司祭「勇者が裏切っただと・・・?」(286)

司祭「勇者は、3年前から行方不明だったではないか。今さら、それを裏切りだと教会は判断したのか!?」

使い「それが1ヶ月前に、突然帰還しまして。」

使い「そして、周囲にこう言い回ったのです。」

使い「『魔物と手を取り合うべきだ。』と。」

司祭「それで勇者は、今はどうしてる?」

使い「首都の地下牢に。間もなく処刑されるとの噂です。」

司祭「ということは。」

司祭「私のところにも、やがて教会の兵士がやってくる可能性が大きいと。」

使い「ええ。なにせ、かの勇者を推挙したのは・・・。」

司祭「私だ。私が勇者を教育し、鍛え上げた。」

使い「えぇ。ですから急いでお支度を!」

司祭「ならぬ。」

使い「は?・・・しかし、それでは司祭様が。」

司祭「私のことは大丈夫だ。・・・それに、仮に私が助かったとしよう。」

司祭「そうなると、教会のトップは責任を別の者に矛を向けるだろう。そうなると、我々一派を異端とするかもしれない。」

使い「司祭様が、かつて長を務められた水の守護派の全てにですか。」

司祭「あぁ。15年前、危うく異端扱いされるところを、何とか私が首都から遠ざけられることで存続したのだ。」

使い「ただでさえ、司祭様をこんな僻地に追いやり・・・」

司祭「それは聞き捨てならないな。我が王国の端、隣国との係争地とは言え、ここには300人という人々が暮らしておるのだ。」

使い「・・・失礼しました。しかし、それでは・・・司祭様は私や私の村の人たちを、救っていただきました。それなのに、私たちはまだ何も司祭様に・・・。」

司祭「私は聖職者です。ですから、そのようなものはお気持ちで充分です。」

司祭「私はこのまま天に向かいましょう。ですが・・・」

使い「ですが・・・?」

司祭「勇者はまだ早すぎます。まだ16年しか生きてません。死ぬには早すぎます。」

使い「し、しかし、それでどうやって勇者様を助けるのですか?」

司祭「簡単です。処刑される前に、脱獄させてしまえばいいんです。」

使い「ですから、その方法は・・・!?」

司祭「それは・・・あの方に任せましょう。」

使い「あの方?」

―5日後、首都・ギルド館内にて

使い「ということで、お願いします。」

?「・・・はぁ?」

使い「ですから、引き受けて下さいと。」

?「だから、何で俺なんだよ!」

使い「司祭様が、あなたが一番地下牢を知っていると。」

?「そりゃあ、そうだけどよ。」

使い「お願いします。元脱獄王の盗賊様。」

盗賊「その名で呼ぶな!」

盗賊「・・・くっそーあのじじぃ!」

使い「じじぃではありません。司祭様です。」

盗賊「どっちでもいいわ!」

使い「その司祭様が、命を無くそうとしてまでも勇者様を助けたいのです。司祭様だけではありません。司祭様や勇者様を知る者はそう願っております。あなたは、私たちの希望なんです!」

盗賊「・・・で・・・?」

使い「?」

盗賊「・・・報酬は?」

使い「無いです。」

盗賊「・・・やっぱりな。」

使い「あ、一つ伝言です。」

盗賊「何さ。」

使い「地下牢から盗むのは、勇者様だけでお願いしますとのこと。」

盗賊「・・・ち、ちくしょー!」

使い「・・・引き受けていただけますか?」

盗賊「この報酬で引き受けると思ってるのか、お前は?」

使い「思います。何せ、司祭様がおっしゃられてましたから。」

盗賊「・・・だから、駄目なんだよこの国は!いや、この世界は!いいか、耳くそほじってしっかり聞けよ!」

盗賊「教会が言ったからだの、司祭様が言うからだの、上司に命令されたからだの、皆、自分の意志をどこに捨てやがった!神様の言うこと絶対だからと、自分の考えを捨てて逃げやがって!それを生きてるとは言わないんだよ!畜生!」

使い「ですが・・・。」

盗賊「なんだよ!」

使い「勇者様は、自分の意思を尊重した結果、今まさに処刑されようとしています。」

盗賊「・・・だから助けるんだろう。」

使い「では!」

盗賊「じいさんの言いなりになるのは、癪に障るんだけどな。」

使い「ありがとうございます!」

―首都・市場の歩道にて

盗賊「しかし、東の端の村から10日とはな。通常なら1ヶ月かかるところをか。かなり急いで来たんだな。」

使い「えぇ。何せ時間が惜しかったですから。」

盗賊「しかも、じいさんを連れて行く兵士に見つかったらやばかっただろうしな。」

使い「司祭様です・・・それは、昼間は目立たずに夜に一気に街道を走りましたから。」

盗賊「時間か。しかし、時間がないのは痛いもんだな。」

使い「司祭様が、一応時間稼ぎをしてくれるとのことですが・・・。」

盗賊「なんか嫌な気がした・・・どうやったんだよ・・・?」

使い「兵士たちが、司祭様を首都の神殿まで連れて行くか、あるいは亡くなられたことを報告したら、直ちに勇者様は処刑される可能性がある。ですから、私が旅立つ直前に、村人に炭のすすを身体に付けるよう嘆願されまして。」

盗賊「すす!?」

使い「えぇ。そして、村の教会に看板を立てました。『ペスト患者収容所』と。」

盗賊「・・・じいさん、本当に聖職者かよ!?詐欺師じゃねーのか!?」



見てる人いるんですかね・・・初めてのSS製作なんで、たどたどしくてすみません。。。

使い「・・・司祭様です。ところで、どちらに向かわれてるのですか?」

盗賊「そりゃあ、情報が無いまま挑むのはバカだからな。まずは準備だ。」

使い「しかし、時間が・・・。」

盗賊「分かってる。でも、情報が無いよりマシだし、もしかしたら何か掘り出し物が出てくるかもしれない。」

使い「・・・分かりました。で、どちらに。」

盗賊「ここだ。」

使い「・・・ここって。」

盗賊「そうだ。本当なら夜に来たいんだがなぁ。・・・入るぞ。」

使い「こんなところで、何を求めるんですか!」

館の主「・・・ひどいですわね。いきなり、ズコズコ入ってきたと思ったら、『こんなところ』とは。」

使い「い、いえ。そ、そういうわけでは・・・!」

盗賊「なに、偉そうに言ってるんだよ。まさしく『こんなところ』じゃねーか。」

館の主「失礼ですわね。少なくとも、初めて出会う人とあなたには言われたくありません。」

盗賊「・・・棘のある言い方しやがって。えーとな、この方は東の端の村の修道院の使いって奴だ。」

使い「・・・はじめまして、さきほどは失礼しました。」

館の主「まっ、気にしなくてもいいよ。気にしなきゃいけないのはこの人だからね。」

盗賊「うるさい。で、これがこの娼婦館の女主人。自称17歳。」

館の主「・・・殴るわよ?」

盗賊「ま、実際はチョメチョメだけどな。」

使い「・・・仲が宜しいですね。」

盗賊・館の主「違う!」

館の主「・・・ゴホン。で、何の御用なんですか?」

盗賊「あぁ。情報がほしいんだ。」

館の主「それは分かってます。あなたは何の情報を求めてるのですか?」

盗賊「・・・地下のことだ。」

館の主「・・・そうですか。」

使い「(・・・空気が変わった・・・。)」

館の主「それなら、政庁に近い娼婦館で、明日の夜の予約に兵士様が20名ほど入ってまして。」

盗賊「なるほど、地下牢の兵士どもの入れ替えは、明日ってことか。」

館の主「ええ、おそらく。」

使い「な、なんでですか?」

館の主「地下牢の兵士は、基本的に一定期間は休日なしで働くのです。その間は、ずっと地下牢に勤めるのです。」

使い「ということは、明日が勤務交代の日で、地下牢の兵士達は仕事上がりに女性を求めると・・・?」

館の主「えぇ・・・おそらくそうだと。」

盗賊「・・・妙だな。」

使い「え?」

使い「なにか気になることでもあるのですか?」

盗賊「あぁ。なぜこの時期に変わるか、ということさ。」

使い「時期?」

盗賊「そう、その時期だよ。だってよ、今は勇者という囚人を抱えてるんだぜ。そんな大事な時期に、監視の兵士を変えるなんてアホの極みだろ。なぁ?」

館の主「・・・えぇ。」

使い「確かに。」

盗賊「誘ってるとも思えるんだよな。」

使い「我々をですか?」

盗賊「と言うよりは、教会のトップが嫌がる人たちだ。」

使い「・・・てことは・・・。」

館の主「もしかしたら・・・水の守護の一派ですか。」

盗賊「あぁ。」



ネタ切れないうちに、書きまくらなきゃw書いてる本人さえ、展開が読めねぇ。。。

使い「・・・それでは、それでは、教会の狙いは勇者様でなく、かつて司祭様が率いた水の守護派の殲滅だと。」

館の主「その可能性は捨てきれぬ。」

盗賊「勇者は罠ってことか。・・・はぁ、その罠にわざわざかかりに行けということなのかよ。」

使い「でも、それでは勇者が・・・!」

盗賊「分かってるよ、やるよ、・・・やってやるよ。」

使い「ありがとうございます。」

盗賊「しかし、ただ脱獄させるだけでは、水の守護派にも害が及ぶ。やれるか?」

館の主「えぇ。私のことを舐めないでいただきたいものです。」

盗賊「舐めてなんかねーよ。ま、引き受けてくれるんなら、安心して頼めるってことだ。」

館の主「・・・報酬は?」

盗賊「・・・この俺がただ働きしようとしてるのに、そんなこと言うのかよ、お前は!?」

館の主「冗談です。ところで、連絡はもう今すぐするとして・・・」

盗賊「決行日だろ。」

使い「え、明日ですよね?」

盗賊「なーに言ってんだよ、今日だよ、今日。」

―首都・某所にて

?「準備は出来ました。」

?「・・・そうか。」

?「ところで・・・」

?「・・・何かあったのか?」

?「東の端の村の件です。派遣した兵士なのですが・・・。」

?「聞いておる。足止めされてるそうではないか。」

?「えぇ。おそらくあの司祭が何か策を・・・。」

?「べつによい、あれには死を賜ればよい・・・。」

?「それはもう無意味かと。」

?「無意味・・・だと?」

?「えぇ。派遣する前、一応命じときました。何かあればすぐに殺せと。」

?「そうか。ではあとはまかせる。」

?「はっ、神のために。」

面白いの?ねぇ、面白いの?www

書いてて、面白く思われてるのかめっちゃ不安w

支援

>>19-21
ありがとう!頑張る!!

―首都・某所、廊下にて

王国付司祭「近衛長官殿。」

近衛長官「あぁ、お前か。私の話は終わった。教皇様は、これから祈祷の時間に入るのだが、何か御用か?」

王国付司祭「いえ。私はあなた様に御用がありまして。」

近衛長官「何だ?」

王国付司祭「東の端の村の件ですが・・・。」

近衛長官「あぁ。兵士がペスト感染の恐れがあるからと隔離されてることか。」

王国付司祭「えぇ、その件ですが、今のところ誰も発症していない模様です。」

近衛長官「てことは、ペストでは無かった・・・ということか。」

王国付司祭「と言うより、ペスト自体、無かったことかと。」

近衛長官「・・・ふむ。」

王国付司祭「そろそろ、兵士達の隔離も終わらせないと、報告が受け取れませぬ。」

近衛長官「いや、念のためだ。もう少し隔離していてもかまわん。」

王国付司祭「しかし、それでは・・・。」

近衛長官「報告の予想はつく。その辺は任せておけ。お前は、例の件を進めばよい。」

王国付司祭「・・・分かりました。・・・それと、一応確認したいのですが・・・。」

近衛長官「あぁ、神殿府の地位な。教皇様に、確約は取っておいた。貴様に相応しき地位を用意してある。」

王国付司祭「あ、ありがとうございます。よ、よろしくお願いしますぞ。では、私は準備がありますので・・・。」

タッタッタッ・・・

・・・

近衛長官「・・・聖霊なる神殿の地位か。国の裏切り者である貴様には、これが一番よ・・・。」

ね、眠いwww

仮眠取ったら書くんで。沈んだらすまぬ。

いい仮眠が取れた。再開するね。

―首都・政府庁にて

側近「また書状ですか?」

聖錬王「あぁ、また教会からだ。」

側近「またですか。」

聖錬王「またなんだ。」

側近「全く進歩がないですね。」

聖錬王「あぁ、教会ってのは、いつでもそうらしい。」

側近「・・・今度はなんと?」

聖錬王「地下牢の勇者の件で、その待遇に対する文句だ。」

側近「相変わらずですね、教会は。だいたい、国家ってものを道具にしか見てないんですよ、彼らは。」

聖錬王「・・・よく言う、元々は教会のスパイだったくせに。」

側近「・・・それは昔のことです。」

聖錬王「ま、俺はそういうのを気にしないからな。」

側近「それは御父君譲りのようで。」

聖錬王「じゃなきゃ、おばさんが今頃こんな所で側近やってないだろうな。」

側近「・・・殴りますよ?」

聖錬王「冗談だ。しかし、部下に殴られるのを示唆される王ってのも情けないものだ。・・・教会はそのことを知って無茶言うんじゃないか?」

側近「だとしたら、余程素晴らしい耳をしているんでしょうね、教会は。」

聖錬王「全く侮れんな。」

側近「そうですね。」

聖錬王「・・・準備は?」

側近「地下牢に一人送り込んでます。」

聖錬王「・・・いけるか?」

側近「本当は、もう少し時間が欲しいです。」

聖錬王「・・・時間か。そうか、この国は、時間までも教会に支配されているのか。」

側近「そこまで悲観することありませんでしょうに。」

聖錬王「・・・だが、多くのことが教会に支配されているのは事実だ。どうしようもない・・・などと思ってしまうのは、性に合わんが。」

側近「私もです。」

聖錬王「勇者を何とか解放する・・・それだけでも、教会から一つ、カードを握ることが出来る。」

側近「教会からの支配を弱くするためのですか。」

聖錬王「それは分からぬ。だが、勇者は民衆を精神的に絶対支配している教会に抗った、唯一の存在だ。・・・今のところはな。」

側近「正直言って、驚きました。」

聖錬王「・・・だから、と言うと強欲だが、決して大国でない我が国家を強くするためにも、必要なのだ。」

側近「・・・強くですか。」

聖錬王「あぁ。決して軍事力とか支配力とかではない。民衆に活力を与えると言えばいいのだろうか。」

側近「・・・えぇ。」

聖錬王「・・・それにだ。勇者は我が国民だ。国民を救えずして、どうして王と名乗れようか。」

―首都・地下牢

文官「待っていただきたい!」

教会兵士長「なにを待てばいいというのだ。」

文官「少なくとも、ここは我が国の管轄内。いくら背教者を抱えているからと言って、教会がここまで口を出すのはいかがと!」

教会兵士長「それがどうした。」

文官「ですから・・・」

教会兵士長「それで貴殿は何をお望みかと。」

文官「我が国の管轄を侵害しないでいただきたいと言ってるのだ。」

教会兵士長「では、私ども教会のすることが気に入らないと。」

文官「・・・そのようなことは申しておらん!」

教会兵士長「なら、許せ。」

文官「・・・しかし!」

教会兵士長「それとも何かね、文官殿。貴殿は、錬王国の民衆を路頭に迷わせたいとでもお思いか?」

文官「・・・!」

教会兵士長「そうではなかろう。なら、お願いする。貴殿の力量で、勇者以外の囚人を他の監獄にでも送ってくれ。邪魔だ。」

文官「しかし、私の一存では決めることは出来ぬ・・・!」

教会兵士長「では、さっさと政府庁に問い合わせるが良い。我々としても、教会に従順たる錬王国が廃れるのを見たくは無い。」

文官「・・・くっ、失礼する。(この禿の坊主崩れめ・・・!)」

タッタッタッ・・・

教会兵士長「よし、勇者の監視はしっかりしておけよ。俺は、別のところに用事があるから、少し出るからな。」

教会兵士A「はっ、かしこまりました。」

・・・

教会兵士B「けっ、人使いの荒いこった。」

教会兵士C「なーに、いつものことだ。」

教会兵士D「いつものことだから、困るんだよ!」

ハハハハ・・・

教会兵士E「しかし、他の囚人を別の所へと輸送するなんて、何かあるんですか?」

教会兵士B「あぁ、お前は1月前からこっちに来たのだから、知らんのか。」

教会兵士E「え?」

教会兵士C「あの禿、飛びっきりの守銭奴でよ。きっと、どこかで儲け話でも仕入れてきたんじゃねーのか?」

教会兵士B「あぁ、違いねぇや。」

教会兵士C「きっと、懐も頭もピカピカに磨いてるに違いないな!」

ハハハハ・・・

教会兵士A「うるさいぞ、お前ら!口ばかり動かしてないで、しっかりしないか!」

教会兵士A「それにだ。勇者の処罰に対し、一部の不平分子どもが何かしでかす可能性がある。だから、特にこの数日は気合を入れてもらうぞ。」

教会兵士C「けっ、そしたら、そいつらは斬ってもいいてことだよな?」

教会兵士A「教会には向かうならやむを得まい。ただし、略奪は禁止だ。」

教会兵士C「ちぇっ、それじゃあ斬る意味ないじゃないか。」

ハハハハ・・・

教会兵士A「ともかく!支払われてる賃金分ぐらいの仕事はしろ!」

教会兵士D「へいへい。」

教会兵士A「なら、さっさと持ち場につけ!」

教会兵士B「兵士長は守銭奴に、こっちは石頭ときた。たまったもんじゃないぜ、なぁEよ。」

教会兵士E「えっ・・・えぇ。」

教会兵士E「(・・・ということは、我々の作戦に気付いてるということなのか・・・?)」

教会兵士E「(いや、そうだとしても、計画の実行に支障は無い。それにだ、どう見ても何か探っての行動では無かった・・・。)」

教会兵士E「(だが、本当に思いつきなのだろうか?囚人を全て移送するとなると・・・。一応作戦としては、囚人を身代わりにする予定だったが・・・。)」

教会兵士E「(しかし、囚人でなくてもいいのは事実だ。少なくとも、ここの兵士の誰かでも良い。)」

教会兵士E「(・・・どっちにしろ、私が勇者を救わなければ・・・そうでなければ、我々一族代々の汚名が雪がれん。これは、王から賜った唯一の汚名返上の機会なのだから・・・。)」

教会兵士D「おい、どうした、深刻な顔をして。さては、何か物資でも横流しをしたのか?」

教会兵士E「え・・・、いえ、そ、そういうわけじゃ・・・。」

教会兵士D「本当かよ、どっちにしろ、あの守銭奴と石頭に怒られないよう考えとけよ!」

教会兵士E「え、えぇ。・・・そうならないよう、気をつけます。」

見てるよ
あと仮眠長かったなおいwww

―首都・地下牢入り口にて

御用商人「では、そのように計らせていただきます。」

教会兵士長「うむ。ところで・・・」

御用商人「それでしたら、いつもの倍の20でどうでしょうか。」

教会兵士長「2割か、悪くない、悪くない。そうさせてもらおう。」

御用商人「では、よろしくお願いします。また夜に・・・。」

教会兵士長「あぁ、待っている。」

タッタッタッ・・・

・・・

>>36
ありがとう!
そういうツッコミを受けると、神奈川一筋の関西魂が嬉しがるのでよろしく!

―首都・地下牢へ続く道の路地裏にて

御用商人「どうだ、そっくりだろう。」

使い「ええ。すごいですね。」

御用商人「これが、魔石の力って奴だ。」

使い「はじめて見ました。全く感心させられます。ところで、この被験者である、このお方はどうします?」

御用商人「そうだね、あと2、3日ぐらいは大人しくしてもらおうか。」

使い「それも魔石の力を使ってですか?」

御用商人「ああ、衰弱して死なれても困るからな。ちょっと仮眠してもらおうか、・・・ねぇ御用商人さん?」

御用商人「むー、むー!」

御用商人「何言いたいか、分からねーな。マスク外してやりたいとこだが、叫ばれても困るんでね。」

使い「そうですね、偉くて悪な御用商人似の盗賊さん。」

シュゥゥゥ

盗賊「・・・たまに酷い毒はくよな、自分?」

使い「いえ、そんなことないですよ?」

盗賊「自分と他人の評価は違うもんだぞ?」

使い「気のせいです。」

盗賊「大体、頼んだのは自分じゃないか。」

使い「引き受けてくれたんですから、文句言わないでください。」

盗賊「ふんっ。」

御用商人「むーっ!むーっ!」

盗賊「捕まっている間も銭勘定のことでも考えてるのか?盗賊よりも守銭奴だな、おい。」

使い「そういえば、あの兵士長は凄い守銭奴らしいですよ?」

盗賊「あぁ、おかげで金のことばかり考えてくれたから、俺の変装見破れなかったな。」

使い「そんな簡単に分かるものなんですか?」

盗賊「いーや、そんなことないぜ。この魔石を舐めないでもらいたいものだな。」

使い「でも、舐めさせないと、その人の姿をインプット出来ないなんて、少し不便ではありますね?」

盗賊「・・・確かにな。ちくしょう、この魔石どんだけ唾液混ざってるんだ。」

使い「そう思うと、不衛生でしょうがないですね。無理矢理舐めさせられた、このお方を憐れたく思いますね。」

盗賊「まぁ、いいんじゃないか。今まで、どれだけ人の不幸の上に、金貨を積み上げてきたことか。」

使い「全く感心させられます。」

御用商人「むー!」

盗賊「あっ、そうそう。御用商人に朗報がひとつあるんだ。」

御用商人「むー、むー!」

盗賊「化けてる間に、お前さんの屋敷に小商人ってのが来訪してよ。」

使い「小商人?」

盗賊「あぁ、意外と図太い奴での。金貨100枚で、北の海への輸送委託を願ってきたんさ。」

使い「それで?」

盗賊「あぁ、面倒だからと言って断ろうとしたら・・・。」

使い「?」

盗賊「色々あって、金貨90枚で委託してやった。」

御用商人「むーっ!むーぅ!びゃー!むーっ!」

盗賊「そんなに嬉しがるとは、いいことしたなぁ、俺。」

使い「辛辣ですね。」

盗賊「ま、そういうわけだ。あ、あと、あの守銭奴には、いつもの倍を払うよう約束したので、それもよろしく~。」

御用商人「むーっ!!!」

・・・

使い「寝てしまいましたね。」

盗賊「あぁ、今頃は現実逃避な夢を見ている頃だろう。」

盗賊「ところでさ。」

使い「はい?」

盗賊「例の小商人にな。」

使い「え?」

盗賊「ばれた。」

使い「え・・・。えええええっ、まずいじゃないですか!!」

盗賊「安心しろ、だからこうやって契約を結んだんじゃないか。」

使い「えっ・・・、北の海へのですか?」

盗賊「そうだ、途中で乗り換えることにした。西に逃げるのではなく、北へ行く。」

使い「それって・・・。」

盗賊「そういうことだ。」

使い「しかし、何故ばれたんですか?」

盗賊「それがよ、勘だってよ。」

使い「はい?」

盗賊「か・ん。」

使い「そんな簡単に分かるものなんですか?」

盗賊「そんなことないだろう。一応、ばれたのは奴だけだ。」

使い「恐ろしいですね。」

盗賊「・・・恐ろしいのはな、この作戦変更をすらすらと出したのが奴だってことだよ。」

使い「・・・?」

盗賊「分かんねーのか、奴は最初から勇者を助ける作戦に乗っかるつもりだったってことだ。」

使い「・・・その小商人さんは、水の守護派なのですか?」

盗賊「いや、違うみたいだ。それに、仮に奴が一派の一員であるとしたら・・・」

使い「したら?」

盗賊「逆に水の守護派の勢力が強い西部地方に、逃げるようすすめるだろ。」

使い「・・・考えてみれば。」

盗賊「なんにせよ、奴に関しては、とりあえず味方だ。」

使い「罠の可能性は?」

盗賊「分からん。」

使い「それじゃ・・・!」

盗賊「しかし、どっちにしろ、今日実行しなきゃならんだろう。」

使い「確かにそうですが。」

盗賊「まぁ、任せろ。あと、奴に関してはあの女主人に調査してもらおう。時間がないのが気がかりだが。」

使い「ええ、分かりました。」

―錬王国・某所にて

?「準備はどうだ?」

?「手抜かりはありません。」

?「頼むぞ、これは我々一派にとって生存を賭けた戦いだ。」

?「はっ。」

?「よし、では明日早朝、例の場所にだ。万が一の場合は、西街道を駆けるようにな。」

?「仰せの通りに。」

タッタッタッ・・・

西の司祭「はぁはぁはぁ、・・・殿。」

?「なんだ、西の司祭ではないか。わざわざ遠くからやって来て、しかめっ面するとは何事か。」

西の司祭「勇者の奪還の件ですが・・・。」

?「・・・その忠告は、もう聞き飽きた。」

西の司祭「・・・しかし!あなたがたのやってることは、クーデターのようなものなんですぞ!それは、我々水の守護派にとって、民衆の命と精神を守るという原則に反する行為ですぞ。」

?「何を言う。我々水の守護派は、今までどれだけ酷い目にあってきた事か覚えているだろう。」

西の司祭「確かにそうです、そうです。しかし、だからといって勇者を力づくで奪取し、その力を利用しようなど・・・!」

?「それのどこが悪い。」

西の司祭「何をおっしゃられる!」

?「だいたい、貴殿のような穏健派がいるから、あの権力派を甘えさせてきたのではないか!見よ、彼らが大主教の地位を得てからの活動振りを!度し難い姿ではないか!」

西の司祭「確かに権力派の行為には、目が余るものです。しかし、それを力で上回ろうなど・・・!」

?「上回ろうとしてるのではない、ある程度の秩序が必要だと言っているのだ。そのために勇者の力を少し拝借しようとしているだけだ。」

西の司祭「それは詭弁です!」

?「詭弁なものか!」

西の司祭「私には受け入れられません!」

?「受け入れろっ!」

西の司祭「何を言うのですか、司祭様がおっしゃられてたじゃないですか。民衆から目をそらすな、力に溺れるなと。」

?「しかし、彼は今は我々一派のトップではない。もうただの地方の司祭ではないか!」

西の司祭「司祭様を侮辱する気か、この過激派!」

?「黙れ!我々水の守護派同志とは言え、許さんぞ!」

西の司祭「許されなくても止めてみせます!」

?「黙れ!邪魔をするな!!!」ザシュッ・・・

西の司祭「あっ・・・あっ・・・」ドスッ・・・

?「ハァハァ、貴様は同志とは言えどこまでも不愉快な奴であったことよ。」

タッタッタッ・・・

?「・・・様。何を叫んでおら、・・・!こ、これは西の司祭殿!何があったのですか、・・・様!」

?「・・・私が奴を斬った。」

?「・・・な、なぜ!」

?「こいつは、我々をたぶらかそうとし、それが無理と分かって裏切ろうとした。だから斬った。」

?「・・・。どうされますか?」

?「魔物に取り付かれて発狂した・・・そう公表しよう・・・。いや、待て。逆に権力派に咎めを受けるかも知れぬ。よし、衣服を剥ぎ、大河に流せ。」

?「大河ですか・・・。」

?「そうだ、それなら誰だかわからなくなる。いいか、側近よ。我々の作戦に失敗は許されない。少しでも邪魔するものは取り除く必要があるのだ。」

?「・・・分かりました。」

?「・・・これまで、どれだけ我々は蔑まれていたことか。なんと恥辱の日々だったのだろうか。しかし、もう耐える必要が無いのだ。勇者の力によって。そう、なのに、何故こいつはその事を分かろうとしなかったのだ・・・!」

ちょっと流れが分かりにくくなっているから少しまとめ。まず人物。

勇者
かつて水の守護派を率いた司祭によって、鍛えられた若者。錬王国出身。「魔物が住む地」に探検隊として出発後、3年間行方不明だったが突然の帰国。そして、「魔物と手を取り合う」ことを求めたため、教会により処刑されそうになっている。

司祭
かつての水の守護派の総統であったが、権力派との抗争に破れ下野。東の端の村に避けられ、ここで司祭を続けている。

使い
東の端の村出身。司祭の身の回りの世話を担当していたが、特に水の守護派との関係はない。妙に落ち着きがあり、その冷静さを司祭は買っていたと思われる。

盗賊
錬王国にて活動中。かつて捕われ、地下牢にいたことも。このとき、何度も脱走を成功させていたため、脱獄王の異名を取る。結局、満期で地下牢を出ることになる。司祭との面識がある模様。

館の主
娼婦館の女主人。情報屋でもあり、世界中の情報を常に手にしようとしている裏の面も。盗賊とは腐れ縁。

まとめその2。人物。

聖錬王
錬王国、第34代の王。父王の死により引き継ぐ。父王とは、容姿だけでなく性格も似てる模様。教会に牛耳られる王国の姿を嘆く若者でもある。

側近
聖錬王の書記であり、また1番の側近でもある。実は教会から派遣されていたスパイだったが、父王の姿を間近に見ていたことで転向する。父王の遺言を守り、聖錬王を補佐する。ただし、性格は悪い。

近衛長官
教会の守備を司る近衛隊の長官。そのため、教皇に一番近く、その意を受け暗躍している。なお、近衛隊の下にも教会兵士隊も存在するが、その力は歴然としている。

王国付司祭
教会から各国に司祭が派遣されており、この地位に付くものは、多くが神殿府の意向を重視し、国を蔑ろにしている。錬王国に派遣された彼も同様で、聖錬王の若さを馬鹿にしており、また神殿府に戻ることを願っている。

教会兵士長
教会兵士隊は、多くが修行を投げ出したものによって構成される。そのため、士気・素行が悪く批判の対称になりやすい。小隊長である彼も、教会所属を盾にやりたい放題の守銭奴である。

教会兵士A
そのくせに、なぜかこんな生真面目な奴も出てくる。不思議としか言いようが無いが、何分人望がない。石頭と称される。

教会兵士B~D
結局こんな奴の集まりである。ちなみに、Cは何気に博識である。

教会兵士E
地下牢の看守に派遣される小隊に、1月前に所属した若い兵士。実は・・・。

まとめその3。人物。

御用商人
盗賊により拘禁、眠らされる。守銭奴の隊長と色々やらかしており、これまた守銭奴。

小商人
一応商人ギルドに所属している。それ以外はただいま館の主が調査中。

?(未だ判明していない奴その1)
っていうか、教皇。言っていいのか、ってなるけど、まぁ分かるでしょ。近衛長官と話していました。

?(未だ判明していない奴その2)
水の守護派の過激派のトップ。権力派に敗れたことを恥辱に思い、その再興のために勇者の力を利用しようとする。

?(未だ判明していない奴その3)
2の部下。それ以外不明。

西の司祭
司祭と同期であり、水の守護派に所属。穏健派であったが、自分の仕事を投げ打ってまで過激派の暴走を止めに行くが、斬られて死亡。

とりあえず、人物は今のところこんなもん。

まとめその4。組織など

教会
聖霊を崇める一神教。民衆の信仰は強く、そのため、国に指示できる権力を握ることが出来た。
錬王国の首都に、本部の神殿府がある。治外法権になっており、まさしくそこは他国となっている。
現在の教皇は、権力派である。

権力派
教会の力を強くすることで、民衆の統一を図ることを目的とした一派。教会から民衆へのスローガンは、民衆から教会への水の守護派と対立し、その抗争に勝つことで権力を手にした。

水の守護派
錬王国の西に存在する、水王国の神学校を出身にした者により形成された一派。水王国は、当時民衆への重い課税から王が倒されており、その事件を目撃していた司祭などが、民衆を守ることを目的に立ち上げた勉強会から発展したもの。
ただし、権力派との抗争に敗れたことで、総統であった司教は東に流され、解体状態となった。

錬王国
北に北の海、東に赤公国、西に水王国が隣接する。現在の王は聖錬王。ただし、首都の一部が神殿府として治外法権になるなど、他の国よりも教会の力を受けていた。特に権力派がトップに立ったことで、その意向がさらに強くなっており、衰退しかけている。

東の端の村
300人ほどしか住まない小さな村。すぐ近くに赤公国との国境があり、戦争の影響を受けやすい。世紀に2回は国が変わるとも。


とりあえず、こんなところかな。方向性は見出したんだけど、なにぶん適当に書き出してることもあり、読者(いるかは知らんが)はもちろん、作者も分からなくなってきたのでとりあえず作りました。

また分かりにくくなったら、書くんで、その旨言って下さいね。

まとめ、ひとつ忘れてた。

魔石
魔法を使うための石。用途は様々である。これを使用せずに魔法を使えるものは魔法使いと称される。

―首都・地下牢にて

教会兵士E「交代の時間だ。」

教会兵士B「お、やっとか。頼んだぜ。」

教会兵士E「異常は?」

教会兵士B「そんな固くなんなくて結構。この連中はいっつも不満ばっかでうるさいし、こっちの囚われの勇者はほれ、いつもの通り静かにしてるよ。」

教会兵士E「分かりました。」

教会兵士B「まったく、嫌んなるぜ。うるさい野郎どもに、こっちは寡黙な少女ときた。へっ、勇者じゃなきゃ、さっさとやってしまいたいんだがな!」

教会兵士E「・・・。」

教会兵士B「まっ、あれでも勇者だ。何されるか分かったもんじゃねーぞ、気をつけとけよ。あんなベッピンな顔をしてやることは悪魔だろうよ!」

教会兵士E「えぇ・・・。」

勇者「・・・。」

教会兵士B「それにだ。仮に襲っても、こんな胸板を弄っても楽しくねぇからな!ハハハハ!」

勇者「・・・黙れ。」

教会兵士B「お、久々にしゃべったかと思えば、自分の身体のこと言われて気にしてんのか?えぇ?」

勇者「・・・。」

教会兵士B「黙ってたら分かんねーんだよ、このクソガキ!てめーは背教者なんだぞ、舐めてんのか、こらっ!」

教会兵士E「・・・もう時間です、貴重な時間を無駄にする必要なんてないでしょう・・・。」

教会兵士B「その無駄な時間を作ったのはこいつじゃねーか、ちくしょう。」

教会兵士E「とにかく、変わりましょう。」

教会兵士B「あぁ、そうさせてもらうよ。右耳ばかりに不満声が聞こえるから嫌になるぜ。ほれ、気をつけろよ。」

教会兵士E「えぇ、ありがとうございます。」

タッタッタッ・・・

教会兵士E「(さてと・・・。どうしたものかな。)」

勇者「・・・何ジロジロ見てる?」

教会兵士E「・・・いや、別に。」

教会兵士E「(勇者にどうやってこれを渡すか・・・。)」

教会兵士E「(とりあえず、今は私を含めて5人。下手に行動すると不味いわけだが・・・。)」

教会兵士E「(とは言え、水の守護派も動きが近いとあの方も言っている。・・・けど、時間はないが焦りは禁物だ。)」

教会兵士E「(どうやって、これを渡すかだが・・・。どうしたものか。)」

わーっ!

囚人A「おいてめぇ、なにしやがる!」

囚人B「へっ、ちょっと夕方の運動でよっ!」ゴツン!

囚人A「っつ、いてーじゃねーかよ、この野郎!」ゴツン!

囚人B「てめーのこと、以前からむかついてんたんだよ!このアンポンタンめ!」

囚人A「何をっ!」

囚人C「へっ、やっちまえー!」

囚人D「てめぇもな!」

わーわーわー・・・

教会兵士A「ちっ、また喧嘩か。おい、止めるんだ!四六時中暴れては困るんだ、早く抑えろ!」

オイ、ハヤクダマランカ!
ウルセェ!コノハゲ!
ナニヲ!

教会兵士A「っ、おいE、勇者はお前とあと隣の奴でしっかり見張ってろ!」

教会兵士E「わ、分かりました。」

教会兵士E「(・・・運がいい。たまたまだが、これはチャンスだ・・・とはいえ、まだもう一人がいる・・・。どうにかして、勇者にこれを渡せないものか。・・・よしっ。」

・・・

教会兵士E「・・・。(気付いてくれよ・・・。)」

勇者「(・・・何、じっと見てるんだ。私は何もしないぞ・・・?)」

教会兵士E「(よし、こっちに気付いたようだ。相棒は、時折向こうの騒動を気にしてくれてるようだ・・・。)」

勇者「(何挙動不審になってるんだ、あいつは。騒動はこっちじゃない、向こうだろ。お前は私のことを監視するんだろ。)」

教会兵士E「(・・・今だ。)」

ポトン・・・

勇者「(んっ、今何かを・・・。)」

チラッ・・・ パシュっ・・・

勇者「(!!っつ、いきなり小石を落としたと思ったら、蹴ってこっちに・・・。・・・あ。)」

勇者「(・・・これは、小石じゃない。・・・魔石だ。)」

勇者「(もう一人は気付いてなさそう・・・。・・・これを私に渡すためにってことか?とりあえず・・・他の奴にばれないように・・・。)」

・・・勇者は、ふと気配を消すと、尋常ではないスピードでその小石を手にした・・・。そう、誰も気付かれずに。

教会兵士E「っ!」

ンッ。オイ、ドウシタ!

教会兵士E「いや、なんでもない。少し向こうを気にしただけだ。」

勇者「(・・・なんだ、いきなり。魔石を持った瞬間・・・。)」

教会兵士E「(・・・分かりますか、勇者様。)」

勇者「(・・・!)」

教会兵士E「(気付いてくれて、ありがとうございます。)」

勇者「(・・・これは、転意石ですか?)」

教会兵士E「(えぇ、ばれないよう持っていて下さい。・・・私は、あなたを助けにやってきました。)」

勇者「(何故?)」

教会兵士E「(一応、国からの命令です。・・・聖錬王様が、あなたを助けるために私をこっそりここに。)」

勇者「(・・・。)」

教会兵士E「(・・・とにかく、転意石を離さず持っていて下さい。それを手にしないことには、こうやってコンタクトが出来ませんから・・・。)」

勇者「(・・・大丈夫ですか?・・・一瞬、気を失いそうに・・・。)」

教会兵士E「(えぇ、大丈夫です。副作用で、どうしても最初は、立ちくらみがありまして。でも、これからは大丈夫ですから。)」

勇者「(・・・私は・・・別に助けてもらう必要なんか・・・。)」

教会兵士E「(そんなこと、言わないでください。)」

勇者「(・・・私は・・・ただ・・・。)」

教会兵士E「(あなたの経緯は知っています。・・・その志を捨ててはいけません。)」

勇者「(・・・ありがとうございます。・・・少し妬け気味だったのかもしれません。)」

教会兵士E「(とにかく、もう少ししたら助け出しますので・・・。)」

勇者「(はい。・・・どうやら、騒ぎは収まってきたようですね。)」

教会兵士E「(そうみたいですね。すみません、その魔石、小さくしている分、長い距離ではこうやって転意することが出来ませんので・・・。)」

勇者「(分かりました。)」

・・・

教会兵士A「よし、そのままAとBは懲罰牢に入れておけ!もう少ししたら、引き取ってくれる。」

ハッ、ワカリマシタ

教会兵士A「おいE!異常は無いか!」

教会兵士E「特に何も。」

教会兵士A「よし、では持ち場に戻れ。」

教会兵士E「了解しました。」

教会兵士A「おい、お前も何か異常は無かったか?」

ナニモアリマセンデシタ!

教会兵士A「よし、全員さっさと持ち場に戻るんだ。急げ!」

教会兵士E「(勇者様。またあとで。)」

勇者「(はい。)」

・・・

―1時間半後

教会兵士A「よし、立ち位置を変えろ。いつも通り、時計回りにな!」

ハイッ

教会兵士E「(・・・しかし、最低な軍隊の癖に、このアイデアは優秀だな。)」

教会兵士A「早く動け!」

ハイッ

教会兵士E「(監視位置を、短時間で次々と移動させる。集中が切れがちなタイミングを見計らって、移動させることで何とかこの集中力を維持させている。特にこんな、やわな軍隊には有効だろう。)」

教会兵士A「よしっ、移動が終わったな。監視を続けろ!」

ハイッ

教会兵士E「(弱点としたら、引継ぐときか・・・だが、所詮教会軍のだらしなさは元々なんだから、特に大きな問題でもない・・・というところか。)」

教会兵士A「勇者監視をしっかりしろよ、次はEだったな!頼むぞっ!」

教会兵士E「ハッ。(まぁ、おかげでこうして勇者に近づけるんだが・・・。・・・勇者様、聞こえますか?)」

勇者「(・・・はい、大丈夫です。)」

教会兵士E「(先ほどは失礼しました。)」

勇者「(いえ。・・・ところで、どちら様・・・ですか?)」

教会兵士E「(あぁ、まだ名乗っていませんでした。すみません。私、一応こうして教会軍の兵卒ですが・・・。)」

勇者「(・・・?)」

教会兵士E「(実は、出がある貧乏な貴族の三男坊でして。)」

勇者「(貴族?)」

教会兵士E「(えぇ。建前としては、教会によりなんとか保護されている貴族です。領地など、これっぽちも持たない貴族です。いわゆる、騎士ってとこですね。」

勇者「(騎士さんですか・・・。)」

教会兵士E「(身分上では一応そうなります。ですが、元々我々一族は、錬王国に恩義がありまして。内緒なんですがね。)」

勇者「(それで、あなたが・・・。)」

教会兵士E「(と言うより、たまたま教会に預けられていた私が、どうにかしてこの隊に入ったわけです。父からそれを示唆する手紙が届いたとき、私は修行の身でしたから。)」

勇者「(私が捕まってから・・・だいぶ急いで潜入したんですね。)」

教会兵士E「(いえ、・・・勇者様が戻る半年前から、行動していました。ですから、その指示に驚いたんですよ、私は。)」

勇者「(えっ。・・・半年前から?)」

教会兵士E「(そうです。)」

勇者「(でも、そのときって、私はまだ行方不明だったんでしょう?)」

教会兵士E「(えぇ。・・・ですが、父は、おそらく勇者様が帰ってくるだろうと。そして、勇者様がこうやって騒動に巻き込まれる可能性と、錬王国に圧をかけようとする教会の姿も想像していました。)」

勇者「(えっ、・・・てことは!?)」

教会兵士A「おい、E!もうすぐ、御用商人が引き取りに来るからな!監視しつつ、こっちの作業も忘れないでくれ!」

勇者「(!)」

教会兵士E「(・・・っ!)は、はいっ、わかりました。(では勇者様、また後で・・・。脱獄の方法も、お話ししないといけませんので。)」

勇者「(わ、分かりました。・・・あの・・・?)」

教会兵士E「(はい?)」

勇者「(Eさんのこと・・・騎士って呼んでもいいですか?)」

教会兵士E「(騎士ですか?えっと、そんな拙い私をそう呼ぶのは全然構いませんが・・・。)」

勇者「(ありがとう!あ、私のこと、ただの『勇者』って呼んで結構ですから・・・。様って呼ばれるの、慣れてなくて。)」

騎士「(分かりました、勇者様。・・・あっ。)」

勇者「(ふふふ。)」

勇者「(あっ、行っちゃった。・・・なんか、じーっと見られるの、恥ずかしくなってきたんだけど。)」

勇者「(さっきまで、死んじゃえとか、倒れちゃえとか、そう思ってたのに。・・・変なの。)」

勇者「(・・・でも、騎士のお父さん、なんで私が帰ってくること知ってたんだろ。)」

勇者「(あそこは・・・誰も知らないはずなのに。)」

勇者「(あそこは・・・。んーんっ、なんだか思い出してきちゃった。)」

勇者「(ダメダメ、そんな気持ちになっちゃ。)」

勇者「(・・・あそこに。あそこに帰りたくなってきちゃった。私馬鹿だよね、司祭様。)」

勇者「(あそこが好きになったって言ったら、どんな顔するかな・・・。)」

コツコツコツ

勇者「(!誰かきた・・・。)」

面白くなくなってきたんじゃないかと、恐れ恐れする日々www

くどいなーと自分でも思ってますが、もし良かったら続けてみて下され。

見て下さいがみて下されになってました。すみません。

兵士長「・・・では、よろしく頼むぞ。」

御用商人「はい、仰せのままに。」

勇者「(あれは・・・片方は、ここの偉い人だけど・・・もう一人は誰だろう・・・。)」

御用商人「ところで・・・」

兵士長「むっ?」

御用商人「東の端の村の方で、流行り病が出ているとか・・・。」

兵士長「あぁ、ペストがな。」

勇者「(・・・東の端の村でペスト!?)」

兵士長「実際起きているかは、まだ調査中でな。だから、まだ公表してはいないのだが・・・それがいかがされたか?」

御用商人「えぇ、これから護送する囚人たちが、全員予防措置を取られているかどうかと、思いまして。」

兵士長「なに?」

御用商人「いえ、もしこの地下牢にペストが持ち込まれていたら、護送中に大きな問題があると思いますが。」

兵士長「・・・大丈夫だとは思うのだが・・・。」

御用商人「それなら結構なんです。ただもし、ここの囚人たちが感染していれば、我々護送隊だけでなく、西の街道に大きな影響を及ぼす恐れがあります。そのような事態に陥れば、我々だけでなく、兵士長様にも責任が及ぶものかと・・・。」

兵士長「・・・それは困る。うむ、困る、勘弁してもらいたい・・・。では、輸送は避けるべきかな・・・?」

御用商人「いえ、予防をしていれば、その責任は少なくとも、兵士長様が被る必要は無くなると思います。」

兵士長「むっ。しかし、うちの軍医は祈祷ばかりで、そのような類を全く信じておらぬのだ。」

御用商人「と思いまして、我々のほうで医者を用意しています・・・。」

兵士長「おぃ、流石は御用商人殿。今からペストの予防措置をしていただけるのか!」

御用商人「えぇ。」

兵士長「それはありがたい!」

御用商人「もちろん、無料でさせていただきます。」

兵士長「ほぅ、気前が良いな!」

御用商人「いえ、これも我々の商いが何事も無く、円滑に進むようにするためですから。」

兵士長「いやいや、貴殿の気配りといい、気前の良さといい、我々教会としてはいつもありがたく感じている。教皇様や聖霊様がお喜びですぞ!」

御用商人「そう言って頂けると、我々もこの仕事を兵士長様にご提示出来たこと、ありがたく思います。」

兵士長「はははっ、そうかそうか、私のおかげか!」

御用商人「はい。・・・では、今から医者を連れてまいりますので、少々お待ちください。」

タタタタッ

・・・

御用商人「こちらが、医者殿になります。」

医者「はじめまして、兵士長様。私の予防法で、護送隊の安全をひとつ、成し遂げてみせましょう。」

兵士長「おぉ、その自信!さぞ、予防法は素晴らしいものだろうな!」

御用商人「なんでも、彼のペストの予防法は、他の医者よりも有効だそうですよ。」

兵士長「おぉ、そうか!医者殿、よろしく頼む!」

医者「はい、お任せください。」

御用商人「では、よろしく頼む。(頼むぞ、使い。)」

医者「はい。(えぇ、手はずの通りに。)」

次!

次!

次!

医者「では、お口をこの器具で開けますので、かまないで下さい。」

囚人A「(くそっ、両手を抑えられて逃げれん!)おいおい、痛いのは勘弁してくれよ。」

囚人B「へっ!なんだ、怖いのかよ!?」

囚人A「そ、そんなこたぁねぇぞ!ほら、さっさとしてくれ!」

医者「はい、分かりました。」

・・・

兵士長「あれは何だ?」

御用商人「あれは、私が聞いたところによりますと、霧吹きの中にお薬を入れているそうですよ。なんでも、その方が薬の効果が高いそうです。(へっ、中身はただのグレープジュースなんだけどな!)」

囚人B「おぉ、この薬は甘いな!こんな甘い薬は、俺は初めてだぜ!」

・・・

医者「よし。全員終わりました。(こちらの準備は、ひとまず大丈夫です。)」

御用商人「(よし、第2段階だな。)よし、では兵士長様。護送の準備に入らせていただきます。」

兵士長「うむ。」

御用商人「よし、皆、入れ!」

人夫「ういっす。」

兵士長「ほほぅ、12人も屈強な男がいるのか!これは頼もしいな!」

御用商人「一応、囚人の護送ですから。」

兵士長「うむ、これなら任せた甲斐があったと言う事、よろしく頼むぞ。」

御用商人「はい。・・・医者殿、どうされた?」

医者「兵士長様、もしかしてこちらの独房は・・・。」

兵士長「うむ、あやつが背教者の勇者だ。」

医者「彼の予防はどうしましょうか?」

兵士長「なに?」

医者「ですから、彼も流行り病の予防をする必要があるかと思いまして。」

兵士長「馬鹿を抜かすな。あれは、我が教徒にとって一番の囚人であるぞ。そんなことをして、逃げられてしまったらどうする。」

医者「ですが・・・。」

兵士長「それは無理だ。」

医者「ですが、彼はあの闇の森から戻ってきたのです。何があるか、私は医者として不安でして。」

兵士長「それはどういう意味だ?」

医者「今回の流行り病ですが、勇者・・・殿が戻ってきてから、増えているとのことです。もし、勇者・・・が病原を持ち込んだのであれば・・・。」

兵士長「それは無かろう、勇者がやって来たのは北だ。流行り病は東からじゃないか。」

医者「勇者さ・・・ごほんっ、彼が東に行ってないのは確かなのでしょうか?」

兵士長「なに?」

医者「もし、東に寄っているのであれば、病は遅れて出てくるものです。感染源の可能性が捨て切れません。その場合、早く手を打たないと事は大きくなりますよ。」

兵士長「そ、それはそうだが・・・。」

御用商人「では、一か八か、そのままにしましょうか?」

医者「え?」

御用商人「確かに、我々は仮に今、勇者と戦うことになっても非常に有利な立場ではあります。兵士長様以下、多くの兵が控えており、さらに戦闘にも慣れた屈強な人夫たちも大勢おります。それに、勇者に武器はありません。丸腰です。」

御用商人「それに、ここは脱獄したものが1名しか記録されていない堅固な地下牢です。」

御用商人「ですが、彼を逃がしてしまう恐れがあると、兵士長様がおっしゃられるのであれば、それは仕方ありません。」

兵士長「むぅ・・・。」

御用商人「非常に残念ではありますが、医者殿、諦めてください。ですから、首都にも病人が出たときのための対応をしましょう。」

医者「ですが・・・!」

御用商人「仕方ありません。」

兵士長「・・・まて。」

御用商人「・・・。」

兵士長「しよう。」

医者「え?」

兵士長「今から、勇者に流行り病の予防を実施する。」

デスガ、ヘイシチョウサマ!

兵士長「黙れ、流行り病ごときで俺のクビが危なくなるなど、たまったもんじゃない!」

医者「では・・・。」

兵士長「うむ、2人ほど兵士を付ける。ほとんど食事をとっていない勇者だ。弱ってるのだから、それで充分だろう。ほら、さっさと終わらせてくれ。」

医者「分かりました。(さすが盗賊殿、では・・・。)」

御用商人「(うむ、ミッションスタートだな。)」

兵士長「御用商人殿、あまり辛辣な言葉をかけないでいただきたい。」

御用商人「失礼しました。あの頑固な医者殿を説得するには、苦労がありまして・・・。」

兵士長「・・・ふんっ。」

・・・

医者「では、勇者殿、お口をお開け下さい。」

勇者「・・・私は感染源などではない!」

医者「いえ、可能性として述べているだけですから。」

勇者「うるさいっ!」

オイ、サッサトスルンダ!

勇者「くっ!」

医者「では・・・。」

勇者「(なに、す・・・なんだ、この感じは・・・うっ・・・。)」

・・・

人夫A「(・・・今だな。)」

ボンッ!

モクモクモク・・・

オイ、ナンダコレハ!マエガ・・・!

兵士長「何が起きた!!」

ワ、ワカリマセン、ケムリガ・・・ゴホゴホッ

兵士長「くっ、早く煙を!邪魔だ!」

囚人B「おい、なんだよこれは、ちくしょー!」

囚人C「ラッキー、今だ!」

兵士長「お、おい、あいつが逃げようとしているぞ!斬れ!」

ナニヤッテンダ、オマエハ!

ザクッ!

囚人C「ぎゃっ!」

兵士長「逃げる者は構わず斬れ!勇者はどうなっている!」

医者「わ、私が抑えています!」

囚人A「うっ・・・!」

兵士長「逃げてるものは!?」

イマノトコロ、Cダケデス!

兵士長「勇者はどうなっている!ちくしょ、早くこの煙をどうにかしろ!」

勇者「(・・・!)」

・・・

兵士長「ふぅ、やっと煙が・・・。」

御用商人「ごほんっ、ごほんっ。」

兵士長「ゆ、勇者は!!逃げてないだろうな!」

医者「兵士長様、申し訳ありません・・・。」

兵士長「な、なに!」

医者「い、いえ、勇者殿はここにおります。ですが・・・勝手ながら眠らせていただきました。」

兵士長「な、なんだ。逃げてはおらぬのだな。そっか、ふぅ・・・それならいい。」

医者「ですが・・・。」

兵士長「いや、いいのだ。逃げなければ、十分だ。」

医者「えっと、薬を使って眠らせました。ですが、このお薬が強力なものでして・・・。」

兵士長「それは勇者を抑えるためなのだろう、それぐらいは仕方あるまい。」

医者「ただ副作用があります。もしかしたら、2、3日は眠っていただくことになるかもしれません。」

兵士長「そうか。いや、大丈夫だ。逃げられるよりマシであるし、次の審問日は4日後に控えておる。それより前に覚めるのであれば、結構。それに、食事をとらぬから体力も落ちていたはずだ。眠らせて、体力を取り戻させるほうがよいしな。」

医者「はぁ。」

兵士長「いや、医者殿、よくやった。貴殿の行いは、教会を、そして聖霊様をお守りした。感謝する。」

医者「いえ・・・。ただ、ご覧のとおり、私と一緒にいた2人の兵士が・・・。」

兵士長「死んでるのか。」

医者「えぇ。(すみません・・・。)」

兵士長「別に良い、彼らも聖霊様と教会のために殉じたのだ。貴殿が気にすることではない。悪いのはこの勇者だ。」

医者「・・・。」

兵士長「・・・ただ、他言はしないでいただきたい。」

医者「と言いますと?」

兵士長「他言することで、私のク・・・いや、教会に反徒する者たちが図に乗る恐れもある。そんなことされたら、たまったもんじゃない。」

医者「はい。(あぁ、なるほどですね。)」

兵士長「あと、2人の兵士の死についてもだ。」

御用商人「(なるほどね・・・。)」

医者「亡くなったこともですか?」

兵士長「そうだ。」

医者「ですが・・・。」

御用商人「私も、人夫たちも、お約束しましょう。聖霊様を信ずる者として。ですね、医者殿。」

医者「(分かりました。)・・・はい。」

兵士長「うむ、頼むぞ。」

遅い更新で申し訳ない!皆!!

御用商人「では、作業を続けさせていただきます。」

兵士長「あぁ、では早くしてくれ。」

御用商人「はい、医者殿もこちらに。」

医者「分かりました。」

人夫A「御用商人様。」

御用商人「なんですか?」

人夫A「囚人Aが、先ほどの騒動で抑える際にノビてしまいました。いかがいたしましょう?」

御用商人「分かりました。では、彼は前方の特別車に。」

人夫A「はい。」

兵士長「おいおい、あいつをどうする気だ?奴は・・・。」

御用商人「えぇ、彼は、今回の護送で一番特別にしなければならない人物です。ノビる、ノビないは別にして、独房の代わりが必要と思いまして。ですから、我々に一番近い車両で運びます。」

兵士長「それは分かるが・・・だが、あれは・・・。」

御用商人「分かっております。ですが、いや、それでこそ、他の囚人とは分けて護送すべきなのです。」

兵士長「・・・逃がすようなことがあれば、困るぞ。」

御用商人「えぇ。彼を我々の元から逃がすなど、しませんよ?」

兵士長「それなら、良い。」

御用商人「お任せください。」

皆さんにお願い。

秩鉄こと秩父鉄道で、ネタ帳一枚見つけた方は、至急報告くださいwww
マジでショック受けてますwww

―数時間後、西へ向かう街道にて

御用商人「よし、ここまで来れば大丈夫だろう。」

医者「ええ、盗賊殿。」

盗賊「ふぅ。この姿は面倒だな、言葉遣いとか振る舞いとか、気品ある行動するのはどうも性に合わん。肩がこるぜ、なぁ使い。」

使い「えぇ。でも流石です、盗賊殿。頭の回転の速さに、まんまと兵士長が誘導される姿は傑作でした。」

盗賊「ま、これぐらいは当たり前。朝飯前よ。」

使い「有言実行、流石です。」

盗賊「それじゃなきゃ、この商売やってられんさ。」

使い「そんなもんなんですか。今回の作戦は上手くいきましたが、それよりも難儀な仕事なのですか?」

盗賊「うーん、類が違うからなー。今回は詐欺みたいなもんだからな。相手が信用したら、こっちのもんだからな。」

使い「確かに兵士長は御用商人殿を大変信用していたみたいでしたね。盗賊殿の言葉に、簡単に釣られていましたし。」

盗賊「要するに、信じたい方に信じてしまうのが人間なんだよ。」

使い「それは、信仰も同じですか?」

盗賊「そうだ、貧しかったらお金や食料の話についつい信じてしまうし、名誉欲があれば戦地で所構わず突き進むってね。だから言ったろ?自分で考えることをしない奴は愚かだって。」

使い「えぇ、身に染みますね・・・。」

盗賊「ところがどっこい、この勇者は若いくせに、いや、若いからこそ体制に反抗した。ついつい俺は、それに手を貸した。ただそれだけだ。だから、それだけだ。」

使い「・・・。」

盗賊「なぜ、勇者が『魔物と手を組む』と言ったのかは分からないが、ただ理由がしっかりあったんだろう。それも聞かずに、教えに反するからとは情けない限りだ。」

使い「でも、民衆はそれにすがってしまうんですね。」

盗賊「あぁ。だから、実は世の中真っ当な人間ってのは、いねぇのかもな。」

盗賊「俺もお前も。あの御用商人だって同じだ。だが、人間は弱いから仕方ないところもあるんだ。ただ、どこかに良心が無きゃ、許されないがな。」

使い「えぇ。この現状を聖霊様は嘆くでしょうね。」

盗賊「呆れてるのかもしれん。ただ、勇者、こいつだけは違った。」

使い「・・・。」

盗賊「こいつは、今まで何度も派遣された探検隊で、唯一の帰還者だ。何かを知っている。その何かが、これからの世界を変えるかも知れんな。」

使い「・・・怖いですね。」

盗賊「あぁ、俺もだ。真実より虚像の方が安心とは、皮肉なもんだぜ。」

使い「えぇ。」

盗賊「ま、そういうわけで。」

使い「行きますか?」

盗賊「行こうじゃないの。勇者もいれば、少しは安心だろ。もっとも、勇者が行きたくないと言ってしまったら、俺らは路頭に迷うんだがな。」

使い「それは勘弁願いたいですね。」

盗賊「あぁ。とにかく急ごう。」

使い「えぇ。早く北の港街に。」

人夫A「その話乗ったぁ!!」

使い「え・・・?」

盗賊「おいおい、盗み聞きはよくねーぞ。」

人夫A「まぁまぁ、そんなの気にすんな。」

盗賊「男同士の会話だから、別にいいけどよー。お前、もてないだろ?」

人夫A「なんだと!?」

盗賊「その反応は当たりか。」

人夫A「うっせぇ!」

使い「それで、我々に付いて来るのですか?急に大丈夫なんですか?」

人夫A「あぁ!囚人たちは西の街に送るんだろ?それは大丈夫だ。他の人夫たちがやってくれるさ。なぁ、ハハハ!」

盗賊「無責任だな、お前ー。」

人夫A「いやいや、館の主殿のご注文はしっかり果たしますよ、彼らが。」

盗賊「確かに、他の連中はお前よりも100倍は責任感ありそうだしな。」

人夫A「あぁ、皆信用出来るぜ!」

盗賊「・・・少しは否定しろ。」

人夫A「と言うわけだが、よろしいか?」

盗賊「使い殿は?」

使い「私は大丈夫です。多すぎるのはどうかと思いますが、仲間が多いには越したことがありません。」

盗賊「報酬はねぇぞ?」

人夫A「報酬はもう十分貰ってるからな。」

盗賊「気前いい奴でよかったな、お前の元雇い主。」

人夫A「いや、べっぴんさんの言うことは俺はなんでも聞くぜ!」

盗賊「じゃあ、勇者の言うことも聞いてくれよな。あいつは、胸は無さそうだったけど、顔立ちは、まぁいいほうだと思うぞ?」

使い「ですが、今はこのむさ苦しい男をさせられてるんですね・・・。」

盗賊・人夫A「・・・不運だな。」

使い「えぇ、同情します・・・。」

盗賊「ま、当分・・・少なくとも、この西街道から北への道に行くまではその姿でいてもらおう。」

使い「とは言っても、起こさない訳にはいきませんね。」

盗賊「あぁ、そうだな。」

人夫A「けっ、野郎ばっかに花が咲くと思ったら、ヒゲが咲きっぱなしじゃねーか。」

盗賊「そういうこと言うなって、傭兵。」

傭兵「おいおい、俺が悪者みたいな言い方すんなよ。」

盗賊「悪者だろ?」

傭兵「少女を誘拐する立案を立てるお前に言われたくないわ。」

盗賊「少女を救出するの間違いだ。」

傭兵「へいへい、俺は雇われの身だからなんでも協力はするが、言われの無い悪口には断固抗議するからな。」

盗賊「あっ、そ。」

傭兵「さっきから喧嘩売りすぎじゃねーか、盗賊よ?」

盗賊「お、いくらで買ってくれるんだ?ちゃんとお金出してくれよ。」

傭兵「うるせぇ、この野郎!」

使い「ご両名ともやめてください、勇者様が起きてしまいますよ・・・。」

立案を立てる→案を立てる
の間違い。すまない・・・。

魔女「もう最悪だわ」を書いた人?

>>102
違いまうw

あ、今日は書けないし、明日も無理かもしれない。

それまでしっかり練っとくので、本当に申し訳ない。

すみません。事情により更新できなくなってます。明日か明後日には再開できるかもです。
支援ありがとうございます・・・↓↓。

盗賊「あぁ、勇者には早く起きてもらわないと困るんだよ。」

使い「え?なんでですか?」

盗賊「そりゃあ、簡単なことよ。少人数で旅するには、強い奴がいるに越したことは無いだろ?」

使い「ですが、そのために館の主様から傭兵殿を雇っていただいたのではないのですか?」

盗賊「そういう面もある。」

傭兵「なんか引っかかる言い方だな・・・。」

盗賊「じゃあ、ダイレクトに言われたいか?」

傭兵「・・・やめとく。想像はつく。」

盗賊「まっ所詮、この人数なんだ。だから、勇者の力は無いよりあったほうがいいだろ?」

使い「ですが・・・。」

盗賊「言いたいことはわかってる。だけど、こいつは『年頃の女の子』でありながら勇者になり、さらにあの教会に逆らったんだ。だから、その姿ぐらい気にしても、なんとか過ごしてくれるだろ。」

傭兵「この先、何あるか分かんないしな。」

盗賊「怖いか?」

傭兵「へっ、そんなこと怖くて傭兵やってられんよ。」

使い「私は盗賊殿にお任せします。」

盗賊「過半数どころか、全員一致ってわけか。こいつは強い味方だぜ。」

傭兵「その棘がある言い方控えてくれんのか?」

盗賊「けっ、それが出来てたら、もう少しまともな職業についてたよ。」

傭兵「そりゃあそうだ。」

盗賊「と言うわけだ。さ、起きろ勇者。」

アホな質問だけど、人夫Aが傭兵だよね?

傭兵「待て、もう少しぐらい寝かせてもいいじゃないか。」

盗賊「さっきの話聞いてなかったのか?」

傭兵「聞いてたよ。ただ、まだ大丈夫だ。」

盗賊「?」

傭兵「さっき、情報屋から伝書鳩がやってきた。・・・水の守護派がこれから襲撃をかけるだろうと。」

使い「・・・!」

盗賊「間一髪ってとこだな。」

傭兵「あぁ、少なくとも地下牢周辺では戦闘が起きるだろ。こっちのことなんて、構ってられなくなる。」

使い「司祭様が無事なら、このような愚行を止められたかもしれないのに・・・。」

傭兵「いや、それは無理だ。」

使い「え?」


ごめんなさい。ずっと死んでました。生き返ってきました。

傭兵「あの頃の水の守護派は、純粋なる組織だった。少なくとも、信徒のことを第一に考え、清貧であり、信念があった。」

使い「今はそうじゃないのですか!?」

傭兵「今は権力争いの派閥でしかなくなった。司祭殿が追放されたとき、初期のメンバーの多くが散り散りとなったしな。」

使い「ですが、西の司祭様は健在ですよ?」

傭兵「・・・さっき、死体が見つかったそうだ。」

盗賊「殺されてたのか?」

傭兵「あぁ。誰なのか分からないように作為してたようだ。その情報も届いている。」

使い「酷い・・・。」

傭兵「少なくとも、水の守護派は今は過激派でしかない。そのような連中では、後も無いな。」

盗賊「あぁ。」

使い「・・・司祭様がいつか再建してくれるはずです・・・。」

傭兵「だといいがな・・・。」

傭兵「(・・・司祭が殺されたことは・・・黙っておいたほうがいいな。)」


>>113
そうですよー!ごめんなさい、ややこしくして。

―首都・地下牢

兵士長「へっ、奴らがいなくなって精々するな。まっ、これで勇者が逃げる心配はないだろう。どうやって、ここから逃げれようか、ふふふ。」

教会兵士A「失礼します。」

兵士長「・・・ご苦労。」

教会兵士A「御用商人様一行は、無事に出発されました。」

兵士長「結構、結構。」

教会兵士A「これで、監視も勇者一人に専念できますね。」

兵士長「あぁ、これだけ楽な仕事は無いってことよ!ははは。」

教会兵士E「・・・。」

教会兵士A「どうした、顔色が悪いぞ。」

教会兵士E「い、いえ。・・・少しお昼のご飯にあたってしまったのかもしれません。」

教会兵士A「それなら良いが・・・無理するなよ。」

教会兵士E「はっ。(まずいな・・・。分かってはいたが、どうやって勇者をここから逃げさせるか・・・。)」

教会兵士E「(しかし、勇者が眠らされたのは全くの予定外だった。くそ、あの忌々しき藪医者め。)」

・・・

教会兵士E「(待てよ。)」

教会兵士E「(確か、転意石は相手の意識に入ることが出来るはず。だから、相手と口にせずに意思の疎通が計れる・・・。それなら、相手の夢の中にも入れることが出来るはずだ。)」

教会兵士E「(今、独房には石ころ一つ転がっていない。と言うことは、勇者はまだあの石を持っているはずだ。)」

教会兵士E「(所詮、薬だ。意識の中から起こされたら、寝続けるわけにはいかないだろう。勇者には悪いが・・・さっさと起きてもらおうか。)」

教会兵士E「(よく考えてみたら、これはラッキーなんだ。眠っているから・・・と油断しているはずだ。これはチャンスに違いない。)」

・・・

教会兵士E「(起きて下さい、勇者。)」

―30分後

教会兵士E「(おかしい!おかしい!おかしい!)」

教会兵士E「(全くを持って反応しないじゃないか。やはり、あの時に石が・・・。)」

勇者?「ぐへへへへ。」

教会兵士E「え?」

オイ、コイツネゴトイッテルゼ、シアワセナヤツヨ!

オンナノクセニ、キタネェコエダシヤガッテ・・・ハハハ!

教会兵士E「(今の声・・・勇者の声か?いや、今まであんな低い声を出したことなんか無いぞ!それに、寝言一つすらなかった。ぐっすり寝るなど、もうすぐ死ぬことが分かっている人間が出来ることか?)」

教会兵士E「(・・・!まさか・・・)」

教会兵士E「(もし、もしもだ、これが実は勇者じゃなかったら・・・)」

教会兵士E「(・・・可能性は無いとは言えないな。ただ、さっきまでは確かに勇者だった。だとすると・・・!)」

教会兵士A「おい、E!」

教会兵士E「え?」

教会兵士A「やはり、顔色が悪いぞ。今日は少し休んだらどうだ?」

教会兵士E「は、はぁ・・・。」

兵士長「そうだな、お前今日は休め。」

教会兵士A「大丈夫なのですか?」

兵士長「あぁ、もう勇者一人だけだからな。Eよ、何かあれば呼び出すが、今日は休んどけ。」

教会兵士E「はっ、ありがとうございます。甘えさせていただきます。(うん、これはラッキーだ。)」

兵士長「あ、そうそう。給料は差し引いとくから安心しとけ。」

教会兵士E「・・・はっ。(やっぱりな。)」

明日たくさん書けたらいいなぁwww←ダメ人間

教会兵士E「で、では失礼します。」

教会兵士A「招集の時には、すぐに来いよ。後、外出は禁止だ。医者は宿舎内の軍医にかかっとけ。」

教会兵士E「はっ。(よし、とりあえず、あそこにまずは行こう。)」

―神殿府

参謀「特に今の所、明らかな異常は認められません。」

近衛長官「ふむ。」

参謀「・・・?何か疑問でも?」

近衛長官「いや。」

参謀「報告は以上になります。」

近衛長官「出てよし。」

参謀「はっ、失礼します。」

タタタ・・・

近衛長官「さて、そろそろですかね。」

・・・

近衛長官「まずはどの駒を動かしましょうか・・・。」

―首都・市場よりやや外れの街

ドンドンドン

魔石屋「なんだい、こんな時間に・・・って、あんたかい。」

教会兵士E「夜分失礼、急で申し訳ないが、聞きたいことがある。」

魔石屋「魔石のことか?転意石を早く返してもらいたいんだけどねぇ。」

教会兵士E「もう少し待ってくれ。転意石のこともだが・・・正体を変える石ってあるのか!?」

魔石屋「あぁ、あるよ。うちでも扱ってる。ただ、高すぎて誰も買いやしないがね。」

教会兵士E「じゃあ、沢山あるものではないんだな?」

魔石屋「あぁ。他の魔石よりも圧倒的に希少価値の高いものだ。中には砕いて使う者もいるが・・・。」

教会兵士E「ここ以外で扱っている場所は!?」

魔石屋「うるさいねぇ・・・無いよ。だから、今あるのはこの店にだけだ。」

教会兵士E「そうか・・・。」

魔石屋「見てみるかい?」

教会兵士E「ぜひ、見せてくれ。」

魔石屋「出来れば買ってもらいたいがね。ほれ、この棚に・・・ん?」

教会兵士E「どうした、ばあさん。」

魔石屋「どうやら先客がいたようだ、ほれ。」

教会兵士E「なに、この紙・・・。」

 少し拝借します。時間はかかるかもしれないが、早く返却するので、どうか通報は控えて。  ―正義の味方より

教会兵士E「・・・これだ。」

魔石屋「なんだい、欲しかったものは見つかったのかい。」

教会兵士E「手掛りがね。・・・このことは、内密にしていただきたい。」

魔石屋「あぁ、それは構わないね。ただ、盗んだものを取り返してくれるのなら、ケーキ一つぐらい奢るがね。」

教会兵士E「さぁ、どうだがね。」

魔石屋「ふん。正義の味方にでもなって、取り戻してくれるかと思ったら。」

教会兵士E「私は、正義の味方など名乗ってはいけないので。」

魔石屋「はいはい。」

教会兵士E「あと、もう一つ。」

魔石屋「ん?」

教会兵士E「魔石を持つ人間を見つける石なんて無いのか?例えば、転意石とか・・・。」

魔石屋「お前さんに貸した魔石、盗まれたのかい。」

教会兵士E「な、・・・な訳あるか!」

魔石屋「夜だよ、静かにしなっ。」

教会兵士E「し、失礼した。」

魔石屋「さて、その様な石の事は聞いたこと無いね。」

教会兵士E「そうか・・・。」

魔石屋「ただ・・・。」

教会兵士E「え?」

魔石屋「転意石なら、持ってる奴の居場所ぐらい簡単に分かるよ。」

教会兵士E「ほ、本当か!?どうやって・・・。」

魔石屋「簡単なことだ。相手の潜在的な意識の強さを読み取るんだよ。お前さんぐらい、簡単なことだ。剣術のほうが難しいだろうよ。」

教会兵士E「そうか・・・なら。」

魔石屋「待ちな。」

教会兵士E「?」

魔石屋「外が騒がしくなってきてる。少し、気をつけな。」

―首都・地下牢

伝令「大変です!」

兵士長「っ!どうした?」

伝令「首都にて、叛乱が起きた模様!」

兵士長「なぬっ。」

伝令「おそらくですが・・・叛乱部隊は、水の守護派の模様!」

兵士長「くそっ、忌々しき寄生虫の奴らめっ!」

教会兵士A「兵士長!」

兵士長「なんだ!?」

教会兵士A「奴らの目的は・・・ほぼ勇者とみて問題ないでしょう。」

兵士長「ちっ!」

教会兵士A「すぐ招集を!」

兵士長「あぁ、早くしろ!・・・A。」

教会兵士A「なんでしょう。」

兵士長「すぐに神殿府に向かい、近衛長官に会いに行け。援軍を要請するんだ。」

教会兵士A「なんですと!?まだ戦っていないうちに援軍とは・・・。」

兵士長「何かあれば、近衛長官殿の下に連絡することになっていることは知っているだろう。」

教会兵士A「しかし・・・。」

兵士長「それにだ。我々だけが損することも無かろう。出血には・・・他の軍にもしてもらおう。自称精鋭部隊の力を見せてもらうのも一興だろ?」

教会兵士A「・・・。」

兵士長「分かったな、なら早く行け!」

教会兵士A「はっ。」

―神殿府

近衛長官「そうですか、水の守護派がですか・・・。」

教会兵士A「その可能性が高いという報告を受けております。」

参謀「本当にそうですか?」

近衛長官「参謀は別の意見があると?」

参謀「ごほんっ、いえ、この突然の事態です。混乱を起こし、情報が乱れている可能性もあります。そうしたなかで、確固たる証拠がないまま、軍を起こすといささか問題が。」

教会兵士A「しかし・・・。」

近衛長官「実は水の守護派ではないと。」

参謀「それもゼロではありません。ですから、早急に事を起こしますと、混乱に拍車のかかる恐れもあります。一時待機すべしかと。」

近衛長官「それもそうだな。」

教会兵士A「・・・っ。」

参謀「それに、この神殿府の守りも低下します。もし、彼らの目的が勇者でなく、この神殿府であるとすれば・・・。」

近衛長官「手薄になった神殿府を襲ってくると。」

参謀「ええ、その事態は避けるべきでしょう。」

教会兵士A「しかし、そうなると勇者が・・・。」

参謀「そこには、教会兵士隊の3小隊がいます。また、それだけでなく予備隊に所属する者も多数近くにおりますので、それで対処することが出来るでしょう。」

近衛長官「さぁ、それはどうかね。」

参謀「・・・。」

近衛長官「教会兵士隊の状態も言及すべきだが、だが相手の数も分からないのであろう?」

参謀「しかし、大多数の部隊を潜らせるのも難しいかと。」

近衛長官「それで、3小隊で十分ということか。」

参謀「はい。」

教会兵士A「・・・。」

近衛長官「だが、その程度なら神殿府を襲っても大したことは無かろう。」

参謀「・・・。」

教会兵士A「それなら・・・!」

近衛長官「まぁ、待て。参謀が何か言いたいようだ。」

参謀「え・・・あ、はい。もし、神殿府を襲うとしても、一点を重視するようであれば、少数でも危険です。」

近衛長官「暗殺や、誘拐といった類であれば、確かにそうだ。」

参謀「ですから、相手が何者か、事を早く起こさずに情報を集めるべきです。」

近衛長官「その相手とやら、お前が一番知っているではないか。」

参謀「え?」

ザシュッ・・・

教会兵士A「えっ?」

参謀「あ・・・あっ・・・。」

ドダンッ・・・

教会兵士A「な、何を!?血迷られたか、近衛長官殿!」

近衛長官「彼は、水の守護派の一員だったんだよ。」

教会兵士A「な、なんですと!?」

近衛長官「調べはついている。過激派トップの腹心だ。こっそり潜入出来てると勘違いしていたのだろう。」

教会兵士A「・・・。」

近衛長官「私の眼はそれほど節穴ではないのだがな。一応有能であったから登用したんだが、自己酔狂でも強かったのかな。きっと、今回も近衛隊の足止めでも頼まれてたのだろう。」

教会兵士A「・・・そうですか。」

近衛長官「A殿」

教会兵士A「はっ。」

近衛長官「彼の後任を、貴殿に任ずる。参謀として、私を補佐せよ。」

教会兵士A「は・・・はい!?」

近衛長官「何を驚く。」

教会兵士A「わ、私がですか!?」

近衛長官「そうだ。軍関係の人事権は、すべて私にある。問題ないはずだ。」

教会兵士A「ですが、この状況下で・・・。」

近衛長官「任命の書類に関しては、まずこの事態を終わらせてから送ります。いいですね。」

教会兵士A→近衛参謀「は・・・はっ。」

近衛長官「それと。」

近衛参謀「は・・・何でしょうか。」

近衛長官「今後は、私に意見具申するのは大いに結構ですが、決定した事に対し反逆するのは認めませんので。」

近衛参謀「は・・・はい。(あんなものを見せ付けられたら・・・)」

近衛長官「よろしい。(これで、彼は私の駒ですね。まぁ、そのためにも劇的に前任の参謀を処理したのですから。・・・しかし、優秀な人材をドブに捨てるなんて、前の人事担当は何て愚かだったのでしょうか。あの世とやらで理由を問いたいものですね。恨みしか聞けなさそうですが。)」

近衛参謀「と、ところで援軍は・・・。」

近衛長官「出す。」

近衛参謀「はっ!」

近衛長官「だが、今ではない。」

近衛参謀「・・・はぁ?」

近衛長官「そういうことだ、いいな参謀殿。」



とりあえず、ここで今日は。また明日書く!(愚かな目標)

―1時間後、地下牢入り口

兵士長「神殿府の様子は!?」

教会兵士B「今のところ・・・。」

兵士長「はっきりせい!」

教会兵士B「今のところ、動きは見られません・・・。」

兵士長「ちっ!!この状況が分からぬのか!!」

教会兵士B「そんな事は無いはずかと・・・。」

兵士長「あのエセ神官の近衛長官め!何考えてやがる!・・・Aもだらしない奴め!」

教会兵士B「(頼ろうとしてたくせに、その言葉かよ・・・。)」

教会兵士D「報告!前線、100歩後退中!」

兵士長「どいつもこいつもだらしない奴らめ!」

教会兵士D「それともう一つ報告が・・・。」

兵士長「何だ。」

教会兵士D「Eの姿が見当たりません。」

兵士長「・・・死んだのか?」

教会兵士D「いや、死体を確認していますが、そこにもおらぬようで。」

兵士長「くっ、あいつはスパイだったのか、クソっ!」

教会兵士D「・・・。」

兵士長「やむを得ん、撤退準備をしとけ。おい、C!」

教会兵士C「へぇっ。」

兵士長「奴を・・・勇者を殺れ。」

教会兵士C「分かりました、・・・しかし大丈夫なんですかい?勝手に決めてしまって。」

兵士長「大丈夫だ。」

教会兵士C「頼みますよ、俺に問題を持ってこないで欲しい。」

兵士長「そんなの関係ない。この状況下で、捕縛したまま勇者を移送するなど無理だ。逆に相手に利用されても、教会は困るはずだ。なら、殺しても大丈夫だろ。」

教会兵士C「そんなもんですかねぇ・・・。」

兵士長「さっさと殺れ!勇者は水の守護派に殺された、そういう筋道にする。それなら、貴様に問題起きないだろ!」

教会兵士C「へぇっ。(そんな安っぽいドラマ、誰が観るってんだよ!)」

ワーワー

テキダー!テキガー、ギャッ!

兵士長「どうした!?」

教会兵士D「裏から・・・裏に伏兵が!」

兵士長「な、なにっ!くっ・・・急げ、早くしないと退路を塞がれてしまうぞ!」

・・・

?「うまくいったな。」

―1時間後

兵士長「ぐはっ!」

教会兵士C「ま・・・まさか・・・そんなことが・・・聞け、聞いてく・・・うわっ!」

・・・

将軍「うまくいきましたね。」

?「いや・・・うまくいったのは確かだ。だが・・・。」

将軍「例の囚われの勇者ですか?」

?「あぁ。伝令の報告では、地下牢はほとんどいなかったそうだ。囚人は一人だけだったようだ。」

将軍「・・・それが、勇者では無かったのですか?」

?「あぁ、聞いたことあるか?殺人と強姦と強盗を際限無くやったAとかいう男を。」

将軍「えぇ。我が故郷、武王国にも被害者はおりましたので。」

将軍「えぇ。我が故郷、武王国にも被害者はおりましたので。」

?「その彼のみだったそうだ。・・・どう思う?」

将軍「なんですと?情報では、確かに地下牢に勇者がいることは確認済みでしたが・・・。」

?「それが、おらぬということは・・・。」

将軍「・・・罠でしょうな。事は急ぎますよ、リーダー殿。」

?→リーダー「あぁ、軟弱な権力派と言えど、侮ったらダメだ。急げ。」

将軍「・・・いや、遅かったですな。」

リーダー「何!?」

将軍「敵に包囲されております。」

リーダー「退路は?」

将軍「門へは、まだ大丈夫ですが。」

リーダー「よし、完全包囲される前に、早くしろ。勇者がいなければ、ここはもう用無しだ。」

将軍「はっ。」

・・・

参謀「作戦は、予定通り進んでおります。」

近衛長官「よろしい。」

参謀「しかし、相手も素早いです。退き際を間違えておりません。」

近衛長官「水の守護派の過激派のトップのことを知っているか?」

参謀「いえ、あまりは・・・。」

近衛長官「過激派のリーダー、彼は元々傭兵一族の出だ。幼い頃から軍事の書物を漁っていたそうだ。家の事情から、修道士にされても聖書と軍事の書物を離さなかったという・・・。」

参謀「・・・。」

近衛長官「だが奴の軍事は所詮、机上の空論だ。」

参謀「・・・もうすぐ、敵の本隊がこちらに来ます。」

近衛長官「そんな愚かな奴には、もう一つ人参をぶら下げれば、喰らいつくだろう。さぁ、作戦を続けようではないか。」

参謀「はっ。」

将軍「急げ!休むな!」

リーダー「・・・。」

将軍「む?」

リーダー「どうした、取り囲まれたか?」

将軍「・・・そうみたいです。ですが、前方の敵は少数です。」

リーダー「突破するぞ!」

将軍「あ、あれは・・・!」

リーダー「どうした!?」

将軍「あれは・・・まさか・・・。」

リーダー「?」

将軍「近衛長官だ・・・。」

リーダー「くっ、食えない奴め。」

近衛長官「敵軍に告ぐ!今すぐ武器を捨て、投降せよ!」

参謀「・・・危険です。」

近衛長官「当たり前だ、敵の顔がしっかり見えるからな。それぐらいじゃないと、奴らは人参に喰らいつかぬ。」

リーダー「我々は降伏などせぬ!」

近衛長官「降伏せぬのならば、私がお前たちに破教の罪を与えるよう教会に勧告する。そうでなければ・・・、少なくともそのような罪にはならぬ。」

参謀「・・・敵には辛辣ですね。」

近衛長官「当たり前だ、そうでなければ、私を狙おうとせぬ。」

参謀「ただ生き残りたいのも欲・・・。さらに、存在が無かったことにされるのも誰だって嫌です。両者とも辛い罪ですな・・・。」

近衛長官「それなら敵はどうする?」

参謀「あなたを殺して、逃げようとします。」

近衛長官「全くだ。」

やっべーすっごいスランプというか・・・話の流れは完全に出来てるのに、文章にならないw

初SSとはいえ、これだけ遅筆なのはどうよw

ミスのお知らせ

>>5 5日後→10日後

>>151-154 参謀→近衛参謀 

他はうまく誤魔化すw

リーダー「くっ・・・あいつを殺れ!!あそこは手薄だ、突撃せよ!」

将軍「・・・っ。」

リーダー「押せ、押さぬか!早くしろ!」

将軍「どんどん我らの軍が包囲されていますぞ!」

リーダー「奴をさっさと殺せばいい!それぐらいの時間があるだろ!」

近衛長官「そう簡単には倒れませんがね。」

・・・

将軍「突撃する兵が片っ端からやられておりますぞ!」

リーダー「くそっ!」

近衛長官「愚かなリーダーに率いられた兵達よ!よく聞け、正義は我の下にあり!今すぐ、頑なに降伏を拒否する軍より立ち去り、我らの元に降れ!」

将軍「・・・。」

近衛長官「一時の愚行は、彼らの上が罪を被るべきである。貴様達は、罪を認め、改めて聖霊様に仕えるべきだ!」

近衛参謀「・・・敵の反攻が止まりつつあります・・・。あらゆる場所にて、敵が降伏しつつあります。」

・・・

リーダー「くそっ、再興のチャンスはまだある!降伏するな!」

将軍「・・・無駄です、半数が敵に・・・。」

リーダー「っ。急げ、て、撤退だ。は、早くするんだ。」

将軍「・・・リーダー殿。」

リーダー「なんだ、何をボヤボヤと・・・。」

将軍「御免!」

リーダー「なっ・・・き・・・さま・・・、うっ・・・。」バタッ

将軍「・・・我々の降伏には、あなたの首が必要なのです。」

―間もなく

近衛長官「これが、過激派のリーダーか。」

将軍「はっ、そうであります。」

近衛長官「ところで、貴殿達は武王国の武官であったな。」

将軍「・・・かつての話です。」

近衛長官「だが、いたことは確かだろう。」

将軍「・・・はっ。」

近衛長官「なぜ離れた?」

将軍「・・・王の錯乱で、軍人の大半が処刑されました。我々はそれを避けるため、国を離れ、傭兵の身分に・・・。」

近衛長官「リーダーとは?」

将軍「数年前に身辺護衛のために雇われました。・・・例の勇者が、捕らえられたという話が届いたとき、私の部下も雇っていただくことに・・・。」

近衛長官「それで全員になるか?」

将軍「はい。」

近衛長官「そうか、ご苦労であったな。」

将軍「我々は降伏した身。そのような気遣いはお気持ちだけで十分です・・・。」

近衛長官「そうか。」

将軍「ところで我々は・・・。」

近衛長官「あぁ、安心するが良い。」

将軍「ありがとうござ・・・。」

近衛長官「死ね。」

将軍「なっ・・・。」バタッ

近衛参謀「な、何を・・・。」

近衛長官「何もありも無い。処刑しただけだ。」

近衛参謀「・・・(あまりにも早すぎて、剣の姿すら見えなかった・・・あっという間に旧武王国武官達を12人も・・・彼らは精鋭だったと聞くが・・・。)」

近衛長官「我らが新参謀殿よ。」

近衛参謀「・・・は・・・はっ!」

近衛長官「奴らの存在を抹殺したまえ。他に漏らさぬよう・・・。」

近衛参謀「そ、それは大丈夫ですが・・・し、神殿府にもですか?」

近衛長官「そうだ。奴らの存在は、邪魔だ。」

近衛長官「貴様達が金で動いたことで、どうなるか考えなかったのか・・・。」

近衛参謀「は・・・何を?」

近衛長官「いや、なんでもない。周辺の様子はどうなっている?報告はまだか?」

近衛参謀「も、もうすぐ届くかと・・・。」

近衛情報員「報告です。」

近衛長官「地下牢の状態は?」

近衛情報員「教会兵士隊の3小隊はほぼ全滅、ただ1名だけ死体が見つからない者がおりまして。Eと言うのですが。」

近衛長官「あぁ、新たに配属されていた者か。」

近衛参謀「ご存知なのですか!?」

近衛長官「何を言う、私には軍の人事権が与えられている。私が判断して決めていることだ。」

近衛参謀「(まさか全員のことを知っているのか・・・?)」

近衛長官「・・・それはいい。勇者はどうなった?」

近衛情報員「それが見当たりませぬ。」

近衛長官「・・・逃げたのか。」

近衛情報員「それどころか、他の囚人すら・・・。」

近衛参謀「あぁ、それはあの兵士長が御用商人に勇者以外の囚人達を西の街の監獄に移動させたのです。」

近衛長官「何?報告は受けておらぬが・・・。」

近衛参謀「どうやら兵士長殿が、錬王国に教会の力を誇示したいことと、御用商人にいくらか金銭的なやり取りが・・・。」

近衛長官「あの兵士長がやりそうなことだ。まぁ、私が彼にその地位を与えたのだ。これは私のミスだろう。・・・それで、地下牢は結局のところもぬけの殻だったのか?」

近衛情報員「いえ、あの凶悪犯として知られているAだけがおりました。死体になっていましたが・・・。」

近衛参謀「何っ!?」

近衛長官「どうした、何を驚く。」

近衛参謀「・・・兵士長殿は、監視の手間を省きたいがために、御用商人の提案をお受けしたのです。」

近衛長官「それで?」

近衛参謀「ですから、勇者以外は全員護送しています・・・。」

近衛長官「なのに、Aがいた・・・そして勇者がいないということは、どういうことだ?御用商人は何をした・・・詳しく聞かせてくれたまえ・・・。」

近衛情報員「それなんですが・・・御用商人が倉庫で拘束されていたそうです。眠らされてはいましたが、ほとんど無傷のようですが・・・。」

近衛参謀「え!?」

近衛長官「・・・ふむ、御用商人に事情は聞けそうか?」

近衛情報員「それが、魔石によって無理矢理眠らされたようで、まだ意識が醒めておりません。」

近衛長官「そうか。それ以外に情報は無いのか?」

近衛情報員「気になるのがもう1件あります。西の街の司祭が、すぐ郊外の更地で死体となって見つかりました。何か剣みたいなものにより、斬殺されたかと。」

近衛長官「・・・ふむ。それは、このリーダーによってかもしれぬな。奴の剣筋と、司祭の斬殺死体の調査をせよ。・・・もしかしたら、水の守護派の過激派一派に全ての罪を被ってもらおうか。」

近衛参謀「・・・。」

近衛長官「ところで、先程の件だが・・・。」

近衛参謀「はい。」

近衛長官「詳しく話を聞かせてもらおうか。・・・いや、まず、そのAとやらの死体を検視に付き合おうか。まずは確認をすべきだな。」

近衛参謀「・・・はっ。」

―西への街道にて

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

傭兵「おいおい、なんだなんだ、この断末魔の悲鳴は。」

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

傭兵「ったく、何しやがったんだ、あの盗賊は。」

・・・

傭兵「どうした、何があったんだ・・・って。」

盗賊「おやすみ中にすまねぇな。勇者に起きてもらったんだがな、ほれ、あの通りだ。」

使い「いきなり鏡を差し上げるとは、酷な事をしますねぇ・・・。」

傭兵「何やってんだか・・・。よう、お目覚めはどうか、凶悪犯。」

勇者「私は勇者だぁぁぁ!」

傭兵「卒倒しそうじゃねーか。」

使い「そりゃあ、起きたら性別が変わったら、誰だって驚きますよ。」

盗賊「うんうん。」

勇者「うんうんじゃねー!」

使い「知ってます?前世代の時代に書かれた小説で、起きたら急に虫になるってお話を。」

傭兵「想像しただけで嫌なもんだな。」

使い「それよりは少しマシ・・・っていう感じなんでしょうね。」

勇者「冷静に分析するなぁ!」

盗賊「おいおい、勇者がこんなに口が悪くていいのかよ。」

傭兵「お前に言われたくないだろ・・・。」

―10分後

使い「・・・ということなんです。」

勇者「・・・。」

盗賊「ま、そういうわけだ、気にするな。」

勇者「気にする。」

傭兵「そりゃあ気になるだろ。」

使い「無理な話かと・・・。」

盗賊「ふんっ。ただ、北の街道へ進むまではそのままの姿でいてもらうからな。」

勇者「・・・分かった。・・・北?」

傭兵「そうだ。北の港町に向かうんだ。」

勇者「海の先・・・闇の地に向かうって事?」

使い「そうです。あなたは、命を懸けて『マモノ』と手を結ぶよう進言されました。なぜそうなったか・・・それを私達は知りたいと思いまして。」

勇者「そっかぁ。」

盗賊「・・・そこに行くのにお前さんの力を借りようと思ってな。だから、こうして脱獄させただけだ。」

傭兵「よく言うよ、使いの話だと勇者を助けることにノリノリだったってじゃないか。」

盗賊「ふんっ、司祭のじじぃに借りを返しただけだ。」

勇者「盗賊も、司祭様のことを知っているの!?」

盗賊「・・・昔な。・・・神殿府の食料庫から、いくらか盗みを働いたことがあってな。ヘマして捕まったわけだ。」

使い「司祭様にですか?」

盗賊「いや、当時はまだ近衛兵のヒラ参謀だった近衛長官にな。で、錬王国の地下牢に5年入ることになったんだが・・・何度か脱獄したんだ。その度に、逃走先に司祭が必ずいて捕まえるんだ。おかげで満期で出所よ。」

傭兵「バカだな。」

盗賊「うっせ!」

勇者「それだけ?」

盗賊「さぁな、まぁその後も色々少しあったが、水の守護派が粛清されたとき以来、会ってないさ。」

使い「そうだったんですね。」

盗賊「昔のことだ、忘れてくれ。」

勇者「盗賊って・・・。」

盗賊「なんだ?」

勇者「それだけのために、私のこと助けようとしてくれたの?」

盗賊「ふんっ、使いにやれと言われたから、その通りのことをしただけだ。」

使い「嘘ですよ、演説して御用商人の物真似をするぐらい、この仕事に情熱を傾けてたじゃないですか。」

勇者「・・・ありがと。」

盗賊「ふんっ、お礼はあとでしっかり貰っとくからな。」

勇者「・・・皆ありがとう。私、私、あの地下牢にいたとき、もう死んでいいと思ったんだ。」

使い「何を言うんですか。」

勇者「ううん、本当なの。もういいやって。でも皆がそんな私を助けてくれた・・・ごめんね、無茶させちゃって。」

傭兵「こんなの朝飯前さ。」

勇者「・・・私、皆に、私の見た光景を見て欲しい!そしたら、もっと世の中が良くなると思うんだ。だから・・・。」

使い「ほら、泣かないで下さい。・・・私達は、今から仲間ですよ?」

勇者「うんっ。」

バタバタバタ・・・

使い「伝書鳩ですね。」

傭兵「あぁ、情報屋・・・例の娼婦館の女主人からだ。こうやって、連絡を寄越してもらってるんだが・・・どれどれ。」

盗賊「なんかあったか?」

傭兵「色々大変なことにはなってるみたいだが・・・まず、例の商人についてだが、水の守護派や他の教会内部との接点は特に見つからなかったようだ。」

盗賊「・・・なに考えてんだ、奴は?」

傭兵「分からないが・・・金銭のやり取りに関しては、この世界でも指折りの存在らしい。ただ、すぐに次の資金へまわすらしいから、他の保守的な商人に比べて裕福というわけでは無いらしい。」

使い「御用商人との接点は?」

傭兵「商人同士のやり取りぐらいしか、分からなかったようだ。」

勇者「その商人って・・・もしかしたら、その人のこと知ってるかも。」

盗賊「何?」

傭兵「どういうことだ?」

勇者「私が探検隊として北の港町に滞在中に、船の数が予定より少なくて揉めた事があって。」

盗賊「で?」

勇者「その時、教会の商人達が船を捻出するのに渋ってたら、ある一介の商人が出てきて、1隻を貸し出したの。」

盗賊「ぼったくったのか?」

勇者「そうみたい、その時はよく分からなかったけど、いつもの3倍で交渉が成立したみたい。」

盗賊「喰えない奴だな。」

勇者「その後、その人にお礼を言いに一人で会いに行ったら・・・。」

盗賊「?」

勇者「帰還したら、本を書いて欲しいって。なんか、そういう事に決まっちゃったのよ。」

盗賊「守銭奴ってレベルじゃねーぞ!」

使い「今回の彼の目的は何でしょうね?」

傭兵「それはまだ調査中らしい。」

盗賊「他には?」

傭兵「それが、水の守護派の過激派が動いたらしい。」

盗賊「で?」

傭兵「地下牢を守る教会兵士隊の3小隊と当たったらしい。どうなったかは分からないが。」

使い「・・・急いだほうがいいですね。」

盗賊「あぁ。」

商人「せやせや。」

勇者「うんうん。」

傭兵「ん?」

・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

盗賊「い、いつから居たんだ、お前は!」

商人「ちょっと前ですよ、うーんっと、私のことを評価している最中には、もうおりました。」

傭兵「自分の姿消しすぎだろ・・・。」

商人「そりゃあ、私自身の評価を聞きたいですもん。だから、大人しくしてました。」

使い「・・・心臓に悪いです・・・。」

商人「気にしなさんな。」

盗賊「気にするっちゅうの。・・・おい、勇者。眼を開けたまま気絶するのはよしてくれ。」

勇者「うぅぅ・・・。」

盗賊「なんか、お前、勇者の癖に弱すぎだろ。」

傭兵「まぁ、探検隊であれば、戦うのは数少ないだろうしな。」

勇者「と言うより、そういうオカルトちっくなのがダメで。」

商人「ちゃんと足ありますぞ?」

勇者「そういう問題じゃあ・・・。」

使い「ところで、なぜ商人殿はこちらに?」

商人「聞きました?」

盗賊「何をだよ。」

商人「教会兵士隊がやられたのを。」

傭兵「想像は出来ていたが・・・早いな、情報が。」

商人「えぇ、ある筋からですよ。それと、過激派もあっという間に全滅させられました。」

盗賊「!?」

商人「近衛長官が手勢を率いてあっという間に。」

使い「・・・流石というところでしょうか。」

商人「さぁ、私はただの商人ですから、彼の力量は知りません。ただ、事態が予想より遥かに進んでいることは確かです。」

盗賊「それなら、急ぐか。」

商人「えぇ、それがいいかと思いまして、早めにこちらに来ました。」

傭兵「・・・よろしく頼む。」

盗賊「裏切るなよ。」

商人「さぁ、それは私が決めることです。」

盗賊「何?」

商人「そう怒らないで下さい、私も勇者を信じて、付いていきますから。」

盗賊「ふんっ。」

―30分後、西への街道、北街道との分岐点

使い「準備できました。他の囚人達は、人夫たちが責任もって連れて行くそうです。」

盗賊「よっしゃ、さぁ急ぐか、北へ。」

勇者「うん。」

傭兵「そうそう、勇者もそろそろむさ苦しい姿から解放だな。」

使い「良かったですね。」

盗賊「あぁ、せめて野太い声から可愛い声に変わって欲しいもんだ。」

傭兵「なになに、勇者、気をつけろよ。」

盗賊「どういう意味だ。」

傭兵「そういう意味だよ。」

勇者「大丈夫、そしたら、ギッチョンギッチョンのバッサバッサにしてやるから!」

・・・

商人「良かったですね。」

使い「えぇ。私にとって、勇者様の笑顔は3年ぶりですから。」

商人「勇者は、かつて東の端の村の孤児だったそうですね?」

使い「えぇ、司祭様が保護されたんです。」

商人「それは、あなたも。」

使い「・・・なぜお知りに?」

商人「さぁ、秘密です。ハハ・・・。」

使い「・・・。」

。死なずに・・・ね。」

>>184の最後の行は無視をしてくださいw

商人「そう怖い顔をしないでください。・・・勇者を裏切るようなことをしませんから。」

使い「本当ですか?」

商人「直球で言われるとは。でも、本当ですよ。私には勇者に助けられた恩がありまして。」

使い「え?」

商人「探検隊で、船を出したのですが、果ての地にたどり着く直前に、船が座礁しかけましてね。」

使い「・・・。」

商人「それを彼女に救ってもらったのです。もし、あの時に船が沈没していたなら、その時に助かっても、あの先の闇の森に行ったのなら・・・。」

使い「助からなかった・・・。」

商人「えぇ。今まで公式的に帰還したのは勇者ただ一人ですからね。30回以上も派遣して、その有り様では私も助からなかったでしょう。」

使い「そうだったのですか。」

商人「ラッキーなことに、私の船は客人を降ろして帰還することが出来ました。死なずに・・・ね。」

使い「・・・。」

商人「ところで、私の命の恩人は、あの地で何を見たか、あなた方におっしゃったんですか?」

使い「いえ、まだです。」

商人「そうかぁ。・・・どう思います?」

使い「さぁ・・・私には見当もつきません。」

商人「本当に?」

使い「ええ、本当です。」

傭兵「おーい!出発するぞ!」

商人「・・・分かりました。使い、いつかは勇者が教えてくれるでしょう。焦ってもダメですね。」

使い「えぇ、勇者様が言いたいときに・・・。」

―首都・政府庁にて

聖錬王「どういうことだ!?」

王国付司祭「どうもこうもありません。この問題は我々の問題です。あなた方に、何かを聞かれて答える義務はございません。」

聖錬王「貴様は、それでも錬王国に仕える身か!」

王国付司祭「私は確かに錬王国に仕えておりますが、それ以前に聖霊様に仕える身。そして、あくまでも教会に属する人間です。」

聖錬王「屁理屈を言うな!」

王国付司祭「屁理屈ではありませぬ。大体、聖霊様のために行動している我らが教会を、あなた方は侮辱するのですか?」

聖錬王「何を言う!侮辱しているのはそちらではないか!」

王国付司祭「私は事実を申しただけです。」

聖錬王「くっ!もう、貴様からの説明はいらぬ!下がれ!」

王国付司祭「では失礼します。私は教会に用がありますので、失礼いたします。(この青二才め!教会を何と考えている!)」

・・・

側近「さすがは教会・・・と言ったところでしょうか。」

聖錬王「忌々しい存在よ!」

側近「そんなに怒ると、健康に悪いですよ?」

聖錬王「教会の存在のほうが、健康に悪い!」

側近「まぁ、そんなところでしょうね。」

聖錬王「で、今はどうなっている?」

側近「不確かな情報が多いようですが・・・、とにかく叛乱部隊は討たれたようです。」

聖錬王「教会兵士隊なぞ、うちの軍隊より弱いからな。それに勝って調子にでも乗ったのか。」

側近「事実を含めながらの冗談はやめてください。ただ、近衛部隊は思ったよりも屈強の部隊になってるようですね。」

聖錬王「全然戦っていないのにな。」

側近「皮肉を言わないで下さい。」

聖錬王「ふんっ。」

聖錬王「どうだ、もし、もし我が軍が近衛部隊と対決するようなことがあれば、どうなると思うか?」

側近「勝つとは保障は出来ません。もちろん、負けると保障することも。ただ、どちらにしろ次の戦いは苦労するでしょう。」

聖錬王「いわゆるピュロスの勝利って奴だな。」

側近「えぇ、前世代のことはよく分かりませんが、同様のことになるでしょう。」

聖錬王「この後どうなると思う?」

側近「分かりません。ただ・・・。」

聖錬王「ただ?」

側近「後世の伝記家にとって、筆の止まぬことになるかもしれません。」

聖錬王「さて、どう動くか。」

側近「私達がこの時代を変える力は未だありません。」

聖錬王「とは言うが、歴史的に見れば、小国が大国になる時は、じっとすることはあまり無い。」

側近「ですが・・・。」

聖錬王「分かっている。俺だって、この国を大国にするのが目的でない。あくまでも民衆が豊かになるようにする。それが私に課せられた義務だ。」

側近「ええ。」

近衛長官「素晴らしいお考えですね。」

聖錬王・側近「!?」

近衛長官「突然ながら失礼、また盗み聞きをしてしまい、ご無礼をお許しくだされ。」

側近「・・・いつからそちらに?」

近衛長官「今先ほどだ。」

側近「何しに来られたのですか?」

近衛長官「一つ、申し上げたいことがありましてな。」

側近「・・・何を?」

近衛長官「あなた方に派遣している王国付司祭だが、もうすぐ召還することになった。神殿府の意向でな。」

側近「わざわざその様なことをお伝えに来られたのですか?」

近衛長官「変わらぬな、君も。」

側近「関係ありませぬ。」

聖錬王「・・・側近。落ち着け。」

側近「・・・は。」

聖錬王「我が部下が、失礼をしてしまい、申し訳ありませぬ。」

近衛長官「いえ、私の以前の部下でもあります。我らが両名に功罪がありましょう。頭を下げる必要はありません。」

聖錬王「それで、本題は?」

近衛長官「まず、先ほど起こりました事件について、説明をしたくて参上したまでに。」

聖錬王「ふむ。」

近衛長官「今はこちらに控えます、我が部下の近衛参謀より口頭で説明を申し上げます。書状に関しては、後ほど使者を送りますのでお許しを。」

側近「・・・。」

近衛参謀「近衛参謀と申します。では、近衛長官に代わりまして、この度の事件について説明させていただきます。」

―30分後

聖錬王「確かにいなくなったか?」

側近「ええ、確認できました。」

聖錬王「どう思う?」

側近「うーん、探りでしょうか?」

聖錬王「何のために?」

側近「そこまでは・・・。」

聖錬王「何を考えているか分からなかった。どうだ、元部下としてどう感じた?」

側近「なにか、決意的なものを感じた気がします。ただ、なんのため・・・なのかは分かりませんが。」

聖錬王「そうか。」

聖錬王「ところで、先の報告の中に、潜入させていた者の名前が無かったではないか。」

側近「えぇ、気になるところです。」

聖錬王「・・・教会の軍の人事権は、奴が握っていたな。」

側近「悟られてる・・・ということですか?」

聖錬王「だって、あいつは全ての死者及び重傷者の名前を、我らに教えたのだぞ?」

側近「分かっていて、あえて中に入り込ませておいたということか。」

聖錬王「その可能性もありますし、逆に今になって分かったと言う可能性も。」

側近「ですが、まさか易々と『勇者行方不明、逃走の可能性』と伝えるとは。」

聖錬王「・・・思ったより、相手は手強そうだな。」

側近「想像以上に、化け物みたいになってるようです。私がいた頃でも、切れ者と評価されていましたが、ここまでとは。」

聖錬王「用心に越したことは無い。・・・少し待とう。もしかしたら、生き残っていて、報告が来るかもしれん。」

側近「はい。」

―政府庁前の大通りにて

近衛参謀「よろしかったのですか?」

近衛長官「ええ。事実を伝えただけです、何も悪いことはありません。」

近衛参謀「しかし、何故そのようなことを?」

近衛長官「・・・そうですね、簡単に言えば戦争はもう始まっている・・・という所でしょうか。宣戦布告なぞ、まだ出てませんが。」

近衛参謀「?」

近衛長官「無理もありません。あなたは、つい最近まで軍曹的な立場でしかなかったのですから。」

近衛参謀「・・・。」

近衛長官「ですが、頭の良いあなたなら、そのうち分かるでしょう。まぁ、今回は相手が一気に出るのを抑えたく思いましてね。」

近衛参謀「聖錬王が、用心されるということでしょうか?」

近衛長官「えぇ、彼は若いです。思い切った行動をするかもしれません。ですが今、それをされてしまうことは私にとっては困ることです。ですから、相手にあえて情報を開かせることで、相手の意図を読み取ろうと構えるはずです。そのような気持ちにさせれば、自ずと早まった行動をすることは無いでしょう。」

近衛参謀「確かに。・・・正直に言うと、私は長官のされたい事が分かりません。至らぬ限りで申し訳ございません。」

近衛長官「私のしたい事ですか。さぁ、そのうち分かってくるでしょう。付いてきてくれませんか?」

近衛参謀「私は部下です。時に申し渡すことはあるでしょうが、長官に付いていきます。」

近衛長官「・・・あなたも意外と適応能力が高いようですね。『石頭』なんちゃらの評価を信じなくて良かったです。」

近衛参謀「その悪口は慣れていますので。」

近衛長官「ハハハ。・・・太陽が昇ってきたようですね。さぁ、また1日が始まるようです。なにはともあれ、頑張りましょう。」

近衛参謀「はっ。」

―2日後 北の街道にて

商人「さぁ、もうすぐ北の港町ですよ。」

盗賊「ところで、今回の騒動の件が、いやに簡単に情報が広がっているじゃないか。大丈夫なのか?」

商人「大丈夫ですよ、今の所、西の街道がかなり厳重的に監視されてるようですから。」

傭兵「どちらかと言えば、港町は権力派寄りだ。逆にそれが、俺たちの姿を消してくれるって事か。」

商人「皮肉なもんですね。」

盗賊「皮肉なのかどうかは関係ねぇ。要するに、目的を達成させ、さらに助かることをすればいいってわけだ。」

商人「ええ。」

傭兵「しっかし!」

盗賊「あぁ、お前の感じていることは俺も同感だ!」

傭兵・盗賊「勇者は食い過ぎだ!」

勇者「へぇ?」

盗賊「予定の5割り増しだぞ!食糧難になったらお前のせいだからな!」

勇者「そしたら、狩りして増やせばいいじゃん。」

盗賊「ばかやろう!」

傭兵「っつーか、よくそれだけ食って、その太らないな・・・。」

勇者「若いからね!」

盗賊「なんかむかつくわ!」

傭兵「少しは胸に栄養いかないのか?」

勇者「殴るよ?」

傭兵「笑顔で言うな、笑顔で。」

使い「でも、船旅では食べすぎはダメですよ?」

勇者「あ・・・嫌な思い出が。」

傭兵「なんだ、酔ったってのか?」

勇者「食べ過ぎると、酷くなる。」

盗賊「当たり前だ。ところで、船の手配はどうなってる?」

商人「もうすぐ出航出来るような状態のはずです。後は、我々一行を待って出発ってことになってるでしょう。」

傭兵「ところで、例の場所に向かうとして、そこからはどうするんだ?」

盗賊「それは勇者に任せてる。しっかり、説明したしな。」

勇者「うん、その辺は全部大丈夫だから。」

傭兵「それならいいけどよ、勇者残して全滅ってのはやめてくれよ。」

勇者「うん。」

盗賊「ま、なるようになれってことよ。」

傭兵「お前さんらしいな。」

盗賊「どういう意味だ。」

傭兵「そういう意味だよ。」

盗賊「おいおい、棘のある言い方は勘弁しろよな、な?」

傭兵「へっ、自覚があるから心に刺さるんだろ?」

盗賊「なんだ、やるのか?」

傭兵「奇襲が取り得の盗賊さんが、宣戦布告とはな。」

盗賊「この野郎っ!」

勇者「もう、やめてよ。何度このやり取り聞かなきゃいけないのさ・・・。」

傭兵「安心しろ、引き際は心得てる。誰かさんとは違ってな。」

盗賊「挑発の仕方に引き際があったのは知らんかったぜ。」

勇者「もう!」

商人「あれで楽しくやれてるんですか、勇者は?」

使い「意外とそんなもんですよ。」

商人「見かけによらず、フランクですな、使いは。」

使い「いえいえ。」

商人「さてさて、どうするんですかね、あの方達は。」

使い「大丈夫だと思いますよ?殺気を隠せない方に、皆さんが簡単にやられることないでしょうから。」

商人「だといいんですが。」

使い「!」

商人「どうしました?」

使い「皆さん、来ますよ!」

盗賊「分かってる!」

傭兵「やっと間抜けの顔が見れるってことか。よく耐えたよ、俺も。」

盗賊「それは俺もだ。」

傭兵「おいおい、俺の挑発には全然耐えられなかったじゃないか?」

盗賊「お前の挑発は心を抉りすぎなんだよ!もう少し優しさぐらい出せよ!」

・・・

?「おい、止まれ。」

盗賊「嫌だね。」

傭兵「いきなり見ず知らずの人間に、命令されて大人しくなるなど、慣れてないんでな。」

盗賊「おいおい、お前は女性なら簡単に言うこと聞くじゃないか。」

傭兵「敵じゃなかったらな。」

盗賊「ふん、いつもやってることは戦いだろうが。」

傭兵「少しオブラートに包むこと出来ないのか、あんたは。」

盗賊「想像力豊かな方には分かりやすかったかもな。」

傭兵「うっせぇ!」

?「・・・おい、なに勝手なこと言ってるんだ!・・・そこの勇者をどうする気だ。」

盗賊「剣向けて、尋ねるものじゃないぜ、全くよ。」

傭兵「相手が男じゃなくて女だったら良かったのにな。」

盗賊「やっぱりそうなんじゃないか。」

傭兵「ふんっ。」

?「おい、無視するな!」

盗賊「無視してないぞ?」

?「?」

使い「えいっ!」

・・・

盗賊「おいおい、隙だらけすぎるだろ。簡単にやられすぎだ。」

使い「作戦成功ですね。勇者様、もう出てきて大丈夫ですよ?」

勇者「うん・・・あれ?」

使い「どうかしましたか?」

勇者「この人・・・地下牢にいたよ。」

傭兵「おいおい、もうバレたのかよ。急がないとダメじゃないか。」

勇者「でも・・・味方だって。」

商人「味方?」

盗賊「味方にしては、随分物騒なやり方じゃないか。」

傭兵「それは我々も同じじゃないか。」

盗賊「ふんっ、俺らには目的がしっかりある。」

傭兵「まぁ、どんな味方だろうと、相手が何者かどうか分からないと話しにならん。勇者、こいつは何者だ?」

勇者「・・・騎士。」

盗賊「騎士?」

傭兵「おいおい、これが騎士のやり方かよ。もう少し堂々とするもんだろ。」

使い「でも、ある程度堂々していたじゃないですか。名乗りはしませんでしたが。卑怯だとは思いませんが・・・。」

傭兵「卑怯なやり方は、盗賊の専売特許だろ。」

盗賊「褒めてる?」

傭兵「貶してる。」

盗賊「ふんっ。騎士とは言え、一体コイツは何者なんだ?」

勇者「さぁ・・・貴族の三男っては言っていたけど・・・。」

盗賊「貴族?キナ臭いなぁ。どうするよ?」

傭兵「そりゃあ尋問だろ。」

商人「仕方ありませんね。はい、紐です。」

盗賊「用意がいいな、まったく。」

―道中

?→騎士「うぅ・・・。」

盗賊「やっと起きたか。」

騎士「・・・ここは?」

盗賊「馬車の中だ。聞きたいことがあるんだが・・・いいか?」

騎士「・・・ふんっ。」

盗賊「まぁ答えてくれ。・・・お前は何者だ?」

騎士「・・・簡単に言うと思うか?」

盗賊「期待はしていないさ。」

騎士「なら、聞くな。」

盗賊「そうか・・・さて、彼をどうするかね、皆?」

傭兵「口封じ。」

使い「縛って解放するのはどうでしょうか?」

商人「監視するために、こちらに置いとくのは?」

盗賊「だってよ。」

騎士「ふんっ。」

盗賊「煮るも焼くも勝手にしろって顔だな。」

騎士「・・・。」

盗賊「そんなに極悪なことしたことないんだけどなぁ・・・。」

騎士「・・・。」

盗賊「何か言ったらどうだ?」

騎士「・・・何もない。」

盗賊「そうか。残念だ。」

騎士「・・・勝手にしろ。」

盗賊「では、勝手にさせてもらおうか。勇者、どうする?」

騎士「!?」

勇者「えぇ!?」

盗賊「だから、お前はどうするってことを聞いてるんだ。」

勇者「後ろで隠れて聞いてろって言ってたのに・・・。」

盗賊「で、聞いてたんだろ?みんなの意見も聞いたはずだ。だったら決定できるな?」

勇者「むぅ・・・じゃあ、連れてきていい?」

盗賊「いい、じゃない。連れて行くのか?」

勇者「(コクリ)」

盗賊「分かった。ほら、解放してやれ。」

傭兵「お人好しだろ、勇者は。まったく・・・。」

使い「流石ですね、勇者は。」

盗賊「全くだ、感謝しろよ、騎士。」

騎士「・・・あぁ。先程は失礼した。」

傭兵「安心しろ、これから嫌になるぐらい盗賊から失礼なことされるからな。」

盗賊「どういう意味だ?」

傭兵「そういう意味だよ。」

盗賊「勝手に言ってろ。よいしょ、勇者、急ぐか。」

勇者「うん!」

騎士「・・・ところで、どこに行くんだ?」

盗賊「なんだ、それも分からずに追いかけてきたのか。・・・どうやってここだと分かったんだ?」

騎士「それは・・・勇者様に渡した転意石のおかげなんだ。」

盗賊「転意石・・・口に出さずにやり取りする魔石のことか。」

勇者「あ!」

盗賊「どうした、勇者。」

勇者「実は・・・その魔石、まだ持ってたんだ。」

傭兵「それを早く言えっつーの。」

勇者「テヘっ。」

傭兵「何が『テヘっ』だよ。」

勇者「むー・・・。」

盗賊「それで魔石の力を使って、俺たち一行を見つけたってわけか。」

騎士「そうだ。よく知ってるな?」

盗賊「あぁ、少しな。」

使い「盗賊殿は意外と物知りなんですよ。」

傭兵「ほぅ、それは意外だ。」

盗賊「なんか喉に小骨が引っかかる言い方だな。」

勇者「気にしたら負けだよ!」

盗賊「うっせ!!」

商人「・・・で、騎士はどうして勇者を助けようとしたのですか?」

騎士「それは・・・。」

使い「うん?」

騎士「聖錬王のご命令で。」

使い「!?錬王国が教会と対決しようとしてたのですか!?」

騎士「それは分からない・・・だが、勇者の力を借りて、教会の犬になっている状態を脱したいと考えていたのかもしれん。」

盗賊「この状態が続いて、少なくとも300年は経っているからな。」

商人「民衆は、信仰を軸に生きてますからね・・・我ら商人は、多少異なりますが。」

傭兵「しかし、勇者一人だけでどうにかなるってものか?」

勇者「私一人じゃ、無理だと思う。最初はなんとかなるって思ったけれど・・・。」

盗賊「対応が素早かったからな。勇者は、侮りすぎたわけだ。」

勇者「むぅ・・・。」

盗賊「拗ねんな、それだけ教会の力が異常ってことだ。」

傭兵「だが、それでもリスクを負ってまで、勇者を救おうとした錬王国の意図はなんだ?」

商人「聖錬王は、即位してまだ早いですから。」

盗賊「若気の至り?そんなことする奴とは思えないな。」

使い「どうしてそう思うのですか?」

盗賊「即位して2年、失政は未だにしていない。中には一つぐらい失敗しても仕方ないが、そのようなことはしていないからな。」

商人「確かに・・・締め付けてるわけでもないですからね。」

盗賊「あぁ・・・騎士、悪いな。お前の雇い主をこう悪く言ったら、気分も悪くなるだろうが、どうもこれは性質上変えられぬものでな。」

騎士「大丈夫だ。私は、そんな由緒正しい一族でないから。それを救っていただいてる感謝はあるが。」

盗賊「そうか・・・ん?」

傭兵「どうした?」

盗賊「・・・由緒正しくない一族の三男坊に、なぜこんな仕事がやってきた?」

騎士「それは・・・たまたま、私が教会に預けられていたのもある。」

盗賊「・・・それだけではなさそうだな?」

騎士「・・・。」

勇者「騎士さん?」

騎士「いや、大丈夫だ。・・・我々一族に伝わるある秘密があってな。」

商人「秘密?」

騎士「あぁ。・・・名無しの歴史家・・・って話は知っているか?」

使い「えぇ、どこの国でも語られている童謡ですよね。それに、教会の童謡集にありますから。」

傭兵「あぁ、あれか。なんだっけな、ある貧乏な歴史家が、嘘をついた歴史家の嘘を暴くって話だっけ。」

商人「貧乏な歴史家は、嘘を暴いたことによって、教会から恩賞をいただいた。でも、それを全部教会に寄付したっていう商人には理解できないストーリーでしたね。」

騎士「あぁ、そうだ。だがな、あれは全部ある話から作られたものなんだ。」

勇者「ある話?」

騎士「そうだ、真実は違うんだ。」

盗賊「真実?あれはただのフィクションだろ?」

騎士「建前上はな。だが、本当はこうなんだ・・・。」

―150年前・・・

一人は善よりも悪に傾く。

昔、こんな格言を残した男がいたそうだ。
名前は、なんと言っただろうか。
この世界の中では、誰も知らないのかもしれない。
わずかに記憶されている事と言えば、その男の考えが世界に大きな影響を与えたことだ。
だが、それは彼が死んでからのことであった。
悲劇なのは、彼の意図とは異なった理解をされたことであった。
時には利用され、時には非難された。
彼の理想はどこにあったのだろうか。
彼が生きていた時間に近い人々が理解できなかったことを、我々が理解することもまた、不可能なのかもしれない。

ともかく、そんな彼の思想が、その後の歴史にどう影響を与えたかはあまり知られていない。
だが、その後の世界には多様な思想、政治体制、秩序などが構成され、寛容と拒絶が入り乱れ、過熱して暴走し、やがて滅亡へと足を踏み込んだ歴史が生まれた。
栄華を誇った人類は、滅び行く運命であった。
魔物たちは、どこからか現れ、人類が踏み込めぬ土地を作った。
その地は、滅亡へのカウントダウンを確実に歩む人類の世界を奪っていった。

住む土地を失いつつある人類に、奇跡が起こった。
いわゆる聖霊様の奇跡の話である。
そんななか、異教徒たちは反発した。
しかし、ある一言がこの反論を沈黙させた。
「世界が滅び行く中、貴様達の神はどこにいた?」

こうして、聖霊様を崇めることで、人間は生き残ることが出来たのである。





―これが、民衆に知られている事実という名のおとぎ話だ。

このただのおとぎ話を我々は盲目的に信じることで、安らかな人生を過ごそうとしている。
このただのおとぎ話を我々は盲目的に信じることで、安らかな死後の世界を得ようとしている。
嘘で固められたような人生を。
嘘で固められたような天国を。

私はただの歴史家である。
その歴史家が、なぜこの地下牢に入っているか。
答えは簡単である。

―真実を知り、それを世界に伝えようとしたからだ。

歴史家は、真実として信じられていることに、まず疑問を持つことから始まる。
常に異説を持ち込み、定説と戦わせることで真実を得ようとしている。
だからこそ、本当の事実を知ることが出来たのである。

それを胸の内に留めようとするなど、15の頃から歴史家の夢を持ち続けた私には不可能な話である。
歴史家の仕事は、ある事実を湾曲するものではない。
事実を世に広めるのが仕事である。
時に、感情を捨ててまで。

今、地下牢にいる。
運良く、書き物を手に入れた。
本来なら、無理な話である。
しかし、私は運が良い。


―歴史家として。

私は、隠蔽と嘘にまみれた宗教裁判で、ある宣言をした。

神はいない。
しかし、実体の無い神は、我らが人間の心にそれぞれに存在するものである。
教会は、それを利用して人間を支配している。
歴史を改竄して。
さらに、今も起きていることも嘘に嘘を重ねている事態である。
人々よ、良く見よ!良く聞け!良く知れ!

一人間としての人生の終焉としては、甚だ悲劇的なもので終わってしまうであろうが、しかし、私は職務を全うしたことに違いは無い。
私の人生のプライドを、自分自身で削ってしまうことなく。

私は、この手紙とともに、ある書き物を残している。
それをとある人間に託した。
彼の名を残すことは、彼の今後の人生を考えると避けなければならない。
だが、この手紙をもって、一つのお礼をしたい。

ありがとう。

私は死ぬ。
しかし、事実はいつか知られるだろう。
その歴史の高揚する現場を目撃することが出来ないことが、私の唯一つの心残りである。

神よ!死にいく私を許したまえ!

―北の街道にて

盗賊「・・・この手紙は?」

騎士「我々一族の、大切な古文書だ。」

傭兵「これが、150年前の文章なんですね。いまいち、読みにくい所もあるが・・・。」

騎士「当たり前だ。なにせ、この文はかつて存在した湖古国の公用語だった古語だったものを翻訳して写したものだからな。」

傭兵「え?」

商人「湖古国って、ちょうどこの頃に滅んだ国ですよね?古語もそれで一気に衰退したとか・・・。」

騎士「あぁ、烈火国にな。その烈火国も、クーデターが起きて、まもなく武王国の誕生となったわけだ。」

使い「・・・色々な書籍が修道館にはありますが、古語に関するものは見たことありませんね。」

騎士「当たり前だ、古語を滅ぼすために教会が暗躍したんだからな。」

傭兵「何!?」

騎士「さっきの手紙の歴史家、処刑されて間もなく歴史抹消刑にも処されたんだ。だから、彼のことを名無しの歴史家という。で、彼の故郷が元々湖古国であったから、古語で本を残していたわけだ。」

盗賊「おいおい、待てよ。まさか教会は・・・。」

騎士「そのまさかだ。国を滅ぼせば、文化も滅ぼせる。そう考えて、烈火国をけしかけた。」

盗賊「さらに証拠隠滅のために、クーデターも起こしたわけか。」

騎士「その通りだ。」

傭兵「スケールが違うわ、全く。」

商人「しかし、なぜあなたそれを知っているのですか?」

騎士「それは簡単なことだ。我々一族は、元々湖古国の王族の末裔なのだからな。」

傭兵「・・・おいおい、そんな簡単なこと信じられるかっての。」

勇者「・・・右の腕。湖の紋章があったら、本当だよ。」

使い「え?どういうことですか?」

勇者「湖古国の王族たちは、右の腕に紋章を全員付けるの。特別なのをね。」

盗賊「・・・騎士、見せてくれ。」

騎士「あぁ、いいよ。」

使い「・・・確かにそれらしいものがありますね。」

勇者「見たことは私も無いけど、でも普通の人がそれを付けてる事を知ってはいないし、信じて良いと思うよ。」

盗賊「・・・疑ってはねぇよ。事態の早急さに飲み込めてないだけだ。」

騎士「・・・信じてくれるとはな。」

傭兵「ここにいる奴らは、皆奇想天外な奴ばっかだからな。俺は・・・。」

盗賊「傭兵もだろ。」

傭兵「んだとっ!?」

商人「まぁまぁ、しかし、勇者は何故それを知っているのですか?」

勇者「湖古国のことは、教会で探検隊の出発準備していたときに、知ったんだよ。」

商人「もしかして、歴史家の事も?」

勇者「ううん、その時は私も何も知らなかった。でも、知ることが出来た。」

商人「え?どこで?」

勇者「・・・あの地。」

傭兵「あの地って、まさか・・・。」

勇者「うん、『魔物が住む地』。」

傭兵「おいおい、なんでそんなところで知るんだよ。」

勇者「行ってみたら、分かると思う。」

盗賊「はぁ、ますます行かなきゃいけなくなってきたな。・・・皆、改めて聞くが覚悟は良いよな?」

(コクリ)

盗賊「異論が無いとは、馬鹿な連中ばかりだ。」

傭兵「なんだとっ!訂正しろよ!」

勇者「あ・・・でも・・・。」

騎士「え?」

勇者「今回、誰も簡単には死なないと思うよ。多分、大丈夫。」

使い「どういうことですか?」

勇者「・・・探検隊は誰もが死んでいる・・・ってのは違うんだ。」

商人「?」

勇者「『魔物が住む地』で生き残っている人も少なくないの。確かに、亡くなる人も大勢いる。私のときも、9割は亡くなったよ。でも、何人かは生き残った。」

傭兵「本当か!?」

勇者「うん。問題なのは、海を越えた先にある森。そこさえ避けれたら大丈夫。」

騎士「それはどのようにして避けるんだ?」

勇者「これだよ!」

盗賊「まさか・・・飛翔石か。」

勇者「そう。」

盗賊「その石はどこで手に入れたんだ?」

勇者「うーんと、確か首都の魔石屋だったはず。3年前に特別に貰ったんだよね。」

騎士「もしかして、行儀の悪そうなお婆さんがやっているお店ですか?」

勇者「うん、そうそう!」

騎士「自分もそこで転意石をお借りしたんです。」

盗賊「・・・そうか。」

使い「?どうかされたのですか?」

盗賊「いや、なんでもないさ。」

使い「ところで、飛翔石とはどのようなものなんですか?」

盗賊「簡単に説明すれば、ある所とある所を空を飛ぶという形で高速に移動するための魔石だ。」

勇者「石には2種類あって、飛ぶ場所を結ぶために置かなければならない石と、飛ぶために持つ石があるの。」

盗賊「要するに、勇者が向こうに2ヵ所ほど石を設置して、使えるようにした・・・ってわけだ。」

使い「なるほど、そういうことなんですね。」

傭兵「なかなか面倒な事をしなきゃならない石なんだな。」

勇者「うん。」

傭兵「誰かさんと同じだな。」

盗賊「おい。」

傭兵「うん?まさか盗賊のこととは誰も言ってないぞ。」

盗賊「おめぇ、人の目を見ながら言うセリフじゃないだろ!」

傭兵「いや、ついついそいつのことを見つけたくなってね。」

盗賊「てめぇ!」

勇者「ふふっ。」

騎士「・・・いつもこんな感じなんですか?」

勇者「うん、この2日間、ずっとこんな感じ。」

商人「お蔭様で悲愴感全く無しですよ。」

勇者「だから騎士も楽しんでって。」

騎士「え?」

商人「逃亡劇を楽しむとは、なかなか体験できないことだと思いますね。」

使い「普通、考えませんよ。」

騎士「・・・当たり前だ。」

勇者「だからさ、騎士もかしこまらないで?」

騎士「え?どういうことでしょうか?」

勇者「他の皆と違って、私だけ敬語使うのはどうかと思うの。」

騎士「・・・。」

勇者「私が目指したのは、皆一緒にして欲しいってことだから。」

商人「人間平等ってことですよ。」

騎士「・・・分かりました、いえ、分かった。」

使い「どうやら、理解していただけたようですね。」

勇者「ふふ、良かった。」

傭兵「そうそう、だから間違っても勇者のことをちっぱいと言っちゃいけないわけだ。」

ボコッ

勇者「・・・それ禁句。」

商人「うわぁ、綺麗なストレート。顔面潰れそう・・・。」

使い「なにやってんですか、まったく。」

傭兵「いてててて・・・事実言っただけじゃないか。」

勇者「ふんっ。」

盗賊「馬鹿だなぁ、全く。」

商人「まぁまぁ、それは置いといて・・・。」

勇者「置くなぁぁぁ!」

商人「その歴史家、何が原因で処刑されることになってしまったんでしょうか。」

勇者「無視するなぁぁ!」

騎士「それは分からない。ただ、教会の秘密に関わることらしい。」

勇者「うぅ・・・騎士まで・・・。」

傭兵「勝手に泣いてろ。」

勇者「ふんっ。」

商人「秘密・・・ですか。それは分からないですよね。」

騎士「あぁ。」

勇者「私、知ってるよ?」

騎士・商人「えっ?」

勇者「うぅ、やっと無視しないでくれた。」

傭兵「嘘じゃないだろうな?」

勇者「うん。」

使い「それで、その秘密とは何なんでしょう?」

勇者「聖霊様の話。」

盗賊「どういうことだ?」

勇者「その昔、もう何千年前だっけ。人間が愚かな行為で自分達の住処を失おうとしていたのは。」

傭兵「あぁ、そう歴史の授業で学ぶな。」

勇者「その原因の一つに、宗教の対立があったってのは皆知ってるよね?」

騎士「もちろんだ。あまりにも神が乱立していたくせに、人間が滅び行く中で、結局のところ神の救いは現れなかったと。」

盗賊「空想の神に見捨てられた人間は、秩序を失っていったと。」

使い「秩序をなくした人類は、自分自身を神とするがごとく、さらに愚かな行為をして自ら首を絞めていった。そう聖書には書かれていますね。」


勇者「うん。そこに現れたのが聖霊様。」

使い「えぇ、わずかに正義の心を持っていた人々をその滅びから救っていったと。」

商人「そして、他の人々をも救っていってたと。」

騎士「だから、我々は聖霊様を崇めることになった。そういう経緯だったはずだ。」

勇者「・・・それがまったくのデタラメなんだ。」

商人「デタラメ?そりゃあ、もちろん多少の誇張があるのは分かっていますが。」

傭兵「どこがデタラメなんだ?」

勇者「聖霊様・・・実はそれこそ、人類の例の機械文明を退化させた張本人なんだ。」

騎士「!?」

盗賊「おいおい、それはどういうことだよ。」

勇者「・・・聖霊様は自らの土地と人を有したかった。全部を支配することは出来なくても、ある程度の広さを有したかった。」

商人「それは・・・。」

勇者「そう。だから毒をまいた。『魔物が住む地』とこちらの世界を繋げないためにね。何千年も続く毒を。」

使い「・・・信じられませんね。」

勇者「考える規模が違うからね。・・・でもこの事実を知ってしまった歴史家は、教会に抹殺された・・・ってことだよ。」

商人「ということは・・・。」

盗賊「あぁ、そうなると、この事実を教会は知っている。民衆には秘密だ。・・・一部の上層部しか知らぬのだろう。」

傭兵「そうなると、知ってそうな奴をピックアップするとなると・・・。」

盗賊「まずは教皇だろう。もうだいぶ年寄りだろうけど、頭がいかれてなきゃ隠すことぐらい出来るだろう。」

商人「あとは誰でしょうか。」

盗賊「うーん、教会軍のトップの近衛長官も知っているかもな。あとは、探検隊の指揮する司祭の連中や、教皇の書記官も怪しいな。」

使い「怪しいとなると、きりがありませんね。」

盗賊「だな。ただ、教会が失墜すると困るやつも大勢いるだろ。」

使い「でしょうね。」

傭兵「となると・・・。」

盗賊「そいつらが俺たちの敵ってわけだ。」

商人「敵が誰なのか見極める必要がありますね。」

盗賊「そうだな、とりあえず急ぐぞ。」

勇者「ところで・・・。」

盗賊「どうした、勇者。」

勇者「今の教皇って、教皇になってからどれぐらい経つの?」

盗賊「・・・さぁ、だいぶ前からだろ?」

―北の港町にて 翌日夕方

商人「そちらの準備は大丈夫ですか?」

船長「あぁ、こっちは大丈夫だ。例の場所まででいいんだな?」

盗賊「そうだ。その先はこちらで何とかするから安心してくれ。」

船長「よし、じゃあすぐに出航だ。海も最近は荒れてないし、ここ数日は安定してそうだから、3日で到着できるだろう。」

商人「頼みますよ。」

・・・

傭兵「大丈夫なのか?もうだいぶ年取ってそうな船長だけど。」

商人「大丈夫ですよ、この海のことを全て知り尽くしている方ですから。」

盗賊「ま、お前に任せるよりは安心だ。」

傭兵「なんだと!・・・まぁ、俺は操船なんて出来ないけどよ。・・・で、着いてからどうするんだ勇者?」

勇者「着いた後は、3時間ほど東に進めば目的地に行けるよ。」

使い「着いてから、少し先が長いようですね。」

盗賊「本当はそのまま馬車も乗せたかったが、まぁ、しょうがないな。」

傭兵「あれ、騎士はどうした?」

勇者「トイレ。」

傭兵「・・・は?」

勇者「トイレでうなされてる。」

傭兵「おいおい、まだ出発していないうちから酔ってるのかよ。」

使い「・・・可愛そうに。」

盗賊「前途多難だな、全く。」

―5日後 神殿府にて

?「勇者はいずこに。」

近衛長官「・・・調査中です。」

?「・・・奴は我々の災いぞ。」

近衛長官「・・・分かっております。」

?「貴殿を信頼している。だから分かるな?」

近衛長官「は。教皇様の信頼を裏切ることは致しません。」

?→教皇「・・・よろしい、何か必要なことがあれば書記官に申し出よ。退室したまえ。・・・書記官、見送りに。」

近衛長官・書記官「はっ。失礼します。」

書記官「近衛長官殿。」

近衛長官「なんでしょうか、書記官殿。」

書記官「このたびの失態、教皇様は激しくお怒りぞ。」

近衛長官「分かっております。」

書記官「・・・貴様の失態は、貴様自身で名誉回復もらいたいものだ。」

近衛長官「心得ております。書記官殿にも、ご迷惑をおかけし申し訳ございません。」

書記官「ふんっ。・・・貴様は最近新しい参謀をつけたようだな。前の参謀はどうした?」

近衛長官「心臓発作で聖霊様の下に。」

書記官「・・・どうだがな。そういえば、貴様が願い出ていた錬王国の王国付司祭だが、どういう気だ?」

近衛長官「・・・はて、どういうことでしょうか?」

書記官「いくら使えぬ人材とは言え、部署外の貴様がそれを申告するのはいかがと聞いておるのだ。」

近衛長官「・・・使えぬ人材は、さっさと切り捨てる方が教会によろしいかと思いまして。」

書記官「ふんっ。」

近衛長官「では失礼します。」

・・・コツコツコツ・・・

書記官「何を考えているか分からぬ奴め・・・。」

書記官「貴様のすることが教会のためにならぬのならば・・・。」

書記官「貴様を切り捨てるまでよ。」

書記官「・・・今までしてきたことのようにな。」

書記官「・・・フフフ。」

―首都・某所にて

近衛参謀「・・・大丈夫です、誰もおりません。」

近衛長官「では、入りましょう。」

タタタ・・・

近衛参謀「・・・しかし、よろしいのですか?」

近衛長官「何がでしょう?」

近衛参謀「私のようなものを、お忍びで来なければならぬ場所に連れてくるのはと思いまして。」

近衛長官「・・・私の野望をお伝えしましたよね?」

近衛参謀「えぇ、昨日拝聴しました。」

近衛長官「それで、どう思われました?」

近衛参謀「・・・正直に申し上げますと、分からぬのです。」

近衛長官「どういうことでしょう?」

近衛参謀「私は、こう運良く今のポストに就いております。ですが・・・。」

近衛長官「・・・。」

近衛参謀「ですが、一つ違えば私は今頃生きることすら出来ていなかった。例の過激派に乱戦の中、斬られていたでしょう。しかし、たまたま伝令で長官のもとへ駆け込んだ結果、こうして生き残ることが出来ています。」

近衛長官「・・・。」

近衛参謀「一寸先は闇と申すのでしょうか、ただ、自分自身が正しいことをしているかは判別出来ません。」

近衛長官「そこまで謙遜することはないでしょう。あなたには実力があります。」

近衛参謀「もったいないお言葉です。ですから、自分が正しいのかどうかすら分からない私は、自分を救ってくれたあなたについていきます。」

近衛長官「私についてくるということは、かなり苦労しますよ?」

近衛参謀「それは、この数日でかなり身に染みてます。」

近衛長官「辛辣ですね。」

近衛参謀「・・・すみません、冗談が過ぎました。」

近衛長官「いえ、結構ですよ。」

近衛参謀「ところで・・・。」

近衛長官「?」

近衛参謀「私が裏切る・・・そういうことは考えなかったのですか?」

近衛長官「・・・裏切るのですか?」

近衛参謀「いえ、そういうわけではなくて・・・。」

近衛長官「・・・裏切られるなら、私はそれまでの人間だったということです。」

近衛参謀「・・・。」

近衛長官「私のことを信じてくれているのです。あなたのことも信じることぐらい出来なくて、どうしてこの野望を果たせるでしょうか。・・・付いてきてくれますか?」

近衛参謀「・・・えぇ、ついていきます。付いていきますとも。」

?「結構な友情ね。」

近衛長官「・・・これはこれは。遅くなりまして申し訳ありません。しかし、あなたの指摘は少し違いますね。」

?「どこがでしょうか?」

近衛長官「彼は、先日私の部下になった近衛参謀だ。これは、友情というより職務と責務というとこでしょうかね。」

近衛参謀「近衛参謀と申します。」

?「知ってますわ。・・・職務と責務ねぇ、あなたは本当にそう思ってるのですか?」

近衛参謀「・・・い、いえ、分かりません。もしかしたら、その通りなのかもしれないですし、あるいは違う表現が世の中にあるのかもしれません。」

?「そう、では訂正させてもらうわね。」

近衛長官「そうしていただけると、私の立場としてもありがたい。」

?「あなたの立場ねぇ、いつの間にやら偉くなったようで。」

近衛長官「お祝いはまだですか?」

?「お祝いされたいのですか?長官就任おめでと―――。」

近衛長官「冗談だ、この立場など捨て石でしかないですからね。」

?「それはそれは、上昇志向がお強いようで。」

近衛長官「その野望に、付き合ってくれるのでしょう?」

?「えぇ、今までのご恩を返さないと、利息すら払えなくなりそうですからね。」

近衛長官「別に貸したわけでもないんですけどね。」

?「あら、そうなの?でも、ここで私が抜けたらお困りになられるでしょう?」

近衛長官「えぇ、かなり痛手です。・・・冗談はさておき、魔石屋はもう来られてますか?」

?「えぇ、とっくに。中にどうぞ。」

タタタタ・・・

近衛長官「これはこれは、待たせて申し訳ない。」

魔石屋「全くだよ。年寄りは、墓場に片足突っ込んでいるから、時間が惜しいんだよ。」

近衛長官「いえいえ、まだまだお若いですよ?」

魔石屋「皮肉にしか聞こえないねぇ。」

近衛長官「本心ですよ、まだまだ働いてもらわないと、私も困りますよ。」

魔石屋「どうだがね、しかし、お前さんが言ったように、やはり教会兵士Eがやってきたよ。」

近衛長官「うまくいきましたか?」

魔石屋「あぁ、疑いもせずに魔石を持っていってくれたよ。」

近衛長官「助かります。で、どうですか?」

魔石屋「無事に例の地に向かっていったのが確認できたよ。」

近衛長官「そうですか、まずは成功ということですね?」

魔石屋「うむ。」

近衛長官「まぁ、全部がうまくいかないと、成功ではないんですけどね。」

魔石屋「気をつけなよ。・・・で、こちらの方は?」

近衛長官「あぁ、彼は最近就任した近衛参謀です。優秀ですよ?」

魔石屋「優秀な人間ほど、怖いものは無いけどね。」

近衛参謀「よろしくお願いします。」

魔石屋「よろしく。長官とはね、20年ほど前からの付き合いでね。」

近衛参謀「・・・そうだったんですか。」

魔石屋「で、彼には全てを話したのかね?」

近衛長官「えぇ、Eが湖王国の末裔であることもね。全部話しました。」

魔石屋「そんな話を聞いて、付いていこうとするあんたも馬鹿だね。」

近衛参謀「いえ、ご恩を返すだけですから。」

?「そのご恩で、何人仲間を作ったんですか、あなたは?」

魔石屋「おや、館の主も押し付けられた恩の借金に返済をするのかい?」

?→館の主「えぇ、私が借金しているのは長官殿だけですから。返さないと、むずむずする性格ですので。」

近衛参謀「それはともかく、ところで勇者達は我々のことに気づいてないようですよね?」

魔石屋「あぁ、そうじゃ。」

近衛参謀「では、長官の野望も?」

魔石屋「うむ。」

近衛参謀「ということは、彼らは駒・・・ですか。」

魔石屋「まったくその通りだ。知ったら怒るだろうに。」

館の主「やることなすこと、辛辣ですからね。」

近衛長官「それは褒め言葉と受け取っておきましょう。」

魔石屋「・・・さて、これからじゃな。」

近衛長官「えぇ、これからが本番です。これから先、一度の失敗は、致命的になります。くれぐれも慎重にお願いしますよ。」

―『魔物が住む地』にて

傭兵「おいおい、まだかよ!」

勇者「あともう少しだよ。」

傭兵「ったく、飛翔石の到着地がすぐ街かと思ったら、3日はかかるじゃねーか!」

勇者「しょうがないじゃん、距離に限界があるんだから。」

傭兵「ちっ。・・・で、これは?」

勇者「えーっと、大砲って言ったかな。大きな火の玉を放って、破壊するものだよ。」

傭兵「おいおい、こんなでかいの飛んできたら、俺たち簡単に死ぬじゃねーか。」

盗賊「なら、死ね。」

傭兵「そういうこと言うな!・・・俺、生まれた時代が良かったのかもな・・・。」

盗賊「そうだな、もしお前が機械文明の時代に生まれてたら、頭が悪くてどんな仕事にも就けなかっただろうよ。」

傭兵「うっせ!」

商人「勇者、これはなんでしょうか?」

勇者「えっと、自動車・・・って言ったけ。馬の力無しに、エネルギーを使って走る馬車みたいなもんだよ。」

騎士「それは馬車じゃないんじゃないか。」

使い「凄いですね、我々の想像を遥かに超えます。」

盗賊「さっきから、遺産ばかりじゃないか。歴史家だったら嬉々するだろうけどよ。」

商人「これが魔物・・・ってことなんでしょうか。」

勇者「いや、だから魔物は・・・。」

使い「いないんですよね。分かってますよ。・・・でも、まだ誰にも出会えていない。」

騎士「街にどんな奴がいるか、興味深いな。」

傭兵「いきなり、大砲とやらにやられるのは勘弁だぞ。」

勇者「大丈夫だよ、ここの人たちも、こんな古いものの使い方は知らないんだから。」

本題と関係ない話題をもう少し減らしてくれると、読みやすいな

―1時間後

盗賊「おい、灯りが見えるぞ!」

勇者「ほら、言ったでしょ。もうすぐって。」

傭兵「勇者のもうすぐと、俺のもうすぐには意味が違うんだよ!」

使い「とりあえず行ってみましょう。いいですね?」

盗賊「あぁ、それには賛成だ。」


>>267
分かりました、気をつけます。ただ、フラグがかなりありまして・・・そこを隠しながらやってたもんで。

―街、長老宅にて

勇者「お久しぶりです、長老殿。」

長老「おぉ、よく戻ってきた。元気にしてたか。」

勇者「えぇ・・・すみません、色々ありまして、再びお邪魔します。」

長老「結構なことだ。・・・で、そちらの方々は?」

勇者「私の命の恩人・・・ってとこかな。」

傭兵「よせよ、照れるじゃないか。」

盗賊「1名は除く、だけどな。」

騎士「そういう奴に限って、最初に自分がアピールするからな。」

傭兵「なんだと!・・・ごほん、しかし、話と違うじゃないか。」

長老「何がかの?」

完結するなら構わないけどもう4か月だぞい?大丈夫かこのペース
ちょっと不安

傭兵「俺たちは、ここを『魔物の住む地』と言っている。しかし、魔物なんて一つも出会ってない。それどころか、この街には俺たちと同じ人間ばっかだ。少し、背が高い奴と低い奴の差が激しいけどな。」

使い「えぇ、ここにたどり着くまでに、大きな問題はありませんでした。今までの探検隊が全滅・・・とは信じられませんね。」

長老「そうか・・・やはり無理じゃったか。」

勇者「えぇ。真実は伝えられませんでした。」

長老「そうか・・・旅人殿、ここに来るまでに色々変なものに出会わなかったか?」

商人「機械文明の遺産ですか?」

長老「そうじゃ。かつて世界は機械文明と称される高度な文明を持った世界であった・・・。」

・・・しかし、その高度の文明にも陰りはあった。

高度な文明には、高度な思想、教育が常に共存するとは限らなかった。

むしろ、その高度な文明が人々を傷つけていく。

・・・ある時代、2度の大きな戦争があった。

戦争なぞ、どこの世界にもあることだ。

しかし、規模は世界全体の話であった。

国を滅ぼされないために、武器を持つ必要があった。

であれば、武器に強さを求めるのは必然であろう。

1つ目の戦争で多くの新型兵器を開発した諸国は、勝ち負けに関係なく、新たな武器を開発していく。

そこに慈悲の心は無い。

破綻したのは2つ目の戦争のときであった。

このとき、1つの武器が開発された。


>>270
遅筆で本当に申し訳ないw

その武器は、ある国に使われ、想像を絶する人々を瞬く間に死に追いやった。

これを我々の言葉では「ナブ」と言う。

「ナブ」の想像を絶する破壊力に、諸国は驚愕した。

驚愕した諸国は、自分達の国に使われることが無いように、逆に自分自身もそれを持つことになる。

しかし、時代は平和を求めた。

2度と、「ナブ」は使われなくなるはずであった。

しかし、そう思っていたのは、悲劇を知っていた人間だけであった。

時代は無常にも、その悲劇をお伽話のように風化させてしまう。

2度目の戦争から100年も経たないうちに、ある戦争が起きた。

3回目の世界規模の戦争である。

ある国は、野望のために領土の拡大を目指した。

しかし、限界があり逆に侵攻を受けることになる。

そして、反攻を目指すその国が「ナブ」を使ったことが、世界を破壊へと進めた。

2度と使われぬ兵器なぞ、我々未来から見たらおかしな話であるが、彼らは信じていた。

その信仰を破壊されたとき、人々から秩序は失われることになる。

「ナブ」を使わないという無言の定めは失われ、我々に再び「ナブ」の毒が襲ってくる。

「ナブ」の恐ろしさは、その地を破壊するだけにとどまらず、そこの地を再び訪れぬことの出来る不毛の地を作ることである。

それを知りつつ、時には自国を守るためとは言え、7発も同時に自分の領土で使用する愚かな国もいた。

乱発されたとき、人間は自分の住む場所を失いつつあった。

ある一帯が、汚染されたとき、世界は二分された。

お互いに知らぬまま、「ナブ」の毒を挟んで、人間は生き続ける・・・。

商人「ナブ・・・?」

長老「いや、本当の名前は分からない。いつしか、読み取ることが出来た一部の言葉をくっつけて、「ナブ」と称されたと聞いておる。」

使い「・・・なんて人間は愚かなんでしょう。」

盗賊「愚かじゃない人間なんていないさ。ただ、自制を知っているかどうかって話だ。」

騎士「あぁ、人間どうやって生きるかが大切だ。・・・で、探検隊は、その「ナブ」の毒にやられたわけか。」

長老「そういうことじゃ。」

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