男「童貞! 俺はお前を守る!」(675)


童貞「ねぇ、男……」

男「ん?どうした童貞?」

童貞「どうして早く私を捨てないの……?」

男「!? 何を言ってるんだ!」

男「お前は……俺の誇りだ。いや、俺の命そのものだ」

男「絶対に一生守ってみせる!」

童貞「男……」///

ザッザッザッ

女54689「近くにいるはずだ! 探せ!」

女19963「奴が最後の童貞だ! 一気に追い込むぞ!」

童貞「!?」

男「くそっ、振り切れたと思ったのにもう近くまで来やがった! 逃げるぞ、童貞!」

童貞「う、うん!」



時は世紀末──いや、性器末と呼ぶべきなのか



世界は『童貞狩り』という超大規模な謎の女集団に支配されていた

『童貞狩り』は文字通り、世界中の童貞を奪う事を目的とし、その為には破壊や殺人等、手段をも選ばない

さらに世界各国の軍事力を持ってしても鎮圧出来なかった『童貞狩り』の身体能力は常軌を逸していた

もはや為すすべもなく、瞬く間に世界中の童貞は奪われてしまった


そんな悪夢のような日が流れに流れ……




とうとう世界に残る童貞は、男(主人公)ただ一人だけとなっていた


タッタッタ……

ガッ!

男「うわっ!」ズサァ!

童貞「男!? 大丈夫!?」

男「あ、あぁ平気さ。ちょっと足が絡まってしまっただけだ」

男「……」ガクガク

男(ヤバいな……体力がもう限界だ……立つのも精一杯じゃねーか……)ガクガク

男(ちくしょう!こんなところで捕まってたまるかよ……!)ガクガク

童貞「……もういいよ」ボソッ

男「え?」

童貞「もういいよっ! これ以上、男が傷付くところなんて見たくない!」

男「童貞……」


童貞「こんな私の為に……男は何年もの間、休まず走り続けて……体はボロボロで……ご飯だってろくに食べてないじゃないっ……」

童貞「お願いだから男……もう私を捨てて……私の存在は……ただ貴方を苦しめるだけだから……うぅっ……」

男「違う!」

男「俺はお前にいつも生きる力を貰ってきた」

男「他の誰かに馬鹿にされたっていい。 世界中の全てを敵に回したって構わない!」

男「だから泣かないでくれ。ずっと俺のそばにいてくれ」

童貞「男……」グスッ

男「さぁ、行こう! 追っ手がくる前に!」



女5「……」



~『童貞狩り』ギャル部隊アジト~



女36547「くそっ! 最後の童貞を捕らえるのに一体いつまでかかってる!」

女53335「我々のアジト周辺に身を隠しているのは確実なんだがな」

36547「時間が無い! もうすぐ我らギャル部隊の隊長が本部会議から帰ってくる……こんな醜態を隊長に晒したとなれば、恐らく我らは無事では済まないっ……!」

女87511「……」ガクブル

女14536「うちらの隊長は『童貞狩り』内でも特に気性が荒いからね……」

女22239「仕方ない、これからは24時間体制でギャル部隊全総員を出動させる!」


女45214「そういえば……本部会議に出向いた私らの隊長に代わって、一時代理でこっちに応援に来ているというツンデレ部隊の隊長は今どこにいるんだ?」

女36457「女5か……知らん。 彼女はすでに、この周辺の捜索に入っているらしいんだが……一度もギャル部隊のアジトには顔を出していない」

女45214「はぁ~なんとまぁ自由でお気楽なこった。 協調性の欠片もありゃしない」

女36457「奴は当てにするな。ましてや女5に最後の童貞を捕らえられたとなれば、私達の隊長は発狂するだろう」

女14536「確かに……つーか、それが一番最悪のケースだろうね。 間違いなく八つ当たりでこの部隊から何人か死人が出る」

女53335「隊長と女5の仲の悪さは折り紙付きだからなぁ」

女36457「とにかく! 話は終わりだ! 何としてでも女5より先に童貞を捕獲するぞ!」


~ギャル部隊アジト近辺の林道~

男「はっ……はっ……」

童貞「男……大丈夫!?」

男「だ……大丈……」

ドサッ!

童貞「男!?」

男「くそ……まだ……まだこんなところで……!」

ザッザッザッ

男&童貞「!?」

ザッザッザッザッザッ

童貞「だ……誰か近づいてくる!」


男「ちくしょう……動けよ……俺の身体……っ」

男(ダメだ……もう立てない……)

ザッザッザッ……

女5「ようやく見つけたわ」

童貞「ひっ!」

男「くっ……童貞狩り……か?」

女5「残念だけど、その通りよ」

少しの沈黙の後、女5は童貞に視線を向けた

女5「ねぇ、この子は誰? あんたのガールフレンド?」

男「うるせぇ……童貞に近づくなよ……指一本でも触れてみろ……ぶち殺すぞ……」

女5「地面に這いつくばった死にかけのカエルが何強がってんのよ……って、え!?」

女5「童貞!? あなた今、この子の事を童貞って言ったのよね!?」


女5(己の童貞を『人の姿』に具現化するという力……噂には聞いた事があるけど……まさか本当に存在する力なの!?)


女5「すごい……どこからどうみても普通の女の子だわ……」


童貞「あ……あ……」ガクブル

男「大丈夫……心配するな……お前は俺が……絶対に守って……みせ……るか……ら……」パタッ

童貞「男!? 男ぉぉっ!!」

女5「あら、気を失ったみたいね」

童貞「……」

童貞「男……ごめんね……いつも守ってくれてありがとう」

女5「……」

童貞「……今度は私があなたを守るから」

ズスズズズズ……

女5「!?」

童貞「童貞狩りさん、男には指一本触れさせません……帰ってください」

ズスズズズズ……

女5(ち、ちょっと!? 何よこの気……この子が放ってるの!?)

ズスズズズズ……

女5「周りの木々も怯えている……この力は一体……」


女28336「な、なんだこの強烈な気の流れは!?」

女47171「まさか……女5が戦闘中なのか!?」

女55239「わからない!至急、気の流れる方角へ迎うぞ!!」


ザッザッザッ

童貞「!」

女5「さすがにこの異様なまでの気……感づいた追っ手が近づいて来たわね」

童貞「くっ……」


ザッザッザッザッザッザッ


女5「あなた……その気を解いた方が良いわよ」

童貞「……」

女5「童貞狩りが蟻のように群がってこっちへ来てるわ」

童貞「……」

女5「……ちょっと、まさか!? 気の解き方がわからないの!?」

童貞「………………は、はい」

女5「あーっもう!この馬鹿!」シュッ

ドスッ!

童貞「うっ……!?」ドサッ

女5の拳を腹部に叩きこまれ童貞は気絶した


女5「まったく……よいしょ!」ガッ

女5「うっ……さすがに二人を担ぐのはしんどいわね……」

ザッザッザッ

女25314「気の流れが……消えた……!?」

女61723「おーい!誰かいるのかー!?」

女5「っと、まずいわね。 さっさと移動しなきゃ」シュタッ


~とある地下道~


男「う……」

男「ここは……」

女5「目が覚めたみたいね」

男「!?」バッ

男「お前はさっきの童貞狩り!」

男「……童貞は!? 童貞はどこだ!? まさか……」

女5「まぁまぁ、落ち着きなさいよ。童貞ちゃんならあんたの後ろで寝てるじゃない」

童貞「Zzz ……」

男「童貞!?……良かった……本当に良かった……」


男「ここは……お前たちのアジトなのか?」

女5「違うわ。ここはあんた達がさっきまでいた林道から10kmほど離れた場所にある廃墟の街の地下道よ」

男「地下道?」

女5「隠れるには絶好の場所よ。入り口も見えにくいように綺麗にカモフラージュしてきたから、そう簡単にここが見つかる事はないと思うわ」

男「え……? 隠れる……? 見つかる事はない……?」

男「ちょっと待て……言ってる事が全然わからないんだが……」

男「あれ……お前……もしかして俺達の事を助けてくれたのか?」

女5「あんたね~さっきから『お前お前』ってうるさいわよ! 私には『女5』って名前があるんだから! 」


ガシッ!

女5「な……何!?」///

男は満面の笑顔で女5の小さな両手を握りしめた

男「いやぁ~ホントにありがとう! 助かったよ! お前って実は良い奴だったんだな! 」

女5「ちょっと、私の話聞いてんの!? ていうか触らないでよ!」/// バッ

女5「い、言っとくけどね、助けたつもりなんてないわよ! 実はこれからあんたの童貞をじっくりいただくつもりなんだから!」///

男「はは、何言ってるんだよ! そんな回りくどい筆下ろしをする童貞狩りなんているもんか」

男「俺は男っていうんだ! よろしくな女5!」

女5「もう……何なのコイツ……調子狂うわね」///


女5「ところでさ、男」

男「ん?」

女5「彼女は……童貞ちゃんはあんたの力で作り出したの……?」

男「……」

女5「あ、ごめんなさい。 別に無理矢理聞き出そうと思っているわけじゃないわ」

男「いや、別に構わないんだけど……」

男「──実は自分でもよくわからないんだ」

女5「え?」

男「二十歳の時だったっけな……いつものように、朝目が覚めたら俺の隣で童貞が寝ていたんだ」

男「俺が作り出したのか、はたまた誰かが与えてくれたのか……わからない」


女5「そんな……その時はお互い不審に思ったりしなかったの?」

男「それがさ……ま、確かに一瞬は驚いたけど、童貞の姿はなんだか懐かしくて……」

男「まるで、小さい頃からずっとそばにいたんじゃないかって思えるくらい親近感があって……すぐに打ち解けたよ 」

男「童貞も同じような気持ちだったみたいだ」

女5「童貞ちゃんが実は普通の人間だという可能性は無いの?」

男「いや、それは無い。 証拠も無いけどあいつは俺の『童貞』そのものだ」

男「なんだろうな……言葉じゃ上手く表せないけど、潜在的にわかるというか……でも間違いないんだ」

女5「なんだか信じがたい話ね……」

男「だけど、あいつがそばに居てくれると本当に幸せな気持ちになるんだよ。 暖かくて、優しくて……」

男「だから俺は絶対に童貞を守る! 例えこの先にどんな絶望が待ってるとしてもな」

女5「男……」

童貞「……う~ん」

男「おっ!? 目が覚めたか童貞!」

童貞「ここ……は?」

女5「おはよう童貞ちゃん。 さっきは強引に寝かせちゃってごめんね」

童貞「な……あなたはっ!?」

男「心配するな童貞。 こいつは俺達を助けてくれたんだぜ!」

童貞「助けて……くれた……?」

女5「だ か らっ! あんたねぇ別に私は助けたつもりはないわよ!」///

童貞「あ……そっか……あの時、私達は童貞狩りに囲まれそうになって……」

童貞「まさか……あれから童貞狩りに見つかる前に私達をここまで運んでくれたんですか?」

女5「ま、まぁね! でも勘違いしないでっ! 今から地獄の筆下ろしタイムが待っ──」///

童貞「ありがとうございます……なんてお礼を言ったらいいのか……」

女5「~~っ!」///

女5「……はぁ……さすが一心同体……お人好しを仲良く持ち合わせてるわね……」


童貞「でも、どうして私達を助けてくれたんですか?」

女5「!!……それは……えっと……」

ピリリリリッ ピリリリリッ

女5「あら」

男「ん? 通信機か?」

女5「えぇ、少し静かにしてて」ピッ

女5「こちら、女5。 どうしたの?」

女5「……」

女5「……わかったわ、すぐに戻るから 」ピッ

男「どうしたんだ?」

女5「ギャル部隊のアジトまで戻らないと行けなくなったわ」

男「そうか……俺達をかくまってた事がバレてなきゃいいんだが」

女5「大丈夫よ。また夜にここに来るから待ってて」


童貞「えっ!? でも……」

女5「ふふ、お腹空いてるでしょ? 何か食べ物を持ってきてあげる」

俺「お、おいおい! それはありがたいけど、大丈夫かよ!?」

女5「うるさいわね~、大人しく待ってなさいって」

女5「それに、今までの疲労や空腹を回復させなきゃ今後ロクに動けないでしょ?」

女5「じゃあね、また後で」

タッタッタッ……

童貞「……なんか不思議な感じだね」

男「あぁ、童貞狩りに助けられるなんて、変な夢でも見てるみたいだ」

男「なんであんな良い奴が童貞狩りなんてやってるんだろうな」

童貞「……」



~『童貞狩り』ギャル部隊アジト~


女42369「なんてことだ……隊長が予定より三日も早く帰ってくるなんて……」

女78741「……」ガクブル

女39687「!! ……来たぞ!」

ガチャ

女8「うぃーす」

女56124「お、お帰りなさいませ女8隊長!」

女8「あ~マジだっる……」

女12356「今回の本部会議は一体どういった内容だったんですか?」

女8「あぁッ!? 知らねーよそんなの。 あんなクッソだりぃお喋り会なんて真面目に聞いてるわけねーだろカス」

女12356(くっ……何故このような方が一部隊の隊長を任されているのか……!)

女8「ところでさ~お前らちゃんと最後の童貞は捕まえたんだろうね?」

隊員一同「!!」ギクッ!

女32547「ま……誠に申し訳ありませんが……未だに捜索中であります……!」


女8「は?」

女32547「ひっ……」

女8「ハァアアアアアアッ!?」ブワッ

女8の長い髪が逆立ち、さらには体中からドス黒い気が溢れ出した

女26354「うわ……うわぁあああ!」

女8「てめぇらっ……私が本部に向かってた一週間の間なにやってたんだ!?」ズスズズズズッ

女78542「す……すみません!! すみませんっ!!」

女8「ただでさえ超気分ワリィのにウチに帰ってもこの有様かよチョベリバッ!!」ズスズズズズッ

女8「ちょっと気分アゲアゲにしたいからさ……何人かぶち殺すわマジで」ズスズズズズッ

女36457「そ……そんなっ!? お許しをーっ!!」

女8「艶やかに死にな……アゲハ神拳奥義! 『トルネード花魁アッ──」

女5「待ちなさいっ!!」

女8「!?」


女36457「……っ!? おま……貴女は!?」

女5「八つ当たりで自分の部下の命を奪おうとするなんて……相変わらず最低ね女8」

女8「女5!? てめぇえええ邪魔してんじゃねーぞゴルァッ!!」

女5「彼女達はあんたみたいな怠け者と違って、立派に捜索に力を注いでいたわ」

女36457「女5隊長……アジトに顔を出さなくとも、現場ではしっかり我々を見ていてくれたんですね……」

女51698「あぁ……女5様……」

女78542「女神やでホンマ……」

女8「チッ……相変わらずムカつくクソアマねぇ……」

女8「確かに……私の可愛い部下達を責めるのは間違いだったわ……ごめんね皆……」

女5「わかればいいのよ、まったく」

女8「本当に責めなきゃいけないのはさァ……私の代わりに隊長代理を務めていた責任者……」ズスズズズズッ

女5「!?」

女36457「なっ!?」

女8「女5ぉおおお!!! てめぇだぁああああああ!!!」バッ

女8は、おぞましいまでにドス黒い気を纏った拳で女5に殴りかかった


──が、その拳は女5の顔に触れる直前でピタリと静止した

女8「がっ……体が……動かない……ッ!?」

女5「この気は……まさか」


女4「うふふ、『束縛のフェロモン』で貴女の動きは封じさせてもらったわ♪」


女8「なっ!?……ななな……なんでアネゴがここに!?」

女36457「人妻部隊の女4隊長!? いつの間に!?」

女5(女4……自分や相手から滲み出るフェロモンに特殊な気をブレンドさせて多種多様な独自のフェロモンを作りだす……気を扱う事に関しては唯一無二の天才……)

女4「んもぉ~相変わらず乱暴ね女8ちゃん♪ そんな荒々しいフェロモンじゃ良い男は落とせないわよぉ♪」

女5「助かったわ女4、ありがとう」

女4「久しぶりねぇ女5ちゃん♪ まぁ、貴女ならあの拳なんか簡単に捌けたんだろうけど♪」


女8「く、くっそぉおおお!! 良いから早くこの気を解いてくれよアネゴ~!」

女4「う~ん、ちゃんと反省してる?」

女8「してるから! してるからぁあああ!」

女4「わかったわ、もう乱暴しちゃダメよ♪」フッ

女8「はぁ……はぁ……なんでアネゴが来てるのよ~……聞いてないよっ!」

女4「あらあら、本部会議で言ってたじゃな~い、まずはこのエリアに他の隊長を二人派遣するって♪」

女8「は……? なにそれ……ちょっとなにそれ!?」


「情けない……貴様、本部会議で一体何をしていたというのだ」


女8「!? てめぇは!!」


女7「こんな醜い豚の為に、我の魔剣『無垢』を振らねばならぬとは……歯痒いものだ」


女5「!」

女36457「ロ……ロリ部隊の女7隊長!?」

女5(弱冠14歳にして童貞狩りNo. 7の座を手にした期待のルーキー女7……今までにどれほどの修羅場をくぐって来たのか……想像するのも恐ろしいわね)


女7「フン……」

女8「ゴルァくそガキぃいいッ!!! アネゴはともかく、てめぇはお呼びじゃねぇ!!!」

女8「さっさとウチに帰ってママのオッパイでも吸ってやがれッ!!!」ズズズズズズッ

女7「我も好き好んでこんな豚小屋に足を踏み入れている訳では無い」

女7「向かってくるのであれば……斬るぞ?」チャキッ

女8「上等だぁあああ!!!ぶるぁあああああ!!!」バッ

ホワァ……

女8「あぐっ!?」ピタッ

女7「むっ?」ピタッ

女4「『束縛のフェロモン』♪ 貴女達いい加減にしなさい♪」

女8「あぁあああもうっ!!!」

女5「女8はしばらく束縛したままでいいわよ」

女4「そうね♪」

女8「ちょっ、女5! てめぇえええ! 」

女5「ところで──何故あなた達のような実力派が二人も派遣されたのかしら? 」

女5「正直、このメンバーだけで一国を相手にしても問題ないくらいだわ」

女7「……最後の童貞を捕らえるべく、我ら童貞狩りの首領が、全部隊の隊長をこのエリアに向かわせる事になった」

女8「ハァッ!?」

女5「なんですって!?」

女4「まぁ、最終的にはって事なんだけどね♪」

女7「どうやら最後の童貞の『覚醒』とやらが迫っているという」

女5「覚醒!? なによそれ!?」

女7「詳しくはわからないが、その『覚醒』が我々にとって最大の危険因子となるらしい」

女8「そんなヤバい話なら、こっそりケータイなんていじらないで真面目に会議に参加しとくべきだったわ……」

女5「……」

女8「でもさ~なんで今回はアネゴとクソガキだけがここに派遣されたワケ?」

女4「他の皆はイケない子達の相手で忙しいのよ♪」

女8「は?」


女7「まだ世界各地には反童貞狩り活動を行うレジスタンスが溢れているからな。現時点では、その愚か者共の対処に追われている部隊がほとんどだ」

女7「しかし、レジスタンスと言えど所詮はただの虫。 他の部隊が奴らを完全に制圧するまでに時間はかからないだろう」

女4「私達二人のエリアは手が空いていたから先にこっちへ派遣されたの♪」

女5「……全ての部隊長がここに集う予定はいつぐらいになるの?」

女7「首領の見込みでは一週間後。 ボーイッシュ部隊と熟女部隊の隊長らは三日後にはこちらへ合流出来るそうだ」

女5「そう……」

女5(まずいわね……最低でもあと三日で男達がいかに遠くのエリアへ移動できるかが鍵となる……)

女4「──あら、女5ちゃん。 なんだか不安定なフェロモンが滲み出てるわよん♪ 何か都合が悪い事でもあるのかしら?♪」

女5「!!!」


女5「な、何よ急に……別に問題ないわ」

女5(なんて奴……! 私の感情の起伏を僅かなフェロモンの流れで読み取ったの!?)

女4「気のせいだったかしら♪ あ、女5ちゃんも引き続きこっちの部隊の応援をよろしく頼むわね♪」

女5「えぇ、わかったわ」

女5(現時点で一番やっかいなのは間違いなく女4ね……『束縛』だけでも脅威なのに、他にどんな効力のあるフェロモンを操るかもわからない……気をつけなきゃ……)

女7「さて、そろそろ捜索に入るとしよう。 我の魔剣『無垢』も長い退屈により血に飢えている」

女4「あらあら、見つけても筆下ろしする前に殺しちゃダメよ?♪ ちゃんと気持ち良く奉仕してからじゃないと♪」

女7「フン…関係無い」

女8「アネゴ~私も早く暴れたいから気を解いてよ~」

女4「はいはい♪ でも、仲間内で喧嘩しないようにね♪」フッ


女5「それじゃ、私は先に行くわね」シュタッ

女36457「は、速い……まるで消えるように一瞬で……」

女7(ほう……)

女4「うふふ、童貞狩りでトップクラスのスピードを誇る女5ちゃんがいれば百人力ね♪」

女7「フン……我の方が速い」

女8「ケッ、余裕こいてんじゃねーぞクソガキ!」

女7「力だけの豚がほざくな」シュタッ

女8「なんだとゴルァ! 待ちやがれ!」シュタッ

女36457「よし、我々も隊長達に続くぞ!」

ギャル部隊隊員一同「おーっ!!!」

ザッザッザッザッザッザ……



女4「……ふふ、皆とっても元気ね~♪ 若いって羨ましいわぁ♪」

女4「それじゃあ私はのんびりと『悩める子猫ちゃん』を追いかけに行こうっと♪」

女4「両手に付着していた濃厚な『男性フェロモン』……貴女の行き先には素敵な王子様が待ってるのかしらねぇ♪」

文字化けがはんぱない

>>33
まじですか…orz
もしかして半角文字の部分ですかね?

PCで確認したところ、本文中に使った波線が文字化けしていました
以後、気をつけます


─地下道─

女5「はぁ……はぁ……」タッタッタッ

女5(とんでもない事になったわね……早く男達に知らせなきゃ……!)タッタッタッ


女5「!」

女5「男! 童貞ちゃん!」

男「あっ、おかえり女5!」

童貞「おかえりなさい、女5さん」

女5「え? ……あ……ただいま……」///

女5「……」///

女5(……こんなどこにでもあるはずの言葉のやり取りが、なんだか妙に懐かしく感じるわね)

女5(そして……とても温かい……)

男「ん? どうした? 急に黙り込んで」

女5「い、いえ、何でもないわ!」///

童貞「?」


女5(今は彼らの疲労の回復と、空腹を満たしてあげるほうが先ね……)

女5「あっ、そうそう」

女5は持ってきた袋から『おにぎり』を取り出し、男と童貞に渡した

女5「二人共、食べて」

男「おぉ! 本当にいいのか!? ありがとう!」

童貞「ありがとうございます、女5さん」

女5「べ、別にお礼なんていいからさっさと食べなさいっ!」///

男「いただきます!」ガツガツッ

童貞「すみません、何から何まで気を使っていただいて……」

女5「ううん、いいのよ。 さ、童貞ちゃんも遠慮せずに食べちゃって 」

童貞「はい、いただきます!」

男「うんめぇえええ! 銀シャリなんてホント久しぶりに食べr」ガリッ

男「っ……舌噛んだ……」

女5「食べながら喋るからよ、バカ」

童貞「ふふふっ」


男「ふぅ……食った食った!」

童貞「ご馳走様でした!」

女5「ふふ、これで明日からも頑張れるかしら?」

男「あぁ!バッチリさ!」

男「……」

男「なぁ、女5」

女5「なに?」

男「あの……さっき童貞も言ってたけどさ、どうして俺達を助けてくれたんだ?」

童貞「あ、そういえば……」

女5「ちょっと、何よ急に……っ!」///

女5「……」///

女5「……」

女5「私は……あなた達に『可能性』を感じたのよ」


童貞「可能性……?」

女5「えぇ、この絶望に満ちた世界に、希望の光をもたらしてくれるんじゃないか……ってね」

女5「どんなに追い込まれようが、決して諦めない心……」

女5「たとえ自分を苦しめようとも、大切なを人を守りたいと思う気持ち……」

女5「互いを信じ合い、支え合う、誰にも引き離す事の出来ない固い絆……」

女5「そんな、今の世の中では誰もが失ってしまっているモノを、あなた達は持っている」

女5「私にはそれが……とても眩しく見えたの……」

女5「どうか……その光で、絶望に打ちひしがれた人々を照らしてほしい」

男「女5……」

女5「『童貞』は世界を救う──私は、そう信じてる」


男「はは、何だか照れるな……」

童貞「うん」///

女5「ったく……あんまりクサい事言わせないでよねっ!」///

男「ありがとうな、女5」

男「……約束するよ」

女5「え?」

男「俺はこの先も、絶対に童貞を守り抜いていく!」

男「そして……悲しみや苦しみを背負ってる人達の為にも
、これから生まれてくる子供達の為にも──」

男「『童貞狩り』が存在しなかった頃のような平和な世界を取り戻してみせる!」

女5「!」

童貞「男……」

男「童貞、俺達なら出来るさ! 」

童貞「うん! 頑張ろうね、男!」

女5「ふふ、期待してるわよ」


女5(本当、眩し過ぎるわね……)

女5(まるで、太陽の光のような……そんな『気』が男達から溢れ出してる……)

女5(闇に浸りきった私には、到底、直視出来ないぐらいに……)

男「それでさ……女5」

女5「……なに?」

男「『童貞狩り』なんて辞めてさ……俺達と一緒に行かないか?」

女5「!!!」

女5「バ、バカじゃないのっ!? わわわ……私は……」///

童貞「私も、男と同じ気持ちです」

童貞「それに……女5さんは、望んで『童貞狩り』に所属してるようには見えません……」

女5「 そ、それは……」

男「なぁ、女5。 大体、お前みたいな優しい奴がどうして『童貞狩り』なんかに入ったんだ?」

女5「……」

女5は、心の底から込み上げてくる『何か』を必死に押しこらえた

女5「少し……昔話をしてもいいかしら?」


十数年前──まだ『童貞狩り』という組織が存在しなかった頃……

私は、とある村の片隅にあった小さな道場で暮らしていたの。

その道場の師範である父、そして、一人の姉と私の三人でね。







女(当時の女5)「はっ!」シュッ

姉「ふふ、相変わらず遅い拳ですわね」サッ

姉「ボディが……がら空きですわよっ!」シュッ!

ドスッ!

女「かは……っ!」ドサッ

父「そこまで!」

姉「まったく……話になりませんこと」


私と姉は、父の武術『守童拳(しゅどうけん)』を継ぐ為に 、日々稽古に励んでいた。

姉「お父様、守童拳の後継者は私一人で充分ですわ」

女「くっ……」

父「……確かに、お前は強い。一つ一つの『型』も、ほぼ完成されている。 武の才能もある」

父「だが、守童拳に『殺気』など必要無い」

姉「!」

父「お前は打撃の際に『殺気』を込め過ぎだ。 それでは、ただの暴力となんら変わりはない」

父「守童拳は人を支配する為の武術ではなく、人を守る為に作られた武術だ」

姉「ちょっと、お父様!? 仰っている意味がわかりませんわ!」

父「それがわからない内は、守童拳の真の力を引き出す事など不可能」

父「今のお前はただの『喧嘩が強い女』だ」

姉「……なぜ……なぜ、いつもお父様は私の事を認めてくれませんの!? 」

姉「実に不愉快ですわっ!」タッタッタッ…

女「姉さん……」

父「……」


そして、ある日──悪夢は唐突に訪れた。

村人A「いらっしゃい! 今日は特別セールだよ!」

女「あら、お肉が安いわね……あ、こっちの野菜も──」

村人B「大変だぁああああああ!!!」

村人C「おいっ!!! 火事だぞ火事!!!」

女「え!?」

村人B「っ!? あ、女ちゃん!!!」

村人B「あんたの道場が……あんたの道場が燃えてるぞ!!!」

女「な、何ですって!?」

タッタッタッタッタッタッ

女「!」

女「嘘……でしょ……」

ゴォオオオ……

村人D「おい! 消火させるぞ! 急げ!」

村人E「あぁ、村の皆を呼んでくる!」


村人の協力のおかげで、無事に火を消し止める事は出来た。

だけど──燃え尽きた道場の中から、二つの遺体が発見された。
真っ黒に染められた『それ』は、もはや人かどうかもわからない状態だった。


家族を失った。


住む家も失った。


あまりに急な出来事に、涙も出なかった。



そして、身寄りもお金も無い私は村を出た。

行き着いた先は、隣街のスラム街だった。


私は生きる為に必死だった。

ゴミ箱を漁って残飯を探したり、そこら中に転がるホームレスに頭を下げて食べ物を分けてもらったり……

ありとあらゆる手段を使い、私は生き続けた。

──でも、そんな生活にも限界がきた。

ドサッ

女「お腹……空いたなぁ……」

女「……なんで私……こんな事してるんだろう……」

女「父さん……姉さん……会いたいよ…………」

女「もう……私には……何も無い……」

女「……このまま……死んじゃえ…………」


ザッザッザッ

マフィアA「ったく、スラム街ってのはどこに行っても汚ぇところだな」

マフィアB 「ククッ、まぁそう言うな。 無法地帯が清潔だと余計に気持ち悪いってもんさ」

マフィアA 「はぁ……さっさと『宝探し』でもして帰る──ん!?」

マフィアA 「おい……あれ見ろよ!」

女「……」

マフィアB 「おいおいおい!? 超上玉じゃねーかあの女!!」

マフィアA「ありゃあ相当、高値で売れるぜ!」

マフィアB 「……でも、生きてんのか?あれ」


ザッザッザッ

マフィアA 「おい、お前」グイッ

女「……!」

女「……触らないで」ボソッ

マフィアA 「おっ!? こいつまだ生きてるじゃ──」ドスッ

マフィアA 「かはッ……!」ドサッ

マフィアB 「な、何!?」

女「触るなって言ってんのよっ!」シュッ

マフィアB 「あぐッ……!」ドスッ

ドサッ

女「はぁ……はぁ……」

女(……!)

女(そっか……まだ私には大切なモノが残っているじゃない……)

女(父さんと姉さんの思い出が詰まった『守童拳』……)

女(……こんなところで挫けてどうすんのよ)

女(私は……二人の分まで、絶対に生き抜いてみせる!)

パチパチパチパチ

女「!?」

???「ふふ、お見事な腕前ですこと」

拍手の鳴る方へ振り向くと、そこには──

姉「久し振りですわね……女」

女「え……? そんな……姉……さん……?」

姉「こんな廃れた場所に一人で……さぞ、辛かったことでしょう……」

女「姉さん……姉さんっ!!!」バッ

姉「心配かけてごめんなさいね」ギュッ

姉は、子供のように泣きじゃくる女を優しく抱きしめた


女「姉さん……生きていたのね……」

姉「ふふ、私はそう簡単にくたばりませんわ」

女「……父さんは……父さんは一緒にいないの!?」

姉「……」

女「……やっぱり、父さんは……うぅ……」

姉「泣かないで女。 これからは私がずっとそばにいてあげますから」

女「うん……また二人で守童拳の稽古やろうね……父さんの意志を継ぐ為にも……」

姉「……ごめんなさい、女」

女「え……?」

姉「私は、武術から足を洗いましたの。 守童拳の後継者は貴女に託しますわ」

女「そ、そんな!? どうして……」

姉「『仕事』が忙しくて、とても武術に時間を割く余裕がありませんの」

女「仕事?」

姉「そう……とぉっても気持ち良くて、楽しい仕事ですわ♪」


姉「貴女にも是非、この仕事に協力していただきたいの」

女「で……でも──」

姉「大丈夫ですわ。 貴女には仕事とは別に武術を磨く時間も与えますから」

女「……」

姉「詳しい話は後でしますわ。 とりあえず、今はこの場所からすぐに立ち去ったほうがいいでしょうし……」

姉「先程、貴女が打ちのめしたマフィアは、恐らく人身売買を糧としている凶悪なグループの部下達。 新手にこの状況を見られると非常に面倒な事になりますわ」

女「わ、わかったわ。 行きましょう」


流されるままに、私は姉の後についていった。


正直、頭の中は混乱していた。

『仕事』とはなにか……これから何処へ行くのか……

そして何より、なぜ、姉さんが生きているのか……

でも、そんな事はどうでもよかった。

これから先、また姉さんと一緒に暮らせるのなら──


──ふと気がつくと、私は、ひんやりとした広い牢屋の中にいた。

女「……」

女「ん……」

姉「あら、お目覚めですわね」

女「!」

牢屋の外には姉と、見知らぬ女性が数人ほど立っていた

女「姉さん!?」ジャラッ

女「な……手枷!? それに、ここは……牢屋!?」

姉「ふふ、貴女には早速『仕事』に取りかかってもらいますわよ♪」

女「ちょっと待って!! 姉さん、これは一体どういう事なの!?」

姉「女37、『彼ら』を牢の中へ」

女37「ハッ!」ガチャガチャッ

女51「ほら、お前ら! さっさと中に入れ!」

ギィイイイ……


ざわざわ……

童貞男A 「ひっ……」

童貞男B 「どうか……命だけは勘弁してください!」

童貞男C「俺たちをどうする気だ!?」

女「!?」

姉「ふふ、皆様、安心していただいて結構ですわよ」

童貞男D 「え……!?」

姉「私達が興味あるのは、あなた方の『童貞』だけですから……命まで奪うつもりはありません」

童貞男E 「僕たちの……『童貞』?」

童貞男F 「どういう事だ!?」

姉「これから一人一人、筆下ろしをしていただきますわ」

姉「あなた方の目の前にいる……彼女を使ってね」

女「!?」


女「……姉さん……本気で言ってるの……?」

姉「それでは、お好きな方からどうぞ」

童貞男G「ふ、筆下ろしって……」

童貞男H「ア……アレだよな?」モジモジ

童貞男I「おいおい、本当にいいのか!?」

姉「ふぅ……さすが童貞共は消極的で苛々させますわね。 さっさと始めてくださらないかしら?」ズズズ……

童貞男J「ひいっ!」

姉「こちらも時間が惜しいので……出来ぬと言うのであれば、あなた方の亡骸から童貞を奪ってあげてもよろしくてよ?」ズズズ……

童貞男K「や、やります!やりますから!」


童貞男L「なんか……よく見たらかなり綺麗な子だな……」

童貞男M「俺みたいな奴に……こんな子とヤれる機会があるなんて……」

童貞男N「……なんか、燃えてきたな」


女「……姉さん……これは悪い夢よね……?」

姉「きちんと満足させなきゃダメよ、女?」

女「姉さんっ!!!」

童貞男O「じゃあ、俺からやらせてもらうとするか!」ガッ

女「いやっ触らないで!!!」バタバタ

童貞男O 「ククッ、抵抗してくるのも、またそそるなぁ」

女「姉さんっ!!! 助けてよ……助けてっ!!!」バタバタ

姉「ふふ、また後で来るわね。しっかりと楽しんで頂戴♪」

女「そんな……」



女「いやぁああああああああ!!!」


カツン……カツン……カツン……


ガチャガチャッ


ギィイイイ……


女「……」

姉「ふふ、お疲れ様。 楽しんでもらえたかしら?」

女「……」

姉「明日はもっと忙しくなりますわよ?」

女「……」

姉「貴女は私の貴重な駒……これから本格的に始動する『童貞狩り』の大きな戦力になりますわ」

女「……」

姉「ずっとそばで見守っててあげますからね」

姉「ただ、もしもここから逃げるのであれば……殺しますわよ」

>>39
携帯かスマホだと「ちるだ」の全角だと大丈夫よ支援

>>64
おぉ、そういう対処法があったんですね!
ありがとうございます!

女「……!?」

女「姉さん……どうして……」

女「何のために……『童貞狩り』なんて……」

女「……姉さん……一緒に村に帰ろうよ……そして、また二人で──」ガッ

姉は女の首を掴んだ

女「あぐっ……!?」 ググッ

姉「うるさいですわねぇ……貴女は黙って私に従えばいいのよ……っ!」

女「姉……さ……」グググッ

姉「あら、いけませんわね」パッ

ドサッ

女「げほっ……! げほげほっ……!」

姉「ふふ、働かせる前に殺してしまうところでしたわ」

女「はぁ……はぁ……」

姉「あ、そうそう。 貴女には明日から『外の仕事』にも取りかかってもらいますわよ」

女「!?」

姉「私達『童貞狩り』の活動を邪魔しようと世界各国の政府が、特殊部隊をこちらへ向かわせてきていますの」

女「は……?」

姉「だから貴女の得意な「守童拳」で返り討ちにしてあげなさい♪ 良い修行になると思いますわ」

女「世界を敵に回すつもりなの!?」

女「それに……人を支配する為に『守童拳』を振るうわけにはいかないわよ!」

ズズズズズズ……

女「!」ビクッ

姉「女……!」ズズズズズズ…

女「……ごめんなさい……」ガクブル


女(この世の物とは思えない程の邪悪な『気』……あなたは……本当に姉さんなの……?)

姉「ふふ、わかればいいのよ」

姉「貴女以外にも『童貞狩り』には素晴らしい戦闘能力をもった方々がいますから、戦力的には何の問題もありませんわ」

姉「その彼女達と仲良く協力して頑張って頂戴ね♪」

女「……」

女(父さん……私はどうすればいいの……)

姉「あ、それと──」

姉「もう私を『姉さん』と呼ぶのはやめていただけますかしら?」

女「え……?」

姉「私は『童貞狩り』の創立者であり、No. 1のランクを持つ『女1』ですわ。 よく覚えてなさい」


私は悪魔のように豹変した姉に逆らう事も出来ず、政府の人間やレジスタンスとの戦闘にも駆り出されるようになった。

たくさんの人をこの手で傷つけた。

体だけではなく、家族との思い出が詰まった『守童拳』も汚れてしまった……。



もはや、私の全ては……『闇』に染まった……

………………

…………

……



男「……」

童貞「……」

女5「それから私はNo. 5のランクを与えられ、今日に至るまでの十年間、『童貞狩り』の『女5』として生きてきたわ」

男「……」

童貞「……」

女5「……ごめんなさい。必要以上に話をしてしまって長くなっちゃったわね」

男「……」

女5「確かに……童貞ちゃんの言うとおり、私は望んで『童貞狩り』に所属しているわけじゃない」

女5「でもね……私は……もう……取り返しのつかない程に……闇に染まってしまった……」ポロポロ

女5「本当は……本当はね……男たちと……一緒……に……」ポロポロ

ギュッ

女「あ……」ポロポロ

童貞「女5さん……っ!」

童貞は、涙が溢れ出した女5を優しく抱きしめた


童貞「ずっと……ずっと辛かったんですね……」

女5「……」ポロポロ

童貞「……ねぇ、女5さん」

童貞「あなたは私達に『たくさんの人々を希望の光で照らしてほしい』って言ってましたよね?」

童貞「ならば……私は今、目の前にいるあなたを照らしてあげたい」

女5「!」ポロポロ

童貞「小さな小さな光かもしれないけど……少しでも女5さんの闇を追い払ってあげたい……!」ポロポロ

女5「ぁ……」ポロポロ

女5「ありがとう……ありがとう童貞ちゃん……」ポロポロ


男「俺も童貞と同じ気持ちだ」

男「今までが辛い過去だったなら、今からは俺達で楽しい未来を作っていこう!」

女5「男……」ポロポロ

女5「ったく……なんなのよ……童貞のクセにカッコつけちゃって……」ポロポロ

女5「だけど……すごく嬉しいよ……ありがとう、男……」ポロポロ

しばらくの間、女5は涙を止める事が出来なかった



──彼女は決意した


『童貞狩りの女5』という自分を捨て、再び『女』として生きていこうと



女「……」

男「大丈夫か?」

女「えぇ、だいぶ落ち着いたわ」

女「ふふ……あんなに大泣きしたのは久しぶりよ」

女「……」

女「私は『童貞狩り』を辞める事にしたわ」

男&童貞「!」

女「今日からまた『女』として生きていくから……改めて、よろしくね」

童貞「良かった……!」

男「あぁ、よろしくな女!」

女「それで……あの……さっき男が言ってくれてたけど……」モジモジ

童貞「?」

女「えっと……これから私も……あなた達についていっていいかしら……?」///

男「あぁ、大歓迎だよ!」

女「あ、ありがとう……」///

童貞「これから女さんとも一緒にいれるなんて嬉しいです!」

ガバッ!

童貞「ひゃっ!?」

女は童貞に飛びつき、強く抱きしめた

女「私も童貞ちゃんと一緒にいれるなんて嬉しいっ!」ギュウウウ

童貞「ちょっ、ちょっと女さん!?」///

女「童貞ちゃんかわいいよ童貞ちゃん」ナデナデナデナデ……

童貞「お、落ち着いてくださいっ」///

男「はは、すっかり童貞がお気に入りになってしまったみたいだな!」


男「……ふわぁあああ」

男「一段落ついて安心したら眠気が襲ってきやがった……」

女「ふふ、この周辺は私が見張っておくから夜明けまで眠ってていいわよ」

女「『童貞狩り』に追われるようになってからは睡眠時間もかなり減ってるみたいだし……たまにはゆっくり休みなさい」

男「いや、そういうわけには──」

女「いいからいいから! さ、童貞ちゃんも夜遅いんだから早く寝なさい!」

童貞「女さん、なんかお母さんみたいですね」クスッ

女「それに明日からは大忙しになるからね! 急いでギャル部隊の管轄エリアから脱出しなきゃいけないわ」

男「おぉ……任せとけ……童貞は絶対に……まも……」

男「zzz ……」

女「あら、よっぽど眠かったのかしら」

童貞「お疲れ様、男。 いつもありがとね」


童貞「ん……」

童貞「なんだか……私も……眠くなってきました……」

女「ふふ、遠慮しないでいいわよ。 童貞ちゃんもゆっくり休んで疲れをとりなさいね」

童貞「はい……すいません……女さ……」

童貞「zzz 」

女「二人とも本当にお疲れ様……おやすみなさい」

女「……」

女「……」コクッ

女「……z 」コクッ

女「はっ!?」バッ

女「……ったく、私まで眠りこけてどうすんのよ……」クスッ

女「それにしても……なんだか心地良いわね……」

ホワァ……

女「──!?」

女(今の感覚……まさかっ……!!)


女は全神経を研ぎ澄ませて周囲を見渡した

女(……!)

女(やっぱり……とてつもなく細かい『気』が充満してるわ!)

女(それも普通の『気』ではない……何か独特な物質が混ざり込んだような──)

女(あっ!!!)

女(そうか……間違いない……! これは『彼女』の──)

男&童貞「zzz ……」

女(くっ……!)

女(……やるしかないわね!)

女「男……童貞ちゃん……おとなしく寝てなさいよ!」シュタッ

タッタッタッタッタッタッ

女「あなた達は……私が絶対に守ってみせる!」

タッタッタッタッタッタッ……


─廃墟の街(地下道 入り口付近)─

ザッ

女「はぁ……はぁ……」

「今夜はとても月が綺麗ね♪」

女「!」

女4「こんなロマンチックな夜に、素敵な王子様から口説かれちゃったりしたら……イチコロだわ♪」

女「……」ギリッ

女4「ふふ、予想通り最後の童貞君と一緒にいたのかしら?♪」

女「女4……地下道に充満していた特殊な『気』はあなたの仕業ね?」

女「恐らく、あの『気』には眠気を促進させる効力がある……危うく私も夢の中に飛び込むところだったわ」

女4「ご名答♪」

女4「とっても心地良かったでしょ?♪ 『安らぎのフェロモン』♪」


女4「でも、さすが女5ちゃん♪ バレないように細かくじっくりと地下道に流しこんでたのに気がつくなんて♪」

女「回りくどいやり方ね。 直接来なさいよ」

女4「私はあなたと戦いたくないの♪」

女4「それに、一緒にいる童貞君が興奮して刃向かって来たら殺してしまってたかもしれないし♪」

女「……!」

女4「私なりに気を使ってあげたつもりなんだけどなぁ♪」

女4「貴女も童貞君を危険に晒さない為に一人で向かってきたんでしょ?♪」

女4「 ふふっ♪ なんて美しい愛なのかしら♪」

女「……」

女4「童貞君……今、心地良く寝てるのよね?♪」

女4「今のうちに夜這いをかけて筆下ろしをしてあげなさいよ♪」

女4「それからじっくり愛し合えばいいじゃない♪ 私たち『童貞狩り』は人の命まで奪う必要はないんだし♪」

女「……」

女4「それに、今ここには私しかいないから、女5ちゃんが童貞君をかくまってた事も皆には内緒にしてあげる♪」


女「ふふ……ありがとう女4」

女4「いいのいいの♪ 私は女5ちゃんの恋の行方を応援し──」

女「気持ちは嬉しいけど、私はもう『童貞狩り』の隊員じゃないの」

女4「へ?♪」

女「これから私は自分の好きなように自由に生きていく」

女「本部に帰って女1に伝えててちょうだい。 『女5は一身上の都合で退社しました』ってね」

女4「女5ちゃん……本気で言ってるの……?」

女「当たり前よ」

女「それと──もう私を『女5』と呼ぶのはやめてもらえるかしら?」

女「私は『童貞』を守る守童拳の後継者『女』よ。 よく覚えときなさい」


女4「……ふふ♪」

女4「貴女から滲み出てるフェロモン……今まで見てきた中で一番美しいわ♪」

女4「女性の私でさえ惚れてしまいそうよ♪」ズズズ……

女「!」ビリビリ

女4「本当に残念だけど……裏切り者には死んでもらうわ♪」ズズズ……

女(なんて強烈な『気』……化け物ね……)

女(でも──)

女4「最後の童貞君は私が可愛がってあげる♪」ズズズズズズ……

女4「命を賭けた略奪愛……燃えてきたわ!♪」 バッ

女(私は……絶対に負けないっ!)バッ


タッタッタッ

女(彼女と戦う上で絶対に避けなければならないのは『束縛のフェロモン』……!)

女(ギャル部隊のアジトで見た時の感じだと……あの技は、束縛の対象に『気』をぶつけてから発動させていた)

女(つまり、彼女が放つ『気』に触れさえしなければ『束縛のフェロモン』を生成される事はない!)

女(まずは私のスピードで、『気』の狙いを定められないくらい視界を撹乱させてあげるわっ!) シュンッ!

女は目にもとまらぬ速さで女4の周囲を縦横無尽に駆け巡る

女4「ふふ、随分と警戒してるわねぇ♪」

女4「ならば……これはどうかしら?♪」ゴソゴソ

女4は懐から数本の小さなナイフを取り出した

女4「『求愛のフェロモン』♪」 ズズズ…

女「!」

女(今度は自分自身のフェロモンに『気』をブレンドさせたわね)


女4「この出来上がった『求愛のフェロモン』をナイフに注ぐと──あら不思議♪」 フワフワ

女「!?」

女(ナイフが……浮いた!?)

女4「愛に飢えたナイフ達が口説くのは貴女の『命』♪」

女4「猛烈に……アタックしちゃうわよ♪」 シュバッ

『求愛のフェロモン』を帯びた数本のナイフが女に向かって飛んでいく

女「くっ……なによこれくらいっ!」 サッ

シュバッ シュバッ シュバッ

女「残念ね、全部ハズレ──」

ククッ

女「な……」

避けたナイフは軌道を戻し、再び女に襲いかかった

女「追尾してくるなんて……っ!」 シュバッ


女「避けてダメなら──」ザッ

女「叩き落とすまでよっ!」 バババババッ

バチッ バチッ バチッ バチッ バチッ バチッ

女「よし! これで──っ!?」

女「女4が……いない!?」

女4「はい、お疲れ様♪」ズズズ……

女(なっ!? いつの間に後ろに!?)

女4「『束縛のフェロモン』♪」 ホワァ……

女(し……しまったっ!!)ピタッ

女4「ふふ、ナイフを捉えるのに集中しすぎて私を視界から外したのが失敗だったわね♪」

女4「貴女ほどではないけど私もすばしっこく動くのは得意なの♪」

女「うぅ……!」 グググッ

女4「無駄よ♪ 力まかせに『束縛のフェロモン』を破るのは不可能だわ♪」


女4「……女ちゃん。 特別にもう一度だけチャンスをあげる♪」

女「!?」

女4「『童貞狩り』に戻ってきなさい♪」

女4「そしたら命だけは助け──」

女「いやよ」

女4「女ちゃんっ……!」ギリッ

女「ふふ、体が動くのなら中指も突き立ててやったのに」

女4「……そっか♪」クスッ

女4「死ね」シュッ

ドゴォッ!

女「かはッ……!」

女4「調子に乗りやがって 」 ドカッ バキッ ボコッ

女(…………あぁ…………)

女4「じっくりと嬲り殺しにしてあげるわ」ボコッ ドカッ バキッ

女(…………強すぎる…………)


ドカッ バキッ ボコッ

女(……体中に激痛が走って……)

ドカッ バキッ ボコッ

女(……口の中に鉄の味が広がって……)

ドカッ バキッ ボコッ

女(……もう……意識が飛びそう……)

ドカッ バキッ ボコッ

女(……なのに……)

ドカッ バキッ ボコッ

女(……なんでだろう……)

ドカッ バキッ ボコッ

女(……ちっとも……負ける気がしない……)

ドゴォッ!

女「んぐっ……!」ドサッ

女4「はぁ……はぁ……はぁ……」


女4「ふぅ……私としたことが……取り乱しちゃった……♪」ハァハァ

女「……」

グイッ

女4「ごめんね女ちゃん♪ もう楽にしてあげるから♪」スッ

女「…………そういえばさ、女4」 モゴモゴ

女4「!」

女4「……何かしら?♪ 言い残した事があるのなら聞いてあげる♪」

女「『束縛のフェロモン』って……」 モゴモゴ

女「首から上は自由が利くのね」 モゴモゴ

女4「え?♪ それがどうかした──」

ブバッ!

女4「きゃっ!?」

女は口の中に溜まっていた血を、女4の顔に勢いよく吹きつけた

女4「くっ……目がっ……!」ゴシゴシ


女4は突然の出来事に慌ててしまい、一瞬だけ『束縛のフェロモン』の操作を怠ってしまった

女(!!──今だっ!)シュタッ

女4「許せない! 許せない!! 許せないっ!!!」ゴシゴシ

女4「殺してやる──って、あれ?」 バッ

女4「女は……どこ?」

女「あんたの後ろよっ」ズズズ……

女4「!?」

女は既に女4の背後で攻撃態勢に入っていた

女(父さん……私ね……)

女(やっと……やっと人を守る為に守童拳が使えるの……)

キュイイイイイイン……

女(もう──誰も悲しませたりなんかしないからっ!)


女「慰めの拳に集いし守護の想い──」

女「白き光に変え、今、悪を貫くっ」

女「守童拳・奥義『天牙(テンガ)』」

ズドォオオオン!

女4「ああああああッ!!」

ズザザザザザッ!

女4「げほっ……がはっ!」ドサッ

女4(濃厚で……純白な『気』を纏った突き……なんて威力なの……)

女4「これが……人を守る為の……真の力を引き出した守童拳……」

女「はぁ……はぁ……」ガクガク

女4「ふふ……なんて美しい技♪」ゲホッ

女4「貴女の気持ちは……本物ね……完敗だわ……♪」ゴホッ


「ククク……」

女&女4「!?」

女7「二つの巨大な『気』の鼓動……何事かと思って来てみたが」

女「女7っ……!」

女7「なかなか面白い事になっているではないか」クスクス

女4「……あらあら♪」

ザッザッザッ

女8「ゴルァ待てやクソガキ──って、あれ!?」

女「!」

女8「アネゴに……クソアマの女5!?」

女8「ちょっとアンタらボロボロじゃない!? 何してんの!?」


女(最悪だわ……このタイミングで部隊長が二人……)ガクガク

女(もう……立ってるのも精一杯なのに……!)ガクガク

女7「人を守る為の力……か」

女7「ククク、正義のヒーローでも始めたつもりか女5?」クスクス

女「……えぇ、あんた達をぶっ飛ばす為にね」

女8「なんだとゴルァッ!?」

女7「ククク……ハッハッハッハッハッ!」

女7「アジトでの貴様の挙動がおかしいと思ってはいたが──おい、女4」

女4「?」

女7「恐らく、あの時点で女5は既に最後の童貞と接触していた……違うか?」

女4「……その通りよ♪」

女8「ハァアアア!? どういう事だ女5ぉおおお!?」ピキピキ

女「ふぅ……うるさいわね」

女「あんた達にも言っとくけど、もう私は『童貞狩りの女5』じゃないわ」

女「守童拳の後継者『女』よ!」


女8「ケッ! 最後の童貞野郎に口説かれたのか何なのか知らねーけど色気づいてんじゃねーぞゴルァ!?」

女8「ま、でもこれで心置きなくテメェをぶち殺せるわけだな」パキパキッ

女7「フム、いくら首領の妹といえど、裏切り者には制裁を与えねばならんな」チャキッ

女「くっ……!」ガクガク

女(諦めるわけにはいかないっ……でも……)ガクガク

女4「……ちょっと待って♪」スタッ

女(嘘……まだ立ち上がれる力があるの……?)

女4「ふふ……女ちゃん、覚悟はいいかしら?♪」スッ

女4「『束縛のフェロモン』♪」 ホワァ……

女「!」

女(もはやこれまでか……男……童貞ちゃん……ごめんね……)ポロポロ

ピタッ


女7「貴様……これは何の真似だ?」 グググッ

女8「ちょっと、アネゴ!? なんで私らに『束縛』を!?」グググッ

女「──え?」

女4「行きなさい、女ちゃん」

女「女4……どういう事──」

女4「いいから早く行きなさい! 守らなきゃいけない人がいるんでしょ!?」

女「!」


女4「さっき美しい一撃をもらっちゃったから……長くはもたない……♪」 ガクガク

女8「アネゴぉおおお!!! 冗談でしょ!?」グググッ

女4「女ちゃん……貴女の『守童拳』……こんなところで終わらせるなんて勿体ないわ♪」ガクガク

女4「もっともっと輝いて美しくなるはずよ……♪ 私が保証してあげる♪」 ガクガク

女「女4……」

女4「それと……貴女ほどの女性を口説き落とした童貞君……今度私に紹介してね♪」 ガクガク

女4「さ、早く行きなさい!」ガクガク

女「でもっ! このままじゃ女4は……!」 ポロポロ

女4「大丈夫、私も隙をついてとんずらしちゃうから♪」ガクガク

女「ごめんね……女4……ありがとう……」 ポロポロ

女「また……絶対に会おうね……!」

タッタッタッタッタッタッ……


女4「……さようなら、女ちゃん……」 ガクッ

女4の体力は底をつき、『束縛のフェロモン』は解除された

女8「…………」ピキピキ

女7「覚悟は出来ているんだろうな……人妻部隊隊長『女4』」 チャキッ

女8「アネゴ──いや、クソババァ。 てめぇには心底、失望したわ」ピキピキ

女4「ふふ、ババァなんて心外だわ♪ 30代の魅力がわからないなんて貴女もまだまだお子ちゃまね♪」クスクス

ザンッ────

女4「あ……」プシュウウウ

女7「死をもって償え」チャキッ

ドサッ

女4「」ピクピク

女7「急いで女の後を追うぞ」

女8「言われなくてもわかってるっつーの……」ズズズズズズ…

女8「マジで超気分ワリィ……絶対にあのクソアマぶち殺してやるっ!!!」 ズズズズズズ……





ドクン……ドクン……



???『誕生日おめでとう、男!』


???『もう二十歳かぁ……とうとう私達も大人になっちゃったね』


???『まさか男とこんな関係になってるなんて……小さい頃は予想もしなかったなぁ』クスクス


???『大好きだよ……男……』///




ドクン……ドクン……



???『げほっ……あぁ……男……無事で良かった……』


???『……なんで……泣いてるの? ……私は……平気だよ?…… 』


???『明日こそは……ね?』


???『ふふ……なんだか……眠くなってきちゃった……』


???『男……これからも……ずっと……一緒に…………』


???『』パタッ


男「うわぁああああああっ!!!」 バッ

童貞「!」ビクッ

男「……はぁ……はぁ……」

男「夢……か……」ハァハァ

童貞「男!? 大丈夫!?」バッ

男「大丈夫……また『あの夢』を見てたんだ……」

童貞「!」

童貞「『あの夢』……そっか……」

男「ははっ、という事はまた一つ歳を取っちまったんだろうな」

童貞「そうだね……誕生日おめでとう、男」ギュッ

男「うん、ありがとう童貞」ギュッ


男「……」

男(もう何度目だっけか……)

男(童貞と出会って以来、なぜか俺は誕生日に必ず『あの夢』を見る)

男(目の前で一人の女の子が死んでしまう夢……)

男(彼女の顔はぼんやりしててわからないけど……どこか懐かしい感じがする……)

男(まるで……童貞のような……)

男(もしかして……俺は……なにか大切な事を忘れているんじゃ──) ガクガク

童貞「男……?」

男「……怖いんだ」ガクガク

童貞「え?」

男「『あの夢』は単なる夢の中での話じゃない……きっと俺の人生のどこかであった出来事──」

男「そんな気がするんだよ……」 ガクガク


男「もし、そうだとしたら……なんで俺は彼女を死なせてしまったんだ……」 ガクガク

男「なんで俺はその時の記憶を隠して生きているんだ……!」ガクガク

男「……そんな弱くて卑怯なクソ野郎が……この先、本当に童貞を守り抜くことなんて……できるのかよ……」 ガクガク

男「俺は……俺は──」

ギュウウウ

男「!」

童貞「男!『俺はお前を守る』っ!」

男「……へ?」

童貞「ふふっ、いつも守ってもらってばかりの私だけど……こんな時ぐらいは私が男を守ってあげたい」

童貞「あなたを追い込む『不安』から守ってあげたい……」ギュウウウ

男「童貞……」

童貞「男は弱くないし、卑怯なんかじゃない!」

童貞「真っ直ぐで……優しくて……明るくて……決して諦めない心があって──」

童貞「いつも大切な人を想ってくれている……」


童貞「私ね……なんとなくわかるんだ」

童貞「夢の中の女の子は……最後の最後まで幸せだったんじゃないか……って」

男「!? そ、そんなわけ──」

童貞「ううん、きっとそう。 あなたみたいな素敵な人なら……」

男「……」

童貞「だから、自分を責めないで……」ギュウウウ

男「あ……」


男(震えが……止まった──)


男「童貞……ありがとう……ありがとう……」ギュウウウ

童貞「ん……」ギュウウウ

タッタッタッタッタッタッ

女「!」

女(良かった! 二人とも起きてる──)

女「──って、なにイチャついてんのよあんた達っ!」///

男「わっ!? 女!?」/// バッ

童貞「そ、そんなイチャついてるなんてっ……!」/// バッ

女「それはともかくっ! 今すぐにこの場を離れるわよっ!」

男「え!? 離れるって──んっ!?」

男「女……お前……体中にケガをしてるじゃないかっ!?」

童貞「そんな……一体、何があったんですか!?」

女「話は後よっ! さ、早く立って! 走るわよ!」

男「お、おいおい!?」バッ

童貞「は、はい!」バッ

すみません>>110一部訂正です


× 童貞「ううん、きっとそう。 あなたみたいな素敵な人なら……」


○ 童貞「ううん、きっとそう。 あなたのような素敵な人がそばにいてくれたのなら──」


タッタッタッタッタッタッ

男「もしかして『童貞狩り』が!?」

女「えぇ、かなり厄介な奴らが追ってきてる!」

女「まずはこの地下道を抜けて──」 ズキッ

女「うっ……! 」ガクッ

童貞「女さん!?」

男「大丈夫か!?」

女「べ……別に問題……無いわ……」 ガクガク

男「くっ……これ以上そんな体で走るなんて無茶だ!」

女「それでも……立ち止まるわけには……いかないのよっ……!」ガクガク

男「……」スッ

女「? なによ、急にしゃがんで──」

男「乗れっ!」

女「……は?」

男「女! 俺はお前をおぶって走る!」


女「お……おお……おぶるっ!?」///

女「バカじゃないの!? あ、あんたなんかにおぶってもらうなんて──」///

女「いや、そもそも人を背負ってまともに走れるワケないでしょっ!?」///

男「ははっ、なめてもらっちゃ困るぜ!」

男「こちとら 『童貞狩り』から逃げる為に何年も走り続けてきたんだ。そのおかげで足腰には自信があるんだよ!」

童貞「私もよくお世話になってるんですけど、本当に速いですよ!」

女「で、でも──」///

男「遠慮すんなって! ほらっ!」

女「じゃあ……そこまで言うのならお願いするわね……」/// ガシッ

男「おう! 任せとけ!」ヒョイッ

男「で、このまま真っ直ぐ走ればいいんだよな?」

女「う、うん……」///

男「よし、それじゃ行こうか!」バッ


タッタッタッタッタッタッ

女(あら、本当に速いわね)クスクス

女(……)///

女(……温かくて……すごく落ち着く……)///

女(……男って肩幅広いんだ……それに、思ってたより筋肉質だし……)///

女(はぁ……童貞ちゃんが羨ましい──)ギュッ

女(って、なに考えてんのよ私っ)///

ズズズズズ……

女「!」

童貞「あれ? なんだろう……後ろから黒い霧みたいなモノが──」

女「このドス黒い『気』は……女8!? みんな、気をつけて!!」

「艶やかに死にな……アゲハ神拳奥義『昇天ペガサスmix波』ァッ!!」 バシュッ!

ズドォオオオン!

男「うわぁあああっ!」

女&童貞「きゃあああっ!」


パラパラ……

男「げほげほっ!…… なんだ今の爆発は!?」

童貞「な……なにか黒い塊が飛んできましたけど……」ゴホッ

女「くっ……追いつかれちゃったみたいね……」

ザッザッ

女8「チッ、流石に距離が遠すぎて直撃しなかったか」ズズズ……

女7「ククク、まぁ良いではないか。 あっけなく死なれては面白くないからな」クスクス

童貞「!」

男「『童貞狩り』か……っ!」

女8「ハッ、ようやくご対面だな最後の童貞野郎──ん?」

女8「クソアマに童貞野郎……それと、もう一人の女の子は誰だ?」

女7「貴様もどこぞかの部隊の裏切り者か?」チャキ

童貞「ひっ……」

男「そいつは俺の童──」

女「彼女は男の『大切な人』よ。 『童貞狩り』なんかと一緒にしないでもらえるかしら?」


男(女……)

女(なるべく『童貞』に関する情報は隠しておいた方がいいかもしれないわ)ボソッ

男(あ、あぁわかった。 えーと、じゃあテキトーに──)ボソッ

男「そうだっ! そいつは俺の愛する『幼馴染』だ! 指一本触れさせねーぞ!」

……ドクン……

男(あれ……幼……馴染……?)

女7「フン、誰であろうと構わん。 死体が一つ増えるだけだ」

男「……」ガクガクブルブル

女「ちょっと、男!? どうしたの急に!?」

男「あ、いや……何でもないっ!」バッ

男(なんだ?……今の感覚……)

女8「ギャハハ、ブルってんのもしょうがねぇよなぁ……今から死んじまうんだからよ!」ズズズ…

男「うるせぇ! 誰がお前みたいなバケモンに負けるかよ!」

女8「な……誰がバケモンだゴルァ!?」 カチンッ


女8「テメェ……今の取り消せや……そんで『艶やかで魅力的な女8様』に訂正しろクソ猿……っ!」ズズズ…

男「ははっ、バカかお前」クスクス

男「俺が猿ならお前は見事なまでにゴリラじゃねーか。 たくまし過ぎるルックスだぜ?」

男「こんな奴に筆下ろしされた人がいるなんて……ゾッとするな。 俺なら間違いなく自殺モンだ」

女7「ククク、ハッハッハッハッハ!」

女8「……威勢だけは満点じゃねーか」ズズズ…

女8「安心しろや。 テメェから奪うのは『童貞』じゃなく『命』なんだからよッ!!」バッ

男「!」

童貞「男っ!!」

ガッ

女「相変わらず遅い拳ね……ハエが止まるわよ?」ググッ

女8「クソアマ……っ!! 邪魔すんじゃ──」ズズズ……

女8「ねぇッ!!!」ブンッ

女「残念っ」サッ


男「助かったぜ女──」

女「先に行きなさい、二人共」

男「え?」

女「挑発するのは結構だけど──彼女達は戦闘能力に関しても『バケモン』よ」

女「魔剣使いの『女7』、アゲハ神拳の使い手『女8』……」

女「『戦い』の世界を知らない男たちには100%勝ち目は無いわ」

男「心配すんな! これでも喧嘩なら少々──」

女「そんな生温いモノじゃない。 生きるか死ぬか……命を賭けた『戦い』よ……」

男&童貞「……」

女「ここは私がなんとかするから──行きなさい」

男「……そんな事できるかよ! 大切な仲間を置いて……背中なんて見せられるかっ!」

女「お願いだから……」ガクガク

男「お前だって……もう体は限界なんだろ……何言ってんだよ……」

女「ふふ、私が負けるとでも思ってるの?」ガクガク


女「言っとくけど私は勝つつもりでいるんだからっ!」ズズズ……

男「そうは言ってもよ……相手は二人──」

女「『例えどんな絶望が待っていようとも諦めない』」

女「そうでしょ? 男」

男「!」

女「こんなの……こんなの所詮、通過点に過ぎないじゃないっ!」 ズズズ……

女「私たちの『楽しい未来』を築く為の……平和な世界を取り戻す為のっ!!」ズズズ……

男「女……」

女7「フン、馬鹿馬鹿しい……言っておくが我らは一匹たりとも逃がすつもりなどない」チャキ

女7「女4の真似事などよせ……実にくだらん」

女「! ……女4はどうしたの?」


女7「クク、奴か?」ゴソゴソ

女7「お前の望み通り……感動の再会だな」ポイッ

ゴトッ

男&童貞「!」

女7が女の目の前に放り投げたのは──

女「ぁ──」

血塗られた女4の頭部だった

童貞「きゃあああああああああッ!!」

男「うっ……!」

女「あああ…………」ガクガク

女7「ハッハッハッ! 嬉しくて言葉にならないか?」

女7「ならば再会後の談笑はあの世でゆっくりやるといい」バッ

男「女っ!」

女「ああああああ……」ズズズ……

女「ああああああああああああっ!!!」ズズズズズズ……


シュンッ!

女7「なっ!? 消え──」

ドゴォッ!

女7「っ……!」メキメキッ

女「このぉおおおっ!!!」 バババババッ

女7「……」ドカッ バキッ ボコッ

女「くたばれぇえええっ!!!」シュッ!

女7「……」ドゴォッ!

女「はぁ……はぁ……はぁ……」

女7「……もう終わりか?」クスクス

女「!?」

女「ウソ……全然……効いてない?」 ガクガク

女7「ククク、所詮その程度か」クスクス


女7「それに今の攻撃……実に心地良い『殺気』がこもっていたぞ?」

女「あ……」ガクガク

女7「やはり貴様は『こちら側』の人間よ……」 クスクス

女7「今さら体中に染み付いた『闇』を拭えるとでも思っていたのか?」クスクス

男「!」ブチッ

童貞「……」ギリッ

女「あ……あ……」ガクッ

女「うあぁ……あああ……」ポロポロ

男「てめぇっ!!」バッ

ドゴッ!

男「かはッ!」ズザザザザザザッ

女8「挑発しといてシカトぶっこいてんじゃねーぞゴルァ? テメェは私が相手してやるからよ」パンッ パンッ

童貞「男っ!!」

女8「クソチビ……テメェも覚悟しとけよ?」 ズズズ……

童貞「くっ……!」ガクブル


女「……」ガクガク

女7「ククク、戦意喪失か? 女よ」

女7「無抵抗の人間を斬るのは退屈極まりないのだが……仕方ないな」チャキ

女「……」ガクガク

男「くっ……女ぁあああ! しっかりしろ──」ドゴォッ!

男「ぐぁッ!」 ズザザザザザザ

女8「おい……シカトすんなっつってんだろうがゴルァ!」ズズズ……

男「へっ……」ガクガク

男「ゴリラ野郎……お前なんて眼中にねぇんだよっ!」ガクガク

女8「……もういい、死ね──」

ガシッ

女8「あァッ!?」

童貞「男……今よっ!」

童貞は女8の背後から羽交い締めをした

女8「クソチビっ!? テメェいつの間にっ!」


男「ナイスプレーだ『幼馴染』っ!」

男「くらえぇえええ!」シュッ

ベチッ

女8「……」クスクス

男「あれ……?」

女8「おい、クソ猿」バッ

童貞「きゃっ!」ズサッ

女8「殴るってのはな」ズズズ…

男「!」

女8「こうやるんだよっ!」 ズズズズズズ……

女8「アゲハ神拳奥義『トルネード花魁アッパー』ァアアアッ!!!」ゴォッ!

ドクシャアアアッ!

打撃を受けた男は数え切れないほどに回転しながら宙を舞った

ドサッ!

男「」ピクピク

童貞「男ぉおおおっ!!!」

女8「さて……」ザッザッ

童貞「あ……あぁ……」ガクガク

女8「クソチビちゃんよぉ……テメェはグーで殴られた事ってあるか?」

童貞「あ……」ガクガクブルブル

女8「ギャハハ! いいねぇ、その恐怖に歪んだ顔っ」ズズズ…


女8「一瞬で楽にしてやるから安心し──」

ベチッ

女8「……まだ生きてたのか」ピキピキ

男「お前の……汚ない手で……『幼馴染』に触んな……っ!」ガクガク

ドゴォッ!

男「がはッ!」グラッ

女8「カッコつけてんじゃねーぞゴルァ!」

ドカッ バキッ ボコッ

童貞「やめて……」ポロポロ

ドカッ バキッ ボコッ

童貞「もうやめてぇえええっ!!!」


女7「ゲームオーバーだ、女」ヒュン ヒュン

女「……」ザシュッ ザシュッ

女7「だが、すぐには殺さん」クスクス

女「……」ザシュッ ザシュッ

女7「最大限の苦痛と絶望を与えてやる」 ヒュン ヒュン

女「……」ザシュッ ザシュッ

女7「ククッ、今宵は魔剣『無垢』も喜んでおるぞ?」ヒュン ヒュン

女「……」ザシュッ ザシュッ

女7「我らに刃向かうという愚行を犯した咎人共の血……なんと美味であることかっ」シュバッ

ザクッ!

女「あ──」ビクッ

女7「ハッハッハッハッハッ!」


女(……もう……だめ……)ドクドク

女(結局……私は無力だった……) ドクドク

女(大切な人も……守童拳も……何一つ守ることなんて出来なかった……) ドクドク

女(巨大過ぎる『闇』には……かなわないのね……)ドクドク

女(男……童貞ちゃん……女4……) ドクドク

女(ごめんね……私……もう……輝けない……)パタッ


女7「おっと、力尽きるにはまだ早いぞ女?」グイッ

女「……」ヒュー ヒュー

女7「おい、女8。 手を止めろ」

女8「あぁッ!?」スッ

ドサッ

男「」ピクピク

童貞「男……女さん……」ポロポロ

女8「なんだよクソガキ!? 邪魔すんじゃ──」

女7「そいつの『童貞』を奪え」

女8&童貞&女「!」

女7「女の目の前で……最高のラストシーンを演出してやれ」クスクス

女「や……やめ……」ヒュー ヒュー

女8「ギャハハハハハ! ゲス過ぎだろテメェ!」クスクス

女7「貴様に言われたくはないが……悪くはなかろう?」クスクス

女8「むしろ最高じゃねーか! 少し気にいったぜクソガキの事!」クスクス


女8「おいクソアマ、ちゃんと目ぇ開いて見てろよ?」ガシッ

童貞「男に……触らないでっ!」バッ

女8「ケッ、脇役に用はねぇんだよっ!」 ブンッ

ドゴォッ

童貞「あぐっ……!」ドサッ

女8「さってと♪」カチャカチャ

男「」ズルズル

女8「うっひょおおお! なかなかイイもん持ってんじゃねーかクソ猿っ!」

女「……や……めて……」ヒューヒュー

女「……」スッ

女7「!──おっと、舌を噛んで自決なぞさせんぞ」ガシッ

女7「しかと見届けろ。 貴様が守れなかった『童貞』の最期を──」

女7「貴様を救った『希望の光』の最期をっ!」クスクス


女「いや……やめて……」ヒュー ヒュー

女「その前に……私を……殺して……」 ヒュー ヒュー

女「お願い……だから……」ヒュー ヒュー

女7「クックック、ハッハッハッハッハ!!!」

女7「己の無力さを恨めっ! 我らに仇なした罪を悔やめっ! 全てに絶望しろっ!」

女7「──そして死ね」

女8「ギャハハ、気分アゲアゲになってきたぜ!」

女8「それじゃ、最後の童貞……いただきますっ♪」ガシッ

女「男…………童貞……ちゃん……」 ポロポロ






……ドクン……ドクン……





男「……」


男「う……」

男「あれ?」

ガバッ

男「ここは……どこだ?」キョロキョロ

男「辺り一面、真っ白で──」

男「もしかして俺……死んだのか……?」

男「多分、ここは『あの世』ってやつだろうな」

ドサッ

男「ははっ」

男「……」プルプル

ドンッ!

男「くそぉ……」ポロポロ

男「ちくしょおおおおおおおおお!」 ポロポロ

男「すまねぇ……童貞……女……」 ポロポロ


???「そんなに荒れるな、男よ」 フオッフォッフォッ

男「!?」バッ

???「いやぁ、しかし間一髪じゃった」

???「ここに『魂』を引き寄せるのがあと少し遅かったら、本当にお主は『あの世』行きだったからのう」ポリポリ

男「おっさん……誰だ?」

童帝「わしはこの『童貞界』の長を務めておる『童帝』という者じゃ」

男「童……帝?」

童帝「うむ、今日はお主に褒美を与えようと思ってここに呼んだわけだが──」

男「ちょ、ちょっと待て! 何がなんだか意味がわからないぞ!?」

男「『魂』って言ってるけど……俺はまだ生きているのか!?」

童帝「うむ、心配ない。 ちゃんと生きておる」

童帝「かなりギリギリじゃったがな」フオッフォッフォッ


童帝「ところで男よ……今日は何の日か知っておるじゃろ?」

男「え? いや……」

男(そもそも『童貞狩り』から逃げるのに必死で、日付なんてもう何年も前から確認してないからなぁ──)

男「あっ」

男「……ははっ、今日は自分の『誕生日』だって事ならわかるよ」

童帝「そうじゃっ!」カッ

男「へ?」

童帝「『30歳』の誕生日おめでとう、男」フオッフォッフォ

男「なっ──」

男「なんだってぇえええッ!?」 ズキュウウウン!


男「おいおい……俺ってもうそんな歳になってたのかよ……」ガクブル

男「ぐわぁあああマジかよぉおおお」 ダンダンッ

童帝「取り乱すな男よ」フオッフォッフォッ

童帝「そして──『童話・魔法使い』の愛読者だったお主なら、その歳が何を意味するのかわかるじゃろ?」

男「!」

男「ははっ、懐かしいなぁ『童話・魔法使い』! 確かに小さい頃はよく読んでたな──」

男「 いやいや、というか何で俺がその本を好きだった事を知ってるんだ?」

童帝「わしは世界中の童貞諸君を常に童貞界から監視しておるからのう」 フオッフォッフォッ

男「──あっ! そういえば、その本に書いてあったな」

男「『30歳まで童貞を貫くと魔法使いになれる』……」


童帝「うむ、その通り」

男「って、あれは本の中で描かれてるだけの伝説だろっ!?」

童帝「いやいや、あれはれっきとした事実じゃ」

童帝「まぁ皆が皆、そうなる訳では無いのだが……お主には『魔法使い』になる才能がある」

男「魔法使いの才能?」

童帝「いや──それどころかお主は前に一度『魔法』を使った」

男「なっ!?」

童帝「長年、幾多の童貞を見てきたが……あんな事は初めてじゃったな」

童帝「わしが力を与える前の童貞が『魔法』を発動させるなど……世の中、不思議な事もあるものじゃ」 フオッフォッフォッ


男「そんな……いつ俺が『魔法』なんて──」




『彼女は……童貞ちゃんはあんたの力で作り出したの……?』




男「あ……」ガクガク

男「まさか……まさか童貞は……」 ガクガク

童帝「うむ」

童帝「己の『童貞』というステータスを人の姿に具現化させる最上位の『魔法』……」

童帝「十年前、それを使ってお主は彼女を作り出したのじゃ」

男「……」ガクガクブルブル


童帝「記憶にないのは無理もない」

童帝「魔力も無しに、当時のあんな若い体で最上位の『魔法』を使ったとなれば精神的に多大なる反動が──」

ガシッ

童帝「むっ!?」

男「教えてくれ……」ググッ

童帝「……」

男「俺が……俺が忘れてしまっている記憶をっ……!」

男「なぜ俺は童貞を作り出したのか……」

男「そして──その記憶の中に、きっと『あの夢』の女の子もいるはずなんだ!」

男「あの子は一体誰だったんだ!?」

童帝「……」

男「あんたなら知ってるはずだろ!?」

男「頼むっ……教えてくれ……! 」


童帝「……思い出しても辛いだけじゃ」

童帝「それにお主にはこの後、大事な戦いが待っておるじゃろ?」

童帝「いくら巨大な『魔法』の力を与えるとしても、精神的に不安定なまま行かせるわけにはいかん。 また次の機会にでも──」

男「頼むっ……どうしても今すぐに知りたいんだ!」

童帝「……」

男「……」ググッ

童帝「まったく……仕方ないのう」

男「ならっ── 」

童帝「ただし、一つだけ約束をしてくれんか?」

男「約束?」

童帝「たとえどんなに辛い記憶を思い出したとしても、必ずそれを乗り越えて見せろ!」

男「!」

童帝「わしは……これからの世界の未来をお主に託すつもりなのじゃからな」 フオッフォッフォッ

男「あぁ! 任せとけっ!」


童帝「では、わしの『魔法』でお主の失った記憶の欠片を蘇らせるぞい」バッ バッ

ズズズズズズ……

童帝「せいっ!」バシュッ

男「……!」ビビビッ





男「あ──」





……ドクン……ドクン……



そうだ……


そうだった……


俺が小さい頃から『あの夢』の女の子は──



『幼馴染』は……そばにいたんだ……



─虹炉利幼稚園─


ワイワイ……ガヤガヤ……


幼馴染(幼)「うぇえええんっ!」
ポロポロ

いじめっ子A 「やーいやーい!」

いじめっ子B 「この泣き虫ブスっ!」

幼馴染(幼)「やめてよぉおおお !」 ポロポロ

タッタッタッ

男(幼)「うぉおおおっ!」タッタッタッ

いじめっ子A 「!」

いじめっ子B 「やべっ! 男がきたぞっ!」


男(幼)「くらえ! 『ひかりのまほう』!」バッ

ポカポカポカポカッ

いじめっ子A 「いたっ! いたいよっ!」

いじめっ子B 「うわっ!」

男(幼)「それっ!それっ!」ブンブン

ポカポカポカポカッ

いじめっ子A&B「うわぁあああん!」 ポロポロ

男(幼)「どうだ、まいったか!」

幼(幼)「男くん……」ヒグッ ヒグッ


男(幼)「わるものはやっつけたぞ! 幼馴染っ!」

幼(幼)「ありがとう……男くん」ヒグッ ヒグッ

先生「こらーっ!」タッタッタッ

先生「何してるの男くん! お友達を叩いちゃダメでしょ!」

男(幼)「ちがうよ先生! あれは叩いたんじゃない! 『ひかりのまほう』だ!」

いじめっ子A 「先生ぇええ男がいじめてくるよぉおおおっ」ポロポロ

男(幼)「おまえたちが幼馴染をいじめてたんだろ!」シュッ

ポカッ

いじめっ子A 「うわぁあああん!」 ポロポロ

先生「こらっ! だったらその『ひかりのまほう』で乱暴しないのっ!」

男(幼)「いまのはパンチだっ!」


─自由時間─

ペラペラ……

男(幼)「うぉおおお」ワクワク

幼(幼)「男くん、なにを読んでるの?」

男(幼)「『まほうつかい』の本さ!」 ワクワク

幼(幼)「へぇ、おもしろそうだねっ」

男(幼)「いっしょに見ようよ!」

幼(幼)「うんっ!」

ペラペラ……

男(幼)「あっ!」

男(幼)「幼馴染っ! これだよこれ!」


『えいっ!』

『まほうつかい は ひかりのまほう を はなって わるもの を たいじ しました』


男(幼)「さっきあいつらに使った『ひかりのまほう』だよ!」

幼(幼)「わぁっ、すごいね!」

男(幼)「だろ? 俺もこんなカッコイイまほうつかいになりたいなぁ」

ペラペラ……

男(幼)「ん!?」

『30さい まで どうてい を つらぬくと まほうつかい に なれる! 』

男(幼)「うーん……『どうてい』ってなんだろう?」

幼(幼)「たべものかなぁ?」

男(幼 「先生にきいてみよう!」)


男(幼)「先生ーっ!」

先生「どうしたの? 男くん♪」

男(幼)「『どうてい』ってなに?」

先生「」ブハッ

先生「な、なによ急にっ!」/// ゲホッ ゲホッ

男(幼)「この本にかいてあるんだけど──」

先生「ちょっと貸しなさい!」バッ

先生「……」/// ジーッ

先生(はぁ……一体、誰がこんな本をうちの本棚に置いたのよ……)///


男(幼)「ねぇ、先生もわからないの?」

先生「えっと……」/// ゴホンッ

先生「『どうてい』っていうのは『子供心を忘れない』って事よっ!」///

男(幼)「え? なにそれ? よくわかんないよっ!」

先生「大人になればきっとわかりますっ! この本は先生が預かっておくからね!」///

男(幼)「ダメだよっ! 返してっ!」

先生「返しませんっ!」プンプン

先生(まったく……園長先生に文句言わなきゃ……)スタスタ

幼(幼)「もっていかれちゃったね……」

男(幼)「ちくしょうっ! 」ダンッ ダンッ


幼(幼)「男くんは『まほうつかい』になれたら何をするの?」

男(幼)「もちろん、世界中のわるものをたいじするのさ!」

男(幼)「 だからお前をいじめてくる奴がいても俺が必ずぶっとばしてやる!」

幼(幼)「やったぁっ! うれしいな♪」

男(幼)「幼馴染! 俺はお前を守る!」





……ドクン……ドクン……




─精通小学校─



ワイワイ……ガヤガヤ……


男(小)「くらえっ! 炎の魔法だっ」デュクシッ

男友A 「最強のバリアはってるから無敵だし!」デュクシッ

男友B 「お前それズルいって! じゃあオレはどんなバリアも突き破る魔法使うからなっ」デュクシッ

ドタバタドタバタ

幼友「はぁ……男子っていつまでたっても子供よねぇ……」

幼(小)「楽しそうでいいじゃない」 クスクス



キーンコーン……カーンコーン……

男友A 「よっしゃ! 次の授業は体育だ!」

男友B 「男、さっさと着替えてグラウンド行こうぜ!」

男(小)「お、おうっ! ちょっと待ってろ」バッ

男友B 「おいおい、どこ行くんだよ!」

男(小)「トイレっ!」タッタッタッ

男友B 「だからって、なんでトイレに体操服まで持っていってんだよ」クスクス

男友A「最近、あいつ隠れて着替えてんだよなぁ」クスクス

男友A「ちょっと覗いてみっか」ニヤニヤ


─トイレ─

男(小)「……」ソワソワ

男友A 「おい、男っ!」 バッ

男(小)「わっ!?」ビクッ

男友A「ハッハッハ、今さら人前で着替えんのが恥ずかしいのかよ──」

男友A 「!」

男友A 「って、お前……なんだよそれ……」ガクガク

男(小)「……」

男(小)「べ、別になんでもねーよっ!」

男(小)「さっさとグラウンドに行こうぜ!」タッタッタッ

男友A 「男……」



─下校─


キーンコーン……カーンコーン……

男(小)「おーい、帰ろうぜ幼馴染!」

幼(小)「うんっ!」パタパタ

幼友「あんたら本っ当に仲良いよね」 クスクス

幼(小)「えっ?」///

男(小)「まぁ、家が近いし幼稚園行ってた頃からよく遊んでたからな」

幼友「ふーん……」ニタニタ

幼(小)「もうっ! 早く帰ろう男くんっ」/// パタパタ


男(小)「よーし、風の魔法を使って一気に家まで飛んでいくぞ! びゅーん!」 タッタッタッ

幼(小)「びゅーんっ!」パタパタ

男友A 「あっ! ちょっと待って幼馴染っ!」バッ

幼(小)「ん? 」 ピタッ

男友A「あのさ……お前って男ん家に行ったことある?」

幼(小)「え? いつも学校に行く時に寄ってるよ?」

幼(小)「私が迎えにいかなきゃ男くん絶対遅刻するんだもんっ」プンプン

男友A 「それなら男の親を見たこともあるんだよな?」

幼(小)「うん! お父さんは見たことないけど、お母さんなら毎朝会うよ! とっても優しいんだっ」パァッ

男友A 「そ、そっか……」

幼(小)「へっ? それがどうかしたの?」

男友A 「いや、実はな──」


男友A 「今日の体育の前に男の着替えを見たんだけど……」

男友A 「あいつ……体中がすっげぇ痣(あざ)だらけだったんだよ……」

幼(小)「え……」

男友A 「確かにオレらは『魔法使いごっこ』で叩き合ったりしてっけど、あんなに青タンできるほど本気でやってない」

男友A 「だから……あいつ家で何かされてるんじゃないかって不安になってさ──」

幼(小)「そんな……」ガクガク

男友A 「昔から男と付き合いのあるお前なら何か知ってるかなって思って聞いてみたんだけど……」

幼(小)「……」ガクガク

男友A 「ご、ごめんな。 急にこんなこと言って……でも、優しい母ちゃんがいるんなら心配ないかな」

幼(小)「ううん、わざわざありがとう男友Aくん……」ガクガク

男(小)「おーい! なにやってんだ幼馴染! 置いてくぞーっ!」

幼(小)「あっ! ま、待って!」

男友A 「他の皆には内緒にしとくからさ、何か原因がわかったら教えてくれ」

幼(小)「う、うん。 じゃあ、またね男友Aくん……」 パタパタ

男友A「おう、じゃあな」


テクテクテクテク……

幼(小)「……」

男(小)「どうしたんだ幼馴染? なんか全然元気ないぞ?」

幼(小)「そ……そうかな? 気のせいだと思うけど……」

男(小)「……」スタッ

男(小)「よしっ! お前にとっておきの魔法をくらわせてやるっ!」

幼(小)「魔法?」

男(小)「えいっ!(変顔)」

幼(小)「…………ぷっ」

幼(小)「なにその顔っ」クスクス

男(小)「相手に元気を出させる『笑いの魔法』さ!」ウニウニ

幼(小)「もうやめてよぉ」ゲラゲラ

男(小)「ほれほれっ!」ウニウニ


幼(小)(いつも通りの男くんだ……)

幼(小)(元気で面白くて優しくて……)

幼(小)(……)

幼(小)(……もしかしたら男友Aくんの見間違いだったかもしれない──)

幼(小)「ねぇ、男くん」

男(小)「ん? どうした?」

幼(小)「あの……さっき男友Aくんから聞いたんだけど──」

男(小)「!」ビクッ

幼(小)「男くん?」

ザッザッザッ

???「……あ"ぁん!?」スタッ

幼(小)「わっ、怖そうな人が来たね」ボソッ

男(小)「……俺の父ちゃんだ」

幼(小)「えっ!?」


幼(小)(男くんのお父さん……初めて見た……)

幼(小)「あ、あのっ! こんにちは! 私は男くんの友達の──」

男父「黙れガキ」

幼(小)「っ!?」ビクッ

男(小)「……珍しいね、父ちゃん」 ビクビク

男(小)「『部屋』からだけじゃなくて『家』の外に出てるなんて……どうしたの?」ビクビク

男父「!」ブチッ

男父「テメェらが酒買ってこねぇからオレがわざわざ外出してんだよッ!」 シュッ

バキッ!

男(小)「あぅっ!」ドサッ

幼(小)「男くんっ!!!」

男(小)「……俺、まだ子供だから……お酒なんて買えないよ……」 ガクガク

男父「だったら盗むなりなんなりして持ってこいやクソがッ!」シュッ

ドカッ!

男(小)「ご……ごめんなさい……」 バキッ ボコッ


幼(小)「やめて……」

ドカッ バキッ ボコッ

男(小)「うあ……」ゲホッ

ドカッ バキッボコッ

幼(小)「やめてぇええええええっ!」 バッ

男父「ゴルァッ! 邪魔だガキっ!」

幼(小)「男くんを……いじめないでぇええ……」ポロポロ

幼(小)「叩くなら私を叩いてよぉおおお……」ポロポロ

男(小)「幼馴染……」ガクガク

幼(小)「私は……私はいじめられるの……なれてるから……男くんだけは……いじめないでぇ……」 ポロポロ

男父「……ケッ!」

男父「おい男、テメェ帰ってくる時はちゃんと酒持ってこいよッ!?」ペッ

ザッザッザッ……

男(小)「……」ガクガク

幼(小)「うわぁああああああん!」 ポロポロ

男(小)「……ごめんな」

幼(小)「ああああああ!」ポロポロ

男(小)「カッコ悪いとこ見せちゃって……」

幼(小)「なんで男くんがっ……男くんがっ……!」 ポロポロ

男(小)「……」

男(小)「ありがとう、幼馴染……」


─公園─


カァ……カァ……


男(小)「……」ギーコ……ギーコ……

幼(小)「……」ヒグッ ヒグッ

男(小)「もう泣くなって」 ギーコ……ギーコ……

幼(小)「……」ヒグッ ヒグッ

男(小)「……」スタッ

男(小)「くらえっ! 『笑いの魔法』!」 ウニウニ

幼(小)「……」ヒグッ ヒグッ

男(小)「……」

幼(小)「なんで……なんでそんなに平気なの……?」ヒグッ ヒグッ


男(小)「まぁ、いつもの事だからさ」ギーコ……ギーコ……

幼(小)「私……全然知らなかった……」 ヒグッ ヒグッ

男(小)「ははっ、そりゃそうだろ」ギーコ……ギーコ……

幼(小)「ごめんね……」ヒグッ ヒグッ

男(小)「ばーか、なんでお前が謝るんだ」クスクス

男(小)「……」ギーコ……ギーコ……

男(小)「今こうやって笑えるのも……幼馴染がそばにいてくれているからだよ」 ギーコ……ギーコ……

幼(小)「……」ヒグッ ヒグッ


男(小)「……」カチャカチヤ

パカッ

男(小)「……」スッ

幼(小)「あ……『童話・魔法使い』……?」ヒグッ ヒグッ

男(小)「うん、俺の宝物」 ペラペラ

男(小)「へへっ、いつもランドセルの中に入れてるんだぜ?」

男(小)「幼稚園に置いてたのを先生から没収された後にさ、どうしても続きが読みたくて父ちゃんに買ってほしいってねだったんだよ」

男(小)「そしたら父ちゃん喜んで買ってきてくれたんだ…… 」




男父『ただいまー!』ガチャ

男(幼)『おかえり父ちゃん!』 パタパタ

男父『男っ! プレゼントだ!』スッ

男(幼)『あっ! 『まほうつかい』の本だぁっ!』パァッ

男父『父ちゃんな、お前に最高の『まほうつかい』になってもらいたくて買ってきたんだ!』

男(幼)『うぉおおおっ! ありがとう父ちゃん!』パラパラ

男(幼)『俺さっ、この『ひかりのまほう』が得意なんだ!』ワクワク

男父『へぇ、じゃあ父ちゃんに見せてみろ男っ!』バッ

男(幼)『えいっ! ひかりのまほう! 』ポカッ

男父『ぐわぁあああやられたぁあああ!』 ヘナヘナ

男(幼)「あははっ、父ちゃん弱すぎだよっ!」ゲラゲラ

男父『あっはっはっはっは! いい魔法じゃないか!』ゲラゲラ

男母『ふふふっ』クスクス





男(小)「……」ググッ

男(小)「前はすっげぇ優しかったのにな……父ちゃん……」

幼(小)「……」ヒグッ ヒグッ

男(小)「よし、そろそろ帰ろうか!」

幼(小)「で、でも男くん……」ヒグッ ヒグッ

男(小)「大丈夫だよ、うちには母ちゃんもいるからさ!」

幼(小)「男くんのお母さんはいじめられてないの……?」ヒグッ ヒグッ

男(小)「…………うん」バッ

男(小)「じゃあ、また明日な幼馴染! 今日はありがとう!」タッタッタッ

幼(小)「あ、待ってよ男くんっ!」 ヒグッ ヒグッ

シーン……

幼(小)「男くん……男くんっ……」 ポロポロ


─自宅─

ガチャッ

男(小)「……ただいま」テクテク

ガラガラ……

男(小)「ごめんね母ちゃん、遅くなって──」

男(小)「あれ? 母ちゃん? いないの?」

男(小)「母ちゃーん! ただいまー!」

シーン……

男(小)「……」カサッ

男(小)「ん? なんだろう、この手紙」

カサカサッ




『 もう我慢できません。 さようなら 』


男(小)「──え?」カサッ


『 男へ 守ってあげられなくてごめんね 』


『 こんな母ちゃんでごめんね 』



男(小)「なんだよ……なんだよコレ……」ガクガク

男(小)「父ちゃんっ!」ダッ


ガラガラッ!

男(小)「父ちゃん! 母ちゃんは!? 母ちゃんはどこに行ったの!?」

男父「あ"ぁっ!? 知るか」グビグビ

男父「それよりテメェ、ちゃんと酒は持ってきたんだろうな?」ヒック

男(小)「何言ってんだよっ! 母ちゃんが心配じゃないの!?」

男父「うるせぇ……酒買ってくる兵隊が一人いなくなっただけじゃねぇか……今度からはテメェが買ってこいな」 グビグビ

男(小)「早く母ちゃんを探しに行こうよ!」グイッ

男父「!? ゴルァ! 引っ張ってんじゃねーよ!」バッ

男(小)「早く行かなきゃ……母ちゃんもきっと心配してる……!」 ハッ……ハッ……

男(小)「母ちゃん……母ちゃんっ!!!」


男父「うるせぇっつってんだろうがッ!!!」 シュッ

ドカッ!

男(小)「あうっ!」ズサッ!

男父「頭に響くんだよクソがッ! ピーピーわめくなッ!」グビグビ

男(小)「……」ググッ

男(小)「……」

カチャカチャ、パカッ

男(小)「父ちゃん……この本おぼえてる?」スッ

男父「知るかッ」グビグビ

男(小)「父ちゃんが俺に『最高の魔法使い』になってほしいって買ってきてくれた本だよ?」


男(小)「あの頃は楽しかったよね……」

男(小)「父ちゃん……母ちゃんを探しに行こう?」ブルブル

男(小)「母ちゃんを見つけたら……俺が『魔法』をかけてあげるからさ……」ブルブル

男(小)「『仲直りの魔法』を……」 ブルブル

男(小)「そしたら……きっと、あの頃の毎日が……楽しかった毎日が……戻ってくるはずだから……」 ポロポロ

男父「……」ヒック

男父「貸せっ」バッ

男(小)「あっ!」

ビリビリビリビリッ!

男(小)「!?」

男(小)「なにすんだよ父ちゃんっ!」


男父「ククク……ガッハッハッハッハッ!!!」ビリビリッ!

男(小)「やめろぉおおおっ!!!」 バッ

男父「ケッ!」シュッ

ドコッ

男(小)「ぎゃっ!」ドサッ!

男父「馬鹿じゃねぇのかテメェ」

男(小)「や、やめ……」ドカッ バキッ ボコッ

男父「いつまでこんな御伽話を信じてんだ?」

男(小)「あ"……」ドカッ バキッ ボコッ

男父「『魔法』だと? 笑わせんな」

男父「んな便利なもんがあったら誰だって幸せになってんだよッ!」

男父「オレだって会社をリストラされずにすんだんだッ!」

男父「取り憑かれたように『魔法』だのなんだの連呼しやがって……」

男父「キメェんだよッ!!!」

男(小)「……」ドサッ


男父「クソが……」ハァハァ

男父「本当に『魔法』が使えるんなら酒の一本ぐらい作り出してみろやカスが」 グビグビ

男(小)「……」ググッ

男(小)「……はぁ……はぁ……」キッ!

男父「おい……なんだその反抗的な目は」

男父「まだ殴られ足りね──」

男(小)「お前なんて死んでしまぇえええっ!!!」ダッ!

男父「あ"ぁッ!? テメェ待てやゴルァッ!!! 」

ガチャッ!

タッタッタッタッタッタッ

男(小)「ちくしょう……ちくしょぉおおお……」ポロポロ


─公園─


ポツ……ポツ……


男(小)「母ちゃん……」

ポツ……

ザァアアアアアア……

男(小)「母ちゃん……どこにいるの……?」

ザァアアアアアア……

男(小)「会いたいよ……母ちゃん」

ザァアアアアアア……

男(小)「ああぁ……」ポロポロ

男(小)「うわぁああああああ…… 」 ポロポロ

ザァアアアアアア……



ザァアアアアアア……


男(中)「あ?」ギーコ……ギーコ……

男(中)「……んだよ」プハー

男(中)「天気予報じゃ晴れっつってたじゃねぇか」ジュッ

男(中)「くそっ、タバコが一本無駄になっちまった」ポイッ

ザァアアアアアア……

男(中)「……『あの日』の公園も土砂降りだったんだよな……」スタッ

男(中)「……」

男(中)「コンビニに傘って売ってたっけ」テクテク


─思春中学校・教室─


キーンコーン カーンコーン……


ワイワイ……ガヤガヤ……


男友A 「お、雨降ってんじゃん」

幼友「うわっ、最悪。 何で急に降り出してんのよぉ」ハァ

幼(中)「さっきまでカンカンに晴れてたのにね……」

男友A 「あーあ……天気は悪いし今日の時間割りはつまんねーし……なんか楽しい事ねぇかなぁ」

男友A 「せめて男がいれば、ちったぁ盛り上がるってのに」 ハァ

幼(中)「うん……」

男友A 「入学式以来一回も学校に来てないんだよなぁ……アイツこのままずっと来ないつもりじゃねーだろうな」ハァ

幼友「せっかくまた同じ学校で同じクラスになれたっていうのにね……」

幼(中)「……」


男友A「なぁ、幼馴染。 男って、もう前の家には住んでないんだよな?」

幼(中)「うん、今は親戚のおじさんの家に住んでるよ」

幼(中)「何度かその家にも行ってみたんだけど……男くんいつも外出してるみたいだから全然会えないの……」

幼友「そうなんだ……普段なにやってんだろうね」ハァ


生徒A 「ねぇねぇ、知ってる?」ヒソヒソ

生徒B 「なになに?」

生徒A 「ウチのクラスに男くんっているじゃない?」ヒソヒソ

生徒B 「あぁ、全然学校に来ない不登校児だろ?」クスクス

生徒A 「なんか彼ね、すっごいワルみたいなんだ」ヒソヒソ

生徒B「ウソっ!? ……マジで?」

生徒A「うん、不良グループと仲良くて、夜中とかにタバコ吸いながらブラブラしてるんだって」ヒソヒソ

生徒A「他にも、他校の生徒としょっちゅう喧嘩したりカツアゲしたりとメチャクチャらしいよ」ヒソヒソ

生徒B「うわぁ……」

生徒B「逆に来なくて正解じゃねーかそんなクズ」クスクス

生徒A「だよねー」クスクス


男友A「……チッ、あいつら丸聞こえだっての」

幼(中)「……」プルプル

幼友「幼馴染……」ギュッ

幼(中)「うぅ……」ポロポロ

男友A「心配すんな、アイツは人に迷惑かけるようなクソ野郎じゃねーよ」

男友A「それは、お前が一番わかってるはずだろ? 幼馴染っ」ポンッ

幼(中)「うん……」ポロポロ

男友A「ちくしょう、俺はアイツの親友として失格だぜ」

男友A「なんで小学生ん時にもっと力になってあげなかったのか……」ギリッ

幼友「あんたも自分を責め過ぎちゃダメよ……男友A……」

テクテク

メガネ「フフッ、なんだか暗い雰囲気ですねぇ。 男くんの友人諸君」クイッ


男友A「あ? なんだよ、メガネ」

メガネ「いえいえ、別に何も」クスッ

メガネ「ただ──最近、男くんが実は相当な『不良』だという噂をよく耳にしましてねぇ」クスクス

幼友「あんたっ……幼馴染の前でよくも堂々と……!」ギリッ

男友A「なめてんのかこの野郎」スタッ

メガネ「あなた方は男くんを学校に来させたいと思っているんでしょうが──」

メガネ「学級委員長の私に言わせてもらうと、ズバリっ! 男くんはこのまま学校に来ないほうが賢明でしょう!」 クイッ

幼(中)「!」ピクッ

男友A「」ブチッ

メガネ「クラスの秩序を乱すであろう存在など必要ありませ──」

ガシッ

男友A「ふざけんなっ!!! 」

生徒一同「!」ビクッ!

メガネ「ひっ!」


ガヤガヤ……

幼(中)「やめてっ! 男友Aくん!」

メガネ「……どうぞ、殴るのなら殴りなさい」 フフッ

メガネ「所詮、あなたも『不良』の仲間……それだけの事です」

幼友「もういいよ男友A! こんな奴ほっときなさいっ」ガタッ

男友A「……親友をバカにされてほっとけるかよっ!!」ググッ

男友A「メガネ……てめぇに男の何がわかるってんだっ……!」

男友A「アイツは……アイツはっ!」 ポロポロ

ブンッ

先生「おーい、そろそろ授業を始めるぞー」ガラガラ

先生「──って、おい! なにやってんだ男友A!」バッ

バキィッ!


─放課後─


キーンコーン カーンコーン……


幼(中)「……あれから男友Aくん、教室に帰ってこないね」

幼友「多分、しこたま職員室で説教されてるんじゃないかしら?」ハァ

幼友「流石に殴っちゃったのはやり過ぎだったわね」

幼友「……ま、ぶっちゃけスカッとしたけどさ」クスッ

幼(中)「……実は私も」クスッ

幼友「だよね」ケラケラ


幼友「私は男友Aが戻ってくるまで待ってるから、先に帰ってていいよ」

幼(中)「ううん、私も一緒に待つよ」

幼友「そう? ──あっ」

幼友「ねぇ、帰りに男ん家に寄ってかない?」

幼(中)「え?」

幼友「もしかしたら男がいるかもしんないしさ、寄るだけ寄ってみようよ」

幼(中)「う、うん。 じゃあ寄ってみよう」

幼友「先に行っててよ。 私も男友Aと合流したら向かうからさ」

幼(中)「え……でも男くんの新しい家の場所わかる?」

幼友「この学校の近くでしょ? 後で電話かけるから、その時に誘導してよ」

幼友「そ れ に ……もし男がいたら、まずは二人っきりになりたいでしょ?」 ニヤニヤ

幼(中)「なっ!? そ、そんな事ないよっ」/// カァッ


幼(中)「じゃ、じゃあ後で連絡してねっ!? 先に行ってるからっ」/// バッ

タッタッタッ……

幼友「ふふっ、ほんっとベタ惚れしてるわねぇ」ケラケラ

幼友「男も、今一番会いたいと思ってる人は、きっと──」



ザァアアアアアア……



幼(中)「あ、そういえば雨だったっけ……」

幼(中)「まさか降るなんて思ってなかったからなぁ」ハァ

幼(中)「……コンビニに傘って売ってたよね」テクテク


─コンビニ前─


「ありがとうございましたー!」

ガーッ

男(中)「まさかの売り切れかよ……」 トボトボ

男(中)「ま、突然の豪雨だし同じ考えの奴がたくさんいたんだろうな 」 カチッ カチッ

男(中)「……」シュボッ

男(中)「しばらく雨宿りするしかねぇか」プハー


ザァアアアアアア……


男(中)「……」プハー

テクテク

不良A「おっ?」スタッ

不良B「あいつ男じゃね?」


不良A「おーい、何やってんだよ男!」

男(中)「ん?」

不良B「相変わらず暇そうにしてんなぁ 」クスクス

男(中)「よう、丁度良かった。 お前らのどっちか傘貸してくれ」

不良A「はぁ?」

男(中)「帰る」

不良A 「おいおい! 何つれねーこと言ってんだよ!」ゲラゲラ

不良B「せっかくだし、お前もオレらのナンパに付き合えや 」クスクス

男(中)「興味ねぇよ、んなモン」

不良A 「そう言うなって! この通りは『思春中学』の可愛い女子共がうろつく絶好のスポットなんだぜ!?」 ゲラゲラ

不良B「そろそろ下校中の奴らが来る頃だと思うんだがな」ワクワク


不良A 「それによぉ、おめーもいい加減『童貞』捨てなきゃヤベェだろ?」 ゲラゲラ

不良B「中学で『童貞』とか、マジで恥の極みだぜ? 」クスクス

男(中)「……」ピクッ





『いつまでこんなお伽話を信じてんだ?』

『魔法だと? 笑わせんな』

『んな便利なもんが本当にあったら、誰だって幸せになってんだよッ!』





男(中)「……だな、やるか」

不良B「ハッハァ! そうこなくっちゃ!」


男(中)(そうさ……30歳まで『童貞』を貫いたって『魔法』なんざ使えねぇんだよ……)

男(中)(何もかも嘘っぱちなんだ……)

男(中)(悪者をぶっ飛ばしたいなら……喧嘩が強けりゃいいだけだ……) ググッ



テクテクテクテク

不良A 「おっと!? さっそく一人目の女が来たぜっ!?」ワクワク

不良B「ブスじゃねー事を祈るぜ」クスクス

男(中)「……」プハー


幼(中)「はぁ……もう、ずぶ濡れだよぉ……」 テクテク

幼(中)「傘……あるといいな」テクテク

不良A &B「へへへ」チラチラ

幼(中)「!」

幼(中)(わぁ……なんだか怖そうな人達がこっち見てる……)テクテク

幼(中)(さっさとお店の中に入っちゃお!)タタッ

幼(中)「──あれ?」スタッ

男(中)「ん?」チラッ

男(中 )「!」ドキッ

男(中)(げっ!? まさか……幼馴染!?)

幼(中)「男……くん? 男くんだよね?」

男(中)「……」ドキドキドキドキ


幼(中)「男くん……ダメだよ、煙草なんて吸っちゃ……」

不良A「ヒュウ♪ いきなり大当たりじゃねーか!」

不良B「おいおい! 男の知り合いかっ!?」

男(中)「……いや、知らね」プハー

幼(中)「え……?」

不良A「ギャハハ、人違いみたいだぜオネーチャン!」ゲラゲラ

不良B「ねぇねぇ、なんならオレ達と遊ぼうよ!」クスクス

幼(中)「男くん……どうして……」
プルプル

男(中)「……」プハー

不良A「まぁこれも何かの縁って事でさ、オレらに付き合ってよ」グイッ

幼(中)「きゃっ! 離してくださいっ!」

不良B「やらしい事なんてしないから大丈夫だって! とりあえず飯でも行こうや」クスクス

幼(中)「嫌ですっ! 」

男(中)「……」ギリッ


不良A 「しかしホンット可愛いねぇ、君」 サワサワ

幼(中)「きゃあああっ!」

不良B「バカっ、人通りで派手にやんのはやめとけって」クスクス

不良A「おっと、ワリィ」ゲラゲラ

不良B「……裏通り行こうか?」クスクス

不良A「だな」ニヤニヤ

幼(中)「いやっ……助けて……」
ポロポロ

幼(中)「助けてっ! 男くんっ! 」 ポロポロ

男(中)「……」プルプル

不良A 「ほんじゃ男くん、僕らは先に行ってるんで」クスクス

不良B 「気が向いたらお前も来いよ?」 クスクス


グイッ グイッ

幼(中)「助け──むぐっ!?」バッ

不良A 「興奮すんのはいいけどさぁ、あんまり大声出さないでくれっかな?」 クスクス

幼(中)「んーっ! んーーーっ!」 グイッ グイッ

不良B「一名様、ご案内っと」クスクス

テクテクテクテク

男(中)「……」プハー


ザァアアアアアア……


男(中)「……」


ザァアアアアアア……


男(中)「……馬鹿か俺はっ!」 タタッ


─裏通り─

幼(中)「んーーーっ!」ポロポロ

不良A「ワリィなぁオネーチャン。 久々に上玉過ぎて我慢できねぇわ」 クスクス

不良B「可愛いってホント罪だよなぁ」 ゲラゲラ

不良A「全くだ。 いっちょオレの暴れん棒で粛正してやらんとな」ガシッ

幼(中)「んーーーっ!!!」バタバタ

テクテクテクテク

不良B「……あれ?」

男(中)「よう」

幼(中)「!」

不良B「ハハッ、やっぱりお前も我慢出来ずにきたかっ!」ゲラゲラ

男(中)「その子を放してやれ」

不良A「……はぁ?」


不良B「おいおいっ! ? なぁにノリの悪い事言ってん──」

バキィッ!

不良B「ぐあッ!」ズザザザッ

不良A &幼(中)「!」

男(中)「ごめんな。 やっぱりその子は俺の知り合いだったみたいだ」

男(中)「それも、昔からの大切な……」

不良A「テメェ……! なに急にカッコつけてんだコラァッ!?」バッ

幼(中)「けほっ……男くん……男くんっ!」 ポロポロ

不良B「チッ……クソがぁっ……ぶっ殺してやるっ!」グググッ


ドカッ バキッ ボコッ……

……

……

……





男(中)「はぁ……はぁ……」ガクガク

不良A&B「」ピクピク

男(中)「ざまぁ……みやがれ……」 ドサッ

幼(中)「男くんっ!」バッ


幼(中)「もうっ……無茶し過ぎだよ……」 ポロポロ

男(中)「流石に二人を相手にすんのは厳しかったな……」クスクス

幼(中)「でも、ありがとう男くん。 『わるもの』から私を守ってくれて……」 ニコッ

幼(中)「あっ! 早く傷の手当てをしなきゃっ!」 バッ

男(中)「……」

男(中)「もう、俺には構わないでくれ」

幼(中)「え?」

男(中)「今さら、お前らに合わせる顔なんてないんだよっ……」

男(中) 「俺はもう昔の俺じゃない……何もかも捨てちまった、ただの馬鹿野郎さ…… 」

幼(中)「……」


男(中)「だからっ──」

幼(中)「えいっ♪」ピトッ

男(中)「いたたたっ! なに傷口に触ってんだよ!」

幼(中)「『回復の魔法で男の傷は完治した』っ!」

男(中)「!」

幼(中)「……なんちゃって」///

男(中)「……ぷっ」クスッ

男(中 )「あっはっはっはっはっ!」 ゲラゲラ

幼(中)「ちょっ、笑い過ぎだよっ! 昔の男くんの真似をしただけじゃないっ 」///

男(中)「ひーっ、苦しいっ」ゲラゲラ

幼(中)「ったく……」/// プンプン

男(中)「ごめんごめんっ」クスクス


幼(中)「ねぇ、男くん」

男(中)「ん?」クスクス

幼(中)「皆、待ってるよ?」

幼(中)「私も男友Aくんも幼友も」

幼(中)「早く男くんが学校来ないかなって」ニコッ

男(中)「……」

幼(中)「男くんはさ……もっと私達を頼っていいんだよ?」

幼(中)「一人で辛い事を何もかも背負わないで……」

幼(中)「小さな力かもしれないけど、私は……ううん、私達は少しでも男くんを支えてあげられたらなって思ってる」

男(中)「幼馴染……」


幼(中)「また……皆で一緒に楽しい思い出を作ろ?」

男(中)「……」プルプル

男(中)「ごめんな……幼馴染……」 プルプル

男(中)「ありがとう…… 」ポロポロ
 
幼(中)「ううん」ニコッ


男(中)「いてっ」ズキッ

幼(中)「あ、本当に傷の手当てをしなきゃっ!」バッ

男(中)「いいよ、これぐらい大丈夫」 スタッ

幼(中)「で、でもっ!」

男(中)「すぐ近くに家があるし、帰ってからテキトーに絆創膏でも貼っとくよ」 クスクス

幼(中)「じゃあ、私も行く!」

男(中)「え? いや、大丈夫だって」

幼(中)「私のせいで怪我させちゃったし、守ってくれたお礼もしたいから私に手当てさせて?」

男(中)「別にお前のせいじゃ──」

幼(中)「お願いっ!」バッ

男(中)「……じゃあ、よろしく頼むよ」



ザァアアアアアア……

幼(中)「その前に……傘買ってこようか?」

男(中)「今さら差しても一緒じゃないか? それにコンビニの傘は売り切れだったぞ」クスッ

幼(中)「そっか……」ガックリ

男(中)「あっ、ここにちょうど二本あるじゃないか」ニヤニヤ

幼(中)「それって不良くん達の傘じゃ……」

男(中)「いいからいいから、ほれ」スッ

幼(中)「う、うーん……」タラッ

幼(中)「……」

幼(中)「……二人で一本じゃダメかな?」ボソッ

男(中)「え? なんだって?」

幼(中)「ううん、何でもないっ」///


男(中)&幼(中)「ワイワイ」テクテク




スッ

男友A「へへっ、オレ達の出番は無かったみたいだな」ニヤニヤ

幼友「さすが幼馴染ね」ニコッ

幼友「 でも……私達が来たときにやってた二対一の喧嘩に加勢しなかったのはあんまりじゃないの!? 男友A!」

男友A「そ、それは少しは反省してるさ! まぁ、結果よければ全てよしって事で」

幼友「ビビってただけでしょ!?」

男友A「なっ!? ふざけんなっ! 」 ギクッ

幼友「はぁ……こいつは本っ当に男の親友として失格だったわ……」


次の日


─思春中学校・教室─


ワイワイ……ガヤガヤ……


ガラガラッ

男(中)「入学式以来かぁ……久しぶりだな」テクテク

生徒「!」

生徒「おいおいマジかよっ!?」ヒソヒソ

生徒「ついに噂の大不良が登校してきやがった……」ヒソヒソ

生徒「うわぁ……なんで来たんだよ…… 」ヒソヒソ

ざわざわ……

男友A「おっ!?」

幼(中)「男くんっ」パァッ

幼友「やったじゃん、幼馴染!」ニコニコ


男(中)「よう!」

男友A「はははっ、ようやくお出ましかよこの野郎」 ニヤニヤ

男(中)「ごめんな皆。 心配ばっかりかけちゃって」

幼友「ったく……もう幼馴染を悲しませるような事はしないでよねっ」クスッ

男(中)「あぁ、任せとけ!」

幼(中)「おはよう、男くんっ!」 パァッ

男(中)「おはよう、幼馴染。 昨日はありがとな!」ニコニコ

テクテクテクテク

メガネ「ククッ、おはようございます男くん」

男友A「!」ピクッ

幼友(男友Aっ! 今日は大人しくしてなさいっ) ヒソヒソ

男友A「チッ……」


メガネ「ふむ、まさか噂の不良が登校してくるとは思いませんでしたよ」クイッ

男(中)「?」

メガネ「周りを見渡してみなさい、男くん」

メガネ「あなたが入室してきた瞬間、教室中の全ての生徒が恐怖で凍りついてしまった……実に迷惑この上ない」クイッ

幼友(……)ギリッ

男友A(……)ピクピク

メガネ「私はあなたのような存在など認めていません」

メガネ「クラスの秩序を乱す恐れのある不良など──」

男(中)「なぁ、あんた誰?」

メガネ「は?」ポカン

メガネ「おっと、失礼。 私は学級委員長を務めているメガネと申します」クイッ

男(中)「そっか。 今日からよろしくな、メガネっ!」ニコニコ

メガネ「は?」ポカン


生徒「あれ? なんか思ってたような奴と違うくね?」ヒソヒソ

生徒「確かに……アイツ本当に不良だったのか?」ヒソヒソ

生徒「良い奴そうじゃん」ヒソヒソ


メガネ「くっ……! 私をバカにしているのですか……!?」プルプル

男(中)「なぁ、幼馴染! 俺の席ってどこだっけ?」クルッ

メガネ「」ブチッ

メガネ「貴様ッ! 貴様貴様貴様貴様貴様貴様ァッ!!!」バッ

ガシッ

男(中)「おわっ! な、なんだよ急に!?」ビクッ


メガネ「この不良っ! 未成年喫煙者っ! 腐れ喧嘩師っ! カツアゲ犯っ!」 ガミガミガミガミ

男(中)「!?」ピクッ

男(中)「おいっ!? 喫煙や喧嘩はともかく『カツアゲ犯』ってなんだよ!?」

メガネ「うるさいうるさいうるさいっ!!! しらばっくれるな!!!」

男(中)「誰だよ……そんな嘘ばらまいてる奴……」タラッ

メガネ「出ていけっ! 出ていけっ! 出ていけっ!」ガミガミガミガミ

男(中)「おい、いい加減うるせぇぞこの野郎」スッ

男友A「!」

幼友「男っ! やめなさいっ!!!」

幼(中)「……」


男(中)「くらえ……」バッ

男(中)「『窒息の魔法』っ!」コチョ コチョ コチョ コチョ

メガネ「なっ……やめ……やめなさいっ!」ゲラゲラ

生徒「」ポカーン

男(中)「ほれほれ」コチョ コチョ

メガネ「ぎゃははっ……やめ……やめろぉおおっ……!」ゲラゲラ

ドサッ

メガネ「」ピクピク

男(中)「へへっ、どうだ! 少し大人しく寝てろ!」ゲラゲラ

生徒「うぉおおお!? なんだアイツ!」 ゲラゲラ

生徒「すっげーおもしれーじゃん!」 ゲラゲラ

幼(中)「男くん……」クスクス


男友A「はは……『あの頃』の男じゃねーか……」ブルブル

男友A「おい、幼馴染……お前……一体どんな『魔法』を男にかけたんだよっ……?」 ブルブル

幼(中)「ふふふ、私は別になんにもしてないよ?」ニコニコ

男友A「男ぉおおおっ! 久しぶりにオレと『魔法』で勝負だぁあああっ!」バッ

男「おうっ、望むところだっ!」バッ

ドタバタドタバタ

ワハハハハハハ!

幼(中)「あはははは!」ケラケラ

幼友「もうっ! 中学生になってまで子供っぽい事やってんじゃないわよ!」 ケラケラ


ワハハハハハハ……


ハハハ……


……



キーンコーン……カーンコーン……




─同穂高校・昼休み─


ワイワイ……ガヤガヤ……


男友C「はぁ……」パクパク

男(高)「どうした? 元気ないな」 パクパク

男友C「なぁ、男よ……」

男(高)「ん?」パクパク

男友C「オレらもいい加減に『彼女』という存在が欲しいと思わねーか?」ハァ

男(高)「へ?」パクパク

男友C「……あいつらを見てみろよ」 チラッ



生徒A「はいっ、生徒Bくん! あーん♪」スッ

生徒B「あーん♪ 」パクッ モグモグ

生徒B「うわぁ、とっても美味しいよ生徒Aちゃんっ!」ナデナデ



男友C「ド畜生がっ……わざわざ教室ん中でイチャイチャしやがって! 羨ま……いや、けしからん!」 プルプル

男(高)「ははっ」クスッ

生徒B「ん?」チラッ

男友C「チッ、なんだよ! こっち見んな──」

生徒B「いやぁ『彼女』がいる僕ってホント幸せだなァ」ドヤァ

男友C「」ブチッ

男友C「くっそぉおおおおおおおおお!!!」 ダンダンッ!

男(高)「お、おい! 落ち着けって!」 バッ


男友C「うるせぇっ! 逆に、なんでお前はそんなに冷静でいられるんだよ!」 プルプル

男友C「羨ましいと思わねぇのか!? あの至福の空間をっ! 心に刻まれるであろう青春の一ページをっ!」 プルプル

男(高)「いや……俺は別に……」タラッ

男友C「なんだとっ!?」

男友C「……」

男友C「フッ……そうか、わかったぜ」

男(高 )「?」パクパク

男友C「お前……幼馴染ちゃんと付き合ってるんだろ?」

男(高)「!?」ブハッ

男(高)「な、なに言ってんだよ! アイツはただの昔からの友達──」

男友C「どうせ付き合ってんだろっ!? だから余裕かましてんだろ!? だから他人の幸せも妬ましく感じないんだろぉおおおっ!?」

男(高)「違うって! ていうか声でけーよバカっ!」オドオド


男友C「くそっ……くそぉ……」ハァハァ

男(高)「ったく……」ドキドキ

男友C「……本当に幼馴染ちゃんと付き合ってないんだな?」ハァハァ

男(高)「あ、あぁ! そういう男女の仲ではないっ!」ドキドキ

男友C「だったらオレが幼馴染ちゃんを狙っても文句ねーよな?」ハァハァ

男(高)「い、いや、それは──」 ドキッ

男友C「クックック、学校一の美女と名高い幼馴染ちゃんと付き合えれば怖いもんなんかねぇ……」ブツブツ

男友C「生徒B共を遥かに凌駕する幸福を手にし、オレの退屈な高校生活はまるで『楽園』のように──」 ブツブツ

男(高)「ダメだ……って、聞いてねーなコイツ」 ハァ


生徒C「なんか男くん達が騒いでるよ」クスクス

幼(高)「ホントだ、なにか面白い事でもあったのかな?」クスッ

生徒C「あいつら毎日賑やかだよねぇ」 クスクス

生徒C「……」

生徒C「ねぇ、幼馴染ってさぁ……男くんと付き合ってるの?」

幼(高)「!?」ブハッ

幼(高)「な、なによ急にっ!?」 /// ゲホッ ゲホッ

生徒C「だって超仲良しじゃん。 毎日一緒に帰ってるしさ」

幼(高)「そ、そんなっ……男くんは幼稚園の頃からずっと一緒だった友達なだけで……」 ///

生徒C「そうなの? ……なら良かった」 ホッ

幼(高)「えっ?」ドキッ


生徒C「私さ、好きなんだよね。 男くんの事」 ドキドキ

幼(高)「!」ビクッ

生徒C「面白くて優しいし、性格に裏表が無くて話しやすいし……」 ドキドキ

生徒C「告白……してみよっかなぁ」 ドキドキ

幼(高)「……」ドクン ドクン



─下校─


キーンコーン……カーンコーン……


男(高)「帰ろっか、幼馴染」

幼(高)「う、うん」


カァ……カァ……


男(高)「……」テクテク

幼(高)「……」テクテク

男(高)&幼(高)「……」チラッ

男(高)&幼(高)「!」

男(高)&幼(高)「わっ!」/// バッ

男(高)「……」/// テクテク

幼(高)「……」/// テクテク


男(高)(ぐわぁあああ…… 何だよこの雰囲気……)テクテク

男(高)(男友Cがあんな事言ってたせいで、妙に幼馴染を意識してしまう) テクテク 

男(高)(ヤバい……なにか話さないと! )ドキドキ


幼(高)(はぁ……もうっ!)テクテク

幼(高)(生徒Cちゃんがあんな事言ってたから、いつも以上に男くんを意識しちゃう……)テクテク

幼(高)(このままだと絶対、変だって思われちゃうよ……!) ドキドキ

幼(高)(なにか話さなくちゃ──)


男(高)「──なぁ幼馴染」ドキドキ

幼(高)「ど、どうしたの?」ビクッ

男(高)「俺たちってさ……結局、高校までずっと同じ学校だったな」 ドキドキ

幼(高)「そうだね」ドキドキ

男(高)「男友Aと幼友は違う高校に行ってしまったけど」ドキドキ

幼(高)「うん──あっ!」

幼(高)「そういえば、男くんは知ってた!?」

男(高)「なにを?」

幼(高)「あの二人……今、付き合ってるんだって!」

男(高)「そっか──」

男(高)「って、えぇえええええええええっ!?」

男(高)「……本当に?」ドキドキ

幼(高)「うんっ」クスッ


男(高)「そうかぁ……あいつらが」
クスクス

男(高)「最近、やたら男友Aが遊びの誘いを断ってたのも、それが原因だったのかな」クスクス

男(高)「相手が幼友なら、あいつ絶対、将来尻に敷かれる──」

幼(高)「男くんは今、付き合ってる人っている?」ドキドキ

男(高)「!」ドキッ

男(高)「……いないけど……そういうお前はどうなんだ?」ドキドキ

幼(高)「私も……いないよ?」 ドキドキ

男(高)「そっか……も、もう高校生なんだから彼氏の一人ぐらい作れよっ!」 ドキドキ

幼(高)「な、なによぉ! 男くんこそ彼女の一人ぐらい作りなよっ!」 ドキドキ

男(高)&幼(高)「……」/// ドキドキ


男(高)「……ちょっと公園に寄っていかないか?」ドキドキ

幼(高)「え? いいけど……」ドキドキ


テクテクテクテク


─公園─


男(高)「久しぶりだなぁ……ここに来るのも」テクテク

幼(高)「私も本っ当に久しぶり!」 クスッ

男(高)「うわっ、ブランコってこんなに小さかったか!?」 ギーコ……ギーコ……

幼(高)「そう見える程、男くんが大きくなったんだよ」クスクス

男(高)「だよなぁ」クスクス



カァ……カァ……


男(高)「昔から全然変わってないよな。 この公園」 クスクス

幼(高)「うん」クスッ

男(高)「そう言いながらここに立つ俺たちの関係も、昔から全っ然変わってない──」

幼(高)「そうだね」ニコッ

男(高)「ずっと……『友達』のまま……」

幼(高)「えっ?」ドキッ

男(高)「……」ドクン ドクン

幼(高)「……」ドクン ドクン


男(高)「あのさ、幼馴染」

幼(高)「は、はいっ!」ビクッ

男(高)「俺……小さい頃に『お前を守る』なんて言ってたよな?」

幼(高)「うん。 私、とっても嬉しかったのを今でも覚えてる」ニコッ

男(高)「そんなカッコつけたセリフを吐いたクセに──」

男(高)「肝心な時にいつも助けてもらってたのは……守ってもらってたのは俺のほうだった……」

幼(高)「えっ?」

男(高)「小学生の頃に父ちゃんからボコボコにされてた時も……」

男(高)「中学生の頃に全てを捨てて道を踏み外そうとした時も……」

幼(高)「……」

男(高)「俺はお前に救われたから今ここにいる」


男(高)「幼馴染の笑顔や涙、言葉や仕草……いや、もう全てがまるで『魔法』のように輝いて俺に力をくれた」

幼(高)「……」

男(高)「好きだ……大好きだ、幼馴染」

男(高)「これからもずっと俺のそばにいてほしい。 俺の『魔法』でいてほしい」

男(高)「だから……良かったら俺と付き合ってくれないか?」

幼(高)「……」ポロポロ

バッ

幼(高)「嬉しい……嬉しいっ!」 ギュウウウ

男(高)「幼馴染……」

幼(高)「私もね……ずっと大好きだったよ……男くんの事……」ポロポロ

幼(高)「男くんがいてくれたから……私も今ここにいるんだよ?」 ポロポロ

幼(高)「私なんかで良ければ、ぜひ、よろしくお願いします……」 ポロポロ


男(高)「ありがとう、幼馴染」 ギュウウウ

男(高)「今度こそ……絶対にお前を悲しませたりなんかしない! 一生そばにいて守ってみせる!」

幼(高)「私も守られてばかりいないで、少しでも男くんの力になれるように頑張るね」ニコッ

ギュウウウ……



ドクン……ドクン……



そして、月日は流れ『あの夢』の日が訪れる



男、19歳最後の夜──



ドクン………ドクン……


テクテクテクテク

男「同窓会かぁ……久しぶりに皆に会えるな」

幼「そうだねっ! なんだか少し緊張してきちゃった」クスッ

男「──おっ、あの店だな」


─居酒屋─


ワイワイ……ガヤガヤ……


ガラガラッ

男「おーっす!」

幼「こんばんは!」

同級生「おぉっ!? やっと来たか!」 バッ

同級生「おい皆っ! 噂のカップルのご来店だぜ!」 ゲラゲラ


男「ははっ、盛り上がってんな」

幼「うわぁ、結構集まったんだねっ」

同級生「お前らの席はあっちな!」

テクテク

男友A「よう! 久しぶりだな!」ニヤニヤ

幼「男友Aくん!」パァッ

男「お前とはそんなに久しぶりでもないだろ」クスクス


男友A「相変わらず仲良く付き合ってるみたいじゃねーか!」クスクス

幼「えへへ」///

男「ま、まぁ……」/// ポリポリ

男「そういうお前は幼友とどうなんだ?」 ニヤニヤ

男友A「……別れた」

男&幼「えっ?」

男友A「あいつ……去年、外国に引っ越しちまってさ……それを機に別れちまったんだ」

男「お、おいおい! 本当か!?」

幼「そんな……しかも幼友が外国に!?」

男友A「なんだ、知らなかったのか? 幼馴染」

幼「うん、初めて聞いたよ!?」


男「……じゃあ、今日は幼友は来ないのか?」

男友A「いや、来るらしいぞ。 幹事の奴に連絡があったみたいだしな」

男「そっか……」

幼「……」

男友A「……」クスッ

男友A「参加早々しんみりしてんじゃねーよお前らっ! 今日はそういう日じゃないだろ!?」ゲラゲラ

男「で、でもよ──」

男友A「気にすんなって! とっくにオレは吹っ切れてるからさ!」

男友A「お前らの飲み物を頼んでくるよ! 何が飲みたい?」

男「悪いな……じゃあ酒で」

幼「ありがとう男友Aくん。 私はジュースで」

男友A「了解っ!」タッタッタッ


男「……今度あいつに誰か紹介してやってくれ」 ポリポリ

幼「うん……」


幼「でも、まさか幼友が外国に引っ越してたなんて……何で直接教えてくれなかったんだろう」

男「だよなぁ。 あいつ幼馴染の親友なのに」

男「まぁ、後から来るみたいだし、その時に詳しく聞いてみるか」

幼「そうだね……」

タッタッタッ

男友A「おまたせっ!」ゴトッ

男「サンキュー」

幼「あっ、ありがとう!」


男「……」プルプル

幼「男……無理してお酒飲まなくてもいいんだよ? しかも、一応まだ未成年なんだし……」

男「いや、こういう日ぐらいは飲んでおこうと思ってさ」

幼「本当に無理しないでね……?」

男「あぁ。 それじゃ乾杯っ」チンッ

男(酒……か)

男(父ちゃん……俺は絶対にあんたみたいな奴にはならない!)ゴクッ

男(何があっても幼馴染を一生幸せにしてみせるからなっ!)ゴクッ

男「ぷはー」ゴトッ

男「……あれ?」

男「これ……ジュースじゃん」

男友A「馬鹿野郎! 逆だ逆っ!」

男「うわっ!? ちょっと待て幼──」 バッ

幼「あれぇ? なんだかフラフラするよぉ」/// クラクラ

男友A「あっちゃー……飲んじゃってた……」ガクッ


男「ごめん……」タラッ

男友A「一杯でベロベロに酔っ払ってるじゃねーか幼馴染っ」ゲラゲラ

男「おい、大丈夫か?」

幼「だいじょーぶだよぉ! よぉし、もっと酒持ってこい男友Aっ!」/// クラクラ

男友A「あっはっは! こいつぁ大問題だな」ゲラゲラ

男「……ジュース頼んでくるよ」 トボトボ


テクテク

メガネ「おや? 男くん!」ニコニコ

男「おぉっ! メガネ! 中学校以来じゃないか! 元気にしてたか?」

男友C「おいコラ、男! あんまり幼馴染ちゃんとイチャついてんのを見せつけんじゃねーぞ!?」クスクス

男「それに男友C! お前と会うのは高校卒業以来だな!」ゲラゲラ

男「みんな元気そうで良かったよ」

ワハハハハハハ……


─二時間後─


ワイワイ……ガヤガヤ……


幼「zzz 」スヤスヤ

男「騒ぎまくった挙げ句に寝ちゃったな」クスッ

男友A「酒飲むと豹変するんだな幼馴染って」 ゲラゲラ

男「こいつに酒を与えたらダメだな。 良い勉強になったよ」クスクス

男友C「……」グビグビ

男友C「……ところでよぉ、男」ヒック

男「ん?」


男友C「お前、本当に羨ましいよなぁ」 ヒック

男「何が?」

男友C「毎晩、ヤってんだろ? あんな可愛い子と」ヒック

男「!」ビクッ

男「よせよバカっ! ほっとけ!」 オドオド

男友C「いいじゃねーか! 幼馴染ちゃん……どんな声で鳴くのかなぁ……」 ヒック

男「知るか!」オドオド

男友C「なんだ? 幼馴染ちゃんってマグロなのか?」ヒック

男「あのなぁ……」ピキッ

男友C「それとも……まさかテメェ、未だに『童貞』のままっていうオチか?」 クスクス

男「……うん」ドキドキ

男友C「だよなぁ! あんな可愛い子を襲わないほうがおかし──」

男友C「って、ええええええぇっ!?」 ビクッ


男「悪いかよ……」ドキドキ

男友C「あっはっはっはっは!」ゲラゲラ

男友C「おい皆っ! こいつまだ一度も幼馴染ちゃんとヤってねぇってよ!? 」 ゲラゲラ

男「や、やめろ男友Cっ!」バッ

同級生「マジかよ!?」ゲラゲラ

同級生「あんな可愛い彼女がいるのに!?」 ゲラゲラ

男友A「本気で30歳まで童貞貫くつもりかこの野郎」 ゲラゲラ

メガネ「幼馴染さん……」ハァハァ

ワハハハハハハ

幼「……」



─さらに一時間後─


男「さて、そろそろ帰るよ」

男友A「もう帰んのか!?」

男「幼馴染が心配だし、早めに送って休ませないとな」

男友C「とかなんと言って、酔っ払った幼馴染ちゃんを襲う気だろ?」ゲラゲラ

男「そ、そんなわけないだろっ!」 オドオド

ワハハハハハハ


男「……そういや、まだ幼友は来てないよな?」

男友A「あぁ。 本当に今日来るのかわかんなくなってきたな」クスッ

男友A「ま、後から来たら明日お前らに会うようにって伝えとくからよ!」

男「悪いな。 じゃあ頼むよ」

男「幼馴染! もう帰るぞ! 」ユサユサ

幼「え……?」パチリ

男「立てるか?」

幼「うん……」


男「じゃあな、皆」

男友A「おう!」

男友C「次に会う時は童貞卒業してろよ!?」クスクス

メガネ「お元気で! また会いましょう!」

同級生「じゃあな! 気をつけて帰れよ!」

ガラガラッ

幼「ふわぁ」フラフラ

男「ほら、肩貸すから掴まれ」グイッ

幼「ごめんね……殆ど寝てたみたいで」フラフラ

男「ったく……まぁ、俺のせいなんだけどな」クスッ

テクテクテクテク……


─居酒屋前─


ピリリリリリ……ピリリリリリ……


???「もしもし?」ピッ

???「……」

???「!」

???「あははっ! 随分と待ちくたびれてたわよ!」ケラケラ

???「……了解、さっそく楽しんできちゃうわ」ピッ



???「いよいよ『童貞狩り』の本格始動……か」

???「たくさん喰っちゃお……『童貞』も『人間』も」ペロッ


─居酒屋─

男友A「よっしゃ! 飲み直そうぜ!」 ゲラゲラ

同級生「おう! どんどん酒持ってこいよ!」

ガラガラッ

男友A「ん? 」

幼友「こんばんはーっ!」ニコニコ

男友A「!」

同級生「あれ!? 幼友ちゃん!?」

同級生「うぉおおお! 幼友ちゃんが来たよ!」

幼友「みんな久しぶりねぇ!」ニコニコ

男友A「……よう、遅かったな」


幼友「あ、男友A!」ニコニコ

男友A「どうだ? 外国の生活ってのは」

幼友「まぁ……充実してるけど」ニコッ

男友A「幼馴染も男も心配してたぞ? お前が引っ越してたなんて知らなかったみたいだし」

男友A「明日、会いに行ってやれよ」

幼友「え? 帰っちゃったの? 男達」

男友A「ついさっきな。 すれ違わなかったか?」

幼友「いや……まぁ、いっか。 あとで会いに行くわ」ニコニコ


男友A「……なぁ、幼友」ググッ

男友A「オレ達……もう一度やり直さ──」

幼友「私さぁ……今、物凄くお腹すいてるんだよね……」 ス ゙ズズ……

男友A「あ、あぁワリィ! なんか食い物注文してくるからっ!」ドキドキ

幼友「いや、結構よ」ニコッ

幼友「まずは……『あんたの肉』を味見するから♪」 ズズズ……

ガブッ! ブチィッ!

男友A「え──」プシュウウウ

同級生「!?」

同級生「うわぁああああああっ!」

同級生「きゃああああああああっ!」


幼友「んー、ちょっと『トッピング』が濃かったかな?」 モグモグ

幼友「それにあんた『非童貞』だしねぇ……肉の鮮度がイマイチだわ」 グチャ バリッ バリッ

男友A「おい……お前……シャレに……なんねーぞ?」 グチャ ブチュッ

幼友「安心しなよ。 あんたは私の『気』として生き続けるからさっ」 モグモグ

男友A「なん……だ ……よ……それ……」 ドシャア

同級生「逃げろぉおおおおおお!」バッ

同級生「警察だっ! 警察呼べっ!」バッ

幼友「逃がすわけないでしょ……こんな贅沢なフルコース達をさ……」ペロッ



─居酒屋前─


うわぁああああああ……

きゃあああああああ……

ガシャーン…… ドタバタ……


幼「?」フラフラ

幼「なんだか今まで以上にお店が騒がしくなってるね」/// フラフラ

男「どうせ酔っ払った誰かが悪ノリでもやってんだろ……ほっとけ」 テクテク

幼「脱いだり……とか?」/// フラフラ

男「お、おいっ!」ドキッ

幼「私も今から脱いじゃおっかなぁあ」/// フラフラ

男「……お前はもう二度と酒を飲むな」ハァ


─居酒屋─

ズチョッ グチャッ……

幼友「あはは……あははははははっ!」 モグモグ

メガネ「男友Cくん……」ガクガク

男友C「あ?」ヒック

メガネ「これは……夢ですよね?」 ガクガク

男友C「……だな」ヒック

メガネ「カニバリズム……それも人を犯しながら食うなんて……」 ガクガク

男友C「上の口と下の口で器用にお食事ってか……」クスクス

メガネ「笑えませんって……」ガクガク

グチャッ バリッ ゴリッ

幼友「はぁ……幸せ♪」ペチャ グチャ


男友C「なぁ……あいつ、もうクラスメイト何人ぐらい食ったか?」ヒック

メガネ「男女合わせて……50人ってとこですかね……」ガクガク

男友C「胃袋どうなってんだよ」クスクス

男友C「これさ、ドッキリも兼ねた大食い大会のテレビ撮影でもやってんじゃね?」 クスクス

メガネ「あの……冗談はともかく、あとは私達二人だけになりましたけど……」ガクガク

幼友「ふぅ……」チラッ

メガネ「ひっ!」ガクガク

男友C「やっぱりオレ達も食われんの?」 ヒック

メガネ「ズバリ……間違いないでしょう……」ガクガク


幼友「ねぇ……あんた達って童貞?」 ニヤッ

メガネ「……」ガクガク

男友C「悪いがオレのマグナムは使用済みだ」クスクス

メガネ「お、同じく僕も卒業済みですっ……食べでも美味しくないですよ……!?」 ガクガク

幼友「そうなの? つまんないわねぇ」 ズズズ……

幼友「筆下ろしをしながら肉を食らうのが一番の幸せなのに」ズズズ……

シュタッ

ガブッ!

男友C「ぐあ"っ!?」ブチッ

メガネ「ひいっ!」

幼友「あれ……この肉質……あんた童貞じゃん!」モグモグ


男友C「ぎゃああああああ!」グチャ バリッ

幼友「ふふ、見栄なんて張っちゃって……可愛い子……」モグモグ

ズチョッ グチャッ

男友C「」ビクンッ

幼友「良かったわねぇ……死ぬ前に童貞を卒業出来て」クスッ

メガネ「あ……あ……」ガクガク

メガネ「うわぁああああああ!」ダッ

幼友「あ、待ちなさいよメガネ」 モグモグ


─居酒屋・厨房─

ガチャ ガチャ

メガネ「はぁ……はぁ……」スッ

幼友「待ちなさいって」スタッ

幼友「──あら、包丁なんて取り出してどうするつもり?」クスッ

幼友「まさか大事なクラスメイトである私を刺す気なの?」クスクス

メガネ「……今の貴女はただの悪魔です」ガクガク

メガネ「どうして……皆を……大切な仲間達を……!」ポロポロ

幼友「悪魔だなんて酷いわねぇ」クスッ

幼友「私は別に皆を殺したわけじゃないのよ? あくまで私と『一つ』になっただけ」クスクス

幼友「あんたも仲良く一緒になろうよ」テクテク

メガネ「く……来るなぁっ!」

幼友「ふふ、刺せるもんなら刺してみなさい」ズズズ……

メガネ「うわぁああああああ!」ダッ

幼友「!」ニヤッ


ガブッ! パリンッ!

メガネ「え──」

幼友「う……流石に『トッピング』をかけても『鉄』は不味いわねぇ」ガリッ ガリッ

幼友「メガネ……あんたの肉でお口直しさせてもらうわよ?」ズズズ……

メガネ「ひ……」ガクガク

ガブッ! グチャッ!

メガネ「いぎゃああああああああっ!」 プシュウウウ

幼友「……あら?」モグモグ




ペチャ……グチャッ……



幼友「男の子って本当に馬鹿よねぇ」 グチャ バリッ

メガネ「」ビクッ ビクッ

幼友「なんで童貞って事を隠したがるのか不思議だわ」クスクス

ドシャア

メガネ「」ピクピク

幼友「ま、最高の踊り食いが出来たから良いんだけど」クスクス

幼友「さて……」スタッ

幼友「最後に『あの二人』を食べに行かなきゃね」ペロッ

スタッ

幼友「ん?」クルッ

???「ひぇー! 随分と派手にヤッちゃったね」クスクス


幼友「女3……来てたんだ」

女3「えへへ、やっと『童貞狩り』が本格始動したねっ」ワクワク

女3「……僕の分の童貞も残して置いてほしかったなぁ」クスッ

幼友「大事なクラスメイト達だったのよ。 他の奴らになんか譲れないわ 」テクテク

女3「ん? 今度はどこに行くの?」

幼友「さぁね」テクテク


女3「……単独行動は控えた方がいいよ?」テクテク

幼友「ついて来ないで」テクテク

女3「だって僕らと同時に、敵である政府の特殊部隊も動き出したんだよ?」 スタッ

幼友「へぇ」テクテク

女3「凄いよねっ! 彼らの情報網って!」ケラケラ

幼友「……」テクテク

シーン……

女3「あーあ、行っちゃった」

女3「……」

女3「人の肉っておいしいのかな?」スッ

カプッ

女3「おぇっ! マズッ!」ペッ ペッ


─幼馴染宅付近─


テクテク

男「すっかり遅くなっちまったな……」

幼「……」

男「酔いは大丈夫か?」

幼「うん……少し落ち着いてきたみたい」

男「良かった……酔っ払ったお前はまるで別人だったぞ?」クスッ

幼「……」/// カァッ

幼「……お酒って怖いね」トボトボ

男「あぁ」クスクス


幼「──あっ!」

男「どうした?」

幼「今……何時ぐらい?」

男「え?」スッ

男「……おっ、あと10秒で『明日』になっちまうぞ」

幼「!」

男「……5……4……3……」

幼「2……1……!」ワクワク

男「0──」

バッ

幼「誕生日おめでとう、男!」ギュウウウ

男「わっ!」ビクッ


男「そういえば今日は俺の誕生日になるんだな。 すっかり忘れてたよ」 クスッ

男「ありがとう、幼馴染」ギュウウウ

幼「ううん……」ギュウウウ

幼「……」

幼「もう二十歳かぁ……とうとう私達も大人になっちゃったね」ニコッ

男「あぁ」

男「大人になっても、こうやってお前と一緒にいれて良かったよ……それも恋人として」

幼「うんっ!」/// ギュウウウ

幼「まさか男とこんな関係になるなんて……小さい頃は全然予想しなかったなぁ」クスクス

男「そ、そうか?」ドキドキ

幼「私はずっと男の事が好きだったんだけどね」クスッ


男「も、もちろん俺だって昔からお前の事が好きだったよ!」ドキドキ

幼「え──」

バッ

幼「ん……」ギュッ

男「……」ギュッ




スッ

幼「……お酒臭くなかった?」///

男「心配すんな、大丈夫だ」クスッ

幼「良かった……」クスッ

幼「大好きだよ……男……」/// ギュウウウ


幼「ねぇ」

男「ん?」

幼「今日……このまま男の家に泊まってもいいかな?」ドキドキ

男「!?」ドキッ

男「な、なに言ってんだよ! お前ん家はもう目の前じゃないか!」ドキドキ

幼「ダメ……?」ドキドキ

男「うっ……」ドキドキ

男「……」ドキドキ

男「別に……いいけど……」ドキドキ

幼「ホント!? 嬉しいっ」パァ


テクテク

男「……」ドキドキ

幼「初めてだなぁ……男の家にお泊まりなんて」ドキドキ

男「……」ドキドキ

幼「……」

幼「今でも『魔法使い』の事……信じてる?」

男「え?」

幼「ほら、30歳までほにゃららを貫くと『魔法使い』になれるって話……」///

男「!」ドキッ

男「……」

男「俺は──」

男「俺は今『幼馴染』という大切な『魔法』を手にしている」

男「だから……もう既に『魔法使い』になっているんだ……」ドキドキ

男「そう思ってる」ドキドキ

幼「えへへ……そうだね……そうだよね」/// ドキドキ


男「……」ドキドキ

男「なぁ……もしかしてお前、居酒屋での話を聞いてたか?」ドキドキ

幼「うっ!」ギクッ

男「……」ハァ

男「みんな笑って囃し立ててたよな」 ドキドキ

男「お前と……その……一度も……あれ……してないなんて」ドキドキ

男「で、でも、そんなの無理に気を使わなくていいから──」

幼「ううん、私はね……いつだって男に全てを受け入れてもらいたいの」ドキドキ

幼「心だけじゃなく……体も」ドキドキ

男「幼馴染……」ドキドキ

男「ごめんな……こんな情けない野郎で……」

幼「なんで謝るのよぉ」クスッ


ヒュウウウ

男「うっ、やっぱり夜は冷えるな」 ブルブル

幼「そろそろ行こっか?」ブルブル

男「そうだな」ドキドキ

幼「本当に……いいの?」ドキドキ

男「……あぁ」ドキドキ

男「お前の全てを受け入れたい……だから、お前も俺の全てを受け入れてほしい」ドキドキ

幼「男……」/// ギュッ

幼「……」テクテク

幼「ねぇ」テクテク

男「ん?」テクテク

幼「今年の誕生日プレゼントは『私』って事でいいかな?」/// クスッ

男「!?」ブハッ

男「お前……まだ酔っ払ってるだろ?」 クスッ

幼「えへへ……」/// ギュッ


─自宅─

ガチャ

男「ふぅ、結構歩いたな」

幼「おじゃましまーす」ボソ

男「誰もいないから声潜めなくていいよ」クスッ

幼「え?」

男「おじさん達は泊まりがけで旅行に行ってるからさ」

幼「あ、そうなんだ」

幼「じゃあ……二人っきりなんだね」/// ニコニコ

男「ま、まぁな」ドキドキ


─男部屋─

ガチャ

男「ふぅ……」

幼「久し振りにたくさん歩いたから汗だくになっちゃった」クスッ

男「だな」クスッ

男「……」ドキドキ

幼「……」ドキドキ

幼「あの……シャワー借りてもいい?」ドキドキ

男「あ、あぁ。 気軽に使ってくれ」ドキドキ

幼「ありがと……じゃあ、ちょっと行ってくるから待っててね」/// ドキドキ

ガチャ


シーン……

男「……」ドキドキ



男(ヤバい……緊張のメーターが限界まで振り切ってる……)ドキドキ

男(こんなに自分の心臓がうるさく鳴るなんて生まれて初めてだ……) ドキドキ

ドサッ

男(俺は……今から幼馴染とこのベッドで……)ドキドキ

男(……)ドキドキ

男(落ち着け、俺っ!) ドキドキ


数十分後──

ガチャ

男「!」ビクッ

幼「……」テクテク

男(来た……!) ドキドキドキドキ

幼「男?」ドキドキ

男「zzz」ドキドキドキドキ

男(って、なに寝たフリしてんだよ!?)

幼「……寝ちゃった?」ドキドキ

男「zzz」ドキドキドキドキ

男(くそぉおおお! 情けねえぇえええ!)ドキドキドキドキ


幼「……」テクテク

ドサッ

男(あ……隣に幼馴染が……)ドキドキ
ドキドキ

幼「……」スッ

男(うわっ……なんて良い匂いなんだ……) ドキドキ

男(それに、幼馴染の息がかかってくる……恐らくもう目の前には顔が……) ドキドキドキドキ

幼「ん……」ギュッ

男「!」ビクッ

男「わぁあああっ!」バッ

幼「きゃっ!?」ビクッ


男「あ……あの……ごめん!」オドオド

幼「え?」/// ドキドキ

男「あ……え、えっと……喉渇いただろ!? ちょっとジュース買ってくるよ!」 オドオド

幼「いや、私は別に……」ドキドキ

男「えええ遠慮すんなって! じゃ、ちょっと行ってくるから待っててくれ!」バッ

ガチャ タッタッタッ……

シーン……

幼「……」

幼「……バカっ」/// ムスッ


─外(自販機前)─


男「はぁ……」トボトボ

男「馬鹿か俺は……」トボトボ

男「何をビビってんだよ……」トボトボ

男「……」ゴソゴソ

男「げ……そういや金持ってくんの忘れたな……」

男「馬鹿だ……本当に馬鹿だ……」 ハァ

ザッ

???「あれ……? もしかして男じゃない!?」

男「ん?」クルッ


幼友「久し振りねぇ!」ニコニコ

男「え……幼友!?」

男「なんでここに!?」

幼友「なんでって……同窓会の帰りだけど?」ニコニコ

男「え……もう終わったのか?」

幼友「うん……たくさんご馳走になってきちゃった……」ペロッ

男(おかしいな……男友A達は朝まで騒ぐ気漫々だったのに)

男「あ、ところで幼友」

幼友「?」

男「お前……なんで引っ越した事を俺や幼馴染に教えてくれなかったんだ!?」

幼友「……」ジュル

男「男友Aに聞いた時はビックリしたんだぞ──」

バッ! ギュウウウッ

男「え?」

幼友「ごめんね……ずっと会いたかったよ、男」ギュッ


男「ちょっ、なに急に抱きついてんだよ! 離れろっ!」/// ドキドキ

幼友「いいじゃん……私、大好きなんだもん」ズズズ……

男「バカ! 酔っ払ってるにしても悪ノリが──」ガブッ

グチャッ

男「え」プシュウウウ

幼友「肩ロースが♪」モグモグ

男「うわぁあああああああああ!」 ドクドク

幼「!」モグモグ

幼友「……ウソっ!?……この肉質……」 モグモグ

幼友「あんた……まだ童貞だったのね……」ニタァ


幼友「あは……あはは」 ケラケラ

幼友「アハハハハハハハッ!!!」 ゲラゲラ

男「うぅ……」 ガクッ

幼友「あぁ、笑い死にしそう……」 ズズズ……

男「!?」ゾクッ

幼友「あんた今まで一度も幼馴染にヤらせて貰えなかったんだね!」バッ

ガブッ グチャッ

男「ぐわぁあああああああああ!」 プシュッ

幼友「ふふっ、可哀相……代わりに私が筆下ろしをしてあげるわね」モグモグ

ガシッ

男「や……やめろぉおおおおおお!」 ドクドク


─男部屋─

バフッ

幼「……遅いなぁ、男」ハァ

幼「……」

幼「私だって……逃げ出したくなる程に恥ずかしかったんだからっ!」///

幼「ったく……」/// ドキドキ

幼「……」

幼「自販機ってすぐ近くにあった気がするんだけど……」

スッ

幼「私も行ってみよっと」テクテク

ガチャ

「や、やめろぉおおお……」

幼「!?」ビクッ

幼「今の声……男!?」バッ

タッタッタッ


─外(自販機前)─

幼「!」

幼「男っ!」タッタッタッ

幼友「あら?」ピクッ

男「幼……馴染……!?」ドクドク

幼「う……! そのケガ……一体どうしたの!?」

幼「それに──」クルッ

幼友「やっほー、幼馴染っ♪」ニコニコ

幼「幼友……!?」

幼友「久し振りねぇ」ニタァ

幼「何……やってるの……?」

幼友「何って、男を美味しく頂いてるのよ」ガブッ グチャッ

男「うぐわぁああああああ!」プシュッ

幼「!?」

幼友「んで、さらにこれから男の筆下ろしをしてあげようと思ってたの♪」 モグモグ


幼「あ……あ……」ガクガク

幼友「あんたも酷いわよねぇ……男に一回もヤらせてあげないなんてさ。 付き合ってもう何年目だって話よ」ケラケラ

幼友「ま、でも、お陰様で男を最高の肉質のまま──」

パチンッ!

幼友「!」

幼「ふざけないでっ……! 」ギリッ

幼友「……久し振りの再会でいきなり頬に平手打ちとはね」クスッ

幼友「あんまり綺麗な指が見えたもんだから……食い千切っちゃった♪」ニッ

幼「え……それ……私の……指?」 プシュッ

幼友「骨ばっかだからあんまり好きな部位じゃないんだけどね」コリッ バキッ

幼「あぁああああああああああッ!」 ドクドク

男「幼馴染っ!?」


男「てめぇえええっ!」バッ

幼友「──よしっ、決めた!」シュッ

ドゴォ!

男「かはっ……!」ドサッ

幼友「あんたの踊り食いは最後のお楽しみにして……先に幼馴染から食べちゃおっと」 ペロッ

幼「あああっ…… !」 ドクドク

幼友「処女のプリプリな肉質もたまんないのよねぇ」ズズズ……

男「やめろっ……!」ガクガク


男「食うなら俺を食え……幼馴染に手を出すなっ……!」ガクガク

幼友「だからあんたは後から食うっつってんでしょーが」ガブッ

幼「!?」ブチッ

グチャッ バリッ

幼「あ"──」ビクッ

幼友「うんっ、美味美味♪」モグモグ

男「やめろぉおおおおおお!」ガクガク


グチャッ ゴリッ バキッ

幼友「大好きだったよ、幼馴染の事」 モグモグ

幼友「優しくて、一途で可愛らしくて」グチャッ ベチャッ

幼「」バキッ グチャッ

幼友「気弱かと思えば人一倍度胸があって」モグモグ

幼友「辛い時なんか、いっつも私達に笑顔をくれてたよね」

幼友「もはや親友というカテゴリーには収まりきれない程に、幼馴染の事が大好きだった……」

幼「」ドシャッ

幼友「あんたの全ては私のモノ……」

幼友「これからは私の中で永遠に生き続けるのよ」ペロッ

幼「」ピクピク

男「あ……うあ……」ガクガク

男「うわぁあああああああああ!」


幼友「さて、と」

男「あああ……」ガクガク

幼友「締めは男の踊り食い♪」ジュル

男「……」ガクガク

幼友「少しは暴れてよね? そっちの方が燃えてくるからさ……」ズズズ……

幼友「んじゃ、いただきま──」

ガシッ

幼友&男「!?」

幼「えへへ……捕まえた……」ゲホッ

幼友「あら? まだ生きてたんだ」クスッ

男「幼……馴染……?」ガクガク


幼友「まだ、しっかりと『取り込み』が出来てなかったか」

幼「ふふ……」ガクガク

幼「私もね……幼友の事……大好きだったんだよ……?」ガクガク

幼「たった今……大嫌いになっちゃったけどね……」クスッ

幼友「……」ピクッ

幼「男……今のうちに……逃げて……」 ガクガク

男「え……」

幼「私が幼友を捕まえてておくから……」 ガクガク

男「何言ってんだよ……」

男「お前を置いて逃げるくらいなら……死んだ方がマシだ……!」 ガクガク


幼友「ふふ……」

幼友「アハハハハハッ!」ゲラゲラ

幼友「死に際でさえお互いを想い合うなんて……あんた達の愛はホンモノだわ」 クスクス

幼友「私が付け入る隙間なんて無いみたいね」ズズズ……

幼友「でもね、幼馴染は私のモノなのよ……今度こそ全てを取り込んであげる」 ズズズズズズ……

幼「男……早く……逃げてっ!」 ガクガク

男「やめろ……」ガクガク

幼友「骨一つ残さず食べきってやるわ!」 バッ

男「やめてくれぇええええええ!」 ポロポロ



パァンッ!

幼友「!?」シュバッ

幼友「これは……銃弾?」コリッ パキッ パキッ

???1「カッカッカッ!」ケラケラ

???1「人肉のみならず鉛玉まで食べてしまうとはのう……」

???1「ただでさえキチガイの集まりである『 童貞狩り』の中でも、おどれはトップクラスでイカれとるぞ?」 ゲラゲラ

???2「それにしても異常なまでの身体能力ね」チャキ

???2「避けられるのは当然、予想してたけど……まさか銃弾に食い付くなんて」

幼友「あんた達……何者?」スッ


ブサメン「今から死ぬモンにわざわざ名乗る必要があるか?」クスクス

美女「一体の『童貞狩り』と遭遇、これよりターゲットの駆除を行います」 ピッ

幼友「……もしかして、女3が言ってた政府の飼い犬かしら?」

幼友「片方は吐き気を催すほどの不細工男……もう片方は女性の私でも惚れてしまいそうな美貌の女」

幼友「美女と野獣にも程があり過ぎるわよあんたら」クスクス

ザッ

幼友「はぁ……ホンット最悪……」

幼友「私ね……食事中に茶々を入れられるのがこの世でもっとも嫌いなのよ」 ズズズ……

幼友「先にあんたらを食い潰してあげるわ」 ズズズズズズ……


ドサッ

幼「う……」ピクピク

男「幼馴染……」ガクガク

美女「っ!? あの二人に早く応急処置を──」

ブサメン「んなモン構うなボケ! 目先の敵に集中せんかいっ!」

幼友「……」ユラッ

ブサメン「あのゲテモノ食い……恐らく相当の実力派じゃ」スッ

美女「くっ!」チャキッ

ブサメン「……後で奴らを治療する為に、少しでも『弾』を残そうなんて考えるなよ?」

美女「!」ピクッ

ブサメン「おどれの力は一滴残さず全て『童貞狩り』の殲滅へ注ぎ込め」

美女「……了解」ギリッ

幼友「ふふふ……まずは……あんたからッ!」 シュバッ

ブサメン「!」


ブサメン「はやっ──」

ガブッ

ブサメン「ぬっ!?」メリメリ

幼友(のろまの肩ロース……いただきま──)クスクス

ジュッ

幼友「!?」ジュウウウ

幼友「あちッ……!」バッ

ブサメン「カッカッカッ! なんじゃあ、お前さん猫舌か!?」クスクス

幼友「ぐっ……」ペッ ペッ

幼友(何よ今の!? ……あいつの肌……いや、肉なの? ……わからないけど、まるで燃えてるように熱かった……!)

幼友(ならば……冷却用の『トッピング』をかけて──)ガッ

幼友「え?」

ブサメンは片手で幼友の顔面を掴んだ

幼友(速いっ……!)

ブサメン「汚物は強火で消毒じゃ」ニヤッ


ジュウウウッ!

幼友「あ"ぁあああッ!」ジュウウウ

幼友「熱いっ! 熱いぃいいいッ!」 バタバタ

ブサメン「ワシのこの手が真っ赤に燃えるッ!」ググッ

ブサメン「思い出せっ! クソにまみれた我が青春を!」ググッ

ブサメン「思い出せっ! ツラに恵まれた勝ち組共を!」ググッ

ブサメン「思い出せぇっ! この世は顔が全てという現実を!」グググッ

ボウッ! ジュウウウウウウッ!

幼友「ぐぎゃああああああああッ!」 ジュウウウウウウッ!

ブサメン「熱く煮えたぎれ……『嫉妬の炎』ぉおお!!!」ググググググッ

ゴォオオオッ!

幼友「あ"……」パチパチ

ドサッ

ブサメン「カッカッカッ! ブサメン流『童貞狩りの丸焼き』の完成じゃ!」 ゲラゲラ

幼友「」パチパチ……パチパチ……


ブサメン「もっとやる奴と思っとったんじゃがな!」ゲラゲラ

美女(『嫉妬の炎』……)

美女(その名の通り、嫉妬から生まれる怒りの力で、自身の『気』を炎に変える能力)

美女(彼の『不細工』というコンプレックスが培ってきた様々な嫉妬……それを思い返せば思い返すほど炎は大きく燃え盛る……)

美女(……)

美女(ブサメン君……今の君の強さの原動力は間違いなくその嫉妬にあるけど……)

美女(私は……怖い……いつの日かその嫉妬の怒りが限界を超え、己の身すら焼き尽くしてしまいそうで……)

美女(……男性は顔が全てじゃないのよ? )

美女(君には早く気付いてほしい……)

美女(今の君の強さなんて全て捨てて……幸せになってほしい……)

美女(……ブサメン君……私は君が──)

幼友「」ズズズ……

美女「!?」ピクッ

幼「」ズズズズズズ……

美女(体が……再生している!?)

幼「」ニヤッ

美女「ブサメン君! 危ないッ!」チャキ

ブサメン「ん?」クルッ

幼友「なぁに勝った気でいるのよ不細工男っ!」 シュバッ

ブサメン「なんじゃと!?」

美女「くっ……!」ドンッ! ドンッ!

幼友「──おっとっと!」スッ スッ

ブサメン「おどれ……さっきまでケシ炭になっとったじゃろうが……!」バッ

幼友「あーあ、惜しいっ♪」スタッ

幼友「彼女の咄嗟の援護射撃が無かったら、今頃あんたの心臓は私の胃袋の中だったのに」クスクス

ブサメン「チッ……余計な真似すんな美女!」

美女「なっ!? ギリギリだったクセにっ!」 ムスッ

美女「君はいい加減、人に感謝するって事を覚えた方が良いわよ?」チャキ

すいません>>323の「幼」は全て「幼友」の間違いです


ブサメン「しかし、なぜ奴の体が元の状態まで完治しとんのじゃ!?」

幼友「ふぅ……熱かった……」パタパタ

幼友「ったく、無駄に燃やされ続けたから『3回』も死んじゃったじゃない」

ブサメン「あぁ!?」

美女「『3回』……死んだ?」

ブサメン「カッカッカッ! ……つまらん冗談やのう」シュバッ

幼友「!」


ブサメン「今度はチリ一つ残さんように調理してやるけぇの……覚悟せぇ!」 ブンッ

幼友「ハッ! あんたの速さは完璧に覚えたっての!」サッ

ブサメン「何っ!? 」スカッ

幼友「次は……ちゃんと食ってあげるからねっ!」バッ

ブサメン「しまった! やられる!」

幼友「アハハハハッ!」ズズズ……

ブサメン「──なーんてな」ニヤッ

ドンッ!

幼友「へ?」ブシャッ! ドサッ

美女「アナタの相手は二人いるって事もしっかり覚えててね?」チャッ

幼友「」ピクピク

ブサメン「カッカッカッ! 見事に脳天をブチ抜いたのう!」ゲラゲラ


美女「……」チャキ

ブサメン「!?」

ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!

幼友「」ビクッ ビクッ……

ブサメン「コ、コラァ! 貴重な『弾』を無駄に使うなっ!」

美女「……肉体が死んでも、彼女を取り巻く『気』が一向に消えないわ」

ブサメン「なんじゃと!?」

幼友「」ズズズ……

ブサメン「おいおい……また再生しよる……」 ゾクッ

美女「しかも、さっきより再生の速度が格段に上がって──」

バシュッ!

美女「!?」

ブサメン「消えた!?」


ブサメン「コラァ! 出てこんかい!」クルッ クルッ

美女「──あっ!」

女3「ふっふっふっ!」クスクス

美女「ブサメン君! あの家の屋根の上!」スッ

ブサメン「あぁ!?」クルッ

女3「こんばんは!」 ケラケラ

幼友「あれ……女3?」パチッ

ブサメン「新手か!? それに、奴が抱えているのはさっきまで戦ってた『童貞狩り』!?」グッ

女3「おっと! 今日はもうお兄さん達と殺り合うつもりは無いよー!」ケラケラ

女3「僕はただ幼友を迎えに来ただけだから安心してね!」ケラケラ

ブサメン「安心……じゃと? 随分ナメた口を叩くのう」ピクッ

女3「あはは! また近い内に会えるといいねっ! その時は最高の殺し合いをしようよ!」 ケラケラ

女3「じゃあね!」シュタッ


ブサメン「コラァ! 逃げんな!」

美女「さっきの一瞬で彼女をあんなに遠くまで運ぶなんて……それに微塵たりとも気配を感じなかった……」 ゾクッ

ブサメン「おい! 関心しとる場合かっ! さっさと奴らを追うぞ!」ダッ

美女「あっ! ま、待って!」バッ

ブサメン「おい! どこ行くんじゃ美女!」

美女「あの二人を助けてあげないと!」 タッタッタッ

男「う……」ピクピク

幼「」ピクピク

美女(ブサメン君……ごめん……!) ズズズ……

ブサメン「なっ!? おどれ……まさかっ!?」 タッタッタッ



シュタッ シュタッ シュタッ!


女3「ふんふんふーん♪」シュタッ タタタッ シュタッ!

幼友「……降ろして」ボソッ

女3「え? なんて?」シュタッ シュタッ!

幼友「降ろせって言ってんのよッ!」

女3「わっ!」ビクッ

女3「ごめんごめんっ! 抱え方が悪かった?」ケラケラ

幼友「違うっ……! どうして人の戦いを邪魔をしたのよ……!」ギリッ

幼女「それに、男と幼馴染を中途半端に食いそびれちゃったし……最悪だわ!」

女3「えー? だって、あのまま戦いを続けてもキミは確実にジリ貧で負けてたよ?」 ケラケラ

幼友「は?」ピクッ

女3「だから単独行動はやめろって言ったのに! ちっとも聞く耳を持たないんだから!」プンプン

幼友「私が……負けてた……?」


幼友「あんた……人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ?」ズズズ……

幼友「そのヘラヘラした顔を引き裂いて──」

女3「あのさぁ、キミはさっきの戦いで自分が何回死んだのかわかってる?」

幼友「え?」ドキッ

女3「9回も死んでるんだよ? 相手はまだ無傷だってのに」クスッ

幼友「最初から……見てたの?」ググッ

女3「キミがあの『化け物』共を相手にどこまで通用するのか確かめたかったんだ。 ごめんね!」クスッ

女3「でさ、今日『トッピング』をかけて取り込んだ人間は50人弱でしょ? 残り40ちょいの残機であの二人を倒せたと思う?」ケラケラ

幼友「……」ギリッ

女3「ていうかね、ぶっちゃけると1回死んだ時点で完全にキミの負けなんだよ」

幼友「!」ブルブル

女3「再生能力に甘え過ぎ。 ちょっとは反省してよね」

幼友「……」ポロポロ


幼友「うぅ……」ポロポロ

女3「ま、そんなに気を落とさなくていいよ。 決してキミが弱かった訳じゃない、相手が強過ぎたんだ」

女3「実はあの二人は『ビューティー・アンド・ビースト』っていう政府の特殊部隊の中でも最強クラスのチームでね」

女3「キミが『童貞狩り』に入る少し前、まだ某国のみでひっそりと筆下ろし活動をしていた時に、彼らに襲撃を受けた事があったの」

女3「その時さ、たかが二人相手に上位ランクの『童貞狩り』が何人も殺されちゃったんだよ? 凄いよね!」ケラケラ

女3「だからウチではちょっとした有名人なんだけど……まさかこの国に潜伏していたとはねぇ」ケラケラ

幼友「……」ポロポロ

幼友「……悔しいっ……」ポロポロ

女3「……」

女3「大丈夫、キミはまだまだ強くなる……あの二人以上に絶対強くなる」

女3「僕はそう信じてるよ、幼友っ!」 ニコッ

幼友「女3……」ポロポロ

女3「さ、とりあえず景気付けにそこら辺の童貞でも狩りに行こうよ! せっかく本格始動したんだしさ!」ワクワク

幼友「うんっ……!」グシッ

何度もすいません>>329の「関心」は「感心」の間違いですorz




タッタッタッ



美女「君達! しっかりして!」バッ

男「う……」ピクピク

幼「」ピクピク

美女(二人とも損傷が酷過ぎる……特に女の子の方は……もう──)

美女(ううん、諦めちゃダメ! 絶対に助けてみせる!)

美女「……」スッ

美女「天地万物全ての『美』を司る女神よ……その華やかに煌めく力を我に与え給え……」 ズズズ……

美女「『女子力』……開放っ!」 ズズズズズズ……


美女「美しき体を取り戻せっ──」 チャキッ

美女「『エステティック・バレット』!」 ドンッ! ドンッ! ドンッ!

男「ぐあっ……!」バシュッ! バシュッ! バシュッ!

男「う……」パァアアア

男「……あれ?」パァアアア

男「傷が……癒えていく……」 パァアアア

美女「よし!」ハァ ハァ

男「誰だかわからないけど……あんた……助けてくれたのか?」

美女「えぇ、もう大丈夫よ」ニコッ

美女「次は……」チャキッ

幼「」ピクピク

美女(問題は、この子……) ズズズ……

男「頼む! 幼馴染も助けてやってくれ!」バッ

美女「うん……!」ズズズ……


美女(この『女子力』を纏った『弾』の一つ『エステティック・バレット』は人体の大抵の傷を即時に癒やす事は出来る)

美女(だけど、彼女の消えかかっている生命力までを癒やす力は無い……)

幼「」ピクピク

美女(それでも……奇跡を信じて撃ち込むしかない!)

美女「『エステティック・バレット』! 」 ドンッ! ドンッ! ドンッ!

幼「」バシュッ! バシュッ! バシュッ!

幼「」パァアアア

男「幼馴染……!」 ゴクッ

幼「」パァアアア

美女(傷は完全に癒えたけど……) ハァ ハァ

幼「」

美女(お願い……目を覚ましてっ!) ハァ ハァ


幼「」

男「幼馴染! おいっ、幼馴染!?」 ユサユサ

幼「」

男「なんでだよ……目を開けてくれよ! 幼馴染っ!」 ユサユサ

美女(くっ……)ズズズ……

美女(こうなったら、私の残り全ての『女子力』を次の一撃に注ぎ込んで──) ズズズズズズ……

ブサメン「おい……」ザッ

美女「!」

ブサメン「この……バカタレがぁ!」 ブンッ

バキッ!

美女「あぅっ!」ドサッ

ブサメン「おどれ……何を考えとんのじゃ……!」ギリッ

美女「……」ガクガク


ブサメン「『女子力』も『弾』も無駄に使いおって……持てる力は全て『童貞狩り』にぶつけろ言うとったじゃろうがぁッ!」

美女「……」ガクガク

ブサメン「それに、さっきの『童貞狩り』共を完全に取り逃してしまった場合の被害の規模を考えてみい! 」

美女「……」ガクガク

ブサメン「こんな、たった二人の人間に、いちいち無駄な時間と力を使っとる場合かボケェ!」

美女「……」キッ

ブサメン「……なんじゃその目は」

ブサメン「美女、よく思い出さんかい」

ブサメン「ワシらに与えられた任務は民間人の救出か? 」

美女「……」

ブサメン「『童貞狩りの殲滅』じゃろうがッ!」

ブサメン「『童貞狩り』を根絶やしにしてこそ民間人の救出は……世界の平和は成される」

ブサメン「その為には少しの犠牲に目をつぶる事も必要なんじゃ」

ブサメン「甘さを捨てろ。 常に先を読め。 そして、一番に何を優先すべきなのか良く考えろ!」

美女「……」


美女「私は……たった一人だろうと目の前にいる傷付いた人間を見捨てるなんて……出来ない」ググッ

ブサメン「あ"ぁ!?」ピキッ

ピリリリリ! ピリリリリ!

ブサメン「!」ピリリリリ! ピリリリリ!

ブサメン「チッ! ……こちらブサメン、どうしたんじゃ!?」ピッ

『フツメンチーム……エリアC……住宅街にて童貞狩りと戦闘中……至急……応援を頼む……』 ザー ザー

美女「!」

ブサメン「くっ……了解! すぐに向かうけぇ、なんとか粘っといてくれ!」 ピッ

ブサメン「さっさと行くぞ美女!」

美女「で、でも、まだこの女の子が──」

ブサメン「いい加減にせぇッ!」

ブサメン「それに、エリアCの住宅街といえば、この周辺では一番人口の多い地域じゃ!」

ブサメン「もしも手遅れになったら相当の被害が出るぞ!?」

ブサメン「恐らくさっきのゲテモノ食いのゾンビ女もいるはずじゃ! 奴は筆下ろしのみならず人の命まで奪う!」

美女「うっ……」ブルブル


ブサメン「もはや猶予は無い!」ダッ

美女「ま、待って! 君一人じゃ危険──」

ブサメン「やかましいッ! 」 タッタッタッ……

美女「あ……」


幼「」

男「幼馴染……幼馴染っ……!」ユサユサ

美女「くっ……」ブルブル

美女「……」ブルブル

美女「ごめんっ……!」ダッ

男「あ……待ってくれよ……まだ幼馴染が……」

美女「……」タッタッタッ

美女「ごめんね……」 ポロポロ

タッタッタッ……



シーン……


男「幼馴染……」ポロポロ

男「俺のせいだ……俺があの時、逃げ出さなければ……」ポロポロ

幼「」

男「ちくしょう……」ポロポロ

ポタッ

幼「」ピクッ

男「!?」

幼「……男?」パチッ

男「あ──」

幼「!」 ドクン……ドクン……

幼「げほっ!」ドバッ

男「幼馴染!?」バッ


幼「……あぁ……男……無事で良かった……」ハァハァ

男「ごめんな……俺のせいでこんな事になって……」ポロポロ

幼「……なんで……泣いてるの……? ……私は……平気だよ……? 」クスッ

男「平気なワケないだろ……」ポロポロ

幼「……」ハァハァ

幼「この……いくじなしっ……!」 ハァハァ

男「え?」ポロポロ

幼「私だって……逃げ出したいくらい恥ずかしかったんだよ? ……男と初めての──」

男「バカ……何言ってんだよこんな時に……」ポロポロ

幼「明日こそは……ね? 約束……だよ?」 ハァハァ

男「もうそれ以上喋るな! 今から助けを呼んでくるからっ!」スタッ


幼「げほっ、げほげほっ!」ドバッ

幼「ふふ……なんだか……眠くなってきちゃった……」ハァハァ

男「おい……待てよ……しっかりしろ! 幼馴染!」バッ

幼「明日は……早起きして……お買い物にいって……それから……」ハァハァ

幼「……」ハァハァ

幼「男……これからも……ずっと……一緒に…………」

幼「」パタッ

男「!?」

男「……嘘だろ?」ガクガク

男「目を覚ませよ! 幼馴染!」ユサユサ

幼「」

男「あ……あ……」ガクガク

男「うわぁああああああああああああっ!!!」




ズドォォォン……


「ひぃいいいいいい! 助けてくれぇええええ!」

「きゃああああああっ!」

童貞狩り「ハッハッハッハッハッハッ!」

童貞狩り「建物を破壊して人間共をあぶり出せ!」

童貞狩り「童貞は一匹残らず筆下ろしだ!」

童貞狩り「抵抗しようものなら殺して犯せ!」


ドガァアアアン……


「嫌だぁああああああ!」ズチャッ

「助けてぇええええええ!」 グチョッ

童貞狩り「キャハハハハハ! 気持ち良いいいいっ♪」グリグリ

童貞狩り「フヒヒヒヒ! 犯せ犯せぇえええ! 」クネクネ



一般人A「ハッ……ハッ……」タッタッタッ

一般人B「くそったれ! 一体、何が起きてるってんだ!?」タッタッタッ

一般人A「わからねぇ……とりあえず街を出るぞ! 急げっ!」 タッタッタッ

一般人B 「──ん!?」ピタッ

男「……」ブツブツ

幼「」

一般人B 「 何してんだ! お前らも早くここから逃げろ!」

男「……」ブツブツ

幼「」

一般人B 「おい! 聞いてんのか!? 」

男「……」ブツブツ

幼「」

一般人A「もう放っておけ一般人B ! グズグズしてる暇はねぇんだ!」タッタッタッ

一般人B 「……チッ! ちゃんと警告はしたからな!? 死んじまってもオレらを恨むなよ!」タッタッタッ


男「見てみろよ、幼馴染」ブツブツ

幼「」

男「星が綺麗だぞ」ブツブツ

幼「」

男「夜は寒いな」ブツブツ

幼「」

男「手、握ってもいいか?」ブツブツ

幼「」ギュッ

男「冷たいんだな……お前の手」 ブツブツ

幼「」

男「……」

男「明日は……ちゃんと頑張るからさ……」

男「今度こそ……俺の全てを……俺の童貞を受け取ってくれ」ズズズ……

男「これからも、ずっと一緒にいような? 幼馴染……」 ズズズズズズ……

キィイイイイン……

男「うぅ……あぁあああああッ!」 ズズズズズズ……



バシュウウウン!



童貞「」ドクン……ドクン……

男「……」ハァ ハァ

グイッ

男「さぁ……家へ帰ろう……」 ハァ ハァ

男「……」ハァ ハァ

男「幼馴染……俺はお前を守る……一生守ってみせる……!」ハァ ハァ

ザッ ザッ ザ……


ザッザッ……


ザッ………


……

おつ
今日は終わりかな?

>>353
はい、また明日以降に更新しようと思います!






─童貞界─


男「あああ……」ガクッ

男「……」ポロポロ

童帝「──幼馴染の亡骸を元に、お主は今の『童貞』を作り出した……」

童帝「そして、『童貞』と共に自宅へ戻った直後に力尽き、互いに深い眠りに入った」

童帝「目が覚めたのは三日後の朝じゃった……」

童帝「だが……唐突に幼馴染を失ったショックに加え、最上位の『魔法』の使用による精神面への反動が、お主の記憶の一部を奪っていた」

童帝「あの悲しき日の記憶……そして、幼馴染という存在の記憶を……」


童帝「……」

男「……」ポロポロ

童帝「立つんじゃ、男」

男「……」ポロポロ

童帝「立たんかァッ!!!」クワッ

男「……」ポロポロ

童帝「約束したはずじゃ! どんなに悲しく辛い記憶だとしても、それを乗り越えてみせろと!」

童帝「お主の気持ちは痛い程にわかる……だが、いつまでも過去に縛られていては前に進む事など出来ぬ!」

男「……」ポロポロ

童帝「 ……まだ終わりではなかろう?」

童帝「幼馴染の姿形を受け継いだお主の『童貞』がいる!」

童帝「そして、お主らが放つ『希望の光』を信じ、巨大な闇に立ち向かう事を決意した『女』がいる!」

男「……」ポロポロ

童帝「……彼女らまでも失っていいのか? 男よ」


男「……」ポロポロ

童帝「今度こそ守ってみせろ……大切な仲間達を……!」

童帝「お主なら出来る! わしがこれからお主へ与える『魔法』がきっと力になってくれる!」

童帝「立つんじゃ……男……」

童帝「彼女らが……いや、絶望に苦しむ世界中の人間がお主を待っておる」

男「……」ポロポロ

童帝「……」

童帝(ぬぅ……記憶の復元は想像以上に酷じゃったか……)

童帝(まずいのう……このままでは世界は『童貞狩り』……いや、あの『魔王』に完全に支配される……)

童帝(男は、これまでに類を見ないほど見込みのある童貞じゃったのだが──)



童帝「むっ!?」ピクッ

童帝「いかんッ! 現世のお主の肉体が、今まさに筆下ろしをされようとしておるッ!」ブルブル

男「……」ポロポロ

童帝(……今の負の感情にまみれた精神状態の男に『魔法』の力を授けるのは危険じゃ……恐らく『闇の人格』が発現してしまうだろう…… )

童帝(しかし、男が非童貞と化せば『魔法』の力を授ける事が出来なくなる……すなわち世界を救う術が完全に断たれてしまう……)

童帝「……」ドクン……ドクン……

童帝「やむを得ん! これより男に『魔法』の力を授ける!」バッ バッ

童帝「男……わしは信じておるからな……」 ズズズ……

男「……」ポロポロ

童帝「過去を乗り越え……己に打ち勝つのじゃっ……!」バッ バッ バシュッ!

男「う……!?」ビビビッ

童帝「そして……『魔法』の力は人を『守る』為に使うんじゃぞ!? よく肝に銘じておけっ!」ビビビッ

男「体が……熱いっ……!」 キュイイイン

童帝「魔力相伝完了……さぁ、行ってこい! 」バッ バッ

童帝「男の魂よ、現世の肉体へと戻れっ……はぁッ!」 ホワァアアア

男「うわ──」バシュン……


シーン……

童帝「ふむ……行ったか……」ハァ ハァ

童帝「……」ハァ ハァ

秘書「お疲れ様でした、童帝様」シュバッ

童帝「秘書よ……わしは間違っていたと思うか?」ハァ ハァ

秘書「……いえ」

秘書「私もあの男には凄まじい『希望の光』を感じました」

秘書「まるで……かつての貴方のような……」

童帝「嬉しい事を言ってくれるではないか」フォッ フォッ フォッ

秘書「だから……きっと、どんなに高い壁でも乗り越えて行ける事でしょう」

童帝「うむ……それに、男にもお前のような素敵な『童貞』がついておるからのう?」ニヤニヤ

秘書「ど、童帝様……」/// ドキッ

童帝「二人っきりの時は『様』などいらんといつも言っておるじゃろ? わしは老いぼれになってしまったが、お前とはいつまでも昔のように接したいんじゃ」フォッ フォッ フォッ

秘書「はい……」/// ギュッ

童帝(……頑張るんじゃぞ……男!)

途中でご指摘のレスがありましたように、長々と脱線した回想になってしまいましたorz

次レスからは>>136の続きとなります





─地下道─


女8「ギャハハ、気分アゲアゲになってきたぜ!」

女8「それじゃ、最後の童貞……いただきますっ♪」ガシッ

女「男…………童貞ちゃん……」 ポロポロ


女7「──!?」ピクッ

女7(……『童貞ちゃん』……? )

女7(……まさか……最後の童貞と共にいたあの小娘は──)


ゴゴゴゴゴゴ……


女7&女8「!?」ビクッ


男「う……」ゴゴゴゴゴゴ……


女8「うおっ!?」バッ

女8「な……なんだよこの邪悪な『気』は!? クソ猿が放ってんのかっ!?」 ザッ

童貞「な……!?」ググッ

女「!?」ガクガク

女7「……そんな……バカな……」 ブルブル

男「うぁあああ……」ゴゴゴゴゴゴ

女8「クソガキ! こりゃあ一体どういう事だッ!?」

女7「……」ブルブル

女8「おいッ!?」

女7「何故……何故『あの方』と同じ『気』を放っているのだ……」 ブルブル

女8「あ"ぁ!? 何ワケわかんねー事言ってんだよッ!」



─男の精神世界─


男「……」ポロポロ

男「幼馴染……」ポロポロ

男「ごめんな……守ってあげられなくて……」ポロポロ

スタッ

???「憎いだろ? 『童貞狩り』が」 クスッ

男「……」ポロポロ

???「憎いだろ? 無力だった自分自身が」クスクス

男「……」ポロポロ

???「……オレが全てぶち壊してやるよ」 クスクス


闇男「『童貞狩り』も……無力な『お前』もな…… 」クスクス



─地下道─


ゴゴゴゴゴゴ……

女8「チッ! デタラメ過ぎんだろ……こりゃ迂闊に近づけねーぞ!?」ビリビリ

女7「……」ビリビリ

男「うぉおおおおおおあああああああッ!!!」 ゴゴゴゴゴゴ……

童貞「……」ビリビリ

男「ぐぅううううう……あああああああッ!!!」 ゴゴゴゴゴゴ……

童貞「……」ヨロ ヨロ

女8「!?」

童貞「男……」ヨロ ヨロ

童貞「どうしたの?……そんなに悲しんで……」ギュッ

男「あ"ぁああああああああああああッ!!!」ゴゴゴゴゴゴ……

童貞「『私』は……ここにいるよ? あなたのそばに……ずっと……」ギュウウウ



─男の精神世界─


闇男「ククク……素晴らしい……とてつもない力が漲ってくるぞ……」クスクス

闇男「もう怯える事など何も無い……邪魔する者は皆殺しだ……」 クスクス

闇男「この絶大なる『魔法』の力で全てを支配してやる」クスクス

闇男「そして……オレはこの世界を統べる『王』となるのだ!」ハッハッハッ!

男「……」ポロポロ


テクテク


童貞「男……」スタッ


男&闇男「!」ピクッ

男「……童貞?」ポロポロ

闇男「なぜ、お前がここにいる!?」


童貞「私は男の『童貞』だもの。心はいつだって男と繋がってる……」テクテク

ギュッ

男「あ……」ポロポロ

童貞「思い出したんだね……『あの夢』の記憶……」ギュウウウ

男「……」ポロポロ

男「俺……あの子を守る事が出来なかった……幸せにする事が出来なかった……」 ポロポロ

童貞「……」ギュウウウ

童貞「」ドクン……ドクン……

幼馴染『私は……幸せだよ?』 ドクン……ドクン……

男「……!?」ポロポロ

幼馴染『あなたがずっと大切にしてきた『童貞』になれたのだから……』 ギュウウウ


幼馴染『大好きなあなたと……一つになれたのだから……』ギュウウウ


男「うぅ……」ポロポロ

幼馴染『嬉しい……何よりも嬉しいよ ……男……』ギュウウウ

幼馴染『だから……もう泣かないで』

幼馴染『悲しまないで……私に笑顔を見せて……?』

幼馴染『大好きだよ……』ギュウウウ

男「幼馴染……」ポロポロ

男「ありがとう…………ありがとう……」 ギュウウウ


パァアアア……


闇男「ぐっ……!?」パァアアア

闇男「なんだこの『光』は……!?」 パァアアア

闇男「オレの……存在が……消されていく……!」 パァアアア


幼馴染『それから……おめでとう、男』

幼馴染『小さい頃から憧れてた本当の魔法使いになれたんだね……』

男「……」コクッ

幼馴染『悪者から……守ってね?』クスッ

幼馴染『あなたを待つ人達を……そして、あなたの大切な『童貞』を……』 ニコッ

男「あぁ、約束するっ……!」ゴシゴシ

幼馴染『ふふ……頑張ってね、男……』 ドクン……ドクン……

幼馴染『私の愛する男……』 ドクン……ドクン……

男「幼馴染!?」バッ

幼馴染『心配しないで……私は……いつでも……あなたの中に……』 ドクン……ドクン……


童貞「」ドクン……ドクン……

男「……」ギュウウウ

童貞「ん……」ギュウウウ


童貞「……大丈夫?」

男「うん……ありがとう……」スッ

男「……」

男「おっさん……俺、前に進むよ……」

男「この『魔法』の力で……皆を絶望から守ってみせる!」パァアアア

男「童貞を……守ってみせるっ!」 パァアアア


闇男「や……めろぉお……おおおッ!」 パァアアア

闇男「『魔法』の力は……オレのモノだッ……この世界は……オレの──」

パァアアアッ!

闇男「ぐがぁああああああ──」 バシュンッ!


男「さぁ、行こう! 童貞!」

童貞「うんっ!」

なかなか更新できなくてすいませんorz
保守してもらえて本当に嬉しいです!ありがとうございます



─地下道─

男「うぉおおおおッ!!!」 ゴゴゴゴゴゴ

男「この……野郎……ッ!」 ゴゴゴゴゴゴ

女7「むっ!?」


男「邪魔……だ……!」ゴゴゴゴゴゴ






男「闇(てめぇ)は邪魔だッ! どけぇええええええッ!!!」バシュウッ!


パァアアア……


男「はぁ……はぁ……」パァアアア


女8「うぉっ!?……まぶしっ!」

女7「ぐぅっ!」


女「……」

女「あったかい……」

女「まるで……太陽の……光……」

女「闇を照らす……希望の……光……」

女「男…………男ぉ…………」ポロポロ


女「」ガクッ


男「はぁ……はぁ……待たせたな、童貞! 女!」 パァアアア

童貞「あああ……男……」ポロポロ

男「心配かけてごめんな……だけど、もう大丈夫だ!」 ギュウウウ

童貞「良かった……本当に良かった……」 ギュウウウ

パァアアア

女8「邪悪な『気』が消えたかと思えば……今度は何なんだよ、クソッ!」

女7「なんと美しい『気』だ……」 ブルブル

女7「これも……『あの方』と同じ『魔法』の力なのか……?」ブルブル

女8「あ"ぁっ!?『魔法』ッ!? 」


男「童貞、さがっていてくれ!」

童貞「うん!」スッ

男「ハァアアア……」パァアアア



─童貞界─


童帝「……」ブルッ

童帝「男め……やりおったな……」
ブルブルッ

童帝「嬉しいぞ……さすが、わしの見込んだ『童貞』よッ!」フォッフオッフォ!

秘書「すごい……」ゴクッ

童帝「全盛期のわしをも軽く凌ぐであろう逸材じゃ!」フォッフオッフォ

秘書「……ですが、童帝!」

秘書「男は肝心な『魔法の使い方』を存じているのでしょうか!?」

童帝「問題無い。 魔力相伝の際に、男の脳内に直接記憶させておる! ついでに身体能力の向上もバッチリじゃ!」

秘書「ならば安心ですね」ホッ

童帝「あの『童貞狩り』共……きっと
腰を抜かすぞい」フォッフオッフォ

秘書「えぇ、間違いないでしょう」クスッ



─地下道─


女8「……………」


女7「……………」


二人の『童貞狩り』は、まるで時が止まってしまったかのように唖然としていた。


女8「……………………」


女7「……………………」


男が突如取り始めた異常な行動を目の当たりにして……









シコシコシコシコ……シコシコシコシコ……











男「ハァアアア……!」シコシコシコシコ……



女8「……なぁ、クソガキ」

女7「……」

女8「ウチらも随分とナメられたもんだな」

女7「……」

女8「ケタ外れの『気』を放ってビビらせてきた後に見せ付けているのが──」


女8「まさかの公開オ○ニーだぜ……?」 プルプル

女7「……」

女8「こんな屈辱……生まれて初めてだよ……」プルプル


女8「ふざけんな……」ズズズズズ……







女8「ふっざけんなァアアアアアアアアアッ!!!」ズズズズズ……






女7「ぐっ!」ビリビリビリビリ


女8「ぶッ……殺すッ!!!」 タッタッタッ


女7「待てっ! 女8!」




男「静かにしろい…」シコシコシコシコ……

男「お前の顔……お前の声……」 シコシコシコシコ……

男「全てが勃ち(たち)を悪くするんだよ……」 シコシコシコシコシコシコシコシコ

男「それに比べて──」クルッ


童貞「男……頑張って……!」グッ


男「童貞……お前の可愛さはっ……」 シコシコシコシコ

男「どんなに萎れても蘇らせてくれる……何度でもよっ!」 シコシコ……ビクンッ!



女8「死ねぇええええええッ!!!」 バッ!



男「『右手』が導く射精は悪を射抜く魔法となる」 シコ……シコ……


女8「もらったァアアアッ!!!」ブンッ


男「『童貞狩り』よ……」シコ……




男「これが……『光』だっ!!!」 ビクンッビクンッ




キュイイイン……

女8「!?」






男「『波童砲』ォオオッ!」 カッ!





マスターベーションの快感が絶頂に達したその時、男の陰茎から白濁した巨大な閃光が放たれた


スドォオオオオオオン!


女8「ぐわぁああああああッ!!!」



ズザザザザザッ! ドサッ!

女8「あ…………が…………」ピクピク


女7「な……なんだ今のは……!?」




男「ふぅ……」ガクッ



男(な……なんて疲労感だ……)ハァ ハァ

男(気軽に何度も撃てるシロモノじゃないな……)ハァ ハァ

男(……)ハァ ハァ

男(残りの体力や精力を考えると……今日撃てる魔法は、あと二発が限界だろう……)フゥ



男(よし! 次は……!)バッ



男「女っ! 今助けてやるからな!」 タッタッタッ


女7(来るか……!)チャキッ


男「うおぉおおお!!!」シコシコシコシコ

男「今度は……『左手』だ!」シコシコ タッタッタッ


女7(『左手』!? 先程とはまた別の魔法が発動するとでも言うのか!?)

女7(チッ! 何が飛んでくるのか全く予想できぬ!)バッ

未知の魔法を警戒し、女7は後方へと長く距離を取った


男「へっ!」ニヤリ

男「次の魔法の対象は……お前じゃねーんだよっ!」 シコシコ……ビクッ!


女7「何だと!?」



女「」ピクピク

男「女……悪いけど少しだけ辛抱してくれ」シコ……シコ……

男「『左手』が導く射精は癒やらしの回復魔法となる」シコ……




男「『フェイスフラッシュ』!」ビクン ビクン




ドピュッ ドピュッ!



男は黄金のように輝く精液を、女の顔へ満遍なくぶちまけた



女「」ポタッ……ポタッ……


女「」パァアアア

女「ん……」パァアアア

女「あれ……?」パァアアア

女「!」ムクッ

女「ウソ……全身の傷が……完治している……!?」


童貞「やった! 女さんっ! 」


男「ふぅ……」ハァ ハァ

男「間一髪だったぜ……!」ハァハァ



女7「ば、馬鹿なッ!?」


男「立てるか?」グイッ

女「男……あんたが私を──」スタッ

女「って、いつまで下半身丸出しにしてるのよッ!?」///

男「あ、いや、これには深い理由があってだな……」


女「……ん?」ドロッ

女「あら、顔に何かついてる──」スッ

女「……!」ベトッ

女「……」

女「……」クンクン

男「あはは……えっと…………」 オドオド



女「ねぇ、男……」プルプル

男「は、はい」ビクッ

女「私の顔についてる『これ』と、あんたが下半身丸出しのままっていうのは何か関係があるのかしら……?」 プルプル

男「そ、それはだな……お前を救うためにやむを得ずに使った魔法であって……その……」 オドオド



男「ごめんなさい、俺がかけました」

女「そっか」ニコッ



女「この……変態ッ!」ブンッ!

ドクシャアアア!

男「」ピクピク

女「ったく……」/// フキフキ


女(でも……ありがとね……男……)



男「いてて……」


男「……」クスッ

男「それだけ元気があるなら……まだ行けるよな?」


女「!」


男「お前、さっきまで諦めムード全開だったろ?」クスクス

女「うっ……」ドキッ

男「女……」スタッ

男「何があっても俺は絶対に諦めない!」

男「だから……お前も俺のそばにいる時は絶対に諦めるなっ!」


女「男……」


女(そんな事……嫌という程わかっていたハズなのに……)

女(まだまだ未熟だなぁ……私……)

女(いっつも口先ばかり一丁前で……)

女(もっと強くならなくちゃ……!)


女「ごめんね……男、童貞ちゃん、それに女4……」

女「約束するから……」

女「今度こそ……もう、二度と諦めない! どんなに強大な闇が心を揺さぶろうとも……!」


女「さ、仕切り直しよ! 女7」スッ

女7「フン……」チャキッ

女「汚名返上っ! 絶対にあんたを倒すっ!」ズズズズズ……


女7(首領が恐れていた童貞の『覚醒』とは『魔法』の事だったか……)

女7(これで、男が連れていたあの小娘も『作品』という事が確定になったな)

女7「ククク……ハッハッハッハッハッ」




女7「ハッハッハッハッハッ!!!」 ズズズズズ……



女「くっ! なんて『気』……!」 ビリビリ

男「うおっ!?」ビリビリ

童貞「うっ!」ビリビリ


女7「面白い……三人まとめてかかってこい……」ズズズズズ……

女7「同じ『作品』として……魔剣『無垢』も嬉々として血を欲しているぞ!?」 ズズズズズ……



女8「……待てや……ゴルァ……」ボソッ

女7「!」

女8「勝手に……人の獲物を横取りしてんじゃねーぞ……!」グググッ


童貞「そんな……魔法が直撃したはずなのに、まだ立ち上がれるなんて!」

男「ははっ、流石に隊長クラスは伊達じゃねーな……」ゴクッ


女7「フンッ、大人しく寝ていろ。 もはや貴様は戦える状態ではない」

女8「あ"ぁ!? ……ナメんじゃねぇぞクソガキ……」 ガクガク

女7「無駄死にするつもりか?」

女8「うるせぇ……」ズズズ……


女8「まだまだ……アゲアゲだっつーのッ!!!」 ズズズズズ……


女7「ほう……」ビリビリ

女8「おい……クソ猿……」ハァ ハァ

男「……」

女8「第二ラウンドといこうじゃねーか……!」ニヤッ

男「……あぁ……望むところだ」ニヤッ


女「それじゃ、そっちは任せたわよ!」

男「おう!」


女7「ククッ、貴様一人で大丈夫なのか?」

女「余裕」スッ

女7「ハッハッハッ! 先程まで絶望に怯え震えていた子犬が良く言えたものよ」チャキッ

女7「次は泣き言を垂れる暇も与えぬ──」


ドゴォッ!


女7「うっ……!?」メキメキ

数メートル先から一瞬で間合いを詰めた女の拳が、女7の"みぞおち"へと深く食い込み──


女「口ばっか動かしてんじゃないわよっ!」 ブンッ


女7「……!」 バキィッ!


続いて、流れるように放たれた回し蹴りが頭部に重く響いた


ズザザザザザッ!



女7「……」スタッ

女7「ふむ……見事なまでに速く、そして美しいコンビネーションだ」ニヤリ


女「けど、ダメージは無し……って顔ね」

女「痩せ我慢なら今のうちにやめときなさいよ?」ズズズズズ……

女「もっともっと強烈な打撃を叩き込まれるだけなんだからっ!」シュタッ

女7「!」

女「守童拳奥義──」スッ




女「『走狼・挿入撃(そうろう・そうにゅうげき)』ッ!!」バババババッ




女7「ぬぅ……!」ドカッ バキッ ボコッ

女「ハァアアアアアアッ!」 バババババッ

女「あんたがッ!」バババババッ

女7「……」ドカッ バキッ ボコッ

女「泣くまでッ!」バババババッ

女7「……」ドカッ バキッ ボコッ

女「殴るのをやめないッ!」 バババババッ

女7「……」ドカッ バキッ ボコッ


女7「……」ニヤッ

女「っ!?」ゾクッ




ザンッ───





不意に放たれた女7の斬撃は──


女(ウソでしょっ!?)バッ


僅かに女の頬をかすめた


女「くっ!」ピッ

女7「ほう、確実に捉えたつもりだったが……良い反応だ」 クスクス


女「はっ……はっ……」ドクン ドクン

女(危なかった……あとコンマ数秒反応が遅れていたら真っ二つにされていたわ……!)ドクン ドクン


女(いや……それよりも……)

女(どうして打撃が効かないのよッ!?)


女(私の乱打を受けていた最中に、よろめきすらなく反撃を仕掛けてくるなんて……!)


女「はっ……はっ……」ドクン ドクン

女7「ククッ、どうした? 随分と息が上がっているではないか」クスクス

女「う、うるさいわねっ!」ハァ ハァ


女(落ち着け……絶対に何らかのカラクリがあるはずよ)フゥ……

女(一番に考えられるのは防御系の能力を持った『気』を纏っているという事)

女(──なんだけど、彼女の体からは『気』が感じられない……)

女(唯一『気』を放っているのは、彼女が持つ、あの魔剣『無垢』……)

女(……よしっ!)スッ


女7「さて……そろそろ我も本気で舞うとしよう」

女7(……流石にこれ以上の打撃は『肉体』が持たんからな……)

女7(……楽しませてもらうぞ?『貴様』の剣術で……)ククク……


女7「ふぅ」チャキッ

女(……来いっ)


女7「誅弐堕天流(ちゅうにだてんりゅう)──」

女7「『邪影ノ太刀』!」シュバッ


女「ハッ! どんな技だろうと正面から私に向かってくるのは──」

女「自殺行為よッ!」シュバッ

女7「!?」ドゴォッ

高速で切り込んできた女7より遥かに速く、女は正拳突きを打ち込んだ

女「残念ねっ!」クスッ


──が、しかし


女7「……」ニヤッ

バシュンッ!

女「──消えた!?」

女7「そいつは残像だ」クスッ

女「なっ!? 本物は──」


女7「死ねぇえええッ!!!」ブンッ

女「上っ!?」バッ

慌てて声と殺気が響く頭上を見上げたが、既に魔剣は女の頭頂に触れる寸前にまで振り下ろされていた

女(……ダメだ……かわせない……!)



女(──って、かわすつもりなんて無いんだけどね)ニヤリ

バッ

女は軽く屈み、斬撃を防ごうと即座に左腕を頭上へ構える

女7(バカめ! そんな華奢な腕一本が何になるッ!)ブォンッ


ガッキィイイイン!


女7「──ッ!?」 ビリビリ

女の左腕は……まるで、鋼鉄の如く硬くなっていた


女7「なん……だと……!?」

女「ふふっ、どう? 自分の技が通用しない気分は」ズズズ……

女7「貴様ァ……ッ!」ギリッ


女(守童拳・練気法『勃気(ぼっき)』!)

女(持てる全ての『気』を腕へ凝縮し、ギンギンに硬化させる防御術っ)

女(そして、さらに『勃気』を発動させたまま拳を放つと──) キュイイイン……


女「次の一撃……とっても痛いわよ?」 スッ

女「宙にいるあんたに避けるという選択肢は無いっ!」


女「守童拳奥義──」



女「『地狼・挿入撃』(ちろう・そうにゅうげき)ッ!」ズバッ




女7(チィッ! 『肉体』よ、耐えろっ!)

女7(……いや、奴の拳が狙ってきているのは……魔剣ッ……!?)

女「砕けちれぇえええっ!」

ガキィイイイイイイン!

女7「うぉおおおおおおおッ!」 ズザザザザザ!


女7「ぐっ……!」 ムクッ

ピシッ! ピシピシッ!

女7「 ッ!? 魔剣にヒビが……!」

女「はぁ……はぁ……」

女(完全に砕けなかったか……でも、これで彼女の状態に何か変化があればいいんだけど……)ハァ ハァ


女7「許さん……許さんぞ、貴様……!」 ズズズズズ……


女7「誅弐堕天流──」スッ


女7「『影己(かげみ)』ッ!」 ズズズズズ……


女「!」

女7「ククク」 「ククク」 「ククク」 ズズズズズ……

女(なっ…… 女7が三人に!?)


女7「我らは舞う……貴様を闇の深淵へと誘(いざな)う為に……」 ズズズズズ……

女7「共に踊れ、女──」チャキッ



女7「「「邪影殺陣燕舞ッ」」」シュバッ シュバッ シュバッ



三体に分身した女7が一斉に女へ襲いかかった


女(これは厄介ねっ……)

女(どうせ一体が本物で、残りはさっきと同じ 残像なんだろうけど──)

女7「「「ハァッ!」」」ヒュンッ

女(こんなに高速で同時攻撃を繰り出されたら──)スッ スッ

女7「「「死ねッ!」」」ヒュンッ

女(避けるだけで精一杯だわっ……!) スッ スッ スッ

女(いや──)

女7「フンッ!」ヒュンッ

ズバッ!

女「うっ……!」プシュッ

女7「ハッハッハッ!」ヒュンッ ヒュンッ

ズバッ ズバッ

女(避けるのも……厳しいっ……!) プシュッ


女7「クハハッ! なかなか華麗な踊りっぷりだぞ、女!」ヒュンッ ヒュンッ

女「あぅっ……!」ズバッ ズバッ

女(……せめて……どいつが本物かさえわかれば……!)

女「このぉおおおッ!」ブンッ

女7「……!」ドゴッ

女7「残像だ」 ニヤリ バシュンッ!

女「くっ!」スタッ

女7「スキありッ!」ヒュンッ


ザンッ────


女「あ"」プシュウウウ

反撃直後、一瞬だけ動きを止めてしまった女は背後から深い斬撃を受けた

女「……あああ……あ……」ドサッ



女8「!」チラッ

男「……」

女8「ギャハハ! かなりピンチみたいだぜぇ? テメェの大事なお仲間さんはよォ?」クスクス

男「……」

女8「見てみろよ、あのクソアマのやられっぷり! マジ超ダサすぎっしょ!」 ゲラゲラ

男「おい」

女8「あ"ぁ?」

男「どこ見てんだよ」

女8「!」

男「お前の相手は俺だろ? それとも、一緒に仲良くあいつらの試合観戦でもするか?」

女8「テメェ……!」ギリッ

男「俺は女を信じている。 あいつは絶対に負けない」

男「そして、俺も絶対に負けない。 お前みたいなゴリラ野郎にはな」 シコシコ……


女「うっ……あぁ……」ドクドク

童貞「女さんっ!!!」タッタッタッ

女「……来ちゃ……ダメ……」ガクガク

童貞「!」

女「心配しないで……私は……絶対に負けないからっ……!」グクグッ

女7「ほう、まだ立てるのか」クスッ

女「バーカ……なめんじゃないわよっ……!」 ガクガク

女7「ククク……」チャキッ

女7「手負いとて容赦はせんぞ?」 ズズズズズ……

女7「『影己』」ズズズズズ……

女(くっ……!)

女7「「「さらばだッ!」」」チャキッ


女7「「「邪影殺陣燕舞ッ」」」シュバッ シュバッ シュバッ



女7「「「ハッ!」」」ヒュンッ ヒュンッ

女「うぅ……」ズバッ ズバッ

女7「ククク、どうした!? 回避にキレを感じないぞ!?」ヒュンッ ヒュンッ

女「あぁっ……!」ズバッ ズバッ



女(……絶対に……諦めないんだからっ……!) ズバッ ズバッ

女(こんなところで……私は終われないのよっ……!)ズバッ ズバッ






『助けて……』






女「!?」

女(なに? ……今の声……)



『怖いよ……』


『真っ暗で……一人ぼっちで……』


『お願い……助けて……』


『誰か……助けてぇええっ……!』



女(……!)

女(……そっか……そういう事だったのね……)


女「許さないッ……!」 ズズズズズ……

女7「!」


女7「フン、来るなら来い」ヒュンッ ヒュンッ

女「……」スッ スッ

女7「だが……次に残像を打った時が貴様の最期だッ!」ヒュンッ ヒュンッ

女「大丈夫。 もう、外さないから──」 スッ スッ

シュバッ

女7「!?」

女「あんたでしょっ!? 本物は!」 ブンッ

女7「何ィッ!?」

ドゴォッ

女7「ぐおっ……!」ズザザザザザッ!


本体に打撃が入り、『影己』は解除された


女7「何故だ…… 」ムクッ

女7「何故、真の我を捉える事が出来たのだッ!?」


女「本物だけ魔剣のヒビから漏れていたのよ──」

女「そこに閉じ込められている『魂』の叫び声がねっ!」


女7「!!!」


女「そして……まさか『魔剣』が『持ち主』を操っていたとは予想外だったわ」

女7「……ククク……」クスッ

女「そりゃ私の打撃をいくら受けても平気なわけよね……『あんた』自身は痛みを感じないんだから」

女7「ハッハッハッ……」

女「この卑怯者っ……年端の行かない少女の肉体を弄んで……!」ギリッ

女7「アーハッハッハッハッハッ!」

女「覚悟しなさい、女7」

女「──いや、魔剣『無垢』!」 ズズズズズ……


女7「今更気付いた所で貴様に勝機など無いッ!」チャキッ

女「……絶対に助け出してみせるから……もう少し待っててねっ!」スッ


女(魔剣を完全に砕く為には、もう、最強の奥義『天牙』を叩き込むしかない!)

女(でも……あの技は発動までに少しだけ時間がかかるし……)

女(ただでさえ素早い彼女の魔剣をピンポイントで突くのは正直、厳しいわ……)

女(ほんの一瞬でもいいから……何か彼女の動きを封じる手段があれば……)


女(……動きを……)


女(……封じる……)




女4『うふふ、【束縛のフェロモン】で貴女の動きは封じさせてもらったわ♪』





女(……)ピクッ


女(女4……)チラッ

女4「」

女(ごめんなさい……)


女「……あなたの力……少しだけ借りるね……」ズズズズズ……


女7「フン、何を企んでいるのかしらんが……」

女7「もはや貴様には我の一太刀をかわす力もなかろうッ!」 シュバッ



女(思い出せ……あの感覚をっ……!) ズズズズズ……





女(私が『束縛』された時のフェロモンの感覚をっ……!)ズニュルルル……


女(女4が放った包容力溢れる『気』の感覚を……!)ズニャラララ……


女(くぅ……!)ホニャラララ……

女(違うっ……こんな不細工な『気』じゃないっ……!) ホニャアアア……

女(もっと……もっと美しさをっ……) ホワワワワワ……


ホワ……


女(!)ホワァ……


女(これだっ!!!)ホワァ……


女7「死ねぇえええッ!」ブォンッ


女「『束縛のフェロモン』っ!」 ホワァ……


女7「なッ……!?」ピタリッ

女7「体が……動かんッ……!」 グクグッ

女7「貴様ァッ!!! 何故、その技をッ……!?」 グクグッ


女「本当にごめんね……女4」

女7「だが……こんな即席の猿真似などッ──」 グクグッ

女「あなたの十八番を汚すような真似をして……」キュイイイン……

女7「通用するものかァッ!」バッ

女「ふふ、あんな美し過ぎる技を完璧に再現なんて出来るわけないじゃない」 キュイイイン……

女「それでも……私にとっては充分な『一瞬』だったわ」 シュバッ

女7「小賢しいッ!」ブォンッ



女(見て……女4……)

女(あなたが守ってくれた守童拳……)

女(今までで一番……一番、輝いてるよ……!)





女「守童拳奥義『天牙』!」 カッ!





女7「!!!」




ズドォオオオオオンッ!






美しき純白の『気』を纏った女の拳は──


女7「バ……カ…………な…………」

ピシピシ……

女7「この…………私が…………」

ピシピシ……ピシピシピシピシッ!

女7「ぐわぁああああああッ!!!」

パリンッ


ついに忌まわしき魔剣を粉々に砕いた


女「はぁ……はぁ……」ガクガク

女「倒……した……?」ガクガク

女「……やった……」ポロポロ

女「やったよ……女4……」ポロポロ



魔剣に封じ込められていた少女の魂は肉体へと戻っていった


少女「……」ピクッ

少女「げほっ……げほっ!」

女「!」

女「大丈夫!?」バッ

少女「ここは……?」ハァ ハァ

女「ごめんね……もっと早く私が魔剣の正体を掴めていたら、肉体を傷つけずにすんだのに……」 ギュウウウ

少女「……そっか……私、あの剣に操られていたんですね……」 ハァ ハァ

少女「……」ハァ ハァ

少女「ずっと……ずっと怖かったんです……周りは真っ暗で……一人ぼっちで……」ガクガク

少女「……いつも人の悲鳴だけが耳に響いてきて……ずっと……怖かった……」 ポロポロ

少女「助けてくれて……本当にありがとうございます……」ポロポロ

少女「……げほっ……ごほっ……!」 ドバッ

女「いけないっ! 今のうちに少しでも応急処置をしなきゃっ……!」


童貞「私も手伝います!」タッタッタッ

女「ありがとう童貞ちゃ──」ズキッ

女「うぅ……」ガクッ

童貞「女さんっ!?」

女「だ、大丈夫……この位の傷なんて平気よ……」ハァ ハァ


魔剣「クク……無様なものよ」


女「 !? あんた、まだっ……!」バッ

魔剣「我如きに深手を負わされるようでは……これから更に立ち塞がる強大な『闇』には到底、太刀打ち出来まい」 クックック

女「うるさいわね」

女「私はまだまだ強くなる……守るべき皆の為に……この世界の未来の為にっ……!」

魔剣「……」

魔剣「……フッ」クスッ

魔剣「……『最高傑作』とは……案外、貴様のほうなのかもしれないな……」

女「……どういう意味よ?」


魔剣「ククク……いずれ、嫌でも知る事になるだろう……」

魔剣「その日まで……せいぜい……足掻いて……み……せ……ろ……」

魔剣「」


女「ふんっ……」

女(さっきから『作品』だの『最高傑作』だの何わけのわかんない事言ってんのよっ!?)


女「──っと、そんな事より彼女を!」

少女「げほっ……!」ハァ ハァ



女8「ぶるぁあああッ!」ブンッ

男「!」スッ

女8「クソがッ! ちょこまか動きやがってッ!」ブンッ ブンッ

男(見える……)スッ スッ

男(既にゴリラ野郎が弱っているのもあるんだろうが……)

男(おっさんが俺を強くしてくれたのがハッキリとわかる!)ブンッ

女8「ぐはッ!」ドコォッ!

女8「……クソがッ……さっきまでの蚊が刺すようなパンチとは全然違うじゃねーかッ……!」 ペッ

男「もうやめろ……勝負はついてるようなモンだ」

女8「あ"ぁッ!?」 ブチッ

女8「ざけんなァッ!」ブンッ

男「……」スッ

女8「負けられないんだよッ……」

女8「私をバカにする『オトコ』にゃ……絶対に負けられないんだよォッ!!!」



ギャハハハ……


ギャル『……』


『なんだよ、あの化物!』 ギャハハハハ


ギャル『……』


『ゴリラが派手なメイクなんてやってんじゃねーよ!』 ギャハハハハ


ギャル『……』


『テメーが色気づいたところでオトコが寄ってくるとでも思ってんのか!?』 ギャハハハハ


ギャル『……』


『つーか、あいつ自身がオトコだろ!? あのガタイならチ○コ付いてんじゃね!?』 ギャハハハハ


ギャル『……』ポロポロ





いつだってそう……






全ての『オトコ』は私を見下し、嘲笑う






誰も私を……『オンナ』として見てくれないんだ……








女8(私が『童貞狩り』に入ったのは復讐の為ッ……!) ブンッ ブンッ

男「……」スッ スッ


女8(テメェらが『オンナ』と認めてくれないなら──) ブォンッ!

男「うおっ!?」スッ


女8(私だってテメェらを『オトコ』だなんて認めねぇッ……!) ズズズズズ……

男「!」


女8「だからッ……力でねじ伏せ、力で犯すッ!」 バッ

女8「アゲハ神拳奥義──」



女8「『トルネード花魁アッパー』ァアアアアアアッ!!!」ズバッ




ドグシャアアアッ!

男「ぐはッ……!」ズザザザザザッ

ドサッ

男「……」


女8「ハッ!……ザマァみやがれクソザル……!」 ハァ ハァ

女8「ダッセェよなァ……『オンナ』に力負けする『オトコ』なんて『オトコ』失格だぜ?」 クスクス

男「……」

女8「だいたい、テメェみてぇな『オンナ』を知らない童貞野郎に、私を蔑む権利なんてねーんだよッ!」 ハァ ハァ


男「……ははっ……」ムクッ

女8「なッ!?」

男「お前が何を考えてんのか知らないけどな──」 ググッ

女8「モロに直撃しただろうがッ……!」

男「俺は……俺は一度も自分を『オトコ』らしいなんて思った事は無いぞ?」 スタッ

女8「!?」


男「二人っきりのベッドから逃げ出して……何が『オトコ』だ……」

女8「あ"ぁ?」


男「大切な『オンナ』を守れないで……何が『オトコ』だっ……!」 ギリッ

女8(な、なに言ってんだコイツ……)


男「そうさ……俺はお前の言うとおり、ただのダセェ童貞野郎だ! 『オトコ』失格のクソザルだっ!」

女8「……」


男「……けどな……そんな自分を悲観してるヒマなんて無いんだよっ!」

女8「!!!」

男「俺は……もう、前しか見えねぇ」 シュバッ

女8「あ……あ……」プルプル


男「前しか……見てねぇッ!!!」 ブンッ


ドグシャアアアッ!




女8(…………なんだよ…………クソザル…………)



女8(…………テメェ…………)





女8(…………最高に…………イケてんじゃん…………)





ドサッ




女8(…………あぁ…………マジで…………超……ムカツク…………) クスッ




女8「……」ハァ ハァ

女8「……さっさと……トドメ刺せや……」 ハァ ハァ

男「……『右手』」スッ

シコシコシコシコ

女8(……ケッ……ここまでか……)

女8(結局……最後の最後まで『オトコ』にナメられたまま人生を終えるっつーね……)

女8(……チョベリバ過ぎんぜ……まったく……)


男「ハァアアア」シコシコシコシコ

女8(なぁ……神様……)

男「アアアッ……!」シコシコシコシコ

女8(今度生まれてくる時は……)

男「──う"っ!」 ビクンッ!


女8(もっと……『オンナ』らしいルックスにしてくれよな……) クスッ





男「おっと……!」ピタッ


女8「!?」

女8(……寸……止め……?)


男「今のは危なかったぜ……」クスッ

女8「おい……」プルプル

男「……」

女8「そりゃ何のマネだよ……」プルプル

男「……もう、お前に魔法は撃てない」

女8「」ブチッ



女8「ふざけんなテメェエエエッ!!!」




女8「情けをかけてるつもりかッ……!?」 ギリッ

女8「んなモンいらねぇんだよッ!!! さっさと殺せやゴルァッ!!!」

男「勘違いすんな」

女8「あ"ぁッ!?」

男「体力的に考えて、俺が今日撃てる魔法は残り一発が限界だろう」

男「それを、お前に撃ち込んでる場合じゃなかった……怪我してる女達の回復に使わないといけない」

女8「……」ギリッ

男「──と、フィニッシュ寸前に気づいたワケよ」クスッ

女8「だったら……テメェの拳で思う存分ボコってこいよッ!!!」

男「……」


男「……」テクテク

女8「シカトすんじゃねぇッ!!」

女8「ここで私を生かしておくと後悔すんぞゴルァッ!?」

男「……今回は引き分けだ」

女8「なんだと!?」

男「次に会った時……第三ラウンドで決着をつけようぜ」ニヤッ

女8「!」

男「それと……」



男「ゴリラ野郎なんて言って悪かった。 ごめんな」



女8「──え?」ドクン……


男「お前、名前は?」

女8「…………ギャル」ボソッ

男「そっか」

男「今度は『童貞狩りの女8』じゃなくて、『ギャル』としてのお前と戦いたいもんだ」クスッ

女8「……」ドクン ドクン

男「じゃあな」テクテク


女8「……とんだ甘ちゃんだな……テメェって奴は……」 ドクン ドクン

女8「首を洗って待ってやがれ……」 ドクン ドクン



女8「たとえ地の果てだろうと……必ずテメェをとっ捕まえてブチ殺してやるッ……!」

男「上等だ」クスッ


男「……言っとくが、俺は『オンナ』でも容赦しないからな? 楽しみに待ってるぜ!」 テクテク


女8「!!!」




女8(……いちいちムカつく野郎だ……)プルプル



女8(……今更……『オンナ』扱いしてんじゃねーよ……ふざけやがって……) ポロポロ



女8「うぅ…………」ポロポロ



女8「うあ……あああ…………」ポロポロ





ギャル「あ"ぁああああああ…………」 ポロポロ






その後、男は『フェイスフラッシュ』を少女達に少量ずつ放ち回復させ

女は丁重に女4を埋葬した


男「よし、行こう!」

童貞「うん!」

女「えぇ!」

少女「はい!」



様々な思いを胸に、四人は地下道を後にした




ギャル「……」


男達が去った後も、ギャルは仰向けのまま天井を見つめていた


ギャル「何だろう……これ……」

ギャル「ムカつくのに……悔しいのに……」

ギャル「すっげぇ……清々しい気分だ……」クスッ


ザッザッザッ


ギャル「!」ピクッ

女36547「──隊長!?」ザッ

女26535「た、隊長! その怪我は!?」

女47852「おい、皆! 隊長がいたぞ!」

ざわざわ…… ざわざわ……

ギャル「……」


女36547「隊長! 一体、何があったのですか!?」

女36547「地下道の入り口には女4隊長の遺体が──」

女36547「そして……そこに散らばるのは……女7隊長の魔剣……!?」チラッ

ギャル「ククッ……」

女71132「隊長!?」

ギャル「おい、女36547」

女36547「は、はい!」

ギャル「これからギャル部隊の隊長はお前がやれ」

女36547「…………は?」

ギャル「私は『童貞狩り』を辞める」

ギャル部隊隊員一同「!?」


ざわざわ……

女36547「なッ……何を突然ッ……!」

女53269「隊長ッ! 本気で仰られているのですかッ!?」

ギャル「あーあー、うるせぇうるせぇ!」

ギャル「マジに決まってんだろうがッ! わかったならとっととアジトに帰りやがれっつーの!」

女63244「そ……そんな!? どうしてっ!?」

ギャル「んー、めんどいから」


女36547「……フハ」クスッ

女36547「ハハハハハ……」

女36547「ハッハッハッハッハッ!」


女36547「ふざけるなッ!!!」




女36547「貴様ァ……そんな勝手な事が許されると思っているのかッ!?」 ズズズズズ……

ギャル「ギャハハ! マジギレしてるし! コイツ超ウケる!」 ゲラゲラ

女36547「……」ギリッ


女74514「……なんかウザくね?」

女83336「あぁ……もう皆で殺っちまわねーか?」

女22481「私ら以外誰も見てないしね」

女59127「こいつも女4隊長らと同じように、何者かに襲撃されたって事にしようや」

女13626「賛成賛成っ! さっさとブチ殺そうよこんなクソゴリラ! 」


女36547「あぁ、私もそのつもりだ」 ズズズズズ……

ギャル「ケッ! 雑魚共がこぞってイキがってんじゃねーぞゴルァッ!?」

女36547「フハハ! その『雑魚共』が何人集まっているのかわかっているのか?」 クスクス

女46821「今、この場にいる隊員はおよそ30人」 クスクス

女74125「それに対し、お前は既にボロ雑巾状態」 クスクス

女36547「勝算など欠片も無いぞ?」 クスクス

女36547「……今まで貴様に与えられ続けた理不尽な仕打ちで溜まった恨みも……ここで全て晴らしてやるッ!」 ハッハッハッ

ギャル「ギャハハ……」 ムクッ



ギャル「ナメんな」 ズズズズズ……



女36547「!」ゾクッ



ギャル(……あぁ……だっる……) ズズズズズ……


ギャル(……実際、これは紛れもなく絶体絶命のピンチなワケだけど……) ズズズズズ……


ギャル(あいつを……男を殺すまでは──) ズズズズズ……



ギャル「絶対に死ねないんだよォオオオッ!!!」 バッ



女36547「来たぞ! 皆、かかれッ!」 バッ

ギャル部隊隊員一同「うぉおおおッ!」 バッ




ギャル(……だから……さ…………)



ギャル(……テメェも……私にブチ殺されるその日まで…………)



ギャル(絶対に……絶対に、くたばんじゃねーぞ…………)




ギャル(……お……と──)











グシャッ

>>460訂正ですorz


× 女4

○ 女4の頭部


テクテク

女「……男」

男「ん?」

女「女8……あのままでよかったの? きっと、いつかまた──」

男「あぁ、いいんだ」

男(……)

男(ギャルの最後の一撃……拳にこもっていたのはドス黒い殺気じゃなく──)

男(とてつもなく深い悲しみだった……)

男「『童貞狩り』にも色んな奴がいるもんだな……」

女「?」

男「ま、今度会った時は徹底的にやっつけてやるからよ!」

男「そして、アイツにはもう二度と暴力を振るわせないようにする!」

男「もっと『オンナ』らしく生きさせてやるんだ!」ニコニコ

童貞「……」クスッ

女「はぁ……相変わらずのお人好しっぷりね」クスッ


─地下道・出口─

男「うひょおおお! 久し振りの外の空気は美味いなぁ!」 ニコニコ

童貞「うん! それに、もうすぐ夜明けって感じだね!」 ニコニコ

女「ふぅ……随分と長く感じた夜だったわね」クスッ

少女(あれ?……この辺りって……) ピクッ


男「とりあえず、これからどうする?」

女「そうね……まずは、この近くにあるピンサロタウンに行ってみない?」

少女「!」ピクッ

男「ピンサロタウン?」

女「えぇ、そういう名の小さな町があるのよ」

女「もし、そこで『童貞狩り』が徘徊していないなら、こっそり一泊休憩したいと思うんだけど……」

少女(ピンサロタウン…………やっぱり…………)

男「よし! じゃあ行ってみよう!」


少女(先生……元気にしてるかな……)





─ピンサロタウン・酒場─



ガチャッ! カラン カランッ


マスター「いらっしゃ──」

仮面を被った男「久し振りやのう、マスター」

マスター「おぉ! お前さんか!」

テクテク

仮面「いつものヤツ、頼む」スチャッ

マスター「おう!」トクトク


仮面「……」スッ

ブサメン「ふぅ……」パカッ


マスター「ところで、ブサメンよ」 トクトク

マスター「いい加減に、その悪趣味な仮面を被るのはやめたらどうだ?」 クスッ

ブサメン「やかましい! 『童貞狩り』にとっちゃワシは有名人じゃからな。 なるべく顔バレせんようにしとんのじゃ」

マスター「ハハッ、政府ご自慢の最強の戦士が随分と弱気な振る舞いだな」 ゴトッ

ブサメン「いつの話しとんのじゃバカタレが!」スッ

ブサメン「飼い主のお偉いさんは皆あの世に行っちまった……」グヒグビ


ブサメン「……仲間も……皆……」 ゴトッ


マスター「……」


マスター「今回帰って来たのも『アイツ』の墓参りの為か?」

ブサメン「あぁ……」

マスター「……」


マスター「あれから、もう8年か……」

マスター「今、この酒場が……この町があるのもアイツが反童貞狩りのレジスタンスとして体を張ってくれたお陰だ」

マスター「世界が平和になった暁にゃ、飛びっきりの名酒を腹一杯飲ませてあげる約束をしてたんだがな……」

ブサメン「……」 グヒグビ


ブサメン「その約束……ワシにもしとけ」 ゴトッ

マスター「あん?」

ブサメン「『童貞狩り』……必ず根絶やしにしてやるけぇの……」 ギリッ




─ピンサロタウン・酒場前─

ガチャッ

仮面「じゃあの、マスター」

マスター「あぁ。 またな、ブサメン」

マスター「必ず……生きて帰って来いよ……」

仮面「カッカッカ! ワシを誰と思っとんのじゃ」ケラケラ

仮面「心配する暇があるなら、さっさと世界各地の名酒のお取り寄せでも始めとけ」 ケラケラ

マスター「ハハッ! それもそうだな!」 クスッ

バタンッ

仮面「おぅ……もう夜明けか」

仮面「少々、飲み過ぎたのう……さっさと宿に戻らんとな」 テクテク

仮面(……) スタッ

仮面(『生きて帰って来い』……か……) ジジジ……

仮面「こんがりと……焼き肉になって帰って来た時は……笑ってくれよ……マス……ター……」 ジュウウウ……


仮面「ぐぅ……うううッ……!」 ジュウウウ!

仮面「クソったれぇえええ……静まらんかいっ……!」 ジュ……

仮面「ハァ……ハァ……」

ガクッ


仮面(もう……長くは持たんやろうな……) ハァ ハァ

仮面(制御出来んレベルにまで達してしまった『嫉妬の炎』が体ん中で暴走しよる……) ハァ ハァ

仮面(日を増すごとに……より激しく……) ハァ ハァ


仮面「カカッ……ガキの頃にやさぐれまくっとったツケが回ってきとるんじゃろな……」 グググッ

仮面「この身が燃え尽きる前に『童貞狩り』の本部を叩かんと……」 ザッ ザッ


ザッ ザッ……


ザッ……




─ピンサロタウン・入口─

女「着いたわ。 ここがピンサロタウンよ」

男「へぇ……なかなか大きな町なんだな」


童貞「さすがに、この時間帯には町の人は見当たりませんね」

女「えぇ。 お陰で『童貞狩り』が徘徊しているかどうかがわかりやすいから好都合だわ」

女「宿まで慎重に進んでみましょ」スッ

男「おう!」スッ


少女「……」

童貞「少女ちゃん?」

少女「は、はいっ!?」 ビクッ

童貞「どうしたの? 何か考え事をしてたみたいだけど……」

少女「い……いえっ! 何でもないですっ! 行きましょう!」オドオド

童貞「?」



─ピンサロタウン・宿屋前─


男「おっ、あれが宿みたいだな」 コソコソ

女「『童貞狩り』は……見当たらないわね」 キョロ キョロ

男「よし、このまま宿に……」 スッ

女「──!」 ピクッ

女「ちょっと待って!」

男「えっ?」 ビクッ

女「誰か来るわ!」


ザッ ザッ

仮面「ハァ……ハァ……」 ザッ ザッ


男「なんだアイツ? 仮面なんか被って、怪しい奴だな」 ボソッ

童貞「体格的に……男性みたいですね」 ボソッ

女「えぇ。 『童貞狩り』ではなさそうだけど……」


仮面「……ぐっ!」ガクッ


男「!?」

男「おいっ! 大丈夫か!?」 ダダッ

女「あっ……待ちなさい、男っ!」 ダッ


仮面「!」ピクッ

仮面「誰じゃ……おどれ……」ハァ ハァ

男「どこか体調でも悪いのか──」スッ

仮面「触んなァッ!」

男「うぉっ!?」ビクッ

仮面「ワシに触ると……火傷じゃスマンぞ……」 ジュウ……

男「っ!? なんだ……この熱気……!」


女「男っ!」タッ

童貞「大丈夫ですかっ!?」タッ


女「!?」ピクッ

女(……ちょっと待って……この煮えたぎるような熱い『気』……)

仮面「今度はメスが三匹か
……何者か知らんが……ワシに構うな! はよ……どっか行かんかいっ!」 ジュウ……

女(それに、この独特な喋り方……まさか、この人……)


男「俺たちはこの宿に用があるんだ。 それに、目の前で膝をついて苦しんでる奴を放っておけるかよ!」

仮面「……」ジュウ……

仮面「ワシは大丈夫じゃ……時間が経てばすぐ楽になるけぇ……」ググッ

童貞「そんな……」

女「すぐ近くに診療所があるわ。 そこの医者を呼んで来るから──」

少女「あっ! 私が行きます!」バッ

仮面「大丈夫言うとるじゃろがッ!」

少女「!」ビクッ


仮面「……」ジュウウウ……

仮面「ほれ……収まってきよった……」 ウウウ……

仮面「怒鳴って……悪かったな……」 ハァ ハァ

男「本当に大丈夫なのかよ!?」

仮面「おう……」スタッ

仮面「……」ハァハァ


仮面「カカッ……驚いたのう……こんな腐りきった世の中でも……まだ、おどれ達のような──」 クスッ

男「え?」

仮面「いや……何でもない」ハァ ハァ

仮面「すまんかったな……」ガチャッ

バタンッ


男「あれ? あいつも宿に入って行ったぞ?」

童貞「この町の人じゃないのかな?」

女「……」

女「さ、とにかく私達も部屋を借りましょ」ガチャッ

男「あ、あぁ」

童貞「はいっ」

少女「……」


少女「あ、あの……」ボソッ

男「ん?」

女「どうしたの?」


少女「わ、私……先生のところへ帰ります……」

童貞「えっ!?」

男「せ……先生?」

少女「はい……」

少女「私の剣術『誅弐堕天流』の師であり、育ての親である方です……」

女「もしかして……その先生はピンサロタウンに住んでるの?」

少女「いえ……あ、で、でも、先生の家はこの町の近くなんです!」

男「そっか……帰る場所があったんだな。 安心したよ」 ニコッ

少女「はい……まさか故郷の近くで『魔剣』の呪縛から解き放たれるとは思っていませんでした」 クスッ

少女「これも……皆さんのおかげです……」 ペコッ ペコッ

女「ううん、私は少女ちゃんが諦めずに叫び続けてくれたから『魔剣』に勝つ事が出来たのよ。 こっちが感謝しなきゃいけないわ」 ギュッ

少女「そ……そんな……」///

女「!」ピクッ


女「ただ……今日はもう無理せずに、宿に泊まっていったほうがいいわね……」 サワサワ

少女「え?」

女「男の魔法で傷は塞がってるけど……体力や『気』が、まだ弱りきってる……」 サワサワ

女「もし、この疲労状態で『童貞狩り』に遭遇でもしてしまったら危険よ」

少女(うっ……)ドキッ

少女「……すごいですね、触っただけでそこまでわかるなんて……」クスッ

少女「でも……宿泊代が勿体ないですし……これ以上ご迷惑をおかけするわけには──」

男「なに細かい事言ってんだよ! 遠慮すんなって! それに、子供は大人には甘えるモンだぞ?」 クスッ

童貞「うんうん! 今日はゆっくり休んで、明日、皆で一緒に向かおうよ!」 ニコッ

少女「男さん……童貞さん……」 ウルッ

女「さ、そういう事で今日はもう逃がさないわよ! ほらほら、中に入った入った」 クスクス

少女「女さん……」 ウルウル


少女「何から何まで……本当にありがとうございます……」 ポロポロ


同時刻



─童貞狩り本部・女王の間─




ギシ……ギシ……




女1「……ぁ……ぁぁ……」 ギシ ギシ

???「……ハッ……ハッ……」 ギシギシ

???「……流石は『童貞狩り』の頂点に立つ女傑……他のメスと比べて『気』の吸い付き具合が段違いですなァ……」 ギシギシ

女1「……ぁ……もっと……もっと激しくっ……!」 ギシギシ

???「ククッ……わかってますって……!」 ギシギシギシギシ

女1「ぁ……あぁあああっ……!」 ギシギシギシギシ

???「……くっ……出るッ……出すぞ──」 ギシギシギシギシ!



コンコンッ


女1&???「!」ピタッ



女2「緊急事態ダ。 入ルゾ」 ガチャッ

女13「失礼しま──」

女2&女13「!?」 ピクッ


女1「ハァ……ハァ……」チッ

???「……あっちゃー……フィニッシュ寸前だったのにねェ」 クスクス

女1「……ったく……急に入って来られると困りますわ! せっかくの至福の時間を……!」 ハァ ハァ


女2「オット……コレハコレハ、オ取リ込ミ中デシタカ」 クスクス

女13「……」 ギリッ

女2「ダガ、呑気ニ腰ヲ振ッテイル場合デハナイゾ」


女13「……先程、ギャル部隊アジトから連絡が入りました」

女13「何者かの襲撃により人妻部隊隊長が死亡。 また、ロリ部隊隊長の魔剣『無垢』も粉々に破壊された状態で発見されたようです」

女1「……なんですって?」ピクッ

???「ヘェ……」

女1「他の部隊長はどうしましたの!? 女8……それに、女5は!?」

女2「イズレモ通信ニ応答無シ……行方不明ダソウダ」

女1「……そんな……馬鹿なッ……」 スタッ


女1「も、もしや……」 ガクガク

女1「最後の『童貞』が……『覚醒』してしまった……!?」 ブルブル

???「あー……そいつはあり得そうだねェ……」 ポリポリ


???「もしくは──」



???「長い眠りから覚めた『飼い犬』の残党が牙を剥いたか……」 ニタァ


イケメン(ククッ……嫉妬の獣……お前さんなら、そんぐらい朝飯前だよなァ……?) クスクス




女13「……」ギリッ

レスありがとうございます
なかなか更新出来ずにすいませんorz


女1「大至急、全ての隊員に本部への帰還命令を通達しなさい!」 テクテク

女2「了解」テクテク

ガチャッ──バタンッ!



イケメン「あーあ……行っちゃった」

女13「……」

イケメン「おや? 君は行かなくていいのかい? なんなら是非、さっきの続きをオレと──」 クスッ

女13「ふざけるなっ……!」 ギリッ

イケメン「おぉ、怖い怖い」 クスクス


女13 「貴様も元は政府の『飼い犬』……一体、ここで何を企んでいる!?」

イケメン「やだねェ……オレは『童貞狩り』のカワイ子ちゃん達とイチャイチャしたいだけさ」 テクテク

イケメン「こんな贅沢な楽園……ぶち壊そうと思っているほうがどうかしてる」 ズイッ

女13「くっ……顔を近づけるなっ! 汚らわしい!」 バッ


イケメン「うーん……」 ジロジロ


イケメン「20点」

女13「?」

イケメン「ククッ……近くでよく見ると全然タイプじゃなかったよ、君。 全くもってヤるに値しない」 クスクス

女13「!」 ブチッ


女13「貴様ァッ!!!」 バッ

イケメン「……」 ズズズズズ……

女13「!?」 ビクッ


イケメン「……ヤれねェ雌はただの豚だ……」 ズズズズズ……

イケメン「殺すぞ……?」 ズズズズズ……

女13「……ぁ……ぁぁぁ……」 ガクガクガクガク



イケメン「──なんてね」 クスッ

女13「ぁ……」 ヘナヘナ

イケメン「ククッ、この髪型を変えるだけでも相当化けると思うよ?」 ポンポン

女13「……」 ガタガタガタガタ


イケメン「それじゃ、次会う時を楽しみにしてるから」 クスクス

ガチャッ──バタンッ!



女13「……」 ガタガタガタガタ


女13 (……化物め……) ガタガタガタガタ


女13(女1様……何故、あのような危険人物を野放しに……!) ガタガタガタガタ


女13「うぅ……」 ガタガタガタガタ


女13(もしも……奴がその気になれば……) ガタガタガタガタ


女13(いとも容易く貴女の喉元を噛み切る事が出来るでしょう……) ガタガタガタガタ


同時刻


─ギャル部隊アジト─


女53689「……はい」

女53689「……」

女53689「えぇ……了解しました」 プツッ──


女27781「本部の反応はどうだ?」

女53689「……全隊員に帰還命令が下されたわ。 しばらくは本部の守りを中心に作戦を展開していくみたい」

女27781「そうか……やはり、相当警戒しているな」

女53689「前代未聞の状況だからね……仕方無いわ」

女27781「くそっ! 一体、誰が隊長達を……!」 ギリッ


「ふふっ……なんだか面白い事になってるみたいだねっ!」 クスクス


女27781&女53689「!?」 ピクッ


ガチャッ!


女3「やっほー♪ 久し振りだねぇ、ギャル部隊の隊員さんっ!」 ニコニコ

女6「ケケケ……」 プルプル


女53689「なっ……ボーイッシュ部隊の女3隊長!? 」

女27781「それに『ゴールドフィンガー・トメ』こと熟女部隊の女6隊長ッ!?」

女3「 あははっ! なんでそんなに驚いてんのさ!? 事前に『来る』って連絡してたじゃん!」 ケラケラ

女53689「い、いや……予定よりも早く到着されたので、つい……」 オドオド

女3「──あ、そっか! 本当はあと二日あったんだっけ?」 ポンッ

女27781「は、はい」 オドオド

女3「フフフ、『スペシャルゲスト』が物凄く張り切ってたからねぇ……だから、ボクが思ってたより随分早く管轄エリアの制圧が出来たんだ♪ 」

女53689「スペシャル……ゲスト……?」

女3「うん! せっかくだし、こっちにも連れてきたよ! ま、今はその辺で『食事中』だと思うけどねっ」クスクス

女53689「?」


女27781「そ、それはともかく女3隊長! 先ほど貴女にも本部からの連絡が入ったと思うのですが──」

女3「さっさとお家に帰ってこいってでしょ!?」 ムスッ

女3「冗談じゃないよ! 誰が帰るもんかっ」 ケラケラ

女27781「えっ!?」

女6「ケケケッ……全くだ」 プルプル

女53689「な……何故ッ!?」


女3「ボクね……今、すごくワクワクしてるんだ……」 ニタァ


女27781「ひっ……!?」 ゾクッ


女6「猛威を振るうは『童貞』か『飼い犬』か……はたまた『裏切り者』か……」 ケケケ

女3「あははっ! どれが相手でも最高の殺し合いが出来そうだねっ♪」 ケラケラ


女3「よーしっ! さっそく出発しようか皆っ」 ワクワク

女27781「え?」

女53689「我々も……ですか?」 オドオド

女3「当たり前じゃんよー! 何言ってんのさ!」 ムスッ

女53689「そんな……」

女3「ターゲットの捜索は人数が多い方が楽だもん」 ケラケラ

女27781「は、はぁ……しかし、さすがに本部の命令に背くのは──」

女3「大丈夫大丈夫っ! 結果出して帰れば問題無いって」ケラケラ

女53689「うぅ……では、アジトに残る全ての隊員に出動命令を出してきます……」 トボトボ

女3「よろしくーっ♪」



─ギャル部隊アジト前─



女53689「整列っ!」

ザッ

女27781「これより我等ギャル部隊はボーイッシュ部隊隊長らの指揮に従い、正体不明の脅威の捜索に入る!」

ギャル部隊隊員一同「ハッ!」


女6「フム……ざっと50人といったところか」 プルプル

女3「うんうん、良い感じ♪ あとは──」


ザッザッザッ


女3「!」 ピクッ

女6「来たか……」 ケケケ

女53689「?」



「あら、もう出掛けちゃうの?」


女3「ったく、遅いよ幼友っ!」 ムスッ

幼友「フフッ、ごめんねぇ。『ご馳走』に夢中になってたわ」 クスクス


女27781(……誰だ?)

女53689「あの……女3隊長、こちらの方は?」

女3「彼女が今回の『スペシャルゲスト』である幼友さっ」 ニコニコ

女27781&女53689「!」

幼友「よろしく」

女53689(……この人が……噂の……) ギリッ

女27781(幼友……ッ!) ググッ

幼友「──って、どうしたのよ。 そんなに険しい顔して」 クスッ


女27781「おい、今『ご馳走』……と言ったな?」

幼友「えぇ」

女27781「何を食った……!?」 ギリッ

幼友「何を、って……役立たずなあんたらの隊員をちょこっと、ね」 ニタァ

女53689&女27781「!!!」

女27781「お前ぇええええええッ!! !」 シュバッ

幼友「!」 クスッ


グチャッ

女27781「え……」 プシュウウウ

女27781は喉元を食いちぎられた

幼友「うるさい」 モグモグ

女27781「ヒュー……ヒュー……」 パクパク

ドサッ

女27781「」 ビクンッ ビクンッ

女42996「う、うわぁあああっ!」

女88737「きゃああああああッ!」

女3「あーあ……」 ハァ

女6「ケケケッ」 クスクス

女3「もぉー! 味方を殺すのも程々にしてよねっ!」 ムスッ

幼友「先に手を出してきたのはそいつじゃない」 モグモグ

女53689「……」ブルブル

女53689(……噂通り……イカれてる……) ブルブル


女53689「女3隊長……このような行為が許されていいのでしょうか?」 ブルブル

女53689「幼友氏の噂は『童貞狩り』内に広く伝わっております……」

女53689「己の『欲』を満たす為ならば敵味方問わず喰らい尽くす化物……」

女3「ごめんねー、毎回ちゃんと注意はしてるんだけどさっ」 テヘッ

女53689「……」 ググッ

女3「──それじゃ、気を取り直して出発しよっか♪」

女53689「た……隊長ォ……ッ!」 ギリッ

女3「 ね ? 」 ズズズズズズ……

女53689「!」 ゾクッ

女53689「……了解しました」 ガクガク

女3「楽しんでいこうよ?」 ニタァ


女3「まずは……そうだなぁ……ギャル部隊の管轄エリアで一番人口の多いピンサロタウンを目指そっか♪」

ギャル部隊隊員一同「ハッ!」

女6「ケケッ」 プルプル

幼友「……」 ジーッ

幼友「ねぇ、女3」

幼友「このお婆ちゃん……本当に役に立つわけ? 今にもポックリ逝きそうなくらいプルプルしてるけど……」

女3「あははっ、失礼だよ幼友っ!」 ケラケラ

女3「熟年のテクニシャン『ゴールドフィンガー・トメ』こと女6……かなり強いよ」

女3「ある意味、『童貞狩り』最強の隊員だからね」 クスッ

幼友「は?」 ポカーン

女6「ケケッ、若い衆にはまだまだ負け──ゲホッ! ゴホッ!」 プルプル

女6「まだまだ……負けんよ」 カーッ! ペッ!

幼友「……心配だわ」 ハァ

女3「ふふっ、期待してるよトメさんっ♪」

女3「んじゃ、皆行くよーっ!」 ワクワク



─ピンサロタウン・宿─


カァ……カァ……


男「……ん」 パチッ

男「……」 ムクッ

男「くぅううう!」 グググッ


男「……ふぅ……もう夕方か……」

男「……」 チラッ

童貞「zzz……」

少女「zzz……」

男「ははっ、二人とも良い寝顔だ」 クスッ

男「──って、あれ? 女がいないな……」

男「どこに行ったんだろう」 スタッ

テクテク


─ピンサロタウン・宿(屋上)─

女「……」

ガチャッ

女「!」 ピクッ

男「お、いたいた。 探したぞ」 テクテク

女「男……」

男「……夕日が綺麗だな」 テクテク

女「えぇ」

男「……」

女「……」

男「寝てないんだろ?」

女「え?」 ドキッ

男「普通に考えて、今の状況で皆が皆眠ってるわけにはいかないもんな……」 クスッ

男「ありがとう、女。 見張っててくれて」

女「べ、別に私は……っ!」 ///


女「……」

男「ど、どうしたんだよ! 黙って考え込んだりして……」

女「あっ、い、いや、なんでもないの」

男「疲れてるんだろ? 見張りは代わるからさ、お前も一眠りしてこいよ!」 ニコニコ

女「ううん、大丈──」

男「大丈夫じゃないって! ほら、 さっさと部屋に戻れっ!」 ガシッ

女「きゃあああっ!?」/// ビクッ


女「いきなり触らないでよっ! 変態ッ!」/// ブンッ

ドグシャアアア

男「」 ピクピク


男「いてて……割と本気で殴るなよ……」 ズキズキ

女「あ、あんたが悪いのよ!?」 ///

男「いや……まぁ、触ったのは悪かった! だけど、俺はお前の為を思ってだな……!」 ズキズキ

女「ふんっ! どーだかっ!」 ///

男「それに、明日は少女を『先生』っていう人の所へ送らなきゃいけないだろ? だから、今日のうちに少しでも体力を回復させておかないと……」

女「……」

女「そうね……」

女「……」 フゥ

女「……正直、少女ちゃんが羨ましいわ……」 クスッ

男「え?」


女「彼女には帰る場所があり……帰りを待つ人がいる……」

男「……」

女「……」

女「ねぇ、男……」

女「『童貞狩り』の存在しない平和な世界を取り戻す事が出来たとして……その先には何があるのかしら……」

男「……」

女「……その世界は……『童貞狩り』だった私を受け入れてくれるのかしら……」

男「……」

女「……ふふっ」

女「ごめんなさい……今のは忘れて。 あんたの言うとおり、なんだか疲れちゃってるみたい」 クスッ

男「……」

女「さて、と……それじゃ、お言葉に甘えて少し休ませてもらうわね」 テクテク


男「なぁ、女」

女「なに?」 スタッ

男「一緒に暮らさないか?」

女「──え?」

男「世界が平和になったらさ……俺と童貞とお前……三人で一緒に……」

女「!?」

女「ちょ……ちよっと!? いきなり何言ってんのよっ!?」 ///

男「前に言ったじゃないか。 これからは俺たちで楽しい未来を作っていこうって」 クスッ

女「だ、だだだ、だからって、なんであんたなんかと一緒に暮らさなきゃいけないのっ!?」 ///

男「嫌か?」

女「……」 ドクン ドクン

女「……そんな真顔で見つめないでよ……」

男「本気で言ってるからな。 童貞だってきっと同じ事を考えてるはずさ」 ニコニコ


女「……バカっ」 ポロポロ

男「げっ!? な、なに泣いてんだよ!? そんなに嫌だったか!?」 オロオロ

女「……ううん……嬉しいの……」 ボソッ

男「え?」

女「嬉しいって言ってんのっ……! もうっ……二度も言わせないでよぉ……」 ポロポロ

男「女……」 ニコッ

男「俺たちには帰る場所が無くても、帰りを待つ人がいなくても……一人じゃないんだ」

男「たとえ、お前が平和な世界に受け入れてもらえなかったとしても、俺と童貞はずっとそばにいるよ」

男「だから……未来の心配なんてしなくていいんだ」 ナデナデ

女「……童貞のクセに……いつもカッコつけ過ぎなのよ……あんたはっ……!」 ポロポロ

男「はは……」 クスッ


男「だけど……未来よりも、まずは『今』だ」

男「この世界を『童貞狩り』の支配から解き放たなきゃいけない」

女「……うん……」 コクン

男「これから厳しい戦いが待っているだろうけど……俺は絶対に負けない! 魔法の力で『童貞狩り』なんてぶっ飛ばしてやる!」

女「……私も負けないわ……絶対にっ……!」

男「一緒に頑張ろうな! 女!」


「──魔法、じゃと?」


男&女「!」 ビクッ


ガチャッ テクテク

仮面「今の話……本当か……?」


男「お前は……今朝の……」

女「……」

仮面「いきなりすまんのう。 別に盗み聞きをしているつもりは無かったんだが」

女「……政府が『童貞狩り』殲滅の為に結成させた特殊部隊の隊員の一人『嫉妬の獣』ことブサメン……」

仮面「っ!? ……何故、ワシの事を知って──」 ピクッ

仮面「そうか……『奴』に似たその風貌……」

仮面「『童貞狩り』首領の実妹であり、No.5のランクを持つと言われるツンデレ部隊隊長女5だな?」

女「えぇ。 もっとも、今は『童貞狩り』の隊員では無いけどね」

仮面「何……?」

男「お、おい女! こいつの事知っているのか?」

女「『童貞狩り』内では有名人よ。 実際にお会いするのは初めてだけど、彼についての情報は嫌という程聞かされていたからすぐに特定出来たわ」

仮面「ケッ、バレバレじゃったか。 一体、なんの為の仮面だか……」 クスッ

仮面「それはともかく、だ。 先程口に出した『魔法』について詳しく聞かせてもらいたい」

男「……」


男(女……) ボソッ

女(話しても大丈夫だと思うわ……元々、彼は反童貞狩りの人間だし……ここは一つ彼を信用してみましょう) ボソッ

男(わかった) ボソッ



男は、現在自分達が置かれている状況や魔法の力についてを話し──

それに加え、女が『童貞狩り』を辞めたいきさつを簡潔に話した


仮面「……」

女「……狐につつまれたような顔ね。 まぁ、無理もないでしょうけど」

仮面「童貞の覚醒……魔法使い……噂だとばかり思っていたが……」

女「今度はこちらから質問をさせてもらうわ。 どうしてあなたはこの町にいるの? ……仮面で変装までして……」

仮面「……」

仮面「ワシは……もう長くはない……」

女「──え?」

男「なっ!?」

仮面「己の体が、己の力に蝕まれている……」

仮面「もう……むやみやたらに戦闘が出来る状態ではない。 無駄な力を開放すれば死期をより一層近づけてしまう──」

仮面「だからワシはこの仮面で正体を隠し、『童貞狩り』との接触をなるべく避けつつ……共に奴らと戦える人間を探し回っていた」

仮面「だが……それもここまでじゃ……!」

バッ

男&女「!?」


仮面は男達に向けて土下座をした


仮面「……ワシに力を貸してくれッ!!!」

男「お、おいおい!?」

仮面「ワシは最期の命を……最後の灯火を『童貞狩り』の本部へぶち込むつもりじゃッ……!」

男&女「!」

仮面「散っていった同志達の想いを果たす為にも絶対に勝たねばならん!」

仮面「力を持つおどれ達が共に戦ってくれれば勝利はより確実なモノとなる……ッ!」

仮面「ようやく見つけた希望の光……どうか……どうか、ワシに力をッ……!!!」 ググッ

男「……」

女「……」


男「……行こう……皆で、一緒に……!」

仮面「!」

男「戦える仲間が増えるのは、こっちにとっても嬉しいしな」 ニコニコ

女「えぇ、私も賛成だわ」

仮面「な、ならばっ──」 バッ

男「ただ……一つだけ約束をしてくれないか?」

仮面「む……!? 」

男「『もう長くはない』だの『最期の命をぶち込む』だの……悲しい事言うな」

仮面「!」

女「男……」

男「『童貞狩り』をぶっ飛ばしても生きて帰る! その後もずっと生き続ける! ……って、約束してくれ」 ニッ

仮面「……」

仮面「……おどれも……無茶な事ぬかしよるのう……」 クスッ

仮面「……だが……」

仮面「……約束しよう…… ワシは……己の力にも打ち勝ってみせるッ!」



仮面(……不思議な気分じゃ……)

仮面(……ワシの『生』を望む者がおる……)

パカッ

ブサメン(……)

ブサメン(ワシは……この醜いツラを憎み……絶望し……心の隅では常に『死』を望んでいた……)

ブサメン(死ぬ事に……微塵の恐怖も感じていなかった……)


『必ず……生きて帰ってこいよ』


『ずっと生き続ける! ……って、約束してくれ』


ブサメン(……あぁ……)

ブサメン(……ワシも……なかなかに単純な生き物じゃ……)

ブサメン(……たかが一つ二つのクサい言葉で心ん中が逆転しよる……)

ブサメン(……)

ブサメン(この世には……炎よりも遥かに熱い野郎が存在するんじゃな……) クスッ

保守ありがとうございました




ブサメン「このツラこそ……偽り無き真のワシ。 ブサメンじゃ。 これからよろしく頼む」


男(あれ……? こいつ……どこかで見たような……) ドクン……


男「お、俺は男。 よろしくな、ブサメン!」





─宿(男達の部屋)─


童貞「zzz 」

少女「zzz 」






少女「……先……生…………」 ムニャ ムニャ









……ぁぁぁ……



……おんぎゃあああ………



眼帯女『……』 ザッ



……あ"ぁああああああ………



眼帯女『……捨て子……?……』



……おんぎゃああああああ……



眼帯女『……』 スッ

眼帯女『……お前も……望まずに造られた生命(いのち)……か……』 ギュッ





眼帯女『ふーっ……ふーっ………』
フキフキ

幼児『……うー……』 スッ

眼帯女『っ!……こら……触るな……』 バッ

眼帯女『今、手入れをしているこれは刀というモノだ……幼子が触れて良い代物では無い……』

幼児『ううぅ……うぇぇ……』 ポロポロ

眼帯女『むむ……』 オロオロ

眼帯女『……鞘だけなら……まぁ、良かろう……』 ヒョイ

幼児『きゃっ、きゃっ!』 ギュッ ニコニコ

眼帯女『……ふふ……』 クスッ


眼帯女『……お前……初めて笑ったな……』 クスクス





幼女『えいっ! えいっ! 』 ブンッ ブンッ

先生『……まだやっていたのか……』

幼女『うんっ! いーっぱい剣のお稽古をして、私も先生みたいに強くなるのっ!』 ブンッ ブンッ

先生『……強くなる必要など無い……』

幼女『……え?』

先生『……早く寝ろ……もう何時だと思っている……』

幼女『う……うん……』

先生『……私は……仕事に行ってくる……』 テクテク

幼女『……先生こそ、いつも夜遅くに何のお仕事をしてるの?』

先生『……』

幼女『お仕事に……その刀は必要なの……?』

先生『…………あぁ…………』




少女「やぁっ!」 シュバッ

ガキンッ──

先生『ふむ……』 ググッ

少女『くぅ……っ!』 ググッ

バッ

少女『誅弐堕天流……邪影の太刀っ!』 シュバッ

先生『!』

ガキンッ──

少女『くっ! 完全に捉えたと思ったのに!』 ググッ

先生『……見事な剣筋だ……』 クスッ



先生『(……その歳で……ここまで辿り着くとは…………想像以上の才能を秘めていたようだな……)』

先生『(……甘く……見過ぎていたか……)』

先生『(……今では後悔している…………お前に剣の道を歩ませた事を…………)』






グツグツ……

少女『あの……先生……』

先生『……なんだ……』 パクパク モグモグ

少女『私……修行の旅に出ます……』

先生『…………さっさと食え。 せっかくの鍋が冷めてしまうぞ……』 パクパクモグモグ

少女『先生っ! 私は本気で言ってるんですっ!』

少女『もっと強くなりたい……! 誅弐堕天流を極める為にもっ……!』

少女『そして、先生の敵……【童貞狩り】を斬る為にも……』

先生『!』 ピタッ

先生『……何故、お前がその名を知っている?』

少女『ピンサロタウンの酒場のおじさんから聞きました。 先生は【童貞狩り】という悪者達と戦っているって……』

先生『(……チッ……あのバカタレが……)』


先生『……お前はまだ若い……生き急ぐな……』 ズズッ モグモグ

先生『心配せずとも……近い将来、お前は私の力量など遥かに上回る剣士になれる……それ程の才能を持っている……』

先生『……今は……ただ、黙ってメシを食え……』 パクパクモグモグ

少女『……』 ギリッ

少女『……先生が止めても……私は行くつもりですよ……?』

先生『……』

先生『──は出来ているのか?』 ボソッ

少女『え……?』


先生『死ぬ覚悟は出来ているのか……?』 ズズズズズ……


少女『!』ゾクッ


先生『武者修行は餓鬼のお遊びでは無い……半端な気持ちで臨むのは自殺行為だ……』 ズズズズズ……

先生『どうしても行くというのであれば……私を斬っていけ……』 ズズズズズ……

少女『先生……』

先生『但し……一切の手加減はしない……』 チャキッ

少女『覚悟は……出来ています……!』 チャキッ

先生『……』

少女『……』




少女『ハァッ!』 シュバッ

先生『!』



先生『……遅いッ!』 シュバッ


ザンッ──


少女『……ぅ……ぁ…………』 ユラッ



先生『……ククッ……』 クスッ

先生『……………見事に…………一本取られてしまったな…………』


少女『』 バシュン──


先生『……私が斬ったのは残像か……全く気が付かなかったぞ……』 クスクス

先生『…………本体は…………行ってしまったか……』 キョロキョロ

先生『……』

先生『……剣の道を歩む者だ……いつか必ず、この日が来るとわかってはいたが……』

先生『……やはり……寂しいものだな……』 フゥ



タッタッタッ……


少女『(先生……ごめんなさい……)』 タッタッタッ


少女『(必ず帰ってくるから……その日まで私のワガママを許してください!)』 タッタッタッ




少女『まずは……【童貞狩り】! 奴らに、私の誅弐堕天流がどこまで通用するのか確かめてみたい!』


タッタッタッ……

タッタッ……

タッ……






パリンッ──

少女『…………そんな…………バカな…………』

少女『…………私の………剣が……………』 ガクッ

女2『脆イ』

女2『ククッ、暇潰シニモナラナカッタナ』クスクス

女2『シカシ、ソノ剣術……貴様、モシヤ【漆黒の風】ノ倅カ?』

少女『漆黒の……風……?』

女2『誅弐堕天流……奴ノ足元ニハ遠ク及バヌガ、才能ハ有ルヨウダナ。 殺スニハ惜シイ人材ダ』

女2『ヨシ、コイツヲ本部へ連行シロ』

女98『ハッ!』

少女『うぅ……』 ガシッ








女1『ようこそ、童貞狩り本部へ。 ふふっ、可愛らしいお嬢さまですこと」 クスッ

少女『……私をどうするつもりですかっ!?』

女1『貴女にはわたくし達の手伝いをしていただきますわ』

女1『気持ち良くて、とぉっても楽しいお仕事の……ね……』 ニタァ

少女『ひっ……!?』 ゾクッ


女1『部下の報告によると、貴女はとても素晴らしい剣術の才能を秘めているそうですね』 テクテク

女1『ならば……お近づきのしるしに、この剣を差し上げますわ』 スッ

少女『!』

女1『魔剣【無垢】……貴女にピッタリのエモノになるかと……』 クスクス

ズズズズズ……

少女『(な、なんなの!?……この禍々しい気を纏った剣は……!)』 ガクガクブルブル

ズズズズズ……

少女『……あ……あぁっ………』 ガクガクブルブル


ピカッ!


少女『う"っ──』 ビクンッ




『──あれ?』

『ここは……どこ……?』

『……真っ暗で……何も見えない……何も聞こえな──』

……ふひひ…… グチョッ ズチャッ

『え……?』

……あひっ……出……ぞ…… グチョッ ドプッ

『……ウソ………でしょ……?』

……ひひっ……最高だったよ……女7ちゃんの……中…… ザクッ──

『……な……ん……で……』

……あ……あれぇ……? プシュッ

『……イヤ……やめて……』

う"ぇ……ひぎっ…… スバッ ズバッ

『やめぇてぇええええええッ!!!』

ザンッ── プシュウウウ……



少女「 ──助けてっ! 先生ぇえええっ!!!」 ガバッ


少女「!」 ハァ ハァ

童貞「zzz 」 スヤスヤ

少女「……夢……」 ハァ ハァ

少女「……」

少女「先生……」 ブルブル

少女「早く……会いたい……」 ポロポロ

少女「……」 スタッ

少女「……皆さん……本当にすみません……」

少女「……私……行きます……!」 タッタッタッ

ガチャッ── バタンッ!

童貞「……んっ……」 ピクッ

童貞「……ふわぁあああ……」 ムクッ

童貞「……あれ……誰もいない……?」 キョロキョロ


─宿(屋上)─

男「魔童人形(ダッチワイフ)……?」

ブサメン「あぁ。 魔法の力で作り出された人間は、そう呼ばれていたと聞いた事がある」

ブサメン「……まさか、実在するとは思いもよらんかったがのう」

女「私も初めて童貞ちゃんを見た時は驚いたわ」

ガチャッ

童貞「あっ、ここにいたんだね」 テクテク

ブサメン「おっと、噂をすれば……」

男「よく眠れたか?」 ニコニコ

童貞「うんっ! ……ってあれ? あなたは……」

ブサメン「ワシは今朝の仮面男じゃ。 名はブサメンという 」

童貞「あ、え……えーと、私は童貞ですっ!」

ブサメン「……」 ジー

ブサメン(ふむ……どこからどう見ても普通の人間にしか見えん……本当に魔法の力で作られた生き物なのか……?) ジー

童貞「あ、あの……私の顔に何かついてます……?」 オドオド


女「おはよう、童貞ちゃん! 少女ちゃんはまだ寝てるのかしら?」 ニコッ

童貞「え? 一緒にいたんじゃないんですか? 部屋にはいませんでしたけど……」

男&女「!?」

男「な……どういう事だ!?」

女「そんな……!?」

女「……まさか……一人で先生のところに……っ!」

男「急いで探しに行こう!」 ダッ

女「待って! 私が行ってくるから、あんた達は待機してて!」

童貞「えっ!?」

女「複数人で下手に動き回るのは目立って危険だわ 」

男「だからって、お前を一人で行かせるわけには──」

女「大丈夫よ。 それに、私はスピードには自信がある。 まだ、そう遠くまでは行ってないでしょうし、すぐにとっ捕まえてきてあげるわ! 」 シュタッ

男「お、おい!? 待てよっ!」


ブサメン「……むっ!?」 ピクッ


男「そうは言っても、あいつだけじゃ心配だ! 女の後を追うぞ!」

童貞「う、うんっ!」

ブサメン「──待て」

男「な、なんだよ!?」

ブサメン「……まずいのう……」 ググッ

男「?」

ブサメン「この胸糞悪くなるような『気』の流れ……『童貞狩り』の気配じゃ。 すぐ近くまで来とるぞ……!」

男「なんだって!?」




─ピンサロタウン付近の山道─


少女「ハッ……ハッ……」 タッタッタッ

少女(先生……先生っ……!) タッタッタッ



「──何者だッ!?」



少女「!」 ビクッ



女2378「……んっ!?……貴女は……!?」 ザッ


少女(しまったッ……! 『童貞狩り』!?)

女2378「女7隊長! ご無事でしたか!」

少女(! ……私が魔剣に操られていた事を知らない下っ端の隊員みたいね……これならなんとか切り抜けられるかもっ……!)

少女「え、えぇ。 捜索活動ご苦労さ──」


ドゴォッ!


少女「かはッ……!?」 メキメキ

女2378「──なーんてね」 クスクス

ドサッ

少女「げほっ……ごほっ……!」

女2378「バーカ、お前には既に抹殺命令が下されているんだよ!」 クスクス

少女「!」

女2378「どういうワケか『魔剣を失った女7には用は無い』ってさ!」 クスクス


女2378「隊長らの身に何があったのか知らないけど……私は個人的にお前の事が大嫌いだったのよねぇ」

少女「あぐっ……うぁっ……!」 ドゴッ バキッ

女2378「ガキのクセして偉そうに振る舞いやがってさぁ」

少女「……ぁ……ぅ"……」 ボゴッ ドカッ

女2378「死ね! 死ね、死ねっ! 死んじゃえ!」

少女「……」 ドカッ バキッ ボゴッ

女2378「キャハハッ! 気ん持ちぃいい! 」 ケラケラ

少女「」 ピクピク

女2378「さーて、と……トドメの一撃っ!」 ブンッ



少女(…………あはは…………バチが当たっちゃったんだね…………)



少女(…………私が…………ワガママで…………勝手な事ばかりして…………色んな人に迷惑をかけちゃったから…………)



少女(…………さよなら…………男さん………女さん………童貞さん…………)



少女(…………先………生…………)



少女(ご……めん……な……さい……)



ドゴォッ!




女2378「……ぐほッ……!?」 メキメキ


少女(──え?) ピクッ

女「もういっちょっ!」 ブォンッ!

バキィッ!

女2378「げはッ……!」 ズザザザザザッ!


女「正義のヒーロー見参っ……てね」 パンッパンッ

少女「……女さん?」 ガクガク

少女「……女さぁん……」 ポロポロ

女「ったく、もうっ! この悪ガキったら、上手に気配を断って宿から出ちゃうんだからっ!」

少女「……ごめんなさい……ごめんなさいぃ……」 ポロポロ

女「ふふっ、間に合って良かったわ。 もう、怖がらなくて大丈夫……私が絶対に守ってみせるっ……」 ナデナデ

少女「……ふぇっ……ふぇええええええ……」 ポロポロ

女「本当はお仕置きにお尻ペンペンといきたいところだけど── まずは、あいつを倒さなくちゃね」 スタッ

女2378「ぐっ……お前ぇええ……!! よくも私の顔を……!!」 ムクッ


女2378「ッ……!? ……女5隊長!?」

女「その名で呼ばないでくれる? 今の私はただの『女』よ」

女2378「なッ……!? ……この……裏切り者めぇッ……!」

女「……」


女2378「……キャハハッ……」 スッ ポチッ

──ピリリリリリリリッ!

女(っ!?……通信機の非常用アラーム……!)

女2378「この周辺は既に『童貞狩り』が包囲している……すぐに他の隊員達が駆けつけてくるわ」 クスクス

女2378「絶対に逃がさないッ……! 女7共々袋叩きにして殺してあげる!」 クスクス


女「……」 クスッ

女2378「な、何が可笑しいッ!?」

女「ギャル部隊の隊員にしてはお利口ね」

女「一対一の勝負では私に勝てないと瞬時に判断出来たんだから」 クスクス

女2378「……!」 ギリッ


女「ま、それでも増援が駆けつけるまでの間は一対一という状況に変わりは無いわ」 ズズ……

女「速攻でケリを付けてあげる……!」 ズズズズズズ……


女2378「うぅっ……!」 ゾクッ


女「ハァッ!」 シュタッ

女2378「!」


女「守童拳奥義──『清士走狼拳(せいしそうろうけん)』っ!」 バシュッ


女2378(……ひっ! ……やられるッ……!) ガクガクブルブル




バシィイイッ!



女「──ッ!?」

女2378(………………えっ?) チラッ


女2378の目前、不意に現れた手のひらが女の拳を受け止めた


女6「ケケケッ……惚れ惚れする突きだねぇ」 グググッ


女「……女6っ……!?」 グググッ


女「くっ……!」 バッ

女(熟女部隊隊長……既にこのエリアへ到着していたなんてっ……!) スタッ



女2378「お、女6隊長!」

女6「ケケケッ」 スッ

トンッ──

女2378「ぴぎッ──」 ビクンビクンッ!

ドサッ

女2378「」 ピクピク

女6「ご苦労さん。 もう、アンタにゃ用は無いよ」 ケケケッ


女「!?」

女(な……なによ、今の……!?)

女2378「」ピクピク

女(……死んでる……指先で額を軽くつつかれただけなのにっ……!)

保守ありがとうございます


女6「ケケッ、久しぶりだね。 守童拳の後継者」 プルプル

女「えぇ、そうね……伝説の『ゴールドフィンガー・トメ』こと女6」

女6「ケッ! なにが伝説だい……あたしゃまだまだ現役さ!」 プルプル

女「あら、ごめんなさい」 クスッ

女「ならば……今日、ここで貴女の現役生活に終止符を打ってあげる……」 ズズズ……

女「いい加減に隠居暮らしでも始めなさいよ? お婆ちゃんっ」 ズズズズズズ……

女6「ケケッ……」 クスッ

女6「ケッケッケッケッケッ!!!」 ゲラゲラ


女6「──小童がッ!!!」 クワッ


女「!」 ゾクゾクッ


女6「……快楽の極み『しみ拳』……骨の髄まで堪能させてやろう……」 コキッ コキッ


女(女6……相当な武術の使い手だと聞いた事がある……)

女(100歳を超えてもなお『童貞狩り』の部隊長として居座り続けている真の実力派……)

女(油断は出来な──)


女6「攻めんのか?」 シュタッ


女「!?」

女(なっ……一瞬で間合いをっ……!)

女6「ぼさっと立ったまま……その態度は年寄りへの余裕か?」 シュッ


トンッ──


女「──ぅ"」 ビクンッ!

ドサッ

女「…………ぁ…………ぅぁ…………」 ビクンッ ビクンッ!


女6「ケッ! この未熟者めッ」 カーッ ペッ!


少女「女さんっ!?」


女「…………ぁぁ………あっ……ぁ………」 ビクンッ


女(……なに……よ……これ……) ビクッ ビクンッ

女(……この感じ……まるで……) ビクンッ

女(…………だ、だめ…………もう……頭が……真っ……白……に…………) ビクンッ ビクンッ!



女6「ケケッ! 甘い痺れが取れぬだろう?」 クスクス


女6「……人の体には『秘悶(ひもん)』と呼ばれる隠れた性感帯が複数箇所存在する」

女6「そいつを指先で刺激し、至高の快楽を与える……それが、あたしの武術『しみ拳』さ」


女6「ちなみに、今、アンタがつつかれたヘソの下……そこは『唖苦女(あくめ)』という秘悶でね」

女6「刺激を与えられた瞬間、体中に自慰行為絶頂時のおよそ100倍の快楽が流れるのだよ」 ケケケッ


女「………ぅっ………ぁ………」 ビクンッ ビクンッ


女6「ケケッ、普通の人間なら糞尿垂れ流して、即、極楽行きなのだが──」


女「……ぐぅ……うぅううう……!」 ビクンッ ビクンッ!


女6「耐えよる耐えよる……流石だね。 何万もの童貞を筆下ろししただけの事はあるよ……」 ケケケッ

女6「あの『肉便所』で鍛え上げられた肉体には少々物足りない快楽だったかねぇ!?」 ケッケッケッ!

女「!!!」 ビクンッ ビクンッ!

女6「だが、安心しな! これから突く究極の秘悶が、きっとアンタを満足させてくれるよ……」 コキッ コキッ

女6「今度こそイけ……極楽へ!!」 シュッ

女(……悔しい……こんな……こんなふざけた奴にっ……!) ポロポロ


トンッ──


女6は指先で、悶え苦しむ女の額を軽く突いた


女「あ"──」 ビクンッ!

女「」ビクンッ ビクンッ!


女「」パタッ──


少女「そ……そんな……」

少女「女さんっ……女さぁあああんっ!!」 ポロポロ


女6「秘悶『夢性(むせい)』──」

女6「脳を揺るがし、これまでの人生で体験した全ての快楽を一気に蘇らせる究極の性感帯だ」

女6「これを味わって快楽死を免れた者は皆無……数多の性交を経験した『童貞狩り』なら尚更助かる見込みは無いだろう」 ケケッ

女「」ピクピク

女6「守童拳、敗れたりっ!!」 ケーケッケッケ!

同時刻

─ピンサロタウン・酒場─


マスター「軋むベッドの上でぇえ淫らな腰つきぃいいい♪……っと」 フキフキ

マスター「ハァ……客がいないと暇で仕方ねぇ……」 フキフキ


ガチャッ── カランカランッ


マスター(おっと、来た来たっ!) ニカッ

マスター「いらっしゃ──」


幼友「こんばんは♪」 テクテク


マスター「……」 ピクッ

マスター「……お客さん、見ない顔だね。 どっから来たんだい?」 ニカッ

幼友「ふふっ、少し遠くの地方から歩いて来たの」

幼友「だから、もうヘトヘトで……お腹すいちゃった……」

幼友「無性に『お肉』が食べたい気分だわ……」 ニタァ


マスター「ハハッ、悪いがウチは定食屋じゃないんでね。 食いモンはちょっとしたツマミ程度しか用意出来ないな」 ニコニコ

幼友「え? なに言ってるのよ」 ズズズ……


幼友「私の目の前にあるじゃない……上質そうな『お肉』がさ……」 ズズズズズズ……

マスター「!」

幼友「いっただっきますっ──」 バッ


チャキッ


幼友「!?」


マスターは、飛びかかろうとした幼友の額に拳銃を突き付けた


幼友「あら……店主のクセに随分と物騒なモノを持ってるじゃない」クスクス

マスター「これでも私は反童貞狩り(レジスタンス)の端くれでね」

マスター「血の匂いがプンプンしてたぜ? 『童貞狩り』のお嬢さんよォ……」 ググッ


幼友「ふふっ……私好みのオジサンだわ。 下の口からも食べちゃいたい……」 クスクス

マスター「そりゃ光栄だ。 だが、残念な事に私の息子はピクリとも反応していなくてね」

マスター「チ○ポの代わりに……弾丸(コイツ)をぶち込んでやるッ!」 カチッ


パァーンッ!


幼友「」 ドサッ──


マスター「……『アイツ』が命と引き換えに守ってくれた町だ……貴様らの好き勝手にはさせんッ」 ハァハァ


幼友「」 ピクピク

幼友「」 ピクッ──


幼友「」 ズズズ……





─ピンサロタウン・宿(屋上)─


ブサメン「──!?」 ピクッ

男「今のは……銃声!?」


ブサメン(この町で銃なんてエモノ持った奴は酒場のマスターだけじゃッ……!)


ブサメン「くそったれッ! 『童貞狩り』め……既に侵入しとったか!」 ダッ


タッタッタッ……


男「お、おい! ブサメン!?」


男「童貞! 俺はあいつを追って様子を確かめてくる! お前は部屋の中に隠れていてくれ!」

童貞「 えっ? 私も一緒に行く──」

男「ダメだっ! 大切なお前をわざわざ危険に晒すわけにはいかない!」

童貞「……」

男「大丈夫、すぐに戻る! もし、先に女達が戻って来た時は状況を説明しといてくれ!」

童貞「う、うん……わかった ……」

童貞「でも……その前に一つだけ──」 テクテク

ギュッ

童貞は涙を浮かべながら男を強く抱きしめた

男「!」

童貞「……気をつけてね、男……」 ギュウウウッ

男「童貞……」

男「……あぁ。 ちゃんと無事に戻ってくるから安心して待っててくれ……」 ギュウウウッ

男「ありがとな、童貞……行ってくるよ!」 スッ

タッタッタッ……


─ピンサロタウン・酒場─


ガチャッ──

ブサメン「マスターッ! 無事かッ!?」

マスター「ッ!? ……おぉ、ブサメンか!」

マスター「私は大丈夫だ」

マスター「ハハッ、まさか『童貞狩り 』が堂々とご来店とは驚いたぜ……」 クスッ

ブサメン「ふぅ、怪我が無くてなによりじゃ」

ブサメン「──いや、待て……その『童貞狩り』はどこに行った!?」

マスター「天国……いや、地獄だな。 脳天をぶち抜いてやったよ。 そこに死体が転がっているだろう? 」

ブサメン「カカッ! なんじゃ、もうくたばっとんのかい」 チラッ


幼友「」


ブサメン「!!!」 ドクンッ──


ブサメン(こ……こいつはッ……!) ドクンッ ドクンッ


マスター「どうしたブサメン? まさか、そいつに惚れちまったかい?」 ケラケラ


幼友「」


ブサメン(……あの時の……ゾンビ女……!)


幼友「」

幼友「」 ニタァ


ブサメン「!!!」



ブサメン「マスターッ!!! 逃げろォオオオオオオッ!!!」




シュバッ

マスター「えっ?」 ブチィッ──


マスターは喉元を食い千切られた

幼友「……んふっ……おいひっ♪」 モグモグ

マスター「……マジ……か……よ……」 プシュウウウ

マスター「……すまん……ブサメン……」 プシュウウウ

マスター「……今度は私が……約束……破っち……まっ……た……」 ドサッ

マスター「」 ピクピク

ブサメン「……マス……ター……?」


幼友「あー痛かった。 まさか、こんな所で『1回』死んじゃうなんて……不服だわ」 クスクス


ブサメン「…………おどれ…………」 ジュッ──

ブサメン「……よくも……マスターを……」 ジュウウウ……

ブサメン「うぉおおおおおおおおおおおおッ!!!」 ゴォオオオッ!

レスありがとうございます


溢れ出した『嫉妬の炎』がブサメンの右腕を包み込んだ


幼友「熱っ……何よこの熱気……」 チラッ


ブサメン「拳に集えッ………紅蓮の『嫉妬』ッ……!」 ゴォオオオ


幼友「って、アンタ……まさか──」


ブサメン「表に出ろやクソボケがァッ!!!」 ダッ

ブサメン「『怒りの壁殴り(アングリーフィスト)』ォオオッ!」 ブンッ


幼友「ッ!?」 ドゴォッ!!!


──ガシャアアアンッ!


強烈な打撃を受けた幼友の体は、酒場の窓を突き破り、屋外へと吹き飛んでいった


ドサッ! ゴロゴロ……

幼友「」 ピクピク


タッタッタッ

ブサメン「マスター! おいッ! マスターァアアア!」

マスター「……ぅ……」 ゲホッ ゲホッ

ブサメン「──!」

マスター「……私は……もう……ダメ……だ……」 ガクガク

ブサメン「バカタレがッ! 何を諦めとるんじゃ!」

ブサメン「今すぐ診療所に──」


ガチャッ!


男「ブサメン! 無事か!?」

ブサメン「男……!」

男「っ!? その人は……!?」

ブサメン「この酒場の店主じゃ……。 ワシの反応が遅れたせいで……『童貞狩り』にやられてしもうた……!」 ポロポロ

男「……俺に任せてくれ!」

ブサメン「えっ……?」 ポロポロ


男「……」 ヌギヌギ


男は衣服を脱ぎ捨て──全裸になった


男「『左手』……」 シコシコシコシコ

ブサメン「!?」

男(間に合ってくれよ……回復魔法っ……!) シコシコシコシコ



シコシコシコシコ……



シコシコシコシコ……



男「……くそっ……イケねぇ……!」 シコシコシコシコ

男(流石にズリネタが厳しいか……! 勃ち【たち】が悪過ぎるっ……!) シコシコシコシコ


ブサメン「くっ……ダメか……」



マスター「……ハハッ……気持ち良くなってきたぜ……酔いが……回ったみてぇに……」 ゲホッ ゲホッ

ブサメン「マスター……」 ポロポロ

マスター「……泣くなよ……元々不細工なツラが……余計、不細工に見えちまう……」 クスクス

ブサメン「……やかましいっ……!」 ゴシゴシ

マスター「……とんでもねぇ不細工だが……私にとっては世界で一番のナイスガイさ……」クスッ

マスター「……またな……ブサ……メ……ン…………」 パタッ

マスター「」


ブサメン「……」 ググッ

男「くそっ……間に合わなかった……!」

ブサメン「……マスター……おどれの仇は必ず討ったるけぇの……」 スタッ


タッタッタッ……


─ピンサロタウン・裏通り─


幼友「」


一般人「──ん!?」

一般人「だ、大丈夫か君!?」 タッタッタッ

幼友「……うぅ……」 ピクッ

一般人「どこか具合でも悪いのか!?」 ユサッ

幼友「……2回目……」

一般人「え?」

幼友「…………お兄さん……………美味しそう」 カプッ

一般人「ちょ、ちょっと君? 一体、何を──」 ブチィッ


グチャ ゴリッ ペチャッ グチャッ ベキッ バキッ……


幼友「……」 モグモグ

幼友(……あの吐き気を催す程の不細工っぷり……間違いないわね……) モグモグ


タッタッタッ

幼友「!」 ピクッ


ザッ

ブサメン「……ッ!! おどれ……町の住人まで……!」 ググッ

男「……うっ……酷い……」 ウプッ


幼友「ふふふ、久し振りねぇ不細工男。 十年ぶりかしら」

ブサメン「今度は逃がさんけぇの……覚悟せぇッ!」 ジュウウウ……

男「俺も一緒に戦うぞ! ブサメン!」 シコシコ


幼友「ん? 誰よその全裸の変態は──」 チラッ

幼友「……あれ?……あんた……もしかして男……?」

男「!」

男「……お前は……幼……友……」 ドクン


ブサメン「……!? 知り合いなのか!?」

男「……」 ガクガク ブルブル

ブサメン「おいっ!? どうしたんじゃ男っ!?」

男「こいつは……俺の……」 ガクガク ブルブル



幼友「……」


幼友「…………」 ニタァ



幼友「……ぴぎぃいいいいいあああああぁああああああああああああああああああああああああ"ぁああア"ァあああああッ!!!!!」



ブサメン「うぉっ!?」 ビクッ



幼友「ひぃいいいいいいい!!! ぴぃい"ぃいいいいいい!!!」 ブチィッ ブチィッ!


耳をつんざくような奇声を上げ──


幼友「ぴぃいぃいいいいいい!!! ぎにぃああああああアアアああ"あああ!!!」 ブチィッ ブチブチッ


己の体を引き裂きながら狂喜乱舞する幼友……


幼友「あひッ……あはは……あはははははははははははははははは!!!」 ブチブチッ ブチィッ


幼友「………………」 ピタッ


幼友「…………神様………ありがとうございます…………」 ツツー


瞳からは血のように赤い涙が流れていた



ブサメン「……狂っとる……」 ゾクッ

男「……」 ググッ


男「……あいつは青春時代を共に過ごした仲間であり──」

男「幼馴染の命を奪った『童貞狩り』だ……」 ググッ

ブサメン「!」


幼友「……ずっと心残りだったの……。 不細工男にズタボロにされた挙げ句、男を喰らい尽くす事が出来なくて……」 ポロポロ

幼友「でも……まさかこんな形であの日の続きが楽しめるなんて……嬉しい……」 ポロポロ


ブサメン(……あの日の……続き……)

ブサメン「──ッ!?」 ピクッ

ブサメン「男……まさか……おどれは……」

男「……!」


────────────


幼『う……』ピクピク

男『幼馴染……』ガクガク

美女『っ!? あの二人に早く応急処置を──』

ブサメン『んなモン構うなボケ! 目先の敵に集中せんかいっ!』


『こんな、たった二人の人間に、いちいち無駄な時間と力を使っとる場合かボケェ!』


────────────



男「……そうか……ブサメンは、あの時の……」

ブサメン「……」

ブサメン「……助かってたかもしれんな」 プルプル

ブサメン「……ワシが……美女を止めていなかったら……」 プルプル

男「……」


男「……なんで謝るんだよ」 クスッ

ブサメン「──え?」

男「ブサメンには感謝してるよ。 お前達が来てくれなかったら俺の命や『童貞』も奪われていただろうしな」 ニコッ

男「……幼馴染が死んだのは全て俺のせいだ」

男「あいつを守ってあげる力が無かったから……」 ググッ

ブサメン「男……」

男「だけど……今の俺には『魔法』の力がある……」

男「約束したんだ……過去を乗り越えて前に進むって……」

男「『わるもの』をぶっ飛ばして平和な世界を取り戻すって……」

男「大切な人達を……そして、『童貞』を守ってみせるって……!」


ブサメン「……すまん……男……」 プルプル

男「……なんで謝るんだよ」 クスッ

ブサメン「──え?」

男「ブサメンには感謝してるよ。 お前達が来てくれなかったら俺の命や『童貞』も奪われていただろうしな」 ニコッ

男「……幼馴染が死んだのは全て俺のせいだ」

男「あいつを守ってあげる力が無かったから……」 ググッ

ブサメン「男……」

男「だけど……今の俺には『魔法』の力がある……」

男「約束したんだ……過去を乗り越えて前に進むって……」

男「『わるもの』をぶっ飛ばして平和な世界を取り戻すって……」

男「大切な人達を……そして、『童貞』を守ってみせるって……!」


幼友「……ふふっ……ふひ……」 クスクス

男「それにしても……随分と変わっちまったな……」

男「変な体になって……『童貞狩り』の人間になってしまって……」

幼友「……くひッ……ふひひッ……」 ペロッ

男「でもな、幼友──」

男「お前は……俺にとって最高の友達だ 」

幼友「……え……」

男「この気持ちは今でも変わっちゃいない。 いや、二度と変わる事なんて無いっ!」

男「……思い出してみろよ……共に泣き、笑い、支え合っていた青春時代の俺達の記憶をっ……!」 プルプル

幼友「……思い出……記……憶……」


ビキッ……

幼友「──う"ぅ!?」

ビキッ…… ビキッビキッ……

幼友「……あ……頭が……痛い……!」 ヨロッ

男「もうやめろよ……『童貞狩り』なんて……」

幼友「うぅ……ああぁ……あぁ……!」 ビキッ……

男「人を傷つけて……悲しませて……何が楽しいんだよ……」

幼友「……うぅううう……痛いっ……痛いよ……」 ビキッ ビキビキッ……

男「戻って来いよ、幼と──」

幼友「あ"あああァアあああアアアッ!!!」 シュバッ!

男「!」

ブサメン「男ォオオオッ!」 バッ


ブチィッ!


同時刻 ─ピンサロタウン・宿前─

テクテクテクテク…… スタッ

女3「うーん……」

女3「オンナのカンってやつかなぁ……」

女3「この宿の中……とんでもなく強い人が隠れている気がする」 ワクワク

女3「──ね、『デっちん』♪」

???「……」

女3「もぉ、相変わらず無口だなぁっ」 プンプン

女3「……久し振りに……本気を出せるかもよ?」 ニタァ

???「!」 ピクッ

女3「あっ! 今、ピクッってなった! ピクッってなったぁっ! 」 ケラケラ

???「……」

女3「ひひひっ! もう、だいぶ溜まってるから仕方ないか」 ニヤニヤ

女3「……たぁっぷり扱(しご)いてあげるから……いっぱい出してよね……」 ズズズ……

???「……御意」


─ピンサロタウン・裏通り─


ポタ……ポタ……


ブサメン「ぐっ……!」 ポタ……

男「ブサメンっ!?」

男をかばったブサメンは右腕の一部を食い千切られていた

幼友「……ふひっ……ふひひッ……」 モグモグ

男「大丈夫か!?」

ブサメン「……馬鹿たれが……ボサッとすんな!」

男「ごめんな、ブサメン……俺のせいで……」

ブサメン「……」

ブサメン 「行け」

男「え?」

ブサメン「お前は宿に戻れ。童貞のお嬢ちゃんが心配だ……この町に入り込んだ『童貞狩り』がコイツだけとは限らんからのう」


ブサメン「それに……ただの足手まといにしかならん」

男「なっ!? ふざけんな! 俺だってちゃんと戦える──」 シコシコ

ブサメン「戦闘能力の話じゃない。 お前の『優しさ』が、だ」

男「!」

ブサメン「きっと、お前は大切な親友だった幼友(コイツ)を狂った闇の中から救い出してやろうと考えている」

男「そ、それは……」

ブサメン「そんな雑念を抱いたまま立ち向かえば……死ぬぞ?」

男「……」 ググッ

ブサメン「ここは任せておけ。 ワシが何とかしてみせる」

幼友「……くひっ……次はどこを食べてあげようかしら……」 ズズズ……

ブサメン「さぁ、早く行けっ!」


男「うぅ……」 ザッ

タッタッタッ……


ブサメン「……行ったか……」

ブサメン(これでワシも本気が出せる……)

ブサメン(男をこの場から遠ざけたかった一番の理由……それは、目の前で何度も焼き殺される親友の姿だけは見せたくなかったからじゃ……)


幼友「……あぁあああ……行かないでよ男っ!」

幼友「──ま、いっか。 お楽しみは最後にって事で」 クスクス

幼友「……ふひっ……メインディッシュの前にまずは前菜を片付けなきゃね」 ニタァ

ブサメン「おいコラ、メシになるのは貴様の方じゃボケカス」

ブサメン「今夜のメインディッシュは童貞狩りの丸焼き。 こんがり強火で調理してやるけぇの 」 ジュウウウッ

ブサメン「ただ……ワシは火加減を全く知らん料理オンチでな。 消し炭になること請け合いじゃ」 ボウッ!

幼友「……くひひ……上等っ!」 シュタッ



『ここは任せておけ。 ワシが何とかしてみせる』


ブサメン(……すまんな……男……) ゴォオオオ

ブサメン(……ワシには彼女を『完全に殺す』以外に選択肢は無い……) ゴォオオオ

ブサメン(それがワシの唯一出来る事……いや、成すべき事じゃ……) ゴォオオオ


ブサメン(……もう……彼女は『幼友』でも『人間』でも無い……) ゴォオオオ

ブサメン(男という魔法使いと出会って、ワシの中に眠っていた一つの疑念が確信へと変わった……) ゴォオオオ


ブサメン「なぁ……『童貞狩り』よ……」 シュタッ

ブサメン「おどれ達の背後にも存在するんじゃろ?」


ブサメン「もう一人の……魔法使いがッ!!!」 ブンッ



タッタッタッ……


男「くそっ……!」 タッタッタッ

男(一体、どうすればいいんだ……) タッタッタッ

男(幼友を元に戻す為に……俺は何を──)

ドクンッ

男「!?」 ピタッ

ドクンッ ドクンッ

男「な……なんだこの感じ……」 ドクンッ ドクンッ


……助けて……男……


男「──童貞っ!?」 バッ

男「……まさか……他の『童貞狩り』が宿の中に……!?」

男「くっ!」 タッタッタッ

男「今すぐ行くからな! お前は俺が守るっ!」 タッタッタッ



─ピンサロタウン・宿─


ドカァアアアンッ!


店主「うぉっ!?」 ビクッ

女3「お邪魔しまーすっ♪」 テクテクテクテク

店主「な、なんだぁっ!? 」

女3「んー……」ジー

女3「オジサンは違うね……全然『強さ』を感じないや」 テクテクテクテク

店主「お、おい! ちょっとアンタ! なに入口の扉ぶっ壊して入ってんだッ!? 」 バッ

女3「えーと、二階への階段は……っと」 キョロキョロ

店主「コラァ! 無視してんじゃねぇぞ!」 ガシッ

女3「なんだよぉ、うっさいなぁ……」 ブンッ

グチャッ


童貞「……な、何だろう、今の音」 ガクブル

童貞「怖いけど……ちょっと様子を見てみようかな……」 ソロソロ

ガチャッ


店主「」 ピクピク

女3「んあ?」 チラッ

童貞「!?」 ビクッ

童貞「あ……あなた……誰っ!?」

女3「……」 ジー

童貞「……?」 ガクブル

女3「……へぇ……」 ニタァ

童貞「ひいっ!」 ガクガクブルブル


童貞(……なに……この人……) ガクガクガクガク

……まるで『恐怖』の塊……いや、『恐怖』そのもの……?


女3「……アタリだね……」 テクテク

童貞「や、やめてっ! 来ないでぇっ!」 ガクガクブルブル

女3「……ビンビン感じるよ、君の中に秘められているチカラ……」 テクテク

童貞「……いやっ……いやぁっ!」 ガクガクガクガク

女3「……あはは……イっちゃいそうだ……。 久しぶりだよ、こんなに興奮するの……」 ニタァ

童貞「……ぁ……ぃぁっ……」 ガクガクガクガクガクガクガクガク


女3「……さァ、始めようか……血湧き肉踊る最高の殺し合いをっ!」 ブォンブォン ──ビシッ!

女3は手に持っていた身の丈ほど長さのある『棒』を軽々と振り回し、構えをとった


童貞(……助けて……) ガクガクガクガク

童貞(……助けて……男っ……!) ガクガクガクガク


女3「……」 ジリッ

童貞「……助けて……」 ガクガクブルブル

女3「そんな演技とかどうでもいいからさぁ……」 ブォンッ

ドカァッ!

童貞「きゃあっ!」 ガクガクブルブル

女3「さっさと始めようよ」 ブォンッ

ドカァッ!

童貞「ひぃっ!」 ガクガクブルブル

女3「……ねぇ、もしかして本当にビビってるの?」

女3「次はマジで当てちゃうよ? ほら、かわしてみなよッ!」 ブォンッ

バキィッ!

童貞「あぅ"ッ!!!」 ドサッ

女3「ありゃ? 」 ポカーン

童貞「……ぅ……」 ゲホッ ゴホッ


女3「ちょっとちょっとぉ! メチャクチャ弱いじゃんか!」 プンプン

女3「おっかしいなぁ……底知れぬチカラを秘めているのは間違いないハズなんだけど」

童貞「……ハァ……ハァ……」 グググッ

女3「なんで本気を出してくれないんだようっ!」 ジタバタ

童貞「……うぅっ……」 ガクッ


女3「だったらさぁ──」 ズズ……

女3「ボクが本気を出せばいいのかな……?」 ズズズズズズ……


童貞「!」 ガクガクブルブル


女3「『デっちん』……フルパワーでいくよ……」 ズズズズズズ……

???「……御意」 ゾクゾクッ

女3「はぁああああああっ……!」 ゴゴゴゴゴゴ


童貞「……」 ガクガクブルブル

女3「ばいばい、さようなら」 ゴゴゴ……

女3「それがイヤならチカラで対抗してね、カワイ子ちゃんっ」 ゴゴゴ……

童貞「……」 ガクガクブルブル

童貞「……怖くなんかないもん……」 ボソッ

女3「?」 ゴゴゴ……

童貞「……怖くない……怖くないっ……!」 ガクガクブルブル

童貞「あなたなんて全っ然怖くないんだからぁあああっ!!!」 ガクガクブルブル

女3「……んで、それだけ?」 ゴゴゴ……

童貞「……男がきっと助けに来てくれるから……『わるもの』なんてやっつけてくれるんだからぁっ……!」 ポロポロ

女3「ふーん、よくわかんないや。 もういいよ、死んで」 ブォンッ!



タッタッタ……


男「童貞ぇええええええッ!!!」 シュタッ

女3「!?」 ピクッ

童貞「──あ」


男「うおぉおおおおおおッ!!!」 ブンッ

女3「ッ!!!」 ドゴォッ!


ズドォオオオン……


女3「……うぅ……」 パラパラ……


男「……ハッ……ハッ……」 ゼェゼェ

童貞「……ほら……やっぱり来てくれた……」 ポロポロ

男「童貞! 大丈夫かっ!?」 ガシッ

童貞「……世界で一番カッコいい魔法使い……私の大好きな男……」 ポロポロ

男「遅くなってごめんな、童貞。 くそっ、俺がバカだった……!」 ギュウウウ

童貞「ううん、ありがとう、男。 ……ふふっ、もう私を一人にしないでね……?」 ギュウウウ

男「あぁ……いつでも俺たちは一緒だ! もう二度と離すもんかっ!」 ギュウウウ


女3「……いたた……」 ムクッ

女3「あーあ、奥歯がイッちゃった……」 ペッ

女3「……最っ高だね……」 ニタァ


女3「よいしょ、っと!」 スタッ

男「童貞の綺麗な肌に痛々しい痣(あざ)を作りやがって……! 絶対に許さねぇ……!」 ギリッ

女3「許さなかったらどうすんの?」

男「ぶっ飛ばす!」

女3「えへへ、そうこなくっちゃ!」 ニヤッ


女3「お兄さんは楽しませてくれそうだね」 ブォン ブォン ブォン ──パシッ!

男「棒術使いか……それにしても気持ち悪い『棒』だな。 チ○コみたいな形しやがって」

女3「気持ち悪いってなんだよーっ! 可愛いでしょうが!」 プンプン

女3「『魔棍ディル・ド』……僕は『デっちん』って呼んでるんだけどね!」

女3「実際、この魔棍の先端部分は男性器をモチーフに作られてるらしいよ」 ツンツン

魔棍「オゥフッ!」 ビクンッ

男「なっ!? (今……あの棒が喋ったのか……!?)」

女3「あははっ! デっちんったら敏感過ぎ!」 ケラケラ

男「もしかして……少女を女7として操っていた『魔剣』と同じ類の……!?」

女3「そうそう! 意志を持ち言葉を話す不思議な武器。 女1ってば一体どこでこんな珍しいモノを見つけてくるんだろうねー」 クスクス


女3「──ん? 魔剣の事を知ってるって事は部隊長達を倒したのは君らなのかな?」

男「……」 ググッ

女3「……あっ、わかった!」


女3「お兄さんってさ……最後の童貞でしょ?」 ニタァ


男「くっ……!」 ゾクゾクッ

女3「へへっ、その顔は"当たり"だね 」 クスクス

女3「最高の殺し合いに加えて筆下ろしまで出来るのか……あぁヤバいっ! 興奮して、またイキそうになってきたよ……!」 ワクワク

男「この変態がっ! 誰がお前なんかに童貞を捧げるもんか!」 シコシコ


女3「さぁ、そろそろ始めるよデっちん!」 ズズズズズ ……

魔棍「御意」

男(来るっ……!)


女3「そぉ……れっ!」 ブォンッ

男「──うぅッ!」 ドゴッ!

女3「ほらほらほらァッ!」 ブォン ブォンッ

男「がッ……!」 バキッ! ドカッ!

男(な……なんて素早い棒捌きだ……!) ゲホッ

女3「あははっ! まるでサンドバッグだね、お兄さんッ!!」 ブォンッ

男「うぐぁっ!」 ドゴォッ!

ズザザザザザッ

男「げほっ……げほごほっ!」 ドバッ


童貞「男っ!?」

男「く、くそぉ……! 棒の動きは見えてるのに──」 ガクガク

女3「体の反応が追いつかないんでしょ?」 クスクス

男「!」

女3「あはは、ダメだねぇお兄さん。見えてからじゃ遅いよ! 予測して避けなきゃ到底無理だって!」 ケラケラ

男「……うるせぇっ!」 ブンッ

女3「ふんふーん♪」 サッ

男「このっ……!」 ブンッ

女3「よっ、と」 サッ

女3「あちょーっ♪」 ズバッ

ドゴォッ!

男「……う……あ……」 ゲホッ……

ドサッ

男「……」 ハァ ハァ


童貞「そんな……男が手も足も出ないなんて……」 ガクガク


女3「うーん、身体能力に関しては申し分ないと思うんだけど」

女3「なーんか動きが素人臭いんだよね。 君さぁ、あんまり実戦経験無いんじゃないの?」

男「……」 ハァ ハァ

女3「はぁ……また肩すかしを食らっちゃったなぁ。 ほら、早く立ちなよ」 ガシッ

男「……ぅ……」 グイッ

女3「おーい! 元気かーっ! 本気出してんのかーっ!」

男「……げほっ……」 ハァハァ

女3「あちゃー、ダメだこりゃ」 ガックシ

女3 「逝ってよしっ!」 ブォンッ


ドグシャアアア……


男「」 ドサッ

童貞「男ぉおおおおおお!!!」


女3「あーあ、本当はここで殺すの勿体ないんだけどさぁ……」 テクテク

女3「今はお偉いさんの命令に背いてる身だからね。 サクッとトドメを刺して筆を下してあげたら帰らなきゃ」 クスクス

男「」

女3「ばいばい♪」 スッ

──ガシッ

女3「ん?」

童貞「……まだまだ勝負はこれからよ……こ、今度は私が相手なんだからっ……!」 ガクガクブルブル

女3「……」 クスッ

女3「ぶるぶる震えちゃって……可愛いね、君」 ブンッ

童貞「あぅ"っ!」 ドゴッ!

女3「なんなら先に死ぬかい?」 ブォンッ

童貞「がふッ……!」 メキッ


ドカッ バキッ ボコッ……


男「」


……懐かしい……。


全身を突き刺す恐怖……。


直感する絶対的な力の差……。


童貞「……あぅ……あ"……っ……」 ドカッ バキッ ズドッ


目の前で壊されていく……愛する人……。


男母『……あぅ……あ"……っ……』 ドカッ バキッ ズドッ


……あぁ……なんて懐かしいんだ…… 。

…………俺は…………この絶望を知っている…………。


男父『……』 ニタァ


童貞「……ぅ……」 ドサッ


男「」





男(小) 『……』 ガクガクブルブル


……また……失うのか……?


男父『ククク……ガッハッハッ!』 ビリビリッ!


男(小)『……』ポロポロ





男「……」 ギリッ



男「……冗談じゃ……ねぇっ……!」 グググ……


女3「!?」 ピクッ

男「……もう……悲しみなんて懲り懲りだ……!」 グググ……

女3「あはは! なんだぁ、まだ立てるじゃんかっ!」 クスクス

男「……」 ハァ ハァ

女3「でも……そんなボロッボロの体でボクとまともにヤり合えるのかな?」 クスクス

男「……勝てなくてもいい……」 ハァハァ

女3「え?」

男「勝ちたいんじゃない……!」 ハァハァ

男「俺は……守りたいんだよッ!!! 愛する人を……大切な童貞をッ!!!」

童貞「……男……」 ポロポロ



パァアアア……


女3「!」 ゾクッ

男「……はぁ……はぁ……」 パァアアア……

女3(『気』の流れが……変わった!?)


──この時、男はまだ気付いていなかった


男「……はぁ……はぁ……はぁ……」 パァアアア……

女3「……今度こそ楽しませてよね?」 ニタァ


命を賭しても守りたいという想いが、無意識のうちに新たな魔法を発動させていた事を……



女3「とうっ♪」 シュタッ

男「……」 ハァ ハァ

女3「おりゃあああっ!」 ブォンッ──


ゾワッ


男「!」

男(……あれ……なんだろう、この感覚……) ゾワゾワッ


男(……右か?) サッ


女3「!」 スカッ


女3「……ありゃりゃ? 避けられちゃった 」 ポカーン

女3「えへへっ、マグレにしては良い反応じゃん!」 ブォンッ ブォンッ

男「……」 サッ サッ

女3「むぅ……!?」 イラッ

女3「このっ! このっ! このぉおおお!」 ブォンッ ブォンッ ズバッ

男「……」 サッ サッ サッ

女3「なんで……なんで当たらないのさっ!?」 ズババババッ

男「……」 ササササッ



男(……全身に伝わってくる……) ゾワゾワッ


男(奴の呼吸……視線……筋肉の僅かな動き……『気』の流れ……) ゾワゾワッ



女3「うりゃあああっ!」 ブォンッ

男(これなら──次に来る手が読めるっ!) サッ


女3「あぁもうっ! 一体、どうなってんだようっ!?」 ハァ ハァ



─童貞界─

秘書「……童帝……あの『魔法』は……!」 ブルッ

童帝「うむ……。 フォッフォッ、男め……その若さでソレを習得するとはのう……」 ゾクゾクッ

秘書「『脳内絶頂(ドライオーガズム)』……己の集中力を限界まで引き上げ、第六感を研ぎ澄ませる補助魔法……!」

童帝「射精を伴う『波童砲』や『フェイスフラッシュ』を"動"の魔法とするならば、『ドライオーガズム』は射精を伴わず発動させる"静"の魔法じゃ」

童帝「だからと言って魔力を消費しないわけではない。 長時間の発動は禁物じゃ。 賢者タイム(魔力0の状態)に突入すれば勝機を完全に失ってしまう」

秘書「しかし、これで男がかなり有利になったのではないでしょうか?」

童帝「……」

秘書「童帝?」

童帝「ようやく五分五分……いや、まだそれ以下かもしれん……」

秘書「そ……そんな……!?」

童帝「あの『童貞狩り』No.3は規格外のツワモノじゃ。 今の男にはちと荷が重過ぎる」

童帝「──あとは『童貞』次第じゃな。 この勝負、一番の鍵を握るのは彼女になるだろう」

秘書「!」



─ピンサロタウン・宿─


女3「えいっ!」 ズバッ

男「……」 スッ


男(……もっと感じるんだ! 奴の全てを……!) ゾワゾワッ


女3(ちっくしょー……これならどうだっ!) ブォン

男「!」


男(……踏み込む距離……速度……腕の振り幅……魔棍のリーチ……) ゾワゾワッ

男(そこから導き出される答えは──フェイントか!) ピタッ

女3(ウソっ!? これも読まれてるっ!?) ピタッ


女3「こんにゃろぉおおっ!」 ブォン

男(次は足払い……) ゾワゾワッ

男(と、見せかけてそのまま上方へ振り上げるっ……本当の狙いは顎だ!) サッ

女3「なっ!?」 スカッ


男(ここで……奴の無防備になった脇腹へ拳をたたき込むっ!) グググッ


女3(──とか思ってるんでしょ?) ニヤッ


男「!」 ブンッ

女3「甘いよ」 サッ


男(強引に体を捻らせてかわしやがった……!)

女3(んふふぅ♪ これで"詰み"だね、お兄さんッ! ) ブォンッ


男(──そう来ると思ってたぜ) ニヤッ


ドゴォッ!

男「うぐっ……!」 メキメキッ

男(けどな……無理矢理放たれたその反撃には初撃のような力強い"踏み込み"が足りねぇっ……!) メキメキッ

男(それなら立ったままなんとか耐えられる痛みにまで威力は落ちてるはず……俺の第六感はそう教えてくれていたのさ! ) グググッ

男「肉を切らせて──」 ガシッ

女3「!?」

男「ツラ殴るッ!!!」 ブォンッ

ドグシャアアア……

女3「……あふぇ……?」 フラッ

男「うぉおおおおおおおおおッ!!!」 ズババババッ


女3「……あ"っ……うぐぇっ……ぁ……」 ドカッ バキッ ズドッ

男「おおおおおおおおおおおおッ!!!」 バババババッ

女3「……」 ドカッ バキッ ズドッ

男「おおおおおおおおおおおおッ!!!」 バババババッ

女3「……」 ドカッ バキッ ズドッ


女3「……ぅ…… ぁ……」 ガクッ


男「『右手』! ……これで……フィニッシュだぁあああッ!」 シコシコシコシコ……ビクッ ビクンッ!


男「『波童砲』ォオオオオオオッ!!!」 ドビュッシィイイイ!


ズドォオオオン……


白濁した閃光と共に、女3は屋外へと吹き飛んでいった

パラパラ……

男「ふぅ……」 ハァ ハァ

男「……やった……」 ハァ ハァ

男「打ち勝ったんだ……あの日と同じ『絶望』に……」 ハァ ハァ

ギュウッ

男「!」

童貞「守ってくれてありがとう……カッコ良かったよ、男……」 ギュウウウ

男「童貞……」 ギュウウウ

男「痛かっただろ? 今すぐに怪我の治療をしてやるからな」 シコシコシコシコ

男(──良かった、『フェイスフラッシュ』 一発分の魔力と精力は残ってるみたいだ) シコシコシ──ビクンッ

童貞「……んっ……ぁ……」 ドピュッ ドピュッ

パァアアア……

男(これでよし! あとは一刻も早くブサメンのところへ行かないと……) フゥ……

男(幼友……お前は絶対に救い出してみせるからな!) フキフキ



─ピンサロタウン・表通り─


ヒュウウウ…… ──ドシャアアアッ!


女3「……」 ピクピク

魔棍「……」

女3「……あ」 ピクッ──

魔棍「?」

女3「……あー…………あー…………」

魔棍「……」

女3「…………あー…………やば……」 プルプル

女3「──んッ……あぁ"あっ……!」 ビクンッ ビクンッ

魔棍「……」


女3「……えへへ……イッちゃった……♪」 ハァ ハァ

魔棍「……いつまで遊んでいるつもりだ」

女3「うっさいなぁ。 少しくらいボクのこと心配してくれても良いのに」 クスッ

魔棍「……」 シーン……

女3「あぁもうっ! ホンット可愛くないなっ!」 ムスッ


女3「……」 ハァ ハァ

女3「はぁ……幸せな気分だけでイッちゃうなんて久しぶりだよ……」 サワサワ

ドロッ……

女3「見て見て、デっちん。 綺麗な血……」

魔棍「……」

女3「『悪魔の子』にだって流れてる……真っ赤で綺麗な血……」 ドクンッ──

魔棍「!」

女3「……やだな……」 ドクンッ ドクンッ

女3「こんなに幸せなのに……また……独りぼっちになっちゃう……」 ゴゴゴ……

ゴゴゴゴゴゴ……


─ピンサロタウン・宿─


ゴゴゴゴゴゴ……

男&童貞「!」 ゾクッ

童貞「……これは……!?」 ガクガクブルブル

男「……くそっ、まだ終わっちゃいないってか」 ブルッ


男(マズいぞ……。 もう、魔力はほとんど残ってない……) ブルブル

男(だけど──)


童貞「……」 ガクガクブルブル

男「……童貞」 ギュッ

童貞「!」

男「行こう。 ……大丈夫、俺たちならどんな『絶望』だって乗り越えていけるさ」 ギュウウウ

童貞「……うんっ!」 ギュウウウ


男(逃げるわけにはいかないんだっ! )



─ピンサロタウン・表通り─


ゴゴゴゴゴゴ……


男「……」 ザッ


ゴゴゴゴゴゴ……


男「……やっぱりそっくりだよ、お前は」

女3「……」 ゴゴゴゴゴゴ……

男「あの飲んだくれ野郎の顔が浮かんできやがる」

女3「……」 ニタァ

男「!」 ゾクゾクッ



男(……へへっ……参ったな……) ガクガクブルブル


男(怖くて声が出ねぇ……体も指一本動かせねぇ……) ガクガクブルブル


男(もう──)



男(小)(……もう……ダメだ……)



男(小)(……俺は……今日、ここで死ぬ……)




女3「……お兄さんさんはさ……どんな時に幸せを感じる?」 ゴゴゴゴゴゴ……

男(小)「……あ……ひッ……!」 ガクガクブルブル

女3「美味しいモノを食べてる時? あったかい布団で眠ってる時?」 ゴゴゴゴゴゴ……

男(小)(……やめろっ……来るな……っ!) ガクガクブルブル

女3「えっちな妄想して自慰に浸ってる時? 可愛いオンナの子のそばにいる時?」 ゴゴゴゴゴゴ……

男(小)(……いやだっ……死にたくないっ……!) ガクガクブルブル

女3「……ボクはね……今、この瞬間が──」 ゴゴゴゴゴゴ……

女3「とぉっても、幸せ♪」 ニコッ

男(小)(……助けて……母ちゃんっ! 母ちゃあああああああん!!!)





童貞「男ぉおおおおおおっ!!!」




男「──はッ!?」 ビクッ

男(体……動くっ!) ニギッ


女3「でもね……多分、これでお別れ」 シュタッ


男(……情けねぇ……童貞の前で俺がビビってどうすんだよっ……!) グググッ

男(最後まで諦めるな! 研ぎ澄ませろ……第六感ッ── ) ゾワゾワッ


メキョッ


男「……あ……れ?」 メキメキッ……

ドカッ ボゴッ メキッ バキッ ズドッ!

男「ごふッ……」 ドバッ

バキッ ドカッ メキッ ズドッ ボゴッ!



男(……全然……見えねぇよ……) ドカッ バキッ ボゴッ



女3「あははははははははッ!」 ブォンッ──

ドグシャアアア……

男「……」 ドサッ


童貞「あ……あああ……」 ガクガクブルブル

男「……」 ピクピク

女3「残念。 お兄さんの魔力はもう空っぽ」

男「……」 ピクピク

女3「……同じ魔法使いでも『パパ』には遠く及ばない。 ま、それでも結構楽しめたからボクは満足だよ」 ニコッ

男「……」 ピクピク

童貞「……」 ポロポロ

女3「えへへ、最後に面白いモノ見せてあげるね」 ズズズズズ…


女3「お待たせ、デっちん」 ニギッ

魔棍「!」 ピクッ

女3「しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ♪」 シコシコシコシコ

魔棍「──ぬふぉおおおオオオオオッ!!!」 ビクンッ ビクンッ


女3は魔棍の先端部を激しく扱きだした


女3「お兄さんがさっき撃ってた魔法……」 シコシコシコシコ

魔棍「ふひゅあああアアアアッ!!!」 キュイイイン…

女3「デっちんも使えるんだよ?」 ニコッ


童貞「……」 ポロポロ

男「……ごめんな……童貞……」 ゲホッ…ゴホッ…

童貞「……」 ギュウッ

男「諦めたくないけど……体……もう動かない……」 ハァハァ

童貞「……」 ギュウウウ

男「早く……逃げてくれ……」

童貞「私も一緒に行く」 ギュウウウ

男「……」 ググッ


男「ちくしょうッ……また……守ってやれないなんて……」 ポロポロ

童貞「ううん、男はもう充分守ってくれた。 こんな私の為に……ずっと……命を懸けてまで……」 ポロポロ

男「……」 ポロポロ

童貞「ありがとう……男……」 ギュウウウ


女3「ばいばい、お兄さん達」 シコシコシコシコ

魔棍「イグぅううウウウウウウウウッ!!!」 キュイイイン… ビクンッ ビクンッ

男「……」 ギュウウウ

童貞「……」 ギュウウウ

女3「さぁ、解き放てッ……『魔童砲──」





「艶やかに死にな」





女3「ッ!?」 ゾクッ

「『昇天ペガサスMIX波』ァアアアッ!!!」 バシュウウウッ!


ズドォオオオオオオンッ!!!


シュウウウ……


女3「うぅッ……!」 ゴホッ ガホッ

「久しぶりだな、ボクッ子」 クスクス

女3「……悔しいなぁ。 君みたいな弱者の気配に気が付かなかったなんて……」 グググッ


男「……助かった……のか?」

童貞「あっ!……あの人……!?」


「ケッ! よーく覚えときな」

ギャル「男を殺していいのはこの世で私だけなんだッ!」


女3「……あっそ」 スタッ

男「ギャル!?」

童貞「ギャルさんっ!」


ギャル「チッ……!」 ギロッ

男「あ、ありがとう。 助かったよ」

ギャル「……おいおい、寝ぼけてんのか?」 ズズズズズ…

童貞「!?」

ギャル「テメェが死ぬ事に変わりはねぇんだよ」 ズズズズズ…

男「くっ……!」 ビリビリッ

ギャル「くらえ……アゲハ神拳奥義『トルネード花魁アッパー』 ァアアアッ!」 ブンッ

男(ダメだ……やられる!)




ギャル「……」 ──ピタッ

男「……え?」 チラッ

ギャル「決着は第4ラウンドでつける」 クルッ

男「!」

ギャル「ズタボロのテメェに勝ってもつまんねーし」 チッ…

男「ギャル……」 クスッ

ギャル「きょ、今日はもう勘弁してやらぁ! けどな……私に殺される前に勝手にくたばったりしたら絶対に許さねぇからっ……!」 テクテク

男「ありがとう……」

ギャル「……」 チッ

男「第4ラウンド……必ずやろうな。 オトコとオンナの約束だ」 ニコッ

ギャル「ッ……!」 /// ドキッ

ギャル「気色悪ッ……! ニコニコすんな童貞野郎がッ!!!」 ///

童貞「ふふっ……」 クスッ



ギャル「──さってと。 人の獲物横取りしようとするクソボクにはお仕置きしなきゃな」 ザッ……

女3「帰りなよ、ゴリラちゃん」

ギャル「……」 パキッ パキッ

女3「君なんか殺す価値も無い」

ギャル「あーそうですかい」 パキッ ポキッ

女3「……」

ギャル「ビビってんならテメェが帰れっつの」 クスクス

女3「……あはは、やっぱ殺そ♪」 ズズズズズ…

ギャル「!」 ゾクゾクッ

女3「ボクはどうでもいいんだけど……デっちんが寸止めくらって怒ってるからね」 クスクス

魔棍「フゥーッ……フゥーッ……!!!」 ゴゴゴゴゴ…

ギャル「ギャハハハハッ! ……大人のオモチャが欲求不満だなんて笑わせるぜッ!」 ズズズズズ…


童貞「ねぇ、男……ギャルさんの体って……」

男「あぁ。 俺との戦いで傷だらけになっていたはずなのに……」


ギャル「ハァアアア……!」 ズズズズズ…


男「綺麗さっぱり完治している。 どういう事だ?」 ゴクッ

童貞「……」 ゴクッ

男「それに……なんだか前よりも……」


ギャル「アアアアアアアア……!」 ズズズズズ…


男「色っぽく見える……のは気のせいか?」 ドキドキ

童貞「た、確かに……!」 ドキッ


ギャル「……」 ズズズズズ…


ギャル(ハッ……人のことなんて言えねぇよな……) ズズズズズ…

ギャル(私はあの場所で死を覚悟していた) ズズズズズ…

ギャル「……」 クスクス

女3「?」


ギャル(……人生、何があるかわからないモンだぜ) ズズズズズ…

ギャル(男……テメェとの出会いもそうだけど……まさかあんな奴がこの地に紛れ込んでいたなんて……) ズズズズズ…


ギャル(ケッ、少し気に食わねーけどさ……) ズズズズズ…

ギャル(感謝してるぜ……『慈愛の魔女』さんよッ!) ズズズズズッ!


女3「はぁー……」 ブォンブォンッ ──パシッ

ギャル「……」 ズズズズズ…

女3「所詮、その程度の『気』…… 全然濡れないよ」

ギャル「……」 ズズズズズ…

女3「君の師匠、モデルさんが相手だったら少しは興奮するんだけどねぇ」 クスクス

ギャル「……」 ズズズズズ…

女3「あの世できっと泣いてるよ。 アゲハ神拳最後の伝承者がこんな出来損ないなんだから」 ケラケラ

ギャル「……」 ズズズズズ…

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年01月28日 (火) 18:27:37   ID: ra4kEcSQ

面白いです。楽しみに待ってます。

2 :  SS好きの774さん   2014年04月16日 (水) 04:23:19   ID: BHfI4dWY

うっはああ続きが気になるううう

3 :  SS好きの774さん   2015年02月09日 (月) 01:43:05   ID: lrDLXFQK

まだかな

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