博士「ふはははー!貴様を美少女に改造してやる!」「やめろー!」(137)

博士「改造成功……!」

女「うっうっ……ひどい」

博士「ふははは!冴えない男が誰もが振り返るような美少女に大変身だ!」

女「も、元に……」

博士「馬鹿め!誰が元に戻してやるものか!」

女「……戻さなくていいかもしれない」

博士「……おい貴様、なんと言った?」

女「女の子には今までモテたこともなかったし、友達もいなかったし」

博士「やめろ。心に刺さるからやめろ」

女「それならこの体で新しい人生を歩んだ方がいいと思うんだ」

博士「少し後ろ向きすぎないか!?」

女「そんなことないですよ」

博士「改造する人間を間違えたか……?」

女「あの」

博士「ふむう、なんだ?」

女「養ってください」

博士「」

女「こんな風になってしまったからもう働くこともかないませんし、僕だって信じてくれないでしょうから」

博士「貴様!本当にそんなんでいいのか!?」

女「いいんです。もう働きたくもありません。上司からこき使われて同僚とは馴染めず、部下からは馬鹿にされて……」

博士「もうその話はやめよう(提案)」

女「こんなにした責任をとってください」

博士「……ここまで心に響かない責任をとってくださいという言葉が今までにあっただろうか?いやない」

女「ニートしていたい。誰にも会うこともなくじっと暮らしていたい」

博士「そ、そういうのはどうかと思うぞ?改造しておいてなんだが」

女「楽しいことなんてほとんどなかった。学生の時も空気みたいな存在で……」

博士「わかったからそういう話はやめよう」

女「養ってください」

博士「ええー……」

女「養ってください」

博士「ほら、あれだ!その美貌を使えば貢いでくれる男なんていくらでもいるぞ!」

女「……」

博士「……な?だから我が輩に寄生するなどと考えずにだな」

女「……男に体を売れと?」

博士「ならそういう気がある女と……」

女「女の人って嫌いなんですよね」

博士「ホモだったのか?」

女「……学生の頃人並みに恋をしたんですよね」

博士「よいことだ」

女「なんて言って断られたか教えてあげますよ」

博士「遠慮しておきます」

女「いきなり呼び出してなに?告白?ふざけてんの?あんたとのそういう噂がたったらどうしてくれ……」

博士「やめろおおおお!」

女「……というわけで女の人が苦手なんですよね。幼稚な理由ですよね。一度嫌なめにあったから女全部が苦手だなんて。笑ってもいいですよ」

博士「は、ははは……」

女「笑うんですか」

博士「どうしろというんだ!」

女「養ってください。それで全部解決です」

博士「なぜそこまで我が輩に頼む!?はっ、もしや……」

女「勝手に改造したという弱みがあるから簡単に脅せそうかなって」

博士「理由最低!」

女「勝手に改造しちゃう博士には及びませんよ」

博士「だ、だって我が輩マッドなサイエンティストだから……」

女「その割には小物くさいですよね。女一人養う甲斐性すらないですし」

博士「悪の組織の博士に向かってなんということを!」

女「悪の組織(笑)」

博士「馬鹿にするな!」

女「というか悪の組織(笑)のマッドサイエンティスト(爆笑)がなぜこんな改造を?」

博士「貴様の態度がものすごく腹立たしいが……もちろん需要があるからだ」

女「あっ(察し)」

博士「もちろんそういうのがないわけではないが……暗殺用だな」

女「……」

博士「古今東西男は美女に弱い。鼻の下を伸ばしている隙に……というわけだ」

女「へえ、それで僕が実験体に」

博士「なったというわけだ。……普通自分の姿形が変わっていたらもっと騒ぐのだが……」

女「それじゃ僕は暗殺者に仕立てあげられるんですか?」

博士「いや、そういう予定は特にない」

女「なんでですか」

博士「……人一人を一から鍛えて使いものにするためにどれくらいの費用と年月がいると思う?」

女「ああ……」

博士「あくまで貴様は実験体だ。本番では既に訓練を受けた戦闘員に手術を行う予定となっている」

女「……でも僕を野放しにすることもできないわけですよね」

博士「その通り!そこで貴様には二通りの道がある。一番楽なのは貴様を処分することだ。それが一番手っ取り早い」

女「……」

博士「もう一つは我が組織のために働くことだ。つまりニートなどにならせはせんということだ」

女「……そうですか」

博士「はははは!というわけでこれから貴様をこき使っ……」

女「なら死にます」

博士「おぃぃぃぃぃ!?」

女「このメス……よく切れそうですね」

博士「やめんか!というかなぜそんな発想に至る!?」

女「夢のひきこもりニート生活が目の前まできてたのに取り上げられもすればこうなりますよ」

博士「なんというダメ人間……」

女「人と接するのが苦痛なんです!今こうして話しているのも嫌だ!」

博士「適当に選んだ実験体がここまで面倒くさいとは……」

女「というわけで死にます」

博士「それは困る!改造したあとのデータも取らねばならんというのに!」

女「へえ……?」

博士「あっ」

女「僕を養うのと新しく改造をするの。どっちが楽ですかね?」

博士「……」

女「どっちなんだろうなー」

博士「黙れ!弱みにつけこみおってえ!」

女「ごめんなさい」

博士「こんなに心がこもってない謝罪は初めてだ……」

女「ありがとうございますっ!」

博士「今度は気持ち悪いぐらいに感情をこめおって!」

女「ネットとー……あとーあとー……ネットくらいだな」

博士「なにがだ」

女「生活の環境ですよ。ネット環境は整えてください」

博士「貴様……!」

女「そうしたらデータ取りにも協力するので」

博士「……申請をしてみる」

女「ありがとうございますっ!」

博士「うっとうしいわ!無駄に眼をきらきら輝かせおってえ!」

女「やった。夢のひきこもりニートだ」

博士「もう嫌だ……」

《博士の家》

博士「ただいまー」

女「……」カチカチッ

博士「こら、家主が帰ってきたのだから出迎えくらいせぬか」

女「お帰りなさい」

博士「まったく……晩御飯はどうした?」

女「まだ食べてないです」

博士「そうだろうと思ってコンビニで弁当を買ってきたぞ」

女「そうなんですかー」カチカチッ

博士「……」

女「……」カチカチッ

博士「飯を食え!」

女「……はーい」

博士「いかん。ただでさえダメ人間だったのが引きこもりニート生活のせいで更にだめになった……」

女「そうですかー?」

博士「うむ。だいたい四割り増しくらいでだめになった」

女「あ、またこのお弁当ですか。いい加減飽きたなあ」

博士「人が買ってきたものにケチつけるか!」

女「別にケチなんてつけてないですよ?……はぁ」

博士「ええい、無駄に態度が大きくなりおって!家事くらいせぬか!」

女「家事とかはちょっと……」

博士「食ってネットして寝ての生活を繰り返しおって!ご近所さんからの視線を考えんか!」

女「……それですよ」

博士「話をそらすな!」

女「悪の組織が提供する環境に少なからず期待してたんですよ」

博士「勝手に期待されても知るか」

女「なのに用意されたのは普通のアパートの一室。しかも元は博士の住居ですよ?」

博士「今もここは私の住居だ」

女「それで思ったんですが」

博士「どうした」

女「組織って思ったより小さい……?」

博士「そんなもの組織の幹部でもある私がこんなところに住んでいる時点でお察しだろう」

女「ええー……。それじゃあ処分するっていうのも……」

博士「めったにないな。人材を処分するような余裕はうちにはない。それなのにお前はニート生活をしおってぇぇ……」

女「……はぁ」

博士「ため息をつきたいのはこっちだ!」

女「せっかく人の喧騒から離れた生活が出来ると思ってたのに……」

博士「ニートの分際で本当に偉そうだなお前」

女「何を言いますか。ちゃんとデータ取りには協力してるでしょう」

博士「少し血液を採取したり質問に答えたりするだけだろうが!」

女「労働に貴賎はありませんよ」

博士「そんなことよりさっさと弁当を食わんか穀潰し」

女「……一度おいしいって言っただけで同じものを何回も買ってきて」

博士「文句があるならはっきりと言え」

女「いえいえ、家主さまに文句なんかとてもとても」

博士「……はぁ」モソモソ

女「……」モソモソ

博士「……おい」

女「……なんですか?」

博士「そういえば届け物はなかったか?」

女「いいえ、特になにも」

博士「おかしいな」

女「何がですか」

博士「そろそろ通販から商品が届いてもいい頃なんだが……」

女「通販使うんですか」

博士「なんだ、悪いか」

女「悪の組織……」

博士「便利ではないか、通販」

女「本当に悪の組織なんですよね?」

博士「ぶっちゃけると組織が小さいからな。やる悪事もそれ相応になる」

女「僕を拉致って改造したのって……」

博士「うむ。組織でもトップクラスの悪事だな」

女「しょぼい……」

博士「黙れ!それにしても届いていないのか……」

女「さあ?そういえばインターホンは鳴りましたけど」

博士「……おい」

女「なんですか」

博士「なぜ出ない!?」

女「引きこもりを甘く見てはいけません。可能な限り人との接触は避けたいんです」

博士「養われているくせに家主に対する気遣いとかはないのか!」

女「そこそこには」

博士「なんだ、そのそこそこにはって」

女「隠しているそういう類のものから博士が実は攻められるのが好きだという……」

博士「らめえええええ!」

女「らめえええええとか恥ずかしくないんですか?」

博士「貴様こそその姿でらめえええええとか言うな」

女「男なんだからいいじゃないですか」

博士「それはどうだろうな?」

女「どういう意味ですか」

博士「精神というのは水のようなものだ。容器によってたやすくその姿形を変える」

女「……」

博士「という話を聞いたことがあるが実際のところどうなんだ?」

女「……女性に対する性的欲求はほとんどないですね」

博士「ほほう、そうなのか」

女「そういう欲求も少なくなるものですから自分が男だという自信があんまりないです」

博士「そういった処理をまったくしていないとは言わんが興味深いな……」

女「やっぱりそういうのしてあるんですか」

博士「多少はな。生理的嫌悪感を和らげんと本番……まあハニートラップやらで使いにくいだろうし」

女「ああ……」

博士「そういった訓練もするとはいえいちいち汗をかいていたり苦笑いをしていたら使いものにならんからな。改造でそこらへんもちょいちょいっとな」

女「洗脳じゃないですか」

博士「あくまで和らげるだけだ。問題ない」

女「……そういえばこの体なんですけど」

博士「不具合でも発生したか?」

女「不具合といえば不具合なんですけど」

博士「なにぃ!?どこだ!」

女「気持ちよくないんです」

博士「……」

女「しても気持ちよくなくて……」

博士「二度も言わんでいい!」

女「どうしてですか?」

博士「そんなもの任務達成のために決まっているだろうが。快楽は思考を鈍らせるからな」

女「なん……だと……」

博士「貴様には関係ないだろうが。相手もいないのだからな」

女「人間の三大欲求の一つが奪われた……!?」

博士「よかったな」

女「よくないです。エロサイト巡りをして時間が潰せなくなったじゃないですか。あんまり気持ちよくないからムラムラするだけですし」

博士「そんなこと知るか!」

女「そういう欲求がなくなっても、女の姿になっても頑張ってしてたのに」

博士「もっと別のことを頑張らんか」

女「……他になんか変なところってないですよね?」

博士「変なところとはなんだ」

女「僕のニート生活に支障がでるようなことですよ」

博士「それなら朗報があるぞ」

女「朗報、ですか」

博士「貴様には生理がない」

女「それは楽でいいですね。経済的ですし」

博士「よって貴様は子供を作れない」

女「……」

博士「どうした?貴様にとっては朗報だろうに」

女「……なんでしょうかね。作る気は微塵もなかったのに作れないと宣告されるともやもやします」

博士「そうか。ま、時間がたてばそれも忘れるだろう」

女「悪の組織の技術で子供が産めるようにとかしなかったんですか?」

博士「どうやってやるのだそんなもの。技術的に無理に決まってるだろう」

女「ですよね」

博士「それに仮にそんなものをつけて何の役に立つ」

女「えっ……?」

博士「子供ができると身動きがとりにくくなるだろう。戦闘員としてそれは大きなマイナスだ」

女「でも子供ができないとなるとかわいそうじゃないですか?僕はともかく」

博士「まあな。だが少なくともこの組織に在籍しているものはわけありだ。納得して改造に志願する者もいるだろう」

女「へー……」

博士「貴様もだ」

女「はい?」

博士「社会からいなくなっても騒ぎになりにくい人間を選んだのだぞ?」

女「……まあ僕は毒にも薬にもならない存在でしたしね」

博士「他には……特にないな。何か聞きたいことでもあるか?」

女「あ、少しお願いいいですか?」

博士「なんだ」

女「お小遣い増やしてください」

博士「却下」

女「なんでですか」

博士「貴様図々しいにも程があるぞ!」

女「いいじゃないですか少しくらい。エロサイト巡りが意味のないものと化した今、ゲームが欲しいんです」

博士「ネットゲームでもしておけ。時間が腐る程あるのだから課金は許さんが」

女「嫌です」

博士「なぜだ。ニートというものはネットゲームが大好きなのではないのか?」

女「人との関わりがイヤで引きこもってるのになんでわざわざネットで関わらなくちゃいけないんですか」

博士「画面を通しての付き合いすらイヤなのか」

女「イヤです、面倒くさい。だからお小遣い増やしてください」

博士「こ、ここまでダメな奴だとは……」

女「以前だって辛うじて社会人してただけですもの」

博士「そんなことで威張るな」

女「それでお小遣いは増やしてくれるんですか?」

博士「却下だと言っただろう!申請して出た貴様の生活費もそんなに多くはないのだぞ!」

女「博士の自腹で」

博士「なぜニートの小遣いを懐から出さねばならんのだ」

女「見た目可愛い同居人の頼みなんですよ?」

博士「ほう?」

女「あれ?自分で僕を美少女に改造したとか言っておいて前言撤回するんですか?」

博士「……元が綺麗だとしても磨かないことには光らんだろう。自分の姿をよく見てみろ」

女「ジャージに眼鏡。髪は伸ばしたままです」

博士「せっかく改造したのにそんなのではまったく生かされていないぞ!」

女「いきなり女になってしっかりおしゃれをするのって難易度高いですよ。博士は女性のおしゃれとかちゃんと知ってるんですか?」

博士「知らんが人並みの努力はしろ。いつまでもニートではいられんのだぞ?」

女「えっ!?」ガタタッ

博士「どうした急に立ち上がったりして」

女「どういうことですか。説明を求めます」

博士「いつもそれくらい真面目ならなあ……」

女「そんなことよりも説明を求めます」

博士「簡単なことだ。改造後の経過を見ていたが大丈夫そうだしな。それならばもう貴様を観察するという名目で養う理由もなくなるわけだ」

女「そん……な……」

博士「だが貴様は少なからず組織と関係を持った人間だ。我が輩の雑用……助手として雇ってやってもいいぞ?一応だが一つ屋根の下で暮らした仲だしな」

博士「そこで貴様と同じ改造手術を受けた者の相談役になってもらいたい。改造を受けた者でしかわからんこともあるだろうしな」

博士「そこで貴様には化粧や女としての振る舞いを覚えてもらえばそれを戦闘員達に教えることも出来るだろう。我が組織は男所帯だからな……って聞いているのか?」

女「ニートできないのなら死のう」

博士「待てえええい!」

女「なんですか」

博士「どれだけ貴様は働きたくないのだ!?」

女「働きたくないんじゃないです。人と関わりあうのが嫌なんです」

博士「なお悪いわ!」

女「せっかく手に入れたこの生活を手放したくないんです」

博士「知るか。あとひと月もたったら働いてもらうからな!」

女「鬼!悪魔!人でなし!」

博士「はははは!悪の組織の博士だからな。そんなのは褒め言葉だ」

女「このムッツリどM」

博士「それは関係ないであろうが!?」

女「やーいムッツリムッツリー」

博士「やめんか!子供か貴様は!?」

女「働かないで済むのなら子供でもなんでもいいです」

博士「……頼むから働いてくれ。いや家事くらいはしてくれないか?最近家に帰ろうと向かう足が重くなって仕方ないのだ……」

女「どうしてですか?」

博士「貴様のせい決まっているだろうが!他に誰がいる!?」

女「博士博士」

博士「なんだ」

女「そんなに怒ってばかりじゃ体に悪いですよ」

博士「貴様ァ!!」

寝る

女「なんですかその振り上げた手は」

博士「……!」

女「叩くんですか?僕を」

博士「…………」

女「…………」

博士「……そんなに働くのが嫌なのか」

女「はい嫌です」

博士「だが家主である我が輩の決定には従ってもらうぞ!貴様は我が輩の助手として組織で働くのだ!」

女「……うっ」ジワ…

博士「な……!?」

女「うわーん嫌だー!働きたくないよー!」

博士「今度は泣き落としときたか……。恥ずかしくないのか?」

女「ぐすっ……働かないで済むのなら恥なんていくらでもかいてやります」

博士「馬鹿め!我が輩にそんなものが通じるとでも思うのか!?」

女「うわーんわんわんわん!」

博士「うるさ……」

ドンッ!

博士「!?」ビクッ

女「!?」ビクッ

「夜中にうるせーぞ!何やってんだ!」

博士「……貴様のせいで隣人に壁ドンされたではないか……!」

女「働けなんていうからですよ……!」

博士「ふん。いくらごねても決定は覆らんからな、覚悟しておけ」

女「そんな……ひどい」

博士「ひどくて結構」

女「せっかくニートになれたのに……」

博士「これ以上貴様の負担など背負ってやるものか。家事も分担だからな」

女「か、家事まで……!?」

博士「今まで我が輩がやってきたのだ。文句など言わせんぞ」

女「あなたには血も涙もないんですか!」

博士「ある。が、ニートに対してなら鬼にも悪魔にもなろう」

女「あんまりだ……」

博士「何、1ヶ月後だからまだ余裕はあるだろう。ちゃんと生活リズムを戻しておけよ」

女「そんなことしたら深夜アニメが見れないじゃないですか」

博士「録画でもしておけ」

女「……」

博士「ところで貴様は家事はできるのか?」

女「……一人暮らししてましたからそこそこには」

博士「そうか。なら明日から家事をやってもらおうか」

女「えっ」

博士「だから今日はちゃんと寝ろ。いつもみたいに夕方に起きるなぞ許さないからな」

女「こんな時間に寝れません」

博士「目をつむっているだけでいい」

女「それが苦痛なんですが」

博士「知るか。これは貴様のためだ」

女「そんなことをしてくれと頼んだ覚えはありません」

博士「いつか必ず我が輩に感謝する時がくる」

女「絶対ないです」

博士「さて、弁当食べ終わったし風呂にでも入るか。貴様から入ってこい。我が輩は布団を敷いておくから」

女「もしもーし話を聞いてくださーい」

博士「肌の手入れもした方がいいのだろうが我が輩はそういうことに疎くてな。早く貴様に覚えて欲しいのだが……」

女「……お風呂行ってきます」

博士「うむ。しっかり体を洗ってこいよ」

《1ヶ月後》

博士「さて、1ヶ月経ったわけだが」

女「行きたくないです」

博士「……ほとんど変わっとらんな」

女「何を言うんですか。ちゃんと家事をするようになったでしょう」

博士「それでも家事をするニートになっただけであろうが。ほら行くぞ」

女「行きたくないです」

博士「貴様はいつまでだだをこねれば気が済むのだ。本当ならばもう組織の者達に顔見せまですませていた予定だというのに……」

女「知ったこっちゃないです」

博士「……貴様というやつは」

女「僕はこの布団の中から出ませんからね」

博士「ほらさっさと出て着替えんかぁー!」

女「やめてー!乱暴はやめてー!誰かー!誰かー!」

博士「貴様がそうするせいで我が輩はご近所さんから冷たい目で見られてるのだぞ!?やめんか!」

女「その手を離してください!」

博士「こ、このぉぉ!」バサッ

女「ひいっ、寒い!」

博士「ほらとっとと着替えぬか」

女「眠い寒いだるい」

博士「さっさとせい!」ポカ

女「痛い!うう……あんまりだ」

博士「まったく、手こずらせおって」

《悪の組織 ミーティングルーム》

ざわざわざわ……

博士「静粛に!」

シーン……

博士「えー、知っての通りだが我が組織は男所帯である」

博士「このままでは使いたくても絡め手が使えぬ。だが女性が我が組織に入り、戦闘員になることは望めない」

博士「なので我が輩は考えた。居ないのなら作ればいいのではないかと!」

博士「戦闘行為が出来る女性などほとんどいない!それに加えて美人である女性はもっと少ない!」

博士「という考えで至ったのが今回の改造だ!そして既に改造の実験は成功した!」

ざわざわざわ……

博士「そしてこれが改造結果だ!さあこい!」

ざわざわざわ……

博士「……」

博士「……」

博士「……」

博士「…………さっさと来んかあ!」

女「……はーい」ノソノソ

ざわざわざわ……!

博士「見たか!これが改造結果である!この美少女は改造前は冴えない男であったが改造によりここまで変化した!」

女「ど、どうも……」

博士「さて、詳しいことは手元の資料を見て欲しい。質問はあるか?」

スッ、スッスッ……

博士「うむ、ではそちらの」

「一度改造手術を受けたらもう戻れないのですか?」

博士「期待はしないで欲しい。次」

「戦闘能力はどうなるのでしょうか?」

博士「やはり落ちることは否めない。手術を受けたら任務もそういったものに変わっていくだろう。次」

「生殖能力はどうなるのでしょうか?」

博士「手元の資料にも書いてあるようになくなってしまう」

「そうですか……」

博士「あらかじめ言っておくがこの改造は姿形が大きく変わる。なるべく志願制で希望者を集めたいが人数が集まらなかった時には覚悟をしておいて欲しい」

「……どれだけの人数が必要なのですか?」

博士「とりあえずは2、3人を予定している。他に質問はあるか?」

シーン……

博士「よし、なければこれで終わりにする。志願するものはあとで私のところへ来るように。解散!」

亀更新でいく。おやすみなさい

~ ~ ~

博士「ふう……」

女「あー疲れた。博士、コーヒー入れてくださいコーヒー」

博士「助手なのだから我が輩の分まで貴様が入れろ」

女「えー」

博士「そしてここでは貴様は我が輩の部下なのだぞ。もっとそれ相応に振る舞わんか」

女「はいはい。博士、コーヒーに砂糖はいりますか?」

博士「四つ入れてくれ」

女「……」

博士「なんだ、言いたいことがあるのなら言え」

女「なんでもないですよ」

博士「ふん!」

女「……それにしても何人くらい来ますかねえ」

博士「さてな。あんまり期待はしていないが」

女「やっぱり」

博士「やはり自分の姿形が変わるというのには抵抗があるのだろう」

女「……」

博士「なんだ」

女「有無を言わさず改造されたんですけど」

博士「貴様はどちらかと言えば喜んでいたではないか」

女「それはそうなんですけど……」

博士「ま、何人かは来るだろう。よく考えればただで性転換手術が受けれるのだぞ?」

女「……世の中には探せば受けたい人はいるんでしょうけどこの小さい組織の中にいるかどうか……」

博士「なら賭けるか?我が輩は来る方に賭けるが」

女「賭事は嫌いなのでいいです」

博士「そうだったか?」

女「基本的にそんなに運がよくないんですよ。拉致されてしまうくらいですし」

博士「……貴様、組織の金であれだけニート生活を送っておきながらまだ根に持っているのか?」

女「それはそれ、これはこれです」

博士「……」

コンコン……

女「誰か来たみたいなので奥で隠れてますね」

博士「許さん。ここに居ろ」

女「ここでやっていけるか不安になってきたな……」

博士「入れ」

戦闘員1「失礼します!」

博士「何の用だ?」

戦闘員1「先ほど説明された改造手術に志願しに参りました!」

博士「ほう……」

女(もう来たよ……)

博士「理由を聞いても?」

戦闘員1「はっ。それは私は恋人や家族などがおらず、改造を受けるのに相応しいのではないかと自己で判断した結果であります!」

博士「……そうか」

戦闘員1「はい」

博士「……わかった。この後の予定は?」

戦闘員1「この後は隊ごとに別れて実戦訓練をする予定であります!」

博士「そうか。おい」

女「なんですか?」

博士「こいつの予定は改造手術になったと連絡をしておけ」

女「もうやるんですか?」

博士「決心が鈍らないうちにやった方がいいだろう。それでいいな?」

戦闘員1「はい」

女「……本当にいいの?」

戦闘員1「組織のためならばこのくらいどうということはない」

女「ええー……」

博士「手術をするぞ、ついてこい」

戦闘員1「わかりました」

コツコツコツ……

女「……そんな簡単に決めていいのかな」

女「っと、連絡しとかなきゃね……」

~ ~ ~

女「すぅ……すぅ……」

博士「起きろ」フミッ

女「ぐえっ」

博士「さては我が輩が手術をしている間ずっと惰眠を貪っていたな?」

女「お腹踏まないでくださいよ!それに違いますよー、ちょっとうとうとしてただけでーす」

博士「どうだか」

女「ところで改造はもう終わったんですか?」

博士「ああ終わったぞ」

女「はやっ!」

博士「もう貴様で一回やったからな。だてに悪の組織の博士なんぞやっとらん」

女「……博士ってすごかったんですね」

博士「どういう意味だそれは」

女「家事してるイメージしかなかったので」

博士「それは貴様のせいだ。まったく……。さて、もうそろそろ来い」

ガチャ……

戦闘員1「……」

女「おおー……」

博士「どうだ、完璧だろう?」

女「……なんか博士が持っていた本の人に似て……」

博士「さあ!!特に不具合はないな?」

戦闘員1「……体のバランスが変わったので動きにくいです」

博士「それはじきに慣れる。とりあえずは大丈夫のようだな」

戦闘員1「それで博士。私はいったいどうすれば?」

博士「ふむ。我が輩の助手と女らしくなる勉強をしてくれ。任務のためにもな」

戦闘員1「わかりました」

女「えー……」

博士「えー……とか言うな。さて、それじゃあさっそくお手本を見せてやれ」

女「えっ」

博士「その姿になったのは貴様が先だろう。先輩らしいところを見せてやれ」

戦闘員1「よろしくお願いします!」

女「……え、えーと……う、うっふーんいやーんばかーんえっちー」

博士「…………」

戦闘員1「…………」

女「せ、せめて何か言ってくださいよ!」

博士「はあ……ひどいな」

戦闘員1「私の方がまだ上手いと思いますね」

女「な、ならやってみせてくださいよ!」

博士「うむ。どれくらい演じれるのか見せて欲しい」

戦闘員1「わかりました。では……」





戦闘員1「きゃぴきゃぴきゃぴーん☆きゃぴきゃぴ星から来たきゃぴりん星人だぞぉ☆」

博士「」

女「」

戦闘員1「……どうですか?」

博士「……何を参考にしたのだ?」

戦闘員1「今どきの流行りだという女性を真似てみたのですが……」

女「……それはもう止めておいた方がいいですよ」

博士「う、うむ。我が輩もそう思うぞ」

戦闘員1「そうですか……。難しいですね……」

女「あっはい」

博士「そ、そうだな。まああれだ、とりあえずは助手と頑張ってくれ」

戦闘員1「わかりました」

博士「ところでだが貴様以外はこの手術についてはどんな様子なのだ?」

戦闘員1「やはり難色を示していますね。組織への忠誠が……」

博士「いやまあ、当然だろう」

戦闘員1「……そうですか」

博士「だがあと一人は志願して欲しいのだがな」

女「いつまで志願するのを待つんですか?」

博士「とりあえず一週間は待とうと思っている」

女「決心するのにも時間がいるでしょうしね」

博士「貴様はその間に一緒に女らしさを磨いておけよ」

女「ええー……」

博士「いちいち口答えするな。いつまでも我が輩に甘えるなよ」

女「……はい」

寝る

~ ~ ~

博士「ふむ……術後は安定していて問題なしだな。流石我が輩」

女「博士ー」

博士「む、なんだ?」

女「この資料ですけどどうしますか?もう使いません?」

博士「ああ、それはもういらん。処分しておけ」

女「わかりましたー」

博士「……それにしてもあれだな」

女「なんですか」

博士「いや、真面目に働いているようなのでな」

女「ああ……そのことですか」

博士「もう仕事には慣れたか?」

女「まあとりあえずは。普通の仕事しかありませんし」

博士「そうか……」

女「……私が働いているのが不思議そうですね」

博士「まあな」

女「……以前は人間関係が最低でしたから。気の知れた人が上司ならそこまで苦痛じゃなかったようです」

博士「ん、そうか」

女「ええ。だから感謝しています皮肉じゃなしに」

博士「……何が目的だ?」

女「どうしたんです急に」

博士「いや、それとも偽物……?」

女「すっっっごく失礼です」

博士「貴様の今までの言動を振り返ってみると妥当な反応だろう」

女「あーはいはい、そうですね」

博士「だが我が輩としても貴様が更正するのは喜ばしいことだ。帰りに居酒屋でも寄って乾杯するか?」

女「それなら人がいるところは嫌なので宅飲みがいいです」

博士「ふむ、なら帰りに買い物でも行くか」

女「そうですね」

博士「そうと決まれば早く仕事を終わらせようではないか」

女「はーい」

《スーパー》

博士「さーて、何を買おうか」

女「なんか今日は枝豆が安売りみたいですよ」

博士「おお、なら枝豆と……」

「レベル高えなー……」チラッ

「お母さんあのお姉ちゃんきれい!」「そうねー」

女「…………」

博士「どうした?」

女「早く行きましょうよ。恥ずかしいです……」

博士「確かに目立っているな」

女「はい、だから……」

博士「少しくらい視線に慣れておけ。我が輩は今忙しいのだ」

女「ちょっ……!」

博士「チーズだけでもいろんな種類があるからな……」

女「そんなのどれだっていいじゃないですか!」

博士「よくない」

女「ああ……もうっ!」

博士「いやしかしサラミも……」

女「早くしてくれないと先に帰りますよ!?」

博士「ん、そうか?別にいいぞ」

女「……鍵、開けときますから」

博士「ビール、発泡酒……」

女「開けときますから!」

博士「お、おお?……わかった」

《博士の家》

ガチャ

女「…………」

バタン

女「……はあ」

シーン……

女「……静かだな」

ピッ

「と、いうわけなんですよ!」「なにがや!」

ピッ

「次はオリコン一位のこの曲……」

ピッ

「明日は朝は雨ですが昼間から夜にかけて晴れ……」

プツン……

女「……面白いのやってないな」

女「…………」

女「……私は突然悪の組織に捕まってしまい、改造手術を受けた改造人間なのだ!」

女「今思うと昔見てたヒーロー物とおんなじだなぁ。……悪の組織と戦ったりするどころかそこで働いているけど」

女「本当に人生あっという間に変わっちゃったなぁ」

女「もし、あのまま……拉致されずに……改造されずに……博士に会わなかったら……」

女「……自殺してたんだろうな」

女「……博士」

女「博士は私を救ってくれた」

女「茶化されたけど、本当に感謝している。あの誰にも必要とされなかった日々から、僕を、私をすくい上げてくれた」

女「誰かに、博士にもっと必要とされたい」

女「体が女になって、心も勘違いをしてるのか」

女「それとも性別関係無しに好きになったのか」

女「そもそもこれは好きという感情なんだろうか」

女「そもそも博士は私を受け入れてくれるんだろうか」

女「私は博士を愛したいのだろうか」

女「……わからない」

女「自分でもわからない」

女「今の自分の博士に対する感情が恋だとしたら……昔の自分がした恋とは全然違うな」

女「今の方がずっとずっとずっと熱くて甘くて……」

女「  。」

~ ~ ~

博士「帰ったぞー」

女「お帰りー」

博士「待たせてすまんな。だが買ってきたのは我が輩が吟味に吟味を重ねた至高の酒とつまみ達だ!」

女「普通にスーパーで買ったんでしょうに」

博士「見てわからんか!」

女「あ、発泡酒じゃない」

博士「気づいたか。今日はちゃんとビールを買ってきたのだぁ!」

女「奮発しましたねー」

博士「貴様がようやっとまともな社会人に復帰したからな」

女「悪の組織はまともな会社なんですか?」

博士「ええい!いちいちあげあしをとるな!」

女「あはは、枝豆茹でますねー」

博士「うむ、頼んだ」

女「全部やっちゃいます?」

博士「全部やるには多い気がするのだが」

女「余ったら余ったでいいじゃないですか。冷蔵庫に入れとけば」

博士「ま、それもそうだな。余ったら何にするか考えとくか」

女「枝豆ご飯とか結構好きですよ」

博士「ぬ、いいなそれは」

女「でしょう?というわけで全部茹でますねー」

博士「了解だ」

女「大きい鍋は……と」

博士「ふぅ……」

ピッ

女「あ、今ろくな番組やってませんよ」

博士「そうなのか?」

女「ええ、だいたいチャンネル回したので」

博士「ニュースもやってないのか?」

女「ニュースは……確かやってましたけど」

博士「なら暇つぶしにでもニュースを見るか……」

ピッ

「○○首相が行った××政策により……」

女「……ニュースといえば」

博士「なんだ?」

女「私達の組織がやったことがニュースに流れたりするんですか?」

博士「……たまーに?」

女「……ないんですね」

博士「我が組織の規模を考えろ!当たり前だろう!」

女「そんなことで怒られても困りますよ」

博士「……実はただでさえ規模の小さい我が組織だが最近落ち目でな」

女「えっ、そうなんですか?どこからそんな情報を」

博士「……給料が減ったからな」

女「ああ……」

寝ます

博士「それにしても面白くともなんともないニュースばかりだな」

女「…………」

博士「あ、また日本負けたのか。情けない」

女(……無防備だな)

博士「あー、でも惜しいところまで行ったのだな……」

女(……今、急に抱きしめたら……どんな反応するんだろう)

女(驚く?嫌がる?呆ける?それとも……)

女(……試したい。どんな反応をするのか、確かめたい。……今なら)

博士「おい、枝豆はまだか?」クル

女「きゃあっ!?」ビクーン!

博士「うおぉ!?」ビクッ!

女「き、急に振り向かないでくださいよ!びっくりしたじゃないですか!」ドキドキドキ…

博士「びっくりしたとはこちらのセリフだたわけ!音も無く人の真後ろに忍びよって!」ドキドキドキ…

女「ちょっと驚かそうとしただけですよ」

博士「火を点けているのだから火元から離れるな!」

女「はいはい、すみませんでした」

博士「あー、心臓に悪い」

女「……ちぇ」

博士「まったく……枝豆が茹で終わったら呑むぞー」

女「はーい」

博士「では、乾杯だ」

女「かんぱーい」

カシュッ!ゴッゴッゴッ……

博士「ぷはぁっ!旨い!」

女「おっさんくさい飲み方ですね」

博士「事実おっさんなのでな。あー、それにしても旨い」

女「……」ゴクゴク

博士「はー……」

女「……結構疲れ溜まってました?」

博士「まあな。やっと一息つけれた感じだ」

女「博士は忙しいからですねぇ」

博士「まったくだ!人を散々こき使いおってからに……」

女「……それなのに給料は増えませんしね」

博士「組織が大変なのは知っておるのだがなー……。あーあ、もう止めてしまうかあんな組織」

女「そうですか。次の仕事を探さないとですね」

博士「冗談だ冗談」

女「そうなんですか」

博士「いちいち真に受けるな。酒の席だぞ」

女「…………」

博士「……お前は止めたいのか?」

女「どうでしょうね、博士はどう思います?」

博士「質問を質問で返すな」

女「……博士が止めない限り止めませんよ。私は博士の部下なので」

博士「……ふん。働きたくないとだだをこねていた頃がだいぶ昔に感じられるな」

女「博士はどうなんですか?」

博士「我が輩か?」

女「はい、愚痴もこぼしてましたし」

博士「……止めるつもりはない」

女「なぜ?」

博士「…………」

女「…………」

博士「……まあ、いろいろ、な」

女「いろいろ……ですか」

博士「そう、いろいろだ。それにそんなことよりも飲め飲め!全然飲んでないではないか!」

女「自分のペースで飲んでますから大丈夫です」

博士「ぬう、そうか」

女「ええ」

女(……間違いない。博士は隠している)

女(……私相手に、隠し事をしている)

女(………………)

女(それは……許されないことだ。理由は至極単純)

女(隠し事をされているという事実はひどく私の神経を逆立たせるからだ)

博士「うはははは!酒がうまい!止まらん!止まらんぞー!」

女「博士、ほどほどにしておきませんと明日に響きますよ」

博士「大丈夫だ!超天才である我が輩が酒ごときで体調を崩すわけがない!」

女(……心の苛立ちを気取られてはいないのか少し不安だ)

博士「ぬはははは!明日には明日の風が吹くぅ!」

女「……深酒すると悪酔いする質だったんですね」

博士「我が輩は酔ってなどおらーん!」

女(……大丈夫そう)

のんびり亀更新

~ ~ ~

博士「すぴー……すぴー……」

女「あーあー、寝ちゃった」

博士「すぴー……」

女「まったく、ペースも考えずどんどん開けるから……」

博士「ぷしゅるるー……」

女「…………」

博士「すぴー……」

女「普段はそんなことないのに……」

博士「ぷしゅるるるー……」

女「……変な寝息」

博士「すぴぴー……」

女「……」ジー

ぷにっ

博士「すぴぴー……」

女「……」ツンツン

ぷにっぷにっ

博士「……んむ?」

女「もしもーし、起きてくださーい」

博士「…………」

女「布団で寝てくださーい」

博士「……ぷしゅるるるー」

女「…………」

博士「すぴぴぴぴー」

女「……起きそうにないですね」

博士「ぷしゅるるー……」

女「…………起きないと悪戯しちゃいますよー」

博士「すぴー……」

女「……本当にしちゃいますよー」ボソ

博士「ぷしゅるるるー……」

女「……起きないのが悪いんですからね」

キュッキュッキュキュキュッ

博士「うごー……」

「私はMです」

女「……ぷっ、くくくっ。こ、これでよし!」

博士「すぴぴー……」

女「……くふっ、あははは!あははははは!……はぁー、楽しいなあ。今が」

博士「むにゃ?」

女「あっ」

博士「……」キョロキョロ

女「…………」

博士「……おい」

女「は、はいっ」

博士「……うるさいぞ」

女「ご、ごめんなさい」

博士「……静かにな」

女「わかりましたー」

博士「………………すぴぴー」

女「……片付けをしーちゃおっと」

~ ~ ~

女「おーしまい。やっぱり枝豆残っちゃったかー」

女「ま、わかってたことだし。冷蔵庫に入れて置いて……っと」

女「博士ー」

博士「すぴぴー……」

女「博士。布団で寝てください」

博士「すぴぴー」

女「……気持ち良さそうに寝てますね」

女「…………」

女「なんだか眠くなってきちゃいましたー。お酒が回ったんですかねー?」

女「……ということで博士の横で寝ちゃっても仕方ないです。仕方ないんです」

女「なので失礼しまーす」ゴロン

眠気が限界、亀だわ量が少ないわで最低ですね。おやすみなさい

女「……」ジー

博士「……すぅ、すぅ」

女「こんな無防備に寝てしまって、よっぽど疲れてたんだろうな」

女「数ヶ月前は赤の他人だった自分がいるのに」

女「…………あー」

女「明日は休みかぁ、どうしようかな……」

女「布団干さなきゃ、明日晴れだったかな」

女「のんびり過ごすのもいいなー……」

女「ご飯は家にあるものだけで済ませてネットしてようかな。あ、博士が怒るか……」

女「……たまには一人の時間でも……」

後輩「先輩まだ終わんないすか?」

……えっ?

後輩「えっ?じゃないすよ。まだ終わってないすか」

……嘘だ。ここは……

後輩「つうか先輩マジ仕事遅いっすね。足引っ張らないでくださいよ」

上司「おい、もう頼んだ仕事は出来たのかね?」

後輩「聞いてくださいよ。先輩まだ終わってないみたいで……」

嫌だ!嘘だ!違う!

上司「……はぁ、またかね。君のせいで周りが迷惑してる自覚がちゃんとあるのかね?」

これは【私】なんかじゃない!【僕】はもう【私】じゃない……違うんだ!

同僚「また、あいつかー。あいつのせいで仕事増えるのこっちなんだよなー」

ごめんなさい

後輩「本当にそうっすよね。おかげで残業しなきゃいけなくなったり」

頑張ってるんです

同僚「本当に勘弁してくれよ」

すみません

上司「……君、こんなことは言いたくないのだが……」

違、う。違う違う違う違う違う違う違う違う違う

上司「やる気、あるのかね?」

【僕】は……

女「違うっ!」ガバッ!

女「……はあ、はあ、はあ」

女「え……あれ……」

チュン、チュンチュン

女「……朝?」

博士「かーこー……」

女「夢、だった……?」

女「……よかった」

女「私は僕じゃない。私は私。博士の助手。博士の家の居候」

女「……あれは、もう違うんだ」

博士「……ふごっ!」

女「あ……」

博士「うぐぅ……」

女「博士、起きたんですか?」

博士「……ずぅ……」

女「え?」

博士「み、ずぅ……」

女「あぁはいはい。持ってきますね」

博士「頭がぁぁぁ……」

女「あんなに飲むからですよ……」ジャー

博士「すまん、小言は後にしてくれ……」

女「どうぞ」

博士「すまんな」

ごくごくごく……

博士「ぶはぁ」

女「もう一杯いりますか?」

博士「いや、いい。これ以上は戻しそうだ……」

女「何やってるんだか」

博士「くぅぅ、少し羽目を外しすぎたか……」

女「宅飲みでよかったですよ。外で飲んでいたら博士を運ぶの大変でしたでしょうし」

博士「いや、宅飲みだからと思って気が緩んでな……」

女「自業自得ですね」

博士「あいたたたたぁ……」

女「今日はせっかくの休みですけど、その有様じゃ何も出来なさそうですね。買い物に付き合ってもらおうと思ったんですけど」

博士「その通りだ」

女「スポーツドリンクでも買ってきましょうか……」

博士「……ところで我が輩がこの様だというのに貴様は平気そうだな?」

女「そりゃセーブしましたし。あまり酔うのは好きじゃないんですよ」

博士「そうか……っつう!」

女「あーあーあー」

博士「頭が割れるぅぅ」

女「割れませんよ」

博士「割れるように痛いのだたわけぇ!」

女「それくらいわかりますよ。あとどうでもいいですけど大声で喋って大丈夫なんですか?」

博士「うぐぉぉ……」

女「重症ですね」

博士「す、すまんがお使いを頼む」

女「いいですよ。何が欲しいんです?」

博士「スポーツドリンク……」

女「スポーツドリンクですね。いろいろ種類ありますけど、どれがいいんですか?」

博士「なんでもいい」

女「わかりました、どれ買ってきても文句言わないでくださいよ?」

博士「ああ……」

眠いのでここまで。レスくれる人達ありがとう、あなた達がやる気の源です

ガチャン

博士「……行ったか」

博士「つつ……、飲み過ぎたな。我ながらバカなことをしてしまったな」

博士「……いかん、な」

博士「……これでは先に延ばしにしているだけではないか。あいつめ、働くようになっても本当に世話がやける」

博士「……少しあいつは我が輩にもたれすぎている。一度、はっきりさせねばならんな」

博士「……せっかくちやほやされる姿になったというのに……」

博士「甘やかしすぎたのか?それなら我が輩にも責はあるな」

博士「……おえっぷ!?」

ガチャン

女「ただいまー、帰りましたよー」

博士「……よ、よく帰ってきたな」

女「…………」

博士「どうした……」

女「……顔色すごく悪いんですけど大丈夫ですか?」

博士「あんまり大丈夫ではないかもしれん……」

女「あと酸っぱいですね、臭いが」

博士「ああ、さっき吐いてしまってな……」

女「口、ゆすぎました?」

博士「一応はな」

女「まったく、あんまり小言は言いたくはないんですけどねー」

博士「なら言うな」

女「はいはい、それじゃあスポドリ飲みます?」

博士「もらおう」

女「はーい、どうぞ」コポコポ

博士「…………」ゴク、ゴク

女「おぉ、いい飲みっぷりですね。まるで昨日みたいに」

博士「…………」

女「どうかしましたか?」

博士「……いつになく嫌みっぽいな、貴様」

女「そうですか?」

博士「ああ、間違いない」

女「自覚はなかったんですが……。気をつけますね」

博士「……それとも我が輩には貴様が居ないとダメだ。居た方がいいと思って欲しいのか?」

女「……何を言ってるんです?」

博士「白を切る気か?無駄だ。働きはじめてお前が少しはまともになったかのように見える。しかし根っこの部分は大して変わっておらん」

女「……なんでそんなことを言うんですか?博士の言った通りに働いているのに文句を言われる筋合いは……」

博士「それだ」

女「……」

博士「根っこの部分で貴様は少しも自力で立っては、いや立とうとはしていない」

女「……止めませんかこんな話。つまらないですし、博士だって体調が悪いじゃないですか。また今度……」

博士「ダメだ」

女「……なんなんですか?いったい何が言いたいんですか?」

博士「一人立ちをしろ。いつまでも我が輩にお守りをさせるな」

女「…………」

博士「……前々から言おうと思っていた。貴様は我が輩に自分の身を預けている。そんなことではいつまでたっても……」

女「なんですか、それ」

博士「……む」

女「そりゃ私だって自覚してますよ。今はお世話しているみたいに見えるけどおんぶにだっこだって。でも、それがなんなんですか?」

博士「今のままでは貴様はいつかダメになる。人の考えに流されるだけではなく自分の意志を持て」

女「余計なお世話ですよ。私は今のままでいい」

博士「貴様がよくとも我が輩がよくない」

女「……嫌になったんでしょう?」

博士「なに?」

女「私と共に暮らすのが会話をするのが食事をするのが私を気遣うのが私に気遣われるのが面倒になったんだ!」

博士「なんでそうなる!?」

女「勝手にこんな体にしておいて、嫌になったらすぐに捨てるんですか。さすが悪の組織ですねえ!やることが極悪非道ですよ!」

博士「そんなことは一言も言っておらんではないか!」

女「いったい何が違うというんですか!?」

博士「違う!」

女「違いませんよ。私のことが嫌になったんだ、そうに違いないです。だってもし私だとしても……」

博士「黙れ」

女「っ!」ビクッ

博士「そして我が輩の話を聞け。……わかったか?」

女「……はい」

博士「なら最初に言っておく、別に貴様を捨てるだのはしない」

女「でも……」

博士「でも、ではない。我が輩はただ貴様に一人立ちしろと言っただけだ。それ以外は何も言っておらん。そうだな?」

女「……はいそうです」

博士「……不安がる貴様の気持ちもまあわからんでもない。だが貴様にどのように思われているかはわかった。我が輩はそんなことをするような輩だと思われていたことがな」

女「ち、違う……んです」

博士「何が違うのだ?」

女「その……【僕】だった頃からの癖で、悪い方向へ悪い方向へ考えてしまうのが止まらなくて……」

博士「…………」

女「悪い癖ですよね、ごめんなさい気をつけます」

博士「許すからその眼を止めろ」

女「えっ……と?」

博士「貴様と初めて会った時にしていたその眼だ。どんよりとしたその眼を止めろ」

女「はい、すみません……。あははは、私ってダメダメですねー。いま、頑張って直しますね」

博士「…………」

女「……直りました?」

博士「ああ、マシになった」

女「そうですか……」ホッ

博士「(……全然直っておらん)」

女「えっと、私はどうすれば……。あ、こういうの聞いてはダメなんですよね……」

博士「我が輩としては貴様が一人立ちするのが好ましい。別に誰にも頼るなとは言っておらん。」

女「……今のままじゃダメなんですか?」

博士「いかん。我が輩と貴様はただ成り行きで同居しているだけにすぎん。そんな他人にここまで精神的にたよりきってどうする」

女「他人じゃないです」

博士「む?」

女「一緒に同じ釜の飯を食べた仲です。一緒に同じ部屋で暮らしたんです。他人じゃありません」

博士「一時的にな」

女「……一時的じゃないです」

博士「ほう、それならずっとこの生活を続けるつもりか?」

女「……できることなら、私はそうしたいです」

博士「これは傑作だな、自分を拉致して改造した相手とずっと一緒に居たいだと?」

女「……はい」

博士「(眼の色が元に戻った、か)」

博士「……正直、貴様と暮らした日々は我が輩にとっても悪くはなかった」

女「え……」

博士「最初はとんだ面倒くさい奴だと思ったが、一緒に暮らしていればどんなダメな奴にでも情が移るものだ」

女「馬鹿にされてます?」

博士「まあ、聞け。……甘っちょろいことを言っている自覚はあるが、そんな情が湧いた馬鹿が自分以外に対して心を閉ざしていたら……」

女「……閉ざしていたら?」

博士「その……あれだ!」

女「……?」

博士「察しが悪いな貴様は!心配になるに決まっているだろうが!」

女「えっ……」

博士「そこで心底不思議そうにされたら我が輩でも傷つくのだが」

女「え、でも、あれ?」

博士「あれだ!ダメな子ほど可愛いという奴だ!」

女「…………」ポカーン

博士「…………っ!」

女「くくっ、なんですかそれ!私、子供扱いされてたんですか?」

博士「ああ、それも頭に手間がかかるがつく、な!」

女「……そっかー」

博士「ええい、一人で何を納得している!?」

女「……私、そんなに手間がかかりました?」

博士「貴様、我が輩に最初に言った言葉を忘れたとは言わさんぞ?」

女「そんな昔のこと忘れちゃいました」

博士「貴様ァ!」

女「でも、それなら自立しないでおきましょうか」

博士「我が輩は自立しろと言ったのだぞ!?」

女「だって自立したら博士が寂しがりそうですからね」

博士「な、何を口走っとるのだ貴様は!」

女「ダメな子ほど可愛いんですよね?私、だいぶダメな子でしたからね。それはそれは可愛いかったでしょう?」

博士「ち、違っ!」

女「自分で言ったんじゃないですか。でも、博士言うことも少しずつやっていきますよ?ダメな子を可愛がる親をあまり心配させたくないですからね」

博士「……貴っ様……うっぷ!?」

女「ほらほら、体調が悪いのに怒鳴るからですよ」

博士「……!!」

女「言いたいことがあるのはわかりますけどまずは吐いてきてくださいよ。掃除するの嫌ですよ?」

博士「うっぷ……」ドタドタ

女「トイレ汚さないでくださいよー」

女「……ふぅ」

女「……最後まできちんと締めて欲しかったですけど、仕方ないですね」

女「……今日のご飯、どうしようかなー」

よし、終わってもいい感じに仕上がった
続きが思いつかなかったらこれでおしまいです

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