで読書をするようだ。


リヴァイ「・・・放っておけ」スタスタ

サシャ「わ、私もいくつか本を借りたし、おさらばしますねー・・・」ソロソロ

エレン「・・・じゃあな」


 ガチャン


サシャ「ジャンったら・・・豆腐メンタルちゃんなんですから」

エレン「まあ、今のジャンは見ていてハラハラするな・・・」

サシャ「ジャンにとってマルコは、勝手にいなくなられて薄情だと思えるんでしょうね」

エレン「そうだな」

サシャ「でも、そんなジャンを心から心配するミカサやエレンがいます」

エレン「や、俺は別に」

サシャ「それを心から否定するジャンこそ、自分だけを可愛がる薄情だと思いますけどね」

エレン「サシャ・・・」

サシャ「あ、いけません、芋燃料切れです。これ以上賢そうなことを言えそうにないですねぇ」

リヴァイ「台無しだな」

サシャ「うーん。水泳しようかと思ったけど、やっぱりおやつを作ろう。

    エレン、とリヴァイさん! 甘い物食べられます?」

エレン「俺は好物」

リヴァイ「・・・・・少し」

サシャ「じゃあ夕飯のデザートを用意しますから、是非食べてくださいね! じゃ!」ノシ


 タッタッタッタ・・・・・・


リヴァイ「バカメガネみたいな奴だな・・・」ポツン

エレン「ははっ。サシャの奴も、もう貴方のこと恐がってませんよ。

    リヴァイ先輩のこと、結構喋るって言ってました」

リヴァイ「バカ言え。俺は元々結構よく喋る・・・」

エレン「もっと早く話掛けりゃよかったです。

    話してみたら、ほんと普通に喋ってくれますし・・・」

リヴァイ「・・・ガキは嫌いだが、ガキのお守りなら慣れてるからな・・・」

エレン「ガキのお守り、ですか」

リヴァイ「・・・昔の話だ。おい。校舎2階はこれくらいしか見所がない。

     あとは使われない普通教室があるくらいだが・・・」

エレン「あ、そうみたいですね。帰りますか。あ、夕飯一緒に喰いません?」

リヴァイ「・・・気が向いたらな」

エレン(なんだかんだ付き合ってくれたな・・・マジで話掛けてよかった・・・ホッ

    そうだ、お礼に>>367をプレゼントしよう)


 * ひつまぶしを or 月刊ラブドールを or きょうせいギブスを

   スズランの香水を or 鋭利なハサミ or 茨の鞭 or やらない

ひつまぶし

リヴァイ「これは・・・エルミハ区 来々軒の特性ひつまぶしじゃねぇか・・・

     てめぇ、こんなお高いものをどこで・・・?」

エレン「えっと、購買部(のガチャガチャ)でです」

リヴァイ「ほう・・・ちょうど三膳分あるな・・・

     一膳目は、そのまま削いだウナギを楽しみ、

     二膳目は、薬味などを加えて変革を求める、

     三膳目は、当然お茶漬けで心を落ち着かせる・・・」

エレン(なんか語り出した!!!)

リヴァイ「実にいいな。国産天然物は削いだときの断片が違う・・・

     エレン、これお前が喰わなくてもいいのか?」

エレン「あ、プレゼント用のものですし、ぜひ食べてください」ニコ

リヴァイ「仕方ねえ、もらってやる・・・」イソイソ

エレン(どうしよ。付き合い短いのに、この人が喜んでることが解ってしまう・・・)

リヴァイ「・・・なあ。エレンよ。

     アルミン・・・アルレルトは、記憶が無いというのは本当か」

エレン「アルミンですか? ええ、人間関係だとか過去をほとんど失ったようです。

    アルミンはすごく冷静に、上手に対処しているけど・・・

    あいつのことを何も知らない俺じゃ、力になってあげられないのかなって思います」シュン

リヴァイ「『何も知らない』か・・・エレン。

     一過性じゃねぇんなら、案外本人が思い出したくねぇってことも考えられる」

エレン「思い出したくない、ですか」

リヴァイ「そういった記憶を、無理に呼び起こす必要はねぇと・・・これは俺の持論だが」

エレン「わかりました。それを踏まえて、アルミンとは話をしてみます」

リヴァイ「・・・・エレン。ひつまぶし、大切に喰う・・・じゃあな」

エレン「あ、いえ。じゃあ、また・・・」

エレン(元々険しい表情をした人だけど・・・今の顔はなんか、哀しそうだったような・・・)

エレン(サシャのトコ行ってみるか・・・)


 俺は食堂に行き、奥の厨房に入った。

 厨房は出入りが自由なのだが、そういえばビュッフェのおかずはどこで作られているのか。

 中ではサシャが鼻歌を歌いながら調理器具を漁っていた。


エレン「サシャ」ノシ

サシャ「ああ、エレン。どうしましたか?」

エレン「お前がおやつを作るっていうから、どんなモンかと思って」

サシャ「今日はみんな暇ですもんねー。いいですよ。ただしエプロン着用してください」

エレン「え・・・持ってねえよ、そんなの」

サシャ「ここに、予備の『ぴよぴよエプロン』があります。さあ、どうぞ」サッ

エレン「わ、わかった(ひよこ柄か・・・)」ガサゴソ

エレン「・・・サシャ?」

サシャ「なんでしょう、エレン?」

エレン「あの・・・ちょ・・・ちょう・・・・・むすび・・・」

サシャ「ちょうちょ結び出来ないんですか? ふふ、後ろむいてください」

エレン「う・・・//////」

サシャ「エレンは手の掛かる子ですねー。はい、できましたよ」

エレン「悪い・・・」

サシャ「さて、エレン助手」

エレン(助手!?)

サシャ「私が作るのは、甘さ控えめの『塩麹チーズケーキ』です。

    お菓子作りというのはなかなか体力がいるので、所々手助けしてくださいね!」

エレン「お、おう!」ガッツ


 サシャはにこにこ笑いながら、巨大な業務用冷蔵庫からタッパーを取り出してきた。

エレン「なんだこれ」

サシャ「10日前から仕込んだお手製の塩麹ですよ」

エレン「へえ・・・・うちの母さんもよく菓子とか作ってくれたなあ」

サシャ「エレンはお母さんのこと好きですね」

エレン「え、別に好きってわけじゃねえよ!」

サシャ「うちは狩猟民族です。両親とも伝統的な猟師で、狩りの時期は家にいませんでしたから。

    お料理は私の役目でした。だから母の味なんて知らないです」

エレン「そうなのか・・・」

サシャ「まあ、それで舌が鋭くなり、こうしてお金を稼ぐことが出来ているんです。

    とても感謝していますよ。美味しいものをたくさん食べるお仕事ですから」

エレン「料理評論家ってどんなことするんだ」

サシャ「もちろん料理にコメントするタレント業が多いですが、自分でもレシピを作ります

    私は自分で好きな物を作る方が好きですから」

エレン「へえ。・・・ここって生徒用の厨房だよな。食材はいつも新鮮なのか?」

サシャ「ええ。ハンジぐるみが夜時間にこっそり入れ替えてるって聴きましたけど」

エレン「そうか・・・」

サシャ「さ、生地を作りますよー。エレン、頑張りましょうね」

エレン「ああ!」


 サシャに指示をもらいつつ、俺はチーズケーキ作りを手伝った。

 教え方が上手いのか、いつのまにか没頭して――。


サシャ「さあ、あとは冷まして冷蔵庫へ入れて完成です。エレン、お疲れ様でした!!」

エレン「おう、ボウルとか洗っといたぜ」

サシャ「ありがとうございます」

エレン「サシャはいいお嫁さんになりそうだな」

サシャ「そうですかね。食欲が強すぎて貰い手がいないとよく言われますが」

エレン「なると思う」

サシャ「じゃあ貰い手がいなかったらエレンが貰ってください」

エレン「え・・・・/////」

サシャ「冗談ですよ。エレンには先約がいそうですから、ふふっ」ニコー

エレン「・・・・うん・・・・?」


 サシャは意味深に微笑みながら、何かを作っていた。

 どうやら飲み物を作っているらしい。


エレン「手伝おうか」

サシャ「ありがとう。でも、いいですよ。すぐ出来ますから」

エレン(そうだ、なんかプレゼントでもやろうかな・・・>>380


 * 月刊ラブドール or きょうせいギブス

   スズランの香水 or 鋭利なハサミ or 茨の鞭 or やらない

鋭利なハサミ

エレン「これやるよ」

サシャ「こ・・・これは伝説の万能ハサミのレプリカではありませんか・・・

    昔殺人鬼が使っていたというお手製ハサミの!!」

エレン「え、そういうモンだったのかコレ! てっきり料理ばさみかと・・・悪い」

サシャ「これ、研ぎ方で何にでも使えるんです。料理だろうが狩りだろうが、工作だろうが・・・」

エレン「ああ。こんなので良ければ・・・」

サシャ「貰います!! ぜひ料理に使わせてください!! ありがとうございます、エレン」キラキラ

エレン(ガチャガチャどうなってんだ・・・何にせよ喜んで貰えてよかったけどさ・・・)

サシャ「じゃあ、ちょっと一息ついて、お茶でも飲みますかっ」ルンッ


 数分後――。

 ガチャ

コニー「ああ! サシャここにいたのかよー!」

エレン「? どうした?・・・って、お前なんでそんなに顔腫れてんの」

コニー「男共とプールに行ったら女子に見つかってボコられたんだよ。わざとじゃないのに。

    男がいないと思って派手な水着つけてたんだぜ、あいつら」

エレン「・・・おまえ学級裁判で裁いて貰えよ」

コニー「なんだー。サシャいないと思ったら飯つくってたのか」

サシャ「お菓子ですよ。夕食の時に食べてくださいね」

コニー「へー。エレンも一緒に?」

エレン「俺は手伝い」

サシャ「コニーはバカですねえ。ガールズトークを邪魔するなんて」

コニー「はあ・・・まあライナーとかは楽しんでたけどなー」


 しばらく、コニーやサシャと他愛ない話をして過ごした。


 -------------------------------


 夕食の時間には、サシャと作った『塩麹チーズケーキ』を振る舞った。

 とても優しい味の、特別美味しいケーキだった。

 女子がレシピについてサシャに質問を浴びせていると――。


『もっしもーし。みなさーん。ちょっとごめんねー』


エレン(授業はともかく飯時に出てくんなよ・・・イラッ)


『あー。実は今晩から、寮のある場所も開放いたします。

 一階南側に、実は大浴場がありまして。シャワーだけじゃヤって人は利用してね。

 ただし、男女兼用になっているからその辺は気を付けてください!』


コニー「まじでー!?」キラキラ

クリスタ「湯船使えるの・・・?」キラキラ

『あと、さすがに大浴場にはカメラないから安心してね。

 お子ちゃま達の裸なんかにゃ興味ござーいませーん↑』


リヴァイ「・・・・・・だろうな」

ライナー「カメラがないのか・・・」

アルミン「それって・・・・・・・」


『サウナルームもあるけど使い方には充分注意してください。

 あと、夜時間中はお湯を抜いてしまうから。お風呂の時間にも留意することだね』


 ハンジぐるみが去った後、右隣に座っていたリヴァイさんが、「やっとか」と呟いた。


ミカサ「エレン、お風呂・・・」キラ

エレン「ああ、おまえ半身浴好きだもんな。よかったな」ニコ

ライナー「・・・おまえら、あとで大浴場集合しようぜ」

ベルト「どうしたんだい、ライナー?」

ライナー「風呂をどう使うか・・・とことん話し合うとしようぜ」ニヤリ



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 大浴場

 今まで利用していなかった通路の奥に、それはあった。

 天井が高めの広々とした空間で、ロッカーのある脱衣所から、サウナ、大浴場へと続く。


ライナー「皆さんごきげんよー」

エレン「ごきげんよー・・・ってライナー。こんなとこ呼んでどうしたの」

ベルト「ライナー。ジャンを連れてきたよ」

ジャン「・・・・・・」ムスッ

ユミル「全員いるね・・・あれ、あの人は? 兵長さん」

リヴァイ「いる・・・・」

アルミン「ああ、ベルトルトの後ろにいたのか」

ライナー「さて、お前らを呼んだのは他でもない。ここの利用についてだ」

ミカサ「女子が一番風呂を望みます。基本一時間ずつでどうだろう」

コニー「あ、こら女子~。男子だって綺麗なお湯使いたいじゃ~ん。そういうのやめなよー」

ライナー「そうじゃなくて! いや、それも後で決めようと思うけどな!」

アルミン「みんな・・・ここってカメラないんだよ」

エレン「・・・・!! そうか、ここなら内々の話も出来るってことだな?」

ライナー「そういうこと。みんなハンジに聴かれたくない話はここでするように」

ジャン「なるほどな・・・」

アニ「でも。あまりにみんなで集まったら不自然じゃないかい?」

エレン「じゃあ、伝達事項がある場合は、ロッカーにメモを残そう」

クリスタ「そうだね。木札の鍵もあるし、活用しよう」

ベルト「せっかくだ、誰か言いたいことはあるかい」

アルミン「・・・この学園が変なのは社会レベルで周知の通りだけど、

     僕が気になっているのは学園長が変わったタイミングだ」

サシャ「えーと・・・確か私たちの入学前に理事会ごと変わったんでしたよね」

ユミル「・・・リヴァイさん、前の学園長ってどうなったんだ?」

リヴァイ「・・・俺は何も知らん。卒業できないくらい学園とは関わってないからな・・・」

アルミン「本当ですか?」

リヴァイ「何が言いたい・・・坊主」

アルミン「いえ・・・」

ミカサ「校舎の2階にも、特に学園についてヒントはなかった・・・」

エレン「マルコの卒業条件を、一つでも知ることが出来たらな・・・」

ジャン「・・・・・・・・・・・・」

ライナー「とにかく。今後ここは活用しようぜ。いいな!」

全員「ラジャ」


リヴァイ「・・・・・・」



 ちなみに入浴順は、そこは紳士に行こうぜということで、女子優先となった。

 俺も湯船は最初に浸かりたいけれど、ミカサがわかりやすく喜んでいるので良しとした。





 夜時間――場所不明


ハンジ「予想通りだな・・・わかりやすい子たちだ」

???「・・・・」

ハンジ「どうだい。少しは心向きが変わったかな?」

???「・・・・・・・・」

ハンジ「そう。変わらないんだね。まあ、任せるよ。どう動くかは・・・」

???「・・・・・・」

ハンジ「頑張ってね、『裏切り者』クン・・・」


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 翌日。ジャンは昨日とは違って授業に参加していたのだが、

 代わりに欠席したのはリヴァイ先輩だった。ハンジの言動を察するにサボりの常習らしい。

 俺にとっては難しい課題も出たため、午後は食堂にてアルミンに教えを請うことにした。


アルミン「――そうそう、基礎は出来たね。エレン、それにしても数学苦手だね」

エレン「ああ。授業だけだとちょっと自信ねえな・・・お前が教えてくれて助かってるよ」

アルミン「ど、どうも。僕、多分以前もこうやって人によく教えてた気がするなあ・・・

     ほら、僕って貧弱で、勉強することしか取り柄がないから、ははは」

エレン「なに言ってんだよ。ガリ勉なんてどこにでもいるけど、

    勉強の教え方が上手い奴なんてそうそういねえよ。お前の才能だろ?」

アルミン「・・・エレンって、褒め上手だなあ」

エレン「アルミンが卑屈過ぎるんだよ。お前みたいな奴、俺はすげぇと思う」

アルミン「んー・・・照れるなあ・・・」テレッ

エレン「俺、友達少なかったから」

アルミン「え? そうなの?」

エレン「喧嘩っぱやくて・・・故郷の奴にすげえ嫌われてた、と思う。

    それはそれでいいんだけど、お前みたいな、すげぇ奴と話せる今が、少し嬉しい」

アルミン「僕も・・・この環境が、人間関係においては割とプラスに働いていると思うよ」

エレン「ミカサも・・・あいつが忙しすぎて、話を聞いてやることもできなかったし・・・」

アルミン(ミカサは自分を姉、エレンは自分を兄ポジションだと認識してるみたいだ。クス)

アルミン「ミカサといえば・・・最初は僕のことちょっと警戒してたみたいなんだけど、

     最近はとても親切に接してくれるな。どうも僕が昔の友達に似てるんだって」

エレン「俺も、お前にはどうも親近感が・・・」

ミカサ「エレン」スッ・・・

エレン「っと。噂をすれば何とやら」

ミカサ「お勉強は・・・」

アルミン「うん。なんとかなりそうだよ。ミカサ」

ミカサ「アルミン、いつもエレンがお世話になっています。ありがとう」ペコ

アルミン「いいよ。お礼に体育のときは助けて貰ってるしね」ニコ

エレン「ジャンは?」

ミカサ「図書室で随分と熱心に調べ物してる・・・難しい本をいっぱい読んでた」シュン

エレン「あー・・・やっぱ学園のこと調べてんのか?」

アルミン「ハンジのあの言動を見るに、たぶん永遠に隠すつもりはない・・・と思う。

     だから、新たな施設である図書室の本を漁るのは間違ってないよ」

ミカサ「問題は、彼が日に日に不健康そうな顔になっている、こと」

エレン「たまには身体動かさなきゃな・・・ドッジボール誘うか?」

アルミン「それは僕がイヤ。(集中的に狙われるから)」

エレン「あのままだと、何かあって、また『学級裁判』が起きかねんぞ(※ライナーっぽく)」

アルミン「フラグ立てないでよ・・・そうそう出てこないよ、パンツ被る人なんて」

エレン「あぁぁあぁああ、なんで俺は俺がいじられる話題を出しちまったんだ!?」

ミカサ「新品だからゆるして・・・///」

エレン「お、お前のだし、別に、いいし・・・」

アルミン「ほんと、君たちは仲がいいなあwww

     ――さて、僕はコニーの宿題も見ないといけないから。エレン大丈夫そう?」ガタリ

エレン「お、おう。わからなかったら夕食の後に訊く」

アルミン「よしよし。じゃあね。 さて、彼はちょっッッと骨が折れるんだよなぁ・・・」スタスタ

エレン「・・・ミカサ」

ミカサ「・・・なに?」

エレン「・・・・・・」ジー

ミカサ「・・・・・・応用問題? どこがわからないの?」クス




アルミン(・・・・・・・)スタスタ

アルミン(ジャンも心配だけど、僕はあの先輩のほうに興味を持ってしまうんだよね・・・)

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 ミカサにも指導してもらい、課題は予想よりも早く片付いた。

 ただ、ミカサは部屋で自主トレをするらしく部屋に戻ったため、俺は1人になった。


エレン(さてと・・・寮を散歩してもどうにもならねえし。

    でもジャンのいる図書室は行き辛いし・・・今日は何しようか・・・)

クリスタ「・・・あ! いいところに。エレーン!!」ノシ

エレン「(クリスタと・・・ユミル、ベルトルト?)どうした?」

ユミル「なあ。お前さん、これから暇?」

エレン「まあ・・・勉強も片付いたし」

ユミル「え? 宿題先にやるタイプ? まじかよ・・・」

クリスタ「普通に良いことでしょ、ユミル! エレン、私たちと遊ばない?」

エレン「いいけど。(このメンツで)何をするんだ?」

ベルト「クリスタって占いが得意らしいんだ」

エレン「占い?」

クリスタ「タロットカードを持ってるんだけど・・・ちょっとお遊び程度にやってみない?」

ユミル「クリスタが『天使』って呼ばれるのは、まあキラキラしてるのもあるけど、

    占いとかが結構当たってて、それが『天使のお告げっぽい』って意味もあるんだぜ」

クリスタ「え!? そうだったの!?」

ユミル「私が今作ったお話です」ニヤ

クリスタ「か、からかわないでよ、もう・・・っ//」

エレン(不思議と心が浄化される・・・)

ベルト「どうかな、エレン?」

エレン「じゃあお邪魔しようかな」

ユミル「あと1人くらい誘うかー。どうする?」

クリスタ「うーん。そうだね、誰か誘おうか」ニコ

エレン「じゃあさ、>>安価とかどうだ?」


 * 勉強中のアルミンとコニー、リヴァイ以外は誘えます。

安価は>>397でお願いします

サシャ


エレン「サシャとかどうだ? 女の子は占い好きだろ?」

ユミル「ああ、あいつなら今日暇そうにしてたしな・・・そうしよう」


 ユミルは素早く、部屋でごろごろしていたというサシャを引き連れてきた。


サシャ「みなさん、ポテチ持ってきましたよ、ポテチ」ガサゴソ

クリスタ「サシャ・・・いちおう、寝室へのお菓子の持ち込みは禁止だよ」

ベルト「そうだ、どこに集まる? もう食堂にしておくかい?」

ユミル「んー」

クリスタ「あ、私の部屋でいいよ」(挙手)

エレン「え!」

ベルト「そ、んな駄目だよ。僕たちもいるし」

クリスタ「いいよ。占い結果ってあんまり周りに聞こえるように言うものでもないし、ね」

ユミル「お前らと違って見られて困る部屋じゃねえしな。でもおかしな行動取ったら・・・」

エレベル(今「コロス」って呪いの呪文が脳裏をよぎった・・・)

サシャ「いいですねー。お菓子もっと持っていきましょうよ」

クリスタ「だから・・・もう、サシャったら仕方ないなあ」クスクス


 クリスタの部屋は、同郷のユミルの隣の部屋で、なおかつ角部屋だ。

 楚々とした白基調の家具があり、クッションやかわいらしい小物が散見する部屋だった。


サシャ「お、お姫様・・・の部屋?」

エレン(なるほど・・・これが普通の女子の部屋なのか。なんか甘い香りがする)

ベルト「普通はトレーニング器具とかないもんね。すっきりとした部屋だなあ」シミジミ

ユミル「ああ、アニのことか? あいつはプロだからな、さぞかし格好いい部屋だろうよ」

エレン「ミカサの部屋も、軽くスポーツジム開けるからな」

ユミル「男子共に教えといてやるけど、クリスタの部屋はそうとう清楚だからな。

    通常の女子がみんなこんなに小綺麗にやってると思うなよ」

エレン「誰もお前の部屋なんか期待してねえって」

ユミル「あ゛? まあいいや。お前が私の性別を覚えてくれただけで前進と思おうじゃねえか」

クリスタ「あ、みんなベッドに上がり込んでくれる?」

サシャ「そういば、サシャのベッドは大きいですね」

クリスタ「うん。ごろごろしたいからセミダブル。だから床面積が狭くてごめんね」


 クリスタはお茶を用意してくれて、それをガラスのローテーブルに置いた。

 そのテーブルを挟んだ反対側のベッドが、俺たちの定位置だ。

 クリスタがそっと、古書のカバーをかたどった綺麗な小箱を持ち出してきた。

 どうやらこれが、占い道具であるタロットカード、であるらしい。


ユミル「それじゃはじめようか」


 俺たちがベッドに上がり込むと、いよいよクリスタのタロット占いが始まった。


クリスタ「えっと・・・誰から占おうか」ニコ


エレン「じゃあ、ベルトルトやってもらえよ」

ベルト「僕から? いい?」

ユミル「好きにしろよ」

クリスタ「じゃあ、タロットをばらして・・・」ササ

 クリスタは手元のカードを裏返した状態で机の上に置き、その場で崩した。

クリスタ「まず、私がシャッフル。次にベルトルトがシャッフルしてね」マゼマゼ

ベルト「う、うん」マゼマゼ

クリスタ「何も考えず、ただ無心に、まぜまぜしてね」

ベルト「な、なんだかちょっと緊張してくるなあ・・・」マゼマゼ

エレン「何を占うんだ?」

サシャ「みんな共通して、総合的な運勢でいいじゃないですか。恋愛とかどーでもいいです」

ユミル「そうだな」


 ひとしきり机上でのシャッフルを終えると、クリスタは再びカードをまとめた。


クリスタ「ふふ、じゃあまずはベルトルト、貴方がカードを1枚引いて。どこでもいいよ」

ベルト「うん」ス・・・

エレン(一番上か。素直なベルトルトらしいな)

クリスタ「ちょうだい。カードは、もちろん裏返したまま机に配置するよ」

クリスタ「次は私が、3枚のカードを引くね」ニコ

 クリスタはベルトルトから貰ったカードをそっと机に置いた。
 
 次に、何か呟きながら3枚のカードを引き、

 ベルトルトが引いたカードより自分側に、正三角形を形作るような配置で陣を作った。


クリスタ「ベルトルトがひいたのは、キーカードと呼ばれるもの。

     ここでは、その人物の本質を端的に示すカードってことになるよ」

エレン「へえ。じゃあ、クリスタが引いた3枚は?」

クリスタ「占い師の選定した3枚は、その人物の本質を守っている1枚の殻って感じかな。

     試しにベルトルトのを見てみよっか」


 クリスタはそっと、配置された4枚のカードを裏返した。


クリスタ「あなたのキーカードは、『塔』の逆位置」


 3枚のカードは『節制』正位置、『星』正位置、『恋人』逆位置――だった。


ユミル「ふうん・・・」

クリスタ「ベルトルト・・・貴方はずばり、

     『転落する自身の運命すらも受容し、高みから物事を見下ろせる』人」キラン

ベルト「て、転落・・・?」ポカーン

クリスタ「貴方は常に高い目標や夢を胸に秘め、

     どんなに下降した運命をたどろうとも、その状況すら受け入れることができる。

     それは、なによりも精神的な強さを貴方にもたらすでしょう」

ベルト「・・・・・・・」

クリスタ「ただし、その精神的な隙の無さというのが、貴方の友人や大切な人には理解されない。

     貴方はどこか孤独を感じながら生きることになる可能性があります」

ベルト「・・・どうすれば・・・?」


クリスタ「感情をもっと、口に出して。驚いたこと。哀しいこと。嬉しいこと。怒ったこと。

     貴方の大切な人たちは、貴方のひと言を待っているから・・・

     どんなに辛くても、貴方が孤独を選ばなければ、最良の結果を得られるでしょう」

ベルト「最良の結果・・・・」

クリスタ「以上です。ご、ごめんねズケズケと・・・」

ユミル「なあベルトルさんよ・・・抽象的だけど、本人としては結構当たってるだろ」ニヤニヤ

ベルト「・・・・・そうかもしれない。はは」

エレン「本人がそう思うなら当たってるんだな。天使のお告げってことかー」

ベルト「うん・・・・」

サシャ「次はエレン、いってみましょー」

エレン「俺? まあいいけど・・・」


 同じ手順で4枚のカードを選出した。

 正面にいるクリスタはやっぱり輝いているように見えるのが不思議だ。


クリスタ「エレンのキーカードは『愚者』の逆位置」


 3枚のカードは、『皇帝』正位置、『戦車』正位置、『世界』逆位置――だった。


クリスタ「ふふ・・おもしろい。エレンはベルトルトとは逆だね。

     あなたは追い求めるべき夢や希望から、離れようとしている。

     情熱を忘れて、今は休憩をしていたいって願望がとても強い」

エレン「休憩・・・?」

クリスタ「だけど、貴方の本質は、誰に何を言われようと、自分を信じて突き進める強さ。

     貴方は『生』への執着が特に強くて、その姿に他者は惹かれ、集まってくる。

     今、貴方は自分へ目を向けることをお休みしているからこそ、他者に目を向けられるの」

エレン「生への、執着・・・」

クリスタ「他者に目を向けることで貴方の視野はより広がる。

     自分の情熱を思い出したとき、さらに成長した姿でまた――走り出せるでしょう」

エレン「ほー・・・・・」

クリスタ「以上です。どう?」

エレン「なんか、独特の緊張感があるっていうか、不思議としっくりきた! 天使すげえな!!」

クリスタ「そう・・・? でも占いだから、自分次第で結果は変えられるよ」テレッ

エレン「情熱か・・・確かに、俺はそういうの持ってないな・・・

    昔は、そういうのがあった、ってことなのか・・・?」


 3番目はクリスタ自身だ。

 ユミルが、自分だけ占わないのはずるい、と面白半分で本人にけしかけたため実現した。

 キーカードは『魔術師』の逆位置。

 3枚のカードは『月』正位置、『女帝』逆位置、『悪魔』逆位置――だった。


クリスタ「・・・うーん。とってもザンネンな結果だなあ(笑)」

ユミル「おい、包み隠さず言っちゃえよ」

クリスタ「私は・・・私の本質は、『変革を求めず安寧を求める者』。ずるい人間ってこと」

ベルト「ずるい・・・?」

クリスタ「自分のこと見透かされたくない、それが私の本質。

     そして悪く言えば事なかれ主義で積極性に欠けてしまう。

     それでも、その欠点すら庇護してくれ、変えようとしてくれる人がいます。

     私が、私の本質を受け入れたとき、私を蝕む最後の障害が取り除かれるでしょう」

サシャ「自分のことなのに、淡々と言うんですね」

クリスタ「・・・占い、だからね。客観的に見なくちゃ・・・ふふ」ニコ

エレン「当たってんのか・・・?」

クリスタ「わかんない・・・。でも、私が平凡な人間ってことは確かだよ」ニコ

ユミル「・・・・・・・・・・・」

エレン(平凡な人間はキラキラしないと思うなあ・・・)

ベルト「じゃあ、次は、サシャ」

サシャ「モグモグ いいですよ。モグ。ばっちこーい」モグモグ

エレン「お前はからあげクン(すだち味)なんていつの間に持ち込んだんだ」

クリスタ「どうりでお腹の空く匂いがすると・・・」

サシャ「ごくんっ――さてと。サシャいっきまーす!」


 サシャのキーカードは『女帝』の正位置。

 3枚のカードは『愚者』逆位置、『節制』逆位置、『教皇』正位置――だった。


サシャ「『女帝』ですって・・・なんか格好いい響きですよ」

クリスタ「サシャの本質は『自分の心を豊かにする努力を怠らない人』。

     貴女は自分の欲求や希望への追求が強く、その姿は強引で、他者の目に理不尽と映る。

     けれども貴女が幸福に満たされたとき、それを見る他者の心をも豊かにする」

サシャ「・・・・・・?」

クリスタ「貴女は、誰しもが持ち得ない二律背反の性質を持っている。

     あと少し、行動に思慮が加われば、貴女は唯一無二の魅力的な女性になるでしょう」

サシャ「・・・・・つまり、お勉強しろと???」

ユミル「ああ、勉強したほうがいい、今すぐ、四字熟語の意味を中心に」

ベルト「サシャはクリスタが何を言っているのか理解するところから、だね・・・」

クリスタ「あとで、メモったのあげるね」

エレン「サシャ、俺もポテチ喰う。・・・じゃあユミルだな」

ユミル「どうぞどうぞ」

クリスタ「じゃあシャッフルしよう」


 ユミルのキーカードは『隠者』の正位置。

 3枚のカードは、『愚者』の正位置、『正義』の逆位置、『太陽』の逆位置――だった。


ユミル「・・・・・・さすが、クリスタは正直だ」ボソ

クリスタ「ユミルは、貴女の本質は『思慮深いゆえに足下から崩れてゆく人』。

     貴女は頭が良い――本当はどうすればいいのか、いつでも判断出来る人。

     けれどもその思慮深さは時に臆病を呼び込み、自分の周囲だけを守ろうと殻になる」

ユミル「そうかよ・・・・・・・」

クリスタ「貴女が殻を破った時、それは吉凶に関わらず、すべての始点となる。

     貴女の友、貴女の想い、貴女のその先。また、貴女の周囲を取り巻く者たち。

     あなたが始点となり変化が訪れたとき、その変化が一周して貴女を救うでしょう」

ユミル「・・・・・よく、わかった」

エレン「あたってんのか?」

ユミル「ああ、そうだな」

ベルト「本人にとってはしっくりくる言葉でも、他人にはさっぱりわからないね(笑)」

サシャ「私は自分のことすらまったく解らなかったんですが、それは・・・」

クリスタ「これはまだ概要だから。詳しく知りたかったら、ひとりひとり教えるよ。

     結構プライバシーの問題も入ってると思うから・・・ね」

エレン「ふぅん・・・なあ。他の奴らのもやってくれよ」キラキラ

クリスタ「え!」

ベルト「確かに、他の人たちのもみたいなあ。タロットの意味も気になるし」

サシャ「夕食時にやりますか!」

ユミル「お前ら見事にハマりやがって・・・・あ、いけねえ。

    私、そういや掃除当番だったんだ。何か忘れてると思った」

クリスタ「え? でもさっき、終わったって――」

ユミル「トラッシュルームの清掃! なんか、やらねえと兵長さんが煩いんだよ」

エレン「ああ、あの人掃除にはうるさいよな・・・」

ユミル「やっべぇ・・・お前ら、クリスタに変なコトすんなよ!」タッタッタ


 ガチャ

 ア・・・アンタ・・・ ・・・・・・ ・・


 ガチャ


ユミル「早速外で1人見つけてきたわ、はい」ポイ

ユミル「それじゃ、ちょっと行ってくる! じゃあなクリスタ!」ガッチャン


 まるでゴミのように室内へ投棄されたのは――リヴァイさんだった。



リヴァイ「・・・・・・???」ムス

クリスタ「・・・・・り、ばい、さん・・・?」

サシャ「あ、リヴァイ先輩じゃないですかー」ノシ

ベルト「わあ・・・びっっっっっくりした・・・・・・」

エレン「あ、リヴァイさん!!! 暇なんですか」ニコニコ

リヴァイ「いや、俺は単に部屋に戻ろr」

サシャ「しょうがないなー。ほら、クリスタが占ってくれるそうですよ!」ニコニコ

クリスタ「え、あ、え?」コンラン

エレン「どうぞどうぞ」ササッ


 迷い込んでいたリヴァイさんは不機嫌そうだったが、彼は見た目ほどワルじゃない。

 俺はここぞとばかりにリヴァイさんをベッドに座らせ、クリスタに目配せした。


クリスタ「・・・・あ、あの、じゃあルールを・・・」

リヴァイ「・・・・・・・・」ムスッ

クリスタ「あぅ・・・・」


 リヴァイさんのキーカードは『死神』の正位置。

 3枚のカードは『審判』の逆位置、『刑死者』の正位置、『太陽』の正位置――だった。


サシャ「基本、物騒なカードなんですね。リヴァイさんらしい」

ベルト「サシャ、いらないことは言わない。」コッソリ

リヴァイ「ほう・・・・」

クリスタ「貴方は・・・貴方は今、歩みを止め、すべてを遮断している。

     貴方は他者にとっての『完璧な存在』であり、また貴方自身もそれを自覚して、

     それに応えることを苦に思わない『自分の運命を人々に捧げられる人』。」


エレン「・・・・・・・ぁ」


リヴァイ「・・・・・・それで?」

クリスタ「エレンと同じで、貴方はそれを今、自らやめてしまっている。貴方自身のために。

     貴方を愛し、尽くす友の心から目をそらさないようになったとき――、

     止まった貴方の時が再び動き始め、そして、すべての歯車が回ることでしょう」


エレン「・・・・・・・・・・・」

サシャ「どうですか、リヴァイさん?」

エレン(あれ、俺、今・・・・何か・・・頭の中に・・・・・)

リヴァイ「・・・・悪くない」

ベルト「す、すごい・・・ですね。クリスタの占いは・・・です」

リヴァイ「取って付けたように敬語を使わなくていい」

ベルト「あ、はい」

リヴァイ「まあ・・・占いは好かんということだけは解った」

クリスタ「あ・・・ザンネンです」ショボン

リヴァイ「お前のその力は・・・どういった願望から生まれたんだろうな・・・」

サシャ「へ?」

リヴァイ「・・・・・・いや」

ベルト「?? ・・・・あれ、エレン?」

エレン「・・・・・あ」ハッ

ベルト「どうしたの? ボーっとして」

エレン「ちょっと考え事・・・あ、サシャ、俺のぶんのじゃがりこ喰ってんじゃねーよ!」

サシャ「ヒャッハー」カリカリカリ

クリスタ「もー、太っちゃうといけないから、あとは私が食べるねっ」クス

ベルト「ク、クリスタもカロリーには気を付けて・・・」


 -------------------------


 夕食時。食堂にて、結局俺たちがやった内容と同じ要領で他のみんなも占ってもらうことに。

 もちろん、俺たちの占い結果も含めて全員でそれを共有した。

 面白いことに、同じカードが多数の人間に示されることはなかった。けっこうな偶然だ。


クリスタ「私は大アルカナ22枚で占うけど、今回は上手くばらけちゃったんだね」

コニー「俺っち、けっこう図星なこと言われた・・・」ズーン


アニ「・・・詳しく占ってもらうことは、できるのかい?」コソ

クリスタ「うん。出たカードは手帳に記録してるから、過去と照らし合わせることもできるよ。

     アニ。恋愛運とか健康運とか。興味あるなら占おうか」ニコ

アニ「ん・・・・・・」コソコソ


ミカサ「エレン。私、キーカードが『戦車』の正位置だった」キラキラ

エレン「嬉しそうだな」

ミカサ「大切な人を守るために、努力に準じた力が手に入る、とのこと・・・

    私はエレンのため、夢のため、これからも稼ぐ!!!」キラキラ

エレン「おま・・・お前に養って貰いたかねぇよ!!」


 『へえ、私は『恋人』の正位置がキーカードですって。うぷぷwww』


ジャン「そんで、お前はどっから出てきたんだよ・・・チッ」


 『クリスタたんは天使だから・・・こんな私も分け隔て無く占ってくれたんだよ・・・w

  てか、クリスタたんマジ直球。ねえリヴァイくんwwwねえねえ、今どんな気持ち?』


リヴァイ「なぜ俺に話を振る・・・失せろクソメガネ」

アルミン「学園長、空気読んでくれると・・・ありがたいです」


 『ごめんなさーい』ヒョイッ


ライナー「さーてそろそろ風呂だな。大浴場行く奴、タオル忘れんなよ!」

エレン「・・・・・・ああ!」

アニ「なるほど・・・」

 
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 大浴場。

 集まったのは、俺、アルミン、ライナー、ユミル、アニ、そしてジャンだ。


エレン「なんとか・・・人数もそこそこで集まったか」

アルミン「で、ライナー。どうしたの?」

ライナー「や。俺は集めただけだ。話があるってのは・・・ジャンだ」

アニ「・・・・ジャン?」

ジャン「・・・・図書室で得た情報を少し、伝えてやろうと思ってな」

エレン「お前、顔色悪いな・・・」

ジャン「・・・ハンジぐるみが俺に耳打ちしてきた。

    俺たち生徒の中に、ハンジの手駒が・・・『裏切り者』がいるってな」

エレン「・・・・!?」

ライナー「裏切り者!? そりゃ本当かよ」

ジャン「なぜ俺に言ってきたのかは知らねぇ。俺の驚いた顔でも楽しみたかったのかもなあ。

    ハンジ側について少なからず内情を把握し、素知らぬ振りをしてる奴が居るってこった」

アルミン「・・・ジャン。それを知ったのはいつ?」

ジャン「今日の夕方だったな。この学園はそれだけ後ろ暗い存在ってのは明らかだ。

    おまけに『裏切り者』がいるかもしれない・・・俺はお前らを、信用はしない」

アニ「・・・・・私のこともあるってこと?」

ジャン「お前にしろマルコにしろ・・・真意なんて計れねえだろ?」

ユミル「学園長さんは何のために吹き込んだんだろうな?」

エレン「・・・・ジャン」

ジャン「俺だけこの情報を持っているのもフェアじゃねえからな・・・そんだけだ」


 ジャンは終始淡々とした口調で告げると、大浴場を出て行き、後には俺たちが残された。

 ジャンのその目は、間違いなく――誰も信じていないという内情を如実に示したものだった。


エレン「どういうことだ・・・ハンジの目的も知っていて、それで黙ってる奴がいるのか?」

ユミル「さあな。『裏切り者』がどれに対するものかはわからないだろ」

アルミン「心情として一番動揺するジャンに告げる・・・悪質だ、ハンジぐるみ・・・」

アニ「とにかく、みんなと共有しないと・・・」

ライナー「信じられんが・・・早々に見つけて、まずは話をきかねえとな」

ライナー「信じられんが・・・早々に見つけて、まずは話をきかねえとな」

エレン「俺だったら話を聴く前に一発ぶん殴るとこだな。・・・そんな奴いたら、腹が立つ」

ライナー「エレン。裏切るってのにも色々な側面があるかもしれんだろ?

     どんな状況であれ、話は聴かなきゃ駄目なんだよ」

アルミン「その通りだ。話すことは重要だよ。情報を引き出すためにも、ね」

エレン「ああ、言い過ぎた・・・・でも、お前らみんな優しいじゃねえか。

    『裏切り者』なんて、ハンジのタチ悪い冗談だと思うぜ・・・」

アルミン「・・・・・・・・・・エレンは、疑うことを知らないんだね」

エレン「え?」


 バン

 その時、脱衣所の扉が勢いよく開け放たれた。入ってきたのは風呂桶を抱えた女子たちだ。


ミカサ「・・・・・みんな、外にハンジぐるみ、いる」

アニ「感づかれた?」

ミカサ「わからない。とりあえず男子は解散」

サシャ「はい、男子はあとあと♪ 女子で『いい湯だなごっこ』しますよー」

クリスタ「くすくす。ほら、男子は出て行って」

エレン「????」

ライナー「・・・エレン、でるぞ」

アルミン「お邪魔しましたー」


 バタン・・・

 俺たち男子は脱衣所から外へ追い出されてしまった・・・。


 『あれれ、男子たちなんでいるの?』


エレン「はんz」

アルミン「女子たちに追い出されてしまって・・・」

ライナー「湯を浴びようとしたら、女子がみんなで風呂入るから出てけ、とのことです。

     俺たちも入る気満々だったからちょっとケンカになっちゃって・・・」


 『ははん。君たちが負けたんだね? 女子に口論をしかけるのは自殺行為だよwww』



アルミン「そういうことです・・・今日は大人しくシャワーにしようかな、ははっ」


 『それがいい。君たち、夜更かしせずに、すぐに寝るんだよ・・・www』


 ハンジが去って行ったのを確認したうえで。


エレン「・・・・しょうがない、今夜は解散しよう」

コニー「まて、エレンよ!!!」ババーン

ベルト「コニー・・・声が大きいよ」テクテク

アルミン「結局集まってるじゃないか・・・ハァ」

コニー「俺たちは花の男子高校生!! そしてここは風呂場の前である!!」

エレン「・・・・・? そうだな」

コニー「この中には今、何が存在している!!?」

ライナー「・・・・・ハッ そうか、ここには・・・・」

エレン「何って、女子?」

ライナー「そう、つまり天使が、天使が存在する、楽園なのだ!!!」

アルミン「そのノリでいっちゃうんだね」

ライナー「ならば! やることはひとつでは・・・ないかね?」

コニー「ないかね?」

ベルト「ライナー・・・やるんだな? 今、ここで・・・!」

アルミン「はぁ・・・1人逃げるなんて野暮なことはしないよ・・・」

エレン「? いや、話が見えない・・・」

ライナー「エレン、選べ! 『男のロマン』を追求するのか、しないのか・・・!!!」

エレン「え・・・・・・・」

エレン(男のロマン・・・? よくわかんねえ、どうしよう・・・えっと、>>425


 * 『男のロマン』を追求する or 追求しない

しない

エレン「(多分だけど)くだらねえ事すんなよ。俺は寝る・・・」

ライナー「ここまできてやらないだと・・・!?」

エレン「あとでしっぺ返しきそうな悪巧みだろ? 俺悪いことはしたくねえ」

コニー「まじかよ・・・・」

アルミン「(エレンは多分、内容すらわかっていないな・・・)

     じゃあ、僕も降りるよ。3人で楽しんできてね」ノシ

ベルト「あ・・・えええ・・・・」

コニー「くっそ・・・・しょうがない、手短にミッションを遂行するぞ」

ライナー「ゼロカウントでミッション開始だ」

リヴァイ「・・・・・・・・おい。」

男子「・・・・・・・・・」ピ シ


 振り返ると眠そうにあくびをするリヴァイさんが、廊下の壁に寄りかかっていた。


リヴァイ「あんまりおイタをするんじゃねえ。学園の仕置きに手心なんてねえからな」

ライナー「・・・ウッス」

リヴァイ「あと、いい歳して覗きやるってんなら・・・朝日が拝めると思うなよ」ヒョオォォォ

コニー「あ゙い」カチンコチン

アルミン「リヴァイ先輩。どうして僕たちがここにいるって解ったんですか?」

リヴァイ「単に通りがかっただけだ・・・・」

エレン「あの、俺は寝ますんで! お休みなさい、リヴァイさん!!!」

リヴァイ「・・・・ああ」スタスタ

ライナー「・・・・今日はあきらめるか」

ベルト「・・・・・・とりあえず、解散」

男子「だな・・・・・・」


 -----------------------------


 『裏切り者』の存在は、伝言などでその夜のうちに全員に知れることとなった。

 しかし、それもハンジの世迷い言だと思う生徒が大半で、

 翌日からは全員一丸となって、真相の特定に勤しむ――筈だった。



 翌日。

 朝食にあつまる顔ぶれに違和感を感じた。


エレン(・・・・・・あれ?)

ミカサ「エレン、おはよう・・・」

エレン「おはよう・・・・(なんか変だ)」

ベルト「あ、エレン」

エレン「おはよう。どうした? そんな浮かない顔して」

ベルト「ライナーを見なかった?」

エレン「ライナー? そういやいないな・・・俺は見かけなかったけど」

アニ「いつもなら1番に来てるけど・・・今朝はいない」

エレン「電子生徒手帳のマップは?」

アニ「自室になってるけど、返事がないんだ・・・」

エレン「・・・・・・」

アルミン「ライナー以外は全員揃った・・・手分けして捜そう」

エレン「ああ・・・何か嫌な予感がする・・・」

ユミル「じゃあ、基本3人で別れようぜ」


 俺は、早速1人で行動しようとしたジャンを捕まえ、ミカサと共に行動することにした。


ジャン「俺たちは寮の共用施設でも捜すか・・・食堂、厨房はいねえ」

エレン「あとは大浴場、洗濯室、トラッシュルームか・・・2階にはいけねぇし」

ミカサ「いこう・・・」


 洗濯室、トラッシュルームは、特に何の変哲も無い、日常の姿だった。


ミカサ「・・・あとは大浴場だけ・・・」


 脱衣所は・・・問題ない。サウナルームも、何もなかった。

 あとは・・・浴室だけだ。


ジャン「あとはここだけだな・・・開けるぜ」


 バン


ジャン「・・・・・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・・・・ぁ」

エレン「ら・・い・・・・・・・」


 大浴場の壁に描かれているのは、海原から顔を出す赤々とした『朝日』だ。

 その美しい壁も所々に損傷があり、そして、

 『朝日』の中心部分に、彼は、ライナーは寄りかかるようにして座っていた。

 ――頭から血を流して。


 キーンコーン カーンコーン


 『えー、事件が発生しました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を始めます!!!』





第二章「ボーイズ・ブルー」 (非)日常編 END

待ってくださる方ありがとう。随分とまた間が開いてしまいましたが、非日常編スタートです。



 こんなことが、あってもいいのだろうか。

 俺は頭から血を流し気絶しているライナーを見て、ただそれだけを考えていた。

 これは『事件』だと、ハンジぐるみが放送している。

 おちゃらけた声だったのに、どこか粛々とした雰囲気を感じ不思議に思いつつ――、

 『事件』が起こってしまったことに、絶望していた。


エレン「ライナー・・・・・・・・?」






第二章「ボーイズ・ブルー」 (非)日常編


ジャン「『裏切り者』が早速動いたか・・・? だとしたらなかなか正直モンじゃねえか」ハッ

ミカサ「ジャン。ライナーを診るのが先決」

ジャン「ああ・・・」

エレン「ハッ ・・・そうだ、ライナー。おい、ライナー」


 俺ははじけたようにライナーへ駆け寄ると、まず耳元で呼びかけた。


ライナー「・・・・・・・・・・・・」スース-

エレン「ぁ・・・大丈夫、呼吸は落ち着いてる・・・気絶してるだけだ」

ミカサ「エレン。動かさないで。脈も・・・少し早いけど・・・」


 頭を派手に切っているのか大量の血が顔面にこびりつき、また、それに伴って血色は最悪だった。

 俺とミカサでライナーに呼びかけ、ジャンはハンジを呼ぶためカメラ前で手を振った。


ジャン「どういうことだ? あいつ、こういう時に限って出てこねえじゃねえか」ノシ

ミカサ「ライナー・・・ライナーしっかりして」

 ※ 今回も、よい子のみんなは、捜査パートで結末が解ったからってネタバレしないようにしてね。


ライナー「・・・・・ぅ・・・・っ」

エレン「ライナー!!!!」

ジャン「!!」

ライナー「・・・ぁ・・・、うら、ぎ・・・・」

ミカサ「・・・なに、なんて?」

ライナー「・・・おまえ、が・・・・死神・・・な、のか」


 ライナーは虚ろな目をこちらに向けて、呟いた。


エレン「ライナー!? 混濁してるのか? ライナー!」

ライナー「『死を、もって・・・・義、をくだす』・・・おまえ、が・・・・・・・」

ライナー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」フッ

エレン「(また気絶した!!!)ライナー!!」


 その時、他の生徒が続々と集まってきた。


アルミン「ライナー!!」

クリスタ「きゃあああっ。そんな・・・っ!!」


『おらおら、みんな集まったかい? 集合まで時間掛かりすぎだぞ』


エレン「あんたこそ遅いんだよ!! ハンジ、早くライナーに治療を!」


『もちろん、学園長の全権を率いて彼に措置を施しましょう。

 君たち、2回目だから解るよね――クロ、見つけるんだよ』


ベルト「ああ・・・・当たり前だ・・・・」

アニ「・・・・・・・・・ッ」


『今回のクロはちょっとタチが悪いんでねえ・・・まあ諸君らの健闘を祈るよ

 悪いけどライナーは保健室へ連れて行くから。恒例のコレを代用しておくれ』


 ハンジぐるみはそう言うと、俺たちに操作用のタブレット端末を残し、

 どこにそんな力があるのか巨体のライナーを軽々と持ち上げ去って行った。


エレン(もっと、茶化すかと思ったのに、意外にあっさり退いたな・・・)

エレン「・・・・ライナー」


 ライナー。ライナー・ブラウン。みんなの兄貴分で、よく周りを気に掛ける優しい奴だ。

 不器用だけど頭も良くて、当然のように運動も出来て――文句なしの『超高校級』。

 そのライナーが、どうしてか『事件』の渦中にいる。

 彼をその位置に引きずり下ろしたのは、やはり『裏切り者』なのだろうか。

 確かめるには――学級裁判で『クロ』を暴くほかない・・・!!






「 捜 査 開 始 」

あ、タイトルをミスりました。訂正します

第二章「ボーイズ・ブルー」 非日常編



 俺はさっそく、ハンジから渡されたタブレットを捜査し――『ハンジさんファイル』を開いた。



【ハンジさんファイル2】

 1.被害者はライナー・ブラウン。大浴場の壁にもたれかかり、頭から血を流して気絶していた。

 2.発見者はミカサ、エレン、ジャン。本日七時過ぎ、生徒間で被害者を捜索中に発見。

 3.頭の裂傷は刃物で切られた後と思われる。そのほか身体に軽い打撲痕あり。

 4.被害者を襲った人物を『クロ』とする。



ジャン「情報少ねぇな・・・こんなモンか」

エレン「・・・そういや、発見者は前も3人しか載らなかったな」

クリスタ「あ、エレンは知らないんだっけ」

エレン「?」

クリスタ「『事件』を目撃、発見した人間が3人になった時点で、

     ハンジぐるみが『事件発見アナウンス』を放送するんだよ。前もそうだったの」


コニー「これ、電子生徒手帳にも書いてあるけどな。実は時々アップデートされてるんだぜ」

エレン「コニーなんかでも気付くってのに、俺って奴ぁ・・・情けねえ」

コニー「俺怒ってもいい?」

ミカサ「とにかく、捜査しないと・・・」

ベルト「悪いけど、僕はまず保健室にいくよ。会わせて貰えるとは思えないけど、それでもいく」

アニ「私も・・・」スタスタ

ユミル「現場検証は任せた。私は他のところを調べてみたい。行くぜ、クリスタ」

クリスタ「う・・・うん」スタスタ

サシャ「さて、おバカちゃんは私と現場の見張りでもしときます?」

コニー「はいはい。どうせ俺なんて役に立ちませんよぅ」ブーブー

リヴァイ「・・・・・・・・・」スタスタ

エレン「さて、俺たちも調べよう・・・」

アルミン「・・・エレン、僕も一度ライナーの様子を見てくるよ。あとで合流する」

ミカサ「でも、ハンジなら被害者には合わせないはず」

アルミン「解ってる。すぐに戻るから・・・じゃあ」スタスタ

エレン「アルミン・・・」

ジャン「つれねぇ奴・・・って顔してるなぁ、死に急ぎ野郎」フッ

エレン「うるせえな・・・今日は俺と話すのか。勝手な奴だ」

ジャン「お前と組んだら捜査しやすそうだからな・・・まずは現場から検証しようぜ」

ミカサ「ジャン、私も」

ジャン「ああ。よろしくな、ミカサ」

ミカサ「・・・ん・・・・」シュン

エレン「(ミカサに対する態度はマシだけど・・・)まず、ライナーの身体だ」

ミカサ「・・・ライナーの身体の状況だけは、別ファイルがアップデートされてる」

ジャン「本人がいないからな・・・。ライナーは壁の中央に寄りかかってた。

    ちょうど朝日と重なる感じだな・・・」

ミカサ「頭の傷は裂傷。派手に血は流れたけど、その血は時間が経ってこびりついていた」

エレン「じゃあ襲われたのは夜時間中なのは間違いないな」

ミカサ「軽い打撲痕・・・争ったあと?」

エレン「そうだな。血は流れて綺麗に床に残った・・・相当だったんだな・・・」

エレン(ライナーのことが心配だが・・・ライナーのためにも捜査をしないとな)


 >言弾『ライナーの身体』を入手


エレン「壁にも斬り傷があるな、やっぱりライナーは激しく抵抗したんじゃないか?」

ミカサ「一部がめり込んでる。これは相当デキ者奴同士の闘い・・・」

ジャン「ライナーも抵抗したのか、壁に、損傷あり・・・と」


 >言弾『壁の損傷』を入手


ジャン「そういや、ライナーの奴。さっき気がついた時に何か言ってなかったか?」

エレン「そういば・・・確か・・・」

ミカサ「『死を以て義を下す』・・・と言っていた。あとは『死神』とも」

エレン「どういう意味だろうな」


 >言弾『死を以て義を下す』を入手


エレン「じゃあ現場を調べようぜ」

ミカサ「・・・・これ」

エレン「どうしたミカサ」


 ライナーの居た場所より左側の壁――ミカサは何かを見つけて座り込んだ。


ジャン「・・・鉄板?」

エレン「なんだそれ・・・?」


 ミカサが自分の白いハンカチに包むようにして見せたのは、

 先が折れたような細長い鉄板だった。


ジャン「・・・・それ、刃物じゃねえか?」

エレン「え」

ミカサ「確かに。包丁のように研いである」

ジャン「片刃だな・・・これがライナーの頭を切った凶器か?」


 ミカサはおもむろに、それを手に取った。


エレン「ばか! 危ないだろ!」

ミカサ「大丈夫・・・・すごく、しなる刃だ」


 端と端を手にとってぐにゃんぐにゃんと曲げてみせる。

 俺はそれをハンカチごと受け取った。


エレン「合金だよな・・・なんだコレ」グニャグニャン

ジャン「普通の金属じゃねえ。こんなの見たことねえぞ・・・」

ミカサ「貴重な証拠。」メモメモ


 >言弾『良くしなる刃物』を入手


 しばらく、広い大浴場を手分けした捜した。


エレン「・・・ん?」


 俺は浴槽の縁に、なにかドロリとしたものが付着しているのを見つけた。


エレン「透明な・・・ゼリー? いや、ジェルか」

エレン(アルコールの匂いがする。これってどこかで見たことあるような・・・)


 >言弾『浴室のジェル』を入手


コニー「暇だわ」

サシャ「ですね」

ミカサ「・・・手伝いなさい」

ジャン「おい、こっち来てみろ」

エレン「なんだ」


 ジャンが調べていたのは、ライナーが寄りかかっていた朝日の絵だ。

 いわゆる『銭湯絵』という、大浴場の壁一面に描かれる絵。

 これは真っ赤な太陽が水平線から顔を出すところをデフォルメ化して描いたデザインだ。


エレン(太陽だけか・・・珍しい絵だ。一応、メモしとくか)


 >言弾『朝日の銭湯絵』を入手


ミカサ「どうしたの・・・」

ジャン「ここ・・・よく見てみろ」


 太陽の中心より、向かって左側。遠目では絵の他に何も無かったが――。


エレン「ジー・・・・・・あ」

ミカサ「『61』・・・これ、血文字?」


 太陽が鮮やかな赤色なので解りづらいが、

 それよりも赤黒い色で、『61』という文字が小さく書かれていた。

ジャン「指で書いたみたいだな・・・位置的に、ライナーが残したのかもしれない」

コニー「それ知ってる、シャイニングメッセージだろ!?」

サシャ「輝いてどうするんですか」

エレン「何か意図があって書いたんだな・・・メモしておこう」


 >言弾『61』を入手


サシャ「いいですか、コニー。被害者が現場に残す言葉、それはダイニングメッセージです」ドヤァ

コニー「そうだっけ、なんか違う気がする!」

ミカサ「正しくはダイイングメセージ・・・ここテストに出る」

エレン「現場はこんなもんか・・・昨日の大浴場の様子はどんな感じだったっけ」

コニー「昨日はみんな早めに寝たよな。少なくとも男子は」

サシャ「女子もお風呂に入ったあとは早めに解散しました。夜時間までにすっかりおねんねですよ」

エレン「確かに・・・昨日は本当、みんなすぐにバラけたな(それが仇になったのか・・・?)。

    なんでライナーは、わざわざ夜時間の浴場にいたんだろう?」


 >言弾『昨日の夜時間』を入手


ジャン「さてと。ライナーの部屋は見とくべきだな。お前ら行くぞ」スタスタ

ミカサ「・・・見せてくれると良いけど」

サシャ「私とコニーはとりあえずここに居ます」ノシ

エレン「ああ、見といてくれ。それじゃあ行こう」スタスタ


 俺たちは一度大浴場を出て、ライナーの個室へ向かった。

 ライナーの部屋は開いていた。


エレン「やっぱり開いてる。今朝のアニの話だと、電子生徒手帳を部屋においたまま、

    ライナーは行方不明になってたんだよな」

ミカサ「入っても良い・・・?」


『やあ君たち。捜索は構わないけどあんまりジロジロ見過ぎないように。

 先客がいるから狭いけど、さあ入った入った』


エレン「先客?」


『真っ先にクリスタとユミルが捜査しに来てるんだよ。今回はみんなよく動いてるね』


エレン「クリスタたちが」

エレン(なるべく1番最初に捜査をしたいって思う俺は欲張りなんだろうな。

    まあいいや、解らないことは第一探索者たちにに聴こう)


 >言弾『寝室の探索者』を入手


ミカサ「なるほど。では私たちも入ろう」

ジャン「ああ」ガチャ


 ライナーの部屋は、なかなか整頓されていてすっきりとした部屋だった。

 壁には、スポーツ選手のポスターが何枚か貼ってある。


エレン「綺麗な部屋だなあ」

ユミル「お。あんた達も捜査?」

ミカサ「うん」

エレン「どうだ、何か見つかったか」

クリスタ「・・・・これが・・・・」


 クリスタはおずおずと、両手で何かを差し出してきた。

 画面の映らない・・・電子生徒手帳だ。


エレン「電源落ちてんな・・・」カチッカチッ

エレン「・・・・? あれ、電源が入らない・・・」

ユミル「壊れてんだよ、それ」

ジャン「壊れてる?」

クリスタ「そう、ライナーの机の上にあったんだけど、壊れて起動しないの」

ミカサ「・・・どういうこと」

エレン「ライナーの電子生徒手帳は壊れていた・・・」


 >言弾『壊れた生徒手帳』を入手


エレン「特に損傷もないけど・・・簡単に壊れるモンなのか?」


『耐衝撃・耐電撃構造だし、簡単には壊れませんよ。だって超お金掛けてるんだからね!』


ジャン「ハンジ・・・壊れねぇもんなんだな?」


『うん、ただ高温多湿には若干弱いかなあ。湿気には特に。まあそれくらいだけどね』


エレン「高温多湿には弱い・・・」


 >言弾『電子生徒手帳の弱点』を入手


ミカサ「・・・・・」ガサゴソ

エレン「ミカサ? あんまりゴミ箱とか漁んな、俺がやる」

ミカサ「・・・! 大丈夫、もう、見つけた」


 ミカサはそう言うと、くしゃくしゃになった紙くずを伸ばして見せた。


 “『裏切り者』について共有したいことがある。0時に大浴場へ”


エレン「これ・・・誰かに呼び出されたってことか・・・!?」

ジャン「ほー・・・クッソ汚ぇ筆跡だなコリャ」

ユミル「犯人に呼び出され、ノコノコ向かったところをバーン・・・てか?」

クリスタ「すごい、大きな証拠が見つかったね・・・」


 >言弾『呼び出しのメモ』を入手


ジャン「0時ってことは、風呂の湯を抜いたか抜かないかってぐらいに呼び出されたのか」

エレン「そうか、確かハンジぐるみが、毎日夜時間に湯を抜くって言ってたな」

ミカサ「なるほど」

エレン(・・・・・・あれ。・・・ん・・・?)


 >言弾『夜時間の大浴場』を入手


ミカサ「昨日、ライナーの様子を知っている人は」

エレン「『裏切り者』を捜そうって言ってたのは知ってる。

    見つけたら、話を聴こうって・・・あいつらしいことも言ってた。いつものライナーだ」

クリスタ「昨日はベルトルトと一緒に夕ご飯を食べたけど・・・

     いつものライナーだったよ。ね、ユミル」

ユミル「そうだな。昨日のタロットのさ、占う側の話に興味持って。

    タロットカードの意味とか、すげえ熱心に聴いてきた・・・ってくらいかな」

エレン「へぇ、ライナーが占いに?」

クリスタ「タロットカードって1から22まで番号が振ってあって、それぞれに意味があるんだよ。

     彼とベルトルトはそういう雑学が好きみたいで、基礎を色々と話したの」

ミカサ「それ以外、彼の様子はおかしくなかった?」

クリスタ「特には・・・」

ユミル「あいつら無駄に記憶力いいんだよな。飲み込み早すぎてビビったくらいだわ」ケッ

エレン「メモメモ・・・っと」


 >言弾『タロット占い』を入手


ジャン「・・・そういや。ライナーなら昨日の昼間、図書室にいたぜ」

エレン「ほんとかよ!」

ジャン「視界にちらっと映しただけだけどな・・・何してたかは知らねぇ」ニヤ

エレン(・・・なんでそこで笑うんだ・・・?)

ジャン「あいつのことなら、ほら、ベルトルトとかのほうが良く知ってんだろ。次は保健室行こうぜ」

ミカサ「この部屋も、あらかた調べたから。いこう」

エレン「・・・そうだな(ジャンの奴・・・?)」

ユミル「私らもそろそろ別に移ろうか」

クリスタ「そうだね」


 クリスタたちと別れたあと、俺たちは保健室に向かった。

 保健室・・・といっても本格的な治療が出来る、小さな病院のような場所で、

 記憶喪失ゆえにここの常連であるアルミンが、慣れた手つきで備品を漁っていた。


アルミン「んー・・・・・・」ガサゴソ

エレン「・・・・アルミン?」

アニ「探し物をしているんだって・・・」


 入り口横にある長いすに、ベルトルトと並んで腰掛けていたアニ。


エレン「おお、アニ。ベルトルトも・・・ライナーには会わせて貰えたか」

ベルト「いや・・・でも、治療も済んで命に別状はないって。

    血は派手に流れてたけど、軽傷だったらしい・・・ハンジぐるみが言ってたよ」

ミカサ「よかった」ホッ

エレン「・・・・」ホッ

ジャン「・・・で? アルミンは何探してんだ」

ベルト「さあ?」

アルミン「やっぱり、ない」

アニ「なにが?」

アルミン「僕、ここはよく通う場所だから、徹底的に調べたんだよ・・・

     医療用の『ジェル』がたくさん持ち出されてる」

エレン「ああ、超音波治療や検査に使う奴か。・・・ほんと備品だけは充実してるな」

アニ「ちょう、おんぱ?」

ベルト(即答かー。さすが医者の息子)

アルミン「なるほどなー。一昨日調べた時は何も無かったし。て、ことは昨日・・・」ブツブツ

エレン「昨日消えたってことか・・・?」


 >言弾『アルミンの証言』を入手


ミカサ「アルミン、いつも調べてるの? ・・・なんで?」

アルミン「え、だってイヤでしょ。ちょっとでも不審な場所で、頭の検査なんてしたくないよ」シレッ

ジャン「・・・ははっ、そりゃそうだ。」

エレン(アルミンって人なつこい、けど・・・時々、すごく・・・)

ミカサ「・・・入退室記録は?」

ジャン「入退室? ・・・ああ」ピコーン

ミカサ「保健室は衛生管理上、電子生徒手帳によって入退室記録が公開されてる。

    たぶん、サボり防止目的でもある・・・」

ベルト「ああ、ライナーが言ってたなあ、そういえば!」パァ

アニ「あいつ、体育委員のくせに保健委員みたいなことするからね・・・」

エレン(確かに、ライナーは体育の授業のとき、けが人の治療をしてたな・・・)

アルミン「そうそう。こっち」スタスタ


 アルミンは言いながら、ライナーがいると思われる治療室に近いカウンターに回った。


アルミン「えっと」ガサゴソ

アルミン「あ、これ」ササッ

エレン「タブレット端末?」

アルミン「エレンは健康だから自分で利用したこと無いんだなあ・・・羨ましいな。

     保健室の利用者は、入室理由を書くんだよ。特に治療室を利用する場合はね」

エレン「うわ、俺アルミンに会いに行った時書いてなかったな・・・」アセ

ベルト「まあ義務じゃないからね。けが人や病人が正直に書くくらいかな」

ミカサ「わざわざ手書きなのがミソ」

アニ「ミカサは、健康そうだけど保健室には詳しいんだね」

ミカサ「内出血したときの冷却剤と、切り傷用のアルコールとガーゼを補充するために。常連」

ベルト「そんな彼女の本職はアイドルです。」

エレン「それでそれでっ。昨日の利用者はどうだ?」

アルミン「えっと・・・昨日はユミル、ベルトルト、コニー、ジャン、リヴァイさんが。

     あと、僕も利用してるけど・・・・ぁ・・・」

エレン「結構利用してるじゃねえか・・・お前ら、ちゃんと元気か?」シュン

アニ「大丈夫だよ。ライナー以外はまだ元気さ」

ベルト「そうそう、大した理由じゃ無くても記録だけは残るから」

アルミン「じゃあ、入退室時刻を読むからメモしてね」



【保健室入退室記録表】

 ユミル   11:52 * 11:55 * 頭痛薬を貰いに来ましたー。非常にだるい。
 
 ベルトルト 13:44 * 14:20 * 睡眠について、相談のため

 コニー   15:28 * 15:46 * 腹通がひどいので、薬をのんで休みにきました

 アルミン  15:41 * 15:47 * 仮病のスプリンガー君を連れ戻しに来ました。すぐ退室します。

 リヴァイ  21:00 * 21:16 * 定期検診の為。

 ジャン   21:21 * 21:39 * 体調不良。あと目薬。

 リヴァイ  00:22 * 00:37 * サビオ、アルコール、ガーゼを貰いに来た為。


ジャン「へえ。先輩2回利用してるんだな。しかも最後は・・・夜時間だぜ」

エレン「・・・・・・・・・」


 >言弾『保健室の入退室記録』を入手


アニ「ごめん、話の腰を折るけど・・・『サビオ』ってなに? 医療品?」

エレン「絆創膏のことだな、確か」

ミカサ「普通は『リバテープ』と言う」ドヤ

ジャン「いや、『バンドエイド』だろ?」ムカ

ベルト「『カットバン』だよ・・・ねえ、アニ」ニコ

アルミン「いや、方言自慢はいいから!」カッ

エレン(・・・ジャンが煽る気持ちもよくわかる。夜時間に・・・保健室?

    理由次第だろうけど、原則、夜時間中は寮から出られない筈なのに・・・)


 心臓の音が早まった。なのに時間が流れるのは遅く感じた。嫌な空間にいる。

 あまり、悪いことは考えたくないものだ。

 場所が場所だからか、急に身体が弱くなったかのように思えてしまう。


ミカサ「ねえ。あいつ・・・先輩の今朝の様子を知っている人は」

ベルト「僕、喋ってないな・・・あの人睨み方が尋常じゃ無くて・・・」

アニ「私も。話掛けたことが無いね」

エレン「俺は今朝も遅かったから・・・」

ジャン「おでこ」

アルミン「おでこ?」

ジャン「透明なバンドエイドしてたな。前髪に隠れてたけど・・・

    大きめだったし、俺は隣の机だったから見えた」

ミカサ「おでこを怪我・・・保健室の入室はそれが理由?」


 >言弾『リヴァイの怪我』を入手


エレン(ダメだ、今は、ひとつひとつを切り離して考えるんだ)

エレン「ベルトルト、ちょっと聴きたいことがあるんだが」

ベルト「なんだい?」

エレン「あの、ライナーって昼間、図書室にいたんだろ。何か言ってなかったか?」

ベルト「ああ。閉架図書を調べてたな。何か手がかりがあるかもって・・・」

アニ「閉架?」

アルミン「持ち出し禁止の本のことだよ。図書室の奥に専用の書架があるんだ。ね、ジャン?」

ジャン「ああ・・・まあな」

エレン「そういえばリヴァイさんも言ってたな。ライナーは何か言ってたか?」

ベルト「寝る前に言ったのは、図書室の記述は『裏切り者』の特定に役立つかもって。

    ここの人間は仮にも『超高校級』だし、なにか参考になる情報があったのかもしれない」

エレン「閉架図書、か・・・」


 >言弾『昨日のライナー』を入手


エレン「だめだ、事件の様子が見えてこない・・・結構調べたのにな・・・」

エレン「だめだ、事件の様子が見えてこない・・・結構調べたのにな・・・」

アルミン「僕はそろそろ他のところを調べにいくね・・・時間もないことだし」

エレン「ああ。またな」

ミカサ「エレン。顔色が悪い。ちょっと休憩するべき」

エレン「ダメだ、調べなきゃ・・・でも、ありがと」ボソ

ミカサ「・・・・・ん。//」

アニ「・・・・なんだか、熱いね」

ベルト「まったくだよ」ヤレヤレ



アルミン「・・・ジャン」

ジャン「なんだよ」

アルミン「実は、けっこう楽しんでるよね」

ジャン「は?」

アルミン「でも・・・あんまりエレンを舐めない方がいいんじゃないかな」ニコ

ジャン「・・・・・」

アルミン「じゃあね」スタスタ・・・ガチャン

ジャン「・・・・・ったく・・・」



エレン「なあ、昨日の夜時間は、お前ら部屋の外に出たか?」

ベルト「僕はいつも出歩かないな」

ミカサ「アニは?」

アニ「私は出歩いた。たぶん、0時過ぎくらいに・・・夢見が悪くて」

ミカサ「0時っ? 大浴場の様子はおかしくなかった?」

アニ「さあ・・・あまり覚えてないけど・・・

   大浴場は知らないけど、洗濯室は明るかった気がするよ」

エレン「洗濯室?」

アニ「そう。洗濯機の回る音がしたし・・・普通使わない時間だからそれだけは覚えてる」

ベルト「中には入ったの」

アニ「ああ。誰もいなかったけどね・・・」

エレン「洗濯室をなんでまた夜時間に利用したんだ・・・?」


 >言弾『アニの証言』を入手


ミカサ「貴重な証言。アニ、ありがとう」

アニ「いいよ・・・ベルトルト、私たちも捜査するよ」スタスタ

ベルト「そうだね。ちょっとは気が紛れるかな」スタスタ

エレン「じゃあ、あとは・・・」

ジャン「・・・エレン、ちょっとついてこいよ」

エレン「あ?」

ジャン「いいから。来い」スタスタ

エレン「・・・・・・」チラ

ミカサ「・・・・・・」コクリ

エレン「・・・待てよ、ジャン。どこに行くんだ」スタスタ

エレン(まったく、勝手な奴だな)


ミカサ「・・・」ポツン

ミカサ「えっと・・・アルミンとこ行こうっと」ポツン




 2階 図書室


エレン「・・・で、なんだよ」ブッスー

ジャン「ああ。ほら、アルミンが言ってただろ。『閉架図書』ってやつ」

エレン「あれか・・・で」

ジャン「そういやお前、あの先輩のこと、なかなか慕ってるよな」

エレン「・・・・・」

ジャン「俺はあいつのこと、どうも好きになれねえな」

エレン「いきなりなんだよ!」

ジャン「突然でてきた留年しまくりの上級生。こんな状況だってのに、

    学園のことをろくに話そうとしない。かといってこちらを説得するわけでもない。

    リヴァイの立場ってのは、なんなんだろうな?」

エレン「だから・・・!」

ジャン「もっと、疑えよ。あの男はマルコと入れ替わりにやって来たんだぜ・・・?」

エレン「・・・・・・・ック」


 >言弾『リヴァイの立場』を入手


ジャン「お前の呆けっぷりについては、ミカサの教育方針が間違ってたと思わざるを得ねぇ」

エレン「久々に喧嘩売りやがって・・・何なんだよ、お前」イライラ

ジャン「今となっては定かではねえが・・・こんな話をマルコから聞いた」

エレン「はあ?」

ジャン「まあ聴け。・・・軍の精鋭部隊には、泣く子も黙る『伝説の兵士』がいたらしい」

エレン「・・・・・でんせつの・・・?」

ジャン「そいつが長となって率いる『特別作戦班』は、特殊な装備で野戦の中を駆け巡る。

    テロリスト、敵兵、時には味方――なんでも斬り捨てる死神のような男だ」

エレン「・・・マルコからの、情報か・・・」


 >言弾『マルコの噂話』を入手 


ジャン「噂とはいえ、軍人の卵だったマルコだからこそ知ってるような与太話だ。

    もう一つ、『閉架図書』にヒントがある。それを見せてやるよ」

エレン「・・・・・・・」


 二の句を告げない俺に冷たい視線を向け、そしてジャンは奥の書架へ向かった。


エレン「これが、持ち出し禁止の・・・結構あるんだな」

ジャン「ああ。ここについては、俺かライナーが詳しいだろうな。さてと・・・」ジロジロ

エレン「コホッ・・・埃っぽいな・・・」

ジャン「ああ、あった。ほら、コイツを見ろよ」ポイ

エレン「っとと。『特別作戦班戦術記録』・・・なんだこれ」パラ  パラ パラ

ジャン「政府向けに官僚が作成した資料だとよ。64ページから。別部隊の兵士の証言記録がある」



 “特別作戦班。諜報から前線まで何でもこなす進撃の雄だ。”

 “彼らは正装時、特殊合金で精練された、しなるブレードを2本、腰元に帯刀した”

 “お飾りかと思いきや、彼らはたとえ前時代的な武器であっても、それで任務を全うする”

 “中でも兵士長は、肉を削ぐように相手の首元を狙い、そして一瞬で命を奪うのだ”

 “『死神』である。軍人としての義を尽くして粛々と相手を殺しゆく様は――”

 “我々通信班の中ではこう喩えられたものだ。『死を以て義を下す、戦禍の死神』と”



エレン「・・・・・・・」ジー


 そこには、『伝説の兵士』を裏付けるような、いち兵士の正直な証言が載っていた。

 相手を絶望へ追いやるその伝説の数々を拙く、そして克明に記録し、

 マルコの与太話から、リアルへと、俺の中で形が変えられていく。

エレン(伝説の兵士は・・・)


 >言弾『閉架図書の記述』を入手


ジャン「どうだ? この情報をどう使うかはお前に任せるぜ」

エレン「・・・なんで俺にだけ」

ジャン「別に、前の『学級裁判』でお前が冴えてたから、その実力だけは素直に買っんだよ」

エレン「ならアルミンだって・・・」

ジャン「基本的に信用してねえって、昨日も言っただろ。

    アルミンなんて・・・俺は絶対心を許したくないね、あんな奴」

エレン「は? お前なんかよりめちゃくちゃ人望あるぞ、あいつ」

ジャン「違いねえなぁw まあいい・・・てなわけで、消去法なんだよ、お前は」

エレン(ジャン。なんとなく、ミカサは来させなかったけど・・・正解かもしれない。

    突然、俺やミカサと積極的に行動を共にして・・・

    捜査の重要性を考えりゃ、一見合理的だけど・・・)

 
 >言弾『ジャンの行動』を入手


ジャン「その証言記録の部分はバカでも解る文章だし、読み込んどけよ。じゃあな」スタスタ

エレン「ちょ・・・・・・っ」

エレン「・・・ハァ・・・あの野郎・・・」パラ・・・



---------------------------


 そのころ、一階階段付近


アルミン「やっぱり・・・・無くなってる」ガサゴソ

ミカサ「あ、アルミン。いた・・・」ホッ

アルミン「やあミカサ。どうしたんだい、エレンは?」

ミカサ「ジャンとどこかに行った。エレンがついてくるなって様子だったから」

アルミン「そうか、ジャンの奴。・・・ほんとどうしようもないなあ・・・ボソ」

ミカサ「ねえ。何か探し物?」

アルミン「そう。ミカサ、ちょっと唐突な質問なんだけど」

ミカサ「うん?」キョトン

アルミン「電子生徒手帳には、マップに持ち主が表示される機能があるね」

ミカサ「うん。コクリ 私もそれでアルミンを捜した」

アルミン「そこから生徒のアイコンが消えることがあるとすれば、どんなケースかな」

ミカサ「その生徒の生徒手帳が壊れた時。あと、電源を落としたら消えると思う」

アルミン「そうだよね・・・なるほど・・・」

ミカサ「・・・?」


---------------------------


 ジャンに言われた通り、俺は資料の一部分を読んでからミカサたちを捜した。

 もう捜査時間も終わりそうだ。あと、出来ることは何だろうか。

 食堂に向かう。ミカサ、アルミンの他にコニーも居た。


エレン「よ」

ミカサ「おかえりなさい。ジャンは?」

エレン「知らねぇよ。あんな奴。そうだ、アルミンは何か見つかったか?」

アルミン「うん。ミカサからアニの証言を聞いたから洗濯室も回ったけど、流石にスカだったね」

ミカサ「あとは、コニーがお手柄だった」

コニー「いやー、なんか大浴場にあの先輩来たからさあ。

    サシャは随分と親しげなんだけど俺はちょっと苦手だから離れたんだよ。そんで・・・

    身を挺して不潔なトラッシュルームを漁った結果、証拠品を見つけてしまった!!」ドン!

エレン「なんだコレ・・・覆面?」


 黒い覆面だ。確かに捨ててあったのなら怪しい。


コニー「アルミン曰く倉庫の備品らしいけどさ・・・毛髪がでてきたんだよな、内側から」

エレン「毛髪!?」

コニー「おう・・・焦げ茶もあるけどほとんど黒だな。そこそこの長さがある」


 コニーはチャック付の小さなポリ袋を見せてきた。中には数本の毛髪。

 確かに、色は解りづらいが黒系で、そして一本が決して短くは無い長さだ。


エレン「『クロ』が被った覆面なのか・・・?」

コニー「昨日ユミルが掃除したばかりだったろ? こんなのだけ捨ててあるのはおかしいぜ」


 >言弾『捨てられた覆面』を入手


エレン「黒い毛髪ね・・・」

エレン(このまま、進んでしまっていいものなのか・・・)


 キーン コーン カーン コーン


『あーいw 今回は捜査時間を結構あげたつもりだけどどうかな?www

 では皆さん、そろそろ校舎一階階段、専用エレベーターへお集まりください』


エレン「・・・・・終わりか」

ミカサ「・・・・」

コニー「っしゃ、行ってくるか! まあ俺はろくに議論できねぇけどな!!」スタスタ

アルミン「コニーってすごく強いよね、色々と」スタスタ


 ミカサが動かないためそれを待っていると、いつの間にか二人きりになっていた。


エレン「ミカサ。行こうぜ・・・裁判場」

ミカサ「エレン。私は、エレンに素直なままでいてほしい」

エレン「おいおい、どうしたんだよいきなり」クス

ミカサ「『学級裁判』は、人を疑う場所。本当は、あの場に、

    証言台に立ってほしく、ない・・・」

エレン「・・・お前は、ほんと母さんみたいなこと言うなぁ。

    ミカサ、俺は、誰かを疑いたいわけじゃねえ・・・」


 ライナー『エレン。裏切るってのにも色々な側面があるかもしれんだろ?

      どんな状況であれ、話は聴かなきゃ駄目なんだよ』


エレン「――ライナーの意志を、尊重したい。あの『学級裁判』は大嫌いだよ。

    だけどあの場ってのは、誰かの話を聴く場所なんだ・・・行かなきゃ」

ミカサ「私は・・・とても苦しい」

エレン「・・・おい、どうしたんだ。なんだか」


 見ているこちらの胸が締め付けられるような、泣きそうな顔をしている。


ミカサ「あそこは嫌い。楽しい時間が終わっていくのが解るから・・・

    どうして、私はこの学園に来てしまったんだろう。

    どうして、エレンをシガンシナに残して来なかったんだろう」ウルウル

エレン「ミカサ、なんで、そんな顔・・・」ドキ

ミカサ「ここに来なかったら、私はアイドルの仕事を続けて、ジャンはそれを手伝ってくれて、

    休みの日はただ貴方や友人と過ごして――私の夢、理想の中にいることができた。

    ここでの出会いはとても嬉しい。素敵な友人ができたのは本当に。

    だけど、どんどん、私の夢からは離れて行く・・・それがイヤだ」

エレン「・・・そんなの、マルコみたいに卒業すれば、また」

ミカサ「『卒業』ってなに? 何から卒業するの。だってここはどんな学校とも違う。

    『卒業』した先に何があるのか、今では解らない」

エレン「ミカサ・・・」

ミカサ「普段はみんなが目をそらしていること。でも『学級裁判』では――

    あそこでは、そのことに目を背けられなくなる。それが、怖い」


 ミカサは、お小言がうるさくておせっかいだけど、

 頭が良くて、いつも俺の側にいて、そしてどこか繊細な奴だ。

 間近で見ている俺にしか解らないほど、その小さな肩が微かに震えていた。


エレン「・・・・・・」


 ポス


ミカサ「!」

エレン「ミカサ、お前がそんなに不安に思ってたなんて知らなかった」


 俺はミカサの頭に手を乗せて、くしゃくしゃと撫でた。

 ほとんど無意識に、小さい頃によくやった仕草で、こうするとミカサは少し落ち着いた。


エレン「お前って、まあ一応女の子だもんな」ナデナデ クシャクシャ

ミカサ「あの、頭がくしゃくしゃ・・・」

エレン「恥ずかしいけど俺もちょっとホームシック気味なんだよな。

    それで、やっぱり『裁判場』は嫌いだ。ミカサと同じなんだよ」

ミカサ「・・・・・う、ん」

エレン「でも、あそこじゃないとライナーが傷ついた理由を知ることは出来ない」

ミカサ「その通り、だ。私、的外れなこと・・・言ってた・・・?」

エレン「いいや、ぜんぜん」ギュ

ミカサ「ごめん。いこう・・・」

エレン「急ごう、みんな待ってる・・・ぷ、お前髪の毛ぐっしゃぐしゃ!」

ミカサ「エレンが・・・っ// ふふっ」ニコ


 俺たちは並んで歩き、一階階段部にある防火扉の奥、

 裁判場へ向かうためのエレベーターに乗り込んだ。まだ集まっていない生徒を待つ。

 やがて、最後にリヴァイ先輩が乗り込んで――、


リヴァイ「・・・・・・・・」

エレン(・・・・・・・・・)


 ――エレベーターは動きだし、下へ、下へと向かってゆく。

 特有の体感に包まれながら、早くライナーと再会できることを願っていた。

 ベルトルトとアニは特に蒼い顔をしていた。当然かも知れない。

 今回のクロは『ライナーを襲った者』。事故じゃない、『事件』なのだから。


エレン(ああライナー心配するな。お前の言ってたとおり、

    俺は、俺たちは話を聴くんだ。聴いてやるからさ・・・)


 そして、エレベーターは止まった。

 各々が定められた証言台に立つ。ミカサが俺の左隣に立つ。

 マルコとライナーの席には、代わりに顔写真のプラカードが立てかけられていた。


エレン(そういえば、証言台ははじめから13人分あった。偶然か・・・?)


『集まったね。では裁判前にルールを説明します。

 君たちには、今回の事件について『クロ』が誰なのかを議論して貰います』


『最終的に、一人一票でクロが誰かを投票していただき、

 多数決で決まった者が『クロ』であった場合、『クロ』には厳しい量刑を、

 もし『シロ』であった場合は、『クロ』以外の人間の在籍年数が5年付与されます』


リヴァイ「5年か・・・・・・おいクソメガネ。ライナー・ブラウンの容態は?」


『無事です。意識もはっきりしているので、ミカサの時と同じように別室にて待機。

 議論の制限時間は設けられていませんが、キリの良いところで終わるからね。

 ――それじゃ、始めてください』


エレン「・・・・・・ああ、始めよう」

ミカサ「学級裁判を・・・・」


 相変わらず、この学園長とやらの言うことは不可解だ。

 だけど、無事だというライナーの姿をこの目で確かめる為に、

 俺は、俺の知り得るすべての情報をみんなにぶつけて行くしかない――!!





 「学 級 裁 判 開 廷」 




 ※ 今回の裁判から、エレンは『言弾』を反論に用いるだけでなく

   誰かの発言に『同意』する際にもぶつけることが出来るようになりました。

きりの良いところで一度おわります。


ジャン「最初に訊いときたいことがある。ハンジ・・・明確な共犯者がいる可能性は?」

エレン(確かに・・・あるか、ないかで随分変わってくる)

『無い、とは言い切れないねえ。でも私の持論だけど、共犯者は単独での犯行が難しい、不可能

 ・・・そういった場合に現れてくると思うんだ。例えば、つじつまあわせの証言だとか・・・ね』

ジャン「・・・つまり?」


『結局クロは実行犯一人のみが対象だ。

 共犯の可能性は【単独での犯行が証明出来ない】なら、その時議論すればいいんじゃないかな?』


アルミン(暗に単独犯だと示唆してるね・・・これで議論しやすくなる)

サシャ「一応ダメモトで訊きますが、自首してくれる人いませんかね。悪いようにはしません。

    今ならなんと! サシャ・ブラウスがカツ丼を振る舞うオプション付です」

コニー「いるわけねえだろ。だから後で俺にカツ丼作ってくれ」

ベルト「カツ丼は置いておいて・・・まずは恒例の『ハンジさんファイル』を反復しよう」

エレン「そういえばリヴァイさんは初参加ですよね。ルールは大丈夫ですか?」

リヴァイ「大丈夫だ、問題ない・・・」

アニ「じゃあ、とっとと。発見者はエレン、ミカサ、ジャンの3人だったね」

ジャン「ああ。今朝、ライナーは珍しく朝食時間に遅れてきた。それの捜索中だ」

アルミン「朝7時、ライナーは部屋にいなかったんだよね、アニ?」

アニ「部屋は開いてたけど不在だったんだよ。生徒手帳を忘れたものと思って、

   ベルトルトと食堂に行ったけど、エレンが来てもライナーは来なかった・・・」

ベルト「そして、大浴場で3人に発見された。頭に切り傷と、そのほか打撲痕がある」

リヴァイ「クロは『被害者を襲った者』・・・だ」

クリスタ「誰かが明確な意志で襲ったってこと、だよね・・・」

ユミル「そして、そいつはこの中にいるってわけだ」

アルミン「犯行時間は単純に、昨夜から今朝にかけての夜時間だろうね」

クリスタ「切り傷の原因ってなんだろう。たった一つしか無いし、偶然かな。

     お風呂場だし、殴られたところを抵抗して、【滑って頭を切った】とか?」


 <言弾『壁の損傷』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「確かに、ライナーの裂傷は頭だけだし、数だけなら打撲痕の方が多い。

    だけど、今回は壁にもたくさん損傷があった」

ミカサ「そう、めり込んだ後の他にも、切ったような傷も・・・

    つまり、事件のどこかで『刃物』が使用された。間違いない」

クリスタ「そっか、単なる殴り合い、ってわけじゃないんだね・・・?」

コニー「つーか、そもそも、なんでライナーは浴場にいたんだよ。

    あれか、また【覗きでもしようとした】のか?」


 <言弾『呼び出しのメモ』をぶつける


エレン「それは違うな」

アニ「『また』って・・・なに?」

アルミン「あーあー、まったく、コニーは何言ってるんだろうなあ、あはは!!」アセ

エレン「ライナーはおそらく、何者かに呼び出されたんだ」

ベルト「呼び出された?」

エレン「ミカサがライナーの部屋で見つけたんだけど・・・」

ミカサ「これ・・・くず入れに捨ててあった・・・」カサ・・


  “『裏切り者』について共有したいことがある。0時に大浴場へ”


リヴァイ「・・・呼び出しか?」

ミカサ「・・・そう。昨夜の0時に」

エレン「ハンジぐるみは昨日、ジャンに『裏切り者』の存在を示唆した」


『そうだねえ。って、なんで君たち知ってんの?w』


ジャン「俺が伝えたからだよ。で、クロは早速そのことをダシにしてライナーをおびき出した」

サシャ「ライナーは誰におびき出されたんでしょうか。

    何か手がかりは。まあ【本人の口から聞くのがてっとり早い】んですけどね」


 <言弾『死を以て義を下す』をぶつける


エレン「それに賛成だ」

サシャ「へ?」

エレン「実は、目撃者である俺、ミカサ、ジャンが発見した時――、

    ライナーは一瞬だけ意識を取り戻し、メッセージを残したんだ」

ユミル「マジか・・・? 何て言ったんだ」

エレン「それは・・・あいつは意識が朦朧としていたのか、俺たちにこう言った」


 ライナー『・・・おまえ、が・・・・死神・・・な、のか』

 ライナー『『死を、もって・・・・義、をくだす』・・・おまえ、が・・・・・・・』


アニ「死神・・・? 犯人のことを言ってるの」

エレン「その可能性がある。重要な手がかりだろう?」

リヴァイ「ほう、なるほど・・・」

ベルト「だけど、それはどういう意味なんだ?」


 <言弾『閉架図書の記述』を提示する


エレン「それは、とある政府の国会資料に記されている」


 俺は、ジャンから教えられた資料のメモを読み上げた。


エレン「・・・つまり、軍部側には戦術価値の高い『伝説の兵士』が実在していた。

    ライナーはそれを知っていたんだと思う」

コニー「それ、どこから得られた情報なんだよ? 【子供が見られる情報じゃ無い】だろ」


<言弾『昨日のライナー』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「コニー。図書室には寄りつかなかったのか?」

コニー「図書室? ああ。探索の時10秒で立ち去ったね。

    それ以上いろと言うなら返り討ちにしてくれるわ」

サシャ「あなたの『バカ』に対するプロ意識には、感動すら覚えます・・・」

エレン「図書室の奥には持ち出し禁止の本を収めた専用の書庫がある。

    この資料はそんな、いわゆる『閉架図書』のひとつから引用したんだ」

ベルト「ああ。僕も含め、ほとんどの人間はそんなもの見てないと思うけど、

    ライナーは昨日、午後の時間いっぱいを、閉架図書を読むことに費やしたんだ。

    ・・・ジャンも見かけたんだよね?」

ジャン「そう。まあ何してたかなんて覚えてねえけど、ライナーが長い間そこにいたのは知ってる」

クリスタ「じゃあ、ライナーはその記述を知っていて、

     それでクロもその『伝説の兵士』を連想させるような手口や格好だったってこと?」

ユミル「可能性はあるな。だが、それを【証明する材料がない】と・・・」


 <言弾『良くしなる刃物』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「証明・・・にはならないかもしれない。

    でも。それを連想するにいたったかもしれない物証が、現場にあったんだ」

ミカサ「・・・これ」


 ミカサは捜査時間に回収した、折れた刃を見せた。


エレン「これは、現場の大浴場に落ちていたもの。包丁とか、

    そういったモンとは全く違う形状だろ? 凄くしなって、先が折れてる」

ミカサ「すごく、びよんびよん」ビヨンビヨン

アニ「なんだそれ」

ベルト「片刃で、そして、しなる。特殊な金属でできてるよねソレ・・・」

エレン「そう。先が折れているということは、元はもっと長かった可能性がある。

    そして『死神』――つまり『伝説の兵士』が正装の時に帯刀していたのは、

    『特殊合金で精練された、しなるブレード』だ」

ミカサ「試しに斬りつけてみよう」


『え、ちょ、ちょちょ待って、なに』


 ――ザシュッ


『んがぁ! マジでやりやがった、何考えてんだよこの子は!!!』


ミカサ「すみません、事件解決のためです。実験は必要」シレッ


『んー、まぁ実験の有用性はよく知ってるよ。でも・・・次からは一応了承とろうぜ?』クスン


ジャン「すげぇ。証言台に切り込みが入っちまってる・・・」

アルミン「今も結構長いけど、折れているということは、元は剣のようだったと考えられる。

     そして大浴場の壁に刻まれたのはその『ブレード』の斬りつけだったってことだね」

サシャ「なるほどー。ライナーが本を読んでいたなら、クロがそのブレードを持ち出した時、

    咄嗟に『これあいつじゃん、あの伝説の奴じゃん(声マネ)』と思うでしょうね」

ミカサ「そういうこと」

アニ「わかった。つまりこの中に、その刃物を持ってた奴がいる・・・ってことだね」

リヴァイ「・・・今も持ってる可能性があるな」

コニー「ちょ、物騒なこと言わないでつかぁさいよ、せんぱーい」アハハー

クリスタ「でも・・・ライナーは本当に0時に呼び出されたのかな。

     その時間帯なら、誰かが【出歩いていてもおかしくない】けど」


 <言弾『昨日の夜時間』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「クリスタの言い分もわかるけど、昨日は諸事情で、みんな夜時間の後はすぐに

    就寝する姿勢を見せたはずだ・・・主にハンジさんに向けて」


『え、私? なんでなんでーw』


生徒(お前が昨日、話し合い中に大浴場に寄ってきたからだよ!)

エレン「まあハンジさんはどうでもいい。

    昨日、出歩いた人間はいつもより少なかったはずだ。そうだろ、夜更かし組?」

コニー「その通りでーす」

サシャ「女子も、お風呂に入ったらすぐ解散しましたね」

エレン「大浴場は寮の南側だし、よく使われる食堂に行くだけでは、異変に気付きにくい」

ユミル「目撃者無しってなら、ライナーが呼び出しに応じて

    【0時に現れた証拠はない】ってことじゃねえか」


 <言弾『壊れた生徒手帳』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「根拠は他にもあるんだユミル」

ユミル「へえ?」

エレン「それは、お前とクリスタが見つけたライナーの生徒手帳だ」

クリスタ「これ・・・のこと?」


 クリスタは持っていた電子生徒手帳を見せた。

 画面は普通の生徒手帳と違って暗いまま――起動していないものだ。


クリスタ「私とユミルは捜査開始のあと、すぐにライナーの部屋に行ったんだけど・・・

     壊れた電子生徒手帳をみつけたんだ」

アルミン「すっかり壊れてしまってるんだね・・・。完全に・・・?」ジッ

クリスタ「う、うん。だからもう、電源も入らないし、まったく機能していないよ」

ユミル「ライナーのもので間違いないよな。他の奴らはみんな持ってるだろ?」


 この場にいる全員が、自分の生徒手帳を懐から出して、周囲に提示して見せた。


エレン「・・・ライナーのアイコンがマップ上に現れていたのは捜査開始まで、そうだな、アニ?」

アニ「そう。だから私とベルトルトは、『生徒手帳を忘れて食堂に行った』と思ったのさ」

リヴァイ「その生徒手帳は、午前7時から捜査開始までの間に不具合か損傷で壊れちまった・・・

     エレンよ・・・そういうことだな?」

ベルト「でも、どちらにせよ、壊れた時間は今朝だ。

    ライナーが大浴場に向かった時間の証明にはならないよね。

    ライナーが大浴場にいくとき、【生徒手帳を忘れていっただけ】なんじゃ・・・」


 <言弾『電子生徒手帳の弱点』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「ベルトルト、ここで重要なのは『電子生徒手帳が壊れた』っていう事実なんだよ」

ミカサ「ハンジぐるみが言ってた。これはお金を掛けたアイテム。ので、衝撃などには強い、と」

ジャン「その辺りはかなり気を遣って作ったらしいな。耐衝撃、耐電撃で壊れにくい」

アルミン「僕も以前、訊いたことがあるよ。取り扱うにあたっての注意点を、ハンジにね・・・」

エレン「そう。だけど、いくら金を掛けようが、これは所詮精密機械。

    どうしてもカバーしきれない弱点が、この電子生徒手帳にはあるんだよ」

コニー「弱点・・・?」ゴクリ

エレン「そう。こいつは、『高温多湿』――つまり水には少し弱いところがあるんだ」

ユミル「そうか、ハンジが言ってたな」ナットク

ジャン「てことは、ライナーの手帳は昨日の【夜時間に大浴場に持ち込まれた】可能性が高い。

    大浴場は夜時間になるまで湯を張って、その後、湯を抜くからな」


 <言弾『夜時間の大浴場』をぶつける


エレン「それに賛成だ」

エレン「ジャンの言うとおりだ。こう推測できないか?

    夜時間に入ってやっと、あの大量の湯を抜いて――まだ換気し切らないうちに・・・」

ジャン「――ライナーがあの場にやって来たとしたら」

サシャ「なるほどー、実際は浴室がジメジメしてたかもしれないのですね!」

アルミン「ハンジ学園長、実際、夜時間中の大浴場は、どれくらいで換気が出来るんですか?」


『教えてしんぜようw。実は夜時間に入ったらすぐに湯を抜くってわけでもないんだよねー。

 0時になると自動的にお湯をバイバイして、それからお掃除ロボットで掃除するの』


エレン「どうしてその時間に湯を抜くんです。誰も利用しないのに」

リヴァイ「・・・おおかた、クソメガネが夜時間になってから入浴することがあるからだろう。

     ぬいぐるみじゃねえ・・・くっせぇ本体がな」

ジャン「本体・・・つまりハンジ・ゾエ本人ってことか?」


『いやん、リヴァイ先輩わかってるーぅw

 そうそう、あれほどの大浴場って寮にしかないんだよねえ。だからたまに入るのさww』


リヴァイ「・・・・・・」イラッ

ユミル「つまり、あそこを張っとけばてめぇの面を拝めるってわけだな」


『ユミルたんのおバカちん★

 もうバレたんだから絶対入らないよー。私そこまで軽率じゃないからねw

 むしろ、君たちの監視が楽しいからシャワーも忘れちゃうかもー、なんちゃってww』


リヴァイ「そんなことでシャワーを忘れるような奴は人間じゃねえ。しね」ギロリ

エレン「り、リヴァイさん、めちゃ怖いっす」

ミカサ「でも、確かに。いずれ、ぬいぐるみまで臭ってきそう。お風呂は、入ってください」


『あい。・・・冗談なのに・・・』シュン


ベルト「・・・話を元に戻すけど。ハンジの情報を元にすれば、

    ライナーは昨夜、大浴場が多湿状態の時に訪れ、襲われた可能性があるんだね」

アニ「呼び出された時間は午前0時。ということはしっかり多湿、下手すりゃ高温状態だね」

コニー「おー、ドンピシャじゃねえか」

アルミン「・・・・ほんと、よく考えたもんだ・・・」ボソ

クリスタ「ということは、その後、クロはライナーの生徒手帳だけを寝室に戻したってこと?」

サシャ「なんのために?」

ジャン「今朝みたいに、ライナーが部屋にいると思わせるためじゃねえか?

    だが今朝7時の時点では動いていたし、クロも壊れる事は想定してなかったのかもな」

ミカサ「私も、そう思う」

アルミン「・・・・・・・・・・」

サシャ「襲われた時間は解ったけど、じゃあ、結局誰が犯人なんです?

   目撃だとか、【0時に出歩いた証拠がない】限り断定は難しいんじゃ・・・」


 <言弾『保健室の入退室記録』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「ひとつ・・・決定的な証拠があるんだよ」

アニ「証拠? そうか・・・」

エレン「『出歩いた』証拠なら、昨日から本日にかけての、保健室入退室記録を見て欲しい」

アルミン「僕の端末を見せようか」サッ



 
【保健室入退室記録表】

 ユミル   11:52 * 11:55 * 頭痛薬を貰いに来ましたー。非常にだるい。
 
 ベルトルト 13:44 * 14:20 * 睡眠について、相談のため

 コニー   15:28 * 15:46 * 腹通がひどいので、薬をのんで休みにきました

 アルミン  15:41 * 15:47 * 仮病のスプリンガー君を連れ戻しに来ました。すぐ退室します。

 リヴァイ  21:00 * 21:16 * 定期検診の為。

 ジャン   21:21 * 21:39 * 体調不良。あと目薬。

 リヴァイ  00:22 * 00:37 * サビオ、アルコール、ガーゼを貰いに来た為。



ユミル「おい、兵長さんよ・・・これは、一体どういうことだ?」

リヴァイ「・・・・・」ギロ

エレン「・・・・・・・・」

ジャン「なあ、リヴァイ先輩。夜時間は原則、寮に出ることができない。

    なんであんたは、その時間にノコノコと保健室に現れたんだ?」

リヴァイ「・・・記録に書いてあるとおり、怪我をしたから手当のためだ。

     万が一、化膿でもしたら、気持ち悪い事この上ねぇだろうが・・・」


 <言弾『リヴァイの怪我』を提示


エレン「リヴァイさん・・・怪我っていうのは、おでこの絆創膏のことですか・・・?」

コニー「お で こ ?」

エレン「ジャンが見たって言うんです。おでこに絆創膏をしてるって。

    俺の席からじゃ、貴方のおでこは前髪でよく見えないから・・・その・・・」

リヴァイ「・・・・・・・・フゥ」サッ


 リヴァイ先輩は嘆息をひとつ、そしてすぐに、右手で自分の前髪を掻き上げた。

 先輩の額には――確かに透明で大きなタイプの絆創膏が張ってあった。


ベルト「先輩・・・それは、たんこぶですか、それとも」

リヴァイ「切り傷だ」

コニー「えっと、昨日は別にそんなモノしてませんでしたよね?」

リヴァイ「その通りだ」

クリスタ「あの、つまり保健室に行ったのは、昨日の夜時間に切り傷を作ったから、

     ハンジぐるみに頼んで保健室に向かったってことですか」

リヴァイ「間違いない」

ミカサ「あやし過ぎる」

リヴァイ「もっとハッキリ言ったらどうだ・・・ミカサ。お前らしくもない」シレッ

ミカサ「・・・貴方がライナーを襲った。のではないか、と思っています」

ユミル「怪我の理由は? クロじゃねえなら言えるよな?」

リヴァイ「・・・・黙秘する」

エレン「リヴァイさん。貴方じゃないならちゃんと話してください・・・」

リヴァイ「拒否だ、エレン」

ジャン「なあリヴァイ先輩。いや、リヴァイ兵士長。

    あんたは『超高校級の兵長』だ。その理由は・・・。閉架図書に記述されるくらい、

    戦術的にとても貴重で有益な、『戦禍の死神』だからじゃねえのか?」

リヴァイ「・・・・・・・」

ジャン「あんた本人なら、あの特殊合金のブレードを持ち込んでいたとしてもおかしくない。

    そして午前0時、『裏切り者』のことを餌にライナーをおびき出し危害を加えた」

アルミン「・・・ジャン。動機がないよ」


ジャン「動機なんて簡単だろ。リヴァイ、てめぇがその『裏切り者』なんだよ!!」


ベルト「・・・・・確かに。彼は、唯一の上級生だ・・・」ボソ

アニ「ハンジの何らかの思惑で動いた・・・ってこと?」

リヴァイ「・・・・・・・」

ジャン「まだ何も言わねえか。往生際の悪い。さっさと投票に行っちまうぞ・・・?」イラ・・・

ユミル「そうだ、とっとと投票してコイツに認めさせようぜ・・・」

エレン「ちょ、ちょっと待って――!」


サシャ「お 腹 空 き ま し た !!!!!」バン!


エレン「――え?」


 シーン・・・


サシャ「だから、お腹空きました。みんなが何言ってるのか理解できてません!

    燃費が悪くてごめんなさい。でも耐え切れません! 休憩をください!!!」

ジャン「はぁ!? おい、芋女。ここで休憩はさんでどうs」

エレン「お、俺も喋り過ぎたから水が飲みたい!! とっとと休憩時間くださいよ!!」

ユミル「お、お前まで・・・」

アルミン「僕もだ。学園長お願いします!!!」


『そーねー。そうしようか。じゃあ7分ね。

 白熱し過ぎたら議論にならないから、ちょっと冷静になろうか』


 こうして、サシャの言葉を皮切りに、

 ある意味空気を読まない『休憩時間』を挟むこととなった。




エレン「ごくごく・・・プハっ」

アルミン「危なかった・・・あのまま投票に行くところだったよ・・・」

エレン「・・・リヴァイさんも悪い。どうして何も言わないんだ」

アルミン「それは彼のみぞ知る世界だよ。・・・エレン、キミには何が見える?」

エレン「・・・なーんにも。これから閃く予定だから・・・」

ミカサ「エレン、貴方らしい」クス

エレン「ミカサ、ちゃんと水分補給したか?」

ミカサ「もちろん。・・・サシャは、鋭い」

エレン「・・・ああ。最初はマジで言ってると思ったけど・・・

    たぶん、あれは最高のタイミングで空気を読んだんだな」

アルミン「まったくだよ。彼女にはあとでお礼しないとなあ」チラ


サシャ「もぐもぐもぐもぐもぐ。うんめっ、芋うんめーっ」


アルミン「――まあ、お腹空いてたのは事実だろうけど」クス

ミカサ「リヴァイ・・・先輩が怪しいのは本当にそう。だけど、何かが引っかかる。

    サシャはそういった勘が鋭いから、叫んだんだと、思う」

エレン「俺もだ・・・何かを見落としてる気がしてならない。アルミンは今回、現場は見たか?」

アルミン「ああ、見たよ・・・バッチリとね。

     まだ現場検証の結果について話していないところがある。

     それを話し合わないうちに投票の事を切り出した・・・ジャンを押さえなきゃいけない」

ミカサ「ジャンだって、多分解ってるのに、どうしてあそこで言い出したんだろう・・・」シュン

エレン(まったくだ・・・ジャンのやつ・・・焦ったように・・・)


 俺は沈んだ気持ちで、捜査時間中にまとめたメモを見直していた。

 かなりのメモを、すでに議論中で使っている。


エレン(ここからどうやって・・・・・・・あ・・・あれ・・・?)

エレン(そうか、俺、なんで気がつかなかったんだろう・・・!

ミカサ「・・・何か気付いたみたい?」

エレン「ああ! ミカサ」パアァ

アルミン「どう。何か見えた?」

エレン「ああ・・・事件は続いてる、あそこで終わらせちゃダメってことがな!」

アルミン「そうかい。じゃあ僕も水をひとくち貰って、後半に備えようかな」

エレン「おう。じゃあな!」


 アルミンが離れた後は、ミカサと共に休憩の終わりまで待機した。


ミカサ「・・・・・・・」

エレン「どうした、ミカサ」

ミカサ「アルミンはどうして、自分から言わないんだろう」

エレン「なにが?」

ミカサ「彼は頭が良い。解っている事だってたくさんある・・・なのにそれを言わないのは」


 ―― な ん で?


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 【幕間:ハンジさん劇場】


 私は、成長著しい、賢しさを秘めた若者をみることが好きだ。

 それを見るためならなんだって出来ると自負している。学園長の鏡だと思わないかい?


 なぜ、どうして。そういった副詞は、若ければ若いほど飛び出してくるでしょう。

 追究するっていうのは、こいつが頭に浮かんでくることから始まるんだよね。

 でね、私って毎日その副詞ばっかり頭に浮かぶんだよねえ。

 これって若い証拠だよね? って友達に訊いたら、「鏡見ろ」って睨まれてさ。


 クソついでに便所の鏡を見たけど、いつも通り、賢そうな顔しか映ってなかったYO★

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 「学 級 裁 判 再 開」


アルミン「さてと、再開だ。みんな、少しは気が収まったかい?」

サシャ「ええ。腹の虫が収まりました。けぷっ」

クリスタ「サシャ、それまったく別の意味だよね・・・」

ジャン「・・・・・・・で?」ジロ

リヴァイ「・・・・・」

ジャン「いくら場を収めたところで、先輩が怪しいことは事実なんスけど」

エレン「リヴァイさん」

リヴァイ「・・・・・?」

エレン「貴方は、何らかの理由で昨日、夜時間0時頃、頭に怪我をした。

    そして保健室で治療をした・・・それは事実だと認めた」

リヴァイ「ああ」

エレン「では質問を変えます。貴方は同じ頃に――」


 <言弾『アニの証言』を提示する


エレン「――洗濯室で、洗濯機を回しませんでしたか」

アニ「・・・!」

リヴァイ「ほう、どうしてそう思う?」

エレン「アニが見かけたようです。誰かが洗濯機を、午前0時を過ぎた頃に回していたと」

アニ「そう。夢見が悪くて起き出したところだから、うろ覚えだけどね」

リヴァイ「だが、俺が洗濯機を回したというのはどこから来たんだ。【憶測か】?」


 <言弾『浴室のジェル』をぶつける


エレン「それは違います」

エレン「実は大浴場に、僅かばかり、『医療用のジェル』が残っていたんです。

    これは昨日中に保健室から持ち出された可能性があります」


 <言弾『アルミンの証言』を提示


エレン「アルミン」

アルミン「ああ。僕は保健室を頻繁に利用している。備品についてみんなよりは把握していたんだ」

ベルト「そう言っていたね」

アルミン「例えば超音波検査などで使う器具では、『医療用のジェル』を使用する。

     僕の記憶が正しければ、これが昨日中に無断で、それも大量に持ち出されたんだ。

     一昨日と、今朝では備蓄量がまったく違うからね」

ミカサ「・・・持ち出したのは、昨日保健室に出入りをした人間」

アルミン「そうなるね。――で、僕はそれがどこに行ったのかを探したんだけど、

     大浴場のロッカーのひとつに、空になったジェルの容器が大量に詰め込まれていた」


 アルミンは言いながら、ジェルの容器が入っていたロッカーの写真を公開した。


ミカサ「私も一緒にみた」

エレン(俺がジャンと図書室に行ってた間にか・・・さすがアルミン。

    自分の証言に対して証拠を拾ってくるなんて。すげぇ奴だ)

コニー「うげぇ・・・何本使ったんだよこれ。中ぐっちょぐちょじゃん・・・」

アルミン「ここでは、先輩がジェルを持ち出したかは証明できない。

     それならユミル、ベルトルト、僕やコニーだって、保健室は出入りしてたからね」

コニー「いやいや、俺はアルミンと一緒に退室しただろ!」

アルミン「例えばの話さ。クス ・・・で、ひとつ仮説が出てくる」

アニ「・・・仮説?」

アルミン「そう。ジェルを大浴場で大量に撒いて、そしてそれを後から流した――

     そういった経緯があった、かも、しれないよね」

ジャン「なるほど? 0時頃、ジェルでぬるぬるな浴場の中に

    リヴァイ先輩がその場にいたとしたら――まあ汚れちまうな、服が」

エレン「・・・リヴァイさん。貴方は、失礼かも知れないけど結構な潔癖症ですよね。

    洗濯幾は貴方が回していたのではないですか? 服が、ジェルで汚れてしまったから」

ベルト「ジェルは、人を滑らせたりするのに効果的だから、罠として仕掛けたのかな・・・」

ジャン「それじゃリヴァイ先輩が現場にいたことは事実になっちまうぜ?」

クリスタ「エレン、私にも、リヴァイ先輩がクロであることを証明しているように聞こえるよ・・・」

ユミル「だよな。結局先輩は保健室にも出入りしてるし、ジェルを仕掛けてライナーを襲ったあと、

    自分も軽い怪我をして保健室へ、さらに服が汚れたのでお洗濯しました・・・

    ってシナリオしか見えてこねえ」

サシャ「んー。でも変ですよ?」キョトン

ユミル「・・・なにが?」

サシャ「潔癖な人がわざわざ汚れるような作戦しかけて、

    しかも汚れることは解りきってるのに、その犯行直後に大音量で洗濯機を回す。

    ちょっと・・・アホではないでしょうか」

ミカサ「先輩がアホかどうか、私たちは詳しく知らないから・・・。

    実は顔に似合わず、アホアホなのかもしれない・・・(真顔)」

リヴァイ「ミカサてめぇ削ぐぞ。」

エレン「ミカサ! いくらなんでも先輩をコニーと一緒にすんな」

コニー「エレンてめぇ泣くぞ。」

エレン「気を取り直して・・・アルミンの仮説に沿って考えると。

    リヴァイ先輩、貴方は0時、まさに大浴場の現場にいた、ということになる」

リヴァイ「・・・続けろ」

エレン「・・・最後の質問です。黙秘してくれてもかまわない」

ジャン「・・・・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・・・・」

アルミン「・・・・・・・・」

エレン「貴方は――午前0時より『後』の時間に、大浴場にいましたか。0時より『後』、です」

リヴァイ「・・・・・・・・」


リヴァイ「いいや。俺が昨日、夜時間中に大浴場にいたのは、0時頃だけだ。

     ・・・それ以上は、黙秘する」


アルミン「・・・・・・・」ニッ

ユミル「そらみろ、兵長さん認めやがったぜ」

ジャン「・・・・・・・・・・・・・の、野郎。まだ・・・っ」ワナワナ

コニー「・・・・ぉ?(ジャン?)」キョトン

ミカサ「・・・! そうか。エレン・・・・」

アニ「どうする。本人が認めたんなら間違いないんじゃない。

   【ライナーが襲われたのも午前0時頃】なんだし・・・」


 <言弾『ライナーの身体』をぶつける


エレン「それは違うな」

アニ「・・・・・へ・・・・?」

ユミル「どういうことだ、エレン」

エレン「ライナーが襲われたのは・・・午前0時、ではないかもしれない・・・」

ジャン「おい、エレンどういうことだ。お前がライナーの生徒手帳で犯行時刻を証明したんだぜ」

エレン「ジャンも俺も。現場検証の時の情報をすっかり忘れてる」

ジャン「どういう・・・」

エレン「ライナーの頭部からの血・・・あれは傷の浅さの割に大量に出ていた」

ベルト「うん。幸い、死ぬほどではなかったけど、かなり出ていたね」

エレン「・・・なあ。午前0時頃になってやっと本格的な換気を始めるんだぞ?

    その前には女子だって散々風呂に入って辺りを濡らしてる」

コニー「? つまり???」

エレン「なのにライナーの血は、頭から床まで綺麗におちて。流れたまま綺麗に固まってた。

    ほんの少しでさえも、水に滲んだ形跡が無かったんだよ・・・」

クリスタ「・・・ちょ、ちょっと待って・・・じゃあライナーが襲われたのって・・・」


エレン「室内が完全に乾いた後・・・つまり午前0時より『ずっと後』だったんじゃないか・・・?」


アニ「・・・・・・」

サシャ「・・・・じゃあ、リヴァイ先輩は」

ミカサ「ライナーを襲ったこととは別に、午前0時に大浴場にいた」

ユミル「ちょっと待て! ライナーの生徒手帳は高温多湿で壊れたんだろ?

    乾いた後じゃ壊れないじゃないか。夜時間は隣のサウナもやってないしな」

エレン(そう、そこが解らない。偶然壊れたとしたら。どんなきっかけがある?

    クロとしては、ライナーの生徒手帳を手元に置きたくは無い筈だ)

ユミル「それとも偶然壊れたってのか? 説明がつかねえぞ」

エレン(いや、ライナーの襲われた時刻は絶対に0時ではない、それは確かだ。

    だけど、そうすると、あの生徒手帳は。くそ、考えろ! 考えるんだ!!!)

コニー「そうだよ、偶然っていっても、けっこうな理由がねえと壊れねえだろ、コレ!」

アルミン「・・・偶然じゃ、無いんだよ。」

エレン(・・・・・ア、アルミン?)

アルミン「クロは偶然壊してしまったんじゃ無い・・・はじめから『壊していた』んだ」

ジャン「おい、アルミン。どういうことだ、それは・・・」

アルミン「大体・・・、クリスタが持ってるその壊れた電子生徒手帳。

     本当に、ライナーの生徒手帳なのかな?」

サシャ「え!?」

アニ「ちょっと、アルミン。ここには生徒手帳がすべて集まってる。

   【壊れてるのはライナーの手帳】だって、さっきも話しただろ?」

アルミン「それは違うよ・・・」ジッ

アルミン「1人分、足りないよね。電子生徒手帳が・・・!」


ミカサ「・・・・あ、あの時アルミンが探していたのって・・・」

ジャン「おい、まさか」

アルミン「――『マルコの』生徒手帳だよ」


 <アルミンが、言弾『消えたマルコの手帳』をぶつける


リヴァイ「・・・・なるほど」ボソ

ベルト「マルコのって・・・え!?」

コニー「誰か、おれっちに翻訳こんにゃくを・・・」プス プス

エレン「(アルミンが理由も無くこんなことを言うはずが無い・・・)

    壊れているソレはマルコの生徒手帳、そう言いたいんだな!?」ジッ

ユミル「はぁ? どっからその発想が飛んでくるんだよ」

アルミン「発想じゃないよ、ユミル。事実を述べているんだ。

     校舎一階の階段部分。裁判場への直通エレベーターは、普段隠されてるよね」

サシャ「そうですね」

アルミン「おととい、探索中にあの辺りを触ったりして確かめたんだけど・・・

     あそこには、さらに隠し扉があるんだ。多分、『外』に出るための」

全員「『外』への!?」

ジャン「・・・おい、どうしてそれを俺たちに言わなかった」

アルミン「言おうとしたけど、そうしたら昨日『裏切り者』の話が出たからね・・・

     それにジャン、今だって冷静ではいられなくなってるだろう?」

ジャン「・・・・・っクソ・・・・・」

アルミン「隠し扉の横にちょうど、消火設備があったから扉を開けていろいろ見たら・・・

     中にテンキーのパネルが設置されてたんだよね」

ミカサ「あ、あれか・・・!」

エレン「見たのか!」

アルミン「多分、生徒手帳とパスワードの認証で扉が開く仕組みなんだと思うけど。

     で、ハンジぐるみは雑なのか、パネルの側の隙間に、

     『卒業生電子生徒手帳回収箱』なんて手書きで書いた箱を置いてたんだよ。

     そこにさ・・・マルコの生徒手帳が入ってたんだよね」

アニ「アルミン・・・悪いけど、それ。作り話じゃなくて?」

アルミン「学園長にきいてみようか」


『ねむい・・・アルミン、話長いよ。おねむだよ・・・・』ダラーン


リヴァイ「お腹出して寝るんじゃねえ、クソ人形」


『えっとね-。そうだよ。あそこが外への出入り口。

 んで、面倒だからその場で生徒手帳を回収してたのも事実。

 しかも回収の後すっかり忘れてたのは、ひとえにワタクシの怠慢ですが、なにか?』


ミカサ「あ、もういいです。一生寝ててください」


『ひーどーいー』


エレン「アルミン、ほんとお前・・・よく見てるな」

アルミン「まあね。自分で見たモノなら、盲信できるしね」ニコ

エレン(・・・ん?)


エレン「えっと、つまり『マルコの生徒手帳』は俺たちで入手出来たってことだ」

アルミン「そう。この場合、盗めたのは僕を含める、隠し扉の存在を知ってた人間ってことになる」

エレン(そうか・・・・ようやく、つながって来た)

エレン「前もってマルコの生徒手帳を手に入れることができたなら、そして、

    電子生徒手帳の弱点を知っていたなら・・・あらかじめ壊すことは出来た」

クリスタ「!! で、で、でも、何のために、マルコの生徒手帳を・・・?」

ミカサ「決まってる――」

エレン「――ライナーが襲われた時刻を、『午前0時頃』と偽装するためだ」

ベルト「そうか。『0時頃』とすることで・・・」

エレン「そう、俺たちは、間違いなくリヴァイさんを疑う。疑わざるを得なくなってしまう」

サシャ「てことは、ライナーを呼び出したメモも、犯人が事件後に残したブラフってことですね?」

ジャン「待てよ。そうしたら、ライナーの残した言葉はどうなる?

    ライナーは確かに『死神』と、『死を以て義を下す』と言った。

    クロがリヴァイだからこそ出た言葉だ!」

エレン「ジャン。ライナーは『お前が死神だったのか』と言ったんだ」

ジャン「・・・・・・・っ」ギリッ

エレン「・・・ライナーは相手がリヴァイさんだと言ったわけじゃない。

    犯行の手口を目の当たりにしたライナーは、クロが『伝説の兵士』と同じ特徴であった、

    ・・・その事を伝えたかったんじゃないか?」

ジャン「じゃあなんで。なんでリヴァイは最初から自分じゃ無いって言わねぇんだよ・・・」ポツリ

アニ「そうか、誰かが『死神』をマネすることなら・・・出来る」

サシャ「マネ、ですか・・・!」

エレン(・・・まずは言わなくちゃいけない、先に進むためにも・・・)

ベルト「でも、そんなの誰が出来るって言うんだ・・・」


 <言弾『マルコの噂話』を提示


エレン「ジャン」

ジャン「・・・なんだよ」

エレン「・・・ジャン。お前は知っていた。マルコから得た『伝説の兵士』の情報を」ポツリ

ジャン「・・・・・・・・・」

エレン「ジャン。お前なら、保健室に入室してから、ジェルを盗み出すことが出来た」ポツリ

ジャン「・・・・・・・・・」

エレン「そしてジャン。リヴァイさんが『伝説の兵士』だってことに、お前は気付いていた!」

ユミル「・・・・・・こいつが? ライナーを?」キョトン

ベルト「まさか、『裏切り者』って・・・」

アルミン「違う」ボソ

ミカサ「少し・・・黙っていて。」

ベルト「・・・ごめん、解ったよ」

コニー「(アイドル顔こぇえぇええええ)」

リヴァイ「・・・・・・・・・・」


ジャン「エレン。なんだ、俺がクロだって言いたいのか? ははっ」

エレン「落ち着け。俺はそんなことを言ってるんじゃない・・・」

ジャン「じゃあなんだよ! 俺じゃなきゃ『マネ』できねえんだろ? あ゛!?」

ジャン「俺が【犯人だって言いたいんだろう!!!】」


 <言弾『ジャンの行動』


エレン「それは違うな」

エレン「――お前は今回、わざわざ俺、ミカサと組んで捜査をした。

    そして、捜査中の移動場所について、お前はさりげなく行き先を誘導したよな」

ジャン「ああ、そうだな。俺はお前に気持ち悪いくらいひっついたよ。

    それが、全部リヴァイを怪しむように仕掛けたって、そういうことか?」

エレン「そうじゃない。ジャン、俺は、その行動の理由を知りたい。

    お前は、何か理由があってその行動をとった」

ミカサ「・・・・・っ(エレン、頑張って・・・!)」

エレン「知っていることを話せ。行動の理由も、話してくれ。

    そうすれば後は・・・俺がお前の・・・無罪を証明してやる」

ジャン「・・・む、ざい?」

エレン「ああ。そうだよ」

ジャン「は、無罪? いや、無理だろ、俺以外誰がいるってんだ・・・ははっ」

エレン「こっの・・・チキン野郎・・・いいからとっとと俺に話せよ!!!」

生徒(何でキレ気味!!?)

ジャン「・・・・・っ・・・・・・・ハア

    っ、わかった・・・話す・・・ちょっと、長くなるけどな・・・」


 皆が注目する中、苦しげに眉間に皺を寄せ・・・ジャンは静かに、語り始めた。




 -----------------


 【ジャンの回想】


 『裏切り者』の存在を知ったとき、真っ先に疑ったのがリヴァイ先輩だった。

 リヴァイ先輩の立場を考えれば、ハンジと内通しているのは当然だと、俺には思えたんだよ。

 昨日の夜、早速リヴァイ先輩の動きをマップで注意深く追っていた。

 先輩が夜時間の前に保健室へ向かったため、俺は生徒手帳を寝室に残して尾行した。

 
 『・・・・・・ちがう・・・・』

 『なにが・・・・・レンは・・・・・』


 中でリヴァイ先輩は誰かと話していた。内容は解らないが、言い争っているようにも聞こえた。

 俺はやっぱり、こいつは裏切り者だろうなと、そう思った。

 先輩が退室した後、一応俺も理由をつけて入室し、ちょっとした探索をしたけど、

 まあ、当然だが、手がかりなんて何にもなかった。


 俺が、先輩が裏切り者だったら、ということを想定したうえで、1番恐れたのは、

 先輩が、マルコから聴いていた『伝説の兵士』であるかもしれない事だった。

 この閉鎖空間で何かが起こったとき、俺は絶対に『死神』には勝てない・・・

 ・・・それに対する恐怖があった。俺は眠れなくて、気付けば徹夜で先輩を見張っていた。


 そして、次に動きがあったのが――そう、夜時間になった後、午前0時だ。

 先輩は何かを腰元に携えた状態で、足音ひとつ立てず大浴場へ向かってた。


 中で何があったのかは知らない。俺はサウナルームに隠れて待つことにした。

 先輩はまた誰かと話し、終いには殴り合いのような音が聞こえた。

 ・・・正直、俺はすっかりビビってよく覚えていない。


 しばらくして、まず顔に覆面を被った知らない奴が出てきて、何処かへ去って行った。

 続けて、頭から少し血を流し、全身が何故かドロドロになった先輩が出てきたんだ。


 『・・・チッ!』


 先輩は舌打ちをしながら服を脱ぎ捨てると、下着一丁になって脱衣所を去り、

 アニが見たとおり、先輩は脱ぎ捨てた服をすぐに洗濯していた。
  

 先輩保健室に行った後部屋に戻ったため、俺も、一度部屋に戻った。


 時間が少し経ったら、先輩はおそらく洗った洗濯物を取りにもう一度洗濯室へ向かい、

 そして再び部屋に帰ると、今度こそそこから動かなかった。


 そして、午前3時くらいだったか。

 やっぱり俺は眠れずに、暇をつぶしながら先輩の動きを追っていた。

 ・・・動きがあった。


 先輩ではない。意外にもライナーが、部屋から出たのだ。

 しかも、大浴場に向かって。


 俺はまたサウナに隠れた。ライナーがやっぱり誰かと言い合いになっていて、

 そして、先輩の時と同じように覆面の人物が出てきて去って行った。

 でも、ライナーは出てこなかった。

 俺は気になって、気になって・・・ビビって、ビビって・・・

 さらに時間が経過するのを待って、そして大浴場へ向かった。

 そこで見たものは――。




 -----------------


ジャン「――お前らが知っている通り、あの状態で倒れているライナーを見つけたんだ」

アルミン「つまりジャンは、本当の意味で第一発見者だったんだ」

ジャン「ああ。俺はすぐハンジを呼んで、あの時点で治療をするよう頼んだ」



『おっけー。この場で応急処置すれば大丈夫。見た目派手だけど大したことないから』

ジャン『・・・なあ、悪いんだけど、このままライナーを放っといても平気か?』

『?? うん、まあ大丈夫だよ。誰か呼びに行くかい』

ジャン『なあ、朝になるまで放っておいても大丈夫なレベルだよな?』

『えええ? ま、まあ大丈夫だけど・・・』

ジャン『ハンジ、学園長。俺が発見者だってこと、言わないでくれ。』

『うーん、いいの、それで』

ジャン『ライナーには後で殴られる。・・・せっかくだから、この状況を使いたい』




ジャン「あとは、朝、エレンやミカサと上手いこと発見者になった。

    事件発生のアナウンスは、発見者が3人でたら、っていう決まりだからな」

サシャ「なるほどー。あたかも初めて見たように装うためですね! うまーい」

ジャン「俺は、リヴァイ先輩が、ライナーを襲ったわけじゃねえ事を、始めから知ってたんだ」

アニ「知らない振りをしたのは・・・」

ジャン「ライナーのことは抜きにして、それでも先輩は行動が不可解だった。

    だから俺は、リヴァイ先輩が犯人だと声をあげることで、

    先輩が何かリアクションをするだろうと待っていたんだよ」

ベルト「そうか、本当に僕たちと同じ立ち位置なら、自分の無実は正直に主張するはずだ」

ジャン「・・・だけど、いくら責めても、何を言っても、

    先輩は、絶対に自分が『やっていない』とは言ってくれなかった。

    どんな事情があるのかは知らねぇけど、あんたは俺たちと同じ立場の人じゃねぇ」

リヴァイ「・・・・・・・・・」

ジャン「最終的には俺が全部言えば、正しいクロの話に軌道修正できるだろうと思ってた。

    浅はかだよなあ・・・先輩の次に怪しいのは俺だってのに・・・はは」

ミカサ「どうして・・・どうして、言わなかったの?」

ジャン「・・・・・・いや」

ミカサ「もう、私を、エレンを信用してないから?」

ジャン「・・・・・・」

ミカサ「ジャン。あまり、私たちを見くびらないで、ほしい」

エレン「まったくだよ。この馬面馬鹿野郎が!」

サシャ「ジャンの臆病さは筋金入りですね。なんだか安心しました」

アルミン「良かった・・・何とか修正できた」

ジャン「・・・悪ィ・・・・・っごめ・・・」

エレン「まあまあ・・・さてと、今の話はジャンの作り話だ!」

ジャン「っ!!?」ビク

エレン「――とでも言いたげな奴がチラホラいるな?」

ジャン「・・・・・・」ホッ

ユミル「・・・そりゃあねぇ」

クリスタ「でも。証明するんだよね? ・・・エレンが」

アニ「じゃあ、とことんやらないと、ね」

エレン「ああ・・・・・・・」チラ

リヴァイ「・・・・・・・」

エレン(貴方のことは、また今度だ・・・今はまず! 犯人を暴いてやる)


ベルト「――今の話、ジャン以外に目撃者がいないってところが痛いよね」

アルミン「そう。彼の話には、午前0時、午前3時頃に、それぞれ『覆面』を被った人物が登場する」

ミカサ「普通に考えたら、状況的に覆面の正体こそがジャン・・・

    と、言われてしまっても、ジャンは反論できない」

アニ「そうだね、そうなってしまう」

ミカサ「でも大丈夫。私たちには【覆面の正体がジャンじゃないという証拠】があるっ」


 <言弾『捨てられた覆面』をぶつける


エレン「それに賛成だ」

エレン(ここは・・・ミカサに任せよう)


 大切な友人を救いたいというミカサの気持ちを汲もう。

 ちょっぴりジャンに悔しさを感じたけど、ちょっぴりだから忘れることにした。


ミカサ「トラッシュルームでコニーが見つけたもの・・・

    それこそが、クロが被ったとされる『覆面』。コニー。見せておしまい」

コニー「あらほらさっさー」バン

コニー「全国の女子高生の皆さん! これが、悪の覆面です!」

アルミン「もう一声」

コニー「さらに、内側に数本だけついてた、クロのものと思われる髪の毛です」ガサッ

クリスタ「黒っぽい・・・髪の毛、だね」

サシャ「クロだけに!」

ミカサ「そう。ジャンの髪は淡くて少しくすんだブロンド」ドヤ

ベルト「なるほど、だから覆面は違う人間が被った可能性があるんだね」

ユミル「私は掃除当番だったけど、昨日はそんなものなかったな・・・どこで見つけたんだ?」

コニー「トラッシュルームの焼却炉!」

エレン(なるほど犯人は焼却しようとして・・・)

コニー「――の、裏側の埃が溜まったところ!!!」

アニ「どこまで細かく探したんだい、あんたは」

ジャン「お前の根気に脱帽するわ」

エレン「そうか、逆に見つけにくいな。焼却炉の裏ってのは・・・」ナットク

ユミル「一応聴くけど・・・学園長さんよ、共犯だった場合のメリットは?」


『うーん。クロは1人だから、オシオキも共犯にかかわらず、クロかそれ以外になる』


ミカサ「うん」


『だけど前回ミカサやエレンが、アニとは違うオシオキを受けたように・・・

 共犯がいたとしても別に用意したオシオキを受けてもらうことになるから。

 協力しても損しかないよね。クロと違って絶対にオシオキを受けるわけだから』


ベルト「あからさまに協力してもデメリットが大きいってことか」

ユミル「・・・でも、ジャンと兵長さんが手を組んでる可能性もまだ考えられそうだな。

    だって、リヴァイさん、ここから卒業する気がなさそうだし?」

リヴァイ「・・・・・・・・」

アニ「つまりジャンの証言は作り話ってことがいいたいの・・・」

エレン「単独犯だよ。これは」キッパリ

アルミン「くす・・・まあ、おいおい証明して行こうよ。単独で出来る人間がいるってことを」

アニ「? あ、ああ・・・」

サシャ「うーん、何か忘れているような・・・」

クリスタ「もう【手がかりなんてない】、んじゃ、ないかな・・・」オズオズ


 <言弾『61』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「ライナーは、ほんとに凄い。被害者は現場にもう1つ手がかりを残していた」

コニー「そうだシャイニングメッセージ!!!!」

サシャ「それだああああ!!!」カッ

アルミン「うるさいよ、君たち」ニコ

ミカサ「現場にはシャ・・・ダイイングメッセージが残されていた」

ジャン「ああ。ライナーがもたれかかった壁に書かれていた血文字だな」

アニ「いや死んでないけどね。」

ベルト「でも・・・『61』ってどういう意味なんだろう」

エレン「ベルトルト、心当たり無いか?」

ベルト「? ・・・いや、解らないや」

アルミン「はは、無理もないよ。ねえ、考えてみて。

     これはライナーが背を向けていた壁に書かれていたんだよ」

エレン「右手で書こうとすると・・・俺たちから見たとき、

    文字の『上下左右が逆転』して見えると思わないか?」

ベルト「・・・・!」

リヴァイ「なるほど・・・正しくは『19』だな」ポツリ

エレン「その通りです、小声で呟いたリヴァイさん!」

リヴァイ「」(呆気)

エレン「さらに・・・」


 <言弾『朝日の銭湯絵』を提示


エレン「その壁に描かれていたのは、『朝日』の絵・・・つまり」

ベルト「太陽の絵・・・だ」

エレン「・・・何か連想しないか、ベルトルト」

アルミン「クリスタは・・・?」チラ

クリスタ「・・・・・・・」

アルミン「だろうね・・・」

ベルト「そうだ・・・タロットカード・・・タロットカードだよ、これ!!!」

アニ「どういうこと」

ベルト「ライナーと僕で、昨日クリスタにタロットの基礎を習ったんだ。

    宗教的な話もあって結構面白くてさ・・・

    クリスタの持ってる大アルカナのカードって、それぞれに番号と意味があるんだよ」

コニー「ああ、あの毒舌占いか」

エレン(ぶっちゃけ俺は内容を知らないけど・・・・・賭ける!!!)

ベルト「『太陽』は『19』番目のカードだ。間違いない、タロットだよ。ね、クリスタ」

クリスタ「・・・・・・・」

ベルト「・・・・クリスタ?」

クリスタ「え? あ、うんっ」ニコ

ミカサ「・・・・・・」

エレン(あと、少し・・・)

ジャン「そうか、昨日は、みんなクリスタのタロット占いをして貰ってたんだな。

    そして、その後でライナー達はクリスタから勉強し、知識を得たってわけか」


 <言弾『タロット占い』を提示


エレン「そう、ライナーには、知識があった。そして俺たちには全員、

    タロット占いをしたという共通項がある」

ミカサ「昨日の占いのカードの中に『太陽』が含まれてる人間・・・?」

ジャン「そうか・・・そういうことなのか・・・」

アルミン「ライナーも解りにくい事をするよね。太陽から咄嗟に連想した結果なんだろうけど」

アニ「あ、じゃあ私、出たカード『太陽』が入ってた・・・」

エレン「そうか。自己申告は嬉しいぜ、アニ」

アルミン「さて、クリスタ」

クリスタ「っ!!!!」ビクゥ

アルミン「昨日の占い結果、覚えてる?」

クリスタ「覚えてないよ・・・私、そこまで頭良くないし」

アルミン「キミが記憶してなくても・・・他のものが記録してるよね?」

クリスタ「し、しらない」

アニ「・・・・クリスタ・・・昨日私に言ったよね・・・。

   『出たカードは手帳に記録してるから』って・・・嘘なのかい?」

クリスタ「・・・あ・・・」

エレン「クリスタ・・・頼む」

クリスタ「・・・覚え、てるよ・・・っ」ウル



クリスタ「・・・あ・・・アニ」フルフル


クリスタ「リヴァイ・・・せん、ぱい」フルフル



クリスタ「・・・・・ゆ、・・・・・・っユミル・・・・ック」グス



ユミル「・・・・・・・」


アルミン「クリスタ・・・本当に・・・本当にありがとう」

クリスタ「っあ・・・・ヒック」

エレン「・・・さて、この中で、黒系の髪を持っているのはリヴァイさんと、ユミルだ」

ユミル「ああ、そうだな」

アルミン「保健室、ユミルも入退室記録があるけど」

ユミル「ふぅん、だから?」

ミカサ「・・・話すつもりないの?」イラ

ユミル「何を? だって、私がやったなんて証拠、無いだろ」

アニ「・・・髪の毛」

ユミル「兵長さんの髪と、私の前髪、長さは同じくらいだよな?」

コニー「・・・・性格ぶーす」コソッ

サシャ「こら」ゲンコツ

エレン(くっそ、どいつもこいつも素直じゃねえ奴ばっか!)

アルミン「はあ・・・ねえ、ユミル」

ユミル「なんだ?」

アルミン「あえて避けていた話をこれからするけど、先に自分から話すつもりはない?」

ユミル「私はやってない」

クリスタ「・・・・・・」

アルミン「そうか・・・じゃあ話そうか。

     クロがリヴァイ先輩に濡れ衣を着せようと『電子生徒手帳』を偽装したって仮説。

     あれはまだ、続きがあるんだけど」

ベルト「続き?」

アルミン「あの話、あれだけだと矛盾だらけなんだよね」

アニ「・・・本物のライナーの手帳はどこに行ったんだ、ってことかい?」

アルミン「そう。あの時ジャンの話に逸れたからか、誰も突っ込まなかったけど

     そこの証明をしないまま、ここまで来たわけだ」

コニー「おー。そういえば。おー」

サシャ「コニー、絶対意味わかってませんよね」

ミカサ「そう。壊れてないなら、アイコンが消えてしまった事実を証明しないといけない」

アルミン「単純なんだけど、それはクロが手元に持ってると思うんだよね。

     ――完璧に電源を切った状態で

エレン「・・・そういうことか」

ベルト「でん、げん?」ポカーン

アルミン「さっき、休憩中に自分のをいじったんだけど裏はふたになっててソレが開くんだよね」


 アルミンは自分の電子生徒手帳を取り出して、爪で裏をひっかき、

 ぱっかりと蓋を取り払ってしまった。


アルミン「で、色々とごちゃごちゃして解りづらいんだけど・・・

     ここに、電源のスイッチ、あるんだよね」


 本当にごちゃごちゃと外国語で書かれている文字盤の一部を、彼は長押しした。

 数秒して、フッ――と画面が暗くなる。


アルミン「ねえ、みんな。自分の手帳のマップを見てよ」

エレン「・・・・・ないな」

サシャ「あれ、アルミンのアイコン消えてますよ」

アニ「ほんとだ」

アルミン「ね。つまり、クロはライナーの生徒手帳を、電源を落として保持してるってこと」

エレン「クロがマルコの生徒手帳を使う理由は『夜0時にライナーが呼び出された』、

    俺たちにそう思わせること。だから予め壊した他の手帳を用意した。

    ・・・ライナーの生徒手帳はまだ壊れていないってことだな」

ユミル「それがなんだよ! ライナーの生徒手帳は捜査開始までちゃんと寝室にあっただろ?

    アニやベルトルトが見てる・・・クロに【盗む機会なんてなかった】だろうが!」


 <言弾『寝室の探索者』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「・・・ユミル。クロがライナーの手帳を懐に入れたのは・・・

    ――捜査の前じゃない、捜査が始まってからなんだよ」

ユミル「・・・・・っ」

エレン「ハンジぐるみから得た情報だから、大切な証拠になるのかな・・・。

    捜査開始後、真っ先にライナーの部屋を訪れたのは、

    ユミルとクリスタ・・・お前たち2人だ」

ベルト「そうか・・・探索と称してすぐにライナーの手帳の電源を落とし、

    クリスタの目をかいくぐってマルコの手帳とすり替えれば・・・」

エレン「そしてまだ持っている筈だ、ライナーの手帳を。このあと完璧に壊して破棄するために」

ユミル「・・・・・・」

アルミン「一連のことがすべて出来たのは、ユミル、キミしかいない。キミにしかできないんだよ」

エレン「話してくれ、ユミル」

クリスタ「・・・ゆ、みる・・・」


ユミル「・・・いいや、まだだ。私は認めない。絶対に認めるわけにはいかねえんだ!!!」


ジャン「何でだよ・・・言った方が・・・お前のためだろうが」

ユミル「うるせえ腰抜け! てめぇなんて自分の尻ぬぐいをエレンにさせただけの癖に!!」

ジャン「ブチ・・・ぁんだと、このアマ!!!」

ミカサ「落ち着いて・・・ジャン。ジャン・・・!!」ガシ

ジャン「・・・・・っの・・・・! フー フー」

サシャ「あわわ・・・・」

コニー「こええよ・・・なんで俺ここにいるの・・・・?」

アニ「落ち着いて・・・私たちは冷静じゃなきゃダメだ。ユミルのためにも」

ユミル「は・・・っ、お前らなn」モゴッ

ベルト「ユミル。悪態ならいつでも聴いてやるから」

エレン「リヴァイさん・・・」

リヴァイ「・・・・・なんだ」

エレン「貴方は昨夜0時、大浴場には・・・誰に呼ばれたんですか」

リヴァイ「俺が答えるとでも?」

エレン「ええ、答えてください!! 貴方がどんなにこの裁判が嫌いだとしても」

リヴァイ「・・・・・・・」

エレン「お願いです・・・もう、ユミルを楽にしてやってくださいよ!!!」

リヴァイ「・・・・・・・」グッ


リヴァイ「“あなたの過去を知っている。あなたが失った未来も知っている”」


エレン「・・・・・!」

ユミル「・・・・・」


リヴァイ「“私は記憶を持っている。あなたの全てを暴かれたくなければ、”

     “番の剣を携えて、今夜0時、お一人だけで大浴場へ来て欲しい”」


リヴァイ「――部屋のドアの間に挟まってた紙切れで、俺はあっさりと釣られにいった」

エレン「リヴァイさん・・・!」

リヴァイ「まあ、つまり。それだけの理由がその紙切れの中にあった・・・」

ミカサ「時間通りに?」

リヴァイ「そう。覆面を被った相手は俺のことを知り尽くしていて・・・

     ご丁寧にも、動きを封じるためのジェルなんて浴室に撒き散らしてやがる・・・

     クソ気持ち悪ィし、うぜえし・・・最悪だったな・・・」

サシャ「ジャンの言ったことと、つじつまが合いますね・・・」パアァ

リヴァイ「まあ・・・色々あってとっくみあいになった」

リヴァイ「その中で俺の持ってるブレードの刃は折れて、俺も額にだけ傷を負った。

     相手はそのブレードが目的だったのか、折れた刃を回収してすぐに消えたな」

ジャン「じゃあ、やっぱり」

リヴァイ「ああ。ジャン・・・お前の察したとおり、

     俺は『戦禍の死神』なんてクソだせぇあだ名をつけられた・・・兵士だ」

ミカサ「あなたは、保健室に行って、すぐに服を洗濯した」

リヴァイ「その通り・・・ハンジを呼び出して保健室に行き、洗濯して、クソして寝た。

     朝起きたら、こうなってた・・・それだけだ」

アルミン「相手は・・・わかっていますよね? 解らないはずが無い」

リヴァイ「そう焦るなアルミンよ・・・まあそうだな、体格に、無理に低くした声・・・

     十中八九お前だろう・・・ユミル」

ユミル「・・・・・・・ぃ・・・ゃ・・・」ガタガタ

エレン「・・・今回、事件は複雑だ・・・振り返って。それで最後にしようぜ、ユミル」


 ※ エレンは当事者に代わって事件の全体像を振り返ることがあります。

   これを『クライマックス推理』といいます。




エレン「・・・これが、事件の全貌だ!」




 【 ク ラ イ マ ッ ク ス 推 理 】


 〔PATT 1〕

 事件は昨日、夜時間に入ったあと、午前0時より始まった。

 『伝説の兵士』ことリヴァイさんは自身の弱みを握る何者に呼び出された。

 つい、先ほどまでお湯を張っていた、まだジメジメとしている大浴場。

 彼を待ち構えていた覆面の人物こそ――今回の犯人だ。

 犯人は昨日、夜時間までに持ち出した大量の医療用ジェルを撒き、

 リヴァイさんの動きを鈍くするようにした。

 大胆にも、犯人は準備をしたうえでリヴァイさんを襲ったんだ。



 〔PATT 2〕

 そしてその状況で2つの材料を手に入れることが出来た。

 ひとつは、リヴァイさんが午前0時に大浴場を訪れた・・・という事実。

 もうひとつはリヴァイさんが持っていた特殊な剣の残骸だ。

 犯人は続けて午前3時、今度は掃除もされ乾ききった大浴場にある人物を呼び出した。

 その人物こそ、今回の被害者――ライナー・ブラウンだ。

 ライナーは、覆面の人間に『伝説の兵士』を彷彿とさせる動きで襲われた。

 当然、犯人としては正体がばれないように細心の注意を払っていただろう。

 だけどライナーは何らかの理由で犯人の正体に気付いてしまった。

 気絶の間際、寄りかかった壁の絵が『太陽』だったために、

 そこからタロットカードを連想し『19』という手がかりを残したってわけだ。



 〔PART 3〕

 さて、一連の事件において、最大のイレギュラーは、目撃者が存在したことだった。

 個人の判断でリヴァイさんを追跡していたジャンは、午前0時、午前3時と、

 まさに覆面の人間が犯行を重ねる場を目撃してしまったんだ。

 普通なら、この時点で事件が露見するはずだった。

 しかし、ジャンはこの状況を利用してリヴァイさんを裁判上で追い詰めようと考えた。

 そのため、事件の発生は次の朝――みんなが朝食に顔を出してからになってしまったんだ。

 これが、事件が複雑化した原因のひとつだ。



 〔PART 4〕

 一方、犯人は描いたシナリオに沿ってしっかりと仕上げの段階に入っていた。

 証拠品として現場には『よくしなる刃』を残し、『伝説の兵士』の存在を強調する。

 ライナーを『午前0時』に呼び出したかのように装ったメモを彼の部屋に残す。

 朝、明るくなるまで事件が露呈しないように、ライナーの生徒手帳もおいていく。

 ――そして事件が発生したあと、犯人は真っ先に動いた。

 最後の仕上げとして、ライナーの手帳と、あらかじめ壊しておいたマルコの手帳を、

 捜査中、一瞬の隙を突いて入れ替えるために。

 こうして、事件の発生時刻を偽装したあと、犯人は淡々と捜査を続けた。

 


エレン「――そう、一連の行動を1人で全てこなすことは不可能じゃ無い。

    そして、実際にこなすことが出来たのは・・・」


エレン「ユミル。お前しか、いないんだ!」


ユミル「・・・・・・・・・・・・・・」


クリスタ「・・・・・・っ・・・」


 シ ン ・・・


ユミル「・・・あー・・・はいはい。私がやりましたよー。

    兵長さんを引っかけて、予想通りノコノコやって来たライナーぶっ叩いて、

    そして皆さんの在籍年数を引き延ばそうとしたのは、紛れもなく私だよ」

ベルト「!! ユミル・・・なんで・・・・」

ユミル「『超高校級の補欠生』にしちゃあ、随分頑張ったもんだろ、なあ?」

エレン「・・・・・・補欠、生・・・?」

クリスタ「え・・・・?」

アルミン「ユミル、僕みたいに記憶が無いって話をしてたよね」

ユミル「ああ、あれ? 嘘に決まってんだろ。最初からしっかり全部覚えてるよ、しっかりとな。

    あんたほど頭がよくないから、私は奪われなかったんだよ、あんたみたいに!」

アルミン「!!! なるほど。きみが『裏切り者』だったわけだ」

ユミル「まあ間違ってないなあ。でも私は、特にハンジぐるみの手下でもなんでもねえからな?

    つまり、私は私の意志で、お前らを騙してやろうと思ったわけだ」

ベルト「ユミル・・・キミはなにをやったのか解ってるのか・・・!?

    刃物まで持ち出して、ライナーは下手をしたら死んでたかも知れない」

ユミル「あははは!!!! なにそれ、教師みたいな科白だなあ。

    そうそう、結構殺すつもりでいったよ。あのゴリラをぶっ叩くのはなんせ骨が折れる!」

ベルト「・・・・・・・ふざ、けるな・・・・・・・!!!」

アニ「ベルトルト。やめよう・・・こんな奴・・・怒鳴る価値もない」

ユミル「そうそう価値ねえよ。だって私は、ただおこぼれで入学しただけの『補欠』だからな!」

クリスタ「ユミル!!!!!」

ユミル「・・・・・・」ポカーン

クリスタ「貴女が今回悪い事をしてるっていうのは、ここにいる誰もが知ってる。

     バカの一つ覚えみたいにそれを強調しなくていいから、ちゃんと話して!」

ユミル「・・・・・・」ポカン

全員(天使が怒鳴った・・・)

クリスタ「・・・・・・・・」

ユミル「おい・・・とっとと投票しろよ」

クリスタ「ユミルっ」ハッ

ユミル「・・・投票」


『はーい。わかりました。では投票タイムー』




 「投 票 結 果」


  ユミル・・・11票


 
『満場一致ですねー。その通り! クロはユミルさんでした!!!

 ユミル、あとでオシオキですのでー・・・待っててね?』


エレン(なんか・・・いつものハンジの声じゃない・・・)ゾワッ

ユミル「・・・で? つっても私は、私の動機なんて全て話せないよ。

    それでも良ければ質問してこいよ」

サシャ「随分大人しいですね。クリスタすごいです」

アルミン「事件の流れだけど・・・あれ、リヴァイさんが全てを話したらすぐにバレたよね。

     そのリスクを承知したうえでやったのかい」

ユミル「・・・そのオッサンは話さねえよ。絶対に話さねえと確信して罪を被せようとした」

全員(・・・・・・・・・オッサン?)

リヴァイ「ああそうだな・・・正解だ。俺は絶対に話さねぇつもりだった。

     ある意味、俺は共犯なんだろう・・・」

エレン「・・・・・・」

エレン(そしてその理由も、絶対に俺たちに明かしてはくれない、これからも)

リヴァイ「幻滅したか、エレンよ」

エレン「わからない・・・ユミルも、リヴァイさんも・・・どうして」

ユミル「言わないし、言えない。・・・『卒業』できたら、身にしみて解るかもな」

ジャン「・・・・・・卒業、出来たら・・・?」

ミカサ「ユミル、どうしてライナーを傷つけてまで、ここに残ろうとしたの」

ユミル「・・・ここが最後の砦だよ。卒業したら、壁の外に戻らなくちゃいけない。

    ここにいれば、何も考えずただ、ただ安寧の中で過ごしていけるだろう」

クリスタ「・・・・・あなた、まさか・・・・・・」

エレン「安寧ね・・・確か、クリスタの占いの中に出てきた言葉だな」ポツリ

クリスタ「私が・・・私の占いの中で『変わりたくない』と言ったから・・・?」ワナワナ

ユミル「・・・・・・・」

コニー「どういうこと、だ?」

クリスタ「・・・私、どうしようもない人間なの。

     引っ込み思案で、ネガティブで、建前が上手なだけの。バカみたいな人間なの」

サシャ「ほんとにネガティブですね。悲観に向かってアクセル全開です」

クリスタ「占いは、そんな私がハッキリ物事を言える、大切な道具だった」

ミカサ「あなたの、本音ともいえる・・・大切な、声だった?」

クリスタ「そう。ふふ。ユミルはそれをよく知ってた。私の大切な親友だから」

ユミル「こいつの本音混じりの占い結果ってのが・・・不思議と的中するんだ。

    それが巷では評判だったんだから、『天使のお告げ』ってのはあながち嘘じゃ無い」

リヴァイ「なるほど・・・お前の本心が・・・」ポツリ

クリスタ「私は自分で自分を占ったとき、暗にこう言ったの。言ってしまったのよ。

     『私は今が楽しい、変わりたくない、このままでいたい』」

ベルト「そうか・・・きみは」

クリスタ「・・・私は、ここが好き。特別外へのあこがれなんてないし、

     ユミルがいて、みんながいて・・・この状況が長く続けば良いと思っていた。

     それくらい、この学園の中が好きなの」

アルミン「・・・ユミル、キミは記憶をしっかりと持っている。そのほかにも、

     この学園のことについてよく知っている、そうだろう?」

ユミル「そう・・・私はこの学園の『存在意義』を知ってる。そのうえで言う。

    ここはクリスタが思うように、居心地が良くて快適な『楽園』で間違いないと」

アニ「楽園・・・ね・・・」

クリスタ「ユミル・・・私が、ここから出たくないと思ったから、

     あなたは・・・あなたはクロになって、在籍年数を増やそうとしたの?」

ユミル「・・・いいや。元からクロになるつもりで計画と下準備はしていた。

    あの保健室のジェルは昨日、午前授業の間の休憩時間で盗んだんだしな。

    だけど、最後の戸惑いを、クリスタのせいにすることで吹っ切ってしまった。

    『クリスタが望んでいるなら』そう思うことで、私は計画を実行に移した」

クリスタ「ユミルの、ばか・・・!!」


 クリスタはユミルの側により、弱々しい拳で、彼女の胸元をぽかぽかと叩いた。


クリスタ「ばか、どうして・・・ユミルなんか嫌い、・・・ばか!!」ポカ ポカ


ユミル「ああ。・・・嫌われたっていいんだ。ここでずっと笑ってくれるなら。

    ここで、ただ平穏に過ごしてくれるなら、なんだって、よかっ・・・」


 ポ タ


エレン「・・・・・・っ」


 ユミルは、静かに涙していた。

 彼女は静かに後ずさりし、そして広い場で・・・膝をついた。


ユミル「・・・おねがいだ・・・おねがいだから・・・・

    お前ら、マルコみたいに『卒業』しないでくれ・・・っ!!!

    本当に、すまなかった・・・だけど・・・・・・・

    ライナーへは一生償うから、お願いだ・・・外に出ないでくれ・・・・っ!!!」


リヴァイ「・・・・・・っ」ギリ・・・

ベルト「なんで・・・ぞんな、今さら泣くなんて、ずるいじゃないか・・・っ」

アニ「・・・・・・」


???「まったくだ、人のことゴリラと言っといて、

    お前こそゴリラみたいな泣きっ面さらしやがって」


ベルアニ「・・・・・・・・・!!!」

ユミル「・・・・・・・・っラ、い・・・・」


 裁判場の入り口になっていたのは、頭を包帯で覆われた・・・


全員「ライナー!!!!!」

ライナー「・・・・っ・・・・おまえらうるさいぞ・・・こっちは怪我人だ」

ベルト「ライナー! 歩いても大丈夫なのかい?」バッ

アニ「というかなんで歩いてるんだよ、頭なんて包帯ぐるぐる巻きじゃないか!!」バッ

ライナー「いや、まあ怪我は大したことねえよ。身体の節々が痛いけどな・・・」

コニー「ライナー!! よかった、元気そうじゃねえかあああっ」ダキッ

サシャ「うううう、よかったぁぁぁ!!!」ダキッ

ライナー「いっってええよ! ひっつくなバカ共!!!!」

アルミン「よかった・・・・」クス

エレン「ああ・・・・・・」

エレン(あれ・・・ライナー・・・・・)

ライナー「心配かけたな。悪かった」ニッコー

エレン(目元が、赤く腫れてる・・・・)

リヴァイ「・・・ライナー、お前・・・」

ライナー「? ・・・ああ、まあ・・・『そういうことです』よ」フッ

アニ「ほんと。体格いいくせに女子に負けるなんて・・・情けない」

ライナー「素人なら殺せるくらいの技術を持ってる人には言われたくないです」

ベルト「ほんと・・・グス」

アルミン「ベルトルト、泣き虫エレンじゃあるまいし何も泣かなくても・・・」

エレン「泣き虫じゃねえし!」

ライナー「なあ、ちょっとユミルと2人で話したいんだが」

クリスタ「でも・・・」

ライナー「大丈夫だ。ハンジ、ちょっと裁判場を出る。いいよな?」


『・・・いいよー!!w ・・・いっておいで』


 ライナーはユミルを連れてエレベーターに乗り込み、

 俺たちはただ、当事者たちの帰りを待つばかりだった。




 校舎 1階


ユミル「・・・強く殴ったりして、悪かった」

ライナー「あー、ほんとだよ。お前の手加減の無さにはびっくりしたぜ。

     こっちは長らく殴り合いなんざしてねえのに・・・勘弁してくれよ」

ユミル「・・・お前まさか・・・」

ライナー「だがお前の犯行動機は実によくわかる。クリスタを守りたいってことだろ?」

ユミル「あ?」

ライナー「世間の荒波にもまれるより、お前の言う『楽園』の中にいてほしいってことだろ?

     クリスタは可愛いし優しいし天使だし、そう思うのも無理からぬ話だ」

ユミル「・・・」

ライナー「でも、お前のエゴだよ、それは。悪いが俺は・・・ここを『卒業』すると決めた」

ユミル「なんでだ・・・マルコもお前も・・・なんでだよ」

ライナー「俺は・・・この学園に来る前も、やっぱり兄貴分を気取っていた。

     しかも兄貴分という自分を演じてさえいれば、みんな慕ってくれる。

     ・・・随分と気分のいい話だ。バレることもない」

ユミル「ここでもずっと『兄貴』でいりゃあいいじゃねえか」

ライナー「・・・でも、変わらないんだよな。俺が、ジャンなんかよりずっと心が弱くて。

     本当はどうしようもなく無様な人間だって真実を、俺が知っている限り」

ユミル「・・・・・・」

ライナー「俺の生まれ、環境。俺を作り上げたものは否定できない。

     弱い人間は弱いなりに、這いつくばって、食い付いて生きていくしかねえ」

ユミル「バカだな。頭おかしいよ。私が言えたモンじゃねえけど、てめぇは頭がイッてやがる」

ライナー「・・・それが俺だ。だからユミル・・・今度『外』で会った時は・・・

     その時は今回殴られた分、しっかり仕返してやるからな」ニコ

ユミル「・・・そうだな、その時は・・・大人しく殴られといてやるよ」ニッ

ライナー「じゃあ、あいつらのところ戻ろうぜ」

ユミル「ライナー」

ライナー「なんだ?」

ユミル「・・・またな」

ライナー「・・・・ああ」




 裁判場


クリスタ「ユミル!!!」

ユミル「よう、クリスタ」

クリスタ「・・・あのね・・・占いの、結果なんだけど・・・

     人の本質って少しずつ変わっていくんだよ・・・その人のカードは変わるんだ」

ユミル「・・・うん」

クリスタ「私、変わりたくないっていう自分から、変わりたい」ウル

ユミル「クリスタ」


クリスタ「ユミルのバカ、アホ・・・っ。水臭いよ、なんで、自分だけでなんでもやろうとするの。

     そんなことだから故郷で『番長』なんて呼ばれちゃうんだよ・・・」

ユミル「ごめんごめん」クス

クリスタ「あんまり私をみくびらないでほしいな・・・

     私、自分の力で、『卒業』してみせるから。だから・・・待っていてほしい」

ユミル「! く・・・」

クリスタ「ユミルに追いつくから、だから・・・壁の外で、待っていてほしい」

ユミル「・・・・・・」ギュ

クリスタ「・・・・・っ」ギュ

ユミル「待ってる」



ジャン「・・・・・・・・・フゥ」

ミカサ「ジャン。そんなに落ち込まないで」

ジャン「情けねえ。疑心暗鬼って言葉どおりだ。俺のクソさは・・・」

アルミン「いいんじゃないかな。キミらしくて」

ジャン「・・・・うるせ」

ミカサ「本当に弱いだけの人間は、行動なんてできない。

    貴方は間違いなく、私の頼れるファンクラブ会長・・・」

ジャン「・・・・・・ふっ。エレンに、悪いって伝えてくれ」

ミカサ「だめ。自分から言って」

ジャン「・・・・やだよ」ニヤ

コニー「っとに、ジャン。俺が覆面見つけてなかったら危なかったんだぞ」ドヤ

サシャ「偉そうですねえ。私は、ジャンがアホなこと、最初から知ってましたからっ」ニヤニヤ

コニー「そうだサシャ、カツ丼作ってくれよ。カツ丼!!」

サシャ「いいですけどー。その代わりに芋をください!!」

アルミン「サシャ。それはちょっと安いんじゃ・・・」

ジャン「・・・・嬉しいもんだな」ポツリ

ミカサ「・・・・・・?」

ジャン「みんな、俺のクソなところを笑ってくれる・・・すげぇ、嬉しいもんなんだな・・・」

ミカサ「・・・うん」




ライナー「お前ら、心配かけちまったな。すまん」

ベルト「いいよ。キミが無事で・・・いつも通りで、すごく・・・嬉しいから」ニコ

アニ「ほんとうに・・・いつもの間抜けな面で・・・」クス

ライナー「俺は・・・色々と、わかったことがある」

アニ「・・・・?」

ライナー「ここが何のためにあるか、ユミルがなぜあんなことをしたのか。

     学園長は一体なんなのか・・・だが、悪いがお前達には言えねえ」

アニ「・・・そう、ざんねん」

ライナー「そして今、『外』に出たいと思った。だから・・・『卒業』する」

ベルト「・・・・・解ったんだ、卒業の条件が」

ライナー「アニ、ベルトルト。お前らみたいないい奴らに何も言えない俺を・・・」

ベルト「・・・信じるよ。他でも無いキミだからこそ」

アニ「・・・・行きな。ライナー」

ライナー「・・・・お前達と過ごせて、楽しかったよ」ニコ




リヴァイ「・・・なんだ、何か言いたげだな、エレンよ」

エレン「俺。貴方に何があったかはしりません」

リヴァイ「教えたつもりはないからな」

エレン「・・・クリスタは言った。貴方も俺も、今は自分の『本質』から目を背けてるって」

リヴァイ「・・・」

エレン「この学園にいれば、その理由を知ることが出来るかも知れない。

    だから、貴方が裁判中にとった行動の理由がわかるまで、貴方への憤りは保留にします」

リヴァイ「・・・お前に1つ教えてやる・・・。

     『卒業』の条件の一つは・・・『友との絆を誇れる者』だ」

エレン「え・・・」

リヴァイ「・・・」スタスタ

エレン「ちょ、待っ・・・」

リヴァイ「あ? 便所について来る気か? 気持ち悪い・・・」

エレン「・・・・っ」グッ





 「学 級 裁 判 閉 廷」




 -------------------------------

・ユミル(クロ)

 ライナーに喧嘩をしかけて怪我を負わせ、さらにその罪を他者になすりつけようと計画した罪。

 反省文765枚の刑。1週間クリスタへお触り禁止の刑。なおかつお嬢様言葉を使う刑。

 おやつ禁止の刑。ライナーが当番をするものについては全て代わる刑。

 午後は全て補習授業の刑(たまにコニーも混ざる)。校舎のワックスがけの刑。

 あのコニーに勉強を教える刑。

 ハンジぐるみの刑はいつもちくちくと細かいが、当のユミルはどこかと晴れやかな表情だった。

 被害者であるライナーが随分と親しく接したことから、他の生徒も距離を置かなかった。




ユミル「まあ・・・ライナー君、今日も厳つくて野性味があってウホウホ言い出しそうな、

    素敵なお顔をしていらっしゃいますわね」

ライナー「そうですね、あんたこそ顔に似合わない素敵な言葉遣いでいらっしゃいますね」

ユミル「おほほほほ。わたくし、だんだん楽しくなってきましたわ」

ライナー「・・・卒業の準備はできてるか?」

ユミル「ええ・・・このオシオキが終わればまもなく・・・試験を受ける予定ですの。

    貴方こそ、ご学友には『卒業』のお話をされていらっしゃいますの?」

ライナー「まあな。理由は言えないことも、たぶん理解してくれてると思う」

ユミル「お互い、美しい友情を育めているようで・・・幸いでしたわね」

ライナー「ほんとだな」

ユミル「うふふ。さて・・・この後はコニーの家庭教師のお仕事ですわ」




ユミル「・・・・コニー、おわかりですか?」イライラ

コニー「わかんねえよ。ユミル氏、俺の頭に理解させようなんざ10年早いですぞ」

ユミル「ブチッ いいからとっとと関数解けやああああああああ!!!」

コニー「はひぃぃっ!!!」ビクーッ



 -------------------------------



 そして――ユミルのオシオキ週間がが終了した翌日の朝。

 食堂にてハンジから、ライナーとユミルが、揃って学園から卒業したと話が合った。

 前回と違って、今回はみんな落ち着いてその報告を聞いていた。


クリスタ「・・・・」グッ

アニ「・・・・・・・そうかい」

ベルト「・・・・・・・・・」


 ライナーもユミルも、何かしらの覚悟を秘めた目で、『卒業』をすると宣言していたからだ。


サシャ「・・・・・・そうですか」

コニー「・・・・・・お別れは、言わないんだな」シュン

ジャン「・・・そうだな・・・でも、また、会える。あいつらにも、マルコにも・・・」


『いやあ。ちょっと寂しくなるけど、みんな頑張ろうね!!!www

 卒業した先には、希望が待っていると信じて!!!!www』


エレン「俺たちも『卒業』しようぜ。ハンジぐるみなんてやっつけるくらいの気持ちで」

ミカサ「うん」

アルミン「・・・・・・・・・」

エレン「アルミン?」

アルミン「・・・・・・ん? ああ、そうだね・・・」ニコ


リヴァイ「・・・・ハンジ・・・・」ポツリ


 『卒業』とはなんなのか。ユミルは何を知っていたのか。

 ライナーは何を知ったのか。リヴァイさんは何を思っていたのか。

 それらは解らないけれど、残されたクリスタの厳しくも穏やかな表情は、信じるに値した。

 彼女の顔を横目に見て、俺は黙々とご飯を食べた。


 今日も――、『希望ヶ峰学園』の一日が始まる。






第一章「ボーイズ・ブルー」 非日常編 END


  生徒数 残り10人

うぎゃあ、やらかしてる。第二章「ボーイズ・ブルー」です。 以上で第二章終了です。

安価の人物によって話を調整してるのでgdgd感が半端ないですが

引き続きよろしくお願いします。



 am 2:53 アニの部屋


アニ「・・・・・う・・・・・・・」グス


 『・・・・・・・・・・』


アニ「・・・ごめん、なさい・・・・」ヒック


 『・・・・・に・・・・・・』


アニ「ごめ・・・・・・・やだ・・・・」


 『この・・・・ろ・・・・!!!!』


アニ「・・・・・・・・・ッ!!!!!!」バッ


 シン・・・


アニ「ハァ・・・ハァ・・・また・・・夢・・・・」


アニ(胃がむかむかして、気持ち悪い・・・絶対、良くない夢を見ていた・・・)

アニ「もう・・・ヤだ・・・」

アニ(・・・すっかり目が覚めてしまったね・・・・水でも飲もう・・・)


 スタスタ


 食堂


アニ(・・・? こんな時間に灯りが・・・)

アルミン「・・・・・・・」ボー

アニ「・・・? アルミン?」

アルミン「あ・・・・あれ、アニ? こんばんは」ニコ

アニ「こんばんは・・・って、珍しいね、あんたが夜中に起きてるなんて」

アルミン「そう? まあ夜は出歩かないからね。アニは、よく起きてるんだ」

アニ「まあね。最近は・・・・・・ごめん、ちょっと、水ついでくる」

アルミン「うん」


 ・・・・・・


アニ(・・・あ、またボーっとしてる)テクテク

アルミン「・・・・・・・・」

アニ「アルミンっ」

アルミン「!ビク ・・・あ、アニ。びっくりした・・・」

アニ「どうしたんだい? ほんと、心ここにあらずって感じだよ」

アルミン「そう見える? ふふ、まあ座りなよ・・・」

アニ「ん・・・」ガタ

アルミン「みんな、ちょっとずつ『卒業』していくよね」

アニ「そうだね。ライナーは・・・なんだか、怪我をする前と後では、

   全く別人のような気がした・・・あいつは、何を知ったんだろうね」

アルミン「ユミルは・・・あの様子じゃ『卒業』しようと思えばいつでも出来たみたいだ。

     それをあえてしなかった。僕たちと学園生活を送るために」

アニ「その辺りの話は、今日みんなで出した結論だね」

アルミン「外には何があるんだろう。君たちの家族はどうしてるんだろう・・・」

アニ「家族も気になるし・・・ライナーは結局どうなったのか、やっぱり気になるよ」

アルミン「アニ・・・キミこそ目にくまが出来てるよ・・・大丈夫?」

アニ「ああ・・・今夜見たのが、嫌な夢だったからかもね」

アルミン「・・・朝、ライナーたちが『卒業』したから・・・?」

アニ「いいや、もっと前からだよ・・・ベルトルトにはすごく心配させてて・・・」ハァ

アルミン「そっか・・・ベルトルトって頻繁に保健室に『相談』しにきてるけど」

アニ「たぶん、私のことで・・・。本当に、迷惑かけてる・・・

   あいつ、気にしすぎなんだよ・・・人のことばっかり・・・」

アルミン「・・・まあ。そこは彼も好きでやってるんだから、やらせてあげたら?

     『超高校級のマネージャー』だし・・・ね?」

アニ「そりゃ・・・嬉しいけど・・・でも、悪いから」

アルミン「嬉しいなら素直に世話くらい焼かれなよ。それでいいじゃないか」クス

アニ「・・・そう、かもね」

アルミン「・・・・・・・」

アニ「・・・・・・・・・」

アルミン「・・・あのさ、アニ」

アニ「・・・なんだい」

アルミン「終わったことを蒸し返すようで申し訳ないんだけど・・・

     『この学園から出たくない』って思ったのは、いつ頃から?」

アニ「・・・」

アルミン「いや、単に知りたいだけだよ。何かきっかけはあった?」

アニ「どう、だったかな・・・最初から、この学園は気持ち悪い場所だと思ってた。

   だけど・・・・・・確か・・・・・・・そうだ」

アルミン「何か思い出した?」

アニ「確か、あいつの・・・・」



アニ「――エレンの顔を見ていると、『ここにいなくちゃ』って思うようになったんだ・・・」








アルミン「・・・・・・・・・へえ、そうなんだ。」








第三章「僕とあの子の×××」 (非)日常編


 相変わらず、俺の眠りは浅くて、だけど起きるのは他の生徒より遅かった。

 ミカサはあまりに遅いと起こしに来てくれる。鬱陶しいけど嫌いじゃ無い。

 今日もそうやって、ミカサは起こしに来た。


エレン「・・・・・・ん・・・・」

ミカサ「・・・エレン・・・よかった、起きた」ホッ

エレン「・・・・・あ・・・・はよ・・・・」ボー

ミカサ「うん、おはよ・・・」ニコ

エレン「・・・・あっ」ニコ

ミカサ「・・・? どうしたの」

エレン「や。なんでもねえ・・・今日は寝坊無し。いこうぜ」

ミカサ「うん。最近は、どう?」

エレン「夢はいつも見てる。よくお前とか登場してる気がするなあ・・・」

ミカサ「そ、そう・・・//」


 ミカサ。よく、他の奴らはミカサのことを「クール」という。俺の認識だと、

 こいつはよく笑うし、よく怒るし、けっこう泣き虫だし、けっこう冗談が好きだ。

 でも最近は、やっぱり少し笑顔が足りなかったんだな・・・

 久々に、わかりやすい笑みを浮かべたミカサを見て、俺はそう思った。


 ライナーが去った後、ハンジぐるみは電子生徒手帳に校則を付け加えた。


 “一、電子生徒手帳の電源を故意に落とすべからず。悪用禁止!”


 電子生徒手帳のカバーを外したら出てくる、見たことも無い異国の言葉で書かれた文字盤。

 たぶん誰かが電源の存在に気付くとは思ってなかったんだろう。

 アルミンは基本的な社会通念くらいしか記憶にないようだが・・・


エレン(実は何カ国語も話せるマルチリンガルとかなんじゃ・・・)


 賢い人間がその構造を理解してしまったのだから、学園長も規則で縛る他なかったようだ。


エレン(でもこれで解った。校則は学園長側の一存で早急に改正される)


 そうまでして残っている人間はきちんと監視したいのか、管理したいのか。

 それでも『卒業』の条件とやらが全く見えてこないのは、俺の目が節穴なのか。


エレン(ユミル、ライナー、マルコにあって、俺にないもの・・・なんだろう)


 ユミルはあの学級裁判以降、最後までユミルそのままの姿勢でみんなと過ごしていた。

 だからこそ、あそこまで取り乱した彼女が何を言っていたのかが気になる。

 解釈は枝分かれしてキリが無いし、結局残るのは、得体の知れない不安だけなのだが。


エレン「あーっ・・・腹減ったっ」

ミカサ「今日も、たくさん食べて」

エレン「ああ・・・考え事してると腹が減るわ・・・喰おう・・・」ゲンナリ


 食堂につくと・・・やっぱり人が少なくなった感じが否めなかった。

 ただでさえ、無駄に広いのに生徒は少人数だったのだから。


エレン「侘びしさもひとしおだなー・・・あれ、アルミンは?」

ミカサ「生徒手帳によると・・・保健室」

エレン「朝っぱらから? 心配だなー。始業前に様子見に行こうぜ」

ミカサ「うん」コクリ

エレン「・・・で、どこ座る?」


 いつもミカサが訊いてくることを、たまにはと俺から訊いてみた


ミカサ「えっと。じゃあ・・・あそこ」

エレン「>>安価のとこか? おっけ、混ぜて貰おうぜ」


 * 以下1から3よりご選択ください。

 1.クリスタとコニーとジャン。団らん中のようだ。ジャンもすっかり打ち解けている。

 2.アニとベルトルト。ベルトルトが気遣わしげにアニと話をしている。

 3.リヴァイさんとサシャ。どう見てもサシャが一方的に話掛けている。のれんに腕押しだ。

安価いつもミスってしまう。すみません。>>600さんお願いします

2


エレン「アニとベルトルトのとこか? おっけ、混ぜて貰おうぜ」


 こくりと頷いたミカサと一緒に、食事を手に取り、

 アニとベルトルトの座るテーブルへ向かった。


ベルト「・・・あ、エレンにミカサ。おはよ」ニコ

エレン「おはよ! お前らいつも一緒だな」

アニ「はよ・・・あんた達こそ」

ミカサ「おはよう・・・アニ。顔色が悪い」

アニ「・・・解っちまうかい? ただの寝不足だよ・・・」

エレン「いただきますっ。・・・言わてみりゃ、アニ、顔が青いぞ」

ベルト「アニ、ずっと眠れないらしいんだ。僕も色々調べてはいるんだけど」

アニ「規則正しい寝食に努めるのは慣れてるんだけどね・・・なんだろ・・・」

ミカサ「ストレス。ここの環境に人一倍適応出来ていないのでは」

エレン「そうかもなあ。アレだ、枕が変わっちゃうと眠れないタイプ!」

アニ「箱入りのあんたじゃあるまいし、そこまでヤワじゃないよ」

エレン「むっ。・・・でも俺も、眠りは浅い方だな。変な夢をよく見る」

アニ「・・・ほんと? 例えばどんな・・・」

エレン「えっと・・・多分ミカサとか両親とか友達とか出てきて。あと、誰かをこ」


 ズキッ


エレン「・・・・・っぁ!!!!」ガバッ

ミカサ「エレン!?」バッ

エレン「・・・・っ痛・・・・」ズキズキ

ミカサ「エレン? 頭が痛いの!?」

エレン「・・・・・・・・あ・・・・・だい、じょう、ぶ・・・」ハァ

ベルト「エレン、君も顔色が悪いけど・・・」

エレン「はは・・・っ。アレかな、水分不足かも・・・」ゴクゴク

ミカサ「・・・・・・・」ヨシヨシ

エレン(おかしい。夢の内容を具体的に思い出そうとしたとたん頭痛が・・・)

アニ「アルミンも、眠れないみたいだった。最近は、みんな健康面が心配だね」

ミカサ「アルミンも・・・?」

アニ「あいつ。夜中に起きてることがあるみたいなんだ。寝付きが悪い」

エレン「・・・ますます、心配だな・・・」

ベルト「やっぱり、ここから出られないことが一番の問題だよ。

    外界から遮断されている理由は解らない。だけどその状況を、

    出て行った者達は『中にいた方がいい』と言う・・・」

ミカサ「残された生徒に、混乱と戸惑いが植え付けられる」

ベルト「アルミンやジャンと図書室の本をできる限り漁ったんだ・・・

    でもやっぱり、新しい情報はなかった・・・」

エレン「・・・リヴァイさんも、長年この学園内にいるってこと以外・・・

    絶対に話してくれようとはしないな・・・意志は固い・・・」

ミカサ「いや・・・この学園は広い。手がかりは必ず、ある」

アニ「・・・・そうだね。寮にも2階があるし、校舎も上がある」

アニ「アルミンも、眠れないみたいだった。最近は、みんな健康面が心配だね」

ミカサ「アルミンも・・・?」

アニ「あいつ。夜中に起きてることがあるみたいなんだ。寝付きが悪い」

エレン「・・・ますます、心配だな・・・」

ベルト「やっぱり、ここから出られないことが一番の問題だよ。

    外界から遮断されている理由は解らない。だけどその状況を、

    出て行った者達は『中にいた方がいい』と言う・・・」

ミカサ「残された生徒に、混乱と戸惑いが植え付けられる」

ベルト「アルミンやジャンと図書室の本をできる限り漁ったんだ・・・

    でもやっぱり、新しい情報はなかった・・・」

エレン「・・・リヴァイさんも、長年この学園内にいるってこと以外・・・

    絶対に話してくれようとはしないな・・・意志は固い・・・」

ミカサ「いや・・・この学園は広い。手がかりは必ず、ある」

アニ「・・・・そうだね。寮にも2階があるし、校舎も上がある」

エレン「そうだ。ハンジぐるみは俺たちに『卒業』させるつもりはあるんだ。

    前例が3人いる以上、この学園に手がかりがあるのは間違いない・・・」

アニ「ライナーたちが『卒業』について何も言えないのは、それだけの拘束力が

   あるってことだから・・・自力で頑張るしか無いね」

エレン「根気よくいこう・・・大丈夫だ・・・」

ベルト「ああ、大丈夫だ・・・」


『ピンポンパンポーン、あー、朝の校内放送でーす。みなさんおはようございます!

 学園長ハンジよりオマエラにスペシャルなお知らせがあるよ!!』


エレン(噂をすれば・・・。でもこのタイミングなら・・・)


『ライナーくんたちがいなくなって3日経ったね。君たち相変わらず真面目で関心関心。

 てなことで、今回は校舎の3階を開放することにしました! いえーいwwww』


ジャン「っしゃあ。手分けして探索しようぜ、エレン!!!」

コニー「ジャンうるせー叫ぶな!」

エレン「おう!!」


『いやー、今回は早く開放してあげたかったんだけど、解除に時間かかっちゃってーw

 みなさん。楽しい施設もあるから是非利用してねっ! では授業に遅れないように!!』


ミカサ「・・・解除?」

エレン「・・・今日の午後にやることは決まったな。さっさと飯喰って・・・」

エレン(とりあえずアルミンとこに顔出すぞ)


 ベルトルトから、偏頭痛の解消などにも効く体操やマッサージを教わった。

 ミカサが、その黒檀のような目を輝かせて聴き入っていたのは言うまでも無い。


エレン「さて、ミカサ。保健室に・・・」

ジャン「あ、なあお前ら」

ミカサ「ジャン? どうしたの」

ジャン「アルミンとこいくんだろ? ・・・あの、俺も」

エレン「なに、お前もいくの。なんで」

ジャン「や、あいつ俺が調子悪い時、見舞いに来てくれたしゴニョゴニョ

    ・・・いいから、とっとと行こうぜ!」

エレン「ははーん? ずいぶん殊勝な心がけすなぁ」ニヤニヤ

ミカサ「ふふ」

ジャン「・・・っうぜえ・・・っ」イライラ


 俺とミカサ、ジャンは友にアルミンのいる保健室へ向かった。

 ガチャ


エレン「アルミーン?」


 シ ン ・・・


エレン「あれ・・・」

ジャン「どうした?」

エレン「いや、返事がなくて・・・」

ミカサ「・・・いない」

ジャン「え?」

ミカサ「気配が無い」

ジャン「流石です、ミカサさん・・・」

アルミン「あれ、どうしたのみんな」

エレジャン「ぎゃあああ!!!!!」ビックー!!

ミカサ「アルミン・・・後ろからいきなりはビックリする。エレンとジャンが」

アルミン「え? ああゴメン」クスクス

エレン「びっくりしたー・・・あれ、アルミンお前どっから」

アルミン「どこって、外のトイレから帰ってきたトコだよ」

ジャン「あれ、でもお前の電子生徒手帳は保健室の・・・」

アルミン「? あ! ごめん、うっかり忘れて保健室を出ちゃった」

エレン「気を付けろよー。めちゃくちゃびびっちゃうだろ!」

アルミン「ごめんよ」

ミカサ「アルミンは朝から保健室にいる。けど、大丈夫?」

エレン「そうだよ、飯とか喰ってねえだろ」

アルミン「うん、ちょっと調子悪いかも。午後の探索の方に力を入れたいし・・・

     今日は午前中の授業をサボってもいいかな・・・?」

ジャン「お前なら一日くらい休んでも大丈夫だろ。俺がノートとっといてやるよ」

アルミン「ほんとう? ジャン、助かるよ。ありがとう」

ジャン「いいよ・・・そんくらい」

エレン「・・・なんかユージョーって奴が芽生えてるな」コソコソ

ミカサ「素晴らしい。見守ろう」コソコソ

アルミン「3階、楽しみだね」

エレン「早く午後にならねえかな。とにかく、解ったことは何でも話し合おうぜ」

ジャン「そうだな。もし『卒業』が前後しても、ヒントくらいは残せるように・・・」

ミカサ「そう・・・何かを残すことは必要」

アルミン「・・・『何でも話そう』。僕たちは、仲間なんだから」ニコ


 アルミンの体調不良はアニと同じく寝不足から来ているようだった。


エレン「じゃあアルミンまたな」ノシ

アルミン「うん。またあとで・・・しっかり休むよ」


 ガチャン ・・・ シン・・・


アルミン「・・・・・・・・・」

アルミン「・・・・・・・・・・・・・・ねむ・・・・」フアァァア・・・




エレン(そーだ。授業前にガチャやっとこう・・・)


 俺は購買部に1人で立ち寄り、学級裁判後にハンジに貰ったメダルを使って、

 3回分のガチャガチャを楽しんだ。ちょっとした息抜きになりつつあるが・・・


 * エレンは『幻の銀水晶』、『割れたゴーグル』、『戦刃ナイフ』を入手しました!


エレン(変なモノばっかり増えてくけど・・・まあ誰かが喜んでくれるかもしれないし・・・)


 午前の授業に集中し、そして待ちに待った探索タイムがやって来た。

 俺はたまには1人で黙々と調べようと、あえて単独での捜査を試みた。

 3階の階段部から一番遠いところにある特別教室に向かう。


エレン「『ぶ つ り し つ』か・・・ふうん」


 ガララッ


エレン「お・・・これまた広いっ・・・て何だこりゃ・・・!?」ドキドキ


 物理室は広く、設備諸々が俺の知っている『物理室』ではないと一目見てに解った。

 中でも扉より左手奥にそびえ立つ巨大な『何らかの装置』に――


エレン「なんだ、この・・・なぜか乗ってみたく衝動に駆られるこの装置は・・・っ」ワクワク


『おやエレン。その装置に興味を持ってしまったかね?wwww

 そいつはここの卒業生である『超高校級の研究家』が研究した装置さ』


エレン「(はしゃいでる・・・)えっと、まあ興味ありますけど」


『その装置はね・・・ずばり『名状しがたいGNドライブのようなもの』と言って・・・

 それはそれはフィクションのようなすげぇ動力なんだよ・・・滾るようなね・・・

 テレビに疎いエレン君でも、男子の本能が疼くだろ、動かしたいって・・・!!!』


エレン「ぐ・・・・!!」


『まあそいつは選ればれし中二病患者しか動かせないからなあ。

 君みたいな駆逐力の足りない腑抜けじゃとてもとても・・・www』


エレン(なんか悔しい・・・)ムカッ


『・・・・・・おや、邪魔が入ったか・・・』ボソ


エレン「? なんか言いましたか、ハンジさん?」キョトン


『いいやw それじゃゆっくり探し回ってくれ。じゃあねwww』


エレン「・・・結局何しに来たんだよ?」


 ハンジの神出鬼没ぶりに辟易しながら、物理室を見て回った。

 どうにも見慣れない器具や装置はあったが、手がかりだと思うものは見つからなかった。

 気分転換も兼ねて、奥の物理準備室へと移動する。


エレン「んー・・・」ガサゴソ

エレン「・・・・・・」ゴソゴソ

エレン「・・・・・・・・・わからん。物理とか興味ねえからなあ・・・」ゴソガサ

エレン(1人はちょっと失敗だったかもな。アルミンあたりがいたほうが・・・)

エレン「・・・・れ」ゴソ・・・


 様々な書類が山積みになったデスクの引き出しを荒らしていた時だった。


エレン「おお・・・二重底になってる!」ゴトン


 バサッ

 二重底の下には一冊の大学ノートが隠してあった。


エレン「・・・なんだなんだー? ・・・・・・」パラ


“ついに完成したよ。きっとこれで、迎えにいけるはずだ――”


エレン「・・・・・・・・綺麗な字だ・・・」ポツン


“私は、私を信じるに値する人間だと疑わない。だからこいつを作ったのだ”


 ハラ・・・


エレン(? なにかページの間から紙切れが・・・)


 床に落ちたそれを拾ってみた・・・写真だ。

 そこに映っていたのはメガネを掛け、こちらに向かって微笑む知的そうな人。

 そしてその人が肩を組んでいるのは、不機嫌そうにその人を睨む・・・。


エレン「リヴァイ・・・さ」

エレン「・・・・・・・!!」バッ


 俺はすぐに、写真の裏を見る。そこにある日付はほとんど一年前。


“XXXX年XX月XX日 卒業間近。兵長殿と”


エレン(てことは、ここに映ってる人は卒業生か・・・?)ジー

エレン(確か、俺たちより前の上級生はみんな卒業して・・・。

    この写真の人の話をリヴァイさんに訊いてみるか・・・?)


 写真の中の彼は相変わらず仏頂面だけど、隣の人を見る眼差しはどこか温かかった。


エレン(とりあえず、こいつは拝借しよう・・・野暮だけど、あの人に話を訊くためだ)


 写真を懐にしまい、二重底を元に戻した、その時。


クリスタ「あ、エレン、やっぱりここだった」

エレン「! クリスタ?」

クリスタ「面白い探し方してるね、エレン。みんなと全然違うところにいるし」

エレン「たまにはな・・・他のみんなは?」

クリスタ「娯楽室ってとこがとても広いの。それでその探索だけで大変で・・・」

エレン「娯楽室?」

クリスタ「たぶん、ハンジぐるみが言ってた『楽しい施設』のことじゃないかな?」

エレン「へえ・・・」

クリスタ「アニが探索は任せるって抜けちゃったから、エレンも手伝ってくれない?」ニコ

エレン「・・・お前、ジャンと違って普通だよな」

クリスタ「ん?」キョトン

エレン「あのさ・・・お前って、なんで解ったんだ?」

クリスタ「えっと、なにが・・・」

エレン「ユミルがさ、『卒業』出来る人間だって、なんですぐに解ったんだ?

    ・・・学級裁判が終わったとき、お前、もう解ってたみたいだから」

クリスタ「・・・エレンは彼女とは付き合いが短いよね」

エレン「ああ・・・お前と比べるとどうしてもな」

クリスタ「ユミルは、けっこう自分本位で臆病なんだ。でも頭は良かったよ。

     ライナーを巻き込んであんな酷いことをしたってことは・・・

     つまり、あの時点で色んな判断材料が彼女にはあったんだよ」

エレン「・・・ユミルがあえて選択したってことに気付いたのか?」

クリスタ「そう。自覚していたのに、あの時、人として愚かな行為をした。

     彼女はいろいろなことが見えていたからこそ、決めたんだなって」

エレン「『卒業』・・・はやくしたいな」

クリスタ「そうだね。待って貰ってるから・・・私・・・

     ユミルとたくさん話がしたい。色んなこと・・・」クス

エレン「そう、だな・・・」

クリスタ「エレンは・・・ちょっと箱入り息子さんって感じが強いけど、

     でも誰よりも、前に進むことができる強さを持ってるよ。

     だから、貴方は絶対に卒業出来ると思うな・・・」キラ

エレン「なあ。それってお得意の『占い』か?」ニヤ

クリスタ「そうそう、『占い』」クスクス


 『天使』はいつでもキラキラしている。おとぎ話そのままに。

 だけどどこか眼差しが変わってしまったクリスタと、少し話をしてから準備室を離れた。




 娯楽室


ミカサ「・・・おそい。」プンスカ

エレン「ちゃんと調べてたよ。なんで怒ってんだよ」

クリスタ「・・・ミカサ、大丈夫だよ」クス

ミカサ「・・・・・・おそい」プイ

エレン「なんだよ、お前はすぐそうやってぷんぷんして・・・」

コニー「おいエレン。お前超高校級を超えるバカなのか? 俺でも解るんだけど」

エレン「はあ? バカって何だよハゲ」

コニー「ハゲじゃねーよ!」

エレン「で、娯楽室って。なんかダーツとかあるけど・・・普通の休憩室じゃね?」

コニー「奥の扉開けてみろよ」

エレン「・・・・?」スタスタ


 ガチャ


エレン「・・・・・・・・は?」


 扉を開けるとそこは『ネズミの国』だった。


ミカサ「ハンジぐるみによると、娯楽室は別棟の屋内遊園施設につながってる。とのこと」

エレン「・・・・・・・・・」シロクロ

クリスタ「目を白黒させてるね」

コニー「まあ、みんなこうなるわな」


 ミカサの言うとおりだ。確かに、本で見たことのあるど派手な遊園地だった。

 どういうことなのか理解できない。意味がわからない。

ミカサ「生徒の生き抜き用で、毎日午後から量産型ハンジぐるみが運営するって」

エレン「別棟があったのにびっくりした・・・外にいかないから全く気付かなかったな」

ミカサ「ハンジぐるみによるとポケットマネーらしい。」

コニー「ジェットコースターとかあるんだぜ! サニーたちがいたら喜ぶだろうなー」

クリスタ「コニーは兄弟がいるんだっけ」

コニー「ああ! ド田舎だからな、都会の遊びなんてあいつら知らねえんだ。

    いつか連れてって遊ばしてやらねえとなあ・・・」シミジミ

クリスタ「ふふ。コニーってとても家族思いだよね。憧れるなあ」キラキラ

コニー「・・・・・・・ふむ・・・」ジー

コニー「難しいことじゃねえよ。自分が大事だって思う人間、いるだろ」

クリスタ「・・・そうだね」クス

コニー「じゃあ、おんなじだ。俺なんて大したことしてねえよ」

クリスタ「・・・ありがとう、コニー」

コニー「ニコ ・・・そうだ、ジャンとアルミンが男手必要だって言ってたんだ。

    エレン、お前こいよ。・・・あとミカサも」

エレン「? お、おう」

ミカサ「私おんな」

コニー「まあまあ。クリスタはサシャ止めてくれよ。あいつフードコートで暴食してるから」

クリスタ「ええ! また? さっき売店のお土産漁ってたから止めたばかりなのに!

     もー、ほんと新しいもの好きなんだから・・・クスクス」スタスタ


 クリスタは、広い園内を迷わず歩いて行った。どうやら地図を覚えているらしい。


ミカサ「エレン。これがパンフレット。地図もあるから、迷子にならないで」パッ

エレン「な、ならねえよ、昔じゃあるまいし」

コニー「さて、こっちだこっち」スタスタ

エレン「はいはい」スタスタ

エレン(・・・・・・・・・・こいつ頭の形めちゃくちゃいいな・・・)スタスタ


 コニーについてしばらく歩く。

 メリーゴーランドだとかゴーカート、ランドマークのお城など、

 俺でもなんとなく知っている遊園地のイメージそのままの世界が広がる中、

 やたら大きな建物の前にたどり着いた。


アルミン「・・・あ、きたきた」

ジャン「おっせーよハゲ!」

コニー「うっせーよウマ!」ニコー

ベルト「エレン、ちょっと手伝ってくれないか」

エレン「どうしたんだよ男衆」

アルミン「箱物のアトラクションなんだけど、これだけ扉が開かないんだ」

エレン「箱物・・・?」

ジャン「『どっきりハウス』ってあるし、お化け屋敷系じゃねえか。

    トロストにもこんなやつあったよ」

アルミン「これだけ何故か入れないんだよね」

エレン「開かないのか・・・そう言うものほど開けたくなるな」

ベルト「ああ・・・同意するよ。わくわくするよね」

ミカサ「・・・あまり触らない方がいいかと」

エレン「せーの」

男子「そーい」


 シン・・・


男子「ぐぬぬ」

アルミン「だめだ、やっぱり意図的に閉じられてるのかな・・・」

ベルト「諦めるしか無いね」

コニー「ちぇー」

アルミン「学園長にあとで訊いてみようか」

ジャン「だな。他は乗れるし。ここだけってのが気になって仕方ねえ」

エレン(・・・遊園地はわくわくするけど・・・)


 俺は、先ほど入手した一枚の写真のことを思い浮かべた。


エレン(気になるし・・・)

エレン「ごめん、俺ちょっとトイレ行ってくる。またあと合流するな」

ミカサ「そう、いってらっしゃい」

コニー「わかったー。すぐ来いよー」

アルミン「ミカサ、僕より力あるし、試してみる?」

ミカサ「それはそうだけど」

ジャン「アルミン、おまっ・・・なんつう失礼なことを・・・!!」

エレン「・・・・・・」スタスタ


 遊園地を出て生徒手帳を見ると、リヴァイさんは同じ3階の別の教室にいた。


エレン(当然のように・・・俺たちとは行動を共にしないし、コニー達も誘わないんだな)


 そこは美術室だった。

 教室にはおそらく卒業生のものと思われる作品群が並べられており、

 彫刻なんかは美術の教科書にあるような、よくある男の裸体だった。


エレン(裸体はいいけど、すげえぶよぶよした体型だな・・・きめぇ)ゲンナリ


 問題はモデルがどう考えても奇形としか思えない、へんてこな体型だったことだ。

 その薄気味悪さに辟易していると、奥の美術準備室から声が聞こえた。


???「・・・・もう待てないよ・・・!」

エレン(ハンジぐるみの声・・・?)コソッ


リヴァイ「悪いが無理だ」


エレン(・・・リヴァイさんの声だ・・・)


???「時間が無い。どうして貴方は決断してくれないんだい」

リヴァイ「何度でも言う・・・お前には従わない・・・ハンジ・・・」

???「・・・私は私の選択を信じている。貴方はもう、貴方を信じないのかい?」

リヴァイ「信じている・・・だから、お前には従わねえ・・・。

     話は終わりだ・・・。外のガキが混乱するだろう・・・?」

エレン「!!」ビクゥ

リヴァイ「・・・さっさと離れろ。10秒待ってやる」

エレン「・・・・・・っ」スッ


 俺は黙ってその場を離れた。


エレン(なんでその場を離れさせた・・・?

    だってあの声はたぶん、ハンジぐるみだろうし、生徒手帳を見れば

    俺が盗み聞きしたってことは解っているだろうし・・・)

エレン「まさか・・・リヴァイさんは学園長の本体と接触して・・・」

エレン(この情報を言うべきか・・・? いや、でも・・・

    もう少し、情報を集めて、考えを煮詰めてからにしよう・・・)


 俺はトイレに立ち寄ってから、それから遊園地に戻った。


ジャン「遅かったな。大か?」

エレン「ああ・・・でかかった・・・」

コニー「俺なんか毎朝規則正しいぜ。健康だろっ」ドヤ

エレン「・・・女子は?」

ベルト「ミカサと合流してポップコーンを買いに行ったよ」

エレン「今日はもう、ここで遊ぶか・・・(気分も沈んだし・・・)」

ベルト「あ、でも僕は先に帰ったアニが気に・・・」

ジャン「まあ待て。寝不足なんだろ? 放ってやれよ。1人の時間も大事だ」

コニー「おっしゃー。探索は一通りやっちまったから、休憩がてら遊ぶぞ!!」ヒャッホウ!

ジャン「おー。やっぱお化け屋敷だろ。行こうぜ」スタスタ

ベルト「え・・・それはちょっと・・・」スタスタ

エレン「俺も・・・」

アルミン「エレン」

エレン「? なんだ、アルミン」

アルミン「何かわかったことはあった?」

エレン「え? ああ、物理室が奥にあるんだけどよ、意味不明な装置があったぜ」

アルミン「へえ、興味沸くなあ。それで、他には?」ニコ

エレン「ほか?」


 リヴァイ『何度でも言う・・・お前には従わない・・・ハンジ・・・』


エレン「・・・まあ、それくらいかな。手がかりらしい手がかりはなかったぜ」

アルミン「ふうん」

エレン「おい、俺らも・・・」

アルミン「エレン、僕たち『なんでも話そう』って・・・今朝言ったよね?」

エレン「・・・・・・・」ゾワッ

アルミン「なんちゃって。さてと、僕も休憩しようかなあ」

エレン「あ・・・ああ」ポカーン

アルミン「それじゃエレン、キミもたまにはのんびりしなよ・・・

     最近はいつも眉間に皺が寄ってるからね」ノシ

エレン(・・・アルミンの奴・・・)

エレン(いや! とりあえず、せっかくだし、初遊園地を楽しまなきゃ・・・)

エレン「よし! まずは>>631と過ごそう!! そうしよう!!」


 * 体調不良のため寝室で寝ているアニ以外を誘えます。

コニー


エレン「コニーだ、コニーと過ごそう!! あいつも俺と同じ遊園地初心者だ!」


 俺はジェットコースター付近でうろうろしていたコニーの元へ向かった。


エレン「おい、コニー!!」

コニー「・・・お、エレン?」

エレン「なにしてんだ、挙動不審だぞ?」

コニー「や・・・遊園地ってーとやっぱり絶叫マシンじゃん?

    でも・・・ちょっと、ちょーっと緊張して」テレッ

エレン「・・・わかる。確かに怖いな・・・」ウンウン

コニー「んー・・・なー。お前一緒に乗れよー」

エレン「え? 他の奴らは?」

コニー「あいつらお化け屋敷いっちゃったよ・・・乗ろうぜ、頼む」

エレン「わ、わかった・・・!」

エレン(最初から絶叫マシンか・・・でも、でもこれさえ乗り切れば

    他のアトラクションなんてヨユーだよな・・・!)

エレン「えっと・・・『タイタン』は、その名の通り高低差が売りの超巨大ローラーコースター。

    迫り来る巨人から、縦横無尽に空中を駆け抜けて逃れるって設定らしい」

コニー「おっしゃ、いこうぜ!!!」ムッフー


 当然だけど、俺たちは一番前に並んで座った。安全装置を固定して・・・。


『それでは快適な空の旅へ! 行ってらっしゃ~~~~い!』


 prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!

 ゴトン・・・


 ハンジぐるみのわざとらしいアナウンスに送り出された。

 ガタゴトと、ゆっくり上へ引き上げられるコースター。


コニー「よ。よし、なんか喋ろうぜ」カチンコチン

エレン「え?」

コニー「好きな子の話しようぜ!?」

エレン「好きな子? なにが?」ポカン

コニー「ごめん、混乱のあまり不適切な話題を・・・えっと、じゃあ最近ソンケーした奴!」

エレン「ソンケー・・・俺アルミンかな、やっぱり」

コニー「俺ライナー!!」

エレン「ははっなんだ、どっちも同級生じゃねえか。なんだそりゃw」

コニー「身近に格上の奴がたくさんいてツライw」

エレン「コニーもすげぇじゃん」

コニー「どこが?」

エレン「頭の形きれいなとことか?w」

コニー「それ俺じゃ無くて生んだカーチャンが凄いだけじゃんw」

エレン「まったくだ!」


 カチ・・・・


エレン「?・・・止まったぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!」ヒャッハァ!

コニー「やべえええええええええええええええええええええ!!!!!!」ヒャッハァ!


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ



 そのころ。

サシャ「コニーうるさいですね。声大きいです」クス

ミカサ「エレンはしゃいでる。かわいい//」

クリスタ「楽しそうだなあ」キラキラ    

サシャ「ミカサ、エレンとデェトしないんですか?」

ミカサ「でっ・・・・//// いや、ほとんど家族みたいなもの・・・だし」

クリスタ「男の子と2人きりなら立派なデートだよっ」クスクス

ミカサ「・・・アイドルは、そういうことしない」シュウウウ

サシャ「ゆでだこになってますよ?」




コニー「うはは! やべえ、ラスボスの『ソニーとビーン』怖かったwww」ゲラゲラ

エレン「なんだよあのキモい顔・・・あんなん逃げるしかねえじゃねえかw」ケラケラ

エレン(あれ、美術室の気持ち悪い彫刻と似てたな・・・w)

コニー「これは、バイキングもやるしかねえか・・・」ニヤニヤ

エレン「俺、絶叫マシンよゆーだった。すげえ嬉しい!」

コニー「ああ・・・お前に同席を頼んだ俺の目に狂いはなかったぜ・・・」

エレン「面白かった。ジャンたち今頃なにしてるんだろ」

コニー「友達もいいけどさ、ミカサとは回らねえのか?」

エレン「え!? いや、だってあいつ女子といるだろ・・・?」

コニー「あえて深くは突っ込まないが・・・デリケートにいこうぜ?」

エレン「??? まあ・・・ミカサと回るのもいいかもな・・・いつか」

コニー「(いつかかよw)じゃあ今日は練習だ。しっかりと学ぶべし」

エレン「? よく解んねえけどサンキュ!」


 立て続けに絶叫マシン2つに乗り、休憩がてらシェイクを買って飲んでいた。


エレン(んー・・・そうだ、ついでに>>637をあげよ)


 * 月刊ラブドール or きょうせいギブス or スズランの香水 or 茨の鞭

   幻の銀水晶 or 戦刃ナイフ or 割れたゴーグル or やらない

月刊ラブドールが気になるが「きょうせいギブス」で

常々思っていた。

プレゼント選択の安価の際、みなさん「好感度」の高い選択肢を外さない。すごい。

エレン「コニー、これやるよ」

コニー「なんぞこれ・・・あ、きょうせいギブスじゃん。ガリ勉向け教材の」

エレン「うん。それつけると色んな意味で成長しまくるらしい。

    その代わり『素早さ』は半減するって説明書に・・・」

コニー「え、もしかして俺の身長や脳みそを心配して・・・?」ウルウル

エレン「や、そういうつもりはねえけど・・・(もしかして怒らせた・・・?)」アセ

コニー「これ、確か政府の教育部門が開発した奴だぜ、貴族向けに。

    テレビでめっちゃ宣伝してた奴・・・どこで買ったんだよw」

エレン「えっと、購買部・・・」

コニー「・・・これつけて勉強したら、バカな俺でも少しは勉強解るかな?」

エレン「コニー、お前・・・」

エレン(ガチャガチャのラインナップは本物で間違いないみたいだけど)

コニー「そっか・・・サンキュ、エレン!」ニコニコ

エレン「まあ、ちょっとごついけどな。はは」

コニー「ま! 俺は『素早さ』はピカイチだし、半減したところで運動性能は高いしな。

    デメリットは実質ナシ! まさに俺向きの教材ってわけだ!!!」ドン!

エレン「おま、天才かよw」

エレン(喜んでもらえた。よかった)ニコ

コニー「よし、そろそろ次いこうぜ! まずは遊び尽くす!」

エレン「なあ、誰か誘おうぜ」

コニー「あ、じゃあ>>641なんてどうだ?」


 * やっぱりアニ以外の人なら遊べます。

ちょっと怖い気がするがアルミン

>>639>>640の間に一文抜けてました。夜ごろ更新します
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エレン「――それ、努力すればするだけ補正するって装置だし。

    お前がさ、入学した時から、頑張って真っ当に『卒業』したいって言ってたの

    知ってるし・・・よければ使って欲しい。勉強教えるのは、アルミンだけど」

コニー「そっか・・・サンキュ、エレン!」ニコニコ

エレン「まあ、ちょっとごついけどな。はは」

コニー「ま! 俺は『素早さ』はピカイチだし、半減したところで運動性能は高いしな。

    デメリットは実質ナシ! まさに俺向きの教材ってわけだ!!!」ドン!

エレン「おま、天才かよw」

エレン(喜んでもらえた。よかった)ニコ

コニー「よし、そろそろ次いこうぜ! まずは遊び尽くす!」

エレン「なあ、誰か誘おうぜ」

コニー「あ、じゃあアルミンなんてどうだ? あいつリアクション面白そう!」

エレン「え、アルミン?」ピタ

コニー「え? いいじゃん、アルミン」キョトン

エレン「・・・ああっ・・・そうだな」

エレン(最近、アルミンの様子が変な時がある・・・。

    いや・・・でもそういう時こそ、一緒に遊ぶべきだよな・・・!)


 俺たちはアルミンを捜した。彼は小さな劇場の中にあるミニシアターで、1人、

 観客席にぽつんと座っていた。


アルミン「・・・・・・・」ボー

エレン「アルミン!」

アルミン「・・・・・ああ、エレンにコニー。どうしたの」ニコ

コニー「なんだコレ。白黒映画?」

アルミン「昔の貴族向けの映画みたいだね。つい観ちゃった」

コニー「えー。遊園地に来たんだから乗り物を楽しもうぜー」

アルミン「あ、もう終わったからw すごい長い作品でもないしね」

エレン「どんな映画だったんだ?」

アルミン「喜劇だよ。すごい真面目だけど人から倦厭されていた青年が、

     なぜ自分が人々に嫌われるのか疑問に思って、好かれようと試行錯誤するんだ。

     策はことごとく失敗して、最後に彼は気付いたんだ、自分がロボットだってことに」

コニー「何それワロエナイ」

アルミン「結局『人』としては受け入れられないし、今までの努力は水泡に帰すんだよね。

     哀しい内容をコメディタッチで描いてるんだけど、

     昔の特撮技術とかが詰まっていて・・・面白かったよ」ニコ

エレン「アルミン・・・あの・・・ごめん・・・」オズ・・・

アルミン「ふっ。わかってるよ、さっきは脅かしてゴメン・・・

     キミだって、言えないことのひとつやふたつはあるよね」クス

エレン(やっぱりあれ、怒ってたのか・・・)

エレン「アルミン、少し待ってくれ。ちゃんと話すから」

アルミン「うん」ニコ

コニー「???」ポカーン

アルミン「で、コニー、何して遊ぶ? 僕、絶叫系はちょっと・・・」

コニー「え、『タイタン』面白かったぜ、やろうぜ!!」

アルミン「ちょ、それ一番怖い奴じゃ無いか・・・」アセ

コニー「まあまあ。俺たちがついてるから大丈夫w」ガシッ

アルミン「え・・・・・・・・え!?」

エレン「確かにあれは面白かった。敵を見てるとすげぇウズウズするんだよな」ガシッ

アルミン「えっと!?」


 俺たちはアルミンをずるずると引きずって、『タイタン』へ向かった。


 ガタン、ゴトン


アルミン「あわわわわ。なぜ僕は一番前に・・・!?」

コニー「しょうがねえなあ。怖いなら俺の腕掴んでもいいぞw 今日だけな」

エレン「俺も後ろにいるから安心しろ、アルミン☆」


 ガタ・・・


アルミン「ふっざけんなああああああああぁぁくぁwせdrftgyふじこlp!!!!!?」

コニー「アルミン痛い痛いいたい、抱きつこうとするなグェっ」

エレン「おっしゃ巨人から逃げるぞおおおおおおおお!!」ヒャッハァ!


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ




 そのころ。


ジャン「・・・女子の悲鳴が聞こえると思ったが・・・ありゃアルミンの絶叫かw」

ベルト「ああああ・・・・」ズーン

ジャン「いや、まじゴメンな、ベルトルト。

    おまえ・・・そんな泣くほどとは思わなかったから・・・っブフッw」

ベルト「貞子こわい貞子こわい貞子こわい」グス



アルミン「うう・・・酷い目にあったよぅ」クスン

コニー「アルミン声高いから、途中から女子に抱きつかれてる錯覚に陥ったわ」コソ

エレン「バカだろそれ、めちゃくちゃ危険じゃねえか。お前の感性が」コソ

エレン「アルミンごめんな! お詫びに次は好きな乗り物選べよ」クスクス

アルミン「えっと・・・じゃあ・・・あれ・・・」

コニー「・・・・・・え、あれ?」


 アルミンが指さした先にあったのは――。


エレン「・・・せまっ」

コニー「これ絶対2人向けだろ・・・3人だと窮屈じゃねえか」

エレン「名前も『スカイ☆ゴンドラブ』とかふざけてるぞ。ハンジぐるみアホだろ」

アルミン「いや、だってゆったりした空中散歩の方が好みだから・・・」


 ゴンドラがモノレール式に動き、園内を周遊する地味なアトラクションだ。


コニー「あ、サシャたちが手ぇ振ってる。おーい」ノシ

エレン「ミカサー」ノシ

アルミン「屋内とはいえ、綺麗な景観だね・・・ふふ」ノシ

エレン「ああ・・・鳥っていつもこんな景色を見てるんだなぁ」シミジミ

コニー「どうしたエレン。急にろまんちっくなことをw」

エレン「なんかこう・・・自由に飛んでみたいな・・・と・・・」

コニー「浸ってるw」ケラケラ

アルミン「・・・エレン、ちょっといい?」

エレン「? どうした、アルミン?」

アルミン「ライナー達は記憶を取り戻して卒業したよね・・・エレンは何か思い出した?」

エレン「いや・・・やっぱ入学式前後のことは・・・」

アルミン「・・・それ以外に忘れてることってない? 変な違和感だとか・・・」

エレン「ねえよ。だいたい、記憶が前後してたら気付くだろ」

アルミン「・・・そうだよね。うん、そうだけど」

エレン(違和感を覚えたのは・・・最近のお前の、言葉とか、表情・・・だし・・・)

アルミン「コニー」

コニー「ん?」

アルミン「コニーは自分の体験や記憶に違和感を持ったことはない? あるいは誰かにとか」

コニー「んー・・・特には・・・・・・・・・・・・あ」

エレン「あるのか?」

コニー「ジャンがさ、お前のこと『死に急ぎ野郎』って言ってんじゃん」

エレン「そうだっけ。あ、そういや出会った頃からあいつ・・・言ってたな」

コニー「あれの意味がわかんなくて、なんでそんなゴロの悪いあだ名つけたんだろうって」

アルミン「・・・エレン、あだ名の由来はわかる?」

エレン「俺は喧嘩っ早い性格だったけど、でも、あいつ初対面の時から言ってたぞ?」

エレン(・・・そういやなんでだ?)

アルミン「なるほどね・・・コニー、きみはちょっと、『バカ』という看板を下ろした方がいい」

コニー「え、それ褒めてんの? それとも俺のアイデンティティを崩しにきてんの?」

アルミン「褒めてるんだよ、ありがとう」クス

エレン「アルミンこそ、何か思い出せねえのか?」

アルミン「ふふ、さっぱり。まあ生活に支障がないから平気だけどね」クスクス

エレン「本当に・・・ムリしてないか?」

アルミン「してないよ」ニコ

エレン「ならいいけどさ」

アルミン「・・・・・・・・ニコニコ」

コニー「アルミンが大丈夫ってなら大丈夫だろ。エレンは過保護じゃね?

    お前に対するミカサみたいな感じにさ」

エレン「ああ・・・だよなw」

エレン(心配しすぎか・・・それとも・・・)

アルミン「あ、そろそろ終着だよ」

コニー「なかなか良かったな、これ・・・次はお化け屋敷だなっ」

エレン「・・・・・・・・・」


 リヴァイ『『何も知らない』か・・・エレン。

     一過性じゃねぇんなら、案外本人が思い出したくねぇってことも考えられる』


 リヴァイ『そういった記憶を、無理に呼び起こす必要はねぇと・・・これは俺の持論だが』


エレン「・・・・・・・・・」

コニー「エレン!」

エレン「!!」

アルミン「もー、何ボーっとしてるんだい。降りるよ」サッ

エレン「あ、ワリ・・・」サッ


 俺たちはゴンドラを降りて、ちょうど近場で量産型ハンジぐるみが売っていた、

 ハニー味のチュロスを食べて一息ついた。


エレン(思い出したくないんだとしたら・・・アルミンは心の中に何を封じているんだろう)

アルミン「あはははっ! コニー、口の周りがベトベトだよ、気持ち悪い!」

コニー「お前だって鼻に蜂蜜ついてんぞ!」

エレン(・・・アルミンを信じよう。今までも、これからも、アルミンに任せよう)

エレン(そうだ・・・さっきコニーにもやったし。アルミンにも>>654やろうかな・・・)


 * 月刊ラブドール or スズランの香水 or 茨の鞭

   幻の銀水晶 or 戦刃ナイフ or 割れたゴーグル or やらない

割れたゴーグル

適当でごめんちゃい

原作未プレイなんだが卒業した人らが学園に現れるってことはあるの?

エレン「なあアルミン」

アルミン「なに?」

エレン「さっきコニーにもやったからさ。お前にもやるよ・・・これ」

アルミン「・・・・・・え、なにこれ・・・」ドンビキ

エレン「・・・割れたゴーグル」

コニー「エレンお前、それはないわ・・・」

アルミン「あ、説明書きがついてる・・・なになに?」


 “これはとある知性を兼ね備えた激情家が遺したもの。割れた部分は、

  何も見るが出来ませんが、その代わりに真実を映し出すと言われています。

  この世の条理、不条理――真実を見通し、貴方はより聡明になることでしょう”


 “なお、装着感という意味では正常に使えます。ハングライダーのお供にどうぞ”


アルミン「・・・意外と由来のあるお守りなんだね、これ」ホー

>>655 原作については触れませんが、この話の場合では、

今の状態だと軟禁状態なので、会うのは難しいだろうなあ、と思っていただければと。

アルミン「・・・意外と由来のあるお守りなんだね、これ」ホー

コニー「水中メガネじゃなくて空中用なのかよw しかしエレンはセンスがあるのかないのかw

    さすが純粋培養って感じだな」

アルミン「『真実を見通す』ね・・・いい響きじゃないか」ニッ

エレン「いや、でも・・・やっぱそんな小汚いもの渡すのは、ちょっと無神経だったかも」

アルミン「いいよ・・・これ貰っとくよ。ありがとう」ニコ

エレン「お、おう・・・」

コニー「本人がいいなら俺は何も言わねえけど」

エレン(ちょっとだけ、喜んでもらえたのかな・・・?)

コニー「そんじゃ気を取り直して、次お化け屋敷な! 俺、悲鳴の係な!」スタスタ

エレン「え、じゃあ俺は・・・」スタスタ

コニー「お前は『冗談じゃ無い! 俺は1人で行く!』ってフラグ建てる係な!」スタスタ




アルミン「・・・エレンはあの様子だし。どこから崩すのが正しいかなあ・・・?」


 --------------------------


 その後、俺はコニーとアルミンとしばらく遊んでいたのだが、次第に他の連中も集まり、

 コニーの悪ふざけでなぜかミカサと2人で観覧車に乗るハメになった。


エレン「・・・・・・・・」

ミカサ「・・・・もう夕方・・・・・・・・・・」


 シーン


エレミカ((なんだか、すごく気まずい・・・))

エレン「・・・なあ、ミカサ」

ミカサ「うん?」

エレン「お前は、前、ここに来なきゃ良かったって言ってたけど・・・」

ミカサ「うん。あの『学級裁判』は、とても怖い」

エレン「俺、ここで仲間が出来たのは嬉しいよ。それだけはハンジぐるみに感謝してる」

ミカサ「・・・私も」

エレン「それに、お前最近ずっと傍にいるよな・・・なんか、懐かしい。上手く言えねえけど」

ミカサ「・・・私も、エレンと一緒にいることができて嬉しい。

    ジャンにしても・・・ここに来てからファンを超えた友人になれた、と思う」

エレン(ああ・・・どうしようもなく懐かしい)

ミカサ「・・・・・・」ドキドキ

ミカサ「あ・・・あの、わt」


 ガッタン――ッ


エレン「おわっ!?」ドサ

ミカサ「・・・・え」


 突然、観覧車が止まり、その反動で俺は正面のミカサに抱き留められる形になった。


エレン「・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・」


『あー。ごめん故障みたいw おふたりさん、それ以上ひっついてると不純異性交遊ですよ』


エレン「!」バッ

ミカサ「・・・・」シュン


『復旧まで時間掛からないとは思うけど、念のため助っ人を呼んだから。

 そいつ使ってとりあえず外に降りてちょうだいねw ごめんね2人とも』


ミカサ「助っ人・・・?」

 
『――出でよ! 我が最強の朋友よ!!!』

 
 パシュッ―― ビ ュ ウッ


 ハンジの呪文のような叫びのあと、風を巻き起こすように『ナニカ』が裁判場を駆け抜け、

 次の瞬間、ミカサは姿を消していた。


エレン「み、みかさああああああああああああああ!!!!!?」


 パシュッ―― ビ ュ ウッ


エレン「えっ」ガシ


 ――そして、俺も。


エレン「???????」ポカーン

ミカサ「・・・・・・・」ボウゼン


 俺とミカサはいつの間にか地上に立っていた。


クリスタ「ミカサ、エレン!!」

ジャン「おい、観覧車故障したって・・・大丈夫か?」

コニー「ラッキースケベは? ラッキースケベは?」

ベルト「コニー、茶化さない。」

サシャ「? 2人とも固まってますよ」

エレン「ハッ ああ・・・なんかさっさと・・・ハンジぐるみ? に救助されたから」

ミカサ「・・・・・・・ま、さか・・・・そんな・・・」

アルミン「ミカサ?」

ミカサ「・・・クリスタ。私にラッキースケベは・・・ムリだった・・・」

クリスタ「ちょ・・・、それは女子会で言うべき報告内容でしょう!」アセアセ

サシャ「ミカサのお茶目さん!」

ベルト「あんまりからかわない方が・・・また掃除させられたら可愛そうだろう」

ジャン「まったくだ! バカやってねーで、そろそろ帰るぞ!」ムスッ

エレン「へーい(ジャンの奴、
ごきげんナナメだな・・・)」テクテク


 ゾロゾロ・・・


ミカサ「・・・」ポツン

ミカサ「・・・・・・・」ジロ


リヴァイ「鋭いな・・・ミカサ」スッ


ミカサ「・・・貴方が私とエレンを助けた」

リヴァイ「・・・・・」

ミカサ「・・・なんにせよ、礼はいいます・・・」ペコリ


 スタスタ・・・


リヴァイ「・・・人をこき使うのも大概にしろよ、クソメガネ・・・」フゥ




 -----------------


 俺は遊園地で買った土産を持ってアニを見舞いに行った。


アニ「・・・ありがとう、わざわざ」

エレン「大勢でゾロゾロ見舞いに来てもアレだしな。俺が代表なんだけど・・・

    元気になったら、また全員でいこうぜ・・・!」

アニ「・・・ありがとう」

エレン「いつか、マルコたちも・・・」

アニ「それは・・・そうだね・・・」フッ


 コンコン ガチャ


ベルト「あ、アニもう起きていいのかい? 夕ご飯取ってきたけど・・・」

アニ「いつも悪いね、ベルトルト」

ベルト「・・・いいよ、このくらい」クス

エレン(アルミンからの指令だ・・・)


 アルミン『いいかい? ベルトルトが入ってきたら大人しく退散すること!』ビシッ


エレン(意味わかんねえけど・・・まあいいや)

エレン「それじゃ、俺も飯喰いに行くし。後は頼むな、ベルトルト!」肩ポン

ベルト「? う、うん」

エレン「じゃあお大事に!」ノシ


 パタン


ベルト「・・・? なんか慌ててたね」

アニ「・・・・うん」

ベルト「あ、りんご食べられる?」ニコ

アニ「食べるよ」

ベルト「はい、これね」

アニ「・・・うさちゃん」

ベルト「ああ、我ながら上手にできたよ」

アニ「ふふ」クス





 色々ありはしたけど、初めての遊園地で楽しんだこともあって、

 俺はその日、随分久々にゆっくりと眠ることが出来た。

 充足感や高揚感は留まることを知らず、実にすばらしい睡眠だった。

 みんなと談笑できたことが、俺の不安を霧散させたのだ。


エレン「・・・・・・スピー」


 けれど、それが最後だった。

 みんなで本当に笑い合えたのは、ある意味、最後だったのだと――俺は知らなかった。

>>661の文章以下に訂正します。あとは本編です。
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 ハンジの呪文のような叫びのあと、風を巻き起こすように『ナニカ』が

 目視できないほど颯爽と観覧車の周りをを駆け抜け、

 次の瞬間、ミカサは姿を消していた。
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 異変は次の日の朝起こった。

 食堂にはほぼ初めてといって良いほど早めに向かった。

 ミカサが喜び頭をぽんぽんするくらいには奇跡的なことだったらしい。


 ぞくぞくと、俺よりはまともな時間にみんなが集まってくる。


アルミン「アニとベルトルトがいないね」

エレン「あいつら、いつも早いのか?」

ジャン「そりゃな。一番乗りだぜ、いっつも」

クリスタ「マップだと・・・アニの部屋に一緒にいるね」

コニー「フジュンイセイコウユー!!??」ガタッ!

サシャ「なわけないでしょう、この思春期さんめっ!」ゲンコツ

ミカサ「あの2人はしっかりしてるからすぐに来る。先に食べよう」

アルミン「そうだね、そうしよう」

ミカサ「エレンが早起きしてくれて、嬉しい」

エレン「それはもういいだろ! お前は俺の母さんか!!」


 ビュッフェの朝ご飯を選んでいると、やがてリヴァイさんがやってきた。

 そして扉に立った瞬間、ぴたりと動きを止める――随分と強ばった顔つきだった。


リヴァイ「・・・・・・・・・・・・」

エレン「あ、おはようございます、リヴァイさん・・・」

エレン(・・・どうしたんだ? あんな顔珍しい・・・)

サシャ「リヴァイせんぷぁーい。どうしたんですか、そんな漏らしそうな顔して」

ジャン「おい、お前もうちょっと言葉選べよ!!」

リヴァイ「・・・・不味いな・・・・」ポツリ

エレン「え?」

リヴァイ「おい、クソメガネ!!!」

後輩「!?」ビクゥッ


『あーい・・・なんすかー? 眠いんですけどーw』


リヴァイ「・・・空気がおかしい。異常事態が考えられる。

     至急、この場にいねぇ奴らを・・・・・・・・・」


『えー? アニとベルトルト? 呼んでくればいいのwww

 てかなに、空気がおかしいってw なにs』


 ヒュッ ドシュッ


 食堂内に響いたその音がなんなのか、俺たちは解っていなかったと思う。

 一呼吸ののち、ようやく『ハンジぐるみをリヴァイさんが足で蹴り飛ばす音』と解った。


『ちょ・・・私のぷりてぃーボディになにす』


 ドゴッ


『ぐふっ』


ジャン「ちょ・・・!?」

サシャ「ぬいぐるみ相手に何DVやってるんですかああああ!!?」

エレン「リヴァイさん!?」


リヴァイ「・・・・・・・・」ドカッバスッ


『あうっひどいっ・・・ぐっ』


リヴァイ「・・・てめぇ、ハンジじゃねえな・・・」

アルミン「・・・・・・!」

エレン「え!?」


『え? 正真正銘、私は学園長ハンジ・ゾエっすけd』


 ゴスッ


リヴァイ「ハンジはどこだ・・・」


『・・・今すぐ暴行をやめろ。さもなくばキミの大切な友人を再び地獄へ落とす』ボソリ


リヴァイ「・・・・・・・・・・・・」スッ


エレン(・・・蹴りをやめた・・・?)



『リヴァイ君ったら何をトチ狂ってんだいw

 さてと、だけど彼の勘通り・・・残念だけど学園に異常事態が発生したよ・・・』


クリスタ「え・・・」




『・・・あるパンデミックが発生しました。そのため、しばらくは授業を休講します』



エレン「・・・・・・・・・・・・パンデミック!?」

ジャン「パンデミックって・・・感染症ってことか・・・!?」

コニー「はあぁぁ!? なんで!! もしかして鳥インフルエンザ!?」

リヴァイ「ちょっと黙ってろトリ頭・・・」ギロ

コニー「あい」テヘペロ


『特に死にいたるというものではないよ・・・

 最近発見された【絶望病】という奇病でね・・・

 とりあえず、対処方法が見つかるまで、君たちは寮に待機してほしい・・・』


エレン「なんだよそれ・・・そんな病名、聞いたことねえぞ!!!」

アルミン「落ち着いて、エレン・・・」

エレン「だって・・・」


『ごく最近発見されたんだ・・・みんなすぐに熱と脈を測って・・・

 以上があるものは即座に申し出て欲しい。

 すぐに【絶望病】の詳細を生徒手帳にアップするから待っててね!』


 ハンジぐるみはそう言って、俺たちに体温計と脈拍計を貸し出した。



クリスタ「きゅ、休校って突然だね・・・」

アルミン「学園長も嘘は言ってないだろうし」

ミカサ「唐突すぎる・・・」

サシャ「とりあえずご飯を食べましょう。話はそれからです」モグモグ

コニー「お前は安定してんなあ。いっそ和むわ」

ジャン「・・・ま、健康診断だと思ってやろうぜ」

ミカサ「うん・・・」

エレン「脈は・・・みんなの分を俺が測るよ。慣れてるから」

ベルトルト「みんな・・・」

エレン「ベルトルト! おはよう・・・アニは?」

ベルトルト「ちょっと・・・朝から熱があるんだ」

ジャン「エレン。アニの様子を先に見てこいよ」

エレン「ああ・・・!」タッタッタ・・・



リヴァイ「・・・・・・・」

アルミン「リヴァイさん、先ほどのはなんですか?」

リヴァイ「驚かせたのは悪かった・・・」

アルミン「ねえ・・・いつまでも隠し通せると思ってます?」

リヴァイ「・・・・・・」

アルミン「・・・ただ、あれがハンジぐるみじゃないっていうのは、同意です」

リヴァイ「・・・わかるのか?」

アルミン「学園長は普段変声幾を使っている・・・元の声質が僅かに違うと感じました」

リヴァイ「・・・そうか」

アルミン「・・・・まあいいです、欲しい情報は得られましたから」ピピッ

アルミン「うわ・・・どうしよう。僕もちょっと熱があるみたいだ・・・はは」

リヴァイ「・・・厨房にブドウ糖とポカリがある」

アルミン「やだなあ・・・」

 ピピッ

リヴァイ「・・・生徒手帳が更新されたようだな・・・」



--------------------------


エレン「ダメだ・・・頭がコンランする・・・」ハァ


 みんな、妙に落ち着き払っていたように思う。

 言われたことがやっぱり陳腐で、たぶんついて行けなかったのだ。

 アニの部屋に向かう途中、電子生徒手帳がアップデートされた。



 【緊急連絡:絶望病について】


 ごく最近発見された特殊なウィルスによりもたらされる奇病です。

 症状はまず、微熱高熱にかかわらずある程度の熱を発し、

 個人差はありますがそのほか風邪と似通った症状がでます。

 また、脈拍がやや早くなる傾向があります。

 そして最大の特徴として、「他の人間の人格になる」「幼児退行する」など、

 一過性ではありますが、感染者の人格に大きな変化が訪れます。

 そのため、絶望病を発症した場合は、一時的に自宅などに隔離することが義務となりました。

 通常、一部のムシを媒介とし感染しますが、学園は内外との接触を断っておりました。

 本来流入しないはずの感染症でしたが、今回のケースを受け、発症者を隔離し、

 感染者が全快するまで学校を休校します。感染者、健常者のマニュアルは別途ご確認ください。



エレン(ともすれば、感染者への対処は風邪の場合を想定すればいいのか・・・)


 コンコン


エレン「・・・アニ。入るぞ?」ガチャ

エレン(ベッドで寝てる・・・・)スタスタ

エレン「・・・おはよ」

アニ「・・・ああ、エレン・・・おはよう・・・」ウルウル

エレン(頬は紅いし目は潤んでる・・・完璧に熱があるな・・・)

エレン「ハンジぐるみの話は知ってるか?」

アニ「ああ・・しって、る・・・」ハァ

エレン「そうか。一応、熱と脈だけ測ろうな・・・体温測ってくれ。これ口に入れて」サッ

アニ「ん・・・・」

エレン「舌の裏にあてて。先端は奥のスジの真横に持ってくるんだ」

アニ「ふ・・・むずか、ひい・・・」

エレン「大丈夫だ、出来てる。鳴るまでジッとしてろよ」


 2分ほどで体温計が鳴った。


エレン「・・・37.6度か。普段の体温は?」

アニ「基礎体温は36.2度前後・・・」

エレン「次に脈だな。左手出してくれ」


 アニは熱があり、脈も速かった。おまけに話しているうちに喉も痛くなってきたという。


エレン「・・・ドンピシャだ。ハンジぐるみを呼ぶよ」

アニ「・・・・・・・ハァ・・・くる・・しい・・・っ」ゼェゼェ

エレン「・・・・アニっ? おい、大丈夫か?」

アニ「あ・・・怖い・・・・こわい・・・・・」


 駆け寄った俺に、一瞬縋るような視線を向けたアニは、その後ふっと脱力した。


エレン(気を失ってる・・・・・!)

エレン「アニ・・・!! ・・・・・・呼吸音は正常だ、気を失ったのか・・・?」


『やあ、エレン。脈取りをありがとう。彼女は感染者の疑いが濃厚のようだね』


エレン「アニは気を失っています。呼吸音は安定していて、寝息にも聞こえるけど心配です」


『うん。ただちに保健室へ収容しよう・・・

 君は、学園長たる私を信用できない、という顔をしているね?』


エレン「・・・・・・」


『まあ、そうだろう。だが【絶望病】は現存するし、アニが苦しんでいるのは事実だ。

 そんなに言うなら、君も感染することを覚悟で保健室に行くかい?』


エレン「・・・・・・」


『・・・その辺りの判断は任せるよ。学園としては止めて欲しいところだけれどね。

 ところで、【絶望病】の特徴である人格の変化について、何か兆候は見られたかな?』


エレン「アニはいつも通りです・・・」

アニ「・・・ぅ・・・・あ」パチッ

エレン「アニ、気付いたか! 大丈夫か?」

アニ「・・・エレン・・・?」

エレン「ああ。今から保健室に行こう・・・!」

アニ「なんでここに・・・? あれ・・・・」キョトン

エレン「アニ? 何言ってるんだ?」

アニ「え・・・キミこそ何を言ってるんだいエレン・・・」

エレン「・・・・・・・・」

アニ「僕・・・アルミンだよ・・・?」

エレン「・・・ハンジさん・・・」


『・・・確定だねぇ』


アニ「・・・あ、そうか・・・僕・・・」

エレン「・・・えっと・・・アルミンって、今朝はいつも通りだったよな?」

アニ「あはは。実はさっき熱を測ったら、あったんだよねー・・・」ハァ・・・


 バン!


ベルト「お 邪 魔 し ま す」ゴゴゴゴ

アニ「」ビクゥッ

エレン「」ビクッ

ベルト「・・・ねえ、アルミンがおかしなこと言うんだけど・・・」

エレン「ああ。アニもだ・・・」

アニ「・・・ベルトルト」

ベルト「アルミンは急に『私はアニだよ。目が腐ったのかい?』って・・・」

アニ「あの、ベルトルト・・・」

ベルト「アルミン、熱があったみたいだし。幻でも見てるんじゃないのかなあって・・・」

アニ「残念だけど。僕がアルミンだ」

ベルト「・・・・・・・・・・・・」

アニ「・・・・・・・・・・あは☆」ヘラァ

エレン「・・・なるほど、『人格が入れ替わった』ってことかあ。たまげたなー・・・」

ベルト「いや、ちょっと・・・冗談だよね!?」

アニ「申し訳ないけど病中にジョークを飛ばせるほど、人間出来てないよ僕・・・」


 ガチャ!


アルミン「・・・ちょっと・・・」

エレン「おおアルミン! ・・・えっととりあえず外見は」

アルミン「私はアルミンじゃない。そこのアニっぽい顔の奴、ちょっと顔貸しな」ゼェゼェ

アニ「え? あ、うん・・・キミも辛そうだね」ゼェ

アルミン「いいから・・・さっさとこっち来な・・・」

アニ「・・・・・・・・・・」オズオズ

アルミン「おい、男共・・・邪魔だよ、出て行け」ヒョオオオオオ

エレベル「・・・・お邪魔しました・・・」


 俺とベルトルトは部屋をアルミン(外見)に追い出されてしまった。


エレン「・・・マジで入れ替わってんじゃねえか・・・」ポカーン

ベルト「アニの身体の中にいるのが男だなんて・・・危険だ・・・」ブツブツ

エレン「? 絶望病、恐ろしいな・・・俺たちも脈測ろうぜ・・・」

ベルト「・・・あああぁぁ・・・・」ズーン

ミカサ「あ・・・ここにいた・・・」

エレン「おぅミカサ。お前も脈測ってやるよ」

ミカサ「・・・あの・・・コニーが・・・コニーが大変・・・!」

エレン「ん?」


 -----------------


 今朝の時点で【絶望病】かその疑いがあると診断されたのは、以下3名だ。


 ・アニ   :風邪症状あり。自身がアルミンと主張している。表情筋が緩んでいる

 ・アルミン :同上。自身がアニと主張。人格がアルミンと入れ替わっている可能性アリ

 ・コニー  :同上。幼児退行。5歳の精神状態になっていている。かなり繊細な性格。




 保健室


 午後、俺はリヴァイさんがくれたマスクをつけた状態で、保健室にいた。

 感染者はみんなここに集まっていたけれど、一番状態が悪いのがコニーだった。


コニー「・・・母ちゃんは・・・?」

エレン「ええっと・・・」

コニー「・・・・・・・」グス

エレン「あー、よしよし。お前の母さんはあれだ、えっと・・・」オロオロ

サシャ「はーい、コニーちゃん。お母さんは今、ウォール・シーナでお仕事中ですよー」ナデナデ

エレン「あれ、サシャ!!?」


 後から、サシャもマスクをした状態で入室してきた。


サシャ「エレン。こういうのはノリですよ」コソッ

コニー「・・・しごと?」

コニー「・・・・・」

サシャ「私はサシャと言います! コニーちゃん、あなたは今風邪を引いていますから、

    しっかりと寝て、しっかりと汗を掻いて、治しましょうね!」

コニー「・・・うん」

サシャ「ふふっ」ナデナデ

エレン「お前・・・子供の扱い上手いなあ・・・」

サシャ「村の子の相手とかしてましたしねー。エレンは下手ですね」

エレン「ああ・・・にしても、コニー大人しいな。いつもと大違いだ」

サシャ「子供の頃と性格が違うのはよくあることですよねえ。

    ベルトルトだとか先輩あたりが幼児化してないだけマシ、可愛いモンです」

エレン「・・・ああ、そのあたりは絶対に想像しちゃいけない気がする・・・」ゲンナリ

コニー「・・・・・・」ジー

サシャ「? どうしました?」

コニー「ずっと一緒にいるのか? ・・・それとも・・・帰る?」フルフル

エレン「・・・・・それは・・・」

サシャ「・・・わかりました、今日だけ一緒に寝ましょう」

コニー「ほんと・・・!?」パアァァ

エレン「おい・・・感染するかもしれねえぞ」

サシャ「エレン、彼は今5歳の男の子です。心細いんでしょう・・・」

エレン「わかった・・・その代わり俺も今日はここに泊まる。

    移っちまったら、その時はしょうがねぇ。アニとアルミンも看るよ」


 絶望病は通常1日から3日ほどで人格の変化も元通りになるとのことだった。

 どうせしばらく休校になるのは間違いないのだ。

 世話出来る人間が、精一杯世話してやろう。病気の時、人間は心も弱くなってしまうから。


サシャ「さて、じゃあ私はコニーと寝ますから、お布団用意してきますね」

エレン「俺はハンジぐるみに頼んで、他の人間に伝言を頼むよ」


 俺はハンジぐるみを呼び出し、俺とサシャが看護師代わりに保健室に常駐すること、

 みんなは寮で、なるべく自室で過ごして欲しいこと、

 必ず朝、昼、夕方、入浴前に検温を行って、異常があれば報告して欲しいことを伝言した。


アルミン「・・・悪い、ね。ゴホッゴホ」

アニ「あ・・・エレン、ありがとう・・・ハア」ヘラッ

エレン「お前達は同じ区画で寝るんだな」

アルミン「当たり前だろう・・・自分の身体を見張るんだから・・・」

アニ「・・・まあ、嫁入り前の女の子の身体だしね・・・ゼェ」

エレン「そりゃあそうだな・・・身体拭く時はどうするんだ?」

アニ「あー、困ったねえ・・・」

アルミン「あんたは目隠ししてな。私が身体を拭く」

アニ「ええ!? なんだか大げさじゃない?」

アルミン「ふざけるな・・・コホッ。ちらとでも覗いてみな。

     その時はあんたの大事なポークビッツに報復するからね・・・」イライラ

アニ「ちょ、自分は僕の見てるんじゃないかああゲホッゴホッグフッ!//」ゼェゼェ

エレン「あー。俺はティッシュとかうがい薬とか、備品を用意するから・・・

    あとは2人でやってくれ(もー面倒くせー・・・)」

アニ「もう・・・・・・逆にいかがわしいんじゃ無い? こんなの」ゴソゴソ

アルミン「いいから黙って・・・」フキフキ

アニ「・・・・・っくすぐったいよ!」

アルミン「我慢しろ・・・」フキフキ

アニ「・・・・・・・・っ///」カアアァァァ

アルミン「・・・今、変なコト考えただろ。このド変態」

アニ「!!!」ビクッ


 夕方ごろから3人の体温は上がり、いよいよ本格的に寝込む形となった。

 俺とサシャは、手分けして3人の世話を続けた。

今回は以上です。更新が安定していない中、足を運んでくださる方ありがとうございます。

また間が開いてしまいました。一気にのせます。あと今更過ぎますがトリップつけますた。以下本文
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 衛生観念から、患者は薄水色の『病衣』、俺とサシャは白衣の着用をルールとした。


サシャ「お母さんが帰ってくるまで、お姉ちゃんと良い子にお留守番しましょうね。

    そうすればー、とっても美味しいごほうびが貰えますからね!」ニコ

コニー「美味しい? ゴホッゴホッ ・・・っ甘いおかしとかっ?」キラキラ

サシャ「そうですよー元気になったらスイートポテトに紅芋モンブラン作りましょう」

コニー「あはは! おねえちゃん、いもばっかり!」クスクス ゴホッグフッゼェゼェ

エレン「あー、ほら、たんを切らなきゃ。ムリして喋るんじゃねえ」

サシャ「辛いときこそ喋っちゃうタイプの子供ですね、コニーは」


 アハハ・・・


アニ「あっちは楽しそうだなあ・・・」ゼェゼェ・・・

アルミン「・・・バカにも可愛い時代があったんだね・・・」ゼェ・・・

アニ「ねえ・・・一緒に寝る必要あるの?」ゴソ

アルミン「変なコトしたらすぐに解るからね・・・さっさと寝な、私のお肌が荒れるだろ」

アニ「もー僕の顔で乙女なこと言わないでよね。気持ち悪いよ・・・」

アルミン「あんたこそ僕とか言わないでくれる? 痛々しいにも程がある」

アニ(・・・にしてもアニの身体、すごく引き締まってる・・・格好いいなあ)

アルミン(・・・アルミンの身体、結構大きい・・・ベルトルトほどじゃないけど)


 翌日、新たな感染者が見つかった。ベルトルトだ。


ベルト「・・・へへ、ごめん・・・よろしく」ズルズル

コニー「・・・・・・・」オズオズ

サシャ「この超大型の人は優しい人ですよ。・・・ふふ、コニー後ろに隠れちゃいました」

エレン「うっわ、高熱だし鼻水やべぇな・・・ベルトルト、お前どこで寝る?」

ベルト「あ、ぜひアルミンとアニのところで・・・ガフッゴホッ ゼェ・・・ゼェ・・・ズルル」

アニ「(必死だなあ・・・)何にもしないよ・・・」

アルミン「・・・ベルトルト、いつも通りだと思うけど」

ベルト「うん? ああ人格のこと? 僕もそう思う・・・身体がだるいけどね」

エレン「人格の変化はナシか・・・」

サシャ「中身アルミンさん、今朝は少し調子良さそうですね」

アニ「え? うん、多少は良くなったかなあ。喉がかなり落ち着いたよ。

   そうだサシャ、昨日は全然話せなかったし、一昨日の話の続きでもしよっか」

サシャ「いいんですか?」

アニ「ああ・・・ちょっと退屈だしね・・・喉が痛くならない程度に」

エレン「話って?」

サシャ「あの遊園地のアトラクションの仕組みを夕食の時に教えて貰ったんですよね。

    脳みそがメロンパンでも解る『アルミン先生のアトラクション講座』です」

アニ「まあ・・・物理の勉強を少しでもさせるため、苦肉の策なんだけどね」

サシャ「一昨日は『タイタン』と、バイキングの仕組みを聞きました。

    『タイタン』はズバリ『巻き上げた後、底辺へ落とす』という悪女のような奴です」

エレン「それ理解できてるか怪しいぞメロンパン」

アニ「じゃあ今日は『タイタン』とは別のローラーコースターの駆動方式を・・・」

サシャ「そうだ、アルミン。ついでに、相談があるんですけどー・・・」

コニー「・・・・・・・」シュン

エレン「・・・おねーちゃん盗られちゃったなー」クス

アルミン「・・・コニー」

コニー「ぅぁ!」ビクッ

アルミン「ほら・・・遊んでやるよ・・・おいで」

コニー「う・・・うん・・・っ」


 生徒数を考えれば『絶望病』は大流行と言えた。ミカサが定期的にご飯を届けてくれる。

 すっかり人の少なくなった寮では、基本的にみんな1人で過ごしているらしい。

 ベルトルトは特におかしな点は見られなかったので、本当にただの風邪なのかもしれない。


 ところで、人格の変化はわかりやすく名前分けされることとなった。

 アルミンとアニは『いれかわり病』。コニーは『さかのぼり病』。

 マニュアルではそろそろ、人格が元に戻ってもおかしくない頃合いなのだが・・・。

 人格が元通りになると『絶望病』の時の記憶はなくなるらしい。・・・デジャブだ。


 夕方、熱が少し下がったアルミン(中身アニ)が、風呂に入りたいと言い出した。

 実際、ちゃんと乾かすならば熱があろうが風呂で暖まることは有効らしい。

 アニとアルミンを引き連れ、俺は大浴場へ向かい、脱衣所で待機した。

 アニの身体を死守する目的で、やっぱり2人は一緒に入浴していた。


アニ「あああああああああ! もう! やめてよ! バカじゃないの!?///////」

アルミン「うるっさいんだよ! 黙って洗われときな!!」

エレン「お前らどっちもうるせえよ静かにしろ!」イライラ



エレン「――ったく風呂如きになに1時間もかけてんだよ。10分で済ませちまえよ」スタスタ

アニ「エレン、それは流石にカラスの行水だよ・・・」スタスタ

アルミン「・・・・疲れた。もうアホらしくなってきた」スタスタ

アニ「僕が1番疲れてるのは間違いないよ・・・ハー

   この行為を、ベルトルトがすんなり受け入れてくれたことだけが救いさ。

   絶対に『断固阻止!』なんて言って、ひと悶着起きると思ってたしね」

エレアル「「なんでそこでベルトルトの名前が?」」

アニ「・・・まあ。いいんじゃない。そういうノリも様式美って奴だよね・・・」


 ガチャ

 保健室


コニー「ぁ・・・・」

エレン「・・・あれ? コニーだけ?」

コニー「ぉぁぇ・・・・・お、おかえり、おにいちゃん」

エレン「あいよ、ただいまー・・・なあ、サシャとベルトルトは?」

コニー「えっと、トイレ。おねえちゃんは付き添い」

アルミン「そっか、トイレここから離れてるからね・・・」

アニ「コニー偉かったねえ。お留守番出来たじゃ無いか」

コニー「お・・・俺長男だから・・・できるよ」

アニ「・・・こんな寂しがり屋なのに長男ぶるってのが・・・今度から優しくしよう」ホロリ

エレン(優しくしよ)


 随分と寂しそうな様子だったコニーと話をしたりしていると、

 やっとサシャとベルトルトが帰ってきた。


サシャ「あ、みなさん帰ってますね」

アルミン「遅かったね・・・2人で何してたの?」

サシャ「私は待ってただけで特になにも・・・それよりベルトルトが大変です」

ベルト「へっくちっ・・・・・・・ズビズビ」ジュルル

サシャ「・・・こんな具合で鼻の症状が酷くなってて。ぽんぽんも調子悪いようですし」

エレン「あーあ。おいサシャ、こいつ何にも羽織ってねえじゃん。身体が冷えたんだよ」

ベルト「うへー・・・サシャは悪くないよ、僕の不注意だっ・・・はっくしゅん!」

サシャ「すみません・・・エレン、鼻炎とかのお薬って飲ませちゃダメなんですか?」

エレン「え? まあ確かに、これじゃろくに寝られないか・・・」

サシャ「奥の調剤室にありそうじゃないですかー」

エレン「そうだな・・・ちょっと見てみるか」

コニー「おねえちゃんっ」

サシャ「コニーちゃん、ちょっと待っててくださいね-、あとでいっぱい遊びましょう」


 保健室の奥にある調剤室に入る。

 ある程度の市販薬なら生徒でも使えるので、俺とサシャで薬を見てみることにした。


エレン「父さんが言ってたけど、鼻の薬って風邪用とかないんだよな・・・」

サシャ「そうなんですか?」

エレン「そう。花粉症の薬と一緒なんだ。

    あった『抗ヒ剤』・・・あー、これ第一世代だ・・・」ブツブツ

サシャ「第一世代?」

エレン「花粉症の薬って第一世代と第二世代があってさ。開発された出始めのころが『第一世代』、

    副作用とか強いんだよ。で、市販薬は処方薬と比べてそういった古い成分のものが多い」

サシャ「できれば産業(三行)で」

エレン「副作用の少ない
    新しいお薬が確実に欲しいなら
    面倒でもお医者に行け」

サシャ「把握しました。副作用ってどんな感じなんです?」

エレン「第一世代は・・・特に眠気がヤバかったような・・・

    同じ成分の薬が睡眠剤としても使われてるくらいだし。

    待てよ。鎮静作用を利用してぐっすり寝てもらった方がいいか・・? ブツブツ」

サシャ「? えっとー・・・よくわかりませんが『絶望病』は寝て治すしかないですし、

    お店の薬でも、ちゃんと量を守れば大丈夫じゃないですか?」

エレン「だな・・・! ちょっと怖いけど、まずはベルトルトの鼻孔を快適にしてやらねえと」


 父さんは薬の処方までやる訪問診療が主流だったから、

 息子の俺は処方薬を見慣れすぎて、逆に市販薬はふれ慣れていないところがあった。

 というわけで、薬についてみんなにも話をしつつ、ベルトルトに飲んで貰った。


サシャ「さあ、これで少しは寝やすくなるでしょう」

ベルト「ああ・・・鼻がすっきりしていく気がするよ」

エレン「それプラシーボだっつの。さすがに飲み立てじゃ効きません」

サシャ「今夜はみなさんへ、私が特性のおかゆを作りますから!」


アニ「・・・・・・・・・・・・・」

アルミン「・・・あんた、またボーッとしてる」

アニ「・・・ああ、うん。もう癖かも」ヘラッ

アルミン「ああいった話を聴くと、エレンは家業をよく見てるし、頭がいいと思うよ。

     あいつもあんたもそうだけど『幸運』以外に才能あるんじゃないの?」

アニ「さあ・・・僕忘れちゃってるしねえ」クスクス


アニ「・・・副作用、ねえ・・・」ボソ


 そうしてサシャが振る舞った夕飯を食べ、ミカサに定時報告をした。

 クリスタはもちろん、実はジャンも落ち着き泣く心配しているらしい。笑える。

 リヴァイさんは、いつも通り、険しい顔をして何を考えているかわからない、とのこと。


エレン「さてみんな、寝ようぜ!」

患者「はーーい」

エレン(熱が下がらなくて体力も落ちてる・・・何か対策を講じるべきなのか・・・)ウトウト

エレン「ふあぁぁあ・・・俺も寝よ」

サシャ「私たちも疲れてるんですかね、今夜はぐっすり眠れそうです」クスリ


 サシャはコニーに付き添って寝て、俺は保健室入り口のソファーベッド、

 アルミンとアニ、ベルトルトも同じ区画のベッドで寝た。

 ぐっすり寝られそうだ。横になって目を閉じたとたん、そんな幸福感に包まれて――。




アニ「・・・・ん、エレン」ユサユサ

エレン「・・・ん・・・誰だよ、起こすなよ・・・」

アニ「・・・ちょっと」コソ

エレン「アニ・・・?」

アニ「アルミンだよ。ねえ、ベルトルトとアニがいないんだ」

エレン「・・・え?」


 午前2時。中身アルミンに起こされた俺は、もぬけの空になった2人のベッドを見る。

 随分と気怠くて、正直、起こしてきたアルミンに多少の不満を持っていた。


エレン「・・・まだ暖かいな。さっきまでいたのか」

アニ「さあ、僕が起きたとき、もういなかったよ」

エレン「生徒手帳は?」

アニ「えっとー・・・遊園地、だって」

サシャ「・・・・ふあぁぁ。どうしたんですかー? こんな夜中に」ムニャ

エレン「あ、悪い起こしちまったか・・・」


 サシャに今の状況を説明した。ちなみにコニーだけは安らかな顔で寝ている。


サシャ「2人は幼なじみですし、積もる話もあるんじゃないですか?」

エレン「そうかもしれねえけど・・・つうか夜中に遊園地って開いてるんだな」

アニ「ねえ、君たち状況を楽観視し過ぎるんじゃないか?」

エレン「ど、どういうことだ?(アニの面立ちが強ばっていて、妙に迫力が・・・)」

アニ「これまで学級裁判に取り沙汰されるような事件は全て夜中に起こっている。

   ましてや、通常は夜間に開園していると考えられにくい遊園地の中に彼らはいる」

サシャ「ちょ、悪いことが起こるかもしれないってことですか?」

アニ「そういう可能性が微粒子レベルで存在するってことさ」

???「そいつの言うとおりだ・・・警戒して損はない」


 3人の誰でもない声に思わず振り向くと、腰に何かを携えたリヴァイさんが立っていた。


エレン「リヴァイさん・・・! ダメですよ、健康な人がここにいちゃ!」アセアセ

リヴァイ「それはこの際問題ではない・・・エレンよ。

     いいか、園内を調べる。事情があろうが、わざわざ3階まで赴く必然性は無ぇ。

     夜中に小便にいくのとは訳が違うんだ・・・解るよな?」

ミカサ「エレン・・・」

クリスタ「久しぶり! みんな大丈夫・・・?」

エレン「お前ら・・・! ジャンまで!」

ジャン「よう、元気そうだな・・・悪いがコニーも起こす」

サシャ「皆さん、なんでここに?」

クリスタ「リヴァイ先輩が夜中にみんなを起こしたんだよ。

     不審な動きがあるから、大げさでも捜したほうがいいって」

リヴァイ「・・・・・・・・」

ミカサ「私も・・・あの『学級裁判』はやたくないし、協力したい」

アニ「エレン、少し疑うくらいがちょうど良いんだ。何も無ければ、それが最良なんだから」

エレン「わかった・・・いこう」


 俺たちは揃いも揃ってマスクを着用し、3階の娯楽室から遊園地に入った。


エレン(ほんとに・・・灯りがついてる。何カ所かのアトラクションだけだけど)

リヴァイ「クソ学園長によると。一昨日の点検時に量産型ハンジぐるみの不良も見つかったため、

     夜に大規模な修繕作業を行っているらしい・・・それでこのザマだ」

ジャン「あんたって・・・この学園を出たくないんですよね」

リヴァイ「で、あるが故に学園の平穏を崩さないよう、事前に防ぐ必要がある。それだけだ」


 リヴァイさんは腰元のよくわからない装置をガシャガシャならしつつ歩いて行く。


エレン「あの・・・お腰につけたそれは、なんですか?」

リヴァイ「これは・・・・・・・・・・・・・・高所作業用の装置だ。気にするな」

ジャン「今すっげぇ溜めましたね。」

エレン「(触れるなってことか?)・・・まあいいです、ところでジャン」

ジャン「なんだよ」

エレン「お前を久々に見たんだけど・・・締まりの無い馬面みてると、心が和むよなー」

ジャン「ぶ っ 殺 す ぞ」ピキ

クリスタ「生徒手帳だと園内までは場所を表示できないから、捜すのは大変だね」

アニ「複数に別れよう。広さから考えてかなりバラけた方がいい」

サシャ「私、とりあえず売店行ってきます。コニーちゃん行きましょう!」

コニー「う、うん・・・」

エレン「・・・なあ、やっぱり病床の奴らまで連れてこなくても」

アニ「いいや。仕方ないんだ。何かあったとき、現在のアリバイだけでも証明するためさ」

サシャ「・・・好きじゃ無いですけど、仕方が無いです。コニーとはゆっくり捜しますから」

エレン「ああ・・・」


 あとはじゃんけんで適当に組み分けをし――、サシャとコニーの他に、

 俺とクリスタ、ミカサとアニ(中身アルミン)、ジャンとリヴァイさんに別れた。


エレン「俺たちは西方か・・・灯りのあるアトラクションから見るか?」

クリスタ「西は劇場と、ゲームセンター、低年齢層向けのアトラクション、

     中央よりにピーチ姫城、観覧車があるよ」

エレン「あ、そっか・・・クリスタは地図を覚えてるんだっけ」

クリスタ「うん・・・じゃあ、気合い入れて走ろう!」タッ


 ランドマークのお城はそもそも閉場されていたため後回しとなった。

 遠目に見て灯りがついているのは劇場と、観覧車だが。


エレン「観覧車は――ひとまず人影は見当たらなかった」

クリスタ「じゃあ、劇場に行こう!」

エレン(俺は楽観視していたんだろうか・・・今になって、もやもやと胸がつかえる)


 劇場の量産型ハンジぐるみは通常営業を行っていた。


エレン「なあ! 誰か夜中に来なかったか!?」


 『他のお客様のお話は、個人情報保護の観点から申し上げることができませーんw』


クリスタ「っじゃあ、今は何をやってる!?」


 『現在はシアターで、園内の様子を音声付でライブ中継していまーす。

  ていうか、ぶっちゃけ上映の演目がない時はいつもそうしてまーす』


エレン「おっけ!」ダッシュ


 俺たちはシアターへ向かった。


クリスタ「誰もいない、か・・・」

エレン「園内の様子か・・・あ、ミカサが映った!」

クリスタ「もしかして、映写室を見れば、園内の定点カメラを見ることができるかな?」

エレン「そうかも・・・・・・」


 ―― フ ッ


クリスタ「え!? なに!?」ビク

エレン「急に暗く・・・停電か!?」


 突然落ちた灯りに、眼が慣れない。しかし、それ一瞬のことだった。

 またスクリーンに、映像が映し出される・・・今までのような空振りではない。


エレン「・・・・・・・・・?」


 アトラクションの・・・長蛇用の待ち会いスペースだろうか。

 そこに、ベルトルトと――麻袋を被った『誰か』が映っていた。


エレン「ベルトルト・・・・・・・!?」

クリスタ「横にいるのは・・・アルミンなの!?」


ベルト『やあ・・・アニ。もう悪夢を見るのはやめにしよう』

アルミン『・・・・・・・・・・』

ベルト『こんなところじゃだめだ、もっと、上へ行こう。

    僕たちが死んだところで、誰も、何も心配なんてしない。僕だけが哀しんであげる』


クリスタ「ちょっと・・・ねえ・・・・・・何言ってるの!!!?」

エレン「わからない・・・・・・・」ボウゼン


ベルト『アニを解き放って、哀しんであげる。こんなところ出て行ってしまおう。

    ねえ、知ってる? 高いところから飛んだら――すごく気持ちいいんだ。

    一緒に・・・飛ぼうよ』


エレン「・・・・おい、これ・・・どこの映像だ!?」

クリスタ「この造りは人気アトラクションの形式だから、

     フリーフォール、ローラーコースター・・・大型の絶叫マシンだよ・・・!!」


ベルト『ああ、アニ・・・早くラクになろう。ねえ』ニコニコ

アルミン『・・・・・・・・・・・・』


 じっと棒立ちしたままの相手を、愛玩動物を愛でるかのように撫でる彼。


ベルト『ふふ、まだ寝ぼけてるの? 今度は、幸せな夢の中で逝けるといいね。

    アニが先に飛ぶかい? そうしたら僕はそれを高みから見下ろすよ。


    それじゃあ・・・のぼろうか。 クスクス』


 そうして、定点カメラは別の位置を映した。俺たちの間には、一瞬の静寂が訪れた。


エレン「・・・・・・・・い、そごう・・・・・下手したら死ぬぞ・・・!!」

クリスタ「ここからなら北のフリーフォールが一番近いよ!!!」

エレン「そこからだ、走るぞ!!!!!!!」


 俺たちは全速力で走った。俺はわりと運動が得意だが、

 意外だったのはクリスタが小柄な柄にとても素早い。


クリスタ「こっちだよ!!!」ハァッハッ

エレン「案内助かる・・・っ!!!」ハッハッ



 園内北東端――アトラクション『フリーフォール・エンジェル』



 まるで運営中かのような明るさだけはあったが、当然ながら閑散さが著しい。

 俺たち数人の生徒が娯楽として利用するには、あまりにも規模が大きいからか、

 静寂さに伴う侘びしさも一塩で、そしてそれが余計に、俺とクリスタの鼓動を跳ね上がらせた。


エレン「ベルトルト!!! アニ!!!!」


 いない。


クリスタ「アニ・・・ベルトルト・・・っ!!! 返事して!!!!」


 ――いない、いない。いない!!


エレン「くっそ・・・・・・・おい!!!!」


 prrrrrrrrrrrrr


エレン「!?」


『それでは、恐怖の空の旅へ、いってらっしゃーーーーい☆』


クリスタ「――え?」


 シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウン


 フリーフォール。垂直落下をするタワー形式のアトラクションだ。

 俺たちが搭乗口に身を乗り出頃には、カタパルト形式でマシンが高速上昇するところだった。


エレン「なんで・・・今まで人のいる気配なんて・・・・・!」

クリスタ「・・・・エレン、エレン・・・・」クイッ

エレン「・・・・・・・・」

クリスタ「ねえ、あれ・・・人影が乗り出しているん、じゃ・・・・・・・」

 
 俺たちはただ、見上げることしかできなかった。マシンが最高度に到達したときも。

 ・・・そうして確かに見ていた。『ナニカ』がマシンから『飛ぶ』姿を。


エレン「・・・・・・・え・・・・・・・」

クリスタ「・・・・ぃ・・・ゃ・・・・・・」


 ―― グ シ ャ リ




 ---------------------------


 ほぼ同時刻、園内東側


ジャン「・・・いねえなー。リヴァイ先輩、次はどこです?」タッタッタ

リヴァイ「めぼしい所はおおかた見た。あとはホラーハウスか『タイタン』だな」ガシャガシャ

ジャン(しっかし、よくヘンなもん腰から下げて全力疾走できるな・・・こえええ)


 >prrrrrrrrrrrrrrr


ジャン「・・・・・先輩、聞きました?」

リヴァイ「聞こえた」

ジャン「あれアトラクションが動く前のサイレンですよ。しかも絶叫マシンの」

リヴァイ「・・・北か・・・フリーフォールあたりだな」

ジャン「・・・ねえ、見に行った方がいいんじゃないスかね」

リヴァイ「ジャン・・・顔が汗できたねえぞ」

ジャン「当たり前でしょう!? こんな時間にアトラクションが動くなんておかしいだろ!」

リヴァイ「俺はこちらを探し続ける」

ジャン「なんで!!」

リヴァイ「最北端まで時間がかかる。ならば、万一のために、自分の持ち場を捜し尽くす。

     絶対に役に立たない選択よりは、間に合う『かもしれない』選択をとる。

     ・・・だが、ジャン。お前は好きにしろ」

ジャン「・・・・・・・・・・・」

リヴァイ「じゃあな」サッ

ジャン「・・・・・・・っ」ッタッタッタ

リヴァイ「・・・チラ ・・・・そうか」タッタッタ

ジャン(『好きにしろ』だとぉ? んな言い方は・・・狡いだろ・・・!!)クッ



 アトラクション『タイタン』


ジャン「・・・・・・・誰も、いない」ゼェゼェ

リヴァイ「・・・いや。いる」

ジャン「え・・・」

リヴァイ「ついてこい」


 カンカンカンカン

 ジャンとリヴァイが搭乗口までの階段を上り詰めると――。


 煌々としたアトラクションの搭乗口、マシンの最前列に、

 虚ろな目をしたベルトルトが座っていた。


ジャン「・・・ベルトルト!!!」ホッ

ベルト「・・・・・・・・・」

ジャン「・・・・・おい・・・? 聞こえてるか、ベルトルト?」

ベルト「・・・飛ばなくちゃ、いけないんだ」ボソ

ジャン「ベルトルト? お前熱あるんだろ? 乗りたいなら明日やろうぜ?」

ベルト「アニを・・・解放してあげなきゃ、だめなんだ」ブツブツ

リヴァイ「この木偶の坊は何がしたい? ・・・おい。あの女はいないな・・・」

ジャン「ええ。ベルトルトだけですね・・・・・・」

リヴァイ「・・・・・・・・・・・・」

ベルト「もうちょっと、だから・・・飛ぼう・・・?」

ジャン「おい、お前なに寝ぼけてんだよ?」

リヴァイ「ガシャガシャ・・・安全レバーがかかってるな」

ジャン「いや、安全レバーがかかってんなら、これ、もしかして・・・」



『それでは快適な空の旅へ! 行ってらっしゃ~~~~い!』


 prrrrrrrrrrrrr


リヴァイ「・・・・これは・・・・!」


ジャン「え、動いちまった・・・ちょ、ベルトルトー?」ポカーン

リヴァイ「緊急停止ボタンは――・・・くそ、どこだ」

ジャン「ダメだ、ハンジぐるみの管制室は鍵が掛かってる!」ドンドン

リヴァイ「そっちを壊して開けるよりは・・・おいジャン。悪いが、少し外す・・・!!」

ジャン「はい?」


 リヴァイは動き出したマシンに乗り移ったかと思うと――。

 カッカッカッカッカッ

 『タイタン』を巻き上げるための急斜面を、容易く駆け上がっていった。


ジャン「ちょ、先輩チートかよ!!! なんでベルトルトより先に・・・・・」

ジャン「えっと・・・・・・まさか、そういうことか!?」ダッ


 ジャンは、脂汗を垂らしながら、元来た道を戻っていった。



 ---------------------------


 俺とクリスタは、おそるおそる、フリーフォールからの『落下物』を見に行った。


エレン「・・・・・・・」

クリスタ「きゃああああ!!!!」


 『よくわからないもの』が地面にたたきつけられ、数メートル先まで飛散した現場。

 そして鮮血が『よくわからないもの』を彩っていた。

 当然だが、クリスタは血相を変え、顔を両手で覆った。

 俺は傍に座りこみ、ソレを触ったり、見たりと観察する(正直やりたくない)。


エレン「・・・・クリスタ、落ち着け」ゴクリ

クリスタ「だって、これ・・・・っ」グスッ

エレン「違う・・・これは、肉塊じゃねえ・・・」

クリスタ「え・・・?」

エレン「これ、随分ズタボロにされてるけど・・・人形だ」

クリスタ「人形・・・?」キョトン

エレン「救急救命訓練の時に使う奴だ。俺の記憶が確かならだけど」

クリスタ「で、でも血は・・・・!!」

エレン「血はフェイクだな。こいつを見てくれ」


 俺は血だらけの腹部から、割れたビニール袋を取り出した。


エレン「そんで、ほら・・・」ゴロン


 続けて身体を裏返す。血にまみれていない部分から『人形』だと一目瞭然だ。
 

クリスタ「・・・・・ほ、ほんとだ・・・・・」ヘタリ


 クリスタは腰が抜けて、その場でへたり込んでしまった。


エレン「まあ、臭いからして血は本物だから、後で消毒しねえとな・・・触るなよ」

クリスタ「触らないよ、触りたくないよ!」


 そのとき、後方から人が駆け寄ってくる音が聞こえた。


アニ「エレーーーーーーーン!!」

エレン「アニ!!! ・・・・・て、なんでミカサにだっこされてんだ」

クリスタ「お姫様だっこだ・・・!!」

ミカサ「アニではなくて、中身はアルミン。容態が悪くなったので」

アニ「ゲホッゴホッ・・・ゼェゼェ・・・・不自然なサイレンがするから、何かと思ったら・・・

   それは・・・なにそれ、フェイクかい? 気持ち悪いね」

エレン「みたいだな・・・なあ、お前達は何か見つけたか?」

ミカサ「南は空振りだった、ので、急いでこちらに向かった」

エレン「クリスタ」ゴクリ

クリスタ「うん・・・詳しくは行きながら話すけど、ベルトルトたちはもしかすると、

     絶叫マシンのところにいるかもしれない・・・!!!」

アニ「ぜっきょ・・・? ゴホッ」

エレン「ああ! なんていうか、怖いんだ、早く止めねえと!!!」

ミカサ「2人とも落ち着いて。どういうこと・・・」


 >prrrrrrrrrrrrrrr


4人「!!!!」

エレン「今のサイレン・・・・!」バッ

ミカサ「・・・・・ここから左手・・・・東」

アニ「東側にある、絶叫マシンというと――」


クリスタ「超大型ローラーコースター『タイタン』だね・・・!!」


 ---------------------------

 
 アトラクション『タイタン』


エレン「――ついた!!」ゼェゼェ

クリスタ「とりあえず、私たちだけ先に走ったけど、ゼェゼェ」

エレン「『タイタン』動いてるな・・・ほら」


 ガタン タタン ゴトン


 『タイタン』は従来の巻き上げ式なので、搭乗口から最初の山を登る高さが異様に高い。

 かなり時間を掛け、ゆっくりと地面から離れていく様は乗客の不安を煽りに煽り――、

 一昨日、コニーがやたら俺に話掛けたのもうなずける程には、怖いんだ。


ジャン「エレン! クリスタ!!」

エレン「ジャン! そうか、この辺りはお前とリヴァイさんが」

ジャン「んなことはどうでもいい! 『タイタン』にはベルトルトが乗ってる!」

クリスタ「ベルトルトが!!?」

ジャン「アルミンは・・・アルミンの身体は、あそこなんだよ!!」バッ


 ジャンが指差した先は、コースターの2番目の谷だ。

 ちょうど『巨人』の仕掛け人形が出てくる最初の部分。

 眼を凝らしてみると――確かに、軌道上に『人影』があった。


クリスタ「・・・アニ!!!!!」

ジャン「ベルトルトは・・・・・アルミンの身体をひき殺す気なんだよ!!!」

エレン「んな、アホな・・・・・」

ミカサ「・・・・・・・っ!!!」


 そしてやっぱりアニの身体を横抱きにしたミカサが到着したとき――、

 ベルトルトを最前列に乗せた『タイタン』が、

 巨人に向かって、アルミンの身体に向かって、アニの心に向かって、

 『飛んで』いった――。



 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



 ダメだ、後数秒で、ダメだ、間に合わない、どうする、

 足が、動かない、なんで、


エレン「アニーーーーーーー!!!!!!」


 それぞれの絶叫が木霊したとき、


 パシュッ―― ビ ュ ウッ


 『また』だ。また、風を巻き起こすように『ナニカ』が軌道上を駆け抜けた。




 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ




 すんでの所で『人影』を抱きかかえた彼はバランスを崩し――、

 地面にたたきつけられるように転がり落ちた。


エレン「・・・・・・・・」

アニ「・・・・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・また」

ジャン「・・・・ハッ! おい、はやくあいつらの所へ!!!!」

クリスタ「う、うん!」


 駆けつけると、アルミンの身体を包み込むように抱えたリヴァイさんが倒れていた。


エレン「アニ! リヴァイさん!!!」

リヴァイ「大丈夫だ、問題ねえ・・・着地で踏み外しただけだ・・・鈍ってやがる」チッ

アルミン「・・・・・・・・・・・・」

アニ「アニ!」

クリスタ「アニ!! しっかりして」

アニ「・・・・・・・・・っ」


 おぼろげに空を見つめていたアニは、アルミンが持つ碧眼から、そっと涙をながした。


アルミン「・・・・・・・ごめんなさい・・・」ポツリ

アニ「・・・・・・・・・・・・・」

クリスタ「あの・・・おけがは・・・?」

リヴァイ「擦り傷くらいだ。それより、あの木偶の坊を押さえろ・・・

     あの状態じゃ次に何をしでかすか解らんからな」

ジャン「そう、だ。エレン、ベルトルトを降車口で押さえようぜ!」

エレン「ああ!!」

ミカサ「私もいく・・・!!」


 降車口で待ち構え、『タイタン』を1周分楽しんできたベルトルトを取り押さえた。

 だが、彼はその巨体を生かすことなく、あまりにも大人しく俺たちに捕まった。


エレン「・・・・・・っ」


 そして見た。

 アニと同じように、彼もまた、無表情のまま、静かに涙を流しているのを。



 ---------------------------


サシャ「みな、さん。何が・・・あったんです・・・?」


 その場に残ったリヴァイ達の前に、息の荒いコニーを背負ったサシャが洗われた。


クリスタ「サシャ、コニー・・・」

アニ「・・・・・見ての通りだよ」

サシャ「え・・・・・・・・・・」

コニー「・・・・・ハァ・・・ハァ。お、ねえちゃん・・・?」


アニ「――事件が、起こってしまったんだ」



 キーンコーン カーンコーン


『事件が発生しました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を始めます!!!』





第三章「僕とあの子の×××」 (非)日常編 END

以上で第三章日常編の終了です。またまた無駄に長くなってしまいました。
非日常編はやっぱり一気に投稿することになるので、待ってくださると嬉しいです。




 好かれよう、好かれようと努力しても、誰もぼくのことを見てはくれないのです。

  理由は単純なのです。ぼくは人の子じゃないのです。

 忘れよう、忘れようと努力した、その理由をようやっと思い出したのです。

  絶対に許されないのです。犬畜生が人の皮を被った罪だけは消せないのです。


     ――とある古い白黒映画の科白より。






第三章「僕とあの子の×××」 非日常編



また間が開いてしまった。第三章 非日常編 一気にあげます。
今回も捜査段階で『クロ』が解ると思いますが見守っていただければ。
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 ベルトルトを押さえていると、リヴァイさんがやって来てロープ(用意がいい、良すぎる)で

 手早く彼を拘束して見せた。縛り方からして、やっぱり技術ある兵士なのだと思う。


 ハンジぐるみのアナウンスから3分と経過していなかったが、

 誰も彼も、ろくなことを喋っていなかった。

 『タイタン』から離れて、地上で待機している全員と合流する。


 ここにきて病状がぶり返してしまったコニーを見て、ただただ、可愛そうに、と思った。


コニー「なぁ・・・みんな・・・だいじょうぶ・・・?」ゴホッゲホッ

サシャ「あ・・・大丈夫、ですよ・・・コニーは優しいですね」ニコ

コニー「みんな、怖い顔してる・・・ゼェ・・・」

クリスタ「そっか・・・コニーは今、小さいころに戻ってるんだよね・・・

     ごめんね・・・こんな・・・こん、な・・・・・・」

アニ「・・・・・・・・」

エレン「・・・とりあえず、ハンジさん・・・いつもの、ください」


『はーいw じゃあ、今回の事件も裁判でしっかりと解決に導いてね!!!www』


ミカサ「仕方ない・・・私たちも混乱している。事実確認という意味でも・・・」

ジャン「ああ、捜査しようぜ・・・なんでこんなことになっちまったのか・・・」

コニー「顔色、悪い・・・・・なあ、だいじょうぶ?」

ジャン「・・・お前ほどじゃねえよ。ったく、お前は子供の頃からお前なんだなー・・・」

アニ「・・・アニと、ベルトルトは」

リヴァイ「・・・何も話さねえな。心ここにあらず、といったところか」

アルミン「・・・・・・・・・・・・・」

ベルト「・・・・・・・・・・・・・・」


 アルミンの中にいるアニも、そしてベルトルトも、

 曇りきった光の無い瞳で、虚空をじっと見つめていた。


エレン「・・・・・・ああ。明かさなきゃ、いけない、よな」


 お前達が何故そんな眼をしているか知らなくてはいけないと、俺は目を閉じた。



「 捜 査 開 始 」



 被害者はアルミンということになるらしい・・・ハンジに連れて行かれてしまった。

 入れ替わるように、恒例のタブレット端末が手渡された。


【ハンジさんファイル3】

 1.被害者はアルミン・アルレルト。【絶望病】に冒された状態で、娯楽室遊園施設、

  『タイタン』の軌道上に捕らわれ、マシンに轢き殺されそうになる

 2.発見者はリヴァイ、ジャン、クリスタ。本日2時半頃、生徒間で被害者を捜索中に発見

 3.被害者は高熱による体力の低下が著しく、『いれかわり病』のため精神がアニとなっている

 4.また被害者の首には手で締め付けられた鬱血痕がある。そのほかに目立った外傷はなし

ミスりました。ハンジさんファイルは以下になります
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【ハンジさんファイル3】

 1.被害者はアルミン・アルレルト。【絶望病】に冒された状態で、娯楽室遊園施設、

  『タイタン』の軌道上に捕らわれ、マシンに轢き殺されそうになる

 2.発見者はリヴァイ、ジャン、クリスタ。本日2時半頃、生徒間で被害者を捜索中に発見

 3.被害者は高熱による体力の低下が著しく、『いれかわり病』のため精神がアニとなっている

 4.また被害者の首には手で締め付けられた鬱血痕がある。そのほかに目立った外傷はなし

 5.被害者を明確に殺そうと行動した者を『クロ』とする



サシャ「――つまり『クロ』が被害者を殺そうとしたのは決定しているんですね」

ミカサ「そうみたい・・・それほど明確な行動を起こしていた」チラ


 ミカサは、地面で体育座りをしてうつむくベルトルトを見た。


リヴァイ「・・・決まったわけじゃねぇんだが?」

ミカサ「わかってます。とにかく・・・ベルトルトを見張る人は必要だと、思う」

リヴァイ「俺がやろう。この木偶の坊1人を見張ることならできる・・・」

ジャン「ハンジさんファイルだと・・・被害者はアルミンってことになるけれど、

    精神はアニだってことを明記している。つまりアニの精神も被害者ってことでいいな」

エレン「だと思う。アニの精神も含めて、明確な殺意を抱いた者が『クロ』なのか・・・?」

クリスタ「・・・・・・殺意なんて、そんな・・・」フルフル

サシャ「クリスタ」

ミカサ「それが本当かどうかも、今回の事件を知る者から確認する。

    私たちは、そのために捜査をする・・・。落ち着いて」

クリスタ「・・・・・・・・」

ジャン「おい、コニーの奴はどうするんだ? 5歳児じゃあ裁判の意味も解らねえだろ」

サシャ「とりあえず、保健室で休ませましょう」

コニー「・・・ん・・・」クラクラ

ジャン「サシャ重いだろ。そいつ俺が背負うから。アニ、つうかアルミン・・・はどうだ?」

アニ「・・・・・・・・・・・・」

エレン(そういやアルミン、さっきから全然喋ってないな・・・)

アニ「・・・ねえ、どういうこと?」

ミカサ「? どうしたの?」

アニ「・・・これは一体どういうことだい?」

エレン(あれ・・・なんかヘンだ・・・えっと・・・)

ミカサ「・・・貴方は、アルミン? それとも・・・貴女はアニ?」

アニ「・・・・・・アニだけど・・・あんたたち、何言ってるんだい?」

エレン「・・・・? あ、っと・・・・これ、は・・・・?」

リヴァイ「・・・【絶望病】の症状が回復したな」ボソ


エレン「・・・てことは、『いれかわり病』が治って・・・」

サシャ「・・・確か人格の変化については、症状の回復後、記憶がなくなるんですよねえ」

クリスタ「アニ、熱が出てからのこと、覚えてる!?」


 アニは首を振った。アニの中身がアルミンだったことを覚えていないらしい。

 もちろん、自分自身がアルミンの身体の中にいたことも――。


 >言弾『感染者の記憶』を入手


ジャン「え、じゃあ被害者は『アルミンの身体』と『記憶がないアニの精神』ってことに・・・」

エレン「・・・なあ、早急に調査をしたほうがいい」

サシャ「私はコニーと保健室に行きますね」

リヴァイ「・・・俺も、木偶の坊を連れて行く。こいつは一応病人だからな」


 今回はまず舞台が広すぎる。俺たちは手分けして捜すことにした。

 アニはクリスタから、事件の経緯を確認するとのことだった。

 まだ熱は下がっていないが、捜査には積極的に参加するらしい。


 ――当然かもしれない。ベルトルト状態を見てしまえば、そうするしか無いのだろう。


エレン(じゃあ、今ひとりきりで何処かにいるアルミンは、自分がどんな状況かすらも

    わかっていないってことか・・・首も絞められているようだし・・・)

ミカサ「エレン、まず現場検証」

エレン「・・・・・・ああ」


 直接の現場はアトラクション『タイタン』だ。

 まずはアルミンの身体があった場所・・・は地上から高く見ることが出来ない。


エレン「どうするか・・・うーん」ムムム

リヴァイ「・・・エレン。俺が一瞬しか見ていない光景でいいなら話してやれる」

エレン「え?」

リヴァイ「アルミンの身体は巨大な石像ごと、軌道上に巻き付けられていた・・・。

     ちょうど、何かのコードでぐるぐる巻きにされてたな・・・」

エレン「石像?」

リヴァイ「ああ・・・俺の動体視力が確かなら・・・おそらく美術室の彫刻だ。

     似たような作品ならたくさんあるから、まぁ時間があれば確かめるといい。

     実際に縛られていた奴は粉々だが、捜せば破片くらいなら落ちてるかもな」

エレン「コードというのは」

リヴァイ「それを切断してアルミンを抱えた。おそらく電気のコードか何かだと思うが」

エレン「あの・・・アルミンの様子はどうでしたか・・・?」

リヴァイ「まあ、ろくな抵抗もしていなかったな。あまりに大人しすぎて、

     俺たちは直前までその場所を特定できなかったわけだ。

     身じろぎくらいはしていただろうが、なんとも些細な抵抗で・・・

     こいつはやる気がねえのか、とすら思った」

ミカサ「リヴァイ先輩・・・今夜はよく喋りますね」イラ

リヴァイ「・・・俺は元々結構しゃべる・・・虚言だと疑うか、ミカサ?」

ミカサ「いいえ。貴方は嘘は言わない。ただ『話さないだけ』・・・いつもそう。

    だから、貴方の証言は、証言として信用したいです」

リヴァイ「そうか・・・俺は保健室にいる。じゃあな」ガシャガシャ


 リヴァイさんは何も話さないベルトルトを引き連れて、遊園地の出口へ向かっていった。


エレン「リヴァイさん・・・」


 >言弾『リヴァイの証言』を入手


ジャン「ほんっと・・・あの人よくわかんねえ・・・」

ミカサ「ジャン」

ジャン「あの腰元のやつは兵備か? 運動性能がおかしいんだが・・・」

エレン「お前は、リヴァイさんと行動してたよな」

ジャン「ああ。あの人ここに近づいだけで『人がいる』って言い出して・・・

    今の、死んだように気配のないベルトルトに気付いたんだよ」

ミカサ「わざわざあの装置を持ってきたってことは、こういった事態を想定していた?」

エレン「かもな。アトラクションの高所で異変があったときに備えて・・・」

ジャン「マシンが発車したとき、管制室はロックがかかって動かなかった。だから先輩は、

    ゆっくり上る『タイタン』より先に軌道上を駆け上がって、寸でのところで救ったんだ」

ミカサ「管制室にロック?」

ジャン「見るか?」


 ジャンの案内で、搭乗口へ向かった。先ほどは降車口にあった『タイタン』のマシンも、

 自動的に搭乗口の定位置へ移動してあった。

 確かにロックされた管制室の中には量産型ハンジぐるみがいる。


エレン「おーい、ハンジぐるみー」コンコン


『・・・なんすかw』


エレン「起きてんなら、ここ開けろ!」


『いいっすよーw』ガチャ


ジャン「え、あっさり開けやがった・・・俺たちがガチャガチャやったときは無視したぞ」


『だってー、その時は貸し切り状態だったからw』


ミカサ「・・・貸し切り?」


『ベルトルトに、これからの一周は邪魔しないで欲しいって言われたからだよw

 お客さんにサプライズの依頼などをされたら優先的に演出するマニュアルなんでw』


ジャン「緊急事態に緊急停止ボタン押さねぇなんて、存在価値ねえだろ!!」


『あー、ちょっと私から説明いいかなw』


 量産型の横に、もう1体ハンジぐるみが現われた・・・こちらは学園長のほうだ。


『学園長である私とは違って、量産型ハンジぐるみは複雑なアルゴリズムを組み込まれた

 ロボットのような存在だと思って欲しい』


エレン「どういうことです?」


『こいつらは学園の人手不足を補うために私が開発したものなんだけど、自立型なんだ。

 学習能力はあるんだけど、それも本物と比べるとパターン化されてしまう』


『さらには・・・お客様の要望に応えるってマニュアルを優先したんだろうね。

 おそらくベルトルトのかなり強い要望について忠実に守った結果、ジャンを無視した』


ミカサ「絶叫マシンの監視員をそんなものにするなんて、どうかしてる・・・」ギロ


『おっしゃる通りだよ。ちょっと想定仕切れない部分があったことは認めよう』


ジャン「いや、でも量産型の思考回路を読み切ってベルトルトは指示したってことになるぞ」


『そうなんだよ。これ、もちろん運営上の社外秘って奴だからさあ・・・

 普通はこんなこと起こりえないはずなんだよね・・・』


 >言弾『量産型ハンジぐるみ』を入手


エレン「じゃあ、アトラクションの起動自体は、量産型が行うってのは間違いないんですね」


『それはもう。起動だけは量産型しか権限がないよー。

 ちゃんと生きてるお客さんを乗せてから動かす。そのためのスタッフだからね』


エレン「そうですか。わかりました」


 >言弾『アトラクションの起動』を入手


『そういうわけだからー・・・よろしくwww』ノシ


ジャン「・・・あいつ反省してんのか?」

エレン「してねえだろ、ふざけすぎだ」イライラ

ミカサ「しかたない・・・」

エレン「そうだジャン、ベルトルトの姿見てるんだよな? どんな感じだった」

ジャン「・・・先頭に乗ってぶつぶつ独り言を言ってたな。死んだような眼だった」

エレン「独り言?」

ジャン「確か『アニを解放してあげなきゃ』とかナントカ言ってたような・・・」

ミカサ「アニって、名前を呟いたの? 確かに?」

ジャン「ああ」

エレン「アルミンの身体に危機が迫っている中、アニの名前を出したってことは・・・」


 >言弾『アニとアルミン』を入手


ジャン「ベルトルトは様子がおかしいってモンじゃねえ。

    大体・・・そうだよ、あいつ先頭なんかにいるのがおかしいんだよ」

ミカサ「どういう意味?」

ジャン「探索の時、俺はベルトルトといくつかアトラクションを回ったんだけど、

    お化け屋敷はダメだわ、絶叫マシンはダメだわ・・・

    笑っちゃうほどそういうのを怖がってただよ、あいつ」

エレン「・・・怖がってるようには見えなかったぞ」

ジャン「ああ・・・おかしいよな?」


 >言弾『ジャンの証言』を入手


エレン「確かに・・・な・・・」

ジャン「ちょっと、あいつともう1度話してみようと思う。調べたいこともあるしな・・・」


 ジャンはそう言って『タイタン』から離れていった。


エレン(直接的な現場は『タイタン』。パンフレットの説明だと、

    人間を喰らう『巨人』なる敵から逃れるため、マシンを使って縦横無尽に駆け抜ける、

    ってストーリー仕立ての設定がある)

エレン(古典的な巻き上げ式駆動だから初動がゆっくりで、

    巨人のモニュメントと共に恐怖感を演出している最大の絶叫マシン、か・・・)

エレン「この舞台は、偶然なのか・・・・・・」


 >言弾『タイタン』を入手


 俺はミカサと共にアルミンの身体が縛り付けらていた、2番目の谷の近くを捜した。

 リヴァイさんの言うとおり、確かに彫像の破片が転がっていた。

 被害者を縛り付けていたらしいものは飛散したのか、上手く見つけることが出来なかった。


ミカサ「エレン・・・『フリーフォール』のあの気持ち悪いフェイクを見に行こう」

エレン「ああ・・・事件のピースだもんな」


 俺たちは北のフリーフォールまで移動した。


アニ「・・・・・・・・・・・」

エレン「あ、アニ!」

アニ「これ、気持ち悪いね」


 アニは1人で、あの偽死体の前に佇んでいた。


エレン「それは・・・」

アニ「クリスタから聞いたけど、エレンと見つけたんだって?」

エレン「ああ・・・これ救急救命の訓練で使うような人形だよ。保健室のかな・・・」

ミカサ「エレン、貴方たちは最初、西側を調べていたはず」

エレン「ああ・・・(ちょうどいい。俺も、捜索したときの流れを整理しよう)」

ミカサ「アルミンの身体とベルトルトが夜中にいなくり、私たちは手分けして捜した。

    私とアニの身体は南、ジャンと先輩は東――、

    エレンとクリスタが西、サシャとコニーが北。といった具合に・・・」    

エレン「西側組は運営しているアトラクションだけに絞って捜してた。

    劇場では、園内の定点カメラの映像を音声付で流してるんだ」

エレン「量産型によると、イベントが無いときはいつもそうらしい・・・。

    で、そこに、ベルトルトとアルミンが映った」

アニ「ってことは、リアルタイムで中継されてたんだね・・・?」

エレン「そうだな。映像が切り替わってた先に映ってたし。右上に、

    確か『LIVE』ってテロップもあった思うし・・・悪い、よく覚えてない・・・」

ミカサ「あとでクリスタにも話を訊いてみよう・・・」


 >言弾『劇場の映像』を入手


アニ「・・・ベルトルトの奴、どんな様子だった?」


 ベルト『――ああ、アニ・・・早くラクになろう。ねえ』ニコニコ


エレン「・・・怖かったよ。言い方はアレだけど、正直普通じゃなかった。

    麻袋を被ったアルミンに話掛けながら・・・そうだ、あいつ、

    はっきりと『アニ』って話掛けてたぜ。アニとして扱ってた・・・」


 >言弾『アニとアルミン』を更新


ミカサ「・・・ちょっと待ってエレン。アルミンは麻袋を被ってたの?」

エレン「ああ・・・」

ミカサ「それで、顔はアルミンだったってこと?」

エレン「・・・そういや見てない。でも華奢だったし。しかも病衣も着ていた。

    状況的にアルミンしかありえねぇ」

アニ「ベルトルトとアルミン以外は2人組だった。状況判断としてはおかしくないんじゃない?」

エレン「・・・・・・・・・・」


 >言弾『映像の中の人物』を入手


ミカサ「ということは、ベルトルトとアニの映っていた場所が、ここだったってこと?」

エレン「ああ。絶叫マシン系のお客さんの順番待ち待ちスペースだって。

    クリスタが判断したから、あいつに話を訊いた方がいい」

アニ「・・・てことは、ベルトルトとアルミンのいる場所を、ここだと思ったってこと?」

エレン「というか。劇場から近いから、まずここを見たな。それでハズレだった」

アニ「そして、違ったうえにマシンが動いて、フェイクの死体が降ってきた。

   捜索にあたった人間を完璧におちょくってるね・・・」

エレン「ああ・・・それから『タイタン』に行ったし、リヴァイさんがいないと

    マジで・・・アルミンの身体は・・・アニは轢き殺されてたかも・・・」ゾワ


 自分で言っておきながら、背筋が凍るというのを体感した。


アニ「・・・実は、私は何も覚えてないけど、アルミンが残してくれたものならある」


 アニはそう言って、自分の生徒手帳を見せてきた。

 そして数ある便利な機能の中で、(俺は)特に利用したことの無いメモ帳を見せてきた。


ミカサ「これ・・・」

アニ「入れ替わってる間、アルミンは色々と思いついたことをメモしてたみたいなんだ。

   大体は、体温とか、風邪の症状とか・・・それから入れ替わった私の様子とかだね」

エレン「細かいな・・・!」

ミカサ「アルミン自身は自分で記憶するタイプ。

    ので、今のように『いれかわり病』が治った時にアニが困らないための配慮では?」

エレン「なんなんだあいつ・・・格好良すぎ・・・っ」パアアァァ

アニ「・・・・・・・・・えっと、アルミンのことはさておき」コホン


 少しだけ顔を紅くしたアニが、見せたメモの内容は・・・。


 “アニと風呂に入ることになった。彼女は女性だし、気になってしまうのも仕方ない”

 “問題は、裸の姿がお互い困るってことと、心配症なベルトルトを納得させられるかだ”


 “・・・意外にも彼はすんなりと笑顔で「わかった」と頷いた。おかしい”

 “大切にしている幼なじみの女の子が他の男と風呂に入る・・・僕だったら悩んでしまうよ”


アニ「私とアルミンが風呂に入ったことは・・・それはもう、どうでもいい。

   ・・・つまり、アルミンとしてはベルトルトの様子をおかしく思ったのさ」

エレン「確かに・・・そうだ、ベルトルトはあっさりと承諾してたな」


 >言弾『ベルトルトの言動』を入手


アニ「それから、アルミンの記録では、食事の量についてベルトルトのことを書いていた。

   食傷気味な自分と比べて、アルミンの身体である私と、ベルトルトは

   熱があるのにものすごくご飯をよく食べてるって」

ミカサ「・・・私も彼らのご飯は多めに運んだ記憶がある。病人の食べる量ではなかった」

エレン「図体デカいのと、ファイターだからな。食べるのが癖なんじゃねえか?」


 >言弾『アルミンの記録』を入手


アニ「このフェイクは気持ち悪いね・・・私は別の所へ行きたいけど現場の保守はどうする?」

ミカサ「写真などに収めることはできない?」

エレン「そうだな、現場ひろすぎるし・・・おーい、ハンジさーん」


『はーいw 話は聴いていたよ。仕方ない、人数も少ないし見張りは難しいだろうから、

 この場はいろいろな角度から写真を撮っておいてあげるね!』


アニ「どうも・・・」

ミカサ「ありがとう」


 アニとは別れ、俺たちは西側の『劇場』へ向かった。


クリスタ「あ、ミカサ、エレン!」

エレン「ああ、クリスタ。お前ここで調べてたんだな」

ミカサ「ベルトルトたちはどこで映ったの?」

クリスタ「この先のミニシアターだよ」

ミカサ「ここはずっと営業していた?」

クリスタ「うん。通常営業していたよ・・・ミカサの捜した南側もあったよね」

ミカサ「そう・・・南も、一部だけ運営されていた。ハンジぐるみに問い合わせたところ、

    3日前、私とエレンの乗った観覧車に不調が見られたから、

    夜間に全面的な点検を行っていた・・・とのこと」

エレン「点検・・・?」

ミカサ「そう。点検の内容にはもちろん、量産型ハンジぐるみも含まれる。

    試運転をするということは、客から見れば『通常営業』していることになる。と」

エレン「・・・やっぱ、夜中に開いてるのはイレギュラーなんだな・・・」

ミカサ「そう。学園長ハンジぐるみがマニュアル点検のために出入りをしていたため、

    娯楽室からの出入り口が開放されていた・・・らしい」

クリスタ「事件の舞台となった始点、ってことだね・・・?」


 >言弾『夜の遊園地』を入手


 俺たちは、ミニシアターの会場へ移動した。

 今でも定点カメラが映されている。


クリスタ「・・・『LIVE』って右上にあって・・・現在の様子を映してる。

     ベルトルト達はこの中のワンシーンで出てきたんだ」

ミカサ「何か変わったことは・・・?」

エレン「・・・・・・・・・あっ」

クリスタ「・・・エレンも思い出した?」

エレン「ああ」

ミカサ「?」

クリスタ「一瞬、停電があったんだよね」

エレン「そうそう。その後、例のベルトルト達の映像が映ったんだ」

クリスタ「私は一瞬でも怖かったな・・・ミカサは大丈夫だった?」

ミカサ「なにが・・・?」

エレン「え、だから停電」

ミカサ「停電なんて、私が知る限り無かった」

クリスタ「そう、なの?」

ミカサ「・・・この『劇場』で起こったことは確かなの?」

エレン「ああ」

クリスタ「・・・・・・・・・」


 >言弾『シアターの暗転』を入手


エレン「・・・一応、映写室を調べようぜ・・・」


 俺たちは入り口にいる量産型ハンジぐるみに頼み込んだ。

 許可を取れば、ホームシアターのようにも利用できるとのことだ。

 客側のモラルに委ねている部分が多いと思った。『超高校級』の客に・・・。


エレン「すげええええええ」


 みたことのない機材が並ぶ映写室。後ろは裏口になっていて外と行き来がすぐに出来るし、

 俺は年甲斐も無くはしゃいでしまった。もちろんたった一瞬だけだけど。


ミカサ「生放送データを高性能なプロジェクターで映写・・・

    ・・・ここは、私たちも探索の日に利用した」

エレン「わたしたち?」

クリスタ「私とミカサ、サシャで遊んで、撮影機材を借りて色々撮ったの。

     今度アニとも映りたいねって・・・」

エレン「撮影?」

クリスタ「撮影は大体サシャがやったんだけど。写真も動画もたくさんとったよ」

ミカサ「機材が大き過ぎて邪魔だから、また今度、全員が揃ったときにでも

    男子に担いでもらって仕切り直そうということになった」

エレン(さりげなく男子に荷物を持たせようと考えるんだな・・・)

ミカサ「・・・あ」

エレン「ん、どした?」

ミカサ「私が3日前、機材を戻した場所と、少し位置が違う・・・」

クリスタ「ほんとだ・・・少し散らかってる感じ。ミカサは丁寧に片付けたもんね」

ミカサ「ん・・・」

クリスタ「私たちのあと、男子は使った?」

エレン「いや、俺たちは使ってねえけど・・・たぶん」

ミカサ「たぶん?」

エレン「使うとしたらアルミンか? あいつ、確か『劇場』で映画観てたし・・・」

エレン(まあそれも『観る』側だから、使ったとは考えにくいけどな)

クリスタ「私たちの後に使った人がいるのは確かだよね」


 >言弾を『撮影機材』を入手


ミカサ「・・・・・・・・・・・」


 ピピッ ピッ・・・ ピ ピ ピ

 ミカサはおもむろに、録画機材の操作パネルをいじりだした。


エレン「どうしたんだよ」

ミカサ「これ。高画質高音質の特殊な撮影をすると、メモリを圧迫する」ピッピピ

エレン「ふむふむ」

ミカサ「・・・いくつか、データが消えてる」

エレン「消したのか?」

クリスタ「ううん。また時間のあるときにディスクに焼こうって話になった筈だけど」

ミカサ「メモリのギリギリまで撮ったのに。なくなってる」

エレン「・・・お前達のあとで、誰かが消したってことだよな・・・?」

エレン(なんにせよ・・・結果的に空き容量は増えてるのか・・・)メモメモ

 >言弾『消えたデータ』を入手


 劇場を出て、そして入り口付近に戻ってきた。


エレン「――とりあえずこんなところか?」

ミカサ「現場らしい現場は見て回った」

クリスタ「私は、もう一度タイタンの近くでも見て回ろうかな」

エレン「俺は、保健室に行くよ。ベルトルト・・・のことを調べたい。あいつはキーパーソンだ」

クリスタ「うん・・・」

ミカサ「やはり現場が大きすぎた・・・私は違う場所を調べようと思う」

エレン「そっか・・・またな」

ミカサ「みんな、忙しくても水分はマメにとるように。それでは」ノシ


 何か心当たりがあるのか、妙に落ち着いた表情をしたミカサは早歩きで去って行った。

 俺もクリスタと別れ、1人保健室へ向かう。


ジャン「お、エレン」

エレン「よお」

ジャン「ふあぁあ・・・」ムニャ・・・

エレン「こんな時に緊張感ねえな」

ジャン「そりゃ・・・寝てねえから・・・まさか夜中に学級裁判やるなんて思わねえだろ」

エレン「お前、今回はちゃんとまともに参加するんだろうな?」

ジャン「うっぜーな。俺は今回なんにも見てねえからな」フンッ

エレン「あー・・・はいはい」

ジャン「ま・・・前の時は、確かに過ぎた。今回は・・・

    正面から『クロ』を問い正してやるよ・・・だから」

エレン「・・・だから?」

ジャン「頼むぜ・・・・・・エレン」


 ぽん、と軽く肩に手を置いて、そしてジャンは寮の方へ消えていった。

 それは、俺の知る限り、よくマルコがジャンにやっていた仕草だった。


エレン「・・・・・・・・・・・・」




 保健室



コニー「あ・・・おにい・・・ちゃ」

エレン「・・・コニー。ごめんな、こんな夜中に・・・」

サシャ「裁判は・・・出なくちゃいけないみたいですから、それまでは休ませます」ナデナデ

エレン「悪いな・・・起こしたみたいで」

コニー「起きとくよ・・・だいじょうぶ」ニカッ

エレン「うん」ニコ

エレン「・・・ベルトルトは?」

サシャ「奥です」


 俺は奥の区画へ向かい、すぐ傍のリヴァイさんを一瞥してから、

 ベッドへ横たわるベルトルトをじっと見つめた。


ベルト「・・・・・・・・・・・・」


 言葉が出なかった。

 彼は熱がある。鼻水だって酷いし咳もあるはずだ。

 そんな生理現象を除けば、彼はまるで生きているように見えなかった。


リヴァイ「ダメだな・・・普通のやり方じゃ、こいつは口を割らねえだろう」ポツリ

エレン「・・・・・・サシャ」

サシャ「どうしましたか?」スタスタ

エレン「俺、ベルトルトの近くにいた筈なんだけど、こいつの様子に違和感は持たなかった。

    お前は・・・何か気付いたか?」

サシャ「うーん。昨日は朝からベルトルトが患者さんの仲間入りをして・・・

    心配症な彼はアルミンたちの隣に寝て、それから普通に寝ましたよ」

エレン「そうだよな・・・まあご飯はもりもり食べてたみたいだけど。

    そうだ、晩ご飯はサシャの特製だったよな。ベルトルトはお粥だっけ」

サシャ「そうです。保健室の皆さんのものは私が作りましたけど・・・

    美味しく召し上がっていただけましたし、私としては満足でした」

エレン「で、そのあとお腹を壊したんだっけ。食べた量が量だしなあ・・・」

サシャ「そうですね。皆さんがお風呂に行く間、私がトイレに付き添ってましたよ」

エレン(特に問題は無い・・・アニやアルミンにも不自然な接触はしていないし・・・

    よくある患者の1日ってところだな・・・)


>言弾『昨日の出来事』を入手


エレン「体調が悪くなったとき、あいつ、おかしなことは言ってなかったか?」

サシャ「うーん・・・まあ苦しんでましたよ。元々、彼って言葉少なですから。

    でもお腹の調子が悪くて、吐き気もある・・・ちょっと尋常じゃなかったです」

エレン「俺たち結構長風呂だったから、大体1時間くらいか」

サシャ「うーん。それくらいですかね。エレンたちがすぐに帰ってくるものと思って

    コニーにはお留守番を頼みましたが・・・悪いことをしてしまいました」

エレン「いや、全ては女子の長風呂が悪いんだ・・・」


 >言弾『体調の悪化』を入手


サシャ「私がもうちょっと鋭かったら・・・気づけてたこともあるんですかね・・・?」

エレン「・・・気にするな。俺だって医者気取りをしておいてこのザマだ」


 その後、サシャに遊園地の北側を捜索したときのことを訊ねた。

 彼女は随分とばつの悪そうな顔で、いつもより控えめな声を出した。


サシャ「申し訳ないんですけど・・・コニーが途中で体調を悪化させて・・・

    看病のために近くでお水を探したり走り回っていたので・・・・・

    それどころでは無かったんです。もちろんその時にアルミンたちの捜索もしましたが、

    コニーを優先しましたし、手がかりになるようなものは・・・」

エレン「そういやお前、コニーを背負ってたな・・・いや、仕方ない」

サシャ「ごめんなさい」シュン


 ばつの悪そうなサシャに、気にするなと活をいれていると――。


コニー「・・・ぅ・・・あの・・・」モジ・・・


 コニーがこちらに来てもじもじと落ち着かない様子で立っていた。


エレン「コニー。あ、そうだ、お前はベルトルトの様子を見て何か思わなかったか?」

コニー「え? んっと・・・あの大きな人は・・・」モジ

エレン「ほら、あのお兄ちゃんがトイレに籠もる前とか、どうだよ」

コニー「アルミンとは喋ったけど・・・あの大きな人とは喋ってないから・・・」

エレン「(アルミンって、中身がアニの時だよな)じゃあ、アルミンはどうだった」

コニー「遊んでくれた。あ・・・よく眠れないって苦しそうだった」

サシャ「そういえば、アニはずっと夢見が悪かったんですよね」

コニー「俺、寝言をきいたよ。誰かにずっと、ずっとあやまってるみたいだった・・・」


 アルミン『ごめ・・・・・ごめん、な・・・・ぃ』


エレン「・・・それ、いつ聞いたんだ?」

コニー「一昨日・・・おれ夜中に起きて、そしたらアルミンが小さい声で言ってた・・・」

エレン「アルミンの身体になっても、睡眠の不調は相変わらず、か・・・」

サシャ「彼女は、そういう意味ではずっと様子が変でしたね」

エレン「そうだな・・・」


 >言弾『アニの悪夢』を入手


コニー「あの・・・」モジモジ

サシャ「どうしました?」

コニー「おしっ・・・・あの、トイレ・・・」モジモジ

サシャ「あ! ごめんなさい、そういうことでしたか!」クスクス

エレン「あー・・・いってらっしゃい」ノシ


 もじもじとせわしないコニーに何度も謝りながら、サシャはコニーを連れて保健室を去った。


エレン(あとは、ベルトルトといえば・・・・・・そうだ、鼻水の薬を飲ませたんだ)


 俺は奥の調剤室へ向かった。

 一応、ベルトルトに関連するものとして調べて見ると・・・。


エレン(あれ・・・思ったより数が・・・少ない・・・)

エレン「・・・!!」バッ


 ガサ ゴソ

 俺は薬棚をあさりつつ、デスク上のパソコンをカチカチといじった。

 目的は調剤室の管理表――・・・やがて。


エレン「・・・・・・やっぱり・・・!」

リヴァイ「どうした」


 ベルトルトのいる区画からリヴァイさんの声がした。


エレン「・・・一部の薬について、使用履歴が改ざんされてます」

リヴァイ「ほう・・・」

エレン「数字をちょっとずつ変えてる・・・けど、誰かが盗んだんだ」


 >言弾『調剤室の管理表』入手


リヴァイ「で、どういった薬が・・・?」

エレン「『抗ヒスタミン薬』・・・花粉症などのアレルギー症状の緩和剤、

    そして、不眠症患者に使う睡眠薬などに入っている、

    『ヒスタミン』って成分の作用を抑えることが目的の薬です」

リヴァイ「なるほど。それで『抗ヒ剤』が狙って盗まれた・・・と?」

エレン「そうです。市販薬も、学園長が処方する処方薬も、ちょっとずつ・・・」

リヴァイ「そりゃあ、穏やかじゃねえな・・・。おら、お前がやったのか、ん・・・?」


 リヴァイさんはこつんとベルトルトの肩を小突いた。


リヴァイ「・・・まあ喋らんだろうな・・・俺と同じ、クソだ。こいつは」

エレン「最悪だ・・・花粉症の薬なんて、副作用の少ない最新の第三世代処方薬は素通りして

    副作用の強い、第一世代ばっかり・・・・・・」


 >言弾『抗ヒスタミン薬』を入手


 俺は調剤室を出てベルトルトとリヴァイさんの元へ戻った。


リヴァイ「・・・捜査の時間も無い、俺も気付いたことを一つ教えよう」

エレン「・・・リヴァイさん」

リヴァイ「こいつだ」


 ガ ン ッ

 リヴァイさんが足で蹴りつけたのは金属製のダストボックスだった。

 鈍色に光るソレの中をのぞき込むと――


エレン「これ・・・・!!」

リヴァイ「ったく汚ねえな・・・絶対触るんじゃねえぞ・・・」

エレン「触りませんけど・・・」

リヴァイ「資料写真ならクソ学園長に撮らせた」

エレン「ありがとうございます。これは確かに・・・就寝前まで保健室にはありませんでした」


 全部で3パック――輸血用の血液製剤が捨てられていた。外の容器だけで中身は空だ。

 誰かからいただいた大切な血はどこへ消えたのか・・・察しはつく。


エレン「・・・ほんと、胸くそ悪い・・・」


 >言弾『輸血用全血製剤』を入手 


リヴァイ「それと質問なんだが・・・この木偶の坊が来ている、病衣だったか・・・?

     この服は保健室にしかねえのか」

エレン「? そうですが・・・」

リヴァイ「患者以外は着ていないんだな。数も少ないのか」

エレン「患者は共通です・・・まあフリーサイズならいくらでも予備はありましたけど」


 薄水色の病衣は基本的に男女共用の「フリーサイズ」だが、ベルトルトだけXLサイズだ。


リヴァイ「じゃあ薬と違って数の管理はしていないんだな・・・」

エレン「ええ、特には・・・」

リヴァイ「・・・つまり、仮に何着か無くなろうが、解らないってことだ」

エレン「確かに・・・(ベルトルトとアルミンの共通点だし、一応メモしとくか?)」


 >言弾『感染者の病衣』を入手


リヴァイ「こいつとアルミンの共通点は、あとは【絶望病】にかかった者同士ってことか」

エレン「え・・・ベルトルトは何も症状がでてません、ただの風邪かと・・・」

リヴァイ「エレンよ、【絶望病】の特徴は、

     『患者の人格に変化をもたらし、回復するとその間の記憶が消える』という」

エレン「そうですね」

リヴァイ「木偶の坊の、今のこの様子・・・俺は普段通りには到底思えないが・・・

     なにか思いあたることはねえのか?」

エレン「少なくとも事件が起こるまでは・・・いつもの彼だった・・・」

エレン(・・・いつもの彼だった・・・?

    俺は自信を持ってそう言えるほど、ベルトルトを知っていただろうか・・・)


 >言弾『絶望病の特徴』を入手


エレン「・・・アニなら、アニだったら解ったかもしれないけど。あいつは何も言ってなかった」

リヴァイ「それは・・・『中身』のほうだな」

エレン「そうです。だってあいつらは『幼なじみ』だったから・・・

    もし、ベルトルトが絶望病であっても、些細で解りづらい変化だったと考えます」

エレン(そう、幼なじみだ。俺やミカサと違って離れている期間が長かったみたいだけど・・・

    だから解らない。なんで、なんでこの2人が事件の渦中にいるのかが・・・!)


 >言弾『幼なじみ』を入手



 キーンコーン カーンコーン


『えー・・・今回は少し多めに捜査時間を取ってみたけど、どうだったでしょうか。

 私が見る限り、前回よりみんなが積極的に捜査を行ってくれて嬉しいっす。

 じゃ・・・そろそろ始めようか。みんな、一階のエレベーター前に集合してくれ』



リヴァイ「・・・いくぞ」

エレン「はい・・・・・」

エレン(時間配分を失敗したかな・・・満足に調べ切れなかった気がする。クソッ!)


 リヴァイさんと、俯いたベルトルトと連れだってエレベーターへ向かう。

 すでにアニとミカサが待っていた。


アニ「・・・ベルトルト・・・あんた・・・」

ベルト「・・・・・・・・・・」

アニ「・・・・・・」

アニ「・・・・・・」

ミカサ「エレン、ベルトルトの様子は?」


 俺は首を振った。やがてクリスタ、サシャ、コニー、ジャン・・・みんなが集まる。


エレン「そっか、今回・・・アルミンがいないんだな」

ミカサ「そう・・・けれど。なにがなんでも解かなくてはいけない。私たちも、事件の一部だから」

エレン「ああ。ミカサ、悔しいけど、お前は頼もしい奴だよ、ほんと」

ミカサ「・・・私はそうでありたい。ここに来て、その想いが強くなっている」


 ミカサは切れ長の眼でじっと、エレベーターを見据えた。

 母さんが持ってる黒曜石の宝石によく似た瞳で・・・ちょっと綺麗で。

 そして俺は漠然と、ミカサとの距離が遠のくような、そんな虚しさを覚えた。


 俺たちを乗せたエレベーターはぐんぐんと下降し、裁判所へたどり着いた。

 それぞれ指定の証言台を目前に佇み――例のごとくハンジぐるみが説明をする。


『揃ったねえ。では、おなじみですが、裁判前にルールを説明します。

 君たちには、今回の事件について『クロ』が誰なのかを議論して貰います』


『最終的に、一人一票でクロが誰かを投票していただき、

 多数決で決まった者が『クロ』であった場合、『クロ』には厳しい量刑を、

 もし『シロ』であった場合は、『クロ』以外の人間の在籍年数が5年付与されます』


リヴァイ「・・・・・・・・・・・」チラ


『あー。リヴァイくん。キミ解ってるよね。ちゃんと参加してね、今回は・・・』クス


リヴァイ「・・・・・・・この豚野郎が」ボソ




 “――被害者を明確に殺そうと行動した者を『クロ』とする――”


エレン(捜査をしていて、疑問に思ったことがいくつかあった。そこを突き詰めたい・・・)


 アルミンの躯は、アニの精神は、誰の悪意に晒されたのか。暴いてやる。

 暴いてやる・・・

 暴いて・・・

 暴・・・


ミカサ「・・・エレン」コソ

エレン「!!」ハッ

ミカサ「大丈夫? 顔色が悪いし・・・足が震えてる」

エレン「え・・・」

ジャン「おい、お前・・・大丈夫か?」

エレン「は・・・・? え、ああ・・・大丈夫・・・」


 俺は小さく、怯えたように小さく震えている自分に気付いた。

 犯人だと疑われた最初の学級裁判でさえ、ここまでの震えはなかったのに。


エレン「なんだろ、案外俺も絶望病にかかってたりして・・・はは」

リヴァイ「面白くねえな・・・」

ジャン「頼むから裁判の後にぶっ倒れてくれよ・・・?」

エレン「ひでえな・・・はは・・・・・・」


 ――ああ、今思い返せば、俺の直感は随分と鋭かった。褒めてやりたいよ。

 ――俺に、こんな裁判はするんじゃないと、全身で教えてくれていたんだから。





 「学 級 裁 判 開 廷」


ちょっと休憩・・・少ししたら裁判パートもあげようと思います。

いまさらですが安価とか書いといて安価ほとんどないのは詐欺だよね。

ごめんなさい、くそトロいけどもうちょっと続く・・・

もともと原作通り章仕立てのつもりだけど、1章ぶんの長さを短くできないのが悪いのです。

一応、最初の妄想のときより章の数を減らそうとは思ってます。



ジャン「さーて。まずは『ハンジさんファイル』を見直すか?」

クリスタ「被害者の定義だけど、『アルミンの身体』と『アニの心』でいいんだよね?」

ミカサ「それでいい・・・」

サシャ「『クロ』はその被害者に、明確な殺意を持ち、行動した者・・・ですよね」

コニー「・・・・・・・」オロオロ

リヴァイ「この中にいるってことだ・・・。おいコニー、解らねぇときは手を挙げろ。

     小学校で習わなかったのか?」

ミカサ「このコニーは未就学児ですけど。バカですか貴方」

ジャン「ミカサさん? お前なんでこの人に挑発的なんだよ!?」

コニー「あ・・・わからない、です。ここ・・・なに?」

リヴァイ「・・・アニとアルミンを傷つけたバカをオシオキして『ごめんなさい』させる場だ」

コニー「あ・・・『帰りの会』ってこと?」

エレン(いや、合ってるけど・・・結構合ってるけども・・・!)

サシャ「正直、ベルトルトも含めて病人ばかりです。アニだって熱は下がってないですし。

    さっくり行きたいところです。なので恒例の・・・犯人は挙手プリーズ!!」ドンッ

ジャン「するわけねーだろ、お前は相変わらず脳みそメロンパン女だな!」

エレン「ところでベルトルトは話せる状態なのかってとこだが・・・・」

ベルト「・・・・・・・」シン・・・

エレン「・・・見ての通りだ」

ミカサ「ベルトルトが事件の中心人物なのは明白・・・」

アニ「でも・・・公平性を持つために、まずは客観的に確認できるところから始めよう」

ミカサ「あんた、必死ね・・・気持ちは解る。そして、アニの言うとおり」

ジャン「そうだ。まずは事件の流れを整理していこうぜ。

    俺たちは今回現場を目撃したという意味で、どうしても話に主観が混じってしまう。

    そこで・・・同じ時間帯において、誰がどの光景を見ていたかを明らかにしたい」

エレン「賛成だ。議論はその後からでも良いと思う」

アニ「わかった・・・私にとってもありがたい」

エレン(アニはここ数日の間を覚えていないだろうしな・・・)


ミカサ「本日午前2時のこと」

クリスタ「ミカサ、ジャン、リヴァイさん、私は、寮で過ごした『健康組』だね。

     リヴァイさんがみんなの寝室を訪ねて起こして回ったの」

ジャン「理由は・・・」チラ

リヴァイ「自室で身体を鍛えていたところだった・・・クソに行こうと生徒手帳を見ると、

     アルミンとベルトルトのアイコンがマップ上で動いたからな」

ミカサ「私もすぐに確認した。高熱の2人が遊園地に向かうのは確かにおかしいと感じた」

ジャン「俺たちはハンジぐるみに掛け合って、特例で校舎側に向かったってわけだ」


エレン「俺、サシャ、アルミン、アニ、コニー、ベルトルトは『保健室組』としよう。

    同時刻、俺は安眠中、アニの身体・・・つまり当時のアルミンに起こされた。

    あいつもたまたま起きたみたいだが、ベルトルト達のベッドには温もりがあった」

サシャ「そのあと『健康組』と合流して遊園地へ行きました。

    マップアイコンは遊園地内の場所までは表示しませんから・・・」

エレン「そこからは、俺たち自身でいなくなった2人を捜すしかなかった」

アニ「東がジャンと先輩、西がクリスタとエレン、

   南がミカサとアニ(中身アルミン)、北がサシャとコニーだね」


サシャ「北は、実はほとんど捜索できていません。コニーがダウンしたので。

    だから騒ぎに気付くのも、合流するのも遅れていました・・・」シュン

クリスタ「西は灯りのあるアトラクションを調べていたんだけど・・・

     劇場で・・・あとから詳しく話すけどベルトルトたちが定点カメラに映ってた。

     だから急いで、候補である絶叫マシン『フリーフォール』へ向かったよ」

ミカサ「南は比較的明るい場所が多かったので非常に骨が折れた・・・スカだったけれど。

    探し回った運動量でアニの身体がへとへとになった。

    『フリーフォール』のサイレンが鳴ったのでアニを抱いて合流した」


ジャン「俺と先輩は一応全部しらみつぶしに調べてたな・・・その時はスカだった。

    南と同じく『フリーフォール』のサイレンは聞こえていたけど

    先輩の判断で敢えてテリトリーの探索を続けたんだ・・・

    そして、絶叫マシン『タイタン』の先頭に座す・・・ベルトルトを見つけた」

リヴァイ「すでに発車直前だった・・・直後に『タイタン』のサイレンが鳴ったな」


クリスタ「『フリーフォール』で見た人影は偽物だったんだよね・・・」

エレン「『フリーフォール』でアニとベルトルトを見つけられなかった俺たちは、

    ミカサ達と一度合流した時に『タイタン』のサイレンを聞いた。駆けつけると、

    加速するマシンから間一髪、リヴァイさんが救出するところを目撃したんだ」

ジャン「それが、『ハンジぐるみファイル』で言うところの『目撃者』に相当する。

    リヴァイさん、俺、クリスタ・・・3人しかいないが次点でエレンも入ってんだろう」

サシャ「私は『フリーフォール』と『タイタン』のサイレンで混乱して・・・

    コニーを連れてとにかく順番に周りました。『フリーフォール』は何もなかったので、

    『タイタン』へ・・・すでにアルミンの身体が救出されたあとでした」

コニー「おれは・・・よく覚えてない・・・」フイッ

アニ「(・・・・・・・・・!)」ジッ

ミカサ「その頃、ちょうど私とエレン、ジャンがベルトルトを降車口で取り押さえて――」


エレン「――そして、学園長のアナウンスにより『事件』の発生が告げられた」


アニ「で・・・あんたたち。正直なところ、ベルトルトを『クロ』と疑ってるんだね」

ジャン「疑うっつうか・・・あいつは当事者だろ、紛れもなく」

エレン「当事者であると、俺も思ってる。だけど『クロ』かってなると・・・

    あんまりそう思いたくないな・・・完璧に俺個人の感情だけど」

エレン(それに・・・捜査中で覚えた違和感が・・・)

リヴァイ「本人が口を割れば早いんだがな・・・」

ミカサ「貴方と同じで二枚貝のような硬い口を持ってる・・・」ジロ

ベルト「・・・・・・・」

クリスタ「えっと、じゃあまず、『被害者』の様子から確認してみようか・・・?」


リヴァイ「・・・被害者はアトラクション『タイタン』の軌道上、

     位置で言うと、マシンの発車地点から2番目の山を下った先にいたな」

サシャ「『ハンジさんファイル』によると、首を絞められたような鬱血痕があります」

クリスタ「アルミンの身体は『絶望病』のせいで体力の低下が顕著だったんだよね」

アニ「なるほど・・・そのせいで抵抗しなかったってことかい」

エレン(体力の低下だけで・・・抵抗をしない・・・そんなことがあるんだろうか・・・)

ジャン「アニ、気分は悪いだろうが、まずは『ベルトルト』が『クロ』であると仮定して、

    事件がどういう経緯で動いたかを議論する・・・そういう流れになっちまってる」

クリスタ「あの、その前に被害者の呼称は統一したほうがいい・・・と、思うよ?」

エレン「そだな・・・どうする?」

リヴァイ「チッ、面倒くせぇ。被害者はもう『アニミン』でいいだろうが。『アニミン』な」

生徒(意外な人が名付けてきた・・・! しかも、やっつけ仕事だ)

ジャン「午前2時ごろ、ベルトルトと・・・ア、アニミンは起き出して『遊園地』へ向かった」

リヴァイ「マップを見ていた限りでは、迷わず3階に向かったな・・・」

クリスタ「じゃあ『遊園地』が【点検のため出入りできたことを知っていた】のかな」


 <言弾を『夜の遊園地』ぶつける


エレン「それに賛成だ」

エレン「十中八九そうだろうな。遊園地が特別な時間帯に出入りできた事を知っていた・・・」

ミカサ「私たちが以前遊んだときに観覧車に故障があったから・・・」


エレン「点検や修理が行われることは容易く連想できただろうし、学園長も隠すつもりはない。

    ハンジぐるみに訊ねたら、このことは簡単に聞き出せただろうな」

アニ「・・・ねえ、アニミンが何らかの理由で自ら『タイタン』にいたってことは?

   ベルトルトは関係なく、【自分の意志と行動だけ】で立っていたなら・・・」


 <言弾『リヴァイの証言』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「アニ、例えアニミンが望んであの場に立っていたとしても、

    1人では不可能なんだ。それはリヴァイさんが目撃してる。そうですね?」チラ

リヴァイ「アニミンが立っていたのはマシンが下降した先の谷だ。地上との高低差は低く、

     作業用の梯子も近くにある。人間の上り下りは楽だろう・・・。

     だが、アニミンは縛り付けられていた・・・軌道上にな」

エレン「そう。しかも美術室にあった彫像ごと後ろ手に・・・1人じゃそんな縛り方はできない」

エレン(今回は積極的に参加してるな・・・リヴァイさん、何を考えているんだろう)

ジャン「俺からもひとつ言いたい。美術室の展示作品について目録を見たが――」


 <ジャンが言弾『不気味な彫刻』を提示


 ジャンがタブレットを見せてきた。美術作品の目録らしい。

 写真付で、そこにはアトラクションにでてくる『巨人』のようなものが映っていた。


コニー「・・・ぅゎ、きもちわるい・・・なにそれーぇ・・・」フルフル

ジャン「モブリットって先輩の作品で・・・『タイタン』って題名の大きな彫像が消えてたな。

    あれを持ち運ぶって観点からも、ひ弱且つ衰弱したアニミンの身体が出来たとは

    考えられにくい・・・俺はそう思うぜ?」

クリスタ「そうだよね・・・少なくともアニミンを縛った人間はいるってことだよ」

ミカサ「アニ。彼が『シロ』なら議論中に綻びが出てくる。

    『万が一』ベルトルトじゃなかったら・・・ベルトルトの疑いが晴れるだけ」

アニ「・・・いいよ、やろうじゃないか」

クリスタ「えっと・・・じゃあアニミン以外があそこに縛り付けたとして・・・

     もしベルトルトがやったとしたらどんな理由が考えられるかな?」

ジャン「以前・・・ユミルが事件を起こしたときは、ライナーが呼び出しに応じそう・・・

    という、事件を作りたいがための利便性からだったな」

ミカサ「では、今回もその【利便性から、拘束しやすいアニミンを選んだ】というのは・・・」


 <言弾『幼なじみ』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「ミカサ・・・俺たちには解るはずだ。あいつらは入学前からの関係だ。

    ユミルとライナーの時は、そういった過去の関係性が無かったからのケースだろう」

クリスタ「関係性が影響しないなら・・・ユミルは私を狙った方が楽だったよね」

エレン「利害だけで親しい人間を殺すってのは・・・普通の高校生には難しい芸当だ」

ミカサ「・・・それはユミルや私達の話。ベルトルトの人間性が同じとは言い切れない」

アニ「・・・・・・・・・・・・・」

サシャ「確かにそうです・・・私たちではベルトルトとアニの関係は測れません。

    彼が本当に利便の関係でアニミンを狙ったのかも・・・」


 <言弾『アニとアルミン』を提示


エレン「それに・・・ベルトルトは発車前に『アニを解放する』・・・って言ってたらしい。

    そうだよな、ジャン?」

ジャン「ああ、そうだ。リヴァイ先輩と俺ではっきりと聞いた。

    こう言っちゃなんだが、頭がいかれてるようにしか見えなかったぜ、俺には」

エレン「・・・そして、俺とクリスタも『劇場』の定点カメラ映像で聴いた。

    一緒に映った相手を『アニ』と呼んでいたのを」

クリスタ「私たちが聴いた言葉は――」


 ベルトルト『やあ・・・アニ。もう悪夢を見るのはやめにしよう』

 ベルトルト『アニを解き放って、哀しんであげる。こんなところ出て行ってしまおう』


クリスタ「――彼はこんな感じのことを言ってたよ」

ジャン「つまりベルトルトと『アニ』の関係性に動機があるかもってんだな?」

エレン「そう・・・だってベルトルトは、『アニの心』に話掛けていたんだから・・・」

サシャ「なるほど・・・とはいえ、結局ベルトルトがやったという論調ですが・・・」

ミカサ「悪意はなくとも・・・人は人を殺すことがある。刃傷沙汰とはそういうもの」

クリスタ「それはそうだけど。でも、ミカサ・・・」

エレン(ミカサは慎重な奴だけど・・・今回はやけに疑って掛かるな・・・。

    どこか、焦っているようにも思える。どうしちゃったんだよ・・・?)

ミカサ「さっき・・・アニは『アニミンが自ら軌道上に立った可能性は?』と言った・・・。

    ねえ・・・何か心当たりがあるんじゃないの・・・あんた」

アニ「・・・・・・・・・・・・ないね」

エレン「あ・・・そういえばアニ、お前・・・」


 <言弾『アニの悪夢』を提示


エレン「『絶望病』にかかる前から、悪い夢を見て調子が悪かったよな」

アニ「ああ・・・そのこと」

エレン「そのことをベルトルトにも相談していたよな?」

ミカサ「・・・ベルトルトはアニを心配していた。とても・・・」

アニ「言ったでしょう・・・夢の内容はあんまり覚えていないって・・・」

エレン「いや・・・でも本調子じゃなかったのは事実だし・・・

    ベルトルトと話していて何か様子が変わったこととかは・・・?」

ミカサ「あるいは、あんたが何か余計なことを言ったとか」

アニ「少なくとも・・・私がアルミンと入れ替わるまでは・・・いつものあいつだったけど。

   ところで。ねえ、ミカサ・・・あんた、私に何が言いたいの?」


 アニの声がひやりとしていた。


ミカサ「・・・ベルトルトがあんたの自殺願望に付き合ったってことも考えられる」


 裁判場に一瞬の静寂が訪れた。


エレン「・・・え?」

クリスタ「み・・・ミカサ・・・!?」

アニ「ちょっと、さすがに突飛だろ。コニーと頭を取り替えたのかい」

リヴァイ「嘱託殺人未遂・・・或いは自殺幇助、教唆の可能性ということか」

サシャ「でもアニミンが抵抗をあまりしていなかったというなら・・・

    ベルトルトにそういうことをお願いしていたのかもしれません。

    そしてあの時、アニミンを縛り付けることが出来たのは彼だけです」

ジャン「他の奴らは『健康組』と『保健室組』でしっかり固まってたからな」

エレン「ちょ、ちょっと待てよ。アニに自殺願望なんかあるわけ・・・」

アニ「失礼な奴・・・よほど私とベルトルトを貶めたいってことか。

   仮にあったとしても、人様に手伝って貰うなんてことはしないよ」

ミカサ「エレン・・・アニミンはほとんど抵抗していなかった。

    それはあのチ・・・先輩が観察したとおり。意識があるのに、それはおかしい」

リヴァイ「おい、今なんか口走りそうになってなかったか・・・」

ミカサ「・・・それとも、あの女を庇う理由でもあるの・・・?」

ジャン「キャッツファイト第2弾かよ。おい、絶対暴れるなよ、絶対だぞ!?」

エレン「違う・・・そうじゃない!」

ミカサ「・・・・・・・」ジッ

エレン(そういう漠然としたのじゃねえ! そうじゃなくて・・・もっと矛盾した何かが)

サシャ「やっぱり【抵抗しない理由は本人が許していたとしか考えられません】・・・!」

エレン(・・・・そうじゃねえんだってば!)


 <言弾『抗ヒスタミン薬』をぶつける


エレン「それは、違う・・・・!」

サシャ「・・・と言いますと?」

エレン「『抗ヒスタミン薬』を大量投与すれば、意識はあっても中枢神経が麻痺する。

    ほとんど動けないし、吐き気、悪寒・・・風邪と似た症状を引き起こすんだよ」

ジャン「エレン? えっと、その抗ひすナントカって単語はどこから出てきたんだ」

サシャ「あー・・・そういえば昼間、ベルトルトに飲ませましたね、鼻のお薬」


 俺は『抗ヒスタミン薬』について、特に『健康組』に対して説明をした。


クリスタ「えっと・・・つまり睡眠作用がある薬のことなんだね」

エレン「とりあえずそういう認識でいいと思う。

    もし、こいつを使ったとすれば、アニミンに抵抗する意志があろうが関係ない」

クリスタ「うーん・・・詳しくないから想像できないな。具体的な情報はある?」


 <言弾『調剤室の管理表』を提示


リヴァイ「・・・それは・・・」

エレン「保健室奥の調剤室で管理されてるデータだ・・・。

    『抗ヒスタミン薬』にあたる薬が少しずつ盗まれて・・・改ざんされてた」

ジャン「ちょっとずつ・・・ここ2日でか」

エレン「ああ・・・」

リヴァイ「具体的には睡眠薬が3種類、抗アレルギー薬が7種類だな・・・」


 リヴァイさんがタブレットのデータを見ながら呟いた。


ミカサ「アニミンが自分で飲んだんじゃ? 保健室なら自分で飲めたでしょう」

アニ「いい加減にして・・・私がいつ死にたいなんて言ったの」イライラ

コニー「・・・・・・ぅ・・・」ウル

サシャ「ちょ、子供がまだ起きてる途中でしょうがぁ! 昼メロは昼やってくださいよ!」

ジャン「・・・あー。こほん。

    ・・・ミカサ、ちょっと落ち着けよ」

ミカサ「私は冷静だ・・・だから疑問をぶつけているだけ」

ジャン「いいや。お前はさっさと『クロ』を決めつけたがってるように見える。

    何をそんなに急いでるのかしらねえがよ、ちょっと話を聴いてやれ」

ミカサ「・・・・・・・・・・・・」ギリ

エレン「そうだミカサ。お前が言うとおりアニミンは自分で飲んだかも知れない・・・

    でも、逆を言えば、『保健室組』の誰かが飲ませたかもしれないんだ」

リヴァイ「『アニミンの動きを封じる』という点では誰でも可能だったと・・・?」

エレン「そうです。で。ミカサはアニがベルトルトに自殺を頼んだって主張したいんだよな?」

ミカサ「そう」

エレン「うん、解るぜ。そうだよな。幼なじみだからこそ、頼めるのかもしれない。

    それくらいの信頼関係が2人にあったと・・・端から見てて俺たちは思った筈だ」

クリスタ「いつも一緒だったからね、ライナーがいたときは大体3人組で・・・」

リヴァイ「それで、確実に殺すために木偶の坊はわざわざ【高所からの轢殺を選んだ】ってか?」


 <言弾『ジャンの証言』をぶつける


エレン「それは違います」

エレン「――仮にベルトルトが手伝ったとしたら、あんな方法をとる筈がないんだよ」チラ

ジャン「!・・・ああ・・・そうだよな・・・そうだよ、やっぱ自分であそこに立ってるなんて、

    そんなのおかしい・・・だって、あいつ高所恐怖所でお化け恐怖症だぜ・・・?」

リヴァイ「ほう・・・アニ、お前は知っていたのか」

アニ「ああ。そういえば・・・彼は高いところが嫌いでした。お化けは初めて聴いたけど。

   高いところからだと人が豆粒みたいに見えて、それが怖いと小さい頃言っていましたね」

ベルト「・・・・・・・・・」

アニ「あんたまだ直ってなかったの・・・? ライナーといい、男共ときたら・・・」

エレン「ジャンは一緒に遊園地を回ったから知ってるんだよな」

ジャン「そうそう。あいつ漏らしそうになってて、しかも泣きじゃくってたし。

    ベルトルトが自分から手伝うとか・・・あんな調子じゃムリだろ」

サシャ「んー? でもベルトルトじゃないとアニミンをあそこに縛れなかったんですよね?」

エレン「ああ、それは間違いない」

サシャ「ベルトルトが【酔っ払ってでもなきゃ】不可能じゃないですかーあははは」


 <言弾『絶望病の特徴』をぶつける


エレン「それに賛成だ」

サシャ「・・・へ?」キョトン

エレン「ベルトルトが素面じゃないとすれば・・・恐怖心に勝る行動力が生まれたかも知れない」

サシャ「え・・・未成年の飲酒は法律で禁止されてますけど・・・」オドオド

エレン「じゃなくて。つまり俺たちが見落としていただけで、

    『ベルトルトは人格が著しく変わっていた』んじゃねえかな・・・」

ミカサ「なるほど・・・彼もまた、『絶望病』におかされていた・・・と?」

ジャン「いや・・・むしろ今でも、しっかり人格変わってんじゃねえの・・・?

    どうして黙ってるのかさっぱり理解できねえけど。まあ普通じゃねえし」

エレン「『絶望病』はかかったものの人格が著しく変わるって病気らしい。

    でも感染者の人格が変わったかは、こちらの主観でしか判断できない」

クリスタ「アニミンみたいに誰かと入れ替わる『いれかわり病』、

     コニーみたいにちっちゃい頃に戻る『さかのぼり病』――あ、そうか」ピコン

エレン「うん。そいつらは普段と対比しやすい劇的な変化だから俺たちは確認できた」

アニ「人格もピンキリ。精神年齢が高ければ、人格の変化を隠して皮を被ることも出来るね」

ジャン「でも結局、人格に変化のあったベルトルトなら殺しを出来たんじゃんって話になるな」

ミカサ「同意する。エレン、私の疑問に答えてくれていない・・・」

エレン「そう。・・・で、根本的な話なんだけど。なんで、わざわざ俺たちに見つかるように

    目立つ方法でベルトルトは殺そうとしたんだろうな?」

アニ「確かに・・・仮にベルトルトが殺そうとしたとして、あんな方法じゃすぐにバレるしね」

リヴァイ「そもそも・・・生徒手帳を持って遊園地へ向かった理由が解らねぇな・・・」

ジャン「そうですね。だって、俺たち全員を引き寄せる結果になってますからね。

    黙って行っとけば、俺たちだってまさか夜の遊園地にいるとは考えませんでしたよ」

ミカサ「そして・・・定点カメラにわざわざ映ったことといい、

    ベルトルト自身が進んで『クロ』と主張しているようにしか思えない・・・」

サシャ「うーん・・・これは小説によくある・・・今のベルトルトの人格は、

    他人の前で人を殺すのに快感を見いだすサイコパスだった、とか?」

リヴァイ「・・・その手の人格破綻者なら数え切れねぇほど見てきた、俺の持論だが・・・

     そういう奴は得てして口が達者でな・・・コレみたいに無口過ぎる奴はいねぇ」

エレン(さらっと恐ろしいこと言ってくるな、この人・・・)

リヴァイ「ま、それは根拠の無い冗談として――」

ジャン「え、冗談かよ」

リヴァイ「仮に、ベルトルトの今の人格が、殺人に抵抗のないクソだったとしよう。

     『フリーフォール』の気持ち悪い血糊人形ってのにどんな意味があった・・・?」

ミカサ「当然・・・私たちへの『フェイク』で間違いない。混乱させて、

    場合によっては本当の犯行場所である『タイタン』から遠ざけることができる」

アニ「・・・それは間違いないだろうね。そういう目的に違いない」

クリスタ「実際、私とエレン、そしてミカサ達も『フリーフォール』のサイレンで集まったし」

サシャ「血糊なんてどうやって用意するんですか。というか【偽物ですよね】?」


 <言弾『輸血用血液製剤』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「本物の血液だ。保健室にある全血製剤のパックが使われていた。

    薄手のビニールに入れられていて、落下の衝撃で散ったんだ」

クリスタ「それも・・・ベルトルトで準備出来るよね。保健室にいたんだし・・・」

エレン(いいや・・・できるはずがない・・・だってベルトルトは・・・)

アニ「・・・わかった。でもさ・・・ベルトルトがいつ準備できたっていうの」

ミカサ「・・・・・・・・・」

アニ「だって、『保健室組』って常に誰かしらと一緒にいたんでしょ?

   トイレひとつだって、離れているから念のためエレンかサシャが付き添っていた・・・」

ジャン「・・・ああ・・・そういやそんな話だったな・・・」


アニ「――ねえ、あんた達。遊園地へ薬漬けのアニミンを連れ発見されるまでの短時間で、

   フェイクの人形に、アニミンを縛り付けた彫像・・・全部準備できると思うの?」


 しんと雑音が消える。やがて・・・最初に口を開いたのはジャンだ。


ジャン「一度夜中に起きて準備をしてから、それからアニミンを連れ出したんじゃ・・・?」

アニ「何度か行き来したとして、ちっとも起きなかった他の保健室組について説明して」

ジャン「それは・・・確かにそうだな・・・」

エレン「あのアルミンでさえ、アニの身体とはいえギリギリまで起きなかったしな・・・」

アニ「そう・・・結局、アニミンだろうが、ベルトルトだろうが・・・

   あの舞台を調えるには時間がなさ過ぎたと思わないかい・・・?」ニヤ

ミカサ「・・・・・・・・・」チッ


『・・・はーい!w さてと、議論が振り出しに戻ったところでちょっと一息しようか。

 うんうん、今回は骨肉の争いって感じで好みだわーwwww 12分休憩ね!!』


 そして見計らったかのように、学級裁判は中断された。





エレン「・・・・・・はぁ~あああ!!!」ドンヨリ


 俺は裁判場の端っこに並べられた椅子のひとつに腰掛けて、紅茶を飲んでいた。

 自分でも驚くほど大きくてわざとらしい溜息が出てしまう。


ジャン「おまえ・・・おっさんみたいな溜息つくなよ。こっちが疲れるだろ」

エレン「いや、だって・・・今回はベルトルトの立ち位置を明かすことが重要だろ?」

ジャン「まあな。いまのところ堂々巡りだけどな」

エレン「そう。やればやるほど・・・あいつのことが解らなくなる・・・」

ジャン「アニはアニで、ベルトルトの味方として必死なんだろうな・・・鋭いことを言う。

    ベルトルトが関わっていない可能性なんてゼロに近いけどな」

エレン「せめて、ベルトルトがどんな人格なのか明確に解ればなあ」

ジャン「・・・・・・なあ。ミカサ、いねえな」

エレン「たぶんトイレじゃねえの?」

ジャン「アイドルはトイレなんていかねえよ。お花摘みにいってんだ」

エレン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホントか!!?」

ジャン「マジレスすんなよこっちが恥ずかしいだろ。」

エレン「・・・・・・なんかさ・・・ミカサの様子がへん」

ジャン「さすがのお前でも気付いたか。よかったわ」

エレン「ミカサ・・・学級裁判は嫌いって言ってた。人前でずっと喋り続けるのも下手だし。

    今回は別人かと思うほど・・・ずっと喋り通しで・・・必死そうでさ」

ジャン「ミカサが必死になるときなんて、重要な仕事で気張るか、あとは・・・・」ジロ

エレン「・・・なんだよ・・・」

ジャン「・・・ムカつくから絶っっっっっ対、言わねぇ」

エレン「・・・・?」イラッ

アニ「あ・・・エレン。ちょっといいかい」スタスタ

エレン「おお、アニ。どうした」

アニ「裁判中に協力してほしいことがあるんだけど――」


 アニは俺に耳打ちをしてきた。


エレン「――?」

アニ「・・・簡単だろ。協力してくれる?」

ジャン「???」

エレン「それくらいは良いけど。でも裁判の材料になるなら俺は言うぞ」

アニ「どうしてもって時は仕方ないね。でも出来れば・・・ギリギリまで言わないで欲しい」

エレン「・・・でも、これがどんなことに役立つってんだ」

アニ「決まってるだろ? 『クロ』を炙り出すためだよ」クス


 アニが去って行ったあと、ジャンが小さく笑った。


ジャン「依然ベルトルトが怪しいってのに・・・ここに来て余裕そうだなあ、あいつ」

エレン「うん・・・今日のアニは、アルミンっぽい」

ジャン「・・・で、何言われたんだ? 言えよ。」

エレン「え? やだよ、約束破っちゃうことになるじゃん」キョトン

ジャン「あっそ」ハァ


 俺とジャンはしばらくどうでもいいことを話していた。ミカサは帰ってこない。

 そして休憩時間を少なくなった頃、俺たちはリヴァイさんとベルトルトの元へ向かった。


エレン「どうです・・・?」

リヴァイ「さあな。多少小突いてみたが相変わらず反応しねえ。案山子だな、こいつは」


 暇そうにしていたリヴァイさんが、唐突にベルトルトをコツン蹴った。

 軽い動作だが、力は強いのか、ベルトルトの巨躯がぐらりと揺れた。


ジャン「先輩、それ小突くってレベルじゃないっすわ」

リヴァイ「なあエレンよ・・・こいつのこの様子・・・精神患者だかに見えるか?」

エレン「うーん・・・かたくなに口を開かない人を、俺はしっかりと見たこと無いです。

    父さんの患者さんも・・・お話くらいは出来る人ばかりだったし・・・」

リヴァイ「ああ・・・『頑な』ってのには同意だ。そこには毅然とした意志がある・・・

     しっかりと躾の行き届いた犬みたいに、従順で頑なに見える」

エレン「躾の・・・・・・・・・・・・・あの、リヴァイさん」

リヴァイ「おい、犬ってのは冗談だぞ・・・」

エレン「捜査中、みんなはどんなことをベルトルトに話掛けてましたか」

リヴァイ「あ・・・? 俺も含めて事件に関することをあれこれ聴いていたが」

エレン「それ以外の話題は。お天気の話とか、ほのぼのした話はとか」

リヴァイ「あるわけねぇだろう、この状況で。サザエさんの時間じゃねぇんだぞ」

エレン「・・・・・・・・・・・・・・!」ハッ

リヴァイ「・・・・・・・・・・・・・そういうことか」

ジャン「っ・・・おい、ベルトルト。アニミンに殺意を抱いたのはてめぇか?」

ベルト「・・・・・・・・・・・・・」シーン

リヴァイ「ベルトルト。幼稚園のころ好きだった女子の名前を言え。今すぐに」

ベルト「・・・・・・・・・・・・・アニ」ボソ

エレンジャン「!!!!」


 俺たちはびっくりして言葉に詰まった。リヴァイさんでさえ目を見開いている。


エレン「っライナーの秘密を一つ教えてくれ」バッ

ベルト「・・・あんなに厳ついのに可愛いものに目が無いこと」ボソ

リヴァイ「おい、ルイズコピペを今好きな子に置き換えて呟いてみろよ。ほら、早く」


ベルト「・・・アニ、アニ、アニ。アニぃいーーん。
    あぁー…ああ…あ。あ。あー。アニアニアニぃいいぁわぁあー
    あぁクンカクンカ。クンカクンカ。スーハースーハー。スーハースーハー。
    いい匂いだなぁ…くんくん
    んはぁ。アニ・レオンハートたんの月光ブロンドの髪をクンカクンカしたいお。クn」


エレン「ベルトルト、ストップ! ちょっとリヴァイさん、こいつで遊ばないでください。

    ・・・てゆうか何ですか、るいずこぴぺって」

ジャン「顔に出てないだけで内心めっちゃ楽しんでるでしょ、あんた」

リヴァイ「いや・・・しかし、なるほどな。こいつがどんな人格なのか検討がついた」

エレン「ええ、やっと解りました・・・! これで、裁判の停滞した流れを覆せる筈です」

ジャン「ハッ。いや・・・でも、コレはちょっと・・・ヤバいんじゃねぇか・・・」


 ジャンはぎこちなく笑いつつ、肩を震わせた。


リヴァイ「・・・悔いのねえようにな」


エレン(にしても、ベルトルトってアニが好きだったのか。そっとしておこう・・・)


 俺は、疑問がひとつ解消されたことに高揚感を覚えていた。

 それなのに。

 それなのに。背筋を撫ぜるほんの少しの寒気は、依然として消えなかった――。







「 学 級 裁 判 再 開 」




アニ「で・・・あんたたち、話は纏まってるのかい。とくにミカサ」ジロ

ミカサ「・・・・・・・・・・・・」ギロ

アニ「怖い顔してる。あんたファイターの方が性に合ってるかもね」

ミカサ「なんなら、いつかの続きをここでしてやろうか・・・」

コニー「・・・なんでケンカしてるの・・・?」

クリスタ「そうだよ・・・! ここは殴り合う場所じゃないんだよ。議論しようよ・・・!」

リヴァイ「解ってるんだろうなメス猫ども・・・

     裁判がいつ終わりになってもおかしくない状況ってことをな・・・」

ミカサ「・・・では私から。ベルトルトがこの夜時間だけで舞台を整えたとして、

    保健室組がそれに気づかなかったことを説明しろと、あんたは言った」

アニ「そうだね・・・何か思いついた?」

ミカサ「『抗ひすみたん薬』を保健室組にも飲ませたとしたら・・・熟睡していた可能性がある」

エレン「ミカサ、ミカサ。『抗ヒスタミン薬』な」

ミカサ「・・・ぇ・・・ぅ・・・・・・」キリッ

ジャン「開き直った・・・」クス

サシャ「えっとー。つまり私とエレンたちは夜中に熟睡してて気付かなかったと?」

エレン(確かに・・・今日の夜時間はいやに寝付きがよかった・・・)

アニ「ふうん。よく考えたね」

ミカサ「調剤室から減った薬の量を考えれば、不可能ではない、はず」

アニ「・・・まあ、あんたにしちゃ及第点だね」ボソ

エレン「ん? ・・・何か言ったか?」

アニ「いや・・・じゃあ・・・仮に保健室組が全員薬を盛られていたとして、

   果たしてベルトルトにそんなことが出来る隙があったの・・・?」

ミカサ「保健室といっても高度な医療措置が出来る空間。中はいくつもの部屋や区画になってる。

    一瞬の隙を突けば可能。そしてベルトルトの人格が【残虐なものに変わって】いたなら、

    ある程度の計画を組み立てて動けたはず・・・」


 <言弾『ベルトルトの言動』をぶつける


エレン「それは違うな・・・ミカサ」

ミカサ「・・・何が違うというの、エレン」

エレン「ベルトルトの人格が、変化していたというのは状況としてアリだ。だけど、人格ってのは、

    無数に存在する。人の数だけあるんだ・・・それをそう簡単に決めつけていいものなのか?」

ミカサ「・・・現状、ベルトルトが殺しをする動機となると、それしか考えられない」

クリスタ「・・・単騎で突っ込むにはあまりにもリスクの高いやり方だと思うよ。

    『人を殺してはいけない』っていう理性を外すきっかけは、

    【絶望病】で常識を逸脱した人格に変化すること・・・これぐらいしかないよ」

ジャン「・・・そもそも、ベルトルトが単身で全てを仕組んだって言い切れるのか?」

クリスタ「! えっと、ジャン・・・」

サシャ「え・・・それは、どういうこと・・・です?」

エレン「俺が今から話す・・・」


 俺は休憩時間、アニに耳打ちされたときのことを思い出した。


 アニ『アルミンと入れ替わっていた時、彼が細かく物事を記録していたこと・・・

    この事実を知っている者は少ない。敢えて、裁判ではそれをかくして欲しい』

 エレン『・・・・・・・』

 アニ『アルミンの記録を証言するときは、極力誰の情報なのか隠して。

    ・・・簡単だろ。協力してくれる?』

 エレン『それくらいは良いけど。でも裁判の材料になるなら俺は言うぞ』

 アニ『どうしてもって時は仕方ないね。でも出来れば・・・ギリギリまで言わないで欲しい』

 エレン『・・・でも、これがどんなことに役立つってんだ』

 アニ『決まってるだろ? 『クロ』を炙り出すためだよ』クス


エレン(――知っているのはミカサと俺だけ・・・ミカサに突っ込まれたら終わりだけど・・・)

エレン「どういった人格になったのかという、手がかりならある。

    それは、今日の夜、ベルトルトの言動に不自然な点があったことだ」

ミカサ「・・・・・・・」

エレン「昨日、入れ替わったアニとアルミンは一緒に大浴場で風呂に入ったんだ」

ジャン「・・・いっしょに?」

コニー「・・・いっしょに?」

リヴァイ「・・・・・・ほう」

女子(男共が軒並み反応を示している・・・)

エレン「お互いの裸を見ることを防止するために、お互い目隠ししてお互いを洗うためにな」

リヴァイ「・・・・・(・・・なかなか高度だな)」

ジャン「(この先輩、たぶん俺とおんなじこと考えてる・・・・)」

エレン「で・・・そのことは勿論ベルトルトも知ってる。

    普通だったら、心配症なあいつのことだ、絶対止めてくるだろう?」

クリスタ「そうだね・・・彼なら絶対反対するだろうなあ・・・許せないだろうし」

エレン(よし。ベルトルトの様子については俺も見ていたことは事実だ。嘘じゃ無い。

    アルミンの記録の内容を・・・さらっと自然に話す・・・!!)

エレン「アニとアルミンを連れて大浴場にいくってことを告げると、

    ベルトルトは素直に『わかった』って頷いたんだ。それも笑顔でな。

    ・・・そこには寸分の迷いもなかった」

ジャン「それベルトルトじゃねぇだろ」

サシャ「アニのこととなると人一倍心配症ですからねえ、彼は。わっかりやすい・・・」

エレン「そう・・・あまりに『素直』だったんだ・・・

    ジャンの言うとおり、この時点で人格は変わっていたんじゃないか」

ミカサ「素直な性格に・・・つまり人の言うことを聴く『すなお病』ってこと?」

エレン「いいや・・・もっと残酷なものかも知れない」


 俺は、先ほど休憩時間にベルトルトに試したことを話した。


エレン「――つまり、『事件』に関すること以外の話なら、俺とリヴァイさん、ジャン。

    全員の言うことをあまりに『素直に』聞き入れ、命令も実行したんだ、ベルトルトは」

アニ「・・・・・・・・・・・・」

クリスタ「・・・ということは、彼は『すなお』というよりは――」


 クリスタの、大きくて綺麗な瞳が揺れる。彼女も気付いたらしい。


リヴァイ「誰かの命令や言動を受け入れ、絶対に従う。

     素直というよりは、服従しているように見えるな・・・」

エレン「ベルトルトの人格変化は・・・『ふくじゅう病』ってところかな」

ジャン「そして、そう仮定すると今のこいつの状況はこう推察できる。

    『事件について一切話すな、という誰かの命令を実行している』・・・ってな」


ミカサ「・・・それはつまり、共犯者が存在するということ・・・?」

エレン「そう。なんで今回はベルトルトという明確な容疑者がいるのに、

    なかなか解決まで話がいたらず、ミカサとアニの間で話がループしたのか・・・」

ジャン「ベルトルトの単独犯だとすると、アニの言うとおり、

    犯行の全てをカバーできねぇし、こちらも立証できねぇからだ」

アニ「・・・だとすると、共犯者とやらはとても性悪だね・・・

   ベルトルトが『ふくじゅう』しているかなんて、この状況下で解ったのが奇跡だよ」

エレン「そう。この事態で、俺たち全員がベルトルトに話掛けるとすれば

    自然と『事件』にまつわる話題になる。他のどうでもいい話なんて振らないだろう。

    ――共犯者はそれを見越して、ベルトルトに命令をしているんじゃないか」

ミカサ「だとしたら・・・じゃあ一見被害者であるアニミンが命令したって疑いがでてくるだけ。

    本人が自殺幇助を命令したとすれば、ベルトルトは簡単に実行に移せたはず、なので」

ジャン「『ふくじゅう病』のベルトルトに命令ができたのは【保健室組だけになる】しな」

アニ「あら・・・ジャン。1人見落としてるよ」

ジャン「?」


 <アニが言弾『校舎を出入りした者』をぶつけた


アニ「それは違うね・・・」

アニ「保健室を出入りしていた人間が1人いるだろう・・・?

   『保健室組』以外にベルトルトと接触できた人間がさ・・・」

サシャ「それは・・・えっとぉ・・・?」チラ

アニ「――ねぇ。ミカサ?」

ミカサ「・・・・・・・・・・・・・・」

エレン「・・・あ・・・」

クリスタ「確かに、毎日毎日『保健室組』に食事を運んだりして、反対に

     私たち『健康組』へは彼らの様子を教えてくれてたけど・・・」

アニ「そう。ミカサ。あんたは『健康組』で唯一、保健室事情を把握していた。

   例えば彫像の準備、フェイクの準備・・・これらを、常に他人と一緒にいる

   『保健室組』がこなすのは、ベルトルトも含めて難しかった・・・」

エレン「そうだな・・・いや、でも・・・」


 両手の拳を握ると、じとりと湿っていて不快だった。


エレン「・・・・・・・・え、ちょっと待てよ・・・」

リヴァイ「確かに・・・俺たち『健康組』は基本的に寝室へ引きこもっていたからな。

     唯一出入りができたミカサなら、ある程度自由に動けただろう・・・」

ジャン「な・・・・え・・・ミカサが・・・?」

アニ「自身は校舎と寮の行き来できる立場を利用し下準備だけ行い、

   ベルトルトを使ってアニミンの拘束以降のプロセスを実行させた――」

クリスタ「アニ・・・! ミカサがそんなことするわけないよ!」

アニ「動機はあとから付いてくるもんさ・・・今回の裁判であんたが随分必死だったのも、

   あんた自身が、事件の当事者だったからこそじゃないの?」

ミカサ「・・・ちがう・・・」

エレン(ミカサの声が・・・ほんの少し震えてる・・・)

アニ「ベルトルトやアニミンと違って、あんたの単独行動は誰にも知られていない」

ミカサ「・・・・・・・・」

アニ「・・・どう、異論はもちろん受け付けるけど。ちゃんと話して」

エレン「・・・・・っ」


 反論の材料を探さなくては――俺が必死にすかすかの脳みそを動かしているその時。


ミカサ「・・・・・・・・・やはり私如きでは、ここが限界か」ポツリ

エレン「・・・・え?」

ミカサ「・・・そう、私ならベルトルトに命令できたし、

    私ならベルトルトが実行できない部分も全部実行することができた。

    ので・・・私が一番怪しいことは明白だ」

アニ「は・・・? なんにも言い返さないの?」ポカン

ミカサ「ベルトルトが犯人ということにしたかったが出来なかった・・・それだけ」

エレン「おい、ミカサ!! お前何考えてんだよ、下手な嘘つくんじゃねぇ!!!」バッ

ジャン「そうだ・・・お前はバカじゃねぇけど、策謀できるほどの頭でもねえだろ!!

    言語能力で嘘が見抜かれるって自覚してる、そういう可愛い奴だろ!?」ババッ

エレン「おい、ジャン!!! お前ミカサのファンなのか本当に!!? 殴るぞコラ」

ミカサ「・・・ふふ・・・じゃあ投票してくれる・・・?」

エレン「ダメだ!!!!」

ミカサ「エレンは黙ってて・・・『クロ』の目処がついた、こんな裁判は終わらせるべき」

エレン「黙らねぇ!! 俺はお前の幼なじみで、お前は俺の家族みたいなもんだ!!

    納得できねぇのに投票なんかやらせるか、このアホ!!!」

ミカサ「・・・・・・・・っ」

エレン「彫像の準備とかだって、案外【学級閉鎖前にやったんじゃ】・・・」

ジャン「おい、いくらなんでもそれは滅茶苦茶だろ、死に急ぎ野郎」


 <ジャンが言弾『延長コード』で反論


ジャン「彫像を縛るのに使われていた道具だが・・・あれは図書室にあった『延長コード』で

    間違いない。俺が使ってた奴だ。学級閉鎖前までは確かにあったのに、

    事件後に調べるとなくなっちまってた」

リヴァイ「もう消し飛んじまったが、俺も救助の際、電気の延長コードをぶった切った覚えがある」

ジャン「やっぱ、そうですよね。・・・で、図書室は夜時間には閉館する。

    とすると、持ち出せたのは学級閉鎖後、日中と夜時間までだ」

クリスタ「ベルトルトは消灯時間までは毎日誰かと一緒にいたんだから・・・

     第三者が盗んだってことになるね・・・」

エレン「・・・・・・ミカサとは限らないだろう!?」


 そして俺はタブレットのメモをもう一度見た。スクロールとタップを繰り返して。

 焦燥が珍しくいい方向に働いたのか、起死回生の事実に気づくことが出来た。


エレン(!!! できる・・・これで証明出来る・・・・・・!)

アニ「ふうん・・・でもミカサは、【ベルトルトに出来ない犯行を全部実行した】と言ってるけど」


 <言弾『アトラクションの起動』をぶつける


エレン「それは違うな!」

アニ「・・・根拠は?」

エレン「・・・ミカサだったらできた犯行はたくさんある。

    だけどミカサの立場なら手伝うことが出来なかった犯行がひとつあるんだよ」

サシャ「といいますと・・・?」

エレン「『フリーフォール』のフェイクについて・・・

    ミカサの立場だと、あのアトラクションを起動させることが出来ないんだよ」

クリスタ「どういうこと・・・?」

リヴァイ「そうか・・・園内にいるスタッフ――【『量産型ハンジぐるみ』の性質】だな」


 <言弾『量産型ハンジぐるみ』をぶつける


エレン「それに賛成です」

エレン「リヴァイさんの言うとおり、『量産型ハンジぐるみ』には特徴がある」


 学園長ハンジが開発した人工知能を有し、一定のアルゴリズムに沿って行動すること。

 サービスの一環なので、お客様の要望にはなるべく忠実に応えるマニュアルがあること。

 そして――。


エレン「当然だがアトラクションの起動も量産型の仕事だ。

    そして、お客さんがいるときの起動条件は決まっている・・・」

ミカサ「・・・・・・・・・・」

エレン「『乗り物の場合、お客様がマシンに座ったら起動する』んだ」

クリスタ「・・・ちょっと待って。ということは・・・

     私とエレンが『フリーフォール』に来たとき、誰かがあの近くにいたってこと?」

エレン「そう・・・そしてそれはミカサには不可能だ。

    あの時ミカサは南を調べていて、アニの身体に収まったアルミンと一緒にいた。

    俺たちは捜索時、必ず2人ひと組になってる。

    相手の目を盗んで起動できる方法がないと・・・ミカサがやったとは言えない」

ジャン「ベルトルトは言わずもがな・・・『タイタン』にいたから実行はできねぇだろうしな」

サシャ「となると・・・縛り付けられていたアニミンも除外・・・

    起動できた人間が、この中にいるってことになりますねえ」

ミカサ「・・・・・・・・・・」

リヴァイ「エレンの言うとおり、ここにいる全員が誰かしらのアリバイ証明になる筈だが?」

サシャ「もう私は脳みそで考えることを放棄しました」ウフフ

ジャン「元々持ってないんだからその理屈はおかしい」

アニ「すぐには思いつかないね・・・あんたたちも解らないだろ?」

エレン「・・・・・・・・・・・」

クリスタ「あの・・・」


 クリスタがまっすぐ手を挙げた。

サシャ「? どうしました?」

クリスタ「議論が完璧に煮詰まったら言おうと思ってたんだけど・・・」

エレン「ああ・・・ちょうど良い、言ってみてくれよ」

クリスタ「ずっと思ってたの。私とエレンが『劇場』で見た中継映像では、

     ベルトルトとアニミンがまだアトラクションの待機スペースにいたけど・・・

     そこからあの短い間に『タイタン』の軌道上に縛り付けるなんて・・・ムリだよね?」

エレン「!!!!!」

ジャン「あ・・・! あ、いや・・・確かにそうだわ・・・!」

クリスタ「一緒に見てたエレンなら解ってくれると思うけど・・・そんなに時間はなかったの。

     やっぱり、彫像に縛り付けてから、自分はマシンに待機するって一連の行動は、

     ベルトルト1人じゃ難しいし、あんな静寂の中なんだから私たちにバレるよね」

エレン「・・・・・・・そうか・・・・・つながった・・・・」

クリスタ「映像は他の定点カメラ映像と同じように【テロップが入ってる】んだけど・・・

     でも・・・不思議と違和感があるというか・・・」


 <言弾『劇場の映像』をぶつける


エレン「それに賛成だ」


 クリスタの証言を裏付けるために、右上に『LIVE』とテロップが挿入されたことを話した。


ジャン「ん? でもよクリスタ、【定点カメラの生中継】映像なんだから、嘘はつけねぇんじゃ?」


 <言弾『撮影機材』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「・・・というか、本当に『生中継だったのか疑わしい』ってところだな」

サシャ「いや、エレンさんさっき『生中継のテロップがある』って言ったばかりでしょ」

エレン「テロップはそうだよ・・・。でも、生中継かどうかってのが・・・。

    というのも、映写室にある撮影機材に違和感があった。ミカサとクリスタの話だ」

リヴァイ「・・・どういうことだ?」

クリスタ「あ・・それはですね・・・」


 彼女は3日前、ミカサ、サシャ、クリスタの3人で映写室の撮影機材を使って遊んだことを話した。


クリスタ「撮影したものは時間のある日にROMに焼いたり、現像しようって話になって。

     それで機材を片付けたんですけど・・・捜査の時はその時とは様子が違っていて。

     誰かが動かした形跡があったんだよ・・・ね。ミカサ?」

ミカサ「・・・・・・・・・その通り」

エレン「しかも・・・」


 <言弾『消えたデータ』を提示


エレン「その、焼こう焼こうと女子が楽しみにしてた画像や映像のデータ・・・

    メモリを圧迫するほどのデータが消えちまってたらしい・・・な。ミカサ?」

ミカサ「・・・・・・・・・その通り」

エレン「この機材を上手く使えば・・・『映像を事前に収める』ことが出来るんじゃねえか?

    で、その際邪魔なデータを咄嗟に消してから映像を撮っていた・・・とか?」

クリスタ「そうだよ・・・そもそもタイミングが良すぎるんだよ。私とエレンが中に入って

     数10秒で、ちょうどベルトルトとアニが会話をする場面が映る――っていう。

     まるで【狙ったかのようなタイミング】だよね・・・!!」


 <言弾を『シアターの暗転』ぶつける


エレン「それに賛成だ」

エレン「確か・・・シアターの映像がベルトルトたちのに切り替わる前に、

    一瞬だけ暗転したんだ・・・ほんの一瞬だけ暗くなって、停電かと思ったけど・・・」

ジャン「停電? そんなもん一度も起きてねえぞ?」

エレン「らしいな・・・」

リヴァイ「つまり・・・お前ら以外に第三者が映写室に忍んでて・・・

     その暗転の時に映写するデータについて生放送と録画を切り替えたと?」

エレン「あるいはそれに準ずる操作を行えたかですが・・・」

サシャ「あれ? でも録画だとしたら何時撮ったんです?

    ベルトルトはもちろん、【映ってたアニミンにも】そんな暇があったとは・・・」


 <言弾『映像の中の人物』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「・・・あの映像が生放送なら・・・ベルトルトの相手はアニミンと言えるだろう。

    だけど録画なら話は違う。だって、相手は麻袋で顔を隠していたんだから・・・」

ミカサ「つまり・・・つまりその人はアニミンでない、と?」

ジャン「そうか・・・タイミングに合わせて映像を流し、

    見た人間を『フリーフォール』へ誘導する。

    その頃すでにベルトルトたちは『タイタン』で準備万端なんだな・・・?」

クリスタ「映写室はスタッフ用の裏口もあるし、私たちより先に『フリーフォール』へ向かって、

     起動させるって言う行動だけ見れば・・・可能なやり方だよ!」

エレン「リヴァイさんが、あの高所作業用の装置? で飛んでくれなかったら、

    俺たちはみんな『フリーフォール』に引きつけられて間に合わず、

    アニミンは確実に死んでいただろうな」

アニ「へえ・・・で、『LIVE』ってテロップについては?」

エレン「動画や画像を編集することは可能だろうけど・・・

    残念ながら裏付けるような手がかりは見つけていないな。正直」

アニ「・・・あんたは?」


 アニは神妙な顔つきで、ミカサをじっと見つめた。


ミカサ「・・・・・・・・・」

アニ「マップで見かけたけど、あんた、捜査中に1階の『視聴覚室』にいなかった・・・?」

エレン「・・・ミカサ本当か?」

ミカサ「・・・・・はぁ・・・・・うん、調べた」


 <ミカサが言弾『視聴覚室の形跡』を提示


ミカサ「学園長に頼んで視聴覚室の管理者データを見せて貰った。昨夜、夜時間前の履歴で、

    画像編集ソフトの利用履歴と・・・外部端末から映像データを読み込んだ記録があった」

ジャン「昨夜ってことは・・・『保健室組』かミカサがやったってことになるな・・・」

エレン「なんで言わなかったんだ・・・? いや、そんなことはどうでもいいか・・・」

ミカサ「・・・・・・・・・・・」

エレン「・・・・・・・・あとで、めっちゃ久々に、お説教してやる・・・」


 ミカサの不可解な行動に怒りつつも、俺はうすうす気付いていた。

 そうだ、その中で、アリバイが曖昧なのは、あいつだけじゃないのか・・・と。


リヴァイ「つまり『劇場』の映像もフェイクだったってことか?」

エレン「そうかもしれない根拠がもう一つあります」


 <言弾『感染者の病衣』を提示


エレン「『保健室組』は俺とサシャだけ白衣、患者は保健室の備品である『病衣』――と、

    格好を統一してたんだけど、病衣は体格差がわかりにくいフリーサイズが基本だ。

    アニミンであると錯覚するのに、服装の差異がないことも貢献していたと思う」

リヴァイ「・・・木偶の坊が無駄にデカいお陰で、映像では身長での本人特定も難しいしな」

アニ「必然的に、アルミンの身体と身長が近い者が怪しくなるね。

   エレン、ミカサ、サシャ、先輩、ぎりぎりコニー・・・このあたりが限界かな」

ジャン「そうか・・・映像に映ってたのはアニミンじゃなくて、ベルトルトの飼い主だな!」

アニ「ベルトルトをさも犬のように扱うのやめてくれない?」

エレン「そう・・・で、この中で1人だけいるんだよ。

    昨夜、ベルトルトと長時間2人きりになってた奴が」

ミカサ「・・・・・・・・」

エレン(やだな・・・胃が痛い。頭が痛い。マジで俺も感染してたりして・・・)


エレン「なあ、そうだろう―― サ シ ャ 」


クリスタ「・・・・・・・・えっと・・・・」

アニ「・・・・・・・・・・ふうん」

サシャ「・・・へ!?」キョトン

コニー「・・・・・・・・・・」ポカン

ジャン「・・・いや、それはねーわ・・・」

サシャ「えっと、ちょっとどういうことです!? 

    なぜ裁判場の隅に生えた雑草、ことサシャ・ブラウスに注目が・・・!?」キョロキョロ

リヴァイ「ベルトルトと2人きり・・・?」

エレン「さっき言ったアニとアルミンの入浴時間と同時刻の話です」

ジャン「コニーもいるんだから必然的に【3人で留守番】していたんだろ?」


 <言弾『体調の悪化』をぶつける


エレン「それは違うな」


 俺はふるふると首を横に振った。


ジャン「おい、初耳だが」

エレン「どれくらい2人きりだったのかは知らないけど・・・

    ベルトルトは夕食のあと腹を下したんだ。サシャが付き添ってトイレへ行った。

    俺たちが大浴場から戻ってきたとき、コニーは1人でお留守番してたんだよ」

ミカサ「・・・コニー・・・」

コニー「・・・え・・・」キョロキョロ

リヴァイ「お前、昨日の夜は留守番してたのか」

コニー「・・・あ、はい・・・したよ・・・」ビクビク

リヴァイ「どれくらいだ。ほら言ってみろ」

サシャ「ちょっとリヴァイ兵長、コニーが怖がってるじゃないですか」

リヴァイ「!!」ハッ

クリスタ「コニー。昨夜はお留守番頑張ったんだよね。どれくらい待ってたの?」キラキラ

コニー「えっと・・・1時間、くらい。俺ちゃんと行儀良くしてたよ・・・」

クリスタ「そう。偉かったねっコニー」ニコニコ

ジャン(さすが天使・・・もう昇格して女神でいいんじゃないだろうか)

サシャ「そりゃ確かにベルトルトのアレは長丁場でしたけどー・・・

    それで私が疑われるんですかー・・・? あんまりな仕打ちじゃないですか」

ミカサ「サシャ・・・それ以上喋らない方が良い。ボロが出る」

サシャ「ミカサまで何言ってるんですか・・・いくらなんでも・・・」

エレン「仮にお前だったらば、保留していた『保健室組』みんなに薬を盛ったかどうか、

    という点も解決する――あっさりとな」

サシャ「盛りませんよー私みたいな騒がしいのが盛ったら【周りに悟られるでしょうし】ね」


 <言弾『昨日の出来事』をぶつける


エレン「それは違うな・・・」

エレン「昨晩の飯・・・お前が作ったよな」

サシャ「ええ、確かに・・・・・・・・・それがどうかしましたか?」ニコ

エレン「食べ物に混入させる、という行動自体は『保健室組』全員が可能なことだ。

    けど、ほぼバレないやり方というと、飯を作ったときに混ぜ込むってのが妥当だろ」

アニ「・・・ふふ、そうだね」

ジャン「いやいやいや。こいつはバカじゃねぇか。バカにそんなことは・・・」


 <言弾『アルミンの記録』を提示


エレン(アルミンの記録であることは伏せて・・・)

エレン「アニミンは普段アニとして食べる量を食べていた。アルミン自体は小食だから、

    身体に見合わない量を食べていたことになる・・・。

    それだけ多くの薬を摂取できたってことなんじゃねえか・・・」

サシャ「いやいや、味で気付かれてしまうでしょう? ムリですってば、あはは」

リヴァイ「患者は高熱に冒されていた――舌は鈍っていてもおかしくねぇな」

サシャ「・・・えー・・・ほんとリヴァイ先輩、今日はよく喋りますね・・・」

コニー「・・・・・・・・・・」

ミカサ「・・・コニー」

コニー「ッッッ!!」ビクッ

ミカサ「どうしたの・・・貴方、さっきからそわそわしてる・・・」ジッ

コニー「・・・・・・・・・・」

サシャ「大体、私はコニーと一緒にいたんですよ、『フリーフォール』の起動なんてできませんっ」

エレン「・・・それは本当なのか?」

サシャ「どういうことです?」

エレン「この裁判、いないのはアルミン1人だけど・・・実質欠席の人間がいる」

クリスタ「喋ろうとしないベルトルトだよね・・・?」

エレン「ああ・・・あともう1人いる」


 俺はコニーの方を凝視した。


エレン「中身は5歳・・・当然裁判のことを理解できていない・・・コニーだ」

コニー「・・・・・・・・・・」

アニ「そうだね・・・」

ジャン「・・・いや・・・コニーはバカだって自分でも言うし俺もそう思うけどよ・・・

    子どもってのは案外周りの空気について敏感だ。こいつは勘もいいしな・・・

    だけど『子どもだから』何も言えていないって状況なんじゃねぇか?」

クリスタ「・・・私も、家が嫌な空気に包まれてるときは、何も言えなかったな・・・」

エレン「・・・サシャ、コニーに聴いても、お前と一緒の答えが聞けるんだな?」

サシャ「・・・ええ、私とコニーは一緒にいました」

エレン「コニー・・・本当か?」

コニー「・・・・・・・・・・・う、うん。いっしょにいた」

サシャ「ほーら、ね?」ニコ

エレン「・・・そうか」

サシャ「そもそも、ミカサが自分でやったと言っているのに、私を疑うなんて・・・

    エレンはよほど友達思いというか家族思いなんでしょうけど・・・必死過ぎますよ」

味が変わるの?

エレン「・・・」

サシャ「それに、私だとして、コニー証言すれば【後からでもバレてしまう】じゃないですか

    私だってそんなリスクは冒しません――」


 <言弾『感染者の記憶』をぶつける


エレン「それは違うな」

エレン「コニーが証言できるとしたら今しか無い――ベルトルトもだ。

    なぜなら【絶望病】は、人格が変化している間の記憶を失ってしまう。

    コニー達の症状が回復してしまえば、他に証言者はいなくなってしまうんだよ」

サシャ「・・・・・・」

エレン「というわけで・・・コニーには是が非でも話して貰う。事細かにな」

コニー「・・・う・・・・」ジワ

リヴァイ「おい怖がることはねぇ。さっさと話せばいい話だ」

ジャン「あんたの能面に怯えてるんすよ先輩」

コニー「・・・・・・・」


 コニーはふるふると首を振り――とうとう我慢ができなかったのか泣き出してしまった。


コニー「ぅ・・・かった・・・」ポツリ

クリスタ「うん、言ってごらん・・・」

コニー「いなかった・・・ずっといなかったから・・・俺こわ、こわく・・・

    み、みんなおねえちゃんを、おこるの、かよ・・・?」

クリスタ「よしよし、大丈夫だよ」ポンポン


 クリスタはコニーをあやすように抱きしめた。


ジャン「さて・・・ずっといなかった・・・って言質がとれてしまったわけだが」

サシャ「だからお水を買いに突っ走ってただけですって」

エレン「なあ・・・どういうことなんだよ」

サシャ「だからなんで、私がやったみたいな空気なんですか」

ジャン「そろそろ認めろよ」

サシャ「だからあ! ミカサが自分でやったって言った件はどうしたんですかぁ?」

ミカサ「・・・私は犯人を名乗るには不十分だった。私は貴方を守れない・・・」

サシャ「私が一連のことを!? これでもビビりでバカなんです、出来ませんってば!!

    録画して編集!? どこの動画主ですか、そんな【知識持ってませんから】!!!」

アニ「・・・・へぇ・・・持ってないの・・・?」


 ひんやりとしたアニの声が、サシャの背中を撫でる。
 

サシャ「・・・へ?」

アニ「動画編集について、全く知識がなかったの・・・?」

サシャ「そ、そうですよ。私テレビの人間ですけど、ブログでさえ事務所に頼んでましたから」


アニ「ねえサシャ・・・『僕』は失望したよ、きみがそんな嘘をつくってことに」


サシャ「・・・!!?」

エレン「・・・あ、アニ・・・?」

アニ「きみは確かに、希望ヶ峰学園に入学する前はそんな知識を持っていなかっただろう。

   でも・・・きみは遊園地でひとしきり遊んだ後、編集について訊ねたはずだよね・・・」

サシャ「は・・・え・・・? ?? ?」

アニ「だからさあ・・・」


 <アニ?が言弾『アルミンの証言』をぶつけた


アニ「きみは保健室で、僕に遊園地の知識――そして、『ついで』だと言って、

   動画編集の方法を訊いてきたよね。女子で撮ったものを編集する予定だからって」

サシャ「・・・え、アニ・・・そんな、だって戻ったんじゃ・・・?」

アニ「仮に僕がまだ『アルミン』のままで、現在も記憶を持っていたとしたら

   ・・・サシャ、なにか不都合でもあるのかな?」クスリ

サシャ「・・・は・・・? 嘘ですよね・・・アニのフリをしていたと・・・?」

アニ「そんなことは些事じゃないか」ニコ

生徒(いや大事だ!!!)

アニ「・・・で、サシャ。僕にあれこれ訊いてきたあの光景は・・・幻とでも言いたいの?」

リヴァイ「・・・どうなんだ」

サシャ「・・・・・・・・っそりゃあ、訊ねました・・・・けど・・・・

    今までアニのフリをして・・・どういう・・・?」


 俺たちだって混乱していたはずだが、サシャの狼狽っぷりには負けた。

 ただ、彼女の顔が「裏切られた」かのように悲痛な表情をしていたのは不思議だった。

 そんななか、アニはいつものように平然としていた。


アニ「ほら、エレン。言質はとってあげたよ」

エレン「・・・・・・・・・・お前、アルミンか?」

アニ「・・・ふふ。それより・・・そこの『クロ』を追い詰めないと」

サシャ「・・・・・・・・っ」ギリ

ミカサ「・・・私の力が・・・及ばなかったから」ポツリ

サシャ「・・・・・・・・・」

クリスタ「・・・サシャ、あの・・・何か言って・・・?」

サシャ「・・・・・・・・・」

ジャン「・・・そうだ、言いたいことがあるなら言ってくれよ。下手な言葉でも聴くから」


サシャ「・・・・・・・・・」

コニー「・・・おねえ・・・ちゃん・・・」

サシャ「・・・――ぃ。」ボソ

エレン「・・・ん?」


サシャ「――許 し て く だ さ い」ニッコリ


エレン「え」

アニ「・・・・・」

サシャ「だからー、私が悪いことをしたのは認めます。でも未遂ですよ? 誰も死んでません。

    どうせ忘れることなんですし、許してください」


 あまりにも無邪気にそう言った。


ジャン「・・・認めるのかよ・・・なあ」

サシャ「え、やったのは事実ですもん。だから許してくださいって言ってるじゃないですか?」キョトン

ジャン「・・・お前状況解ってるのか? ユミルの時とは違い、今回は殺意が明白だ。

    お前はそれを認めてしまっていいのかよ!」

サシャ「そうですよ?」シレッ

エレン「・・・俺、お前がそんなことする人間じゃないって思ってるんだけど・・・」

サシャ「もう・・・せっかくミカサが庇おうとしてくれたのに・・・それを生かせない、

    ・・・自分という人間はここまでのようですね」


 ベルトルトの方を向いて、なおもサシャは笑った。


サシャ「ああ、ベルトルト、もう喋って良いですよ。事件のことを言ったって。

    いろいろ脅しつけて服従させましたけど・・・それも反故にしましょう」


 おそらく、『ふくじゅう』した彼が誰にも従わないほど――。

 事件に関して沈黙する、という命令は、よほどの制約を課していたに違いない。

 彼の黒々とした瞳に、ようやく光が戻ったようだ。


ベルト「・・・・・・・・アニ、アニ! ごめんなさい、僕・・・ごめん。

    きみをアルミンの身体ごと殺そうとした、きみを傷つけて・・・

    きみは覚えていないかも知れない、でも、ごめ・・・っ」


 ベルトルトは泣き虫な奴だった。ずっと大きな身体なのに、俺と同じなのだ。


エレン「・・・ベルトルト・・・!」

アニ「ベルトルト・・・ずっと言えくて苦しかっただろ・・・?」

ベルト「う・・・ぐ・・・っアニ・・・アルミン・・・ごめん、ぼくは・・・!」

サシャ「えー酷いですねえ・・・アニ、まさかさっきのはカマかけですか?」

アニ「・・・私は、アルミンだとはひと言も言ってない」

エレン「え・・・じゃあ、お前はアニでいいのか!? アルミンのフリをした演技!!?」

アニ「そうだよ・・・アルミンは自分の行動や疑問点を生徒手帳に残していたから。

   サシャを揺さぶるために使わせてもらった・・・アルミンの証言という意味では

   間違いないだろう? 誰も嘘は言ってない・・・」

ミカサ「・・・みごと・・・アルミンも、あんたも」

サシャ「えー、無効ですよ! じゃあ認めません!」

クリスタ「さ、サシャ、それはズルだよ! 言ったことは取り消せないよ!!」

サシャ「やーですよ、やってませんよ!」

ジャン「だだっ子かお前は、いい加減にしろ!!」

コニー「おねえちゃん。おれのメシやるから・・・悪いことしたならあやまって・・・」

サシャ「はあ? そんなことで釣られるほどお子ちゃまじゃありませんよ?」

リヴァイ「なん・・・だと・・・!?」

エレン(どうも・・・普段のサシャじゃない・・・。話を聴くためにも、まずは・・・)

エレン「サシャ、事件を一から振り返って・・・それでお前から反論がなければ・・・

    ・・・もう認めてくれ。最後くらい、お前を信じさせてくれ・・・!!」



エレン「・・・これが、事件の全貌だ!」





 【 ク ラ イ マ ッ ク ス 推 理 】



 〔PATT 1〕

 校舎の3階が解放された翌日、学園を恐ろしい病が襲い、学級が閉鎖された。

 名を【絶望病】。身体的な病症に加え、感染者の人格を一時的に激変させるものだ。

 俺と『クロ』は感染者のアルミン、アニ、コニーと『保健室組』として校舎側に常駐した。

 翌日、新たな病人として加わったベルトルトは【絶望病】の人格変化が見られなかった。

 ――そう思っていたのは俺たちだけで、唯一『クロ』だけは気付いてしまったのだ。

 元々温和で我を通さない彼が、さらに従順になる『ふくじゅう病』であることに。


 〔PATT 2〕

 夕ご飯の時間、『クロ』は全員分の手料理の中に睡眠作用のある薬を仕込んだ。

 さらに、アルミン、アニ、俺が大浴場にいく間、ベルトルトを連れた『クロ』は、

 遊園地などを周り、今回の『事件』の下ごしらえを済ませたのだ。

 『フリーフォール』に偽死体を設置する、まるで生放送かのように映像を作成する、

 アニミンを縛り付けるための彫像と電気コードを用意する・・・

 そして、夜時間に入り熟睡に包まれる保健室にて、午前2時。

 いよいよ、その後の全てを命令されたベルトルトが動いた。



 〔PATT 3〕

 意識はあるものの、薬のせいで身体が動かせないアニミンを連れ、

 彼は3階娯楽室の奥から続く――調整中の遊園地へ向かった。

 ベルトルトの目的は『クロ』の指示に沿ってアニミンを殺すこと。

 彼はアニミンを『タイタン』の軌道上に彫像ごと縛り付けた。

 同じ頃、俺たちはリヴァイさんの提案でいなくなった2人を捜すことになる。

 2人1組で捜索し、俺とクリスタは西側を捜索していた。

 『クロ』は劇場で、仕込んでいた録画映像をフェイクとして流し――

 意識を『フリーフォール』へ向けさせることに成功。

 『クロ』は自らマシンに一度座る形をとり、量産型のスタッフにマシンを起動させた。

 このサイレンでミカサとアニ(中身アルミン)も引っかけることができ、成果は上々だ。



 〔PATT 4〕

 一方、ここまで特になにもせず、ただ待機をしていたベルトルトも、

 捜索陣の意識が『フリーフォール』へ向かったことを見計らうタイミングで、

 『タイタン』を起動させた。その先に、アルミンが・・・アニがいると知りながら。

 だが、ほんの小さな誤算で、失敗してしまう。

 高所を飛ぶように操る装置――それをリヴァイさんが身につけ、そして庇うということ。

 このイレギュラーを予想できなかったために、最後の最後で、失敗してしまったのだ。




エレン「――ベルトルトを操り、また俺たちに錯覚を起こすための準備が出来た人物・・・

    明確な殺意を持って行動できた『クロ』は・・・」


エレン「サシャ。お前しか、いないんだ!!!」


サシャ「・・・・・・・っく」


 俺たちは自然と、『クロ』の次の言葉を待っていた。


サシャ「惜しいなほんと・・・兵長が助けなければいけたのに・・・ハァア」

ジャン「この事件の肝は、当事者たちが内容をいずれ忘れてしまうということにある・・・

    コニーしかり、ベルトルトしかり・・・

    俺たちがお前を特定できたのは・・・すごく運が良かったんだよな」

コニー「・・・はれ? なんだ、ここ・・・・!? おわっ裁判場じゃん!!?」キョロキョロッ

ジャン「てめぇ!! このタイミングで戻るなよジャマでしかねぇだろ!?

    しかも可愛さがねえから出直してこいよ!!!」

クリスタ「ちょっと、コニーはいつでも可愛いよ、頭の形とか!!!」

コニー「え? なんで俺ディスられてんだよ!!?」ガーン

アニ「・・・・・で?」

サシャ「ゆるしてください」クス

アニ「殴ってあげようか?」

サシャ「ゆるしてくださいよー」


サシャ「ゆるして ゆるして ゆるして ゆるして
     ゆるして ゆるして ゆるして ゆるして

      ゆるしてくださいよぉ・・・ねえ、アニ、ベルトルト?」


エレン「おまえ、この後に及んでそんなこと言うのかよ!?」

アニ「できない・・・ベルトルトにこんなことをさせて・・・

   人殺しをさせようとするなんて・・・絶対に許せない・・・!!」

コニー「・・・・・・・・・・」

ベルト「アニ・・・やめよう・・・僕は、アニが無事でいてくれて何より嬉しいから。

    リヴァイ先輩・・・ありがとうございます・・・」

リヴァイ「いや、礼には及ばない・・・老婆心でやったつもりも無いからな」

サシャ「ククっ・・・そうですよねぇ、誰だって人殺しは許せませんよねぇ・・・?」

ミカサ「サシャ・・・これ以上はやめて。認めたなら、すぐに投票しよう」
 

 サシャは肩を震わせ静かに笑っていた。どんな笑いかといえば、

 どう言ったら良いか・・・たぶん、ナニカに対する最大限の『嘲笑』だった。


サシャ「・・・・あはははははははっ!!!!!」


 広々とした場内を、サシャの笑い声だけが包み込む。


コニー「おい芋女・・・どうしちまったんだよ・・・?」

サシャ「あーあ・・・ふふ・・・いやいや・・・・私は許されるべきですよ。

    だって私は人にも満たない獣を駆除しようとしただけなんですよ・・・?」クスクス

リヴァイ「おい・・・こいつ様子がおかしいぞ」

ベルト「っずっと、彼女の様子を見ていたんだけど・・・彼女・・・

    あるときから、突然僕への態度が変わったんだ・・・180度ね」

クリスタ「それって・・・彼女も【絶望病】なんじゃ・・・」

エレン「・・・可能性はある。コニー、熱を測ってくれ」

コニー「【絶望病】って確か・・・まぁいいや」


 コニーは素早く動き、ずっと小刻みに笑うサシャのおでこと自分のおでこをくっつけた。


コニー「・・・おい、俺もたしか微熱気味だったと思うけど・・・

    こいつ・・・俺よりめちゃくちゃ熱あるぞ・・・」

ジャン「おいおい、とんでもねぇな・・・こいつこそサイコパスの人格ってか・・・?

    なんつう恐ろしい感染症だよ・・・」

リヴァイ「バイオテロと相違ないな」

エレン「よかった・・・サシャの元の人格じゃねえってなら・・・」

アニ「だとしても・・・罰は受けて貰う・・・」

クリスタ「それは・・・そうだけど、でもアニ・・・」

ミカサ「・・・投票を」




 「投 票 結 果」


  サシャ・・・7票

  エレン・・・1票

  コニー・・・1票



『はい、正解でーす。今回は満場一致じゃなかったねえ。

 誰とは言わないけど・・・なんでエレンにしたしwwww

 じゃ・・・サシャさんはあとでオシオキ決定です。

 一応ベルトルトも、不可抗力とはいえ危険な行動を取ってるから、軽いオシオキあげるね』


ベルト「・・・はい。わかりました」

エレン「俺に入れたのはサシャ・・・お前だな・・・?」

サシャ「あがきました」ニコ

ジャン「おい、コニーに投票したの誰だよ!!?」

コニー「俺だけど。だって参加してないのに他人に投票なんかしちゃダメだろ?」

ジャン「おまえ・・・可愛くなくていいわ。格好いいわ・・・・・・」

コニー「んだよそれwww」


 直後、アルミンが車いすに座った状態でやってきた。

 (付き添いのハンジぐるみが看護婦さんの格好をしているのは見なかったことにしよう)


エレン「・・・アルミン!」

アルミン「やあ、散々だったね。今回の裁判見てたよ・・・」

ジャン「身体は?」

アルミン「喋れる程度には・・・ミン剤が切れて逆にハイになってるかなっ」

ミカサ「アルミン・・・安静にしてて」

アルミン「そうもいかないよ・・・一応被害者? だし。まあ覚えてないんだけどね。

     それに、まだ謎が解明できてないし・・・」

アニ「アルミン・・・」

アルミン「やあ。僕が残したメモを活用してくれて嬉しいな。アニ」ニコニコ

ベルト「メモ?」

アニ「アルミンが渡しの身体にいたときの行動をメモしてたんだ。

   そして、万が一何かあって、その時運悪く私たちが元に戻った時、

   必要な場合は私がアルミンとして振る舞って記録を証言するよう指示書きもあった」

アルミン「サシャが引っかかってくれたからよかったよ」

エレン「あの演技も・・・『アルミンの記録』を伏せることも・・・

    ぜんぶアルミンの指示だったってことか・・・」

アニ「恐ろしい子・・・」

ジャン「お前も恐ろしい子だけどな。ファイターやめてアクターになれよ」

アルミン「それより・・・僕としては気になってることがある」


 アルミンは、退屈そうにふて腐れ、証言台に頬杖をつくサシャを見やった。


アルミン「・・・サシャの人格はどんな変化があるのか、確認しておきたいんだよね」

ミカサ「必要ない。サシャは今だけ常識外れ。いつもそうだけど、今夜は特別なだけ」

クリスタ「ミカサ、微妙に庇えてないよ・・・?」

エレン「俺も知りたい・・・ミカサ・・・お前は何を知って、何を隠している・・・?」

ミカサ「なにも・・・・・・」

エレン(いいや・・・お前は隠し事をしないから、いざやるとド下手くそなんだよ)

サシャ「・・・アルミン、どうして確認する必要があるんです?

    今見たままの姿が私ですよ。やるべきだと思ったから殺ろうと思っただけです」

コニー「サシャの話・・・俺いつもは結構わかるんだけど、今日は難易度高いな・・・」

ジャン「安心しろ・・・俺もおんなじだ」

アルミン「だって・・・演技が下手くそなんだもの」

サシャ「・・・ん?」

アルミン「あとはさあ・・・舞台装置が、ただ単に選んだとは思えないんだよね」

エレン「それって――」


 <言弾『タイタン』を提示


エレン「『タイタン』のことか?」

アルミン「そう。だってあんな手間のかかる場所にアニミン縛り付けるくらいなら、

     それこそ『フリーフォール』から落下させるほうが楽だよね。

     あえて『タイタン』を選んでるし、彫像も『タイタン』だ」

サシャ「・・・・・・どうせならテーマを持って完遂させようと思いましてー」

クリスタ「げ・・・芸術家肌なんだね・・・」

ジャン「ああ。これが殺しついての方向性じゃなけりゃあな・・・」ドンビキ

アニ「とにかく。人を殺そうとした落とし前はつけて貰わないと・・・」

サシャ「ったく、どの口が偉そうに言うんだか・・・」ボソ

ベルト「・・・なんて?」


サシャ「あーもー・・・兵長、貴方のせいですよ。なんでジャマをするんでしょう。

    アニを殺した事実さえあれば、ベルトルトなんて勝手に自滅するし・・・

    あと一歩のところだったのに・・・貴方は本当に計算外だ・・・。

    コニーだってさっさと回復すれば証言できなかったし、賭けに負けてしまった。

    アルミンなんてさすがだよ・・・お前はなんでも解ってしまうんだ。

    なんでそれをあの時使わなかったんだよ、バカだな・・・」


 ぶつぶつ、ぶつぶつ、と呟くサシャの眼は何を見ているんだろう。

 少なくとも俺たちのことを捉えてはいない。どこかその先にあるものを見ていた。


ベルト「・・・証言すると・・・僕たち2人に並々ならない憎悪を持っていたよ、彼女。

    酷い人格に変わったんだね・・・サシャ」

サシャ「何いってるんですか? いえいえ、思い出しただけですから・・・」クスクス

アニ「あんた・・・ごめんのひと言も言えないの?」


サシャ「ははっ。んなこと・・・・・ 言 う わ け ね え だ ろ う が !!!!

    今度こそ・・・今度こそぶちのめしてやろうと思ったのに!!!!」


エレン「サシャ!?」


 サシャがアニに向かって身を乗り出す。

 すかさず、少し離れたリヴァイさんが人間離れした俊足で彼女の背後に回る。

 ガ シ ッ


アニ「・・・・・・・・・」

ベルト「・・・・・・・・」


 さすがのアニもベルトルトと共に絶句していた。


サシャ「何が・・・何が罰を受けろだ・・・!!?

    てめぇらこそ、巨人に潰されて死んでしまえよ!!!

    大義のための殺しが赦されるんだろ!? 今すぐやってやる!!!!」


ジャン「おい、何言ってんだ落ち着けよ死に急ぎ野郎!!!」

コニー「お前こそ落ち着けよジャン!! おい、先輩もっときつく縛ってっ!」

リヴァイ「・・・・んの・・・大馬鹿野郎が・・・っ!!」グッ

エレン「眼がいっちまってる・・・!!」

サシャ「一切の抵抗なく躯をすり潰されて死ねばよかったんだよ・・・!」

クリスタ「サシャ・・・ねえ『思い出した』って、一体どういう」

エレン「お前・・・一体どうしたんだよ・・・いくらなんでも・・・」

サシャ「はぁ? はは!!! ああオモシロイ、傑作だ!! 我ながら察しが悪くて清々しいよ!」

アルミン「・・・さて、どういうことかな」

ミカサ「サシャ・・・やめて。・・・やめて、やめて!!!」

エレン「われながら――って」




サシャ「お前こそどうしたんだか。俺はお前だろ、エレン・イェーガー?」




エレン「・・・・・・・・・・・・え?」





 「学 級 裁 判 閉 廷」


 -------------------------------

・サシャ(クロ)

 絶望病に感染した際、人格が常識を逸脱したサイコパスと思われる行動をとり、

 同じく絶望病に感染し不自由なベルトルトを利用してアルミン(アニ)を殺そうとした罪

 ご飯の量を1日20パーセント減らす刑、一度も喋らず1日を過ごす刑、

 校舎内ランニング543周の刑、料理本閲覧禁止の刑、教材準備の手伝い(内職)の刑、

 校内清掃(遊園地含む)の刑、日々の生活態度について毎日反省文を7枚ずつの刑。

 本人が人格が変化した際の記憶を保持していないためか、刑は若干軽いものかもしれない。


・ベルトルト

 絶望病に感染した際、軌道上にアルミン(アニ)をのせ、死ぬおそれを理解したうえで

 アトラクションを動かした罪。

 アニの体調管理を調整する刑、しばらく図書室と視聴覚室に出入り禁止の刑、

 アニと高所のアトラクション(観覧車)に乗る刑

 不運な立場であることが熟慮されたのか、彼もごく軽い。一層意味不明な刑が多かった。


 -------------------------------


 あの時・・・錯乱したサシャが突如俺の名前を出した時に、周りは動揺した。

 しかし、その流れをぶった切ったのは、意外にも――


コニー「この芋女! いい加減にしろ!」


 彼女の頭にチョップをお見舞いしたコニーだった。


コニー「さっきから聴いてりゃなんだぁ・・・? アホなことばっか言いやがって」

サシャ「・・・なにするんだよコニー。止める気か・・・?」

コニー「ちょっと解ったぜ、こいつ【絶望病】なんだろ・・・?

    あのなあ・・・『大義』だっけ? お前がなにを信じてるのか知らねえし、

    なんで今、なんかアニとベルトルトに恨み言を吐いてるのかも知らねえけど・・・」


 そしてコニーは、

 ふにっ


サシャ「・・・・!?」


 サシャのほっぺたをつまんで、軽く引っ張った。


コニー「お前がどういう理由で戦おうが勝手だが、戦う手段ってのは決まってんだよ。

    んで、ここでは殺しって手段は卑怯なやり方なんだ。

    そんなバカでも解ることすら解んねえようなら小学校からやり直せ・・・」

サシャ「い・・いひゃいい!」

コニー「・・・解ったら、さっさとするべき奴に『ごめんなさい』しやがれ。

    それから・・・お前熱が凄い、とりあえず寝ちゃえ。俺も寝たい」

エレン「・・・・・・・・」

サシャ「・・・・・・・・」

アルミン「・・・うーん。まあいいか。最低限の情報は得られたし」ポツリ

コニー「あーあ。酷いわ、よく見たら時計夜中じゃん! 早く寝ないと身長伸びないのに!」


 サシャはしばらく呆けていたが、

 やがて体調不良が限界に達したのか倒れてしまい・・・それ以上の話は聞けなかった。

 彼女が次に目を覚ました時は。すでに元のアホで和やかなサシャに戻っていたからだ。


エレン「・・・お前すげぇな。あんな状況で口挟むなんて、俺は混乱して出来ないだろうな」

コニー「あ?」

ジャン「ああ。お前度胸あるな・・・しかも理解できてるし。珍しく頭使ったのか?」

コニー「使う頭がねえからw」

ベルト「じゃあどうして解ったの?」


コニー「さあ。俺はバカだけど『天才』だから・・・感じろとしか言えん」ニヤ


 そんな風に冗談っぽく笑うコニーに、心が救われたのは俺だけじゃないはずだ。

 気絶したサシャ、まだ熱があって不調のコニーは保健室に行くことになる。

 みんなが裁判場を離れていく中、俺だけは立ちすくんで動けなかった。

 ミカサも同じように席を微動だにせず、俺はやっと笑顔で話掛けることができた。


ミカサ「・・・・・・・」

エレン「――なに沈んだ表情してるんだよ」ヘラッ

ミカサ「・・・・・・・」

エレン「おおかた、サシャが俺だって吹聴してるところを知ってしまったんだろ?

    それで庇おうとしたのか、お前・・・バカだなぁ」

ミカサ「・・・・・・・」

エレン「お前、自暴自棄にも程度があるぞ? ベルトルトが『クロ』でないと解ったら、

    今度はおまえ自身が疑われても否定しないなんて・・・捨て鉢すぎる」

ミカサ「それは・・・そうかもしれない」

エレン「・・・なあ、あんなの壊れたスピーカーみたいなモンだろ?

    適当言ってるに決まってる。真に受ける方がどうかして・・・」

ミカサ「エレン、貴方はいま、震えてる」

エレン「・・・はは・・・なあ。『アレ』が俺? ・・・・・・嘘 だ よ な ?」

ミカサ「・・・エレン。あんなの真に受けないでって言ったのは、あなた」

エレン「ああ・・・嘘なんだよな・・・。

    ばかばかしい・・・ほんと、サシャの顔して変なこと言いやがって・・・はは」

ミカサ「・・・だから学級裁判はイヤだ・・・っ」


 どういうことだと顔を上げて、俺は口をつぐんだ。

 ミカサが、こんなにも感情をむき出した顔をすることがあっただろうか。

 なぜそんなに哀しい眼をしているのか・・・俺には理解できなかった・


エレン「サシャは・・・何を思いだしたんだ・・・?

    それともあいつは入学前はあんな性格だったってのかよ・・・」


 ミカサは俺の手をそっと握った。

 子どもの頃はよくやっていた仕草だ。


ミカサ「エレン・・・だいじょうぶ・・・私はなにがあっても、

    どんなあなたでも、絶対にあなたの味方・・・ぜったいに・・・」

エレン「もう、わけわかんねぇ・・・」

ミカサ「エレン、惑わされなくていい。貴方は『いま』をここで過ごしているのだから」

エレン「なあ、ミカサ、俺はなんで震えてるんだ? ガキみたいにさ・・・なんでだ?」

ミカサ「だいじょうぶ・・・エレン、『クロ』の言ったことは忘れて・・・

    今夜は寝よう・・・ね・・・?」

エレン「・・・・・・・・・ミカサ」


 恥ずかしいことに、ミカサにそうやってしばらくあやされていた。

 今となっては、なぜ、たかだか犯人の妄言ごときに、あんなにも取り乱したのか解らない。

 そうして俺は彼女に見送られ――久々とも思える寝室で、泥のように眠った。

 何か夢を見ていたと思うのに、朝には忘れてしまっていた。




 【絶望病】が収束したとハンジぐるみから知らされたのは、それから2日後。


 同時に、クリスタ自ら、『卒業』する見込みだと告げられた。


エレン「・・・そっか。まあ、クリスタならなんでもバランスよくこなすし、

    卒業基準ってのにも見合うだろうな――おめでとう」


 俺たちはもう誰も驚かなかった。漠然と理解していたからだ。

 『卒業』というのは、どうにも本人にしかその時が解らないらしい。


クリスタ「・・・正直、今の私が卒業しても、外で通用するか不安だよ。

     でも、貴方たちと出会って・・・あんな学級裁判でも、私は私として言葉を言えた。

     今までの私としては・・・とっても大きな手応えを感じてるんだ」

ジャン(ああ・・・後光がなんか女神っぽいオーラに進化してるしな・・・)

クリスタ「卒業基準は・・・やっぱり言えないんだけど・・・・

     でもね、そう焦らなくてもいいと思うんだ。」

アルミン「どうしてそう思うの・・・?」

クリスタ「卒業してしまえば、きっと時間の流れが速くなる気がするの。

     だから・・・『いま』を自分自身のために使ってほしいな」

ベルト「そうかもしれない・・・クリスタ、すごく良い言葉を聴いたよ」ニコ

サシャ「うっへぇ、いいなぁ。私も卒業したいですー!」

コニー「お前はちゃんとオシオキ受けやがれ」

サシャ「覚えていないことを反省するという行為の難易度・・・ナイトメア」キリッ

ジャン「それはさておき、お前は普段がアレだからオシオキはちょうどいいだろ」

サシャ「えー・・・ぐうの音もでませんねw」ケラケラ

クリスタ「――そうだ。外でユミルに言う前に、練習させて欲しいんだけど・・・」

サシャ「どうしましたか?」

コニー「コレは意外な暴露大会になる予感・・・」ピコン


クリスタ「私ね・・・本当の名前は、ヒストリア・レイスって言うんだっ」キラキラ


 彼女は眩しい笑顔で、そうして告げた。誰にも明かしたことの無いというその名を。



 ------------------------



 それからは、再開した学級で勉強して、たまに遊んで。飯喰って。

 そうして、サシャとベルトルトのオシオキ週間が明けてしばらく経った日の朝――

 クリスタと、そしてひっそりとベルトルトが卒業した。

 後から聴いた話だが、アニだけは、ベルトルトの卒業を知っていたという。


コニー「水臭いわあああああああ。昨日まで超普通に青春してたけど、あいつ!!」

アニ「いいんじゃないかい。私たちもいずれ会えると思ってるから

   あいつもそうしたんだろうしね・・・・・」

エレン「あいつ・・・何か言ってなかったのか?」

アニ「えっと・・・・・」



 ベルト『ずっと時が経っても、たぶんみんなのことは、心が忘れないと思うよ。

     それがどんな風に繋がるかはわからないけど・・・

     僕は、ここにきて苦しい思いもしたけど、楽しかったんだ・・・』

 アニ『そう・・・』

 ベルト『だから。アニ、僕はここにいることが出来て良かったと思ってる。

     挨拶は・・・余計に未練がましいからしないつもりだ』

 アニ『ライナーにあったら、よろしく伝えて。外に出たら、また会おうって』

 ベルト『うん。ありがとう、アニ』ニコッ



アニ「・・・ひみつ」

ジャン「言えよ気になんだろ!!」

アルミン「まあまあ・・・アニ、最近は夢見はどうなの?」

アニ「ぼちぼち回復してきたよ・・・なんとなく原因もわかった。ありがとう」

アルミン「そっか、ならよかったよ」

サシャ「そういや、リヴァイ先輩いませんね」

コニー「ミカサと掃除当番。朝のウチに全部済ませるとか頭おかしい・・・」

ジャン「や・・・あの2人なら可能だろ」


エレン「・・・・・・・・・」


 『クロ』が言ったことは妄言だというのがみんなの見解だ。俺もそう思っている。

 ずっとそれが、胸の奥につかえているのは、どうしてか説明がつかないけれど。

 ミカサは時々、物思いにふけることが増えてしまった。

 ここにきて、俺たちは少しずつ、少しずつ変化していた。


エレン(大丈夫だミカサもいる。苦しいが、機会を待つんだ・・・・)


 ハンジぐるみは相変わらずぶちのめしたい。けどあいつ、最近元気がねぇなと思ったことがあった。

 そういえば、リヴァイさんもちょっと元気がない。そしてよく、学園長のほうを見ている気がする。

 アルミンは・・・ここ最近と比べると逆に元気になった。俺にとって一番の朗報だろうか。


エレン「・・・いただきます」




 閉鎖空間での学園生活は、今日も明日も、続いている。








ジャン「・・・なあ、アルミン」

アルミン「・・・なに?」

ジャン「お前って頭いいだろ・・・あんまり考え過ぎんなよ?」

アルミン「え? ふふ、どういうこと?」

ジャン「いや・・・・・心当たりがないならそれでいいんだよ」






第三章「僕とあの子の×××」 非日常編 END


  生徒数 残り08人


以上、第三章 非日常編おわりです。進撃で一番イケメンなのはコニー。間違いない。

>>852、薬物を入れるとどうしても違う味がすると聞きました。でもにわか知識なので、
ここはサシャとかリヴァイは舌が鋭そうだから解るだろう、ってことでオナシャス

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