モバP「彼女の実家で過ごす夏」 (16)


ミーン ミーン

P「……暑いな」

藤原肇「暑いですね」

P「……まあ、夏だしな」

肇「夏ですからね」

P「…………」

肇「…………」

P「……いっせーのーせでもするか?」

肇「い、いえ、遠慮します……」

P「そかー……」

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肇「……Pさん、将棋か囲碁は分かりますか?」

P「んー、将棋のコマの動きくらいならなんとかな。囲碁はよく分からん」

肇「なら、暇つぶしに一緒にやりませんか?」

P「肇、出来るのか?」

肇「小さい頃におじ……祖父が友人とやっているのを、横でよく見ていましたから」

P「ほー、そんじゃやるか」

肇「はい。盤、持ってきますね」

P「……えーっと、金が上下左右と斜め前左右で銀がバッテンと前……だったかな?」

肇「はい、王手です」

P「……待った」

肇「もう五回目ですよ?」

P「いやちょっとマジで待って……えっと、こっちに逃げれば香、こっちは金、こっちはと……」

肇「ちなみに、こちらへ逃げれば角がきますよ」

P「…………投了でお願いします」

肇「はい。諦めも肝心ですよ?」

P「はい、肝に銘じます……。しかし、肇強いな」

肇「はい、祖父から何度か習いましたから」

P「なるほどね……」

肇「Pさん、お腹空きませんか?」

P「ん、そういやもうお昼か。親御さん遅いな」

肇「すいません、用事が長引いてるみたいです」

P「いやいや、それなら気長に待たせてもらうよ」

肇「そう……ですか? じゃあ、ちょっと簡単な物作ってきますね」

P「悪いな、何から何まで」

肇「ふふっ、気にしないで下さい。じゃ」

P「…………幸せ者だな、俺」

肇「お待たせしました。冷やし中華で大丈夫でしたか?」

P「ああ、いいな。暑いとあんまりガッツリした物は喉通らないからな」

肇「ふふ、それはよかったです。お箸とお茶碗は父の物を使って下さい」

P「ありがとな。……ん?」

肇「どうしました?」

P「この冷やし中華盛ってる器……もしかして手作りか?」

肇「あ、はい。小学生くらいの時に作った物です。祖父に手伝ってもらいながら……」

P「やっぱりな。ほら、ここに『はじめ』って彫ってある」

肇「あ、あの……そこは恥ずかしいので、あまり見ないで下さい……」

P「ああ、悪い悪い。それじゃ、いただきます」

肇「いただきます」

P「ああ、美味かったよ。肇、ごちそうさん」

肇「はい、お粗末様でした」

P「肇の冷やし中華は絶品だな。これから毎日俺の為に冷やし中華を作ってくれ。……なーんて」

肇「もう……それに、それじゃ冬にも冷やし中華になっちゃいますよ」

P「あはは、そういやそうだな」

肇「ふふっ、じゃあお皿洗ってきますね」

P「おう。……おっ、なあ、このアルバム見てもいいか?」

肇「はい、大丈夫ですよ」

P「それじゃ失礼して……」

P(『肇四歳、初めて陶芸に触れる』……これはお祖父さんの字かな?)

P(にしても……頭の手ぬぐいはこの頃からか。うん、似合ってる似合ってる)

P(『肇五歳、肇製皿第一号』……あらら、縁がぐにゃぐにゃだな)

P(でも本当にいい笑顔で皿持ってんなあ……やっぱ可愛い)

P(ふんふん……ふんふん……お、『肇十二歳、合格作品完成!』……?)

P(お祖父さんから課題でも出されてたのか? すごい字にも力入ってるし……)

P(すごい嬉しそうな顔してるなあ……あれ? この湯のみって……)

肇「ふう、終わりました」

P「なあ肇。ちょっといいか?」

肇「どうしました?」

P「この合格作品完成って……」

肇「ああ、それですね。祖父から課題を出されたんです。『何でもいいから、自分を納得させる作品を作れ』って」

P「えらくアバウトな課題だな……。で、これが合格もらった作品なんだよな?」

肇「はい」

P「なあ、これってもしかして……」

肇「はい。あの時、Pさんに渡した湯のみです」

P「なんか申し訳ないな。そんな大事な物もらってたなんて……」

肇「いえ、いいんです」

P「……そうなのか?」

肇「はい。大事な物だからこそ、Pさんに受け取って欲しかったんです」

P「……そう、か。ありがとうな」

肇「はい……」

P「……また、作品が出来たらさ」

肇「はい」

P「良かったら……また、譲ってもらえないか?」

肇「……はい、是非」

P「……っと、もう二時か」

肇「時間ってあっという間に過ぎてしまいますよね」

P「そうだな。楽しい時間ならなおさら」

肇「楽しい、時間……ですか。そう、ですね……」

ガチャ ガララ

肇母「肇ー、帰ったわよー」

肇父「おや、この靴は誰のだろう?」

肇祖父「肇、誰か来とるのか?」

肇「あ、帰ってきました。お帰りなさい。ええと、こちら……」

P「では、本日はこれで失礼します」

肇父「またいつでもいらして下さい」

肇母「肇、頑張りなさいよ」

肇「うん、分かってる」

肇祖父「……アンタ、Pさんじゃったの」

P「はい、何ですか?」

肇祖父「…………いや。肇の事、頼みましたぞ」

P「……大丈夫です、任せて下さい」

P「ただ近況報告だけだったのに、思ったよりかかったな」

肇「すいません。まさか揃って外出してるとは思わなくて……」

P「いや、いいよ。楽しませてもらったし」

肇「そう、ですか?」

P「ああ。それに、どうにか交際の報告も出来たしな」

肇「…………はい」

P「言った瞬間お祖父さんが書斎の日本刀持ってきた時は死を覚悟したぞ」

肇「そんな大げさな……」

P「まあ、なんとかお許しはいただけたけど」

肇「はい。……あの、Pさん」

P「どうした、肇?」



肇「これからも……公私共に、よろしくお願いしますね?」



おわり

終わりです
書いといてなんだけど、肇ちゃんにまんまな恋愛は似合わないな!(白目)
もっと純粋にほのぼののんびりさせたかったのにどうしてこうなった
HTML依頼してもう寝ます

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