サイバー・ウォー 第63自由擊部隊の少女たち (4)

小学校の授業でも習う、一般常識だ。

どのようなプログラムであろうとも人間が持つ脳波に到底及ばない
ことが立証された。
その実験が行われたのは、もう随分と昔の話だ。

その実験から、人間の脳波をプログラムに変換、サイバー空間に
移行させる技術が確立するのに、そう時間は掛からなかった。

自動プログラムの進化は緩やかなものとなり。
人々がプログラムとなり“労働”するようになったのは、もはや日常風景だ。
そう、それは戦争さえも……


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空間内部は夜とも明け方ともつかない闇に包まれている。
しかし、視界が曇ることはない。
“見る”のではなく、“認知”しているのだ。

「はぁっ!」
その少女が多くの者に与える第一印象は、空だ。
色素の薄い、灰色とも水色ともつかない長髪が要因か。

空間内では、実際の筋力の比例など起こりえない。
最も重要なのは、脳波そのものが持つ演算能力。
次が、個人がもつ他各面的なセンス。

剣を振るうには、とても似合わない華奢な腕。
気合の一声と共に少女は振り下ろす。
“それ”はいくつもの数字の羅列と化して、散っていく。
甲高い、悲鳴とも取れる電子音と共に。

「絆(つな)、オートバグ撃破を確認、残率74%」
「聞こえている、絆? オート相手に3割近く削られたら使い物にならないのよ?」
現実世界。
いくつものモニター発光に照らされているとはいえ、その部屋は暗い。

スーツに身を包み、長い黒髪を一つに束ねた女性は怪訝そうだ。

「律花さん、すいません」
「……、指揮官っ! 訓練も仕事よ?」
「……あぅ、ごめんなさい」

空を彷彿とさせる少女、絆に叱咤した女性。
律花は絆の姉と友人、だった。

サイド:絆

体を実際に動かしている訳ではない。
装置に座っているだけなのに、汗はかくし、疲労感も溜まる。
機器担当の鈴木さん曰く、
「疲れずに勉強を続けるのは無理でしょう?」
だ、そうだ。

シャワールームに転がり込む。
熱いのは苦手だから、温度は冷たくない程度に……
鏡に映った私が、視界を過ぎる。

リアルの私はこんなにも非力だ。
こんなにも疲労も貯まるし、優秀な学だってない。
それでも、例えばお姉ちゃんみたいに誰かの役に立てるなら。

そう思って自由擊部隊に志願してからは、厳しい訓練の毎日だ。
リアルではないけど、私にとっては向こう側だってリアルなのだ。


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