クリスタ「ピアノの先生はじめました」(897)

※10巻までのネタバレあり
※捏造あり
※進撃世界観けっこう無視
※クリスタにピアノ弾かせたいだけ


ウォール・ローゼ南方面駐屯地。

今日最後の講義を終え、訓練兵たちはそれぞれ講堂を後にしていく。

クリスタも皆と同じように講義棟の廊下を歩いていた。

使用されていない教室の中へ何気なく目をやった時、あることに気づいた。

クリスタ「あれって、もしかして・・・。」


ガラッ。

クリスタ「お邪魔します。・・・勝手に入って大丈夫かな?」

教室内には、布のかけられた大型の物体があり埃をひどくかぶっていた。

バサッ。

布をはぐると埃が舞い上がり、うっかり吸い込んでしまった。

クリスタ「ゲホッ、ゲホッ。・・・・やっぱり、ピアノだ。」

そこには古いグランドピアノがあった。

布を被せてあったおかげで、ピアノ自体の汚れはさほどひどくなさそうだ。


クリスタ「よいしょっと。」カパッ。

蓋を開けると、濃い象牙色に変色した鍵盤が現れる。

クリスタ「ちょっとだけ弾かせてもらっちゃお・・・。」

椅子の高さを調節する。

クリスタ(ピアノに触るの久しぶり。うふふ、嬉しい。)

椅子に腰掛け、そっと演奏し始めた。


クリスタ(音のずれがひどいなぁ。随分、長い間、放置されてたのね。かわいそうな子。)

ピアノの音色が講義棟に流れた。

クリスタ(お母様が好きだった曲・・・。今頃、どうしてるかな・・・。)

ちょっとだけ。そのつもりが、気づけば夢中になって弾いていた。


ガラッ

クリスタ「!!」ビクッ

マルコ「ピアノ弾いてたのクリスタだったのか。」

クリスタ「ご、ごめんなさい・・・。」

マルコ「何で謝るの?
    
    マクダウェルの『野ばらに寄す』。すごく素敵だったよ。」


クリスタ「!! 本当?うれしい。マルコもピアノ弾けるの?」

マルコ「クリスタほどじゃないけど、ちょっとだけね。

    でも、このピアノ、音が狂いまくってるね。」

クリスタ「そうなの。綺麗な音で歌わせてあげたいのに・・・。」


マルコ「よし。今度の休みに調律道具借りてくるよ。」

クリスタ「マルコ、調律できるの?」

マルコ「僕のおじさんが調律師でさ。調律のやり方、教えてもらったんだ。」

クリスタ「すごい!あっ、でも、その前にこのピアノ弾いてもいいか許可もらわないと。」


マルコ「じゃあ、今から一緒にキース教官のところへ行こう。」

クリスタ「一緒に行ってくれるの?」

マルコ「ああ。ちゃんとしたクリスタの演奏、聴きたいからね。」ニコッ

クリスタ「ありがとう。」///


「休日および自由時間になら好きにするがいい。」

キース教官は意外にもあっさりと許可をくれた。

クリスタ(優等生のマルコが一緒にお願いしてくれたから・・・。)

マルコ「良かったね。」

クリスタ「うん。マルコのおかげだよ。ありがとう。」

マルコ「いやいや。僕は何もしてないよ。じゃあ、次の休日だね。」


数日後。講義棟。

ガラッ。

マルコ「お待たせ~。」

ユミル「マルコ、おせぇよ。クリスタ待たせんな。」

クリスタ「こら、ユミル。そんなこと言わない。

     わざわざ調律の道具取りに帰ってくれてたんだから。

     本当にありがとう。」


マルコ「いいよ、いいよ。ちょっと家に用事もあったし。ついでだから。

でも、意外だな。ユミルもピアノに興味あるんだ。」

ユミル「んなわけないじゃん。私が興味あるのはクリスタだけ。

    大切なクリスタを男と二人きりになんてさせたくないからね。」

クリスタ「ちょっと!マルコに失礼だよ。」


ユミル「ほら、さっさと調律しな。女神クリスタの演奏を私は早く聴きたいんだよ。」

クリスタ「もう!ユミル!あなたは黙ってて。

     ごめんね。何か手伝えることある?」

マルコ「じゃあ、鍵盤のふたと天屋根はずすから、そっち側持ってくれる?」

クリスタ「分かった。・・・うんしょ。」


マルコ「重いから気をつけてね。・・・そっと床に置こう。

    次に手前のパネルを外して・・・。」

クリスタ「ユミル、勝手に調律道具いじっちゃダメだよ。」

ユミル「この二股に分かれてるの何だ?」

マルコ「それは音叉。それを叩いて出る音と真ん中のラの音を合わせるんだ。」


ユミル「ラって何だ?」

クリスタ「この鍵盤から出る音のことだよ。」ポーン

ユミル「ふーん。他の音はどうやって合わせるんだ?」

マルコ「音叉で合わせたラの音を中心に1オクターブ下のラ、1オクターブ上のラを合わせるんだ。

    他の音は自分の耳を頼りに調整していくんだ。」


ユミル「??? よくわかんないけど、マルコは耳がいいのか?」

マルコ「僕はそんなに良くないよ。

    普通の人よりはちょっとだけ音感があるくらいで。

    ピアノを小さいころからやってると絶対音感っていう、

    すべての音をドレミファソで答えられる特殊能力がつく人もいるみたいだけど。

    僕はそんなに一生懸命、練習しなかったからね。残念ながら絶対音感はないんだ。」


ユミル「クリスタはあんの?」

クリスタ「単音だったらね。和音だと三つぐらいまでなら問題ないけど、不協和音とかは厳しいかな。」

マルコ「それでもすごいよ。じゃあ、クリスタ、音合わせるの手伝ってね。

    ええと、チューニングハンマーをこのピンにはめて・・・。」


―1時間後。

マルコ「よし、できたかな。試し弾きするから、おかしな音がないか聞いててね。」

クリスタ「いいよ。」

ユミル「マルコが弾くのかよ。」

マルコ「まぁ、そう言わないで。いくよ・・・」


大きく息を吐き身体の力を抜くと、鍵盤に置いた指を動かし始めた。

クリスタ(・・・シューマンの『トロイメライ』。

     子どものころを思い出す郷愁を誘うメロディー。

     優しく柔らかい音色。マルコらしいな。)


マルコ「ふぅ~。久しぶりに弾いたよ。音のずれは大丈夫そうかな?」

クリスタ「ええ、ばっちり。それより、マルコ、すごく上手で驚いたよ。」

マルコ「そう?そんなに難しくない曲だからね。」

クリスタ「そんなことないよ。簡単な曲ほど上手に聴かせるの難しいもん。

     特にこの曲、演奏者の感性がそのまま出るから。

     私はマルコの弾き方、好きだよ。」


マルコ「ははは。そんなに褒められると照れちゃうな///」

ユミル「・・・・」グスッ

クリスタ「あれ?ユミル涙ぐんでる。」

ユミル「う、うるさい///」グスッ

クリスタ「楽しかった出来事とか家族のこととか、優しい記憶が浮かんでくる曲だから。

     ユミル悪ぶってるけど、本当は純粋なんだね。」

ユミル「ちがうし。」ゴシゴシ


マルコ「でもさぁ、ピアノって庶民の家庭には高級品だよね。

    僕はおじさんが調律師だったおかげで、おじさんの家にピアノがあって練習できたけど。

    クリスタの家って裕福なんだね。」

クリスタ「!! ううん、ぜんぜんそんなことないよ。えーとね、ピアノは・・・その・・・。」

ユミル「・・・・。」


クリスタ「・・・親戚の家に・・・たまたま置いてあって・・・。」タジタジ

ユミル「ほらっ!そんなのどうでもいいから、次はクリスタ弾いてよ。」

クリスタ「う、うんっ!」

マルコ「おっ、楽しみ。何弾いてくれるの?」

ユミル「私のためだけに演奏してくれるよな。」


クリスタ「うーん、何にしようかな。

     さっきマルコが『トロイメライ』弾いてくれたから・・・。うん、決めた。」

クリスタは流れるような指さばきで弾き始めた。

ピアノから音が溢れ、流れ、教室中を満たした。


マルコ(・・・これはすごいぞ。リストの『愛の夢 第三番』。

    何度か他の人の演奏を聴いたことがあるけど、こんなに透明感のある音は初めてだ。

    常に流れるアルペジオを粒の揃った音できれいになめらかに弾きつつ、

    左手、右手、交互に出てくるメロディーを芯を持った音できっちり出してくる。

    素人の僕にだって分かる。彼女は本物だ。)


ユミル(ちょっとちょっと、何かヤバイんだけど。ものっそい指動いてるんだけど。

    なのに微笑んで余裕で弾いてて。クリスタ、まじすげぇよ。

    ・・・めっちゃきれいな曲だな。弾いてるクリスタは女神そのものじゃん。

    ずっと聴いていたい・・・)


クリスタ「むぅー・・・。久しぶりだと指がうまく回らないなぁ。」

マルコ「すごいよ!!感動したよ!!」

ユミル「やるじゃん。」ナデナデ

クリスタ「えへへ、ありがとう。『トロイメライ』って確か‘夢’って意味でしょ。

     だから夢つながりでこの曲にしてみたの。」


マルコ「夢か・・・。クリスタって、もしかしてピアニストになることが夢だったんじゃない?」

クリスタ「!?とんでもない。私って手が小さいから・・・。

     でも、子どもの頃はピアノの先生になるのが夢だったな。」

マルコ「そんなに上手なのにもったいないよ。

    たくさんの人に君のピアノを聴いてもらうべきだよ。

    どうして兵士になんかなろうと・・・。」


ユミル「まぁ、人にはそれぞれ事情があるじゃないの。詮索するのは野暮だよ。

    でも、ピアノの先生って夢はここでも叶えられるんじゃないか?」

クリスタ「えっ?」

ユミル「生徒集めて、ここで教えればいいじゃん。クリスタ先生。」


マルコ「そうだよ。自由時間と休日はここ使っていいんだし。

    クリスタがピアノを教えるって言ったら、みんな喜ぶよ。(主に男子が)」

クリスタ「・・・私なんかが教えていいのかな・・・。」

マルコ「もちろんだよ。自信持って。」


ユミル「じゃあ、クリスタピアノ教室の生徒募集のポスター書こうぜ。」

クリスタ「そうだね・・・。

     それで、もし教えて欲しいって人が来れば、やってみようかな。」

マルコ「大丈夫。みんな飛びつくから。(主にラのつく人が)」

ユミル「早速ポスター作って、食堂の掲示板に張ろう。」

レスありがとうです。
また後で続き書きます。

連投すまんがショパン希望
雨だれとか

たくさんのレスありがとうです。
完全なる趣味ssなので放置プレイ覚悟してた。
こんなss書いてるけど、
あまりピアノ詳しくないので間違いがあったらスマン。
>>47 リクエストありがとう。
   入れれるかどうか分からんが頑張ってみる。

ID変わったけど>>1です。続きをのんびり。


―その日の夕食時間 食堂

掲示板には一枚のポスターが新しく貼られていた。

『クリスタピアノ教室 生徒募集 

 ピアノの先生はじめました。

 興味のある方は自由時間に講義棟・旧教室へお越し下さい。』


ザワザワ、ガヤガヤ

ベルトルト「ライナー、掲示板見た?」

ライナー「ああ。もちろんだ。」

ベルトルト「・・・やるんだな。」

ライナー「クリスタの個人レッスンだ。

     ここは戦士として責任を果たさなくてはならない。」

ベルトルト「それなら僕も・・・。」


ライナー「いや、お前はいい。責任を果たすのは俺一人で十分だ。」

ベルトルト「ずるいぞ、ライナー。」

ライナー「何とでも言え。ここは譲れん。」

ベルトルト「別に、定員があるわけじゃないんだからいいだろう?」

ライナー「生徒が増えれば、一人当たりのレッスン時間が短くなる。

     俺はできるだけ長くクリスタと二人の時間を過ごしたい。」

ベルトルト「でも、僕らだけじゃなさそうだよ。レッスン希望者。」



―別のテーブル

アルミン「ピアノかー。ちょっと弾いてみたかったんだよね。」

エレン「ピアノって何だ?」

ミカサ「私も知らない。」

アルミン「指を使って鍵盤を押さえて音をならす楽器だよ。

     といっても本で仕入れた情報で、僕も実物は見たことはないけど。」


エレン「へぇ~。どんな音がするんだろうな。」

アルミン「エレンも興味ある?じゃあ、一緒にレッスン受けようよ。」

エレン「俺はいいよ。兵士に必要な技術じゃなさそうだし。」

ミカサ「そう。エレンはもっと立体機動術を私から学ぶべき。」


アルミン「でもピアノで演奏する曲って、外の世界から持ち込まれたものがほとんどなんだって。

     昔、外の世界の人たちがどんな音楽を楽しんでいたのか僕は知りたいんだ。」

エレン「外の世界の音楽か・・・。

    習うつもりはないけど、ちょっとだけのぞいてみようかな。」

ミカサ「エレンが行くなら私も行こう。」

アルミン「それじゃあ、明日の自由時間、みんなで行ってみよう。」


―翌日、自由時間

ガラッ

アルミン「お邪魔します。」

クリスタ「あっ、アルミンたちも来てくれたんだ。どうぞ、入って。」ニコッ

ユミル「予想以上にいっぱい来たな。」

マルコ「クリスタの人徳だよ。」


エレン「なんだ、いつものメンバーほとんど来てるじゃないか。」

コニー「俺は珍しそうだから見にきただけ。」

サシャ「美しい音楽はお腹が満たされると聞きましたので。」

ジャン「そりゃ心だろ。

    俺はガキの頃ちょっと習ってたことがあるんでな。お前らを笑いに来ただけだ。」

アニ「私は暇つぶし。」


アルミン「じゃあ、レッスン希望は僕とライナーとベルトルトだけかな。」

ライナー「エレンとミカサは?」

エレン「俺らも見学。」

ミカサ「エレンに従うだけ。」

ライナー「そうか。」

ライナー(よし、三人で収まったか。これ以上増えるなよ。)


マルコ「もう、来ないかな?じゃあ、クリスタ先生どうぞ。」

クリスタ「先生だなんて/// えっと、ピアノをはじめて見る人は?」

ジャン以外「はーい」

クリスタ「うん。ほとんどだね。

     それじゃあ、どんな音がするか、とりあえず弾いてみせるね。」


ユミル「クリスタ待ちな。さっき、ジャンも弾けるって言ってただろ。

    ジャンに弾かせてみようぜ。」

ジャン「はぁ?なんでだよ。」

ユミル「ジャンはいつも口ばっかりでかいからな。弾けるなんてどうせ嘘だろ。」


ジャン「何言ってんだ。俺はトロスト区のモーツァルトと呼ばれた男だぞ。

    家には足踏みオルガンしかなかったけどな。

    弾いてやるから耳かっぽじって聴いとけ。」

マルコ「曲は?」

ジャン「ベートーベンの『エリーゼのために』だ。」

クリスタ(モーツァルトじゃないんだ。)


ジャン「よし、いくぞ。」

ピロリロリピロリラ~♪

ユミル(これ、昨日と同じピアノか?こんなイヤな音だっけ?)

クリスタ(そんな叩きつけないで。荒いタッチだなぁ。ピアノがかわいそう。)

マルコ(いるんだよね。エリーゼ弾ければピアノが上手なつもりの人。

    ノンレガートのゴツゴツしたエリーゼ。ある意味、斬新だな。

    あっ、展開部入らず演奏終わっちゃった。そこからがいいところなのに。)


ジャン「はぁはぁ・・・。どうだ。」ドヤ

コニー「すげー。なんかいっぱい音がでるな。」

サシャ「どういう仕組みなんでしょうか?でも、ちっともお腹が満たされません。」

アルミン「鍵盤を下ろすと後ろに張ってある弦が弾かれるのか。なるほど。」


エレン「なんで息が荒いんだ?」

ミカサ「ピアノと戦ってたんでしょう。目が血走ってたし。」

ライナー「ピアノとは相当の覚悟を持って臨まなければならないのか。」

ベルトルト「自分とピアノ。負けることのできない戦い・・・か。」

アニ「・・・くだらない。」


ジャン「ちょっ、お前ら俺の演奏に感想はないのか。」

サシャ「はじめて聴くものなのでよく分からないです。」

コニー「ピアノを弾いてる人間見んのも初めてだから、

    手で弾くのが正しいのかどうかさえ分からん。」

ジャン「正しいよ!!」


マルコ「まぁまぁ、じゃあ次はクリスタで。

    クリスタの演奏を聴いたら、みんなジャンの評価もできると思うから。」

ユミル「ささっ、クリスタ先生どうぞ。折角だから、さっきジャンが弾いた曲やってよ。」

クリスタ「えっ?いや、でも、それは・・・。」


ミカサ「そうしてくれた方が判断しやすい。」

エレン「ピアノ勝負か。おもしろそうだな。」

ジャン「いいぜ。俺も正直なみんなの感想聞きたいし。」

ユミル「なっ、ああ言ってるし、やっちゃいな。」

クリスタ「うう・・・。しょうがないな・・・。」

椅子に座り、しばらく目を閉じ集中する。

教室にクリスタのピアノの音が流れ出すと、そこにいる全員が息を呑んだ。


マルコ(やっぱりすごいな。

    昨日、クリスタに簡単な曲ほど上手に弾くのは難しいって言われたけど、その通りだな。

    音数が少なければ少ないほど、弾き手の技術の優劣がはっきり出る。

    ジャンは譜面に書いてある音符を、鍵盤の上で音に変換してるだけ。いわば、作業だ。

    クリスタは一音一音に意味を持たせて、まるで物語を紡いでいるようだ。

    喜び、切なさ、苦しみ、悲しみ、彼女の生み出す音はすべてを演じ表現する。まさに演奏だ。
    
    ジャンには悪いがすべてにおいて比べ物にならないよ。)


アルミン(うわぁ。きれいな音だな。悲しげなメロディーが胸に迫ってくる。)

アニ(音に洗われて心がきれいになっていくみたい・・・。)

ユミル(切なげなクリスタの表情・・・。胸がきゅんきゅんする。)

ベルトルト(僕にはクリスタの背中に天使の羽根が見えるよ。)

ライナー(足元のペダルになりたい。)


クリスタ「・・・ふぅっ。ピアノってこんな音だよ。」

パチパチ パチパチ

コニー「すげぇよ。俺、よく分かんないけど、なんか体がビリビリッて震えたよ。」

サシャ「ジャンの時と違って、お腹、じゃなくて胸がいっぱいになりました。ごちそうさまです。」

ミカサ「そもそもジャンと同じ曲なの?クリスタの方が長い曲だった。」

マルコ「えーと、ジャンは曲の途中までだったから・・・。」


エレン「何だよ。最後まで弾けねぇのかよ。」

ジャン「うっせぇ。楽譜があれば弾けんだよ。あんな長いの全部覚えられるか。」

アニ「クリスタはばっちり覚えてたけどね。」

ジャン「はっ、弾けもしない奴らに文句言われたくないね。」


ライナー「だが、ジャン。クリスタに比べるとお前の腕前は・・・。」

ジャン「言われなくても分かってるよ。

    クリスタに比べたらゴミみたいな演奏だったって。

    でも、言っとくけど、クリスタと比べるからヘタクソなだけで、

    俺の演奏自体はそんなに悪くなかったはずだ。

    クリスタが別格すぎるんだよ。」


クリスタ「ううん、そんなことないよ。

     私がジャンよりちょっとだけ多く、今まで練習をしてきただけだから。

     今からピアノ再開すれば、あっという間に私より上手になるよ。」

ジャン「本当か?」


クリスタ「うん。そもそもピアノって女の人より男の人の方が向いてるんだ。

     身体能力の高さや体格の良さは、表現の幅を広げるのに有利だから。

     有名なピアニストも男の人の方が圧倒的に多いしね。」

マルコ「感受性豊かで繊細な表現は、なかなか男性には難しいけど、

    豪快で力強い演奏は女性には向かないからね。」


エレン「じゃあ、あれか。男の身体能力を持った女が一番うまくなるのか?」

マルコ「もしくはその逆。女性の心を持った男性。

    実際にピアニストにはゲイが多いらしいし。」

ユミル「それって・・・ミカサとライナーじゃんw」

レスありがとう。
今日はここまで。続きは後日。


ライナー「おいおい、俺はゲイじゃないぞ。」

ミカサ「アルミン。私、今、褒められているの?馬鹿にされているの?どっち?」

アルミン「褒められてるよ・・・多分。」

サシャ「じゃあ、ミカサも習ったらいいじゃないですか。きっと上手になりますよ。」

ミカサ「エレンがやらないことは私もやらない。」


コニー「なぁなぁ、ちょっとピアノ触ってみてもいいかー?」

クリスタ「いいよ。自由に音出してみて。」

エレン「俺も俺も。」

アルミン「僕も触ってみたい。」

ポーン♪ポロン♪ピロン♪

コニー「おおっ、簡単に音出んじゃん。」

クリスタ「鍵盤を押さえるだけで音が出るから。簡単でしょ?」


アルミン「ふむふむ。左の方へ行くと低い音。右の方へ行くと高い音になるのか。」

エレン「鍵盤一つ一つ音がちょっとずつ違うんだな。ポーン♪

    ・・・あっ、これはさっき聴いた音。この隣がこの音で・・・ポーン♪

    3つ隣がこの音で・・・ポーン♪7つで1セットか・・・ポロロロロン♪」

コニー「エレン、お前さっきから何ぶつぶつ言ってんだよ。」

エレン「いや、よくわかんないんだけど、何かがわかるような・・・。」

コニー「はぁ?大丈夫か?」


エレン「・・・左から順番に白いのと黒いのを交互に右端まで押さえていって・・・」ピロピロピロピロ♪

クリスタ(エレン、半音階なんて弾き始めてどうしたのかな?)

マルコ(もしかして・・・音を確認してる・・・?)

エレン「よしっ。大体分かったぞ。」

アルミン「えっ?」

エレン「ちょっと椅子座らせて。

    ジャン、お前がさっき弾いてた曲ってこれだろ?」ピロリロリピロリラ♪

ジャン「何!?」


マルコ「エレンすごいじゃないか!!

    一本指打法だけど、右手、左手ちゃんと音をとれてる。」

アルミン「まさか、ジャンの押さえた鍵盤を1回見ただけで記憶したの?」

エレン「えっ?お前らわかんないの?さっきこの音してたじゃん。」

コニー「わかんないのって、わかんねぇよ。」


クリスタ「ちょっとエレン。

     ピアノの鍵盤を見ないように後ろを向いて立ってくれるかな?」

エレン「ん?いいけど。」

クリスタ「今から弾く音を聴いてね。」

クリスタ(まずは単音の旋律で・・・)ポーン♪ポーン♪ポーン♪

クリスタ「エレンこっちに来て、今聴こえた音を出してみて。」

エレン「いいよ。」ポーン♪ポーン♪ポーン♪


クリスタ「ありがとう。また後ろ向いててね。じゃあ次ね。」

クリスタ(今度は三和音。ト調の主和音、下属和音、属和音。)ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

クリスタ「また、今の音、出してみて。」

エレン「いいけど。」ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

クリスタ「次いくね。」

エレン「はいはい。」クルッ

クリスタ(次もいけるかな?嬰ハ短の属七、減七、導七の和音。)ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

クリスタ「どうぞ。」

エレン「こうだろ。」ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪


クリスタ「すごい!!全部正解だね。エレン、絶対音感があるよ!!」

エレン「何だそれ?」

クリスタ「音を聴いただけで、それが、どの音程か分かる能力だよ。」

エレン「そんなの、聴けば分かるんじゃないのか。」

マルコ「普通の人は分からないんだよ。

    子どもの頃から音感を鍛えないと、なかなか身につかないんだけど・・・。

    エレンは天性の絶対音感保持者なんだ。」


クリスタ「エレン、ぜひ、ピアノを弾いて。

     神様が与えてくれた才能を無駄にしてはいけないわ。」

エレン「そんなこと言われてもなぁ。あんまり興味ないし。」

アルミン「エレン、一緒に習おうよ。そんな才能があるなんてすごいよ。

     僕なんてちっとも音分かんなかったし。」

エレン「アルミンでも分かんなかったのか?ミカサは?」

ミカサ「音は音。何を理解するというの?」

アルミン「ねっ、君は特別なんだよ。」


エレン「そうか・・・。」

エレン(・・・ピアノだったらミカサを越えられるかもしれないのか?

    一つぐらいミカサに勝てるものが欲しい・・・。)

エレン「よし。俺、ピアノやってみる。クリスタ、俺にも教えてくれ。」

クリスタ「良かった。こちらこそよろしくね。」


ミカサ「エレンがやるなら・・・。クリスタ、私も習いたい。」

エレン「お前はいいよ。何でも真似するなよ。」

ミカサ「でも・・・。」シュン

クリスタ「いいじゃない。ミカサもきっと上手になるから。一緒にがんばろうね。」

ミカサ「うん。」

ジャン「ミカサもやるのか・・・。俺もやっぱり教えてくれよ。クリスタ先生。」

クリスタ「もちろんだよ。」


ユミル「ってことは、

    生徒はライナー、ベルトルト、ジャン、アルミン、ミカサ、エレンの六人だな。」

クリスタ「それじゃあ、レッスンは一時間ずつね。

     月・ライナー、火・ベルトルト、水・ジャン、木・アルミン、金・ミカサ、土・エレンで。

     レッスン時間以外は、このピアノでみんな自由に練習していいからね。

     教本まだ用意できてないから、楽譜の読み方とか手のフォームとか

     基本的なことからはじめるね。
 
     レッスンはもちろん無料だけど、新しい教本や楽譜が必要になった場合は、

     申し訳ないんだけど、自費でお願いするね。」


ライナー「了解した。」

ベルトルト「レッスン料とらないなんて、本当にいいの?」

クリスタ「うん。私、先生させてもらえるだけで嬉しいから。気にしないでね。」ニコッ

マルコ「それじゃあ、今日はもう遅くなったし解散だね。」

クリスタ「えーと、明日は火曜日だから、ベルトルトだね。

     自由時間になったらこの教室に来てね。」

ベルトルト「うん。わかったよ。」


ユミル「はーい、撤収、撤収。」

「おつかれー」ガラガラ ピシャッ

ピアノの片付けに残ったクリスタとマルコ、ユミルを残し、皆、宿舎へ帰っていった。

マルコ「教本どうするの?」

クリスタ「うーん。やっぱり楽しくないと続かないからなぁ。

     『バイエル』とか使いたくないなぁ・・・。」


マルコ「ちょっと難しくても、気に入った曲に挑戦する方が楽しいかもね。」

クリスタ「そうだよね。みんなには何か一曲選んでもらうとして・・・。

     あとは『ル・デリアトゥール』使って、基本的なテクニックを身につけてもらおうかな。」

マルコ「うん。それでいいんじゃない。」


クリスタ「マルコ、今度の休みって空いてる?」

マルコ「いいよ。楽譜買いに行くんでしょ。付き合うよ。」

ユミル「もちろん、私も付いていくし。」

マルコ「僕の家にも、いくらか楽譜あるからそれも持って来るよ。」

クリスタ「マルコにはお世話になりっぱなしでゴメンね。ありがとう。」


マルコ「ん~、じゃあ、お礼に一曲弾いてくれない?」

ユミル「おい、調子にのんな。」

クリスタ「いいよ。そんなのでお礼になるなら。」

マルコ「やった。」

クリスタは椅子に腰掛け鍵盤に手をかけた。

クリスタ(訓練で疲れたみんながよく眠れますように・・・。)

♪~♪~~♪♪♪~~~♪~~~


マルコ(ショパンの『ノクターンOp.9-2』。静かな夜にぴったりだ。

    甘く感傷的な主題が少しずつ形を変えながら何度も繰り返される。

    左手の伴奏形はかなり音が飛ぶけど、決して雑にならず、

    テヌートが嫌味にならない絶妙なバランスで効いている。

    ・・・あぁ、心が穏やかになる。)


クリスタ「・・・ふぅ・・・。少しはお礼になったかな?」

マルコ「十分すぎるくらいだよ。今日はいい夢が見られそうだよ。」

ユミル「もう1回聴かせてよ~。」

クリスタ「うふふ。また今度ね。それじゃ、蓋をしめて・・・。」

マルコ「天屋根閉めて・・・と。」

クリスタ「おやすみなさい。」

マルコ「うん。また明日ね。」

続きはまた後日

>>1です。
レスありがとう。いろいろと参考にさせてもらうよ。
続きいきます。


―次の休日。

小雨が降りしきる中、マルコは傘をさし宿舎前に立っていた。

クリスタ「遅くなってゴメンね。待った?」

マルコ「ううん。雨降っちゃったね。あれ?ユミルは?」

クリスタ「ユミル風邪ひいてて、あまり体調良さそうじゃなかったから、

     この天気だし、無理やり置いてきちゃった。」

マルコ「そっか。ひどくなると大変だもんね。それじゃあ、行こうか。」

クリスタ「うん。」

二人は駅馬車の停留所に向かって歩き出した。


マルコ「レッスンは順調?」

クリスタ「うーん。一回ずつしかやってないから。ライナーはまだ見れてないし・・・。

     でも、アルミンとミカサはさすがだよ。音符の読み方すぐ覚えちゃった。

     一つ教えたら十以上のことを理解してくれるからすごく楽。」

マルコ「あの二人、座学の成績ずば抜けてるもんね。」


クリスタ「ベルトルトはとっても真面目。アルミンもだけど、私の言ったこと全部メモしてるの。

     一生懸命覚えようとしてくれてて、嬉しくなっちゃった。

     手がね、とっても大きくて、指が意外にほっそりと長くて。

     本物のピアニストの手みたいなんだよ。ちょっとうらやましいかな。」

マルコ「ピアノに向かっているベルトルトは様になりそうだ。」


クリスタ「そうなの。かっこよくてびっくりしたよ。

     ジャンはね、楽譜はばっちり読めるんだ。

     でも、オルガンで練習してきたせいもあって、タッチが荒くって・・・。

     そこをどうにか直せたら、きれいな演奏ができると思う。」

マルコ「ジャンは何でも器用にこなすから、教え方が良ければすぐに直るよ。」


クリスタ「うん。私、がんばるよ。

     エレンは・・・、もう、無理に楽譜を読ませないことにした。

     音符の読み方説明してたら、顔が?マークだらけになっちゃって。

     エレンの場合、音ありきだから。とりあえず耳で聴いて覚えてもらって。

     音と音符を結びつけるのは慣れてきてからでいいかなぁって。」

マルコ「ははは、エレンらしいね。」


クリスタ「でも、エレンすごいんだよ。

     私が『きらきら星』弾いたら、すぐに音とって演奏してね。

     もちろん、指使いはめちゃくちゃだから、一から教えたけど。

     するとね、すべての調に移調して弾き始めて、びっくりしたよ。」

マルコ「エレンがどんな弾き手になるのか今から楽しみだね。」

クリスタ「もっと早くピアノ始めてたら、間違いなく神童だって騒がれてたと思う。

     ちょっと遅かったけど、それでもエレンの才能に気づいてあげれて良かった。」


停留所に着くと、二人は駅馬車に乗り込んだ。

馬車の天井を覆う幌に雨粒が落ち、ボタボタという音が響く。

クリスタ「雨粒の音・・・。」

マルコ「ショパンの前奏曲『雨だれ』みたいだね。」

クリスタ「途切れなく続く変イ音がまるで雨粒の落ちる音に聴こえるんだよね・・・。

     だけど私、この曲聴くとものすごく不安になるんだ。」


マルコ「そう?しっとりと穏やかな曲じゃない?

    中間部は嬰ハ短調に転調して、暗く激しい感じになるけど。」

クリスタ「最初は雨粒の音なんだけど、転調してからは不気味な足音に聴こえて。

     ささやかで幸せな生活を送っていても、後ろから悪魔の足音がどんどん近づいてきて、

     気づいたときには手遅れで絶望する・・・。そんなイメージかな。」


マルコ「おもしろい解釈だね。

悪魔の足音か・・・。今の僕たちからすれば巨人の足音ってところかな。

    だけど、最後は足音が一旦途切れ、また明るい変ニ長調に戻る。

    絶望の後には救いがあるよ。」

クリスタ「前向きだね。マルコらしい。そっか、救いか。

     私は最後の長調で、天国に召されたのかと思ってた。」


マルコ「ぷぷっ、クリスタ、後向きすぎるでしょ。」

クリスタ「もう、笑わないでよ。けっこう真剣に考えてたんだから。

     ・・・でも、嬉しいな。訓練兵になったら音楽の話なんてできないと思ってたから。

     マルコがいてくれて良かった。」ニコッ

マルコ「///。僕も楽しいよ。

    訓練兵になる前も、友達とこんなに深く音楽のこと話すことなかったから。」


クリスタ「友達か・・・。
  
     私はね、周りに同年代の子がいなくて・・・、友達って呼べる人がいなかった。」

マルコ「そうなんだ・・・。」

クリスタ「だから、毎日、毎日ピアノを弾いてたの。

     ピアノを弾いてたら、悲しいとか寂しいとか、そういうの忘れられるから。

     だけど、訓練兵になってみたら、周りとどう接していいかよく分からなくてね。

     そんな時、なぜかユミルが絡んできて・・・。

     随分と彼女には助けられてるんだ。突飛な言動にはたびたび困らせられるけど。

     私にとって、ユミルは初めての友達なんだ。

     あっ、これユミルには内緒ね。すぐ調子に乗っちゃうから。」シー

マルコ「ははっ、分かったよ。

    あっ、街に着いたみたいだ。降りよう。」


二人は書店、楽器屋をめぐり、めぼしい楽譜を買い集めていった。

クリスタ「とりあえず必要な楽譜と教本は揃ったかな。」

マルコ「それは良かった。それじゃ、そこのカフェでお茶にしよう。

    雨の中、随分と歩いたから疲れたんじゃない?」

クリスタ「うん。街に出てくるの久しぶりだから、ちょっと人混みに疲れちゃった。」


店に入り、マルコはカフェオレを、クリスタは紅茶を注文した。

クリスタ「マルコってここの街、詳しいんだね。本屋さんの場所とかよく知ってたし。」

マルコ「あっ、言ってなかったけ。ここ、僕の地元なんだ。僕の家もすぐ近くだよ。」

クリスタ「知らなかった。でも、すごく助かったよ。マルコのおかげで買い物が早く済んだから。」

マルコ「それはそれは。お役に立てて光栄です。クリスタ姫。」

クリスタ「うふふ。もう、姫なんてやめてよ。」


マルコ「ははは。

    ところで、クリスタってさ・・・、好きな人いるの?」

クリスタ「!?」///

マルコ「えっと、突然変なこと聞いてごめんね。

    クリスタって男子にすごく人気があるからさ。ちょっと気になって。」

クリスタ「私って、人気あるの?」

マルコ「うん。告白とかされない?」

クリスタ「全然されない。むしろ、男の子たちから話しかけられることがほとんどないよ。

     ちょっと寂しいくらい。」


マルコ(そうか。クリスタにはいつもユミルがべったりだしな。

    ライナーたちも影で盛り上がるばっかりで、本人目の前にしたら固まってるし。)

クリスタ「私って男の子たちに嫌われてるのかな・・・。」シュン

マルコ「そんなことない。僕は好きだよ。」

クリスタ「えっ・・・?」///

マルコ「・・・あっ。」///


マルコ(まずい。早く何か言わないと・・・。)
    
マルコ「う、うん。そう、友達としてね。

    クリスタ優しいし、趣味合うし、友達としてって意味で・・・。」///

クリスタ「そ、そうだよね。もう、やだな・・・、マルコってば・・・。」///

クリスタ(はぁー、びっくりした。そうよ、友達、友達。)


クリスタ「マルコのほうこそ好きな子いないの?」

マルコ「僕?僕は・・・、いないかな・・・。」

クリスタ「そっか。私ね、一度でいいから、恋してみたいんだ。

     ピアノの曲って恋愛をテーマにしたものが結構あるでしょ。

     私、恋したことないからうまく表現できなくて・・・。」

マルコ「難しいよね。僕は子どもの頃、好きだった子いたけど片思いで終わったから。

    恋の喜びを表現しろって言われても、どう弾いていいのかさっぱりだよ。」


クリスタ「片思いって、・・・ふられたの?」

マルコ「ううん。告白すらしなかったよ。

    僕の友達もその子のこと好きでさ。

    争ってまでどうこうなりたかったわけじゃないし、自分の気持ちは胸に閉まっといたよ。」

クリスタ「マルコって欲がないよね。訓練の時も、一歩引いて他の人に譲ってることがあるから。」


マルコ「うーん・・・。

    欲がないってわけじゃなくて、人と競争したり、ぶつかったりするのが苦手なんだ。

    自分が諦めることで、物事がスムーズに流れるんなら、それでいいやって思っちゃう。」

クリスタ「その気持ち、私も分かるな・・・。

     でも、それって、マルコの優しさでしょ。立派だと思うけど・・・。」


マルコ「優しさなんかじゃないよ。僕は臆病だから。争いを避けて自己防衛してるだけだよ。

    欲しいものを欲しいって言える人間の方がよっぽど強くて立派だよ。」

クリスタ「だけど、どうしても譲れないものができたらどうするの?」

マルコ「んー、その時になってみないと分からないなぁ。

    欲しいって言える勇気があればいいけどね・・・。

    あっ、雨が止んだみたい。そろそろ出ようか。」

クリスタ「うん。」


店を出る。

クリスタ「奢ってもらっちゃった・・・。ありがとう。」

マルコ「いいよ、それぐらい。

    ちょっと家に楽譜取りに行って来るから、その辺のお店で時間潰してて。」

クリスタ「わかった。」

クリスタは目に付いた一軒の雑貨屋に入った。

クリスタ(あっ、これとかユミルにいいかも。おみやげに買って帰ろう。)



―女子宿舎

クリスタ「ただいま~。ユミル調子はどう?」

ユミル「遅い!!今、何時だと思ってんだよ!!」

クリスタ「えっ?午後4時だけど。」

ユミル「こんな遅くまで病気の私を置いて、マルコと二人でどこ行ってたんだよぉ~~~。」

クリスタ「楽譜買いに行っただけだって。しかも全然遅くないし。

     でも、だいぶ調子良さそうだね。良かった。」


ユミル「・・・何もされてない?何か変なこと言われたり、変なとこ触られたりしてない?」

クリスタ「もう!いい加減にしてよ。マルコはそんな人じゃないから。怒るよ。」

ユミル「あぅぅ・・・、だってさ・・・、心配だから・・・。」

クリスタ「はいはい。あっ、これユミルにおみやげ。」

ユミル「これは・・・、髪留め?」

クリスタ「うん。ユミル、だいぶ髪伸びてきたじゃない。

     これだとシンプルで訓練の邪魔にならなそうでしょ。

     髪の毛切るんだったら、必要ないけど・・・。」


ユミル「クリスタ、ありがと~。絶対、髪切らないし。まじ大好き。結婚してくれ!」ムギュ~

クリスタ(・・・僕は好きだよ・・・か。)///

ユミル「あっ、真っ赤になってる。ほんとクリスタはかわいいよ。」

クリスタ(・・・やだっ、私ってば何思い出してるの・・・。)///


―男子宿舎

マルコ「ただいま。あー、疲れた・・・。」ガシッ!!

マルコ「!?」

ベルトルト「さぁ、マルコ、そこに座ろうか。」

マルコ「え、ええと・・・。」

ライナー「今日は、お前とゆっくり話がしたくてな。」

マルコ「いや・・・、そんな、ぜんぜん、話すことないデス・・・。」


ベルトルト「今日はユミル、一緒じゃなかったみたいだねぇ。」

ライナー「クリスタと二人きりでお出かけ・・・って、まるでデートだな。」

マルコ「そ、そんなつもりじゃないし。やだな、二人とも笑顔が怖いよ。」

ベルトルト「時間はたっぷりあるから、クリスタの一挙一動、すみずみまで聞かせてもらおうかな。」

ライナー「まずは、クリスタの匂いについて語り合おうか・・・。」

マルコ(だれか助けて・・・。)

こうして長い夜は更けていった。


―月曜日、自由時間

クリスタ「ライナーは今日が初めてのレッスンだね。」

ライナー「ああ。」

クリスタ「じゃあ、とりあえず、演奏する時の姿勢から確認するね。

     まずは、椅子の高さを合わせるよ。ちょっと座ってみて。」

ライナー「ああ。」


クリスタ「・・・・うん。はい、立っていいよ。

     椅子の高さはね、鍵盤に手を置いたときに、手首と肘がほぼ水平になるように調整するの。

     かなり椅子下げなくちゃ。やっぱりライナーって大きいね。」ニコッ

ライナー「ああ。」

クリスタ「・・・よいしょ。これぐらいの高さかな。もう一度座ってみて。」

ライナー「ああ。」


クリスタ「それで、両手を鍵盤に置いてみて。

     ・・・うん。椅子の高さはばっちりだね。今度からは自分で調整してみてね。

     ほら、肩の力を抜いて、リラックスして。」ポンポン

椅子の後ろに立ち、ライナーの両肩をクリスタは優しくたたく。

ライナー「ああ。」


クリスタ「手の力も抜いて。指は伸ばさず軽くボールを握ってるような形で・・・。」

ライナーの後ろから、クリスタは腕を伸ばし、ライナーの手の形を整える。

ライナー(・・・俺の平常心もそろそろ限界だ・・・。

     大きいねって、クリスタさんが言ったから、毎週火曜はピアノ記念日。

     あぁ、めちゃくちゃいい匂いがする。ピアノ最高。)スーハースーハー

クリスタ「ほら、そんなに背中を丸めないで。背筋を伸ばして・・・。」サスサス

ライナー「む、無理・・・。」

クリスタ「顔赤いし、調子悪そうだけど大丈夫?」


ライナー「す、すまん。ちょっと手洗いに・・・。」

クリスタ「あっ、うん。行ってきていいよ。」

ガラッ。

前屈みのまま教室を出て行くライナー。

クリスタ「お腹の調子が悪かったのかな・・・。」

一人残された教室でクリスタは呟いた。

ここまで。続きは後日。

>>142 毎週火曜× 毎週月曜○でした。間違い。

>>1です。
レスありがとう。
進撃アニメでまだご健在のマルコを見たせいで、こんなことになってしまった。
恋愛要素いれる予定なかった。
生きろ!マルコ!
続きをのんびり


―火曜日、自由時間

クリスタ「ト音記号の音符は読めるようになったかな?」

ベルトルト「うん。頑張って覚えてきたよ。」

クリスタ「よかった。じゃ、今日はヘ音記号の音符の読み方をやるんだけど、

     その前に、はいっ、これ教本。」

ベルトルト「これ、何て書いてあるの?」

クリスタ「『ル・デリアトゥール』。指の基礎練習の本だよ。

     運動する前の準備体操みたいなものかな。

     毎日、10分でもいいから、ちゃんとした指の形でその本に取り組むと、

     あっという間に上手になるよ。」


ベルトルト「そうなの?」

クリスタ「うん。騙されたと思ってやってみて。

     あっ、もちろん今からその本の使い方も指導するから。」

ベルトルト「わかった。」

クリスタ「それとね、その本だけじゃおもしろくないから、

     みんなには自分で練習曲を一曲選んでもらおうと思って。

     初心者でもがんばれば弾けそうな楽譜をいろいろ用意したよ。」バサッ

ベルトルト「うわっ、たくさんあるな。」


クリスタ「どんな曲がいいかな~。

     最初だし、やっぱり、ゆったりめの曲じゃないと難しいよね・・・。」

ベルトルト「クリスタに任せるよ。僕、よく分からないし。」

クリスタ「わかった。ベルトルトに似合いそうなのは・・・。

     これ、どうかな?ちょっと弾いてみるから聴いててね。」

♪~~♪~~♪~♪♪~~~

ベルトルト(優しく穏やかで、どこか懐かしい・・・。

      クリスタが僕のために選んでくれた曲だ。すごく嬉しい。)


クリスタ「こんな感じの曲だけど、どうかな?」

ベルトルト「うん。気に入ったよ。ぜひ、その曲を弾けるようになりたいな。」

クリスタ「よかった。」

ベルトルト「何ていう曲?」

クリスタ「シューマンの『見知らぬ国と人々について』」

ベルトルト「不思議な曲名だね。」


クリスタ「この曲はね、『子どもの情景』っていう曲集の中の一つでね。

     子供の心を描いた作品なんだ。

     でも、子ども向けってわけじゃなくて、大人が遠い日々を思い出しながら弾く感じ。
     
     子どもの頃持っていた、まだ知らない世界への憧れとか不安とか、

     そういう気持ちを表した曲かな。」

ベルトルト「なるほど。だから、初めて聴く曲なのに、懐かしさを感じるんだね。」


クリスタ「うん。優しい温もりに包まれる曲。

     もの静かで穏やかなベルトルトにぴったりだと思うよ。

     それにね、この曲、ベルトルトの手の大きさを活かせるんだ。

     左手の伴奏部分がね、小さな手だと音が途切れちゃうの。

     私はペダル踏んでごまかしてるけど、

     やっぱりちゃんと音をつないで弾いた方がきれいだから。」

ベルトルト「難しそうだけどできるかな?」

クリスタ「大丈夫。最初は片手ずつゆっくり練習するから。」


ベルトルト「よろしくね。

      それより、ライナーはどんな曲選んだの?

      昨日はライナーのレッスンだったよね。」

クリスタ「うふふ。気になる?」

ベルトルト「うん。やっぱり、クリスタの選曲?」

クリスタ「そうだよ。

     戦士にふさわしい格好いい曲を弾きたい、って言うからこの曲を勧めたの。」

♪♪~♪♪♪~~


ベルトルト(重々しくて悲しいメロディー。だけど壮大で心に響く・・・。)

クリスタ「こんな曲。」

ベルトルト「確かに格好いいね。何ていう曲?」

クリスタ「ヘンデルの『ハープシコード組曲第4番 ニ短調 サラバンド(HWV437)』」

ベルトルト「長くて覚えれない・・・。」


クリスタ「ごめんごめん。ヘンデルの『サラバンド』でいいよ。

     ヘンデルさんって人、『サラバンド』っていう曲をたくさん書いてるから、

     他の曲と区別するために色々と題名に付いてるんだ。

     でも、この『サラバンド』が一番有名だよ。」

ベルトルト「そうなんだ。ライナーの無骨な感じが出てて、良い選曲だと思うよ。」

クリスタ「うふふ。ありがとう。

     それじゃ、レッスン始めようか。まずは先週のおさらいから・・・。」


―水曜日 自由時間

ジャン「だからさ、簡単なんだけど『おぉ~、すげぇ』って言われる曲が弾きたいんだって。」

クリスタ「難しい注文だなぁ。」

ジャン「もちろん、エレンよりイカした曲ってのが前提で。」

クリスタ「エレンはまだ曲決めてないし。

     ジャンはピアノ経験あるから、曲の難易度がちょっと高くても大丈夫そうだけど。」


ジャン「難しい曲は勘弁してくれ。俺は地道に練習する気ないんでね。

    初見で弾ける程度で、ドラマチックで疾走感があって、心が震える曲。」

クリスタ「もう、無理ばっかり。

     疾走感って言ったら、それなりに速い曲になるよ。」

ジャン「速弾きなら自信がある。

    ただ譜読みが大変なやつとか、音飛びが激しいのは面倒くさい。」


クリスタ「うーん。ハチャトゥリアンの『少年時代の画集』って使ったことある?」

ジャン「ない。」

クリスタ「その中の『エチュード』って曲なんだけど・・・。」

♪♪~♪♪♪♪~♪♪~

ジャン(やべぇ、これ超かっこいい。

    譜面を見る限り難易度はそんなに高くないのに、なんだこの緊迫感。

    胸騒ぎがして、何ともいえない焦燥感にかられる。

    無機的で冷たい感じの曲なのに、心がどんどん熱くなるぜ。)


クリスタ「・・・ふぅ。どうかな?」

ジャン「この曲に決めた。絶対、エレンには弾かせないでくれ。」

クリスタ「それは約束できないよ。エレンだって弾きたいって言うかもしれないし。」

ジャン「頼む。この曲だけは。」ペコリ

手を合わせ、頭を下げるジャン。

クリスタ「しょうがないなぁ。わかったよ。

     そのかわり、練習は真面目にしてね。」

ジャン「サンキュ。」


ジャン(これで、ミカサに格好いいとこ見せれるぜ・・・。)

クリスタ(エレンは教えなくても、ジャンの演奏聴いたら、

     勝手に覚えて弾いちゃうだろうな・・・。)

クリスタ「じゃ、レッスン始めよっか。」

ジャン「あぁ。ばっちり弾けるように頼むぜ。」

とりあえずここまで。また後で。


―木曜日 自由時間

クリスタ「はい、これ。アルミン専用の教本。用意しておいたよ。」

アルミン「ありがとう。」

クリスタ「でも、本当にいいの?基礎から始めたら、あんまり楽しくないよ。」

アルミン「うーん、楽しさは求めてないって言ったら嘘になるけど、

     どうせ習うなら本格的な技術と知識を身につけたいからね。」

クリスタ「うふふ。アルミンは偉いね。

     それじゃ、その『バイエル』と『プレインベンション』を練習しつつ、

     楽典もしっかり教えるからね。」


アルミン「うん。よろしくお願いするよ。

それと・・・、クリスタ、曲の作り方って知ってるかな?」

クリスタ「えっ?」

アルミン「ほら、ここにある曲は全部、壁の外から来たものでしょ?」

クリスタ「そうだけど・・・。」


アルミン「巨人のいなかった時代、人々は音楽を生み出していた。

音楽だけじゃなく文学や絵画、いわゆる芸術を楽しんでいたんだ。

     だけど、巨人が出現して壁の中に閉じこもってからは、

     生きることに精一杯で、新しいものを創造する余裕がなくなった。

     巨人への恐怖が、人間から自由な発想力を奪い去ったんだ。

     人は思考して初めて人といえる。

     何も考えずただ生きるのは、エレンじゃないけど、家畜と一緒だと思う。

     今、人類は本来の人間らしい文化的な生活から、随分後退しているんだ。

     僕はそれが悔しい。巨人なんて関係ない。人間らしく生きたい。

     だから、僕は壁の中で新しい音楽を作ってみたいと思ったんだ。」


クリスタ「すごいよ、アルミン!新しい音楽か・・・。考えたこともなかった。」

アルミン「だけど、いざ曲を作ろうと思っても、どうすればいいのかさっぱりでさ。

     偉そうなこと言ったけど、今の僕にはできそうにないんだ。

     だから、クリスタ、僕に作曲方法を教えて欲しい。」

クリスタ「ごめんなさい・・・。

     作曲には、和声楽とか楽式論とか、音楽理論の知識が必要になると思うんだけど・・・。

     私、そういうの、あまり詳しくなくて・・・。教えれないんだ・・・。」シュン


アルミン「そっか・・・。気にしないでよ。

     壁に閉じこもって百年。誰もやらなかったことをやろうとしてるんだから、

     そんなに簡単なことじゃないってのは覚悟してるから。」

クリスタ「先生なのに・・・。本当にごめんね・・・。」

アルミン「やだなぁ。そんなに落ち込まないでよ。

     大丈夫。本でも調べながら試行錯誤してみるよ。」

クリスタ「うん・・・。ありがとう。」

アルミン「それじゃ、今日もレッスンお願いするよ。」


―レッスン後

アルミンは宿舎へと歩いていた。

アルミン(クリスタのこと困らせちゃった。レッスン中、ずっと元気なかったし。

     自信なくさせたかな。うーん、どうしよう・・・。

     あ、マルコがいる・・・。)

アルミン「おーい、マルコー。」

マルコ「やあ、アルミン。どうしたの?今日は確かピアノの日だっけ。」

アルミン「そうだよ。今終わって宿舎に帰るところ。」

マルコ「そう。どうだった?今日のレッスン。」

アルミン「それが―――――」


―旧教室

クリスタは窓枠に座り、夜空をぼんやり眺めていた。

クリスタ(ダメだなあ・・・私。

     アルミン、せっかくやる気出してくれてるのに、

     それに応えることができないなんて。先生失格・・・。)


ガラッ

マルコ「お邪魔するよ。」

クリスタ「マルコ・・・。」

マルコ「アルミンから大体話は聞いたよ。

    音楽理論か~。弾き手にはあまり必要な知識じゃないからね。

    勉強してなくて当たり前だよ。」

クリスタ「でも、先生やる以上、何でも教えてあげられなくちゃ。」


マルコ「アルミンには音楽理論、僕が教えるよ。

    和声学の基本ぐらいなら分かるから。

    だから、クリスタは実技の方をしっかり見てあげてよ。」

クリスタ「それじゃ、ダメだよ。

     ろくに生徒の質問に答えられない、マルコには頼りっぱなし。

     これじゃ、おままごとの先生じゃない。

     やっと、この場所で自分ができることを見つけたの。

     いい加減にはしたくないの。」


マルコ「ん~、それじゃあ、アルミンとクリスタと僕、三人で一緒に勉強しようよ。

    音楽理論について、僕ももっと学びたいし。」

クリスタ「でも・・・、それって、やっぱりマルコの迷惑になる・・・。」

マルコ「迷惑じゃないよ。何でも一人でしようとしないで。

    困ったときは誰かに頼ればいいよ。」

クリスタ「だけど・・・。自分のことは自分で・・・。」


マルコ「はぁ・・・。」

大きな溜息をつくと、マルコはピアノに向かい、椅子を鍵盤の中心より右にずらした。

その左隣にもう一脚、椅子を置いた。

マルコ「クリスタ、こっちに来て座って。」

クリスタ「えっ?」

マルコ「いいからさ、右側に座ってね。僕は左側。」

クリスタ「?」


マルコ「パッヘルベルの『カノン』弾ける?」

クリスタ「うん。」

マルコ「いつもより1オクターブ上で弾いてくれるかな。」

クリスタ「いいけど・・・。」

♪~~♪~~♪~~♪~~

教室に、明るく落ち着いた旋律が流れる。

クリスタ(もともとピアノ曲じゃなくて、四重奏の室内楽の曲だから・・・。

     ピアノだともの足りないな・・・。)


オスティナート主題が四回繰り返されたところで、

マルコは鍵盤に手をかけ演奏に加わった。

音が交差し、一瞬で華やかになる。

クリスタ(すごい!寂しく頼りなかった音が、マルコの音にしっかり支えられる。

     マルコの弾く通奏低音が演奏に深みを増し、右手は私の弾く主題を追いかけて・・・。

     音が絡み、縺れ、一体となって流れていく。なんて心地いいんだろう。)


演奏が終わると、クリスタはうっとりと甘美な余韻に身をゆだねていた。

クリスタ「音に包み込まれて、まだ頭がふわふわしてる。」

マルコ「連弾は初めて?」

クリスタ「うん。ずっと一人で弾いてたから。」

マルコ「そっか。」

クリスタ「マルコの音と調和して、弾いててすごく気持ちよかった。」

マルコ「うん。」

クリスタ「一緒に弾くのがこんなに楽しいなんて知らなかった。」

マルコ「ね。一人よりずっといいでしょ。」

クリスタ「・・・あっ。」


マルコ「何でもかんでも自分一人で抱え込もうとしないでさ。

    困ったときはお互い様だし。」

クリスタ「・・・うん。」

マルコ「僕じゃ頼りないかもしれないけど。」

クリスタ「そんなことないよ。でも、マルコすごいね。

     さっきの『カノン』、即興で合わせたの?」

マルコ「即興というか、『カノン』は和音進行が最後まで変わらないから、

    和音を適当に分散させてれば、何とかなるんだよ。」


クリスタ「うーん、和声学ってやっぱり大事なんだね。」

マルコ「でもさ、古い音楽理論にこだわる必要はないと思うんだ。

    アルミンは新しい音楽を作りたいって言ってるんでしょ。

    昔ながらの手法じゃなく、自由な発想で作ればいいんだよ。

    音楽なんだから、楽しまなくちゃ。」

クリスタ「そっか。そうだよね。

     ありがとう、マルコ。気が楽になったよ。」

マルコ「よかった。

    それじゃ、今日はもう遅いから宿舎に戻ろう。」

クリスタ「うん。また明日ね。おやすみなさい。」

今日はここまで。続きは後日。

>>1です。
レスありがとう。そのうちいろいろと参考にさせてもらうよ。
続きを少し。


―金曜日 自由時間

ミカサ「うぅ・・・、ぐすっ・・・。」

クリスタ(どうしよう・・・。泣かせちゃった・・・。)

クリスタ「ね、もう1回やってみよ。

     たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん・・・。」

「たん」で手を叩き、「うん」は手を握る。

ミカサ「たん・うん・たたん・うん・たん・たたん・・・

    やっぱり、できない・・・、うぅ・・・」グスッ


クリスタ(まさか、ミカサがリズム音痴だったなんて。しかも重度の。)

クリスタ「大丈夫。慣れたらすぐにできるようになるから、ね?」ナデナデ

ミカサ「こんな簡単なことができないなんて・・・。

    これじゃ・・・、ひっく、エレンを守れ・・ひっく・・ない・・・」シクシク

クリスタ「リズムが取れなくても、エレンのこと守れるから。」ナデナデ


ミカサ「私・・・、ピアノに向いてない・・・。」グスッ

クリスタ「そんなことないよ。

     楽譜の読み方あっという間に覚えたし、手のフォームだって一番きれい。

     打鍵も安定してるから、音だって初心者と思えないぐらいしっかり出てるよ。」

ミカサ「でも・・・、リズム・・・。」

クリスタ「誰にだって苦手なことはあるよ。最初から何でもできる人なんていないよ。」


ミカサ「私は何でもできる。今までは何でもできてた。・・・でも、できない・・・。

    自分をうまくコントロールできない・・・。こんなこと、はじめて・・・。」

クリスタ(ミカサにとって、初めての挫折なのね・・・。

     いつも気丈なミカサが落ち込んでる。・・・ちょっとかわいい。)

ミカサ「エレンにはできることが、私にはできない。そんなのダメ。

    すべてにおいて常にエレンの先を歩いていないと、彼を守ることができない。」


クリスタ「・・・ねぇ、どうしてエレンを守ろうとするの?」

ミカサ「家族だから。」

クリスタ「家族か・・・。でもさ、家族って助け合うものじゃないの?

     ミカサばっかり頑張る必要ないと思うけど・・・。」

ミカサ「エレンは・・・、私が支えないと生きていけない。」

クリスタ「それ、エレンに失礼だよ。エレン、赤ちゃんじゃないんだから。

     ミカサはエレンのお母さんのつもりなの?」


ミカサ「・・・そう、私はおばさんにエレンのことを頼まれた。

    だから、私が母親代わり・・・。」

クリスタ「母親じゃ・・・、恋人になれないよ?」

ミカサ「!?」///

クリスタ「ミカサのこと見てたら分かるよ。エレンのこと好きなんでしょ。」

ミカサ「な、何を言っているの?私は家族であって、好きとか・・・そんなんじゃ・・・」///


クリスタ「じゃあ、たとえば私がエレンの恋人になってもいいの?」

ミカサ「それはダメ。絶対に。」

クリスタ「どうして?ミカサはエレンのこと好きじゃないんでしょ?」

ミカサ「そんなわけ・・・ない。でも、家族の好きであって・・・。」///

クリスタ「いつまでもそんな風に自分の気持ちごまかしてたら、エレン誰かにとられちゃうよ?」

ミカサ「それは嫌・・・。」


クリスタ「ね、そろそろ母親をやめたら?

     このままだと、エレンはミカサのこと母親のような存在としか思わないよ。

     男の子なんだもん。守られるより、守りたいはず。」

ミカサ「・・・そうかな・・・。」

クリスタ「うん。そうだよ。だから、ミカサは頑張り過ぎないでいいの。

     ちょっとくらいできないことがあっても大丈夫。

     むしろ、エレンのこと頼るくらいの気持ちでいいんじゃないかな。」

クリスタ(って、昨日マルコに言われたことをまねてみる。)


ミカサ「頼る・・・。」

クリスタ「エレンね、音感だけじゃなくってリズム感もすごくいいの。

     リズム打ちの練習、つきあってもらったら?」

ミカサ「・・・そうする。」

クリスタ「よかった。・・・それじゃあ、ミカサの練習曲決めようかな。」

ミカサ「うん。」

クリスタ「今回は、リズムが簡単なのにしようね。

     シンコペーションのリズムが無くて、ミカサの良さをいかせる曲・・・。」ゴソゴソ


クリスタ「うん。これにしよう。バッハの『平均律クラヴィーア曲集第一巻 1番 プレリュード』」

ミカサ「?」

クリスタ「この本、結構難しいんだけど、このプレリュードだけは初心者でも大丈夫。」

ミカサ「楽譜見せて。」

クリスタ「いいよ。譜読みしてみて。」

ミカサ「・・・・・・・・。」

クリスタ「ハ長調だし、ミカサだったら初見で弾けるかも。」


ミカサ「ちょっと弾いてみる・・・。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

クリスタ(ミサカすごいな。もう鍵盤感覚が身についてる。習い始めたばかりなのにね。

     一音、一音、打鍵も深く、まだ教えてないのにレガート奏法が自然とできてる。

     タッチの良さは天性のものね。譜読みも早くて正確。やっぱり頭いいんだなぁ。   

     まだぎこちないけど、的確に16分音符を刻んでいく。

     直していくところはたくさんあるけど、

     ミカサの感情を抑えて淡々とひく弾き方はこの曲に合ってるかな。)


パチパチパチパチ

クリスタ「初めてなのに、すっごく上手だよ。」

ミカサ「本当?」

クリスタ「うん。どう、この曲?」

ミカサ「いろんな感情がすぅっと溶けて消えて・・・。心が静かになる。

    すごく落ち着く。私、この曲練習したい。」

クリスタ「よかった。じゃあ、レッスン続けよう。」

ミカサ「うん。」


―レッスン後

クリスタが帰った後の教室で、ミカサは一人手を叩いていた。

ミカサ「たん・うん・うん・うんたん・うん・たたん・うん・・・」

ミカサ(こんなことができないなんて悔しい・・・。情けない・・・。)

ミカサ「たん・ったたん・うん・うん・たん・うん・たたん・・・」

ミカサ「・・・何度やってもできない・・・。」シュン


ガラッ

エレン「ミカサいる?」

ミカサ「!?なぜ、ここへ?」

エレン「いや、なんかクリスタがとにかく行けって・・・。」

ミカサ(クリスタのお節介・・・。)

エレン「なんだ、これ?小さな子どものためのリズム練習?」

エレン(そういえばクリスタ、何があっても絶対に笑うなって言ってたな・・・。)


ミカサ「練習中・・・。」

エレン「ふーん。たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん・・・か。

    簡単じゃん。なんでこんなの練習すんだよ。」

ミカサ「簡単じゃない。私は・・・それができない。」シュン

エレン「えっ?マジで?」

ミカサ「・・・」コクン

エレン「ちょっとやってみせろよ。」


ミカサ「わかった・・・。

    たん・・・うん・うん・・うん・たん・うん・たたん・・・」

エレン(ぷぷっ。ミカサがカクカクしてる。やばい、おもしれぇw)

ミカサ「たたん・うん・うんたん・うん・うん・たん・・・」

エレン(でも、笑っちゃいけないんだよな。はぁー、深呼吸・・・)

エレン「ミカサ、落ち着け。俺のあとに真似してみろよ。」

ミカサ「うん。」


エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」

ミカサ「たん・うん・うん・うん・たん・うん・たん・うん」

エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」イラッ

ミカサ「たん・うん・たたん・うん・うん・たん・うん・うん」

エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」イライラッ

ミカサ「うん・うん・たん・うん・たたん・うん・うんた・たん」


エレン「あー、もう!お前、わざとだろ!真面目にやれよ!」

ミカサ「そんな!?私は真剣にやっている・・・。」

エレン「だって、こんなの誰でもできるだろ!」

ミカサ「それが、私にはできないの!!・・・うぅ・・・うぁぁぁぁん・・・」

ガラッ

ミカサは泣きながら教室を走って出て行く。


エレン「おっ、おい。」

エレン(冗談抜きでできないのか・・・。あのミカサだぞ。

    なんでも器用にこなし、いつも俺の前を行くあのミカサが・・・泣いてた。

    できないって泣いてた・・・。)

エレン「うーん、明日なんて謝ろう・・・。」

一人残された教室でエレンは頭を悩ませた。

ここまで。
進撃アニメのマルコに黙祷。
続きは後日。

レスありがとう。ゆっくり進行でスマン。
続きいきます。


―土曜日 自由時間

クリスタ「エレンの馬鹿!鈍感!アホ!」ポカポカ

エレン「そんな叩くなよ。だから、反省してるって。」

クリスタ「ミカサ、昨晩、ずっと宿舎で泣いてたんだから!」ポカポカ

エレン「今日、ちゃんと謝ったんだからいいだろ。」

クリスタ「よくないよ。ミカサ、ずっと元気ないじゃん。

エレンは不器用だから、できない人の気持ちがよく分かるでしょ。」

エレン「ちょっ、ひどくないか?それ。確かに俺は不器用だけど・・・。」


クリスタ「立体機動の姿勢制御訓練、最初はエレン、ボロボロだったじゃない。

     あの時ミカサはどうしてくれた?」

エレン「あれはベルトの装備の欠陥で、俺が無能なわけじゃない。」

クリスタ「そんなことはどうでもいいの。

     できないエレンのこと、ミカサは笑った?馬鹿にした?怒った?」

エレン「・・・うまくいくようアドバイスしてくれて、練習につきあってくれた。

    それでも結果のでない俺に、一緒に兵士になるのやめようって・・・。」


クリスタ「その時エレンはどんな気持ちだった?」

エレン「そりゃ、惨めだったよ。情けなかったよ。

    誰でも簡単にできることが自分にはできないんだからな。」

クリスタ「そう。ミカサはまさに今その気持ち。

     しかも装備の欠陥とかっていうベタなオチはないの。

     自分の感覚は他の人と交換できないから。

     正直ね、あそこまでひどいリズム感は矯正が難しい・・・。

     彼女は生涯、リズム音痴という理由のない悲運に見舞われてしまうの。」

エレン「そんなにひどいのか・・・。」


クリスタ「うん。治すには相当の努力が必要だと思う。

     リズム感なんて生きていくのに必要のないものだけど、

     ミカサの中では一生、できないことへの劣等感が残っちゃう・・・。」

エレン「俺は不器用だけど、努力して何事も人並み以上にはできるようにしてきた。

    負けず嫌いだからな。ミカサも涼しい顔してるけど、本当は俺と同じで負けるのが嫌いだ。

    悔しいだろうな・・・。」


クリスタ「ね、ミカサだって完璧じゃない。苦手なこともある普通の女の子なんだよ。

     少しは優しく接してあげようよ。」

エレン「普段の俺って、ミカサに冷たく見えるのか?」

クリスタ「うーん、冷たいっていうか・・・そう、ミカサの前では反抗期の子どもみたい。」

エレン「何だそれ。」

クリスタ「本当は大好きで甘えたいんだけど、自立心が邪魔をして素直になれないって感じ。」

エレン「おいっ、誰が、大好きで甘えたいんだよ。俺はそんなんじゃねぇ。」///

クリスタ「そうなの?そういう風に見えるんだけどなぁ。」

クリスタ(赤くなった・・・。少しはミカサに脈あるのかな・・・。)


エレン「はぁー。もういいよ。わかったよ。ミカサに優しくすればいいんだな?」

クリスタ「そうそう。お願いね。それじゃ、レッスンはじめよっか。」

エレン「おう。」

クリスタ「エレンはとにかくたくさん曲を弾いていこう。

     数をこなせば基本的な指使いとか身についていくから。考えるより身体で覚えよう。」

エレン「そのほうが得意だぜ。」


クリスタ「あっ、その前に。これから弾く曲の主旋律だけ覚えて。」

エレン「何の曲?」

クリスタ「エレンの練習用ではないんだけど。ミカサともっと仲良くなるための曲・・・かな?」

エレン「はぁ?」

クリスタ「いいから、いいから。ちゃんと聴いて覚えてね。」


―日曜日  

休日でゆっくり眠っている仲間たちを起こさないようにベッドを抜け出し、

クリスタは身支度を整えると、掃除道具を持って講義棟へ向かう。

クリスタ「ピアノの教室のお掃除しなきゃ。レッスン室はきれいじゃないとね。」

講義棟に入ると、ピアノの音が聞こえてきた。

クリスタ(誰か練習してるのかな?)

旧教室の前まで来ると窓から中を覗く。

クリスタ(あっ、マルコだ。)


ガラッ

クリスタ「マルコ、おはよう。」

マルコ「おはよう。早起きだね。」

クリスタ「私はここの掃除しようと思って。昼前からみんな練習しに来るでしょ。その前に。」

マルコ「偉いね。僕も掃除手伝うよ。」

クリスタ「いいよ、いいよ。マルコは弾いてて。

     マルコだってみんなに遠慮して、こんな朝早くから弾いてるんでしょ。」


マルコ「遠慮ってわけじゃないけどさ。僕も練習しないとみんなにすぐ追い抜かれそうで。

    ほら、ほうき貸して。二人でやったほうが早く終わるよ。」

クリスタ「ううん。私がマルコのピアノ聴きたいの。楽しくお掃除できる曲をお願いします。」

マルコ「はは、掃除の曲か。難しいね。うーん・・・。

    では、ほうきを持ったお姫様。ワルツを一曲いかがでしょうか?」

♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪~~♪♪♪~~


クリスタ(ウエーバーの『舞踏への勧誘』。舞踏会の様子を表したちょっとした物語。

     序奏部は、ダンスを申し出る紳士と、その誘いを受ける淑女との間で交わされる会話。

     マルコの柔らかく丁寧なタッチは、上品で礼儀正しい男性をイメージさせる。

     主部はダンスの開始。華やかなワルツが突然始まり、舞踏会の様子が展開していく。

     何度も同じ旋律が繰り返され、二人は優雅に華麗に踊り続ける。

     やっぱり男の人はいいなぁ。あの音量や迫力は私には出せないよ。)


クリスタはワルツのステップを軽く踏んでみる。

クリスタ(一度だけお父様に連れて行かれた舞踏会を思い出すな。

     絢爛な舞踏場に華美に着飾った女の人たち。ここの生活からは程遠い世界。

     あの頃はまだレイス家の後継者になる可能性があったから、

     子どもの私にいろんな男の人がダンスを申し込んできた。

     卑屈で、品定めするような男たちの視線。すごく嫌だった・・・。

     曲の最後は冒頭の序奏部が穏やかに繰り返され、紳士と淑女が別れの挨拶を告げる。

     そして、静かに舞踏会の幕が閉じる・・・。)


クリスタ「あっ、聴き入っちゃって全然掃除してなかった・・・。」

マルコ「ははは。それじゃ、僕は机とか窓とか拭いていくから、クリスタは床掃いてね。」

クリスタ「結局、手伝わせちゃったね。ごめん。」

マルコ「謝らないでよ。この部屋使ってるのクリスタだけじゃないんだから。」フキフキ

クリスタ「ありがとう。でも意外だったな。マルコがこの曲弾くの。」サッサッ

マルコ「そう?庶民の僕には似合わないかな。確かにワルツなんて踊れないけどね。」フキフキ


クリスタ「そういう意味じゃなくて。豪華できらびやかな感じがね、マルコっぽくない。」サッサッ

マルコ「はいはい。僕は地味で目立たない男だよ。」フキフキ

クリスタ「違うって。マルコっぽくないけど、演奏はすごく良かったって言いたいの。

     マルコの人柄からは想像できない、明るく華やかな音でびっくりしたよ。」サッサッ

マルコ「褒められてるのかな、それ。」フキフキ

クリスタ「褒めてるよ。」サッサッ


マルコ「でもクリスタ、僕に遠慮しなくなったね。言いたいことはっきり言うようになった。」フキフキ

クリスタ「うーん、マルコって話しやすいから、つい。ダメかな?」サッサッ

マルコ「ダメじゃないよ。むしろ嬉しい。」フキフキ

クリスタ「よかった。気を遣わずに話できる人、あんまりいないから。」サッサッ

マルコ「みんな個性的だからね。打ち解けるには時間がかかるかも。」フキフキ


クリスタ「ねぇ、さっきの曲なんだけどさ。」サッサッ

マルコ「うん。」フキフキ

クリスタ「舞踏会が終わってさよならした後、紳士と淑女はどうなったんだろうね。」サッサッ

マルコ「そうだなー。どういう目的でダンスに誘ったかにもよるんじゃない?」フキフキ

クリスタ「うーん。たまたま見つけた綺麗な女性を気まぐれで誘ったのかな。」サッサッ

マルコ「それだったら、その場かぎりでバイバイだね。」フキフキ


クリスタ「でも、踊ってる最中に恋が芽生えて盛り上がって、こう・・・」サッサッ

マルコ「こうって何w」フキフキ

クリスタ「じゃあ、マルコはどう思うのよ。」サッサッ

マルコ「僕は、前から気になっていた淑女にやっとダンスを申し込めた紳士かなって思う。

    誘いにのってくれた嬉しさが、あの大音量のワルツで表現されてるんじゃないかな。」フキフキ


クリスタ「じゃあ、舞踏会の後は・・・。」サッサッ

マルコ「住所交換して手紙でも書いたかな。」フキフキ

クリスタ「あはは。急に堅実になるんだ。」サッサッ

マルコ「手の早い紳士と尻の軽い淑女じゃ、物語が台無しだよ。」フキフキ

クリスタ「///。・・・マルコもはっきりと言うようになったね。」

マルコ「うん。僕もクリスタに遠慮しない。」

クリスタ「ふふっ。掃除終わったね。あっ、もうこんな時間だ。マルコ、教室からいそいで出るよ。」

マルコ「えっ?何で?」

クリスタ「いいから。理由は後で。早く早く。」


―数分後

ガラッ

ミカサ「クリスタ・・・いない。練習見てくれる約束してたのに。」

トコトコトコ、ポスッ

ミカサ「仕方がない。一人で練習しよう。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~


ガラッ

ミカサ「!?」

エレン「よ、よう。」

ミカサ「・・・・・・。」ウルウル

エレン「ちょっ、いきなり、泣くなって。昨日も謝っただろ。この間は本当に悪かったって。」

ミカサ「・・・・・・。」ウルウル

エレン「あー、もう、ごめんって。」ナデナデ

ミカサ「・・・・うん///」ニコッ

エレン「うっ。」///

エレン(しおらしいミカサ・・・、カワイイとか思っちまった・・・。)


エレン「今、練習してる曲聴かせろよ。」

ミカサ「エレンが望むなら。ただ・・・、あまり上手ではない・・・。」

エレン「みんなそうだろ。始めたばかりだし。」

ミカサ「わかった。では、聴いてて・・・。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~


エレン(なるほどな。クリスタが俺に教えた曲の意味がやっと分かった。)

エレン「ミカサ、ストップ。」

ミカサ「?」

エレン「ちょっと座らせてもらうぞ。」ヨイショ

ミカサ(エレンが同じ椅子に・・・。身体の右側がエレンと密着)///

エレン「あっ、これじゃ弾きにくいよな。悪い。もうちょい離れるわ。」

ミカサ(せっかくのエレンの温もりが・・・)シュン


エレン「今のもっかい最初から弾いてくれ。」

ミカサ「うん。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

エレン(よし、ここで入る。)

エレンの右手が演奏に加わる。

ミカサ(・・・私の弾くプレリュードにエレンの奏でるメロディーが調和する。

    モノクロだった世界が突然鮮やかになったみたい。すごくきれい。

    エレンの音と私の音が混ざり合い一体となる。気分が段々高揚する・・・。)


エレン「一緒に弾くのって結構楽しいのな。」ニコッ

ミカサ「ハァ、ハァ・・・」///

エレン「ミ、ミカサ?」

ミカサ「お願い。もう1回しよ・・・。」///

エレン「い、いいけど。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~


―その頃、教室の窓の外

マルコ「のぞき見は良くないよ。」

クリスタ「だって、エレンがちゃんとミカサに優しくするか気になるんだもん。」

マルコ「でも、考えたね。グノーの『アヴェ・マリア』か。

    バッハの『プレリュード』をそのまま伴奏に使って作られた曲だから、

    エレンでもすぐに合わせられる。」


クリスタ「この前、マルコが連弾してくれたでしょ。

     あの時、すっごく楽しくて気持ちよかったから、仲直りさせるにはもってこいかなって。」

マルコ「そう。また連弾しよっか。」

クリスタ「うん。あっ、二回目の演奏が終わったね。

     うふふ。ミカサってば目が潤んでる。頬も赤く染めちゃって。そんなに感動したのかな。」

マルコ「ははは。見つめ合っちゃって。エレンも楽しかったんだろう・・・って、あっ///」

クリスタ「あっ///」


マルコ「ク、クリスタ、ここを離れよう。今すぐに。」///

マルコはクリスタの手を引いて、慌ててその場を離れる。

クリスタ「う、うん。」///

マルコ「友人のああいうところは見ちゃいけない。」///

クリスタ「・・・手の早い紳士と尻の軽い淑女・・・」///

マルコ「そんな風に言っちゃダメだから。」///

クリスタ(マルコの手、大きくて温かい。胸がドキドキするのはあの二人のせいだよね。

     それとも・・・。)

二人は真っ赤になったまま歩き続けた。

続きは後日

>>1です。レスありがとう。続きです。


サシャ「おや、マルコにクリスタじゃないですか。おててつないで仲良しさんですね。」

クリスタ「あっ」パッ

マルコ「や、やぁ、サシャ。」パッ

サシャ「朝ごはんもう食べました?」

クリスタ「ううん。私たちはこれから。」

サシャ「じゃ、一緒に行きましょう。

    それより、クリスタって最近ユミルと一緒じゃないですね。」

クリスタ「そうなのよ。休日も自由時間もふらっとどこかへ行っちゃって。」


サシャ「喧嘩でもしたんですか?」

クリスタ「そんなことないよ。一緒にいる時は相変わらずべったりくっついてくる。」

サシャ「どこ行ってるんでしょうね。」

クリスタ「聞いても教えてくれないし。ねぇ、マルコ知らない?」

マルコ「さぁ・・・、僕も知らない。」

マルコ(知ってるけど・・・ユミルに口止めされてるからなぁ・・・。)


サシャ「今日のみなさんのご予定は?」

マルコ「僕はアルミンと作曲の勉強。」

サシャ「作曲ですか?」

マルコ「そう。新しい曲を作ろうとしてるんだ。ぜんぜん進んでないけどね。」

サシャ「何だか、おもしろそうです。私も見に行っていいですか?」

マルコ「いいけど・・・、つまんないと思うよ。」


サシャ「構わないです。最近みなさんピアノにはまってて、相手してくれる人いないんですよ。」

クリスタ「サシャもピアノ弾いてみる?」

サシャ「いえいえ、とんでもない。私みたいな田舎者にはもったいないです。」

クリスタ「そんなことないよ。」

サシャ「その・・・、じっと座っとくのが苦手なので・・・。勘弁です。」

マルコ「ははは、サシャらしいね。じゃ、朝ごはん食べたら一緒に曲考えよう。」

クリスタ「私も加わっていいかな?」

マルコ「もちろん。」


―朝食後 食堂

アルミン「今日はここでやるんだ。ピアノで音出さないと考えにくくないかな。」

マルコ「いやー、ほら、みんな休日は練習でピアノ使うから。邪魔しちゃ悪いなって。」

マルコ(エレンとミカサがまだあの教室にいるかもしれないし・・・)

アルミン「そうだね。ここでできることをすればいっか。」

サシャ「はい、質問。アルミンはどんな曲を作ろうとしてるんですか?」

アルミン「それがさ・・・。なかなかイメージが沸かなくて。

     とにかくみんなが楽しめる曲を作りたいんだけど・・・。」


サシャ「でも、ピアノの曲なんですよね?」

アルミン「一応ね。ここにはピアノしかないし。」

サシャ「私、ピアノ弾けないから楽しめません。」

アルミン「いや、聴いて楽しむとか・・・。」

サシャ「私の村にはピアノありません。」

アルミン「・・・・。」


クリスタ「確かに、サシャの言うとおりだわ。ピアノなんて一部特権階級の娯楽品。

     みんなが楽しむのは難しい。」

マルコ「そうなると・・・、他の楽器?」

アルミン「他の楽器も入手困難だしね。」

クリスタ「うーん・・・。」


サシャ「あの、私、歌なら歌えますよ。」

アルミン「!?そうだ、その手があった。」

マルコ「盲点だった。サシャ、偉いよ。」

クリスタ「サシャ、天才だよ。」ギュッ

サシャ「私もクリスタにぎゅってされて嬉しいです。でも、歌がどうかしましたか?」


アルミン「楽器がなくても楽しめる音楽。それが歌なんだよ。」

クリスタ「歌詞とメロディーさえ覚えれていれば、貧富の差なんて関係なく楽しめる。」

マルコ「歌詞があったほうが曲のイメージ考えやすいしね。」

アルミン「じゃあ、歌詞から考えよう。」

サシャ「何の歌にしましょうね。・・・お肉の歌がいいです。」

アルミン「食品は自重して。」

サシャ「はい、すみません・・・。」


マルコ「まぁ、処女作だしさ。楽しんでもらう対象を全人類とか大きくしないで・・・。」

クリスタ「自分たちの身近なところで・・・。」

アルミン「訓練兵団・・・の歌?」

サシャ「大賛成です。私みんなで歌いたいです。きっと楽しいですよ。」

マルコ「訓練兵団の歌なら、歌詞に仲間の思いを入れたいね。」

アルミン「うん。作曲は僕とマルコがやるとして、歌詞はみんなで作りたいな。」

クリスタ「うふふ。なんだか楽しくなってきた。」

アルミン「それじゃ、今日の夕食後、みんなに集まってもらうように声をかけとこう。」


―夕食後 旧教室

アルミン「そういうわけで、みんなに訓練兵団の歌の歌詞を考えてもらいたい。」

ライナー「突然、そんなこと言われてもな。」

コニー「オレ、歌とか興味ねぇし。」

アニ「馬鹿馬鹿しい。」

ジャン「アルミンとマルコで勝手に作ればいいだろ。巻き込むな。」


マルコ「まぁ、そう言うなよ。この歌が完成すれば、壁内初の快挙になるんだ。

    みんなでいい歌詞を考えて、歴史に残る歌にしたいじゃないか。」

アルミン「歌の出来次第では、ずっと訓練兵団で歌い継がれるかもしれない。

     そうなれば、僕たち104期生の魂は永遠に残るんだよ。」

エレン「なんかそれカッコいいな。」

マルコ「兵士を目指した以上、いつ死ぬかわからない。

    だから少しでも自分たちが生きた証をこの世界に残していこうよ。」

ベルトルト「生きた証・・・か。」

ジャン「悪くねぇな。」


ライナー「だが、どうやって作る?俺には詩のセンスなんてないぞ。」

コニー「作文とかマジ勘弁。」

ミカサ「私は言語力が欠如している。」

サシャ「とりあえず、みんなが今思っていることを言葉に出してみましょうか。」

クリスタ「うん。黙ってても仕方ないしね。」

ユミル「何でもいいのか?」

アルミン「何でもいいよ。訓練兵生活を思ったとき、パッと頭に浮かんだことを言葉にするんだ。

     それを繋げていけば、歌詞っぽくなると思う。」

クリスタ「私、書記やるね。出された言葉、黒板に書いていくから。」


マルコ「じゃ、僕から右回りで。歌いだしは訓練兵の歌ってかんじで。」

アルミン「うん。」

エレン「ああ、いいぜ。」

マルコ「いくよ。・・・歌え、兵士の歌を」

アルミン「人類への忠誠を胸に」

ミカサ「大切な家族を」

エレン「駆逐してやる」

アニ「つまらない」

ベルトルト「故郷へ帰る」

ライナー「戦士として責任を果たし」

コニー「父ちゃん、母ちゃん、見返したい」

サシャ「おいしいご飯と」

ユミル「女神クリスタ」

ジャン「あぁ、憲兵団になりたいなっと」


マルコ「ははは・・・、カオスだね。」

アルミン「まぁ、予想はしてたけど・・・。」

クリスタ「でもさ、使えそうな言葉はあるよ。忠誠とか家族とか故郷とか。

     その調子でどんどん言ってもらおうよ。」

アルミン「そうだね。じっと考えてても浮かばないからね。」

マルコ「じゃあ、二順目いくよ。」


―2時間後

コニー「もう、何も浮かばねぇ。」

アニ「疲れた・・・。」

ベルトルト「何周したんだろう・・・。」

ライナー「30周はいってるな。」

マルコ「たくさん言葉が出たね。そろそろいいかな。」

アルミン「うん。みんなの言葉をまとめたら大体こんな感じかな。

     クリスタ、黒板に書いてくれる。」

クリスタ「わかった。」カキカキ


さぁ歌おう 兵士の歌を
人類への忠誠を 家族への愛を

壁の向こうに世界がある
我らは恐れず進み行く

壁の向こうが我らの故郷
祖先の大地を取り戻せ

我らは気高き訓練兵団
戦え それが自由への道

※レ・ミゼラブル「民衆の歌」のパクり。土下座して謝罪。
 作詞とか無理。風呂敷広げすぎた。反省。


クリスタ「書けたよ。」

マルコ「うん。いいんじゃない。」

コニー「漢字が多いな。ひらがなふってくれ。」

ジャン「たくさん言わせた割に短いな。」

アルミン「使える言葉はほんのわずかしかなかったよ。」

ユミル「クリスタって言葉、入ってないじゃん。」

クリスタ「入りません。」

サシャ「パァンについても触れられてませんね。」

アルミン「触れません。」


エレン「駆逐・・・。」シュン

ミカサ「・・・・。」ナデナデ

ジャン「エレン、お前、ふざけんなっ。」

マルコ「まぁまぁ。落ち着いて。」

ライナー「男らしくて俺は結構気に入ったぞ。」

ベルトルト「壁の向こうが故郷ってところが、すごくいい。」

アニ「・・・短くていいんじゃない。」


アルミン「みんな協力してくれてありがとう。頑張って曲を付けるよ。」

ジャン「イカした曲、期待してるぜ。」

サシャ「早くみんなで歌いたいです。」

マルコ「遅くまでありがとう。今日は解散で。」

クリスタ「あっ、みんな3ヶ月後にピアノの発表会やるから。そのつもりでいてね。」

ライナー「そんなものやるのか。」

クリスタ「うん。やっぱり目標があった方が練習し甲斐があるでしょ。」

アルミン「じゃあ、この歌も完成させて、そこで披露できたらいいな。」

クリスタ「うふふ。楽しみにしてる。」


アルミン「それじゃあね。」

「おつかれー」

それぞれ宿舎に帰っていく。

クリスタ「さてと、私たちはお片づけ。」

ユミル「黒板消すぞー。」

クリスタ「あっ、ちょっと待って。」

マルコ「大丈夫。ちゃんとノートに書いたから。」

クリスタ「ありがとう。ユミル消していいよ。」


マルコ「椅子と机を整理して・・・・。」

ユミル「うわっ、手がチョークの粉だらけになった。」

クリスタ「今日はたくさん書いたり消したりしたから・・・って、ユミル怪我してるの?」

ユミル「ん?」

クリスタ「左手の指先、ほとんどの指に絆創膏貼ってるじゃない。」

ユミル「あぁ、これ?乾燥して逆剥けしちゃってさ。水仕事はヤダねぇ。」

クリスタ「そうなの?左手だけ・・・。」

マルコ「ほらほら、片付いたし僕たちも戻ろう。」

ユミル「もうすぐ消灯時間だしな。早く帰ろうぜ。」

クリスタ「う、うん。お疲れ様。」

続きは後日
この需要のないSSにいつもレス下さるそこの貴方。感謝してます。
ユミルって・・・ヴァイオリンとチェロ、どっちが似合うんだろう?

たくさんのレスありがとうございます。
みなさんの意見を参考にしました。
続きです。


―3ヵ月後 旧教室

ワイワイ ガヤガヤ

マルコ「予想以上に大盛況だね。」

クリスタ「うん。立ち見までいる。内輪でこっそりやるつもりだったんだけど・・・。」

マルコ「ジャンが宣伝しまくってたからね。俺様のピアノを聴きに来いって。」

クリスタ「ベルトルト、大丈夫?顔色悪いし、冷や汗かいてる。」

ベルトルト「だ、だだ大丈夫。し、心配してくれて、あ、ありがとう・・・。」ブルブル

ライナー「しっかりしろ、ベルトルト。お前はやる時はやる男だ。」


クリスタ「そんなに緊張しないで。いつも通りに弾いたらいいんだよ。

     一番真面目に練習してたんだから。この手はちゃんと弾き方を覚えてるよ。」ギュッ

クリスタはベルトルトの両手を握る。

クリスタ「大丈夫だから、ね?」ニコッ

ベルトルト「・・・うん。」///

ライナー「・・・クリスタ、俺も激しく緊張してる。」

クリスタ「・・・しょうがないなぁ。はい、ぎゅっ。」ニコッ

ライナー(発表会終わったら、正式にプロポーズしよう・・・心の中で。)

ジャン「俺の手も握ってくれよ。クリスタみたく上手く弾けるように。」

クリスタ「いいよ。いつも通り自信を持って。」ギュッ

アルミン「僕も。クリスタの手って、なんかご利益ありそうだね。」

クリスタ「ふふっ。そんなものないよ。・・・頑張ってね。」ギュッ


エレン「俺も、うわっ!」グイッ

ミカサ「エレンは私が。」ギュゥッ

エレン「痛いってば。力入れすぎ。指が折れちゃうだろ。」

クリスタ「はい、サシャも。特別出演ありがとう。」ギュッ

サシャ「たくさん練習しましたから、期待してて下さいね。」

ユミル「私も友情出演させてくれよな。」

クリスタ「えっ!?」

ユミル「はい、クリスタ用の伴奏譜。練習なしで弾けるだろ。」

クリスタ「・・・これって。ユミル、あなた!?」

ユミル「いいから。とにかく、ぎゅっ。」ムギュゥ

クリスタ「そんなに抱きしめないで。苦しいよ。」


ユミル「どっかプログラムに組み込んでよ。でも、最後のトリとかは嫌だからな。」

クリスタ「うん、うん・・・。ユミルと一緒に演奏できるなんて。・・・嬉しいよぉ。」ウルウル

ユミル「馬鹿。泣くのは演奏終わってからにしろ。」ナデナデ

クリスタ「うん。」グスッ

マルコ「そろそろ開始時間だね。始めようか。」

クリスタ「待って。その前に、マルコにも。」ギュッ

マルコ「ありがとう。」///


クリスタ「では・・・、コホン。」

クリスタ「みなさまお忙しい中お集まり下さいまして、誠にありがとうございます。

     これから第1回クリスタピアノ教室発表会を行います。」

パチパチパチパチ

クリスタ「1番、ライナー・ブラウンさん ヘンデル作曲『サラバンド』」

ライナー「おう。」

スタスタスタスタ ペコリ

ライナー(クリスタ、俺の魂の咆哮を君に捧げよう。)

♪♪~♪♪♪~~


マルコ(うわっ、いきなりff。確か、pで厳かに始まる曲なはず。

    この後、盛り上がっていく部分どうするんだろ・・・。)

クリスタ(それでいいよ、ライナー。小さくまとまった演奏は似合わない。

     これは豪胆で無骨なライナーの『サラバンド』。)

ジャン(カッコいいな・・・、ちくしょう。)

エレン(超兄貴・・・。)

ユミル(ププッ。ライナーに熱い視線送ってんの野郎ばっかりじゃねぇか。男にはもてもてだな。)


ライナー「・・・」ペコリ

「うおぉぉぉぉぉ」パチパチパチパチ

「アニキ・アニキ・アニキ・アニキ・・・・」

クリスタ「ライナーらしくて、すごく良い演奏だったよ。」

ライナー「本当か?」

クリスタ「うん。この歓声が聴こえない?」

ライナー「・・・随分野太い歓声だな。」

エレン「アニキコールすげぇな。」

アルミン「ライナーは頼りになるから、入団当初から男子に人気あるしね。」

ライナー「複雑な気分だ・・・。」


クリスタ「コホン、静粛にして下さい。

     2番、ベルトルト・フーバーさん シューマン作曲『見知らぬ国と人々について』」

ベルトルト「じゃ、じゃあ行ってくるね・・・。」

ライナー「ぶちかましてやれ。」

サシャ「ファイトー。」

スタスタスタスタ ペコリ

ベルトルト(いつも通り、いつも通り・・・。)

♪~~♪~~♪~♪♪~~~


マルコ(うん。優しく柔らかく、けれど深い音。短期間で随分練習したのが分かる。

    アーティキュレーションを忠実に守った、まるで教科書のような演奏。

    ライナーとは対照的だな。)

クリスタ(緊張で若干硬さは残ってるけど、落ち着いて弾けてる。

     教えたことも全部できてる。すごいよ。

     ただ、もう少し楽しそうに弾いてくれたらな・・・。)

ライナー(どこか哀愁の漂う曲だな。俺たちの故郷が目に浮かぶ・・・。)

サシャ(子どもの頃お母さんが歌ってくれた子守唄を思い出します・・・。)グスッ

ユミル(ベルトルさんよ・・・。弾いてる姿、カッコいいじゃねぇか。)


ベルトルト「・・・」ペコリ

「きゃぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチ

クリスタ「お疲れ様。人前での演奏はどうだった?」

ベルトルト「すごく緊張したけど・・・、自信がついたよ。」

クリスタ「うん。女の子たちの目がハートになってたよ。」

ベルトルト「や、やだなぁ・・・。」///

ジャン「つーか、何?この黄色い歓声。」

マルコ「ベルトルトが実はイケメンだってことに、女の子達、気が付いたんでしょ。」

ジャン「ちっ、おもしろくねぇ。」


マルコ「はは。次はジャンだよ。ジャンもモテてこいよ。」

ジャン「俺はミカサ一筋だ。他の女子はどうでもいい。」

クリスタ「続きまして・・・。3番 ジャン・キルシュタインさん。

     ハチャトゥリアン作曲『少年時代の画集』より『エチュード』」

スタスタスタスタ ペコリ

ジャン「ミカサ、お前に捧げる。」

ミカサ「・・・・・」イラッ

♪♪~♪♪♪♪~♪♪~


マルコ(駄目だよ、ジャン。自分の彼女でもない子にそんなこと口に出して言ったら。

    しかも大勢の前で。みんなドン引きだよ。巻き込まれたミカサが可哀想だよ。
 
    これじゃ、いくら良い演奏をしても評価されない・・・。)

クリスタ(演奏は申し分ない。技術、表現力、どちらも合格点。

     ただ、会場が悪い意味で静まり返った。次の人が弾きにくくなっちゃったよ。

     もう、ジャンの馬鹿。)


ジャン「・・・・ふぅっ。ミカサ、俺のこと少しは見直したか?」ドヤァ

ミカサ「・・・・ちっ。」

マルコ「ジャン!お辞儀してさっさと下がる。」

ジャン「あ?ああ。」ペコリ

パチ・・・パチ・・・

マルコ「はぁー。もう、お前って奴は・・・。」

ジャン「何、怒ってんだよ。」

マルコ「見なよ。このまばらな拍手。」


ジャン「俺の演奏、そんなに酷かったか?結構うまく弾けたと思ったんだが。」

クリスタ「演奏はすごく良かったの。完璧だったの。ただ、演奏以前に問題があるの。」

ジャン「はぁ?分かんねぇな。」

マルコ「ジャン、後でゆっくり話そう。」

ジャン「何なんだよ、ったく。」

エレン「ジャン、すげーカッコ良かったぞ。お前、意外とやるんだな。見直したぜ。」

ジャン「てめぇに褒められてもな・・・。まぁ・・・、サンキュ。」

ミカサはジャンにもう少し優しくてもよくないか?


サシャ「私たちの出番はいつですか?」

アルミン「僕たちは大トリ。お楽しみは一番最後までとっておくんだってさ。」

サシャ「責任重大ですねー。緊張するので、今のうちにとっておいたパァン食べときます。」モシャモシャ

クリスタ「はいっ。次は4番 ミカサ・アッカーマンさん。バッハ作曲『プレリュード BWV846』」

マルコ「ミカサ、ごめん。なんか空気悪くて・・・。」

ミカサ「気にしない。私はエレンが聴いてくれさえすればいい。」

スタスタスタスタ ペコリ

♪♪♪♪♪♪♪♪~

>>306 ミカサとジャンの関係性を深く考えずにつっぱしって書いた。
   そうだね。もうちょいミカサは優しい子だよね。スマン。


マルコ(以前聴いた時より、ずっと進化している。

    ダンパーペダルを使用しない、指ペダルだけの奏法で、ここまで音を美しく響かせるなんて。

    それぞれの指が独立して機能している。動かしにくい薬指と小指を完全にコントロールしてる。

    初心者には見えないよ。これでリズム感さえあれば・・・ね。)

クリスタ(硬質で洗練された音。やっぱりミカサはすごいな。

     もっと上級者向けの曲を弾かせたかったけど、リズム感を治してあげれなかった。ごめんね。)

ジャン(美しい・・・。ピアノを弾くと美人度がさらに上がるな。)

エレン(ふぁー。この曲、聴きすぎて飽きてんだよなー。)


ミカサ「・・・・」ペコリ

パチパチパチパチ パチパチパチパチ

クリスタ「すごい拍手だよ。今までで一番良い演奏だったよ、ミカサ。」

ミカサ「ありがとう。」

マルコ「エレン、連弾しなくて良かったのか?」ヒソヒソ

エレン「ん?あー、あれね。いやさ、連弾するとミカサに変なスイッチ入るからここじゃ無理。」ヒソヒソ

マルコ「そ、そうなんだ。」ヒソヒソ

マルコ(ここのところ、グノーの『アヴェ・マリア』がやたら聴こえてきたんだけど・・・。

    エレン、スイッチ押しまくってたんだね・・・。)


エレン「よし!次は俺の番だ。」

ミカサ「期待している。」

クリスタ「次は5番 エレン・イェ―ガーさん グリーグ作曲『小人の行進』」

ジャン「ぷっ。随分可愛らしいタイトルだなw」

サシャ「メルヘンを感じますね。」モシャモシャ

エレン「言ってろ。俺の駆逐ソングだ。」

アルミン「確かに、巨人から見れば僕らは小人だしね。」

マルコ「ほら、おしゃべりしてないで早く。」

スタスタスタスタ ペコリ

♪♪♪♪♪♪♪♪~


ジャン(ちょっ、可愛らしさのかけらもねぇ。)

ライナー(随分と邪悪な小人だな。)

ベルトルト(小人が大群で進撃してくる。)

サシャ(あっ、途中からメルヘン入りました。)モシャモシャ

ミカサ(ここは、私とエレンの幸せだった子ども時代の回想シーン。)

アルミン(で、また進軍するんだね。エレンらしい曲だよ。)

マルコ(そこまで難易度の高い曲じゃないけど、随分とテンポを上げてるな。

    指示速度の倍速ぐらいの勢いじゃないか?

    それでも中間部はテンポ緩めて曲想を変えてる。緩急のバランスが丁度いい。

    それにしても、短期間でよくここまで精度を高めたな。

    どんなに速くても決してミスがない。すべての音を外さずにちゃんと出せてる。

    やっぱりピアノに関しては非凡な才能を持ってるね。)


エレン「・・・・・」ペコリ

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチパチパチ

クリスタ「うん。すごく興奮した。エレン、最高だよ。」

ジャン「お前、ずりぃぞ。なんだそのカッコいい曲。」

ライナー「ジャン、曲の問題ではないだろう。腕だ。」

ベルトルト「僕らとはすでに別格だね。」

ミカサ「とても高揚した。良い演奏だった。」

エレン「そんなに褒めるな。照れるだろ。」


アルミン「次は誰?」

クリスタ「マルコだよ。」

ユミル「おっ、マルコも弾くのか。そりゃ、楽しみだ。」

ベルトルト「そういえば僕たち、マルコが弾くの聴いたことないね。」

ライナー「言われてみればそうだな。」

ジャン「なんか偉そうに解説とかしてるけど、実は大したこと無いんじゃねぇ。」

ユミル「バーカ。ジャンよりは間違いなく上手いぜ。」

ジャン「あん?弾けねぇやつは黙ってろよ。」

アルミン「まぁまぁ、落ち着いて。とりあえず聴こうよ。」

クリスタ「次は6番 マルコ・ボットさん シベリウス作曲『樹の組曲』より『樅の木』」

スタスタスタスタ ペコリ

♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪~


クリスタ(目に浮かぶのは深い冬空と雪の情景。そこに凛として立つ樅の木。

     流れるようなアルペジオに始まり、主題の旋律は緩やかにじっくりと響きを楽しんで。

     樅の木の周囲を舞う風のようなアルペジオに、私の心も遠くへ流されていく。

     情感を込めて弾く曲、やっぱり上手だな。冬を耐え、春を待ちわびる樅の木・・・。)

ジャン(ぐっ、何だこの大人の男の雰囲気は。こんなの俺の知ってるマルコじゃねぇ。)

ライナー(ムーディーだ。極上のムーディーだ。)

ベルトルト(男の哀愁と人生の苦悩がつまってるよ。)

ユミル(くぅー、相変わらずぐっとくるぜ。)


マルコ「・・・・」ペコリ

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ

クリスタ「さすがだね。みんな魅了されたよ。会場が良い意味で静まり返った。」

マルコ「ミスらなくて良かったよ。次は、クリスタの番だね。」

クリスタ「えっと、私とユミルの二重奏に変更で。」

マルコ「ユミル、練習間に合ったんだね。良かった。」

クリスタ「知ってたの?」

マルコ「以前、ユミルにヴァイオリンを手に入れたいって相談を受けてね。

    地元のヴァイオリン工房を紹介したんだ。そこで弾き方も教えてもらってたみたい。」

クリスタ「ひどいなぁ。私だけ仲間はずれにして・・・。」

ユミル「ほら、拗ねんな。驚かせようと思って内緒にしてただけだろ。」


マルコ「曲は?」

クリスタ「これ。」ペラッ

マルコ「了解。」

ユミル「ちょっとチューニングするから。クリスタ、ラの音ちょーだい。」

クリスタ「うん。」ポーン

ライナー「あれって、ヴァイオリンか?」

ベルトルト「うん。ユミル、演奏できるのかな。」

ジャン「けっ、そばかす女にゃ似合わねぇよ。」

サシャ「みなさんすごい特技があるんですねぇ。」モシャモシャ

アルミン「いい加減食べるのやめようよ。僕たちこの次だよ。」


マルコ「えー、こほん、次は7番 クリスタ・レンズさんとユミルさんの二重奏で。

    マスネ作曲『タイスの瞑想曲』」

クリスタ「テンポは?」

ユミル「アダージョぐらいで。」

クリスタ「わかった。」

♪♪♪♪♪♪♪~ ♪♪♪♪♪♪♪~

クリスタの伴奏から曲は始まり、ユミルのヴァイオリンが美しく歌いだす。

時々、お互いに目配せしながら、ゆったりとした演奏が続く。


マルコ(歌劇『タイス』の間奏曲。自由気ままに好き勝手生きている娼婦タイスと

    それを更正させようとする修道士の話。修道士に改心を勧められたタイスが、

    正しい道を歩むべきかどうか葛藤するシーンで流れるのがこの曲だ。

    それをユミルは知っているんだろうか・・・。いや、考えすぎかな。)

ベルトルト(美しい音だな。ヴァイオリンの音ってこんなに響くんだ。)

ジャン(くそっ、ユミルのこと、綺麗だとか思っちまったじゃねぇか。)

サシャ(はぁー。ユミル格好いいですね。いつもと違います。気品に満ち溢れています。)

ミカサ(意外。でも、とても素敵。)

ライナー(ユミルどいて。クリスタがよく見えない。)


演奏が終わると、二人は顔を合わせ微笑んだ。

クリスタ・ユミル「・・・・」ペコリ

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・

クリスタ「うふふ。」

ユミル「へへ。」

マルコ「今日、一番の拍手だね。ユミルやるじゃないか。」

ユミル「まぁな。クリスタに恥かかすわけにはいかないし。」


クリスタ「すっごい楽しかった。ありがとうユミル。」

ユミル「別に。借りを作ったままにしときたくなかったし。」

クリスタ「借りって?」

ユミル「髪留め。」

クリスタ「あははっ。あんなことで、こんなに頑張ったの?じゃ、また買ってこなきゃ。」

ユミル「調子にのんな。」

サシャ「・・・あの、この最高潮に盛り上がってる中で歌うんですか?」

アルミン「そうみたいだね。」

サシャ「うぅぅぅ・・・。お腹が・・・。」チラッ

アルミン「大丈夫だよ。サシャも意外性では負けてないから。」


クリスタ「次は、本日最後のプログラムとなりました。

     8番 アルレルト作曲『訓練兵団の歌』。独唱、サシャ・ブラウスさん

     伴奏、アルミン・アルレルトさん。」

サシャ「呼ばれてしまいました。」

アルミン「ほら行こう。」

エレン「頑張れよ。」

ミカサ「楽しみにしてる。」


スタスタスタスタ ペコリ

アルミン「演奏を始める前に少しだけ・・・。

     これから演奏するのは、僕の大切な仲間の思いが込められた歌です。

     僕はこの歌を、仲間の思いを、大事にしたい。伝えたい。

     できることなら、この駐屯地の訓練兵全員で歌いたい。

     作曲は初めてだから、正直自信はない・・・。

     だけど、ここにいる全員が納得するまで作り直す覚悟はあります。

     ・・・聴いて下さい。僕たちの歌を。」


♪♪♪♪~♪♪~

アルミンのピアノに合わせ、サシャは歌った。のびやかな歌声が教室中に響いた。

ジャン(おいおい。芋女のくせにめちゃくちゃ歌うめぇじゃねぇか。)

ミカサ(サシャらしい明るく澄んだ歌声。耳に心地いい。)

ライナー(人は見かけによらないもんだな。)

クリスタ(行進曲風かと思ったら、予想に反してすごくメロディアス。

     キャッチーなサビに、語感を大切にした旋律。親しみやすい歌だわ。)


アルミン・サシャ「・・・・」ペコリ

「・・・・・・・・」シーン

アルミン「・・・・・・」ギリッ

サシャ「だ、だめでしたか・・・・・?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチパチパチ

アルミン「えっ?」

「いいぜ。その歌気に入った。」

「私も歌いたい。」

「歌詞、教えてくれよ。」

「ここに来てない奴らにも教えないとな。」

鳴り止まない拍手の中、観客席から次々に声が上がった。


アルミン「うぅ・・・、みんな、ありがとう・・・。」グスッ

サシャ「良かったです・・・ぅ、ぅ、うえぇぇぇぇん・・・」

クリスタ「サシャ、あなたが歌ってくれたおかげよ。ありがとう。」ムギュゥ

サシャ「びぇぇぇぇん・・・。優しくしないで・・・ひっく、ください。

    涙が、ひっく、止まらなく・・・なります・・・」グスッ

マルコ「アルミン、やったな。壁内初の快挙だ。」

アルミン「うん。ぐすっ、僕一人じゃできなかった。みんながいたから・・ぐすっ・・・」


エレン「お前はすげぇよ、やっぱり。」

ミカサ「アルミンはできる子。」ナデナデ

ジャン「ちょっ、アルミン、ふざけんな。」

ライナー「ジャン、お前のその反応、いい加減飽きたぞ。」

ジャン「ふんっ。今日、良いとこ無かったの俺だけじゃねぇか。」

ベルトルト「まぁまぁ。今日は全員、アルミンとサシャに持ってかれたよ。」

ジャン「ちっ、しょうがねぇか。」

その後、旧教室では「訓練兵団の歌」の大合唱がしばらく続いた。

彼らは歌うことの喜びを知り、人生を楽しむことを思い出した。


―その頃、教官室

キース「休日にわざわざご足労頂き、ありがとうございます。」

ザックレー総統「訓練状況を視察したかったのだが、平日はなかなか自由が利かなくてな。」

キース「事前に来訪をお伝え下されば、休日返上で訓練を実施致しましたが・・・。」

ザックレー「よい。訓練兵にも休みは必要だ。まぁ、そんなにかしこまるな。

      今日はキースと久しぶりに飲もうと思ってな。いい酒を持ってきた。」

キース「はっ、ありがたく頂戴します。」


ザックレー「それより、先程から何か聴こえるのだが・・・。ピアノの音か?」

キース「訓練兵の中にピアノが弾きたいという物好きがおりまして。

    余暇には自由に使用する許可を与えております。」

ザックレー「ふむ・・・。最近、貴族連中から兵士の教養の無さを批判されてな。

      話相手にも遊び相手にもならん、と。

      奴らは身辺警護を務める兵士を道化か何かと勘違いしとるらしい。

      腹立だしいことこの上ないが、奴らの資金がなければ兵団が存続できないのも、また事実。

      憲兵団を希望する訓練兵には、ピアノを習わせるのも一つの手だな。」


キース「しかし、憲兵団の希望者は多く、ピアノ一台では間に合わないかと。」

ザックレー「貴族連中の屋敷には、使われてないピアノなどゴロゴロしとるだろう。

      もらい受けるよう交渉させよう。他の訓練兵駐屯地にも配備せねばな。」

キース「兵士にも教養が求められる時代ですか・・・。」

ザックレー「はっはっはっ。わしらは早く生まれて良かったのう。」

投票数によりユミル、ヴァイオリン決定。
チェロでもよかったね。どっちでも似合うね。
今日はここまで。終わろうとしたけど終われなかった。
もう少しお付き合いください。

レスありがとう。続きを少し。


―旧教室 
 
発表会の熱気も冷め、静まり返った教室でクリスタ達は後片付けをしていた。

クリスタ「とりあえず、大成功かな。」

マルコ「うん。ライナーたちすごくピアノ上手になったね。それにユミルも。相当練習したでしょ?」

ユミル「ああ。なかなかまともな音が出なくてな。なんだあの頑固な楽器。もう二度と弾かねぇ。」

クリスタ「そんなこと言わないでよ。私、ユミルともっといろんな曲やりたいのに。」

ユミル「んー、じゃあ、キスしてくれたら考えてやるよ。」ニヤニヤ

クリスタ「いいよ。」シレッ

ユミル「・・・こう、恥ずかしがるとかさ、そういう反応が欲しいんだけど・・・。」


クリスタ「ふふっ、ユミルの扱い上手になったでしょ。

     それより、アルミンの曲ってマルコも作るの手伝ったんでしょ?」

マルコ「メロディーはアルミン一人で考えたよ。僕は伴奏譜に手を貸しただけ。」

ユミル「じゃ、作曲アルミン、編曲マルコってとこか。アルミン一人の手柄にしていいのかよ。」

マルコ「ははっ、そんな大したことはしてないから。僕の名前なんて出さなくていいよ。」

ユミル「アルミンに遠慮してんのか?」

マルコ「いや、本心で思ってるよ。」


ユミル「いい人ぶってんじゃねぇよ。なんか、お前のそういうところ見てるとイライラすんだよ。

    後ろに下がって人に譲ってばっかりで。そんな生き方楽しいか?この偽善野郎。」

クリスタ「ちょっと、ユミル。いきなり何言い出すの。」

マルコ「いいよ、クリスタ。ジャンにも同じようなこと言われてるから。

    そうだね。僕はいい人でいたいんだ。その方が周囲との軋轢を生まないから。

    偽善と呼ばれようが、僕はこういう生き方しかできない。強くないからね。」

ユミル「・・・喧嘩にもならん。つまんねぇ男だな。」


マルコ「そういうユミルだって、本当はいい人になりたいんだろう?

    今日、なぜ『タイスの瞑想曲』を演奏したんだ?」

クリスタ「?」

ユミル「はっ、意味はねぇよ。綺麗な曲だから。それだけだ。」

マルコ「確かに綺麗な曲だね。ただ、たくさんあるヴァイオリン曲の中で、敢えてあの曲をユミルは選んだ。

    もっと簡単で華やかな曲もあったはずだ。・・・『タイス』の物語、本当は知っているんだろう?」

ユミル「・・・ああ、そうだよ。ヴァイオリン工房の親父がつまんねぇ話、聞かせてくれたよ。

    だが、勘違いすんな。この曲を選んだのは、お前らへの警告だ。」

マルコ「警告?」

ユミル「タイスを改心させようとした修道士が最後どうなったか知ってるよな?

    タイスに深入りし過ぎて堕落の道を辿るんだよ。つまり、私に深く関わるなってことだ。」


クリスタ「ユミル・・・。」

ユミル「・・・気分わりぃ。先に宿舎戻るわ。」

ガラッ ピシャッ

クリスタ「近づいたと思ったらすぐに離れていく・・・。友達と思っているのは私だけなのかな。」

マルコ「そんなことないよ。何とも思ってない人のためにヴァイオリンなんて練習しない。

    ただ、素直に生きれない何かを抱えているんだろう。それが何なのかは分からないけど・・・。」

クリスタ「どうすればユミル、心を開いてくれるかな。」

マルコ「放っとくしかないよ。ユミルが自分からそうしたいと思うまで。」

クリスタ「うん・・・。ユミルを信じて待つよ・・・。」


―数日後 訓練場

キース「整列!!朝っぱらからお前らウジ虫野郎につきあってるんだ。ビシッとしろ。」

一同 ビシッ

アルミン「キース教官!」ハイッ

キース「何だ、アルレルト訓練兵。」

アルミン「訓練を始める前にキース教官のために歌いたいと思います!!」

キース「・・・・なぬっ?」


アルミン「せーの・・・」

そこにいる訓練兵全員が一斉に歌いだした。

青空の下、大音声が響き渡る。

キース(これは何事だ。新手のボイコットか?何を企んでいるアルレルト。)

キース(だが、なかなか良い歌だ。連帯感のない訓練兵が、歌うことで一致団結している。)


キース「何だ、この歌は?」

アルミン「訓練兵団の歌であります。」

キース「何だ、それは?」

アルミン「訓練兵有志で作った訓練兵のための歌であります。」

キース「なぜ歌った?」

アルミン「歌うことで士気が高まります。」

キース「こんな馬鹿げた計画を考えた豚野郎はお前一人か?」

アルミン(まずい、怒らせたか?)

アルミン「はっ。自分一人の一存であります。」


キース「そうか・・・。では、アルレルト訓練兵に命じる。

    毎朝、集合時にこの歌を全員に歌わせろ。一人の脱落者も出すな。」

アルミン「はっ。ありがとうございますっ!!」

キース「今日は訓練を始める前に、お前たちに伝えることがある。

    憲兵団を希望するものは教養を身に付けろ、と上からの通達があった。

    近日中に新たに2台のピアノがこの駐屯地に配備される予定だ。

    音楽だけが教養ではない。よって無理強いはしない。

    だがピアノの技能が、多少、点数に考慮されることは覚えておけ。」


ザワザワ ザワザワ

「教養って、何だよそれ」

「兵士だろ?俺達。関係ねぇじゃん」

「ますます憲兵団が遠のいちまう。」

キース「黙れ!!これ以上無駄口を叩く奴は演習場50周だ。」

シーン・・・

キース「では、今日の訓練を開始する・・・」

キース(理不尽なことは重々承知だ。だが上の決定には逆らえない・・・。)

ここまで。続きはちょっと先になりそうです。

時間ができたので少し続きを


それから数日後に2台の中古ピアノが搬入され、使用されてない他の教室にそれぞれ設置された。

憲兵団を希望できるのは成績上位10名のみ。

しかし、まだ訓練期間の半ば。定着しつつある成績順位を何とか覆したい。

その思いで憲兵団を目指す者は躍起になって、クリスタに教えを請いにきた。

クリスタだけでは手が足りず、見かねたマルコも先生役を買って出た。

そんなある日―――


アニ「ねぇ、ライナー、ベルトルト。私にもピアノを教えてよ。」

ライナー「俺達が?無理だ。教えられるほどの技術は持ってない。」

ベルトルト「クリスタかマルコに習ったほうがいいよ。」

アニ「あの二人、忙しそうで。私まで世話になったら、なんか悪いかなって。」

ライナー「しかし、いくら憲兵団に入りたいからって、お前がそんなことを言い出すとは意外だな。」

ベルトルト「うん。ピアノなんてくだらないって一蹴するかと思ってた。」

アニ「仕方ないじゃないか。憲兵団にはどうしても入りたいし。それに・・・」

ライナー「それに?」

アニ「お前らが弾いてるのを見て、ピアノも悪くないって思ったんだよ。」


ベルトルト「見に来てくれてたんだ、発表会。」

アニ「一応ね。」

ライナー「しかしなぁ。俺は教えるって柄じゃないし。」

アニ「基本的なことだけでいいんだ。後は自分で何とかするから。」

ベルトルト「いいよ。僕が教える。」

ライナー「ベルトルト?」

ベルトルト「ライナーよりは基礎はしっかり身についてると思うから。

      触りぐらいしか教えれないけど、それでよければ。」

アニ「うん。頼むよ。」

ライナー(珍しいな。ベルトルトが自分から前に出るのは・・・。)


―講義棟

マルコ「クリスタ、これからレッスン?」

クリスタ「うん。マルコも?」

マルコ「そう。何だか忙しくなったね。」

クリスタ「私は生徒が増えて嬉しいよ。でも、またマルコのお世話になっちゃった。ごめん。」

マルコ「ははっ、いいよ。あまり話したことのない女子と仲良くなるチャンスだと思ってる。」

クリスタ「そういえば、マルコの生徒って女の子ばっかり。」

マルコ「レッスン希望者募ったら、なぜか女子ばかりだった。」

クリスタ「ピアノ男子ってモテるんだよね。ピアノ女子は全然なのに・・・。」

マルコ「違うでしょ。男子はみんなクリスタに教えてもらいたかったんだよ。僕じゃなくて。」


クリスタ「そうなのかな。確かに生徒の男子率は高いかも。

     そうそう。ピアノの置いてある教室増えたから、分かりやすいように教室に名前つけたよ。

     講義棟の奥から順番に第一、第二、第三音楽室ね。教室の入り口にプレートかけたから。」

マルコ「了解。じゃ、第一、第二がレッスン用で、第三を開放するんだね。」

クリスタ「うん。あっ、もう、第三音楽室が賑わってる。」

マルコ「あれは、ライナーとその仲間たち・・・。」

クリスタ「発表会終わってから、ライナー大人気だね。」

マルコ「うん。男子しかいないけどね。それにしてもすごいな。10人以上に囲まれてる。」

クリスタ「何やってるんだろう?」

マルコ「ちょっと覗いてみようか。」


―第三音楽室

ライナー「よし、お前ら。今日はみんなで歌をうたうぞ。」

「『訓練兵団の歌』か?」

「アニキの伴奏で?くぅー、しびれるぜ。」

「みんな、盛り上がろうぜ。」

ライナー「馬鹿野郎。俺達にふさわしい、もっと魂の震える歌だ。」

「そんな歌が存在するのか?」

「教えてくれよ、アニキ。」

「頼むぜ、一発、ぶちかましてくれよ。」


ライナー「モーツァルト大先生作曲『俺の尻をなめろ』。お前ら俺の後に続け。」

俺の尻をなめろ~♪ (俺の尻をなめろ~♪)

陽気にいこうぜ~♪ (陽気にいこうぜ~♪)

・・・・・・・・♪

・・・・・・♪


―教室の外

マルコ(輪唱・・・。)

クリスタ(あんなに生き生きとしたライナー初めて見た。)

マルコ「ぷぷっ・・・、あはははっ。僕も混ざろうかな。楽しそうだ。」

クリスタ「ふふふっ。ライナーって面白いね。」

マルコ「でも、そろそろ行かないと。」

クリスタ「うん。生徒さんが待ってたら悪いしね。」


―第二音楽室前

ミーナ「マルコ遅いよー。」

マルコ「ごめん。こんなに早く来てるとは思ってなくて。」

クリスタ「ミーナもピアノ習い始めたんだ。」

ミーナ「うん。マルコのレッスン、女の子にとっても評判いいんだよ。」

クリスタ「そうなんだ。」

ミーナ「親切で丁寧で、何より優しい。マルコ株急上昇中だよ。」

マルコ「ははっ。冗談でもそんなに褒められると嬉しいね。」

ミーナ「冗談じゃないよー。本気でマルコのこと狙ってる子もいるんだよー。」

マルコ「はいはい。時間がもったいないから、早くレッスン始めよう。」

ミーナ「うん。じゃあね、クリスタ。」クスッ

ガラッ ピシャッ


クリスタ(・・・・なんか

     ・・・・よく分かんないけど

     ・・・・すっごく

     ・・・・おもしろくない。)

ここまで。
以前、レス頂いた『俺の尻をなめろ』をどうしても入れたかった。
続きは三日後ぐらいになります。

>>1です。レスありがとう。元気でるよ。
続きです。


―食堂

コニー「サシャ、お前はどうすんだ?」

サシャ「何がですか?」

コニー「ピアノだよ。憲兵団入りたいんだろ?」

サシャ「うーん。まだどの兵団にするかは決めてませんが、ピアノはやりません。」

コニー「何だよ。憲兵団は希望しないのか?ピアノ弾けなきゃ入れないんだろ?」

アルミン「そんなことはないんだよ。

     キース教官の意図がよく分からなくて、先日、僕とマルコで教官に詳細を尋ねたんだ。

     そしたらね、ピアノが配備されたけど、別にピアノである必要はないんだって。

     お偉いさんを楽しませる一芸を、何か身につければいいらしいよ。」


コニー「何だそりゃ。芸人になれってのか。」

サシャ「なので私は、歌い手さんになることにしました。」

アルミン「サシャは歌が上手だからね。」

コニー「ずりぃ。俺はどうしたらいいんだよ。」

サシャ「身軽な身のこなしを生かして軽業師とかどうですか?」

コニー「おっ、それいいな。」

アルミン「うーん。教養を感じさせる芸じゃないと駄目だって教官が言ってたよ。」

コニー「どんな芸だよ、ソレ。」


アルミン「みんなそれが思いつかないから、とりあえずピアノを習ってるんだよ。」

サシャ「私と一緒に歌いますか?」

コニー「人前で歌うとか、勘弁してくれ。」

サシャ「そうえいばコニーも私と同じ狩猟の民でしたよね。」

コニー「そうだ。お前ほど田舎者じゃねぇけどな。」

サシャ「・・・口笛とか指笛って得意じゃないですか?」

コニー「得意だぜ。・・・でも、それって芸なのか?」

サシャ「何でも極めれば一流の芸になります。」

アルミン「笛か・・・。いいかもしれない。

     でも、さすがに口笛や指笛では貴族のお偉いさんは満足しないかもね。」


コニー「ほら、やっぱダメじゃん。」

サシャ「良いアイディアだと思ったんですけど・・・。」

アルミン「簡単に吹けそうな笛、探してみようよ。」

サシャ「楽器の笛ですか?」

アルミン「うん。」

コニー「楽器はイヤだ。俺には向かん。」

サシャ「でも、憲兵団入りたいんですよね?このままだと入れないかもしれませんよ。」

アルミン「歌うか吹くか、さぁどっちを選ぶ。」

コニー「何でその二択しかねぇんだよ。」

サシャ「だったら自分で考えて下さい。私達はもう知りません。」

コニー「・・・・・あー、もう!いいよ、吹くよ。吹けばいいんだろ。」


―男子宿舎

マルコ「ただいまー。」

ジャン「おう、遅かったな。」

マルコ「今日は3人もレッスン見たからね。疲れたよ。」

ジャン「俺も今日ピアノのレッスンだったんだけどよ、クリスタがマジ機嫌悪くてびびったわ。」

マルコ「クリスタが?」

ジャン「ああ。ずっとイライラしててよ。練習してない俺も悪いんだけどさ。初めて怒鳴られた。」

マルコ「レッスン前、話したときは普通だったけどなぁ・・・。」


ジャン「情緒不安定。生理中だな。」

マルコ「そういうこと言うな。」

ジャン「マルコ、クリスタ襲うんだったら今日だぜ。中出ししてもガキはできねぇ。」

マルコ「最低だな、お前。」

ジャン「だってよ、マルコ、クリスタのこと好きだろ。」

マルコ「ああ、好きだね。仲間として。」

ジャン「はぁ?そんなん聞いてんじゃねぇだろ。最近やたら一緒にいるじゃねぇか。」


マルコ「ふぅー・・・。ジャン、何かあった?今日はやけに絡んでくるね。」

ジャン「話逸らすなよ。」

マルコ「ミカサ絡み?エレンとミカサ、近頃良い雰囲気だもんね。付き合い始めてたりして。」

ジャン「なっ、そうなのか?」

マルコ「さぁ、知らないけど。でも、ジャンが最近やさぐれてんのはあの二人のせいだろ?」

ジャン「そうなんだよ。今日だって、あいつら俺の目の前で・・・」ウダウダウダウダ・・・

マルコ(ジャンは扱いやすくて助かる。

    でも、傍から見ても僕がクリスタに好意を持っているようにみえるのか・・・。

    それはマズイな。彼女の迷惑になるかもしれない。もっと普通にしてないと。)


―女子宿舎

クリスタ「・・・ただいま。」ギュッ

椅子に座り本を眺めているユミルの背中に、クリスタは抱きついた。

ユミル「・・・珍しいな。クリスタから抱きついてくるなんて。何かあったか?」

クリスタ「・・・自己嫌悪中。」

ユミルの肩に顔を埋めて呟いた。

ユミル「じゃ、気の済むまでそうしてろ。」

ユミルは本を眺めたままだ。


部屋の片隅では、ミーナたち女子が集まってガールズトークに花を咲かせていた。

かしましい話し声は嫌でもクリスタの耳に入ってくる。

女子A「だからさ、こう自然に手とか肩とか触れてくるじゃない?」

ミーナ「そりゃ、教えてるんだから触れもするでしょ。」

女子B「そうそう、あんただけじゃないからね。私だって触られたもん。」

女子A「いやいや、あれは絶対、私に気がある。めっちゃ優しく微笑んでくれるし。」

女子C「ばかじゃない?誰にだって笑ってるっつーの。」

女子B「ていうか、今までノーマークだったのに、なに急に熱あげてんの。」


女子A「よくよく考えたらさ、マルコって成績優秀で憲兵団行くのほぼ確定してるし。

   まぁ見てくれはパッとしないけど、将来性あるじゃん。」

ミーナ「その上、真面目で性格が良いからね。」

女子C「はははっ。理想の結婚相手ってわけ?」

女子B「気が早くねー?」

女子A「訓練期間中にしかチャンスはないでしょ。どうせ私ら憲兵団入れないんだから。」

ミーナ「言えてるー。私も頑張っちゃおうかな。」

女子A「えー、ミーナも狙ってんの?ズルくない?後から言うなんて。」

ミーナ「冗談だよぅ。そんな怒んないでよ。」


クリスタ(うるさい、うるさい、うるさい・・・)ギュゥゥゥゥ

ユミル「ぐえっ、クリスタ苦しい。締まってるって。」


女子B「でもさマルコもいいけど、ベルトルトの方が私はタイプだなー。」

女子C「だよね、だよね。あの寡黙な感じがたまらないよね。」

女子A「今日さ、私見ちゃったんだよねー。」

ミーナ「何を?」

女子A「ベルトルトとアニが音楽室に二人きりでいるとこ。」

女子B「うっそ、マジ?」

女子A「マジで。」

女子C「ちょっ、アニ、ざけんなよ。あいつ女子とは全然絡もうとしないくせに。」

女子B「男には媚売るんだ。サイアク。」

女子A「ちょっと優秀でカワイイからって調子乗ってんじゃない?」

女子C「ちっ、出来の悪い私らとは違いますってか。ただのビッチじゃん。」


クリスタ「ちょっと、あなたたち「おいっ!!うるせぇ!!」

クリスタの声を遮ってユミルは怒鳴った。

ユミル「さっきからキャンキャンうぜぇんだよ。発情期のメス犬か、お前ら。

    そんなに男が欲しいんなら、ウダウダ言わずにとっとと股開いて来い。」

ミーナ「そんなつもりじゃ・・・///」

女子A「はぁー、何かシラけるね。他の部屋行こ。」

女子B「そだね。ほらっ、ミーナも行くよ。」

ミーナ「う、うん・・・。」


ガチャ パタン

クリスタ「・・・ユミル、ありがとう。でも、もう少し言い方が・・・。」

ユミル「はっ、もっと上品に怒れって?いいんだよ。ああいうクソ女にはあれぐらい言って。」

クリスタ「・・・・。ねぇ、ところでさっきから何読んでるの?」

ユミル「これ?クリスタの日記。」

クリスタ「!?ちょっと、何、勝手に人の日記読んでるのよ!!」

ユミル「そこに落ちてたから。」

クリスタ「落ちてません!しまってました!もう、早く返して!」


ユミル「はい、返す。つーか、クリスタの日記ってぜんぜん面白くねぇな。

    出来事ばっかり並べて、主観がほとんど入ってねぇじゃん。報告書みてぇ。」

クリスタ「人の日記勝手に読んどいて、さらにダメ出し?ありえないから。」

ユミル「はいはい、ごめんよ。・・・そろそろ寝るわ。っふぁー・・・」

クリスタ(・・・ユミルが盗み見るのを想定して、当たり障りの無い日記にしといて良かった。

     でもアニのこと庇ったりして、悪ぶってるけど本当は優しくて仲間思い・・・。

     早く素直になればいいのに。)


―数日後 食堂

コニー「ジャ、ジャーン♪えっへん、皆の衆、コレが何か分かるか?」

エレン「木の棒。」

ミカサ「使い方によっては人を殺せるモノ。」

ベルトルト「吹き矢?」

ライナー「おいおい、そんな卑猥な道具こんなところで出すな。」

ジャン「えっ?マジで?そういう道具?」

ユミル「ダメだろ。アニの持ち物勝手に持ってきちゃ。」ニヤニヤ

ジャン「!?アニ・・・」///

アニ「馬鹿だろ、あんた。」


クリスタ「あれは・・・横笛?」

マルコ「うん。ファイフかな。」

コニー「さすがマルコ。大正解だ。」

アルミン「この前の休日に僕とコニーとサシャで街に出掛けて買ってきたんだ。」

サシャ「コニーは憲兵団に入るため、ウォールローゼの笛吹き男になりました。」

コニー「言っとくけど好きで吹くわけじゃないからな。致し方なくだ。」

アルミン「楽器屋のおじさんが、これが一番簡単だよって勧めてくれて。

昔、外の世界では軍隊の行進とかに使われてたんだって。」


エレン「へぇー。じゃあ俺達も行進の時にコニーに吹いてもらおうぜ。」

アルミン「でもね、行進にはファイフとドラムが必須なんだって。」

ミカサ「ドラム?」

アルミン「太鼓みたいなやつ。ドラムでリズムをとってファイフを吹くらしいんだけど。」

コニー「ドラムってめっちゃ高ぇの。俺らの財布じゃ買えねぇよ。」


サシャ「なので、代わりにこれを買ってきました。じゃーん♪」

エレン「なんだ、これ?」

ライナー「お前ら、いい加減にきわどいグッズを昼間から出すのはやめろ。」

ユミル「あぁ、それ?昨晩アニが使ってたやつか。」ニヤニヤ

ジャン「!?アニ・・・」///

アニ「だから馬鹿だろ、あんた。」

ベルトルト「でも見たことの無い形だな。なんだろう。」

クリスタ「・・・カスタネットと」

マルコ「トライアングル。」


サシャ「そうでーす。はい、アルミンはトライアングルをどうぞ。」

アルミン「え?え?」

サシャ「いきますよー。」

サシャ  タン・タン・タン♪

アルミン チーン♪///

サシャ  タン・タン・タン♪

アルミン チーン♪///

サシャ「アルミン、恥ずかしがっちゃ駄目ですよ。コニーのためです。はい、もう1回。」

ミカサ(かわいい・・・)

アニ(二人ともナデナデしたい・・・)

ジャン(なごむ・・・)


サシャ「こんな感じです。さぁこれに合わせてコニーよ、吹くのです。」

コニー「スマン。まだ吹けん・・・。」

サシャ「えー!?そんな、がっかりです。」

コニー「だってよー、買ってまだ数日しか経ってないんだぜ。吹けねぇよ。」

エレン「どんな音かぐらい聴かせてくれよ。」

コニー「だから、いくら吹いても音が出ねぇんだよ。」

ライナー「ちょっとやって見せてみろ。」

コニー「いいけど・・・。スフゥー・・・、スフゥー・・・」

ジャン「あははは、何だよソレ。全然駄目じゃん。」

アルミン「吹き方にコツがいるって楽器屋のおじさん言ってたね。」

コニー「ちくしょ、何で鳴らないんだよ。」


サシャ「・・・ちょっとコニー、笛貸して下さい。」パシッ

コニー「え?」

サシャ ピーーー ピッピーーー♪

コニー「うそ!?何で音出るんだよ。」

ベルトルト「サシャ、すごいね。」(間接キスしたね)

ジャン「ちゃんと音出んじゃん。」(ナチュラルに間接キスしたな)

アルミン「コツが分かるの?サシャ。」(恥ずかしくないのかな?間接キス)

サシャ「草笛です。草笛の時の唇の形です。」

コニー「こ、こうか?」

サシャ「うーん。口を軽く閉じて、唇を前に突き出して、さらに横に軽く引く・・・。」

コニー「うー・・・こう?」

サシャ「そうです。ではファイフをどうぞ。吹いてみて下さい。」


コニー ピピーーー ピーピッピー♪

コニー「やった!音が出たぜ。ありがとな、サシャ。」

サシャ「お役に立てて嬉しいですよ。」

コニー「へへへっ。やる気が出たぜ。」ピーーー ピッピッピーー・・・♪

ミカサ「無邪気ね。」

ユミル「笛吹き男っつーより、笛を吹く少年だな。」

アニ「楽しそうでいいんじゃない。」


アルミン「あとはちゃんと音程が出せるようになるだけだね。」

サシャ「コニーが上手になったら、行進の時、一緒に演奏しましょうね。」

アルミン「えっ?本気で言ってるの?」

サシャ「もちろんです。私、カスタネットのプロを目指します。

    だからアルミンは、トライアングルのスペシャリストになって下さい。」

クリスタ「ふふっ、かわいい軍楽隊の誕生だね。」

アルミン「・・・マルコ。お金貸してくれない?ドラム買いたい。

     トライアングルで行進とか恥ずかしすぎるよ・・・。」

マルコ「ははっ、だよね。みんなにカンパお願いしてみよっか。」

ここまでです。進むの遅くてスマン。
いつ終わるかわかんないけど、必ず完結はさせるよ。

乙乙
いつも楽しみに読んでます
ファイフって確かすんごい安かった記憶がある

ビューグルだっけ、起床ラッパみたいなやつも頑張ったらできそう

今更かもしれんが、ライナーニキはドイツで使われる鞭の楽器がよく似合うだろうなー。
床にバシィンッバシィンッって
アニもだけども

レスありがとう。がんばろうって気になれます。感謝。
>>399 その通り。プラスチック製だったら1000円ぐらい。
>>400 その案、おいしく頂きます
>>401 その案、つまい食いしました。


―第二音楽室

マルコ「じゃあ、今日はここまでね。」

女子A「えー、もうちょっと教えてよー。今日は私で最後のレッスンなんでしょ?」

マルコ「ごめんね。レッスン時間は一人1時間って決めてるから。みんな平等にね。」

女子A「ぶぅー・・・。」

マルコ「ほら、拗ねないの。また来週ね。」

女子A「だったらー、マルコのピアノ聴かせてよ。」

マルコ「えっ?」

女子A「マルコが弾くんだったらレッスン時間に入らないでしょ?

    私、マルコの演奏大好きなんだ。弾いてほしいなぁ。」


マルコ「・・・・悪いね。今日はちょっと無理。」

女子A「えー、なんでー?」

マルコ「訓練でちょっと指を痛めちゃってさ。ごめんね。」

女子A「・・・そっか。しょうがないよね。また今度聴かせてね。」

マルコ「うん。じゃあね。もう暗いから気をつけて宿舎に帰ってね。」

女子A「送ってほしいなぁ、なんて。」チラッ

マルコ「はははっ、ここの片付けあるから。待たせたら悪いから、ね。」ニコッ

女子A「わかったよ。それじゃあ、おやすみなさーい。」エヘヘ

マルコ「お疲れさまー。」


ガラッ ピシャッ

マルコ「・・・・・・・・・・ハァァァァァ。」

椅子に座り、背もたれに身体をあずける。

マルコ(あーーーー、もう無理。あの子、すっごい苦手。

    だけど、波風を立てたくないから、嫌いな子にも優しくするし笑顔も向ける。

    ピアノの先生なんて、みんな平等に扱わないと、どんな陰口叩かれるか分からないからね。

    僕は精一杯やってるよ。必死にいい人、演じているよ。

    ・・・ただ、ピアノだけは駄目なんだ。大切な人のためだけに弾きたいんだ。

    それぐらいのわがまま、許してくれよ・・・。)


片づけを終え、マルコは教室を出る。

マルコ(・・・ピアノの音が聴こえる。クリスタまだレッスンしてるのかな?)

第一音楽室の前まで来ると足を止めた。

教室の窓から中を覗くと、今までに見たことのない真剣な表情でピアノに向かうクリスタが見えた。

マルコ(全調のスケール・・・。地味だが技術の向上と維持には欠かせない基礎練習。

    見えないところでちゃんと努力してるんだな。偉いよ。

    ・・・邪魔しちゃ悪いから帰ろう。)


踵を返した時、声をかけられた。

クリスタ「誰かいるの?」

マルコ「ごめん、手を止めさせる気無かったんだけど・・・。」

クリスタ「マルコかー。・・・あぁ、良かった。そんなところに立ってないで入って来てよ。」

ガラッ

マルコ「どうしたの?」

クリスタ「講義棟って広いし古いでしょ。暗くなってから一人で教室にいるの苦手なんだ。」

マルコ「おばけとか幽霊とか出そうで?」

クリスタ「そう。ちょっとした物音や影なんかでビクッてなっちゃう。」

マルコ「はは。僕も怖がりだからその気持ち分かるよ。」


クリスタ「でも今日は夜空が明るいからまだマシかな。」

マルコ「本当だね。あっ、満月だ。」

クリスタ「というわけで、一曲どうぞ。」

マルコ「ぷっ、何それ。練習中だったよね。」

クリスタ「ちょっと休憩。ゆっくり星空を眺めたい気分なの。」

マルコ「まぁ、いいけどさ。」

椅子に座り、弾き始める。

♪♪~♪~~♪♪♪~~


クリスタ「ドビュッシーの『月の光』・・・」

窓枠に腰掛け、夜空を見上げながらつぶやく。

マルコは演奏の手をやすめず話しかけた。

マルコ「何か嫌なことでもあった?」

クリスタ「ううん・・・。」

マルコ「そう・・・。」

黙りこんだ二人の間にはゆったりとしたピアノの音だけが流れる。

夜の静けさに雫が一滴一滴落ちていくかのような繊細で甘美な旋律。

ゆるやかに螺旋を描きながらどこまでも下降していくメロディー。

儚げで幻想的な月の光。


音に煽られ、気持ちが高ぶる。

お互いに募る思いはあった。すぐにでも吐き出したかった。

しかし思いを口にすることで、二人の間だけでなく仲間達との関係も壊れてしまうことのほうが怖かった。

あまりのもどかしさにクリスタは焦れた。

クリスタ「マルコの選曲はずるい・・・。」

マルコ「だって、月夜だから。」

クリスタ「ベートーベンのソナタ『月光』でもいいでしょ。」

マルコ「えー、悲壮感漂わせるの?」


クリスタ「そのほうがマシ。中途半端に甘い雰囲気作らないでよ。」

マルコ「ははっ、期待した?」

クリスタ「何をかな?」

マルコ「さぁ、何だろうね。」

クリスタ「・・・・・ふぅー、もういいよ。明日はカンパお願いするんだよね。」

マルコ「うん。みんなが一斉に集まる夕食の時にでも声をかけようかなって。」

クリスタ「協力してくれるかな・・・。」

マルコ「分からない。でも、やるだけやってみよう。」


―その頃 

講義棟の外には怒りに肩を震わせる人影があった。

女子A(指に怪我してるとかやっぱウソじゃん。マジむかつく・・・)


―翌日 食堂

アルミン「というわけで、軍楽隊に賛同して下さる方はカンパをお願いします。」

マルコ「今からバケツを回すので、協力してくれる方はお金を入れて下さい。」

ライナー「お前ら頼むぞ!」

ライナーの仲間たち「おう、アニキ!!」

エレン「ははっ、ライナーはすげぇな。」

ミカサ「人望があるのね。」


アニ「ベルトルトも女子のとこ、お願いに行ったら。」

ベルトルト「えっ、なんで?」

サシャ「そうですよ。ベルトルトが行けばお金がいっぱい集まります。」

ベルトルト「でも、女子は苦手で・・・。」

ジャン「しょうがねぇ、俺が行ってくる。」

コニー「お前は行くな。」

ジャン「なんでだよっ。」


ライナー「ところでユミル。お前はヴァイオリンどうやって手に入れたんだ?高いんだろ、あれ。」

ユミル「訓練兵になる前に小金は結構貯めてたからな。それでも足りない分は身体で払った。」

ライナー「身体でって、お前・・・。」

クリスタ「もうユミル、勘違いされる言い方しないの。

     ユミルはね、休日にヴァイオリン工房で雑用係として働いて返したの。」

ライナー「兵士のアルバイトは禁止だが、お前にしてはまともな判断だったな。」

ユミル「盗んだとでも思ってたか?ライナーさんよ。」

ライナー「お前ならやりかねんからな。・・・いや、今のお前はやらないな。」

ユミル「何だそりゃ。」


アルミン「あっ、バケツが戻ってきた。」

エレン「いくら入ってんだ?」

マルコ「えーと・・・。うん。ドラムが三個ぐらい買えそうだね。」

サシャ「やったーーー!みなさんご協力ありがとうございます!」

ミカサ「私たちもお礼を述べねば・・・」

エレン「だな。」

一同「ありがとうございました!!!」

「軍楽隊、期待してるぜ。」

「オレの金、無駄にすんなよ。」

「楽しみにしてるからねー。」


アルミン「みんな・・・。僕は良い同期に恵まれて幸せだよ・・・。」グスッ

ミカサ「うん。期待に応えなくては。アルミンならきっとできる。」ナデナデ

エレン「集まった金、誰が持っとく?」

ジャン「男子寮はやめといた方がいいぜ。手癖の悪いやついるからな。」

コニー「部屋が散らかってるしな。失くしそうだ。」

クリスタ「分かった。それじゃ、私が預かっとくね。」

ライナー「クリスタなら安心だな。」

ベルトルト「うん。賛成だ。」


マルコ「次の休日に、みんなで街の楽器屋さんへ行こう。」

サシャ「みんなで!?遠足みたいですね。」

コニー「やっべ。こんな大人数で遊ぶの初めてだ。何持って行こう。」

ジャン「間違ってもボールとか虫取り網とか持ってくるなよ。」

コニー「釣竿は?」

ジャン「どこ行く気だ?」

アルミン「ははは。楽しみだね。」

エレン「街出るの久しぶりだぜ。」

ミカサ「私が誘うと断るのに・・・。」シュン


アニ「私はパス。」ガタッ

ライナー「相変わらずつれねぇな。どこ行くんだ?」

アニ「散歩。」スタスタスタ

クリスタ「アニも一緒に来ればいいのに・・・。」

ベルトルト「気にしなくていいよ。もともと団体行動が嫌いだから。」

ユミル「いいんじゃね?いろんな奴がいて。」

サシャ「じゃあ早速、どこのお店でご飯食べるかプランを立てましょう!!」

コニー「お前は食い物しか頭にないのか、芋女!!」

ワイワイワイワイ


―別のテーブル

ミーナ「あっちのグループ、楽しそうだね。」

女子A「は?うちらと一緒じゃ、つまんないって?」

ミーナ「そ、そんなこと言ってないよ・・・。」

女子B「うざいよね。人から金とってさ。自分らだけ盛り上がって。」

女子C「だよね。目障り。」

ミーナ「そうかな・・・。」

女子A「・・・ねぇ、ミーナ。お願いがあるんだけどさ。」

ミーナ「何?」

女子A「ここじゃ、何だから外で話そ。」


―講義棟の裏

アニ(ライナーの奴、すっかり仲間意識持っちゃって。大丈夫かあいつ・・・。

   それにしても怪しい奴がいないか巡回するのも飽きたね・・・。

   よくよく考えたら、なんで私だけ?ライナーとベルトルトも働けよ。

   ・・・・・ん?あれは・・・。)


ミーナ「お願いって何?」

女子A「ミーナ、うちらって友達だよね。」

ミーナ「う、うん。」

女子B「うちらが相手してやんなかったら、ボッチだもんな。」クスクス

女子C「ズッ友だよねぇ。」

ミーナ「うん・・・。」

女子A「お願いっていうのはね―――――」


―翌日 女子宿舎

ミーナ(体調が悪いって訓練さぼっちゃった。医務室抜け出してきたけど大丈夫かな・・・。)

ミーナ(・・・うん、誰もいないね。クリスタの持ち物はここの棚かな・・・。)

ゴソゴソゴソゴソ

ミーナ(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・

    私だって本当はこんなことしたくない・・・・・・・・。)


アニ「ねぇ。」

ミーナ「!?」ビクッ

アニ「私は訓練サボってるだけで、あんたが何しようと関係ないんだけどさ。」

ミーナ「あ、あの・・・。」オドオド

アニ「私はずるくて嫌なヤツだけど、それでも人間ではいたいわけ。

   あんたは本当に家畜以下になりたいの?」

ミーナ「・・・・!!」

アニ「じゃあね。私は何も見てないから。」スタスタスタスタ

ミーナ(・・・・・・・・・・・)

ミーナ(・・・・・・私、何をしようとしていたんだろう・・・。

    人の言いなりになって、それで何を得ようとしていたんだろう・・・。)

ミーナ「・・・ぅぅ・・ひっく、ううぅぅ・・・・うわぁぁぁぁん・・・」


―翌日 食堂

賑やかに朝食を食べる声が響く中、ミーナは一人でテーブルに座っていた。

ミーナ(お金を盗めないって言ったら、やっぱりハブられちゃった・・・。

    もう私には友達がいない・・・。独りでご飯食べるとか、死ぬほどイヤだよ・・・。

    明日からはトイレで食べよう。惨めだけど、独りでいるとこ見られるよりいいや。

    でもこれでよかったんだ。恥ずかしい人間になるよりボッチの方がマシだよね・・・。)


アニ「ここ、空いてる?」

ミーナ「!? う、うん。」

ミーナ(昨日のこと責められるのかな・・・。アニ、みんなにバラしちゃったかな・・・。)

アニ「何、堅くなってんのさ。」

ミーナ「あ、あの、ごめんなさい・・・。」

アニ「何のこと?私はここでご飯食べたいだけ。」

ミーナ「・・・・・・・・・・ありがとう」グスッ


サシャ「おやおや?ミーナが泣いてますね。アニにパァン盗られましたか?あっ、ここ座りますよ。」

アニ「サシャじゃないんだから、そんなことしないよ。」

コニー「おっ、ミーナが泣いてる。サシャ、また人の飯奪ったんだろ。ここ座るぜ。」

サシャ「人聞きが悪いですね。ミーナはアニに泣かされたんです。」

コニー「おいおい、アニ。寝起きで機嫌が悪いからって蹴り入れるこたないだろ。そりゃ泣くわ。」

アニ「あんたが蹴られたいようだね。」ガタッ

コニー「うわっ、ちょっと、マジ勘弁。」ガタッ

クリスタ「うふふ。朝から賑やかだね。私もここ座ろうっと。」

ミーナ(クリスタ・・・)グスッ


クリスタ「おはようミーナ。・・・って、どうしたの?コニーがいたずらした?」

コニー「オレじゃねぇし。」

クリスタ「大丈夫?」ヨシヨシ

ミーナ「・・・うぅ・・ひっく・ごめんね・・・ひっく、ごめんね・・・。」グスッ

クリスタ「??? 何で謝ってるの?ほら泣き止んで。」ヨシヨシ

コニー「しょうがねぇな。そんなに謝るんならミーナ軍楽隊に入れ。そしたら許してやる。」

クリスタ「許すって、ミーナが何かしたの?」

コニー「知らん。」

サシャ「でも軍楽隊に入ってくれたら嬉しいです。仲間が増えます。」

ミーナ「仲間・・・。」

サシャ「そうです。壁内一の軍楽隊を目指しましょう。」


ミーナ「でも・・・、私なんか・・・。」

アニ「やってみたら?馬鹿が多いけど退屈はしないよ。」

クリスタ「一緒にがんばろうよ、ミーナ。」ニコッ

クリスタはミーナの手を握った。

クリスタの手は優しく温かかった。

ミーナ「・・・・・うんっ。よろしくね。」ニコッ

サシャ「では、新しい仲間にスープで乾杯です。」

コニー「こぼれるからやめとけ。」


アニ「じゃ、私もう行くわ。」ガタッ

アニは食器を片付けに席を立つ。

途中、あるテーブルの前で止まった。

アニ「ねぇ、あんた。」

女子A「・・・なんか用?」

アニ「今日の対人格闘術の訓練、私と組んでくれない?」


―休日 

アルミン「こんにちはー。」

店主「おぉ、訓練兵の坊主。また来たのか。」

エレン「へぇ、ここが楽器屋か。見たことのないモノがいっぱいだな。どれどれ・・・」

ミカサ「エレン、勝手に触っては駄目。」

マルコ「ドラムはどこかな?」

クリスタ「ピアノ譜、置いてないかな・・・。」

コニー「おっ、ファイフまだあるじゃん。もっといっぱい買おうぜ。」


ジャン「そういえば、アニとユミルは?」

サシャ「一生懸命お誘いしたのですが、面倒くさいって断られました。」

コニー「ミーナは?」

サシャ「もちろん誘いましたよ。でも、私なんかがってものすごく遠慮して来なかったです。」

コニー「なんだよ、それ。」

クリスタ「まだ私たちに慣れてないから緊張するんじゃない?」

ジャン「ははっ、確かにな。ライナーとか普通の女はビビっちまうよな。」

ライナー「それでいい。どうでもいい女に周りをうろちょろされたら面倒なだけだ。」

ベルトルト「それにしても、天井低いな。頭ぶつけそう。」


※ ※ ※ ※

店主「今日は何が欲しいんだ?」

アルミン「軍楽隊に使うドラムです。」

店主「マーチング用のドラムだったらその辺だ。値段もいろいろだからな。じっくり見て決めるといい。」

アルミン「ありがとうごさいます。」

コニー「へぇ、太鼓っつっても、いろいろあるんだな。」

アルミン「どれがいいかなぁ・・・。」


※ ※ ※ ※

クリスタ「あっ、これカワイイ。」

ミカサ「何?」

クリスタ「ちっちゃめのオカリナ。」

サシャ「うわー、綺麗な装飾がしてありますね。」

ミカサ「インテリアにもなりそうね。」

クリスタ「うん。自分のとユミルにもおみやげで買って帰ろう。」


※ ※ ※ ※

ジャン「珍しいもんだらけだぜ。」

マルコ「うん。僕も初めて見るものがたくさんある・・・って、これは!!」

ベルトルト「どうしたの?」

マルコ「おじさん。これって、もしかしてビューゲル?」

店主「坊主よく分かるな。そうだ、ビューゲルだ。」

ジャン「なんだそれ?」

店主「いわゆる軍隊ラッパさ。昔、軍隊で命令の伝達に使われてたらしい。」

ベルトルト「へぇ。軍楽隊に組み込めるかな?」

店主「いや。ビューゲルは出せる音程が限られてるから演奏には向かない。

   行軍時や日常生活の号令としてしか使えんよ。」


ジャン「教官の怒鳴り声よりはラッパのほうがいいな。おっさん、これいくらすんだ?」

店主「これは非売品だ。もう壁内じゃ製造されとらんからな。」

ジャン「そこを何とかさぁ、頼むよ、おっさん。」ペコリ

マルコ「僕からもお願いします。」ペコリ

ベルトルト「僕からも」ペコリ

店主「・・・お前ら、今日ドラム何個買うんだ?」

マルコ「ええと、三個です。」


店主「じゃあ、おまけでビューゲル、付けてやるよ。

   ここにあっても埃をかぶるだけだしな。楽器は音を出してこそ価値がある。

   そいつに命を吹き込んでやってくれ。」

ベルトルト「やった。」

ジャン「ホントにいいのかよ?」

店主「ああ。お前ら将来、立派な兵士になるんだろ?先行投資だ。」

マルコ「ありがとうございます。」


※ ※ ※ ※

ライナー「こ、これは!?」

エレン「何だこれ?」

ライナー「こんなけしからんものが売っているとは・・・、ここの店主できる。」キラン

エレン「おーい、店主のおっさーん。」

店主「呼んだか。」

エレン「これって鞭みたいだけど、楽器なのか?」

店主「ああ。昔、外の世界にあったドイツってところの民族楽器だな。

   ゴアスルシュノイツェンっていう立派な楽器だ。まぁ、ただの牛追い用の鞭だがな。」


ライナー「親父、これを一つは自分用に、一つはプレゼント用で包んでくれ。」

店主「若造のくせに、お主なかなかやるな。」キラン

ライナー「親父さんには叶いませんよ。」ニヤリ

エレン「軍楽隊に鞭って必要なのか?」

ライナー「いや、これはあくまで個人的趣味だ。」

エレン「? プレゼントって誰にやるんだよ。」

ライナー「アニに決まってるだろうが。」

エレン「そんなもんもらってもアニは喜ばねぇだろ。」

ライナー「馬鹿野郎。『こんなもんいるか!!』って怒ったアニが、すかさず鞭でオレをパシーン。

     最高じゃないか。」ハァハァ

エレン「変態だな。」

ライナー「お前も一つどうだ。ミカサにプレゼントしてみろよ。」

エレン「そんな殺傷能力の高そうなもんでミカサに叩かれたら、俺の身体がちぎれちゃうだろ。」


―街の公園 

サシャ「やっぱり、大人数で一緒に入れるお店ありませんでしたね。」モグモグ

アルミン「しょうがないよ。でもおいしいサンドウィッチ屋さん見つけたし。」モグモグ

ミカサ「木陰が気持ちいい。」モグモグ

エレン「外で食べるほうが気分いいぜ。」モグモグ

ベルトルト「でも、随分と買い込んだね。」モグモグ

マルコ「ドラム3台と追加でファイフ11本。おじさん、かなり値引きしてくれたから。

    なんとか軍楽隊が形になりそうだよ。」モグモグ


ライナー「そんなに買ったのか。演奏する奴いるのか?」モグモグ

クリスタ「募集するの。きっとやってみたい人がいるはず。もし応募がなかったら・・・。」モグモグ

マルコ「ライナー軍団に頼めるかな?」モグモグ

ベルトルト「ははっ、軍団なんだ。」モグモグ

ライナー「俺が頼めばやってくれる男たちだが・・・・、むさ苦しいぞ。」モグモグ

ジャン「ライナーがそれ言うか。」モグモグ


ベルトルト「でもさ、ビューゲルは誰が吹くの?」モグモグ

アルミン「うーん。日常生活の号令で使うんだったら、時間に正確な人かなー。」モグモグ

マルコ「起床ラッパとか、誰よりも早起きできる人じゃないと無理だねー。」モグモグ

エレン「早起きかー。そういやダズって早起きじゃね?」モグモグ

ジャン「そうそう。年寄りかっていうぐらい早起きだな。」モグモグ

ライナー「奴がゴソゴソする音でこっちまで目が覚める。」モグモグ

マルコ「毎日、心配なことが多すぎて早く目が覚めるらしいよ。」モグモグ

ジャン「ダズに任せるか。」モグモグ

マルコ「余計、心配ごとが増えるんじゃないかな。まぁ、頼むだけ頼んでみようか。」モグモグ


コニー「あー、公園来るんだったら、やっぱボール持ってくりゃよかった。」モグモグ

ジャン「お前、まだそれ言ってんのか。」モグモグ

コニー「だってよー、あそこにいる奴、いっぱいボールくるくる回して楽しそうなんだよー。」モグモグ

ジャン「馬鹿。ありゃ、大道芸人のジャグリングだ。ああやって芸を見せて金稼いでんだよ。」モグモグ

コニー「俺もやってみてぇな。小遣い稼ぎになるし。」モグモグ

ベルトルト「じゃあ、ファイフ吹いてみたら?上手に演奏したらチップもらえるかも。」モグモグ

コニー「やだよ。恥ずかしい。」モグモグ

ライナー「おいおい、恥ずかしがってちゃ軍楽隊できないだろう。」モグモグ

コニー「みんなと一緒だったら平気だ。一人は無理。」モグモグ


ベルトルト「サシャは偉いよね。大勢の前で一人で歌ったんだから。」モグモグ

ジャン「羞恥心、田舎に忘れて来たんだろ。」モグモグ

コニー「なぁ、サシャ。ここで歌えって言われたら歌えるか?」モグモグ

サシャ「もちろんです。私は歌い手さんです。時と場所は選びません。」モグモグ

ライナー「すでにプロ意識を持ってるな。」モグモグ

ジャン「それじゃあ、歌ってみろよ。小銭稼げるかもしれねぇぜ。」モグモグ

マルコ「やめなよジャン。芸人みたいな真似、サシャにさせるなよ。」モグモグ

コニー「だって俺ら芸人にならなきゃいけねぇんだろ。」モグモグ

マルコ「だとしても、今はまだしなくていい。」モグモグ

サシャ「マルコは優しいですね。でも大丈夫です。私、歌うの好きなんです。」ヨイショ


エレン「おっ、マジで歌うのか?」モグモグ

サシャ「はい。この前クリスタに教えてもらった歌が、今日はぴったりなんです。」

アルミン「なんて歌?」

サシャ「えと、ヘンデルの『ラルゴ』です。」

ジャン「チップ集めるものは・・・、この袋でいっか。」

ミカサ「サシャ、がんばって。」

サシャ「はい。聴いてて下さいね。」

サシャは人がたくさんいる方へ少し歩みを進めた。


サシャ「みなさーん!!今から歌いますねー!!」

振り返る人々。

サシャは大きく息を吸い歌いだした。


Ombra mai fu     こんな木陰は今までなかった
di vegetabile,    愛しくて 心地よくて
cara ed amabile,   そして優しい
soave piu       緑の木陰


サシャの歌声に人々は集まった。

歌い終わると、歓声と拍手が起こった。

「よっ、姉ちゃん、うまいじゃねぇか。」

「いい声してるね。」

「初めて聴いたよその歌。すごくいい歌だね。」

用意した袋に、次々と硬貨が投げ込まれる。


サシャ「お騒がせしてすいません。ありがとうございました。」ペコリ タッタッタッタ

エレン「すげぇな、サシャ。」モグモグ

サシャ「いやー、緊張しちゃいました。」

ジャン「どこがだよ。」モグモグ

サシャ「みなさんへの感謝の気持ちを込めました。伝わりましたか?」

コニー「ありゃ、何語だ?まったく分からん。」モグモグ

サシャ「壁の外の昔の言葉らしいですよ。

    大体の意味はクリスタから聞いたんですけど、簡単にまとめると・・・」

ジャン「まとめると?」モグモグ


サシャ「みなさんのことが大好きです!!って感じです。」

ミカサ「ふふ、サシャかわいい。」

コニー「お前そんなことよく平気で言えるな。こっちが照れるわ。」///

ベルトルト「サシャは真っ直ぐだね。」

ライナー「ああ。初めて女子から告白された。」///

ジャン「俺もだ。」///

エレン「お前らの脳内は快適だな。」

アルミン「クリスタ、歌詞の意味ってあれで合ってるの?」

クリスタ「うーん、ちょっと違うけど・・・。でも正解。」

コニー「小銭ばっかだけど、けっこう入ってんじゃん。何かおごれよ。」

サシャ「駄目です。帰りにケーキ買って、ミーナと一緒に食べるんです。」


アルミン「・・・ねぇマルコ。サシャがちょっと歌っただけでチップがもらえたね。」

マルコ「そうだね。」

アルミン「・・・・・・・」

マルコ「・・・・・・・」

アルミン「・・・・多分、同じこと考えてるよね。」

マルコ「・・・・ああ、資金はあるに越したことはない。」

アルミン「やるしかないね。」

マルコ「寄付金集めのチャリティーコンサート。」

ここまでです。続きは後日。進むの遅くてほんとスマン。

>>1です。レスありがとうございます。
随分間があいてしまいましたが続きです。


後日、アルミンとマルコは軍楽隊の設立とチャリティーコンサート実施の許可をキース教官に申請した。

軍楽隊の設立は認められたが、コンサートに関しては兵士の対外活動になるので中央の承認が必要らしい。

「軍楽隊の出来次第では中央に申請してやってもいいぞ」とキース教官は温情を見せた。

なお、ビューゲルは日常生活の号令にのみ使用が許可された。

「壁外でラッパなんぞ吹いたら巨人に居場所を知らせるようなもんだろう。」

優秀な二人が意外と抜けていることに、キース教官は苦笑いした。

二人は礼を述べると教官室を後にした。


アルミン「とりあえず軍楽隊を形にしないとね。」

マルコ「ああ、すべてはそれからだ。」

アルミン「僕、隊員募集のチラシ作って食堂の掲示板に貼っとくね。」

マルコ「僕も周りに声かけてみるよ。訓練兵団の軍楽隊だから仲間内だけでやるわけにはいかない。

    今まであまり接点の無かった人たちにも参加してもらいたいね。」

アルミン「うん。自分達だけで盛り上がるのは良くないね。周りを巻き込んでいかなくちゃ。」


―男子宿舎

ジャン「ダズ、頼む。ビューゲル吹きになってくれよ。」

ダズ「お、俺にはできない・・・。そんな責任のある役・・・。」

エレン「ダズしか適任がいないんだよ。なぁ、頼むよ。」

ダズ「なんで、急にラッパなんだよ。今まで通りカンカンカンって鐘の合図でいいじゃないか。」

コニー「そんなんカッコいいからに決まってるだろ。」

ダズ「だったらコニーが吹けばいいじゃないか。」

コニー「俺だって吹きてぇよ。でも早起きできん。」

ベルトルト「一番早起きのダズにやってもらえると僕たちすごく助かるんだけど。」

ダズ「これ以上、俺に負担をかけないでくれ。今の生活に付いていくのにいっぱいいっぱいなんだよ。」


ライナー「ふぅー。ダズ、お前ここの生活楽しいか?」

ダズ「楽しいわけないだろ?万年落ちこぼれで、毎日教官にはどやされる。

   男子からはグズの厄介者扱いを受け、女子からはいるだけでキモいって言われる。

   開拓地に送られたくないから仕方なくここにいるだけだ。」

ライナー「だったら、ビューゲルを吹いてみろよ。お前にしかできない特技を身に付けろ。

     そうすれば周囲のお前への評価も変わってくる。少しはここの生活を楽しもうとしろ。」

ダズ「そんな・・・、ラッパが吹けたところで何も変わらない・・・。」


エレン「決めつけんなよ。少なくともここにいる俺たちはお前のこと尊敬する。」

ダズ「・・・尊敬・・・」

ベルトルト「自分のためでなく他人のために何かできる人は立派だよ。」

ダズ「・・・立派・・・」

コニー「何よりラッパが吹けるってカッコいいじゃん。憧れるぜ。」

ダズ「・・・憧れ・・・」

ジャン「どうだ、やってくれるか?」

ダズ「う、うん。俺、頑張ってみるよ。」


コニー「よっしゃ!!じゃあ、早速吹いてみろよ。」

ダズ「できるかな・・・いくよ・・・  フスゥー・・・」

コニー「はははっ。やっぱそうなるよな。俺も最初はファイフ、ぜんぜん鳴らなかったし。」

ダズ「や、やっぱり俺には無理なんじゃ・・・。」

ジャン「心配すんな。吹き方にコツがあるんだろ。マルコとアルミンが帰ってきたら聞いてみようぜ。」

ライナー「何事も最初からはうまくいかないさ。大丈夫。お前ならできる。」


―数日後 第三音楽室

軍楽隊員に応募したメンバーの初顔合わせが行われていた。

アルミン「こんなにたくさん集まるとは思わなかったよ。みんなありがとう。」

ミーナ「誰も来ないんじゃないかって心配してたのに・・・、嬉しいよ。」

サシャ「むさ苦しいライナー軍団を召集しなくてもよくなりました。」

コニー「うーんと、ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・、俺たち除いて12人か。すげぇな。」

トーマス「なんかお前ら一生懸命だからな。手伝ってやりたくなった。」

サムエル「カンパ出したし。俺にも軍楽隊に参加する権利はあるよな?」

アルミン「もちろんだよ。」

ナック「俺らこれといった趣味もないからさ。自由時間はヒマしてんだ。」

ミリウス「ここには娯楽が何もないからな。面白そうなことには食いつくぜ。」

サシャ「そうです。みんなで合奏するのは絶対に楽しいはずです。」


アルミン「ドラム3人、ファイフ12人の構成なんだけど希望の楽器ある?」

ハンナ「私はファイフやってみたい。」

フランツ「俺はドラムで。俺のビートがハンナのメロディーを支えるんだ。」

ハンナ「フランツ・・・///」

コニー「馬鹿夫婦・・・。」

アルミン「他のみんなは?」

「どっちでもいいぜ。」

「良くわかんないし。」

「アルミンが決めてくれよ。」

アルミン「分かった。じゃあ、ドラムは結構重たいから男子の方が良さそうだね。

     フランツとトーマスと僕がドラムで。他のメンバーはみんなファイフで。」

トーマス「了解。」

ミリウス「かまわねぇぜ。」


サシャ「ちょっと待って下さい。ファイフって全部で12本しかないんですよね。

    ここには16人います。ドラムの人除いても1人余ります。」

ミーナ「あっ・・・、じゃあ、私は外してもらっても・・・。」

サシャ「駄目です!!それは絶対許しません!!」

コニー「珍しいなアルミン。計算間違えたか。」

アルミン「間違いじゃないよ。サシャには特別な役をやってもらおうと思って。」

サシャ「特別な役・・・ですか?」

アルミン「うん。僕ね、いろいろと軍楽隊について古い資料を調べたんだ。

     それで分かったんだけど、軍楽隊にはドラムメジャーっていう指揮役が必要なんだって。」

サシャ「指揮・・・。具体的には何をするんでしょう?」

アルミン「軍楽隊の先頭で、メジャーバトンっていう杖を振って演奏を指揮したり隊を先導したり。

     一番目立つ花形のポジションだよ。」


サシャ「そんな重要な役割、私なんかでいいのでしょうか?」

アルミン「サシャだからお願いしたいんだ。だって緊張しなそうだから。」

コニー「ははっ、確かにな。先頭で杖振るとか、恥ずかしくって俺はできん。」

ミーナ「メジャーバトンっていうモノは用意してあるの?」

アルミン「それがまだ無いんだ。キース教官にお披露目するまでには用意しないと。」

サシャ「そんなの無くていいですよ。買ったら多分高いでしょうし。どっかで棒きれ拾ってきます。」

ミーナ「そんな。棒っきれじゃ格好がつかないよ。」

サシャ「いいんです。見た目よりバトン技術で勝負してやります。」

コニー「なぁ、アルミン。メジャーバトンってどんな形なんだ?」

アルミン「僕も本で見ただけだから正確には分からないんだけど、

     1mくらいの細長い棒で片側に装飾がある、いわゆるメイスって呼ばれるものらしい。」

コニー「ふーん・・・・。」

アルミン「じゃあ、練習を始めよう。ファイフ隊はコニーとサシャに音の出し方を教えてもらって。

     ドラム隊は僕とスティックの持ち方から練習しよう。」


―数日後 自由時間 講義棟

マルコ「ドラムの音がする。今日も軍楽隊、頑張ってるね。」

クリスタ「アルミンの行動力ってすごいよね。作曲の次は軍楽隊まで作ろうとするんだもん。」

マルコ「うん。彼の前向きでひたむきな姿勢に仲間が自然と集まってくる。

    1人じゃできないことでも仲間がいれば可能になる。

    自分の能力を冷静に判断して、足りない部分は素直に人に頼れるところがアルミンの強みだね。」

クリスタ「うん。素直さか・・・。見習わないとな。

     でもさ、仲間が集まるのはアルミンだけじゃないよね。・・・ほら、声が聞こえてきた。」

マルコ「ぷっ、本当だ。今日もやってるのか。ちょっと覗いて見ようか。」


―第二音楽室

ライナー「よーし、お前ら。今日も歌って気分爽快すっきり寝るぞ。」

「腹から声出すぞー」

「軍楽隊の音に負けてらんねぇな」

「アニキ、今日は何の歌で?」

ライナー「俺の届ける最高のパーティーチューン。

     モーツァルト第二弾『俺の尻を舐めろ、きれいにきれいにね』。お前ら俺の後に続け。」

さぁ俺の尻を舐めろ~♪ (さぁ俺の尻を舐めろ~♪)

きれいに美しく舐めあげろ~♪ (きれいに美しく舐めあげろ~♪)

・・・・・・♪

・・・・・♪


―教室の外

マルコ「はははっ、相変わらず楽しそうだね。」

クリスタ「ふふふっ、前より人数増えてるし。すごい迫力。」

マルコ「うん。毎日こうやって歌っているからかな。上手くなってるね。」

クリスタ「ちょっとした合唱団みたい。ライナーってバリトンの結構いい声してるよね。」

マルコ「確かによく響くし声量もすごいね。・・・男性合唱か。いいかもしれない・・・。」

クリスタ「何が?」

マルコ「ほら、チャリティーコンサート。開催は軍楽隊の出来次第なんだけどさ。

    アルミンは間違いなくキース教官に認められる軍楽隊を作る。

    だから、コンサートでやる演目の案を早めに考えとこうと思って。」


クリスタ「そうだね。準備は早い方がいいね。」

マルコ「アルミンは今手いっぱいだから。僕たちで考えないと。」

クリスタ「そっか。お客様に喜んでもらえる演目だよね・・・。」

マルコ「できるだけ訓練兵のみんなにステージに立ってもらいたいんだ。

    軍楽隊とライナー合唱団は出演依頼をしてみるよ。ただ他の人たちも何かで出演できれば・・・。」

クリスタ「予算をかけずに団体でできるパフォーマンスか・・・。ダンスとか?」

マルコ「僕もそれを考えたんだけど。ファイフの音色で踊ればいいかなって。

    ただ僕はダンスに詳しくないから。どんな踊りが相応しいのか分からないんだ。」

クリスタ「うーん。集団で踊るダンスは私も分からないなぁ・・・。」


マルコ「だから、この前行った楽器屋さんで聞いてみるよ。あそこ民族楽器がたくさん置いてたから。

    民俗音楽って踊るための曲が多いし。おじさん何か良いダンス知ってるかもしれない。」

クリスタ「うん。分からないことは素直に人に頼ろう。私も楽器屋さん一緒に行くよ。」

マルコ「ありがとう。それよりクリスタ、そろそろレッスンじゃないの?」

クリスタ「あっ、いそがなきゃ。でも、マルコは?ライナーに教室占領されてるけど・・・」

マルコ「今日はレッスン無しなんだ。なぜか生徒が急に減ってね。」

クリスタ「ふふっ、マルコ人気は一瞬だったんだね。」

マルコ「そうだよ。僕の人生でおそらく、最初で最後のモテ期はあっという間に終わったよ。

    ほら、早く行かないと。生徒さん待ってるよ。」

クリスタ「うん。それじゃあ。」


―男子宿舎

アルミン「疲れたー。腕がパンパンだよ。」

エレン「お疲れー。」

ジャン「ほらっ、ダズ、もう1回やってみろ。」

ダズ「う、うん。」 プォ~~~♪

アルミン「ダズ、すごいじゃないか。音、出るようになったんだ。」

ダズ「口の形とか息の出し方とか、いろいろ試してみたんだ。」

マルコ「あとは今のアンブシュアを保ったまま、息を出す速さを変えるんだ。」

ベルトルト「アンブシュアって?」

マルコ「唇の形のことらしいよ。僕もよく知らないけど格好つけて言ってみた。」

ダズ「息を出す速さを変えるのか・・・」 ポォ~♪プゥ~♪パァ~♪

エレン「おー、音が変わった。今のはド、ミ、ソだ。」


マルコ「ビューゲルにはバルブが付いてないからね。

    音程を吹き分けるには、息の速さやアンブシュアを変化させるしかないんだ。

    でも出せる音は下から言うと、ド・ソ・ド・ミ・ソ・シ♭・ドだけだから。」

アルミン「自分のさじ加減なんだね。」

マルコ「うん。とにかくどう吹いたらどの音になるか身体で覚えるしかないね。」

ダズ「頑張るよ。こんな俺でも人に認めてもらえそうなものが見つかったんだ。

   ビューゲルの練習始めてから少し前向きになれたよ。」

ジャン「良かったじゃねぇか。どんな場所にいても人生楽しまなきゃ損だからな。」

ダズ「ああ。お前らのおかげだ。感謝するよ。」

ライナー「礼はちゃんと吹けるようになってから言え。」


アルミン「それより、コニーは隅っこで何やってんの?」

ジャン「あいつ、ここんとこ毎晩小刀でなんか削ってんだよ。」

エレン「今日はヤスリをかけてるな。」

ベルトルト「話かけても気付かないぐらい集中してるんだよ。」

マルコ「コニーがあんなに夢中で何かに取り組むの珍しいから、あえて放置してる。」

アルミン「ふーん。何だろうね。」

コニー「・・・・・できたーーーー!!!」

ベルトルト「!?びっくりした。急に大声出すなよ。」

コニー「ああ、すまん。あまりの完成度の高さについ興奮しちまってな。」

エレン「何、作ってたんだ?」


コニー「じゃーん♪これ、何だと思う?」

ジャン「棒。」

エレン「ツルツルの棒。」

ベルトルト「超大型マッチ棒。」

ライナー「おまっ、ふつう手作りするか!?そんな夜のお楽しみ道具。」

ジャン「マジかっ!!・・・・って長すぎだろう。もう俺は騙されねぇ。」

ライナー「ふっ、甘いぞジャン。たとえば食堂のテーブルの下での使用を想像してみろ。」

ジャン「・・・・・すごくイイ。///」

エレン「お前ら想像力が豊かだな。」

アルミン「これって・・・、もしかしてメジャーバトン?」

コニー「そうだ。さすがに棒切れじゃ格好つかないからな。」

マルコ「へぇ。よくできてるじゃないか。先端の楕円体とか上手に削ったね。」

コニー「小刀の扱いは得意だ。」

アルミン「サシャ、きっと喜ぶよ。世界に一つしかないメジャーバトンだ。」


ジャン「・・・コニーお前、これ何を削って作ったんだ?」

ベルトルト「長さといい質感といい・・・、どっかで見たことあるな。」

マルコ「まさか・・・。」

コニー「ん?対人格闘の棒術で使うやつを一本だけ拝借した。」

アルミン「拝借って・・・、許可とったの?」

コニー「いや、勝手に取ってきた。一本ぐらい構わんだろ。」

エレン「駄目だろ。不足があったら備品管理係が教官にどやされるぞ。」

ベルトルト「盗ってから数日経ってるから、すでに手遅れかもしれないけど。」

アルミン「今からでも教官に正直に話すべきだよ。」

コニー「えー、やだよ。怒られたくねぇし。せっかく作ったのに取り上げられたらどうすんだよ。」


ジャン「コニー、お前馬鹿だろ。盗んだもんプレゼントされて喜ぶ女がどこにいるんだよ。」

コニー「別にプレゼントとかそんなんじゃねぇし。」

アルミン「でも元が盗品と分かったらサシャ悲しむよ。」

コニー「・・・そうか・・・。あーーー、どうすりゃいいんだよ。」

ジャン「明日、俺が一緒に教官のところ行ってやるよ。事情を説明すりゃ分かってもらえるだろ。」

コニー「いいのか?ジャン。」

ジャン「ああ。恋する男の気持ちは痛いほど分かるからな。」

コニー「だーかーらー、そんなんじゃねぇって。」


―女子宿舎

ミーナ「唇が痛いよー。」

ハンナ「私も。口の周りの筋肉がつりそうだよ。」

クリスタ「二人ともお疲れ様。ファイフに慣れるまで大変そうだね。」

サシャ「でも、すごく上手になってますよ。ちゃんと曲に聞こえるようになりましたから。」

ミーナ「あはは。最初はひどかったもんね。」

ハンナ「サシャも棒切れ回すのすごく上手になったね。」

サシャ「はい。たくさん練習しました。おかげで手が豆だらけです。」

クリスタ「でも、いつまでも棒切れで練習するわけにはいかないよね。」

サシャ「大丈夫です。今度もっと形のいいやつ森で探してきます。」


クリスタ「どっかで安く売ってないかな・・・。そうだ、今度街でるから探してみるね。」

ユミル「また街に行くのか?」

クリスタ「うん。」

ユミル「誰と?」

クリスタ「マルコとだけど。」

ミーナ「二人で?」

クリスタ「今のところ。」

ハンナ「それって、デート?」

クリスタ「違うよ。何か楽しいダンスを知らないか楽器屋さんに行って尋ねるの。」

ミーナ「ダンス?」

クリスタ「うん。ほらチャリティーコンサート開きたいなって話を前にしたでしょ。

     できるだけたくさんの仲間にステージに立ってもらいたいんだ。

     それで何かいいダンスはないかなって探してるの。そういうダンス知らないかな?」


ハンナ「うーん、踊ったことすらないよ。」

ミーナ「私も。ダンスって見たことがない。」

クリスタ「そっか・・・。」

ユミル「楽しいかどうかは知らんが、踊りを教えてくれるババァなら心当たりあるぜ。」

クリスタ「ほんと?」

ユミル「ちょっと前までヴァイオリン工房に通ってただろ。

    そこのオヤジのお袋さんってのが、大昔から壁外にあった踊りってのを伝承してるらしい。

    オヤジはヴァイオリンのことフィドルって変わった呼び方するし。

    多分どっかの民俗の末裔なんだろうな。」


クリスタ「ユミル、一緒に街へ行ってくれない?工房のおじさん紹介してよ。」

ユミル「私とクリスタの二人ならいいぜ。」

クリスタ「イジワル言わないでよ・・・・。」シュン

ユミル「・・・まぁ、マルコに教わった工房だしな。しょうがない。三人で行くか。」

クリスタ「ありがとう。ユミル大好き。」ギュッ

ユミル「うんうん。訓練兵卒業したら結婚しような。」ナデナデ


―翌日 訓練終了後 

夕焼け空の下、コニーとジャンは演習場を走っていた。

ジャン「ちっ、何で俺まで処罰されんだよ。」

コニー「わりぃな、ジャン。でもお前が庇ってくれたからメジャーバトン取り上げられずに済んだ。

    ありがとな。」

ジャン「ああ、一生オレ様に感謝しろよ。」

コニー「営倉行きも覚悟してたけど、意外と教官優しかったな。」

ジャン「そうか?飯抜き50周だぜ。鬼だろ。」

コニー「ジャンも優しいんだな。もっと自己中な奴だと思ってた。」

ジャン「はっ、これが憲兵団行きに響いたらどう責任とってくれんだよ。」

コニー「それが分かってて付き合ってくれたんだろ。お前、いい奴だ。」


ジャン「はっ、野郎に褒められても嬉しくねぇよ。」

コニー「ミカサにもお前の良さが伝わるといいな。」

ジャン「うっせぇよ。それよりコニー、お前やっぱりサシャが好きだろう。」

コニー「何でだよ。」

ジャン「何日もかけて木の棒削るなんて、そんなめんどくせぇこと普通しねぇだろ。」

コニー「サシャには世話になってるからな。ありがとうの代わりだ。」

ジャン「礼なんて口で言えば済むだろ。ほら認めちまえよ、好きだって。」

コニー「もー、さっきから何なんだよ。お前、恋バナ好きの女子かよ。」

ジャン「俺は報われない片思い野郎を1人でも増やしたいだけだ。」

コニー「お前サイテーだ。やっぱり全然いい奴じゃねーな。」


ジャン「コニー、お前は自分で気付いてないだけでサシャのことが好きなんだよ。」

コニー「何回もしつけぇよ。洗脳する気か。」

ジャン「ああ、走り終わるまでずっと言ってやる。お前はサシャが好き。」

コニー「違う。うっとしいな、俺もう先行くし。」ダッシュ

ジャン「あっ、待ちやがれ。お前はサシャが好きなんだよ。」

コニー「好きじゃねぇ。」

ジャン「好きなんだ!!!」

コニー「好きじゃねぇ!!!」

ジャン「大好きだ!!!!」

コニー「やめてくれ!!!!」


―演習場の外れ

アニ「なにアレ?」

ミカサ「ジャンが大声で好きだと叫びながら、コニーを追いかけている。」

サシャ「夕焼け空の下、青春ですね。」

ミーナ「思わず何かに目覚めてしまいそう・・・・・・ハッ、だめだめ。」ブンブンブン

ユミル「ノーマルだろうがゲイだろうが本人の自由だ。放っとけ。」

クリスタ「そうだね。コニー、頑張って逃げてねー。」


―翌日 第三音楽室

ガラッ

コニー「よう。」

サシャ「あっ、コニー。珍しく早いですね。今日も練習頑張りますよ。」

コニー「サシャあのさ・・・・・、コレやる。」

コニー(あいつらご丁寧にラッピングしてリボンまで付けやがって・・・。渡しづれぇ。)

サシャ「何ですか?おお!これは噂に聞くプレゼントってやつですね。」

コニー「いいから早く開けろよ。」

サシャ「食べられる物だといいですねー。じゃ、遠慮なく。」ビリビリビリ

コニー(豪快に破いたな。ラッピングしてもサシャの前じゃ意味ねぇっての。)


サシャ「・・・・・・・・」ウルウル

コニー「サ、サシャ?」

サシャ「・・・・初めてです。」グスッ

コニー「何が?」

サシャ「食べ物以外を人から頂くのは・・・。」グスッ

コニー「お前の場合、ほぼ奪ってるけどな。」

サシャ「食べ物は食べたら無くなります。」グスッ

コニー「そりゃそうだ。」

サシャ「・・・でも、このバトンはずっと残ります。」グスッ

コニー「食えないしな。」

サシャ「・・・一生の宝物ですよ。コニー、ありがとうです。」ニコッ

コニー「あ、ああ。」///

コニー(涙目で微笑むとかカワイすぎるだろうが・・・、ハッ、やべぇ、ジャンに洗脳されてる)


サシャ「でも、こんなのよく見つけましたね。どこで売ってたんですか?」

コニー「へへん、オレ様の手作りだ。」

サシャ「すごいです!コニーって意外と器用なんですね。」

コニー「ガキの頃から小刀で木を削って遊んでたからな。」

ガラッ

ミーナ「二人とも早いねー。」

サシャ「あっ、ミーナ見てください。コニー作のメジャーバトンです。」

ミーナ「うそ!?わー、すごい上手。コニーやるじゃん。」

コニー「だろ?もっと褒めてくれ。」

サシャ「うん。コニーは偉いです。」

ミーナ「このバトンがあれば、立派なドラムメジャーに見えるね。」

サシャ「駄目ですよ。宝物だから使いません。大事にしまっておきます。」

ミーナ「えっ?」

コニー「お前なぁ、オレが作った意味ねぇじゃん。ほら、出せよ。使えよ。」グイグイ

サシャ「いーやーでーすー。」グイグイ


―休日

ユミル「オヤジ、邪魔するぜ。」

オヤジ「おぉ、ユミル久しぶりだな。元気しとったか。」

クリスタ「ここがヴァイオリン工房か・・・。木の優しい香りがする。」

マルコ「おじさん、お久しぶりです。」

オヤジ「マルコじゃないか。そうそう、ユミルにこの工房紹介してくれてありがとうな。

    ぶっきらぼうだが真面目に働くいい娘だよ。」

ユミル「ふんっ、おだてても二度と手伝わねぇからな。」

オヤジ「はっはっはっ、あいかわらず素直じゃないな。ところで今日は何の用だ?」


ユミル「前にオヤジのお袋さんが、どっかの踊りを継承してるとかって話してただろ。」

マルコ「そのダンスがどんなものなのか知りたくて。」

オヤジ「また、珍しいものに興味持ったな。まぁお袋は喜ぶが。それより、そちらのお嬢さんは?」

クリスタ「クリスタと言います。マルコたちと同じ訓練兵団に所属してます。」

オヤジ「こんな可愛い娘さんに兵隊やらせとるのか。世の中どうかしとるのぉ。

    まぁ、わしが嘆いてもどうにもならんがな。

    三人とも付いておいで。この工房の奥が住居で、そこにお袋はいるから。」


ガチャッ

オヤジ「お袋、お客さんだ。自慢のダンスを教えて欲しいんだとさ。」

婆さん「まあまあ、よく来なすった。ささっ、そこの椅子にかけんしゃい。」

オヤジ「じゃあ、わしは仕事に戻るから、後は好きに話聞いてけ。」

マルコ「ありがとうございます。」

パタン

クリスタ「お邪魔します。」

ユミル「久しぶりだな婆さん。」

婆さん「おお、元気そうじゃないか。もう工房では働かんのか?」

ユミル「代金の分はきっちり働いたからな。もうゴメンだ。」

マルコ「あの、突然の訪問ですみません。

    今日訪ねたのは、お婆さんが知っているダンスについて伺いたくて。」

婆さん「そうか、そうか。関心な若者もおるんじゃのぉ。

    話せば長くなるが――――――――」


お婆さんの話は想像以上に長かった。

要約すると、

・お婆さんはケルト系民俗の末裔でアイリッシュステップダンスなるものを継承している。

・このダンスは足を踏みならすタップダンスのようなもので、多人数で踊るのに向いている。

・代々一族で受け継いできたが後継者がおらず、自分の代で潰える覚悟をしていた。

・受け継いでくれる若者がいるなら喜んで教えたい。

マルコたちの探しているダンスにぴったりと当てはまった。


マルコ「ではダンスメンバーが集まったら、講師をお願いできますか?」

婆さん「もちろんじゃ。踊りと言ってもハードじゃからな生きのいい奴らを集めてくれ。

    あとは・・、そうじゃのぉ、リードダンサーとして美男美女が1人づつ欲しいのぉ。」

ユミル「むちゃ言うな婆さん。踊り手集めるだけでも大変だっつーの。」

婆さん「ほれ、そこのお嬢さんでもええんじゃぞ。」

クリスタ「いえ、私は・・・、他にやることがあってダンスはできないんです。すみません。」

婆さん「そうか、残念じゃのぉ。」

マルコ「できるだけ努力はしてみます。こちらの準備が整ったら、また改めてお願いに伺います。」

ユミル「じゃあな、婆さん。くたばるなよ。」

クリスタ「貴重なお話ありがとうございました。失礼します。」ペコリ

婆さん「気をつけてなー。」


工房を後にし、帰路につく。

ユミル「あはははは、美男、美女って誰だよ。私らの団にそんなんいたか?」

クリスタ「ユミル笑いすぎ。」

マルコ「うーん、きれいな子はいるけど、踊ってくれるとは限らないしね。」

ユミル「へー、誰だよ。きれいな子って。」

マルコ「・・・アニとか?」

ユミル「ヒュ~♪お前、ああいうのがタイプなんだ。意外だな。」

マルコ「違うよ。一般的に見てきれいだってこと。」

クリスタ「そうだよね。アニは金髪碧眼で象牙のような白い肌。おとぎ話に出てくるお姫様みたい。」

ユミル「お前、なに自画自賛してんだよ。その通りだけど。」

クリスタ「えっ?」

マルコ「ははっ、クリスタも金髪、碧眼、白い肌だろ。」

クリスタ「やだ、そんなつもりで言ったんじゃないのに・・・///」


ユミル「クリスタはきれい系っていうよりカワイイ系だな。アニとは全然違うし。」

クリスタ「でもアニはきれいだよ。美女の部類に入るよ。」
    
ユミル「けど、あいつは踊らねぇよ。」

マルコ「やっぱりそう思うよな。」

ユミル「集まった女の中から一番まともなの選べばいいじゃん。」

クリスタ「私アニに頼むだけ頼んでみる。もしかしたら引き受けてくれるかもしれないし。」

ユミル「やるだけ無駄じゃね。それより美男はどこにいんだよ。」

マルコ「・・・ジャンとか。」

ユミル「美男って分かってるか。見目麗しい男だぞ。」


マルコ「いや、ジャンなら頼まなくても自分から名乗りを上げてくれそうだから、楽かなーって。」

ユミル「だったらベルトルさんに頼めよ。まだそっちのが男前だ。」

マルコ「ベルトルトは絶対に断るって。性格的に人前で踊るとか向いてないよ。」

クリスタ「声かけてみようよ。勝手に決め付けるのはよくない。」

マルコ「そうだね・・・。一応頼んでみるよ。」

クリスタ「そうそう。軍楽隊のお披露目って明日だよね。」

マルコ「うん。今日は猛特訓してると思う。帰ったら様子見にいこう。」

クリスタ「じゃあ、何か差し入れ買って帰らなきゃ。」


―演習場

マルコ「おつかれー。頑張ってるね。」

サシャ「あっ、マルコにクリスタ。」

アルミン「ちょっと休憩しようか。僕もうクタクタだし。」

フランツ「俺も。ちょっとドラム降ろしたい。肩痛い。」

ミーナ「私も。喉かわいちゃった。」

サシャ「しょうがないですねぇ。はーい、みなさん休憩でーす。10分後に開始しまーす。」

クリスタ「ふふっ。サシャが仕切ってるんだ。」

サシャ「そうですよ。なんたってドラムメジャーですから。」

マルコ「コニー製のメジャーバトンちゃんと使ってるんだ。」

サシャ「はい。コニーがもう一本作る約束してくれたんで、心置きなく使ってます。」

コニー「いつになるか分からんがな。」

マルコ「もう備品盗むなよ。」ヒソヒソ

コニー「わかってるよ。」ヒソヒソ


クリスタ「これ、みんなに差し入れ。召し上がって下さいな。」

サシャ「何ですかコレ?」

クリスタ「氷砂糖。体力回復には甘いものが一番。」

サシャ「どれどれ・・・パクッ、!!あんまーーーーい!おいしいーーーー!」

コニー「オレにも寄こせ。」

サシャ「はい、どうぞ。みんなに配って来ますねー。」

アルミン「砂糖なんて貴重なのに。高かったでしょ。気を使わせてごめんね。」

クリスタ「いいの。マルコと割り勘だし。みんな頑張ってるから少しでも役に立ちたかったの。」

マルコ「今日は最終調整かな。」

アルミン「うん。隊形変化の確認と歩き方や姿勢を統一する練習してた。」


クリスタ「結局、何の曲を演奏することになったの?」

アルミン「『ブリティッシュ・グレナディアーズ(The British Grenadiers)』っていう昔の行進曲。

     あと『忘れえぬ乙女(the girl I left Behind Me)』っていう行進曲も。」

クリスタ「すごいね。二曲も仕上げたんだ。」

アルミン「うん。一曲じゃ短くてなんかマヌケでさ。

     リピートしようかとも思ったんだけど、どうせならもう一曲挑戦しちゃえって。」

クリスタ「練習見学していいかな?聴いてみたい。」

アルミン「もちろんだよ。むしろおかしな所がないかチェックしててね。」

マルコ「了解。しっかり見とくよ。」

サシャ「はーい、みなさん休憩終わりですよー。位置について下さーい。」

それぞれが配置につくのを確認すると、サシャのメジャーバトンが振られた。


♪♪♪~~♪♪~~♪♪~

クリスタ「・・・・すごいね。きっちり動きが揃ってる。」

マルコ「うん。移動しながらって難しいはずなのに、少しも演奏がおろそかになってない。」

クリスタ「これなら明日は大丈夫そうだね。」

マルコ「問題は・・・、ダズのビューゲルだけかな・・・。」


―男子宿舎

ジャン「ダズ、びびってんじゃねぇよ。」

ダズ「やっぱり俺には無理だよ・・・。」ガクブル

エレン「大丈夫だって。ちゃんと吹けてるし。」

ダズ「でも、みんなの前で、・・・・キース教官の前で吹くんだろ・・・。」ガクブル

ベルトルト「軍楽隊の行進開始の合図にビューゲル吹くって約束したんだろう?」

ダズ「あれはアルミンとコニーが勝手に決めたんだよ。俺は知らない。」ガクブル

エレン「知らないって無責任だな。ダズが了解してんの俺見たぞ。」

ダズ「俺は押しの強い人間には弱いんだよ。簡単に押し切られるんだよ。」ガクブル

ジャン「じゃあ、何のために練習してたんだよ。自己満足のためか?

    違うだろ。お前を馬鹿にしてきた連中を、見返してやりたいんだろうが。」

ダズ「そうだ。俺だってやればできるって所を見せたくて努力したんだ。

   でも、大勢の前で吹くことを考えたら震えが止まらないんだよ・・・・。」ガクブル


ライナー「ダズ、お前格好つけようとしてるだろ。」

ダズ「えっ?」ガクブル

ライナー「ノーミスで完璧に吹いたところでダズはダズだ。

     逆を言えば、ボロボロの演奏で終わったとしてもダズなんだよ。

     お前はお前以上でもないし以下でもない。気負うな。」

ダズ「・・・・・・」

エレン「ライナー、俺にはお前の言ってる意味がよく分からん。」

ジャン「俺もだ。なんかの哲学か?」

ライナー「俺の持論だが、ありのままの自分をさらけ出せってことだ。

     他人がどう思おうが関係ねぇ。これが自分なんだと開き直れ。

     丸裸の俺を見やがれこの野郎ってな。」

エレン「最終的には裸見せたいだけじゃん。」

ジャン「お前はコニー並の馬鹿か。喩えだろうが。」


ベルトルト「でも、ダズの不安とか緊張、僕も分かるよ。」

エレン「そういえばベルトルトも発表会の時、ガクブルしてたもんな。」

ベルトルト「うん。でもクリスタが、いつも通りにやればいいって手を握ってくれて。

      あれでかなり気持ちが楽になったよ。」

ライナー「そうだったな・・・。しょうがねぇ、ダズ、俺が抱きしめてやる。」

ダズ「いや、意味が分からないし。」


ライナー「遠慮するな。俺の熱い抱擁を受けやがれ。」ムギュゥゥゥ

ダズ「うわぁぁぁぁ!!ギブ・・・ギブ!!!マジで背骨が折れる!!」

ジャン「ちっ、ダズ、俺も抱きしめてやるよ。」ムギュゥゥゥ

ダズ「ちょっとやめろよ!!」

ベルトルト「あはは。僕も。」ムギュゥゥゥ

ダズ「だから何でだよ!!」

エレン「そんなん仲間だからに決まってんだろ!!」ムギュゥゥゥ

ダズ「!?・・・・・やめろよ、ホントに・・・」グスッ

ライナー「なっ、震え止まっただろ。心配すんな。なるようにしかならん。」

ダズ「ああ。明日、ありのままの俺を見ててくれ。」


―翌日 演習場

アルミン「キース教官。先日お話した軍楽隊が無事仕上がりました。今から披露させて頂きます。」

キース「出来如何によっては廃止するかもしれんぞ。それでもやるのか?アルレルト訓練兵。」

アルミン「出来次第では、こちらの要望を飲んで下さる約束をしています。」

キース「いいだろう。貴様の作った軍楽隊見せてみろ。」

アルミン「はっ。」

軍楽隊のメンバーは配置につき楽器を構えた。

サシャの合図でダズのビューゲルが青空に鳴り響く。進軍ラッパの号令音。

甲高い響きの余韻が消えると、軍楽隊の行進が始まった。

軽快なリズム。楽しげなファイフの調べ。

無駄の無い統制のとれた動きに、見ていた訓練兵たちは釘付けになった。


演奏が終わると、大きな拍手と歓声が起こった。

アルミン「キース教官。判断をお願いします。」

キース「・・・この軍楽隊はまだ上を目指せるのか?」

アルミン「はっ。楽器の数を増やすことによって、さらに迫力のある演奏が可能になります。

     しかし、楽器を購入する予算が必要であります。」

キース「そうか・・・。アルレルト訓練兵。

    貴様の作った軍楽隊を104期訓練兵団軍楽隊として正式に承認してやる。

    活動の場は今のところ無いが、そのうち必要とされるかもしれん。

    資金集めについては追って連絡する。以上だ。」

アルミン「はっ、ありがとうございます!!」

わぁぁぁぁぁぁぁ

軍楽隊員から喜びの声があがった。

ある者は肩を組み、ある者は抱き合い、込み上げてくる嬉しさを分かち合った。

壁内初の軍楽隊が誕生した瞬間だった。

ここまでです。もう進撃である必要が無くなってきたのは分かってるから。
自己満足だよ。スマン。
続きは後日。

>>1です。お待たせしてすみません。
みなさんの温かいレスにマジ泣きしそうになったよ。
マーチングかじったこともないので描写避けたんだけど・・・
がんばってみます。


―訓練終了後 第三音楽室

トーマス「いやー、終わった終わった。」

ナック「これでしばらくはのんびりできるぜ。」

サシャ「何言ってるんですか。のんびりしている暇はないですよ。」

サムエル「そうなのか?」

サシャ「そうです。今度はステージの上で披露するんです。まだ決まってないですけど。」

ミリウス「マジかよ。アルミンの野望は底知れねぇな。」

ナック「じゃ決まったら教えてくれ。その時は練習に参加するから。俺はしばらく休む。」

ミーナ「駄目だよ。勝手に休んじゃ。せっかくファイフ隊の息が揃ってきたんだから。」

トーマス「まあまあ。連日の猛特訓でみんな疲れてるんだ。休息も必要だよ。」


フランツ「だけど、教官に認められて良かったじゃないか。一歩前進だ。」

ハンナ「うん。みんな頑張ったもんね。特にフランツのドラム音は私の心に響いたよ。」

フランツ「ハンナの奏でるファイフも僕には一際輝いて聴こえたよ。」

ハンナ「やだ、フランツったら。」///

サムエル「音揃えてんだから、どれが誰の音とか分からないだろうが。」

コニー「馬鹿夫婦は放っとこうぜ。でも、みんな同じメロディーを吹かなくてもいいかもな。」

ミリウス「どういうことだ?」

コニー「うーんと何て言えばいいのかな、ファイフ隊も分かれて別々の音を出すっていうか・・・。」

ミーナ「メロディーパートを分けてハーモニーにしたいんだね。」

コニー「そうだ。よく分からんが多分それ。」


ナック「面倒なこと言い出すなよ。今のままでいいじゃねぇか。」

サシャ「ナックは消極的ですね。軍楽隊、嫌になりましたか?」

ナック「そうじゃねぇけど。なんつーか、そこまで頑張る必要があるのかなって。

    俺は暇つぶしで軍楽隊に参加しただけで、音楽に対して元々興味も熱意もないから。」

トーマス「冷めてるなぁ。みんなから拍手もらって何とも思わなかったのか?」

ナック「そりゃ褒められたら嬉しいよ。だが努力した割りに、得られた達成感は少なかった。」

ミリウス「まあ、俺ら冷やかし程度で入隊したからな。お前らと温度差があるのは確かだ。」

サシャ「そんな・・・。みんな楽しんでくれてると思ってました・・・。」

ナック「サシャは、はしゃぎ過ぎなんだよ。周りを見ずに突っ走りやがって。」

サシャ「ごめんなさい・・・。」

サムエル「お前そんな言い方はないだろう。サシャは一生懸命やってるだろ。

     引っ張ってくれる奴がいないと、俺らなんかまとまんねぇよ。」

ナック「あれー、随分とサシャを庇うんだな。」

サムエル「お前の言い草が気に食わないだけだ。」


ミリウス「俺は何のために軍楽隊やってるのか分からなくなってきた。」

コニー「何のためって、俺は憲兵団に入るためだが。」

ミリウス「コニーは憲兵団狙える位置にいるからな。だが俺たちはどう転んでも10位以内は無理だ。」

ナック「夢見すぎなんだよ、アルミンは。優秀な奴は他人も自分と同じようにできると勘違いするからな。

    あいにく俺は出来の悪いダメ人間なんでな。アルミンの期待する駒にはなれん。」

ミーナ「駒だなんて・・・。アルミンはそんなふうに私たちのこと思ってないよ。」

ナック「そりゃ、ミーナはアルミンたち成績上位者と仲良いからな。

    ちょっと前までは、おバカ女たちとつるんでたのに。

    劣等生のお前がどういう手を使って取り入ったのかは知らんがな。」

ミーナ「!?・・・・ひどいよ・・・そんなふうに私のこと見てたんだ・・・」ジワッ

トーマス「ナック、いい加減にしろよ!軍楽隊に不満があるならはっきり言えよ!

     ミーナに八つ当たりするな!」

ナック「言っていいのかよ。お前らの友達ごっこを壊さねぇように今まで我慢してきてやったのに!」

フランツ「まぁまぁ。二人とも落ち着いて。ナックは疲れてイライラしてるだけだよ。」


ハンナ「喧嘩はやめてよ。今日はおめでたい日なんだから。仲良くしようよ。」

ナック「仲良く?冗談じゃねぇ。何でもかんでもアルミンのやつ勝手に決めやがって。

    ステージで演奏?聞いてねぇっての。」

ミリウス「少しは俺らの考えも聞いてほしいよな。偉そうに指図して何様だよ。」

コニー「あーーーー!!!もう、面倒くせぇ!やる気のない奴は辞めちまえ!」

サシャ「!?コニー、何を言ってるんですか。そんなのダメです。」

コニー「いいんだよ。軍楽隊に入るのも辞めるのも本人の自由だろ。

    楽しくないんだったら辞めればいい。」

ナック「ああ。そうさせてもらう。」ガタッ

ミリウス「俺も・・・・。」ガタッ

ミーナ「ちょっと二人とも待ってよ。」


ガラッ

アルミン「遅くなってごめん。ダズにお礼言いたくて探してたらこんな時間になっちゃった。」

ナック「・・・・・」スタスタスタ

ミリウス「・・・・・」スタスタスタ

アルミン「ねえ、二人ともどうしたの?どこ行くんだよ。」

コニー「放っとけ。」

アルミン「放っとけって・・・・何かあったの?」

フランツ「あの二人ちょっと調子悪いみたいでさ。今日は帰るって。」アセアセ

ハンナ「そうそう。明日になったらきっと元気になってるよ。」アセアセ

トーマス「お前ら、ごまかしてもしょうがないだろ。」

サムエル「・・・あの二人、軍楽隊を抜けるって。」

アルミン「そんな!?急になんで?」

サシャ「・・・・私がいけないんです。みんなのことちゃんと見てなかったから。ごめんなさい。」

サムエル「サシャはちっとも悪くないだろ。あいつらが勝手すぎるんだ。」

アルミン「本当に何があったんだ?詳しく話してくれないか。」


―第二音楽室

マルコ「そういうわけでさ、男声合唱団としてステージで歌ってもらいたいんだ。」

ライナー「俺は構わんが・・・・、お前らはどうだ。やる気あるのか?」

「アニキと一緒ならどこででも歌うぜ。」

「でっかい花火打ち上げてやるぜ。」

「伝説に残るステージにしてやる。」

ライナー「だそうだ。出演、受けてやるよ。」

マルコ「まだ日程は決まってないんだけど・・・。

    というか開催できるかどうかも不確定で申し訳ないんだけどさ。

    合唱の練習だけは始めてもらっていいかな?準備は早いに越したことはないから。」

ライナー「まあ、いつもここで歌っているからな。問題ないだろう。」

マルコ「ありがとう。助かるよ。」

ライナー「しかし男声合唱団って何か堅いな。

     ステージデビューするからには、それっぽいチーム名が欲しいところだ。」

マルコ「ははっ、それはライナーたちで自由に決めていいよ。


ライナー「お前ら、何か良い呼び名を思いつかないか?」

「ライナー合唱団とか?」

「ライナー・ブラウンと愉快な仲間達ってどうよ。」

「ライナー部隊?ブラウン一家?」

ライナー「おいおい、俺の名前を入れる必要はないぞ。こう、男らしい感じの何か・・・。

     そうだ。お前ら、俺たちは何だ?」

「俺たちは・・・・」

「そうだった、いつもアニキが言っている。」

「俺たちは戦士だ。」

ライナー「正解だ。戦士の合唱団だ。・・・マルコ、これをカッコ良く言い換えてくれ。」

マルコ「えっ?無茶ぶりするなぁ・・・。うーん・・・・。」

ライナー「どうだ?男のロマンが溢れた感じで頼む。」


マルコ「・・・メンネルコール・デス・クリーガーズ(Mannerchor des Kriegers)とか・・・。」

「やべっ、超かっこいい。」

「意味はまったく分かんねぇけど、何か強そうだ。」

ライナー「どういう意味だそれ?」

マルコ「そのまんま。メンネルコールが男声合唱団のことで、クリーガーズが戦士たち。

    壁外に昔あったドイツって国の言葉。」

ライナー「前々からマルコは頭の良い奴だと思ってたが、壁外の言葉まで話せるのか。」

マルコ「話せないよ。壁外から伝わってきた歌曲ってドイツ語で書かれたものが結構あるんだ。

    だから、たまたま知ってただけ。」


ライナー「そうか。・・・‘メンネルコール・デス・クリーガーズ’、ちょっと長いな。

     よし。お前ら、俺たちは今日から‘デス・クリーガーズ’だ。文句のある奴いるか?」

「あるわけないだろ。」

「アニキの意見に従うだけだぜ。」

「俺たち、デス・クリーガーズ!!」

ライナー「そうだ。略して‘デスクリ’。マルコ、協力感謝する。」

マルコ「まぁ、ライナー達が気に入ったんならいいけどさ・・・。」

ライナー「あとはステージで歌う曲決めないとな。俺たちの十八番は『俺の尻を舐めろ』だが。」

マルコ「うん、知ってる。でも、それ以外にしような。」


―女子宿舎

クリスタ「アニ、お願い。リードダンサー引き受けて。」

アニ「だからさあ、何回頼まれても私はやらないから。」

クリスタ「アニしかいないの。一生のお願い。この通り。」ペコリ

アニ「いい加減諦めてよ。頭下げても無駄だから。」

クリスタ「だって運動神経の良い美人ってアニしかいないんだもん。」

アニ「ミカサに頼めば?」

ミカサ「・・・私はリズム感がないので、ダンスには向かない。」

アニ「サシャは?」

クリスタ「サシャは軍楽隊で手一杯なの。」

アニ「じゃあ、クリスタが自分でやればいいでしょ。」

クリスタ「私は伴奏とか他に役目があって・・・。

     自分ができないことを人に頼むのは心苦しいんだけど、アニだけが頼りなの。」


アニ「そもそも何でダンスなんかやるのさ?得意な奴でもいるの?」

クリスタ「ううん。みんな素人だよ。提案したマルコの意図は詳しく知らないけど・・・。

     私ね、訓練兵になって周りを見て思ったんだ。

     ここにいるのは、他人を追い落としてでも憲兵団入りを目指すギスギスした人たちと、

     無気力で将来を悲観した人たちばかりだなって。

     もちろん中には立派な志のある人たちもいるけど・・・、そういう人は僅かだよね。

     何かの縁でせっかく同期になったんだから、もっとみんな仲良くなれたらいいなって。

     一緒に何かを成し遂げたらきっと楽しいだろうなって。」

アニ「ご立派だね。あいにくと私は人生を悲観してないし、他人と馴れ合う気もないから。」

クリスタ「アニはそれでいいの?私アニが笑っているとこ見たことないよ。」

アニ「大きなお世話。無愛想なのは生まれつきだよ。」


クリスタ「ねぇ知ってる?人間は笑うことを神様から許された唯一の動物なんだって。

     こんな世の中だけど、私は人間らしく笑っていたいんだ。」

アニ「・・・・人間らしく、ね。」

ミカサ「いい加減引き受けてあげたら。気持ちの問題だけで、できない理由は無いんでしょう?」

アニ「・・・・はぁ、アンタたち面倒くさい。ちょっと散歩に行ってくる。」

ガチャ バタン

クリスタ「逃げられちゃった。」

ユミル「だから言ったろ。アニは絶対に引き受けないって。」

クリスタ「でも、私も諦めないもん。」

ユミル「クリスタ・・・・、お前頑固だな・・・・。」


―翌朝 食堂

ミカサ「アルミン、どこか調子が悪いの?顔色が優れない。」

アルミン「・・・・何でもない。大丈夫だよ。」

エレン「昨晩、宿舎戻ってきてからずっとこの調子なんだよ。コニーも珍しく黙りこんでるし。

    軍楽隊で何かあったのか?」

ミカサ「そういえばサシャたちも元気がなかった。問題があるなら話して、アルミン。」

アルミン「心配してくれありがとう。でも、これは僕の問題だから・・・。」ガタッ

ミカサ「待って、アルミン。」

エレン「ミカサ、そっとしといてやろうぜ。」

ミカサ「でも・・・。」

エレン「今は話したくないんだろ。見守ってやろうぜ。」


―食堂掲示板前

マルコ「ダンサー募集のポスター貼ったよ。」

クリスタ「たくさん集まるといいな。それよりマルコはベルトルトに声かけた?」

マルコ「いや、まだだけど。クリスタは?」

クリスタ「アニにはやっぱり断られたよ。でも、まだまだアタックするんだ。」

マルコ「あんまりしつこいと嫌われるよ。」

クリスタ「うーーー、嫌われたくはないな。でも、もう一押しな気もするんだ。

     なんだかんだ言ってアニって優しいじゃない?」

マルコ「そうだね。でもその優しさにつけこんで、無理強いしちゃ駄目だよ。」

クリスタ「うん。気をつけるよ。」


―対人格闘訓練中

ユミル「なあ、アニ。今日は私と組まないか?」

アニ「やだ。」

ユミル「何でだよ。」

アニ「だって今まで一度も組んだことないじゃないか。何か裏があるに決まってる。」

ユミル「裏ねぇ、そりゃあるよ。じゃなきゃ、わざわざアニなんか誘わねぇし。」

アニ「一応聞いてあげる。どんな裏?」

ユミル「私が勝ったらリードダンサーやれ。アニが勝ったらクリスタを黙らせてやるよ。」

アニ「私にメリットがほとんどないじゃないか。」

ユミル「アニは強いだろ。ハンデをくれてやったと思え。」

アニ「はっ、馬鹿らしい。そんな勝負乗るわけないでしょ。」スタスタスタ・・・


ユミル「逃げんなよ。私はクリスタに早くお前のこと諦めさせたいんだよ。」

アニ「・・・どういうこと?」

ユミル「あいつ頑固だからな。ケジメをつけてやらないと、いつまでもうるさいぞ。」

アニ「あんたはクリスタが私に纏わりついているのが気に入らないんだね。」

ユミル「そうだ。だからアニの得意な分野で敢えて勝負を挑んでやってんだ。」

アニ「・・・しょうがないね。受けてやるよ。」

ユミル「さすが、アニ。じゃ場所変えようか。教官の目の届きにくいところへ。」スタスタスタ

アニ「どこでもいいけど。どうせ一瞬で終わるから。」スタスタスタ

ユミル「・・・この辺りだな。人が多くて目立ちにくい。」

アニ「ルールは?」

ユミル「何でもあり。で、降参するか再起不能になった方が負け。」

アニ「くたばる前に降参してね。」


ユミル「はいはい。・・・・じゃ、始めようか。」

ユミルが構えた瞬間、アニは左くるぶし目掛けて足払いにも似た蹴りを放つ。

ユミル(アニの得意技。計算通り・・・・)

ユミルはバックステップして蹴りをかわした。

アニから視線を離さないようさらに数歩下がり、

自分の後ろで棒術の訓練をしていた兵士から、使用していた棒を奪う。

ユミル「ちょっと借りるよ。」

「お、おい」

アニ「汚いね。」

ユミル「何でもありって言っただろ。」

アニ「わざわざここまで連れてきたのもそれが目的?」

ユミル「ああ。まともにやっても勝てる気がしないからな。」


アニはユミルを見据えつつ周囲を窺った。棒を使用している兵士は近くにはもういなかった。

棒の長さは約1m。ただでさえリーチ差があるのに、棒を持たれてはアニが圧倒的に不利だった。

ユミル(突きは間違いなく捕られるな。かといって打ちや払いが当たる間合いには入ってこないしな。)

アニ(棒の間合いにさえ入らなければ問題ない。けどこれじゃ膠着状態から抜け出せない。)

睨みあったままの二人の不穏な空気に周囲が気付き、ざわつき始めた。

ユミル(ちっ、騒がれる前に終わらせたかったが・・・。しょうがねぇ。)

アニ(・・・・来るっ。)

ユミルは大きく一歩間合いを詰めた。

踏み出したユミルの右足が地面に着地するのと同時に狙いを定めたアニのローキックがはいった。

アニ(くっ・・・・・)

しかし、アニが蹴っていたのはユミルの右足ではなく、地面につきたてられた棒だった。

ユミルは棒を軸にし、そのままアニ目掛けて後ろ回し蹴りを放った。

とっさにに両腕で頭をガードするアニ。

しかし片足立ちだったため、2mほど吹っ飛び地面に横倒しとなった。


ユミル「もらった!!」

頭上高く掲げた棒を、アニに向かって振り下ろした。

ガキッッッ!!!!!

ライナー「~~~~~~~ッッ!!」

ユミル「!?ライナー、何で割り込んでくるんだよ!!」

ユミルの渾身の一撃を右前腕でモロに受けとめ、ライナーは悶絶しのた打ち回った。

アニの方を見ると、クリスタが守るようにアニに覆い被さっていた。

アニを庇いに飛び出したクリスタを守ろうとライナーも出てきたのだろう。

ユミル「クリスタ!?お前そんなところにいちゃ危ないだろ。」

クリスタ「ユミルひどいよ。自分だけ武器もって一方的に・・・。こんなの訓練じゃないよ。」

ユミル「いや、訓練じゃないんだけどさ・・・。」

クリスタ「もう勝負はついてたじゃない!あんなのただの暴力だよ!ユミルの馬鹿!!」

ユミル「クリスタ・・・。」ショボン


クリスタ「アニ、大丈夫?」

アニ「ああ、私はね。それよりライナー心配してやってよ。」ヨイショ

ライナー「骨は折れてなさそうだ・・・俺も大丈夫だ。」

クリスタ「ちゃんと医務室行って診てもらお。私も一緒に行くから。」

ライナー「あ、ああ。」

クリスタ「庇ってくれてありがとう。ライナーは優しいね。」ニコッ

ライナー「いや、当然のことをしたまでだ・・・///」(結婚しよ)


―自由時間 第三音楽室

ミーナ「やっぱり来ないね。」

トーマス「まぁ、あんなふうに出て行ったんだ。顔出すのは気恥ずかしいだろう。」

ハンナ「本当に辞めたのかな・・・。せっかく上手になったのに・・・。」

フランツ「悲しまないでくれ、ハンナ。僕が説得してみせるから。」

ハンナ「フランツ・・・頼もしいわ。」///

サムエル「説得ねぇ。今日あいつらと話してみたけどさ、戻る気は無いってはっきり言われたよ。」

コニー「もういいじゃねぇか。新しい団員募集しようぜ。」

アルミン「それは駄目だ!!」

コニー「何でだよ。」

アルミン「新しい団員を迎えたら、ナックとミリウスの戻ってくる場所が無くなってしまう。」

コニー「そんな場所必要ねぇじゃん。あいつら戻ってくる気がねぇんだから。」


トーマス「アルミンは二人に戻ってもらいたいんだな?」

アルミン「うん。僕のせいだから。僕が辞めたら二人は戻って来るかな・・・。」

コニー「お前、何言ってんだよ!!冗談じゃねぇぞ!!」

アルミン「うん。分かってる。みんなを巻き込んでおいて逃げるわけにはいかないよね。

     最後の1人になっても僕は軍楽隊を続ける責任がある。

     ただ・・・、僕はつくづく指揮官向きじゃないことを痛感したよ。」

ミーナ「アルミン・・・。」

アルミン「僕は一度目標を持ったら周りが見えないくらい集中しちゃうから。

     軍楽隊を成功させるための計画や手段ばかりに気を取られて、

     一番大切な仲間のことを考える余裕がなかった。」

サシャ「アルミンだけのせいじゃないですよ。私だって・・・。」

アルミン「僕は自分が指揮官向きじゃないって分かってたから逃げたんだ。

     ドラムメジャーの役、サシャに押し付けて・・・。

     サシャだって指揮官向きじゃないのにね・・・。ごめん。」

サシャ「謝らないで下さい。私、ドラムメジャーに任命されて嬉しかったんですから。」


サムエル「結局、気の回るまとめ役が不在だったってのが根本的な問題なんだな。」

トーマス「でもさ、不満の出ない組織なんてないよ。何にでもケチつける人間はいるよ。」

アルミン「そうだとしても、みんなの意見に耳を傾けるべきだったんだ。

     僕が軍楽隊を作ったのは、たくさんの人に音楽に触れてもらいたかったからだ。

     辛い訓練生活を少しでも楽しくできればって、それだけなんだ。

     だから、嫌な思いをさせたまま軍楽隊を辞めさせるわけにはいかないよ。」

コニー「もう!辛気臭ぇな。ごちゃごちゃ難しいこと話やがって。俺をのけ者にするな。」

ミーナ「うん。ここで私たちが暗くなっても仕方がないよ。

    二人が戻ってきてくれるのを信じて待とうよ、ね。」

サシャ「・・・そうですね。じゃあいつも通り練習を始めましょう。」


―演習場の外れ

アニ(夜の散歩は気持ちいいね。

   最近は出歩いてるやつも少ないし、そろそろ見回りやめてもいいかな。)

♪~~♪♪~~♪~~

アニ(何の音だろう・・・。ファイフ?でも、もっと低くこもった音・・・。)

音のする方へ歩みを進めると、ユミルが積み上げられた資材の上に座っていた。

アニ「あんた、こんな夜中にそんなところで何してんのさ。」

ユミル「そりゃお互い様だろ。」

アニ「それ何?」

ユミル「これ?クリスタにもらったオカリナ。

アニに謝るまで部屋に戻ってくるなって追い出されてさ。暇つぶしのお供に持ってきた。」

アニ「じゃ、私を待ってたんだ。」

ユミル「そ。アニは夜になるといっつも徘徊してるから、外にいれば必ず会えると思ってさ。」

アニ「徘徊って・・・、ただの散歩なんだけど。」


ユミル「散歩ねぇ。まぁ、宿舎に居たくない気持ちは分かるぜ。

    頭の悪い女どもがやたらハイテンションできゃぴきゃぴ騒いでるからな。

    次から次にくだらないことしゃべり続けて、何が面白いんだか。」

アニ「そういう子が普通だろ。一般的に見たらアンタや私の方がおかしいんだよ。」

ユミル「意外と寛容だな。じゃ、その広い心で私のことも許してくれ。スマン。」

アニ「何に対して謝ってるの?」

ユミル「知らん。ただアニに謝らないと野宿することになる。」

アニ「クリスタに説明すれば?何を賭けてたか。」

ユミル「はっ、そんなん格好つかねぇだろ。いいんだよ。悪者扱いは慣れてるから。」

アニ「今日の勝負だけど・・・」

ユミル「あれは無効だ。邪魔が入ったからな。」


アニ「・・・あんた本気で棒を振り下ろす気だった?」

ユミル「さあな。振り下ろしたところでアニは避けてただろ?」

アニ「どうだろうね。・・・でも楽しかったよ、あんたとの勝負。」

ユミル「それはどうも。・・・そうそう、この紙にサインしてくんない?」

アニ「なんで?」

ユミル「ちゃんとアニに謝罪した証明もらってこいってさ。」

アニ「ぷっ、あはははは。あんたどこまでクリスタの尻に敷かれてんだよ。」

ユミル「・・・・お前、ちゃんと笑えんじゃん。」

アニ「!?う、うるさいな。ほらサインしてやるからその紙よこしな。」

ユミル「ああ。頼むわ。」

アニ 「・・・・・」カキカキカキ

アニ「はい、これでいい?」

ユミル「サンキュ。」

アニ「じゃ、私もう行くから。

   ・・・・あとクリスタに伝えてくれない?リードダンサー引き受けてもいいって。」


―翌日 食堂

マルコ「やっぱり駄目?」

ベルトルト「うん。ごめん。人前で踊るとか僕には恥ずかしくてできないよ。」

マルコ「気にしないで。人には向き不向きがあるから。」

ジャン「しょうがねぇなぁ。リードダンサーっての、俺が引き受けてやるよ。」

マルコ「いや、ジャンには頼んでないし。」

ジャン「何だよ。運動の得意なイケメンを探してんだろ?俺の他に該当する奴いるか?」

マルコ「ふぅー、結局こうなるんだよね。いいよ、ジャンにお願いするよ。」

ジャン「任せとけ。」

クリスタ「みんなおはよう。マルコ、リードダンサー決まった?」

マルコ「おはようクリスタ。たった今ジャンに決まったところだよ。」

クリスタ「そっか。女子のリードダンサーはアニで決定だよ。」

マルコ「本当?よく引き受けてくれたね。」

クリスタ「うん。なぜか昨晩あっさりと了解してくれた。」

ジャン「じゃあ俺はアニと踊るのか・・・・。ボロボロにされそうだな。」


ベルトルト「・・・・ごめん。やっぱり僕がリードダンサーやりたい。今更で悪いんだけど。」

マルコ「えっ?」

ジャン「もう遅ぇよ。俺に決定したんだから。」

ベルトルト「うん。申し訳ないと思ってる。でも譲ってくれ。」

ジャン「何だよ。あんなに無理だっつっといて。」

ベルトルト「なんだか無理じゃない気がしてきたんだよ。なんでかなー。あははは・・・」

ジャン「・・・・まっ、いいぜ。相手がミカサだったら死んでも譲らんがアニだもんな。

    自分から怪我しに行くことはねぇか。」

ベルトルト「ありがとう。ジャン。」

ジャン「そのかわり、後でゆっくり話を聞かせてもらうからな。」ニヤリ

ベルトルト「ぐっ・・・・」

クリスタ「やった。絶対引き受けないと思ってた二人が揃ったね。」

マルコ「これならお婆さんも納得してくれそうだ。あとは他のダンサーが集まるのを待つだけだね。」


―第一音楽室

クリスタ「エレンにはコンサートの時、ソロでピアノ演奏してもらいたいんだ。」

エレン「それなんだけどさ・・・。ミカサってステージに立てるのか?」

クリスタ「えっ?」

エレン「軍楽隊、ダンス、男だらけの合唱団、みんなどこかに関わってるだろ?

    でも、ミカサはどこにも属してない。リズム音痴だからって遠くから見てるだけだ。

    俺達ばっかり楽しんでミカサが置いてけぼりになってる。何とかしてやりたいんだ。」

クリスタ「うふふ。エレン、ミカサに優しくなったね。」

エレン「そうか?変わったつもりはないけど。」

クリスタ「変わったよ。・・・・でもミカサか。私も気になってたんだ。

     彼女の得意なことで、ステージで披露できそうなものを考えないとね・・・。」


エレン「ミカサの他にもやること決まってない奴っているのか?」

クリスタ「うーんと、ジャンかな。」

エレン「ユミルは?」

クリスタ「ユミルはヴァイオリン担当予定。」

エレン「マルコは?」

クリスタ「マルコは今回は裏方に徹するんだって。

     全体を把握している人間がステージ裏には絶対に必要だからって。」

エレン「そっか。・・・ミカサとジャンの二人でできることって何だ?」

クリスタ「エレンは、ミカサとジャンが組んでもいいの?ジャンはミカサが好きなんだよ?」

エレン「いいのって、なんか悪いのか?」

クリスタ(・・・エレンとミカサの関係ってよくわかんない。)


―数日後 教官室

キース「アルレルト訓練兵、ボット訓練兵。

    貴様ら発案のチャリティーコンサートの実施が中央にて承認された。

    三ヵ月後、ウォールシーナ南端エルミハ区、王立公園内、野外ステージにて開催しろとの通達だ。」

アルミン「内地での開催でありますか?」

キース「ウォールローゼ内よりも内地のほうが圧倒的に富裕層が多いからな。

    実施するなら寄付金が集まりやすいところで、という上層部の配慮だ。」

マルコ「しかし、エルミハ区はこの駐屯地から少々離れています。

    開催にあたっての準備が困難かと思われます。」

キース「エルミハ区の憲兵団支部が全面的に支援してくれるそうだ。

    ただし、集めた寄付金の7割を憲兵団に渡すことが条件だ。」

アルミン「そんな。半分以上も・・・・。」


キース「アルレルト訓練兵。何か不満があるのか?今なら開催自体を白紙に戻すことも可能だが。」

マルコ「いえ、問題ありません。その条件で開催させて頂きます。」

アルミン「マルコ・・・。」

キース「では、こちらも開催の方向で調整していく。

    貴様らは観衆の前で恥をかかぬよう、しっかりと芸に磨きをかけろ。

    貴様らの評判が、兵団の評価に直結すると思え。」

アル・マル「はっ!!」

キース「それと軍楽隊に仕事をやろう。

    一週間後、トロスト区で新たに設置した壁上固定砲の竣工式が執り行われる。

    そこで演奏してほしいと、駐屯兵団からの依頼だ。

    貴様らの初仕事だ。しっかりやってこい。」

アルミン「・・・・はっ!!」


二人は教官室を後にした。

アルミン「7割も持っていかれるなんて・・・。」

マルコ「そのかわり堂々と準備は丸投げできる。

    会場設営って人手がたくさんいるし、結構な肉体労働だからね。

    それに、僕らだけでは舞台設備がまともに用意できないよ。

    どんな公演でも開催しようとすると、それなりに経費がかかるんだ。

    残念だけど僕らには資金がない。出演するだけで3割ももらえるんだ。好条件だよ。」

アルミン「マルコは前向きだね。・・・僕も前を見るしかないな。」

マルコ「ああ、軍楽隊の初仕事だ。でもアルミン、あまり嬉しそうじゃないね。どうかした?」

アルミン「・・・隊員が二人辞めたんだ。

     僕は二人がいつでも戻ってこれるように、このことは隊内部だけの秘密にしてた。

     でも、もう隠し切れないし、二人のことを待っている時間は無くなった。」

マルコ「一週間後か・・・。今から隊列の編成やり直すのは大変だ。」

アルミン「うん。でもやるしかないんだ。僕は逃げないって決めたんだ。」


―第三音楽室

ミーナ「今日もやっぱり来ないね。」

トーマス「もう一週間以上か・・・。本当に戻ってくる気ないんだな。」

コニー「もういい加減あきらめろよ。」

サムエル「まぁ、そう言うなって。あいつら練習来ないで何やってんだろうな。」

フランツ「宿舎にチェスセット持ち込んで、二人でずっと指してるよ。」

ハンナ「フランツ、ちゃんと説得してるの?」

フランツ「もちろんさ。‘あの時は思わず頭に血が上って悪かったな'って言ってたよ。」

サシャ「じゃあ戻ってくればいいのに。」

フランツ「あいつら素直じゃないからな。何かきっかけを作ってやらないと戻り辛いんだろ。」

トーマス「きっかけねぇ・・・。」


ガラッ

アルミン「お待たせ。みんな、僕たちの初仕事が決定したよ。」

コニー「ナニっ?」

ミーナ「仕事って?」

アルミン「駐屯兵団からの依頼でさ。トロスト区の壁上固定砲の竣工式で演奏して欲しいんだって。」

サシャ「いつですか?」

アルミン「一週間後。」

サムエル「えらい急だな。」

ハンナ「どうするの?二人欠けたままだよ。」

ミーナ「今から新しい隊員加えても絶対間に合わないよ。」

アルミン「そうだ。だから今からドリル・フォーメーションを変更する。

     ここにいる14人でやるしかないんだ。」


フランツ「いいのか?あいつらの復帰に一番こだわっていたのはアルミンだろ?」

アルミン「僕たちは正式な訓練兵団軍楽隊だ。団に属している以上、上官からの命令は絶対だ。

     どういう状況であれ、任務の遂行が最優先だ。」

サシャ「・・・アルミン、自分で気付いてますか?すごく辛そうな顔してますよ。

    そんな顔じゃ、楽しい演奏はできませんよ。」

アルミン「・・・サシャも人のこと言えないよ。」

サシャ「・・・・・」グスッ


サムエル「しょうがねぇな。俺が今からナックとミリウスの野郎、連れてきてやるよ。」

トーマス「何か策があるのか?」

サムエル「ああ。だからお前ら、フォーメーションの変更とかせずに、いつも通り練習しててくれ。」

アルミン「サムエル・・・。」

サムエル「俺たち仲間だろ。信じろ。」

トーマス「それじゃ、俺もついて行こう。」

サムエル「あの二人が戻ってきても、何事も無かったかのように振舞ってやってくれ。

     じゃあ、行って来る。」


―第二音楽室

マルコ「右腕の打撲痕なかなか引かないね。まだ痛む?」

ライナー「触るとまだ痛むがな。だが、この痕を見るたびにクリスタは優しく声をかけてくる。

     痕が消えかけたら・・・・マルコ、同じ場所を棒でしばいてくれないか。」

マルコ「嫌だよ。馬鹿言ってないで早く治せよ。骨に異常がなくてラッキーだったんだから。」

ライナー「そうだな。やっと訓練にも支障が出なくなってきたしな。それより今日は何をするんだ?」

マルコ「今日はベートヴェンの『交響曲第9番』の第4楽章で歌われる『歓喜の歌』を練習するよ。」

ライナー「それもステージで俺たちが歌うのか?」

マルコ「これは出演者全員で最後に歌ってもらう予定。

    デスクリ以外は練習する時間ないから主旋律を歌ってもらって・・・。

    デスクリは主旋律以外のパートを担当してもらいたい。」


ライナー「いいぜ。この前、声の高さでパート分けしたばかりだしな。」

マルコ「うん。でもこれは混声4部合唱だから・・・・。第一テノールの人は?」

「なんだ?俺たちだけど。」

マルコ「ファルセット・・・えーと、裏声で歌える?」

「裏声って・・・こうか?  アァァァァァ♪」

マルコ「そうそう。第一テノールには、本来女性が歌うアルトパートを歌って欲しいんだ。」

「ずっと裏声か?きついな・・・。」

マルコ「ずっとじゃなくていいよ。地声ででない音程のとこだけで。」

「それなら大丈夫だ。」

ライナー「俺も裏声には自信があるぞ。」

マルコ「ライナーは裏声よりもっと重要な仕事がある。この曲、歌いだしはバリトンの独唱なんだ。」

ライナー「独唱って、俺のソロか?」

マルコ「ああ。ライナーにしかできない役目だよ。」

ライナー「グループでデビューして、いきなりソロ活動か・・・。ファンに叩かれそうだな。」


ガラッ

トーマス「お邪魔しまーす。」

サムエル「練習中、失礼する。」

マルコ「トーマスとサムエル。どうしたんだ?軍楽隊も練習中だろ?」

ライナー「お前らデス・クリーガーズに鞍替えか?大歓迎だ。」

サムエル「違うって。」

トーマス「ライナー、ちょっとマルコ借りてもいいかな?」

ライナー「構わんが・・・・、ちゃんと返せよ。今は俺たちの講師だ。」

トーマス「分かってるよ。」

マルコ「何か急用?」

サムエル「軍楽隊の危機を救うためにどうしてもお前の力が必要なんだ。」

マルコ「・・・・脱退者の件かな。」

トーマス「知ってるなら話が早い。とにかく付いて来てくれ。」

サムエル「詳しくは歩きながら説明する。」


―男子宿舎

ミリウス「いい加減、チェス飽きたな・・・。」

ナック「ああ。」

ミリウス「・・・ヒマだなぁ。」

ナック「ああ。」

ミリウス「・・・こんなに時間って持て余すもんだっけ?」

ナック「ちょっと前まで馬鹿みたいに忙しかったからな・・・。感覚がおかしくなったんだろ。」

ミリウス「自由な時間が無くてストレス感じてたはずなのにな。

     自由になってみたものの、やりたいことが一つも無かった。」

ナック「まぁ、俺らって最初からこんな感じだったし。元に戻っただけだ。」


ガチャ

トーマス「よう、お前ら元気してるか?」

ナック「・・・・何だよ?説得しても戻る気ないって言ってあるよな。」

サムエル「説得なんてもうしない。今日はお前らとチェスで遊ぼうと思ってな。」

ミリウス「隊の練習は?」

トーマス「サボり。」

サムエル「練習に参加するのも欠席するのも自由だからな。休みたい時は休む。」

ナック「なんだ、説教かよ・・・。」

トーマス「違うって。本当にお前らとチェスで勝負しに来たんだ。

     お前らが勝ったら、一ヶ月間洗濯、掃除、水汲みなんかの雑用を全部代わりにやってやる。

     俺らが勝ったら、お前らは軍楽隊に戻る。どうだ?」

ミリウス「・・・それでマルコを連れてきてるのか。」

マルコ「はは・・・、よろしくね。」


サムエル「ああ、こっちはマルコが指す。」

ナック「ずりぃだろ。頭脳戦で勝てるわけがない。そんな勝負受けねぇよ。」

トーマス「駒落ち戦でもか?」

マルコ「えっ?」

トーマス「こっちはハンデとして二駒落としてやるよ。」

マルコ「ちょっと聞いてないよ?チェスで駒落ちなんてありえないから。絶対に勝てない。」

ナック「二駒も落としてくれるのか。随分馬鹿にされてんだな。いいぜ、受けてやるよ。」

マルコ「おいおいおいおい。勝手に決めるなよ。」

サムエル「大丈夫だ。マルコなら勝てる。」

マルコ「お前らチェスやったことあるのか?」

トーマス「いや、全然。でもなんとなくルールは知ってる。」

サムエル「俺もそんな感じだ。」


ナック「ほらマルコ、右手、左手どっちだ?」

マルコ「もう、どうなっても知らないからな・・・・・。右手で。」

ナック「・・・黒ポーンだ。じゃ、俺が先攻だな。」

ナックは白い駒をマルコは黒い駒を盤上に並べていく。

マルコ「で、どの駒を落とせばいいの?」

ナック「クイーンとビショップ。」

マルコ「ふざけんな。」

ナック「冗談。落としてくれるんなら何でもいいぜ。」

マルコ「じゃ、両端のポーンで。」

ナック「はじめるぜ・・・・」コトン

マルコ(チェスで勝って、軍楽隊にもどるきっかけを作ってやってほしいって話だったのに)コトン

ナック「・・・・」コトン

マルコ(・・・・負けないように尽くすしかないな。)コトン


トーマス「へぇー、チェスって16駒で戦うんだ。」

ミリウス「お前、そんなことも知らないで勝負しかけてきたのか。」

トーマス「いや、たったの16駒だぜ、16駒。」

サムエル「そのうち2駒も落とすんだもんな。これは大打撃だなー。」

ナック「・・・何が言いたいんだよ。」コトン

トーマス「ん?言葉通りだよ。14駒しか無いと大変だなぁって。」

マルコ(ポーン、ナイト、ビショップを進めてきたか。

    ・・・‘ルイ・ロペス'。序盤戦のがちがちの定石だな。さて、どうしよう・・・)コトン

サムエル「ナック、お前さ自分のこと‘駒'だって言ってただろ。」

ナック「ああ、言ったさ。俺だけじゃなくお前らも駒だがな。」コトン

サムエル「そうだ。俺たちは駒にすぎない。ただナックは大きな勘違いをしてる。」

マルコ(とりあえずビショップの動きをルークでピンしとこう・・・)コトン

ナック「勘違いって何だよ。」コトン


サムエル「お前はアルミンがプレイヤーだと思ってるだろ。」

ナック「ああ。俺たちは軍楽隊という盤上でアルミンに遊ばれている駒だ。」

マルコ(反対のビショップは完全にクィーン取りにきたな。ポーンが一歩も動かせない・・・)コトン

サムエル「そこが間違いなんだ。アルミンも駒の一つにすぎないんだよ。」

ナック「・・・・は?」コトン 

ミリウス「じゃあ、誰がプレイヤーなんだよ。」

マルコ(しかし・・・なぜ定石通りに動くんだ?こっちは両端のポーンが無いんだぞ・・・。)コトン

サムエル「プレイヤーはいないんだ。」

ミリウス「だったら、俺たちは誰に従ってたんだよ。」

トーマス「最初から誰も命令なんてしてないんだよ。俺たちは自分の意思で軍楽隊に入ったんだ。

     誰かに強制されたわけじゃない。」

サムエル「誰も動かしてくれない駒は、自分で考えて動くしかないだろ。

     前進するのも、立ち止まるのも、諦めて盤上から降りるのも、すべて自分の責任だ。」


ナック「・・・・・」コトン コトン

マルコ(・・・キャスリング。攻めてこないな。仕方ない、こっちから仕掛けるか。)コトン 

ミリウス「じゃあ、アルミンな何なんだよ。あいつが軍楽隊を作ったんだろ?」

ナック「・・・キングだろ。」コトン パシッ

サムエル「本人にそのつもりはないだろうけどな。俺たちが勝手にキングだと思ってる。」

マルコ(・・・ポーンを取られたか。クィーンががら空きなのは見え透いた罠だよな。

    ・・・でも、ナックは・・・・・賭けてみるか。)コトン パシッ

トーマス「でもな、哀れなキングだ。周りの駒が進まないから身動きがとれない。」

ナック「・・・・・」コトン パシッ

サムエル「うちのクィーンは自由奔放すぎるしな。」

トーマス「まっすぐ進むことしか知らないお馬鹿なルークはうるさいし。」

サムエル「優しすぎるビショップ夫婦は不満のある奴をなだめるのに精一杯だ。」

マルコ(チェックのチャンスを敢えて避けてナイトを取った。これで確信したよ。

    最初から勝つ気は無いんだ・・・。)コトン パシッ


ミリウス「じゃあ、サムエルとトーマスは何の駒なんだよ。」

トーマス「俺たち?もちろんナイトだよ。」

ナック「けっ、そんな柄かよ。」コトン パシッ

サムエル「ナイトが二人揃ってお迎えに上がってんだ。素直になれよ。」

マルコ(駒の取り合いになってるけど・・・。ま、いっか。考えるのが馬鹿らしくなってきた)コトン パシッ

ナック「やなこった。」コトン パシッ

ミリウス「クィーンが迎えにきたら考えたかもな。」

サムエル「何!?お前もクィーン狙いなのか?」

ミリウス「狙いってわけじゃないけど、普通に可愛いじゃん。」

マルコ(・・・なごやかな雰囲気だね。もうチェスで勝負する必要無いんじゃ・・・。)コトン パシッ

サムエル「だよな。可愛いよな。ちょっと天然なところがツボすぎる。」

ナック「やめとけ。お前じゃ釣り合わねぇよ、成績が。」コトン パシッ

マルコ(でも普通に勝っても二人のためにならないな・・・。うん、この手でいこう。)コトン パシッ


サムエル「そうなんだよ。お馬鹿そうなのに、めちゃくちゃ優秀なんだよ。」

ミリウス「そのギャップがいいんだろ?」

サムエル「よく分かってるな。ミリウスとは話が合いそうだ。」

ナック「トーマスは気になる女子いないのか?」コトン パシッ

トーマス「今のとこ、いないかな。」

サムエル「うそつけ。何かとミーナに絡んでるくせに。」

マルコ(へー、そうなんだ。)コトン パシッ

トーマス「それは、その、打ち合わせとかあるから話してるだけで・・・。」

ナック「お前はドラムでミーナはファイフだろ。打ち合わせることあんのかよ。」コトン パシッ

マルコ(よし、これでおしまい。)コトン

マルコ「ステイルメイト。引き分けだ。」

ナック「へっ?」

サムエル「引き分けって・・・。そんな勝負のつき方あるのか?」


マルコ「チェスの試合で引き分けは珍しくないよ。

    チェックされてない状態で有効な指し手がなくなると、引き分けになるんだ。」

ナック「ステイルメイトに持ち込むのは自分が不利な状況の時だろ。

    マルコの方が優勢だったのに、なんでわざわざ引き分けにすんだよ。」

マルコ「じゃあナックはどうしてわざわざ僕を優勢にしたのかな。」

ナック「ちっ・・・、お前、面倒くせぇな。」

マルコ「引き分けの場合どうするか決めてなかったよね。」

トーマス「そうだな。どうしようか。」

サムエル「よし、ナックとミリウスに任せる。お前ら軍楽隊に戻るのか?戻らないのか?」

ミリウス「そんなこと言われても、な・・・。」

ナック「・・・自分の意思で決めろってことか。」

サムエル「そうだ。強制的に連れ戻しても、お前らまた不満爆発させて同じこと繰り返しそうだからな。」

トーマス「お前らがどちらを選ぼうと自己責任において自由だ。」


ミリウス「・・・戻るよ。こんなふうに誰かに自分のこと望まれたことないから。」

ナック「・・・そうだな。誰からも期待されない生き方をしてきたもんな。

    だけど、俺たちのこと必要としてくれる仲間ができたんだ・・・。軍楽隊に俺も戻る。」

サムエル「ふぅー、肩の荷が下りたぜ。絶対にお前ら連れ戻すって偉そうな口叩いて出てきたからな。」

トーマス「あっ、そうだ。一週間後に初仕事だから。トロスト区で演奏するんだって。」

ナック「なっ!!そんな話聞いてねぇよ。」

トーマス「うん。アルミンを含め、みんな今日知った。」

サムエル「はははっ、しばらく練習で忙しいぞ。チェスなんかやってる暇無くなったな。」

ミリウス「さっきの駒の話だが、お前らがナイトなら俺たちは何だ?」

サムエル「あ?ポーンに決まってるだろう。」

ナック「ちっ、やっぱ捨て駒かよ。」


マルコ「でもプロモーション(昇格)できるのはポーンだけだ。

    生き方次第でナイトにもクィーンにもなれる。お前ら二度と盤上から落ちるなよ。」

ナック「・・・・マルコ、くせぇよ。」

マルコ「えっ?」

ミリウス「うん。今のセリフはかっこつけすぎだな。」

マルコ「格好つけた気はないんだけど・・・。」

トーマス「マルコは顔に似合わず時々キザなこと言うからな。」

サムエル「実は俺もたまにひいてる。」

マルコ「お前らまで・・・。もう頼まれても二度と手は貸さないからな。」

トーマス「ははっ、冗談だって。今回はありがとう。ホントに助かったよ。」

マルコ「・・・ま、僕がいなくても二人は戻っただろうけど。

    とにかく軍楽隊の初仕事だ。必ず成功させてくれよ。」


―第三音楽室

サシャ「サムエルたち遅いですね。」

コニー「本当に連れて来れんのかよ。」

アルミン「うん。僕は信じてるよ。みんな、ナックとミリウスが戻ってきても普通にしといてね。」

フランツ「了解。」


ガラッ

トーマス「遅くなってスマン。」

サムエル「俺らも練習に加わるぞ。」

ナック「・・・・。」

ミリウス「・・・・。」

ミーナ「ファイフ隊はこっち。今、パート分けしてたとこ。」(帰ってきた!!)

ハンナ「ナックとミリウスは今まで通りのメロディ吹いていいから。」(良かったぁ・・・)

ナック「あ、ああ。わかった。」

ミリウス「これが新しい楽譜か・・・。」

アルミン「僕がちょっと手を加えたんだ。主旋律より3度下の副旋律を加えたんだ。」

    (戻ってきてくれてありがとう・・・。)

コニー「・・・・・・」ウズウズ

サシャ「・・・・・・」ウズウズ


サムエル「俺はどっち吹くんだ?」

ミーナ「サムエルは下パート。一週間しか時間がないけど頑張ろうね。」

アルミン「やれるだけやってみよう。無理そうだったら元の譜面に戻せばいいだけだから。」

コニー「・・・・・・」ウズウズウズウズ

サシャ「・・・・・・」ウズウズウズウズ

フランツ「トーマス、ダブルストロークの練習しよう。」

トーマス「えー、俺苦手なんだよな・・・。」

フランツ「だから練習するんだろ。・・・・連れ戻してくれてありがとう。」ヒソヒソ

トーマス「俺一人の力じゃないけどな。」ヒソヒソ

コニー「だーーーー!!!もう!!!」

サシャ「みなさん、なんで普通にしてられるんですか!!!」

アルミン「コニー?サシャ?」


サシャ「嬉しいの我慢するとか私には無理です。ナック、ミリウス。ずっと待ってたんですよー!!」

コニー「お前ら・・・お前ら・・・本当に良かった!!!」

フランツ「コニーは二人の復帰に積極的じゃなかったのに・・・。」

コニー「俺が辞めちまえって言って二人が出てったのに、そのこと誰も責めないだろ。

    俺、言いすぎたって、悪かったって思ってんのに・・・

    誰も怒ってくんないから態度変えれないだろ!!!」

ミーナ「もう、変な意地張って。」

アルミン「うやむやにした方がナックとミリウスの気が楽かなって思ったけど・・・。

     僕だってすごく嬉しいんだ。もう、はっきりと言うよ。

     ナック、ミリウス、戻ってきてくれてありがとう!!!」

サシャ「おかえりなさいです!!!」

ナック「あ、ああ・・・・ちくしょう・・・なんか照れくさいな。」

ミリウス「うん・・・。でも、こんなに喜んで迎えてくれる。戻ってきて正解だったな・・・。」


―演習場

ジャン「ミカサと共演か。願っても無い役回りだな。感謝するぜ、クリスタ。」

クリスタ「どちらかと言うと競演だけどね・・・。」

エレン「あっ、来た来た。ジャン遅ぇよ。」

ジャン「は?何でエレンがいるんだよ。さてはお前もミカサと共演する気か?」

エレン「共演つったら共演かもしんねぇけど、俺は直接ミカサと絡まないから。」

ジャン「そうなのか?てめぇと同じ舞台に立つのは気に入らんが・・・ミカサのためだ。我慢してやる。」

エレン「ミカサはすでに準備して待ってるぜ。お前も早くしろ。」


ジャン「そうか、ミカサは・・・・って、あいつ何持ってるんだ?」

エレン「サーベル。模造刀だけどな。」

ジャン「なぜ?」

クリスタ「はい、ジャンのサーベル。」

ジャン「お、おう。」パシッ

ミカサ「時間がもったいない。ジャン、用意ができたなら早くこっちへ来て。」

エレン「ミカサは二刀流だが、ジャンももう一本持つか?」

ジャン「いや・・・、なんとなく状況は理解できた。だが一つ教えてくれ。」

クリスタ「なあに?」

ジャン「俺はコンサート当日まで五体満足でいられるのか?」


― 一週間後 トロスト区壁門前広場

大勢の観衆を前に、壁上固定砲竣工式が行われていた。

軍楽隊は式が行われている簡易舞台の袖で自分達の出番を待っていた。

サムエル「この門の向こうには巨人がぞろぞろいるんだろうな。」

ミーナ「こんなところで大きな音出して大丈夫かな。巨人が集まってきたらどうしよう・・・。」

トーマス「大丈夫だよ。新たに10門も壁上固定砲増設したんだ。

     式典の最後に一斉射撃するらしいし。的がたくさんあった方がいいんじゃない?」

コニー「それにしても竣工式ってのは退屈だな。お偉いさんのつまんねぇ話ばっかりで。」

ナック「あんなに中身の無い話を延々とできるってある意味すげぇよな。」

ハンナ「街の有力者たちの自己アピールの場になってるね。」

サシャ「早く終わってくれませんかねぇ。お腹空いてきました。」

ミリウス「でもさ、よく結成したての得体のしれない軍楽隊なんか出そうと思ったよな。」

フランツ「きっと駐屯兵団の上層部に変人でもいるんだろう。」

アルミン「みんな静かにしようよ。駐屯兵団の人たちが睨んでるよ。」


主賓たちの挨拶がひと通り終わり、進行役の兵士からアルミンに合図が送られる。

アルミン「みんな出番だ。サシャ、頼むよ。」

サシャ「はい。お任せ下さい。」

サシャは隊列の先頭に立った。

サシャ(セットアップ)

メジャーバトンで支持を出す。一斉に楽器を構える隊員たち。

サシャ(マークタイム)

バトンを動かすとドラムのリズムで足踏みが始まる。

8拍の足踏みの後、ファイフの演奏が加わり隊は前進し始めた。

先頭でくるくるバトンをサシャは回す。

サシャに導かれ、軍楽隊は広場の中央へ移動する。

サシャ(たくさんの人が見てくれてます。なんだかわくわくしますね。)

サシャはバトンを高く放り投げた。


フォーメーション変形の合図。

ドラム隊を中央に残し、ファイフ隊は左右に分かれていく。

統率のとれたまったくズレの無い動きに、観衆から感嘆の溜息がもれる。

サシャは次から次に合図を送る。

マークタイム、ライトピンウィル、フォワードマーチ、レフトスピン・・・

規則正しい動きで、隊は変形を繰り返し観衆の目を楽しませた。

そして最初の陣形に再び戻る。

サシャはメジャーバトンの両端を持ち両手を高く掲げる。

それを合図に隊の動きは一斉に止まり、演奏は無事に終了した。

パチパチパチパチパチ・・・・

会場から送られる惜しみない拍手、歓喜の叫び、賞賛の声。

すべてが混ざり合い怒涛のように隊員たちに押し寄せた。

込み上げてくる喜びを必死に押さえサシャは一礼をし、隊員たちを引き連れ待機場所に戻った。


コニー「な、なぁ・・・、叫んでもいいか?」ウズウズウズウズ

サシャ「私も早く大声出したいです。」ウズウズウズウズ

アルミン「僕もだよ。でも式が終わるまで我慢しなきゃ。」ウズウズウズウズ

ミーナ「あっ、一斉射撃始まるみたい。」ウズウズウズウズ

トーマス「あれ撃ったら終わりだよな。」ウズウズウズウズ

ナック「早く撃ちやがれ。何カウントダウンとかしてんだよ。」ウズウズウズウズ

フランツ「5・・・」ウズウズウズウズ

ハンナ「4・・・」ウズウズウズウズ

サムエル「3・・・」ウズウズウズウズ

ミリウス「2・・・」ウズウズウズウズ

アルミン「1・・・」ウズウズウズウズ

全員「発射!!!・・・・やっったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

砲撃の轟音の中、ありったけの大声で叫んだ。

初仕事の成功が嬉しかった。それ以上に大衆に受け入れられたことが誇らしかった。

迷い、悩み、苦しんだ分、隊員たちの喜びは大きかった。

ここまでです。
きりのいい所まで書き溜めてからあげるので次も遅くなりそうです。すまぬ。
で、ここまで書いておいてナックとミリウスがどっちなのか分からないよ。
ナックが金髪?のつもりで書いてみた。間違いかな?

>>1です。レスありがとうございます。感謝。
続きです。


―休日 第三音楽室

ダンサー募集に応じたメンバーを集め初ミーティングが開かれていた。

その中には例のお婆さんの姿もあった。

駐屯地への部外者の立ち入りは通常禁じられているが、キース教官は特例として認めてくれた。

ベルトルト「この教室使っていいの?いつも軍楽隊が練習してるけど。」

マルコ「今日は練習休んでみんなで遊びに行くんだって。たまには息抜きしないとね。」

ベルトルト「そっか。初仕事成功したって言ってたし。打ち上げでもするのかな。」

マルコ「そうかもな。」

クリスタ「わざわざご足労頂きありがとうございます。」

婆さん「いやいや、ダンスを受け継いでもらえるならこれぐらいどうってことない。

     ユミルが迎えに来てくれたしの。」

ユミル「ったく、手間のかかるババァだぜ。」

クリスタ「そんなこと言わないの。せっかく来て下さったんだから。」


マルコ「全員揃ったみたいだね。そろそろ始めようか。」

パン、パン。手を叩き注意を引く。

マルコ「みんなせっかくの休日なのに集まってくれてありがとう。

    全員で20名。こんなに手を挙げてくれるとは思ってなかった。嬉しいよ。

    まずは、みんなにダンス講師を紹介するよ。えーと・・・、何てお呼びしましょうか?」

婆さん「婆さんのままでええよ。それじゃあ軽くこれから教えるダンスについて説明しようかの。

    わしが教えるのはアイリッシュ・ステップ・ダンス。わしの一族に伝わる古いタップダンスじゃ。

    通常はタップ音を出すために専用の靴を履くんじゃが・・・。」

マルコ「みんな、今から配るこのブーツに履き替えてくれ。」

アニ「・・・いつものブーツと変わらないけど。」

ベルトルト「何か違うのか?」

マルコ「キース教官に支給品ブーツの予備を特別に譲ってもらった。通常のブーツと違うのは靴底だ。

    つま先と踵部分に金属の鋲を打ちこんだんだ。その部分で床を踏みならせば音が出るはずだ。」


アニ「・・・本当だね。すごく響く。」カッ カッ

ベルトルト「でもいつものブーツよりちょっと重たいな。」カッ カッ

マルコ「ごめん。でも筋力アップには効果的だ。」

ベルトルト「ははっ、そうだね。自主トレになっていいかも。」

婆さん「みんな履きかえたようじゃの。それじゃあ、わしが軽く手本を見せようかのう。

    実際のダンスを見んことにはイメージが沸かないじゃろう。よく見とくんじゃぞ。」

カタタ カタタ カタタ タタタ・・・・

ユミル(おいおい、ババアおかしいだろ。なんだその機敏な足さばき。老人の動きじゃねぇぞ。)

アニ(速い。瞬発力と足の筋力が必要ね。)

クリスタ(それぞれの動作は単純だけど、ステップの組み合わせを変えてリズムに変化を出してる。)

ベルトルト(身体の軸がまったくぶれない。体幹が強くないとこうはいかないな。)

婆さん「ゼェゼェ・・・・・。こんな感じじゃ。」

マルコ「お婆さん大丈夫ですか?無理なさらないで下さい。」

婆さん「ハァー・・・。年寄りにはやはりきついのぅ。まぁお主らは若いから大丈夫じゃろ。」


ユミル「しかし、足の動きが尋常じゃなかったぜ。対照的に上半身はまったく動かさないんだな。」

婆さん「それにはな、理由があるんじゃ。大昔、わしの祖先の国は他国に占領されとってな。

    自分たちの伝統的なダンスや音楽が禁止されたんじゃ。

    しかし何とか後世に伝えようとしてな。

    窓の外から監視する兵隊に見えぬよう足だけでステップを踏んだんじゃ。」

クリスタ「それで上体をほとんど動かさないんですね。」

婆さん「そうじゃ。そこまでして守ってきた伝統文化が消えてしまうのがわしゃ悲しくてのぅ。

    わしの民族だけじゃない。巨人のせいで、今まで人類が培ってきた多くの文化が失われたじゃろうて。」

ユミル「工房のおっさんて婆さんの息子だろ?教えりゃいいだろ。」

婆さん「もちろん伝えたさ。せがれの一人息子・・、わしのたった一人の孫にもな。」

クリスタ「お孫さんが継承されてるなら、ひとまず安心ですね。」

婆さん「・・・死んだよ。駐屯兵団に所属しとってな。845年の巨人侵攻の際に命を落としたよ。」

アニ「・・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・・」


クリスタ「・・・・ごめんなさい。軽率なことを言ってしまって・・・。」

婆さん「気にせんでええ。孫がいなくなったのは悲しいが・・・。

    代わりにこんなにたくさんの弟子ができた。長生きして良かったわい。」

ユミル「婆さん、辛気くせぇよ。みんな暗くなっちまっただろ。ほらさっさと踊り方教えろよ。」

婆さん「おお、そうじゃったの。ダンスは楽しくせんとのう。それじゃあ、基本のステップからいくぞ。」

婆さん「まずは気をつけの姿勢。背筋をまっすぐ。視線は正面。」

一同  ピシッ

婆さん「かかとを上げた状態でその場で足踏み。」

一同  カッ カッ カッ カッ

婆さん「ほれ、もっと音を出すことを意識して。元気よく!」

一同  カッ カッ カッ カッ


婆さん「今のがステップとよばれる動作じゃ。では次の動きにいくぞ。

    右足を1回ステップしてつま先をそのまま床につけておく。かかとを下ろすんじゃないぞ。」

一同  カッ

婆さん「そのまま右足かかとを下ろして床を突く。」

一同  タッ

婆さん「今やったのがヒール・ドロップ。この二つを組み合わせたのが基本動作じゃ。

    それじゃあ、やってみようかの。右足、左足交互にステップス&ヒール・ドロップス。」

一同  カッ タッ カッ タッ・・・・

婆さん「ほっほっほっ。ぎこちないのう。最初は誰でもそんなもんじゃ。

    ゆっくりでええから慣れるまで練習しなされ。」

ユミル「あんましゆっくりしてる時間は無いんだけどな。」

婆さん「大丈夫じゃ。みんな若い。すぐできるようになる。

    それより頼んでおいたリードダンサーは用意できとるのか?」


マルコ「ええ。苦労しましたけど・・・。アニ、ベルトルトこっちに来てくれ。」

婆さん「ほっほー。こりゃあ、またエラい別嬪さんを連れてきたな。わしの若い頃そっくりじゃ。」

アニ「・・・・・」

婆さん「そう恐い顔するでない。で、こっちは鼻筋の通った美青年か。

    憂いを湛えた眼差しが乙女心をくすぐるじょ。」

ベルトルト「ど、どうも・・・。」

婆さん「しかし身長差がありすぎかの・・・。まっ、ええか。どうにでもなるわい。」

アニ「・・・今更で悪いんだけど、やっぱりリードダンサー・・・ううん、ダンス自体降りさせて。」

ユミル「はぁ?何言ってんだよ。お前がやるっつったからダンス計画が動き始めたんだよ。」

クリスタ「そんな無責任な態度、アニらしくないよ。何か問題があるの?」

アニ「・・・お婆さんの大切なダンスを引き継ぐ資格、私には無いから・・・。」

ベルトルト「アニ・・・・。」


ユミル「?わかんねぇな。婆さん、踊るのに資格がいるのか?」

婆さん「そんなもん無いわい。・・・アニとか言ったな。お主が何を考えとるのかは知らん。

    しかしな、若いうちは逃げずに何でもやってみなされ。

    人生どんなことでも無駄になることは無い。必ず得るものがある。」

アニ「・・・でも・・・」

ベルトルト「アニ、一度引き受けたんだ。途中で投げ出したらみんな迷惑するだろ。最後までやるんだ。」

アニ「ベルトルト・・・。」

ベルトルト「ここで急に抜けたら変に思われるだろ」ヒソヒソ

アニ「・・・分かった。ごめん、突然おかしなこと言って。ちゃんとやるよ。」

クリスタ「良かったぁ。もう!焦っちゃったじゃない。」

ユミル「ホント、しっかりしてくれよ。」

婆さん「それじゃあ、リードダンサーの二人には特別メニューで厳しく指導じゃ。」


―演習場

ジャン「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・・・、ちょっと休憩させてくれ。」

ミカサ「仕方ない。ジャンが動けないと練習にならない。ちょっと休もう。」

ジャン「ゴクゴクゴク・・・ふぅーーー。しかしミカサ、お前の心肺機能はどうなってんだ?」

ミカサ「特に異常はないけど。何かおかしい?」

ジャン「いや、異常だろ。5分間全力で剣振り回して、呼吸が少しも乱れない人間はいねぇよ。」

ミカサ「ジャンの鍛え方がぬるいだけ。」

ジャン「そうなのか?お前と変わらない訓練メニューこなしてるだろ。」

ミカサ「エレンは私に追いつくため、私の倍は自主的にトレーニングしてる。ジャンもそれぐらい努力すべき。」

ジャン「出たよ。口を開けばエレンかよ。剣舞の練習してる時ぐらいエレンって言うな。」

ミカサ「なぜ?」

ジャン「俺が悲しくなる。」

ミカサ「・・・わかった。口には出さないよう努力する。」

ジャン「心では思うわけね。」

ミカサ「そこは自由にさせて。」


ジャン「・・・・お前さぁ、俺の気持ち分かってるよな。」

ミカサ「ジャンの気持ちなんて知らない。」

ジャン「相変わらず冷てぇな。」

ミカサ「ジャンの気持ちを直接聞いたことが無いから分からない。」

ジャン「めちゃくちゃ態度に出してんだけど。」

ミカサ「私は他人の感情を察するのが苦手だから。」

ジャン「・・・はっきりと言葉にすればいいんだな。」

ミカサ「それだと私でも理解できる。」

ジャン「・・・俺が正直な気持ちを言ったら、お前は何か変わるのか?」

ミカサ「変わらない。」

ジャン「だよな。まだ口に出すのは早いっつーことだ。」


マルコ「おーい。練習おつかれさまー。」

ミカサ「・・・マルコ。」

ジャン「あれ?お前今日ダンスで忙しいとか言ってなかったっけ?」

マルコ「僕がいなくても大丈夫そうだから抜けてきた。ミカサとジャンの方が心配だから。」

ミカサ「心配させるようなことは何も無い。ジャンとはうまくやっている。」

マルコ「本当?良かった。ジャンが失礼なことしてミカサ怒らせてたらどうしようって気になっちゃって。」

ジャン「お前は俺を何だと思ってんだ。一応、常識人のつもりだぞ。」

マルコ「どこが。寮では失礼極まりないだろ。」

ミカサ「丁度いい。マルコも練習付き合って。相手がジャン一人だと存分に力が揮えない。」

マルコ「えっ?」

ジャン「そうだお前、今度のステージ何も出ないらしいな。ずるくねぇか?」

マルコ「仕方ないだろ。誰が裏方仕切るんだよ。」

ジャン「それでも少しぐらい出ろ。ちなみに剣舞は五分弱で終わる予定だろ?」

ミカサ「それくらいの時間ならステージ裏を離れてもきっと問題ない。」


マルコ「いやいや。ジャンの邪魔をするわけにはいかないし・・・。」

ジャン「俺とミカサの会話に割って入らなけりゃ邪魔じゃない。」

マルコ「いや、でも、剣術とか僕には向いてないから。勘弁してくれよ。」

ミカサ「逃げちゃ駄目。マルコは憲兵団に入りたいんでしょ?」

マルコ「そうだけど・・・。」

ミカサ「なら対巨人の技術より対人の技術をもっと磨くべき。

    この世界の悪は巨人だけじゃない。人類の中にも救いようの無い極悪人が大勢いる。

    マルコには、そういう悪党どもから弱者を守る力を身につけてほしい。」

ジャン「だそうだ。どうするマルコ?弱っちいまま憲兵団に入るのか?暴漢がいても見て見ぬふりをするのか?」

マルコ「はぁ・・・、分かったよ。僕も強くならないとね。」

ジャン「よし。それじゃあ2対1だ。ミカサ覚悟しろよ。」

ミカサ「これでやっと本気を出せる。」


マルコ「立ち回りとか打ち合わせしないの?」

ジャン「疾走感と緊張感のある激しい斬り合いをよろしくってクリスタに頼まれてんだ。

    事前に動き決めたら生ぬるい感じになるだろ?五分間何も考えずガチで攻める。」

マルコ「そんなの危ないって。模造刀でも当たると怪我するよ。」

ジャン「大丈夫。俺はすでに痣だらけだ。」

マルコ「全然、大丈夫じゃないし。」

ミカサ「予想外の動きをしなければ大きな怪我はさせない。」

ジャン「とにかく休みなく切りかかれ。ミカサに反撃する余裕を与えるな。」

マルコ「もう、どうにでもなれ・・・。」

ミカサ「では、いつでもかかってきて。」


―第一音楽室

クリスタ「遅くなってごめんね。」

エレン「ダンスの方はもういいのか?」

クリスタ「うん。ユミルに任せてきた。」

エレン「俺も後でのぞいてみよ。アニとベルトルトがダンスって、あいつら大丈夫なのか?」

クリスタ「人のこと心配してる余裕は無いよ。エレンには超難曲に挑戦してもらうから。」

エレン「超難曲?」

クリスタ「うん、これ。ハチャトゥリアン『剣の舞』シフラ編曲版。まぁ、譜面見てよ。」

エレン「・・・・・俺が楽譜読むのすっげー苦手なの知ってるよな。」

クリスタ「うん。」

エレン「こんなの一生かかっても読めねぇよ。なんだよこれ。音符が多すぎてやたら黒いぞ。」

クリスタ「そうなんだよ。音が多いんだよね。ピアノだけでオーケストラの音を再現しようとしてるから。」

エレン「オーケストラってなんだよ?」

クリスタ「うーん、簡単に言うと楽器の種類が多い軍楽隊。」


エレン「ふーん。よく分かんねぇけど、いつもみたいにお手本で弾いてくれ。」

クリスタ「ごめん。私も完璧に弾けないんだ。」

エレン「なっ!?そんなもん俺に弾かせようとすんな。」

クリスタ「私の手の大きさじゃ無理なんだよ。だから音を削って弾くね。

     でもエレンにはちゃんと譜面通りに弾いてもらうから。」

エレン「分かったよ。とりあえずどんな曲なのか聴かせてくれ。」

クリスタ「うん。エレンに聴かせるために私も久しぶりに本気で練習したよ。いくよ・・・。」

♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪・・・・

エレン(・・・・・左手がおかしい。オクターブ以上で跳躍する和音の高速連打って・・・。

    左手の動きが速すぎて残像が見える。右手は右手で意味わからん。もはや人間の指とは思えない。

    音は聴き取れるけど、どうやって弾けばいいのかさっぱり検討がつかねぇ・・・。)

クリスタ「ハァハァハァ・・・・・・、こんな感じだよ。」

エレン「これはもうピアノ演奏を超えた何か別物だな。」


クリスタ「うん。体育会系ピアノ曲って呼ばれてるから。スポーツに近いかも。エレンにぴったりでしょ。」

エレン「いや、全然弾ける気がしないんだけど。ピアノに初めて敗北した気分だ。」

クリスタ「ね、余裕無くなったでしょ。期限は3ヵ月。ミカサのために仕上げるよ。」

エレン「そうだな。俺が弱音吐いてる場合じゃねぇな。クリスタばっちり指導してくれよ。」

クリスタ「うん、今回はスパルタでいくから覚悟してね。」


―駐屯地近くの街

サシャ「嬉しいですね。軍楽隊のみんなでお出かけなんて。」

ミーナ「うん。私、駐屯地から出るの久しぶりだよ。」

トーマス「しかも、今日は打ち上げすんだろ?久しぶりに酒が飲める。」

ハンナ「でもこんな大人数で入れるお店よく見つけたね。」

フランツ「それはこいつのおかげだ。」

隊員A「僕の実家が酒場やっててさ。小さな店だけど貸切で使っていいって。」

アルミン「ありがとう。すごく助かるよ。一般のお店だと僕たち騒ぎすぎて他のお客さんに迷惑かけそうだから。」

ミリウス「それでまだ昼間だってのに店に向かってるわけだ。」

アルミン「門限があるからさ。日が高いうちからお酒飲むのもどうかと思ったけど、しょうがないよね。」

ナック「いや、すごくいいぜそれ。まだ働いてる奴がいる時間に飲むビールは、優越感に浸れて最高にうまい。」

コニー「相変わらずひねくれてんな。」


サムエル「ん?あれは・・・・。」

ミリウス「どうした?・・・・ああ、物乞いか。」

フランツ「ウォールマリアが崩壊してから、よく見かけるようになったね。」

トーマス「ウォールローゼ内に避難してきた難民の多くは、例の領土奪還作戦で命を落としたけど・・・。

     召集されなかった人たちも定職にありつけないでいるからね・・・。」

アルミン「・・・・・」ギリッ

サシャ「アルミンどうかしましたか?顔が恐いですよ。」

アルミン「・・・ううん。何でもない。ほら、もうすぐ店に着くよ。」


―酒場

サシャの乾杯で始まった打ち上げは大いに盛り上がり、程よく酒の回った団員達は上機嫌だった。

アルミン「ボクはね、思うんだよ。この世の中はおかしいんだよ。」ヒック

トーマス「おう、おかしいよな。アルミンの言うとおりだ。・・・・って何がだ?」ウィー

アルミン「王政のもとで僕らは暮らしてるわけだ。高い税金だって納めてる。

     なのに一般庶民には国から何の恩恵もないじゃないか。僕らの金はどこへ消えたんだよ。」

サムエル「オレら兵士は税金免除だろうが。何言ってんだよ。」ヒック

アルミン「あはははは。そうだった。ボク払ってないや。よし、ビールおかわり。」ヒック

ナック「オレらの給料に市民の血税は消えてんだよ。税金泥棒って罵られてもしょうがねぇ。」

アルミン「ああそうだ。ボクは税金で生きている。でも国家予算の何%が軍事費に割かれてんだよ。」ヒック

ミリウス「そんなの知るか。」ウィー

アルミン「なんで議会は情報公開しないんだ。国の財政が不透明すぎるんだよ。」ヒック

トーマス「なんだ?アルミンは今度は政治家を目指すのか?」ヒック

アルミン「そうだ!ボクは王政を廃止して社会保障制度の充実した民主主義国家を作りたい・・・のかな?」ヒック

サムエル「お前物騒なこと言うなよ。憲兵団に聞かれたらしょっ引かれるぞ。」ヒック


ナック「ははは。軍楽隊の次は革命軍でも作るのか?アルミンの野望はホント底知れねぇな。」ウィー

トーマス「頼むからこれ以上話を大きくしないでくれ。オレらはもうついていけん。」

アルミン「・・・・革命か・・・手始めに何をすべきか・・・ブツブツ・・・」ヒック

ミーナ「アルミン、考えちゃ駄目!!誰かアルミンを止めて!」

サシャ「しょうがないですねぇ。私の出番ですか。」モグモグ

サムエル「サシャは飲んでないのか?」ヒック

サシャ「はい。お酒飲むとお腹がふくれてご馳走が食べれなくなります。もったいないです。」モグモグ

コニー「俺とサシャは食べるの専門。」モグモグ

ハンナ「コニーも飲まないの?」

コニー「おう。俺は酒が嫌いだ。なんでそんなマズイもん飲まなきゃならんのだ。」モグモグ

ナック「お子様だな。」

コニー「うるせぇ。無理して大人ぶって何が楽しいんだよ。」モグモグ


サシャ「じゃあここらで、ご意見箱に寄せられた皆さんの投書を発表しまーす。」

コニー「何だそれ?」

サシャ「前に説明したじゃないですか。みんなの疑問、要望、不満など何でも書いて入れていい箱です。」

ハンナ「不満爆発させる人が二度と出ないように設置したんだよね。」

ナック「ちっ、俺らが悪ぅございましたよ。」ヒック

サシャ「けっこう投書があったので持って来ました。さぁアルミン。みんなの率直な意見に答えて下さい。」

アルミン「いいよー。何でも答えちゃうよー。」ヒック

サシャ「では一つ目。‘アルミンの話つまらねぇ'・・・・ごめん。次いきましょう。」

アルミン「いいって。みんなの率直な意見でしょ。アハハハハ、つまんないかー・・・、うっさいわ。」ヒック

ミーナ「アルミン、かなりお酒入ってるね・・・。」

トーマス「いいんじゃない?たまには、こういうアルミンも。」ヒック


サシャ「次は‘仕事引き受けたけど軍楽隊に謝礼って出たの?' おぉ、まともな質問です。」

アルミン「お金?そんなもん出ませんから。

     仕事が無事終わったら、ご満悦なキース教官にセクハラまがいのハグされるだけだから。」ヒック

コニー「アルミン、お前にばっかり苦労をかけて悪ぃな。」モグモグ

ナック「たった一人で教官室に入っていくお前の背中は男だったぜ。」ヒック

サシャ「じゃあ次。・・・・‘彼女欲しい'」

アルミン「ボクも欲しい。はい、次。」ヒック

サシャ「・・・・‘彼氏欲しい'」

アルミン「今の二人で付き合えばー。」ヒック

トーマス「ははは、誰だろうねー。あんなこと書いたの。・・・もう一杯おかわり。」ヒック

ミーナ「ほ、本当よねー。・・・私もビールおかわりしよっかな。」


サシャ「まともな投書が少ないですね。次は・・・‘ハンナ結婚しよう'・・・・」

ミリウス「フランツか。」ヒック

ナック「フランツしかいねぇな。」ヒック

トーマス「フランツ・・・。お前なぁ、独り身に見せつけて楽しいか。」ヒック

サムエル「頼むから見えないトコでイチャイチャしてくれ。お前らのこと嫌いになるぞ。」ヒック

フランツ「ごめんごめん。ちょっとサプライズしたくてさ・・・・・。」テレテレ

コニー「お前・・・、もしかしてこれマジなのか?」モグモグ

フランツ「・・・・・うん。本気のプロポーズ。」テレテレ

アルミン「イヤイヤイヤイヤ、ぜんぜんダメでしょ。こんなシチュエーション認めないから。」ヒック

トーマス「そうだぞ。こんな衆人環視の中でプロポーズって・・・・お前、自信あんだろ。」ヒック

サムエル「断られないと踏んでこの暴挙に出たな。許さん。」ヒック

コニー「いや、結婚て・・・・・早くねぇか?」モグモグ

ナック「だな。・・・・・できちゃったとか?」ヒック

アルミン「できちゃったのーーーー!?」ヒック


サムエル「つーか、やることはやってたんだ・・・・・。いやん、生々しい。」ヒック

ミーナ「もう、あんたらうるさい!!ハンナ、どうなの?赤ちゃんいるの?」ヒック

ハンナ「ぷっ・・・、あははははは。ないない、赤ちゃんとか絶対ないから。」ヒック

ミーナ「じゃあ、どうしてフランツはプロポーズなんかしたのよ。」ヒック

フランツ「いや、訓練中に命を落とすこともあるっていうしさ・・・。

     後悔しないように、言いたいことは今のうちに全部言っておこうと思って。」

ハンナ「ふふふ。フランツらしいね。」

フランツ「返事は?」

ハンナ「あとで・・・・・二人きりの時に、ね。」

ナック「うわー。今晩やる気ですわ。」ヒック

サムエル「返事はどう考えてもOKじゃねぇか。おもしろくねぇな。」ヒック

ミリウス「ちくしょう、オレも言いたいこといってやる。」ヒック

トーマス「だな。黙ってても何も始まらないしな。オレも言うぞ。」ヒック


ミーナ「まぁ結婚するのは数年先だろうけど。とにかく二人の幸せを願って乾杯しよ。」ヒック

アルミン「そうだね。ほら、みんなグラスを持って・・・」ヒック

かんぱーい!!!

トーマス「ほら、コニーも一杯ぐらい飲めよ。」ヒック

コニー「えー、まじぃもん。やだよ。」

ナック「祝福してやれよ。冷てぇ野郎だな。」ヒック

コニー「うう・・・、しょうがねぇな。」ゴクゴクゴクゴク・・・

トーマス「おお、一気飲み。」ヒック

コニー「・・・・・苦ぇ。」

ナック「苦いのはガキだからだ。」ヒック

コニー「うっせぇ。」

   (そういえばサシャの姿がねぇな。)キョロキョロ


コニー(あ、こっそりドア開けて、店から逃げ出してやがる。ずりぃ。)

コニー「ちょっと便所。」ガタッ

トーマス「おお。店の奥の右手にあるぜ。」ヒック

コニー「サンキュ。」(なんか退屈だ。俺も抜けよ。)


―街の大通り

タッタッタッタッ・・・

コニー「おい、勝手に抜け出してんじゃねぇよ。」ハァハァハァ・・・

サシャ「ギクッ!?ばれちゃいましたか。」

コニー「いや、気付いてるのは俺だけだったけど・・・、自由すぎるだろ。お前幹事だろ?」

サシャ「すみません・・・。でも苦手な空気になってきたので・・・。」

コニー「苦手って?」

サシャ「私、恋バナとかあんまり好きじゃないんです・・・。」

コニー「まあ俺も好きじゃねぇけど。他人が誰とくっつこうがどうでもいい。」


サシャ「うーん・・・、そうじゃなくて・・・。何でみんなと一緒じゃダメなんですかね。」

コニー「は?」

サシャ「どうしてコンビになろうとするんでしょうか。」

コニー「コンビって・・・、なんか違うだろ。」

サシャ「分かってますよ、私だって。でも二人だけよりみんなと一緒のほうが楽しいですよ。」

コニー「そんなん言ってるとガキ扱いされ、うわっ!!」ペタン

サシャ「!?大丈夫ですか?急に尻もちなんかついて。」

コニー「うぐぐ・・・、足に力が入らん・・・・。クラクラするし・・・。」

サシャ「・・・コニーお酒飲みました?」

コニー「出てくる前に一杯だけ一気飲みした。」

サシャ「で、走ってきたんですね。そんなことしたら酔いが回って当然です。」

コニー「飲まなきゃいけない雰囲気だったんだよ。」


サシャ「はぁ・・・・しょうがないですね。・・・ほらっ。」ヨッコイショ

コニー「なんだ・・・その構えは・・・。」

サシャ「おんぶです。早く乗ってください。」

コニー「やめろよ。勘弁してくれ。」

サシャ「だってこんな大通りの真ん中に放っておくわけにはいかないです。邪魔になります。」

コニー「・・・這ってでも自分で道の隅っこ行くから放っておいてくれ。」

サシャ「もう!!もたもたしてたら強制的に抱っこしますよ。」グイッ

コニー「いやだ!!やめてくれ。おんぶのがまだマシだ。」ジタバタ

サシャ「暴れたらもっとアルコール回りますよ。おとなしくして下さい。・・・ほら、乗って。」

コニー「うう・・・・///」ヨイショ

サシャ「意外と重たいですね。小柄だからもっと軽いと思ってました。」ドッコイショ

コニー「チビで悪かったな。」

サシャ「そんなこと言ってませんよ。ちゃんと筋肉ついてるんですね。」

コニー「そりゃあな。あんだけ訓練すれば。・・・どこに向かってるんだよ。」


サシャ「公園です。ほら、前にエレンやクリスタなんかとみんなで行った。ここから近いんですよ。

    そこで時間潰してから店に戻る気だったんです。」

コニー「そうか。・・・面倒かけてスマン。」

サシャ「気にしないで下さい。明日のパン期待してますから。」

コニー「いいぜ、パンぐらいやるよ。その代わり誰にも言うなよ。」

サシャ「何をですか?」

コニー「俺をおぶって街を歩いたとか・・・///」

サシャ「そんなに恥ずかしいことですか?」

コニー「恥ずかしいよ。さっきからすれ違う奴らの視線がいてぇよ。」

サシャ「じゃあ見なきゃいいです。目をつぶってて下さい。」

コニー「・・・・・・やべぇ。眠い・・・。」

サシャ「ふふ。おんぶで寝ちゃうとか本当に子どもみたいですね。」

コニー「・・・ああ、俺はガキだ・・・・・。何か悪いか・・・。」


サシャ「ぜんぜん悪くないですよ。私も子どもだから。今が楽しいから、ずっと子どもでいたいんです。」

コニー「ふぁ~・・・オトナになったらなったで、楽しいことはあるんじゃねぇの・・・」ウトウト

サシャ「そうかもしれませんが・・・、コニーはオトナになりたいんですか?」

コニー「・・・なりたくなくったって勝手になっちまうだろ・・・」ウトウト

サシャ「みんな急いでオトナになろうとします。でもオトナになった先には何があるんでしょう。」

コニー「・・・じじばばになって死ぬだけだ・・・」ウトウト

サシャ「じゃあ、やっぱり子どものままでいいです。」

コニー「・・・変に若作りしたババアになるなよ・・・そんなサシャは嫌だかんな・・・・」ウトウト

サシャ「あはは。歳をとっても一緒にいる気ですか。」

コニー「・・・すぅー・・・すぅー・・・」

サシャ「・・・寝ちゃいましたか。もう公園着きましたよ。」


あの日みんなで休んだ木陰にコニーをそうっと降ろした。

コニー「・・・うぅん・・・」ゴロゴロ

サシャ「寝心地悪そうですね・・・。」

サシャは樹の幹にもたれて座り、コニーの頭を膝に乗せた。

サシャ「パン一週間分ですよ。」

風がそよぎ頬を撫でていく。木々のざわめきと野鳥のさえずる声に安らぎを覚えた。

サシャ「・・・お腹いっぱいで私も眠いです・・・。コニー起こして下さいね・・・。」

座ったままサシャは眠りについた。


―数時間後

飲み会を終え、みんなそれぞれ帰途につく。

終了間際になってからやっとサシャとコニーの不在に隊員たちは気付いた。

それぐらいみんなできあがっていた。

「どうせあいつら帰ってるよ」そう言われ、アルミンも二人のことを気にかけつつ夕焼け空の下、帰り道を急いだ。


コニー「おい、サシャ起きろ!!」

サシャ「んーー?朝ですかぁ・・・?まだ暗いですよぉ・・・。」

コニー「もう暗いんだよ!!寝ぼけてんじゃねぇ!」

サシャ「・・・・・・はぅあっ!!今、何時ですか?」

コニー「時計持ってないから分かんねぇ。やべぇよ。門限。」

サシャ「と、とにかく急ぎましょう・・・・・って足が痺れて立てません!!」

コニー「あぁ、俺がずっと頭乗っけてたみてぇだからな。じゃあな。おれ先行くわ。」

サシャ「ちょっ!!ひどいですよ!恩を仇で返しますか!?コニーの人でなし!!」

コニー「何とでも言え。怒ったサシャよりキース教官の方が100万倍怖いんだよ!!」ダッシュ


サシャ「ほ、ほんとに行っちゃいました・・・・・。

    こんクサレが!!散々世話掛けちょってから。なんちこしきい奴じゃろうか。」プンプン

足の痺れが治ってから駅馬車の停留所に向かう。

結局そこで馬車を待っていたコニーと合流。車中でサシャはコニーを散々罵倒した。

無事に駐屯地へ帰ったものの、門限には間に合わず二人は揃ってキース教官にこってり絞られた。


―数日後 第二音楽室

ライナー「O Freunde, nicht diese Tone・・・・♪」

マルコ「いい感じ。独唱パートはアカペラの予定だからもっと自由に歌っていいよ。」

ライナー「そうか。じゃあもっと俺らしさを出していいんだな。

     しかし、まったく歌詞の意味が分からんからな。表現しづらい。

     ・・・・・実はものすごく卑猥な内容だったりするのか?」

マルコ「しないよ。でも歌詞の内容説明してなかったね。ごめん、忘れてた。

    えーと、ライナーの歌いだしのソロパートは・・・・。

    簡単に言うと‘お前らもっと楽しくて気持ちいい歌をうたおうぜ'って仲間に呼びかけてる。」

「それっていつものアニキじゃん。」

「この曲はアニキのこと歌ってんのか?」

ライナー「いやぁ、まいった。まさかベートーベンにパクられちまうとはな。」

マルコ「ははっ、確かにライナーにはまり過ぎてる。」


ライナー「で、その後の合唱部分はどういう意味なんだ?」

マルコ「この後の歌詞はかなり難解。合唱部分はシラーっていう人が書いた詩が元になっててね。

    昔あったフランスっていう国の革命の精神を歌ってるらしいよ。

    確か・・・自由、平等、博愛だったかな。」

ライナー「革命ソングか。過激だな。そんなのステージで歌っていいのか?」

マルコ「直接的な表現は無いから大丈夫。

    ベートーベンって人も憲兵に捕まらないようにかなりオブラートに包んだみたい。

    本当は‘自由賛歌'って詩なんだけど、‘歓喜の歌'ってあいまいな題名に変えてるし。」

ライナー「そうか・・・。いつの時代も表現の自由は制限されるんだな。」

マルコ「どんな体制にだって不満を持つ人間は出てくるからね。

    誰かが放った何気ない一言が社会を大きく揺るがすかもしれない。

    為政者としては火種が燃え広がる前に、元から絶ちたいんだろう。」


ライナー「しかし壁の中では体制を覆そうとかって危険な輩は見かけんな。民衆は不満だらけだろうに。」

マルコ「情報自体を規制して知識を与えず、民衆が賢くなることを避けてるんだ。

    何も知らなければ、世の中はこういうものなんだって諦める。

    それに巨人がいるからね。人々の目は外側に向けられて、内側への関心は弱まる。」

ライナー「意外だな。マルコが体制に批判的とは思わなかった。」

マルコ「別に批判してるわけじゃない。単なる現状認識だよ。僕も諦めてる人間だから。

    ただ、規制された中でもそれなりに楽しく生きることはできる。

    現状に不満をこぼすより、今をどう生きるか前向きに考えた方が有意義だよ。」

ライナー「はは。さすが‘王に掘られたい'って宣言するだけはあるな。」

マルコ「そんなこと言ってない!・・・でも、ライナーこそどうなんだよ。

    訓練兵卒業後どうするつもりなのか、ライナーから聞いたことがない。」

ライナー「俺か?まぁ、その時の状況次第だな。・・・俺は生き方を選べないんでな・・・。」

マルコ「・・・ライナー?」


ライナー「いや、何でもない。それより練習だ。もう一曲も仕上げないとな。えっと何だっけ?」

マルコ「ヴェルディの歌劇『アイーダ』で歌われる『凱旋行進曲』。」

ライナー「それそれ。勝利の歌なんだろ?俺たち兵士にぴったりだ。」

マルコ「混声合唱の曲だけど、男声だけでも歌えるから。むしろその方が迫力あるし。」

ライナー「『アイーダ』とかって劇はさぞかし血沸き肉踊る話なんだろうな。」

マルコ「ははっ、正反対。悲恋物だよ。」

ライナー「なに?それはガチ泣きできるレベルの悲しい話なのか?」

マルコ「えっ?それは人によると思うけど・・・。」

ライナー「よし、聞かせてくれ。」

マルコ「いいけど・・・なんで?」

ライナー「自分より報われない男の話を聞くと元気出るだろ?」


マルコ「けっこう嫌な奴なんだな・・・。まぁ、話を知ってたほうが歌いやすいかな。

    ざっくり言うと・・・。身分を隠して潜入してきた敵国のお姫様と恋に落ちた兵士の話。」

ライナー「ベタだな。で、どういうオチだ?」

マルコ「二人揃って生き埋めにされる。」

ライナー「極端だな、おい。」

マルコ「もちろん途中に色々あるけど。

    兵士は祖国を裏切ってお姫様を助けようとして失敗。そして生き埋めの刑に処せられるんだ。」

ライナー「やっぱりベタだな。だが俺にはできん。」

マルコ「そうかな。ライナーならやりそうだけど。以前クリスタのこと身体張って守ってたし。」

ライナー「クリスタのためなら俺の命ぐらいくれてやる。しかし祖国は裏切れない。」

マルコ「?意外と愛国心が強いんだな。」


ライナー「そういうマルコはどうなんだ。」

マルコ「僕?」

ライナー「ああ。‘王に掘られる'か‘クリスタに掘られる'か。どっちを選ぶんだ。」

マルコ「・・・どっちも遠慮する。」

ライナー「意外と愛国心が無いんだな。」

マルコ「・・・ぷっ、あはははは。真面目な顔して何言ってんだよ。さあ、練習を続けよう。」


―第三音楽室

ユミル「今日も教室、占領しちまって悪いな。」

アルミン「ああ、それは構わないよ。軍楽隊は外でも練習できるから。

     でもダンスは床の上じゃないと靴の音がでないんでしょ?」

ユミル「そうらしいぜ。あっ、そうそう軍楽隊にプレゼント。」

アルミン「何これ?」

ユミル「見ての通り楽譜だよ。ダンスの曲、軍楽隊に頼むわ。」

アルミン「『ブライアン・ボルーのマーチ』?」

ユミル「そ。婆さんが言うには大昔からあるアイリッシュの曲だとよ。」

アルミン「ヴァイオリンパートもある。ユミルも弾くんだ。」

ユミル「弾きたくねぇんだが、アイリッシュダンスにフィドルは欠かせないって婆さんがうるさくってな。」

アルミン「フィドルってヴァイオリンのこと?」

ユミル「そうらしいぜ。それから、ダンスに合わせて編曲が必要になるだろうって。

    その時はアルミンよろしくな。」


アルミン「わかった。とりあえず軍楽隊で練習してある程度形になったら、ダンス隊と合流するよ。」

ユミル「悪ぃな。おっ、ダンスの練習終わったみてぇだな。」

アルミン「でもさ、ベルトルトとアニが踊ってるのもびっくりだけど、ユミルが仕切ってるのも意外すぎだよ。」

ユミル「仕切ってねぇし。ダンス教えてくれる婆さんとちょっと親しいんでな。

    それを理由にクリスタに押し付けられてんだ。ホントいい迷惑だぜ。」

アルミン「ははは。ユミル、最近丸くなったね。」

ユミル「は?うるせぇよ。調子にのんな、このチビが。」

アルミン「・・・ご、ごめん。」

ユミル「さてと・・・大体撤収したかな・・・ん?・・・お前らまだここに残るのか?」

アニ「そう。もう少し練習したいから。」

ベルトルト「ちゃんと片付けるから先帰ってていいよ。」

ユミル「じゃ、頼むわ。お疲れー。ほらアルミンも帰るぞ。」

アルミン「う、うん。それじゃあ、がんばってね。お先に。」


ガラッ ピシャッ

アニ「じゃあ、ダブルタイムステップから。いくらやってもあんたとタイミングが合わない。」

ベルトルト「アニ、あのさ・・・。」

アニ「何?無駄口叩いてる時間は無いんだけど。」

ベルトルト「どうしてそんなに一生懸命なの?」

アニ「おかしい?たまには真面目にやったていいでしょ。」

ベルトルト「・・・お婆さんへの罪滅ぼしのつもり?」

アニ「・・・何言ってるの?そんな気はないから。」

ベルトルト「・・・もう無理なんだよ。何をしたって僕たちは許されることはないんだ。」

アニ「そんなの分かってる。・・・分かってるから。」

ベルトルト「・・・そもそも何でアニはリードダンサーなんか引き受けたの?」

アニ「別に・・・。そういうベルトルトだって引き受けてるじゃない。」

ベルトルト「僕は・・・アニが引き受けたって聞いたから・・・。」


アニ「私の監視?私が裏切るんじゃないかって疑ってんの?」

ベルトルト「違うよ!僕は・・・アニが心配なんだ。」

アニ「あんたに心配されるようなことは何もないけど。」

ベルトルト「これまでアニは他の訓練兵と関わるのを極力避けてただろ?

      なのに最近のアニはおかしいよ。自分から他人に近づくような真似するなんて。」

アニ「だったらライナーの方がおかしいじゃない。変な集団作って馴れ合って。

   あいつ、自分の目的忘れてんじゃないの?」

ベルトルト「ああ。ライナーはおかしくなってる。でも、あいつには僕がいつも付いていられる。

      けど、アニはそうはいかないだろ?同郷だっていうのも隠してるんだ。

      僕とアニがいつも一緒にいたらみんな変に思うよ。」

アニ「私もあんたと一緒にいるのはご免だわ。」


ベルトルト「茶化さないでくれよ。僕はアニにみんなと深く関わって欲しくないんだ。

      仲良くなればなるほど、後で辛い思いをするのはアニだから・・・。」

アニ「・・・もう手遅れだよ。」

ベルトルト「アニ・・・。」

アニ「・・・宿命みたいなものをさ。ずっと‘これでいいんだ'って諦めてた。

   でも、最近‘これでいいのか'って・・・疑うようになってきた・・・。」

ベルトルト「駄目だ!しっかりしてくれよ。故郷に帰るんだろ?それが一番大切なことだろ?」

アニ「分かってる。もう後には引けないことも。

   ・・・けどさ、少しでいいから普通の人間らしく笑って過ごしてみたかったんだ・・・」

ベルトルト「そんなの幻想だよ。」

アニ「・・・幻を見ることすら許されないの?」


ベルトルト「ああ、そうだ。僕らは必ず彼らに憎まれることになる。頼むから自分で傷口を広げないでくれよ。」

アニ「・・・・。」

ベルトルト「僕だって不安なんだよ。本当に理解しあえる仲間がここには三人しかいないのに・・・。

      二人とも裏切ったらどうしようって。僕一人になったらどうしようって。」

アニ「・・・情けない男だね。絶対に裏切ったりしないから安心しな。」

ベルトルト「アニ・・・、信じていいんだね。」

アニ「あんたこそ裏切んじゃないよ。」

ベルトルト「もちろんだよ。アニ・・・ありがとう。」

ここまでです。ダラダラ続いてスミマセン。

>>1です 言い忘れました


―数日後 第一音楽室

エレン「だぁぁぁぁぁぁ!!無理!!!」

クリスタ「無理じゃない!!投げ出したら負けだよ!!」

エレン「鍵盤を目で確認する暇がまったくねぇよ!!

    左手だけで2オクターブも跳んで不協和音の高速連打とか、音外すなって言う方が無理!!」

クリスタ「だから身体で覚えるの!目をつぶってても狙った鍵盤に指が行くようにするの。

     何百回でも何千回でも繰り返してミリ単位の距離感を身体に叩き込む!」

エレン「くっそ・・・。出さなきゃいけねぇ音は分かるのに、手が動かん!!」

クリスタ「ほら、弾きにくい部分だけ繰り返して。私が隣でうるさく言ったってできるようにはならないんだから。

     エレンが頑張るしかないんだよ。」

エレン「ピアノでこんなに肉体を酷使するとは思わなかった。腕が筋肉痛だ。」

クリスタ「日常生活で使わない筋肉動かすからね。あと、エレンは無駄に力が入りすぎなんだよ。」

エレン「脱力しろって言うんだろ?でもテンポ上げるとどうしても力んじまう。」


ガラッ

マルコ「どう?調子は。」

エレン「マルコか・・・・。もうさ、マルコ弾いてくれよ。俺できねぇわ。」

マルコ「ははは。残念。僕もそれ弾けないから。」

クリスタ「こら!逃げない!エレンが弾かないと意味ないでしょ?」

マルコ「エレンが言い出したんだろ?ミカサと一緒にステージ立ちたいって。」

エレン「別に一緒じゃなくても良かったんだよ。ただ、何もすることの無いミカサが可哀想でさ。」

マルコ「おかげで僕が今、可哀想なことになってるよ。」

エレン「そういや着替えてるの見たけど、マルコとジャン痣だらけだったな。ミカサも怪我してるのか?」

クリスタ「ミカサはいつも通りきれいな身体してたよ。」

エレン「ははっ、さすがミカサだ。」

マルコ「もうさ、女の子相手だと思わず僕もジャンも本気で斬りかかってるんだけど・・・。

    二人がかりで掠ることもできないんだ。逆に返り討ちにあってボロボロだよ。」

エレン「なんかスマン・・・。」


マルコ「いいよいいよ。僕たちが不甲斐ないだけだから。でもミカサの身体能力は驚異的だね。」

エレン「だろ?人間離れしてんだよ、あいつ。」

クリスタ「ほら、みんな巻き込んでるんだからエレンも泣き言いわないで頑張るの。」

エレン「はぁー、分かったよ。でも難しすぎだろ、これ。」

マルコ「だね。『剣の舞』、よりによってシフラ編曲版だから。何でこんな難易度高いの選んだの?」

エレン「俺は選んでねぇし。クリスタに勝手に決められた。」

クリスタ「だって嬉しかったんだもん。エレンがミカサのために何かしようとするのが。」

マルコ「嬉しいのは分かるけど、この編曲じゃなくてもさ。通常版の『剣の舞』じゃ駄目なの?」

エレン「なにっ?もっと簡単なバージョンがあるのか?じゃあそっちに変更してくれよ。」

クリスタ「マルコ、余計なこと教えないでよ。」

マルコ「ごめん。でもピアノ初心者のエレンに無謀な挑戦させてるからさ・・・。」


クリスタ「もう初心者じゃないし。それにエレンは特別なの。

     ピアノの先生として、エレンの才能を限界まで引き出したいの。」

エレン「とっくに限界超えてるよ。」

クリスタ「もう!!やる気出してよ。男の子でしょ。好きな子のために頑張りなさいよ!」

エレン「は?何言ってんだ。好きな子って誰だよ。」

クリスタ「え?」

マルコ「ん?」

クリスタ「えっと・・・ミカサ。」

エレン「そりゃあ幼馴染だし嫌いじゃないけど。」

クリスタ「んーっと・・・今二人はどうなってるの?」

エレン「どうって?」

クリスタ「恋人同士じゃないのかな・・・?」

エレン「何でそうなるんだよ。」


クリスタ「じゃあ何なの。好きじゃないのになんで・・・なんで・・・あんなこと・・・。」

エレン「なんだよ。」

クリスタ「だから・・・あの・・・・、その・・・・」///

エレン「だから何?」

クリスタ「えっと、ね・・・・・マルコ、パス。」///

マルコ「はぁー・・・。ごめんエレン。僕ら偶然見ちゃってさ。その・・・二人がキスしてるの。

    悪気は無いからね。すぐに立ち去ったし。」

エレン「見られたのか。・・・まぁしょうがねぇか、この教室だしな・・・。」

クリスタ「どうしてあんなことしたのよ。」

エレン「何でクリスタに説明しなきゃならねぇんだよ。やだよ、恥ずかしい。」

マルコ「・・・雰囲気に流された、かな?」

エレン「そう、それ。何ていうか、そういう雰囲気になって、しなきゃいけない感じがして・・・・した。

    好きとか嫌いとか、はっきり言って何も考えてねぇよ。」


クリスタ「それはエレンが、でしょ。ミカサはきっとエレンの恋人になりたいはずだよ。」

エレン「そうなのか?一緒にピアノ弾いてると、あいつキスして欲しそうにするから何回かしたけど。

    別にミカサは何も言ってこないぞ。」

クリスタ「!?・・・最低。自分の気持ちがはっきりしないのにそんなことして。しかも何度も。」

マルコ「まあまあ。僕らが口を挟むことじゃないよ。」

クリスタ「駄目。そうやって関係をはっきりさせないで、遊ぶだけ遊んで飽きたらポイッ。

     捨てられて文句を言う女の子に‘彼女だなんて一度も言ってねぇだろ’って冷たく突き放す。

     最初から責任回避して女の子を弄ぶゲス野郎とエレンは同じだよ。」

マルコ「ク、クリスタ?」

エレン「ひどい言われようだな。」

クリスタ「だって、世の中そんな男ばっかりだって、男を信用しちゃいけないってユミルが言ってたもん。」

マルコ(ユミルの奴、クリスタを男性不信にする気か・・・。)


エレン「うーん・・・。キスしかしてないんだけど、それって弄ぶって言うのか?」

クリスタ「どこまでしたかじゃなくて気持ちの問題。好きじゃないのにそんなことしちゃいけません。」

エレン「いや、好きじゃないっていうか・・・・むしろ好きなんだろうけど、でもそこまでじゃないっていうか・・・」

クリスタ「はっきりしないなぁ。」

エレン「俺とミカサは家族として育ったからな。改めてミカサのことどう思ってるか聞かれてもよく分かんねぇよ。」

マルコ「はっきりさせなくてもいいんじゃない?」

クリスタ「マルコ?」

マルコ「逆にはっきりさせた方がいろいろと波風が立って大変だと思うよ。」

エレン「だよな。別に周りに迷惑かけてるわけじゃないし。今まで通りの関係でいるのがベストなんだよ。」

クリスタ「何よ二人して。ミカサが可哀想でしょ。」

マルコ「だってねえ・・・、エレン、ミカサに‘好き’とか‘付き合って’とか言われたことある?」

エレン「ない。」


マルコ「ほらね。ミカサも今の状態で構わないんだよ。」

エレン「俺ら訓練で忙しいしな。恋人とか言ってる場合じゃないだろ。」

クリスタ「もう!どうして男の子は何でも曖昧にしようとするのよ。」

エレン「何で女子はすべてに白黒つけたがるんだよ。グレーでいいだろ。」

クリスタ「やだ。女の子ははっきりしたいの。ちゃんと好きって言ってもらいたいの。」

エレン「それはクリスタの意見だろ。」

クリスタ「ちがうもん。一般論だもん。」

エレン「はぁ・・・。仮に俺がミカサに告って恋人同士になったところで、俺は何も変わらないし。」

マルコ「エレン達に対する周囲の反応は変わるだろうけど。・・・それが嫌なんだろ?」

エレン「そうなんだよ。面倒くせぇだろ。冷やかされたり気を遣われたりするの。

    それに今は男同士でわいわいやってる方が楽しいしな。俺はこのままでいたいんだよ。」

クリスタ「ミカサに悪いと思わないの?」

エレン「いやさ、俺だってこのよく分からん状態に後ろめたさは感じてんだぜ。」


クリスタ「むぅー・・・、納得できないなぁ・・・。」

マルコ「しょうがないよ。男と女は考え方が基本的に違うから。

    女の子と違って恋愛の優先順位はそんなに高くないんだよ。」

エレン「そうそう。俺は巨人の駆逐、男の友情、睡眠、飯、あといろいろあって、ミカサの順だな。

    調査兵団に入って巨人を駆逐するまで他のことは後回し。」

マルコ「もう少しミカサの順位あげようよ。」

クリスタ「もういいよ。ミカサにはジャンを勧めるから。きっとジャンはミカサが一番だから。」

エレン「怒るなよ。」

クリスタ「別に怒ってないし・・・。ほら、練習しよう。とにかくこの曲仕上げてもらうから。」

エレン「はいはい。マルコもちょっと見ててくれ。お前のアドバイスも欲しい。」

マルコ「いいけど。でもあんまり役にたたないと思うよ・・・。」

♪♪♪♪♪♪・・・・・

クリスタ「ストップ。やっぱり和音、外してるじゃない。通し練習はいいから左手だけやろうよ。」

エレン「えー、部分練習はつまんねぇからヤダ。」

クリスタ「文句言わない。それじゃいつまで経っても弾けないよ。」


マルコ「・・・そこまで正確さ求めなくていいんじゃない?」

クリスタ「マルコは黙ってて。」

エレン「ぜひ続きを話してくれ。」

マルコ「・・・もともと不協和音なんだ。音を外したところで誰も分かんないよ。

    右手のメロディーさえしっかり弾けてればミスしたなんて思われない。」

クリスタ「すべての音には意味がある。譜面通りに弾かないのは作曲者への冒涜。そう習わなかった?」

マルコ「でも編曲版でしょ、これ。編曲版をさらにエレンが編曲したって考えれば?」

クリスタ「そんな適当な・・・。」

マルコ「適当でいいんだよ。勢いさえあれば。本番はエレンが弾いてる前でミカサが暴れるんだ。

    観客はそこまで演奏を気にしないと思うよ。」

エレン「そっか適当でいいのか。よし、何か気が楽になった。サンキュ、マルコ。」


クリスタ「もうっ!何なのよ。二人して何もかも誤魔化そうとする。」

マルコ「そんなつもりはないけど・・・。」

クリスタ「何でも曖昧にしてぼやかしてはっきりしない!もう、私知らない。」

エレン「クリスタ?どこ行くんだよ。」

クリスタ「いい加減な人は嫌い。今日のレッスンは終わり。」

ガラッ ピシャッ

エレン「・・・何であんなに機嫌悪いんだ?そんなに悪いこと言ったかな、俺。」

マルコ「生真面目な性格だから。適当なのが許せないんだろう。」

エレン「嫌いだってよ。」

マルコ「はは、嫌われちゃったね。」

エレン「楽譜通りに弾かないのってそんなに怒ることなのか?」

マルコ「うーん・・・、そのことよりむしろ僕らの態度に怒ってるね。」


エレン「やる気が無いから?」

マルコ「そう、ピアノも恋愛も。」

エレン「ピアノは分かるが、なんで恋愛にやる気出さなきゃなんねぇんだよ。」    

マルコ「クリスタは恋に憧れてたから。

    彼女にとってはどちらも大切で譲れない気持ちがあるんだろうね。

    自分の描く理想の恋愛とエレンたちがあまりにもかけ離れていたからがっかりしたんだよ。」

エレン「ったく、自分の願望を人に押し付けるなよ。」

マルコ「まぁ、僕は普通の女の子らしくて可愛いと思うよ。ここには変にすれた女の子たくさんいるから。」

エレン「なんか分かったような口ぶりだけど、マルコは恋愛経験豊富なのか?」

マルコ「いや全然。でも恋愛小説は片っ端から読んだよ。いつ何が起こるか分からないからね。」

エレン「けっこう気持ち悪いな。」

マルコ「ああ、自覚してる。」

エレン「ぷっ、ははは・・・。お前って真面目なだけじゃないんだな。

    とにかくクリスタのフォローしといてくれよ。機嫌が悪いままじゃ困るから。」

マルコ「そうだね。もう、レッスンしないとか言い出したら大変だ。後で謝っとくよ。」


―第二音楽室

サシャ「私も歌の練習まぜて下さい。」

ライナー「構わんが。軍楽隊はどうした?」

サシャ「今日はダンス隊と合同で練習してます。ダンスの曲の時、私は用無しなんです。」

ライナー「ははっ、確かにダンスやってる奴らの前でバトン振り回したら邪魔なだけだな。」

サシャ「そうなんです。だから今日はデスクリに加えて下さい。」

ライナー「おっ、そのチーム名ちゃんと浸透してるのか。」

サシャ「はい。でも格好悪いですね。口にするのが何か気恥ずかしいです。」

ライナー「放っとけ。」

サシャ「そうそう、私もステージで一曲歌うんですよ。」

ライナー「ソロか?」

サシャ「はい。アルミンとマルコが私にぜひ歌って欲しい曲があるって。」


ライナー「どういう曲だ?」

サシャ「えーとですね、楽譜の隅にメモったんですよ。長くて覚えれなくて・・・・・・、あった。

    プッチーニ作曲 歌劇『ジャンニ・スキッキ』より『私のお父さん』です。」

ライナー「そういや、お前の親父さんは健在なんだっけ。」

サシャ「はい。娘の私が言うのは何ですが、なかなかダンディーなちょい悪オヤジなんですよ。

    食べ物のことで怒られてばっかりでしたけど。」

ライナー「ははっ、食い意地が張ってるのは昔からなんだな。その曲は父親への感謝の歌ってわけか?」

サシャ「歌詞の意味は聞いてません。とにかく楽しそうにのびのびと歌えばいいからって。」

ライナー「・・・サシャ、はめられてるんじゃないか?」

サシャ「えっ?」

ライナー「多分その歌は、あの二人が口にするのもはばかられる猥褻な言葉のオンパレードだ。」

サシャ「いやいや。あの二人に限ってそんな曲選びませんよ。」

ライナー「分からんぞ。何もしらないサシャが卑猥な歌をうたってる姿をこっそり楽しむ気だ。」

サシャ「そんな!?」


ライナー「あいつらだけずるいな・・・。俺も歌詞の意味教えてもらおう。」

サシャ「ちょっとやめて下さいよ。みんな変態ですか。」

ライナー「ははは、冗談だ。訳の分からん言語でエロいこと言われてもな。まったくそそられん。」

サシャ「・・・ライナーはセクハラ親父です。」

ライナー「まぁ内容はともかく、内地の豚野郎どものハートを掴んで寄付金を搾り取れってことだろ。」

サシャ「そ、そうなんですか?」

ライナー「‘ねぇーパパぁ、サシャ今月の生活費足りないんだ’って上目遣いで言えば大丈夫だ。」

サシャ「何が大丈夫なんですか。絶対イヤですよ、そんなことするの。」

ライナー「だって『私のパパさん』だろ。間違いなくそういう歌だ。」

サシャ「パパさんじゃなくてお父さんです。本当にライナーは10代の若者ですか。

    40過ぎの中年オヤジみたいなこと言わないで下さい。」

ライナー「馬鹿野郎。俺が中年オヤジだったら、もっとエスプリの効いたえげつない会話をする。」

サシャ「何で偉そうなんですか、まったく。・・・とにかく勝手に練習させてもらいますから。」

ライナー「そうつんけんするな。発声練習ぐらい付き合えよ。」


―第三音楽室

アルミン「えーと・・・、冒頭はドラムとベルトルトのステップの掛け合いで・・・・」

ユミル「で、途中からアニ登場で・・・フィドルが加わるっと・・・、どのタイミングで入ればいいんだ?」

アニ「ステージの中央辺りまで私が来たら弾き始めて。」

ユミル「ステップに合わせなくていいのか?」

アニ「それは大変でしょ。音に合わせる方が簡単じゃない?」

アルミン「じゃあ、ユミルの出だし部分は2小節ほど序奏をつけ足した方がいいね。」

ユミル「そんなことできんのか?」

アルミン「いきなり息を合わせるのは難しいだろ。フィドルの音が先にあった方が入りやすい。

     ちょっとだけ楽譜いじってみるよ。」

アニ「悪いね。」


ユミル「フィドルのパートが終わったら、全員登場って訳か。」

アルミン「うん。そこからドラム、ファイフ、フィドルの合奏。それで終了。」

アニ「了解。」

ユミル「そういえばベルトルさんは?」

アルミン「あっちでコニーにダンス教えてる。コニーもタカタカしてみたいんだって。」

※  ※  ※  ※

コニー「けっこう難しいもんだな。」カッタ カッタ・・・

ベルトルト「最初はね。でも慣れればどうってことないよ。機敏な動きは得意だろ?」

コニー「でも気をつけの姿勢のまま足だけバタバタさせるのってやりにくいな。

    ついつい上体を動かしちまう。」カッタタ カッタタ・・・

ベルトルト「ははっ、コニー流のステップダンスだね。」

コニー「ベルトルトってでかい図体してるのに意外と器用だよな。ダンスもこなしちまうとは。」カッタッタ・・・ 

ベルトルト「身体動かすのは得意だから。運動に関しては何でも人並みにこなす自信はあるよ。」

コニー「そういやベルトルトは憲兵団入りたいんだっけ。」タッカッタ タッカッタ・・・

ベルトルト「そうだよ。コニーもだろ?」

コニー「そうだ。でも、もし成績が10位以内に入れなかったらどうすんだ?」カッタッタッタ カッタッタッタ・・・

ベルトルト「いや、それはありえないし。」


コニー「何だよ、その自信は。・・・まあ順当に行けば確実に10番内だがな。

    けどよぉ、怪我して長期間休むってこともあるだろ?そうなったら順位は下がるぜ。」カタタッカタタッ・・・

ベルトルト「うーん、憲兵団入れなかったら・・・兵士自体、辞めるかもな・・・。」

コニー「そうか。じゃあさ、俺とお前の二人とも憲兵団に入れなかったら・・・・

    一緒に旅回りの芸人になろうぜ。俺がファイフ吹いて、お前が踊る。」カタッカタッカタッカタッ・・・

ベルトルト「えー、やだよ。」

コニー「そう言うなって。俺さ、今まで自分が育った村からほとんど出たことなくってよ。

    いろんな所へ行ってみたいんだ。壁の内側っていってもけっこう広いからな。」カタッタ カタッタ・・・

ベルトルト「・・・『見知らぬ国と人々について』」

コニー「は?何言ってんだ。」カタタタッカッタ カタタタッカッタ・・・

ベルトルト「いや、コニーの話聞いてたらピアノの発表会で弾いた曲思い出してさ。」

コニー「そういや、お前そんな曲弾いてたな。」カッタタタカッタタタタ・・・


ベルトルト「うん。あれからもうすぐ一年か・・・。でも、すごく昔のことのように感じるよ。」

コニー「だな。一年後に俺がファイフ吹いてるなんて誰も想像できなかったろうな。」カタタッタタ・・・

ベルトルト「ははっ、本当だよね。僕もダンス踊る日が来るなんて夢にも思わなかったよ。」

コニー「人生どう転ぶか分かんねぇな。けど今から一年後っつったらもう卒業してんのか。」カタタタ カタタタ・・

ベルトルト「なんだかあっという間だね。」

コニー「一年後の俺はどうしてんだろうな・・・」カッタタカッタタ・・・

ベルトルト「・・・誰も未来は予想できないよ。」

コニー「そうだよな・・・って、ごまかすなよ。なぁ、もしもの時は一緒に旅芸人になろうぜ。」カッタタカッタタ・・・

ベルトルト「僕には無理だって。」

コニー「じゃあ、兵士辞めてどうする気だ?もう帰る場所は無いんだろ?」カッタカッタカッタ・・

ベルトルト「あるよ!!!」

コニー「!?うわっ・・・びっくりしたー。急に大声出すなよ。こけるじゃねぇか。」

ベルトルト「ご、ごめん。・・・そうだった、僕の村は今じゃ壁外だからね・・・」


コニー「いや、俺のほうこそ悪いこと言っちまったな・・・スマン。」

ベルトルト「いいんだよ。気にしないで。・・・それが僕の現実だから。」

コニー「ベルトルトは強いな。・・・もし自分の村がそんなふうになったらって思うと俺は耐えられねぇよ。」

ベルトルト「強くないよ。・・・ただ何があったとしても生きるしかないだろ?」

コニー「だな。・・・よし、俺も。この先何があっても絶対に生きてやる。」

ベルトルト「ああ。コニーは大丈夫だ。」

コニー「・・・で、旅芸人は?」

ベルトルト「しつこいよ。」


―夜 講義棟

マルコ(クリスタは嫌なことがあるとピアノに向かう。だから今日も一人で弾いてるはずだ。)

♪~♪~~♪♪♪~♪♪~

ピアノの音がする方へ足を運ぶ。第一音楽室の窓から仄かな明かりがもれている。

マルコは教室の前まで来たがドアを開けるのを躊躇った。

マルコ(ドビュッシーの『夢』か・・・。幻想的でどこか神々しく神秘的なメロディー。

    美しく儚く、アンニュイな曲想。夢の世界を漂う不安定さを感じさせ心が波打つ。

    ・・・そうえいば、この教室から始まったんだ。クリスタの『夢』を叶えるために。)

演奏が終わり、ドアを開ける。


ガラッ

マルコ「こんばんは。入ってもいいかな。」

クリスタ「・・・・」プイッ

マルコ「はは・・・、勝手にお邪魔するよ。」

マルコは窓際に置いてある椅子に腰掛けた。

マルコ「あのさ、今日は悪かったよ。余計な口出しして・・・」

クリスタ「・・・・・」

♪♪ ♪♪~ ♪♪ ♪♪~

クリスタは無言のまま突然、鋭い音を響かせ弾き始めた。陰鬱で嵐のように吹き荒れるメロディー。

マルコ(うっ、まだ怒ってるなー。これってショパンの『ピアノソナタ第二番 葬送』だよな。

    死ねばいいのにっとか思われてるのかな・・・・・。さすがにへこむ。

    でも第一楽章からちゃんと弾いてくれたからまだマシなのかな。

    いきなり第三楽章の「葬送行進曲」弾かれたら僕は立ち直れないよ・・・。)


しばらくの間、絶望と激昂の入り混じった激しい音の濁流が教室を満たした。

マルコ(でも、どんな曲を弾かれても、クリスタのピアノが好きだって思う自分が悲しい・・・)

急にクリスタは手を止めた。

クリスタ「ぷっ・・・・あははははは。」

マルコ「クリスタ?」

クリスタ「冗談だよ。そんな暗い顔しないで。」

マルコ「怒ってるんじゃないの?」

クリスタ「んー・・・、そりゃあね、気に入らないことはあるけど。ピアノを弾いたら頭が冷えたかな。」

マルコ「そっか、良かった。」

クリスタ「どうも私は頑固な性格らしくって。融通が利かないってユミルによく指摘されるんだ。」

マルコ「まっ、誰にでも譲れないものはあるよね。」

クリスタ「そっ。ピアノに関しては口を挟まれるとついカッとなっちゃう。」

マルコ「・・・ごめん。」


クリスタ「ううん。私が熱くなりすぎてた。エレンを何とかしなきゃって勝手に思い込んでて。

     本人にしてみたら大きなお世話だったよね。」

マルコ「確かに、ちょっと厳しい先生になってたね。」

クリスタ「それにね、一番大切なことを忘れかけてた。」

マルコ「大切なこと?」

クリスタ「そう。ピアノを楽しむこと。ステージを成功させようとか、エレンに格好つけさせようとか。

     くだらない見栄を張ろうとして私が一番ガチガチになってた。

     楽しくないと音楽じゃないのにね。」

マルコ「うん。演奏者と聴衆が一緒に楽しんでこそ本当の音楽だ。」

クリスタ「だから私も譜面に囚われないで、エレンには自由に弾いてもらうことにする。」

マルコ「ははっ、180度方向転換か。思い切ったね。」

クリスタ「そう、女の子は潔いのです。男の子と違ってね。」

マルコ「・・・やっぱりそっち。」


クリスタ「そうだよ。何で男の子は、はっきりしないんだろうって腹が立った。

     恋人未満の曖昧な態度をとり続けるエレンはズルイなぁって、逃げてるなぁって・・・。

マルコ「女の子はそう感じても仕方ないか。」

クリスタ「でもね、考えてみたらエレンって馬鹿正直でしょ。

     ミカサに対していい加減な約束はできないから保留にしてるのかなって思った。」

マルコ「うーん、エレンはそこまで深く考えてはなさそうだけど・・・。

    でもさクリスタの言う通りだよ。後先考えず簡単に付き合う男の方が無責任だと僕は思う。」

クリスタ「うん。・・・でもね、恋人じゃないのにキスするのは許せない。」

マルコ「しょうがないよ。その場の勢いとかさ。多分いろいろあるんだよ。」

クリスタ「何よそれ。少しは自制しようよ。」

マルコ「無理。だって男の子だもん。」

クリスタ「・・・ぷっ、あははははは。マルコっぽくない。だもんって・・・ふふふっ・・・」

マルコ「そこまで笑わなくても・・・。」


クリスタ「よく分かんないけど男の子ってそういうものなんだ。」

マルコ「人によるけどね。」

クリスタ「マルコは?」

マルコ「・・・そういうこと聞くかな。」

クリスタ「どうなのかなって思って。」

マルコ「僕は・・・手の早い紳士にはなりたくない、かな。」

クリスタ「ふふっ、懐かしいね。ここでワルツ弾いてくれたんだよね。」

マルコ「あれから一年が経つのか。あっという間だ。」     

クリスタ「・・・一年経っても紳士から手紙が一つも来ないので、淑女は大変ご不満です。」

マルコ「クリスタ・・・。」

クリスタ「なんちゃって。・・・言ってみただけ。」

マルコ「・・・・・紳士はとても臆病なので手紙を書く勇気がありません。

    ・・・代わりにピアノを弾くことにしました。」

クリスタ「マルコ?」


マルコは立ち上がり、ピアノに近づいた。

ピアノの椅子に座っているクリスタの後ろに立ち、鍵盤に手を伸ばす。

身体は直接触れないものの、クリスタの背中に覆いかぶさる形になる。

クリスタ「ちょっと・・・近すぎなんだけど」///

マルコ「あっ、ごめん。適当に弾くから椅子座らなくてもいいかなって。」

クリスタ「適当って・・・。ひどくない?」

マルコ「いや適当っていうかピアノ曲じゃないからさ。うろ覚え。」

クリスタ「そんな曲ここで弾くかな。・・・なんかがっかり。」

マルコ「まぁまぁ・・・。」

♪~♪~~♪~♪~~


明るく軽快な前奏。楽しげな旋律を奏でながらマルコは口を開く。

マルコ「知ってるよね、このアリア。名曲だから。」

クリスタ「・・・うん。」

マルコ「・・・そういうことなんだ。」

クリスタ「・・・・・・」///

マルコ「でも、クリスタは何も言わないで。」

クリスタ「・・・どうして?」

マルコ「僕はさ、憲兵団に入ることが最優先なんだ。それまでは無責任な約束はできないから。

    もし僕が無事に卒業して憲兵団に入れたら、その時返事を聞かせて欲しい。」

クリスタ「・・・気が変わるかもね。」

マルコ「・・・・・・そうなったら仕方がない。諦めるよ。」

クリスタ「違う、マルコの。」

マルコ「・・・いや、それはないから・・・」


クリスタ「ふふっ、マルコ知らないんでしょ。」

マルコ「何を?」

クリスタ「このアリアを歌っているのは浮気しまくる少年だって。」

マルコ「あっ・・・・・そうだっけ?」

クリスタ「もう!だからうろ覚えで弾かないでよ。」

マルコ「はははっ、ごめん。まあ、作品背景は気にしないでよ。」

クリスタ「気にするよ。・・・・・・卒業したらもう一度ちゃんとした曲弾いてね。」

マルコ「・・・うん。リベンジさせてよ。」

若さと瑞々しさに溢れたメロディーに包まれて二人は微笑んだ。

モーツァルト『フィガロの結婚』より「恋とはどんなものかしら」。

恋に目覚めた少年が、心の苦しみを愛する女性に切実に訴える。


Voi che sapete Che cosa e amor, 恋ってどんなものなのか 貴方は知ってるよね
Donne vedete S'io l'ho nel cor. 僕の胸が苦しいのは恋のせいかな ねぇ、教えてよ


それからしばらくは怒涛のように忙しい毎日が過ぎていった。

軍楽隊、合唱、ダンス・・・、それぞれの役割を果たすべく訓練の合間を縫って練習に励んだ。

マルコとアルミンはステージ設営の打ち合わせなど事務方の仕事もあり多忙を極めた。

月日はあっという間に流れ、ついにチャリティーコンサート当日を迎えた。

ここまでです。続きは後日。

レスありがとうございます。なかなかクライマックスに突入できません。


―エルミハ区

街についた一行は乗ってきた馬を厩舎につなぎ、会場となる王立公園を目指し大通りを歩いていた。

ジャン「馬で飛ばして三時間か。結構疲れるぜ。

    マルコとアルミンは打ち合わせで何回かこの街来たんだろ?ご苦労だったな。」

アルミン「僕らは駅馬車で来てたから。時間はかかったけど疲れはしなかったよ。」

マルコ「今日は人数が多いからさ、特別に兵団の馬の使用を許可してもらったんだ。」

ジャン「そういや、ドラムとかでっかい荷物はどうしたんだ?」

アルミン「軍楽隊の楽器は後から荷馬車で届く予定だよ。」

ジャン「さすがアルミン。ぬかりねぇな。」

ベルトルト「・・・僕らのコンサートのポスターがいたる所に貼られてるね。・・・恥ずかしいな。」

マルコ「憲兵団が気合を入れて宣伝してくれたんだろう。」

アルミン「人がたくさん来たほうが寄付金は多く集まるからね。

     寄付金が多ければ多いほど憲兵団の取り分も増えるから・・・。」


コニー「すっげーな、おい。道が全部レンガか石畳だぜ。地面が恋しくならねぇのかな。」

マルコ「この方が土ぼこりがたたないからね。」

コニー「これじゃ、ガキんちょが遊べねぇよ。Sケンとかケンパとか線が引けないから無理じゃん。」

エレン「ははっ、懐かしいな。俺たちもよくやった。」

アルミン「うん。日が暮れるまで外で遊んでたね。」

ジャン「はっ、田舎もんだな。大きな街じゃガキは通りで遊ばねぇんだよ。」

コニー「つってもジャンの家はトロスト区だろ。ここの奴らと比べたらお前も田舎もんだ。」

ジャン「村出身の奴に言われたくねぇよ。」

サシャ「じゃあ、街の子のジャンに質問です。建物の窓の内側に時々布がぶら下がってます。あれは何ですか?」

ジャン「布?・・・・・・本当だな。洗濯物か?」

クリスタ「あれはカーテンだよ。」

サシャ「カーテン?」

クリスタ「太陽の光を遮ったり、部屋の中を見られないように目隠しに使うの。」


エレン「へぇー、俺も初めて見た。」

ミカサ「私たちの住んでいた地区では見たことがない。」

ジャン「内地は潤ってんな。あんな風に無駄に使える布なんか俺らにはねぇよ。」

ライナー「ああ、身体を隠すのに精一杯だ。稀にそれすら叶わない時もある。」

ベルトルト「それは個人的な事情だよね。」

サシャ「クリスタはもの知りですね。もしかしてクリスタのお家にはカーテンがあったんですか?」

クリスタ「えっ・・と・・・無いよ、そんなの・・・。」

ユミル「サシャと違ってクリスタは勉強熱心だからな。本にでも書いてあったんだろ。」

クリスタ「そう!本で知ったの。」

サシャ「もしかして内地の名物とかも知ってますか?」

クリスタ「名物って・・・・・食べ物で?」

サシャ「もちろんです。折角内地に来たんだからここでしか味わえない物を食べたいです。」

ユミル「ばーか。そんなことしてる暇はねぇよ。公演終わったら即撤収だ。」


サシャ「そんな・・・!?アルミン、少しは自由時間とれないですか?」

アルミン「ごめんね。早く引き揚げないと今日中に帰れなくなるから。」

サシャ「あぅぅぅ・・・・残念です。」

ミカサ「またみんなで来ればいい。今度はちゃんとした旅行として。」

サシャ「そうですね!二度と来れないってわけじゃないですもんね。」

アルミン「それいいね。訓練兵卒業したらみんなで一緒に旅行しようか。」

ジャン「卒業旅行か・・・、悪くねぇ。」

コニー「俺も、俺も。」

マルコ「ライナーたちも、もちろん参加するよな。」

ライナー「ああ、楽しみだな。」

ベルトルト「・・・・・う、うん。」


アニ「馬鹿馬鹿しい。私はごめんだよ。」

エレン「んな冷てぇこと言うなって。卒業したらみんなバラバラになっちゃうだろ。

    簡単には会えなくなるぜ、きっと。」

アニ「別に会わなくてもいいし。」

エレン「お前は良くても、俺が会いたいんだよ。」

アニ「・・・・・・アンタさぁ、もう少し自覚した方がいいよ。その天然タラシっぷり。」

クリスタ「うん。隣で聞いててドキッとしちゃった。」

ユミル「ほらほら、ミカサが恐い顔してるぞ。」


エレン「? 何か悪いこと言ったか、俺。」

ミカサ「別にかまわない。エレンはそういう人。誰にでも優しくできる。」

エレン「じゃ、怒るなよ。」

ミカサ「・・・エレンは私にも会いたい?その・・・卒業したあと・・・」

エレン「卒業後もどうせお前は俺に付いて来るんだろ。嫌でも毎日顔合わせる。」

ミカサ「・・・・・うん。」ニコッ

ジャン「だあぁぁぁぁぁ!!!お前らなんなの?頼むから俺の前でイチャイチャすんな。」

マルコ「ははっ。エレンは何で普通にあんなこと言えるんだろうな。」

ライナー「何も考えてねぇからだろ。」

※  ※  ※  ※  ※

ミーナ「ハンナ、置いてかれちゃうよ。ほら、早く。」

ハンナ「ごめん、ちょっと待って。」

ミーナ「さっきからキョロキョロして何か探してるの?」

ハンナ「探してるっていうか、歩いてる女の子の服装とかお店で売られてる洋服のチェックしてるの。」

ミーナ「へぇ、お洒落に興味あるんだ。」

ハンナ「うん。自分で服作る時の参考にしようと思って。」

ミーナ「作るって・・・、ハンナ洋裁できるの?」

ハンナ「えっ?ミーナできないの?」

ミーナ「無理無理。ボタン付けるのがやっとだよ。」

ハンナ「じゃあ今まで着てた服は?」

ミーナ「ほとんど古着だよ。新品は高くて買えないもん。」

ハンナ「でしょ。買うと高いから自分で作るんだよ。」

ミーナ「すごーい。私にも作ってよ。」


ハンナ「いいよ。気に入った服地を持って来たら。でも今は手元にミシンがないから時間かかっちゃう。」

ミーナ「じゃあ全部手縫いで作るの?」

ハンナ「そうだよ。それしか方法がないから。」

ミーナ「うーん、ミシン欲しいね。」

ハンナ「ミシンがあったらなあ。スカート一枚くらい半日で作れるのに。」

ミーナ「すごっ。職人みたい。」

トーマス「おーい、お前ら早く来いよ。」

フランツ「ほら、話しこんでないでさっさと歩く。」

ミーナ「フランツがうらやましい。」

フランツ「なんで?」

ミーナ「私もハンナみたいな家庭的な子お嫁さんに欲しい。」

フランツ「ははっ、ミーナも頑張れよ。嫁さんに欲しいって言ってもらえるように。」

ミーナ「だってさー、不器用だし、頭もそんな良くないし、顔だってぱっとしないし・・・。

    私って取り柄がないもん。」


ハンナ「そんなことないよ。ミーナはとっても優しい性格してるじゃない。」

トーマス「そうそう。それに趣味は人それぞれだからさ。

     きっとミーナみたいな目立たない子がツボの男もいるって。」

ミーナ「フォローになってないし。ぜんぜん嬉しくないよ。」

フランツ「でも人の好みって不思議なんだよなぁー。・・・・・おーいダズ、ちょっとこっち来てよ。」

ダズ「何か用?」

フランツ「お前、彼女できただろ。」ボソッ

ダズ「なっ、なんでそれを知ってるんだよ」///

トーマス「マジで!?」

ミーナ「うそ!?」

フランツ「夜こっそり宿舎抜け出して、女の子と会ってるの見かけたんだ。」

ダズ「えへへ・・・」///

トーマス「ぐぁっ・・・・・なんだろう、この敗北感・・・・・」

ミーナ「ちょっ、相手はどんな子よ。もしかして目が悪いの?」

ダズ「ひどいなぁ。ごく普通のカワイイ子だよ。」///


ハンナ「どういうきっかけなの?」

ダズ「ほら俺、毎朝起床時間にビューゲル吹いてるだろ。そしたら、毎日ご苦労様って声掛けられて。」///

フランツ「へぇー、で仲良くなったんだ。」

ダズ「うん。すごくいい子なんだ。」///

トーマス「・・・俺がビューゲル吹けばよかった・・・」

ミーナ「・・・ファイフじゃ誰も食いついてこないのに・・・」

フランツ「ダズの良さが分かるんだ。よっぽど人間ができてる子なんだろうな。」

ハンナ「フランツ、さらっと失礼なこと言わないの。」

ダズ「いいんだ。その通りだから。ビューゲル吹いて本当に良かったって心から思うよ。」

トーマス「くっそ・・・、誰だよ相手。教えろよ。」

ダズ「やだよ。秘密だ。」

ミーナ「なんで。」

ダズ「だって・・・、俺の彼女だなんてバレたら、きっと恥ずかしい思いをするだろ・・・」

ハンナ「ダズ・・・。」

トーマス「お前・・・・・悲しいな。そんなふうに自分のこと思うなよ・・・。」


ダズ「いいんだ。自分が嫌われてるの分かってるから。彼女まで俺と同じ目で見られたら可哀想だろ。」

ミーナ「相変わらず卑屈だなぁ・・・。」

ハンナ「彼女が秘密にしたいって言ってるの?」

ダズ「ううん。でも周りから余計なこと言われたくないから・・・。頼むからこのことは内緒にしておいてくれよ。

   俺なんかに彼女ができたって知られたら、余計いじめられちまう。」

フランツ「分かったよ。誰にも言わない。」

トーマス「幸せになれよ・・・。お前は幸せになるべきだ・・・。」

ダズ「へへ・・・、ありがとう。」

ミーナ「・・・ダズに負けてられないね!私もがんばる。ハンナ、私に洋裁を教えて。」

ハンナ「いいけど、急にどうしたの?」

ミーナ「女子力アップしてモテモテになってやるんだから。」

トーマス「・・・別に頑張らなくても今のままでいいけどなぁ・・・」

ミーナ「何か言った?」

トーマス「いや、何でも。」

フランツ「そんなことより今日の心配しようよ。おっ、すぐそこが会場みたいだ。」


―王立公園

サシャ「広いですねー。あっ、大きな噴水がありますよ。」

クリスタ「花壇のお花もきれいに手入れされてるね。薔薇のアーチまである。」

ミカサ「舗道は全部、幾何学模様のモザイクが敷き詰められてる。」

エレン「でっかい池まである。後でボート乗りてぇな。」

コニー「なんかさ、きれいに整いすぎてて不自然だ。

    たくさん木を植えて森っぽくしてあるけど俺はここ好きじゃねぇな。」

ジャン「仕方ねぇだろ。人工的に作ってあんだから。しっかし金のかかった公園だな。」

エレン「おっ、広場が見えてきた。」

ライナー「立派な舞台だな。おっ、ちゃんとグランドピアノが用意されてるな。」

ベルトルト「椅子並べすぎじゃない?観客どれだけ来るの。」

アニ「今は11時か・・・。何時から始まるんだっけ?」

ベルトルト「えっと、15時開演だったかな。」

アニ「そう・・・。この客席が全部埋まったら圧巻だろうね。」

ベルトルト「・・・・考えただけで緊張するからやめてよ。」


サシャ「みなさん見てください!!広場の周りに食べ物の屋台がいっぱい出てます!!」

ライナー「おっ、酒も売ってるな。」

コニー「今日は祭りでもやってるのか?」

ベルトルト「祭りじゃなくてさ、僕らを肴に一杯やる気なんだろう。・・・気が滅入るな。」

ジャン「・・・ちっ、見世物にされる気分ってあんまりよくねぇんだな。

    ・・・サシャ、だいぶ前のことだが公園で歌わせて悪かったな・・・・。」

サシャ「ふふっ、気にしてないですよ。でも、お詫びに何かおごって下さい。」

ジャン「気にしてねぇんだろ?」

サシャ「はい。でもおごって下さい。」

ジャン「気にしてないのに?」

サシャ「おごって下さい。」


ジャン「・・・・・・しょうがねぇ。何が欲しいんだよ。」

サシャ「さすがジャンです。そうですねぇ、色々あって迷いますねー。」

ミカサ「サシャ待って。自由行動はアルミンの許可をとってから。」

ジャン「だそうだ。残念だったな。」

サシャ「そんな・・・。あれ?アルミンはどこ行ったんですか?」

エレン「マルコと一緒に憲兵団の担当者に挨拶してくるって先に行った。」

ミカサ「多分ステージの裏側にいると思う。私たちも行きましょう。」


―ステージ裏

マルコ「すみません。何から何まで準備して頂いて。」

憲兵A「仕事だからな。気にするな。」

アルミン「えっと、お願いしていた小物類はどちらに?」

憲兵A「ああ、募金箱とかか。もうすぐ他の者が届けに来る。」

アルミン「ありがとうございます。」

憲兵A「とりあえず、飯でも食ってゆっくりしてろ。」

マルコ「リハーサルしても構いませんか?」

憲兵A「好きにしろ。俺はこれから休憩時間だから。二時間ぐらいで戻る。」

マルコ「はっ。了解です。」


二人はステージ裏から外に出る。

エレン「よう、ご苦労さん。どうだった?」

アルミン「大丈夫。問題ないよ。」

サシャ「アルミン!!すごくお腹が空きました。昼食の許可を下さい。」

アルミン「うん。みんなお昼にしよう。」

マルコ「12時からリハーサルするから。他の参加者にも伝えてくれ。」


―公園のベンチ広場

サシャ「おいしいです!!屋台でこんなご馳走があるなんて!!」モグモグ

コニー「サシャは何食ってんだ?」モグモグ

サシャ「ガレットです。なんと、生ハムが入ってるんですよ。」モグモグ

ジャン「ちっ、一番高いヤツ選びやがって・・・。」モグモグ

サシャ「ありがとうございます。」モグモグ

コニー「うまそうだな。俺にも一口くれよ。」モグモグ

サシャ「いやですよー。コニーは何食べてるんですか?」モグモグ

コニー「俺?ドルネケバブ。なかなかスパイシーでいけるぜ。」モグモグ

サシャ「お肉入ってるんですか?」モグモグ

コニー「おう。多分羊肉だ。」モグモグ


サシャ「じゃ、交換しましょう。・・・はい。」

コニー「いいぜ。・・・ほれ。」

サシャ「パクッ・・・おお!!これもおいしいです。羊の臭みがまったくありません。」モグモグ

コニー「パクッ・・・やっべー、生ハム初めて食ったぜ。うめぇな、これ。」モグモグ

ジャン「なぁ、お前ら。何で平気で食いかけのもの交換できるんだよ。」モグモグ

サシャ「ジャンは潔癖症なんですか?」モグモグ

ジャン「いや、そうじゃなくてよ・・・」モグモグ

コニー「別にうつる病気持ってないし平気だ。」モグモグ

ジャン「そうか・・・。俺にもお前らみたいな純真な頃があったんだろうな・・・」

サシャ「ジャン?遠い目をしてますよ。」モグモグ

コニー「ジャンも交換したいのか?」モグモグ

ジャン「いや、結構だ。」

※  ※  ※  ※  ※

エレン「それにしてもすごい屋台の数だな。」モグモグ

アルミン「憲兵団がさエルミハ区中の屋台を集めたんだ。高い出店料をとってね。」モグモグ

ミカサ「それでこんなに多いのね。」モグモグ

アルミン「そうなんだ。憲兵団は全て金儲けにしようとする。」モグモグ

マルコ「まぁ、そう言うなよ。こうやってイベントを開くと人が集まってお金が動く。

    少しは経済の活性化に寄与できたんじゃない?」モグモグ

アルミン「でもさ、金持ちから金持ちへお金が動くだけじゃないか。貧困層には何の恩恵もないよ。」モグモグ

マルコ「経済活動が停滞してるよりはマシさ。大金をタンスにしまい込んでるのが一番タチが悪い。」モグモグ

エレン「お前らさ、そんなつまんねぇ話しておもしろいのか?」モグモグ

ミカサ「つまらないけど大切な話。エレンも参加すべき。」モグモグ

マルコ「だからさ、貯蓄するだけして動いてないお金を、表に引っ張り出さなきゃいけないんだよ。」モグモグ

アルミン「表に出したところで、また金持ちのところへ行くだけだよ。」モグモグ


マルコ「そんなことはない。お金が動くってことは消費するってことだ。

    つまり、需要と供給の関係ができる。供給するためには新たに雇用が必要になる。

    そうすればウォールマリア内に溢れる失業者も少しは減るんじゃないかな。」モグモグ

アルミン「金持ちがお金を使いたくなる娯楽がないのが問題なのかな・・・。」モグモグ

マルコ「そう。地下街にあるくらいだ。でもそんなところ一部の人間しか遊びにいかないだろ?」モグモグ

エレン「ウォールマリアにカジノでも作ればいいんじゃね?」モグモグ

アルミン「治安が最悪になりそうだね・・・。でもウォールマリアに何か作るってのはいい考えだ。」モグモグ

マルコ「そう、何でもいいんだよ。富裕層がわざわざ出向いてお金を落としたくなるようなモノなら。

    あとは世の中の気分だね。もう少し明るくならないとさ、景気は上向かない。」モグモグ

アルミン「で、僕らの出番ってわけ?音楽で世の中を明るくするの?」モグモグ

マルコ「ははっ、そこまでは考えてなかったけど。でも、そうなったらいいな。」モグモグ

アルミン「マルコは前向きだね。体制に不満はないの?」モグモグ


マルコ「僕はさ、今の体制の枠組みの中でできることをやれば現状はよくなると思う。」モグモグ

アルミン「僕は枠組みを壊さないと良くならないと思ってる・・・」モグモグ

マルコ「壊すって?」モグモグ

アルミン「クーデターでも起こして、体制をぶっ壊してやろうかと。」モグモグ

マルコ「ははっ、革命か・・・・・・冗談だろ?」

アルミン「うん、冗談・・・。

     でも僕は・・・僕の両親を殺した今の体制をやっぱり許すことができないんだ・・・。」

ミカサ「アルミン・・・。」

エレン「・・・平気そうな顔してたけど、お前やっぱり引きずってたんだな・・・。」

マルコ「・・・アルミン、お前は軍のトップを目指せよ。」

アルミン「マルコ?」

マルコ「ただの訓練兵じゃ何の力もない。何を言っても無駄だ。

    けど中央に意見できるくらい影響力のある人間になれば、体制を変えられるかもしれない。」


エレン「なるほどな・・・。じゃあ、俺は調査兵団の団長を目指すぜ。」

ミカサ「私はエレンとアルミンを支えよう。」

アルミン「そんなトップだなんて・・・僕には無理だよ。」

エレン「諦めたらそこで終わりだろ。やれるとこまでやってやろうぜ。」

アルミン「・・・随分長い道のりだね。」

ミカサ「でも、挑戦する価値は十分ある。」

エレン「マルコはもちろん憲兵団のトップ目指すんだろ?」

マルコ「ははっ、僕はそんな大それた野望は持ってないよ。」

アルミン「人を焚き付けといてそれはないよ。」

エレン「マルコも上を目指そうぜ。そして、俺たちが世の中を変えるんだ。」

アルミン「うん。・・・そこの頃にはみんなお爺ちゃん、お婆ちゃんになってるだろうけど。」

ミカサ「ふふっ、人生をかけて追いかける夢。素敵だと思う。」

マルコ「おっ、そろそろ12時がくるね。リハーサル始めよう。」

―ステージ裏

訓練兵一同が揃う。

アルミン「えーと、楽器類は・・・・・届いてるね。良かった。」

マルコ「憲兵団に頼んだ備品も用意されてるね。じゃあ、各自準備をしてくれ。

    観客が来る前にリハーサルを済ませよう。」

出演者たちはそれぞれ用意を始める。

バタバタ ゴソゴソ

マルコ「ここにタイムスケジュール貼っとくから。大まかな動きはそれで確認して。

    分からないことがあったら直接聞いてくれ。」

アルミン「舞台に直接出ない人は客席から見ててね。おかしな所がないかチェックして欲しい。」

ジャン「おっ、サーベルここにあった。はいよ、ミカサ。」

ミカサ「ありがとう。・・・・って、これ!?」

ジャン「どうかしたか?」

ミカサ「いつもの模造刀と違う。・・・本物の剣・・・。」


ジャン「はっ?そんなわけねぇだろ。」ビュン ガスッ

木製の柱に向かって軽く振った剣は見事に突き刺さる。

ジャン「・・・・・・・!?」

ミカサ「言ったでしょ。本物だって。」

ジャン「マルコーーー!!!!」

マルコ「うるさいな、大声出して。何?」

ジャン「お前、この剣本物じゃねぇか!!軽く振って柱にぶっ刺さったぞ!!」

マルコ「えっ!?そんなわけ・・・・。本当だ刺さってる・・・。」

ジャン「模造刀じゃねぇのかよ!?」

マルコ「いや、憲兵団の担当者には模造刀を用意して欲しいって依頼したはずだ。」

アルミン「トラブル発生?」

マルコ「備品の依頼書の控えある?」

アルミン「ちょっと待ってね・・・・・・あった、これだ。」

マルコ「・・・・ちゃんと模造刀になってるね。担当者が戻って来たら確認しよう。」


ミカサ「練習で使用していた剣は?」

マルコ「極力積荷を減らすために持ってきてないんだ。ごめん。迂闊だった。」

ジャン「どうすんだよ。」

マルコ「・・・剣舞はリハーサル無しで。」

ジャン「ぶっつけ本番かよ!」

マルコ「仕方ないだろ・・・。もし模造刀が用意できなかったら演技自体中止だ。」

ジャン「ふざけんな!!あんなに練習したのに!!」

マルコ「命の危険を冒してまでやることじゃない。」

ミカサ「・・・とにかく担当者が来るのを待ちましょう。それからどうするか決めればいい。」

ジャン「・・・くそっ。」

リハーサルは剣舞を除き滞りなく進んだ。

時間は14時。開演まで一時間を切ったところでやっと憲兵団の担当者が戻ってきた。

マルコ「すみません。依頼させて頂いた備品に不備があったのですが・・・。」

憲兵A「何だ?」

マルコ「模造刀を用意して頂くよう依頼書には明記したのですが、実際に届いたのは本物のサーベルです。」

憲兵A「そうか、それはすまなかったな。」

マルコ「今から用意して頂けないでしょうか?」

憲兵A「うーん、もう時間がないだろ。お前らで何とかしろ。」

マルコ「そんな!?」

憲兵A「文句あるのか?たかが訓練兵のお遊びだろ。手伝ってやってるだけでもありがたいと思え。」

マルコ「・・・・分かりました。自分たちで考えます・・・・」

―ステージ裏

コニー「うっひょーーー。すっげー人が集まってきたぜ。」

ユミル「開演30分前でこれか。満席になるな、こりゃ。」

クリスタ「みんな楽しみにしててくれたのかな。嬉しいな。」

ベルトルト「・・・・頼むからこれ以上お客さん来ないでくれ・・・・。」ブルブル

アニ「・・・びびりすぎ。しっかりしなよ。」

ライナー「ははっ、ベルトルトは相変わらずだな。」

ベルトルト「・・・こんなたくさんの人見たことないよ・・・」ブルブル

ライナー「アニ、ベルトルトの緊張を解く方法を教えてやる。耳をかせ。」

アニ「何だい、それ?」

ライナー「ヒソヒソヒソヒソ・・・・」

アニ「・・・・蹴られたいの?」

ライナー「ふざけてるわけじゃねぇよ。出番になってもベルトルトがあれじゃ困るだろ?

     一応お前には最終手段を教えとこうと思ってな。」

アニ「はっ、くだらない・・・。」


アルミン「あっ、マルコが戻ってきた。」

ジャン「どうなったんだ?」

マルコ「・・・・すまない。剣舞は中止だ。」

ジャン「はぁ・・・なんなんだよ。ったく、俺の3ヵ月間を返せよ。」

エレン「じゃ、俺は?」

マルコ「エレンには演奏してもらう。」

エレン「そうか・・・仕方ねぇな。ミカサたちに怪我させるわけにはいかねぇもんな。」

ミカサ「・・・・・・・・」シュン

ジャン(クソッ・・・ミカサが落ち込んでるじゃねぇか。ミカサだって一生懸命練習したんだ。

    それがエレンのためってのは気に食わないが・・・。)

マルコ「クリスタ、プログラムの変更がある。」

ジャン(ミカサいいのか?エレンと一緒の舞台に立てるのを楽しみにしてただろ・・・。)

クリスタ「えっ?急だね。どうしたの?」

ジャン(お前の思いはそんなものなのか?・・・・・・・・違うだろ!!!)


マルコ「ちょっと手違いがあって・・・。エレンの独奏で。剣舞は『やるぜ!!!』

マルコ「ジャン?」

ジャン「ミカサと俺の二人でやる。マルコは見学しとけ。」

ミカサ「・・・・ジャン。」

マルコ「何言ってんだよ。そんな危険なこと舞台の上でやらせるわけにはいかないだろ。」

ジャン「ミカサが怪我をすることはまず無い。練習でも無傷だ。」

マルコ「・・・ジャンは練習でさえ傷だらけじゃないか。」

ジャン「あんなのかすり傷だ。」

マルコ「今日はかすり傷じゃ済まないから言ってんだよ!!!」

ジャン「いいんだ。俺は大怪我したって。ミカサを舞台に上げてやりたいんだよ。」

マルコ「ジャン・・・・お前馬鹿だろ・・・・。」

ジャン「できるだけ舞台の上を血で汚さねぇようにするからよ。・・・頼む、やらせてくれ。」


エレン「俺はどっちでも構わねぇけど。」

ミカサ「ジャンに覚悟があるなら・・・・・私もやらせてほしい。当てないように細心の注意を払うので。」

アルミン「緊張感ありすぎだね・・・。」

クリスタ「エレンには『剣の舞』じゃなくって、リストの『死の舞踏』弾いてもらえば良かったかな・・・。」

マルコ「クリスタ!」

クリスタ「ごめん・・・。つい、頭に浮かんじゃって・・・。」

ジャン「で、やっていいのか?」

マルコ「・・・・・ああ。ただし絶対にミカサの間合いには入るな。迫力とか無くていいから。

    ・・・・とにかく怪我だけは避けてくれよ。」


危険と不安をはらみつつ舞台の幕が切って落とされた。

>>1ですって言い忘れてました。今日はここまで。展開が遅く申し訳ない。
続きはまた後日です。

カップリングどうなってんの?

>>1です。レスありがとうございます。感情移入して頂けるとは光栄です。
>>724 カップリングは正直何も考えてなかったんです。気付けばマルクリ。
   最初の注意書きに書いてなくて不快な思いをされた方は申し訳ありません。
   他はエレミカ、コニサシャ、ベルアニがゆるく入ってます。


※  ※ ステージ上 ※  ※

マルコ「本日は私たちウォールローゼ南方面駐屯地・訓練兵団のチャリティーコンサートにご来場頂き、

    誠にありがとうございます。

    この会場で皆様にお会いできますことを団員一同、心より楽しみに練習に励んで参りました。

    若さの溢れる瑞々しいステージを最後までごゆっくりお楽しみ下さい。

    なお、演奏の合間に募金箱を持った団員が、皆様の座席の間を回らせて頂きます。

    訓練兵団の文化的活動にご理解頂ける方は、ご支援の程よろしくお願いいたします。     

    最後になりましたが、本日のコンサートの開催にあたり、惜しみないご協力を頂きました

    憲兵団のみなさまに心より御礼申し上げます。     

    それでは、皆様大変お待たせ致しました。チャリティーコンサートの開演です。」

超満員の会場にビューゲルが高らかに鳴り響く。ざわめいていた会場に一瞬沈黙が訪れる。

サシャ「さあ、いきますよ。」

サシャを先頭に軍楽隊がステージに上がる。


大観衆を前にしても隊員達は皆落ち着いていた。

初仕事としてトロスト区の民衆の前で演奏した経験が自信に繋がっていた。

楽しく軽やかな行進に、観客は心を躍らせた。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

クリスタ「スタートは好調だね。観客の反応がいい。」

マルコ「人前での演奏に慣れてる軍楽隊を最初にして正解だったね。」

クリスタ「マルコも開会挨拶ご苦労様。」

マルコ「ちょっと堅苦しすぎたかな。・・・やっぱり挨拶はクリスタにやってもらいたかったよ。

    女の子が舞台に上がった方が華があるでしょ。」

クリスタ「ふふっ、私は無理だよ。人前で話すの恥ずかしいもん。」

アニ「しかしわざわざ憲兵団への礼を入れるかな。あれはマルコ流の担当者への皮肉?」

マルコ「そんなんじゃないよ。手伝ってもらったことには変わりないから。

    それに今回のステージの主催は憲兵団になってるし。一応さ、礼儀だよ。」


アニ「相変わらずお利口さんだね。じゃあこのステージが成功したら憲兵団の手柄ってわけ?」

マルコ「そうなるかな・・・。」

アニ「あんたさぁ、自分が憲兵団に入りたいからって尻尾振ってんじゃないの?」

ベルトルト「アニやめなよ。こんな時に噛み付かなくてもさ・・・。」ブルブル

マルコ「いいんだベルトルト。そう思われても仕方のない状況だから・・・・。

    でもさアニも憲兵団に入りたいんだろ?角が立たない方が都合が良いと思うけど。」ニコッ

アニ「・・・・・・やっぱりあんた苦手だわ。」

マルコ「ははっ、僕はそうでもないよ。」

アニ「・・・・・ちっ。」

ベルトルト「なんでみんな無駄話する余裕があるんだよ・・・」ブルブル

マルコ「えっと・・・、この後の司会はクリスタに任せていいんだよね。」

クリスタ「・・・・・・うん。」

マルコ「あれ?本当は司会するの嫌だった?」

クリスタ「司会が嫌ってわけじゃなくて・・・・・・・・あんまり目立ちたくないの。」


マルコ「そうえいば、今回はソロで演奏するのも頑なに拒否してたね・・・・・。」

クリスタ「・・・・・・・・」

マルコ「・・・・分かった。無理に司会しなくていいよ。手の空いてる人で回すから。」

クリスタ「・・・わがまま言ってごめんね。」

マルコ「いや、僕が勝手に押し付けちゃったから。悪かったね。」

ライナー「おいマルコ、俺達の出番は次でいいのか?」

マルコ「ああ、そろそろ準備しといて。・・・・・・・・合唱の伴奏は大丈夫だよね?」

クリスタ「うん。隅っこでピアノ弾くぐらいなら・・・・。」

マルコ(・・・クリスタの様子がおかしい。まるで人に見られることを恐れているようだ・・・)

マルコ「ライナー、思いきり存在感を示してくれよ。観客の目を全部集めるんだ。」


ライナー「もちろんだ。俺たちの歌声で全員昇天させてやる。」

クリスタ「ふふっ、期待してるよ。」ニコッ

ライナー「おう。///」

マルコ「それより、ジャンとミカサ見なかった?」

ライナー「あぁ、あいつらならユミルと一緒にすぐそこの林で木を切ってたぞ。遊んでる場合じゃねぇのにな。」

マルコ「・・・刃こぼれさせようとしてるのか?・・・・・ってユミルも次出番だよ。」

クリスタ「あっ、そうだった。呼んで来るね。」

マルコ「お願い、急いでね。」


※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

ミカサ「ユミルに言われた通り、樹の皮剥がして剣で傷つけてみた。」

エレン「うおっ、なんかネバネバした汁が出てきたぞ。」

ユミル「こぼさないように早くその液体を集めな。・・・ほれ、袋やるから。」

エレン「サンキュ・・・・って、これで剣の切れ味本当に悪くなるのか?」

ユミル「知らん。」

ジャン「おい、お前が助けてやるって言うから、こんな意味不明な作業してんだろうが。」

ミカサ「効果が不明なのなら時間の無駄。その辺の岩でも叩き割ったほうが効率的。」

ユミル「バーカ、んなことしたらお前の手首がいっちまうだろ・・・・・・ちょっと待ってろ。」ゴソゴソ パカッ

ユミル「・・・・これ、何か分かるか?」

ミカサ「・・・琥珀色の・・・・ガラス玉?」

ジャン「宝石かなんかか・・・にしてはでかいな。石ころぐらの大きさあるし。」

ユミル「これは‘ロジン’っつってなヴァイオリンの弓に塗ったくる、まぁ滑り止めみたいなもんだ。

    これを塗らなきゃヴァイオリンは音がまったく出ない。」


エレン「それがどうした。何か関係あんのか?」

ユミル「大ありだ。お前らが傷つけたのは松の木だ。ロジンの原料は松の樹液、いわゆる松ヤニってやつだから。」

ミカサ「ではこの樹液を刃に塗れば切れ味が悪くなるの?」

ユミル「生松ヤニをそのまま塗っても意味がねぇよ。・・・・・・やっぱ、樹液集めるの時間かかるな。

    ・・・・精製して純粋なロジン作るわけじゃねぇからいっか・・・・。」

ジャン「何ブツブツ言ってんだよ。」

ユミル「松の幹に液体が流れたような白っぽい塊がくっついてるだろ。お前ら、あれを集めな。」

エレン「うーんと、これか?・・・うわっ、ベトベトして気持ち悪ぃ。」

ジャン「オレ無理だわ。こんな巨大カマキリの卵みてぇなもん触れねぇ。」

ユミル「文句言ってねぇでさっさと採れよ。できるだけたくさん集めろ。」

ミカサ「これも松ヤニ?」

ユミル「そうだ。分泌したばかりの松ヤニは無色透明の粘っこい液体なんだが、時間が経つとそうなる。」

ジャン「こんなの直接手で触って大丈夫なのか?」

ユミル「さあ?普通は軍手はめるがな。」

ジャン「おいっ、かぶれたらどうすんだ。」


ミカサ「そんなこと気にしてる場合じゃない。急がなければ。」

ジャン「クソッ・・・・・・・・・・ネチョ、ひぃぃぃぃぃ、やっぱ無理!!」ゾワワワ

エレン「ったく、情けねぇな。ほら、だいぶん集まったぞ。」

ユミル「じゃあ、そうだな・・・・・・ここのタイル張りの歩道の上にまとめて置いてくれ。」

ミカサ「分かった。」

ユミル「袋に溜まった樹液も上からぶっかけろ。」

エレン「おう。」

ジャン「何をする気だ?」

ユミル「燃やすんだよ。えーと、マッチは・・・あった。・・・・・点火。」シュッ

エレン「うおっ、一気に燃え上がった。」

ユミル「生松ヤニには油分が含まれてるからな。」

ミカサ「・・・茶色っぽい液体が流れ出てきた。」

ユミル「これが‘ロジン’の原形だ。本来の作り方とは全然違うが、まぁ問題ないだろ。」

ジャン「これを刃に塗りつけるのか?」

ユミル「そうだ。そいつは冷めるとすぐ固まるからな。半日ほっとくとガラスみたいになる。」


エレン「半日も待ってられねぇよ。」

ユミル「分かってねぇな。ガラスになったら意味がないだろ。」

ミカサ「ガラスだと刃がぶつかり合った時に砕け散って危険。」

ユミル「塗って二時間ぐらいで適度な弾力のある天然樹脂のコーティングになる・・・・・はずだ。」

ジャン「マジか?」

ユミル「さあ、やったことないからな。知らん。」

ジャン「お前はさっきから何なんだよ!本当は適当なこと言ってんじゃねぇのか?」

エレン「二時間ってそんな時間もねぇよ。」

ユミル「だから早く塗れってば。で、できるだけ振り回して乾燥させろ。」

ミカサ「とにかく急いで塗りましょう。できるだけ厚めに。」ベチャ

エレン「ああ。4本全部やるのか?」ベチャ

ジャン「失敗作が出たら困るからな。一応全部塗っとこうぜ。」ベチャ

ユミル「言っとくがコーティングしたからって気休め程度だからな。

    軽く触れる程度なら斬れないが、深く入ればザックリいく。」


エレン「ユミルは意外と物知りだな。こんな知識どこで仕入れたんだ?」ベチャ

ミカサ「ヴァイオリン工房で教わったの?」ベチャ

ユミル「そうだ。お前らも兵団の中に引きこもってないで一度世間に出て働いてみな。案外楽しいぜ。」

ジャン「うっせぇよ。・・・・・・だが、サンキュ。」

ミカサ「ありがとうユミル。すごく助かる。」

ユミル「礼はいらないよ。親切でしたわけじゃないし。見返りを期待してるからな。」

エレン「何だよ。金でも取る気か。」

ユミル「金?ははっ、そんなもんじゃ面白くないだろ。お前らには・・・・そうだな・・・・。」

ジャン「ふざけんな。オレは何もしねぇぜ。」

クリスタ「おーい!!ユミルーーー!!」

ユミル「おっ、クリスタ。・・・・何か用かーーー!!」

クリスタ「もう出番が来るよーー!!早く来てーーー!!」


ユミル「わかったーー!!今行くーーー!!」

ミカサ「舞台に出るの?」

ユミル「そうらしい。じゃあな。松ヤニ塗りたくれよ。・・・・・・・・・何させようかなー♪」スタスタスタ

エレン「はは・・・・一番助けてもらっちゃいけない奴の手を借りちまったな。」

ジャン「何言われても放っとけ。」

ミカサ「ほら、無駄口叩かずに手を動かす。」ベチャ


※  ※ ステージ上 ※  ※

演奏が終わり、軍楽隊は喝采を浴びていた。一同はステージ中央に整列し客席に向かって敬礼をする。

アルミンは一歩前に出ると観客に向かって口を開いた。

アルミン「私達は訓練兵団所属の軍楽隊です。一年前に結成されたばかりの、兵団の新たな試みの一つです。

     かつて壁の外では軍隊の中には軍楽隊というものが必ずと言っていい程、存在していたそうです。

     しかし壁内に人類が閉じこもってからは軍楽隊は消滅してしまいました。

     人類が築いてきた文化を取り戻すべく、私たちは立ち上がりました。

     音楽を通して少しでも皆様の心を明るくすることができたなら、これ以上の幸せはありません。

     ご清聴を心より感謝致します。」バッ


再度敬礼すると、サシャの合図で隊は行進しながら舞台を去っていく。再び起こる拍手。

沸いた客席の間を募金箱を持った回収担当の訓練兵が回っていく。次々に投げ入れられる金、金、金。

それを見て満足げに口角を上げる憲兵たち。

客席の後方で今回のイベントの社会的有用性を検証する中央上層部の面々。

特別席のパラソルの下では貴族連中がワインを片手に清談を交わす。

あらゆる思惑が交差しもつれ合い、客席のボルテージは上がっていく。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

クリスタ「遅くなってごめん。間に合った?」

マルコ「大丈夫。今、寄付金集めてるところだから。」

ユミル「まったく、最初から言っとけよな。ここにいろって。」

クリスタ「タイムスケジュールぐらい自分で確認しなさいよ。」

マルコ「あっ、アルミン。お疲れ様。締めの挨拶までしてくれて助かったよ。」

アルミン「ひゃぁぁぁぁぁ、ドキドキしたよーーーーー!!」ギュッ

マルコ「!? ア、アルミン?」

ユミル「戻ってきた途端マルコに抱きついた・・・。なんだ、お前らできてんのか?」ニヤニヤ

クリスタ「それは無いから。」

ユミル「何でだよ。」

クリスタ「無いったら無いの。」

アルミン「ちょっと待ってね。しばらくこのまま・・・・・・」ギュゥ

マルコ「ははっ、落ち着いた?アルミンでも緊張するんだな。」ポンポン


アルミン「平気かなって思ってたけど、あれだけの大観衆前にしたらさすがに足が竦んじゃったよ。」

マルコ「うん。でも立派な演奏だったよ。」

アニ「・・・・・ねぇ、アルミン。」

アルミン「あっ、アニ。何か用かな?」

アニ「あのさ・・・・人に抱きつくと本当に落ち着くの?」

アルミン「えっ?・・・・あっ、変に見えたかな。別にマルコが好きとか、そんなんじゃないからね。」

アニ「いや、そういう話じゃなくてさ。・・・・・・抱きつくと安心するの?」

アルミン「うーん・・・、子どもっぽく思われるかもしれないけど、人の温もりって安心するよ。」

アニ「相手は誰でもいいの?」

アルミン「そりゃあさ、マルコなんかより可愛い女の子の方がいいけど。

     抱きついても許してくれる子なんて僕にはいないし・・・・・。」

マルコ「なんかで悪かったね。」

アニ「そう。ありがとう、もういいわ。」


アルミン「・・・もしかしてアニも緊張してるの?だったら僕が抱きしめてあげるよ。」

アニ「・・・・」シュッ バシッ

アルミン「はぐっっっ・・・・!!」

アニ「調子にのるな。」スタスタスタスタ

マルコ「・・・・・・アルミン、チャレンジャーだな。」

アルミン「ってて・・・・・。軽い冗談なのに本気で蹴られた。」

マルコ「何だかいつもよりテンション高いね。」

アルミン「うん。ステージの熱気のせいかな。すごくハイな気分だよ。」

マルコ「ははっ、舞台酔いしたんだよ。

    ・・・・軍楽隊のみんな!!まだ出番が残ってるけど、とりあえずご苦労様!!」

サシャ「ダズのことも忘れないで下さい。」

マルコ「あっ、もちろんダズもご苦労様。ビューゲル良かったよ。」

ダズ「へへっ。・・・ありがとう。」

サシャ「ダズはいつも皆のために頑張ってくれてますから。偉いですよ。」

ダズ「サシャ・・・・///」


トーマス「・・・・・・・今の見たか?ミーナ。」ヒソヒソ

ミーナ「・・・・・・・うん、ばっちり見た。」ヒソヒソ


マルコ「じゃあ、ライナー軍団は舞台にあがってくれ。」

ライナー「デスクリと呼びやがれ。」

マルコ「ははっ、ごめん。やっぱそれ恥ずかしい。・・・・クリスタとユミルも頑張ってね。」

クリスタ「うん。ミスらないように気をつけるよ。」

ユミル「あっ、マルコ。ミカサたちの出番できるだけ後に回してやってくれ。

    それが無理なら、できるだけ引き伸ばしてくれよ。」


マルコ「ミカサたちに何かあったの!?」

ユミル「いや、怪我とかじゃないから安心しな。ちょっと時間が必要なんだよ。」

マルコ「よく分からないけど・・・・・・了解した。

    サシャ、悪いんだけど順番変更。ライナーたちの後に歌ってくれるかな。」

サシャ「いいですよ。ライナーたちの二曲目に私も加わってますから。そのまま舞台いたらいいですか?」

マルコ「うん。区切りを入れずそのまま続けよう。クリスタとユミルもそのつもりで頼むね。」

クリスタ「わかった。」

ユミル「いいぜ。・・・・・無理言って悪ぃな。」


※  ※ ステージ上 ※  ※

サシャ「おまたせしました。次は訓練兵団が誇る男声合唱団『デス・クリーガーズ』の登場です。

    ヴェルディ作曲 歌劇『アイーダ』より『凱旋行進曲』、

    ビゼー作曲 歌劇『カルメン』より『闘牛士の歌』二曲続けてお楽しみ下さい。」

サシャが舞台袖に引き揚げるのと交代に屈強な男たちが姿を現す。

声のパートごとに別れて並ぶと、ライナーの合図で一斉に敬礼をする。

ざわつく客席。男ばかりで合唱すること自体を珍しく感じるのだろう。

ライナーたちには奇異なものを見るような視線が投げかけられた。

そんな中、ステージの端でクリスタとユミルは演奏を始める。

♪♪♪~♪♪♪~

勇ましく壮大な前奏が流れる。ヴァイオリンの唸るように長く尾を引く余響。ピアノの小気味良い行進のリズム。

伴奏の勢いが頂点に達する所でライナーたちは一斉に歌いだす。

フォルティシモの大音声が大気を振るわせ、衝撃が客席に走る。一瞬にして観客たちの目の色が変わった。


Gloria all'Egitto, ad Iside♪ Che il sacro suol protegge♪~~~

聴衆はもちろん歌っているライナーたちでさえ、言葉の意味はさっぱり分からない。

歌詞に振られたカタカナを丸暗記しただけだ。

だが観客は興奮した。言い表し難い感動に襲われ鳥肌が止まらなかった。

意味など分からなくいい。本能のままに感じればいい。

そう、これが俺たちの音楽だ。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

アルミン「すごい迫力だね。」

サシャ「そうですよ。教室で歌ってるの聴くと耳がやられます。」

アルミン「ライナー軍団って今何人いるの?」

サシャ「えーと、40人ぐらいです。」

アルミン「着実に増えてるし。でもたった40人でこの声量はすごいね。」

マルコ「身体の大きさや肺活量が声量には影響するから。

    女子で換算したら100人分ぐらいの声の大きさはあるんじゃないかな。」

アルミン「へぇ。でもさサシャもデスクリだっけ、それに加入したの?」

サシャ「いえいえ、入りませんよ。歌の練習させてもらってたら、なぜか一緒に歌うことになってました。」

マルコ「サシャはすごいよ。むさ苦しい男連中に囲まれても全然平気なんだから。」

サシャ「はい。今では仲良しさんですよ。みなさんの下ネタに突っ込み入れまくりです。」

マルコ「サシャがいるのにライナーたち普通にそういう話するから。居心地悪かったよね。ごめん。」

サシャ「気にしてませんよ。むしろ男子のエロトーク聞けて面白かったです。」


アルミン「あはは、ひかないんだ。でもライナーたちもさすがに話す内容セーブしてたんでしょ。」

マルコ「・・・・・僕がドン引きするくらい濃かったよ。」

サシャ「・・・・はい。えげつなかったですね。」

マルコ「あいつらサシャの反応見て楽しもうとしてたんだよ。とんだセクハラ集団だ。」

サシャ「大丈夫です。そんな手には屈しません。それに男の集まりっていいなって思いましたよ。」

アルミン「どうして?」

サシャ「すごくお馬鹿な話や下ネタばかりなんですけど、悪意がないっていうか・・・・・。

    他人のことをいじったりからかったりしても、決して悪口は言わないんですよね。」

マルコ「ライナーの影響だね。」

アルミン「うん。ライナー、人の悪口とか大嫌いだから。」

サシャ「ただのセクハラ親父じゃないんですね。」

マルコ「あれだけ人が集まってくるんだ。ちゃんと理由があるんだよ。」


アルミン「それよりさ、二曲目ってどうして『闘牛士の歌』なの?」

サシャ「私がソロで歌うって言ったらライナーが俺にもソロやらせろって言い出しまして。

    ステージ最後の合唱で独唱パートあるのに欲張りです。」

マルコ「ライナーって声の音域がバリトンだから。

    バリトンが主役の曲で、なおかつサシャも加えてみんなで盛り上がれる曲探したらこれになった。」

アルミン「ふーん。さっきリハーサル見たけど、お芝居っぽくしてなかった?」

サシャ「そうなんです。気をつけのまま歌っても面白くないので動きを加えてみました。」

マルコ「演出は自由にしてもらったよ。やってる本人たちが楽しくないとね。観客も楽しくないでしょ。」

サシャ「おっ、そろそろ終わりそうですね。」

マルコ「サシャの出番だね。例のスピーチも頼むね。」

サシャ「はい。お任せください。」

アルミン「頑張って。」

※  ※  ※  ※

トーマス「・・・・・ねぇミーナ。さっきのダズだけどさ、サシャを前にして顔赤らめてたよね。」ヒソヒソ

ミーナ「そうそう、しかもサシャがダズを褒めてた。」ヒソヒソ

トーマス「もしかして・・・・ダズの彼女って・・・・」ヒソヒソ

ミーナ「いや、それは無いでしょう・・・・」ヒソヒソ

トーマス「わかんねぇぞ。あのサシャだ。常人には理解できないセンスをしていても不思議じゃない・・・」ヒソヒソ

コニー「お前ら何コソコソ話してんだよ。」

ミーナ「あっ、コニー。・・・・・何でもないよ、えへへ。」

コニー「うそつけ。俺にも教えろよ。」

トーマス「・・・コニーだったら知ってるかも。サシャと仲良いし。」ヒソヒソ

ミーナ「・・・でも、ダズの彼女のことは秘密なんでしょ。」ヒソヒソ

トーマス「・・・ダズの名前出さなきゃいいんだろ。」ヒソヒソ

コニー「だからヒソヒソ話すんのやめろよ。」


トーマス「ごめんごめん。コニー、あのさ聞きたいことがあるんだけど・・・・。」

コニー「何だよ。」

トーマス「・・・・サシャって最近、彼氏できた?」

コニー「はぁ?何だそれ。」

ミーナ「知らないんだったらいいの。変なこと聞いてごめんね。」

コニー「知らねぇけど・・・・・・。あいつ彼氏できたの?」

トーマス「いや、何となくそうなのかなって・・・・・。ごめん。忘れてくれ。」

コニー「忘れてくれって・・・・。変なやつらだな・・・・。」

ミーナ「ダズ本人に聞くのが一番てっとり早くない?」ヒソヒソ

トーマス「そうだね。聞きに行こう。」ヒソヒソ

コニー「まーた、コソコソする。・・・・それよりサシャはどこだ?」

ミーナ「多分、今ステージ出てるよ。」

コニー「そっか。・・・・・見に行ってやろうかな。」


※  ※  ※  ※

コニー(サシャに彼氏?ありえねぇな。)スタスタ

コニー(だってあいつ自分でそんなもんいらねぇって言ってたよな。)スタスタ

コニー(・・・・でも何でそんな話がでるんだ?本当にできたのか?)スタスタ

コニー(・・・・だったら相手は誰だよ。サシャと仲がいいのは・・・)スタスタ

コニー(アルミン?軍楽隊で一緒だしな。んー、でもなんか違うよな・・・・)スタスタ

コニー(じゃあエレンとか?・・・無いな。それともジャン?・・・もっと無いな。)スタスタ

アルミン「あっ、コニーも見に来たの?今ステージめちゃくちゃ面白いよ。」

コニー「おう。何やってんだ?」

アルミン「ライナーとサシャがさお芝居しながら歌ってんだ。迫真の演技だよ。」

コニー「ふーん。どれどれ・・・・・・ぷっ、何だありゃ。」ゲラゲラ

マルコ「笑うなよ。真剣なんだから・・・・・・ぷっ、でもライナー顔キメすぎ・・・ぷぷっ・・・」


アルミン「あははっ・・・・顔面演技がすごいね。」

コニー「サシャもよくあの距離で噴出さないで歌えるよな・・・・・・って結構近いな。」

マルコ「闘牛士役のライナーがカルメン役のサシャを口説くシーンにしたんだって。」

コニー「だって、ってマルコの指導じゃないのか?」

マルコ「違うよ。ライナーがやってみたいってさ。観客も楽しんでくれてるし大成功だ。」

コニー「ライナーが・・・・。」

コニー(・・・・・・サシャの彼氏って・・・・・・ライナー?)

舞台袖から再度覗く。目に入ってきたのはサシャの肩を抱き寄せるライナーの姿。

コニー(・・・・・・・・・・・見たくねぇ。)ズキン

コニー「・・・・・・もういいわ。」クルッ タッタッタッ

マルコ「コニー?」

アルミン「行っちゃったね。どうしたんだろう。もう飽きたのかな。」


※  ※  ※  ※

ミーナ「ねぇねぇ、ダズ。」

ダズ「何だよ。」

トーマス「ダズの彼女って・・・・・・もしかしてサシャ?」

ダズ「は?違うよ。何言ってんだよ。」

トーマス「あっ、やっぱり。・・・そうだよね、ははは、ごめんね。」

ミーナ「じゃあ何でサシャにお礼言われて頬染めてんのよ。気持ち悪い。」

ダズ「気持ち悪いって・・・・。そんなの勝手だ。可愛い女の子に話しかけられたら照れるだろ。」

ミーナ「じゃあ何で私と話してる時は平然としてるのよ。」

ダズ「そりゃあ・・・・・・・あんまり可愛くないから?」

ミーナ「あはは、そっかー可愛くないかー・・・・・・・・・・殴っていい?」


※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

エレン「おっ、いい感じに固まってきたぜ。」ビュン

ジャン「だぁぁぁぁ、もういい加減、剣振るの疲れたぜ。」ビュン ビュン

ミカサ「それはジャンが二本も振ってるから。一本こちらに貸して。」ビュン

ジャン「ミカサには渡さねぇよ。おいエレン、お前が持てよ。・・・ほいっ。」ポン

エレン「うっ、わ・・・・危ねぇな。急に投げるなよ。」

ジャン「すまんね。コーティングしてあるから大丈夫だと思ってよ。」ビュン

ミカサ「斬れるときは斬れるってユミル言ってたでしょ。気をつけて。」ビュン

ジャン「はいはい。悪かったよ・・・・・・って、あれはコニーか・・・?」ビュン

ミカサ「コニーね。」ビュン

エレン「おーい!コニー!暇なら手伝ってくれ!」ビュン ビュン

コニー「・・・・・お前ら見ねぇと思ったらこんなとこで何やってんだ?」

ジャン「剣の刃に細工してんだ。これで斬れにくくなるんだとよ。」ビュン

エレン「ホイ、一本頼むわ。適当に振ってくれ。」ビュン


コニー「いいけど・・・・・・」ビュン

ジャン「でな、さっきの話なんだけどよ。」ビュン

エレン「お前がカマキリが苦手って話か。」ビュン

コニー(・・・・・・サシャの彼氏がライナーだったら安心だな。)ビュン

ジャン「そうだ。ガキの頃によ、公園で捕まえたカマキリを虫かごに入れて飼ってたんだ。」ビュン

ミカサ「可愛らしい時期もあったのね。」ビュン

ジャン「まぁな。捕まえたカマキリに名前つけたりしてよ。」ビュン

コニー(・・・ライナーはいい奴だ。優しいし頼りになる。)ビュン

エレン「それはねぇな。虫に名前つけるとか。」ビュン

ジャン「うるせぇよ。で、大事に育てたカマキリ君と遊ぼうと思って虫かごから出したんだ。」ビュン

ミカサ「・・・・・・どうせうっかり潰したとかでしょ?」ビュン

コニー(・・・・身長も高いしな。サシャとお似合いだな。)ビュン

ジャン「正解。でもそれでカマキリが嫌いになったわけじゃねぇんだよ。」ビュン

エレン「じゃあ何だよ。」ビュン


ジャン「潰れたカマキリの腹から、うねうねした超長い虫が出てきたんだよ。」ビュン

エレン「きもっ!!」ビュン

コニー(・・・・でも舞台の上のあいつら見たら胸が痛くなったな。)ビュン

ミカサ「ただの寄生虫でしょ。」ビュン

ジャン「冷静だな。虫とか平気なのか?」ビュン

ミカサ「山育ちだから。」ビュン

コニー(・・・・・なんでだろうな。ライナーでいいじゃねぇか・・・・・)ビュン

エレン「・・・・・コニー?お前何で泣いてんだ?」

ミカサ「静かだと思ったら・・・・・どうしたの?」

ジャン「お前、泣くほど舞台が恐かったのか?」

コニー「えっ?あれっ・・・ははっ・・・おかしいな・・・・・」ポロポロ

エレン「何かあったのか?」


コニー「いや・・・さ、ライナーのこと考えてたら胸が痛くなってよ・・・・」ポロポロ

ジャン「・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・」

エレン「・・・・・・」

コニー「何で黙るんだよ・・・・やっぱ変かな・・・・」ゴシゴシ

ジャン「・・・・・・変っていうか・・・・・な。」

エレン「お、おう・・・・・・まぁいろいろあるよな・・・・。」

ミカサ「泣くほど思いつめてるのね・・・・」

コニー「あーーー、かっこ悪ぃとこ見られちまったな。すまん、忘れてくれ。」

ジャン「あ、ああ。」

エレン「まぁ・・・、頑張れよ。」

ミカサ「・・・無理しないでね。」


コニー「俺、ちょっと顔洗ってくるわ。ほい、剣返す。」

エレン「ああ。手伝ってくれてサンキュ。」

コニー「じゃあな。」スタスタスタ・・・・

ジャン「・・・・・・」

エレン「・・・・・・」

ミカサ「・・・・・何も見なかった。何も聞かなかった。いい?」ビュン

ジャン「そ、そうだな。それがコニーのためだな。」ビュン

エレン「でもライナーって・・・・、アルミンならまだ分かるけど・・・。」ビュン ビュン

ミカサ「エレン、分からないで。お願い。」ビュン

エレン「いや、言ってみただけだろ。顔恐ぇよ。」ビュン

ジャン「しっかし、この緊急時にとんでもない爆弾落として行きやがったな。集中できねぇよ。」ビュン

今日はここまでです。続きは後日。

乙です
ハリガネ虫キモいよね…

>>1です。レスありがとうございます。
>>762 そうそうハリガネムシ。やっと名前思い出せた。
   なのでちょっと取り入れてみました。


※  ※ ステージ上 ※  ※

舞台で演じられるのは俗にまみれた狂騒歌劇。

圧倒的な雰囲気に客席は呑まれ気持ちが昂っていく。

闘牛士になりきって、ライナーは威厳に満ちた深みのあるバリトンで観客に歌いかける。

Apostrophes, cris et tapage♪    わめけ、叫べ、足を踏みなれせ
Pousses jusqu'a la fureur!♪    もっと興奮しろよ
Car c'est la fete du courage!♪   今日は戦士のお祭りだろ

ライナーを取り囲んだ男達は勇ましい掛け声で盛り上げる。

Toreador, en garde! Toreador! Toreador! ♪ さあ進むんだ 闘牛士よ 
Toreador, Toreador. L'amour t'attend. ♪  恋がお前を待っている

舞台はクライマックス。ライナーはサシャの肩に手を置き猛る情熱のまま歌い続ける。

サシャも負けじと空気を突き抜けるような鋭い声を張り上げる。

艶を含んだ狂おしいヴァイオリンの音色が空に舞い上がり、演技は終焉を迎えた。

洪水のような拍手と歓声が押し寄せる中、ライナーたちは敬礼し舞台を後にした。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

マルコ「お疲れ様。さすがだね。安心して見ていられたよ」

ライナー「ふぃー・・・・・ビールねぇのか?」

アルミン「駄目だよ。まだ出番あるんだから。はい、タオル」

ライナー「おっ、サンキュ」フキフキ

マルコ「公演終わったらみんなでビールで乾杯しよう。屋台で売ってたから」

アルミン「勝手に先に飲まないでよ」

ライナー「分かったよ。・・・・にしても、ユミルの奴ヴァイオリン上手くなったな。

     技術的なことはよく分からんが、あいつの奏でる音が心臓に突き刺さってきたぜ」

アルミン「僕も思った。なんだかんだ言って練習続けてたんだね」

マルコ「そうみたい。照れくさいのか教えてくれないけど」

ライナー「あいつのヴァイオリンはなんつーか悲哀を感じるんだよな」


マルコ「楽器の音は演奏者を反映するって言うからさ。過去にいろいろあったのかもね。」

アルミン「ユミルの過去か・・・。今度聞いてみようかな。簡単には教えてくれなさそうだけど」

ライナー「やめとけ。詮索されたくないから、ああやって意地張って生きてんだろ。放っといてやれ」

アルミン「そっか・・・、そうだよね。あまり話したくない過去って誰にでもあるよね」

マルコ「・・・過去か・・・・

    ・・・・・・僕はさ、みんなといると時々自分の存在が居た堪れなくなる」

アルミン「マルコ?」

マルコ「僕はみんなと違って平穏無事に過ごしてきたから、人に話したくないような辛い過去がない。

    ウォールマリアが陥落してみんなが苦しんでいた時、僕は何をしていた?

    温かい家の片隅で見たこともない巨人の恐怖に震えていただけだ。

    みんなが開拓地で強制労働させられてた時は?・・・・・僕は友達と遊んでた。

    みんな重荷を背負って生きてるのに僕の背中は軽いんだ。情けないくらい軽いんだよ」

ライナー「・・・・ボンボンの同情か?」


マルコ「違う。同じ人間なのに何でこんなに差がつくのか・・・。

    壁一枚隔てただけで人生の明暗が分かれることが許せないし悔しいんだ」

ライナー「かつての内地にいた人間に何が分かる。お前が何を言っても上から目線の哀れみにしか聞こえん」

マルコ「・・・・・!」

アルミン「ちょっと、ライナー・・・」

ライナー「だが、お前は口先だけの男じゃないよな。世の中の不条理に立ち向かう勇気がお前にはあるのか?」

マルコ「・・・・ああ。僕は僕のできることをやるつもりだよ」

アルミン「これから僕ら小さな反旗を翻すから。ライナー見ててよ」

ライナー「これから・・・・?」

アルミン「サシャにさ託したんだ。僕らの思いを短いスピーチにして」

ライナー「おいおい、サシャ任せかよ。情けねぇな。自分達で言いやがれ」

マルコ「うーん、僕たちよりサシャの方が反感買わないかなって。キャラ的に」

アルミン「ステージの流れもあるしね・・・。サシャが快諾してくれたから、つい甘えちゃった」

ライナー「まっ、お前らが何をするのかじっくり見学させてもらおうか」


※  ※ ステージ上 ※  ※

興奮さめやらぬざわつく会場。寄付金回収班が客席を回る。

ステージ上ではサシャが次の演目の準備にとりかかる。

サシャ「二人ともお疲れ様です。次もよろしくお願いしますね」

ユミル「次はサシャか。面倒くせぇな。なんかさあ、私とクリスタだけ舞台にいる時間長くねぇか?」

クリスタ「そんなこと言わないの。伴奏担当なんだから。仕方ないよ」

サシャ「それでですね。クリスタにお願いがありまして」

クリスタ「何?」

サシャ「私、歌う前に短いスピーチ入れるんですけど、後ろで何か弾いて貰っていいですか?」

クリスタ「・・・・・サシャが前に立ってお話してる間だよね」

サシャ「はい。激しくなくて優しい曲なら何でもいいです。シーンとした中で話すのは緊張するので」

クリスタ「・・・・えっと・・・・・」

ユミル「・・・・・・心配すんな。何があっても私が守ってやるから」ヒソヒソ

クリスタ「ユミル・・・・?」


サシャ「・・・・駄目ですか?」

クリスタ「・・・いいよ。大丈夫、任せといて」

サシャ「良かったです。お願いしますね」

クリスタ「サシャも頑張ってね」

サシャ「はい。では行って来ます」スタスタ

クリスタ「・・・ユミル・・・・あなた何か知ってるの?」

ユミル「ん?何のことだ?」

クリスタ「さっきの耳打ち」

ユミル「は?いつも言ってることだろ。守ってやるって。なんだ、もっと言って欲しいのか」ニヤニヤ

クリスタ「・・・・言わなくていいよ」

    (・・・ユミルはごまかすのがうまいから、本当のところは分からない・・・・)

ユミル「遠慮すんな。」


クリスタ(ここはウォールシーナでも南端の街だから平気かと思ってたけど・・・・・

     特別席は中央の有力貴族らしき面々が陣取ってる。わざわざ憲兵団がご機嫌伺いで招待したんだわ・・・・

     私に面識がなくても向こうは私のことを知っているかもしれないし・・・

     本当は今すぐ舞台の上から逃げ出したい。でもみんなのために責任を果たさなくちゃ・・・)

ユミル「黙り込んでどうした。弾く曲決まったのか?」

クリスタ「あっ、そうだった。優しい曲ね・・・・・・・うーん・・・・よし決めた」

ユミル「何の曲だ?」

クリスタ「ふふっ、秘密」

サシャ「えー、こほん。ただ今より次の演目に移らせて頂きます」

クリスタ(集中、集中・・・・・・・

     ・・・・ここは私の故郷にいつもより少しだけ近い・・・・・

     ・・・・もう二度と会えないけど・・・・・安否さえ分からないけど・・・・

     ・・・・あなたの喜ぶ顔がまた見たいです・・・・・)

♪♪♪~~♪♪♪~~


サシャ「これから皆様に披露させて頂くのはプッチーニ作曲 歌劇『ジャンニ・スキッキ』より『わたしのお父さん』です。

    幸いなことに私には優しい父がいます。今は離れて暮らしてますが、父の存在は私の心の支えです。

    しかし私たちの所属するウォールローゼ南方面駐屯地には家族を・・・・両親を無くした者がたくさんいます。

    ウォールマリアの崩壊とその後行われた領土奪還作戦。

    そのために両親と住む家を失った彼らは必然的に開拓地へ送られました。

    そして志願可能年齢を迎えると世論に背中を押され兵士になる道を選ばざるをえませんでした」

サシャ「決して恨み言を言ってるのではありません。私たちは兵士であることに誇りを持っています。

    しかし、兵士か生産者かの二択しかない人生はあまりに悲しすぎませんか?

    私は自ら・・・・・といいますか、父の勧めで兵士に志願しました。

    けれど両親を失った訓練兵の大半は生きていくために仕方なく志願しています。

    もっと人生に別の選択肢があれば兵士を選ばなかったかもしれません」


サシャ「開拓地には現在も孤児がたくさんいます。

    こうやって私が話している今も、幼い孤児たちは開拓地での過酷な労働に小さな身体で今も耐えています。

    少しでも哀れに思われましたら孤児たちを労働から解放するよう呼びかけて下さい。

    彼らに兵士以外の選択肢を用意してあげて下さい。

    ・・・・・たいへん長くなってしまい申し訳ありません。ご清聴感謝致します。

    では、最後まで聞いてくださった皆様へ、感謝の気持ちを込めて歌います・・・・」

♪ ♪ ♪ ♪~~


※  ※ ステージ裏 ※  ※

マルコ(スピーチの時に流れていたのは・・・・・あの教室で一番最初にクリスタが弾いていた曲。

    マクダウェルの『野ばらに寄す』だ・・・・クリスタにとって特別な曲なのかな・・・・)

ライナー「なるほど。・・・本当にちっぽけな反旗だな」

マルコ「ライナー・・・」

ライナー「あれで世の中が変わると思ってるのか?」

マルコ「・・・すぐには無理だよ。でも社会に問題提起することぐらいしか今の僕らにはできないから」

アルミン「とにかく内地の人間に訴えたかったんだ。そんな機会は今日しかないから」

ライナー「孤児の問題をか?」

アルミン「僕のいた開拓地には幼い孤児がたくさんいてさ。

     どうして両親を失ったのか理解できないまま、泣きながら働かされてたんだ。

     僕やミカサ、エレンは農作業の合間を縫ってそんな子たちに読み書きを教えてた。

     僕は兵士の道を選んだけど、あの子たちには自由に生き方を選ばせてあげたいんだ」


ライナー「確かに俺たちのいた開拓地も孤児で溢れていたな・・・・

     過酷な労働環境と食料不足で衰弱していくガキどもを嫌というほど見た・・・・・」

アニ「・・・ねぇ、マルコ」

マルコ「あっ、アニ。どうしたの?何か用?」

アニ「あんたさ、サシャにあんなこと言わせて大丈夫なの?」

マルコ「うーん・・・・大丈夫じゃないだろうね。開拓地制度を公衆の面前で批判したから」

アルミン「開拓地は憲兵団の管轄だからね」

マルコ「今頃、憲兵団の担当者は激怒してるんじゃないかな」

アニ「分かってて何でわざわざ・・・・」

憲兵A「・・・・・・・ボット訓練兵!!」ズンズンズンズン

マルコ「・・・・やっぱり来たね」ボソッ

アルミン「・・・・うん」ボソッ


憲兵A「お前ら一体何を考えている!?」

マルコ「はっ!何のことでしょうか」

憲兵A「今のスピーチだ!今日は中央のお偉いさん連中が視察に来てるんだ。知ってるだろう。

    その面前でわざわざ開拓地制度を・・・・憲兵団を批判するとはいい度胸だな」

マルコ「批判したつもりはありません。現状を報告したまでです」

憲兵A「お前が勝手なことをしたせいで俺の面目は丸つぶれだ。上官になんて報告すればいいんだ」

マルコ「それは申し訳ありません」

憲兵A「舞台上で話していいのは、事前に検閲を通った原稿内容に限ると言ってあったろう。

    勝手なことをした以上コンサートはここで中止だ。お前も訓練兵団側の責任者として処分を受けるんだな」

マルコ「あれ?おかしいですね。検閲を受けた内容しか話していませんが」

憲兵A「何だと?」

アルミン「これが今日のスピーチの草稿です。Aさんのサイン、日付、検閲印が押されています」

憲兵A「見せてみろ・・・・・・・・・ちっ、本当に押してやがる」


アルミン「先程のスピーチはその草稿の28枚目下段部分に書いてあります」

憲兵A「・・・・・・・・・」

アルミン「草稿が長すぎたので、抜粋してスピーチに使用しました」

憲兵A「しかし・・・・こんな内容を許可するはずはない・・・・」

マルコ「覚えていなくて当然です。目を通していないんですから。

    事前に草稿を提出した際、Aさんは始めの2、3ページを読んだだけで検閲印を押して下さいました。

    けれどこの検閲印は草稿のすべてが許可されたことを示します」

憲兵A「・・・・初めからそれが狙いか。こんな無駄に分厚い草稿作りやがって・・・・」

マルコ「僕は検閲を通った内容をスピーチにしただけです。作意はありません」

憲兵A「・・・・・なぜこんな手の込んだことをするんだ?」

マルコ「僕たちは真剣なんです。コンサートを通じて少しでも明るい世の中に変えていきたいんです。

    あなた方にはただのお遊びに見えるかもしれませんが」

憲兵A「ちっ・・・・・・・俺の負けだ。コンサートは続けろ。だがこれ以上問題を起こすな」

マルコ「はっ!」


憲兵A「・・・・・お前みたいなご立派な志を振りかざす奴は組織に入ると叩き潰される。

    せいぜい今の内に夢を見ることだ・・・・・・

    じゃあな、俺は上官方への言い訳考えるのに忙しいんでな。せいぜい頑張れ」スタスタスタスタ

マルコ「・・・・・・・・・・はぁー、危ない危ない」

アルミン「何とか切り抜けたね」

マルコ「うん。やる気はないけど意外といい人で助かったよ」

アニ「・・・あんな喧嘩売るような真似して。憲兵団に入れなくなったらどうすんのさ」

マルコ「ん?大丈夫。あの人は下っ端だよ。新人採用に口を出せるような立場にはいない。

    まぁ、もし僕が憲兵団に入ったら疎まれるのは間違いないだろうけど」

アニ「・・・・・尻尾振ってたわけじゃないんだ」

マルコ「さあ?僕には尻尾が無いからね、どうだろう」

アニ「・・・・・・・掴めない奴だね。やっぱり苦手だ」

マルコ「ははっ。それよりサシャの次がダンス隊の出番だけど・・・・ベルトルト大丈夫?」

アニ「ほら、あそこで体育座りして震えてる」

マルコ「・・・うわっ、顔面蒼白じゃないか。・・・・・・参ったな」


アニ「ベルトルトが出ないって訳にはいかないか・・・・」

マルコ「そりゃあね。リードダンサーだし」

アニ「・・・・ダンス自体中止ってどう?」

マルコ「却下。ここまできてそれはないでしょ」

アニ「・・・・・しょうがない」スタスタスタ

マルコ「アニ?」

アニ「何とかしてみる。じゃあね」スタスタスタ

ライナー「ほう、ついにアニが動いたか」ニヤリ

マルコ「何だよそれ」

ライナー「気にすんな。独り言だ。

     それよりマルコ。今サシャが歌ってる曲ってどんな内容なんだ?

     さっきのスピーチの流れ的には父親への感謝の歌ってところか・・・」

アルミン「ははっ、やっぱりそう思うよね。でも全然ちがうんだよ」

マルコ「‘パパ私好きな人ができちゃった。結婚させてくれなきゃ川に飛び込んで死んでやる’

    って、キラキラした笑顔で幸せそうにサシャは歌ってる」


ライナー「ぶっ、歌詞の意味教えてやれよ」

マルコ「サシャに聞かれなかったから・・・・・・まぁいいやって」

アルミン「教えたところできっと楽しそうに歌うよ、サシャは」

ライナー「しかし『私のお父さん』っていう題名から選曲しただけか・・・・・

     腹黒いマルコのことだからもっと含みがあるのかと思ったぜ」

マルコ「含みはあるよ。腹黒くはないけど」

アルミン「なんかね『ジャンニ・スキッキ』っていう歌劇の曲らしいんだけど・・・・

     この劇の内容がね、まさに僕たちなんだって」

ライナー「どういうことだ?」

マルコ「ずる賢い男が知恵を絞って、強欲な富豪連中から金を巻き上げる話なんだ。僕らにぴったりだろ?」

ライナー「やっぱり腹黒いじゃねぇか」

アルミン「うん。マルコってさ知り合った頃は初々しい純朴少年だったのに、最近変わったよね」

ライナー「ああ、きっと心も身体も汚れちまったんだな・・・・・」

アルミン「そっか・・・・いつまでも綺麗なままでいようって約束したのに・・・・」

マルコ「汚れてないし、そんな約束もしてないよっ」


アルミン「ははっ、冗談だよ。でもなんていうか・・・・・・頼もしくなったね」

ライナー「そうだな。入団当初よりずっと男らしくなった」

マルコ「そうかな。でも変わったのは僕だけじゃないよ」

ライナー「そうか?アルミンは相変わらず可愛いらしいぞ」

アルミン「そういうライナーは入団した時からごつかった」

マルコ「ははは、見た目じゃなくってさ」

ライナー「精神的にだろ。確かにクソガキみてぇなわがまま言うやつは減ったな」

アルミン「あと半年もすれば兵団を卒業するんだ。いつまでも子どものままじゃいられないよ」

マルコ「みんなと一緒にいられるのも残りわずかか・・・・・寂しいね・・・・・」


※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

ミカサ「・・・・さっきのカマキリの話だけど」ビュン

エレン「まだカマキリ引っ張るのかよ」ビュン

ジャン「うるせぇ、てめぇは黙ってろ。何だミカサ?」ビュン

ミカサ「・・・・幼い頃にカマキリが蝶を捕食してるのを見た」ビュン

ジャン「そうか・・・・・・で?」ビュン

ミカサ「世の中の残酷さを思うたびに脳裏にその光景が浮かんでくる」ビュン

エレン「・・・・・」ビュン

ミカサ「私にとってカマキリは残酷な世界の象徴。あまり好きではない」ビュン

ジャン「巨人に食われ支配される世界か・・・・・・」ビュン

エレン「俺はおとなしく食われる気はねぇよ」ビュン

ミカサ「でも圧倒的捕食者の前では人間なんてちっぽけなものよ」ビュン

ジャン「・・・・なぁミカサ、さっきカマキリの中に寄生虫がいたって話しただろ」ビュン

ミカサ「ええ」ビュン


エレン「いや、キモいからもうその話やめてくれよ」ビュン

ジャン「嫌なら聞くな。耳でも塞いでろ。・・・・・あの寄生虫のこと詳しく知ってるか?」ビュン

ミカサ「知らない」ビュン

ジャン「あれを初めて見たときは気持ち悪くてしょうがなかったんだが・・・・

    あれが何なのか気になって調べたことがあるんだ」ビュン

エレン「わざわざ調べんなよ」ビュン

ジャン「あれはハリガネムシっつってな、水中で生まれて最初は小さな生物に寄生するらしい。

    で、それを食ったより大きな生物に宿主を乗り換える。

    食物連鎖を繰り返して最終的にカマキリの腹の中に落ち着く」ビュン

エレン「おい、人間にも寄生するのか・・・・」ビュン

ジャン「しないらしいぜ。だから安心してカマキリ食えよ」ビュン

エレン「誰が食うか」ビュン

ミカサ「それが何?」ビュン

ジャン「ああ、俺が言いたいのは・・・・ハリガネムシはカマキリをコントロールするって話だ」ビュン

ミカサ「コントロール?」ビュン


ジャン「そうだ。奴らは水中で産卵するからな。水の苦手なカマキリを水場へ導き死のダイブをさせる」ビュン

ミカサ「そんなことが・・・・」ビュン

ジャン「本当らしいぜ。昆虫界の頂点にいるつもりのカマキリも実は他の生物に支配されてたってわけだ」ビュン

ミカサ「・・・・・ジャンは巨人も実は何者かに支配されてるって言いたいの?」ビュン

ジャン「ああ、そう思いたいね。やつらは得体が知れなさすぎる。人間を攻撃する理由も不明だ。

    何者かにコントロールされてイヤイヤ人間食ってるって考えた方が、まだかわいく思える」ビュン

ミカサ「・・・・ジャンも色々と考えてるのね」ビュン

ジャン「いや、さっき思いついただけなんだが・・・・。どうだ俺の説は?」ビュン

ミカサ「壮大ね。小説にしたら面白いんじゃない?」ビュン

ジャン「やっぱ信憑性はねぇか」ビュン


エレン「じゃあ俺が壁外調査に出たら、巨人の腹かっさばいてハリガネムシがいねぇか確認してやるよ。」ビュン

ジャン「・・・・・・。そーだな。巨人の腹にいるんだ。超特大のハリガネムシだから気をつけろよ」ビュン

ミカサ「エレンは理解力が残念・・・・」ビュン

エレン「何だよ・・・・・・・ってあそこにいるのベルトルトか?」ビュン

ジャン「ああ・・・・一緒にいるのはアニか・・・・・」ビュン

ミカサ「あんな所で何してるのかしら・・・・・」ビュン

※  ※  ※  ※  

ベルトルト「何?急に外に連れ出して」ブルブル

アニ「あんたが緊張しすぎだから。気分転換に散歩するの」

ベルトルト「はは・・・・ありがとう」ブルブル

アニ「どう?少しはマシになった?」

ベルトルト「ごめん・・・・無理・・・・」ブルブル

アニ「はぁー、しっかりしなさいよ」

ベルトルト「そんなこと言われても・・・・身体が勝手に震えるんだよ・・・・」ブルブル

アニ「・・・・・ちょっと止まって」

ベルトルト「・・・・何?」ブルブル

アニ「・・・・・・やっぱりあんた背ぇ高すぎ」

ベルトルト「何をいまさら・・・・・・・・」ブルブル

アニ「そこの切り株に座ってよ」

ベルトルト「いいけど・・・・」ブルブル ポスッ


アニ(・・・・・・前からはキツいな)

ベルトルト「何?そんなにじろじろ見ないでよ」ブルブル

アニ(・・・・・後ろからか)スタスタ

ベルトルト「アニ?」ブルブル

アニ(でもこんなんで本当に震えが止まるのか・・・・?)ギュゥゥゥ

ベルトルト「突然のスリーパーホールド!?」ブルブル

アニ「馬鹿。技なんてかけてないだろ」ギュゥ 

ベルトルト「ア、アニ・・・・?///」ブルブル

アニ「しばらく黙ってて・・・・」ギュゥ

ベルトルト「う、うん・・・・・///」ブルブル

アニ(背中広いね・・・・・・お父さんみたい・・・・・)

ベルトルト(ナニコレ!?意味が分かんないよ・・・///)ブルブル ドキドキ


アニ(首筋からほのかに漂うシトラス系の香り・・・。ぷっ、コロンつけてる!?)プルプル

ベルトルト(アニ・・・何を考えてるの?なんで背中で震えてるの?///)ドキドキ

アニ(ちょっと何色気づいてんのさ。・・・・まぁベルトルトも年頃の男子だから仕方ないか)

ベルトルト「ねぇ・・・・、もうしゃべってもいい?///」ドキドキ

アニ「うん」

ベルトルト「・・・・いつまで抱きついてるのかなぁ///」ドキドキ

アニ「あんたの震えがとまるまで」

ベルトルト「・・・・じゃあしばらく時間がかかるかな///」ドキドキ

アニ「・・・・・もう震えてないじゃん」

ベルトルト「・・・・・あとちょっとだけ///」ドキドキ

アニ「・・・・・はぁ、じゃあ後10秒ね」

ベルトルト(背中に当たる柔らかい感触・・・・。アニって結構胸あるよね・・・・///)ドキドキ

アニ「・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・はい、終わり」


ベルトルト「・・・ありがとう。これなら舞台に上がっても大丈夫そうだよ」

アニ「良かった。じゃあ戻りましょ」スタスタ

ベルトルト「あのさアニ・・・・」

アニ「何?」

ベルトルト「その・・・・・震えてるのが僕じゃなくて他の男でもアニは抱きしめてあげたの?」

アニ「さあね。相手によるんじゃない?」

ベルトルト「・・・・そっか、そうだよね、はは・・・・・」

アニ「・・・・・・けどあんなに長い時間はしない」

ベルトルト「!?」

アニ「ほら、もたもたしてたら先に行くよ」

ベルトルト「う、うん・・・・///」


※  ※  ※  ※

ジャン「・・・・・・ここにいると衝撃的な出来事に遭遇するな」ビュン

エレン「そうだな。何もここまで来て背後からの技の練習しなくてもいいよな」ビュン

ミカサ「エレンは純粋」ビュン

ジャン「・・・・・・まあ、ある意味アニの必殺技かもしれん」ビュン

エレン「必殺技か。俺も今度アニに教えてもらおう」ビュン

ミカサ「駄目。エレンには私が教えてあげる」ビュン

エレン「ミカサも必殺技できるのか?」ビュン

ミカサ「できる。ここにいる誰よりも上手にできる」ビュン

ジャン「どっからくるんだ。その根拠の無い自信は・・・・・・」ビュン

ミカサ「何なら今から披露してもいい」ビュン

エレン「本当か?」ビュン

ジャン「頼むから俺の前ではやめてくれ・・・・・・・泣くぞ」ビュン


※  ※ ステージ裏 ※  ※

マルコ「サシャ、お疲れ様。すごく素敵だった。もう立派な歌姫だね」

サシャ「ふふふ、そんなに褒められると照れますよ」

アルミン「スピーチもありがとう。サシャの明るさのおかげで観客に嫌なイメージを与えずに済んだ」

サシャ「あれでよかったんですかね。客席が静まり返っちゃって焦りましたよ」

アルミン「それだけみんなサシャの話に耳を傾けてくれたんだ。大成功だよ」

サシャ「大成功ですか。それを聞いて安心しました」

マルコ「あっ、クリスタとユミルもお疲れ様」

ユミル「あーーーあちぃ」

クリスタ「はい、お水。ユミル今日は大活躍だね」

マルコ「そうだね。舞台に上がる時間はユミルが一番長い」

ユミル「ほんと意味わかんねぇよ。なんで私が一番働かなきゃなんねぇんだよ」

クリスタ「それだけ頼りにしてるんだよ」

ユミル「頼られても迷惑なだけだ」

クリスタ「えっと・・・次は?」


マルコ「本当はエレンたちなんだけど・・・・・・ダンスを先にしてもらうことにしたよ」

ユミル「おっ、何でエレンたちを後回しにするのか理由も聞かないで決めたのか?

    私が大ほら吹いてるかもしれねぇのに」

マルコ「ははっ、ユミルはそんな無駄なことはしないよ。超のつくぐらいの合理主義だから」

ユミル「ちっ・・・でも今からでも止めたほうがいいと思うぜ」

マルコ「ユミルもやっぱりそう思う?ジャンの勢いに押されてつい許可してしまたけど・・・後悔してる」

ユミル「一応さ軽く触れるぐらいでは斬れないように刃を加工させたけど・・・・・

    ジャンとミカサに何かあった時、お前じゃ責任とれねぇだろ」

マルコ「・・・・だよね。ジャンたちが戻ってきたらもう一度話してみるよ」

サシャ「あれ?コニーがいないです。次は軍楽隊が演奏しなきゃいけないのにどこいったんでしょう?」

ライナー「俺が探してきてやるよ、カルメン」

サシャ「おぉ、頼りになる闘牛士さん。よろしくお願いします」

マルコ「アニとベルトルトは・・・・・・・・あっ、戻ってきた」


アニ「・・・・ごめん。私たちが待たせてた?」

マルコ「そんなことはないよ。それに今は休憩時間だし」

アニ「そう、良かった」

マルコ「ベルトルトは・・・・・・・大丈夫そうだね」

ベルトルト「ああ。任せてくれよ。僕今なら空も飛べる気がするよ」

マルコ「はは、すごいやる気だね。何か良いことでもあった?」

ベルトルト「うん・・・・///」

アニ「はぁ・・・・・単純な男だね」


※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

ジャン「そうそうカマキリっていえばよ・・・」ビュン

エレン「またカマキリかよ。他に話すことねぇのか」ビュン

ジャン「バーカ。てめぇと揉めねぇで穏やかに話ができるネタが他にあるのかよ」ビュン

エレン「俺とお前の間にはカマキリしかねぇのかよ」ビュン

ジャン「何もねぇよりマシだろうが」ビュン

ミカサ「・・・・・あれはコニー」ビュン

エレン「・・・・・反対側からライナーが来た」ビュン

ジャン「おいおい・・・・・・・いきなりクライマックスか!?」ビュン


※  ※  ※  ※

ライナー「おっ、コニー発見」

コニー「・・・ライナー・・・何か用か?」

ライナー「お前の出番だからサシャの代わりに探しにきたんだよ」

コニー「・・・サシャの代わりか・・・」

ライナー「どうした?元気ねぇな」

コニー「ははっ・・・・やっぱりそうなんだな・・・・・」

ライナ「コニー?」

コニー「・・・サシャはいいやつだ。優しいし、おもしれぇし、気が利くし・・・・」

ライナー「そうだが・・・・?」

コニー「いつも太陽みたいに笑ってて、一緒にいるとポカポカ心が暖かくなって、幸せな気分になって・・・」

ライナー「お、おう・・・・」

コニー「俺の陽だまり返せよ!!」


ライナー「お前・・・・・・・何か盛大に勘違いしてないか」

コニー「・・・・何をだ?」

ライナー「いや・・・・・・お前の頭の中でサシャと俺ってどうなってんだ?」

コニー「なんでわざわざ言わせんだよ。ムカつくな」

ライナー「いいから言ってみろよ」

コニー「・・・・付き合ってんだろ」

ライナー「誰ネタだ?」

コニー「誰っていうか・・・・・・・俺がそう判断した」

ライナー「・・・やっぱりお前の状況分析には誤認が多いな」

コニー「なんだよ、偉そうに」

ライナー「完全なるお前の判断ミスだって言ってるんだ。馬鹿野郎」

コニー「・・・・ん?そうなのか?・・・・付き合ってないのか?」

ライナー「そうだ。ったく、どこで勘違いしたのか知らんが・・・・。他の奴らには話したのか?」

コニー「いや、話してねぇよ。・・・・・・そっか違ったのか。良かった良かった」


ライナー「・・・・コニー、さっき俺に言ったことそのままサシャに言ってこい」

コニー「何でだよ」

ライナー「あれは立派な愛の告白だ」ニヤリ

コニー「なっ!?そんなじゃねぇし///」

ライナー「認めちまえよ。サシャが好きだって」

コニー「ちげぇし。友達とられたのがちょっと悲しかっただけだ///」

ライナー「友達ねぇ・・・」ニヤニヤ

コニー「もう、その顔やめろよ///」

ライナー「まぁ、がんばれや少年」ポンポン

コニー「頭ポンポンすんなよ。背が縮むだろ!」

ライナー「おっとすまん。やっぱりサシャより身長は高くねぇとな」

コニー「だから違うってば!!///」

ライナー「分かった分かった。とにかく戻ろうぜ。そろそろ次が始まるだろう」

コニー「やべっ、急がねぇと。オレ待ちとか勘弁してくれよ」


※  ※  ※  ※

ジャン「・・・・・結局どうなったんだ、あれ?」ビュン

ミカサ「・・・・・真っ赤な顔してコニーがライナーに何か訴えてた」ビュン

エレン「・・・・・でライナーがコニーの頭をポンポンと」ビュン

ジャン「これは・・・・・コニーが告ってライナーがOKしたってことか?」ビュン

ミカサ「ええ・・・・・・新たなカップルの誕生ね」ビュン

エレン「祝福してやらなくちゃな」ビュン

ジャン「いや・・・・・俺たちの胸にしまっとこうぜ」ビュン

ミカサ「そうね・・・・まだまだ同性愛者はマイノリティ。偏見をもたれたら可哀想」ビュン

エレン「そうなのか?そんな奴はオレがぶっ飛ばしてやる」ビュン

ミカサ「あの二人が自らカミングアウトするまで触れちゃ駄目」ビュン

ジャン「デリケートな問題だしな」ビュン

エレン「なんか・・・・・もやもやするな」ビュン


※  ※ ステージ上 ※  ※

三台のドラムに囲まれてベルトルトは立っていた。

ダカダカダダン ダンダダン・・・・    タカタカタタン タンタタン・・・・

ドラムの変則的リズムをタップで再現する。

だんだんと速度を上げていくドラム音。ベルトルトのステップも激しさを増す。

複雑さを極めた足捌きに観客は息を呑んだ。

ステップにつられて速まる鼓動、焦燥感。

会場の熱をもった緊張感がピークに達した時、アニがステージに登場する。

それに合わせユミルのヴァイオリンが激しくもの悲しい音色が奏で始める。

ドラム隊はステージ端に下がり、舞台中央にはベルトルトとアニの二人だけ。

曲にドラム音を加えるようにステップを踏み続ける。


ベルトルト(こんなに大勢のお客さんに見られて恥ずかしいはずなのに、

      アニが隣にいるって思うだけで安心する。アニがいれば僕は何でもできる)

アニ(ちょっと・・・・飛ばしすぎだよ。少し落ち着けっての)

ヴァイオリンの旋律が一旦終了したところで、ファイフの演奏に合わせてダンス隊が全員ステージに上がる。

横一列に整列し、揃って敬礼。それを合図に始まる大合奏。

ダンサーたちの動きは細部に渡るまでシンクロした。

膝を曲げる角度、足を浮かせる高さまで全てが機械仕掛けの人形のように揃った。

小気味よいステップ音を響かせ観客を魅了する。

遠い遠い昔の記憶。抑圧された人々のダンス。百年以上の時を経て今、会場に蘇った。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

サシャ「あそこまで動きが揃うと圧巻ですね。背筋がゾクゾクッてします」

クリスタ「アニすごく綺麗。やっぱり華があるね。リードダンサーやってくれて本当に良かった」

マルコ「ベルトルトもすごいね。あんなに晴れやかな顔してる彼を見るのは初めてだ」

ライナー「ああ。ベルトルトがあそこまでフレキシブルな動きをするとは予想外だ」

エレン「よっ、ステージはどんな感じだ」

サシャ「あっ、エレン。なんだかとってもお久しぶりな感じがします。今までどこにいたんですか?」

エレン「裏の林。そこでずっとサーベル振ってた。あーーー腕がだりぃ」

クリスタ「駄目だよエレン。次ピアノ弾くのに。ちょっと腕見せて」

エレン「ん、ほらよ」

クリスタ「腕まくるね・・・・・・・・・。やだ、パンパンに張ってるじゃない。指は動く?」

エレン「指ねぇ・・・・曲げ伸ばしがぎこちねぇな」

クリスタ「エレンの馬鹿。マッサージしてあげるからこっち来て」

ミカサ「私も手伝おう」

クリスタ「うん。お願い」


ライナー「ジャン、お前ら何してたんだ?」

ジャン「うっ・・・ライナー・・・」

ライナー「何だ?変な顔をして」

ジャン「いや、何でもねぇ・・・・。俺らは裏の林でサーベルをコーディングしてたんだ」

ライナー「コーティング?」

ジャン「溶けた松ヤニ塗ったくってな、天然樹脂加工の刃が完成したわけだ」

サシャ「なんだかすごそうですね。見せてください」

ジャン「いいぜ。・・・・見ろ、これが俺のパワーアップしたサーベルだ」

ライナー「アップしたらまずいだろう」

ジャン「そうだった。パワーダウンしたサーベルだ・・・ってなんかかっこ悪ぃな」

サシャ「おお!刃の部分が琥珀色してます。触ってもいいですか?」

ジャン「いいぜ。ちょっと触ったぐらいじゃ斬れねぇが気をつけろよ」

サシャ「はい。・・・・・・表面がプニプニしてますね」

ライナー「弾力があるな。・・・・しかしこれは・・・・すぐ剥げるだろ」


ジャン「ああ。試しにさっきミカサと剣同士をぶつけてみたんだ。刃がぶつかった部分はすぐに剥げる」

ライナー「危険だな・・・。剣舞中は数え切れないくらい剣を交えるんだろ?あっという間にツルッパゲだ」

ジャン「でも無いよりはマシだ」

マルコ「ジャン」

ジャン「おっ何だマルコ?見てくれよこの剣。カッケーだろ」

マルコ「・・・・やっぱり中止しよう」

ジャン「は?」

マルコ「今更で悪い。でも・・・・やっぱりお前たちの身の安全を第一に考えたいんだ」

ジャン「・・・・やだね」

マルコ「ジャン・・・・・頼む」

ジャン「俺は何を言われてもミカサと一緒に舞台に立つって決めたんだ」

マルコ「責任者は僕だ。決定には従ってもらう」

ジャン「・・・なぁマルコ。兵士になった以上いつ死ぬか分かんねぇだろ。

    俺は巨人に食われて死ぬより、ミカサに斬られて死ぬほうを選びたい」

マルコ「なんでここで死のうとしてんだよ。やめてくれよ」


ジャン「うっせぇな。大丈夫だよ。サーベルもコーディングしたし。簡単には斬られねぇよ」

マルコ「・・・・・・じゃあ、そのサーベルで僕を斬りつけてみろよ」

ジャン「は?」

マルコ「安全なんだろ?怪我しないんだろ?だったらここで僕を斬って証明しろよ!」

ジャン「マルコ・・・・・落ち着けよ」

マルコ「それができないんだったら中止だ」

ジャン「ちっ・・・・お前ずりぃ・・・・・そんなんできるわけねぇだろ」

ミカサ「ジャンができないのであれば私がやろう」スッ

ジャン「へっ?」

マルコ「ちょ、ちょっとミカサは勘弁してくれよ・・・・・」

ミカサ「マルコ、あなたは弱い。そしてとても臆病。そこで指をくわえて見てればいい」

マルコ「ミカサ・・・・」

ミカサ「でもそれが正しい。あなたは私たちの責任者、言ってみれば指揮官。指揮官は先陣に立ってはいけない」


ジャン「何があってもお前のこと恨んだりしねぇからよ」

ミカサ「私の技術を信じて欲しい」

マルコ「はは・・・・・・もう好きにしてよ」

サシャ「あっ、ダンス終わりましたね。すごい拍手ですよ」

ジャン「じゃあ行ってくるわ」

マルコ「・・・・・・・・」

ジャン「そうそう、万が一俺に何かあった時はオレ様秘蔵の官能小説、お前に譲ってやるよ」

マルコ「・・・・・・・・」

ジャン「俺んちの自分の部屋に置いて来てるんだがな。本棚の最上段にある文学全集。

    あれはカバーだけで中身はマニア垂涎のお宝本だ」

マルコ「・・・・・・・・・」

ジャン「もしお前がその本取りに行くようなことがあったら・・・・クソババアによろしく伝えといてくれ」

マルコ「・・・・・・・・・」


ジャン「よし、やってやるか」スタスタ

マルコ「・・・・・・待てよ!!」

ジャン「何だよ、まだ止める気か?」

マルコ「僕もやるよ」

ジャン「お前・・・・」

マルコ「そんな悲しい官能小説じゃ抜けないだろう?」

ジャン「ぶっ・・・・・アハハハハハ・・・・・お前最高」

マルコ「剣は?」

ジャン「・・・・ほら、予備だ。・・・・ミカサ!マルコも参加するってよ。いつも通りの二刀流にしてくれ」

ミカサ「了解した。・・・・覚悟はできてる?」

マルコ「ああ、大丈夫だ」


クリスタ「マルコ・・・・。考え直してよ。ミカサがさっき言ったじゃない。指揮官は先陣に立っちゃいけないって」

マルコ「ごめん。僕は・・・・・・指揮官である前にジャンの友人でいたいんだ」

クリスタ「・・・・・・バカ」

ジャン「よし、今度こそ出撃だ」スタスタ

マルコ「ああ。お手柔らかに頼むよ、ミカサ」スタスタ

ミカサ「容赦しない」スタスタ

マルコ「えっ!?」スタスタ

ミカサ「冗談。練習通りにするのが一番安全だと思う」スタスタ

ジャン「だな。慣れてるやり方のほうが怪我は少ないだろう」スタスタ

マルコ「練習通りって・・・・・・・ノープランかよ!!」スタスタ

今日はここまでです。あとちょっとです。頑張ります。

レスありがとうございます。続きです


※  ※ ステージ上 ※  ※

マルコ「ここからの眺めはやっぱり圧巻だね」

ジャン「ヒュー♪テンション上がるぜ」

ミカサ「浮き足立たないで」

エレン「まあ頑張れよ」

ジャン「てめぇもな」

サシャ「次はハチャトゥリアン作曲『剣の舞』オリジナルヴァージョンのピアノ独奏です。

    曲にちなんで訓練兵団の精鋭が剣舞をご披露します。どうぞお楽しみ下さい」

観客席から期待に満ちた視線が送られる。その重圧をごまかすように話し続ける。

マルコ「ははっ精鋭だって。はじめて言われた」

ジャン「まあ俺はそう呼ばれて当然だがな」

ミカサ「集中して・・・・曲が始まる」

エレン「いくぜ」

♪♪♪♪♪~~~


静まりかえった会場に突然落ちる雷のように落ちる衝撃的な不協和音。

それと同時にミカサたちも動き始める。

爆破音のように激しい音の渦の中、ミカサたちは呼吸すらままならない速さで激しく剣を切り結ぶ。

マルコ(くっ・・・・・・少しでも止まったらやられる)ギィン!! ギィン!!

ジャン(・・・・・くそっミカサの奴、相変わらず涼しい顔して捌きやがって)ギィン!! ガギィン!!

ミカサ(・・・・・コーディングが・・・・・刃の中央部分はもうボロボロね)ギィン!! ギィン!! ギィン!!

琥珀色と本来の剣の色でまだらになった刀身。剣を交えれば交えるほど危険が増していく。

マルコ(・・・・エレンの編曲いいな。耳障りな音を極力削って、自分なりに和音を構築してる・・・・・って危ねっ!!)シュッ!!

マルコの頬を掠めた剣先。一瞬冷やりとする。しかしコーティングが残っていたおかげで切り傷はできていない。

ジャン「マルコ!!何ぼうっとしてんだよ!!」ギィン!!ギィン!!

マルコ「悪い!僕は・・・つくづく音楽・・・・・バカだよ」ギィン!!ギィン!!

ジャン「は?」ギィンギィン!!ガギィン!!

マルコ「こんな時・・・だってのにエレンの・・・・演奏解説してた」ギィン!!ギィン!!

ジャン「ははっ・・・・余裕だな」ギィン!!ギィン!!


ミカサ「お願いだから集中して。うっかり斬ってしまう」ギィン!!ギィン!!ガギィン!!

マルコ「くっ・・そ・・・・・」ギィン!!ギィン!!

ジャン「はっ・・・マルコ押されてんぞ」ギィン!!ギィン!!

マルコ「なん・・・・でミカサは・・・・こんなに強い・・・・・んだよ」ギィン!!ギィン!!

ジャン「女相手に男二人で・・・・勝てねぇなんて・・・情けねぇ・・・・・・・よなっと」ガギィン!!ガギィン!!

マルコ「ああ・・・・格好つかない・・・・・よっ」ギィン!!ガギィン!!

ジャン「だよな・・・・・・・・・・ふぉっ!!」ガギィィン!!! ザシュッ!!

ジャンの剣が大きく弾かれた。間髪を容れずミカサは横薙ぎに剣を払う。あまりの速さに防御が間に合わない。

マルコ「ジャン!!!」ギィン!!ギィン!! ギン!!

ミカサ「大丈夫。肉まで達してない」ギィン!!ガギィン!!

ジャンの上着は切れ目が入り、完全に切り離されなった布が無様にぶらさがり揺れている。

ジャン「マジかよ・・・・・」ギィン!! ギィン!!

マルコ「洒落に・・・ならない・・・・・・よっ」ギィン!!


死を意識し体中に痺れるような戦慄がはしる。

生まれて初めて真剣と対峙する緊張と恐怖でアドレナリンが大量に分泌される。

高まる動悸。激しくなる呼吸。滴り落ちる汗。

観客のざわめきもピアノの音も遠くに掻き消え、心臓の鼓動だけが耳の奥底で鳴り響く。

ジャン・マルコ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

獣のような咆哮をあげ無我夢中で斬りかかる。

死にたくない

死にたくない!!

死にたくない!!!!

理性は消えうせ本能のみが肉体を支配する。

加速度的に激しさを増す斬り合いに、ジャンとマルコの服には無数の裂け目が刻まれていく。 

白いシャツに血が滲む。だが痛みは感じない。

真っ白な意識の中ひたすらに剣を振る。


どれぐらい時間が経過しただろう。ミカサが大声で何か訴えている。

しかし強い興奮状態にある二人の耳には届かない。

ずっしりとした重量感のあるサーベル。いつも使用していた模造刀の比ではない。

重みに両腕が疲弊する。段々と柄を握る手の力が弱まってくる。

その時、マルコの振り下ろそうとした剣が汗ですべって手から離れた。

一瞬にして我に返るマルコ。目に映る情景がスローモーションのようにゆっくり進んでいく。

宙を浮く剣はミカサの顔面を目掛けてゆるやかな軌道を描き、

ミカサの振り抜いた切っ先は一直線にマルコの喉下を抉ろうとしていた。


「予想外の動きをしなければ大きな怪我はさせない」

練習中にミカサが言った言葉が頭をよぎる。

マルコの目には不気味に輝く鈍色の刃が、死のカウントダウンをしながら迫ってくるのがはっきり見えた。

マルコ(ごめんミカサ。予想外の動きをしてしまったね)

急速に冷えた頭で人生最期の時を覚悟した。

刃が喉を切り裂く。その寸前・・・・

バタンッ!!!

何かが倒れる音と同時にミカサが視界から消えた。

ジャン・マルコ「!?」


エレン「っって・・・・・・お前らいい加減にしろよ!!!もう演奏終わってんだよ!!!」

舞台上にはエレンに横抱きにされ倒れこんだミカサの姿があった。

エレンは演奏が終わっても戦い続ける三人を不審に思い側に近寄り、制止するタイミングを計っていた。

マルコの剣が手から離れ危険と判断したエレンは、咄嗟に後からミカサの腰を掴み渾身の力で引き倒したのだった。

そして床に垂直に突き刺さるマルコが手放した剣。

無様な幕引きに観客は複雑な表情を浮かべ、事の成り行きを静かに窺っている。

エレン「ミカサ、大丈夫か?」

ミカサ「うん・・・・・///」

マルコ「終わってたの・・・・?」

ジャン「全然気付かなかった・・・・・」


ミカサ「私は何度も言った。でもあなたたちは聞いてくれなかった」

マルコ「それは・・・・・本当に申し訳ない」

ジャン「悪かった・・・・」

エレン「とりあえず挨拶して舞台降りろ、ってアルミンがカンペ出してる」

マルコ「そうだった。ここステージの上だよ・・・・」

エレン「しっかりしろよ」

マルコ「ああ・・・。とにかく下がろう」

会場に漂う微妙な空気。

一同は並んで敬礼すると逃げるように舞台袖へ消えた。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

ジャン「ミカサすまん。完全に自分を見失ってた」

マルコ「僕も。エレンが機転をきかせてくれなかったら、ミカサに大怪我を負わせるところだった」

ミカサ「気にしないで。マルコの落とした剣は私なら避けれたはず。

    ただ私の振り抜いた剣は勢いがつきすぎて急には止めれなかった」

アルミン「反省会は後にしてよ。まだ公演は続いてるんだから。舞台を進行させないと・・・・」

エレン「次で最期か?」

アルミン「うん。全員参加の大合唱。でもジャンとマルコは休んでてよ」

ジャン「何でだよ。俺はピンピンしてるぜ」

アルミン「自分の姿をよく見てみなよ」

ジャン「姿?・・・・・・うわっ、服ボロボロじゃねぇか」

マルコ「血も滲んでるし・・・・。いつの間にか傷だらけだ」


ミカサ「すまない。あなたたちが本気で向かってくるので加減が難しかった」

ジャン「謝んなよ。お前はなんも悪くねぇんだから」

マルコ「ああ、この程度で済んですごくラッキーだよ」

アルミン「後は僕に任せて。じゃあ行ってくるね」

マルコ「うん、悪いね・・・・・・頼んだよ」

ジャン「会場を盛り下げちまってすまねぇ・・・・頑張ってこいよ」

アルミン「じゃあみんな用意して!!舞台に出るよ!!」

クリスタ「・・・・マルコ」

マルコ「あっ・・・・・」

クリスタ「はい、救急箱。手当は自分たちでしてね。私も伴奏役あるから」

マルコ「ありがとう・・・・・・・格好つけて出たくせにさ・・・・情けないよね・・・・」

クリスタ「・・・・文句は後でいっぱい言わせてもらうから」

マルコ「・・・・・・」

クリスタ「・・・・・でも本当に無事で良かった・・・・・」グスッ

マルコ「うん・・・・・」


※  ※ ステージ裏 ※  ※

ジャン「ってーな・・・・・もっと優しく消毒しろよ」

マルコ「悪い。ライナーの声やっぱり響くなぁって感心してたらさ・・・・」ポンポン

ジャン「・・・・合唱始まったんだな。俺も歌の練習させられたのによ。不参加とはな・・・・」

マルコ「まぁね、フィナーレは全員でステージ立ちたかったけど・・・・しょうがないよね」ポンポン

ジャン「あんまり痛くはねぇんだが傷は深そうか?」

マルコ「どの傷も皮膚の表面を切ってるだけ。ミカサはやっぱりすごいね。

    あの状況で剣の軌道を完璧にコントロールしてたんだから」ポンポン

ジャン「ああ・・・・それに比べて俺らは本当に情けねぇよな・・・・・」


マルコ「うん・・・・。真剣と対峙して僕は初めて死の恐怖ってものを知ったよ。頭がパニック状態になって・・・・

    あれほど死にたくないって思ったことは一度もないね」ポンポン

ジャン「俺もさ、ミカサに斬られて死ねるなら本望だって思ってたけど・・・・全然本望じゃなかったぜ。

    死ぬのがこんなにも恐ろしいなんてな・・・・・。やっぱり俺は生きていてぇんだよ」

マルコ「うん・・・・・・生きような。この先何があっても生き抜こうな」ポンポン

ジャン「もちろんだ。俺とマルコが組めば敵無しだ・・・・・・ミカサは別として」

マルコ「ははっ。・・・・うん。大体消毒できたかな」

ジャン「ガーゼは?」

マルコ「そんなに傷が深くないから貼らなくていいだろ。面倒だし」


ジャン「はぁ・・・・野郎の手当なんざいい加減なもんだよな。・・・・・交代してやる。上脱げよ」

マルコ「分かった。・・・・・ジャン着替え持ってきてる?」ヌギヌギ

ジャン「んなもんねぇよ」

マルコ「僕もだよ。ボロボロの服で帰るしかないのか・・・・」

ジャン「いっその事、上半身裸で帰っちまうか」ポンポン

マルコ「やだよ。上着だけ誰かに貸してもらうよ」

ジャン「素肌にジャケットか。ワイルドだな」ポンポン

マルコ「何も着ないよりはマシだろ?」

ジャン「まあな。・・・・・・・・・・それよりだ」ポンポン

マルコ「何?」


ジャン「さっきのクリスタ、あれはどういうことだ?どうしてお前が無事で涙ぐんでんだよ」ポンポン

マルコ「さぁ・・・・なんでだろうね?」

ジャン「しらばっくれんじゃねぇよ」グリグリ

マルコ「いっ!?ちょっ・・・やめてくれよ、痛いって」

ジャン「じゃあ正直に話せよ。付き合ってんのか?」

マルコ「付き合ってないよ」

ジャン「嘘つくな」グリグリ

マルコ「いっ・・・た!本当だってば!!」

ジャン「お前さぁ、ずるくねぇ?

    マルコは俺の恋愛事情を全部知ってるくせに、俺はマルコのそういう話これっぽっちも知らないんだぜ?」

マルコ「それはジャンが勝手にべらべらしゃべるからだろ」

ジャン「マルコだからしゃべってんだよ。他の奴にはそんな話しねぇし」

マルコ「ジャン・・・・」


ジャン「親友だろ?誰にもバラさねぇからよ。いい加減教えろ」ポンポン

マルコ「・・・・・・付き合ってないのは本当だよ」

ジャン「ふーん・・・・で?お前はクリスタが好きなのか?」ポンポン

マルコ「はぁー・・・・・・そうだよ」

ジャン「じゃあ今すぐ告れよ。さっきのクリスタの様子は間違いなくお前に気がある」ポンポン

マルコ「・・・・告白っていうか・・・・・・すでに僕の気持ちはクリスタに伝わってるよ・・・・」

ジャン「マジか!意外と積極的だな・・・・・・・で、クリスタの返事は?」ポンポン

マルコ「・・・・その、返事はしないでって・・・・・」

ジャン「・・・・は?」

マルコ「返事は・・・・訓練兵団を卒業するまでしないでって頼んだ・・・・」

ジャン「意味分かんねぇ」


マルコ「いい加減な付き合いはしたくなかったから・・・・。憲兵団に入れるまでは保留しようかなって」

ジャン「お前さぁ・・・・何でそんなとこまでごまかすんだよ・・・・。本当はそんな理由じゃねぇだろ。

    単に周りに遠慮してるだけだろ」ポンポン

マルコ「・・・・やっぱりジャンにはバレたか。・・・・僕はさ、今のままで十分満足してるんだよ。

    クリスタがいてジャンがいて他にもたくさん仲間がいて・・・・。この状態を壊したくないんだ」

ジャン「壊すって・・・・馬鹿だな、お前。ライナーにでも気を遣ってんのか」ポンポン

マルコ「やっぱり・・・・僕は臆病なんだよね・・・・。人と争いたくないし嫌われるのが恐い」

ジャン「じゃあ何でクリスタに言ったんだよ。最期まで黙っとけよ」ポンポン

マルコ「・・・・卑怯かな」

ジャン「ああ。クリスタ狙ってる奴らを出し抜いて、何食わぬ顔で先約入れてよ。

    それじゃあ他の奴がいくら勇気を出して告ったって、クリスタはお前との約束を気にして了承できねぇだろ」

マルコ「返事をもらう約束はしたけど・・・・・僕と付き合う約束はしてないよ・・・・」


ジャン「あーーー、もう!!俺はそういう曖昧な態度が大嫌いだ。すげぇムカつくぜ」グリグリ

マルコ「いっ・・・・て!!」

ジャン「俺なガキの頃、昆虫好きでよ・・・・・・・って今日は虫の話ばっかしてんな」

マルコ「ジャン・・・・?」

ジャン「いいから黙って聞け。・・・・家の近所に昆虫専門店があってよ。しょっちゅう覗いてたんだ」

マルコ「・・・・めずらしいねそんな店」

ジャン「だろ?露店だったけどな。・・・・そんなある日俺はその店で運命の出会いをした。

    堂々とした風格、絶妙な長さとそり具合の角、黒光りする体躯。まさに理想のカブトムシだ。

    俺はその黒いダイヤに一目で夢中になった」

マルコ「・・・・・・」

ジャン「すぐに店のおっさんに売ってくれって声をかけた。だがな一足遅かった。もう売れたって言うんだぜ。

    そのカブトムシが入っているケースをよく見ると売約済みの札がかけられてた」

マルコ「・・・・・・」


ジャン「でもよ、諦め切れなくて毎日毎日そのカブトムシに会いにいった。売約済みのままずっと店頭にいたんだ。

    買うって言った奴がなかなか金持って引き取りに来なくてな・・・・・ホント何考えてんだか」

マルコ「・・・・・・カブトムシは高いからね」

ジャン「店のおっさんは手付金もらってるらしくって律儀にそいつを待ってんだ。

    だが俺はいつか売約済みの札が消えるんじゃねぇかって期待してた。

    あのカブトムシがフリーになったら今度は俺が一番に名乗りをあげるんだって・・・・」

マルコ「・・・・・・」

ジャン「最初はとにかくカブトムシを自分の物にしたくって店に通い詰めてた。

    だけど毎日見てると段々とそいつが可哀想に思えてきてな・・・・

    ガラスのケースの中、一人ぼっちで来るか来ないかわかんねぇ奴を待ってるんだぜ」

マルコ「・・・・・カブトムシに感情移入しすぎだよ」


ジャン「うるせぇな。俺にはそう見えたんだよ。

    俺はそのカブトムシが欲しくて欲しくてたまらなかったはずなのによ・・・・・

    俺にチャンスが来てないか確認するために通ってたんだが・・・・

    そのうち無事に迎えが来たかどうかを心配して通うようになってた」

マルコ「・・・・・・結局そのカブトムシはどうなったの?」

ジャン「それがな、ある日突然その昆虫屋が店じまいしやがってよ。カブトの行方は未だ知れずだ」

マルコ「・・・・・・作り話?」

ジャン「お前なぁ、俺がこんなに一生懸命思い出話してやったのに疑うのかよ」

マルコ「いや、出来すぎかなって。いろいろと」

ジャン「実際にあった話だ。多少脚色しちまった部分はあるが・・・・

    で、マルコは俺の話を聞いてどう思ったよ。自分のやってることが最低だって自覚したか?」

マルコ「まぁ・・・・ジャンの言いたいことは分かった。けど僕にどうしろって言うんだよ」


ジャン「そりゃあお前、すぐに引き取るか、売約自体をキャンセルするかの二択しかねぇだろ」

マルコ「じゃあ僕は三択目にするよ」

ジャン「はあ?」

マルコ「僕はお店に手付金を払ってないからね。店のおじさんは律儀に僕を待つ必要はない。

    売約札をいつ取るかはおじさんに任せるよ」

ジャン「それずるくねぇ?完全に人任せじゃん。

    それに今の会話ではカブトムシがクリスタで売約した奴がマルコだろ?・・・・おっさんって誰?」

マルコ「そうだな・・・・・・ユミルとか?」

ジャン「ぶっ・・・・くくくっ・・・・お前ひでぇな・・・・ユミルのおっさんか・・・・」ゲラゲラ

マルコ「いや、ふざけてないから。そんなに笑うなよ。ほらユミルってクリスタの保護者みたいだろ?」

ジャン「まぁ確かにいつもべったりくっついてるが・・・・。お前はユミル任せでいいのかよ」

マルコ「それは困るな。すぐに売約札叩き折ってカブトムシを店の奥にしまい込むだろうから」

ジャン「ははは、確かにな」


マルコ「それにクリスタはガラスケースの中に閉じ込められてないし。何を選ぶかは本人の自由だよ。

    カブトムシとクリスタを一緒にするな」

ジャン「悪ぃ悪ぃ。けどよ以前やったピアノの発表会でお前『樅の木』弾いてただろ?」

マルコ「そうだけど?急になんだよ」

ジャン「あん時のお前の演奏、ムードたっぷりに甘く歌い上げやがって。ありゃ女を口説く弾き方だ」

マルコ「今ごろになって駄目出し?」

ジャン「ちげぇよ。お前のピアノは甘ったるいんだ。甘い匂いに誘われたクリスタはカブトムシみたいなもんだ」

マルコ「強引に持ってくるなぁ・・・・・。だがジャン、樅の木にはカブトムシは生息しない」

ジャン「マジ?そういや、クヌギやコナラでしか捕ったことねぇな」

マルコ「はぁ・・・・思いつきで適当に話すなよ。

    ・・・・・・・あっ、訓練兵団の歌が始まった。これで本当に最期だ・・・・」

ジャン「やっとか。あー、今日一日すっげー長く感じたぜ」

マルコ「ははっお疲れさま」

ジャン「お前もな」


マルコ「よし。みんなが戻ってきたら、まずはミカサカブトにもう一度謝ろうな」

ジャン「ぶっ、なんだ?ミカサカブトって」

マルコ「だってジャンの作り話、ミカサへの思いそのまんまじゃないか。カブトムシにミカサを完全に重ねてただろ」

ジャン「だから作り話じゃねぇって。・・・・・・ミカサは・・・・やっぱり重ねちまったかな」

マルコ「ジャン・・・・・・・僕は応援してるから。どんなに望みが薄そうでも」

ジャン「うるせぇよ」

トントン トントン

マルコ「ん?ノックする音?」

ジャン「入り口の方からしたな。誰か来たのか?」

マルコ「見てくるよ」スクッ スタスタスタスタ

ジャン「悪ぃな」


マルコ(あっ・・・・上半身裸だ・・・・・)スタスタスタスタ

マルコ(まっ、いっか・・・・・・)スタスタスタスタ

マルコ(入り口に来たけど・・・・・誰もいないな・・・・・)キョロキョロ

マルコ(ん?何か置いてある・・・・・・・)

マルコ(小さな花束・・・・ブーケってやつか・・・・・)

マルコ(メッセージカードが添えられてる・・・・・どれどれ・・・・?)

>>1ですって言うの忘れてました。今日はここまでです。
次回でとりあえず完結させます。多分。レスありがとうございました。

>>1です。今日中にラストまで行きます


※  ※ ステージ上 ※  ※

大合唱が終わり観客席から歓声と拍手が巻き起こる。

アルミン「たくさんの拍手ありがとうございます。

     ただ今の演奏をもちましてチャリティーコンサートを終わらさせていただきます。

     途中、不手際があり、大変お見苦しい所をご覧に入れてしまい申し訳ありませんでした。

     なんとか無事に今日の舞台を終え、私たち訓練兵団一同、晴れ晴れしい気持ちでいっぱいです。

     今日皆様から頂いた拍手が今後の訓練の励みになることと思います。

     御来聴有難うございました」

一同整列して一斉に敬礼を捧げる。

再び波のように押し寄せる拍手。

ひとまず安堵の表情を浮かべアルミンは一礼した。


※  ※ 広場 ※  ※

舞台が終了した後も片付けや荷物の搬送手続き等、みな忙しく動き回った。

帰り支度を終え広場に集合するころには、観客席は先程までの熱気が嘘だったかのようにガランと静まり返っていた。

店じまいをしていた屋台から無理を言って人数分の飲み物を買う。

憲兵団に挨拶しに行ったアルミンとマルコの帰りを今か今かと待っていた。

アルミン「ごめん、お待たせ」

エレン「遅ぇよ」

マルコ「寄付金の集計に手間取っちゃって。・・・・・・・ほらジャン。シャツ貰えたよ」ポイッ

ジャン「おっ、サンキュ。助かるぜ」

マルコ「兵士が裸ジャケットなんかで街を歩くなってさ。外見だけは気にするらしい」

コニー「なぁなぁ、いくら稼いだんだ?」

アルミン「びっくりするくらい結構な金額だよ。後日、明細と一緒に駐屯地まで届けてくれることになった」


サシャ「やりましたね。みんなでご馳走食べ放題じゃないですか」

アルミン「はは・・・・お金の使い道は帰ってから全員で相談しよう」

ライナー「ああ。とりあえず乾杯しようぜ。いつまで待たせやがる」

ベルトルト「ほら、アルミンとマルコの分」

アルミン「ありがとう」

マルコ「じゃあみんな今日はお疲れ様。そしてありがとう!!!」


かんぱーーーーーーーい!!!!


ライナー「くぅぅぅ・・・・たまらん。一仕事終わった後のビールは格別だな」

サシャ「おじさん臭いですよ」

ライナー「まぁそういうなよ、陽だまりちゃん」ニヤリ

サシャ「は?何ですかそれ?」

コニー「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ライナー余計なこと言うなよ!!」

サシャ「うわっ、何ですかコニー。急に飛んできて」

ライナー「俺が何かまずいこと言ったか?」ニヤニヤ

コニー「ぐっ・・・・・・・・ライナーはサシャと絡むの禁止だ」

サシャ「おお!なぜか禁止されました」

ライナー「そりゃ無理だ。サシャはなかなか良いケツしてるからな」

サシャ「本人を目に前にしての大胆な発言、さすがセクハラオヤジです」

コニー「ケツって・・・・・!?ライナー、てめぇ触ったのかよ!!」

ライナー「まさか、眺めてるだけだ。 ・・・・・触ってもいいのか?」

サシャ「駄目に決まってます」


コニー「何でライナーはサシャの前では素なんだよ。他の女子の前では岩みてぇに黙ってんのに」

ライナー「おいおい、それを俺に言わせるのか?サシャの前だぞ」

コニー「なっ!?やっぱりお前サシャのこと・・・・・・・」

ライナー「ああ、そうだな」

コニー「くっそ・・・・・・・さんざん人のことからかっといて」

ライナー「サシャのことは妹のように思ってるな」

コニー「へ?」

サシャ「妹ですか。・・・・・・・妹のお尻を変な目でみるのはどうかと思いますよ」

ライナー「それもそうだな。・・・・・・・・・・じゃあ娘か?」

サシャ「娘のほうがもっと問題です」

コニー「何だよそれ。意味分かんねぇよ」


ライナー「まあ、あれだ。俺は正統派のお嬢様タイプが好みなんでな。

     サシャは女のわりにさっぱりした性格してるだろ?気楽に話せるんだよ」

サシャ「暗に恋愛対象外だって言い放ちましたね」

ライナー「対象に入りたいのか?」

サシャ「永久に外でお願いします」

コニー「なんだ・・・・。ただの友達ってことか」

サシャ「そうですよ。みんな友達・・・・・・・いえ大切な仲間ですよ」

ライナー「それじゃあ、俺は女神の顔でも拝みに行くとするか。

     ・・・・・ぼやぼやしてっと陽だまりが他のやつに占領されるぞ、コニー」スタスタスタ・・・

コニー「なっ!?それ言うなよ、もう」

サシャ「行っちゃいましたね。・・・・・さっきから陽だまり陽だまりって何ですか?」


コニー「何でもねぇよ」ゴクゴクゴク

サシャ「あっ、コニー。それお酒なんじゃ?」

コニー「ちげぇよ。瓶の見た目はビールっぽいが中身は激甘の炭酸水だ」

サシャ「よかったです。また倒れられたら面倒ですから」

コニー「あん時は・・・・・・世話かけて悪かったな」

サシャ「かまいませんよ。そんなことより、ソレ私にも一口下さい。飲んでみたいです」

コニー「えー、ただでやるのか?」

サシャ「私のはオレンジジュースです。交換しましょう。はい、どうぞコニー」

コニー「お、おう・・・・・・・・・ほらよ」

サシャ「ありがとうです。では味見です」ゴクゴクゴクゴク

コニー「お、おい。全部飲むなよ」


サシャ「プハーーーッ。甘くておいしいですよ。・・・・・コニーは飲まないんですか?」

コニー「い、いや・・・・えーと・・・・・」

サシャ「オレンジジュースは嫌いでしたか?」

コニー「そうじゃねぇけどよ・・・・・・なんつーか・・・・・」

サシャ「?」

コニー「なんか・・・・・・すげぇ恥ずかしいんだよ」///

サシャ「オレンジジュース飲むのがですか?」

コニー「・・・・・・・・この瓶に口つけるのが」///

サシャ「ふーん・・・・・変なコニーですね」


※  ※  ※  ※

アルミン「冷やりとする場面もあったけど無事に終わって何よりだね」

マルコ「僕がすべて台無しにするところだった。反省してるよ」

アルミン「けど真剣持ったミカサ相手によくやったよ。僕は絶対ごめんだね」

マルコ「そう?相手がミカサだからこの程度の傷で済んだんだ。彼女には感謝してるよ」

アルミン「ミカサもエレンに助けられて嬉しそうだったし・・・・・・結果オーライかな?」

マルコ「はは。・・・・・でもさ、ここまでトントン拍子で事が進んだから足元が浮ついてたのかも。

    模造刀さえ持って来とけばこんな騒ぎにはならなかった。肝心なところで詰めが甘いんだよ、僕は」

アルミン「まぁ、今回のステージはいい経験になったよね。運営を通して今の僕らの実力が見えてきた。

     足らなかった部分は今後の課題にすればいいよ」


マルコ「ああ。・・・・・・・僕達はこれからだ」

アルミン「うん。期待してるよ。未来の名指揮官殿」

マルコ「ははっ・・・・・じゃあアルミンは名参謀かな」

アルミン「やだなぁそんな目標はないよ・・・・・

     でもさ、そんなふうにに呼ばれる歳になったら、今日の出来事は良い思い出になってるんだろうね」

マルコ「・・・・・何十年たっても忘れないだろうな。訓練兵団で過ごした日々は・・・・・」

アルミン「うん。この瞬間の全てが一生の宝物になるんだ。

     こうやって何気なくマルコと会話してることも、将来きっと懐かしく思い出すんだよ」


マルコ「そうだね・・・・・・・なんだかしんみりしてきたな・・・・・」

アルミン「ごめんごめん。とにかく今日はお疲れ様。一番の目的だった寄付金集めは大成功だよ」

マルコ「本当にみんなよくやってくれたよね。感謝しなきゃ。・・・・・・・・あっ、いけない」

アルミン「どうしたの?」

マルコ「クリスタにちょっと用があって・・・・・・どこいるかな・・・・・?」


※  ※  ※  ※

ユミル「クリスタ、私今日すっげー頑張っただろ?」

クリスタ「うん。ユミルは偉いよ」

ユミル「じゃあご褒美にキスしてくれ」

クリスタ「イヤ」

ユミル「ケチ」

クリスタ「ふふ。・・・・・いつも守ってくれてありがとう。大好きだよ」ギュッ

ユミル「クリスタ・・・・」///

クリスタ「ねぇ・・・・・ユミルってヴァイオリンすごく上手になったよね」

ユミル「まぁな。そんな柄じゃ無ぇが、練習だけは続けてたし」


クリスタ「・・・・・・今度はチェロ弾いてみない?」

ユミル「はぁ?」

クリスタ「私ね、ユミルってすごくチェロも似合うと思うの。次はチェロとピアノの二重奏したいなぁ」

ユミル「勘弁してくれよ」

クリスタ「やだやだ。チェロ弾いてよー。お願い」ギュゥゥ

ユミル「お前・・・・・・・ほんっとずりぃな・・・・・・・」ナデナデ


※  ※  ※  ※

ジャン「ミカサ、本当にすまなかったな」

ミカサ「もういいって言ってるでしょ。

    それに・・・・あなたたちのおかげで私は久しぶりにエレンに守られた。・・・・すごく高揚した」///

ジャン「はぁ・・・・・結局お前に格好いいとこ見せられなかったな」

ミカサ「そんなの最初から期待してないから」

ジャン「そうか・・・・・」

ミカサ「けど・・・・・ジャンのおかげでエレンと一緒の舞台に立てた。ありがとう」

ジャン「かまわねぇよ。ミカサが喜んでくれたならそれでいい」


ミカサ「・・・・・・ジャンは優しい」

ジャン「おっ、ようやく気付いたか」

ミカサ「その優しさは私にではなく他の女の子へ向けたほうがいい。それがあなたのため」

ジャン「・・・・・・・俺はお前にまだ何も言ってねぇだろ。勝手に返事すんなよ」

ミカサ「ジャン・・・・・・」

ジャン「おっと、あれはベルトルトとアニ。ん?エレンも一緒か」

ミカサ「エレンのことだから余計なことを言っているかもしれない・・・・・・」

ジャン「アニにぶん投げられる前に止めた方がよさそうだな」


※  ※  ※  ※

エレン「だからさぁ、さっき林でベルトルトにかけてた絞め技、俺にも教えてくれってば」

ベルトルト「な、なんのことかなぁ」ダラダラ

アニ「人違いじゃない?」

エレン「いや確実にアニとベルトルトだった。見たの俺だけじゃねぇし」

ベルトルト「ほ、他には誰が見たのかな」ダラダラ

エレン「ミカサとジャンだけど」

アニ「ふーん・・・・」

エレン「ミカサはアニよりあの技上手にかけれるって豪語してたぞ」

アニ「だったらミカサに教えてもらいな」


ジャン「おう!!お前ら元気か?」

エレン「何だよジャン。突然来て」

ミカサ「さぁエレンここから離れましょう」

アニ「ねぇ・・・・・・あんたたちは何も見てないでしょ?」

ジャン「あ、ああ。もちろんだ。俺は今日に限って目が悪いんだ」

ミカサ「アニとベルトルトが何をしようが私には関係ない。むしろ見せつけられて非常に不愉快」

ジャン「ばっ・・・・お前、喧嘩売るな」

アニ「そう。関係ないなら黙ってて」

ミカサ「私たちは見なかったことにしてもいい。

    でも何も無かったことにはしないで。・・・・・・ベルトルトが可哀想」

ベルトルト「!!」


アニ「あんたはエレンのことしか頭に無いと思ってたけど・・・・・他人のことでもお節介焼くんだね」

ミカサ「アニの態度が良くないと思っただけ」

アニ「・・・・・・そんなことは言われなくても分かってる」

ミカサ「そう。・・・・・では、私も何も見なかったことにする」

エレン「なぁ、一体何の話してんだ?」

ジャン「てめぇには一生分からねぇだろうな。・・・・・・・・・お、マルコとアルミン」

アルミン「みんなお疲れ様」

エレン「おう。アルミンもな」


マルコ「ジャン・・・・ちょっと頼みがある」ヒソヒソ

ジャン「なんだ?」ヒソヒソ

マルコ「クリスタに用があるんだけどユミルがべったりでさ。何とか引き離せないかな」ヒソヒソ

ジャン「なるほどな・・・・・。分かった。でも後でちゃんと話聞かせろよ」ヒソヒソ

マルコ「いいけど・・・・ジャンが期待してるような話はできないと思うよ・・・・・」ヒソヒソ

ジャン「おーーーい!!!ユミルー!!!」

ユミル「なんだーー!!」

ジャン「ちょっとこっち来いよ!!」

ユミル「用があるんならてめぇが来い!!」

ジャン「俺たちに礼になんかさせるんだろ!!今言わねぇと聞いてやらねぇぞ!!」

ユミル「ちっ、分かったよ!!」スタスタスタ


ジャン「ほら、マルコ今のうちだ」ヒソヒソ

マルコ「さすがジャンだ。感謝するよ」ヒソヒソ 

エレン「おい、ジャン。何でわざわざ言うんだよ。放っときゃユミル忘れたかもしれないだろ」

ジャン「はぁー分かってねぇな。ユミルに考える間を与えたらとんでもないこと言い出すぞ。

    思いつきで言わせた方がきっとマシだぜ」

ミカサ「そうかしら・・・・・・」

ユミル「お待たせ。お前らそんなに礼がしたいのか。関心関心」

ジャン「よし、今から10数える間に要望を言え。それを過ぎたら聞いてやらねぇ」

ユミル「おいっ、待てよ」


ジャン「10」

ユミル「ちょっと」

ジャン「9」

ユミル「何でこんな条件がつくんだよ」

ジャン「8」

エレン「おっ、思いつかないか」

ジャン「7」

ユミル「うるせぇな。今考えてんだよ」

ジャン「6」

ミカサ「そのまま黙ってて」

ジャン「5」

ユミル「んーーーーと・・・・」

ジャン「4」

エレン「へへっ、あと少し」


ジャン「3」

ユミル「えーーーーと・・・・」

ジャン「2」

ユミル「あーーーー、もう!!」

ジャン「1」

ユミル「お前らヴァイオリン工房で働けよ!!!」

ジャン「は?」