【安価】インデックス「フィアンマはね、疲れちゃったの」 (452)



前々々スレ

【安価】インデックス「いい加減私も怒るかも」フィアンマ「……ふん」


前々スレ

【安価】インデックス「フィアンマのばか」フィアンマ「…拗ねるな」
(↑原作らしい冷酷な右方のフィアンマを見たい方はこちら)

前スレ

【安価】フィアンマ「俺様は、インデックスを愛していたんだよ」
(↑五和エンド、インデックスエンド、ヴェントエンド(GOOD/BAD)をお求めの方はこちら)



・右方のフィアンマさんが魔道書図書館を管理するお話

・メインは右方禁書…とでも思っているんだろうが

・時間軸不明、とある平行世界のお話

・キャラ崩壊(設定改変含)注意


※注意※
エログロ描写が入る可能性があります。
小ネタを単発で投下するかもしれません。
どうしても捌けない場合等、>>1の判断で安価下。
コンマ安価は苦悶と迷いの果てに。
連投、連続取得はご自由に。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363170559

+



□右方のフィアンマ(主に使う偽名:ミハエル=ケール=フィアンマ)

本作品の主人公。
ローマ正教の魔道書図書館『禁書目録』を管理する『神の右席』の一人。
中でも『右方』を司る、実質的なリーダー。
本来右席メンバーは使用出来ない筈の人間用の魔術を例外的に扱い、その知識は禁書目録にこそ及ばないものの、魔神並。
詠唱無しに左腕を接続し直したことがある。
また、『熾天玉座(セラフィムレガリア)』と名を付けた魔神級の術式を扱える。
甘いものをこよなく愛し、異常な情熱を発揮する。甘味殺し(アマチャンブレイカー)。辛いものは大の苦手。
莫大な『世界を救える程の力』を体内に有し、『救世主』という特殊体質故、既に六百年余りを生きている。
本人曰く『何年生きたか数えたことはないが、まだまだ死ねないだろう』『本気で死にたいのならミンチになる機械にでも飛び込むしかない』とのこと。
とある事件によって右目の視力を喪った為、眼帯をしている。
人間不信気味なひきこもりだったが、インデックスと出会ってからだいぶ改善された。
上条当麻を親友と認め、彼の為に命を張ったことがある。
受動的な人助けしか出来ない。理由が無ければ人を助けない臆病者、と自嘲しがち。
インデックスと上条当麻を守る為なら何を犠牲にしても仕方が無いと考えている。
しかしながら自己犠牲的な精神性が強い為、他者に犠牲の所在は求めない。
五和が死亡して以来強く責任を感じており、鬱気味。

何だか気づいたらメイドさんやら義娘やらが出来ていた上に大天使『神の力』に惚れられた事もあるフラグ体質。

魔法名は『relevium057(我が存在は救済の為に)』。

多大な精神疲労により、自殺志願者に。


□インデックス

本作品のメインヒロイン。
ローマ正教が誇る魔道書図書館『禁書目録』。
世界中のありとあらゆる魔道書・邪本悪書103000冊を記憶の中へ収納している。
放っておけば世界中の魔術師から狙われる為、右方のフィアンマに管理権限がある。
その為、彼女個人の自由はそんなに無い…筈だが、フィアンマの考えにより割と自由。
彼女の意図しないところでフィアンマの行動を変革する心優しい少女。
癇癪による噛み付き攻撃は、ことごとく回避されてしまっている。
限りなく恋情に近い信頼をフィアンマへ抱いている。
その為、彼が他ヒロインにフラグを立てる度、癇癪を起こしたりむすくれたりしている。
どんなに傷つけられても、悪意を向けられても、他者の為に微笑む事が出来る小さな聖女。
死にたがりのフィアンマを心配している。

+



□五和

元天草式十字凄教の女魔術師。
教皇代理である建宮斎字に強姦され、自殺をしようとしていたところをフィアンマに救われた。
尚、建宮斎字は天草式十字凄教によって『幽閉500年』の処罰を下された後、自殺した模様。
現在は右方のフィアンマ(もとい、偽名:ミハエル=ケール=フィアンマ)と禁書目録の専属住み込みメイドだった。
シルビアに家事を習いつつ、今日も今日とてフィアンマのお嫁さんとなるべく奮闘していた。
もはやその愛は信仰に等しく、盲目的な信頼をフィアンマへ抱いていた。
前々スレにて、一方通行の愛でも構わない、とフィアンマに告白をした。
第三次世界大戦中、魔神オティヌスの依頼を受けた垣根帝督に殺害され、死亡した。


□ミサカ00000号(フルチューニング)

天井亜雄の私怨によってフィアンマを殺害する筈だったクローンの少女。
通常の妹達とは違い、ミサカネットワークの影響を受けないが、接続出来る。
様々な過程を経て、フィアンマから『グラーノ=ケール』という名前を付けて貰った。
また、現在はフィアンマを殺そうという発想は無い。
フィアンマの娘(養女)として、人権を獲得した。
尚、御坂美琴のコネによりミラノの学園都市系研究所で調整を受けている模様。
フィアンマを『パパ』『お父様』と呼び、純粋に慕っている。
一人称は『私』と『ミサカ』を行ったり来たり。
ミサカネットワークの都合の良い部分だけを取得し、感情を持ったようだ。
おおよそ悪意というものを持ち合わせていないようである。
甘い物、及び家事を五和から習い、既にいつでもお嫁に行ける状態。
死にたがりのフィアンマを心配している。


□上条当麻

学園都市に住む万年『無能力者(レベル0)』。
『幻想殺し』というどんな異能も問答無用で破壊する力、右手を持っている。
幼い頃に『不幸を呼ぶ疫病神』であるといじめられ、絶望したところでフィアンマに手を差し伸べられた。
また、借金を抱える男から完全な逆恨みによって刺されかけた時にフィアンマに庇われて以降、自分は彼を絶対に裏切らない味方で居る、と決めている。
八人もの女性(滝壺、佐天、オリアナ、黄泉川、初春、姫神、病理、フレメア)を虜にしたハーレム男。
絶対的な味方であると宣言しながらも、同時に、自分はフィアンマの理解者にはなれないと自負している。
今時の男子高校生らしく面倒臭がりだが、こと、困っている人を見ると放っておけない。
理由がある・或いは理由を作らないと人助けを出来ないフィアンマとは反対に、理由が無くとも人助けが出来る。
フィアンマの背中を追いかけ、彼を目指すあまり、自己犠牲が目立つ傾向が大きい。
自分の為に立ち上がることは出来ないらしく、前々スレで追い詰められた際、フィアンマに助けを求めた。
前スレではロシアまでフィアンマを追いかけ、その窮地を救った。
しかしながらその後フィアンマの頼みを受けた一方通行によって学園都市に連れ戻された為、不満が残っている。


養子縁組などしていないので戸籍上は違うものの、義兄(フィアンマ)コン。

+



□木原数多

飲料:いちごおでん開発者。
フィアンマの甘味説教によって改心したらしい。
『学園都市単位で騒動が起きた時、上条当麻を守って欲しい』というフィアンマの願いを聞き入れるべく、0930事件で暗躍した。
尚、フィアンマとは甘味盟約を交わした盟友らしい。


□ローラ=スチュアート

イギリス清教の最大主教。
フィアンマ勢力を潰すべく動いていたが、フィアンマに惚れ込んで以来中止。
『異界反転』が起きた原因を作り出した女。


□神裂火織

天草式十字凄教の女教皇。
自分の悪い部分を指摘され、服装について理解してくれたフィアンマに恩義を感じている。
『御使堕し』編にて、フィアンマと上条の仲を知って以降上条を守ろうともしている。
また、フィアンマに恋心を抱いている。しかし、積極的なアプローチは苦手なようだ。
鬱々と自責の念に駆られるフィアンマを懸命に励まし、自殺を食い止めた。


□御坂美琴

スキルアウトに強姦されかかっているところをフィアンマに救われた、学園都市第三位。
フィアンマに対し、恩義と同時に恋心を抱いている。
ミラノへ短期留学へ来た事があり、ミサカ00000号の状態を正常に戻した。
フィアンマとは携帯番号及びメールアドレスを交換しており、連絡をしてくることが多い。
学園都市にて悶々とフィアンマのことを心配している。


□ミサカ10032号

第10032次実験へ上条当麻の姿で介入したフィアンマに命を救われた個体。
彼の言葉と行動によって人間だと自覚し、現在は感謝の念を抱いている。
グラーノからミサカネットワークにより、フィアンマの現在状況をいつも聞いている。
そのために、誰かの為に心を痛める、という感覚を覚えた。

+



□一方通行

学園都市最強。第10032次実験において、上条の見目をしたフィアンマに徹底的に叩きのめされた。
その後の会話などから、フィアンマには尊敬と畏怖、憧憬の感情を抱いている。
助けを求めてきた打ち止めを迷わず救った。能力は健在。
現在は垣根帝督率いる軍事組織にて働いている。


■垣根帝督

学園都市第二位。
『未元物質』を自由自在に操る事が出来る。
生き死にの境界線が曖昧な為、彼の事は最早概念とさえ呼べる。
軍事組織を立ち上げ、一方通行と共に簡単な仕事から汚れ仕事まで請け負っている。
実際に一方通行を負かしたフィアンマに興味を抱いているようだ。上条と面識があり、友人。
第三次世界大戦中において魔神オティヌスの依頼を受け、五和を殺害した。
『暗部に身を置く人間が何かを守りたがるのは気に食わない』が彼の持論。
なお、後方のアックアとの戦闘において魔術現象を目撃し、独自の魔術解釈・独学を行っているようだ。


□前方のヴェント

ローマ正教最暗部『神の右席』の一人、『前方』を司る。
右方のフィアンマに対し、恋愛のような、特殊な好意を抱いている。
彼女と彼が交わした約束の内容は、『科学サイドを潰す』こと。
しかしながらフィアンマが約束を守らない理由をきちんと理解し、妥協している。
死にたがりに戻ったフィアンマを励ますべく苦心している。


□オッレルス

魔神のなり損ない。フィアンマ・禁書目録・五和のお隣さん。
シルビアといつか結ばれたいと思っているお人好し。
魔神級の術式を組み上げる際、フィアンマに協力した。
第三次世界大戦にて魔神オティヌスを殺害した。


□シルビア

オッレルスと同居している聖人の女性。
下女すなわちメイドの修行を終えている、優秀なメイド。
魔神級の術式を組み上げる際、フィアンマに協力した。


□禁書妹

天井亜雄と組んだオティヌスによって生み出されたインデックスのクローン。
インデックスよりも少し年齢が低く、幼い。
完全記憶能力は無いものの、オリジナル—フィアンマ間との思い出を多少共有している。
現在はオッレルスによって保護されている。

+

《このスレに建宮斎字は出ません。あらかじめご了承ください》


神裂「ありがたいですがまだ仕事が残っているので…今日のところは、帰ります」

インデックス「そっか、引き止めてごめんね」

神裂「…インデックス、どうか貴女だけでも、五和の代わりに…いいえ、五和の分も、彼を支えてあげてください」

インデックス「…うん。勿論かも」

神裂「…では、失礼します」

フィアンマ「…ああ」

一礼し、神裂はアパートメントから出て行った。
フィアンマは食事を終え、皿を片付ける。

グラーノ「ミサカやるよ?」

フィアンマ「んー…俺様が洗うからしまってくれ」

グラーノ「…うん、わかった」

こくんと頷き、グラーノはフィアンマと共に台所に立つ。
かちゃかちゃと静かな食器の音が、台所に虚しく響く。

グラーノ「……パパのお仕事は、全部終わったの?」

フィアンマ「…あぁ」

グラーノ「…もう、何処かに行って、しばらく帰ってこないとか、ないよね?」

フィアンマ「>>13

ああ、だがお前らとは二度と会わん

《クーデターは無理だけどキャーリサさん本人だけならあるいは…? 飯行ってきます》


フィアンマ「…そうだな、暫くはゆっくり、したい…」

疲れた、という言葉は飲み込んで。
食器用洗剤の泡を、水流で丁寧に洗い流していく。
グラーノはその皿をキッチンペーパーで丁寧に拭き、食器棚へとしまう。

グラーノ「…メイドちゃんのお葬式、私も、行って良い?」

フィアンマ「あぁ。…香典は包んでやる」

グラーノ「うん。……ごめんね」

フィアンマ「…何故お前が謝るんだ?」

グラーノ「…ミサカが、メイドちゃんをお買い物に行かせなければ、良かったんだよ」

買い物の帰りに、五和は殺された。
だから、買い物を頼んでしまった自分のせいだ、とグラーノは思う。

フィアンマ「……、」

グラーノ「…私が行っていれば、」

フィアンマ「…お前が、殺されただろう」

どちらにせよ、八方塞がり。
どちらにせよ自分は同じく絶望していただろう、とフィアンマは呟く。

フィアンマ「……お前とインデックスが生きていてくれて、良かった」

グラーノ「…パパ」

フィアンマ「……喪ったものは大きいが、…俺様にはまだ、お前とインデックスがいる」

グラーノ「>>19

>>18

やめろ泣く……


グラーノ「パパ…無理、しないでね…?」

皿洗いが終わり。
濡れた手をタオルで拭き、グラーノはそっとフィアンマに抱きついた。
ぎゅっ、と力を強く込める。
フィアンマも同じく手を拭き、グラーノの方へ向き直った。
優しく髪を撫でてやり、彼女の姿を見下ろす。
グラーノはフィアンマに抱きついたまま、掠れ気味の声で言った。

グラーノ「私が五和の分も頑張るから…五和の分まで、頑張って生きるからね」

フィアンマ「……、」

見目こそ十代の少女だが、グラーノは実際より幼い。
幼いが故に直感に優れ、フィアンマが本心から望んでいる死を拒絶する。

グラーノ「パパも生きてね? 私、いっぱい、いっぱい親孝行するね」

フィアンマ「…グラーノ、」

グラーノ「だから、生きて。ミサカと、インデックスと、一緒に居て」

フィアンマ「……そうするよ」

グラーノ「……うん」

フィアンマ「…目立った親孝行はしなくて良い。生きて、息をして、笑って、泣いて、怒れるのなら、それで良い」

絞り出したように言って、グラーノの髪を、撫でる。




一週間後。
一月二十二日。

墓が出来てより随分後となってしまった五和の葬式を終えて。
フィアンマは、グラーノやインデックスと共に、家へ戻って来た。
線香の匂いを、シャワーで振り払う気にもなれない。

禁書妹「あっ、お帰り!」

フィアンマの部屋の隣り、即ちオッレルスの部屋から、禁書妹が顔を覗かせた。
何の防護機能も無い修道服ではなく、白いワンピースとコートを纏っている。
黒いストッキングを履いており、真面目な女学生———否、女子小学生のように見えた。

フィアンマ「ただいま。…元気そうだな」

インデックス「わ、私が」

グラーノ「インデックスが二人っ?!」

禁書妹「あっ、えっと」

フィアンマ「>>25

こんだけ>>1が名作を書き続けているのだからフィアンマファミリーとかの美麗な絵支援とかあってもいい気がする安価↓

ここの登場キャラ全体的に病んでませんかァ?逆に充実してそうなのは誰だろう

>>28 シルビアさんと禁書妹はきっとまともです  支援絵とかいいなーチラッチラッ》


フィアンマ「そういえば言っていなかったな」

あたふたと自己紹介すらままならない禁書妹の頭を撫でて落ち着かせてやり。
フィアンマはグラーノとインデックスを見やり、簡単に説明する。

フィアンマ「インデックスの分身…言ってしまえばクローンだ」

インデックス「クローン、」

気持ち悪い、とは思わなかった。
グラーノ出自を知っていたからだろう。
インデックスは少し驚くも、割と素直に受け入れて。

フィアンマ「仲良くしてやってくれ」

禁書妹「…良かったら仲良くしてもらえると、嬉しいな」

えへへ、とはにかむ禁書妹。

グラーノ「確かにインデックスよりちょっと小さいしね」

禁書妹「う…」

うんうん、と納得するグラーノ。
と、ドアが開いてオッレルスが出てきた。

オッレルス「……、」

フィアンマ「……、」

オッレルス「…葬式の、帰りかな。……お帰り」

フィアンマ「…あぁ」

禁書妹「あっ、お父さん! どうしたの? 私寒くないよ?」

オッレルス「>>31


オッレルス「そうかい? それなら良かった」

禁書妹「うん!」

目が合い。
その目配せでどんな意思を交わしたかは、当人同士にしかわからない。
しかし、フィアンマもオッレルスも大人だ。
子供の前で虚勢を張る位の度量は持っている。
充分過ぎる程に悔やみ、泣いた。
それは忘れてはいけない理由にはならないけれど、今は日常を謳歌するべきだ。
本当は此処にいられた筈の少女の分まで、絶対に。

オッレルス「そうだ、これからご飯なんだが、皆良かったら一緒にどうだい?」

フィアンマ「食事か」

インデックス「うん、ご相伴に預かりたいかも」

見目こそ子供で、時折我が儘の出るインデックスだが、それでも精神性は立派なもので。
落ち込んでいるからという理由では断らず、敢えて乗った。

オッレルス「シルビアー、構わないかー?」

台所より、オッケー、との声。

オッレルス「だそうだ。外は寒いし、入ってくれ」

グラーノ「お邪魔します」

流石に六人も入ると狭いものの、どうにか入り切る。
お手伝いするー、とインデックスとグラーノがシルビアにひっつく。
自然として、リビングにはフィアンマとオッレルス、禁書妹が残された。
促されるままソファーへと腰掛け、フィアンマは禁書妹を見やる。
禁書妹は疲れているのかはたまた偶々か、眠気に身をゆだね、うたた寝を始めている。
だいぶ懐いたらしく、オッレルスにもたれかかって眠っていた。

フィアンマ「…随分と懐いたな。良い傾向だ」

オッレルス「……」

フィアンマ「……すまないな。禁書妹の身柄は、本来俺様が請けるべきだというのに」

オッレルス「>>35

いやいいさ。ほら、なんとなくシルビアとの子供みtシルビア「それはない」


オッレルス「いや、いいさ。ほら、何となくシルビアとの子供みt「それはない」……」

シルビアの容赦無い一言に、オッレルスはがくりと項垂れる。
相変わらず進展していないな、とフィアンマは小さく笑った。
そんな笑みを見やり、オッレルスは安堵の表情を浮かべる。

オッレルス「……少しでも元気が出たのなら、良かった」

フィアンマ「…お前達が思っている程落ち込んでもいないさ」

オッレルス「逆だろう。…私達が想像しているより、君が今回受けたダメージは重いはずだ」

フィアンマ「……」

無言のままに、フィアンマは禁書妹を見やる。
すやすやと眠る、その寝顔は愛らしく、あどけない。
彼女がそこにいるだけで、ほのぼのとした空気が出来上がる。
オリジナルとの共通した部分だった。

フィアンマ「…安心しろ。どうせ死ねないんだ」

オッレルス「……」

フィアンマ「…腹を割かれ、内蔵をぐちゃぐちゃにされても、呼吸して、思考出来ていた」

別に、今更ショックなことではない。
ただ、再確認しただけだ。
周囲が何と言ってくれても、所詮自分は化物止まりだと。

フィアンマ「……或いは、…お前なら、俺様を殺害出来るか?」

オッレルス「>>38

わからない
どっちにしろ俺には荷が重いよ


オッレルス「わからない」

オッレルスは、そっと禁書妹の頭を撫でる。
むにゃむにゃと言葉にならない寝言を漏らし、彼女はふにゃんと柔らかな笑みを浮かべた。
そんな彼女の笑みを一瞥し、心を和ませながら、彼は首を横に振る。

オッレルス「どっちにしろ、俺には荷が重いよ」

フィアンマ「…心情的に殺せない訳でもあるまい」

オッレルス「…俺が魔神オティヌスを殺害出来たのは、本当に彼女を憎んでいたからだ。そうでなければ、基本的には殺せないよ」

フィアンマ「……」

オッレルス「…ましてや、友人を殺す事など出来ない」

その時、フィアンマは笑ったのか泣きそうになったのか、自分でもわからなかった。
けれど、自分を見るオッレルスがあまりにも痛そうな顔をしたから、余程酷い顔をしていたのだろうとは思う。

フィアンマ「………、」

オッレルス「…死なないといっても、本当に、絶対の不死身が保証されている訳ではないんだ。無茶は、しないでくれ」

フィアンマ「……気を付ける」

夕飯が出来上がったらしい少女達の声音に、フィアンマは表情を変える。
弱い者の前でいつまでも泣き崩れてはいられない。
死にたいという慢性的な想いを封印し、フィアンマは普段通り振舞うことにした。

グラーノ「パパ見て見て、アイスクリームの天ぷら! 食べた事ある?」

フィアンマ「>>42

勿論だとも。あの時食べさせてくれた女将さんは息災だろうか…シミジミ


フィアンマ「勿論だとも。あの時食べさせてくれた女将さんは息災だろうか…」

しみじみとするフィアンマ。
グラーノはというと、本当に甘い物は何でも食べた事があるのだな、と感心するばかり。
アイスクリームの天ぷらは思いつきで作られたものらしく、他の料理に変わり種は無い。

シルビア「ほら、運んだなら席つく」

グラーノ「はーい」

インデックス「フィアンマ、私も作ったんだよ」

くいくい、と袖を引かれ、フィアンマはインデックスを見やる。
彼女は基本的に料理が苦手なはずだ。
故に、テッラとお菓子作りをした際にはテッラがほとんど作っていた。

インデックス「ほら、シベリアロール。…食べた事ある?」

フィアンマ「>>46

ロールケーキなら…


フィアンマ「ロールケーキなら…あるが」

インデックス「…ふふん」

グラーノ「むう…」

何かの勝負をしていたのだろうか、インデックスが胸を張る。
グラーノはちょっぴり悔しそうにしながら、スプーンなどの配膳を終えた。
ちなみにシベリアロールとは三角形のスポンジで餡子とバターをサンドしたお菓子である。

禁書妹「ふぁ…あっ、お菓子だ」

フィアンマ「…菓子が好きなのか」

禁書妹「貴男が熱心に語ってたからかな」

えへへ、と禁書妹が小さく笑む。
どこまでものどかな彼女に、フィアンマも薄い笑みを浮かべた。





夕食を終え。
隣室、もとい、自宅へと、フィアンマ達は帰ってきた。
グラーノは風呂に入る、と浴室に消え。
リビングには、フィアンマとインデックスが残った。

インデックス「美味しかったね」

フィアンマ「…そうだな」

インデックス「……でも、フィアンマは前より食べなくなったね」

フィアンマ「……偶々だ」

インデックス「…死にたいって、思ってる、の?」

フィアンマ「……>>49

>>48
だが一時的な物だ


フィアンマ「……永く生きてるとな、そういう時が来るんだよ」

インデックス「………」

フィアンマ「だが、一時的な物だ。…じきに治まる」

インデックス「……」

インデックスは、手を伸ばし。
フィアンマの右手を、小さな両手で包んだ。

インデックス(癒してあげられたらいいのに)

身体の手当なら、してあげられるかもしれない。
包帯や、薬を使って、いくらでも。
魔術の知識を使って、他者に治療させることだって出来る。
けれど、心はどうにもならない。
インデックスは精神科医ではないし、仮に精神科医だからといって精神病を治せるという保証にはならない。
ロシアで彼に何があったのか、インデックスは知らない。見ていないし、答えてくれないから。
それでもきっと、痛い思いをしたのだろうなあ、と思う。
一生懸命やったのに、沢山痛い思いをしたのに、マイナスが大きくて、だから傷ついている。

インデックス「……」

フィアンマ「……」

インデックス「…ぼろぼろだね」

フィアンマ「…傷の跡など無いと思うが」

インデックス「そうじゃ、なくて」

フィアンマ「……」

インデックス「…フィアンマは、一人で頑張り過ぎなんだよ。だから、…だからもう、ボロボロなの。フィアンマが思っている以上に、フィアンマはぼろぼろになっているんだよ」

インデックスの瞳から、ぽた、と涙が溢れた。
見下しも何も無く、可哀想だ、と思った。
代わってあげたい、とインデックスは心底から思う。

フィアンマ「…何故お前が泣くんだ」

インデックス「…>>52

あなたが気づかないままボロボロになって、いくのが、…う、グス

《今日はここまで。お疲れ様でした》


インデックス「…あなたが気づかないままボロボロになって、いくのが、…う、」

ぐす、と鼻を啜る音が、フィアンマの耳に届く。
別に何かした訳ではないのだが、泣かれるというのは気まずい。
特に、男性にとって少女の涙とは非常に困ってしまうものだ。
だが、彼女の優しさはわかる。少し、嬉しいとも思える。

フィアンマ「……俺様は、大丈夫だよ」

インデックス「大丈夫じゃ、ないもん、いつもそう言って、フィアンマは、」

彼女の言葉を遮るように、フィアンマは囁くように言った。
その場しのぎの言葉ではなく、思っていることだった。

フィアンマ「…男とは、そういう生き物なんだよ。家族や、大切なもの、大事な人間を守る為に戦って、ボロボロになって、いかにマイナスを抑えられるか、……そんな風にしか、生きられないものなんだ」

少なくとも自分はそんな生き物なのだと思う、と彼は呟く。
インデックスは唇を噛み、手を離し、フィアンマに抱きついた。
胸元に顔を埋め、声を堪えながらも涙を零す。
力なく、両拳がフィアンマの肩辺りを叩いた。

インデックス「フィアンマの、ばか」

そんな言葉が聞きたいんじゃない。
そんな風に生きて欲しい訳じゃない。

言葉にならない沢山の想いが、弱い拳という形へ出力される。
その痛みにすらならない感触を受け、フィアンマはインデックスを見つめた。

フィアンマ「……すまん」

と、バスルームのドアが開く。
グラーノはインデックスとフィアンマを見、目を細めた。

グラーノ「………パパ、女の子を泣かせるのは良くないと思う」

フィアンマ「>>55

すまん…


フィアンマ「すまん…」

今日は謝ってばかりだ、と思いつつ、フィアンマは同じように謝罪した。
グラーノはインデックスに近寄り、その様子を窺う。

グラーノ「…インデックス、泣かないで」

インデックス「うぅ、…ひっく…」

フィアンマ「……」

別に暴言を吐いたり暴力を振るって泣かせた訳ではないのだが、居心地が悪い。
だからといって逃げ出す程心が弱い訳でもないので、フィアンマはじっとしていた。
グラーノと共に、優しくインデックスの頭を撫でる。
徐々に泣き止み始めたインデックスに満足すると、グラーノは台所へ立つ。
あまり器用でない分、こうして下準備をしておくことで料理を沢山作れるように、とのことだ。

ようやっと泣き止み、インデックスはしばし、フィアンマの手を握ったままでいた。
一向に離す様子が見られない。

フィアンマ「……動けんのだが」

インデックス「……」

つーん、とほっぺたを膨らませている。

フィアンマ「…何なんだお前は」

インデックス「>>59

インデックスだよ?


インデックス「インデックスだよ?」

フィアンマ「…そういうことではない。手を離さん理由のことだ」

インデックス「離したらまたふらふらどこかに行っちゃうからしばらく離さないもん」

フィアンマ「………」

勝手にしろ、と突き放す気力すら失せ、フィアンマは好きなようにさせてやる。
どうせだからと、インデックスは彼の手の観察を始めた。
形としては一般男性の手より少し細い程度で、特に変異は無いのだが。

インデックス「……」

フィアンマ「……」

じぃ、と見つめられ、気まずさに視線を逸らす。
特別容姿が劣っていると感じたことはないが、優れていると思ったこともないのだ。
インデックスは視線を外し、彼を見上げた。

インデックス「…そういえばもうすぐバレンタインだね」

フィアンマ「聖ヴァレンティヌスがどうかしたのか?」

インデックス「とうまによるとね、バレンタイン…つまり二月十四日は、女の子がお世話になっている、もしくは好きな男の人にチョコレートを渡す日なんだって」

フィアンマが働いている最中に連絡をとったらしい。
日本流バレンタインについて覚えたらしい彼女は、フィアンマを見つめている。

インデックス「フィアンマはチョコレート好き?」

フィアンマ「>>62

>>61

大好きだ!むしろ愛してると言っても過言ではない!


フィアンマ「ふぅ…インデックス、むしろ逆に問いたい」

確かに彼は未だ落ち込んではいる。
鬱気味だし、定期的に死にたいという自殺衝動がその身を襲う事は間違い無い。
だけれども、それは彼の性格や本質まで丸っきり変化させてしまう訳ではない。

インデックス「な、何?」

フィアンマ「何 故 俺 様 が か の Chocolate  を 好 き で は な い か も し れ な い と い う 発 想 に 至 っ た の か 」

フィアンマは両手でインデックスの両手を握る。
そして視線を合わせ、きらきらと、或いはギラギラと光る隻眼でインデックスを見つめる。
眼帯に隠されている方の視力の無い瞳も、しかし光っている事だろう。

フィアンマ「大好きだ! むしろ愛してると言っても過言ではない!」

インデックス「あう、フィアンマ」

不味いことを言ってしまったか、とはいえ元気が出て良かったような、と微妙な気分のインデックス。

フィアンマ「ガトーショコラ、ケーキ、ミルクホワイトビターブラックチョコ、チョコレートマフィン、生チョコ、ザッハトルテ、チョコマドレーヌ、チョコレートケーキ、チョコレートシフォン、チョコレートロール、チョコムース、チョコモンブラン、チョコチーズケーキ、スノーボール、チョコチップクッキー、ココアスティック、チョコメレンゲクッキー、チョコレートスフレ、チョコトリュフ、エクレア、チョコシュークリーム……数え切れん程菓子名がある程に汎用性が高いチョコレートは好きだぞ? そもそも、甘味と呼ばれるもので俺様が嫌いなものなど、普通の食材範囲に限ってはまずありえない」

甘味殺しの情熱は健在であったようだ。
インデックスはもごもごと気圧された後、思い出したように言う。

インデックス「じゃあ、一生懸命頑張って作るかも。何が食べたい?」

フィアンマ「>>65

すごい今更だけど、このフィアンマさんは救世主体質でなかったら間違いなく糖尿病か何かで早く逝ってるww

さっき言ったもの全部だ!
皆も呼べ!今日は喰うぞ!

>>64 考えてもみて欲しい、救世主体質ではないフィアンマさん→辛党になる→健康だと》


フィアンマ「さっき言ったもの全部だ!」

何かが刺激されたらしく、彼のテンションはマックスだった。

フィアンマ「皆も呼べ! 今日は喰うぞ!」

インデックス「今日食べるの!?」

フィアンマ「少し買い出しに出たい」

インデックス「待って待って、甘い物のお話を振った私が悪かったらーっ!」

立ち上がり、外へ出ようとするフィアンマを、インデックスは必死に引き止める。
グラーノも手伝って引き止め、一時間の格闘を経てどうにか勝利した。


インデックス「…落ち着いた?」

フィアンマ「…ああ。躁鬱かもしれんな」

呟き、彼はグラーノの焼いたクッキーを食べている。
先程急ピッチで焼いたものなので、僅かに温かい。
インデックスも同じくいただきながら、リクエストを改めて聞いた。
別にリクエストは無いから、好きなように作って欲しい、とアバウトな答え。

インデックス「…そういえば、フィアンマはいつ頃から甘い物が好きなの?」

フィアンマ「>>68

前世から


フィアンマ「前世から」

インデックス「…十字教徒が前世とか口にするのはマズイと思うんだよ」

フィアンマ「ローマ正教などどうでも良い。…まぁ、随分と昔から好きだから、前世ということでいいだろう。俺様は普通の人間であれば六回は生き直しているのだから」

肩を竦め、フィアンマはクッキーをもぐもぐと食べる。
どれだけ甘いものを食べても(基本敵にあまり食べないが)体に肉がつかないのは、救世主体質の『元に戻ろうとする』特性の為だろう。
インデックスはそれとはまた違い、食べたものはすべて熱量として図書館維持に消費される。
食べなければ、あるいは点滴を打たなければ脳に栄養を取られて死んでしまうのである。
とはいえ、体型が気になるお年頃の為、夜のおやつはここまでにしよう、と手を止めた。
インデックスは彼の体質についてぼんやりと思い返し。
ふと、彼の身体をじろじろと見る。別に性的な意味合いは無いのだが。

フィアンマ「…何だ」

インデックス「…『世界を救うに際して程よい年齢』としてその見目が採用されたんだよね?」

フィアンマ「そうなるな」

彼の容姿は、二十代前半、大きく見積もっても二十代後半だ。
何百年も生きていますと言われて納得出来る程ヨボヨボではないし、身体機能も健康である。
そこで、インデックスは疑問を抱いた。

インデックス「……少年期で止まらなかったのはどうしてかな?」

二十代よりも、十代後半の方が活動するには適しているような。
成長期の少年の体の方が、青年のそれより更に元気であるはずだ、とインデックスは思う。

インデックス「……見た目の年齢って変えられないの?」

フィアンマ「>>71

しわしわヨボヨボの俺様が見たいか?
見せてやろうか(だんだんしわしわになっていく)
インデックス「やめて!お願いだからやめて!私が悪かったんだよ!」

十代の身体では酒、煙草類の接種がむずかしかったり成長期の弱い身体だったりするからな…

やろうと思えば可能だとは思うが

>>70を想像して和むと共に腹筋がやられた》


フィアンマ「十代の身体では酒、煙草類の接種が難しかったり成長期の弱い身体だったりするからな…」

成長期とは即ち、成長する幅があるということ。
伸びしろの分だけ未熟であるということは、弱さである。

フィアンマ「やろうと思えば可能だとは思うが」

しかしながら、メリットを感じられない。
老いては身体機能が下がるのみ。
幼くしては他者に手間をかけさせるだけ。
今位が調度良い、とフィアンマは思う。
彼自身がそう思っているからこそ、この見目がチョイスされたのかもしれない。

インデックス「フィアンマのちっちゃい頃にちょっと興味が湧いただけなんだよ。あんまり気にしないで」

フィアンマ「其の辺に居る普通の子供だったぞ、一見な」

インデックス「…昔からこんな感じの口調だったの?」

フィアンマ「いやあ、もう少し口汚かったよ。若かったからな」

そんな話をしていると、不意にインデックスが欠伸を漏らす。
フィアンマはクッキーの最後の一粒を食べきり、皿を洗い場へ片付けた。

フィアンマ「もう夜だ。寝ろ」

インデックス「うん。一緒に寝よう、グラーノ」

グラーノ「うん」

インデックスとグラーノは、ベッドへと移動する。
ちなみにクッキーを焼いている間にフィアンマもインデックスも入浴は済ませたので、もういつでも眠れる状況だった。
フィアンマは二人がベッドに入ったことを見届けて、部屋の電気を消す。
そして自分の部屋に移動すると、上条に電話をした。

フィアンマ「無事戻れたと聞いたが。…怪我はしていないか?」

上条『>>75


上条『うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとね、お兄ちゃん』

フィアンマ「…そうか。なら良い」

上条『……お兄ちゃんは、…どうなんだよ』

フィアンマ「…俺様も、元気だよ」

上条『…嘘つくなよ』

フィアンマ「……」

上条『……絶対、死んじゃダメだからな。それだけは許さねえぞ』

フィアンマ「…死なない体だという話は、前に実演して見聞きさせたな?」

上条『そういう問題じゃなくて。……大体、俺は連れて行ってくれなかったことも恨んでるんだぜ』

不満げな声。
一方通行によって連れ返されたのが不満だったらしい。
フィアンマは、小さくため息を漏らす。

フィアンマ「……言っただろう。巻き込みたくないと。俺様と違って、お前は兵器で手足をもがれれば出血多量で死ぬ体なんだ」

上条『>>78

お兄ちゃんが辛いときにそばに居てあげられない自分が不甲斐ないよ…


上条『お兄ちゃんが辛いときにそばに居てあげられない自分が不甲斐ないよ…』

フィアンマ「…ロシアまで来てくれたじゃないか」

上条『あんなのほんの一端だろ』

フィアンマ「そうか? 少なくとも、俺様はあの時助かったと思ったよ」

上条『……ならいいけど』

フィアンマ「…俺様は当麻が無事ならそれで良い」

上条『俺が良くないんだ』

フィアンマ「我が儘を言うな、…別に何も求めてはいない。ただ、無事で居てくれればいい」

笑って、生きてさえくれれば。

五和を喪って間もない現在だからこそ、尚更強く思う。
フィアンマの言葉に、上条はしばしむすくれた後。
ハーレムの一人に話しかけられたのだろう、またね、と電話を切った。
通話を終え、フィアンマは続いて、通信用霊装を使用する。
かける先は、後方のアックアだった。

フィアンマ「……出ないな」

なかなか出ない。
もうしばらく待ってみると、ようやく返答があった。

フィアンマ「…自責感に苛まれてはいないだろうな?」

アックア『>>81

すまん…本当にすまなかった…我が輩がいながら…


アックア『すまん…本当にすまなかった…我が輩が居ながら…』

フィアンマ「……お前が謝る事ではない。敵が姑息且つ強大だったのだろう。お前の慢心とは思わんさ」

アックア『……戦闘中の判断を間違った私のミスである』

フィアンマ「……お前はよくやっただろう。治療跡が多かったと報告は受けているが」

アックア『如何に取り組もうと結果が良いものでなければ、』

フィアンマ「意味が無い、か。……そうだな、…一生懸命頑張りました、で褒められるのは子供や学生の領分だ」

だからといって、責めようとは思わない。
アックアが勝てない相手だっただけだ。
それは非常に稀で、天文学的確率の不幸。
普通の敵相手なら、アックアは粉砕出来た筈なのだ。

五和が襲われた場所に、一人しか駆けつけられなかったこと。
アックアと相性の悪い敵が殺人実行者であったこと。
戦闘中のコンマ一秒の不運が明暗を分けたこと。

全てが確率と不運で決定された、仕方のないことだ。

アックア『貴様から彼女の身柄を請け負っておきながら、…私は失敗した』

フィアンマ「誰だって、失敗の一つや二つあるだろう」

アックア『………』

フィアンマ「…結果はこのようなことになってしまったが、…俺様は、お前に五和を託したその判断を間違ったとは思っていない」

信頼、と呼んでも良いかもしれない。
信用に、少しだけ依存心の色合いの乗ったその感情は。

フィアンマ「…お前はよくやった。努力した。だから、責任を感じる必要はない。……五和を守ってくれて、…礼を言う」

アックア『>>84

そう言ってくれると少し気持ちが楽になる…
今度改めてお詫びに行くのである

《飯行ってきます》


アックア『そう言ってくれると、少し気持ちが楽になる…』

任務に失敗した、というだけなら、彼もここまで落ち込みはしない。
なまじ五和という少女を知っているだけに、苦しんだのだ。
フィアンマ程とはいかずとも、自らに対する失望に項垂れた。

アックア『今度改めてお詫びに行くのである』

フィアンマ「ああ、…まあ、その前に俺様がそちらへ行くと思うが」

後処理が終わったからといって、仕事がなくなる訳ではない。
新しいローマ教皇の相談役として仕事をしなければならないだろう。
フィアンマはアックアとの通信を終え、ベッドへ倒れこむ。
仰向けになり、天井を見上げ、ぼんやりとした。

フィアンマ「……」

欲張りだったから、神罰が下ったのかもしれない。
そんな風に神へ責任を押し付けて、目を閉じる。




二月八日。
神裂火織は、天草式十字凄教の人間としてではなく、イギリス清教の人間として働いていた。
正確には、同僚の少年と共に書類整理を行っている訳なのだが。

神裂「……」

ステイル「…何だか思いつめた顔をしているね」

神裂「…日本流のバレンタインというものがありまして」

ステイル「ああ、国によって慣習は変わるものだから…」

神裂「…その、…し、…お慕いしている殿方が、居て、その、…どのようなチョコレート菓子を作ろうか、と」

ステイル「…神裂、君はお菓子作りは得意なのかい?」

神裂「>>87

>>86

ですからチョコの代わりに和菓子をと思ってるのですが おかしいですかね?

《若い頃は甘い味がするからと昆虫まで噛んだ甘味殺しなら心配は要らない》



神裂「神裂火織18才、恥ずかしながら和食以外作れませんッッ!」

うぐぐ、と悔しそうにする神裂。
長年共に働いてきた同僚であるステイルは、しんみりとしていた。
書類を扱っている為、噛みタバコを堪能中である。

神裂「ですから、チョコの代わりに和菓子を…と思っているのですが、おかしいですかね?」

ステイル「僕は日本の慣習には詳しくないから何とも言えないが、…そうだね、チョコレートという条件をクリアするのなら、和菓子にしてもチョコレート成分が無ければいけないと思うよ」

神裂「チョコレート成分、ですか…」

神裂(生チョコ大福…などでしょうか?)

書類が片付く。
綺麗にトントンとまとめ、本棚へしまう。
ステイルは噛みタバコを追加しながら、神裂の様子を眺めた。
そわそわとしていて、正に恋する乙女といった様子だ。
五和を喪い、いたく落ち込んでいた頃に比べればだいぶ元気になったと思う。

ステイル(そういえば、第三次世界大戦を裏から手を引いていた魔神を倒した男だったか)

そんな噂を聞いた、とステイルは思い返す。
会ってみたいな、と興味も湧いた。
普段はそんなことは思わないのだが。

『私の管理者は、…フィアンマはね、とっても優しくて格好良い人なんだよ。貴方と同じように、赤い髪をしているの』

一度、共に仕事をした小さく白い修道女が、そう言い、微笑んでいたから。

ステイル「……その、君が慕っている男に会ってみたいんだが、断られるかな?」

神裂「>>91

>>91

ただし、その後……大変なことになるとインデックスが、


神裂「断られはしないと思いますよ」

そこまで気のキツい男性ではない、と神裂は思う。
自分が夜分訪問した際には少々の警戒はあれど、家に入れてくれた程なのだから。

神裂「……多分、美味しい甘味を持っていけば、家の前に立っているだけで招き入れられると思います」

ステイル「甘味、か…」

ステイル(つまり、余程甘い物が好きなのかな)

神裂「ただし、その後……大変なことになるとインデックスが、」

ステイル「インデックス、というのはあの白い服の修道女かい?」

神裂「ええ。…恐らく語らせなければ大丈夫でしょう、……確か甘味にかける情熱と説教がとてつもないだとか」

ステイル「味にうるさいのなら、気をつけないといけないね」

神裂「いえ、余程のゲテモノでない限りはお召し上がりになるかと」

甘いジャムでも喜ぶかもしれない、と神裂は言う。
仕事が終わった為、頭の中では生チョコ大福のレシピが止めどもなく渦巻いていた。




同日、昼下がり。
御坂美琴は悩んでいた。
何に悩んでいるかというと、いかにしてチョコ菓子を作り、フィアンマへ届けるかということである。

美琴「ううー…」

送料はだいぶかかってしまうが、その辺りは無視出来る程の財力が自分にはある。
しかしながら、郵送で送ってしまうというのはいかがなものか。
どうせなら手渡しで、そう、『お返しに今からデートを』なんて言われたいのである。

美琴「うううー……何で私は日本人なのよ…」

黒子「…お姉様は先程からゴロゴロとしながら何を仰ってますの…?」

美琴「……はぁ」

黒子「何事かに心を痛めていらっしゃるのならこの黒子、お悩み解決の為に東西奔走しますのよ?」

美琴「………」

美琴(でも黒子に言ったら大事になるじゃない?)

黒子「…大覇星祭の際にお会いした方なら私、多少は認めますのよ」

ごにょごにょ、と呟く黒子。
彼女は美琴に送られたメールを時々(そう、偶々)見てしまうのだが、その文章からフィアンマの人格を理解している。
その上で、自らが敬愛するお姉様を預けるに足る人格性のきちんとした男性だと認め始めているようだ。

美琴「……、…>>94

ま、まさか黒子まであの人を狙うなんて……もう、躊躇してる場合じゃないわ! 今すぐ、チョコを作るわよ! 

それだけじゃない。第三位の頭脳で、一気にゴールインする方法を……ゴニョゴニョ


美琴「……、…ま、まさか黒子まであの人を狙うなんて……もう、躊躇してる場合じゃないわ! 今すぐ、チョコを作るわよ!」

がたっ、と立ち上がる美琴。
精神が高ぶった為か、前髪からパチンッ、と紫電が鳴る。
その表情を見て、黒子はがっくりと項垂れた。

黒子(別に狙ってはおりませんの、……ああ、おいたわしやお姉様、完璧に恋する乙女のおかんばせをなさって…)

それもまた愛らしいとはいえ、とショックを受ける黒子。
美琴はそんな後輩の表情にも気がつかず、部屋の中をうろうろとしながら呟く。 

美琴「それだけじゃない。第三位の頭脳で、一気にゴールインする方法を……ゴニョゴニョ」

黒子「……」

美琴「あの白い修道女にメイドの女に……に、…ううう」

何はともあれお菓子作りだ、と美琴は制服の上から指定のコートを羽織る。
ぱぱっと前でボタンを締め、彼女は早々に部屋を出て行った。
やれやれとため息をつきつつ、美琴のパジャマを片付けてあげるしっかり者、白井黒子なのであった。



そうして。
美琴は、無事ショッピングモールまでやって来た。
バレンタインフェアということで、沢山の既製品チョコ、簡単手作りキット、本格的なお菓子の材料が所狭しと並べられている。

美琴「…あれ? アンタ、」

上条「ん? よお、…えーっと…御坂さん?」

美琴「そうそう、……男なのに、チョコ?」

上条「>>97

御世話になった人にあげるんだよ。
今年はガトーショコラにしようかと


上条「御世話になった人にあげるんだよ。今年はガトーショコラにしようかと」

担任である小萌先生への差し入れ。
ハーレムの皆からは貰う事として。
残り一つは義理として、フィアンマに贈る物。
一から作るよりもキットで作った方が長持ちするだろうか、と上条は首を傾げる。

上条「んー…」

美琴「…ねえ」

上条「ん?」

美琴「アンタはその、フィアンマさんに作るの?」

上条「そのつもりだけど。既製品なんかいつでも買えるだろうしな」

慣れた様子で、上条はカゴにチョコなどを入れていく。
キットを手に悩み、再び首を傾げ。
そんな上条の様子を見、美琴はおずおずと問いかける。

美琴「…あの人、チョコのお菓子なら一番好きなのって何?」

上条「>>100

チョコビ


上条「チョコビ」

美琴「…チョコビ?」

上条「チョコビスケットな。まあ、基本的に何でも好きだと思うぞ? 多少下手でも笑顔で食べてくれるし」

無類の甘党の前に甘い物の好き嫌いなど無いだろう、と上条は思う。
結局全て手作りにすると決めたらしく、キットは元の棚へと戻された。

上条「お前も作んの?」

美琴「…ま、御世話になったから、そう、義理よ、義理」

美琴(本当は本命だけど)

上条「頑張れよー」

のんびりと言い、上条は人ごみに紛れてしまう。
チョコビスケットを作ろう、と美琴は堅く決意した。

美琴(ビスケットから焼こう。プレーンビスケットをチョコでコーティングして…)

チョコをかけた後に冷凍庫に入れると良いということを聞いたような。
そう思いつつ、美琴は材料コーナーを見て回る。
と、後ろから声をかけられた。

黒子「やー、っと見つけましたのよ、お姉様」

美琴「くっ、黒子!?」

黒子「お姉さまは早とちりが過ぎますわ。私はいつでもお姉様一筋ですの」

しれっと告白しつつ、黒子は続ける。

黒子「お菓子作り、お手伝いしますわ。材料の荷物持ちもしますの」

美琴「……>>103


美琴「……ありがとね黒子、でもこれは私だけで頑張ってみたいの。どうしてもダメな時は黒子、手伝いよろしくね?」

黒子「お姉様…」

美琴「…まあ、帰りは空間移動してくれると助かるけどね」

黒子「ではそこまではお手伝いさせていただきますの。お菓子作りは見守りましてよ」

のんびりと笑む美琴に、愛らしく笑む黒子。
少女二人の周囲の雰囲気に、花が飛んでいるようだった。
美琴は材料コーナーを改めて眺め、厳密に選ぶ。
良い小麦粉と良い砂糖を使って、美味しいチョコビスケットを作ってあげたかった。



二月十日。
男は追い出されていた。
正確には、フィアンマがオッレルス宅にお邪魔し、シルビアがフィアンマ宅へお菓子作り指導へ行った訳である。
指導とは名ばかり、実際にはお菓子作りのお手伝い、といったところが実情だろうが。

フィアンマ「…すまないな」

オッレルス「いや、構わないよ」

フィアンマ「…大体、作っているところを見せずとも、後々冷蔵庫を覗けば一発だと思うがね」

オッレルス「恐らく、冷蔵庫の中も見せないようにするだろう。サプライズ精神満点で可愛いじゃないか?」

フィアンマ「……」

そんな会話をしている傍ら。
フィアンマ宅からは、危ないインデックス、という声やら、どんがらがっしゃん、という音。
本当に大丈夫なのか、とフィアンマは心配でいっぱいだった。

フィアンマ「…そういえば、材料の量だけ見たのだが」

オッレルス「うん?」

フィアンマ「恐らくシルビアはお前の分も作るぞ。良かったな」

オッレルス「>>106


オッレルス「これで本命なら万々歳なんだけどね」

ふふ、と笑う彼のまとう空気は澱んでいる。
何だかものすごく卑屈だった。

フィアンマ「…オッレルス?」

オッレルス「ちなみに、もし彼女が君に本命を渡した場合は…すまないが、旅に出た俺の事は探さないでもらえると助かる」

フィアンマ「…流石にそれはないだろう。大体、俺様はさほどシルビアと会話もしていないしな」

オッレルス「身近に比較対象が居ると、女性は比較して考えるものさ。冷静に」

フィアンマ「……お前にも俺様にも恐らく義理が来るか、お前にだけチョコが来るさ」

フィアンマは仕方なしにオッレルスを慰める。
嫌な結果しか思い浮かべられないのか、彼はがっくりと項垂れていた。
恋愛事に関してはどうにもスマートに出来ないらしい。

オッレルスが落ち込んでいる間に、フィアンマは聞き耳を立ててみることにした。



『うん、大体美味しそうに出来たかも…』
『つまみ食いしちゃダメだよ、ってあああ!』
『…はー』
『もう…あ、シルビアさんはオッレルスさんに作ってるんですか?』
『ん? まあね』
『…本命ですか? 何ならメッセージカードもあるんですよ? ふふふふ』
『シルビアはたまには素直になるべきかも』
>>109


『そうよね…たまには素直になってみようかしら』
『チョコペンで描きます?』
『それも悪くない、か』
『シルビアの字は綺麗だね!』
『…そりゃどーも』
『ミサカも字の練習しよう…』

フィアンマ「……」

フィアンマ(大丈夫そうじゃないか)

敢えてオッレルスには伝えないでおこう。
聞き耳を立てるのをやめ、フィアンマはテーブル上のおやつに手を伸ばす。
炒ったアーモンドに砂糖がけしてある甘いお菓子だ。
幸せそうにかりかりとかじり、フィアンマは欠伸を噛み殺す。




二月十四日。
フィアンマは、昼近くに朝から甘い匂いと共に起こされた。

グラーノ・インデックス「「Buon San Valentino!」」

はい、と手渡された小包二つ。
フィアンマは起き上がって素直に受け取り、丁寧に開けてみる事にした。

フィアンマ「…>>112>>113か?」

チョコクッキー

ガトーショコラ


フィアンマ「…チョコクッキーとガトーショコラか?」

インデックス「うん。チョコクッキーは私が作って」

グラーノ「ガトーショコラは私が作ったんだよ」

インデックス「冷蔵庫にはチョコマフィンがあるんだよ。シルビアから、義理チョコマフィンです、だって」

フィアンマ「……そうか。ありがとう」

礼を言い、フィアンマはインデックスとグラーノの頭を撫でる。
少女達ははにかむと、部屋を出、台所へと移動した。
後で大事に食べよう、とフィアンマは包装をある程度元に戻す。
そうして部屋にしまったところで、携帯電話が震えた。

-----------------
From:御坂美琴
Title:(無題)
-----------------
ミラノに来てるの
ですが、今から会
えませんか? 

よろしければ、バ
レンタインチョコ
レートをお渡しし
たくて…(´∀`*)
-----------------

チョコを渡しにわざわざ来たのだろうか、とフィアンマは首を傾げる。
部屋から出つつ返信をし、グラーノが作った朝食をひとまずいただくことにした。

グラーノ「ねえねえパパ」

フィアンマ「んー?」

グラーノ「ミサカネットワークからね、パパにチョコ作ったんだけどこれから9969個チョコ菓子届けて大丈夫ですか、って連絡が来てるよ」

フィアンマ「>>116

…よし!こい!


フィアンマ「…よし! こい!」

インデックス「私も食べるのお手伝いするんだよ」

フィアンマ「そうだな、少し任せるかもしれん」

何だかとんでもない量のチョコレートである。
フィアンマは少しだけ迷った後、覚悟を決めて頷いた。
甘い物からは逃れられない星の下に、彼は生きている。

グラーノ「じゃあミサカ受け取っておくね」

フィアンマ「中身によっては冷蔵庫へ入れておいてくれ」

インデックス「んぐ、出かけるの?」

フィアンマ「ああ、少し用があってな」

インデックス「…女の子と?」

フィアンマ「性別は関係無いだろう」

朝食を食べ終え、フィアンマは立ち上がる。
眠い目をこすることなく身支度を済ませ、グラーノ達に留守を任せ、外へ出た。



美琴との待ち合わせにはまだまだ時間はあるし、場所は近い。
ゆっくりと歩いて向かっていると、一人の女に捕まった。

フィアンマ「何だ」

ヴェント「…別に、……ちょっと顔貸しなさいよ」

フィアンマ「待ち合わせている相手が居るのだが。手短に済ませろ。…何の用だ」

ヴェント「>>119

…はい、チョコレートぎ、義理だけど一応手作りだから!


ヴェント「…はい、チョコレート。ぎ、義理だけど一応手作りだから!」

フィアンマ「……チョコレート、」

ヴェント「日本流のバレンタイン、…に合わせたんだよ。アンタ甘い物なら何でもイケる口でしょ」

フィアンマ「…それはそうだが。………手作りか」

ヴェント「義理だって言ってんだから四の五の言わず受け取りなさい」

フィアンマ「……感謝する」

意外な相手からの意外な贈り物を紙袋ごと受け取り。
フィアンマが頷き、そう述べたのを聞き、ヴェントは彼に背を向けた。

ヴェント「………めたから」

フィアンマ「ん?」

首を傾げたところで、彼女は雑踏へ紛れて消える。
何を言おうとしていたのかはわからないが、きっと重大なことではないだろう。
フィアンマは再び待ち合わせ場所へ向かう。
三十分程早いが、ゆっくり待っていれば来るだろう。



予定の十分前に、美琴はやって来た。
慎重に、何やら紙袋を揺さぶらないようにして持っている。

美琴「贈れてすみません…はい、どうぞ」

フィアンマ「ああ、ありがとう」

紙袋を受け取る。
かさり、という音とも、重み。

フィアンマ(…クッキー、或いはビスケット、か?)

美琴「>>123

えっと、チョコマフィンと、チョコマカロンです…口に合うといいんですけど…


美琴「えっと、チョコマフィンと、チョコマカロンです…口に合うといいんですけど…」

チョコビスケットを作ろうとした美琴だったが、実を言うと失敗したのだ。
市販のビスケットらしいカリカリ感を出そうとすれば焦げてしまい。
反対に柔らかめのものを作ろうとすれば生焼けだったり、綺麗なまん丸にならなかったり。
完璧主義的な部分のある美琴は、そのいびつな丸型のチョコビスケットでは満足しなかった。
納得のいかないものを他者にはあげられない。ましてや、好きな男には、絶対に。

フィアンマ(なるほど、マカロンの音か)

かさりという音に結論を出したフィアンマは、こくりと頷く。

フィアンマ「有り難く頂く事にする。感想はメールで送るが、良いか?」

美琴「はっ、はい! 大丈夫です!」

フィアンマ「…さて、ホワイトデーとやらは来月なのだが、お前にそう何度も学園都市から出てこいと言うつもりはない」

美琴「……」

ドキドキと胸を高鳴らせる美琴。

フィアンマ「…という訳で、何かお前の望むものでお返しをするとしよう。欲しい物、行きたい場所…何かあるか? 遠慮はいらない。既にこうして物を贈っているのだから、お返しに何をもらっても怯む必要は無い」

美琴(…えっと…うーん…)

美琴「>>126





>>126のコンマ一桁で美琴の行動決定


0〜2 チョコに感謝の手紙付き

3〜5 チョコにラブレター付き

6.7 マカロンに『好きです』の文字

8.9 特に無し

8、9は一日デートとかはダメだったのか


>>125 一日デートはもう決定してるので…


安価なら安価下

どうだ

《今日はここまで。フィアンマさんマジシングルパパンマ。お疲れ様でした。美琴の台詞安価下》


———午前八時

フィアンマ「…」むくり

グラーノ「…」むにゃ

インデックス「…」すやー


———午前九時


フィアンマ「……」もぐもぐ

グラーノ「パパおはよ…」

インデックス「おはよう、フィアンマ」のびー

フィアンマ「ん、…朝食を摂れ」ぐでー


———正午


フィアンマ「……」もぐもぐ

グラーノ「んー」もぐもぐ

インデックス「ふぁあ…」もぐもぐ


———午後二時


グラーノ「パパ、おやつ作るね」

フィアンマ「ああ。好きな物を作れば良い」

グラーノ「はーい」

インデックス「今日は何かな?」

フィアンマ「さっぱりしたものだと嬉しいのだが」

グラーノ(今日はさっぱりしたもの……ミサカ覚えた、大丈夫。ゼリーにしようかな)いそいそ

———午後九時


インデックス「んん…ちょっと眠いかも」

グラーノ「ミサカはもう寝たい…」うとうと

フィアンマ「諸々の片付けならやっておくから先に寝ていろ」

グラーノ「はぁい…」

インデックス「私手伝うん、だよ…」うとうと

フィアンマ「……寝ろ」ぐい

———午前0時


フィアンマ(そろそろ寝るか)ちら

グラーノ「んむぅ…」むにゃ

インデックス「おなか…いっぱいなんらよ……」むにゃ

フィアンマ「………、…おやすみ」そっ

グラーノ「んぅ」もそもそ

インデックス「ふふ…」もぞもぞ

フィアンマ「……」なでなで ぱたんっ

乙昼前と昼以降は一体何を…

これならフィアンマさんに気を引けるよ ニッコリ

>>127  23:39:34.8『7』 結果:マカロンに『好きです』の文字    >>129 寝たり駄弁ったりだよ(震え声) >>130 見られなかった…oh...》


美琴「えーっと、その、あ、アクセサリーを買ってくれますか?」

どうせなら、形に残るものを。
そんなことを思い、美琴はおずおずとそう要求してみる。

美琴(ゆ、ゆゆっゆ、指輪、とか)

もし貰ったら左手薬指に着けちゃおう、などと考えている美琴。
もじつく彼女に、フィアンマはこくりと頷いた。
幸いにして手持ちはだいぶある。銀行に寄る必要は無さそうだ。

フィアンマ「アクセサリーか。分かった」

フィアンマは右手に紙袋をまとめ持ち、美琴に左手を差し出す。

美琴(あ、やっぱりモテるんだ、紙袋…私のを含めて二個…いやいや、あの子のかもしれないし)

現在はフィアンマの義娘となっている個体を思いだし、美琴は自分を納得させ(実際にはヴェントのものだ)。
そして、差し出された左手にきょとん、と首を傾げた。

美琴「…はい?」

フィアンマ「デートは手を繋ぐものだと思うのだが。…まぁ、必ずしもそうとは限らないがね」

美琴「>>134

…ふぁいポケー


美琴「…ふぁい」

ぽけー、と呆ける美琴。
はっ、とどうにか自分を現実に戻し、彼女は控えめにフィアンマの手を握る。

美琴(…大きな手)

常盤台中学はお嬢様学校だ。
故に、美琴は男性との接触が少ない。
その為、こんな些細なことでも一々動揺するのだった。
女子中学生に贈るに適したアクセサリーの値段は幾ら位なのだろう、とフィアンマは思う。
思い、考え、悩みつつてくてくと歩いて行く。
美琴に歩調を合わせ、自分の常のスピードよりもやや遅く。

美琴(…て、手を繋いでくれるってことは、少しは意識してくれてる…のかしら。デートって言ってたし)

口ごもりながら歩く美琴。
握っているのとは反対の手で、そわそわと前髪を耳にかける。
そんな二人を、おずおずとした声が呼び止めた。

禁書妹「フィアンマ…、フィアンマ伯父さん」

フィアンマ「ん?」

ちら、と視線を向けられる。
長い銀髪に黒いタイツ、パステルピンクのスカートと白いコートという出で立ちの幼い少女。

美琴「…アンタこの間の」

禁書妹「…恋人?」

フィアンマ「いや、友人だ。で、何か用か?」

禁書妹「バレンタインだからね、お父さんから聞いてお菓子作ってきたんだよ」

そっと差し出される紙袋。
フィアンマは受け取りつつ、首を傾げた。

フィアンマ「ありがとう。…一人で出歩いていて大丈夫なのか?」

禁書妹「>>137

うん、お父さんが歩く教会と同じ効果のある
霊装くれたから

夜には再開します

【悲報】疲れちゃったフィアンマさんが色々と忘れている模様【歳が歳】

《今確認したらフィアンマさん霊装なんてあげてない、ごめんなさいうわあ誤報した救済される(怯え)》


禁書妹「うん、お父さんが『歩く教会』と同じ効果のある霊装くれたから」

美琴(…歩く教会? レイソウ?)

フィアンマ「『歩く教会』を?」

禁書妹「北欧基準だけどね、だって」

フィアンマ「…まあ、そうだろうな」

禁書妹「デートの邪魔してごめんね。じゃあ失礼するかも」

ばいばい、と愛らしく手を振り、彼女は人ごみに消えていく。
美琴の視線を受け、フィアンマは肩をすくめた。

フィアンマ「…インデックスの妹だ」

美琴「妹、ですか」

てっきり本人だと思っていた、と美琴は言葉に出さないまでも、思う。


そうして。
フィアンマと美琴は手を繋いだままに、アクセサリー店へとやってきた。
ショッピングモール内、店が立ち並ぶ中の一つ。
中に入り、存外広い店内にして、美琴はきょろきょろと辺りを見回した。

フィアンマ「……この中から好きなものを一つ選んでくれて良い。値段によっては銀行から一度金を引き出す為に待っていてもらうことになるが」

美琴「はい」

返事をしながら、彼女は周囲をぐるりと見回す。
煌びやかな細工のネックレス、光り輝くブローチ、シンプルながらもおしゃれな指輪。
数え切れない程の装飾品が、彼女の前には並べられている。
ガラスケース越しに眺め、美琴はそわそわと考える。

何をもらおう。

美琴「>>142

小さな月と十字架が合わさった髪留め


美琴「この、小さな月と十字架が合わさった髪留めをいただけませんか?」

美琴(指輪とかはお付き合いがスタートしてから貰えば良いのよ。うんうん)

控えめな問いかけ、及び要求に、フィアンマは頷いて。
美琴が指差したガラスケース越し、その髪留めを見た。

小さな月。
添えられた十字架。
十字架の中央に埋められたブルーサファイア。

フィアンマ(青、月、十字。……後方の象徴)

意図せずして霊装になっているな、とフィアンマは思う。
思っただけで、だからどうという訳でもないのだが。
もはや職業病だな、と思いつつ、フィアンマは店員を呼ぶ。
本物の宝石があしらわれているだけあって、かなり高価なものだ。

美琴「すみません、お値段が…」

フィアンマ「バレンタインのチョコレートは三倍返し、だったか。それに沿っているだろう。問題は無いな」

美琴「…ありがとうございます」

えへへ、とはにかむ美琴。
フィアンマは会計をすると共に宝石箱を受け取り、美琴へ差し出した。
美琴はドキドキとしつつ宝石箱を撫でる。

フィアンマ「……着けんのか」

美琴「>>145

つけてくれませんか?


美琴「着けて、くれませんか?」

店の外へ出る。
人通りはそれなりに少なかった。
美琴は宝石箱をぱかりと開け、フィアンマに差し出す。
彼は髪留めを手にし、美琴の前髪を丁寧に留める。
グラーノの髪を数度弄ってやったこともあり、手馴れていた。

美琴「…っ、」

当然、丁寧に着けようとすれば、顔の距離が近づく。
バチンバチン、と体から紫電を迸らせながら、美琴は深呼吸をする。
息を吸い込む度に、フィアンマが軽く着けている甘い香水の匂いがした。

美琴(…リンゴ、かな)

良い匂いだ、と美琴は思う。
と、顔が離れた。
美琴はそっと宝石箱をポケットへとしまう。

美琴「…ありがとうございます」

フィアンマ「ああ、…似合っているよ」

美琴「っっ、…あり、あ、りがとう、ございますっ」

フィアンマ「…他に、行きたい場所はあるか? イタリア国内なら何処でも良いが」

美琴「>>148

>>147

あとはフィアンマさんのお任せでお願いします


美琴「じゃあ、カステル・デル・モンテとか、イタリア・ドロミテ渓谷に……。後はフィアンマさんのお任せでお願いします」

フィアンマ「分かった」

フィアンマは美琴の手を引き、歩き始める。
女とのデートはやはり疲れるものだな、と内心でぼんやりと思いながら。



文化遺産、カステル・デル・モンテ。
美琴はその中にて周囲を興味深そうに眺めている。
宗教に興味はないが、こうした文化物は別だ。

美琴「平面図拝見しましたけど、素晴らしいですよね。黄金比にそってきっちり建築されていて」

フィアンマ「客をもてなす為であり、軍事要塞ではないからな。造形にこだわる必要があったのだろう」

美琴「なるほど……」

フィアンマ「…今回も短期留学か?」

美琴「>>151

>>150

住むところがまだ決まってないんですけど、
その、フィアンマさんのお宅にステイさせては
いただけないでしょうか!


美琴「似たようなものです」

無理を言って留学させてもらったのだ。
当然寮監にはこってり絞られたが、ベタ褒めで勘弁してもらった。

美琴「暫くはこっちにいますよ! …だから、色々してくれると嬉しいかな、って…」

フィアンマ「…する、とは?」

美琴「えっ、あっ、その、ほら、生活の手引きとか、です」

美琴(何言ってるんだろ私。でもよく言った私っ!)

にこにこと日本人特有の愛想笑いで色々と誤魔化す美琴。
当麻も困るとこんな笑顔を浮かべるな、とフィアンマは思う。
美琴は策略が浮かんだらしく、おずおずと提案、もといお願いした。

美琴「住むところがまだ決まってないんですけど、その、フィアンマさんのお宅にステイさせてはいただけないでしょうか!」

フィアンマ「…狭いぞ? 一度来たことはあるだろうが」

美琴「大丈夫です、床があれば寝られますから」

とんでもないことを言う御坂美琴14歳、割と必死である。
同じ歳の頃の女の子二人を抱えるフィアンマは、後一人増えても問題無いか、と考え。
インデックスと喧嘩になりそうだ、とも思った。

美琴「今回はあんまり奨学金が下りなくて…ホテル代がバカにならないんです」

もごもごとそんなことを付け加えてみる美琴。
フィアンマはだいぶ悩んだ末に、わかった、と頷いた。

フィアンマ「ただ、少し部屋の掃除をしてから迎えたい。一日だけどこかのホテルに宿泊してくれ」

美琴「! はいっ」




イタリア・ドロミテ渓谷、ガリバルディ通り、コルソ・コモ通り。
夕方になり、フィアンマと美琴は一旦別れた。
部屋掃除をして術式による部屋の拡張をして、と考え事をしながら帰宅すると。
家の前に、二人、長身の男女が立っていた。

一人は神裂火織。フィアンマのよく知る女魔術師にして、極東の聖人。
もう一人は背丈の高い少年。落ち着かないのか、タバコを吸っている。

フィアンマ「……どういう状況かさっぱりわからんのだが。イギリス清教で何か問題でも?」

神裂「>>154

ステイル「>>156

↑+僕は僕でこいつに用があるんだから

さて魔術師、インデックスが二人いるのはどういうことかな?


神裂「いえ…あの…その…」

もじもじとし、口ごもる神裂。
その手には何やら小さな布包み。
そんな彼女を見やり、ステイルはタバコの息を吐き出し、フィアンマを見やった。
鋭い視線。必要さえあれば、人を殺せる瞳だ。

ステイル「…神裂、やるなら早くしろ。でなければ帰れ。僕は僕でこいつに用があるんだから」

神裂「しかし、ですね、その、」

ステイル「さて魔術師、インデックスが二人いるのはどういうことかな?」

フィアンマ「何故お前がインデックスをよく知っているのかは不明だが、…ああ、一度仕事をしたことがあると言っていたのはお前か」

ステイル「質問に答えてもらおう」

フィアンマ「答える義務は無いな」

ギロ、とステイルはフィアンマを睨む。
彼はまだ十四歳、まだまだ若い少年だ。

フィアンマ「…妹だ。インデックスの」

ステイル「妹…?」

神裂「妹君、ですか…」

フィアンマ「そういうことで良いだろう。という訳で要件を…いや、良い、中に入れ」

とにかく寒いから俺様は家に戻りたい。

そんな俺様ルールを発動し、フィアンマじゃ二人を家の中へと追い立てる。

フィアンマ「そうそう、お前はタバコを消せ」

ステイル「……、」

フィアンマ「……消せ」

彼は自分の為に怒る時、さほど威圧感は出さない。
しかしながら、他者の為に怒る時は別だ。
ステイルは仕方なく火を消し、噛みタバコへ切り替えることにした。

グラーノ「パパお帰りー、チョコ来たよ。あ、神裂さん!」

神裂「お久しぶりです」

インデックス「よくきたね、かおり。あ、ステイルも来てくれたの? もしお仕事じゃないのならチェスに付き合ってくれると嬉しいな」

ステイル「いや、僕は…」

インデックス「大丈夫、ルールを覚えるのは案外簡単なんだから」

笑みを浮かべ、純粋にステイルを誘うインデックス。
フィアンマは上着を壁にかけ、寒さに眉を寄せた。
グラーノは自分が飲んでいた温かいココアを躊躇なく彼に差し出す。
フィアンマは礼と共に受け取り啜り、神裂を見やった。

フィアンマ「…その包みは?」

神裂「>>159

は、ハッピーバレンタイン!


神裂「は、ハッピーバレンタイン!」

すっ、と彼女は布包みを差し出した。
きょとん、としながらフィアンマは素直に受け取る。
促されるままに中身を見てみた。中身は生チョコ大福である。

神裂「本物の餅ではなく牛皮で作ったので、もちもちしていると思います…」

フィアンマ「わざわざ作ったのか」

神裂「……すみません」

フィアンマ「責めている訳ではない。ご苦労、大切に食べる…が、菓子の内容から考えて食べる優先順位はこちらが高いな」

呟き、フィアンマは紙袋をテーブルへ置く。
そしてソファーへと腰掛け、ココアを二口飲んでグラーノに返すと生チョコ大福を食べ始めた。
求肥で作られたそれは神裂が口にした通りもちもちと柔らかな食感で非常に美味しい。

フィアンマ「…ん、」

神裂「…お口に合いましたか…?」

体の前で緊張気味に手を組む神裂。
豊満な胸が結果として寄せられているのだが、気づかない。

フィアンマ「>>162

素晴らしい…また作ってくれ


フィアンマ「素晴らしい…また作ってくれ」

チョコレートを練りこんである白あんが、口の中に上品な甘さを残して去っていく。
もちもちと食べ進めながら、フィアンマは笑顔でそう言った。
子供のような笑顔に良い意味でギャップを感じ、神裂は照れくさそうに笑む。

神裂「貴男が望むのなら、いつでも、幾らでも作ります。…お口に合ったようで安心しました」

フィアンマ「あぁ、幸せな気分だ」

言いながら、フィアンマは全て食べ終える。
お返しは何にしようか、と首を傾げつつ神裂を見やった。
ついでに隣に座るよう促し、座らせる。
神裂は緊張をこらえる為にもぞつき、もじついた。

フィアンマ「…ホワイトデーというものがあったな。何を返そうか。欲しい物は無いのか?」

神裂「貴男には数々のご恩がありますから、別段欲しい物など……」

フィアンマ「そう言われてもな…」

神裂「では、」

フィアンマ「ん?」

神裂「>>165

あ、アクセサリーを…


神裂「あ、アクセサリーを…」

彼女はフィアンマに調整霊装をもらって以来、自由な服装で戦闘が出来ている。
故に、普段着にもアクセサリーを身につけられるようになった。
他者に見られても堂々と出来る、一般女性の服装を身につけられるようになったからだ。
何でも着けられるとはいえ、どうせなら好きな男性からもらった物が良いに決まっている。

フィアンマ(お前もか。…ホワイトデーのお返しはアクセサリーと勝手が決まっている、のか?)

だとすれば当麻の出費はとんでもない額になりそうだ、と思いつつ。
フィアンマは構わないとこくんと頷いた。

フィアンマ「お前の休暇が合致すれば良いが」

神裂「恐らく問題無いと思います…」

フィアンマ「そうか。…ところで、」

神裂「はい?」

神裂はフィアンマの視線の先を追う。
そこにはチェスセットを見つめ、インデックスから真剣にチェスを教わるステイルの姿があった。

フィアンマ「ヤツはインデックスを好いているのか?」

神裂「>>168

好き…どうなんでしょうか?
あのなりで14歳ですからねぇ…


神裂「好き…どうなんでしょうか?」

ステイルはチェスの駒を眺めて考え込んでいる。
インデックスから教わったルールを復習しているようだった。

神裂「あのなりで14歳ですからねぇ…」

恋にはまだ早いのでは、と呟く神裂。
お前がそれを言うのか、とは敢えてフィアンマはツッコミを入れないでおいてあげた。
ひとえに彼の優しさにつきる。

神裂「…もしも好いていたのなら、何かするのですか?」

問いかけに、フィアンマは小さく笑んで首を横に振る。
穏やかな笑みだった。諦念を湛えたものだった。

フィアンマ「もしもそうなら、両思いになって結ばれれば良いと思っただけだ」

神裂「…貴方は」

フィアンマ「俺様は禁書目録の管理者、ただそれだけだ。俺様の所有物だというつもりはあるが、…彼女個人の人権は彼女の自由にされて然るべきだろう」

命懸けで救った少女を、それでも、フィアンマは好きにしたら良いと言う。

彼女は自分の物で、自分は彼女のものだ。

それは不可侵領域で、変えようのない、変えるつもりもない事実。
だけれど、それは不死の自分が彼女を自分だけに縛り付ける理由にはならない。

フィアンマ「…とはいえ、あの少年は奥手そうだが」

神裂「>>171

奥手ですねぇ…奥手というか正直になれないというか…


神裂「奥手ですねぇ…奥手というか正直になれないというか…」

フィアンマ「…今流行りの…何だったか、…つん…ツンデロというやつか」

神裂「そうなのでしょうか…」

二人が首を傾げていると、ステイルが噛みタバコを口に入れる。
そんな彼を見、インデックスがほっぺたを膨らませた。

インデックス「そんなに沢山ニコチンやタールを摂取したら体中をやられちゃうかも」

ステイル「これが無い方がかえって地獄というものだよ」

インデックス「………」

ぷくううう。

食べ物を詰め込んでもそこまでは膨らまないだろう、という程に。
インデックスはほっぺたを膨らませてステイルを叱る

インデックス「ダメなんだよ、タバコは百害あって一利なしなんだから」

めっ、と真面目に叱るインデックス。

ステイル「>>174

ぐむ……わかったよなるべく善処する…

《今日はここまで。お疲れ様でした》


ステイル「ぐむ……分かったよ、なるべく善処する…」

インデックス「最初からそう言えば良いのに…もう。あ、お菓子あるんだよ。食べる?」

ステイル「僕は甘い物は得意じゃなくてね」

インデックス「これはあんまり甘くないかも」

はい、と渡されたコーヒーマシュマロ。
仕方なしに口に含めば、ほろ苦さとほんのりとした甘さ。
大人向けのそれは多少の甘味はあれど上品なものだ。

ステイル(…悪く無いね)

もぐもぐ、と大人しく食べるステイル=マグヌス十四歳。
フィアンマはそんな彼の様子に子供だな、とうっすら思った。



そうして、二人は帰っていった。
ホワイトデーの約束を取り付けたフィアンマは、妹達より届いたチョコ菓子の中でも腐りやすいものをもぐもぐと食べていく。
総量は九千を遥かに超えているのだが、気にせずばくばくと食べていく。

インデックス「…お腹痛くならないの?」

グラーノ「大丈夫?」

フィアンマ「>>177

全然平気だ


フィアンマ「全然平気だ」

仮にお菓子の食べすぎで胃腸をダメにしても後悔は無い。

そんな物騒な言葉を付け加える彼の手は止まらない。
加えて、食べるペースもさほど感じていない。
普段の食事量が控えめなのは甘いものを食べる為なのか、と思わせる程に。

グラーノ(…病気になったりしないのかな)

ふと不安に思うグラーノである。

グラーノ「パパ、夜ご飯は?」

フィアンマ「夕食は夕食で食べるが」

グラーノ「…そっか。うん、パパがいいならミサカもいいんだけどね」

インデックス(…絶対私のこと言えないと思うんだよ)




夜。
深夜二時頃、フィアンマはふと、美琴から貰った紙袋へ手を伸ばした。
グラーノとインデックスは既に寝入っている。
フィアンマがもらったチョコ菓子を数点食べた為、もはや食べ物を食べているという雰囲気を羨ましがって起き上がりはしない。

フィアンマ「……、」

ラッピングの袋からマカロンを取り出す。
ミニマカロンが四つ。チョコペンで文字が綴られていた。

『好』『き』『で』『す』

その、四文字。
携帯が震えた。
美琴からの着信のようだった。

フィアンマ「……プロント?」

日本語で言う『もしもし』である。

美琴『>>181


美琴『あ、夜分遅くにごめんなさい』

ちゃっ、という音が聞こえた。
どうやらバッグに荷物を詰め込み、チャックを閉めたようだ。

美琴『準備が終わったので、明日からよろしくお願いしますね!』

というかもう今日ですけど、などと苦笑いの声。
フィアンマはマカロンを見やり、何と言葉を返すか迷っていた。
理論的な理由を並べても、女性は満足してくれない。
自分は半永久的に死なない化物だとか、聖職者なのだ、だとか。
五和の時を踏まえ、きっちりと告白を断るべきだ、と思う。
思うのだが、うまく言葉が浮かばない。
嫌味や暴言なら浮かぶのだが、別に美琴を嫌っている訳ではないのだ。
人間としては評価出来る良い子だと思う。

美琴『…ま、…マカロン、とか、…召し上がって、くれましたか…?』

おずおずとした声。
告白を受け取ってくれたか、という意味だということ位わかる。

フィアンマ「ああ、今夜食としていただこうと思って傍らに置いてある」

美琴『……そうですか。…その、ですね、ええっと…』

フィアンマ「………」

美琴『…私、フィアンマさんのことを、"そういう意味"で』

フィアンマ「>>184

ありがとう


フィアンマ「ありがとう」

遮った。
冷たくならないようには気をつけた。
けれども、その告白には応えられない、という思いを込めて。
美琴はそんな彼の空気を受け取り、ごくりと唾を飲む。
そして、最大限好意的に解釈した。

美琴(……刺されても死なない体だから…? きっと、そうよね)

そんな風に自分の思いは変えずに現実と折り合いをつけ。
美琴は穏やかに明るい声で言った。

美琴『……も、勿論一人の男性としても尊敬してますけどね』

フィアンマ「俺様は尊敬されるような立派な人間ではないよ」

美琴『そんなことないです。少なくとも、…私や、妹達にとっては、ヒーローなんですから』

フィアンマ「……そうか」

美琴『…もうお眠りになりますか? 私、時差ボケで眠れなくて…』

旅行には慣れないから、と彼女はため息を飲み込む。

フィアンマ「>>187

>>186

《飯行ってきます》


フィアンマ「そうか。では、お前が眠くなるまで話相手になろう」

美琴『! …ありがとうございます』

フィアンマ「…そうだな、お前はアレクサンドラトリバネアゲハという美しい蝶を知ってるか?」

美琴『…アレクサンドラトリバネアゲハ、世界最大のチョウ、ですよね』

フィアンマ「あぁ。世界一のチョウだけあって、人気が高い。故に乱獲され、現在はワシントン条約によって取引が禁止されているものだ」

美琴『オスのチョウ、絵画みたいに綺麗ですよね』

フィアンマ「虫は苦手か?」

美琴『流石にゴキブリとかは苦手ですけど、チョウなら…』

フィアンマ「なるほど。その幼態期は、幼虫同士で潰し合うということは知っているか?」

美琴『そうなんですか? あ、だから絶滅危惧種に…あんまり保護されてませんけど』

フィアンマ「そろそろ保護されても良い時期だとは思うのだが。…まあ、そのチョウがお前に似ていると、今さっきそう思った訳だ。学園都市の潰し合いや競争を生き残り、美しく残る希少な者、ということでな」

美琴『>>191

>>190


美琴『も、もうっ! 褒めても何にも出ませんよ?!』

顔を真っ赤にし、わたわたと軽く咎め、照れ隠しをする美琴。
実際には何も出ないというより紫電が出ているのだが。
フィアンマは小さく笑って、マカロンを口にする。
細やかな粉糖とアーモンドプードルの味が、口内を甘く染め上げる。

フィアンマ「ちなみにアレクサンドラトリバネアゲハの種小名はアレクサンドラ・イギリス王妃への献名だ」

美琴『王妃様に…』

フィアンマ「愛されなかった悲劇の王妃だ。…哀れなものだったが」

美琴『…何だか直接知ってるような口ぶりですね?』

フィアンマ「んー。どちらとも言えんな」

フィアンマは完全記憶能力者ではない。
あくまでその記憶力は尋常な、一般人より少し良い程度のものだ。
そんな訳で、遠い昔のことを思い出すとどうも曖昧になるのだった。




一時間程の通話を終え、携帯電話をしまい。
フィアンマはもそもそとマカロンを食べ、メモ帳にかりかりと筆記する。
術式の構成を考え、改善点を考える為だった。
守るものが増えた今、どれだけの力を抱え込んでも、足りない。

フィアンマ「……」

ぐし、と眠い目を擦り、綴っていく。
ゲームのプログラムコードを組む時と同じで、適所に付け足したり、逆に消した方が無駄が省けたりする。
しばらく筆記を続けていると、インデックスが起きてきた。
早く寝たので、早く目が覚めてしまったようである。

インデックス「まだ寝ないの…?」

フィアンマ「仕上げたら寝るつもりではあるが。ああ、お前に伝え忘れていたことがある」

インデックス「? なぁに?」

フィアンマ「明日、もとい今日の昼過ぎ頃からホームステイの女学生が来る。お前も一度顔を合わせたことのある短い髪の少女だ。グラーノのオリジナルと言えばわかるか」

インデックス「>>194

おもてなししなきゃ!


インデックス「おもてなししなきゃ!」

最早フィアンマが女性及び女の子と仲良くなるのは仕方のないことだ。
結論付け、インデックスはやや寝ぼけ気味にそう言った。
ちなみに彼女は料理とお菓子作りはいまいちだが紅茶を淹れるのは特別上手である。

フィアンマ「その精神は素晴らしいことだが寝直せ」

インデックス「んぅ…」

眠そうにインデックスは冷蔵庫へと近寄る。
ミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、コップへ中身を移してゆっくりと飲んだ。

インデックス「フィアンマも早く寝ないとダメだよ」

フィアンマ「…多少眠らずとも倒れない体はしているのだがね」

インデックス「またそんなことばっかり」

むう、とほっぺたを膨らませ、インデックスはペットボトルを冷蔵庫へとしまう。
冷蔵庫を開閉する度に、ただでさえチョコの匂いがする部屋の中が更にチョコ一色の匂いとなった。



そうして。
昼過ぎに、美琴はフィアンマの部屋へとやって来た。

美琴(前より広くなってる…あれ?)

フィアンマ「荷物はそちらの部屋に置いてくれ。好きに使ってくれて良い」

美琴「はいっ。…そういえば、あのメイドさんは?」

フィアンマ「……、」

グラーノ「お姉様」

美琴「?」

首を傾げる美琴を手招き、グラーノはひそひそと言う。

グラーノ「>>197

熊のムートンをどうぞ


グラーノ「後で詳しく話すから、今後絶対にあのメイドに関する事はパピーの前で言わないで」

美琴「? う、うん、わかった」

よくわからないながらも、美琴はこくりと頷く。
荷物を勧められた部屋に置き、インデックスに勧められた紅茶を啜った。
アールグレイのミルクティー。温かなロイヤルミルクティーだった。
ソファーに控えめに腰掛け、美琴は静かにミルクティーを啜る。
インデックスは美琴と話そうかフィアンマを慰めようか迷った結果、フィアンマに近寄った。

インデックス「フィアンマ、…その、…短髪も悪気があった訳じゃないと思うんだよ」

フィアンマ「そうだろうな。…言っていなかった俺様が悪いんだ」

インデックス(どうしよう、また"俺様が全部悪かったモード"になってるんだよ)

それは謝罪の時にしか有効ではないのに、とインデックスは焦る。
美琴が焦って余計に墓穴を掘ってしまわないよう、グラーノは美琴に話しかけた。

フィアンマ「……」

インデックス「>>201


インデックス「思い出して辛いのはわかるけど、人が一人死んだんだもの、仕方のないことなんだよ。そこで落ち込んだり、自分のせいだと抱え込んでもどうしようもないの。…五和は優しいし、フィアンマが大好きだったから、……フィアンマが自分のことで落ち込んだら辛いと思うんだよ。わかったら顔を上げて。ほら、上げるの」

インデックスは背伸びをし、フィアンマの顔に触れる。
酷く落ち込む彼は、なかなか顔をあげようとしない。

インデックス「…えい」

ぺち、と頬を叩いた。
本当に軽い一度のビンタで、痛みなど無いに等しかったが、フィアンマの意識は表層へと引きずり上げられる。

フィアンマ「……、」

インデックス「うじうじするのも、いらない責任まで背負うのはもうやめなさい」

インデックスは両拳を自らの腰に当て、凛と叱った。
フィアンマは俯くのをやめ、インデックスを見つめる。
そうして小さい笑いと共に落ち込むのをやめた。

フィアンマ「…何やら、お前が俺様の母親のようだな」

インデックス「>>205

あらあら、うふふ


インデックス「私はシスターなんだよ!」

だから、と彼女は続ける。

インデックス「迷える子羊を導くのは当たり前なんだよ……」

フィアンマ「…一応、俺様は羊飼いの方なのだがね」

インデックス「羊飼いでも時には迷うことがあるかも」

こく、とインデックスは頷く。
フィアンマは相槌と共に頷いて、美琴の向かいに腰掛けた。
テーブルの上にこんもりと盛られたチョコ菓子を口にする。

グラーノ「これ、全部妹達がそれぞれ作ったんだよ」

美琴「すごいじゃない。…数が数だけど」

グラーノ「パパなら食べきれるから大丈夫」

美琴「へー。そんなに甘い物がお好きなんでムグッ」

インデックス・グラーノ「「しーっ!」」

美琴「な、何なのよ」

もごもごと聞く美琴。
インデックスは深刻そうに言う。

インデックス「甘味説教は聞かせたくないんだよ。長くなるから…」

美琴「…説教? え、甘い物について語るの? フィアンマさん」

グラーノ「すごく語るよ…多分お姉様でもドン引きするんじゃないかな。というよりも、気迫が怖い」

美琴「……どんな感じに?」

グラーノ「>>209

軽く一時間は語るよ…
「砂糖が出来る前には、人々は砂糖黍の茎を噛んで甘い汁を啜っていた。何故そんなことをしたかといえば、現代の人間と同じように甘味が誰よりも何よりも愛されたからだ。時代によっては砂糖は金の代わりとされ、沢山の物と交換することが出来た。つまり、それは一種の砂糖信仰と言っても良い程だ。愛されているからな。我らが主に向ける我々聖職者の感情にも等しいかもしれん。邪教ではない。お前も知ってのことだろうが、十字教徒とはマナの時代より甘味を愛する。そして、甘味は人々を笑顔にする、元気にもする。女に際しては冷え性などが問題とされているが、野菜などから甘味を抽出したものであればその心配は無い。子供は甘い菓子を与えられれば途端に元気を出すし、科学サイドでは適量の甘いものが脳の疲れを取るとも言われている。砂糖を巡って戦争が起きる事もあるが、砂糖が充分量足りていれば戦争などすぐさま集結するだろう。甘みに勝る強さなど無いんだよ。甘い蜜を吸う、という表現もあるが、甘みとは財産をも意味するんだ。甘味こそが絶対の正義だ」
とかいってたね…


グラーノ「軽く一時間は語るよ…」

美琴「い、一時間? ぶっ続けで?」

グラーノ「…うん『砂糖が出来る前には、人々は砂糖黍の茎を噛んで甘い汁を啜っていた。何故そんなことをしたかといえば、現代の人間と同じように甘味が誰よりも何よりも愛されたからだ。時代によっては砂糖は金の代わりとされ、沢山の物と交換することが出来た。つまり、それは一種の砂糖信仰と言っても良い程だ。愛されているからな。我らが主に向ける我々聖職者の感情にも等しいかもしれん。邪教ではない。お前も知ってのことだろうが、十字教徒とはマナの時代より甘味を愛する。そして、甘味は人々を笑顔にする、元気にもする。女に際しては冷え性などが問題とされているが、野菜などから甘味を抽出したものであればその心配は無い。子供は甘い菓子を与えられれば途端に元気を出すし、科学サイドでは適量の甘いものが脳の疲れを取るとも言われている。砂糖を巡って戦争が起きる事もあるが、砂糖が充分量足りていれば戦争などすぐさま集結するだろう。甘みに勝る強さなど無いんだよ。甘い蜜を吸う、という表現もあるが、甘みとは財産をも意味するんだ。甘味こそが絶対の正義だ』とか言ってたね…」

美琴「」

グラーノ「…目から火が出るくらいの迫力で怖いんだから…」

しんみりと語るグラーノ、思わず言葉を失う美琴。
しみじみと頷くインデックス。
少女達が何を話しているのかわからないフィアンマとしては、首を傾げるばかりである。



女三人、女性同士で込み入った話もあるだろう。
ガールズトークを尊重してあげることにしたフィアンマは、自室へやって来た。
もぐもぐとチョコチップクッキーを頬張りながら。

フィアンマ「…ん、結局どうだったんだ。本命はもらえたのか?」

思い出したように、オッレルスへ連絡をする。
上手くいくかどうか、気になっていたのだった。

オッレルス『>>214


オッレルス『貰えた! 貰えたよフィアンマ! いやー、今日はハイテンションだ!』

フィアンマ「そうか、良かったな」

オッレルス『ああ、本当に良かった。君のところの女の子達が進言してくれたのか、メッセージも貰ったしね』

フィアンマ(……あれか)

フィアンマ「結婚する時は呼んでくれ」

オッレルス『け…結婚は、まだ、早いんじゃないかな…』

フィアンマ「お前は今自分が何歳なのか認識しているのか?」

オッレルス『勿論だとも。ただ、その心の準備が…』

乙女か、とフィアンマは頭を抱えたくなる。
そうこうしていると和やかに通信が切れ。
フィアンマは紙袋へと手を伸ばした。
途端、カサリ、という音と共に、ベッドへカードが落ちる。
メッセージカードのようだった。ヴェントからのチョコに同梱されていたらしい。

フィアンマ「……?」

首を傾げ、中を開いてみる。






メッセージカードの内容(アバウトでも可)>>+2


『E4 G4 D3 B3  vento with menuet su r le nom d'haydn』

綴られていたのは、その一文。
フィアンマはしばし考え、ポツリと呟く。

フィアンマ「…menuet su r le nom d'haydn.」

即ち。

フィアンマ「『ハイドンの名によるメヌエット』…か」

暗号文だった。
頭が悪ければ即座に放り出し、困り果てる類の。
フィアンマはメモ帳を取り出し、かりかりと筆記する。
行番号を振り、表を作り、アルファベットへと置き換えて。

フィアンマ「……なるほど」

えす、ゆー、けー、あい。

ローマ字読み。

気づかれなければそれまで、放り出されればそれまで。
そう思って、彼女はこのメッセージを綴ったのだろうか。
フィアンマがヴェントを何とも思っていなければ、このメッセージは伝わらなかった筈である。

フィアンマ「………」

メモ帳を破り捨てる。
メッセージカードを見つめた。
美琴からマカロンを貰った時もそうだが、嬉しいとは思えなかった。
破綻しているな、と思う。普通の男なら、喜ぶ筈なのだ。
どう断るかを必死に考えている自分が居る。傷つけないように、諦めさせられるように。

フィアンマ「……」

フィアンマは、通信用霊装を手にする。
返事をしない方がかえって良いのかもしれない。
ただ、ここで黙るという形で答えを出すのは不誠実なような気もする。






通信するorしない>>+2


>>+1のコンマ一桁(アンタに、黙ってたコトがある [sage]:2013/03/17(日) 22:56:01.8『3』←ココ)で決定


0〜4 通信する

5〜9 通信しない

( ̄^ ̄)ゞ

>>226 23:01:06.8『8』 結果:通信しない ご協力ありがとうございます》


けれど。
自分はいつでも誠実であろうとして、沢山の人間を傷つけてきた。
ならば、無言で回答してあげるというのも優しさというものではないだろうか。
決して自分が優しい男であるなどと言うつもりはないけれど。
今は黙っておこう、気づかなかったフリをしよう、とフィアンマは通信をしようとして、やめた。
メッセージカードをしまい、もぐもぐとチョコレートを食べる。

フィアンマ「………、」

からい。

告白を断るのを見越していたのだろうか。
チョコレートトリュフの中に、辛子が入っていた。
うっかり飲み込んでしまったため、喉が辛味を訴えている。
口の中は辛くて堪らないし、言葉を発する気にもなれない。

フィアンマ「………」

フィアンマはひとまずゴミを片付け、台所へと移動する。
美琴とグラーノが美琴の部屋で眠る中、インデックスだけが起き、チョコを食べていた。

インデックス「フィアンマ大丈夫? …涙目かも」

フィアンマ「………」

ふるふる、とフィアンマは無言で首を横に振る。

インデックス「…ど、どうしたの…?」

心因性のものではなさそうだと判断し、インデックスは問いかけ、彼に近寄る。

フィアンマ「…>>231


フィアンマ「…チョコレートがロシアンチョコレートだった…」

インデックス(フィアンマに嫌がらせするなんて肝が据わってるんだよ…)

フィアンマ「水を…いや、ミルク…ホットミルク…やっぱミルク…それかお湯…」

うろうろと意味もなく部屋を歩くフィアンマ。
白い肌がやや青ざめている。
これはだいぶやられていると判断し、インデックスは慌てて冷蔵庫を開けた。
氷をグラスへ、牛乳を取り出してグラスへ、そこにガムシロップを二つ入れ、よくかき混ぜる。
キンキンに冷えた甘ったるいアイスミルクを、インデックスはフィアンマへ差し出した。
彼は喜んでそれを受け取り、口の中へ溜めつつ飲み下していく。
インデックスはフィアンマの背中を優しく摩ってやり、眉を下げる。

インデックス「…もう大丈夫?」

フィアンマ「ああ、…ガムシロップは良い選択だった」

インデックス「ロシアンチョコレートだなんて酷いんだよ。甘いものを冒涜しているかも。…何なら私が怒ってあげるんだよ」

フィアンマ「いや、いい」

インデックス「? いつもなら甘いものを冒涜したって怒るのに」

フィアンマ「>>234

上+
はぁ…辛い…


フィアンマ「今回は俺様が悪いんだ…」

インデックス「! フィアンマはまた、」

フィアンマ「あ、インデックス、勘違いするな? 落ち込んではいない」

インデックス「…なら良いけど」

フィアンマ「はぁ…辛い…」

世を儚んで毒酒を飲む哲学家のような顔だが、彼が飲んでいるのはアイスミルク(すごく甘い)である。
おかわりを要求され、インデックスは同じ配分で作ってやる。
フィアンマは再びグラスを受け取り、静かに飲んだ。
本当は床の上を転がりたくなる位辛かったのだが、そこは我慢するのが大人というもの。

インデックス「……そういえば、フィアンマはあんまりお酒飲まないね」

フィアンマ「ああ、多少は飲んだぞ。…お前がヴェントの持ってきた酒で酔って眠った後に」

インデックス「ぎくっ」

フィアンマ「……」

インデックス「…酔いクセってあるの?」

フィアンマ「>>237

《今日はここまで。お疲れ様でした》


フィアンマ「俺様の? それともお前の? お前の酒癖は……まぁ、うん」

にっこりと笑みを浮かべるフィアンマ。
実際にはインデックスは酔って少し絡んで抱きついて眠っただけなのだが。
精々、癖といえるのは抱きつき位なものだろう。
しかしながらその含みを持たせる言い方に、インデックスは衝撃を受ける。

インデックス「わ、私何かしたの?!」

フィアンマ「……さて、飲み終わった事だし、家事でもするか」

インデックス「フィアンマってば!」

フィアンマ「皿洗いをするべきかね」

インデックス「……ううう〜!」

ガチガチと歯を鳴らして威嚇するインデックス。
仮に噛み付いてもフィアンマが衣装に魔力を通せば無駄なのだが。

インデックス「大体、聞きたかったのはフィアンマの酒癖なんだよ!」

フィアンマ「>>240

さぁな、酔ったことがない


フィアンマ「さぁな、酔ったことがない」

インデックス「…今まで一度も?」

フィアンマ「沢山飲んでも酔わないんだよ、残念ながら」

御蔭で素直に飲酒を楽しめない、とため息を漏らし。
フィアンマはテキパキと食器洗いを済ませ、丁寧に拭いて棚へとしまう。
インデックスは暇なのか、片付けるのを手伝った。

インデックス「ほろ酔いにもならないの?」

フィアンマ「それ位にならなるが…一時間で醒める」

インデックス「何だか寂しいかも」

フィアンマ「俺様もそう思う」

家事を終え、フィアンマは冷蔵庫を開ける。
中のチョコ菓子を手に取り、包装を剥いで食べ始めた。
インデックスも便乗していただきつつ、いい加減にチョコにうんざりとしてきている。
しかしチョコに対して文句を零せばフィアンマが何かしら張り切るに違い無いので沈黙を貫く訳だが。

インデックス「何だか暇なんだよ。何かやることない?」

フィアンマ「>>245

よし、セックスしようか


フィアンマ「そうだな」

相槌を打ち同意して、フィアンマはチョコマシュマロを食べつつ言う。

フィアンマ「またチェスでもやるか」

インデックス「じゃあセット出すね」

こくりと頷き、インデックスはいそいそと準備を始める。
フィアンマは続いてチョコレートキャラメルを口に含み、こき、と一度だけ首を鳴らした。
何となく肩が凝っているのである。恐らく疲れだろうとは思うのだが。

フィアンマ(…そろそろ体にガタがきて、…そんな訳はないか)

インデックス「はい、準備終わり」

フィアンマ「ん」

ソファーへ座り、フィアンマはチェスの駒を動かす。
じゃんけんをすると百発百中フィアンマが勝つ為、もはややるまでもない。

インデックス「……ふぁ、」

フィアンマ「…眠いなら昼寝をしたらどうだ」

インデックス「夜眠れなくなっちゃうから我慢するんだよ…ふぁふ」

フィアンマ「グラーノ達は昼寝か?」

インデックス「うん。短髪も一緒に」

フィアンマ「そうか」

インデックス「姉妹水入らず、ってやつだね!」

フィアンマ「そうなるな」

コンコン、というノックの音。
チェスをする手を止め、フィアンマは扉を見やる。
立ち上がり、応答するべくのぞき窓を見てみた。





訪問してきた人物(禁書キャラ名。一名)>>+2


ガチャ、とドアを開ける。
髪を下ろし、スカートを着用し、清楚系の装いをした神裂が立っていた。
本日、二月十五日。
まだまだホワイトデーには程遠いのだが。
彼女は言葉を選び迷っているのか、口ごもっている。

フィアンマ「…何か用か?」

もし話が長くなるのなら中へ遠そう、とフィアンマは思う。
神裂は視線をさまよわせ、やがて彼を見た。

神裂「>>256


神裂「いえ、その…近くまで来ましたので…」

控えめは日本人の美徳である。
フィアンマとしてはもう少しはっきり言えば良いのに、と時々思ったりするのだが。
神裂は所在無さげに指先で手遊びをし、彼を見据える。

神裂「えと、あの、最近あなたがお疲れと聞きまして、温泉旅行にでもと…いい秘湯を知ってるんですよ! どうでしょうか!」

顔が赤くなっている。
手遊びをしていた彼女の手が震えている。
恐らく緊張しているのだろう。
フィアンマは少し迷い、すぐには答えを出せず、ひとまず神裂を室内へ招き入れる。
神裂は「お邪魔します」の一言と共に中へ入り、インデックスに一礼した。

インデックス「かおり、よく来たかも。寒かった? ココアならすぐ淹れられるんだよ」

神裂「い、いえいえお構いなく…」

インデックス「そう?」

そうこうしていると、美琴とグラーノが部屋から出てきた。

美琴(あ、病室で会った人じゃない)

グラーノ「やっほー、元気だった? とはいっても昨日も会ったけど」

神裂「ええ、お陰様で私は元気です」

グラーノ「何か用事? それとも遊びに来たの?」

口ごもる神裂に代わり、フィアンマは鈍感を装おって言う。
彼女は二人きりが良いのだろうとは思いつつも、とりあえず。

フィアンマ「俺様が精神的に落ちている事を知って、温泉旅行へ誘いに来てくれたんだ。……という訳で行ってこようかと思うのだが、お前達はどうする?」

インデックス「>>259

グラーノ「>>261

美琴「>>263

>>260

わ、私も行って良いんでしょうか…?
良いなら、是非行きたいです!


インデックス「行って良いなら行く!」

グラーノ「行きたいー! とミサカは立候補します!」

美琴「わ、私も行って良いんでしょうか…? 良いなら、是非行きたいです!」

神裂「」

神裂火織は優しい女性だ。
故に、独占欲などというものは発揮出来ない。
また、基本的には控えめで、自分の為には怒れない性格の為、進言も出来ない。
何となく予想はついていたことなのだが、全員で行く事となってしまった。

フィアンマ「……全員だな。分かった。構わないか?」

神裂「ええ、先んじて旅館に連絡をしておけば問題ありません」

目に涙を浮かべそうになりつつ、神裂はこくんと頷くのだった。





二月十九日。
そうして、神裂、グラーノ、インデックス、美琴、フィアンマ、計五人は日本の旅館へとやって来ていた。
グラーノとインデックスは温泉街の食べ物を見て回ると言い。
フィアンマと一緒に居たいが為に断ろうとした美琴はグラーノに引っ張られ、仕方なしに出て行った。
結果として現在状況を説明すれば、神裂とフィアンマが二人きりで和室に居る訳である。

神裂(ふ、二人きり…)

一度失望、もとい諦めたからこそ、ドキドキが尚更高まる。
だからといって何を言うでもなく、硬直する他無く。
そんな彼女に、フィアンマは興味深そうに玄米茶の粉を眺めつつ言った。

フィアンマ「……わざわざ気を遣わせてすまないな」

神裂「>>266

>>265


神裂「いえいえ! 少しでもあなたの疲れが癒せれば…」

それで良い、それが良い、と彼女は微笑む。
緊張はあれど、フィアンマと二人きりが嬉しい事は確かである。
彼女は部屋にあるポットや茶筅などを見やり、思い出したように提案した。

神裂「あ、もしよかったら部屋備え付けの抹茶点てますけど、いかがでしょう?」

フィアンマ「抹茶か。…あまり飲んだ事が無いな。頼む」

神裂「はい、少々お待ちくださいね」

神裂はいそいそとポットでお湯を沸かし始める。
茶筅や茶巾などを用い、抹茶の粉を丁寧に網で越した。

十分もしない内にお湯が湧き、神裂は熱湯を使って抹茶を点てる。
しゃかしゃかしゃか、と小気味良い音がし、まろやかな泡立ちが成った。

神裂「…どうぞ」

出来上がり、神裂はそっと茶碗をフィアンマへ差し出す。
フィアンマは受け取って、少しだけ回してから飲んだ。
特に際立った苦味も無く、溶け残った粉もない。

神裂「……濃すぎたり、薄すぎたりしませんか…?」

フィアンマ「>>269

丁度良い。が、苦いな…何か菓子は無いものか…


フィアンマ「丁度良い。が、苦いな…何か菓子は無いものか…」

本来、抹茶はお茶請け、即ちお菓子と一緒に頂くものである。
勿論単品で飲んでも美味しいのだが、抹茶を飲む事により、菓子の甘さがほどよくなるという効果がある。
完全に失念していた、と神裂は慌て、周囲を見回す。
銀色の硬い四角い箱の中から、ザラメのついた甘そうなお煎餅を取り出した。
和紙のような個装がなされたそれを、神裂はフィアンマに差し出す。

神裂「遅れましたが、お茶請けがありました。どうぞ」

フィアンマ「ん、感謝する。……甘いな」

差し出された煎餅の包装を破り、フィアンマはぱくりと煎餅を口にする。

ばりり、もぐもぐ、ばきばき。

もっぐもっきゅ。

かなり硬いお煎餅である。
ザラメの甘味が、先ほどの抹茶の苦味を緩和していく。
ほどよく中和され、ミルクコーヒーに似たまろやかさへと変わった。

フィアンマ「美味いな。…ワビサビというものだったか」

神裂「はい、調和を楽しむ日本の文化ですね」

フィアンマ「…抹茶を点てられるということは、習ったのか。花嫁修業の一環か?」

神裂「>>273

幼い頃から習ってまして…

甘いものお好きなんですね


神裂「幼い頃から習ってまして…」

フィアンマ「ほう、感心だな」

神裂「甘いもの、お好きなんですね」

のんびりと神裂は言う。
ほんの一瞬だけ、謎の空気が走り抜けた。
フィアンマは少しぴくりとするも、頷くのみに留める。

フィアンマ「ああ、昔から好きでな」

神裂「おかきもどうぞ」

フィアンマ「ん…ん? 甘くないのか」

神裂「塩味の豆おかきです」

勧められるまま次のお菓子へ手を伸ばす。
ぼりぼりもぐもぐと食べつつ、フィアンマは首を傾げた。
甘くないお菓子はあまり食べつけないのである。

フィアンマ「…ん」

携帯を見やる。
美琴からメールが来ていた。
グラーノとインデックスが温泉街の色々なものにやたらと興味を示しているのが原因でなかなか戻れないらしい。

フィアンマ「…先に風呂に入るべきか」

神裂「遅くなるのですか?」

フィアンマ「今さっきそのような連絡が入った。…此処の売りは混浴と天然温泉、景観の良さのようだな?」

神裂「>>276

>>275


神裂「ええ。よくご存じですね? …ただ、じつはもう一つありまして、知る者ぞ知る隠し湯があるのですよ」

フィアンマ「…ふむ」

所謂VIP専用、といったところか。
確かに神裂はここの女将などと親しげに話していた。
親睦が深ければ当然、裏の裏まで知っているのだろう。
彼女はもじもじと恥ずかしそうに言う。

神裂「その湯に一緒に入ると親密になれるそうで…」

所謂、言い伝え。噂。
魔術の術式にまでは発展していないもの。
そんなものに縋ってでも、神裂はフィアンマと仲良くなりたかった。
積極的にならねば、と己を奮い立たせて誘う。

神裂「あの、もしよかったら、お背中流しますから、一緒にその湯に入りませんか?」

フィアンマ「構わんが」

神裂「ありがとうございます」

安堵感に、神裂はやんわりと笑みを浮かべる。
お菓子を食べ終わったところで、入浴することにした。




隠し湯、というだけあって。
混浴温泉のその先に、カーテンのようなもので隠されている温泉だった。
個室になっているらしく、三箇所程しかない。

神裂「…では、お背中お流ししますね」

フィアンマ「んー」

生返事を返す彼の背中を、神裂は石鹸水によって泡立ったタオルで丁寧にこする。

フィアンマ「……」

神裂「……」

かこん、という音がする。
お湯の温度調整の為に水を注ぐ鹿威しの音である。
何か会話をしよう、したい、と話題を捻り出す。

神裂「…>>279

背中広いですね


神裂「…背中、広いですね」

フィアンマ「…そうか?」

神裂「私は、そう思います」

擦り終わり、彼女は手のひらでフィアンマの背中を撫でる。
人種の違いにより、色白な神裂以上に、その背中は白い。
ドキドキとしながら、神裂はしばし撫で。
そうして、かけ湯を桶に組み、フィアンマの体へかけた。

神裂「……沢山のものを背負っているだけあって、広いと、思います」

フィアンマ「…そんなに背負っているつもりは無いのだがね」

神裂「一人で背負い込む過ぎているのですよ」

柔らかな笑みを浮かべ。
神裂は彼から離れた。



きちんと身体を洗い、お湯に浸かる。
天然温泉の湯色は白濁としていて。
神裂は所在無さげに、胸元まで巻いたタオルを弄る。
フィアンマはししおどしを見やりつつ、髪を見やった。
そろそろ切るべきかもしれない、と思う。
髪と爪は放置しておくと伸びるのである。

フィアンマ「…少し、人に頼る事を覚えた方が良いのかもしれないが、……難しいな」

ぽつりと呟く。
かこん、という音が打ち消した。
神裂はフィアンマの隣で、無言のままにこくんと頷く。
彼女自身も、背負い込んでしまおうと、自分ひとりが痛い思いをすれば良いと思っている部分があるから。






神裂はどうする?>>+2


神裂は、静かにフィアンマの正面へと移動した。
ぼんやりとした表情の彼と、視線を合わせる。
真っ直ぐな黒の両瞳が、彼の金の隻眼を射抜くように見つめた。
神裂はそっと、彼の耳元へ唇を寄せた。
そうして、静かな声で囁く。

「では、寄り掛かるのが、誰かを頼るのが難しく思うのでしたら……私が、こんな風に、あなたが寄りかかれるよう誘導します」
「……神裂、」
「助けて、と言えないなら、私が気づいて、助けます」
「……」
「疲れた、と言えないなら、私があなたを癒しにきます」

きっと。
神裂火織は、右方のフィアンマという青年を心底から理解してあげられる素質を持った、数少ない人間だ。
彼のように途方もない時間を生きてはいないけれど、それでも、支えにはなれる。

「…ご迷惑かもしれないですけど、そうでないのなら、させてはもらえませんか?」
「…俺様は、そのような施しを受けて良い人間ではないんだ」
「卑下しないでください。…人は、誰かに頼って良いんです。甘えて、助けてもらって良いんです。それが、人権というものです」
「………」
「私は、…貴男を、支えたいんです」
「五和の二の舞になりはしないか」
「なりません」
「何故そう言い切れる」
「私が、おこがましくも物理的な強者だからです」
「………、」

神裂は、彼の身体を抱きしめる。
柔らかな胸が、タオル越し、彼の胸板へ押し付けられた。

「……良いのか。…お前を、頼っても」
「勿論です。…私は、貴男に助けられました。今度は、私が貴男を助け、癒す番です」

彼女の手が、フィアンマの右手を握る。
フィアンマは左手を伸ばし、彼女の髪を撫でた。

白い湯煙が、彼らの会話を秘匿してくれていた。










saint end.


神裂エンドでした。
残るはみこっちゃんエンドとハーレムエンド(これは最後の最後に)です。

…どこから分岐しましょうか。


じゃあ神裂さんの秘湯お誘いを断る感じからの分岐で…
とりあえず飯食ってきます

《ええと…>>264改変から再開します、ご了承ください》



二月十九日。
そうして、神裂、グラーノ、インデックス、美琴、フィアンマ、計五人は日本の旅館へとやって来ていた。
グラーノとインデックスは温泉街の食べ物を見て回ると言い。
フィアンマと一緒に居たいが為にどうにか断ろうとした神裂はインデックスに笑顔で引っ張られ、仕方なしに出て行った。
グラーノとインデックスの警護をする、という目的意識と生真面目さが裏目に出た形である。
結果として現在状況を説明すれば、美琴とフィアンマが二人きりで和室に居る訳なのだった。

美琴(ふ、二人きり…フィアンマさん、と)

美琴はそわそわと落ち着き無く。
フィアンマはマイペースにお煎餅へ手を伸ばしている。
ザラメのついた醤油味のそれである。

もぐもぐ。

美琴はちらりとフィアンマを見やる。
自分は知らなかった事だが、彼は酷く落ち込んでいたらしい。
メイドの少女が不慮の事故(グラーノが言葉を濁した)で死亡したことも、聞いた。
どうにか元気になってくれたようだ、と判断する。

美琴(…そういえな、告白の返事…)

ありがとう、で終わってしまった。
しかしここで問いただす勇気は無い訳で。

美琴(せっかく二人きりなんだし、直接会ってるんだから、何か言わなくちゃ…)

美琴「>>291

ふぃ、フィアンマさんは、好きな女性のタイプとか有ります?

>>289 ×そういえな ○そういえば》


美琴「ふぃ、フィアンマさんは、好きな女性のタイプとか有ります?」

美琴(き、聞いちゃった聞いちゃった聞いちゃった…! 私と真逆のタイプだったらどうしよう…)

フィアンマ「…好きな、というと、恋愛対象として、ということか?」

美琴「そうなりますね!」

ドキドキと心臓を高鳴らせ、美琴はそう言葉を返す。
フィアンマから一つ煎餅を受け取り、控えめにかりかりとかじった。
彼は熟考し、今まで自分が妻、及び恋人にしてきた女性たちを思い返した。

フィアンマ「……」

共通項を抜き出して口にしようと思うも、なかなかまとまらない。
妻は二人居てそれぞれ性格が違ったし、恋人もまた然り。
そもそも焦がれる程愛したかと言われると不安になってくる程度の想い。
大切にしよう、ということと、どうしようもない程愛しい、とはまた違う訳で。
特別女性の容姿に対して好みは無い。
髪が長くても短くても、細身でもふくよかでも、服装が地味でも派手でも。
本人がそれが良いと言っているのなら、それはそれで良いと思う。
顔の造形も良かろうと悪かろうと、要は性格さえ合えば良い訳で。
ではどのような性格が好みなのかと問われると、迷ってしまう。
大人しいのは嫌いではないし、おしゃべりなのも苦手ではない。

フィアンマ「……」

美琴「……」

ちら、と美琴を見てみる。
彼女の眼差しは期待に満ち溢れていた。
マカロンに綴られていた四文字を思い出す。

フィアンマ「>>295

短髪の茶髪でカエル好きな女の子


フィアンマ「…短髪の茶髪で、カエル好きな女の子、…だな」

美琴(短髪…私そんなに髪短くないし、今度切ろう。……茶髪…? 茶髪って、もっと明るい色合いの? 染めないとダメかな。カエルは…ゲコ太もカエルとしてカウントして良いならセーフよね!)

フィアンマ(……期待には沿えた筈だ)

眼差しに応え、フィアンマはそう答え。
美琴はそんな彼の発言をほどよく自分に当てはめ、もじもじとする。
ふと、彼女は時計を見やった。

美琴「なかなか戻ってきませんね?」

フィアンマ「少し連絡を入れてみるか」

頷き、フィアンマは通信術式を仕掛けてみる。
文字で返答されるタイプのものだ。
返答内容は、『二人が遊んでいてまだまだ戻れません』とのことである。

フィアンマ「まだ戻れないそうだ。先に入浴しておくべきか」

美琴「…あの!」

フィアンマ「ん?」

美琴「い、…一緒に、入り、ませんか。こ、ここ、混浴…の、お風呂」

フィアンマ「…構わんが」

御坂美琴、人生の中で最も勇気を振り絞った瞬間である。




そして。
身体を洗い、美琴とフィアンマは露天風呂に浸かっていた。
二月の寒い空気は辛いが、お湯がかなり温かい為、問題無い。
美琴は万が一にも放電してしまわないよう、自らを律していた。
紫がかった色のこのお湯は、ワイン風呂である。
天然ナトリウム温泉にワインをブチ込んだお湯。
美琴は所在なさげに膝を抱え、ちらちらとフィアンマを見ていた。

フィアンマ「…どうかしたのか。のぼせたのなら上がった方が良いと思うが」

美琴「>>298

酔っちゃいそうね


美琴「酔っちゃいそうね。…のぼせはしてません、大丈夫です」

ふるる、と彼女は首を横に振る。
アルコール臭は無いし、どちらかといえば葡萄の匂いが強かったが、酔いそうな事に代わりはなく。
自分は酔ったら母のようなタイプの酔いクセだろうか、と美琴は首を傾げた。

美琴「…ワインはお好きですか?」

フィアンマ「さほど呑もうとは思わんがね。質の良いものか、或いはワインゼリーなら好きだよ」

美琴「あはは、やっぱり甘い物になっちゃうと何でも好きなんですね」

小さく笑い。
美琴は勇気を出して、徐々に彼に近寄った。
隣に座り、ぴと、と身体をくっつける。
心臓がこれでもかとばかりにバクバクと高鳴って、苦しい悲鳴を上げていた。
恩人として親友として尊敬しているだけでは、この苦しさに説明がつかない。
やはり、やっぱり、どうしても、自分は彼が好きなのだな、と思った。

美琴「……マカロン、食べてくれましたよね」

フィアンマ「あぁ、……」

美琴「…告白の、お返事。……下さい」

彼女の瞳が、フィアンマを見つめる。
視力のある方の左目が、僅かに動いた。
口ごもる。

フィアンマ「……俺様はトラウマがあり、…恋愛感情を誰かに抱く事が出来ない」

美琴「………」

フィアンマ「だから、…お前に、『俺様も好きだ』と不用意に返すような真似は出来ない。うまく言えないが、…恋人という立場になる分には、構わない。……こんなヤツでも良いのか」

美琴「>>302


「…なら、"お前が好きだ"って言わせてみせますから!」

いつの日か。
言わせてみせる、そう堅く堅く、美琴は決意する。
トラウマがあって、恋愛感情を抱く事が出来ない。
その痛みを癒してあげられるのが恋人だと、美琴は思う。

だから。

「…お願いします!」

ぽた、ぴちょん。

そんなトラウマを抱えていて尚、恋人になろうと言ってくれるフィアンマに。
嬉しさから発露した美琴の涙が、湯船へ落ち、溶けていく。
彼女は慌てて手の甲でぐしぐしと目元を擦った。

「……お前がそう言うのなら、期待してみることにする」

優しく言って、フィアンマは手を伸ばす。
水滴を払った指先で、そっと彼女の目元を拭った。
その丁寧な手つきにときめきながら、美琴は深呼吸をする。
顔を上げ、薄く笑みを浮かべ、そうして。

ちゅ

軽く、口づけた。
一瞬だけ接吻をし、彼女は唇を離した。
収穫時期の林檎のように顔を赤くして、彼女は宣戦布告する。

「絶対、いつか言わせてみせるから」
「そうか」

案外、その日は遠いものではないのかもしれない。

うっすらと思って、彼は彼女の手を取る。
水気を払い、彼女の手の平へ、口付けを落とした。







———手のひらへの口付けは、懇願のキス。

                                                      finale dell'elettricità.


みこっちゃんエンドでした。
最後にハーレム、もといトゥルーで終わらせようと思います。

どこから分岐しよう……

《女は生かして男は見殺しっていうのはあんまりなので、前スレ>>574以降から分岐(=時系列的に禁書妹消滅)》


トール「悪いが、ただの人間がアンタみたいな化け物に勝つには…、多少の犠牲はしょうがねぇんだよッ!」

雷神トールは無理矢理に動き。
足首の関節が外れてしまうのも構わずに動く。
バジバジバジ!! という電気の音がした。
フィアンマは無言のままに『熾天玉座』を振るう。
雷神トールの身体が、ノーバウンドで吹っ飛んだ。

ガッ、と嫌な音を立てて、廃ビルにぶつかる。

トール「が、ッぐ、」

フィアンマ「…まあ、あれだよ。喧嘩を売る相手はもう少々考えた方が良いと思うぞ」

トール「……チッ」

舌打ちをし、トールはがくりと項垂れる。
しかし、彼の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

トール「噂通り、やっぱ強いな」

十二月半ばの空気は寒く。
彼の一言一言は白い呼気となる。
フィアンマは少しだけ考えて彼の足首を見やった。

フィアンマ「…外れているようだが、治療が必要か?」

トール「>>312

>>311

《今日はここまで。お疲れ様でした》


トール「ここ数年ドンパチばかりしてきたから身体にガタが来てるんだ…」

はー、と彼はため息を漏らす。
フィアンマ個人に恨みや敵意がある訳ではないので、その表情は晴れやかだった。
彼はフィアンマをのろのろと見上げて言う。

トール「魔術による傷もあるが、お願いできるか?」

フィアンマ「流石にここで間に合わせるのは不可能だがね」

言いつつ、フィアンマは彼に近寄る。
よいしょ、とトールの身体を抱えた。

お姫様抱っこで。


トール「」

フィアンマ「…流石に女よりは重いな」

トール「おい」

フィアンマ「何だ」

トール「もっと他の抱え方があっただろうが」

フィアンマは幼少期の上条に対し頻繁に発揮していたスキルを使い、進む。




家に帰ってきた。

五和「お帰りなさ…その方は?」

フィアンマ「>>315

フィアンマさん主役で、このスレ終わったらやって欲しい題材とかが浮かんでしまう…。
>>1的にはリクエストとか受けられそう?

スレ立てるのはこれで終わり詐欺をついったでしていましたが、リクエスト内容によってはお引き受け出来ると思います…

>>317
ちなみにどの様な題材でしょうか。

内部エラーで更新出来ない…ぐぬぬ

>>318まだ>>1のフィアンマスレが見たいんだが(迫真)。
題材は、何故か高校生になったフィアンマの学園ものギャルゲーみたいな感じ。
幼馴染、先生、部活の先輩後輩とか、いろんな禁書の女性キャラでやって、安価で色んなエンドまで…みたいな。
完全に要望なんだけどねww

>>319 ふむ、なるほど……うーん…短くなるかもしれませんが…このスレが終わったらやってみましょうか…(悩)》


フィアンマ「客人だ。しばらくここに住む。治療の手伝いを頼む」

トール「……」

お姫様抱っこされている状態と、フィアンマの聞く耳持たずに、トールは羞恥心を捨てた。
傷の痛みに身をゆだね、ぐったりとしている。
五和はそんな彼の様子とフィアンマの言葉に、こくりと頷いた。

五和「僭越ながらお手伝いさせていただきます!」

フィアンマ「ああ」

彼らはテキパキと動き、雷神トールの治療を始める。



トール「…だいぶ身体が軽くなった。……悪いな」

フィアンマ「いや、構わんよ。…ところで、お前の野望とは何だ」

トール「あー…世界で一番強くなることだな」

フィアンマ「そうか」

トール「…ああ、後迷子を捜してる」

フィアンマ「迷子?」

トール「おう。…フロイライン=クロイトゥーネっていう女は知ってるか」

フィアンマ「…あぁ、ヤツか」

フロイライン=クロイトゥーネ。
魔女狩りの時代において、神明裁判に308回ほど掛けられながらも、一切の傷を得ず、死に至らなかったとされる女性。
火刑・圧殺・溺殺・飢餓……等々、あらゆる方法において、命を落とさなかったどころか、ろくに顔色を変えることもなかったという。
しかし、時代的に情報精度が不確かな事もあり、彼女の特異な『伝説』は有象無象の中に埋もれてしまっている。
右方のフィアンマとはまた別の、未解明過ぎる不死の存在。

トール「知ってるのか?!」

フィアンマ「ああ、…神明裁判に幾度もかけられていたよ」

トール「………」

フィアンマ「…俺様は聖職者側だ。彼女を傷つける立場にあった。……止めるという発想は無かった、時代が時代だった」

トール「…、」

フィアンマ「歴史の途中から、あの女は姿を消した筈だが」

トール「そうだ。…最近になって、俺が目覚めさせた」

フィアンマ「どこかへ封印されてカタを付ける形としていたしな」

トール「……それで、あれだ。その、」

もごもごと、彼は言いよどむ。
首を傾げ、フィアンマは雷神トールを見つめた。

トール「…一目惚れしたんだが、逃げられた」

フィアンマ「何かを迫ったのか?」

トール「>>322

>>1ができるようであればで構わないです。
フィアンマの学生生活が見てみたいとふと思いついたってだけなんで…。

安価下。

>>323 便利な魔術『異界反転』ということで書いてみようと思います。…老若男女にモテるフィアンマさんみたいになりそうですが(定番パターン)》


トール「いや、何も…」

彼は首を横に振る。
迫ったといえば手を繋ぎたいと思った程度。
だが、手を差し出した時、フロイラインは怯えていたように見えた。
高性能の人工知能が、人と同じように物事を考えるように。
0と1で判断する彼女は、怯えという感情(きのう)を獲得してしまったのかもしれない。

トール「ただ、あいつ人間不信みたいな面もあったからよ…」

フィアンマ「…その程度の情緒は獲得したんだな」

トール「あん?」

フィアンマ「いや、こっちの話だ」

彼女は0と1で全てを判断し、より快適な方へと流れる生き物だ。
生まれつきすべてが揃っていたのか、はたまた何かが決定的に足りなかったのか。
喜怒哀楽といった感情は無かった筈なのだが、変わったのかもしれない、とフィアンマは思う。
ずっと昔、魔女狩り時代にパンを差し出した時、彼女は微笑んで食べていた。
喜怒哀楽の喜位はあったのかもしれないな、と今更ながらに感じる。

フィアンマ「…まあ、捜しておいてやるから、お前は寝ていろ」

トール「手当してもらったし問題な、」

立ち上がり。
トールはふらりとよろめいて、壁に手をついた。
そのままソファーへ膝をつき、項垂れる。

トール「……?」

フィアンマ「疲労熱だ。……五和、コイツを任せられるか。最悪、禁書目録の手を借りて昏倒させても構わん」

五和「はい…」

フィアンマ「ちなみにどの辺りに居ると予想しているんだ?」

トール「>>327

イギリスでローラと散歩してたって噂を聞いた


トール「イギリスで、最大主教と散歩してたって噂を聞いた。…本当だとするとマズい」

フィアンマ「…あの魔女狩りで有名なイギリス清教、だからな。安心しろ、伝手はある」

言葉を返して、彼は外へ出る。
はー、と息を吐いた。
金にも得にもならないことなのに、取り組んでしまうのは何故だろうか。

フィアンマ「…まあ、良いか」

上条に胸を張れる人生ならばそれだけで良いだろう、と彼は思う。
角度を計算し、数度踏み出して、イギリスへと向かった。




噂とは、徐々に内容がねじ曲がっていくものだ。
果てにはまったく関係の無いものが絡んでくる。
それこそが伝承や、魔女狩りなどの悲劇の正体。
伝言ゲームが失敗した場合と同じ。


そして。
フロイライン=クロイトゥーネは、イギリスでぼんやりと彷徨っていた。
路地裏に居た野良猫と見つめ合い、にゃー、と鳴き声を真似ている。
上下下着姿の彼女は、当然、路地裏の不良や、ならず者の男に絡まれ。
が、彼らは体内に生み出された謎の凝りにより、バタリと倒れる。
彼女には善意も悪意もなく、ただ怯えだけが存在していた。

フィアンマ「…フロイライン=クロイトゥーネだな」

フロイライン「……不思議な神父様」

フロイラインは、フィアンマを見上げる。
フィアンマは無言のままに、体内へ生み出された凝りを術式調整で消し去った。

フィアンマ「……どうした。何故、金髪の少年から逃げた」

彼女は、ゴキリ、と不自然に首を傾げる。

フロイライン「>>331

そういや神裂みこっちゃんエロ、ムギちゃん嫁入りエンドは…

ついでにローラ

『救世主との盟約によりその願いは承れません』って逃げられたんだけど……

>>330 エロはもういいよ…(怯え) 嫁入りエンドはや…りたかったが… ローラさんは…>>1の萌え範囲をお察しください》


フロイライン「約束だから、です」

フィアンマ「…約束?」

フロイライン「…逃げる事が、…約束だから、です」

『もうお前は、人々の遊興の為に虐げられなくて良い』
『封印術式は、お前の身を守る為にも行われるものだ』
『これ以上、殺されなくて良い』
『私は、死んでいません』
『…そうだな。お前はただ少し、身体が頑丈だった。だから、死ななかった』
『……』
『俺様と同じように、少し身体が頑丈だっただけの、普通の人間だ』
『……人間、』
『もしも、また目覚めることがあれば、…逃げられるだけ逃げろ』
『逃げる、…わかりました』
『……怖いと思わなくなるまで、どこまでも逃げてくれ』
『……はい』
『…俺様とお前は』
『私と、不思議な神父様は』
『『人間だ(です)』』

遠い昔の話だった。
一歩間違えば、フィアンマがフロイラインのように魔女狩りの被害を受けていたかもしれない。
だから、彼は彼女と一つ、約束をした。
封印が解かれたその時、フロイラインが逃げる、ただそれだけの約束を。

フィアンマ「……」

忘れていた。
が、思い出した以上約束など無かったと言い切る訳にはいかない。

フィアンマ「…あの少年は、お前に好意を抱いている。怯える必要は無い。逃げなくて良い」

フロイライン「……」

フィアンマ「…もう、あの暗黒時代は終わったんだ。お前は、今、普通に生きていて良い。逃げずとも、幸せに暮らす事が出来る」

フロイライン「>>335

>>334

修造フィアンマ「どおぉしてそこで諦め(ry

せめて、
   ム
   ギ
   ち
   ゃ
   ん
   を

何故怯えるのか。
ワイは好きやで(ニッコリ

>>336 鬱造フィアンマ「いや〜、俺様の救済を拒んだ世界なんて転がり落ちれば良いよね(原作)」 娘さん結婚は書きたいですけど >>337 エロ描写苦手です(食い気味)》


フロイライン「そう……なんですか? 本当に?」

聞き返しながら。
そんな彼女の目には、涙が浮かんでいた。
野良猫が彼女の脚に擦り寄り、ごろごろと喉を鳴らす。

フィアンマ「本当だ。……だから、…約束は、もう終わりだ」

フロイライン「…約束は、終わり」

復唱して、彼女はこくりと頷く。
フィアンマは彼女の前にしゃがみ、ハンカチで目元を拭った。
安堵感に、ぼろぼろと涙を流し、彼女は普通の女性のように泣いた。



流石に上下下着姿の女性と一緒に外に居る訳にはいかない。
そんな訳で、フィアンマは服屋へ行き、戻って来た。
フロイラインの2メートル程の身長を鑑みて、大きめの服である。
路地裏へと戻ってくると、彼女は彼女の隣りに屈んだ誰かと会話をしていた。

フィアンマ「……」

フロイライン「…お帰り、なさい」

フィアンマ「フロイライン、その女から離れろ」

言われるまま、フロイラインは少女から離れる。
そうして、フィアンマの後ろに隠れた。
少女は黒い衣装に、鍔広の帽子を被っている。

魔神オティヌス。

彼女は、そう呼ばれていた。

オティヌス「…そう警戒するな」

フィアンマ「……フロイライン=クロイトゥーネに何か用か?」

オティヌス「そうではない。…どちらかといえば、お前を捜していた。右方のフィアンマ」

フィアンマ「…俺様を? 何の為に。必要性が見えないがね」

オティヌス「………>>340

オッレルスを知らないか?
逃げられた


オティヌス「………オッレルスを知らないか?」

彼女の隻眼はというと。
しょんぼりと落ち込んでいた。
フィアンマは拍子抜けしながら、フロイラインに紙袋を手渡す。
中の服を突っついて首を傾げている彼女に着衣しろと促して。

オティヌス「逃げられたんだ」

フィアンマ「……」

オティヌス「ただ押し倒そうとしただけだというのに、…ふふ、照れ屋なヤツめ。数年かかったが、ようやく手がかりを見つけたぞ」

フィアンマ「…話が見えないが、ひとまず言っておこう。俺様とオッレルスに何の関係がある」

オティヌス「友人なのだろう?」

フィアンマ「………」

逃げようとするフィアンマ。
彼の手首を掴むオティヌス。
マイペースに服を着終わるフロイライン。

冷や汗をかくフィアンマを見上げ、オティヌスは言う。

オティヌス「オッレルスとの仲を取り持ってくれ」

フィアンマ「俺様に頼むな、そういう縁繋ぎが得意な人間の所へ行け」

オティヌス「そもそもオッレルスの知り合いが少ない」

フィアンマ「……」

フロイライン「…どうします、か?」

フィアンマ「…>>344

わかった、オッレルスといい雰囲気の店はセッティングしてやる。

その代わり後は知らん。お前次第だ

>>343


フィアンマ「…わかった、オッレルスと良い雰囲気の店はセッティングしてやる」

オティヌス「ふむ」

フィアンマ「その代わり、後は知らん。お前次第だ」

オティヌス「…ひとまずはそれで良いか」

フィアンマ(……何故お前はこんな女に好かれたんだ)

ため息を飲み込むフィアンマ。
彼は悩んだ後、オティヌスに連絡をする旨を告げ、フロイラインの手を引いた。
角度を計算し、同じように進み、同じようにイタリアへと戻る。


帰り道の途中、オッレルスに会った。
タイミングが良いな、とフィアンマは思う。ひとえに彼の幸運故だ。

オッレルス「あれ、また女性を…いや、良いか。君の自由だしね」

フロイライン「?」

フィアンマ「…お前に言うべきことがあるのだが」

オッレルス「うん?」

フィアンマ「言葉に悩んでいる。どう言えば良いのか」

オッレルス「? 何でも言ってくれ。頼みごとかい?」

フィアンマ「頼みといえばそうかもしれないのだが…」

フィアンマ(嘘をついてセッティングするべきか)

オッレルス「…珍しく歯切れが悪いね」

フィアンマ「……泣くなよ?」

オッレルス「流石に街中で泣くつもりはないよ」

フィアンマ「>>347

いや、その…知り合いの少女から頼まれたんだが…

お前にどうしても好意を伝えたい、ただ直接頼んでもあまり接点がない私では来てもらえるか自信がないから何とか取り持ってもらえないか、と…

どうだ?お前がシルビアを愛してるのは知っているが、せめて会うだけでもお願いできないだろうか?

>>346



フィアンマ「いや、その…知り合いの少女から頼まれたんだが…」

嘘をつけば支障が生じる。
そう思い、誤魔化し半分、詳しく言わない半分で何かとしよう、とフィアンマは考えた。
なので、オティヌスが相手だということは伝えないでおく。

フィアンマ「お前に『どうしても好意を伝えたい、ただ直接頼んでもあまり接点がない私では来てもらえるか自信がないから何とか取り持ってもらえないか』、と…」

オッレルス「…ふむ」

魔神を黙せるのは、同じ魔神だけ。
そんな訳で、オッレルスはフィアンマの本心を見抜けないようだった。

フィアンマ「どうだ? お前がシルビアを愛しているのは知っているが、せめて会うだけでもお願いできないだろうか?」

オッレルス「…うーん」

フィアンマ「美味しい食事の店には心当たりがある。セッティングはこちらで済ませておくから、お前は会ってやるだけで良いんだ」

オッレルス「…と、言われても…」

フィアンマ「……頼む。…それに、男として自分を好いている女と顔を合わせる位はするべきだと思うぞ」

オッレルス「……じゃあ、お願いするよ」

フィアンマ「詳しい事は後々連絡する」

頷いて、彼は何処かへ歩いて行く。
特に目的は無さそうなので、恐らく散歩だろう。
フロイラインが興味を示した為、パンを差し出す。

フロイライン「…美味しい、です」

フィアンマ「そうか、良かったな」

フロイライン「…手を繋ぐと、安心、します」

フィアンマ「……それは、『機能』か?」

フロイライン「>>350

いえ、これは、きっと、『心』

>>349

なんだか嬉しいです。
これも心ですね

《…誤爆? フロイラインちゃんのおっぱいは何カップだろう》


フロイライン「いえ、これは、きっと、『心』」

彼女は、フィアンマの手を数度握る。
長い時間をかけて、優しさを受けて。
快適さを求めるだけの生き物から、人間へと、彼女は変わろうとしている。
彼女は今、自分が普通の人間のような笑みを浮かべている事に、気づいているのだろうか。

フロイライン「なんだか、嬉しい、です。…これも、心ですね」

フィアンマ「……そうだな」

長い時間を生きるには、彼女のような精神構造の方が良いのかもしれない。
フィアンマはそう思ってきたが、考えを改める。
自分たちは人間なのだから、人間として生きて良いのだ。

フィアンマ(…とまでは、思えないがね)

ガチャリ、とドアを開ける。
トールの額に、五和が冷えピタを貼っている所だった。

五和「先ほどの『迷子』さんでしょうか?」

フィアンマ「ああ。イギリスで捕まえてきたところだ」

トール「ん…フロイ、ライン…」

フィアンマ「……あの少年は、お前に好意を抱いている。だから、お前のことは傷つけない。…お前は、どうしたいんだ?」

フロイライン「>>354

特には何も。

私はまだアレがどういうモノかわからないから

あのお札、はがせ


フロイライン「よく、わからないのでこれから理解していきたい」

フィアンマ「…まあ、時間はあるからな」

トールの熱が下がるまでは此処に居させよう、とフィアンマは決める。
億劫そうに立ち上がり、だらだらと壁にチョークで魔術記号を記す。
部屋の広さを広げ、空間を捻じ曲げる術式だ。
部屋を増やしたところで、フィアンマは目をこする。
少し眠いのだった。我慢するのだが。

フィアンマ「…複製…ん、問題無いな。五和、ソイツをこちらの部屋へ移す。手伝ってくれ」

五和「はい」

五和はフィアンマと共にトールを抱える。
そして、増やされた部屋のベッドへ横たわらせた。
フロイラインはというと、目の前のお菓子に興味を示している。
五和はトールを運び終わり、台所へと戻る。
フィアンマは部屋に残り、トールを見やった。

トール「…悪い」

フィアンマ「いや、…俺様の知り合いでもあったしな」

トール「……なあ」

フィアンマ「ん?」

トール「>>358


トール「ありがとな…」

フィアンマ「…そもそも、ヤツが迷子になったのは俺様の責任だ。気に病むな」

トール「? お前の責任? …それと、何か甘い物が食べたいんだけど、無い?」

フィアンマ「甘い物であれば常にあるぞ。少し待っていろ」

言って、彼はリビングへと戻る。
フロイラインがすごい勢いでもぐもぐとお菓子を食べていた。
一度興味が湧いてしまうと、とことんやってしまうようだ。
フィアンマは気にせず冷凍庫を開け、アイスを器へとよそう。
脂肪分の少ない、比較的氷に近いアイスである。
スプーンを添え、トールへ持っていった。
トールは素直に受け取り、もぐもぐと食べ始める。
熱を持った体にとって、ひんやりとした氷華は美味しいものだ。

トール「…美味ぇ」

しゃくしゃくと食べ、トールは息を吐き出す。
フロイラインが見つかった事もあり、安堵したのだろう。
フィアンマはリビングへ戻り、フロイラインの隣へ座る。

フィアンマ「…菓子が気に入ったのか?」

フロイライン「>>361

嗜好品として問題ないモクモク

こんなに美味しいものは初めて食べましたニコニコ


フロイライン「こんなに美味しいものは、初めて食べました」

にこにこ、と彼女は穏やかに微笑む。

かつては、鉄塔の先端に括りつけられて浮かべているものだった。
かつては、水に沈められて浮かべているものだった。
かつては、糾弾されながら浮かべているものだった。

フィアンマは、彼女の笑みに意味が篭っていないことを知っている。
けれど、徐々にそうではなくなってきていることも分かった。
手を伸ばし、彼女の髪を優しく撫でる。
フロイラインは不可解そうに首を傾げ、薄く笑んだままでいた。




それから、二日が経過して。
トールは全快し、部屋を出ようとしていた。
フィアンマはフロイラインを見やる。
トールも、不安げに彼女を見やった。

フィアンマ「……ついていくか?」

トール「…ついてきてくれ」

フロイライン「>>364



あ、これからよろしくお願いしますね
雷神さん

《飯食ってきます》


フロイライン「…」

彼女は黙って、フィアンマを見つめる。
そして、0と1の思考の結果をはじき出した。

フロイライン「お菓子食べに来ても、良いですか? 良いなら、ついていきます。お菓子は重要です」

フィアンマ「それは構わん。好きにしろ」

トール「…菓子なら買ってやるけどな」

フロイライン「あ、これからよろしくお願いしますね。…雷神さん」

彼女の視線を受け。
雷神トールは、薄い笑みを浮かべる。
少し照れているようにも見えた。

フィアンマ「…元気でな」

フロイライン「はい」

こく、と頷き。
そうして、二人は出て行った。


五和に作ってもらったおやつを食べながら。
フィアンマはふと、オッレルスとオティヌスの逢瀬の結果が気になった。
のんびりと用意をし、通信術式を仕掛ける。

フィアンマ「…聞こえるか? "彼女"には会えたか?」

オッレルス『>>367

…搾り取られた…

↑シルビアと二人で

あぁ…会えたよ…この世で一番会いたくなかった女性にな…

謀ったなフィアンマッ!どうして一言でも彼女について情報をくれなかったんだ!おかげで一日中『デート』と称してあんな事やこんな事を強いられたんだぞ!

どうしよう…シルビアに嫌われる…シクシク


オッレルスさん爆発しろ…早急にだ…


コンマにしてやる…(嫉妬)
フィアンマさんの声優さんはAUOの中の人が良いな…声優さん詳しくないが

尚、どちらの内容でもフィアンマさんがキレる模様

どちらかといえばオティヌス一本化を…

は ぁ ー 、 甘 い も の 食 べ た い !

《流れにワロタ オッレルスさんは殺させないぞ…!》


>>+1のコンマ一桁(いつもの優しい救世主にかわりまして憤怒の神の如き者がお送りします [sage]:2013/03/19(火) 18:59:00.9『3』)でオッレルスの返答決定


0〜7 >>368

8.9 >>367(+>>366) 

えいっ

>>384 20:32:23.1『1』 結果:>>368 ご協力ありがとうございます》


オッレルス『あぁ…会えたよ…この世で一番会いたくなかった女性にな…』

返ってきた返答は、重苦しく。
そして、恨みなどを湛えたものでもあった。
その割に彼の言葉遣いは汚いものではなかったが。

オッレルス『謀ったな、フィアンマッ! どうして一言でも彼女について情報をくれなかったんだ! おかげで一日中『デート』と称してあんな事やこんな事を強いられたんだぞ!』

フィアンマ「……そうか」

オッレルス『どうしよう…シルビアに嫌われる…っうう…』

しくしく、と落ち込む声。
ぐす、と鼻を啜る音も聞こえる。

フィアンマ「…そうか、それは可哀想に」

オッレルス『うう……』

フィアンマ「……とでも言って欲しかったか?」

オッレルス『……?』

にっこりと笑み。
フィアンマは、手にしている板チョコをバキッ、と真っ二つに折った。
結構な分厚さのそれを折った音は、自然とオッレルスの耳へ届く。

フィアンマ「俺様は、お前の友人だ。大切な友達だと、そう思っているよ。だからこそ言うぞ」

オッレルス『…な、何を怒って、』

フィアンマ「甘ったれるのもいい加減にしろ貴様!! 何が強いられた、だ。嫌われるも何も、きちんと拒絶しない己に落ち度があると何故認めない!? 大体、好きでもない男と自らの意思で共に暮らす女が居るとでも思っているのか。何か恩を売った訳でもないというのに。だというのにお前はいつまでもいつまでも自らが傷つきたくないからという曖昧で臆病でどうしようもない弱虫であるが故に告白もしなければアピールもしない。魔神オティヌスに本気で抵抗も出来なかったクセに、嫌われるのが嫌だなどと弱音をほざくな!! どちらかに絞れないのならいっそどちらにも断りを入れておけ、それが筋ではないのか。自分一人で話を通す事すら出来ないのか。現実を見ろ、向き合え、戦え、やることはやれ。一人の女の為に貞操をしっかりと保つ自信や気の強さも無いというのなら恋などやめてしまえ。いじいじめそめそじとじとと、告白出来ないじゃない、告白"する"んだよ。お前がいつでも哀れんでもらえると思うな…!!!! 勇気が無いのなら俺様が伝えてやっても良いんだぞ。お前のような馬鹿者など失恋しろッ、クソッたれ!!!」

オッレルス『』

はー、はー、とフィアンマは肩で息をする。
怒鳴った興奮によってズキズキと頭が痛んだ。
深呼吸をしながら、フィアンマはため息を吐き出す。

フィアンマ「……返事は」

オッレルス『>>388

↑(結果はOKで)

流石のフィアンマさんも見てられなかったようですww


オッレルス『ジルビアにごぐばぐじでぎばず!』

シルビアに告白してきます、という言葉だったらしい。
らしいのだが、涙声が酷く、ほとんど言葉としての形を成していない。
しかしながら天使語さえ聞き取るフィアンマの耳に問題はなく。

フィアンマ「分かったなら早くしろ」

オッレルス『ぐすっ、…』

通信が切れる。
すー、はー、と深呼吸を繰り返した。
本気で人を叱ったのは久しぶりである。
自分で自分を叱った時以来ではないだろうか。
部屋から出てきたグラーノはというと、通信霊装に向かって怒鳴っていたフィアンマを心配そうに見る。
彼女は彼が怒ったところをほとんど見た事が無いのである。
そもそも、フィアンマは滅多な事では怒らないが。

グラーノ「……ぱ、パパ」

フィアンマ「…ん?」

先程折った板チョコをばりもぐと食べ、フィアンマは首を傾げる。

グラーノ「……今、怒ってた…?」

フィアンマ「>>393

>>392
怒ったというか説教だな
大丈夫、安心しろグラーノ さぁ甘いものでも食べよう


フィアンマ「なあに、友達の歪んだ性根を真っ直ぐにしてやっただけだよ!」

にこー、と笑む彼は穏やかだ。
怒りを吐き出してスッキリしたのである。
実に人間らしい反応、対応なのだった。

フィアンマ「怒った、というか、説教だな。大丈夫、安心しろグラーノ」

グラーノ「? …うん」

フィアンマ「さぁ、甘い物でも食べよう」

グラーノ「う、うん…あ、シフォンケーキだ!」

五和「グラーノちゃんの分は冷蔵庫に冷やしてありますよ。お好みで生クリームもどうぞ」

グラーノ「ありがとう、メイドちゃん」

上機嫌にグラーノは冷蔵庫を開ける。
小さい方のシフォンケーキの乗った皿を取り出し、控えめにクリームをかけた。
久々にミサカネットワークへ接続した結果、ダイエットに目覚めたのである。

フィアンマ「…食べる量が少ないな」

グラーノ「う、……ねえパパ」

フィアンマ「んー?」

グラーノ「パパはやっぱり、ほっそりした女の子の方が好き? あ、胸じゃなくてね、お腹周りとかお尻とか、色々と…全体的に」

フィアンマ「>>397

ウエストは細い方がいいな色んな意味で。くびれが最高だ縦に細長い臍もすばらしい。

尻は肉量がある方がいいな、揉み心地がいい。


あくまで一般論だが、そんな見た目ならモテる


フィアンマ「ウエストは細い方がいいな、色んな意味で。くびれが最高だ。縦に細長い臍もすばらしい」

グラーノ(やっぱり男性は皆そうなんだ…)

フィアンマ「逆に、尻は肉量がある方がいいな。揉み心地が良い」

グラーノ「も、揉み、っ」

グラーノ(…パパだって男の人だからそういうことだって言うよね。……ミサカ何ショック受けてるんだろう)

フィアンマ「あくまで一般論だが、そんな見た目ならモテる」

グラーノ「…モテ?」

フィアンマ「そういう話ではなかったのか? 俺様の好みに体型を変えてどうする。どのような見目にしろ、娘に欲情、或いは恋愛感情を抱く父親は異常だと思うぞ」

グラーノ(……じゃあ今のは一般論だけ?)

グラーノ「そりゃ、…そうだけど。……でもついでだからパパの好みも知っておきたいなー、って」

グラーノ(他個体の為にも)

フィアンマ「…そう言われてもな。所詮、容姿など第一印象決定に過ぎない。太っていようが痩せていようが、内面がきちんとしていれば何も問題は無いな」

見た目に拘る年齢など、とうに過ぎている。
フィアンマは肩を竦め、チョコレートを食べ終わった。
シフォンケーキの残りも、ついでにもぐもぐと食べ終えてしまう。
グラーノもそそくさと食べつつ、ダイエットをするべきか悩む。

グラーノ(でも女の子はダイエットに興味を持つ生き物、ってテレビで言ってたし…)

フィアンマ「……好きな男が居るのなら、直接ソイツに好みを聞いた方が早いと思うが」

グラーノ「>>401

ん、そうするー

おめぇだよ


グラーノ「一応さ! 念のため! ほら! 女の子はパパに似たタイプ好きになるって言うしさ!」

グラーノ(ミサカネットワークに情報を流してあげていることは内緒にしておこう…)

先程のフィアンマの怒声を思い返し。
グラーノは自分が怒られた訳ではないものの、ぶるりと震える。
あんな感じで怒られたら流石の自分でも泣きじゃくってしまうだろう。

もっとも、グラーノがあそこまで怒られるようなことをする訳もないのだが。





夜。
悪夢を視て、フィアンマは目を覚ました。
ふらふらと壁に手をつき、歩く。
ガチャリとドアを開けた。
ドアの開いた音により、五和が目を覚ます。

五和「…ご、ご主人様?」

どうかしたのだろうか、と彼女は起き上がって座り、首を傾げる。
フィアンマは彼女に近寄ると、ベッドへ膝をついて彼女の身体を抱きしめた。

五和「……どうか、したんですか?」

フィアンマ「…戦争が、起きて。……お前を、喪った夢を視た」

彼の息遣いは浅く、やや早い。
恐怖心を感じている人間特有の、ある種の興奮した息遣いだった。
怯えている、と五和は感じる。

フィアンマ「俺様は戦争を終わらせる為に戦地へ出向いていて、……お前は、安全なシェルターから外へ出たところを、刺客にやられた。アックアが助けに駆けつけたが、間に合わなかった。治療が間に合わず、お前は死んだ。……お前の死体を、直視することさえままならなかった。墓前で謝った。インデックスに慰められた。全部自分のせいだと思った。……自分の、…俺様の、せいだと、……」

掠れた声は、今にも泣き出しそうに震えていた。
自分よりずっと年上のはずのフィアンマが、子供であるかのように、五和は感じた。

五和「>>405

夢、ですから…大丈夫ですよナデナデ

私はここに居ますから。

…例え死んだってあなたの側にいますから。

安心してください。…ほら、今夜は一緒に寝ましょう?

貴男のお役に立てたのならば、その『私』も本望だったでしょう…
>>404


五和「貴男のお役に立てたのならば、その『私』も本望だったでしょう…」

彼女は手を伸ばし。
手のひらで優しく、彼の頭と背中を撫で、摩る。

五和「夢、ですから…大丈夫ですよ」

フィアンマ「……、」

五和「私はここに居ますから」

五和は、不謹慎ながらも、彼が悲しんで、同じく哀しいながらも。
自分が死んだ、ただそれだけで悲しんでもらえて嬉しいと、思った。
それだけ、自分という存在が彼の中で割合を占めていられて、嬉しいと。

五和「…例え死んだって、あなたの側にいますから」

きっと、彼の夢の中の自分も。
死んで、霊魂となって、彼の傍に居た筈だ、と思う。

だから。

五和「安心してください。…ほら、今夜は一緒に寝ましょう?」

彼女は彼の手を引き、隣りにスペースを空け、ぽんぽんと叩く。
フィアンマは促されるまま、彼女の隣に入った。
五和は指先で毛布をつまみ、彼の肩までかける。

五和「……夢です。私は、今、生きて、ここにいて、呼吸して、笑って、泣けます。ですから、貴男が悲しむ事なんて何もありません」

フィアンマ「……>>408

>>407


フィアンマ「……そうだな……すまない……」

息遣いは、段々と落ち着きを取り戻していく。
五和は、彼を安堵させるように、再び抱きしめる。
体格差による影響で、ほとんど抱きつくようにして。
フィアンマは彼女の頭を撫で、抱き寄せる形で、呟く。

フィアンマ「だが、…泣かせてくれ…」

今だけで良い。
少しだけで良い。
それ程に怖かった。
悲しかった。
辛かった。
悔しかった。
憎らしかった。
自分が疎ましくなった。

夢だった、その一言で片付けられない程の苦悶が、胸の中で渦巻いている。
制御出来なかった感情のまま、瞳から溢れ出す体液を、手の甲で拭う。
五和はフィアンマを抱きしめたまま、泣いても良いです、と静かに頷いた。




翌日。
フィアンマは酷い目覚め方で目を覚ました。
具体的に言うと、インデックスに噛み付かれた訳である。

頭に。

未だ続く痛みに頭を自分の手で摩り、フィアンマはインデックスをジト目で見やる。

フィアンマ「何だというんだ」

インデックス「自分の胸に聞いてみたら良いかも」

フィアンマ「……俺様は潔白だ」

インデックス「いつわと同じベッドで寝ていたのに?」

フィアンマ「…少し、…色々とあっただけだ。夢見が悪かったんだよ」

インデックス「……」

ガチガチガチ、と彼女は無言で歯を鳴らす。
怒っているのだった。だいぶ。

フィアンマ「…どうしろと言うんだ」

インデックス「>>411

じゃあ、ちょっと私を抱きしめてみて?


クンカクンカ……うん、特有の匂いもキスマもない。疑って悪かったんだよ


インデックス「じゃあ、ちょっと私を抱きしめてみて?」

フィアンマ「…それで何が分かると、」

インデックス「良いから早く」

ぷく、とインデックスは頬を膨らませる。
なるべく妬かないようにはしていても、彼と付き合いが深いという意地がある。

インデックス「すんすん」

仕方なしにインデックスを抱きしめるフィアンマ。
彼女は彼の服に鼻を寄せ、犬猫のようにくんかくんかと嗅ぐ。

インデックス「……うん、特有の匂いもキスマークもない。疑って悪かったんだよ」

フィアンマ「………」

真面目に謝罪されたので、怒るに怒れず。
ため息を飲み込み、フィアンマはインデックスから離れる。
携帯が震えた為、取り出してみた。
美琴からの電話だった。

フィアンマ「…何かあったのか?」

美琴『いえ、何も無いんですけど、今ミラノに来てまして…また短期留学なんですけど』

彼女の背後の音は『電話相手はどなたですのお姉様! お姉様!?』などと騒がしい。

フィアンマ「ふむ。…宿が見つからないだとか、そういう話か?」

美琴『>>414

いえちょっと……

変なのに絡まれ

そ、そうなんです…
もし良ければ、フィアンマさんの所に泊まらせてもらえないでしょうか?
妹の顔も見たいですし、フィアンマさんとお話もしたいので…



美琴『そ、そうなんです…』

実を言うと嘘である。
まったくの嘘ではないと言えばそれも嘘になってしまうが、別に宿を見つけられない訳ではない。
しかしながら、彼女の優秀な頭脳は、フィアンマ宅への宿泊を思いついた。
思いついてしまっては、自分の考えに背く事など出来はしない。

美琴『もし良ければ、フィアンマさんの所に泊まらせてもらえないでしょうか?』

フィアンマ「此処に?」

美琴『妹の顔も見たいですし、フィアンマさんとお話もしたいので…』

フィアンマ「……」

フィアンマは無言のままに、部屋を見やる。
トールの為に作っておいた部屋があるのだった。

美琴『ホテル代にしようと思っていたお金があるので、食費等は問題無いと思います』

フィアンマ「そうか」

そちらの心配はしていなかったのだが、スペースや金銭上の問題はない。
フィアンマは一旦通話を保留し、インデックスを見やる。

インデックス「? どうしたの? 何かトラブルがあったの?」

フィアンマ「いいや、…お前が一度会った、短髪で、茶髪の女学生が家に来てしばらく宿泊していくが、良いか?」

インデックス「>>417


インデックス「今日は短髪ようこそパーティーするんだよ!」

にこ、と笑みと共に明るい返答。
要するにオッケーということらしい。

インデックス「今日来るの?」

フィアンマ「恐らくな。…ああ、悪かった。待たせたな」

美琴『いえいえ。いつ頃お伺いすれば…?』

フィアンマ「これからすぐでも問題無いが」

美琴『! じゃあ荷物を持ってお伺いしますね…。…すいません、後輩が増えそうなんですけど…』

フィアンマ「大覇星祭の際に会ったツインテールの少女か」

美琴『はい…』

フィアンマ「構わんよ。ただ、部屋が同じになってしまうが」

美琴『元々寮で同室なので大丈夫です、お気遣いありがとうございます。準備するので、一回切りますね』

フィアンマ「ああ」

通話を終える。
最後まで美琴の後ろは騒がしかった。



三時間後。
午後一時に、美琴と黒子はやって来た。

フィアンマ「…部屋は入って先を右に曲がれば良い」

グラーノ「お姉様お久しぶり!」

黒子「妹君ですの?」

美琴「そうそう。じゃあちょろっと荷物置いてきますね」

言って、お嬢様二人は部屋へと消える。
フィアンマはひとまず、彼女達から受け取った食費及び生活費を五和に渡す。
五和は受け取り、中身を確認し、やりくり内容を考えて頷く。
まるで妻である。

グラーノ「…ねえパパ」

フィアンマ「ん?」

グラーノ「結局、ミサカのママは誰ってことになるの?」

フィアンマ「げほ、」

グラーノの唐突な質問に、フィアンマは飲んでいた水で思わず咽る。

フィアンマ「いきなり何を、」

グラーノ「パパの周りっていっぱい女の子居るし、女性も居るし、だから気になって」

フィアンマ「…>>420

お前は、誰がいいんだ?


…お前が納得する母親を俺様は伴侶にしよう

シルビア

うーむ、遺伝子学的には美琴なのだが…
性格や年齢を鑑みると……俺様にも分からん…
>>419

>>419

(その会話は全員に聞こえていたヴェントとねーちんはたまたま電話してた誰かの受話器からとか)



>>+1のコンマ二桁(右方の赤にかわりまして神上がお送りします [sage]:2013/03/19(火) 23:23:16.『33』←ココ)でフィアンマの発言決定



00〜68 >>419(+>>422

69 >>420

70〜99 >>419(+>>421

もし>>421が安価なら>>422も追加でお願いします

もう無視でええやん…何言ったってわからないならもう放置しかないやん?

ほら、特殊学級の子と一緒に授業受けた時を思い出すんだ!

>>425 23:27:24.『86』 結果:>>419(+>>421)→(>>422) 混乱しかけた問題無い ご協力ありがとうございます …ローラさんは除外で(小声)》



フィアンマ「うーむ、遺伝子学的には美琴なのだが…。性格や年齢を鑑みると……俺様にも分からん… …お前は、誰がいいんだ?」

彼自身に、特別に好き嫌いは無い。
好きと言えば好きだが、恋愛感情としてのそれではない。
故に、結婚に関しても特に際立った思考や強い考えは無い。

フィアンマ「…お前が納得する母親を、俺様は伴侶にしよう」

美琴は部屋から出ようとしていた。…聞いていた。
神裂は彼に連絡をしようと霊装と通信を繋いでいた。…聞いていた。
五和は料理の支度を開始しつつ。…聞いていた。
インデックスは料理を頬張りながら。…聞いていた。
ミサカネットワークはその言葉を。…聞いていた。
前方のヴェントは業務連絡をする為に霊装と通信を繋いでいた。…聞いていた。

そして、思った事は皆同じだった。
控えめに想いを胸に湛える者も、大胆にアプローチをしている者も。

私が選ばれたい

その一言へと収束する。

グラーノ「うーん……ミサカが決めちゃうの?」

フィアンマ「決めて良いぞ」

グラーノ「じゃあ…」

父親とは、往々にして娘に甘いものである。
フィアンマもその類に漏れなかった。
もっとも、彼は息子のように思っているとある少年にも甘いのだが。

グラーノ(お姉様に味方してあげたいのは山々だけど、ミサカネットワークの皆も必死だしなぁ。かといって神裂さんも優しいし、ヴェントさんも姉御肌で格好良いし、インデッククは同い年だけど包容力? あるし、メイドちゃんは健気で可愛くてお料理上手いし、……うーん?)

考え込むグラーノへ、慌てて美琴とインデックス、五和が近寄った。

美琴「そ、そんなに慌てて答え出すモンじゃないわよ」

五和「そうですよ、もっとゆっくりじっくり考えましょう」

インデックス「急いで思考してもロクな結果は出ないかも。熟考って大事なんだよ!」

三者三様の慌てぶりである。
そんな彼女達を見つつ、黒子はフィアンマへ近寄る。

黒子「…無責任だと思いますの」

フィアンマ「これ以上に最善の方法は無いと思うがね」

黒子「>>437

そんな事をしなくとも、この黒子を選べばよろしいじゃありませんか?(ジョーク)

皆ママが良いって言われたらどうするんですの

>>437
そしてスレタイ回収か…フィアンマさん大変だね(意味深)

《今日はここまで。お疲れ様でした。 …ハーレム飽きたので学園生活スレはやっぱり厳しいです…》


黒子「皆ママが良いって言われたら、どうするんですの」

フィアンマ「………」

黒子「…考えていなかった、という顔をなさっていますわね」

フィアンマ「……その時は全員を妻に迎える他あるまい」

何とも無計画な彼の発言に、黒子はため息を漏らす。
そんな彼の発言に、三者はグラーノを見た。
ホラー映画ばりに、グルン、と六つの目が自分を捉え、グラーノは怯える。

グラーノ「……」

美琴「…ねえグラーノ? 『皆ママが良い』っていうのはどう?」

インデックス「それが名案かも」

五和「どうでしょうか?」

にこにこと笑む三人の少女。
と、ドアがノックされた。
フィアンマが応答すると、そこには前方のヴェントと、神裂火織が立っていた。

ヴェント「諦めたつもりではいたんだケドね」

神裂「唐突な訪問、申し訳ありません。しかし、私にも女の意地というものがあります」

言って、二人はグラーノへ詰め寄る。
女に囲まれ、グラーノは怯えつつ逃げ出した。

グラーノ「うわあああん助けてええええ!」

ばっ、と彼女はフィアンマの後ろへ隠れる。

フィアンマ「……」

グラーノ「…全員って言わないと殺られるかな…?」

グラーノはおずおずとフィアンマの服を掴む。

フィアンマ「それは無いと思うが、…まあ、あれだ。…さっさと決めてしまえば良い」

グラーノ「……じゃあ、…………全員」

ぼそ、と彼女は言う。
女性陣の目が、フィアンマを見た。

フィアンマ「…>>441

かくしてローマ正教を中心とした、人類史上に残る大規模ハーレムが誕生したのであった

…なんだコレ…いくらフィアンマさんでも身体(主に腰)が保たんぞ…

子供で国が出来るな。

>>443
しかも全員が『神の子』のDNAを半分受け継いでいるという…(しかもその内何人かは『聖人』と『神の子』のハイブリッド)

文字通りの『神の国』が生まれるな…

上げてしまっ…>>1なんで許してください
スレタイ回収して明日終わりますね


突然の謝罪に吹き出してしまった(小並感)

乙。もう終わりなんだな…ムギちゃんはどこに嫁入りするのか


このスレタイ見た時フィアンマさんが死ぬ時になってインちゃんが呟いて終わる、とか、インデックス「>>1はね、疲れちゃったの」に見えたりしてたww

>>448
ムギちゃん関連の命名安価にことごとく当たった自分としてはマジで気になるぜ、嫁入り先…
フィアンマさんが号泣するくらい立派な式になると良いな…そして何より彼女に幸せになって欲しい…

それと>>1本当にお疲れ様、でも小ネタも期待してるよ
語録のネタとかフィアンマさんによるグラーノ成長日記とか色々あるよね(ゲス顔)

そりゃスゲーな…

>>1はマジお疲れさんだわいな


婿候補

テッラさん(絵面が…)

海原(本物)

上条さん(ハーレムに追加)

教皇(大穴)

一方通行(絶対一悶着)

垣根(アカン)

後誰かいいのいたかな…

テッラさんが絵面を除いてはこの中で一番婿候補として優秀であるという…

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