木村夏樹「モバPとロックフェス」 (28)



————————————夏某日、事務所


夏樹「おっす、P。呼び出したみたいだけど……何か用?」

P「ああ、お前さ、今度の日曜空いてるか?」

夏樹「日曜? とりあえず仕事は……無い。ってそれはPがよく知ってるだろ?」

P「まあ、そうなんだけどな。プライベートで用事とかだよ」

夏樹「とりあえず今のところはないな」

P「そうか」

夏樹「あ、待って。その日はデートだわ……どうすっかな?」

P「マジ?!」

夏樹「嘘だよ。アタシに男がいるようにみえるか?」

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P「そりゃ、お前だって女の子だろ。いても不思議じゃないさ」

夏樹「ばっ、バカ! 何言ってんだよ!」

P「でも、アイドルやってる間は我慢してくれよ? 一応恋愛はご法度の体裁取ってるんだからな?」

夏樹「うるせーな、嘘だって言ってんだろ? なんだよ、そんなこと確認したいのか?」

P「おっと、そうじゃない。忘れるところだった。今度の日曜日に臨海公園でロックフェスあるの知ってるか?」

夏樹「もちろん。でも、あれって超プラチナチケットなんだよなー。瞬殺で売り切れたんだよ」

P「実はさ……そのチケットがあるって言ったら?」

夏樹「マジで!!?」

P「マジ。知り合いのレコード会社の人がくれたんだよ」

夏樹「うおおおおっ! そりゃいいや!」

P「だろ?」

夏樹「あっ……でもいいや。拓海や涼も行きたいだろうし、あいつら誘ってやんなよ」

P「ところが、涼の奴、封切りされる新作ホラーを小梅と見に行く約束してるらしい」

夏樹「あちゃー」

P「ものすごく行きたがってたみたいだけど、先約がある以上仕方ないってな」

夏樹「涼も小梅には甘いからな。拓海はどうなんだ?」

P「拓海はその日仕事だ」

夏樹「あれ? そうだっけ?」

P「忘れたのか? あいつ先週ツーリングに行くからってお前と仕事代わっただろ?」

夏樹「あー、そうだったな」

P「だからあいつは、その日水着コンパニオンの仕事」

夏樹「ひえーっ。代わってくれて助かったぜ」


http://i.imgur.com/b8hLcY4.jpg

木村夏樹(18)

P「このチケットさ、一応、身分証明やなんやら厳しいんだよ」

夏樹「へー。フェスなのに珍しいな」

P「それで俺も行かなきゃ無効になるんだ」

夏樹「ふーん。ん?……それって……じゃあ行くのは?」

P「俺とお前」

夏樹「……」

P「すまんな。俺とじゃ役不足だろうが我慢してくれ」

夏樹「そ、そ、そ、そんなこと言ってねーだろっ!」

P「とりあえず、日曜頼むぞ」

夏樹「お、おうっ……」



夏樹(これは不意打ちだな……)

————————————日曜、駅前

夏樹(早く着いちまった……)

夏樹(別に期待してるわけじゃねーけどさ)

夏樹(なんか……こういうの慣れねーな、アタシ)

夏樹(このカッコ……おかしくねーよな?)

夏樹(な、なんで緊張してんだ……早く来いよ!)



P「おーっ! 夏樹!」

夏樹「ひゃっ!!」

P「なんだ?」

夏樹「お、お、おせーんだよ!!」

P「???……予定の15分前なんだが?」

夏樹「あ……あうぅ」

P「しかし、決めてきた衣装だな」

夏樹「へへへ……に、似合う……か?」

P「おう。夏樹っぽくって俺は好きだな」

夏樹「ば、バカっ!! 何言ってんだよ!!」

P「???……衣装の事だよな?」

夏樹「うっ……そういやPさんは、Tシャツとジーパンか……」

P「変かな?」

夏樹「いや、いいと思うよ。いつもスーツしか見てないから新鮮だな」

P「ロックな衣装ってのがわからなくてな……とりあえずこのへんが無難かと」

夏樹「無理に合わせる必要もないさ。自分らしくってのがロックの精神だからな」

P「だったらよかった。行こうか」

夏樹「おうっ」

————————————会場前

P「おおっ!この行列って全部観客なのか?」

夏樹「そりゃそうさ。実際はこれの倍はいるだろうな」

P「あれ?このチケット……どこで渡すんだ?」

夏樹「P!! こっちだこっち!! ここで引き換えるんだよ」

P「引き換え?」

夏樹「チケットをリストバンドに交換するんだ。これが入場の証になるからな」

P「へー……」

夏樹「何も知らないんだな」

P「なにぶん初めてなもんでね……」

P「これを手首に巻けばいいのか?」

夏樹「そうだよ。きちんと締めておかねーと落っことすぞ」

P「ん? これどうやるんだ?」

夏樹「あーもうっ! ちょっと手を貸しな!」

P「うん」

夏樹「こうやって……こう……」

P「……」

夏樹「……」


夏樹(アタシ……なんかすごい自然に手を握ってる……)


P「どうした??」

夏樹「なっ……な、なんでもねえよっ!!」

P「いたいいたい!! 締めすぎだっ!!」

————————————観客席

P「おおっ! すごいステージだな!!」

夏樹「だろ?!」

P「機材もすごいな……こんなデカいスピーカー始めてみたぞ」

夏樹「まあホールなんかと違ってさ、音が反射しない分余計に出力が必要だからな」

P「くわえてこの広さだもんな。そりゃ音を行き届かせるためにはこれぐらい必要か」

夏樹「おっ! 始まるぞ!」

〜♪〜


夏樹「くうぅ〜っ!! やっぱいいサウンドだったぜ!!」

P「夏樹、さっきのバンド知ってんの?」

夏樹「ああ、アメリカでデビューして間もないバンドなんだがな。去年のビルボードじゃ新人ではトップだったんだぜ」

P「へー。そりゃすごいな」

夏樹「再来年……いや、来年あたりは必ず来るバンドだからチェックしといたほうがいいよ」

P「……」

夏樹「ん? どうした?」

P「いや、お前もやっぱ音楽好きなんだなって」

夏樹「へへへっ、そりゃどーも。Pさんも楽しまなきゃ損だぜ」

P「おうっ」

〜♪〜


夏樹「はああぁっ〜。これだけ聞きまくると最高だよな! 身体がノリノリに……」

P「………」


夏樹(Pのやつ、さっきからノートに何書いてんだ?)


P「えっと……ステージは……30mくらいか……スピーカーが……」ブツブツ


夏樹(なんだよ……ここまで来て仕事か?……)


夏樹「おいっ! P!」

P「うおっ! なんだっ?!」

夏樹「ここはロックを楽しむ場所だぜ? 仕事は後だ!!」

P「あっ?……ああ、すまんすまん。つい、な」

夏樹「アタシ一人で浮かれてるみたいじゃねーか」

P「悪い悪い。職業病でな」

夏樹「ったく、せっかくのデー……」

P「で?」

夏樹「……なんでもねえよっ!! バカッ!!」

P「俺……なんか言ったか?」


夏樹(ふんっ!)

ぽつぽつ………


P「おい、夏樹。雨降ってきたぞ」

夏樹「あ? 別にいいよ、んなもん。濡れてもノリまくるってのも楽しみの一つなんだよ」

P「でもなぁ……」

ざーっ!!!


P「ひいいっ、ゲリラ豪雨じゃねーか!! カッパどこになおしてたたっけ?」

夏樹「ったく、うろたえるなよ。雨対策なんて常識……あれ?」


夏樹(やっべえ! 去年使ったポンチョ、入れてくるの忘れてた!!)


P「あったあった……あれ? 夏樹、カッパどうした?」

夏樹「アタシは……いいや別に」

P「よくねーよ! 大事なアイドルに風邪なんかひかれてたまるか!」

夏樹「でも……」

P「ほら、俺の使えよ」

夏樹「Pさんは?」

P「俺は大丈夫。風邪引きにくいから」

夏樹「そんなワケねーだろ! Pさんこそ風邪引かれたらアタシらが困るって」

P「うーん……じゃあ、ほら」


ぎゅっ


夏樹「……えっ?」

P「こうやって二人で頭からかけてれば、一枚でも大丈夫だろ」

夏樹「で、でも……」

P「なにやってんだよ。もうちょっと近づかないと濡れるだろ?」

夏樹「う、うん……」


夏樹(ち、近いよ……)


夏樹(でも……サンキューな……P)

P「雨、上がったな」

夏樹「うん……」

P「せっかくのリーゼントが台無しだな」

夏樹「……しかたねーよ」


http://i.imgur.com/61e9Lmd.jpg


P「でも、俺は今の夏樹、可愛いと思うけどな」

夏樹「!!!」

P「そこいらの女の子よりよく見えるぞ」

夏樹「ばっ……ば、ば、馬鹿野郎っ!!」

P「? どうした? 顔赤いぞ? 風邪引いたんじゃないだろうな?」

夏樹「うっさいうっさい!!」

————————————終了後、観客席

P「ようやく終わったな」

夏樹「そうだね」

P「いいライブだった。来てよかったよ」

夏樹「何言ってんだよ……上の空だったくせに」

P「でも、ちゃんと聞いてたぞ?」

夏樹「ふんっ、どーだか?」

P「俺な、ずっと考えてたんだ」

夏樹「何を?」

P「あのステージに、拓海がいて、涼がいて、そしてお前がいる……それを想像してた」

夏樹「アタシらが?」

P「お前らさ、みんな気持ちよさそうに演奏して、歌って、踊って」

P「で、みんなお客さんもノリノリになって」

P「んで、お前たちがステージからはけて来るとき、俺に言うんだよ」


P「『最高にロックだった!!』ってすごい笑顔でな」


夏樹「……」


http://i.imgur.com/jZV5bV4.jpg

P「どうだ? いいと思わないか?」

夏樹「……何いってんだか」

P「あれ? 変かな?」

夏樹「そういうのは妄想っていうんだぜ? 日菜子のクセがうつっちまったか?」

P「うーん……」

夏樹「そろそろ、帰ろうぜ。渋滞に巻き込まれるぞ」

P「そうだな……夏樹、手を出せ」

夏樹「ん?」


きゅっ


夏樹「……えっ」

P「夏樹、はぐれんなよ」

夏樹「ふんっ! アンタもね!」




夏樹(妄想かもしんねーけど……)


夏樹(この人と一緒ならやれそうな気がする)


夏樹(とりあえず今は……)




夏樹(この手を離さねーようにしねーとな)




おわり


これで終わりです
一応、拓海、涼、夏樹でバンド組んでる設定です。
最初に書くのを忘れてました。すいません。

なつきち好きの方が喜んでくれたらうれしいです

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