欠陥製品「戯言だけどね」人間失格「そいつは傑作」(104)

いーたん「やぁ、人間失格」

ぜろりん「お、久しぶり欠陥製品」

いーたん「こんなところで遭うなんて奇遇だね」

ぜろりん「かっ、確かに奇遇。傑作だぜ」

いーたん「そういえば僕に遭わないために遠くにいったんじゃなかったっけ、例えばアメリカとか」

ぜろりん「馬鹿いってんじゃねぇ、俺だってお前に遭いたくはなかったっつぅの、今はちょっと妹から逃走中だから仕方なくここまで来たんだよ」

いーたん「へぇ、妹」

ぜろりん「つっても兄貴に押し付けられた妹だけどな、あんま好きじゃねぇ」

いーたん「一番嫌いな人は?」

ぜろりん「お前」

いーたん「そいつは傑作」

ぜろりん「戯言だけどな」

人識「さてと、暇だし話でもするか」

戯言「僕はあんまり暇じゃ無い」

人識「は? お前って出席日数ヤバめの大学生(暫定)じゃなかったっけ」

戯言「(暫定)って言うなよ、僕そんなに休んでないぞ? 休んだ時にいつも誰かが死ぬだけ」

人識「はた迷惑な野郎だ」

戯言「殺人鬼に言われたくない」

人識「かはは、違いねぇ」

戯言「ということで、休んだ分の追試を受け、宿題になっていたレポートを僕のことをいっくんと呼んで慕ってくれている友達に写させてもらって、その後遊ぶ約束をしていた崩子ちゃんとお出かけして、その途中哀川さんに拉致られて、ようやっと解放された帰りなんだ」

人識「つまり暇だろ?」

戯言「そりゃあ、戯言だからね」

人識「本家本元には敵わねぇな」

いの字「それじゃ、ここらで小話ひとつ」

殺人鬼「よっ」

いの字「お題目は『零崎一賊の恋愛事情』と相成りまして」

殺人鬼「は!?」

いの字「立てば嘘吐き座れば詐欺師歩く姿は詭道主義舌先三寸口八丁出任せ誤魔化し至極上等、戯言遣いの戯言一席、どうぞごゆるりとお楽しみあれ」

殺人鬼「ちょ、待てテメェ!」

【零崎一賊の恋愛事情】


舞織「ねぇねぇ、人識くん」

人識「あ? なんだよ伊織ちゃん」

舞織「ふと思ったんですけど、人識くんってモテなさそうですよねー」

人識「殺されてぇのか!?」

舞織「その間違った高校デビューみたいな恰好の時点で駄目ですねー」

人識「こ……のっ……」

舞織「やー、あれじゃないですかー」

人識「なんだよっ!」

舞織「お兄ちゃんですよ、双識お兄ちゃん」

人識「兄貴ぃ?」

人識「兄貴がどうしたんだよ」

舞織「お兄ちゃんって、なんていうか紳士って感じでかっこいーじゃないですか! ……人識くんと違って」

人識「あれはただの変態だろ」

舞織「まぁ確かに性格面に難ありではあるのですが、それでも女の子に優しくてイケメンで殺人鬼なところは良いですよね」

人識「おい、最後の一つ、おい」

舞織「だから弟の人識くんも同じようになりそうなのに違うから、なんでだろうなーって」

人識「あんなシスコン野郎と同じなんて死んでもごめんだね」

舞織「お兄ちゃんの場合はシスコンというより家族愛ですよ?」

期待

舞織「愛、愛ですよ」

人識「うるせぇな」

舞織「人識くんってどんな人がタイプなんですか?」

人識「背が高くて綺麗なおねーさん」

舞織「やだー、わたしじゃないですかー」

人識「ほざいてんじゃねぇよ馬鹿妹」

舞織「うなー」

人識「大体俺はモテたいとは思ってないんだよ」

舞織「でたー、モテない男の言いわけ……ふぎゃ! 殴らないでくださいよぅ」

人識「俺は殺人鬼、『アイツ』みたいに女の子に囲まれて暮らすのはごめんだね」

舞織「アイツって誰ですか?」

人識「鏡の向こう側、欠陥製品、俺の代理存在」

舞織「わけわかんないこと言わないでくださいよー」

人識「戯言だよ、戯言」

舞織「そういえば、零崎って恋愛出来るんでしょうかね」

人識「あん?」

舞織「人識くんの言い分じゃないですが、殺人鬼ですし」

人識「あぁ」

舞織「他の方々ってどうなんでしょうか? ほら零崎一賊の方々」

人識「他って言えば――」

双識「おや?」

双識「なになに、僕の恋愛事情だって? うふふ、私が愛してるのは妹さ」

双識「うふふ、妹妹妹……あぁなんて素晴らしい」

子荻「こんにちは、『お兄ちゃん』」

双識「やあ! やあやあやあやあ子荻ちゃんこんなところで会うなんて」

子荻「……はぁ、声掛けるんじゃなかった」

人識「兄貴……は救いようのない妹マニア」

人識「いや? そういや中学生とデートしてたことも……」

舞織「うな? 中学生ですか?」

人識「つまり年下趣味でもあるってことか?」

軋識「恋愛事情だっちゃか?」

軋識「あーあー、そういうの俺には関係ねぇっちゃ」

双識「おいおいアスったらそんなこと言って、あの『青色』の子はどうしたのさ」

軋識「レン、それをどこで聞いた」

双識「素が出てるよアス」

軋識「暴君の話をどこで聞いたんだよ」

双識「おいおい、釘バット《シームレスバイアス》なんか構えてどうしたのさ! ちょ、待って、わっ!」

人識「軋識の兄ちゃんは……」

舞織「うなー、知らない人ですね軋識さん」

人識「今度教えてやるよ」

人識「確か……『青』に惚れ込んでるって言ってたか?」

舞織「青ってなんですか?」

人識「良く分かんないが、少女らしい」

舞織「また少女ですか」

訂正

×軋識の兄ちゃん→○大将


戯言読み直すかなぁ

暗記しなさい

曲識「恋というものもまた――悪くない」

曲識「少女趣味、だなんて二つ名を持っている僕だけれど別にそういう趣味じゃない」

曲識「あの赤色の彼女との約束を果たすまでの決意さ」

曲識「まだ未熟だったころの獅子の……」

舞織「…………」

人識「…………」

舞織「……ねぇ、人識くん……もしかして零崎ってロリコ、むぐぅ」

人識「言うな! それだけは言っちゃいけねぇ!」

舞織「ってことは人識くんも本当は、もがっ」

人識「いーやーだー! 心の奥底では俺も少女趣味なのかもしれないとか絶対にいやだーっ!」

と、こんな感じでやってきたいと思います


安価でお題を募集
次のお題>>20

出夢くんと零崎

みここちゃんとむいみちゃん

【みここちゃんとむいみちゃん】


巫女子「やっほー、むいみちゃん」

むいみ「おー巫女子どーした?」

巫女子「いやぁ……やはは、ちょっと相談があってね?」

むいみ「相談?」

巫女子「そのね? なんていうか……《ご近所付き合い井戸端会議、ただし国家機密》みたいなー、えっとー」

むいみ「つまり?」

巫女子「むいみちゃんって……恋愛経験多そうだなぁって」

むいみ「まぁ、確かにグレてたときはそれなりに……」

巫女子「えっとね、そのね……」

むいみ「なんだよ巫女子、はっきり言えよ」

巫女子「彼氏彼女の関係になるためにはどうすればいいかなって」

むいみ「…………は?」

巫女子「そのぉ……あーもう! めんどくさいから隠さず言う!」

巫女子「クラスに気になる男の子がいるんだけど、どうすれば仲良くなれるかなっ!」

むいみ「ちょ、ちょっと待って……男の子? 巫女子が?」

巫女子「えーその言い方なにさー、私に恋愛は似合わないってのかー」

むいみ「そ、そういうわけじゃないんだけど……」

むいみ「え、誰?」

巫女子「いっくん」

むいみ「いっくん……いっくん? いっくんねぇ……誰だっけ」

巫女子「むいみちゃん酷いよっ! クラスメイトだよ、何度かグループ学習したよっ!」

むいみ「えーっと……あーあー思い出した、あの根暗い奴ね」

むいみ「……って、えぇっ!? アイツ!?」

巫女子「何かいけないの?」

むいみ「いや……アイツ目つきヤバくね? 目というか表情が無いって言うか」

巫女子「そんなことないよーっ」

むいみ「入学していきなり何日も休んでたし、なんか変な奴だよ」

巫女子「たしかにいっくんは変わってるけどさ《小魚達がシルエットゲーム、ただし一匹だけ色違い》みたいだけどさ」

むいみ「スイミーかよ」

巫女子「でもでも、悪い人じゃないってば!」

むいみ「……アイツのこと、好きなの?」

巫女子「…………うんっ」

むいみ「そっか」

むいみ「んじゃ、しかたないかな……やなやつだったらあたしがぶっとばすし」

巫女子「ぼ、暴力はいけないよっ」

むいみ「巫女子を傷つけたらきっちり仕返しをするという事で……」

巫女子「むいみちゃーんっ」

むいみ「仲良くなるにはってー……まぁ、何度も話すしかないんじゃないのか?」

巫女子「それがやってみてるんだけどさぁ、いっくん興味無さそうにしか聞いてくれなくて」

むいみ「……根性焼き、一発いっとくか」

巫女子「わーっわーっ、だ、駄目だよむいみちゃんっ! むいみちゃん今日何だか過激だよっ! 危険思想だよ物騒だよ攻撃的だよ!」

むいみ「巫女子のことだから」

巫女子「へ? わたし?」

むいみ「…………」

むいみ「なんでもないよ」

巫女子「そう? で、えーっと何の話だっけ」

むいみ「《いっくん》をどうやって〆るか」

巫女子「違うよっ! いっくんとどうやってお話しするかだよっ」

むいみ「どうやって……ねぇ……何かきっかけみたいなのがあればいいのかな」

巫女子「なるほどなるほどっ、きっかけかぁ」

巫女子「でもきっかけなんて……何があるかな」

むいみ「話をしっかり聞いてくれないなら……こう、聞かざるをえない状況に持ち込むとか」

巫女子「ほぇ?」

むいみ「独りでいるところに突っ込んで、無理やり話しかけるとかさ」

巫女子「いっくんっていつもどこに居るのかな」

むいみ「それはしらない、自分で捜せ」

むいみ「そっからなんか話して、また会う約束取り付ければいいんじゃないか?」

巫女子「おぉぉ」

巫女子「どんな約束がいいのかな」

むいみ「そんなのは自分で……あ、そうだ誕生日会」

巫女子「誕生日会ってともちゃんの?」

むいみ「誘ってみたらどうだ? 智恵も一度あいつと話したいって言ってたし」

巫女子「ともちゃんが……」

巫女子「って、そうだねっ! 誕生日会誘ってみようか!」

むいみ「じゃ、智恵の方にも呼んでいいか聞きに行こうぜ」

巫女子「うんうん行こーっ、全速前進《かっ飛ばせスポーツカー、ただし法定速度40km/h》みたいにっ!」

今日はここまで
西尾信者達に幸運あれ

次回はいずむんととっしーの話で行きます

【ヒトシキイズム】

出夢「ぎゃはははっ! おっす、とっしー! 可愛い可愛い出夢くん参上だよーっ!」

人識「うるせぇ、せっかく屋上でのんびり寝てたってのに……」

人識「っていうかどっから学校に入ってきたんだよ、拘束着のまんまじゃねぇか。見つかったら即退場だよ」

出夢「壁走って昇った」

人識「お前人間じゃねぇよ」

出夢「そっちも似たようなもんだろ汀目くん、いや零崎くん」

人識「一緒にすんな」

人識「それで『そっちの名前』で呼んだってことは……」

出夢「うん、ちょっくら人識をぶっ殺しに来た」

人識「……ちっ、面倒だなぁ」

出夢「ぎゃは、そんなに青筋立てて怒るなってばー、可愛い女の子がじゃれついて来てんだぜ? 全男子の夢じゃねぇか」

人識「女の子は女の子でも殺し屋だったら話は別だよ、いまどき病んデレなんてウケないっつうの。てか出夢テメェ男じゃねぇか中身は」

出夢「細かいこた気にすんな、ぎゃは、ぎゃははははははっ!」

人識「はぁ、しょうがねぇ……やってやるよ」

人識「だけどあれだぜ? あんまり学校壊すなよ」

出夢「ぎゃははっ、善処するさ」

人識「んじゃ――いっちょ殺して解して並べて揃えて晒していこうか」

出夢「あ、ちょっとまって」

人識「っ……何だよ、せっかくやる気出したってのに」

出夢「いや、いつもどおりじゃつまらないからさ……具体的に言うと人識にハンデをやろうかなって」

人識「いらねぇよんなもん」

出夢「それじゃあ僕のスリルが足りないだろ、そうだなぁ……」

出夢「じゃぁ、僕拘束着脱いで全力だすからよー、人識が僕に一発でも当てられたらそっちの勝ちってことで」

人識「出夢……馬鹿にするのも大概にしろよ」

出夢「ぎゃははは、いつも通り僕が勝ったら熱ーいキスをしてやろう」

人識「ほざけ、即刻当てて俺からキスしてやんよ」

――――――
――――
――

人識「……俺の勝ち」

出夢「ひゅーう、まさか負けるとは思わなんだ、ぎゃはははは」

人識「がふっ……畜生、全然勝った気がしねぇ」

人識「こっちが満身創痍、そっちはナイフを押し当てられただけ……理不尽にもほどがあるだろ」

出夢「結構僕もマジだったんだけどな、かすらせもしないつもりだったのに」

人識「うーぇ、体いってぇ……」

出夢「まぁ負けは負けだ、ぎゃははははっ! そんじゃ、熱ぅいベーゼをしてもらおうかな」

人識「あ、むりむり……今一ミリも動きたくねぇ、また今度な」

出夢「やーっだ」

人識「むぐっ!?」

出夢「……ん……ちゅ……ぷは、ごっそーさん」

人識「テメェ…………はぁ、疲れた」

人識「まぁ、一旦帰れ出夢……俺は少し寝る」

出夢「……なぁ、人識」

人識「あ?」

出夢「何でさっき殺さなかったんだよ」

出夢「首に押し当てたんだからそのまま掻き切れただろ」

人識「あぁ、まあそれは」

出夢「なんでだよ」

人識「あれだよあれ、出夢も避けられただろうし、それに切っちまって反撃くらって殺されたら嫌だったしな」

出夢「……ぎゃは」

出夢「まったくもって零崎らしくもねぇ答えだよ、人識案外一般人なのかもな」

人識「悪い冗談だな」

出夢「ぎゃはははっ、だな」

出夢「それじゃ、結局一時間フルに戦えなかったから消化不良気味だけど、僕帰るわ」

人識「おう、じゃあな……」

出夢「ばっははーい、とぅ!」



人識「屋上から飛び降りて帰るとか、絶対おかしいっつうの」

人識「一般人……ねぇ」

人識「殺人衝動、ねぇもんなぁ……」

平等主義《ヒトシキイズム》ってことで、小話おしまい


次のお題
安価はしないんで、好きに書いてってもらえるとありがたいです

秋春くん

秋春くん!?

まじっすか……ネタ練りますがんばります

崩子ちゃんの一日

秋春君ネタが面白いのが浮かばなかったので、ちょっと保留

という事で代わりに【人類最弱の請負人】を投下いたします


崩子ちゃん把握

【人類最弱の請負人】


「なんて……戯言だけどね」

 人類最弱の請負人ーーだなんて、彼女風に言ってみたものの、どうにもこうにも締まらないというか、頼りなさげというか。
 いかにも僕らしくて良い感じだ、僕らしくて悪い感じだ。
 最弱だけでなく、真ん中に負の字が入っているところもなんだかなぁ。

「まぁ、請負人の名を汚さぬよう、今日もがんばりますか」

 最近はようやく依頼の数も増え、忙しくなってきたことだし。
 もちろんあの赤色に比べればこんな繁盛塵芥に過ぎないけれど。あの人は今も世界中を飛び回っていることだろう。三ヶ月先まで休みなくスケジュールが埋まってるって言ってた気がするし。

 まず僕とは格が違う、核が違う。次元も違えば、挙げ句の果てには存在を構成する分子まで違うかもしれない。
 あの人はどうしようもなく最強だ。
 それでもようやく、彼女と同じ職業に就くことができた。

「さてはて戯言遣いの請負稼業……今日もぴしっと参ります」


 はぁ、と溜め息をついて歩きだす。最近は仕事のせいなのか、四年前のあの時のせいか、はたまた単純に簡単になんとなくなのかわからないのだけれど、戯言も少なくなってきたかと思ったのだけど。どうもそんなことはなく相も変わらず口は回るようだ。
 もちろん僕は真紅の最強と違い力業での問題解決が出来ないので、この口が無ければ活動できない。ので、回せなければいけないのだけれど。
 まだ夏が抜けきらない九月の日差しを受けながら今回の依頼人の下へ行く、待ち合わせ場所に指定した駅前の喫茶店へと。
 指定時間の十分前。まぁ良い時間だろう。からんと扉を開けて冷房の利いた店内へ入る。

「よっ、元気してるか? いーたんよぉ」

 いきなり声をかけられる。

「…………」
「おっす」
「…………哀川さん、なにしてるんすか」
「あたしのことを苗字で呼ぶな。あたしを苗字で呼ぶのは敵だけだ」
「そりゃ、商売敵ですから」
「そういやそうだった。いやぁ一度お前とは全力で戦ってみたかったんだよなっ! 親父の敵に成り得たんだから、相手にとって不足はねぇ」
「人類最弱の請負人としては全力で遠慮させてもらいます」
「……そのコピー、頼りねぇな」
「よくよく自覚してますよ」

 と、与太話はそんなところで。
 本題というかなんというか、なぜ僕と依頼人の待ち合わせ場所に赤く紅く朱い人類最強がいるのかという疑問。ていうか哀川さん、落ち着いた雰囲気の喫茶店で真っ赤なスーツがめっちゃ目立ってます。

「あぁ、あたしが依頼人」
「……そんな気はしてたんです」


 請負人がクライアントとかなんだか変な感じだ。人類最強が人類最弱に相談というのも。

「……それでは、今回僕は何を請け負えばいいのでしょうか」
「いや、特に何も?」

 だったら、何故呼んだ。そりゃ、あなたほどでは無いにしろ僕だってそう暇なわけではないんですよ。大体それじゃ僕の儲けゼロじゃないですか、僕は崩子ちゃんとアイツを養わなければならないんです。

「ーーとか思ってるだろ」

 心を読まれた。

「安心しろ、一応報酬は用意してる。あたしとお喋りしてくれるってことで、ほらホストクラブみたいな」
「……それでお金をいただくのも気が引けるんですが」
「可愛い後輩を援助させてくれって、貴重な時間を割いてもらってるし、あたしも隙間時間で何とか会いに来たんだし」
「……わかりました」
「おう、ていうか大体あたしからのありがたーい命令に逆らおうとするとか千年早ぇーんだよ。生意気な口利くのは二回三回死んでからにしろ」

 三回どころか一回死んだらそこで終わりだと思う。ていうか哀川さん何度か死んだことあるんですか。まぁ、あり得るけど。

「それで、これからどうしますか」
「おいおい、そんな焦るなよ……まぁ軽く京都ぶらぶらしようぜ」
「はぁ……そうですか」


 さて、そうなれば急ぐか、などと哀川さんはさっきと矛盾するようなこと言っている。まぁ、急かされるのはいやだけど急かすのはかまわないみたいな感じだろう。
 ごくごくとカップの中のコーヒーを飲み干して音を立ててソーサーに置く。そんなこと普通の人がやったら行儀が悪いと取られてしまいそうだが、この真っ赤な美女がやるとそれすら様になる。ちょっと理不尽。

「おら、もたもたすんな! 時間は少ねぇんだから」

 半ば引きずり出されるように店を後にする。
 そういえば、気がつかなかったが駐車場にこれでもかと自己主張している真っ赤な車が止まっている。

「おし、乗れ」

 乗れだなんて哀川さんはまるで自発的に行動させてくれるように言いながら、しかし実際は僕を助手席に投げ込んだだけである。そんな乗せ方をされて、もちろん受け身など取ることができず、座席にしたたかに背中を打つ。高級車だったため、シートが柔らかかったのが不幸中の幸いか。

「どこ行くんですか?」
「どっか。適当に走らせればどっか着くだろ、天国とか地獄とか」

 なんだか初めて会った時と同じようなことを言っている。
 地獄も天国も、要は死後の世界なんだから、つまりは交通事故まっしぐらということになるのだが、哀川さんといれば交通事故くらい軽い方だろう。

「……なんか嫌な方向に慣れていってる気がする」
「あ? なんか言ったか?」
「何でもありませんよ」

「そっか。それで最近どうだ? いーたん」
「なかなかに忙しいですよ。請負人ってのも結構キツい仕事ですね、哀川さんがーー」
「潤だ」
「……哀川さんが軽々とこなすもんだから、分かりにくかったですけど、僕なんて崩子ちゃんが手伝ってくれなければまともに活動出来ないですよ」
「お前も大概懲りないよな、哀川って呼ぶんじゃねぇよ」
「そこはやっぱり、戯言ですから」
「お、久しぶりに聞いたなそれ」

 変んねぇなお前も、そういって哀川さんはシニカルに笑う。
 確かに、僕も変わらず僕らしい。いや、あるいは変わって僕らしいのかな。戯言遣いの矜持としてその場しのぎの誤魔化し話術、ほとんど無意味に無意義に、無意識に無為式に騙ってしまう。

「それにあたしだって軽々やってるわけじゃねぇぞ」
「そうなんですか?」
「たりめーだ、この世に軽々出来る仕事なんてひとつだろうとどこにだろうとねーんだよ。軽々やってるように見えるってのは、真面目にしっかり全力尽くしてスマートに働いてるか、力抜いて適当にやる気無くやってるかのどっちかなんだよ。……今のこの世の中、後者の方が圧倒的に多いけどな。ふざけんなよっ!? もっと頑張れるだろ、全力尽せるだろ、総力挙げられるだろ、なあなあでやってんじゃねぇ!! てめぇら折角人間に産まれることができたんだからそんな勿体無いことしてんじゃねぇよっ!!」

 台詞の途中でいきなりぶち切れる哀川さん。いや、性格ピーキー過ぎるだろ。八つ当たりで何発か蹴りが僕にヒットする。手加減してくれてるんだろうけれど、充分以上に痛い。

「そこんとこ、お前はそこそこ頑張ってるな。全力は出してないっぽいけど」
「そんなことありませんよ、いっぱいいっぱいです」
「嘘吐け」
「本当ですよ」

 本当に、僕なんかにできることは少ないけれど、それでもやっぱり出来ることには自分の全力で挑んでいるつもりだ、つもりなんだ。

「あ、そうだ……ほらこれ、報酬。先渡しとく」

 ぽい、とやけに分厚く重量のある封筒が投げ渡される。どう見ても(実際に中身を見ることはしていないのだけれど)端金なんかではない。お喋りの報酬なんかには破格過ぎる。

「こんなもらえませんよ」
「いいんだよ、あたし金なんて腐るほど持ってるから」
「でも」
「あぁ? がたがたうるせぇな、受け取れ、これは命令だ」

 渋々封筒を鞄にしまう。正直これだけあれば一年くらい何もしなくても充分生きていける。

「ありがとうございます」
「おう、気にすんな」

 哀川さんは獰猛な笑みを浮かべる。
 この人には、頭が上がらない。足を向けて寝るなんてもってのほかだ。

 低いエンジンの重低音を響かせながら山の中をオープンカーが風を切って進む。そういえば、大金に気を取られ周りの景色を気にしていなかったけれど、本当にどこに向かっているのだろう。まさか本当に適当に走ってるんじゃないだろうな。

「いやー、やっぱ山ん中はきもちーな」
「それには共感できますけど、哀川さんこの車、一体どこに向かっているんでっ!?」

 会話が物理的に打ち切られる。目の前の景色が吹っ飛ぶ。左右上下平衡感覚が機能しない。一体何が。ぐるぐると遠心力が体にかかる。
 どうやら、吹っ飛んでいるようだ。車が。
 もっと正確に言うと、蹴り飛ばされた、だ。
 もはや墜落という形で森へと落ちる。

「が、ふっ……」
「いってー、なんだよ誰だよ、あたしの車蹴ったのは」
「俺様だよ」

 ぐしゃぐしゃになったボンネットの上に橙色が落ちてきた。

「げらげら、よお友達、遊びに来たぜ」

 想影真心だった。
 人類最終、橙なる種、哀川潤の上位互換。
 僕の友達。

「うぇ、マジかよ……あたしこの後仕事入ってるんだけど」
「いいから遊ぼうぜ! って、あれ? いーちゃんいたのか」

 真心はようやく僕に気がついた。

「真心、頼むからもっと安全に登場してくれ。僕はお前等と違って車が吹き飛ばされても無事な体はしてないんだ」
「ごめんごめん、いーちゃんが乗ってるとは思ってなかった」


 真心はげらげらと笑う。肩口でばっさりと切られた橙色の髪の毛がつられて揺れる。

「今日は哀川潤と遊びに来た」
「あたしは少し遠慮したい……けど、言っても聞かねぇよな」
「げらげらげらげら、当たり前だ」
「ってことで、いーたんごめんな。ちょっくら可愛い我が子と遊ばなきゃいけなくなったから依頼はここで終了」
「僕は構わないですけど」
「おう、それじゃあな」
「ばいばいいーちゃん」

 そういって、赤と橙は取っ組み合いながら森の中へと消えていった。

「…………」

 嵐のような二人に振り回され、精神的にかなり疲れてしまった。早く帰りたい。

「あれ、僕どうやって帰ればいいんだ?」

 足となっていた車は大破、ここがどこなのか僕はわからない。
 簡単に言えば遭難だろう、これ。

「戯言……だったらいいのになぁ……」

 そんなこんなで本日の依頼、おしまい。

そんなこんなで本日の戯言でした
やっぱりいー兄は地の文あった方が書きやすいですね


次回は崩子ちゃんと骨董アパートで行きます

お題はどんどん書いてもらって構いません、ていうかください

お題
姫ちゃんは今日も元気です

【崩子ちゃんの一日】

「……」

 ぱちりと目を覚ます。視界に広がるのは真新しい我が家の天井。

「朝……ですね」

 眠い目をこすり、頭を振って曖々昧な意識をしっかりさせる。
 どうにも、この目を覚ました瞬間の光景には慣れない。長い間慣れ親しんだあのアパート(戯言遣いのお兄ちゃんは骨董アパートと呼んでいましたっけ)が崩壊し、新築六階建てマンションに変わってから、毎朝一瞬だけ違和感を感じる。
 それでも、きっとまたしばらく住めば違和感は消えるでしょうけど。

 萌太のいない生活にも、慣れるでしょう。

「……いけないですね、早く動きましょう」

 布団から這い出て、顔を洗いに洗面所へと向かった。

 あれから。
 あれから戯言遣いのお兄ちゃんは大学を辞めてしまいました。
 請負人、という何でも屋のようなものを始めました。時々話に上る『哀川』という人と同じ職業だそうです。
 まだ駆け出しで右も左もわからない、ぼくなんかに請負人が務まるのか、と私に愚痴ってきますが、お兄ちゃんを見ているかぎり今までよりはずっと楽しそうで、ずっと生き生きとしています。少なくとも、もう自分自身を殺し続けるようなあんな生き方はしないでしょう。

「……さて、と」

 ささっと朝の支度を終え、ご飯を食べて、お兄ちゃんの部屋へ行く。
 チャイムを押してしばらくすると、お兄ちゃんが出てきた。合い鍵は貰っているので、別にチャイムを押す必要は無いのだけれど、一応。

「ごめんごめん崩子ちゃん、今まで寝てた」
「いえ、大丈夫です。おはようございます、戯言遣いのお兄ちゃん」
「うん、おはよう」

 最近はお兄ちゃんの奴隷として、身の周りのお手伝いをさせていただいています。
 主に、洗濯や掃除などの家事などを。……たまに、お兄ちゃんに遊ばれますけど。
 わんこちゃんなどというネタを提供してしまったのは一生の不覚です。

 お兄ちゃんの部屋は、私室と仕事場に分かれています。
 初めは空っぽの棚やぴかぴかの机しかなかった仕事場は資料などの書類で埋め尽くされていて、混沌としています。

「散らかっててごめんね。忙しくて片付ける暇ないんだ」
「私整理しましょうか?」
「ううん、逆に動かされると困るかも」

 どちらかというとごちゃごちゃした空間が苦手な方であるお兄ちゃんですが、今はそんなことを言っていられないほど忙しいようです。
 ……大丈夫でしょうか、身体とか。
 命令とあらば、私はお兄ちゃんの疲労を取るために何でもしなければならないのですが。
 私はお兄ちゃんの犬です。
 わんこちゃんです。
 わん。

「ネタ提供もいい加減自重した方がいいですかね……」
「ん? なんか言った?」
「いえ」

おぉう・・・

寝オチ、からのー外出により投下途中で中断してしまいました

すみません

それでは投下再開

 とにかく、お兄ちゃんは仕事をしていると、働いているか寝ているかのどちらかなので、うっかりすると洗濯物や洗い物が溜まっていきます。
 日中の仕事は基本的にお兄ちゃんが快適に気兼ねなく働けるよう、周りを清潔に保つように動いています。
 最近は請負人のお仕事の方も少し手伝わせてもらっています。

「それじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん」

 色々と荷物を抱えて、家を飛び出していくお兄ちゃん。たぶん、依頼人さんのところへ向かったのでしょう。

「それでは始めましょうか」

 お兄ちゃんが脱ぎ散らかした洋服を集めて洗濯を始める。
 お兄ちゃんの服にはお兄ちゃんの匂いがついていて、なんだかちょっとどきどきするような。
 ちょ、ちょっとだけ! ちょっとだけ匂いを嗅ぐだけだから!
 よれよれになったワイシャツに顔を埋める。

「…………はふぅ」

 ……って。
 あれっ!? わたし何をしているのっ!?

「不覚です、破廉恥です」

 顔から火が出そうだ。恥ずかしい、よりにもよって我が主人の一介の所有物であるわたし、奴隷闇口崩子がこんなことを。
 ……これも戯言遣いのお兄ちゃんが鈍感だからいけないのです。
 なんて、責任転嫁。


 そんな感じで、お兄ちゃんの部屋で家事を堪能……じゃなくて。家事を済ませました。色々やっているうちに既に昼頃、お昼を食べます。
 お兄ちゃんの仕事がないときは、一緒にお昼ご飯を食べるのですが、今日は出掛けたままのようで、一人です。

「今度からお兄ちゃんにお弁当を作りましょうかね?」

 仕事で一日中外に出っぱなしなことも多くなってきたお兄ちゃんですし、外食ばかりで栄養も偏ってしまいそうです。
 主人の健康管理も奴隷の務め、お兄ちゃんのためなら早起きだって構いません、しっかりと美味しいお弁当を作ります。

 お昼を食べ終わって、午後は町の図書館へと向かいます。
 わたしは14歳なので年齢的には中学生青春真っ盛りなのですが、諸々の事情あって学校には通っていません。現代日本で学歴なしというのもかなり危険な気もしますが。
 なので学校へ行く代わりに図書館に通って知識を漁っています。

「学校に……行きたくない訳では無いですけど」

 今のわたしは、萌太が死んでしまったのでお兄ちゃんに養ってもらっているので、あまりお金はかけられません。
 図書館なら無料ですし、学術書から大衆小説まで揃っているので勉強には事欠きません。
 初めの頃は、図書館の司書さんに怪しまれましたが、軽くお兄ちゃんの真似をして戯言を言ってみたら騙されてくれました。
 助かりました。

 マンションから出ようとしたところで、みい姉さんと会いました。

「崩、今から図書館か?」

 みい姉さんはこのマンションに住んでいるフリーターのお姉さんです。剣術家で、骨董集めが趣味の和風な方です。着ているものは主に甚平で背中に文字が書かれています。家出してきたわたし達兄妹にも良くしてくれくれた優しい人です。
 ……お兄ちゃんの想い人だったりします。

「はい、行ってきます」

 このマンション(お兄ちゃんは塔アパートと呼んでいました。これはみい姉さんが名付けたそうです)にはいろんな人が住んでいます。魔女のお姉さんや伴天連のお爺さん。浮雲さんと姫姉さまはもういなくなってしまったけど。皆少し変だけれど、良い人ばかりです。

 図書館での勉強が終わった後は鴨川に向かい、日課の小動物殺しをします。
 ターゲットは鳩か、川の名の通り鴨などです。いないときには、虫など。

「……気持ちいいですね」

 何ともまあ絶好の下等生物殺傷日和です。
 そういえばこの間お兄ちゃんに「もうちょっと……害獣駆除とか他の言い方をしたら?」と言われました。
 お兄ちゃん引いてました。悲しいです。

「まあ、それでも言い方は変えませんけれど」

 これは私の矜持というか、もっと砕いて言うならばこだわりです。お兄ちゃんにとってのバイクや車のようなものです。
 戯言ですが。
 そんな感じで、真似してみたり。

 マンションに帰った後には……特に決まった予定はありませんね。
 みい姉さんと話してみたり、魔女のお姉さんに漫画を読まされたり、伴天連のお爺さんとはあまり話しません。

「さて、お兄ちゃんが帰ってくる前にご飯の支度をしましょう」

 自営業ゆえに、お兄ちゃんには定時というものがありません。なので帰宅が早い日もあれば遅い日もあります。今日はそれほど遅くはならないと言っていたので、夕飯はお家で食べるのでしょう。
 ……それほど遅くならないってお兄ちゃんが言うとむしろ遅くなりそうですが。
 前にそう言った時には三日帰ってこなかったので、マンションは大騒ぎでした。
 お兄ちゃんは「哀川さんに拉致られた」と言っていました。
 皆の哀川さんへの好感度がガクッと下がった気がしました。

 がちゃり。と、丁度夕飯が出来た頃にドアが開く音がしました。

「ふぅ……ただいま、崩子ちゃん」
「おかえりなさい、戯言遣いのお兄ちゃん」

 疲れている、しかし楽しそうな顔でお兄ちゃんが言いました。
 わたしは、そうなってくれたお兄ちゃんが嬉しくて、思わず笑みがこぼれます。

 これが、わたしの一日です。

 哀川さんに今度は私が拉致されて、大厄島へ里帰りをし、様々な気持ちを整理することになるのは、ここから、もう少し先の話。

崩子ちゃんの一日、おしまいです。

【骨董アパートメイド喫茶~ゲストもいるよ~】

「お、お帰りなさいませっ、ご主人様っ」

 我らが鉄筋コンクリート六階建て塔アパート、その内の一室ーーつまるところぼくの部屋、そのドアを開けたとたん、そんな台詞を言うメイドがいた。
 ふりふりとフリルをふんだんに使用したエプロンドレスを着込み、何もないぼくの部屋の真ん中に正座をして、やや頬を赤らめた、そんな……。
 そんな、崩子ちゃん。

「崩子ちゃん、何してるの」
「…………メイド、です」

 ぷるぷると小さく体を震わせる崩子ちゃん。そんなに恥ずかしいのであれば何故こんなことをしているのだろう、というか、どうしてぼくの部屋でそんなメイドのコスプレをしているのだろう。


「いや……ぼくはなんでメイドなのかっていうのを聞きたいんだけど」
「これはっ……そのっ……」

 ぼくと話せば話すほど、崩子ちゃんの顔がどんどん赤くなっていく。
 やばい、これはクる。
 水着、ナース、チャイナドレス、ゴシックロリータ、学生服、猫耳、などなど崩子ちゃんコスプレは大量にやってきたものの、やはりぼくとしては本命のメイド服は崩子ちゃんの完全なる育成を終えるまでとっておいていた。
 が、それは愚の骨頂だったかもしれない。
 今、正に少女から大人へ変わっていこうとしている崩子ちゃん(17)のこのあどけなさと妖艶さの混じるぎりぎりの時期。それがメイド服という萌えの境地、萌えの究極と見事な化学反応を起こして、崩子ちゃんの持つ可愛らしさをさらなるステージへと昇華させている。これは育成後には存在し得なかったものだ。危なかった、ぼくがこの事に気が付かないままに崩子ちゃんをメイドにすることを渋ったままだったらあまりにも膨大で莫大で強大な損失を被ることになっていた。それはとてつもなくぞっとしない。
 ちらりと崩子ちゃんが上目遣いでぼくを見る。
 落ち着け、落ち着け戯言遣い。
 まだ慌ててはいけない、まずは扉の鍵を閉め、チェーンを掛けて、逃がさずにそして邪魔者を入れないようにしてから……。

「メイド喫茶やろーってあたしが言ったんだよ、いーたん」

 後ろから声がかけられる。驚いて我に返る。
 振り向くと、赤いメイドがいた。

「哀川さん……えぇぇ……」
「なんだよ、ほらほらいーたんの大好きなメイドだぞ」

 本来黒である生地は、燃え上がるような赤色。着ている人も地獄の業火より熱い人類最強。本来メイド(とはいえ、大元の家政婦ではなく現代の可愛らしさを追求したメイド)に有るべき要素をすべて削ぎ落としたかのようなアンチ癒し系、リバース和み系。萌えではなく燃えるメイド。
 燃えー。

「てか何ですかその真っ赤なメイド服は」
「赤くねぇとパワーが出ないんだよ」
「あなたの体はどんな仕組みだ」
「特注だぜこれ、ちなみにケブラー繊維使用防弾仕様」
「どんな状況でそれは活用されるんですか」

 閑話休題。
 人類最強用のメイド服には確かに興味はあるのだけれど今はまず別の疑問を解消したい。

「いや、メイドなのはいいんですが……なんで二人してそんなことを」
「あたしがいーたんがメイドらぶーだって崩子ちゃんに教えたら、それじゃあ私がって……」
「わーっ! わーっ! 違います違うんです哀川さん何を言っているんですか」
「まったく、恥ずかしがっちゃって」

 どうやら崩子ちゃん的にはメイドの理由については触れて欲しくないらしい。ぼくのために自らの羞恥心を二の次にしてメイドになってくれるだなんてすばらしい忠誠心だ。そこは流石、主人への忠誠に生きる闇口衆なのかもしれない。
 崩子ちゃんはそんな忠誠心を見せてくれたのに先ほどぼくはとんでもないことをしようとしていた。危ない危ない、彼女のことを傷つけてしまうところだった。哀川さんが声をかけてくれて本当に良かった。
 あの場で流れ上展開上仕方なくぼくを主人にさせてしまったのが可哀想だ。崩子ちゃんだって、きっとぼくなんかよりもっと別の人を主人にしたかっただろうに。

「……これは闇口とは関係ないんですけどね」
「え? 何か言った、崩子ちゃん?」
「何でもありませんよ、戯言遣いのお兄ちゃん……じゃなくてご主人様」

 もじもじと恥ずかしそうにしつつも、ぼくの方をじとっと見て、何かぶつぶつ言っている。

「それに、二人じゃねーぜ? メイド軍団だよ、軍団」

 哀川さんは、おもちゃを前にした子供のように笑う。心底楽しそうでいて、獰猛さの混じる笑顔。なんだかぼくの中の対トラブルセンサーが全力で警報音を発している、哀川さんがこの笑顔の時はいつも何かが起こる。

「軍団ですか?」
「うん、メイド戦隊でもいいんじゃねえ?」

 軍団だろうと戦隊だろうと、どちらにしろ危険な香り漂うメイドだ。
 ていうか、ぼくの友好関係および哀川さんの友好関係を鑑みるに、かなりの高確率で本当に戦えるメイドたちが出来上がる気がする。真心とか、ある意味では玖渚とか、姫ちゃんとか。そういえばてる子さんは本職が戦闘メイドだったっけ。
 ……世界すら支配できそう。
 目指せ世界征服、逝ってらっしゃいませご主人様。

しばし中断


……ていうか、秋春君書けねぇ、セリフすくねぇ
お題くれた方申し訳ない

面白い
一旦乙

age


あー、ちょっと駄文しか生産不可能です
先が書けない

ていうか深夜だと戯言の認知度低いのかねぇ

俺は期待してる

戯言って何年前の作品やねん

2001年だっけか?

パねぇ

「笑えねぇっすよ、潤さん」
「いいや、我らメイド特殊部隊にかかれば、いくら笑う事が出来ない戯言遣いだろうと、そのほっぺたをだるだるゆるゆるになるまで綻ばせてやるよ」
「そういう意味じゃないっす」
『《正月恒例福笑い、ただし作るののっぺらぼう》みたいなっ!』
「声まで変えて何言ってんすか」

 巫女子ちゃんネタを完璧にマスターしてやがるこの人類最強。
 確かにメイド軍団に囲まれるというのは、ちょっと、想像するだけで、にやけてしまいそうだけれど。だけれどだけれど。

「それで、その軍団とやらのメンバーというのは誰で、何処に居るんですか?」
「まーまーそう焦るなって」

 哀川さんが後ろのドアへ向く。
 ぼくも同じようにドアの方を見る。

「うーにーっ! いーちゃん!」

 今度は青がぼくの胸に飛び込んできた。

「うわっ」
「うにうに、どーかないーちゃん? 僕様ちゃんのメイド姿!」

 玖渚友。天才。技術屋。
 その劣性の証明、紺碧の瞳は光り、ハワイアンブルーの髪の毛がゆらゆらと揺れている。
 着こんでいるメイド服は哀川さんと違ってごく普通の黒色だったが。

「どうかな、かな?」
「あぁ、いいんじゃないか? 似合ってるよ」
「いえーい! いーちゃんに褒められたんだよ!」

 うにうに言いながら、ぼくに身体を擦りつけてくる玖渚。
 確かに来るメイド来るメイドにこんなことをされては頬も綻ぶってもんだ。
 戯言だけど。

 玖渚はコスプレマニアなので、この姿は何度か見たが、まあ、ほどほどに似合っている。
 内面がメイド足りえているのかは、一旦置いておくが。

「うにょー、やっぱり素材に拘ったメイド服はいいねっ!」
「素材?」
「そうなんだよ! 最高級の生地を使って最高級の職人が作り上げたメイド服なんだよ!」
「へぇ、いくら?」
「5000万」

 とんでもねぇ額だった。
 おい玖渚、なんてところに玖渚機関の力を使ってやがる。

「ちなみにあたしは1億位だな」

 哀川さんが対抗して(いや、対抗してなのかは分からないが)言う。
 一億円、防弾仕様、レッドバージョン。

 一言言わせてもらいたい。

「金の無駄だ」

「んー、これ以上は部屋に入らねぇな」

 哀川さんがそういって外に出る。
 ぼくと玖渚と崩子ちゃんもついていく。
 外に出ると、並んでいた。メイド軍団が。

「えぇっと……」

 右から橙色、曲弦師、剣術家、鴉の濡れ羽島の次女。
 色々言いたいことがある。

「よお、いーちゃん。なんか哀川潤に呼ばれてきたらこれ着させられたんだけど」
「師匠! 姫ちゃん的には微妙なんですけどどう思うですかね」
「おい、いの字。そこの、手だれな女性に、これを着れば、お前に茶をおごってもらえると、聞いたが本当か」
「えっと、哀川さんに連れられてきましたが……一応、お疲れ様ですご主人様」

 メンツ濃すぎじゃね?
 哀川さんがシニカルに笑って言う。

「ちなみに他のメンバーはあかりとてる子と零崎んとこの伊織ちゃん、匂宮の二人に澪標姉妹だな」

 おかしいだろ。

「意外と動きやすいなこれ、いーちゃん」
「うにうに、いっぱいいるねぇ! いーちゃん凄いご主人様だね」
「戯言遣いのお兄ちゃんの交友関係は女性が多すぎる気がします」
「師匠! 姫ちゃんはこの後何すればいいですか?」
「いの字、正直、こういった少女趣味な服を、着るのは、初めてなんだが」
「これだけメイドが揃っていると本業としては負けていられませんね」

 先程は笑わないと言ったが、まあ、これは。

「ずいぶん……戯言じゃないかな」


 この日、戯言遣いは失くした笑いを取り戻せた気がする。

メイドおしまい

乙したー

冥土から何人か出張って来てるし・・・

ああ、メイドだけにな(自殺)

少し謝罪を


すみません、秋春君書けません!
戯言シリーズへの愛は溢れかえるほどなのですが、如何せん私の筆力不足によりまともな話が書けないんです
何度か書いたけど駄文ばかり
まじすんません、せっかくお題くれたのに……


次回は【姫ちゃんは今日も元気です】を書こうと思います
お題は何時でも募集してますのでどんどん書いてってください

語っちゃってすみませんでした
西尾信者に尽きぬほどの幸あれ

お題
僕の死線の蒼とジグザグと抱き枕が修羅場すぎる

いーちゃんと真心のイチャラブ

【姫ちゃんは今日も元気です】

 こんにちはです!
 姫ちゃんは姫ちゃんと申します!
 本日は姫ちゃんの生活について話していきます。
 まな板に水な感じに頑張って喋りますので、応援よろしくです。

「姫ちゃん、まな板じゃなくて立て板に水だよ」
「細かいところはいいのですよ、師匠」

 注意を受けてしまいました。
 師匠というのは、この戯言遣いの大学生さんで、姫ちゃんが住んでいるアパートの住人です。まぁ……とある理由と事情により、師匠にアパートを紹介してもらったです。
 さて、それではへこたれずにどんどんいきましょう。

 姫ちゃんは今日も元気です。


 姫ちゃんは高校生――正直そう名乗っていいのかは微妙なとこですが――なので、毎日元気に学校へ登校しているです。
 きちんと友達もできたですよ。友達の話は後で話すです。
 師匠の言うこの骨董アパートは朝から大賑わいです。
 みい姉さんと荒唐丸さんは口論していますし、崩子ちゃんは小動物を殺していますし、奈波さんは『こみけ』とかいうお祭りの締め切りに追われていますし。
 師匠はいつも死にかけてますし。

上げ

西尾信者だけど、このスレの再現度にはなかなか満足しています

お題:逃亡中の春日井さんとハンターのいっきー

age

age

age

あげ

続きない? 支援age

慌ただしいアパートを出て、高校へ走ります。
澄百合にいたときにはそもそも登校というものがありませんでした。
ですので、こうして時間に追われて目的地に向かうというのはなんだかとても新鮮な気持ちになるですね。

「あっ、姫ちゃん! おはようー」
「鵜鷺ちゃんおはようです!」

姫ちゃんが走っていますと、声をかけてくる人がいました。
嵯峨野鵜鷺。姫ちゃんのクラスメイトです。

「朝から元気だねぇ姫ちゃんは」

クラスメイトといっても、一般人の方ですよ。
戦闘技能を叩きこまれたりなんてこれっぽっちもされていない、普通の学生さんです。
転校してきていろいろと困ってた姫ちゃんを助けてくれた優しい子です。

師匠なんかよりはるかに優しいですね。

「流石、君子星の人ですよね」
「君子星!? ……あ、あぁ……聖人君子ね」
「そうともいうですね」
「そうとしかいわないよ」

苦笑いをする鵜鷺ちゃん。
姫ちゃんの頭は大分危ういところがありましてですね、勉強は苦手なのです。
体育とか身体動かし系の授業なら得意なのですけどね。

「あ、そういえば今日抜き打ちテストやるってさ」
「抜き打ちなのになんでしってるんですか!?」
「いやぁ、先生と仲いいからさ」

仲がいいからってそれはいいことなのか分からないっすです。

「ううっ、テストなんて輪切りにしてポイしたいです」
「ちなみに姫ちゃんの苦手な数学ね」
「行き当たりばったりです」
「たぶん踏んだり蹴ったりだね……」

そのあとは鵜鷺ちゃんにヤマを張ってもらって、何とか凌ごうと思ってみたりしたですが。
残念ながら赤点常連客のこの姫ちゃん、紫木一姫にとってヤマ張ったところで点数が上がることは無いのでした。

暗号のごとく公式数式その他数十式をぺらぺらと唱える鵜鷺ちゃん。
もはや異国語と化しているその授業を聞きながら二人、学校につきましたです。

「数学は何時間目だったですか?」
「四時間目だね」
「……せめて昼休みを挿んでほしかったです」

挿んだところで何にもならないとは思うですけどね。
姫ちゃんのお馬鹿はそう簡単には治らないと、師匠も愚痴ってましたし。

保守

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